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大阪教育大学紀要 第Ⅰ部門 第59巻 第2号 45 ∼ 61頁(2011年2月)

生成文法から英語教育へ,know howの世界にknow whyがはたす役割


−文法理論を英語教育に活用する(1)−

まつ もと
松 本 マスミ
欧米言語文化講座

(平成22年9月2日 受付)

 本稿では,これまでの生成文法の研究成果が,I. 生成文法の言語観,Ⅱ. 生成文法の方法論,Ⅲ. 言


語事実に関して生成文法が与えうる新知見という3つの点で,英語教育における効果的指導にどのよう
に活用できるかを議論する。説明的妥当性を満たすような理論を追求するという生成文法の姿勢が英語
教育に対してもつ意味についても論じたい。

キーワード:生成文法,英語教育,文法理論,説明的妥当性

Ⅰ はじめに

 Noam Chomskyを牽引者とする生成文法理論は,Chomsky(1957)にはじまり,現在も
代表的な文法理論の一つであり続けている。この生成文法と英語教育との関係について,
すでに安井(1973)では,次のような問いを投げかけていた。

 今度は,視点を英語教育のほうにおき,英語教育は,変形生成文法からなにかを学ぶ
ことができるであろうか,と問うのである。
(中略)そして,これに対する答は肯定である
といったのである。これは,大きく2つの面に分けて考えてゆくことができると思われ
る。一つは,変形文法の言語間に結びついている面であり,もう一つは,個々の言語事実
に関して変形文法が与えうる新知見と結びついている面である。   (安井(1973: 154))

 本稿では,上記の2つの面にもう一つ「生成文法の方法論」を加えて,次の3つの面に
おいて英語教育が生成文法からどのようなことを得ることができるかどうかについて,議
論を進める。

(1) a. 生成文法の言語観
    b. 生成文法の方法論
    c. 言語事実に関して生成文法が与えうる新知見

 第Ⅱ章では(1a)について,第Ⅲ章では
(1b)について概説し,議論の方向付けを行う。第
Ⅳ章では(1a)や(1b)にもとづいて得られる
(1c)
について具体例をあげて説明する。第Ⅴ章
46 松 本 マスミ

では,実際に生成文法を授業に取り入れた場合の3つの調査とその結果について報告する。
第Ⅵ章では,文法とコミュニケーションの関係について考察する。

Ⅱ 生成文法の言語観

 現在生成文法で仮定されているミニマリスト・プログラムでは,
「言語は,最適な設計
(optimal design)をもつ完璧な(perfect)システムである」と考えられている。生成文法が
普遍文法(UG)は,言語能力の生得的基盤である。1)
探求する目標は言語機能の解明であり,
 従来からも議論されている言語の特性の中で,文法と関連があるのは,
「創造的特性」
である。言語は階層的構造を持ち,その構造は一定の規則に従って無限に結合され,また,
一定の法則に従った操作を受ける。

(2) a. [ Hanako knows [ that [ Jiro met Yukiko ]]]


    b. [ Taro thinks [ that [ Hanako knows [ that [ Jiro met Yukiko ]]]]]

 例えば,
(2a)のような文は,文が文の中に埋め込まれているという階層性を示す例であ
る。また,
(2a)は
(2b)のように,さらにより大きな文の中に埋め込むことができる。この
ような出力がそのまま自らの入力となる関数の性質は「回帰(recursion)
」とよばれ,無
限に長い文を産出する源となっている。この回帰性は,ヒトに固有の言語能力とされてい
る。2)
 このUGと言語の創造性という生成文法における重要概念については,第Ⅳ章で言語事
実に関する知見を議論する際に,
具体的にそれらの概念をどのように活用するか検討する。

Ⅲ 生成文法の方法論

 生成文法が答えなければならないのは,次の5つの課題であるとされている。

(3) a. 言語知識とは何か
    b. どのように獲得するか
    c. どのように使用するか
    d. どのように進化したか
    e. 脳のメカニズムの中でどのように具現化されているか
(Chomsky(1995: 17))

 人間の「こころ」あるいは脳の中に物理的に配置されているとされる言語知識すなわち
言語機能の探求
(3a)が,生成文法の最大の課題である。それに答えるための理論は,説明
的妥当性(explanatory adequacy)を満たさなければならない。すなわち言語の特性を記
述するだけではなく,なぜそのような特性を有するのかということまで説明できなければ
ならないのである。3)(説明的妥当性については,第Ⅶ章でもふれる。)
 説明的に妥当であるためには,
(3b)の言語獲得の観点からみても満足できるものでなけ
ればならない。言語獲得については,母語の言語獲得だけでなく,UGとパラミターの関
係を念頭に置いた第2言語獲得(SLA)研究も,生成文法の枠組みで行われている。
生成文法から英語教育へ,know howの世界にknow whyがはたす役割 47

