ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続

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ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続

                   −         我妻   学
一 はじめに
ニ ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続
三 ドイッにおける医療紛争の調停所および鑑定委員会
四 医療紛争の裁判外紛争処理手続の評価                                    ,
五 医療紛争の裁判外紛争処理手続の問題点                         .  ・
六 おわりに
一 はじめに
 患者の取り違い、薬の投与量ミスなど初歩的な医療過誤に対して、医師・医療機関に対する不信が高まり、社会問
      ︵1︶
題となっている。二〇〇三年四月丁五日に公表されている医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会報告書
   ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続      。          ︵都法四十五ー一︶  四九        ・
五〇
では、医療事故が社会問題化する中、医療の安全と信頼の向上を図るための社会的システムの構築が求められてお
り、具体的には、医療事故の発生の予防・再発防止のためには、事故事例情報の収集・分析し、その改善方策等を社
会に還元するためのシステムの構築が最も重要である。このシステムには、事故事例情報の収集・分析・提供を行う
ため、行政及び事故の直接の関係者から独立し、国民や医療機関から信頼される中立的な第三者機関の設置が必要で
ある、と提言している。あわせて、個別事例への対応方針として、患者・家族からの苦情や相談に迅速に対応するシ
ステムを構築することは、当事者間の理解の促進や紛争の未然防止を図り、医療への信頼を確保する観点からもきわ
               ︵2︶
めて重要であることも指摘してい る 。
 患者の権利意識の高揚、医師・医療機関に対する不信などから医療紛争は近年増加しており、これにともない訴訟
                                      ハヨ 
件数も一九九三年に四四二件であったのが、二〇〇二年には、八九六件と増加傾向にある。さらに、医事関係訴訟の
                                         ユ
平均審理期間は、年々改善がなされているものの、通常民事事件と比較すると長期化している。この原因としては、
紛争の内容が専門的・技術的であるため、患者あるいは弁護士が診療・治療経過から医師の注意義務などの責任に関
して訴状の段階で的確に把握することが困難な場合が多いこと、裁判官も医学的専門知識を有していないため、争点
整理に時間がかかること、人証の範囲、順序、尋問の内容などについても審理計画を立てられないこと、適切な鑑定
                               ︵5︶
人の選任および鑑定書の作成に時間がかっていることなどが挙げられる。
 東京地裁には四箇部、大阪地裁には二箇部の集中部が設けられ、二〇〇一年四月から医事関係訴訟の新件全件が医
療集中部に配点されている。医事関係訴訟の審理方式も当事者が診療経過一覧表および争点整理表を作成し、争点整
理を早期に行うとともに被告側からカルテ、看護記録、検査報告書などの診療記録を争点整理の早期の段階で提出さ
せること、事件を調停に付して医師などの専門家の調停委員を活用して、争点および証拠の整理などを行うこと、プ
  ロセスカードを利用することにより、裁判所と訴訟代理人との認識を共通にし、円滑な訴訟運営を図るとともに、訴
  訟代理人を通して当事者本人に訴訟進行状況などの情報が正確に伝達されること、陳述書を利用して反対尋問権を実
  質的に保障しながら集中証拠調べを行うこと、複数鑑定、カンフアレンス方式などの鑑定手続の改善も進められて
   ︵6︶
  いる。          、      ’     −             、   、     −
   二〇〇三年の民事訴訟法の改正では、民事訴訟の充実・迅速化を図るため、①争点が複雑困難な医事関係訴訟など
  において計画審理を推進すること︵一四七条の二∼一四七条の三︶、②当事者が提訴前において必要な証拠や情報の
’ 収集を適切に行うことができるように訴えの提起前における証拠収集処分を整備すること︵=三一条の二∼二二二条
  の九︶、③医事関係訴訟などの高度の専門的な知見が必要とされる事件の審理を充実・迅速に処理するため、審理に
  必要な高度の専門的知見を有する専門家である専門委員制度︵九二条の二∼九二条の七︶を創設してWぷ。これらの
  制度は、第一審の訴訟手続について、二年以内のできるだけ短い期間内に終局させる審理期間の目標︵裁判の迅速化
  に関する法律︶を遂行するための基盤整備をしているといえる。
   しかし、民事裁判では、あくまでも法的責任に基づいた損害賠償という金銭請求が中心であり、二当事者対立構造
  をとっているので、被害者およびその家族が医療紛争の原因究明、医師・医療機関による説明・情報の提供、患者と
  医師.医療機関の信頼関係の修復⇒維持、再発防止などの改善策を望んでいてもそれらの期待に応えることは制度上
          
  困難といえる。そこで、医療事故か否かの判定、責任の割合の判断、補償の認定などを迅速に行う公平・中立な裁判
                     ︵9︶                      、
  外での紛争解決手段の充実が求め ら れ て い る 。
                                    り
  ・医療紛争について調停などの裁判外紛争処理手続を積極的に活用する試みは、ドイツにおける医師会の調停所ある
  いは鑑萎員会が有名でありすでに有益な文献が多数存在為・本論文では・従来から紹介されてきた調停所およ
ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                ︵都法四十五−一︶  五一          ㌧
五二
び鑑定委員会の組織、手続概要だけではなく、ドイツにおける医療紛争の裁判外紛争処理手続に対する評価および問
題 点 に つ いても言及する。
︹付記︺本論文は、医療技術評価総合研究事業︵医事紛争における裁判外紛争処理に関する基礎的研究︵出﹂㎝ー医療ーOc。◎。︶︵代表
者︰我妻学︶の成果の一部である。
 本論文を作成するにあたって、二〇〇二年三月二七日に北ドイツ調停所のZΦ已弁護士、同月二八日に北ライン鑑定委員会の[曽∈ゴ
委員長に聞取調査を行った︵平成=二年度厚生労働省特別研究︵代表者︰前田雅英都立大学教授︶︶。さらに、二〇〇四年二月八日
から同月一五日まで、ハンブルク大学病院患者苦情相談オンブズマン︵呂毘oε冨博士︶、ハンブルク上級地方裁判所︵医療専門部︶
︵弓巨∋Φ自彗裁判官︶、ハンブルク地方裁判所︵医療専門部︶︵ロξ穿o冒裁判官︶、医療紛争専門弁護士︵Ω雪碧゜。氏︶、ハンブル
ク検察庁︵内§①づ巨尾検察官︶、ドイツ連邦医師会︵じd弓己m°。餌目8民§。﹃︶法律顧問︵ロΦ日2氏︶、疾病金庫︵≧有Φ日Φ日ΦO昌。。胃員−
Φ邑︵9°。①︶、ノルドライン鑑定委員会︵9塞委員長、°カヨ雪汗o乞。。匠事務局長︶から聞取調査を行った。聞取調査の選定および同行
して頂いた畔柳達雄弁護士、通訳の労および日程の調整をしていただいた金子恭子b。oけ宮ゴ2氏に厚く御礼申し上げる次第である。
ハンブルクでの調査に際しては、垣内秀介東京大学助教授︵在外研究中︶にも同行して頂いたことを感謝申し上げる。
︵1︶毎日新聞医療問題取材班﹃医療事故が止まらない﹄︵集英社新書、二〇〇三︶など参照。
︵2︶ ﹃医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会報告書﹄︵部会長︰堺秀人東海大学医学部付属病院副院長、起草委
  員長︰前田雅英都立大学法学部教授︶
︵3︶ 田中康茂﹁裁判統計から見た医事関係訴訟を巡る最近の動向﹂民事法情報二〇二号︵二〇〇三︶二頁、菅原研ニー−森村大
  欣﹁裁判統計から見た医事関係訴訟を巡る最近の動向﹂同一八九号︵二〇〇二︶二頁など参照。
︵4︶ 二〇〇二年の医事関係訴訟の平均審理期間は、三〇・四ヶ月であり、一九九八年の三五・三ヶ月よりも改善されている
   が、二〇〇二年の地方裁判所の第一審通常訴訟事件︵医事関係訴訟も含む︶の平均審理期間八・三ヶ月よりも長期化してい
   る︵田中・前掲注︵3︶四頁参照︶。
、︵5︶ 東京地方裁判所医療過誤訴訟検討チーム﹁東京地方裁判所における医療過誤訴訟の審理の実情について﹂判タ一〇一八号
   ︵二〇〇一︶五九頁。福田剛久裁判官は、従来の医事関係訴訟について、鑑定依存型漂流訴訟と批判される︵福田剛久﹁座
  談会﹃医療過誤﹄を読んで﹂Z田国Z写o昌2二〇〇三年三月号一二頁︶。
 ︵6︶ 福田・前掲注︵5︶二二頁、東京地方裁判所医療訴訟対策委員会﹁東京地方裁判所における医療過誤訴訟の審理の実情につ
   いて﹂判タ一一〇五号︵二〇〇三︶三四頁、釜田ゆり11山田哲也11小川卓逸﹁東京地裁医療集中部における事件の概況﹂民
  事法情報二一三号︵二〇〇四︶一九頁など参照。   ’        、
 ︵7︶ 山田文﹁審理の計画化と効率化﹂法時七四巻=号︵二〇〇二︶二九頁、笠井正俊﹁専門訴訟への対応﹂同三五頁、同﹁専
                         ノ
   門委員について﹂曹時五六巻四号︵二〇〇四︶二頁、川嶋四郎﹁計画審理﹂ジュリ一二五二号︵二〇〇三︶二一頁、上野泰
   男﹁証拠収集手続の拡充﹂同二一頁、長谷部由起子﹁専門委員、鑑定﹂同二九頁など参照。
 ︵8︶ 和田仁孝‖前田正一﹃医療紛争メディカル・コンフリクト・マネジメントの提案﹄︵医学書院、二〇〇一︶一四六頁∼一
   五六頁など参照。
 ︵9︶ 福田剛久﹁座談会医療訴訟と専門情報﹂福田剛久11高瀬浩造編﹃医療訴訟と専門情報﹄−︵判例タイムズ、二〇〇四︶六六
   頁∼六七頁[福田剛久発言]、[高瀬浩造発言]、[前田順司発言]、一四三頁[前田順司発言]、鈴木利廣﹁患者側弁護士の活
   動と医療機関への要望・期待﹂畔柳達雄n高瀬浩造11前田順司編﹃わかりやすい医療裁判処方箋﹄︵判例タイムズ、二〇〇
  、四︶二六一頁、﹃医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会報告書﹄など参照。
 ︵10︶ イギリスにおける医療紛争の調停については、我妻学﹁医事紛争と裁判外紛争処理制度﹂都法四三巻一号、︵二〇〇二︶
   一九九頁以下参照。
 ︵11︶ 畔柳達雄﹁現行型不法行為事件と裁判外紛争処理機構ードイツにおける﹃医療事故鑑定委員会・調停所﹄管見1﹂判タ
   八六五号︵一九九五︶六九頁、同﹁ドイツにおける﹃医療事故鑑定委員会・調停所﹄管見︵続報︶﹂法の支配一=号二
   九九八︶一頁、浦川道太郎﹁ドイツ医師会の調停所と鑑定委員会ードイツにおける医療事故防止の試みー﹂年報医事法=
   号︵一九九六︶一六頁、中村也寸志﹁ドイツにおける専門訴訟︵医療過誤訴訟及び建築関係訴訟︶の実情﹂判時一六九六号
   ︵一九九九︶三二頁、岡崎克也﹁ドイツにおける裁判外紛争解決及び法律相談制度の実情︵2︶﹂判時一七二六号︵二〇〇〇︶
ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続       ’        ︵都法四十五−一︶  五三,
五四
一一頁など参照。
ニ ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続
                                                
 一九七五年から一九七八年にかけて、ドイツ各地の医師会が医療紛争を処理する裁判外の紛争処理手続を創設した
のは、医師.病院に対する賠償責任訴訟が増加し、医師の負担する責任保険料が増加したことによる。医師は、自分
の開業している各州の医師会に加入し、医師責任保険に加入しなければならないため、医師の負担が増加していた。
一九七〇年代においては、医師の過失責任が認められるかを患者が判断するのに必要な医療記録の収集・閲覧を求め
ることは困難であったため、当該医師を刑事告訴することによる刑事捜査を利用して、医療記録の収集・閲覧および
          
