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だい しょう けんせつ こ う じ あんぜん

第7 章 建設工事の安全

けんせつ こ う じ し ぼ う さいがい

7.1 建設工事における死亡災害

けんせつ げ ん ば ろうどうさいがい はっせい ひょう こうせいろうどうしょう


建 設 現場 では、さまざまな 労 働 災 害 が 発 生 しています。 表 7-1 は 厚 生 労 働 省 が
はっぴょう さくせい れいわ ねんけんせつぎょう おも じ こ かたべつ し ぼ う ろうどうさいがい
発 表 したデータをもとに作 成 した、令和3年 建 設 業 の主 な事故の型 別 死亡 労 働 災 害
はっせいけんすう ろうどうさいがい お なか ついらく てんらく けんせつきかい
発 生 件 数 です。さまざまな労 働 災 害 が起こる中 でも、
「墜 落・転 落 」
「建設機械・クレー
さいがい ほうかい とうかいさいがい けんせつぎょう さんだいさいがい さいがいぜんたい
ンなど災 害 」
「崩 壊 ・倒 壊 災 害 」を 建 設 業 における「三 大 災 害 」といい、災 害 全 体 の
わり し かひょう げきとつ ま こ おお けんせつきかい
4~7割 を占めています。下 表 の「激 突 され」
「はさまれ・巻き込まれ」の多 くは、
「建設機械・
さいがい
クレーンなど災 害 」です。
さんだいさいがい なか とく おお こうしょ さぎょうちゅう お ついらく てんらく
三 大 災 害 の中 でも特 に多 いのは高 所 での 作 業 中 に起こる「墜 落・転 落 」です。また、
さんだいさいがい い が い おお こうどう いどうちゅう お こうつう じ こ だい しょう
三 大 災 害 以外 で 多 いのが、 公 道 を 移 動 中 に起 きる「 交 通 事故 」です。 第 7 章 では、
どぼくこうじ げんば はっせい じ こ しゅるい げんいん たいさく こころがま かいせつ
土木工事の現場で発 生 する事故の種 類 や原 因 、対 策 や 心 構 えなどを解 説 しています。

はさまれ 高温・低 交通事故


墜落・ 飛来・ 崩壊・ 有害物等 交通事故
転倒 激突 激突され ・巻き込 おぼれ 温の物と 感電 (その 計
転落 落下 倒壊 との接触 (道路)
まれ の接触 他)

土木工事 19 5 1 4 13 11 15 9 4 3 2 10 1 102

トンネル建設工事 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 0 1 0 3

橋梁建設工事 1 0 0 0 2 0 1 2 0 0 0 0 0 6

道路建設工事 3 0 1 1 2 1 2 0 1 0 0 5 0 17
河川土木工事 1 3 0 0 1 1 1 2 0 1 0 0 0 10

砂防工事業 2 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 4

港湾海岸 0 1 0 0 0 0 1 2 0 1 0 0 1 6

その他土木 9 0 0 2 4 8 8 2 3 1 2 1 0 44

建築工事 71 0 0 5 15 7 6 0 6 5 2 9 0 139

鉄骨・鉄筋家屋 23 0 0 3 5 2 0 0 3 4 0 5 0 48

木造家屋建築 12 0 0 0 1 1 0 0 0 0 1 1 0 19
建築設備工事 8 0 0 0 2 0 0 0 0 0 1 2 0 16

その他の建築工事 28 0 0 2 7 4 6 0 3 1 0 1 0 56

その他の建設 20 0 0 1 3 1 6 1 1 1 4 6 0 47

電気通信工事 4 0 0 0 1 0 2 0 1 0 2 2 0 13
機械器具設置 4 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 6
その他の建設 12 0 0 1 1 1 4 1 0 1 2 4 0 28

建設業小計 110 5 1 10 31 19 27 10 11 9 8 25 1 288

ひょう れいわ ねんけんせつぎょう おも じ こ かたべつ し ぼ う ろうどうさいがいはっせいじょうきょう


表 7-1 令和3 年 建 設 業 の主な事故の型別死亡労働災害発生 状 況
こうせいろうどうしょう しょくば さくせい
(厚生 労 働 省 職場のあんぜんサイトより作成)

175
けんせつ こ う じ し ぼ う さいがい じょうきょう

7.1.1 建設工事における死亡災害の 状 況

ひょう こうせいろうどうしょう れいわ ねんど ねんど はっせい ぜんぎょうしゅ


表 7-2 は、厚 生 労 働 省 がまとめた、令和2年度と 3年度に発 生 した、 全 業 種 におけ
がいこくじんろうどうしゃ し ぼ う さいがいはっせいけんすう ひょう み けんせつぎょう もっともおお
る外 国 人 労 働 者 の死亡 災 害 発 生 件 数 です。 表 7-3 を見ると、 建 設 業 が最 も 多 いこと

がわかります。

しぼうしゃすう

じ こ かた 死亡者数
事故の型 れいわ ねんど れいわ ねんど

令和2年度 令和3年度
ついらく てんらく
ひょう ぜんぎょうしゅ がいこくじんろうどうしゃ
5 5
墜落・転落 ← 表 7-2 全 業 種 における外国人労働者の
てんとう し ぼ う さいがいはっせいじょうきょう
転倒 2 0
げきとつ
死亡災害発生 状 況
激突 1 0
ひらい らっか

飛来・落下 1 2
ほうかい とうかい

崩壊・倒壊 3 3
しぼうしゃすう
げきとつ

激突され 4 2 ぎょう しゅ 死亡者数


ま こ
業 種 れいわ ねんど れいわ ねんど

はさまれ・巻き込まれ 2 3 令和2年度 令和3年度


ゆうがいぶつ せっしょく せい ぞう ぎょう

有害物との接触 2 0 製造業 3 8
かんでん けん せつ ぎょう
感電 2 1 建設業 17 10
かさい た
火災 0 1 10 6
その他
こ う つう じこ どうろ

