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Movlc-T4を 活 用 した 都 市 内地 下道 路 の 走 行 安 全 性 に関 す る基 礎 的研 究*: 【土 木 計 画 学 研 究 ・論 文 集No.23No.42006年9月 】
Movlc-T4を 活 用 した 都 市 内地 下道 路 の 走 行 安 全 性 に関 す る基 礎 的研 究*: 【土 木 計 画 学 研 究 ・論 文 集No.23No.42006年9月 】
42006年9月 】
MOVlC-T4を 活 用 した 都 市 内地 下道 路 の 走 行 安 全 性 に関 す る基 礎 的研 究*
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図-2 MOVIC-T4の 外 観 と走 行 画 面
図-1
都 市内地下道路 にお ける運転者の覚醒水
準 に影響 を与 える要因
表-1 MOVIC-T4に よ る走 行 実 験 デ ー タ の 再 現 性 分析 結 果 の概 要
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e)停止挙 動
一般 道 直線 部にて80km/hで 走行 し,前 方 の停止車両
―799―
表-2 平 常時走行実験の走行条件
図-4 走 行 条 件 の イ メ ー ジ
図-5 道路構造の概要
―800―
d)実験 結果 表-3 SPL時 間変動の検定結果
図-6,図-7に,3つ の走行条件(表-2)に おけるSPL
の時間変動の学生 ・高齢者 ごとの平均値を示す.SPLは
個人 ごとにその値や変動幅が異な り,ま た,あ るSPLの
値が どの程度の覚醒水準 を表すか も異なる.従 って,本
分析で は,被 験者 ごとに軽い運 動時及び 目を閉 じて安静
時のSPLを 別 途計測 し,そ れぞれ 最大 ・最小SPLと し,
デー タの基準化(最 小値0∼ 最大値1)を 行 った(図-8
参照).「SPLが 小 さいほ ど覚 醒水準 が低下 している」 こ
表-4 全走行時 間平均SPLの 条件 間比較
とを示す.
全体 を通 して言える事は,学 生 ドライバーは走行 開始
後,単 調 にSPLが 低下,つ ま り覚醒水準 が低下 してお り
(SPLに 対す る時間の主効果 は3条 件全てで1%有 意:
表-3参 照),一 方,高 齢者 は3条 件 と も有意な覚醒水準
の低下は見 られない.学 生 ドライバ ーでは都市 内地下道
路の心理的負担要因よ り覚醒水準低下要 因が勝 り,高 齢
者はその逆であった ことが推察 され る.リ スクの感受性 表-5 イ ンシデ ン ト発生 時走行 実験の走行条件
が低い学生等の若年 ドライバー は,5分 程度 の走行で覚
醒水準が低下 しうる とともに,道 路構造か らみ ると,前
半の単路部において覚 醒水準が低下 しきってお り,そ の
後の分合流部において周辺車両 との コンフリク トが ある
場合は,覚 醒水準低下 の影響で適切な 回避行動が取れな
い可能性 も十分 にあることが示唆 された.
続いて条件 間の差 を見 る.表-4に 各条件別の全走行時
間のSPL平 均値 を示 して いるが,さ ほど大 きな差はない
ものの,「 【A】交通量大 一大型車混入率小」が他の2条
展す る可能性があ り,大 深度地 下道路 ともなれ ば災害時
件(共 に大型車混入率大)に 比べ覚醒水準の低下が小さ
の避難 もよ り困難 であろ う.単 発 の事故 を防ぐことも当
い傾 向が ある(い ずれ のペア も統計的 に有意な差はない
然重要ではあるが,単 発 の事故 は前述 の覚醒水準低下等
が,高 齢者の 【A】と 【C】の間は15%有 意).大 型車 混
によ り確率的に生 じて しま う(完 全 には防ぐことはで き
入率が大 きいほ ど圧迫感が大き く,心理的負担は高ま り,
ない)と 考える と,事 故車両 の後続車が巻 き込 まれ る事
覚醒水準 も低下 しにくいと想像されたが,結 果 は逆 の傾
故,つ まり2次 的追突事故や多重衝突事故 を防止す る方
向で あった.前 方車が大型車の場 合,前 方視界 が大き く
法 も併せて検 討 し,大 災害 に発展 させな い工夫 をす るこ
遮 られ視覚刺激の変化が抑制され,そ の状態 の継続は覚
とが,地 下 トンネルで は特 に重要で あると考え られ る.
