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むかし ある ところ に、 おふろ の だいきらい な おじいさん と

おばあさん が いました。
一(いち)年(ねん) じゅう おふろ に はいら ない の です から、 あか だら
け。
からだ を こする と、 ぽろぽろ きのこ の よう に あか が
おちて きました。

--

むかし ある ところ に、
Long ago in some place,

おふろ の だいきらい な おじいさん と おばあさん が いました。


there was an old man and an old woman who hated bathing.

一(いち)年(ねん) じゅう おふろ に はいら ない の です から、


All year they never entered the bath, so

あか だらけ。
they were covered with filth.

からだ を こする と、
When they rubbed their bodies,

ぽろぽろ きのこ の よう に あか が おちて きました。


poroporo, dirt dropped off just like mushrooms.

--

じゅう = all
あか、垢 = dirt, filth, grime
だらけ = full of, covered with
こする、こすります、こすって = rub
ぽろぽろ = sound of something small falling
きのこ = mushroom
の よう に = just like ...
おちる、おちます、おちて、落ちる = fall, drop

page 3

「ばあさん や。 この あか で
にんぎょう を つくって みんべえ。」
子ども の いない ふたり は、
あか を かきあつめて おいて、 にんぎょう を
つくりました。

--

「ばあさん や。
"Old woman.

この あか で にんぎょう を つくって みんべえ。」


Let's try and make a doll from this dirt."

子ども の いない ふたり は、


The childless couple,

あか を かきあつめて おいて、
scraped up the dirt, and

にんぎょう を つくりました。
made a doll.

--

かきあつめる、かきあつめます、かきあつめて、かき集める = scrape up
together
おく、おきます、おいて、置く = keep

page 4

「まっくろ だが、 かわいい 子 が


できた な。 あか で つくった んだ から、
あかたろう と 名(な) を つける べえ。」
おじいさん と おばあさん は、
おおよろこび です。 にんぎょう の
あかたろう を、 子もりかご の えじこ に
いれて、 ほんとう の 子ども の ように
そだてました。

--

「まっくろ だが、 かわいい 子 が できた な。


"Although he is very dark, we made a cute child.

あか で つくった んだ から、
Because we made him from dirt,

あかたろう と 名(な) を つける べえ。」


let's name him Akatarou."

おじいさん と おばあさん は、 おおよろこび です。


The old man and old woman were very happy.

にんぎょう の あかたろう を、 子もりかご の えじこ に いれて、


They put the Akatarou doll into a cradle, and

ほんとう の 子ども の ように そだてました。


raised him just like a real child.

--

まっくろ = very black


だが = although
できる、できます、できて、出来る = be made of, grow
子もりかご = cradle (noun)
えじこ = (archaic)
いれる、いれます、いれて、入れる = put in
そだてる、そだてます、そだてて、育てる = raise

page 5

おばあさん が ちゃわん に ごはん を


いれて さしだす と、 あかたろう は 手 を
のばして、 ぱくり と ひとくち で
たべて しまいました。
「あれ、 この 子 は ごはん を
たべます よ。」
おじいさん と おばあさん は
びっくり して しまいました。

--

おばあさん が ちゃわん に ごはん を いれて さしだす と、


When the old woman put rice in a bowl and held it out,

あかたろう は 手 を のばして、
Akatarou reached out his hand, and

ぱくり と ひとくち で たべて しまいました。


pakuri, ate it with a single bite.

「あれ、 この 子 は ごはん を たべます よ。」


"Wow, this child eats!"

おじいさん と おばあさん は びっくり して しまいました。


The old man and old woman were completely surprised.

--

ちゃわん = bowl
さしだす、さしだします、さしだして、差し出す = present, hold out
のばす、のばします、のばして、延ばす = extend
ぱくり = sound of biting
ひとくち で = with one bite

page 6

あかたろう は、 ごはん を 十(じっ)ぱい たべれば、


十ぱい だけ 大きく なりました。
二十ぱい たべれば、 二十ぱい だけ
ずずん と からだ が 大きく なって、
たちあがりました。 そして、
「じさま。 おら に 百(ひゃっ)かんめ の
てつ の ぼう、 つくって くれろ。」
と、 はじめて くち を ひらきました。
「そんな おもい もの、
どう するん じゃ。」
「つえ に する んじゃ。 はやく
つくって くれろ。」
あかたろう が なおも いう ので、
おじいさん は 村(むら) の かじや へ、
とんで いきました。

--

あかたろう は、 ごはん を 十(じっ)ぱい たべれば、


十ぱい だけ 大きく なりました。
If Akatarou ate ten cups, he grew ten cups.

