The Japanese Journal of Psychology

1991, Vol. 61, No. 6, 400-403 資 料

傾 き の 継 時 判 断 及 び 絶 対 判 断 に お け るoblique効 果 と カ テ ゴ リー 的 要 因

樟蔭女子短期大学1 仲 谷 兼 人2

Categorical factors in the oblique effect under successive and

absolute judgments of inclination
Kaneto Nakatani (Shoin Junior College, Kitakatsuragi-gun, Nara
639-02)

Effects of inclined frame of reference upon inclination of the target line have been studied under suc

cessive and absolute judgments. Using nine undergraduate students as subjects, a marked oblique

effect on the distribution of judgment errors was found under the condition with the horizontal frame of

reference. In contrast, the peak of errors shifted in proportion to the inclination of the frame of ref

erence and the relative dominance disappeared on physically horizontal and vertical axes. Some famil

iarized response categories such as 0•‹, 30•‹, 43•‹, 90•‹ and -30•‹ were utilized more frequently than the

others, and this tendency was found to be similar in every subjects and conditions. These consequences

couldn't be attributed to the anisotropy of orientation analyzers, therefore, the obtained results have

been explained in terms of the anchoring effect during categorization processes.

Key words: orientation, oblique effect, judgment, perception of inclination, anchoring effect.

傾 きの知 覚,と くに前 額 平 行 面 上 にお け るそ れ につ い 身 体 軸 を基 準 に した も ので あ る.従 来 の こ の種 の実 験 で

て は 従 来 か ら多 くの研 究 が な され て お り,水 平 ・垂 直 軸
に対 して45° 方 向 の知 覚 的performanceが
知 られ て い る(Appelle,
果 と呼 ばれ て お り,神 経 生 理 学 的 知 覚 に基 づ い た特 徴 抽
出 器 な い しorientationan
性 に よ っ て説 明 され る こ とが 多 い が,一 方 で は認 知 的諸
は,と くに な ん らか の 目的 を持 た な い か ぎ り,被 験 者
低 い こ とが の頭 部 は垂 直 に保 持 され,刺 激 は前 額 平 行 面 に呈 示 さ れ
1972).こ の現 象 はoblique効 る。 さ らに反 応 カ テ ゴ リー の名 称 と して 重 力 的 水 平 を
<0°>と した角 度 が 与 え られ る こ とが 多 い が,こ の条 件 設
alyzerの 量 的 ・機 能 的非 等 方 定 で は網 膜 的 方 向,重 力 的 方 向,反 応 カ テ ゴ リー の名 称
に お け る<方 向>が ご く 自然 に一 致 して お り,実 験 を簡

要 因 の影 響 を重 視 す る立 場 か ら これ を再 検 討 し よ う とす 明 に し記 述 を容 易 に す る反 面,所 謂class 2的 要 因 の 関
る動 き もあ る(仲 谷, 1981, 1983;鋤 柄, 1980, 1983). 与 か ら 目 をそ ら させ る結 果 を招 い て い る.
Essock (1980)は3種 のRT課 題 を実 施 し,傾 き の同 傾 き の絶 対 判 断 に使 用 され る反 応 カ テ ゴ リー を実 験 変

定 課 題 で の みoblique効 果 が 認 め られ た こ とか ら,同 効 数 と して操 作 した仲 谷(1985)で は,物 理 的水 平 を0° と

果 を2分 し,視 覚 系 の基 礎 的機 能 を反 映 して い る も の を し反 時 計 回 りに上 昇 す る反 応 カテ ゴ リー 系列 を使 用 した

class 1,刺 激 の コ ー ド化 や 記 憶 に 由来 す る もの をclass 場 合 と,物 理 的垂 直 を0° と して 時 計 回 りに 上 昇 す る系
2と よ ぶ こ と を提 案 して い る. 列 を使 用 した場 合 とで は,同 じ刺 激 系 列 に つ い て 方 向
一 般 に, oblique効 果 につ い て の神 経 生 理 学 的 モ デ ル の異 な った誤 差 傾 向 が観 察 され て い る.こ の と き網膜 上

は,調 整 法 や極 限 法 等 の精 神 物 理 学 的 測 定 法 に よ って 得 の像 は 等 し く,従 って特 徴 抽 出 器 の 出力 も等 しい は ず で

