自然エネルギーは自立できない

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自然エネルギーは自立できない
―火力・原子力と不可分―

目 次
巻 頭 言 -再生エネは原子力を必要としている-
一般社団法人原子力国民会議 代表理事 宮 健三 ........................... 1

1.科学的分析 ―自然エネルギーの 10 の欠点―


東京大学新領域 客員共同研究員 金盛 正至 ........................... 3

2.対談 今再エネはどれくらいの実力なのか? —主力電源になりうるのかー


政治ジャーナリスト 細川 珠生
東工大先導原子力研究所 澤田 哲生 ......................... 10

3.地域からの声 ....................................................................................................... 19

(1)感情論に流されない明確な 原子力政策の推進を
青森県東通村長 越善 靖夫 .... 19

(2)「脱原発」の欺瞞性を暴き、 真のエネルギー・原子力政策の推進を
原子力産業と地域・産業振興を考える会 会長 末永 洋一 .................. 21

(3)選択肢を失う日 新潟県刈羽村長 品田 宏夫 .................. 23

(4)原発ゼロは現実的なのか?
福井県原子力平和利用協議会 事務局次長 武内 貴年...................... 25

(5)日本型リベラルのお花畑プラン 福井県高浜町長 野瀬 豊...................... 27

(6)地域の声に照らしてみた原発ゼロ法案への反論
佐賀県玄海町長 岸本 英雄 .................... 29

4.識者の声 .............................................................................................................. 31

(1)ドイツはエネルギー政策で大失敗 作家 川口マーン恵美 .................... 31

(2)枝野さん、原発ゼロ政策は経済音痴の証です
常葉大学経営学部教授 国際環境経済研究所所長 山本 隆三 ................ 33

5. 終わりに ............................................................................................................ 35

これまでの提言活動実績 ...................... エラー! ブックマークが定義されていません。


巻 頭 言
-再生エネは原子力を必要としている-

一般社団法人原子力国民会議
代表理事 宮 健三

立憲民主党は今国会にゼロ原発法案を提出した。また原自連(ゼロ原子力・自然エ
ネルギー推進連盟)顧問の小泉純一郎氏もこれに呼応するかのようにゼロ原発を謳い、
この主張を全国で喧伝して回っている。電力供給の現状は、80%以上を火力発電で賄
い、再生エネは 12%程度で、太陽光発電はわずか5%弱である。CO2 ガス放出に制限
がないとすれば、このような原子力ゼロに近い電力供給状況を維持できるだろうが、
この状況は地球温暖化防止の観点からいつまでも続けられない。当面続けられるとし
ても、CO2削減に関する待ったなしの国際約束や地球温暖化による異常気象、さらに
化石燃料価格の高騰と入手困難になる事態、など多くの解決困難な要因が待っており、
火力発電無しの電力供給体制をどう構築していくか、深刻な問題である。この深刻な
事態を避けるには自然エネルギーに対する国民の幻想を解明し一掃しなければならな
い。
マスコミがこの事態を煽り続けている状況も異常で、自然エネルギーの実力を正し
く理解しているのだろうかといぶかしく思うばかりである。このままゼロ原子力に向
かって突進していったとき生じる重大な事態について懸念を抱かないというのは不思
議で仕方がない。
このような悲惨な帰結をもたらすプロセスは単純である。1)現在、再生エネの5
割は太陽電池によってもたらされている、2)その太陽電池は夜の 18 時間は発電でき
ない。バックアップ電源が必要で、現在火力に依存している。その割合は 80%以上で
ある、3)雨が降り数日発電できない場合にも備えておく必要があるので、火力発電
は 90%以上の設備容量を持たないといけない、発電設備の二重投資をしてまで太陽電
池を優遇する理由は薄弱である、4)そうすると昼間に太陽光発電によって夜間の電
力使用分を蓄電池に蓄えておかなければならない、5)この場合蓄電池の容量は莫大
なもので、数日分を用意するときのコストは千兆円を超えてしまう。

結論は再生エネだけでは自立できないということ。近い将来、火力発電には期待で
きないとなると、バックアップ電源は原子力しかありえない、というのが疑いようが
ない事実である。

1
だとすると、立憲党の枝野党首や小泉氏らは国民に対し詐欺行為に値する発言をし
ていることになり、こういう普通の人にとって理解できない行為の本当の理由は何か
ということになる。ゼロ原発の動きの背後に、菅元首相、ソフトバンクの孫氏、朝日
新聞、枝野立憲党党首、左翼系弁護士、などが垣間見えるのは不気味である。太陽光
発電で成功しようがしまいがゼロ原発を実現して太陽光発電で相当の収益を上げられ
れば良いという企みなのか、あるいは国民が再生エネの詐欺に気付く前に自民党政権
を倒すための反原発の政治利用なのか、疑念は消えない。
産経新聞(2018/1/18)における菅氏の発言は反原発の政治利用を公言したもので
あり、来年秋の参議院選で勝利を収めることを宣言しているといってよい。このとき、
彼らの最大の強みは、国民の“再エネに対する幻想”と原発に対する“誤解”であろ
う。これらの疑念を解明するのが、国民に対する真の貢献であろう。

悲しいことに、小泉氏などにとってこの国の将来という価値観はないに等しい。安倍
総理が政権に還り咲いたとき発したキャッチフレーズは、「日本を取り戻す」という
言葉であった。普通の日本に回帰することに抵抗する反日勢力からこの日本を取り戻
す、ということであったと思える。だからして、反日である多くのマスコミは安倍氏
をどうしても引きずり降ろそうとするのである。森加計問題はその象徴ではないか。
そうなっては日本の滅亡である。そうさせてはならないのである。

再エネ問題は日本が伝統的に持つ弱点をあぶりだしている。原子力問題を正しく理
解して将来の選択を誤らないことは現在最も重要な課題であろう。真実が顕在化する
ときは必ずやってくるであろう。

2
1.科学的分析 ―自然エネルギーの 10 の欠点―

東京大学新領域 客員共同研究員
金盛 正至

自然エネルギーは火力・原発と組み合わせないと駄目
代表的な自然エネルギーには、近年発電量が増加している太陽光発電(以下太陽光
という)と風力発電があります。また、旧来から活用され安定的に電力を生み出す、地
熱発電、水力発電、バイオマス発電がありますがこれらの発電方法は立地の制約などか
らその発電量は殆ど増加していません。現在変動型の自然エネルギーの中で、風力発電
は、太陽光の数分の一程度で、大半が太陽光なので、以下の説明は太陽光を中心に行い
ます。
太陽光は、図1の一日の需給バランスの例見ていただくと、その特徴が分かります。
当然のことですが一日の中で、昼間に太陽光があり、夜間は火力、水力、原子力が使わ
れていることが分かります。現在火力発電・原発の力を借りないと一日の電力を賄うこ
とは無理なのです。図1では昼間に太陽光の電力が多い時に、太陽光で発電し余った電
力を揚水発電に蓄電し、太陽の照らない夜間にその電力を活用しています。(注1)

太陽光は昼だけしか発電できない
上述したように、太陽光は昼だけしか発電できませんので、夜には使えません。発
電した電気は貯めておくことはできませんので、何らかの蓄電方法でそのエネルギーを

3
ためて夜間に使うことが欠かせません。更に、下の図2は昼間の太陽光発電の電力出力
を示しています。快晴であれば昼間はなだらかな山のように上昇するはず(赤曲線)で
すが、雲が通過することにより発電量が鋸状に大幅に上下(オレンジ線)することがわ
かります。この図2では、紫線では昼12時頃でも太陽光パネルの上空を雲が通過してい
る為に本来の半分以下の発電しかできていません。オレンジの線では小さな雲が頻繁に
通過するため発電量がギザギザになっています。これでは、100ボルトの電圧が上下し
そのままでは普通の電気として使えません。また、梅雨などの長期に曇りが続くときに
は、その期間電気が使えないことになってしまします。晴天の日に蓄電した電力を雨天
の日に使うことも必要です。自然エネルギーには他に、風力発電もありますが、風力発
電も風の強弱で大きく変動する特性は同じです。

必要な時に発電できない
つまり、自然エネルギーは、必要な時に発電してくれと言ってもできないというこ
とです。専門的には給電指令と言いますが、電気は必要な時に発電するように指令を出
しますが、指令を出しても必要な時に発電できないということは、日本の電源としては
致命的な欠点です。
電気が止まるとどうしても困るケース、例えば、病院で必要な電力が来なければ、
手術を止めなければいけないとか、透析を止めなければいけないとか、人の命に係わる
重大なことなのです。産業界では必要な電力がこなければ工場が止まってしまう事にな
ります。工場が止まり、生産ができないことは大変なダメージです。短期的には、電池
で補えるかもしれませんが、暗い夜は、火力発電とか原発に頼る以外に道はありません。

寒波襲来で再エネ働かず電力不足
また、今年の一月には、東京電力の管内では寒波襲来で、深刻な電力不足となりま
した。これは、今冬のような厳冬のなかで暖房に使う電力の需要が多くなり、かつ太陽
光が雪で発電できないなどの原因が重なって発生したものです。東京電力は他の電力会
4
社から電力を融通してもらってぎりぎり乗り切りました。具体的には、朝日新聞、電気
新聞等で報道されましたが、今年2月22日以降、24日、25日等、夜間の9時過ぎの寒い時
期に電力が不足する緊急事態となりました。24日には最大で関西電力など計6社から200
万キロワットの電力を融通受けなければならない
危機的状況でした。

日本では昼間より夜間に電気が必要
太陽光発電は、昼間しか発電できませんが、現
在の日本では、昼より夜のほうが、多くの電気を
使っていています。過去の電力会社の統計でみて
も、夜間電力は、年間平均でも1日の半分以上となりますし、多い日には2割も増加しま
す。

