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陶芸入門

練り込み
第2版

白根開善学校 美術同好会 1
  練り込み陶芸入門 CONTENTS

   は じ め に (第 2 版 序) ‥‥‥‥‥ 1
1. 陶芸の基礎知識  ‥‥‥‥‥ 2
1-1 やきものができるまで ‥‥‥‥‥ 3
1-2 粘土について ‥‥‥‥‥ 4
1-3 道 具 ‥‥‥‥‥ 6
1-4 土練り ‥‥‥‥‥ 8
   荒練り ‥‥‥‥‥ 8
菊練り ‥‥‥‥‥ 9
1-5 成形について ‥‥‥‥‥ 10
 手びねり ‥‥‥‥‥ 10
   ひもづくり ‥‥‥‥‥ 11
   タタラづくり ‥‥‥‥‥ 12
   ロクロ成形 ‥‥‥‥‥ 14
1-6 釉薬について ‥‥‥‥‥ 16
1-7 窯について  ‥‥‥‥‥ 19

2. 練込み基本テクニック ‥‥‥‥‥ 20
2-1 色粘土をつくる ‥‥‥‥‥ 21
2-2 色見本をつくろう ‥‥‥‥‥ 24
2-3 マーブル模様 ‥‥‥‥‥ 27
2-4 ストライプ模様 ‥‥‥‥‥ 30

3. 練込み応用テクニック ‥‥‥‥‥ 32
3-1 ストライプ模様の花入れ ‥‥‥‥‥ 33
3-2 市松模様の角皿 ‥‥‥‥‥ 35
3-3 クマの顔をつくる ‥‥‥‥‥ 37
3-4 「嘯裂文」の壺をつくる ‥‥‥‥‥ 40
3-5 オリジナル模様の角瓶 ‥‥‥‥‥ 42
3-6 くず粘土の利用 ‥‥‥‥‥ 45
3-7 練り込み作品集 ‥‥‥‥‥ 46
  編 集 後 記   ‥‥‥‥‥ 47

2
 は じ め に ( 第2版 序 )

 「練り込み」とは、陶芸の装飾技法の一つで、色や濃淡の異なる土を練り合わせたり、貼り合
わせたり、交互に積み上げるなどして作った模様の土を使いやきものを成形することです。「練
上手」とも呼ばれ、中国では8世紀の唐時代からはじまり、ヨーロッパでは 18 世紀にマーブル・
ウェアの名で呼ばれる伝統技法です。
 思えば 15 年前、赴任した学校に陶芸の窯があったのがきっかけで陶芸をはじめました。最
初は失敗の連続でしたが、2年・3年と続けることでなんとか作品らしいものが焼けるように
なりました。
「練り込み」との出会いもその頃で、人間国宝・松井康成(1927-2003)の作品で
した。片手にのる細かなストライプ模様の小さな「水滴」で、流れるような模様の美しさとその
繊細さに驚き、小品ながら迫力と存在感に圧倒されました。
 それから「練り込み」への挑戦が始まりました。書籍やビデオ等を参考に、見よう見まね、試
行錯誤の連続でした。その後、
大学に戻り卒業制作で「陶芸テキスト
(拙書)」を編集する機会を得、
松井康成の作品を多数所蔵する茨城県立陶芸美術館へ取材に伺うこともできました。
 あれからすでに4年が経過してしまいましたが、ようやく第2版の準備が整ったところです。
今回も作業しているのは中学生と高校生で、作例の作品もほとんどが生徒の作品です。実際に
作り始めると想像以上に大変な作業で、思うような模様ができない、亀裂が入る等失敗もよく
あります。しかし、材料と道具をそろえ、基本をしっかり守れば、確実に作品は仕上がります。
 「練り込み」の作品を手に持ってみると、絵付け等にはない、温かい味わいと素朴な感動があ
ります。失敗をおそれず、ぜひ挑戦して下さい。


     白根開善学校 美術同好会 顧問 関口 正人

1
基礎知識
陶芸の

「酒 器」 Y . H
2
1-1 やきものができるまで やきものができあがるまでの工程を簡単に説明します。
                

陶芸の基礎知識
               
① 荒練り
1  土練り
粘土を混ぜる、硬さを均一にします。
② 菊練り
粘土の中に残っている空気の粒を抜きます。

手びねり、ひもづくり、タタラづくり、ろくろ成形など形をつくる
2  成 形
作業。「練り込み」は、成形の時におこなう素地の粘土の組み合わ
せによる装飾技法です。

やきものができるまで
乾燥・素焼き・本焼きと完成までに 12 ∼ 15% 程度縮みます。
3  乾 燥

700 ∼ 800℃で焼く。粘土が焼き締まり、強度と吸水性が増し、釉
4  素焼き
掛けや絵付けがしやすくなります。

釉薬は焼成するとガラス質のうすい皮膜になります。
5  釉掛け

6  本焼き 1,230 ∼ 1,300℃で焼く。釉薬の特性により、酸化炎焼成、還元炎


焼成に分け、目標温度を決めます。
本焼き後に金彩・銀彩、上絵付けもできます。

作品の完成です。
7  完 成

3
1-2 粘土について
陶芸の基礎知識

 陶芸の窯は小さな火山
陶芸用の粘土の多くは岩石などが雨や風などで削られ小さくなり、流され堆積してできたも
のです。この粘土を陶芸の窯で 1,200 − 1,300 度で焼くと、粘土は熱で熔けて焼き締まり、
冷めると石のようになります。やきものは人間がつくった火成岩といわれ、風化して堆積し
た粘土を窯の中で石に戻したものといえます。日本は火山が多く、噴火等、火山活動がニュー
スになりますが、あの噴火口から噴き出すマグマも 1,300 度以上といわれ、陶芸の窯はたと
えればまさに小さな火山です。


