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俺は何処から来た

そして何処へ行くのだろうか

Chapter 01
暗闇の淵、蠢く罠は黒い薔薇の花
胸を刺す赤い棘が今も抜けない運命
ズバアッ!!
「切り裂け!」
ビルトシュバインのザンバーの切っ先が、敵機のバルトールを切り裂いた。
「そして打ち砕け!」
バアン!バアン!バアァン!
とどめはM13ショットガンで蜂の巣とする。
ドドーン!!
『クォヴレー、後ろ!』
前後にはバルトールがもう一機。クォヴレーは回避に専念した。
「ッツ!」
ギリギリでバルトールの光の刃がビルトシュバインの頭上に走った。
『援護するわ!B-モード、セット!いっけえ!』
「たあッ!」
ビルトファルケンのオクスタンライフルで打ち抜かれた隙に、クォヴレーはサークルザンバーで止めを
刺す。横になぎ払ってザンバーの光が暗闇に一閃を見せた。
「デッドエンドスラッシュ…」
敵機の爆風からゆっくりとスラスターでビルトシュバインを前後に移動させた。
「こちらスチール2から各機へ、帰還して下さい、繰り返します…」
オペレーターからの帰還命令を聞き、クォヴレーはスチール2、ハガネへとビルトシュバインのカメラア
イを向かせた。映っているのは巨大な戦闘母艦。
『引き返すわよ、クォヴレー』
「…了解」

今日も戦闘は無事に終了した。

「ふーっ」
ゼオラ・シュバイツァーはハガネの休憩室の長椅子に座っていた。
「お疲れ様、はい冷たいウーロン茶」
現在、ハガネと同行しているリオ・メイロンは飲み物の缶を差す。月のマオ社の社員が何故この戦闘
母艦と共にいるのかは、ハガネのチェックアップだから。この万能戦闘母艦には結構お世話になった
ので、連邦軍の感謝の気持ちなんだろう。だからわざわざ彼女をここに招いたのも、このハガネのア
フターケアだからか。
「アフターケアにオペレーターって、何で急に?」
「私ね、昔ここのオペレーターだったでしょう?だから自分の腕が鈍ってないか確認したいのよ。それ
に私なら異常があったらすぐにマオ社へ報告できるからね」
「そうなんですか…」
ウーロン茶の蓋を開けながら、彼女は一滴飲んだ。
「ねえ、ゼオラ」
「ん?」
口元から缶を遠ざけると、唐突にリオが彼女に質問した。
「あなた、大丈夫なの?」
彼女が言う大丈夫とは、何ヶ月前に行方不明になったアラドの事だろう。実際、自分もその事は頭か
ら離れない事態になっている。
「私はまた何も出来なかった、あのとき、アラドがリオンで私を庇ったように…」
「ゼオラ…」
「でも私は挫けない、きっと今でもアラドは生きている。ユウキさんがまだ生きているように」
い し
彼女の眼には強い意思が伝わる。その眼差しを見てリオは
「もう大分落ち着いたみたいね。まったく、この子達は人騒がせなんだから。でも無理はしないでね、
みんなあなたとアラドの事を心配しているんだから」
「リオさん…」
ようやく暖かいムードになった為か、二人は世間話をした。
「そういえば、リョウトさんの方はどうですか?確か、サーヴァントシステムを開発した後ちょっとトラブ
ルに会ったって…」
「今は大丈夫よ、サーヴァントシステムが連邦に目をつけられたからね。脳波で操る兵器って普通じゃ
ないから、お偉いさん方が興味を持って。その後の開発や、いろんな技術への応用、その他諸々でな
んだかストレス溜まったみたい」
「そうですか、リョウトさんも大変ですね」
「そりゃあもう、私がハガネに行くときは何だか暗くなって“行かないでくれー”と叫んだくらいね。そう
そう、新人さんの方はどう?」
「新人さん?ああ、クォヴレーのことね。少なくとも新人じゃないわ、補給の兵士が正しい見たいです
ね」
「補給の兵士?それにしてもよく手馴れた戦い方ね、まるで普通じゃない、私たちみたいに経験があり
そうな…」
「え?まあ、私の動きをリードしてその上フォローするのは素晴らしいと思うけど」
「それに彼のビルトシュバインの操り方…まるでどこかで見たような…」
その時
『緊急事態発令、緊急事態発令、月面基地に未確認物体が出現。全機、それぞれの位置に帰還せよ。
繰り返す…』
エイタ・ナダカの声が艦内に響く。
「月!?リョウト君達が!」
「あ、リオさん!」
彼女がすぐに発令を応答したせいで、最後に彼女へ伝いたい事を言い損ねた。
「クォヴレーの奴、ビルトシュバインに乗ったの今日が始めてなのに…」

クォヴレー・ゴードンは格納庫で二つの機体を見上げている。もう一つは自分が始めて乗った(?)機
体、ビルトシュバイン。そしてもう一つは、深い漆黒の装甲で塗られた、悪魔染みた機体、ベルグバウ。
どちらの機体も、まるで主が無い呪われた機体に見える。そんな呪われた機体を容易く操られる自分
に疑問を持っている。
俺は誰だ?この艦長によれば俺の名はクォヴレー・ゴードン。
何処から来た?レポートによると俺は連邦所属のパイロットだ。
そして何処へ行くのか?俺の任務は無事この母艦を伊豆基地へ送る事、その後はここの艦長に従う
事。

だが俺はやはり疑問を持った、本当だろうか?判らない、自分自身が信じられない。俺は誰なんだ?