交通事故(道路) 7 4 ごうけい
30 24
合計

おぼれ 0 1
た ひょう ぎょうしゅべつ し ぼ う しゃすう
その他 1 2
表 7-3 業 種 別の死亡者数
ごうけい

合計 30 24

ついらく てんらく こうしょ こうじちゅう ふ ぬ くっさくちゅう あな てんらく こと


【墜 落・転 落 】高 所 からの落下や、工 事 中 の吹き抜けや 掘 削 中 の穴 など転 落 する事 に
お ろうどうさいがい
よって起こる労 働 災 害 です。
てんとう もの ころ くず ころ お ろうどう
【転 倒 】物 などにつまずいて転 んだり、バランスを崩 して転 ぶことによって起こる労 働
さいがい
災 害 です。
げきとつ なに はげ お ろうどうさいがい
【激 突 】何 かに激 しくぶつかることによって起こる労 働 災 害 です。
ひらい らっ か つ あ ちゅう にもつ らっか こうしょ こうぐ ぶざい らっか
【飛来・落 下】クレーンで吊り上げ 中 の荷物の落下や、高 所 から工具や部材が落下するこ
お ろうどうさいがい
とによって起こる労 働 災 害 です。
ほうかい とうかい あしば くず かいたいちゅう たてもの たお お ろうどう
【崩 壊 ・倒 壊 】足場などが崩 れたり、 解 体 中 の建 物 が倒 れることによって起こる労 働
さいがい
災 害 です。

176
げきとつ そうこうちゅう じゅうき せんかいちゅう げきとつ お ろうどうさいがい
【激 突 され】 走 行 中 の重 機 や、 旋 回 中 のバケットなどに激 突 されて起こる労 働 災 害

です。
ま こ きかい ま こ お ろうどうさいがい
【はさまれ・巻き込まれ】機械にはさまれたり、巻き込まれたりすることで起こる労 働 災 害

です。
ゆうがいぶつ せっしょく かがくぶっしつ ゆうがいぶっしつ じんたい ふ お ろうどうさいがい
【有 害 物 との 接 触 】化学物質などの有 害 物 質 が、人 体 に触れることで起こる労 働 災 害

です。
かんでん つうでんちゅう でんせん せつだん ろうでん き き ふ でんき からだ
【感 電 】通 電 中 の電 線 を切 断 する、漏 電 している機器に触れることなどで、電気が 体
なか なが お ろうどうさいがい
の中 を流 れることによって起こる労 働 災 害 です。
かさい げんいん はっせい かさい ま こ お ろうどうさいがい
【火災】さまざまな原 因 で発 生 する火災に巻き込まれることによって起こる労 働 災 害 で

す。
こうつう じ こ どうろ こうじげんば つうきんちゅう お こうつう じ こ どうろ めん ばしょ
【 交 通 事故 (道路 )】工事現場 で 通 勤 中 に起 こる 交 通 事故 や、道路 に 面 した場所 での
こうじちゅう いっぱん じどうしゃ ま こ お ろうどうさいがい
工 事 中 に一 般 の自動車に巻き込まれて起こる労 働 災 害 です。
うみ かせん げすいどう こ う じ みず あつか ばしょ すいちゅう お こと お ろうどう
【おぼれ】海 や河川、下水道工事などの水 を 扱 う場所で、水 中 に落ちる事 で起こる労 働
さいがい
災 害 です。

し ぼ う さいがい じ こ かた

7.1.2 死亡災害事故の型

ついらく
①墜 落
ついらく しぼうさいがい こうしょ ついらく はっせい
墜 落 による死亡災害は、高 所 からの墜 落 で発 生 するとは
かぎ にだい てんらく ていしょ
限 らず、ダンプトラックの荷台から転 落 するような低 所 で
お くっさく あな らっか じ こ
も起こります。また、掘 削 した穴 への落下事故もあります。
くず あし すべ ついらく
バランスを崩 す、足 を滑 らすなどによって墜 落 することが
おお こうしょ がたついらく せ い し よう き ぐ
多 い た め 、 高 所 で は フ ル ハ ー ネ ス 型 墜 落 制止 用 器具 を
ちゃくじつ そうちゃく そうちゃく さぎょう じ つか じ こ み
着 実 に 装 着 します。また、装 着 しても作 業 時に使 わないことによる事故も見られるた
かなら つか こころ
め、 必 ず使 うことを 心 がけましょう。

177
げきとつ
②激 突 され・はさまれ
どぼくこうじ おおがた けんせつきかい つか おお
土木工事 は、 大 型 の建設機械 を 使 うことが 多 い
こうじ じゅうきさいがい はっせい
工事のため、重 機 災 害 が発 生 しやすくなっていま
けんせつきかい じ こ
す。建設機械に「ひかれる」
「はさまれる」事故や、
けんせつきかい てんとう てんらく おお とくちょう
建設機械の転 倒・転 落 が多 いのが 特 徴 です。バッ
せんかいちゅう ひと しょうとつ もの あいだ ひと
クホウでは、旋 回 中 のアームやバケットと人 との 衝 突 や、バケットと物 の 間 に人 がは
じ こ お
さまれる事故が起きています。
べつ しゃりょう ゆうどういん
別 の 車 両 の誘 導 員 が、バックしてきたダンプトラック
き つ じ こ お
に気が付かずに、はさまれるという事故も起きています。ま
げ ん ば はんにゅう ろ し しきいた は と
た現場 搬 入 路に敷いた敷 板 を、ダンプトラックが跳ね飛
ゆうどういん あ じ こ はっせい
ばして誘 導 員 に当たるなどの事故も発 生 しています。
てんとう したじき しぼう じ こ
バックホウの転 倒 は、下敷きによる死亡事故につなが
つ こ
ります。バックホウをトラックなどに積み込んだり、おろ
てんとう はっせい
したりするときには、バックホウの転 倒 が発 生 しやすく

なります。
けんせつ き か い てんらく てんとう しゃ ろ そうこうちゅう ろかた
建 設 機械の転 落・転 倒 は、斜 路の 走 行 中 や、路肩か
てんらく お けんせつ き か い とお けいろ じゅうぶん はば かくほ ろかた
らの転 落 によっても起こります。建 設 機械が通 る経路は、 十 分 な 幅 を確保し、路肩の
ほうかい ぼうし ひつよう つか おも つ あ とき
崩 壊 を防止することが必 要 です。バックホウを使 って重 いものを吊り上げようとする時
てんとう お かぎ けんせつ き か い ほんらい もくてき い が い つか
にも転 倒 は起こります。バックホウに限 らず、建 設 機械は、本 来 の目 的 以外に使 っては

