音楽美学レポート

【課 題 内 容】
授 業 内 容 を ふ ま え て、 「 music 」 と い う 言 葉 に 示 さ れ る 西 洋 の 音 楽 観 と、 「音 楽」
と い う 言 葉 に 示 さ れ る 日 本 の 音 楽 観 の 違 い に つ い て 簡 潔 に ま と め な さ い。

　 は じ め に、 music と は ギ リ シ ャ 語 で mousike （ o に ア ク セ ン ト、 e を の ば す ）
で あ る。 古 代 ギ リ シ ャ 語 に は、 長 短 の あ る 母 音 や 高 低 ア ク セ ン ト （ Pitch
Accent ） が あ り、 リ ズ ム と 音 の 高 低 が 存 在 し た。 よ っ て、 mousike と は 言 葉 と
音 楽 が 融 合 さ れ た も の で あ る。
　 西 洋 の 歴 史 で は、 １ 世 紀 か ら 単 旋 律 聖 歌、 ９ 世 紀 か ら 多 声 教 会 音 楽 の
polyphony 、 １ ２ 世 紀 か ら 単 旋 律 世 俗 歌 曲、 １ ５ 世 紀 の ル ネ サ ン ス 前 半 か ら ミ サ
曲、 motetus 、 chanson 、 ル ネ サ ン ス 後 半 か ら Madrigale が 発 達 し て い る。 い ず
れ も 声 楽 曲 で あ り、 Madrigale は 言 葉 の 内 容 を 音 楽 に 反 映 さ せ た も の で あ る。 １
６ 世 紀 末 に は、 言 葉 の 抑 揚 を 忠 実 に 反 映 し た 朗 唱 法 が 発 達 し、 Vincenzo Gallilei
や Caccini が 参 加 し て い る Camerata と い う グ ル ー プ に よ っ て、 古 代 ギ リ シ ャ 音
楽 の 復 興 や オ ペ ラ の 創 出 が 目 論 ま れ た。 言 葉 の 抑 揚 を 忠 実 に 反 映 し た 朗 唱 法 の こ
と を 彼 ら は Stile reppresentativo と 呼 び、 の ち の recitativo の こ と で あ る。 こ の
recitativo に Aria が 加 え ら れ、 オ ペ ラ が 発 達 し て い く こ と と な る。
　 元 来、 西 洋 は 声 楽 主 義 で あ り、 バ ロ ッ ク や 古 典 に お い て も music ＝ 声 楽 で、 こ
の 時 代 の 作 曲 家 は、 世 の 中 に 認 め ら れ る た め に オ ペ ラ と 教 会 音 楽 を 数 多 く 作 曲 し
な く て は な ら な か っ た。 器 楽 曲 が 現 れ は じ め た の は 後 期 バ ロ ッ ク で、 充 実 し て き
た の は せ い ぜ い １ ５ ０ 年 前 の ロ マ ン 派 以 降 で あ る。
　 日 本 で は、 日 本 初 期 文 献 に 見 ら れ る 「音 楽」 の 用 語 に は 統 一 性 は 見 ら れ な い が、
平 安 中 期 以 降 は 「音 楽」 ＝ 「雅 楽」、 「音 楽」 ＝ 「仏 教 音 楽」 を 指 し て い る。 雅
楽 も 仏 教 音 楽 も 器 楽 を 主 体 と し て い て、 日 本 に と っ て は 異 国 の も の で あ り、 何 や
ら あ り が た い も の を 「音 楽」 と さ れ て い た よ う で あ る。 幕 末 に は、 西 洋 音 楽 隊
（ 軍 隊 ） の 演 奏 に 対 し て 「音 楽」 と い う 用 語 を 用 い て お り、 外 国 の 器 楽 音 楽 を
「音 楽」 と 捉 え て い た。 一 方、 西 洋 歌 曲 に 対 し て は 「唱 歌」 と 示 さ れ て い て、
「音 楽」 と い う 言 葉 は 使 用 さ れ て い な い。
　 以 上 の こ と か ら、 西 洋 で は、 教 会 音 楽、 世 俗 歌 曲 ・ 合 唱 曲 と い っ た 主 に 声 楽 曲
中 心 で、 music ＝ 声 楽、 日 本 で は、 音 楽 ＝ 異 国 の 器 楽 音 楽 と い っ た 音 楽 観 の 違 い
が み ら れ る。 そ こ に は、 西 洋 で は、 「 Verbal message 」 が 重 要 視 さ れ て い る こ
と、 日 本 で は、 器 楽 曲 か ら 特 に 感 じ る こ と が 出 来 る 「旋 律 性」 が 重 要 視 し て い る
こ と が 隠 さ れ て い る。