6 00

レ ビ ュ ー
鉄 と 鋼 Tbtsu-to-Hagane Vol. 88 (2002) No. 10

鋼 構 造 に使 用 され るボ ル ト用 鋼 材
並村 裕 一*

Bolt Steels Used for Steel Structures

Yuichi NAMIMURA

Synopsis : Bolts are used in a wide variety of fields including the automobile industry, the civil engineering and construction industry, and the machine
industry. Therefore, bolt strength class and fastening method are all highly variable according to use location and purpose. Consequently, the
optimum steel grade for the application concerned must be selected from carbon steels to alloy steels.
Bolts for steel structures are standardized by 'Sets of high strength hexagon bolt, hexagon nut and plain washers for friction grip joints JIS
B 1186 by Japanese Standards Association)' and 'Sets of torshear type high strength bolt, hexagon nut and plain washers for structural joints
(JSS II 09 by Society of Steel Construction of Japan)'. But their bolts are not specified about used materials. However, it is necessary for the
materials to possess a lot of characteristics, example for toughness and ductility, corrosion resistance, fire resistance, delayed fracture resis-
tance, according to the use condition.
In this paper, high strength bolt steels for steel structures are mainly introduced about conventional bolt, hot dip galvanized bolt, fire resis-
tance bolt, weathering bolt, stainless bolt, super high strength bolt.
Keywords: high strength bolt; steel structures; delayed fracture; hexagon bolt; torshear type bolt; hot dip galvanized bolt; fire resistance bolt; weathering
bolt; stainless bolt; super high strength bolt.

1. 緒言 示 す よ う な 高 力 六 角 ボ ル トや トル シ ア 形 高 力 ボ ル トが 使 用

さ れ て い る 。 高 力 六 角 ボ ル トは,JIS B 1186「 摩 擦 接 合 用

ボル トは 非 常 に 重 要 な 締 結 部 品 で あ り,自 動 車 用, 土 高 力 六 角 ボ ル ト ・六 角 ナ ッ ト,平 座 金 の セ ッ ト」 に 規 格 化

木 ・建 築 用,産 業 機 械 用 な ど さ ま ざ ま な 分野 に使 用 され て さ れ,ト ル シ ア 形 高 力 ボ ル トは,社 団 法 人 日本 鋼 構 造 協 会

い る。 そ の ため,使 用 され る場 所 や 目的,ボ ル ト強 度, 締 の 規 格JSS II 09「 構 造 用 トル シ ア 形 高 力 ボ ル ト ・六 角 ナ ッ

付 け方 法 な どは 多種 多様 で あ り,各 必 要 特 性 に応 じて 材 料 ト ・平 座 金 セ ッ ト」 で 定 め ら れ て い る が,特 に材料の規定

が 選 定 され て お り,鋼 種 は炭 素 鋼 や 合 金 鋼 な どの 広 範 囲 の は設 け られ て い な い 。 こ れ は 所 用 特 性 を 発揮 す るの に 適 し

中か ら選 択 され る。 た 材 料,加 工方 法 の 選 択 を 自 由 に して,よ り優 れ た 製 品 の

鋼 構 造 物 に使 用 され る ボル ト形 状 に は,主 に Fig, 1, 2 に 開 発 を期 待 した もの で あ る 。

こ こ で は,主 に 鋼 構 造 物 に 使 用 され て い る 高 力 六 角 ボ ル

トお よ び トル シ ア 形 高 力 ボ ル トを(1)標 準 ボ ル ト, (2)溶 融 亜

鉛 め っ き ボ ル ト,(3)耐 火 鋼 ボ ル ト,(4)耐 候 性 鋼 ボ ル ト, (5)

ス テ ン レ ス 鋼 ボ ル ト,(6)超 高 力 ボ ル トに 分 類 し (Table 1),

そ れ ぞ れ 使 用 され て い る材 料 に つ い て 紹 介 す る 。

Fig . 1. Sets of high strength hexagon bolt, hexagon nut Table 1. Classification of high strength bolts for structural
and plain washers.
joints.

