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Battlefield Operations: Falcon 4.

0 Allied Force 日本語マニュアル

第 25 章: 飛行力学と G 加重
空気力学は大きな学術分野であり、細部を突き詰めようとすればするほど、さらにその細部があることを知るに
至ります。幸いにして、飛行機を飛ばすためには、それに関する膨大な量の細部の全てを知る必要はありません。
そのため、本章では spare you pages of integrals and partial differentials~「知る必要があること」だけに話題
を絞って説明します。

飛行機に作用する力
パイロットは飛行中の飛行機に作用する力のうち基本的なものについて理解する必要があります。それを知識と
して蓄えることによって、飛行機に何が起ころうとしているのか、あなたの操作がなぜそのような形で飛行機に
影響を及ぼすのかを分析することができます。

さあ、基本的なところから始めましょう。飛行機にはいついかなるときも四つの力が作用しています。揚力と荷
重と推力と抗力です。これらの力のバランスを取ること。これは飛ぶことの経験全体から得られるものです。揚
力と荷重のバランスが取れているときは、今いるところの地上からの高さをそのまま維持することができます。
荷重が揚力よりも大きければ地面に向かって落ちていくわけですが、この点に関しては多少なり注釈が必要です。

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揚力

推力

抗力

重量

飛行力学と G 加重
推力は飛行機を空中に押し出しますが、この力は飛行機のエンジンによって生み出されます。ジェットエンジン
の働きを要約すると「吸込んで、圧縮して、かき混ぜて、点火して、吹出す」ということになります。エンジン
は吸気口から空気を吸込み、コンプレッサーで圧縮して、燃焼室でこの圧搾空気に燃料を混合して点火します。
これによって燃焼ガスがエンジン後方に吹出し、排気ノズルを通して大きな力を生み出します。

後方に吹出す途中で、この高速の燃焼ガスはタービンブレードを回転させます。これを動力源としてコンプレッ
サーとエンジンの最前部にあるファンブレードが回転します。スロットルレバーを押し上げるとエンジン後方の
排気ノズルが窄まり、より高速の燃焼ガスが作り出され、さらに推力が増加します。アフターバーナー点火操作
を行うと、エンジン排気口で燃料が文字通り噴霧され、制御された形での爆発が起こり最大開口状態の排気ノズ
ルから直接排気されます。AB(AfterBurner:アフターバーナー)は莫大な推力を生み出します。
スロットルレバーの位置を変えることで推力操作を行うわけですが、これは燃焼室で燃焼する燃料の量を調節す
ることによってエンジンが生み出す推力の量を操作しています。推力量は通常パーセントで計測され、アフター
バーナーなしの最大出力を 100%とします。この状態のスロットル位置を戦闘機パイロットの間ではミリタリー
速度と呼んでいます。スロットルを押し込めば、単純にジェットエンジンに燃料が加えられ、轟音と共に推力
(及び速度)が増加します。アフターバーナーでは相当量の燃料をさらに消費します。

推力を考えるときの注意点として点火という段階が存在することを忘れないで下さい。ここでは燃料が空気(酸
素)と混合され、燃焼することで始めてそれ相応のものが得られるわけです。高度を上げれば上げるほど、酸素
はどんどん少なくなり、有効となる推力は減少します。

揚力は航空機の翼(あるいはそれに加えて胴体)によって生み出される力であり、飛行方向に直角に作用して飛
行機を下から上に押し上げます。F-16 のような現用戦闘機はブレンディッド・ウィングボディーになっている
ため大量の揚力を生み出します。これによって翼がより小さくなり荷重が軽減されています。

ここで注意すべき点の一つとして、揚力は必ずしも荷重と同方向もしくは反対方向に作用するわけではありませ
ん。飛行機が上昇中の揚力の向きは実際には真上ではありませんので、上昇するためには、通常で荷重を打ち消
すためだけに必要な分以上の力が揚力に求められます。揚力は揚力面の上を通過する空気によって発生します、
ここら辺から注意が必要になってきますが、高度を上げれば上げるほど揚力と関わり合いがある空気が薄くなっ
ていきます。

