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令和4年度

年次経済財政報告
(経済財政政策担当大臣報告)

-人への投資を原動力とする成長と分配の好循環実現へ-

令和4年7月
内閣府経済財政分析担当
各章のポイント
 第1章 経済財政の動向と課題
我が国経済は、ウィズコロナの取組の下、上向きの動きが継続。今後、感染症による行動変容
や国際経済環境の変化などに適切に対応しつつ、賃金引上げ、官民連携での計画的な投資等を
通じて、経済を民需主導の自律的な成長軌道に乗せていくことが重要。現在、我が国経済はい
わゆるスタグフレーションと呼ばれる状況にないが、継続的・安定的な賃金引上げと需給
ギャップの着実な縮小を進め、賃金と物価がともに上昇していく経済を実現し、デフレ脱却を
実現する必要。経済あっての財政であり、経済をしっかり立て直した上で、官民連携での計画
的な投資等を通じた経済成長の実現、持続可能な社会保障制度の構築、財政健全化を一体的に
推進していくことが必要。
 第2章 労働力の確保・質の向上に向けた課題
一人当たり賃金は、デフレが長期化する中で経済全体の稼ぐ力が十分に高まらなかったことに
加え、労働生産性の伸びに対し十分な分配が行われなかったことなどから伸び悩み。労働生産
性の伸びと物価上昇率に見合った賃金上昇の実現が重要。人口減少に伴う労働投入量の減少が
見込まれる中で、女性や高齢者等の一層の労働参加、すでに就労している者の労働移動を通じ
た一層の活躍促進が必要。また、同一労働同一賃金を徹底し、男女の賃金格差縮小に取り組む
とともに、人への投資を通じた労働の質の向上に向けて、社会人等の学び直しを強化していく
ことが重要。
 第3章 成長力拡大に向けた投資の課題
企業の投資活動は全体として慎重に推移してきたが、官民連携で計画的な投資を進め、脱炭素
化やデジタル化に向けた投資を喚起していく必要。これにより、エネルギー対外依存の低減な
どの社会課題の解決を付加価値創出に結びつける必要。また、脱炭素コストの円滑な価格転嫁
を実現するために、継続的・安定的な賃上げ環境の醸成も重要。デジタル化の推進は、脱炭素
化や地方創生などの社会課題への効果も期待されるが、我が国ではIT人材の量・質の不足が
ボトルネックとなっており、人への投資の強化が不可欠。
⽬次
第1章 経済財政の動向と課題
・・・・・・・・・p1

第2章 労働力の確保・質の向上に向けた課題
・・・・・・・・・p6

第3章 成長力拡大に向けた投資の課題
・・・・・・・・・p11

当資料は、「年次経済財政報告」の説明のために暫定的に作成したものであり、引⽤等については、直接「年
次経済財政報告」本⽂によられたい。
1章 第1節 感染症等の影響を受けた実体経済の動向と課題(マクロの動き)
 実質GDPは概ね感染症前の水準を回復。ウィズコロナの考え方の下、経済社会活動を極力継続できるよう取り組
んだことで、2022年以降、個人消費を中心に感染拡大が経済に与える影響は低下(1図)。設備投資は収益改善の
中で持ち直しの動きがみられるものの、感染症前の水準を下回っており、投資拡大が課題。
 2020年に大幅に拡大した家計の貯蓄超過が当面、個人消費を下支えし、賃上げが進む下で個人消費の回復が力強さ
を増していくことを期待(2図)。2000年代以降を通じて貯蓄超過が続く企業部門では、新しい資本主義の下、よ
り積極的な投資が求められる。
1図 GDPとその内訳の回復過程 2図 日本の貯蓄・投資バランスの内訳
(1)実質GDPの推移 (2)輸出の推移
(2019年10-12月期=100) (2019年10-12月期=100) (兆円)
110 110 100
<2022年1-3月期>
日本 アメリカ 日本:101.5 アメリカ:92.3 日本
英国:80.1 ドイツ:99.0 貯蓄・投資バランス(折線)
100 100 家計部門
ドイツ
ドイツ 企業部門
90 90
<2022年1-3月期> アメリカ 50
日本:99.4
80 アメリカ:102.8
ドイツ:99.1
80
英国:100.7
英国
70 英国
70
Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ
(期) (期)
2019 20 21 22 (年) 2019 20 21 22(年) 0
(3)個人消費の推移 (4)設備投資の推移
(2019年10-12月期=100)
110 110 (2019年10-12月期=100)
アメリカ アメリカ
日本 日本
100 100
-50
90 ドイツ 90
<2022年1-3月期> ドイツ 政府部門
日本:99.9
80 アメリカ:105.1 80 <2022年1-3月期>
ドイツ:96.7 日本:95.7 アメリカ:104.8
英国 英国:99.3 英国 ドイツ:96.2 英国:90.9
70 70 -100
Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ 1995 2000 05 10 15 20 (年)
(期) (期)
2019 20 21 22(年) 2019 20 21 22(年)
(備考)(1図)内閣府「国民経済計算」、アメリカ商務省、英国統計局、ドイツ連邦統計局により作成。(2図)内閣府「国民経済計算」により作成。

1章 第1節 感染症等の影響を受けた実体経済の動向と課題(感染症後の家計・企業の動向)
 個人消費は、2022年3月以降、外食や旅行といったサービス中心に持ち直しの動き(3図)。ただし、中高年齢層
(40~59歳、60~74歳)は、25~39歳層と比べてサービス消費は慎重。旅行消費は、団体旅行の持ち直しの動きに弱
さ、出張も総じて弱い(4図)。
 ワクチン接種の進展を背景として、夜間人流の増加から感染拡大への関連が低下(5図)。
 輸送機械や電気・情報通信機械を中心に世界的な半導体不足等の供給制約に直面しており、サプライチェーン強靱化
が課題(6図)。貿易収支の変動には、電気機器や素材産業(原料別製品)の輸出競争力の低下や東日本大震災後の
鉱物性燃料の輸入拡大が影響(7図)。
3図 感染拡大後の個人消費の動向 4図 感染症後の旅行消費額の推移 6図 2021年後半の2020年後半からの生産増加率
(1)消費支出額の推移 (2019年比、%) (%)
0 40
(2016~2018年度比、%) -10 30
20 -20 出張
-30 国内旅行 団体旅行 20
10 財
総合 -40 10
0 -50 0
-60
-10 -70 -10
-80
-20