その時、艦内に緊急命令が発令した

「月から反応は?」
「今のところ応答ありません」
「ルナー5へ、こちらスチール2、応答してください!」
状況がつかめない事にパニックを起こしているリオ。
「エイタ、全オペレーターに告げ。今からスペース級万能戦闘母艦ハガネは、月へ向かう。そしてリオ、
落ち着くんだ」
「…はい」
「了解、全オペレーターに告ぎます…」
そしてすべての準備が整った。
「ハガネ、全速前進!」
スペース級万能戦闘母艦ハガネの艦長、テツヤ・オノデラ大尉は大きな声で命令を発言した。

『くっ…!このままじゃ機体が持たない』
リョウト・ヒカワはヒュッカバイン・サーヴァントを操り、彼の背中にあるムーンクレイドルを守り抜いて
いる。
『リョウト、もう少しでハガネが来るわ。それまでどうにか持つわよ。アルたちの不在は私達がなんとか
しないと』
カルヴィナ・クーランジュが彼に通信をくれた。どうやら彼女の言うとおり、月には彼女たちしかいない。
彼女の操る白いヒュッカバインmk-IIがG-インパクトキャノンを構える。
『でも三機だけじゃちょっと難しいわね』
ラーダ・バイラバンの操るシュッツバルトのツインキャノンが照準を定め、バグスに向かって打ち放つ。
『それでもこのサーヴァントなら!』
彼は無数のサーヴァントを放ち、必死でムーンクレイドルを背中に、次々と敵機を狙い落とした。

彼らがギリギリのラインまで抑えられたときに。

『ハガネが来たわ!」
彼らの目の前に希望が一滴、現れた。

「全機、発進せよ!」
『『『了解!』』』
リオはシュヴェールトで月へ向かう、彼女のAMガンナーを取りに。クォヴレーとゼオラはムーンクレイ
ドルの援護を。
「おまたせしました、カルヴィナさん、ラーダさん、そしてリョウトさんも」
ゼオラが一応挨拶で彼らに声を掛けた。
『遅かったじゃないの、何処で道草食ってたの?』
『今は目の前の敵を排除するのが優先順位が高い、集中しろ』
むっ、とカルヴィナは顔を引きついた。
「ちょっとクォヴレー!失礼じゃないの、仮に彼女はあなたの上司でなくてもあなたよりすごい人よ!」
『ま、この坊やの言う通りか。今は戦闘に集中するわよ』
彼らは反撃に、正面へと進んだ。

『そこっ!』
カルヴィナのチャクラムシューターが敵機のバグスを捕獲、そのまま切り裂いた。今のところ、前線で
はカルヴィナ、クォヴレー、そしてゼオラが。残りのラーダ、リョウト、そしてAMガンナーに乗り換えたリ
オが前後で援護。
『二人とも、私が支持しても構わないわね!?今は緊急事態だから』
「クォヴレー、彼女はもう連邦軍所属ではないけど腕は確かよ。生き残りたいなら彼女に従うわよ」
ゼオラが通信でクォヴレーに言った。
『…了解』
『さあって、行くわよ野郎ども!』
カルヴィナが前に、G-インパクトキャノンの照準を定めた。
『ファイア!』
G-インパクトキャノンから重力衝撃波を放った。そのまま多くのバグスに向かって弾幕を襲わせる。
「このまま弾幕を打ち続けます!」
ビルトファルケンのオクスタンライフルをE-モードに切り替えた。そのまま連射を行い、多くのバグス
に向かって大量の弾幕が降りかかる。
『敵機の小隊長と思われる機体を確認。戦闘を開始する』
慎重に、クォヴレーはリープスラッシャーを放った。
しかし、
ドガアッ!!
その赤い機体に傷はつかなかった。
「なっ!」
まるで大きな赤い翼が不気味に見える機体。その機体がクォヴレーの攻撃に反応したみたいに、動き
始める。
『どうもさっきから動かないのは理由があったかと思うと、どうやら攻撃したのがやばかったわね』
『どいてください!』
リョウトが唐突に通信を送った。
『このままフルインパクトキャノンを使います、皆さん回避を!』
リオが追加の通信を送った。
ヒュッカバインmk-IIIがサーヴァントモジュールを分離し、そのままAMガンナーへドッキングした。
『『フルインパクトキャノン、ファイア!!』』
ドガアン!!
そのまま赤い機体に直撃した。
「やったの!?」
ゼオラはすぐに目標を探し出す、彼女の高性能PTビルトファルケンがレーダーとカメラアイで目標を
高軌道で探し出す。
だが、
『ッ!』
目の前にはあの化け物がまだ立っている。
誰もが絶望の淵に立っていると思う状況に、突然

光の渦が月面に巻いた。

「どうしたエイタ!?状況を説明しろ!」
「それが艦長、なんだかの衝撃波と思われます、通信、及びレーダーの反応が異常になっています!」
「何だって!?ならば各機の状況は!?」
「レーダーが戻りました、どうやら無事のようです…って、艦長!光の渦から未確認物体を確認しまし
た!」
「何!?」