いけません。
こうつう じ こ どうろ
③交 通 事故(道路)
けんちく こ う じ かぎ こうつう じ こ し ぼ う さいがい けんせつこうじ せつびこうじ
建 築 工事に限 らず、交 通 事故による死亡 災 害 は、建設工事や設備工事、ライフライン
こうじ おお はっせい こうじげんば つうきん
工事でも多 く発 生 しています。工事現場への通 勤
とちゅう こうつう じ こ おお こ う じ しゃりょう いっぱんどう
途 中 の 交 通 事故 が 多 く、工事 車 両 が 一 般 道 を
つうか とき はっせい こうつう じ こ
通過している時 に発 生 する交 通 事故もあります。

178
こうどう にもつ つ お じ べつ くるま じ こ ざんど せきさい
公 道 での荷物の積み下ろし時に、別 の 車 にはねられる事故や、残土を積 載 しているダン
そくど だ おうてん じ こ はっせい
プトラックが、速度を出しすぎて、カーブで横 転 するなどの事故が発 生 しています。
ひらい らっか
④飛来・落下
ひらいらっか と お もの あ
飛来落下は、飛んできたり、落ちてきたりする物 に当た
お じ こ うんぱんちゅう もの
って起こる事故です。たとえば、クレーンの 運 搬 中 の物
らっか つ に したじ じ こ
にぶつかる、落下した吊り荷の下敷きになるなどの事故で
ふじゅうぶん たま が つ に うご じ こ よういん
す。不 十 分 な玉 掛け、吊り荷が動 くなどが事故の要 因 で
たいせつ つ に した はい
す。大 切 なのは、吊り荷の下 には入 らないことです。また、
こうぐ とりつ まえ ぶざい らっか じ こ はっせい
工具や取付け前 の部材が落下することによる事故も発 生 しています。
ほうかい とうかい
⑤崩 壊 ・倒 壊
どぼくこうじ しぜん あいて こうじ ど し ゃ ほうかい たちき たお じ こ
土木工事 は自然 を相手 にする工事 のため、土砂 崩 壊 や立木 が 倒 れることによる事故 が
はっせい とく くっさくさぎょう つちかべ ほうかい じ こ はっせい かのうせい
発 生 しています。特 に掘 削 作 業 で、土 壁 が崩 壊 する事故が発 生 する可能性があります。

し ぼ う さいがいけんすう おお こうじ

7.1.3 死亡災害件数が多い工事

どうろこうじ とくちょう じ こ
①道路工事の 特 徴 と事故
みぎ しゃしん どうろ ほそうこうじ
右 の 写 真 は、道路 の舗装工事 のようすです。
ふくすう けんせつきかい れつ つく すす うし
複 数 の 建設機械 が 列 を 作 っ て 進 む 後 ろ で は 、
ふくすう さぎょういん なら さぎょう
複 数 の作 業 員 がアスファルトの均 し作 業 をして
どうろこうじ げきとつ
います。道路工事では、ローラーとの激 突 や、バッ

クしてきたダンプトラックにはねられるなどの
じ こ お ほそうどうろ ほしゅう こ う じ
事故が起こります。また、舗装道路の補 修 工事などでは、バックホウのアームやバケット
せっしょく じ こ お どうろこうじ けんせつきかい ひと せっきん さぎょう すす
との 接 触 事故も起こります。道路工事は、建設機械と人 が、接 近 して作 業 を進 めるのが
とくちょう けんせつきかい そうさいん あいず さぎょういん あんぜん かくほ ゆうどういん はいち
特 徴 です。建設機械の操作員と合図しながら作 業 員 の安 全 を確保する誘 導 員 を配置し
さぎょういん じ し ん しゅうい あんぜん つね き くば
ますが、作 業 員 自身も周 囲 の安 全 に常 に気を配 らなくてはいけません。

179
かせんこうじ
②河川工事
かせんこうじ お けんせつきかい
河川工事で起こりやすい事故は、建設機械
しゃりょう かん こうじげんば
や 車 両 に関 するものです。工事現場では、
のりめん てんとう い ど う しゃりょう
バックホウの 法 面 からの 転 倒 や移動 車 両
じ こ おおがた
にひかれるなどの事故があります。大 型 のブ
つか こと おお しよう
ロックを使 う事 が多 く、クレーン仕様のバッ
つ あ ちゅう い どうさぎょうちゅう
ク ホ ウ の 吊 り 上 げ 中 や 移動 作 業 中 に
はっせい じ こ み
発 生 する事故も見られます。
きょうりょうこうじ
③橋 梁 工 事
きょうりょうこうじ こうしょ さぎょう おお
橋 梁 工 事 では、高 所 での作 業 が多 くな
ついらく ひらいらっか
ります。そのため、墜 落 や飛来落下による
じ こ はっせい
事故が発 生 しやすくなっています。そのた
ついらく ひらいらっか じ こ はっせい
め、墜 落 や飛来落下による事故が発 生 しや
きょうりょうじょうぶ こうじ
す く な っ て い ま す 。 橋 梁 上 部 の 工事
かしょ かり ど たんかん あし
個所に 仮 止 めしてあった 単 管 パイプに足
かたわく はず らっか
をかけ、型 枠 が外 れて落下するというよう
じ こ お さだ つうろいがい つか うえ あ お
な事故も起 こります。定 められた通路以外を使 って上 に上 がろうとしたために起 こった
じ こ ついらく じ こ ぼ う し がたついらく せ い し よう き ぐ そうちゃく かくじつ
事故です。墜 落 事故防止には、フルハーネス型 墜 落 制止 用 器具を 装 着 し、それを確 実 に
つか きほん ついらく お
使 うことが基本です。墜 落 は、
「つまずき」により、バランスをくずすことでも起こります。
あしもと ちゅうい つうろ よぶん お たいせつ
足 元 に注 意 するだけではなく、通路には余分なものを置かないことも大 切 です。
こうじ
④トンネル工事
しょう の こうほう ちしつ かんきょうじょうけん おう
3 章 3.1.1 で述べたように、トンネル工 法 には地質や 環 境 条 件 に応 じたさまざまな
せこうほう あつか ちしつ しよう けんせつ き か い かりせつび こと あんぜんじょう
施工法があります。 扱 う地質や使用する建 設 機械および仮設備も異 なるため、 安 全 上
りゅうい てん ちが きょうつう てん すく こうない
留 意 すべき点 にも違 いはありますが、共 通 する点 も少 なくありません。トンネル坑 内 で
せま くら かんきょうか きじょう そ う ち とう くっさくどはんしゅつ
は、 狭 くて 暗 い 環 境 下 において、 軌 条 装置 やダンプトラック 等 による掘削土 搬 出 や

