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な が れ14 (1995) 226-232.


解 説〕

衝撃 波の伝 播 と反射
*東京農工大 ・工 東 野 文 男

Shock Wave Propagation and Reflection

Fumio HIGASHINO

Faculty of Technology,
Tokyo University of Agriculture and Technology
(Received 7 November, 1994; in revised form 17 January, 1995)

Shock wave phenomena, propagation and reflection, are reviewed. One dimensional
propagation of exploding and imploding shock waves based on similarity methods is reviewed
and in addition, decay exponents of shock waves analyzed by the shock dynamics theory of
Witham are discussed for comparison. The oblique reflection of shock waves on a wall is also
reviewed for both steady and quasi-steady flows. Results of numerical simulation for various
types of shock reflection are discussed. Recent advances on reflection phenomena are also
covered.
(KEY WORDS): Explosion shock, Decay exponent, Similarity rule, Shock reflection, Shock
Dynamics theory, Mach reflection

般 に接 触 面 を通 して の物 理 量 の 不 連 続 変 化 が 大 き
1.  ま えが き
い場 合 に は,接 触 面 は周 囲 の 気 体 の 音 速 よ り も速

落 雷 に よ り発 生 した衝 撃 波 は大 気 中 を減 衰 しな い速 度 で急 激 に膨 張 す る.こ の 不連 続 面 の 運 動 は
が ら非 定 常 に伝 播 す るが,一 様 断 面 積 の衝 撃 波 管 通 常 固 体 の ピス トン と同 じ役 目を す るの で 接 触 面
内 を 伝 播 す る平 面 衝 撃 波 は殆 ど一 定 の速 度 で準 定 に よ り圧 縮 さ れ た気 体 は衝 撃 波 を 形成 して ゆ く.
常 的 に管 内 を 伝 播 す る1).こ れ ら の 衝 撃 波 は 圧 力 自然 界 で見 られ る雷 の場 合 に は 空 気 中 の 放 電 エ ネ
や 密 度 な ど の微 少 擾 乱 で あ る音 波 と は異 な り反 射 ルギ ーに よ り高 エ ンタル ピー領域 がっ くられ,ショ ッ
や 回 折 の際 に非 線 形 現 象 を 呈 す る こ とが特 徴 で あ ク ・チ ュ ー ブ流 れ の場 合 に は人 工 的 な 圧 縮 気 体 を
り,気 体 中 に限 らず 液 体 中 や 固 体 中 で も観 察 され 利 用 して衝 撃 波 を発 生 させ る こ と にな る.こ こで
る.衝 撃 波 現 象 に 関 して は伝 播,反 射,回 折,お 高 エ ン タル ピー気 体 が急 激 な 膨 張 を 始 め て か ら衝
よ び収 束 な ど の 問題 が あ るが,こ こで は空 気 中 の 撃 波 が 形 成 され るま で に は極 め て 短 い有 限 な 時 間
衝 撃 波 の伝 播 と反 射 を 中 心 に解 説 す る. ま た は有 限 な距 離 が必 要 で あ るが,こ こで はそ の
一 様 な気 体 中 で何 らか の 原 因 に よ り高 圧 で 高 密 よ うな衝 撃 波 の形 成 距 離 や 構 造 につ いて は言 及 し
度 ま た は高 圧 で 高 温 度 の 領 域 が で き る とそ の 高 エ な い で,不 連 続 面 と して の 衝 撃 波 現 象 につ いて 述
ンタ ル ピー領 域 は 周 囲 に膨 張 す る.こ の 高 エ ンタ べ る.
ル ピー領 域 と一様 な 周 囲 の 気 体 と の境 界 面 は接 触
2.  衝 撃 波 の 伝 播
面 と言 わ れ る温 度 や 密 度 等 の 不 連 続 面 で あ る.一
衝 撃 波 伝 播 の研 究 と して は今 日で は数 値 シ ミュ
*〒184小 金 井 市 中 町2 -24-16 レー シ ョンに よ り解 析 す るの が 一 般 的 で あ るが,
東野文男 227

