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G 法学(「法と社会」)講義(憲法)③ 2022.10.

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第3章 法の体系 §1 法の分類 1 公法と私法


§2 国家と法 1 国家と憲法

2 日本国憲法の基本原理(国民主権・平和主義・基本的人権の保障・権力分立)

基本的人権の保障

⇒ 「人間として、あるいは国民として当然に享有すべき権利と自由」を保障すること。

第13条(個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉) すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及
び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大
の尊重を必要とする。

(自民党草案13条(人としての尊重等) 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に
対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊
重されなければならない。)

第11条(基本的人権の享有) 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保
障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

(自民党草案11条(基本的人権の享有)  国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障
する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である)

第97条(基本的人権の本質) この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得
の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すこと
のできない永久の権利として信託されたものである。
(自民党草案97条削除)

第81条(法令審査権と最高裁判所) 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するか
しないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

(自民党草案81条(法令審査権と最高裁判所) 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合す
るかしないかを決定する権限を有する最終的な上訴審裁判所である。)

憲法が保障する人権もまた社会のうちに存在する以上、絶対無制約なものではない。自由も放
恣(ほうし= 勝手、気まま)を認めるものでもない。憲法は、一方で、人権を不断の努力によって
守ることを求めながら、他方で、それを濫用せず、「公共の福祉」のために利用する責任を負わ
せている(同12条)。

第12条(自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止) この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の
不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつ
て、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

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(自民党草案12条(国民の責務) この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、
保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うこ
とを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。)

 「公共の福祉」 は 「公益及び公の秩序」とは異なる概念である。

保障される人権の範囲

第一に、平等は個人の尊重に必然的に伴う要請であり。平等権の保障 は徹底している(憲法
14条・24条・26条・44条参照)。

第14条(法の下の平等、貴族の禁止、栄典) ① すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性
別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は
将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

(自民党草案14条(法の下の平等) ① 全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害
の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
② 華族その他の貴族の制度は、認めない。
③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効
力を有する。)

第24条(家族生活における個人の尊厳と両性の平等) ① 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫
婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
② 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関して
は、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。(→ 民法2条(解釈
の基準))

(自民党草案24条(家族、婚姻等に関する基本原則) ① 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として
尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。 (公助、自助)
② 婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力に
より、維持されなければならない。
③ 家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律
は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。)

第26条(教育を受ける権利、教育の義務) ① すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に
応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
② すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。
義務教育は、これを無償とする。

(自民党草案26条(教育に関する権利及び義務等) ① 全て国民は、法律の定めるところにより、その
能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する。
② 全て国民は、法律の定めるところにより、その保護する子に普通教育を受けさせる義務を負う。義務

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教育は、無償とする。)

第44条(議員及び選挙人の資格) 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、
人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。

(自民党草案44条(議員及び選挙人の資格) 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律で定める。こ
の場合においては、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差
別してはならない。)

第二に、人間の精神活動の自由は、個人が人格を形成する基盤であり、また社会が民主的に構
成される条件であって、広く保護を受ける(同19条~21条・23条)。

第19条(思想及び良心の自由) 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

(自民党草案19条(思想及び良心の自由) 思想及び良心の自由は、保障する。
第19条の2(個人情報の不当取得の禁止等) 何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利
用してはならない。) 

第20条(信教の自由) ① 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から
特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

(自民党草案20条(信教の自由) ① 信教の自由は、保障する。国は、いかなる宗教団体に対しても、
特権を与えてはならない。
② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
③ 国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならな
い。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。)

第21条(集会・結社・表現の自由、通信の秘密) ① 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由
は、これを保障する。
② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
(→ 通信傍受法「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」(平成11年法137))

(自民党草案21条(表現の自由) ① 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する
② 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目
的として結社をすることは、認められない。
③ 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。
第21条の2(国政上の行為に関する説明の責務)  国は、国政上の行為につき国民に説明する責務を負
う。)

朝日新聞2022年03月25日 夕刊 1社会 011ページ , 00514文字


道警ヤジ排除、道に賠償命令 「表現の自由を侵害」
 2019年の参院選で、札幌市で演説中の安倍晋三首相(当時)にヤジを飛ばした男女2人が、北海道

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警の警察官に違法に排除され、憲法で保障された表現の自由を侵害されたとして、道に慰謝料などを求め
た訴訟の判決が25日、札幌地裁であった。広瀬孝裁判長は「原告らの表現の自由などが違法に侵害され
た」と述べ、道に計88万円の支払いを命じた。
 原告は、団体職員の男性(34)と、当時大学生だった労働団体職員の女性(26)=いずれも札幌市
在住。訴状によると、19年7月15日、男性はJR札幌駅前で自民党候補の応援演説をしていた安倍氏
に「安倍やめろ」とヤジを飛ばし、複数の警察官に後方に排除された。その後、近くにいた女性は「増税
反対」と叫んだあと、20メートル以上後ろに移動させられた。さらに男性は札幌三越前の演説会場でも
安倍氏にヤジを飛ばし、約50メートル移動させられたという。
 2人は「政治批判の声を政府の最高責任者にぶつけるまれな機会を違法に奪われた」として、20年2
月までにそれぞれ提訴した。
 道警側は、排除は警察官職務執行法に基づき、危険の回避や犯罪予防のため原告らを移動させたと主張
同法の範囲内の対応かどうかが争点だった。(平岡春人)

朝日新聞2022年03月26日 朝刊 1社会 039ページ , 02247文字


ヤジ排除「表現の自由侵害」 道警側に賠償命令「重要な憲法上の権利」 元首相の演説警備巡り 札
幌地裁
 2019年の参院選で、札幌市で演説中の安倍晋三首相(当時)にヤジを飛ばした男女が、北海道警の
警察官に違法に排除され、憲法が保障する表現の自由を侵害されたとして、道に慰謝料などを求めた訴訟
の判決が25日、札幌地裁であった。広瀬孝裁判長は「2人の表現の自由などが違法に侵害された」と述
べ、道に計88万円の支払いを命じた。
 判決によると、19年7月15日、原告男性(34)はJR札幌駅前などで応援演説をしていた安倍氏
に「安倍やめろ」とヤジを飛ばし、警察官らに排除された。「増税反対」と叫んだ女性(26)も移動さ
せられた上、警察官らに長時間つきまとわれた。
 2人は「政治批判の声を最高責任者にぶつけるまれな機会を違法に奪われた」として、20年2月まで
に提訴。道警側は、排除は警察官職務執行法に基づく適法な行為と主張。原告らが聴衆に危害を加えられ
るなどの恐れがあったとした。
 判決は現実的な危険があったかどうかを検討した。市民が撮影した動画などをもとに、怒号が上がるな
ど騒然とした状態にはなっておらず、警察官職務執行法の適用要件を満たしていないと判断。警察官らの
行為を「違法なもの」とした。
 その上で、表現の自由について「民主主義社会を基礎づける重要な権利であり、公共的・政治的表現の
自由は、特に重要な憲法上の権利として尊重されるべきだ」と指摘。原告らのヤジは公共的・政治的表現
行為だと認めた。さらに、警察官らは原告らのヤジが安倍氏の演説の場にそぐわないものと判断して「表
現行為そのものを制限した」と結論づけた。
 また、原告女性につきまとった行為については、移動・行動の自由や名誉権、プライバシー権の侵害に
あたると認定した。
 道警監察官室は「判決内容を精査し、対応を検討する」との談話を出した。(平岡春人)

