(kenichi Sato/佐藤健一) (2011/02/19) <日本PC連合学会 冬季セミナー> 家庭医と地域リハ (ハンドアウト)

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                                         2011.2.

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リハビリの視点を持って!
地域を中心に医療を叫ぼう!!

関西リハビリテーション病院 佐藤 健一
<http://www.scribd.com/people/view/164734-ksatoh>

地域でのリハビリを進めていく上で大切なこと
「ホームズの視点」を持つこと
 ・現在から過去を推理
 ・現在から未来を予測

このレクチャーでの目標
1. リハビリの基本的知識を理解する
2. 家庭医が関わりうるリハビリについて知る
3. 外来,在宅,病棟で使えるリハの視点・指導を知る

リハビリテーションの視点を知る
リハビリテーションとは?
  心身に障害を持った方に対し
   1.障害を可能な限り回復させる
   2.残された能力を最大限に使用できる
   3.家庭や社会への参加を可能にする
   4.日常生活における諸活動の自立性を向上させる    ことが目的

 理学療法と機能的作業療法の違い
共通部分:身体機能障害の改善・予防が目的

理学療法 機能的作業療法
運動の過程に注目 動作の結果に注目

受け身的な訓練 能動的な訓練

身体の機能障害を部分的,断片的に訓練 身体の機能障害を一連の動作で同時に訓練

物理療法(電気刺激,牽引,ホットパックなど)は?
 リハビリの手技のほんの一部分にしかすぎない

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リハビリはリハ医にお任せでいい?
 ・リハビリ専門医の絶対数が少ない
 ・急性期病院ではコンサルトを受ける立場 
 ・リハビリ不要と判断されたら何も介入が出来ない
 ・内科疾患治療中の廃用症候群が一番の問題となる
    *長期臥床の原因
   脳血管疾患41%,認知症:14%,転倒・骨折:14%,衰弱:13%,関節疾患:8%

医療関係者が持つべきリハビリの視点
向上


この視点
一般的 専門的

維持

「リハビリ」=「機能訓練」の考えからの脱却を!!
受療者・介護者の「生活」に視点を向ける
 ・老化とされている機能障害の発見
 ・自宅の生活環境を評価
 ・自宅での日常生活動作レベルの確認
 ・介護負担増加がないかの確認

生活能力評価の3ポイント
 1)身体機能面
 2)環境面
 3)心理・精神面

1)身体機能面の評価
 その時の状態でダマされることがある
  →本当の身体能力を評価
   元々の身体能力を評価    
  身体能力が短期間で変化したのか?,長期間で変化したのか?
   →回復に要する日数や目標とする身体レベルが変わる


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身体能力の評価方法
  FIM:Functional Independence Measure ・・・おすすめ
    運動:13項目,認知:5項目 各々1 7点  →126点満点で評価
   BI:Barthel Index

廃用症候群
1) 廃用症候群の定義
身体の全部や一部を使用せずにいる(活動性低下)
 →全身や局所の「機能的・形態的障害」を生じることの総称

運動器系 骨萎縮、筋萎縮,関節拘縮、骨粗鬆症、異所性骨化

循環器系 起立性低血圧、心予備能低下、静脈血栓症、浮腫

呼吸器系 肺塞栓症、沈下性肺炎、無気肺

泌尿器系 尿路結石、尿路感染、尿失禁

精神機能 認知症、知的能力減退、うつ状態、睡眠障害、食欲不振

その他 姿勢、脱水、便秘、褥創、皮膚萎縮

2) 老化との違い
生理的老化
生理的老化 病的老化(廃用)
加齢に伴う生理的な機能低下 生理的老化が著しく加速 廃用症候群
能力
全ての人に起こる 一部の人のみ
不可逆的 可逆的(介入すれば)

入院中に廃用を来す理由
  治療の「結果」ではない
時間
  治療中の「安静」の結果で起こる
 →医療者が注意すれば予防できるはずなのに...