 また,生成文法の議論は演繹法の手法にもとづいてなされる。少数の例を注意深く検証
することによって一般法則を導き出し,他の例にも拡張する。
 さて,ミニマリスト・プログラムの段階に至って生成文法による理論や議論は,より簡
潔なものを求めるためにより抽象的になり,生成文法から外国語教育が有益な何かを得る
ことは困難になっているのではないかという指摘もある。4)また,演繹的手法を採ること
により,一部の論文では例文の数が多いとはいえないものもあり,言語の記述の面で得る
ものがないと誤解されているのかもしれない。
 しかし,実際には現在も生成文法による研究は活発に行われており,英語をはじめとす
る様々な言語における多くの新しい言語データが次々と提示されている。半世紀以上にわ
たる生成文法研究における様々な概念,操作や構文についての記述と議論の蓄積は,かけ
がえのない貴重な言語資料の宝庫である。5)
 第Ⅳ章では,生成文法研究における言語分析をどのように英語教育に活用することがで
きるか,すなわち
(1c)の面を英語教育にどのように活かすことができるかということを議
論する。

Ⅳ 言語事実に関する知見

 本章では,生成文法で扱われてきた概念や操作,そして構文を,英語学習の指導に応用
する可能性をさぐる。具体的には,
「移動」「見えないもの」「制約」「主要部と一般化」と
いうテーマをあげて,実際の英文法の指導への応用例を示す。その際,生成文法の視点か
ら学習文法を再構築した英文法書である中村(2009)も参考にしながら議論を進める。

4.1 移動(1)
:関係代名詞
 第Ⅱ章の
(2)でみた,階層的構造をもつ文は,
「併合(merge)」と「移動(move)」の繰
り返しによって組み立てられる。英語の関係代名詞構文(4a)についてみてみよう。

(4) a. the man whom you can trust


b. [[ C φEF][TP you [T can ][VP [V trust ] whom ]]]
c. [CP whom [ C φEF ][TP you [T can ][VP [V trust ] whom ]]]

 現在の生成文法では,語を一つずつ組み立てて文を作り上げ,その操作を併合とよぶ。
(4b)は,trustとwhomが併合されてtrust whomが作られる。さらに,関係代名詞whomは,
初めはtrustの後にあるが,CとTPが併合した後,Cの指定部の位置に移動する。その後で
先行詞the manとCPが併合される。
 この関係代名詞の派生を「移動」を使って指導することができる。中村(2009)では,
関係代名詞の目的格用法について次のように説明されている。

(5) a. the present [Sn Taro sent the present to Hanako ]


                  ↓ <the presentをwhichに換える>
b. the present [Sn Taro sent which to Hanako ]
                  ↓ <whichを節の先頭に移動する>
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c. the present [Sn which Taro sent ∧ to Hanako ]


_____________
             ↑ |            (中村(2009: 209))

 (5)では併合は取り入れられておらず,基本となる(5a)では,はじめから先行詞が先頭で,
先行詞と同じthe presentが目的語の位置にある。 (5b)
しかし, でthe presentから置き換わっ
たwhichは節の先頭に移動し,
(5c)のように元の位置に痕跡である∧を残す。中村の説明
では,移動の操作を取り入れながらも,先行詞と関係代名詞の関連性をよりはっきりと示
すために,最初の構造では先行詞と同じthe presentが目的語の位置にくる構造を提案して
いると考えられる。

4.2 移動(2)
:受動文
 受動文がどのようにつくられるかということは,生成文法で常に議論されてきた。

(6) a. John invited Mary.


b. Mary was invited by John.
c. e was invited Mary by John.

初期の時代では,
「受動変形」によって,能動文(6a)から受動文(6b)がつくられるとされ
ていたが,その後,
(6c)が(6a)のもとの形であるとされるようになった。
 (6a)と
(6b)は単なる書き換えの関係ではないが,
(6a)の目的語と
(6b)の主語の意味役割
が同じであるという点で類似性がある。この類似性を反映したのが(6c)の構造である。
 中村(2009)でも,
「主語位置へ移動している」と,移動が伴うという説明がされている。

(7) Mary was invited ∧ by John.


_______________
↑ |         (中村(2009: 270))

(6b)
このように移動を使うと, のMaryが最初は(6a)と同じように目的語の位置にあったと
いうことが視覚的にもわかりやすいという利点がある。

4.3 見えないもの
(1):意味上の主語
 次に,生成文法では,
「見えない」表現が構造の中に含まれているとする場合がある。

(8) a. They want [ John to help himself ].


b. *They want [ John to help themselves ].
(9) a. John wants [ to prove himself ].
b. John wants [ PRO to prove himself ].    (Radford(2009: 95))

(8a)のhimself はto不定詞句の中でその先行詞がなければならない。
(9a)が文として許され
るのは,実は
(9b)のように空の代名詞PROがto不定詞の主語の位置にあって,それをJohn
が制御しているからだと,生成文法では説明されている。
 この空の代名詞について,中村(2009)では,学校文法で使われる「意味上の主語」を
取り入れるという工夫がされている。
生成文法から英語教育へ,know howの世界にknow whyがはたす役割 49

(10) a. John tried [Sn △ to solve the problem ]. [△ = John ]


b. John hopes [Sn △ to go abroad ]. [△ = John]
(11) a. John persuaded her [Sn △ to go out for lunch with him ]. [ △ = her ]
b. John shouted to Bill [Sn △ to get out ]. [ △ = Bill ]     (中村(2009: 149))

