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土 木 学 会 論 文 集No. 474/VI-20, pp. 67∼74, 1993.

湊漂埋立工事 における濁 りの発生原単位の検討

油 谷 進 介*・ 室 田 明**・ 岩 田 尚 生***

我が国の臨海部開発 は深刻な公害問題を もた らしたが, そのうち凌深埋立工事 による


水底質 汚濁 は漁業 との摩擦 の原因 ともな り, 1970年 代前 半におけ る大 きな問題の ひと
っ であった. 運輸省港湾局 はこの問題の解決に取 り組んだが, 本論文 ではそのなかで筆
者等 が全国的な実態調査 をもとに汚濁の予測手法 の開発 に取 り組み, SS(浮 遊物質)
を指標 と した濁 りの発生原単位 を開発 した ことを論 じ, 残 された課題 を考察 した.
Key Words: SS (Suspended Solids) and Turbidity, re-floatation critical velocity, SS
load per unit soil volume

1. 序 論

(1) 濃 藻 埋 立 工 事 と海 域 環 境 問 題
昭和40年 前 後 か らの 我 が 国 の 高 度 経 済成 長 に お い て,
大規 模 な 臨海 工 業 地 帯 の 造 成 や, コ ンテ ナ等 海上 輸 送 の
革新 に対 応 した大 型 流 通 港 湾 の 整 備 等, 港 湾 工 事 の規 模
の拡 大 が進 行 した が, 一 方 で は凌 喋 や 埋立 工 事 に よる海

域 の濁 りの 問題 が顕 在 化 す る よ う に もな っ た. これ らの
問題 は折 か らの都 市 へ の 人 口 集 中 や 産業 活 動 の活 発化 に
よ る汚 水 の 流 入, 水 産 に お け る増 養 殖 化 の 進 展 と も相
ま っ て, 内湾 に お け る水 質 汚 濁 の 進行 や赤 潮 の 多発 な ど,
(生息分布 域の変化)
深 刻 な社 会 問 題 の 原 因 の 一 つ に 数 え られ る よ う に な っ
図-1 土砂 の濁 りに よ る海 洋 生 態 系 へ の 影 響
た.

凌 喋 埋 立 工 事 に関 す る海 域 環 境 問 題 は, 40年 代 後 半 と す る. 短 期 的影 響 と して は次 の よ うな こと が考 え られ
に い た り, 47年 の 閣 議 了 解 「各 種 公 共 事 業 に係 る環 境 た.
保 全 対 策 につ い て」 を受 けて, 運 輸 省 に と っ て も本 格 的 (1) 工 事 に よ り発生 す る濁 りの影 響
な取 り組 み が焦 眉 の課 題 と な った. ま た, 一 般 の港 湾 工 (1)-1 濁 りが 魚介 類 等 漁 場 に及 ぼす 直接 的 な影 響
事 の み な らず, 水 俣 港 を始 め とす る工業 港 内 に堆 積 した (1)-2 濁 りに よる水 中光 量 減 少 の 影 響
水 銀 を含 む有 害 汚 泥 や, 東 京 ・大 阪等 の大 都 市 前 面 の 港 (1)-3 濁 り粒 子 の沈 澱 堆 積 に よ る影 響
内 に堆 積 す る栄 養 塩 を多 量 に含 有 す る有 機 質 汚 泥 の除 去 (2) 工 事 に よっ て底 質 に含 ま れ る物 質 が 溶 出 拡 散 す る
事 業 が急 が れ て お り, これ らの 除去 に 当 た っ て も2次 公 影響
害 を 防止 す る こ と は緊 急 の 課 題 で あ っ た. (2)-1 底 質 に含 まれ る有 機 物, 栄 養 塩 の溶 出 に よる
工 事 に よる濁 りが周 辺 の 水 質, 底 質 や海 生 生 物 に及 ぼ 富 栄 養 化 へ の 影響
す影 響 の模 式 図 を 図-11)に 示 す が, そ の 中 に は短 期 的 (2)-2 底 質 に含 ま れ る有 害 物 質 の 溶 出 に よ る影 響
な も の と長 期 的 な もの が あ る. 短 期 的 な も の と して は, (2) 既往 の研 究
工 事 期 間 及 び工 事 箇 所 を中 心 と した比 較 的 短 期 間 に生 じ 著 者 等 が本 研 究 に着 手 した 昭 和48年 頃 は, 土 運 船 か
る影 響 で あ り, 長 期 的 な もの と して は, 生 物 の世 代 の 交 らの投 棄 土 砂 の水 中 で の拡 散 現 象 の 研 究 等, 個 別 の研 究
代 や広 範 囲 に及 ぶ 地 形, 流 況 の 変化 に よ る影 響 を い うが, は な さ れ て い た が2), 本 論 文 に示 す よ う な, 現 地 調 査 に
本 論 文 で は こ の う ち短 期 間 の 影響 に着 目 して 述 べ る こ と も とつ く濁 りそ の も のの 発 生 原 単 位 の 包 括 的 な検 討 は な
さ れ て い な か っ た(本 研 究 成 果 はそ の 後 市 販 の文 献3)に
*正 会員 工修 運輸省第五港湾建設局先任港湾工事検査官 一 部 引 用 され て い る).
(〒455名 古屋市港 区築地町2番 地) 一 方, 西村 は, 瀬 戸 内 海 の 海 水 の 濁 りに つ い て, 透 明
**正 会員 工博 大 阪産業大学工学部長(大 阪大学名誉教授)
***技術 士(株)岩 田環境技術研究所 度 分 布 とSS(浮 遊 物 質)を 含 む 人 為 的 な微 細 固体 懸 濁