180
ざいりょううんぱん じっし おお しゃりょう さぎょういん さぎょう なか そうこう
材 料 運 搬 が実施され、多 くの 車 両 が作 業 員 の作 業 する中 を走 行 します。このため、
じゅうき ま こ さいがい おお はっせい ちしつ ちが どしゃ
重 機 の巻き込まれ災 害 が多 く発 生 しています。また、地質の違 いはありますが、土砂や
ふうか がんせきとうぜいじゃく ちしつ くっさく くっさくさぎょう か みだ ちそう ほうかい
風化した岩 石 等 脆 弱 な地質も掘 削 するため、掘 削 作 業 により搔き乱 された地層が崩 壊
らくばん じ こ はっせい くっさく せこう きりはふきん
し、落 盤 事故が発 生 することもあります。トンネル掘 削 の施工にあたっては、切羽付近の
ちしつ ちゅうい ぶ か く かんさつ ちしつ てき くっさくさぎょう けいかく た たいせつ
地質を注 意 深く 観 察 し、地質に適 した掘 削 作 業 の計 画 を立てることが大 切 です。
すいしん こ う じ せこう き じこう かいせつ
ここでは、トンネル推 進 工事の施工にあたって気をつけるべき事項について解 説 します。
こうない さ ん そ けつぼう ゆうどく はっせい ちゅうい ひつよう いっさんかたんそ
□トンネル 坑 内 では、酸素 欠 乏 や 有 毒 ガスの 発 生 に 注 意 が 必 要 です。一酸化炭素 や
にさんかたんそ むしょくむしゅう うえ はっせい よそく こんなん
二酸化炭素は無 色 無 臭 な上 、どこから発 生 するか予測することは困 難 です。このため、
はっせい う む のうど けんちき つか そくてい ひつよう かくさぎょう さぎょう
発 生 の有無や濃度は検知器を使 って測 定 する必 要 があります。各 作 業 シフトの作 業 を
かいし まえ ゆうどく そくてい じっし あんぜん かくにん さいきん じどう
開始する前 に、有 毒 ガス測 定 を実施し、安 全 を確 認 しなければなりません。最 近 では自動
そくてい そ う ち こうない せっち じ か ん れんぞくけいそく じっし げんば おお
測 定 装置を坑 内 に設置し、24時間 連 続 計 測 を実施する現場が多 くなりました。
かねんせい はっせい おそ ばあい か き しよう げんきん
□可燃性ガスが発 生 する恐 れがある場合は、火気の使用は厳 禁 です。
すいしん こ う じ けい ちい げ すいどうかんきょ こ う じ じょうすいどうかんきょ こ う じ つか ばあい
□トンネル 推 進 工事 は 径 の 小 さな下 水 道 管 渠 工事 や 上 水 道 管 渠 工事 に 使 われる場合
おお けい ていど ばあい おお たてこう なか すいしん ひつよう
が多 く、径 は 0.8~3m程度の場合が多 いです。立 坑 の中 にはトンネル推 進 に必 要 ないろ
かりせつび うえ くっさくど はんしゅつ たてこうない おこな はさ ひらいらっか ついらく
いろな仮設備がある上 、掘削土の 搬 出 も立 坑 内 で 行 うため、挟 まれ、飛来落下や墜 落
さいがい ちゅうい ひつよう くっさくどはんしゅつちゅう たてこうない たちい きんし
災 害 に注 意 する必 要 があります。掘削土 搬 出 中 は立 坑 内 への立入りを禁止するなどの
そ ち ひつよう
措置が必 要 です。

けんせつ げ ん ば あんぜんかつどう

7.2 建設現場における安全活動

けんせつ げ ん ば おお しょくしゅ ぎのうしゃ で い おこな しごと ちが み


建 設 現場には、多 くの 職 種 の技能者が出入りします。行 っている仕事は違 うように見
ぎのうしゃ つね いしき きょうつう じ こ う たか
えますが、ベテラン技能者は、常 に意識している 共 通 事項があります。そのことが、高 い
ひんしつ あんぜん すべ ぎのうしゃ し あんぜんかつどう
品 質 と安 全 につながっています。7.2 では、全 ての技能者が知っておくべき安 全 活 動 の
きょうつう じ こ う かいせつ
共 通 事項を解 説 しています。

181
あんぜん せ こ う

7.2.1 安全施工サイクル

あんぜん せ こ う まわ ろうどうさいがい お さぎょう げ ん ば


安 全 施工サイクルを回 すことで、労 働 災 害 が起こりにくい作 業 現場にしていくことが
あんぜん せ こ う つぎ ねら たっせい
できます。安 全 施工サイクルは、次 の狙 いを達 成 することです。
せこう あんぜん いったいか
a. 施工と安 全 の一体化をはかる。
もとうけ た かんけいうけおいにん きょうりょくかんけい えんかつか
b. 元 請 と他の関 係 請 負 人 の 協 力 関 係 の円滑化。
あんぜんえいせいかつどう しゅうかんか
c. 安 全 衛 生 活 動 を習 慣 化 する。
あんぜん さきど そういくふう
d. 安 全 の先取りのための創意工夫をする。
こうじ あんぜん ひつよう じこう ぜんいん しゅうち
e. 工事、安 全 に必 要 な事項を全 員 に周 知 する。
けんせつ げ ん ば にちじょうぎょうむ なか あんぜんかつどう く い ろうどうさいがい
建 設 現場の 日 常 業 務 の中 に、さまざまな安 全 活 動 を組み入れていきます。労 働 災 害
ぼうし いちにち あんぜん せ こ う せってい まわ つづ じゅうよう
防止のため、一 日 の安 全 施工サイクルを設 定 し、それを回 し続 けることが 重 要 です。

