29 105

You might also like

Download as pdf or txt
Download as pdf or txt
You are on page 1of 2

第29回廃棄物資源循環学会研究発表会 講演原稿2018

A8-1
「インスタ映え」料理写真の SNS 掲載による食べ残し増加の可能性

○(正)藤倉まなみ 1)、大和妃香里 1)、(正)福岡雅子 2)


1)桜美林大学、2)大阪工業大学

1.調査の背景及び目的
2017 年の「ユーキャン新語・流行語大賞」では「インスタ映え」が年間大賞に選ばれるなど、近年、ソーシャル・
ネットワーキング・サービス(SNS)に撮影テーマと写りの良さを意識した写真を掲載することが流行している。一方
で、SNS に掲載するためだけに食べ物を注文し、食べ残す事例が問題となっている。例えば、愛知県にあるソフトク
リーム専門店は、アイスが写真映えすると人気で、若い女性を中心に多くの人がツィッターやインスタグラムなどの
SNS に写真を掲載している。しかし、写真だけを撮り、ほとんどを食べ残したアイスが多数ごみ箱に捨てられている
様子が写真付きでツィッターに掲載されて議論を呼んだ 1)。
このように、最近は SNS に写真を掲載することを目的に料理を注文し、食べ残すことによる食品ロスが増えている
のではないかと考えられる。そこでインスタグラム等の SNS を利用している人を対象に、Web を利用したアンケート
調査を行い、普段の食べ残しと、SNS 上に掲載する際の食べ残しの頻度の違いを調べることで、SNS 普及にともなう食
品ロスの増加の可能性を明らかにすることを目的として本研究を実施した。

2.調査方法 表-1 調査項目

(1)調査票の設計 属性 年齢・性別・居住地・職業・未既婚・子供の有無 既得
設問を表-1 に示す。問 5 の写真映え等 問1 普段の外食の際の食べ残し頻度 選択肢
問2 外食時の料理の写真撮影経験 を示し
を意識した注文経験の項目は、ニュース て単一
事例や、複数の飲食店での観察結果をも 問3 撮影した料理写真のSNS掲載経験 回答
とに設定した。 問4 掲載時の利用SNS
なお、調査票は桜美林大学研究倫理委 問5 写真映え等を意識した注文経験と食べ残し頻度
員会の審査で承認を受けた。 ア (嫌いな食材でも注文)嫌いな食材が入っているが、写真映えしそ 各問に
(2)調査の実施・回答者数 うな料理だから注文したことが、 ついて
調査は、株式会社クロス・マーケティ イ (メガ盛り注文)メガ盛りなど、量にインパクトがあり、写真映え 「よくあ
しそうな料理だから注文したことが、 る」「た
ングに依頼し、Web 上で回答者の端末に まにあ
設問を示し、選択肢を回答者自身がクリ ウ (人数みせ注文)一緒に食事をする人が実際より多くいるように見 る」「な
せる写真を撮りたいから、人数分以上の料理を注文したことが、 い」を問
ックする方法で実施した。 調査期間は
エ (子供に大人用注文)自分の子どもと料理が一緒に写る写真を撮り い、経
2017 年 10 月 26 日、27 日の 2 日間である。 たいから、大人用の料理を子どものために注文したことが、 験者に
対象者は、10 代(15-19 歳)、20 代(20-29 食べ残
オ (共有のための注文) SNS等で有名な料理を、自分も友だち(フォロワー し頻度
歳)、30 代(30-39 歳)、40 代(40-49 歳) 含む)と共有したいから、その有名な料理を注文したことが、 を問う
の 4 区分の男女、計 8 グループとし、各 カ (いいね注文)料理の写真は他者からの反応がいいので、食べたく
グループで 50 人の回答が得られた時点 ないときでも料理を注文したことが、
で当該グループについては回答を締め切
った。47 都道府県の 15 歳から 49 歳の男女、計 400 人分について、回答者の個人情報が連結不可能な匿名化された回
答データを得た。年齢・性別等の属性は調査会社より既得情報として得た。