薪窯の焚き口(大戸窯:群馬県吾妻郡東吾妻町)    粘土について
粘土について

粘土のいちばんの特徴は可塑性で、つまんだりくっつけたり、のばしたり、自由にかたちを
つくることができることです。粘土の粒子を拡大してみると、粒子には平らなガラスのよう
な面があり、表面に水の皮膜があるので、水の表面張力によって粒子が互いに強く引きつけ
られています。濡れたガラスの板同士を張り合わせるとくっついてしまい、はがしにくくな
るのも同じことでこれも水の表面張力によるものです。
また、粘土を繰り返し使っているとひび割れやすくなりますが、これは粘土の粒の表面の水
の皮膜がなくなってしまったからで、水を加えて練り直し、しばらく寝かせておくと戻ります。
粘土はさわっているだけで、手のぬくもりで表面が乾いてきます。作品を手早くつくるのも
可塑性を失わないポイントです。

 水簸(すいひ)で粘土を集める
身近にある山や空き地の粘土質の土を集め、水を加えてよくかき混ぜます。しばらく経つと、
礫や砂は沈殿し、草木片、腐葉土などが浮かび、にごり水ができます。このにごりの正体は
粘土です。このにごり水だけを他の容器に移し、さらに放置するとにごりの中の粘土はほと
んど沈殿し、上ずみ液はきれいになっています。この上ずみ液を流すことで、沈殿した粘土
を集めることができます。この方法は水簸といわれ、非常に細かい粘土を精製するのに利用
します。土の成分にもよりますが、工夫次第でほとんどの場合、やきものの原料として利用
できます。実際にやってみると、苦労する割に集まる粘土は少ない大変な作業です。良質な
粘土を探すのは大変ですが、原料からからやきものづくりに取り組むこともできます。
今回の「練り込み」で使う粘土は、窯業の専門店でブレンドされた「白水簸」で、信楽の粘
土がベースの焼き上がりの白い粘土です。

4
陶芸の基礎知識
 粘土の収縮
粘土は、乾燥するときと、焼成されるときに 12 ∼ 15% 程度収縮します。
乾燥するときは、粘土の粒子をとりまいている水分が蒸発し、粒子が互いに接近するためです。
焼成による収縮は、粘土に含まれる珪酸分が、媒熔原料と結合してガラス化し浸透するため
です。

 もう少し専門的に粘土について

土のなかの粒のうちで、大きさ(粒径)が2mm 以上のものを礫(小石)、それ以下のものを
土粒子といいます。土粒子はさらに 2∼0.2mm のものを粗砂、0.2∼0.02mm を細砂、0.02∼

粘土について
0.002mm をシルト、0.002mm 以下のものを粘土と区分されています。
ですから粘土の粒子を見るためには、電子顕微鏡が必要で、さらに小さい粘土粒子は 0.002 μ
( ミクロン=1千分の1mm ) のものもあります。タバコの煙のなかの粒子が 0.1 ∼ 0.01 μと
いわれていますので、粘土粒子がいかに小さいかが分かります。
またやきもので使う粘土の化学成分については、簡単に言えばアルミナ*と珪酸と水で、いわ
ゆるこのような化学成分の粘土(粘土鉱物)を多く含んだ土がやきものに適しています。
*アルミナ(Alumina) 酸化アルミニウム。アルミニウムを強く熱して得る白色の粉。

 さらに粘土鉱物について

やきもの(窯業原料)で使う粘土鉱物の代表的なものは、珪酸塩鉱物のカオリナイト 
(Kaolinite:Al4Si4O10(OH)8)です。外観は白色の塊状∼土状ですが、電子顕微鏡で見ると六角
板状の結晶になっているそうです。
長野県の真田町にかつてろう石を採掘していた鉱山があります。そこにカオリナイトがある
と聞き、原料からやきものづくりに挑戦しようと、生徒と採集に出かけたことがあります。
採集した一部を国立科学博物館に送り、鉱石の鑑定と分析を依頼したところ、「石英を多く含
むカオリナイト」との回答があり、さらに「窯業原料として使えるとは思われますが、恐ら
く可塑性に乏しく成形に苦労すると思います。粉砕など処理法に工夫が必要でしょう。」とア
ドバイスもいただきました。鉱石をハンマーでたたき粉砕、精製しましたが、粘りがなくヒ
ビが入りやすいもので粘土らしくはなりませんでした。それでもなんとか成形し、透明釉を
かけて焼くと、純白の磁器のようになりました。

カオリナイト(長野県小県郡真田町 信陽鉱山)と作品

5
1-3 道 具
1−10  木ゴテ・ヘラ各種 おもに皿や鉢などの形を広げて整えたり、表面をなめらかに
6 7 8
陶芸の基礎知識

1      仕上げるのに使用。

  4・5  細工ヘラ 細かな部分の作業に使う。作品に合わせて使い分ける。

    8  柄ゴテ① 壺、徳利などの袋物の内側をふくらますなど、成形するときに使用。
2 3
9・10  柄ゴテ② 作業台やロクロに貼りついている粘土をはがすのに便利。

   11  なめし皮 成形時、器の口縁をなめらかに仕上げるときに使う。粘土を挟むように
10
     なでるとあっという間に仕上がるスグレモノ。
11    12  スポンジ 主にロクロ成形の時に作品の中に溜まった水を吸い取るのに使う。
12


   13 クレイカッター(ワイヤー) 粘土を切りはなすのに使う。30cm、50cm と2種類
13
18      の長さがある。
14    14 糸 主にロクロ成形の時に作品を切り離すのに使う。

  具

   15 剣先(ナイフ) 粘土板をカットしたり、作業工程ではば広く使える。
17    16 針 あたりをつけたり、粘土をカットするのに使う。

15 19 17−18 弓 器の口縁の高さをそろえたい時などに切るために使う。
     18 は糸鋸の刃を針金に変え、大きな弓として使用している。
16 20 19−20 削りカンナ 高台を削り出す時などに使う。

