SNS 依存と SNS 利用実態とその影響 Actual use of Social Networking Service and its Effects with Social Networking Service Addiction

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SNS 依存と SNS 利用実態とその影響

Actual use of Social Networking Service and its Effects


with Social Networking Service Addiction

◎河井 大介 1、天野 美穂子 1、小笠原 盛浩 2、橋元 良明 3、


小室 広佐子 4、大野 志郎 1、堀川 裕介 5
Daisuke KAWAI, Mihoko AMANO, Morihiro OGASAHARA, Yoshiaki
HASHIMOTO, Hisako KOMURO, Shiro OONO and Yusuke HORIKAWA

1
東京大学大学院学際情報学府博士課程 The University of Tokyo
2
関西大学社会学部 Kansai University
3
東京大学大学院情報学環 The University of Tokyo
4
東京国際大学国際関係学部 Tokyo International University
5
東京大学大学院学際情報学府修士課程 The University of Tokyo

Abstract This paper shows actual use of Social Networking Service(SNS) and its effects with SNS addiction.
SNS user is over 70 million, and we can see a topic about internet or SNS addiction on mass media and
internet homepage. However there are few paper about SNS addiction. Thus we present this paper about how
long, how often, what kind of service, and what kind of scene SNS addicted user use SNS, and what kind of
burden and sacrifice SNS addicted felt by using SNS, and change and effects by SNS use.

キーワード ソーシャル・ネットワーキング・サービス、SNS 依存、SNS 利用実態、SNS 利用の影響

1.はじめに 存を引き起こしているのかを明らかにし、さらに SNS

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下、 利用が人びとにどのような影響を及ぼしているのか明

SNS)は 7,000 万人以上のユーザーがおり(総務省, らかにする。

2009)、日本人の半数以上が利用していることになる。 2.調査の方法
一方、SNS に対して依存や中毒があるのではないかとい 本研究では、日本で最大級の SNS「SNS X」2の運営会

うことがマスメディアやネット上で話題に上っている。 社協力のもとインターネット調査を行った。調査対象

しかし、実際にどの程度の SNS ユーザーが依存である 者は SNS X のユーザーで、携帯版 SNS X にログインし

かといった統計的なデータはほとんど見当たらない。 た全ユーザーからランダムに調査協力依頼のリンクを

そこで、本論文では 2010 年に実施した SNS 依存調査1の 表示し、調査時点での月間ログインユーザー約 1,500

結果から SNS ユーザーの SNS に対する依存の実態を明 万ユーザーのうち 71,926 ユーザーから回答があった。

らかにするとともに、どのような SNS の利用が SNS 依 そのうち有効回答は 56,272 である。平均年齢は 25.8

歳、男女比は男性が 31.4%、女性が 68.6%、全 SNS X


1
調査は「総務省」および「安心ネットづくり促進協議会」
の助成(2010 年度)に基づく研究プロジェクト(研究代表者:
橋元良明)の成果の一部である。調査の企画・実施に当たっ
2
ては連名著者全員で行った。 登録ユーザー数は 2010 年 10 月時点で約 2,000 万。
ユーザーと比べて年齢層が若干若く、女性の比率が高 とおりであり、年齢層が若いほど、また男性より女性

い。調査項目は、SNS X 利用状況(パソコン、携帯電話 が依存者の割合が高く、依存者は全体の 11%であった。

別)、SNS X 依存度、SNS 利用の影響など 15 問に加えフ 図表 2 性別・年齢層別の依存者の割合4

ェイスシート 9 問で構成されている。調査実施期間は 19歳以下 14.3%


a *** 16.9%
2010 年 10 月 4 日(月)16 時から 10 月 7 日(木)16 時 9.8%
20歳~29歳以下 11.2%
までの 4 日間である。また、調査実施にあたり、協力 12.4%
b *** 8.2%
者への謝礼等のインセンティブは与えていない。 30歳~39歳以下 8.6% 全体
9.5%
c *** 6.7% 女性
40歳以上 7.7% 男性
3.依存者の定義 8.7%
c ** 6.3%
11.0%
インターネット依存者の定義については簡易的なも 全体
12.3%
*** 8.1%
のを含め様々なものが存在するが、Young(1998)の「イ
0% 5% 10% 15% 20%
ンターネット依存尺度」が世界各国でもっとも多く採