鑑定が行われていた。ドイツにおいても医療訴訟の複雑・専門性、裁判費用などから裁判所の敷居が高く、裁判への
アクセスが問題となっていた。捜査の結果、医師の起訴が見送られた場合には、医師に対する信用を損ねるとして、
このような刑事告訴を利用した証拠収集に医師は反発していた。
 患者から医師に対する訴訟が増加するなど医師・医療機関に対する批判に対して、時間がかかる裁判ではなく、で
きるだけ公正.迅速に裁判外で対応し、事実を解明するのに必要とされる当事者の活動を裁判手続よりも緩和するこ
と、同時に時代遅れの医師の特権意識を克服し、医師に対する信頼を再び強固にすることを目的とする医療紛争専門
の裁判外の紛争処理手続を構築することが求められていた。そこで、ドイツ連邦医師会および損害保険団体は、医療
紛争専門の裁判外紛争処理制度の構築に向けて動き出し、一九七五年一二月にバイエルン医師会は、損害保険団体と
共同で医師の賠償責任を判断する調停所をはじめて設立した。さらに一九七六年一〇月に西ベルリン、ブレーメン、
ハンブルグ、シュレスヴイッヒ・ホルシュタイン、ニーダーザクセンの五の医師会から構成される北ドイッ医師会
   は、調停所の設置および業務についての約定を締結し、同年一一月に損害保険団体と共同で、八ノーバ﹁に北ドイツ
   医師会医師責任問題に関する調停所︵以下、﹁北ドイツ調停所﹂と略記する︶を設立した。
     一九七五年一一月にノルドライン医師会の代表会議で、医療紛争の鑑定委員会を設立することが圧倒的多数で可決
   され、同年一二月にノルドライン医師会における医療過誤の鑑定委員会が設立された︵以下、﹁ノルドライン鑑定委
   員会﹂と略記する︶。鑑定委員会が設立された目的は、医師の行為について客観的な鑑定を行うことによって、医療
’  過誤により、健康上の被害を被った者に対して、根拠のある請求権を実現すること、反対に根拠のない患者の批判を
   却けるのを軽減することである︵ノルドライン鑑定委員会規則一条一項三文︶。鑑定委員会は、ノルドライン医師会
   の中に設けられている。鑑定委員会の手続規定は、ノルドライン・ウェストファーレン州の労働・健康・社会大臣に
    よ り 同 月 承 認 さ れ て い る 。
    ドイツにおける医療紛争の裁判外紛争処理手続は、バイエルンの調停所のように医師の賠償責任を裁判外で処理す
   る手続とノルドラインの鑑定委員会のように医師の治療の過誤の有無についてのみ鑑定を行う手続に分かれて発展し
   ている。このように医療紛争の裁判外紛争処理制度は、患者と医者・医療機関双方に対して公正・公平な利益調整を
           !                                  ︵3︶
   図るとともに、患者と医師の信頼関係を維持・修復させる機能を果している。各医師会単位で創設されており、連邦
   法などの統一的な立法はなく、具体的な組織、手続もそれぞれ異なっている︵各医師会における医療紛争の裁判外紛
   争処理手続については、表1参照︶。     、            、   、    :
    バイエルン調停所は、設立当時における損害保険会社との約定がもはや時代遅れとなり、実務で行われている手続−
                                           ︵4︶         、
   を明文化するために、一九九八年に従来の調停所から鑑定・調停委員会に組織変更している。
    もともと医療紛争専門の裁判外紛争処理制度がドイツで設立されたのは、患者の医師に対する損害賠償請求を裁判
      ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                 ︵都法四十五口一︶  五五         −
五六
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ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                 ︵都法四十五L一︶  五七


五八
外でできるだけ解決するとともに、患者に対して医療過誤に関する情報を提供する目的を有していた。一九八二年一
一月二一二日に連邦通常裁判所は、自然科学的に具体化可能な所見、投薬や手術記録などの診療上の記録に限定して、
            ︵5︶
裁判外の閲覧を認めている。したがって、患者は、診療記録などの医療情報の閲覧を医師・医療機関に直接請求して
                                                  ︵6︶
おり、一九七〇年代のように刑事訴追により必要な資料を収集することは最早行われていないようである。
︵1︶ ドイツにおける医療紛争の裁判外紛争処理手続について、詳細に検討を加えた近時の文献としては、≦Φ冒♀O已冨o宮o完o∋−
  己。ω苫宕ロ弓口乙力6巨﹂。宮ξ功ω吟合Φ5芦﹃目日良u巨。苔守品Φ5し⑩q⊃qっ参照。本論文の多くもこの論文に依拠している。
︵2︶ 日米両国における医療事故に対する対応、特に患者の安全と刑事司法制度を比較分析した興味深い論文として、ロバー
  ト.B.レフラー︵三瀬朋子訳︶﹁医療事故に対する日米の対応﹂判タ一=二三号︵二〇〇三︶一頁、五頁参照。
︵3︶調停所および鑑定委員会の沿革については、知窪邑Φ㍗09NΦどOδO已冨oゴ9斉o冒゜。°。﹂oづ05戸5島゜。。巨。ゴξ品゜。°・否巴05芦
  国昼O巨臼吟・・胃Φ﹂語オ9雪呈呂8⇒ざ9ロ巨O㊥昌o昌巴”︿2・。po一⑩。。。。“o◎°Φ迫巴。。各⑦古﹀島昌m芦ユば葺冨詳巳20力o匿9ξ品゜。1
  巨OΦ己声畠9曇亀Φロ芦﹃§香ゴ良b臣o宮゜。胃o客億冨冨コ“一⑩゜。P◎力’OO自など参照。
︵4︶箒9言゜騨゜P°力゜㌫゜
︵5︶ 神経症で体が麻痺している患者が市営病院の神経外科で手術を受けたが、重大な合併症を起こし、麻痺が以前より重く
  なったため、入院.看護治療が必要となっている。患者は診療過誤を証明しようとして、市に対して手術の経過と治療に関
  する情報および患者の弁護士と患者の指名した医師に治療に関する資料の閲覧を求めた事案である。医師への閲覧は認めら
  れたが、患者の弁護士に対する閲覧を認めなかったので、患者は市を訴えた。原審は、全ての医療記録を弁護士に閲覧する
  ことを認めた。連邦通常裁判所は、原審の判断のように広範な医療記録の開示を認めず、自然科学的に具体化可能な所見、
  投薬や手術記録などの診療上の記録に限定して閲覧を認めている︵b。Φ国切Φ=N◎。伊ωb。や︶。
   ドイツにおける議論については、村山淳子﹁患者の診療記録閲覧請求権﹂早稲田法学会誌五二巻︵二〇〇二︶二九五頁、
  山下登﹁診療記録の開示をめぐる若干の論点についての検討−近時のドイツの議論を手がかりとして﹂年報医事法一四巻二
  九九九︶三五頁なゼ参照。連邦通常裁判所の判決以前の下級審判例については、吉野正三郎﹁ドイツ医療過誤訴訟の証明責
    任分配﹂﹃ドイツ民事訴訟法の新展開﹄︵成文堂、一九九一︶一二六頁を参照。

\ ︵6︶箒匡“80‘°・°Φ゜。°                       ‘  ,
三 ドイツにおける医療紛争の調停所,および鑑定委員会     ﹂
1 調停所と鑑定委員会
 ドイッ全国には、医療紛争を処理すゐ裁判外の紛争処理手続として、四の調停所︵北ドイヅ調停所、ザクセン調停
所、バイエルン鑑定・調停委員会およびラインラツト・プファルツ調停委員会︶と五の鑑定委員会︵ノルドライン、
          ︵1︶
バーデンヴュルテンベルグ、,ザールラント、ヴェスト・ファーレン・リッペ鑑定委員会およびヘッセン鑑定・調停委
員会︶に大別される。厳密に言えばババイエルンおよびヘッセンのように鑑定と調停が組み合わされた類型も存在す
                ︵2︶                                              ’
るが、独立の類型とは考えられておらず、本論文では、組織・財源から、バイエルンについては、調停所の中に分類
し、ヘッセンについては、鑑定委員会に分類している︵表1参照︶。
 つぎに、調停所の代表として、北ドイツ調停所の手続概要と鑑定委員会の代表として、ノルドライン鑑定委員会の
手続概要について述べ、る。         、  ,
︵1︶北ドイツ調停所                  、 、
 北ドイツ調停所が設立された目的は、できるだけ迅速かつ綿密に事実関係を明らかにすることである。当事者は互
いに協力する義務を負い、特に事実関係の解明に必要な情報を直ちに付与する義務を負う︵北ドイツ調停規則三
条︶。北ドイッ調停所は、一九七六年に西ベルリン、ブレーメン、、ハンブルグ、シユレスヴイッヒ・ホルシュタイン、
   ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                 ︵都法四十五ー一︶  五九
六〇
二ーダーザクセンの五の医師会の連合で設立されたが、一九九〇年一〇月三日に旧東ドイツ地域に属していた東ベル
リン、ザクセン・アンハルト、メクレンブルグ・フォアボンメルン、ブランデンブルグの各医師会が加盟し、さらに
一九九一年一〇月にチューリンゲン医師会も加盟している。このようにザクセンを除く旧東ドイッの医師会が北ドイ
ツ調停所に加盟したのは、各医師会が調停所を独自に設立するには予算的に厳しかったこと、もともと東ドイツで
                                                  ヨ 
は、医師に過失が認められない場合にも、患者に最大一ヶ月分の協定賃金分︵弓知SO﹁5︶の補償金などを認めており、
                     ︵4︶
患者の保護の期待や経済的な理由によるようである。
 北ドイツ調停所は、九の医師会が加盟しており、ドイツ全域の過半数をカバーしている最大の医療紛争の裁判外紛
争処理手続である。北ドイツ調停所は、三三名の医師、四名の弁護士、および一七名の専門職員から構成されている
︵二〇〇二年当時︶。
 調停手続は、当事者が申立書を北ドイツ調停所に郵送で提出することにより開始される。申立書の様式が定められ
                         ら 
ているわけではない。北ドイツ調停所のホーム・ページに掲載されている申立書の記載事項は、申立人の氏名・住
所。生年月日、相手方の氏名・住所である。さらに調停所は、患者のカルテ、病歴などの医療記録、医師および病院
の治療記録および医師の保険会社の記録などの書類の原本あるいはコピーを取り寄せるのでぺ当事者に承諾書を提出
させている。さらに、診療過誤が主張されている診療がいつどこでなされ、誰に損害賠償を請求するのか、身体的お
よび金銭的損害の額、損害発生前五年以内および損害発生後に受診した医師および病院の名前・所在地、専門領域、
既に損害賠償請求を相手方にしているのか、刑事あるいは民事裁判手続が係属しているのか、保険を適用しているの
か、あるいは自由診療であるのか、保険を適用している場合には、保険会社の名前、などの質問票から構成されてい
る。
               
 申立ての大部分は、患者側からであり、二〇〇二年においては、事件の約五五∼六〇パーセントについて弁護士が
選任されている。当事者本人があまり詳細に申立書を記載することは期待されていないようで㌘・
 当事者の提出した申立書の記載に基づいて、北ドイツ調停所に加盟している医師会に所属する医師を相手方として
いるか、損害発生から五年を経過しているか、あるいは既に当事者が民事裁判などを提起しているかなど手続開始障    ’
害事由が存在するかを調査する必要な資料を収集し、鑑定人および質問事項を当事者に明らかにし、鑑定が行われ、
当事者に鑑定意見が示され、最終的な見解が示される。調停手続に参加するか否かは自由であり、医師、病院および、
医師もしくは病院の保険会社が同意しなければ、調停所の手続は終了する︵北ドイツ調停規則二条三項︶。
 二〇〇〇年から二〇〇二年度までの間に、、北ドイツ調停所に新たに申し立てられた件数は、三、七四四件︵二〇〇
〇年度︶、、四、二一〇件︵二〇〇一年度︶、四、〇一〇件︵二〇〇二年度︶である。既済件数は、三、五九〇件︵二〇
〇〇年度︶、三、九三五件二.一〇〇一年度︶、三、九三一件︵二〇〇二年度︶である︵表211、212、213参照︶。
 二〇〇〇年度の既済事件のうち、形式的理由で終結した件数は、一、一六〇件︵既済事件の三ニパーセント︶であ
り、内訳は、関係人の不同意が四七八件︵四一パーセント︶、申立人の取下げ三九三件︵三四パーセント︶、管轄違背
八二件︵七パーセント︶などである。二〇〇一年度の既済事件のうち、形式的理由で終結した件数は、一、三一五件
︵既済事件の三三パーセント︶であり、内訳は、関係人の不同意が六二九件︵四八パーセント︶、申立人の取下げ四
〇七件二三﹂パーセント︶、管轄違背六七件︵五パーセント︶である。二〇〇二年度の既済事件のうち、形式的理由     ︷
で終結した件数は、一、二八一件︵既済事件の三三パーセント︶であり、内訳は、関係人の不同意が六〇〇件︵四七
パーセント︶、申立人の取下げ四二五件︵三三パーセント︶、管轄違背五三件︵四パーセント︶である︵表2−1・2
12、213参照︶。
   ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                 ︵都法四十五ー一︶  六一・
六二
 このように実体判断に至らないで終結する事件の割合が三三パーセントと比較的高く、関係人の不同意、申立人の
取下げが八割を占めている。医師が同意しない事例は少ないとされているので、保険会社が同意しないのであろう
か。同意しない理由は明らかにされていない。
 調停手続は、原則として書面主義である。ただし、調停所は当事者の手続への参加および鑑定人を呼び出すことが
         
