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                 弦楽器の主な奏法

[投弓]:垂直運動を含む運弓の分類法の一つ。
      弓の弾性は、弦の反発の吸収に利用し、右手で垂直運動を完全にコントロールして行う奏法。
[跳弓]:垂直運動を含む運弓の分類法の一つ。
      弓の弾性を利用して、速く連続して弓を跳躍させる方法。
[備考]
 ☆一般的には、「レガート」と「デタシェ」「スタッカート」は弦から離れず弦上で水平運動のみで行われるものを差すことが多く、 「スピッカート」は水平運動に垂直運動(弦から弓の毛が離れる)を加え
たものを差して言うことが多い。

◦レガート legato(伊)
(1)音と音とを切れ目なく演奏すること
(2)スラーの付いた部分を、弓を返さずに複数の音を続けて演奏すること。(レガトゥーラという)
leggiero(伊)レッジェーロ
non legato(伊)ノン・レガート
staccato(伊)スタッカート
détaché(仏)デタシェ
◦ア・ラ・コルド à la corde(仏)
「弓を弦上に保って」の意。レガートで弾くこと。
=at the string(英)アット・ザ・ストリング

◦デタシェ détaché(仏)
一音ごとに弓を返して演奏すること。
「分離して」「ノン・レガートで」の意を持つが、現代奏法では、音と音とは分離せず切れ目なく、ただし発音を明瞭に弾く奏法をいう。速く弾く場合は真中からやや先にかけてを使うと弾きやすい。
○グラン・デタシェ(後述)
○プティ・デタシェ(後述)
○中央
○先半弓
○元半弓
○デタシェ・ポルテ(後述)
○デタシェ・ランセ(後述)
○フェッテ(後述)

◦グラン・デタシェ grande detache(仏)


弓を大きく使うデタシェ。
◦プティ・デタシェ petit détaché(仏)
弓先を用いて一音ごとに弓を返しながら、速いパッセージを弾く。
◦デタシェ・ポルテ détaché porter(仏)
ポルタートあるいはルレとほぼ同種の奏法。
テヌート記号を冠したいくつかの音がスラーで繋がれている場合に使用する。
◦デタシェ・ランセ détaché lancer(仏)
急速に弾き始め、音終わりに向かってやや速度を緩める。
音符間に休止が入るのが普通だがテンポが速くなると、入らないこともある。 
音符にテヌート記号を付け、さらにその上にスタッカート記号を付けた音符を弾く場合に用いる。
◦フェッテ Fouetté(仏)
アクセントをつけたデタシェ。
普通、上半弓アップ・ボウで行われることが多い。
=Wipped bowing(英)ウィップト・ボーイング
弓の返しで、弓を強制的にわずかに持ち上げることで、その効果は高くなる。
ポルタート、スピカート、ソーティエ、リコシェなど

◦ポルタート
portato(伊)
(1)スタッカートとレガートの中間の奏法。
(2)緩やかなテンポで幾つかの音をわずかに切りながら、引き摺るように演奏すること。
○一つ一つの音を、違うボーイングで、柔らかく区切るように弾く。
○複数の音を一弓で、一つ一つの音を軽く切りながら演奏する。
=portando(伊)ポルタンド
=louré(仏)ルレ
=détaché porter(仏)デタシェ・ポルテ

◦スタッカート staccato(伊)
(1)弓を速く弾き、各音ごとに弓を止め、音を区切る奏法の総称。
(2)奏法名としては、基本的に運弓に垂直運動を含まないものをいい、スピッカートと区別される。
○マルテラート(下)
○サルタート(下)
○一弓連続スタッカート(下)
○リコシェ・スタッカート(下)
レガート
satcc.と略される。
音符上に点または楔(ダッシュ)を付けて表される。
=solid staccato(英)ソリッド・スタッカート:flying staccato(英)と区別するために使われる用語。

◦マルトレ martelé(仏)
(1)「槌で打つ」の意。スタッカートを表現する。(ピアノ、声楽にも共通)
音符の子音部分にアクセントを付ける。
(2)「音符上に楔記号が記されている場合に用いる」と指定しているものもある。
○単純マルトレ(急速マルトレ)
→音符にスタッカート記号が付いたもの(下)
○長音マルトレ
→音符にテヌート記号とスタッカート記号、両方が付いたもの。(下)
=martellando(伊)マルテッランド
=martellato(伊)マルテッラート
=hammerstroke(英) ハンマー=ストローク
マルトレ・デュ・タロン:元弓のマルトレ
マルトレ・ア・プンタ・ダルコ:先弓のマルトレ
単純マルトレ
マルトレのうち、主に急速に行われるもの。
○全弓∼短弓(どの長さでもできる)
○弓先∼元弓(どこでもできる)

長音マルトレ
マルトレのうち、特に音に表情を持たせるものをいう。


◦マルテッラート martellato(伊)
(1)スタッカートを表現する奏法名。
(2)スタッカートを表現するものをスタッカート奏法とし、スタッカーティシモを表現するものをこういう。
(3)弓先の張りの強い部分で弾く、強く明瞭なスタッカートをいう。
=martelé(仏)
=martellando(伊)
=hammerstroke(英)
(2)の意味で用いる場合は、音符の上に楔形の印を記すのが一般的な記譜。