こ こで は衝 撃 波 運 動 の解 析 的 な 方 法 につ いて 概 説 図 か ら高 圧 部 の駆 動 気 体 の 音 速 が 低 圧 部 に得 られ
す る.差 分 法,有 限要 素 法,有 限 体 積 法 お よ び特 る衝 撃 波 の 強 さ(衝 撃 波 マ ッハ 数Ms)に かな り
性 曲線 法19)な ど の 数 値 流 体 力 学 的 な 方 法 を 応 用 影 響 す る こ とが 分 か る3).
す る場 合 に は,各 数 値 解 法 に応 じた 初 期 条 件 を与 2)  軸 対 象 お よ び 球 面 対 称 の エ ク ス プ ロ ー デ ィ
え て リー マ ン問題 を解 け ば よ い. ン グ衝 撃 波 と イ ンプ ロー デ ィ ング衝 撃 波7-10)
1)  衝 撃 波 管(shock tube)内 を伝 播 す る平面 高 エ ンタ ル ピー気 体 の領 域 を 周 囲 の一 様 な空 気
衝 撃 波2-6) の領 域 に比 べ て 小 さ く与 え る と,接 触 面 を駆 動 す
リー マ ン問題 の初 期 値 を与 え る と き に,衝 撃 波 る全 エ ネ ル ギが 小 さ くな るの で 接 触 面 の伝 播 速 度
管 の高 圧 部 の容 積 を比 較 的 に 大 き くと り,低 圧 部 は す ぐ に減 衰 して しま う.そ れ 故,伝 播 す る衝 撃
内 を伝 わ る接 解 面(ピ ス トン)の 速 度 が 時 間 と共 波 に加 え られ る エ ネ ル ギ も徐 々 に減 少 す る の で衝
に減 衰 す る こ とな くほ ぼ一 定 の 速 度 で 運 動 す る よ 撃 波 の 伝 播 速 度 も減 衰 す る.衝 撃 波 が 非 常 に大 き
うに境 界 条 件 を与 え れ ば衝 撃 波 管 内 の 流 れ が 解 け な空 間 中 を 伝 わ る場 合 に は,衝 撃 波 面 の 運 動 は1
る.ま た,高 圧 部 の容 積 を小 さ く して 接 触 面 の速 つ の 空 間 座 標xと 時 間 の変 数tに よ り表 さ れ る の
度 が時 間 と共 に減 衰 す るよ うに 初 期 条 件 を与 え る で,相 似 解 法 が 使 え る.1次 元 の非 定 常衝 撃波
と爆 発 の 問題 に な る.シ ョッ ク ・チ ュ ー ブ問 題 で を伴 う気 体 力 学 の問 題 に 力学 的 相 似 の概 念 を導 入
は管 内 を伝 播 す る ピス トンが常 に 衝 撃 波 面 に エ ネ した の はK. G. Guderley 7)で あ る.彼 は球 面 状 ま
ル ギ を加 え て い るの で接 触 面 と衝 撃 波 面 と の間 の た は円 筒 状 の衝 撃 波 が 中心 に 向 か って 収 縮 す る場
圧九 密 度,温 度,流 速 な どの 分 布 は衝 撃 波 面 の 合 の 流 れ に対 して粘 性 等 の 影 響 を 無 視 した理 想 的
背 後 で一 定 にな る.衝 撃 波 管 の 高 圧 室 の圧 力 をP4 な流 れ の 解 析 を した.こ の よ う に軸 対 象 ま た は球
と し,低 圧 室 の圧 力 をP1と した 場 合 に,低 圧部 面 対 称 状 に収 縮 す る衝撃 波 を一 般 に イ ンプ ロー デ ィ
を伝 播 す る衝 撃 波 マ ッハ 数 は理 想 気 体 に対 して容 ング衝 撃 波(imploding shock)と 言 い,ノ ズ ル
易 に計 算 す る こ とが で き る.低 圧 室 と高 圧 室 の比 の 収 縮 部 を 伝 播 す る 衝 撃 波 の よ う に 準1次 元的
熱 比 を そ れ ぞ れr1,r4=1.4ま た は1.667と した な形 状(球 面 の一 部 を取 り出 して 考 え る)の 場 合
場 合,高 圧 部 と低圧 部 との音 速 の比A41を パ ラメー に は収 縮 衝 撃 波(converging shock)と 言 うこ
タに して衝 撃 波 管 内 に 得 られ る衝 撃 波 マ ッハ 数 を とが 多 い.日 本 語 で は 同 じ収 束衝 撃 波 と言 って も,
図 示 す る と図1の よ うに な る.こ こで 衝 撃 波 マ ッ 英 語 の術 語 の上 で はimploding shockに 対 して は
ハ 数 と は衝 撃 波 の伝 播 速 度 を 衝 撃 波 前 方 の一 様 な exploding shockが 対 応 し,converging shock
領 域 の音 速 で無 次 元 化 した マ ッハ 数 で あ る.こ の に対 して はdivergingま た はexpanding shock
が 対 応 して い る.イ ン プ ロ ー デ ィ ング衝 撃 波 の解
析 に相 似 解 法 を適 用 す る と,衝 撃 波 面 が 中心 に近
づ くにつ れ て衝 撃 波 が 強 くな るの で,波 面 後 方 の
圧 力 が 高 くな り自 己相 似 な 流 れ の 成 立 条 件 に よ り
近 くな る.相 似 解 法 の 基 礎 は衝 撃 波 が 空 気 中 を伝
播 す る 時 に 常 に 流 れ の 力 学 的 相 似14)が 保 た れ る
こ と に あ る か らイ ンプ ロ ー デ ィ ング衝 撃 波 を エ ク
ス プ ロ ー デ ィ ン グ衝 撃 波 の 逆 の 現 象 と考 え れ ば2
つ の 問 題 を 同 じ手 法 に よ り解 析 す る こ とが で き る.