二十ぱい たべれば、
When he ate twenty cups,

二十ぱい だけ ずずん と からだ が 大きく なって、


his body, zuzun, grew twenty cups, and then

たちあがりました。
he stood up.

そして、
And then,

「じさま。
"Grandfather,

おら に 百(ひゃっ)かんめ の てつ の ぼう、 つくって くれろ。」


please make me an iron rod weighing 100 kanme (weight units)."

と、 はじめて くち を ひらきました。
he said, the first time he opened his mouth.

「そんな おもい もの、 どう するん じゃ。」


"What will you do with such a heavy thing?"

「つえ に する んじゃ。
"I will make it my walking stick.

はやく つくって くれろ。」


Please make it quickly."

あかたろう が なおも いう ので、


Because Akatarou asked again,

おじいさん は 村(むら) の かじや へ、


とんで いきました。
the old man went flying to the ironsmith in town.

--

たちあがる、たちあがります、たちあがって、立ち上がる = stand up
ずずん = the sound of a heavy thing doing something
かんめ = a unit of weight
てつ、鉄 = iron
ぼう = rod
ひらく、ひらきます、ひらいて、開く = open
つえ、杖 = walking stick
なおも = again (adverb)
ので = because
かじや = ironsmith

page 9

百かんめ の てつ の ぼう が
できて くる と、 あかたろう は
うれしそう に かた手 で もちあげて、
どしん と じめん を たたきました。
すると、 おじいさん と
おばあさん は、 かえる の ように
ぴょん と とびあがって、
しりもち を ついて しまいました。
「なんと いう ちからもち じゃ。
きょう から 名まえ を かえよう。
お、 お、 おまえ は 日本一(にっぽんいち) の
ちからたろう じゃーー」
おじいさん は いき を
のみ ながら いいました が、
ふしぎな こと に、 ちからたろう の
せ が ずずずん と のびて、
二(に)メートル に も なって いました。

--

百かんめ の てつ の ぼう が できて くる と、
The hundred kanme iron rod was made and arrived, and

あかたろう は うれしそう に かた手 で もちあげて、


Akatarou happily lifted it with one hand, and

どしん と じめん を たたきました。


doshin, he hit the ground with it.

すると、 おじいさん と おばあさん は、


And then, the old man and old woman,

かえる の ように ぴょん と とびあがって、


pyon, bounced like a frog, and

しりもち を ついて しまいました。


fell on their behinds.

「なんと いう ちからもち じゃ。


"What a powerful man!

きょう から 名まえ を かえよう。


From today I will change your name.

お、 お、 おまえ は 日本一(にっぽんいち) の ちからたろう じゃーー」


Y, y, your name is Japan's number one Chikaratarou!"

おじいさん は いき を のみ ながら いいました が、


the old man said while holding his breath, and

ふしぎな こと に、
mysteriously,

ちからたろう の せ が ずずずん と のびて、


Chikaratarou's height, zuzuzun, grew, and

二(に)メートル に も なって いました。


had become as much as two meters.

--

かた手 = one hand


もちあげる、もちあげます、もちあげて、持ち上げる = lift
どしん = sound of heavy thing falling onto the ground
じめん、地面 = the ground
たたく、たたきます、たたいて、叩く= hit
しりもち を つく = fall on one's behind
ちからもち、力持ち = strong man, powerful man
いき を のむ = hold the breath
せ、背 = height
のびる、のびます、のびて、伸びる = grow
に も = as ... as (as high as)

page 10

「おら、 これから ちから だめし の


たび に でる だ。 じさま、 ばさま、
たっしゃで な。」
ちからたろう は、 つえ がわり の
百かんめ の てつ の ぼう を、
ぶりん ぶりん ふり まわし ながら、
いえ を あと に しました。

--

「おら、 これから ちから だめし の たび に でる だ。


"From now I will leave on a journey to test my power.

