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20 610
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20 (1971)
製 剤 中 のdl-塩 酸 メ チ ル エ フ ェ ドリンの 吸 光 光 度 定 量 法
海東 常 敏, 相 楽 和 彦*
(1970年11月26日 受 理)
dl-塩 酸 メ チ ル エ フ ェ ド リ ン(MEP)は ア ル カ リ溶 液 中 で フ ェ リ シ ア ン 化 カ リ ウ ム に よ り 酸 化 さ れ て
ベ ン ズ ア ル デ ヒ ドを 生 成 す る.ベ ン ズ ア ル デ ヒ ドは241nmに 極 大 吸 収 を 有 し,MEPに 比 べ て強 い 吸
収 を 示 す の で,こ の 反 応 を 利 用 し て 製 剤 中 の 定 量 を 行 な い 良 好 な 結 果 を 得 た.ま た本 定 量法 は 反応 温 度
を20℃ に す る こ と に よ り塩 酸 エ フ ェ ド リ ン(EP)が10倍 量 共 存 し て も 影 響 な く 定 量 す る こ とが 可 能
で あ る.
と し て は か な り の 特 異 性 を 持 ち,簡 単 な 処 方 の 製 剤 は本
1 緒 言
定 量 法 を 直 接 適 用 で き,妨 害 物 質 を 含 む 場 合 は,解 熱鎮
に よ る色 素 法2)が あ る.こ の 色 素 法 は製 剤 中 の定 量法 と
2 実 験
して 広 く用 い られ て い る が,リ ン 酸 ジ ヒ ドロコ デ ィ ン な
どの 妨 害 成 分 を含 む 場 合 は,あ らか じめ 水 蒸 気 蒸 留 に よ 2・1 試 薬 お よ び 装 置
せ た 場 合 は 分 離 が さ らに 困 難 とな るな どの 欠 点 が あ る. 薬 局 方 適 品 を105℃ で3時 間 乾 燥 し て 用 い た.
3%フ ェ リ シ ア ン 化 カ リ ウ ム 溶 液(用 時 調 製).
日本 薬 局 方 のMEPは,水 酸 化 ナ ト リウ ム アル カ リ性 で
pH10緩 衝 液:0.05M炭 酸 ナ ト リ ウ ム 溶 液50mlを
過 マ ン ガ ン酸 カ リウ ム酸 化 に よ り得 られ た ベ ン ズ ア ル デ
と り,0.05Mホ ウ 酸 ナ ト リ ウ ム 溶 液 を 加 え てpH10.0
ヒ ドの 芳 香 に よ っ て確 認 を行 な って い る4).さ ら に 同解 に 調 整 す る.
20%塩 酸,0。IN塩 酸, 2N水 酸 化 ナ ト リ ウ ム 液,
説 書5)は フ ェ リシ ア ン化 カ リウ ム酸 化 に よ って も,ベ ン
n-ヘ キ サ ン(ビ タ ミ ン 定 量 用),弱 酸 性 イ オ ン 交 換 樹脂
ズ アル デ ヒ ドが 生 成 され る こ とが 記 され て い る.著 者 ら
ア ン バ ー ラ イ トCG50[NH4型]カ ラ ム:弱 酸性イオ
は この フ ェ リシ ア ン化 カ リウ ムを 川 い てMEPの 定量法
ン 交 換 樹 脂 ア ン バ ー ラ イ トCG50を 常 法 に よ り[NH4
を確 立 した.類 似 化 合物 で あ るEPは 過 ヨ ウ素 酸 酸 化6) 型]と し,内 径10mmの カ ラ ム に 層 長5cmに 詰 め る.
ま た は ク ロ ム酸 酸 化7)に よ りベ ン ズ アル デ ヒ ドを生 成 さ 試 液 調 製 用 の 試 薬 は い ず れ も 試 薬 特 級 を 用 い た.
2・1・2・ 装置 日立EPS2型 自 記 分 光 光 度 計,日 立
せ,定 量 を 行 な っ て い る が,本 法 はEPが3倍 量 共存 し
パ ー キ ン エ ル マ ー139型 分 光 光 度 計.