鉄鋼・非鉄

鉱工業

輸送機械
デバイス工業
機械工業

汎用・業務用

その他工業

化学工業

電気・情報通信
-20 -90

金属工業
生産用

電子部品・

工業
機械工業
-100

機械工業
-30 サービス Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ (期)
-40
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 2020 21 22 (年)
(月)
2020 21 22 (年) 5図 歓楽街の夜間人流増加後の
(2)年齢階層別の消費額推移(サービス) 新規感染者数の増加率 7図 貿易収支の動向
ワクチン接種0割 ワクチン接種率7割程度 (兆円)
(2016~2018年度比、%) 50
(0週からの新規感染者数変化率、%) (0週からの新規感染者数変化率、%) 原料別製品 電気機器 一般機械
10 2.0 2.0
5 40歳~59歳 30 自動車
0 1.5 1.5
-5 25歳~39歳
-10 10
-15 1.0 1.0
-20 -10
-25 0.5 0.5
-30
-35 0.0 0.0 -30 その他
-40 60歳~74歳 医薬品
-45 -0.5 鉱物性燃料 貿易収支(折線)
-0.5 -50
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5(月) 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 12345
(0週に夜間人流が (0週に夜間人流が (月)
2020 2021 2022 (年) 1%増加した後の経過週) 1%増加した後の経過週) 2000 05 10 15 2021 22 (年)
(備考)(3図)株式会社ナウキャスト、株式会社ジェーシービー「JCB消費NOW」により作成。(2)は、年齢階層ごとの2016~2018年度比。(4図)観光庁「旅行・観光消費動向調査」により作成。
2022年1-3月期は速報値。(5図)内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室「新型コロナウイルス感染症対策」、デジタル庁「新型コロナワクチンの接種状況」、厚生労働省「データからわかる-
新型コロナウイルス感染症情報-」等により作成。全国の歓楽街63地点における夜間人流(21時と28時の人流の差)が0週に1%増加したときの1~5週後の新規感染者数変化率。ワクチン接種率は2回目接 2
種状況。破線は90%信頼区間の上限と下限。(6図)経済産業省「鉱工業指数」により作成。(7図)財務省「貿易統計」により作成。2022年の月別データは年率換算。
1章 第2節 原材料価格の上昇とデフレ脱却に向けた展望(原材料価格上昇と国内経済への影響)
 2021年以降の原油価格上昇率は第2次石油危機と同程度(8図)。一方で、我が国の物価上昇率は欧米より低い水準
(9図)。第1次石油危機では、物価と賃金のスパイラル的な上昇につながり、スタグフレーションに(10図)。現
在の景気は持ち直しの動きが続いており、物価上昇率も著しく高い状況ではないことから、いわゆるスタグフレー
ションと呼ばれる状況にはない。
 日本のGDPギャップは依然としてマイナスにとどまるなど(11図)、マクロ経済環境からみた物価上昇圧力は欧米
と比べて弱い状況。我が国経済がスタグフレーションに陥らないためにも、継続的・安定的な賃金引上げと需給
ギャップの着実な縮小により、デフレ脱却につなげることが重要。
8図 原油価格の推移 10図 過去の石油価格上昇時と比較したマクロ経済指標の動向
(USドル/バレル) 足下の
150 実質GDP 実質設備投資
原油価格高騰期 (基準期=100) (基準期=100)
2000年代半ばの 第2次石油危機
アラビアンライトスポット 108% (2020年12月~) 第2次石油危機
原油価格高騰期
上昇 120 足下の原油価格 (1978年第Ⅳ期) 120 足下の原油価格
(2007年4月~
100 第1次石油危機 高騰期(2020年第Ⅳ期) 高騰期
2008年7月) 110
(1972年12月~1974年3月) 110
第1次石油危機
第2次石油危機 154%
50 (1978年12月~1980年7月) 上昇 100 100
370%
上昇
120% 90 2000年代半ばの 90
WTI原油先物
0 上昇 原油価格高騰期 第1次石油危機 2000年代半ばの
1971 75 80 85 90 95 2000 05 10 15 20 22(年) (2007年第Ⅰ期) (1972年第Ⅳ期) 80 原油価格高騰期
80
-4 -2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 -4 -2 0 2 4 6 8 10 12 14 16
9図 消費者物価(総合)の国際比較 (期) (期)
(前年同期比、%)
10 (%)
11図 GDPギャップの国際比較
アメリカ 2
8 アメリカ
1 ドイツ
6 EU
0
4 日本 -1
2 -2
-3
0 英国
-4
-2 -5 フランス 日本
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 5 (月) -6
2015 16 17 18 19 20 21 22 (年) 2015 16 17 18 19 20 21 (年)
(備考)(8図) Bloombergにより作成。アラビアンライトとは、OPECが生産する原油価格の基準となっていたサウジアラビア産の軽質原油であり、1970~80年代まで世界的な原油の代表的指標。
第1・2次石油危機及び2000年代半ばの原油価格高騰期それぞれの期間は、昭和55年の年次世界経済報告を参考に「石油価格が上昇に転じてからその上昇が止まるまで」とした。直近は2020年12月~
2022年6月。(9図)総務省「消費者物価指数」、各国統計により作成。(10図)内閣府「国民経済計算」により作成。(11図)内閣府「国民経済計算」、IMF「World Economic Outlook2021」等に 3
より作成。GDPギャップ=(実際のGDP-潜在GDP)/潜在GDPにより算出。
1章 第2節 原材料価格の上昇とデフレ脱却に向けた展望(物価動向とデフレ脱却に向けた課題)
 デフレ脱却には、名目賃金が物価上昇率と労働生産性の伸びに見合って上昇していくことが重要となるが、名目賃金
の伸びは物価に対し十分ではない(12図)。時間当たり実質賃金の伸びも労働生産性を下回って推移。賃上げを進
め、労働分配率を高めるとともに、交易条件悪化に歯止めをかけることが重要。
 一人当たり賃金の上昇にはベアや賞与の増加が重要となるが、2020年・21年は、ベアは0.1%台にとどまる(13
図)。また、長期間にわたるデフレの経験もあり、企業は賃金決定に当たって労働生産性や物価動向を重視していな
い。データやエビデンスを踏まえ、適正な賃上げの在り方を官民で共有していく必要。
 第2次石油危機では、省エネルギー投資を中心に設備投資が堅調に増加したことで景気への影響も軽微にとどまり、
エネルギー消費効率も改善(14図)。第2次石油危機の経験も参考にしつつ、新しい資本主義の下、官民連携による
計画的な重点投資を推進し、長期に渡り低迷してきた民間投資を喚起することが重要。
12図 賃金上昇率と労働生産性の関係 13図 企業の賃上げ行動 14図 省エネ投資とエネルギー効率の改善
(1)消費者物価と名目賃金の関係 (%)
(1)月例賃金の引上げ率の内訳 省エネルギー関連投資の比率
2.5 (構成比、%)
(前年同月比、%) 6.0
12 2.0 製造業
名目賃金上昇率が 名目賃金上昇率が 5.0
消費者物価上昇率を 消費者物価上昇率と
上回る傾向 同程度若しくは下回る傾向
1.5 4.0
7 全産業
昇給
消費者物価上昇率(総合) 1.0 ベア 3.0
2 0.5 2.0
0.0 1.0
-3 2014 15 16 17 18 19 20 21(年) 非製造業
(%) (2)賃金決定に当たって考慮した要素 0.0
名目賃金上昇率 90
-8 2009 2015 1978 80 82 84 (年度)
80
70 エネルギー消費効率の推移
60 2019 2021 (1973年度=100)
(2)実質賃金の累積寄与度分解 (年) 50 300
(2000年比寄与度、%) 製造業(加工業種)
40 250 全体
30 30 第三次産業
時間当たり 労働生産性 20
20 実質賃金(折線) 10 200
0
世間相場