Fig . 2. Sets of torshear type high strength hexagon bolt,

hexagon nut and plain washer for structural joints.

平 成 14 年 3 月 12 日 受 付平 成 14 年 6 月 10 日受 理(ReCeived on Mar. 12. 2002; Accepted on June 10, 2002)

* (株) 神 戸 製 鋼 所 神 戸 製 鉄 所(Kobe Works, Kobe Steel,Ltd., 2 Nadahamahigashimachi Nada-ku Kobe 657-0863)

14
 鋼構造 に使用 され るボル ト用鋼 材 60 1

Table 2. Combination of classes of sets and the grades according to mechanical properties of components.

Table 3. Mechanical properties of bolt test pieces.

Table 4. Mechanical properties of bolt products.

Table 5. Combination of the grade according to mechani-

2. 高 力 ボ ル トの 規 格
cal properties of component.

JIS B 1186「 摩 擦 接 合 用 高 力 六 角 ボ ル ト ・六 角 ナ ッ ト,

平 座 金 の セ ッ ト」 に は,Table2, 3に 示 す よ う に F8T (800∼

1000 N/mm2), F10T (1000∼1200N/mm2), F11T (1100∼1300

N/mm2)の 強 度 が 規 格 化 さ れ て い る が,F11Tは 遅 れ破 壊 の Table 6. Mechanical properties of bolt test pieces.

危 険 性 よ り括 弧 付 き で な る べ く使 用 し な い よ う に な っ て い

る 。 ま たF8Tは 接 合 効 率 が 悪 い こ と か ら,F10Tに 比 べ使

用 さ れ る 量 は 非 常 に 少 な い 。 ボ ル トサ イ ズ はTable4に 示

す よ う にM12, M16, M20, M22, M24, M27, M30 が規格化 さ

れ て お り,ボ ル ト製 品 の 最 小 引 張 荷 重 お よ び 硬 さ 規 格 が 設

け られ て い る 。

トル シ ア 形 高 力 ボ ル ト の 規 格JSS II 09 に つ い て は, 設 け られ て い る。
Table5, 6に 示 す よ う に S10T (1000∼1200N/mm2)の み規 格 上 記 の よ うに 高 力 ボル トは10T強 度 レベ ル の もの が 主 に
化 され て い る 。 ま た ボ ル トサ イ ズ はTable7に 示 す よ うに 使 用 され て い るが,JIS B 1186お よびJSS II 09に は,高 力
M16, M20, M22, M24, M27, M30 が 規 格 化 さ れ て お り, JIS ボ ル トに使 用 す る材 料 の種 類 を規 定 せ ず,製 品 と して の 機
B 1186同 様 に ボ ル ト製 品 の 最 小 引 張 荷 重 お よ び 硬 さ規 格 が 械 的 性 質 の み を規 定 して い る。 た だ し,実 際 に 使 用 され る

15
60 2 鉄 と鋼 Tetsu-to-Hagane Vol.88 (2002) No.10

Table 7. Mechanical properties of bolt products.

Table 8. Example of chemical composition for high strength bolts steel (mass%).

材 料 は,頭 部 成 形 や ね じ転 造 な どの 冷 間加 工 性 が よ く, 熱 低 炭 素 系 材 料 にMn, Cr, Bを 添 加 した 低 炭 素 ボ ロ ン系 材 料

処 理 に よ り十 分 な機 械 的 性 質 が得 られ,耐 遅 れ 破 壊 性 も優 が 多 く使 用 され て い る。

れ,か つ 低 コ ス トの 材 料 で あ る こ とが 望 まれ る。 例 え ばTable8に 示 す 低 炭 素 ボ ロ ン鋼(0.21% C程 度)な

ま た形 状 的 に は,六 角 ボル トや 六 角 ナ ッ トの 六 角形 部 の ど が使 用 され,線 材 加 工 され た 鋼 材 を ボル ト頭 部 成 形 お よ

寸 法(2面 幅)は,高 い 締 付 け 軸 力 を考 慮 して,一 般 のね び ね じ転 造 した後,焼 入 れ 焼 戻 し処 理 を行 う こ とに よ り必