用されている。ただし、この尺度は一つの文章中に二 4.SNS 依存と SNS 利用の実態

つの質問が含まれているなど、文言上の問題を含んで SNS 依存者はどのように SNS を利用しているかを見る

いる。そのため、Young(1998)のこの問題点を修正し ために、PC と携帯ごとの SNS 利用時間と頻度、SNS の

た Beard & Wolf(2001)の尺度がある。そこで、これ 利用機能、SNS 利用シーンと依存の関係を分析した。

ら Young(1998)と Beard ら(2001)とを参考にし、新 (1) SNS 依存と SNS 利用時間・頻度の関係

たに SNS(SNS X)依存尺度を作成した(図表 1)。 まず、SNS 依存者・非依存者別にパソコン、携帯電話

図表 1 SNS X 依存尺度 それぞれからの SNS 利用時間と利用頻度5、および 1 回


もともと予定していたより長時間 SNS X を利用して あたり利用時間を比較したものが図表 3 である。
しまう
図表 3 依存者・非依存者の PC、携帯からの SNS 利用6
SNS X を利用していない時も、SNS X のことを考え
てしまう 依存者 非依存者 t 検定
SNS X を利用していないと、落ち着かなくなったり、
憂うつになったり、落ち込んだり、いらいらしたり 利用時間(分) 144.4 86.2 ***

する 利用頻度(回/月) 73.5 40.1 ***
SNS X の利用時間を減らそうとしても、失敗してし C
まう 1回利用時間(分) 34.2 28.9 ***
ますます長時間 SNS X を利用しないと満足できなく 利用時間(分) 177.7 105.2 ***
なっている 携
落ち込んだり不安やストレスを感じたとき、逃避や 利用頻度(回/月) 533.8 298.7 ***
気晴らしに SNS X を利用している 帯
1回利用時間(分) 15.2 14.6 n.s.
SNS X の利用が原因で家族や友人との関係が悪化し
ている
SNS X を利用している時間や熱中している度合いに 4
ついて、ごまかしたりウソをついたことがある 橋元良明編『ネット依存の現状―2010 年調査』より。また、
男性と女性の依存者の割合の差はχ二乗検定の結果で***:
ここでは、Young(1998)に倣い、依存尺度の 8 項目 p<0.001,**:p<0.01 で有意。男女を合わせた全体の年齢層間
の差はF検定の結果 F=65.2,p<0.001 で有意。下部の a,b,c は、
のうち 5 項目以上該当するものを依存者3と定義した。
同記号間で Tukey の多重範囲検定により男女を合わせた全体
調査の結果、性別、年齢層別の SNS 依存者は図表 2 の で年齢層間に p<0.05 の有意差がないことを示す。
5
利用頻度は、 「ほぼ毎日」を 30×「1日当たり利用回数」、「週
に数回」を 10 回、「月に数回」を 2.5 回、
「月に1回以下」を
0.5 回、「利用していない」を 0 回として数値化した。利用時
3 間と 1 回利用時間は毎日利用者のみ。
これは比較的緩い基準であり、より厳しい基準を採用する
6
研究も多い。したがって、本調査における「依存者」が必ず 橋元良明編『ネット依存の現状―2010 年調査』より。また、
しもただちに治療を必要とするものではない。 ***:p<0.001 で有意。n.s.:有意差なし。以下同じ。
分析の結果、携帯での 1 回あたり利用時間を除き、 依存者は非依存者に比べて、携帯、PC それぞれから、