できる︵同五条︶。鑑定をする前に調停所に所属する医師は、弁護士と協議しながら、事実関係の解明に役立つ全て
の資料を医師および病院から取り寄せ、鑑定事項を作成する。鑑定事項は、患者、医師、医師の保険会社に送付され、
鑑定事項の修正・補充する機会を与える。約四週間後に鑑定事項が鑑定人に送付され、鑑定人は、医療過誤の責任が
認められるかについて、三∼四ヶ月以内に鑑定する。鑑定人の費用は、医師の保険会社が医師の責任を認めたか否か
を問わず、負担する。医師の責任の根拠に関する最終意見︵>O°・o巨け6。ΦaΦo力け色∈品5§ΦN已5出鯵弓o。°。o。巨昆︶が
示される。
 二〇〇〇年度の既済事件のうち、実体判断された事件数は、二、四三〇件︵既済事件の六八パーセント︶であり、
診療過誤および説明義務違反否定一、四九九件︵六ニパーセント︶、診療過誤と損害発生との間の因果関係肯定七三
九件︵三〇パーセント︶、診療過誤肯定・因果関係否定一七三件︵七パーセント︶などである。二〇〇一年度の既済
事件のうち、実体判断された事件数は、二、六二〇件︵既済事件の六七パーセント︶であり、診療過誤および説明義
務違反否定一、六=ご件︵六ニパーセント︶、診療過誤と損害発生との間の因果関係肯定七五六件︵二九パーセン
ト︶、診療過誤肯定・因果関係否定二三六件︵九パーセント︶などである。二〇〇二年度の既済事件のうち、実体判
断された事件数は、二、六五〇件︵既済事件の六七パーセント︶であり、診療過誤および説明義務違反否定一、六四
五件︵六ニパーセント︶、診療過誤と損害発生との間の因果関係肯定七四二件︵二八パーセント︶、診療過誤肯定.因

果関係否定二一二七件︵九パーセント︶などである。︵表211、212、2−3参照︶。
 実体判断がなされた事件の七割は、診療過誤および説明義務違反を否定しており、診療過誤が認められているの
        ︵9︶                             、
は、三割弱に過ぎない。             ,      ・        、
︵2︶ノルドライン鑑定委員会
 ノルドライン鑑定委員会は、元裁判官である法律家一名︵代理六名︶および外科医一名︵代理九名︶、内科医一名
︵同五名︶、病理学一名︵同二名︶、一般医一名︵同二名︶の他、麻酔医一名、眼科医二名、婦人科三名など他の専門
                                  ︵10︶
医療分野の通信委員︵民o湾o°。⑰05合o苫巳Φ巨品巨Φ巳隅︶二六名から構成されている。
 鑑定手続は、当事者が申立書を鑑定委員会に提出することにより開始される。ほとんどの申立では、患者からなさ
 ・                                                        ︵11︶
れており、患者が医師を中傷するような場合に医師が例外的に申し立てる場合があるようである。相手方が鑑定委員
                                    ︵12︶
会の手続に同意すれば、手続が開始される。鑑定手続は原則としてへ書面主義である。ノルドライン鑑定委員会に所
属する委員一名︵医師︶に低学上の問題を処理するために、業務執行権︵OΦ゜。畠葺゜・旨ゴ昌50。︶を授権し、事実関係の
解明に必要な全ての資料を医師・病院から取り寄せ、鑑定の必要性を判断し、事実関係について、鑑定委員会の委
員、通信委員などと議論をする︵ノルドライン鑑定委員会規則五条︶。
 鑑定人は、事実関係の確認、医療過誤の有無、鑑定結果の要約などからなる書面を作成し、法律家が注意義務など
法律問題について検討する。鑑定の主要な内容は当事者に知らせる。
 鑑定などに基づいて、医師一名と法律家一名︵元裁判官︶が、第一回決定︵Ω暮8罫巨合ロdo°。プΦ[α︶をする。
 月一回、医師五〇各および法律家七名が参加して、全体会議︵国巴c。邑訂巨o。︶が行われ、複数の専門分野にまたが
   ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続    ゜            ︵都法四十五ー一︶  六三


六四
るような複雑な医療過誤の事案について、全体で協議し、統一的な見解が通常示される。ただし、全体会議は、個々
                              ゼ
の事案に対する判断機能はなく、あくまでも助言機能しか有しない。
 第一回決定が下されてから一ヶ月以内に当事者が異議を申し立てると、い③巨ゴノルドライン鑑定委員会委員長︵元
上級地方裁判所所長︶を議長として、外科医一名、内科医一名、病理学一名、一般医一名から構成される鑑定委員会
が新たに、最終決定︵きc◎O巨巨OQocoΦ﹃P口Φoカ 一]ΦoカゴΦ戸●︶を下す。委員会の前に予め、医師︵一名︶が法律家︵一名︶と協議
して、決定草案︵口Φo◎ゴΦ﹂OΦづひき﹃﹃︶を作成し、鑑定委員会の構成員全体で協議し、原則として全員一致で最終判断を
                        ロ
示す︵ノルドライン鑑定委員会規 則 一 〇 条 ︶ 。
 二〇〇〇年から二〇〇二年度までの間に、ノルドライン鑑定委員会に新たに申し立てられた件数は、一、六〇二件
︵二〇〇〇年度︶、一、六五六件︵二〇〇一年度︶、一、六八三件︵二〇〇二年度︶と漸増している。既済件数は、一、°
四〇〇件︵二〇〇〇年度︶、一、三五四件︵二〇〇一年度︶、一、五九九件︵二〇〇二年度︶である︵表211、2−
2、213参照︶。
 二〇〇〇年度の既済事件のうち、形式的理由で終結した件数は、三六八件︵既済事件の二六パーセント︶であり、
内訳は、管轄違背一四一件︵三八パーセント︶、申立人の取下げ=二件︵三三パーセント︶、申立期間徒過四二件二
一パーセント︶などである。二〇〇一年度の既済事件のうち、形式的理由で終結した件数は、三五六件︵既済事件の
二六パーセント︶であり、内訳は、管轄違背一五一件︵四ニパーセント︶、申立人の取下げ一〇四件︵二九パーセン
ト︶、申立期間徒過三八件︵=パーセント︶などである。二〇〇二年度の既済事件のうち、形式的理由で終結した
件数は、三八三件︵既済事件の二四パーセント︶であり、内訳は、管轄違背一五九件︵四ニパーセント︶、申立人の
取下げ一二八件︵三三パーセント︶、申立期間徒過二五件︵七パーセント︶などである︵表2−1、2−2、213
    参照︶。                        °              、
     ノルドライン鑑定委員会では、実体判断に至らないで終結する事件の割合が二四∼二六パーセントと北ドイツ調停
    所の三三パーセントよりは低いが、管轄違背、申立期間徒過というより形式的な理由の割合が高い。ノルドライン医、
    師会に所属しない医師を相手方としている場合には、他の適切な医師会の紛争処理手続に移送するよりも、手続を終・
    結させて、新たに適切な医師会の紛争処理手続に申し立てをさせているのであろうか。当事者本人が医療紛争の裁判
    外紛争処理手続を正確に理解していないために、不利益を被らないように、当事者が手続を申立てる前に手続に関し
    て教示し、早期に医療過誤専門の弁護士に相談する必要性を示唆している。.
﹁   、 二〇〇〇年度の既済事件のうち、実体判断された事件数は、一、〇三二件︵既済事件の七四パーセント︶であり、
    診療過誤および説明義務違反否定六〇二件︵五八パーセント︶、診療過誤と損害発生との間の因果関係肯定二九二件
                     ト
    ︵二八パーセント︶、診療過誤肯定・因果関係否定六一件︵六パーセント︶などである。二〇〇一年度の既済事件の    、
    うち、実体判断された事件数は、九九八件︵既済事件の七四パーセント︶であり、診療過誤および説明義務違反否定
    五八四件︵五九パーセント︶、診療過誤と損害発生との間の因果関係肯定二八一件︵二八パーセント︶、診療過誤肯
    定一因果関係否定六℃件︵六パーセント︶などである。二〇〇二年度の既済事件のうち、実体判断された事件数は、
 ’  一、一二六件︵既済事件の七六パーセント︶であり、診療過誤および説明義務違反否定七五一件︵六ニパーセント︶、
    診療過誤と損害発生との間の因果関係肯定三三三件︵二七パーセント︶、診療過誤肯定・因果関係否定七二件︵六パー
    セント︶などである。                                          ・
     実体判断がなされた事件数の七割は、診療過誤および説明義務違反を否定しており、診療過誤が認められているの      、
    は、三割弱に過ぎず、北ドイッ調停所とほぼ同じである。
       ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                 ︵都法四十五ー一︶  六五
六六
2 調停所と鑑定委員会の相違
 調停所は、各州の医師会と保険会社との取り決めにより設立されている。調停所の役割は、医師の責任をめぐる患
者と医師との間の紛争を裁判外で解決すること︵北ドイツ調停所三条一項、ザクセン調停所規則二条など参照︶であ
り、調停所は、鑑定意見を示し、例外的に損害を認定し、調停を行っている。そのため、患者と医師だけではなく、
医師の加入している責任保険会社が当事者として調停手続の最初から参加することに特色がある。保険会社が同意を
しなければ、原則として調停所の手続は進められない︵北ドイツ調停所規則二条二項、バイエルン鑑定・調停委員会
規則四条三項、四項︶。手続費用は保険会社が原則として負担している。保険会社を調停所の手続に予め組み込むこ
とにより、医師に対する責任賠償請求を円滑に進めることに意味がある。
 鑑定委員会は、各州の医師会の規約に基づいて設立されており、保険会社とは独立して運営されている。鑑定委員
会の役割は、医療過誤の有無についてのみ公正に判断し、医療過誤の有無を判断するのに必要な患者の負担を軽減
し、反対に医師に対するいわれのない非難を排斥する医師の負担を軽減することにある︵ノルドライン鑑定委員会規
則一条一項三文、バーデンヴュルテンベルグ鑑定委員会規則一条二項、ザールラント鑑定委員会規約一条二項など参
照︶。したがって、鑑定委員会の手続では、医師と患者だけが当事者となり、医師の加入している保険会社は手続に
関与しない。手続費用は、保険会社ではなく、医師会が負担している。
 このように調停所と鑑定委員会の設立目的、制度設計は、互いに異なっている。しかし、実際には、鑑定を中心に
行っている点で、患者が調停所あるいは鑑定委員会いずれの手続を選択した場合にも、両者の間に実質的な差異は生
  ︵15︶
じない。鑑定委員会の手続を開始するには、調停所の手続のように保険会社の同意は原則として必要とされていない
が、保険会社は、医師に対する過失の有無の認定に関して、重大な関心があり、当該医師に対しても事実上強い影響
                          −                       ︵16︶
力を与えているので、保険会社の意向を実際上無視して手続を開始することは不可能だからである。
3 医療紛争の裁判外紛争処理手続の特色
 各医師会によって、調停所を設けているか、あるいは鑑定委員会を設けているかが異なっているだけではなく、具
                                       ︵17︶
体的な組織、手続の細部についても異なっている︵各調停所および鑑定委員会の組織の概略などについては、表1参
照︶。
 このように細部は、相互に異なってはいるものの、医療紛争の裁判外紛争処理手続の基本原理である、任意性
︵写Φ﹂邑后冨巳、無料︵ΩΦひ巨苫弓。芦Φ芭、強制力がないこと︵巴つくo号宣巨。芹①邑の三要素については、調停所お
                ︵18︶
よび鑑定委員会で共通している。

