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角R
角R
角R
2012 年 06 月 20 日 11 時 00 分 公開
[落合孝明/モールドテック,MONOist]
さて唐突ですが、身近にある樹脂製品を見てみてください。PC のキーボード、モニ
ター、ペットボトルなど、何かしらの樹脂製品が身の回りにはあるかと思います。では、
その製品の角はどうなっているでしょうか?
丸みが付いていませんか?
この「丸みを付ける」ことを「R(アール)を付ける」と言います。基本的に製品の
角部は、R になっています(図 1)。一見、角でも、よく見れば微細な R が付いていま
す。
図1
角には、R が付く
では、なぜ R を付けるのでしょうか?
理由 1.製品の耐久性
もし製品をぶつけてしまったとき、角に R が付いている場合と付いていない場合で
はその耐久性が違ってきます。「R が付いていない」ということは、「製品がとがって
いる」わけです。それだけ、製品が欠けやすくなってしまうのです。
理由 2.使いやすさ、安全性
その製品を持ち上げたときに、角がとがっている場合と丸みが付いている場合では、
持ちやすさが全然違います。とがっていたら、痛いですよね? 製品によっては、角で
あるために手や肌を傷を傷つけてしまう場合もあります。
例えば、お風呂の椅子(いす)は、座る部分の真ん中に穴が開いています。
図 2 お風呂の椅子
R が付いていなければ、穴に手を入れる際に手を傷つけないまでも、入れづらいで
しょうし、座る部分の周りに R が付いていなければ、座ったときにお尻に角が当たり、
非常に座りにくいでしょう。
ちなみに、R を付ける理由には、加工上の理由もあります。しかし、製品デザインに制限を与えてしまう可能性もあ
りますので、今回は省略いたします。
いずれにせよ、製品によっては、角であったがために使用者がケガをしてしまうケー
スも考えられます。たかが、丸みを付けるとはいえ、バカにはできません。このように、
製品に対して R を付けることは、非常に重要なこととなります。
公差のお話
このように、その製品や部位によって許容できる差があります。この許容できる範囲
のことを公差と言います。公差には、大きく「寸法公差」と「幾何公差」の 2 種類が
あります。
寸法公差とは、寸法公差とは、「寸法のズレがどのくらいまでなら許せ
るか?」、その寸法差のことを言います
幾何公差とは、例えば中心軸など、寸法ではなく、垂直度や平行度など
の位置関係(幾何関係)における公差のことを言います
例えば、穴が棒よりも、大き過ぎると抜けてしまいますし、小さ過ぎれば入りません。
このような場合には、適正な寸法を指示する必要があり、その寸法の許容範囲を示す必
要があります。
一般的な公差については、JIS(日本工業規格)で規定されています。しかし、JIS
の規定以上に寸法精度がシビアになる部分については、別途公差を指示する必要があり
ます。
寸法公差は、以下のように表現します。
また、幾何公差には、「垂直度」「平行度」など多くの種類があり、表のような記号
と共に表現します。
図 3 幾何公差記号一
覧:「製図を極める! 幾何公差徹底攻略(5)」より
関連記事:
⇒ 製図を極める! 幾何公差徹底攻略
悪い公差の入れ方
公差が本来必要なシビアな部分に公差指示を忘れると、その製品に必要な仕様を満た
すことができず、製品として不良になる可能性があります。そのことから、公差の指示
を忘れないよう注意が必要です。
それから、たまにですが、ありとあらゆる部位に一般公差より厳しい公差が設定され
ている図面を見ることがあります。「公差を指示する」ということは、「その製品に対
して寸法管理が必要」ということです。それは「労力」、すなわち「コストがかさむこ
と」になります。なので、不必要なまでに厳しい公差を設定しないようにすることもま
た大切なことです。
樹脂製品の成形時には収縮が起こることは、連載 1 回でも触れました。製品形状が
板状の場合。収縮するときに製品がそりやねじれといった、形状変形が発生する場合が
あります。
図 4 形状変形
このような形状変形を防ぐために、製品に対して補強するための形状を設定します。
この補強形状を「リブ」といいます(図 5)。
図 5 リブ
リブを設定することにより、製品の変形を防げます。また、リブには製品の強度を
アップする役割もあります。
ただし、リブの付け方次第では、樹脂流動の妨げとなってしまい、ヒケやボイドと
いった成形不良の原因となってしまいますので、最適な位置と厚さでリブを設定する必
要があります。
以上、全 3 回に渡ってお届けした樹脂の製品設計ですが、あくまで「基本」ですか
ら、当然、その全てを網羅しているわけではありません。そこで、もう 1 ステップ深
掘りした解説をお届けする新連載を予定しています。本連載と新連載が、読者の皆さま
のお役に少しでも立てば幸いです。