さぎょうまえ あんぜんちょうれい
①作 業 前 の安 全 朝 礼
もとうけ かんけいうけおい ぜんいん さ ん か さぎょうしょちょうとう ぜんじつ あんぜん
元 請 および関 係 請 負 人が全 員 参加して、作 業 所 長 等 による前 日 の安 全 パトロール
け っ か とう はっぴょう とうじつ さぎょうあんぜん し じ たいそう おこな
結果 等 の 発 表 、当 日 の作 業 安 全 指示、ラジオ体 操 を 行 います。
あんぜん
②安 全 ミーティング
しょくちょう ちゅうしん しょくしゅ はな あ おこな ぜんじつ さぎょうこうてい け っ か はんせい
職 長 を 中 心 に、職 種 ごとの話 し合いを 行 います。前 日 の作 業 工 程 結果の反 省 、

182
ほんじつ さぎょうこうてい かん き け ん よ ち かつどう し ん き にゅうじょうしゃきょういく おこな
本 日 の作 業 工 程 に関 する危険予知(KY)活 動 、新規 入 場 者 教 育 を 行 います。
さぎょう か い し まえてんけん
③作 業 開始 前 点 検
さぎょう か い し まえ しようきかい こ う ぐ とう てんけん さぎょうかくにん あんぜんてんけん おこな
作 業 開始 前 に、使用機械・工具 等 の点 検 、作 業 確 認 などの安 全 点 検 を 行 います。
さぎょうちゅう しどう かんとく
④作 業 中 の指導・監 督
げ ん ば かんとくしゃ しょくちょう さぎょうしゅにんしゃとう さぎょういん し ど う かんとく おこな
現場 監 督 者 ( 職 長 ・作 業 主 任 者 等 )により、作 業 員 へ指導 監 督 を 行 います。
あんぜん
⑤安 全 パトロール
さぎょうしょちょうとう きょうりょくぎょうしゃ あんぜん じっし かくしょくちょう
作 業 所 長 等 と 協 力 業 者 による 安 全 パトロールを実施 して、 各 職 長 などへの
し じ しどう おこな
指示・指導を 行 います。
あんぜんこうていうちあわ
⑥安 全 工 程 打 合 せ
もとうけ かくせんもん こ う じ ぎょうしゃ よくじつ ぎょうしゅかん れんらく ちょうせい さぎょうほうほう
元 請 と各 専 門 工事 業 者 により、翌 日 の 業 種 間 の連 絡 および 調 整 と、作 業 方 法 な
けんとう おこな
どの検 討 を 行 います。
も ば あとかたづ
⑦持ち場の後片付け
かんけいしゃぜんいん も ば せいり せいとん せいそう せいけつ おこな
関 係 者 全 員 による持ち場の整理・整 頓 ・清 掃 ・清 潔 などを 行 います。
しゅうぎょう じ あんぜんかくにん
⑧ 終 業 時の安 全 確 認
もとうけ かくせんもん こ う じ ぎょうしゃ せきにんしゃ かさい とうなん こうしゅうさいがい ぼ う し たいさく
元 請 と各 専 門 工事 業 者 の責 任 者 により、火災・盗 難・ 公 衆 災 害 などの防止 対 策 の
かくにん おこな
確 認 を 行 います。

しんにゅうしゃあんぜんえいせいきょういく

7.2.2 新 入 者 安全衛生 教 育

しんにゅうしゃあんぜんえいせいきょういく じ ぎょうしゃ あたら ろうどうしゃ やと い おこな あんぜん

新 入 者 安全衛生 教 育 とは、事 業 者 が 新 しく 労 働 者 を雇 い入 れたときに 行 う安全


きょういく しんにゅうしゃあんぜんえいせいきょういく じっし ろうどうあんぜんえいせい き そ く さだ
教 育 のことです。新 入 者 安全衛生 教 育 の実施は、労 働 安 全 衛 生 規則として定 められてい

ます。
き か い とう げんざいりょうとう きけんせい ゆうがいせい とりあつか ほうほう かん
[1] 機械 等 、原 材 料 等 の危険性または有 害 性 およびこれらの取 扱 い方 法 に関 すること。
あんぜん そ う ち ゆうがいぶつよくせい そ う ち ほ ご ぐ せいのう とりあつか ほうほう かん
[2] 安 全 装置、有 害 物 抑 制 装置または保護具の性 能 およびこれらの取 扱 い方 法 に関 す

ること。

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さぎょうてじゅん かん
[3] 作 業 手 順 に関 すること。
さぎょう か い し じ てんけん かん
[4] 作 業 開始時の点 検 に関 すること。
とうがいぎょうむ かん はっせい しっぺい げんいんおよ よぼう かん
[5] 当 該 業 務 に関 して発 生 するおそれのある疾 病 の原 因 及 び予防に関 すること。
せいり せいとん せいけつ ほ じ かん
[6] 整理、整 頓 および清 潔 の保持に関 すること。
じ こ じ など おうきゅう そ ち たいひ かん
[7] 事故時 等 における 応 急 措置および退避に関 すること。
ぜんかくごう かか とうがいぎょうむ かん あんぜん えいせい ひつよう
[8] 前 各 号 に 掲 げるもののほか、 当 該 業 務 に 関 する 安 全 または 衛 生 のために 必 要 な
じこう
事項。

