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Japan From The Perspective of Food Sovereignty
Japan From The Perspective of Food Sovereignty
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Japan from the Perspective of Food Sovereignty, Food Sovereignty from the
Perspective of Japan ( )
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Shuji Hisano
Kyoto University
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2017年2月28日
@総合地球環境学研究所
京都大学大学院経済学研究科 久野秀二
はじめに
本報告の目的と課題
Food Sovereignty論(concept, discourse)を正しく理解する。
Food Security論や Right to Food論との関係を理解する。
日本の文脈で Food Sovereignty論の可能性を考える。
切り口=3つの近接する概念
Food Security ・・・食料安全保障(食料保障)=technical concept
Food Sovereignty ・・・食料主権 =political concept
Right to Food (Right to Appropriate Food for All) ・・・食料への権利 =legal concept
二つの概念は対立的なのか?
Clapp (2014)
• Food Securityは本来、descriptive (not prescriptive) + open-ended な概念なのに、Food
Sovereigntyの主唱者は敢えて対立的な規範的アジェンダを挿入し、その実現方法に関する一つ
の言説(mainstream neoliberal discourse)と同一視。こうした議論は建設的ではない!
• Food Security概念自体、豊富化されてきた。
• 生産主義、個人主義、自由貿易主義という二項対立的な批判は一面的
二つの概念の違いをどう理解するか?
Murphy (2014)
• Food Security =規範的な目的(到達すべき結果)に関する概念
• Food Sovereignty =規範的な過程(到達するための道筋)に関する概念
• いずれも社会的構成物。その歴史的文脈を理解することが肝心
• Food Securityの枠組みと方向性をめぐるイデオロギー(政治経済的利害)のせめぎ合い
Food Securityの一般的な定義
“Food security exists when all people, at all times, have physical, social and economic
access to sufficient, safe and nutritious food that meets their dietary needs and food
preferences for an active and healthy life” (FAO 2001)
More than 200 definitions and 450 indicators (Maxwell & Smith 1992; Sage 2002)
Access Utilisation
• People have sufficient • The knowledge and basic sanitary
resources to produce condition to choose, prepare and
and/or purchase food distribute food in a way that
results in good nutrition
Availability Stability
• There is a reliable and • People’s ability to access
consistent source of and utilise food that
quality food remains stable and
Food sustained over time
Security
Food Security定義におけるキーワードの変遷
Availability + Price Stability (1974)
• 世界食料危機
Physical and Economic Access (1983)
• 緑の革命の「失敗」
Enough Food for an Active and Healthy Life (1986)
• 慢性的飢餓の問題
Safe and Nutritious Food / Dietary Needs and Food Preferences (1996)
• 健康栄養研究の進展+1994年UNDP「人間開発報告」+1996年世界食料サミット
Social Access (2001)
• ジェンダー等の社会慣習による疎外の問題
量的側面から質的側面へ、国家食料安全保障から世帯・個人の食料安全保障へ
• Amartya Sen (1981) のエンタイトルメント概念やケイパビリティ理論の影響
• 新自由主義的規範形成(個人主義・消費主義・科学主義)
新自由主義的理解、生産力主義的・開発主義的理解の主流化
• とくに2007/08年の世界食料価格危機を契機に
Food as a
1948 UDHR
basic human rights
地理的文脈
食料輸出国と食料輸入国における Food Sovereignty, Food Security の意味の違い
• 同様に、peasants, family farmers, locality 等の意味の違い
主要先進輸出国それぞれの異なる事情
• 米国:food justice=人種問題や貧困問題に由来するローカル次元の食料調達戦略を重視、
ナショナル次元・グローバル次元での構造転換への視点は弱い。
• カナダ=ローカル次元は食料主権、ナショナル次元は食料安全保障。「主権」論の危うさ。
• ニュージーランド=食料輸出依存・酪農王国・フォンテラの存在。「clean-green」「pure」等のナショ
ナル・ブランド化。多文化主義社会、等々。 「主権」概念の難しさ。
制度化・法制化の試み、到達点
Food Sovereigntyが法制化された・されつつある国々
• 憲法and/or国内基本法・・・ベネズエラ、マリ、セネガル、ネパール、エクアドル、ボリビア、ニカラグア
• 政府による支持・・・キューバ / 法制化の動き・・・ドミニカ共和国、ペルー、アルゼンチン、グアテマラ、
ブラジル、エルサルバドル、インドネシア
運動の到達、成果の変節・・・エクアドルの場合
• Alexandra Martinez Flores (2015) “Seeds, Food Networks and Politics: Different
Ontologies in Relation to Food Sovereignty in Ecuador” (Wageningen PhD)
• Cf. “Propositions” +久野コメント(添付)
社会運動とフォーマル政治との相克(矛盾を含んだ関係性)
社会運動としてのFood Sovereignty、国家の政策目標としてのFood Sovereignty
• 法制化は国家が食料主権の主唱者になったことをそのまま意味しない。他のアクターとともに食料
主権をめぐる政治的闘争の場に国家が加わったということ。
• ①政治的闘争過程を含む歴史的経緯を理解すること=historical approach;②到達点と
して概念化された食料主権とそれを目指す過程としての食料主権化の違い。後者の過程を現在
進行形の闘争と交渉の過程として理解すること=relational approach;③国家と社会の多様
なアクター間の諸関係において理解すること=interactive approach ・・・ 【Schiavoni 2016】
構造的な社会変革の展望と具体的方策の欠如?
