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漢文編  故事 ⑶

ラジオ学習メモ

故事─ 三編
  五十歩百歩
講師 て、もう一度確認してください。
渡辺恭子
 学習のポイント2
■学習のねらい■  漢字の意味に
ご じっ ぽ ひゃっ
故事の三回目。「五十歩百歩」を学習する。本文を訓点

  注意しながら現代語に訳す

− 49 −
のきまりに従って正確に読み、「五十歩百歩」の内容を味 「五十歩百歩」は、
「戦いの最中において、五十歩逃げた兵士
わう。そして、孟子が王にいいたかったこと(主張)を考え、 と百歩逃げた兵士は、逃げたという点で大差がない。重要なの
故事成語としての意味を正しく理解しよう。 は、逃げずに戦うかどうかだ。
」というお話です。これは王の
質問に対して、孟子がお答えする際に用いたその場にふさわし
い「たとえ話」です。
学習のポイント1
 
漢文編

ここに出てくる重要語句の意味を理解しましょう。
 本文を声に出して読む
漢文の学習では、訓読のきまりに従って、漢文を正しく読め 【語句の意味】
 

高校講座・学習メモ
こた
るようにすること、そして、漢文のリズムに慣れることが、大 対ヘテ……お答えして〈目上の人に答える場合〉に使う。
国語総合


切です。訓点(「送りがな」「返り点」「句読点」)の学習で学ん 請フ~セン……どうか私に~させてください。
第 21 回
てんぜん
だ知識をいかして、「五十歩百歩」の文章を、声に出して、何 塡然……ドンドン〈攻め太鼓の音〉。 
へいじん
度も読んでみましょう。主な記号(漢字の向かって左下に書い 兵刃……武器。
てある「返り点」)については、「訓点」の学習メモを参考にし  接す……交わる。 
甲……よろい。 たりで、結局たいして違いがない。
」「わずかな違いはあっても、
ラジオ学習メモ

走る……逃げる。 本質的には同じであること。」という意味で使われています。
 
ある
或いは……ある者は。
いかん
何如……どうでしょうか。 
た のみ
直だ~耳……ただ~だけだ〈限定を表す〉。
学習のポイント3 
 
 話の背景と
故事成語としての意味を理解する
  
「五十歩百歩」の話も、「借虎威」「守株」同様、自分の主張
に説得力を持たせるためのたとえ話です。

− 50 −
王は孟子に、「私は、国に凶作があるといろいろと気を遣っ
て人民を救おうとしているのに、隣国の王は何もしていない。
そ れ な の に、 な ぜ 隣 国 の 人 民 は 私 を 慕 っ て 移 住 し て こ な い の
か。」と質問します。それに対して孟子が、「普段から人民の生
活が安定するような政治を行うべきで、凶作になってから心を
漢文編

くだいても、何もしない隣国の王と大差がない。」と述べます。
その「たとえ話」として、五十歩逃げた兵士と百歩逃げた兵士
の話を持ち出すのです。

高校講座・学習メモ
戦争好きの王に、戦争の話でたとえるとは、孟子は話の運び
国語総合
方が上手です。
第 21 回
【故事成語「五十歩百歩」の意味】
「五十歩百歩」は、「多少の違いはあるにしても、似たりよっ
故事
ラジオ学習メモ

講師
〈三〉
 渡辺恭子
五十歩百歩
りょう けい おう もう し
梁の恵王が孟子に、「私は、日頃、心を尽くした政治を行っ
ている。隣国はこのような善政を行っていないのに、人口が減
らず、我が国の人口が増えないのは、どうしてか。」と尋ねた。
孟 子 対 曰

ま う し

た ヘ テ い
ハ ク
孟子対へて曰はく、
「王 好 戦
。請 以 戦 喩



ヲ こ
フ も
ツ テ ヒ
ヲ た
と ヘ



「王戦ひを好む。請ふ戦ひを以つて喩へん。

− 51 −
塡 然 鼓 之
、兵 刃 既

ん ぜ
んトシテ こ


い じ
ん ニ

口語訳
塡然として鼓し、兵刃既に
孟子がお答えしていうには、
接。棄 甲 曳 兵 而 走

        ス    す テ   か
ふ ヲ ひ
キ テ ヲ


「王は戦争がお好きです。(ですから)どう



接す。甲を棄て兵を曳きて走る。
か、私に戦争の話でたとえさせてください。
或 百 歩 而 後 止
、或

る イ ハ ニ
シテ の
ち ニ と
ど マ
リ あ
る イ

ドンドンと攻め太鼓を打ち鳴らし、両軍の武
或いは百歩にして後に止まり、或いは
器が交わりました。(そのときに)よろいを
五 十 歩 而 後 止
。以

シテ ニ

ル ツ

五十歩にして後に止まる。 脱ぎ捨てて、武器を引きずって逃げ出した(兵
漢文編



士がいました)。ある者は、百歩逃げ出して
五 十 歩 笑 百 歩
、則


バ ヲ

なはチ





五十歩を以つて百歩を笑はば、則ち から踏みとどまり、ある者は五十歩逃げ出し
てから踏みとどまりました。(五十歩逃げた
何 如。」





何如。」と。 兵士が)五十歩(しかにげなかった)という

高校講座・学習メモ
国語総合

理由で、百歩逃げた兵士を笑ったならば、ど
王 曰


ハ ク
王曰はく、 うでしょうか。」と。
第 21 回
王がいった、
「不 可。直 不 百 歩 耳




リ た


ル ナ
ラ の





「不可なり。直だ百歩ならざるのみ。 「 よ く な い。 た だ 百 歩 で な い だ け だ。 こ れ
(五十歩逃げた兵士)も、同じく逃げたので
是 亦 走 也
。」   『孟子』

れ モ ま
た ル

り ト

是も亦走るなり。」と。 ある。」と。

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