◦メッゾ・スタッカート mezzo staccato(伊)


(1)あまり鋭くないスタッカート。
(2)音符にテヌートとスタッカート記号がついたもの。普通のスタッカートより柔らかく長めに弾く。 
一弓連続スタッカート
一弓で行う一方向に数音連続して行うスタッカートの総称。
=spring stakkato(独)スプリング・スタッカート
=flying staccato(英)フライング・スタッカート
=Das Hiegende Stakkato(独)
=staccato volant(仏)スタッカート・ヴォラン
=staccato en ricochet(仏)スタッカート・アン・リコシェ 

◦スプリング・スタッカート spring stakkato(独)


一群の短い音符を一弓で、スタッカートで弾く。
弾き終わりに、弓の毛が弦から離れた方がうまくいくため、そう弾くことが多く 「弓が弦上で跳ねることを許されたスタッカート」と言われる。
アップで行われることが多い。
=flying staccato(英)
=Das Hiegende Stakkato(独)
=staccato volant(仏)
=staccato en ricochet(仏)




◦スピッカート spiccato(伊)
(1)弦上での垂直運動を含む運弓の総称。
(2)[投弓][跳弓]双方を含める場合と[跳弓]類の総称として用いられる場合がある。
(3)[跳弓]のうち、弓の毛が完全に弦から離れるものをいう。>ソティエ(3)
spicc.と略される。
=sautillé(仏)ソティエ
=Springbogen(独)シュプリングボーゲン
=saltando(伊)サルタンド
=saltillo(伊)サルティッロ
シュプリングボーゲン
Springbogen(独)
弦上での垂直運動を含む運弓の総称。
=sautillé(仏)
=saltando(伊)
=saltillo(伊)
=spiccato(伊)

◦ソティエsautillé(仏)
(1)弦上での垂直運動を含む運弓の総称。
(2)弓の中央部で弓を急速に反復し跳躍させる奏法。[跳弓]
(3)[跳弓]のうち、弓の毛がほとんど弦から離れないように行うもの。
=Springbogen(独)
=saltando(伊)
=saltillo(伊)
=spiccato(伊)
=Wrist spiccato(英)リスト・スピッカート

◦レッジェーロleggiero(伊)
(1)ノン・レガート奏法
(2)弓中央部での急速なテンポの跳ばし弓。[跳弓]
(3)(2)のうちで弓の毛が弦からほとんど離れないものを特定していうことがある。[跳弓]
=leggiero(伊)
=Wrist spiccato(英)
広義の奏法用語としては「ノン・レガートで演奏する」ことを意味し、レガートの反意語として用いられる。

◦リスト・スピッカート Wrist spiccato(英)


手首で行う、急速な跳躍奏法。[跳弓]
=sautillé(仏)
=leggiero(伊)
跳ばし弓(日) 
弓の弾性を利用し、跳躍させる運弓の総称。[跳弓]

一弓連続スピッカート
一弓で行うスピッカート。[跳弓]
○リコシェ・サルタート(下)
=ricochet(仏)リコシェ
=jeté(仏)ジュテ
リコシェ・サルタート
ricoche saltato
弓の先の方で、いくつかの音を跳躍させて一弓で弾く。[跳弓]
一般的にダウンで行うことが多い。

◦flying spiccato(英):flying staccatoよりも弦に強く打付けられる。
太鼓運弓
◦Trommelstrich(独)
一群の短い音符(いくつかの同じ数ずつ)を一弓で、コントロールしながら跳躍させて弾く。[跳弓]

◦Springarpeggien(独)
跳弓アルペジオ。分散和音を弓を跳躍させて弾く。[跳弓]


◦サルタート saltato(伊)
(1)弦上での垂直運動を含む運弓の総称。
(2)弓の中央部で弓を急速に反復し跳躍させる奏法。[跳弓]
(3)元で行う半跳ばし。[投弓] 

=sautillé(仏)
=Springbogen(独)
=saltando(伊)
=saltillo(伊)
=spiccato(伊) 

◦コーレcollé(仏)
元半分で、弓をコントロールしながら、跳躍させて弾く。[投弓]


◦ステーション・サルタート station saltato(英)
一音を弾ませ、弓がその音の出発点に戻るようにして、いくつもの音を同じボーイングで繰り返し弾く。[投弓]
アップで続けるパターンが多い。
○手首と指の運動によるもの。
○肘の回転運動によるもの。
=standing staccato(英)スタンディング・スタッカート
=Das stehende Stakkato(独)ダス・ステンデ・
スタカート
半跳ばし(日)
弓をコントロールし、弓に垂直運動を加える運弓の総称。[投弓] 

元弓で行われるものを差すことが比較的多い。 


◦パガニーニ・ストローク paganini stroke(英)
4個の音符群からなるパッセーッジを、音符を一つ隔てて2個ずつスラーで演奏する。

◦ロング・トーン long tone(英)