じさま、 ばさま、 たっしゃで な。」


Old man, old woman, stay well."

ちからたろう は、
Chikaratarou,

つえ がわり の 百かんめ の てつ の ぼう を、
with the hundred kanme iron rod as a walking stick,

ぶりん ぶりん ふり まわし ながら、


burin burin, while swinging it around,

いえ を あと に しました。
left his house behind.
--

ためし、試し = trial
たび、旅 = journey
たっしゃな = healthy
がわり = substitute
ふる、ふります、ふって、振る = swing, wave
まわす、まわします、まわして、回す = turn, spin

page 11

山みち を あるいて いく と、
むこう から かんのん さま の みどう を
かついだ 大男 が、 えいこら よいこら
のぼって きました。 そして かみなり の
ような 大ごえ で いいました。
「ほれ、 じゃま だ。 じゃま だ。
おれ さま は 日本一 の ちからもち、
みどうっこたろう さま じゃーー」

--

山みち を あるいて いく と、
He went walking on a mountain path and,

むこう から かんのん さま の みどう を かついだ 大男 が、


From over there a big man carrying a Kannon shrine on his back,

えいこら よいこら のぼって きました。


eikora yoikora, came climbing.

そして かみなり の ような 大ごえ で いいました。


And then he said in a big voice like thunder,

「ほれ、 じゃま だ。
"Hey you, you disturb me.

じゃま だ。
You are in my way.

おれ さま は 日本一 の ちからもち、
I am Japan's most powerful person,

みどうっこたろう さま じゃーー」
I am Mr. Midoukkotarou."

--

山みち = mountain path


むこう = other side, over there
かんのん = Kannon, the goddess of mercy
みどう、御堂 = temple
かつぐ、かつぎます、かついで、担ぐ = carry on the back
かみなり、雷 = thunder
じゃま、邪魔 = interruption, disturbance
ちからもち = a person with a lot of power

page 12

「なに いう か。 おら こそ 日本一 の ちからもち、 ちからたろう じゃ。」


ちからたろう も、 こえ を はりあげて 名のり を あげる と、
ふりあげた てつ の ぼう を、 あもいきり ふりおろしました。
ばりばりばり......。
かんのん さま の みどう は めちゃめちゃ に
こわれて、 すっとんで しまいました。
みどうっこたろう も、 どこ へ いった か
すがた が みえません。

--

「なに いう か。
"What did you say?

おら こそ 日本一 の ちからもち、 ちからたろう じゃ。」


But I am Japan's most powerful person, I am Chikaratarou."

ちからたろう も、 こえ を はりあげて 名のり を あげる と、


Chikaratarou also gave his name in a loud voice, and

ふりあげた てつ の ぼう を、 あもいきり ふりおろしました。


swung down his raised iron rod as hard as he could.

ばりばりばり......。
Baribaribari....

かんのん さま の みどう は めちゃめちゃ に こわれて、


The Kannon shrine was recklessly broken, and

すっとんで しまいました。
knocked away.

みどうっこたろう も、
Also Midoukkotarou,

どこ へ いった か すがた が みえません。


where he had gone could not be seen.

--

こそ = very, just
はりあげる、はりあげます、はりあげて、張り上げる = raise one's voice
名のり を あげる = give one's name
ふりあげる、ふりあげます、ふりあげて、振り上げる = swing up
ふりおろす、ふりおろします、ふりおろして、振り下ろす = swing down
おもいきり = as ~ as one can
めちゃめちゃ に = (adverb) reckless
こわれる、こわれます、こわれて、壊れる = break, be broken
すっとぶ、すっとびます、すっとんで = fly away
すがた = figure, appearance

page 14

「たすけて くれーー。 たすけて くれろーー」


みどうっこたろう は、 まつ の 木 の てっぺん に
さかさま に ひっかかって いました。
「なんじゃいな、 大きな くち たたいて。 いま
おろして やる わ。」

--

「たすけて くれーー。 たすけて くれろーー」


"Please help me! Please help me."