具 体 的 に は爆 風 の場 合 と同 じ相 似 変 数 を使 い,爆
風 と は逆 に時 間 を 遡 って(時 間tの 代 わ りに-t
にす る)解 析 す れ ば よ い.
図1  衝 撃 波 管 内 に 得 られ る衝 撃 波 の強 さ.低 圧 室 爆 発 に よ り生 じ る空 気 流 は先 頭 の衝 撃 波 の 直 後
と高 圧 室 との圧 力比 と衝 撃 波 マ ッハ 数 の関 係 に膨 張 波 を 伴 い,日 本 語 で は 爆 風(blast wave)
228 衝撃波 の伝 播 と反射

とい う言 葉 が 使 わ れ て い る.一 般 に爆 発 現 象 は爆 か も,点 爆 発 モ デ ル に よ る解 析 結 果 は 爆 風 内 部 に

発 の エ ネル ギ が 有 限 で あ り,接 触 面 の運 動 が衝 撃 あ る流 体 が 持 つ エ ネ ル ギ の 保 存 則8)を 用 い て 解 い

波 面 の運 動 に比 べ て極 め て狭 い領 域 に限 られ る こ た 結 果 に 極 あ て よ く一 致 す る こ とが 知 られ て い る.

とか ら衝 撃 波 の背 後 で膨 張 波 の 影 響 に よ り圧 力, こ の よ うに爆 発 現 象 が 自己 相 似 で は な い一 般 的 な

密 度,流 速 な ど の分 布 が 時 間 と共 に減 少 す る こ と 流 れ に つ い て は,衝 撃 波 の 減 衰 は減 衰 係 数 と い う
を特 徴 とす る.非 常 に大 きな 空 間 を爆 風 が伝 播 す パ ラ メ ー タ を 用 い れ ば ,マ ッハ 数 の 固 有 値 と して
る場 合 の 減 衰 の状 況 は次 元 解 析 に基 づ く爆 風 の 理 計 算 で き る.衝 撃 波 背 後 の 気 体 が 高 温 に な り解 離

論 に よ り解 析 で きる が,そ の よ う な相 似 変 数 の 表 す る よ うな場 合 に お いて も相 似 解 が 求 ま る こ と は

し方 は一 通 りに限 らな い.例 え ば英 国 を代 表 す る Higashino17,18)に よ り示 さ れ た.爆 風 の解 析 に 相

G. I.Taylor 11)が用 い た 変 数,旧 ソ連 を 代 表 す る 似 解 法 を用 い れ ば衝 撃 波 面 の 内 部 が 一 様 に変 化 す


L. I.Sedov 9)とV. P. Korobeinikov 8)ら の 変 数, る 場 合 に は よ い が,接 触 面 の 運 動 を 記 述 して い な

日本 のA. Sakurai 12)およ びK. Oshima 13)らが 用 い の で2次 衝 撃 波 や3次 衝 撃波 の発 生 は予 測 で

い た相 似 変 数 な ど色 々 で あ る. き な い.よ り現 実 的 な 爆 風 の 解 析 を す る た め に は

相 似 変 数 の 決 め 方 は π定 理 を 応 用 す れ ば よ い 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン が 適 して い る.

が15),爆 発16)の よ う に大 規 模 な 爆 発 に 関 して は, 3)  衝 撃 波 運 動 理 論21-23)

伝 播 す る衝 撃 波 の波 面 前 方 の 圧 力 が 波 面 後 方 の圧 衝 撃 波 面 の非 定 常 運 動 だ けを 問 題 にす る場 合 に

力 に比 べ て 無 視 で き る こ とか ら 自 己相 似 解 が得 ら は 衝 撃 波 運 動 理 論(shock dynamics)が 使 え る.

