鬼ばばとこぞう

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鬼ばばとこぞう

1. あるお寺に、こぞうさんが
いました。ある日、おしょう様に
山をこえたとなりの村へお使いに
行くように言われました。
「山には、人を食べるおにばばが
いるから、このおふだを三枚
もって行きなさい。願い事を
言えばかならずかなえてくれよう」
2. こぞうさんが、山道を歩いて
いくと、道ばたにおばあさんが
すわっていました。
「こぞうさん、こぞうさん、
ちょっと手をかしておくれで
ないか。家まで帰るのに足が
いたくなってあるけなくなって
しまったよ」
おばあさんは、そう言いました。
3. こぞうさんは、おばあさんの
手を引いてあげました。
「あっちだよ」
と、おばあさんは、道を教えて
くれました。
でもその道は、どんどん山の
おくへ向かっています。
4. こうして、とうとう山おくの
いっけんのあばらやに
着きました。
「ありがとうよ。
でも、もうすぐ日がくれる。
夜道はあぶないから、
今夜はここにおとまり」
おばあさんに言われて、
こぞうさんはしかたなく、
おばあさんの家に
とまることにしました。
5. 夜中に、こぞうさんはふと目を
覚ましました。すると、
シャッシャッという音がします。
ふすまの穴から
となりの部屋をのぞいてみると
やさしそうなおばあさんは、
鬼ばばのすがたになって、
ほうちょうをといでいるでは
ありませんか。
「きっと、私を食べるつもりだ」
6. 「おばさん、おばあさん、
おしっこ」
こぞうさんは、そう言って
おばあさんを呼びました。
「しかたないね、
まよわないように
このなわでしばって
あげるから、便所に
いっておいで」
鬼ばばは、こぞうさんの
こしのところをなわで
しばってやりました。
7. こぞうさんは、便所にはいると
こしをしばっているなわを
といて、柱にしばりつけると
そこへおしょうさんにもらった
おふだを一枚はさみました。
「どうか、あの鬼ばばが何か
言ったら、まだまだと
答えてください」
そうして、こぞうさんは、
こっそりにげだしました。
8. 「まだかい、こぞうさん」
鬼ばばが声をかけると、
柱が答えます。
「まだ、まだ」
「まだかい、こぞうさん」
「まだ、まだ」
こうしている間に、
こぞうさんはどんどん遠くまで
にげていきました。
9. やっとこぞうさんがいないことに
気づいた鬼ばばは、こぞうさんを
追いかけました。
その早いこと早いこと、見る間に
こぞうさんに追いついてきました。
もう少しで、鬼ばばの手が
こぞうさんにとどきそうに
なったとき、こぞうさんは
おふだを投げて言いました。
「大きな川を作ってください」
10. すると、鬼ばばの目の前に
大きな川ができました。
鬼ばばは、その川を泳いで
わたらなければなりません。
そのすきに、こぞうさんは、
どんどん遠くまでにげて
いきました。
11. 川をわたった鬼ばばが、
またまた追いついてきました。
もう少しで、鬼ばばの手が、
こぞうさんの背中にとどきそうに
なったとき、こぞうさんは
最後のおふだを投げて
言いました。
「大きな砂山を作ってください」
すると、大きな砂山ができて、
鬼ばばはすべってころんで
なかなかこぞうさんに
追いつけません。
12. そのすきに、こぞうさんは
お寺にかけこみました。
そしておしょうさんに
言いました。
「おしょうさん、おしょうさん
鬼ばばに追いつかれそうです」
「よしよし、そこのおしいれに
かくれていなさい」
13. こぞうさんが、押入に
かくれたとたん、鬼ばばが
飛びこんできました。
「やい、おしょう、こぞうが
にげてこなかったか」
「いや、だれもこなかった」
「うそをつけ、うそをつくと
おまえから食べてしまうぞ」
14. 「じゃあ、わざくらべをしよう。
私が負けたら、私を食べても
良いぞ。そうだな、お前は豆に
化けられるか?あんな小さな
ものに化けるのは
むずかしいだろう」
そう言われて、鬼ばばは、
「何を、豆だと。そんなのは
簡単だ」
と言いながら、とんぼ返りを
しました。すると、
あっという間に小さな豆に
なってしまいました。

15. それを見たおしょうさんは、
て まめ
さっと手をのばして豆をつまむと
くち
口にほうりこんで、

むしゃむしゃ食べてしまいました。
--- ---
--- おしまい---

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