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そうせい き

創世記
第一章
かみ てん ち そうぞう ち かたち
一はじめに神は天と地とを創造された。 二地は形なく、むなしく、やみが
ふち かみ れい みず
淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた。
かみ ひかり い ひかり かみ ひかり み
三神は﹁光あれ﹂と言われた。すると光があった。 四神はその光を見て、
よ かみ ひかり わ かみ ひかり ひる な
良 し と さ れ た。神 は そ の 光 と や み と を 分 け ら れ た。 五神 は 光 を 昼 と 名
よる な ゆう あさ だい にち
づけ、やみを夜と名づけられた。夕となり、また朝となった。第一日で
ある。
かみ い みず あいだ みず みず わ
六神はまた言われた、
﹁水の間におおぞらがあって、水と水とを分けよ﹂。
かみ つく した みず
七そのようになった。神はおおぞらを造って、おおぞらの下の水とおお
うえ みず わ かみ てん な
ぞ ら の 上 の 水 と を 分 け ら れ た。 八神 は そ の お お ぞ ら を 天 と 名 づ け ら れ
創世記

ゆう あさ だい にち
た。夕となり、また朝となった。第二日である。

0
かみ い てん した みず ひと ところ あつ ち あらわ
九神はまた言われた、
﹁天の下の水は一つ所に集まり、かわいた地が現れ
かみ ち りく な みず あつ
よ﹂。そのようになった。 一〇神はそのかわいた地を陸と名づけ、水の集
ところ うみ な かみ み よ かみ
まった所を海と名づけられた。神は見て、良しとされた。 一一神はまた
い ち あおくさ たね くさ しゅるい たね み
言われた、
﹁地は青草と、種をもつ草と、種類にしたがって種のある実を
むす か じゅ ち うえ ち あおくさ
結 ぶ 果樹 と を 地 の 上 に は え さ せ よ﹂。そ の よ う に な っ た。 一二地 は 青草
しゅるい たね くさ しゅるい たね み むす
と、種類にしたがって種をもつ草と、種類にしたがって種のある実を結
き かみ み よ ゆう あさ
ぶ木とをはえさせた。神は見て、良しとされた。 一三夕となり、また朝と
だい にち
なった。第三日である。
かみ い てん ひかり ひる よる わ
一四 神はまた言われた、
﹁天のおおぞらに光があって昼と夜とを分け、し
きせつ ひ とし てん
るしのため、季節のため、日のため、年のためになり、 一五天のおおぞら
ち て ひかり かみ おお
に あ っ て 地 を 照 ら す 光 と な れ﹂。そ の よ う に な っ た。 一六神 は 二 つ の 大
ひかり つく おお ひかり ひる ちい ひかり よる
きな光を造り、大きい光に昼をつかさどらせ、小さい光に夜をつかさど
ほし つく かみ てん お ち
らせ、また星を造られた。 一七神はこれらを天のおおぞらに置いて地を
創世記

て ひる よる ひかり わ
照らさせ、 一八昼と夜とをつかさどらせ、光とやみとを分けさせられた。

1
かみ み よ ゆう あさ だい にち
神は見て、良しとされた。 一九夕となり、また朝となった。第四日であ
る。
かみ い みず い もの む み とり ち うえ てん
二〇 神はまた言われた、
﹁水は生き物の群れで満ち、鳥は地の上、天のお
と かみ うみ おお けもの みず むら うご い
おぞらを飛べ﹂。 二一神は海の大いなる獣と、水に群がるすべての動く生
もの しゅるい そうぞう つばさ とり しゅるい
き物とを、種類にしたがって創造し、また翼のあるすべての鳥を、種類
そうぞう かみ み よ かみ
にしたがって創造された。神は見て、良しとされた。 二二神はこれらを
しゅくふく い う うみ みず み とり ち
祝 福して言われた、
﹁生めよ、ふえよ、海の水に満ちよ、また鳥は地に
ゆう あさ だい にち
ふえよ﹂。 二三夕となり、また朝となった。第五日である。
かみ い ち い もの しゅるい かちく
二四 神はまた言われた、﹁地は生き物を種類にしたがっていだせ。家畜
は ち けもの しゅるい
と、這うものと、地の獣とを種類にしたがっていだせ﹂。そのようになっ
かみ ち けもの しゅるい かちく しゅるい ち
た。 二五神は地の獣を種類にしたがい、家畜を種類にしたがい、また地に
は もの しゅるい つく かみ み よ
這うすべての物を種類にしたがって造られた。神は見て、良しとされ
た。
創世記

かみ い ひと
二六 神はまた言われた、
﹁われわれのかたちに、われわれにかたどって人

2
つく うみ うお そら とり かちく ち けもの ち
を造り、これに海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべての獣と、地の
は おさ かみ じぶん ひと
す べ て の 這 う も の と を 治 め さ せ よ う﹂。 二 七神 は 自分 の か た ち に 人 を
そうぞう かみ そうぞう おとこ おんな そうぞう
創造された。すなわち、神のかたちに創造し、 男と女とに創造された。
かみ かれ しゅくふく い う ち み ち
二八神は彼らを祝 福して言われた、
﹁生めよ、ふえよ、地に満ちよ、地を
したが うみ うお そら とり ち うご い もの おさ
従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治め
かみ い ぜん ち たね
よ﹂。 二九神はまた言われた、﹁わたしは全地のおもてにある種をもつす
くさ たね み むす き あた
べての草と、種のある実を結ぶすべての木とをあなたがたに与える。こ
しょくもつ ち けもの そら
れはあなたがたの食 物となるであろう。 三〇また地のすべての獣、空の
とり ち は いのち しょくもつ
すべての鳥、地を這うすべてのもの、すなわち命あるものには、食 物と
あおくさ あた かみ つく
し て す べ て の 青草 を 与 え る﹂。そ の よ う に な っ た。 三一神 が 造 っ た す べ
もの み よ ゆう
ての物を見られたところ、それは、はなはだ良かった。夕となり、また
あさ だい にち
朝となった。第六日である。
創世記

3
第二章
てん ち ばんしょう かんせい かみ だい にち さぎょう
一こうして天と地と、その万 象とが完成した。 二神は第七日にその作業
お さぎょう おわ だい にち やす
を終えられた。すなわち、そのすべての作業を終って第七日に休まれ
かみ だい にち しゅくふく せいべつ かみ ひ
た。 三神はその第七日を祝 福して、これを聖別された。神がこの日に、
そうぞう おわ やす
そのすべての創造のわざを終って休まれたからである。
て ん ち そうぞう ゆらい
四これが天地創造の由来である。
しゅ かみ ち てん つく とき ち の き の
主なる神が地と天とを造られた時、 五地にはまだ野の木もなく、また野
くさ しゅ かみ ち あめ ふ つち たがや
の草もはえていなかった。主なる神が地に雨を降らせず、また土を耕す
ひと ち いずみ つち ぜんめん
人 も な か っ た か ら で あ る。 六し か し 地 か ら 泉 が わ き あ が っ て 土 の 全面
うるお しゅ かみ つち ひと つく いのち いき はな ふ
を潤していた。 七主なる神は土のちりで人を造り、命の息をその鼻に吹
ひと い もの しゅ かみ ひがし
きいれられた。そこで人は生きた者となった。 八主なる神は東のかた、
その もう つく ひと お しゅ
エデンに一つの園を設けて、その造った人をそこに置かれた。 九また主
創世記

かみ み うつく た よ き つち さら
なる神は、見て美しく、食べるに良いすべての木を土からはえさせ、更

4
その ちゅうおう いのち き ぜんあく し き
に園の中 央に命の木と、善悪を知る木とをはえさせられた。 一〇また一
かわ なが で その うるお わか かわ
つの川がエデンから流れ出て園を潤し、そこから分れて四つの川となっ
だい な きん ぜん ち
た。 一一その第一の名はピソンといい、金のあるハビラの全地をめぐる
ち きん よ
もので、 一二その地の金は良く、またそこはブドラクと、しまめのうとを
さん だい かわ な ぜん ち
産した。 一三第二の川の名はギホンといい、クシの全地をめぐるもの。 一
だい かわ な ひがし なが だい
第三の川の名はヒデケルといい、アッスリヤの東を流れるもの。第四

かわ
の川はユフラテである。
しゅ かみ ひと つ い その お たがや
一五 主なる神は人を連れて行ってエデンの園に置き、これを耕させ、これ
まも しゅ かみ ひと めい い その
を守らせられた。 一六主なる神はその人に命じて言われた、
﹁あなたは園
き こころ と た ぜんあく
のどの木からでも心のままに取って食べてよろしい。 一七しかし善悪を
し き と た と た
知る木からは取って食べてはならない。それを取って食べると、きっと

死ぬであろう﹂。
しゅ かみ い ひと よ かれ
一八 また主なる神は言われた、
﹁人がひとりでいるのは良くない。彼のた
創世記

たす て つく しゅ かみ の
めに、ふさわしい助け手を造ろう﹂。 一九そして主なる神は野のすべての

5
けもの そら とり つち つく ひと つ かれ
獣と、空のすべての鳥とを土で造り、人のところへ連れてきて、彼がそ
な み ひと い もの あた な
れにどんな名をつけるかを見られた。人がすべて生き物に与える名は、
な ひと かちく そら とり
その名となるのであった。 二〇それで人は、すべての家畜と、空の鳥と、
の けもの な ひと たす て み
野のすべての獣とに名をつけたが、人にはふさわしい助け手が見つから
しゅ かみ ひと ふか ねむ ねむ とき
なかった。 二一そこで主なる神は人を深く眠らせ、眠った時に、そのあば
ぼね と ところ にく しゅ かみ ひと
ら骨の一つを取って、その所を肉でふさがれた。 二二主なる神は人から
と ぼね おんな つく ひと つ
取ったあばら骨でひとりの女を造り、人のところへ連れてこられた。 二三
ひと い
そのとき、人は言った。
ほね ほね
﹁これこそ、ついにわたしの骨の骨、
にく にく
わたしの肉の肉。
おとこ と
男から取ったものだから、
おんな な
これを女と名づけよう﹂。
ひと ちち はは はな つま むす あ いったい
二四 それで人はその父と母を離れて、妻と結び合い、一体となるのであ
創世記

ひと つま はだか は おも
る。 二五人とその妻とは、ふたりとも裸であったが、恥ずかしいとは思わ

6
なかった。
第三章
しゅ かみ つく の い もの もっと こうかつ
さて主なる神が造られた野の生き物のうちで、へびが最も狡猾であっ

おんな い その き と た
た。へびは女に言った、﹁園にあるどの木からも取って食べるなと、ほん
かみ い おんな い その
とうに神が言われたのですか﹂。 二 女はへびに言った、
﹁わたしたちは園
き み た ゆる その ちゅうおう き
の木の実を食べることは許されていますが、 三ただ園の中 央にある木
み と た ふ し
の実については、これを取って食べるな、これに触れるな、死んではい
かみ い おんな い
けないからと、神は言われました﹂。 四へびは女に言った、
﹁あなたがた
けっ し た め
は決して死ぬことはないでしょう。 五それを食べると、あなたがたの目
ひら かみ ぜんあく し もの かみ し
が開け、神のように善悪を知る者となることを、神は知っておられるの
おんな き み た よ め うつく かしこ
です﹂。 六 女がその木を見ると、それは食べるに良く、目には美しく、賢
創世記

この おも み と た とも
くなるには好ましいと思われたから、その実を取って食べ、また共にい

7
おっと あた かれ た め ひら じぶん
た夫にも与えたので、彼も食べた。 七すると、ふたりの目が開け、自分
はだか は あ
たちの裸であることがわかったので、いちじくの葉をつづり合わせて、
こし ま
腰に巻いた。
かれ ひ すず かぜ ふ その なか しゅ かみ あゆ おと
彼らは、日の涼しい風の吹くころ、園の中に主なる神の歩まれる音を

き ひと つま しゅ かみ かお さ その き あいだ
聞いた。そこで、人とその妻とは主なる神の顔を避けて、園の木の間に
み かく しゅ かみ ひと よ い
身を隠した。 九主なる神は人に呼びかけて言われた、﹁あなたはどこに
かれ こた その なか あゆ おと き
いるのか﹂。 一〇彼は答えた、
﹁園の中であなたの歩まれる音を聞き、わた
はだか おそ み かく かみ い
しは裸だったので、恐れて身を隠したのです﹂。 一一神は言われた、
﹁あな
はだか し た めい き
たが裸であるのを、だれが知らせたのか。食べるなと、命じておいた木
と た ひと こた いっしょ
から、あなたは取って食べたのか﹂。 一二人は答えた、
﹁わたしと一緒にし
おんな き と た
てくださったあの女が、木から取ってくれたので、わたしは食べたので
しゅ かみ おんな い
す﹂。 一三そこで主なる神は女に言われた、
﹁あなたは、なんということを
おんな こた
したのです﹂。 女は答えた、﹁へびがわたしをだましたのです。それで
創世記

た しゅ かみ い
わたしは食べました﹂。 一四主なる神はへびに言われた、

8
こと
﹁おまえは、この事を、したので、
かちく の けもの
すべての家畜、野のすべての獣のうち、
もっと
最ものろわれる。
はら は
おまえは腹で、這いあるき、
いっしょう た
一 生、ちりを食べるであろう。
うら
わたしは恨みをおく、
一五
おんな
おまえと女とのあいだに、
おんな あいだ
おまえのすえと女のすえとの間に。
かれ くだ
彼はおまえのかしらを砕き、
かれ くだ
おまえは彼のかかとを砕くであろう﹂。
おんな い
つぎに女に言われた、
一六
う くる おお ま
﹁わたしはあなたの産みの苦しみを大いに増す。
くる こ う
あなたは苦しんで子を産む。
創世記

おっと した
それでもなお、あなたは夫を慕い、

9
かれ おさ
彼はあなたを治めるであろう﹂。
さら ひと い つま ことば き た
更に人に言われた、
一七 ﹁あなたが妻の言葉を聞いて、食べるなと、わた
めい き と た
しが命じた木から取って食べたので、

地はあなたのためにのろわれ、
いっしょう くる ち しょくもつ と
あなたは一 生、苦しんで地から食 物を取る。
ち しょう
一八 地はあなたのために、いばらとあざみとを生じ、
の くさ た
あなたは野の草を食べるであろう。
かお あせ た つち かえ
一九 あなたは顔に汗してパンを食べ、ついに土に帰る、
つち と
あなたは土から取られたのだから。
かえ
あなたは、ちりだから、ちりに帰る﹂。
ひと つま な な かのじょ い もの
さて、人はその妻の名をエバと名づけた。彼女がすべて生きた者の
二〇
はは しゅ かみ ひと つま かわ きもの つく
母だからである。 二一主なる神は人とその妻とのために皮の着物を造っ
かれ き
て、彼らに着せられた。
創世記

しゅ かみ い み ひと
主なる神は言われた、﹁見よ、人はわれわれのひとりのようになり、
二二

10
ぜんあく し かれ て の いのち き と た
善悪 を 知 る も の と な っ た。彼 は 手 を 伸 べ、 命 の 木 か ら も 取 っ て 食 べ、
えいきゅう い し しゅ かみ かれ その
永 久に生きるかも知れない﹂。 二三そこで主なる神は彼をエデンの園か
お だ ひと つく つち たがや かみ ひと お
ら追い出して、人が造られたその土を耕させられた。 二四神は人を追い
だ その ひがし まわ ほのお お いのち
出し、エデンの園の東に、ケルビムと、回る炎のつるぎとを置いて、 命
き みち まも
の木の道を守らせられた。
第四章
ひと つま し かのじょ う い
一人はその妻エバを知った。彼女はみごもり、カインを産んで言った、
しゅ ひと え かのじょ おとうと
﹁わたしは主によって、ひとりの人を得た﹂。 二彼女はまた、その弟 アベ
う ひつじ か もの つち たがや もの
ルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となっ
ひ ち さんぶつ も しゅ そな もの
た。 三日がたって、カインは地の産物を持ってきて、主に供え物とした。
む こ も しゅ
四アベルもまた、その群れのういごと肥えたものとを持ってきた。主は
創世記

そな もの かえり そな もの
ア ベ ル と そ の 供 え 物 と を 顧 み ら れ た。 五し か し カ イ ン と そ の 供 え 物 と

11
かえり おお いきどお かお ふ
は顧みられなかったので、カインは大いに憤 って、顔を伏せた。 六そこ
しゅ い いきどお かお ふ
で主はカインに言われた、﹁なぜあなたは憤るのですか、なぜ顔を伏せる
ただ こと かお
のですか。 七正しい事をしているのでしたら、顔をあげたらよいでしょ
ただ こと つみ かどぐち ま ぶ
う。もし正しい事をしていないのでしたら、罪が門口に待ち伏せていま
した もと おさ
す。それはあなたを慕い求めますが、あなたはそれを治めなければなり
ません﹂。
おとうと い のはら い かれ の
八カインは弟 アベルに言った、
﹁さあ、野原へ行こう﹂。彼らが野にいた
おとうと た ころ しゅ
とき、カインは弟 アベルに立ちかかって、これを殺した。 九主はカイン
い おとうと こた し
に言われた、
﹁弟 アベルは、どこにいますか﹂。カインは答えた、
﹁知り
おとうと ばんにん しゅ い
ません。わたしが弟の番人でしょうか﹂。 一〇主は言われた、﹁あなたは
なに おとうと ち こえ つち なか さけ
何をしたのです。あなたの弟の血の声が土の中からわたしに叫んでい
いま と ち はな
ま す。 一一今 あ な た は の ろ わ れ て こ の 土地 を 離 れ な け れ ば な り ま せ ん。
と ち くち て おとうと ち う
この土地が口をあけて、あなたの手から弟の血を受けたからです。 一二
創世記

と ち たがや と ち み むす
あなたが土地を耕しても、土地は、もはやあなたのために実を結びませ

12
ちじょう ほうろうしゃ しゅ い
ん。あなたは地上の放浪者となるでしょう﹂。 一三カインは主に言った、
ばつ おも お
﹁わたしの罰は重くて負いきれません。 一四あなたは、きょう、わたしを
ち ついほう はな ちじょう
地 の お も て か ら 追放 さ れ ま し た。わ た し は あ な た を 離 れ て、地上 の
ほうろうしゃ み つ ひと
放浪者とならねばなりません。わたしを見付ける人はだれでもわたし
ころ しゅ い
を殺すでしょう﹂。 一五主はカインに言われた、
﹁いや、そうではない。だ
ころ もの ばい ふくしゅう う しゅ
れ で も カ イ ン を 殺 す 者 は 七 倍 の 復 讐 を 受 け る で し ょ う﹂。そ し て 主 は
み つ もの かれ う ころ かれ
カインを見付ける者が、だれも彼を打ち殺すことのないように、彼に一
しゅ まえ さ ひがし
つのしるしをつけられた。 一六カインは主の前を去って、エデンの東、ノ
ち す
ドの地に住んだ。
つま し かのじょ う
一七 カインはその妻を知った。彼女はみごもってエノクを産んだ。カイ
まち た まち な こ な な
ンは町を建て、その町の名をその子の名にしたがって、エノクと名づけ
うま こ
た。 一八エノクにはイラデが生れた。イラデの子はメホヤエル、メホヤ
こ こ
エルの子はメトサエル、メトサエルの子はレメクである。 一九レメクは
創世記

つま な な
ふたりの妻をめとった。ひとりの名はアダといい、ひとりの名はチラと

13
う かれ てんまく す かちく か もの
いった。 二〇アダはヤバルを産んだ。彼は天幕に住んで、家畜を飼う者
せんぞ おとうと な かれ こと ふえ と
の先祖となった。 二一その弟の名はユバルといった。彼は琴や笛を執る
もの せんぞ う かれ
すべての者の先祖となった。 二二チラもまたトバルカインを産んだ。彼
せいどう てつ はもの きた もの いもうと
は青銅や鉄のすべての刃物を鍛える者となった。トバルカインの妹を
ナアマといった。
つま い
二三 レメクはその妻たちに言った、
こえ き
﹁アダとチラよ、わたしの声を聞け、
つま ことば みみ かたむ
レメクの妻たちよ、わたしの言葉に耳を傾けよ。
う きず ひと ころ
わたしは受ける傷のために、人を殺し、
う う きず わかもの ころ
受ける打ち傷のために、わたしは若者を殺す。
ふくしゅう ばい
二四 カインのための復 讐が七倍ならば、
ふくしゅう ばい
レメクのための復 讐は七十七倍﹂。
つま し かのじょ おとこ こ う な
アダムはまたその妻を知った。彼女は男の子を産み、その名をセツ
二五
創世記

な い ころ かみ かわ
と名づけて言った、﹁カインがアベルを殺したので、神はアベルの代り

14
こ さづ おとこ こ
に、ひとりの子をわたしに授けられました﹂。 二六セツにもまた男の子が
うま かれ な な とき ひとびと しゅ な よ
生れた。彼はその名をエノスと名づけた。この時、人々は主の名を呼び
はじ
始めた。
第五章
けいず つぎ かみ ひと そうぞう とき かみ
アダムの系図は次のとおりである。神が人を創造された時、神をかた

つく かれ おとこ おんな そうぞう かれ そうぞう とき かみ
どって造り、 二彼らを男と女とに創造された。彼らが創造された時、神
かれ しゅくふく な な
は彼らを祝 福して、その名をアダムと名づけられた。 三アダムは百三十
さい じぶん じぶん おとこ こ う
歳になって、自分にかたどり、自分のかたちのような男の子を生み、そ
な な う のち い とし ねん
の名をセツと名づけた。 四アダムがセツを生んで後、生きた年は八百年
だんし じょ し う い とし あ
であって、ほかに男子と女子を生んだ。 五アダムの生きた年は合わせて
さい かれ し
九百三十歳であった。そして彼は死んだ。
創世記

さい う う のち
セツは百五歳になって、エノスを生んだ。 七セツはエノスを生んだ後、

15
ねん い だんし じょ し う とし あ
八百七年生きて、男子と女子を生んだ。 八セツの年は合わせて九百十二
さい かれ し
歳であった。そして彼は死んだ。
さい う
エノスは九十歳になって、カイナンを生んだ。 一〇エノスはカイナン

う のち ねん い だんし じょ し う とし
を生んだ後、八百十五年生きて、男子と女子を生んだ。 一一エノスの年は
あ さい かれ し
合わせて九百五歳であった。そして彼は死んだ。
さい う
一二 カイナンは七十歳になって、マハラレルを生んだ。 一三カイナンはマ
う のち ねん い だんし じょ し う
ハラレルを生んだ後、八百四十年生きて、男子と女子を生んだ。 一四カイ
とし あ さい かれ し
ナンの年は合わせて九百十歳であった。そして彼は死んだ。
さい う
一五 マハラレルは六十五歳になって、ヤレドを生んだ。 一六マハラレルは
う のち ねん い だんし じょ し う
ヤレドを生んだ後、八百三十年生きて、男子と女子を生んだ。 一七マハラ
とし あ さい かれ し
レルの年は合わせて八百九十五歳であった。そして彼は死んだ。 一八ヤ
さい う う
レドは百六十二歳になって、エノクを生んだ。 一九ヤレドはエノクを生
のち ねん い だんし じょ し う とし あ
んだ後、八百年生きて、男子と女子を生んだ。 二〇ヤレドの年は合わせて
創世記

さい かれ し
九百六十二歳であった。そして彼は死んだ。

16
さい う
二一エノクは六十五歳になって、メトセラを生んだ。 二二エノクはメトセ
う のち ねん かみ あゆ だんし じょ し う
ラを生んだ後、三百年、神とともに歩み、男子と女子を生んだ。 二三エノ
とし あ さい かみ あゆ
ク の 年 は 合 わ せ て 三 百 六 十 五 歳 で あ っ た。 二四エ ノ ク は 神 と と も に 歩
かみ かれ と
み、神が彼を取られたので、いなくなった。
さい う
二五メトセラは百八十七歳になって、レメクを生んだ。 二六メトセラはレ
う のち ねん い だんし じょ し う
メクを生んだ後、七百八十二年生きて、男子と女子を生んだ。 二七メトセ
とし あ さい かれ し
ラの年は合わせて九百六十九歳であった。そして彼は死んだ。
さい おとこ こ う こ しゅ
二八レメクは百八十二歳になって、 男の子を生み、 二九﹁この子こそ、主
ち ほねお はたら なぐさ い
が地をのろわれたため、骨折り働くわれわれを慰めるもの﹂と言って、そ
な な う のち ねん い
の名をノアと名づけた。 三〇レメクはノアを生んだ後、五百九十五年生
だんし じょ し う とし あ さい
きて、男子と女子を生んだ。 三一レメクの年は合わせて七百七十七歳で
かれ し
あった。そして彼は死んだ。
さい う
三二ノアは五百歳になって、セム、ハム、ヤペテを生んだ。
創世記

17
第六章
ひと ち はじ むすめ かれ うま とき かみ こ
一人が地のおもてにふえ始めて、 娘たちが彼らに生れた時、 二神の子た
ひと むすめ うつく み じぶん この もの つま
ちは人の娘たちの美しいのを見て、自分の好む者を妻にめとった。 三そ
しゅ い れい ひと なか かれ
こで主は言われた、﹁わたしの霊はながく人の中にとどまらない。彼は
にく かれ とし ねん
肉にすぎないのだ。しかし、彼の年は百二十年であろう﹂。 四そのころ、
のち ち かみ こ ひと むすめ
またその後にも、地にネピリムがいた。これは神の子たちが人の娘たち
むすめ う かれ むかし ゆうし
のところにはいって、 娘たちに産ませたものである。彼らは昔の勇士
ゆうめい ひとびと
であり、有名な人々であった。
しゅ ひと あく ち こころ おも
五主は人の悪が地にはびこり、すべてその心に思いはかることが、いつ
わる こと み しゅ ち うえ ひと つく
も 悪 い 事 ば か り で あ る の を 見 ら れ た。 六主 は 地 の 上 に 人 を 造 っ た の を
く こころ いた そうぞう ひと ち さ
悔いて、 心を痛め、 七﹁わたしが創造した人を地のおもてからぬぐい去
ひと けもの は そら とり つく
ろう。人も獣も、這うものも、空の鳥までも。わたしは、これらを造っ
創世記

く い しゅ まえ めぐ え
たことを悔いる﹂と言われた。 八しかし、ノアは主の前に恵みを得た。

18
けいず つぎ じだい ひとびと なか ただ
ノアの系図は次のとおりである。ノアはその時代の人々の中で正し

まった ひと かみ あゆ
く、かつ全き人であった。ノアは神とともに歩んだ。 一〇ノアはセム、ハ
にん こ う
ム、ヤペテの三人の子を生んだ。
とき よ かみ まえ みだ ぼうぎゃく ち み かみ ち み
一一 時に世は神の前に乱れて、暴 虐が地に満ちた。 一二神が地を見られる
みだ ひと ち うえ みち みだ
と、それは乱れていた。すべての人が地の上でその道を乱したからであ
かみ い ひと た
る。 一三そこで神はノアに言われた、
﹁わたしは、すべての人を絶やそう
けっしん かれ ち ぼうぎゃく み かれ ち
と決心した。彼らは地を暴 虐で満たしたから、わたしは彼らを地とと
ほろ き はこぶね つく はこぶね なか
もに滅ぼそう。 一四あなたは、いとすぎの木で箱舟を造り、箱舟の中にへ
もう ぬ つく かた
やを設け、アスファルトでそのうちそとを塗りなさい。 一五その造り方
つぎ はこぶね なが はば
は次のとおりである。すなわち箱舟の長さは三百キュビト、幅は五十
たか はこぶね や ね つく うえ
キュビト、高さは三十キュビトとし、 一六箱舟に屋根を造り、上へ一キュ
し あ はこぶね とぐち よこ もう かい かい
ビトにそれを仕上げ、また箱舟の戸口をその横に設けて、一階と二階と
かい はこぶね つく ち うえ こうずい おく いのち
三階のある箱舟を造りなさい。 一七わたしは地の上に洪水を送って、 命
創世記

いき にく てん した ほろ さ ち
の息のある肉なるものを、みな天の下から滅ぼし去る。地にあるもの

19
し た けいやく むす
は、みな死に絶えるであろう。 一八ただし、わたしはあなたと契約を結ぼ
こ つま こ つま とも はこぶね
う。あなたは子らと、妻と、子らの妻たちと共に箱舟にはいりなさい。 一
い もの にく なか
またすべての生き物、すべての肉なるものの中から、それぞれ二つず

はこぶね い とも いのち たも おす
つを箱舟に入れて、あなたと共にその命を保たせなさい。それらは雄と
めす とり しゅるい けもの
雌とでなければならない。 二〇すなわち、鳥はその種類にしたがい獣は
しゅるい ち は しゅるい
その種類にしたがい、また地のすべての這うものも、その種類にした
い いのち たも
がって、それぞれ二つずつ、あなたのところに入れて、 命を保たせなさ
しょくもつ
い。 二一また、すべての食 物となるものをとって、あなたのところにたく
しょくもつ かみ
わえ、あなたとこれらのものとの食 物としなさい﹂。 二二ノアはすべて神
めい
の命じられたようにした。
第七章
創世記

しゅ い かぞく はこぶね
一主はノアに言われた、﹁あなたと家族とはみな箱舟にはいりなさい。

20
じだい ひとびと なか まえ ただ ひと
あなたがこの時代の人々の中で、わたしの前に正しい人であるとわたし
みと きよ けもの なか おす めす
は 認 め た か ら で あ る。 二あ な た は す べ て の 清 い 獣 の 中 か ら 雄 と 雌 と を
と きよ けもの なか おす めす と そら
七つずつ取り、清くない獣の中から雄と雌とを二つずつ取り、 三また空
とり なか おす めす と しゅるい ぜん ち い
の鳥の中から雄と雌とを七つずつ取って、その種類が全地のおもてに生
のこ なぬか のち にち や ち あめ
き残るようにしなさい。 四七日の後、わたしは四十日四十夜、地に雨を
ふ つく い もの ち さ
降らせて、わたしの造ったすべての生き物を、地のおもてからぬぐい去
しゅ めい
ります﹂。 五ノアはすべて主が命じられたようにした。
こうずい ち た とき さい こ つま
六さて洪水が地に起った時、ノアは六百歳であった。 七ノアは子らと、妻
こ つま とも こうずい さ はこぶね きよ けもの
と、子 ら の 妻 た ち と 共 に 洪水 を 避 け て 箱舟 に は い っ た。 八ま た 清 い 獣
きよ けもの とり ち は おす めす
と、清くない獣と、鳥と、地に這うすべてのものとの、 九雄と雌とが、二
かみ めい はこぶね
つずつノアのもとにきて、神がノアに命じられたように箱舟にはいっ
なぬか のち こうずい ち た
た。 一〇こうして七日の後、洪水が地に起った。
さい がつ にち ひ おお ふち
一一 それはノアの六百歳の二月十七日であって、その日に大いなる淵の
創世記

みなもと やぶ てん まど ひら あめ にち や ち ふ
源は、ことごとく破れ、天の窓が開けて、 一二雨は四十日四十夜、地に降

21
そそ おな ひ こ
り注いだ。 一三その同じ日に、ノアと、ノアの子セム、ハム、ヤペテと、
つま こ にん つま とも はこぶね
ノアの妻と、その子らの三人の妻とは共に箱舟にはいった。 一四またす
しゅるい けもの しゅるい かちく ち しゅるい は
べての種類の獣も、すべての種類の家畜も、地のすべての種類の這うも
しゅるい とり つばさ みな
のも、すべての種類の鳥も、すべての翼あるものも、皆はいった。 一五す
いのち いき にく
なわち命の息のあるすべての肉なるものが、二つずつノアのもとにき
はこぶね にく おす
て、箱舟にはいった。 一六そのはいったものは、すべて肉なるものの雄と
めす かみ かれ めい しゅ かれ
雌とであって、神が彼に命じられたようにはいった。そこで主は彼のう
と と
しろの戸を閉ざされた。
こうずい にち ちじょう みず ま はこぶね うか
一七 洪水 は 四 十 日 の あ い だ 地上 に あ っ た。水 が 増 し て 箱舟 を 浮 べ た の
はこぶね ち たか あ みず ち ま
で、箱舟は地から高く上がった。 一八また水がみなぎり、地に増したの
はこぶね みず ただよ みず ち
で、箱舟は水のおもてに漂 った。 一九水はまた、ますます地にみなぎり、
てん した たか やまやま みな みず うえ
天の下の高い山々は皆おおわれた。 二〇水はその上、さらに十五キュビ
やまやま まった ち うえ うご にく
トみなぎって、山々は全くおおわれた。 二一地の上に動くすべて肉なる
創世記

とり かちく けもの ち むら は ひと
ものは、鳥も家畜も獣も、地に群がるすべての這うものも、すべての人

22
ほろ はな いのち いき りく
もみな滅びた。 二二すなわち鼻に命の息のあるすべてのもの、陸にいた
し ち い もの ひと
すべてのものは死んだ。 二三地のおもてにいたすべての生き物は、人も
かちく は そら とり ち さ
家畜も、這うものも、空の鳥もみな地からぬぐい去られて、ただノアと、
かれ とも はこぶね のこ みず にち ちじょう
彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 二四水は百五十日のあいだ地上
にみなぎった。
第八章
かみ はこぶね なか い もの かちく こころ
一神はノアと、箱舟の中にいたすべての生き物と、すべての家畜とを心
かみ かぜ ち うえ ふ みず しりぞ
にとめられた。神が風を地の上に吹かせられたので、水は退いた。 二ま
ふち みなもと てん まど と てん あめ ふ
た淵の源と、天の窓とは閉ざされて、天から雨が降らなくなった。 三そ
みず ち うえ ひ にち のち みず へ
れ で 水 は し だ い に 地 の 上 か ら 引 い て、百 五 十 日 の 後 に は 水 が 減 り、 四
はこぶね がつ にち やま みず へ
箱舟 は 七 月 十 七 日 に ア ラ ラ テ の 山 に と ど ま っ た。 五水 は し だ い に 減 っ
創世記

がつ がつ にち やまやま いただき あらわ


て、十月になり、十月一日に山々の頂が現れた。

23
にち つく はこぶね まど ひら はな
六四十日たって、ノアはその造った箱舟の窓を開いて、 七からすを放っ
ち うえ みず と
たところ、からすは地の上から水がかわききるまで、あちらこちらへ飛
ち みず み
びまわった。 八ノアはまた地のおもてから、水がひいたかどうかを見よ
かれ ところ はな あし うら ところ み
うと、彼の所から、はとを放ったが、 九はとは足の裏をとどめる所が見
はこぶね かえ みず ぜん ち
つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰ってきた。水がまだ全地の
かれ て の とら はこぶね なか
おもてにあったからである。彼は手を伸べて、これを捕え、箱舟の中の
かれ ひ い なぬか ま ふたた はこぶね
彼 の も と に 引 き 入 れ た。 一 〇そ れ か ら 七日待 っ て 再 び は と を 箱舟 か ら
はな ゆうがた かれ かえ み
放った。 一一はとは夕方になって彼のもとに帰ってきた。見ると、その
わかば ち みず
くちばしには、オリブの若葉があった。ノアは地から水がひいたのを
し なぬか ま はな かれ
知った。 一二さらに七日待ってまた、はとを放ったところ、もはや彼のも
かえ
とには帰ってこなかった。
さい がつ にち ち うえ みず はこぶね
一三 六百一歳の一月一日になって、地の上の水はかれた。ノアが箱舟の
と のぞ み つち がつ
おおいを取り除いて見ると、土のおもては、かわいていた。 一四二月二十
創世記

にち ち まった とき かみ い
七日になって、地は全くかわいた。 一五この時、神はノアに言われた、 一

24
つま こ こ つま とも はこぶね で
﹁あなたは妻と、子らと、子らの妻たちと共に箱舟を出なさい。 一七あ

とも にく い もの とり かちく ち
なたは、共にいる肉なるすべての生き物、すなわち鳥と家畜と、地のす
は つ で ち むら ち うえ
べての這うものとを連れて出て、これらのものが地に群がり、地の上に
ひろ とも こ つま こ
ふえ広がるようにしなさい﹂。 一八ノアは共にいた子らと、妻と、子らの
つま つ で けもの は
妻たちとを連れて出た。 一九またすべての獣、すべての這うもの、すべて
とり ち うえ うご みな しゅるい はこぶね で
の鳥、すべて地の上に動くものは皆、種類にしたがって箱舟を出た。
しゅ さいだん きず きよ けもの きよ とり
二〇 ノアは主に祭壇を築いて、すべての清い獣と、すべての清い鳥とのう
と はんさい さいだん うえ しゅ こう
ちから取って、燔祭を祭壇の上にささげた。 二一主はその香ばしいかお
こころ い ど ひと ち
りをかいで、 心に言われた、
﹁わたしはもはや二度と人のゆえに地をの
ひと こころ おも はか おさな とき わる
ろわない。人が心に思い図ることは、 幼い時から悪いからである。わ
ど い ほろ
たしは、このたびしたように、もう二度と、すべての生きたものを滅ぼ
ち かぎ たね とき かりい とき あつ さむ
さない。 二二地のある限り、種まきの時も、刈入れの時も、暑さ寒さも、
なつふゆ ひる よる
夏冬も、昼も夜もやむことはないであろう﹂。
創世記

25
第九章
かみ こ しゅくふく かれ い う
神はノアとその子らとを祝 福して彼らに言われた、
一 ﹁生めよ、ふえよ、
ち み ち けもの そら とり ち は
地に満ちよ。 二地のすべての獣、空のすべての鳥、地に這うすべてのも
うみ うお おそ しはい ふく
の、海のすべての魚は恐れおののいて、あなたがたの支配に服し、 三す
い うご しょくもつ あおくさ
べて生きて動くものはあなたがたの食 物となるであろう。さきに青草
あた みな
をあなたがたに与えたように、わたしはこれらのものを皆あなたがたに
あた にく いのち ち た
与える。 四しかし肉を、その命である血のままで、食べてはならない。 五
いのち ち なが かなら ほうふく
あなたがたの命の血を流すものには、わたしは必ず報復するであろう。
けもの ほうふく きょうだい ひと ひと いのち
いかなる獣にも報復する。 兄 弟である人にも、わたしは人の命のため
ほうふく
に、報復するであろう。
ひと ち なが ひと ち なが
人の血を流すものは、人に血を流される、

かみ じぶん ひと つく
神が自分のかたちに人を造られたゆえに。
創世記


あなたがたは、生めよ、ふえよ、

26
ち むら ち うえ
地に群がり、地の上にふえよ﹂。
かみ とも こ い およ
八神はノアおよび共にいる子らに言われた、 九﹁わたしはあなたがた及
のち しそん けいやく た とも
びあなたがたの後の子孫と契約を立てる。 一〇またあなたがたと共にい
い もの とも とり かちく ち けもの
るすべての生き物、あなたがたと共にいる鳥、家畜、地のすべての獣、す
はこぶね で ち けもの
なわち、すべて箱舟から出たものは、地のすべての獣にいたるまで、わ
けいやく た た
た し は そ れ と 契約 を 立 て よ う。 一一わ た し が あ な た が た と 立 て る こ の
けいやく にく もの こうずい ほろ
契約により、すべて肉なる者は、もはや洪水によって滅ぼされることは
ち ほろ こうずい ふたた おこ かみ
なく、また地を滅ぼす洪水は、 再び起らないであろう﹂。 一二さらに神は
い およ とも
言われた、﹁これはわたしと、あなたがた及びあなたがたと共にいるすべ
い もの あいだ よ よ た けいやく
ての生き物との間に代々かぎりなく、わたしが立てる契約のしるしであ
くも なか お ち
る。 一三すなわち、わたしは雲の中に、にじを置く。これがわたしと地と
あいだ けいやく くも ち うえ おこ
の間の契約のしるしとなる。 一四わたしが雲を地の上に起すとき、にじ
くも なか あらわ およ
は雲の中に現れる。 一五こうして、わたしは、わたしとあなたがた、及び
創世記

にく い もの あいだ た けいやく おも みず
すべて肉なるあらゆる生き物との間に立てた契約を思いおこすゆえ、水

27
にく もの ほろ こうずい くも
はふたたび、すべて肉なる者を滅ぼす洪水とはならない。 一六にじが雲
なか あらわ み かみ ちじょう にく
の中に現れるとき、わたしはこれを見て、神が地上にあるすべて肉なる
い もの あいだ た えいえん けいやく おも
あらゆる生き物との間に立てた永遠の契約を思いおこすであろう﹂。 一七
かみ い ち にく
そして神はノアに言われた、﹁これがわたしと地にあるすべて肉なるも
あいだ た けいやく
のとの間に、わたしが立てた契約のしるしである﹂。
はこぶね で こ
一八 箱舟から出たノアの子らはセム、ハム、ヤペテであった。ハムはカナ
ちち にん こ ぜん ち たみ かれ で
ンの父である。 一九この三人はノアの子らで、全地の民は彼らから出て、
ひろ
広がったのである。
のうふ はたけ はじ かれ
二〇 さてノアは農夫となり、ぶどう畑をつくり始めたが、 二一彼はぶどう
しゅ の よ てんまく なか はだか ちち ちち
酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 二二カナンの父ハムは父
はだか み そと きょうだい つ
の 裸 を 見 て、外 に い る ふ た り の 兄 弟 に 告 げ た。 二三セ ム と ヤ ペ テ と は
きもの と かた む あゆ よ ちち はだか かお
着物を取って、肩にかけ、うしろ向きに歩み寄って、父の裸をおおい、顔
ちち はだか み よ すえ
をそむけて父の裸を見なかった。 二四やがてノアは酔いがさめて、末の
創世記

こ かれ こと し かれ い
子が彼にした事を知ったとき、 二五彼は言った、

28
﹁カナンはのろわれよ。
かれ
彼はしもべのしもべとなって、
きょうだい つか
その兄 弟たちに仕える﹂。

また言った、
二六
かみ しゅ
﹁セムの神、主はほむべきかな、
カナンはそのしもべとなれ。
かみ おお
神はヤペテを大いならしめ、
二七
てんまく かれ す
セムの天幕に彼を住まわせられるように。
カナンはそのしもべとなれ﹂。
こうずい のち ねん い とし あ
ノアは洪水の後、なお三百五十年生きた。 二九ノアの年は合わせて九
二八
さい かれ し
百五十歳であった。そして彼は死んだ。
創世記

29
第一〇章
こ けいず つぎ こうずい のち かれ
ノアの子セム、ハム、ヤペテの系図は次のとおりである。洪水の後、彼

こ うま しそん
らに子が生れた。 二ヤペテの子孫はゴメル、マゴグ、マダイ、ヤワン、ト
しそん
バル、メセク、テラスであった。 三ゴメルの子孫はアシケナズ、リ
しそん
パテ、トガルマ。 四ヤワンの子孫はエリシャ、タルシシ、キッテム、ド
うみぞ ち こくみん わか
ダニムであった。 五これらから海沿いの地の国民が分れて、おのおのそ
と ち げんご しぞく くにぐに
の土地におり、その言語にしたがい、その氏族にしたがって、その国々

に住んだ。
しそん しそん
ハムの子孫はクシ、ミツライム、プテ、カナンであった。 七クシの子孫

しそん
はセバ、ハビラ、サブタ、ラアマ、サブテカであり、ラアマの子孫はシ

バとデダンであった。 八クシの子はニムロデであって、このニムロデは
よ けんりょくしゃ さいしょ ひと かれ しゅ まえ ちから しゅりょうしゃ
世の権 力 者となった最初の人である。 九彼は主の前に力ある狩 猟 者で
創世記

しゅ まえ ちから しゅりょうしゃ
あった。これから﹁主の前に力ある狩 猟 者 ニムロデのごとし﹂というこ

30
た かれ くに さいしょ ち
とわざが起った。 一〇彼の国は最初シナルの地にあるバベル、エレク、ア
かれ ち で
カデ、カルネであった。 一一彼はその地からアッスリヤに出て、ニネベ、
あいだ おお まち
レホボテイリ、カラ、一二およびニネベとカラとの間にある大いなる町レ
た ぞく ぞく ぞく
センを建てた。 一三ミツライムからルデ族、アナミ族、レハビ族、ナフト
ぞく ぞく ぞく ぞく で ぞく
族、 一四パテロス族、カスル族、カフトリ族が出た。カフトリ族からペリ
ぞく で
シテ族が出た。
ちょうし で で た
一五 カナンからその長子シドンが出て、またヘテが出た。 一六その他エブ
スびと、アモリびと、ギルガシびと、 一七ヒビびと、アルキびと、セニび
で のち
と、 一八アルワデびと、ゼマリびと、ハマテびとが出た。後になってカナ
しぞく さかい
ンびとの氏族がひろがった。 一九カナンびとの境はシドンからゲラルを
へ いた へ
経てガザに至り、ソドム、ゴモラ、アデマ、ゼボイムを経て、レシャに
およ しそん しぞく げんご
及んだ。 二〇これらはハムの子孫であって、その氏族とその言語とにし
と ち くにぐに
たがって、その土地と、その国々にいた。
創世記

こ うま しそん せんぞ
二一 セ ム に も 子 が 生 れ た。セ ム は エ ベ ル の す べ て の 子孫 の 先祖 で あ っ

31
あに しそん
て、ヤペテの兄であった。 二二セムの子孫はエラム、アシュル、アルパク
しそん
サデ、ルデ、アラムであった。 二三アラムの子孫はウヅ、ホル、ゲテル、
こ こ
マシであった。 二四アルパクサデの子はシラ、シラの子はエベルである。
こ うま な
二五 エベルにふたりの子が生れた。そのひとりの名をペレグといった。
かれ よ ち たみ わか おとうと な
これは彼の代に地の民が分れたからである。その弟の名をヨクタンと
いった。 二六ヨクタンにアルモダデ、シャレフ、ハザルマウテ、エラ、 二
ハドラム、ウザル、デクラ、 二八オバル、アビマエル、シバ、 二九オフル、

うま みな こ かれ
ハビラ、ヨバブが生れた。これらは皆ヨクタンの子であった。 三〇彼ら
す ところ ひがし さんち およ
が住んだ所はメシャから東の山地セパルに及んだ。 三一これらはセムの
しそん しぞく げんご と ち
子孫であって、その氏族とその言語とにしたがって、その土地と、その
くにぐに
国々にいた。
こ しぞく けっとう くにぐに す
三二 これらはノアの子らの氏族であって、血統にしたがって国々に住ん
こうずい のち ちじょう しょこくみん わか
でいたが、洪水の後、これらから地上の諸国民が分れたのである。
創世記

32
第一一章
ぜん ち おな はつおん おな ことば とき ひとびと ひがし うつ
一全地は同じ発音、同じ言葉であった。 二時に人々は東に移り、シナルの
ち へいや え す かれ たがい い
地に平野を得て、そこに住んだ。 三彼らは互に言った、
﹁さあ、れんがを
つく や かれ いし かわ え
造って、よく焼こう﹂。こうして彼らは石の代りに、れんがを得、しっく
かわ え かれ い まち とう
いの代りに、アスファルトを得た。 四彼らはまた言った、
﹁さあ、町と塔
た いただき てん とど な あ
とを建てて、その頂を天に届かせよう。そしてわれわれは名を上げて、
ぜん ち ち まぬか とき しゅ くだ ひと こ
全地のおもてに散るのを免れよう﹂。 五時に主は下って、人の子たちの
た まち とう み い たみ おな ことば
建てる町と塔とを見て、六言われた、﹁民は一つで、みな同じ言葉である。
かれ こと かれ こと
彼らはすでにこの事をしはじめた。彼らがしようとする事は、もはや
なにごと え くだ い
何事もとどめ得ないであろう。 七さあ、われわれは下って行って、そこ
かれ ことば みだ たがい ことば つう
で彼らの言葉を乱し、 互に言葉が通じないようにしよう﹂。 八こうして
しゅ かれ ぜん ち ち かれ まち た
主が彼らをそこから全地のおもてに散らされたので、彼らは町を建てる
創世記

まち な よ しゅ
の を や め た。 九こ れ に よ っ て そ の 町 の 名 は バ ベ ル と 呼 ば れ た。主 が そ

33
ぜん ち ことば みだ しゅ かれ ぜん ち
こで全地の言葉を乱されたからである。主はそこから彼らを全地のお

もてに散らされた。
けいず つぎ さい こうずい ねん
一〇 セムの系図は次のとおりである。セムは百歳になって洪水の二年の
のち う う のち
後にアルパクサデを生んだ。 一一セムはアルパクサデを生んで後、五百
ねん い だんし じょ し う
年生きて、男子と女子を生んだ。
さい う
一二 アルパクサデは三十五歳になってシラを生んだ。 一三アルパクサデ
う のち ねん い だんし じょ し う
はシラを生んで後、四百三年生きて、男子と女子を生んだ。
さい う う
一四 シラは三十歳になってエベルを生んだ。 一五シラはエベルを生んで
のち ねん い だんし じょ し う
後、四百三年生きて、男子と女子を生んだ。
さい う
一六 エベルは三十四歳になってペレグを生んだ。 一七エベルはペレグを
う のち ねん い だんし じょ し う
生んで後、四百三十年生きて、男子と女子を生んだ。
さい う う
一八 ペレグは三十歳になってリウを生んだ。 一九ペレグはリウを生んで
のち ねん い だんし じょ し う
後、二百九年生きて、男子と女子を生んだ。
創世記

さい う う
二〇 リウは三十二歳になってセルグを生んだ。 二一リウはセルグを生ん

34
のち ねん い だんし じょ し う
で後、二百七年生きて、男子と女子を生んだ。
さい う う
二二 セルグは三十歳になってナホルを生んだ。 二三セルグはナホルを生
のち ねん い だんし じょ し う
んで後、二百年生きて、男子と女子を生んだ。
さい う う
二四 ナホルは二十九歳になってテラを生んだ。 二五ナホルはテラを生ん
のち ねん い だんし じょ し う
で後、百十九年生きて、男子と女子を生んだ。
さい う
テラは七十歳になってアブラム、ナホルおよびハランを生んだ。
二六
けいず つぎ
テラの系図は次のとおりである。テラはアブラム、ナホルおよびハ
二七
う う ちち
ランを生み、ハランはロトを生んだ。 二八ハランは父テラにさきだって、
うま ち し つま
その生れた地、カルデヤのウルで死んだ。 二九アブラムとナホルは妻を
つま な つま な
めとった。アブラムの妻の名はサライといい、ナホルの妻の名はミルカ
むすめ ちち ちち
といってハランの娘である。ハランはミルカの父、またイスカの父であ

る。 三〇サライはうまずめで、子がなかった。
こ こ まご こ
テラはその子アブラムと、ハランの子である孫ロトと、子アブラムの
三一
創世記

つま よめ つ ち い
妻である嫁サライとを連れて、カナンの地へ行こうとカルデヤのウルを

35
で つ す とし さい
出たが、ハランに着いてそこに住んだ。 三二テラの年は二百五歳であっ

た。テラはハランで死んだ。
第一二章
とき しゅ い くに で しんぞく わか ちち
時に主はアブラムに言われた、
一 ﹁あなたは国を出て、親族に別れ、父の
いえ はな しめ ち い おお
家を離れ、わたしが示す地に行きなさい。 二わたしはあなたを大いなる
こくみん しゅくふく な おお しゅくふく
国民とし、あなたを祝 福し、あなたの名を大きくしよう。あなたは祝 福
もとい
の基となるであろう。
しゅくふく もの しゅくふく
三あなたを祝 福する者をわたしは祝 福し、
もの
あなたをのろう者をわたしはのろう。

地のすべてのやからは、
しゅくふく
あなたによって祝 福される﹂。
創世記

しゅ い た かれ とも い
アブラムは主が言われたようにいで立った。ロトも彼と共に行った。

36
で さい つま
ア ブ ラ ム は ハ ラ ン を 出 た と き 七 十 五 歳 で あ っ た。 五ア ブ ラ ム は 妻 サ ラ
おとうと こ あつ ざいさん え ひとびと たずさ
イと、 弟の子ロトと、集めたすべての財産と、ハランで獲た人々とを携
い た ち
えてカナンに行こうとしていで立ち、カナンの地にきた。 六アブラムは
ち とお ところ き つ
その地を通ってシケムの所、モレのテレビンの木のもとに着いた。その
ち とき しゅ あらわ い
こ ろ カ ナ ン び と が そ の 地 に い た。 七時 に 主 は ア ブ ラ ム に 現 れ て 言 わ れ
しそん ち あた かれ あらわ
た、﹁わたしはあなたの子孫にこの地を与えます﹂。アブラムは彼に現れ
しゅ さいだん きず かれ ひがし やま
た主のために、そこに祭壇を築いた。 八彼はそこからベテルの東の山に
うつ てんまく は にし ひがし かれ
移って天幕を張った。西にはベテル、 東にはアイがあった。そこに彼
しゅ さいだん きず しゅ な よ すす
は主のために祭壇を築いて、主の名を呼んだ。 九アブラムはなお進んで
うつ
ネゲブに移った。
ち きりゅう
一〇さて、その地にききんがあったのでアブラムはエジプトに寄留しよ
くだ ち はげ
うと、そこに下った。ききんがその地に激しかったからである。 一一エ
ちか かれ つま い
ジプトにはいろうとして、そこに近づいたとき、彼は妻サライに言った、
創世記

うつく おんな し
﹁わたしはあなたが美しい女であるのを知っています。 一二それでエジ

37
み とき かれ つま い ころ
プトびとがあなたを見る時、これは彼の妻であると言ってわたしを殺
い いもうと
し、あなたを生かしておくでしょう。 一三どうかあなたは、わたしの妹だ
い ぶ じ
と言ってください。そうすればわたしはあなたのおかげで無事であり、
いのち たす
わたしの命はあなたによって助かるでしょう﹂。 一四アブラムがエジプ
とき おんな み うつく ひと
トにはいった時エジプトびとはこの女を見て、たいそう美しい人である
こうかん かのじょ み まえ おんな
とし、 一五またパロの高官たちも彼女を見てパロの前でほめたので、 女
いえ め い かのじょ あつ
はパロの家に召し入れられた。 一六パロは彼女のゆえにアブラムを厚く
おお ひつじ うし しゆう だんじょ どれい
もてなしたので、アブラムは多くの羊、牛、雌雄のろば、男女の奴隷お

よび、らくだを得た。
しゅ つま はげ えきびょう
一七 ところで主はアブラムの妻サライのゆえに、激しい疫 病をパロとそ
いえ くだ め よ い
の家に下された。 一八パロはアブラムを召し寄せて言った、
﹁あなたはわ
こと かのじょ つま
たしになんという事をしたのですか。なぜ彼女が妻であるのをわたし
つ かのじょ いもうと
に告げなかったのですか。 一九あなたはなぜ、彼女はわたしの妹ですと
創世記

い かのじょ つま
言ったのですか。わたしは彼女を妻にしようとしていました。さあ、あ

38
つま つ い かれ こと
な た の 妻 は こ こ に い ま す。連 れ て 行 っ て く だ さ い﹂。 二〇パ ロ は 彼 の 事
ひとびと めい かれ つま も もの おく さ
について人々に命じ、彼とその妻およびそのすべての持ち物を送り去ら
せた。
第一三章
つま も もの たずさ で
一アブラムは妻とすべての持ち物を携え、エジプトを出て、ネゲブに
のぼ かれ とも のぼ
上った。ロトも彼と共に上った。
かちく きんぎん ひじょう と かれ たびじ
二アブラムは家畜と金銀に非常に富んでいた。 三彼はネゲブから旅路を
すす む あいだ てんまく は ところ
進めてベテルに向かい、ベテルとアイの間の、さきに天幕を張った所に
い かれ はじ きず さいだん ところ い ところ
行った。 四すなわち彼が初めに築いた祭壇の所に行き、その所でアブラ
しゅ な よ とも い ひつじ うし てんまく
ムは主の名を呼んだ。 五アブラムと共に行ったロトも羊、牛および天幕
も ち かれ とも す
を 持 っ て い た。 六そ の 地 は 彼 ら を さ さ え て 共 に 住 ま せ る こ と が で き な
創世記

かれ ざいさん おお とも す
かった。彼らの財産が多かったため、共に住めなかったのである。 七ア

39
かちく ぼくしゃ かちく ぼくしゃ あいだ あらそ
ブラムの家畜の牧者たちとロトの家畜の牧者たちの間に争いがあった。
ち す
そのころカナンびととペリジびとがその地に住んでいた。
い みうち もの
八アブラムはロトに言った、﹁わたしたちは身内の者です。わたしとあ
あいだ ぼくしゃ ぼくしゃ あいだ あらそ
なたの間にも、わたしの牧者たちとあなたの牧者たちの間にも争いがな
ぜん ち まえ
い よ う に し ま し ょ う。 九全地 は あ な た の 前 に あ る で は あ り ま せ ん か。
わか ひだり い みぎ い
どうかわたしと別れてください。あなたが左に行けばわたしは右に行
みぎ い ひだり い
き ま す。あ な た が 右 に 行 け ば わ た し は 左 に 行 き ま し ょ う﹂。 一〇ロ ト が
め あ ていち み しゅ
目を上げてヨルダンの低地をあまねく見わたすと、主がソドムとゴモラ
ほろ まえ しゅ その
を滅ぼされる前であったから、ゾアルまで主の園のように、またエジプ
ち うるお
トの地のように、すみずみまでよく潤 っていた。 一一そこでロトはヨル
ていち えら ひがし うつ かれ たがい
ダンの低地をことごとく選びとって東に移った。こうして彼らは互に
わか ち す ていち まちまち す
別れた。 一二アブラムはカナンの地に住んだが、ロトは低地の町々に住
てんまく うつ ひとびと しゅ たい
み、天幕をソドムに移した。 一三ソドムの人々はわるく、主に対して、は
創世記

