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Gypsum & Lime No.

193 (1984) (367)

資 料

ベ ン トナ イ ト泥 水 固 化 工 法*

平 井 利 一**

べ騒 音 や 振 動 が は るか に小 さい 。 また,壁 体 の 剛 性 が 高
1 泥 水 固 化 工 法 の背 景
く,止 水 性 も よい た め 機 能 的 に も す ぐれ て お り,周 辺 地

昭 和40年 代 の初 め頃 を境 に,騒 音,振 動,地 盤 沈 下 な 盤 沈 下 や 地 下 水 位 の 低 下等 に 対 す る安全 性 が 高 い工 法 で

ど,建 設 工 事 に伴 う公 害 が大 きな社 会 問 題 と して取 り上 あ る 。 さ らに,た ん な る工 事 中 の 仮 設 構 造 物 と して で な

げ ら れ る よ うに な っ た 。 こ の た め種 々 の対 策 が 研 究 さ く,構 造 物 本 体 の 地 下 壁 と して設 計 す る こ と も可 能 で あ

れ,現 在,市 街 地 の工 事 で は こ う した公 害源 に な らな い る。

工 法 に よ って施 工 を行 うの が 常識 とな って い る。 この よ うに,地 中 連 続 壁工 法 は,安 全 性 の 高 い 無 公 害

基礎 工 事 や 地 下工 事 で は,公 害 に 関 連 した トラブ ル が 工 法 で あ るた め,市 街 地 の 大 規 模 な 地 下工 事 や 軟 弱 地 盤

と くに 発 生 しが ち で あ るた め,早 くか ら無公 害工 法 の 研 で の 工 事 に は,近 年 しば しば 採 用 され る よ うに な った 。

究 が進 ん で お り,30年 代 か ら い くつ か の新 工 法 が 実 用 化 しか しな が ら,こ の工 法 は 地 盤 に掘 削 した深 溝 に,し か

され て い た 。 地 中 連 続壁 工 法 もそ の 一 つ で あ る。 もベ ン トナ イ ト泥 水 の 充 た され た 状 態 で コ ン ク リー トを

この工 法 は,建 築 の 地 下工 事 な どで 地 下 を掘 削 す る と 打 設 す るの で,壁 体 や 壁 面 の 精 度,鉄 筋 コ ン ク リー トの

き,掘 削 面 が崩 壊 しな い よ うに 支 え る山 止 め 壁 工 法 の 一 品 質 な どが,一 般 の地 上 構 造 物 に くら べ る と低 い 。 そ の

種 で あ る。 山 止 壁 は,従 来 鋼 製 の シ ー トパ イル が 代 表 的 た め地 中 連 続 壁 の 設 計 に あ た って は 設 計 強 度 を 低 く 押

な もの で あ った が,シ ー トパ イル 工 法 は,ハ ン マ ーで 地 え,ま た 施 工 に あ た って は 慎 重 な管 理 を行 うな どの 配 慮

中 深 く打 ち 込 む た め に,騒 音 や 地 盤 振 動 が 大 きい 。 これ の も とに 実 施 され て い る。 また,こ の 工 法 で は 深 溝 を型

に 対 して 地 中 連 続 壁 工 法 は,図1に 示 す よ うに,(1)特 殊 枠 と して コ ン ク リー トを打 設 す るの で,溝 の 掘 削 精 度 が

な 掘 削 機 に よ っ て 巾40∼100cm程 度の深い 溝 を 掘 削 地 中 壁 の 精 度 に 直 接 影 響 す る。 こ のた め溝 掘 削 に あ た っ

し,(溝 の 崩 壊 を防 ぐた めに 常 に ベ ン トナ イ ト泥 水 が 充 ては,高 性 能 の掘 削 機 を用 い,慎 重 に 垂 直 精 度 の管 理 を

た され て い る)(2)掘 削 終 了後 溝 中 に,地 上 でか ご状 に 組 行 う必 要 が あ る。 さ らに,砂 れ き層 な どで 施 工 す る場 合

立 て られ た 鉄 筋 をつ り込 み,(3)ト レ ミー管(水 中 コン ク に は,掘 削 壁 面 を な め らか に掘 削 す る こ とは 不 可 能 で,

