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第1課 日本語で文法を

〈本文1〉 ヤンデラ先生と鈴木先生の会話

久しぶりに日本に来たヤンデラ先生は、留学時代の友人の鈴木先生に電話をかけます。太字になっ
ている話し言葉的な表現に注意しながら読んでみましょう。

鈴木:はい、鈴木ですが。
ヤン:あっ、鈴木さん、ヤンデラです。お久しぶり。
とつぜん
鈴木:えっ、ヤネさん、どうしたの。突然電話なんかくれて。
ヤン:何わけわかんないこと言ってんの。日本についたら連絡しろって言ったのは、鈴木さんだよ。
鈴木:えっ、もう日本なの。
じょうじゅん
ヤン:す・ず・き・さ・ん。七月の終わりに、九月の上旬に日本に着くって連絡しただろ。
鈴木:それは、そうだけど、あれ、ってことは、もう九月か。
ヤン:まだ、八月だと思ってたわけ?しょうがねえなあ、もう。
くる

鈴木:うん、夏休みは日付の感覚が狂うんだよ。最近うちで本読んでばっかだしあ。毎日同じことやって     
ると、曜日もわかんなくなるしね。んで、今日は何曜?
しゅくしゃ
ヤン:月曜だよ。月曜。先週の金曜に日本に着いて、週末に宿舎を片付けて、今日研究室のようなものを
けいたい

もらったとこ。まだ携帯も買ってないから、研究室の電話を使ってんだよ。
鈴木:へえ、その部屋どこにあんの?
と き わ かん
ヤン:ええとね。大学院の常盤館の五階。
鈴木:ああ、文学科の先生たちの研究室が並んでるとこかあ。
ヤン:うん、そう。一部屋だけ外国から来た研究者のための部屋があって、そこを使わせてもらえること
になった。語学の先生の近くとどっちがいいかって聞かれて、文学科のほうを選んだんだ。
鈴木:研究んこと考えると、そのほうがいいだろうね。そんでどんなことすることになってんの?
たいしょう せんたく

ヤン:とりあえず、学部生と院生を対象に選択科目でチェコ語を教えることになってる。
鈴木:まとめて?
ヤン:うん。人数はそんなに多くなるわけないから、分けても意味ないと思う。それから、院の文学関係
のゼミにはいくつか出させてもらうつもり。
こうはい
鈴木:じゃあ、どのゼミがいいか、後輩に聞いとくよ。
ヤン:うん、お願い。とこれで、今日時間ある?久しぶりに一杯どう?
鈴木:いいねえ。忙しくねえってわけじゃねえけど、時間なんて作ろうと思やあ、いくらでも作れっから
ね。で、時間と場所はどうする?
ヤン:あの、名前忘れちゃったんだけど、昔よく行った店がいいなあ。
鈴木:ああ、あの店ね。じゃあ待ち合わせも、昔と同じで渋谷駅のバス停んとこでどう?
りょうかい

ヤン:いいねえ。了解。で、時間は?こっちは何時でも大丈夫だけど。
鈴木:そうだなあ。今すぐって言いてえけど、ちょっと無理だなあ。今三時だから、五時半でどう?
1
ヤン:うん。わかった。じゃあまた後で。
鈴木:他の連中にも声かけようか?みんな忙しいみたいだけど。
ヤン:いや、今日はいいよ。突然だしさ。次はまず計画立ててから連絡するってことで、よろしくね。

〈会話1〉 「です・ます」を使わないで話してみよう
【課題1】みんさんは、今まで話をする時には、原則として「です・ます」を使って来ました。今回のテ
キストでは「です・ます」が使われていません。また、話し言葉的な表現もたくさん出てきています。こ
のテキストを、二人組になって、「です・ます」を使った形に直して、読んでみてください。

【注意しなければいけない変化】
・ている→てる ・ておく→とく ・ばかり→ばっか
・たい→てえ ・ない→ねえ ・ところ→とこ
・る/れ→ん ・の→ん ・と/という→って
・てしまう→ちゃう/ちまう ・では→じゃ/じゃあ

【課題2】二人組になって、「です・ます」を使わない話をしましょう。テーマは、「冬休み」、「クリ
スマス」、「テスト」、ということにしましょう。

例1(※Bさんは男)
A:ねえ、冬休みどうだった?
B:そうだなあ、_______だったよ。
A:へえ、どこか行ったの?
B:うん、________に行った。/いや、どこにもいけなかった。
続く。
例2
A:ねえ、クリスマスプレゼント、何かいいものもらえた?
B:うん、_______。
A:よかったね。誰からもらったの?
B:ええとねえ、________。
続く。
例3
A:今学期のテストどうだった?
B:ええとね、全然だめだった。/全部合格できた。
A:へえ。それは_______。
B:そっちはどうだったの?
続く

2
〈副詞と副詞的表現〉

01 まだ/まだまだ = “(stále) ještě”, “stále”, “teprve”


※ 「まだまだ」 は強調する表現 
・ ヤンデラ先生はもう学校にいらっしゃると思っていたら、まだ来ていらっしゃらなかった。
・ 勉強しなければいけないことは、まだまだたくさんあります。
・オロモウツからブルノまで歩いて来たが、プラハまではまだまだ遠い。

02 すぐ(に)= “hned”
※ かかる時間が短いことを示す。
・ ヤンデラ先生、すぐに教務課に来てください。
・ もうすぐオロモウツに到着しますので降りる準備をしておいてください。
※ 時間の前後関係を表す表現と共に使うことも多い。
・ 学校に来てすぐ先生に会いに行きました。
・ 食事をした後、すぐに横になると和牛になると、日本では言われている。
・ 先生に連絡をもらってから、すぐうちを出て大学に向かいました。
※ 場所が近いことを示すこともある。「近く」、「そば」と共に使うことが多い。
・ 大学はうちからすぐの所にありますので、歩いて五分もかかりません。
・ヤンデラ先生が私のうちのすぐ近くに住んでいることは知りませんでした。

〈まとめ〉 「わけ」の使い方
 わけのわからない「わけ」の使い方なんかわかるわけがないと思っている人もいるかも知れませんが、
わかるようにならないと日本語ができると言うわけにはいかないので、勉強しないわけにはいかないので
す。というわけで始めましょう。

01 わけ = 「理由」/ “důvod”, “příčina”

※ 「理由」は「わけ」の本来の意味
※ どういうわけで =「なぜ/どうして/何で/どんな理由で」
・昨日は、どういうわけで学校を休んだんですか。
・それが昨日私が仕事を休んだわけです。
・昨日は私の町では、大雪が降って、電車もバスも全部運休でした。というわけで、私は学校に来られま     
せんでした。
あ せいかく

・この調査が行われたのは十年以上前のことです。それに、ここに挙げられている数値は正確なものでは
ありません。以上のようなわけで、私はこの提案に反対します。
・私がチェコ語の勉強を始めたわけは、秘密です。誰にも教えません。

3
02(という)わけではない =「という意味/ことではない」/ …neznamená, že…

・チェコ人はみんなお洒が好きだというわけではない。
・私は英語が全然できないが、真面目に勉強しなかったわけではない。
・私はベジタリアンだというわけではありませんが、肉はあまり食べません。
※「∼からといって」と共に使うことも多い。
・日本に行ったことがあるからといって、日本について詳しいというわけではない。

03 わけにはいかない =「しては/しなくてはいけない」、「できない」 / “nemoci”, “nesmět”


※ 特別な理由がある時に、その理由と共に使う。
みながわ

・来週は、皆川先生がいらっしゃるので、休むわけにはいかない。
・パヴェルが日本に来たから、一緒にお酒を飲みに行かなねいわけにはいかない。
・今日は田舎に帰る先輩のお別れ会があって、出ないわけにはいかないから、このままうちに帰るわけに
はいかない。
※ 理由を強調する表現 (「からには」、「以上」など) と一緒に使うことも多い。
・日本に行くからには、実家にも寄らないわけにはいかない。
・チェコ語の勉強を始めた以上は、簡単にやめるわけにはいかない。

04 わけがない = 「はずがない」、「そんなことは考えられない」、「ありえない」/ “nemít důvod


dělat… / být…”, “není možné, aby…”, “je vyloučeno, aby…”

・ヤンデラ先生は今日本に行っているから、オロモウツにいるわけがありません。
・こんな犬も食べないようなもの、私が食べるわけがないでしょう。
※可能表現と共に使うことが多い。
・こんな難しいテストに、私なんかが合格できるわけがありません。
・お金も時間もないのだから、日本になんて行けるわけがありません。
※ 話し言葉では「わけない」になることも多い。
・英語なんて私にわかるわけないでしょ。

05 (∼ということは、) ∼というわけだ = 「ということだ」 / “to, že…, znamená, že…”

・ ここにヤンデラ先生の車があるということは、先生はまだ学校にいらっしやるというわけだ。

【参考】

06 わけだ = “(tak) proto”


なっとく

※ 理由に納得した時に文末に使う表現
・A: あの人は日本人ですけど、アメリカで生まれて育ったらちしいです
B: へえ、英語が上手なわけですね。
・ヤンデラ先生は日本語が上手なわけです。パラツキー大学で日本語の勉強をして、日本への留学も合計4
年もしたらしいです。

4
07 わけ (も) ない =「簡単だ」 / “jednoduchý”
・私にとって、そのチェコ語の Al のテストはわけもないものだった。
・体育学部の学生にとって、ハーフマラソンを走りきるのはわけないことかも知れないが、私たちにとっ
てはとても大変なことだ。

08 わけ (が) わからない = 「全くわからない」、「理解できない」/ “nedávat smysl”


・あの人は、日本語で話す時だけでなく、チェコ語で話す時もわけがわからない
・わけわかんないこと言ってないで、行くわよ。 (※話し言葉)

09 とはわけが違う =「全然違う」/ “být úplně jiný”, “být úplně o něčem jiném” 


・チェコのビールは、日本のビールとはわけが違う。
・今回の試験は、前回の試験とはわけが違うほど難しかった。 

〈本文2〉  国語文法

 皆さんは、これまで、チェコ語で日本語の勉強をしてきたので、日本語の文法に関する言葉はあまり知
らないと思います。それで、ここで、日本のいわゆる国語文法で使われる言葉につて説明しようと思いま
す。

 国語文法というのは、日本人が小学校、中学校、高校で習う日本語文法のことで、いわりる本語文法、
つまり外国人が日本語を勉強する時に使う分法とはかなり倍います。私たちが、先学期まで使っていた教
き そ

科書『日本語基礎』は、日本語分法ではなく、この国語分法に基づいて書かれていますので、この『日本
語中級』でも、国語文法に基づいて文法の説明をきます。
ぎ む しょう きほん
 国語文法は、日本の半義務教育でも教えられていますので、最終的に決めたのは文部省ですが、基本的
はしもとしんきち

な部分は国語学者の橋本進吉氏の理論に基づいています。この橋本氏の理論のことを橋本文法と呼ぶこと
たいけい ときえだ
もあります。日本語全体を体系的に理論化した文法には、他にも時枝文法や、山田文法などがありますの
で、興味のある人は調べてみてください。
ひんし

 それでは、品詞の説明から始めましょう。これはそれぞれの単語を分類して同じ種類の単語をまとめた
どうし めいし

ものです。皆さんも、動詞、名詞ぐらいは、すでに聞いたことがあると思いますが、国語文法では、品詞
は全部で 11 種類あることになっています。
たんどく ふぞく
 単語はまず、自立語と呼ばれる単独で使われることのあるものと、付属語と呼ばれる単独では使われ
ず、必ず自立語に付属して使われるものの二つに分かれます。
じょどうし じょし
 付属語はさらに活用する (形を変える) 助動詞と活用しない助詞に分かれます。助動詞には、例えば受身
しえき
の意味を表す「れる/られる」や、使役の意味を表す「せる/させる」などがありますが、「れる」だけ
いっぱん

では、絶対に使われず、必ず動詞と一緒に使われます。助詞は、一般に「てにをは」と言われることもあ

5
るように、「笑って」の「て」、時間や場所を表す「に」などが代表的ですが、「だけ」や「しか」「こ
そ」なども助詞に含まれます。
けいようし けいよう ど う し だい め い し ふくし れんたい し せつぞく し

 自立語には、残りの9種類の品詞、動詞、形容詞、形容動詞、名詞、代名詞、副詞、連体詞、接続詞、
かんどう し
感動詞が含まれます。

 動詞は、漢字のとおり動作を表す言葉で、日本語の動詞には文末の言い切りの形(終止形)が、ウ段の
音で終わるという特徴があり形容詞は、文末や名詞の前で使われる形が「い」で終り、動詞にかかる時に
は「い」が「く」に変わる言葉です。形容動詞は、言い切りの形「だ」で、名詞の前にきた場合には、
「だ」が「な」か「の」に変化し、動詞の前では「に」か「で」になります。この三っの品詞は活用する
ことから、まとめて用言と呼ばんることがあります。

 名詞は物の名前を表す言葉で、代名詞は「これ」「それ」などの物を指し示す言葉です。この二っは、
まとめて体言と呼ばれることがあります。
しゅうしょく
 副詞は用言を修飾する言葉で、「とても楽しい」の「とても」や、「たくさん食べた」の「たくさん」
てんけいてき

などが典型的な例になります。連体詞は、漢字のとおり「体言に連なる」言葉で、「いわゆる」「あらゆ
じゅんせつ
る」などが含まれます。接続詞は、文と文を接続する言葉で、「だから」のような順接の接続詞、「しか
ぎゃくせつ
し』のような逆説の接続詞などに分かれます。最後の感動詞は、感動を表す言葉ですので、驚いた時の
「あっ」や「えっ」、感動した時の「ああ」などが含まれます。チェコの人がよく使う「サクラ」も国語
文法で言えば、感動詞になるわけです。

 この中で活用するのは、動詞、形容詞、形容動詞と付属語の助動詞ですが、活用した形にも名前が付い
みぜん
ています。チェコ語から直訳すると、動詞の「第一基本形」となる形は、国語文法では未然形と呼ばれて
ひてい