醒水準の低下を助長する との報告 もあるが,今 回,大 型
今後,都 市内地下道路 にお ける多重衝突事故分析及び事
車混入率大の条件では追従対 象車 は大型車,混 入率小 で
故 防止対 策を検討す るにあた り,本 実験では まず,実 際
は普通車であったため,そ の ことが結果 の一 因とも考 え
に走行 中にインシデ ン ト(事 故車)が 発生 した場合 に,
られ る.大 型車に追従する場合 は前方 の交通状況が把握
そ の後続車 がどの程度衝突する可能性が あるのか,ま た
しづ らい上,覚 醒水準の低下 も引き起 こす とな ると,非
簡 易な前方事故車 に関す る情報提供 システムの効果が ど
常 に危険な走行 状態 と言える.ま た,ス リー ドリミッタ
の程度 あるのか につ いて基礎的な分析 を行った.
ーの装備義務のある大型車 に追従す る場合 は
,比 較的走
b)被験者
行速度が低いため車 間が詰 ま り易 いとも考え られ る.従
被験者は,学 生 ドライバーと して本学学 生7サ ンプル
って,前 方車 が大型車 の場合 は特 に広 い車間 を維持 させ
(22∼30歳),高 齢 ドライバー18サ ンプル(63∼72歳)
る工夫が必要で あろう.
で ある.
(2)インシデ ン ト発 生時 の追突危 険性 と前 方障害物 の情
c)実験条件 ・手順
報提供効果 の分析
事故車は,区間中間の分流部及 びやや後 半の合流部(図
a)実験 目的 -4)で 発生 させた2ケ ース を模 擬 し,そ れぞれ の交通流
トンネル内事故は,閉 塞空間であるが故に大災害に発
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表-6 インシデ ン ト発生 時の追突危険性 と情報提供効果
(1) 追 突 人数
(3) 平 均減 速 度
条件 を表-2の 【B】,【C】
に設定 した.当 初は,発 生位 d)実験結果 と考 察
置の違いで,前 節の覚醒水準低下 の影響 を見 ようと考 え 表-6は 情報提供のない場合,あ る場合の追突 人数,反
ていたが,学 生は区間中間です でに低 い覚醒水準 に達 し 応時 間,平 均減速度 を示 してい る.当 然ではあるが,合
てお り,ま た高齢者は覚醒水準 に変化 がなか ったので, 流部事故 の方が,分 流部事故 に比べて追突可能 性が高い
事故車の発生位置の違いは,本 分析 には特 に影響 を及 ぼ (走行速度 が速 いた め).ま た,全 体的 に高齢者の方が追
さない と考え られる.ま た,走 行 条件の 【B】と 【C】で 突危 険性が 高く,そ の分,高 齢者 に対 して情報提供の効
は走行速度が異なるため追突可能性 に大きな影響 を及 ぼ 果 が大きいが,学 生には効果は小 さい.条 件(4)の情報提
す. 供 のタイミングは前方車 の減速 開始 とほぼ同 じか若干早
実験 では被験者 が追従 している前方車 が事故車両直 前 い程度であるため,も ともと効果 は小 さいと考え られる
で急減速 し,そ のブ レーキ ランプに被験 者が反応す る こ が,前 方車 の減速 に対す る反応時間が非常 に遅 い高齢者
とにな る.学 生,高 齢者それぞれ を2グ ループに分け,1 には,今 回のよ うな比 較的余裕 の少な い情報提供であっ
つ は情報提供な し(表-5の(1)(2)),も う1つ は情報提 供 て も効 果がある ことが示唆され る.し か し,合 流部事故
あ り(表-5の(3)(4))の実験を行 った.情 報提供 はフロン では,情 報 提供 によ り高齢者 の平均減速度 はむ しろ大き
トガ ラス部 にヘ ッ ドア ップディスプ レイ として 「
前方 に くなっている.減 速度 が大きくなった ことで追突 を回避
低速車 あ り」 とい う画像情報を警告音 とともに提 供 し, できた とも言えるが,一 方 で,非 日常 的な情報提供 に慌
「もし情報提供があった場合は前方に注意 して運 転 し, て必 要以上の急減 速が引き起 こされた とも考 えられ る.
