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Jpn. J. Med. Mycol.

Vol. 40, 63-67, 1999


ISSN 0916-4804

総 説

Malassezia furfur の 引 き 起 こ す 皮 膚 の 炎 症 ・免 疫 反 応

照 井 正 工 藤 和 浩 田 上 八 朗
東北大学医学部附属病院皮膚科教室

要 旨
最 近, い くつ か の炎 症 性 皮 膚 疾 患 の発 症 や 悪 化 に Malassezia furfur が関連している事実が報告され, 注目を浴びて
い る. しか し, これ らの皮 膚 疾 患 の 病 変形 成 に Malassezia furfur がどのように関連しているかは充分に明らかにされ

て い な い. これ らの 皮 膚疾 患 の 臨 床 な らび に病 理 組 織 学 的所 見 をみ てみ る とか な り違 い が あ り, 最 近 知 ら れ て い る7

種 類 の Malassezia の抗 原性 の違 い だ け で説 明す る こ とは難 しい. そ の た め, Malassezia furfurに対 す る宿 主 側 の 反 応 を

調 べ, 各皮 膚 疾 患 で の差 違 を比 較 検 討 す る必 要 が あ る. 角 層 のバ リア機 能 や 表 皮 角 化 細 胞 の サ イ トカ イ ン 産 生, 細 胞
性 免 疫 の 三 つ の視 点 か ら, 皮 膚 の 感染 防 御機 構 を概 説 す る と と もに, 各 疾 患 に お け る Malassezia furfurに よ っ て 引 き
起 こ さ れ る 炎症 ・免 疫 反 応 の違 い に つ い て ま とめ て報 告 したい.
Key words: 角 層 (stratum corneum), 表 皮 角 化 細 胞 (epidermal keratinocyte), サ イ トカ イ ン(cytokine), 好 中

球 (neutrophil), T細 胞 (T cell)

