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京都外国語大学

2020GS0060
中尾衣里

高岡 Community Engagement Project


「最終レポート」

1. 現地研修内容と感想
① 竹中銅器
竹中銅器さんでは、ゆっくりと販売物の見学や梱包作業過程などをお見せいただきました。
高岡市の伝統産業についての概要もとても分かりやすくご説明いただき、前葉を把握し
易くとても興味深いお話をいくつもお伺いしました。高岡市が分業制であることや、様々な
会社を通して製品を制作しているということもとても丁寧にお話ししてくださり、理解がより
深まる瞬間でした。販売物として並んでいる商品は取扱いの幅が広く、私たちが想像する
銅器から、こんなものまであるのかと驚くようなデザイン性・利便性のある先鋭的な商品ま
で並んでり、高岡市の伝統産業の持つ多面性を感じることができました。

② モメンタムファクトリー・Orii
モメンタムファクトリーさんでは、商品の製造着色工程から、着色の原理、産業としての現
状課題や新たな取り組み、そして販売の様子まで詳しくご説明くださいました。分業制を
誇る高岡だからこそ、他が追随できない着色技術の追求、アイコンとなる着色技術の開発、
産業の需要変化に伴う新たな試みといった点で学生の私たちにもわかり易く教えてくだ
さった姿勢がとてもありがたかったです。それ以降も高岡市の様々な場所で Orii 様のアイ
コンとする着色を施した商品や施設を見つけ、みんなで幾度となく高揚しながらその技術
力とデザイン性、ビジネスとしての先見の明をひしひしと感じました。

③ 山口久乗
山口久乗さんでは、歴史的背景を踏まえた企業の軌跡、会社として迎えた分岐点とその
きっかけをお話しくださった点が非常に強く記憶に残っております。阪神淡路大震災とい
う日本史の中でもまだ新しく、人々の記憶にも強烈なまでに焼き付いている悲惨な事象に
起業として寄り添い、考え抜いた先に見つけた新たな仏具としての姿には圧巻のあまり
言葉も出ませんでした。仏具を扱う会社だからこそ、仏様はもちろんのこと、今を生きる
人々のことを考える企業姿勢にひどく感銘を受けました。また、実際に触れることを快く許
してくださり、とても素敵な演奏をされる「響」のお二人の演奏を聞く機会を設けてくださっ
たことも非常に嬉しかったです。
④ 高田製作所
機械では再現できない、とても精密かつ丁寧な研磨技術を誇る高田製作所の皆様は、
我々学生に一つでも多く知ってほしいととても熱心に説明してくださる姿が一番記憶に
残っております。素人目には全く気付くことのできないような気泡を見つけ、研磨し、顧客
のニーズを完璧に再現するために突き詰める姿勢は職人そのものでした。また、研磨に用
いられる機械の構造などもわかり易く説明してくださり、とてもわかり易く理解することが
できました。
長時間座って作業するあ環境は決して楽なものではなく、身体的にもとても過酷だと仰っ
ておりましたが、それを続ける皆様が削られた製品の美しさには感嘆の言葉が溢れるほど
に目を惹かれました。

⑤ 老子製作所
現代の日本人にも未だ残る古の日本文化を表す象徴とも言える釣鐘を作る老子製作所
を実際に見学し、お話を伺えたこと、とても貴重な時間だったなと今一度噛み締めており
ます。唯一無二 d、長い歴史と人々の思いを刻む釣鐘を作る機械や職人さん方の k 技術
は目を見張るものでした。また、社長自らが会社内を説明してくださいましたが、制作過程
における専門的な質問などには職人さんに任せる姿勢など、厳しい現状を生き抜く伝統
産業企業としての在り方を知ることができたような気がしました。また、産業課題における
今後の企業としての向き合い方など、素人質問にも真摯にお答えくださり、非常に学ぶこ
との多い時間でした。

⑥ 若鶴酒造三郎丸蒸留所
見学客に対する徹底した設備完備には、思わずあ一つのアトラクションに遊びにきたよう
な感覚に陥るほどでした。声が聞き取りやすいマイクをご準備くださっていたり、見易く改
造された工場、わかり易く説明が織り込まれたアニメーションや試飲設備など、企業として
も世界が注目するような事業を進められながらそれを知りたいと思う人々への窓口の広
さを感じました。実際に試飲したウィスキーは絶品で、家族も虜になる程でした。そんな日
本の誇るウィスキーの製造される機械や技術へのこだわりまで、実際に見て感じて嗅いで
体験しながら知ることができて、とても楽しい時間でした。

