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グローバル化するBL研究
グローバル化するBL研究
ジェンダー学 M1 ニチェ
長池一美
A. 著者情報
B. まとめ
1.はじめに
2.BL 規制研究
BL のグローバル化のなかに、BL の性的描写(過激な描写、未成年の性的描写、フィクションと現実社会の性
犯罪のありかたなど)を問題視されている。日本だけではなく、海外でも問題になり、規制についてトランスナシ
ョナル BL 研究で重要である。
日本 ➡東京都少年健全育成条例改正問題(非実在青少年問題)
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アニメやマンガについて十分な見識を持たない法整備側の関係者が、アニメやマンガファンを仮想敵としな
がら、青少年を性犯罪から守るという名目で規制を強化する。
オーストラリア、イギリス、カナダ ➡現実とフィクションの児童ポルノ禁止
例:『ザ・シンプソンズ』のエロティックな画像所持 ☞ 間違った性認識強化の恐れ
McLelland:現実実施されている過剰な規制の在り方はアニメやマンガの後退を招いている。さらに、児童
ポルノはウェブ上で取引されていない、また BL などのファン活動と児童ポルノ犯罪の関連について検証が全
くされていない現状を批判した。
3.ファン研究
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日本の BL 研究は精神分析で始まったが、「なぜ読む」から「どのように楽しむ」にシフトし、ファン研究中心になっ
たという歴史がある。海外の BL 研究でも、BL ファン活動、ファンとしてのアイデンティティ構築、ファン・コミュニティ
の構成が広く論じられている。
★Lucy Glasspool:日本の「におい」
特定のナショナル・ブランドとして大衆文化を解釈すれば、「BL」という言葉には日本的な「におい」(日本性)
がある。Glasspool がイギリスの RPG「ファイナルファンタジー」のオンライン BL 同人サイトを研究し、その作り手や
読者が「日本性」に魅力され、ユーザー名や日本語の使用をはじめ、「想像」としての日本を生産しているのを
説明した。想像の日本を構築し、自分をその想像の日本に重ね合うことで、快楽を得られる。
☆岩渕功一の「無国籍論」:日本の大衆文化のグローバル化は、日本の大衆文化が基本的に日本性
(日本的な特異性)を持たない「無国籍」であるためとした(p. 141)。
☆東浩紀の「データベース論」:「他者」によって無限に「想像」される「日本性」は「他者」によってカテゴリー
化され、データベース化される。その日本性というデータが際限なく新しいナラティブを生産していく過程を可
能にする(p. 141)。
ファンとして、同じ嗜好をもつファン間の連帯性を基盤にするコミュニティーを求められると著者が述べた(p.
141)。Donovan が、アメリカでの BL 文化は一見すると資本主義に測った消費の連続性が重要であるが、実
は前-資本主義を反映している。アメリカで、BL ファンサイトは BL 作品を無料で交換されている。例:
Aarinfantasy で「Thank you」ボタンで同人誌を無料でアクセスできる。
性的欲望・欲動として BL を楽しむパターン
ファン間の密接なコミュニケーションを楽しむパターン
イベントを楽しむパターン
その混合形と分類し、エンターテインメントとしての BL を肯定的にとらえた。
生産と消費の境を簡単に越境できるという特徴を持つ限り、BL の受容と使用は無限に多様化すると述べた。
4.セクシュアリティ・クィア研究
初期の日本 BL 研究は主にフェミニズムとジェンダーの枠組みのなかで、「女性」と「女性性」を考え直し、①女
性性否定、②女性特有のガイネーシス的なナラティブであることの強調、③「なぜ」に対する女性深層心理と
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いう議論が開かれた。しかし、1990 年代に、「やおい論争」で起こった BL へゲイからの批判があり、そして 2000
年腐男子研究で異性愛男性の BL 受容という新しい視点の可能性が明らかにした。
5.レジスタンスとしての BL 研究
★中国では、息子が父親に叩かれていることを眺めている女性というフロイトの精神分析を参照し、Yanrui Xu
と Ling Yang が、中国の BL 同人において父親と息子の近親相姦のテーマが人気であり、女性のレジスタンス性
を表現する装置となっているからであると述べた。中国の BL 同人では、受けの父親と攻めの息子のような、中
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国の儒教思想、または共産党支配の理想的な社会構造から逸脱した人間関係を描写している。また、中国
女性 BL ファンは潜在的に和を基盤とする人間関係性を求めていて、悲劇なオリジナルをハッピーエンドに語りな
おされていることもみられる。例えば、王朝時代の中国で息子に殺された父親の物語を、二人の恋愛話に書き
直す。
6.終わり
C. ディスカッショントピック
“In 1992, Satō Masaki, a gay activist/civil servant/drag queen, harshly attacked
yaoi…. He felt that his human rights as a gay man were harmed by women drawing
and enjoying yaoi manga. He compared them to the 'dirty old men' [hentai jijii] who
watch pornography including women engaging in sexual activities with each other.
In addition, he accused yaoi of creating and having a skewed image of gay men
as beautiful and handsome and regarding gay men who do not fit that image and
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tend to 'hide in the dark' as 'garbage' [gomi]. In addition, he attacked them for
creating the 'gay boom', a media wave of interest in gay issues sparked by
women's magazine Crea, which, according to him, did nothing for gay men at large
(ibid).”
参考文献
Lunsing Wim(2006)『Yaoi Ronsō: Discussing Depictions of Male Homosexuality in Japanese Girls' Comics,
Gay Comics and Gay Pornography』「Intersections: Gender, History and Culture in the Asian Context」
12、<http://intersections.anu.edu.au/issue12/lunsing.html>