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22SJPN431AB⑭                          2022 年 6 月 2 日(木)

引用①
【目標】

1.「盗用(剽窃)」と引用の違いを理解する。

2.直接引用・間接引用のしかたを学ぶ。

1.引用とは

他の人がすでに話したり書いたりした考え・情報や、公開されている資料・デー

タなどを、自分のレポート・論文の中で出典を示して「紹介」すること。 

2.引用の目的

近 藤 裕 子 他 ( 2019) 『 失 敗 か ら 学 ぶ 大 学 生 の レ ポ ー ト 作 成 法 』 ひ つ じ 書 房 p.38

大学で書く論証型レポートや論文は、

・自分の感想やぼんやりとした考えをただ連ねるのではなく、資料による客観的

な事実やデータを用いて論理的な文章を書くことが求められている。

・事実を報告するだけでなく、自分の主張を述べる必要がある。

 ⇒自分の主張が正しいことを証明するために、他人の主張や先行研究を引用す

る。

①自 分 が 述 べ る こ と に つ い て の 説 明 や 具 体 例 を 示 す ( 定 義 ・ 背 景 説 明 な ど )

②先 行 研 究 な ど を 提 示 し 、 自 分 の 節 が こ れ ま で と は 異 な る 視 点 か ら の ア プ ロ ー チ

を試みていることや、これまでになかった新しい視点であることを示す。

③自 分 の 主 張 と 同 じ 意 見 を 提 示 し 、 自 分 の 主 張 を 強 化 す る 。

④反 対 意 見 を 提 示 し 、 そ れ が 適 切 で な い こ と を 指 摘 す る こ と で 自 分 の 主 張 を 強 化

する。

3.盗用(剽窃)と孫引き

3.1.盗 用 ( 剽 窃 )

 ・インターネット上の情報や他人の論文・専門書などのコピー&ペースト

 ・(出版されていない)他人のレポートのコピー&ペーストや丸写し

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 ・先行研究の結果や成果(アイディア)を自分の調査結果・考えであるかのよ

うに書く

 ・出典や誰の考え・成果なのかを明記せずに書く。

 ・ほかの授業のレポートの使いまわし

3.2.孫 引 き

  ・ 他 人 ( Aさ ん ) の 論 文 ・ 著 書 の 中 に 引 用 さ れ て い た 別 の 人 物 ( Bさ ん ) の 文 章

を 、 元 の 文 章 ( B) を 確 認 し な い で 、 引 用 す る    

【問題1】考えてみよう。

(1)レポートを書く際に、なぜ上記のような「剽窃」をしてはいけないので

しょうか。

(2)なぜ「孫引き」はしないほうがいいのでしょうか。

4.引用するときの注意点

① レポート本文に、情報源を明記する。

(「だれ」の意見、「いつ」の資料なのか、などがわかるように書く。)

② どこからどこまでが引用した部分なのかがわかるように書く。

(引用部分と自分の意見などが混ざってしまっていないか)

③ 参考文献のリストに著者名・出版年・論文/書籍名等の情報を詳しく書く。

⇒・ こ れ ら を 書 か な い と 、 「 盗 用 / 剽 窃 」 ( = 他 人 の 研 究 成 果 や 意 見 を ま る で 自

分の意見や研究成果であるかのように書いている)と思われるので、気を付

けること。

 ・③を書いただけでは、どの部分が引用か、どの部分がレポートの書き手自身

の考えや研究成果なのかわからないので、①②も必要。

5.引用するときの形式

引 用 に は 、 大 き く 分 け て 、 次 の 2種 類 が あ る 。

書籍や資料の言葉をそのまま抜き出して引用する方法 = 直接引用

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書籍や資料の内容を言い換えたり要約したりして引用する方法 = 間接引

5.1.原 文 を そ の ま ま 引 用 す る 方 法 : 直 接 引 用

◆ど ん な と き に ?

