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Study of Satisfaction Factor Analysis of SNS Users
Study of Satisfaction Factor Analysis of SNS Users
伊東俊彦 柴田聡
Toshihiko ITO Satoshi SHIBATA
要旨:
近年 mixi に代表されるような大規模な SNS に加えて、地域 SNS 1 ・大学 SNS 2 ・企業内 SNS といった小規
模な SNS 3 の可能性に注目が集まっている。
4
一方で SNS 分析の枠組みは単一の SNS を想定したものとなって
おり、小規模 SNS に対応した分析が行われているとは言い難い。本研究では、SNS における利用者の満足度
調査についてのサーベイを行い SNS の満足度分析についての SNS 間の相違について考慮した新しい分析方
法を提案する。
Abstract:
Recently, largescale SNS represented by mixi, and the possibilities of small SNSs such as local SNSs, university
SNSs and corporate SNSs have been attracting attention. However, most studies have focused on SNSs in general. We
suggest a new method in which we describe differences among small SNSs using satisfaction survey results we are
developing.
1
地域 SNS の実態調査については、地方自治情報センター『地域 SNS の活用状況などに関する調査 報告書』
2007.がある。
2
大学 SNS の導入については、伊東俊彦, 柴田聡「大学教育支援のための SNS 導入の調査研究」 『経営情報
学会 2008 年春季全国研究発表大会予稿集』C33, 2008.がある。
3
本論文では、地域 SNS・大学 SNS・企業内 SNS をまとめて小規模 SNS と呼ぶ。
4
地域 SNS の可能性と拡大については、朝日新聞社 Asahi.com の記事『広がる地域限定型 SNS』がある。
http://www.asahi.com/digital/techno/TKY200804130109.html(確認:2008.10)
ている。
SNS の使用動機の一つとして娯楽性があり、 Kekre et al. (1995)は、ソフトウェア製品の満足度に
SNS における満足度が「楽しさ」によって規定され 関するアンケートにたいして 5 段階評価の順序プロ
ていると考えることが出来る。さらに、SNS はイン ビットモデルを用いて分析し要因の寄与度を測っ
ターネット空間上におけるコミュニティ活動その ている。C. Lawson1 & D. C. Montgomery (2006)は、2
ものであり、所属コミュニティからの影響を無視す 項ロジットモデルによる満足度分析についての紹
ることは出来ない。以上の議論から SNS の価値向 介を行っている。また、金融サービスに対する満足
上/活性化のためには SNS に対する利用者の満足度 度分析では M. S. Krishnan et al. (1999)が、ベイズ推
向上が必要であると考える。したがって、本研究で 測を用いた順序プロビットモデルによる研究を行
は満足度に注目し、かつコミュニティの影響をふま っている。
えて分析の枠組みを展開していく。 これらの研究では、順序プロビットモデルあるい
はロジットモデルに基づき顧客満足度モデルを構
2. 満足度に関する先行研究 築している。このモデルでは満足度をいくつかの段
顧客満足度研究に関する研究はマーケティング 階で質問し、その回答に対してプロビット/ロジット
分野を中心に多岐に渡っており、また同時に研究の 変換を施した後に、満足度に関連があると見込まれ
膨大な蓄積がなされている。特に満足度は心理的尺 る要素で回帰を行っている。このモデルの優れてい
度であるため、それ自体を計測することが困難であ る点として、「満足度についての潜在変数を仮定す
りその測定には多くの努力が払われてきた。代表的 る必要が無いためアンケートが簡便に出来る」・「操
な満足度研究に関する研究の一つとして満足度指 作可能な変数からの影響を明示的に分析できるた
標に関するものがある。C Fornell et al. (1996)は、ア め経営的インプリケーションを獲得しやすい」こと
メリカを対象として、満足度についての消費者行動 が挙げられる。
モデルにもとづき、満足度を規定する潜在的な要因 一方で、このモデルでは消費者の心理モデルを仮
間の構造を分析し、マーケティングマネジメントに 定していない。精緻な研究を行ううえでは大きな欠
活用できる指標(ACSI)を提案している。同様にして 陥である。しかし、SNS における満足度研究の現状
ヨーロッパに適応させたモデルを提案した論文と はまだその緒についてばかりであり、統一的なモデ
して J. A. Eklöf &; A. H. Westlund (2002)が、デンマー ルの構築よりも個々の要因についての研究を蓄積
クに適用した論文として E. Ciavolino & J. J. していくことが重要であると考える。
Dahlgaard (2007)が挙げられる。J. M.D.Gustafsson et それゆえ本研究では順序プロビットモデルに基
al. (2001)は ACSI の改善をおこなっている。 づく顧客満足度モデルを採用する。モデルは表,1 に
これら一連の研究では、潜在的な満足度を構成す 示す、yは回答者 i の満足度アンケートに対する満
る要素間の関係性の解明を主眼としており、満足度 足度の回答である。y*はアンケートで得られた満
そのものを管理維持することには重きを置いてい 足度データをプロビット変換したものである。また,
ない。一つには顧客満足度の研究は CRM に関連し アルファは切片,X は満足度要因でβはそのパラメ
た顧客ロイヤリティの概念と密接に結びついてお ータである。
り、むしろ顧客ロイヤリティの構成要素としての側
面が注目されたためと考えられる。マーケティング 表 1 順序プロビット型の顧客満足度モデル
Model 1
においては顧客の購買行動こそが重要であるため、
y * i = a + b X i + e i
これは当然の帰結ともいえる。
しかし、前節で述べたように、本研究で対象とす yi = j if g j -1 < y i* £ g j
る SNS では SNS 運営者と利用者間での価値の共創 for j = 1, 2,3, 4,5
がきわめて重要である。すなわち、価値共創の要因
として満足度そのものの重要性が極めて高くなる
ことを意味する。この点を踏まえて、本研究では満 3. モデルの拡張
足度を向上させるための要因とその効果について 前節では順序プロビット型の満足度 model の紹介
分析することを主眼に置き研究を進めていく。 をおこなった。しかし、紹介した model は、代表的
満足度の個々の要因に関する研究として (S. な利用者について同質な SNS における満足度とそ
れを規定する要因間との関係を示しているに過ぎ 4. アンケート
ない。本研究の対象とする小規模 SNS にそのまま 表 3 アンケートの項目
適用することはいくつかの問題をかかえている。
満足度要因 質問項目
まず、小規模 SNS を研究する際一つ問題になる
有効性 SNS内において必要な情報が得られ
点として、異なる小規模 SNS 間で目的・サービス
たか
内容・参加者特性など様々な点で特異性をもってお
SNS内においてコミュニケーション
り、小規模 SNS 間の異質性を無視することは、分
ができているか
析に大きな誤りをもたらす危険性がある。
効果性 SNSで得られた情報は役に立ったか
加えて、小規模 SNS では 1 つ 1 つの SNS に関し
SNSで期待するコミュニケーション
てのサンプル数が分析するモデルに対して十分で
が出来たか
ないという状況に陥る危険性がある。一つの解決方
機能性 SNS。が提供するサービスの数は十
法として、複数の小規模 SNS のデータをプールし
分か
て満足度分析を施すという方法が考えられる。しか
SNSが提供するサービスの質は満足
しこの方法では、異なる小規模 SNS 間の異質性を
か
無視してしまうため十分な研究成果が得られない
信頼性 SNSのシステムは安定していると思
可能性がある。
うか