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JSASS北部支部2015年講演会 H042 


1500NクラスN2O/EAエンジン試験と
供給系安全対策について




平岩 徹夫、竹腰 正雄、小野 文衛、齋藤 俊仁、川口 淳一郎


JAXA宇宙輸送ミッション本部
JAXA宇宙科学研究所


LCO2を使用する自己加圧システム

■小型推進用供給系…タンク加圧システムが主流
→GN2、GHeなどの高圧タンクを実装=重量増加著しい
   ↓
非運用時は液、使用時には高圧ガスであれば好都合
燃焼器を加熱源とした加圧システムの考案

■2013年度より検討スタート
N2O(二酸化一窒素)/EA系ロケットエンジン用に向けた研究がスタート
2014年は実ロケットエンジンと組み合わせた試験を計画
角田宇宙センターにて2014年5月燃焼試験連動テスト実施 2
N2O/EAロケットエンジンと試験設備
角田宇宙センタ RJTF冷却構造スタンドにて実施
使用するロケットエンジンはLOx/EA用に使用されたものを再利用
推力が測定できないがEA供給系はすでに整備済み

冷却構造スタンドと 冷却構造スタンドに設置される
N2O/EAエンジン ディフレクタ兼
左右のフレキチューブは 水スプレーサプレッションダクト
3
冷却配管

N2O/EA 燃焼器供試体

■LOx/EA用エンジンをそのまま転用
 平行部200m 平行部径66mm スロート径33mm 
 環状水冷却(冷却水量および温度より熱流束換算)
■インジェクタはFFOOFF衝突型(高差圧モデル)
 インジェクタ配列はO-Oラインが壁面に垂直

高差圧垂直噴射(HPVI) JAXA角田基準燃焼器形状
N2O/EA供給系 系統
冷却構造スタンドにはEA用供給システムは用意(ただし流量小)
N2O供給系は完全新設…設計指針については後述
EA供給系は一部分岐、自己加圧システム熱交換器へ供給

N2O/EA試験 結果一覧
試験条件:
O/FはmaxIsp近傍
 ■ O/F = 3 4 Pc=1 4MPa
燃焼器、噴射器形態は同一
試験番号 日時 時間  目標 設定条件 結果
PC/O/F EA/N2Oタンク圧
NEA14-H001 5/12 0 1.5/3.0 6.5/2.0 着火せず初期O/F過小
NEA14-H002 5/12 0 1.5/3.0 6.5/1.7 一瞬着火するが持続せず
NEA14-H003 5/13 0 1.3/3.0 6.5/1.9 着火せず
NEA14-H004 5/13 6 1.3/3.0 6.5/2.0 EAにオリフィス増設 燃焼達成
NEA14-H005 5/14 0 1.3/3.5 7.4/2.2 高O/F設定だが着火せず
NEA14-H006 5/15 0 1.3/3.0 6.5/2.0 H004再試 一瞬着火するが失火
NEA14-H007 5/15 0 1.3/3.0 6.5/1.8 H006再試 一時着火
NEA14-H008 5/15 6 1.1/3.5 6.5/1.7 低OFで燃焼
NEA14-H009 5/15 0 1.3/4.5 7.7/1.5 着火せず
NEA14-H010 5/15 6 1.4/4.0 6.7/1.7 高OFで燃焼
NEA14-H011 5/16 15 1.1/3.5 6.0/1.5 H008再試 長秒時試験
NEA14-H012 5/26 40 1.1/3.5 6.5/1.5 長秒時試験
NEA14-H013 5/27 40 1.1/3.5 6.5/1.6 連動試験(1)
NEA14-H014 5/27 40 1.1/3.5 6.5/1.6 連動試験(2)
NEA14-H015 5/28 0 1.1/3.5 6.5/1.6 2回(15A/B)不着火 OF過小
NEA14-H016 5/28 40 1.1/3.5 7.0/1.6 連動試験(3)
NEA14-H017 5/28 40 1.1/3.5 7.0/1.5 連動試験(4)
NEA14-H018 5/29 40 1.1/3.5 7.0/1.5 連動試験(5) 6
合計 273秒/10回 
N2O/EA 噴射器状態と着火限界
N2Oマニホルド内を液充填とするため噴射差圧は約4MPa(燃焼時想定)
 ex.EA側噴射差圧30%
 →着火前(燃焼室内大気圧環境)では酸化剤過多
着火にはGOx/GH2駆動の内部トーチ(フェイスプレート埋め込み)

O/F=3程度を狙うときには、トーチ作動時にはO/F=2以下 → 着火できず
▶目標O/Fを3.5から4にあげて対応

5 1.5 mass flow [kg/s], chamber pressure [MPa]