⑦ 小野研磨所
研磨技術に特化した小野研磨所さんでは知識と経験に基づき様々な道具を使い分けて
顧客のニーズに合った製品に仕上げていくという技術力の高さに驚かされました。とても
短い時間ではありましたが、様々な作例を見してくださったり、実際に目の前で研磨してい
く工程をで見せてくださり、大変気づきの多い時間でした。
⑧ 平和合金
日本で一番イケメンな二宮金次郎像を造られいる平和合金さんは、学びにきた我々学生
が聴きやすいようにインカムをご用意してくださり、今後より新しい人々に伝統産業を知っ
ていってもらいたいという思いをつよく感じました。先細りと言われることの多い伝統産業
において事業を拡大している企業として、やはり何度も驚くようなお話をお聞かせください
ました。一品ものや大型なものを多く取り扱う反面、ロストワックスでは小型で量産需要の
あるものを取り扱うという、分業制を売りとする高岡の伝統産業スタイルとは一風変わっ
た次世代的な企業姿勢だと感じました。また、着色や新技術へ t 絶えず挑戦される姿に、
私たちのグループが考えていた改革案の輪郭をより掴むきっかけになるようなものを学
ぶことができました。

⑨ 越中福岡の菅笠振興会
実際に菅笠作りを体験できて、とても思い出深い時間でした。菅笠の歴史もわかり易くご
説明くださり、日本文化が創り上げてきた時代の発明品に触れ、その時代背景や人々の
生活も含めて感じることができる時間というのはそう体験できるものではないと思います。
私たちが作りやすいよう準備をしてくださり、全く手際の良くない私にも根気よく教えてく
ださった皆様の温かをひしひしと感じました。あの日作った菅笠はとても可愛らしく、愛着
を持って今も大事に飾らせていただいております。

⑩ 高岡民芸
中山煌雲さんの、菅笠という今やあまり知られていない伝統産業。伝統技術に対する向き
合い方やビジョン、挑戦を知ることができるとても学びの多い時間を過ごさせていただきま
した。伝統産業が抱える後継者不足や低賃金という問題、分業制の良し悪しといった新
たな見解を知ることができ、成果報告会プロジェクトへの切り口となりました。また、ドロー
ンにも触れさせていただき、学生の多くが新たな技術との出会いの窓口になったことと思
います。一見菅笠となんの接点もないようなものと、煌雲さんが引き合わせてくださったこ
とにより、そこに繋がりが生まれる。このような出会いもあるのだな、と、高岡の伝統産業へ
の向き合い方に新たな風が吹いたような気がしました。

⑪ 地場産センター
地場産センターでは、高岡の伝統産業である漆器・銅器・菅笠の製造工程や歴史につい
てのわかりやすい展示から、様々な幅のある商品の展示と、高岡伝統産業を一目で掴む
ことのできる場所となっておりました。展示されていた一番大きな菅笠のサイズには思わ
ず声を上げて驚きました。

⑫ 道の駅万葉の里
道の駅に訪れるということ自体が初めての経験だったのですが、その町の食べ物や商品、
お土産品を一度に堪能できるというとても贅沢な時間だったなと感じております。万葉の
里で食べた白エビのかき揚げ丼の美味しさは今思い解しても飛び返りたくなるほどに美
味しかったです。

⑬ ギャラリー MONONO-FU
駅に併設されたギャラリーでは、今まで見たことがある商品から全く見たことがない商品
など新たな出会いもあり、その中には〇〇の製品だ!と思わず紅葉してしまうような再会も
ありました。

⑭ イオンモール高岡 T.OCUL
展示されている商品全てがとてもスタイリッシュなデザイン且つ実用的な商品ばかりで、
友人もたくさんお土産を購入していたことが記憶に残っております。様々な制作工程を見
学してきたからこそ、そこに並ぶデザインや性能の再現の難しさを感じることができました。

⑮ 高岡御車山会館
高岡の誇る伝統催事の歴史や時代背景、紡がれてきた人々の思いや技術力の高さを強
烈に感じました。見せていただいた映像では、クローズアップされる技術力が踏んだんに
振るわれた作品たちの美しさのあまり、同じ班の友人と涙しそうになる程息を呑む美しさ
でした。また、御車そのものを日頃は展示ケースとして使用している全身ガラス張りの
ショーウィンドウは、緻密に計算設計されており保管にも適しているという点や、入り出しに
も最適な構造となっているという機能性にも驚きました。

