（112）医機学　Vol．78，　No．4（2008）
匿コ　電気メス出力測定システムの試作と性能評価（第2報）
〔背景・目的〕　電気メスの保守点検時には，出力を定
量的に測定できる電気メス解析アナライザが必要とな
る．しかし市販アナライザは非常に高価である．そこ
で，われわれはオシロスコープを用いた電気メス出力
測定システムを製作し，その実用性を第80回大会で
報告した．今回さらに本システムの改良をおこない，
市販アナライザにおいても同じ条件で電気メスの出力
測定，比較することにより本システムの信頼性と有用
性の評価をおこなった．
〔改良点〕
1）前回の報告では，システムの負荷抵抗値は1種類
　（550Ω）であった．今回，負荷抵抗値を100～
　1，400Ω（100Ωステップ）と可変できるようにし，
　さまざまな機種に対応可能とした．
2）出力を分圧せず高電圧プローブを使用した．
〔結果〕本システムと市販アナライザを使って，2機
種の電気メスの各モードにおける出力を測定した．と
もに設定値の±10％以内の精度で測定できた．
國電気メステスタの性能向上
　　　　　　　　　　　　　　　岡野　宏，西澤裕輔，大原　衛（東京都立産業技術研究センター），
　　　　　　　　　　　　　　　富樫昌之，日向一郎，高柳政晴（エクセル㈱），
　　　　　　　　　　　　　　　青木紀二，山口十貴哉（セムコ㈱）
〔はじめに〕　院内で電気メスの定期的な保守点検をお
こなうことにより，出力測定の不具合や火傷防止等の
安全確保が達成できる．現在，市販の電気メステスタ
がこれらの目的のために普及しつつある．その一方で，
測定値にバラツキ等の問題があると指摘されている．
そこで前年，電気メスメーカおよびテスタメーカの協
力を得てその実態調査に着手した．電気手術器（電気
メス）JIST1453：1998に準じて切開と凝固の各モー
ドで出力である高周波電力と高周波電流を測定した．
使用した電気メスはエルベ社，コンメド社，パリーラ
ブ社，泉工医科工業社，計4社の製品であり，評価に
使用した電気メステスタは，バイオテック社，ダイナ
テック社，メトロン社，エクセル社，JISの方法（横
河電機），計5社である．この中でわれわれの開発し
たエクセル社のテスタは安価で使いやすいが，誤差が
他の外国製品に比べて大きなことがわかった．そこで
この原因を調査検討し，性能を向上させた．
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Presented by Medical*Online
吉澤光崇（伊那中央病院臨床工学室），
小　野　哲　章（神奈川県立保健福祉大学）
〔考察・結論〕測定精度は，本システムが市販のアナ
ライザに劣らないことを示した．市販のアナライザで
も1MHzまでの周波数までしか精度を保証していな
い．本システムは，メタルクラッド抵抗の周波数特性
やオシロスコープの周波数帯域を考えると，周波数特
性も市販のアナライザに劣らない．
　結論としては，本システムの性能は市販のアナライ
ザに劣らず，またコストパフォーマンスが良く十分に
’実用していけると思われる．多くの電気メスの周波数
は500　kHzが主流であり，今回測定した2機種の電気
メスも乱民kHz程度である．しかし，1　MHzを大き
く超える電気メス（3．8MHzのサージトロン等）も存
在し，その測定は市販のアナライザでも測定できない
（誤差が大きい）．しかし1MHzを大きく超える電気
メスの出力測定でも，本システムにおいては，メタル
クラッド抵抗の値をインピーダンスアナライザで実測
し（電気メスの周波数にて），その値を出力算出に用
いれば測定できる．
〔調査総括〕われわれのテスタはS社の電気メスを用
いたスプレー凝固状態で誤差を最小にするように調整
をおこなっていた．スプレー凝固の状態の出力は一般
に高電圧，高周波パルス性非正弦波，高クレストファ
クターを含む複雑波形であり，このモードの誤差は一
番大きい．この特殊な状態を基準にしてしまったため，
通常の切開や凝固状態では底上げしたように誤差が増
えてしまうことが判明した．そこで，（1）校正はあく
まで切開状態（正弦波）でJISに基づく熱電対法を基
準にした．（2）スプレー凝固状態はソフト的に波形を
判断し，校正に係数を乗じ校正誤差を少なくした．
（3）内部の誤差の影響を考慮：した回路構成にした．
〔まとめ〕　この結果，誤差を約1／2になるような特
性改善をおこなうことができた．今後は内部計測用
ICの周波数特性の向上や，高クレストファクターへ
の対応を取り，外国製品に近い特性をもちながら安価
で使いやすい製品を提供したい．