て も影 響 な く,さ ら に反 応温 度 を20℃ にす る こ とに よ
り,10倍 量 まで 共 存 して も,そ の 影 響 な しに 定 量 す る
こ とが で き る.ま た感 度 はMEPそ の もの の 吸 光 度 に比 2・2 定 量 法
2・3 定 量 条 件 の 検 討
2・3・1 酸 化 生 成 物 お よびMEPの 吸 収 曲線 標準
液(60μg/ml)2mlを と り定 量 法 に 従 って 得 た 液 お よ
びMEP400μ9/mlを 含 む 溶 液 の吸 収 曲線 をFig.1に
示 す.定 量 法 に 従 って得 た液 の 吸 収 曲 線 は 波長241mm
に 吸収 の 極 大 を持 つ ベ ン ズ ア ル デ ヒ ドの吸 収 曲線 と一 致
し,そ の吸 光 度 は0・064/μ9で あ った ・ これ に 対 して
Fig. 2 Effect of concentration of K3Fe(CN)6
MEPは257nmに 吸 収 の極 大 が あ り,吸光 度 は0.00094/
solution
μgで あ った.し た が って ベ ンズ アル デ ヒ ド生 成 に よ る
感 度 はMEPそ の もの の約68倍 と な る.
2。3・4 pHと 吸光度の関係 標 準 液(60μg/ml)
ム溶 液 でpH 11.0∼12.5に 調 節 した 緩 衝 液 をつ く り,
そ の3mlを 用 い,他 は 定 量 法 に 従 って 操 作 した と こ
ろ,吸 光 度 はpH9.25∼9.75の 間 で 徐 々 に増 加 し,pH
9.75∼12・5の 問 で 一 定 値 を示 した.定 量法 で はEPの
影 響 も考 えてpH10.0と した.
2・3・5 反 応 時 間 と温 度 の 関 係 標 準 液(60μ9/ml)
2mlを と り,反 応 時 間 は10∼90分 と し,一 一方 反 応 温
度 を15∼400Cに 変 え,定 量法 に 従 って 操 作 した 結 果 を
Fig.3に 示 す 。定 量 法 で は再 現 性 が よ く,ま た 定 量 条 件
Fig. 1 Absorption spectra of dl-methylephedrine
と して 適 当で あ る と考 え られ る と ころ,す な わ ち 反 応 時
hydrochloride in water and of its oxidation
間60分,温 度25。Cを 採 用 した.
product in n-hexane
2・3・6 塩 酸 濃 度 と吸 光 度 の 関係 お よ び 塩 基 性 妨 害 物
質の除去法 塩 酸 は反 応 に は直 接 関係 な い が,塩 基 性
妨 害 物 質 を 除 去 す るた め に 用 い る こ と と した ・ 標 準 液
2・3・2 検 量 線 標 準 液(15∼120μ9/ml)を 調製 (60μ9/ml)2mlを と り,塩 酸 の 濃 度 を5∼36・5%(濃
し,そ の2mlを と り,以 下 定 量 法 に従 って操 作 した結 塩 酸)に 変 え,そ の1mlを 用 い,他 は 定 量 法 に 従 って
果,原 点 を 通 る 直 線 関 係 が 得 ら れ た. 操 作 し,吸 光 度 を測 定 した と ころ,5∼36.5%の 間でほ
2・3・3 フ ェ リ シ ア ン 化 カ リ ウ ム 溶 液 の 濃 度 と 吸 光 度 と ん ど一 定 の値 を示 した.次 に塩 酸 を加 え な い 場合 に 妨
の 関係 標 準 液(60μg/ml)2ml'を と り,フ ェ リシ 害 す るお そ れ の あ る塩 基 性 物 質 をMEPの5倍 量ず つ 混
ア ン 化 カ リ ウ ム 溶 液 の 濃 度 を0.5∼10%に 変 え,そ の 合 し,塩 酸 の 濃 度 を5∼20%に 変 え て測 定 した と ころ,
612 JAPAN ANALYST Vol. 20 (1971)
影 響 が大 き くな る こ とが わ か った 。 ま たpH12・5緩 衝
液 お よび10%フ ェ リシ ア ン化 カ リウ ム溶 液 を用 い操 作