みどうっこたろう は、
まつ の 木 の てっぺん に さかさま に ひっかかって いました。
Midoukkotarou was caught upside down in the top of a pine tree.

「なんじゃいな、 大きな くち たたいて。


"What happened, you talked big.

いま おろして やる わ。」
Now I will do you the favor of putting you down."

--

まつ の き = pine tree
てっぺん = top
さかさま に = upside down
ひっかかる、ひっかかります、ひっかかって、引っ掛かる = be caught
なんじゃいな = what happened
たたく = hit
おろす、おろします、おろして、下ろす = put down
page 15

ちからたろう は、 まつ の 木 を
ねっこ ごと ひきぬいて、
みどうっこたろう を たすけて やりました。
「とても あんた の ちから には かなわん。
どうか けらい に して くれろ。」
みどうっこたろう は 手 を あわせて、
ちからたろう の けらい に なりました。

--

ちからたろう は、 まつ の 木 を ねっこ ごと ひきぬいて、


Chikaratarou pulled the pine tree out with its roots, and

みどうっこたろう を たすけて やりました。


kindly helped Midoukkotarou.

「とても あんた の ちから には かなわん。


"By far I can not match your power.

どうか けらい に して くれろ。」


Please make me your retainer."

みどうっこたろう は 手 を あわせて、
Midoukkotarou asked with his hands together, and

ちからたろう の けらい に なりました。


became Chikaratarou's retainer.

--

ねっこ = root
ごと = together with
ひきぬく、ひきぬきます、ひきぬいて、引き抜く = pull out
~(して)やる = help, ~ for a person
あんた = you (あなた)
かなう、かないます、かなって = suit, agree with
どうか = please
けらい = a retainer, a follower

page 16

ふたり で しばらく 山みち を あるいて


いく と、 がけ の いわ を がきん がきん、
手 で くだいて いる 大男 が いました。
だまって みて いる と、 大男 が
くだいた、 カボチャ くらい の 石(いし) の
かけら が、 うなり ながら とんで きました。
「おっと、 あぶねえ。」
ちからたろう は、 ふうっ と いき を
ふきつけました。
すると 石 の かけら は、
はんたい に とんで いって、 大男 の
おでこ に、 がきん と
ぶちあたりました。

--

ふたり で しばらく 山みち を あるいて いく と、


They went walking together for a while on the mountain road, and

がけ の いわ を がきん がきん、
手 で くだいて いる 大男 が いました。
there was a big man breaking the cliff rocks, gakin gakin,
with his hands.

だまって みて いる と、
They watched silently and then

大男 が くだいた、 カボチャ くらい の 石(いし) の かけら が、


a piece of rock the size of a pumpkin, which the big man had broken,
うなり ながら とんで きました。
came flying with a groan.

「おっと、 あぶねえ。」
"Whoops, danger."

ちからたろう は、 ふうっ と いき を ふきつけました。


Chikaratarou blew against it.

すると 石 の かけら は、
And then the piece of rock,

はんたい に とんで いって、


went flying in the opposite direction, and

大男 の おでこ に、 がきん と ぶちあたりました。


hit, gakin, the big man in the forehead.

--

がけ、崖 = cliff
いわ、岩 = rock
がきん がきん = sound of hard things hitting each other
くだく、くだきます、くだいて、砕く= break
だまる、だまります、だまって、黙る = be silent
カボチャ = pumpkin, or squash
くらい = the size of, as big as
かけら = a broken piece, a piece
うなる、うなります、うなって = groan
verb + ながら = while verb-ing
ふうっ = sound of blowing
いき、息 = a breath, breathe
ふきつける、ふきつけます、ふきつけて、吹き付ける = breathe against, spray
はんたい に = to the opposite direction
でこ = forehead
ぶちあたる、ぶちあたります、ぶちあたって = hit

page 18

「やい、 やい、 だれ じゃい。 日本一 の 石っこたろう さま に、


石 を ぶつけた やつ は。 ひねりつぶして くれる わ。」
石っこたろう は おこって かお を まっか に
し ながら、 ちからたろう の ほう へ やって きました。

--

「やい、 やい、 だれ じゃい。


"Hey, hey, who is it!