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凌漢埋立工事 における濁 り匹発生原 単位の検討/油 谷 ・室田 ・岩田

表-1 SS関 連 の法 的 基 準 値 等 表-2 現地調査一覧

注; 表中の記号 は調査対象 を表す、△は水質 のみ、0は 水質 ・底質、◎ は水質 ・底質 ・生物

測 定 方 法SS: JISK0102-10.21に よ る(ガ ラ ス 濾 器 法)

濁 度: JISK0101-8.2に よ る(光 電 光 度 法)

図-2 濁 度 とSSと の 関係(ポ ンプ2, 下 層)

た め, 昭 和48∼50年 度 に渡 っ て種 ・
々の 調 査検 討 を実 施
した結 果 の う ち, そ れ ま で不 明確 で あ っ た 濁 りの発 生 量
に 関 し, SSを 指 標 と した 濁 りの 発 生 原 単 位 を著 者 等 が

開 発 した経 緯 を中心 に論 じる と と も に, 現 時 点 で そ の 内
容 を省 み る とき様 々 な課 題 が残 され て お り, 今 後 さ らに
よ りよ い もの に 改善 さ れ る必 要 の あ る こ と を考 察 す る も
ので あ る.

2. 調 査 検 討 の 概 要 と経 緯

工 事 に よる水 質, 底 質, 海 生 生 物 等 へ の 影 響 を把 握 す

物 負 荷 と を比較 して, そ の中 で 埋 立 に伴 う微 粒 子 の流 出 る た め の現 地 調 査 が 昭 和48, 49年 度 に 全 国 的 に実 施 さ

が 濁 りの 大 きな割 合 を 占 めて い る と指 摘 した が, 個 々 の れ た が, そ の 概 要 を表-2に 示 す. これ らの調 査 は ポ ン

工 事 ご と に実測 した も の で は な く, マ ク ロな検 討 に と ど プ式, グ ラ ブ式, バ ケ ッ ト式, ドラ グ式 等 各 種 の 凌深 船,

ま って い る4). 土運 船 に よる海 中へ の 土 砂 投 入, ガ ッ ト船 に よる 基礎 マ

(3) 海域 に お け る濁 りの 規 制 値 ウ ン ド石 の投 入, 床 掘 し た箇 所 へ の 置換 砂 の投 入, 埋 立

工 事 に よ り発 生 す る 濁 りに対 す る法 的 な 規 制 や参 考 値 に伴 う余 水 吐 か らの 土 砂 の流 出状 況, あ る い は港 湾 の 開

を表-1に 示 す. 発 に伴 う周 辺 海 域 の 環 境 の 変化 調 査 等, 様 々 な要 因 に よ

有 害 物 質 に対 す る 規 制 値 と比 較 して, SSを 中心 と し る水 質, 底 質, 生 物 へ の影 響 を調 査 して い る. ま た, 作

た濁 りに対 して は明確 な基 準 が な く, 評 価 が 難 しい こと 業船 の大 き さや 能 力 も様 々 で あ る と と もに対 象 海 域 も太