Chapter 02
天使の顔の毒蜂が舞う悪魔の花園
誰かが呼ぶ優しさの仮面
まやかしの愛が僕の闇に溶け込む
「っつ…!?」
目を開いたセツコは戦場の風景に驚かされた。
『セツコ!無事か!?』
『お前にもしもの事があったら、俺は隊長失格だ!』
自分の心配している仲間たちの声を聴いて、セツコは安堵した。
「自分は無事です、隊長達こそ大丈夫ですか?」
『見ての通り、あと百年ぐらい生きられるな。寿命は1-2年は削られたが』
『隊長の場合、この後死ぬのが世界で一番不可能な事ですよね。っと、俺は大丈夫だぜ』
仲間全員の無事を聞いて、セツコは彼女の見回りの状況をもう一度探る。
「…ここは?」
ここは彼女のいる月みたいな所だった、ならば目の前に戦っている彼らは誰なのだろう?敵?味方?
それとも敵でも味方でもない?
『とりあえず状況を説明しよう。あの母艦に通信を』
「了解。こちらグローリースター、確認を願います」

「艦長!未確認物体から通信を貰いました、どうしますか?」
「通信を繋げ。一刻も状況を把握するんだ!」
『…こちらグローリースター、応答を願います…』
「こちらは連邦軍所属スペース級万能戦闘母艦ハガネの艦長、テツヤ・オノデラ大尉だ。貴官の確認
を願いたい」
『…?連邦軍所属グローリースターの隊長、デンゼル・ハマー大尉だ』
「グローリースター?聞いた事があるか、エイタ伍長」
「データベースで探り出してます…結果、ゼロです」
『どうやら状況が複雑のようだ、今は俺達を信じて貴官らとの対決を避けたい』
「………」
テツヤは慎重に考えた。

「これでよろしいのですか、隊長?」
『ああ、後は彼らの返事を待つだけだ。それにどうやら体制を組み立て直しているみたいだな』
『あの赤い化け物なんなんでしょうね?まさか異星人とか?』
「…通信が着ました、ハガネからです」
『繋いでくれ』
『貴官らへの襲撃は控えよう。後はあなた達次第だ、目の前にある異星人を倒すのに協力するか否
か』
『では協力しよう』
「隊長?」
『俺達に選択肢は無い。ここは素直に彼らを助けよう、敵が異星人なら尚更だ』
『了解、久々に異星人狩りも悪くねえな』
「異論はありません、地球人同士助け合いましょう。ここが本当の私達の世界かどうかは置いといて」
『よし!行くぞ野郎ども、ゴー!グローリースター!ゴー!』
「っつ!?」
(俺の頭が痛くなった、何だこれは?記憶喪失の影響か?こんなときに!)
クォヴレ-・ゴードンは頭にを手をおいた。そして彼は光の渦へとカメラアイ向かわせた。頭の中に変
な感情が生まれる、こんな感情は彼の一生に起こった事は無い。目の前に、青い機体が映った。
突然、戦場に変化が起きた。
『スチール2から各機へ、以後、例の未確認物体を中立性とする、繰り返す…』
「…中立…?人間…なのか?」
そして三つの影が動き出す、赤い怪物へと向かって。
『私達も行くわよ!』
カルヴィナ・クーランジュが支持を送る。再び、戦争は渦を巻いた。

「敵機確認…ハヴアゴー…」
『俺が弾幕を送る!その隙にカーパーとバーレイサイズを頼む』
『了解、行くぞセツコ!』
1号機がスタートレイトを連打打ち、そして前後から2号機と3号機が前に線を引く、それぞれの武器
を構えて。
「そこっ!」
『てりゃっ!』
弾幕直撃後、二つの機体が十文字を描く、それぞれの刃で。
「…やった、私にも出来た!」
『甘い…』
と、クォヴレーが瞬く。
「え?」
(赤い化け物がこちらを睨んでいる…?まさか!?)
そして無数の光が襲う、目の前の2機へ向かって。
「キャアッ!」
セツコは目を閉じた、目の前の恐怖に恐れて。
しかし
「え?」
そのままバルゴラ3号機の機体は月面に倒れた。慌てて周囲を見渡すと、やや黒いPTが真横に襲う
光を回避している。
(この人に助けられたの?バルゴラを押し倒して?)
その機体から円形の刃が二つ飛び散った。敵機に刺さった後、接近戦で腕の刃で何回も敵を切り裂
く。まだ物足りないように、刺さった円形の刃を二つの手で引き裂いて、そのまま連激を繰り返した。
その後、腰についた武器を抜き、零距離でショットガンの砲身を敵機に咥える。
バアン!バアン!バアン!バアン!バアァン!
「すごい…」
『皆、敵から離れて!もう一回フルインパクトキャノンを打つわ!』
女性の声?あの黒い、バイクみたいに乗っている機体からだ。
ズズウウンッ!!!
『E-モード、チャージ完了!ええい!』
『まだまだ打てるわ、G-インパクトキャノン、ファイア!』
『援護します』
『まだイケるな、ようし!取って置きのを浴びさせてやる!』
全機体から一斉攻撃が行っている、まるで物足りないように
『スチール2から各機へ。これより、トロニウムバスターキャノンを打ちます。射程内から至急回避して
ください』
今度はあの戦闘母艦からだ…確かハガネという名の
『艦首トロニウムバスターキャノン、打てええええっ!』
爆音が響いた、この月面で。