じ部 品 に 比 べ1サ イ ズ大 き い呼 び 径 の もの を採 用 し,ナ ッ 要 強 度 を得 て い る。Table8に 示 す ボ ロ ン鋼 で 作 製 した 10T
トの 高 さ を呼 び 径 と 同 じに して い る1)。 ボ ル トで は使 用 され 始 め て か ら20年 以 上 も経 過 す る が遅
さ らに これ らの 高 力 ボ ル トが他 の 一 般 ボ ル トと異 な る点 れ 破 壊 の 発 生 は皆 無 で あ る。
は,ボ ル ト,ナ ッ ト,座 金 の そ れ ぞ れ の 種 類,形 状,機 械 3・ 2 溶 融 亜 鉛 め っ き高 力 ボ ル ト

的 性 質 な どが 規 格 化 され て い る こ と は もち ろん,ト ル ク係 鋼 構 造 物 の 高 耐 食 性 を 目 的 と して,半 永 久 的 な耐 食性 が

数値 が 一
定 と な る よ うに 製 造 管 理 され て い る こ と で あ る 。 期 待 で き る溶 融 亜 鉛 め っ き を施 した 構 造 物 が 増 加 して い
トル ク係 数 値 は 他 の 機 械 的 性 質 と異 な り,ボ ル ト ・ナ ッ る 。 そ の 継 手 部 に 使 用 され る溶 融 亜 鉛 め っ き高 力 ボ ル トに
ト ・座 金 をセ ッ トと して 取 り扱 うべ き性 質 の もの で あ る 。 はJIS規 格 が な く,建 築 で 使 用 す る場 合,建 築基準法 に基

ま た これ ら上 記 の規 格 に よ っ て,具 備 す べ き条 件 の す べ づ き メ ー カ ー ご と に大 臣 認 定 を取 得 して使 用 され て い る 。

て が尽 く され て い る わ けで は な く,さ らに ボル トの使 用 条 こ の 溶 融 亜 鉛 め っ き 六 角 ボ ル トにつ い て もTable 8の 低 炭

件 に応 じて,寒 冷 地 な ど に お い て の 衝 撃 に 対 す る注 意,耐 素 ボ ロ ン鋼 な ど が 用 い られ,最 高 強 度 は遅 れ 破 壊 の 危 険 性