つみ
なはだしい罪びとであった。

40
わか のち しゅ い め
一四 ロトがアブラムに別れた後に、主はアブラムに言われた、
﹁目をあげ
ところ きた みなみ ひがし にし み
てあなたのいる所から北、 南、 東、西を見わたしなさい。 一五すべてあ
み ち えいきゅう しそん あた
なたが見わたす地は、 永 久にあなたとあなたの子孫に与えます。 一六わ
しそん ち おお ひと ち
たしはあなたの子孫を地のちりのように多くします。もし人が地のち
かぞ しそん かぞ
りを数えることができるなら、あなたの子孫も数えられることができま
た ち い めぐ
しょう。 一七あなたは立って、その地をたてよこに行き巡りなさい。わ
あた てんまく うつ
た し は そ れ を あ な た に 与 え ま す﹂。 一八ア ブ ラ ム は 天幕 を 移 し て ヘ ブ ロ
き す ところ しゅ さいだん
ンにあるマムレのテレビンの木のかたわらに住み、その所で主に祭壇を
きず
築いた。
第一四章
おう おう おう
一シナルの王アムラペル、エラサルの王アリオク、エラムの王ケダラオ
創世記

おう よ おう おう
メルおよびゴイムの王テダルの世に、 二これらの王はソドムの王ベラ、

41
おう おう おう
ゴモラの王ビルシャ、アデマの王シナブ、ゼボイムの王セメベル、およ
おう たたか にん おう どうめい
びベラすなわちゾアルの王と戦 った。 三これら五人の王はみな同盟し
たに しお うみ む い かれ
てシデムの谷、すなわち塩の海に向かって行った。 四すなわち彼らは十
ねん あいだ つか ねん め ねん
二年の間 ケダラオメルに仕えたが、十三年目にそむいたので、 五十四年
め かれ れんごう おう とも
目にケダラオメルは彼と連合した王たちと共にきて、アシタロテ・カル
ナイムでレパイムびとを、ハムでズジびとを、シャベ・キリアタイムで
う さんち う あらの
エミびとを撃ち、 六セイルの山地でホリびとを撃って、荒野のほとりに
およ かれ ひ かえ
あるエル・パランに及んだ。 七彼らは引き返してエン・ミシパテすなわ
い くに う
ちカデシへ行って、アマレクびとの国をことごとく撃ち、またハザゾン・
す う おう
タ マ ル に 住 む ア モ リ び と を も 撃 っ た。 八そ こ で ソ ド ム の 王、ゴ モ ラ の
おう おう おう おう で
王、アデマの王、ゼボイムの王およびベラすなわちゾアルの王は出てシ
たに かれ む たたか じん おう
デムの谷で彼らに向かい、戦いの陣をしいた。 九すなわちエラムの王ケ
おう おう おう
ダラオメル、ゴイムの王テダル、シナルの王アムラペル、エラサルの王
創世記

にん おう たい にん おう たに
アリオクの四人の王に対する五人の王であった。 一〇シデムの谷にはア

42
あな おお おう おう に
スファルトの穴が多かったので、ソドムの王とゴモラの王は逃げてそこ
お のこ もの やま かれ
に落ちたが、残りの者は山にのがれた。 一一そこで彼らはソドムとゴモ
ざいさん しょくりょう うば さ す
ラの財産と食 料とをことごとく奪って去り、 一二またソドムに住んでい
おとうと こ ざいさん うば さ
たアブラムの弟の子ロトとその財産を奪って去った。
とき ひと つ
一三時に、ひとりの人がのがれてきて、ヘブルびとアブラムに告げた。こ
とき きょうだい きょうだい
の時アブラムはエシコルの兄 弟、またアネルの兄 弟であるアモリびと
き す かれ
マ ム レ の テ レ ビ ン の 木 の か た わ ら に 住 ん で い た。彼 ら は ア ブ ラ ム と
どうめい みうち もの ほ りょ き くんれん
同盟していた。 一四アブラムは身内の者が捕虜になったのを聞き、訓練
いえ こ にん ひ つ お い
した家の子三百十八人を引き連れてダンまで追って行き、 一五そのしも
わ よる せ う きた
べたちを分けて、夜かれらを攻め、これを撃ってダマスコの北、ホバま
かれ お かれ ざいさん と かえ みうち
で彼らを追った。 一六そして彼はすべての財産を取り返し、また身内の
もの ざいさん おんな たみ と かえ
者ロトとその財産および女たちと民とを取り返した。
れんごう おう う やぶ かえ
一七 ア ブ ラ ム が ケ ダ ラ オ メ ル と そ の 連合 の 王 た ち を 撃 ち 破 っ て 帰 っ た
創世記

とき おう たに おう たに で かれ むか
時、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷に出て彼を迎えた。 一八そ

43
とき おう しゅ も かれ
の時、サレムの王メルキゼデクはパンとぶどう酒とを持ってきた。彼は
たか かみ さいし かれ しゅくふく い
いと高き神の祭司である。 一九彼はアブラムを祝 福して言った、
ねが てんち しゅ たか かみ
﹁願わくは天地の主なるいと高き神が、
しゅくふく
アブラムを祝 福されるように。
ねが てき て わた
二〇 願わくはあなたの敵をあなたの手に渡された
たか かみ
いと高き神があがめられるように﹂。
かれ もの ぶん おく とき おう
アブラムは彼にすべての物の十分の一を贈った。 二一時にソドムの王は
い ひと ざいさん と
アブラムに言った、﹁わたしには人をください。財産はあなたが取りな
おう い てんち しゅ たか かみ
さい﹂。 二二アブラムはソドムの王に言った、
﹁天地の主なるいと高き神、
しゅ て ちか いと ぽん
主に手をあげて、わたしは誓います。 二三わたしは糸一本でも、くつひも
ぽん なに う と
一本でも、あなたのものは何にも受けません。アブラムを富ませたのは
い わかもの た
わたしだと、あなたが言わないように。 二四ただし若者たちがすでに食
もの べつ とも い ひとびと
べた物は別です。そしてわたしと共に行った人々アネルとエシコルと
創世記

ぶん と
マムレとにはその分を取らせなさい﹂。

44
第一五章
こと のち しゅ ことば まぼろし のぞ
一これらの事の後、主の言葉が幻のうちにアブラムに臨んだ、
おそ
﹁アブラムよ恐れてはならない、
たて
わたしはあなたの盾である。
う むく
あなたの受ける報いは、
おお
はなはだ大きいであろう﹂。
い しゅ かみ こ いえ
二アブラムは言った、
﹁主なる神よ、わたしには子がなく、わたしの家を
つ もの なに
継ぐ者はダマスコのエリエゼルであるのに、あなたはわたしに何をくだ

さろうとするのですか﹂。 三アブラムはまた言った、
﹁あなたはわたしに
こ たま いえ うま
子を賜わらないので、わたしの家に生れたしもべが、あとつぎとなるで
とき しゅ ことば かれ のぞ もの
しょう﹂。 四この時、主の言葉が彼に臨んだ、
﹁この者はあなたのあとつ
み で もの
ぎとなるべきではありません。あなたの身から出る者があとつぎとな
創世記

しゅ かれ そと つ だ い てん あお
る べ き で す﹂。 五そ し て 主 は 彼 を 外 に 連 れ 出 し て 言 わ れ た、﹁天 を 仰 い

45
ほし かぞ かぞ かれ い
で、星を数えることができるなら、数えてみなさい﹂。また彼に言われ
しそん しゅ しん
た、
﹁あなたの子孫はあのようになるでしょう﹂。 六アブラムは主を信じ
しゅ かれ ぎ みと
た。主はこれを彼の義と認められた。
しゅ かれ い ち あた つ
七また主は彼に言われた、
﹁わたしはこの地をあなたに与えて、これを継
みちび だ しゅ かれ
がせようと、あなたをカルデヤのウルから導き出した主です﹂。 八彼は
い しゅ かみ つ し
言った、﹁主なる神よ、わたしがこれを継ぐのをどうして知ることができ
しゅ かれ い さい めうし さい め さい
ますか﹂。 九主は彼に言われた、
﹁三歳の雌牛と、三歳の雌やぎと、三歳
おひつじ やま いえ ところ つ
の雄羊と、山ばとと、家ばとのひなとをわたしの所に連れてきなさい﹂。
かれ つ さ さ たがい む
一〇 彼はこれらをみな連れてきて、二つに裂き、裂いたものを互に向かい
あ お とり さ あら とり したい
合わせて置いた。ただし、鳥は裂かなかった。 一一 荒い鳥が死体の
うえ お お はら
上に降りるとき、アブラムはこれを追い払った。
ひ い ふか ねむ とき おお おそ
一二 日の入るころ、アブラムが深い眠りにおそわれた時、大きな恐ろしい
くら かれ のぞ とき しゅ い
暗やみが彼に臨んだ。 一三時に主はアブラムに言われた、
﹁あなたはよく
創世記

こころ しそん た くに たび
心にとめておきなさい。あなたの子孫は他の国に旅びととなって、その

46
ひとびと つか ひとびと かれ ねん あいだ なや
人々に仕え、その人々は彼らを四百年の間、悩ますでしょう。 一四しか
かれ つか こくみん のち おお
し、わたしは彼らが仕えたその国民をさばきます。その後かれらは多く
ざいさん たずさ で く やす せんぞ
の財産を携えて出て来るでしょう。 一五あなたは安らかに先祖のもとに
い こうれい たっ ほうむ だい め
行きます。そして高齢に達して葬られるでしょう。 一六四代目になって
かれ かえ く あく み
彼らはここに帰って来るでしょう。アモリびとの悪がまだ満ちないか
らです﹂。
ひ い くら とき けむり た ほのお で
一七 やがて日は入り、暗やみになった時、 煙の立つかまど、 炎の出るた
さ あいだ とお す ひ しゅ
いまつが、裂いたものの間を通り過ぎた。 一八その日、主はアブラムと
けいやく むす い
契約を結んで言われた、
ち しそん あた
﹁わたしはこの地をあなたの子孫に与える。
かわ おおかわ
エジプトの川から、かの大川ユフラテまで。
一九 すなわちケニびと、ケニジびと、カドモニびと、 二〇ヘテびと、ペリ
ジびと、レパイムびと、 二一アモリびと、カナンびと、ギルガシびと、エ
創世記

ち あた
ブスびとの地を与える﹂。

47
第一六章
つま こ う かのじょ
一アブラムの妻サライは子を産まなかった。彼女にひとりのつかえめ
おんな な
が あ っ た。エ ジ プ ト の 女 で 名 を ハ ガ ル と い っ た。 二サ ラ イ は ア ブ ラ ム
い しゅ こ さづ
に言った、﹁主はわたしに子をお授けになりません。どうぞ、わたしのつ
ところ かのじょ こ
かえめの所におはいりください。彼女によってわたしは子をもつこと
ことば き
になるでしょう﹂。アブラムはサライの言葉を聞きいれた。 三アブラム
つま おんな おっと
の妻サライはそのつかえめエジプトの女 ハガルをとって、 夫 アブラム
つま あた ち ねん す のち
に 妻 と し て 与 え た。こ れ は ア ブ ラ ム が カ ナ ン の 地 に 十 年住 ん だ 後 で
かれ ところ こ かのじょ
あ っ た。 四彼 は ハ ガ ル の 所 に は い り、ハ ガ ル は 子 を は ら ん だ。彼女 は
じぶん み おんなしゅじん み さ
自分のはらんだのを見て、 女 主人を見下げるようになった。 五そこで
い う がい せきにん
サライはアブラムに言った、﹁わたしが受けた害はあなたの責任です。
あた かのじょ じぶん
わたしのつかえめをあなたのふところに与えたのに、彼女は自分のはら
創世記

み み しゅ
んだのを見て、わたしを見下さげます。どうか、主があなたとわたしの

48
あいだ い
間をおさばきになるように﹂。 六アブラムはサライに言った、
﹁あなたの
て す かのじょ
つかえめはあなたの手のうちにある。あなたの好きなように彼女にし
かのじょ くる かのじょ かお さ
なさい﹂。そしてサライが彼女を苦しめたので、彼女はサライの顔を避

けて逃げた。
しゅ つかい あらの いずみ みち いずみ
七主の使は荒野にある泉のほとり、すなわちシュルの道にある泉のほと
かのじょ あ い
りで、彼女に会い、 八そして言った、
﹁サライのつかえめハガルよ、あな
い かのじょ い
たはどこからきたのですか、またどこへ行くのですか﹂。彼女は言った、
おんなしゅじん かお さ に しゅ つかい
﹁わたしは女 主人サライの顔を避けて逃げているのです﹂。 九主の使は
かのじょ い おんなしゅじん かえ て み まか
彼女に言った、
﹁あなたは女 主人のもとに帰って、その手に身を任せな
しゅ つかい かのじょ い おお しそん
さい﹂。 一〇主の使はまた彼女に言った、﹁わたしは大いにあなたの子孫
ま かぞ おお しゅ つかい かのじょ
を増して、数えきれないほどに多くしましょう﹂。 一一主の使はまた彼女
い おとこ こ う
に言った、﹁あなたは、みごもっています。あなたは男の子を産むでしょ
な な しゅ くる き
う。名をイシマエルと名づけなさい。主があなたの苦しみを聞かれた
創世記

かれ の ひと て ひと さか
のです。 一二彼は野ろばのような人となり、その手はすべての人に逆ら

49
ひと て かれ さか かれ きょうだい てき す
い、すべての人の手は彼に逆らい、彼はすべての兄 弟に敵して住むで
じぶん かた しゅ な よ
しょう﹂。 一三そこで、ハガルは自分に語られた主の名を呼んで、
﹁あなた
い かのじょ み
はエル・ロイです﹂と言った。彼女が﹁ここでも、わたしを見ていられ
おが い
る か た の う し ろ を 拝 め た の か﹂と 言 っ た こ と に よ る。 一 四そ れ で そ の
い ど よ
井戸は﹁ベエル・ラハイ・ロイ﹂と呼ばれた。これはカデシとベレデの
あいだ
間にある。
おとこ こ う う こ
一五 ハガルはアブラムに男の子を産んだ。アブラムはハガルが産んだ子
な な う
の名をイシマエルと名づけた。 一六ハガルがイシマエルをアブラムに産
とき さい
んだ時、アブラムは八十六歳であった。
第一七章
さい とき しゅ あらわ い
一アブラムの九十九歳の時、主はアブラムに現れて言われた、
創世記

ぜんのう かみ
﹁わたしは全能の神である。

50
まえ あゆ まった もの
あなたはわたしの前に歩み、 全き者であれ。
けいやく むす
わたしはあなたと契約を結び、

おお しそん ま
大いにあなたの子孫を増すであろう﹂。
ふ かみ かれ い
三アブラムは、ひれ伏した。神はまた彼に言われた、
けいやく むす
﹁わたしはあなたと契約を結ぶ。

おお こくみん ちち
あなたは多くの国民の父となるであろう。
な い
あなたの名は、もはやアブラムとは言われず、

な よ
あなたの名はアブラハムと呼ばれるであろう。
おお こくみん
わたしはあなたを多くの国民の
ちち
父とするからである。
おお しそん え くにぐに たみ おこ
六わたしはあなたに多くの子孫を得させ、国々の民をあなたから起そ
おう で およ のち
う。また、王たちもあなたから出るであろう。 七わたしはあなた及び後
よ よ しそん けいやく た えいえん けいやく のち しそん
の代々の子孫と契約を立てて、永遠の契約とし、あなたと後の子孫との
創世記

かみ のち しそん やど
神 と な る で あ ろ う。 八わ た し は あ な た と 後 の 子孫 と に あ な た の 宿 っ て

51
ち ぜん ち えいきゅう しょゆう あた
いるこの地、すなわちカナンの全地を永 久の所有として与える。そし
かれ かみ
てわたしは彼らの神となるであろう﹂。
かみ い のち しそん とも よ よ
九神はまたアブラハムに言われた、﹁あなたと後の子孫とは共に代々わ
けいやく まも だんし
たしの契約を守らなければならない。あなたがたのうち 一〇 男子はみな
かつれい およ のち
割礼 を う け な け れ ば な ら な い。こ れ は わ た し と あ な た が た 及 び 後 の
しそん あいだ けいやく まも
子孫との間のわたしの契約であって、あなたがたの守るべきものであ
まえ かわ かつれい う
る。 一一あなたがたは前の皮に割礼を受けなければならない。それがわ
あいだ けいやく
たしとあなたがたとの間の契約のしるしとなるであろう。 一二あなたが
だんし よ よ いえ うま もの いほうじん ぎん か
たのうちの男子はみな代々、家に生れた者も、また異邦人から銀で買い
と しそん もの うま か め かつれい う
取った、あなたの子孫でない者も、生れて八日目に割礼を受けなければ
いえ うま もの ぎん か と もの
ならない。 一三あなたの家に生れた者も、あなたが銀で買い取った者も
かなら かつれい う けいやく
必ず割礼を受けなければならない。こうしてわたしの契約はあなたが
み えいえん けいやく かつれい う だんし
た の 身 に あ っ て 永遠 の 契約 と な る で あ ろ う。 一四割礼 を 受 け な い 男子、
創世記

まえ かわ き もの けいやく やぶ ひと たみ
すなわち前の皮を切らない者はわたしの契約を破るゆえ、その人は民の

52

うちから断たれるであろう﹂。
かみ い つま な
一五 神はまたアブラハムに言われた、
﹁あなたの妻サライは、もはや名を
な い かのじょ しゅくふく
サライといわず、名をサラと言いなさい。 一六わたしは彼女を祝 福し、ま
かのじょ おとこ こ さづ かのじょ
た彼女によって、あなたにひとりの男の子を授けよう。わたしは彼女を
しゅくふく かのじょ くにぐに たみ はは かのじょ たみ おう
祝 福し、彼女を国々の民の母としよう。彼女から、もろもろの民の王た
で ふ わら こころ なか い
ちが出るであろう﹂。 一七アブラハムはひれ伏して笑い、 心の中で言っ
さい もの こ うま さい
た、﹁百歳の者にどうして子が生れよう。サラはまた九十歳にもなって、
う かみ い
どうして産むことができようか﹂。 一八そしてアブラハムは神に言った、
まえ い かみ
﹁どうかイシマエルがあなたの前に生きながらえますように﹂。 一九神は
い つま おとこ こ う な
言われた、﹁いや、あなたの妻サラはあなたに男の子を産むでしょう。名
な かれ けいやく た のち しそん
をイサクと名づけなさい。わたしは彼と契約を立てて、後の子孫のため
えいえん けいやく ねが
に永遠の契約としよう。 二〇またイシマエルについてはあなたの願いを
き かれ しゅくふく おお しそん え おお ま
聞いた。わたしは彼を祝 福して多くの子孫を得させ、大いにそれを増
創世記

かれ にん きみ う かれ おお
すであろう。彼は十二人の君たちを生むであろう。わたしは彼を大い

53
こくみん らいねん いま う
なる国民としよう。 二一しかしわたしは来年の今ごろサラがあなたに産
けいやく た
むイサクと、わたしの契約を立てるであろう﹂。
かみ かた お かれ はな
二二 神はアブラハムと語り終え、彼を離れて、のぼられた。 二三アブラハ
かみ じぶん い ひ こ いえ
ムは神が自分に言われたように、この日その子イシマエルと、すべて家
うま もの ぎん か と もの いえ
に生れた者およびすべて銀で買い取った者、すなわちアブラハムの家の
ひとびと だんし つ まえ かわ かつれい ほどこ
人々のうち、すべての男子を連れてきて、前の皮に割礼を施した。 二四ア
まえ かわ かつれい う とき さい こ
ブラハムが前の皮に割礼を受けた時は九十九歳、 二五その子イシマエル
まえ かわ かつれい う とき さい ひ
が前の皮に割礼を受けた時は十三歳であった。 二六この日アブラハムと
こ かつれい う いえ ひとびと いえ うま
その子イシマエルは割礼を受けた。 二七またその家の人々は家に生れた
もの ぎん いほうじん か と もの みな かれ とも かつれい う
者も、銀で異邦人から買い取った者も皆、彼と共に割礼を受けた。
第一八章
創世記

しゅ き あらわ
一主 は マ ム レ の テ レ ビ ン の 木 の か た わ ら で ア ブ ラ ハ ム に 現 れ ら れ た。

54
ひる あつ かれ てんまく いりぐち め あ
それは昼の暑いころで、彼は天幕の入口にすわっていたが、 二目を上げ
み にん ひと かれ む た かれ み てんまく
て見ると、三人の人が彼に向かって立っていた。彼はこれを見て、天幕
いりぐち はし い かれ むか ち み い
の入口から走って行って彼らを迎え、地に身をかがめて、 三言った、
﹁わ
しゅ まえ めぐ え
が主よ、もしわたしがあなたの前に恵みを得ているなら、どうぞしもべ
とお す みず と
を通り過ごさないでください。 四水をすこし取ってこさせますから、あ
あし あら き した やす ひとくち
なたがたは足を洗って、この木の下でお休みください。 五わたしは一口
と げんき で
の パ ン を 取 っ て き ま す。元気 を つ け て、そ れ か ら お 出 か け く だ さ い。
ところ かれ い
せっかくしもべの所においでになったのですから﹂。彼らは言った、﹁お
ことば いそ てんまく い
言葉 ど お り に し て く だ さ い﹂。 六そ こ で ア ブ ラ ハ ム は 急 い で 天幕 に 入
ところ い い いそ こま むぎこ
り、サラの所に行って言った、
﹁急いで細かい麦粉三セヤをとり、こねて
つく うし む はし い やわ
パンを造りなさい﹂。 七アブラハムは牛の群れに走って行き、柔らかな
よ こ うし と わかもの わた いそ ちょうり
良い子牛を取って若者に渡したので、急いで調理した。 八そしてアブラ
ぎょうにゅう ぎゅうにゅう こ うし ちょうり と かれ まえ そな
ハムは凝 乳と牛 乳および子牛の調理したものを取って、彼らの前に供
創世記

き した かれ た きゅうじ かれ しょくじ
え、木の下で彼らのかたわらに立って給仕し、彼らは食事した。

55
かれ い つま
九彼 ら は ア ブ ラ ハ ム に 言 っ た、﹁あ な た の 妻 サ ラ は ど こ に お ら れ ま す
かれ い てんまく なか い らいねん
か﹂。彼は言った、﹁天幕の中です﹂。 一〇そのひとりが言った、﹁来年の
はる ところ かえ とき
春、わたしはかならずあなたの所に帰ってきましょう。その時、あなた
つま おとこ こ うま ほう てんまく
の妻サラには男の子が生れているでしょう﹂。サラはうしろの方の天幕
いりぐち き とし ろうじん
の入口で聞いていた。 一一さてアブラハムとサラとは年がすすみ、老人
おんな つき と
となり、サラは女の月のものが、すでに止まっていた。 一二それでサラは
こころ なか わら い おとろ しゅじん ろうじん
心の中で笑って言った、
﹁わたしは衰え、主人もまた老人であるのに、わ
たの しゅ い
たしに楽しみなどありえようか﹂。 一三主はアブラハムに言われた、﹁な
ろうじん こ う
ぜサラは、わたしは老人であるのに、どうして子を産むことができよう
い わら しゅ ふ か の う
か と 言 っ て 笑 っ た の か。 一 四主 に と っ て 不可能 な こ と が あ り ま し ょ う
らいねん はる さだ とき ところ かえ
か。来年の春、定めの時に、わたしはあなたの所に帰ってきます。その
おとこ こ うま おそ
ときサラには男の子が生れているでしょう﹂。 一五サラは恐れたので、こ
う け い わら しゅ い
れを打ち消して言った、
﹁わたしは笑いません﹂。主は言われた、
﹁いや、
創世記

わら
あなたは笑いました﹂。

56
ひとびと た ほう む
その人々はそこを立ってソドムの方に向かったので、アブラハムは
一六
かれ みおく とも い とき しゅ い
彼らを見送って共に行った。 一七時に主は言われた、
﹁わたしのしようと
こと かく かなら おお
する事をアブラハムに隠してよいであろうか。 一八アブラハムは必ず大
つよ こくみん ち たみ かれ しゅくふく う
きな強い国民となって、地のすべての民がみな、彼によって祝 福を受け
かれ のち こ かぞく めい しゅ みち
るのではないか。 一九わたしは彼が後の子らと家族とに命じて主の道を
まも せいぎ こうどう おこな かれ し しゅ
守らせ、正義と公道とを行わせるために彼を知ったのである。これは主
い こと かれ うえ のぞ
がかつてアブラハムについて言った事を彼の上に臨ませるためであ
しゅ い さけ おお
る﹂。 二〇主はまた言われた、
﹁ソドムとゴモラの叫びは大きく、またその
つみ ひじょう おも くだ とど さけ
罪は非常に重いので、二一わたしはいま下って、わたしに届いた叫びのと
かれ み し
おりに、すべて彼らがおこなっているかどうかを見て、それを知ろう﹂。
ひとびと み めぐ ほう い
その人々はそこから身を巡らしてソドムの方に行ったが、アブラハ
二二
しゅ まえ た ちかよ い
ムはなお、主の前に立っていた。 二三アブラハムは近寄って言った、
﹁ま
ただ もの わる もの いっしょ ほろ
ことにあなたは正しい者を、悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 二四
創世記

まち にん ただ もの ところ
たとい、あの町に五十人の正しい者があっても、あなたはなお、その所

57
ほろ なか にん ただ もの
を滅ぼし、その中にいる五十人の正しい者のためにこれをゆるされない
ただ もの わる もの いっしょ ころ
のですか。 二五正しい者と悪い者とを一緒に殺すようなことを、あなた
けっ ただ もの わる もの おな
は決してなさらないでしょう。正しい者と悪い者とを同じようにする
けっ ぜん ち もの こうぎ
ことも、あなたは決してなさらないでしょう。全地をさばく者は公義を
おこな しゅ い まち なか
行うべきではありませんか﹂。 二六主は言われた、﹁もしソドムで町の中
にん ただ もの ひとびと ところ
に五十人の正しい者があったら、その人々のためにその所をすべてゆる
こた い はい す
そう﹂。 二七アブラハムは答えて言った、﹁わたしはちり灰に過ぎません
しゅ もう にん ただ もの にん か
が、あえてわが主に申します。 二八もし五十人の正しい者のうち五人欠
にん か まち まった ほろ しゅ い
けたなら、その五人欠けたために町を全く滅ぼされますか﹂。主は言わ
にん ほろ
れた、
﹁もしそこに四十五人いたら、滅ぼさないであろう﹂。 二九アブラハ
かさ しゅ い にん しゅ い
ムはまた重ねて主に言った、﹁もしそこに四十人いたら﹂。主は言われ
にん
た、﹁その四十人のために、これをしないであろう﹂。 三〇アブラハムは
い しゅ いか もう
言った、﹁わが主よ、どうかお怒りにならぬよう。わたしは申します。も
創世記

にん しゅ い にん
しそこに三十人いたら﹂。主は言われた、
﹁そこに三十人いたら、これを

58

しないであろう﹂。 三一アブラハムは言った、﹁いまわたしはあえてわが
しゅ もう にん しゅ い
主に申します。もしそこに二十人いたら﹂。主は言われた、﹁わたしはそ
にん ほろ い
の二十人のために滅ぼさないであろう﹂。 三二アブラハムは言った、﹁わ
しゅ いか ど もう
が主よ、どうかお怒りにならぬよう。わたしはいま一度申します、もし
にん しゅ い にん ほろ
そこに十人いたら﹂。主は言われた、﹁わたしはその十人のために滅ぼさ
しゅ かた おわ さ い
ないであろう﹂。 三三主はアブラハムと語り終り、去って行かれた。アブ
じぶん ところ かえ
ラハムは自分の所に帰った。
第一九章
つかい ゆうぐれ つ
そのふたりのみ使は夕暮にソドムに着いた。そのときロトはソドム

もん かれ み た むか ち ふ
の門にすわっていた。ロトは彼らを見て、立って迎え、地に伏して、 二
い しゅ いえ たちよ あし あら と
言った、
﹁わが主よ、どうぞしもべの家に立寄って足を洗い、お泊まりく
創世記

あさはや お た かれ い
ださい。そして朝早く起きてお立ちください﹂。彼らは言った、﹁いや、

59
ひろば よ す すす
わ れ わ れ は 広場 で 夜 を 過 ご し ま す﹂。 三し か し ロ ト が し い て 勧 め た の
かれ かれ ところ よ いえ かれ
で、彼らはついに彼の所に寄り、家にはいった。ロトは彼らのためにふ
もう たね い や た かれ ね
るまいを設け、種入れぬパンを焼いて食べさせた。 四ところが彼らの寝
まち ひとびと わか もの ろうじん たみ しほう
ないうちに、ソドムの町の人々は、若い者も老人も、民がみな四方から
いえ かこ さけ い こんや ところ
きて、その家を囲み、 五ロトに叫んで言った、﹁今夜おまえの所にきた
ひとびと だ かれ し
人々はどこにいるか。それをここに出しなさい。われわれは彼らを知
いりぐち かれ ところ で い と
るであろう﹂。 六ロトは入口におる彼らの所に出て行き、うしろの戸を
と い きょうだい わる こと
閉じて、 七言った、
﹁兄 弟たちよ、どうか悪い事はしないでください。 八
おとこ し むすめ
わたしにまだ男を知らない娘がふたりあります。わたしはこれをあな
だ す
たがたに、さし出しますから、好きなようにしてください。ただ、わた
や ね した ひと なに
しの屋根の下にはいったこの人たちには、何もしないでください﹂。 九
かれ い しりぞ い おとこ わた もの
彼らは言った、﹁退け﹂。また言った、﹁この男は渡ってきたよそ者である
かれ
のに、いつも、さばきびとになろうとする。それで、われわれは彼らに
創世記

くわ おお がい くわ かれ み はげ
加えるよりも、おまえに多くの害を加えよう﹂。彼らはロトの身に激し

60
せま すす よ と やぶ とき て の
く迫り、進み寄って戸を破ろうとした。 一〇その時、かのふたりは手を伸
いえ うち ひ い と と いえ いりぐち
べてロトを家の内に引き入れ、戸を閉じた。 一一そして家の入口におる
ひとびと ろうにゃく べつ う め かれ いりぐち さが
人々を、老 若の別なく打って目をくらましたので、彼らは入口を捜すの
つか
に疲れた。
い みうち もの
ふたりはロトに言った、
一二 ﹁ほかにあなたの身内の者がここにおります
むすめ まち みうち もの
か。あなたのむこ、むすこ、 娘およびこの町におるあなたの身内の者
みな つ だ ところ ほろ
を、皆ここから連れ出しなさい。 一三われわれがこの所を滅ぼそうとし
ひとびと さけ しゅ まえ おお しゅ ところ ほろ
ているからです。人々の叫びが主の前に大きくなり、主はこの所を滅ぼ
で い
すために、われわれをつかわされたのです﹂。 一四そこでロトは出て行っ
むすめ つ い た ところ で
て、その娘たちをめとるむこたちに告げて言った、﹁立ってこの所から出
しゅ まち ほろ たわむ
なさい。主がこの町を滅ぼされます﹂。しかしそれはむこたちには戯む
おも
れごとに思えた。
よ あ つかい うなが い た
夜が明けて、み使たちはロトを促して言った
一五 ﹁立って、ここにい
創世記

つま むすめ つ だ
るあなたの妻とふたりの娘とを連れ出しなさい。そうしなければ、あな

61
まち ふ ぎ ほろ かれ
た も こ の 町 の 不義 の た め に 滅 ぼ さ れ る で し ょ う﹂。 一六彼 は た め ら っ て
しゅ かれ ほどこ かれ て
いたが、主は彼にあわれみを施されたので、かのふたりは彼の手と、そ
つま て むすめ て と つ だ まち そと お かれ
の妻の手と、ふたりの娘の手を取って連れ出し、町の外に置いた。 一七彼
そと つ だ とき い じぶん いのち すく
らを外に連れ出した時そのひとりは言った、﹁のがれて、自分の命を救い
み ていち た
なさい。うしろをふりかえって見てはならない。低地にはどこにも立
ど やま
ち止まってはならない。山にのがれなさい。そうしなければ、あなたは
ほろ かれ い しゅ
滅びます﹂。 一八ロトは彼らに言った、
﹁わが主よ、どうか、そうさせない
まえ めぐ え
でください。 一九しもべはすでにあなたの前に恵みを得ました。あなた
いのち すく おお ほどこ
はわたしの命を救って、大いなるいつくしみを施されました。しかしわ
やま こと わざわい み お せま
たしは山まではのがれる事ができません。 災が身に追い迫ってわたし
し まち に ちか
は死ぬでしょう。 二〇あの町をごらんなさい。逃げていくのに近く、ま
ちい まち
た小さい町です。どうかわたしをそこにのがれさせてください。それ
ちい いのち たす
は 小 さ い で は あ り ま せ ん か。そ う す れ ば わ た し の 命 は 助 か る で し ょ
創世記

つかい かれ い こと ねが
う﹂。 二一み使は彼に言った、﹁わたしはこの事でもあなたの願いをいれ

62
い まち ほろ いそ
て、あなたの言うその町は滅ぼしません。 二二急いでそこへのがれなさ
つ なにごと
い。あなたがそこに着くまでは、わたしは何事もすることができませ
まち な よ
ん﹂。これによって、その町の名はゾアルと呼ばれた。 二三ロトがゾアル
つ とき ひ ち うえ
に着いた時、日は地の上にのぼった。
しゅ いおう ひ しゅ ところ てん うえ ふ
二四主は硫黄と火とを主の所すなわち天からソドムとゴモラの上に降ら
まち ていち まちまち じゅうみん
せて、 二五これらの町と、すべての低地と、その町々のすべての住 民と、
ち もの ほろ つま
その地にはえている物を、ことごとく滅ぼされた。 二六しかしロトの妻
かえり しお はしら あさはや お
は う し ろ を 顧 み た の で 塩 の 柱 に な っ た。 二七ア ブ ラ ハ ム は 朝早 く 起 き、
しゅ まえ た ところ い ほう ていち
さきに主の前に立った所に行って、二八ソドムとゴモラの方、および低地
ぜんめん ち けむり けむり た
の全面をながめると、その地の煙が、かまどの煙のように立ちのぼって
いた。
かみ ていち まちまち とき す
二九こうして神が低地の町々をこぼたれた時、すなわちロトの住んでい
まちまち ほろ とき かみ おぼ ほろ なか
た町々を滅ぼされた時、神はアブラハムを覚えて、その滅びの中からロ
創世記

すく だ
トを救い出された。

63
で のぼ むすめ とも やま す
三〇 ロトはゾアルを出て上り、ふたりの娘と共に山に住んだ。ゾアルに
す おそ かれ むすめ とも あな なか す
住むのを恐れたからである。彼はふたりの娘と共に、ほら穴の中に住ん
とき あね いもうと い ちち お ち
だ。 三一時に姉が妹に言った、
﹁わたしたちの父は老い、またこの地には
よ ところ く おとこ
世のならわしのように、わたしたちの所に来る男はいません。 三二さあ、
ちち さけ の とも ね ちち こ のこ かのじょ
父に酒を飲ませ、共に寝て、父によって子を残しましょう﹂。 三三彼女た
よ ちち さけ の あね ちち とも ね むすめ
ちはその夜、父に酒を飲ませ、姉がはいって父と共に寝た。ロトは娘が
ね お し ひ あね いもうと い
寝たのも、起きたのも知らなかった。 三四あくる日、姉は妹に言った、
﹁わ
さくや ちち ね こんや ちち さけ の
たしは昨夜、父と寝ました。わたしたちは今夜もまた父に酒を飲ませま
とも ね ちち
し ょ う。そ し て あ な た が は い っ て 共 に 寝 な さ い。わ た し た ち は 父 に
こ のこ かれ よ ちち さけ の
よ っ て 子 を 残 し ま し ょ う﹂。 三五彼 ら は そ の 夜 も ま た 父 に 酒 を 飲 ま せ、
いもうと い ちち とも ね むすめ ね お し
妹 が 行 っ て 父 と 共 に 寝 た。ロ ト は 娘 の 寝 た の も、起 き た の も 知 ら な
むすめ ちち
かった。 三六こうしてロトのふたりの娘たちは父によってはらんだ。 三七
あねむすめ こ う な な いま
姉 娘は子を産み、その名をモアブと名づけた。これは今のモアブびと
創世記

せんぞ いもうと こ う な な
の先祖である。 三八 妹もまた子を産んで、その名をベニアンミと名づけ

64
いま せんぞ
た。これは今のアンモンびとの先祖である。
第二〇章
ち うつ あいだ す
一アブラハムはそこからネゲブの地に移って、カデシとシュルの間に住
かれ とき つま
ん だ。彼 が ゲ ラ ル に と ど ま っ て い た 時、 二ア ブ ラ ハ ム は 妻 サ ラ の こ と
いもうと い おう
を、
﹁これはわたしの妹です﹂と言ったので、ゲラルの王アビメレクは、
ひと め い かみ よ ゆめ
人 を つ か わ し て サ ラ を 召 し 入 れ た。 三と こ ろ が 神 は 夜 の 夢 に ア ビ メ レ
のぞ い め い おんな し
クに臨んで言われた、﹁あなたは召し入れたあの女のゆえに死なねばな
かのじょ おっと み かのじょ ちか
らない。彼女は夫のある身である﹂。 四アビメレクはまだ彼女に近づい
い しゅ ただ たみ ころ
ていなかったので言った、﹁主よ、あなたは正しい民でも殺されるのです
かれ いもうと い
か。 五彼 は わ た し に、こ れ は わ た し の 妹 で す と 言 っ た で は あ り ま せ ん
かのじょ じぶん かれ あに い こころ
か。また彼女も自分で、彼はわたしの兄ですと言いました。わたしは心
創世記

きよ て かみ ゆめ かれ い
も清く、手もいさぎよく、このことをしました﹂。 六神はまた夢で彼に言

65
きよ こころ し
われた、﹁そうです、あなたが清い心をもってこのことをしたのを知って
まも たい つみ おか かのじょ
いたから、わたしもあなたを守って、わたしに対して罪を犯させず、彼女
ゆる かれ つま かえ かれ
に ふ れ る こ と を 許 さ な か っ た の で す。 七い ま 彼 の 妻 を 返 し な さ い。彼
よげんしゃ いの いのち たも
は預言者ですから、あなたのために祈って、命を保たせるでしょう。も
かえ みうち もの かなら し し
し返さないなら、あなたも身内の者もみな必ず死ぬと知らなければなり
ません﹂。
あさはや お め あつ
八そこでアビメレクは朝早く起き、しもべたちをことごとく召し集め
こと かた き ひとびと ひじょう おそ
て、これらの事をみな語り聞かせたので、人々は非常に恐れた。 九そし
め い なに
てアビメレクはアブラハムを召して言った、﹁あなたはわれわれに何を
たい つみ おか
するのですか。あなたに対してわたしがどんな罪を犯したために、あな
くに おお つみ お
たはわたしとわたしの国とに、大きな罪を負わせるのですか。あなたは
してはならぬことをわたしにしたのです﹂。 一〇アビメレクはまたアブ
い おも こと
ラハムに言った、
﹁あなたはなんと思って、この事をしたのですか﹂。 一一
創世記

い ところ かみ おそ
アブラハムは言った、﹁この所には神を恐れるということが、まったくな

66
つま ひとびと ころ おも
いので、わたしの妻のゆえに人々がわたしを殺すと思ったからです。 一二
かのじょ いもうと ちち むすめ はは
また彼女はほんとうにわたしの妹なのです。わたしの父の娘ですが、母
むすめ つま かみ
の娘ではありません。そして、わたしの妻になったのです。 一三神がわ
ちち いえ はな い めぐ とき かのじょ
たしに父の家を離れて、行き巡らせた時、わたしは彼女に、あなたはわ
い あに い
たしたちの行くさきざきでわたしを兄であると言ってください。これ
ほどこ めぐ い
はあなたがわたしに施す恵みであると言いました﹂。 一四そこでアビメ
ひつじ うし だんじょ どれい と あた つま
レクは羊、牛および男女の奴隷を取ってアブラハムに与え、その妻サラ
かれ かえ い ち
を彼に返した。 一五そしてアビメレクは言った、
﹁わたしの地はあなたの
まえ す ところ す い
前 に あ り ま す。あ な た の 好 き な 所 に 住 み な さ い﹂。 一六ま た サ ラ に 言 っ
あに ぎんせん あた
た、﹁わたしはあなたの兄に銀千シケルを与えました。これはあなたの
み た こと つぐな
身に起ったすべての事について、あなたに償いをするものです。こうし
ひと ただ みと
てすべての人にあなたは正しいと認められます﹂。 一七そこでアブラハ
かみ いの かみ つま
ムは神に祈った。神はアビメレクとその妻および、はしためたちをいや
創世記

かれ こ う しゅ
されたので、彼らは子を産むようになった。 一八これは主がさきにアブ

67
つま いえ もの たい
ラハムの妻サラのゆえに、アビメレクの家のすべての者の胎を、かたく

閉ざされたからである。
第二一章
しゅ い かえり つ おこな
一主は、さきに言われたようにサラを顧み、告げられたようにサラに行
かみ つ とき
われた。 二サラはみごもり、神がアブラハムに告げられた時になって、
としお おとこ こ う うま こ
年老いたアブラハムに男の子を産んだ。 三アブラハムは生れた子、サラ
う おとこ こ な な かみ めい
が 産 ん だ 男 の 子 の 名 を イ サ ク と 名 づ け た。 四ア ブ ラ ハ ム は 神 が 命 じ ら
か め こ かつれい ほどこ
れ た よ う に 八 日目 に そ の 子 イ サ ク に 割礼 を 施 し た。 五ア ブ ラ ハ ム は そ
こ うま とき さい い かみ
の子イサクが生れた時百歳であった。 六そしてサラは言った、﹁神はわ
わら き もの みな わら
た し を 笑 わ せ て く だ さ っ た。聞 く 者 は 皆 わ た し の こ と で 笑 う で し ょ
い こ ちち の
う﹂。 七また言った、
﹁サラが子に乳を飲ませるだろうと、だれがアブラ
創世記

い え かれ とし こ
ハムに言い得たであろう。それなのに、わたしは彼が年とってから、子

68

を産んだ﹂。
そだ ちばな ちばな ひ
さて、おさなごは育って乳離れした。イサクが乳離れした日にアブラ

さか もう おんな
ハムは盛んなふるまいを設けた。 九サラはエジプトの女 ハガルのアブ
う こ じぶん こ あそ み
ラハムに産んだ子が、自分の子イサクと遊ぶのを見て、一〇アブラハムに
い こ お だ
言った、﹁このはしためとその子を追い出してください。このはしため
こ こ とも よつぎ もの
の子はわたしの子イサクと共に、世継となるべき者ではありません﹂。 一
こと こ ひじょう しんぱい かみ
この事で、アブラハムはその子のために非常に心配した。 一二神はア


ブラハムに言われた、﹁あのわらべのため、またあなたのはしためのため
しんぱい い き
に心配することはない。サラがあなたに言うことはすべて聞きいれな
うま もの しそん とな
さい。イサクに生れる者が、あなたの子孫と唱えられるからです。 一三
こ こ こくみん
しかし、はしための子もあなたの子ですから、これをも、一つの国民と
あ あさ お みず かわ
します﹂。 一四そこでアブラハムは明くる朝はやく起きて、パンと水の皮
ぶくろ と あた かた お こ つ さ
袋とを取り、ハガルに与えて、肩に負わせ、その子を連れて去らせた。
創世記

さ あらの
ハガルは去ってベエルシバの荒野にさまよった。

69
かわぶくろ みず つ かのじょ こ き した
一五 や が て 皮 袋 の 水 が 尽 き た の で、彼女 は そ の 子 を 木 の 下 に お き、 一六
こ し み しの い や とど はな
﹁わたしはこの子の死ぬのを見るに忍びない﹂と言って、矢の届くほど離
い こども ほう む かのじょ こども ほう む
れて行き、子供の方に向いてすわった。彼女が子供の方に向いてすわっ
こども こえ な かみ こえ き かみ つかい
たとき、子供は声をあげて泣いた。 一七神はわらべの声を聞かれ、神の使
てん よ い おそ
は天からハガルを呼んで言った、﹁ハガルよ、どうしたのか。恐れてはい
かみ こえ き た い
けない。神はあそこにいるわらべの声を聞かれた。 一八立って行き、わ
と あ て だ かれ おお
ら べ を 取 り 上 げ て あ な た の 手 に 抱 き な さ い。わ た し は 彼 を 大 い な る
こくみん かみ め ひら かのじょ みず
国民とするであろう﹂。 一九神がハガルの目を開かれたので、彼女は水の
い ど み かのじょ い かわぶくろ みず み の
井戸のあるのを見た。彼女は行って皮 袋に水を満たし、わらべに飲ま
かみ とも せいちょう かれ あらの す
せた。 二〇神はわらべと共にいまし、わらべは成 長した。彼は荒野に住
ゆみ い もの かれ あらの す はは かれ
んで弓を射る者となった。 二一彼はパランの荒野に住んだ。母は彼のた
くに つま むか
めにエジプトの国から妻を迎えた。
ぐんぜい ちょう い
二二 そのころアビメレクとその軍勢の長 ピコルはアブラハムに言った、
創世記

なにごと かみ とも
﹁あ な た が 何事 を な さ っ て も、神 は あ な た と 共 に お ら れ る。 二三そ れ ゆ

70
いま こ まご あざむ かみ
え、今ここでわたしをも、わたしの子をも、孫をも欺かないと、神をさ
ちか しんせつ
してわたしに誓ってください。わたしがあなたに親切にしたように、あ
きりゅう ち
なたもわたしと、このあなたの寄留の地とに、しなければなりません﹂。
い ちか
二四アブラハムは言った、﹁わたしは誓います﹂。
けらい みず い ど うば と
二五アブラハムはアビメレクの家来たちが、水の井戸を奪い取ったこと
せ い
についてアビメルクを責めた。 二六しかしアビメレクは言った、
﹁だれが
こと し つ
この事をしたかわたしは知りません。あなたもわたしに告げたことは

なく、わたしもきょうまで聞きませんでした﹂。 二七そこでアブラハムは
ひつじ うし と あた けいやく むす
羊と牛とを取ってアビメレクに与え、ふたりは契約を結んだ。 二八アブ
めす こひつじ とう わ お
ラハムが雌の小羊七頭を分けて置いたところ、 二九アビメレクはアブラ
い めす こひつじ とう わ お
ハムに言った、﹁あなたがこれらの雌の小羊七頭を分けて置いたのは、な
い て
んのためですか﹂。 三〇アブラハムは言った、﹁あなたはわたしの手から
めす こひつじ とう う と い ど ほ
これらの雌の小羊七頭を受け取って、わたしがこの井戸を掘ったことの
創世記

しょうこ ところ な
証拠 と し て く だ さ い﹂。 三一こ れ に よ っ て そ の 所 を ベ エ ル シ バ と 名 づ け

71
かれ ちか かれ
た。彼らがふたりそこで誓いをしたからである。 三二このように彼らは
けいやく むす ぐんぜい ちょう た
ベエルシバで契約を結び、アビメレクとその軍勢の長 ピコルは立って
ち かえ ぽん
ペリシテの地に帰った。 三三アブラハムはベエルシバに一本のぎょりゅ
き う ところ えいえん かみ しゅ な よ
うの木を植え、その所で永遠の神、主の名を呼んだ。 三四こうしてアブラ
なが あいだ ち
ハムは長い間 ペリシテびとの地にとどまった。
第二二章
こと のち かみ こころ かれ い
一これらの事の後、神はアブラハムを試みて彼に言われた、
﹁アブラハム
かれ い かみ い こ
よ﹂。彼は言った、
﹁ここにおります﹂。 二神は言われた、
﹁あなたの子、あ
あい こ つ ち い しめ
なたの愛するひとり子イサクを連れてモリヤの地に行き、わたしが示す
やま かれ はんさい あさ お
山 で 彼 を 燔祭 と し て さ さ げ な さ い﹂。 三ア ブ ラ ハ ム は 朝 は や く 起 き て、
お わかもの こ つ はんさい
ろばにくらを置き、ふたりの若者と、その子イサクとを連れ、また燔祭
創世記

わ た かみ しめ ところ で か め
のたきぎを割り、立って神が示された所に出かけた。 四三日目に、アブ

72
め ば しょ み
ラハムは目をあげて、はるかにその場所を見た。 五そこでアブラハムは
わかもの い いっしょ
若者たちに言った、﹁あなたがたは、ろばと一緒にここにいなさい。わた
む い れいはい ところ かえ
しとわらべは向こうへ行って礼拝し、そののち、あなたがたの所に帰っ
はんさい と こ お
てきます﹂。 六アブラハムは燔祭のたきぎを取って、その子イサクに負
て ひ はもの と いっしょ い
わせ、手に火と刃物とを執って、ふたり一緒に行った。 七やがてイサク
ちち い ちち かれ こた こ
は父アブラハムに言った、
﹁父よ﹂。彼は答えた、
﹁子よ、わたしはここに
い ひ はんさい こひつじ
います﹂。イサクは言った、
﹁火とたきぎとはありますが、燔祭の小羊は
い こ かみ はんさい
どこにありますか﹂。 八アブラハムは言った、
﹁子よ、神みずから燔祭の
こひつじ そな いっしょ い
小羊を備えてくださるであろう﹂。こうしてふたりは一緒に行った。
かれ かみ しめ ば しょ さいだん きず
彼らが神の示された場所にきたとき、アブラハムはそこに祭壇を築

なら こ しば さいだん うえ の
き、たきぎを並べ、その子イサクを縛って祭壇のたきぎの上に載せた。 一
て さ の はもの と こ ころ
そしてアブラハムが手を差し伸べ、刃物を執ってその子を殺そうとし

とき しゅ つかい てん かれ よ い
た時、 一一主の使が天から彼を呼んで言った、
﹁アブラハムよ、アブラハ
創世記

かれ こた つかい い
ムよ﹂。彼は答えた、
﹁はい、ここにおります﹂。 一二み使が言った、
﹁わら

73
て なに かれ
べを手にかけてはならない。また何も彼にしてはならない。あなたの
こ こ お
子、あなたのひとり子をさえ、わたしのために惜しまないので、あなた
かみ おそ もの いま し とき
が 神 を 恐 れ る 者 で あ る こ と を わ た し は 今知 っ た﹂。 一三こ の 時 ア ブ ラ ハ
め み つの か とう おひつじ
ムが目をあげて見ると、うしろに、角をやぶに掛けている一頭の雄羊が
い おひつじ とら こ
いた。アブラハムは行ってその雄羊を捕え、それをその子のかわりに
はんさい ところ な
燔祭としてささげた。 一四それでアブラハムはその所の名をアドナイ・
よ ひとびと こんにち しゅ やま そな
エレと呼んだ。これにより、人々は今日もなお﹁主の山に備えあり﹂と

言う。
しゅ つかい ふたた てん よ い しゅ い
一五 主の使は再び天からアブラハムを呼んで、 一六言った、﹁主は言われ
じぶん ちか こと こ
た、
﹃わたしは自分をさして誓う。あなたがこの事をし、あなたの子、あ
こ お おお
なたのひとり子をも惜しまなかったので、 一七わたしは大いにあなたを
しゅくふく おお しそん てん ほし はま すな
祝 福し、大いにあなたの子孫をふやして、天の星のように、浜べの砂の
しそん てき もん う と ち
ようにする。あなたの子孫は敵の門を打ち取り、 一八また地のもろもろ
創世記

こくみん しそん しゅくふく え


の国民はあなたの子孫によって祝 福を得るであろう。あなたがわたし

74
ことば したが わかもの ところ かえ
の言葉に従 ったからである﹄﹂。 一九アブラハムは若者たちの所に帰り、
た とも い
みな立って、共にベエルシバへ行った。そしてアブラハムはベエルシバ

に住んだ。
こと のち ひと つ い
二〇 これらの事の後、ある人がアブラハムに告げて言った、
﹁ミルカもま
きょうだい こ う ちょうなん おとうと
たあなたの兄 弟 ナホルに子どもを産みました。 二一長 男はウヅ、 弟は
つぎ ちち つぎ
ブズ、次はアラムの父ケムエル、 二二次はケセデ、ハゾ、ピルダシ、エデ
こ にん
ラフ、ベトエルです﹂。 二三ベトエルの子はリベカであって、これら八人
きょうだい う
は ミ ル カ が ア ブ ラ ハ ム の 兄 弟 ナ ホ ル に 産 ん だ の で あ る。 二四ナ ホ ル の
な おんな
そばめで、名をルマという女もまたテバ、ガハム、タハシおよびマアカ

を産んだ。
第二三章
創世記

いっしょう ねん い とし
一サラの一 生は百二十七年であった。これがサラの生きながらえた年

75
ち し
である。 二サラはカナンの地のキリアテ・アルバすなわちヘブロンで死
なか かな な
ん だ。ア ブ ラ ハ ム は 中 に は い っ て サ ラ の た め に 悲 し み 泣 い た。 三ア ブ
しにん た ひとびと い
ラハムは死人のそばから立って、ヘテの人々に言った、 四﹁わたしはあ
たび もの きりゅうしゃ しにん だ ほうむ
なたがたのうちの旅の者で寄留者ですが、わたしの死人を出して葬るた
しょゆう ぼ ち
め、あなたがたのうちにわたしの所有として一つの墓地をください﹂。 五
ひとびと こた い しゅ き
ヘテの人々はアブラハムに答えて言った、 六﹁わが主よ、お聞きなさい。
かみ しゅくん
あなたはわれわれのうちにおられて、神のような主君です。われわれの
ぼ ち もっと よ ところ しにん ほうむ ぼ ち こば
墓地の最も良い所にあなたの死人を葬りなさい。その墓地を拒んで、あ
しにん ほうむ もの
なたにその死人を葬らせない者はわれわれのうちには、ひとりもないで
た ち たみ ひとびと れい
しょう﹂。 七アブラハムは立ちあがり、その地の民ヘテの人々に礼をし
かれ い しにん ほうむ どうい
て、 八彼らに言った、
﹁もしわたしの死人を葬るのに同意されるなら、わ
ねが こ たの かれ
たしの願いをいれて、わたしのためにゾハルの子エフロンに頼み、 九彼
も はたけ はし あな だいか
が持っている畑の端のマクペラのほら穴をじゅうぶんな代価でわたし
創世記

あた ぼ ち も とき
に与え、あなたがたのうちに墓地を持たせてください﹂。 一〇時にエフロ

76
ひとびと
ンはヘテの人々のうちにすわっていた。そこでヘテびとエフロンはヘ
ひとびと まち もん ひとびと き
テの人々、すなわちすべてその町の門にはいる人々の聞いているところ
こた い しゅ き
で、アブラハムに答えて言った、 一一﹁いいえ、わが主よ、お聞きなさい。
はたけ なか あな
わたしはあの畑をあなたにさしあげます。またその中にあるほら穴も
たみ ひとびと まえ
さしあげます。わたしの民の人々の前で、それをさしあげます。あなた
しにん ほうむ ち たみ まえ れい
の 死人 を 葬 り な さ い﹂。 一二ア ブ ラ ハ ム は そ の 地 の 民 の 前 で 礼 を し、 一三
ち たみ き い
その地の民の聞いているところでエフロンに言った、﹁あなたがそれを
しょうだく き はたけ だいか はら
承 諾 さ れ る な ら、お 聞 き な さ い。わ た し は そ の 畑 の 代価 を 払 い ま す。
う と しにん ほうむ
お 受 け 取 り く だ さ い。わ た し の 死人 を そ こ に 葬 り ま し ょ う﹂。 一四エ フ
こた い しゅ き
ロンはアブラハムに答えて言った、 一五﹁わが主よ、お聞きなさい。あの
ち ぎん あいだ
地は銀四百シケルですが、これはわたしとあなたの間で、なにほどのこ
しにん ほうむ
と で し ょ う。あ な た の 死人 を 葬 り な さ い﹂。 一六そ こ で ア ブ ラ ハ ム は エ
ことば ひとびと き
フロンの言葉にしたがい、エフロンがヘテの人々の聞いているところで
創世記

い ぎん しょうにん つうようぎん はか あた
言った銀、すなわち商 人の通用銀四百シケルを量ってエフロンに与え

77
た。
まえ はたけ はたけ
一七 こうしてマムレの前のマクペラにあるエフロンの畑は、 畑も、その
なか あな はたけ なか しゅうい さかい き みな
中のほら穴も、 畑の中およびその周囲の境にあるすべての木も皆、 一八
ひとびと まえ まち もん ひとびと まえ
ヘテの人々の前、すなわちその町の門にはいるすべての人々の前で、ア
しょゆう き のち つま
ブラハムの所有と決まった。 一九その後、アブラハムはその妻サラをカ
ち まえ はたけ あな
ナンの地にあるマムレ、すなわちヘブロンの前のマクペラの畑のほら穴
ほうむ はたけ なか あな ひとびと
に 葬 っ た。 二〇こ の よ う に 畑 と そ の 中 に あ る ほ ら 穴 と は ヘ テ の 人々 に
しょゆう ぼ ち さだ
よってアブラハムの所有の墓地と定められた。
第二四章
とし すす ろうじん しゅ こと
一アブラハムは年が進んで老人となった。主はすべての事にアブラハ
めぐ しょゆう かんり いえ
ム を 恵 ま れ た。 二さ て ア ブ ラ ハ ム は 所有 の す べ て を 管理 さ せ て い た 家
創世記