⑯ デザイン・工芸センター
高岡市が、これまで、そして今後どのように伝統産業・伝統文化と向き合ってきたかを学ぶ
ことができました。高岡市の強みや、現状の課題について、文化や歴史的背景から社会の
変化といった尺度を踏まえて改めて学ぶことが多く、最終報告会に向けたデータベースに
大きく役立てることができました。

⑰ 能作
大変主観的尺度ではありますが、高岡伝統産業の中で最も広く認知されているのではな
いかとお見受けする能作さんの見学では、本当に多くのことを学びました。テーブルコー
ディネート界でも大変話題に取り上げられた能作さんの作品はどれもその独自の特性を
活かし、且つ洗練されたでデザインは一目で能作さんの作品だとわかるようなものばかり
でした。実際に購入したビールカップは今でも毎日愛用しており、非常に生活を豊かにし
てくれる一品でした。製造、見学、体験、試用、購入までが一か所で完結しているという点
に非常に惹かれました。

⑱ 高岡市立博物館
高岡の歴史や文化背景から、今の技術継承に至るまで精密なデータベースを元にとても
情報豊かな講義をしてくださいました。また、実際に博物館展示階の方ではと多くの歴史
的遺産物も実際に拝見し、その歴史の古さや刻まれた思いもひしひしと感じることができ
ました。

⑲ 金屋鋳物師町交流館
登録有形文化財の街として、掲げているビジョンやそこに向かう地元の人々の熱い思い、
反して抱えている現状の課題や問題点といったとてもリアルな声を聞くことができました。
決してボランティア精神では守っていくことのできない有形文化財の街としての重みや、
維持、管理、後見人問題。また、補助はあるが見られる生活に対する嫌悪感といった、実際
に住んでいる人だからこそわかる現状の声を知ることができたと感じています。一時的な
登録ではなく、持続可能な文化財にするための取り組みやその難しさは、現地に行ったか
らこそより身近な話として感じることができたのだと思います。