火 上 の 問題,腐 食 環 境 の 厳 しい地 域 ・場 所 に お け る耐 食 性 お よ び 溶 融 亜 鉛 め っ き時(480∼500℃ に加 熱)の 強 度低 下
の 問 題,遅 れ 破 壊 の 問 題 な ど,い ろ い ろ と考 慮 しな け い れ を 考 慮 してF8Tと され て い る 。 溶 融 亜 鉛 め っ き付 着 量 は
ば な らな い 問 題 は 多 々 あ る。 550g/m2以 上 で あ り,長 期 防 食 性 に 優 れ て い る。
3・ 3 耐火鋼 高力ボル ト
3. 各 種 高 力 ボ ル トに つ い て 建 築 基 準 法 で は,不 特 定 多 数 の 人 が利 用 す る特 殊建 築物
(ホ テ ル ・共 同 住 宅)と 市 街 地 内 の 建 築 物 に は,耐 火建 築
3・ 1 標準高力 ボル ト 物 とす る こ とが義 務 付 け られ て い る。 耐 火建 築物 で は, 主
高 力 ボ ル トが製 造 され 始 め た初 期 の こ ろ は,低 炭 素 鋼 ・ 要 建 造 部 材 を耐 火 構 造 にす る必 要 が あ り,法 定 耐 火 時 間 ご
中炭 素 鋼 ・低 合 金 鋼(ク ロ ム鋼,ク ロ ム モ リブ デ ン鋼) な との 耐 火 試 験 で 鋼 材 温 度 が350℃ 以 下 に な る よ うに 鉄 骨 を
ど のJIS規 格 材 やSAE規 格 材 な ど が 使 用 さ れ て い た が, 耐 火 被 覆 す る よ う に決 め られ て い た。 しか し,工 事 費 の 低
1970年 頃 か ら ボ ロ ン鋼 が採 用 され 始 め,コ ス トダ ウ ン化 減,工 期 短 縮,室 面 積 有 効 利 用 な どの 面 か ら,耐 火 皮 膜 の
が行 わ れ て き た 。 ボ ロ ン鋼 とは,微 量 の ボ ロ ン を添 加 す る 低 減 が 強 く望 まれ て い た 。 そ ん な 中,1987年3月 建 設省総
こ とに よ り焼 入 性 を向 上 させ た 鋼 材 で あ り,中 炭 素 系 低 合 合 技 術 プ ロ ジ ェ ク ト｢建 築 物 の 総 合 防 火 設 計 法｣が 完 了 し,
金 鋼 か ら合 金 元 素 の 低 減 お よ び 低 炭 素 化 を図 る こ とが で き 法 定 耐 火 時 間 や 耐 火 試 験 に よ らず 建 築 物 の耐 火 安 全 性 を評
る 。 また,高 力 六 角 ボ ル トや トル シ ア形 高 力 ボ ル トの 熱 処 価 で き る｢新 耐 火 設 計 法｣が 新 設 され た。
理 に は 水 焼 入 れ を採 用 して い るた め ボ ル トサ イ ズ が 太 い に これ に よ り,鋼 材 温 度 で は な く建 築 物 の 火 災 時 を想 定 し
もか か わ らず,十 分 な 焼 入 れ硬 さ を得 る こ と が で き る。 つ た 高温 耐 力 の評 価 で 耐 火建 築 物 と して認 め られ,従 来 の 一
ま り,CrやMoな どの 合 金 元 素 を低 減 し鋼 材 の 低 廉 化 を図 般 建 築 構 造 用 鋼 材 と比 較 して 鋼 材 温 度600℃ に お け る降 伏
る と と も に,低 炭 素 化 に よ りボ ル トの 冷 間 圧 造 性 を改 善 す 点 が 常 温 規 格 値 の2/3以 上 を 有 す る耐 火 鋼(FR鋼 : Fire
る こ とが 可 能 に な る。 そ の た め最 近 の 標 準 的 高 力 ボ ル トは, ResistanceSteel)が 開 発 ・実 用 化 され た 。

16
 鋼構造に使用 され るボル ト用鋼 材 603

この耐 火鋼 材 を使 用 した主 要 構 造 物 材 の継 手 部 に は, 部 耐 火 鋼 高 力 ボ ル トは,裸 ボ ル トの 場 合10T強 度,溶 融亜

材 と同 等 以上 の 高 温 耐 力 が必 要 で あ る.つ ま り鋼 板 を締 結 鉛 め っ き をす る場 合8T強 度 と して 使 用 され る。
す るボ ル トに つ い て も 当然 耐 火性 が 要 求 され る。 高 力 ボ ル 3・4 耐候性鋼 高力ボル ト
ト継手 は,高 温 に な る と導 入軸 力 が 弛 緩 され るた め,摩 擦 橋 梁 分野 で は,初 期 建 設 コ ス トの 低 減 や 維 持 管 理 コ ス ト
力の低 下 です べ り を生 じる。 耐 火 鋼 高 力 ボ ル トに は,こ の の 軽 減 が 求 め られ て お り,最 小 限 の 維 持 管 理 で 最 大 限 の 長

す べ りが起 こっ た 後,ボ ル トがせ ん 断 接 合 状 態 に な っ た 時 寿 命 化 を め ざす 「ミニ マ ム メ ンテ ナ ンス橋 」 に対 す る要 望

点 で,母 材 よ り も先 に 破 断 しな い 耐 力 を 有 す る 必 要 が あ が 高 ま っ て きて い る 。 特 に,海 岸 部 の 橋 梁 や 凍 結 防 止 剤 を
る。 散 布 す る橋 梁 な ど 高塩 分 環 境 下 に さ ら され る場 合 に お い て
耐 火 鋼 高 力 ボル トの 化 学 成 分 系 はTable9に 示 す よ うに も,無 塗 装 使 用 の 実 現 が 望 まれ て い る。 こ れ に 伴 い 高 力 ボ
JIS SCM822相 当鋼 で あ り,Cr, Moを 添 加 す る こ と に よ り ル トに も本 来 の 高 力 ボ ル トと して の 特 性 以 外 に 鋼 板 と"等