21−25 タタラ板(タタラづくり用)
     粘土を同じ厚さにスライスしたり、のばしたりするときに使う。2枚を組として
     使う。21 は1mm 厚、22 は3mm 厚、23 は5mm 厚、24 は7mm 厚、25 は
     8mm 厚。

21 22 23 24 25

26−28 紙筒(タタラづくり用)
     心材として粘土を巻きつける時に使う。

26 27 28 29−30 のべ棒(タタラづくり用)
      のばし棒、粘土を均一ににのばすときに使う。
29
   31  曲尺(さしがね) 直角定規
30

31

6
   32  電球型(タタラづくり用)

陶芸の基礎知識
32      茶碗や小鉢づくり用の型。粘土がこびりつかないように電球に靴下をかぶせてい 
     る。

33 33−35  木型各種(タタラづくり用)
     角長皿、四角中皿と小皿用の型、丸皿用の型。

35
34    36 スポンジ(タタラづくり用)
36      木型を使った皿づくりの時、縁を一気に持ち上げることができるすぐれもの。座布
     団のクッションとして、100 円ショップでも手に入る。

   37 手ロクロ(径 22cm)


     机の上で使う回転台。さまざまな工程で使う。


39

  具
38
   38 手ロクロ(径 45cm)
     ひもづくり、タタラづくりはもちろん、ロクロ成形もできる。        
     トルクが強く、慣れるととても使い易い 。
37
   39 カメ板
     作品をロクロの上に置いて使用。

40−42 はかり各種
     顔料や粘土の重さをはかるので練込みでは必需品。
41

   43 乳鉢と乳棒
     顔料を擂るのに使用。
40

42

43

コ  手は清潔に !?
ラ 粘土には、土壌菌というバクテリアがいます。粘土の可塑性に
ム も貢献しているありがたい微生物ですが、バイキンです。作業
が終わったら、石鹸で手を洗いましょう。

7
1-4 土練り
(1) 荒練り
陶芸の基礎知識

この部分をやや前に押し込む
土練り

この部分で押し込んでいる
荒練り(荒もみ)は、粘土のかたさにむ
らがないように、均質にすることが目的
です。 眼
粘土をのばして、たたみこみ、再びのば
すことをくり返す練り方です。

つの

種類の違う粘土を合わせること 羊の顔のようです。
もあります。

① ② ③ ④

両手をそろえ、奥から粘土を回 粘土を起こして、折り畳むうよ 前から見たところ。前方に押し 長くのびた粘土を、互い違いに


転させる。 うに、身体を乗り出し、やや前 込むように、腕に体重をのせる 折り畳み 90 度回転させ、①か
方に押し込む。 と楽に練れる。 ら繰り返す。

8
(2) 菊練り 5㎏弱の粘土で練習するとや
粘土の回転軸

陶芸の基礎知識
りやすい。慣れてくると 10
㎏以上でもできるようにな
る。
回転方向

粘土が回転して動くので、
菊の花びらのような模様がで
左手で押し込む部分。 きる。

土練り
菊練り(ねじりもみ)は、粘土の中に
残っている空気の粒を抜くのが目的で
す。空気の粒が粘土の中にあると焼い
た時に膨張して、作品が壊れてしまう
からです。
菊練りを 70 回繰り返し、最後に手の
間隔を広げるようにしながら砲弾の形
に粘土をまるめます。上下を逆にして、
さらに 70 回練ります。

うまく練れると、空気の
粒がつぶれる音が聞こえ
ます。
右手は粘土を起こす、左手で粘土の上半分を前方に押し込む。

① ② ③ ④

手の親指を重ねるように構え、 左手の手のひらで粘土の上半分 右手を 45 度回転させて、粘土 ②③の繰り返し。粘土が回転


右手で粘土を起こす。 を前方に押し込む。力を入れす を持ち換え起こす。手を回し起 し、菊の花びらのような模様
矢印は前方に押し込む部分。 ぎると粘土がつぶれてしまう。 こすことで粘土が回る。 ができる。

9
1-5 成形について
(1) 手びねり
陶芸の基礎知識

茶碗各部の名称を 口縁 見込
覚えよう。



ム 腰
高台
成形について

最初に粘土の団子を用意します。この粘土の団子の大きさで作品の
大きさが決まります。200 ∼ 300g 位で湯飲みや茶碗、400 ∼ 500g 横に広げるだけで
位で中鉢になります。 なく、上に上に背
実際に手びねりで粘土をのばすと、最初のうちは横へと広がってし が高くなるように
まうことが多く、背を高く、上にのびるように意識しながら作るよ
うに心がけます。

作り始めは手の上で
回しながらのばす
腰の部分をしっかり
のばす

親指と中指・薬指で粘土をはさ 粘土を均一の厚みにのばす。 形が完成、すこし乾燥(生乾き) カンナで削り仕上げをして、


んでのばす。 腰の部分が厚くなりやすい。 させ、ひっくり返してひも状の 成形終了。
粘土を底につけ、高台をつくる。

10
(2) ひもづくり

陶芸の基礎知識
① 粘土を手の中でころが
すようにひも状にする。 ② 作業台の上で転がしな
がら、さらにのばす。

③ ④

成形について
粘土のひもをつくり、一段一段積みあげ、自由
な発想で形をつくることができます。
ひもの粘土の色を変えながら積み上げることで
「練り込み」に応用することも可能です。

ひもをねじりながら積む。 高く積み上げる時は、少
し乾かしてから積み上げ
る。

底の粘土を用意する。 粘土のひもは、一回りごとにち 親指と人差し指で外側、内側の 角瓶の成形終了。


ぎり、積み上げるのが基本。 粘土をよくのばし密着させる。

11
(3) タタラづくり スライスはタタラ板を両側に積み重ねて置き、
陶芸の基礎知識

クレイカッター(ワイヤー)を使い、①②③の
タタラづくりとは、粘土を薄くスライスしたり、の 3つの動作を同時に行う。
べ棒で押しつぶし板状にし、曲げたり、くっつけた
りしながらつくる方法です。また、粘土はすこし乾 ③
かす(生乾き)と、木工の板のように組んだり貼り ① ①
合わせてつくることもできます。