入院中の暗黙の安静
 ・検査前には病室にいることを求められる
 ・運動する場所がない
 ・動かなくても生活できる
 ・運動すると転倒のリスクが増える
 ・病態の時期にかかわらず安静を求める

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<筋力低下>
 定義 最大限に力を入れても同年代ほどの力が出ないこと
    加齢の影響以上に筋力が落ちている
  鑑別:加齢による筋力低下(Sarcopenia)

筋力低下の発生する速さ
安静臥床 →1週間で15 20%の筋力低下,3週間で50%の筋力低下
筋力増強 →1週間で10%が限度
      回復には要した期間の3倍が必要とされている

活発に見える高齢者でも...
予備力がない,様々なリスクを抱えている
  →短期間の安静でも起き上がれなくなる可能性
 →「年のせい」から「廃用の影響」へ

もうひとつの問題
 廃用症候群は入院してから始まっている? いつから始まっている?
  →これを考慮することが大切
   治療に要する期間<廃用回復に要する時間

治療中に動かすことのメリットとデメリット
 安静によるメリット:安心感,管理が楽,業務が減る(問題の先送りとも)・・
 廃用によるデメリット:筋力低下,拘縮,骨萎縮,体力低下,在宅困難・・・

 どちらを取るかだが,地域に戻るのにはどちらが致命的?

<関節拘縮>
 定義 軟部組織(筋肉、 、皮下組織、皮膚など)の変化
        →関節の可動域制限を来たした状態

 固定日数と回復の可能性
  4日  → 自動的.他動的な可動域制限(可逆的)
  4週間 → 結合組織増殖と癒着による制限(可逆的)
  8週間 → 関節軟骨に繊維素形成や潰瘍発生(不可逆的)

関節拘縮による影響
 麻痺が軽度でも運動障害を来す
 一度拘縮が出来てしまうと,もとに戻すことは困難
  痛や歩行障害の原因となる
 復職困難

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廃用症候群への介入
 ベッド上でのポジショニングの工夫
 可動域を動かす取り組み
 立ち上がり練習

<立ち上がり訓練> ☆ 
 最も安全で効果的
   方法:5秒程度をかけてゆっくりと立ち上がり、5秒程度をかけてゆっくりと腰掛ける
   回数:20回程度、通常は50∼100回
   負荷:座面の高さを変えることで調節可能
   利点:安全性が高い
      循環器への影響が少ない
      実生活での動作応用が可能

2)環境面の評価
「家」というものの捉え方の違い
  医療関係者 → 評価・改修対象
  本人・家族 → 長年の生活の場

医療者の持つべき視点
 ・生活環境の価値を認める
 ・短時間で長年の生活を想像する
 ・どこが問題となりうるかを評価

どこをみていくか? → 生活しているあらゆるところ
  「ホームズの視点」が生きてくる

自宅と病院の橋渡し
病院と自宅は大きく異なる

物理的 精神的

バリアは少ない
どこの病院でも同じような環境
病院 患者=客
動かなくても生活できる
福祉用具は比較的充実

バリアだらけ
家の環境は全て異なる
自宅 患者=主
動かないと生活出来ない
福祉用具は限定的

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在宅に向けてできること
 ・リハビリと病棟で行っていることの差を近づける
 ・病院と訪問の際に出来ることの差を近づける
 ・スムーズに退院できるように調整を行う

・医師の役割
  活動度を指示する(安静度は間違っても指示しない+こまめに変更する)
  廃用症候群を来さないように気を配る
  本人や家族に入院中であっても動くことの重要性を伝える

・リハビリの役割  
  能力低下の原因を評価する(元のレベルと比較していく)
  能力を向上させる
  向上した能力を病棟でもできるように連携を取る

・病棟の役割
  リハビリで向上した能力を実用化できるように取り組む
  本人の生活能力や行動範囲を拡大できるようにする
  病棟で全てをお世話するのではなく出来ることは行ってもらって必要なケアを提供する

・在宅での目標
  今まで以上に意識的に動くことを勧める
  入院前の身体能力に近づけることを優先
  介護者の精神的・物理的負担軽減ができるように考える

*自宅での能力向上は可能?
  元の能力,筋力低下の期間・程度,本人の意欲,家族の協力による
   

*過度の住宅改修や福祉用具の使用
   本人が能力を維持するための機会を奪ってしまう可能性がある
 例:段差解消  →つまずく可能性は減るが太ももを上げる機会が減る→他でつまずく可能性

・事務での目標
  (受付が実は能力の変化を一番見つけやすい)
  金銭管理能力
  服装の変化,髪型の変化
  移動能力の変化
  会話内容の変化
  お金の取り出し方(指の巧緻性の変化)

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