リー ト打 設 用 の鋼 製 パ イ プ)を 用 い て コ ン ク リー トを打 した が っ て地 中壁 の壁 面 に 凹凸 がで き る こ とは 避 け られ

設 す る方 法 に よ っ て鉄 筋 コ ン ク リー ト構 造 の地 中壁 を構 ない 。

築 するものである。 こ れ ら の地 中連 続 壁 の宿 命 ともい え る問 題 点 の 改 善 策

地 中 連 続 壁 に よ る 山止 め壁 工 法 は,シ ー トパ イ ル に比 と して,現 場 で コン ク リー トを打 つ 代 わ りに プ レキ ャ ス

(a) 溝 掘 削 (b) インターロッキング (c) 鉄筋籠 建 て込み (d) コン ク リー ト打 設 (e) インターロッキング


パ イプ建 て込 み パイプ 引き抜 き

図1 地中連続壁工法

* Slurry-Solidifying Method
** Riichi HIRAI (株 式 会 社 熊 谷 組 技 術 研 究 所 第5部)

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トコン ク リー ト板(以 下PC板 とい う)を 用 い る方 法 が を増 進 し,止 水 性 の よい硬 質 粘 土 状 の物 質 と な っ てPC


考 え ら れ る。 こ の方 法 に よれ ばPC板 は,工 場 で 良 好 な 板 と と もに 止 水 壁 を形 成 す る 。
管 理 の も とに 製 造 され るの で,コ ン ク リー トの 品 質,壁
2 泥水固化工法の種類
体 精 度,壁 面 状 態 な どは きわ め て よい もの が 得 られ,高
強 度 で 薄 い 壁 が 設 計 で き る。 また,地 中 壁 の施 工 は, PC板 を用 い た地 中連 続 壁 工 法 で,PC板 と溝 壁 の 間
PC板 を垂 直 に つ って 溝 内 に 設 置 で き る の で,溝 の掘 削 げ きを 充 て ん す る方法 に は,前 述 した よ うな 泥水 を そ の
も在 来 の工 法 に 比 べ,容 易 とな る。 ま まの 位 置 で 固 化 す る工 法 と地 上 で 混練 した ベ ン トナ イ
こ の よ うなPC板 を用 い た 地 中 連 続 壁工 法 を実用 化 す トモ ル タル を溝 中 に 注入 し,泥 水 と置 換 す る工 法 とが あ
るた めに は,深 溝 にPC板 をつ り込 ん だ 後 に これ を地 中 る。 また,前 者 の工 法 に は,ケ イ ソ イル工 法 の よ う に
壁 と して固 定 させ る方 法,す な わ ち,溝 内 のPC板 周 PC板 を設 置 した後 に泥 水 を固 化 す る工 法 の ほか に 自硬
辺 の 間 げ き(泥 水 が充 され て い る)を 地 盤 と同等 以 上 の 性 泥 水 を用 い る工 法 が あ る(表1)。
強 度 と安 定 性 の あ る物 質 で 充 て ん す る こ とが 必 要 と な 自硬 性 泥 水 を用 い る工 法 は,掘 削時 に用 い る泥 水 中 に
る。 あ らか じめ 固 化材 と硬 化 遅 延 剤 を配 合 してお くも の で,
筆 者 らは,こ の 一 手 段 と して 溝 掘 削 時 に用 い た ベ ン ト 溝 掘 削 とPC板 建 て込 み作 業 の期 間 に は,泥 水 は所 定 の
ナ イ ト泥 水 を,溝 内 の 原 位 置 で 固 化 させ る方法(ケ イソ 流 動 状 態 が保 た れ,PC板 の設 置 が完 了 してか ら固 化 が
イル 工 法)を 開 発,実 用 化 した 。 この工 法 の手 順 を 図2 始 ま る よ うに 配合 を調 整 して お く。 この工 法 は,固 化 工
に 示 し,説 明 す る 。(1)在来 の地 中連 続 壁 工 法 と同様 に一 程 が 省 け る利 点が あ るが,PC板 の建 て込 み を終 え る ま
施 工 単位 の溝 掘 削 を行 う。(2)PC板 を溝 中 に順 次 建 て入 で,泥 水 が 固 化 は じめ て い な い こ とが重 要 で あ り,固 化
れ,地 上 か ら垂 直 に つ り下 げ た状 態 で 設 置 す る。(3)溝の 時 間 を綿 密 な施 工 計 画に 合 せ て正 確 に 調 整 す る必 要 が あ
端 部 に 鋼 製 の 仕切 り板(イ ン ター ロ ッキ ング ボ ック ス) る 。 こ の工 法 に は,フ ラ ン ス の ソ レタ ン シ ュ社 が 開 発 し
を 設 置 す る。(4)あらか じめPC板 中 に埋 設 して おい た パ た パ ナ ソル工 法 な どが あ る。
イ プ に よ って地 上 か ら圧 搾 空 気 を送 り,PC板 下 端 に取 泥 水 を充 て ん材 と置 換 す る工 法 には フ ラ ン ス の バ シ ー
りつ け た ノズ ル か ら溝 底 近 くの 泥水 中 に吹 き 出 さ せ る。 社 が特 許 を も つ プ レフ ァシ フ工 法 が あ る。 充 てん 材 は,
空 気 は 気泡 群 とな っ て 上 昇 し,こ れ に伴 い泥 水 は溝 全 体 遅 延 性 ベ ン トナ イ トモ ル タ ル で 固化 開 始 時 間 は5∼6時
に わ た って か くは ん され る。 この状 態 を続 け な が ら,泥 間,最 終 強度 は5∼100kg/cm2で 調 整 で き る。 置 換 は,
水 中 に地 上 か ら水 ガ ラ ス お よび セ メ ン トペ ー ス トを順 次 図3に 示 す よ うに水 平 ス プ レ ッダ ーつ き の トレ ミー パ イ
投 入 す る 。 十分 に か くは ん,混 合 が行 わ れ た ら空 気 の送 プ を用 い て行 わ れ る。 注 入 量 はPC板 の容 積 を考 慮 して
り込 み を停 止 し,作 業 を終 る。(5)溝中 の液 は,ま も な く 決 め られ,泥 水 を 回収 しなが らPC板 を挿 入 して,建 て
ゼ ラチ ン状 態 に な り,化 学 反 応 の進 行 と ともに 固 化 して 込 み が 終 る と泥 水 全 部 が 充 て ん 材 と置 き換 わ る よ うに 計
PC板 は 地 中 に 固 定 され る。 泥 水 固 化 物 は 経 時 的 に 強 度 画 され る。