耐 熱性 が 向 上され て い る。 こ の 鋼 材 を使 用 し た ボ ル トは, の耐 候 性 が要 求 され て きて い る。
Fig.3に 示 す よ うに 常 温 時 の 強 度 は 一 般 の 高 力 ボル トと 同 耐 候 性 鋼 材 は,材 料 自 身 が 安 定 した 錆 を 発 生 させ る こ と
等 で あ る が,高 温 性 能 が 優 れ て お り,特 に600℃ に お い て に よ り,塗 装 を省 略 で き る こ と に特 徴 が あ る 。 ま た,腐 食

従来 の 高 力 ボル トの約2倍 の耐 力 を有 して い る。 環 境 の 厳 しい と こ ろ で は,錆 が安 定 しな い こ とが あ り,流

出 錆 を抑 え る と同 時 に安 定 錆 を む ら な く生 成 させ る た め に
Table 9. Example of chemical composition for FR bolt 錆 安 定 化 処 理 を施 す 場 合 もあ る。
steel (mass%).
こ こ で は,1) JIS 耐 候 性 鋼 板SMA490Wな ど に 適 用 され
るJIS鋼 板 用 耐 候 性 鋼 高 力 ボ ル トお よび2)海 浜 ・海 岸 耐 候
性 鋼 板 に適 用 され る海 浜 ・海 岸 耐 候 性 鋼 高 力 ボ ル トにつ い
て述 べ る。

3・4・1 JIS 鋼 板 用 耐 候 性 鋼 高 力 ボ ル ト
一 般 のJIS耐 候 性 鋼 板SMA490Wと 同 等 な耐 食性 を有 す

る よ うに,JIS鋼 板 用 耐 候 性 鋼 高 力 ボ ル トに も,耐 候 性 有
効 成 分 で あ るCu,Niな どが 適 量 添 加 され て い る(Table 10)。
この 鋼 材 を 曝 露 試 験 した 結 果 をFig.4に 示 す が,耐 候性鋼
は 普 通 鋼 に比 べ,工 業 地 帯,海 岸 工 業 地 帯 と もに 曝 露 期 間
1年 以 上 に お い て 腐 食 減 量 が 低 減 され て い るの が わ か る。
3・4・2 海 浜 ・海 岸 耐 候 性 鋼 高 力 ボ ル ト

飛 来 塩 分 量 が 多 く,一 般 のJIS耐 候 性 鋼 板 が適 用 で き な
い 海 岸 地 帯 な ど に お い て も無 塗 装 に て使 用 で き る海 浜 ・海
Fig . 3. Relationship between temperature and strength of
FR steel. 岸 耐 候 性 鋼 板(高 耐 候 性 鋼 板)が,近 年 開 発 され て い る2-5)。

Table 10. Example of chemical composition for JIS weathering bolt and plate steels (mass%).

(a ) Industrial area (b) Seashore industrial area

Fig . 4. Result of exposure test of weathering steel.