弓をゆっくり全弓で弾くこと。
弦楽器奏法用語としては最近時々見られる。古い用語ではない。

◦アタック attack(英)
(1)音の発音を明瞭にさせる奏法。
(2)速いスタッカートで弓を止める時間がない場合に行う、各音の発音のみを強調する奏法。
◦ピンチング pinching(英)
音を出す前に、あらかじめ弓を弦に押し付けること(アクセント奏法等で使用される)。

弦楽器のみに使われるわけではない一般的なアーティキュレーション 
☆テヌート tenuto(伊)
(1)音の初めから終わりまで均等な音を出す。
(2)音符の長さをしっかり保持する。
ten.と略す。
テヌート記号(−)が使用されている場合は、その音のみに効果がある。
☆ソステヌートsostenuto(伊)
(1)音の長さを充分に保つ。
(2)全ての音をテヌートで弾く。
☆アクセント accent(伊)
(1)小節内での強勢部を言う。
(2)音符の子音部分に衝撃を与え、発音を明瞭にする奏法。
=accent(仏)アクサン
=Akzent,Accent(独)アクツァント
=accento(伊)アッチェント
これらは装飾音の名称でもある。(装飾をつけることでその音が強勢部になるため)
アクセント記号、フォルツァンド記号などが付いた音符を弾くときに使う奏法。   


スル・ポンティチェッロ sul ponticello(伊)
弓で駒のごく近くを弾く。
ざらざら感のある特殊な音色が出る。

=am Steg(独)アム・スタッグ

スル・タスト sul tasto(伊)


弓を指板の近くで用いる。
フルートの音色に似た柔らかい音色が出る。

=flautato(伊)フラウタート
=flautando(伊)フラウタンド
=on the fingerboard(英)オン・ザ・フィンガーボード
=am Griffbrett(独)アム・グリフブレット
P.O.あるいはpos.ord.
position ordinario
(上記奏法の後で)弓を元の位置に戻して。


トレモロ tremolo(伊)
同じ音を刻んで弾くもの。
弓を急速に上下に反復させて弾く。
弓は跳躍させるものもさせないものもある。
  
本来は、同一音上の振動を意味する。
ヴァイオリン初期から見られる非常に古い奏法の一つ。
17∼18世紀に用いられたトレモロ奏法。
=Schwärmer(独)
=Schwermer(独)
=bombo(伊)ボムボ




◦フロテ flotter(仏)
弓を波上に動かして演奏する。
○オンデュレ

◦オンデュレ ondulé(仏)
弓を波打つように揺らしながら、隣接する複数の弦を交互に弾く。
○バリオラージュ
=ondeggiando(伊)オンデジァンド
◦バリオラージュ
bariolage(仏)
オンデュレのうち、一方の弦を開放弦にして行うもの。

◦コル・レーニョ col legno(伊)
弓の木の部分(棹)で弦を叩く、あるいは弦上を滑らせて音を出す。

◦ピッツィカート pizzicato
弦をはじく。pizz.と略される。
○右手ではじく
○アルペジオ
○左手ではじく(+記号)
○バルトーク・ピッツィカート
○アラシェあるいはアンライセン
基本的には右手ではじく。弓を握ってはじく方法と、弓を構えたままはじく方法がある。
バルトーク・ピッツィカート
弦を指板にぶつけるようにはじく。「バシッ」と音がする。


◦アラシェorアンライセン arraché(仏)anreißen(独)
激しいピッツィカート。


◦アルコ arco(伊)
「弓で」の意。ピッツィカートの後で、弓を使って弾き始める位置を指示する用語。

=col arco(伊)コル・アルコ
=arcato(伊)アルカート
=coll'arco(仏)コルアルコ


◦マルテラート(Martellato)
弓先で明瞭に音を切って弾く、強いスタッカートです。弓先で弦を確り押さえて手首と指の運動で弾き、各音の頭にアクセントを付けて歯切れの良い音を出します。弓先は毛の張りが強い為、音が荒く
なり易いので弓の角度と圧力、スピード等を工夫しましょう。
ПV共に、弓が始動する直前に弦を押さえ付けてアクセントが付く様にし、弓の動き出しと同時に人差し指で軽く叩く様なイメージで音を出し、短く早く弾いて直ちに力を抜いて止めます。止める時に
力を入れると雑音が出るので注意しましょう。

◦サルタート(Saltato)
弓の根元の弾力のない部分を用いた、少し遅めで重たいスタッカートです。弓の毛が弦から跳ねずに、棹だけの弾力で音が弾んでいる様に弾く奏法です。
1音を弾き終わると同時に、小指と薬指で弓を支える手の運動で弓を弦から離します。
弓を弦上5cm程の高さに軽く支えて持ち、肩の力を抜き、腕の上下運動による手首と指の力で弓を弦上に打ち下ろす様にして歯切れよく弾き、その反動で弦から離します。弓の反発力は無いので、手
は弦を擦奏すると同時に弓を弦から上げる運動を行う必要があります。小指と薬指は弓を支え気味にし、棹の重さに均衡を与える様にしましょう。

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