人材確保・定着率の向

労使関係の安定
昨年の妥協額・率

生産性の向上

物価の動向

税・社会保険料負担の

その他
企業業績

経済・景気の動向

雇用の維持・安定

10 150

0 100
増大

-10 交易条件等
50 家庭 運輸
労働分配率 製造業(素材業種)
-20 0
2000 03 06 09 12 15 18 21 (年) 1973 78 83 88 93 98 03 08 13 18
(年度)
(備考)(12図)総務省「消費者物価指数」、「労働力調査(基本集計)」、厚生労働省「毎月勤労統計調査」、内閣府「国民経済計算」により作成。実質賃金、労働生産性はマンアワーベース。実質賃金
=名目雇用者報酬/家計最終消費支出デフレーター(帰属家賃除く)/雇用者数/労働時間。(13図)日本経済団体連合会「昇給・ベースアップ実施状況調査」により作成。調査時期は各年1月から6月。
各社2つ回答。(14図)日本開発銀行(日本政策投資銀行)「設備投資計画調査」、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」により作成。エネルギー消費効率=実質GDP/エネルギー最終消費(家庭は国 4
内家計最終消費支出/エネルギー最終消費)。
1章 第3節 財政の現状と課題(感染症下の財政政策と中長期的な経済財政運営に向けた課題)
 今回の感染拡大局面では、大規模な経済対策等の策定に伴い、基礎的財政収支(PB)赤字、債務残高対GDP比
が大きく拡大(15図)。名目成長率は大幅なマイナスとなったものの、消費税率引上げに加え、政府の経済支援等
を通じて家計所得が維持されたことや企業の利益総額が増加したことなどを背景に税収はむしろ増加(16図)。
 感染拡大前を振り返ると、デフレ状況ではなくなった2013年以降、名目GDP拡大が債務残高対GDP比の押下げ
に寄与(17図)。歳出改革や歳入増加によりPB要因の押上げ寄与も2000~12年と比べて半分強に縮小。高齢化の
進展や補正予算、消費税率引上げに伴う歳出増加がPBを悪化させる一方、自然増収等を通じて名目GDP拡大が
PB対GDP比の改善に大きく寄与(18図)。経済をしっかり立て直した上で、中長期的な課題である経済成長の
実現、持続可能な社会保障制度構築、財政健全化を一体的に推進することが必要。
15図 国・地方の財政状況 17図 主要国の一般政府債務残高対GDP比変化
①国・地方PB対GDP比変化幅 ②国・地方債務残高対GDP比 ①2000年→2012年 ②2013年→2019年
(対前年度比、%ポイント) (%) (年平均上昇率、%ポイント) (年平均上昇率、%ポイント)
4 270 15 15
試算値 試算値 政府債務残高対GDP比(折線) 政府債務残高対GDP比(折線)
名目GDP 260 250.5 10
2 歳入 10 PB要因 利払費要因 利払費要因
PB要因
250 245.8 5
1.7 5
0 240
226.1 249.1 0 0
-0.8
1.4 230
-2 歳出 -5 -5
220 その他要因
GDPデフレーター要因 実質GDP要因
-4 210 -10 -10
217.9 実質GDP要因 その他要因 GDPデフレーター要因
PB(国・地方)対名目 200 -15

ドイツ

英国
日本

アメリカ

カナダ
フランス

イタリア
-15

アメリカ

ドイツ

英国

フランス
日本

イタリア

カナダ
-6 GDP比の前年度からの -6.6
変化幅(折線)
190
-8 180
2012 15 19 20 21 22(年度) 2012 15 19 20 21 22(年度)
16図 名目GDPと国税収の推移 18図 2013年度以降の国・地方PB対GDP比変化
(兆円) (兆円) (2012年度からの変化幅:対名目GDP比、%ポイント)
570 7 名目GDP要因
557.2 59.9 6 PB対GDP比(2012年度から
60 0.7 0.7 名目GDP増減に伴う歳入要因
5 の変化幅)(折線)
538.5 52.9 550 2.7 税制改正等による歳入要因(消費税要
57.4 4 2.7
因)
国税収
50 3 税制改正等による歳入要因(税制改正
535.5 530 2 1.5 1.6 等その他による要因)
49.8 37.7 1 1.3 歳出要因(社会保障関係支出要因)
1.0
40 523.4 0 -0.8 -1.0
510 歳出要因(非社会保障関係支出のう
-1 -0.6 -0.8 ち公共投資要因)
497.4 名目GDP(目盛右) -2 -0.4 -0.9 歳出要因(非社会保障関係支出のうち
30 490 -3 公共投資以外の要因)
2005 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 (年度) 2012 13 14 15 16 17 18 19 (年度)
(備考)内閣府「国民経済計算」、「中長期の経済財政に関する試算」(2022年1月14日公表)、財務省「租税及び印紙収入決算額調」、OECD.Stat、IMF”World Economic Outlook”により作成。(15図) 5
①2021~22年度は、「中長期の経済財政に関する試算」による試算値、②2021~22年度は、2020年度の値に、それ以降の「中長期の経済財政に関する試算」の財政収支の累積を加算した値。
2章 第1節 成長と分配からみた人への投資の課題
 我が国の実質GDPは約30年間、緩やかな増加にとどまってきたが、労働投入の面からみると、その背景は人口減少
と、完全週休二日制の普及や非正規雇用者数の増加等による一人当たり労働時間の減少。労働時間当たりの実質GD
Pは主要先進国とそん色のない伸び(1図)。我が国は2013年以降、TFPと労働の寄与が高まる一方、資本の寄与
は大幅に縮小し、他の主要先進国との差が拡大(2図)。
 一人当たり名目賃金は伸び悩み(3図)。一人当たり労働時間の減少、相対的に賃金水準が低い女性や高齢者の増加
が押下げ。一方、2013年以降、時給の増加によるプラス寄与が拡大。
 一般労働者(フルタイム)について、女性の時給は総じて緩やかに増加(4図)。男性は全体では2013年頃から上昇
に転じたものの、40代では減少傾向が続く。50代は定年延長等の取組により、2010年代半ば以降緩やかに増加。
1図 主要先進国の実質GDPの推移 3図 一人当たり名目賃金の要因分解
(1)実質GDP (2)労働時間当たり実質GDP
(1990年=100) 207.3 (1990年=100) 161.0 157.0 (1993年比変化、%)
220 170 20
アメリカ 日本 アメリカ 15 時給
200 160 構成比
英国 英国 10
180 フランス 172.7 150 5
160 155.3 140 0
-5
140 150.9 130 153.3 -10
146.7
120 120 -15
-20 一人当たり名目賃金(折線)
100 126.3 110 ドイツ 142.1
ドイツ 日本 フランス -25 一人当たり労働時間
80 100 -30
1990 93 96 99 02 05 08 11 14 17 20 1990 93 96 99 02 05 08 11 14 17 20 1993 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 17 19 21
(年)
(年)
(年)
2図 実質GDP成長率の要因分解(全要素生産性・労働・資本) 4図 一般労働者の時給
(各期間の平均、%) (円) ①年齢階級計 ②男性年代別
3 (円)
全要素生産性(TFP) 3,000 3,000
非ICT資本
40代 50代
2 ICT資本 平均成長率 2,500 男性 2,500