② ②
  
成形について

①親指でタタラ板とワイヤーを押さえる。
②ワイヤーを横に強く引っ張る。
③手前に引いて粘土をスライスする。

布で粘土はさむ。粘土の
向きを変え繰り返す。

丸皿をつくる

粘土の両脇に5mm のタタラ板 円形の外型を用意し、まわりを スポンジの上に内型を置き、押 縁の仕上げをすれば成形終了。


を積み、ワイヤーでスライスし、 切り抜く。 しこむ。スポンジの弾力で、縁
5mm の粘土板をつくる。 粘土が作業台にくっつかないよ が持ち上がり、丸皿ができる。
うに布を敷いておく。

12
220mm 以上
湯呑みをつくる

陶芸の基礎知識
① 底用 本体 ( ボディ ) 用

底の粘土と本体(ボディ)の粘土を用意
します。本体の高さは好みで決めます。

② ③

成形について
タタラづくりで湯呑みをつくります。 今回使
用している心材の円周は 220mm なので、ス
ライスした粘土はそれ以上の長さが必要です。

紙筒に新聞紙を巻き、その上に粘
底の粘土を貼り合わせ、剣先
土の板を巻きつけています。
(ナイフ)で切り取ります。
貼り合わせるところに、接着剤と
して、ドベ(泥状の粘土)や水を
ぬります。

スライスした粘土にはワイ
コ 貼り合わせたつなぎ目を指やヘラなど
ラ ヤーの跡が残るので、模様
でしっかりくっつけます。
ム として利用することもでき
ます。厚めにスライスし、
取っ手をつければ、コーヒーカップが
のべ棒でつぶすと、跡が消
完成です。
え、土もしまります。
「練り込み」は成形する前の段階で模様
はさむ布を濡らすと、粘土
を組んでおきます。練習しコツをつか
が水分を吸い込み、柔らか
んでください。
くなります。

13
(4) ロクロ成形
陶芸の基礎知識

ロクロ挽きでできるのは上の
ボディだけなので、底の高台
は少し乾かして(生乾き)か
ら削りだします。
成形について

電動ロクロで作品をつくると、みるみるうちに粘土が伸びて、作品ができます。しかし実際やってみ
ると、イメージ通りにはならなくて難しさを実感します。やきものは「土錬り3年、ロクロ 10 年」
といわれ、成形の中でも難しい技術で、ねらい通りの作品が作れるようになるには少し時間がかかり
ます。
ロクロ成形後、乾燥させます。さわっても形がゆがまない程度(生乾き)になったら、作品の裏を削
ります。削りは、できるだけ削る量が少なくなるように、ろくろ挽きのときにしっかりと粘土をのばし、
一削り分を残して切り離すのがベストです。何度も練習してコツをつかんで下さい。

粘土をターンテーブル ( 右回転 ) 親指で粘土を広げ、次に指をか 口の仕上げ。高さを揃えて切る なめし皮をあてて、口をなめら


の上に置き、中心に入れる。 えて、親指と中指・薬指で粘土 時は弓を使う。 かに仕上げる。
をはさみ、上にのばす。

14
陶芸の基礎知識
成形について
徳利など袋物がねらい通りにできれ
ば、風船挽き・ドーナツ挽き・蓋も
徳利は、背の高い湯呑みをつ ふくらみをつける時は、柄ゴ のから急須まで、さまざまな形に挑
くり、底の部分を仕上げ、口 テを使います。 戦できます。
をすぼめます。 柄ゴテの位置を感覚的につか
めるまで練習が必要です。

糸で切り離し、作品を移動し、 作品をロクロの上に伏せて置き、 削りカンナの角をうまく利用し 成形終了


乾燥(生乾き)させる。 粘土で固定する。針で削り出す ながら、高台の外側と内側を削
高台の線(あたり)をつけている。 りだす。
    

15
1-6 釉薬について
釉薬とは、やきものの表面をおおっている薄いガラス状の皮膜で、やきものに光沢や色
陶芸の基礎知識

石灰系透明釉(三合)
 酸化焼成
彩を与え、水の浸透をさまたげ、よごれの付着を防ぎます。また、釉薬は美しく見せる
美的働きをもち、原料の選択と配合により、組成をかえることによって、透明釉、艶消
し釉、色釉、結晶釉等いろいろな種類のものをつくることができます。「練り込み」で利
用する釉薬は、素地の色土で模様を組んでいるので、透明釉がメインです。

釉薬の組成
︵有田上石︶

︵赤津貫入土︶

︵丸二︶

︵丸二︶
磁土

半磁土

耐熱耐急冷土

信楽水ひ土
釉薬にふくまれている最も重要な成分は珪酸で、これを酸性成分といいます。またアル
ミナも、釉薬には欠かせない大切な成分で、これを中性成分とよびます。
さらに、この二つの成分のほかに、鉛、ソーダ、カリ、マグネシウム、亜鉛、バリウム、
カルシウムなど媒熔の働きをする成分があり、これを塩基成分といいます。どの塩基成
分を調合するかにより熔融する温度が変わります。
釉薬について

釉薬はこれら酸性成分(珪酸)と中性成分(アルミナ)と塩基成分の三つが結びついて
できた、ガラスの一種であるといえます。

代表的な透明釉の調合例
(熔融温度 1,200 度)
組成
長石…36.0% 珪酸…64.2%
石灰石…17.8% アルミナ…10.9%
亜鉛華…6.6% 酸化カルシウム…11.0%
カオリン…8.4% 酸化カリ…7.0%
珪石…31.2% 酸化亜鉛…7.3%

釉がけ(流し掛け)