ねんちょう い て した い
の年 長のしもべに言った、
﹁あなたの手をわたしのももの下に入れなさ

78
てんち かみ しゅ ちか
い。 三わたしはあなたに天地の神、主をさして誓わせる。あなたはわた
いまいっしょ す むすめ こ つま
しが今一緒に住んでいるカナンびとのうちから、 娘をわたしの子の妻
くに い しんぞく ところ い
にめとってはならない。 四あなたはわたしの国へ行き、親族の所へ行っ
こ つま
て、わたしの子イサクのために妻をめとらなければならない﹂。 五しも
かれ い おんな ち く この
べは彼に言った、﹁もしその女がわたしについてこの地に来ることを好
とき こ しゅっしん ち つ かえ
まない時は、わたしはあなたの子をあなたの出 身 地に連れ帰るべきで
かれ い こ けっ む
しょうか﹂。 六アブラハムは彼に言った、
﹁わたしの子は決して向こうへ
つ かえ てん かみ しゅ ちち いえ しんぞく ち
連れ帰ってはならない。 七天の神、主はわたしを父の家、親族の地から
みちび だ かた ちか しそん ち あた
導き出してわたしに語り、わたしに誓って、おまえの子孫にこの地を与
い しゅ つかい まえ
えると言われた。主は、み使をあなたの前につかわされるであろう。あ
こ つま
な た は あ そ こ か ら わ た し の 子 に 妻 を め と ら ね ば な ら な い。 八け れ ど も
おんな く この ちか
その女があなたについて来ることを好まないなら、あなたはこの誓いを
と こ む つ かえ
解かれる。ただわたしの子を向こうへ連れ帰ってはならない﹂。 九そこ
創世記

て しゅじん した い こと かれ
でしもべは手を主人アブラハムのももの下に入れ、この事について彼に

79
ちか
誓った。
しゅじん とう と で
一〇 しもべは主人のらくだのうちから十頭のらくだを取って出かけた。
しゅじん よ もの たずさ た
すなわち主人のさまざまの良い物を携え、立ってアラム・ナハライムに
まち い かれ まち そと みず い ど
むかい、ナホルの町へ行った。 一一彼はらくだを町の外の、水の井戸のそ
ふ とき ゆうぐれ おんな みず で じこく
ばに伏させた。時は夕暮で、 女たちが水をくみに出る時刻であった。 一
かれ い しゅじん かみ しゅ
彼は言った、
二 ﹁主人アブラハムの神、主よ、どうか、きょう、わたしに
さづ しゅじん めぐ ほどこ
しあわせを授け、主人アブラハムに恵みを施してください。 一三わたし
いずみ た まち ひとびと むすめ みず で
は泉のそばに立っています。町の人々の娘たちが水をくみに出てきた
むすめ む ねが みず かたむ
とき、一四 娘に向かって﹃お願いです、あなたの水がめを傾けてわたしに
の い むすめ こた の
飲ませてください﹄と言い、 娘が答えて、
﹃お飲みください。あなたの
の い もの
らくだにも飲ませましょう﹄と言ったなら、その者こそ、あなたがしも
さだ もの
べイサクのために定められた者ということにしてください。わたしは
しゅじん めぐ ほどこ し
これによって、あなたがわたしの主人に恵みを施されることを知りま
創世記

しょう﹂。

80
かれ い おわ きょうだい つま
彼がまだ言い終らないうちに、アブラハムの兄 弟 ナホルの妻ミルカ
一五
こ むすめ みず かた の で むすめ
の子ベトエルの娘 リベカが、水がめを肩に載せて出てきた。 一六その娘
ひじょう うつく おとこ し しょじょ かのじょ いずみ ふ みず
は非常に美しく、男を知らぬ処女であった。彼女が泉に降りて、水がめ
み あ とき はし よ かのじょ あ い
を満たし、上がってきた時、 一七しもべは走り寄って、彼女に会って言っ
ねが みず みず すこ の
た、﹁お願いです。あなたの水がめの水を少し飲ませてください﹂。 一八
かのじょ しゅ の い いそ みず
すると彼女は﹁わが主よ、お飲みください﹂と言って、急いで水がめを
じぶん て と かれ の の おわ かのじょ い
自分の手に取りおろして彼に飲ませた。 一九飲ませ終って、彼女は言っ
の おわ みず
た、﹁あなたのらくだもみな飲み終るまで、わたしは水をくみましょう﹂。
かのじょ いそ みず みず ふたた みず い ど はし
彼女は急いでかめの水を水ぶねにあけ、 再び水をくみに井戸に走っ
二〇
い みず あいだ ひと しゅ
て行って、すべてのらくだのために水をくんだ。 二一その間その人は主
かれ たび しゅくふく し だま かのじょ み
が彼の旅の祝 福されるか、どうかを知ろうと、黙って彼女を見つめてい
た。
の おわ ひと おも はん きん はなわ
らくだが飲み終ったとき、その人は重さ半シケルの金の鼻輪一つと、
二二
創世記

おも きん うでわ と い むすめ
重さ十シケルの金の腕輪二つを取って、 二三言った、
﹁あなたはだれの娘

81
はな ちち いえ と
か、わたしに話してください。あなたの父の家にわたしどもの泊まる
ば しょ かのじょ かれ い つま
場所がありましょうか﹂。 二四彼女は彼に言った、﹁わたしはナホルの妻
こ むすめ かれ い
ミルカの子ベトエルの娘です﹂。 二五また彼に言った、
﹁わたしどもには、
かいば と ば しょ
わらも、飼葉もたくさんあります。また泊まる場所もあります﹂。 二六そ
ひと あたま さ しゅ はい い しゅじん かみ しゅ
の人は頭を下げ、主を拝して、 二七言った、
﹁主人アブラハムの神、主は
しゅ しゅじん お
ほむべきかな。主はわたしの主人にいつくしみと、まこととを惜しまれ
しゅ たび しゅじん きょうだい いえ みちび
なかった。そして主は旅にあるわたしを主人の兄 弟の家に導かれた﹂。
むすめ はし い はは いえ こと つ
二八 娘は走って行って、母の家のものにこれらの事を告げた。 二九リベカ
あに な いずみ
にひとりの兄があって、名をラバンといった。ラバンは泉のそばにいる
ひと ところ はし い かれ はなわ いもうと て うでわ み
そ の 人 の 所 へ 走 っ て 行 っ た。 三〇彼 は 鼻輪 と 妹 の 手 に あ る 腕輪 と を 見、
いもうと ひと い き
また妹 リベカが﹁その人はわたしにこう言った﹂というのを聞いて、そ
ひと ところ い ひと いずみ た
の人の所へ行ってみると、その人は泉のほとりで、らくだのそばに立っ
ひと い しゅ しゅくふく ひと
ていた。 三一そこでその人に言った、
﹁主に祝 福された人よ、おはいりく
創世記

そと た いえ じゅんび
ださい。なぜ外に立っておられますか。わたしは家を準備し、らくだの

82
ば しょ じゅんび ひと いえ
た め に も 場所 を 準備 し て お き ま し た﹂。 三二そ の 人 は 家 に は い っ た。ラ
に と かいば あた みず あた
バンはらくだの荷を解いて、わらと飼葉をらくだに与え、また水を与え
ひと あし じゅうしゃ あし あら かれ まえ
て そ の 人 の 足 と、そ の 従 者 た ち の 足 を 洗 わ せ た。 三三そ し て 彼 の 前 に
しょくもつ そな かれ い ようむ はな た
食 物を供えたが、彼は言った、
﹁わたしは用向きを話すまでは食べませ
い はな
ん﹂。ラバンは言った、﹁お話しください﹂。
かれ い しゅ
三四そこで彼は言った、﹁わたしはアブラハムのしもべです。 三五主はわ
しゅじん おお しゅくふく おお もの しゅ かれ
たしの主人を大いに祝 福して、大いなる者とされました。主はまた彼
ひつじ うし ぎん きん だんじょ どれい あた しゅじん
に羊、牛、銀、金、男女の奴隷、らくだ、ろばを与えられました。 三六主人
つま としお しゅじん おとこ こ う しゅじん しょゆう
の妻サラは年老いてから、主人に男の子を産みました。主人はその所有
みな あた しゅじん ちか い
を皆これに与えました。 三七ところで主人はわたしに誓わせて言いまし
す ち むすめ こ つま
た、﹃わたしの住んでいる地のカナンびとの娘を、わたしの子の妻にめ
ちち いえ しんぞく ところ い
とってはならない。 三八おまえはわたしの父の家、親族の所へ行って、わ
こ つま しゅじん い
た し の 子 に 妻 を め と ら な け れ ば な ら な い﹄。 三九わ た し は 主人 に 言 い ま
創世記

おんな とき
し た、﹃も し そ の 女 が わ た し に つ い て こ な い 時 は ど う い た し ま し ょ う

83
しゅじん い つか しゅ つかい
か﹄。 四〇主人はわたしに言いました、
﹃わたしの仕えている主は、み使を
いっしょ たび あた
おまえと一緒につかわして、おまえの旅にさいわいを与えられるであろ
しんぞく ちち いえ こ つま
う。おまえはわたしの親族、わたしの父の家からわたしの子に妻をめと
ちか と
らなければならない。 四一そのとき、おまえはわたしにした誓いから解
しんぞく い とき かれ
かれるであろう。またおまえがわたしの親族に行く時、彼らがおまえに
むすめ あた ちか と
その娘を与えないなら、おまえはわたしにした誓いから解かれるであろ
う﹄。
いずみ い しゅじん
わたしはきょう、泉のところにきて言いました、
四二 ﹃主人アブラハムの
かみ しゅ いま みち あた
神、主よ、どうか今わたしのゆく道にさいわいを与えてください。 四三わ
いずみ た みず で むすめ む
たしはこの泉のそばに立っていますが、水をくみに出てくる娘に向かっ
ねが みず みず すこ の い
て、﹁お願いです。あなたの水がめの水を少し飲ませてください﹂と言

い、 四四﹁お飲みください。あなたのらくだのためにも、くみましょう﹂
い むすめ しゅ しゅじん こ さだ
とわたしに言うなら、その娘こそ、主がわたしの主人の子のために定め
創世記

おんな
られた女ということにしてください﹄。

84
こころ い おわ みず かた
四五 わたしが心のうちでそう言い終らないうちに、リベカが水がめを肩
の で みず いずみ ふ ねが
に載せて出てきて、水をくみに泉に降りたので、わたしは﹃お願いです、
の い かのじょ いそ みず かた
飲ませてください﹄と言いますと、四六彼女は急いで水がめを肩からおろ
の の
し、﹃お飲みください。わたしはあなたのらくだにも飲ませましょう﹄と
い の かのじょ の
言いました。それでわたしは飲みましたが、彼女はらくだにも飲ませま
かのじょ たず むすめ い
した。 四七わたしは彼女に尋ねて、
﹃あなたはだれの娘ですか﹄と言いま
つま こ むすめ こた
すと、﹃ナホルとその妻ミルカの子ベトエルの娘です﹄と答えました。そ
かのじょ はな はなわ て うでわ
こでわたしは彼女の鼻に鼻輪をつけ、手に腕輪をつけました。 四八そし
あたま しゅ はい しゅじん かみ しゅ
てわたしは頭をさげて主を拝し、主人アブラハムの神、主をほめたたえ
しゅ しゅじん きょうだい むすめ こ ただ
ました。主は主人の兄 弟の娘を子にめとらせようと、わたしを正しい
みち みちび しゅじん
道に導かれたからです。 四九あなたがたが、もしわたしの主人にいつく
つく おも はな
しみと、まことを尽そうと思われるなら、そうとわたしにお話しくださ
はな
い。そうでなければ、そうでないとお話しください。それによってわた
創世記

みぎ ひだり き
しは右か左に決めましょう﹂。

85
こた い こと しゅ で
五〇 ラバンとベトエルは答えて言った、
﹁この事は主から出たことですか

ら、わたしどもはあなたによしあしを言うことができません。 五一リベ
つ い しゅ い
カがここにおりますから連れて行って、主が言われたように、あなたの
しゅじん こ つま
主人の子の妻にしてください﹂。
かれ ことば き ち ふ しゅ はい
五二 アブラハムのしもべは彼らの言葉を聞いて、地に伏し、主を拝した。
ぎん かざ きん かざ いふく と だ
五三 そしてしもべは銀の飾りと、金の飾り、および衣服を取り出してリベ
あた あに はは あたい たか しなじな あた かれ じゅうしゃ
カに与え、その兄と母とにも価の高い品々を与えた。 五四彼と従 者たち
の く やど あさかれ お とき い
は飲み食いして宿ったが、あくる朝彼らが起きた時、しもべは言った、
しゅじん かえ あに はは
﹁わ た し を 主人 の も と に 帰 ら せ て く だ さ い﹂。 五 五リ ベ カ の 兄 と 母 と は
い むすめ すうじつ すく か とも
言った、
﹁娘は数日、少なくとも十日、わたしどもと共にいて、それから
い かれ い しゅ みち
行かせましょう﹂。 五六しもべは彼らに言った、﹁主はわたしの道にさい
あた ひ しゅじん かえ
わいを与えられましたから、わたしを引きとめずに、主人のもとに帰ら
かれ い むすめ よ き
せてください﹂。 五七彼らは言った、
﹁娘を呼んで聞いてみましょう﹂。 五八
創世記

かれ よ い ひと いっしょ い
彼らはリベカを呼んで言った、﹁あなたはこの人と一緒に行きますか﹂。

86
かのじょ い い かれ いもうと
彼女は言った、
﹁行きます﹂。 五九そこで彼らは妹 リベカと、そのうばと、
じゅうしゃ おく さ かれ
アブラハムのしもべと、その従 者とを送り去らせた。 六〇彼らはリベカ
しゅくふく かのじょ い
を祝 福して彼女に言った、
いもうと ひと はは
﹁妹よ、あなたは、ちよろずの人の母となれ。
しそん てき もん う と
あなたの子孫はその敵の門を打ち取れ﹂。
た じ じょ とも の ひと したが い
六一 リベカは立って侍女たちと共にらくだに乗り、その人に従 って行っ
つ た さ
た。しもべはリベカを連れて立ち去った。
ち す
六二 さてイサクはベエル・ラハイ・ロイからきて、ネゲブの地に住んでい
ゆうぐれ の で ある め く
た。 六三イサクは夕暮、野に出て歩いていたが、目をあげて、らくだの来
み め み
るのを見た。 六四リベカは目をあげてイサクを見、らくだからおりて、 六
い む の ある く ひと
しもべに言った、
五 ﹁わたしたちに向かって、野を歩いて来るあの人はだ
い しゅじん
れでしょう﹂。しもべは言った、﹁あれはわたしの主人です﹂。するとリ
かずき み じぶん
ベカは、被衣で身をおおった。 六六しもべは自分がしたことのすべてを
創世記

はな てんまく つ い
イサクに話した。 六七イサクはリベカを天幕に連れて行き、リベカをめ

87
つま かのじょ あい はは し ご なぐさ え
とって妻とし、彼女を愛した。こうしてイサクは母の死後、 慰めを得
た。
第二五章
ふたた つま な かのじょ
一アブラハムは再び妻をめとった。名をケトラという。 二彼女はジムラ

ン、ヨクシャン、メダン、ミデアン、イシバクおよびシュワを産んだ。 三
こ しそん
ヨクシャンの子はシバとデダン。デダンの子孫はアシュリびと、レトシ
しそん
びと、レウミびとである。 四ミデアンの子孫はエパ、エペル、ヘノク、ア
みな しそん
ビダ、エルダアであって、これらは皆ケトラの子孫であった。 五アブラ
しょゆう あた
ハ ム は そ の 所有 を こ と ご と く イ サ ク に 与 え た。 六ま た そ の そ ば め た ち
こ もの あた い あいだ かれ こ
の子らにもアブラハムは物を与え、なお生きている間に彼らをその子イ
はな ひがし ほう ひがし くに うつ
サクから離して、 東の方、 東の国に移らせた。
創世記

い とし ねん
七アブラハムの生きながらえた年は百七十五年である。 八アブラハムは

88
こうれい たっ ろうじん とし み いき た し たみ くわ
高齢に達し、老人となり、年が満ちて息絶え、死んでその民に加えられ
こ かれ こ
た。 九そ の 子 イ サ ク と イ シ マ エ ル は 彼 を ヘ テ び と ゾ ハ ル の 子 エ フ ロ ン
はたけ あな ほうむ む
の 畑 に あ る マ ク ペ ラ の ほ ら 穴 に 葬 っ た。こ れ は マ ム レ の 向 か い に あ
ひとびと か と はたけ
り、 一〇アブラハムがヘテの人々から、買い取った畑であって、そこにア
つま ほうむ し のち かみ
ブラハムとその妻サラが葬られた。 一一アブラハムが死んだ後、神はそ
こ しゅくふく す
の子イサクを祝 福された。イサクはベエル・ラハイ・ロイのほとりに住
んだ。

一二 サラのつかえめエジプトびとハガルがアブラハムに産んだアブラハ
こ けいず つぎ こ
ムの子イシマエルの系図は次のとおりである。 一三イシマエルの子らの
な せだい な つぎ
名を世代にしたがって、その名をいえば次のとおりである。すなわちイ
ちょうし つぎ
シマエルの長子はネバヨテ、次はケダル、アデビエル、ミブサム、 一四ミ
シマ、ドマ、マッサ、 一五ハダデ、テマ、エトル、ネフシ、ケデマ。 一六こ
こ むら しゅくえい な しぞく
れはイシマエルの子らであり、村と宿 営とによる名であって、その氏族
創世記

にん きみ ねん
による十二人の君たちである。 一七イシマエルのよわいは百三十七年で

89
かれ いき た し たみ くわ こ
ある。彼は息絶えて死に、その民に加えられた。 一八イシマエルの子ら
ひがし あいだ す およ
はハビラからエジプトの東、シュルまでの間に住んで、アシュルに及ん
きょうだい ひがし す
だ。イシマエルはすべての兄 弟の東に住んだ。
こ けいず つぎ こ
アブラハムの子イサクの系図は次のとおりである。アブラハムの子
一九
さい とき
はイサクであって、二〇イサクは四十歳の時、パダンアラムのアラムびと
むすめ いもうと つま
ベトエルの娘で、アラムびとラバンの妹 リベカを妻にめとった。 二一イ
つま こ う つま しゅ いの ねが しゅ
サクは妻が子を産まなかったので、妻のために主に祈り願った。主はそ
ねが き つま こ たいない
の願いを聞かれ、妻リベカはみごもった。 二二ところがその子らが胎内
お あ い
で押し合ったので、リベカは言った、
﹁こんなことでは、わたしはどうな
かのじょ い しゅ たず しゅ かのじょ い
るでしょう﹂。彼女は行って主に尋ねた。 二三主は彼女に言われた、
こくみん たいない
﹁二つの国民があなたの胎内にあり、
たみ はら わか で
二つの民があなたの腹から別れて出る。
たみ た たみ つよ
一つの民は他の民よりも強く、
創世記

あに おとうと つか
兄は弟に仕えるであろう﹂。

90
かのじょ しゅっさん ひ たいない で
二四彼女の出 産の日がきたとき、胎内にはふたごがあった。 二五さきに出
あか ぜんしん け な な
たのは赤くて全身毛ごろものようであった。それで名をエサウと名づ
のち おとうと で て
け た。 二 六そ の 後 に 弟 が 出 た。そ の 手 は エ サ ウ の か か と を つ か ん で い
な な かれ う とき
た。それで名をヤコブと名づけた。リベカが彼らを産んだ時、イサクは
さい
六十歳であった。
こ せいちょう たく しゅりょうしゃ の ひと
二七 さてその子らは成 長し、エサウは巧みな狩 猟 者となり、野の人と
おだ ひと てんまく す
なったが、ヤコブは穏やかな人で、天幕に住んでいた。 二八イサクは、し
にく す あい あい
かの肉が好きだったので、エサウを愛したが、リベカはヤコブを愛した。
ひ に とき う つか の
二九ある日ヤコブが、あつものを煮ていた時、エサウは飢え疲れて野から
かえ い う つか ねが
帰ってきた。 三〇エサウはヤコブに言った、
﹁わたしは飢え疲れた。お願
あか あか た かれ な
いだ。赤いもの、その赤いものをわたしに食べさせてくれ﹂。彼が名を
よ い
エドムと呼ばれたのはこのためである。 三一ヤコブは言った、
﹁まずあな
ちょうし とっけん う い
たの長子の特権をわたしに売りなさい﹂。 三二エサウは言った、﹁わたし
創世記

し ちょうし とっけん なに
は 死 に そ う だ。長子 の 特権 な ど わ た し に 何 に な ろ う﹂。 三三ヤ コ ブ は ま

91
い ちか かれ ちか ちょうし とっけん
た言った、﹁まずわたしに誓いなさい﹂。彼は誓って長子の特権をヤコブ
う まめ
に売った。 三四そこでヤコブはパンとレンズ豆のあつものとをエサウに
あた かれ の く た さ
与えたので、彼は飲み食いして、立ち去った。このようにしてエサウは
ちょうし とっけん かろ
長子の特権を軽んじた。
第二六章
とき はじ くに
一アブラハムの時にあった初めのききんのほか、またききんがその国に
おう ところ
あったので、イサクはゲラルにいるペリシテびとの王アビメレクの所へ
い とき しゅ かれ あらわ い くだ
行った。 二その時、主は彼に現れて言われた、
﹁エジプトへ下ってはなら
しめ ち ち
な い。わ た し が あ な た に 示 す 地 に と ど ま り な さ い。 三あ な た が こ の 地
とも しゅくふく
にとどまるなら、わたしはあなたと共にいて、あなたを祝 福し、これら
くに しそん あた
の国をことごとくあなたと、あなたの子孫とに与え、わたしがあなたの
創世記

ちち ちか ちか はた しそん
父 ア ブ ラ ハ ム に 誓 っ た 誓 い を 果 そ う。 四ま た わ た し は あ な た の 子孫 を

92
ま てん ほし しそん ち あた
増して天の星のようにし、あなたの子孫にこれらの地をみな与えよう。
ち こくみん しそん しゅくふく
そ し て 地 の す べ て の 国民 は あ な た の 子孫 に よ っ て 祝 福 を え る で あ ろ
ことば
う。 五アブラハムがわたしの言葉にしたがってわたしのさとしと、いま
まも
しめと、さだめと、おきてとを守ったからである﹂。
す ところ ひとびと かれ つま
六こうしてイサクはゲラルに住んだ。 七その所の人々が彼の妻のことを
たず かのじょ いもうと かれ い うつく
尋ねたとき、﹁彼女はわたしの妹です﹂と彼は言った。リベカは美しかっ
ところ ひとびと じぶん ころ おも
たので、その所の人々がリベカのゆえに自分を殺すかもしれないと思っ
つま い おそ なが
て、
﹁わたしの妻です﹂と言うのを恐れたからである。 八イサクは長らく
ひ おう まど そと
そこにいたが、ある日ペリシテびとの王アビメレクは窓から外をながめ
つま たわむ み
ていて、イサクがその妻リベカと戯れているのを見た。 九そこでアビメ
め い かのじょ たし つま
レクはイサクを召して言った、﹁彼女は確かにあなたの妻です。あなた
かのじょ いもうと い かれ
はどうして﹃彼女はわたしの妹です﹄と言われたのですか﹂。イサクは彼
い かのじょ ころ おも
に言った、﹁わたしは彼女のゆえに殺されるかもしれないと思ったから
創世記

い こと
です﹂。 一〇アビメレクは言った、﹁あなたはどうしてこんな事をわれわ

93
たみ かるがる つま ね
れにされたのですか。民のひとりが軽々しくあなたの妻と寝るような
こと とき つみ お
事があれば、その時あなたはわれわれに罪を負わせるでしょう﹂。 一一そ
たみ めい い ひと つま
れでアビメレクはすべての民に命じて言った、﹁この人、またはその妻に
もの かなら し
さわる者は必ず死ななければならない﹂。
ち たね とし ばい しゅうかく え
一二 イサクはその地に種をまいて、その年に百倍の収 穫を得た。このよ
しゅ かれ しゅくふく かれ と さか ひじょう
うに主が彼を祝 福されたので、 一三彼は富み、またますます栄えて非常
ゆうふく ひつじ む うし む およ おお も
に裕福になり、 一四 羊の群れ、牛の群れ及び多くのしもべを持つように
かれ かれ
なったので、ペリシテびとは彼をねたんだ。 一五またペリシテびとは彼
ちち とき ちち ほ い ど
の父アブラハムの時に、父のしもべたちが掘ったすべての井戸をふさ
つち う い
ぎ、土で埋めた。 一六アビメレクはイサクに言った、
﹁あなたはわれわれ
つよ ところ さ
よりも、はるかに強くなられたから、われわれの所を去ってください﹂。
さ たに てんまく は ところ す
一七 イサクはそこを去り、ゲラルの谷に天幕を張ってその所に住んだ。 一
ちち とき ひとびと ほ みず い ど ふたた
八そ し て イ サ ク は 父 ア ブ ラ ハ ム の 時 に 人々 の 掘 っ た 水 の 井戸 を 再 び
創世記

ほ し ご
掘った。アブラハムの死後、ペリシテびとがふさいだからである。イサ

94
ちち な な
クは父がつけた名にしたがってそれらに名をつけた。 一九しかしイサク
たに なか ほ で みず い ど み
のしもべたちが谷の中を掘って、そこにわき出る水の井戸を見つけたと
ひつじかい みず い
き、二〇ゲラルの羊 飼たちは、
﹁この水はわれわれのものだ﹂と言って、イ
ひつじかい あらそ い ど な な
サクの羊 飼たちと争 ったので、イサクはその井戸の名をエセクと名づ
かれ かれ あらそ かれ い ど ほ
けた。彼らが彼と争 ったからである。 二一彼らはまた一つの井戸を掘っ
あらそ な な
たが、これをも争 ったので、名をシテナと名づけた。 二二イサクはそこか
うつ い ど ほ かれ あらそ
ら移ってまた一つの井戸を掘ったが、彼らはこれを争わなかったので、
な な い しゅ ば しょ ひろ
その名をレホボテと名づけて言った、﹁いま主がわれわれの場所を広げ

られたから、われわれはこの地にふえるであろう﹂。
かれ のぼ よ しゅ かれ あらわ い
二三彼はそこからベエルシバに上った。 二四その夜、主は彼に現れて言わ
ちち かみ おそ
れた、﹁わたしはあなたの父アブラハムの神である。あなたは恐れては
とも しゅくふく
ならない。わたしはあなたと共におって、あなたを祝 福し、わたしのし
しそん ま かれ
も べ ア ブ ラ ハ ム の ゆ え に あ な た の 子孫 を 増 す で あ ろ う﹂。 二五そ れ で 彼
創世記

ところ さいだん きず しゅ な よ てんまく は


はその所に祭壇を築いて、主の名を呼び、そこに天幕を張った。またイ

95
い ど ほ
サクのしもべたちはそこに一つの井戸を掘った。
とき とも ぐんぜい ちょう とも
時にアビメレクがその友アホザテと、軍勢の長 ピコルと共にゲラル
二六
かれ い
からイサクのもとにきたので、 二七イサクは彼らに言った、
﹁あなたがた
にく なか お だ
はわたしを憎んで、あなたがたの中からわたしを追い出されたのに、ど
ところ かれ い
うしてわたしの所にこられたのですか﹂。 二八彼らは言った、﹁われわれ
しゅ とも み
は主があなたと共におられるのを、はっきり見ましたので、いまわれわ
あいだ あいだ ちか た
れの間、すなわちわれわれとあなたとの間に一つの誓いを立てて、あな
けいやく むすぼ おも がい くわ
たと契約を結ぼうと思います。 二九われわれはあなたに害を加えたこと
よ こと やす さ
はなく、ただ良い事だけをして、安らかに去らせたのですから、あなた
わる こと しゅ しゅくふく
はわれわれに悪い事をしてはなりません。まことにあなたは主に祝 福
かれ もう
されたかたです﹂。 三〇そこでイサクは彼らのためにふるまいを設けた。
かれ の く あさ お たがい ちか
彼らは飲み食いし、三一あくる朝、はやく起きて互に誓った。こうしてイ
かれ さ かれ おだ さ
サクは彼らを去らせたので、彼らはイサクのもとから穏やかに去った。
創世記

ひ じぶん ほ い ど
その日、イサクのしもべたちがきて、自分たちが掘った井戸について
三二

96
かれ つ い みず み
彼に告げて言った、﹁わたしたちは水を見つけました﹂。 三三イサクはそ
な まち な こんにち
れをシバと名づけた。これによってその町の名は今日にいたるまでベ
エルシバといわれている。
さい とき むすめ
三四 エサウは四十歳の時、ヘテびとベエリの娘 ユデテとヘテびとエロン
むすめ つま かのじょ
の娘 バスマテとを妻にめとった。 三五彼女たちはイサクとリベカにとっ
こころ いた
て心の痛みとなった。
第二七章
としお め み とき ちょうし よ
イサクは年老い、目がかすんで見えなくなった時、長子エサウを呼ん

い こ かれ こた い
で言った、
﹁子よ﹂。彼は答えて言った、
﹁ここにおります﹂。 二イサクは
い としお し し
言った。﹁わたしは年老いて、いつ死ぬかも知れない。 三それであなた
ぶ き ゆみや の で にく
の武器、弓矢をもって野に出かけ、わたしのために、しかの肉をとって
創世記

す た もの つく も た
きて、四わたしの好きなおいしい食べ物を作り、持ってきて食べさせよ。

97
し まえ しゅくふく
わたしは死ぬ前にあなたを祝 福しよう﹂。
こ かた き
イサクがその子エサウに語るのをリベカは聞いていた。やがてエサ

にく え の で こ
ウが、しかの肉を獲ようと野に出かけたとき、 六リベカはその子ヤコブ
い き ちち あに
に言った、
﹁わたしは聞いていましたが、父は兄エサウに、 七﹃わたしの
にく た もの つく た
ために、しかの肉をとってきて、おいしい食べ物を作り、わたしに食べ
し まえ しゅ まえ しゅくふく い
させよ。わたしは死ぬ前に、主の前であなたを祝 福しよう﹄と言いまし
こ ことば い
た。 八それで、子よ、わたしの言葉にしたがい、わたしの言うとおりに
む ところ い こ よ とう
しなさい。 九群れの所へ行って、そこからやぎの子の良いのを二頭わた
ところ と ちち ちち す
しの所に取ってきなさい。わたしはそれで父のために、父の好きなおい
た もの つく も い ちち た
しい食べ物を作りましょう。 一〇あなたはそれを持って行って父に食べ
ちち し まえ しゅくふく
させなさい。父は死ぬ前にあなたを祝 福するでしょう﹂。 一一ヤコブは
はは い あに けぶか ひと
母リベカに言った、﹁兄エサウは毛深い人ですが、わたしはなめらかで
ちち
す。 一二おそらく父はわたしにさわってみるでしょう。そうすればわた
創世記

ちち あざむ もの おも しゅくふく う う
しは父を欺く者と思われ、 祝 福を受けず、かえってのろいを受けるで

98
はは かれ い こ
しょう﹂。 一三母は彼に言った、
﹁子よ、あなたがうけるのろいはわたしが
う ことば したが い と
受けます。ただ、わたしの言葉に従い、行って取ってきなさい﹂。 一四そ
かれ い こ と はは ところ も はは ちち す
こで彼は行ってやぎの子を取り、母の所に持ってきたので、母は父の好
た もの つく いえ ちょうし
き な お い し い 食 べ 物 を 作 っ た。 一五リ ベ カ は 家 に あ っ た 長子 エ サ ウ の
はれぎ と おとうと き こ かわ て くび
晴着を取って、 弟 ヤコブに着せ、一六また子やぎの皮を手と首のなめら
ところ かのじょ つく た もの
かな所とにつけさせ、 一七彼女が作ったおいしい食べ物とパンとをその
こ て
子ヤコブの手にわたした。
ちち ところ い い ちち ちち い
一八 そこでヤコブは父の所へ行って言った、
﹁父よ﹂。すると父は言った、
こ ちち い
﹁わたしはここにいる。子よ、あなたはだれか﹂。 一九ヤコブは父に言っ
ちょうし い
た、﹁長子エサウです。あなたがわたしに言われたとおりにいたしまし
お にく た
た。どうぞ起きて、すわってわたしのしかの肉を食べ、あなたみずから
しゅくふく こ い こ
わたしを祝 福してください﹂。 二〇イサクはその子に言った、﹁子よ、どう
はや て い かれ い
してあなたはこんなに早く手に入れたのか﹂。彼は言った、﹁あなたの
創世記

かみ しゅ さづ
神、主がわたしにしあわせを授けられたからです﹂。 二一イサクはヤコブ

99
い こ ちかよ たし
に言った、
﹁子よ、近寄りなさい。わたしは、さわってみて、あなたが確
こ ちち
かにわが子エサウであるかどうかをみよう﹂。 二二ヤコブが、父イサクに
ちかよ かれ い こえ こえ
近寄ったので、イサクは彼にさわってみて言った、﹁声はヤコブの声だ
て て て あに て けぶか
が、手 は エ サ ウ の 手 だ﹂。 二三ヤ コ ブ の 手 が 兄 エ サ ウ の 手 の よ う に 毛深
み かれ
かったため、イサクはヤコブを見わけることができなかったので、彼を
しゅくふく い たし こ
祝 福した。 二四イサクは言った、﹁あなたは確かにわが子エサウですか﹂。
かれ い い ところ も
彼は言った、
﹁そうです﹂。 二五イサクは言った、
﹁わたしの所へ持ってき
こ にく た しゅくふく
なさい。わが子のしかの肉を食べて、わたしみずから、あなたを祝 福し
かれ ところ も かれ た
よう﹂。ヤコブがそれを彼の所に持ってきたので、彼は食べた。またぶ
しゅ も かれ の ちち かれ い
どう酒を持ってきたので、彼は飲んだ。 二六そして父イサクは彼に言っ
こ ちかよ くち かれ ちかよ
た、
﹁子よ、さあ、近寄ってわたしに口づけしなさい﹂。 二七彼が近寄って
くち とき きもの かれ しゅくふく い
口づけした時、イサクはその着物のかおりをかぎ、彼を祝 福して言っ
た、
創世記


﹁ああ、わが子のかおりは、

100
しゅ しゅくふく の
主が祝 福された野のかおりのようだ。
かみ てん つゆ
二八 どうか神が、天の露と、
ち こ おお こくもつ
地の肥えたところと、多くの穀物と、
あたら しゅ たま
新しいぶどう酒とをあなたに賜わるように。
たみ つか
二九 もろもろの民はあなたに仕え、
くに み
もろもろの国はあなたに身をかがめる。
きょうだい しゅ
あなたは兄 弟たちの主となり、
はは こ
あなたの母の子らは、

あなたに身をかがめるであろう。
もの
あなたをのろう者はのろわれ、
しゅくふく もの しゅくふく
あなたを祝 福する者は祝 福される﹂。
しゅくふく おわ ちち まえ で い
イサクがヤコブを祝 福し終って、ヤコブが父イサクの前から出て行
三〇
あに かり かえ かれ た もの
くとすぐ、兄エサウが狩から帰ってきた。 三一彼もまたおいしい食べ物
創世記

つく ちち ところ も い ちち お こ
を作って、父の所に持ってきて、言った、
﹁父よ、起きてあなたの子のし

101
にく た しゅくふく ちち
かの肉を食べ、あなたみずから、わたしを祝 福してください﹂。 三二父イ
かれ い かれ い
サクは彼に言った、
﹁あなたは、だれか﹂。彼は言った、
﹁わたしはあなた
こ ちょうし はげ い
の子、長子エサウです﹂。 三三イサクは激しくふるえて言った、﹁それで
にく と も もの
は、あのしかの肉を取って、わたしに持ってきた者はだれか。わたしは
く まえ た かれ しゅくふく かれ しゅくふく え
あなたが来る前に、みんな食べて彼を祝 福した。ゆえに彼が祝 福を得
ちち ことば き とき おおごえ はげ さけ
るであろう﹂。 三四エサウは父の言葉を聞いた時、大声をあげ、激しく叫
ちち い ちち しゅくふく
んで、父に言った、
﹁父よ、わたしを、わたしをも祝 福してください﹂。
い おとうと いつわ しゅくふく
イサクは言った、﹁あなたの弟が偽 ってやってきて、あなたの祝 福を
三五
うば い な
奪ってしまった﹂。 三六エサウは言った、﹁よくもヤコブと名づけたもの
かれ ど ちょうし
だ。彼は二度までもわたしをおしのけた。さきには、わたしの長子の
とっけん うば しゅくふく うば い
特権を奪い、こんどはわたしの祝 福を奪った﹂。また言った、
﹁あなたは
しゅくふく のこ こた
わたしのために祝 福を残しておかれませんでしたか﹂。 三七イサクは答
い かれ しゅじん きょうだい みな
えてエサウに言った、
﹁わたしは彼をあなたの主人とし、兄 弟たちを皆
創世記

かれ あた こくもつ しゅ かれ さづ こ
しもべとして彼に与え、また穀物とぶどう酒を彼に授けた。わが子よ、

102
いま なに ちち い
今となっては、あなたのために何ができようか﹂。 三八エサウは父に言っ
ちち しゅくふく ちち
た、
﹁父よ、あなたの祝 福はただ一つだけですか。父よ、わたしを、わ
しゅくふく こえ な
たしをも祝 福してください﹂。エサウは声をあげて泣いた。
ちち こた かれ い
父イサクは答えて彼に言った、
三九
ち こ ところ はな
﹁あなたのすみかは地の肥えた所から離れ、
うえ てん つゆ はな
また上なる天の露から離れるであろう。
よ わた
四〇 あなたはつるぎをもって世を渡り、
おとうと つか
あなたの弟に仕えるであろう。
いさ た とき
しかし、あなたが勇み立つ時、
くび ふ おと
首から、そのくびきを振り落すであろう﹂。
ちち あた しゅくふく にく
四一 こうしてエサウは父がヤコブに与えた祝 福のゆえにヤコブを憎ん
こころ うち い ちち も ひ とお
だ。エサウは心の内で言った、﹁父の喪の日も遠くはないであろう。そ
とき おとうと ころ ちょうし ことば
の時、 弟 ヤコブを殺そう﹂。 四二しかしリベカは長子エサウのこの言葉
創世記

ひと き ひと おとうと よ い あに
を人づてに聞いたので、人をやり、 弟 ヤコブを呼んで言った、
﹁兄エサ

103
ころ かんが なぐさ こ いま
ウはあなたを殺そうと考えて、みずから慰めています。 四三子よ、今わた
ことば したが あに
しの言葉に従 って、すぐハランにいるわたしの兄ラバンのもとにのが
あに いか と かれ ところ
れ、 四四あなたの兄の怒りが解けるまで、しばらく彼の所にいなさい。 四
あに いきどお と こと あに わす
兄の憤りが解けて、あなたのした事を兄が忘れるようになったなら

ひと むか
ば、わたしは人をやって、あなたをそこから迎えましょう。どうして、わ
にち うしな
たしは一日のうちにあなたがたふたりを失 ってよいでしょうか﹂。
い むすめ い
四六 リベカはイサクに言った、
﹁わたしはヘテびとの娘どものことで、生
ち むすめ
きているのがいやになりました。もしヤコブがこの地の、あの娘どもの
むすめ つま い なに
ようなヘテびとの娘を妻にめとるなら、わたしは生きていて、何になり
ましょう﹂。
第二八章
創世記

よ しゅくふく めい い
イサクはヤコブを呼んで、これを祝 福し、命じて言った、
一 ﹁あなたは

104
むすめ つま た い
カナンの娘を妻にめとってはならない。 二立ってパダンアラムへ行き、
はは ちち いえ い はは あに
あなたの母の父ベトエルの家に行って、そこであなたの母の兄ラバンの
むすめ つま ぜんのう かみ しゅくふく おお こ え
娘を妻にめとりなさい。 三全能の神が、あなたを祝 福し、多くの子を得
おお こくみん しゅくふく
させ、かつふえさせて、多くの国民とし、 四またアブラハムの祝 福をあ
しそん あた かみ さづ きりゅう ち
なたと子孫とに与えて、神がアブラハムに授けられたあなたの寄留の地
つ おく だ
を 継 が せ て く だ さ る よ う に﹂。 五こ う し て イ サ ク は ヤ コ ブ を 送 り 出 し
む こ
た。ヤコブはパダンアラムに向かい、アラムびとベトエルの子で、ヤコ
はは あに い
ブとエサウとの母リベカの兄ラバンのもとへ行った。
しゅくふく
六さてエサウは、イサクがヤコブを祝 福して、パダンアラムにつかわ
つま かれ しゅくふく めい
し、そこから妻をめとらせようとしたこと、彼を祝 福し、命じて﹁あな
むすめ つま い
たはカナンの娘を妻にめとってはならない﹂と言ったこと、 七そしてヤ
ふ ぼ ことば したが い し
コブが父母の言葉に従 って、パダンアラムへ行ったことを知ったとき、
かれ むすめ ちち こころ み
八彼はカナンの娘が父イサクの心にかなわないのを見た。 九そこでエサ
創世記

ところ い つま こ
ウはイシマエルの所に行き、すでにある妻たちのほかにアブラハムの子

105
むすめ いもうと つま
イシマエルの娘で、ネバヨテの妹 マハラテを妻にめとった。
た む
一〇さてヤコブはベエルシバを立って、ハランへ向かったが、 一一一つの
ところ つ とき ひ く や す ところ いし と
所に着いた時、日が暮れたので、そこに一夜を過ごし、その所の石を取っ
ふ ね とき かれ ゆめ
てまくらとし、そこに伏して寝た。 一二時に彼は夢をみた。一つのはし
ち うえ た いただき てん たっ かみ つかい のぼ
ごが地の上に立っていて、その頂は天に達し、神の使たちがそれを上り
くだ み しゅ かれ た い
下りしているのを見た。 一三そして主は彼のそばに立って言われた、
﹁わ
ちち かみ かみ しゅ ふ
たしはあなたの父アブラハムの神、イサクの神、主である。あなたが伏
ち しそん あた しそん ち
している地を、あなたと子孫とに与えよう。 一四あなたの子孫は地のち
おお にし ひがし きた みなみ ち しょぞく
りのように多くなって、西、 東、北、 南にひろがり、地の諸族はあなた
しそん しゅくふく とも
と子孫とによって祝 福をうけるであろう。 一五わたしはあなたと共にい
い まも ち つ かえ
て、あなたがどこへ行くにもあなたを守り、あなたをこの地に連れ帰る
けっ す かた こと おこな
であろう。わたしは決してあなたを捨てず、あなたに語った事を行うで
ねむ い しゅ ところ
あろう﹂。 一六ヤコブは眠りからさめて言った、﹁まことに主がこの所に
創世記

し かれ おそ い
おられるのに、わたしは知らなかった﹂。 一七そして彼は恐れて言った、

106
おそ ところ かみ いえ てん
﹁これはなんという恐るべき所だろう。これは神の家である。これは天
もん
の門だ﹂。
あさ お いし と た
一八 ヤコブは朝はやく起きて、まくらとしていた石を取り、それを立てて
はしら いただき あぶら そそ ところ な な
柱とし、その頂に油を注いで、一九その所の名をベテルと名づけた。その
まち な はじ ちか た い かみ
町の名は初めはルズといった。 二〇ヤコブは誓いを立てて言った、
﹁神が
とも い みち まも た
わたしと共にいまし、わたしの行くこの道でわたしを守り、食べるパン
き きもの たま やす ちち いえ かえ しゅ
と着る着物を賜い、二一安らかに父の家に帰らせてくださるなら、主をわ
かみ はしら た いし かみ
たしの神といたしましょう。 二二またわたしが柱に立てたこの石を神の
いえ もの ぶん
家といたしましょう。そしてあなたがくださるすべての物の十分の一
かなら
を、わたしは必ずあなたにささげます﹂。
第二九章
創世記

たび つづ ひがし たみ ち い み の
一ヤ コ ブ は そ の 旅 を 続 け て 東 の 民 の 地 へ 行 っ た。 二見 る と 野 に 一 つ の

107
い ど ひつじ む ふ ひとびと
井戸があって、そのかたわらに羊の三つの群れが伏していた。人々はそ
い ど む みず の い ど くち おお いし
の井戸から群れに水を飲ませるのであったが、井戸の口には大きな石が
む みな あつ ひとびと い ど くち いし
あった。 三群れが皆そこに集まると、人々は井戸の口から石をころがし
ひつじ みず の いし い ど くち もと かえ
て羊に水を飲ませ、その石をまた井戸の口の元のところに返しておくの
である。
ひとびと い きょうだい
四ヤコブは人々に言った、
﹁兄 弟たちよ、あなたがたはどこからこられ
かれ い
たのですか﹂。彼らは言った、﹁わたしたちはハランからです﹂。 五ヤコ
かれ い こ し
ブ は 彼 ら に 言 っ た、﹁あ な た が た は ナ ホ ル の 子 ラ バ ン を 知 っ て い ま す
かれ い し かれ い
か﹂。彼 ら は 言 っ た、﹁知 っ て い ま す﹂。 六ヤ コ ブ は ま た 彼 ら に 言 っ た、
かれ ぶ じ かれ い ぶ じ ごらん かれ むすめ
﹁彼は無事ですか﹂。彼らは言った、
﹁無事です。御覧なさい。彼の娘 ラ
ひつじ いっしょ い ひ たか
ケルはいま羊と一緒にここへきます﹂。 七ヤコブは言った、
﹁日はまだ高
かちく あつ とき ひつじ みず の
いし、家畜を集める時でもない。あなたがたは羊に水を飲ませてから、
い か かれ い
また行って飼いなさい﹂。 八彼らは言った、
﹁わたしたちはそれはできな
創世記

む あつ うえ い ど くち いし
いのです。群れがみな集まった上で、井戸の口から石をころがし、それ

108
ひつじ みず の
から羊に水を飲ませるのです﹂。
かれ かた とき ちち ひつじ いっしょ
九ヤコブがなお彼らと語っている時に、ラケルは父の羊と一緒にきた。
かのじょ ひつじ か はは あに むすめ
彼女は羊を飼っていたからである。 一〇ヤコブは母の兄ラバンの娘 ラケ
はは あに ひつじ み すす よ い ど くち
ルと母の兄ラバンの羊とを見た。そしてヤコブは進み寄って井戸の口
いし はは あに ひつじ みず の
から石をころがし、母の兄ラバンの羊に水を飲ませた。 一一ヤコブはラ
くち こえ な じぶん
ケルに口づけし、声をあげて泣いた。 一二ヤコブはラケルに、自分がラケ
ちち こ つ かのじょ はし
ルの父のおいであり、リベカの子であることを告げたので、彼女は走っ
い ちち はな
て行って父に話した。
いもうと こ し き はし
一三 ラ バ ン は 妹 の 子 ヤ コ ブ が き た と い う 知 ら せ を 聞 く と す ぐ、走 っ て
い むか だ くち いえ つ
行ってヤコブを迎え、これを抱いて口づけし、家に連れてきた。そこで
こと はな かれ い
ヤコブはすべての事をラバンに話した。 一四ラバンは彼に言った、
﹁あな
こつにく げつ あいだかれ とも
た は ほ ん と う に わ た し の 骨肉 で す﹂。ヤ コ ブ は 一 か 月 の 間 彼 と 共 に い
た。
創世記

とき い
一五 時にラバンはヤコブに言った、
﹁あなたはわたしのおいだからといっ

109
はたら ほうしゅう のぞ
て、ただでわたしのために働くこともないでしょう。どんな報 酬を望
い むすめ
みますか、わたしに言ってください﹂。 一六さてラバンにはふたりの娘が
あね な いもうと な め
あった。姉の名はレアといい、 妹の名はラケルといった。 一七レアは目
よわ うつく あい
が弱かったが、ラケルは美しくて愛らしかった。 一八ヤコブはラケルを
あい いもうとむすめ ねん つか
愛したので、﹁わたしは、あなたの妹 娘 ラケルのために七年あなたに仕
い い かのじょ たにん
えましょう﹂と言った。 一九ラバンは言った、
﹁彼女を他人にやるよりも
ほう いっしょ
あなたにやる方がよい。わたしと一緒にいなさい﹂。 二〇こうして、ヤコ
ねん あいだ はたら かのじょ あい すうじつ
ブは七年の間 ラケルのために働いたが、彼女を愛したので、ただ数日の
おも
ように思われた。
い きじつ み つま あた
二一ヤコブはラバンに言った、﹁期日が満ちたから、わたしの妻を与えて、
つま ところ ところ ひとびと
妻 の 所 に は い ら せ て く だ さ い﹂。 二二そ こ で ラ バ ン は そ の 所 の 人々 を み
あつ もう ゆうぐれ むすめ
な集めて、ふるまいを設けた。 二三夕暮となったとき、 娘 レアをヤコブ
つ かのじょ ところ
のもとに連れてきたので、ヤコブは彼女の所にはいった。 二四ラバンは
創世記

じぶん むすめ あた あさ
また自分のつかえめジルパを娘 レアにつかえめとして与えた。 二五朝に

110
み い
なって、見ると、それはレアであったので、ヤコブはラバンに言った、﹁あ
こと
なたはどうしてこんな事をわたしにされたのですか。わたしはラケル
はたら あざむ
のために働いたのではありませんか。どうしてあなたはわたしを欺い
い いもうと あね さき こと
たのですか﹂。 二六ラバンは言った、﹁妹を姉より先にとつがせる事はわ
くに むすめ しゅうかん す
れ わ れ の 国 で は し ま せ ん。 二七ま ず こ の 娘 の た め に 一 週 間 を 過 ご し な
むすめ さら
さい。そうすればあの娘もあなたにあげよう。あなたは、そのため更に
ねん つか
七年わたしに仕えなければならない﹂。 二八ヤコブはそのとおりにして、
しゅうかん おわ むすめ つま かれ あた
そ の 一 週 間 が 終 っ た の で、ラ バ ン は 娘 ラ ケ ル を も 妻 と し て 彼 に 与 え
じぶん むすめ
た。 二九ラバンはまた自分のつかえめビルハを娘 ラケルにつかえめとし
あた ところ かれ
て与えた。 三〇ヤコブはまたラケルの所にはいった。彼はレアよりもラ
あい さら ねん つか
ケルを愛して、更に七年ラバンに仕えた。
しゅ み たい ひら
三一主はレアがきらわれるのを見て、その胎を開かれたが、ラケルは、み
こ う な な
ごもらなかった。 三二レアは、みごもって子を産み、名をルベンと名づけ
創世記

い しゅ なや かえり いま おっと あい
て、言った、
﹁主がわたしの悩みを顧みられたから、今は夫もわたしを愛

111
かのじょ こ う しゅ きら
するだろう﹂。 三三彼女はまた、みごもって子を産み、
﹁主はわたしが嫌わ
き こ たま い な
れるのをお聞きになって、わたしにこの子をも賜わった﹂と言って、名
な かのじょ こ う
をシメオンと名づけた。 三四彼女はまた、みごもって子を産み、
﹁わたし
かれ にん こ う おっと した
は彼に三人の子を産んだから、こんどこそは夫もわたしに親しむだろ
い な な かのじょ こ う
う﹂と言って、名をレビと名づけた。 三五彼女はまた、みごもって子を産
いま しゅ い な な
み、
﹁わたしは今、主をほめたたえる﹂と言って名をユダと名づけた。そ
かのじょ こ う
こで彼女の、子を産むことはやんだ。
第三〇章
じぶん こ う し とき あね
ラケルは自分がヤコブに子を産まないのを知った時、姉をねたんでヤ

い こ し
コブに言った、﹁わたしに子どもをください。さもないと、わたしは死に
む いか い たい こ
ます﹂。 二ヤコブはラケルに向かい怒って言った、
﹁あなたの胎に子ども
創世記

かみ かみ かわ
をやどらせないのは神です。わたしが神に代ることができようか﹂。 三

112
い かのじょ ところ
ラケルは言った、﹁わたしのつかえめビルハがいます。彼女の所におは
かのじょ こ う お
いりなさい。彼女が子を産んで、わたしのひざに置きます。そうすれ
かのじょ こ も
ば、わたしもまた彼女によって子を持つでしょう﹂。 四ラケルはつかえ
かれ あた つま かのじょ ところ
めビルハを彼に与えて、妻とさせたので、ヤコブは彼女の所にはいった。
こ う かみ
ビルハは、みごもってヤコブに子を産んだ。 六そこでラケルは、
五 ﹁神は
うった こた こえ き こ たま
わたしの訴えに答え、またわたしの声を聞いて、わたしに子を賜わった﹂
い な な
と言って、名をダンと名づけた。 七ラケルのつかえめビルハはまた、み
だい こ う はげ
ごもって第二の子をヤコブに産んだ。 八そこでラケルは、﹁わたしは激
あらそ あね あらそ か い な な
しい争いで、姉と争 って勝った﹂と言って、名をナフタリと名づけた。
じぶん こ う み
さてレアは自分が子を産むことのやんだのを見たとき、つかえめジル

と つま あた
パを取り、妻としてヤコブに与えた。 一〇レアのつかえめジルパはヤコ
こ う こううん い な
ブに子を産んだ。 一一そこでレアは、
﹁幸運がきた﹂と言って、名をガド
な だい こ う
と名づけた。 一二レアのつかえめジルパは第二の子をヤコブに産んだ。
創世記

むすめ
一三 そこでレアは、
﹁わたしは、しあわせです。 娘たちはわたしをしあわ

113
もの い い な な
せな者と言うでしょう﹂と言って、名をアセルと名づけた。
むぎ か ひ の で の こい み
一四さてルベンは麦刈りの日に野に出て、野で恋なすびを見つけ、それを
はは も い こ こい
母レアのもとに持ってきた。ラケルはレアに言った、﹁あなたの子の恋

なすびをどうぞわたしにください﹂。 一五レアはラケルに言った、﹁あな
おっと と ちい こと うえ
たがわたしの夫を取ったのは小さな事でしょうか。その上、あなたはま
こ こい と い
た わ た し の 子 の 恋 な す び を も 取 ろ う と す る の で す か﹂。ラ ケ ル は 言 っ
こ こい か こ ん や かれ とも ね
た、﹁それではあなたの子の恋なすびに換えて、今夜彼をあなたと共に寝
ゆうがた の かえ
させましょう﹂。 一六夕方になって、ヤコブが野から帰ってきたので、レ
かれ でむか い こ こい
アは彼を出迎えて言った、﹁わたしの子の恋なすびをもって、わたしがあ
やと ところ
なたを雇ったのですから、あなたはわたしの所に、はいらなければなり
よ とも ね かみ ねが き
ま せ ん﹂。ヤ コ ブ は そ の 夜 レ ア と 共 に 寝 た。 一七神 は レ ア の 願 い を 聞 か
かのじょ ばんめ こ う
れたので、彼女はみごもって五番目の子をヤコブに産んだ。 一八そこで
おっと あた かみ あたい たま
レアは、﹁わたしがつかえめを夫に与えたから、神がわたしにその価を賜
創世記

い な な
わったのです﹂と言って、名をイッサカルと名づけた。 一九レアはまた、

114
ばんめ こ う かみ
みごもって六番目の子をヤコブに産んだ。 二〇そこでレアは、
﹁神はわた
よ たまもの にん こ おっと う いま
しに良い賜物をたまわった。わたしは六人の子を夫に産んだから、今こ
かれ いっしょ す い な な
そ彼はわたしと一緒に住むでしょう﹂と言って、その名をゼブルンと名
のち かのじょ むすめ う な な
づけた。 二一その後、彼女はひとりの娘を産んで、名をデナと名づけた。
つぎ かみ こころ かのじょ ねが き たい ひら
次に神はラケルを心にとめられ、彼女の願いを聞き、その胎を開かれ
二二
かのじょ おとこ こ う かみ はじ
たので、 二三彼女は、みごもって男の子を産み、
﹁神はわたしの恥をすす
い な な しゅ
いでくださった﹂と言って、二四名をヨセフと名づけ、
﹁主がわたしに、な
こ くわ い
おひとりの子を加えられるように﹂と言った。
う とき い さ
ラケルがヨセフを産んだ時、ヤコブはラバンに言った、
二五 ﹁わたしを去
こきょう くに い つか
らせて、わたしの故郷、わたしの国へ行かせてください。 二六あなたに仕
え さいし あた い
えて得たわたしの妻子を、わたしに与えて行かせてください。わたしが
はたら ほねお
あなたのために働いた骨折りは、あなたがごぞんじです﹂。 二七ラバンは
かれ い こころ
彼に言った、
﹁もし、あなたの心にかなうなら、とどまってください。わ
創世記

しゅ めぐ み
たしは主があなたのゆえに、わたしを恵まれるしるしを見ました﹂。 二八

115
い ほうしゅう もう で はら
また言った、
﹁あなたの報 酬を申し出てください。わたしはそれを払い
かれ い つか
ます﹂。 二九ヤコブは彼に言った、﹁わたしがどのようにあなたに仕えた
かちく か
か、またどのようにあなたの家畜を飼ったかは、あなたがごぞんじです。
く まえ も
三〇 わたしが来る前には、あなたの持っておられたものはわずかでした
おお しゅ い ところ めぐ
が、ふえて多くなりました。主はわたしの行く所どこでも、あなたを恵
じぶん いえ な
まれました。しかし、いつになったらわたしも自分の家を成すようにな
かれ い なに
るでしょうか﹂。 三一彼は言った、
﹁何をあなたにあげようか﹂。ヤコブは
い およ
言った、﹁なにもわたしにくださるに及びません。もしあなたが、わたし
こと いま ど む
のためにこの一つの事をしてくださるなら、わたしは今一度あなたの群
か まも む まわ
れを飼い、守りましょう。 三二わたしはきょう、あなたの群れをみな回っ
なか ひつじ くろ こひつじ
てみて、その中からすべてぶちとまだらの羊、およびすべて黒い小羊と、
なか うつ
やぎの中のまだらのものと、ぶちのものとを移しますが、これをわたし
ほうしゅう まえ
の報 酬としましょう。 三三あとで、あなたがきて、あなたの前でわたしの
創世記