上の各文で,PROは意味上の主語△で置き換えられ,その結果,専門概念に対する抵抗が
なくされている。生成文法では
(10)は主語コントロール,
(11)は目的語コントロールの例
であるが,中村(2009)では,
(10)を「意味上の主語が主文の主語と同じである場合」,
(11)
を「意味上の主語が主文の目的語と同じである場合」と説明し,主語と目的語のどちらと
同じかは,主文の動詞の意味によって決まると説明している。
 「意味上の主語」というだけでは感覚的にはわかるものの,それだけではどこにあるの
かあいまいである。実際に△を使って,その位置を指定することによって視覚的にもより
把握しやすくなることが可能となっている。

4.4 見えないもの
(2):意味上の目的語
 長らく,生成文法が扱う領域は「文」のレベルまでであるということがいわれてきた。
近年,Rizzi(1997)などにより,CPがより複雑な内部構造をもつとすることにより,談話
のレベルを生成文法の領域に組み込むことができる可能性が追求されるようになった。し
かし,それ以前でも文脈の話題をdiscourse topicとして,TopPを想定するということは行
われてきた。
 (12)は,料理のレシピやガーデニングなどでよく見られる文体である。

(12) Cook beef ribs in oil in Dutch oven over medium heat until brown; drain. Stir in
broth, horseradish and salt.
(Betty Crocker’
s Cookbook: Sixth Edition(1986). Bantam Books, p.375)

drain(汁を切る)は一見自動詞のように見えるが,実は,前の文で使われているcook beef
が省略されており,指示命令文またはレシピ文脈空目的語構文と呼ばれている。生成文法
では,文脈話題DTが文の話題の位置すなわちTopPの指定部にあって,空の代名詞proと
つながっているという分析が可能である。

(13) [TopP DT Top [TP T drain pro ]]


       |_________________|

(13) (14)のようになり,
の分析と中村(2009)の「意味上の主語」を目的語にも応用すると,
(15)のような説明が可能となる。

(14) Cook beef ribs in oil in Dutch oven over medium heat until brown; drain △. Stir
∧ in broth, horseradish and salt. [ △ = beef ribs ]
  |______________________↑
(15) drainの意味上の目的語は,文脈における話題であるbeef ribを指しています。
50 松 本 マスミ

 (14)のstir の直後にも目的語がないが,これは,目的語が右に移動した重名詞句移動
(heavy NP shift)の例である。こちらは目的語horseradish and salt が右側に移動している
「移動」を用いた説明をすることができる。drain とstir を比較しながら説明することに
と,
よって,より効果的な指導が可能となる。

4.5 制約(1):wh疑問文
 生成文法では,4.1と4.2でみた移動が英語の疑問詞による疑問文(wh疑問文)においても
起こっていると考えられてきた。中村(2009)は,wh疑問文について(16)のように説明し
ている。

(16)  ・・・英語では疑問詞を文頭に移動し,主語・助動詞倒置を行います。
(中村(2009: 15))

 さらに,かなり長い疑問文
(17)も扱って,
(18)のように述べている。 

(17) a. What do you think that John did to make money?


b. Who do you think loves Mary?
c. What does the teacher suppose that the student bought at the store?
(18) 疑問詞は文頭に移動しますから,that節がある場合には長距離の移動をします。
この場合,疑問詞のもとの位置を正確に見抜くことが大切です。(中村(2009: 16))

 wh移動を中心とした移動による過剰生成を防ぐために,
「制約」についての議論も盛ん
に行われてきた。

(19) a. *What might he think who has done?


b. Who might he think has done what?       (Radford(2009: 216))

なぜ(19a)がだめで
(19b)がよいのかというのは,より短い移動が好まれるという一般的な
(19a)は(19b)の whatとwhoを入れ替えただけなのになぜ
制約によって説明されている。
だめなのだろうかと問いかけて,生成文法の細かい説明は省略しながら一般的な制約に話
を進めることも可能かもしれない。
 制約については,畠山(2006)や白畑(2008)で,
(19a)
のような間違った文,よくない文
を文法の指導に活用することが効果的であり,なぜ間違っているかということを説明する
際に生成文法の考え方を利用することができるのではないかという指摘がされている。6)

4.6 制約(2):動詞句削除
 生成文法では,省略や削除についても研究が行われてきた。
(20)は動詞句削除
(VP
deletion)の例である。

(20) They say the chairman has resigned from the board, but I don’t think he has
resigned from the board.         (Radford(2009: 64))
生成文法から英語教育へ,know howの世界にknow whyがはたす役割 51

しかし,どのようなものでも削除できるわけではない。例えば,
(21)のようにhasを含め
て削除することはできない。

(21) *They say the chairman has resigned from the board, but I don’
t think he has
resigned from the board.         (Radford(2009: 64))

Radford(2009)によると,
(21)は「省略することができるのは最大投射XPだけである」と
(20)のresigned from the board は最大投射だが,
いう制約により排除されている。 (21)の
has resigned from the board が最大投射ではないからである。
(21)は自由英作文などでおか
しやすい間違いであり,制約を利用して指導できる例ではないだろうか。