17
604 鉄 と鋼 Tetsu-to-Hagane Vol.88 (2002)No. 10

例 え ば,1%Ni-1%Cu-Ti添 加 の 耐 候 性 鋼 板 な ど が 開 発 ・実 力 ボル トと して の 加 工 性,熱 処 理 条件 な どの 製 造 性 も考 慮
用 化 され て お り,腐 食 電 位 や 腐 食 減 量 な どの 耐 候 性 能 は, し決 定 され て い る。 こ の ボ ル ト用 鋼 材 は Cu+Ni=1.96% で
Ti添 加 を 前 提 とす れ ばCuとNiの 総 和 量 で よ く整 理 で き る あ り,鋼 板 とほ ぼ 同 じ電 気 化 学 特 性 を 有 して い る。 ま た,
こ と が わ か っ て い る2,3)。つ ま り,Fig.5に 示 す よ う に鋼 中 この ボ ル ト用 鋼 を用 い てJIS B 1186に 定 め るF10T M22 高
のCu+Ni量 が増 加 す る に つ れ て 裸 耐 食 性 が 向 上 し,さ ら 力 ボ ル ト,六 角 ナ ッ ト,平 座 金 の セ ッ トを作 製 し,高 力 ボ
にTi添 加 に よ り耐 食 性 が さ ら に 向 上 す る2,3)。しか し,こ ル ト添 接 部 の 特 性 試験(す べ り係 数 試 験,リ ラク セ ー シ ョ
の 鋼 板 を ボ ル トで 締 結 す る場 合,一 般 の 鋼 製 ボル トで は 腐 ン試 験)を 行 っ た結 果,JIS鋼 板 用 耐 候 性 鋼 高 力 ボ ル トと

食 電 位 が鋼 板 に 対 して相 対 的 に低 い た め,鋼 板 との 間 に ガ 同 等 以 上 の 評 価 が得 られ た こ と が確 認 され て い る6)。

ル バ ニ ック電 池 を形 成 し,ボ ル トの腐 食 を促 進 させ る恐 れ 3・ 5 ス テ ン レス鋼 高 力 ボ ル ト
が あ る。 そ こ で,鋼 板 とボ ル ト用 材 料 の 起 電 力 をで き る だ ス テ ン レス鋼 高 力 ボル トは,高 い耐 食性 や通 常 の環 境 下

け 同 一 に す る必 要 が あ る。 で の 長 寿 命 化 や メ ン テ ナ ンス フ リー が要 求 され る建 物 に対
Ti添 加 ベ ー ス でCu+Ni量 を 変 化 させ た ボル ト用 鋼 と鋼 応 で き る他,熱 に よ る耐 力 低 下 が 少 な く,ま た 低 温 で の 靭

板 との 間 に 生 じ る起 電 力 を評 価 した 結 果,Fig.6の よ うに 性 が 高 い 特 徴 を 有 して い る た め 耐 火 性 や 低 温 特 性 が要 求 さ
Cu+Ni=1.8-2.4%で あ れ ば鋼 板 と ほ ぼ 同等 の 電 気 化 学 特 性 れ る建 物 に も適 して い る。
に な る こ とが わ か っ た6)。 こ の 結 果 を も と に 設 計 した 開 発 この ス テ ン レ ス鋼 高 力 ボ ル トの 規 格 は,社 団 法 人 ス テ ン

鋼 の 化 学 成 分 の 一 例 をTable 11に 示 す6)。 尚, Cu, Ni量 は高 レ ス構 造 建 築 協 会 の規 格SSBS 301｢構 造 用 ス テ ン レス 鋼

高 力 六 角 ボ ル ト ・六 角 ナ ッ ト ・平 座 金 セ ッ ト｣で 定 め られ
て い る。 この規 格 は,平 成12年6月 施行 の改正建築基準法
に お い て,ス テ ン レス鋼(SUS304A, SUS316A, SUS304N2A,
SCS13AA-CF: JIS G 4321)が,鉄 骨 造の規 定 に位置 付け ら
れ,そ の 摩 擦 接 合 用 高 力 六 角 ボル ト ・六 角 ナ ッ ト ・平 座 金
に つ い て は,JIS B 1186に 規 定 され る こ と に な っ た 。 しか
し,前 述 の よ うにJIS B 1186に は 化 学 成 分 の 規 定 が な く,

構造 部 材 の 耐 久 性 の 観 点 か ら,ス テ ン レス建 築 構 造 物 に 用
い る ス テ ン レス鋼 の 摩 擦 接 合用 と して 制 定 され た 。 これ ら
の ボ ル ト,ナ ッ ト,座 金 の 材 料 に はJIS G 4303(ス テ ン レ ス