既存システムの外(インフォーマル政治経済)でいかに運動を組織しニッチを形成するか
既存システムの中(フォーマル政治経済)でいかに効果的に事業と運動を進めるか
ポスト資本主義への移行を含む、根本的・構造的な社会変革を展望するか
Cf. Maria Fonte (referring to “Real Utopias Project” of Erik Olin Wright)
• Interstitial strategies of transformation (ignore the State) --- innovative niches
• Symbiotic strategies of transformation (work with the ‘local’ State) - ex. Food Council?
• Ruptural strategies of transformation (smash the State) - ex. Food Sovereignty?
国家主権と国民主権
主権という言葉の語感・・・国家主権>国民主権?
1996年の定義
• 「食料主権とは、各国内の文化と食料生産の多様性を尊重しながら、国内に必要な基本的食
料を自ら生産する能力を維持し発展させる、各国政府に保障されるべき権利である。食料主権
は真の食料安全保障を実現するための前提条件である」
田代洋一 (1998)
• 「それぞれの主権国民国家が食料自給率を高める権利をもっていることを世界の国々が認めあい、
自給率向上に向けて最大限に政策努力すること」と解釈、GATTウルグアイ・ラウンド以降のグロー
バルな規制緩和政策下の農政展開とそれに対置されるべき日本の政策課題を具体的に論じた。
山崎農業研究所 (2000)
• ①主権在民が基本である、②国民の生命と健康を守る、③国土と環境を保全する、④農業・農
村を再生する、⑤各国・地域の独自の権利である。
大野和興 (2005)
• 「食料主権という言葉はいまや、国の主権ではなく、人びとが安心して生きるための権利、生存権
として読み直さないといけない時代」、「農民運動が食料主権という言葉を用いるときには、ある時
は国家と一緒に、ある時は国家と対抗して、という両者の意味がある」、後者の場合には「食料主
権という言葉が適当かどうかという議論は当然出てきます」
食料主権が言及される政策論上の文脈
日本共産党
• 農林漁業分野政策(2014年)「TPP交渉参加の撤回を強く求め、食料主権を回復する」
• 「各国の食料主権を尊重する貿易ルールを確立する --- 自由化一辺倒のWTO体制のもとで、世界各国の
農業が荒廃し、環境や食の安全も脅かされ、貧困と格差が拡大するなどの矛盾が広がりました。21世紀の
世界に必要なのは、各国の国土資源を最大限に活かした食料の増産であり、それを可能にする貿易ルール
です。各国が自国民のための食料生産を最優先し、関税など国境措置の維持強化、価格保障などの農業
政策を自主的に決定する権利=「食料主権」を保障する貿易ルールの確立をめざします。」
• 「「成長戦略」の名で輸出や投資の拡大を最優先し、農産物を含めた輸入自由化を推進するFTAやEPAが、
農業衰退に拍車をかけることは避けられません。締結した日豪EPAについては、国内への影響を検証し、悪
影響が顕れた場合には、輸入規制、価格補填など機敏な対策をとります。その他の二国間・多国間の貿
易や経済連携にあたっても、各国の多様な農業の共存、食料主権を尊重するルールをめざします。」
• TPP承認案・関連法案に対する反対討論(2016年)
• 「あらゆる分野で主権を損なう亡国のTPPではなく、各国の経済主権と食料主権を尊重し、国民のくらしを
守る平等・互恵の貿易・投資ルールこそ求められています。」
社民党
• 農林水産政策(2007年)
• 「自給可能な基礎的食料の自給力を高め、食料主権を確保します。・・・食料供給の海外依存からの脱却
に向けて・・・優良田畑の確保、直接支払の拡充、国内生産の拡大、地産地消の推進、多様な担い手の
確保、消費者との連携強化、日本型食生活の普及等に取り組みます。」
ローカルな課題
地域の農業・食料・生活を守るための多様な取り組み
ローカリゼーションの問題点
• ローカルだから取り組めること、取り組めないこと
• ローカル主体と民主的ガバナンスの問題(Emancipatory Question)
• ナショナルな政治課題とのリンケージ
ナショナルな課題
政策課題としての位置づけ 広範な国民的運動との連携(cf. 農民連)
フォーマル政治とのリンケージ
• 例:種子を守るために「ローカル/ナショナル」軸、「インフォーマル/フォーマル」軸
• 市民運動・批判的研究者の間に残るナイーブさ(政党を通じた議会政治との距離感)
リージョナル+グローバルな課題
各国・地域の状況に即した運動課題と国際連帯の可能性
• 先進国と途上国、輸出国と輸入国、欧州とアジア等々のギャップ・・・日本の立ち位置?
• 国際人権レジームの可能性・・・日本政府の国際的義務、それを追求する社会運動の責務