は じめに Malassezia furfur の 関連 した皮 膚 疾 患

Malassezia furfur (M. furfur) は, Castelli & Chalmers M. furfur の 関与 が 考 え られ る皮 膚 疾 患 は1), M. furfur
に よ って 人 の 正 常 皮 膚 お よ び脂 漏 性 皮 膚 炎 の 病 変 部 位 よ の増 殖 が 直 接 発 病 につ なが る疾 患 と2)直 接 発 病 に 関与 し
り酵 母 用 真 菌 と して 分 離 され た 好 脂 質 性 の 真 菌 で1), サ て い な い が病 変 を悪 化 させ た りす る疾患 の 二 つ に分 け ら
ブ ロ ー培 地 で は発 育 が 非常 に遅 く,サ ブロ ー培 地 にオ リー れ る. 第一 の グ ル ー プ に属 す るの が, 綴 風 とマ ラ セ チ ア
ブ油 を乗 せ た培 地 や, 脂 肪 酸 で あ る Tween の 添 加 され 毛 包 炎 で あ る. 一 方, 最 近 に な っ て, 脂 漏 性 皮 膚 炎 や 乾
たDIXSON平 板 培 地 を用 い る と3∼5日 で コロニ ーの 癬, ア トピー性 皮 膚 炎 な どの皮 膚 疾 患 に お い て, そ れ ら
形 成 を示 す. の 発 症 や 増 悪 にM. furfur が 関与 して い る デ ー タ が い く
M. furfur は ア クネ桿 菌 と と もに 正 常 皮 膚 細 菌 ・真 菌 つ か 報 告 され, 話 題 を呼 んで い る.
叢 の 一 つ で あ り, ほ ぼ 全 身 に分 布 す る が, と くに 脂 漏 M. furfur が 発 症 に関 与 す る皮 膚 疾 患 を観 察 す る と, そ
部位 で あ る被 髪頭 部, 顔 面, 頚 部, 上 背 部 に 多 く存 在 す れ ぞ れ, 臨床 症 状 だ け で な く病 理 組 織 学 的 所 見 も大 い に
る2). また, M. furfur の菌 数 は年 齢 と と もに 変 化 す る こ 異 な る. M. furfur の 形 態 は疾 患 に よ り異 な り, 菌 糸 形 で
とが 知 られ3), これ は皮 脂 の 分 泌 の 年齢 的 な 変 動 に 一 致 あ っ た り, 酵 母 形 で あ っ た りす る. さ ら に, 最 近, 一 種
す る4). M. furfur の発 育 を促 進 す る よ うに働 く宿 主 側 の 類 と考 え られ て い た本 菌 が, 少 な く と も7種 類 か ら な る
要 因 と して, 多汗, 皮 脂 分 泌 過 多, 抗 生 物 質 や ス テ ロ イ こ とが 分 子 生 物 学 的 な検 索 に よ り, 分 か りつ つ あ り, 菌
ド剤 の使 用, 免 疫 不 全 が あ げ られ る. 種 の 違 い が これ らの皮 膚 疾 患 の病 態 の違 い に当 然 影響 し
皮 膚 は 角層 とい うバ リア で 覆 わ れ, 物 理 的 な 外 力 や 微 う る一 方, 宿 主側 の要 因 で も病 態 が 変 化 す る こ とが 推 察
生物 な どの侵 入 を防 い で い る. 発 汗 に よ り湿 潤 した 状 態 され る. この疑 問 を解 き明 かす に は, まず, M. furfur が
が 長 く続 くと, 角 層 のバ リア機 能 は低 下 し, 微 生 物 が 侵 炎 症 や 免 疫 反 応 を どの よ うに惹 起 した り, 修 飾 した りす
入 し, 定 着 す る の に適 した状 態 に な る た め種 々 の 感 染 症 る の か, また, 各 種 皮 膚 疾 患 でM. furfur に 対 す る免 疫
が発 病 しや す くな る. ス テ ロ イ ド剤 な どの免 疫 抑 制 剤 の 反 応 は どの よ うに 変化 して い る の か を 明 らか にす る基礎
投 与, あ る い は免 疫 不 全 の病 態 を示 す よ うな患 者 で は感 的 な研 究 を通 じて 理解 す る 必要 が あ る. これ ま で 論 文 で
染 症 が起 こ りや す い こ と も経験 的 に 知 られ て い る. こ の 報 告 され て きた 実験 結 果 と当教 室 で得 られ た結 果 を ま と
よ うな状 態 で の易 感染 性 は, 皮 膚 の感 染 防御 機 構 の 理 解 め て解 説 し, 今 後 どの よ うな研 究 が必 要 で あ る か 考 え て
か ら とそ の理 由 も明 らか とな る. み たい.

皮膚 の 感染 防御 機 構
別刷 請 求先: 照 井 正
〒980-8574仙 台 市 青 葉 区星 陵 町1-1 皮 膚 の 感 染 症 に対 す る 防御 機 構 と して, 少 な くと も3
東北 大 学 医 学 部 附属 病 院皮 膚 科 教 室 つ の点 を考 慮 す る必 要 が あ る. つ ま り, 1)角 層 の バ リ
64 真 菌誌 第40巻 第2号 平 成11年

Fig. 1. Cutaneous defense mechanism against Malassezia furfur.

ア 機構 と, 2)表 皮 角 化 細 胞 の サ イ トカ イ ン産 生 と増 殖, ま う.
3)T細 胞 を は じめ とす る 免 疫 担 当 細 胞 の働 き で あ る 臨 床 的 に 脂 漏 性 皮 膚 炎 と判 断 で き な い よ う な ふ け 症

(Fig. 1). 角 層 は皮 膚 の最 外 層 に位 置 し て, 我 々 の 体 を の 人 の フ ケ を顕 微 鏡 で 観 察 す る と 乾 癬 の 鱗 屑 と似 て