⑳ 高岡伝統産業青年会
「ガラは悪いが、腕はいい」や、高岡伝統産業青年会メンバー様のイラストといった、どうし
ようもなく愛着が湧いてしまう発想力と実行力を兼ね備えた高岡伝統産業青年会の皆様
との出会いは、私の高岡に対する興味関心や情熱をより高めてくれるような時間でした。
伝統産業・技術が抱えている現状課題、今後どうしていくことが継承なのかというビジョン
や、突拍子もないと思ってしまうほどに多方面で、でもとても挑戦的な取り組みといった、
まさに今変革へと突き進んでいる皆様のお声をお聞かせくださりとても学びの多い時間
でした。産地の PR や人材育成、エンドユーザーの声の重要性やものづくりへの理解と
いった多面的な尺度から、高岡市の伝統産業が迫られている改革への前向きな姿勢に
は驚かされるばかりでした。クラフト婚パや職人技術の国際交流、オンラインセミオーダー
システムや映像コンテンツ・アニメシーンへの飛躍といった、どれも非常に興味が湧く活動
が多く、成果報告会プレゼンへの新たな刺激も受けました。とても好評な活動も多い反面、
やはりコストや人員、時間といった点で限られてしまう受け入れ人数などの問題を重く受
け止め、より抜本的な打開策を絶えず追求される考えには同意を抱かざるを得ませんで
した。そのためにも、より先鋭的に最新技術とのコラボや制作過程・広報のプロセスのデ
ジタル化といった必要性も強く認識されているのだという点も、実際に伺うことができまし
た。そのようなアイディアを持ちながら、しかしやはり実際に働いている人にしかわからな
い塩梅や問題点について、詳しく教えてくださりとても多くのことを学べたと確信しており
ます。
2. チーム活動の概要と自身の役割
チーム活動である最終成果報告会に向けてのプレゼンテーション制作では、私たちのチームは
主に「現代社会的要素を用いた高岡伝統産業の改革案」を提案しました。高岡が誇る伝統技術や
文化、産業の魅力を肌で感じ魅せられたファンの一人としてその魅力をより多くの人に知ってもらう
ため、よりキャッチーでインパクトの強い宣伝効果を重視したアイディアを多く考えまとめることを一
番の目的に設定しました。他が追随できない高い技術力と、その生きる文化が根付いた街や人の
魅力を生かしながらその世界を知らない人に着目してもらえる「トレンドさ」と「産業としての生産
性を上げる」ためにも、現状の課題分析とそこから導き出したアプローチ点をまとめることが、主に
私の担った役割でした。
高岡伝統産業の抱える現状の課題を「産業収入の低さ」「後継者育成のハードル」「広報力」
の三つに分類しました。銅器一つを例に挙げても、売上が 100 億を切り、最盛期の 4 分の 1 まで低
下している点から見ても、伝統産業全体としての収入の減少は著しいのが伺えます。このように、産
業全体の収入の成長が乏しいということはすなわち、そこに従事する人々の収入も右肩上がりと期
待するのは難しいため、後継者として新たに産業に踏み込む人が少なくなってしまうという付随的
影響も考えられました。経済的観点とプラスアルファで、職人として手に職をつけるためには長い修
行期間が必要であることや、そもそも高岡の伝統産業に従事するという就職の選択肢が周知され
ていないという点も、後継者問題に大きく関わっていると考えました。このように、高岡伝統産業そ
のものがあまり知られていないという事実は全ての問題の根幹であるとも考えており、生活文化の
変容や価値観、経済状況の変化というのは現代を生きる人々の生活から伝統工芸が遠い存在に
なってしまった一因とも言えるでしょう。今までは当たり前に日本人の生活に用いられていたからこ
そ宣伝する必要もありませんでしたが、伝統産業となってしまったが故に普及率の低下に目を向け、
今一度広報力の強いアプローチ方法を考える必要があると考えました。
以上の課題を打破するために、三つの視点でアプローチ方法を考えました。「汎用性を高める
こと」、「希少価値を高めること」そして、「知名度を高める」という三本柱の改革案が、我々のグルー
プのアイディアの根幹であります。
「汎用性」とは、高岡の伝統産業が持つ技術力と、職人さんがつひとつひとつ手作業で作るか
らこそ可能となるオリジナリティの具現性を活用し、再び日本人の文化の一つとしてひ根付かせる
ことはできないかという案です。産業全体を通して精密な作業が多く、機械化されていないプロセ
スが多いからこそ、顧客のニーズに沿った製品を生み出すことに長けているのだということは実際
に現地に伺ったからこそ知ることができました。だからこそ、人々がコストをかけてでもオリジナリティ
を重視したい、もしくは費用以上に大事な意味があると付加価値を見出せるプロダクツに結びつけ
ることが重要なのではないかと考えました。例としては、冠婚葬祭にまつわるものに t 高岡の伝統
産業を結びつけるということです。実際に、仏具はその代表格とも言えますでしょうが、現代におい
て仏具を持つ家庭が減少傾向にあることも踏まえ、新たな切り口が必要だと考えました。冠婚葬祭
というのは人生においてもとても重要な行事であり、自身の場合でも、他者の場合でも、そこには人
を想う気持ちが大きく現れる催事と言えるでしょう。そのため、冠婚葬祭業の顧客単価は非常に高
く、そこにはつ顧客の強い思いや個性を宿らせることができるポイントが重視されます。そのため、出
産時には赤子やその親が使える製品を。葬儀には故人を収める棺や弔いの意を込める製品などに
高岡の伝統産業を組み入れることで、製品クオリティの高さや汎用性を活かせるのではないかと考
えました。
「希少価値を高める」というのは、近年のハイブランド思想に肖るという点が重要になると考え
ます。良くも悪くも、インターネットの普及に伴い我々の生活には垣根がなくなり、これまで常識的と
してあった年代別の収入平均が崩れつつあります。学生でも豊富な収入がある人も少なくありませ
ん。その中で話題を呼んだのが、「supreme」や「MCM」、「山崎ウィスキー」などのような、その名前
と膨大な金額が周知され、それゆえに入手困難となりさらに市場価値が跳ね上がるという現象が
続いています。このように、実際の実用性や価値を一度置いて、その製品そのものを買うことができ
る権利、その金額を支払うことができる人という購入者の価値感覚も相乗する製品は、それ単体の
宣伝効果も高いという利点が大きいです。高い技術力を、それに見合った金額をつけることで最大
限にポテンシャルを発揮する製品のラインナップを試作するというのも、大事な試みなのではない
かと考えました。もちろん、ただべらぼうに高い製品を生み出すのではなく、それを上手くブランディ
ングし、金額に含まれる技術やそれ以上の付加価値を周知してもらうというのは必要条件になりま
す。
最後に、「知名度を高める」というのは最も重要な分野であると考えます。何かそのジャンルの
製品を選ぶとき、高岡のものを選ぼうと思ってもらうには選択肢として周知してもらうことが不可欠
です。現状、高岡の伝統産業そのものを謳った広告は数点お見受けしましたが、伝統光源品そのも
のに興味のない人には全く届いていないというのが事実です。ただそれ単体を見ても興味を持た
ない人に関心を持ってもらうためには、他市場とのコラボレーションが重要になってくると考えます。
現在トレンドとなっている製品や作品、人物や市場とニュースに着目しながらコラボレーションする
ことで、普段全く伝統工芸に触れてこなかった人々のジャンルにアプローチしていくことが可能とな
ります。このように、よりトレンディーに窓口を広く開けることが重要なのではないかと考えました。
以上のように、高岡伝統産業が抱える問題とそれに対するアプローチとなるような改革案の骨
組みを分析し、わかりやすく理解していただくために再構築するという役割を担っておりました。