して得 た液 の 吸 収 曲 線 を測 定 した とこ ろ,ベ ンズ アルデ
ヒ ドの 吸 収 曲 線 と一 致 した.し か し定 量こ
法 で 用 い られて
い るpH10緩 衝 液 お よび3%フ ェ リシ ア ン化 カ リウ
ム溶 液 を 用 い た 場合,そ の 影 響 は ほ とん ど無 視 で き るも
の で あ る。
perature to absorbance
TableIに 示 す とお り5∼10%の 間 で ほ とん ど 除 去 す
る こ とが で きた ・ 実 際 に製 剤 に つ い て 行 な う と,賦 型 剤
そ の 他 の 影 響 のた めか20%で な け れ ば 妨 害 物 質 を除 去
で きな い もの も あ る た め,こ こで は20%塩 酸 を用 い る
Fig. 4 Relation between concentration of K3Fe-
こ と と 新た.た だ し適 当 な前 処 理 を行 な う場 合 には,さ (CN)6 solution and pH for ephedrine
らに低 濃 度 の 塩 酸 を用 い て も よ い と考 え る。 hydrochloride
度 が 高 く な る に した が って か な りの 影 響 が み られ た.し
た が ってEPを 共 存 させ た 場 合 に は,反 応温 度 を200c
にす れ ば影 響 が さ らに少 な くな る こ とが わ か る.
2.4 EP の影響
2・4。1 EP に 対 す るpHと フ エ リシ ア ン化 力 リ ウム
溶 液 の 濃 度 の 関 係EP溶 液(300μg/ml)を 調 製 し,
5個 の 遠 沈 管 に 各2mlず つ を と り,こ れ に2∼10%の
濃 度 の フ ェ リ シ ア ン 化 カ リ ウ ム 溶 液 各2mlお よ び0.05
M炭 酸 ナ ト リ ウ ム 溶 液 と0・052Mホ ウ酸 ナ ト リウ ム溶 液
Fig. 5 Effect of temperature for ephedrine
でpH9.25∼10.75に,ま た0.05Mホ ウ酸 ナ ト リウ ム hydrochloride
溶 液 と0・05N水 酸 化 ナ ト リ ウ ム 溶 液 でpHl1.0∼125
2・5 製 剤 へ の 応 用
2・5。1 妨 害物 質TableI以 外 の30種 類の物質を
MEPの5倍 量ず つ混 合 し定 量 を行 な った.TableI II
な った と ころ,TablcIVに 示 す とお りの 良 好 な 結 果 を
得 た.
処 方Aの 定 量 法:こ の処 方 に は妨 害 成 分 が 配 合 され て
い な い ので 前 処 理 を行 な う必 要 は ない 。 まず,試 料 を微
粉末 として,MEP6mg相 当 量 を 精 密 に 量 り100mlの
メス フ ラス コに 入 れ,水50mlを 加 えて10分 間 振 り混
密 に量 り,共 せ ん遠 沈 管 に入 れ,水20mlを 加 えて よく
振 り混 ぜ た の ち,遠 心 分 離 す る.残 留 物 は さ らに水20
mlず つ で3回 抽 出 し,全 抽 出液 を 合 わせ100mlの メ
ス フ ラス コに入 れ,水 を加 え て正 確 に100mlと す る。
文 献 prepared as follows.
Transfer 40 ml of the sample solution containing
1) 服 部 哲 靖,西 海 里:薬 剤 学, 21, 9 (1961). 6 mg MEP into a column of cation exchange resin
2) 堀 岡 正 義:薬 誌, 77, 200 (1957). (Amberlite CG50 NH4 type, 5cm X 1 cm i. d.) and
3) 小 野 真 一,尾 西 良 一,川 村 邦 夫,小 田 容 子:日 本 pour 150 ml of water. Then elute MEP with 90 ml