太陽光と風力発電の現状
下表に2016年の我が国の電源構成を示しますが、エネ庁によれば、太陽光などの変
動する自然エネルギーは全体の5%、従来からある安定的な自然エネルギーは9.6%で、
約84%は石油等の火力に頼らざるを得ないのが現状です。

太陽光のための十分な電池はない
では、自然エネルギーで発電できない時のために、蓄電池に電気を貯蔵しておくに
はどうしたら良いでしょうか。太陽光は、昼6時間は発電しますが、最低でも夜18時間
に対応する電力を電池でためておかないといけません。近年では、一日の電力量は約30
億kWhとなっており、夜間分は約23億kWhを蓄電するには、膨大な量の電池が必要になり
ます。現在、経産省も次世代高性能電気自動車蓄電池の開発等を進めつつあり、有望な
電池としては、ナトリウム/硫黄電池(NAS電池)
、リチウムイオン電池(Li電池)
、レド
ックスフロー電池などの電池が有望とされています。電力供給用にも、数万kWh程度の
実証試験計画が進みつつあります。
(アメリカのテスラ社では4万円/kWh の電池開発済)
5
また、他の素材も検討されていますが、実用化は相当先になるものと考えられます。
では、現在の一例としてLi電池等で、日本全体で必要な電気を貯めておくためには
どれ位のコストがかかるのでしょうか。これには夜だけの分を蓄電するのか、梅雨の日
は何日分蓄電する必要があるかなど、色々な条件を考える必要があります。しかし、現
在から将来にかけて、日本の現状を考慮した場合、水力などが10%発電すると仮定
し残りの90%を蓄電池により蓄電し供給するという方法が最も単純な想定の一つと
考えられます。Li電池ですと、足元で20万円/kWh程度の価格ですので、この価格に基づ
く単純な試算の結果を以下の表に示します。(注2)

ここでは、三日分の貯蔵しか仮定しませんでしたが、単純に考えても、蓄電池に必
要な費用は100兆円~1000兆円のオーダーと想定されます。東北エリアの実績をベース
に評価した新田目氏の論文の結論の一つでは、電力需要1kWシステムに対し太陽光で
1110.3kWhの蓄電池が必要とされており、この結論からは2015年の日本の最大需要1.7
億kWから計算すると1888億kWhの蓄電池が必要でこれは約20000兆円とうい膨大な金額
となります。また、各地域の所要蓄電設備の概算方法も示されていますが、年間需要の
10%~20%とされています。2016年の発電電力量は10506億kWhですので、水力などを除
いた90%の電力量に対して、現在の最安値のLi蓄電池4万円~20万円を適用して計算す
ると以下のように、約4000兆円~40000兆円とういう範囲となります。(注3)

電池の技術開発にも限界がある
では、自然エネルギーを推進している人々が言うような技術開発で実現できるので
しょうか?我が国の先端の研究の実施・評価を行っている国の予測、新エネルギー・産
業技術総合開発機構などの最新の予測を見ても現在のコストを大幅に低減する見通し
はできていません。

6
再生エネは火力も食い物にしている
需給バランスの図からも分かりますが、昼間など再エネが発電する時、本来発電で
きる火力を止めて出力を下げなければなりません。これは、火力発電の設備の稼働率を
下げ、採算を悪化させます。ドイツでは実際に発生していますが、E.OnN社など大きな
電力会社は、赤字になる火力発電などを分離して別の会社にするなどの対策を行うこと
になりました。昼間太陽光は止められませんので、日によってはさらに多くの発電所を
止める必要が生じます。結果として、余分に作った再エネ設備の費用、火力発電を止め
ている間の火力発電の維持に必要なコスト、それらすべては国民が支払う電気料金に上
乗せされます。ドイツでは電力料金が上昇し、電気料金難民の声まであがる状態となっ
ています。
(注4)

停止させる原発の資金は誰が払うのか
ドイツでは、原発の停止に踏み切りつつありますが、ドイツのE.ON社など大きな電
力会社は、原発を停止させられることにより、原発という財産と原発を停止することに
より失う利益の保証を求めた訴訟を起こし勝訴しています。それだけではありません、
巨額の解体費用、廃炉費用、廃棄物の処分費用等などを国民の税金から支払わなければ
ならなくなります。立憲民主党の「原発ゼロ基本法案」においてもこの金銭的補償につ
いて言及せざる負えなくなっています。これらの費用は、本来ですと電力会社が原発の
運転の収益から支払ものです。それを国民の税金から支払うという、二重・三重の負担
を国民に強いるものとなるのです。

太陽光パネル廃棄物であふれる
太陽光パネルは寿命が20年から30年と言われていますが、太陽光パネルは電極やシ
リコンを何層にも固着しているため分離することが難しいのです。パネルには、セレン、
鉛などの有害物質が多く含まれています。寿命がきたパネルや強風・雪などで損傷した
パネルが産業廃棄物となるので、総務省はその有害性・処分方法について調査を開始し
ています。総務省によれば、有害物質の情報を処分場に提供していない業者は8割に上
ります。震災後過去5年で、政府の支援策もあり、太陽光発電設備は6倍に増えました。
2040年の太陽光パネル廃棄物発生量は2015年の300倍超の80万トンに達すると言われて
います。また、太陽光パネルの廃棄方法によっては、感電・火災などの事故の危険性も
指摘されています。今後、これら有害物質を含む膨大な量の太陽光パネル廃棄物の処分
が社会問題となる可能性があります。

中国製の太陽光パネルであふれる
今や、我が国でも中国産パネルを使わざる負えなくなっています。かつて、技術開
発段階で、日本は太陽光パネル開発をリードしたこともありましが、今や国産パネルは、
コスト、性能両面で中国製にかなわなくなってきています。これからは、太陽光発電を
すればするほど、中国のパネルを輸入することになり、必要なエネルギーを賄えないだ
けでなく、中国を利するだけの政策です。

7
太陽光発電コストは日本では安くならない
中国産の太陽光パネルは、日本産に比べどんどん安くなっています。日本の商社が
アラブ首長国連邦(UAE)と契約した太陽光発電所では、1キロワット時当たり3円を切
る金額になっているようです。しかし、日本での太陽光発電の費用は、現在固定価格買
取制度で1キロワット時当たり20円程度とさほど安くなっていません。その理由はいく
つか考えられます。日本では、太陽光発電に必要なパネル以外の費用であるパネル設置
費用、人件費、土地代が高いこと、太陽光の利用率が低いこと、太陽光発電事業者への
支援費用などの理由などがあげられます。土地代が殆どかからないサハラ砂漠に、中国
の安い労働力で建てるのと、土地代、人件費の高い日本に作るのとは状況が違うのです。

太陽光発電による自然破壊
最近では、自然エネルギーの計画が広い面積の森林を伐採することで問題が生じる場
合がでています。場合によっては、計画そのものをキャンセルするかどうかを問われる
反対意見の出る事例もあります。例えば、伊豆高原メガソーラーパーク発電所(仮称)
計画(事業面積105ha)では伊豆半島の森林を東京ドーム10個分伐採して太陽光パネル
を設置することとしています。2600人を超える住民から、森林伐採とそれに伴う土砂の
流失、海への流入による自然破壊と環境汚染に反対の声が上がっています。計画そのも
のは、伊東市長の「市民の思いが届かず悔しい」とのコメントも見られましたが、県の
もとで進んで知るとの報道ですが、地域の声の対立を招いている現状のようです。

自然エネルギーと火力では炭酸ガスは削減できない
自然エネルギー先進国と言われるドイツの事例を見てみたいと思います。ドイツで
の総発電量は、1%程度の上下はあるもののほぼ横ばい状態となっています。その中で
自然エネルギー割合は徐々に増えています。最近のデータでも2014年から2015年で自然
エネルギー割合の伸びは、25.8%から29%へと約3%増加しています。しかし、連邦環
境省発表では、自然エネルギーが増加しているにもかかわらず炭酸ガス発生量が2014
8
年から2015年にかけ0.7%増加してしまっています。これは、太陽光・風力のない夜間
などの不足する電力を補うための石炭火力発電量の焚きまし量の増加などによるもの
と言われています。

まとめ

日本で100%自然エネルギーは実現困難

これまで述べてきました
ように、自然エネルギーには、
良い面、魅力的な面があり、
各国ともその活用に力を入
れています。反面、数々の欠
点があります。とりわけ自然
エネルギーが得られない場
合に必要な蓄電池の費用が
大きいことが律速と考えら
れ対応策を検討する必要が
あります。世界中の利用状況
を見ても、自然エネルギーの
不足分は、火力発電、原発で
不足分を補っているのが現状で需要の相当部分を賄う蓄電池の活用には至っていませ
ん。現状日本でも、新しい蓄電池の開発にも多くの機関が取り組み、各種の試験研究が
なされていますが、原理的な検討の域を出ていません。現在実用化が進み改良が続けら
れている Li 電池等については、国レベルでも、大量生産によるコストダウンでは乗り
越えられない壁ととらえられています。これらの状況を踏まえるとき、日本では 100%
自然エネルギーは実現困難と考えられます。

(注1) 需給バランスの表等は電力会社の HP を引用しています。


(注2) 電力需要等の数値は資源ネルギー庁 HP を引用しています。
(注3) 太陽光、風力発電の安定供給コスト、新田目倖造、電気学会論文誌 B,Vol138
(注4) ドイツ連邦環境省の資料など参照。

