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土木技術資料 53-1(2011)

特集:今後の社会資本整備・管理を支える技術開発

低炭素社会に貢献する舗装技術

川上篤史 * 新田弘之 ** 久保和幸 * **

表-1 低炭素舗装技術 (一部抜粋 ) 1)


1.はじめに 1
技術の種類 具体の技術
わ が 国 の CO 2 排 出 量 は 、 2008 年 時 点 で 12 億 加熱アスファルト混合物の 中温化技術
製造温度低下技術
8,000万トン(二酸化炭素換算)であり、京都議定書 弱加熱技術
チップシール
の 基 準 年 で あ る 1990年 の 12億 6,100万 ト ン に 比 べ 、 舗
常温製造技術
マイクロサーフェシング
実 際 に は 1.6%増 加 し て い る 1) 。 し た が っ て 、 わ が 装

プラント再生舗装工法
術 リサイクル技術 路上表層再生工法
国 に お いて は低 炭 素社 会に 向 け た様 々な 取 組み ・
路上路盤再生工法
技 術 開 発が 一層 求 めら れ て お り 、舗 装分 野 にお い コンポジット舗装
長寿命化技術
て も 例 外な く低 炭 素社 会に 向 け た取 組み が ます ま 改質アスファルトの適用
製造 アスファルト混合物の バーナの燃費向上
す重要となってくる。
技術 製造効率の向上技術 ドライヤ内の羽根の改良等
「環境に配慮した舗装技術に関するガイドブッ
施工
施工の効率化技術 3Dマシンコントロール
ク」 2) では、CO 2 排出抑制機能を有する舗装技術と 技術

して、加熱アスファルト混合物(以下、HMA)の
製造温度低下技術、常温製造技術、リサイクル技
廃棄(廃材輸
術、長寿命化技術等が挙げられている(表-1)。な 送) 3%
【材料製造】の内訳
施工等
お、本稿ではこれらを低炭素社会に貢献する舗装 10% アスファルト
混合物
技術(以下、低炭素舗装技術)とする。
材料製造 61%
今後、これら低炭素舗装技術の新開発や更なる 材料輸送 59%
28% アスファルト As乳剤
高度化を行うとともに、既存技術を低炭素舗装技 33% 4%

術として可能性を見いだすためには、CO 2 排出削 砕石
4%
減効果の定量的評価が重要になってくる。
図-1 表層切削オーバーレイ工事におけるCO2排出割合 4)
本稿では、低炭素舗装技術のうち、HMA製造温
度の低下技術に位置づけられている中温化技術お
よびリサイクル技術である舗装再生工法について 舗 装 工 事 の CO 2 排 出 量 は 、 こ の ラ イ フ サ イ ク ル
概要を紹介するとともに、筆者らがこれまでに を通じて使用した資材や機器等の燃料消費量に
行ってきた低炭素舗装技術の評価として、ライフ CO 2 排 出 量 原 単 位 を 乗 ず る こ と に よ っ て 算 出 す る
サイクルを通じたCO 2 排出量の定量評価に関する こ と が でき る。 一 般的 な舗 装 補 修工 事( 表 層切 削
研究結果について紹介する。 オーバーレイ工事)におけるCO 2 排出量の試算例 4)
を 図 -1に 示 す 。 こ の 図 に よ れ ば 、 材 料 製 造 、 材 料
2.低炭素舗装技術の概要とその効果
輸 送 、 施 工 、 廃 棄 の 各 サ イ ク ル ( こ こ で は 1サ イ
2.1 舗装工事とCO 2 排出の関係 ク ル ) に お い て 排 出 さ れ る CO 2 は 、 材 料 製 造 段 階
舗 装 工 事 の CO 2 は 、 舗 装 工 事 の ラ イ フ サ イ ク ル が全体の 約 6割、材料輸送段階が 3割、施工段階が
(材料製造、材料輸送、施工、廃棄)において排 1割 を 占 め て い た 。 ま た 、 材 料 製 造 段 階 の う ち 、
出 さ れ る 。「 舗 装 性 能 評 価 法 別冊―必要に応じ HMAの製造に係るCO 2 排出量が最も多く材料製造
て 定 め る 性 能 指 標 の 評 価 法 編 ― 」 3) に お い て も 、 の 約 6 割 、 次 い で ア ス フ ァ ル ト 製 造 分 が 約 3割 で
CO 2 排 出 量 の 評 価 を 行 う 際 に は ラ イ フ サ イ ク ル を あった。
考慮することが求められている。