 ■「おかしいこと、おかしいと言う力に」 原告
 「完全勝利です」。25日の札幌地裁判決。法廷から飛び出した原告男性が支持者に向かって叫ぶと、
拍手が起きた。代理人弁護士らが「勝訴」「民主主義の後退に歯止め」と掲げた。
 判決後の集会では、原告女性(26)が約90人の支持者や報道陣を前に「この社会でおかしいことを
おかしいと言うために、力になる判決だ」と語った。
 判決は、政治的な事柄に関する表現の自由は、憲法上で特に重要な権利だと指摘した上で、原告らのヤ
ジを排除した道警は「表現の自由を制限した」と明言。さらに、ヤジの内容は差別意識や憎悪を誘発する
ものではなく、表現の自由を制限する合理的な理由はなかったとも言及した。

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 原告側代理人を務めた小野寺信勝弁護士は「憲法判断をせず、違法に精神的苦痛を負わせたとだけ述べ
て判決を済ませることもできた。踏み込んだ判決だ」と評価した。
 裁判で争点となったのが、道警が排除の根拠とした「警察官職務執行法」による適法な対応だったかと
いう点。同法は、危険な事態があって急を要する場合、警察官は関係者を避難させられるなどと規定する
しかし判決は、道警の行為は「同法の要件を満たしていない」として、違法なものだったと判断した。
 事案発生から2年8カ月余。道警側の対応には疑問の声もあがった。
 原告2人が排除された翌日、道警は朝日新聞の取材に「選挙の自由妨害の疑いがあった」と説明したが
その後に撤回。排除の法的根拠を公式に明かしたのは、7カ月ほどたった翌年の20年2月だった。
 裁判では、排除の正当性を示す証拠として、自分たちに肯定的なネットニュース上の書き込みを提出。
広瀬孝裁判長から「立証責任は道警側にある」と指摘される場面もあった。
 また、排除に関わった警察官らが「(原告の)男性に怒鳴る人や小突く人がいた」などと発言し、安全
確保を排除理由に挙げたが、その場を撮影した複数の動画などで事実とは認められないと判断された。
 判決後の会見で原告の男性は「にせものの主張を持ち出された」、原告の女性も「聴衆と私が一触即発
だったかのような主張をされた」と憤った。小野寺弁護士は「そもそもの説明に無理があったから、その
後の訴訟でも荒唐無稽な主張を続けた」と批判した。(平岡春人、川村さくら)

 ■かなり踏み込んだ判断
 京都大学・毛利透教授(憲法学)の話 裁判長は、警察官の排除が違法だとしても、憲法判断をせずに
賠償を命じることもできたが、あえて表現の自由に触れた。原告2人の表現活動が侵害されたことに訴訟
の本質があり、社会的に重要な問題だと考えたからだろう。2人が被った損害の大きさを示すために表現
の自由に触れたとみることもできる。警察官が女性に長時間つきまとった行為については、不審者のよう
な印象を通行人に与えたとして名誉権の侵害を認めた。かなり踏み込んだ判断といえる。

 ■警備対応、客観的な根拠を
 元警察大学校長の田村正博・京都産業大教授(警察行政法)の話 警察官職務執行法に基づいて物理的
に動作を制止するには、人の生命や身体に害が及ぶ恐れが切迫していたことを示す客観的な判断の根拠が
必要だ。判決も(安倍氏の乗った演説車両に向かって)原告の男性が突然走り出したのを制止したことに
ついては、道警の対応が適法だったと認めた。与野党問わず選挙運動を守るため、警察警備は必要だ。現
場はとっさの対応が求められるが、警察は客観的な根拠をもとに行動しなければならない。そんな教訓を
示した判決だと言える。

2022/06/14 日本経済新聞 朝刊 38ページ 445文字


「拘禁刑」創設、改正刑法が成立――侮辱罪を厳罰化、ネット中傷対策
 インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷対策で「侮辱罪」を厳罰化し、現行の懲役や罰金刑の対象とす
る改正刑法が13日、参院本会議で賛成多数により可決、成立した。
 2020年に女子プロレスラー、木村花さん(当時22)がSNS(交流サイト)で中傷され、亡く
なったのを機に見直しの議論が拡大した。
 侮辱罪は公然と人をおとしめる行為が対象で、具体的な事実を示さない点で名誉毀損罪と区別される。
現行の法定刑は「拘留(30日未満)か科料(1万円未満)」で、これに「1年以下の懲役・禁錮または
30万円以下の罰金」を加える。公訴時効は1年から3年に延長となる。近く公布され、20日の経過後
に施行される。
 施行から3年後、表現の自由を不当に制約していないか検証するとした検討条項の付則が設けられた。
 花さんの母、響子さん(45)は成立を受け都内で記者会見し「これまでは抑止力にならなかった。
『やっと』という思いだ」と語った。一方で「発信者の特定や賠償請求にはお金がかかる」として民事手
続きでの行政の支援を求めた。

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第23条(学問の自由) 学問の自由は、これを保障する。

(自民党草案23条(学問の自由) 学問の自由は、保障する。)

第三に、人身の自由も、近代憲法の重視するところであり、過去(戦前(1945年以前))のわ
が国でその侵害がめだったことを反省し、詳細な規定がおかれている(同18条・31条・33条~39条)。

第18条(奴隷的拘束及び苦役からの自由) 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処
罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
(自民党草案18条(身体の拘束及び苦役からの自由) 何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済
的関係において身体を拘束されない。
② 何人も、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。)

第31条(法定の手続の保障) 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪は
れ、又はその他の刑罰を科せられない。
(自民党草案31条(適正手続の保障) 何人も、法律の定める適正な手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪
われ、又はその他の刑罰を科せられない。)