︵1︶任意性
 任意性とは、−当事者たる患者と医師は手続を強制されず、当事者が合意をしなければ、手続が開始しないことであ
                         ︵19︶
る。調停手続の場合には、責任保険会社の同意が必要となる。手続が開始された場合にも当事者は、裁判所に訴えを
提 起 す る ことができる。
︵2︶無料
 鑑定費用などの手続費用はn調停所の場合には、保険会社が負担し、鑑定委員会では医師会が負担するので、原則
として無料である︵バイエルン鑑定・調停委員会業務および手続規則五条一項、北ドイツ調停所規則六条一項、ノル
   ドイッにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                ︵都法四十五−一︶  六七
六八
ドライン鑑定委員会規則一一条二項など参照︶。事件数が増加しているので、各医師会が裁判外紛争処理手続を維持
                                         ︵20︶
するために年間負担する鑑定費用、人件費、運営費などの総額はかなりの額になると考えられる。
 弁護士費用は当事者が各自負担する︵バイエルン鑑定・調停委員会業務および手続規則五条一項、北ドイツ調停所
規則六条二項、ノルドライン鑑定委員会規則一一条三項など参照︶。医療紛争の裁判外紛争処理手続は、書面主義を
採用し、医療紛争に精通していない当事者本人に不利益を与えないように配慮しているので、弁護士を選任すること
                      ︵21︶
は必要不可欠であるとは認められていな゜いからである。実際にも患者の約半数に弁護士が選任されているのに対し
て、医師側には、ほとんど選任されていないようである。診療過誤の有無を専門の医師が鑑定する以上、医師が弁護
                    ︵22︶
士を選任する必要はないと考えているからである。診療過誤が認められた後に保険会社に対して、損害賠償請求をす
                                               ︵23︶
る場合には、具体的な賠償額などをめぐって争いとなるので、当事者のほとんど全てに弁護士が選任されているのと
は対照的である。
 診療過誤の疑いがある場合には、患者は、弁護士に今後の対応について相談すると考えられ、調停所あるいは鑑定,
委員会に書面で申し立てをする場合にも、弁護士は、当事者本人よりも事実関係を客観的に指摘できるだけではな
く、時効、管轄などの手続障害事由の有無を判断した上で、申立てをするので、無駄な申立てを減少させることがで
きる。調停所あるいは鑑定委員会が実体判断に至らずに終了する事件数も全体の二∼三割程度を占めており︵三1
︵1︶、︵2︶参照︶、弁護士が選任されていれば、形式的理由で終結することを極力回避することが期待できる。
 下級審判例は、調停所および鑑定委員会は、専門的かつ客観的な機関として、裁判外で迅速に紛争を解決してお
り、診療過誤の有無は純粋な医学上の判断ではなく、法律上の問題も含んでいるので、調停所および鑑定委員会にお
                  ︵24︶
ける弁護士費用を必要経費として認めている︵ドイツ連邦弁護士費用法=八条︶。
︵3︶強制力がない
  
、 調 
停 所 
あ る 
い は 
鑑 定 
委 員
 会 は
 、 医
 師 お
 よ び
 法 律
 家 が
 協 働
 し て
 鑑 定
 を 行
 っ︵て
2い5︶
る。強制力がないということは、医療
紛争の裁判外紛争処理手続で鑑定などの判断が示された場合には、仲裁手続のように紛争解決機能はなく、あくまで
も勧告に過ぎず、債務名義にもならない。したがって、当事者は、医療紛争の裁判外紛争処理手続が行われている間
あるいは、医療紛争の裁判外紛争処理手続で鑑定などの判断が示された後においても、訴訟を提起することができる
︵バイエルン鑑定・調停委員会業務および手続規則一条二項、北ドイツ調停所規則七条、ヘッセン鑑定・調停委員会
規則一一条など参照︶。


ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                 ︵都法四十五ー一︶  六九
七〇
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   ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続・  ・  ,   ,      ︵都法四十五−一︶  七一
七二
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︵1︶ バーデンヴュルテンベルグの調停所は、シユトゥットガルト、フライブルグ、カールスルエ、チュービンゲンの四箇所に
  分かれ、互いに独立して運営され、手続も異なっている。                    ﹁
︵2︶ 三〇〇四年一月三一日に京都大学で開催された国際シンポジウム,︵タウピッツ︵潮見佳男訳︶﹁医師の損害賠償責任をめ
  ぐる紛争解決への医師の関与﹂﹃国際シンポジウム︰現代社会における専門家関与と市民参加﹄︵二〇〇四︶五二頁︶参照。
  国●Φ﹃9己戸o力o冒c。けくΦ﹃c・ひ呂O巨゜・k5°・b三臼[日O<①﹃合冨o⇒c。胃①邑c。已目OQ力o巨旨ゴ亘50。。・c・[巴Φ目一㊤o。o◎“Qo°一誤゜
︵3︶ o力o巨き゜。°。“O声Φ89巨合窪O目5合躍①5旨﹃合oロ099昌ξ<80力9③9ロ゜・零゜。巴N∂a①ξ巴9﹃bo宥ぴ。2乞品雪×O目2。,
  号づ巴゜。日Φ庄N巨゜。畠2国9﹃巴∈品芦9﹃OO員<Φ﹃°・國一Φ。。⑩で91Φ8°
︵4︶二〇〇二年三月二七日に北ドイツ調停所を訪問し、業務執行者きプ曽5ZΦ已氏︵弁護士︶に対する聞取調査に基づく。≦①訂巴   , 一
  〇暮③合8完o冒。°・85Φづ巨Oo。○巨﹂。葺∈品゜。°・9已05旨﹃﹀目︷ゴ③誇b巨o耳守温ΦP一㊤⑩P。。°ごc。も参照。
︵5︶プ§⋮§ミ゜°・。巨9ξ6°。[①印Φ゜△Φ゜
︵6︶ 患者の加入している健康保険組合が主導して当事者が申立てをしている場合も増加しているようである。健康保険組合が
  関与するのは、保険加入者へのサービスというだけではなく、医師に診療過誤が認められれば、支払った保険金を当該医師’
  に求償しうる点で健康保険組合にも関係しているからである︵≦O[NO一∨ ①゜①゜○こ o◎°O●o︶。調停所は、患者と医師の関係を維持.   、
  修復ずる目的で設けられているので、健康保険組合自身が調停手続に参加することは予定されていない。二〇〇二年から、
  健康保険組合も診療過誤か否かを医師と法律家が協同して無料判断する鑑定手続を行っている︵二〇〇四年二月一二日に疾’
  病金庫での亘g]≦Φ詳Φ房氏などに対する聞取調査による︶。              、
︵7︶ Z巴業務執行者に対する聞取調査に基づく。   .  −     、
︵8︶ 書面主義と口頭主義との関係については、本論文五1︵2︶参照。
︵9︶°。合。9。訂ご且zΦFoΦ;匡Φ毫置く8。。合。宮巨。。巨ユ箒合古§亘。二。巨臼窪Nヨ。。合雪㊦豊巴ごa巴N︹<。﹃。。日08
  ωΦ゜。°畔柳達雄弁護士が一九八九年、一九九三年度、一九九四年度における事件を分析された割合とほぼ変わりがない︵畔柳
  達雄﹁現行型不法行為事件と裁判外紛争処理機構ードイツにおける﹃医療事故鑑定委員会・調停所﹄管見1﹂判タ八六五号
  ︵一九九五︶四四頁参照。            ﹁
︵10︶ その他、皮膚・性病科︵国①巨止5口ΩΦ゜・6巨8暮゜・民﹃碧冨︸9窪︶一名、耳鼻咽喉科二名、心臓科︵民胃合oδ笹Φ︶一名、小児
  科二名、口・顎・顔面外科︵罫日辛田。︷⑱7ピ5ユO①゜。村葺乙・6ξ曇Φ︶一名、脳神経外科︵ZΦ目05聴。︶一名、整形外科二名、
,      ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続            、   ︵都法四十五﹁一︶  七三
七四
  形成・手の外科︵田器駐合Φ烏己工雪ユo巨冨品一Φ︶二名、放射線科︵ぽ合oざ笹Φ︶一名、放射線治療科︵0力§巨Φ昌ず①日豆Φ︶一
  名、胸部心臓血管外科︵弓ゴo﹃良−弓●民胃合o<g×已曽。﹃o。芭 一名、救急外科︵ご鳥邑。巨≡己。︶一名、泌尿器科二名、神経
  外科︵2Φ烏o。巨巨曇Φ︶二名である︵9昌“o力9巨鮎20暮器宮Φ済o冒゜。°。﹂oづ旨﹃§庄畠Φb。Φゴ碧色∈お゜。合巨Φ烈心。OOPQ力゜一〇〇︶。
  畔柳・前掲注︵9︶一〇七頁注︵1︶よりも人数が三名多くなり、神経外科二名が新たに任命されている。
︵11︶ 二〇〇二年三月二八日にノルドライン鑑定委員会を訪問し、[巨ヨ委員長に対する聞取調査に基づく。
︵12︶ 書面主義と口頭主義との関係については、本論文五1︵2︶参照。
︵13︶   ↑ ① § u P P O こ o 。 ° 一 心 。 c 。 °
・︵14︶以上については、二〇〇四年二月=二日にノルドライン鑑定委員会を再訪問し、い窪∋委員長および事務総長◎カヨΦづ只o笥。匠
  氏に対する聞取調査に基づく。
︵15︶ 綱Φ﹂No吉①PO‘Q。]︹edΦ﹃窒ρ弓wO声Φぎ誓貰ξ“ト。﹀己“o。08°Q。°﹂ΦO迫巨Φ下OΦ冒Φ吉臣Φ○¢宮各8完o曇゜。巴89∈一〇
  Q。⇔巨旨罫ξ切゜。吟巴巴旨﹃=§b巨畠け゜。冨﹂語冨9づN忌筈85ぎ9ロ巨臼㊥豊Φ旨o見くo﹃°。國声Φ゜。◎。“°力゜200目uO﹂Φ音巨oゴ巴O亨
  訂臼9完o喜゜力巴8雪巨●o◎o巨答罫ξω9巴雪“Zヨ戸⑩◎◎一“心o吟o◎ρ
︵16︶ バーデンヴュルテンベルグ鑑定委員会に属するカールスルエでは、保険会社が鑑定手続に関与することを希望している場
  合には、医師が承諾すれば、鑑定手続に関与する余地を認めている︵♂<Φ一NΦ一w御゜O°ひ▼“︸o◎°一ふo◎︶。一九九八年から二〇〇〇年まで
  にバーデンヴュルテンベルグ鑑定委員会に申し立てられた事件の実態調査では、対象件数︵六〇〇件︶の内、診療過誤が認
  められた︵一部認容も含む︶事件︵一二〇件︶の内六〇件︵五〇パーセント︶に保険会社が手続に参加しており、責任が否
  定された事件︵四八〇件︶の内一六五件︵三四・四パーセント︶に保険会社が手続に参加している︵Z窪日曽戸民o自Φρ已o日oコ
  巨゜。国づ雷o冨aξ3<日O己古器耳2ぎ自[己゜。甑o器豆家ゆユ留08“。。◆ω心。べ︶。
︵17︶ 出雪゜。09ど﹀忌①9=昆弓彗お冨﹂三20。。巨o宮ξω1∈己C暮9宮Φ邑合自巨﹃§日鯵U巨9宣邑語冨箒見一qっ◎。ρo力゜切゜。已家曽
  ︷巨Φ゜・∨o力o巨8°。日゜。官5N⑱づ雪boΦ吋色9号﹃§日昌∈品 Q力合巨O誠①●o見一Φ。。♪g。ヒぷboo95ぴ編∈a窓魯巨①切uざ昌合oO已声合宮丁
  巨OQ◎⇔ゴ旨o葺ξ。。°。9目窪−弓ゴΦoユo巨巳淳巨゜。o巨o°。家o口色む乃゜<o°。國一⑩o◎N一品Φ‘
︵18︶≦Φ9一一P餌゜Po力b一゜9爵門5◎q巨o昌日6方国碧合口9合ω﹀曇苫百暮゜。○﹀巨こ心。80。“◎力]08◆
︵19︶ 保険会社が調停手続を拒絶した場合にも、医師が保険会社が通常負担する鑑定費用を自ら負担することに同意していれ
  ば、手続は開始される。

︵20︶ 二〇〇二年度において、北ドイツ調停所の予算としで、およそ二〇〇万ユーロ︵約二六億円︶を医師会が計上している︵業
  務執行者 Zo已氏に対する聞取調査に基づく︶。バーデンヴュルテンベルグ医師会は、一九九八年に一二一万七、一六ニマ
  ルクを負担している︵ウペΦ已白ξ 旬゜③σO  oo°ω心oΦ        W        .W︶。≦o訂o一︾PPρ一゜。ひやも参照。同様の指摘として、畔柳・前掲注︵9︶四一頁参
︵21︶ ≦09一“PPP°。.一〇°。°              ・       ’
︵22︶ ≦Φ富Φ一uP知右○°亘゜一9°                 .        ・    ・

