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12.

はんだ中の鉛の定量

1.要旨
試料は希硝酸で加熱分解し,蒸発乾固してすずを不溶性のメタスズ酸とし、沈殿分離,灰化し,
重量法により求めた後,鉛は濾液の一定量をとりてヘキサミンを加えてを調整し,XO を指示
薬として EDTA 標準溶液で滴定して求めた。

2.試薬 試薬は次のものを用いる.
B 班(1)硝酸(1+1)全量 200ml WKE0471 Wako
C 班(2)ヘキサミン B49272G Chameleon
(ヘキサメチレンテトラミ)全量 100ml
(3)Xo 指示薬(1g/1)
3,3ービス[NNージー(カルボキシメチル)-アミノメチル]ークレゾールスルホフタレイン
0.1g を水に溶かして 100ml とし,褐色瓶に入れて冷暗所に保存する.1~2 ヶ月毎に新しく調
製した.
B 班(4)0.02M 亜鉛標準溶液の調製
金属亜鉛(標準試薬 99.90%以上)約 0.66g を 0.1mg の桁まで正確にビーカーにはかり取る.
もし,金属亜鉛の表面が光沢が無く,酸化していると認められた場合は,塩酸(1+1)で手早く表
面の酸化物を溶かし水洗し,アセトンで洗った後,110 で 5 分間乾燥し,デシケータ中で放冷
してから用いた。
はかり取った金属亜鉛に約 10ml の塩酸(1+1)を加え,時計皿で覆って,弱火で注意深く加熱
溶解する.この溶液を 500ml のメスフラスコに移し入れ,水で希釈しファクターを算出して
おいた。
(5)0.02M EDTA 標準溶液
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(二水塩)7.5g を水に溶かして 11 とし,ポリエチレン
瓶に保存した。この溶液の標定は,(4)で調製した 0.02M 亜鉛標準溶液を用い,次の操作にて
行った。0.02M 亜鉛標準溶液 20ml をコニカルピーカー(200ml)に分取し,約 50ml に希釈し
た後,X0 指示薬を数滴加え,よく振り混ぜながら黄色から紫色に変化するまでヘキサミンを
加え,変色してからさらに約 0.5g 過剰に加え,0.02M EDTA 標準溶液で完全に黄色になるま
で滴定した。

3.試料のはかり取り量
試料は 約 0.5g を 0.1mg の桁まで正確にはかり取る:0,4989 0,5018 0,5012。

4.すずの定量
(1)試料をピーカー(300ml)にはかり取り,硝酸(1+1)15ml を加え,時計皿で覆って砂浴また
はホットプレート上で加熱分解した。
分解が始まると同時にメタすず酸の乳白色の沈殿を生ずるので,試料が完全に分解したかど
うかは灰黒色の試料片の残存を確かめて判断した。
(2) 時計皿をとり加熟蒸発し,乾固したならば再び硝酸(1+1)10ml を加え,時計皿で覆って煮
沸するまで加熱し,これに温水を加えて約 150ml に薄め,約 10 分間加熱し可溶性塩類を溶解
した。
(3) 濾紙(No.5C)を用い, ピーカー(300ml)に濾過し(ロイドのでとおしにくい ), 温硝酸
(1+100)で 3 回,温水で約 5 回洗浄する.""濾液及び洗液は,鉛の定量用に保存した。

4 と 5 のすずの純粋化はやらなかった。
(4)沈殿を濾紙と共に恒量にした磁性るつぽに入れ,蓋をせずに,始めは弱いバーナー炎で乾
燥,灰化し,次第に温度を高め,次に素早く電気炉に移し,1000 で約 10 分間強熱する.デシケー
タ中で放冷した後,重量をはかり,恒量となるまで繰り返す。
(5)試料中のすず含有率は,次の式によって算出した。
すず(%)=(m×0.7877/W) ×100
但し m:酸化スズ(SnO )の重量(g)
W:試料のはかり取り量(g)