が特 徴 で あ る. 平洋 岸, 日本 海 沿 岸 等外 海 と東 京 湾, 伊 勢 湾, 大 阪湾,

(4) 本論文の主旨 瀬戸 内海 等 の内 湾 等, 海 況 や環 境 の異 な る海 湾 で調 査 し

本 論 文 は, 湊 深 埋 立 工事 に よ っ て生 じる濁 りが, 周 辺 て い る.
の生 物 を含 む海 域 環 境 に及 ぼ す影 響 を定 量 的 に把 握 す る た だ これ らの 数 多 く現 地 調 査 は, 必 ず しも すべ てが 本

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土 木 学 会 論 文 集No. 474/VI-202pp. 67∼74, 1993. 9

--航 跡
航跡 上の各点 が ---上 層
潮流 によ って移 -下 層
動 した後の位置

図-3 ドラ グサ ク シ ョ ン船 の溢 流 濁 水 の拡 散 状 況
(9時22分 時 点)

論 文 の 主 旨で あ るSS発 生 原 単 位 を求 め る た め に実 施 さ CODや 栄 養 塩 との 相 関 が必 ず し も よ くな い 場 合 も見 ら

れ た もの で はな か った. 当 時 は各 海 域 ご とに(東 日本 や れ た.

西 日本, 太 平 洋 岸 や 日本 海 岸, 外 海 と内 湾, 臨海 工 業 地 (2) ドラ グサ ク シ ョン船 か らのSS排 出 の収 支把 握 の

帯 前 面 とそ れ 以 外, 大 都 市 港 湾 とそ れ 以 外 等)環 境 問題 例6)

の 内 容 が 異 な って お り, それ ぞ れ の 地 域 の 要 請 に応 じて 図-3の よ う に, 舷 側 か らオ ーバ ー フ ロ ー水(温 流 水)

調 査 して い るの が 実 態 で あ った. そ れ ら を大 ま か に 区分 を放 出 させ つ つ, 格子 状 の測 点 問 を航 行 させ て, 溢 流 水

す る と次 の よ う に な る. の 拡 散 状 況 を航 空 写真 で撮 影 した. そ の 際, 溢 流 水 量 と

(1) 濁 りの 把 握 に重 点 を置 い た もの そ れ に 含 ま れ るSS量 を各 測 点 で 採 水 し て調 査 し, SS

(1)-1 発 生 量 の 把 握 に注 目 し た もの の 拡 散, 沈 降状 況 を調 査 した. まず 同 図 に お い て, 航 跡

(1)-2 拡 散 状 況 の 把 握 に注 目 した もの に直 交 して 帯状 に発 生 源 を想 定 し, それ が潮 流 の方 向 に

(1)-3 両 者 を把 握 しよ う と し た もの 航 空 写真 か ら観 察 さ れ る幅 に拡 散 す る と考 え た(こ の 際,

(2) 濁 りが 生 物 に 及 ぼ す影 響 に注 目 した も の 各 帯 の 拡 散 面積 と して は隣 り合 う帯 の 間 のSSの 出入量

(2)-1 短 期 的 な 濁 りの 影 響 に注 目 した も の は等 しい もの と想 定 す れ ば, 帯 の 幅 だ け を考 えれ ば よい

(2)-2 長 期 的 な 濁 りの 影 響 に注 目 した も の こ とに な る. 図-4に 拡 散 面 積 の 推 移 を示 す. ). 次 に,

この 中 で ほ とん ど の調 査 は短 期 的 な濁 りの把 握 と短 期 溢 流 水 中 の 土 粒 子 が, St0kes式 に よ り海 底 に 徐 々 に沈

的 な 生物 影 響 に着 目 した もの で あ っ た. 澱 す る こ と を想 定 して 水 深 方 向 の拡 散 厚 の 時 間 変 化 を考
これ らの 現地 調 査 を総 合 的 に分 析 して濁 りの発 生 拡 散 慮 し, 各 幅 の 中 で のSS濃 度 を計 算 し て, そ れ と 各測 点
を定 量 的 に把 握 し, 海 生 生 物 へ の影 響 予 測 を行 い, 適正 で のSS濃 度(バ ック グ ラ ン ド値 を差 し引 い た値)を 対

な 評 価方 法 と影 響 の 防止 対 策 の確 立 も含 め た工 事 に係 る 比 し た も の を 図 一5に 示 す. (な お, ドラ グサ ク シ ョン