外 部 環 境 か らの 物 理 化 学 的 な刺 激 や微 生物 の侵 入 か ら守 parakeratosis (錯 角 化)を 伴 っ た角 層 で あ る こ とが わ か
る し, 体 内 の水 分 の蒸 散 を防 い で い る. さ ら に, 角 層 は り, 好 中 球 の 浸 潤 も み ら れ る8). さらに フケの抽 出液 の
外 力 が 加 わ る と, 炎 症 を起 こす 機 能 を有 し, 表 皮 角 化 細 中 に は 好 中 球 を 引 き寄 せ る 化 学 遊 走 因 子 が 含 ま れ て お り,
胞 の 増 殖 を充 進 させ, そ れ らの 細 胞 と と も に異 物 を排 除 補 体 の 活 性 化 に よ り生 じ るC5aア ナ フ ィ ラ トキ シ ンが
す る働 きを持 つ. 表 皮 角 化 細 胞 は バ リ アで あ る角 層 を供 存 在 す る8).
給 す る大 事 な役 目 を担 って い る. い った ん外 か ら物 理 化 ま た, 角 層 は 多 量 のrL-1α を 内包 す る こ とが 分 か っ て
学 的 な刺 激 や, 微 生 物 の 侵 入 が あ る と, そ れ らに 反 応 し い る9,10). した が っ て, 角 層 の 破 壊 に よ りIL-1α が放 出

て様 々 の サ イ トカ イ ン を放 出 し, 炎 症 や 免 疫 反 応 が 起 こ さ れ 炎 症 を 惹 起 し た り, T細 胞 の 活 性 化 に 寄 与 し う る.

りやす い環 境 を作 る. 上 記 バ リ ア をす り抜 け て排 除 か ら 角 層 中 に はIL-1α の antagonist と し て 知 ら れ るIL-1


免 れ た異 物 は 表 皮 内 の ラ ンゲ ルハ ンス 細 胞 な どに よ り処 receptor antagonist (IL-1ra) も含 ま れ, IL-1機 能 はIL

理 され, T細 胞 に情 報 が もた ら され, そ の抗 原 の 種 類 や 1raと の バ ラ ン ス で 決 定 さ れ て い る と 考 え ら れ る. IL.

抗 原 提 示 の 際 の 環 境 の 違 い に よ り, ヘ ルパ ーT細 胞 の 前 1α とIL-1raに 関 し て は, そ の 産 生 細 胞 で あ る 表 皮 角 化

駆 細 胞 はTh1やTh2細 胞 へ と分 化 し, そ れ ぞ れ の 機 能 細 胞 の 項 で 述 べ る.
を発 揮 す る.
2)表 皮 角 化 細 胞 の サ イ トカ イ ン産 生 異 常
1)角 層 と Malassezia furfur の起 炎作 用 表 皮 角 化 細 胞 は, 外 部 環 境 か ら の 刺 激 に 反 応 し て 様 々
角 層 の重 要 な機 能 の 一 つ と してバ リア機 能 が 挙 げ られ の サ イ トカ イ ン を 放 出 し, そ の サ イ トカ イ ン を 介 し て 炎
る(Fig. 1). こ の破 壊 は微 生 物 の 侵 入 や 定 着 を許 し, 発 症 や 免 疫 反 応 に 関 与 す る 細 胞 に 影 響 を与 え る. ま た, 表
病 に い た る. 微 生 物 の侵 入 を 防 ぐた め に, 角 層 に は も う 皮 角 化 細 胞 は 補 体 成 分 で あ るC3と factor Bを 産 生 す る
一 つ の驚 くべ き機 能 が賦 与 され て い る. す な わ ち, 生 体 11,12).と く に, TNFα やIFNγ な どの 炎症 性 サ イ トカ イ

の最 外 層 に位 置 す る角 層 自体 が生 体 に とっ て異 物 と して ン が 存 在 す る と, C3の 産 生 が 著 明 に 増 加 す る13). さら

認 識 され, 補 体 の 傍系 路 を介 して好 中球 を集 積 させ, 炎 に 表 皮 角 化 細 胞 は 炎 症 や 免 疫 反 応 を充 進 させ る サ イ トカ

症 を惹 起 す る5-7). イ ン ば か りで な く, 逆 に, 抑 制 的 に働 くIL4 raやIL-10,

さ ら に種 々 の 細 菌 や真 菌 は補 体 の傍 系 路 を介 して補 体 TGFβ な ど を 放 出 し, 炎 症 や 免 疫 反 応 を コ ン ト ロ ー ル し