(これで少しは奴に利くだろう)
クォヴレーのビルトシュバインが月面に足を着いた。
(どうやら手首が壊れたな、使えるのはザンバーのみ…か)
赤い怪物が動き出した。
(まだやる気か?)
そして赤い化け物は足元を蹴り、月面から離れた。

『今は追いつくな、俺達にも補給が必要だ。補給が終わったら奴らを追うぞ』
『艦長!SRXチームから緊急事態の報告です!これは…SOS!?』
『何!?』
『しかもあの赤い機体、SRXチームの信号の発信先へと向かいます!』
『ええい!早く補給を済ませろ!このままではやばい!』

(どうやら事態は悪化しているな。ビルトシュバインの修理を急がなくては…)
『あの…』
前後から謎の機体の一機が自分に向けて通信を送った。
「なんだ…俺は今任務中だ」
『いえ…自分達を助けに、お礼がしたいのですけど』
「礼などいらない、俺は任務を……痛っつ!」
突然、頭痛が悪化した。そしてあの変な感情が頭の中に渦巻いている。
『ど、どうしたんですか?まさか自分が無理をなさっていて怪我を…!?』
「…違う」
「え?無理なさらなくても母艦へ帰還すれば」
「…お前は誰だ?」
「あの?…えっと?」
「お前は誰なんだ?俺はお前を見た事が無い」
ズズッ…と妙な冷や汗が浮かぶ。冷たい、まるで死よりも恐ろしいものを見た事がある声が自分の喉
から出た。
「だからお前は誰なんだ!」
自分の混乱と、自分のなかで渦巻く感情がぶつかった。

自分の動きが信じられなかった、自分自身が信じられなかった。
だから途中でやめた。だがビルトシュバインの刃はまだ渦を巻いている、自分の混乱のように。彼女
は武器を盾にしていたが、俺のザンバーが途中で止まったから問題ない…モンダイナイハズダ…

そのまま意識が尽き果てた。

Chapter 03
黒く唸る、時の波に揺られながら
黒い帆に野心という風を受け、凪がれるままに
「………………」
テツヤ・オノデラは状況を再確認する。今目の前にいる三人はグローリースターという、機体兵器の
開発機関のメンバーとテストパイロットを含めている。所属は地球連邦、自分と同じ側の人間という
事。だが彼らの情報と自分たちのデータベースには一致しなかった、いったい何が起きている?
「だから自分たちは事実を言い聞かせただけだ。それに我らも今の状況の確認を願いたい」
「そうか、なら手短に説明してもらう」
デンゼル・ハマーの質問を答える際に、テツヤ・オノデラは今の状況をとある出来事と似ている事に
気付いた。そう、あの時流エンジンを使っているエクサランスの人々のような、そしてシャドーミラーの
次元転移みたいな。
「貴官の情報と我々のいた地球の状況と環境があっている。あなたの表情には今我らの状況を把握
しているみたいだが?」
「中々鋭いですね、貴官達が経験した現象には幾つかの可能性と例がある。自分の意見を聞かせて
もよろしいならお伺いしますが」
「今の我々は捕虜の身だ。まあ、あの出来事は貴官らの謝罪に応じて無しにしてもらおう。遠慮なく
進めてほしい」
「そうできれば我々にもいろいろと都合がいい。彼の行動には我々も驚いている、もう一回謝罪して
貰いたいくらいに」
「ですからそれは無しにしてださい。まあ、出来れば彼の意識が戻れば我々の大事な新人に謝罪を
求めるくらいだ」
「わかりました、…では話を戻しましょう。現在貴官らは自分たちの世界と別に、別の世界に訪れてい
ます」
「別の世界…?」
「そう、次元を超え、別の世界に」
「…出来れば信じたくないが、何を根拠に?」
「過去に二回、いや、それ以上何回も起こっている例はあります」
彼等は沈黙し、次の判断に移った。

セツコ・オハラの目の前に、一人の少年が眠っている。
「今の彼には異常が見当たりません、大丈夫ですよ」
「貴女は…?」
「ゼオラ・シュバイツアー、彼の同胞です。彼に代わってお詫びを言ってなければ、と。貴女は?」
「いいえ、捕虜の分際でこんなに動き回ってもらえて幸いです。えっと、自分はセツコ・オハラ少尉です。
本当は、もう一回彼に礼を言わなければと私は悩んでいて」
「礼?彼はあなたを襲うつもりでいたのに?」
「私を襲う間のわずか数秒で、彼は自分の機体を強請的に停止したと、違いますか?」
「違わないわ、それでも彼を信じるあなたに尊敬する」
「彼の身に何か起こったんですか?」
「本当わね、クォヴレーの奴記憶喪失なの。だから彼は多分記憶が混乱したのね、あなた達に会った
時に」
「記憶喪失?」
「まあ、正確には何か起こったのは彼が一番知っているわ。今は彼を休ませて上げましょう。私も貴女
を送りましょう」
「本当に申し訳ございません。しかしこの船は捕虜このように自由にしてもいいのですか?」
「大丈夫よ、私も敵だったから。それに貴女は敵じゃないわ、貴女自身も少しはそう思っているのでし
ょう?」
「…?そうですけど…」
ゼオラの発言に違和感を覚えながらも、二人は自衛の兵士と共にセツコの監視の部室へ進んだ。

