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廃LIBセルにおけるLi回収率および純度向上へ向けた条件検討
廃LIBセルにおけるLi回収率および純度向上へ向けた条件検討
C2-10-P
1.緒言
リチウムイオン二次電池(LIB)は、携帯電話やノートパソコンなどに幅広く使われている。LIB の生産量増加に伴い
原料である Li 塩の価格は高騰している。しかし、日本における水平リサイクルはほとんど進んでおらず、原料は全て
輸入に頼っているため、廃 LIB からの Li 回収は重要な課題のひとつである。
著者らは、正極活物質(LiCoO2)のモデル試料 [1]および廃 LIB の正極材 [2]を焼成および水浸出処理により、どちらの
試料でも Li を 98%回収するための条件を見出した。その一方で、電解液やバインダー由来の F も 90%以上水浸出する
ことも明らかにした。廃 LIB から Li 回収プロセスを構築するためには、検討のターゲットを正極材からセルにする
ことと、F のコントロールが必要不可欠である。
本実験では、廃 LIB セルからの Li の回収率および純度の向上を目的として焼成実験を行った。Ca(OH)2 を正極材へ
添加することで F のコントロールを行い、焼成実験を通じて Li および F の水浸出挙動について評価した。
2.実験方法
2.1 試料
・F 中和実験:使用済みノートパソコン用 LIB から手分解により正極材を取り出し、カ
表1 正極粉末試料の元素濃度
ッターミルで 250μm 以下に粉砕したものを正極粉末試料として用いた。正極粉末試料
の元素濃度を表 1 に示す。焼成時に発生する F を中和するために Ca(OH)2 を用いた。正極 元素 mass%
2.2 焼成実験および分析前処理
図 1 に焼成実験装置概略を示す。アルミナボートに試料をのせ、反応管の中心に挿入した。試料の焼成を表 2 に示
す条件で行った。焼成実験後、F 中和実験の場合 300 ml、LIB の焼成実験では 400 ml の超純水と焼成試料をコニカル
ビーカーにそれぞれ入れ、両者共に 1 h 超音波洗浄をした。
減圧濾過後、濾液と濾過残渣に分けた。さらに、LIB の焼成実験場合、水浸出濾過残渣を王水処理して、得られた濾
液を分析試料とした。
表2 焼成条件
反応管 試料(粉末 or LIB セル) 電気炉
F 中和 LIB セル
雰囲気ガス Ar Ar
昇温速度 [℃/min] 10 5
シリコンキャップ ガス流量 [ml/min] 100 500
アルミナボート
Ar ガス マスフローメーター
焼成温度 [℃] 500 600, 700
保持時間 [h] 1 1
図 1 焼成装置概略
2.3 分析およびマテリアルバランス
濾液中の金属を ICP-AES、F を IC でそれぞれ分析した。濾過残渣の F を微量分析装置(有機ハロゲン・硫黄分析シス
テム)で分析した。F 中和実験において、濾液で検出された F を水溶性 F、残渣の F を非水溶性 F、それ以外を排ガス
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【キーワード】リチウムイオン二次電池、Li 回収、F 中和
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第32回廃棄物資源循環学会研究発表会 講演原稿2021
60 6
Ca浸出率 [%]
60
割合 [%]
50 5
排ガス
40 4
40 水溶性
30 3
非水溶性
20 2
20
10 1
0 0
0 1 2 3 4 5 0
0 0.2 1 5
Ca(OH)2値 [-]
Ca(OH)2値 [-]
600℃ 700℃
100
80
割合 [%]
60
水
王水
40
20
0
Li Co Al Li Co Al
図 4 LIB セル焼成後における Li、Co、Al の水と王水の分配率
参考文献
[1] Kuzuhara, S. Et al. Metals 2020, 10, 433. https://doi.org/10.3390/met10040433
[2] 山田悠人. 葛原俊介「廃 LIB 正極材からの高純度 Li 回収に向けた検討」. 2020, p.12-13.
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