【註】1) メタすず酸の沈殿は,ビーカー壁に容易に付着するので,ポリスマン等で充分にこ
すり落とすこと。
2)酸化すずは濾紙の灰化の際,還元する恐れがあるので空気の流通をよくするために蓋をし
ない。
3) 磁性るつぽは急熱,急冷などの急激な温度変化に弱く,破損しやすいので,特に 1000 の高
温の電気炉に入れる際には,予熱しておいた。

5.鉛の定量
(1) すずの定量 4(3)で保存した濾液及び洗液を 250ml のメスフラスコに移し入れ,水で標線
まで薄め,よく振り混ぜた。
(2) この溶液 50ml を 200m1 のコニカルピーカーへ正確に分取し,水を加えて約 70ml に薄
めた。
(3) X0 指示薬を滴加え,振り混ぜながらヘキサミンを少量(約 0.5g)ずつ加え,溶液が黄色から
紫色に変色してから更に少量加えた。
(4) 0,02M EDTA 標準溶液を用いて滴定し,紫色が無くなり完全に黄色に変化した点を終点
とした。."鉄,銅などの不純物が含まれていると,終点が不明確になることがある。この様な
ときは,EDTA 標準溶液を予め一定量加えておき,ヘキサミン,XO 指示薬を加えると良い。た
だし,鉛の定量値に影響する量であれば,その反応量を補正する必要があった。
(5) 試料中の鉛の含有率は,次の式によって算出した。
鉛(%)=(V f 0,00414/W) (250/50) 100
但し,V:0.02M EDTA 標準溶液使用量(ml),f:0.02M EDTA 標準溶液のファクター,W:試料は
かり取り量(g)とした。

【註】4)この満定の条件では,亜鉛との反応によって EDTA は酸を遊離するので,それを中


和するのに必要な量を過剰に加えておいた。
5) 終点近くではゆっくり注意深く滴下した。.
6) 0.1%以下では特に影響はなかった。

解說
はんだは,用途によっていろいろな組成があるが,すずと鉛を基本成分とする 2 元合金が最も
代表的である.この種のはんだは JISH4341 に規格が定められている。我の身近にあるテレ
ビ,パソコン,携帯電話等の電子部品,電気製品の回路関係を始め,工業材料として広く使われ
ている。すず-鉛の合金は,Sn 62w%-Pb 38w%の組成比において,共晶点をもっており、183t
の低い融点が得られ,他の合金と合金化しやすい.この性質が金属同士の接合において,低融
点のろう剤として好都合となっている由縁である。しかしながら,この便利な材料も,鉛が環
境有害物質に指定されてからは鉛を使わない工法の技術開発が進められており,今後はその
使用が削減されていくであろう。はんだの分析法としては,いくつかの方法がある.すずは還
元後、ヨウ素、ヨウ素酸などによる酸化滴定,鉛は硫酸鉛,クロム酸鉛として重量法によって
求める方法である.日本工業規格にも JISZ3910 に規定がある、この JIS 法では,すずはヨウ
素酸商定法が,鉛は硫酸鉛として沈殿分離し,EDTA 商定法が定められている。どちらか一方
の成分を定量する事としている。本テキストでは,すずと鉛の 2 元合金を前提として,簡便,迅
速な方法をとった。すずは重量法を,鉛は EDTA を用いるキレート滴定法を選んだ.鉛は
EDTA と 1:1 の安定なキレートを形成する.安定度定数は 1og K =18.04 であり,pH5 付近の
酸性側でも X0 を指示薬として明瞭な終点が得られる.ただし,EDTA は他の多くの金属とも
反応するので,この条件下では反応する共存成分が無いことを確かめておかなければならな
い.もし,そのような成分が含まれているときは,JIS 法の様に予め硫酸鉛として分離するか,
あるいは適当なマスキング剤があれば共存物をマスクする必要がある。

[反応]
すず一鉛の合金は硝酸によって分解し,次式のような反応により,すずはメタ
すず酸となって沈殿を生成する.しかし,組成は一定しないと言われている.
3Sn + 4HNO + H O = 3SnO(OH) + 4NO
この時,鉛は硝酸特に希硝酸に最もよく溶解するので両成分の分離が出来る。

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