ほうしゅう とき ただ こと しょうめい
報 酬をしらべる時、わたしの正しい事が証 明されるでしょう。もしも、

116
なか こひつじ なか
やぎの中にぶちのないもの、まだらでないものがあったり、小羊の中に
くろ ぬす
黒くないものがあれば、それはみなわたしが盗んだものとなるでしょ
い い
う﹂。 三四ラバンは言った、﹁よろしい。あなたの言われるとおりにしま
ひ お
しょう﹂。 三五そこでラバンはその日、雄やぎのしまのあるもの、まだら
め しろ
のもの、すべて雌やぎのぶちのもの、まだらのもの、すべて白みをおび
こひつじ なか くろ うつ こ て
ているもの、またすべて小羊の中の黒いものを移して子らの手にわた
あいだ か じ へだ もう のこ
し、 三六ヤコブとの間に三日路の隔たりを設けた。ヤコブはラバンの残
む か
りの群れを飼った。
き えだ
三七 ヤコブは、はこやなぎと、あめんどうと、すずかけの木のなまの枝を
と かわ しろ すじ えだ しろ ところ あら かわ
取り、皮をはいでそれに白い筋をつくり、枝の白い所を表わし、 三八皮を
えだ む みず の はち みず なか む む
はいだ枝を、群れがきて水を飲む鉢、すなわち水ぶねの中に、群れに向
お む みず の とき
かわせて置いた。群れは水を飲みにきた時に、はらんだ。 三九すなわち
む えだ まえ
群れは枝の前で、はらんで、しまのあるもの、ぶちのもの、まだらのも
創世記

う こひつじ べつ かれ む かお
のを産んだ。 四〇ヤコブはその小羊を別においた。彼はまた群れの顔を

117
む くろ む
ラバンの群れのしまのあるものと、すべて黒いものとに向かわせた。そ
じぶん む べつ む い
して自分の群れを別にまとめておいて、ラバンの群れには、入れなかっ
む つよ はつじょう とき みず なか
た。 四一また群れの強いものが発 情した時には、ヤコブは水ぶねの中に、
む め まえ えだ お えだ あいだ
その群れの目の前に、かの枝を置いて、枝の間で、はらませた。 四二けれ
む よわ とき お よわ
ども群れの弱いものの時には、それを置かなかった。こうして弱いもの
つよ
はラバンのものとなり、強いものはヤコブのものとなったので、四三この
ひと おお と おお む だんじょ どれい も
人は大いに富み、多くの群れと、男女の奴隷、およびらくだ、ろばを持
つようになった。
第三一章
こ ちち もの
さてヤコブはラバンの子らが、﹁ヤコブはわれわれの父の物をことご

うば ちち もの とみ え い
とく奪い、父の物によってあのすべての富を獲たのだ﹂と言っているの
創世記

き かお み じぶん たい
を聞いた。 二またヤコブがラバンの顔を見るのに、それは自分に対して

118
いぜん しゅ い せんぞ
以前のようではなかった。 三主はヤコブに言われた、﹁あなたの先祖の
くに かえ しんぞく い とも
国へ帰り、親族のもとに行きなさい。わたしはあなたと共にいるであろ
ひと の じぶん
う﹂。 四そこでヤコブは人をやって、ラケルとレアとを、野にいる自分の
む まね かのじょ い ちち かお
群れのところに招き、五彼女らに言った、
﹁わたしがあなたがたの父の顔
み たい いぜん ちち
を見るのに、わたしに対して以前のようではない。しかし、わたしの父
かみ とも し
の神はわたしと共におられる。 六あなたがたが知っているように、わた
ちから ちち つか
しは力のかぎり、あなたがたの父に仕えてきた。 七しかし、あなたがた
ちち あざむ ど ほうしゅう か かみ
の父はわたしを欺いて、十度もわたしの報 酬を変えた。けれども神は
かれ がい くわ ゆる かれ
彼 が わ た し に 害 を 加 え る こ と を お 許 し に な ら な か っ た。 八も し 彼 が、
ほうしゅう い む みな う
﹃ぶちのものはあなたの報 酬だ﹄と言えば、群れは皆ぶちのものを産ん
かれ ほうしゅう い む
だ。もし彼が、
﹃しまのあるものはあなたの報 酬だ﹄と言えば、群れは
みな う かみ ちち かちく
皆 し ま の あ る も の を 産 ん だ。 九こ う し て 神 は あ な た が た の 父 の 家畜 を
あた む はつじょう とき ゆめ
とってわたしに与えられた。 一〇また群れが発 情した時、わたしが夢に
創世記

め み む うえ の お みな
目をあげて見ると、群れの上に乗っている雄やぎは皆しまのあるもの、

119
しも とき かみ つかい ゆめ なか
ぶちのもの、霜ふりのものであった。 一一その時、神の使が夢の中でわた
い こた かみ
しに言った、
﹃ヤコブよ﹄。わたしは答えた、
﹃ここにおります﹄。 一二神の
つかい い め あ み む うえ の お
使は言った、﹃目を上げて見てごらん。群れの上に乗っている雄やぎは
みな しも
皆しまのあるもの、ぶちのもの、霜ふりのものです。わたしはラバンが
み かみ
あなたにしたことをみな見ています。 一三わたしはベテルの神です。か
はしら あぶら そそ ちか た
つてあなたはあそこで柱に油を注いで、わたしに誓いを立てましたが、
た ち で うま くに かえ
いま立ってこの地を出て、あなたの生れた国へ帰りなさい﹄﹂。 一四ラケ
こた い ちち いえ う
ルとレアは答えて言った、﹁わたしたちの父の家に、なおわたしたちの受
ぶん し ぎょう ちち たにん
くべき分、また嗣 業がありましょうか。 一五わたしたちは父に他人のよ
おも かれ う
うに思われているではありませんか。彼はわたしたちを売ったばかり
かね つか は かみ
でなく、わたしたちのその金をさえ使い果たしたのです。 一六神がわた
ちち と とみ こ
したちの父から取りあげられた富は、みなわたしたちとわたしたちの子
なにごと かみ つ こと
どものものです。だから何事でも神があなたにお告げになった事をし
創世記

てください﹂。

120
た こ つま の
一七 そこでヤコブは立って、子らと妻たちをらくだに乗せ、 一八またすべ
かちく かれ え かちく ざいさん たずさ
ての家畜、すなわち彼がパダンアラムで獲た家畜と、すべての財産を携
ち ちち おもむ とき
えて、カナンの地におる父イサクのもとへ赴いた。 一九その時ラバンは
ひつじ け き で ちち しょゆう ぬす
羊の毛を切るために出ていたので、ラケルは父の所有のテラピムを盗み
だ あざむ じぶん に さ
出した。 二〇またヤコブはアラムびとラバンを欺き、自分の逃げ去るの
かれ つ かれ も もの たずさ に
を彼に告げなかった。 二一こうして彼はすべての持ち物を携えて逃げ、
た かわ わた さんち む
立って川を渡り、ギレアデの山地へ向かった。
か め に さ きこ
二二 三日目になって、ヤコブの逃げ去ったことが、ラバンに聞えたので、
かれ いちぞく ひき なぬか あいだ お さんち お
二三 彼は一族を率いて、七日の間そのあとを追い、ギレアデの山地で追い
かみ よ ゆめ あらわ い
ついた。 二四しかし、神は夜の夢にアラムびとラバンに現れて言われた、
こころ い
﹁あなたは心してヤコブに、よしあしを言ってはなりません﹂。
お やま てんまく は
二五 ラバンはついにヤコブに追いついたが、ヤコブが山に天幕を張って
いちぞく とも やま てんまく は
いたので、ラバンも一族と共にギレアデの山に天幕を張った。 二六ラバ
創世記

い こと
ンはヤコブに言った、﹁あなたはなんという事をしたのですか。あなた

121
あざむ むすめ ひ い
はわたしを欺いてわたしの娘たちをいくさのとりこのように引いて行
つ に さ
きました。 二七なぜあなたはわたしに告げずに、ひそかに逃げ去ってわ
あざむ て つづみ こと よろこ うた おく
たしを欺いたのですか。わたしは手 鼓や琴で喜び歌ってあなたを送り
まご むすめ くち
だそうとしていたのに。 二八なぜわたしの孫や娘にわたしが口づけする
ゆる おろ こと
のを許さなかったのですか。あなたは愚かな事をしました。 二九わたし
がい くわ ちから ちち かみ
はあなたがたに害を加える力をもっているが、あなたがたの父の神が
さくや つ こころ い
昨夜わたしに告げて、
﹃おまえは心して、ヤコブによしあしを言うな﹄と
い いま に だ ちち いえ ひじょう こい
言 わ れ ま し た。 三〇今 あ な た が 逃 げ 出 し た の は 父 の 家 が 非常 に 恋 し く
かみ ぬす
なったからでしょうが、なぜあなたはわたしの神を盗んだのですか﹂。 三
こた むすめ うば
一ヤコブはラバンに答えた、﹁たぶんあなたが娘たちをわたしから奪い
おも おそ ところ
とるだろうと思ってわたしは恐れたからです。 三二だれの所にでもあな
かみ み もの い なに
たの神が見つかったら、その者を生かしてはおきません。何かあなたの
もの いちぞく まえ しら
物がわたしのところにあるか、われわれの一族の前で、調べてみて、そ
創世記

と かみ ぬす し
れをお取りください﹂。ラケルが神を盗んだことをヤコブは知らなかっ

122
たからである。
てんまく てんまく さら
三三 そこでラバンはヤコブの天幕にはいり、またレアの天幕にはいり、更
てんまく み
にふたりのはしための天幕にはいってみたが、見つからなかったので、
てんまく で てんまく
レアの天幕を出てラケルの天幕にはいった。 三四しかし、ラケルはすで
と した い うえ
にテラピムを取って、らくだのくらの下に入れ、その上にすわっていた
てんまく なか さが み
ので、ラバンは、くまなく天幕の中を捜したが、見つからなかった。 三五
とき ちち い おんな つね
その時ラケルは父に言った、﹁わたしは女の常のことがあって、あなたの
まえ た あ しゅ いか
前に立ち上がることができません。わが主よ、どうかお怒りにならぬよ
かれ さが み
う﹂。彼は捜したがテラピムは見つからなかった。
いか せ
三六 そ こ で ヤ コ ブ は 怒 っ て ラ バ ン を 責 め た。そ し て ヤ コ ブ は ラ バ ン に
い つみ
言った、
﹁わたしにどんなあやまちがあり、どんな罪があって、あなたは
はげ お もの
わたしのあとを激しく追ったのですか。 三七あなたはわたしの物をこと
さぐ なに いえ もの み
ごとく探られたが、何かあなたの家の物が見つかりましたか。それを、
創世記

いちぞく いちぞく まえ お
ここに、わたしの一族と、あなたの一族の前に置いて、われわれふたり

123
あいだ ねん いっしょ
の間をさばかせましょう。 三八わたしはこの二十年、あなたと一緒にい
かん め ひつじ め こ う
ましたが、その間あなたの雌 羊も雌やぎも子を産みそこねたことはな
む おひつじ た
く、またわたしはあなたの群れの雄羊を食べたこともありませんでし
やじゅう さ も
た。 三九また野獣が、かみ裂いたものは、あなたのもとに持ってこない
じぶん つぐな ひるぬす よるぬす
で、自分でそれを償いました。また昼盗まれたものも、夜盗まれたもの
つぐな もと
も、あなたはわたしにその償いを求められました。 四〇わたしのことを
い ひる あつ よる さむ なや ねむ
言えば、昼は暑さに、夜は寒さに悩まされて、眠ることもできませんで
ねん かぞく
した。 四一わたしはこの二十年あなたの家族のひとりでありました。わ
むすめ ねん む
たしはあなたのふたりの娘のために十四年、またあなたの群れのために
ねん つか じゅう ど ほうしゅう か
六年、あなたに仕えましたが、あなたは十 度もわたしの報 酬を変えられ
ちち かみ かみ
ました。 四二もし、わたしの父の神、アブラハムの神、イサクのかしこむ
もの とも
者がわたしと共におられなかったなら、あなたはきっとわたしを、から
て さ かみ なや ろうく かえり
手で去らせたでしょう。神はわたしの悩みと、わたしの労苦とを顧みら
創世記

さくや いまし
れて昨夜あなたを戒められたのです﹂。

124
こた い むすめ むすめ こ
四三 ラバンは答えてヤコブに言った、
﹁娘たちはわたしの娘、子どもたち
まご む む み
はわたしの孫です。また群れはわたしの群れ、あなたの見るものはみな
むすめ かれ う
わたしのものです。これらのわたしの娘たちのため、また彼らが産んだ
こ なに
子どもたちのため、きょうわたしは何をすることができましょうか。 四四
けいやく むす
さあ、それではわたしとあなたと契約を結んで、これをわたしとあなた
あいだ しょうこ いし と た
との間の証拠としましょう﹂。 四五そこでヤコブは石を取り、それを立て
はしら いちぞく もの い いし あつ
て 柱 と し た。 四六ヤ コ ブ は ま た 一族 の 者 に 言 っ た、﹁石 を 集 め て く だ さ
かれ いし と いしづか つく かれ
い﹂。彼 ら は 石 を 取 っ て、一 つ の 石塚 を 造 っ た。こ う し て 彼 ら は そ の
いしづか しょくじ
石塚のかたわらで食事をした。 四七ラバンはこれをエガル・サハドタと
な な い
名づけ、ヤコブはこれをガルエドと名づけた。 四八そしてラバンは言っ
いしづか あいだ しょうこ
た、﹁この石塚はきょうわたしとあなたとの間の証拠となります﹂。それ
な よ よ かれ
でその名はガルエドと呼ばれた。 四九またミズパとも呼ばれた。彼がこ
い たがい わか しゅ
う言ったからである、﹁われわれが互に別れたのちも、どうか主がわたし
創世記

あいだ みまも むすめ


と あ な た と の 間 を 見守 ら れ る よ う に。 五〇も し あ な た が わ た し の 娘 を

125
ぎゃくたい むすめ つま
虐 待したり、わたしの娘のほかに妻をめとることがあれば、たといそこ
かみ あいだ しょうにん
にだれひとりいなくても、神はわたしとあなたとの間の証 人でいらせ
られる﹂。
さら い あいだ た
五一 更にラバンはヤコブに言った、
﹁あなたとわたしとの間にわたしが建
いしづか はしら いしづか
てたこの石塚をごらんなさい、この柱をごらんなさい。 五二この石塚を
こ がい くわ いしづか はしら こ
越えてわたしがあなたに害を加えず、またこの石塚とこの柱を越えてあ
がい くわ いしづか
なたがわたしに害を加えないように、どうかこの石塚があかしとなり、
はしら かみ かみ
この柱があかしとなるように。 五三どうかアブラハムの神、ナホルの神、
かれ ちち かみ あいだ ちち
彼らの父の神がわれわれの間をさばかれるように﹂。ヤコブは父イサク
もの ちか やま ぎせい
の か し こ む 者 に よ っ て 誓 っ た。 五四そ し て ヤ コ ブ は 山 で 犠牲 を さ さ げ、
いちぞく まね しょくじ かれ しょくじ やま やど
一族を招いて、食事をした。彼らは食事をして山に宿った。
あさ はや お まご むすめ くち かれ しゅくふく
五五 あ く る 朝 ラ バ ン は 早 く 起 き、孫 と 娘 た ち に 口 づ け し て 彼 ら を 祝 福
さ いえ かえ
し、去って家に帰った。
創世記

126
第三二章
たびじ すす かみ つかい かれ あ
さて、ヤコブが旅路に進んだとき、神の使たちが彼に会った。 二ヤコブ

かれ み かみ じんえい い ところ な
は彼らを見て、
﹁これは神の陣営です﹂と言って、その所の名をマハナイ

ムと名づけた。
ち の す あに
ヤコブはセイルの地、エドムの野に住む兄エサウのもとに、さきだっ

し しゃ めい い
て使者をつかわした。 四すなわちそれに命じて言った、﹁あなたがたは
しゅじん い
わたしの主人エサウにこう言いなさい、﹃あなたのしもべヤコブはこう
い きりゅう いま
言いました。わたしはラバンのもとに寄留して今までとどまりました。
うし ひつじ だんじょ どれい も しゅ
わたしは牛、ろば、 羊、男女の奴隷を持っています。それでわが主に

もう あ まえ めぐ え ひと
申し上げて、あなたの前に恵みを得ようと人をつかわしたのです﹄﹂。
し しゃ かえ い あに
使者はヤコブのもとに帰って言った、﹁わたしたちはあなたの兄エサ

い かれ むか にん ひき
ウのもとへ行きました。彼もまたあなたを迎えようと四百人を率いて
創世記

おお おそ くる とも たみ ひつじ
きます﹂。 七そこでヤコブは大いに恐れ、苦しみ、共にいる民および羊、

127
うし くみ わ い
牛、らくだを二つの組に分けて、 八言った、
﹁たとい、エサウがきて、一
くみ う のこ くみ
つの組を撃っても、残りの組はのがれるであろう﹂。
い ちち かみ ちち かみ
ヤコブはまた言った、
九 ﹁父アブラハムの神、父イサクの神よ、かつてわ
くに かえ しんぞく い めぐ
たしに﹃おまえの国へ帰り、おまえの親族に行け。わたしはおまえを恵
い しゅ ほどこ めぐ
もう﹄と言われた主よ、一〇あなたがしもべに施されたすべての恵みとま
う た もの なに も
ことをわたしは受けるに足りない者です。わたしは、つえのほか何も持
わた いま くみ
たないでこのヨルダンを渡りましたが、今は二つの組にもなりました。
あに て すく かれ
一一 どうぞ、兄エサウの手からわたしをお救いください。わたしは彼が
う はは こども およ おそ
きて、わたしを撃ち、母や子供たちにまで及ぶのを恐れます。 一二あなた
かなら めぐ しそん うみ すな かぞ
は、かつて、
﹃わたしは必ずおまえを恵み、おまえの子孫を海の砂の数え
おお い
がたいほど多くしよう﹄と言われました﹂。
かれ よ やど も もの あに おく もの えら
一三 彼はその夜そこに宿り、持ち物のうちから兄エサウへの贈り物を選
め お め ひつじ おひつじ
んだ。 一四すなわち雌やぎ二百、雄やぎ二十、雌 羊 二百、雄羊二十、 一五
創世記

ちち こ めうし おうし め お
乳らくだ三十とその子、雌牛四十、雄牛十、雌ろば二十、雄ろば十。 一六

128
かれ む わ て
彼はこれらをそれぞれの群れに分けて、しもべたちの手にわたし、しも
い さき すす む
べたちに言った、﹁あなたがたはわたしの先に進みなさい、そして群れと
む あいだ へだ せんとう もの めい い
群 れ と の 間 に は 隔 た り を お き な さ い﹂。 一七ま た 先頭 の 者 に 命 じ て 言 っ
あに あ い
た、
﹁もし、兄エサウがあなたに会って﹃だれのしもべで、どこへ行くの
まえ もの たず
か。あなたの前にあるこれらのものはだれの物か﹄と尋ねたら、 一八﹃あ
もの しゅ おく もの かれ
なたのしもべヤコブの物で、わが主エサウにおくる贈り物です。彼もわ
い かれ だい もの
たしたちのうしろにおります﹄と言いなさい﹂。 一九彼は第二の者にも、
だい もの む む い もの めい い
第三の者にも、また群れ群れについて行くすべての者にも命じて言っ
あ おな かれ つ
た、
﹁あなたがたがエサウに会うときは、同じように彼に告げて、二〇﹃あ

なたのしもべヤコブもわれわれのうしろにおります﹄と言いなさい﹂。
おく おく もの かれ
ヤコブは、﹁わたしがさきに送る贈り物をもってまず彼をなだめ、それか
かれ かお み かれ むか
ら、彼の顔を見よう。そうすれば、彼はわたしを迎えてくれるであろう﹂
おも おく もの かれ さきだ わた かれ
と思ったからである。 二一こうして贈り物は彼に先立って渡り、彼はそ
創世記

よ しゅくえい
の夜、 宿 営にやどった。

129
かれ よ お つま にん こ
二二 彼はその夜起きて、ふたりの妻とふたりのつかえめと十一人の子ど
つ わた かれ みちび かわ
もとを連れてヤボクの渡しをわたった。 二三すなわち彼らを導いて川を
わた かれ も もの わた のこ
渡らせ、また彼の持ち物を渡らせた。 二四ヤコブはひとりあとに残った
ひと よ あ かれ くみう ひと
が、ひとりの人が、夜明けまで彼と組打ちした。 二五ところでその人はヤ
か み
コブに勝てないのを見て、ヤコブのもものつがいにさわったので、ヤコ
ひと くみう
ブのもものつがいが、その人と組打ちするあいだにはずれた。 二六その
ひと い よ あ さ こた
人は言った、﹁夜が明けるからわたしを去らせてください﹂。ヤコブは答
しゅくふく さ
えた、
﹁わたしを祝 福してくださらないなら、あなたを去らせません﹂。
ひと かれ い な い かれ こた
二七 その人は彼に言った、﹁あなたの名はなんと言いますか﹂。彼は答え
ひと い な
た、
﹁ヤコブです﹂。 二八その人は言った、
﹁あなたはもはや名をヤコブと
い い かみ ひと ちから あらそ
言わず、イスラエルと言いなさい。あなたが神と人とに、 力を争 って
か たず い
勝ったからです﹂。 二九ヤコブは尋ねて言った、﹁どうかわたしにあなた
な し ひと な
の名を知らせてください﹂。するとその人は、﹁なぜあなたはわたしの名
創世記

い ところ かれ しゅくふく
をきくのですか﹂と言ったが、その所で彼を祝 福した。 三〇そこでヤコブ

130
ところ な な い かお かお
はその所の名をペニエルと名づけて言った、﹁わたしは顔と顔をあわせ
かみ み い かれ す
て 神 を 見 た が、な お 生 き て い る﹂。 三一こ う し て 彼 が ペ ニ エ ル を 過 ぎ る
とき ひ かれ うえ かれ ひ
時、日は彼の上にのぼったが、彼はそのもものゆえにびっこを引いてい
こ こんにち うえ
た。 三二そのため、イスラエルの子らは今日まで、もものつがいの上にあ
こし すじ た ひと こし すじ
る腰の筋を食べない。かの人がヤコブのもものつがい、すなわち腰の筋
にさわったからである。
第三三章
め にん ひき く み
一さてヤコブは目をあげ、エサウが四百人を率いて来るのを見た。そこ
かれ こども わ
で彼は子供たちを分けてレアとラケルとふたりのつかえめとにわたし、
こ とも さき お こ とも つぎ
二つかえめとその子供たちをまっ先に置き、レアとその子供たちを次に
お さいご お かれ まえ すす
置き、ラケルとヨセフを最後に置いて、 三みずから彼らの前に進み、七
創世記

み ち あに ちか
たび身を地にかがめて、兄に近づいた。

131
はし むか かれ だ くち
四するとエサウは走ってきて迎え、彼を抱き、そのくびをかかえて口づ
とも な め おんな こども み い
けし、共に泣いた。 五エサウは目をあげて女と子供たちを見て言った、
いっしょ もの い かみ
﹁あなたと一緒にいるこれらの者はだれですか﹂。ヤコブは言った、﹁神
さづ こども こ
がしもべに授けられた子供たちです﹂。 六そこでつかえめたちはその子
とも とも ちかよ じ ぎ こ とも とも
供 た ち と 共 に 近寄 っ て お 辞儀 し た。 七レ ア も ま た そ の 子供 た ち と 共 に
ちかよ じ ぎ ちかよ じ ぎ
近寄ってお辞儀し、それからヨセフとラケルが近寄ってお辞儀した。 八
い で あ む
するとエサウは言った、﹁わたしが出会ったあのすべての群れはどうし
い しゅ まえ めぐ え
たのですか﹂。ヤコブは言った、
﹁わが主の前に恵みを得るためです﹂。 九
い おとうと もの
エサウは言った、﹁弟よ、わたしはじゅうぶんもっている。あなたの物は

あなたのものにしなさい﹂。 一〇ヤコブは言った、
﹁いいえ、もしわたしが
まえ めぐ え て おく もの う
あなたの前に恵みを得るなら、どうか、わたしの手から贈り物を受けて
よろこ むか かお
ください。あなたが喜んでわたしを迎えてくださるので、あなたの顔を
み かみ かお み おも も おく
見て、神の顔を見るように思います。 一一どうかわたしが持ってきた贈
創世記

もの う かみ めぐ
り物を受けてください。神がわたしを恵まれたので、わたしはじゅうぶ

132
かれ かれ う と
んもっていますから﹂。こうして彼がしいたので、彼は受け取った。
い た い さき い
一二そしてエサウは言った、
﹁さあ、立って行こう。わたしが先に行く﹂。
かれ い こども
一三ヤコブは彼に言った、
﹁ごぞんじのように、子供たちは、かよわく、ま
ちち の ひつじ うし せ わ にち
た乳を飲ませている羊や牛をわたしが世話をしています。もし一日で
ある す む し しゅ
も歩かせ過ぎたら群れはみな死んでしまいます。 一四わが主よ、どうか、
さき まえ かちく こども
しもべの先においでください。わたしはわたしの前にいる家畜と子供
あゆ あ ある い しゅ いっしょ
たちの歩みに合わせて、ゆっくり歩いて行き、セイルでわが主と一緒に
なりましょう﹂。
い つ もの いくひと
一五エサウは言った、
﹁それならわたしが連れている者どものうち幾人か
のこ い
をあなたのもとに残しましょう﹂。ヤコブは言った、
﹁いいえ、それには
およ しゅ まえ めぐ え ひ
及 び ま せ ん。わ が 主 の 前 に 恵 み を 得 さ せ て く だ さ い﹂。 一六そ の 日 エ サ
き と た い じぶん
ウはセイルへの帰途についた。 一七ヤコブは立ってスコテに行き、自分
いえ た かちく こ や つく
のために家を建て、また家畜のために小屋を造った。これによってその
創世記

ところ な よ
所の名はスコテと呼ばれている。

133
ぶ じ ち
一八 こうしてヤコブはパダンアラムからきて、無事カナンの地のシケム
まち つ まち まえ しゅくえい かれ てんまく は の いちぶ
の町に着き、町の前に宿 営した。 一九彼は天幕を張った野の一部をシケ
ちち こ て か と さいだん た
ムの父ハモルの子らの手から百ケシタで買い取り、 二〇そこに祭壇を建

てて、これをエル・エロヘ・イスラエルと名づけた。
第三四章
う むすめ ち おんな あ で
一レアがヤコブに産んだ娘 デナはその地の女たちに会おうと出かけて
い ち こ かのじょ み
行ったが、二その地のつかさ、ヒビびとハモルの子シケムが彼女を見て、
ひ い ね かれ ふか むすめ した
引き入れ、これと寝てはずかしめた。 三彼は深くヤコブの娘 デナを慕
むすめ あい むすめ かた ちち
い、こ の 娘 を 愛 し て、ね ん ご ろ に 娘 に 語 っ た。 四シ ケ ム は 父 ハ モ ル に
い むすめ つま
言った、
﹁この娘をわたしの妻にめとってください﹂。 五さてヤコブはシ
むすめ けが き こ かちく つ
ケムが、娘 デナを汚したことを聞いたけれども、その子らが家畜を連れ
創世記

の かれ かえ だま ちち
て野にいたので、彼らの帰るまで黙っていた。 六シケムの父ハモルはヤ

134
はな あ ところ で こ の
コブと話し合おうと、ヤコブの所に出てきた。 七ヤコブの子らは野から
かえ こと き かな ひじょう いか
帰り、この事を聞いて、悲しみ、かつ非常に怒った。シケムがヤコブの
むすめ ね おろ
娘と寝て、イスラエルに愚かなことをしたためで、こんなことは、して
こと
はならぬ事だからである。
かれ かた い こ むすめ
八ハモルは彼らと語って言った、﹁わたしの子シケムはあなたがたの娘
こころ した かのじょ かれ つま
を 心 に 慕 っ て い ま す。ど う か 彼女 を 彼 の 妻 に く だ さ い。 九あ な た が た
こんいん むすめ あた
はわたしたちと婚姻し、あなたがたの娘をわたしたちに与え、わたした
むすめ
ちの娘をあなたがたにめとってください。 一〇こうしてあなたがたとわ
いっしょ す ち まえ
た し た ち と は 一緒 に 住 み ま し ょ う。地 は あ な た が た の 前 に あ り ま す。
す とりひき ざいさん え
ここに住んで取引し、ここで財産を獲なさい﹂。 一一シケムはまたデナの
ちち きょうだい い まえ めぐ え
父 と 兄 弟 た ち と に 言 っ た、﹁あ な た が た の 前 に 恵 み を 得 さ せ て く だ さ

い。あなたがたがわたしに言われるものは、なんでもさしあげましょ
ゆいのうきん おく もの もと
う。 一二たくさんの結納金と贈り物とをお求めになっても、あなたがた
創世記

い むすめ つま
の 言 わ れ る と お り さ し あ げ ま す。た だ こ の 娘 は わ た し の 妻 に く だ さ

135
い﹂。
こ かれ いもうと けが
一三 しかし、ヤコブの子らはシケムが彼らの妹 デナを汚したので、シケ
ちち いつわ こた かれ い かつれい
ムとその父ハモルに偽 って答え、 一四彼らに言った、
﹁われわれは割礼を
う もの いもうと こと はじ
受けない者に妹をやる事はできません。それはわれわれの恥とすると
どうい
ころですから。 一五ただ、こうなさればわれわれはあなたがたに同意し
だんし かつれい う
ます。もしあなたがたのうち男子がみな割礼を受けて、われわれのよう
むすめ あた むすめ
になるなら、一六われわれの娘をあなたがたに与え、あなたがたの娘をわ
いっしょ す
れわれにめとりましょう。そしてわれわれはあなたがたと一緒に住ん
たみ
で一つの民となりましょう。 一七けれども、もしあなたがたがわれわれ
き かつれい う むすめ つ い
に聞かず、割礼を受けないなら、われわれは娘を連れて行きます﹂。
かれ ことば こ こころ
一八 彼らの言葉がハモルとハモルの子シケムとの心にかなったので、 一九
わかもの こと かれ むすめ あい
若者は、ためらわずにこの事をした。彼がヤコブの娘を愛したからであ
かれ ちち いえ ばんおも もの
る。また彼は父の家のうちで一番重んじられた者であった。 二〇そこで
創世記

こ まち もん い まち ひとびと かた い
ハモルとその子シケムとは町の門に行き、町の人々に語って言った、 二一

136
ひとびと した ち す とりひき
﹁この人々はわれわれと親しいから、この地に住まわせて、ここで取引を
ち ひろ かれ
させよう。地は広く、彼らをいれるにじゅうぶんである。そしてわれわ
かれ むすめ つま むすめ かれ あた かれ
れは彼らの娘を妻にめとり、われわれの娘を彼らに与えよう。 二二彼ら
かつれい う だんし みな かつれい う
が割礼を受けているように、もしわれわれのうちの男子が皆、割礼を受
こと ひとびと どうい
けるなら、ただこの事だけで、この人々はわれわれに同意し、われわれ
いっしょ す たみ かれ かちく ざいさん
と一緒に住んで一つの民となるのだ。 二三そうすれば彼らの家畜と財産
けもの
とすべての獣とは、われわれのものとなるではないか。ただわれわれが
かれ どうい かれ いっしょ す
彼らに同意すれば、彼らはわれわれと一緒に住むであろう﹂。 二四そこで
まち もん で い もの こ き したが
町 の 門 に 出入 り す る 者 は み な ハ モ ル と そ の 子 シ ケ ム と に 聞 き 従 っ て、
まち もん で い だんし かつれい う
町の門に出入りするすべての男子は割礼を受けた。
か め かれ いた おぼ とき こ
二五三日目になって彼らが痛みを覚えている時、ヤコブのふたりの子、す
きょうだい と ふ い
なわちデナの兄 弟 シメオンとレビとは、おのおのつるぎを取って、不意
まち おそ だんし ころ は
に町を襲い、男子をことごとく殺し、二六またつるぎの刃にかけてハモル
創世記

こ ころ いえ つ だ
とその子シケムとを殺し、シケムの家からデナを連れ出した。 二七そし

137
こ ころ ひとびと まち かれ いもうと けが
てヤコブの子らは殺された人々をはぎ、町をかすめた。彼らが妹を汚し
ひつじ うし およ まち の
たからである。 二八すなわち羊、牛、ろば及び町にあるものと、野にある
なら か ざい うば こ おんな つま みな
もの、 二九並びにすべての貨財を奪い、その子 女と妻たちを皆とりこに
いえ なか もの
し、家の中にある物をことごとくかすめた。 三〇そこでヤコブはシメオ
い ち じゅうみん
ンとレビとに言った、
﹁あなたがたはわたしをこの地の住 民、カナンび
い めいわく
と と ペ リ ジ び と に 忌 み き ら わ せ、わ た し に 迷惑 を か け た。わ た し は、
にんずう すく かれ あつ せ う
人数が少ないから、彼らが集まってわたしを攻め撃つならば、わたしも
かぞく ほろ かれ い いもうと
家族 も 滅 ぼ さ れ る で あ ろ う﹂。 三 一彼 ら は 言 っ た、﹁わ た し た ち の 妹 を
ゆうじょ かれ あつか
遊女のように彼が扱 ってよいのですか﹂。
第三五章
かみ い た のぼ
一ときに神はヤコブに言われた、
﹁あなたは立ってベテルに上り、そこに
創世記

す あに かお さ とき あらわ
住んで、あなたがさきに兄エサウの顔を避けてのがれる時、あなたに現

138
かみ さいだん つく かぞく とも
れた神に祭壇を造りなさい﹂。 二ヤコブは、その家族および共にいるす
もの い こと かみがみ す み きよ
べての者に言った、﹁あなたがたのうちにある異なる神々を捨て、身を清
きもの き が た のぼ ところ
めて着物を着替えなさい。 三われわれは立ってベテルに上り、その所で
くなん ひ い みち とも
わたしの苦難の日にわたしにこたえ、かつわたしの行く道で共におられ
かみ さいだん つく かれ も こと かみがみ みみ
た神に祭壇を造ろう﹂。 四そこで彼らは持っている異なる神々と、耳に
みみわ あた
つけている耳輪をことごとくヤコブに与えたので、ヤコブはこれをシケ
き した う
ムのほとりにあるテレビンの木の下に埋めた。
かれ た おお おそ しゅうい まちまち た
そして彼らは、いで立ったが、大いなる恐れが周囲の町々に起ったの

こ お もの とも
で、ヤコブの子らのあとを追う者はなかった。 六こうしてヤコブは共に
ひとびと いっしょ ち
いたすべての人々と一緒にカナンの地にあるルズ、すなわちベテルにき
かれ さいだん きず ところ な かれ
た。 七彼はそこに祭壇を築き、その所をエル・ベテルと名づけた。彼が
あに かお さ とき かみ かれ あらわ とき
兄の顔を避けてのがれる時、神がそこで彼に現れたからである。 八時に
し き した ほうむ
リベカのうばデボラが死んで、ベテルのしもの、かしの木の下に葬られ
創世記

き な よ
た。これによってその木の名をアロン・バクテと呼ばれた。

139
かえ とき かみ ふたた かれ あらわ かれ
九さてヤコブがパダンアラムから帰ってきた時、神は再び彼に現れて彼
しゅくふく かみ かれ い な
を祝 福された。 一〇神は彼に言われた、﹁あなたの名はヤコブである。し
な よ な
かしあなたの名をもはやヤコブと呼んではならない。あなたの名をイ
かれ な
ス ラ エ ル と し な さ い﹂。こ う し て 彼 を イ ス ラ エ ル と 名 づ け ら れ た。 一一
かみ かれ い
神はまた彼に言われた、
ぜんのう かみ
﹁わたしは全能の神である。

あなたは生めよ、またふえよ。
こくみん おお こくみん で
一つの国民、また多くの国民があなたから出て、
おう み で
王たちがあなたの身から出るであろう。
あた ち
一二 わたしはアブラハムとイサクとに与えた地を、
あた
あなたに与えよう。
のち しそん ち あた
またあなたの後の子孫にその地を与えよう﹂。
かみ かれ かた ば しょ かれ はな
一三 神 は 彼 と 語 っ て お ら れ た そ の 場所 か ら 彼 を 離 れ て の ぼ ら れ た。 一四
創世記

かみ じぶん かた ば しょ ぽん いし はしら た
そこでヤコブは神が自分と語られたその場所に、一本の石の柱を立て、

140
うえ かんさい あぶら そそ かみ じぶん
その上に灌祭をささげ、また油を注いだ。 一五そしてヤコブは神が自分
かた ば しょ な
と語られたその場所をベテルと名づけた。
かれ た い つ
一六 こうして彼らはベテルを立ったが、エフラタに行き着くまでに、なお
へだ ところ さんけ さん おも なんざん
隔たりのある所でラケルは産気づき、その産は重かった。 一七その難産
あた さんば かのじょ い しんぱい こんど おとこ
に当って、産婆は彼女に言った、﹁心配することはありません。今度も男
こ かのじょ し たましい さ とき こ な
の子です﹂。 一八彼女は死にのぞみ、 魂の去ろうとする時、子の名をベノ
よ ちち な
ニと呼んだ。しかし、父はこれをベニヤミンと名づけた。 一九ラケルは
し みち ほうむ
死んでエフラタ、すなわちベツレヘムの道に葬られた。 二〇ヤコブはそ
はか はしら た はか はしら こんにち いた
の墓に柱を立てた。これはラケルの墓の柱であって、今日に至ってい
た む てんまく
る。 二一イスラエルはまた、いで立ってミグダル・エダルの向こうに天幕

を張った。
ち す とき ちち
二二 イスラエルがその地に住んでいた時、ルベンは父のそばめビルハの
い ね き
ところへ行って、これと寝た。イスラエルはこれを聞いた。
創世記

こ にん こ
さてヤコブの子らは十二人であった。 二三すなわちレアの子らはヤコブ

141
ちょうし
の長子ルベンとシメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルン。 二四ラケ
こ こ
ルの子らはヨセフとベニヤミン。 二五ラケルのつかえめビルハの子らは

ダンとナフタリ。 二六レアのつかえめジルパの子らはガドとアセル。こ
こ かれ うま もの
れらはヤコブの子らであって、パダンアラムで彼に生れた者である。
ちち
二七 ヤコブはキリアテ・アルバ、すなわちヘブロンのマムレにいる父イサ
い きりゅう ところ
クのもとへ行った。ここはアブラハムとイサクとが寄留した所である。
とし さい としお ひ み いき た
二八 イサクの年は百八十歳であった。 二九イサクは年老い、日満ちて息絶
し たみ くわ こ
え、死んで、その民に加えられた。その子エサウとヤコブとは、これを
ほうむ
葬 った。
第三六章
けいず つぎ
一エサウ、すなわちエドムの系図は次のとおりである。 二エサウはカナ
創世記

むすめ つま むすめ
ンの娘たちのうちから妻をめとった。すなわちヘテびとエロンの娘 ア

142
こ むすめ
ダと、ヒビびとヂベオンの子アナの娘 アホリバマとである。 三また、イ
むすめ いもうと
シマエルの娘 ネバヨテの妹 バスマテをめとった。 四アダはエリパズを
う う
エサウに産み、バスマテはリウエルを産み、 五アホリバマはエウシ、ヤ
う こ ち かれ
ラム、コラを産んだ。これらはエサウの子であって、カナンの地で彼に
うま もの
生れた者である。
つま こ むすめ いえ ひと かちく けもの
六エサウは妻と子と娘と家のすべての人、家畜とすべての獣、またカナ
ち え ざいさん たずさ きょうだい はな ち
ン の 地 で 獲 た す べ て の 財産 を 携 え、 兄 弟 ヤ コ ブ を 離 れ て ほ か の 地 へ
い かれ ざいさん おお いっしょ
行った。 七彼らの財産が多くて、一緒にいることができなかったからで
かれ きりゅう ち かれ かちく かれ
ある。すなわち彼らが寄留した地は彼らの家畜のゆえに、彼らをささえ
さんち
る こ と が で き な か っ た の で あ る。 八こ う し て エ サ ウ は セ イ ル の 山地 に

住んだ。エサウはすなわちエドムである。
さんち せんぞ けいず つぎ
九セイルの山地におったエドムびとの先祖エサウの系図は次のとおり
こ な つぎ
である。 一〇エサウの子らの名は次のとおりである。すなわちエサウの
創世記

つま こ つま こ
妻アダの子はエリパズ。エサウの妻バスマテの子はリウエル。 一一エリ

143

パズの子らはテマン、オマル、ゼポ、ガタム、ケナズである。 一二テムナ
こ う
はエサウの子エリパズのそばめで、アマレクをエリパズに産んだ。これ
つま こ こ つぎ
らはエサウの妻アダの子らである。 一三リウエルの子らは次のとおりで
ある。すなわちナハテ、ゼラ、シャンマ、ミザであって、これらはエサ
つま こ こ むすめ
ウの妻バスマテの子らである。 一四ヂベオンの子アナの娘で、エサウの
つま こ つぎ かのじょ
妻アホリバマの子らは次のとおりである。すなわち彼女はエウシ、ヤラ

ム、コラをエサウに産んだ。
こ なか ぞくちょう もの つぎ
一五エサウの子らの中で、族 長たる者は次のとおりである。すなわちエ
ちょうし こ ぞくちょう ぞくちょう
サ ウ の 長子 エ リ パ ズ の 子 ら は テ マ ン の 族 長、オ マ ル の 族 長、ゼ ポ の
ぞくちょう ぞくちょう ぞくちょう ぞくちょう ぞくちょう
族 長、ケナズの族 長、 一六コラの族 長、ガタムの族 長、アマレクの族 長
で ぞくちょう ち
である。これらはエリパズから出た族 長で、エドムの地におった。こ
こ こ こ つぎ
れらはアダの子らである。 一七エサウの子リウエルの子らは次のとおり
ぞくちょう ぞくちょう ぞくちょう
である。すなわちナハテの族 長、ゼラの族 長、シャンマの族 長、ミザ
創世記

ぞくちょう で ぞくちょう ち
の族 長。これらはリウエルから出た族 長で、エドムの地におった。こ

144
つま こ つま
れらはエサウの妻バスマテの子らである。 一八エサウの妻アホリバマの
こ つぎ ぞくちょう ぞくちょう
子らは次のとおりである。すなわちエウシの族 長、ヤラムの族 長、コラ
ぞくちょう むすめ つま で ぞくちょう
の族 長。これらはアナの娘で、エサウの妻アホリバマから出た族 長で
こ ぞくちょう もの
ある。 一九これらはエサウすなわちエドムの子らで、族 長たる者である。
ち じゅうみん こ つぎ
二〇 この地の住 民 ホリびとセイルの子らは次のとおりである。すなわ
ちロタン、ショバル、ヂベオン、アナ、 二一デション、エゼル、デシャン。
こ で ぞくちょう ち
これらはセイルの子ホリびとから出た族 長で、エドムの地におった。 二
こ いもうと
ロタンの子らはホリ、ヘマムであり、ロタンの妹はテムナであった。 二

こ つぎ
ショバルの子らは次のとおりである。すなわちアルワン、マナハテ、

こ つぎ
エバル、シポ、オナム。 二四ヂベオンの子らは次のとおりである。すなわ
ちち か とき あらの
ちアヤとアナ。このアナは父ヂベオンのろばを飼っていた時、荒野で
おんせん はっけん もの こ つぎ
温泉を発見した者である。 二五アナの子らは次のとおりである。すなわ
むすめ
ちデションとアホリバマ。アホリバマはアナの娘である。 二六デション
創世記

こ つぎ
の子らは次のとおりである。すなわちヘムダン、エシバン、イテラン、ケ

145
こ つぎ
ラン。 二七エゼルの子らは次のとおりである。すなわちビルハン、ザワ
こ つぎ
ン、アカン。 二八デシャンの子らは次のとおりである。すなわちウズと
で ぞくちょう つぎ
アラン。 二九ホリびとから出た族 長は次のとおりである。すなわちロタ
ぞくちょう ぞくちょう ぞくちょう ぞくちょう
ンの族 長、ショバルの族 長、ヂベオンの族 長、アナの族 長、 三〇デショ
ぞくちょう ぞくちょう ぞくちょう で
ンの族 長、エゼルの族 長、デシャンの族 長。これらはホリびとから出
ぞくちょう しぞく したが ち もの
た族 長であって、その氏族に従 ってセイルの地におった者である。
ひとびと おさ おう とき ち おさ
三一 イスラエルの人々を治める王がまだなかった時、エドムの地を治め
おう つぎ こ おさ
た王たちは次のとおりである。 三二ベオルの子ベラはエドムを治め、そ
みやこ な し こ
の都の名はデナバであった。 三三ベラが死んで、ボズラのゼラの子ヨバ
かわ おう し ち
ブがこれに代って王となった。 三四ヨバブが死んで、テマンびとの地の
かわ おう し
ホシャムがこれに代って王となった。 三五ホシャムが死んで、ベダデの
こ かわ おう かれ の
子 ハ ダ デ が こ れ に 代 っ て 王 と な っ た。彼 は モ ア ブ の 野 で ミ デ ア ン を
う もの みやこ な し
撃 っ た 者 で あ る。そ の 都 の 名 は ア ビ テ で あ っ た。 三六ハ ダ デ が 死 ん で、
創世記

かわ おう し
マスレカのサムラがこれに代って王となった。 三七サムラが死んでユフ

146
かわ かわ おう
ラテ川のほとりにあるレホボテのサウルがこれに代って王となった。 三
し こ かわ おう
八サウルが死んでアクボルの子バアル・ハナンがこれに代って王となっ
こ し かわ おう
た。 三九アクボルの子バアル・ハナンが死んで、ハダルがこれに代って王
みやこ な つま な
と な っ た。そ の 都 の 名 は パ ウ で あ っ た。そ の 妻 の 名 は メ ヘ タ ベ ル と
むすめ むすめ
いって、メザハブの娘 マテレデの娘であった。
で ぞくちょう な しぞく じゅうしょ な したが い
四〇 エサウから出た族 長の名は、その氏族と住 所と名に従 って言えば
つぎ ぞくちょう ぞくちょう
次のとおりである。すなわちテムナの族 長、アルワの族 長、エテテの
ぞくちょう ぞくちょう ぞくちょう ぞくちょう
族 長、四一アホリバマの族 長、エラの族 長、ピノンの族 長、四二ケナズの
ぞくちょう ぞくちょう ぞくちょう ぞくちょう
族 長、テマンの族 長、ミブザルの族 長、 四三マグデエルの族 長、イラム
ぞくちょう ぞくちょう りょうちうち じゅうしょ
の 族 長。こ れ ら は エ ド ム の 族 長 た ち で あ っ て、そ の 領地内 の 住 所 に
したが せんぞ
従 っていったものである。エドムびとの先祖はエサウである。
創世記

147
第三七章
ちち きりゅう ち ち す
一ヤ コ ブ は 父 の 寄留 の 地、す な わ ち カ ナ ン の 地 に 住 ん だ。 二ヤ コ ブ の
しそん つぎ
子孫は次のとおりである。
さい とき きょうだい とも ひつじ む か かれ
ヨセフは十七歳の時、 兄 弟たちと共に羊の群れを飼っていた。彼はま
こども ちち つま こ とも
だ子供で、父の妻たちビルハとジルパとの子らと共にいたが、ヨセフは
かれ わる ちち つ としよ こ
彼らの悪いうわさを父に告げた。 三ヨセフは年寄り子であったから、イ
た こ かれ あい かれ なが きもの
スラエルは他のどの子よりも彼を愛して、彼のために長そでの着物をつ
きょうだい ちち きょうだい かれ あい み かれ
くった。 四兄 弟たちは父がどの兄 弟よりも彼を愛するのを見て、彼を
にく おだ かれ かた
憎み、穏やかに彼に語ることができなかった。
とき ゆめ み きょうだい はな かれ
ある時、ヨセフは夢を見て、それを兄 弟たちに話したので、彼らは、

かれ にく かれ い み
ますます彼を憎んだ。 六ヨセフは彼らに言った、﹁どうぞわたしが見た
ゆめ き はたけ なか たば ゆ
夢を聞いてください。 七わたしたちが畑の中で束を結わえていたとき、
創世記

たば お た たば
わたしの束が起きて立つと、あなたがたの束がまわりにきて、わたしの

148
たば おが きょうだい かれ む
束を拝みました﹂。 八すると兄 弟たちは彼に向かって、
﹁あなたはほんと
おう じっさい おさ
うにわたしたちの王になるのか。あなたは実際わたしたちを治めるの
い かれ ゆめ ことば かれ にく
か﹂と言って、彼の夢とその言葉のゆえにますます彼を憎んだ。 九ヨセ
ゆめ み きょうだい かた い
フはまた一つの夢を見て、それを兄 弟たちに語って言った、
﹁わたしは
ゆめ み ひ つき ほし おが
ま た 夢 を 見 ま し た。日 と 月 と 十 一 の 星 と が わ た し を 拝 み ま し た﹂。 一〇
かれ ちち きょうだい かた ちち かれ い
彼はこれを父と兄 弟たちに語ったので、父は彼をとがめて言った、
﹁あ
み ゆめ はは
なたが見たその夢はどういうのか。ほんとうにわたしとあなたの母と、
きょうだい い ち ふ おが きょうだい かれ
兄 弟たちとが行って地に伏し、あなたを拝むのか﹂。 一一兄 弟たちは彼
ちち ことば こころ
をねたんだ。しかし父はこの言葉を心にとめた。
きょうだい い ちち ひつじ む か
一二 さて兄 弟たちがシケムに行って、父の羊の群れを飼っていたとき、一
い きょうだい ひつじ
三イ ス ラ エ ル は ヨ セ フ に 言 っ た、﹁あ な た の 兄 弟 た ち は シ ケ ム で 羊 を
か かれ ところ
飼っているではないか。さあ、あなたを彼らの所へつかわそう﹂。ヨセ
ちち い い ちち かれ い い
フは父に言った、
﹁はい、行きます﹂。 一四父は彼に言った、
﹁どうか、行っ
創世記

きょうだい ぶ じ む ぶ じ み
て、あなたの兄 弟たちは無事であるか、また群れは無事であるか見てき

149
し ちち かれ たに
て、わたしに知らせてください﹂。父が彼をヘブロンの谷からつかわし
かれ い ひと かれ あ かれ の
たので、彼はシケムに行った。 一五ひとりの人が彼に会い、彼が野をさま
ひと かれ たず い なに さが
よっていたので、その人は彼に尋ねて言った、﹁あなたは何を捜している
かれ い きょうだい さが かれ
のですか﹂。 一六彼は言った、﹁兄 弟たちを捜しているのです。彼らが、ど
ひつじ か し
こで羊を飼っているのか、どうぞわたしに知らせてください﹂。 一七その
ひと い かれ さ かれ い い
人は言った、
﹁彼らはここを去りました。彼らが﹃ドタンへ行こう﹄と言
き きょうだい お
う の を わ た し は 聞 き ま し た﹂。そ こ で ヨ セ フ は 兄 弟 た ち の あ と を 追 っ
い かれ あ かれ ちか
て行って、ドタンで彼らに会った。 一八ヨセフが彼らに近づかないうち
かれ み ころ はか たがい い
に、彼らははるかにヨセフを見て、これを殺そうと計り、 一九 互に言っ
ゆめみ もの く かれ ころ あな な い わる
た、
﹁あの夢見る者がやって来る。 二〇さあ、彼を殺して穴に投げ入れ、悪
けもの かれ く い かれ ゆめ み
い 獣 が 彼 を 食 っ た と 言 お う。そ し て 彼 の 夢 が ど う な る か 見 よ う﹂。 二一
き かれ て すく だ い
ルベンはこれを聞いて、ヨセフを彼らの手から救い出そうとして言っ
かれ いのち と かれ
た、﹁われわれは彼の命を取ってはならない﹂。 二二ルベンはまた彼らに
創世記

い ち なが かれ あらの あな な い
言った、﹁血を流してはいけない。彼を荒野のこの穴に投げ入れよう。

150
かれ て かれ て すく
彼に手をくだしてはならない﹂。これはヨセフを彼らの手から救いだし
ちち かえ きょうだい い
て父に返すためであった。 二三さて、ヨセフが兄 弟たちのもとへ行くと、
かれ きもの かれ き なが きもの かれ とら
彼らはヨセフの着物、彼が着ていた長そでの着物をはぎとり、二四彼を捕
あな な い あな なか みず
えて穴に投げ入れた。その穴はからで、その中に水はなかった。
かれ た とき かれ め み
二五 こうして彼らはすわってパンを食べた。時に彼らが目をあげて見る
たいしょう こうりょう にゅうこう
と、イシマエルびとの隊 商が、らくだに香 料と、 乳 香と、もつやくと
お くだ い
を負わせてエジプトへ下り行こうとギレアデからやってきた。 二六
きょうだい い おとうと ころ ち かく
そこでユダは兄 弟たちに言った、
﹁われわれが弟を殺し、その血を隠し
なに えき かれ う
て何の益があろう。 二七さあ、われわれは彼をイシマエルびとに売ろう。
かれ きょうだい にく み かれ て くだ
彼はわれわれの兄 弟、われわれの肉身だから、彼に手を下してはならな
きょうだい き い とき しょうにん
い﹂。 兄 弟たちはこれを聞き入れた。 二八時にミデアンびとの商 人たち
とお かれ あな ひ あ ぎん
が通りかかったので、彼らはヨセフを穴から引き上げ、銀二十シケルで
う かれ つ
ヨセフをイシマエルびとに売った。彼らはヨセフをエジプトへ連れて
創世記


行った。

151
あな かえ み あな なか
二九 さてルベンは穴に帰って見たが、ヨセフが穴の中にいなかったので、
かれ いふく さ きょうだい かえ い こ
彼は衣服を裂き、 三〇兄 弟たちのもとに帰って言った、﹁あの子はいな
い かれ
い。あ あ、わ た し は ど こ へ 行 く こ と が で き よ う﹂。 三一彼 ら は ヨ セ フ の
きもの と お ころ きもの ち ひた なが
着物を取り、雄やぎを殺して、着物をその血に浸し、 三二その長そでの
きもの ちち も かえ い み
着物を父に持ち帰って言った、﹁わたしたちはこれを見つけましたが、こ
こ きもの み ちち
れはあなたの子の着物か、どうか見さだめてください﹂。 三三父はこれを
み い こ きもの わる けもの かれ く たし
見さだめて言った、﹁わが子の着物だ。悪い獣が彼を食ったのだ。確か
さ いふく さ あらぬの
にヨセフはかみ裂かれたのだ﹂。 三四そこでヤコブは衣服を裂き、荒布を
こし なが あいだ こ なげ こ むすめ みな
腰 に ま と っ て、長 い 間 そ の 子 の た め に 嘆 い た。 三 五子 ら と 娘 ら と は 皆
た かれ なぐさ かれ なぐさ こば い
立って彼を慰めようとしたが、彼は慰められるのを拒んで言った、﹁い
なげ よ み くだ こ い
や、わたしは嘆きながら陰府に下って、わが子のもとへ行こう﹂。こうし
ちち かれ な
て父は彼のために泣いた。 三六さて、かのミデアンびとらはエジプトで
やくにん じ え い ちょう う
パロの役人、侍衛 長 ポテパルにヨセフを売った。
創世記

152
第三八章
きょうだい はな くだ な
一そのころユダは兄 弟たちを離れて下り、アドラムびとで、名をヒラと
もの ところ い ところ な
いう者の所へ行った。 二ユダはその所で、名をシュアというカナンびと
むすめ み ところ かのじょ おとこ
の娘を見て、これをめとり、その所にはいった。 三彼女はみごもって男
こ う な な かのじょ ふたた
の子を産んだので、ユダは名をエルと名づけた。 四彼女は再びみごもっ
おとこ こ う な な かさ おとこ こ う
て男の子を産み、名をオナンと名づけた。 五また重ねて、男の子を産み、
な な かのじょ おとこ こ う
名をシラと名づけた。彼女はこの男の子を産んだとき、クジブにおっ
ちょうし な つま むか
た。 六ユダは長子エルのために、名をタマルという妻を迎えた。 七しか
ちょうし しゅ まえ わる もの しゅ かれ ころ
しユダの長子エルは主の前に悪い者であったので、主は彼を殺された。
い あに つま ところ かのじょ
八そこでユダはオナンに言った、﹁兄の妻の所にはいって、彼女をめと
あに こども え こ じぶん
り、兄に子供を得させなさい﹂。 九しかしオナンはその子が自分のもの
し あに つま ところ とき あに こ え
とならないのを知っていたので、兄の妻の所にはいった時、兄に子を得
創世記

ち も かれ こと しゅ まえ わる
さ せ な い た め に 地 に 洩 ら し た。 一〇彼 の し た 事 は 主 の 前 に 悪 か っ た の

153
しゅ かれ ころ こ つま い
で、主は彼をも殺された。 一一そこでユダはその子の妻タマルに言った、
こ せいじん か ふ ちち いえ
﹁わたしの子シラが成人するまで、寡婦のままで、あなたの父の家にいな
かれ きょうだい し おも
さい﹂。彼は、シラもまた兄 弟たちのように死ぬかもしれないと、思っ
い ちち いえ
たからである。それでタマルは行って父の家におった。
ひ むすめ つま し のち も おわ
一二日がたってシュアの娘 ユダの妻は死んだ。その後、ユダは喪を終っ
とも とも のぼ じぶん ひつじ け き もの
てその友アドラムびとヒラと共にテムナに上り、自分の羊の毛を切る者
い とき ひと つ
のところへ行った。 一三時に、ひとりの人がタマルに告げて、
﹁あなたの
ひつじ け き のぼ く い
しゅうとが羊の毛を切るためにテムナに上って来る﹂と言ったので、 一四
かのじょ か ふ いふく ぬ かずき み かく い
彼女は寡婦の衣服を脱ぎすて、被衣で身をおおい隠して、テムナへ行く
みち いりぐち かのじょ
道 の か た わ ら に あ る エ ナ イ ム の 入口 に す わ っ て い た。彼女 は シ ラ が
せいじん じぶん つま し
成人したのに、自分がその妻にされないのを知ったからである。 一五ユ
かのじょ み かのじょ かお ゆうじょ おも
ダは彼女を見たとき、彼女が顔をおおっていたため、遊女だと思い、 一六
みち かのじょ む い ところ
道のかたわらで彼女に向かって言った、﹁さあ、あなたの所にはいらせて
創世記