られ た 結 果 に基 づ い て 提 案 され て お り,閾 値 やj. n.d.に あ る こ とか ら,こ こで み られ たoblique効 果 は特徴 抽

み られ るoblique効
測 が 可 能 で あ る と考 え られ る(Andrews, 1967a, 1967b;
Bouma & Andriessen, 1968;鋤 柄, 1983).こ れ らのモ
デ ル で は 特 定 の 方 向 にチ ュー ニ ン グ され た 特 徴 抽 出器 間
の 機 能 差 が問 題 に され て い る が,こ の場 合 の<方 向>は
1 本研究 は京都大学教育学部 において行 なわれ た.
2 御指導頂 きま した京都大学故百名盛之教授 は じめ諸
先生方 に厚 く御礼 申上 げます.
果 につ い て は あ る程 度適 合 的 な 予 出器 以 後 の 反 応 側 の要 因 に よ って 形 成 され た と考 え られ
る.そ こで本 研 究 で は,物 理 的,生 理 的 な 刺 激 条 件 を一
定 に してoblique効 果 に対 す るclass 1的 要 因 を等 化 し
た 上 で,傾 き判 断 の基 準 軸 が 重 力 的 水 平 と一 致 す る一 致
条 件,斜 交 す る斜 交 条 件 の2条 件 を設 定 し,反 応 カテ ゴ
リー系 列 を操 作 す る こ とに よ って,反 応 形 成 段 階 にお け
る認 知 的 要 因 の影 響 の分 析 を試 み た.斜 交 条 件 に お い て
は判 断 の基 準 軸 の学 習 が不 可 欠 で あ り,絶 対 判 断 条 件 に
さ き だ っ て継 時 判 断 条 件 を実 施 して 基 準 軸 の学 習 過 程 と
 伸 谷: Oblique効 果 の カ テ ゴ リ ー 的 要 因  401

した. 各 条 件 は ラ ン ダム 順 に呈 示 され た36種 の刺 激 に 対 す
る各 々1回 の傾 き判 断 を含 む.
方 法 Fig. 1は 試 行 の時 間 的 関 係 と被 験 者 に要 求 され る反 応

装 置 暗 室 内 でCommodore CBM4032シ ステムに を例 示 した もの で あ る.継 時 判 断 条 件 の場 合, 2秒 間 の

よ っ て制 御 され た3 channel projector tachistscopeを 判 断 の基 準 軸 の呈 示 に続 い て,ラ ンダ ム ドッ ト ・パ ター
使 用 した.座 位 の被 験 者 の頭 部 は 固 定 せ ず,刺 激 が 呈 示 ンに よ るマ ス ク刺 激 が1秒 間 呈 示 され,さ ら に1秒 後 に
され る前額 平 行面 の透 過 式 ス ク リー ン と被 験 者 の両 眼 の 刺 激 が2秒 間呈 示 され た が,絶 対判 断 条 件 で は基 準 軸 の
中 央 と の距 離 が70cm,視 線 が 水 平 とな るよ う に 調 整 呈 示 は 行 わ れ ず,か わ りに フ ィ ー ル ド中央 に直 径1cm
した. の円 が 呈 示 され た.被 験 者 は各 条 件 にお い て,基 準 軸 を
刺激 刺 激 は物 理 的 水 平 を0° と して5° 刻 み で ±90° 0°と し反 時 計 回 りに+,時 計 回 りに 一 の記 号 をつ け た
まで36種 類 を用 意 し,判 断 の基 準 軸 に は物 理 的 水 平(一 5° き ざみ の 反 応 カテ ゴ リー(-85° か ら+90° まで, 36

致 条 件)及 び 物 理 的水 平 よ り 反 時 計 回 りに25°(斜 交 条 種)を 用 い て傾 き を評 定 ・言 語 報 告 す る よ うに求 め られ,