16
釉掛け
釉掛けをするまえに、作品にほこりなどがついていると釉薬をはじいてしまうことがあるので、

陶芸の基礎知識
絞ったスポンジ等で拭いておきます。

釉薬について
湯呑みや碗ものの釉掛けは、釉薬を湯飲みの 中の釉薬をこぼし、器を下向きに持ち換え、 そっと持ち上げて、湯呑みの釉掛けが終了。
3分の1位流し込む。器をかたむけてながら 底の部分に釉薬が付かないように注意しなが
釉薬をこぼさないように器の中をめぐらせ釉 ら浸す。
薬を付ける。

釉ばさみをつかったお皿などの釉掛けでは、 静かに釉薬に沈める。 静かに持ち上げる、釉薬のしずくが残らな


まず作品をしっかりとはさむ。 いように注意する。

17
釉掛けの仕上げ
陶芸の基礎知識
釉薬について

釉薬が作品の裏に付くと本焼きの際、釉薬 同様に硬くしぼったスポンジで拭き取ってい 底の部分に、あらかじめ撥水剤をぬり、釉薬


が熔けて窯の中で棚板にくっついてしまうの ます。 がつかないようにすることもできます。
で、底の部分に付いた釉薬は、ブラシでこす 施釉後に作品を触ると釉薬がはがれやすいこ
り落としておきます。 ともあり、大きな作品やお皿等には事前に撥
水剤をぬって施釉します。

コ 水モレにシリコン !?
ラ 本焼きのあと、作品を実際に使い始めると、ジワジワと
ム 水漏れすることがあります。
もともと陶器は吸水性があるので、使い始める前に、米
のとぎ汁で煮沸しておくと水漏れしにくくなります。そ
れでも水漏れするときは、食器用シリコンがあります。
器の中にシリコンを流し込み、3日乾かせば大丈夫です
が、窯で 300℃で焼くと安心です。

18
1-7 窯について

陶芸の基礎知識
古くは薪を燃料に使い「登り窯」等で焼いていましたが、現在では灯油窯、ガス窯、
電気窯が中心です。学校では電気窯を使用しています。

電気窯
電熱線を使用した窯で、煙やガスが発生しないこと、温度調節が容易なこと、
完全な酸化焼成になるなどの利点があり、「練り込み」には最適です。
また、ガスバーナーによる補助焚きもできるので、弱い還元をかけることもで
きます。還元焼成は、窯の内部を酸素不足状態にして焼くことで、酸化された
金属を酸素を奪うことで元へ戻します。焼き方の違いで、釉薬や顔料の発色が
変わってきます。「練り込み」で還元焼成をすると、青系の色はよく発色します
が、赤や黄色は色がとびやすく、注意が必要です。

窯について
電気窯

素焼きの窯詰め。 本焼きの窯詰め。棚板には、釉薬が熔けて 本焼きが終わり、まる一日経ちました。


約 8 時間かけて 700 ∼ 800℃まで温度を上 熔着しないように、コーティング剤が塗っ 作品の裏がざらざらしていたり、尖ってい
げます。 てあります。 るようであれば、砥石ややすりで削り、作
        品完成です。

19

練り込み
基本テクニック

20
2-1 色粘土をつくる

練り込み基本テクニック
 練込み用粘土について
陶芸用の粘土は大きく分けると、白土と赤土の2種類ですが、窯業の専門店では業者がブ
レンドした様々な粘土が販売されています。
「練り込み」で使う粘土は顔料を混ぜていろいろな色土をつくるので、細かい目の白土を用
意します。顔料を使用せずに、白土と赤土を組み合わせて練り込みができます。またより
白く細かい磁器土でもできますが、陶土に比べやや扱いづらいです。この本では信楽の「白
水簸」という粘土を使っています。

色粘土をつくる
「白水簸」山中陶土

 練込み用顔料の種類
練り込み顔料は、現在多くの種類が販売されています。顔料は酸化金
属で、粘土に混ぜる割合でほぼ計算通りの色をつくることが可能です。
また、絵の具のように青と黄で黄緑の色をつくることもできます。
他にも、練り込み用の顔料を固めて陶芸用のクレパスをつくったり、
白絵土に混ぜて色化粧土に使用します。
  
「練り込み用顔料」福島釉薬

21
顔料(陶試紅)を10%含む色粘土を5kg つくる
練り込み基本テクニック
色粘土をつくる

練り込み用の顔料(陶試紅)を 水を加えて乳鉢でする。マヨネー 粘土(白水ヒ)4.5kg を用意する。 粘土をスライスし、顔料を混ぜ


500g 用意する ズぐらいの柔らかさ。    る

粘土に顔料を付ける。粘土をち 顔料が柔らかく扱いにくい。 なじむまでよく練る。 粘土が柔らかい時は、アーチ型


ぎって、乳鉢のまわりの顔料も にして乾かす。 
きれいにとる。

22
顔料(陶試紅)を10%含む色粘土から、顔料を5%、3%、1%含む色粘土を各2kg つくる。

練り込み基本テクニック
(1)10%の色土から5%の色土を2kg つくる。
   10%の粘土を 900g に、白土を 1,100g 追加し練る。
   計算式(900+ n ):100=100:5

(2)10%の色土から3%の色土を2kg つくる。
   10%の粘土を 540g に、白土を 1,460g 追加し練る。
   計算式(540 + n ):60=100:3

(3)10%の色土から1%の色土を2kg つくる。
   10%の粘土を 180g に、白土を 1,820g 追加し練る。
  計算式(180 + n ):20=100:1

色粘土をつくる
粘土を用意。 それぞれを薄くスライスし 荒練り 菊練り
に重ねる。 

奥から、10%、5%、3%、1%  粘土は、乾かないようにビ 
の粘土。 ニール袋にしまい、ラベル 
を貼っておく。

23
2-2 色見本をつくろう
練り込み基本テクニック

練込みの作品をつくる前に、10%、5%、3%、
1%の顔料を含んだの色見本をつくってみま
しょう。
黒い色土のドベ(ドロドロにした粘土)を使い
ます。接着と色土の境に黒い筋をつけるのが目
的です。
色見本をつくろう