依存者は非依存者に比べて PC、
携帯それぞれからの SNS 「つぶやき機能」を利用する人の割合が高く、
「ニュー

利用時間、利用頻度、1 回あたり利用時間が大きい。ま ス」を利用する人の割合が低い傾向がみられた。

た、携帯での 1 回利用時間に依存者と非依存者間に有 (3) SNS 依存と SNS 利用シーン

意差が見られなかったということは、携帯7では利用時 次に、SNS 依存者がどのような場所で SNS を利用して

間より利用頻度が依存と深く関係しているようである。 いるのかを見たものが図表 5 である。

(2) SNS 依存と SNS 利用機能の関係 図表 5 依存・非依存での利用シーン10の違い11

次に、携帯では利用頻度が SNS 依存との関係が深い 0% 25% 50% 75% 100%

ため、依存者の携帯での最もよく使う機能は必然的に 自宅で空いた時間*** 91.1%


80.8%
頻繁に利用するような機能であることが予測できる。 待合わせ等空き時間*** 86.8%
77.0%
実際に SNS 依存者がどのような機能 を最もよく利用し 8
就寝前*** 88.3%
72.9%
ているかを示したものが図表 4 である。 移動中*** 85.2%
73.0%
図表 4 依存・非依存で最もよく利用する機能の比較 9
職場・学校休憩時間*** 72.0%
59.7%
トイレの中*** 46.6%
つぶやき アプリ ニュース 日記 コミュニティ その他 30.5%
食事中*** 37.5%
11% 8% 19.1%
携帯/依存 37% 23% 13% 9% 仕事中・授業中*** 33.9%
17.2%
入浴中*** 13.9% 依存者
12% 6.4%
6%
携帯/非依存 26% 22% 24% 9% 非依存者

上位 5 項目は基本的に空き時間や自由時間といった
PC/依存 22% 21% 7% 21% 11% 18% 通常の利用だと言えるが、
「トイレの中」や「食事中」

「仕事・授業中」などあまり一般的でない利用におい
PC/非依存 17% 21% 13% 24% 12% 14% ても、依存者の 3 分の 1 以上が SNS を利用している。

(4) 依存者の SNS 利用のその他の特徴


0% 20% 40% 60% 80% 100%
上記以外にも SNS 依存者は非依存者に比べて、
「SNS

予想通り携帯では「つぶやき機能」、「アプリ」とい 上の友人の数」が有意に多く(依存者:85.3 人、非依

った必然的に高頻度で利用する機能が最もよく利用さ 存者:61.2 人、t(7053)= -22.73、p<0.0001、N=56,228)


れており、また依存者は非依存者に比べて「つぶやき 「利用金額」が有意に多く(依存者:459.7 円、非依存

機能」という回答が多く、
「ニュース」という回答が少 者:244.2 円、t(6852.9)= -8.25、p<0.0001、N=56,029)

ない。一方、PC でも依存者は「つぶやき機能」を最も 自分自身が「SNS に依存していると感じている」割合が

よく利用しているが非依存者の携帯からの最もよく利 多い(依存者:87.2%、非依存者:32.9%、χ自乗検

用する割合ほどではなく、携帯の依存者と比べた場合、 定の結果、p<0.0001 で有意)。

「日記」の割合も高い。また、PC では依存者の「ニュ

ース」の割合が極端に低い。

7
PC からの利用時間、利用頻度。 10
どのような場所で SNS を利用しているかを複数選択で質問
8
最もよく利用する機能を 1 つ選択させた。またそれぞれにお した。
いて 10%を切るものは「その他」としてまとめた。 11
橋元良明編『ネット依存の現状―2010 年調査』より。また、
9
携帯、PC ともに、依存者・非依存者と最もよく利用する機 それぞれの項目と依存・非依存でχ自乗検定を行った結果、
能でχ自乗検定を行った結果、0.1%水準で有意。 全ての項目において 0.1%水準で有意。
5.SNS 依存と SNS 利用の負担感・犠牲時間 間」、「趣味に使う時間」を犠牲にしていると感じてい

