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たけとりものがたり

―― かぐやひめ ――
むかしむかし ところ たけと す
昔 々 、ある 所 に竹取りのおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは
やま たけ と つく たけと
山 から 竹 を取ってきて、かご1やざる2を 作 っていましたから、みんなに「竹取りのおじい

さん」と呼ばれていました。

ひ たけ なか はい い く わ
ある日、おじいさんが 竹 やぶ3の 中 に 入 って行くと、どこから来るのか分かりませんで
ひかり いっぽん たけ きんいろ
したが、まぶしい 光 がさし4てきました。 一 本 の 竹 が 金 色 に光ってい
おも たけ き き
ます。ふしぎに 思 ったおじいさんは、その 竹 を切ってみました。切った
たけ なか ちい おんな こ すわ
竹 の 中 には、かわいらしい、 小 さい 女 の子が 座 っていました。おじ
おんな こ て と いえ つ かえ
いさんは、その 女 の子を手に取って、 家 に連れて 帰 りました。

こども わたし かみさま


「子供がいない 私 たちに、 神 様 がくださったんじゃ5。」

むすめ
「ほんとうに、かわいらしい 娘 ですね!」

こ ひめ な
おじいさんとおばあさんは、その子にかぐや 姫 という名
とき
まえをつけて、とてもかわいがり6ました。その 時 から、
きんいろ かがや たけ
おじいさんはいつも 金 色 に 輝 く 竹 をみつけました。
き やま かねも
切ってみると、こがね7の 山 です。おかげで、とてもお金持ちになりました。

1 かご: a woven basket


2 ざる:a strainer made of bamboo
3 竹やぶ:bamboo grove
4 光がさす:a light shines, comes out
5 ~じゃ=です
6 かわいがる:to treat sb kindly, affectionately
7 こがね:gold
おお ひめ うつく むすめ うつく ひめ
大 きくなると、かぐや 姫 はとても 美 しい 娘 になりました。 美 しいかぐや 姫 のうわ
くにじゅう ひろ かねも えら ひと つぎつぎ ひめ けっこん
さは、すぐ 国 中 に 広 がりました。お金持ちや 偉 い 人 たちが、 次 々 にかぐや 姫 と 結 婚
い ひめ い
したいと言いました。けれども、かぐや 姫 は言いました。

わたし だれ けっこん
「 私 は 誰 とも 結 婚 したくありません。ずっと、おじいさん、おばあさんのそばにいま

す。いつまでも、いつまでも。」

むずか ちゅうもん だ
ですから、おじいさんは、 難 しい 注 文 を出して、かぐ
ひめ けっこん おとこ み かんが
や 姫 と 結 婚 したい 男 たちができるかどうか、見ようと 考

えました。

ひか み こんじき えだ つぎ ひと きん けがわ つぎ
「あなたは、 光 る実ができる 金 色 の 枝 を取ってきなさい8。 次 の 人 は、 金 の毛皮。 次 の
かた ひかり せんす りゅう めだま くらやみ み いろがみ
方 は、 光 をだす扇子。 竜 の目玉のネックレス。 暗 闇 9のなかで見える 色 紙 ・・・。」
むずか ちゅうもん
どれもこれも10、 難 しい 注 文 ばかりです。これで、きっとみんないなくなってくれる
おも おとこ ちゅうもん しな も
と、おじいさんは 思 いました。ところが、 男 たちは 注 文 の 品 をぜんぶ持ってきまし
うつく たからもの こま
た。どれもこれも、 美 しい 宝 物 でした。おじいさんは、ほんとうに 困 りましたが、こ
たからもの ひめ まえ だ もの か
の 宝 物 をかぐや 姫 の 前 に出すと、みんなきたない 物 に変わってしまいました。

じゅうごや ちか つき ひめ め
十五夜11が 近 づいてきました。 月 はだんだん、まるくなります。かぐや 姫 の目は、だん
かな
だん 悲 しそうになりました。おじいさんと、おばあさんは、
しんぱい ひめ き
心 配 して、かぐや 姫 に 聞きました。

ひめ つき み かな
「かぐや 姫 や、どうして 月 を見て、そんなに 悲 しむのじゃ。」

ひめ うえ な い
すると、かぐや 姫 は、おばあさんのひざの 上 で泣きながら、こう言いました。

8 きなさい:imperative form=こい
9 くらやみ:the dark
10 どれもこれも:each and every, all and singular
11 じゅうごや:a night with a full moon
たいせつ そだ つき かえ じつ
「いままで 大 切 に 育 てていただきましたが、わたしは 月 へ 帰 らなければなりません。 実
つき みやこ もの
は、わたしは 月 の 都 の 者 です。」