鋼 棒)ま た はJIS G 4304 (熱 間 圧 延 ス テ ン レス鋼 板 お よび 鋼

帯)に 規 定 され て い る析 出硬 化 系SUS630が 使 用 され て い

Fig . 5. Effect of Cu, Ni, and Ti on the chloride corrosion る 。例 え ば,Table12に 示 す 化 学 成 分 系 の 鋼 材 が 用 い られ,
resistance of steel.2) 固 溶 化 熱 処 理 お よ び析 出 硬 化 熱 処 理 を施 し製 品 と な る。
(3% NaCl aq. sol. spray once a week at Kakogawa
Work's quay for 1 year) 3・6 超高力 ボル ト
超 高 層 ビ ル や 大 型 構 造 物 な ど に使 用 され る厚 肉,高 強 度

部 材 の継 手 に は 多 量 の ボル トが 必 要 と な る 。 そ の た め 締 付
け本 数 を削 減 した り,ボ ル トの サ イ ズ ダ ウ ン を図 る こ と に
よ り,作 業 能 率 を上 げ,建 設 コ ス トを削 減 した い との 要 望
が強 い 。 そ の た め に は 現 状10Tレ ベ ル の 高 力 ボ ル トを さ ら
に高 強 度 化 す る 必 要 が あ る が,JIS B 1186に は,F11T強 度
が規 格 化 され て い る もの の,遅 れ 破 壊 の 危 険 性 よ り括 弧 付
きで な るべ く使 用 しな い よ う に な って い る。 例 え ば,Fig.
7に 示 す よ う に 通 常 の 低 合 金 調 質 鋼 で は,引 張 強 さが
1200N/mm2以 上 に な る と遅 れ 破 壊 感 受 性 が 強 く な る こ と
が 知 られ て い る7-9)。つ ま り,11T強 度 以 上 で は遅 れ 破 壊 を

Fig . 6. Electromotive force between plate and bolt.6) 起 こす 可 能 性 が あ り,13T, 14Tと さ らに強 度 が 高 くな る程

Table 11. Example of chemical composition for costal weathering bolt and plate steels6) (mass%).

18
 鋼構造に使用 されるボル ト用鋼 材 605

その危 険 性は 高 くな る7-9)。 セ メ ン タ イ ト析 出 を防 止 し,粒 界 強 度 の 低 下 を抑 制 す る。

その 一 方 で,現 在遅 れ 破 壊 を 克服 した14T超 高 力 ボル ト
が紹 介 され10,11),一部 の 建 造 物 に 使 用 さ れ て い る。 ま た, 4. 結 言
各鋼 材 メ ー カ ー はTable 13に 示 す よ う に 各 種 高 強 度 ボ ル ト
用鋼 材 を開 発 して お り12-18),主に 以 下 の よ うな 手 段 で耐 遅 鋼 構 造 物 に 用 い られ る高 力 ボ ル トは,市 場 の ニ ー ズ に 応
れ破 壊 性 の 改 善 を 図 っ て い る。 じて 耐 火 性,耐 候 性 な どの 様 々 な機 能 を付 与 して き た 。 今
1) 不 純 物 元 素 の 低 減 : 不 純 物 のP,Sを 極 力 減 らす と と 後 も ます ま す 多 様 化 す る と考 え られ,高 力 ボ ル トも そ れ ら
もに,P,Sの 粒 界 偏 析 を促 すMnを 減 らす こ と に よ り, 粒 の要 求 に応 え る もの が 開発 され 実 用 化 され る だ ろ う。
界強 化 を図 る12)。 また 遅 れ 破 壊 発 生 が懸 念 され る超 高 力 ボル トへ の 関 心 は
2) 結 晶 粒 の 微 細 化:Ti,Nb,Vな どの 添 加 に よ り結 晶 粒 高 い が,ま だ遅 れ 破 壊 発 生 機 構 が完 全 に解 明 され ず, 根 本
を微 細 化 し,粒 界強 化 を図 る と と もに鋼 材 の 靱 延 性 を向 上 的 な 解 決 が な され て い な い の が実 状 で あ る。 今 後, 遅 れ 破
させ る。 壊 発 生機 構 の 解 明 は さる こ と な が ら,遅 れ 破 壊 発 生 有 無 を
3) 微 細 炭 窒 化 物 の 析 出 お よ び 高 温 焼 戻 し : 析 出硬 化 型 明 確 に 判 断 で き る評 力 法 を 確 立 し,高 力 ボル トが 安 心 して
の元 素 で あ るMo,V,Tiな ど を添 加 し,高 温 焼 戻 し処 理 を行 使 用 で き る基 準 を 設 け る こ とが 必 要 と考 え る。
うこ と に よ り,微 細 な炭 窒 化 物 を析 出 させ る。 そ れ らの 析 お わ りに,本 報 を ま と め るに あ た り有 益 な ご助 言 を頂 い