し ん き にゅうじょうしゃきょういく

7.2.3 新規 入 場 者 教 育

あたら こうじげんば はい さぎょういん し ん き にゅうじょうしゃ けんせつ げ ん ば しぼうさいがい


新 しく工事現場に入 る作 業 員 を「新規 入 場 者 」といいます。建 設 現場での死亡災害
はんすうちか にゅうじょう しゅうかん い な い はっせい こうせいろうどうしょう
は、その半 数 近 くが 入 場 1 週 間 以内に 発 生 しています。このため厚 生 労 働 省 は、
し ん き にゅうじょうしゃきょういく ぎ む づ もとかたじぎょうしゃ けんせつ げ ん ば あんぜん か ん り し し ん
「新規 入 場 者 教 育 」を義務付けました。
「元方事 業 者 による建 設 現場 安 全 管理指針」
じ っ し きじゅん つぎ さだ
では、実施 基 準 を次 のように定 めています。
しんきにゅうじょうしゃきょういく じっし
【 新 規 入 場 者 教 育 の実施】
かんけいうけおいにん こよう ろうどうしゃ けんせつ げ ん ば あら さぎょう じゅうじ
関 係 請 負 人 は、その雇用する労 働 者 が建 設 現場で新 たに作 業 に従 事 することとなっ
ばあい とうがいさぎょうじゅうじまえ とうがいけんせつ げ ん ば とくせい ふ つぎ じこう しょくちょうとう
た場合には、当 該 作 業 従 事 前 に当 該 建 設 現場の特 性 を踏まえて、次 の事項を 職 長 等
しゅうち もとかたじぎょうしゃ けっか ほうこく
から周 知 するとともに、元方事 業 者 にその結果を報 告 すること。
もとかたじぎょうしゃおよ かんけいうけおいにん ろうどうしゃ こんざい さぎょう おこな ば しょ じょうきょう
[1] 元方事 業 者 及 び関 係 請 負 人 の労 働 者 が混 在 して作 業 を 行 う場 所 の 状 況
ろうどうしゃ きけん しょう かしょ じょうきょう き け ん ゆうがい か し ょ たちいりきんし く い き
[2] 労 働 者 に危険を 生 ずる箇所の 状 況 (危険 有 害 箇所と立入禁止区域)
こんざいさぎょう ば し ょ おこな さぎょう そ う ご れんらく ちょうせいかんけい
[3] 混 在 作 業 場所において 行 われる作 業 相互の連 絡 ・ 調 整 関 係
さいがいはっせい じ ひなん ほうほう
[4] 災 害 発 生 時の避難の方 法
し き めいれいけいとう
[5] 指揮 命 令 系 統
たんとう さぎょうないよう ろうどうさいがい ぼ う し たいさく
[6] 担 当 する作 業 内 容 と労 働 災 害 防止 対 策

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あんぜんえいせい かん きてい
[7] 安 全 衛 生 に関 する規程
けんせつ げ ん ば あんぜんえいせい か ん り き ほ ん ほうしん もくひょう た きほんてき ろうどうさいがい ぼ う し たいさく
[8] 建 設 現場の安 全 衛 生 管理の基本 方 針 、目 標 、その他基本的な労 働 災 害 防止 対 策
さだ けいかく
を定 めた計 画
いじょう ないよう つぎ じっし
以 上 の内 容 で、次 のように実施します。
うけおいぎょうしゃ はじ げんば はい さぎょう かいし とうじつ さぎょうまえ
①請 負 業 者 が初 めて現場に入 り作 業 を開始する当 日 の作 業 前
もとかた せこうしゃ がわ たんとうしゃ しょくちょう あんぜんえいせいせきにんしゃ きょういく じっし
元 方 (施工者)側 の担 当 者 、 職 長 ・安 全 衛 生 責 任 者 が 教 育 を実施します。
うけおいぎょうしゃがわ あら さぎょうかんけいしゃ くわ とうじつ さぎょうまえ
②請 負 業 者 側 に新 たに作 業 関 係 者 が加 わった当 日 の作 業 前
しょくちょう あんぜんえいせいせきにんしゃ きょういく じっし
職 長 ・安 全 衛 生 責 任 者 が 教 育 を実施します。
じっし げんば じ む し ょ かいぎしつ う あ しつ ふん て い ど おこな
実施は、現場事務所の会議室や打ち合わせ室 などで、30分 程度 行 います。

あんぜんさぎょう そうび

7.2.4 安全作業のための装備

しゃしん あんぜんさぎょう そうび がたついらく せ い し よう き ぐ


下の写 真 は、安 全 作 業 のための装備です。フルハーネス型 墜 落 制止 用 器具(①)
、ヘ
あんぜんぐつ きほんてき そうび
ルメット(②)
、フック(③)、安 全 靴 (④)が基本的な装備です。

185
がたついらく せ い し よう き ぐ がたついらく せ い し よう き ぐ ついらく せいし
【フルハーネス型 墜 落 制止 用 器具】フルハーネス型 墜 落 制止 用 器具は、墜 落 を制止する
き ぐ ねん がつ にち さぎょうゆか たか こ ばあい そうちゃく
ための器具です。2022年 1月 2日 からは、作 業 床 の高 さが 6.75m を超える場合は、 装 着
ぎ む づ ついらく じ こ おお けんせつぎょう こ
することが義務付けられました。ただし、墜 落 事故の多 い 建 設 業 については、5m を超え
たか さぎょう がたついらく せ い し よう き ぐ しよう もと
る高 さの作 業 でも、フルハーネス型 墜 落 制止 用 器具の使用が求 められています。ただし、
そうび つか じ こ み かなら つか
装備していても使 わないことによる事故が見られるため、 必 ず使 いましょう。