第32条(裁判を受ける権利) 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
(自民党草案32条(裁判を受ける権利)何人も、裁判所において裁判を受ける権利を有する。)

第33条(逮捕の要件) 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し
且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
(自民党草案第33条(逮捕に関する手続の保障) 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、裁判官が発し、
かつ、理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。)

第34条(抑留・拘禁の要件、不法拘禁に対する保障) 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁
護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、
拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなけ
ればならない。
(自民党草案34条(抑留及び拘禁に関する手続の保障) ① 何人も、正当な理由がなく、若しくは理由を直ちに告げら
れることなく、又は直ちに弁護人に依頼する権利を与えられることなく、抑留され、又は拘禁されない。
② 拘禁された者は、拘禁の理由を直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示すことを求める権利を有す
る。)

第35条(住居の不可侵) ① 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受ける
ことのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収
する物を明示する令状がなければ、侵されない。
② 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
(自民党草案35条(住居等の不可侵) 何人も、正当な理由に基づいて発せられ、かつ、捜索する場所及び押収する物
を明示する令状によらなければ、住居その他の場所、書類及び所持品について、侵入、捜索又は押収を受けない。ただ
し、第33条の規定により逮捕される場合は、この限りでない。
② 前項本文の規定による捜索又は押収は、裁判官が発する各別の令状によって行う。

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第36条(拷問及び残虐刑の禁止) 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。死刑廃止論
(自民党草案36条(拷問及び残虐な刑罰の禁止) 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、禁止する。)
  (冤罪(えんざい))

第37条(刑事被告人の権利) ① すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判
を受ける権利を有する。
② 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制
的手続により証人を求める権利を有する。
③ 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれ
を依頼することができないときは、国でこれを附する。

(自民党草案第37条(刑事被告人の権利) ① 全て刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を
受ける権利を有する。
② 被告人は、全ての証人に対して審問する機会を十分に与えられる権利及び公費で自己のために強制的手続により証
人を求める権利を有する。
③ 被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することが
できないときは、国でこれを付する。)     黙秘権

第38条(自己に不利益な供述、自白の証拠能力) ① 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
② 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠
とすることができない。
③ 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられ
ない。

(自民党草案38条(刑事事件における自白等) ① 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
② 拷問、脅迫その他の強制による自白又は不当に長く抑留され、若しくは拘禁された後の自白は、証拠とすることが
できない。
③ 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされない。)

第39条(遡及処罰の禁止・一事不再理) 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行
為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない
(自民党草案39条(遡及処罰等の禁止) 何人も、実行の時に違法ではなかった行為又は既に無罪とされた行為につい
ては、刑事上の責任を問われない。同一の犯罪については、重ねて刑事上の責任を問われない。)

第四に、経済活動の自由は、資本主義体制のもとで、生活の物的基礎を確保するために必要な
ものとして、保障される(同22条・29条)。
ただ、戦後の社会においては、社会的にみて必要であったために、経済活動の自由の面につい
て、国の規制を広く認める傾向があったが、20世紀終わりころから、広い分野でその規制を緩和
する動きが継続している。

〔規制緩和〕 政府が関与し、民間の活動を阻害する要因(規制)を取り除くことをいう。民間の自由な経済
活動を促進し、経済の活性化を目的とする。
戦後の日本は産業の保護・育成のために種々の規制(制度)を実施した。しかし、当時は有効に機能した制
度も経済発展と共に必要性を失い、むしろ発展の阻害要因になった。日本の場合、政府関与の規制や行政

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当局の介入が諸外国に比べ根強かったため、海外からの批判も多かった。
こうした背景のもと、第2次臨調(第2次臨時行政調査会(1981年3月〜83年3月)では「許認可等の整理・合
理化」などが答申された。以降、規制緩和は継続的・断続的に進められたが、特に小泉政権下での進度は
急速・急激だった。その進展度合いには高い評価がある一方、「市場原理主義をもたらした」「格差社会
の原因」との批判もある。

1980年代以降の規制緩和・民営化・自由化の例  日本電信電話公社民営化、国鉄民営化、金融ビッグ
バン、タクシー台数の制限撤廃、貨物自動車運送業への新規参入の条件緩和、バス運送事業への新規参入
の緩和、電力自由化、酒類販売業免許の付与基準の緩和、ビールなどの年間最低製造量の緩和、港湾運送
事業への新規参入、電気通信事業の開放、農業への株式会社参入、郵便事業の民間開放、労働者派遣事業
労働者派遣法の緩和により、それまで派遣が禁止されていた分野(製造業や医療など)にも派遣社員の使
用が認められるようになり、以後企業では非正規雇用が急増した、医薬品の部外品化による緩和、建築基
準検査機関の民間開放 耐震偽装問題発生で、問題点が指摘された、指定管理者制度による行政サービスの
外国資本等への開放、大都市圏での高層ビル建設に於ける高さ制限の緩和と、超高層ビルの建設促進、地
下空間の利用規制緩和による再開発利用拡大など。

第22条(居住・移転及び職業選択の自由、外国移住及び国籍離脱の自由) ① 何人も、公共の福祉に反
しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。 営業の自由
② 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

(自民党草案22条(居住、移転及び職業選択等の自由等) ① 何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
② 全て国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する。)

第29条(財産権) ① 財産権は、これを侵してはならない。私有財産制
② 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
③ 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

(自民党草案29条(財産権) ①  財産権は、保障する。
② 財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。この場合において、知的財産権については
国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならない。
③ 私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる。)

  公共の福祉 は 公益及び公の秩序 という概念とは異なる。

【銭湯の配置規制】(最高裁判所昭和30年1月26日大法廷判決)
被告人が、県知事の許可を受けず、16回に亘り、自ら設備した浴場において、Aほか一般公衆を入浴さ
せて金員を徴収し、以て公衆浴場を経営した事実につき、原判決が、罰金5千円に処した一審判決を維持し
控訴を棄却したため、被告人が上告した事案で、公衆浴場の開設に適正配置(距離制限)を要求する公衆
浴場法2条およびそれに基づく福岡県条例の合憲性が争われた。
公衆浴場の設置場所が配置の適性を欠き、その偏在乃至濫立を来たすに至るがごときは、公共の福祉に
反するものであって、この理由により公衆浴場の経営の許可を与えないことができる旨の規定を設けるこ
とは、憲法22条に違反するものとは認められない(公衆浴場の設立を業者の自由に任せると、偏在による
利用不便のおそれと、乱立による過当競争、経営の不合理化、衛生設備低下のおそれがある)とし、それ
を国民保健および環境衛生を保持するための右規制は憲法22条に反しないとして、上告を棄却した事例。