︵23︶ ≦m冒①一b°①゜Oこ゜o°宗一右       “              ’
︵24︶ O↑Oo。8日巴呂江國営8uo力゜Φω㊤トΩロ巴Φ〒ロ毘雪呂9閲一㊤◎。ごO㊤゜
   OΦ暮切ムプ声50ζ巴吟巨o。。”﹀目ひプ良ξ゜。おo宮“Oコ5合品①P㌘08宮゜。肩Φ6ゴξ︸O旨gプ9下ピ500◎畠o宮巨品゜・°。冨頴Pc。﹀自゜[一qっo◎o◎︾
  Q力゜一boo◎ ≦O詩Φ古③.旬゜○‘oo°ミ吟゜
   民事訴訟施行法では、訴訟物の価額が七五〇︵約九万七五〇〇円︶ユーロを越えない紛争について、州が調停を前置する
  ことを認めており、州によって認められた調停手続を利用した場合に生じた費用を訴訟費用とする余地を認めている︵一五
  条a四項︶︵ロロ窪∋ぴ㏄o戸≧σ2°。“N㊥OΦ⊆戸邑二NOO°。ら㌫①国ΩN㊥O“自。身゜b。㎝⋮N合o♪N㊥Pb。Q。﹀巨二心。OOo。ゆ㌫邑ON勺O閲旨゜心。Φ⋮呵o‘
  2°。[PZ≧心。OO吉゜。さω︶。調停の拡充および改善の動向については、ベーター・ゴットバルト︵出口雅久11本間学訳︶﹁ドイ
  ツにおける民事司法改嘩への努力﹂立命二七七号︵二〇〇一︶三〇三頁参照。ただし、医療紛争では、七五〇ユーロを超え
                                 エ
  る事件が大部分であるので、直接に適用される事件はほとんどないと考えられる。
︵25︶ 構成員の数、法律家と医師の資格要件および委員長の資格要件はそれぞれの医師会によって異なる︵表1参照︶。
四 医療紛争の裁判外紛争処理手続の評価
                           ノ
ー 医療紛争の裁判外紛争処理手続の目的
 医療紛争の裁判外紛争処理手続は、時間がかかる裁判ではなく、できるだけ公正・迅速に裁判外で対応し、事実を
解明するの忙必要とされる当事者の活動を裁判手続よりも緩和すること、同時に時代遅れの医師の特権意識を克服
し、医師に対する信頼を再び強固にすることを目的として、一九七〇年代に設立され、発展している。医療紛争の裁
ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                ︵都法四十五1、一︶ 七五

七六
判外紛争処理手続が無料であること、連邦通常裁判所は当事者に医師・医療機関に対して、診療上の記録を裁判外で
閲覧を求めることを認めている︵本論文二参照︶ので、調停所あるいは鑑定委員会は、医師会に所属する医師に対し
                                   ︵1︶
て具体的に必要な医療記録を裁判手続よりも簡単かつ迅速に収集することができる。
 調停所あるいは鑑定委員会の手続では、医師と法律家が協同して判断を下すので、専門的知見に依拠して、診療過
誤の有無などについて判断することができる。これに対して、裁判所は、鑑定人を利用しうるが、裁判官は、専門的
                    ︵ 2 ︶
な知見を有しないで判断を下す必 要 が あ る 。
 裁判手続のように当事者の主張に拘束されないので、医療紛争の裁判外紛争処理手続は、医療紛争に精通していな
                          ︵3︶
い患者本人と医師との間の武器平等原則を実質的に保障できる。さらに、調停所あるいは鑑定委員会が診療過誤、説
明義務違反などについて判断を下すことによって、訴訟の勝訴の見込みについて、当事者および弁護士が現実的に判
  ︵4︶
断しうる。
2 ノルドライン鑑定委員会における判断と紛争の解決
 医療紛争の裁判外紛争処理手続が患者と医師の関係を維持・修復させ、紛争を解決しているかについては、調停所
あるいは鑑定委員会の示した最終判断に当事者が実際にどの位従っているのか、が問題となる。
 そこで、二〇〇〇年に終結したノルドライン鑑定委員会の鑑定手続について、二〇〇二年末から二〇〇三年一〇月
        ︵5︶                                            ︵6︶
まで追跡調査した資料を基に鑑定委員会の判断がどの位、当事者が従っているのか、について検討する。ノルドライ
                                ︵7︶
ン鑑定委員会は、従来の実務に変更があるかを調査するために、一九九〇年および一九九五年に終結された鑑定結果
について追跡調査を行っている。
   二〇〇〇年度に実体判断をして、終結した事件︵一、〇三二件︶︵二〇〇〇年度の終結状況については、表211
  参照︶に関して、アンケートの回答が寄せられた一、○〇六件︵回収率九七・五パーセント︶について分析を加えて
  いゐ︵表311︶。二〇〇〇年度において、診療過誤あるいは説明義務違反を肯定した事件は、三九五件︵実体判断
  がなされた決定の三八.三パーセント︶である。、診療過誤あるいは説明義務違反を肯定した事件の内、アンケートに
  回答したのは三八二件である︵表3−2︶。鑑定の結果後に、保険会社に賠償金を請求しているのは、二九三件.︵七
  六.七パーセント︶である。鑑定結果に満足して、保険会社に請求しない場合は、八九件︵二三・三パーセント︶で     、
  ある。当事者は金銭賠償だけを目的として鑑定委員会に申し立てをしているのではなくび医療過誤の有無を明確にし、
                         
  たい当事者が存在することを明らかにしている。
.  診療過誤あるいは説明義務違反を否定あるいは確定していない事件︵六三七件︶の内、アンケートに回答したのは
  六二四件である︵表312︶。鑑定の結果後に、保険会社に損害賠償を請求しているのは、八一件︵約二ニパーセン
 ・ト︶に過ぎない。鑑定結果に納得して、保険会社に請求しない場合は、五四三件︵八七パーセント︶に上る。
  ・鑑定委員会が診療過誤を認めたので、当事者が保険会社に損害賠償請求を請求した場合に、保険会社が直接賠償金
  を支払う場合および鑑定人を選任した上で支払う場合は二〇三件︵六九・三パーセント︶である︵表3−4︶ρ保険
  会社が新たに鑑定人を選任する場合とは、例えば、胎児の脳損傷のような賠償額が高額になる場合に、鑑定委員会の
                                
  鑑定だけではなく、自前の鑑定人による判断を求める場合である。
   鑑定委員会が診療過誤を認定しているのに、保険会社が賠償金の支払いを拒絶したのは、僅か八件︵三パーセン
  ト︶に過ぎない。鑑定委員会が診療過誤を認定しているのに、保険会社が賠償を認めなければ、鑑定委員会の労力が
  実際上無駄になるので、保険会社が鑑定委員会の判断を量する、﹂とも重要と菱・保険会社にとっても二五苦部
     ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                ’︵都法四十五−一︶  七七
                                             七八
                                               ユ
で事件を処理するよりも第三者機関である鑑定委員会を利用することによって、手続の公正さを担保できる。保険会
社は、鑑定委員会の判断を原則として尊重しているが、診療過誤と損害発生との因果関係の認定、鑑定人の資質、鑑
定委員会の判断に保険会社が異論を述べる機会が保障されていないこと、鑑定手続の遅延などに対して不満を持って
      ︵12︶
いるようである。
 特別な事案︵三件︶とは、裁判上の独立証拠調べが行われた場合、医師が鑑定委員会の判断を承認していない場合、
保険会社による具体的な和解交渉中に当事者が訴えを提起している場合である︵表314︶。
 保険会社が支払った賠償金額の大部分は、千マルクから二万マルクまでの範囲内である︵一一四件︶︵表3−5︶。
最高額は、一〇〇万マルクであり、産婦人科および神経外科などの専門の鑑定人は、胎児の生存の可能性を高めるた
                        お 
めに適切な帝王切開を医師が怠ったことを認めている。保険会社がドイツ全土の病院で生じた医療事故で年間に支
払った賠償額は、一九九一年度において八、一〇〇万ユーロ︵約一〇五億三、○○○万円︶であったのが、二〇〇三
                         ハぜ
゜年度は四億ユーロ︵約五二〇億円︶に達しているようである。
 診療過誤を認定した鑑定委員会の判断を実現するために、当事者が損害賠償請求を裁判所に提起しているのは、七
〇件︵一八二ニパーセント︶に過ぎない︵表3−4︶。訴えの理由としては、請求の理由をめぐって相手方が争って
いる場合︵三七件︶、具体的な損害賠償額について、当事者間で争いがある場合︵二二件︶、保険会社が賠償金の支払
いを拒絶した場合︵一件︶、鑑定委員会が判断を示す前に訴えを提起した場合︵二件︶、不明︵一〇件︶である。
 鑑定委員会が診療過誤あるいは説明義務違反を否定あるいは確定しなかったにもかかわらず、保険会社が賠償金を
支払ったのは、僅か八件に過ぎない。鑑定委員会が診療過誤あるいは説明義務違反を否定している場合に、裁判所に
訴えが提起されているのは六三件である︵表3−6︶。既に第一審手続が終結しているのは、一八件である。請求棄

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表 ぱ表 α表
籔却が一四件︵七八パーセント︶、訴えの取下げ
、                員終% が二牛である。患者の権利が完全こ認められた
で6    f     、       ー
綻8のは、僅かに亘である︵表ー7︶・敗訴す
   れば、鑑定費用、裁判手数料の他弁護士費用も  −、

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三三件︵申立件数の二二・ニパーセント︶に過
1


の覆
麟決     ’  ご  的である医蕩争について裁判外で解決する、﹂
 鑑   ゜      °              ・ とを文字通り実践していると評価できる。さら