3.調査結果
(1)外食時の料理の写真撮影の経験と SNS 掲載経験 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
外食時に、注文した料理の写真撮影経験
外食時に注文した
があるかについて選択肢を示して尋ねたと 外食をする際に、注文 よく撮る ときどき撮る 撮ったことがない
料理の写真を撮っ
した料理の写真を撮った
ころ、図-1 のとおり、 「よく撮る」が 16%、 たことはあるか 16% 43% 41%
ことはあるか(N=400)
「ときどき撮る」が 43%であった(これら (N=400)
を以下「写真撮影経験者」という)。性別で 0% 20% 40% 60% 80% 100%
は有意に女性の方が多かった(χ 2 検定、 外食時に撮った料理
p<0.01)が、年代別では有意な関係はみら の写真をSNSに載せ よく 載せたこと
れなかった。 たこと(アイコン・ヘッダー 載せる
ときどき載せる
がない
44%
等への使用を含む) 20% 36%
また、写真撮影経験者に、撮影した料理
はあるか(N=237)
写真の SNS 掲載経験について選択肢を示し
て尋ねたところ、 「よく載せる」が 20%、
「と
きどき載せる」が 44%であった(これらを 図-1 外食時の料理の撮影経験と SNS 掲載経験
以下「SNS 掲載経験者」という)。なお、SNS
掲載経験は、性別・年代で有意な関係はみられなかった。
SNS 掲載経験者に、主に利用する SNS を1つだけ、選択肢を示して尋ねたところ、最も多いのはインスタグラムで
40%、次いでツイッター24%、フェイスブック 22%であった。

【連絡先】〒194-0294 東京都町田市常盤町 3758 桜美林大学リベラルアーツ学群


藤倉まなみ Tel:042-797-9634 FAX:042-797-9950 e-mail:fujikura@obirin.ac.jp
【キーワード】食品ロス、食べ残し、インスタ映え、SNS、メガ盛り