環 境 ア セ ス メ ン トの 手 法 を開 発 す る こ と が, 49, 50年 船 の溢 流 水 に関 して は, この後 浄 化 装 置 の整 備 に よ り,

度 の 分 析 調 査1),5)の
狙 い で あ っ た. そ こで は次 の よ うな 水 質 の改 善 を図 って い る. )

手順 で 開 発 に 取 り組 ん だ. 以 上 の よ うな 分析 の結 果, 工 事 に よ る濁 りに関 し, 粒

(1) 各 現地 調 査 結 果 を も と に, 水 質 項 目相 互 の 相 関 を 径 に よ る沈 降 挙 動, 拡 散 係 数 の扱 い等 に関 す る様 々な 知

分 析 す る. 見 が 得 られ, 次 節 に述 べ る よ う な濁 りの 定 量 的 な 取 り扱
(2) 濁 りの指 標 を確 立 し, 発 生 量 と拡 散 堆積 した量 と いが 可 能 で あ る と い う知 見 を得 た.

の収 支 の算 定 方 法 を確 立 す る.
3. 濁 りの発 生 原 単 位 の 検 討
(3)(1), (2)をも と に濁 りの発 生 原 単 位 手 法 を確 立 す る.
(4)凌 深 埋 立 工 事 が生 物 に及 ぼす 影 響 を現地 調 査, 文 (1) 基 本 的 考 え方

献 調 査 を もと に分 析 す る. a) 濁 りの指 標

(5)以 上 の知 見 を も と に, 工 事 に係 る環 境 ア セ ス メ ン 濁 りを 表 す 代表 的 な 指標 と して は濁 度 とSSが あ り,
トの手 法 を 開発 す る. 原 単位 の 作 成 に 当 たっ て はSSを 採 用 した. そ の理 由 と

本 節 で は, こ の う ち(1)と(2)につ い て, 検 討 した も のの して は, 濁度 の測 定 値 は溶 解 性 物 質 も含 め て よ り広 範 囲
一 部 を次 に示 す. の 濁 りを表 す も の で あ るが, 定量 的 な扱 い に な じま な い

(1)水 質 に関 す る項 目相 互 の 関係 の に対 して, SSの 方 は粒 径2mm以 下 の不 溶 解 性 の 懸

現 地 調 査 に基 づ き, 濁 度 とSSの 関係 を図-2に 示 す. 濁 物質 を表 す も の で あ り, フ ィル タ ー で残 留 す る もの を
一 般 に濁 度 とSSの 相 関 は よ いが, 濁 度 あ る い はSSと 測定 す る こ とか ら1μ 程 度 以 下 の 粒 子 や 溶 解 性 物 質 は抜

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凌深 埋 立 工 事 に お け る濁 りの 発 生 原 単 位 の検 討/油 谷 ・室 田 ・岩 田

(注. 図 の(10∼15)hの 値 は、Stokes式 適 用 範 囲 内 の粒 子 径 の 場 合)

図-6 濁 りの沈降, 鉛 直拡散のモ デル化 と測点配置


(ポンプ凌喋の場合)

a) 連続 発 生源 b) 一時 的 発生 源

平面図 平面図

注)こ の図 は、 航空 写真 で と らえ た濁 りの1分 間 毎 の面積 を

求 めて 溢流 後 の時 間 と面積 とを プ ロ ッ トした もので ある。

図-4 溢流後経過時 間と拡散面積

断面図
断面図

・計算 値

・実 測 値

図-7 濁 りの流 下 拡 散 モ デ ル

で あ る. これ はc)で 述 べ る.

ま ず こ こで は, 現 象 を図-7の よ う に 単純 な モ デ ル に
置 き換 え て考 え る.
濁 りの発 生 は, ポ ン プ船 や グ ラブ 船 の 掘 削 に伴 う濁 り
で連 続 発 生 源 と見 なせ る場 合 と, 沖 捨 の よ う に土 運 船 か

ら短 時 間 で土 砂 を排 出す る一 時 的 発 生 源 と見 な せ る場 合
と に分 類 で き る. 発 生 した濁 り は潮 流 に よ って 拡 散 し,

図-7に 示 す 測 定 ラ イ ン に 到 達 す る. 各 測 点 に お け る
SS濃 度 は 測 点 位 置 に よ っ て異 な る が, バ ック グ ラ ン ド