(a) 溝 掘 削 (b) PC板 お よび イン (c) PC板 設 置完 了 (d) 泥水 固化 作業 (e) 泥水 固化後 イ ンター


タ ー ロッキングパ ロッキン グパイプ 引
イプ 建 て込 み
き抜 き

図2 プ レキ ャ ス トコ ン ク リー ト板 を用 い た 地 中 連 続 壁工 法

表1 PC地 中連続壁工法 の分類

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(1) (2) (3) (4)

図3 プ レフ ァ シ フ工 法

3・3 泥 水 固 化 物 の 強度 と 強度 制 御
3 泥 水 固 化工 法 の 技術
3・3・1 強 度 に影 響 を及 ぼ す 因子

本 節 で は,ケ イ ソ イル工 法 に よ る泥水 固化 技 術 を 中心 泥 水 固物 の強 度 は,後 述 す る手 段 に よ っ て制 御 す る こ

に二,三 の点 に つ い て述 べ る。 とが で き,お お よ そ 図4に 示 す範 囲 の強 度 発 現 を てい す

3・1 ベ ン トナ イ ト泥 水 る 。強 度 に影 響 を与 え る 因子 と しては,図5に 示 すよ う

泥水 に用 い るベ ン トナ イ トの主 成 分 は モ ンモ リロナ イ な も の が考 え ら れ,数 多 く実 験 を行 った 。 主 な因 子 に つ