4.7 主要部と一般化,そしてパラミター
 学校文法においては,
「名詞句と名詞節」のように,
「句」というのは「節」に対する概
念として位置づけられている。一方,生成文法においては文もTP(Tense phrase)であり,
「句」としてとらえられている。むしろ,生成文法における「句」に対立する概念は,そ
れの中心となる「主要部」であるといえる。
 中村(2009: 3)も,句とその中心となる語(すなわち主要部)について,
(22)のようにまと
め,各句について(23)のように説明している。

(22) 句には必ずその中心となる語があり,それによって句の性質が決まります。
(中村(2009: 3))
(23) a. 名詞句
(NP)
: 名詞が中心となっている句
b. 動詞句(VP): 動詞が中心となっている句
c. 形容詞句
(AP): 形容詞が中心となっている句
                          (中村(2009: 4))
(以下略)

主要部と句の関係を理解することは,第Ⅱ章で取り上げた文の階層構造についての理解に
つながるという利点がある。             
 さらに,主要部と句を品詞にまたがって一般化することは,生成文法ではより簡潔な説
明につながるという点で評価されてきたが,教授法としての利点もある。文法を教える際,
統一的に教えるということの利点について,岡田(2001)は,次のように述べている。

(24) 今までばらばらに
(無関係に)教えてきたことを統一的に教えることができれば学
習者の負担を減らすことができる。            (岡田(2001: 24))

 主要部と句の位置関係は,生成文法では,言語に共通した一般的原理であるUGに対し
て,言語間の差違の根源となっているパラミターの一つとして,主要部パラミター(head
parameter)として扱われてきた。
 中村(2009: 5)も,句についての原則を次のようにまとめて,日本語と英語の間におけ
る規則的で対称的な関係について,再確認するように指示している。
52 松 本 マスミ

(25) (Ⅰ) 日本語では句の中心となる語が句の最後にくる。
    (Ⅱ) 英語では句の中心となる語が句の先頭にくる。     (中村(2009: 5))

例えば,日本語がSOVで英語がSVOであるという語順の違いも,主要部の概念を用いる
ことで,動詞句の主要部が最後にくるか先にくるかの違いであると説明することができる。
また,韓国語も日本語と同じように主要部が句の最後にくるということを付け加えれば,
英語以外の外国語に対する親しみと興味を喚起することができるかもしれない。

4.8 まとめ
 本章では,生成文法で扱われてきた言語データとしての構文だけでなく,操作や概念
が英語教育に利用できることを議論した。生成文法を利用した訳読方式について,安井
(1973)では次のように述べられている。

(26) これに反して,よい訳読方式においては,単なる訳語の置き換えではなく,内容
に関する真の理解が常に意図され,特定構文の深層構造
(つまり,意味に関する
最も基本的な情報をになっていると考えられる構造)に対する配慮が見られ,同
時に,その構文の前提条件は何であり,また,含意は何であるか,というような
ことに対する配慮もみられることになるであろう。     (安井(1973: 158))

 (26)の「深層構造に関する配慮」に相当するのが,本章で取り上げた「移動」や「見
えないもの」を取り入れた説明であり,
「見えないもの」は同時に「前提条件」や「含意」
への配慮とも関わりがある。
 「移動」という操作を取り入れることによって,実際に表現された文におけるある要素
の元の位置を突き止める。その結果,基本的意味を理解するとともに,なぜそのような移
動が起こるかについて考えることにより,より完全な意味を理解することができる。
 「見えないもの」は,実際には発音されないけれども何か見えない表現がある特定の場
所に存在することを想定することによって,意味解釈の助けとなる。このように,移動と
見えないものは,単なる文法における説明だけでなく,より完全な英文解釈への指導にも
利用することができる。
 また,
「制約」であるが,文法の指導の際,間違った例を示すことにより,その文がな
ぜだめかという理由を説明することができると同時に,作文やスピーキングで間違ったア
ウトプットが行われた際に,なぜそうなるかを論理的に説明することができる。
 白畑(2008: 61-62)によると,1970年代の指導法の文献では,深層構造や表層構造を用
いた記述がみられたが,理論の抽象化,英語特有ではなく言語一般を扱うということから,
現在は,そのような生成文法の枠組みでの指導法を扱ったものは皆無だという。
 現在は,当時のような各英語構文についての一つずつの変形操作のようなものは存在し
ない。しかし,より一般化,簡略化された操作や概念を体系的に利用することによって,
論理的な説得力のある説明をすることが可能ではないだろうか。その好例が中村(2009)で
はないかと思う。さらに,主要部と句の関係の一般化を導入することによって,言語の構
造に関する言語感覚を養うことができる。また,他の言語と比較することにより,英語だ
けではなく母語である日本語や他の外国語に対する好奇心を高め,国際感覚を育てる契機
となる可能性もある。
生成文法から英語教育へ,know howの世界にknow whyがはたす役割 53

Ⅴ 3つの調査

 前章で生成文法のこれまでの知見をあらためて指導する可能性について検討した。では,
学生はそのような指導に対してどのような反応をするだろうか。本章では,生成文法で扱
われている内容を実際に筆者が大学の授業での指導において用いた際の,学生の反応など
についてのインフォーマルな実験的調査とその結果について報告する。