「これより作戦会議を行います」
カルヴィナ・クーランジュはハガネの会議室で言った。
「本当は民間人を巻き込まれたくないのだが、諸君らの大半も知っているように、彼女の腕は確かだ。
よって自分は彼女を推薦しこの作戦の司令官の役を取ってもらう。異論は?」
テツヤ・オノデラの言葉に、誰も口を阻む者は一人も無いみたいに、全員黙り込んで信頼の眼差しを
送った。
「決まりだな」
微笑を隣のカルヴィナ・クーランジュに送った
「はあっ~、だからやりたくないのよ。貴方達も随分と私に高望みしているようね」
溜息を吹きながら彼女は愚痴の一つと二つを送った。
「いいえ、貴女の活躍はこの目に焼きついています。それにフューリー騎士団と地球を結びつけ、その
うえ今の特殊教導隊のトレーナーに口を阻みませんから」
リョウト・ヒカワは彼女の自分自身の否定の言葉を否定し、彼女の戦果を言い出した。
顔を少し赤く頬を染めながら、もう一回溜息を吹き込んで
「わかったわかった、まったく。それでは、これよりSRXチームの救助及び謎の機体の追跡の作戦を
行います」
作戦会議室に立体映像のマップを見せた。そこに現在ハガネの位置、謎の機体の脱出ルートをたど
り、そしてSRXチームの位置を。
「これが今の私達の位置、よってあのバケモノのルートを辿れば、やはりSRXチームのいる位置に向
かっているわ。最速の追跡でも最低で後三十分はかかる。作戦はいたってシンプル、私たちは二手に
分かれる。一つは謎の敵機の足止め、そして残りの一隊はSRXチームの援護と救出。この作戦への
異論と質問は?なかったらそれぞれの隊のメンバーを進めるわ」
「司令、あのグローリースターの人たちはこの作戦に参加しますか?それにクォヴレーは?」
ゼオラ・シュバイツアーが質問を送った。
「まあ、大まかにこの作戦では貴女の言い出した人物たちは出したくないわ。あの三人は異次元の来
訪者だし、まだ身の所を把握していない。それにクォヴレーの件は先の作戦の処罰としてこの作戦か
ら外します、これで彼の頭をすこしでも冷してほしい。彼自身は未だに気絶しているし、よってこの作
戦への参加を拒否します。異論は?」
ゼオラの顔には何かを言い出したいように見えるが、彼女は沈黙し、何も異論を出さなかった。
「それでは、足止めのメンバーを発表します。足止めのメンバーは私のヒュッカバインmk-II、リョウト
のヒュッカバイン・サーヴァント、そして足の速いゼオラのビルトファルケン。救出チームはリオのAMガ
ンナー、そしてラーダのシュッツバルトをだすわ。人数の問題は痛いけど、私たちはやれる事をやるし
かないわ。それに作戦の優先はSRXチームの救出だから、足止めメンバーは救出が完了次第、すぐ
にハガネへ帰還。以上作戦の説明を終了します。異論と質問は?」
全員が沈黙した、異論なしのサイン
「それでは、作戦会議はこれにて解散。各機それぞれの配置に戻って。油断は禁物よ。みんな、グッド
ラック」
会議は解散し、それぞれの配置へと向かった。

「アヤ!アヤあああぁっ!!!!!」
リュウセイ・ダテが声が尽きるほどの悲鳴を上げた
『落ち着くんだ、リュウセイ!』
ライディース・ブランシュタインが自分の同胞のリュウセイに向かって通信を送った。
「クソ、クソクソクソッ!許せねえ!」
『フハハハハハハ!いい響きだ、リュウセイ・ダテ!このハザル・ゴッツオの前におまえたちは無力なの
だ。わかったか、俺がおまえよりサイコドライバーとして素質が上だという事を!』
「そんなの関係ねえ、おめえのせいで、アヤが、アヤが!」
『フン、今のおまえたちにこのヴァイクラン相手に勝てると思っているのか!?実力の差を見せてや
る!』
ヴァイクランが次の攻撃に移った。その一撃はそんなに強くは無く、しいて言えばSRXを玩具にするよ
うに。
「くっ!クソオオオッ!」
『避けろリュウセイ!それにおまえの念動フィールドも限界を超えている!援護が来るまでどうにか持つ
んだ!』
「わかっている!それでも奴は、アヤを…」
『いいから、引くんだリュウセイ!アヤ大尉の犠牲を無駄にする気か、おまえは!?』
リュウセイは少しだけ冷静を取り戻し、後方への撤退を開始する。
『女々しいにも程がある。いいだろう、おまえ達まとめて、このヴァイクランの餌食になってもらおう!』
ヴァイクランが力を溜めるような体制を見せた。
『くっ!トロニウムエンジンの出力をR-2に集中させる!おまえは生きろ、リュウセイ!』
「ライ!?冗談じゃねえ!俺たちは生きるんだ!おまえもアヤの犠牲の意味が判ってねえんじゃない
か!?」
その時
『こちらスチール2、SRXチーム、応答してください!』
スペース級万能戦闘母艦ハガネが戦場に降臨した。
『ほう、地球人どもの分際でこの俺に歯向かうとは。念動力を一から習って出直してこい!』
『各機、発進を許可する!作戦通りに頼むぞ!』
『『『『『了解!』』』』』