を活 性 化 す る こ とが知 ら れ て い る. 皮 膚 に 常 在 す るM. て い る.

furfur や ア ク ネ桿 菌, 表 皮 ブ ドウ球 菌 や 病 原 性 の あ る 黄 ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 や 乾 癬 を 含 む 炎 症 性 皮 膚 疾 患 と健 常

色 ブ ドウ球 菌 の補 体 活 性 化 能 を比 べ て み る と, 病 原 性 の 人 の 角 層 を 比 較 す る と, 炎 症 性 疾 患 で は, 1L. 1α は 低 下

強 い 黄 色 ブ ドウ球 菌 が も っ と も弱 く, 逆 に, ア ク ネ桿 菌 し, 1L. 1raが 増 え て い る こ と が 分 か っ た14). 角層 中の

やM. furfur が 強 い 活 性 化 能 を示 した6). この よ う な 事 IL4α や1L-1raは 病 変 部 の 表 皮 角 化 細 胞 の 産 生 量 を反

実 か ら, い った ん角 層 が 破 壊 され, 生 きた 表 皮 細 胞 層 か 映 す る と 考 え ら れ る. 同 じ方 法 を 使 っ て, 白 癬 患 者 とM.
ら分 泌 され る補 体 成 分 を含 ん だ 間 質 液 が 角 層 に 至 る と, furfur の 増 殖 が 直 接 発 病 に 関 与 す る 綴 風 患 者 を 調 べ た
常 在 真 菌 や 細 菌 は角 層細 胞 と と もに補 体 を活 性 化 し, 好 と こ ろ, 他 の 炎 症 性 皮 膚 疾 患 と 同 様 に1L-I1α は低 下 し

中球 の浸 潤 を伴 っ た 炎 症 反 応 を 引 き起 こす. そ の 結 果, (Fig. 2), 1L-1raが 増 加 して い た(Fig. 3). 興 味 深 い こ

表皮 の増 殖 が 充 進 し, 鱗 屑 や 痂 皮 と一 緒 に排 除 さ れ て し と に, 白 癬 患 者 に 比 べ て, 綴 風 患 者 の 健 常 部 と 病 変 部 の
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トで は も う少 し複雑 で あ る こ とが 分 か って い る が, 類 似
したT細 胞 が存 在 す る こ とが 報 告 さ れ て い る. 以 下 に,
脂 漏 性 皮 膚 炎 や ア トピー性 皮 膚 炎, 乾癬 に お け る免 疫 異
常 につ い て, T細 胞 サ ブ セ ツ トを検 討 した論 文 を含.め て
紹 介 す る.
先 ず は じめ に, 脂 漏 性 皮 膚 炎 の 実験 結 果 を示 す. 皮 膚
テ ス トと して, IgEに よ る即 時 型 ア レ ル ギ ー 反 応 を反 映

□Uninvolved す る プ リ ック テス トと遅 延 型 反 応 を示 すパ ツチ テ ス トあ
る い はス ク ラ ツチ パ ツチ テ ス トに よ る皮 膚 反 応 テ ス ト
■Involved
が検 討 され てい る. 脂 漏 性 皮 膚 炎 患 者 の 結 果 を示 す と,
プ リ ツク テス トとパ ツチ テ ス トは ほ とん どの 症例 で 陰性
で16), 注 射針 で角 層 バ リア を破 壊 したス ク ラ ツチ パ ツチ
テ ス トで は約50%の 患 者 で 陽 性 を示 した17). AIDS患
者 で脂 漏 性 皮 膚 炎 が しば しば み られ るが, 脂 漏 性 皮 膚 炎