かれ おんな こ つま し
おくれ﹂。彼はこの女がわが子の妻であることを知らなかったからであ

154
かのじょ い ところ なに
る。彼女は言った、﹁わたしの所にはいるため、何をくださいますか﹂。 一
い む こ かのじょ
七ユダは言った、
﹁群れのうちのやぎの子をあなたにあげよう﹂。彼女は

言った、
﹁それをくださるまで、しるしをわたしにくださいますか﹂。 一八
い かのじょ い
ユダは言った、﹁どんなしるしをあげようか﹂。彼女は言った、﹁あなたの
いん ひも て かれ あた かのじょ ところ
印と紐と、あなたの手にあるつえとを﹂。彼はこれらを与えて彼女の所
かのじょ かのじょ お さ
に は い っ た。彼女 は ユ ダ に よ っ て み ご も っ た。 一九彼女 は 起 き て 去 り、
かずき ぬ か ふ いふく き
被衣を脱いで寡婦の衣服を着た。
おんな と とも
二〇 やがてユダはその女からしるしを取りもどそうと、その友アドラム
たく こ おく おんな み
びとに託してやぎの子を送ったけれども、その女を見いだせなかった。
かれ ところ ひとびと たず い みち
二一 そこで彼はその所の人々に尋ねて言った、
﹁エナイムで道のかたわら
ゆうじょ かれ い ゆうじょ
にいた遊女はどこにいますか﹂。彼らは言った、﹁ここには遊女はいませ
かれ かえ い かのじょ み
ん﹂。 二二彼はユダのもとに帰って言った、﹁わたしは彼女を見いだせま
ところ ひとびと ゆうじょ い
せんでした。またその所の人々は、﹃ここには遊女はいない﹄と言いまし
創世記

い おんな も はじ
た﹂。 二三そこでユダは言った、﹁女に持たせておこう。わたしたちは恥

155
こ おく
をかくといけないから。とにかく、わたしはこのやぎの子を送ったが、
かのじょ み
あなたは彼女を見いだせなかったのだ﹂。
つき ひと い よめ
二四 ところが三月ほどたって、ひとりの人がユダに言った、
﹁あなたの嫁
かんいん かのじょ かんいん
タマルは姦淫しました。そのうえ、彼女は姦淫によってみごもりまし
い かのじょ ひ だ や かのじょ ひ
た﹂。ユダは言った、
﹁彼女を引き出して焼いてしまえ﹂。 二五彼女は引き
だ とき ひと い
出された時、そのしゅうとに人をつかわして言った、﹁わたしはこれを
ひと かのじょ い
もっている人によって、みごもりました﹂。彼女はまた言った、﹁どうか、
いん ひも みさだ
この印と、紐と、つえとはだれのものか、見定めてください﹂。 二六ユダ
みさだ い かのじょ ただ かのじょ
はこれを見定めて言った、﹁彼女はわたしよりも正しい。わたしが彼女
こ あた かれ ふたた かのじょ し
をわが子シラに与えなかったためである﹂。彼は再び彼女を知らなかっ
た。
かのじょ しゅっさん とき たいない しゅっさん
二七 さて彼女の出 産の時がきたが、胎内には、ふたごがあった。 二八出 産
とき こ て だ さんば で
の時に、ひとりの子が手を出したので、産婆は、
﹁これがさきに出た﹂と
創世記

い ひ いと と て むす こ て
言い、緋の糸を取って、その手に結んだ。 二九そして、その子が手をひっ

156
おとうと で じぶん やぶ で
こめると、その弟が出たので、﹁どうしてあなたは自分で破って出るの
い な よ のち て ひ
か﹂と言った。これによって名はペレヅと呼ばれた。 三〇その後、手に緋
いと あに で な よ
の糸のある兄が出たので、名はゼラと呼ばれた。
第三九章
つ くだ やくにん じ え い ちょう
さてヨセフは連れられてエジプトに下ったが、パロの役人で侍衛 長

かれ つ くだ
であったエジプトびとポテパルは、彼をそこに連れ下ったイシマエルび
て か と しゅ とも かれ こううん
とらの手から買い取った。 二主がヨセフと共におられたので、彼は幸運
もの しゅじん いえ しゅじん しゅ かれ
な者となり、その主人エジプトびとの家におった。 三その主人は主が彼
しゅ かれ て さか
とともにおられることと、主が彼の手のすることをすべて栄えさせられ
み かれ まえ めぐ え ちか つか
るのを見た。 四そこで、ヨセフは彼の前に恵みを得、そのそば近く仕え
かれ いえ も もの かれ て
た。彼はヨセフに家をつかさどらせ、持ち物をみな彼の手にゆだねた。
創世記

かれ いえ も もの とき しゅ
彼がヨセフに家とすべての持ち物をつかさどらせた時から、主はヨセ

157
いえ めぐ しゅ めぐ かれ いえ
フのゆえにそのエジプトびとの家を恵まれたので、主の恵みは彼の家と
はたけ も もの およ かれ も もの
畑 と に あ る す べ て の 持 ち 物 に 及 ん だ。 六そ こ で 彼 は 持 ち 物 を み な ヨ セ
て じぶん た もの なに かえり
フの手にゆだねて、自分が食べる物のほかは、何をも顧みなかった。
すがた かお うつく こと のち しゅじん つま
さてヨセフは姿がよく、顔が美しかった。 七これらの事の後、主人の妻
め い ね こば
は ヨ セ フ に 目 を つ け て 言 っ た、﹁わ た し と 寝 な さ い﹂。 八ヨ セ フ は 拒 ん
しゅじん つま い ご しゅじん いえ なか なに かえり
で、主人の妻に言った、﹁御主人はわたしがいるので家の中の何をも顧み
も もの て いえ
ず、その持ち物をみなわたしの手にゆだねられました。 九この家にはわ
おお もの ご しゅじん のぞ
たしよりも大いなる者はありません。また御主人はあなたを除いては、
なに きん ご しゅじん つま
何をもわたしに禁じられませんでした。あなたが御主人の妻であるか
おお あく かみ つみ おか
らです。どうしてわたしはこの大きな悪をおこなって、神に罪を犯すこ
かのじょ まいにち い よ
とができましょう﹂。 一〇彼女は毎日ヨセフに言い寄ったけれども、ヨセ
き かのじょ ね とも ひ
フは聞きいれず、彼女と寝なかった。また共にいなかった。 一一ある日
つとめ いえ とき いえ もの
ヨセフが務をするために家にはいった時、家の者がひとりもそこにいな
創世記

かのじょ きもの とら ね
かったので、 一二彼女はヨセフの着物を捕えて、
﹁わたしと寝なさい﹂と

158
い きもの かのじょ て のこ そと で かのじょ
言った。ヨセフは着物を彼女の手に残して外にのがれ出た。 一三彼女は
きもの じぶん て のこ そと み いえ
ヨセフが着物を自分の手に残して外にのがれたのを見て、 一四その家の
もの よ かれ つ い しゅじん ところ つ
者どもを呼び、彼らに告げて言った、﹁主人がわたしたちの所に連れてき
たわむ かれ ね
たヘブルびとは、わたしたちに戯れます。彼はわたしと寝ようとして、
ところ おおごえ さけ かれ
わたしの所にはいったので、わたしは大声で叫びました。 一五彼はわた
こえ さけ き きもの ところ のこ そと
しが声をあげて叫ぶのを聞くと、着物をわたしの所に残して外にのがれ
で かのじょ きもの お しゅじん かえ く
出ました﹂。 一六彼女はその着物をかたわらに置いて、主人の帰って来る
ま かのじょ つぎ しゅじん つ
のを待った。 一七そして彼女は次のように主人に告げた、
﹁あなたがわた
つ たわむ
したちに連れてこられたヘブルのしもべはわたしに戯れようとして、わ
ところ こえ さけ かれ
たしの所にはいってきました。 一八わたしが声をあげて叫んだので、彼
きもの ところ のこ そと
は着物をわたしの所に残して外にのがれました﹂。
しゅじん つま こと つ
一九 主人はその妻が﹁あなたのしもべは、わたしにこんな事をした﹂と告
ことば き はげ いか しゅじん かれ とら
げる言葉を聞いて、激しく怒った。 二〇そしてヨセフの主人は彼を捕え
創世記

おう しゅうじん ごくや な い ごくや なか


て、王の囚 人をつなぐ獄屋に投げ入れた。こうしてヨセフは獄屋の中

159
しゅ とも かれ た ごくや
におったが、二一主はヨセフと共におられて彼にいつくしみを垂れ、獄屋
ばん めぐ ご く や ばん ごくや しゅうじん
番の恵みをうけさせられた。 二二獄屋番は獄屋におるすべての囚 人をヨ
て かれ こと
セフの手にゆだねたので、彼はそこでするすべての事をおこなった。 二三
ご く や ばん かれ て こと かえり しゅ
獄屋番は彼の手にゆだねた事はいっさい顧みなかった。主がヨセフと
とも しゅ かれ こと さか
共におられたからである。主は彼のなす事を栄えさせられた。
第四〇章
こと のち おう きゅうじやく りょうりやく しゅくん
一これらの事の後、エジプト王の給仕役と料理役とがその主君エジプト
おう つみ おか やくにん きゅうじやく ちょう りょうりやく
王に罪を犯した。 二パロはふたりの役人、すなわち給仕役の長と料理役
ちょう む いきどお じ え い ちょう いえ かんきんじょ
の長に向かって憤り、 三侍衛 長の家の監禁所、すなわちヨセフがつなが
ごくや い じ え い ちょう めい かれ とも
れている獄屋に入れた。 四侍衛 長はヨセフに命じて彼らと共におらせ
かれ つか かれ かんきんじょ いくにち す
たので、ヨセフは彼らに仕えた。こうして彼らは監禁所で幾日かを過ご
創世記

ごくや おう きゅうじやく りょうりやく


し た。 五さ て 獄屋 に つ な が れ た エ ジ プ ト 王 の 給仕役 と 料理役 の ふ た り

160
いちや い み ゆめ み あさ かれ
は一夜のうちにそれぞれ意味のある夢を見た。 六ヨセフが朝、彼らのと
い み かれ かな しず
こ ろ へ 行 っ て 見 る と、彼 ら は 悲 し み に 沈 ん で い た。 七そ こ で ヨ セ フ は
じぶん いっしょ しゅじん いえ かんきんじょ やくにん たず い
自分と一緒に主人の家の監禁所にいるパロの役人たちに尋ねて言った、
かおいろ わる かれ い
﹁どうして、きょう、あなたがたの顔色が悪いのですか﹂。 八彼らは言っ
ゆめ み と もの
た、
﹁わたしたちは夢を見ましたが、解いてくれる者がいません﹂。ヨセ
かれ い と かみ
フは彼らに言った、﹁解くことは神によるのではありませんか。どうぞ、
はな
わたしに話してください﹂。
きゅうじやく ちょう ゆめ はな い み ゆめ
九給仕役の長はその夢をヨセフに話して言った、
﹁わたしが見た夢で、わ
まえ ぽん き き
たしの前に一本のぶどうの木がありました。 一〇そのぶどうの木に三つ
えだ め だ はな さ じゅく とき
の枝があって、芽を出し、花が咲き、ぶどうのふさが熟しました。 一一時
て さかずき と
にわたしの手に、パロの杯があって、わたしはそのぶどうを取り、それ
さかずき さかずき て
をパロの杯にしぼり、その杯をパロの手にささげました﹂。 一二ヨセフは
い と あ えだ か いま
言った、
﹁その解き明かしはこうです。三つの枝は三日です。 一三今から
創世記

か あたま あ もと やくめ かえ
三日のうちにパロはあなたの頭を上げて、あなたを元の役目に返すで

161
きゅうじやく とき て さかずき
しょう。あなたはさきに給仕役だった時にされたように、パロの手に杯
をささげられるでしょう。 一四それで、あなたがしあわせになられたら、
おぼ めぐ ほどこ こと
わたしを覚えていて、どうかわたしに恵みを施し、わたしの事をパロに
はな いえ だ み
話して、この家からわたしを出してください。 一五わたしは、実はヘブル
ち もの ち か
び と の 地 か ら さ ら わ れ て き た 者 で す。ま た こ こ で も わ た し は 地下 の
ごくや い こと
獄屋に入れられるような事はしなかったのです﹂。
りょうりやく ちょう と あ よ み い
一六料理役の長はその解き明かしの良かったのを見て、ヨセフに言った、
ゆめ み しろ あたま うえ
﹁わたしも夢を見たが、白いパンのかごが三つ、わたしの頭の上にあっ
ばんうえ りょうりやく つく しょくもつ
た。 一七一番上のかごには料理役がパロのために作ったさまざまの食 物
とり あたま うえ た
があったが、鳥がわたしの頭の上のかごからそれを食べていた﹂。 一八ヨ
こた い と あ か
セフは答えて言った、﹁その解き明かしはこうです。三つのかごは三日
いま か あたま あ はな
です。 一九今から三日のうちにパロはあなたの頭を上げ離して、あなた
き か とり にく く と
を木に掛けるでしょう。そして鳥があなたの肉を食い取るでしょう﹂。
創世記

か め たんじょう ひ けらい
二〇さて三日目はパロの誕 生 日であったので、パロはすべての家来のた

162
もう けらい きゅうじやく ちょう あたま りょうりやく ちょう あたま
めにふるまいを設け、家来のうちの給仕役の長の頭と、料理役の長の頭
あ きゅうじやく ちょう きゅうじやく しょく かえ
を 上 げ た。 二一す な わ ち パ ロ は 給仕役 の 長 を 給仕役 の 職 に 返 し た の で、
かれ て さかずき りょうりやく ちょう き か
彼はパロの手に杯をささげた。 二二しかしパロは料理役の長を木に掛け
かれ と あ きゅうじやく
た。ヨセフが彼らに解き明かしたとおりである。 二三ところが、給仕役
ちょう おも だ わす
の長はヨセフを思い出さず、忘れてしまった。
第四一章
ねん のち ゆめ み ゆめ かれ かわ た
一二年の後パロは夢を見た。夢に、彼はナイル川のほとりに立ってい
かわ うつく こ ふと とう めうし あ
た。 二すると、その川から美しい、肥え太った七頭の雌牛が上がってき
あし く のち みにく ほそ た とう めうし
て葦を食っていた。 三その後、また醜い、やせ細った他の七頭の雌牛が
かわ あ かわ きし めうし た みにく
川から上がってきて、川の岸にいた雌牛のそばに立ち、 四その醜い、や
ほそ めうし うつく こ とう めうし く
せ細った雌牛が、あの美しい、肥えた七頭の雌牛を食いつくした。ここ
創世記

め さ かれ ねむ ふたた ゆめ み ゆめ ぽん
でパロは目が覚めた。 五彼はまた眠って、 再び夢を見た。夢に、一本の

163
くき ふと よ ほ で のち ひがしかぜ や
茎に太った良い七つの穂が出てきた。 六その後また、やせて、東 風に焼
ほ で ほ ふと みの
けた七つの穂が出てきて、 七そのやせた穂が、あの太って実った七つの
ほ め さ ゆめ
穂をのみつくした。ここでパロは目が覚めたが、それは夢であった。 八
あさ こころ さわ ひと まじゅつ
朝になって、パロは心が騒ぎ、人をつかわして、エジプトのすべての魔術
し ち しゃ よ よ かれ ゆめ つ と
師とすべての知者とを呼び寄せ、彼らに夢を告げたが、これをパロに解
あ もの
き明かしうる者がなかった。
きゅうじやく ちょう つ い じぶん
九そのとき給仕役の長はパロに告げて言った、
﹁わたしはきょう、自分の
おも だ む いきどお
あ や ま ち を 思 い 出 し ま し た。 一〇か つ て パ ロ が し も べ ら に 向 か っ て 憤
りょうりやく ちょう じ え い ちょう いえ かんきんじょ い とき
り、わたしと料理役の長とを侍衛 長の家の監禁所にお入れになった時、
かれ いちや ゆめ み い み ゆめ み
一一 わたしも彼も一夜のうちに夢を見、それぞれ意味のある夢を見まし
じ え い ちょう わか
たが、 一二そこに侍衛 長のしもべで、ひとりの若いヘブルびとがわれわ
とも かれ はな かれ ゆめ と あ
れと共にいたので、彼に話したところ、彼はわれわれの夢を解き明かし、
ゆめ と あ かれ と
その夢によって、それぞれ解き明かしをしました。 一三そして彼が解き
創世記

あ しょく かえ かれ き か
明かしたとおりになって、パロはわたしを職に返し、彼を木に掛けられ

164
ました﹂。
ひと よ ひとびと いそ かれ
一四 そ こ で パ ロ は 人 を つ か わ し て ヨ セ フ を 呼 ん だ。人々 は 急 い で 彼 を
ち か ごくや だ きもの き が
地下の獄屋から出した。ヨセフは、ひげをそり、着物を着替えてパロの
い い ゆめ み
もとに行った。 一五パロはヨセフに言った、
﹁わたしは夢を見たが、これ
と あ もの き ゆめ き と
を解き明かす者がない。聞くところによると、あなたは夢を聞いて、解
あ こた い
き明かしができるそうだ﹂。 一六ヨセフはパロに答えて言った、
﹁いいえ、
かみ へいあん つ
わたしではありません。神がパロに平安をお告げになりましょう﹂。 一七
い ゆめ かわ きし た かわ
パロはヨセフに言った、
﹁夢にわたしは川の岸に立っていた。 一八その川
こ ふと うつく とう めうし あ あし く
から肥え太った、 美しい七頭の雌牛が上がってきて葦を食っていた。 一
のち よわ ひじょう みにく ほそ た とう めうし うえ
その後、弱く、非常に醜い、やせ細った他の七頭の雌牛がまた上がっ

ぜんこく みにく み
てきた。わたしはエジプト全国で、このような醜いものをまだ見たこと
みにく めうし はじ とう こ めうし
がない。 二〇ところがそのやせた醜い雌牛が、初めの七頭の肥えた雌牛
く はら はら こと し
を食いつくしたが、 二一腹にはいっても、腹にはいった事が知れず、やは
創世記

はじ みにく め さ
り初めのように醜かった。ここでわたしは目が覚めた。 二二わたしはま

165
ゆめ ぽん くき みの よ ほ で のち
た 夢 を み た。一 本 の 茎 に 七 つ の 実 っ た 良 い 穂 が 出 て き た。 二三そ の 後、
おとろ ひがしかぜ や ほ で ほ
やせ衰えて、東 風に焼けた七つの穂が出てきたが、二四そのやせた穂が、
よ ほ まじゅつ し はな
あの七つの良い穂をのみつくした。わたしは魔術師に話したが、わたし
しめ もの
にそのわけを示しうる者はなかった﹂。
い ゆめ かみ
二五ヨセフはパロに言った、
﹁パロの夢は一つです。神がこれからしよう
しめ とう よ めうし ねん
と す る こ と を パ ロ に 示 さ れ た の で す。 二六七 頭 の 良 い 雌牛 は 七 年 で す。
よ ほ ねん ゆめ つづ あ
七つの良い穂も七年で、夢は一つです。 二七あとに続いて、上がってきた
とう みにく めうし ねん ひがしかぜ や み い ほ
七頭のやせた醜い雌牛は七年で、 東 風に焼けた実の入らない七つの穂
ねん もう あ かみ
は七年のききんです。 二八わたしがパロに申し上げたように、神がこれ
しめ ぜんこく
からしようとすることをパロに示されたのです。 二九エジプト全国に七
ねん だいほうさく のち ねん おこ ほうさく
年の大豊作があり、三〇その後七年のききんが起り、その豊作はみなエジ
くに わす くに ほろ のち く
プトの国で忘れられて、そのききんは国を滅ぼすでしょう。 三一後に来
ひじょう はげ ほうさく くに きおく
るそのききんが、非常に激しいから、その豊作は国のうちで記憶されな
創世記

ど かさ ゆめ み こと かみ
くなるでしょう。 三二パロが二度重ねて夢を見られたのは、この事が神

166
さだ かみ
によって定められ、神がすみやかにこれをされるからです。 三三それゆ
いま かしこ ひと たず だ くに おさ
えパロは今、さとく、かつ賢い人を尋ね出してエジプトの国を治めさせ
くにぢゅう かんとく お ねん ほうさく
なさい。 三四パロはこうして国 中に監督を置き、その七年の豊作のうち
くに さんぶつ ぶん と つづ く よ ねんねん
に、エジプトの国の産物の五分の一を取り、三五続いて来る良い年々のす
しょくりょう かれ あつ こくもつ しょくりょう て まちまち
べての食 糧を彼らに集めさせ、穀物を食 糧として、パロの手で町々に
まも しょくりょう くに のぞ
たくわえ守らせなさい。 三六こうすれば食 糧は、エジプトの国に臨む七
ねん そな くに くに
年のききんに備えて、この国のためにたくわえとなり、この国はききん
ほろ
によって滅びることがないでしょう﹂。
こと けらい め
三七 この事はパロとそのすべての家来たちの目にかなった。 三八そこで
けらい い かみ れい ひと
パロは家来たちに言った、﹁われわれは神の霊をもつこのような人を、ほ
み え い かみ
かに見いだし得ようか﹂。 三九またパロはヨセフに言った、﹁神がこれを
みな しめ かしこ もの
皆あなたに示された。あなたのようにさとく賢い者はない。 四〇あなた
いえ おさ たみ ことば したが
はわたしの家を治めてください。わたしの民はみなあなたの言葉に従
創世記

おう くらい
う で し ょ う。わ た し は た だ 王 の 位 で だ け あ な た に ま さ る﹂。 四一パ ロ は

167
さら い ぜんこく
更 に ヨ セ フ に 言 っ た、﹁わ た し は あ な た を エ ジ プ ト 全国 の つ か さ と す
ゆびわ て て あ ま
る﹂。 四二そしてパロは指輪を手からはずして、ヨセフの手にはめ、亜麻
ぬの いふく き きん くさり じぶん だい くるま かれ の
布の衣服を着せ、金の鎖をくびにかけ、 四三自分の第二の車に彼を乗せ、
まえ よ かれ ぜんこく
﹁ひざまずけ﹂とその前に呼ばわらせ、こうして彼をエジプト全国のつか

さとした。 四四ついでパロはヨセフに言った、
﹁わたしはパロである。あ
ゆる ぜんこく てあし あ
なたの許しがなければエジプト全国で、だれも手足を上げることはでき
な よ さいし
ない﹂。 四五パロはヨセフの名をザフナテ・パネアと呼び、オンの祭司ポ
むすめ つま かれ あた くに
テペラの娘 アセナテを妻として彼に与えた。ヨセフはエジプトの国を
めぐ
巡った。
おう まえ た とき さい
四六ヨセフがエジプトの王パロの前に立った時は三十歳であった。ヨセ
まえ で ぜんこく めぐ ねん
フはパロの前を出て、エジプト全国をあまねく巡った。 四七さて七年の
ほうさく ち ゆた もの さん くに
豊作のうちに地は豊かに物を産した。 四八そこでヨセフはエジプトの国
ねんかん しょくりょう あつ しょくりょう まちまち おさ
にできたその七年間の食 糧をことごとく集め、その食 糧を町々に納め
創世記

まち しゅうい はたけ しょくりょう まち なか おさ


さ せ た。す な わ ち 町 の 周囲 に あ る 畑 の 食 糧 を そ の 町 の 中 に 納 め さ せ

168
こくもつ うみ すな ひじょう おお はか
た。 四九ヨセフは穀物を海の砂のように、非常に多くたくわえ、量りきれ
はか
なくなったので、ついに量ることをやめた。
とし く まえ こ うま
五〇ききんの年の来る前にヨセフにふたりの子が生れた。これらはオン
さいし むすめ う ちょうし な
の祭司ポテペラの娘 アセナテが産んだのである。 五一ヨセフは長子の名
な い かみ くなん ちち いえ
をマナセと名づけて言った、﹁神がわたしにすべての苦難と父の家のす
こと わす つぎ こ な な
べての事を忘れさせられた﹂。 五二また次の子の名をエフライムと名づ
い かみ なや ち ゆた
けて言った、﹁神がわたしを悩みの地で豊かにせられた﹂。
くに ねん ほうさく おわ い
五三エジプトの国にあった七年の豊作が終り、 五四ヨセフの言ったように
ねん はじ くに
七年のききんが始まった。そのききんはすべての国にあったが、エジプ
ぜんこく しょくもつ ぜんこく う とき たみ
ト全国には食 物があった。 五五やがてエジプト全国が飢えた時、民はパ
しょくもつ さけ もと い
ロ に 食 物 を 叫 び 求 め た。そ こ で パ ロ は す べ て の エ ジ プ ト び と に 言 っ
い かれ い ち ぜんめん
た、
﹁ヨセフのもとに行き、彼の言うようにせよ﹂。 五六ききんが地の全面
こくぐら ひら う
にあったので、ヨセフはすべての穀倉を開いて、エジプトびとに売った。
創世記

くに はげ ぜん ち はげ
ききんはますますエジプトの国に激しくなった。 五七ききんが全地に激

169
しょこく ひとびと こくもつ か
しくなったので、諸国の人々がエジプトのヨセフのもとに穀物を買うた
めにきた。
第四二章
こくもつ し い
一ヤコブはエジプトに穀物があると知って、むすこたちに言った、
﹁あな
かお み あ い
たがたはなぜ顔を見合わせているのですか﹂。 二また言った、
﹁エジプト
こくもつ くだ い
に穀物があるということだが、あなたがたはそこへ下って行って、そこ
こくもつ か
から、われわれのため穀物を買ってきなさい。そうすれば、われわれは
い し まぬか にん きょうだい
生きながらえて、死を免れるであろう﹂。 三そこでヨセフの十人の兄 弟
こくもつ か くだ
は 穀物 を 買 う た め に エ ジ プ ト へ 下 っ た。 四し か し、ヤ コ ブ は ヨ セ フ の
おとうと きょうだい いっしょ かれ わざわい あ
弟 ベ ニ ヤ ミ ン を 兄 弟 た ち と 一緒 に や ら な か っ た。彼 が 災 に 会 う の を
おそ こ こくもつ か
恐 れ た か ら で あ る。 五こ う し て イ ス ラ エ ル の 子 ら は 穀物 を 買 お う と
創世記

ひとびと ま ち
人々に交じってやってきた。カナンの地にききんがあったからである。

170
くに くに たみ こくもつ う
六ときにヨセフは国のつかさであって、国のすべての民に穀物を売るこ
きょうだい ち ふ かれ はい
とをしていた。ヨセフの兄 弟たちはきて、地にひれ伏し、彼を拝した。
きょうだい み し かれ む し
七ヨセフは兄 弟たちを見て、それと知ったが、彼らに向かっては知らぬ
もの あらあら かた かれ い
者のようにし、荒々しく語った。すなわち彼らに言った、﹁あなたがたは
かれ こた しょくりょう か ち
どこからきたのか﹂。彼らは答えた、﹁食 糧を買うためにカナンの地か
きょうだい し かれ
らきました﹂。 八ヨセフは、兄 弟たちであるのを知っていたが、彼らはヨ
し かれ み ゆめ おも
セ フ と は 知 ら な か っ た。 九ヨ セ フ は か つ て 彼 ら に つ い て 見 た 夢 を 思 い
だ かれ い まわ もの くに
出して、彼らに言った、
﹁あなたがたは回し者で、この国のすきをうかが
かれ こた しゅ
うためにきたのです﹂。 一〇彼らはヨセフに答えた、
﹁いいえ、わが主よ、
しょくりょう か みな
しもべらはただ食 糧を買うためにきたのです。 一一われわれは皆、ひと
ひと こ しんじつ もの まわ もの
りの人の子で、真実な者です。しもべらは回し者ではありません﹂。 一二
かれ い くに
ヨセフは彼らに言った、﹁いや、あなたがたはこの国のすきをうかがうた
かれ い にんきょうだい
めにきたのです﹂。 一三彼らは言った、
﹁しもべらは十二人 兄 弟で、カナ
創世記

ち ひと こ すえ おとうと いま ちち いっしょ
ンの地にいるひとりの人の子です。末の弟は今、父と一緒にいますが、

171
た かれ い
他のひとりはいなくなりました﹂。 一四ヨセフは彼らに言った、﹁わたし
い まわ もの
が言ったとおり、あなたがたは回し者です。 一五あなたがたをこうして
ちか すえ おとうと
ためしてみよう。パロのいのちにかけて誓います。末の弟がここにこ

なければ、あなたがたはここを出ることはできません。 一六あなたがた
おとうと つ
のひとりをやって弟を連れてこさせなさい。それまであなたがたをつ
せいじつ ことば
ないでおいて、あなたがたに誠実があるかどうか、あなたがたの言葉を
ちか たし
ためしてみよう。パロのいのちにかけて誓います。あなたがたは確か
まわ もの かれ いっしょ か あいだ かんきんじょ い
に回し者です﹂。 一七ヨセフは彼らをみな一緒に三日の間、監禁所に入れ
た。
か め かれ い たす
一八 三日目にヨセフは彼らに言った、
﹁こうすればあなたがたは助かるで
かみ おそ しんじつ もの
し ょ う。わ た し は 神 を 恐 れ ま す。 一九も し あ な た が た が 真実 な 者 な ら、
きょうだい かんきんじょ のこ こくもつ
兄 弟のひとりをあなたがたのいる監禁所に残し、あなたがたは穀物を
たずさ い かぞく う すく すえ おとうと
携えて行って、家族の飢えを救いなさい。 二〇そして末の弟をわたしの
創世記

つ ことば
もとに連れてきなさい。そうすればあなたがたの言葉のほんとうであ

172
し まぬか かれ
ることがわかって、死を免れるでしょう﹂。彼らはそのようにした。 二一
かれ たがい い たし おとうと こと つみ かれ
彼らは互に言った、﹁確かにわれわれは弟の事で罪がある。彼がしきり
ねが とき こころ くる み き い
に願った時、その心の苦しみを見ながら、われわれは聞き入れなかった。
くる あ かれ こた い
それでこの苦しみに会うのだ﹂。 二二ルベンが彼らに答えて言った、﹁わ
こども つみ おか い
たしはあなたがたに、この子供に罪を犯すなと言ったではないか。それ
き い かれ ち むく
にもかかわらず、あなたがたは聞き入れなかった。それで彼の血の報い
う かれ き し
を受けるのです﹂。 二三彼らはヨセフが聞きわけているのを知らなかっ
そうご あいだ つうやくしゃ かれ はな
た。相互 の 間 に 通訳者 が い た か ら で あ る。 二 四ヨ セ フ は 彼 ら を 離 れ て
い な かえ かれ かた とら
行って泣き、また帰ってきて彼らと語り、そのひとりシメオンを捕えて、
かれ め まえ しば ひとびと めい かれ ふくろ
彼らの目の前で縛った。 二五そしてヨセフは人々に命じて、彼らの袋に
こくもつ み ぎん ふくろ かえ どうちゅう しょくりょう あた
穀物を満たし、めいめいの銀を袋に返し、 道 中の食 料を与えさせた。
かれ
ヨセフはこのように彼らにした。
かれ こくもつ お さ やど
二六 彼らは穀物をろばに負わせてそこを去った。 二七そのひとりが宿で、
創世記

かいば ふくろ み ふくろ くち じぶん ぎん


ろばに飼葉をやるため袋をあけて見ると、 袋の口に自分の銀があった。

173
かれ きょうだい い ぎん かえ み
二八 彼は兄 弟たちに言った、
﹁わたしの銀は返してある。しかも見よ、そ
ふくろ なか かれ ひじょう おどろ たがい ふる い
れ は 袋 の 中 に あ る﹂。そ こ で 彼 ら は 非常 に 驚 き、 互 に 震 え な が ら 言 っ
かみ なにごと
た、﹁神がわれわれにされたこのことは何事だろう﹂。
かれ ち ちち かえ み
二九 こうして彼らはカナンの地にいる父ヤコブのもとに帰り、その身に
た こと つ い くに きみ
起った事をことごとく告げて言った、 三〇﹁あの国の君は、われわれに
あらあら かた くに まわ もの い かれ
荒々しく語り、国をうかがう回し者だと言いました。 三一われわれは彼
こた しんじつ もの まわ もの
に答えました、
﹃われわれは真実な者であって回し者ではない。 三二われ
にんきょうだい おな ちち こ すえ おとうと
われは十二人 兄 弟で、同じ父の子である。ひとりはいなくなり、末の弟
いまちち とも ち くに きみ ひと
は 今父 と 共 に カ ナ ン の 地 に い る﹄。 三三そ の 国 の 君 で あ る そ の 人 は わ れ
い しんじつ もの
われに言いました、﹃わたしはこうしてあなたがたの真実な者であるの
し きょうだい のこ こくもつ
を知ろう。あなたがたは兄 弟のひとりをわたしのもとに残し、穀物を
たずさ い かぞく う すく すえ おとうと
携えて行って、家族の飢えを救いなさい。 三四そして末の弟をわたしの
つ まわ もの しんじつ
もとに連れてきなさい。そうすればあなたがたが回し者ではなく、真実
創世記

もの し きょうだい かえ くに
な者であるのを知って、あなたがたの兄 弟を返し、この国であなたがた

174
とりひき
に取引させましょう﹄﹂。
かれ ふくろ だ み かねつつ ふくろ なか
三五彼らが袋のものを出して見ると、めいめいの金包みが袋の中にあっ
かれ ちち かねつつ み おそ ちち かれ い
たので、彼らも父も金包みを見て恐れた。 三六父ヤコブは彼らに言った、
こ うしな
﹁あなたがたはわたしに子を失わせた。ヨセフはいなくなり、シメオン
こんど と さ
もいなくなった。今度はベニヤミンをも取り去る。これらはみなわた
み く ちち い
しの身にふりかかって来るのだ﹂。 三七ルベンは父に言った、﹁もしわた
かれ つ かえ こ
しが彼をあなたのもとに連れて帰らなかったら、わたしのふたりの子を
ころ かれ て
殺してください。ただ彼をわたしの手にまかせてください。わたしは
かれ つ かえ い
きっと、あなたのもとに彼を連れて帰ります﹂。 三八ヤコブは言った、
﹁わ
こ とも くだ い かれ あに し
たしの子はあなたがたと共に下って行ってはならない。彼の兄は死に、
かれ のこ い みち かれ
ただひとり彼が残っているのだから。もしあなたがたの行く道で彼が
わざわい あ かな よ み くだ
災に会えば、あなたがたは、しらがのわたしを悲しんで陰府に下らせる
であろう﹂。
創世記

175
第四三章
ち はげ かれ たずさ こくもつ
一ききんはその地に激しかった。 二彼らがエジプトから携えてきた穀物
く つく とき ちち かれ い い すこ
を食い尽した時、父は彼らに言った、
﹁また行って、われわれのために少
しょくりょう か ちち こた い ひと
しの食 糧を買ってきなさい﹂。 三ユダは父に答えて言った、﹁あの人は
いまし おとうと いっしょ かお み
われわれをきびしく戒めて、 弟が一緒でなければ、わたしの顔を見ては
い おとうと いっしょ
な ら な い と 言 い ま し た。 四も し あ な た が 弟 を わ れ わ れ と 一緒 に や っ て
くだ い しょくりょう か
くださるなら、われわれは下って行って、あなたのために食 糧を買って
かれ くだ い
きましょう。 五しかし、もし彼をやられないなら、われわれは下って行
ひと おとうと いっしょ かお み
きません。あの人がわれわれに、 弟が一緒でなければわたしの顔を見
い い
てはならないと言ったのですから﹂。 六イスラエルは言った、
﹁なぜ、も
おとうと ひと い くる かれ
うひとりの弟があるとあの人に言って、わたしを苦しめるのか﹂。 七彼
い ひと いちぞく と ちち
らは言った、﹁あの人がわれわれと一族とのことを問いただして、父はま
創世記

い おとうと い と
だ生きているか、もうひとりの弟があるかと言ったので、問われるまま

176
こた ひと おとうと つ い し
に答えましたが、その人が、 弟を連れてこいと言おうとは、どうして知
ちち い こ
ることができたでしょう﹂。 八ユダは父イスラエルに言った、
﹁あの子を
いっしょ た い
わたしと一緒にやってくだされば、われわれは立って行きましょう。そ
こども い し まぬか
してわれわれもあなたも、われわれの子供らも生きながらえ、死を免れ
かれ み う あ て かれ もと
ま し ょ う。 九わ た し が 彼 の 身 を 請 け 合 い ま す。わ た し の 手 か ら 彼 を 求
かれ つ かえ まえ
めなさい。もしわたしが彼をあなたのもとに連れ帰って、あなたの前に
お たい えいきゅう つみ お
置かなかったら、わたしはあなたに対して永 久に罪を負いましょう。 一
いま ど い
〇もしわれわれがこんなにためらわなかったら、今ごろは二度も行って
きたでしょう﹂。
ちち かれ い くに
一一 父イスラエルは彼らに言った、﹁それではこうしなさい。この国の
めいさん うつわ い たずさ くだ ひと おく もの すこ
名産を器に入れ、 携え下ってその人に贈り物にしなさい。すなわち少
にゅうこう すこ みつ こうりょう
しの乳 香、少しの蜜、 香 料、もつやく、ふすだしう、あめんどう。 一二
うえ ばいがく ぎん て も い ふくろ くち かえ
そしてその上に、倍額の銀を手に持って行きなさい。また袋の口に返し
創世記

ぎん も い かえ あやま
てあった銀は持って行って返しなさい。たぶんそれは誤りであったの

177
おとうと つ た ひと ところ い
でしょう。 一三 弟も連れ、立って、またその人の所へ行きなさい。 一四ど
ぜんのう かみ ひと まえ
う か 全能 の 神 が そ の 人 の 前 で あ な た が た を あ わ れ み、も う ひ と り の
きょうだい かえ こ
兄 弟とベニヤミンとを、返させてくださるように。もしわたしが子を
うしな うしな ひとびと
失わなければならないのなら、 失 ってもよい﹂。 一五そこでその人々は
おく もの と ばいがく ぎん たずさ つ た
贈り物を取り、また倍額の銀を携え、ベニヤミンを連れ、立ってエジプ
くだ まえ た
トへ下り、ヨセフの前に立った。
かれ とも み いえ い
一六ヨセフはベニヤミンが彼らと共にいるのを見て、家づかさに言った、
ひとびと いえ つ い けもの
﹁この人々を家に連れて行き、 獣をほふって、したくするように。この
ひとびと ひる いっしょ しょくじ ひと い
人々は昼、わたしと一緒に食事をします﹂。 一七その人はヨセフの言った
ひとびと いえ つ い
ようにして、この人々をヨセフの家へ連れて行った。 一八ところがこの
ひとびと いえ つ い おそ い はじ とき ふくろ
人々はヨセフの家へ連れて行かれたので恐れて言った、﹁初めの時に袋
かえ ぎん ひ い
に返してあったあの銀のゆえに、われわれを引き入れたのです。そして
おそ せ とら どれい うば
われわれを襲い、攻め、捕えて奴隷とし、われわれのろばをも奪うので
創世記

かれ いえ ちか いえ いりぐち い
す﹂。 一九彼らはヨセフの家づかさに近づいて、家の入口で、言った、 二〇

178
しゅ さいしょ しょくりょう か くだ
﹁ああ、わが主よ、われわれは最初、 食 糧を買うために下ってきたので
やど い ふくろ み ぎん ふくろ くち
す。 二一ところが宿に行って袋をあけて見ると、めいめいの銀は袋の口
ぎん おも もと も
にあって、銀の重さは元のままでした。それでわれわれはそれを持って
まい しょくりょう か ぎん も くだ
参りました。 二二そして食 糧を買うために、ほかの銀をも持って下って
ぎん ふくろ い もの わか
きました。われわれの銀を袋に入れた者が、だれであるかは分りませ
かれ い あんしん おそ たから
ん﹂。 二三彼は言った、﹁安心しなさい。恐れてはいけません。その宝は
かみ ちち かみ ふくろ い
あなたがたの神、あなたがたの父の神が、あなたがたの袋に入れてあな
たま ぎん う と
た が た に 賜 わ っ た の で す。あ な た が た の 銀 は わ た し が 受 け 取 り ま し
かれ かれ ところ つ
た﹂。そ し て 彼 は シ メ オ ン を 彼 ら の 所 へ 連 れ て き た。 二四こ う し て そ の
ひと ひとびと いえ みちび みず あた あし あら
人はこの人々をヨセフの家へ導き、水を与えて足を洗わせ、また、ろば
かいば あた かれ ところ しょくじ き おく もの
に飼葉を与えた。 二五彼らはその所で食事をするのだと聞き、贈り物を
ととの ひる く ま
整えて、昼にヨセフの来るのを待った。
いえ かえ かれ いえ たずさ おく
二六さてヨセフが家に帰ってきたので、彼らはその家に携えてきた贈り
創世記

もの ち ふ かれ はい かれ あんぴ
物をヨセフにささげ、地に伏して、彼を拝した。 二七ヨセフは彼らの安否

179
と い ちち はな
を問うて言った、﹁あなたがたの父、あなたがたがさきに話していたその
ろうじん ぶ じ い かれ こた
老人 は 無事 で す か。な お 生 き な が ら え て お ら れ ま す か﹂。 二八彼 ら は 答
ちち ぶ じ い
えた、
﹁あなたのしもべ、われわれの父は無事で、なお生きながらえてい
かれ あたま はい め おな
ます﹂。そして彼らは、頭をさげて拝した。 二九ヨセフは目をあげて同じ
はは こ おとうと み い まえ
母の子である弟 ベニヤミンを見て言った、﹁これはあなたがたが前にわ
はな すえ おとうと い こ かみ
たしに話した末の弟ですか﹂。また言った、
﹁わが子よ、どうか神があな
めぐ おとうと こころ いそ
たを恵まれるように﹂。 三〇ヨセフは弟なつかしさに心がせまり、急いで
な ば しょ な かれ かお あら
泣く場所をたずね、へやにはいって泣いた。 三一やがて彼は顔を洗って
で じぶん せい い しょくじ
出てきた。そして自分を制して言った、﹁食事にしよう﹂。 三二そこでヨ
かれ かれ ばいしょく
セフはヨセフ、彼らは彼ら、 陪 食のエジプトびとはエジプトびと、と
べつべつ せき つ とも しょくじ
別々に席に着いた。エジプトびとはヘブルびとと共に食事することが

できなかった。それはエジプトびとの忌むところであったからである。
かれ まえ ちょうし ちょうし おとうとおとうと
三三 こうして彼らはヨセフの前に、長子は長子として、 弟は弟としてす
創世記

ひとびと たがい おどろ まえ


わらせられたので、その人々は互に驚いた。 三四またヨセフの前から、め

180
ぶん はこ ぶん た もの ぶん
いめいの分が運ばれたが、ベニヤミンの分は他のいずれの者の分よりも
ばいおお かれ の とも たの
五倍多かった。こうして彼らは飲み、ヨセフと共に楽しんだ。
第四四章
いえ めい い ひとびと ふくろ はこ
さてヨセフは家づかさに命じて言った、
一 ﹁この人々の袋に、運べるだけ
おお しょくりょう み ぎん ふくろ くち い
多くの食 糧を満たし、めいめいの銀を袋の口に入れておきなさい。 二
さかずき ぎん さかずき としした もの ふくろ くち こくもつ だいきん とも
またわたしの杯、銀の杯をあの年下の者の袋の口に、穀物の代金と共に
い いえ ことば よ
入れておきなさい﹂。家づかさはヨセフの言葉のとおりにした。 三夜が
あ ひとびと おく だ まち で とお
明けると、その人々と、ろばとは送り出されたが、 四町を出て、まだ遠
い いえ い た ひとびと
くへ行かないうちに、ヨセフは家づかさに言った、
﹁立って、あの人々の
お お かれ い
あとを追いなさい。追いついて、彼らに言いなさい、﹃あなたがたはなぜ
あく ぜん むく ぎん さかずき ぬす
悪をもって善に報いるのですか。なぜわたしの銀の杯を盗んだのです
創世記

しゅじん の とき つか うらな もち
か。 五これはわたしの主人が飲む時に使い、またいつも占いに用いるも

181
こと わる
のではありませんか。あなたがたのした事は悪いことです﹄﹂。
いえ かれ お ことば かれ つ
家づかさが彼らに追いついて、これらの言葉を彼らに告げたとき、 七

かれ い しゅ い
彼らは言った、﹁わが主は、どうしてそのようなことを言われるのです
けっ ふくろ くち み
か。しもべらは決してそのようなことはいたしません。 八 袋の口で見
ぎん ち ところ も かえ
つけた銀でさえ、カナンの地からあなたの所に持ち帰ったほどです。ど
ご しゅじん いえ ぎん きん ぬす
うして、われわれは御主人の家から銀や金を盗みましょう。 九しもべら
ところ み もの し
のうちのだれの所でそれが見つかっても、その者は死に、またわれわれ
しゅ どれい いえ い
はわが主の奴隷となりましょう﹂。 一〇家づかさは言った、﹁それではあ
ことば さかずき み もの どれい
なたがたの言葉のようにしよう。 杯の見つかった者はわたしの奴隷と
もの むざい かれ
ならなければならない。ほかの者は無罪です﹂。 一一そこで彼らは、めい
いそ ふくろ ち ふくろ ひら いえ
めい急いで袋を地におろし、ひとりひとりその袋を開いた。 一二家づか
としうえ さが はじ としした おわ さかずき ふくろ なか
さは年上から捜し始めて年下に終ったが、 杯はベニヤミンの袋の中に
かれ いふく さ に お まち
あった。 一三そこで彼らは衣服を裂き、おのおの、ろばに荷を負わせて町
創世記

ひ かえ
に引き返した。

182
きょうだい いえ
一四 ユダと兄 弟たちとは、ヨセフの家にはいったが、ヨセフがなおそこ
かれ まえ ち ふ かれ い
にいたので、彼らはその前で地にひれ伏した。 一五ヨセフは彼らに言っ
なにごと ひと かなら
た、
﹁あなたがたのこのしわざは何事ですか。わたしのような人は、 必
うらな あ し い
ず占い当てることを知らないのですか﹂。 一六ユダは言った、﹁われわれ
しゅ なに い なに の え み
はわが主に何を言い、何を述べ得ましょう。どうしてわれわれは身の
けっぱく え かみ つみ
潔白をあらわし得ましょう。神がしもべらの罪をあばかれました。わ
さかずき も もの とも しゅ どれい
れわれと、 杯を持っていた者とは共にわが主の奴隷となりましょう﹂。
い けっ さかずき
一七 ヨセフは言った、﹁わたしは決してそのようなことはしない。 杯を
も もの どれい もの
持っている者だけがわたしの奴隷とならなければならない。ほかの者
あんぜん ちち のぼ い
は安全に父のもとへ上って行きなさい﹂。
とき かれ ちか い しゅ しゅ
一八 この時ユダは彼に近づいて言った、
﹁ああ、わが主よ、どうぞわが主
みみ い
の 耳 に ひ と こ と 言 わ せ て く だ さ い。し も べ を お こ ら な い で く だ さ い。
しゅ たず ちち
あなたはパロのようなかたです。 一九わが主はしもべらに尋ねて、
﹃父が
創世記

おとうと い しゅ い
あるか、また弟があるか﹄と言われたので、 二〇われわれはわが主に言い

183
ろうれい ちち としよ こ おとうと
ました、
﹃われわれには老齢の父があり、また年寄り子の弟があります。
あに し おな はは こ のこ
その兄は死んで、同じ母の子で残っているのは、ただこれだけですから
ちち あい とき い
父はこれを愛しています﹄。 二一その時あなたはしもべらに言われまし
もの ところ つ め かれ み
た、﹃その者をわたしの所へ連れてきなさい。わたしはこの目で彼を見
しゅ い こ とも ちち はな
よう﹄。 二二われわれはわが主に言いました。﹃その子供は父を離れるこ
ちち はな ちち し
とができません。もし父を離れたら父は死ぬでしょう﹄。 二三しかし、あ
い すえ おとうと いっしょ くだ
なたはしもべらに言われました、﹃末の弟が一緒に下ってこなければ、お
ふたた かお み
まえたちは再びわたしの顔を見ることはできない﹄。 二四それであなた
ちち のぼ しゅ ことば かれ つ
のしもべである父のもとに上って、わが主の言葉を彼に告げました。 二五
ちち ふたた い すこ
ところで、父が﹃おまえたちは再び行って、われわれのために少しの
しょくりょう か い い
食 糧を買ってくるように﹄と言ったので、 二六われわれは言いました、
くだ い すえ おとうと いっしょ い
﹃われわれは下って行けません。もし末の弟が一緒であれば行きましょ
すえ おとうと いっしょ ひと かお み
う。末の弟が一緒でなければ、あの人の顔を見ることができません﹄。 二
創世記

ちち い し
七あなたのしもべである父は言いました、﹃おまえたちの知っていると

184
つま こ う そと で
おり、妻はわたしにふたりの子を産んだ。 二八ひとりは外へ出たが、きっ
さ ころ おも いま かれ み
と裂き殺されたのだと思う。わたしは今になっても彼を見ない。 二九も
こ と い かれ わざわい あ
しおまえたちがこの子をもわたしから取って行って、彼が災に会えば、
かな よ み くだ
おまえたちは、しらがのわたしを悲しんで陰府に下らせるであろう﹄。 三
ちち かえ い
〇わたしがあなたのしもべである父のもとに帰って行くとき、もしこの
こども いっしょ ちち たましい こども たましい むす
子供が一緒にいなかったら、どうなるでしょう。父の魂は子供の魂に結
こども いっしょ み
ば れ て い る の で す。 三 一こ の 子供 が わ れ わ れ と 一緒 に い な い の を 見 た
ちち し
ら、父は死ぬでしょう。そうすればしもべらは、あなたのしもべである
ちち かな よ み くだ
しらがの父を悲しんで陰府に下らせることになるでしょう。 三二しもべ
ちち こども み う あ こ
は父にこの子供の身を請け合って﹃もしわたしがこの子をあなたのもと
つ かえ ちち たい えいきゅう つみ お
に連れ帰らなかったら、わたしは父に対して永 久に罪を負いましょう﹄
い こども かわ しゅ どれい
と言ったのです。 三三どうか、しもべをこの子供の代りに、わが主の奴隷
こども きょうだい いっしょ のぼ い
としてとどまらせ、この子供を兄 弟たちと一緒に上り行かせてくださ
創世記

こども つ ちち のぼ い
い、三四この子供を連れずに、どうしてわたしは父のもとに上り行くこと

185
ちち わざわい あ み しの
ができましょう。父が災に会うのを見るに忍びません﹂。
第四五章
た ひと まえ じぶん せい
一そこでヨセフはそばに立っているすべての人の前で、自分を制しきれ
ひと みな で よ
なくなったので、﹁人は皆ここから出てください﹂と呼ばわった。それゆ
きょうだい じぶん あ とき かれ
えヨセフが兄 弟たちに自分のことを明かした時、ひとりも彼のそばに
た もの こえ な
立 っ て い る 者 は な か っ た。 二ヨ セ フ は 声 を あ げ て 泣 い た。エ ジ プ ト び
き いえ き きょうだい い
とはこれを聞き、パロの家もこれを聞いた。 三ヨセフは兄 弟たちに言っ
ちち い きょうだい
た、﹁わたしはヨセフです。父はまだ生きながらえていますか﹂。 兄 弟
こた かれ おどろ おそ
たちは答えることができなかった。彼らは驚き恐れたからである。
きょうだい い ちかよ かれ
四ヨセフは兄 弟たちに言った、﹁わたしに近寄ってください﹂。彼らが
ちかよ かれ い おとうと
近寄ったので彼は言った、﹁わたしはあなたがたの弟 ヨセフです。あな
創世記

う もの う
た が た が エ ジ プ ト に 売 っ た 者 で す。 五し か し わ た し を こ こ に 売 っ た の

186
なげ くや かみ いのち すく
を嘆くことも、悔むこともいりません。神は命を救うために、あなたが
ねん あいだ くにぢゅう
たよりさきにわたしをつかわされたのです。 六この二年の間、国 中にき
ねん あいだ たがや か い
きんがあったが、なお五年の間は耕すことも刈り入れることもないで
かみ ち のこ おお すくい
しょう。 七神は、あなたがたのすえを地に残すため、また大いなる救を
いのち たす
もってあなたがたの命を助けるために、わたしをあなたがたよりさきに
つ か わ さ れ た の で す。 八そ れ ゆ え わ た し を こ こ に つ か わ し た の は あ な
かみ かみ ちち ぜんか しゅ
たがたではなく、神です。神はわたしをパロの父とし、その全家の主と
ぜんこく ちち
し、またエジプト全国のつかさとされました。 九あなたがたは父のもと
いそ のぼ い こ い かみ
に急ぎ上って言いなさい、﹃あなたの子ヨセフが、こう言いました。神が
ぜんこく しゅ ところ
わたしをエジプト全国の主とされたから、ためらわずにわたしの所へ
くだ ち す こ
下ってきなさい。 一〇あなたはゴセンの地に住み、あなたも、あなたの子
まご ひつじ うし た ちか
らも、孫たちも、 羊も牛も、その他のものもみな、わたしの近くにおら
ねん かぞく
せます。 一一ききんはなお五年つづきますから、あなたも、家族も、その
創世記

た こま やしな
他のものも、みな困らないように、わたしはそこで養いましょう﹄。 一二

187
おとうと め み くち
あなたがたと弟 ベニヤミンが目に見るとおり、あなたがたに口ずから
かた
語っているのはこのわたしです。 一三あなたがたはエジプトでの、わた
さか み こと ちち
しのいっさいの栄えと、あなたがたが見るいっさいの事をわたしの父に
つ いそ ちち つ くだ
告げ、急いでわたしの父をここへ連れ下りなさい﹂。 一四そしてヨセフは
おとうと だ な かれ だ な
弟 ベニヤミンのくびを抱いて泣き、ベニヤミンも彼のくびを抱いて泣
きょうだい くち かれ だ な
いた。 一五またヨセフはすべての兄 弟たちに口づけし、彼らを抱いて泣
のち きょうだい かれ かた
いた。そして後、 兄 弟たちは彼と語った。
とき きょうだい い いえ きこ
一六 時に、
﹁ヨセフの兄 弟たちがきた﹂と言ううわさがパロの家に聞えた
けらい よろこ い
の で、パ ロ と そ の 家来 た ち と は 喜 ん だ。 一 七パ ロ は ヨ セ フ に 言 っ た、
きょうだい い けもの に お
﹁兄 弟たちに言いなさい、﹃あなたがたは、こうしなさい。 獣に荷を負わ
ち い ちち かぞく つ
せてカナンの地へ行き、 一八父と家族とを連れてわたしのもとへきなさ
ち よ もの あた
い。わたしはあなたがたに、エジプトの地の良い物を与えます。あなた
くに もっと よ た かれ めい
がたは、この国の最も良いものを食べるでしょう﹄。 一九また彼らに命じ
創世記

おさ ご つま
なさい、﹃あなたがたは、こうしなさい。幼な子たちと妻たちのためにエ

188
ち くるま い ちち つ かざい こころ
ジプトの地から車をもって行き、父を連れてきなさい。 二〇家財に心を
ひ ぜんこく よ もの
引かれてはなりません。エジプト全国の良い物は、あなたがたのものだ
からです﹄﹂。
こ めい したが
二一 イ ス ラ エ ル の 子 ら は そ の よ う に し た。ヨ セ フ は パ ロ の 命 に 従 っ て
かれ くるま あた とちゅう しょくりょう あた はれぎ
彼らに車を与え、また途中の食 料をも与えた。 二二まためいめいに晴着
あた ぎん はれぎ ちゃく あた
を与えたが、ベニヤミンには銀三百シケルと晴着五 着とを与えた。 二三
かれ ちち つぎ おく よ もの
また彼は父に次のようなものを贈った。すなわちエジプトの良い物を
お とう こくもつ およ ちち どうちゅう しょくりょう お め
負わせたろば十頭と、穀物、パン及び父の道 中の食 料を負わせた雌ろ
とう きょうだい おく さ かれ い
ば十頭。 二四こうしてヨセフは兄 弟たちを送り去らせ、彼らに言った、
とちゅう あらそ かれ のぼ
﹁途中で争 ってはなりません﹂。 二五彼らはエジプトから上ってカナンの
ち い ちち い かれ い い
地に入り、父ヤコブのもとへ行って、 二六彼に言った、
﹁ヨセフはなお生
ぜんこく き とお かれ
きていてエジプト全国のつかさです﹂。ヤコブは気が遠くなった。彼ら
い しん かれ
の言うことが信じられなかったからである。 二七そこで彼らはヨセフが
創世記