抗力は推力と反対方向に作用します。飛行機の前面には空気が存在します、もっと正確に言えば飛行機が存在す
る場所そのものにも空気が存在しますので、それを掻き分け横に押しやることで抗力が生じます。抗力は飛行機
の速度を減じるわけですが、それは主に二通りの方法で発生します。まず第一に挙げられるのが、基本的な空気
力学的形態による影響です。空気中に何かを押し進めると必ずそこには抗力が生じます。

飛行機の形態をデザインすればそれによって形成される抗力を減じることができます。機首断面を小さくし、滑
らかな空気力学的に優れた形態にするのです。例えば槍を想像してみると、極めて滑らかな空気力学的な形態を
持っているので、生じる抗力はわずかです。では一方でレンガを想像してみると、ごつごつしていて大きな抗力
が生じる形をしています。高度を上げれば上げるほど横に押しやるべき空気が薄くなるので、抗力も減少傾向に

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なります。つまり、高度にも良い効果をもたらすところがあるのです!

それ以外の主たる抗力に誘導抗力と呼ばれるものがあります。これは揚力が発生していれば必ず生じます。これ
は翼端周辺やその他の部分を流れる渦流が原因です。詳細を説明するのは難しいのですが、揚力の量が増えれば
必ずこの抗力成分が増加します。航空機を急激に旋回させる場合、より多くの揚力が旋回中に必要となりますが、
これは同時に誘導抗力の効果も増加させてしまうことになります。Your also no longer going through the air
with pointy end first so form drag goes up too.

航空機が低速飛行している場合、形態特性から発生する抗力よりも誘導抗力が支配的になります。このことから、
急激な旋回あるいは低速での穏やかな旋回は命取り(とりわけ着地速度)になります。形態特性から発生する抗
力が航空機に作用する抗力の主原因となるのは高速飛行の場合です。

速度を上げていくと、やがて遷音速域に入り音の速度であるマッハ1に近づきます。この速度域に入ると奇妙な
現象が起こり始めます。わずかながら空気流が一時的にせよ音速より速く流れるため、そこから衝撃波が発生し
始めるのです。この現象は全く新しい領域として加えられ、このことにより発生する抗力は造波抗力と呼ばれま
す。また音の壁を超えるのを困難としている原因の一つがこの造波抗力です。衝撃波はさらに飛行機の操舵翼を
悲惨な状況になるまで弄ぶため、、このことを念頭に置いた設計が行われていないと飛行機は突然操縦不能に陥
ります。今日では音速域はもはや「壁」ではなくなりましたが、それを適切な測定器で計測する必要があります。

FalconAFにおいて、急激な旋回を行うと対気速度が失われるのが不思議に思えるかもしれません。G加重(飛行
機の旋回によって生じる加速度のこと)下では飛行機の実際の重量が増えるため、これを打ち消すために揚力を
増加させなければなりません。揚力の増加は誘導抗力の増加を招き、これが原因で対気速度が失われます。これ
に対処するためにより多くの推力が求められます。

残念ながら飛行機の推力は常に有限であるため、掛かる G にも上限が生じ、即ち機動性能にも限界を与えるこ
とになります。このことから、現用戦闘機の推力対重量比はほぼ 1:1 近くになっています。高推力対重量比に
することで、誘導抗力の影響を凌駕するだけの動力を飛行機に与えるためすばらしい機動性能が得られるのです。

重量は、ジェット機に作用する4つの力のうち最後に挙げるもので、飛行機を地面へと引きつける力です。重量
は単純明快で我々が普段から慣れ親しんでいるものです。飛行機の重量は燃料消費や兵装の投下によって軽減さ
れます。つまり、より多くの揚力が必要だという場合、それを得るための別手段として重量を軽減するという方
法があります。兵装や燃料を投棄する、あるいは同乗している教官を突き落とすのも手です。

G 加重
G 加重はジェット機に作用する力であり、ジェット機や搭乗者であるあなたの重量が増えたり減ったりするよ
うに感じられることから、重量と関連しています。飛行機を旋回させるとき、飛行機は実際には曲がろうとはせ
ずにむしろ今まで進んでいた方向に進みつづけようとします。逆にジェット機と搭乗者がまっすぐに進もうと思
っても飛行機は実際には旋回を続けようとします。従ってまるで自分の重量が増えたかのようにそれまで進んで
いた方向に押しつぶされるような感じになります。ごく一般的には、飛行機を上方に傾けるとシート越しに下向
きに押しつける力が働きますが、これに限らずあらゆる方向において同様のことが起こります。