────────────────────────
Pavement Technologies for Low-Carbon Societies

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土木技術資料 53-1(2011)

こ れ に 対 して 、 先 に挙 げた 低 炭 素 舗装 技 術 を採
用 す る こ と に よ っ て 、 ど の 程 度 の CO 2 排 出 量 が 削
減 さ れ る か 定 量 的 に 把 握 す る こ と で CO 2 排 出 量 削
減効果の評価が可能となる。
2.2 HMAの製造温度低下技術
HMAの製造温度低下技術は、中温化技術と弱加
熱技術が挙げられる。中温化技術は、中温化剤
(写真-1)等を用いることによって、通常のアス 写真-1 中温化剤(発泡系の例)
ファルト 混合物よりも製造温度を 30℃程度低く し、
骨材の加熱・乾燥に要する燃料などの消費を低減 ケース2(骨材温度10+含水比4)
ケース1(骨材温度20+含水比2.5)
させることができる技術である。日本では1997年 ケース3(骨材温度30+含水比1)
140%
には実道で本格的な施工が行われており、ヨー

HMA1t製造あたり重油消費量の比率
ロッパが同時期、アメリカでは2004年に試験施工 120%
が行われていたことから、世界的に比較的早い時
標準
期から適用が進められてきた 5) 。一方、弱加熱技 100%

術は混合物製造時に水を添加し、これを潤滑剤と
80%
することで混合物の製造温度を100℃以下とした 20℃上昇
ものである。日本においては、耐久性等の観点か 60% 30℃低減

ら現状は試験施工段階である。 50℃低減
40%
これらHMAの製造温度低下技術は、骨材の加熱 100 120 140 160 180 (℃)
温度が低いことからアスファルトプラントにおけ
図-2 骨材温度、骨材含水率、混合物温度の組み合わ
る骨材の加熱・乾燥に係る燃料消費量を低減させ せによる重油消費量の比率 4)

ることができ、図-1で示した「HMA製造」に係る
CO 2 を削減することができる。ここで、HMA製造
アスファルト混合物 中温化剤
に係る重油消費量と製造温度の関係(通常温度で 0% 20% 40% 60% 80% 100%
製造した時に対する増減比率)を図-2に示す。重
通常 100%
油消費量は骨材温度や骨材含水比によっても変化 (新規HMA)

するが、ここでは、骨材温度20℃、含水比2.5%を 発泡剤1 87% 2.7%


(30℃低減)
基本ケース(ケース1)とし、重油消費量が増加する 発泡剤2 87% 0.9%
(30℃低減)
場合(ケース2:骨材温度10℃、含水比4%)、減少
発泡剤3 78% 1.8%
(50℃低減)
する場合(ケース3:骨材温度30℃、含水比1%)に
粘度調
粘調剤1 87% 1.5%
ついても示している。例えば、重油消費量は、骨 整剤 1
(30℃低減)

材含水比の増加・骨材温度の低下と共に増加し、
図-3 中温化技術の適用による CO 2 削減効果 4)
骨材含水比の低下・骨材温度の上昇と共に減少す
る。中温化技術の適用を想定した場合、加熱温度 減 タ イ プ 、 1技 術 は 50℃ 低 減 タ イ プ ) に つ い て 明
を30℃低減させることにより84%、50℃低減させ ら か に した 。粘 度 調整 タイ プ に つい ては 、 材料 組
ることにより73%の重油燃料が削減されることが 成 、 CO 2 排 出 量 原 単 位 い ず れ も 明 確 な デ ー タ が 得
分かる。 ら れ な かっ たた め 、石 油精 製 に よる 製品 は 全て 同
中 温 化 技 術 の CO 2 排 出 量 削 減 効 果 を 明 ら か に す 等としてアスファルトの値を代用した。通常の
るにはHMA製造温度の低下によるCO 2 削減分の他 HMAの製造に係るCO 2 排出量および中温化技術の
に 、 中 温 化 剤 自 体 の 製 造 に 係 る CO 2 排 出 量 の 増 加 適用によるCO 2 排出量を 図-3に示す(通常 のHMA
分 も 考 慮に 入れ る 必要 があ る 。 中温 化剤 の 製造 に を基準(100%)としてその比率とした)。
係 る CO 2 排 出 量 原 単 位 に つ い て は 、 メ ー カ ー 等 に
ヒアリングを行い、発泡剤3技術(2技術は30℃低