9
2.対談
今再エネはどれくらいの実力なのか?
—主力電源になりうるのかー

政治ジャーナリスト 細川 珠生
東工大先導原子力研究所 澤田 哲生

—世界2位、しかし高々5%—
澤田哲生 資源エネ庁の2016年の統計では、新エネ(太陽光、風力、地熱、バイオ)
は815億 kwh の発電をし、これは全電力の7.7%にあたります。内訳は、太陽光4.
8%、風力0.9%、地熱0.2%、バイオ1.7%です。この数字をご覧になってどう
思われますか?
細川珠生 これは2011年以前に比べるとどれくらいの伸びなのでしょうか?
澤田 2010年比で地熱とバイオはほとんど伸びていません。太陽光は 35 億 kwh だ
ったのが510億 kwh、風力は 40 から 96 億 kwh に伸びています。
細川 つまり太陽光の一人勝ちということですね。15倍近い。風力はなぜあまり伸び
ていないのでしょうか?
澤田 風況の良いところは、すでに開発されているか遠隔地にあって既設の送電線への
接続がむずかしいのです。
細川 太陽光パネルの技術ではかつては日本が世界をリードしていたようですが、今は
中国産が非常に安価だと聞きます。
澤田 その通りです。中国産のパネルが世界中を席巻しています。ところで日本の太陽
光パネルの量つまり設備容量はどれくらいか想像がつきますか?
細川 全く想像がつきません。
澤田 実は中国に次いで世界2位なんですね。
細川 えっ!それは驚きました。
澤田 ドイツが3位です。あのドイツも追い抜いています。
細川 日本は今や太陽光発電先進国ですか。
澤田 そうなんですね。そしてその設備容量は4280万 kw
です。
細川 設備容量と発電量の関係は?
澤田 その設備が常に100%働いていれば、年間の総発電量(単位 kwh)は、(設備容
量(単位 kw))×365×24h です。つまり、太陽光の総発電量は4280万 kw×3
65×24h = 3749億 kwh です。実際には 510 億 kWh でしたので510÷3749=
13.6%ですね。これを設備利用率といいます。
細川 なるほど。それって随分効率が悪いのですね。高性能の火力だと60%近くで、
原子力は40%弱だと聞きます。
澤田 それはいずれも変換効率ですね。原子力の40%という値は変換効率ですね。熱
から電気を得る効率です。設備利用率は、火力はバックアプとして意図的に止めている
分もあるので概ね70%程度でしょうか。原子力の稼働率も3・11以前は約70%程
10
度です。つまり、1 年間のうちにその電源が 100%の出力で働いた時間数の割合で表わし
ますと、火力も原子力もだいたい 70%程度です。
細川 太陽光パネルはどんどん増えてもそれが使い物になればいいのですが、こんなに
効率が低いとどうなのかと思います。
澤田 太陽光は技術的には20%くらいまではなんとかなるかもしれないと言われて
いますが、夜はゼロと言うのはどうしようもないです。
細川 発電量を上げるためには、太陽光は面積を増やすしか手がないのですね。しかし、
30年もすれば使い物にならない、廃棄物になってしまいますね。莫大な量の廃棄物は
どうするのでしょうか。
澤田 そうですね。メーカーの話では耐用年数は20年から30
年程度となっています。
細川 太陽光は綺麗ごとのように聞こえますが、将来の世代にと
ってはお荷物になりかねない側面もある。ところでドイツは日本
や各国に先駆けて、もう20年以上再エネの普及と原発ゼロを目
標に精力的にやってますね。現状はどうなのですか?
澤田 ドイツでは1990年に再エネ法が施行されたので30年
近いですね。2015年の統計ですが、ドイツは太陽光が6%、風力が12%です。ド
イツとともによく引き合いに出されるスペインは、太陽光が3%、風力が18%です。
細川 スペインは風車に突っ込んでいったドンキホーテの国。さすがと言いたいですが、
それでも風力は18%止まりなんですね。太陽光が意外に低いですね。
澤田 苦戦しています。
細川 しかし、ヨーロッパは陸続きで電力網も各国間がネットワークで繋がっています
ね。国別であれこれ言ってもあまり意味がないのでは・・・
澤田 その通りですね。電力網が孤立している日本とは事情が全く異なります。ドイツ
を見習うと道を誤りかねない。EU 全体でみると、太陽光はわずか3%で風力は10%
です。
細川 太陽光はつまるところ社会貢献でやる程度のもので、多分〝主力電源〟には永遠
にならないのではないでしょうか。
澤田 そうですね。まあテクノロジーの世界ですから、いつか将来画期的なイノベーシ
ョンがあるかもしれないですが、今はその糸口さえ見つかっていません。
細川 技術開発はどんどんやるべきですが、日本のような国がそこに過度の期待とお金
をかけるのは本当に良い選択なのか大きな疑問があります。近未来の像が見えている技
術にこそ力を注ぐべきではないでしょうか。
澤田 今社会貢献と言われました。再エネの方々はよく〝エネルギーデモクラシー(エ
ネルギー民主主義)〟というのですが、社会貢献というよりむしろ社会に育てていただ
いている。それが実態ではないでしょうか。

11
エネルギーデモクラシーの名の下の弱者いじめ
細川 どういうことでしょうか?
澤田 フィードインタリフ(FIT)という制度をご存知ですね。
細川 はい、知っています。固定価格買取制度ですね。太陽光は2012年当初1kwh
あたり40 円で太陽光発電の事業者から電力会社が買い取っていた。今では20円台で
しょうか。
澤田 そうですね。FIT 制度を支えるために〝再エネ賦課金〟というものがあります。
再生可能エネルギー発電促進賦課金が正式名称です。
細川 はい。電気料金に賦課されているものですね。わが家では毎月2000円くらい
になっています。
澤田 東京電力管内だと、1kwh 使えば約2.9円が賦課される。つまり各ご家庭がそれ
だけ余分に支払うわけです。昨年日本全体でこの再エネ賦課金が一体いくらほどになっ
たか想像つきますか?
細川 うーん、兆円並みですか。
澤田 約2兆円です。
細川 ちょっと待ってください。確か、原発が止まっている分を火力を炊き増ししてい
て、その燃料買い付けに毎年海外に3兆円ほど払い続けているはずですね。
澤田 ですから、3兆円+2兆円で総額5兆円を〝余分〟に払っている。しかもこの再
エネ賦課金は今後もじわじわと増え続けやがて年間4兆円になる見込みです。
細川 つまり今再エネ事業を始めれば、その再エネ賦課金が FIT という制度によって各
事業者に分配されるというわけですね。
澤田 甘い蜜である再エネ賦課金に事業者が群がっている。しかも、家計収入の差によ
らず賦課金は電気利用者である国民に等しくのしかかってくる。当然ですが、所得の少
ない家庭ほどこの一律の賦課金は家計に重くのしかかってくる。弱者いじめです。これ
で果たしてデモクラシーと言えるのでしょうか。

ドイツの『エネルギーヴェンデ(大転換)』の大失敗から学ぶべき教訓とは
細川 ところで再エネ先進国ドイツは今どうなっているのですか。
澤田 メルケルさんの政権が今回なかなか発足しなかった理由が
2つあります。一つは難民政策の失敗。そしてもう一つがエネル
ギー政策の大失敗です。
細川 エネルギー政策の失敗とは?
澤田 再生可能エネルギーに長年にわたって国家をあげて投資し
てきましたが、太陽光や風力は投資に見合うほど効果が出ていな
い。例えば2011年から2015年の間に家庭用電気料金では、
約4割も値上がりしています*。(注*: 2015年で0.28ユー
ロ/kwh (約37円))
細川 随分お高いですね。4年で4割上昇とは。
澤田 その結果、大手の電力会社は大赤字に転落し、政府を訴え政府は敗訴しました。

12
細川 それは酷いです。
澤田 ドイツ政府は、1990 年の「再生可能エネルギーによる電力の公共電力網へのフ
ィードインに関する法律」にはじまり、2000 年に「再生可能エネルギー法」を整備し、
2010年メルケル政権は〝エネルギーヴェンデ(エネルギー大転換)〟を標榜し、太陽
光や風力の導入を優先し、原発廃止を叫んできました。
細川 2011年の菅直人さんの再エネ法や今回の原自連はまさにそのドイツをお手
本にしているのですね。
澤田 そうです。ドイツはすでに30年にわたる社会実験を経験しています。
細川 結果は?
澤田 風力は17%にまで伸びましたが、太陽光はわずか6%にすぎません。
細川 30年必死になってやってそれですか。
澤田 しかもドイツ政府はエネルギーヴェンデからたった4年後の2014年には、ド
イツ全土のうち700万世帯近くが高額の電気料金にあえぐ貧困の状態にあることを
認めました。低所得層の家庭では家計収入の10%以上を光熱費に充てざるをえないと
いう惨状です。この最大の要因が再生エネルギー賦課金なのです。
細川 再エネが貧困を生むという構造が壮大な社会実験で明らかになったのですね。日
本はドイツに20年遅れで再エネ法を整備施行したわけで、ドイツからむしろ教訓を学
ばなければならないと思います。

澤田 そのドイツは FIT のような不合理な制度はとっくにやめて、2014年からはフ


ィードインプレミアムという制度に移行しています。これは〝市場取引平均価格と入札
による固定買取価格との差額を補助として受け取る〟制度です。今後、さらに入札制度
が導入されます。
細川 そうすると太陽光のような不安定な電源は買い叩かれませんか。
澤田 その通りです。再エネ電力が市場に大量に出されると市場価格が下がります。実
際にドイツでは北部で多量に産する再エネ電力が、非常に安価でタダ同然に隣国のポー
ランドなどに流されている実態があります。
細川 隣国に迷惑をかけている。
澤田 ポーランドは火力が主流ですから、火力で隣国からくる再エネ電源の不安定性を
調整している。ここにドイツの二酸化炭素排出量の推移があります。