①特 別 な 造 語 や 定 義 な ど 、 言 葉 の 使 い 方 も 含 め て 正 確 に 伝 え る 必 要 が あ る と

き。

 ②発言者や著者の言葉をそのまま示したほうが効果的であると判断したとき

 ③原文の言い換えや要約が難しいとき

◆直 接 引 用 の 方 法

・短い文を引用する =原文の部分を「  」で書く。

  著者名(出版年)は、「  原文   」(ページ数)と述べている/述べ

た。

                            定義している/定義

した。

                            報告している/報告

した。

  ( 例 ) 田 中 ( 2005) は 、 「 緑 茶 を よ く 飲 む 人 は 、 飲 ま な い 人 に 比 べ て 長 生 き す る 。 」

( p.15) と 述 べ て い る 。

 ※著者名は名字だけでよい。

  ※引用した本や論文の名前は、本文に書かず、レポートの参考文献に載せる

か、注をつける。

・比較的長い文章を直接引用する=段落/ブロック引用

 引用する原文の部分は、

   (1)レポート本文との間に1行スペースを入れる。

   (2)文頭を2文字分空ける。

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(例)

ネ ウ ス ト プ ニ ー ( 1982) は 外 国 人 の 敬 語 使 用 に 対 す る 意 識 に つ い て 、 以 下 の よ う に 述 べ て い

る。

  外国人の間には、正しい敬語の使い方を習得したいと思っている人が多い。しかし、

敬語というものが、人間の平等の原理をおかし、「目上」への屈服の象徴だと思い込

み 、 自 分 は 絶 対 に 使 わ な い と 決 め て い る 人 も い る 。 ( ネ ウ ス ト プ ニ ー 1982: 108)

このように、「敬語の正確な使用が難しいから」という使用上の困難だけでなく、対等な人

間関係を築くために敬語を敢えて使わないという人もいるのである。

【問題2】次の文を、直接引用の表現に変えなさい。

(1)「よい声とは何か」の定義を自分のレポートの中で述べる。

よい声は、声量のある声、明るい声、よく通る声、響く声、やわらかい声の5つに分けられ
る。
                       
白石謙二(2006)『言葉と声の磨き方 ワークショップ』

⇒                                                                     

                                    

(2)統計学の種類にはどのようなものがあるかという点を整理して紹介する。

今日、統計学は、集団的研究の方法という意味で用いられているが、その内容を大きく分けると、
記述統計学と推測統計学の2つになる。
佐藤信(1968)『推計学のすすめ』講談社

⇒                                                                     

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5.2.原 文 の 形 ・ 表 現 を 変 え て 引 用 す る 方 法 : 間 接 引 用

◆ど ん な と き に ?

①引 用 す る 箇 所 が 長 い 時 ( 2文 以 上 が 目 安 )

②引 用 し た い 文 章 の 中 に 、 部 分 的 に 必 要 な い 箇 所 が 含 ま れ て い る 時

③外 国 語 で 書 か れ て い る 時                                       な ど

※内 容 や 意 味 は 変 え な い よ う に 注 意 し な が ら 、 別 の 表 現 で 言 い 換 え た り 、 要 約 し

たりして

 引用する。

◆間 接 引 用 を す る 時 の ポ イ ン ト

① 原文のうち、どの部分を取り上げて紹介したいのか。

② どの程度詳しく紹介する必要があるのか。(どの程度要約するのか)

◆間 接 引 用 の 方 法

(1)著者名(出版年)は、 引用部分 と述べている/している/報告してい

る。

( 例 ) 田 中 ( 2005) は 、 緑 茶 を よ く 飲 む 人 の ほ う が 寿 命 が 長 い と 述 べ て い る 。

(2)著者名(出版年)によれば/よると、 引用部分 (という)。

  ( 例 ) 田 中 ( 2005) に よ る と 、 緑 茶 を よ く 飲 む 人 の ほ う が 寿 命 が 長 い 。

 ※論文、レポートでは、「~そうだ」を使わない場合が多い。

 ※辞書や新聞記事などを引用する場合には、著者名の代わりに『 』で書籍

名・新聞名を書く。

(3)著者名(出版年)により、 引用部分 ことが報告されている/指摘され

ている。

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  ( 例 ) 田 中 ( 2005) に よ り 、 緑 茶 を よ く 飲 む 人 の ほ う が 寿 命 が 長 い こ と

が報告されている。

(4) 引用部分  といわれている/されている/報告されている。

※( 4 ) は 、 情 報 源 が 明 確 で な い 場 合 ( 一 般 論 ) に も 使 用 で き る 。

   (例)地球最初の生命は、海から生まれたと言われている。

      現代絵画はわかりにくいと言われている。

【問題3】次の文を、間接引用の表現に変えなさい。

(1)
留学生と日本人のレポートを比較してみたところ、日本人は多種多様な接続詞を使っているのに対し、
留学生は、接続詞をほとんど使っていませんでした。これは、留学生のレポートの特徴の一つと言える
でしょう。
佐藤花子(2020)「日本語学習者のレポートにおける接続詞の使用」
                       