さぎょう おう つぎ ほ ご あんぜん き ぐ つか
さらに、作 業 に応 じて次 のような保護・安 全 器具を使 います。
ほ ご こうじげんば ざいりょう かこうげんば はっせい きんぞく き ふん ひばな ねつ
【保護メガネ】工事現場や 材 料 の加工現場で発 生 する、金 属 や木の粉 じん、火花、熱 、
けむり ゆうどく ふく ゆうがいこうせん め まも
煙 (有 毒 ガスを含 む)、レーザーなどの有 害 光 線 などから目を守 るためのメガネです。
もくてき おう さいてき えら
目 的 に応 じて最 適 なものを選 びます。
ほ ご ふせ つか す しき とりか
【保護マスク】ホコリなどのちりを防 ぐためのマスクです。使 い捨て式 とフィルタ取換え
しき こうせいろうどうしょう きかく さだ ようせつ がんせき
式 があります。厚 生 労 働 省 が、その規格を定 めています。たとえばアーク溶 接 や岩 石 な
さいだんさぎょう はっせい ふん ちょうき す つづ はい き の う しょうがい
どの裁 断 作 業 で発 生 する粉 じんは、長 期 にわたって吸い続 けると、肺 の機能 障 害 (じ
ぱい ひ お ほ ご しよう ぎ む づ
ん肺 )を引き起こすため、保護マスクの使用が義務付けられています。
てぶくろ せっさく せつだん か こ う とそうこうじ かくしゅとりつけ こ う じ か が く ぶっしつ あつか こうじ おこな
【手 袋 】切 削・切 断 加工や塗装工事、各 種 取 付 工事、化学 物 質 を 扱 う工事などを 行 う
て ほ ご もち まる ばん めんと ばん
ときに、手を保護するために用 います。ただし、
「丸 のこ、ボール盤 、面取り盤 、パイプね
きりき かいてん はもの つか てぶくろ ぐんて かいてん は ま こ じ こ
じ切機などの回 転 する刃物」を使 うときは、手 袋(軍手)が回 転 する刃に巻き込まれる事故
てぶくろ ぐんて つか
につながるため、手 袋 (軍手)を使 ってはいけません。
めんつ かおぜんたい ほ ご いったい
【シールド面付きヘルメット】ヘルメットと顔 全 体 を保護するシールドが一 体 になってい
おも ようせつ こ う じ つか
るヘルメットです。主 に溶 接 工事に使 われます。

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ねっちゅうしょうたいさく

7.2.5 熱 中 症 対策

にほん なつ きおん こ まなつび こ もうしょび おお


日本の夏 は気温30℃を超える「真夏日」や、35℃を超える「猛暑日」が多 くあります。
あつ ば しょ おこな さぎょう ねっちゅうしょう ひ お ねっちゅうしょう しっしん
熱 い場 所 で 行 う作 業 は、熱 中 症 を引き起こします。熱 中 症 になると、めまい・失 神 、
きんにくつう きんにく こうちょく たいりょう はっかん ずつう きぶん
筋 肉 痛 ・筋 肉 の 硬 直 、 大 量 の発 汗 、頭痛・気分
ふかい は け おう と けんたいかん きょだつかん い し き しょうがい
の不快・吐き気・嘔 吐・倦 怠 感・虚 脱 感 、意識 障 害 ・
けいれん てあし うんどうしょうがい こうたいおんなど しょうじょう あらわ
痙 攣・手足の運 動 障 害 、高 体 温 等 の 症 状 が 現
さぎょう つづ し いた
れ、作 業 を続 けられなくなるだけではなく、死に至
きしょうちょう かくち あつ
ることもあります。気 象 庁 では、各地における「暑
しすう よそくち さんしゅつ じょうほう
さ指数(WBGT)
」の予測値を 算 出 して、その 情 報
ていきょう かんりしゃ ち ていげん おおがたせんぷうき しゃこう
を 提 供 しています。管理者は、WBGT値を低 減 させるために、大 型 扇風機、遮 光 ネット、
きゅうけい ば し ょ せいび せつび きゅうすいき せ っ ち れいぞうこ せいひょうき いんりょうすい
ドライミスト、休 憩 場所の整備、エアコン設備、給 水 器 設置、冷蔵庫・製 氷 機・飲 料 水
じはんき せっち おこな もうしょ び しゅっきん じ こ く たいしゃ じ こ く はや
自販機の設置などを 行 っています。猛 暑 日には、 出 勤 時刻と退 社 時刻を早 めにするこ
おこな ばあい さぎょういん き きゅうけい じ か ん
とが 行 われる場合もあります。作 業 員 としては、決められた 休 憩 時間には、エアコンが
せっち きゅうけい ば し ょ すず やす さぎょう ぜんご すいぶん えんぶん と
設置されている 休 憩 場所など涼 しいところで休 み、作 業 の前後には水 分 や塩 分 を取る
こころ つうきせい よ さぎょうふく ねつ きゅうしゅう あんぜん
ことを 心 がけましょう。また、通気性の良い作 業 服 や、熱 を 吸 収 しやすい安 全 チョッ
りよう
キなども利用しましょう。

あんぜんさぎょう いしき

7.2.6 安全作業を意識するためのマーク

けんせつ げ ん ば ばしょ しろ はいけい みどり じゅうじ み


建 設 現場のいろいろな場所に、白 い背 景 に 緑 の十 字 がデザインされたマークが見られ
みどりじゅう じ よ あんぜん えいせい こうじ
ます。このマークは「 緑 十 字」と呼ばれ、安 全 や衛 生 のシンボルとなっています。工事
げんば あんぜん いちばんじゅうよう あんぜんだいいち も じ いっしょ
現場では、まず安 全 が一 番 重 要 であるため、しばしば「安 全 第 一 」の文字と一 緒 にデザ
つか け が おうきゅう し ょ ち くすり どうぐ
インして使 われます。ヘルメットや、怪我したときに 応 急 処置をするための 薬 や道具が

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はい きゅうきゅうばこ みどりじゅうじ つ えいせい あらわ はくじゅう
入 った「 救 急 箱 」にも 緑 十 字 のマークが付けられています。
「衛 生 」を 表 す「白 十
じ く あんぜんえいせいき かか
字」と組み合わせた、安 全 衛生旗が掲 げられることもあります。

たい りかい

7.2.7 ヒューマンエラーに対する理解

にんげん げんいん お
人 間 が原 因 となって起こるミスを「ヒューマンエラー」といいます。ヒューマンエラー
にんげん お お
は、人 間 だから起こるミスです。うっかりしていたために起こるミスだけではなく、やる
さぎょう て ぬ ふく けんせつ げ ん ば じ こ
べき作 業 をやらなかった「手抜き」によるミスも含 まれます。建 設 現場で事故をもらわな
お いしき さぎょう おこな たいせつ
い、起こさないためには、ヒューマンエラーを意識して作 業 を 行 うことが大 切 です。ま
ひと たい じ こ で き あ けんぞうぶつ
た、ヒューマンエラーは、 人 に対 する事故だけではなく、出来上がったときの建 造 物 の
ひんしつ こうてい おく えいきょう お げんいん しゅるい
品 質 や、工 程 の遅 れにも 影 響 します。ヒューマンエラーが起こる原 因 は 12種 類 あると