値 を差 し引 い た平 均SS濃 度 を考 え, 以下 の よ うに して
図-5 SSに 関 す る計 算 値 と実 測 値 の 対 比
測 定 ラ イ ン位 置 で の 濁 りの 総 量 と掘 削 あ るい は排 出 した
け落 ち る可 能性 はあ る もの の, 重 量 濃 度 で表 す こ とが で 土 砂 量 の比 か ら濁 りの 発 生 原 単位 を算 定 す る こと が で き
き るの で 結 果 の 取 り扱 い が容 易 な た め で あ っ た. た だ 両 る(も ち ろ ん, この 場 合, 掘 削 あ る い は排 出地 点 か ら測

者 の 間 に は図 一2に 示 す よ う に あ る程 度 の相 関 は認 め ら 点 位 置 ま で に沈 澱 し た濁 り は除 外 され る).
れ たの で, 必 要 に応 じてSSか ら濁 度 を推 定 で き る こ と (1) 連 続 発 生 源 の 場 合
もわ か っ た. 測 定 ラ イン上 の各 測 点 のSS濃 度 分 布 か ら, 測 定 ラ イ
b) 現 地 で の濁 りの発 生 量 と原 単 位 ン上 の濁 り領 域 幅Bを 決 め, 平 均SS濃 度 を用 い て 発

現 地 にお け る実 際 の 濁 りの現 象 は工 法 に よ って異 な る 生 量 と発 生 原 単 位 を次式 に よ り算 定 す る.


が, 一 例 を挙 げ る と 図-6の よ うで あ り, 潮 流, 土 質等 W0=S・B・H・ η×10-6 (3-1)

に よ っ て も形 状 は異 な り, 観 測 点 の濃 度 分 布 も絶 え ず 変 ここ にWb: 濁 りの発 生量(ton/hr, 9.8kN/hr)

動 す る(図 の沈 降 の長 さ はlngersol式 か ら求 ま る も の S: 測 定 ラ イ ン を通 過 す る濁 り の平 均SS濃

を例 示). と くに そ の 中 で流 れ の 中 で の 濁 り粒 子 の沈 降 度(g/m3, mN/m3)


と再 浮 上 の 問 題 は拡 散 や 水理 的挙 動 の 問題 が 絡 ん で 複雑 B: 測 定 ライ ンに お け る濁 り領 域 幅(m)

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土 木 学 会 論 文 集No. 474/'VI-20, pp. 67∼74, 1993. 9

KU: 水 深(m)
η: 流 速(m/hr)

ω01=W3/Q0 (3-2)
こ こ に ω01: 測 定 ラ イ ン位 置 で の 濁 りの発 生 原 単 位

(ton/m3, 9.8kN/m3)
Q0: 取 り扱 い 土 砂 量(m3/hr)
(2) 一 時 的 発 生 源 の 場 合
測 定 ラ イ ン を濁 りが通 過 す る 間 のSS濃 度 を連 続 測定
し, そ のSS濃 度 分 布 か ら通 過 した 濁 り領 域 の平 面 積A.
を求 め, 平 均SS濃 度 を用 い て発 生 量 と発 生 原単 位 を 次
式 に よ り算 定 す る.

Wb=S・A・H×10-6 (3-3)
ここに 既: 濁 りの 発 生 量(ton, 9.8kN)

S: 連 続 測 定 し た濁 りの 平 均SS濃 度

(ton/m3, 9. 8kN/m3)
図-8 粒子径 と汚濁限界流速 の関係
A: 濁 り領 域 の 平 面 積(m2)
E: 水 深(m)

W1=W/Q0 (3-4)
こ こ に ω01: 測 定 ラ イ ン位 置 で の 濁 りの 発 生原 単 位

(ton/m3, 9.8kN/m3)
Q0: 取 り扱 い 土 砂 量(m3)

c) 流 れ の 中 で の 濁 り粒 子 の 沈 降 と再 浮 上 の 問題
ポ ン プ湊 深 等, 海底 近 くで濁 りが発 生 して い る に もか
か わ らず, 流 下 方 向 の水 面 へ の 濁 りが浮 上 す る現 象 や,

海 中 の 表 面 近 くに あ った 粒子 が 海底 に 向 か っ て沈 降す る 図-9 汚濁限界流速を設定 した壁 面噴流実 験槽


現 象, あ るい は, 一旦 海 底 に沈 降堆 積 した粒 子 が再 び潮
流 に よ って 舞 い 上 が る現 象 は, 流 れ に よる鉛 直方 向 の拡
散 に よ る浮 上 効 果 や 濁 り粒子 の沈 降 速 度 との物 理 的 関 連
で 決 ま る もの と考 え る.
この よ う な物 理 的 現 象 の 取 り扱 い は, 様 々 な分 野 で検