います。「未然」というのは「まだそうなっていない」という意味ですが、それは否定を表す「ない」が
付く形だからです。

 「第二基本形」は連用形です。「連用」の「用」は、用言の用ですので、この形は用言につなげる時に
使う形ということになります。過去の助動詞「た」、助詞「て」につなげる時にもこの連用形を使います
が、動詞の種類によっては、いわゆる音便が発生することがあります。例えは、動詞「買う」に「て」を
そくおんびん
つけると「買いて」ではなく「買って」となりますが、これが「促音便」と呼ばれるものです。

 「第三基本形」は、国語文法の終止形と連体形に当たります。 終止形は、文末に来る時の形で、連体形
は体言に続く時の形です。ただし、現代日本語では動詞の終止形と連体形は同じ形になります。だから、
私たちの教科書では、一つにまとめてしまったわけです。
かてい
 「第四基本形」は助詞「ば」を付けて仮定の意味を表しますので、仮定形と呼ばれます。その後に国語
めいれい

文法では命令形が来ますが、これについては、説明はいりませんよね。

 「第五基本形」は、国語文法には存在せず、未然形に助動詞「う/よう」が付いたものとして説明され
ますが、それは古語 (古い日本語) の文法と合わせるための説明だと言われています。

 国語文法ではこれらの活用形は、動詞だけではなく、形容詞や助動詞の活用を説明する時にも使われて
います。形容動詞といくつかの助動詞は終止形と連体形が違う形になりますので、注意が必要です。

6
ぼいん しいん
 最後に動詞の活用の種類についても説明しておきましょう。これまでは「母音動詞」「子音動詞」「半
かみ
母音動詞」「不規則動詞」と訳せる言葉を使ってきましたかが、国語文法では、動詞は「五段活用」「上
しも へんかく

一段活用」「下一段活用」という三つの種類に分けれ、それに例外である「変格活用」が加わります。

 五段活用は、「書く」のように、未然形から命令形までにア段からオ段までの五段の音が出てくる動詞
です (下の表を見てください) 。活用する行とあわせ、「書く」は「カ行五段活用」と言われます。ちなみ
に「買う」のような「う」で終わる動詞は「半母音動詞」ではなく、「ワ行五段活用」となります。上一
段活用は、「見る」のように、活用がイ段で行われるもので、下一段活用は、「食べる」のようにエ段で
活用するものです。変格活用になるのは、「カ行変格活用」の「来る」と、「サ行変格活用」の「する」
だけです。
ぶんせつ

 国語文法のもう一つの大切な考え方に、「文節」というものがありますが、長くなってしまいましたの
で、これについては別の機会に説明することにします。

【参考】国語文法活用表 (※連用形の太字は音便形)

ごかん

語幹 未然 連用 終止 連体 仮定 命令 活用の種類

話す 話 し す す せ せ サ行五段活用


書く 書 く く け け カ行五段活用
こ い


笑う 笑 う う え え ワ行五段活用
お っ


飛ぶ 飛 ぶ ぶ べ べ バ行五段活用
ぼ ん

ちよ

落ちる 落 ち ち ちる ちる ちれ タ行上一段活用
ちろ
べよ

食べる 食 べ べ べる べる べれ バ行下一段活用
べろ

来る (来) こ き くる くる くれ こい カ行変格活用

せよ

する し
し する する すれ サ行変格活用
しろ

白い 白 かろ う い い けれ かれ 形容詞
かっ

元気だ 元気 だろ に
だ だ なら ✖ 形容動詞
だっ
れよ
助動詞

られる ら れ れ れる れる れれ
れろ (受身)
                                                   
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〈文型・表現〉
01 名詞+に+関して =「について」/ “ohledně…”, “týkající se”, “vztahující se k…“

※ 名詞が後に来る場合は関する/関してのを使う,
ちょさく

・教科書の著作権の問題に関して、昔の友達に相談することにした。
・来年日本で、環境問題に関する国際会議が開かれるそうだ。
・新聞社から電話があって、今の日本の政治に関してのコメン ミトを求められた。
・昨日私が学校を休んだことに関して、いろいろ噂されているようだ。
※ 疑間表現を使う場合には「こと」ではなく、「か」を使う。
・誰を日本に留学させるかに関しては、これから先生たちで相談して決めます。

02 名詞+に+基づいて =「に従って」/ “na základě…”, “podle…”


はしもとしんきち

・この教科書は、橋本進吉氏の文法理論に基づいて書かれている。
・宇都宮大学との交換留学協定に基づいて、今年も二人の学生を留学させることになった。
ひょうか

・この鈴木先生の詳しい調査に基づいて書かれた論文は、高く評価されている。
※ 名詞に付ける場合は基づく/基づいたを使う。
・この鈴木先生の詳しい調査に基づいた論文は、高く評価されている。

03 という+名詞 = “(např. …, který říká / ve kterém stojí / který je o tom) že …“


※ 名詞の具体的な内容を説明する時に使う
・今年の冬は暖かくなりそうだというニュースを聞いて嬉しかった。
・日本語には、動詞が文未に来るという特徴がある。
・チェコ人の友達から、来年日本に留学することになったという手紙が来た。
・学生時代は、朝までお酒を飲んで寝て、昼ごろ起きて、夕方大学に行くという生活をしていた。

しゅうしょくせつ
04 連体 修飾 節+こと+から =「ために」、「せいで」/ “z toho důvodu, že …, … (následek)”
※ 原因・理由を示す表現
こ が

・久我先生は、自分のことをほとんど話さないことから、「秘窒の久我先生」と呼ばれている。
こうひょう

・昨日行われた日本クラブのバザーは、非常に好評だったことから、また今度行われることになった。
・メチルアルコールの入ったお酒を飲んでたくさんの人が亡くなったことから、政府は部分的な禁酒令を
出すことを検討している。
・試験を受けに来た学生の数が机の数よりも多かったことから、最後に教室に入った私は立って試験を受
けなければならなかった。

8
05 動詞(未然形)+ず+に =「ないで」/ “bez toho, aniž by (dělal …)”, “ne(dělat) … a (dělat …)”
・何か欲しいものがあったら、遠慮せずに言ってくださいね。
・ちょっと危険ですので、ここから動かずに私が戻ってくるのを待っていてください。
・昨日は疲れていたので、シャワーも浴びずに寝てしまった。
※ 「ずに」ではなく、「ず」だけを使った場合には、原因・理由も表すことがある。
・昨日のパーティーは鈴木先生がいらっしゃらず、全く盛り上がらなかった。(※「来なかったので」の意
味)
※ 動詞 「いる」に付ける場合には、「いず」ではなく、「おらず」を使う。
・前の日から何も食べておらず、死ほどお腹がすいている。 (※「食べていないので」 の意味)
・田中さんのうちに行ってみたが、誰もおらず、伝言を残すこともできなかった。 (※「いなかったので」
の意味)
・授業中先生に話を聞いておらず、宿題があることも知らなかった。(※「聞いていなかった」の意味」

〈副詞と副詞的表現〉
03 それぞれ = “různý”, “každý jeden”
・皆さん、それでは、前の人から漢字をそれぞれ一文字ずつホワイトボードに書いていってください。
・人間には、それぞれいいところも悪いところもある。
・今日は十個の漢字を勉強しましたが、うちでそれぞれの漢字を十回ずつ書いてください。
・チェコのクリスマスの鯉料理は、それぞれの家庭で、それぞれの方法で作るそうだ。
・お金の使い方は人それぞれなんだから、あんまり人のことを言わないほうがいいよ。

04 必ず = “určitě”, “rozhodně”
ひてい
※ 否定と一緒には使わない。
ふろく
※ 付録の「絶対に」も見ること。
・明日、私は必ず来ますので、ヤンデラさんも絶対に休まないで下さいね。
・申込用紙は、必ず12月1日までに提出してください。

05 必ずしも =「絶対ではない」/ “ne vždy”, “ne nutně”, “ne všechno”


※ 否定表現と共に使う。
※ 硬い表現
・日本の電気製品が、必ずしもヨーロッパでも使えるわけではないので、行く前に使えるかどうか確認し
たほうがいいですよ。
・日本人の使う日本語が、必ずしも正しくはない。
・この言葉はかなり古い表現で、必ずしも日本人なら正しく使えるというものではない。
・この表現は必ずしも使えるようにならなくてもかまわない。出てきた時に意味が理解できるようにして
おいてほしい。
9
06 一般に =「普通」/ “obecně”, “obvykle”, “obyčejně”
きんべん

・一般に日本人は勤勉で、家庭よりも仕事を大事にしていると言われる。
・日本語は、一般にウラル・アルタイ語族に属していると言われているが、インドのタミル語との関係を
しゅちょう
主張する学者もいる。

※ 名詞の前では、一般のになる。ただし、「人」、「家庭」などの一般的な名詞と共に使う。
かんりょう

・我々、一般の人間には、政治家や官僚達がやっていることは理解できない。
・日本では、一般の家庭にも消火器があることが多い。

※ 形容動詞にする時には一般的な/だ の形で使う。
ほしょうにん

・お金を借りる時だけでなく、アパートを借りる時や就職する時にも保証人が必要だというのは、日本で
は一般的だ。
・一般的な辞書では、動詞は終止形で出ているが、岩波の古語辞典だけは連用形で出ている。

〈接続詞〉
01 それで = “(a) proto”, “a tak”, “(a) potom”
※ 理由を表す表現
※ 動作の順番を示す時にも使う。
・今朝駅に着いたら電車が事故で止まっていた。それで学校に行けなかったのだ。
・部下の結婚式に出る予定だったが、父が急病で入院してしまった。それで私が欠席することになった。
・昨日先生から、今日の授業は休講だという連絡があったんですよ。それで同級生に電話をかけたんです
けど、出ない人もいて、学校に来てしまう人もいると思います。
・A: 今度大学時代の同級生たちと富士山に登りに行くことになったんですよ。
B: ふーん、それで?

※ 話し言葉では、「そんで」、「んで」、「で」などの形でも使われる。
・昨日は学校を休んだ。そんで一日中コンピューターでゲームをしていた。

02 つまり = “jinými slovy“, “jinak řečeno”, “zkrátka”, “totiž”


※ わかりにくい表現を別な言葉で説明する時に使う。
・私は、世界で二番目に美しい言葉、つまりチェコ語を勉強していろ。
こ きろく

・大学時代には仲間と研究会を作って、古記録、つまり平安時代の貴族の日記を読んでいた。

※ 文と文の間で使う場合には、二つ目の文の文末に「のだ」、「ことだ」を付けることが多い。
・父は過労死だった。つまり仕事をし過ぎて疲れて死んでしまったのだ。
・先生、いろいろ説明していただきましたが、つまり私は病気ではないということですね。

10
〈まとめ〉 連体詞

01 いわゆる =「一般にそのように言われている」/ “takzvaný”


・これがいわゆるロッキード事件です。
こ じ せいご

・いわゆる「古事成語」というのは、中国の古典に出て来る話が元になって出来上がった言葉である。

02 あらゆる =「すべての」/ “všechen”, “každý”

・世界中のあらゆる場所で、日本のお米が食べられるようにしてほしい。

※ 強調する時、「ありと」を付ける。
はかい

・戦争でありとあらゆる建物が破壊されてしまった。

03 ある =「一つの」/ “jeden”, “jisty”, “nějaký“


※「或る」 と書くこともある。
・アジアのある国で仕事をしている友人の話によると、その国に住む日本人の数が増えているらしい。
・私がその男と初めて出会ったのは、数年前のある日のことだった。

04 わが =「私の」、「自分の」、「うちの」/ můj , náš


※「我が」と書くことも多い。
・我が社では、太陽光発電に使用する太陽電池を生産しています。
・明日、やっと我が家に帰れる。 (※読み方は「わがや」)

05 この、その、あの、どの
・この4つの言葉については説明も例も不要ですよね。
・日本人は「彼」ではなく、「あの人」という言葉を使うことも多い。

※ 名詞「ところ」、「もの」と一緒には使わない。「このところ」は使えるが、「最近」という意味に    
なる。場所を表す場合には「ここ」、「そこ」、「あそこ」、「どこ」、物を表す場合には「これ」、「そ
れ」、「あれ」、「どれ」を使う。古い表現では「このもの」、「そのもの」、「あのもの」を使うこと
もあるが、これらは人を指す表現である。

06 例の =「あの」、「いつもの」/ obvyklý

・今日も、例の場所で、例の時間に待っていますので、例のものを持ってきてください。
・今回も例のようにお願いします。

11
07 明くる =「次の」/ “další”, “příští”, “následující”
※「日」、「月」、「年」などと共に使う。
・明くる日の朝 起きた時にはもう誰もうちにはいなかった。

08 いろんな =「いろいろな」/ “různý”


※ 話し言葉的表現
・この学校には、いろんな人がいる。

※「いろんだ」は使えない。
・この学校で学んでいる人たちの国籍はいろいろだ。

09 大きな =「大きい」 /小さな =「小さい」


※ この二つについては、形容詞「大きい」「小さい」と、連体詞「大きな」「小さな」を合わせて、「大
きいな」「小さいな」とする間違いが非常に多いので注意しなければならない。

※ 文末では使わないので、「大きだ」「小さだ」という形では使えない。
・あそこに見える大きな建物が、パラツキー大学の図書館です。

〈まとめ〉   「同じ」の使い方

 この言葉がどの品詞に含まれるのかについてはいろいろな説がある。

01 形容動詞用法
・私が昨日買ったコンピューターは、ヤンデラさんが使っているのと全く同じです。
・私も、ヤナさんと同じで、宇都宮大学に留学したいと思います。
・この新しい製品は、値段はこれまでのものと同じですが、性能は同じではありません。
なかみ

・これとこれは、名前が違うだけで、中身は同じだ。

02 連体詞的用法
※ 名詞の前で「同じな」 にならないことに注意
・今回のテストでは、 ベトル君と全く同じ点数でした。
・ヤンデラさんと山田さんは同じ授業に出ています。
・私も、ヤナさんと同じように、宇都宮大学に留学したいと思います。
・勉強してもしなくても、どちらでも同じのような気がします。

