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3D CADの基礎知識5 アセンブリモデリング PDF
3D CADの基礎知識5 アセンブリモデリング PDF
3D CADの基礎知識5 アセンブリモデリング PDF
アセンブリモデリング
もくじ
1. 複数部品の扱い …2
2. アセンブリ拘束 …2
3. アセンブリ構成 …4
4. アセンブリモデリングの活用法 …6
株式会社イプロス
Tech Note 編集部
前回は、パーツモデリングについて解説しました。今回は複数パーツを
扱うアセンブリモデリングを説明します。アセンブリモデリングの CAD
機能は、シンプルでコマンドも少ない一方で、使い方によって作成した
アセンブリモデルの扱いやすさ、
修正しやすさが変わってきます。そこで、
モデルの扱いやすさに関わるモデリングのコツも紹介します。
1. 複数部品の扱い
3D CAD では、複数の立体を取り扱うとき、アセンブリ機能によってパー
ツを複数配置する方法と、パーツモデリングの中で複数のソリッドを取
り扱う方法があります。アセンブリ機能は、複数部品を扱うために、3D
CAD が持っている機能です。アセンブリモデル(アセンブリファイル)
にパーツモデル(パーツファイル)を配置することで、複数部品を扱い
ます。今回はこの機能について説明します。
一方、パーツモデリングの中で、複数のソリッドを扱うことで簡易的に
複数部品を表現することができます。この方法の利点は、パーツモデリ
ングの知識だけで複数部品を扱えることです。ただし、部品点数の多い
製品や動きを伴う製品には向きません。
2. アセンブリ拘束
アセンブリ機能を使った部品の位置決めは、アセンブリ拘束によって要
素間の相対的な姿勢を定義することで行います。アセンブリ拘束の基本
的な機能を、図 1 に示します。一致(図 1 左)は現実の組立作業と似
ています。オフセット(図 1 中央)は平行に距離を保ちます。ここで、
一致はオフセットの距離が 0 と考えられるので、両者は同じ役割です。
角度(図 1 右)は指定の角度を保ちます。平行・直交も角度がそれぞれ、
0°
と 90°
と考えることができます。つまり、CAD 製品によって、拘束の種
類が多く感じても、考え方はオフセットと角度を理解すれば十分です。
面
面
アセンブリ拘束で面を指定するとき、合わせる向きも指定します(図 2)
。
拘束の対象として、面のほかに、軸、エッジ、コーナーを自由に組み合
わせることができます(図 3)
。
図2:拘束の向き
向かい合わせ 同じ向き
図3:拘束の対象
水平に移動できる
面の一致
下の部品は固定
動かない(拘束自由度)
動く(未拘束自由度)
拘束を与えたときの位置決めの状態は、自由度(DOF)として考えるこ
とができます。3D 空間で部品の位置を決定するためには、6 自由度
(3 軸の並進と回転)で表現することを第 1 回で紹介しました。アセンブ
リ拘束とは、この自由度のいずれかを拘束することです。図 4 の右は面
同士の一致拘束で、拘束される自由度(赤色)と残る自由度(青色)
を示しています。上の部品は拘束した後も青い矢印の方向に自由に動く
ことができます。拘束によって 6 自由度全てを拘束したとき、完全に位
置決めされた状態になります。
自由度の残し方により、回転軸やスライダなどの機械の動きを表現する
ことができます。なお、
拘束する自由度に特別な関係が定義された、
ねじ・
歯車・カムなど機械要素の動作を表現できる拘束が用意されている
CAD もあります。
3. アセンブリ構成
アセンブリでは、1 つの製品で多数のパーツを扱う必要があります。こ
のとき、1 つのアセンブリ内に全てのパーツを配置すると、数が膨大に
なり、扱いきれなくなります。そこで、関係の深いパーツ同士を合わせ
て 1 つのアセンブリとし、これを 1 つの固まりとしてアセンブリ内に配置
図5:アセンブリの階 パーツ
