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ミクロ経済学 講義資料

今回の議論 前回の続き
3. 協調的寡占産業内部における企業行動の特徴
寡占産業内部での企業行動にはどのようなものがあるか
寡占産業:1つの産業内に存在する企業の数が少ない → 企業間の関係が重要
(1)カルテル【Kartell 独】
同種もしくは類似の産業部門に属する複数の企業が、相互の独立を維持しながら、市場を支配す
るために共同行為を行うこと。企業協定を結ぶこともある。独占禁止法により原則として禁止。
企業連合。[出典:広辞苑 第5版]
昭和20年代から昭和30年代にかけては国内産業の育成・強化や、国際競争力強化のため、合理化
等を目的とした適用除外が設けられた。その後、日本経済の発展に伴って、適用除外がもたらす
利益よりも弊害――効率化への努力や創意工夫を妨げる可能性などの問題――が大きいことから
その見直しが行われ、平成11(1999)年7月、不況カルテル制度および合理化カルテル制度が廃止さ
れた。
例外的に認められているカルテルの例:道路運送法に基づくカルテル
輸送需要の減少により事業の継続が困難と見込まれる路線において地域住民の生活に必要な旅客
輸送を確保するため,又は旅客の利便を増進する適切な運行時刻を設定するため,一般乗合旅客
自動車運送事業者は,他の一般乗合旅客自動車運送事業者と,共同経営に関する協定を締結する
ことができる。[出典:平成30年度公正取引委員会年次報告]

(2)管理価格
プライス・リーダーシップ:大手企業による価格支配
大手企業――――低コスト → 価格設定で主導権を握る
限界的な企業――高コスト
テキスト p.94の図5-4参照

(3)参入障壁
高すぎる価格は産業外部からの新規参入を招く →競争的市場に移行
これを避けるために、既存企業は価格をある程度低く設定 参入阻止価格
鉄鋼、化学など、規模の経済性が働く産業や、製品差別化が難しい産業では参入が困難
価格以外にも、さまざまな参入障壁が存在 例:販路、特許などの技術独占 等

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(4)屈折需要曲線
価格についての現実 企業物価指数 [出典:日本銀行調査統計局]

一次産品(素原材料)価格は変動が激しい一方、工業製品の価格が安定しているのはなぜか

プライスリーダーと、 その他の企業の行動を考える
プライスリーダー
値上げ 値下げ
A1 A2
プライスリーダーと他の企業の プライスリーダーと他の企業の
追随する 相対的な価格は変わらないので、 相対的な価格は変わらないので、
他の企業の需要も減少する可能 他の企業の需要も増加する可能
その他
性が高い 性が高い
の企業
B1 B2
プライスリーダーの価格が相対 プライスリーダーの価格が相対
追随しない
的に高くなるので、他の企業の需 的に低くなるので、他の企業の需
要が増加する可能性が高い 要が減少する可能性が高い
以上から、
プライスリーダーが値上げした場合 → 他の企業は追随する戦略を選ばない可能性が高い B1
プライスリーダーが値下げした場合 → 他の企業は追随する戦略を選ぶ可能性が高い A2

①ここから、プライスリーダーが、その他の企業が採用する戦略を想定して、自己の採るべき戦
略を図示したものが屈折需要曲線になる。

②需要曲線の屈折箇所で、プライスリーダーの設定する価格は硬直的(安定的)になる

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屈折需要曲線: 産業全体の需要曲線と個別需要曲線の組み合わせによる応用
・企業の行動についての2つの仮説
(a)1企業が価格を変更した場合に、競合している他の企業もこれに追随する場合
産業全体の需要曲線DD
(b)1企業だけが価格を変更し、競合している他の企業はこれに追随しない場合
個別企業の需要曲線dd

p
D 需要の価格弾力性は小

p0

d 需要の価格弾力性は大
D

O x0 x

屈折需要曲線の説明について、さらに詳しくは屈折需要曲線.pptx を参照 音声付き

4. 協調的寡占と競争的寡占
寡占企業の関係がすべて協調的とは限らない
寡占と競争の区別:競争的<――>企業数が多い、寡占的<――>企業数が少ない
しかし、産業内部の企業の数と寡占の程度は同じではない
競争的な寡占もある
例:近年の銀行、通信等の合併の進展 →競争力の強化が目的

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