れ る.こ れ は質 量,運 動 量,エ ネ ル ギ保 存 の基 礎 こ の 方 法 はW. Chester 21),R. F. Chisnell 22)に よ り

方 程 式 系 で 独 立 変 数 を相 似 変 換 す る際 に,波 面 前 解 析 さ れG. B Whitham 23)に よ り完 成 さ れ た 理 論

方 の 圧 力 が 零 に近 づ い た極 限 で は音 速 も零 に近 づ で あ る か ら,CCWモ デ ル と 呼 ば れ た り,レ イ ・

くの で 結 果 と して マ ッハ数 が 無 限 大 に な る こ とに シ ョ ッ ク理 論(ray-shock)ま たは幾何 学的 衝撃

対 応 して い る.こ の よ う に無 限 に強 い爆 風 の解 析 波 運 動 理 論(geometrical shock dynamics)な

に つ い て は現 象 を支 配 す る独 立 な 相 似 変 数 は1 ど 色 々 な 言 い 方 が あ る.こ の 理 論 に よ る と衝 撃 波
つ に な り,G. I.Taylor 11)とL. I.Sedov 9)の 自己 相 面 の 形 状 が 変 化 す る 場 合,波 面 の 断 面 積Aと 衝

似 解 が 有 名 で あ る.し か し,我 々 が遭 遇 す る多 く 撃 波 マ ッハ 数Msの 間 に は 近 似 的 にMs∞A(1/2)κ


の爆 発 で は衝 撃 波 は そ れ 程 強 くは な い の で衝 撃 波 の 関 係 式 が 成 立 す る.こ の 式 の相 似 パ ラメ ー ター

面 前 方 の圧 力 は波 面 後 方 の 圧 力 に比 べ て省 略 で き で あ る κ の 値 を 表1に 示 す.こ の 表 か ら衝 撃 波

る と は限 らな い.こ の 様 に衝 撃 波 の強 さが 有 限 の が 強 い場 合 に は衝 撃 波 運 動 理 論 と 自 己相 似 解 は良

場 合 に は衝 撃 波 マ ッハ 数Msが 独 立 変 数 と して 加 く一 致 し て い る こ と が 分 か る.さ らに衝 撃 波 面 が

わ る が,こ の よ う な 流 れ に対 して はSakuraiの 膨 張 す る爆 風 の 場 合 に は 衝 撃 波 の 強 さ は 弱 あ られ,


Ms2展 開 の解12)ま た は変 数 分 離 に よ るOshima 13) 衝 撃 波 面 の形 状 が 収 縮 す る場 合 に は強 め られ る こ
の 準 相 似 解 が 有 効 で あ る. と が 理 解 で き る.実 際 に衝 撃 波 ま た は デ トネ ー シ ョ

この 種 の相 似 解 法 で は一 般 に接 触面(ピ ス トン)
の 運 動 は考 慮 で きな いの で,そ れ に代 わ る境 界 条 表1  爆 風 の 相 似 パ ラ メ ー タ ーK

件 が 必 要 に な る.そ こで 爆 発 の 中心 部 に お いて は
流 れ の 対 称 性 か ら流 速 が 零 に な る べ きで あ る と考
え,時 間tに 関 係 な く座 標 の 原 点x=0で は常 に
ピス トン速 度 が零 とな る よ うな条 件 を 用 い て 解 析
した の が点 爆 発 の解8)で あ る.実 際 に,接 触 面 が
伝 播 す る領 域 は衝 撃 波 面 が 運 動 す る領 域 に 比 べ て
極 め て 小 さ い か ら,爆 発 の 中 心 近 くに お け る接 触
面 の 運 動 が 無 視 で きて 点 爆 発 モ デ ル に近 づ く.し
東野文男 229