日本一 の 石っこたろう さま に、
石 を ぶつけた やつ は。
Who threw a rock at Japan's number one Ishikkotarou?

ひねりつぶして くれる わ。」


I will smash you!"

石っこたろう は おこって かお を まっか に し ながら、


While making his face red with anger, Ishikkotarou

ちからたろう の ほう へ やって きました。


approached Chikaratarou.

--

ぶつける、ぶつけます、ぶつけて = throw at
ひねりつぶす、ひねりつぶします、ひねりつぶして = twist and break
まっかな = red
し = make

page 19
「よし。 おめえ、 しょうぶ を して みろ。」
ちからたろう に いわれて、 みどうっこたろう が
とびだして いきました。 ふたり は がっぷり くみあいました が、
なかなか しょうぶ が つきません。

--

「よし。 おめえ、 しょうぶ を して みろ。」


"Alright. You, try and fight him."

ちからたろう に いわれて、
Because he was told by Chikaratarou,

みどうっこたろう が とびだして いきました。


Midoukkotarou came jumping out.

ふたり は がっぷり くみあいました が、


Together they grappled

なかなか しょうぶ が つきません。


for a long time and nobody won.

--

よし = alright
おめえ = you (impolite)
しょうぶ = a game, a match
いわれる、いわれます、いわれて、言われる = be told
とびだす、とびだします、とびだして、飛び出す = jump out
がっぷり = sound of two guys wrestling
くみあう、くみあいます、くみあって、組み合う = grapple with
しょうぶ が つく = end a fight with a winner and looser
なかなか = for a long time

page 20
「のったら のったら、 いつまで やっとるん じゃ。」
しびれ を きらした ちからたろう は、
石っこたろう の あたま の まげ を つかむ と、
ぶるん ぶるん ふりまわしました。
森(もり) の 木 が あらし の ように ゆれました。

--

「のったら のったら、 いつまで やっとるん じゃ。」


"Until when will you keep fighting?"

しびれ を きらした ちからたろう は、


Chikaratarou who became impatient,

石っこたろう の あたま の まげ を つかむ と、


grabbed the topnot on Ishikkotarou's head, and

ぶるん ぶるん ふりまわしました。


burun burun swung him around.

森(もり) の 木 が あらし の ように ゆれました。


The trees in the forest shook as in a storm.

--

のったら のったら = slowly


しびれ を きらす = get impatient
まげ = top not in men's hair
つかむ、つかみます、つかんで、掴む = grab
ぶるん ぶるん = swinging sound
ふりまわす、ふりまわします、ふりまわして、振り回す = swing around
あらし、嵐 = a storm
ゆれる、ゆれます、ゆれて、揺れる = shake or wave

page 21
「いてえ。 いてえ。 目 が まわる だよーー」
石っこたろう が さけぶ と、 ちからたろう は
空(そら) に むかって、 石っこたろう を
なげとばしました。
「たすけて くれーー」
まっさかさま に おちて きた
石っこたろう は、 ずぼぼぼっ と あたま から
じめん に めりこんで しまいました。

--

「いてえ。 いてえ。 目 が まわる だよーー」


"It hurts. It hurts. I feel dizzy."

石っこたろう が さけぶ と、
Ishikkotarou cried out, and

ちからたろう は 空(そら) に むかって、


facing the sky, Chikaratarou

石っこたろう を なげとばしました。
let Ishikkorarou fly.

「たすけて くれーー」
"Help!"

まっさかさま に おちて きた 石っこたろう は、


Ishikkotarou who came falling head over heels,

ずぼぼぼっ と あたま から じめん に めりこんで しまいました。


zubobobo, and landed with his head stuck into the ground.