                                         く                         ’
に、当事者が裁判所に訴えを提起した場合にも裁判所が、鑑定委員会の判断を覆しているのは、六件︵一パーセント︶
に過ぎず、鑑定委員会の判断を結果的に支持しているといえる︵図1︶。
 一九八七年五月一九日に連邦通常裁判所は、鑑定委員会あるいは調停所の手続において示された鑑定意見につい     ,
ドイッにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続     −          ︵都法四十五ー一︶  八一
八二
て、書証として裁判上取り扱い、鑑定意見に対して疑いがある場合には、裁判所は新たに鑑定人を選任し、明確にし
            ︵16︶
なければならないとしている。
 二〇〇二年一月一日から施行されている民事訴訟改革法では当事者間での和解的解決のために、裁判所が当事者に
和解的弁論を行うことを規定している︵二七八条︶。既に鑑定委員会あるいは調停所の手続において示された診療過
誤の判断について当事者間に争いがある場合には、裁判所が再度調停を勧試することは意味がないので、行う必要は
 ︵17︶
ない。
︵ 1 ︶ ≦ Φ冨Φ一uP騨b°亘゜O◎。°
︵2︶ ≦Φ旨9P①b°
  伊藤眞教授は、裁判所の専門的知見獲得について、第一に裁判体の構成員である裁判官が自らの実務経験や学習によって
  知見を獲得・集積する、第二に、裁判所の補助者を通じて獲得する、第三に、証拠調を通じて獲得する方法に分類されてい
  る︵伊藤眞﹁専門訴訟の行方﹂判タ=二四号︵二〇〇三︶一二頁︶。杉山悦子﹁民事訴訟と専門家︵一︶1専門家の訴訟
  上の地位と手続規律をめぐってー﹂法協一二〇巻四号︵二〇〇三︶六三九∼六四〇頁も参照。
︵3︶Oo§“9Φ﹂ぎ昌合巴O已冨。宮Φ鼻o自巨゜。°。δ器コ旨Oo。。巨﹂口宮ξ゜・°。百巴①見2乏一⑩。。一ふお心。⋮bd。号呂ξo。巨O家§巨Φ・・∨音阜
  合o田O巨R罫07戸日OQ力o巨旨宮ξ゜。ω8 豊−弓90ユΦ⊆うユ写琶゜。Φ日Φ゜。ζoq巴。。u<Φ﹃。。國﹂⑩◎◎心o“◎Q°品Φ︵品O︶°
︵4︶≦魯。吉③pO‘。力゜8⋮ロ。号g烏゜。弓△§含募゜。三゜①◆P。力゜品ピ
︵5︶冨∈pb。8×弓ユ゜。目旨。5亘゜。。巨・宮ξ昌゜。﹃。5。Φ﹃巴Q§§“。,。己日巨。ζc°・穿Φ巨゜・9①切ざ§藝ふ08°。。°ピ
︵6︶調停所あるいは鑑定委員会の判断に対する保険会社の対応、提訴状況などを分析した文献として、呂良巨m切“o。。巨9°。日c。官5
  N雲日切Φ﹃o帥合9﹃﹀冨日葺∈頃 o力o 巨O出③9P一⑩o。♪o力﹂㎝三≦Φ富巴“p騨゜OこQ◎°ごごZΦ巨曽戸民0585日呂巨ω国昌− 
  °。合Φ置巨頃o白くoづO巨8宮o井o冒゜。。。δロΦ豆家Φユ國NO8∨Q。O嵩⋮切o巳Φうげ巨o。︹5αζ巴θ巨o。。“PPOこc力゜やト。Φなど参照。
︵7︶畔柳達雄﹁ドイツにおける﹃医療事故鑑定委員会・調停所﹄管見︵続報︶﹂法の支配=一号︵一九九八︶一〇八頁以下
  に紹介がなされている。
 ︵8︶ ≦o富Φ吉旬゜PO‘°力゜一c。°。°
 ︵9︶≦Φ9㌃゜①b‘°。°匡o°
 ︵10︶ ≦Φ烏Φ一“Pg°○°b°一畠゜                           、      °              ’
 ︵11︶≦晋Φ炉③PP。力゜一︽︽°  ’
 ︵12︶ ≦Φ冒o一“①輻○‘°力゜一ま゜                “ 、.       .           〆
・︵13︶ 一九九〇年度に行われたノルドライン鑑定委員会の追跡調査で、保険会社が支払った件数︵七二件︶よりも大幅に増加し、
−、 支払いの最高額︿四∴万マルク︶も大幅に増加している︵畔柳・前掲注︵7︶一〇八頁注︵9︶参照︶。
 ︵14︶ b。o品日巴5”冒o§夢良∈頃ふ﹀巨亘N°   ’ ・・
 ︵15︶ ハンブルクの消費者相談所︵<Φ吾日⊆合m7NΦ2巨o出旬∋ぴ烏σ。Φ≧“︶は、一九八八年から一九九五年までに北ドイツ調停所
   に申し立てをした六三人の患者に対して、アンケート調査をしている。回答した当事者の七五パーセントが、北ドイツ調停
、 所の手続への不満を示している。患者に不利な鑑定が示されると提訴を思い止まると指摘している︵○﹃o日05 =o鼻巴 ︹50
   寄m巨o亘≦2ω合゜。o巨合9つ§°。合窪﹀日=50勺昌Φ2∨“︽°﹀ピ邑゜bO8、o力゜一一︶。                  、
    ハンブルグの公共怯律情報および和解所︵Oぼづ巨各Φ5国Φ合冨①已゜・犀§°。ー巨ユ︿o邑巴o房゜・け巴05︵OΦ口﹀︶については、岡崎
, 克彦﹁ドイツにおける裁判外紛争解決及び法律相談制度の実情︵3︶・完﹂判時一七二七号︵二〇〇〇︶二六頁、波多野雅子、
  .﹁裁判と裁判外の紛争解決制度との関係﹂判タ六一九号︵一九八六︶二二頁、木川統一郎11吉野正三郎﹁法律相談と法律扶
   助﹂判タ四七一号︵一九八二︶四五頁など参照。
 ︵16︶ 右腕の脈管撮影をした後に血栓症になり、右腕の切断を余儀なくされた患者が脈管撮影をした医師などに対して損害賠償
   請求などをした。第一審は原告の請求を棄却したが、第二審は請求を認めた。連邦通常裁判所は、第二審が鑑定委員会およ
   び調停所で示された鑑定意見に基づいて、脈管撮影後、遅くとも二四時間以内に適切な処置をしていれば、血栓症を予防す
   ることができたと判断したことに対して、鑑定委員会および調停所の鑑定意見は、書証として取り扱われ、被告に診療過誤
   を証明するのに十分な判断基礎とは認めることができず、鑑定意見に対して疑いがある場合には、裁判所は新たに鑑定人を
   選任し︹明確にしなければならないとして、第二審の判断を破棄した︵切Ω匡Z⇔フ<]°⑩o◎や“トo●◎OO︶。。。8巨o白9ー↑Φ甘9良N勺ON一゜
   ﹀巨こ一〇㊤P︿o﹃ゆ︽Oト。國Nひ︽ NO Φ5N勺Ob。。。.﹀邑﹄OOぷ●︽Ob。謁N°昆゜e口○民Z㌔一Φ⑩べc。O㊤Oも参照。     、
 ︵17︶o。旨ゴ巨o°。冨穿。捧冨合目①゜言o>巨.ふ8ω葛弓e°。⋮b。①昌9葺≧9亘胃OΦ一﹀巨三〇〇c。“●心。や゜。二N呂Φ烈N8ふc。
   ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                 ︵都法四十五ー一︶  八三
八四
﹀已戸ト。OOb。㌫賠◎。°同法については、勅使河原和彦﹁心。OO〒心。OO心。ドイツ民事訴訟法改正について﹂早法七七巻三号︵二〇〇二︶
二〇七頁、二五六頁、八田卓也﹁二〇〇一年ドイツ民事訴訟法改正について﹂法政七〇巻三号︵二〇〇三︶一五二頁など参
照。
五 医療紛争の裁判外紛争処理手続の問題点
 医療紛争の裁判外紛争処理手続は、任意性、強制力のないことから、調停所および鑑定委員会は、それぞれ自由に
手続を構築してきたので、裁判手続で当事者に当然認められている権利について、調停所あるいは鑑定委員会の規則
                             ︵1︶
に明確に規定されていないため、以下のような批判がなされている。
         ︵2︶
1 審尋請求権の保障
 ドイツ基本法一〇三条は、判決を下す前に事実および法律問題について、当事者に見解を表明する機会を保障して
いる。基本法九三条に依拠して、審尋請求権は、裁判上の手続に適用されるのみであり、裁判外紛争処理手続には適
         ︵3︶                                                          ︵4︶
用されないとする学説と手続の基本として裁判手続だけではなく、裁判外紛争処理手続にも適用されるとする学説に
分かれている。医療紛争の裁判外紛争処理手続を当事者が利用するかは、任意であるが、調停所あるいは鑑定委員会
は、患者と医師の信頼関係を維持・修復する目的を有し、患者と医師に対する公正・公平な判断機関であることから
審尋請求権を保障すべきである。
 通説は、審尋請求権の具体的な内容を情報の提供、見解表明、判断︵o。[①芦50。5昌∋o︶に対する配慮︵ロΦ巳。冨︹
                 ︵5 ︶
畠蔚已編︶の3段階に分けている 。
 ︵1︶情報の提供
 調停所あるいは鑑定委員会の手続過程において、,両当事者が十分な情報を共有することが必要である。したがっ
て、鑑定結果しか当事者に伝えられないなら、当事者の手続保障としては、十分とはいえない。当事者が見解を表明
するには、重要な情報を当事者に提供することが必要となるからである。そこで、乞o冒Φ一は、委員会の人的・財政
的事情を考慮して、当事者が委員会に書面を提出し、委員会がそのまま相手方に手渡すことによって相手方に必要と
なる生の情報を完全に伝えるか、一定の期間、当事者に医療記録を閲覧させることによって、委員会に負担をかけず,
                           ︵6︶
に法的審問を当事者に実質的に保障しうることを提案している。
 委員会から診療過誤について鑑定することを委託された鑑定人に関する情報は、当事者に開示しなければならない
重要な情報である。ヴェスト・ファーレン・リッペの鑑定委員会の鑑定人は、匿名で鑑定書を作成していた口,一九九
八年八月一三日にノルドライン・ヴェスト・ファーレン上級行政裁判所はぺ鑑定委員会が医師の責任問題について判
断しているので、公法上の団体であり、鑑定委員会の委員長および鑑定した医師の氏名を匿名にすることは、法治国
                         ︵7︶
原理から導かれる行政行為の公平性に違反すると判断した。そこで、ヴェスト・ファーレン・リッペ鑑定委員会は、
鑑定人の匿名性を廃止し、当事者に委員長と鑑定人の氏名を明らかにしている。現在では、全ての鑑定委員会および
                                     ︵8︶
調停所では、責任のある医師の鑑定人の氏名を当事者に明らかにしなければならない。鑑定人に対するいわれなき忌
避による手続の遅延を避けるために、鑑定人を忌避する場合には、.期日を定めて、当事者が正当な理由を示す必要が
 ︵9︶
ある。、         ’
︵2︶見解の表明、,      ,    ︶
  ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                 ︵都法四十五ー一︶  八五
八六
 患者と医師の信頼関係を維持・修復させるという委員会の目的を達成するには、当事者を単に手続の対象として扱
うのではなく、手続の主体として、当事者の見解を積極的に表明する機会を保障することによって、裁判外紛争処理
手続の判断の実効性を高めることが重要である。全ての事項について、当事者に見解を表明させることは、手続が遅
延するおそれがあり、当事者の合意を過度に強調することには問題がある。そこで、司o良Φ一は、判断が結果的にあ
る程度遅れても正当化されるような重要な事項に限定して、見解を表明する機会を当事者に付与すべきであるとさ
 ︵10︶
れる。具体的には、鑑定人に対する発問権︵北ドイツ調停所規則五条二項、バイエルン鑑定・調停所規則四条七項︶、
鑑定人に対する見解表明︵北ドイツ調停所規則五条二項、バイエルン鑑定・調停所規則四条七項︶を付与することが
                  ︵11︶                            ︵12︶
必要である。鑑定人の専門性に対して、患者だけではなく、保険会社も不満をいだいているからである。
 さらに委員会の判断に対して異議権などの見解表明をする機会を付与することが重要である。異議権は、患者と医
師との紛争を解決するという医療紛争の裁判外手続において重要な役割を有しているが、調停所または鑑定委員会の
判断に対して、当事者に異議権を認めているのは、北ドイツ調停所︵北ドイツ調停所規則五条四項︶、ザクセン調停
所︵ザクセン調停所規則九条︶、ノルドライン鑑定委員会︵ノルドライン鑑定委員会規則五条四項︶などに過ぎない。
調停所あるいは鑑定委員会の判断の根拠が不明確である場合、当事者の主張が正しく評価されでいない場合に、当事
者に異議権が保障されていなければ、紛争を解決することができないので、後は保険会社との裁判外の交渉あるい
は、当事者が裁判を提起する他はない。このように委員会の労力を無に帰すことを回避するには、当事者に異議を述
べる機会を付与することが必要である。そこで、≦o良Φ一は、実務の運用として当事者に異議権を認めているのでは、
                                      ︵13︶
当事者の保護としては不十分であり、委員会の規則などで明確にする必要性を説いている。
  書面主義とロ頭主義
 医療紛争の裁判外手続は、原則として書面主義である。口頭主義も鑑定委員会の規則上は認められている︵ノルド
ライン鑑定委員会規則九条一項二文、北ドイツ調停所規則五条一項二文、バーデンヴュルテンベルグ鑑定委員会規則
六条二項、ラインラント・プハルツ鑑定委員会規則六条二項など参照︶が、実際にはほとんど行われていない。書面
主義に対して・不誠実な医師に対して・反論する機会が覧られていないなどの患者からの批判薮㌍。頭主義の
         ・    ︵15︶
導入を支持する学説も存在する。しかし、口頭主義を採用すれば、患者と医師の双方が出頭しうる期日を調整する必
要があり、時間と費用がかかること、医療過誤の有無を判断する決め手は、カルテ、手術記録などの医療記録であり、
口頭王義を採用するか、あるいは書面王義を採用するか、によって、結論は異ならないなどの口頭主義への反批判も
強い。
 二〇〇一年七月に開催された全国の調停所と鑑定委員会の常設会議において、当事者の手続への関与をできるだけ
広く認めるという観点から、鑑定人の任命、鑑定人に対する定型的な質問を当事者に認めるほか、調停所および鑑定     −
                                  ︵16︶
委員会において、判断を示す前に口頭主義を試験的に採用することが提案された。ノルドライン鑑定委員会は、口頭
主義を試験的に採用したが、医療記録に基づいて実質的に判断され、紛争の解決が遅延したことから、結局、その後、
           ︵17︶
口頭主義は採用されていない。               .
 これに対して、バーデンヴュルテンベルグ医師会に所属する一部の鑑定委員会では、規則の文言通り、口頭主義が
          ︵18︶                                                      −
採用されているようである。具体的には、カールスルエの鑑定委員会においては、関係人に診療経過、医学上の事実
関係を質問する必要がある場合に口頭主義が採用されているようである。さらに、シュトゥヅトガルトの鑑定委員会
においては、口頭主義を原則として採用されており、事実関係の解明が期待できない場合にのみ口頭主義を採用して
いない。シュトゥットガルトの鑑定委員会においては、疑義のある問題について判断し、様々な専門的な意見につい
   ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                ︵都法四十五ー一︶  八七
八八
ても議論されている。カールスルエの鑑定委員会では、口頭主義について、しばしば不毛な場合があるが、事実関係
                             ︵19︶
を明確にするだけではなく、医師の誠意を示すのに資するとしている。バーデンヴュルテンベルグにおける鑑定委員