層構造 アセンブリ
パーツ
アセンブリ
パーツ
アセンブリ(製品)
アセンブリ
アセンブリ
アセンブリ
アセンブリ
アセンブリ構成を適切に作成することは、アセンブリモデルを扱う上で
大変重要です。アセンブリの 1 階層の部品が多くなると、拘束も多くな
ります。1 つの部品を位置決めするには、通常、2 つから 3 つの拘束が
必要です。部品が 10 個あれば、拘束は 20 個以上になります。部品が
多すぎると、部品の配置状態を把握しきれなくなり、モデルの変更に支
障が出ます。また、CAD はアセンブリ内の拘束から各部品の位置を計
算するので、計算負荷が大きくなって CAD が不安定になることもありま
す。
拘束を作成する際、ソリッド形状の面を指定すると直感的で操作も簡単
図1の拘束でも、
です。 ソリッドモデルの表面を拘束しています。
ところが、
拘束は部品間に依存関係を発生させます。図 6 の左は部品 A と部品 B
との間にオフセット拘束があり、部品 B と部品 C との間もオフセットで
上下方向の位置決めをしています。このとき、部品 B を削除すると部品
C の位置決めは無効となります。このような依存関係が部品間で複雑に
なっていると、モデルの簡単な変更でも拘束に矛盾が生じてエラーを起
こすようになり、扱いにくいアセンブリモデルになってしまいます。
図6:拘束に使う要素
オフセット拘束 アセンブリ基準面 部品基準面
部品 C 部品 C
部品 B 部品 B
部品 A(固定) 部品 A(固定)
形状要素同士 基準面同士
このような問題を最小限にするには、基準平面など普遍的な要素を拘
束に利用します。図 6 の右は、部品 C の基準面とアセンブリ基準面と
の間にオフセット拘束を作成しています。この方法では、部品 C は部品
A と部品 B の変更の影響を受けません。
軸受ブロック
図7:ボトムアップアセ
フレーム
ンブリ
フレームの配置 軸受ブロックの配置
軸受
軸受の配置 軸の配置
ところが、機械設計を考えたとき、部品の形状が完成しないとアセンブ
リができないのでは、設計段階でアセンブリができず、3D CAD による
機械設計(3D 設計)を実現できません。これを解決する手法がトップ
ダウンアセンブリです。トップダウンアセンブリでは、形状が未完成な
部品も含めて階層構造を先に作成します。形状が未完成でも部品をア
センブリに配置することは可能です。図 8 の左上で、主要な部品(軸、
軸受ブロック)を配置しています。部品は単純な円柱で浮いていますが、
軸の中心位置や軸受の位置は設計の早い段階で決まるので、基準要素
(基準面)を利用して拘束を作成します(図 6 の右の方法)
。その後、
設計上の検討事項を考慮しながら各部品の詳細形状を作成します
図8:トップダウンアセ
ンブリ
主要な部品を配置 軸のモデリング
軸受ブロックのモデリング 詳細部のモデリング
トップダウンアセンブリによって、3D 設計を実現できても、部品が連動
して動作するメカニズムの設計には使いにくいという問題が残ります。
そこで用いる手法がレイアウトスケッチです。レイアウトスケッチでは、
部品が連動する動作をスケッチで作成します(図 9 左上)
。スケッチの
寸法拘束・幾何拘束を活用して、メカニズムの動作をスケッチ線で表
現します。ここに部品を配置し、部品の基準要素とスケッチの線との間
にアセンブリ拘束を作成します(図 9 右上)
。メカニズムの動作を確認
したいときは、スケッチを編集して線の位置を変更すると(図 9 左下)
、
部品はスケッチ線に追従します(図 9 右下)
。
スケッチ作成 スケッチ線にアセンブリ拘束
スケッチを修正 部品の位置に反映
いかがでしたか? 今回はアセンブリ機能の概要と、モデリングのコツ
を紹介しました。次回は、図面機能とサーフェス機能を解説します。お
楽しみに!
3D CAD の基礎知識 5:
アセンブリモデリング
初版 2019 年 2 月 22 日
著者: D2FORM 代表 榎本 実