ここはハガネの艦内、そこに一つの影が見えている
「まさか、この世にたった一つの存在を見つけ出せるとは思っていなかった。多元世界に唯一の存在、
そんなものがあるとしたら彼女は神であろうな。だがこの世に神のような存在などありはしない、まし
やあの女は普通の人間だ。ただ何らかの力を身につけていると…フ、今のおまえにはどう歩むのだろ
うか?もう一人のオレよ」
冷静な微笑み浮かべた男は、青い髪の男。しかし彼の服装はこの船の誰かと被っている。
「ふむ、あらゆる世界で生を認められず、∞(無限)分の一の確立で存在する…悲しいものだな。まあ
いい、事情はどうあれ、あの女をどうにかしなければ…」
コントロールルームに忍び込む、そしてそこにいる二人の兵士を気絶させた。そして、彼はパネルに
“捕虜の部室”のロックを解除した。
「これでいい」
監視カメラの映像に、その中の人物たちが、戸惑い、そしてゆっくりと部室から出た。
・・
「さあ、おまえ達とオレははどう動くか?」
彼は冷酷な台詞を残し、コントロールルームを後にした。

「何が起こっているんですか?」
セツコ・オハラは自分の部室から出て、隣の部室から出たデンゼル・ハマーとトビー・ワトソンに向か
って問いだした。
「俺たちにもわからねえ。隊長、どうしますか?」
「とりあえず俺たちのバルゴラのいる格納庫に行くか。この船もだいぶ揺れているしな。俺たちもこの
船の援護に移ろう」
「よろしいのですか、隊長?私たちは捕虜です、よって勝手な真似は控えた方がよろしいかと」
「いいか、セツコ・オハラ少尉。軍人と呼ばれるものは、時々羽目を外さなければいけない。時にはこ
んな大胆な行動も必要だ」
「はぁ…」
彼らは自分たちの分身であるバルゴラのいる格納庫へ向かった。

Chapter 04
漆黒のケルベロスよ焼き尽くせ
我が道を阻む全て噛み裂け心のままに
『こいつ、やる…』
通信からカルヴィナ・クーランジュの声が聞こえる。ゼオラは回避と多少の反撃で精一杯、ビルトファ
ルケンではこの戦法しか道は無い。
『サーヴァントも何体か撃墜されました…自分は回避に専念します』
『救出隊はどうなの!?リオ、ラーダ!応答して!』
『こちらも苦戦しています、あの赤い機体がまさかこんなタイミングで現るとは…どうやら填められま
したね』
「カルヴィナさん、リョウトさんも、このままではやば過ぎます!SRXチームの護衛に移りましょう!」
『こうなったら仕方ないわね。全機体、援護に移るわよ!出来ればこの白い奴をSRXから遠ざけて、最
速で援護に回る!』
「『了解!』」

『エンジンの出力をブースターの点火に移す。進路を定めろ、リュウセイ!俺達はハガネへ向かって全
速力で行く!』
「いっけえええ!」
真後ろにはシュッツバルトとAMガンナーが援護を行いながらも確実に後退して行く。
『…………』
まるで関心が無いように、赤いバケモノは無数の光を放つ。
『くッ…!もう機体の限界が近いわ、こうなったら全速力でハガネに後退するしかない。ラーダさん、ガ
ンナーに捕まって!』
相手が後退しつつ事を認識し、赤いバケモノは唐突に
「…なんだ?あいつ…ハガネに向かいやがった!」
ハガネに向かって、全速力で

機体を突撃させた

赤く巨大な機体が激突し。ハガネはバランスを崩し、そこから遠くない隕石へ向かった。

ガッシャアン!

隕石にぶつかったハガネは、ショックで艦内ではレッドゾーンの状態になっている。
『皆!大丈夫か!』
ハガネの艦長、テツヤ・オノデラがブリッジにいるクルーに向けて叫んだ。
『なんとか、艦長!格納庫から発進する機体を三機確認!これは、捕虜のバルゴラ!?』
『何!?』

『機体にもう乗っていて幸いだったぜ』
トビー・ワトソンが通信を送った。彼ら三人は今、ハガネの外側に出た。
「これからどうしますか、隊長?」
『あの時のバケモノか…全機、これより我々グローリースターはハガネの援護へ移る!異論は無
いな、トビー、セツコ!?』
『異論は無いぜ、隊長!』
「彼らには恩があります、全力で守って見せます!」
『いい返事だ。行くぞ!ゴー!グローリースター!ゴー!』
三機の機体がハガネの援護に向かった、赤いバケモノ相手に。