この単純な事実のとおり、旋回が急激であればあるほど下に引っ張る G 加重が増え、全てが重く感じられるよ
うになります。本当に太ってしまった場合はさておき、この力は体内の血液を全て下半身に押し下げようとしま
す。残念ながらパイロットのほとんどは足元ではなく頭の中に脳みそが詰まっているので、脳内の髄液が枯渇し
始めます。この状態があまりにも長く続くと、身体機能がだんだんと停止し、ブラックアウト(視界が真っ暗に
なる)に陥ります。これを克服するためには様々な方法があり、パイロットは体内の血液を強制的に必要箇所に
戻す特殊なテクニックを学びます。「スピード・ジーンズ」や対 G スーツなどもこれを補助します。しかしな
がら、高 G 負荷の状態があまりにも長時間続くとこのような対策でも追いつかなくなります。

FalconAF では、パイロットの視界が狭くなるという形で G 加重をモデル化しています。高 G 環境下で頭を回


すのが難しくなる状況もシミュレートしています。ジェット機内で G 加重が掛かると視界がトンネルの中にい
るような感じになります。
FalconAF では、ジェット機に掛かる G 加重に正比例してブラックアウトが起こるというような単純なモデル
化はされていません。6G の負荷が掛かっているとしても、それがそのまま 6G 環境下でのブラックアウトによ
る視界消失が起こるというわけではありません。

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FalconAF では、G 加重環境下でのトンネル視覚効果は空気流の如何によって生じるようになっています。この


ようなモデル化は、パイロットに掛かる G 加重の影響を計測した実際のテストデータに基づいて行われていま
す。「トンネル視覚効果」がなくなると、G 加重による影響はリセットされ、当初の状態に戻ります。言い換
えると、G 加重環境下のパイロットのストレス状況をその視界に置き換えて画面に映し出しているのです。

このシミュレーションで表現される別の視覚効果として、滅多には起こりませんが、レッドアウトがあります。
この視覚効果は通常の G とは逆向きの方向に加重が掛かる場合に起こります。操縦スティックを前に押し倒し
たままにすると、この逆向き G 加重が掛かり、トンネル視覚効果が起こります。ただしこの場合は視界が真っ
赤になります。

戦術機動において、操縦スティックを前に倒したままで逆向き G 加重を長時間継続することはまずありません。
戦闘機がロールを繰り返すとこのようなことが起こります。素早く降下したいときや、ロールして背面飛行した
り and pull すると逆向き G 加重が掛かりますが、まだ容易に制御できる程度のものです。G 加重の程度から言
えばレッドアウトの方がブラックアウトよりも起こりやすいのですが、そうとは言えまともな飛行をしていれば
FalconAF では滅多に起こることはありません。

飛行機は搭乗者よりも頑丈な構造になってはいますが、G 加重の影響は免れません。翼端に1トンの爆弾を搭
載していれば、例えその状態を保てるように設計されているとはいえ、そのまま G 加重が掛かればあなたと同
じ苦痛を機体も感じます。9G 加重時の 1 トン爆弾は事実上 9 トン爆弾になる点は留意が必要です。兵装の中に
は G 加重及び速度に制限があり、それを超えるとダメになってしまうものもあります。もし仮に最大加重が 6G
までの兵装を搭載した状態で 9G で旋回、加速を行なった場合、それを使いたい場所に到達したときには正常に
機能しなくなっている恐れがあります。

飛行機はこういった状況に耐えられるように建造されてはいますが、よくよく留意しておかなければならないの
は、その建造は入札によって決められています(つまり一番安い建造費を提示したメーカーが請け負っているの
です)。もし大量の兵装を搭載したまま極度の G 加重を掛けた場合、思いもかけないような最悪の事態が起こ
り、ミッション終了後には厳しい監査を受ける必要がでてくるでしょう。グランドクルーからは見向きもされな
くなります。

ジェット機の操縦
さて、駆け足で基本的な空気力学を説明してきましたが、次に戦闘機パイロットでもきちんと理解できる操縦に
ついて話を進めましょう。飛行機の操縦といっても、できることはたったの三つしかありません。ロール、ター
ン、加速/減速です。