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細川 ドイツが減っていませんねえ。
— そうです。傾向としては日本や英国、フランスの方が減っています。
細川 ドイツは再エネ先進国だと思っていましたが、なぜ二酸化炭素排出量が減ってい
ないのですか?
— それには2つの理由があります。再エネは不安定電源ですから、再エネを増やせば
増やすだけ、バックアップや変動を調整する電源を余分に増やす必要があります。
細川 バックアップ電源とは?
— 雨の日や風のない日に備えてのバックアップです。また電気出力の変動を補うため
穴埋め(〝シワ取り〟という)調整は火力が担当します。そして、その火力にドイツ
は価格が安く自国で豊富に産出する質の悪い褐炭を用いています。ドイツの石炭火
力の発電比率はなんと44%で、EU 主要国の間では断トツの1位です。
細川 それはパラドックスというほかないですね。

太陽光発電のバックアップコストは国家予算並み?
細川 ところで電気は貯められますね。大規模に貯めておけばいいのでは?日本では、
確か九州で余った太陽光の電気を揚水発電に溜め込んでいるとか。
澤田 確かに日本には揚水発電を使って電気を貯めることができます。しかし、大きな
問題が2つあります。一つは経済性、もう一つは規模、つまり容量の問題です。
細川 経済性の問題とは?
澤田 揚水発電は九州電力の自前のものですが、太陽光の電気は他社から買い取ります。
つまり、市場価格の高い昼間のピーク発電時の電気を使って揚水を行い、価格が低くな
る夜間に水を落として発電し販売することになります。これは経済合理性からいえばや
ってはならないことです。また送電時の損失や揚水つまり水をくみ上げる際の損失を考
えると25%もの損失、つまり無駄が出ます。
細川 揚水発電を持っている電力会社にはメリットが全くない。渋々受け入れていると
いうことですね。では量の問題はどうなのでしょう?
澤田 日本国内に 40 ヶ所以上、総出力 2,600 万 kW と世界最大規模の施設があります。
だいたい1箇所の揚水発電所で7、8時間稼働するといいます。すると、2600 万 kW×
8h = 20800 万 kWh。つまり、2億 kWh です。
細川 そうなんですね。
澤田 冒頭で太陽光の年間発電量は510億 kwh、風力は 96 億 kwh 以上に伸びている
と言いました。合計600億 kwh。単純に1日あたりで考えると、2億 kWh の蓄電は可
能かもしれませんね。ただし、揚水発電所は日本ではほぼ開発し尽くされていると言わ
れています。これから再エネがどんどん伸びていくとすればとても対応できなくなりま
す。
細川 それは残念ですね。では、リチウム電池などはどうなんですか?
— リチウムの他に鉛電池や NAS 電池もありますが、どれも大変コストが高い。リチウ
ム電池は1kWh あたり 20 万円ほどもします。発電のコストを仮に 20 円/kwh とする

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と、1 万倍のコストです。蓄電池戦略チーム(経産省)が『蓄電池戦略』をまとめま
した(平成 24 年 7 月)。それが次の表です。

種類 1kWh の値段
鉛蓄電池 50,000 円
リチウムイオン蓄電池 200,000 円
ニッケル水素電池 100,000 円
NAS 電池 40,000 円

細川 高いのかそうでないのか、あまりピンときませんが・・・
澤田 この表をご覧ください。
試算によれば、再生エネ100%のうち90%を太陽光で賄うとします。
細川 原自連の2050年の目標ですね。
澤田 そうすると電池にもよりますが、3 日連続の悪天候に備えるとすれば、リチウム
電池で1563兆円、NAS 電池で340兆円になります。
細川 それはとてつもない額ですね。日本の GDP かそれ以上が、太陽光発電を支えるた
めの経費になるんですね。日本は国土が狭いので、台風や大寒波襲来の際、全土が数日
間悪天候にさらされることがありますね。
澤田 これまでに日本では原子力発電に約30兆円を投資してきたとされています。
細川 では電池だけで、これまで原発に投資した額の10倍以上ですね。これだけ巨額
な蓄電池のコストを電力料金から集めるとなると、電気料金も天井知らずの勢いになり
ますね。
澤田 ちなみにこの試算は、IRENA という再生可能エネルギーをこれからどんどん増や
していこうといういわば国際的〝お手盛り〟組織がいう「蓄電池が2030年までに6
6%まで安くなる」という超楽観的な未来予測に基づいています(日本経済新聞 電子
版 2017/10/11)。
細川 IRENA といえば外務大臣の河野太郎さんが、今年1月にわざわざアブダビで開催
された年次総会に出向いて、〝再生可能エネルギー導入に向けた日本の取り組みは国際
水準にも達していないとして「嘆かわしい」と批判した〟と言われているものですね。
澤田 そんなことがありましたね。
細川 ところで蓄電池は大量生産できるのですか。技術課題は?
澤田 大量生産は可能かもしれませんが、安全性と廃棄物の問題が付きまといます。
細川 安全性とは?
澤田 リチウム電池は電車内や航空機内で突然発火したりしてますね。リチウムは化学
的活性がとても高いのです。NAS 電池は本名がナトリウム硫黄電池と言って、ナトリウ
ムと硫黄が主材料です。どちらも化学的活性が高い。
細川 NAS ってそうなんですね。
澤田 2012年に筑波で大容量 NAS 電池の火災が発生しました。消火が難航し2週間
燃え続けたという事故です。大規模に集積するとこういう厄介な問題が発生します。

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細川 大きさはどうなんでしょうか?
澤田 最新の大型 NAS 電池(九州電力豊前蓄電池変電所)が、蓄電容量が30万 kwh で敷
地面積が約 14,000m2 です。
細川 では・・・
澤田 NAS 電池だと136億 kwh
ですから、
136億 kwh÷30万 kwh×1.4
万 m2 =だいたい583km2
細川 うーん、どれほどの広さか
想像がつきません。
澤田 東京都区部つまり23区全
部の面積が619km2 ですからほ
ぼそれに匹敵する面積ですね。
細川 それは想像を絶する風景ですね。
澤田 ちなみに核のごみの最終処分地(過去40年分)の敷地面積が6km2程度と言わ
れているので、その100倍ですね。

さてどうする、日本!?
細川 だいたい事情が飲み込めました。再生可能エネルギーに未来があることは間違い
ないでしょう。しかし、現実的にはどう考えても経済効率性、技術力野おいても主力電
源にはなり得ない。これではドイツが実証したように私たちの未来を安易に再生可能エ
ネルギーには託せない。特に太陽光発電は問題がありすぎですね。
澤田 原自連は、イケイケどんどんの再エネ拡張と原発即時ゼロを旗頭にしています。
しかも、2030年の目標は再エネ比率50%です。そして、2050年には再エネ1
00%とまで言い切っています。
細川 再エネだけで行こう・・・という考え方はダメですね。国民の安定的な生活には
リスクヘッジ(危険回避)が必要です。いろいろな発電手段を手元に持っていてそれぞれ
の利点を活かしつつ互いの欠点を補う。
澤田 その通りだと思います。
細川 再エネには良い面があるように様々なメディアを通じて流布されています1。し
かし、2030年、さらに2050年を展望してもとても〝主力電源〟にはなれないと
いうことがよくわかりました。
澤田 日本はオイルショックの結果、世界に先駆けて再エネ利用と省エネのイノベーシ
ョンを目指しました。1974年から始まったサンシャイン計画です。
細川 それは存じ上げています。
澤田 あれから実に40年以上が経っています。太陽光発電は1980年から産官学が

1 『再生エネ、主力に 2050 年戦略 原


ごく最近では日経新聞が3月30日の朝刊1面で、
発比率示さず 蓄電池・水素活用』と報じた。
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一体になって特に注力してきました。30年−40年先は遠いようで意外に早いかもし
れません。そして期待したような技術革新は成ってないかもしれない。
細川 そうです。だからこそのリスクヘッジです。
つまり、今見えているのは原子力を活かしていく道しかない。
澤田 さて、この図をご覧ください。
左上は今後とも原子力を使っていく国、左下は脱原発を目指す国、右上は今後原子力
を導入しようとしている国、右下は現在原発を利用していない先進主要国です。

細川 『世界は脱原発を目指している』と耳にしますが、全くの事実誤認。ウソですね。
サウジアラビアなどの主要な産油国も原子力を使おうとしているのですね。
澤田 石油などの地下資源は用途が多様で、単に燃やして利用するには惜しい。将来世
代に残さないといけません。
細川 そうですね。枯渇の心配があるので、産油国も他の電源を求めている。
澤田 彼らは実に現実をよく見ていて、太陽光などの自然エネルギーの豊かなので、自
然再生可能エネルギーも原子力もという意思が表れています。
細川 韓国は本当に原発をやめるのでしょうか?
澤田 やめると言っている国々の原子力の発電比率は、韓国30%、ドイツ12%、ベ
ルギー52%、台湾16%、スイス34%。
細川 ドイツを除けばいずれの国も化石燃料資源のない国々ですね。
澤田 そうです。スイスは2017年5月の国民投票では、原発を段階的に廃止し再エ
ネ比率を高める、との票が58%でした。2050年までの段階的廃止を狙っています。
スイスはこれまで90%以上の電力を水力と原子力でまかなってきています。
細川 世界の趨勢からすれば、脱原発をしようという国はごくわずかですね。むしろこ
れから原発に乗り出そうという国々が多い。
澤田 この図にはないですが、アフリカ諸国にも原子力を始めたいと考えている国が沢
山あります。まだ具体的な計画には至ってないですが。
細川 日本はむしろそういう国々にこれからもどんどん協力していくべきでは。
澤田 その通りです。
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細川 小池百合子さんなどは廃炉に軸足を移すべしと言っていますが。
澤田 廃炉は重要でしょうが、あくまでも後始末の話で、新しい価値を生むものではあ
りません。
細川 日本の周りは軍拡国ばかりですね。日本が前向きな技術開発を行って、若者も育
てていかなければ、核のこともわからなくなってしまいそうです。
澤田 そうですね。
細川 エネルギーに直結することに加えて、周辺の様々な事情や可能性を理解するため
にも原子力が分かっていて、そのことをちゃんと国民に説明できる専門家が居続けない
と明るい未来はないのではないですか。
IoT から IoS がこれからどんどんと増えていき、AI も進化して世の中は便利になってい
くといわれています。
澤田 そうです。少子化で人口は減るかもしれませんが、電力需要は今後も伸びるとい
うのが日本の将来です。
細川 ですから、合理的に手に入る電源は全部持っておくべきです。CO2 の削減も考え
れば、原子力は決して手離せないオプションだと思います。技術は仮に一度やめてしま
うと、将来再び立ち上げるにしてもそんな時間的余裕はない。今日本がリードしている
技術は、私たちの子供達が生きていく未来への贈り物にしなければなりません。今方向
を間違えば必ずや未来の世代から愚かな選択をしたと言われるに違いありません。
澤田 最後に力強いメッセージをいただきました。本日は長時間ありがとうございまし
た。