停止車両がある場合はその まま停止 して ください」 と指 このよ うな,情 報提 供による急減速が新 たな事故 に繋が
示 した.情 報提供 タイ ミ ング は,分 流部 で は事 故車 の る可能 性も伺える.た だ し,MOVIC-T4で は過大な減速
200M前,合 流部 では150M前 であ り,合 流 部事故の方 度が生 じやすいため(再 現性検討参照),あ くまで条件間
が余裕の少ない状況で ある(前 者はイ ンフラ側 で事故車 の相対的な値の差 の議論 に とどまる.
を検知 し,後 者は車載 システムによ り前方車 の急 減速 を (3)
走行 安全 性分析のま とめ
検知す るイ メー ジ).このよ うな情報提供システムは試験 以上の走行安 全 性の分析 よ り,約15kmの 都市内地下
的 に実用化 もされてお り,本 研 究にお いて も地下道路に 道路において,特 に若年 ドライバー の覚醒水準低下が起
お ける多重衝突事故分析 を行 うにあた り,ま ず は このよ こり得る こと,一 方,高 齢 ドライバ ーは緊張状態が続 く
うな簡易な情報提供 システムの効果 と影響について把握 こと(高 覚醒を維持),大 型車追従が覚 醒水準低下 の一 因
し,今 後の研究 にお ける走行支援 システムの検 討に繋げ になっている可能性 がある ことが分 かった.つ ま り,高
る. 齢 ドライバーに とって都市内地 下道路 は,ト ンネル 内の
圧迫感や高密度交通流な どの要 因によ り,普 段 よ り緊張
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した走行状態 とな り易 い一方で,リ スク感受性 の低い若 2) 平 田 輝 満, 山 口晋 弘, 屋 井 鉄雄, 高 川 剛: ドライ ビ ン グ シ
ス 評 価, 第24回 交 通 工 学 研 究 発 表 会 論 文 報 告 集, pp.17-20,
な どの影響 によ り,5分 程度の走行 で覚醒水準低 下が生
2004.
ず る可能性が高 いことが示唆された.従 って,緊 張状態
3) 阪 神 高 速 道 路 公 団 ・財 団 法 人災 害 科 学 研 究 所: トンネ ル 事
を緩和す るための道路線形の改良や交通流の制御 を検 討
故 に関する研究 (そ の3), 1999.
す るとともに,道 路線形や トンネル内壁デザイ ンの単調
4) F. H. Amundsen and G Ranes: Studies on traffic accidents in
性 を緩和す るな どの覚醒水準低下防止対策も併 せて検 討
Norwegian road tunnels, Tunnelling and Underground Space
す る必要が あると考え られる(特 に分合流部手前区間に Technology, Vol. 15, Issue. 1,pp.3-11, 2000.
お いて).ま た,大 型車 に追従する車両の車間距 離を広め 5) 後 藤 秀 典, 田 中 淳, 赤 羽 弘 和, 割 田 博: 都 市 高 速 道 路 の ト
に維持す る対策 も検討事項 として挙げ られる. ン ネ ル 区 間 を対 象 と し た事 故 分 析, 第25回 交通工学研究
また,イ ンシデ ン ト発生時の追突 危険性 の分析 よ り, 発 表 会 論 文 報 告 集, pp.49-52, 2005.
9) 実 車 実 験 に よ る トン ネ ル 走 行 時 の 視 線 誘 導 方 策 に 関 す る
6. おわ りに 研 究, 第22回 交 通 工学 研 究 発 表 会 論 文 報 告 集, pp.9-12,
2002.
生 理 心 理 学<1巻>生 理 心 理学 の 基 礎, 北 大 路 書 房, 1998.
参考 文献 18) 荒 木 学, 屋 井鉄 雄, 平 田 輝 満: バ イ オ フ ィー ドバ ッ ク に よ
1) 平田輝満, 飯島雄一, 屋井鉄雄: 都市内地下道路における る 居 眠 り運 転 防 止 方 法 の 評 価, 土 木 計 画 学 研 究 ・講 演 集,
運転者の意識水準低下に関する分析, 土木計画学研究 ・論 Vol.29, CD-ROM,, 2004.
文集, Vol.21,No.4,pp.915-923,2004.
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MOVIC-T4を 活 用 した 都 市 内 地 下 道 路 の 走 行 安 全 性 に 関 す る 基 礎 的 研 究
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