『ゲットスラッシュ!』
2号機のバーレイサイズが赤いバケモノに切りかかった。
「絶対守ってみせる!」
1号機と3号機がスタートレイトで打ちつくし
『各機、一斉射撃だ!』
「『了解!』」
バルゴラ達が横に一列に並んで、そしてバケモノを取り込めるように
「『『ガンホー!ガンホー!ガンホー!』』」
腰から抜けだした拳銃で撃ちつくした。
「これで…終わる事無いですね」
セツコが歯を食いしばり、辛そうに言った。

『お待たせしました!』
前後から三機、白い機体の足止めを放棄し、ハガネとSRXの援護に移った。
『いい皆!私達はグローリースターと共に、ハガネを援護する!SRXは速やかに後退して!』
カルヴィナ・クーランジュが全機体に向かって命令を宣伝した。
『よし、乗りかかった船だ、共に終わらせよう』
デンゼル・ハマーの声がまるで嬉しがってるように聞こえる。まさか隊長はこういう女の人がタイ
プ…?
『余計な事は詮索しなくていいぜ、セツコ。俺達も隊長に続くぞ』
「わ、わかりました」
全機体が、ハガネを守りぬくように、構えた。

「…うっ、ここは…?」
クォヴレー・ゴードンはコクピットに座っている。
(なぜ俺はこんなところに…?まさか前の戦闘がまだ続いていると?)
彼は周囲を見渡した。
(このコクピット…ベルグバウか?)
彼は混乱に満ちている、前の戦闘での不明な行動、そして何故ベルグバウのコクピットに座って
いるのか。
そして彼は目の前のカメラアイからの映像を確認した。
目の前には戦場、そして大破した特機がハガネに乗り込もうとしている。
(この特機、SRXか?確か艦内の通信でこの機体が狙われていると。まさか俺は作戦の最中に
気絶したのか?)
彼は考えるより、ベルグバウの起動を優先した。
「システムオールグリーン、久しぶりだな」
まるで長く置いてかされていた恋人のように彼は自分の機体に挨拶をした。彼はこの機体に愛
着は無いはず。そして彼は格納庫を後にした、ベルグバウに乗って。

戦場は悪化していた。
「主砲を赤いバケモノに集中させろ!ここから脱出の準備を!」
「艦長!ハガネの2番、および3番のテスラドライブが使用不可能になっています!」
エイタ・ナダカの声に怯えが詰まっている。
「各機からの通信も、どうやら白い機体がハガネに近づいている模様!」
「何!?このままではやばい!どうにかテスラドライブとブースターの修理を優先させろ!」
「艦長!」
「今度はなんだ!?」
「格納庫からもう一体、ベルグバウ?がハガネから発進していきます!」
「ええい、もう何体目だと思うんだ!?構わん、今はハガネの修理だ!」

「ガンスレイブ、行け!」
全機が後退している間に、ベルグバウが赤いバケモノに向かってスレイブを放った。そして追跡
する白い機体にライフルの狙いを定まった。
「………」
無言でラアムライフルの引き金を引く。白い敵機に当たり、速度を少し弱めた。

『クォヴレー!?もう大丈夫なの!?』
ゼオラ・シュバイツアーの通信が繋がった。心配そうな顔で。
「今は敵機の排除だ、ハガネの修理が済む次第、俺たちはこの場を引く。おまえ達は引け」
『私達の機体はちょっと損傷したけど、貴方一人で何が出来るっていうの!?』
カルヴィナ・クーランジュの怒鳴り声が通信内で響く。
「ならば、何体か待機させろ。そいつらにハガネの援護を任せる、あの2機は俺が引き受ける」
『…まるで自分の命が惜しくない言いようだな』
トビー・ワトソン声が通信に響く。
「俺の代わりなんていくらでもある」
彼の言い方に全員が黙り込んだ。
『なに言っ『そんな馬鹿な事言わないでください!』

通信でカルヴィナの言葉をセツコ・オハラが言い切った。

『そんな、寂しい事言わないでください…』

全員が沈黙した、クォヴレーは彼女の台詞が判らないみたいに
「俺が馬鹿を言おうと、戦場の風向きは変わらない。おまえは残るか?残らないか?選べ」
『今の司令官は私よ、全機に宣伝する!リョウト、ゼオラ、ラーダ、そしてリオは私に続いてハガネ
へ後退、修理と補給を済む次第、すぐに戦場に復帰する事!そしてグローリースターの皆にはこ
の馬鹿の援護を頼むわ』
『俺たちに異論はない、だろ?トビー、セツコ』
『…こいつは気にくわねえけど、了解。おまえに命の大切さを見せてやる』
『貴方一人では何も出来ない、そして私は貴方を守ります』

「…………」

『作戦開始!』
それぞれ支持に従い、この苦難を乗り越えることを胸に強く思う。

『『『ガンホー!ガンホー!ガンホー!!』』』
バルゴラの一斉射撃が宇宙に響く。それに続いて
「零距離だ」
ラアムライフルを零距離に、砲身を銜えさせる。
バアーン!
その後追跡し、彼はラアムライフルの銃身に潜むナイフみたいな物を引き出し、そのまま斬撃を
行う。
「Z.O.ダガー」
ズバアッ!
赤い機体が後退する。
『中々やるな。この状況じゃ俺たちには徹底的に不利だ。来い!エイス!』
『………』
無言に、二つの機体が近付いた。
『何を…?』