件)の2種 を用 い た.刺 激,基 準 軸 は と もに ス ク リー ン 絶 対 判 断 条 件 で は先 行 の継 時 判 断 条 件 で使 用 した基 準 軸
上 に お い て長 さ4cm,幅1mmの 線 分 で,透 過 式 ス に基 づ い て判 断 す る よ うに教 示 され た.各 条 件 間 に3分
ク リー ンの 背 後 か ら 直 径6cmの 円形 フ ィ ー ル ドの 中 間 の休 憩,各 条 件 の 前 には 各 々8試 行 の練 習 を実 施 し,
央 に,各 々 の 中心 が 一 致 す る よ うに呈 示 した.輝 度 は 刺 被 験 者 一 人 あ た りの総 試 行 数 は176で あ った.
激 線 分 と 基 準 軸 が240cd/m2,背 景 の フ ィー ル ド内 が
結 果 と考 察
160cd/m2,フ ィ ール ド外 が0.1cd/m2以 下 で あ った.
製 作 には ス ライ ド作 成 機(パ ナ コ ピー:松 下 製)を 使 用 し 以 下 の記 述 にお い て は,つ ぎの よ うな概 念 的 枠組 み を
た. 使 用 す る.
被 験 者19-22歳 の心 理 学 専 攻 の大 学 生9名.い ずれ 1.  物 理 的 傾 き:線 分 の傾 き を,物 理 的 水 平 軸 と一 致

も実 験 に支 障 の ない 視 力 を有 す. す る も の を<0°>と し,反 時 計 回 りに+,時 計 回 りに 一

手続 き 以 下 の4条 件 を設 定 し,全 被 験 者 に次 の順 序 の符 号 をつ け て表 示 した も の を物 理 的 傾 き とす る.
で実:施した. 2.  相 対 的 傾 き:線 分 の傾 き を,判 断 の基 準 軸 を<0°>
1.  一 致 ・継 時 条 件 判 断 の基 準 軸 と物 理 的水 平 軸 が と し,反 時 計 回 りに+,時 計 回 りに 一 の符 号 をつ け て
一 致 した状 態 で の線 分 の 傾 きの継 時 判 断. 5°き ざみ で表 示 す る.一 致 条 件 で は物 理 的傾 き が そ の ま
2.  一 致 ・絶 対 条 件 同 じ く絶 対判 断. ま相 対 的傾 き とな るが,斜 交 条 件 で は異 な る.
3.  斜 交 ・継 時条 件 判 断 の基 準 軸 と物 理 的 水 平 軸 が 3.  評定 誤 差 な い し誤 差:傾 き の 評 定 が な され た 時,

斜 交(水 平 軸 に対 して 反 時 計 回 りに250)し た状態で 刺激 の 相対 的傾 き と使 用 され た 反 応 カテ ゴ リー の 関係 を

の 継 時 判 断. 数値 の 差 で表 示 した もの.判 断 の 基 準 軸 か ら遠 ざか る場
4.  斜 交 ・絶 対 条 件 同 じ く絶 対 判 断. 合 に+,近 づ く場 合 に 一 の 符 号 を与 え る.
これ ら相 互 の 関 係 は 実 験 条 件 に よ っ て変 化 す る.た と
え ば,物 理 的 傾 き が<+45°>の 線 分 の相 対 的 傾 き は一 致
条 件 で は<+45°>,斜 交 条 件 で は<+20°>で あ り,こ の
線 分 に対 して 一 致 条 件 で<+55°>,斜 交 条 件 で<+30°>
の反 応 カテ ゴ リー が選 択 され た場 合 の 誤 差 は い ず れ も
+10° で あ る.同 様 に各 々<+40°>,<+15°>が 選択 され
た場 合,誤 差 は-5° とな る.
Fig. 2に 一 致 ・継 時 条 件,一 致 ・絶 対 条 件 に お け る全

被 験 者 の 評 定 誤 差 の 平 均 値, Fig. 3に 斜 交 ・継 時条 件 ・
斜 交 ・絶 対 条 件 に お け る全被 験 者 の評 定 誤 差 の平 均値 を
Fig. 1. A schematic representation of trials. Sub
示 す.両 図 と も横 軸 は 物 理 的 傾 き で 表 示 され て い るが,
jects estimated the inclination of stimuli using 36 re Fig. 2で は 相対 的 傾 き と物 理 的 傾 きが 一 致 して い る.
sponse categories (+90•‹ to -85•‹ in step of 5•‹. 0•‹
Fig. 4は 同 じ く斜 交 ・継 時 条 件,斜 交 ・絶 対 条 件 で あ
coincides with the horizontal axis), The "relative