Fig. 2. Comparison of IL-1 a in the stratum corneum between 患 者 と細 胞 性 免 疫 の 低 下 との 問 に 関 連 が あ る こ とが示 唆


involved and uninvolved skin of patients with cutaneous され て きた. 実 際, 患 者 末梢 血 単 核 球 を mitogen で あ る
fungal diseases. concanavalin A (ConA) で刺 激 し て, そ の 増 殖 をみ る
と脂 漏 性 皮 膚 炎 患 者 で は低 下 して い る こ とが 報 告 され て
い る18). しか し, 実 験 結 果 にば らつ きが あ る の で 解 釈 に
は 注 意 を要 す る. ま た, 最 近 の サ イ トカ イ ン産 生 を み た
研 究 で は, IFNγ とIL-2のTh1サ イ トカ イ ン の 産 生 が
低 下 し, IL-10の 産 生 が患 者 で は充 進 して い る こ とが 報
告 され て い る19). 日常 診 療 で 脂 漏 性 皮 膚 炎 患 者 を し ば し
□Uninvolved
ば 診察 す る が, 必 ず し も免 疫 異 常 を示 す 患 者 ば か り とは
■Involved 限 らな い. 脂 漏 性 皮 膚 炎 患 者 で は全 身 の 免 疫 機 能 が 低 下
して い る の か, M. furfur に対 す る 免 疫 反 応 だ け が 特 異
的 に 異常 を示 す の か, 今 後, さ ら に検 討 が 必要 で あ る.
成 人 型 ア トピー性 皮 膚 炎 患 者 の脂 漏 部 位 で, 顔 面 や 頚
部 に し ば し ば難 治 性 の 皮 疹 が あ り, atopic red face や
dirty neck とい う名 称 で 注 目され て い る. こ の よ う な 患
者 で は, M. furfur に対 す る 特 異IgE値 も高 値 を示 す 頻
度 が 高 く, プ リ ツク テ ス トも陽 性 率 が 高 い16). ま た, 抗
真 菌剤 が効 果 を示 す 例 が 報 告 され て お り, 本 菌 が 病 変 形
Fig. 3. Comparison of IL-1 ra in the stratum corneum between
成 に 関与 して い る こ とが 推 察 され る. ア トピ ー性 皮 膚 炎
involved and uninvolved skin of patients with cutaneous

fungal diseases. 患 者 で ス ク ラ ツチパ ツチ テス トを行 う と, 菌 抗 原 に30∼


60%で 陽 性 で あ る こ とが分 か っ て い る17). 以 前 まで, ア
トピー性 皮 膚 炎 はTh2優 位 の 疾 患 と して 理 解 さ れ て き
い ず れ にお い て も, 1L-1raは 高 い 値 を示 した(Fig. 3). た が, 最 近, 病 変 部 でTh1も 活 性 化 され て い る こ とが 分
綴 風 の 皮 疹 で 炎 症 反応 が 弱 く, 紅 斑 が み られ る こ とが 少 か って きた. プ リ ツク テス トとス ク ラ ツチ パ ツ チ テ ス ト
な い の はIL-raに 起 因 す る 可 能性 が示 唆 され, 現 在M. の 結 果 もTh1とTh2の 両 方 が 関与 して い る こ と を示 唆
furfur が 表皮 角 化 細 胞 のIL-1ra産 生 に影 響 を与 え る か ど す る もの で あ る17). また, M. furfur 特 異 T cell clone を
うか, in vitroの実 験 で検 討 中 で あ る. 作 成 し, サ イ トカ イ ン産 生 を調 べ た報 告 が あ る20), 血 液
か らの clone はTh1型 を示 し, 病 変 部 か ら の clone は
3) Malassezia furfur の 関 連 した皮膚 疾 患 に お け る免 Th2型 で あ っ た. 全 身 的 な免 疫 と局 所 の 免 疫 に解 離 が あ
疫異 常 り, これ が どの よ うな意 味 を持 つ の か は, 正 常 人 や 他 の
多 くの 皮 膚 炎 症性 疾患 の 病 変 部 に は, CD4陽 性 のヘ ル 炎 症 性疾 患 との比 較 に よ っ て明 らか に な るで あ ろ う.
パ ーT細 胞 の浸 潤 が み られ る. このCD4陽 性T細 胞 に 乾癬 の病 変 形 成 にTh1が 関 与 して い る こ とが 報 告 さ
は2つ の サ ブセ ツ トが 存 在 す る. す な わ ち, IL. 2やIFN れ て い るが21), い まだ, 乾癬 発 病 の責 任 抗 原 が 何 で あ る
γ, TNFα を産 生 し, 遅 延 型 免 疫 反 応 に 関与 す るTh1細 か 明 らか に され て い な い. 乾 癬 の 病 変 は機械 的 な刺 激 の
胞 と1L-4やIL-5, 1L-10を 産 生 し, IgEの 産 生 や 好 酸 球 加 わ る肘 頭, 膝 蓋, 仙 骨 部 な ど に 多 くみ ら れ るが, M.
の 関与 した ア レル ギ ー 性 の 疾 患 で 注 目 さ れ て い るTh2 furfur が多 く存 在 す る被 髪 頭 部 や 腋 窩, 陰 股 部 で もみ ら
細 胞 で あ る15). 多 くの報 告 は マ ウ ス で の実 験 で あ り, ヒ れ る. 乾癬 にお い て, M. furfur は責 任 抗 原 と して働 くの
66 真菌誌 第40巻 第2号 平 成11年