12
03 形容詞的用法
・今日も、昨日と同じく、文法の説明から始めます。
・私も、ヤナさんと同じく、宇都宮大学に留学したいと思います。

※ 書き言葉的表現
※ 「同じで」と同じような意味

【参考】

04 副詞的用法
※ 古い表現
※「同じ+動詞 (連体形) +なら」の形で使う。
※ どうせするなら」 「結局することになるなら」の意味
・同じ買うなら、少しでも安いほうがいい。
・同じ行くなら、日本に行きたい。

たいぎ ご こと
※「同じ」の対義語は動詞「違う」、「異なる」
・これとこれは全く違う。
・3年間同じように勉強したのに、パヴェル君と、ペトル君の日本語のレベルは全然違う。
・この教科書とは違うことが書いてある教科書もあるかもしれません。
・このビールは、この前飲んだのと違いますね。
・私は、ヤンデラさんと違って真面目ではありませんので、よく授業をサボります。
・私とは異なる意見をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、 ……。
・ この二つの漢字は非常によく似ていますが、しんにょうの点の数が異なっています。

13
《本文3》  チェコ語の授業の後で1
A
みやお
宮尾:ヤンデラ先生、すみません。ちょっとお頭いしたいことがあるんですが、 今よらしいですか。

ヤン : はい、何でしょう。

宮尾 : ええと、知り合いにチェコ語がどんな言葉か、説明しようと思うんですが、どんな説明がいい
でしょうか

ヤン : そうですねえ。 普通は、最初に印欧語族だとか、スラブ語だとか、ロシア語に似ていろとかいうこ
とを言うんですけど…、それは宮尾さんも知っていますよね。

宮尾 : ええ、でも知り合いというのが外国語嫌いなもので、それに、もしかしたら言語学も嫌っているか
もなので、そんな説明だと嫌がりそうなんですよ。

ヤン : へえ、それは面白い人ですね。じゃあ、もう体系的に説明するのはあきらめて、宮尾さんがチェコ
語を勉強した時に感じた日本語と違う部分を個別に説明するしかないんじゃないですか。 日本語と
違ってああだとか、こうだとか言えば、わかりやすくなるでしょ。

宮尾 :そうすると、例えば、名詞の性の問題とか、単数複数の問題とかですか。

ヤン : ええ、それに名詞だったら格変化なんかも、日本語の助詞と比べて説明するといいんじゃないでしょ
うか。 

宮尾 : そうですね。そういうのでよければ、いくつか思いつけそうです。
たい
ヤン : あとは、名詞の活動体、不活動体、それから動詞の完了態、不完了態あたりが、日本の人には面白
いんじゃないかと思いますよ。

宮尾 : そうですねえ……うーん。 その辺まで行くと、私もちょっとあやふやで、自信がないんですけど、
やってみます。あっ、そうだ、せっかくチェコ語を勉強しているんですから、チェコ語で日本語のこ
とを説明できるようにもなりたいです。

ヤン : いいですねえ。 じゃあ、今やってる課が終ったら、授業でそういうことをやりましょうか。

宮尾:ええ、ぜひお願いします。 自分でも調べてみようかとも思うんですが、こういうのは、語彙を知ら
ないとどうしようもないので。ところで、ヤンデラ先生、先生は私たち学生と話す時にも、すごく丁
寧にお話しなさいますけど、何か理由がおありなんですか。

ヤン:そういう宮尾さんこそ。 今時若い人にしては、丁寧に話していると思いますけど。
そ ふ ぼ
宮尾 : うちは、祖父母も一緒に住んでいますので、その影響だと思いますけど……。
あくゆう

ヤン : そうですか。私の場合は、友達ですね。昔この大学に留学していた時の悪友に言われたんですよ。
「丁寧に話せるのは力だ、敬語を使えるのは武器だ」とかなんとか。わかるような、わからないよう
な言葉なんですけど、私はわかっちゃったんでしょうね。そねれ以来こんな感じです。

宮尾 : それ、私もわかるような気がします。いいお友達だったんですね。

14
ヤン : それはどうなんでしょうね。親友とは言いたくないので、悪友と言うことが多いんですけど。

宮尾 : 悪友ですか。いいですねえ。あっ、先生、すみません。そろそろ失礼します。今日はお忙しいとろ、
わざわざお時間とっていただいてありがとうございました。

ヤン : いえいえ、何かあったら、いつでも遠慮しないで質問に来てください。

B
宮尾 : 先生、すみません、スメタナのあの有名な交響詩のことなんですけど。
そこく
ヤン : 『我が祖国』がどうかしましたか。
だいめい
宮尾 : 日本語の題名のほうはどうでもいいんですが、チェコ語だと「Má vlast」 ですよね。

ヤン : ええ、そうですけど。
ふるさと
宮尾 : 「vlast」が、故郷とか祖国という意味なのは、辞書を引いてわかったんですが、「má」がわからな
さんにんしょう
いんですよ。どうして動詞 「mít」の三 人称 単数の形がここに出てくるのか……。

ヤン : あはははは。すみません、笑ってしまって。まあ、よくある間違いなんですけどね。この「má」は
「mít」とは全く関係ないんですよ。
とくしゅ
宮尾 : えっ、でも、 「vlast」は特殊変化の性名詞だから、1格と4格は同じなので、文法的にはこの考え
方でいいのかなと思ったんですけど。

ヤン : でも、それだと直訳すると「彼は祖国を持っている」になってしまいますよ。実はこれ、「私の」
しょゆう
という意味の所有形容詞が女性名詞につく時の1格の特別な形なんですよ。 普通は 「moje」を使う
から、知らなくても仕方ありませんよ。それに授業ではまだやっていないところですから。

宮尾 : へえ、そうだったんですか。チェコ語は難しいですねえ。

宮尾 : 先生、たびたびすみません。またまた質問なんですけど、 「trhák」って言葉の意味を教えていただ
けませんか。

ヤン : うーん、それって日本語に訳しにくい言葉なんですけどねえ。あっ映画の題名ですか。

宮尾 : そうなんです。チェコ人の友達にめちゃくちゃ面白い映画だと聞いたんですけど、見るのはまだ早
いと止められまして。せめて題名の意味ぐらい知りたいと思うんですよ。

ヤン : なるほど。 でも、確かにそのお友達の言うとおりですね。今の宮尾さんにはまだ勧められません。
今回は言葉の説明だけにしておきましょうか。

宮尾 : はい、お願いします。

ヤン : もともとは、「ちぎる」とか「引っぱる」という意味の動詞からできた名詞なんですけど、映画の
場合には、大ヒットした映画のことを言います。

15
宮尾 : そうすると、映画が公開されると観客が押し寄せて連日満員で立ち見も出たってような時に使うわ
けですか。
あっとう

ヤン : そうです。それから、本なんかだと他よりも圧倒的にたくさん売れた場合に使いますね。
ばつぐん
宮尾 : ということは、「抜群の売り上げ」とか「売り上げダントツ一位」ってことなんですかねえ。うー
ん「ベストセラー」もそうですけど、映画の題名にはなりそうもありませんね。

ヤン : まあ、そうですね。それからスポーツの世界でも使うんですけど、マラソンとか、自転車のロード
しゅうだん

レースなんかで、スピードして集団から抜け出して、独走することも「trhák」と言います。

宮尾 : それは、日本語でも「ちぎる」って言います。そうすると 「trhák」は「ぶっちぎり」になるんです
かねえ。あんまりきれいな表現じゃありませんけど、これなら題名になりそうですし。
はんだん

ヤン : うーん、どうでしょうか。それは映画を見てから判断してくださいよ。

〈会話2〉 同じ所と違う所
【課題1】 上の A、B、Cの会話を、「です・ます」を使わない形にして、二人組で話してみてください。
それができたら、付録のヤンデラ先生と鈴木先生の会話も「です・ます¦ を使わかい形に直してみましょ
う。

【課題2】 比べて話そう。
1. 自分の住んでいる町・村について、オロモウツと比べて話してみましょ う。同じところ、違うところ、
似ているところなど、いろいろ話してください。敬語は使わないこと。


A : 〇〇さんは、どこに住んでるんだっけ?
B : ______って村だよ。
A : その村ってどんなとこなの?
B : そうだねえ。オロモウツと比べると、人口は少ないけど、______は似ていろかな。
A : へえ、他にオロモウツと同じところってある?
続く

2. 日本の駅の写真を探して、チェコの駅を比べて同じところ、違うところを行ってみましょう。
・ 東京駅、京都駅などの大都市の中心駅 (プフハ、プルノなどの駅と比べる)
・ 渋谷駅、新宿駅、池袋駅などの大きな駅
・ 東京などの地下鉄の駅 (プラハの地下鉄の駅と比べる)
・ 田舎の駅

3. 日本の雪だるまとチェコのスニェフラータを比べてみましょう。

4. 日本語とチェコ語の似ているところ、 違うところについて話してみましょう。

16
〈文型・表現〉
06 動詞(終止形)+と+いい = přání, doporučení apod
※ 希望を表す。相手に勧める時にも使う。
・ 明日は晴れるといいですね。
・ 残念ですが富士山は見えませんね。晴れてくれるとよかったんですが,
・ 風邪をひいた時は、この薬を飲むといいですよ。
・ オロモウツで困ったことがあったら、パラツキー大学に行ってみるといいかもしれませんよ。日本語が
できる学生がいますから。

07 名詞+と+違って/異なり = “na rozdíl od …”


※ 違う点を示す時に使う表現
・ 北海道は、日本の他の地方と違って梅雨がない。
こうずい

・ 北日本では、南日本と異なり春に洪水が起こることがある。
タバコ

・ 日本ではチェコと違って、お酒と煙草の販売は免許制になっているため、同じコンビでもお酒と煙草を
売っているところと、売っていないところがある。

08 名詞+と+比べて/比べ/比べると = “ve srovnání s …”


※ 比較して差を示す時に使う表現
・ チェコの冬は日本の冬と比べるとずっと寒い。
ごじゅん
・ 日本語は英語と比べて語順 が自由である。
・ チェコ人は、日本人と比べ、背が高い人が多い。

09 名詞+の+(ような)+形をしている = “mít tvar jako …”


※ 物の形を説明する時に使う。
・ イタリアは長靴の形をしているとよく言われる。
み か づき
・ この三日月のような形をしているパンは、チェコ語でロフリークと言います。
・ これは、鉛筆の形をしていますが、実は消しゴムです。それから動物や自動車の形をした消しゴムもあ
ります。

17
副詞と副詞的表現
07 あやふや = “nejistý”, “nejasný”, “mlhavý”
※ はっきりしない時、よくわからない時に使う。
※ 形容動詞
・私は、チェコ語が少しできますが、文法の知識はあやふやなので、聞かないで下さい。
・新しく買ったコンピューターの使い方の説明があやふやでよくわからなかった。
・この質問には、あやふやに答えておこうと思う。

08 せっかく = “s námahou”, “laskavě”, “schválně”, “po vyvinutí určitého úsilí”


※ 訳すのが難しい言葉
※ せっかくて∼のに の形でチャンスを生かせなかったのが残念だどという意味で使う。
・昨日はせっかく遊びよに来てくれたのに、うちにいなくてすみません。 (※「会えなくて残念だ」の意味)
・せっかくいい会社に就職したのに、すぐ辞めてしまうなんて、もったいない。

※ せっかく∼から/ので の形で、後に続くことをしなかったら残念だという意味で使う。
・せっかくオロモウツにいらっしゃるのですから、パラツキー大学にもお寄りください。(※「寄ってくれ
なかったら残念だ」の意味う
・せっかく新しいコンビュータを買ってもらったのだから、使わないともったいない。
しゅうしょくせつ

※連体 修飾 節の一部としても使えろ。
・友達は、せっかく私が貸してやったお金をトラムですりにすられたらしい。
・せっかく先生に直してもらった作文をなくしてしまった。

09 実は = “ve skutečnosti”, “upřímně řečeno”


※ 知られていない本当のことを話す時に使う。
・ユレチカさんは、実は日本で生まれ育ったので、日本語が上手なのは当然です。
・私は、実は英語が全くできませんので、チェコ語でお話しくださいませんか。

※ 実に =「本当に」/ “opravdu”, “skutečně”

・あの人は実に面白い人だねえ。今度また一緒に飲みに行きたいなあ。
・ユレチカさんは、実に日本語が上手ですねえ。 信じられませんよ。

10 たびたび =「何度も」/ “opakovaně”, “často”


・お忙しいところ、たびたびお電話をさし上げてしまいまして、申し訳ございません。
・たびたびで申し訳ないんですが、またお金を貸していただけないでしょうか。

18
11 また/またまた = “zase”, “opět”
※ くり返しすることを示す。
※「またまた」は親しい相手に使う。
・また来年もチェコに来ますので、その時は一緒にお酒を飲みに行きましょう。
・先日、風邪を引いて学校を休んだばかりなのに、今度は怪我をしてまた休むことになってしまった。
・先生、すみません、また/またまた質問させてください。

12 めちゃくちゃ
※ 漢字で「減茶苦茶」とも書く。

① =「とても」、「非常に」/ “strašně”, “velmi”, “hodně”

※ 話し言葉的
・あの人は字がめちゃくちゃ汚いので、何が書いてあるのかわからない。
・チェコ語はめちゃくちゃ難しいらしいですよ。

② =「混乱している」、「わけがわからない」/ “zmatený” , “v nepořádku”, “bez ladu a skladu”

※ 形容動詞的な使い方
・あの映画はストーリーがめちゃくちゃで、よくわからなかった。
・あの男と知り合ったせいで、私の人生はめちゃくちゃになってしまった。
・鈴木先生は、時どきめちゃくちゃなことを言うので気を付けたほうがいい。

13 せめて = “alespoň”
・せめて自分の部屋ぐらい自分で掃除しなさい。
・大学生なんだから、毎日せめて2時間ぐらいは勉強したほうがいいと思う。
・せめてあと一万円あれば、ヨーロッパ旅行にいけるんだけど……。
・他の試験には合格できなかったので、せめてこの試験だけでも合格したい。

