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/イスラエル問題は宗教紛争か」 "Is Religion am Obstacle to Peace in the Holy Land?"
/イスラエル問題は宗教紛争か」 "Is Religion am Obstacle to Peace in the Holy Land?"
【1】概要
・日時:2010 年 4 月 25 日(日)
・場所:大阪城南キリスト教会
【2】タイムスケジュール
15:00- 開会あいさつ(日本聖公会大阪教区主教 大西修氏)
スライド上映「パレスチナの今」(NPO 法人パレスチナ子どものキャンペーン常
任理事 小川信夫氏)
15:05- ラブキン教授を迎えて(日本キリスト教団牧師 村山盛忠氏)
15:20- ラブキン教授紹介(「ホロコーストとイスラエルを考える」シンポジウム実行委
員会コーディネーター 長澤美沙子氏)
15:25- ラブキン教授講演
16:50- 休憩(質問用紙回収)
17:00- 質疑応答
17:45 閉会あいさつ(日本聖公会大阪教区城南キリスト教会牧師 齊藤壹氏)
【3】主な論点
3.1 ステレオタイプと現状
「イスラエル=ユダヤ国家であり、パレスチナ問題は宗教問題である」というステレ
オタイプ→これを批判すると、「反ユダヤ主義」との非難がふりかかる。
3.2 伝統的ユダヤ教の基本的思考
・イスラエルへの帰還に対する批判的警告(『バビロニア・タルムード』)
・政治的行動主義や帰還への祈りを批判
・イスラエル国がなくなっても、ユダヤ教徒は普通に生活し続けられる
3.3 シオニズムの黎明期
・ユダヤ教という宗教によらず、民族的・エスニックな集団としての自己定義( 20c 初
頭)
・ロシアに住んでいた世俗的で無神論的な人々がイスラエルへ移住
(つまり、敬虔なユダヤ教徒がシオニズムを推進したのではない!)
3.4 シオニズムの特徴
・過去の歴史との連続性をでっちあげるロマン主義
ex. ネタニヤフ首相:「自分の名前は、古代イスラエル王国からあるものだ!」
※ラブキン教授はこれに対し、「彼の名は彼の父が付けたものだ」と笑う。
・宗教的象徴を利用する
※明治期の日本における神道的象徴の政治利用と類似
・安全保障に対するこだわり
・同質的(homogeneous)で、民族的に純粋な国家を志向するヨーロッパ的思考
→Jewish State の建設へ
3.5 シオニズムに対する伝統的ユダヤ教による批判
・シオニズムは、ヨーロッパ起源の民族主義の一種
・伝統的ユダヤ教に対する脅威
3.6 パレスチナ問題の性質
・パレスチナ人が怒るのは合理的(rational)。誰だって追放されたら怒る。
・問題は宗教的なものではなく、政治的なものである
3.7 西アジアにおけるユダヤ教の位置づけ
・ユダヤ人=少数派でありつづけた
※特にイスラーム世界において、イスラームの寛容な姿勢の下で共存
ex. 十字軍は途中でユダヤ人虐殺を実施したが、サラディンはエルサレム
を奪回後、ユダヤ人が戻るのを認めた。
・イスラーム、ユダヤ教:柔軟
キリスト教:聖墳墓へのこだわり
3.8 キリスト教シオニズムの影響
・担い手:エヴァンゲリカルズ(キリスト教福音主義者)
ex. Christians United for Israel―世界のユダヤ人総人口を超える 1,500 万人
ブッシュ Jr.の支持基盤
イスラームへの嫌悪
・思考:イスラエル国家なしに、キリスト再臨、最後の審判、世界の終りが到来しない
∴パレスチナへのユダヤ人の帰還は、宗教的義務である
※当の伝統的ユダヤ教徒は、イスラエルのために団結するなどあり得ない
3.9 ラブキン教授による宗教シオニズム批判
パレスチナ人に対する暴力を容認しつつ、ユダヤ教の伝統を遵守する
※ラブキン教授による批判
レビ記 18:21「自分の子のうちある者を日の中に通らせてモレク神にささげ、あなた
の神の名を汚してはならない」(ヘブライ語)
→全ての人を犠牲に捧げる場合は罰せられないが、一部の者を犠牲に捧げる(=パ
レ
スチナ人に対する暴力を容認する)と、いくらユダヤ教を守っていても神に罰せ
ら
れる
【4】まとめ
・議論において正確な用語法、正確な分析を行う必要性
用語の多面性を省みず、大雑把な議論をすることの危うさ
ex. 「イスラエル」:聖書的意味?
ユダヤ人の総体?
聖地?
今あるイスラエル国?
特に慎重な吟味が必要な用語=「ユダヤ国家(Jewish State)」
最も混乱している用語
<雑記>
翻訳にあたり、日本側の通訳および主催者の間で、実際に用語の意味・訳をめぐる混
乱が見受けられ、まさにラブキン教授が指摘する「正確な用語法と分析」の必要性を実
感させられた。