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* マ ヨ ネ ー ズ の 製 造 に 関 す る 基 礎 的 研 究 (第1報) ** キ ュ ー ピ ー 株 式 会 社 (東 京 都 渋 谷 区 渋 谷1-4-13) Q.P. Corporation, Shibuya-ku, Tokyo
* マ ヨ ネ ー ズ の 製 造 に 関 す る 基 礎 的 研 究 (第1報) ** キ ュ ー ピ ー 株 式 会 社 (東 京 都 渋 谷 区 渋 谷1-4-13) Q.P. Corporation, Shibuya-ku, Tokyo
研 究 ノー ト
は適当ではない。
マ ヨ ネ ー ズ の 安 定 度 の 測 定 法* YEADONら5)は 鶏 卵 燐 脂 質 の乳 化 安定 性 を比 較 す る際
場 合 に は水 相 か ら 分 離 しは じめ,遠 心 力 を強 くか け た 時 2. 実 験 結 果
に初 め て油 を 分 離 す るが,そ の 量 は ご く微 量 で あ る 。 マ (1) 遠 心 法
ヨネ ー ズ が 輸 送 中 に 受 け る の は振 動 で あ っ て遠 心 力 で は ロー ターの 回 転 数 を段 階 的 に上 げ 遠心 分 離 す る と表2
ない か ら遠 心 力 に よ っ て分 離 す る油 の 量 を 比較 す る こ と に 示す よ うに 当初,遠 心 管 の 底 に水 相 が 分 離 しは じめ回
* マ ヨ ネ ー ズ の 製 造 に 関 す る 基 礎 的 研 究(第1報)
** キ ュ ー ピ ー 株 式 会 社(東 京 都 渋 谷 区 渋 谷1-4-13)
て 水相 の大 部分 は分 離 し てい る こ とが理 解 さ れ る 。
伊 勢 村7)は エ マ ル ジ ョ ンの 安 定度 の測 定 法 と して遠 心
法 の 欠点 を挙 げ,油 相 及 び 水相 の密 度 差 の大 き い も の で
は排 液の 作 用 が 特 に強 く現 わ れ,本 来 の 安定 度 よ り低 い
結 果 とな る と述 べ てい る。本 実 験 に お い て は遠 心 力 に よ
っ て密 度 の 大 で あ る水相 が下 層 に集 め られ,密 度 の 小 で
あ る油 と乳 化 安 定 剤 で あ る卵 黄 リポ蛋 白 な どが 上 層 に集
め られ る こ とに な る 。 しか し,実 際 の 輸 送 中 の 振 動 は 容
図1 振動遠心法 器 内の マ ヨ ネー ズ が 一定 の 方 向 で な く主 と して 上下 に,
しか も反 復 して 振 動 され,そ の 結 果,油 の周 囲 を カバ ー
表1 供 試 マ ヨ ネ ー ズ の 一 般 組 成(%) し てい る 卵 黄 の薄 い膜 が 破 れ 油 の 粒 子 が 互 い に 直 接,接
し て合 体 し,そ れ を繰 りか え しつ つ 粒 子 が成 長 し,遂 に
可 視 的 な大 き さ に な るの で あ るか ら遠 心 力 に よ る分 離 と
は 異 な る。 ま た,遠 心 力 で は水 相 が さ き に分 離 して来 る
が 輸 送 に よ る分 離 は油 で あ って水 の 分 離 は発 生 しに くい
か ら,こ の 点か ら も遠 心 法 は 適 当 で は な い。
(2) 振 動 法
マ ヨネ ー ズ を種 々 な容 器 に入 れ振 動 を与 えた 結 果 は 次
の よ うで あ った 。 ま ず振 動 に よ っ て容 器 自身 が 変 形 しに
くい もの と し て ステ ン レス 製の 遠 心 管(10ml容)に マ
表2 遠 心 法 に よ る 分離 状 況
ヨネ ー ズを 入 れ,120分 間振 動 して も油 を分 離 しな い し,
肉厚3mmの 硬 質 ポ リエ チ レ ン製 遠 心 管(50ml容)及
び 肉厚3mmの ポ リエ ステ ル遠 心 管(50ml容)の 場合
も分 離 を認 め な か った。
これ に反 して 肉厚0.06mmの 薄 い ポ リエ チ レ ン製 小
袋 で は 微 量 の油 を分 離 し,肉 厚0.2mmの ポ リエ チ レ ン
製 の ボ トル で は著 し く分 離 した 。 これ は 振 動 機 に 固定 し
た 木 箱 内 で く りか え し振 動 を受 け る際 に ポ リエ チ レ ンボ
トル の側 壁 が変 形 し 内容 物 の マ ヨ ネ ーズ が 絶 え ず小 刻 み
に移 動 させ られ るた め に 比 較 的 短 時 間 に 油 が 分 離 す る も