inclination " indicates the inclination of stimuli from

る が,横 軸 を物 理 的 傾 き そ の ま まで は な く,相 対 的 傾 き

the frame of reference. The "errors" with negative

で 表 示 しな お した も ので あ る.先 の例 を あ げれ ば,物 理
and positive signs indicate under-and over-estima 的 水 平 か ら45° 傾 い た線 分 に対 す る評 定 誤 差 は, Fig.2,
tions, respectively. Fig. 3で はx軸 上 の+45°, Fig. 4で は+20° に対 応
 402  心 理 学 研 究 第61巻 第6号

し て表 示 され てお り, Fig. 3とFig. 4はx軸 に沿 っ 垂 直 な刺 激<+90°>に 対 す る誤 差 は は るか に 大 き い.

た 平 行 移 動 の関 係 に あ る. 一致条件
,斜 交 条 件 間 の評 定 誤 差 の傾 向 につ い て 観 察
Fig. 2で は 継 時 判 断,絶 対 判 断 とも に傾 き の過 大 評 定 す る とき,物 理 的 傾 き を横 軸 に表 示 したFig. 2, Fig. 3
傾 向 がみ られ,と くに+側 で 顕 著 で あ る.ま た,誤 差 問 よ りも,同 じデ ー タ を相 対 的 傾 き を横 軸 に して表 示 し
は水 平 ・垂 直 軸 に一 致 す る刺 激 に 対 し て 最 も小 さ く, なお したFig. 2, Fig. 4間 の 類似 性 が 高 い.一 致 ・継 時
oblique効 果 が認 め られ る. 条 件 と斜 交 ・継 時 条 件 の相 対 的 傾 き に対 応 した 評 定 誤 差
一 方Fig . 3で は 様 相 は 大 き く異 な り,垂 直 軸 付 近 を につ い て, Spearmanの 順 位 相 関係 数 はp=0.32: p<
除 く全 域 で 過 小 評 定 傾 向 がみ られ る.水 平 ・垂 直 の刺 激 0.05で あ り,有 意 な相 関 が認 め られ る.
に対 す る誤 差 は必 ず し も小 さ くな く,一 致 条 件 でみ られ 判 断 の基 準 軸 を境 界 に した これ ら の過 大 な い し過 小 評
た 物 理 的 水 平 ・垂 直 軸 の優 位 は斜 交 条 件 で は失 われ て い 定傾 向 の周 期 性 変 動 につ い て も,ラ ンの 検 定 に よ りい ず
る. れ も有 意 性 が 示 され て い る.(p<0.05)ま た,一 致 ・継
さ ら にFig. 4で は継 時判 断,絶 対 判 断 と もに<+60°> 時条 件,一 致 ・絶 対 条 件,斜 交 ・継 時 条 件 につ い て は9
付 近 の 過 大 評 定 傾 向 とそ れ 以 外 の領 域 にお け る過 小 評 定 人 の被 験 者 間 の評 定 傾 向 の 差異 が 小 さ く,一 致 度 係 数 が
傾 向 が み られ る.判 断 の基 準 軸<0°>に 一 致 す る刺 激 に 有 意 で あ り,こ の 点 か ら も観 測 され た 誤 差 傾 向 の普 遍 性
対 す る評 定 の正確 さ はFig. 2と 変 らな い が,基 準 軸 に が認 め られ る.(p<0.01)
Fig. 5は 斜 交 ・絶 対 条 件 にお け る反 応 カテ ゴ リー使 用
の偏 り を示 して い る.横 軸 は反 応 カテ ゴ リー,縦 軸 は全
被 験 者 の選 択 回数 の 累 計 で あ り,均 等 な選 択 が な され た
とき の期 待 値9をE. V.と して差 で表 示 して い る.と こ
で は<0°>,<+45°>,<+90°>等 に対 す る偏 好 が認 め られ
る が,他 の3条 件 につ い て も こ の傾 向 は よ く似 て い る.
一方
,こ の 図 で は物 理 的 水 平 ・垂 直 の刺 激 に対 応 す る反
応 カ テ ゴ リー は そ れ ぞ れ<-25°>,<+65°>で あ るが,何
Fig. 2. The mean judgment error as a function of
れ も と くに使 用 頻 度 が高 い わ け で は な い.す な わ ち,多
physical/relative inclination under the condition with く使 用 され るの は被 験 者 の反 応 側 の系 列 に お け る<0°>,
the horizontal frame of reference. The parameter is
successive or absolute judgment. <+90°>な どの カテ ゴ リー な い し数値 で あ って,実 際の
傾 き が0°, 90° な どで あ る刺 激 に対 応 した反 応 カ テ ゴ リ
ー で は な く,反 応 カ テ ゴ リー選 択 に み られ る偏 好 傾 向 は