会の一部が口頭主義を採用しているのは、事件数が少ないからであり、調停所および鑑定委員会の事件数が不断に増
加していることを考慮すると、口頭主義を採用すると手続が遅延するおそれがあり、ノルドライン鑑定委員会など多    ’
数の見解は、口頭主義を採用することに対して消極的であり、北ドイツ調停所では当事者の手続保障の観点から異議
      ︵20︶
権を認めている。しかし、綱①﹂N巴は、口頭主義を採用することにより、医療紛争の裁判外紛争処理手続の公正さ、
透明性を確保するのに資するだけではなく、情報提供権および見解表明権を実効化し、結果的に当事者が調停所ある
                             ︵21︶
いは鑑定委員会の判断に拘束されることを正当化すると主張している。
︵3︶判断に対する配慮
 申立て、手続開始の段階だけではなく、鑑定人が鑑定意見を当事者双方に明確に示すなど、手続の進行過程に応じ
て、当事者の理解を得られるように配慮することが必要である。≦Φ9一は、北ドイツ調停所の手続は、このような
                         ︵22︶
当事者への配慮がなされているとして、高く評価されている。
2 手続の不統一
 ドイツにおける医療紛争の裁判外紛争処理手続は、調停所と鑑定委員会に大別され、さらに具体的な手続がそれぞ
れの医師会で異なっている。当事者は、医師が所属する医師会が設けている裁判外紛争処理手続しか利用できないの
で、医療紛争についての具体的な裁判外紛争処理手続が互いに異なることによって、当事者にできるだけ不利益を与
                            ︵23︶
えないように配慮する必要がある。手続の統一を唱える有力な学説も存在するが、医師会がそれぞれ独立し、各々の
調停所および鑑定委員会の独立性も極め℃高く、取り扱い事件数も異なるので、手続を統一することは非現実的であ
       ︵24︶
ると考えられている。その代わりに、毎年一回、七月に全国の調停所と鑑定委員会の常設会議を開催し、統計などに
よるそれぞれの調停所および鑑定委員会の活動状況および鑑定人の質の問題などについて互いに意見交換をしている
      ︵25︶
ことが注目される。
 二〇〇三年の常設委員会では、統一的な統計を新たに構築することが議論されている。従来の統計のように利用実
績を示すだけではなく、むしろどの専門分野に医療過誤が多いのか、全国の調停所と鑑定委員会が互いに協力して、
統一的な数値を示し、危険性の高い専門領域を特定することによって、医療過誤の予防をより確実にすることを目指
   ︵26︶                            ’                          ︵27︶
している。調停所および鑑定委員会に申し立てられている事件は、外科、整形外科、婦人科に集中しているようであ
り、今後の統一的な分析の成果が期待される。
 3 医師の身内・同業主義
  鑑定委員会は、公正な鑑定を行う機関として各医師会に設置されている︵ノルドライン鑑定委員会規則一条一項、
 バーデンヴュルテンベルグ鑑定委員会規則一条一項、ザールラント鑑定委員会規則一条三項など参照︶が、診療過誤
 が問題となっている医師と同じ医師会に所属する同僚が判断するので、医療紛争の裁判外紛争処理手続の中立性・独
       ︵28︶
・立性が問題となる。調停所あるいは鑑定委員会は財政的には医師会に依存しているものの、人的な関係では独立して
 いる。さらに、鑑定人の中立性が問題となる場合には、民事訴訟法上の鑑定人の除斥・忌避事由︵四〇六条︶が準用
されている︵北ドイッ調停所規則五条二項、ノルドライン鑑定委員会規則八条など参照︶。特に、北ドイッ調停所は、
    ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                 ︵都法四十五−一︶  八九
                                             九〇‘
                      
鑑定人のおよそ九割を外部の医師に依頼している。調停所あるいは鑑定委員会が診療過誤あるいは説明義務違反を認
定しなかった場合に裁判所が調停所あるいは鑑定委員会の判断を覆す場合は、提訴された二割程度しか存在せず、裁
                             
判所も調停所あるいは鑑定委員会の判断を結果的に尊重しており、≦Φ冒。一は、調停所あるいは鑑定委員会の判断が
                              
公正・公平性を欠くという批判は、説得力がないと批判している。
4 病院の関与が予定されていないこと
 調停所あるいは鑑定委員会は、医師と患者が関与するのが原則である。これらの機関は、医師会がもともと創設
し、医師会に所属する医師が手続に関与することのみを規定しており、病院などの医療機関自体が関与することは予
淀されていない。医療機関の関与は、それぞれの医師会によって異なっている。北ドイツ調停所は、一九八一年に規
則を改正して、保険に加入している病院の関与を認めている︵二条二項d︶。
 病院が保険に加入していなければ、個々の医師に裁判外紛争処理手続は収敏されてしまう。病院などの医療機関自
体にも医療過誤の責任が認められるような場合には、医療機関が裁判外手続に関与しないのは、適切といえるかが問
題となる。医療の専門化、医師・医療機関と患者とのコミュニケーション不足による病院に対する訴訟が増加してい
るからである。
 調停所あるいは鑑定委員会の手続が開始した場合に、医師に対する責任賠償請求の時効が中断するかが問題とな
る。一九八三年五月一〇日に連邦通常裁判所は、一九七八年一月一日から施行されている旧民法八五二条二項の改正
以前には、調停所あるいは鑑定手続の手続が開始しても時効は中断しないが、そのような手続の過程あるいは手続の
終結後不当に短期間に医師が時効を援用することは、信義則違反となる︵民法二四二条︶と判断した。さらに傍論と
    して、・︵旧︶民法八五二条の施行後に、仲裁手続だけではなく、医師が関与している純粋な鑑定手続についても時効
@の停止が認められると判断趨・これに対して・援機関が調停所あるいは鑑定委曇の当事者として関与しなけれ
@ 
     

@  ば・時効停止の禦は生じ蕊・壽①ぼ・調停所あるいは鑑定委員会の任意性の讐⋮から医療機関を強制的に参加、
.                                                 ,’‘               ︵34︶                  .タ
     させるのは、問題があり、実際の手続を遅延させる危険が存在すると指摘する。
      旧民法では、契約については、三〇年︵旧民法一九五条︶、不法行為については、三年の時効にかかっていた︵旧
     民法八五二条︶が、二〇〇二年の民法改正により、契約か不法行為かを問わず、時効期間は三年︵民法一九五条、一
    九九条︶に統一されて誌・調停所あるいは鑑定委員会に申し立てをすると時効の停止が認められる︵民法二〇四条
一項四号、八号︶。
    ︵1︶ 08日Φ5=o己Φご50昏昌o庁“≦2°・o °。合o葺gN註゜。合oコ﹀旨d巨己田江巴鼻︽°﹀戸邑こト。08”o◎°一N・
    ︵2︶ 審尋請求権については、中野貞一郎﹁民事裁判と憲法﹂講座民事訴訟法一巻︵弘文堂、一九八四︶一四頁、鈴木忠一﹁非
                             へ
      訟事件に於ける正当な手続の保障﹂﹃非訟・家事事件の研究﹄︵有斐閣、一九七一︶二九九頁以下、バウァー11鈴木正裕﹁ド
      イツ法における審尋請求権の発展﹂神戸法学雑誌一八巻三・四号︵一九六八︶五一ご頁へ紺谷浩司﹁審問請求権︵旨゜。b日合
      旬己冨○巨﹂oゴm°・Ωoゴ障︶の保障とその問題点﹂民訴雑誌一八号︵一九七二︶一四三頁以下、三ヶ月章﹁訴訟事件の非訟化とそ
     タの限界﹂民事訴訟法研究五巻︵一九七二︶,九七頁など参照。       、   ・   .  −
    ︵3︶ 呂旨o亘○ρ一Φ◎。c。“﹀艮一8國9﹃°ふ            、    ・   ’                     ・   −
    ︵4︶§邑ξ占。巨●丁駕目βoρ巨゜§﹀げむ・°§㎝豆o。巳゜・6ゴ巨o冨[巨Φ。・°§[け鯵ξ。・﹃。。耳o昌§。。。558冨宮Φ−
’   ・.  合∈頃“O暮①合97ピ5ユQ力合o耳ξ切゜。9 oロc。﹀亀二一㊤。。Q。“。◎°一N。。⋮≦m冒Φど陀pO°ug。°心。㎝゜       “
    ︵5︶§巨邑ξ−。。。己O㌣≧旨費5るρ﹀詳゜さc。﹀げω゜完NΦ㊤辿Φ陪一“曽゜旬゜ρw。。°ト。O°
    ︵6︶≦Φ9一”C.P°力゜心。o°
    ︵7︶ 腎臓疾患の患者に対して、透析などの適切な治療が行われたか否かの鑑定がヴェスト・ファーレン㌦リッペ鑑定委員会に
ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続  ゜              ︵都法四十五ー一︶  九一

九二
  申立てられ、同鑑定委員会は、医師の過失責任を認めた。患者は当該医師に対して損害賠償の訴えを提起した。鑑定委員長
  および鑑定人の氏名が匿名であったので、医師は情報提供権に基づいて、鑑定委員会に対して氏名を明らかにすることを求
  めたが、鑑定委員会が拒絶した事例である︵○<○プコ<“]≦Φ巳囚一q⊃⑩o◎“Oや︽︶。
︵8︶ ロm品日碧βO信﹀﹃N日良∈眞Q。°宗O°北ドイッ調停所規則五条二項など参照。                       ’
︵9︶ ノルドライン鑑定委員会の運用である︵二〇〇四年二月一三日にノルドライン鑑定委員会の9§日委員長および
  ω日窪汗o≦°。匠事務総長に対する聞取調査に基づく︶。≦o日Φ一“p③bこ゜力゜b。やも参照。
︵−o︶冨邑自昌占。巨口㌣嵩日§“oρ巨゜§﹀げ゜・完・°。。O口・°°。?≦Φ冒鼻ppP。。°ト。°。⋮°。g巨。白買胃O<°邑N°。宕ξおも
  参照。
︵11︶ 北ドイツ調停所に申立てをした患者に対するアンケートでは、特に整形外科、救急外科、耳鼻咽喉科、脳神経外科の分野
  において、診療過誤を否定する特定の医師に鑑定が集中していることに疑義がもたれている︵○苫巨①5出o昆Φ︼弓巳古㏄巨6ゴ“
  ①.①゜O°“c力゜ト。㊤.︶
︵12︶ ≦Φ富Φ吉騨゜PO二〇◎◆一冷゜
︵13︶ ≦o§吉PPPQ力OPOo巳゜。oゴ巨江呂9吟巨㊦ぷ﹀旨任葺ξ゜。﹃Φ9ρQ◎°一トoや゜
︵14︶ O田ヨβ国Φ鼻巴巨ユ日昌各三’知b°“◎◎°トo一亘゜心。◎。°
︵15︶   綱 Φ 冒 Φ 吉 P ① b こ ω ゜ ω c 。 °
︵16︶ 二〇〇四年二月=日にドイツ連邦医師会の法律顧問じ。碧9蚕ロo∋2氏から提供された資料による。
︵17︶ ノルドライン鑑定委員会のP③E当委員長および゜力日mロ汗o≦°。ぽ事務総長に対する聞取調査に基づく。
︵18︶ チュービンゲンにおいても、口頭主義が採用されているようであるが、フライブルグでは採用されていないようである
    ︵ 妻 o冒Φ吉p餌゜O°“o力゜ωご。
︵19︶ 綱Φ冒巴餌如OこQ力゜Q。心。°
︵20︶。力口9暑99巨αZΦ∼020力吟m 碧司Φ詳く80。合。耳ξ巨●法Φ合①葺8σ露内o員8ロN目゜。oゴ巴霊92巨江§戸く2°
  ト。OOト。“°。8﹄碧∋ノルドライン鑑定委員会委員長および゜。日雪完o笥乙。匠事務総長に対する聞取調査に基づく。
︵21︶≦。9㌧PP豆。力゜ω。。一〇Φ巨。・9巨O呂讐巨6°・“§日鯵∈傷﹃Φ69Φ旨5合認雪葛8宮゜。廿﹃Φ合ξ“Ω暮③987巨創゜。。巨合自品゜。°。置‘
  訂Po 力 ] ト o ﹃ °
   ︵22︶ ≦09一−P①゜PQ。°c。ふ
   ︵23︶ O巴雷合已己呂§巨①゜。∨P③゜OこQ力゜一心。㎝゜
   ︵24︶箒9吉pp豆゜力゜c。㎝゜                 、              、
   ︵25︶ ロo∋。﹃ドイツ連邦医師会法律顧問から提供された資料による。             °     、
   ︵26︶ 切o∋2ドイツ連邦医師会法律顧問から提供された資料による。
   ︵27︶昏・冨゜。N篁。。。9巨ユ。,。冒∋昌POδ頴艮σ。蚕古く8ロ。ゴ碧合弓゜・狩巨‖。§崇づ5.口2箒合旦く。誘巴㊤q⊃べω゜﹄ト。o︵畠゜。︶⋮
     切Φ口6耳OoΦ<自む。声5巳σ゜・ユo﹃ざ古冨自∋2司Φ゜。吟宣o〒巨O冨NOOト。“°力゜O㎝など参照。    −

