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2014N-JSASS 1500NクラスN2Ov0.19
2014N-JSASS 1500NクラスN2Ov0.19
2014N-JSASS 1500NクラスN2Ov0.19
Experimental results and safety assessment for 1500N class N2O/ethanol engine test
Abstract
For the closed-loop pressurization system with liquefied carbon dioxide (CO2), hot-firing test of a
rocket engine with nitrous oxide (N2O) and ethanol combination was conducted in JAXA Kakuda
space center in 2014. To prevent hazards and health effects, a N2O supply rig was designed and a
written work instruction / filling procedure were regulated based on re-assessment of N2O
characteristics.
1. はじめに の再生冷却構造やコーティングなど、ロケットエンジン
大型液体推進系を主な研究対象とする JAXA 角田宇 や極超音速エンジン用冷却構造の加熱試験を実施して
宙センタでは、これまでに多種多様な液体推進薬が試験 いる.そのためガス酸素およびガス水素、エタノールの
されてきている.酸化剤については、かつて四酸化二窒 供給系が用意されている.また高熱負荷に対応できるよ
素(NTO) を使用したことはあるものの液体およびガス う、大流量の冷却水供給系が用意されているため、新規
1
酸素に限られている.角田宇宙センタでテストされるエ の酸化剤を使ったロケットエンジン試験には適切なス
ンジンは打ち上げ機向けのものが多く、性能の面から酸 タンドである.ここに後述する N2O 供給系を新設して
素が好ましいと判断されているからである.一方、最近 試験を計画した.N2O/EA エンジンは加圧システム用の
国内のロケットエンジン研究においては、液体酸素の極 加熱源として使用されることから、a)要求燃焼条件を満
低温流体という特性に起因する取扱にくさを回避する 足し安定に作動する作動点を見つけること、b)そのとき
ために、一酸化二窒素(以下 N2O)を使用する事例が増え の熱流束分布を求めること、を目的とした.
てきている.たとえば大学等において、ハイブリッドロ
ケットエンジン用の酸化剤としての実例 が数多く報告 2.2 供試体
2
発の多様性に対して、酸化剤も考慮される時代が到来し はないので、インジェクタは転用せず新規に作成した.
ていると言えよう. インジェクタヘッドには中心部にあるトーチイグナイ
このような状況のなか、ISAS で液化二酸化炭素を使 タ孔を中心に、衝突型エレメント 12 本が埋め込まれて
用したタンク加圧システム の研究が進められており、 いる(図 1 左).エンジンの主要緒元を表 1 に示す.噴射
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燃焼器冷却 環状 水冷却
着火器 ガス酸素/水素内部トーチ
表2 試験条件一覧と結果
試験番号 日時 時間 目標 設定条件 結果
PC/O/F EA/N2Oタンク圧
NEA14-H001 5/12 0 1.5/3.0 6.5/2.0 着火せず初期O/F過小
NEA14-H002 5/12 0 1.5/3.0 6.5/1.7 一瞬着火するが持続せず
NEA14-H003 5/13 0 1.3/3.0 6.5/1.9 着火せず
NEA14-H004 5/13 6 1.3/3.0 6.5/2.0 EAにオリフィス増設 燃焼達成
NEA14-H005 5/14 0 1.3/3.5 7.4/2.2 高O/F設定だが着火せず
NEA14-H006 5/15 0 1.3/3.0 6.5/2.0 H004再試 一瞬着火するが失火
NEA14-H007 5/15 0 1.3/3.0 6.5/1.8 H006再試 一時着火
NEA14-H008 5/15 6 1.1/3.5 6.5/1.7 低OFで燃焼
NEA14-H009 5/15 0 1.3/4.5 7.7/1.5 着火せず
NEA14-H010 5/15 6 1.4/4.0 6.7/1.7 高OFで燃焼
NEA14-H011 5/16 15 1.1/3.5 6.0/1.5 H008再試 長秒時試験
NEA14-H012 5/26 40 1.1/3.5 6.5/1.5 長秒時試験
NEA14-H013 5/27 40 1.1/3.5 6.5/1.6 連動試験(1)
NEA14-H014 5/27 40 1.1/3.5 6.5/1.6 連動試験(2)
NEA14-H015 5/28 0 1.1/3.5 6.5/1.6 2回(15A/B)不着火 OF過小
NEA14-H016 5/28 40 1.1/3.5 7.0/1.6 連動試験(3)
図 2 N2O/EA 用 FFOOFF 衝突型 NEA14-H017 5/28 40 1.1/3.5 7.0/1.5 連動試験(4)
NEA14-H018 5/29 40 1.1/3.5 7.0/1.5 連動試験(5)
エレメント
合計 273 秒/10 回
図 4 C*効率の時間変化比較
■噴射口流量係数
試験中の噴射流量や O/F に関係する噴射流量係数、
Cd は噴射条件を見るためにも重要な指標である.計測
結果を図 5 に示す.N2O 噴射流量係数は試験中安定し
ているものの全体に低く 0.4 程度である.一方の EA の
方は大きな変化があり、H008 では 0.8 程度.一方 H011
図 3 N2O/EA 着火可能 O/F と燃焼圧の相関
EA タンク加圧系の能力が不足し、流量が低下したため
である.