2,000 2,000 30代


1
1,500 1,500
0
1,000 1,000
労働投入量(マンアワー) 女性 20代
-1 500 500
2000-12 2013-18 2000-12 2013-18 2000-12 2013-18 2000-12 2013-18 2000-12 2013-18 1990 95 00 05 10 15 20 1990 95 00 05 10 15 20
(年) (年) (年)
日本 アメリカ 英国 フランス ドイツ
(備考)(1・2図)OECD.Statにより作成。(3図)厚生労働省「毎月勤労統計調査」、「賃金構造基本統計調査」により作成。(4図)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」、労働政策研究・研修機構労働 6
統計データ検索システムホームページにより作成。破線は、2010年以前の方法に基づく系列、実線は2020年の方法に基づき推計した系列。
2章 第2節 人材の活用に向けた課題(人口減少と雇用の動向、雇用形態の多様化と労働参加の促進)
 女性の労働参加の進展により、人口減少の下でも2010年代半ば以降、就業者数は増加(5図)。今後、人口減少や少
子高齢化が本格化する中、マンアワーベースの労働投入量(一人当たり労働時間×就業者数)は、労働参加が一定程
度進んだとしても年率0.6~1.1%程度減少する可能性(6図)。
 労働の量の減少を緩和するためには、女性や高齢者などの一層の労働参加の促進が必要。人口の1割弱程度を占める
不本意非正規雇用者、失業者、就業希望者(7図)に加え、就業時間の増加を希望する短時間就業者(8図)、就業
時間を調整している者(9図)などに対しても、制度の見直しや就労支援を通じ、活躍を促していくことが重要。

5図 就業者数の要因分解 6図 労働投入量の今後のシナリオ 8図 就業時間の増加を希望する短時間就業者


(1990年対比、万人) 女性・就業率要因 (2019年=100) ①人数
1,000 (万人) ②年齢別シェア 65歳以上
110 250 100%
女性・15歳以上 就業者数(折れ線) 機械的な試算期間
100 女性 80% 55~64歳
人口要因
500 中位シナリオ 200
90 60% 45~54歳

0 80 150 男性 40% 35~44歳


70 20%
100 25~34歳
-500 男性・15歳以上 60 低位シナリオ 0% 15~24歳
人口要因
男性・就業率要因 2012 21 2012 21 (年)
50 50
-1,000 2012 14 16 18 20(年) 男性 女性
1990 95 2000 05 10 15 21(年) (年)

7図 就業希望者(現在無業者) 9図 女性の就業調整(2017年、非正規雇用者)
(万人) ①男性 (万人) ②女性 その他 (万人)
500 900 500
就業調整なし(配偶者なし)
800 400
400 健康を維持したい 就業調整なし(配偶者あり)
700
300 就業調整あり(配偶者なし)
600 時間に余裕ができた
300 就業調整あり(配偶者あり)
500 200
400 社会に出たい
200 100
300 知識や技能を生かしたい
0
100 200

50万円未満

50~99万円

100~149万円

150~199万円

200~249万円

250~299万円

300~399万円

400~499万円

500万円以上
収入を得る必要が生じた
100
学校を卒業した
0 0
1992 97 2002 07 12 17 (年) 1992 97 2002 07 12 17 失業している
(年)
(備考)(5図)総務省「労働力調査(基本集計)」により作成。(6図)総務省「労働力調査(基本集計)」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」、労働政策研究・研修
機構「労働力需給の推計―労働力需給モデル(2018年度版)による将来推計―」により作成。中位シナリオは出生中位・死亡中位、経済成長実現・労働参加シナリオ、低位シナリオは出生低位・死亡中位、ゼロ
成長・労働参加現状シナリオの値を参照。(7・9図)総務省「就業構造基本調査」により作成。無業者数には完全失業者数も含まれる。(8図)総務省「労働力調査(詳細集計)」により作成。 7
2章 第2節 人材の活用に向けた課題(多様な働き方と労働移動の促進)
 労働移動の状況について、転職入職率は、30代男性、40代・50代の女性では上昇傾向(10図)。 30代以下の男性や
30代・40代の女性では転職に伴い賃金が増加する者が多い(11図)。正社員間の転職1年後の年収は、49歳以下では
増加しており、転職1年後の年収増加は異業種間転職よりも同業種間の方が高い(12図)。感染症下で正規雇用の転
職希望者が増加(13図)。労働移動を通じ、すでに就労している様々な年齢層の一層の活躍の後押しが今後の課題。
 副業・兼業は、現時点では若年層中心(14図)。成功事例と課題の共有、ガイドラインの普及等を通じ、その動きが
広がっていくことを期待。
10図 転職入職率の推移 12図 正社員の転職前後の年収の推移(2016~2020年)
(%) ①男性 (%) ②女性 ①同業種間転職 ②異業種間転職
20 20 600 (万円) 600 (万円)
29歳以下 29歳以下
転職年 1年後 1年後
500 転職前年 500
15 15 30代 転職前年
転職年
合計 400 400
30代
10 10
300 300

5 5 200 200
34歳以下 34~49歳 50歳以上 34歳以下 34~49歳 50歳以上
40代 合計 40代 50代
50代
0 0 13図 転職希望者数の推移 14図 副業・兼業実施率
2000 05 10 15 20 2000 05 10 15 20 (%) ①男性
(万人) 20
(年) (年) 350 29歳以下 30代
11図 一般労働者間での転職入職者の賃金変動状況(2019年) 300
15
(%) ①男性 (%) ②女性 不詳 10
100 100 250 女性・非正規
減少 40代 50代
28.2 25.7 29.1 34.1 35.7 200 5
80 42.4 80 37.4 41.2 男性・正規 2017 18 19 20 (年)
変わら 150
60 31.6 60 ない (%) ②女性
28.3 35.9 24.8 26.0 20
26.6 29歳以下
40 31.3 40 28.7 100
15 40代
男性・非正規
増加 50
20 41.5 42.0 33.9 20 34.6 40.3 37.8 女性・正規
26.1 28.4 10
50代
0 30代
0 0
2013 14 15 16 17 18 19 20 21 5
29歳以下 30代 40代 50代 29歳以下 30代 40代 50代
(年) 2017 18 19 20 (年)