ロールとは、翼の位置付け、言い換えると揚力ベクトルの位置(さらに言えば more on lift vector

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positioning later)を決める行為です。ターンとは「G」を使って空中で飛行経路を変えるということに過ぎませ
ん。スティックを引いてより大きな G を掛ければ掛けるほど、素早いターンができます。加速/減速は飛行機の
飛行速度を変化させるものです。推力(スロットルの設定)、抗力と地面(重量)に対する機首方向とのバラン
スなど幾つかの方法で行うことができます。

下図では飛行機の揚力ベクトルが飛行運動面に対して直角上向きにまっすぐ伸びています。この揚力ベクトルは
飛行機の G 加重によって生み出され、パイロットによって制御されています。パイロットが操縦スティックを
手前に引くと G 加重がより増し、揚力ベクトルが大きくなります。飛行機はこのベクトルの方向に向かって動
こうとしますので、G 加重が掛かれば掛かるほど素早いターンが可能になるのです。別の言い方をすれば、旋
回率が高くなるのです。

下図は揚力ベクトルに関する極めて重要な概念を示しています。この図では特定のバンク角で水平飛行を維持す
るために必要な G(あるいは揚力ベクトルの大きさ)がどれだけかを示しています。バンク角が大きくなれば
なるほど、ジェット機が水平飛行を続けるためにはより多くの G が必要になります。例えばバンク角:60度
の場合、2G ではなく 1G しか掛けない場合は飛行機は降下します。逆に 2G 以上掛けると飛行機は上昇します。

バンク状態を維持するために必要な G 加重

失速
失速とは、飛行機が限界 AoA(迎え角)を超えた場合に生じる揚力の減少と定義されています。失速を理解す
るにはまず迎え角を理解しなければなりません。迎え角とは飛行機の機体軸と飛行方向とがなす角度のことです。

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照 星

AOA = 飛行機の機体軸と
飛行方向との角度差

フライトパスマーカー

胴体基準軸とは飛行機の機体から真っ直ぐに伸びた線のことです。この線は機銃から発射される弾丸の射出経路
(銃身軸)でもあります。HUD にある照星は胴体基準線に沿った弾丸の射出経路を示しています。

照星とフライトパスマーカーの差が迎え角になります(この考え方は第1章:飛行方法でも説明しています)。
迎え角は揚力と関係しているということをまず覚えておいてください。迎え角が大きくなると揚力も大きくなり
ます。ジェット機が減速すると、水平飛行を続けるためにはパイロットは迎え角を大きくしなければなりません。
何故ならば、水平飛行を維持するためには生み出される全揚力が重量と釣り合ってなければならないからです。

揚力は迎え角と対気速度に正比例しますので、減速した場合は飛行機の迎え角を大きくしなければ揚力が失われ
ます。迎え角を大きくすれば限界迎え角に達するまでは揚力も増加します。限界迎え角に達した時点で揚力の増
加は止まり、実際には水平飛行ができなくなるか降下を始めます。迎え角曲線上のこの点を失速迎え角と呼び、
下図に示されています。

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直線翼を持つ航空機は失速
迎え角を超えると劇的に揚
直線翼 力損失が起こる
航空機

後退翼を持つ F-16 は失
速迎え角を超えても揚
力損失が少ない

失速迎え角 F-16 の
失速迎え角
迎え角(AOA) →

グラフ表の水平軸方向の値:迎え角が大きくなるにつれて、垂直軸方向の値である揚力係数も大きくなります。
(ここでは「揚力係数」を単純に「揚力」に置き換えて話を進めます)迎え角を失速点を超えて大きくしていく
と揚力は減少していきます。「失速」という言葉からイメージされるのは、飛行機の機首が真っ直ぐ下を向き空
中からまっさかさまに落ちていくような感じです(実際にそのような状況に陥る飛行機もあります)。

幸い、F-16 はそのような形で失速はしません。F-16 を失速迎え角を超えて飛行させた場合、このジェット機は


同じ姿勢を保とうとし(地面と機首の位置関係を同じに保とうとし)、ゆっくりと高度を下げていきます。いき
なり地面に向けて落下することもなく、また機首が下を向くということもありません。失速状態から抜け出すに
は、エンジン出力を増やすだけで充分です。高推力対重量比であるおかげで、このジェット機は通常であればこ
の時点で加速し始め迎え角は小さくなっていくはずです。失速に関する詳細は第2章のトレーニングミッション
7 の「ターンの習得」を参照して下さい。

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