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【小売市場事件】(最高裁判所昭和47年11月22日大法廷判決)
 市場経営等を業とする法人である被告人株式会社の代表取締役である被告人が、知事の許可を得ないで
小売商業調整特別措置法所定の指定区域内で鉄骨モルタル塗平家建1棟を建築し、小売市場とするために
右建物を店舗の用に供する小売商人らに貸し付けた事案の上告審において、小売商業調整特別措置法所定
の小売市場の許可制(適正配置〔既存の市場から一定の距離(たとえば大阪府では700メートル)以上離れ
ていることを要求する、いわゆる距離制限〕)は、国が社会経済の調和的発展を企図するという観点から
中小企業保護政策としてとられたものであり、目的において一応合理性があり、規制手段・態様も著しく
不合理であることが明白ではないので、憲法22条1項に違反するとは言えないと判示し、有罪判決を支持
して控訴を棄却した原審の判断は相当であるとして、上告を棄却した事例。

【薬事法距離制限違憲判決】(最高裁判所昭和50年4月30日大法廷判決)
 スーパーマーケットを経営する上告人が、その店舗内での医薬品の一般販売業の許可を申請したが、被
上告人知事が本件不許可処分を下したところ、上告人が本件処分の取消しを求め、原審では本件不許可処
分を適法としたところ、これを不服として上告人が上告した事案において、薬局等の設置場所の地域的制
限の必要性と合理性を裏付ける理由として被上告人の指摘する薬局等の偏在-競争激化-一部薬局等の経
営の不安定-不良医薬品の供給の危険又は医薬品乱用の助長の弊害という事由は、いずれもいまだそれに
よって右の必要性と合理性を肯定するに足りず、薬局開設許可基準の1つとして地域的制限を定めた旧薬
事法6条2・4項および広島県条例は憲法22条1項に違反し無効であるとして、原判決を破棄した事例。

【西陣ネクタイ事件】(最高裁判所平成2年2月6日判決)
積極的な社会経済政策の実施の一手段として、個人の経済活動に対し一定の合理的規制措置を講ずるこ
とは、憲法が予定し、かつ、許容するところであるから、裁判所は、立法府がその裁量権を逸脱し、当該
規制措置が著しく不合理であることの明白な場合に限って、これを違憲としてその効力を否定することが
できるというのが、当裁判所の判例とするところである(昭和45年(あ)第23号同47年11月22日大法廷判
決・刑集26巻9号586頁)。そして、昭和51年法律第15号による改正後の繭糸価格安定法12条の13の2及び
12条の13の3は、原則として、当分の間、当時の日本蚕糸事業団等でなければ生糸を輸入することができな
いとするいわゆる生糸の一元輸入措置の実施、及び所定の輸入生糸を同事業団が売り渡す際の売渡方法、
売渡価格等の規制について規定しており、営業の自由に対し制限を加えるものではあるが、以上の判例の
趣旨に照らしてみれば、右各法条の立法行為が国家賠償法1条1項の適用上例外的に違法の評価を受けるも
のではないとした原審の判断は、正当として是認することができる。所論は、違憲をも主張するが、その
実質は原判決の右判断における法令違背の主張にすぎない。論旨は、採用することができない。

【西陣ネクタイ訴訟第一審判決)】(京都地判昭和59年6月29日) 繭糸価格安定法12条の13の2、12条の
13の3の規定は、絹織物生地製造業者の経済的活動の自由を規制するものであるが、右規制措置が国内蚕糸
業の経営の安定に資するという目的達成のために必要かつ合理的な範囲を逸脱したものということはでき
ず、また、少なくとも国会が裁量権を逸脱し、法的規制措置が著しく不合理であることが明白である場合
に当たると解することもできないから、憲法22条1項、29条1項に違反しない。

【東京都管理職選考国籍条項訴訟】(最高裁判所平成17年1月26日大法廷判決)
 東京都に保健婦として採用されたXが、東京都人事委員会の実施した管理職選考を受験しようとしたが
日本国籍を有しないことを理由に受験が認められなかったため、国賠法1条1項に基づき、東京都に対し
慰謝料の支払等を求めた事案において、管理職の任用制度を適正に運営するために必要があると判断して
職員が管理職に昇任するための資格要件として当該職員が日本の国籍を有する職員であることを定めたと
しても、合理的な理由に基づいて日本国籍を有する職員と在留外国人である職員とを区別するものであり
右措置は労働基準法3条にも憲法14条1項にも違反するものではないとして、原判決のうち東京都敗訴部分

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を破棄した事例(補足意見、意見、反対意見あり)。

【酒類販売免許制違憲訴訟事件】最判(第三小法廷)平成4年12月15日
【事案の概要】 上告人が、酒税法9条1項の規定に基づき酒類販売業免許の申請をしたところ、被上告人
(税務署長)が、酒税法10条10号の「経営の基盤が薄弱であると認められる場合」に該当するとして、同
免許の拒否処分をしたため、上告人が同処分の取消しを求めた事案の上告審で、租税の適正かつ確実な賦
課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性に
ついての立法府の判断が、政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限
り、これを憲法22条1項の規定に違反するということはできないとした上で、本件当時においてなお酒類
販売業免許制度を存置すべきであるとした立法府の判断が著しく不合理であるとまではいえず、その免許
基準も立法目的からして合理的なものであるといえるから、酒税法の上記各規定が憲法22条1項に違反する
とはいえないとした事例(補足意見及び反対意見がある)。

【司法書法違反事件】最判(第三小法廷)平成12年2月8日
【事案の概要】 司法書士法19条1項、25条1項は、登記制度が国民の権利義務など社会生活上の利益に
重大な影響を及ぼすものであることなどにかんがみ、法律に別段の定めがある場合を除き、司法書士及び
公共嘱託登記司法書士協会以外の者が、他人の嘱託を受けて、登記に関する手続について代理する業務お
よび登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止し、これに違反した者を処罰することにしたもので
あって、右規制が公共の福祉に合致した合理的なもので憲法22条1項に違反するものではないとした事例。

第五に、積極的な生存への権利を保障している(同25条・27条・28条参照)。これはいわゆる福祉
国家の理念に仕えるものである。

第25条(生存権、国の社会的使命)① すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する
② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければ
ならない。

(自民党草案25条(生存権等) ① 全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
② 国は、国民生活のあらゆる側面において、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならな
い。
第25条の2(環境保全の責務) ① 国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全
に努めなければならない。
第25条の3(在外国民の保護) 国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない
第25条の4(犯罪被害者等への配慮) 国は、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮しなければならない。)

