2001 Letter To Seishinigaku

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27
0 精神医学 4
3巻・ 1
1号 2
00
1年 11月

への手紙
1
0歳以下の子どもに大うつ病性障害が存在するか
大井論文を読んで

原井宏明

は私の専門ではな ンスの強さの観点から批判的吟 その後は減り続けて, 1


975年
い が 咽 「 … 領
味を行い,吟味にかなった論文 以降はずっと 1
00人前後のまま
域である 展望:大井論文 2) は だけを選び,内容をまとめるも である。
大変参考なった。ただし,気 のである。大井論文はこの意味 離婚率は 1
963年ごろがもっ
ころがあるので, 2
, で展望論文らしくないものであ とも低く人口千対 0
.7程度で訓
った。 1
998年では1.9
4であるが,こ
点として,展望論文 第 2点として,大井論文の意 れは米国の半分以下であり,先
見自体に疑問がある。現代の子 進国の中でもっとも低い部類に
ども遣を取り巻く環境が悪化し 入る。離婚について戦後大きく
ていることについて,大井論文 変わったのは親権の行方であ
はデータを示していない。そし る。離婚後の親権を行使する親
て私に入手可能な統計を見るか は1
965年までは父親が多かっ
ぎり,著者の意見を補強するデ た。その後は母親が増え, 1
998
ータがあるとは思えない。 年では子どもが一人の場合母親
日本の現代と過去を厚生省の が親権をとるのは 8
3.1%であ
人口動態統計や警察白書などを る。すなわち離婚した場合,昔
用いて比べてみよう。 は母親から引き離され,現在は
日本の乳幼児死亡率は戦後, 母親がそのまま養育に当たるよ
例のないほどの速度で低下を示 うになった。白雪姫のような継
し,出生千当たり 3
.6(
199
8年) 母による継子虐めは昔話になり
は欧米諸国と比べても低い。自 つつある。
殺に関しては,子どもの自殺が 国際比較をしてみよう。米国
もっとも高頻度であったのは, の1
0歳台妊娠率,貧困世帯の
1
950年代後半である。近年で 数は先進国の中でもっとも多
の未成年の自殺がもっとも多か い。医療へのアクセスが悪く,
ったのは 1
986年で 7
85件であ 医療保険を持たない人々が約
うである。全体を見 る。ちなみに現代の日本で自殺 5,0
00万人いる。ヒスパニック
とは,著者の個人 率がもっとも高いのは 5
0歳台 系の高校卒業率は 50%台であ
の男性である。 る。 15"
"-
'2
4歳台の人口 1 0万対
は考える。 I
Sac
ket
tら3)が述べ 殺人(未遂も含む)で検挙され 自殺率を見ると,米国は 1 3
.8
の方法を示 た少年の数は, 1
960年前後に (19
94)で あ り , 日 本 の 12
.2
4
00人を超えてピークとなり, (19
98)よりも高い。
精神医学 4
3巻・ 1
1号 2
001年 1
1月 1
271

きて,これらの統計データか ではないだろうか。 達への医療の向上につながるこ


ら見た場合に,日本の現代の子 最後にプライベートな意見を とを私は願う。
どもは,現代日本の 5
0歳 台 男 述べさせていただし私は大人 文献
性よりも,戦前の子どもより の非精神病性精神障害を主に診 )K
1 ovacsM :R
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, 1
も 950年代の子どもよりも, ている精神科医である。児童精 a
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1
986年 頃 の 子 ど も よ り も , ま 神医学についてはユーザーの立 p
sychia
trica4 6:30
5-315,
た米国の子どもよりも不幸なの 場にある。私の長男は小学 2年 1
981
) 大井正巳:児童期・青年期の
2
だろうか? 生のとき CDI (
Chi
ld Depres-
感情(気分)障害.精神医学
第 3点として,文献に対する s
io )が 一 時 3
n Inventory1l 0を 4
3:3
52-
366,2
001
解釈に疑問がある。児童期のう 超えていて,それは半年近く続 3
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tDL ,StrausSE,R i
-
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ardsn WS,e
o ta l:Evi
-
つ病に関する日本での疫学的研 いた。もし,子どもの不幸の原 den
ce-Based Medicin 巴:
究は乏しいが,その数少ない中 因が現代の社会環境にあるなら Howt opracti
ceandt eac
h
EBM, Sec
ondE diti
on.Chur
-
のひとつである村田,辻井らの ば,児童期のうつ状態に対する
c
hil
l Living
stone, London,
研究について (
359ページ左段, 対策は社会改革であり,個々の 2
000

五日
1
6
..
.
..
.
.2
1行)“いかに現代の子ど

制岬
療体

所菊

院町
患者に対する治療の研究は無用

養県
国日附
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田智字
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-



も遣が不幸な環境にいるかを示 ということになる。 1
0歳 以 下

の4
す"と大井論文は解釈する。引 の子どもにもうつ病があること
用された論文の執筆者はこのよ を研究者が認めるようになり,
うな解釈の仕方に対して怒るの それが私の長男のような子ども

四珊 第1
4回日本総合病院精神医学会総会
F・



凹 日時 2
会場
001年 1
1月 2
9日(木), 3
0日(金)
りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)
宮 0
25-
224
-56
22 Fax0
25-
224
-56
26
テーマ 『総合病院精神科の「連携Jと「独自性Jを探る』
会長 染矢俊幸(新潟大学大学院医歯学総合研究科粕神医学分野教授)
プログラム
・会長講演
・特別講演:精神医療の機能分化と総合病院精神科への期待
・シンポジウム :GHPネクストステップ総合病院精神科の今後あるべき姿
・ワークショップ①サイコオンコロジーで求められる精神科医の臨床技術
@小児・思春期の精神疾患に対する薬物療法
@総合病院精神科における教育研修プログラム
.ケースディスカッション:精神科救急におげる薬物療法
・ランチョンセミナー
o9
縮会事務局者i
i 5
1-8
510新潟市旭町通一番町 7
57
新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野
宮 0
25-
227
-22
11 Fax0
25-
227
-07
77

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