ン波 が 固 体 壁 面 で反 射 した後 に収 縮 す る際 に は衝 き く影 響 す る こ と は容 易 に想 像 が っ く.こ の よ う
撃 波 は 強 め られ る24,25).衝撃 波 の こ の性 質 は膀 胱 な流 れ場 で 実 際 に観 測 さ れ る衝 撃 波 の 反 射 形 態 は
結 石 や 腎臓 結 石 の破 壊 な ど の 医療 の 分 野 で 利 用 さ 正 常 反 射 と 単 純 マ ッ ハ 反 射 に 限 ら れ,Von
れ て い る.衝 撃 波 運 動 理 論 に よ る と衝 撃 波 の 収 束 Neumannの2衝 撃 波 理 論 ま た は3衝 撃 波 理 論27)
点 近 くで は か な りの高 圧 で 温度 の 空 気 が 得 られ る が そ の ま ま使 え る の で理 論 解 析 が 容 易 に な る.ま
は ず で あ るが,実 際 に は粘 性 等 の 影 響 に よ り衝 撃 た,爆 風 の よ うに衝 撃 波 が 非 定 常 に伝 播 して い て
波 が不 安 定 に な り,波 面 が 完 全 な 球 面(円 柱)対 も,衝 撃 波 面 後 方 の流 れ が す ぐに減 衰 して し ま う
称 を保 つ こ とが で きな い の で そ れ 程 高 温,高 圧 に 場 合 に は現 象 は さ らに簡 単 にな る.爆 風 の場 合 に
はな らな い.レ ー ザ 核 融 合 の 場 合 に も最 終 的 に は も,正 常 反 射 ま た は単 純 マ ッハ 反 射 の み が実 際 に
イ ン プ ロー デ ィ ン グ衝 撃 波 の 収 束 点 近 くに お け る は観 測 さ れ て い る.
衝 撃 波 の安 定性 が 問 題 にな るの と同 じで あ る. 同 じ定 常 流 中 の斜 め 衝 撃 波 の反 射 で も管 内 の 超
音 速 流 中 に発 生 す る衝 撃 波 は境 界 層 と超 音 速 主 流
3. 襲 撃 波 の反 射26,27)
とが 干 渉 す る こ とに よ り発 生 す る の で,流 れ 方 向
前 節 の よ う に衝 撃 波 が 一 様 な空 気 中 を伝 播 す る に振 動 す る不 安 定 な 衝 撃 波 に な る.管 内 の 超 音 速
場 合 の解 析 は衝 撃 波 の1次 元 問 題 と して 取 り扱 流 が 亜 音 速 流 に 減 速 され る場 合 に は,幾 つ か の衝
わ れ るが,衝 撃 波 の 反 射 と回 折 の 問 題 は2次 元 撃 波 面 を通 して 減 速 され る こ とか ら,衝 撃 波 群 が
ま た は3次 元 現 象 で あ る か らそ れ だ け複 雑 に な 形 成 され る.こ の様 な衝 撃 波 群 をCrocco 28)は擬
る.衝 撃 波 が 非 線 形 性 を示 す 典 型 的 な 例 と して 衝 似 衝 撃 波 と名 ず け た.擬 似 衝 撃 波 を 構 成 す る個 々
撃 波 の 反 射 形 態 に は正 常 反 射 の他 に マ ッハ 反 射 が の衝 撃 波 面 は3次 元 的 で 複 雑 な形 状 を して い る
あ る こと は1878年 のE.Machの 実 験4)に よ り明 が,そ の 反 射 形 態 は大 別 してX型 と遷 音 速 流 の
らか に さ れ た.一 方,Von Neumann 27)は理 論 解 翼 面 上 に 見 られ る よ うな λ型 衝 撃 波 とに分 かれ る.
析 に よ り正 常 反 射 と マ ッハ反 射 を別 々 に解 析 した. 超 音 波 ノ ズル 流 の場 合 に も適 正 膨 張 をす る こ とは
そ れ らは2衝 撃 波 理 論(正 常 反 射)お よ び3衝 あ ま りな い の で 擬 似 衝 撃 波 を 発生 す る ことが多 い.
撃 波 理 論(マ ッハ 反 射)と 呼 ば れ て い る.自 然 界 似 た よ うな 現 象 は超 音 速 噴 流 に も見 られ る が,衝
に お け る斜 め衝 撃波 の反 射 は爆風 や ソニ ック ・ブー 撃 波 の 反 射 面 が ノ ズ ル の よ うな 固 体 壁 面 で は な く
ムのN型 波が地表面 上 で反 射す る ときに見 られ 自 由境 界 面(せ ん 断 層)に な るの で 現 象 は さ ら に
るが,実 験 室 で は多 くの場 合 衝 撃 波 管 を用 い て実 複 雑 にな る.擬 似 衝 撃 波 に特 徴 的 な こ とは境 界 層
験 さ れ て きた.爆 風 の場 合 に は衝 撃 波 の 伝 播 速 度 が 不 安 定 に な る こ とか ら衝 撃 波 面 が 流 れ方 向 に振
が非 定 常 に減 衰 す るか ら斜 め衝 撃 波 の非 定 常 反 射 動 す る こと で あ り20,28),この振 動 は境 界 層 剥 離 と
に な るが,衝 撃波 管 を 用 い た 模 面 上 で の反 射 の実 密 接 な関 係 が あ るが あ る もの と思 わ れ る.し か し,
験 で は衝 撃 波 は楔 上 を 殆 ど一 定 の 速 度 で伝 播 し, そ の 流 れ の詳 細 に つ い て は ま だ十 分 に分 か って い
さ らに,反 射 衝 撃 波 の 幾 何 学 的 な形 状 が ほ ぼ相 似 な い.
形 を保 ち な が ら伝 播 す るの で,準 定 常 な斜 め衝 撃 2)  準 定 常 な衝 撃 波 の反 射23,24,26)
波 の反 射(pseudo stationary reflection)と い 衝 撃 波 管 内 に 見 られ る準 定 常 な斜 め衝 撃 波 の 反
う.ま た,超 音 速 風 洞 の測 定 部 内 で観 測 され る衝 射 の問 題 は一 様 な 空 気 中 に衝 撃 波 が入 射 して くる
撃 波 は定常 流 中 に発 生 し,空 間 的 に定 在 す るの で の で境 界 層 の影 響 は衝 撃 波 面 の背 後 だ け に限 られ