14 確か = “pokud se nemýlím”, “pokud vím”, “pokud mě paměť neklame”


※ 確信がない時に使う。
・ヤンデラ先生は、確か以前プラハの銀行で働いていたことがあるはずですよ。
・A : 長田さんは、確か私達よりいくつか年上でしたよね。
 B : ええ、確かこの大学に入る前に、一度就職したと言っていたと思います。

※ 形容動詞 確かだ/な/に =「本当だ/な/に」/ “jistý/ě”, “nepochybný/ě”, “skutečný/ě”

・ヤンデラ先生に聞いたら、確かに以前銀行で働いていたと言っていました。
・A : 窓がちゃんと閉まっているかどうか確認してください。
 B : はい。 確かに閉めてあります。
・ヤンデラ先生が以前銀行で働いていたのは確かです。
・長田さんが私たちより年上なのは確かなことです。
19
15 一見 =「ちょっと見ただけで」/ “na (první) pohled”

※ 実は違う時に使う。
・この問題は一見簡単に見えますが、実は難しいですので気をつけてください。
・一見簡単に解決できそうな事件でも、解決までに長い時間がかかることがあります。
・その人は一見日本人のようでしたが、実はアメリカ人でした。

16 はるかに/ずっと = mnohem , daleko


※ 差が大きいことを示す表現
・天気予報によると、今年の冬は去年の冬よりずっと寒くなるらしい。
・昔の日本語能力試験の2級は、3級と比べるとはるかに/ずっと難しかった。
いなさく

・今回の発見で、これまで考えられていたよりはるかに古くから日本で稲作が行われていたことがわかっ
た。

※「ずっと」のもう一つの使い方
・昨日は朝から晩までずっと眠ってしまった。
・私はずっと前から、チェコ語を勉強したいと思っていたのですが、 機会がありませんでした。

〈接続詞〉
03 だから = (a) proto

・来年は卒業論文を書かなければならない。だから、今年の夏休みはあちこち旅行するつもりだ。
・今日もまたたくさん本を買ってしまった。だから、お金も時間もなくなるのだ。

04 ただし/ただ = avšak , jen (+ výjimka)

※ 部分的に否定する時に使う。
・午後はたいてい学校に来ています。ただし水曜日だけはうちで仕事をするので来ません。
・このイベントの入場料は50コルナです。ただし、日本クラブの会員は無料です。
しょせき

・スマートフォンとかタブレットのような新しい機械は使いたくありません。ただ、電子書籍リーダーだ
けは買ってしまって使っています。

05 ちなみに = “mimochodem”, “když už jsem zmínil …“, “ve spojitosti s tím, co jsem právě řekl…”
※ なくてもいい情報を付け加える時に使う。
※ 「ところで」と違って、次に出てくる情報はあまり重要ではない。
・日本文学に関する最近出た論文集を貸しますので、ちなみに私もちょっと書いているんですけど、卒論
に使ってください。
か さ い きよし

・皆さんが、どんな日本の作家の本を読んでいるか教えてください。ちなみに私は今、笠井潔という作家
げんしょう
の『テロルの現象学』という難しい本を読んでいるんですけどね。皆さんも何か読んでいますよね。

20
06 それに = “a (dále) také”, “kromě toho”, “k tomu”
・今週は月曜から金曜まで毎日テストがある。それに土曜日にはオープンキャンパスが行われるので、そ
の準備もしなければいけない。
・鈴木先生は、チェコ語だけでなくアルメニア語も勉強したことがあるらしい。それに今はカザフスタン
語を勉強していると言っていた。ただし、どの言葉も話すことはできないらしい。
・買い物に行くなら、オレンジジュース、ミネラルウォーター、それに、今日はジョギングする予定なの
でスポーツドリンクも買ってきてください。

07 そうすると/すると = “v takovém případě”, “tehdy”, “a (když to uděláte) tak (pak)”


※ まえの文に出てきたことから予想されることが後に続く。また時間的な前後関係を示す。
こう し い ん

・ヤン : この言葉は、硬子音の「t」で終わっていますよね。
 宮尾 : そうすると、男性名詞だということですか。
・この道をまっすぐ1キロぐらい行ってください。そうすると右側に大きな建物が見えてくるはずです。そ
れが、コンサートホールです。
・何の機械かわからなかったが、スイッチを入れてみた。すると、音楽が開こえてきた。

08 ということは = “to znamená, že …”


※ 前の文に出てきた情報に基づいて、自分が考えたことを述べる。
・アペートの部屋には電気がついている。ということは、ヤンデラ先生は部屋にいるということだ。
・A : 天気予報で、明日の朝は、気温がマイナス20度ぐらいまで下がるといっていましたよ。
 B : ということは、先生は学校に来ないかもしれませんね。

09 また = “(a) také“, “(a) dále“


・パラツキー大学の学生はチェコ人が一番多いが、スロヴァキア人も多い。また、他の国からの留学生も
たくさんパラツキー大学で勉強している。
・2013 年1月に行わもんたチェコの大統領の選挙の第一回投票で、一番たくさんの票を集めたのは元総
理大臣のミロシュ・ゼマン氏で、二番目は外務大臣のカレル・シュヴァルツェンベルク氏だった。また
よとう こうほ かくとく
与党の市民民主党の候補者ソボトカ氏は、2 パーセントぐらいの票しか獲得できなかった。

まとめ  「あまり」の使い方
01 名詞として使う =「残り」/ “zbytek”, “přebytek”
・使わなかったあまりはこっちに戻してください。

21
02 副詞として否定形と共に使う =「そんなにない」/ “moc ne”, “ne moc”
・このビールはあまりおいしくない。
・今週はあまり忙しくないので、サッカーを見に行けそうだ。
・あの人は、あまり勉強していないので、試験には合格できないだろう。
・日本語を勉強していますが、日本についてはあまり知りません。

※ 話し言葉では「あんまり」の形で使われることもある。
・今日見た映画はあんまり面白くなかった。

03 あまりに(も)=「とても」、「非常に」/ “příliš”, “hodně”


・入学試験があまりに難しかったので、泣き出してしまう人もいた。
・チェコのビールはあまりにおいしくて、医者に止められているのに飲むのをやめられない。
・昨日は、朝早くから夜遅くまで仕事が忙しく、あまりにも疲れていたので、着替えもしないでそのまま
寝てしまった。
はら

・最近、不運なことがあまりにも続くので、神社でお祓いをしてもらうことにした。
・親友だと思っていた人に、そんなひどいことをするなんて、あんまりだ。 (※語し言葉)

04 名詞のあまり =「とてもので」/ “být tak moc (šťastný, smutný, apod.), že…”, “kvůli příliš intensivnímu
pocitu (smutku, štěstí apod.) …”
※ 気持ち、心の動きを表す言葉と共に使う。
・難しい試験に合格した時、喜びのあまり、思わず泣いてしまった。
・その映画を見た時、驚きのあまり何も言えなくなってしまった。

※ 気持ちを表す形容詞の語幹に「さ」を付けて名詞化して使うことも多い。
・久しぶりにヤンデラさんの顔を見たら、懐かしさのあまり言葉が出てこなかった。

05 あまり+の+名詞+に =「とてもので」/ “být tak moc …, že …”, “kvůli tomu, že je příliš …”


※ 形容詞の語幹に「さ」を付けて名詞化したものとともに使うことも多い。
・今朝は、あまりの寒さに、どこにも行く気がしなかった。
・ヴェロニカ会長が作ってくれた料理のあまりの美味しさに、ほっぺたが落ちてしまうかと思った。
・あまりのことに何も言えなくなってしまった。 (※「あまりにひどい」の意味)

【参考】
06 動詞(連体形)+あまり =「し過ぎて」、「し過ぎたので」/ “příliš (+ sloveso), a tak”
※ 使える動詞は少ない。
・間違いをしないようにしようと思うあまり、言葉が口から出てこなくなってしまった。
・遅刻しないように急ぐあまり、宿題をうちに忘れてしまいました。
22
〈慣用句の世界1〉  「気」①
01 気に入る = “oblíbit si”
・気に入った物があれば、差し上げますので、どうぞお持ちください。
・この街は静かでいいですねえ。気に入りました。
・このコンピューターは、性能や値段はいいんだけど、デザインが気に入らないから、買わない。
おしゃ

・気に入らない部分があったら修正しますので、仰ってください。

※ 気に食わない =「気に入らない」の非常に口語的な表現
・人が遊んでる時に、自分だけ仕事するのは、気に食わんよな。
・あの人の言うことは正しいのだろうが、言い方が気に食わない。
さわ け ん お かん

※ 気に障る =「気に入らない」より強い嫌悪感を表す表現
・あの人の言うことは一々気に障る。
・気に障るようなことを、申し上げてしまいまして、まことに申し訳ございません。

02 気になる、気にかかる = “znepokojovat”, “vyvolávat obavy”, “vadit”, “vyvolávat zájem“


・最近、お洒の量が増えているのが気になる。
・なぜかあの人のことが気になる。好きになったのかなあ。
・どうもあの人のことが気にかかる。病気でもしていなければいいが。
・この表現は間違いとは言いたくないのですが、ちょっと気になります。
・最近休みが多くて気にかかっていた学生が、病気で入院してしまった。
・何か気にかかる問題はありますか。(※「何か気がかりな問題はありますか」の意味)

03 気にする、気にかける = “dělat si starosti”, “příliš o něčem přemýšlet”, “věnovat pozornost”


・誰でも間違いはありますので、あんまり気にしないでくだたさい。
・文法を気にしすぎると、言葉が口から出てこなくなりますのでほどほどに。
・先生のところに私の教え子が入学しますので、気にかけてやってください。
・あの人は、今でも私のことを気にかけてくれていて、時々電話をくれる。

04 気をつける = “dávat si pozor”


・そこは階段がちょっと壊れていますので、気をつけてください
・同じ間違いを繰り返さないように気をつけてください。
・寒い日が続きますので、風邪などひかぬよう、お体には十分にお気をつけください。
・お気をつけください。
しせい

・気を付け、礼。 (※儀式の時などに姿勢を正しくするよう命令する言葉)

23
05 気を失う = “ztratit vědomí”
・ショックのあまり気を失って倒れてしまつた。
・交通事故で頭を ぶつけて気を失った人が、救急車で病院に運ばれていった。

06 気を抜く = “přestat se soustředit”, “uvolnit se“


・試験に合格しても気を抜かないでください。気を抜くと覚えたことを忘れてしまいますよ。
・以前から日本語を勉強していたので、簡単だと思って気を抜いていたら、全然できなくなってしまっ
ぼこく ご

た。 (多分母国語で考えたのでしょう)

07 気を落とす、気落ちする = “být zklamaný”, “být skleslý”, “poklesnout na mysli”


・試験に合格できなかったからといって、気を落とさないで、勉強を続けてください。
さんざん ぐ ち

・離婚した友達が気落ちしているようだったので、一緒にお酒を飲みに言ったら、散々愚痴を聞かされ
た。

08 気を許す = “naprosto důvěřovat, a proto nebýt ostražitý“


※ 「信じる」と同じような意味
・あの人は、何を考えているかわからないところがあるので、気は許さないほうがいいでしょう。
・友達だと思って気を許していた人に、ひどい悪口を言われてショックだった。

09 気を使う/遺う = být pozorný”, “být starostlivý”, ”byt opatrný”, “byt napjatý”

・A : これつまらないものですが、お礼です。
 B : そんな。気を使わないでくださいよ。
・授業の時にお客さんが来ると気を使うので、いつも以上に疲れてしまう。

10 気がする = “mít dojem, že …”


・誰かが来たような気がして見に行ったが、誰もいなかった。
・あの人とはどこかで会ったことがある気がするのだが、どこで会ったのか思い出せない。

11 気のせい = “mít vidiny/slyšiny”, “něco si namlouvat”, “zdát se někomu”


・誰かが来たような気がしたが、気のせいだった。
・気のせいか、最近体の調子が悪いような気もする。

12 気が付く、気付く = “všimnout si“


・学校に着いてから、うちに宿題を忘れてきたことに気が付いた。
・自分で自分の間違いに気付けるようになってください。

24
第二課  敬語、敬語、敬語

《本文1》 研究発表会
次の会話を敬語の使い方に注意しながら読みましょう。

A 研究発表
宮尾 : ……以上で、私の発表を終わらちせて頂きます。
まつもと
松本 : 宮尾さん、ありがとうございました。ただいまの宮尾さんの発表に対しまして、何かご質間はござ
いませんか。 質問のある方は、お手をお挙げください。……どなたかいらっしゃいませんか。……
では、鈴木先生どうぞ。
鈴木 : 今の宮尾さんの発表大変興味深く聞かせていただきました。 内容の濃い、しかもよくまとまった発
ふじわらさねすけ きんとう

表だったと思います。 一点だけちょっと気になったのですが、藤原実資と公任について、かなり
だいたん こんきょ
大胆なことを発表されましたよね。あれは何か、根拠のある考えなのでしょうか。 それとも誰かの
説を借りてきたとかいうことでしょうか。
松本 : 鈴木先生ありがとうございます。 宮尾さん、お願いします。
宮尾 : はい、ええとですね、この件に関しましては、私も少し言い過ぎかなとは思ったのですが、 時代を
しょうゆ う き
通して、先輩方一緒にずっと『小右記』の講読をしていたんです。細々と続けてはいるんですけど
ね。 量もかなり読みましたし、読んだところは詳しく読み込んだと思っております。私が今回申し
上げましたことは、その『小右記』の講読を通して得た考えです。いつのどの記事を元に、と開かれ
るとちょっと苦しいんですけれども、どなたかの説ということではなくて、私自身の考えだとご理解
ください。
松本 : 鈴木先生、今のでよろしいですか。
鈴木 : はい。 経験に基づいた御意見ということですね。ありがとうございます。