ここまで SNS 依存と SNS 利用の実態を見てきたが、 るようである。

次に、SNS 依存者は、SNS 利用によってどのような負担 図表 7 依存・非依存と犠牲時間の関係15

感を持ち、どのような時間を犠牲にしていると感じて 0% 25% 50% 75%

いるのかを明らかにする。 睡眠時間*** 65.1%


28.7%
勉強の時間*** 40.1%
(1) SNS 依存と SNS 利用の負担感 14.2%
趣味に使う時間… 32.7%
まず、SNS 依存者、非依存者で SNS 利用にどのような 11.9%
家族と話す時間… 24.3%
5.6%
負担感12を持っているのかを見たものが図表 6 である。 21.4%
運動する時間*** 6.0%
図表 6 依存者・非依存者別の SNS 利用の負担感13 仕事の時間*** 11.0%
2.3%
0% 25% 50% 75% 食事の時間*** 9.0%
1.7%
友人と会う時間… 8.4% 依存者
SNS上の人間関係 *** 52.1% 1.1%
24.9% 6.5%
知人と会う時間… 0.9% 非依存者
SNS上の友人へのコメン 26.4%
14.8% 恋人と会う時間… 4.4%
ト ***
0.7%
実際の友人にSNSの内容 25.6% 18.2%
ない*** 59.7%
に触れてよいか *** 11.2%

足あとをチェック *** 25.5%


9.9% 一方で、依存者・非依存者で一日の平均睡眠時間の
荒らしや勧誘対応 *** 24.4%
16.9% 平均値の差の検定の結果、有意ではあった(t(7197.7)=

キャラクター作り *** 20.2% 依存者 2.05、p<0.05、N=55,821)が、その差は 2.6 分(依存


7.4%
日記を書き続けること 16.9% 非依存者 者:378.0 分、非依存者: 380.6 分)であった。つま
*** 10.4%
負担を感じることはな 22.1% り SNS 依存者は非依存者と比べて、睡眠時間を実際に
い *** 48.5%
極端に犠牲にしているわけではなく、睡眠時間を犠牲

依存者は特に「SNS 上の人間関係」に負担を感じてい にしていると感じているだけである可能性がある。

る人の割合が高く、非依存者は「負担に感じることは

ない」という人が多い。しかし、非依存者の中で負担 6.SNS 依存と SNS 利用による変化・影響


に感じるものがある人の中でも「SNS 上の人間関係」を SNS 依存者は SNS 利用によってどのような変化があり、

負担に感じる人の割合が他の項目に比べて多く、SNS 自 どのような影響を受けているのかを明らかにする。

体が人的ネットワークに依拠しているものであるにも (1) SNS 依存と SNS 利用による変化

かかわらず、その人間関係が SNS ユーザーの負担でも まず、SNS 依存者が SNS 利用によってどのような変化

あるようだ。 があったのか16を見たものが図表 8 である。

(2) SNS 依存と SNS 利用による犠牲時間 依存者の半数以上が SNS の利用によって増加したと

次に、SNS 依存者がどのような時間を犠牲にしている 感じている項目は、


「社会的知識」、
「人との交流」や「ネ

と感じているか14を見たものが図表 7 である。 ット上の友人・知人の数」


、「ネット上でのコミュニケ

依存者は SNS 利用によって、


「睡眠時間」や「勉強時 ーション力」、「現実の友人・知人の数」といった対人

12 15
どのようなものに負担を感じているか複数選択で質問した。 橋元良明編『ネット依存の現状―2010 年調査』より。また、
13
橋元良明編『ネット依存の現状―2010 年調査』より。また、 それぞれと依存・非依存でχ自乗検定を行った結果、全て
それぞれと依存・非依存でχ自乗検定を行った結果、全て 0.1%水準で有意。
16
0.1%水準で有意 SNS 利用による変化は、それぞれの質問項目に対して、 「増
14
どのような時間を犠牲にしていると感じているかを複数選 えた」、 「減った」、
「かわらない」の 3 件法で質問した。本稿
択で質問した。 では、便宜的に「増えた」と「減った」を分けて分析した。
関係にかかわるもの、そして「生活の満足度」である。 (2) SNS 依存と SNS 利用による影響