定常 衝 撃 波 の 反 射 と いわ れ る.以 下 に そ れ ぞ れ の る.衝 撃 波 管 内 を 衝 撃 波 が 準 定 常 的 に 伝 播 す る場
場 合 につ いて 解 説 す る. 合 で も,波 面 後 方 の 流 れ が 亜 音 速 流 で あ るか 超 音
1)  定 常 衝 撃 波 の 反 射26) 速 流 で あ るか に よ り反 射 衝 撃 波 の形 状 が 異 な っ て
定 常 な斜 め衝 撃 波 の反 射 の 問題 は定 在 す る衝 撃 くる.そ の結 果,マ ッハ 反 射 は一 通 りで は な く,
波 と反 射 壁 面 近 くの衝 撃 波 面 の前 後 に発 達 す る境 単 純 マ ッハ 反 射,複 合 マ ッハ反 射 お よ び二 重 マ ッ
界 層 と の 干渉 の 問 題 に な る の で,流 れ の 粘 性 が 大 ハ反 射 な どの 反 射 形 態 に分 か れ る こ とが 明 らか に
230 衝撃波の伝播 と反射

な っ た.こ れ らの現 象 は実 験 的 に も数 値 シ ミュ レー マ ッハ 反 射 の マ ッハ ・シ ュ テ ム が3重 点 近 くで


シ ョ ンで も確 認 され て い るが,楔 の角 度 と衝 撃 波 曲率 を持 つ よ う にな り,い わ ゆ るVon Neumann
の 強 さ を圧 力 比 で 表 した衝 撃 波 極 線 を 用 い る と さ 反 射 に 移行 して ゆ く.こ の よ うに楔 面 上 を伝 播 す
ら に現 象 が理 解 し易 くな る.数 値 シ ミュ レー シ ョ る平 面 の斜 め 衝 撃 波 が 弱 くな る と反 射 衝 撃 波 後 方
ン に よ り得 られ た 斜 め 衝 撃 波 の色 々 な反 射 形 態 に の流 れ が 亜 音 速 流 に な る だ けで は な く,入 射 衝 撃
つ い て密 度 分 布 図 を 図2(a),(b)に 示 す.反 射 波,反 射 衝 撃 波 お よ び マ ッハ ・シ ュ テ ム が1点
形 態 に影 響 を及 ぼ す パ ラ メ ー タ と して は入 射 衝 撃 で 交 わ る3重 点 そ の もの が 「あ い ま い」 に な り,
波 マ ッハ 数Ms,楔 角 θお よ び 比 熱 比 γが あ るが, そ こで は反 射 波 は 「包 絡 面 」 を形 成 す る こと な く
γ=1.4と した場 合 に得 られ る 各 反 射 形 態 の 領 域 圧 縮 波 群 に な って い る.従 っ て3重 点 よ り上 側
を 図3に 示 す. で二 度 の 衝 撃 波 圧 縮 を受 け た気 体 と マ ッハ ・シュ
Von Neumann 27)が解 析 した2衝 撃 波 理 論 と3 テ ム に よ る圧 縮 だ け を受 け た気 体 との間 に で きる
衝 撃 波 理 論 は衝 撃 波 の 強 さが,マ ッハ数 に して2 エ ン トロ ピ ーの 差 が 小 さ くな る こと か ら,す べ り