そして凄まじい光景が

『ガドル・ヴァイクラン!』

あの二つのバケモノクラスの機体が合体した。
『フン、おまえらの技術を参考にこんな無駄遣いをやってしまった。しかし、このガドル・ヴァイク
ランは無敵!おまえらの勝機はもう無い』

『クッ…!』
セツコが光景に圧倒させる、あんな大きな怪物、どうやって倒すのかと。
『チッ!大きくても何とかしてやるさ!どうせ弱点があるに決まっている!』
トビーが全員を安堵するために通信を送った。
『甘いな…ならば、少し実力を見せようか?』
ガドル・ヴァイクランが、強烈な破壊の玉を溜めて、そしてハガネに向かって投げつけた。
『ハガネが!?』
デンゼル・ハマーの声と同時に、全員のカメラアイの視線がハガネに向かって一致する。

ドオーン!
ドドドドド…

そこには、

ハガネがいた。

どうやら、彼はハガネにぶつかっていた隕石に向かって攻撃を行っていた。だがすざましい衝撃
波の前に、ハガネは混乱へと向かった。

「エメト・アシャー…」
ガドル・ヴァイクランの攻撃後、合間無くクォヴレーのベルグバウが次の攻撃の体制に移った、
肩の折り畳んでいた二つの砲身がまっすぐに。まるでカウンターを狙っていたように。
「ダブルシュート!!」

ズズーン!!

ベルグバウの攻撃がガドル・ヴァイクランに直撃した

筈だった

『そんな…!』
『こりゃやばいぜ』
『うろたえるな野郎ども!!俺の究極の一撃で、おまえ達もスタートレイトで追撃だ!』
『『…了解!』』

それでも、

無駄だった。

『それだけか?やはり念動力無しの人間には興味が無い。失せろ』
もう一回、ガドル・ヴァイクランはあの隕石を一撃で仕留めた攻撃を行う。

ベルグバウに向かって

『食らえ!!』

『やめて!!!』
セツコのバルゴラ3号機がベルグバウを庇うように、ガドル・ヴァイクランの一直線の攻撃の通
路に身を捨てた。

「………」

そして

奇跡が起こった

ズウウウウウウウ

あの光の渦がクォヴレーの目の前に回っている。そう、あの月面に起こったあの光の渦が。
『セツコ!』
他の二機が彼女を追う、逆に

『貴方は生きて』
セツコのバルゴラ3号機はベルグバウを突き飛ばした、その光の渦に巻き込まれないように。

『なんなんだ…?』
ハザル・ゴッツオが不満に言った。
『俺の必殺の一撃が無駄になった…?』

「…………」
その逆に、クォヴレー・ゴードンはただ黙っていた。

何故、あの女は自分を助けに必死になった?
何故、あの時俺は彼女に襲い掛かった?
何故、こういう自分がいやになっている?
何故…?

「痛ッ!!!」

またあの頭痛だ、こんな時に。

『俺は最高に気分が悪い』
ハザル・ゴッツオはクォヴレーのベルグバウに向かって言った。
『よって、貴様を排除する』
そしてもう一回、怒りを込めた一撃をガドル・ヴァイクランが放つ体制に移った。

「機嫌が悪いのは俺の方だ」
冷酷な声が通信内に響いた。

ハガネの艦内は混乱に満ちていても、誰もが沈黙していた。あのバケモノの一撃、そしてまたあ
の光の渦が巻いたことに。
そんな混乱と沈黙の中に
「クォヴレー…?」
ブリッジにいるゼオラ・シュバイツアーは驚きを隠さなかった。なぜならば、通信内でクォヴレー
の声が、まるで別人のように聞こえているからだ。
『貴様を破壊する』
そして、ハガネブリッジに映っているのは。青い髪に冷酷な微笑を送っている男。

「貴様を破壊する」
自分自身の言葉が信じられなかった、そして何より、自分自身を信じ切れなかった。
『黙れえぇっ!!!』
そして

まるでその一撃が紙飛行機のような速度の動きに見えるように

ベルグバウは容易く回避した。

『何!?何者だ、貴様は!』

「ディーンの火よ!その力を我が手の内に」
まるで敵の声が届かなかったように、彼は攻撃に専念する。たとえベルグバウの真後ろに隕石
がもう一つ、爆音を鳴らしていても。

「プレートバレル展開…」
ベルグバウの胸部が展開し、その中から三つの棒が立った。

「アキシオンバスター」
三つの棒の中心に、一つの暗闇が渦を巻く。

『くっ!エイス、反撃だ!』

「もう遅い」
まるで絶望を塗りつぶすために、ハザルに向かって言った。

「マキシマムシュート!!!」

その塊の渦は絶望を送る、誰もが恐怖し、誰もがその存在を拒否するように。

ズグウウウウン!!!

暗闇に包まれ、ガドル・ヴァイクランの合体は解除した。分離したヴァイクランは、大きな損傷を
背負っている。

『貴様…後で覚えていろよ!引くぞ、エイス!』

そして苦難は回避された。

Epilogue
そして俺は、この戦いの渦に溶け込んだ。
そう、絶望という名の

戦いに。

To be continued?

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