出物 が,拡 散 性 水 素 を トラ ップ し,有 害 な水 素 を低 減 す る 。 た神 鋼 ボ ル ト(株)取 締 役 技 術 担 当寺 門 三 郎 氏,技 術部長

さらに 高温 焼 戻 しは,旧 オ ー ス テ ナ イ ト粒 界 の フ ィル ム 状 長 崎 英 二 氏 に 深 く感 謝 します 。

Table 12. Example of chemical composition for stainless 文 献

bolt steel (mass%).
1 ) E.Kurata: Special Steel, 40 (1991) Feb., 35.
2 ) T.Nakayama, F.Yuse, H.Kawano, K.Ooe, K.Abe and M.Sakai: Kobe
Steel Eng. Rep., 51 (2001) 1, 29.
3 ) 湯 瀬 文 雄, 中 山 武 典, 竹下 智, 菅 俊 明: 土 木 学 会 第55回
年 次 学 術 講 演 会, 土 木 学 会, 東 京, (2000), VI-150.
4 ) 保 坂 鐵 夫, 楠 隆, 冨 田 幸 男, 宮 坂 明 博, 田 辺 児: 土木学
会 第55回 年 次 学 術 講 演 会, 土 木 学 会, 東 京, (2000), I-A190.
5 ) 塩 谷 和 彦, 野 埜 浩 史, 川 端 文 丸, 天 野 〓 一, 宮 本 一 範, 西 田
俊 一: 土 木 学 会 第55回 年 次 学 術 講 演 会, 土 木 学 会, 東 京,
(2000), I-A241.
6 ) 保 坂 鐵 夫, 山 田 節 雄, 稲田 淳, 堺 雅 彦, 長 崎 英 二: 土木
学 会 第56回 年 次 学 術 講 演 会, 土 木 学 会, 東 京, (2001), I-A233,
466。
7 ) Japanese Society of Steel Construction: JSSC, 6 ( 1970) 52, 4.
8 ) S.Yamamoto and T.Fijita: Kobe Steel Eng. Rep., 18 ( 1968) 3, 93.
9 ) 松 山 晋 作: 遅 れ 破 壊, 日 刊 工 業 新 聞 社, 東 京, (1989), 67.
10) M.Nagata: I JFRI, 32 (2001) Feb., 33.
11) K.Wakiyama: JSSC, No. 40 (2001), 47.
12) S.Matsuyama: Tetsu-to-Hagane, 80 (1994), 679.
13) Y.Namimura, N.Ibaraki, T.Hasegawa and Y.Oki: Kobe Steel Eng.
Rep., 50 (2000) 1, 41.
14) T.Tsumura, F.Nakasato, T.Ueda and N.Murai: Sumitomo Met., 40
(1988), 19.
15) T.Kushida, H.Matsumoto, N.Kuratomi, T.Tsumura, F.Nakasato and
T.Kudo: Tetsu-to-Hagane, 82 (1996), 297.
16) S.Yamasaki, M.Kubota and T.Tarui: Shinnittetsu Giho, No. 370
(1999), 51.
Fig . 7. Effect of tensile strength on delayed fracture 17) T.Kimura and S.Nakamura: Electr. Furn. Steel, 65 (1994), 31.
strengths.7-9) 18) T.Siraga and N.Ishikawa: CAMP-ISIJ, 5 (1992), 1982.

Table 13. Example of chemical composition for high strength bolt steels12-18)(mass%).

19