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3.地域からの声
(1)感情論に流されない明確な
原子力政策の推進を

青森県 東通村長
越善 靖夫

東通村においては、昭和40年の東通村議会における原子力発電所の誘致決議以来、
半世紀にわたり、安全性の確保を大前提として、国・事業者との信頼関係のもと、村・
議会・村民が一体となり、一貫して国策である原子力発電の推進に対して全面的に協力
してきました。
当村には、平成17年12月に営業運転を開始した東北電力㈱東通原子力発電所1号
機、平成23年1月に着工した東京電力ホールディングス㈱東通原子力発電所1号機が
あり、さらに、両事業者において、それぞれ1基の原子力発電所の建設を計画していま
す。
しかし、東北電力㈱東通原子力発電所1号機は、平成23年2月の定期検査開始以降
は停止したままであり、東京電力HD㈱東通原子力発電所1号機は、福島第一原子力発
電所事故への対応を優先するため、本格工事を中断し、約7年もの長期にわたり継続し
ていています。
このような状況は、「原子力発電所との共生による村づくり」を掲げる当村にとって
憂慮すべき事態であり、当村の存亡に係る非常に重要な課題であります。
一方、政府においては、平成27年7月には、2030年度の原子力の比率を20~
22%とする電力需給構造を示した「長期エネルギー需給見通し」を決定するとともに、
平成26年4月に決定した、原子力発電を「重要なベースロード電源」と位置付ける「エ
ネルギー基本計画」の見直しが進められているところであります。
そのような中、原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟において、「原発ゼロ・自然エネ
ルギー基本法案」が発表され、立憲民主党においても「原発ゼロ基本法案」が発表され
ましたが、私といたしましては、再生可能エネルギーの普及拡大への積極的な取組みは
非常に重要ではありますが、今後も原子力発電の必要性や重要性は変化するものではな
いと考えています。
エネルギーは、経済や社会、そして生活に直結するものであり、将来にわたり安定的
に供給される必要があります。再生可能エネルギーは、温出効果ガスの排出量の低減や
エネルギー自給率の向上に貢献する重要なエネルギー源ではありますが、季節や天候に
よって発電量が大幅に変動するため、安定的な供給は期待できません。
震災以降、原子力発電所稼働停止を受けて、安定した電力供給のために、火力発電の
焚き増しを行ってきました。このことにより地球温暖化に影響を与える温室効果ガスの
排出量が急激に増加しているとともに、大量の化石燃料を輸入したため、貿易赤字への

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転落、経常収支の大幅悪化にも繋がっています。
エネルギーの安全保障、地球環境問題等の課題を解決しつつ、現在の日本経済や生活
を維持していくためには、一定の比率で原子力発電を維持していくことが必要不可欠で
あると認識しております。エネルギー政策・原子力政策の推進のためには、住民の理解
と、国、事業者、自治体との信頼関係が非常に重要なものであると認識しておりますが、
この約7年の間、国や事業者からは、具体的な地域支援策はありませんでした。地域経
済が停滞し、東北電力㈱東通原子力発電所1号機の再稼働と東京電力HD㈱東通原子力
発電所1号機の工事の再開を求める悲痛な声が日に日に大きくなっている現在の状況
をみますと、これまで国策へ協力してききたにも関わらず、立地地域が蔑ろにされてい
る言わざるを得ません。
立地の経緯を振り返りますと、村内において、原子力への賛否を巡って全く議論がな
かった訳ではなく、特に漁業補償の段階においては原子力受け入れについて村を二分す
るような激しい議論がなされた時期もありました。そのような激しい議論を乗り越え
て、村と事業者との信頼関係が強固なものとなったものです。現在のような状況が継続
することにより、半世紀をかけ苦難を乗り越え構築してきた、国・事業者・住民との信
頼関係が損なわれ、住民の心が原子力から離れかねないなど、非常に強い危機感を抱い
ています。
国においては、その時々の世論の動向に左右されることなく、立地地域のおかれてい
る状況を重く受け止め、感情論に流されず、ブレのない明確な国家戦略としての原子力
政策を推進することを強く要望します。
東通原子力発電所は、日本のエネルギー政策、原子力政策に対して大きな役割を担う
ものであると認識しており、東通村といたしましては、今後も、より一層の安全性の確
保を大前提として、原子力発電所との共生による村づくりを進めて参る所存でありま
す。

20
(2)
「脱原発」の欺瞞性を暴き、
真のエネルギー・原子力政策の推進を

原子力産業と地域・産業振興を考える会
会長 末永 洋一

昨年11月1日、小泉元首相が青森県で講演し、原発を即時停止し、核燃料サイクル
政策の放棄を求める「持論」を展開した。今更言っても無駄だろうが、小泉氏が首相で
あった時、わが国は原子力の平和利用をさらに推進し、「原子力立国」を目指すべきだ
との報告書がまとめられていたが、そうした事実を完全にかなぐり捨て、「脱原発・反
原発」「反核燃」の伝道者の如くに振る舞う氏の姿勢に、元首相としての矜持の片鱗す
ら感じられないのは私一人ではあるまい。小泉氏が脱原発の根拠として挙げているのは、
高レベル放射性廃棄物の最終処分地を見付けられないことのみで(これ自体は国とNU
MOの責任でもあり、しっかりした対応が求められる問題であるが)、日本のエネルギ
ー政策をどうすべきか、原発の穴埋めをどうするのかなどを明確に説明することもなく、
様々な問題点や限界を指摘されているにもかかわらず、ただ単に、「再生可能エネルギ
ーを普及拡大すればよい」というだけなのである。小泉氏特有の「ワンフレーズ」的な
説明だが、エネルギー問題は一国の安全保障に関わる問題であり、産業経済、国民生活、
さらには環境問題にも深く関係する重要な課題であり、そう単純に「ワンフレーズ」で
説明できるようなものではないことは言うまでもないだろう。
その後においても、小泉氏が顧問を務める「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」
(原
自連)の活動は極めて活発で、全国各地で講演会などを開催するとともに、1月10日
には「原発ゼロ法案」を各党に呼びかけ、立憲民主党と共産党はこれを歓迎している。
あるいは立民に至っては、「原発ゼロ基本法案」を今国会に上程するとされている。ま
た、「脱原発」が持論である河野外相が委嘱した外務省の有識者会議は「原発や石炭火
力をベースロード電源とするのは過去のことであり、わが国は率先して再生可能エネル
ギーの普及拡大にこそ努力すべきだ」との意見書をまとめ、河野氏は今後、わが国のエ
ネルギー政策を考える上で大いに参考にしたいとまで述べている。小泉氏らの主張が政
府・自民党の中にも一定の影響力を持ちかねない状況であるともみられる中で、我々は、
こうした動きに的確な批判を加え、わが国が取るべきエネルギー・原子力政策を提示し
ていくことが求められている。
周知のように、わが国は、「石油ショック」と産業構造の転換の中で原子力の平和利
用政策を推進してきた。そうした中、青森県は、政府のエネルギー・原子力政策に協力
し、原子力発電所や核燃料サイクル施設が県内に進出・立地することを歓迎し、原子力
と共生する地域づくりを進めてきている。環境に優しく安価で安定した電力を供給する
原子力発電所、資源小国日本において「準国産」資源を生み出すとともに、使用済み核

21
燃料の減容化などにも大いに貢献する再処理工場を中心とする核燃料サイクル施設、あ
るいは使用済み燃料中間貯蔵など、県内の下北半島地域には多くの原子力産業が立地し
ており、これらの地域の「地場産業」として地域にしっかりと定着している。もちろん、
これらの産業・施設は単に地域産業や地域社会の発展・新興に寄与しているだけではな
く、原子力施設が立地している他の地域と同様に、地域住民は、わが国の産業経済の支
柱であるエネルギー・電力供給地であること、それを通じて国民生活の安定や向上にも
貢献していることに誇りを持っている。そうした点からも、青森県民の多くは、今後と
も、安全性を第一とし、環境問題、電力の安定供給、経済性などにおいて優れている原
子力の平和利用を積極的に推進していくことが重要であるとの認識を共有している。
差し当たり、小泉氏などの「脱原発・反核燃」の主張や、一部の野党が提案しようと
している「脱原発法案」の欺瞞性(この点についての詳論は他に譲る)を論理的に暴き
出すとともに、経産省の総合資源エネルギー調査会で議論されている「エネルギー基本
計画」においては、原発の早期再稼働、原発新増設・リプレース、そして、核燃料サイ
クル政策の堅持を明確に記載するとともに、国は責任をもってその推進を図っていくこ
とを強く求めていきたい。その中で青森県は原子力と共生する地域づくりを目指してい
くだろう。