されています。
にんち
①認知ミス
おも こ げんいん お ばめん し じ
思 い込みが原 因 で起こるヒューマンエラーです。たとえば、
「この場面では、こういう指示
く おも こ あいて し じ あいず み まちが
が来るはずだ」という思 い込みは、相手の指示や合図を見間違うことにつながります。
ふちゅうい
②不注意
ちゅうい た お とく さぎょう しゅうちゅう
注 意 が足りないことによって起こるヒューマンエラーです。特 に 1 つの作 業 に 集 中
まわ たい ちゅういりょく ていか じ こ ぜんぽう さぎょう
すると、周 りに対 する 注 意 力 が低下して、事故につながります。たとえば、前 方 の作 業
しゅうちゅう うし あな き ついらく
に 集 中 していて、後 ろの穴 に気づかず墜 落 するといったケースがあります。

188
ちゅうい いしき ていか
③注 意 や意識の低下
ちゅうい いしき ていか とく たんじゅん さぎょう く かえ お たんじゅん
注 意 や意識の低下は、特 に 単 純 な作 業 を繰 り返 しているときに起 こります。 単 純
さぎょう く かえ さぎょう かんが むいしき どうさ
作 業 を繰り返 していると、その作 業 について 考 えることをしないで、無意識で動作をす

るようになります。
けいけん ぶ そ く ちしきぶそく
④経 験 不足・知識不足
けいけん た し お こうぐ てきせつ しよう
経 験 が足りない、知らないことで起こるヒューマンエラーです。工具が適 切 に使用でき
さぎょうこうてい ただ りかい さぎょう じ こ よそく
ない、作 業 工 程 を正 しく理解していない、その作 業 にひそむ事故を予測できないなどが
げんいん さぎょうかいしまえ かつどう ぎのうしゃ けいけん きけん よ ち
原 因 となります。作 業 開始前の KY活 動 は、ベテランの技能者の経 験 からくる危険予知を
きょうゆう ば はじ さぎょう き し
共 有 できる場です。初 めての作 業 でも、気をつけるべきポイントを知ることができます。
な て ぬ
⑤慣れによる手抜き
にんげん な じしん けっか しょしんしゃ ころ ちゅうい
人 間 は、慣れることで自信がつき、その結果、初 心 者 の頃 には注 意 していたことや、や
てじゅん と おこな じ こ な き も ゆる
るべき手 順 を飛ばしてしまうことを 行 いがちです。事故は、慣れてきて気持ちが緩 んだ
お な あんぜんこうどう かくじつ さぎょうまえ こうぐ
ときに起こりやすくなります。どんなに慣れても、安 全 行 動 は確 実 にとり、作 業 前 の工具
てんけん あんぜん そ う ち かくにん あんぜん そ う び そうちゃく かくにん かなら おこな
の点 検 、安 全 装置の確 認 、安 全 装備の 装 着 と確 認 は 必 ず 行 いましょう。
しゅうだんけっかん
⑥集 団 欠 陥
しゅうだん お こうき ま あ ばあい
集 団 で起 こるヒューマンエラーです。たとえば、工期 に間 に合 いそうもない場合 、
ふあんぜんこうどう しかた ふんいき う こうき まも
「不安全 行 動 をとっても仕方がない」という雰囲気が生まれやすくなります。工期を守 る
たいせつ ひと あんぜん かんが だいいち ふあんぜんこうどう じ こ
ことも大 切 ですが、人 の安 全 を 考 えることが第 一 です。また、不安全 行 動 によって事故
はっせい こうき おく
が発 生 すると、そのことが工期の遅 れにつながります。
ちかみちこうどう しょうりゃくこうどう
⑦近 道 行 動 ・ 省 略 行 動
こうりつてき さぎょう すす き も ほんらい こうどう しょうりゃく
効 率 的 に作 業 を進 めたいという気持ちから、本 来 やるべき行 動 を 省 略 してしまうこ

とによって起こるヒューマンエラーです。
れんらく ぶ そ く
⑧連 絡 不足
し じ ないよう つた お し じ ないよう りかい
指示 内 容 がはっきり伝 わらないために起こるヒューマンエラーです。指示の内 容 を理解
さぎょう すす じ こ こうじ おく ひ お
しないまま、作 業 を進 めてしまうことで、事故や工事の遅 れなどを引き起こします。

189
ば め ん こうどうほんのう
⑨場面 行 動 本 能
ばめん おも こうどう とく てん しゅうちゅう み
ある場面になると思 わずとってしまう行 動 です。特 に1点 に 集 中 すると、まわりが見
きゃたつ うえ たお こうぐ ほう だ み あんぜん
えなくなります。たとえば脚 立 の上 で倒 れそうになったとき、工具を放 り出して身の安 全
まも こうどう ほう だ こうぐ べつ さぎょういん あた じ こ お
を守 ろうとするなどの行 動 です。放 り出された工具が別 の作 業 員 に当 ると事故が起こり

ます。

⑩パニック
きゅう おどろ あわ ふあんぜんこうどう ふてきせつ し じ こうどう
急 に 驚 いたり慌 てることで、とっさに不安全 行 動 をとったり、不適切な指示 行 動 をと

ることが起こりやすくなります。

しんしん きのうていか
⑪心 身 の機能低下
わか かれい ばあい とく あしこし
若 いころにはできたことも、加齢によってできなくなる場合があります。特 に、足 腰 の
きのうていか しりょく ていか すこ お き つ む り こうどう
機能低下や、視 力 の低下などは少 しずつ起こるので、気が付きにくいことです。無理な行 動
しせい じかく たいせつ
や姿勢をとらないように、自覚することが大 切 です。
ひろう
⑫疲労
ひろう ちゅういりょく ていか じ こ てきせつ すいみん えいようほきゅう
疲労がたまり、 注 意 力 が低下すると、事故につながります。適 切 な睡 眠 、栄 養 補 給 な
にちじょう けんこう か ん り おこな たいせつ
ど 日 常 の健 康 管理しっかりと 行 うことが大 切 です。

きょう いちにち あんぜん


「今日も一日ご安全に!」

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