で は な く, M. furfur が 刺 激 と な りケ ブ ネ ル 現 象 を惹 起 11) Basset-Seguin N, Caughman SW, Yancey KM: A-431


して, 病 変 を形 成 す る と考 え られ て い る. cells and human keratinocytes synthesize and secrete
the third component of complement. J Invest Dermatol
お わ り に 95: 621-625, 1990.
12) Yancey KB, Overholser 0, Domloge-Hultsch N, Li L-J,
以上, 皮 膚 の 感 染 防 御 機構 を説 明 す る と と も に, M. Caughman SW, Bisalbutra P: Human keratinocytes
furfur が 関与 し うる 皮 膚 疾 患 で, どの よ う な 感 染 免 疫 防 and A-432 cells synthesize and secrete factor B, the
御 機 構 が異 常 を きた して い る の か, 概 説 した. ま だ, 解 major zymosan protease of the alternative complement
明 され て い な い 点 が 多 く, 今 後, さ ら に炎 症 と免 疫 学 的 pathway. J Invest Dermatol 98: 379-383, 1992.
13) Terui T, Ishii K, Ozawa M, Tabata N, Kato T,
な視 点 か ら これ らの 疾 患 を見 直 す 必 要 が あ る こ とを強 調
Tagami H: C3 production of cultured human epidermal
した い. keratinocytes is enhanced by IFN y and TNF a through
different pathways. J Invest Dermatol 108: 62-67, 1997.
文 献
14) Terui T, Hirao T, Sato Y, et al.: An increased ratio
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Jpn. J. Med. Mycol. Vol. 40 (No. ), 1999 67

Cutaneous Immune and Inflammatory Reactions to Malassezia furfur

Tadashi Terui, Kazuhiro Kudo, Hachiro Tagami


Department of Dermatology, Tohoku University School of Medicine
Seiryo-machi 1-1, Aoba-ku, Sendai 980-8574,Japan.
Initiation and aggravation of several inflammatory skin diseases are associated with Malassezia furfur.
These are divided into at least two groups. In one group including tinea versicolor and Malassezia
folliculitis, the growth of Malassezia furfur directly triggers the development of the cutaneous lesions. In
another group including atopic dermatitis, seborrheic dermatitis, and psoriasis, cutaneous lesions already
developed by other mechanisms are aggravated by the growth of Malassezia furfur. Recent progress of
molecular biology techniques revealed that Malassezia furfur is divided into at least seven species. Since
their clinical and histological findings are quite diverse, their differences cannot be explained solely by
the difference in antigenicity of each Malassezia. Instead, the cutaneous defense mechanisms against
Malassezia furfur must be considered. In this article, we reviewed the mechanisms at three levels: 1)
barrier functions of the uppermost layer of the skin, the stratum corneum, 2) cytokine production by
epidermal keratinocytes, and 3) immune and inflammatory responses by infiltrating neutrophils and
T cells.

こ の論 文 は, 第42回 日本 医真 菌 学 会 総 会 の “シ ンポ ジ ウ ムI: Malassezia furfur-最 近 の話 題 ”


に お い て発 表 され た もの です.

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