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散乱角も 8°と比較的大きなものになってしまっ ものでした.まずは,実験の面倒を見て頂いた

ています.同じ SNS のチョッパー分光器でも Andrey さんはとても親切な方で,実験のサポート


ARCS や SEQUOIA はバックグラウンドを下げる はもちろんのこと前節で述べたような様々な装置
ために試料環境も検出器も同じ真空槽の中に入れ に関する質問にも嫌な顔一つせずに教えて下さい
ていますが,CNCS では試料環境へのアクセスの ました.実験中には SNS のディレクター(当時)
容易さを重視してそれを空気中に置くことにした の Ian Anderson 氏も見に来られ, 「実験は上手くい
そうです.どちらの方式も一長一短で判断の難し っているか?何か困ったことや不満に思うことが
いところではありますが,個人的には非弾性散乱 あれば遠慮なく言ってくれ,我々も今後 SNS をさ
装置はやはりバックグラウンドを下げることを重 らに良くするためにユーザーの意見が聞きたい」
視するべきではないかと感じました. と声をかけてくれました.また,ある日突然二人
装置の仕様でもう一つ不便と感じたのは,最近 組の太ったおじさん達がやってきて「実験は上手
J-PARC で売りにしている(?)複数の入射エネル くいっているか?データはどうやって持って帰る
ギー(Ei)の同時測定(multi-Ei 測定)ができない つもりだ?分からなければヘルプしてやる」と話
ことです.multi-Ei 測定は原理的にはどのチョッパ しかけてきて,突然のことで正直戸惑ったのです
ー分光器でも可能なはずですが,CNCS では狙っ が,実は前述のリモートアクセスのシステムを開
た Ei の中性子の散乱を他の Ei の中性子が邪魔する 発した責任者の方々だったようで,その場でシス
ことを嫌って,2 枚の補助的なディスクチョッパ テムのアカウントを作ってくれてソフトウェアの
ーで狙った Ei 以外の中性子が来ないようにカット .. 使い方も教えてくれました.他にも,SNS のユー
しています.我々の実験でも,丁度前述のにせの ザーズオフィスの近くをうろうろしていたら中か
散乱が低い E 領域に見えてそれが本物かと思って らスタッフの人が出てきて「何か困っているのか,
いた時ですが,Ei を下げてこの新しい(と思って 何かあれば何でも言ってくれ」と声をかけてくれ
いた)励起を詳細に調べるか Ei を上げてもっと広 たこともありました.このように,SNS で出会っ
い Q, E 範囲を測るか悩んで,Andrey さんに相談 たスタッフの方々は総じて,親切なだけでなく,
すると「そんなに一遍に測れないからどちらかに SNS をユーザーにとって快適な施設にしていこう
絞れ」と言われてしまいました.それは至極尤も と一人一人が積極的に心がけており,また,そう
な意見なのですが,内心 multi-Ei 測定ができれば した自分たちの施設に誇りを持っているように感
両方測れるのにとも思っていました.Andrey さん じました.
になぜ multi-Ei 測定を試してみないのかとも聞い 話を CNCS に戻しますと,CNCS のスタッフは,
てみたのですが,それに限らず装置の高度化のア Instrumental Scientist は Andrey さんの他,装置責任
イディアはいろいろあるが,ユーザー実験が多す 者の Georg Ehlers さんの 2 名がおられます.他に
ぎて時間取れないと半分愚痴のようなことを漏ら Scientific Associate という方が 1 名(Paul Culter 氏)
されて,それには同意せざるを得ませんでした. おられますが,おそらく装置の技術的なサポート
データ解析環境も前述のように使い易いツール を専門とされているようです.そのほかポスドク
が備わっていましたが,よく見てみると,リモー の方が 1 名おられましたが,その方はユーザーサ
トアクセスのツールは SNS 謹製のようでしたが, ポートの義務は負っていないそうです.従ってユ
データの解析は ISIS 等が開発した Mantid という ーザーの面倒を見る研究者のスタッフは 2 名です
ソフト(生データから動的構造因子 S(Q,E)への変 が,実験のサポートは交代で行っているようで,
換を行う)と NIST が開発した DAVE というソフ 実際に実験についている方は 1 名のみです.この
ト(S(Q,E)の可視化を行う)を組み合わせて使っ 人数は決して多くはないと思いますが,それでも
ていました.結局ユーザーが満足する解析環境が 上手く回っているのは,技術スタッフが充実して
構築できるのならこうした既存のソフトの組合せ おり,研究者との分業が上手くできているからだ
で手っ取り早く解析環境を構築するのは決して悪 と思われます.よく海外で実験した方々が指摘さ
くはないと思います.ただ,既存ソフトの導入だ れるように実験中の冷凍機の面倒は技官の方が全
けでは小回りが効かないこともあると思います. 部見てくれて我々は何もする必要がないのですが,
実際,CNCS ではデータ解析用に 32 コアの CPU その技官の方々は単に液体ヘリウムを汲むお手伝
を積んだコンピューターを用意していながら,ソ いをしているだけでなく,試料環境装置全般を管
フト(DAVE)の方が 1 コアの処理しか対応して 理する大きなグループの一員のようです.同様に
おらず以外に処理が遅いというようなこともあり チョッパーもそれを共通で管理する大きなグルー
ました.もっとも,これはソフトがマルチコア対 プがありました.実験ホールの中にもこれら試料
応にアップデートされれば解決される問題ではあ 環境用,チョッパー整備用の大きなスペースが確
りますが. 保されていました(Fig. 4).これらのグループは,
単に既存の装置を管理するだけでなく新しい装置
5. スタッフ の開発も行う独立性のある専門家集団であるよう
以上のように,装置の仕様については素晴らし です.各装置の運営が一見すると少ない人数で済
いと思う点も,不便だと思う点もありましたが, んでいて,また,各スタッフがホスピタリティあ
スタッフの方々のサポートは文句なく素晴らしい ふれる対応をしてくれるのも,このように,実験,

16 日本中性子科学会誌「波紋」  Vol.22,No.1,2012

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