討 され て お り, 西 村 は粒 子 の 沈 降 と乱 流 拡散 に よ る上 方
輸 送 の バ ラ ンス か らVfH/Kz<1(こ こ にVt: 粒子の沈
降 速 度, H: 水 深, Kz: 鉛 直 拡 散 係 数)な ら粒 子 は垂
直方 向 に ほ ぼ一 様 に分 布 し安 定 し た懸 濁 状 態 に な る と述 (1): 底 質 浄 化 協 会 「埋 立 工 事 に お け る軟 弱 土 の 堆
べ て い る4). と こ ろ が, この よ う な 方 法 で は不 明 確 な拡 積 と余 水 濃 度 」 日米 専 門 家 会議(1985)
(2)(3): 日本 港 湾 コ ンサ ル タ ン ト協 会 「粘 土 に つ い
散 係 数 の項 が加 わ る こ とか ら, 筆 者 等 は沈 澱 池 の設 計 で て」 協 研021. (1974)
による
用 い られ る洗 掘 ・再 浮 上 の 限 界 流 速 の考 え方7)を適 用 す
る こと と した. 図-10 海 水 中 に お け る微 細 粒 子 の フ ロ ッ ク化 説 明 図

具 体 的 に は図一7の よ う な状 況 の 中 で, Ingers01式 お
よ びCamp式 を補 正 し た 汚 濁 限 界 流 速(再 浮 上 限 界 流 す る粒 子 と, 表 層 か ら下 層 ま で の 鉛 直 断 面 に一 様 に広 が

速)を 定 義 して 図一8に 示 す 曲 線 図 を作 成 した. 図 に お る粒 子 と の 区 別 はで き て い な い. ま た, 図-8に お いて

い て"Camp式 を補 正"と あ る の は, 松 田, 岩 田が 実 施 横 軸 は濁 り粒 子 に は フ ロ ッ ク も含 む た め, 相 当粒 子 径 と

し た図-9に 示 す 壁 面 噴 流 実 験 に よ れ ば8), 砂, レキ が も 呼 ぶ べ き 性 格 の も の で あ る. した が っ て, γf=6∼7

動 き 始 め る 流 速 がCamp式 の 爾 で β=0.04, f= cm/sの 間 に適 用 式 が 変 わ る こ と に よ る 変 曲 点 が あ る

0.025と す れ ば3.58に な る の に対 し, 1.86に な っ た こ が, こ れ は, 粒 度 組 成分 類 に お ける砂 と シル トの境 界 値

とか ら, 補 正 した も の で あ る. この よ う に して求 め た粒 4=74μ との 直 接 的 な 関 係 は な い. さ ら に, 海 水 中 で 撹

子 の浮 上 限界 で あ る た め, 浮 上 後 に海 底 面 を這 っ て流 下 拝 され た微 細 な濁 り粒 子 は凝 集 して フロ ック化 し, 図一

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凌深埋立工事にお ける濁 りの発生原単位の検討/油 谷 ・室田 ・岩田

表-3 SS発 生量 および発生原単位 の計算方法一覧


(現地調査データの解析方法)

10に 示 す 例 の よ う に シ リ ン ダ ー に よ る濁 水 の 撹 拝 静 置 ま るSS濃 度, 水 深, 潮 流 の 流 速 か ら表-3に 示す方法


試 験 で 得 られ た 沈 降 速 度 か らStokes式 に よ り逆 算 して に よ り計 算 す る.

求 め た フ ロ ッ ク の粒 子 径10μ 付 近 に集 中 す る こ とが わ 昭 和48年, 49年 度 の 現 地 調 査 資 料 につ いて 算 定 した