--

いてえ = like いたい = hurt


め が まわる = feel dizzy
まわる、まわります、まわって、回る = turn
さけぶ、さけびます、さけんで、叫ぶ = cry (out), shout
むかう、むかいます、むかって、向かう = face (direction)
なげる、なげます、なげて、投げる = throw, pitch
とばす、とばします、とばして、飛ばす = fly, let ~ fly
まっさかさま = head over heels
おちる、おちます、おちて、落ちる = fall
ずぼぼぼっ = sound of something sticking into something
じめん = the ground
めりこむ、みりこみます、めりこんで = sink, cave in

page 22

石っこたろう も けらい に なりました。


三(さん)人(にん) で 山みち を おりて まち へ
いく と、 ひるま だ と いう のに、 どこ の
いえ も と を しめて、 しずまりかえって
いました。

--

石っこたろう も けらい に なりました。


Ishikkotarou also became a retainer.

三(さん)人(にん) で 山みち を おりて まち へ いく と、


The three men came down the mountain path and went to the town, and

ひるま だ と いう のに、
although it was daytime,

どこ の いえ も と を しめて、
all the houses were closed, and

しずまりかえって いました。
it was completely quiet.
--

おりる、おります、おりて、下りる = come down


ひるま = daytime
のに = although
しずまる、しずまります、しずまって、静まる = become quiet, calm down
かえる、かえります、かえって = strengthen meaning of first part of verb

page 23

「なにか あった の かいな。


はら が すいて、 めし を くわして
もらい たい のに、 だれも おらん な。」
まち の なか を あるいて いく と、 りっぱ な
ちょうじゃ の いえ の まえ で、 ちょうじゃ の
むすめ が ござ に すわって ないて いました。

--

「なにか あった の かいな。


"I wonder what happened."

はら が すいて、
I am hungry, and

めし を くわして もらい たい のに、


although I want to receive a meal,

だれも おらん な。」


there is nobody around."

まち の なか を あるいて いく と、
They walked through the town, and

りっぱ な ちょうじゃ の いえ の まえ で、
in front of a magnificent rich person's house,

ちょうじゃ の むすめ が ござ に すわって ないて いました。


there was a rich person's daughter sitting on a straw mat and crying.

--

なにか = something
あった = past tense ある
かいな = I wonder
はら = stomach
はら が すく = be hungry
すく、すきます、すいて、空く = become empty
くわす、くわします、くわして、食わす = feed
だれも = anybody
おらん = not present, be absent
ちょうじゃ、長者 = rich person
ござ = a straw mat
すわる、すわります、すわって、座る = sit

page 24

ちからたろう が たずねる と むすめ は、


「ひと月(つき) に いちど、 おそろしい ばけもの が
あらわれて、 まち の むすめ を ひとり ずつ
さらって いきます。 こんや は、 わたし の
ばん なの です。」
と、 なみだ を ふき ふき いいました。

--

ちからたろう が たずねる と むすめ は、


Chikaratarou asked, and the girl

「ひと月(つき) に いちど、
"Once a month,
おそろしい ばけもの が あらわれて、
a terrible monster appears, and

まち の むすめ を ひとり ずつ さらって いきます。


carries off the town's girls one by one.

こんや は、 わたし の ばん なの です。」


Tonight it is my turn."

と、 なみだ を ふき ふき いいました。
she said, wiping tears.

--

ひとつき、ひと月 = one month


いちど = one time
おそろしい、恐ろしい = terrible, fearful
ばけもの、化け者 = monster
あらわれる、あらわれます、あらわれて、現れる = appear, show up
ひとり ずつ = one (person) by one (person)
さらう、さらいます、さらって = carry off, kidnap
ばん、番 = turn
ふく、ふきます、ふいて、拭く = wipe
ふき ふき = wipe

page 25

ちからたろう は、
きりり と 目 を つりあげました。
「どんな ばけもの か しらぬ が、 わるい こと を
する やつ は ゆるせん。 おら たち が たいじ して やる。」
そう いって ばけもの が あらわれる と いう やしき に
あんない させました。

--
ちからたろう は、 きりり と 目 を つりあげました。
Chikaratarou had a fierce look in his eyes.

「どんな ばけもの か しらぬ が、


"I don't know what kind of monster it is, but

わるい こと を する やつ は ゆるせん。
I can not forgive anyone who does bad things.

おら たち が たいじ して やる。」
We will get rid of it."