刺 激 の物 理 的傾 き よ り も,む しろ判 断 の認 知 的 枠 組 み に
依 存 す る こ とが わ か る.
反 応 カ テ ゴ リー の使 用 頻 度 に つ い てSpearmanの 順
位 相 関係 数 ρ を求 め た とこ ろ,継 時 判 断,絶 対判断 の
双 方 で,一 致 条 件 と斜 交 条 件 の問 に高 い相 関 が認 め られ
た.ま た,一 致 条 件,斜 交 条 件 を問 わず 継 時 判 断 と絶 対
Fig. 3. The mean judgment error as a function of
判 断 の問 に 高 い相 関 が み ら れ た(い ず れ もp<0.01,
the physical inclination with the frame of reference
inclined 25 degrees anticlockwise from the horizontal
axis. The parameter is successive or absolute judg
ment.

Fig. S. Frequency distribution of response cate

Fig. 4. Re-plotted data of Fig. 3 against the rela gories in the absolute judgment with the inclined
tive inclination. frame. The expected value (=9) was indicated as 0.
 仲 谷: Obiique効 果 の カ テ ゴ リ ー 的 要 因  403

df=34).さ らに4条 件 問 の 反 応 カ テ ゴ リー の 使 用 頻 度 され た異 方性 が存 在 し,そ れ が顕 在 化 した も の がclass

の 一致 度 係 数 はW=85.4,p<0.001で,極 めて 高 い相 関 1 oblique効 果 で あ り,そ の よ うな異 方 性 を過 剰 体 験 し
が示 され た.こ れ らの 結果 は判 断 の 形 式 や,物 理 的 ・身 た 結 果 獲 得 され た の がclass 2 oblique効 果 な い し,そ
体 的 方 向 と基 準 軸 の 関 係,言 い換 え れ ば空 間 的 枠 組 み と の基 盤 とな る非 等 方 的 な,つ ま り水 平 ・垂 直 軸 方 向 に密
認 知 的枠 組 み の 一 致 ・不 一 致 な ど にか か わ らず 反 応 カテ で,斜 め方 向 に疎 な 表 象 体 系 で あ る と考 え られ る.限 定
ゴ リー の使 用 傾 向 が 類 似 して い る こ とを示 唆 して い る. され た実 験 室 的 環 境 以 外 で は む しろclass 2 oblique効
この 実 験 で は 継 時 判 断 ・絶 対 判 断 の双 方 を試 み たわ け 果 が優 勢 に現 れ る と思 わ れ,そ の意 味 か ら も認 知 的 要 因
で あ るが,両 者 に知 覚 レベ ル,認 知 レベ ル で 本 質 的 な相 の再 検 討 を要 す る と考 え る.