トの 主 成 分 で,水 中 で 多量 の水 を吸 収 し,5∼10倍 に膨 い て の研 究 結 果 は,つ ぎ の通 りで あ る。

潤 して 分 散 す る。溝 掘 削 中 に 泥 水 は溝 壁 面 で 炉 過 され, a) ベ ン トナ イ トの種 類

こ こに 止 水 性 の 高 い ベ ン トナ イ ト泥膜 を形 成 す る。 この 泥 水 固 化 物 の 強度 は,泥 水 に用 い る ベ ン トナ イ トの種

泥 膜 を介 して 泥 水 圧 が 地 盤 に 伝 達 され て溝 壁 の 安 定 を保 類 に大 き く左 右 され る 。 ベ ン トナ イ トは,産 地 に よ って

つ 。 また,砂 地 盤 な どで は,浸 透 した 泥 水 に よ り砂 に 粘 膨 潤 度 が 異 な る。膨 潤 度 が大 き な産 地 の も の を用 い た 場

着 力 が 付加 され る。 ベ ン トナ イ ト泥 水 の 性 能 は,ベ ント
ナ イ トの 鉱床 や 粒 度,調 合,添 加 剤等 に左 右 され る。

3・2 固 化 材 と投 入 手 順

固 化 材 に は 水 ガ ラス と セ メ ン トを 使用 す る。 セ メ ン ト
は,泥 水 中 で の 分 散 性 を よ くす る す るた め,W/C 50%

程 度 の ペ ー ス トと して 使 用 す る。 水 ガ ラス は,現 場 で の
取 り扱 い や す さや 経 済 性 を考 え,JIS 3号 品 を使 用 して
い る。

固 化 材 の 投 入 は,か な らず水 ガ ラス→ セ メ ン トの順 と


す る。 セ メ ン トペ ース トを最 初 に 投 入 す る と,か くは ん
に よ って 泥 水 中 の 膨 潤 ベ ン トナ イ トのNaイ オ ン とセ メ
ン トの 水 和 反 応 に よ って 生 じるCaイ オ ン との塩 基 置 換 図4 泥水 固化物 の強度発現
が 行 わ れ て ベ ン トナ イ トは 吸 着 水 を放 出 して収 縮 し,泥

水 中 の 自由 水 量 が 増 加 す る。 これ に 対 して,水 ガ ラス を
最 初 に 投 入 す る場 合は,膨 潤 ベ ン トナ イ トの 周 辺 に 拡 散
して い る水 ガ ラ スが 自由 な塩 基 置 換 を妨 げ るた め,放 出
す る吸着 水 量 が 少 く,し た が って セ メ ン ト→ 水 ガ ラス 方

式 に よ る もの に 比 較 して 相 対 的 に 自由 水 量 が 少 な く な
る。 した が って,水 ガ ラス を先 に 投 入 した ほ うが 固 化 材

濃 度 が大 き く固 化物 の 強度 が 高 くな り,ま た ブ リー ジ ン
グ も発 生 しが た い 。 図5 泥 水 固 化 物 の強 度 に影 響 を あ た え る因 子

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合 に は 泥 水 中 の 自由 水 が 少 な くな るた め 固化 材 濃 度 が高 f) 活 性 が高 い シ リカ質 微 粉 の添 加
くな り,強 度 が 大 き くな る。 しか し膨 潤 度 が大 き く,吸 活 性 が高 い シ リカ質 微 粉 末 を泥 水 に 添 加 してお く と,
着Naイ オ ンの 量 が 多 い場 合,セ メ ン トとの水 和 反 応 に そ の ポ ゾ ラ ン反 応 を 利用 して,固 化 物 の 圧縮 強 度 を高 く
よ っ て生 じるCaイ オ ン との塩 基 置換 が行 わ れ や す くな す る こ とが で き る。
り,こ れ に よ っ て生 じる 自由 水 量 が 多 くな る。 こ の た め g) 泥水 中 の懸 濁 物
例 外 的 に 膨 潤 度 が 大 きい に もか か わ らず 固 化 物 強度 が 低 溝 掘 削 中 に 粘土 粒子 の よ うな比 表 面 積 の大 きな土 粒子
くな るベ ン トナ イ トが あ る。 を多 量 に 懸 濁 した 場 合,そ の 表 面 に 泥 水 中 の 水分 が 吸着
b) ベ ン トナ イ トの 濃度 され るの で 自由 水 量 が 少 くな り固 化物 強 度 が 高 くな る。
同 一 固 化 材 量 に 対 してベ ン トナ イ トの 濃 度 が 大 きい も 比 表 面 積 が 少 な い 砂 粒子 等 の 場 合 は,懸 濁 して もほ とん
の の ほ うが 小 さい もの に 比 較 して 固 化 物 強 度 が 高 い 。 こ ど強 度 に影 響 しな い 。
れ は,前 者 の ほ うが 後 者 に 比 べ て泥 水 中 の 自由 水 量 が 少 h) か くは ん,混 合 の 強 弱
な い た め で あ る。 水 ガ ラス混 和 泥水 とセ メ ン トペ ー ス トをか くは ん,混
c) 水 ガ ラス の 量 合 す る と き,塩 基 置 換 の た め に膨 潤 ベ ン トナ イ トが 吸着