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土木技術資料 53-1(2011)

中温化技術を適用した際には、いずれの技術も
製造温度の低下、つまり燃料消費量の削減による
CO 2 排 出 量 削 減 効 果が 示さ れ て い る 。 そ れと と も
に 、 中 温 化剤 の 製造 に 係る CO 2 排 出 量 の 増 加分 が
0.9%か ら 2.7%で あ っ た 。 こ れ に よ り 、 中 温 化 技
術を適用した場合、HMA混合物の製造に係るCO 2
排出量は全体として10~20%削減することが明ら
かとなった。
2.3 リサイクル技術
リサイクル技術は、舗装再生工法としてプラン 図-5 建設発生材の再資源化率 6)
ト再生舗装工法、路上再生舗装工法(路上表層再
生工法、路上路盤再生工法)がある 6) 。プラント 廃材輸送 施工・機器輸送 材料輸送 材料製造
12
再生舗装工法は、図-4に示すような常設の再生混
10

CO2排出量(t-CO2)
合所において、再生骨材と新規骨材を混合して再
8
生HMAを製造する技術であり、路上表層再生工法
6
(写真-2)、路上路盤再生工法は、現位置において
4
舗装を再生させる技術である。これら舗装再生工 2
法によって、舗装発生材であるアスファルトコン 0
クリート塊の再資源化率はほぼ100%であり(図- 新規HMA プラント 路上表層
再生工法 再生工法
5) 6) 、リサイクル技術としての役割を十分果たし
図-6 リサイクル技術ごとのCO 2 排出量の試算例 7)
石粉
サイロ
ていると言える。この舗装のリサイクルはほとん
どがプラント再生舗装工法によるものであるが、
路上再生舗装工法も含め、ライフサイクルを通じ
たCO 2 排出量の観点からの評価はあまり行われて
いなかった。
そ こ で 、 筆 者 ら は 、 舗 装 再 生 工 法 の CO 2 排 出 量
の 試 算 も行 った 。 試算 は、 表 層 の補 修工 事 (切 削
図-4 プラント再生の例
オーバーレイ工法)を対象とし、新規HMAを用い
(併設加熱混合方式) 6)
た 場 合 とプ ラン ト 再生 舗装 工 法 によ り再 資 源化 さ
れた再生骨材を用いた場合、路上表層再生工法
(リミックス工法)の3ケースとした。なお、工事規
模は、道路の幅員3.25m、2車線、延長200m(施工
面 積 1,300m 2 ) と し 、 既 存 の 舗 装 面 を 3cm 切 削 、
5cmオーバーレイを行うこととした。
CO 2 排 出 量 を 試 算 し た 結 果 を 図 -6に 示 し 、 そ の
概要を以下にまとめる。
1) 新 規 HMAを 使 用 し た 切 削 オ ー バ ー レ イ 工 法 と
プ ラ ン ト再 生工 法 で再 生さ れ た 再生 骨材 を 使用 し
た 切 削 オ ー バ ー レ イ 工 法 の CO 2 排 出 量 を 比 較 す る
と 、 施 工や 廃材 輸 送は 変わ ら な いが 、材 料 製造 で
約 10%、 材 料 輸 送 で 45%の 削 減 と な り 、 全 体 と し
写真-2 路上表層再生工法
て約20%のCO 2 排出量の削減となる。

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土木技術資料 53-1(2011)

