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ことはじ

プライマリ・ケア言始め
−今さら聞けないひととことば−

第7回

プライマリ・ケアの特徴を記述する ( これまでのまとめ+α )
鉄蕉会 亀田ファミリークリニック館山
日本プライマリ・ケア連合学会 学会のあり方・知的活性化プロジェクトチーム(通称チーム岡田) 岡田 唯男

 このコーナーでは,プライマリ・ケアにおける重要な
(知ってい  2003 年から 2007 年のプライマリ・ケア関連の論文 6,537

るとちょっと差がつく)用語,人物,ことば,などを,岡田唯男の 本から,合計 48 ヵ国のデータを含む,原著もしくはシステマ

独断と偏見で選び,正式な定義に独自の解釈を加えて解説しま ティックレビュー 85 編
(35 本は質の高い横断研究,25 本は文

す.ここで取り上げてほしい人物や用語,出来事は,編集部
(pc- 献レビュー,13 本は妥当性の弱い記述研究,5 本は前向き,4

magazine@primed.co.jp)までお寄せください.また,調査が不 本は後ろ向きの質の高いコホート研究,3 本は妥当性の弱い費

十分で,
引用や定義が間違っている場合は,
優しくご指摘ください. 用対効果研究)
に絞り込まれ,それらの解析の結果,プライマリ・

 これまで,6 回にわたって,プライマリ・ケア/家庭医療の特 ケアは 10 の次元/側面を含む,multidimensional system で

徴についての米国発の代表的な三つの概念を紹介してきました. あることを結論づけています.10 の軸は Donabedian が医療

表 1 に概要をまとめます. の質の定義の際に提唱した構造,プロセス,アウトカムの枠組

 旧 IOM のオリジナル以外は,すべて 1990 年代に提唱されて み 2)に紐づけられています.国同士や地域ごとのプライマリ・ケ

いるのが興味深い点といえます.それぞれ独自性を出すべく工夫 アを記述,表現するうえで,ガバナンスはこう,経済状況はこ

されていますが,当時活発に議論され,提唱者同士が対話する う……と続けて,健康の平等性はこう,という具合に 10 の軸で

なかで,相互の影響もあったのではないかと推測します.覚えや 記述,表現し,比較する必要があるということです.これまで

すさや訴求力は他の二つに劣りますが,単語,表現の厳密な選択, 6 回にわたって,解説してきたプライマリ・ケア,家庭医療の特

コンセプトの明確さからは Starfield の 4 + 3 がダントツです. 徴はこのなかの


「プロセス」
を表現する軸にあたります.次回から

 さて,物事を比較検討するには,そのための軸,切り口が必要 Kringos の 10 の軸についてお話しします.

です.フィギュアスケートなら技術点,演技構成点,掃除機なら
参考文献
吸引力,騒音,さまざまな素材への対応力,ゴミタンクの容量,
1)Kringos DS, Boerma W. The breadth of primary care: a systematic literature
充電時間,値段といった具合です. review of its core dimensions. BMC Health Services Research. 2010; 10: 65.
2)Donabedian A: Explorations in quality assessment and monitoring. The
 ヨーロッパでのプライマリ・ケアの記述を正確に行う目的で,
Definition of quality and approaches to its assessment Ann Arbor, MI. Health
過去にどのような軸でプライマリ・ケアが切られてきたか,とい Administration Press, 1980, 1.

うレビューが存在します . 1)

表1
提唱者 / 年 HMD(旧 IOM)/ 1978,1996 Starfield / 1992,1998 Saultz / 1999
よび名 ACCCA Starfield の 4+3 ACCCC
説明 よいプライマリ・ケアの実践に不可欠な五 プライマリ・ケア機能を評価する枠組み/特徴 家庭医療の根本原理 (fundamental
つ の 特 性(the five attributes essential principles of family medicine)
to the good practice of primary care)
要素 ●特有の特徴
A: accessibility First contact care(医療の窓口) A: Access to Care
C: comprehensiveness Longitudinality(全人的な人間関係に基づく継続診療) C: Continuity of Care
C: coordination Comprehensiveness( 包括的なケア) C: Comprehensive Care
C: continuity Coordination (integration) of Care(ケアの調整 C: Coordination of Care
A: accountability と統合) C: Contextual Care
●派生的な特徴
Family centered(家族志向)
Cultural competence(多様な患者背景への対応能力)
Community oriented (コミュニティ志向)
●「特有ではないが必須の特徴」は省略 (第 4 回参照)

50 プライマリ・ケア Vol.3 No.1 2018

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