3. 全体の振り返り
この高岡 CEP プロジェクトを通して、日本が持っている伝統産業・技術や歴史的価値に対して
の考え方を大きく改めるきっかけを掴みました。高岡市が築き守ってきたこの産業は、決して簡単に
たやしていいものではないのだということを、実際に現地に行き、人に出会い、触れて感じれたから
こそ強く確信しているのだと思います。伝統産業。技術とは何なのか、その本質とはとても難しく決
して完全に知ることができたとは思っておりません。二週間の学びを通してもなお、伝統産業・技術
たらしめる本質がなんなのか、何を変えてしまってはいけないのか。しかし、絶やすことなく継承して
いくために変化し続けなければいけないところはどこなのか、その境界線を見極めることは非常に
難しく、高岡市に住む皆様の中にも多種多様の価値観があるのだということを学びました。Z 世代
と主語を大きく括ってしまうことには抵抗がありますが、少なからず若者と呼ばれる世代の多くは伝
統産業や文化、技術といったものの価値や本質に対する興味関心が薄い人が多いでしょう。日々移
り変わるトレンドや最新技術はどれも新鮮で、反対に伝統とつくものは全て変化や改革を怠った末
路という認識があるのもまた事実です。しかしそうではないのだと、明らかに確信することができま
した。伝統産業や技術が抱えている価値は、日本の文化や歴史、人の思い、時間、いろいろなもの
が形として結晶として残っているのだと今は思っております。だからこそ、それを守るということがど
ういうことなのか、反対にたやしてしまうと言う事はどれほど多くのものを日本人が失うということな
のか、そのことの重大さに向き合えたような気がします。私たちが必要だと感じた変化は成果報告
会プレゼンにまとめましたが、決して一時的なアイディアではなく、伝統産業を継承していくために
私が今後していけることはないかと深く考えております。高岡の魅力に魅せたれたものとして、少し
でも恩返しがしたい。でもそれ以上に、こんなにも素敵な街を、技術を知ってほしいと強く願っており
ます。人生を通して、伝統産業や文化、技術に向き合うきっかけとなったこのプロジェクトは、本当に
貴重な学びの機会でした。

4. 謝辞
この度は、私共京都外国語大学学生の高岡現地訪問にあたり様々な面で寛容に受け入れてく
ださいましたこと、心より御礼申し上げます。感染症拡大に伴い何度も変更を余儀なくされ、その他
にもみ高岡市の皆様に多大なるご負担をおかけしたことと思います。しかし、実際に高岡市を訪れ
て伝統産業や文化に見て、触れて、聞いて、言葉を直接交わすことができたからこそ、形容し難いほ
ど学びの多い時間を過ごすことができました。そのための機会を設けてくださった皆様には言葉を
尽くしても感謝の意を伝えきれないほどに、私にとってとても貴重で充実した時間でありました。高
岡市がき築き継承してきた伝統技術と産業の細部まで聞き、体験できる機会の貴重さはしみじみと
二週間余りで感じました。今回の高岡現地研修にあたり、皆様の様々な御心遣いがなければなし
得ない体験でした。心より感謝申し上げます。
日を跨ぐごとに気温は下がり、日没の時刻も早まってまいりましたが、どうか皆様ご自愛くださ
い。また必ず、高岡に遊びに行きたいと強く思っております。

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