5.1 疑似受動文
(1): 言語学概論
 疑似受動文とは, (28b)のように,be動詞+自動詞+前置詞という受動文である。
(27b)

(27) a. Everyone objected to the plan.


b. The plan was objected to by everyone.
(28) a. The manager asked about the sales effort.
b. The sales effort was asked about by the manager.     (中村(2009: 274))

この疑似受動文について,まず,本学の文化研究専攻共通科目である言語学概論において,
次のような条件で調査を行った。

(29)  調査実施日: 2009年11月24日
対象人数:  受講者19名(教養学科文化研究専攻欧米言語文化コース(英語圏)
2回生11名,3回生2名,同欧米言語文化コース(独・仏語圏)4
名,日本・アジア言語文化コース1名)
背景知識:  10月から統語論を学ぶ。句の構造や主要部の概念については既に
学んでいる。

 授業では,英語の名詞句,動詞句,形容詞句,前置詞句における主要部と補部,付加部
(30a)のon the doctorがrelyの補部で
の関係について,樹形図を用いて説明した。その後,
(30b)のduring the operationが付加部であることにふれ,その後(30)① ②の質問をして,
各自筆記で自由記述の形で解答させた。

(30) a. He relied on the doctor during the operation.


b.*He relied during the operation on the doctor.      (中島(1995: 14-15))

①[2a]と[2b]の違いを説明しなさい。
[1] a. He relied on the doctor during the operation.(=(30a))
b.*He relied during the operation on the doctor.(=
(30b))
[2] a. The doctor was relied on.
b. *The operation was relied during.
② 今日の説明は,英語の学習の役に立つと思いますか。

(30)①の質問については,それなりに様々な解答があったが,ここでは(30)②の質問に対
する回答結果
(31)を紹介する。
54 松 本 マスミ

(31) a. 役に立つ  13名
    b. 一部役に立つ 3名
c. 役に立たない(わからない) 3名

(31a)のうち,
「英作文に役に立つ」と答えた学生は4名いた。一方,
「一部役に立つ」と答
えた学生のうち,
「言語学・英語学や文法を研究する場合は役に立つはずですが,それ以
外のスピーキングやリスニングでは役に立たないと思います。」という学生もいた。
 本調査の結果を筆者なりに解釈してまとめると,次のようなことがいえる。

(32) 「英語を専門とする学部生」
a. ある程度専門用語を使って説明しても,理解できる。
b. 文の「構造」を知ることが具体的にどのようなことに役に立つか,指摘できる
学生もいる。
c. 統語論をどうしても理解できない学生もいる。

5.2 疑似受動文
(2):共通基礎科目英語Ⅰb
 次に,同じ疑似受動文についての,一般英語,共通基礎科目「英語Ⅰb」の授業におけ
る調査について報告する。

(33)  調査実施日: 2009年11月6日
対象人数:  受講者32名(教養学科人間科学専攻,自然研究専攻,健康科学専
攻の1回生)
背景知識:  前期英語Iaの受講者が引き続き受講。テキストは,DVDを用いた
BBCのビデオクリップ教材。

 調査では,[1a]の前置詞句on the doctorと[1b]のduring the operationの動詞relyとの結び


つきの強さについて説明し,[2a]のreliedとonの結びつきの方が[2b]のreliedとduringの結
びつきよりも強く,その結果[2a]と[2b]のような違いが出ることを説明した。5.1で用い
(34)① ②のような質問を行い,
た「補部,付加部」という用語は使用しなかった。その後,
(35)のような結果が得られた。

(34) [1] a. He relied on the doctor during the operation.(=(28a))


b.*He relied during the operation on the doctor.(=(28b))
[2] a. The doctor was [ relied on ].
b. *The operation was [ relied during ].

① この説明は,どの程度わかりましたか。
② 英語を学ぶのに役に立つと思いますか。
生成文法から英語教育へ,know howの世界にknow whyがはたす役割 55

(35) (34)①に対する回答  (34)②に対する回答


回答 人数
(名) 回答 人数(名)
よくわかった 4 役に立つ 21
わかった 4 一部役に立つ 6
だいたいわかった 9 役に立たない 3
一部わかった 11 無回答 2
何らかの点でわかった 3 合計 32
無回答 1
合計 32


(34)②に対する回答の中には,
「海外で話すために英語を学ぶなら細かい文法は必要な
いと思う。」や「英語を研究するという意味では役立つと思うが,英会話にはあまり役立
たないと思う。」という,コミュニケーションにおける文法不要論があった。一方,
「より
英語の理解が深まるので,良いと思う。でも,自動詞と他動詞の違いがはっきりとわかっ
ていない人に,この話をすると逆効果と思う。
」という鋭い指摘もあった。5.1の調査で見
られた「英作文に役に立つ」といったような具体的に何に役に立つかという回答はなかった。
 調査結果を筆者なりに解釈してまとめると,次のようになる。