これは SNS が人的ネットワークに依拠するものである 次に、SNS 依存者が SNS 利用によってどのような影響

ため、対人関係にかかわるものの増加は容易に理解で を受けているのか19を見たものが図表 9 である。

きる。また、
「社会的知識」に関しては、依存者は非依 図表 9 依存・非依存と SNS 利用による影響20

存者に比べて、携帯もしくは PC から週に 1 回以上使う 0% 25% 50% 75% 100%

機能として「ニュース」を挙げている人の割合が有意 毎日が楽しくなった 79.9%


*** 64.3%
に多く17、依存者は SNS のニュース機能によって「社会 人にやさしくなった 38.1%
*** 25.0%
的知識」が増加していると感じているようである。 生活が夜型になった 62.1%
18 *** 28.0%
図表 8 依存・非依存と SNS 利用による変化
視力が低下した*** 51.9%
26.6%
減った 増えた 49.9%
眠れなくなった***
17.8%
50.0% 0.0% 50.0% 100.0% 情緒不安定になった 37.9%
81.4% *** 9.6%
社会的知識*** 2.1% 74.6% ひきこもりになった 依存者
0.9% 28.1%
2.7% 72.7% *** 6.7%
人との交流*** 51.9% 非依存者
0.7% 27.3%
60.9% 健康が悪化した***
ネット友人数*** 0.8% 6.9%
0.3% 47.7%
2.0% 59.6%
ネットコミュニケ力*** 38.7%
1.0% 依存者は、
「生活が夜型になった」、
「視力が低下した」

2.5% 54.0%
現実友人数*** 36.8%
0.6% 「眠れなくなったと」いったネガティブな項目だけで
50.5%
生活満足度*** 11.2% 32.8%
3.2% なく、
「毎日が楽しくなった」や「人にやさしくなれる
0.9% 30.4%
パソコン知識*** 20.7%
0.3% ようになった」といったポジティブな項目においても、
30.2%
現実コミュニケ力*** 10.7% 19.3%
3.1%
23.4% 非依存者より割合が高い。
お金を使う額*** 3.3% 11.0%
1.9%
22.4% また、依存者は、「生活が夜型になった」「眠れなく
体重*** 10.2% 12.5%
7.0%
21.5% 依存者 なった」といった睡眠時間に関係するものを挙げてい
自信*** 16.7% 10.6%
5.9%
22.4% 25.8% るが、5 章 2 節で明らかにしたように、実際の睡眠時間
ストレス*** 9.5% 非依存者
12.9%
対人信頼感***28.8%
16.0% はさほど減っているわけではなく、睡眠時間を犠牲に
13.5% 9.2%
しているという感覚と同様に生活が夜型になっている、
一方で、依存者の 2 割前後が減少したと感じている 夜眠れなくなっていると感じている可能性がある。
項目は、
「人への信頼感」や「ストレス」、
「自信」であ また SNS 利用による影響を因子分析21した結果、
「毎
った。SNS の利用で「人への信頼感」や「自信」が減少 日が楽しくなった」と「人にやさしくなれるようにな
する一方で「ストレス」の軽減にもなっている。また、 った」のポジティブな項目が一つの因子にまとまり(以
依存者は非依存者と比べて「自信」と「人への信頼感」 下、ポジティブ影響因子)
、それ以外も1つの因子にま
を除くすべての項目で増えると回答する傾向が見られ
19
た。 それぞれの項目に対して、「あてはまる」
、「まああてはまる」 、
「あまりあてはまらない」、
「あてはまらない」の 4 件法で質
問した。
20
17
依存者(81.1%)、非依存者(78.1%)でχ自乗検定の結果、 橋元良明編『ネット依存の現状―2010 年調査』より。それ
0.1%水準で有意。また携帯と PC それぞれ個別で見た場合、 ぞれ「あてはまる」「まああてはまる」の割合の合計。また、
携帯では依存者(77.8%)、非依存者(74.76%)でχ自乗検 それぞれの項目と依存・非依存でχ自乗検定を行った結果、
定の結果 0.1%水準で有意。PC では有意差なし。 全ての項目において 0.1%水準で有意。
18 21
橋元良明編『ネット依存の現状―2010 年調査』より。増えた、 ここでは、「あてはまる」を 4、
「まああてはまる」を 3、
「あ
減った両側において、それぞれの項目と依存・非依存でχ自 まりあてはまらない」を 2、「あてはまらない」を 1 として因
乗検定を行った結果、全て 0.1%水準で有意。 子分析を行った。
とまった(以下、ネガティブ影響因子)。さらに、それ 係に関して人との交流や友人数が増えたと答える人が