色粘土(陶試紅)10%、5%、3%、1%、
と白粘土を用意する。

右から色粘土 10%、5%、3%、1%、 ひも状の粘土の両側にタタラ板8mm 8mm の厚さにのびた粘土。


白粘土で 10cm 程度のひも状にのばす。 をおき、粘土のばし棒をころがし、粘
土をのばす。

24
練り込み基本テクニック
黒い色土のドベ(ドロドロにした粘土) 黒ドベを筆で粘土にぬる。接着剤にもな 順番に積み重ねる。
を用意、乳鉢ですっておく。 る。

色見本をつくろう
すべて積み終わったところ。 タタラ板を使い、7mm にスライスする。 スライスした粘土をはがす。

形を整え成形終了。 素焼き後に、透明釉をかけたところ。 1250℃で本焼き、完成。

25
色見本
M460 ピンク         P40 黄           M120 黄         
練り込み基本テクニック

M6000 トルコ青       T505 濃々青         T9 赤茶 


色見本をつくろう

M55 グリーン        T500 ピーコック       M700 黒

白い土にするために、白の顔料(ジルコン)を混ぜて色見本をつくりましたが、色はほとん
ど変わりません。白色は 白水ひ の粘土をそのまま使っていますが、顔料を多く含ませる
時は、収縮率を合わせるために白の顔料を混ぜた方が歪みやひび割れは少ないです。

コ  裏技、レンジでチン !?
ラ 作品は自然乾燥が原則ですが、時間が足りないとドライヤーを使い乾燥させること
ム があります。さらに急ぐときは電子レンジを使います。短時間(30 ∼ 60 秒)温める
と作品から湯気があがるので、冷まして様子をみながら繰り返します。電波(電磁波)
で水の分子の振動させることで熱を持たせるので、壊れることもありますよ。

26
2-3 マーブル模様 

練り込み基本テクニック
2色の粘土を使いマーブル模様をつくります。
菊練りがうまくできないときれいなマーブル模様になりません。しっかりと菊練りの練習をしましょう。

まずしっかりと とりあえず、菊練りを
粘土を密着させ 10 回したところです。
ます。 表面はこんな感じです
が、切ってみると中に
はしっかりとマーブル
模様ができています。

マーブル模様
菊練り 10 回でスライスしたところです。 菊練り 20 回でスライスしたところです。 菊練り 30 回でスライスしたところです。
マーブルケーキのような感じです。 マーブルも細かくなっています。 マーブルも細かくなりすぎてしまいました。
菊練りはすごい威力と感動します。

コ 人間国宝・松井康成は、マーブル模様をつくる時は菊練りは 21 回と決めていたそう
ラ です。理由は 20 回だと模様にムラがありすぎる、22 回だと模様が細かくなりすぎる
ム からだそうです。フムフム。

27
① マーブル模様の角皿をつくる
練り込み基本テクニック

型を使い、マーブル模様の角皿
をつくります。

5mm のタタラ板を粘土の両側 スライスした粘土をはがす。 粘土の板は汚れたり、くっつい


に置いて、ワイヤーを外に引っ たりしないように、布の上に置
張りながら、親指でタタラ板を く。
マーブル模様

押さえ、手前に引く。

外型を使いナイフで回りを切り 外型をはずす。 内型を中心に置く。


取る。

スポンジの上に移動。 内型を押し込むと、角皿の縁が スポンジの上から移動し、内型 成形終了


一気に持ち上がる。 をはずす。

28
② マーブル模様の小鉢をつくる

練り込み基本テクニック
マーブル模様の粘土を使い小鉢を
つくります。

マーブル模様
電球の型を用意する(電球には マーブル模様の粘土の板を電球 少しずつ、丁寧に押さえる。 電球型の合わせて丸くなった。
靴下をはかせてある)
。 の型にかぶせる。

余分な粘土を切っているところ。 針で切り取り線をつけ、切り離 そっと型からはずす。 底と口の部分を仕上げて、成形


す。 終了。

29
2-5 ストライプ模様
① ストライプ模様の角皿をつくる
練り込み基本テクニック

5㎜のタタラ板を両側に積み重 ワイヤーを外に引っ張っぱり、
2色の粘土を用意する。
ねて置く。 親指でタタラ板を押さえながら、
手前に引いて粘土をスライスす
る。
ストライプ模様

スライスした粘土に接着剤とし 積み重ねた粘土を横に置き、再 スライスした粘土をはがす。粘 粘土の縁を指で押持ち上げて、


てドベや水をぬり、2色の粘土 びスライスすると、ストライプ 土がやわらかく、模様が壊れな 角皿の成形が終了。
を交互に積み重ねる。重しをの 模様の粘土の板ができる。 いように、粘土を板にはさんで
せ2∼3日ねかす。 移動。

型を使って角皿をつくる。

マーブル模様の角皿と手順は同 スポンジの上で粘土を押し込み、 角皿の完成。


じ。 弾力を利用し縁を一気に持ち上
30 げる。
② ストライプ模様のコップ・湯呑みをつくる

練り込み基本テクニック
5mm のタタラ板でスライスし 曲尺の向きを変え、切る。長さ 底に使う 5mm の粘土板を用意 s

ストライプ模様
た粘土を用意し、曲尺をつかい、 は 約 250mm、 高 さ は 好 み で、 する。
粘土を切り取る。 70-100mm 位 が 使 い 易 い サ イ
ズ。