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(3)選択肢を失う日

新潟県刈羽村長 品田 宏夫

2 月初め、万景峰号がウラジオストック沖で燃料切れのため救難信号を発した。食料
も切れかかっていたらしい。その船は新潟の港で二度ほど見かけたことがある。燃料切
れ、食料切れの万景峰号が行く先の日本の姿にダブって見えた。
今日、日本に住む我々は世界中からほぼ野放図に欲しいもの必要なものを輸入できて
いる。圧倒的な経済力があればこその荒技だ。経済力があるとは、他国に比べて比較優
位に位置しているということに他ならない。飢餓人口 10 億人とも言われるこの世界で
ある。彼らだっていつまでも黙ってはいない。GDP の順位にどれほどの価値があるかは
さておき、下位に甘んじていた多数の国がもの凄いスピードで力をつけているのは目の
前の現実だ。
2014 年のエネルギー海外依存度を世銀が発表している。国と地域の混在だが 1 位は
100%依存の英領ジブラルタル、人口は 3 万 4,000 人。以下キュラソー・香港・マルタ・
レバノンと続いて 10 位が依存度 94%の日本である。日本より上位に位置する 9 カ国の
人口合計は 2,600 万人に満たない。そこへ 1 億 2,700 万人の日本が登場する。3 年余を
経て現状、何とかなってはいるが一級のホラー小説より怖い話ではないか。
日本は 1 日に VLCC と呼ばれる巨大タンカー2 隻分の原油をガブ飲みする国である。
実に 200L のドラム缶 300 万本分(60 万 KL)を日々消費している。この他にガスや石炭、
発電用の自然エネルギーも含めると日々のエネルギー消費は石油換算で 150 万 KL なの
だそうだ。呆れる程のエネルギー消費だが現実である。想像してみてほしい、いったい
どれだけのタンカーが日本に向かっているのか、空荷のタンカーが積載地へ向かってい
るのか。中東へは往復で 45 日、豪州へは 20 日の航海である。順調な手際は僥倖という
他ない。
AI や IoT といった新しい分野が世界経済全体の新成長エンジンだ。携帯電話・スマ
ートフォンの爆発的普及に見られるように先端技術が夢を現実のものとし、あっという
間に実用化される。各自が通信手段で使う電気もかなりの量だろうが、手持ちのスマホ
の電力だけで世界中のコンピュータに繋がるわけではない。ネットワークを支えている
高性能コンピュータがそれこそ無尽蔵に繋がっているからこそ便利なスマホが技を発
揮できるのだ。
自動車も電池車の時代を迎える。電気をバッテリーに溜めることを充電という。電池
車もガソリン車と同じく燃料補給は必要なのだ。石油依存度が下がるから良かったと思
うのはただの一面、車に補給する電気をいったいどうやって作ったらいいのか。
よく日本は人口減少で電力需要が先細りという話を聞くが本当か。私には社会の動向
が電力需要拡大に向かっているように感じられる。電気が非常に使いやすい優れものの
エネルギーであることは言を俟たない。オール電化住宅の話ではなくオール生活電化が

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始まっているのだ。エネルギー、中でも電気の供給を完璧にできないとこの国は終わる。
常温超伝導や核融合といった超画期的ブレークスルーは電力の需給環境を一変させ
るだろうが問題はそこまでをどう合理的に生き延びるかである。スマホ片手の節電論議
や原発ゼロの主張には現実味がないし責任感も感じられない。
原子力発電と決別することを究極の目的とするならそれはあっさり可能である。とに
かくやめればいい。
「時の政権が、総理が決断すれば可能だ」という主張には 100%同意
できる。しかし、まさか原子力と決別することが政権の究極の目的であろうはずはない
から安心している。国家経営の究極の目的は国民の幸せを実現し、維持すること、それ
以外にない。
扱いは難しいものの、原子力という高出力かつ高効率のエネルギー源を放棄してまで
求めるものは一体何なのか。事故に象徴されるような原子力リスクの完全回避か。確か
に原子力発電をやめればそれは可能だ。しかし前述のような、この上ない脆弱性を持っ
たエネルギー供給である。この国にはない化石燃料に極端に依存している。
オイルクライシスが発生、特別な緊急事態には原子力を稼働させるなどという方針は
非常識極まりない。自然エネルギーでなんとかするという考え方も全く現実的ではない。
「なんとかなる」という人がいるが「なんとなしてもらう」ということなのか。いった
い誰に? 空想の世界では完結できても、現実に即した対処が今必要なことの全てだ。
現実に原子力抜きのエネルギー供給が可能だと完璧に説明できる人はいるのか。
スーパーコンピュータ京は 27,000 世帯分!の電気を消費しながら今日も動いている。

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(4)原発ゼロは現実的なのか?

福井県原子力平和利用協議会
事務局次長 武内 貴年

日本の総理大臣を経験した細川・小泉元総理が所属する原発ゼロ・自然エネルギー推
進連盟(原自連)と立憲民主党が「原発ゼロ法案」を国会へ提出するという報道が出た。
まず、総理大臣を経験した方なら今の日本のエネルギー情勢は熟知している筈である。
OECD加盟国の中で下から2番目にエネルギー自給率の低い国である。にも関わらず、
このような法案を提出する事には理解が出来ない。内容を見てみると、「2030年までに
自然エネルギーの比率を50%以上、2050年までには100%とする。運転されている原子
力発電所は直ちに停止する。」とある。この内容を見れば、原発ゼロだけではなく火力
ゼロでもある。何故、原発ゼロだけを言うのか?また、何を根拠にこの数値を出したの
であろうか?今年の福井県の豪雪は周知のとおりであると思うが、日本海側の冬季は日
照時間が少なく自然エネルギーで賄う事は現実的とは言えない。そのような地域にはど
のように電力を供給すると言うのか?またしても「都会の論理」で話を進めている感じ
である。ならば問うが、「直ちに停止」ならば、同時に原子力発電所からの送電線も直
ちに遮断する覚悟はあるのか。また停止した後の「使用済み核燃料」も直ちに引き取っ
てくれるのか。この部分だけを原子力立地地域に押し付けるのか。この法案には、原子
力立地地域に対する配慮は何も書かれていない。ましてや「ベースロード電源」を何で
賄うのかも示してない。現時点で、自然エネルギーが24時間安定的に電力供給の出来る
「ベースロード電源」には成り得ない。
また立憲民主党の法案にも首をかしげる。原子力に対して「中長期的に電力が不足する
場合のみ、きわめて例外的に稼働」とあるが、いつ稼働させるか分からない原子力発電
所を、その日が来るまでどうやって維持管理をするのか。また、その日まで廃炉にせず
どの原子力発電所を残すのか。ましてや原子力発電所は運転前に充分時間をかけて点検
をし問題が無ければ運転となる。また、運転を再開しフル稼働するには時間がかかるの
で、緊急時には適さないのである。そのような原子力の性質を考慮したうえでの法案な
のか、理解し難い法案である。
原子力は、事有る毎に政治利用される事が多い。その都度、我々のような立地地域は
右往左往する。そもそも原子力を必要としたのは立地地域ではない。大量の電気を必要
とする地域で、いわゆる都市部である。過去においては石油に重点を置いた発電からシ
フトし、LNG、石炭・原子力・水力を必要として来たのだ。
その安定した電力供給あってこその発展を成し得たのであって、もう成長し切ってし
まったら必要ありませんでは、あまりにも身勝手な御都合主義である。私の願いは、国
民が、そして次世代の若い世代がこの法案を現実的に見て欲しい事である。恐らくこの
法案に関しては、メディア毎に論評は分かれるであろう…。しかし今の若い世代はTV

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や新聞を見ない。SNSが主な情報源である。とあるSNSの動画では、選挙前に党首
討論をノーカットで流す。これは通常のTVではカットされる部分が見ることが出来て
良い事だと思う。昨年行われた衆議院銀選挙では、メディアが取り上げた「とある政党」
は散々たるものであった。そして若い世代の支持政党は、「とある政党」を支持してい
る。そう!若い世代は「現実的」だと私は思っている。だから、この法案にも、若い世
代は「現実的なのか?」と言う事を冷静にジャッジメントして欲しい。そして、その結
果、「現実的な判断」をした時に、私は小泉元総理の賞味期限は終焉したと思う。

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(5)日本型リベラルのお花畑プラン

福井県高浜町長 野瀬 豊

小泉純一郎・元首相が顧問を務める「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」
が本年 1 月 10 日に、「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の骨子案を発表しました。
内容としては「原発の即時停止」の他「核燃料サイクル事業からの撤退」「海外への原
発輸出の禁止」を実現した上で、自然エネルギーの比率を 2030 年に 50%、2050 年まで
に 100%、つまり全面転換するというドラスティックなプランで、国には目標達成に向
けた必要な措置を求める内容となっています。
原子力発電に対し心理的不安を抱く一般的国民には聞えの良い法案といえますが、相変
わらず一方的な理想を積み上げた「お花畑プラン」の域を脱していません。

2016 年度の国内発電量に占める再生可能エネルギー(大規模水力を除く)の発電比率
は約 9%となっており、前出の法案に拠れば現在の発電量を 10 倍以上に高めることとな
ります。
他方、現状の9%導入によって生じている再生可能エネルギー発電促進賦課金、つま
り割高な再エネ導入を進めるための国民負担額は、一般的標準家庭で月額 800 円となっ
ており電気料金の大きな上昇要因となっています。
そもそも、供給安定性に課題のある自然(再生可能)エネルギーを 100%にするという考
え方自体に相当な無理があります。
他国からの電力供給が望めない我が国においては送電系統対策の根本的再構築、革新
的蓄電技術の具現化など発電設備に止まらないエネルギーインフラ全体を変えていく
という相当な困難があるわけですが、その課題を脇に置いて自然エネルギー100%が実現
されたとした場合、電力コストは信じがたい金額となってしまい、産業のみならず国民
生活に与える影響は計り知れません。
しかしながら、日本におけるリベラル勢力のずるいところは「お花畑」の素晴らしさ
は語るが、「お花畑」に掛かるコスト、負担、影響を語らない。あるいは「イノベーシ
ョン」という抽象的言葉で解決できるという安易な逃げ口上に終始するトレードオフ感
覚の欠如です。
どうしても原発をゼロにし、発電コストの上昇も抑制するのであれば石炭火力の発電
比率を 50%以上に高めるというプランを出すべきであり、それならリアリティを感じま
すが彼らは温室ガスの排出もゼロにするという命題も捨てようとしないため、このよう
な荒唐無稽なプランが生まれてしまいます。まさに多様な価値観を尊重する日本的リベ
ラルの限界を感じます。