程 度 以 上 の場 合 に は実 験 結 果 と比 べ て 極 め て よ い 流(slip line)が 顕 著 に見 られ な くな る.そ れ 故


一 致 を示 す が ,衝 撃 波 の強 さがMs=1.5程 に,入 射 波,反 射 波 お よ び マ ッハ シ ュテ ム か らな
度以 下
に弱 くな って くる と理 論 値 と実 験 結 果 との 一 致 が る マ ッハ 反 射 に 関 す るVon Neumannの 仮定が
悪 く な っ て く る.こ の 現 象 が い わ ゆ るVon 成 り立 た な くな り3衝 撃 波 理 論 が 使 え な く な る
Neumannの パ ラ ドッ ク スで あ る.こ の パ ラ ド ッ とい う こ とが 起 こ る.
ク ス を説 明 す るた め に気 体 の粘 性 や気 体 分 子 の振 衝 撃 波 を 工 学 や 医 学 の分 野 に応 用 しよ う とす る
動 緩 和 な どの 実 在 気 体 効 果 を考 慮 した 解 析 が 行 わ 際 に,正 常 反 射 か らマ ッハ 反 射 へ の遷 移 が 問題 に
れ て い るが,ま だ,十 分 に は解 明 され て い な い. な る.2衝 撃 波 理 論 か ら3衝 撃 波 理 論 へ の 遷 移
特 に,衝 撃 波 が 弱 くな り,Ms=1.1程 度 に な ると

図2 (a) 正 常 反 射 と単 純 マ ッハ反 射 の 密 度 分 布

図3  衝 撃 波 の い ろ い ろ な 反 射 形 態 の 領 域 図(Ms-
θ曲線)

図2 (b) 複 合 マ ッハ 反 射 と二 重 マ ッハ 反 射 の 密 度
分布
東野 文男 231

の 問 題 はVon Neumann以 来 多 くの 研 究 者 に よ Chap. IV.


り 研 究 さ れ て い る が,ま だ 十 分 に解 明 さ れ て い な 3) I. I. Glass & J. G. Hall: SHOCK TUBES, Hand-
い.今 の と こ ろ,i) 楔 角 と衝 撃 波 面 前 後 の 圧 力 book of Supersonic Aerodynamics, Section 18
比 の 関 係 を 表 す 衝 撃 波 極 線(shock polar)上 で (NAVORD REPORT 1488 (Vol. 6), 1959) Chap.
正 常 反 射 が 可 能 な 範 囲 か ら判 断 す る 離 脱 基 準 2.
(detachment criterion),五)同 じ衝 撃 波 極 線 上 4) I. I. Glass & J. P. Sislian: Nonstationary Flows and
で 垂 直 衝 撃 波 の 場 合 に は正 常 反 射 もマ ッハ反 射 も Shock Waves (Oxford Science Publ., 1994). Chap.