 憲法25条1項に規定されている「生存権」は、国民が「人間に値する生活」を営むことができ
るように、国の積極的な配慮を求める権利であるが、この規定だけを根拠として権利の実現を裁
判所に請求できる「具体的な請求権」ではないと理解されている(裁判所に救済を求めることの
できる具体的権利となるためには立法による裏付けを必要とする)。
 そのため、25条は、国民の生存を確保すべき政治的・道義的義務を国に課したにとどまり、こ
の国民に対して具体的権利を保障したものではない、と説明されることが多い。この見解を一般
に「プログラム規定説」という。
 生存権の内容は抽象的で不明確であるから、25条を直接の根拠として生活扶助を請求する権利
を導き出すことは難しい。生存権はそれを具体化する法律によってはじめて具体的な権利となる

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と考えざるをえない。しかし、そのような内容の権利であっても「権利」と呼ぶことは可能であ
り、少しも差し支えない。こう考える説を一般に「抽象的権利説という。抽象的権利説によれば
25条は、国に立法・予算を通じて生存権を実現すべき法的義務を課していることになる。この考
えを推し進めれば、25条の生存権が生活保護法のような施行立法によって具体化されている場合
には、憲法と生活保護法とを一体として捉え、生存権の具体的権利性を論ずることも許される。

【朝日訴訟】東京地判昭和35年10月19日
【事案の概要】 原告が、原告が受給していた生活保護法に基づく医療扶助及び生活扶助について、津山市
社会福祉事務所長がした本件保護変更決定と被告厚生大臣がした本件不服申立てを却下する旨の裁決につ
いて、本件保護変更決定は違法であり、これを認容した本件裁決も違法であるとして、その取消しを求め
た事案において、原告のような医療扶助により医療機関に収容されている要保護患者が補食のための購入
費を必要とすることは明らかであり、その所用経費を医療扶助の金銭給付として必要最小限度と認められ
る程度に支給し、あるいは医療費一部負担の要保護患者には右費用の控除を認めることは、生活保護法9
条の趣旨にかない、要保護患者の生活保護法3条にいう「健康で文化的な生活水準」を維持するための措
置といえる等として、原告の請求を認容した事例。
「福祉事務所長が本件保護変更決定により原告に対し前述仕送り月額金1,500円から原告の日用品費とし
て金600円を控除した残月額金900円をすべて原告の医療費の一部として負担すべきことを命じ、補食費の
控除を全く認めなかつたのは、結局において生活保護法第2条、第3条、第8条に違反する違法な措置といわ
なければならない。」

最(大)判昭和42年5月24日 【著名事件名】 朝日訴訟上告審判決


【事案の概要】 上告人らの被相続人Aが、Aが受給していた生活保護法に基づく医療扶助及び生活扶助に
ついて、本件保護変更決定及び被上告人厚生大臣がした不服申立てを却下する裁決の取消しを求めた事案
の上告審において、傍論で、健康で文化的な最低限度の生活なるものは、抽象的な相対的概念であり、そ
の具体的内容は、文化の発達、国民経済の進展に伴って向上するのはもとより、多数の不確定的要素を綜
合考慮してはじめて決定できるものであり、その判断は一応厚生大臣の合目的的な裁量に委ねられている
と示しつつ、生活保護法に基づく保護受給権が一審専属の権利である以上、本件訴訟は、上告人の死亡に
よって終了したとした事例。

【堀木訴訟】最大判昭和57年7月7日 【著名事件名】 堀木訴訟上告審判決


【事案の概要】 上告人が、被上告人に対し、内縁の夫との離別後独力で養育している子について児童扶養
手当法に基づく児童扶養手当を請求したところ、視力障害者として国民年金法に基づく障害福祉年金を受
給している上告人は児童福祉手当法4条3項3号(昭和43年法律第93号による改正前のもの)に該当するとい
う理由で右請求を却下する旨の処分がされたため、右処分の取消しを求めた事案の上告審で、社会保障給
付の全般的公平を図るため公的年金相互間における併給調整を行うかどうかは立法府の裁量の範囲に属す
る事柄であるから、本件併給調整条項は憲法25条に違反せず、また、憲法14条及び憲法13条にも違反しな
いとして、上告人の請求を棄却した原判決を支持し、上告を棄却した事例。
「憲法25条1項は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定してい
るが、この規定が、いわゆる福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を
営みうるよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言したものであること、また、同条2項は「国は、
すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならな
い。」と規定しているが、この規定が、同じく福祉国家の理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創
造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したものであること、そして、同条1項は、国が個々の国
民に対して具体的・現実的に右のような義務を有することを規定したものではなく、同条2項によって国の
責務であるとされている社会的立法及び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的・現実的な生活

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権が設定充実されてゆくものであると解すべきことは、すでに当裁判所の判例とするところである」
 「憲法25条の規定は、国権の作用に対し、一定の目的を設定しその実現のための積極的な発動を期待す
るという性質のものである。しかも、右規定にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、きわ
めて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・
社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、
右規定を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方
面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするもので
ある。したがつて、憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定
は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざ
るをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならな
い。」

【老齢加算廃止違憲訴訟】最判(第三小法廷)平成24年2月28日
【事案の概要】 原告ら(控訴人、上告人)が、「生活保護法による保護の基準」の数次の改定により、老
齢加算が段階的に減額されて廃止されたことに基づいて、所轄の福祉事務所長からそれぞれ生活扶助の支
給額を減額する旨の保護変更決定を受けたため、保護基準の上記改定は憲法25条1項、生活保護法3条等に
反する違憲、違法なものであるとして、被告ら(被控訴人、被上告人)に対し、上記各保護変更決定の取
消しを求めたところ、原判決が、請求を棄却した第一審判決を維持したため、原告らが上告した事案にお
いて、本件改定については、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできず、生活保護法3条
又は生活保護法8条2項の規定に違反するものではないと解するのが相当であるとし、上告を棄却した事例

【判示事項】 生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告
示第158条)の改定について,厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえず,
生活保護法3条又は8条2項の規定に違反しないとされた事例
【要旨】 老齢加算の廃止を内容とする保護基準の改定は、改定の時点において70歳以上の高齢者には老齢
加算に見合う特別な需要が認められず、高齢者に係る改定後の生活扶助基準の内容が高齢者の健康で文化
的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係
る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があ
ると認められる場合、あるいは、老齢加算の廃止に際し激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及
びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした右大臣の判断に、被保護者の期待的利益
や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に違法となる