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他方、いまの若者には変化が現れています。日本的リベラルの中核的世代である団塊
世代以上とは違いリアリティを持った人たちが増えてきています。ネットを覗けば如実
に感じますし直近の沖縄県・名護市長選の結果もその表れではないかと感じます。
彼らは現実をある程度直視した上で、本当に実現可能なのか?実現した場合に失うもの、
また負担に対し自分達は許容できるのか?といった冷静な思考で動静を観ており、陳腐
なお花畑プランに惑わされない感性を持っています。
そういった意味においては、今回の「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」が今の若
者たちの共感を得るとは思えませんし、多くの国民もそこまで愚かではないと確信して
います。

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(6)地域の声に照らしてみた原発ゼロ法案への反論

佐賀県玄海町長 岸本 英雄

玄海原子力発電所は昭和50年10月の1号機の運転から今年で43年を迎えます。
1号機については、平成27年4月27日に運転を終了しました。玄海町はこれまでエ
ネルギー資源に乏しいわが国のエネルギー政策に大きく貢献し支えてきたと自負して
います。
そのような中で、私が町長に就任して4年目の平成23年3月11日、第1回定例議
会の一般質問中に東日本大震災は発生いたしました。まさか、日本の原子力発電所がメ
ルトダウンをおこすなど考えてもみかなったことが現実に起こり、大変ショックでもあ
り気が滅入る日々を過ごしました。議会では福島第一原子力発電所事故後、最初に再稼
働の容認をして頂きました。これは、安全を第一に考えた上でも玄海原子力発電所は他
の発電所より地震も少なく立地的に安全であり、原子力発電の再稼働は国民経済にとっ
ても重要であると判断されたものであると考えております。このような判断をして頂い
たことは、大変ありがたいことだと思いました。しかし、当時の菅総理の「ストレステ
スト」実施の表明により再稼働の容認は撤回せざるを得なくなりました。

あれから約7年ようやく新規制基準適合性審査に合格し3号機が再稼働へ向けて燃
料装荷が行われ、再稼働が目前になってきました。
この間、原子力発電所停止後、地元経済への影響は大きく、旅館業や飲食業など就業
者が直接利用する事業所だけではなく、町の基幹産業である農業や漁業にも影響を及ぼ
しています。その影響は、当町のみならず隣の唐津市周辺にまで及んでおり、唐津上場
商工会は、平成24年に経済損失について玄海町と隣接の唐津市を合わせ、少なくとも
年間約34億円に上るとする試算を発表しました。このままの状況が続くと当町のみな
らず隣接の市まで疲弊してしまうこととなります。
また、国内の現状へ目を向けると全国の原子力発電所の停止により、年間約3兆円の
国富が海外へと流失している状況にあります。
このような状況にある中、直ちに全原発を廃止して、2050年までに再生可能エネ
ルギーへと全面転換することが果たして可能なのか、疑問を抱かざるを得ません。 再
生可能エネルギーの需給率は数パーセントであり、電力を生み出すエネルギー源には、
中長期の需給や時々刻々の発電調整が求められるため多様性が必要とされます。そのた
め、ベストミックスとして、原子力発電から各種の火力発電、水力発電などが組み合わ
されています。よって、国内のエネルギー状況を考えたとき、原子力発電は再稼働させ
有効に活用すべきだと考えています。そうでなければ、エネルギーのベストミックスは

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図られないと考えています。

私は、実際に福島第一原子力発電所の視察も行い悲惨な現場の状況も目の当たりに
し、原子力発電所の安全性が第一であることを身にしみて感じて参りました。一方、女
川原子力発電所では安全に停止していることから、原子力発電所の立地条件など地勢の
大切さも改めて感じさせられました。玄海原子力発電所は、地震や津波などの自然災害
に対する立地条件なども含めて、日本で一番安全な原子力発電所だと思っております。
更に、新規制基準のもと玄海原子力発電所の安全対策はさらに進んでいると実感してい
ます。このような原子力発電所を全廃にする法案など決して許せるものではありません。

現代社会において最も便利なエネルギーは電力であり、現代社会を維持し発展させ
ていくためには欠かせないエネルギーとなっています。今後も安価で安定した電力の確
保は最も重要な国策であり、国の発展に欠かせないものであります。しかし、この法案
は資源の乏しい日本の現状を完全に無視した法案であり、先の不幸な大戦がエネルギー
問題にあったことを再認識すべきてあると考えます。
玄海町は国のエネルギー政策にこれまでも寄与して来ました。町民の約1割が何らか
の形で原子力発電所内で働いています。これからも資源の少ない我が国において、将来
にわたり電力を安定的かつ安価に提供し、九州経済発展の一翼を担っていることを誇り
に思い、「原発ゼロ法案」には反対します。

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4.識者の声

(1)ドイツはエネルギー政策で大失敗

作家 川口マーン恵美

日本では、ドイツのエネルギー事情についての間違った認識がまかり通っています。
まず、旧民主党が2011年、再エネの全量・20年間・固定価格・優先買取制度を決
めたとき、ドイツでは、すでにこの制度の見直しが始まっていました。なのに菅政権は
その問題多き制度を真似ただけでなく、買取値段をドイツより高くしました。なぜ、こ
ういうことが起こったのでしょう?
買取値段は消費者の電気代に賦課金として乗りますから、ドイツの電気代は EU でデ
ンマークに次いで2番目に高額です。日本の電気代も、賦課金の高騰でまもなくドイツ
を追い越すと予想されています。
ただ、ドイツが日本と違うのは、国際競争力を保たなければならない大企業の賦課金
だけは免除、あるいは軽減し、是が非でも産業を守っていることです。それに比べて、
日本の企業は電気代の高騰にもろに晒されています。それが日本経済にどれだけの打撃
を与えることになるか。なぜ国民はそれを危惧しないのでしょう?
ドイツが2022年までに脱原発するという決定を、多くの日本人は賞賛しました。
しかし現在、ドイツではそれによる問題が膨れ上がっています。まず、あらゆる点で優
遇された再エネが増え過ぎ、施設の容量がピーク需要の2倍以上になるという歪んだ状
態が生じています。風が強く、お天気の良い日にはそれらが一斉に稼働するため、余っ
た電気を捨値で、場合によってはお金をつけて周辺国に引き取ってもらっているという
のが現状です。つまり、高値で買い取った電気を安価で放出し、そのツケが国民の電気
代に乗っているのです。なのにドイツのメディアや、一部の政党、反原発団体などが「ド
イツは電気の輸出国だ」と喧伝し、よりによって、それを日本で広めている人々がいる
のは嘆かわしいことです。
再エネ発電のことをドイツでは、produce & forget と呼んでいます。「ドイツの再エ
ネ値段が安い」のは、売ることを考えずに生産できるため、需要がだぶつき、値崩れを
引き起こしているからです。全量・優先買取制度は計画経済の構造と同じで、需要と供
給のメカニズムが作動しません。ソ連、および東欧諸国の経済がそのせいで崩壊したこ
とは、私たちの記憶にまだ新しいところです。
ドイツの北部は風が強いため、風力発電が急増しました。元々、脱原発で減った電力
は風力で補うという計画なので、北海やバルト海の洋上風力施設の建設も進んでいます。
ただ、大量の電気は北ドイツでは消費できず、産業の盛んな南ドイツに運ばなければな
りません。でも、脱原発の決定から7年が経とうとしている今も、超高圧の送電線の建

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設はほとんど進んでいません。完成目標は2022年から25年に延長されましたが、
それも恐らく無理だと私は思っています。
さらに言うなら、
ドイツではこれほど再エネ発電が増えましたが、
CO2 は減りません。
既存の火力発電所は再エネ発電のバックアップに追われ、計画的に発電できないまま、
採算はどこも壊滅状態です。そこで、高いガスを使わず、空気を汚す石炭や褐炭での発
電が増えました。
なお、現在はベースロード電力にはまだ原発が使われていますが、これが22年に本
当に止まれば、その分、さらに火力が増えるでしょう。ベースロード電源を他国へ依存
するなど、ハイテク産業国としては考えられません。ドイツ人は今、CO2 が減らない原
因をすべて火力発電所に押し付けていますが、火力がないとどんなに困るかということ
には、政府もメディアも一切触れません。
ただ、ドイツ政府が問題を知らないはずはありません。メルケル首相が最近「EU の
電力統合」ばかり叫んでいるのは、何も「ヨーロッパは一つ」の理念を達成しようとし
ているわけではありません。これは、脱原発で不足する電気を隣国からもらうため、ま
た、再エネで作りすぎた電気を隣国に流すため、送電体制を強化しなくてはならないと
いうことに他なりません。原発を再エネで代替するというのは、現在の蓄電技術ではま
だあり得ないことですが、そのあり得ないことを堂々と提唱しているのがドイツで、そ
れを信じているのが日本です。
一方、日本ではどう逆立ちしても、電力の過不足を隣国とのやりとりで解決すること
はできません。火力は原発を代替できますが、そのためには CO2 が増えます。
日本は火力の燃料である石炭、石油、ガスに、世界で一番高い値段を払っています。
日本人がこれだけ一生懸命働いてもそれほど豊かになったような気がしないのは、アベ
ノミクスが悪いわけではなく、これら膨大な燃料コストが常に経済を圧迫しているから
ではないでしょうか。
私は、ドイツが2022年に本当にすべての原発を止めるかどうか、まだわからない
と思っています。あまりにも矛盾が多いからです。なのに一切それを見ようとせず、日
本で原発ゼロが実現できると主張している人たちがいます。彼らは、そのために起こる
かもしれない日本経済の崩壊にどう責任を取るつもりでしょう。原発ゼロの主張は、ま
ず、それらに対する実現可能な解決策を明らかにしてからにしていただきたいと思いま
す。
日本が窮地に陥ったころ、ドイツがすでに何らかの方向転換をしている可能性は、非
常に高いと私は見ています。夢見るドイツの無謀な実験に、資源小国の日本が国の命運
をかけてまで付き合う必要はまったくありません。