心材に新聞紙を巻き、粘土を巻 粘土が長いので、針で余分な粘 貼り合わせた部分をしっかりつ 底の粘土の上にのせる。


きつける。粘土に直接ふれない 土を切り取り、粘土がやわらか ける。
ように布を持っている。 いのでそのまま接着する。

ナイフで余分な粘土を切り取る。 紙筒を先ずぬき、新聞紙を丁寧 周囲や口、中をコテで仕上げ成


にはがす。 形終了。
31
応用テクニック
練り込み

「角皿(市松模様)」 Y.H
32
3-1 ストライプ模様の花入れをつくる(タタラづくり∼ロクロ成形)

練り込み応用テクニック
タタラづくりでストライプ模様の長めコップをつくり、ロクロの上で胴をふく
らませ花入れをつくります。ロクロが回転しているので、模様も自然に流れます。

ストライプ模様の花入れ
背の高いストライプ模様のコッ ロクロ挽きしやすいように筆に 内側に水がたまってしまったと
プをつくる。 水を含ませ、外と内側をなでる。 きには、コテの先にスポンジを
つけて吸いとる。

ストライプ模様はとくに
タ テ 割 れ し や す い の で、
広げる時には注意が必要
です。

一度、全体を絞るようにしめて 柄ゴテを使用し。胴のふくらみ
から、口のすぼめる部分にあた をつける。
りをつけます。

33
練り込み応用テクニック

ロクロ挽きが終わったところ、 急ぐ時はドライヤーを使い、表 表面がしっとりと乾いて(生乾 うっすら模様がみえてきたら削


回りに手ドロ(ドベ)がついて 面を乾燥させる。
(自然乾燥の方 き)になったら、削りカンナで りをやめ、作品を完全に乾燥さ
ストライプ模様の花入れ

模様は隠れている。 がベスト) 手ドロを削る。 せる。

「練り込み」の失敗で意外と多い
のが、削りの時です。
粘土は乾いたときがいちばんも
ろく、欠いてしまったり、削り
ながらつい手をすべらせ、落と
してしまうこともあります。注
意しましょう。

削りの仕上げは、ヤスリ掛け。 最後に削ったカスがのこらない
スチールウールを使い模様を削 ように、刷毛や筆できれいには
りだす。 らい、成形終了。

粘土を円柱状にし、より球形にふくらますためには粘土の厚みの調整が必要です。

ラ 底の部分、口の部分は薄く、ボディの中央になるほど厚みをつけた粘土を用意します。

ム 模様が流れないようにするには、ロクロを逆回転にします。右回りで 10 回転挽いたら、
左回りで 10 回転挽いて、流れた分を元に戻します。理論的には可能ですが…。

34
3-2 市松模様の角皿をつくる

練り込み応用テクニック
ストライプ模様を組んだものをスライスし、市
松模様を組むことができます。
作品の大きさに応じて、合板で型を用意してお
くと便利です。

市松模様の角皿をつくる
黄と緑のマーブル模様の土と白
制作: N . M
土のストライプ模様で組んだ粘
土。

タタラ板を使いスライスす スライスした粘土を市松模様 組んだ模様の周りに緑の粘土 圧着。重石を置いて乾かない


る。 になるようにずらしながら組 で縁をつける。 ようにビニールで包み、2∼
む。 3日ねかせる。

35
練り込み応用テクニック

組みあがった粘土。 タタラ板を使い粘土をスライ スライスした粘土を布の上に


スする。 置いて、スポンジの上に移動。
市松模様の角皿をつくる

模様の大きさに合わせて用意 布ごと移動し、型を外す。 成形終了


した合板の型を使い、押し込
む。

コ  タタラづくりは歪む ! ?
ラ 成 形 が 終 了 し て も 安 心 で き な い の が タ タ ラ づ く り で す。 乾 燥 中 に 歪 ん だ り、
ム 割 れ て し ま う こ と が よ く あ り ま す。 成 形 中 に、 粘 土 を し っ か り 叩 い て 締 め て
お く、 乾 燥 は ビ ニ ー ル を か ぶ せ て ゆ っ く り 時 間 を か け て 乾 か す な ど 工 夫 し て
も焼くと歪んでしまうことはあります。あとは火の神様に祈るだけ…。

36
3-3 クマの顔をつくる

練り込み応用テクニック
金太郎飴の金太郎の顔をつくるように、動物の
顔を組み、ベースになる粘土に埋め込んで湯呑
みや角皿、小鉢づくりに挑戦です。
日本では飴細工ですが、古代ローマではガラス
のトンボ玉の技法で人面モザイクがあり、工程
も似ているので参考になります。

クマの顔をつくる
瞳用に黒土のひもをつくる。
制作: Y . H

切断には弓が便利。 白眼の厚さを 2mm にするた の べ 棒 を 使 い 2mm に の ば のばした白土の上に黒土のひ


めにタタラ板を用意。 す。 もをおき、巻く。

37
練り込み応用テクニック

黒土のひもが一周巻いたとこ 2等分に切断する。 両眼ができた。 鼻用の黒土のひもを用意す


ろで、余分な白土は切る。 る。
クマの顔をつくる

口の部分の黄色の土を用意 鼻を埋め込むために切り込み 顔用の青い土を用意する。 口の部分の形に合わせ、弓で


し、粘土と水平に弓をあてる。 を入れる。 切り抜く。

鼻の向きを確認し埋め込み、 眼の部分を切り抜く。 眼を埋め込む。 反対の眼も同様に切り抜き、


接着する。 埋め込む。

38
練り込み応用テクニック
顔らしくなってきた。 弓で切って確認。 それぞれのパーツが透き間な 耳用に黄色の土でひもをつく
く埋め込まれた。 る。

クマの顔をつくる
耳のひもを接着し、クマの顔 湯呑み用に白土のベースの粘土に埋め スライスし、紙筒に巻きつける。
が完成。 込む。 内側と外側に顔があるのが練り
込みの特徴。こちらが内側。

底をつける。 クマの湯飲みが完成。 角皿や小鉢にもクマの顔を使


う。

39
しょうれつもん

3-4 「嘯裂文」(象裂文)の壺をつくる
練り込み応用テクニック

人間国宝・松井康成の嘯裂文にチャレンジです。
﹁嘯裂文﹂の壺をつくる

表面の粘土のみ可塑性をなく
し、内側からひろげることで、
亀裂ができます。

練り込みでつくった素地の表面につけるマチエールです。櫛目を入れ、ロ
クロでふくらませることで、亀裂をいれます。


ラ 表面の可塑性がなくなる !?

