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第11講

朱子学と陽明学
宋元明清王朝概念図

西夏



(1115-
1234) 1271- 北元ー韃靼 後金→清
(916-1125) 1368) (1616-1911)
上京臨潢府
中都
大興府 大都 北京 北京


(1368-
開封
1644)
南宋
北宋 (1127-1279)
(960-1127) 南京
臨安
君ー臣ー士/民

教導する
に責務を負い、民を
天子を補佐して国家
官にあるもの(臣下)
先覚者

科挙(第一段階で可)に合格した者

儒家教養


生成と性即理説

• 人はどのように生まれるか
• 太極→陰陽・五行
陰陽・五行・・・ものを作る働きをする担い手ーそれぞれに理が
具わる
実際に形作るにあたり、気の精妙なものが人となる。
性ー (用)
(体)
木 仁 惻隠

火 礼 恭敬
陽 健
土 信 誠実
陰 順
金 義 羞悪
水 知 是非
朱子ー集大成者

• 朱熹(1130-1200)
• 19歳で進士合格 福建省など多くの地方官を歴任
• 1168年、福建省崇安で発生した自然災害で、民衆の救
済に無関心な官僚たちを見て憤慨→儒学の再興を図る
• 社倉の創設ー飢饉に対する弱者救済。飢饉時に米を貸し
出し、後に民営の自治的組織によって持続的に運用でき
るように
→のちの協同組合的なものー江戸の儒学者山崎闇斎が紹

理の哲学

• 理の哲学ー万物にはそれを成り立たせてい
る法則「理」があり、それら万物の「理」
は究極には一つの「天理」に集約される
• 性即理ー性を本然の性と気質の性に分ける
本然の性=本来性:絶対・不変・不滅
*本来持っている性→至善
気質の性=現実性:相対・可変
*情を含んだ個を形作る性→有善有不善
*気質の性の不善の部分を去って本然の性
を回復することが人としてなすべきこと。
理と気

• 理:もともとは玉のすじめ→普遍的道理 治=理
• 気:本来 ー空気状のもの(息・風・雲)
→人体の中にも充満している
*万物の構成要素や「気分」のような心理作用を含む

• 法則と実体

• 理と気はどちらが先か
*理は気を離れては存在せず、気も理を離れては成り立たない
「不離不雑」
→しかし、価値としては理が優先
• 理ー天よりもたらされる→至善
• 気ー善・不善いずれにも向かうことがある
理をめぐる二つのイメージ

• 程顥の「天理」説 「天理とは道理」 自然の法則の


全て→道家のいわゆる「道」に近い
• 程頤 「理は天下の至公、利は衆人の同じく欲すると
ころ」→人欲と対立するものと捉える
• 「所以然」の理=万物を万物たらしめる「理」
• 「所当然」の理=あるべき秩序
→自然法則から道徳律へ
性即理

• 性ーもともともっているもの→天から授かっている=理・・・
当然「善」でなくてはいけない
• ならば「悪」はどこから存在するのか?
• 性を二つに分ける
☆本然の性ー人間が本来持っている(はずの)天とつながって
いる性
☆気質の性ー気によってもたらされる個人の性質ー気の清濁に
よって善不善がある。
• 「上智と下愚は移らず」(『論語』陽貨)→本然の性を有して
いる以上そんなことはない。 「自暴(自身の力を卑下する)
自棄(どりょくを怠る)」になってはならない

気質の性=情 気質の性=情

本然の性 本然の性
復初

• 気質を克服して「初」にもどる
→聖人に至る道
• 居敬窮理
居敬:心を専一にし、義理を心の主宰とし、一切の行動や思
考を義理に一致させるようにする。
→内省観察・外修正坐
窮理:理をきわめる
→格物致知一つ一つの「理」を探ることによって理を
極める
理はすでに聖人によって明らかにされている
→外に理を窮めることが本然の性を取り戻すことにつながる
補足

• 道統:孔子の学を正しく受け継いだもの
孔子→顔回→子思→孟子

• 学:「学之為言、效也」・・・先人・先覚者の営為をまねること
により、「復初」できる
学を行うことの要点:一つ一つの事(行動)について、その是
なる(仕方)を審求し、決然とその非なる(仕方)を去ること
<訳は木下鉄矢2013『朱子学』講談社p.42 による>

• 四書 『論語』『孟子』『大学』『中庸』
→『大学』『中庸』はもと『礼記』の一篇
子思の学を伝えるものとして尊重し独立別行させる
儒家の2本柱ー内聖(修己)と外王(治人)

修己 治人

性善説
人間性の回復 不忍人の政
性善説を基盤とする体系の確立
ーその影響

• 背景:自覚をベースとする士大夫ー聖人学んで至るべし
→だれでも原理的には聖人を目指せるという自信
資質に差はあるが、努力次第で道は開けている

• 自然界の生成論を人間の倫理観にリンク
→その天理は誰が決定する?
• 性善説→定められた「天理」が実はその人の本来の性

万物一体観・の宇宙論・倫理観が
例外を認めず、多元的価値観を否定し
かねないことになる
元朝

• 1271:フビライにより建国
• 1279:南宋を滅ぼし中国全土に領域を広げる
• 九儒十丐:儒者の地位低下ー科挙の停止(~1314)
• 士大夫の地位低下→庶民文化の発達
• *元曲/演劇 唐代伝奇にも題材を得つつ戯曲に発展
• 4身分による支配 蒙古:色目:漢人:南人
• 領土拡張と重税→やがて反乱
・・・紅巾(韓山童など)の乱は鎮圧されるも、その流
れを朱元璋が継ぎ、知識人のバックアップを得る
明の建国と地方統治