(備考)(10・11図)厚生労働省「雇用動向調査」により作成。転職入職率=転職入職者数÷常用動労者数。転職入職者は、入職者のうち入職前1年間に就業経験のある者。(12・14図)リクルートワークス研
究所「全国就業実態パネル調査」により作成。個票による特別集計を行い、集計に当たってはウエイトバックを行っている。12図は2016年から2020年の間に転職した者の年収状況について集計。(13図)総務省
「労働力調査(詳細集計)」により作成。

2章 第3節 労働の質の向上に向けて(男女間賃金格差・非正規雇用と労働の質、リカレント教育促進)
 男女間の賃金格差の背景には、①女性の方が正規雇用、高い職位のシェアが少ないこと、正規の平均勤続年数が短い
こと、②女性の方が正規雇用での就業や年齢の上昇による賃金増加程度が小さいこと等が挙げられる(15図)。
 非正規雇用者比率は男性において中長期的に上昇傾向、女性は2010年代半ば以降、低下傾向(16図)。学校卒業後の
初職が非正規の者は現職も非正規の割合が大きく(17図)、非正規雇用が固定化している可能性。
 学び直しの効果として、大学等で学んだ者の2割程度が希望の転職や年収増加を実現(18図)。特にOFF-JTと
自己啓発を両方実施する者は、片方のみの者に比べ、年収増加が明確(19図)。企業側が業務に必要な技術・能力等
を明確化することで雇用者の学び直しを促し、処遇改善や年収増加につながることを期待。

15図 男女間賃金格差の要因分解 女性の賃金が 17図 学卒後初めて就く職が非正規のうち現職も非正規の者


②同一属性下での 男性に比べて
①構成割合の差 伸びやすい要 (%) ①男性 (%) ②女性
(寄与、%) (寄与、%) 男女間の賃金差 因 100
4 100
4
2 2
0 0 80 80
-2 -2
-4 -4
-6 60 60
-6
-8 -8
-10 女性の賃金が 40 40
-10 -12
-12 男性に比べて
企業規模

学歴

勤続年数・正規

勤続年数・非正規
正規
職位

年齢・正規

年齢・非正規
60歳以上・正規

60歳以上・非正規

-14
企業規模

学歴

勤続年数・正規

勤続年数・非正規
正規
職位

年齢・正規

年齢・非正規
60歳以上・正規

60歳以上・非正規
伸びにくい要
20 20

0 0
25歳未満 25~34歳 35~44歳 45~54歳 25歳未満 25~34歳 35~44歳 45~54歳

16図 非正規雇用者比率の推移 18図 学び直しによる効果 19図 学び直しが賃金に与える


(%)
(%) ①男性 (%) ②女性 (①n=284、②n=815、 0 10 20 30 (%) 影響の経年変化
100 100 複数回答) 8
55~64歳 希望の仕事に転職 両方実施
80 80 45~54歳 6
65歳以上 65歳以上
年収が増加 4
60 60
55~64歳 在籍企業での業務の質が ①大学等で 2
25~34歳 OFF-JTのみ
40 45~54歳 40 向上・業績をあげた 学んでいる者
年齢階級計 0
20 20 35~44歳 昇進 ②民間、勤務先等
年齢階級計 25~34歳 で学んでいる者 -2
35~44歳 在籍企業で希望の異動・ 自己啓発のみ
0 0 -4
1990 95 2000 05 10 15 20
(年)1990 95 2000 05 10 15 20 (年) 希望の仕事を獲得 1年目 2年目 3年目 4年目
(備考)(15・17・19図)リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」により作成。個票による特別集計を行い、集計に当たってはウエイトバックを行っている。17図は年齢は2020年時点。「その
他」は役員・自営業主など。19図は2017年以降継続してOFF-JTや自己啓発を実施したかどうかで区分しており、2017年と同一企業で就業している正規雇用者が対象。19図は何も実施しなかった場合との比
較。正規雇用者。(16図)総務省「労働力調査(特別調査及び詳細集計)」により作成。(18図)文部科学省「令和元年度社会人の学び直しの実態把握に関する調査研究」により作成。 9
2章 第3節 労働の質の向上に向けて(税・社会保障による再分配の現状と課題)
 単身世帯や高齢者世帯の割合の増加等を背景に、再分配前の世帯所得の格差は拡大(20図)。世帯類型別にみると、
ひとり親世帯では年収300万円以下の割合が総じて上昇、厳しさが増している(21図)。
 25年前と比べて再分配によるジニ係数の改善幅は拡大しており、再分配効果は向上。高齢者世帯では、低所得者層に
おいて医療・介護等の受益が増加する一方、就業者数の増加を背景に高所得者層では社会保障制度を支える側へ(22
図)。夫婦と子世帯では、教育・保育等の受益が増加する一方、社会保険料負担等が増加。ひとり親世帯では、子育
て関連の受益が増える一方、年金等の受益が減少しており、厳しい状況。
20図 全世帯の所得分布 21図 世帯類型別にみた所得分布(再分配前)
①1994年
夫婦のみ世帯 夫婦と子世帯 ひとり親世帯
(全体に占める割合、%)
30 25 (%) 25 (%) 30 (%)
25 <ジニ係数> 2019年
20 2019年 20 2019年 25
再分配後 ・再分配前:0.42
20 ・再分配後:0.33 1994年 20
(中央値:505万円)
15 1994年 15
15 15
10 10
10 10 1994年
5 5 5
5
再分配前(中央値:545万円)
0 0 0 0
0~ 200~ 400~ 600~ 800~ 1000~ 0~ 200~ 400~ 600~ 800~ 1000~ 0~ 200~ 400~ 600~ 800~ 1000~ 0~ 200~ 400~ 600~ 800~ 1000~
(万円) (万円)
22図 世帯類型別の所得再分配効果(1994年から2019年の変化)
②2019年
夫婦と子世帯 (万円) ひとり親世帯 (万円) 高齢者世帯(60歳以上)
30 (全体に占める割合、%) 80
(万円)
80 60
60
(受益増・負担減)
再分配後 <ジニ係数> (受益増・負担減) 60 (受益増・負担減) 40
25
(中央値:374万円) ・再分配前:0.51 40 40 20
20 ・再分配後:0.36 20 20
0
0 0
15 -20
-20 -20
10 -40 -40 -40
-60 -60 -60
5 (受益減・負担増)
-80 (受益減・負担増) -80 -80 (受益減・負担増)
再分配前(中央値:375万円)
0 -100 -100 -100
0~ 200~ 400~ 600~ 800~ 1000~ 0~200 200~400 400~600
(万円)
消費税 保育
教育 介護
(備考)(20~22図)総務省「全国家計構造調査」、「全国消費実態調査」により作成。各調査の個票を内閣府において 医療 社会保険料 (再分配前世帯所得、万円)
集計し、作成。夫婦と子世帯及びひとり親世帯はそれぞれ、末子の年齢が18歳以下の場合について集計。高齢者世帯以外は、 所得税・住民税 年金以外の現金給付等
世帯主年齢が60歳未満の世帯。20図のジニ係数は簡易的な試算値。21図の世帯類型別の分布は、各世帯類型に占める構成比。 年金 10
3章 第1節 投資活動の伸び悩みの背景と最近の環境変化(投資活動とデジタル化・脱炭素化)
 我が国企業の投資活動は、海外への投資割合が高まっているものの、期待成長率の低下やいわゆる実質無借金に代
表される保守的な経営などを背景に、全体として慎重に推移(1、2図)。
 業種別の期待成長率と設備投資見通しの間には相関関係(3図)。デジタル化や脱炭素化は幅広い産業の需要構造
に変化をもたらす可能性。実際、感染拡大以降、デジタル化が進捗した企業ほど同業他社対比で業績が良好(4
図)。官民連携で計画的な投資を進め、予見可能性の向上を伴う形で民間の需要見通しに影響を与え、民間投資の
喚起につながることを期待。
1図 投資活動の対経常利益比率 2図 実質無借金企業比率の動向 4図 デジタル化の進捗度と売上高の関係
(%) (%)
150 65 製造業 情報・通信業
海外設備投資 60 (2019年同期比、%) (2019年同期比、%)
海外M&A 5 15
120 55 非製造業
デジタル化上位企業 10
50 0
90 45 5
40 -5
0
60 製造業
35 デジタル化下位企業
-10 -5
30 2019 20 (年度)
21 2019 20 21
30
国内設備投資 25 サービス業 小売業
0 20 (2019年同期比、%) (2019年同期比、%)
2000 05 10 15 (年度) 8
20(年度) 2002 04 06 08 10 12 14 16 18 2021 0
6
4 -5
3図 業種別の期待成長率と設備投資の関係 2
(%) 0 -10
16 -2
設 -4 -15
12