B 発表会の後
宮尾 : 鈴木先生、先ほどはご質問ありがとうございました。誰からも質問が出なかったらどうしようと
思っていたんですよ。
鈴木 : 宮尾さん、いやあ、いいり発表だったね。 ご苦労様。本当はもっと意地悪な質問をしてやろうと思っ
ていたんだけど、意地悪な質問が思い浮かばなかったんだよ。
宮尾 : そうだったんですか。
ヤン : 宮尾さん。
宮尾 : そっ、あれ、ヤンデラ先生、どうしてここにいらっしゃるんですか。
ヤン : 宮尾さんの発表が聞きたかったってのもあるんですが、他にも知り合いが来ていましてね。
鈴木 : いやあ、実はその知り合いというのが私なんだよ。
宮尾: えーっ、お二人はお知り合いだったんですか。
ヤン : 以前話したことがあるでしょ。 留学時代の悪友なんですよ。そいつがいつの間にか大学の先生に
なってて、おまけにこんな研究会で偉そうにして……。
25
鈴木 : そういうヤンデラさんこそ、何で宮尾さんと知り合いなんですか。
ヤン : 私のチェコ語の授業に来ているんですよ。熱心に勉強していますよ。昔の誰かさんみたいに。
鈴木 : へえ、宮尾さんはチェコ語なんか勉強してたのか。ちょっとびっくりだなあ。
宮尾 : いえ、勉強していると申しましても、始めたばかりですし、まだまだ何もできないんですよ。
鈴木 : ところで、宮尾さん、この後の予定はどうなっているのかな。 先生たちで、飲みに行こうという話
になっているんだが、一緒にどうだい。
宮尾 : 申しわけありません。お誘いはありがたいんですが、今日はちょっと先約がありまして、先ほど申
し上げました『小右記』の講読会のメンバーで、飲みに行くことになっているんですよ。 今度、世話
になった先輩が帰郷するんですけど、その先輩のお別れ会でして、出ないわけにはいかないんです。
すみません。
鈴木 : いやいや、謝ることはないよ。じゃあまた次の機会ということだな。
うんえい

宮尾 : そうですね。 今度は運営に関わりました先生のところの松本さんとか、坂田なんかとも打ち上げを
しようと申しておりますので、その時には松本さんを通して声をかけさせていただきます。
鈴木 : ああ、そうだね。 じゃあ、また今度を楽しみにしているよ。
宮尾 : その時にはヤンデラ先生もぜひ、いらっしゃってくださいね。
ヤン : それは嬉しいお誘いですね。でも、私としては『小右記』の会のほうにも興味があるんですけど。
宮尾 : でしたら、次の授業の時に、今後の予定をお伝えしますね。
ヤン : お願いできますか。
宮尾: ええ、もちろんです。それでは、ヤンデラ先生、鈴木先生、すみませんが、今日はこれで失礼さすせ
ていただきます。
鈴木 : ああ、またね。
ヤン : はい。 では、また来週の授業で。

C 研究会の後の先生たち
鈴木 : さて、ヤネさん、俺らも行こうか。
ヤン : 行こうかって、どこ行くんですか。
鈴木 : ヤセネさん、俺たちだけの時は、ですます使わずに話そうって決めたよな。
ヤン : それはそうなんだけど、急に変えるのは難しいんだよ。最近ですます抜きで話す機会なんてほとん
どないから。
鈴木 : じゃあ、今日は復習だな。でも他の先生たちも来るから、……。ルール変える?
ヤン : いや、それは嫌だなあ。それより他の先生たちのこと教えてよ。
鈴木 : そう? じゃあ、ええとねえ、俺もあんま覚えてないんだけど……。

(以下略)

26
〈会話〉   敬語
【課題 1 】

1. 本文1のBの部分を、敬語 (尊敬語・謙譲語) を使わない形に直して、文章全体を「です・ます」を使う


形に統一してください。
2. さらに「です・ます」を全く使わない友達の会話に直してみましょう。
3. 自分が直したものを使って、二人組になって読んでみましょう。

※「です・ます」を使わない場合の疑問文の文末に注意
例1  行きませんか。→ 行かない (の/かい) ? (※「行かないか」は強すぎる)
例2  誰が来るんですか。→ … 来るの?/来るんだ (よ) ?/来るんだい? (※「来るんか」 は方言的)

【問題2】 二人組になってお互いに敬語 (尊赦語、謙譲語) を使って話してみみましょう。質問する時も、


答える時も敬語を使ってください。

内容例
・簡単な自己紹介。名前だけででもかまわない。
・相手がどこから来たのか聞く。
・何をしているのか聞く。 (※仕事)
・何をしているのか聞く。 (※今、チェコで)
・その他、いろいろ。

【問題3】 チェコ敬語について説明してください。話す時には敬語を使わなくてもかまいません。

内容例
・敬語があるのか、ないのか。
・ある場合には、どんな敬語なのか。
・敬語はどんな時に使うか。
・自分でもよく使うか。
・日本語の敬語と比べてどう思うか。
・敬語がない場合には、どうしてないと思うか。

27
〈文型・表現〉

01 名詞+そのもの/その人/自身/自体 = “sám o osobě”, “samotný”, “sám”


・コンピューターそのものはそれほど高くなかったのですが、他にもプリンターやマウス、外付けハード
ディスクなどを買ったので、予算をオーバーしてしまいました。
・ホームページを作ること自体は、そんなに難しくないのだが、それを定期的に更新していくことは非常
に大変だ。
・ヤンラ先生御自身は、今日本にいらっしゃるので無理だけど、教え子さんたちに聞いてみることはでき
ると仰っていましたよ。
・鈴木先生御自身の御連絡先は存じ上げないのですが、先輩を通じて御連絡差し上げること可能だと思い
ます。
・空港で私を待っていたのは、大学の学長その人だった。

02 動詞(連用形)+ながら
① 二つのことを同時にする時に使う/ dělat dvě věci současně

・私は新聞を読みながら朝ごはんを食べるので、時々お茶をこぼしてしまうことがある。
・あの人は、涙を流しながら笑っていた。
ぎゃくせつ

② 前の部分から予想されるのとは反対の結果になる時に使う逆接の接続詞/ “i když”, “přestože”


※ 動詞以外にも使える。 接続に注意
・質問の答えがわかっていながら答えない学生が多い。
・レストランで食事をしながら、お金を払わずに逃げる。これを食い逃げという。
・最近の携帯電話は、小さいながら色々な機能がついて便利になった。
・健康でありながら自分は病気だと思っている人もいる。
・残念ながら、試験に合格できませんでした。
・あの人は日本人ながら/でありながら、アメリカで生まれたので日本語が下手だ。
・我ながら馬鹿なことをしたと思う。

※ 「も」を加えることもある。
・忙しいながらも何とか時間を見つけて、お土産を買いに行った。
・日本語がまだあまりできないながらも、がんばって日本語で話していた。

28
03 名詞+を+通して
① 直接ではなく間に何かがある時に使う/ “prostřednictvím”, “přes”, “skrz”

・ヤンデラ先生とは、大学時代の後輩を通して知り合いました。
・古い文学作品を通して知った日本と、実際の日本を比べてみてください。違いますよね。

② 時間を表す表現と共に使うと、「その期間ずっと」という意味になる/ “po celou danou dobu”

・チェコは一年を通して空気が乾いているので、のどの調子が悪くなりやすい。
・この時代を通して権力を持っていたのは、藤原氏でした。

04 と(は)+言っても =「だけど」/ “přestože / i když (říkám, že) to je…”


※ 文末に否定表現が使われることが多い。
・私の家は、プラハとは言っても、郊外なので近くに観光地はありませんよ。
・チェコ人とは言っても、生まれてからずっと日本に住んでいるので、チェコのことはあまり知らない。
・私は、日本語を勉強しているとは言っても、まだ半年なのであまり話すことはできません。
・このテストは簡単だとは言っても、全員合格できるというわけではありませんよ。

05 動詞(連体形)+こと+はない =「する必要はない」/ “není třeba / nemuset (dělat)“


・ユレチカさんのせいではないのですから、謝ることはありませんよ。
・ヤンデラ先生のことは心配することはありませんよ。私たちが一緒に行くんですから。
・大した本ではありませんので、お金を出して買うことはありませんよ。

〈副詞と副詞的表現〉

ほそぼそ
01 細々と
① =「非常に細い」/ “velmi tenký“, “štíhlý”, “slabý”

・あの人はやせていて、腕も足も細々としている。
② =「何とか続いている様子」/ “ubohý”, “skrovný”, “malý”, “sotva nějaký”
とうさん

・あのレストランは倒産したという話だったが、今でも細々と営業を続けているようだ。
・このお祭は今では細々と続いているだけだが、昔はかなり大きな祭だったらしい。
しゅうきょう そんぞく

・あの 宗教 団体は昔は信者も多かったのだが、今では細々と存続し続けている。

02 以前 = 「昔」、「前」/ “dříve”, “před (daným časem)”, “v minulosti”


・あの人には以前どこかで会ったことがあるような気がするのだが、思い出せない。
たいそう

・以前聞いた話なんですが、日本では毎朝ラジオ体操というものが行われているのだそうです。
・これは以前も説明したと思いますが、お願いする時に使う言葉です。
・私は朝6時に出社しました。それ以前は誰もいなかったはずです。

29
03 いつの間にか =「気付かないうちに」/ “nepozorovaně”, “bezděčně”, “než se jeden naděje”

・昨夜は、テレビを見ていたらいつの間にか眠ってしまったようだ。気が付いたら朝になっていた。
・毎日苦手な数学の予習と復習をしていたら、いつの間にかできるようになっていた。
・毎日寒い寒いと思っていたのだが、いつの間にか春が来て桜の花が咲いている。時間がたつのは早いな
あ。

04 いきなり =「突然」、「急に」/ “náhle”, “nenadále”, “z ničeho nic”, “nečekaně“


・いきなりそんなこと言われも困ります。
・まだまだ続くと思って楽しみにしていたテレビドラマがいきなり終わってしまった。何か問題があった
のだろうか。
・渋谷の街を歩いていたら、外国の人に英語で声をかけられた。英語ができないというわけではないが、
いきなりのことだったので、何も言うことができなかった。

〈接続詞〉

01 でしたら = “v tom případě”, “je-li tomu tak”

※「なら」の丁寧な形
※ そうでしたらの形で使うこともある。
・先生は今度、日本に行かれるんですよね。でしたら、本を一冊買ってきていただけないでしょうか。
・そうですか、明日はお時間がないんですか。 でしたら、明後日の生後はいかがでしょうか。

02 しかも「さらに」、「その上」/ “nadto”, “nejen to, ale také”, “ještě k tomu navíc”


※ 情報を追加する時に使う。
・今年の冬は寒い日が続いている。しかも大雪まで降るので学校まで歩くのも大変だ。
・テストはひどい点数だった。しかも目分の名前まで書き間違えてしまつた。

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〈まとめ〉 命令と禁止
 みなさんは、もういくつか命令・ 禁止に使える表現を勉強したはずです。勉強したものの他にもいくつ
か同じように使える表現がありますので、まとめておきます。 自分で全部使えるようになる必要はありま
せんが、聞いたり読んだどりした時に理解できるようになっておいてください。

A 命令 (お願い) に使える表現
01 命令形
・危ない、逃げろ。

※ 五段活用以外の動詞では古い命令形の形も使わもれることがあるので注意すること。下線を引いたほう
が古い形
・食べる→食べろ/食べよ (※下一段)      ・見る→見ろ/見よ(※上一段)
・する→しろ/せよ(※サ変)           ・来る→来い/来よ(※カ変) 

02 連用形+て(ください)
・ここは危ないですので、急いで逃げてください。

03 連用形+なさい
※ もともとは動詞「なさる」の連用形のイ音便形
・ 危ないから早く逃げなさい。

04 連用形+な
しょうりゃく
※「なさい」の「さい」が省略されたもの (禁止の終止形+な」と間違えないこと)
※ 友人もしくは目下に対して使う話し言葉的表現
・早く逃げな。(=逃げろ、 逃げるな)
・遅いぞ。もう帰りな。(=帰れ、 帰るな)

05 連用形+て+欲しい/もらいた
がんぼう

※ 話し手の願望の形で命令を表す。目上の人には使わないほうがいい表現。
・私が残るから、みんなにはもう逃げてほしい/逃げてもらいたい。

06 運体形+こと
※ やり方を説明する文書などによく使われる書き言葉的
・地震が起こった場合には、先ず窓を開け、揺れが止まったのを確認してから逃げること。
・日本への留学を希望する人は、必要な書類を3月1日までに提出すること。
・遅刻した学生がいた場合は、試験開始後15分までは入場を許可すること。

31
【参考】
07 終止形
※ 学校の先生が生徒たちに対して使うことのある表現
・ほら、立ってないで逃げる。
・そこ、 喋ってないで黙る。

08 連体形+んだぞ/んですよ/のよ
※「しなければいけない」と強調すろ時に使う表現
・危険だと思ったら、すぐ途げるんだぞ。
・久我先生にお目にかかったら、私が言ったことをちゃんとお伝えするんだぞ。
・わからないことがあったら、何でも先生に質問するんですよ。

09 連体形+ように
※「しなければならない」注意事項を書く時に使う書き言葉的表現
・宮尾と池は授業の後開きたいことがあるから職員室に来るように。

10 連用形+たまえ
※ もともとは動詞「給う」の命令形
※ 今でも目下の人に向けて使うこともある偉そうに聞こえる古い表現
・危ないと思ったら、すぐ逃げたまえ。
つみ

・神よ、わが罪を許したまえ。
・君にも見せてやろう、ついて来たまえ。

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B 禁止に使える表現

01 終止形+な
・逃げるな。

02 未然形+ないで(ください)
・私も残りますので、逃げないでください。

03 連体形+ことはない
※「しなくてもいい」という意味で使われる表現
・もうここは安全だから、怖がることはありませんよ。
・みんな間違えるのだから、間違えても、恥ずかしがることはない。
・怖がることはない。大丈夫だ。

【参考】

04 未然形+ない
※ 先生が生徒たちに対して使うことのある表現
・ はい、そこ、こっち見ない。
・授業中は、しゃべらない、寝ない。

05 連体形+んじゃない
※「してはいけない」ことを強調する話し言葉的表現
※ 目上から目下に、特に親が子供に対して使うことの多い表現
・こんな馬鹿なことはもうするんじゃないぞ。
・こんな汚い言葉を人の前で使うんじゃありません。