Chamber pressure

O/F
1
3
N2O mass flow [kg/s]
O/F

2
0.5

1 EA mass flow [kg/s]

0 0
9 9.5 10 10.5 11 11.5 12 7
Time

N2O/EA燃焼器内部熱流束分布
Pc=1 MPa O/F=3を仮定し熱流束分布を予想
平行部5MW/m2 スロート部最大15MW/m2
16系統の円環構造冷却水を循環、出入り口の温度差より軸方向熱流束を算出

試験結果は
平行部フェイスプレート9MW/m2
平行部中央 3MW/m2
スロート部7∼10MW/m2
従来の熱流束プロファイルと
大きく異なる現象
→N2O側のCd値45%なので、
ガス化して噴射、噴射器近傍で燃焼

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試験終了後の燃焼器

実験終了後のフェイスプレート FP近傍の燃焼器は
(白色成分は不明) 黒変部分多数

スロート部は溶融した
酸化銅が付着 9

N2O/EA供給系
エンジン作動条件より
供給予定流量 1.5 kg/sec 供給圧力は最大9.8 MPaに設定
ランタンクは67ℓ N2O自己加圧およびGN2加圧とする
N2Oの供給は130ℓボンベより液体のみ抽出する

後述するように供給系はすべて脱脂した酸素コンパチ仕様で製作
配管はタンクを除き基本1/4インチ配管
タンクおよび配管に9.8 MPaの安全弁を用意
ドレンおよび安全弁吹き出しは窒素封入排気ダクトへ結合

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N2O関連のアクシデント
2001年オランダにて医療用N2Oをストレージタンクへ移送中、
 トレーラ側タンクが爆発、炎上
→供給ポンプが空転、ガス層N2Oに着火
2007年モハベにてロケット用N2O噴射器のテスト中爆発
→40℃以上の炎天下にN2Oタンクを長期晒した上での試験
原因は不明だが気化によるものと想定

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着火可能限界曲線と燃焼速度

分解時82kJ/mol発熱
…熱暴走による燃焼発生
25℃では、飽和蒸気にも着火できる

気相が発生すれば着火可能性大
気温20℃以上は危険域
cf. モハベ事例

■燃焼速度はせいぜい100cm/s
爆轟の1/30以下で遅い

爆轟は起こりにくいが、逆に遅延して
爆発する可能性あり
cf. オランダタンク爆発
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N2O quenching限界
1インチ以上の配管では25℃でも飽和蒸気圧(5.5MPa)以下で燃焼持続
1/2インチであれば供給系として想定される環境では着火しない

飽和蒸気圧線

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本実験でのN2O取り扱い基本方針

N2OはCryogenic推進薬である
過酸化水素のように予混合気的性質もある危険性の高い流体

1) 供給系は酸素仕様とする
機材は酸素コンパチのものを使用する
使用前に脱脂、洗浄を実施
油脂はCrytoxのみ
2) ガスN2Oが存在しないようにする
噴射差圧を大きく取る
タンク内N2Oを使い切らず、液が残るようにする
3) 熱源や急激な圧力変化を避ける
オリフィスなどによる水撃の防止
窒素などによる配管の均圧処置を施す
直射日光に供給系を晒さない
臨界温度以上の環境では試験を行わない(可能ならば25℃以上では試験を行わない)

そのほか

1/2インチ以上の配管は使用しない
静電気の防止
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N2O供給系シークエンス ランタンクは事前加圧し
ておき、除熱しておく

充填直前の気温から
飽和蒸気圧を算出、
配管内にガスN2O
GN2加圧
が存在できないよう
N2を封入して充填

弁を開く時点で上
下流側の差圧を微
小に

インジェクタ直近
に始動弁を配置、 仕切り弁や逆止弁
予冷も実施する 付近では手動弁を
使用し、急激な圧
力変化を回避

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まとめ:
角田宇宙センターにてN2O/EAエンジン燃焼試験を実施した.実験結果と、
試験に必要なN2O供給系のシステム構築から以下のような結果を得た.

■1500Nクラスエンジンの性能を取得
  EA側供給系の制限から非定常とはなったが40秒の燃焼に成功
O/Fの着火限界データの取得
フェイスプレート近傍で高くなる熱流束分布→N2Oガス化の影響?

■N2O供給系安全対策を確立、実施
基本として 1)供給系は酸素仕様 2)ガス化させない 3)急激な圧力変動を避ける
そのほかとして下流側加圧による差圧低下
1/2インチ以上の配管使用を避ける

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