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(2)枝野さん、原発ゼロ政策は経済音痴の証です

常葉大学経営学部教授
国際環境経済研究所所長
山本 隆三

立憲民主党を中心に「原発ゼロ基本法案」が議論されている。電力使用量を2030年ま
でに30%削減する一方、原発を直ちに廃止し再エネ比率を2030年に40%にする案だが、非
現実的であるのは間違いない。私たちが原発を必要とするのは、まず競争力のある電気
料金が産業と生活に必要とされるからだ。原発ゼロと主張するのは、経済問題を全く理
解していない証のようにも思える。様々な面から原発ゼロの主張を考えてみたい。
私たちの給与が最も高かったのは、20年前、1997年、平均年収467万円だった。2016
年の平均年収は422万円だ。失われた20年と呼ばれるデフレがもたらした結果だが、東
日本大震災後の原発停止も年収額に影響を与えている。2011年から原発の停止が始まっ
た。その結果、日本は電気料金の上昇に直面する。2014年産業界の支払う電気料金は震
災前に比べ約4割上昇した。金額にすると製造業だけで1兆2000億円以上の負担増だ。こ
の金額は製造業従業員の月例給の3.5%に相当する額だ。
電気料金の負担増が私たちの給与にも影響を与えていることになる。原発の再稼働が
少しずつ進み、原油価格も下落しているが、産業用電気料金は震災前より約2割上昇し
たままだ。その理由は再エネ振興策、固定価格買取り制度の負担額だ。2017年度の負担
額は2兆円を超え、1kWh当たり2.64円にもなっている。
結果、日本の輸出産業が支払う電気料金は、国内エネルギーに恵まれている米国、政
策的に輸出産業を優遇しているドイツの約2倍になっている。国際競争力に影響を与え、
アベノミクスの効果を薄め、失われた20年をさらに引き延ばすことにもなりかねない。
収入の減少は世帯支出額にも影響を与えた。2000年に32万円弱だった月平均支出額
は、今1割以上落ち込み28万円強だ。衣服費、交際費、旅行費などの落ち込みが目立つ
が、そんななかで上昇しているのが電気料金だ。
震災後、家庭用電気料金は最大時2割以上上昇したが、節電を行った家庭が多く、支
払額の上昇率は単価値上がり率ほどではなかった。しかし、日本は約2000万人の貧困層
をかかえている。この人たちは、電気の使用量が少ないため、節電余地はなく、単価上
昇の影響を大きく受けた。原発の稼働が進めば、電気料金の引き下げが実現することに
なるだろう。産業と家庭には大きなプラスとなる。
原発稼働のメリットの一つは、温室効果ガス、二酸化炭素の排出がないことだ。原発
に代えて同じく低炭素電源の再エネを導入すれば良いとの主張もあるが、経済性を全く
無視した議論だ。再エネ導入による電気料金上昇を避けることはできない。さらに、発

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電コストに加えバックアップ電源、送電線整備など、固定価格買い取り額以上の負担も
生じる。再エネの発電コストが火力並みになっても私たちの手元に届く時のコストが火
力並みになる訳ではない。
再エネを導入し市場を作れば、再エネ・ビジネスで経済成長が可能との主張も間違い
だ。日本では太陽光発電設備への大きな投資が起こったが、最盛期でも日本製パネルの
出荷額は3000億円程度だった。パネルのうち3分の2は中国などからの輸入品が利用さ
れたからだ。固定価格買い取り制度を創設し無理やり市場を作っても、日本企業の成長
に結びつく訳ではない。成長のためには他国が真似をできない技術開発が必要だが、太
陽光パネルのようなコモディティと呼ばれる製品では難しい。再エネ比率が40%になれ
ば、電気料金の負担はいくらになるのだろうか。これからの技術開発を考慮しても、費
用対効果を考えれば実現不可能な世界だろう。
電力使用量の30%削減も実現は不可能だろう。電気自動車をはじめ、きれいなエネル
ギーを志向する流れは変わりそうにない。例えば、日本の乗用車の半分が電気に代われ
ば、電力需要を5%押し上げる。トラックも電気になれば、電力需要はさらに押し上げら
れる。
世論調査では再稼働反対が多いことも、一部政党の原発ゼロ主張を後押しする形にな
っている。しかし、世論調査結果は、必ずしも国民の意見を反映している訳ではない。
世論調査に回答する世代には偏りがある。NHKの世論調査では、回答者の半分は60歳以
上、20歳代は3%しかいない。
原発再稼働問題では、世代により意見は大きく異なる。若い世代ほど再稼働賛成が多
く、60歳代で最も反対が多くなる。朝日新聞ですら、昨年自社の世論調査の結果20歳代
の再稼働賛成は6割と認めざるを得なかったほどだ。世論調査結果には高齢者の意見が
強く反映されており、国民全体の意見の縮図でないことも政治家は理解したほうが良
い。

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5. 終わりに

自然エネルギーには多くの魅力がある。当然有効に活用すべきと考えている。では、
「100%自然エネルギーだけで我々の生活は大丈夫か?」という問いがこの小冊子を纏
めるきっかけの一つであった。
それと同時に、自然エネ100%を標榜する「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」
(原自連)の企みにも、私たちは目を瞑ってはならない。自然エネルギーを増やしてい
くのは今やたしかに国策の一部ではある。しかしながら、あまりに急速に無理を強いれ
ば、経済に歪みが生じる。歪みは当然ながら弱者に重くのしかかる。生活弱者であり企
業弱者である。
その歪みを扇動している政治家が2名いる。いずれもあろうことかこの国の首相経験
者である。
3・11時に私は騙されていたと見えを切って鞍替えした小泉純一郎がいる。小泉氏
は日本各所に出かけて自然エネルギー万歳・原発ゼロたるべしと良民を前に洗脳しまく
っている。郵政民営化の際と同様に有名人やメディアを巻き込んでのプロパガンダだ。
郵政民営化が名ばかりで実がなく国民が騙されたことは今や明らかである。私たちは、
郵政民営化の二匹目のドジョウよろしく、またしても小泉流の法螺に騙されるのであろ
うか。ウソは大きいほどコロリと騙されるという。本小冊子が意図したのは、再び騙さ
れないための情報を広く共有することである。
もう一人は、3・11時に全くもって危機管理を誤った、国家的犯罪者・菅直人であ
る。菅氏は、近頃『原自連』の首脳を永田町に呼びつけて、原自連幹部(河合博之幹事
長他)に、原発ゼロ街道の障壁となっている野党系議員のオルグをお願いしたいと〝逆
陳情〟をしているという。国会議員の矜持も投げ捨てた体たらくである。菅直人氏が敷
いた『再生可能エネルギー促進法』は天下の悪法である。2011年以降、原発を止め
て、その分火力発電を炊きましせざるを得ない状況を国民に強いた。その結果毎年3兆
円の国富が海外に流失している。そして、当初42円/kwh という法外な値付けを行っ
た再エネ賦課金である。この賦課金は電力需要家に広く薄くばらまかれ、効率よく金を
吸い上げるシステムである。結果、若者や低所得者層を苦しめ、電力多消費産業に重篤
な電力課金病をもたらしている。どちらもこの国の足腰を挫くこと甚だしい。誰が得す
るのか?それは再エネ事業に新規参入し事業を拡大してきた個人事業主や企業である。
そしてそれらを束ねている自然エネルギー財団及び再エネ事業に重点的に融資を行っ
ている金融機関である。金融機関のなかでも最も〝活躍〟しているのは、原自連の会長
である吉原毅氏が相談役に就く城南信用金庫である。

今、日本の再エネビジネスの現況に目を移すと、各電力会社が太陽光など自然エネル
ギーの導入に前向きに取り組んでいる。その中でのいくつかの具体的課題が発生しつつ
あるようにも見える。一つは、太陽光は昼間の晴天の時に大量に発電されるが、日没と
ともに急速に発電量が減少する。この、太陽光の発電量の減少があまりに急激なので、

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この減少分を補うために火力発電を起動しても間に合わない可能性が浮上してきてい
るのである。このため、かなり計画的に火力発電、揚水水力、蓄電池等、昼間に停止し
ていた発電を急速に立ち上げなければならないが、これが結構綱渡りになることがある。
これは、急な悪天候、豪雨、豪雪などでも同様で、期待していた太陽が照らない時の火
力発電の立ち上げとその準備が数十分から数時間の時間を要するのでお天気任せのフ
ォロー、事前準備は大変そうである。
ドイツ等の自然エネルギー先進と言われている国々でも、似たような事情は見られて
いる。太陽光、風力を補うために、昼間から火力発電を待機しておかなければならない。
この、待機運転を行うときに放出するCO2 があるので、ドイツでは放出CO2 量が減
少しない段階になっている。
自立できない自然エネルギーをいかに生かせていくかという知恵が重要になってく
る。
私たちはもう二度とだまされてはならない。さもなければこの国の足腰がどんどんと
弱っていくことは火を見るより明らかである。不幸な未来を子どもたちに残してはなら
ない。私たちは自ら知恵を拓いていかなければならないのである。
本冊子がその一助になることを願ってやまない。
(S.K 記)

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URL : http//www.kokumin.org
Tel : 03-5809-0085 E-mail : nnc@kokumin.org

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