違 があ るわ けで はな い.継 時 判 断 にお いて 呈 示 され た 基
準 軸 の残 効 や 刺 激 布 置 に基 づ く繋 留 効 果 は マ ス キ ン グ に 引 用文 献
よ って 打 ち消 され て い る し,絶 対 判 断 とい え ど も仮 想 的
Andrews, D. P. 1967a Perception of contour orien
な 基 準 軸 ・内 的 関 係 枠 の 存 在無 く して は 成 立 しえ な い. tation in the central fovea. I. Short lines. Vision
結 果 の上 で も両 者 に大 きな 違 い はみ られ ない. Research, 7, 975-997.
一 致 条 件 と斜 交 条 件 を比 較 した とき
,評 定 誤 差 の絶 対 Andrews, D. P. 1967b Perception of contour orien
値 や 周 期 性 に差 がな く,判 断 の基 準 軸 を換 え る こ とに よ tation in the central fovea. II. Spatial integration.
って 誤 差 の ピー クが 移 動 す る こ とか ら,誤 差 傾 向 の 中心 Vision Research, 7, 999-1013.
が 判 断 の 基 準 軸 に あ り,物 理 的 水 平 に は な い こ と が 示 Appelle, S. 1972 Perception and discrimination as
a function of stimulus orientation: The "oblique
唆 され る.す な わ ち水 平 ・垂 直 軸 の優 位 性 は刺 激 の物 理
effect" in man and animals. Psychological bulletin,
的 ・空 間 的 布 置 を 基 準 と して 固 定 され た も ので は な く, 78, 266-278.
判 断 の枠組 み に よ って 相 対 化 され 得 る. Pouma, H., & Andriessen, J. J. 1968 Perceived ori
こ こで のoblique効 果 が刺 激 の物 理 的 傾 き と無 関 係 と entation of isolated line segments. Vision Research,
い うこ と に なれ ば,特 徴 抽 出 器 との直 接 的 な関 係 も否 定 8, 493-507.
で き る.神 経 生 理 学 で は特 徴 抽 出 器 の適 刺 激 と出 力 の関 Essock, E. A. 1980 The oblique effect of stimulus
係 を固 定 的,か つ 可 塑 性 を持 た な い と して い る が,そ こ identification considered with respect to two classes

に非 等 方 性 が存 在 す る と して も極 め て小 さ く,こ の実 験 of oblique effects. Perception, 9, 37-46.

Howard, J. P. 1982 Human visual orientation.
条 件 で は認 知 的 要 因 に埋 没 して い る と考 え られ る.
Chichester: John Wily & Sons.
Howard (1982)は 言 語 を用 い た評 定 が繋 留 効 果 を生 じ
仲 谷 兼 人1981 Oblique効 果 をめ ぐ る諸 問題 京都大
や す い こ とを指 摘 して い る が,こ の よ うな反 応 側 の要 因
学 教 育 学 部 紀 要, 27, 138-148.
は感 覚 の モ ダ リテ ィ に か か わ らず,反 応 系 列 の両 端 部 に 仲 谷 兼 人1983方 向 弁 別 反 応 時 間 に お け る練 習効 果 と
お け る対 比,同 化,さ らに系 列 の 中央 部 に お け る誤 差 の そ の転 移 心 理 学 研 究, 53, 376-379.
拡 大 等,多 様 な現 れ方 をす る こ とが知 られ て い る. 4条 仲 谷 兼 人1985傾 き知 覚 に お け る カテ ゴ リ ー 的 要 因
"Class 2" oblique効 果 を中心 と して一 京都
件 間 の反 応 カ テ ゴ リー偏 好 の類 似 性 か らみ れ ば,こ こで
のoblique効 果 が,反 応 形 成 レベ ル に お け るカ テ ゴ リー 大 学 教 育 学 部 紀 要, 31, 60-68.

間 の対 比 に よ る もの で あ る可 能 性 が あ る と思 わ れ る.こ 鋤 柄 増 根1980方 向 の異 同判 断 に お け る 比較 処 理 過 程
弁 別 反 応 時 間 に よ る ア プ ロー チー 心 理 学 研 究,
の よ うな反 応 カ テ ゴ リー偏 好 の原 因 に つ い て は,例 え
51, 76-83.
ば,我 々 が 日常 的 に使 用 す る頻 度 と関係 し,確 信 を も っ
鋤 柄 増 根1983方 向検 出器 の反 応 特 性 に関 す る心 理 学
た判 断 が難 しい時 こ れ らの数 字 が選 択 され や す い,と い
的 視 点 と斜 線 効 果 へ の応 用 金 沢 医科 大 学 教 養 部 論 文
うよ うな推 測 も可 能 で あ ろ う. 集, 11, 13-24.
従 来 か ら傾 きや 方 向性 の知 覚 実 験 に 際 して観 察 され て
い る異 方 性 と結 び つ け て整 理 す るな らば,視 覚 系 に 内包 -1986.7.12.受 稿, 1990.7.14.受 理-