(36) 「英語を専門としない学部生」
a. 専門用語の使用を避けて文の構造を利用した説明をすれば,内容によっては,
ある程度理解できる。
b. ある程度役に立つと思っているが,
「何に役に立つか」については特に意識し
ていない。
c.「何に役に立たないか」については,
「英文法」はコミュニケーションに役に立
たないと思っている学生がいる。

5.3 能動受動文(中間構文)
と能格文:英語学研究法Ⅰ
 能動受動文とは,
(37)のように,形は能動態,意味は受動態のような文のことをいう。

(37) a. This car drives smoothly.


b. This door opens easily.
c. This book reads hard. (中村(2009: 278))

 受動態の意味をもつということから,生成文法では,能動受動文も受動文と同じように
目的語が主語の位置に移動してできるという分析もある。中村(2009)でも,目的語の移
動を使って能動受動文を説明している。

(38) a. ___ drives this car smoothly.


__________
↑ |
b. This car drives smoothly.         (中村(2009: 278))

 能動受動文
(38c)は,生成文法では中間構文と呼ばれ,受動文ばかりでなく能格文(38d)
とも比較されてきた。両者は,副詞を必要とするかどうか,特定の「時」を指示するかど
56 松 本 マスミ

うか,動作主を含意するかどうか,総称文であるかどうか,などの違いがある。7)

(39) a. Mary broke the vase.


b. The vase was broken. 
c. The vase breaks easily.
d. The vase broke suddenly.

 教養学科文化研究専攻欧米言語文化コース専門科目「英語学研究法Ⅰ」で実施した調査
の実施日や背景知識などは次の通りである。

(40)  調査実施日: 2010年5月21日
    対象人数:  受講者11名(教養学科文化研究専攻欧米言語文化コース
(英語圏)
3回生9名,同4回生1名,同(仏語圏)5回生1名)
    背景知識:  ①英語圏の学生全員は,昨年「言語学概論」で,統語論の入門(主
にGB理論の枠組み,受動文(「意味役割」「移動」を含む)まで)
を学んでいる。
       ②英語圏の3回生のうち4名は,昨年「言語学研究法Ⅰ」で,受動
文(半年以上),中間構文(2コマ程度)について,学んだ経験がある。
       ③「英語学研究法Ⅰ」の授業で,Levin(1993)を中心に,中間構
文と能格文について,3コマ,実質3時間以上,学んでいる。
       ④「意味役割」については学んでいるが,中間構文の「移動」に
ついてはまだ学んでいない。

 まず,中間構文と能格文との違いについて,データを示して改めて説明した。その後,
次のような作業を学生に課した。

(41) ①検討する語の,辞書における他動詞と自動詞の全ての語義を与えた。
②その中の自動詞の語義の中から,中間構文と能格文に相当する語義を全て選ば
せた。
③中間構文には「動作主」の意味が含まれていること,副詞を伴っていても必ず
しも中間構文ではないことを,ヒントとして与えた。

 検討する語は次の6語で,辞書は『小学館プログレッシブ英和中辞典(第4版)
』を使用
した。
(42a)は中間構文の用法しかもたない動詞,
(42b)は中間構文と能格文の両方の用法
を持つ動詞であるが,学生にはそのことは知らせていない。

(42) a. translate, photograph, read


b. break, drive, cook

 例えば,辞書のreadの自動詞の語義と解説は,次のようになっている。

(43) read 自(←他)


1 読む,読書する;(指などで)記号などを読む
生成文法から英語教育へ,know howの世界にknow whyがはたす役割 57

|∼ extensively [intensively]多読[精読]する.
2 [ I(副)
] 音読してやる(to …)|∼ to a child every evening 毎晩子
(・・・に)
供に本を読んでやる/ ∼ before a large audience 大ぜいの聴衆の前で朗読する.
3(英古風)
(・・・のために)研究する,勉強する(for)
;(・・・を)
専攻する(in
…)|∼ for a degree in physics 物理学の学位を取るために勉強する
4[ I 副]( ・・・について)
読んで知る[学ぶ](of, about …). →進行形不可.→他1
|I have ∼ about the big earthquake.その大地震のことは読んで知っています.
5<本などが>
(・・・のように)読める;
(・・・と)書いてある,表現されている,
<が> ・・・と
( ・・・に)解される,解釈される(to ・・・).→進行形不可|
This novel ∼ s well.この小説はおもしろく読める/The message ∼ s as follows.
伝言には次のように書いてある/The letter ∼ s like a threat.その手紙は脅迫状
みたいだ.
6<機器が>数値などを示す[表す].7[コンピュータ]データなどを読み取る
(『小学館プログレッシブ英和中辞典(第4版)』,p.1537)

 学生は,語義と例文を参考にして,どの語義が中間構文または能格文の用法の語義であ
るかを答える。readの場合,5が中間構文の用法の語義である。
 学生の作業の結果をまとめると,
(44)になる。
「中間構文」と「能格文」と答えた人数の
うち,数字を囲んである方が正解である。