備 2019 20 21 2019 20 21
投 8 卸売業 運輸・倉庫業

資 4 (2019年同期比、%)
後 (2019年同期比、%)
増 0 10
3 0
減 -2
年 5
率 -4 -4


見 0
通 -8 -6
-8 -5
し-12
-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 (%) -10 -10
業界需要の名目成長率見通し(今後3年間) 2019 20 21 2019 20 21
(備考) (1図)経済産業省「海外事業活動基本調査」、財務省「法人企業統計年報」、Bloombergにより作成。 (2図)日経NEEDSにより作成。3月本決算の全上場企業に占める実質無借金企業(借
入金以上の現預金を保有する企業)の割合。 (3図)内閣府「企業行動に関するアンケート調査」により作成。2003~21年度の関係。(4図)日経NEEDSにより作成。集計対象は3月期決算企業のうち
ソフトウェア資産額を開示している企業。2019年度時点の従業員一人当たりのソフトウェア資産額を算出し、同値が同一産業の中央値以上の企業を「デジタル化上位企業」、同中央値未満の企業を「デジタ
ル化下位企業」と定義。各グループの売上高2019年度比の中央値を比較している。 11
3章 第2節 脱炭素化政策の推進に向けた課題(環境政策と経済成長)
 OECD「環境政策指数(注1)」を用いた国際データ推計では、環境政策と経済成長が背反する証左は得られな
い(5図)。排出量基準や排出量取引制度の強化は貿易赤字の削減に寄与する傾向がある。また、我が国では1970
年代の厳しい排ガス規制が自動車産業の競争力強化に繋がった事例。
 こうした環境規制の強化はこれまで限定的であったが(6図)、国際社会の脱炭素への移行や原油価格高騰に伴う
海外への所得流出の抑制、エネルギー安全保障の観点も考慮し、規制・支援一体型の投資促進が重要。
 諸外国でも、我が国同様に過去と比較して追加的な削減努力が必要(7図)。我が国の環境分野の競争力は相対的
に高く(8、9図)、官民連携により国際競争力を一層強化し付加価値創出につなげる必要。

5図 環境政策とGDP・貿易収支の関係(1990~2015年) 7図 温室効果ガス排出量の推移と各国の目標値

推移 2030年目標の達成に必要な今後の削減ペース
(10億トン) (2010~2019年の平均削減率からの乖離、%pt)
8 10
7 8
6 6
5 EU アメリカ
4
4 2
3 日本 カナダ 0

韓国
英国
EU

カナダ
スイス

日本
オーストラリア

アメリカ

ノルウェー
イスラエル

ニュージーランド
アイスランド
2 英国
1
6図 環境政策指数の強化幅 0
(1990年以降の環境政策指数の強化幅) 2000 10 20 30 40 50(年)
4.5
4 9図 環境関連特許の出願数(2019年)
8図 エネルギー原単位(2019年)
3.5 (米ドル/百万ジュール) (千件)
3 OECD平均 5 5
4 エネルギー効率が高い 4
2.5
2 日本 3 3
1.5 2 2
1 1 1
0 0
ドイツ

韓国
英国

フランス

カナダ
日本

中国
アメリカ
0.5

ドイツ

韓国

フランス

カナダ
アメリカ

日本

中国

英国
0
環境政策指数 排出量 排出量 環境税 固定価格 R&D
(総合) 基準 取引制度 買取制度 補助金
(注1)Environmental Policy Stringency Index、各国の環境政策の厳しさを国家間、時系列方向で比較できるようにOECDが指数化。
(備考) (5、6図)OECD.Stat、世界銀行のデータより内閣府が推計。上矢印は、一人当たり実質GDPに対してはGDPの押上げ方向に有意、貿易収支に対しては貿易黒字拡大(若しくは貿易赤字縮小)方向
に有意を指す。年数は有意になるタイミングを示す。「-」は非有意。 (7図)UNFCCC「Nationally determined contributions」、「Greenhouse Gas Inventry Data」により作成。温室効果ガスはCO2
換算値。左図の点線部分は、目標と実績を線形補完したもの。右図は、2030年目標を国連に提出しているOECD諸国を対象に、2030年目標の達成に必要な年間削減率と2010年から2019年までの平均年間削減率と
の差分を比較。 (8図)経済産業省「令和3年度エネルギーに関する年次報告」により作成。エネルギー原単位=一次エネルギー消費/実質GDP。(9図)OECD.Statにより作成。特許出願件数は、PCTに出願
された特許で、発明者の居住国別の件数。 12
3章 第2節 脱炭素化政策の推進に向けた課題(我が国が脱炭素化を推進していく上での課題)