   ︵28︶≦⑦9一三゜①゜ρo。°ωご○﹃o巨旦国Φ昆Φご5△日軸巨6戸C°ρ○力右心。㎝ 国●Φ︸①己戸゜力。一げ゜。[<Φ自芦△巨゜。“雪題2畠ど日O<⑦﹃宣弓雪乙。宮§°。
     ︹5qoQo巨↑合ひξ乙。切9 Φロ一㊤o。o。亘゜◎◎一ト。一旨゜。90a9﹃○﹃060°。o冨OoPOo﹃oD豆oσ亀Φ一Q。o。\一㊤㊤ベ一8︵一q⊃心o︶°
   ︵29︶ 。。。冨90訂三50ZΦ子02。力θΦ mづき詳く8む。合6宮巨σq旨ユ呂09豊8げ巴民o巨吟窪N目゜。oプ窪雷試①2巳己§︹︿oぴ図b。08
↓     c。qっ゜。°
   ︵30︶ 本論文四2参照。
                                   ﹀
   ︵31︶ 宅Φ9一“P③゜P°力゜e°
   ︵32︶ Z≧一⑩。。円b。O誤゜○↑OO己゜。ωo一〇〇﹃守Φ窃ロ一⑩゜。◎恕貞起Φ︶三↑○05雪ぴ已o。“Zヨ一㊤Φc。“N⑩Φべ心。㊤㊤゜。も参照。
   ︵33︶c。。合昌編巨ユ§暮巨口音巨・ゴΦ○旨9§下弓㌫゜巨。宮已編゜・°。邑゜〒目Φ92邑写琶゜。Φ§°。害鳳①量く°°・巴Φ゜。N三c。ω゜
   ︵34︶ ≦eΦP知゜Pρ乙力゜畠゜        、
   ︵35︶ 二〇〇二年の民法改正については、,半田吉信﹃ドイツ債務法現代化法概説﹄︵信山社、二〇〇三︶が詳細である。
  六 おわりに
   ドイツにおける医療紛争の裁判外紛争処理手続は、調停所と鑑定委員会に二分され、具体的な手続の細部について
  もそれぞれの調停所、鑑定委員会によって異なっている。しかし、診療過誤、説明義務違反、因果関係の有無などに
                                                        
 .関して、医師が医学的な見地から事実を認定し、法律家が法律問題を判断している点では、,本質的な差異は存在しな
  い。具体的な損害賠償額についでは、患者と保険会社との直接交渉あるいは裁判による最終的な解決に委ねられてい
     ‘ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続   −、            ︵都法四十五ー一︶  九三


九四.
る。医療紛争について、診療過誤、医師の過失、患者の損害発生、因果関係の存在などの実体上の請求権をめぐる問
題と具体的な損害の金額の双方について、争いが存在する場合に、双方についての審理を並行して進めると、請求の
原因が存在しないことが判明した場合には、損害の数額についての審理は全く無駄に帰してしまう。ドイツにおける
医療紛争では、原因判決に相当する部分を調停所または鑑定委員会の判断に委ねていることが注目される。ただし、
調停所または鑑定委員会の判断には、拘束力がない。たとえば、胎児の脳損傷の事件などのように複雑で、損害額も
高騰する事件類型については、具体的な損害賠償額の認定とは切り離して、診療過誤の有無に集中して判断する方が
紛争の迅速な解決に資すると考えられる。我が国の医療訴訟においても、診療経過等の事実関係に関する書証と損害
                      ︵1︶
の立証に関する書証を分けて提出するようにしている。
 ドイツでは\各州の医師会が裁判外紛争処理手続を運営しているので、産婦人科、外科、整形外科などの医療過誤
の多い専門分野を特定し、危険情報を医師・医療機関に迅速にフィードバックすることも容易である。
 調停所あるいは鑑定委員会の手続は、無料であり、当事者の主張も裁判手続のように厳格ではなく、医療記録など
必要な証拠も調停所あるいは鑑定委員会が収集している。さらに、当事者が調停所あるいは鑑定委員会に申立てをす
ると時効の停止効も認められている。ドイツにおいても家族法、社会保障の領域と比較して、医療紛争においては、
                     ︵2︶
弁護士の専門化が進んでいないとされているので、患者と医師の間に紛争が生じた場合に、診療過誤の有無を医師と
法律家が協同して公正に判断する調停所あるいは鑑定委員会を利用するメリットが認められる。このように医療紛争
を裁判外紛争処理手続によって解決する積極的な誘因が認められ、年間の総申立件数もドイツ全国で一万件を超えて
いる。調停所および鑑定委員会の実効性を高めるために、専門に応じて、優れた医師および法律家を揃えており、医
師会あるいは保険会社が多額の資金負担をしていることにも留意する必要がある。
 調停所あるいは鑑定委員会を利用するかは、当事者の自由意思に委ねられているので、医療紛争専門の弁護士の中
には、むしろ医師、医療機関との直接交渉を好む場合がある。調停所あるいは鑑定委員会の判断の公正、妥当性に疑
問を持っているだけではなく、書面主義のため、湘手方との直接交渉と比較して、弁護士の果たす役割が少ないから
で曇・
 調停所および鑑定委員会が書面主義を採用してい’ることに対して、医療紛争の裁判外紛争処理手続の公平・公正
性、透明性の観点から鑑定人に関する情報を当事者に開示すること、鑑定人に対して、当事者が見解を表明する機会
を与えること、鑑定に対して当事者の異議権を保障することが指摘されている。’当事者の手続保障を実質的に担保す
るためには、書面主義から口頭主義に転換すべきであると唱える少数説もある。調停所および鑑定委員会の役割が診
療過誤の認定という客観的な事実を中心としているので、当事者の主張よりもカルテ、手術の記録などの書証が決め
手となること、口頭主義を採用すると手続が遅延するとして、多数説は書面主義を支持している。
 ドイツにおける医療紛争の裁判外紛争処理手続は、もともと患者から医師に対する賠償責任訴訟が増加したことに
対応して設立されているので、個別の医師と患者を対象とするのが原則である。しかし、医療の高度・専門化によ
り、開業医よりも病院などの医療機関に対する訴訟が増加しており、病院のリスクマネジメントなどを勘案すると
個々の医師だけではなく、病院の責任者も同席する方が望ましい場合も多いのではないかと考えら麩・
我が国に講る裁判外の医療紛争処理制度としては、呆医師会の日本医師会医師賠償責任保険の賠償責任妻会
制度が存在する。我が国の医師会は、‘ドイッの各医師会とは異なり、強制加入ではなく、任意加入であるので、両国
の医療制度の前提は大きく異なる。     ,       ・・      −
 ドイツの調停所あるいは鑑定委員会は、患者、“医師双方の申立てを認めているのに対して、我が国の賠償責任審査
   ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続                 ︵都法四十五−一︶  九五
九六    、
会制度は患者から損害賠償請求された被保険会員である医師の申出によって開始され、患者側からの申出は原則とし
て受け付けていないことも異なる。さらに、我が国の賠償責任審査会では、保険金の額まで決めているが、ドイツで
は、請求原因しか判断しておらず、損害賠償までは原則として判断しない。
 審査会の手続が診療記録と担当医師からの報告書に基づいて書面主義で行われている点で、ドイツにおける調停所
あるいは鑑定委員会の手続と共通する。しかし、患者は当事者とはならないため、患者への情報提供、審査会への見
解表明、異議などは全く保障され て い な い 。
 ドイツにおいても患者と医師とのコミュニケーション不足、裁判外での和解交渉が失敗して、紛争が裁判所に提起
                                                   
されていることが指摘されており、患者と医師との信頼関係の維持・修復するプロセスの重要性が説かれている。し
かし、調停所あるいは鑑定委員会の役割はあくまでも診療過誤の認定を中心としており、手続も書面主義である。ハ
ンブルグ大学病院では、オンブズマン制度により、患者の医師・医療機関に対する苦情処理手続を設けている。この
                                           
ようなコミュニケーションを改善する方策は、ドイツにおいてもまだ始まったばかりであり、患者と医師との信頼関
                                
係の維持・修復に調停が果たして機能しうるかについても議論がある。
 今後、我が国において医療紛争について公正・公平な裁判外紛争処理手続を構築する際には、ドイツにおけるよう
に診療過誤、説明義務違反の認定を目的とするのか、さらには患者と医師との信頼関係の回復・維持も重視するのか
を検討する必要がある。公平・公正な裁判外紛争処理手続を構築する際に、財源および人材をどのように確保するの
か、書面主義、口頭主義いずれを採用するのか、当事者、保険会社あるいは医療機関の関与をどこまで認めるか、鑑
定人の選任過程、鑑定書などの判断に対する異議権などの当事者の実質的な手続保障をどのように確保するのか、な
どを具体的に検討することが必要 と な る 。
     ︵1︶ 医療訴訟対策委員会﹁東京地裁医療集中部における医療訴訟の審理について﹂判タ一〇七二号︵二〇〇一︶二五頁など参
、     ・      召“o
       ロμハ
     ︵2︶ 二〇〇四年二月一〇日に行った医療紛争専門弁護士○旨∋碧゜。氏への聞取調査による。
     ︵3︶ 医療紛争専門弁護士O=日碧゜。氏への聞取調査による。たとえば、イギリスにおいても、患者の弁護士と医療機関の担当者
       は、手続の主導権を維持し、費用を節約しうることから、第三者である調停委員に手続を委ねるよりも直接交渉を好むとさ
       れている︵我妻学﹃イギリスにおける民事司法の新たな展開﹄︵都立大学出版会、二〇〇三︶二=二頁参照︶。
     ︵4︶ 担当の医師等の個人責任だけではなく、病院等の組織責任を追及することにもなる︵西口元‖島田圭子﹁医師の制度披露
       責任−個人責任から組織責任へ﹂判タ一一三三号︵二〇〇三︶一二頁など参照︶。
     ,︵5︶ 太田秀哉﹁保険制度、医師会の医事紛争処理機構について﹂畔柳達雄11高瀬浩造﹃わかりやすい医療裁判処方箋﹄︵判例
       タイムズ、二〇〇四︶一八五頁、畔柳達雄﹁医師賠償責任保険制度﹂山口和男‖林豊編﹃現代民事裁判の課題九巻医療過誤﹄
        ︵一九九一、新日本法規出版︶七六八頁、同﹁医療過誤の裁判外の救済方法︶自由と正義二八巻一〇号︵一九七七︶一五頁、   ,
       同﹁医師賠償責任保険﹂ジュリ六九一号︵一九七九︶一一〇頁、小海正勝﹁医師会の医事紛争処理機構の概要﹂浅井富美彦
       H園尾隆司編﹃現代裁判法体系七巻﹄︵新日本法規出版、一九九八︶三二五頁、﹁医師会の医事紛争処理機構﹂根本久編、﹃裁
       判実務大系一七巻﹄︵青林書院、一九九〇︶五二九頁など参照。
     ︵6︶ 二〇〇四年二月九日にハンブルク上級地方裁判所,︵医療専門部︶︵弓雪∋o自巴裁判官︶、ハンブルク地方裁判所︵医療専
       門部︶︵b。ξ;o冒裁判官︶に行った聞取調査および医療紛争専門弁護士9旨碧゜。氏への聞取調査による。
     ︵7︶ ハンブルク大学病院でこのようなオンブズマン制度が先駆的に創設された背景には、ハンブルグの病院で整形外科手術の
       医療過誤︵バルンベック事件︶および放射線治療の医療過誤︵UKE事件︶により、多数の犠牲者に対して、ハンブルグ州
       が多額の損害賠償を支払ったこと︵事件の詳細については、畔柳達雄﹁現行型不法行為事件と’裁判外紛争処理機構ードイツ
       における﹃医療事故鑑定委員会・調停所﹄管見1﹂判タ八六五号︵一九九五︶五四頁注︵3︶参照︶もあるようである︵ハン
       ブルク大学病院患者苦情相談オンブズマンの家堤o≦冨博士に対する二〇〇四年二月九日の聞取調査による︶。
     ︵8︶ 医師が保険会社の意向に左右されるので、当事者自治の範囲が制約されること、関連する資料が複雑で膨大なこと、当事
       者の身体的・精神的負担などを勘案すると口頭主義で調停を行うのに相応しい事件は、自ずから限定される︵○力合8bo犀9
       ∈己Z①戸O隅゜力g庁5§詳<80。合。宮巨゜。巨ユ家。合豊05ぴ巴×o舜宮5Nきω9雪霊試Φ昌巨O>翼“<。﹃°。90飼軽Ob。︶。
ドイツにおける医療紛争と裁判外紛争処理手続      .     ‘    ︵都法四十五−一︶  九七

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