■熱流束分布
燃焼器は環状に冷却水を流しているため、局所的な熱
流束分布を測定することが可能である.H008、011 お
よび 012 の結果をあわせて図 6 に表示した.Bartz 式か
ら予測した平行部熱流束は約 5MW/m 、スロートでは
2
15MW/m と求まっていた.しかし結果はこれとは大き
2
く異なり、平行部上流側フェイスプレート近傍では
9MW/m と高く、平行部中心ではせいぜい 4MW/m 、
2 2
分程度となった.
壁面各所に埋め込んだ熱電対(K 種φ1mm シース熱電
対.内壁から 1mm に固定)の出力もこれを支持するもの
であり、スロートでは最大でも 330K なのに対し、上流
にさかのぼるほど高くフェイスプレート近傍では最大
500K を越えるほどの高温となったことがわかった.
N2O は噴射後直ちにガス化されていることから噴射直
後に壁面近傍でよく燃え、その後未燃部分と混ざりなが
ら壁面を流れていったものと推測する.噴射形態と燃焼
器寸法から、外周壁面近くで燃えた可能性が高く、試験
終了後内壁を観測したところ、強いヒートマークが観測
されており、上記推測を裏付けている.
3. N2O 運用の安全性確保について
吸引による麻酔作用および液接触による凍傷という有
害性のみを示している.環境影響についても温暖化物質
という以外特段明記されておらず、暴露防止のための管
理濃度も特段決められていない.そのため、SDS を見る
限り安全で安心して使用できる物質と見なすことが可
能である.厚生労働省の N2O 製品安全シート において
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も、支燃性はあるとするが可燃性、引火性や自己反応性
については記述がなく、窒素などと同様な一般的な高圧
ガスとしての危険性を指摘するにとどまっている.しか
しながら、Scaled Composites による N2O ハイブリッ
ド推進系試験時の爆発で死傷者が発生する事例が発生
しており、注意を払うべき流体であることが認知されつ
つある .角田宇宙センタでは初の取り扱いであるので、
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液化可能、3)材料適合性、健康への危険性はすくなく安 (デフラグレーション)しか生じないと結論づけている.
全対策も最小でかまわないことの上に、Isp も比較的良 この結果は Rhodes が 1974 年に調べた結果でも確認さ
好であるため cold-gas 推進薬として適しているとした. れている .Rhodes はこの調査で、ガス、液での N2O
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らの事故の分析を試みたが定性的であいまいな記述の
みに終始し、十分な教訓は引き出せたとは言いがたい.
また、Scaled Composites の事故分析は公的には行われ
ず、単に労働安全の面からの責任追求がなされた のみ
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で、今もって事故の詳細は不明で対応方針も不明瞭なも
図 8 圧力および温度に対する着火可能限界
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ような事象を元に詳細な研究が進み、Karabeyoglu らは
詳細反応機構を使った着火、火炎伝播の計算を実施、そ 4) 配管は原則 1/2 インチ以下のものとする.
の結果を取り扱い注意事項として列挙している .2013 5) タンクおよびタンク下流配管に安全弁を設置する
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年には European Industrial Gases Association (EIGA) 6) 不要な N2O や配管、タンクの残存 N2O は、GN2
が N2O の取り扱いについての指針 をまとめた.この を流しつつ GN2 で十分満たされているベントスタ
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1) 供給系は酸素仕様とする
2) ガス N2O が存在しないようにする
3) 熱源や急激な圧力変化を避ける
具体的には、
燃焼器
参考文献
大塚貞吉ほか、”N ロケット第 2 段用 LE-3 型エンジンの高空性能試験,” 航空宇宙技術研究所資料 TM-364、1978.
1
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4
東ほか、”液酸/エタノールロケットエンジン基本性能計測結果について,” 第 58 回宇宙科学技術連合講演会、1J05、2014.
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