かた ことば のこ かれ つ ちち じぶん の
語った言葉を残らず彼に告げた。父ヤコブはヨセフが自分を乗せるた

189
おく くるま み げんき い まんぞく
めに送った車を見て元気づいた。 二八そしてイスラエルは言った、
﹁満足
こ い し まえ い かれ み
だ。わが子ヨセフがまだ生きている。わたしは死ぬ前に行って彼を見
よう﹂。
第四六章
も もの たずさ たびだ
一イスラエルはその持ち物をことごとく携えて旅立ち、ベエルシバに
い ちち かみ ぎせい とき かみ よ まぼろし
行って、父イサクの神に犠牲をささげた。 二この時、神は夜の幻のうち
かた い かれ い
にイスラエルに語って言われた、﹁ヤコブよ、ヤコブよ﹂。彼は言った、
かみ い かみ ちち かみ
﹁ここにいます﹂。 三神は言われた、﹁わたしは神、あなたの父の神であ
くだ おそ
る。エジプトに下るのを恐れてはならない。わたしはあそこであなた
おお こくみん いっしょ くだ
を大いなる国民にする。 四わたしはあなたと一緒にエジプトに下り、ま
かなら みちび のぼ て め と
た必ずあなたを導き上るであろう。ヨセフが手ずからあなたの目を閉
創世記


じるであろう﹂。 五そしてヤコブはベエルシバを立った。イスラエルの

190
こ の おく くるま ちち おさ こ
子らはヤコブを乗せるためにパロの送った車に、父ヤコブと幼な子たち
つま の かちく ち え ざいさん たずさ
と妻たちを乗せ、 六またその家畜とカナンの地で得た財産を携え、ヤコ
しそん みな い
ブ と そ の 子孫 は 皆 と も に エ ジ プ ト へ 行 っ た。 七こ う し て ヤ コ ブ は そ の
こ まご むすめ まごむすめ しそん つ い
子と、孫および娘と孫 娘などその子孫をみな連れて、エジプトへ行っ
た。
こ い もの な つぎ
八イ ス ラ エ ル の 子 ら で エ ジ プ ト へ 行 っ た 者 の 名 は 次 の と お り で あ る。
こ ちょうし
すなわちヤコブとその子らであるが、ヤコブの長子はルベン。 九ルベン
こ こ
の子らはハノク、パル、ヘヅロン、カルミ。 一〇シメオンの子らはエムエ
およ おんな う こ
ル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ゾハル及びカナンの女の産んだ子シャウ
こ こ
ル。 一一レビの子らはゲルション、コハテ、メラリ。 一二ユダの子らはエ
ち し
ル、オナン、シラ、ペレヅ、ゼラ。エルとオナンはカナンの地で死んだ。
こ こ
ペレヅの子らはヘヅロンとハムル。 一三イッサカルの子らはトラ、プワ、

ヨブ、シムロン。 一四ゼブルンの子らはセレデ、エロン、ヤリエル。 一五こ
創世記

むすめ う こ
れらと娘 デナとはレアがパダンアラムでヤコブに産んだ子らである。

191
こ むすめ あ にん こ
そ の 子 ら と 娘 ら は 合 わ せ て 三 十 三 人。 一六ガ ド の 子 ら は ゼ ポ ン、ハ ギ、

シュニ、エヅボン、エリ、アロデ、アレリ。 一七アセルの子らはエムナ、
いもうと こ
イシワ、イスイ、ベリアおよび妹 サラ。ベリアの子らはヘベルとマルキ
むすめ あた こ かのじょ
エル。 一八これらはラバンが娘 レアに与えたジルパの子らである。彼女
う あ にん つま
はこれらをヤコブに産んだ。合わせて十六人。 一九ヤコブの妻ラケルの
こ くに
子らはヨセフとベニヤミンとである。 二〇エジプトの国でヨセフにマナ
うま さいし むすめ
セとエフライムとが生れた。これはオンの祭司ポテペラの娘 アセナテ
かれ う もの こ
が彼に産んだ者である。 二一ベニヤミンの子らはベラ、ベケル、アシベ
ル、ゲラ、ナアマン、エヒ、ロシ、ムッピム、ホパム、アルデ。 二二これ
う こ あ にん
らはラケルがヤコブに産んだ子らである。合わせて十四人。 二三ダンの
こ こ
子はホシム。 二四ナフタリの子らはヤジエル、グニ、エゼル、シレム。 二
むすめ あた こ かのじょ
五これらはラバンが娘 ラケルに与えたビルハの子らである。彼女はこ
う あ にん とも
れ ら を ヤ コ ブ に 産 ん だ。合 わ せ て 七 人。 二 六ヤ コ ブ と 共 に エ ジ プ ト へ
創世記

い もの かれ み で もの こ つま
行ったすべての者、すなわち彼の身から出た者はヤコブの子らの妻をの

192
あ にん うま こ
ぞいて、合わせて六十六人であった。 二七エジプトでヨセフに生れた子
い いえ もの あ にん
がふたりあった。エジプトへ行ったヤコブの家の者は合わせて七十人
であった。

二八 さてヤコブはユダをさきにヨセフにつかわして、ゴセンで会おうと
い かれ ち い くるま ととの
言 わ せ た。そ し て 彼 ら は ゴ セ ン の 地 へ 行 っ た。 二 九ヨ セ フ は 車 を 整 え
ちち むか のぼ ちち あ
て、父イスラエルを迎えるためにゴセンに上り、父に会い、そのくびを
だ ひさ な とき
抱き、くびをかかえて久しく泣いた。 三〇時に、イスラエルはヨセフに
い い かお み いま
言った、﹁あなたがなお生きていて、わたしはあなたの顔を見たので今は
し きょうだい ちち かぞく い
死んでもよい﹂。 三一ヨセフは兄 弟たちと父の家族とに言った、﹁わたし
のぼ い ち きょうだい ちち
は 上 っ て パ ロ に 言 お う、﹃カ ナ ン の 地 に い た わ た し の 兄 弟 た ち と 父 の
かぞく ところ もの ひつじ か もの かちく
家族 と が わ た し の 所 へ き ま し た。 三 二こ の 者 ら は 羊 を 飼 う 者、家畜 の
ぼくしゃ ひつじ うし も もの たずさ
牧者で、その羊、牛および持ち物をみな携えてきました﹄。 三三もしパロ
め しょくぎょう なに い
があなたがたを召して、
﹃あなたがたの職 業は何か﹄と言われたら、 三四
創世記

おさな とき かちく ぼくしゃ


﹃しもべらは幼い時から、ずっと家畜の牧者です。われわれも、われわれ

193
せんぞ い ち
の先祖もそうです﹄と言いなさい。そうすればあなたがたはゴセンの地
す ひつじかい い もの
に住むことができましょう。 羊 飼はすべて、エジプトびとの忌む者だ
からです﹂。
第四七章
い い ちち きょうだい ひつじ うし
ヨセフは行って、パロに言った、
一 ﹁わたしの父と兄 弟たち、その羊、牛
も もの ち いま ち
およびすべての持ち物がカナンの地からきて、今ゴセンの地におりま
きょうだい にん つ い あ
す﹂。 二そしてその兄 弟のうちの五人を連れて行って、パロに会わせた。
きょうだい い しょくぎょう なに かれ
パロはヨセフの兄 弟たちに言った、
三 ﹁あなたがたの職 業は何か﹂。彼
い ひつじ か もの
らはパロに言った、﹁しもべらは羊を飼う者です。われわれも、われわれ
せんぞ かれ い くに きりゅう
の先祖もそうです﹂。 四彼らはまたパロに言った、
﹁この国に寄留しよう
ち はげ む
としてきました。カナンの地はききんが激しく、しもべらの群れのため
創世記

ぼくそう ち す
の牧草がないのです。どうかしもべらをゴセンの地に住ませてくださ

194
い ちち きょうだい
い﹂。 五パロはヨセフに言った、
﹁あなたの父と兄 弟たちとがあなたのと
ち まえ ち もっと よ ところ
こ ろ に き た。 六エ ジ プ ト の 地 は あ な た の 前 に あ る。地 の 最 も 良 い 所 に
ちち きょうだい す ち かれ す
あなたの父と兄 弟たちとを住ませなさい。ゴセンの地に彼らを住ませ
かれ ゆうのう もの し
なさい。もしあなたが彼らのうちに有能な者があるのを知っているな
もの かちく
ら、その者にわたしの家畜をつかさどらせなさい﹂。
ちち みちび まえ た
七そこでヨセフは父ヤコブを導いてパロの前に立たせた。ヤコブはパ
しゅくふく い とし
ロを祝 福した。 八パロはヤコブに言った、﹁あなたの年はいくつか﹂。 九
い たびじ ねん
ヤコブはパロに言った、﹁わたしの旅路のとしつきは、百三十年です。わ
ひ せんぞ
たしのよわいの日はわずかで、ふしあわせで、わたしの先祖たちのよわ
ひ たびじ ひ およ しゅくふく
いの日と旅路の日には及びません﹂。 一〇ヤコブはパロを祝 福し、パロの
まえ さ めい ちち きょうだい
前を去った。 一一ヨセフはパロの命じたように、父と兄 弟たちとのすま
さだ かれ くに もっと よ ち ち しょゆう
いを定め、彼らにエジプトの国で最も良い地、ラメセスの地を所有とし
あた ちち きょうだい ちち ぜんか かぞく かず
て与えた。 一二またヨセフは父と兄 弟たちと父の全家とに、家族の数に
創世記

しょくもつ あた やしな
したがい、 食 物を与えて養 った。

195
ひじょう はげ ぜん ち しょくもつ
一三 さて、ききんが非常に激しかったので、全地に食 物がなく、エジプ
くに くに おとろ
ト の 国 も カ ナ ン の 国 も、き き ん の た め に 衰 え た。 一 四そ れ で ヨ セ フ は
ひとびと か こくもつ だいきん くに くに ぎん
人々が買った穀物の代金としてエジプトの国とカナンの国にあった銀
あつ ぎん いえ おさ くに
をみな集め、その銀をパロの家に納めた。 一五こうしてエジプトの国と
くに ぎん つ
カナンの国に銀が尽きたとき、エジプトびとはみなヨセフのもとにきて
い しょくもつ ぎん つ まえ
言った、
﹁食 物をください。銀が尽きたからとて、どうしてあなたの前
し い かちく だ
で死んでよいでしょう﹂。 一六ヨセフは言った、﹁あなたがたの家畜を出
ぎん つ かちく ひ か しょくもつ
しなさい。銀が尽きたのなら、あなたがたの家畜と引き替えで食 物を
かれ ところ かちく うま
わたそう﹂。 一七彼らはヨセフの所へ家畜をひいてきたので、ヨセフは馬
ひつじ む うし む およ ひ か しょくもつ かれ
と羊の群れと牛の群れ及びろばと引き替えで、食 物を彼らにわたした。
かれ とし かちく ひ か しょくもつ かれ やしな
こうして彼はその年、すべての家畜と引き替えた食 物で彼らを養 った。
とし く つぎ とし ひとびと ところ い
一八 やがてその年は暮れ、次の年、人々はまたヨセフの所へきて言った、
しゅ なにごと かく ぎん つ けもの む
﹁わが主には何事も隠しません。われわれの銀は尽き、 獣の群れもわが
創世記

しゅ でんち しゅ まえ なに
主のものになって、われわれのからだと田地のほかはわが主の前に何も

196
のこ でんち いっしょ め
残っていません。 一九われわれはどうして田地と一緒に、あなたの目の
まえ ほろ でんち しょくもつ ひ か か
前で滅んでよいでしょう。われわれと田地とを食 物と引き替えで買っ
でんち いっしょ どれい
てください。われわれは田地と一緒にパロの奴隷となりましょう。ま
たね い し まぬか
た 種 を く だ さ い。そ う す れ ば わ れ わ れ は 生 き な が ら え、死 を 免 れ て、
でんち あ
田地も荒れないでしょう﹂。
でんち か と
二〇 そこでヨセフはエジプトの田地をみなパロのために買い取った。き
たはた う
きんがエジプトびとに、きびしかったので、めいめいその田畑を売った

からである。こうして地はパロのものとなった。 二一そしてヨセフはエ
こっきょう はし はし たみ どれい さいし
ジプトの国 境のこの端からかの端まで民を奴隷とした。 二二ただ祭司の
でんち か と さいし きゅうよ あた
田地は買い取らなかった。祭司にはパロの給与があって、パロが与える
きゅうよ せいかつ でんち う
給与で生活していたので、その田地を売らなかったからである。 二三ヨ
たみ い でんち か
セフは民に言った、﹁わたしはきょう、あなたがたとその田地とを買い
と たね ち
取って、パロのものとした。あなたがたに種をあげるから地にまきなさ
創世記

しゅうかく とき ぶん おさ ぶん じぶん
い。 二四収 穫の時は、その五分の一をパロに納め、五分の四を自分のも

197
たはた たね じぶん かぞく しょくりょう こども しょくりょう
のとして田畑の種とし、自分と家族の食 糧とし、また子供の食 糧とし
かれ い いのち すく
なさい﹂。 二五彼らは言った、﹁あなたはわれわれの命をお救いくださっ
しゅ まえ めぐ え
た。どうかわが主の前に恵みを得させてください。われわれはパロの
どれい でんち しゅうかく
奴隷になりましょう﹂。 二六ヨセフはエジプトの田地について、 収 穫の
ぶん おさ こんにち およ
五分の一をパロに納めることをおきてとしたが、それは今日に及んでい
さいし でんち
る。ただし祭司の田地だけはパロのものとならなかった。
くに ち す ざいさん
二七 さてイスラエルはエジプトの国でゴセンの地に住み、そこで財産を
え こ う おお くに ねん い
得、子を生み、大いにふえた。 二八ヤコブはエジプトの国で十七年生きな
ひ ねん
がらえた。ヤコブのよわいの日は百四十七年であった。
し とき ちか こ よ い
二九 イスラエルは死ぬ時が近づいたので、その子ヨセフを呼んで言った、
まえ めぐ え て
﹁もしわたしがあなたの前に恵みを得るなら、どうか手をわたしのもも
した い ちか しんせつ せいじつ と あつか
の下に入れて誓い、親切と誠実とをもってわたしを取り扱 ってくださ
ほうむ
い。ど う か わ た し を エ ジ プ ト に は 葬 ら な い で く だ さ い。 三 〇わ た し が
創世記

せんぞ とも ねむ はこ だ せんぞ
先祖たちと共に眠るときには、わたしをエジプトから運び出して先祖た

198
はか ほうむ い い
ちの墓に葬 ってください﹂。ヨセフは言った、﹁あなたの言われたよう
ちか い
にいたします﹂。 三一ヤコブがまた、
﹁わたしに誓ってください﹂と言った
かれ ちか ゆか おが
ので、彼は誓った。イスラエルは床のかしらで拝んだ。
第四八章
こと のち ちち びょうき つ
これらの事の後に、
一 ﹁あなたの父は、いま病気です﹂とヨセフに告げる
もの かれ こ つ い
者があったので、彼はふたりの子、マナセとエフライムとを連れて行っ
とき ひと つ こ
た。 二時に人がヤコブに告げて、﹁あなたの子ヨセフがあなたのもとに
い つと ゆか うえ
きました﹂と言ったので、イスラエルは努めて床の上にすわった。 三そ
い さき ぜんのう かみ ち
してヤコブはヨセフに言った、﹁先に全能の神がカナンの地ルズでわた
あらわ しゅくふく い おお こ
しに現れ、わたしを祝 福して、四言われた、
﹃わたしはおまえに多くの子
え おお こくみん
を得させ、おまえをふやし、おまえを多くの国民としよう。また、この
創世記

ち のち しそん あた えいきゅう しょゆう


地をおまえの後の子孫に与えて永 久の所有とさせる﹄。 五エジプトにい

199
ところ く まえ くに うま
るあなたの所にわたしが来る前に、エジプトの国で生れたあなたのふた
こ こ
りの子はいまわたしの子とします。すなわちエフライムとマナセとは
おな こ かれ
ル ベ ン と シ メ オ ン と 同 じ よ う に わ た し の 子 と し ま す。 六た だ し 彼 ら の
のち うま こ し
後にあなたに生れた子らはあなたのものとなります。しかし、その嗣
ぎょう きょうだい な よ かえ
業はその兄 弟の名で呼ばれるでしょう。 七わたしがパダンから帰って
く とちゅう ち し かな
来る途中ラケルはカナンの地で死に、わたしは悲しんだ。そこはエフラ
い へだ
タに行くまでには、なお隔たりがあった。わたしはエフラタ、すなわち
い みち かのじょ ほうむ
ベツレヘムへ行く道のかたわらに彼女を葬 った﹂。
こ み い
八ところで、イスラエルはヨセフの子らを見て言った、
﹁これはだれです
ちち い かみ こ
か﹂。 九ヨセフは父に言った、
﹁神がここでわたしにくださった子どもで
ちち い かれ ところ つ しゅくふく
す﹂。父は言った、
﹁彼らをわたしの所に連れてきて、わたしに祝 福させ
め ろうれい み
てください﹂。 一〇イスラエルの目は老齢のゆえに、かすんで見えなかっ
かれ ちち ところ ちかよ ちち かれ くち かれ
たが、ヨセフが彼らを父の所に近寄らせたので、父は彼らに口づけし、彼
創世記

だ い かお み
らを抱いた。 一一そしてイスラエルはヨセフに言った、
﹁あなたの顔が見

200
おも かみ こ み
られようとは思わなかったのに、神はあなたの子らをもわたしに見させ
かれ あいだ と
てくださった﹂。 一二そこでヨセフは彼らをヤコブのひざの間から取り
だ ち ふ はい みぎ て と
出し、地に伏して拝した。 一三ヨセフはエフライムを右の手に取ってイ
ひだり て む ひだり て と みぎ
スラエルの左の手に向かわせ、マナセを左の手に取ってイスラエルの右
て む ちかよ みぎ て
の手に向かわせ、ふたりを近寄らせた。 一四すると、イスラエルは右の手
の おとうと あたま お ひだり て あたま お
を伸べて弟 エフライムの頭に置き、 左の手をマナセの頭に置いた。マ
ちょうし て お
ナセは長子であるが、ことさらそのように手を置いたのである。 一五そ
しゅくふく い
してヨセフを祝 福して言った、
せんぞ つか かみ
﹁わが先祖アブラハムとイサクの仕えた神、
うま やしな かみ
生れてからきょうまでわたしを養われた神、
わざわい つかい
すべての災からわたしをあがなわれたみ使よ、
一六
こども しゅくふく
この子供たちを祝 福してください。
な せんぞ な
またわが名と先祖アブラハムとイサクの名とが、
創世記

かれ とな
彼らによって唱えられますように、

201
かれ ち うえ
また彼らが地の上にふえひろがりますように﹂。
ちち みぎ て あたま お み ふまん
一七 ヨセフは父が右の手をエフライムの頭に置いているのを見て不満に
おも ちち て と あたま あたま うつ
思い、父の手を取ってエフライムの頭からマナセの頭へ移そうとした。
ちち い ちち
一八 そしてヨセフは父に言った、
﹁父よ、そうではありません。こちらが
ちょうし あたま みぎ て お ちち こば い
長子です。その頭に右の手を置いてください﹂。 一九父は拒んで言った、
こ かれ たみ
﹁わかっている。子よ、わたしにはわかっている。彼もまた一つの民と
おお もの おとうと かれ おお もの
なり、また大いなる者となるであろう。しかし弟は彼よりも大いなる者
しそん おお こくみん かれ
となり、その子孫は多くの国民となるであろう﹂。 二〇こうして彼はこの
ひ かれ しゅくふく い
日、彼らを祝 福して言った、

﹁あなたを指して、イスラエルは、
ひと しゅくふく い
人を祝 福して言うであろう、
かみ
﹃神があなたをエフライムのごとく、
またマナセのごとくにせられるように﹄﹂。
創世記

かれ さき た
このように、彼はエフライムをマナセの先に立てた。 二一イスラエルは

202
い し かみ
またヨセフに言った、﹁わたしはやがて死にます。しかし、神はあなたが
とも せんぞ くに みちび かえ
たと共におられて、あなたがたを先祖の国に導き返されるであろう。 二二
ぶん きょうだい おお あた
なおわたしは一つの分を兄 弟よりも多くあなたに与える。これはわた
ゆみ も て と
しがつるぎと弓とを持ってアモリびとの手から取ったものである﹂。
第四九章
こ よ い あつ のち ひ
ヤコブはその子らを呼んで言った、
一 ﹁集まりなさい。後の日に、あなた
うえ おこ つ
がたの上に起ることを、告げましょう、
こ あつ き
ヤコブの子らよ、集まって聞け。

ちち き
父イスラエルのことばを聞け。
ちょうし
ルベンよ、あなたはわが長子、

いきお ちから
わが勢い、わが力のはじめ、
創世記

いこう もの けんりょく もの
威光のすぐれた者、 権 力のすぐれた者。

203
わ た みず
しかし、沸き立つ水のようだから、

もの え
もはや、すぐれた者ではあり得ない。
ちち ゆか のぼ けが
あなたは父の床に上って汚した。
ねどこ のぼ
ああ、あなたはわが寝床に上った。
きょうだい
シメオンとレビとは兄 弟。

かれ ぼうぎゃく ぶ き
彼らのつるぎは暴 虐の武器。
たましい かれ かいぎ のぞ
わが魂よ、彼らの会議に臨むな。

さか かれ つら
わが栄えよ、彼らのつどいに連なるな。
かれ いか まか ひと ころ
彼らは怒りに任せて人を殺し、
おうし あし すじ き
ほしいままに雄牛の足の筋を切った。
かれ いか はげ
彼らの怒りは、激しいゆえにのろわれ、

かれ いきどお
彼らの憤りは、はなはだしいゆえにのろわれる。
かれ わ
わたしは彼らをヤコブのうちに分け、
創世記


イスラエルのうちに散らそう。

204
きょうだい
ユダよ、 兄 弟たちはあなたをほめる。

て てき おさ
あなたの手は敵のくびを押え、
ちち こ まえ み
父の子らはあなたの前に身をかがめるであろう。

ユダは、ししの子。

こ えもの のぼ く
わが子よ、あなたは獲物をもって上って来る。
かれ お
彼は雄じしのようにうずくまり、
め み ふ
雌じしのように身を伏せる。
おこ
だれがこれを起すことができよう。
はな
一〇 つえはユダを離れず、
りっぽうしゃ あし あいだ はな
立法者のつえはその足の間を離れることなく、
く とき およ
シロの来る時までに及ぶであろう。
たみ かれ したが
もろもろの民は彼に従う。
かれ こ き
一一 彼はそのろばの子をぶどうの木につなぎ、
創世記

め こ よ き
その雌ろばの子を良きぶどうの木につなぐ。

205
かれ いふく しゅ あら
彼はその衣服をぶどう酒で洗い、
きもの しる あら
その着物をぶどうの汁で洗うであろう。
め しゅ あか
その目はぶどう酒によって赤く、
一二
は ちち しろ
その歯は乳によって白い。
うみ す
ゼブルンは海べに住み、
一三
ふね と みなと
舟の泊まる港となって、
さかい およ
その境はシドンに及ぶであろう。
イッサカルはたくましいろば、
一四
かれ ひつじ あいだ ふ
彼は羊のおりの間に伏している。
かれ ていじゅう ち み よ
彼は定 住の地を見て良しとし、
一五
くに み たの
その国を見て楽しとした。
かれ かた さ
彼はその肩を下げてにない、
どれい お つか
奴隷となって追い使われる。
創世記

たみ
ダンはおのれの民をさばくであろう、
一六

206
ぶぞく
イスラエルのほかの部族のように。
みち
一七 ダンは道のかたわらのへび、
みち
道のほとりのまむし。
うま
馬のかかとをかんで、
の もの おと
乗る者をうしろに落すであろう。
しゅ すくい ま のぞ
一八 主よ、わたしはあなたの救を待ち望む。
りゃくだつしゃ せま
一九 ガドには略 奪 者が迫る。
かれ てき せま
しかし彼はかえって敵のかかとに迫るであろう。
しょくもつ
二〇 アセルはその食 物がゆたかで、
おう び み
王の美味をいだすであろう。
はな め
二一 ナフタリは放たれた雌じか、
かれ うつく こ う
彼は美しい子じかを生むであろう。
み むす わかぎ
二二 ヨセフは実を結ぶ若木、
創世記

いずみ み むす わかぎ
泉のほとりの実を結ぶ若木。

207
えだ こ
その枝は、かきねを越えるであろう。
い もの かれ はげ せ
二三 射る者は彼を激しく攻め、
かれ い かれ なや
彼を射、彼をいたく悩ました。
かれ ゆみ つよ
二四 しかし彼の弓はなお強く、
かれ うで すばや
彼の腕は素早い。
ぜんのうしゃ て
これはヤコブの全能者の手により、
いわ ぼくしゃ な
イスラエルの岩なる牧者の名により、
たす ちち かみ
二五 あなたを助ける父の神により、
うえ てん しゅくふく
また上なる天の祝 福、
した よこ ふち しゅくふく
下に横たわる淵の祝 福、
ち たい しゅくふく
乳ぶさと胎の祝 福をもって、
めぐ ぜんのうしゃ
あなたを恵まれる全能者による。
ちち しゅくふく えいえん やま しゅくふく
二六 あなたの父の祝 福は永遠の山の祝 福にまさり、
創世記

えいきゅう おか たまもの
永 久の丘の賜物にまさる。

208
しゅくふく き
これらの祝 福はヨセフのかしらに帰し、
きょうだい きみ もの あたま いただき き
その兄 弟たちの君たる者の頭の頂に帰する。

二七 ベニヤミンはかき裂くおおかみ、
あさ えもの く
朝にその獲物を食らい、
ゆう ぶんとりもの わ
夕にその分捕物を分けるであろう﹂。
ぶぞく かれ
二八すべてこれらはイスラエルの十二の部族である。そしてこれは彼ら
ちち かれ かた かれ しゅくふく かれ しゅくふく
の父が彼らに語り、彼らを祝 福したもので、彼は祝 福すべきところに
したが かれ しゅくふく かれ かれ めい い
従 って、彼らおのおのを祝 福した。 二九彼はまた彼らに命じて言った、
たみ くわ
﹁わたしはわが民に加えられようとしている。あなたがたはヘテびとエ
はたけ あな せんぞ とも ほうむ
フロンの畑にあるほら穴に、わたしの先祖たちと共にわたしを葬 って
あな ち ひがし
ください。 三〇そのほら穴はカナンの地のマムレの東にあるマクペラの
はたけ はたけ とも か と しょゆう
畑にあり、アブラハムがヘテびとエフロンから畑と共に買い取り、所有
ぼ ち つま ほうむ
の墓地としたもので、三一そこにアブラハムと妻サラとが葬られ、イサク
創世記

つま ほうむ ほうむ
と妻リベカもそこに葬られたが、わたしはまたそこにレアを葬 った。 三

209
はたけ なか あな ひとびと か
あの畑とその中にあるほら穴とはヘテの人々から買ったものです﹂。

こ めい おわ あし ゆか いき た
三三 こうしてヤコブは子らに命じ終って、足を床におさめ、息絶えて、そ
たみ くわ
の民に加えられた。
第五〇章
ちち かお ふ な くち かれ
ヨセフは父の顔に伏して泣き、口づけした。 二そしてヨセフは彼のし

い しゃ ちち くすり ぬ めい い しゃ
もべである医者たちに、父に薬を塗ることを命じたので、医者たちはイ
くすり ぬ にち ついや くすり ぬ
スラエルに薬を塗った。 三このために四十日を費した。 薬を塗るには
ひ かず よう にち あいだ かれ
これほどの日数を要するのである。エジプトびとは七十日の間、彼のた

めに泣いた。
かれ な ひ す いえ もの い いま
彼のために泣く日が過ぎて、ヨセフはパロの家の者に言った、
四 ﹁今もし
まえ めぐ え つた
わたしがあなたがたの前に恵みを得るなら、どうかパロに伝えてくださ
創世記

ちち ちか い し
い。 五﹃わたしの父はわたしに誓わせて言いました﹁わたしはやがて死

210
ち ほ お はか ほうむ
にます。カナンの地に、わたしが掘って置いた墓に葬 ってください﹂。
のぼ い ちち ほうむ
それで、どうかわたしを上って行かせ、父を葬らせてください。そうす
かえ い ちち
れば、わたしはまた帰ってきます﹄﹂。 六パロは言った、
﹁あなたの父があ
ちか のぼ い かれ ほうむ
なたに誓わせたように上って行って彼を葬りなさい﹂。 七そこでヨセフ
ちち ほうむ のぼ い かれ とも のぼ もの
は父を葬るために上って行った。彼と共に上った者はパロのもろもろ
けらい いえ ちょうろう くに ちょうろう
の家来たち、パロの家の長 老たち、エジプトの国のもろもろの長 老た
ぜんか きょうだい およ ちち かぞく
ち、 八ヨセフの全家とその兄 弟たち及びその父の家族であった。ただ
こども ひつじ うし ち のこ せんしゃ きへい かれ とも
子供 と 羊 と 牛 は ゴ セ ン の 地 に 残 し た。 九ま た 戦車 と 騎兵 も 彼 と 共 に
のぼ ぎょうれつ さか かれ
上ったので、その行 列はたいそう盛んであった。 一〇彼らはヨルダンの
む う ば い つ おお なげ ひじょう かな
向こうのアタデの打ち場に行き着いて、そこで大いに嘆き、非常に悲し
なぬか あいだちち なげ ち じゅうみん
んだ。そしてヨセフは七日の間 父のために嘆いた。 一一その地の住 民、
う ば なげ み おお
カナンびとがアタデの打ち場の嘆きを見て、﹁これはエジプトびとの大
なげ い ところ な よ
いなる嘆きだ﹂と言ったので、その所の名はアベル・ミツライムと呼ば
創世記

む こ めい
れた。これはヨルダンの向こうにある。 一二ヤコブの子らは命じられた

211
こ かれ ち
ようにヤコブにおこなった。 一三すなわちその子らは彼をカナンの地へ
はこ い はたけ あな ほうむ あな
運んで行って、マクペラの畑のほら穴に葬 った。このほら穴はマムレ
ひがし はたけ とも か
の 東 に あ っ て、ア ブ ラ ハ ム が ヘ テ び と エ フ ロ ン か ら 畑 と 共 に 買 っ て、
しょゆう ぼ ち ちち ほうむ のち きょうだい
所有の墓地としたものである。 一四ヨセフは父を葬 った後、その兄 弟た
およ ちち ほうむ いっしょ のぼ もの とも かえ
ち及びすべて父を葬るために一緒に上った者と共にエジプトに帰った。
きょうだい ちち し み い
一五 ヨセフの兄 弟たちは父の死んだのを見て言った、﹁ヨセフはことに
にく かれ あく しかえ
よるとわれわれを憎んで、われわれが彼にしたすべての悪に、仕返しす
ちが かれ い
るに違いない﹂。 一六そこで彼らはことづけしてヨセフに言った、﹁あな
ちち し まえ めい い い
たの父は死ぬ前に命じて言われました、一七
﹃おまえたちはヨセフに言い
きょうだい あく
なさい、
﹁あなたの兄 弟たちはあなたに悪をおこなったが、どうかその
つみ いま ちち かみ つか
とがと罪をゆるしてやってください﹂﹄。今どうかあなたの父の神に仕
ことば き
えるしもべらのとがをゆるしてください﹂。ヨセフはこの言葉を聞いて
な きょうだい かれ まえ ふ い
泣いた。 一八やがて兄 弟たちもきて、彼の前に伏して言った、
﹁このとお
創世記

かれ い おそ
り、わたしたちはあなたのしもべです﹂。 一九ヨセフは彼らに言った、
﹁恐

212
かみ かわ
れることはいりません。わたしが神に代ることができましょうか。 二〇
たい あく かみ よ かわ
あなたがたはわたしに対して悪をたくらんだが、神はそれを良きに変ら
こんにち おお たみ いのち すく はか
せて、今日のように多くの民の命を救おうと計らわれました。 二一それ
おそ
ゆ え 恐 れ る こ と は い り ま せ ん。わ た し は あ な た が た と あ な た が た の
こども やしな かれ かれ なぐさ しんせつ かた
子供たちを養いましょう﹂。彼は彼らを慰めて、親切に語った。
ちち かぞく とも す
二二このようにしてヨセフは父の家族と共にエジプトに住んだ。そして
ねん い だい しそん
ヨセフは百十年生きながらえた。 二三ヨセフはエフライムの三代の子孫
み こ こ うま うえ お
を見た。マナセの子マキルの子らも生れてヨセフのひざの上に置かれ
きょうだい い し かみ かなら
た。 二四ヨセフは兄 弟たちに言った、﹁わたしはやがて死にます。神は必
かえり くに つ だ
ずあなたがたを顧みて、この国から連れ出し、アブラハム、イサク、ヤ
ちか ち みちび のぼ かみ
コブに誓われた地に導き上られるでしょう﹂。 二五さらにヨセフは、﹁神
かなら かえり とき ほね
は必ずあなたがたを顧みられる。その時、あなたがたはわたしの骨をこ
たずさ のぼ い こ ちか
こから携え上りなさい﹂と言ってイスラエルの子らに誓わせた。 二六こ
創世記

さい し かれ くすり ぬ かん おさ
うしてヨセフは百十歳で死んだ。彼らはこれに薬を塗り、棺に納めて、

213

エジプトに置いた。
創世記

214
しゅつ き
出 エジプト記
第一章
とも かぞく ともな い
さて、ヤコブと共に、おのおのその家族を伴 って、エジプトへ行った

こ な つぎ
イスラエルの子らの名は次のとおりである。 二すなわちルベン、シメオ
ン、レビ、ユダ、 三イッサカル、ゼブルン、ベニヤミン、 四ダン、ナフタ
こし で あ
リ、ガド、アセルであった。 五ヤコブの腰から出たものは、合わせて七
にん し きょうだい
十人。ヨセフはすでにエジプトにいた。 六そして、ヨセフは死に、兄 弟
じだい ひとびと し しそん
たちも、その時代の人々もみな死んだ。 七けれどもイスラエルの子孫は
おお こ う つよ くに み
多くの子を生み、ますますふえ、はなはだ強くなって、国に満ちるよう
出エジプト記

になった。
し あたら おう た かれ
ここに、ヨセフのことを知らない新しい王が、エジプトに起った。 九彼

たみ い み たみ
はその民に言った、﹁見よ、イスラエルびとなるこの民は、われわれに

0
おお つよ ぬ
とって、あまりにも多く、また強すぎる。 一〇さあ、われわれは、抜かり
かれ と あつか かれ おお たたか おこ てき みかた
なく彼らを取り扱おう。彼らが多くなり、戦いの起るとき、敵に味方し
たたか くに に さ
て、われわれと戦い、ついにこの国から逃げ去ることのないようにしよ
かれ うえ かんとく おも ろうえき
う﹂。 一一そこでエジプトびとは彼らの上に監督をおき、重い労役をもっ
かれ くる かれ そうこ まち
て彼らを苦しめた。彼らはパロのために倉庫の町ピトムとラメセスを
た ひとびと くる
建てた。 一二しかしイスラエルの人々が苦しめられるにしたがって、い
かれ ひとびと おそ
よいよふえひろがるので、彼らはイスラエルの人々のゆえに恐れをなし
ひとびと つか つとめ
た。 一三エジプトびとはイスラエルの人々をきびしく使い、 一四つらい務
せいかつ くる つく
をもってその生活を苦しめた。すなわち、しっくいこね、れんが作り、お
たはた つとめ あた ろうえき
よび田畑のあらゆる務に当らせたが、そのすべての労役はきびしかっ
た。
おう おんな とりあ じょさんぷ
出エジプト記

一五 またエジプトの王は、ヘブルの女のために取上げをする助産婦でひ
な た な もの
とりは名をシフラといい、他のひとりは名をプアという者にさとして、一
い おんな じょさん う だい うえ み
言った、
六 ﹁ヘブルの女のために助産をするとき、産み台の上を見て、も

1
おとこ こ ころ おんな こ い
し男の子ならばそれを殺し、女の子ならば生かしておきなさい﹂。 一七し
じょさんぷ かみ おう かれ めい
かし助産婦たちは神をおそれ、エジプトの王が彼らに命じたようにはせ
おとこ こ い おう じょさんぷ め
ず、 男の子を生かしておいた。 一八エジプトの王は助産婦たちを召して
い おとこ こ い
言った、
﹁あなたがたはなぜこのようなことをして、 男の子を生かして
じょさんぷ い おんな
おいたのか﹂。 一九助産婦たちはパロに言った、﹁ヘブルの女はエジプト
おんな ちが かのじょ すこ じょさんぷ い まえ う
の女とは違い、彼女たちは健やかで助産婦が行く前に産んでしまいま
かみ じょさんぷ めぐ たみ
す﹂。 二〇そ れ で 神 は 助産婦 た ち に 恵 み を ほ ど こ さ れ た。そ し て 民 は ふ
ひじょう つよ じょさんぷ かみ かみ かのじょ
え、非常に強くなった。 二一助産婦たちは神をおそれたので、神は彼女た
いえ さか たみ めい
ち の 家 を 栄 え さ せ ら れ た。 二二そ こ で パ ロ は そ の す べ て の 民 に 命 じ て
い おとこ こ うま かわ な
言った、﹁ヘブルびとに男の子が生れたならば、みなナイル川に投げこ
おんな こ い
め。しかし女の子はみな生かしておけ﹂。
出エジプト記

2
第二章
いえ ひと い むすめ おんな
さて、レビの家のひとりの人が行ってレビの娘をめとった。 二 女はみ

おとこ こ う うるわ み つき かく
ごもって、 男の子を産んだが、その麗しいのを見て、三月のあいだ隠し
かく あ
ていた。 三しかし、もう隠しきれなくなったので、パピルスで編んだか
と じゅ し ぬ こ なか い
ごを取り、それにアスファルトと樹脂とを塗って、子をその中に入れ、こ
かわ きし あし なか あね かれ
れをナイル川の岸の葦の中においた。 四その姉は、彼がどうされるかを
し とお はな た むすめ み あら
知ろうと、遠く離れて立っていた。 五ときにパロの娘が身を洗おうと、
かわ お じ じょ かわ ある かのじょ あし なか
川に降りてきた。侍女たちは川べを歩いていたが、彼女は、葦の中にか
み と み
ごのあるのを見て、つかえめをやり、それを取ってこさせ、 六あけて見
こども み おさ ご な かのじょ おも
ると子供がいた。見よ、幼な子は泣いていた。彼女はかわいそうに思っ
い こども おさ ご あね
出エジプト記

て言った、
﹁これはヘブルびとの子供です﹂。 七そのとき幼な子の姉はパ
むすめ い い おんな
ロの娘に言った、﹁わたしが行ってヘブルの女のうちから、あなたのため
こ ちち の よ
に、この子に乳を飲ませるうばを呼んでまいりましょうか﹂。 八パロの

3
むすめ い い しょうじょ い こ はは よ
娘が﹁行ってきてください﹂と言うと、少 女は行ってその子の母を呼ん
むすめ かのじょ い こ つ い
できた。 九パロの娘は彼女に言った、
﹁この子を連れて行って、わたしに
かわ ちち の ほうしゅう おんな
代り、乳を飲ませてください。わたしはその報 酬をさしあげます﹂。 女
こ ひ と ちち あた こ せいちょう
はその子を引き取って、これに乳を与えた。 一〇その子が成 長したので、
かのじょ むすめ つ い かれ こ
彼女はこれをパロの娘のところに連れて行った。そして彼はその子と
かのじょ な な い みず なか
なった。彼女はその名をモーセと名づけて言った、﹁水の中からわたし
ひ だ
が引き出したからです﹂。
せいちょう のち ひ どうほう ところ で い
一一 モーセが成 長して後、ある日のこと、同胞の所に出て行って、その
ろうえき み かれ どうほう
はげしい労役を見た。彼はひとりのエジプトびとが、同胞のひとりであ
う み さゆう み ひと
るヘブルびとを打つのを見たので、一二左右を見まわし、人のいないのを
み う ころ すな なか かく つぎ ひ
見て、そのエジプトびとを打ち殺し、これを砂の中に隠した。 一三次の日
で い たがい あらそ み わる ほう
出エジプト記

また出て行って、ふたりのヘブルびとが互に争 っているのを見、悪い方
おとこ い とも う かれ
の男に言った、﹁あなたはなぜ、あなたの友を打つのですか﹂。 一四彼は
い た さいばんにん
言った、
﹁だれがあなたを立てて、われわれのつかさ、また裁判人とした

4
ころ ころ おも
のですか。エジプトびとを殺したように、あなたはわたしを殺そうと思
おそ こと し
う の で す か﹂。モ ー セ は 恐 れ た。そ し て あ の 事 が き っ と 知 れ た の だ と
おも こと き ころ
思った。 一五パロはこの事を聞いて、モーセを殺そうとした。
まえ ち い い ど
しかしモーセはパロの前をのがれて、ミデヤンの地に行き、井戸のかた
ざ さいし にん むすめ
わ ら に 座 し て い た。 一 六さ て、ミ デ ヤ ン の 祭司 に 七 人 の 娘 が あ っ た。
かのじょ みず すいそう ちち ひつじ む の
彼女たちはきて水をくみ、水槽にみたして父の羊の群れに飲ませようと
ひつじかい かのじょ お はら た あ
したが、 一七羊 飼たちがきて彼女らを追い払ったので、モーセは立ち上
かのじょ たす ひつじ む みず の かのじょ
がって彼女たちを助け、その羊の群れに水を飲ませた。 一八彼女たちが
ちち かえ とき ちち い
父リウエルのところに帰った時、父は言った、
﹁きょうは、どうして、こ
はや かえ かのじょ い
んなに早く帰ってきたのか﹂。 一九彼女たちは言った、﹁ひとりのエジプ
ひつじかい て たす だ みず
トびとが、わたしたちを羊 飼たちの手から助け出し、そのうえ、水をた
ひつじ む の かれ むすめ
出エジプト記

くさんくんで、 羊の群れに飲ませてくれたのです﹂。 二〇彼は娘たちに



言った、﹁そのかたはどこにおられるか。なぜ、そのかたをおいてきたの
よ しょくじ ひと とも
か。呼んできて、食事をさしあげなさい﹂。 二一モーセがこの人と共にお

5
この かれ むすめ つま あた
ることを好んだので、彼は娘のチッポラを妻としてモーセに与えた。 二二
かのじょ おとこ こ う な な
彼女が男の子を産んだので、モーセはその名をゲルショムと名づけた。
がいこく きりゅうしゃ い
﹁わたしは外国に寄留者となっている﹂と言ったからである。
おお ひ へ おう し ひとびと
二三 多くの日を経て、エジプトの王は死んだ。イスラエルの人々は、その
くえき つとめ さけ くえき さけ かみ
苦役の務のゆえにうめき、また叫んだが、その苦役のゆえの叫びは神に
とど かみ かれ き かみ
届いた。 二四神は彼らのうめきを聞き、神はアブラハム、イサク、ヤコブ
けいやく おぼ かみ ひとびと かえり かみ かれ
との契約を覚え、二五神はイスラエルの人々を顧み、神は彼らをしろしめ
された。
第三章
出エジプト記

つま ちち さいし ひつじ む か
一モーセは妻の父、ミデヤンの祭司エテロの羊の群れを飼っていたが、
む あらの おく みちび かみ やま しゅ つかい
そ の 群 れ を 荒野 の 奥 に 導 い て、神 の 山 ホ レ ブ に き た。 二と き に 主 の 使
なか ほのお かれ あらわ かれ み ひ も
は、しばの中の炎のうちに彼に現れた。彼が見ると、しばは火に燃えて

6
い い
いるのに、そのしばはなくならなかった。 三モーセは言った、
﹁行ってこ
おお み み も し しゅ
の大きな見ものを見、なぜしばが燃えてしまわないかを知ろう﹂。 四主
かれ みさだめ み かみ なか かれ よ
は彼がきて見定ようとするのを見、神はしばの中から彼を呼んで、﹁モー
い かれ い かみ
セよ、モーセよ﹂と言われた。彼は﹁ここにいます﹂と言った。 五神は
い ちか あし ぬ
言われた、﹁ここに近づいてはいけない。足からくつを脱ぎなさい。あ
た ば しょ せい ち い
な た が 立 っ て い る そ の 場所 は 聖 な る 地 だ か ら で あ る﹂。 六ま た 言 わ れ
せんぞ かみ かみ かみ
た、
﹁わたしは、あなたの先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコ
かみ かみ み おそ かお かく
ブの神である﹂。モーセは神を見ることを恐れたので顔を隠した。
しゅ い たみ なや
七主はまた言われた、
﹁わたしは、エジプトにいるわたしの民の悩みを、
み お つか もの かれ さけ き
つぶさに見、また追い使う者のゆえに彼らの叫ぶのを聞いた。わたしは
かれ くる し くだ かれ
彼らの苦しみを知っている。 八わたしは下って、彼らをエジプトびとの
て すく だ ち みちび のぼ よ ひろ ち ちち みつ
出エジプト記

手から救い出し、これをかの地から導き上って、良い広い地、乳と蜜の
なが ち
流れる地、すなわちカナンびと、ヘテびと、アモリびと、ペリジびと、ヒ
ところ いた
ビびと、エブスびとのおる所に至らせようとしている。 九いまイスラエ

7
ひとびと さけ とど かれ
ルの人々の叫びがわたしに届いた。わたしはまたエジプトびとが彼ら

をしえたげる、そのしえたげを見た。 一〇さあ、わたしは、あなたをパロ
たみ ひとびと みちび だ
につかわして、わたしの民、イスラエルの人々をエジプトから導き出さ
かみ い なにもの
せよう﹂。 一一モーセは神に言った、
﹁わたしは、いったい何者でしょう。
い ひとびと みちび
わたしがパロのところへ行って、イスラエルの人々をエジプトから導き
だ かみ い かなら とも
出すのでしょうか﹂。 一二神は言われた、﹁わたしは必ずあなたと共にい
たみ
る。これが、わたしのあなたをつかわしたしるしである。あなたが民を
みちび だ やま かみ つか
エジプトから導き出したとき、あなたがたはこの山で神に仕えるであろ
う﹂。
かみ い ひとびと い
一三 モーセは神に言った、﹁わたしがイスラエルの人々のところへ行っ
かれ せんぞ かみ
て、彼らに﹃あなたがたの先祖の神が、わたしをあなたがたのところへ
い かれ な
出エジプト記

つかわされました﹄と言うとき、彼らが﹃その名はなんというのですか﹄
き こた かみ い
とわたしに聞くならば、なんと答えましょうか﹂。 一四神はモーセに言わ
あ あ もの い ひとびと
れた、
﹁わたしは、有って有る者﹂。また言われた、
﹁イスラエルの人々に

8
い あ
こう言いなさい、
﹃﹁わたしは有る﹂というかたが、わたしをあなたがた
かみ い
のところへつかわされました﹄と﹂。 一五神はまたモーセに言われた、
﹁イ
ひとびと い せんぞ かみ
スラエルの人々にこう言いなさい﹃あなたがたの先祖の神、アブラハム
かみ かみ かみ しゅ
の神、イサクの神、ヤコブの神である主が、わたしをあなたがたのとこ
えいえん な よ よ
ろへつかわされました﹄と。これは永遠にわたしの名、これは世々のわ
よ な い ちょうろう あつ
たしの呼び名である。 一六あなたは行って、イスラエルの長 老たちを集
い せんぞ かみ
めて言いなさい、
﹃あなたがたの先祖の神、アブラハム、イサク、ヤコブ
かみ しゅ あらわ い
の神である主は、わたしに現れて言われました、﹁わたしはあなたがたを
かえり こと たし み
顧み、あなたがたがエジプトでされている事を確かに見た。 一七それで
なや みちび だ
わたしはあなたがたを、エジプトの悩みから導き出して、カナンびと、ヘ
ち ちち みつ
テびと、アモリびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとの地、乳と蜜
なが ち たずさ のぼ けっしん かれ こえ き
出エジプト記

の流れる地へ携え上ろうと決心した﹂と﹄。 一八彼らはあなたの声に聞き
したが ちょうろう いっしょ おう
従うであろう。あなたはイスラエルの長 老たちと一緒にエジプトの王
い い かみ しゅ あらわ
のところへ行って言いなさい、﹃ヘブルびとの神、主がわたしたちに現れ

9
か みち あらの い
られました。それで、わたしたちを、三日の道のりほど荒野に行かせて、
かみ しゅ ぎせい ゆる
わたしたちの神、主に犠牲をささげることを許してください﹄と。 一九し
おう つよ て せま い
かし、エジプトの王は強い手をもって迫らなければ、あなたがたを行か
し て の
せないのをわたしは知っている。 二〇それで、わたしは手を伸べて、エジ
おこな ふ し ぎ う
プトのうちに行おうとする、さまざまの不思議をもってエジプトを打と
のち かれ さ たみ
う。その後に彼はあなたがたを去らせるであろう。 二一わたしはこの民
こうい え さ て
にエジプトびとの好意を得させる。あなたがたは去るときに、むなし手
さ おんな となり おんな いえ やど おんな
で去ってはならない。 二二 女はみな、その隣の女と、家に宿っている女
ぎん かざ きん かざ いふく もと
に、銀の飾り、金の飾り、また衣服を求めなさい。そしてこれらを、あ
むすめ つ
なたがたのむすこ、 娘に着けさせなさい。このようにエジプトびとの
うば と
ものを奪い取りなさい﹂。
出エジプト記

10
第四章
い かれ しん こえ
モーセは言った、
一 ﹁しかし、彼らはわたしを信ぜず、またわたしの声に
き したが い しゅ あらわ しゅ
聞き従わないで言うでしょう、
﹃主はあなたに現れなかった﹄と﹂。 二主
かれ い て なに かれ い
は彼に言われた、﹁あなたの手にあるそれは何か﹂。彼は言った、﹁つえで
い ち な かれ ち な
す﹂。 三また言われた、﹁それを地に投げなさい﹂。彼がそれを地に投げ
まえ み さ しゅ
ると、へびになったので、モーセはその前から身を避けた。 四主はモー
い て の お と
セに言われた、﹁あなたの手を伸ばして、その尾を取りなさい。︱︱そこ
て の と て
で手を伸ばしてそれを取ると、手のなかでつえとなった。︱︱ 五これ
かれ せんぞ かみ かみ かみ かみ
は、彼らの先祖たちの神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神で
しゅ あらわ かれ しん しゅ
ある主が、あなたに現れたのを、彼らに信じさせるためである﹂。 六主は
かれ い て い かれ て
出エジプト記

また彼に言われた、﹁あなたの手をふところに入れなさい﹂。彼が手をふ
い だ て びょう ゆき しろ
ところに入れ、それを出すと、手は、らい病にかかって、雪のように白
しゅ い て かれ
くなっていた。 七主は言われた、
﹁手をふところにもどしなさい﹂。彼は

11
て だ み かいふく
手をふところにもどし、それをふところから出して見ると、回復して、も
にく しゅ い かれ しん
との肉のようになっていた。 八主は言われた、﹁彼らがもしあなたを信
はじ みと のち しん
ぜず、また初めのしるしを認めないならば、後のしるしは信じるであろ
かれ しん こえ き したが
う。 九彼らがもしこの二つのしるしをも信ぜず、あなたの声に聞き従わ
かわ みず と ち そそ
ないならば、あなたはナイル川の水を取って、かわいた地に注ぎなさい。
かわ と みず ち ち
あなたがナイル川から取った水は、かわいた地で血となるであろう﹂。
しゅ い しゅ いぜん
一〇 モーセは主に言った、
﹁ああ主よ、わたしは以前にも、またあなたが、
かた のち ことば ひと くち おも
しもべに語られてから後も、言葉の人ではありません。わたしは口も重
した おも しゅ かれ い ひと くち さづ
く、舌も重いのです﹂。 一一主は彼に言われた、
﹁だれが人に口を授けたの
みみ め め しゅ
か。おし、耳しい、目あき、目しいにだれがするのか。主なるわたしで
い くち とも
は な い か。 一 二そ れ ゆ え 行 き な さ い。わ た し は あ な た の 口 と 共 に あ っ
い おし い
出エジプト記

て、あなたの言うべきことを教えるであろう﹂。 一三モーセは言った、
﹁あ
しゅ てきとう ひと
あ、主よ、どうか、ほかの適当な人をおつかわしください﹂。 一四そこで、
しゅ いか はっ い きょうだい
主はモーセにむかって怒りを発して言われた、
﹁あなたの兄 弟 レビびと

12
かれ ことば し
アロンがいるではないか。わたしは彼が言葉にすぐれているのを知っ
み かれ あ で かれ
ている。見よ、彼はあなたに会おうとして出てきている。彼はあなたを
み こころ よろこ かれ かた ことば くち さづ
見て心に喜ぶであろう。 一五あなたは彼に語って言葉をその口に授けな
くち とも かれ くち とも
さい。わたしはあなたの口と共にあり、彼の口と共にあって、あなたが
おし かれ かわ たみ かた
たのなすべきことを教え、 一六彼はあなたに代って民に語るであろう。
かれ くち かれ かみ かわ
彼はあなたの口となり、あなたは彼のために、神に代るであろう。 一七あ
て と おこな
なたはそのつえを手に執り、それをもって、しるしを行いなさい﹂。
つま ちち かえ かれ い
一八 モーセは妻の父エテロのところに帰って彼に言った、
﹁どうかわたし
み もの かえ かれ い
を、エジプトにいる身うちの者のところに帰らせ、彼らがまだ生きなが
み い
らえているか、どうかを見させてください﹂。エテロはモーセに言った、
やす い しゅ い
﹁安んじて行きなさい﹂。 一九主はミデヤンでモーセに言われた、
﹁エジプ
かえ い いのち もと ひとびと し
出エジプト記

ト に 帰 っ て 行 き な さ い。あ な た の 命 を 求 め た 人々 は み な 死 ん だ﹂。 二〇
つま こども の ち
そこでモーセは妻と子供たちをとり、ろばに乗せて、エジプトの地に
かえ て かみ と
帰った。モーセは手に神のつえを執った。

13
しゅ い かえ
二一 主はモーセに言われた、
﹁あなたがエジプトに帰ったとき、わたしが
て さづ ふ し ぎ まえ おこな
あなたの手に授けた不思議を、みなパロの前で行いなさい。しかし、わ
かれ こころ かれ たみ さ
たしが彼の心をかたくなにするので、彼は民を去らせないであろう。 二二
い しゅ おお
あなたはパロに言いなさい、﹃主はこう仰せられる。イスラエルはわた
こ ちょうし い こ
しの子、わたしの長子である。 二三わたしはあなたに言う。わたしの子
さ つか かれ さ こば
を去らせて、わたしに仕えさせなさい。もし彼を去らせるのを拒むなら
こ ちょうし ころ
ば、わたしはあなたの子、あなたの長子を殺すであろう﹄と﹂。
とちゅう やど とき しゅ かれ あ かれ ころ
二四 さてモーセが途中で宿っている時、主は彼に会って彼を殺そうとさ
とき ひ う いし こがたな と おとこ こ まえ
れた。 二五その時チッポラは火打ち石の小刀を取って、その男の子の前
かわ き あし い
の皮を切り、それをモーセの足につけて言った、
﹁あなたはまことに、わ
ち はなむこ しゅ
たしにとって血の花婿です﹂。 二六そこで、主はモーセをゆるされた。こ
とき ち はなむこ い かつれい
出エジプト記

の時﹁血の花婿です﹂とチッポラが言ったのは割礼のゆえである。
しゅ い あらの い あ かれ
二七 主はアロンに言われた、﹁荒野に行ってモーセに会いなさい﹂。彼は
い かみ やま あ くち じぶん
行って神の山でモーセに会い、これに口づけした。 二八モーセは自分を

14
しゅ ことば めい
つかわされた主のすべての言葉と、命じられたすべてのしるしをアロン
つ い ひとびと ちょうろう
に告げた。 二九そこでモーセとアロンは行ってイスラエルの人々の長 老
あつ しゅ かた ことば
た ち を み な 集 め た。 三〇そ し て ア ロ ン は 主 が モ ー セ に 語 ら れ た 言葉 を、
つ かれ たみ まえ おこな たみ しん
ことごとく告げた。また彼は民の前でしるしを行 ったので、 三一民は信
かれ しゅ ひとびと かえり くる み
じた。彼らは主がイスラエルの人々を顧み、その苦しみを見られたのを
き ふ れいはい
聞き、伏して礼拝した。
第五章
のち い い かみ しゅ
一その後、モーセとアロンは行ってパロに言った、
﹁イスラエルの神、主
い たみ さ あらの まつり
はこう言われる、
﹃わたしの民を去らせ、荒野で、わたしのために祭をさ
出エジプト記

い しゅ なにもの
せなさい﹄と﹂。 二パロは言った、
﹁主とはいったい何者か。わたしがそ
こえ き したが さ
の声に聞き従 ってイスラエルを去らせなければならないのか。わたし
しゅ し さ かれ い
は 主 を 知 ら な い。ま た イ ス ラ エ ル を 去 ら せ は し な い﹂。 三彼 ら は 言 っ

15
かみ あらわ
た、﹁ヘブルびとの神がわたしたちに現れました。どうか、わたしたちを
か みち あらの い かみ しゅ ぎせい
三日の道のりほど荒野に行かせ、わたしたちの神、主に犠牲をささげさ
しゅ えきびょう
せてください。そうしなければ主は疫 病か、つるぎをもって、わたした
なや おう かれ い
ちを悩まされるからです﹂。 四エジプトの王は彼らに言った、
﹁モーセと
たみ はたら
ア ロ ン よ、あ な た が た は、な ぜ 民 に 働 き を や め さ せ よ う と す る の か。
じぶん ろうえき い み いま どみん かず
自分の労役につくがよい﹂。 五パロはまた言った、
﹁見よ、今や土民の数
おお かれ ろうえき やす
は多い。しかも、あなたがたは彼らに労役を休ませようとするのか﹂。 六
ひ たみ お つか もの たみ めい い
その日、パロは民を追い使う者と、民のかしらたちに命じて言った、 七
つく いま
﹁あなたがたは、れんがを作るためのわらを、もはや、今までのように、
たみ あた かれ じぶん い あつ
この民に与えてはならない。彼らに自分で行って、わらを集めさせなさ
まえ つく かず かれ つく
い。 八また前に作っていた、れんがの数どおりに彼らに作らせ、それを
へ かれ もの かれ さけ
出エジプト記