【裁判結果】 棄却  【上訴等】 確定
【掲載文献】 裁判所ウェブサイト、裁判所時報 1550号21頁、判例時報2145号3頁、判例タイムズ1369号
101頁

 19世紀の資本主義の発達の過程において、労働者は失業や劣悪な労働条件のために厳しい生活
を余儀なくされた。そこで、労働者に人間に値する生活を実現するために、労働者を保護し、労
働運動を容認する立法が制定されることになった。このような経緯を踏まえて、日本国憲法は、
27条で勤労の権利を保障し、納税(30条)、教育(26条)と並んで、勤労が国民の義務であるこ
とを宣言し(法律により国民に勤労を強制できるという意味ではない)、かつ、勤労条件の法定を定
めるとともに、労働基本権を保障している(28条)。

第27条(勤労の権利及び義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止) ① すべて国民は、勤労の権利を有し
義務を負ふ。

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② 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
③ 児童は、これを酷使してはならない。

(自民党草案27条(勤労の権利及び義務等) ① 全て国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
② 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。
③ 何人も、児童を酷使してはならない。)

第28条(勤労者の団結権) 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保
障する。

(自民党草案28条(勤労者の団結権等) ① 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、保
障する。
② 公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は
一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなけれ
ばならない。)

労働基本権の保障
 「契約自由の原則」が全面的に妥当している場合には、現実の労使間の力の差のために、労働
者は使用者に対して不利な立場に立たざるをえない。労働基本権の保障は、劣位にある労働者を
使用者と対等の立場に立たせることを目的としている。28条でいう「勤労者」とは、労働力を提
供して対価を得て生活する者のことであり、労働者(労働組合法3条)と同義である。労働基本権
は、具体的には団結権(「団結する権利」)、団体交渉権(「団体交渉をする権利」)、団体行動権
(「その他の団体行動をする権利」)の三つからなり、それは労働三権とも言われる。
 団結権とは、労働者の団体を組織する権利(労働組合結成権)であり、労働者を団結させて、
労働者を使用者の地位と対等な立場に立たせるための権利である。団体交渉権とは、労働者の団
体が使用者と労働条件について交渉する権利であり、交渉の結果、締結されるのが「労働協約」
(労働組合法14条)である。団体行動権とは、労働者の団体が望む労働条件の実現を図るために
団体行動(デモ、同盟罷業(ストライキ))を行う権利であり、その中心は争議行為である。
 労働基本権は、まず、①社会権として、国に対して労働者の労働基本権を保障する措置を要求
し、国はその施策を実施すべき義務を負う、という意味をもつ。次に、②自由権として、それを
制限するような立法その他の国家行為を国に対して禁止するという意味をもつ(この点で、労働
組合法1条2項の定める争議行為の刑事免責が重要である)。また、③使用者対労働者という関係にお
いて、労働者の権利を保護することを目的とする。したがって、その性質上、使用者は労働者の
労働基本権の行使を尊重すべき義務を負う。つまり、労働基本権の保障は、私人間(会社と従業
員間)の関係にも直接適用される(この点で、労働組合法8条の定める争議行為の民事免責が重
要である)。

労働基本権の制限
 労働基本権の行使は社会的影響力が大きいので、それだけ制限に服する可能性も強い。しかし、労働基
本権は、労働者の生きる権利として保障されているので、それを規制する立法について立法府の裁量を過
度に重視するのは妥当ではなく、ある程度厳格に審査することが求められる。
 表現の自由を中心とする精神的自由を規制する立法の合憲性は、経済的自由を規制する立法よりも厳し
い基準によって審査されなければならない(これを「二重の基準」という)こととの関係でいえば、労働基本

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権は 精神 的自 由と 経済 的自 由の 中 間 に 位 置 す るも のと 考え られ る 。L RA (l es s r es tr ic ti ve a lt er na ti ve s)
(立法目的を達成するため規制の程度のより少ない手段)がありうると解される場合には、問題となって
いる立法を違憲とする基準がある。労働基本権の制限規制立法の合憲性は、この基準で測られるべきであ
る。
 
 公務員の労働基本権
公務員も、会社で働いている者と同様に、雇われて働き、その対価としての賃金で生活している。だか
ら、当然、公務員といえども労働者であり、それに伴い、憲法第28条に規定される「労働基本権」も保障
されるはずである。ところが、公務員が、民間で働く者と異なる点は、その仕事が「公共的な性格」を有
する点である。そして、公共的な性格を有するが故に、法律では、労働基本権に対する制約が定められて
います。公務員は、通常の労働者と違い、労働三権の一部または全部が制約されている(自衛隊員、警察
官、消防職員、刑事施設で勤務する職員、海上保安庁職員(全部制約)。一般職の国家公務員・地方公務
員(団結権のみ)。公営企業職員(郵便など)(団結権と団体交渉権))。その理由について、判例は推
移。①「全体の奉仕者」論(初期の判決)→ ②職務性質説(全逓東京中郵事件判決・都教組事件判決)
→ ③「地位の特殊性」論(全農林警職法判決)

 公務員の政治活動の自由
 被告人である厚生労働省の課長補佐が、郵便受けに、日本共産党の機関紙を投函して配布した行為が、
国会公務員法違反として有罪となるか。本件罰則規定が、政治活動の自由(憲法21条)を侵害し、また
適正手続(憲法31条)に反し、違憲か。
千葉、小貫(多数意見。千葉は、補足意見も): 被告人の行為は、本件罰則規定の構成要件に該当し、有
罪である。
須藤(反対意見): 被告人の行為は、本件罰則規定の構成要件に該当せず、無罪である。
コメント
多数意見が、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるかを、諸般の事
情を総合して判断しようとした点は、一定の評価ができる。しかし、多数意見が、被告人は筆頭課長補佐
であることから、他の多数の職員の職務の遂行に影響を及ぼすことのできる地位にあったとされ、機関紙
の配布により、様々な場面でその政治的傾向が職務内容に現れる蓋然性が高まり、部下に影響を及ぼすこ
とになりかねないので、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる、とし
た点は、具体的かつ説得的な論証とはいえないものと考えられ、むしろ、政治的傾向と職務の中立性との
関係は示されておらず、無罪とすべきであったと考えられる。

第六に、憲法の条文には明記されていないが、プライバシーの権利(「私生活をみだりに公
開されない法的保障ないし権利」(人格権の一つ))、環境権(「大気・水・日照などの良好な環
境の中で生活できる権利」)などのように、社会の発展とともに憲法の保護を受ける新しい
人権が、明文の規定はないが、主として幸福追求権(憲法13条)のような包括的な人権規定を
根拠として主張されている。
知る権利は、自由権が根拠と解されている(表現の自由(憲法21条)より派生した権利であると
理解されている)。国などに対して情報の提供を求める権利(積極的自由)と国民が国家の妨害を受けず
に自由に情報を受取る権利(消極的自由)がある)。