(44) 各語義を中間構文と答えた学生数と能格文と答えた学生数
語義 中間構文 能格文
語義
番号 (名) (名)
translate 2 <作品などが>訳せる 5 6
photograph 2 写真に写る 7 1
<本などが>(・・・のように)読める;
read 5 6 3
(・・・と)書いてある,表現されている
break 1 割れる,粉々になる,・・・ 3 4
break 2 故障する,壊れる,・・・ 3 1
(車を)運転する,・・・
drive 1 4 3
<車が>運転しやすい[しずらい]
<車・船などが>前進する,進行する,
drive 2 3 2
突進する,疾走する
cook 2 料理される,煮える 3 4
cook 3 <人が>
(暑さで)うだる 2 3

 cookの2の語義は,中間構文と能格文の両方が一つの語義にまとめられている。また,
breakの中間構文の用法は,語義の中には見あたらなかった。
(44)の結果から,次のよう
なことが言える。

(45) ①中間構文でのみ用いられる動詞
(=(42a))の方が,中間構文と能格文の両方で
用いられる動詞
(=(42b)
)よりも中間構文の正解率が高い。
   ②中間構文と能格文の両方で用いられる動詞の場合,中間構文と能格文のどちら
58 松 本 マスミ

かであるという判断をする場合の正解率も低い。
③中間構文
(能動受動文)と能格文を完全に区別するためには,かなり高度な言語
学的知識が必要である。
(「意味役割」「NP移動」「含意的動作主」「アスペクト」
「時制」など)

 特に,動詞readの中間構文の場合,一つの英語動詞に対して,
「れる,てある,されている」
と様々な形態の日本語が対応している。この英語の動詞形態・意味と日本語の動詞形態・
意味とのずれが,中間構文に対する理解をより難しいものにしていると言えるのではない
だろうか。
 従って,英語の専門科目の授業で(46c)の中間構文と(46b)の能格文を指導する場合に
は,単に,それぞれの構文の特徴だけでなく日本語の訳も添えて教えることで,より完全
に学生が中間構文を理解できるのではないかと思われる。

(46) a. Taro cooked tofu.


b. Tofu cooks quickly.
c. Tofu cooks ∧ quickly.
  ↑_________|
d. The tofu cooked quickly.

(指導の試み)
(46b)の中間構文は,
(46c)
のように最初Tofuが目的語の位置に現れるが,その後,
目的語位置から主語の位置に移動する。
(46b)の文は,
「豆腐はさっと料理できる」という意味で,
「料理する人」が含意され,
豆腐についての特徴を述べている。
(46d)の能格文は,
一方, 「その豆腐はすぐ煮えた」という出来事を述べる文で,
「料
理する人」は含意されていない。
(46b)だけが現在形なのは,中間構文は主語の一般的な特徴を述べる文だからで
ある。

5.4 調査のまとめ
 本章では,背景の異なる学生を対象とした3つの調査の結果を紹介した。まず,英語を
専門としない学生でも,専門用語の使用をさけて文の構造を利用した説明をすれば,ある
程度理解できる。また,英語を専門とする学生の中には,文の構造を知ることがどのよう
なことに役に立つかを意識している学生もいた。また,中間構文と能格文のように,日本
語と英語の間にずれがあるような場合は,日本語の訳も利用した指導が効果的だというこ
とを示した。

Ⅵ コミュニケーションと文法

 前章の5.1と5.2の調査で文の構造を利用した説明に対し,
「文法は英会話には役立たない」
という回答が,英語を専門とする学生と専門としない学生の両方からあった。しかし,外
国語といえども「言語知識」に基づく文が発話の基本となっているのに変わりはない。岡
生成文法から英語教育へ,know howの世界にknow whyがはたす役割 59

田(2001)でも,次のように述べられている。

(47) 英語でコミュニケーションをするためには,まず英語の形と意味の対応関係を表
(岡田(2001: 17))
す知識,すなわち英文法を習得していなければ話にならない。

 コミュニケーションにおける文法の重要性は,TOEFL® iBTの評価において言語の「構
造」が重視されていることによっても裏付けられている。TOEFL®(=Test of English as
a Foreign Language)は,米国の非営利団体ETSによって実施されている英語を母国語と
しない人々の英語コミュニケーション能力測定のためのテストである。TOEFL® iBTは,
Listening, Reading, Speaking, Writingの4つの技能を測定するテストから成っている。
 ETSが出しているTOEFL®の受験心得をまとめたTOEFL® iBT Tips では,Speaking試
験の評価に言語構造が含まれている。Speakingの評価は(48)の3つの項目に分けて行わ
れる。その中で,言語構造は,Language useの中で言及されている。

(48) a. Delivery
b. Language use
c. Topic development (TOEFL iBT Tips : 26)
(49) Language use: How effectively does the test taker use grammar and vocabulary to
convey their ideas? Raters determine the test taker’
s ability to control both basic
and more complex language structure, and use appropriate vocabulary.
(TOEFL iBT Tips : 26)

(49)では,
「基本的かつより複雑な言語構造をコントロールする能力」と述べられている。
もちろん「コントロールする能力」も大切であるが,その能力を発揮するためには,
「複
雑な言語構造」すなわち文法を習得していなければならないのである。