本 工 法 で の水 ガ ラ スの 機 能 は,(1)セ メ ン トの 水 和反 応 水 を 放 出 す るが,実 験 で は この か くは ん が弱 い と塩 基 置
を促 進 す る,(2)膨 潤 ベ ン トナ イ トとCaイ オ ンの塩 基 置 換 度 が 少 な い た め 自 由水 の増 量 が少 く,固 化 物強 度 が 高
換 を妨 げ る,(3)Ca(OH)2と 反 応 して ケ イ酸 カ ル シウ ム くな る こ とが あ る 。 しか し,実 際 の施 工 現 場 で は,溝 全
の ゲ ル状 沈 殿 物 を生 成 し,か くは ん 停止 後 セ メ ン ト粒子 体 に わ た っ て セ メ ン ト粒 子 を で き る だ け均 等 に分 散 す る
を分 散 した状 態 で 保 持 して 均 一 な 固 化 物 を作 る,の3点 よ う長 時 間 か くは ん を行 うの で,塩 基 置 換 は 完全 に 行 わ
で あ る。 これ ら の効 果 は,い ずれ も水 ガ ラス 量 が 多 い ほ れ,か くは ん,混 合 の 強 弱 に よ って 固 化 物 強 度 が 高 くな
ど大 きい の で,固 化 物 強 度 も水 ガ ラ ス量 が 多 い ほ ど 高 る こ とは な い 。
い 。 また,水 ガ ラ スが 強 度 に お よぼ す効 果 は,早 期 材 令 3・3・2 強 度 の 制 御
に 大 き く現 わ れ,長 期 材 令 に な るに した が って薄 れ る。 泥 水 固 化工 法 は,PC板 を用 い た地 中連 続 壁工 法 以 外
d) セ メ ン ト量 に も地 盤 改 良,止 水 壁,そ の ほ か 多 くの 山止 め工 法 等 に
セ メ ン ト量 が 多 い ほ ど泥 水 固 化 物 の 強 度 は 高 くな り, 応 用 で き る。 これ ら使 用 目的 や 計 画 条 件 に よ り,固 化 物
そ の 影 響 は 水 ガ ラ ス と逆 に 材 令 が 長 くな るに した が って の強 度 を制 御 す る必 要 が あ り,そ の 方法 は,ベ ン トナ イ
顕 著 に な る。 ト種 類 の選 定,セ メ ン ト種類 の 選 定,高 シ リカ 質 微 紛 末
e) セ メ ン トの 種 類 の添 加 の三 つ の 手 段 に よ って 行 う。 固 化 物 強 度 は,実 用
固 化 材 の配 合 が 同 一 の 場 合,高 炉 セ メ ン トを 使用 した 上5kg/cm2以 下,5kg/cm2∼10kg/cm2, 10kg/cm2
固 化 物 の 強 度 は,普 通 ボル トラ ン ドセ メ ン トを使 用 した ∼20kg/cm2, 20kg/cm2以 上 の4段 階 に分 け,そ の配
もの よ り顕 著 に 高 い 。 これ は,泥 水 固化 物 の場 合,セ メ 合 基 準 は 表2の 通 りで あ る 。
ン ト量 に対 して 泥水 中 の水 分 が多 い た め,水 に溶 解 す る
実 際 の現 場 では,ま ず こ の基 準 に よる試 験 を行 っ て 泥
Ca(OH)2の 量 が 多 く,し た が っ て 高 炉 セ メン トに含 ま 水 と固化 材 の配 合 を決 め る 。 つ ぎ に掘 削 中 の溝 か ら泥 水
れ て い るス ラグ に よる ポ ゾラ ン反 応 が活 発 とな る た め で を採 取 し,試 し練 りに よる 固化 物 の 一軸 圧 縮 強 度 試 験 を
ある。 行 っ て そ の結 果 に よ っ て基 準配 合 の調 整 を行 う。