第13条(個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉) すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及
び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大
の尊重を必要とする。

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(自民党草案13条(人としての尊重等) 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の
権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならな
い。)
(自民党草案でもプライバシーの権利は明文化されていない。環境の保全については草案25条の2(↓)参照。これまた
権利として明文化されていない。)
(環境保全の責務)
(第25条の2  国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければなら
ない。)

第21条【集会・結社・表現の自由、通信の秘密】 ① 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由
は、これを保障する。
② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

(自民党草案21条(表現の自由) ① 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する
② 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目
的として結社をすることは、認められない。
③ 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。
第21条の2(国政上の行為に関する説明の責務)  国は、国政上の行為につき国民に説明する責務を負
う。)

ゲーム条例「違憲」と提訴、香川の高校生ら「幸福追求権を侵害」。
2020/10/01 日本経済新聞 大阪朝刊 社会面
 香川県で4月に施行された子どものインターネット・ゲーム依存症対策条例は憲法13条が保障する幸
福追求権などを侵害し違憲で、精神的苦痛を受けたとして高松市の男子高校生(17)と母親が30日、
県に計160万円の損害賠償を求める訴訟を高松地裁に起こした。
 条例は、18歳未満のゲーム利用は1日60分(学校休業日は90分)まで、スマートフォンの使用は
中学生以下は午後9時、それ以外は午後10時までにやめさせることを目安に、家庭でルールを作って子
どもに順守させる努力義務を保護者に課している。罰則はない。ゲームの利用時間を制限する内容の条例
は全国初。
 訴状によると、3月に政府が条例に関し「ゲーム依存症の発症を防ぐための時間制限に係る有効性およ
び科学的根拠は承知していない」と国会答弁していることなどから、条例の目的に科学的正当性は認めら
れないと主張。仮に正当性が認められても、親や子どもには何時間ゲームをするかを決める自由があり、
条例は憲法13条が保障する幸福追求権や自己決定権を侵害し、基本的人権を必要以上に制限して違憲だ
としている。
 訴訟費用はクラウドファンディングで調達。1844人から目標金額の500万円を超える計約612
万円の支援を得たという。
 香川県子ども政策課は「現時点で訴訟の内容などの情報が来ていないため、コメントは控えたい」とし
ている。

香川ゲーム条例合憲、地裁判決「青少年、影響受けやすく」
2022/08/31 日本経済新聞 大阪朝刊
 子供がインターネットやゲームに依存するのを防ぐため、利用時間の目安などを示した香川県の条例が
幸福追求権などを保障する憲法に反するかどうかが争われた訴訟の判決で、高松地裁(天野智子裁判長)
は30日、条例が合憲だとする判断を示した。原告側の賠償請求の訴えは棄却した。
 問題となったのは香川県ネット・ゲーム依存症対策条例。2020年4月に施行され、ゲームなどの利

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用時間に目安を示した全国初の条例だった。
 判決理由で天野裁判長は、ゲームのし過ぎにより社会生活上の支障が生じることについて「医学的知見
が確立したとはいえないまでも、可能性そのものは否定できない。青少年は特に影響を受けやすい」と指
摘した。
 その上で、自治体には適切な教育政策を実施するために必要な範囲で家庭生活のルールを定める権限が
あるとし、一定の目安を示し、子供がゲーム依存に陥らないよう保護者に配慮を求めることを是認した。
 今回の訴訟は、当時高校生だった男性と母親が20年9月に提訴した。原告側は条例に記されている依
存症は医学的根拠が不明確だと主張。憲法13条が保障する幸福追求権や自己決定権を侵害しているとし
て、県に計160万円の賠償を請求した。
 県側は、ゲームに熱中して日常生活に支障が出る状態を「ゲーム障害」と世界保健機関(WHO)が分
類したことなどから、条例の目的や理念には合理性があると反論。利用時間などは目安にとどまり、県民
の権利を不当に制限していないとして請求を退けるよう求めた。
 訴訟を巡っては、原告側が今年4月に訴えの取り下げを申し立てた。県側が同意せず、高松地裁は認め
なかった。
 香川県の浜田恵造知事は判決後、「県の主張が認められたものと認識している。県民をネット・ゲーム
依存から守るという条例の趣旨について、一層の理解促進に努め、対策に積極的に取り組む」とするコメ
ントを出した。
 ▼香川県ネット・ゲーム依存症対策条例 インターネットやゲームにのめり込み、日常生活に支障が出
る状態を「ネット・ゲーム依存症」と定義し、対策を進めることを目的とする。香川県議が提案し、20
20年3月に賛成多数で可決された。
 ゲームなどの過剰な利用は子供の学力や体力の低下、引きこもり、睡眠障害を招く指摘があると明記。
18歳未満のゲームの時間を1日60分(学校休業日は90分)、スマートフォンの利用は中学生以下が
午後9時、それ以外は午後10時までを目安とするよう保護者に求める。違反に罰則はない。
 条例の制定過程を巡っては、パブリックコメント(意見公募)の際に同じ誤字があるコメントが複数見
つかった。香川県弁護士会は20年5月、「子供と保護者の自己決定権を侵害する恐れがある」として条
例の廃止を求める会長声明を出している。

なお、憲法は、基本的人権とはいえないにしても、基本的人権を確保する手段となるための権
利を認めている(同16条・17条・32条・40条参照)。

第16条(請願権) 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他
の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けな
い。(→請願法)

(自民党草案16条(請願をする権利) 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定
廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願をする権利を有する。)

第17条(国及び公共団体の賠償責任) 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の
定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。 (→ 国家賠償法)

(自民党草案17条(国等に対する賠償請求権) 何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、
法律の定めるところにより、国又は地方自治体その他の公共団体に、その賠償を求めることができる。)

第32条(裁判を受ける権利) 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

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(自民党草案32条(裁判を受ける権利) 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を有する。)

第40条(刑事補償) 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところ
により、国にその補償を求めることができる。   (→ 刑事補償法)

(自民党草案40条(刑事補償を求める権利) 何人も、抑留され、又は拘禁された後、裁判の結果無罪と
なったときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。)