Ⅶ まとめ

 本稿では,英語教育が生成文法から得ることができる項目
(1)に基づいて議論を進めて
きた。

(1) a. 生成文法の言語観
b. 生成文法の方法論
c. 言語事実に関して生成文法が与えうる新知見

 前章で議論した言語知識がコミュニケーションの基盤となっているというのは,
(1a)と
関わりがある。また,第V章の調査から,
(1c)に関しては,学生や生徒のレベルに応じて
内容を選択する必要があるといえる。
 最後に,
(1b)の方法論について,もう一度考えてみたい。生成文法の理論は,自然言語
の文法の特性について,
「説明」できなければならないという説明的妥当性を満たすこと
ができなければならないということであった。
60 松 本 マスミ

 「説明」には,言語事実の「説明」だけでなく,知識のシステム全体の「説明」もあるが,
生成文法では,常に「なぜそうなるのか?」ということを問いかけて,それを説明しよう
と試みてきた。
(Information and Communication Technology)の導入の方法
 現在の英語教育では,ICT
やカリキュラムの組み立て方,指導のスキルなど,howの側面が重視されているように思
える。
 しかし,生成文法のwhyの問いかけは,英語を教える側だけでなく英語を学ぶ側にも,
忘れてはならない姿勢を教えてくれる。
「なぜそうなるのか?」と問うことは,自分で答
を探すという姿勢であり,
能動的に「ことばそのもの」と向き合う姿勢である。その結果,
より鋭い言語感覚を養うと同時に,能動的な姿勢が,英語の自律学習へのヒントにもつな
がっていくのではないだろうか。

*本稿は,日本英文学会第82回大会シンポジアム「文法理論を英語教育に活用する」(2010
年5月29日,於 神戸大学)
での講演に加筆したものである。

1)Chomsky(1995, 2005, 2008)


参照。
2)Hauser et al.(2002)参照。
3)Radford
(2009), pp.12-13参照。
4)白畑(2008)参照。
5)英語の主要構文について生成文法で扱われたテーマごとに整理された事典に、中島
(2001)がある。また、生成文法を中心に20世紀後半の言語研究の成果にもとづく知見
をまとめたものとして、原口他
(2000)をはじめとする「英語学モノグラフシリーズ」
がある。
6)生成文法の文献を中心に制約にもとづく非文の用例を集めた辞典に、荒木(1996)が
ある。
7)詳しくは、藤田・松本(2005)などを参照されたい。

参考文献

荒木一雄(編)
(1996)『現代英語正誤辞典』研究社。
Chomsky, Noam(1957)Syntactic Structures , Mouton, The Hague.
Chomsky, Noam(1995)The Minimalist Program , The MIT Press, Cambridge, MA.
“Three Factors in the Language Design,”Linguistic Inquiry 36,
Chomsky, Noam(2005)
1-22.
“On Phases,”Foundational Issues in Linguistic Theory: Essays in
Chomsky, Noam(2008)
Honor of Jean-Roger Vergnaud , ed. by Robert Freidin, Carlos P. Otero, and Maria Luisa
Zubizarreta, 133-166, The MIT Press, Cambridge, MA.
藤田耕司・松本マスミ(2005) 『語彙範疇 (I)動詞(英語学モノグラフシリーズ 6)』研究社。
原口庄輔・中島平三・中村捷・河上誓作(2000)『ことばの仕組みを探る−生成文法と認
知文法(英語学モノグラフシリーズ 1)』研究社。
生成文法から英語教育へ,know howの世界にknow whyがはたす役割 61

畠山雄二(2006)『言語学の専門家が教える新しい英文法』ベレ出版。
Hauser, Marc D., Noam Chomsky, and W. Tecumseh Fitch(2002)
“The Faculty of
Language: What Is It, Who Has It, and How Did It Evolve?”Science 298, 1569-79.
Levin, Beth(1993)English Verb Classes and Alternations: A Preliminary Investigation ,
The University of Chicago Press, Chicago.
中村捷(2009)『実例解説英文法』開拓社。
中島平三(1995)『ファンダメンタル英語学』ひつじ書房。
中島平三(編)
(2001)『[最新]英語構文事典』大修館書店。
岡田伸夫(2001)『英語教育と英文法の接点』美誠社。
Radford, Andrew(2009)Analysing English Sentences: A Minimalist Approach , Cambridge
University Press, Cambridge.
白畑知彦(2008)「生成文法は外国語教育にどのような貢献ができるか−現場の教師が言
語理論を学ぶ重要性を考える」
『月刊言語』第37巻第11号,60-65。
安井稔(1973)『英語教育の中の英語学』大修館書店。

From Generative Grammar to English Education, Knowing Why vs. Knowing How
− Application of Grammatical Theories to English Education(1)−

MATSUMOTO Masumi

European and American Languages and Cultures,


Department of Arts and Sciences
Kashiwara, Osaka, 582-8582, Japan

This paper discusses how studies of generative grammar can lead to an effective teaching in
English education at least in three important respects: I. view of language, Ⅱ. methodology, Ⅲ.
knowledge on linguistic data. It also discusses what the attitude to seek the explanatory
adequacy of a linguistic theory means in English education.

Key Words: generative grammar, English education, grammatical theory, explanatory adequacy

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