おどろ
おじいさんたちは 驚 きました。

つき みやこ もの
「 月 の 都 の 者 !!」

つき みやこ もの おとな つき
「 はい、 月 の 都 の 者 は、大人になると、 月 へもどら

なければなりません。」

「それは、いつ?」

はちがつじゅうごにち よる
「はい、 八 月 十 五 日 の 夜 に・・・」

じゅうごや よる
「十五夜!!それは、あしたの 夜 だ・・・」

ひめ な
おじいさんとおばあさんは、かぐや 姫 をしっかりと12だきしめ13ながら、泣きました。

じゅうごや よる つき く づか もの お
とうとう、十五夜の 夜 になりました。おじいさんは、 月 から来る 使 い14の 者 たちを、追
かえ き ひめ けっこん みかど たち いえ
い 返 そう15と決めました。かぐや 姫 と 結 婚 したいと思っていた 帝 のさむらい 達 に 家 の
16

まも やま うえ まんげつ ゆみ
まわりを 守 って17もらいました。やがて、 山 の 上 に 満 月 18がでました。さむらいたちは 弓
や そら む いえ いちばんおく へ や
に矢をつけて、 空 へ向けます。 家 の 一 番 奥 の部屋では、おじいさんとおばあさんがかぐ
ひめ まも
や 姫 を 守 っています。

12 しっかりと:firmly
13 だきしめる:to embrace sb closely, tightly
14 つかい:messenger
15 おいかえす:to send away, to turn sb.from the door
16 みかど:the Emperor
17 まもる:to protect sb from harm
18 まんげつ:full moon
じゅうごや つき かがや はじ うえ ひかり ひろ ひとり
十五夜の 月 が 輝 き 始 めました。さむらいたちの 上 に 光 が 広 がります。一人のさむ
ゆみ ひ や や む と い や
らいが、 弓 を引いて、矢をはなちました19。矢は月へ向かって飛んで行きましたが、矢はと
す っ き つき ひかり め み
ちゅうで、スッと消えてしまいました。ふしぎな 月 の 光 で、さむらいたちの目が見えな
ひかり う いし うご
くなりました。さむらいたちは 光 に打たれて、 石 のように 動 かなくなりました。

ひかり なか てんにょ てんま お おく


やがて、 光 の 中 から 天 女 と天馬が降りてきました。 奥 の
へ や ひめ ま つき ひかり なか た
部屋にいたかぐや 姫 が、いつの間にか、 月 の 光 の 中 に立ってい

ました。おじいさんとおばあさんは、も
なに
う、 何 もすることができません。

「おじいさん、これを!」

ひめ まえ お
かぐや 姫 はおじいさんの 前 にふくろを落と

して行きました。

ひめ つ い
「おお、かぐや 姫 、どうか20、わたしたちも連れて行ってくださ

い。」

お ひめ の うま しず てん のぼ
おじいさんとおばあさんは追いかけましたが、かぐや 姫 が乗った 馬 は 静 かに 天 へ 上 って
い ま つき なか き い
行きます。そして、あっという間に 月 の 中 へ消えて行きました。

ひめ お い ながい くすり はい
かぐや 姫 が落として行ったふくろには、長生きの 薬 が 入 っていましたが、おじいさん
ひ や
は、それを火で焼いてしまいました。

ひめ ながい
「 姫 がいないから、長生きはしたくない・・」

いのち くすり で かな ひめ
命 の 薬 から出るけむりは、おじいさんとおばあさんの 悲 しみといっしょに、かぐや 姫
つき む たか たか のぼ
のいる 月 へ向かって、 高 く、 高 く、 上 って行きました。

19 やをはなつ:to shoot, send an arrow


20 どうか:please, ‘I beseech you’
なん よ
(1)おじいさんはみんなに 何 と呼ばれていましたか。どうしてですか。

たけ なか ひかり き
(2) 竹 やぶの 中 のまぶしい 光 はどこから来ていましたか。

ひめ い い
(3)かぐや 姫 はどうして「およめに行きたくない」と言いましたか。

ひめ じゅうごや ちか とき かな
(3)かぐや 姫 はどうして十五夜が 近 づいた 時 、 悲 しそうでしたか。

たち じゅうごや よる ひめ まも なに
(4)おじいさん 達 は十五夜の 夜 、かぐや 姫 を 守 るために 何 をしましたか。

ひめ つき かえ とき なに
(5)かぐや 姫 は 月 に 帰 る 時 、おじいさん、おばあさんに 何 をあげましたか。

一言

たけと ものがたり にほんさいこ ものがたり い か わ


「竹取り 物 語 」は日本最古の 物 語 と言われている。いつごろ書かれたかははっきり分
せいき ものがたり せいき さくひん 「たけとりものがたり
からないが、10世紀の「うつぼ 物 語 」や、11世紀の 作 品 にも、「 竹 取 物 語 」に
か ぶん み おそ せいき なかば せいりつ かんが
ついて書かれた 文 が見られるので、 遅 くても10世紀半ばまでに 成 立 したと 考 えられて
だれ か ふめい
いる。 誰 が書いたのかも不明。

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