ぞれを単純加算し、ポジティブ影響得点(クロンバッ 多い。また SNS 利用による社会的知識の増加は、SNS 上

クのα係数:0.57)
、ネガティブ影響得点(クロバック のニュース機能による可能性がある。一方で自信や対

のα係数:0.82)とした。 人信頼感が減少したという回答が見られた点にも注意

次に、ポジティブ影響得点、ネガティブ影響得点の する必要がある。

どちらが依存尺度と関係が強いかを明らかにするため さらに、SNS 利用による影響では、毎日が楽しくなっ

に、依存尺度の 8 項目を単純加算して依存得点(クロ たなどのポジティブな項目においても依存者は非依存

ンバックのα係数:0.71)とし、依存得点を被説明変 者に比べてより当てはまると回答する傾向が見られた。

数に、ポジティブ影響得点、ネガティブ影響得点を説 しかし、重回帰分析の結果、依存とはネガティブな要

明変数に、性別と年齢を統制変数とした重回帰分析を 因がポジティブな要因に比べて関係が深いようである。

行った(図表 11)
。 また今後の課題としては、大野ら(2010)のインタ

図表 11 依存得点へのポジティブ影響と ビュー調査にあるように SNS を含むインターネット上

ネガティブ影響の寄与 の非同期型コミュニケーションにおける依存状態から

β T値 有意水準 標準化β の脱却の要因として現実での人間関係の充実や自由に

切片 -1.21891 -31.86 <.0001 0 使える時間の減少が挙げられており、現実での人間関

性別 0.29774 21.26 <.0001 0.07721 係について詳細にみていくことが必要であろう。さら

年齢 -0.12472 -14.89 <.0001 -0.054 に、今回の調査では確認していない心理傾向も含めた

ポジティブ得点 0.47008 50.95 <.0001 0.18954 調査も今後の課題である。

ネガティブ得点 1.18696 110.48 <.0001 0.41446

※Pr > F:<.0001、調整済み R2=0.2686 参考文献


βを見た場合、ネガティブ影響得点はポジティブ影 1) 大野志郎、小室広佐子、橋元良明、小笠原盛浩、堀川裕

響得点に比べて高い値を示しており、ネガティブな影 介(2010):ネット依存の若者たち、21人インタビュー調

響がポジティブな影響に比べて依存得点との関係が強 査、東京大学大学院情報学環紀要 情報学研究 調査研

いといえる。 究偏、No.27,101-139.

2) 橋元良明編(2011):『ネット依存の現状―2010 年調査』
(総

6.まとめ 務省・安心ネットづくり促進協議会共同研究報告書).

以上のように、
SNS 利用実態から SNS 依存を見た場合、 3) 総務省情報通信政策研究所調査研究部(2009):ブログ・

PC からの SNS 利用時間、携帯からの SNS 利用頻度との SNS の経済効果の推計, http://www.soumu.go.jp/main_

関係が強く、依存者は「つぶやき機能」を多く使い、
「ニ content/000030547.pdf, last access 2011/06/ 12

ュース機能」を最も使うわけではない。また、SNS 利用 4) Beard, K., & Wolf, E.(2001):“Modification in the

による負担感や犠牲時間から SNS 依存を見た場合、依 proposed diagnostic criteria for internet addiction”

存者の多くの人は SNS 上の人間関係に負担を感じ、依 , Cyber Psychology and Behavior,4,377-383.

存者と非依存者の実際の睡眠時間に大きな差はないが 5) Young, K.S.(1998):”Internet Addiction: The emergen

睡眠時間や勉強時間、趣味に使う時間を犠牲にしてい ce of a new clinical disorder”, Cyber Psychology &

ると感じている人が依存者に多い。 Behavior,1,237-244.

さらに、SNS 利用による影響という側面では、対人関

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