そう いって
He said so, and

ばけもの が あらわれる と いう やしき に あんない させました。


let her guide them to the mansion where it is said that the monster appears.

--

きりり = a tension sound


つりあげる、つりあげます、つりあげて、つり上げる = hang up
目 を つりあげる = have a fierce look in one's eyes
やつ = somebody
ゆるす、ゆるします、ゆるして、許す = forgive, excuse
どんな = what kind of
たいじ、退治する = get rid of
あらわれる、あらわれます、あらわれて、現れる = appear
やしき、屋敷 = a mansion, a residence
あんない、案内 = guidance
させる、させます、させて = let somebody do something, make somebody do
something

page 26
よる に なる と、 なま あたたかい かぜ が
ふいて、 やしき よりも せ の たかい
ばけもの が、 あらわれました。
「むすめ は、 どこに おる。 かくれて おらんで、
でて まいれーー」
ばけもの は、 かお の まんなか に ある
目だま を ぎろぎろ ひからせて います。
「それっ。 みどうっこたろう、 石っこたろう、
やっつけて しまえ!」
ちからたろう が いいました が、 ふたり とも
すぐ ばけもの に つまみあげ られて、
ぱくり と のみこまれて しまいました。

--

よる に なる と、
It became night and,

なま あたたかい かぜ が ふいて、
a disagreeably warm breeze was blowing, and

やしき よりも せ の たかい ばけもの が、 あらわれました。


a monster taller than the mansion appeared.

「むすめ は、 どこに おる。


"Where is the girl.

かくれて おらんで、 でて まいれーー」


Don't hide, come out."

ばけもの は、
The monster was

かお の まんなか に ある 目だま を ぎろぎろ ひからせて います。


leting shine the eyeball which was at the center of his face, girogiro.
「それっ。 みどうっこたろう、 石っこたろう、 やっつけて しまえ!」
"Now! Midoukkotarou, Ishikkotarou, attack him!"

ちからたろう が いいました が、
Chikaratarou said, but,

ふたり とも すぐ ばけもの に つまみあげ られて、


right away they were both picked up in the monster's fingers,

ぱくり と のみこまれて しまいました。


and pakuri, swallowed.

--

なまあたたかい、生暖かい = disagreeably warm


よりも = than (for comparison)
せ、背 = back, but in this case refers to height
おる、おります、おって、居る = same as いる, exist, be there, for people
かくれる、かくれます、かくれて、隠れる = hide oneself
まんなか、真ん中 = the center
目だま = eyeball
ぎろぎろ = sound of somebody staring at something
ひからせる、ひからせます、ひからせて、光らせる = let something shine
やっつける、やっつけます、やっつけて = beat, attack
とも = both, together
つまみあげる、つまみあげます、つまみあげて = pick up in one's fingers,
take a pinch of
ぱくり = sound of taking food into mouth all at once
のみこむ、のみこみます、のみこんで、飲み込む = swallow

page 28

「なんじゃい な。 おら が
やっつける べえ。」
ちからたろう は、 てつ の ぼう を
ふりまわし ながら、 ばけもの に
かかって いきました。
ところ が、 てつ の ぼう は
ぐにゃり と ねじまげ られて
しまいました。
くみついて も、 ずでん。
「うーぬ。 もう がまん が
ならん!」
ちからたろう は、 おもいきり
おなか を けりあげました。

--

「なんじゃい な。
"What happened?

おら が やっつける べえ。」
I will beat him!"

ちからたろう は、 てつ の ぼう を ふりまわし ながら、


ばけもの に かかって いきました。
While swinging his iron rod, Chikaratarou attacked the monster.

ところ が、
But,

てつ の ぼう は ぐにゃり と ねじまげ られて しまいました。


the iron rod became twisted.

くみついて も、 ずでん。
He grappled, but zuden (faling down sound).

「うーぬ。 もう がまん が ならん!」


"Hnnn. I am out of patience!"