請願法(昭和22年3月13日法律第13号)
第一条  請願については、別に法律の定める場合を除いては、この法律の定めるところによる。
第二条  請願は、請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合は居所)を記載し、
文書でこれをしなければならない。
第三条 ① 請願書は、請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。天皇に対する請
願書は、内閣にこれを提出しなければならない。
② 請願の事項を所管する官公署が明らかでないときは、請願書は、これを内閣に提出することができる

第四条  請願書が誤って前条に規定する官公署以外の官公署に提出されたときは、その官公署は、請願者
に正当な官公署を指示し、又は正当な官公署にその請願書を送付しなければならない。
第五条  この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない。
第六条  何人も、請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
 附 則 この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。

国家賠償法(昭和22年10月27日法律第125号)
第一条  ① 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失に
よって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員
に対して求償権を有する。
第二条  ① 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたと
きは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、こ
れに対して求償権を有する。
第三条  ① 前二条の規定によって国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の
選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公
の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害
を賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償
権を有する。
第四条  国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法 の規定による。
第五条  国又は公共団体の損害賠償の責任について民法 以外の他の法律に別段の定があるときは、その
定めるところによる。
第六条  この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。
刑事補償法(昭和25年1月1日法律第1号)最終改正:平成19年6月15日法律第88号
第一条(補償の要件) ① 刑事訴訟法 (昭和23年法律第131号)による通常手続又は再審若しくは非常上
告の手続において無罪の裁判を受けた者が同法 、少年法 (昭和23年法律第168号)又は経済調査庁法(昭

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和23年法律第206号)によって未決の抑留又は拘禁を受けた場合には、その者は、国に対して、抑留又は拘
禁による補償を請求することができる。
② 上訴権回復による上訴、再審又は非常上告の手続において無罪の裁判を受けた者が原判決によってす
でに刑の執行を受け、又は刑法 (明治40年法律第45号)第11条第2項の規定による拘置を受けた場合には
その者は、国に対して、刑の執行又は拘置による補償を請求することができる。
③  刑事訴訟法第484四条から第486条まで(同法第505条において準用する場合を含む。)の収容状によ
る抑留及び同法第481条第2項(同法第505条において準用する場合を含む。)の規定による留置並びに更生
保護法(平成19年法律第88号)第63条第2項又は第3項の引致状による抑留及び留置は、前項の規定の適用
については、刑の執行又は拘置とみなす。
第四条(補償の内容) ① 抑留又は拘禁による補償においては、前条及び次条第2項に規定する場合を除
いては、その日数に応じて、1日1000円以上1万2500円以下の割合による額の補償金を交付する。懲役、禁
錮若しくは拘留の執行又は拘置による補償においても、同様である。
② 裁判所は、前項の補償金の額を定めるには、拘束の種類及びその期間の長短、本人が受けた財産上の
損失、得るはずであつた利益の喪失、精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察、検察及び裁判の各機関
の故意過失の有無その他一切の事情を考慮しなければならない。
③ 死刑の執行による補償においては、3000万円以内で裁判所の相当と認める額の補償金を交付する。た
だし、本人の死亡によって生じた財産上の損失額が証明された場合には、補償金の額は、その損失額に
3000万円を加算した額の範囲内とする。
④ 裁判所は、前項の補償金の額を定めるには、同項但書の証明された損失額の外、本人の年齢、健康状
態、収入能力その他の事情を考慮しなければならない。
⑤ 罰金又は科料の執行による補償においては、すでに徴収した罰金又は科料の額に、これに対する徴収
の日の翌日から補償の決定の日までの期間に応じ年5分の割合による金額を加算した額に等しい補償金を交
付する。労役場留置の執行をしたときは、第1項の規定を準用する。
⑥ 没収の執行による補償においては、没収物がまだ処分されていないときは、その物を返付し、すでに
処分されているときは、その物の時価に等しい額の補償金を交付し、又、徴収した追徴金についてはその
額にこれに対する徴収の日の翌日から補償の決定の日までの期間に応じ年5分の割合による金額を加算した
額に等しい補償金を交付する。
第五条(損害賠償との関係) ① この法律は、補償を受けるべき者が国家賠償法 (昭和22年法律第125
号)その他の法律の定めるところにより損害賠償を請求することを妨げない。
② 補償を受けるべき者が同一の原因について他の法律によって損害賠償を受けた場合において、その損
害賠償の額がこの法律によって受けるべき補償金の額に等しいか、又はこれを越える場合には、補償をし
ない。その損害賠償の額がこの法律によって受けるべき補償金の額より少いときは、損害賠償の額を差し
引いて補償金の額を定めなければならない。
③ 他の法律によって損害賠償を受けるべき者が同一の原因についてこの法律によって補償を受けた場合
には、その補償金の額を差し引いて損害賠償の額を定めなければならない。        以下 略

刑事補償の例(新聞報道)
マイナリさんに刑事補償6840万円 東京地裁が支払い決定
日本経済新聞 2013/5/23
 東京電力女性社員殺害事件で再審無罪が確定したネパール人、ゴビンダ・プラサド・マイナリさん
(46)に、東京地裁が刑事補償法に基づく補償金約6840万円の支払いを認める決定をしていたことが23日
関係者への取材で分かった。決定は2月6日付。
 マイナリさんは昨年(2012年)6月の再審開始決定で釈放されるまで、約15年間にわたって身柄を拘束され
た。1日当たり1万2500円の上限額の請求が認められた。
 東京高裁は昨年11月の再審判決で「第三者の男が犯人の疑いが強い」としてマイナリさんを無罪とし、

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即日確定した。

菅家さんに8千万円支払い 足利事件で刑事補償金
日本経済新聞 2011/1/13
 栃木県足利市で1990年、女児が殺害された足利事件で、宇都宮地裁(佐藤正信裁判長)は13日、再審無
罪となった菅家利和さん(64)に対し、刑事補償法に基づき、国が補償金約8千万円支払うとの決定書を交
付した。
 金額は昨年(2010年)9月の請求通り。菅家さんは決定書を受け取った後「額については妥当だと思ってい
る。17年半は長かったが、今日で一区切りですね」と語った。今後は「地道に暮らしていきたい」とほっ
とした表情を見せた。
 代理人らによると、補償の対象期間は逮捕から釈放までの17年半で、不当に身体を拘束されたとして、
1日当たり上限の1万2500円で金額を算定した。一部は再審を支援してきた日弁連に寄付するという。
 弁護団が刑事訴訟法に基づき請求していた弁護費用については、約1200万円の支払いが決定した。
 菅家さんは1991年12月に逮捕され、再審請求中に証拠のDNA型不一致が判明。2009年6月に釈放された。
昨年3月、再審で無罪判決が言い渡され、確定した。〔共同〕

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