 東日本大震災後の原子力発電所の再稼働が遅れているほか、石炭火力発電所の割合も高止まり(10図)。地理的な
制約から、陸上・洋上風力等の一部の再生可能エネルギー電源の導入も進みにくいとの指摘もあり、安全性の確保
を前提に原子力発電の活用も検討していく必要。
 脱炭素移行コストが高い素材産業のウエイトが他の先進国対比で高く、適切な支援を検討する必要(11図)。
 我が国の研究開発効率は低位(12図)。スタートアップ支援のほか、博士号取得者と国境を超えた研究人材の交流
を増やし(13図)、産学官の連携を一層強化することにより(14図)、オープンイノベーションを通じた研究開発
力の強化が重要。

10図 電源構成の推移 13図 博士号取得者と国境を越えた研究人材の交流


日本 EU

所属研究機関の国籍が変わった
(%) アメリカ (%)
100
(%) 100 100 (%) 20
フランス ドイツ
80 80 80 16

研究者の割合
英国
60 60 60 12
40 40 40 8 アメリカ
20 20 20 4
中国
0 日本
0 0 0
1990 95 2000 05 10 15 20(年)1990 95 2000 05 10 15 20
(年)1990 95 2000 05 10 15 20
(年) 0 2 4 6 8 (%)
10
再生可能エネルギー 石炭 その他の化石燃料 原子力 研究者に占める博士号取得者の割合

12図 研究開発効率の推移 14図 産学官における相互の研究資金出資割合


11図 製造業の業種構成

研究開発費(大学)における
(%) (研究開発効率、倍) (%)
100 120 14
カナダ 12 ドイツ
80 その他の製造業 英国 ドイツ

企業出資割合
100 10 OECD平均
生産用機械 OECD平均 アメリカ
60 80 フランス 8
電気機械・ 6 日本 フランス
40 電子機器 金属製品 60 4
輸送機械
20 鉄鋼・非鉄金属 40 2 英国
食料品・たばこ
日本 0
アメリカ
0 化学 20 0 2 4 6 8 10 12 14
(%)
日本 カナダ アメリカ フランス ドイツ 英国 イタリア 1996 99 02 05 08 11 14 17 20(年) 研究開発費(企業部門)における政府出資割合

(備考)(10図)Our World in Dataにより作成。(11図)OECD.Statにより作成。付加価値の産出に占める各産業の割合。 (12図)OECD.Statにより作成。研究開発効率は、各国の企業部門の生産付加価値と研究


開発支出(PPPドルベース)について、後方5年移動平均をとったうえで、5年間の増分の比により算出。 (13図)OECD「OECD Science, Technology and Industry Scoreboard 2017」、文部科学省「科学技
術指標2021」により作成。博士号取得者割合は「博士号取得者数(2018年)/研究者数(2019年、アメリカのみ2018年)」。所属研究機関の国籍が変わった研究者の割合は、流出者と流入者の合計を研究者数の合
計で除したもの。2016年時点。(14図)OECD「OECD Main Science and Technology Indicators」により作成。2019年時点。 13
3章 第2節 脱炭素化政策の推進に向けた課題(企業の取組と認識する課題)

 脱炭素に向けた取組みは、上場企業が先行(15図)。約7割の企業が何らか取組を開始(1~6を選択)。ただ
し、排出削減に向けた削減計画の実行に移っている企業(6を選択)は約4割にとどまる。非上場企業の7割以上
が未着手(7を選択)と、脱炭素化に向けた取組に遅れ。取組の推進に向けては、ノウハウ・人員の不足が課題と
なっている(16図)。
 取組着手先のうち(15図で1~6を選択)、約7割が自社の省エネ・再エネ設備への投資を計画(17図)。また、
他社・消費者の脱炭素化や省エネに向けた設備投資や研究開発投資といった「攻め」のグリーン投資も、約3割の
企業が実施若しくは実施予定と回答。官民連携による計画的な重点投資を通じて、企業の予見可能性を高め、民間
投資を喚起していくことが重要。
 また、脱炭素化に向けて、費用増加への対策の必要性を感じる企業は6割を超えており、サプライチェーン上で必
要な価格転嫁が可能な経済環境を醸成することが重要(18図)。

15図 我が国企業の脱炭素化に向けた取組状況 16図 脱炭素化に向けた取組を進める上での課題

1:気候変動リスク・機会の把握 51.1 必要なノウハウ、人員の不足 38.2


12.0
2:TCFD提言に沿った分析・情報開示の実施 36.1 上場企業 コスト増への対応が困難 30.4
1.3
3:排出量の算定 68.2 必要な技術の不足 14.0
15.9
4:排出削減目標の設定 56.8 サプライチェーンの見直しが困難 6.2
13.0 非上場企業
5:排出削減計画の策定
41.1
7.1 その他 4.7
6:排出削減計画の実行
9.7 43.2 不明 4.0
7:未着手 27.5
75.1 取組を進める必要なし 2.5
0 20 40 60 80 100 (%) 0 10 20 30 40 50(%)
17図 2050年までの設備投資実施予定 18図 脱炭素化に向けた費用増加への対策の必要性
実施済み 実施予定 実施予定なし 不明
必要があり検討している 17.1
a)自社の省エネ・再エネ設備への設備投資 41 30 11 18
必要があり今後検討する 44.3
b)他社・消費者の脱炭素化や省エネに関す
15 19 28 38
る製品・サービス等への設備投資 検討する必要はない 10.1

c)脱炭素化に向けた研究開発への投資 16 14 37 34 不明 28.6
(%)
0 20 40 60 80 100 0 10 20 30 40 50 (%)
(備考)(15~18図)内閣府「カーボン・ニュートラルが企業活動に及ぼす影響について」により作成。15図は複数回答。回答企業数は上場企業280社、非上場企業1,412社。16図~18図は15図で何らかの脱炭素化
に向けた取組を行っている企業(1~6のいずれかを選択)に対する設問。16図の回答企業数は550社。 17図の回答企業数は、a)について571社、b)について565社、c)について565社。 18図の回答企業数は574社。 14
3章 第3節 デジタル化を進める上での課題(IT投資の遅れの背景)
 我が国ではIT投資を推進する人材が不足しているほか(19図)、IT人材の競争力が諸外国に劣後(20図)。人
材への教育訓練投資はソフトウェア投資を量・質の両面で押上げる傾向(21図)。人的資本の蓄積不足が、デジタ
ル化推進のボトルネックになっている可能性。
 IT人材がIT産業に集中しており、非IT企業においてIT専門人材の確保に向けた賃金・処遇体系の整備が必
要(22図)。また、社会人の再教育制度の質の改善や(23図)、外部人材を積極的に活用しつつ、初等中等教育課
程におけるIT導入を進め(24図)、社会全体のデジタルスキルの底上げを図ることも重要。
19図 就業者に占めるIT人材の割合 21図 人への投資がソフトウェア投資の量と質に及ぼす効果 23図 再教育制度の効果に対する認識
(教育訓練ストックの1%の増加に対する (ソフトウェア投資の1%の増加に (「非常に役だった」と回答した利用者の割合、%)
(%) ソフトウェア投資の増加率、%) 対する労働生産性の上率、%) 100
5 0.07 0.025
*** 80
4 0.06 ***
0.020 60
0.05 40
3 0.015
0.04 20
2 0.03 0