• 1368 朱元璋によって建国→知識人のバックアップ
*自分に権力を集中させる
• 南からの統一:首都南京
• 独裁政治の進展:宰相廃止・功臣の誅殺
• 漢民族主義ー儒家国家を目指す
• 聖諭六言
孝順父母、尊敬長上、和睦郷里、
教訓子孫、各安生理、毋作非為
朱子学の形骸化と陽明学

• 朱子学の国学化ー大全:科挙における国定解釈に
→立身出世のための学問に
→皇帝専制を支える理論に変質
• 知識偏重
→理先気後:主知主義に 知行合一/事上磨錬

• 方法論の難しさ
「格物」「居敬」 致良知
勧学文ー(北宋 眞宗)

富家不用買良田 家を富ますには良田を買ふを用ひず
書中自有千鍾粟 嘗中自ら干鍾の粟有り
安居不用架高堂 居を安んずるには高堂を架するを用ひず
書中自有黃金屋 書中自ら黃金の屋有り
出門莫恨無人隨 門を出づるに人の随ふ無きを恨むことなかれ
書中車馬多如簇 書中車馬多きこと簇がるが如し
娶妻莫恨無良媒 妻を娶るに良媒無きを恨むことなかれ
書中自有顏如玉 書中に女有り顏玉の如し
男兒欲遂平生志 男兒平生の志を遂げんと欲せば
六經勤向窗前讀 六經 勤めて窗前に向かって讀め

大木康(2020)『明清江南社会文化史研究』汲古書院,p.553
王陽明

• 王守仁(1472-1528)名門官僚の出自。軍人としても名声
• 朱子学の「格物致知」を極めようとして挫折
• 若いときは神仙世界や仏教に傾倒
• 竜場の大悟→「理は外にあるのではなく、己の心のうちに備
わっている」・・・「心即理」へ
心即理説

• 心と性を分けずに、心を直に理に結びつける考え方
→心は理を創造する
• 王陽明・・・「心即理」を学説として立てる
「天下には心外の事や心外の理はない」→心を性と情とに分け
る考え方を否定
→理に合致した心で行動すれば理はその中に自ずと現れる
• 「六経我が脚注」
格物致知

• 『大学』の一節
三綱領 「大學之道,在明明德,在親民,在止於至善。 」・
八条目 「古之欲明明德於天下者(平天下),先治其國。欲治其國者,
先齊其家。欲齊其家者,先脩其身。欲脩其身者,先正其心。欲正其心
者,先誠其意。欲誠其意者,先致其知。致知在格物。 」

• 朱子:格物=一つ一つのことがらに当たって理を極める
致知=自分の知識を推し極める
→読書を通じて理を極めていく
• 陽明:格物=己の心の内を正しくする(是非の弁別する)
:致知=吾心の良心を表現し尽くす
知行合一

• 朱子「まず広く学んで理を知り、その後に実践せよ」→理先気

• 陽明学「道徳的実践(行)を経ない道理の認識(知)知など存
在しない」
→行いを切り離して理を知るなど不可能
• 道徳的要求・・・行って初めて知ったということ
→陽明の実践主義
致良知

• 陽明の最終帰着点→「良知を推し極めて発揮すること」(友枝
龍太郎)
• 良知ー是非善悪を判断する先天固有の能力。自知自省能力があ
り、自身の判断・行為に対して自力で検証・修正して自己を更
新することができる

(もはや「天から賦与された」という前提すら不要)→至善

• 無善無悪→固定された価値観にとらわれないこと
• 天から賦与されて性があるのではなく、内心の良知が天を作り
出す霊妙な力となる
→自己の「心」に対する絶対的信頼・・・・やがて人欲をも肯
定する思想が生まれる
陽明学のその後

• いわゆる「王学右派」と「左派」
• 天泉証道問答
「無善無悪是心之体/有善有悪是意之動」
◎王畿(龍渓)ー心の本体が無善無悪なら、そ
れから発せられる意識も無善無悪では?
「無=とらわれない心」
→後の王学左派へ
◎銭徳洪(緒山)ー人は先天的には無善無悪だ
が、習心によって意は善悪の区別が生じる
• 陽明・・「王畿の説は素質の上の人に生かすの
がよく、銭徳洪の説は通常以下の人に対して説
くのがよい」→折衷
陽明後学

• 右派ー銭徳洪・鄒守益・季本・・・・行き過ぎた直裁的心至上
主義を廃して朱子学に接近
• 左派
王畿ー「ありのまま」を肯定・・・
「無善無悪」ー既成の善悪観にとらわれず、その都度ごとに善
悪の判断を的確に判断し、実行する能力(を持っている)。
→心の自然の発現が正しい
本体即工夫・・・良知は修養の結果ではない「道は人の心にあ
り・・文字によって道を学ぶのは本末転倒」
• 「講学」ー自らの「良知」を検証するのに、自分一人ではあや
ういー仲間を作ってともに良知を磨き合う
いわゆる泰州学派ー陽明学の極点

• 王艮・顔鈞・羅汝芳・・・・
• ◎李贄(卓吾)1527-1602
• 徹底的な「現成」主義 「穿衣喫飯是天理」
• 童心説ー童心・・・いつわりなき真心・・・書物によって義理
を知るとかえってそれは失われる
・・・・儒家的な形式的「礼」に対する痛烈な批判
→儒教解体の一歩手前 ・・逮捕、自殺

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