ちからたろう は、 おもいきり おなか を けりあげました。


Chikaratarou kicked up into his stomach with all his might.
--

てつ の ぼう = iron rod
ふりまわす、ふりまわします、ふりまわして、振り回す = swing around
かかる、かかります、かかって = challenge
ぐにゃり = sound of something being bent
ねじまげる、ねじまげます、ねじまげて、ねじ曲げる = bend by twisting, twist
くみつく、くみつきます、くみついて、組み付く = grapple
ずでん = sound of somebody hitting the ground
うーぬ = express a feeling between anger and frustration
もう = any more, yet
がまん = patience
ならん = can not (do, continue, exist)
おもいきり = with all his might
ける、けります、けって、蹴る = kick
あげる、あげます、あげて、上げる = lift

page 29

「ぎゃおーー」
ばけもの は、 のみこんだ みどうっこたろう と
石っこたろう を はきだして、 けむり の ように
きえて しまいました。

--

「ぎゃおーー」
"Gyaooo"

ばけもの は、
The monster,

のみこんだ みどうっこたろう と 石っこたろう を はきだして、


threw up Midoukkotarou and Ishikkotarou who he had swallowed, and
けむり の ように きえて しまいました。
disappeared like smoke.

--

のみこむ、のみこみます、のみきんで、呑み込む = swallow in
はきだす、はきだします、はきだして、吐き出す = throw up, vomit
けむり = smoke
きえる、きえます、きえて、消える = disappeare

page 30

むすめ が たすかった ので、 ちょうじゃ は おおよろこび。


おれい が したい と いいました。
「なにも いらん。 はら が すいた だよ。」
ちからたろう が いう ので、 ふろおけ の ような 大がま で
ごはん を たく と、 三人 で ぺろりん と たいらげて、
にこにこ し ながら、
「ごちそうさん。」
ぺこり と あたま を さげ ました。
大ぐい です が、 いい 大男 たち です。

--

むすめ が たすかった ので、 ちょうじゃ は おおよろこび。


Because the daughter was saved, the rich person was very pleased.

おれい が したい と いいました。


He said that he wants to thank them.

「なにも いらん。
"I don't need anything.

はら が すいた だよ。」
But I am hungry."
ちからたろう が いう ので、
Because Chikaratarou said that,

ふろおけ の ような 大がま で ごはん を たく と、


he had rice cooked in a big kettle like a bathtub, and

三人 で ぺろりん と たいらげて、
the three people ate up, and

にこにこ し ながら、
while smiling,

「ごちそうさん。」
"It was good food."

ぺこり と あたま を さげました。


They bowed their heads.

大ぐい です が、 いい 大男 たち です。
They are big eaters, but they are good big men.

--

ので = because
ちょうじゃ = rich person
おれい = thanks, a reward
いらん = short for いらない = don't need
はら = stomach
ふろおけ = bathtub
ような = like, just like
おがま、かま = an iron pot, a kettle
たく、たきます、たいて、炊く = cook, boil
ぺろりん と たいらげる = eat up
し = する
にこにこ する = smile
ぺこり = sound of bowing
おおぐい、大ぐい = a person who eats a lot, glutton

page 31

ちょうじゃ は すっかり
きにいって、 三人 を じぶん の
むすめ たち の むこ さん に むかえました。
それから と いう もの、 ちからたろう たち は
よく はたらいて、 まち の ひと たち と いつまでも
なかよく くらしました とさ。
ーー「ちからたろう」 の おはなし、 これで おしまい。

--

ちょうじゃ は すっかり きにいって、


The rich person was quite pleased, and

三人 を じぶん の むすめ たち の むこ さん に むかえました。


welcomed the three to be the husbands of his own daughters.

それから と いう もの、
From then on,

ちからたろう たち は よく はたらいて、
Chikaratarou and his friends worked well, and

まち の ひと たち と いつまでも なかよく くらしました とさ。


became friends with the towns people and lived happily ever after.

ーー「ちからたろう」 の おはなし、 これで おしまい。


The "Chikaratarou" story closes there.

--

すっかり = completely, quite


きにいる、きにいります、きにいって、気に入る = to like, be pleased with
むこ、婿 = groom (husband), husband chosen for daughter
むかえる、むかえます、むかえて、迎える = meet, welcome
なかよく、仲良く = make friends, become friends
くらす、くらします、くらして、暮らす = live a life

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