珪酸ソーダ(水ガラス:Na2O・nSiO2・mH2O)は石鹸の
添加剤として使われるなど、粒子を分散させる特性があり
ます。
鋳込みなど、液状粘土をつくるときにも使うので、陶芸材
料店で手に入ります。

40
練り込み応用テクニック
粘土を用意。丸くふくらませるために 心材に巻きつける ロクロの中心に入れる。 
中心部分に厚みをもたせる。 

﹁嘯裂文﹂の壺をつくる
針を使い、櫛目模様をつけ始めたとこ 写真では針を使用していますが、櫛を使 霧吹きを使い「珪酸ソーダ」の水溶液
ろ。 い模様をつけることもできる。 をふきつける。 

表面に亀裂を入れる方法は、珪酸ソーダ以外
にも、ガスバーナーでできます。
櫛目を入れた後、バーナーの炎を1∼2秒あ
てると表面が乾き、ふくらますと嘯裂文にな
ります。
より球形にする場合は、タマゴ型に挽き、ク
シ目を入れます。表面にロクロ目が残ってい
る時は、ヘラなどで消しておきます。

柄ゴテをつかい、ふくらますと表面 表面にはふれずに仕上げる。
に亀裂が入る。

41
3-5 オリジナル模様の角瓶をつくる
練り込み応用テクニック

ガラスの角瓶を心材に使い、面ごとに組
み立て、貼り合わせることで、成形する。
オリジナル文様。
オリジナル模様の角瓶をつくる

制作: M . K

黄、白、グレーの3色の色粘土を用意。 5mm のタタラ板を重ね、スライスする。

グレー、白、黄の順で重ねる。 重ねた粘土を立てて(90 度回転)、2分割し、 板で両側から、圧着する。


ストライプ模様の幅を広げる。

42
練り込み応用テクニック
余分な粘土をスライスして取る . 3色の縦縞文様。 切断した面の粘土が流れるように、幅の広
いタタラ板(2−3mm)を使い、粘土を
切断する。 

オリジナル模様の角瓶をつくる
互い違いに接着させる。(同方向の場合は スライスしたところ。
鶉手になる)

寸法に合わせて、パーツをそろえる。 接着する。 形をそろえる。

43
練り込み応用テクニック

逆さにして組み立て。心材にガラスの角 慎重に、貼り合わせる。 内側は、心材をはずしてから、コテ等で


瓶を使用。 仕上げる。
オリジナル模様の角瓶をつくる

最後に口の部分に白い粘土のパーツを接 成形終了
着する。

 コツのコツ

ラ タ タ ラ づ く り は、 イ メ ー ジ し た 作 品 の 形 に 合 わ せ た
ム 道 具 を 用 意 し ま す。 型 に 合 わ せ て つ く る 時 は 心 材 や
木 型、 紙 型、 石 膏 型、 発 泡 ス チ ロ ー ル な ど、 ロ ク ロ
を使う時は球形に合わせ膨らみをもたせた柄ゴテな
ど、 自 分 で つ く っ た り、 身 近 に あ る も の で 代 用 す る
など工夫しましょう。

「鶉手の醤油注しと小皿」

44
3-6 クズ粘土の利用

練り込み応用テクニック
① 角瓶のクズ粘土を利用しながら、練込みの丸皿をつくる

パーツを並べ、黒い粘土をす 金属のボールを台にして、布を 縁の粘土をつける。 成形終了


き間にはめ込む。 かけ、パーツを接着する。
パーツは特に乾きやすいので、

くず粘土の利用
タオルに包んだり、ビニール袋
に入れ管理する。

② クッキーや和菓子の型をつかい、箸休めをつくる

嘯裂文の壺で残った粘土を使い 余った粘土を寄せ集めて、1cm 箸が転がらないように、くぼみ 成形終了


つくったもの。 の厚さにのばす。 をつける。
模様を選び、型でくりぬく。

45
3-7 練り込み作品集
練り込み応用テクニック
練り込み作品集

「不思議な生物」ひもづくり  Y . M 「練り込みの角瓶」タタラづくり  Y . H 「練り込みの壺」ロクロ成形  Y . H

「練り込みの花入れ」タタラづくり M . K

「星座のランプシェード」ひもづくり M . K
46
編集後記

 テキストとしてはふさわしくない作品以上に派手な柄の布をなんとかしたかったのです
が、ありのままの活動記録とあえて繕うことはしませんでした。相変わらず雑然とした陶芸
室では、これまでと同じように生徒が作業をしています。卒業した生徒たちも、この教室に
居場所を見つけてひたむきに制作に打ち込んでいました。この子どもたちのおかげで自分
もここで仕事ができるのだと改めて感謝しています。(ま)
                  

陶芸材料店

福島釉薬(株)東京出張所
埼玉県比企郡玉川村五明 321-2 TEL 0493-65-1498
山中陶土
滋賀県甲賀郡信楽町江田 257-1 TEL 0748-82-0356

練り込み陶芸入門 第 2 版

企画・著・撮影・編集・印刷・製本 関口 正人
撮影協力 白根開善学校 美術同好会 
発行 白根開善学校
平成 21 年7月7日
非売品

群馬県吾妻郡六合村大字入山 1 − 1
学校法人 白根開善学校
白根開善学校中等部
白根開善学校高等部
TEL 0279-95-5311
FAX 0279-95-5315
URL http://www.shirane.ac.jp/

47
練り込み
陶芸入門

48

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