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アマネ2000字レポート PDF
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「いる」「ある」の使い分けと主語の生物・無生物に関する問題はときとして難しい
問題で、「ある」が生物に、「いる」が無生物に使用される場合がある。(南 2009:
198)
注1
もちろん「ている」を使ったときには、 無生物の主語に対して表面的に「いる」が現れるが「ている」の「いる」は
「存在する」という意味の「いる」ではなく、「ている」で動作の状態・進行を表すひとまとまりの形態(アスペクト)だと
考えられる(南 2009:198)のでここでは扱わない。
この意見に従って、南(2009:198)はこのような例を挙げている。
ペットショップの広告で「ハト・カナリヤがあります」などとあるのは商品・カテ
ゴリーを表している。言い換えれば、自分で動ける(ように見える)ものがじっとし
ていることを「ある」で表していると考えている。(南 2009:198)
一方、定延(2006:84)は次のような例を挙げている。
ヘリコプターが生き物でないと言うことは誰でも知っているが、もうすぐ離陸する
ヘリコプターは、中に人が乗っていて、エンジンがかかっていて、プロペラも回っ
ているそうで、生きているイメージがけっこう強いので、人によって「いる」にな
る。(定延 2006:84)
つまり、生き物でも動いてない場合は無生物のようにイメージされて「ある」を使うこ
とが可能だ。無生物でも動いている状態でいれば、生きているイメージがあるので「い
る」を使うのも可能だ。
1.3 幽 霊 と 神 様 は 「 い る 」 か 「 あ る 」 か ?
幽霊や神様は目に見えない存在であり、いわゆる「生物」とは区別されたものとして
認識されているであろう。幽霊は人が死んだ魂と言う人もいる。死んでいる幽霊などに
「いる」を使うのか「ある」を使うのかについて金水(2006)はこう述べている。
幽霊や神様・妖怪などの超常的現象は生物でなくても「自分で動ける」物に分類
できるので「いる」で表されると考える。(金水 2006)
以上の例や先行研究を参考にした上で名古屋大学の日本語・日本文化研修コースの学生
が「いる」と「ある」についてどのような知識を得ているのかを調査したいと思う。
2.調 査 方 法
このレポートのためにインターネットのアンケート google form を使用して調査を行
なった。アンケートの回答を分析しこの調査の結論を得るのが目標である。インターネ
ットのアンケートを選んだ理由は簡単にアクセスできることである。
3. 質 問 内 容
アンケートに書く質問はそれぞれ以下のようだ
− 「いる」の意味を言葉で説明する
− 「ある」の意味を言葉で説明する
− 第一の「いる」と「ある」の典型的な使い分けを答える+答えを選んだ理由を書
く
− 第二の「いる」と「ある」の非典型的な使い分けを答える+答えを選んだ理由を
書く
− アンケートの感想
4. 質 問
アンケートにある質問はこのようである
「いる」の意味を具体
的に説明してくださ
い。
「ある」の意味を具体
的に説明してくださ
い。
を選んだ理由を書いて
ください。
机の上に消しゴムが..... (いる)(ある)
答えを選んだ理由:
A:なんだろうこのうるさい音は?
B:あそこ見てください、空に戦闘機が.....(います)(ありま
す)!
答えを選んだ理由:
(魚屋で)いらっしゃい!先ほど上がった新鮮な*ハマグリ
が....(います)(あります)!*海の貝の仲間
答えを選んだ理由:
このアンケートに答え
た感想を教えてくださ
い
5.ア ン ケ ー ト の 結 果
5.1 ア ン ケ ー ト ( 1)
アンケートは 2 つに分けて一年コースの方に送信した。第一のアンケートの解答者は
8人、答えはこの通りである。
ほとんどの回答者は「いる」と言う存在表現は生き物を表していると回答した。動け
るもの、物語で存在する無生物や生物にも使えると答えた回答者もいる。これも面白い
ことだ。
ほとんどの回答者は「ある」と言う存在表現は生き物ではない、動けない物と答えた。
微生物や植物に使えると説明した回答者もいる。
裏の庭には鶏が二羽.....
0%
いる
ある
100%
この問題では「いる」を全員が選んだ。もちろん、この答えには「いる」を使うのが
自然だ。鶏も生き物で、動けることであるからだ。
この問題では「ある」を全部の方が答えた。「消しゴム」は無生物、つまり「ある」
で答えるのが一番自然だと我も思われる。
5.2 ア ン ケ ー ト ( 2 )
第二のアンケートは回答者 6 人。その答えはこのようである:
6人の中の3人も「います」を選んだことは筆者には予想外のことであった。「あり
ます」を選んだ方はもちろん無生物だから選んだと理由を述べている。「います」と答
えた理由も「動いているから」と正しいものであった 。さて、問題2はどうだろう。
問題2では 83.3%が「あります」と答えていて、16.7%が「います」と答えている。
ほとんどの回答者は「あります」と答えた理由は南(2009:198)の意見「動いていない
から」と違って「料理」つまり材料だからと考えている。しかし、「動いていないから」
と答えた回答者もいた。南(2009:198)が分析していることと同じだ。
結論
様々な答えを得て、ほとんどの回答者は筆者と同様に非典型的な存在表現の使用方に
ついては正確な区別を知らないと思う。教科書でも基本的な使い方しか教えていない。
この調査から、教員や学生が存在表現のより深い使い方の知識を得ることが必要だと思
う。生き物が料理の材料として「ある」を使うことに関して、実際「ある」を使えるの
が動いてないからなのか、料理の材料だからなのかは今後考察したいと思う。
筆者はこの調査をし、無生物でも自分で動いたら「いる」を使うことも正しいと言え、
生き物でも動かない状態でいたら「ある」とも言えることがわかった。もちろん、生き
物が動かない状態のとき「ある」を使うと違和感を感じるだろうが、存在表現はそのと
きの見た目だけではなく、イメージでどの状態になっているかによって「いる」か「あ
る」を使い分けでると思われる。
参考文献
金水 敏(2006)『日本語存在表現の歴史』ひつじ書房.
定延 利之(2006)『日本語不思議図鑑』大修館書店.
南 雅彦(2009)『言語と文化』くろしお出版.