減らしてはならない。彼らはなまけ者だ。それだから、彼らは叫んで、
い かみ ぎせい い
﹃行 っ て わ た し た ち の 神 に 犠牲 を さ さ げ さ せ よ﹄と 言 う の だ。 九こ の
ひとびと ろうえき おも はたら いつわ ことば こころ よ
人々の労役を重くして、働かせ、偽りの言葉に心を寄せさせぬようにし

16
なさい﹂。
たみ お つか もの たみ で い たみ
一〇 そこで民を追い使う者たちと、民のかしらたちは出て行って、民に
い おお あた
言った、
﹁パロはこう仰せられる、
﹃あなたがたに、わらは与えない。 一一
じぶん い み ところ と く はたら
自分で行って、見つかる所から、わらを取って来るがよい。しかし働き
すこ へ たみ ぜん ち
は 少 し も 減 ら し て は な ら な い﹄と﹂。 一二そ こ で 民 は エ ジ プ ト の 全地 に
ち か かぶ あつ お つか もの かれ
散って、わらのかわりに、刈り株を集めた。 一三追い使う者たちは、彼ら
た い とき おな はたら
をせき立てて言った、﹁わらがあった時と同じように、あなたがたの働き
ひ ぶん し あ お つか もの
の、日ごとの分を仕上げなければならない﹂。 一四パロの追い使う者たち
ひとびと うえ た う
がイスラエルの人々の上に立てたかしらたちは、打たれて、
﹁なぜ、あな
つく しごと まえ し あ
たがたは、れんが作りの仕事を、きょうも、前のように仕上げないのか﹂

と言われた。
ひとびと い さけ
出エジプト記

一五 そこで、イスラエルの人々のかしらたちはパロのところに行き、叫ん

で言った、
﹁あなたはなぜ、しもべどもにこんなことをなさるのですか。
あた かれ
一六 しもべどもは、わらを与えられず、しかも彼らはわたしたちに、
﹃れ

17
つく い うえ う つみ
んがは作れ﹄と言うのです。その上、しもべどもは打たれています。罪
たみ い
はあなたの民にあるのです﹂。 一七パロは言った、
﹁あなたがたは、なまけ
もの もの い しゅ ぎせい
者だ、なまけ者だ。それだから、
﹃行って、主に犠牲をささげさせよ﹄と
い い はたら あた
言うのだ。 一八さあ、行って働きなさい。わらは与えないが、なおあなた
さだ かず おさ
がたは定めた数のれんがを納めなければならない﹂。 一九イスラエルの
ひとびと ひ ぶん へ い
人々のかしらたちは、﹁れんがの日ごとの分を減らしてはならない﹂と言
わる じたい し かれ はな
われたので、悪い事態になったことを知った。 二〇彼らがパロを離れて
で とき かれ あ た あ
出てきた時、彼らに会おうとして立っていたモーセとアロンに会ったの
かれ い しゅ
で、 二一彼らに言った、
﹁主があなたがたをごらんになって、さばかれま
けらい
すように。あなたがたは、わたしたちをパロとその家来たちにきらわ
かれ て わた ころ
せ、つるぎを彼らの手に渡して、殺させようとしておられるのです﹂。
しゅ かえ い しゅ たみ
出エジプト記

二二 モーセは主のもとに帰って言った、
﹁主よ、あなたは、なぜこの民を

ひどい目にあわされるのですか。なんのためにわたしをつかわされた
い な かた
のですか。 二三わたしがパロのもとに行って、あなたの名によって語っ

18
かれ たみ め
てからこのかた、彼はこの民をひどい目にあわせるばかりです。また、
たみ すく
あなたは、すこしもあなたの民を救おうとなさいません﹂。
第六章
しゅ い いま なに
一主はモーセに言われた、
﹁今、あなたは、わたしがパロに何をしようと
み つよ て かれ
しているかを見るであろう。すなわちパロは強い手にしいられて、彼ら
さ いな かれ つよ て かれ くに お
を去らせるであろう。否、彼は強い手にしいられて、彼らを国から追い

出すであろう﹂。
かみ い しゅ
二神はモーセに言われた、﹁わたしは主である。 三わたしはアブラハム、
ぜんのう かみ あらわ しゅ な じぶん
イサク、ヤコブには全能の神として現れたが、主という名では、自分を
出エジプト記

かれ し ち かれ
彼 ら に 知 ら せ な か っ た。 四わ た し は ま た カ ナ ン の 地、す な わ ち 彼 ら が
きりゅう きりゅう ち かれ あた けいやく かれ た
寄留したその寄留の地を、彼らに与えるという契約を彼らと立てた。 五
どれい ひとびと
わたしはまた、エジプトびとが奴隷としているイスラエルの人々のうめ

19
き けいやく おも だ
き を 聞 い て、わ た し の 契約 を 思 い 出 し た。 六そ れ ゆ え、イ ス ラ エ ル の
ひとびと い しゅ
人々に言いなさい、﹃わたしは主である。わたしはあなたがたをエジプ
ろうえき した みちび だ どれい つとめ すく の うで おお
トびとの労役の下から導き出し、奴隷の務から救い、また伸べた腕と大
いなるさばきをもって、あなたがたをあがなうであろう。 七わたしはあ
と たみ かみ
なたがたを取ってわたしの民とし、わたしはあなたがたの神となる。わ
ろうえき した みちび だ
たしがエジプトびとの労役の下からあなたがたを導き出すあなたがた
かみ しゅ し
の神、主であることを、あなたがたは知るであろう。 八わたしはアブラ
あた て あ ちか ち
ハム、イサク、ヤコブに与えると手を挙げて誓ったその地にあなたがた
しょゆう あた しゅ
をはいらせ、それを所有として、与えるであろう。わたしは主である﹄
ひとびと かた かれ こころ
と﹂。 九モーセはこのようにイスラエルの人々に語ったが、彼らは心の
いた どれい つとめ き したが
痛みと、きびしい奴隷の務のゆえに、モーセに聞き従わなかった。
しゅ い おう い
出エジプト記

一〇 さて主はモーセに言われた、 一一﹁エジプトの王パロのところに行っ
かれ ひとびと くに さ はな
て、彼がイスラエルの人々をその国から去らせるように話しなさい﹂。 一
しゅ い ひとびと い
二モーセは主にむかって言った、
﹁イスラエルの人々でさえ、わたしの言

20
き かつれい
うことを聞かなかったのに、どうして、くちびるに割礼のないわたしの
い き い しゅ
言うことを、パロが聞き入れましょうか﹂。 一三しかし、主はモーセとア
かた ひとびと おう い
ロンに語って、イスラエルの人々と、エジプトの王パロのもとに行かせ、
ひとびと ち みちび だ めい
イスラエルの人々をエジプトの地から導き出せと命じられた。
かれ せんぞ いえ しゅちょう つぎ
一四 彼 ら の 先祖 の 家 の 首 長 た ち は 次 の と お り で あ る。す な わ ち イ ス ラ
ちょうし こ
エルの長子ルベンの子らはハノク、パル、ヘヅロン、カルミで、これら
いちぞく こ
はルベンの一族である。 一五シメオンの子らはエムエル、ヤミン、オハ
おんな うま
デ、ヤキン、ゾハル、およびカナンの女から生れたシャウルで、これら
いちぞく こ な せだい したが
はシメオンの一族である。 一六レビの子らの名は、その世代に従えば、ゲ
いっしょう ねん
ルション、コハテ、メラリで、レビの一 生は百三十七年であった。 一七ゲ
こ いちぞく こ
ルションの子らの一族はリブニとシメイである。 一八コハテの子らはア
いっしょう ねん
出エジプト記

ムラム、イヅハル、ヘブロン、ウジエルで、コハテの一 生は百三十三年
こ せだい
であった。 一九メラリの子らはマヘリとムシである。これらはその世代
いちぞく ちち いもうと つま
に よ る レ ビ の 一族 で あ る。 二〇ア ム ラ ム は 父 の 妹 ヨ ケ ベ デ を 妻 と し た

21
かのじょ かれ う いっしょう
が、彼女はアロンとモーセを彼に産んだ。アムラムの一 生は百三十七
ねん こ
年であった。 二一イヅハルの子らはコラ、ネペグ、ジクリである。 二二ウジ

エルの子らはミサエル、エルザパン、シテリである。 二三アロンはナショ
しまい むすめ つま かれ
ンの姉妹、アミナダブの娘 エリセバを妻とした。エリセバは彼にナダ
う こ
ブ、アビウ、エレアザル、イタマルを産んだ。 二四コラの子らはアッシル、
いちぞく
エルカナ、アビアサフで、これらはコラびとの一族である。 二五アロンの
こ むすめ つま かのじょ
子エレアザルはプテエルの娘のひとりを妻とした。彼女はピネハスを
かれ う いちぞく せんぞ いえ しゅちょう
彼に産んだ。これらは、その一族によるレビびとの先祖の家の首 長た
ちである。
しゅ ひとびと ぐんだん したが ち みちび
二六 主が、
﹁イスラエルの人々をその軍団に従 って、エジプトの地から導
だ い かれ
き出しなさい﹂と言われたのは、このアロンとモーセである。 二七彼らは
ひとびと みちび だ おう
出エジプト記

イスラエルの人々をエジプトから導き出すことについて、エジプトの王
かた
パロに語ったもので、すなわちこのモーセとアロンである。
しゅ ち かた ひ しゅ い
二八 主がエジプトの地でモーセに語られた日に、 二九主はモーセに言われ

22
しゅ かた
た、﹁わたしは主である。わたしがあなたに語ることは、みなエジプトの
おう かた しゅ い
王パロに語りなさい﹂。 三〇しかしモーセは主にむかって言った、﹁ごら
かつれい もの
んのとおり、わたしは、くちびるに割礼のない者です。パロがどうして
い き
わたしの言うことを聞きいれましょうか﹂。
第七章
しゅ い み たい かみ
一主はモーセに言われた、
﹁見よ、わたしはあなたをパロに対して神のご
きょうだい よげんしゃ
ときものとする。あなたの兄 弟 アロンはあなたの預言者となるであろ
めい かれ つ
う。 二あなたはわたしが命じることを、ことごとく彼に告げなければな
きょうだい つ
ら な い。そ し て あ な た の 兄 弟 ア ロ ン は パ ロ に 告 げ て、イ ス ラ エ ル の
出エジプト記

ひとびと くに さ
人々をその国から去らせるようにさせなければならない。 三しかし、わ
こころ ふ し ぎ
たしはパロの心をかたくなにするので、わたしのしるしと不思議をエジ
くに おお おこな い き
プトの国に多く行 っても、 四パロはあなたがたの言うことを聞かない

23
て うえ くわ おお
であろう。それでわたしは手をエジプトの上に加え、大いなるさばきを
ぐんだん たみ ひとびと
くだして、わたしの軍団、わたしの民イスラエルの人々を、エジプトの
くに みちび だ て うえ の
国から導き出すであろう。 五わたしが手をエジプトの上にさし伸べて、
ひとびと かれ みちび だ とき
イスラエルの人々を彼らのうちから導き出す時、エジプトびとはわたし
しゅ し
が主であることを知るようになるであろう﹂。 六モーセとアロンはその
おこな しゅ かれ めい おこな かれ
ように行 った。すなわち主が彼らに命じられたように行 った。 七彼ら
かた とき さい さい
がパロと語った時、モーセは八十歳、アロンは八十三歳であった。
しゅ い ふ し ぎ
主はモーセとアロンに言われた、 九﹁パロがあなたがたに、
八 ﹃不思議を
しょうこ しめ い とき い
おこなって証拠を示せ﹄と言う時、あなたはアロンに言いなさい、
﹃あな
と まえ な
たのつえを取って、パロの前に投げなさい﹄と。するとそれはへびにな
い しゅ
るであろう﹂。 一〇それで、モーセとアロンはパロのところに行き、主の
めい
出エジプト記

命じられたとおりにおこなった。すなわちアロンはそのつえを、パロと
けらい まえ な
その家来たちの前に投げると、それはへびになった。 一一そこでパロも
ち しゃ まほうつかい め よ まじゅつ し
また知者と魔法使を召し寄せた。これらのエジプトの魔術師らもまた、

24
ひじゅつ おな おこな かれ
その秘術をもって同じように行 った。 一二すなわち彼らは、おのおのそ
な かれ
のつえを投げたが、それらはへびになった。しかし、アロンのつえは彼
こころ
らのつえを、のみつくした。 一三けれども、パロの心はかたくなになっ
しゅ い かれ い き
て、主の言われたように、彼らの言うことを聞かなかった。
しゅ い こころ かれ たみ さ
一四 主はモーセに言われた、
﹁パロの心はかたくなで、彼は民を去らせる
こば あさ い
ことを拒んでいる。 一五あなたは、あすの朝、パロのところに行きなさ
み かれ みず で かわ
い。見よ、彼は水のところに出ている。あなたは、へびに変ったあのつ
て と かわ きし た かれ あ かれ い
えを手に執り、ナイル川の岸に立って彼に会い、一六そして彼に言いなさ
かみ しゅ い
い、﹃ヘブルびとの神、主がわたしをあなたにつかわして言われます、﹁わ
たみ さ あらの つか
たしの民を去らせ、荒野で、わたしに仕えるようにさせよ﹂と。しかし
いま き しゅ おお
今もなお、あなたが聞きいれようとされないので、一七主はこう仰せられ
しゅ し
出エジプト記

ます、
﹁これによってわたしが主であることを、あなたは知るでしょう。
み て かわ みず う ち かわ
見よ、わたしが手にあるつえでナイル川の水を打つと、それは血に変る
かわ うお し かわ くさ かわ
であろう。 一八そして川の魚は死に、川は臭くなり、エジプトびとは川の

25
みず の しゅ い
水を飲むことをいとうであろう﹂﹄と﹂。 一九主はまたモーセに言われた、
い と て
﹁あなたはアロンに言いなさい、
﹃あなたのつえを執って、手をエジプト
みず うえ かわ うえ なが うえ いけ うえ みず うえ
の水の上、川の上、流れの上、池の上、またそのすべての水たまりの上
の ち ぜんこく き
にさし伸べて、それを血にならせなさい。エジプト全国にわたって、木
うつわ いし うつわ ち
の器、石の器にも、血があるようになるでしょう﹄と﹂。
しゅ めい かれ
二〇モーセとアロンは主の命じられたようにおこなった。すなわち、彼
けらい め まえ かわ みず う
はパロとその家来たちの目の前で、つえをあげてナイル川の水を打つ
かわ みず ち かわ かわ うお し かわ くさ
と、川の水は、ことごとく血に変った。 二一それで川の魚は死に、川は臭
かわ みず の
くなり、エジプトびとは川の水を飲むことができなくなった。そしてエ
ぜんこく ち まじゅつ し ひじゅつ
ジ プ ト 全国 に わ た っ て 血 が あ っ た。 二 二エ ジ プ ト の 魔術師 ら も 秘術 を
おな しゅ い こころ
もって同じようにおこなった。しかし、主の言われたように、パロの心
かれ い き み
出エジプト記

はかたくなになり、彼らの言うことを聞かなかった。 二三パロは身をめ
いえ い こころ と
ぐらして家に入り、またこのことをも心に留めなかった。 二四すべての
かわ みず の の みず え
エジプトびとはナイル川の水が飲めなかったので、飲む水を得ようと、

26
かわ ほ しゅ かわ う なぬか へ
川のまわりを掘った。 二五主がナイル川を打たれてのち七日を経た。
第八章
しゅ い い い
主はモーセに言われた、
一 ﹁あなたはパロのところに行って言いなさい、
しゅ おお たみ さ つか
﹃主はこう仰せられます、
﹁わたしの民を去らせて、わたしに仕えさせな
さ こば み
さい。 二しかし、去らせることを拒むならば、見よ、わたしは、かえる
りょうど う かわ
をもって、あなたの領土を、ことごとく撃つであろう。 三ナイル川にか
むら いえ しんしつ しんだい
えるが群がり、のぼって、あなたの家、あなたの寝室にはいり、寝台に
けらい たみ いえ
のぼり、あなたの家来と民の家にはいり、またあなたのかまどや、こね
はち たみ けらい
鉢にはいり、 四あなたと、あなたの民と、すべての家来のからだに、は
出エジプト記

あ しゅ い
い上がるであろう﹂と﹄﹂。 五主はモーセに言われた、
﹁あなたはアロンに
い も て かわ うえ なが うえ いけ うえ の
言いなさい、
﹃つえを持って、手を川の上、流れの上、、池の上にさし伸
ち て
べ、かえるをエジプトの地にのぼらせなさい﹄と﹂。 六アロンが手をエジ

27
みず うえ の ち
プトの水の上にさし伸べたので、かえるはのぼってエジプトの地をお
まじゅつ し ひじゅつ おな おこな
おった。 七魔術師らも秘術をもって同じように行い、かえるをエジプト

の地にのぼらせた。
め い
八パロはモーセとアロンを召して言った、
﹁かえるをわたしと、わたしの
たみ と さ しゅ ねが たみ
民から取り去るように主に願ってください。そのときわたしはこの民
さ しゅ ぎせい
を 去 ら せ て、主 に 犠牲 を さ さ げ さ せ る で し ょ う﹂。 九モ ー セ は パ ロ に
い けらい たみ
言った、
﹁あなたと、あなたの家来と、あなたの民のために、わたしがい
ねが いえ た かわ
つ願って、このかえるを、あなたとあなたの家から断って、ナイル川だ
い みょうにち
けにとどまらせるべきか、きめてください﹂。 一〇パロは言った、﹁明 日﹂。
い おお かみ しゅ なら
モーセは言った、
﹁仰せのとおりになって、わたしたちの神、主に並ぶも

ののないことを、あなたが知られますように。 一一そして、かえるはあな
いえ けらい たみ はな かわ
出エジプト記

たと、あなたの家と、あなたの家来と、あなたの民を離れてナイル川に
はな
だけとどまるでしょう﹂。 一二こうしてモーセとアロンはパロを離れて
で しゅ こと しゅ よ
出た。モーセは主がパロにつかわされたかえるの事について、主に呼び

28
もと しゅ いえ にわ
求めたので、 一三主はモーセのことばのようにされ、かえるは家から、庭
はたけ し た やま やま つ ち
から、また畑から死に絶えた。 一四これをひと山ひと山に積んだので、地
くさ いき み しゅ
は臭くなった。 一五ところがパロは息つくひまのできたのを見て、主が
い こころ かれ い き
言われたように、その心をかたくなにして彼らの言うことを聞かなかっ
た。
しゅ い い
一六 主はモーセに言われた、﹁あなたはアロンに言いなさい、﹃あなたのつ
の ち う ぜんこく
えをさし伸べて地のちりを打ち、それをエジプトの全国にわたって、ぶ
かれ おこな
よとならせなさい﹄と﹂。 一七彼らはそのように行 った。すなわちアロン
て の ち う ひと
はそのつえをとって手をさし伸べ、地のちりを打ったので、ぶよは人と
かちく ち ぜんこく
家畜についた。すなわち、地のちりはみなエジプトの全国にわたって、
まじゅつ し ひじゅつ おな おこな だ
ぶよとなった。 一八魔術師らも秘術をもって同じように行い、ぶよを出
かれ ひと かちく
出エジプト記

そうとしたが、彼らにはできなかった。ぶよが人と家畜についたので、一
まじゅつ し い かみ ゆび しゅ い
魔術師らはパロに言った、
九 ﹁これは神の指です﹂。しかし主の言われた
こころ かれ き
ように、パロの心はかたくなになって、彼らのいうことを聞かなかった。

29
しゅ い あさはや お まえ た
主はモーセに言われた、
二〇 ﹁あなたは朝早く起きてパロの前に立ちなさ
かれ みず で かれ い しゅ
い。ちょうど彼は水のところに出ているから彼に言いなさい、﹃主はこ
おお たみ さ つか
う仰せられる、﹁わたしの民を去らせて、わたしに仕えさせなさい。 二一
たみ さ
あなたがわたしの民を去らせないならば、わたしは、あなたとあなたの
けらい たみ いえ む
家来と、あなたの民とあなたの家とに、あぶの群れをつかわすであろう。
いえいえ む み かれ ふ ち
エジプトびとの家々は、あぶの群れで満ち、彼らの踏む地もまた、そう
ひ たみ す ち く
なるであろう。 二二その日わたしは、わたしの民の住むゴセンの地を区
べっ む い くに なか しゅ
別して、そこにあぶの群れを入れないであろう。国の中でわたしが主で
し たみ
あることをあなたが知るためである。 二三わたしはわたしの民とあなた
たみ あいだ くべつ おこ しゅ
の民の間に区別をおく。このしるしは、あす起るであろう﹂と﹄﹂。 二四主
いえ けらい
はそのようにされたので、おびただしいあぶが、パロの家と、その家来
いえ ぜんこく ち む がい
出エジプト記

の家と、エジプトの全国にはいってきて、地はあぶの群れのために害を
うけた。
め い い
そこで、パロはモーセとアロンを召して言った、
二五 ﹁あなたがたは行っ

30
くに うち かみ ぎせい
てこの国の内で、あなたがたの神に犠牲をささげなさい﹂。 二六モーセは
い い
言った、﹁そうすることはできません。わたしたちはエジプトびとの忌
ぎせい かみ しゅ
むものを犠牲として、わたしたちの神、主にささげるからです。もし、エ
め まえ かれ い ぎせい かれ
ジプトびとの目の前で、彼らの忌むものを犠牲にささげるならば、彼ら
いし う か みち
はわたしたちを石で打たないでしょうか。 二七わたしたちは三日の道の
あらの かみ しゅ ぎせい しゅ
りほど、荒野にはいって、わたしたちの神、主に犠牲をささげ、主がわ
めい い
たしたちに命じられるようにしなければなりません﹂。 二八パロは言っ
さ あらの かみ しゅ ぎせい
た、
﹁わたしはあなたがたを去らせ、荒野で、あなたがたの神、主に犠牲
とお い
をささげさせよう。ただあまり遠くへ行ってはならない。わたしのた
きがん い
めに祈願しなさい﹂。 二九モーセは言った、﹁わたしはあなたのもとから
で い しゅ きがん む けらい
出て行って主に祈願しましょう。あすあぶの群れがパロと、その家来
たみ はな あざむ たみ しゅ ぎせい
出エジプト記

と、その民から離れるでしょう。ただパロはまた欺いて、民が主に犠牲

をささげに行くのをとめないようにしてください﹂。 三〇こうしてモー
で しゅ きがん しゅ ことば
セはパロのもとを出て、主に祈願したので、三一主はモーセの言葉のよう

31
む けらい たみ と
にされた。すなわち、あぶの群れをパロと、その家来と、その民から取
さ のこ
り去られたので、一つも残らなかった。 三二しかしパロはこんどもまた、
こころ たみ さ
その心をかたくなにして民を去らせなかった。
第九章
しゅ い い かれ い
主はモーセに言われた、
一 ﹁パロのもとに行って、彼に言いなさい、
﹃ヘ
かみ しゅ おお たみ さ
ブルびとの神、主はこう仰せられる、
﹁わたしの民を去らせて、わたしに
つか かれ さ こば かれ
仕えさせなさい。 二あなたがもし彼らを去らせることを拒んで、なお彼
と しゅ て もっと はげ えきびょう の
らを留めおくならば、 三主の手は最も激しい疫 病をもって、野にいるあ
かちく うま うし ひつじ うえ のぞ
なたの家畜、すなわち馬、ろば、らくだ、牛、 羊の上に臨むであろう。
出エジプト記

しゅ かちく かちく くべつ


しかし、主はイスラエルの家畜と、エジプトの家畜を区別され、すべ

ひとびと ぞく とう し
てイスラエルの人々に属するものには一頭も死ぬものがないであろう﹂
しゅ とき さだ おお しゅ くに
と﹄﹂。 五主は、また、時を定めて仰せられた、
﹁あす、主はこのことを国

32
おこな ひ しゅ おこな
に行うであろう﹂。 六あくる日、主はこのことを行われたので、エジプト
かちく し ひとびと かちく とう し
びとの家畜はみな死んだ。しかし、イスラエルの人々の家畜は一頭も死
ひと み かちく
ななかった。 七パロは人をつかわして見させたが、イスラエルの家畜は
とう し こころ たみ さ
一頭も死んでいなかった。それでもパロの心はかたくなで、民を去らせ
なかった。
しゅ い りょう
主はモーセとアロンに言われた、
八 ﹁あなたがたは、かまどのすすを両
て と め まえ てん ち
手いっぱい取り、それをモーセはパロの目の前で天にむかって、まき散
ぜんこく こま
らしなさい。 九それはエジプトの全国にわたって、細かいちりとなり、
ぜんこく ひと けもの つ で
エジプト全国で人と獣に付いて、うみの出るはれものとなるであろう﹂。
かれ と まえ た てん
一〇 そこで彼らは、かまどのすすを取ってパロの前に立ち、モーセは天に
ち ひと けもの つ で
むかってこれをまき散らしたので、人と獣に付いて、うみの出るはれも
まじゅつ し まえ た
出エジプト記

のとなった。 一一魔術師らは、はれもののためにモーセの前に立つこと
まじゅつ し しょう
ができなかった。はれものが魔術師らと、すべてのエジプトびとに生じ
しゅ こころ かれ
たからである。 一二しかし、主はパロの心をかたくなにされたので、彼は

33
しゅ かた かれ い き
主がモーセに語られたように、彼らの言うことを聞かなかった。
しゅ い あさはや お まえ た かれ
一三 主はまたモーセに言われた、
﹁朝早く起き、パロの前に立って、彼に
い かみ しゅ おお たみ さ
言いなさい、
﹃ヘブルびとの神、主はこう仰せられる、
﹁わたしの民を去
つか
らせて、わたしに仕えさせなさい。 一四わたしは、こんどは、もろもろの
わざわい けらい たみ なら
災を、あなたと、あなたの家来と、あなたの民にくだし、わたしに並ぶ
ぜん ち し て
ものが全地にないことを知らせるであろう。 一五わたしがもし、手をさ
の えきびょう たみ う
し伸べ、疫 病をもって、あなたと、あなたの民を打っていたならば、あ
ち た ほろ
なたは地から断ち滅ぼされていたであろう。 一六しかし、わたしがあな
ちから み
たをながらえさせたのは、あなたにわたしの力を見させるため、そして、
な ぜん ち の つた
わ た し の 名 が 全地 に 宣 べ 伝 え ら れ る た め に ほ か な ら な い。 一七そ れ に、
たみ たか かれ さ
あなたはなお、わたしの民にむかって、おのれを高くし、彼らを去らせ
いま おそ おお ひょう
出エジプト記

ようとしない。 一八ゆえに、あすの今ごろ、わたしは恐ろしく大きな雹を
ふ くに はじ ひ いま
降らせるであろう。それはエジプトの国が始まった日から今まで、かつ
ひと
てなかったほどのものである。 一九それゆえ、いま、人をやって、あなた

34
かちく の
の家畜と、あなたが野にもっているすべてのものを、のがれさせなさい。
ひと けもの の いえ かえ ふ ひょう う し
人も獣も、すべて野にあって家に帰らないものは降る雹に打たれて死ぬ
けらい しゅ ことば もの
であろう﹂と﹄﹂。 二〇パロの家来のうち、主の言葉をおそれる者は、その
かちく いえ しゅ ことば い
しもべと家畜を家にのがれさせたが、 二一主の言葉を意にとめないもの
かちく の のこ
は、そのしもべと家畜を野に残しておいた。
しゅ い て てん の
主はモーセに言われた、
二二 ﹁あなたの手を天にむかってさし伸べ、エジ
ぜんこく ち ひと けもの はたけ あおもの
プトの全国にわたって、エジプトの地にいる人と獣と畑のすべての青物
うえ ひょう ふ てん の
の上に雹を降らせなさい﹂。 二三モーセが天にむかってつえをさし伸べ
しゅ かみなり ひょう ひ ち くだ
ると、主は雷と雹をおくられ、火は地にむかって、はせ下った。こうし
しゅ ひょう ち ふ ひょう ふ ひょう あいだ
て主は、 雹をエジプトの地に降らされた。 二四そして雹が降り、 雹の間
ひ わた ひょう おそ おお ぜんこく くに
に火がひらめき渡った。 雹は恐ろしく大きく、エジプト全国には、国を
ひょう ぜんこく
出エジプト記

なしてこのかた、かつてないものであった。 二五 雹はエジプト全国にわ
はたけ ひと けもの う ひょう はたけ あおもの
たって、すべて畑にいる人と獣を打った。 雹はまた畑のすべての青物
う の き お くだ ひとびと
を打ち、野のもろもろの木を折り砕いた。 二六ただイスラエルの人々の

35
ち ひょう ふ
いたゴセンの地には、 雹が降らなかった。
ひと め い
二七そこで、パロは人をつかわし、モーセとアロンを召して言った、
﹁わ
つみ おか しゅ ただ たみ わる
たしはこんどは罪を犯した。主は正しく、わたしと、わたしの民は悪い。
しゅ きがん かみなり ひょう
二八主に祈願してください。この雷と雹はもうじゅうぶんです。わたし

は あ な た が た を 去 ら せ ま す。も は や と ど ま ら な く て も よ ろ し い﹂。 二九
かれ い まち で しゅ
モーセは彼に言った、
﹁わたしは町を出ると、すぐ、主にむかってわたし
て の かみなり ひょう ふ
の手を伸べひろげます。すると雷はやみ、雹はもはや降らなくなり、あ
ち しゅ し
なたは、地が主のものであることを知られましょう。 三〇しかし、あなた
けらい かみ しゅ おそ し
とあなたの家来たちは、なお、神なる主を恐れないことを、わたしは知っ
あ ま おおむぎ う たお おおむぎ ほ だ あ ま
ています﹂。 三一︱︱亜麻と大麦は打ち倒された。大麦は穂を出し、亜麻
はな さ こむぎ むぎ
は花が咲いていたからである。 三二小麦とスペルタ麦はおくてであるた
う たお さ まち で
出エジプト記

め打ち倒されなかった。︱︱ 三三 モーセはパロのもとを去り、町を出て、
しゅ て の かみなり ひょう あめ ち ふ
主にむかって手を伸べひろげたので、 雷と雹はやみ、雨は地に降らなく
あめ ひょう かみなり み つみ
なった。 三四ところがパロは雨と雹と雷がやんだのを見て、またも罪を

36
おか こころ かれ けらい
犯し、心をかたくなにした。彼も家来も、そうであった。 三五すなわちパ
こころ しゅ かた
ロは心をかたくなにし、主がモーセによって語られたように、イスラエ
ひとびと さ
ルの人々を去らせなかった。
第一〇章
しゅ い い
そこで、主はモーセに言われた、
一 ﹁パロのもとに行きなさい。わたしは
かれ こころ けらい こころ
彼の心とその家来たちの心をかたくなにした。これは、わたしがこれら
かれ なか おこな
のしるしを、彼らの中に行うためである。 二また、わたしがエジプトび
かれ なか おこな
とをあしらったこと、また彼らの中にわたしが行 ったしるしを、あなた
こ まご みみ かた つた
がたが、子や孫の耳に語り伝えるためである。そしてあなたがたは、わ
出エジプト記

しゅ し
たしが主であることを知るであろう﹂。
い かれ い かみ
モーセとアロンはパロのもとに行って彼に言った、
三 ﹁ヘブルびとの神、
しゅ おお くっぷく こば
主はこう仰せられる、
﹃いつまで、あなたは、わたしに屈伏することを拒

37
たみ さ つか
むのですか。民を去らせて、わたしに仕えさせなさい。 四もし、わたし
たみ さ こば み
の民を去らせることを拒むならば、見よ、あす、わたしはいなごを、あ
りょうど ち ひと
なたの領土にはいらせるであろう。 五それは地のおもてをおおい、人が
ち み ひょう まぬか のこ
地を見ることもできないほどになるであろう。そして雹を免れて、残さ
く つく の き く つく
れているものを食い尽し、野にはえているあなたがたの木をみな食い尽
いえ けらい いえ
すであろう。 六またそれはあなたの家とあなたのすべての家来の家、お
いえ み
よび、すべてのエジプトびとの家に満ちるであろう。このようなこと
ちち そ ふ かれ ちじょう ひ
は、あなたの父たちも、また、祖父たちも、彼らが地上にあった日から
こんにち いた み かれ み
今日に至るまで、かつて見たことのないものである﹄と﹂。そして彼は身
で い
をめぐらして、パロのもとを出て行った。
けらい おう い ひと
パロの家来たちは王に言った、
七 ﹁いつまで、この人はわれわれのわなと
ひとびと さ かれ かみ しゅ つか
出エジプト記

なるのでしょう。この人々を去らせ、彼らの神なる主に仕えさせては、
ほろ き
どうでしょう。エジプトが滅びてしまうことに、まだ気づかれないので
め だ
すか﹂。 八そこで、モーセとアロンは、また、パロのもとに召し出された。

38
かれ い い かみ しゅ つか
パロは彼らに言った、
﹁行って、あなたがたの神、主に仕えなさい。しか
い い おさな もの
し、行くものはだれだれか﹂。 九モーセは言った、
﹁わたしたちは幼い者
お もの い むすめ たずさ ひつじ うし つ い
も、老いた者も行きます。むすこも娘も携え、 羊も牛も連れて行きま
しゅ まつり と おこな
す。わたしたちは主の祭を執り行わなければならないのですから﹂。 一〇
かれ い まんいち こども つ
パロは彼らに言った、
﹁万一、わたしが、あなたがたに子供を連れてまで
さ しゅ とも
去らせるようなことがあれば、主があなたがたと共にいますがよい。あ
わる
なたがたは悪いたくらみをしている。 一一それはいけない。あなたがた
おとこ い しゅ つか ようきゅう
は男だけ行って主に仕えるがよい。それが、あなたがたの要 求であっ
かれ まえ お だ
た﹂。彼らは、ついにパロの前から追い出された。
しゅ い て ち うえ の
一二 主はモーセに言われた、
﹁あなたの手をエジプトの地の上にさし伸べ
ち ち あおもの ひょう
て、エジプトの地にいなごをのぼらせ、地のすべての青物、すなわち、雹
う のこ た
出エジプト記

が打ち残したものを、ことごとく食べさせなさい﹂。 一三そこでモーセは
ち うえ の しゅ しゅうじつ しゅうや ひがしかぜ
エジプトの地の上に、つえをさし伸べたので、主は終 日、終夜、 東 風
ち ふ あさ ひがしかぜ はこ
を地に吹かせられた。朝となって、 東 風は、いなごを運んできた。 一四

39
ぜんこく ぜんりょうど かず
いなごはエジプト全国にのぞみ、エジプトの全領土にとどまり、その数
おお まえ のち
がはなはだ多く、このようないなごは前にもなく、また後にもないであ
ち ぜんめん ち くら
ろう。 一五いなごは地の全面をおおったので、地は暗くなった。そして
ち あおもの ひょう う のこ き み た
地のすべての青物と、 雹の打ち残した木の実を、ことごとく食べたの
ぜんこく き はたけ あおもの みどり もの なに
で、エジプト全国にわたって、木にも畑の青物にも、 緑の物とては何も
のこ いそ め い
残らなかった。 一六そこで、パロは、急いでモーセとアロンを召して言っ
かみ しゅ たい たい
た、
﹁わたしは、あなたがたの神、主に対し、また、あなたがたに対して
つみ おか ど つみ
罪を犯しました。 一七それで、どうか、もう一度だけ、わたしの罪をゆる
かみ しゅ きがん し
してください。そしてあなたがたの神、主に祈願して、ただ、この死を
はな かれ で
わたしから離れさせてください﹂。 一八そこで彼はパロのところから出
しゅ きがん しゅ つよ にしかぜ かわ
て、主に祈願したので、 一九主は、はなはだ強い西風に変らせ、いなごを
ふ あ こうかい お ぜんど
出エジプト記

吹き上げて、これを紅海に追いやられたので、エジプト全土には一つの
のこ しゅ こころ
いなごも残らなかった。 二〇しかし、主がパロの心をかたくなにされた
かれ ひとびと さ
ので、彼はイスラエルの人々を去らせなかった。

40
しゅ い てん て の
主はまたモーセに言われた、﹁天にむかってあなたの手をさし伸べ、
二一
くに
エジプトの国に、くらやみをこさせなさい。そのくらやみは、さわれる
てん て の こ
ほどである﹂。 二二モーセが天にむかって手をさし伸べたので、濃いくら
ぜんこく のぞ か およ か あいだ ひとびと たがい み
やみは、エジプト全国に臨み三日に及んだ。 二三三日の間、人々は互に見
ところ た もの
ることもできず、まただれもその所から立つ者もなかった。しかし、イ
ひとびと す ところ ひかり
スラエルの人々には、みな、その住む所に光があった。 二四そこでパロは
め い い しゅ つか
モーセを召して言った、﹁あなたがたは行って主に仕えなさい。あなた
こども つ い ひつじ うし のこ
がたの子供も連れて行ってもよろしい。ただ、あなたがたの羊と牛は残
お い
して置きなさい﹂。 二五しかし、モーセは言った、
﹁あなたは、また、わた
かみ しゅ ぎせい はんさい もの
したちの神、主にささげる犠牲と燔祭の物をも、わたしたちにくださら
かちく つ い
なければなりません。 二六わたしたちは家畜も連れて行きます。ひずめ
のこ と
出エジプト記

一つも残しません。わたしたちは、そのうちから取って、わたしたちの
かみ しゅ つか ば しょ い
神、主に仕えねばなりません。またわたしたちは、その場所に行くまで
なに しゅ つか し
は、何をもって、主に仕えるべきかを知らないからです﹂。 二七けれども、

41
しゅ こころ かれ さ
主がパロの心をかたくなにされたので、パロは彼らを去らせようとしな
い ところ さ
か っ た。 二八そ れ で パ ロ は モ ー セ に 言 っ た、﹁わ た し の 所 か ら 去 り な さ
こころ かお ど み かお み
い。 心して、わたしの顔は二度と見てはならない。わたしの顔を見る
ひ いのち い おお
日には、あなたの命はないであろう﹂。 二九モーセは言った、
﹁よくぞ仰せ
ど かお み
られました。わたしは、二度と、あなたの顔を見ないでしょう﹂。
第一一章
しゅ い わざわい
一主はモーセに言われた、
﹁わたしは、なお一つの災を、パロとエジプト
うえ のち かれ さ
の上にくだし、その後、彼はあなたがたをここから去らせるであろう。
かれ さ かれ お だ
彼が去らせるとき、彼はあなたがたを、ことごとくここから追い出すで
出エジプト記

たみ みみ かた おとこ となり おとこ おんな となり おんな


あろう。 二あなたは民の耳に語って、 男は隣の男から、 女は隣の女か
ぎん かざ きん かざ こ もと しゅ たみ
ら、それぞれ銀の飾り、金の飾りを請い求めさせなさい﹂。 三主は民にエ
こうい え ひと くに
ジプトびとの好意を得させられた。またモーセその人は、エジプトの国

42
けらい め たみ め おお み
で、パロの家来たちの目と民の目とに、はなはだ大いなるものと見えた。
い しゅ おお ま よ な か
モーセは言った、
四 ﹁主はこう仰せられる、
﹃真夜中ごろ、わたしはエジ
なか で い くに くらい
プトの中へ出て行くであろう。 五エジプトの国のうちのういごは、位に
ざ のち
座するパロのういごをはじめ、ひきうすの後にいる、はしためのういご
いた し かちく し
に至るまで、みな死に、また家畜のういごもみな死ぬであろう。 六そし
ぜんこく おお さけ おこ
てエジプト全国に大いなる叫びが起るであろう。このようなことはか
つてなく、また、ふたたびないであろう﹄と。 七しかし、すべて、イス
ひとびと ひと けもの いぬ
ラエルの人々にむかっては、人にむかっても、 獣にむかっても、犬さえ
した な しゅ
その舌を鳴らさないであろう。これによって主がエジプトびととイス
あいだ くべつ し
ラエルびととの間の区別をされるのを、あなたがたは知るであろう。 八
けらい くだ
これらのあなたの家来たちは、みな、わたしのもとに下ってきて、ひれ
ふ い したが たみ で い
出エジプト記

伏して言うであろう、﹃あなたもあなたに従う民もみな出て行ってくだ
のち で い かれ はげ いか
さい﹄と。その後、わたしは出て行きます﹂。彼は激しく怒ってパロのも
で い しゅ い い
とから出て行った。 九主はモーセに言われた、﹁パロはあなたがたの言

43
き くに ふ し ぎ
うことを聞かないであろう。それゆえ、わたしはエジプトの国に不思議
ま くわ
を増し加えるであろう﹂。
ふ し ぎ まえ い しゅ
一〇 モーセとアロンは、すべてこれらの不思議をパロの前に行ったが、主
こころ かれ ひとびと くに
がパロの心をかたくなにされたので、彼はイスラエルの人々をその国か

ら去らせなかった。
第一二章
しゅ くに つ い つき
一主はエジプトの国で、モーセとアロンに告げて言われた、二﹁この月を
はじ つき とし しょうがつ
あなたがたの初めの月とし、これを年の正 月としなさい。 三あなたがた
ぜんかいしゅう い つき か
はイスラエルの全 会 衆に言いなさい、
﹃この月の十日におのおの、その
出エジプト記

ちち いえ こひつじ と かぞく こひつじ


父の家ごとに小羊を取らなければならない。すなわち、一家族に小羊一
とう と かぞく すく とう こひつじ た
頭 を 取 ら な け れ ば な ら な い。 四も し 家族 が 少 な く て 一 頭 の 小羊 を 食 べ
いえ となり ひと とも にんずう したが とう と
きれないときは、家のすぐ隣の人と共に、人数に従 って一頭を取り、お

44
た おう こひつじ みはか
の お の 食 べ る と こ ろ に 応 じ て、小羊 を 見計 ら わ な け れ ば な ら な い。 五
こひつじ きず さい おす ひつじ
小羊は傷のないもので、一歳の雄でなければならない。 羊またはやぎ
と つき か
のうちから、これを取らなければならない。 六そしてこの月の十四日ま
まも お かいしゅう ゆうぐれ
で、これを守って置き、イスラエルの会 衆はみな、夕暮にこれをほふり、
ち と こひつじ しょく いえ いりぐち はしら
七その血を取り、小羊を食する家の入口の二つの柱と、かもいにそれを
ぬ よる にく ひ や た たね
塗らなければならない。 八そしてその夜、その肉を火に焼いて食べ、種
い にが な そ た なま みず に
入れぬパンと苦菜を添えて食べなければならない。 九生でも、水で煮て
た ひ や あたま あし ないぞう とも た
も、食べてはならない。火に焼いて、その頭を足と内臓と共に食べなけ
あさ のこ あさ のこ
ればならない。 一〇朝までそれを残しておいてはならない。朝まで残る
ひ や
ものは火で焼きつくさなければならない。 一一あなたがたは、こうして、
た こし ひ あし
それを食べなければならない。すなわち腰を引きからげ、足にくつをは
て と いそ た しゅ
出エジプト記

き、手につえを取って、急いでそれを食べなければならない。これは主
すぎこし よる くに めぐ
の過越である。 一二その夜わたしはエジプトの国を巡って、エジプトの
くに ひと けもの う
国におる人と獣との、すべてのういごを打ち、またエジプトのすべての

45
かみがみ しんぱん おこな しゅ ち
神々に審判を行うであろう。わたしは主である。 一三その血はあなたが
いえいえ ち
たのおる家々で、あなたがたのために、しるしとなり、わたしはその血
み ところ す こ くに
を見て、あなたがたの所を過ぎ越すであろう。わたしがエジプトの国を
う とき わざわい のぞ ほろ
撃つ時、 災が臨んで、あなたがたを滅ぼすことはないであろう。
ひ きねん しゅ まつり
一四 この日はあなたがたに記念となり、あなたがたは主の祭としてこれ
まも よ よ えいきゅう さだ まも
を 守 り、代々、 永 久 の 定 め と し て こ れ を 守 ら な け れ ば な ら な い。 一 五
なぬか あいだ たね い た はじ
七日の間あなたがたは種入れぬパンを食べなければならない。その初
ひ いえ だね す のぞ だい にち だい
めの日に家からパン種を取り除かなければならない。第一日から第七
にち たね い た ひと た
日までに、種を入れたパンを食べる人はみなイスラエルから断たれるで
だい にち せいかい だい にち せいかい ひら
あろう。 一六かつ、あなたがたは第一日に聖会を、また第七日に聖会を開
ひ しごと
かなければならない。これらの日には、なんの仕事もしてはならない。
た つく
出エジプト記

ただ、おのおのの食べものだけは作ることができる。 一七あなたがたは、
たね い まつり まも ひ
種入れぬパンの祭を守らなければならない。ちょうど、この日、わたし
ぐんぜい くに みちび だ
があなたがたの軍勢をエジプトの国から導き出したからである。それ

46
よ よ えいきゅう さだ ひ まも
ゆえ、あなたがたは代々、永 久の定めとして、その日を守らなければな
しょうがつ つき か ゆうがた たね い
らない。 一八正 月に、その月の十四日の夕方に、あなたがたは種入れぬ
た つき にち ゆうがた つづ
パンを食べ、その月の二十一日の夕方まで続けなければならない。 一九
なぬか あいだ いえ だね お たね い た もの
七日の間、家にパン種を置いてはならない。種を入れたものを食べる者
きりゅう た こ く じん くに うま もの
は、寄留の他国人であれ、国に生れた者であれ、すべて、イスラエルの
かいしゅう た たね い なに た
会 衆から断たれるであろう。 二〇あなたがたは種を入れたものは何も食
たね い
べてはならない。すべてあなたがたのすまいにおいて種入れぬパンを

食べなければならない﹄﹂。
ちょうろう よ よ い
二一 そこでモーセはイスラエルの長 老をみな呼び寄せて言った、﹁あな
いそ かぞく こひつじ と すぎこし けもの
たがたは急いで家族ごとに一つの小羊を取り、その過越の獣をほふらな
たば と はち ち ひた はち ち
ければならない。 二二また一束のヒソプを取って鉢の血に浸し、鉢の血
いりぐち はしら あさ
出エジプト記

を、かもいと入口の二つの柱につけなければならない。朝まであなたが
いえ と そと で しゅ い めぐ
たは、ひとりも家の戸の外に出てはならない。 二三主が行き巡ってエジ
う いりぐち はしら ち み しゅ
プトびとを撃たれるとき、かもいと入口の二つの柱にある血を見て、主

47
いりぐち す こ ほろ もの いえ う
はその入口を過ぎ越し、滅ぼす者が、あなたがたの家にはいって、撃つ
ゆる こと しそん
のを許されないであろう。 二四あなたがたはこの事を、あなたと子孫の
さだ えいきゅう まも
ための定めとして、 永 久に守らなければならない。 二五あなたがたは、
しゅ やくそく たまわ ち いた ぎしき まも
主が約束されたように、あなたがたに賜る地に至るとき、この儀式を守
こども ぎしき
らなければならない。 二六もし、あなたがたの子供たちが﹃この儀式はど
い み と い
んな意味ですか﹄と問うならば、 二七あなたがたは言いなさい、
﹃これは
しゅ すぎこし ぎせい う
主の過越の犠牲である。エジプトびとを撃たれたとき、エジプトにいた
ひとびと いえ す こ いえ すく
イスラエルの人々の家を過ぎ越して、われわれの家を救われたのであ
たみ ふ れいはい
る﹄﹂。民はこのとき、伏して礼拝した。
ひとびと い しゅ
イスラエルの人々は行ってそのようにした。すなわち主がモーセと
二八
めい
アロンに命じられたようにした。
よなか しゅ くに くらい ざ
出エジプト記

夜中になって主はエジプトの国の、すべてのういご、すなわち位に座
二九
ち か ほ りょ
するパロのういごから、地下のひとやにおる捕虜のういごにいたるま
かちく う けらい
で、また、すべての家畜のういごを撃たれた。 三〇それでパロとその家来

48
よる お おお
およびエジプトびとはみな夜のうちに起きあがり、エジプトに大いなる
さけ しにん いえ
叫びがあった。死人のない家がなかったからである。 三一そこでパロは
よる よ よ い
夜のうちにモーセとアロンを呼び寄せて言った、﹁あなたがたとイスラ
ひとびと た たみ なか で い
エルの人々は立って、わたしの民の中から出て行くがよい。そしてあな
い い しゅ つか い
たがたの言うように、行って主に仕えなさい。 三二あなたがたの言うよ
ひつじ うし と い しゅくふく
うに羊と牛とを取って行きなさい。また、わたしを祝 福しなさい﹂。
たみ た くに さ
こうしてエジプトびとは民をせき立てて、すみやかに国を去らせよ
三三
かれ し おも たみ
うとした。彼らは﹁われわれはみな死ぬ﹂と思ったからである。 三四民は
だね い ね こ きもの つつ かた お
まだパン種を入れない練り粉を、こばちのまま着物に包んで肩に負っ
ひとびと ことば
た。 三五そしてイスラエルの人々はモーセの言葉のようにして、エジプ
ぎん かざ きん かざ いふく こ もと しゅ たみ
トびとから銀の飾り、金の飾り、また衣服を請い求めた。 三六主は民にエ
じょう え かれ こ もと あた
出エジプト記

ジプトびとの情を得させ、彼らの請い求めたものを与えさせられた。こ
かれ うば と
うして彼らはエジプトびとのものを奪い取った。
ひとびと しゅったつ む
三七 さて、イスラエルの人々はラメセスを出 立してスコテに向かった。

49
おんな こども のぞ と ほ だんし やく にん おお い
女と子供を除いて徒歩の男子は約六十万人であった。 三八また多くの入
ま ぐんしゅう ひつじ うし ひじょう おお かちく かれ とも のぼ
り混じった群 衆および羊、牛など非常に多くの家畜も彼らと共に上っ
かれ たずさ で ね こ たね い
た。 三九そして彼らはエジプトから携えて出た練り粉をもって、種入れ
か し や だね い
ぬ パ ン の 菓子 を 焼 い た。ま だ パ ン 種 を 入 れ て い な か っ た か ら で あ る。
かれ お だ とどこお なに
それは彼らがエジプトから追い出されて滞ることができず、また、何の
しょくりょう ととの
食 料をも整えていなかったからである。
ひとびと す あいだ ねん
四〇イスラエルの人々がエジプトに住んでいた間は、四百三十年であっ
ねん おわ ひ しゅ ぜんぐん
た。 四一四百三十年の終りとなって、ちょうどその日に、主の全軍はエジ
くに で かれ くに みちび だ しゅ
プトの国を出た。 四二これは彼らをエジプトの国から導き出すために主
ね ばん よる よる
が寝ずの番をされた夜であった。ゆえにこの夜、すべてのイスラエルの
ひとびと よ よ しゅ ね ばん
人々は代々、主のために寝ずの番をしなければならない。
しゅ い すぎこし まつり さだ つぎ
出エジプト記

四三主はモーセとアロンとに言われた、
﹁過越の祭の定めは次のとおりで
いほうじん た
ある。すなわち、異邦人はだれもこれを食べてはならない。 四四しかし、
かね か かつれい おこな た
おのおのが金で買ったしもべは、これに割礼を行 ってのち、これを食べ

50
かり もの やといにん た
させることができる。 四五仮ずまいの者と、 雇 人とは、これを食べては
いえ た にく すこ
ならない。 四六ひとつの家でこれを食べなければならない。その肉を少
いえ そと も だ ほね お
しも家の外に持ち出してはならない。また、その骨を折ってはならな
ぜんかいしゅう まも きりゅう
い。 四七イスラエルの全 会 衆はこれを守らなければならない。 四八寄留
がいこくじん しゅ すぎこし まつり まも
の外国人があなたのもとにとどまっていて、主に過越の祭を守ろうとす
だんし かつれい う ちか まも
るときは、その男子はみな割礼を受けてのち、近づいてこれを守ること
かれ くに うま もの
ができる。そうすれば彼は国に生れた者のようになるであろう。しか
む かつれい もの た りっぽう くに
し、無割礼の者はだれもこれを食べてはならない。 四九この律法は国に
うま きりゅう がいこくじん どういつ
生れたものにも、あなたがたのうちに寄留している外国人にも同一であ
る﹂。
ひとびと しゅ めい
イスラエルの人々は、みなこのようにし、主がモーセとアロンに命じ
五〇
ひ しゅ ひとびと
出エジプト記

られたようにした。 五一ちょうどその日に、主はイスラエルの人々を、そ
ぐんだん したが くに みちび だ
の軍団に従 ってエジプトの国から導き出された。

51
第一三章
しゅ い ひとびと
一主はモーセに言われた、二﹁イスラエルの人々のうちで、すべてのうい
はじ たい ひら ひと けもの
ご、すなわちすべて初めに胎を開いたものを、人であれ、 獣であれ、み
せいべつ
な、わたしのために聖別しなければならない。それはわたしのものであ
る﹂。
たみ い どれい いえ で
三モーセは民に言った、
﹁あなたがたは、エジプトから、奴隷の家から出
ひ おぼ しゅ つよ て みちび
るこの日を覚えなさい。主が強い手をもって、あなたがたをここから導
だ たね い た
き 出 さ れ る か ら で あ る。種 を 入 れ た パ ン を 食 べ て は な ら な い。 四あ な
つき ひ で しゅ あた
た が た は ア ビ ブ の 月 の こ の 日 に 出 る の で あ る。 五主 が あ な た に 与 え る
せんぞ ちか
と、あなたの先祖たちに誓われたカナンびと、ヘテびと、アモリびと、ヒ
ち ちち みつ なが ち みちび い とき
出エジプト記

ビびと、エブスびとの地、乳と蜜との流れる地に、 導き入れられる時、
つき ぎしき まも なぬか
あ な た は こ の 月 に こ の 儀式 を 守 ら な け れ ば な ら な い。 六七日 の あ い だ
たね い た なぬか め しゅ まつり たね い
種入れぬパンを食べ、七日目には主に祭をしなければならない。 七種入

52
なぬか た たね い
れぬパンを七日のあいだ食べなければならない。種を入れたパンをあ
ところ お ち く
なたの所に置いてはならない。また、あなたの地区のどこでも、あなた
ところ だね お ひ こ つ い
の所にパン種を置いてはならない。 八その日、あなたの子に告げて言い
で しゅ
なさい、﹃これはわたしがエジプトから出るときに、主がわたしになされ
て め
たことのためである﹄。 九そして、これを、手につけて、しるしとし、目
あいだ お きねん しゅ りっぽう くち お
の間に置いて記念とし、主の律法をあなたの口に置かなければならな
しゅ つよ て みちび だ
い。主が強い手をもって、あなたをエジプトから導き出されるからであ
さだ ねんねん きせつ まも
る。 一〇それゆえ、あなたはこの定めを年々その期節に守らなければな
らない。
しゅ せんぞ ちか
主があなたとあなたの先祖たちに誓われたように、あなたをカナン
一一
ち みちび たま とき はじ
びとの地に導いて、それをあなたに賜わる時、 一二あなたは、すべて初め
たい ひら もの かちく う しゅ
出エジプト記

に胎を開いた者、およびあなたの家畜の産むういごは、ことごとく主に
だんせい しゅ き
ささげなければならない。すなわち、それらの男性のものは主に帰せし
はじ たい ひら
めなければならない。 一三また、すべて、ろばの、初めて胎を開いたもの

53
こひつじ
は、小羊をもって、あがなわなければならない。もし、あがなわないな
くび お こ
らば、その首を折らなければならない。あなたの子らのうち、すべて、
おとこ のち こ
男のういごは、あがなわなければならない。 一四後になって、あなたの子
い み と い
が﹃これはどんな意味ですか﹄と問うならば、これに言わなければなら
しゅ つよ て どれい いえ みちび
ない、
﹃主が強い手をもって、われわれをエジプトから、奴隷の家から導
だ さ
き出された。 一五そのときパロが、かたくなで、われわれを去らせなかっ
しゅ くに ひと かちく
たため、主はエジプトの国のういごを、人のういごも家畜のういごも、こ
ころ はじ たい ひら だんせい しゅ
とごとく殺された。それゆえ、初めて胎を開く男性のものはみな、主に
ぎせい こども
犠牲としてささげるが、わたしの子供のうちのういごは、すべてあがな
て め あいだ お
うのである﹄。 一六そして、これを手につけて、しるしとし、目の間に置
おぼ しゅ つよ て
いて覚えとしなければならない。主が強い手をもって、われわれをエジ
みちび だ
出エジプト記

プトから導き出されたからである﹂。
たみ さ とき くに みち ちか
さて、パロが民を去らせた時、ペリシテびとの国の道は近かったが、
一七
かみ かれ みちび たみ たたか み く
神は彼らをそれに導かれなかった。民が戦いを見れば悔いてエジプト