可 能 で あ る が,圧 力 の 観 点 か らす る と力 学 的 な 平 7.
衡 を保 っ た ま ま連 続 的 に遷 移 す る とす る力 学 的 平 5) E. F. Green & J. P. Toennies: Chemical Reactions
衡 基 準(mechanical equilibrium criterion), in Shock Waves (Edward Arnold Ltd., 1964)
iii)楔 の 先 端 で 発 生 し た 音 波(擾 乱)が 反 射波 に Chap. 2.
影 響 す る か ど う か を 判 定 す る 音 波 基 準(sonic 6) J. K. Wright: SHOCK TUBES (Methuen & Co.
criterion)な ど が あ る が,そ れ らの 基 準 の 問 に Ltd., 1961) Chap. 4.
本 質 的 な 差 は な い28). 7) K. G. Guderley: Starke Kugelige und Zylind-
rische Verdichtungsstosse in der Nahe des
4.  あ とが き
Kugelmitterpunktes bnw. der Zylinderachse,
本 稿 で は衝 撃 波 の伝 播 と反 射 の 問題 を 筆 者 の 興 Luftfahrtforschung 19 (1942) 302.
味 に基 づ い て解 説 して きた の で,不 備 な 点 が 多 々 8) V. P. Korobeinikov: Problems of Point-Blast
あ る と思 うが,読 者 が少 しで も衝 撃 波 に興味 を持 っ Theory (American Inst. Physics, 1985) Chap. 2.
て下 さ れ ば幸 い で あ る.衝 撃 波 の 問 題 は1940年 9) L. I. Sedov: Similarity and Dimensional Methods
代 か ら原 爆 の破 壊 力 を予 測 す るた め に解 析 され, in Mechanics (Inforsearch Ltd. 1959) Chap. 1.
爆 風 の理 論 と して発 展 した.最 初 の 原 爆 の 起 爆 に 10) J. H. Lee, R. Knystatas & G. G. Bach: Theory of
は収 縮 衝 撃 波(デ トネ ー シ ョン波)が 利 用 され た Explosions, MERL Rep. 69-10 (Macgill Univ.,
こ とは良 く知 られ て い る.50年 後 の 今 日,衝 撃 1969).
波 は 医学 や核 融 合 の分 野 で利 用 され て い る.原 爆 11) G. I. Taylor: The Formation of a Blast Wave by
の開 発 期 に は レー ザ ー光 や半 導 体 技 術 が なか った Very Intense Explosion, Proc. Roy. Soc. A201
か ら現 在 の実 験 装 置 に比 べ る と極 め て 精 度 の悪 い (1950) 159.
機 器 を使 って実 験 して い た もの と思 う.ま た,爆 12) A. Sakurai: On the propagation and structure of
風 の数 値 計 数 で も手 計 算 が 多 く,並 列 計 算 機 な ど the blast wave I, J. Phys. Soci. Japan 9 (1954)
は存 在 しな か った か ら,数 値 計 算 も不 十 分 で あ っ 256.
た.こ の様 に衝 撃 波 の 研 究 環 境 は今 日格 段 に進 歩 13) K. Oshima: Blast waves produced by exploding
した が,衝 撃 波 と境 界 層 との 干 渉 問 題 な ど工 学 的 wire, Aero. Res. Inst., Univ. Tokyo, No. 368
に 重要 な 多 くの 問 題 が 未 解 決 の ま ま残 され て い る. (1960).
本 稿 の 執 筆 中 に 衝 撃 波 現 象 の 研 究 で多 くの先 駆 14) G. I. Barenblatt: Similarity, self-similarity and
的 な 業 績 を 残 した トロ ン ト大 学 のI.I.Glass教 授 intermediate asymptotics, Trans. by N. Stein &
が 他 界 され た.こ こ に謹 ん で 哀悼 の意 を表 した い. M. Van Dyke, Consultants Bureau (1979).
15) G. Birkhoff: Hydrodynamics, 2nd Edit. (Princeton
引 用 文献 Univ. Press, 1960).
1) I. I. Glass: Shock Waves and Man (UTIAS, To- 16) S. Glasstone & P. J. Dalan: The Effects of Nuclear
ronto, 1974). Weapons, 3rd Ed. (U. S. Dept. Defe. and Ener.
2) R. Courant & K. 0. Friedrichs: Supersonic Flow Rese. and Devel. Admin., 1977).
and Shock Waves (Interscience Publ., 1948) 17) F. Higashino: Cylindrical blast waves in ideal
232 衝 撃 波 の 伝 播 と反 射

dissociating Gases, J. Facl. Eng. Univ. Tokyo (B) flow, J. Fluid Mech. 4 (1959) 337.
XXXII (1973) 105. 24) I. Sakamoto, F. Higashino & R. Holl: Focusing of
18) F. Higashino: Imploding shock waves with reflected shock waves analyzed by means of
chamical reactions, Trans. Japan Soc. Aero. geometrical shock dynamics, JSME Inter. J. B. 36
Space Scie. 26 (1971). (1993) 560.
19) F. Higashino: Characteristics method applied to 25) W. D. Henshaw, N. H. Smyth & D. W. Schwende-
point source explosions, Trans. Japan Soc. Aero. man: Numerical shock propagation using geo-
Space Scie.28 (1985) 161. metrical shock dynamics, J. Fluid Mech. 171
20) F. Higashino, S. Matsuo & T. Tsuyuki: Interac- (1986) 519.
tion of supersonic expansion flows with bound- 26) Gabi Ben-Dor: Shock Wave Reflection Phenomena
ary layer in and unsymmetrical duct, JSME (Springer Verlag, 1992).
Inter. J. B. 37 (1993) 36. 27) J. von Neumann: Collected Works 6 (Pergamon
21) W. Chester: The propagation of shock waves in Press, 1963) 238.
a channel of non-uniform width, Quart. J. Mech. 28) L. Crocco: One dimensional treatment of steady
Appl. 6 (1953) 440. gasdynamics, High Speed Aerodynamics and Jet
22) R. F. Chisnell: The motion of a shock wave in a Propulsion, Vol. III, Ed. Emmons, Chap. B (Prince-
channel, with applications to cylindrical and ton Univ. Press, 1958).
spherical shock waves, J. Fluid Mech. 2 (1957) 29) 東 野 文 男:爆 風 の 理 論 に つ い て,Nagare 5 (1973)

286. 1.

23) G. B. Witham: On the propagation of shock 30) 東 野 文 男:理 想 解 離 気 体 中 の 爆 風 の 解 析,日 本 航

waves through regions of nonuniform area of 空 宇 宙 学 会 誌19,214号(1971) 513.

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