-105-
第29回廃棄物資源循環学会研究発表会 講演原稿2018

(2)理由別の注文経験と食べ残し頻度
写真撮影経験者に尋ねた、 1 よくある 2 たまにある 3 ない 1 よくある 2 たまにある 3 ない
表-1 の問 5 に示す写真映え等 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0% 20% 40% 60% 80% 100%
を意識した注文の経験につい
ては、図-2 のとおり、いずれ 嫌いな食材でも注文 15% 15% 嫌いな食材でも注文 1% 2%
の場合も、「よくある」「たま メガ盛り注文 11% 29% メガ盛り注文 3% 10%
にある」 (以下「写真映え等注 人数みせ注文 7%13% 人数みせ注文 0% 2%
文経験者」という)の割合は、
子供に大人用注文 9% 23% 子供に大人用注文 0% 9%
SNS 掲載経験者が SNS 掲載経
験なしのグループを上回った。 共有のための注文 13% 32% 共有のための注文 2% 7%
全員に、普段の外食の際の いいね注文 8%15% いいね注文 0% 5%
食べ残し頻度について、また SNS 掲載経験あり SNS 掲載経験なし
写真映え等注文経験者に注 N=151(子供に~のみ N=43) N=86(子供に~のみ N=23)
文時の食べ残し頻度につい 図-2 写真映え等を意識した注文経験
て、同じ選択肢を示して尋ね
た結果を図-3 に示す。撮影経験 1.いつも完食する 2.ときどき食べ残す 3.よく食べ残す 4.いつも食べ残す
経験がない又は SNS 掲載経験が 0% 50% 100%
ない(撮影・SNS 掲載経験なし)
グループと SNS 掲載経験者では、 全体(N=400) 71% 23% 4%
撮影・SNS 掲載経験なしグループ 普 撮影・SNS掲載経験なし(N=249) 69% 23% 6%
の方が「いつも食べ残す」「とき 段 SNS掲載経験者(N=151) 74% 23%
どき食べ残す」の回答割合が大
きかったが、統計的に有意な差 ア 嫌いな食材でも注文(N=44) 64% 27% 7%
ではなかった。 イ メガ盛り注文(N=61) 56% 33% 8% 3%*
一方、撮影・SNS 掲載経験なし 注
ウ 人数みせ注文(N=30) 63% 30% 3%
グループと、写真映え等注文経 文
験者の、注文時の食べ残し頻度 時 エ 子供に大人用注文(N=14) 64% 36%
をそれぞれ比較したところ、 「メ オ 共有のための注文(N=68) 69% 19% 9% 3%*
ガ盛り注文」と「共有のための
注文」で p<0.05、「いいね注文」
カ いいね注文(N=35) 57% 29% 11% 3%**
で p<0.01 で有意な差が見られた(χ2 検定)。さら 図-3 外食時の料理の食べ残し頻度
に、 「メガ盛り注文」 「共有のための注文」 「いいね注
文」について、食べ残しの頻度を 1~4 のダミー変数 1 いつも完食する 2 ときどき残す 3 よく残す 4 いつも残す
として、同一回答者の普段の食べ残し頻度と差があ 0% 20% 40% 60% 80% 100%
るかについて 2 群の母平均の差の検定(対応あり)を
普段 72% 23% 3%2%
行ったところ、いずれも有意な差があり(片側
p<0.05)、特に「メガ盛り注文」で図-4 に示すとお 注文時 56% 33% 8% 3%
り顕著であった(p<0.01)。ただし、回答者の中には、
普段「ときどき残す」が、写真映え等注文の時には 図-4 「メガ盛り注文」経験者の
「いつも完食する」というように、食べ残し頻度が 普段と注文時の食べ残し頻度の比較
減少する回答者もいた。

4.まとめと考察
図-1 より、外食時に料理を撮影し、かつ SNS に掲載した経験があるのは、全数の 38%であった。2016 年の代表的
な SNS(ライン、フェイスブック、ツイッター等の 6 つ)の利用割合は 71%2)であるので、SNS 利用者の半数以上が外
食時の料理写真を SNS に掲載していると考えられる。
SNS 掲載経験者は、図-2 のとおり、写真映え等を意識した注文を行っており、 「メガ盛り注文」 「共有のための注文」
「いいね注文」の経験者は、撮影や SNS 掲載をしないグループよりも有意に食べ残し頻度が大きかった。普段と、写
真映え等注文時の「いつも完食する」の回答者数を比較すると、 「メガ盛り注文」で 10 人(SNS 掲載経験者の 6.6%)、
「いいね注文」で 7 人(同 4.6%)減少しており、普段の外食では完食していても、写真映え等を意識した注文時に
は食べ残す人が存在し、食品ロスを増加させていることが明らかになった。SNS の利用率は今なお増加傾向にある 2)
ため、今後 SNS への掲載に起因する食べ残しは増加する可能性がある。
食べる以外の目的で食品が購入され、廃棄されて問題になった例に、1980 年代のビックリマンチョコがある。おま
けのシールが爆発的な人気となり、シールだけを抜き取りチョコを捨てるなどの現象が起き社会問題になった 3)。こ
の件は製造事業者が公正取引委員会の指導を受け収束したが、SNS 掲載目的の食べ残しは社会全体の課題として取り
組む必要がある。

1)https://twitter.com/ani__R/status/870189400646328320 (2018/06/15 閲覧,同日時点で 34,546 件のリツイート)


2)総務省,平成 29 年版情報通信白書,2017
3)日本経済新聞,ロッテなど業界各社、シール付きチョコ自粛―公取委の指導で,1988 年 8 月 9 日朝刊

本研究は文部科学省科学研究費 15K12283 の助成を受けて実施した。

-106-

You might also like