表2 泥水の配合基準

注) 普 ポ:普 通 ボ ル ト ラ ン ドセ メ ン ト
高 炉:高 炉セ メン ト

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程 度 の高 い止 水 性 を要 求 され る場 合 に は,高 炉 セ メ ン ト
を使 用 す る こ とに してい る。

4 お わ りに

以 上,筆 者 ら が開 発 した泥 水 固 化 工 法 に つ い て の べ
た 。 この こ の工 法 は プ レキ ャス トコン ク リー ト板 を用 い

た地 中連 続 壁 工 法 を実 用 化 す る こ と を 目的 と して 開 発 し
た も の だ が,応 用 性 が広 く,現 在,土 木 建 築 の 地 下工 事
関 係11種 類 の応 用 工 法 が実 用 化 され てお り,壁 タ イ プの
もの約20万m2,地 盤 改 良や 泥 水 処 理 な ど約 万2m3を

施 工 して い る 。
本 文 で は,本 工 法 の開 発 に 至 る背 景 と固 化 物 強 度 に 関
す る研 究 結果 の概 要 の み を の べ た。 工 法 の詳 細 に つ い て
は,後 掲 の文 献 を ご らん い た だ きた い。 諸 兄 の ご研 究 に
な ん らか の参 考 に で も なれ ば幸 い で あ る。

図6 泥 水 固 化 物 の 一 軸 圧縮 強度 と変形 係 数 文 献
(注) E50:破 壊応 力 の56%の 応 力 時 に お け る応 力 と
ひ ず み の比 率,一 軸 圧 縮 強 度 試 験 で 測 定 1) 増 沢鯱 男,「 プ レキ ャス トコン ク リー ト板 を 用 い
す る。 た 地 中連 続 壁 工 法 」,土 と基 礎,24, No. 9 (土質

3・4 固化物の物性 工 学 会,1976).


2) 増 沢 鯱 男 「泥水 固 化工 法 を利 用 した 置 換 に よ る地
泥 水 固 化工 法 の計 画 で は,使 用 目的 や計 画 条 件 に よ っ
て,固 定 物 に 要 求 され る強 度 や 透 水 係 数 を 設 定 す る。 盤 改 良工 法 」,土 と基 礎,25, No. 9 (土質 工 学 会,
1977).
実 際 の 現 場 で 採 取 した 固 化 物 の 一軸 圧 縮 強 度 と変 形 係
3) 津 高正 高,増 沢鯱 男,佐 治 敏 雄 「泥 水 固 化 工 法 に
数 の 関係 は,図6に 示 す 通 りで,設 計 で は,E50= 100 qu
を採 用 して い る。 引 張 り強 度 も同様 に統 計 的 に検 討 した よ る プ レキ ャス トコ ン ク リー ト地 中 連 続 壁 工 事 」,

結 果 か ら,σt=1/10quと して い る。 土 木 学 会 誌63-7 (土木 学 会,1978).

ま た,固 化 物 の透 水 係 数 は,1.0×10-6∼1.0 ×10 -8 4) 増 沢 鯱 男 「泥水 固化 工 法 にお け る配 合 と固 化 物 の

cm/sec位 の 範 囲 に あ る。 透水 性 は,普 通 ボル トラ ン ド 物 性 に 関 す る 研 究 」,日 本 建 築 学 会 大 会 学 術 講 演

セ メ ン トを用 い た 場合 よ りも高 炉 セ メ ン トを用 い た も の 梗 概集,(日 本 建 築 学 会,1979).

の ほ うが高 くな り,し た が って1.0×10-7cm/sec以 下 (1984. 4. 5受 付)

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