表3 遠 心 法 に よ る 水 と油 の 分 離状 況
表4 振 動 遠 心 法 によ る 油 の 分 離 量 に及 ぼ す
振 幅 の影 響
転数 を上 げ る とや が て 油 が 分 離 しは じめ る。 この 遠 心 法
に よ って は油 の み を 分離 させ る こ とは で き なか った 。
次 に,最 上層 の 微 量 の 油 をヘ プ タ ンで 集 め 最 下 層 の 水
相 を注 射器 で取 り出 し,や や 粗 で は あ るが 計 量 し,各 々
の乳 化 され て い るベ き油 相,水 相 に対 す る比 を 求 め た の
178 日本 食 品 工 業 学 会 誌 第22巻 第4号 1975年4月 (42)
の と思 わ れ る。 油 は マ ヨ ネ ー ズ 中 に点 在 ない しは や や 広
表6 振 動 遠 心 法 に よ る 油 の 分 離 量 に及 ぼ す
い 層 と し て分 離 す るか ら,こ れ を静 置 す る限 りエ マル ジ 振 動 方 向の 影 響
ョン相 と明 快 に分 離 せ ず,油 の 正 確 な採 取 秤 量 は 不 可 能
で 定 性 的 に分 離 の 多 少 を 比 較 し得 るの み で あ った
。
(3) 振 動 遠 心 法
遠 心 法 で は 水 相 が さ き に分 離 し油 は 分 離 しに く く,振
動 法 で は 油 は 分 離 す るが そ の ま まで は エ マル ジ ョン相 と
分 け る こ とが 困 難 で あ るの で,ま ず 振 動 に よ って油 を 分
離 させ た 後,軽 い 遠 心 に よ っ て油 を上 層 に 集 め,し か も
水 相 は 分 離 し ない 条 件 を検 討 した と ころ,ほ ぼ 満 足 で き
る結 果 を得 た 。
表4は 振 幅 を種 々変 更 した 時 の 結 果 で,振 幅5mmで
は120分 か け て も分 離 しな い こ とが 認 め られ,表5は 振
動時 間 を 種 々 変 更 した時 の 結 果 で あ るが,時 間 が 延 長 さ
れ る に 従 って 油 の 分 離 量 は大 とな り,念 のた め有 意 差 検
表6は 振 動 機 の振 動方 向 を縦 と横 とは い ず れ の 振 動 方
向 が適 当 で あ る か 比較 した結 果 で あ るが,横 振 動 は 油 の
分離 量 にバ ラ ツキが 大 で あ るか ら よ くな い 。
表7は マ ヨネ ー ズ を 実 際 に 輸 送 した 時 の 結 果 で あ る
が,夫 々の 輸 送 条 件 下 にお い て,No.2が 最 も 安定 で振
動 に よ る油 の 分離 量 が小 でNo.1. No.3が これ に続 い
てお り,振 動 遠 心 法 の 結 果 と同 じ傾 向 を 示 して い る。
幅15mm,周 期500回/分,60分 間 の 振 動 を 与 え た 後,
表5 振 動 遠 心 法 に よる 油 の 分 離 量 に及 ぼ す
140G.30分 間 の遠 心 を与 え て 油 を 上 層 に 集 め,そ の油
振動時間の影響
を取 り出 して秤 量 す る振 動遠 心 法 が,マ ヨ ネーズの輸送
中 に 受 け る振 動 に対 す る安 定 度 の測 定 法 と して適 当であ
る こ とを 認 め た 。
要 約
マ ヨ ネー ズ の振 動 に 対 す る 安 定 度 の 測 定 法 を検討 し
た 。遠 心 分 離 機 に よ る遠 心 法,振 動 機 に よ る振 動法 は不
適 当 で あ る こ と,本 報 の 振 動 遠 心 法 は油 を分 離 す るが,
水 を分 離 せ ず,し か も再 現 性 の あ るす ぐれ た 測定 法であ
る こと を確 認 した 。
お わ りに,終 始 御 指 導 を賜 った 東 京 農 業 大 学農 学部農
芸 化 学 科 小 原 哲 二 郎 教 授 に深 謝 致 し ます 。
研 究 ノ ー ト 179
(43)
16, 43 (1951).
1) 押 田 一 夫:油 化 学,12, (8), 468 (1963).
5) YEADON, D.A., GOLDBLATT, L.A., and ALTSCHUL,
2) 押 田 一 夫:新 調 理 科 学 講 座,6,第2版,(朝 倉 書
A.M.: J. Ame. Oil Chem. Soc., 35, (8), 435
店),p.118 (1974).
(昭 和49年8月27日 受 理)
gazine, (3), 42 (1933).