2) 路 上 表 層 再 生 工 法 と 新 規 HMA を 用 い た 切 削 リ ー ン 購入 法に お いて 新材 を 使 用す るこ と とし て
オ ー バ ー レ イ 工 法 の CO 2 排 出 量 を 比 較 す る と 、 路 い る が 、今 後の 課 題と して 、 再 生骨 材を 用 いた 場
上 表 層 再生 工法 は 現位 置で 舗 装 発生 材を 再 資源 化 合 や 排 水性 舗装 に 適用 した 場 合 の耐 久性 を 明ら か
す る た め 、 施 工 時 の CO 2 排 出 量 は 多 い が 、 全 体 と にする必要がある。
して約20%のCO 2 排出量の削減となる。 そ こ で 、 土 木 研 究 所 で は 、「 低 炭 素 舗 装 技 術 の
3) 路上表層再生工法とプラント再生舗装工法で再 高 度 化 に 関 す る 研 究 ( 平 成 22~ 24年 度 )」 と 題 し
資 源 化 され た再 生 骨材 を用 い た 切削 オー バ ーレ イ て 民間会 社、 9社・グルー プ(大 林道路 (株),常
工 法 の CO 2 排 出 量 を 比 較 す る と 、 前 者 の 施 工 時 等 温 舗 装 技 術 研 究 会 , 世 紀 東 急 工 業 ( 株 ), 大 成 ロ
の CO 2 排 出 量 は 多 く な る 一 方 、 材 料 輸 送 時 の CO 2 テ ッ ク ( 株 ), 東 亜 道 路 工 業 ( 株 ),( 株 ) N I P
排 出 量 は少 なく 、 廃材 輸送 量 が ない こと も あっ て P O ,日 本道 路( 株 ),ニ チ レキ (株 ),前 田道路
全 体 の CO 2 排 出 量 は 若 干 少 な く な る ( た だ し 、 ( 株 ))と 共同 研究 を開 始し て いる 。本 共同 研究 で
CO 2 排 出 量 が 少 な い 路 上 表 層 再 生 工 法 で も 、 路 上 は 、 中 温化 技術 を 始め 、路 上 再 生工 法や 常 温舗 装
表 層 再 生機 の輸 送 距離 によ っ て 環境 負荷 が 大き く 技 術 な ど低 炭素 舗 装技 術に つ い て、 既存 技 術の 高
な る 場 合も ある こ とも 試算 結 果 とし て得 ら れて い 度 化 を 図る とと も に、 新た な 技 術開 発を 行 って い
る)。 く予定である。

3.おわりに
参考文献
以 上 のよ うに 、 中温 化技 術 お よび 舗装 再 生工 法 1) 環境省:2008年度(平成20年度)の温室効果ガス排
出量(確定値)について、平成22年4月15日報道発
に つ い て 、 ラ イ フ サ イ ク ル を 通 じ た CO 2 排 出 量 を

定 量 的 に試 算す る こと によ っ て 、低 炭素 舗 装技 術 2) (社)日本道路協会:環境に配慮した舗装技術に関す
と し て の CO 2 削 減 効 果 の 評 価 を 行 う こ と が で き た 。 るガイドブック、2009.6
3) (社)日本道路協会:舗装性能評価法 別冊-必要に
舗装再生工法は、舗装工事により発生するアス 応じて求める性能指標の評価法編-、2008.3.
ファルトコンクリート塊のリサイクル率を約100% 4) 川上篤史、新田弘之、加納孝志、久保和幸:加熱ア
に 達 成 させ てい る こと から 、 今 後も 高い リ サイ ク スファルト混合物製造に係るCO 2 排出量とその影響
要因について、土木学会舗装工学論文集、第14巻、
ル 率 を 維 持 し て い く こ と で 、 CO 2 排 出 量 を 削 減 し 2009.12
ていくと考えられる。 5) 吉中保:アスファルト舗装の低炭素化技術(中温化)
の動向、2010年石油製品討論会、(社)石油学会、
一 方 、中 温化 技 術に つい て は 、コ スト が 普通 の
2010.11
HMAに対して10~20%高くなることから、採用数 6) (社)日本道路協会:舗装再生便覧(平成22年版)、
が 少 な か っ た の が 現 状 で あ る 。 し か し 、「 国 等 に 2010.11
7) 川上篤史、新田弘之、加納孝志、久保和幸:舗装再
よ る 環 境 物 品 等 の 推 進 等 に 関 す る 法 律 」( グ リ ー
生工法の環境負荷評価について、土木学会舗装工学
ン購入法 )において、今年度(平 成 22年度)よ り、 論文集、第13巻、2008.12
中 温 化 アス ファ ル ト混 合物 ( 資 材) とし て 調達 品
目 に 指 定さ れて い る。 よっ て 、 今後 、普 及 され て
い く も のと 予想 さ れる 。な お 、 中温 化技 術 は、 グ

川上篤史 * 新田弘之 ** 久保和幸 ***

独立行政法人土木研究所つくば 独立行政法人土木研究所つくば 独立行政法人土木研究所つくば


中央研究所道路技術研究グルー 中央研究所材料地盤研究グルー 中央研究所道路技術研究グルー
プ舗装チーム 研究員 プ新材料チーム 主任研究員 プ舗装チーム 上席研究員
Atsushi KAWAKAMI 博士(工学) Kazuyuki KUBO
Dr. Hiroyuki NITTA

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