【問題4】次の文章では、どのような引用形式が用いられているか。

なぜ引用の仕方が重要なのであろうか。引用をする際のルールを守る必要性について、酒井
(2009)は次のように説明している。

引用文は他人からの借り物であり、借りる際のルールを順守する必要がある。ルールを破ると、
他人が収集した情報を借りるのではなく盗んだことになり、盗用・剽窃となって著作権法を侵害
することになる。(酒井 2009:39)

このように、酒井は、引用のルールを破ることは他人の情報を盗む行為であり、法律に違反するた
め、適切な引用をすることが重要だと考えているのである。
しかし、他にも引用や出典の明示が重要な理由が存在する。
戸田山(2002)は、論文ではオリジナリティを示すことになるが、そのオリジナリティは他人の業績に
よって可能になるものであり、オリジナリティを可能にした他人の業績のどこに依拠しているのかを示
すため、また、その他人の業績への敬意を示すために引用のルールや出典の明示が必要であると説
明している(戸田山 2002:232-233)。
一方、山内(2001)は、論文を客観的に評価するために出典の明示が重要であると説明している。
山内によれば、論文は,論文の材料、手順、背景などの「手の内」を明示することによって「説得力」を
持ち、出典の明示はその「手の内」を明かすことであり、他の人が検証したり吟味したりできるようにす
ることであるという。そのような「手の内」を明かさない論文は、卑怯であり、弱虫であると山内は述べ
ている
(山内 2001:156-158)。
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 以上のような見解をまとめると、引用のルールを守ることや出典を明示することは、1)他人の権利
(著作権)を侵害しないため、2)他人の業績へ敬意を示すため、3)他人の業績(研究)に依拠している
ことを明示して客観的に検証・評価をしてもらうために大切だということになる.
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【問題5】次の文章は「人口減少に伴う労働力不足問題」に関する専門家の意見

です。

以下の文章を読んで、著者の意見を整理し、間接引用の文にしなさい。

( 1 ) 河 合 雅 司 ( 2017) 『 未 来 の 年 表   人 口 減 少 日 本 で こ れ か ら 起 き る こ と 』 p.163

もっと大胆なアイデアを示そう。増え続ける「高齢者」の数を減らしてしまうのだ。これが第一の処方箋である。「減
らす」といっても、姥捨て山のような、物騒なことをしようというわけではない。65 歳以上を高齢者と位置付ける現在
の定義を変更するのである。
…(中略)…そこで仮に、高齢者の線引きを「75 歳以上」へと引き上げてみよう。すると、2065 年の高齢者の割合は
25.5%にまで下がる。…(中略)…高齢者から外れる 65~74 歳の多くが働くのが当たり前の社会となれば、労働
力不足も社会保障の財源問題も大きく改善することだろう。

①河 合 氏 の 考 え る 対 策 と は ?

  

 ②河合氏の考える人口減少に伴う労働力不足問題の解決策を間接引用の形で書

いてみよう。

( 2 ) 2017年 4 月 15日 『 日 本 経 済 新 聞 』 朝 刊   「 外 国 人 の 純 流 入 、 13.6万 人 」

  八代尚宏(昭和女子大学特命教授)

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女性や高齢者の活用促進が基本
 人口減少を外国人の受け入れで止めようとすると大規模な移民流入が必要で、難し

い。少子高齢化社会に対応するためには女性や高齢者も働きやすい社会を作るのが基

本だ。人口減の傾向は変わらないが、減少速度を緩やかにできる。そのうえで外国人材

を活用する必要がある。

  政 府 は 3月 に 働 き 方 改 革 実 行 計 画 を ま と め た 。 だ が 日 本 の 雇 用 慣 行 を 維 持 し た 上 で

もできることが多く、改革の内容は不十分だ。終身雇用や定年制の廃止を通じて労働市

場の流動化を促したり女性・高齢者の活用を進めたりする一方、日本独自の過剰な

サービスの見直しなども進めて人口減に対応できる社会基盤をつくるべきだ。

①八 代 氏 は 、 人 口 減 少 問 題 の 緩 和 策 と し て の 外 国 人 受 け 入 れ に つ い て ど う 考 え

ているか。

②人 口 減 少 問 題 の 対 策 と し て の 外 国 人 受 け 入 れ に つ い て 、 八 代 氏 の 意 見 を ま と

め、

 「間接引用」の形で書いてみよう。

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