06 未然形+ない+こと
じょうこう へいき

※ 禁止条項をいくつか併記する時によく使う書き言葉的表現
・この言葉は日本人の中には、嫌いだという人もいるので使わないこと。
・授業中は眠らないこと。

07 未然形+ない+ように
※「してはならない」注意事項を書く時に使う書き言葉的表現
・この言葉は、使い方を間違えると大変なことになるから、使わないように。
・授業中はお喋りをしたり、居眠りしたりしないように。

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《本文2》 敬語について
 敬語は難しいから、勉強したくもなければ使いたくもないという人がいるかもしれない。確かに、日本
人でも何の問題もなく敬語を使いこなしている人がいる一方で、難しいと思っている人もかなりいるよう
だ。では、敬語の一体何がそんなに難しいのだろうか。

 皆さんの中には敬語そのものが難しいという人もいるだろう。今まで聞いたことも見たこともないよう
な新しい言葉や、文法が出てきて、覚えるのが大変なのかもしれない。しかし、日本語の勉強を始めた頃
のことを思い出してみてほしい。新しい単語、文法をたくさん覚えなければならなかっただけではなく、
新しい文字も覚えなければならなかったはずだ。それに比べれば、敬語でしか使わない特別な言葉ははる
かに少ないし、普通の動詞から尊敬表現、議譲表現を作る文法はそれほど難しいものではない。だから、
覚えること自体はさほど困難ではないはずだ。

 実は、難しいのは、敬語そのものではなく、その使い方なのである。その場の状況に応じて、尊散語を
使うのか、それとも謙譲語を使うのかを判断し、最適な表現を選び出して使用する。これを話しながら瞬
時にしなければならないのだから、難しいのは当然だと言える。最近は日本人でも敬語に自信がない人は
多いし、敬語を使えない人の中には、うまく使えないからあまり使わず、あまり使わないから使えるよう
じゅんかん おちい

にもならないという悪循環に陥っている人もいるようだ。

 では、皆さんの敬語の使い方にはどんな問題がなあるのか、具体的に考えてみよう。まず、第一の問題
は、相手に「です・ます」を使わずに話された時に、目上の人に対しても「です・ます」を使わないで話
してしまうという問題でもる。相手に丁寧に話された場合に、自分も丁寧に話すのは、ほとんどの人がで
きているようで、授業中に「寒くありませんか」と質問すると、たいてい 「楽くありません」という答え
が返ってくる。それに対して、「寒くない?」と質問すると、「寒くない」と答えてしまう人が少なくない。
これは、チェコ語で話す時に、片方だけが丁寧な話し方をするという場面がほとんどないせいだろう。

 もう一つの問題は、謙譲語の使い方、正確には謙譲語をどんな時に使うのかである。尊敬語は、敬意を
表したい相手の動作に付けておけばいいので、簡単である。それに対して、謙譲語は、自分の動作に付け
ることになるのだが、いつでもどこでも使えばいいというものではない。使い方を間違えると、変なもの
に敬意を表すことになってしまうので、注意が必要だ。自分の動作でも、敬意を表したい相手に関係しな
とくがわつなよし
い動作には謙譲語を使ってはいけないのだ。これがしっかりわかっていないと、江戸時代の徳川綱吉の時
代のように、「お犬様」に敬意を表したり、自分が作ったケーキや料理に敬意を雪したりするという変な
ことになってしまう。

 では、具体的に先生に対して敬意を表す場合を考えてみよう。先生に対して「私は図書館で本をお借り
しましたと言う人がいると思うのだが、この場合「私が本を借りた」ことと、先生の間には、全く関係が
ないので、 図書館か本に対して敬意を表していることになってしまう。例えば、「先生のところで本をお
借りしました」にするか、先生に直接「先生の本をお借りしました」と言うのであれば、「私が本を借り
た」ことと先生の間に関係ができるので、 正しい使い方だということになる。

 次に「お作りする」などの場合だが、先生と一緒にいて、何か作らなければならないような場合には、
私がお作りします」 と言ってもかまわないだろう。状況から「私」の動作が先生にも関係することが明ら

34
かだからである。しかし、それ意外の場合に「私がお作りした料理」と言われると、料理に敬意を表して
いるように聞こえてしまう。その理由としては次のようなことが考えられる。 「私が料理した」という動
作を先生にも関係させるなら、考えられるのは「私が先生のためにお作りした料理」である。ここで、い
わゆる「やりもらい動詞」を勉強した時のことを思い出してほしい。 日本語では、自分が相手のために何
かをしたことを直接表現するのは、持に目上の人が相手の時には、よくないことを勉強したはずだ。「先
生のために」と先生に言うのも同じようによくない。そのため日本人は「私がお作りした料理」を使うの
を避けているのかもしれない。ちなみに、先生にではなく、別の人に言う場合には、「先生に作ってさし
あげた」と言えばいいのである。
 もう一つ注意しておいたほうがいいことは、「申す」「おる」「いたす」「参る」など、謙議語の中に
は、謙議語的な性格が弱くなって、丁寧語的に使われているものもあることだ。特に「∼しております」
という形は、「元気に暮らしております」「今本を読んでおります」などのようによく使われている。ま
た、「おる」は、受身の「おられる」の形で尊敬語としても使われることがあり、特に西日本では、「お
る」 自体が尊敬語として使われることもあるので、注意が必要である。皆さんが、よくわからないという
ことが多い「寒くなって参りました」も、謙譲語というよりは、丁寧語に近づきつつあると理解してかま
わないだろう。

 日本語で敬語を使わなければいけないのは、上下関係がある場面で話す場合、あまり親しくない人と語
しんそ

す場合(親疎の関係言うこともある)、改まった場面で話す場合の三つの場合なのだが 皆さんが特に注意
しなければいけないのは、これまで書いてきたことからもわかるだろうが、上下関係のある場合である。
他の場合には、相手の話し方に合わせて話せばいいのに対して、この場合には、相手がどんな話し方をし
ても、自分は丁寧に尊敬語、謙譲語を使って話さなけれはばならないからである。ただし、「あまり親し
くない目上の人と話す場合」や、「改まった場面で目上の人と話す場合」もあって、それぞれ敬語の使い
方が微妙に違うのだが、これはまた後で考えればいいことだろう。

 また、日本人向けに、敬語の使い方についての本が山のように出版されているが、どれも取り立てて特
ちょしゃ
別なことが書いてあるわけではない。敬語そのものが本によって変わるわけもなく、また使い方も著者に
よって大きく変わることがないことを考えると、それは当然と言えば当然だ。ついでに言えば、本を一
冊、二冊読んだぐらいで敬語が正しく使えるようになるわけがなく、次から次に新しい本を買うことにな
り、本屋、出版社にとってのいいお客さんとなってしまう。だから、皆さんはそんな無駄なことはしない
で、外国人である特権を生かして、実際に上下関係のある場に出て積極的に敬語を使って、間違えたらそ
の間違いを通して散語を学ぶという形で身につけるのがいいのではないかと思う。チェコ人ががんばって
して き

敬語を使おうとしているというだけで、喜んでくれる日本人は多いはずだ。ただ、間違えた場合には指摘
してくれるようにお願いしておくのは忘れないようにして欲しい。

 もし、最初から目上の日本人に対して、敬語を使うのは不安だという場合には、友達同士で、例えば日
本的な先輩・後間になったつもりで話してみるのもいい方法だろう。その際、ちゃんと日本語で話してい
やく
るかどうか監視する役、もしくは使っている敬語が正しいかどうか判定する役を思くのも悪くない。

 とにかく、散語というものは日本語を使う際には欠かせないものであるので、使い方が多少難しくて
も、あきらめずに勉強を続けていって欲しい。

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〈文型・表現〉

06 動詞(連体形)+一方で = “na druhou stranu”, “na druhé straně“


しょうりゃく
※ 「で」は省略されることも多い。
・ 一年生の中には、うちの大学で日本語の勉強を一から始める人がいる一方で、高校時代に日本に留学し
たことのある人もいる。
・日本から海外に旅行する人の数が増える一方で、日本を訪れる外国人の数も増えている。

※ 二つの文に分ける時には、その一方でになる。
・日本からチェコに来る観光客の数は、ここ数年減りつつある。 その一方で、中国、韓国からの観光客は
増え続けている。

※ 変化を表す動詞と共に使うと、変化が続いていることを表す/“neustále / pořád( se zvyšuje, snižuje apod.)”

・最近学生の数が増える一方だ。(※「増え続けている。全然減らない」 の意味)
・日本語の成績は一年生の一学期目はよかったのだが、そのあとは下がる一方だった。

07 名詞+も+なければ、名詞+も+ない = “nemít ani … ani …”, “neudělat ani … ani …”


※「どちらもない」、もしくは「何もない」ことを強調する表現
・最近は時間もなければお金もない。
・家もなければ仕事もない。いわゆる住所不定無職だ。
・あの人には、手紙なんか出したこともなければ、もらったこともない。

※ 形容詞(連用形+も+ない) 、 形容動詞(連用形+も+ない)も使うことができる/
“(nebýt) ani … ani …” apod.
・この食べ物は、甘くもなければ辛くもない。不思議な味だ。
・あの人のことは、好きでもなければ嫌いでもありません。
・頭が痛くて、食べたくもなければ、飲みたくもなかった。

※「ない」ではなく、「できない」を使うこともできる。
・私は、英語もできなければ、ドイツ語もできません。
・あの人は自転車に乗ることもできなければ、車の運転もできない。

08 名詞+に+応じて =「によって」/ “na základě …”, “podle…”


・状況に応じて言葉遣いを変えなければならない。
・あの会社は、こちらの要望に応じて、何でもしてくれるのでありがたい。
・自分の目的に応じて、一番いい方法を探してください。

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09 動詞 (連用形) +つつ+ある =「しているところ」、「しようとしている]
※ 変化を表す動詞と共に使う/ “právě docházet ke změně”, “být na cestě k tomu, aby došlo ke změně”

・病気はよくなりつつありますが、まだ無理はしないで下さい。
・最近、日本語が上達しつつあるような気がします。
・時代が変わりつつあるということに気づいていない人は多い。

※「つつ」 自体は、「ながら」と同じ意味の少し古い表現/ “zatímco”, “zároveň”, “i když”


・授業中は寝てはいけないと思いつつ(=思っていながら)、気がついたらぐっすり眠ってしまっていま
した。
・昔は毎晩お酒を飲みつつ(=飲みながら)チェコ語の勉強をしていました。
・昨日は、夜遅くまで勉強しつつ(=勉強しながら)、弁論大会のことを考えていた。

10 と+言うより = “spíš než …”


・敬語は、文法が難しいと言うより、使い方が難しいのだ。
・外国人は鼻が高いとよく言われるが、実は高いと言うより長いのだと思う。
・あの人は、日本語が上手と言うより、頭がいいのだろう。チェ コ語で書いた作文も非常に面白い。

しゅうしょくせつ
11 連体 修飾 節(動詞)+ついで+に = “při dané příležitosti”, “po cestě”, “když”, “vedle toho”
※ 本来の目的とは別にもう一つの動作をする時に使う。
・買い物に行くついでに、銀行に寄ってお金を下してきた。(※買い物が本来の目的)
・自分のお弁当を作るついでに、父のお弁当も作ってあげることにした。
・プラハの日本大使館に行ったついでに、カレル大学にも行ってきた。

※ 動作の意味を持つ名詞と共に使うこともある。
・引っ越しのついでに、読まなくなった本などいらないものをたくさん捨てた。

※ 同じ動詞の時には省略されることもある。
・銀行のついでに本屋にも行くつもりだ。(※「銀行に行くついでに」の意味)

※ 副詞的にも使える。
・郵便局に行くんですか。じゃあ、ついでに切手を買って来てもらえませんか。
・仕事で日本に行くことになった。ついでだから友人に連絡を取って会うことにした。
・来週はプルゼニュに出張しなければならないのだが、ついでにピルスナー・ウルクエルの工場の見学を
したいと思っている。

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12 動詞(連用形) +た+ぐらいで (は)=「だけでは」/ “tak / tím, že jenom …, …”
※ それだけでは足りないことを示す。
※ 文末に否定表現を使う。
・チェコ語は、少し勉強したぐらいでは、できるようにはならない。

・日本の本当のよさは、旅行したぐらいでわかるはずがない。
・この映画の面白さはは、口で説明したぐらいでは伝わらないと思う。

※ 数詞と共に使って、程度、量が少ないことを表すこともある。
・10キロ走ったぐらいで動けなくなるなんて、体力がありませんね。
・ビールを一杯飲んだぐらいで酔っ払うなんて、お酒が弱いですねえ。

13 動詞(連体形)+よう+になる = “začít (něco dělat)”, “stát se (schopným něco dělat apod.)”

※ 変化を表す表現
・毎日勉強していたら、日本語ができるようになりました。
・昔は朝ごはんを食べないことが多かったのですが、最近毎日食べるようになりました。
・昔は、生魚は苦手だったんですが、最近食べられるようになりました。
・毎朝ジョギングするようになって、体の調子がよくなりました。

※ 否定形で使うこともある。
・朝ごはんを食べないようになりました。 (※「食べなくなりました」の意味)

14 動詞(連体形)+のが+いい = “je dobré / vhodné apod.”