か って い る. そ こで浮 遊 フ ロ ック の相 当粒 子 径 が測 定 で 結 果 の 一 部 を表 一45)に 示 す. こ の 計 算 に あ た っ て は,
きれ ば図-8か らそ の フ ロ ック の 汚濁 限 界 流 速 が 算 定 で 各調 査 資料 か ら観 測 点 位 置(発 生 源 か ら観 測 ラ イ ン ま で
き る こ と にな る. の 距 離.R, 観 測 ラ イ ンの 長 さ2πRま た はB, 観 測 点 数),
d) 現 地 に お け る濁 りの発 生 原 単 位 の 標 準 化 観 測 点 の水 深h, 観 測 点 濃 度m(上 ・中 ・下 層 のSS),
現 地 にお け る濁 りの 発 生 原単 位 の標 準 化 は, 工 法 と取 発 生 源 付 近 の潮 流 ηお よ び取 り扱 い 土 砂 の 粒 土 組 成 を
り扱 い土 砂 が 同 じで あ って もそ の 場 の 流 速 に よっ て変 動 求 め, 表 一3の 計 算 方 法 に よっ て 発 生 量Wbお よび発生
す る. そ こで 標 準 的 な流 速 条件 を設 定 す る必 要 が生 じた. 原 単 位 η01を求 め た. ま た η0は ω01か らの 換 算 値 を 平
粒 径 分 布 か ら見 る と, 砂 と シル ト以 下 の 境 界 で あ る粒 子 均 した.
径4=74μ と, それ に対 応 す る現 地 流 速6∼7cm/s辺 り 表-4の 原 単 位 は 調 査 箇 所 ご と の 取 り扱 い 土 砂 の 土
が利 用 上 か らも よい と判 断 して, 粒 子 径4=74μ に対 応 質, 潮 流 の 流速, 施 工 機 械 の能 力, 施 工 方 法(操 船 方 法,
す る汚 濁 限界 流 速 で標 準 化 す る こ と と した. す な わ ち, 掘 削 厚 等)ご とに様 々 な条 件 を含 ん だ も の で あ り, この
ω0=(R74/R01)・ ω01 (3-5) 値 を 利用 す る 際 に は ほ と ん ど同 じよ う な施 工 条 件 で あれ
こ こに ω0: 標 準 化 し たSS発 生 原 単 位(ton/m3, ばそ の ま ま利 用 で き る が, 一 般 に は補 間 す る等 の 補 正 が

9.8kN/m3) 必 要 で あ る. そ の た め, この 後 の 追 加 調 査 を含 め表 一4
R74: 取 り扱 い 土 砂 の 粒 子 径74μ 以 下 の 粒 径 を 平 均 化 し た表 一5が 第 四 港 湾 建 設 局 に よ り昭和57年

加積 百 分 率(%) に 開発 さ れ て い る.

KR1: 図一8に お いて 現 地 の流 速 に対 応 す る粒
4. 考 察 お よび 課 題
子径 以 下 の粒 径 加 積 百 分 率(%)
ω01: 現 地 の 流 況 下 で 求 め たSS発 生原 単位 本 論 文 の ポ イ ン トと して は2つ あ り, そ の1はSSを

(ton/m3, 9.8kN/m3) 濁 りの発 生 原 単 位 の 指 標 と した こ と で あ る. これ に よ っ

(2) 発生原単位の算定 て濁 りの 定 量 的 取 り扱 い が可 能 と な り, 水 中光 量 の 指 標

濁 りの発 生 量, 発 生 原 単位 は, 水 質調 査 の結 果 か ら求 と して有 用 な濁 度 に関 して はssと の相関で合わせて活

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土 木 学 会 論 文 集No. 474/VI-20, pp. 67∼74, 1993. 9

表-4 SS発 生 原 単位 表

但 しt/hは9.8kN/h、t/m3は9.8kN/m3 (SI単 位)

用 す る こ と と した. そ の2は 原 単位 を標 準 化 して 予 測 の 一 方, 原 単 位 の値 は, 実 測 値 そ の もの か ら算 定 した も

必 要 な様 々 に異 な る現 場 条 件 に対 して も使 用 で き る よ う の で あ り, 標 準 化 の 過 程 にお い て, 一 定 の安 全 率 は見 込
に した こと で あ る. ん だ も の の, 海 水 中 の流 れ の 中 の濁 り現象 の機 構 を十 分
実 際 のSSの 発 生 量 の算 定 は, 次 の よ う な手 順 で行 う. 解 明 した う え で算 定 し た もの で は な い. した が っ て, 実
用 的 に は問 題 は な い と考 え るが, 厳 密 な意 味 で は, 土 粒
子 の沈 降, 浮 上 現 象 を精 査 し, そ の詳 細 な機 構 を解 明 す
る こ とで 原 単 位 の もつ 意 味 が よ り明確 に な る と考 え る.