ドイツ

トルコ
オランダ

韓国
ギリシャ
カナダ

イタリ ア
チリ
英国

キプロス

チェコ

フランス
アメリカ

ベルギー

スペイン
ロシア

日本
デンマーク

ノルウェー

オーストリア

シンガポール

リトアニア
イスラエル
ポーランド

フィンランド

エストニア
ニュージーランド
アイルランド

スロバキア

スウェーデン
スロベニア
0.010
1 0.02
0.005
0 0.01
デンマーク
スウェーデン

ドイツ

イタリ ア
英国

フランス
アメリカ

日本

0.00 0.000
教育訓練ストック 教育訓練 教育訓練 教育訓練
上位グループ 中位グループ 下位グループ

ソフトウェア投資

20図 デジタル競争力ランキングにおける我が国の 22図 IT人材が従事する産業 24図 授業でITを使った中学校教員の割合


IT人材に関する評価 (%)
IT産業 非IT産業 100
80
2017 2021
(63カ国中) (64カ国中) 日本 72.0 28.0 60 17.9
総合(人材) 41位 47位 アメリカ 34.6 65.4 40
教育評価(PISA-数学) 4位 5位 カナダ 44.0 56.0 20
0

韓国
イタリ ア

フランス
アメリカ

日本
デンマーク

オーストラリア

スウェーデン
国際経験 63位 64位 英国 46.1 53.9
外国人高度技術者 51位 49位
都市管理 9位 15位 ドイツ 38.6 61.4
デジタル/技術スキル 59位 62位 フランス 46.6 53.4
留学生 23位 26位
0% 20% 40% 60% 80% 100%
(備考)(19図)ILO統計、総務省「就業構造基本調査」により作成。IT人材は国際標準職業分類の「25.情報通信技術系専門職」「35.情報通信技術者」の合計。2017年の値。(20図)IMD World
Competitiveness Center 「IMD World Digital Competitiveness Ranking」により作成。(21図)経済産業省「企業活動基本調査」により作成。***は1%水準で有意であることを示す。左図は教育訓練ストック
(能力開発費を一定の仮定の下でストック化)がソフトウェア投資量に与える効果の推計値。右図は教育訓練の積極度に応じて企業を3分割し、ソフトウェア投資が労働生産性に及ぼす弾性値を比較したもの。
(22図)独立行政法人情報処理推進機構「IT人材白書2017」より引用。 (23図)OECD「国際成人力調査」により作成。33か国25万人を対象に調査。通信教育、実践研修、上司または同僚による研修、その
他セミナーを利用したことがある者を対象に、「その学習は当時または現在のあなたの仕事やビジネスにどう役立ちましたか」と訊いた結果。(24図)OECD「国際教員指導環境調査2018」により作成。
15
3章 第3節 デジタル化を進める上での課題(脱炭素や地域活性化への効果)

 企業の生み出す付加価値向上のみならず、デジタル技術の活用による脱炭素化の推進(いわゆる「グリーンbyデジ
タル」)など、デジタル技術が社会課題の解決に貢献する働きにも期待。デジタル化が進んだ企業ほど、温室効果ガ
ス排出量の算定・削減目標の設定が進みやすい傾向(25図)。また、我が国においては、IT技術の活用が製造業
を中心にエネルギー消費の削減に寄与(26図)。
 我が国は首都圏への人口集中が進み、地方部の産業や環境資源の保全等に課題(27図)。デジタル化により、地方
部のビジネス環境・生活インフラの改善を進めることは地方部の経済活性化に寄与。例えば、同一属性(年収、年
齢等)の世帯で比較すると、電子商取引を利用する確率は地方部で低く(28図)、通信インフラ面で格差が生じて
いる可能性。

25図 排出量の算定・目標設定に対するデジタル化の効果 26図 IT資本がエネルギー消費に及ぼす効果 27図 首都圏人口比率の国際比較

(IT資本が1%増加したときのエネルギー消費量の変化、%)
0.1 (首都圏人口/総人口、%)
35
自社の排出量を 排出削減目標を 0.0 日本(東京)
算定する確率 設定する確率
-0.1
30
-0.2
デジタル化の進展度 **
(従業員一人当たり
ソフトウェア資産)
○ ○ -0.3
25 韓国(ソウル)
-0.4 ***
一国全体 製造業平均 非製造業平均
教育研修費 ― ― 28図 都道府県別に見た電子商取引の利用確率
20
フランス(パリ)
(東京都との限界効果の差、%ポイント)
売上高営業利益率 ― ― 0
-2 15 英国(ロンドン)
企業規模ダミー ― ○ -4
-6 アメリカ
10 イタリア(ローマ)(ニューヨーク)
-8
上場ダミー ― ― -10
-12
業種ダミー ○ ○ -14 5
-16 中国(北京) ドイツ(ベルリン)
-18
0
-20
北海道
青森県

茨城県

兵庫県

熊本県
栃木県

千葉県

石川県

三重県
神奈川県
富山県

長野県

島根県

徳島県

高知県

鹿児島県
岩手県
秋田県

群馬県
埼玉県

愛知県
滋賀県
大阪府
奈良県
和歌山県
宮城県
山形県
福島県

新潟県

福井県
山梨県
岐阜県
静岡県

京都府

鳥取県
岡山県
広島県

愛媛県

佐賀県
長崎県
大分県

沖縄県
山口県
香川県

福岡県

宮崎県
1950 60 70 80 90 2000 10 20
(年)

(備考)(25図)内閣府「カーボン・ニュートラルが企業活動に及ぼす影響について」により作成。 360社を対象にしたロジスティック回帰分析の結果。10%水準で有意な変数に「〇」を記載。(26図)内閣府
「国民経済計算」、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」、日本銀行「企業物価指数」により作成。被説明変数をエネルギー消費、説明変数をIT資本量とし、GDPやエネルギー価格等をコントロールした
回帰分析を実施。製造業、非製造業は業種別パネル分析の結果。***は1%、**は5%水準で有意。(27図)UN「World Urbanizaiton Prospects:The 2018 Revision」、総務省「国勢調査」、「人口推計」、ア
メリカ商務省により作成。(28図)総務省「家計消費状況調査」により作成。EC利用の有無を被説明変数とし、年収・年齢等をコントロールしたプロビット分析における各都道府県ダミーの限界効果。
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