※ 相手に勧める時、助言を求める時に使う。
こうよう

・日本へは秋に行くのがいいですよ。暑くもなければ寒くもなくて、山の紅葉もきれいですから。
・体調がよくない時には、早く寝るのが一番いいですよ。
・来月日本の友達のところに遊びに行くんですが、何をお土産に持っていくのがいいと思いますか。

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〈副詞と副詞的表現>
05 問題なく = “bez problémů”, “hladce”

・この試験は、めちゃくちゃ簡単ですからみんな間題なく合格できると思いますよ。
・雪で混乱が予想された今回の入学試験だったが、何の間題もなく終った。

06 いったい = “sakra”, “u všech čertů”, …

※ 漢字で書くと「一体」
※ 疑問を強調する表現
・いったいどうして昨日は学校を休んだんですか。
・いったい誰が昨日うちに電話をかけてきたのだろうか。

※ 一体全体を使うこともある。こちらのほうが強い強調になる。
・うちの中のどこを探しても眼鏡がない。一体全体どこに置いてしまったのだろう。

07 そんなに/それほど/さほど =「あまり(∼ない) 」“(nebýt) až tak moc …”

※ 否定表現と共に使う。
・今週はそんなに忙しくないので、新しいコンピューターを買いに行こうと思う。
・チェコ語のAlの試験は、それほど難しいとは思わなかったが、合格できなかった。
・この問題は、現時点ではさほど大きな問題というわけではないが、これから大きな問題になるかもしれ
ない。

※ 話し言葉では「そんな」だけになることもある。
・仕事の内容はそんな大変じゃないんですけど、時間がかかるのが大変なんですよ。

※「そんなに」は仮定表現と共に使うことも多い/ “tak moc”

・そんなに勉強しないのなら、大学なんかやめてしまえ。
・そんなに急いで駅に行っても、もう電車には間に合わないと思いますよ。
・夜中に、そんなにたくさん食べたら、明日おなかが痛くなるよ。

08 直接 = “přímo”, “bezprostředně”, “rovnou”

・何か間題があったら、直接私のところに言いに来てください。
・プラハへから直接日本に飛ぶ飛行機はありませんので、乗換えが必要になります。ウィーンからは直接
成田に飛んでいますので、そっちのほうが便利かもしれません。
・すみません、ちょっと待ち合わせに遅れそうなので先に行っていてください。わたしは直接レストラン
に向います。

※ 対義語は間接だが、間接的な形容動詞として使うことが多い/ “nepřímý/o”

・その件については、直接書くことができませんので、間接的な表現で書いてあります。

39
09 明らかに =「はっきりとした」/ “jasně”, “zřejmě”, “zřetelně”

※ 形容動詞
・ヤンデラ先生は明らかに寝不足な顔をしていた。また徹夜で論文を読んでいたのだろう。
・熱が高くて頭が痛い。明らかにインフルエンザですね。
・このままでは時間が足りなくなるのは明らかです。
・こんな明らかな関違いに気付かなかったんですか。本当にチェックしたんですか。

10 微妙に = 「少し」、「何とも言えない」/ “trochu”, “nepatrně”, “delikátně”, “ne příliš výrazně”

※ 形容動詞
・この二つの色を比べてみてください。奇妙に違うのがわかりまうすか。
・日本語の表現では奇妙な違いが、大きな意味を持つこともあるので、 気をつけてください。
・最近「微妙」という言葉が微妙に変な使い方をされることがあるのだが、その使い方はちょっと「微
妙」だから覚えないほうがいい。
・父の受ける手術はとても難しく、成功するかどうかは徹妙なところらしい。

11 取り立てて =「特に」 / “(ob)zvlášť”, “zejména”, “mimořádně”

※ 否定形と共に使う。
・先週出してくれた作文だが、取り立てて変なところはないのでこれで完成ということにしよう。
・よく日本のもので欲しいものはないかと聞かれることがあるのですが、 取り立てて欲しいものはないの
で、お米と答えることにしている。
・昨日の夜の映画は、取り立てて面白くはなかったが、最後まで見てしまった。

12 とにかく = “každopádně”, “v každém případě”


※ 他はどうでもいいという気持ちを表す。
・何でもいいから、とにかく持ってきてください。 (※「持ってくることが大事で、何を持って来るかは、
どうでもいい」の意味)
・どんなテーマでもいいので、とにかく日本語で書いた作文を提出してください。 (※「日本語で作文を書
くことが大事で内容やテーマはどうでもいい」の意味
・今月はもうとにかく忙しいので、この話は来月になってからにしましょう。 (※「忙しくて他のことはど
うでもいい」の意味)
・今から間に合うかどうかわからないけど、とにかく行ってみよう。(※「行ってみることが大切で、間に
合わなくてもいい」の意味)

40
〈接続詞〉
03 そのため =「だから」、「それで」/ (a) proto , kvůli tomu
※ 理由を表す表現
・昨日は東京にしては珍しく大雪が降った。そのため電車や地下鉄、バスなどの交通機関に大きな遅れが
出た。(※「昨日は東京にしては珍しく大雪が降ったため、電車や地下鉄、バスなどの交通機関に大きな
遅れが出た」の意味)
・来年は日本に留学することが決まっている。そのため今年の終わりまでに卒業論文を書き上げなければ
ならない。

04 もしくは =「または」/ nebo


※ どちらでもいいことを表す
・この書類は、2月15日までに私のところに提出するか、もしくは16日までに直接大使館に提出する
かしてください。
・公式な書類に記入する際には、黒、もしくは青のペンを使ってください。緑色や赤のベンは使わないで
ください。
・チェコ国内の健康保険に加入する場合には、お手伝いしますので、私に連絡を下さい。もしくは、イン
ターネットで加入できる保険もありますので、そちらに加入することも可能です。

41
〈まとめ〉 「かける」の意味・使い方
01 他動詞としての「かける」
※場合によっては、「掛ける」、「架ける」と書くこともある。
・学校に行く前に、友達に電話をかけて、待ち合わせの時間と場所を決めなければならない。
・知人だと思って声をかけてみましたが、別人でした。
・村としては、この川に橋をかけたいと考えているのですが、そのための予算がありません。
もうふ

・妻がテレビを見ながらソファーで居眠りしていたので、風邪を引かないように毛布をかけてやった。
・椅子の背にかけておいた服が、いつの間にか床に落ちていました。
・外に出ようとしたヤンデラさんの肩に手をかけて、引き止めた。
・A:外国語ができるようになるためにどうすればいいでしょうか。
B:一番大切なのは、時間とお金をかけることです。
けいば

・どの馬が一番速くゴールまで走れるかにお金をかけるのが競馬です。
・「一生懸命」という言葉は、 命をかけて頑張るという意味です。
・イースターの時、スロバキアでは、女性に冷たい水をかけるらしい。
・目覚まし時計をかけて寝たのに、寝坊してしまった。
・部屋に掃除機をかけたり、洗濯物にアイロンをかけたりするので週末も忙しい。
・算数の時間に、2に4をかけるといくつになるか聞かれて答えられなかった。
・この前、みんなでお酒を飲みに行った時は、財布を忘れてみんなに迷惑をかけてしまった。
・もう大人なんだから、親に心配をかけるようなことはしてはいけませんよ。

02 自動詞としての「かける」
・このコーヒーカップは、ちょっと欠けている。 誰かが落としたのだろう。
・この棚には全部で十冊の辞書が置いてあったはずだが、一冊欠けている。
・あの人は、真面目に勉強していて成績も素晴らしい。ただ優しきに欠けるところがある。
・犬は喜び庭を駆け回り、猫はこたつで丸くなる。
・小学校から高校まで、運動会のかけっこ (=走る競争) で、一度も一等になったことがない。

03 可能動詞としての「かける」
・私が書ける漢字の数は、五千個ぐらいだと思います。
・私は不器用なので絵は描けりません。

42
ほじょ
04 補助動詞としての「かける」
ひとじち

・人質をとった犯人に対して、警察が人質を解放するように呼びかけたが、何の反応もなかった。
・これは皆さんを引っかけるための問題ですので、間違えないように注意してください。
・日本に行っているはずのヤンデラ先生を見かけたような気がするのだが、気のせいかもしれない。
・今日は朝から出かけていて家にいなかったので、……

※ 「動作を始める (ただし、終らない) 」という意味で使う。


・この前書きかけた論文がどこかにあるはずなのですが……。
・A : 私が食べかけたのでよければあるけど、食べる?
B : 人の食べかけは食べたくないなあ。 (※連用形を名詞として使う)
・言いかけて途中でやめるのはよくない。ちゃんと最後まで言いなさい。

〈まとめ〉    助数詞
すでに勉強したこともありますが、基本的な助数詞の使い方をまとめておきましょう。

01 疑問詞「何」、助詞「か」と共に = “několik”
・何人かの友達と一緒に日本へ旅行しました。
・何年か前に日本に行った時に買ってきた本が何冊かあるのですが、まだ全部読んでいません。

※ 「か」の代わりに「も」を使うと、「たくさん」という意味が強調される。
・何週間も前に出した手紙が、まだ日本に届いていないそうだ。

02「目」と共に順番を表す = “číslovka řadová”

・前から二列目の左から三番目に座っている人は誰ですか。
・一台目が壊れたので、二台月のコンピューターを買いました。
・チェコで一番大きな町はプラハで、二番目はブルのです。(※「一番目」ではないことに注意)

03 一+助数詞+も∼ない = “ani jeden”


※ 全くないことを示す。
・今日は大雪が降ったせいか、学生が一人も授業に来なかった。
・持っていたお金を全て使ってしまって、もう一円も残っていない。

04 何/誰+一つ/人∼もない = “ani jeden ne”


※ 全くないことを示す。
・戦争で家族がみんな死んでしまい、誰一人生き残らなかった。
・私は交通事故で頭を強く打ったせいで、あの日のことは何一つ覚えていない。

43
05 助数詞+助詞
① 助詞「が」、「を」
・昨日コーヒーを三杯飲みました。 (※「昨日三杯のコーヒーを飲みました」の意味)
・友達が三人来ました。 (※「三人の友達が来ました」の意味)
・ポケットに(お金が)千円あります。

※ 具体的な人、物を指す時には数詞の後に「が」、「を」を使うこともある。
・私には大事な友達が三人います。その三人が昨日うちに来ました。

② 助詞「に」、「で」
・バス三台でプラハに行きました。(※「三台のバスでプラハに行きました」の意味)
・友達二人に手紙を書きました。 (※「二人の友達に手紙を書きました」の意味)

③ 助詞「と」
・友達二人と日本語の勉強をしました。 (※「二人の友達と勉強した」の意味)
・友達と二人で日本語の勉強をしました。 (※「友達は一人」の意味)

④ 助詞「も」、「は」
・今年は一年生が、90人もいる。(※「90人は多い」の意味)
・毎日、五時間は日本語を家で勉強していますよね。 (※「最低でも五時間」の意味)
・友達二人には手紙を出しました。/友達二人にも手紙を出しました。

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《本文》 研究発表会の後、飲み屋で
 この文章は、誰が誰に対してどんな言葉遣いをしているか、どんな呼び方(あだ名)で呼んでいるかに
注意しながら読んでみましょう。そして誰が先輩で誰が後輩なのかも考えてください。 
み や お たまさ は せ が わ えみこ いずも こ が とおる あ き の みきひさ
 登場人物は、宮尾環、長谷川咲子、出雲たける、久我通、秋野幹久の五人です。ちなみに「お頭さん」
の「頭」は「あたま」ではなく「かしら」と読んでください。

宮尾:今日は先輩方、お忙しい中、わざわざ私の発表のために来てくださってありがとうございます。
長谷:何言ってるのよ、タマちゃんのためだったら、当然よ。お礼なんか言わなくていいわよ。それより
飲んで、飲んで。ほら、タケル、タマちゃんについでやって。その後、あたしね.
くず

出雲 : はい。ちょっと待ってよ。なし崩しで始めちゃうわけ? まあいいか。はいタマ、どうぞ
宮尾 : あ、タケさん、ありがとうございます。
かしら
出雲 : んじゃ、頭、どうぞ。
長谷 : ん、こぼすなよ。
出雲:大丈夫だって。ほら、久我先生も、コップ出し。
久我:すまんね。でも兄さん、なんか日本語壊れてないかい。
長谷:まあまあまあ、次はあたしがタケルについでやるから、ほらあんたも飲め。ところで、久我さん、
あさこ
麻子ちゃんは?
久我:あいつは今日はちょっと仕事が忙しすぎて抜けられないらしいんですよ。長谷川さんによろしく伝
えてほしいと言っていました。
長谷 : そうかあ。残念だなあ。次回は何とか来てくれると嬉しいんだけどなあ。
久我 : えっ、次回もあるの?
た か お さん と ざ ん かさい
出雲 : そうなんだよ。次回は高尾山登山だとか言ってたから、一日がかりだなあ。そんで、そん次が葛西
りんかい かしら

臨海公園だったっけ、頭 ?
長谷 : うん、そう。 遠いから昼ごろ集合ね。
宮尾 : お頭さん、日程は決まってるんですか。
長谷:いやあ、申し訳ないんだけど、まだなのよ。でも、とりあえず高尾山は二月中に行きたいなあ。臨
海公園は三月かな。どっちも週末になると思うんだけど、細かいこと決めたらこいつが連絡するから
よろしくね。
出雲 : ということなんで、先生とタマは予定が決まって、来られるようだったらよろしく。いや、できれ
ば来られなくても来てほしいけど。
長谷 : 何よ、その言い方は。
出雲 : 細かいこと気にしないでよ。ところで、タマ、秋野も来るんじゃなかったんだっけ。
宮尾:そうなんですけど、今日が卒論の締め切りらしくて……。
久我:出せるかどうかが問題ってわけかい。
宮尾:ええ。大問題なたんですよ。あっ来た。ミッキー、ここよ、ここ。
秋野 : すみません、皆さん。遅くなっちまいました。
久我:いや、今始めたばかりだし、気にするな。それより、卒論は無事に出せたのか。