5. 結 論

凌 喋 埋 立 工 事 に よ る海 域 の濁 りの問 題 は港 湾 整 備 事 業
に お いて 昭 和40年 代 か ら50年 代 にか けて そ の 現 象 の解
明(海 生生 物 へ の影 響 を含 む)と 防 除 対 策(有 害重 金 属
等 を含 む 汚 泥 の 除去 事 業 で は と く に重 要)の 確 立 が強 く
求 め られ た 問題 で あ っ た. 本 論 文 で はそ れ らの調 査 研 究

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凌 深 埋 立 工 事 に お け る濁 りの 発 生 原 単 位 の検 討/油 谷 ・室 田 ・岩 田

表-5SS発 生 原 単 位2〃0の 平 均 値(流 速 η=7cm/s)

の う ち有 害 堆 積 汚 泥(こ れ ら は別 途 検 討 した)を 除 く一 参 考 文 献
般 の海 底 土 砂 を対 象 と し た濁 り につ いて 数 多 くの 現地 調 1) 運 輸 省第 四港 湾 建設 局: 凌喋 埋 立 影 響 分 析 調 査, p. 293,
1975年3月.
査 を も と にSSを 指 標 と した濁 りの発 生原 単位 を 開発 し
2) 小川 元 ・竹 内 益 雄: 土 運 船 に よ る投 棄 土 砂 の分 散, 土
た こ と を 中心 に と り ま と め た. この 原 単 位 は以 後, 公 有
木 学 会論 文 報 告 集, No. 161, 1969年1月.
水 面 の埋 立 申請 等 の 工 事 に係 る環 境 アセ ス メ ン トを実 施
3) 石黒 隆 編: 海 岸 ・港 湾 ・海 洋 工 事, 山 海 堂, pp. 133∼
す る 際 に広 く用 い られ て い る が, 4-に 述 べ た よ う に残 136, 1980.
さ れ た課 題 を含 む もの で あ る. 環 境 問 題 が 再 び ク ロー ズ 4) 西村 肇: 瀬 戸 内 海 の 汚 染III-海 水 の 濁 り-, 科学

ア ップ さ れ て い る今 日, さ ら に正 確 な環 境 ア セ ス メ ン ト Vo1. 42, No. ll, pp. 628一一一629, 1972.


5) 運 輸 省第 四 港 湾 建 設 局: 凌深 埋立 影 響 分 析 調 査, 1976年
を行 う た め に も残 され た 課 題 の 解 明 に取 り組 む所 存 で あ
3月.
る.
6) 運 輸 省 第 四 港 湾 建 設 局: 土 粒 子 の 拡 散, pp. 47∼60,
なお, 本 論 文 の 提 出 が 研究 の 時期 と比 較 して大 き く遅 1974年10月.
れ て い るが, 濁 りの 発 生 原 単位 が実 務 で用 い られ た実 績 7) 土 木 学 会 編: 水 理 公 式 集, p. 418, 1971.

を踏 ま え, さ ら に必 要 な 考 察 を加 え て 今 回発 表 す る こ と 8) 松 田 ・岩 田: 鉛 直 ジ ェ ッ トに よる 海 底 土 砂 の切 崩 に つ い

と した. ま た, 本 文 中 の 意 見 に 関 す る もの は, 著 者 等 個 て, 港 湾 技術 研 究 所 報 告, Vol. 3, No. 5, 1964年12月.


(1992-9.10受 付)
人 の もの で あ り, 所 属 す る機 関 の もの とは 関係 の な い こ
と を お断 り して お く.

STUDIES ON NUMERICAL ESTIMATIONS OF SUSPENDED SOLIDS LOAD CAUSED


BY DREDGING AND RECLAMATION WORKS
Shinsuke ABURATANI, Akira MUROTA and Hisao IWATA
Water front developmentfor rapid industrializationand urbanization in our country have
causedtremendous environmentalpollutions, and one of these various pollutionswas the
water pollution caused by marine constructionworks (dredging and reclamationworks).
In the first half of 1970's, these works often broke out many troubles with fishermen
everywhere in our country.
In order to solvethese problems, Port Bureau of M. of Transport carried out many kinds
of intensive field investigation,together with The 1-5's Port Construction Bureaus, in
197374. And using these field studies etc., the 4's Bureau developed pre-forecasting
method of water pollution by marine construction works.
This report presents that we analyzedthe contents of these investigationsand determined
the index of water pollutionby works and created the table of the SS load per unit soil
volume handled by marine construction works.

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