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つ かえ
秋野:お陰さまで、何とか。多分、来週あたり一度突っ返されて、一ヵ月後までに再提出になると思うん
ですけど、とりあえず受理はされたので。
宮尾:そっか、これで一安心ってとこね。すみません、これで、今日は全員なんですけど、乾杯でもします?
長谷:うん、せっかくだからやろうかねえ。あたしがやってもいいかな?
出雲 : 他に誰がいるんだよ。任す。
秋野:あっ、お頭さん、お久しぶりです。仕事辞めて田舎に帰られるんですって。
長谷:うん、そうなのよ。みんなに会えなくなると思うと寂しくてねえ。
秋野:タマともよく言うんですけど、お頭さんはどこに行かれても、お頭さんだから、うまくやっていけ
ると思いますけど、がんばってください。
宮尾 : そうそう。私たち遠くから応援しています。それから東京に来られた時は、いつでもお声かけてく
ださいね。
長谷 : 秋野さん、タマちゃん、ありがとう。あなたたちだけよ。こんなこと言ってくれるのは。何にやに
やしてんのよ。タケル、それに久我さんも。
久我:やいや、長谷川さんには悪いけど、秋野も宮尾もまだまだ青いなあと思ってね。なあ、兄さん。
出雲 : ほんと、ほんと。これで最後ってわけでもなし。
宮尾:でも、こういうことは酔っ払う前に、誰かが言っておかなければいけないことでしょう。
出雪 : そうかなあ。 それ言っちゃ身も蓋もないって気がするのは俺だけかな。
久我 : ちょっと兄さん、身も蓋もないのはあんただよ。もっとましな言葉があるでしょうが。
ばしょう
出雲:さようか。さらば、「言い尽くして何のことやあらん」とか芭蕉の言いに……。
久我 : 何いきなり古文化してんだよ。しかも何か間違ってるし。こういう時には、「言わぬが花」って言っ
ときゃいいんだよ。
長谷 : せっかく人がいい気持ちになってたのに……。まあ、でも確かに今タマちゃんたちが言ってくれた
言葉を、久我さんとか、特にタケルレなんかからは聞きたくないかなあ。
宮尾:えっ、本当ですか。お頭さん何だかかわいそう。ところで乾杯するんじゃなかったんでしたっけ。
出雲:そうだそうだ。みんなコップにビールついでね。準備はいいかい。じゃあ、お頭、よろしくお願い
します。

【語注】次のこの会話に出てきた言葉の意味を調べてみましょう。
「身も蓋もない」__________________________________
「言わぬが花」 __________________________________

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〈会話2〉   先輩と後輩の会話

 本文2でも読んだように、皆さんは上下関係のある会話の練習をする必要があります。三人組になっ
て、役割を変えながらいろいろなテーマで話して見ましょう。役割は会話テキスト2で出てきた五人の中
から選んでもかまいません。尊敬語、謙議語は使わなくてもいいですので、「です・ます」を、状況に応
じて使ったり使わなかったりする練習をしましょう。もちろんできるようになったら尊敬語、謙譲語も
使ってみてください。

【課題1】先輩と後輩 (二人で話す)
・先輩は後輩に対して「です・ます」を使わないでください。
・後輩は先輩に対して「です・ます」を使って話してください。
・三人目はちゃんと上の二つのルールが守られているかチェックしてください。
・最初は簡単な質問と答えから始めましょう。役割を変えながらいろいろな質問をしてください。
・できるようになったらテーマを選んで、できるだけ長く会話を続けてください。
・ーつのテーマでの話が終わったら、役割を変えて別のテーマで話してください。

【課題2】先輩と後輩二人(三人で話す)
・基本ルールは上と同じ。
・後輩二人はお互いに「です・ます」を使わないでください。
・チェック係はいないのでおお互いにチェックし合ってください。

【課題3】上中下の関係 (三人で話す)
・一番上の人は、二人に「です・ます」を使わないでください。
・一番下の人は、二人に「です・ます」を使って話してください。
・真ん中の人は、上の人には「です・ます」を使って、下の人には使わないでください。

話のテーマ例
・週末の予定 (一緒にどこかに行かないか誘う)
・週末に何をしたか
・卒業論文について(テーマ、指導の先生など)
・卒業論文は進んでいるか(後輩が先輩に聞く)
・日本語の文法について

※ 話が短くならないように頑張って長く話しましょう。

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〈文型・表現〉
15 ∼ん+だって/ですって = “(že) prý”
でんぶん

※ 文未に付けて、他の人から聞いたり本で読んだりして知つた情報であることを示す。これを伝聞とい
う。
※「ん」は「の」が変化したもの
※ 話し言葉的表現
・天気予報で言ってたけど、明日は大雪なんだって。
・A:先生、来月日本にいらっしゃるんですって。
B:うん。文部省からお金がもらえたんだって。

※ その場で直接開き返す場合には、「ん」は使わないことが多い。
・えっ、何?わからないだって? 誰だ、そんなこと言うのは。

副詞と副詞的表現

13 多少 =「少し」、「ちょっと」/ “trochu”
※ 少し硬い表現

・乗る予定の電車の出発時間まで多少時間があったので、喫茶店でコーヒーを飲むことにした。
・すみません、今の説明で多少わからない点がありましたので質問させてください。

※ 似た意味の言葉少々を使うことも多い。特にお願いをする時には「少々」を使う。
・乗る予定の電車の出発時間まで少々時間があったので、喫茶店でコーヒーを飲むことにした。
・先生、質問があるので、少々お時間をいただけないでしょうか。

14 とりあえず =「今のところは」/ “prozatím”, “pro tuto chvíli”, “jako první krok”


※ 後で変わるかもしれないという気持ちを表す。
・とりあえず風邪薬を出しておきますので、何か食べてから飲んでください。
かまくら

・今日の鎌倉行きは、とりあえずは15人参加の予定なたんですが、増えるかもしれません。
・日本では飲み屋に入るとすぐ「とりあえず、ビール」と言って注文する人が多いので、昔「とりあえず
ビール」 という名前のビールを作っていた会社がありましたが、あまり売れなかったようです。

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15 にやにや = “šklebit se”
ぎたい ご
※ 声を出さずに笑っている様子を表す擬態語
※ あまりいいイメージではない。
・あの人はいつもにやにや笑っていて、何を考えているかわからない。
・授業中ににやにやしないでください。変なことを考えていると思われますよ。

※ 笑いが一瞬の場合には、にやっとを使う。
・その瞬間、男はニヤッと嫌な笑いを浮かべて外へ出て行った。

16 まし =「より∼方がいい」/ “lepší”, “přijatelnější”, “vhodnější”


※ カタカナで書くことも多い。
※ 形容動詞
・どちらもあまりよくありませんけど、こっちのほうがマシですね。

・私の英語は、幼稚園児より少しはましという程度ですので、実際には全く使えません。
・こんな本買わないほうがましだった。
・今回の作文は、前回よりはましになりました。前回のがひどすぎただけですけどね。
・怒られたくないのなら、もう少しましな言い訳を考えなさい。

〈まとめ〉 疑問視

「何」 、「誰」 、「どこ」などの、いわゆる疑問詞の使い方をまとめておきます。すでに勉強したことも


あると思いますが、もう一度確認しておきましょう。

01 普通の疑問文
※ 「はい/いいえ」では答えない。
・昨日人はお宅に電話したのにいらっしゃいませんでしたよね。 どこに行っていたんですか。
・このレストランは、何が美味しいですか。
・いつから日本に留学する予定なんですか。
・日本語は、もう何年ぐらい勉強しているんですか。
・いつ、誰と、どこで、コーヒーを飲んだんですか。
・明日は、どこで待てばいいですか。 (※この場合「どこで待ったほうがいいですか」は使わないこと)

02 「か」と共に = “ně- (+ co/kdo/kde apod.)”


・あの人にはどこかで会ったことがあるような気がする。
・いつかぜひチェコに旅行したいと思う。
・明日の授業は休講だと三年生の誰かに伝えておいてください。
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・何年か前にチェュ語サマースクールで一緒に勉強した友達が、何人かオロモウツに遊びに来た。
・これまで、何十人かの人がメチルアルコール中毒で病院に運ばれ、そのうち十何人かが亡くなった。
・何か困ったことがあれば、いつでも連絡してください。
・誰か日本語を教えられる人がいたら、紹介してください.
・日本語を教えられる人がいたら、誰か、紹介してください。
・どこか静かに話せるところで話を続けましょう。

03 「か」が二つの疑問文
※ 「はい/いいえ」で答えられる。
・A : 明日どこかに行きませんか。
B:ええ、いいですね。行きましょう。でもどこに行きます?
・A : すみません。誰かいませんか。
B : はい。少々お待ちください。
・ヤン : 明日、山田さんのお見無いに行くんですけど、何か持っていったほうがいいでしょうか。
鈴木 : いや、いらないと思いますよ。今回はすぐ退院できるらしいですから。

04 動詞「も」と共に = “ni- (+ kdo/kdy/kde apod.)”


※ 文末に否定形を使う
・学校には、もう誰も残っていなかった。
・言いたいことはたくさんあったのだが、何も言うことができなかった。
・今日は、誰にも会いたくないので、帰ってもらってください。

※「いつも」は一語化しているので副詞と考え、否定形と共には使わないほうがいい。
・あの人は、学校の近くに住んでいるのに、いつも学校に遅刻してくる。

※ 何+助数詞+もの形で使うと、「たくさん」という意味になる。
・昨日、何回も行ってみたが、ヤンデラ先生は研究室にいなかった。
・何杯も水を飲んで、おなかが水でいっぱいになってしまった。

05 「でも」と共に = “(kdo/co/kdy apod. +) -koliv”


・この授業には、誰でも出席することができます。
・私は何でも食べられますので、食事に関しては問題ありません。
・質問がある時には、いつでも質問しにきてください。

※「いつでも質問してもいいですよ」は、「でも」 、「ても」が重なるのでよくない。

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06 間接疑問文で
※ 「言う」、「聞く」、「わかる」などの内容を示す。
※ 「か」の位置に注意
・昨日誰が学校を休んだか、覚えていますか。
・明日何時から授業が始まるか、先生に聞いておいてください。
・この漢字をどう読むか忘れてしまいました。
・日本語がいかに難しい言葉か、思い知らされました。

※ 「か」の後に助詞を入れてもいい。
・昨日誰が学校を休んだかを覚えていますか。
・来年誰を日本に留学させるかについては、来月の会議で決めます。

07 疑問詞∼の/こと+だ
いか

※ 怒りや驚きなどを表す。
※ 話し言葉的表現
・何ということだ。/何てこっだ。
・何だって。/何ですって。
・何とすばらしい (んだ) 。
・一体いつになったら春が来るんだ。もう冬には耐えられんぞ。
・一体誰がこんなことをしたんだか。まったく、信じられませんなあ。

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〈慣用句の世界2〉 「口」

01 口にする =「言う」、「食べる」、「飲む」 / “říkat”, “jíst”, “pít”


・こんな汚い言葉を、女性が口にするなんて、時代が変わったのかなあ。
・こんな美味しいものは、今まで口にしたことがありません。

02 口に合う =「美味しいと感じる」/ “chutnat”


・お口に合わないかもしれませんが、よろしかったらどうぞ。
・これは、ちょっと私の口には合わないなあ。

03 口が悪い = 「ひどいことばかり言う」/ “mluvit nevybíravě/sprostě”, “mít ostrý jazyk”


・あの人は、口が悪いのでいつもいろいろな人とけんかしている。
・あの人は口は悪いですが、悪い人ではないと思います。

04 口がうまい =「話が上手で何でも信じさせられてしまう」/ “být dobrým řečníkem”, “mluvit tak dobře,


že by mu jeden uvěřil úplně všechno”
・あの人は口がうまいから、あまり信用できない。
・新聞部の部長は口がうまいから、いつも何かかにか仕事をさせられてしまう。

05 口が重い =「あまりしゃべりたがらない」/ “být nemluvný”, “být zdrženlivý”


・遠足に行くバスの中で口の重い人が隣に座っていたので、行きも帰りもほとんど話さなかった。
・鈴木先生は、この話題になると、なぜか口が重くなって、何も語してくれなくなる。

06 口が軽い =「おしゃべりで何でもしゃべってしまう」/ “být upovídaný”


・あの人に、そんなこと言うのはやめておいたほうがいいよ。 口がめちゃくちゃ軽いんだから。
・口が軽い人に、お酒を飲ませたらもっ と口が軽くなるだろうと思って、 〇〇さんとお洒を飲みに行った
のだが、〇〇さんはお酒を飲むと笑いが止まらなくなる人だった。

かた
07 口が堅い =「必要なこと以外は話さない」/ “zachovávající mlčení”, “odmítající cokoli prozradit”,
“schopný nevyzradit tajemství”
・ユレチカさんは口が堅いと思っていたのだが、実は口が軽い人だった。
・この仕事は口が堅くない人には任せられません。

52
08 口が滑る/口を滑らせる =「問違って言ってしまう」/ “přeřeknout se”, “říct něco nechtíc”
・すみません。今のは、なし。 忘れてください。ちょっと口が滑りました。
・あの人は口が堅い人ではあるのですが、時々口を滑らせることがあるので、大切なことは言わないほう
がいいですよ。

にご
09 口を濁す =「はっきり言わないでごまかす」/ “mluvit nejasně”
・久我先生に、奥さんのことを質問したのだが、 口を濁してまともに答えてくれなかった。
・いつまでも口を濁していないで、どう考えているのかちゃんと等えてくだきい

10 口は出す =「横からあれこれ言う」/ “vměšovat se”, “plést se”


・これは私が解決 しレしなければならない問題ですので、 鈴木さんは口を出さないでください
・日本の政府は大学教育に対 して、 口は出すけれども金は出さない。

11 口が酸っぱくなるほど =「燥り返し繰り返し何度も同じことを言う」/ “říkat stále dokola”


・こんな間違いはしてはいけないと、口が酸っぱくなるほど注意したのに、また同じ間違いをした。


12 口が裂けても(言えない)=「絶対に」/ “nikdy / za nic na světě nemoct říct”

・そんな恥ずかしいことは、日本人の私には口が裂けても言えません。

13 口が寂しい
※ タバコをやめた人用
・山田さんは禁煙している間、口が寂しいと言いながら飴をなめていたが、太ってしまったので禁煙をや
めて、 ままたタバコを吸い始めた。

14 口止めする =「話さないようにお願いする」/ “zavázat mlčením”, “požádat někoho, aby


o něčem nemluvil“
・A : 例の件だけど、鈴木先生に口止めしておいてくれたかな。
B : ええ、口止め料にチェコレストランに連れて行きましたんで、こっちが発表するまでは黙っていてく
れると思います。

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