54
かえ かみ おも かみ こうかい そ あらの
に帰るであろうと、神は思われたからである。 一八神は紅海に沿う荒野
みち たみ まわ ひとびと ぶそう くに
の道に、民を回らされた。イスラエルの人々は武装してエジプトの国を
で のぼ いがい たずさ
出て、上った。 一九そのときモーセはヨセフの遺骸を携えていた。ヨセ
かみ かなら かえり
フが、﹁神は必ずあなたがたを顧みられるであろう。そのとき、あなたが
いがい たずさ のぼ い
たは、わたしの遺骸を携えて、ここから上って行かなければならない﹂と
い ひとびと かた ちか かれ
言って、イスラエルの人々に固く誓わせたからである。 二〇こうして彼
さら すす あらの はし しゅくえい しゅ
らは更にスコテから進んで、荒野の端にあるエタムに宿 営した。 二一主
かれ まえ い ひる くも はしら かれ みちび よる ひ はしら
は彼らの前に行かれ、昼は雲の柱をもって彼らを導き、夜は火の柱を
かれ てら ひる よる かれ すす い ひる くも はしら
もって彼らを照し、昼も夜も彼らを進み行かせられた。 二二昼は雲の柱、
よる ひ はしら たみ まえ はな
夜は火の柱が、民の前から離れなかった。
出エジプト記

第一四章
しゅ い ひとびと つ ひ かえ
主はモーセに言われた、 二﹁イスラエルの人々に告げ、引き返して、ミ

55
うみ あいだ まえ まえ しゅくえい
グドルと海との間にあるピハヒロテの前、バアルゼポンの前に宿 営さ
うみ しゅくえい
せなさい。あなたがたはそれにむかって、海のかたわらに宿 営しなけ
ひとびと かれ ち
ればならない。 三パロはイスラエルの人々について、﹃彼らはその地で
まよ あらの かれ と こ い
迷っている。荒野は彼らを閉じ込めてしまった﹄と言うであろう。 四わ
こころ かれ お
たしがパロの心をかたくなにするから、パロは彼らのあとを追うであろ
ぐんぜい やぶ ほまれ え
う。わたしはパロとそのすべての軍勢を破って誉を得、エジプトびとに
しゅ し かれ
わたしが主であることを知らせるであろう﹂。彼らはそのようにした。
たみ に さ おう つた
民の逃げ去ったことが、エジプトの王に伝えられたので、パロとその

けらい たみ たい かんが か い
家来たちとは、民に対する考えを変えて言った、﹁われわれはなぜこのよ
さ つか
うにイスラエルを去らせて、われわれに仕えさせないようにしたのであ
せんしゃ ととの たみ ひき
ろう﹂。 六それでパロは戦車を整え、みずからその民を率い、 七また、え
ぬ せんしゃ せんしゃ し き しゃ
出エジプト記

り抜きの戦車六百と、エジプトのすべての戦車およびすべての指揮者た
ひき しゅ おう こころ かれ
ちを率いた。 八主がエジプトの王パロの心をかたくなにされたので、彼
ひとびと お ひとびと いきようよう
はイスラエルの人々のあとを追った。イスラエルの人々は意気揚々と

56
で かれ お うま
出たのである。 九エジプトびとは彼らのあとを追い、パロのすべての馬
せんしゃ きへい ぐんぜい まえ
と戦車およびその騎兵と軍勢とは、バアルゼポンの前にあるピハヒロテ
うみ しゅくえい かれ お
のあたりで、海のかたわらに宿 営している彼らに追いついた。
ちかよ とき ひとびと め あ
一〇 パロが近寄った時、イスラエルの人々は目を上げてエジプトびとが
かれ すす み ひじょう おそ
彼らのあとに進んできているのを見て、非常に恐れた。そしてイスラエ
ひとびと しゅ さけ い はか
ルの人々は主にむかって叫び、 一一かつモーセに言った、
﹁エジプトに墓
あらの し たずさ だ
がないので、荒野で死なせるために、わたしたちを携え出したのですか。
みちび だ
なぜわたしたちをエジプトから導き出して、こんなにするのですか。 一二
つ す
わたしたちがエジプトであなたに告げて、﹃わたしたちを捨てておいて、
つか い
エジプトびとに仕えさせてください﹄と言ったのは、このことではあり
あらの し つか ほう
ませんか。荒野で死ぬよりもエジプトびとに仕える方が、わたしたちに
たみ い おそ
出エジプト記

はよかったのです﹂。 一三モーセは民に言った、﹁あなたがたは恐れては
た しゅ すくい
ならない。かたく立って、主がきょう、あなたがたのためになされる救
み み えいきゅう
を見なさい。きょう、あなたがたはエジプトびとを見るが、もはや永 久

57
ど かれ み しゅ たたか
に、二度と彼らを見ないであろう。 一四主があなたがたのために戦われ
もく しゅ い
るから、あなたがたは黙していなさい﹂。 一五主はモーセに言われた、
﹁あ
さけ ひとびと かた かれ
なたは、なぜわたしにむかって叫ぶのか。イスラエルの人々に語って彼
すす い あ て うみ うえ の
らを進み行かせなさい。 一六あなたはつえを上げ、手を海の上にさし伸
わ ひとびと うみ なか ち い
べてそれを分け、イスラエルの人々に海の中のかわいた地を行かせなさ
こころ かれ
い。 一七わたしがエジプトびとの心をかたくなにするから、彼らはその

あとを追ってはいるであろう。こうしてわたしはパロとそのすべての
ぐんぜい せんしゃ きへい う やぶ ほまれ え
軍勢および戦車と騎兵とを打ち破って誉を得よう。 一八わたしがパロと
せんしゃ きへい う やぶ ほまれ え
その戦車とその騎兵とを打ち破って誉を得るとき、エジプトびとはわた
しゅ し
しが主であることを知るであろう﹂。
ぶたい まえ い かみ つかい うつ かれ
このとき、イスラエルの部隊の前に行く神の使は移って彼らのうし
一九
い くも はしら かれ まえ うつ かれ た
出エジプト記

ろに行った。雲の柱も彼らの前から移って彼らのうしろに立ち、 二〇エ
ぶたい ぶたい あいだ くも
ジプトびとの部隊とイスラエルびとの部隊との間にきたので、そこに雲
よ ちか よる
とやみがあり夜もすがら、かれとこれと近づくことなく、夜がすぎた。

58
て うみ うえ の しゅ よ つよ ひがしかぜ
二一 モーセが手を海の上にさし伸べたので、主は夜もすがら強い東 風を
うみ しりぞ うみ りくち みず わ
もって海を退かせ、海を陸地とされ、水は分かれた。 二二イスラエルの
ひとびと うみ なか ち い みず かれ みぎ ひだり
人々は海の中のかわいた地を行ったが、水は彼らの右と左に、かきと
お うま せんしゃ
な っ た。 二 三エ ジ プ ト び と は 追 っ て き て、パ ロ の す べ て の 馬 と 戦車 と
きへい かれ うみ なか あかつき さら しゅ
騎兵とは、彼らのあとについて海の中にはいった。 二四 暁の更に、主は
ひ くも はしら ぐんぜい み
火と雲の柱のうちからエジプトびとの軍勢を見おろして、エジプトびと
ぐんぜい みだ せんしゃ わ すす おも
の軍勢を乱し、 二五その戦車の輪をきしらせて、進むのに重くされたの
い はな に
で、エジプトびとは言った、
﹁われわれはイスラエルを離れて逃げよう。
しゅ かれ たたか
主が彼らのためにエジプトびとと戦う﹂。
しゅ い て うみ うえ の
二六 そのとき主はモーセに言われた、﹁あなたの手を海の上にさし伸べ
みず せんしゃ きへい うえ なが かえ
て、水をエジプトびとと、その戦車と騎兵との上に流れ返らせなさい﹂。
て うみ うえ の よ あ うみ
出エジプト記

二七 モーセが手を海の上にさし伸べると、夜明けになって海はいつもの
なが かえ に しゅ
流れに返り、エジプトびとはこれにむかって逃げたが、主はエジプトび
うみ なか な こ みず なが かえ
と を 海 の 中 に 投 げ 込 ま れ た。 二 八水 は 流 れ 返 り、イ ス ラ エ ル の あ と を

59
お うみ せんしゃ きへい ぐんぜい
追って海にはいった戦車と騎兵およびパロのすべての軍勢をおおい、ひ
のこ ひとびと うみ なか
とりも残らなかった。 二九しかし、イスラエルの人々は海の中のかわい
ち い みず かれ みぎ ひだり
た地を行ったが、水は彼らの右と左に、かきとなった。
しゅ ひ て すく
三〇 このように、主はこの日イスラエルをエジプトびとの手から救われ
うみ し み
た。イスラエルはエジプトびとが海べに死んでいるのを見た。 三一イス
しゅ おこな おお み
ラエルはまた、主がエジプトびとに行われた大いなるみわざを見た。そ
たみ しゅ おそ しゅ しん
れで民は主を恐れ、主とそのしもべモーセとを信じた。
第一五章
ひとびと うた しゅ うた
そこでモーセとイスラエルの人々は、この歌を主にむかって歌った。

出エジプト記

かれ うた い
彼らは歌って言った、
しゅ うた
﹁主にむかってわたしは歌おう、
かれ かがや か え
彼は輝かしくも勝ちを得られた、

60
かれ うま の て うみ な こ
彼は馬と乗り手を海に投げ込まれた。
しゅ ちから うた すくい
主はわたしの力また歌、わたしの救となられた、

かれ かみ かれ
彼こそわたしの神、わたしは彼をたたえる、
かれ ちち かみ かれ
彼はわたしの父の神、わたしは彼をあがめる。
しゅ な しゅ
主はいくさびと、その名は主。

かれ せんしゃ ぐんぜい うみ な こ
彼はパロの戦車とその軍勢とを海に投げ込まれた、

し き しゃ こうかい しず
そのすぐれた指揮者たちは紅海に沈んだ。
おおみず かれ かれ いし ふち くだ
大水は彼らをおおい、彼らは石のように淵に下った。

しゅ みぎ て ちから えいこう
主よ、あなたの右の手は力をもって栄光にかがやく、

しゅ みぎ て てき う くだ
主よ、あなたの右の手は敵を打ち砕く。
おお いこう
あなたは大いなる威光をもって、

た もの う やぶ
出エジプト記

あなたに立ちむかう者を打ち破られた。
いか はっ
あなたが怒りを発せられると、
かれ や
彼らは、わらのように焼きつくされた。

61
はな いき みず つ
あなたの鼻の息によって水は積みかさなり、

なが つつみ た
流れは堤となって立ち、
おおみず うみ こ かた
大水は海のもなかに凝り固まった。
てき い お い お つ
敵は言った、﹃わたしは追い行き、追い着いて、

ぶんどりもの わ と
分捕物を分かち取ろう、
よくぼう かれ み
わたしの欲望を彼らによって満たそう、
ぬ て かれ ほろ
つるぎを抜こう、わたしの手は彼らを滅ぼそう﹄。
いき ふ うみ かれ
一〇 あなたが息を吹かれると、海は彼らをおおい、
かれ なまり おおみず なか しず
彼らは鉛のように、大水の中に沈んだ。
しゅ かみがみ くら
一一 主よ、神々のうち、だれがあなたに比べられようか、
せい さか
だれがあなたのように、聖にして栄えあるもの、
おそ
出エジプト記

ほむべくして恐るべきもの、
おこな
くすしきわざを行うものであろうか。
みぎ て の
一二 あなたが右の手を伸べられると、

62
ち かれ
地は彼らをのんだ。
たみ めぐ みちび
一三 あなたは、あがなわれた民を恵みをもって導き、
ちから せい ともな
み力をもって、あなたの聖なるすまいに伴われた。
たみ き ふる
一四 もろもろの民は聞いて震え、
じゅうみん くる おそ
ペリシテの住 民は苦しみに襲われた。
ぞくちょう
一五 エドムの族 長らは、おどろき、
しゅちょう
モアブの首 長らは、わななき、
じゅうみん と さ
カナンの住 民は、みな溶け去った。
おそ かれ のぞ
一六 恐れと、おののきとは彼らに臨み、
うで おお かれ いし もく
み腕の大いなるゆえに、彼らは石のように黙した、
しゅ たみ とお
主よ、あなたの民の通りすぎるまで、
か たみ とお
出エジプト記

あなたが買いとられた民の通りすぎるまで。
かれ みちび
一七 あなたは彼らを導いて、
し ぎょう やま う
あなたの嗣 業の山に植えられる。

63
しゅ
主よ、これこそあなたのすまいとして、
つく ところ
みずから造られた所、
しゅ て た せいじょ
主よ、み手によって建てられた聖所。
しゅ えいえん す おさ
主は永遠に統べ治められる﹂。
一八
うま せんしゃ きへい とも うみ しゅ うみ みず
一九パロの馬が、その戦車および騎兵と共に海にはいると、主は海の水を
かれ うえ なが かえ ひとびと うみ なか ち
彼らの上に流れ返らされたが、イスラエルの人々は海の中のかわいた地
い あね おんな よ げ ん し ゃ
を行った。 二〇そのとき、アロンの姉、 女 預言者ミリアムはタンバリン
て と おんな みな と おど
を手に取り、 女たちも皆タンバリンを取って、踊りながら、そのあとに
したが で かれ わ うた
従 って出てきた。 二一そこでミリアムは彼らに和して歌った、
しゅ うた
﹁主にむかって歌え、
かれ かがや か え
彼は輝かしくも勝ちを得られた、
かれ うま の て うみ な こ
出エジプト記

彼は馬と乗り手を海に投げ込まれた﹂。
こうかい たびだ かれ
二二さて、モーセはイスラエルを紅海から旅立たせた。彼らはシュルの
あらの い か あらの ある みず え かれ
荒野に入り、三日のあいだ荒野を歩いたが、水を得なかった。 二三彼らは

64
つ みず にが の
メラに着いたが、メラの水は苦くて飲むことができなかった。それで、
ところ な よ たみ
そ の 所 の 名 は メ ラ と 呼 ば れ た。 二 四と き に、民 は モ ー セ に つ ぶ や い て
い なに の しゅ さけ
言 っ た、﹁わ た し た ち は 何 を 飲 む の で す か﹂。 二五モ ー セ は 主 に 叫 ん だ。
しゅ かれ ぽん き しめ みず な い みず あま
主は彼に一本の木を示されたので、それを水に投げ入れると、水は甘く
なった。
ところ しゅ たみ さだ た かれ こころ
その所で主は民のために定めと、おきてを立てられ、彼らを試みて、 二六
い かみ しゅ こえ よ き したが め
言われた、
﹁あなたが、もしあなたの神、主の声に良く聞き従い、その目
ただ み おこな いまし みみ かたむ さだ
に正しいと見られることを行い、その戒めに耳を傾け、すべての定めを
まも くだ やまい
守るならば、わたしは、かつてエジプトびとに下した病を一つもあなた
くだ しゅ
に下さないであろう。わたしは主であって、あなたをいやすものであ
る﹂。
かれ つ みず いずみ
出エジプト記

二七 こうして彼らはエリムに着いた。そこには水の泉 十二と、なつめや
き ぽん ところ かれ みず しゅくえい
しの木七十本があった。その所で彼らは水のほとりに宿 営した。

65
第一六章
ひとびと ぜんかいしゅう しゅっぱつ ち で
イスラエルの人々の全 会 衆はエリムを出 発し、エジプトの地を出て

げつ め にち あいだ あらの
二か月目の十五日に、エリムとシナイとの間にあるシンの荒野にきた
あらの ひとびと ぜんかいしゅう
が、 二その荒野でイスラエルの人々の全 会 衆は、モーセとアロンにつぶ
ひとびと かれ い
やいた。 三イスラエルの人々は彼らに言った、﹁われわれはエジプトの
ち にく ざ あ た とき しゅ
地で、肉のなべのかたわらに座し、飽きるほどパンを食べていた時に、主
て し よ
の手にかかって死んでいたら良かった。あなたがたは、われわれをこの
あらの みちび だ ぜんかいしゅう が し
荒野に導き出して、全 会 衆を餓死させようとしている﹂。
しゅ い み
そのとき主はモーセに言われた、﹁見よ、わたしはあなたがたのため

てん ふ たみ で ひ び ぶん ひ あつ
に、天からパンを降らせよう。民は出て日々の分を日ごとに集めなけれ
かれ りっぽう したが こころ
出エジプト記

ばならない。こうして彼らがわたしの律法に従うかどうかを試みよう。
か め かれ と い ちょうり ひ あつ
六日目には、彼らが取り入れたものを調理すると、それは日ごとに集

ばい
めるものの二倍あるであろう﹂。 六モーセとアロンは、イスラエルのす

66
ひとびと い ゆうぐれ ち
べての人々に言った、
﹁夕暮には、あなたがたは、エジプトの地からあな
みちび だ しゅ し あさ
たがたを導き出されたのが、主であることを知るであろう。 七また、朝
しゅ えいこう み しゅ しゅ
には、あなたがたは主の栄光を見るであろう。主はあなたがたが主にむ

かってつぶやくのを聞かれたからである。あなたがたは、いったいわれ
なにもの
われを何者として、われわれにむかってつぶやくのか﹂。 八モーセはま
い しゅ ゆうぐれ にく あた た あさ
た言った、﹁主は夕暮にはあなたがたに肉を与えて食べさせ、朝にはパン
あた あ た しゅ しゅ
を与えて飽き足らせられるであろう。主はあなたがたが、主にむかって
き なにもの
つぶやくつぶやきを聞かれたからである。いったいわれわれは何者な
しゅ
のか。あなたがたのつぶやくのは、われわれにむかってでなく、主にむ
かってである﹂。
い ひとびと ぜんかいしゅう い
九モ ー セ は ア ロ ン に 言 っ た、﹁イ ス ラ エ ル の 人々 の 全 会 衆 に 言 い な さ
しゅ まえ ちか しゅ
出エジプト記

い、﹃あなたがたは主の前に近づきなさい。主があなたがたのつぶやき
き ひとびと ぜん
を聞かれたからである﹄と﹂。 一〇それでアロンがイスラエルの人々の全
かいしゅう かた かれ あらの ほう のぞ み しゅ えいこう くも
会 衆に語ったとき、彼らが荒野の方を望むと、見よ、主の栄光が雲のう

67
あらわ しゅ い
ちに現れていた。 一一主はモーセに言われた、 一二﹁わたしはイスラエル
ひとびと き かれ い ゆう
の人々のつぶやきを聞いた。彼らに言いなさい、﹃あなたがたは夕には
にく た あさ あ た
肉を食べ、朝にはパンに飽き足りるであろう。そうしてわたしがあなた
かみ しゅ し
がたの神、主であることを知るであろう﹄と﹂。
ゆう と しゅくえい あさ
夕べになると、うずらが飛んできて宿 営をおおった。また、朝にな
一三
しゅくえい しゅうい つゆ ふ ふ つゆ あらの
ると、 宿 営の周囲に露が降りた。 一四その降りた露がかわくと、荒野の
めん うす ち むす うす しも
面には、薄いうろこのようなものがあり、ちょうど地に結ぶ薄い霜のよ
ひとびと み たがい い
うであった。 一五イスラエルの人々はそれを見て互に言った、
﹁これはな
かれ し
んであろう﹂。彼らはそれがなんであるのか知らなかったからである。
かれ い しゅ しょくもつ たま
モーセは彼らに言った、
﹁これは主があなたがたの食 物として賜わるパ
しゅ めい
ンである。 一六主が命じられるのはこうである、
﹃あなたがたは、おのお
た したが あつ にんずう したが
出エジプト記

のその食べるところに従 ってそれを集め、あなたがたの人数に従 って、


てんまく と
ひとり一オメルずつ、おのおのその天幕におるもののためにそれを取り
ひとびと もの おお
なさい﹄と﹂。 一七イスラエルの人々はそのようにして、ある者は多く、あ

68
もの すく あつ はか おお あつ
る者は少なく集めた。 一八しかし、オメルでそれを計ってみると、多く集
もの あま すく あつ もの ふそく
めた者にも余らず、少なく集めた者にも不足しなかった。おのおのその
た したが あつ かれ い
食べるところに従 って集めていた。 一九モーセは彼らに言った、﹁だれも
あさ のこ かれ き
朝までそれを残しておいてはならない﹂。 二〇しかし彼らはモーセに聞
したが もの あさ のこ むし くさ
き従わないで、ある者は朝までそれを残しておいたが、虫がついて臭く
かれ いか かれ た
なった。モーセは彼らにむかって怒った。 二一彼らは、おのおのその食
したが あさ あつ ひ あつ
べるところに従 って、朝ごとにそれを集めたが、日が熱くなるとそれは

溶けた。
か め かれ ばい あつ
二二 六日目には、彼らは二倍のパン、すなわちひとりに二オメルを集め
かいしゅう ちょう みな つ
た。そこで、 会 衆の長たちは皆きて、モーセに告げたが、 二三モーセは
かれ い しゅ かた しゅ せいあんそくにち
彼らに言った、
﹁主の語られたのはこうである、
﹃あすは主の聖安息日で
やす や や に に
出エジプト記

休みである。きょう、焼こうとするものを焼き、煮ようとするものを煮
のこ あさ ほぞん かれ
なさい。残ったものはみな朝までたくわえて保存しなさい﹄と﹂。 二四彼
めい あさ ほぞん くさ
らはモーセの命じたように、それを朝まで保存したが、臭くならず、ま

69
むし い た
た虫もつかなかった。 二五モーセは言った、
﹁きょう、それを食べなさい。
しゅ あんそくにち の え
きょうは主の安息日であるから、きょうは野でそれを獲られないであろ
か あいだ あつ なぬか め あんそくにち
う。 二六六日の間はそれを集めなければならない。七日目は安息日であ
ひ な たみ なぬか め
るから、その日には無いであろう﹂。 二七ところが民のうちには、七日目
で あつ もの え しゅ
に出て集めようとした者があったが、獲られなかった。 二八そこで主は
い いまし りっぽう
モーセに言われた、
﹁あなたがたは、いつまでわたしの戒めと、律法とを
まも こば み しゅ あんそくにち あた
守ることを拒むのか。 二九見よ、主はあなたがたに安息日を与えられた。
か め ぶん たま
ゆえに六日目には、ふつか分のパンをあなたがたに賜わるのである。お
ところ なぬか め ところ で
のおのその所にとどまり、七日目にはその所から出てはならない﹂。 三〇
たみ なぬか め やす
こうして民は七日目に休んだ。
いえ もの な よ
三一 イスラエルの家はその物の名をマナと呼んだ。それはコエンドロの
み しろ あじ みつ い
出エジプト記

実 の よ う で 白 く、そ の 味 は 蜜 を 入 れ た せ ん べ い の よ う で あ っ た。 三 二
い しゅ めい
モーセは言った、
﹁主の命じられることはこうである、
﹃それを一オメル
しそん
あなたがたの子孫のためにたくわえておきなさい。それはわたしが、あ

70
ち みちび だ とき あらの た
なたがたをエジプトの地から導き出した時、荒野であなたがたに食べさ
かれ み
せたパンを彼らに見させるためである﹄と﹂。 三三そしてモーセはアロン
い と なか い しゅ
に言った﹁一つのつぼを取り、マナ一オメルをその中に入れ、それを主
まえ お しそん しゅ
の前に置いて、子孫のためにたくわえなさい﹂。 三四そこで主がモーセに
めい はこ まえ お
命じられたように、アロンはそれをあかしの箱の前に置いてたくわえ
ひとびと ひと す ち つ ねん あいだ た
た。 三五イスラエルの人々は人の住む地に着くまで四十年の間 マナを食
かれ ち さかい いた た
べた。すなわち、彼らはカナンの地の境に至るまでマナを食べた。 三六
ぶん
一オメルは一エパの十分の一である。
第一七章
出エジプト記

ひとびと ぜんかいしゅう しゅ いのち したが あらの しゅっぱつ


イスラエルの人々の全 会 衆は、主の命に従 って、シンの荒野を出 発

たびじ かさ しゅくえい たみ の みず
し、旅路を重ねて、レピデムに宿 営したが、そこには民の飲む水がな
たみ あらそ い の みず
かった。 二それで、民はモーセと争 って言った、﹁わたしたちに飲む水を

71
かれ い あらそ
ください﹂。モーセは彼らに言った、﹁あなたがたはなぜわたしと争うの
しゅ こころ たみ ところ みず
か、なぜ主を試みるのか﹂。 三民はその所で水にかわき、モーセにつぶや
い みちび だ
いて言った、﹁あなたはなぜわたしたちをエジプトから導き出して、わた
こども かちく いっしょ し
したちを、子供や家畜と一緒に、かわきによって死なせようとするので
しゅ さけ い たみ
すか﹂。 四このときモーセは主に叫んで言った、
﹁わたしはこの民をどう
かれ いま いし う ころ
すればよいのでしょう。彼らは、今にも、わたしを石で打ち殺そうとし
しゅ い たみ まえ すす い
ています﹂。 五主はモーセに言われた、
﹁あなたは民の前に進み行き、イ
ちょうろう ともな かわ う て
スラエルの長 老たちを伴い、あなたがナイル川を打った、つえを手に
と い み いわ うえ まえ た
取って行きなさい。 六見よ、わたしはホレブの岩の上であなたの前に立
いわ う みず で たみ
つであろう。あなたは岩を打ちなさい。水がそれから出て、民はそれを
の ちょうろう め まえ
飲むことができる﹂。モーセはイスラエルの長 老たちの目の前で、その
おこな かれ ところ な よ
出エジプト記

ように行 った。 七そして彼はその所の名をマッサ、またメリバと呼ん


ひとびと あらそ かれ しゅ
だ。これはイスラエルの人々が争 ったゆえ、また彼らが﹁主はわたした
い しゅ こころ
ちのうちにおられるかどうか﹂と言って主を試みたからである。

72
たたか
ときにアマレクがきて、イスラエルとレピデムで戦 った。 九モーセは

い ひと えら で たたか
ヨシュアに言った、﹁われわれのために人を選び、出てアマレクと戦いな
かみ て と おか いただき た
さい。わたしはあす神のつえを手に取って、丘の頂に立つであろう﹂。 一
かれ い たたか
ヨシュアはモーセが彼に言ったようにし、アマレクと戦 った。モー

おか いただき のぼ て あ
セとアロンおよびホルは丘の頂に登った。 一一モーセが手を上げている
か て さ か
とイスラエルは勝ち、手を下げるとアマレクが勝った。 一二しかしモー
て おも いし と あし
セの手が重くなったので、アロンとホルが石を取って、モーセの足もと
お かれ うえ ざ
に置くと、彼はその上に座した。そしてひとりはこちらに、ひとりはあ
て かれ て にちぼつ
ちらにいて、モーセの手をささえたので、彼の手は日没までさがらな
たみ う やぶ
かった。 一三ヨシュアは、つるぎにかけてアマレクとその民を打ち敗っ
た。
しゅ い しょもつ きねん
出エジプト記

一四 主はモーセに言われた、
﹁これを書物にしるして記念とし、それをヨ
みみ い あめ した きおく かんぜん
シュアの耳に入れなさい。わたしは天が下からアマレクの記憶を完全
け さ さいだん きず な しゅ
に消し去るであろう﹂。 一五モーセは一つの祭壇を築いてその名を﹁主は

73
はた よ い
わが旗﹂と呼んだ。 一六そしてモーセは言った、
しゅ はた て あ
﹁主の旗にむかって手を上げる、
しゅ よ よ たたか
主は世々アマレクと戦われる﹂。
第一八章
さいし かみ
一さて、モーセのしゅうと、ミデアンの祭司エテロは、神がモーセと、み
たみ こと しゅ みちび
民イスラエルとにされたすべての事、主がイスラエルをエジプトから導
だ き
き出されたことを聞いた。 二それでモーセのしゅうと、エテロは、さき
おく かえ つま こ つ
に送り返されていたモーセの妻チッポラと、 三そのふたりの子とを連れ

てきた。そのひとりの名はゲルショムといった。モーセが、﹁わたしは
出エジプト記

がいこく きりゅうしゃ い な
外国で寄留者となっている﹂と言ったからである。 四ほかのひとりの名
ちち かみ たす
はエリエゼルといった。﹁わたしの父の神はわたしの助けであって、パ
すく い
ロ の つ る ぎ か ら わ た し を 救 わ れ た﹂と 言 っ た か ら で あ る。 五こ う し て

74
さいし ともな あらの い かみ
モーセのしゅうと、エテロは、モーセの妻子を伴 って、荒野に行き、神
やま しゅくえい ところ とき ひと
の山に宿 営しているモーセの所にきた。 六その時、ある人がモーセに
い つま
言った、
﹁ごらんなさい。あなたのしゅうと、エテロは、あなたの妻とそ
こ つ ところ
のふたりの子を連れて、あなたの所にこられます﹂。 七そこでモーセは
でむか み かれ くち たがい あんぴ と
しゅうとを出迎えて、身をかがめ、彼に口づけして、 互に安否を問い、
とも てんまく しゅ
共に天幕にはいった。 八そしてモーセは、主がイスラエルのために、パ
こと みち で あ くる
ロとエジプトびととにされたすべての事、道で出会ったすべての苦し
しゅ かれ すく ものがた
み、また主が彼らを救われたことを、しゅうとに物語ったので、 九エテ
しゅ て すく だ めぐ
ロは主がイスラエルをエジプトびとの手から救い出して、もろもろの恵
たま よろこ
みを賜わったことを喜んだ。
い しゅ しゅ
一〇 そしてエテロは言った、
﹁主はほむべきかな。主はあなたがたをエジ
て て すく だ たみ て した
出エジプト記

プトびとの手と、パロの手から救い出し、民をエジプトびとの手の下か
すく だ いま し じつ かれ
ら救い出された。 一一今こそわたしは知った。実に彼らはイスラエルび
こうまん しゅ かみがみ おお
とにむかって高慢にふるまったが、主はあらゆる神々にまさって大いに

75
はんさい ぎせい かみ
い ま す こ と を﹂。 一二そ し て モ ー セ の し ゅ う と エ テ ロ は 燔祭 と 犠牲 を 神
そな ちょうろう
に供え、アロンとイスラエルの長 老たちもみなきて、モーセのしゅうと
とも かみ まえ しょくじ
と共に神の前で食事をした。
ひ ざ たみ たみ あさ ばん
一三 あくる日モーセは座して民をさばいたが、民は朝から晩まで、モーセ
た かれ たみ
のまわりに立っていた。 一四モーセのしゅうとは、彼がすべて民にして
み い たみ
いることを見て、言った、﹁あなたが民にしているこのことはなんです
ざ たみ あさ ばん
か。あなたひとりが座し、民はみな朝から晩まで、あなたのまわりに
た い たみ かみ
立っているのはなぜですか﹂。 一五モーセはしゅうとに言った、﹁民が神
うかが ところ く かれ こと
に伺おうとして、わたしの所に来るからです。 一六彼らは事があれば、わ
ところ そうご あいだ かみ さだ はんけつ し
たしの所にきます。わたしは相互の間をさばいて、神の定めと判決を知
かれ い
らせるのです﹂。 一七モーセのしゅうとは彼に言った、﹁あなたのしてい
よ いっしょ たみ かなら つか
出エジプト記

ることは良くない。 一八あなたも、あなたと一緒にいるこの民も、必ず疲
は おも す
れ果てるであろう。このことはあなたに重過ぎるから、ひとりでするこ
いま い き
とができない。 一九今わたしの言うことを聞きなさい。わたしはあなた

76
じょげん かみ とも たみ
に助言する。どうか神があなたと共にいますように。あなたは民のた
かみ まえ じけん かみ の かれ さだ
めに神の前にいて、事件を神に述べなさい。 二〇あなたは彼らに定めと
はんけつ おし かれ あゆ みち こと かれ し
判決を教え、彼らの歩むべき道と、なすべき事を彼らに知らせなさい。 二
たみ ゆうのう ひと かみ おそ せいじつ ふ ぎ
また、すべての民のうちから、有能な人で、神を恐れ、誠実で不義の

り にく ひと えら たみ うえ た にん ちょう にん ちょう
利を憎む人を選び、それを民の上に立てて、千人の長、百人の長、五十
にん ちょう にん ちょう へいそ かれ たみ だいじけん
人の長、十人の長としなさい。 二二平素は彼らに民をさばかせ、大事件は
ところ も しょう じ け ん かれ
すべてあなたの所に持ってこさせ、 小 事件はすべて彼らにさばかせな
みがる とも かれ に お
さい。こうしてあなたを身軽にし、あなたと共に彼らに、荷を負わせな
こと おこな かみ めい
さい。 二三あなたが、もしこの事を行い、神もまたあなたに命じられるな
た たみ やす ところ
らば、あなたは耐えることができ、この民もまた、みな安んじてその所
かえ
に帰ることができよう﹂。
ことば したが い
出エジプト記

二四 モーセはしゅうとの言葉に従い、すべて言われたようにした。 二五す
ゆうのう ひと えら たみ
なわち、モーセはすべてのイスラエルのうちから有能な人を選んで、民
うえ ちょう た にん ちょう にん ちょう にん ちょう にん ちょう
の上に長として立て、千人の長、百人の長、五十人の長、十人の長とし

77
へいそ かれ たみ じけん も
た。 二六平素は彼らが民をさばき、むずかしい事件はモーセに持ってき
ちい じけん かれ
たが、小さい事件はすべて彼らみずからさばいた。 二七こうしてモーセ
おく かえ くに かえ い
はしゅうとを送り返したので、その国に帰って行った。
第一九章
ひとびと ち で のち つき め ひ
イスラエルの人々は、エジプトの地を出て後三月目のその日に、シナ

あらの かれ しゅったつ
イの荒野にはいった。 二すなわち彼らはレピデムを出 立してシナイの
あらの い あらの しゅくえい ところ やま まえ しゅくえい
荒野に入り、荒野に宿 営した。イスラエルはその所で山の前に宿 営し
かみ のぼ しゅ やま かれ よ い
た。 三さて、モーセが神のもとに登ると、主は山から彼を呼んで言われ
いえ い ひとびと つ
た、
﹁このように、ヤコブの家に言い、イスラエルの人々に告げなさい、
出エジプト記

こと わし
﹃あなたがたは、わたしがエジプトびとにした事と、あなたがたを鷲

つばさ の ところ み
の翼に載せてわたしの所にこさせたことを見た。 五それで、もしあなた
こえ き したが けいやく まも
がたが、まことにわたしの声に聞き従い、わたしの契約を守るならば、あ

78
たみ たから ぜん ち
なたがたはすべての民にまさって、わたしの宝となるであろう。全地は
しょゆう たい さいし くに
わ た し の 所有 だ か ら で あ る。 六あ な た が た は わ た し に 対 し て 祭司 の 国
せい たみ
となり、また聖なる民となるであろう﹄。これがあなたのイスラエルの
ひとびと かた ことば
人々に語るべき言葉である﹂。
い たみ ちょうろう よ しゅ めい
七それでモーセは行って民の長 老たちを呼び、主が命じられたこれら
ことば まえ の たみ とも こた い
の言葉を、すべてその前に述べたので、 八民はみな共に答えて言った、
しゅ い おこな たみ ことば
﹁われわれは主が言われたことを、みな行います﹂。モーセは民の言葉を
しゅ つ しゅ い み こ くも
主に告げた。 九主はモーセに言われた、
﹁見よ、わたしは濃い雲のうちに
のぞ かた たみ
あって、あなたに臨むであろう。それはわたしがあなたと語るのを民に
き かれ なが しん
聞かせて、彼らに長くあなたを信じさせるためである﹂。
たみ ことば しゅ つ しゅ い
モーセは民の言葉を主に告げた。 一〇主はモーセに言われた、
﹁あなたは
たみ い かれ かれ いふく
出エジプト記

民のところに行って、きょうとあす、彼らをきよめ、彼らにその衣服を
あら か め そな か め しゅ たみ
洗わせ、一一三日目までに備えさせなさい。三日目に主が、すべての民の
め まえ さん くだ たみ しゅうい
目の前で、シナイ山に下るからである。 一二あなたは民のために、周囲に

79
さかい もう い ちゅうい やま のぼ
境を設けて言いなさい、
﹃あなたがたは注意して、山に上らず、また、そ
きょうかい ふ やま ふ もの かなら ころ
の境 界に触れないようにしなさい。山に触れる者は必ず殺されるであ
て ふ ふ もの かなら いし う ころ
ろう。 一三手をそれに触れてはならない。触れる者は必ず石で打ち殺さ
いころ けもの ひと い
れるか、射殺されるであろう。 獣でも人でも生きることはできない﹄。
なが ひび とき かれ やま のぼ
ラッパが長く響いた時、彼らは山に登ることができる﹂と。 一四そこで
やま たみ くだ たみ かれ いふく
モーセは山から民のところに下り、民をきよめた。彼らはその衣服を
あら たみ い か め そな おんな
洗った。 一五モーセは民に言った、﹁三日目までに備えをしなさい。 女に
ちか
近づいてはならない﹂。
か め あさ あつ くも やま うえ
一六三日目の朝となって、かみなりと、いなずまと厚い雲とが、山の上に
おと たか ひび しゅくえい たみ ふる
あり、ラッパの音が、はなはだ高く響いたので、宿 営におる民はみな震
たみ かみ あ しゅくえい みちび だ
え た。 一七モ ー セ が 民 を 神 に 会 わ せ る た め に、 宿 営 か ら 導 き 出 し た の
かれ やま た さん ぜんざんけむ しゅ ひ
出エジプト記

で、彼らは山のふもとに立った。 一八シナイ山は全山煙った。主が火の
うえ くだ けむり けむり
なかにあって、その上に下られたからである。その煙は、かまどの煙の
た のぼ ぜんざん ふる おと たか
ように立ち上り、全山はげしく震えた。 一九ラッパの音が、いよいよ高く

80
かた かみ かれ こた
なったとき、モーセは語り、神は、かみなりをもって、彼に答えられた。
しゅ さん いただき くだ しゅ やま いただき め
二〇主はシナイ山の頂に下られた。そして主がモーセを山の頂に召され
のぼ しゅ い くだ い たみ
たので、モーセは登った。 二一主はモーセに言われた、
﹁下って行って民
いまし たみ お やぶ しゅ み おお
を戒めなさい。民が押し破って、主のところにきて、見ようとし、多く
し しゅ ちか さいし
のものが死ぬことのないようにするためである。 二二主に近づく祭司た
み しゅ かれ う
ちにもまた、その身をきよめさせなさい。主が彼らを打つことのないよ
しゅ い たみ さん のぼ
うにするためである﹂。 二三モーセは主に言った、﹁民はシナイ山に登る
いまし やま
ことはできないでしょう。あなたがわたしたちを戒めて﹃山のまわりに
さかい もう い しゅ かれ い
境を設け、それをきよめよ﹄と言われたからです﹂。 二四主は彼に言われ
い くだ とも のぼ
た、﹁行け、下れ。そしてあなたはアロンと共に登ってきなさい。ただ
さいし たみ お やぶ しゅ のぼ
し、祭司たちと民とが、押し破って主のところに登ることのないように
しゅ かれ う
出エジプト記

し な さ い。主 が 彼 ら を 打 つ こ と の な い よ う に す る た め で あ る﹂。 二 五
たみ ところ くだ い かれ つ
モーセは民の所に下って行って彼らに告げた。

81
第二〇章
かみ ことば かた い
一神はこのすべての言葉を語って言われた。
かみ しゅ ち どれい
二﹁わたしはあなたの神、主であって、あなたをエジプトの地、奴隷の
いえ みちび だ もの
家から導き出した者である。
かみ
三あなたはわたしのほかに、なにものをも神としてはならない。
じぶん きざ ぞう つく うえ てん
四あなたは自分のために、刻んだ像を造ってはならない。上は天にある
した ち ち した みず
もの、下は地にあるもの、また地の下の水のなかにあるものの、どんな
かたち つく ふ つか
形 を も 造 っ て は な ら な い。 五そ れ に ひ れ 伏 し て は な ら な い。そ れ に 仕
かみ しゅ かみ
えてはならない。あなたの神、主であるわたしは、ねたむ神であるから、
にく ちち つみ こ むく だい およ
わたしを憎むものは、父の罪を子に報いて、三四代に及ぼし、 六わたし
あい いまし まも めぐ ほどこ だい いた
出エジプト記

を愛し、わたしの戒めを守るものには、恵みを施して、千代に至るであ
ろう。
かみ しゅ な とな しゅ
七あなたは、あなたの神、主の名を、みだりに唱えてはならない。主は、

82
な とな ばっ お
み名をみだりに唱えるものを、罰しないでは置かないであろう。
あんそくにち おぼ せい か はたら
安息日を覚えて、これを聖とせよ。 九六日のあいだ働いてあなたのす

なぬか め かみ しゅ あんそく
べてのわざをせよ。 一〇七日目はあなたの神、主の安息であるから、なん
むすめ
のわざをもしてはならない。あなたもあなたのむすこ、 娘、しもべ、は
かちく もん たこく ひと
しため、家畜、またあなたの門のうちにいる他国の人もそうである。 一一
しゅ か てん ち うみ なか つく なぬか
主は六日のうちに、天と地と海と、その中のすべてのものを造って、七日
め やす しゅ あんそくにち しゅくふく せい
目に休まれたからである。それで主は安息日を祝 福して聖とされた。
ちち はは うやま かみ しゅ たま ち
一二 あなたの父と母を敬え。これは、あなたの神、主が賜わる地で、あな
なが い
たが長く生きるためである。
ころ
一三 あなたは殺してはならない。
かんいん
一四 あなたは姦淫してはならない。
ぬす
出エジプト記

一五 あなたは盗んではならない。
りんじん ぎしょう
一六 あなたは隣人について、偽証してはならない。
りんじん いえ りんじん つま
一七 あなたは隣人の家をむさぼってはならない。隣人の妻、しもべ、はし

83
うし りんじん
ため、牛、ろば、またすべて隣人のものをむさぼってはならない﹂。
たみ みな おと やま けむ
一八 民は皆、かみなりと、いなずまと、ラッパの音と、山の煙っているの
み たみ おそ とお はな た かれ
とを見た。民は恐れおののき、遠く離れて立った。 一九彼らはモーセに
い かた き したが
言った、﹁あなたがわたしたちに語ってください。わたしたちは聞き従
かみ かた
います。神がわたしたちに語られぬようにしてください。それでなけ
し たみ い おそ
れば、わたしたちは死ぬでしょう﹂。 二〇モーセは民に言った、
﹁恐れては
かみ こころ おそ
ならない。神はあなたがたを試みるため、またその恐れをあなたがたの
め まえ つみ おか のぞ
目の前において、あなたがたが罪を犯さないようにするために臨まれた
のである﹂。
たみ とお はな た かみ こ くも ちか
二一 そこで、民は遠く離れて立ったが、モーセは神のおられる濃い雲に近
い しゅ い ひとびと
づいて行った。 二二主はモーセに言われた、
﹁あなたはイスラエルの人々
い てん かた
出エジプト記

にこう言いなさい、﹃あなたがたは、わたしが天からあなたがたと語るの
み なら なに つく
を 見 た。 二三あ な た が た は わ た し と 並 べ て、何 を も 造 っ て は な ら な い。
ぎん かみがみ きん かみがみ つく
銀の神々も、金の神々も、あなたがたのために、造ってはならない。 二四

84
つち さいだん きず うえ はんさい
あ な た は わ た し の た め に 土 の 祭壇 を 築 き、そ の 上 に あ な た の 燔祭、
しゅうおんさい ひつじ うし な おぼ
酬 恩 祭、 羊、牛をささげなければならない。わたしの名を覚えさせる
ところ のぞ しゅくふく
すべての所で、わたしはあなたに臨んで、あなたを祝 福するであろう。
いし さいだん つく き いし きず
二五 あなたがもしわたしに石の祭壇を造るならば、切り石で築いてはな

らない。あなたがもし、のみをそれに当てるならば、それをけがすから
かいだん さいだん のぼ
である。 二六あなたは階段によって、わたしの祭壇に登ってはならない。
かく ところ うえ
あなたの隠し所が、その上にあらわれることのないようにするためであ
る﹄。
第二一章
出エジプト記

かれ まえ しめ
一これはあなたが彼らの前に示すべきおきてである。 二あなたがヘブル
どれい か とき ねん つか ねん め むしょう
びとである奴隷を買う時は、六年のあいだ仕えさせ、七年目には無償で
じゆう み さ かれ どくしん
自由 の 身 と し て 去 ら せ な け れ ば な ら な い。 三彼 が も し 独身 で き た な ら

85
どくしん さ つま も つま
ば、独身で去らなければならない。もし妻を持っていたならば、その妻
かれ とも さ しゅじん かれ つま あた
は彼と共に去らなければならない。 四もしその主人が彼に妻を与えて、
かれ おとこ こ おんな こ う つま こ とも しゅじん
彼に男の子また女の子を産んだならば、妻とその子供は主人のものとな
かれ どくしん さ どれい
り、彼は独身で去らなければならない。 五奴隷がもし﹃わたしは、わた
しゅじん つま こども あい じゆう み
しの主人と、わたしの妻と子供を愛します。わたしは自由の身となって
さ この めいげん しゅじん かれ かみ
去ることを好みません﹄と明言するならば、 六その主人は彼を神のもと
つ い と はしら つ い しゅじん
に連れて行き、戸あるいは柱のところに連れて行って、主人は、きりで
かれ みみ さ とお かれ
彼の耳を刺し通さなければならない。そうすれば彼はいつまでもこれ
つか
に仕えるであろう。
ひと むすめ おんな ど れ い う むすめ おとこ ど れ い さ
七もし人がその娘を女 奴隷として売るならば、その娘は男 奴隷が去る
さ かのじょ かのじょ じぶん さだ
よ う に 去 っ て は な ら な い。 八彼女 が も し 彼女 を 自分 の も の と 定 め た
しゅじん き とき しゅじん かのじょ
出エジプト記

主人の気にいらない時は、その主人は彼女が、あがなわれることを、こ
ゆる かれ あざむ
れに許さなければならない。彼はこれを欺いたのであるから、これを
たこく たみ う けんり かれ かのじょ じぶん こ さだ
他国 の 民 に 売 る 権利 は な い。 九彼 が も し 彼女 を 自分 の 子 の も の と 定 め

86
むすめ あつか かれ
るならば、これを娘のように扱わなければならない。 一〇彼が、たとい、
おんな まえ おんな しょくもつ いふく あた
ほかに女をめとることがあっても、前の女に食 物と衣服を与えること
ふうふ みち た かれ
と、その夫婦の道とを絶えさせてはならない。 一一彼がもしこの三つを
おこな かのじょ かね つぐな さ
行わないならば、彼女は金を償わずに去ることができる。
ひと う し もの かなら ころ
一二人を撃って死なせた者は、 必ず殺されなければならない。 一三しか
ひと かみ かれ て ひと
し、人がたくむことをしないのに、神が彼の手に人をわたされることの
とき ところ さだ かれ ところ
ある時は、わたしはあなたのために一つの所を定めよう。彼はその所へ
ひと りんじん あざむ
のがれることができる。 一四しかし人がもし、ことさらにその隣人を欺
ころ とき もの さいだん とら い ころ
いて殺す時は、その者をわたしの祭壇からでも、捕えて行って殺さなけ
ればならない。
じぶん ちち はは う もの かなら ころ
一五自分の父または母を撃つ者は、 必ず殺されなければならない。
ひと もの う かれ て
出エジプト記

一六人をかどわかした者は、これを売っていても、なお彼の手にあって
かなら ころ
も、 必ず殺されなければならない。
じぶん ちち はは もの かなら ころ
一七自分の父または母をのろう者は、 必ず殺されなければならない。

87
ひと たがい あらそ いし あいて う とき
人が互に争い、そのひとりが石または、こぶしで相手を撃った時、こ
一八
し とこ ふたた お そと ある
れが死なないで床につき、一九 再び起きあがって、つえにすがり、外を歩
う もの
くようになるならば、これを撃った者は、ゆるされるであろう。ただそ
しごと やす そんしつ つぐな ちりょう
の仕事を休んだ損失を償い、かつこれにじゅうぶん治療させなければな
らない。
ひと じぶん おとこ ど れ い おんな ど れ い う て
もし人がつえをもって、自分の男 奴隷または女 奴隷を撃ち、その手
二〇
した し かなら ばっ かれ
の下に死ぬならば、必ず罰せられなければならない。 二一しかし、彼がも
にち い の ひと ばっ どれい かれ
し一日か、ふつか生き延びるならば、その人は罰せられない。奴隷は彼
ざいさん
の財産だからである。
ひと たがい あらそ み おんな う りゅうざん
もし人が互に争 って、身ごもった女を撃ち、これに流 産させるなら
二二
がい かれ かなら おんな おっと もと ばっきん か
ば、ほかの害がなくとも、彼は必ずその女の夫の求める罰金を課せられ、
さいばんにん さだ しはら
出エジプト記

裁判人の定めるとおりに支払わなければならない。 二三しかし、ほかの
がい とき いのち いのち め め は は て て あし あし
害がある時は、命には命、二四目には目、歯には歯、手には手、足には足、
や きず や きず きず きず う きず う きず つぐな
焼き傷には焼き傷、傷には傷、打ち傷には打ち傷をもって償わなけれ
二五

88
ばならない。
ひと じぶん おとこ ど れ い かため おんな ど れ い かため う
二六 もし人が自分の男 奴隷の片目、または女 奴隷の片目を撃ち、これを
め じゆう み さ
つぶすならば、その目のためにこれを自由の身として去らせなければな
おとこ ど れ い ぽん は おんな ど れ い
らない。 二七また、もしその男 奴隷の一本の歯、またはその女 奴隷の一
ぽん は う おと は じゆう み さ
本の歯を撃ち落すならば、その歯のためにこれを自由の身として去らせ
なければならない。
うし おとこ おんな つ ころ うし かなら いし う ころ
二八 もし牛が男または女を突いて殺すならば、その牛は必ず石で撃ち殺
にく た うし
されなければならない。その肉は食べてはならない。しかし、その牛の
も ぬし つみ うし いぜん つ くせ も ぬし
持ち主は罪がない。 二九牛がもし以前から突く癖があって、その持ち主
ちゅうい まも おとこ おんな ころ
が注意されても、これを守りおかなかったために、男または女を殺した
うし いし う ころ も ぬし ころ
ならば、その牛は石で撃ち殺され、その持ち主もまた殺されなければな
かれ かね か か
出エジプト記

らない。 三〇彼がもし、あがないの金を課せられたならば、すべて課せら
いのち つぐな しはら おとこ こ
れたほどのものを、 命の償いに支払わなければならない。 三一 男の子を
つ おんな こ つ さだ したが しょ ち
突いても、女の子を突いても、この定めに従 って処置されなければなら

89
うし おとこ ど れ い おんな ど れ い つ しゅじん ぎん
ない。 三二牛がもし男 奴隷または女 奴隷を突くならば、その主人に銀三
しはら うし いし う ころ
十シケルを支払わなければならない。またその牛は石で撃ち殺されな
ければならない。
ひと あな お あな ほ
三三もし人が穴をあけたままに置き、あるいは穴を掘ってこれにおおい
うし お こ あな
をしないために、牛または、ろばがこれに落ち込むことがあれば、 三四穴
も ぬし つぐな かね も ぬし しはら
の持ち主はこれを償い、金をその持ち主に支払わなければならない。し
し けもの かれ
かし、その死んだ獣は彼のものとなるであろう。
ひと うし たにん うし つ ころ かれ い
三五ある人の牛が、もし他人の牛を突いて殺すならば、彼らはその生きて
うし う あたい わ し わ
いる牛を売って、その価を分け、またその死んだものをも分けなければ
うし いぜん つ くせ し
ならない。 三六あるいはその牛が以前から突く癖のあることが知られて
も ぬし まも ひと かなら
いるのに、その持ち主がこれを守りおかなかったならば、その人は必ず
うし うし つぐな し
出エジプト記

その牛のために牛をもって償わなければならない。しかし、その死んだ
けもの かれ
獣は彼のものとなるであろう。

90
第二二章
ひと うし ひつじ ぬす ころ う
一もし人が牛または羊を盗んで、これを殺し、あるいはこれを売るなら
かれ とう うし とう うし とう ひつじ とう
ば、彼は一頭の牛のために五頭の牛をもって、一頭の羊のために四頭の
ひつじ つぐな かれ かなら つぐな
羊 を も っ て 償 わ な け れ ば な ら な い。 三下彼 は 必 ず 償 わ な け れ ば な ら な
かれ なに とき かれ ぬす もの み う
い。もし彼に何もない時は、彼はその盗んだ物のために身を売られるで
ぬす もの い かれ て
あろう。 四もしその盗んだ物がなお生きて、彼の手もとにあれば、それ
うし ひつじ ばい つぐな
は牛、ろば、 羊のいずれにせよ、これを二倍にして償わなければならな
い。
ぬす あな み う ころ
二もし盗びとが穴をあけてはいるのを見て、これを撃って殺したとき
ひと ち なが つみ ひ のち
は、その人には血を流した罪はない。 三上しかし日がのぼって後ならば、
ひと ち なが つみ
出エジプト記

その人に血を流した罪がある。
ひと はたけ はたけ く かちく はな たにん
五もし人が畑またはぶどう畑のものを食わせ、その家畜を放って他人の
はたけ く とき じぶん はたけ もっと よ もの はたけ もっと よ
畑のものを食わせた時は、自分の畑の最も良い物と、ぶどう畑の最も良

91
もの つぐな
い物をもって、これを償わなければならない。
ひ で うつ つ むぎたば たち ほ
六もし火が出て、いばらに移り、積みあげた麦束、または立穂、または
はたけ や ひ も もの かなら つぐな
畑を焼いたならば、その火を燃やした者は、必ずこれを償わなければな
らない。
ひと きんせん ぶっぴん ほかん りんじん たく りんじん いえ ぬす
七もし人が金銭または物品の保管を隣人に託し、それが隣人の家から盗
とき ぬす み ばい つぐな
まれた時、その盗びとが見つけられたならば、これを二倍にして償わせ
ぬす み いえ しゅじん かみ
なければならない。 八もし盗びとが見つけられなければ、家の主人を神
まえ つ かれ りんじん も もの て たし
の前に連れてきて、彼が隣人の持ち物に手をかけたかどうかを、確かめ
なければならない。
うし ひつじ いふく うしな
九牛であれ、ろばであれ、 羊であれ、衣服であれ、あるいはどんな失 っ
もの い あらそ おこ い もの
た物であれ、それについて言い争いが起り﹃これがそれです﹄と言う者
そうほう い ぶん かみ まえ も だ
出エジプト記

があれば、その双方の言い分を、神の前に持ち出さなければならない。
かみ ゆうざい さだ もの ばい あいて つぐな
そして神が有罪と定められる者は、それを二倍にしてその相手に償わな
ければならない。

92
ひと うし ひつじ かちく
もし人が、ろば、または牛、または羊、またはどんな家畜でも、それ
一〇
りんじん あづ し きず うば さ
を隣人に預けて、それが死ぬか、傷つくか、あるいは奪い去られても、そ
み もの そうほう あいだ りんじん も もの て
れを見た者がなければ、一一双方の間に、隣人の持ち物に手をかけなかっ
ちか しゅ まえ も
たという誓いが、主の前になされなければならない。そうすれば、持ち
ぬし う い りんじん つぐな およ
主はこれを受け入れ、隣人は償うに及ばない。 一二けれども、それがまさ
じぶん ところ ぬす とき も ぬし つぐな
しく自分の所から盗まれた時は、その持ち主に償わなければならない。
さ ころ とき しょうこ も く
もしそれが裂き殺された時は、それを証拠として持って来るならば、
一三
さ ころ つぐな およ
その裂き殺されたものは償うに及ばない。
ひと りんじん かちく か きず し ばあい
もし人が隣人から家畜を借りて、それが傷つき、または死ぬ場合、そ
一四
も ぬし とも とき かなら つぐな
の持ち主がそれと共にいない時は、 必ずこれを償わなければならない。
も ぬし とも つぐな およ
もしその持ち主がそれと共におれば、それを償うに及ばない。もし
一五
ちんが かりちん あ
出エジプト記

それが賃借りしたものならば、その借賃をそれに当てなければならな
い。
ひと こんやく しょじょ さそ ね かれ かなら
もし人がまだ婚約しない処女を誘って、これと寝たならば、彼は必ず
一六

93
はなよめりょう はら つま ちち
これに花嫁 料を払って、妻としなければならない。 一七もしその父がこ
ひと あた こば かれ しょじょ はなよめりょう あた
れをその人に与えることをかたく拒むならば、彼は処女の花嫁 料に当
かね はら
るほどの金を払わなければならない。
まほうつかい おんな い
魔法使の女は、これを生かしておいてはならない。
一八
けもの おか もの かなら ころ
すべて獣を犯す者は、 必ず殺されなければならない。
一九
しゅ た かみがみ ぎせい もの た ほろ
主のほか、他の神々に犠牲をささげる者は、断ち滅ぼされなければな
二〇
らない。
きりゅう た こ く じん くる
あなたは寄留の他国人を苦しめてはならない。また、これをしえた
二一
くに きりゅう た こ く じん
げてはならない。あなたがたも、かつてエジプトの国で、寄留の他国人
か ふ こ じ なや
であったからである。 二二あなたがたはすべて寡婦、または孤児を悩ま
かれ なや かれ
してはならない。 二三もしあなたが彼らを悩まして、彼らがわたしにむ
さけ かなら さけ き
出エジプト記

かって叫ぶならば、わたしは必ずその叫びを聞くであろう。 二四そして
いか も ころ
わたしの怒りは燃えたち、つるぎをもってあなたがたを殺すであろう。
つま か ふ こども こ じ
あなたがたの妻は寡婦となり、あなたがたの子供たちは孤児となるであ

94
ろう。
とも たみ まず もの かね か とき たい
あなたが、共におるわたしの民の貧しい者に金を貸す時は、これに対
二五
かねか り し と
して金貸しのようになってはならない。これから利子を取ってはなら
りんじん うわぎ しつ と ひ い かえ
ない。 二六もし隣人の上着を質に取るならば、日の入るまでにそれを返
かれ み もの かれ はだ
さなければならない。 二七これは彼の身をおおう、ただ一つの物、彼の膚
きもの かれ なに き ね かれ
のための着物だからである。彼は何を着て寝ることができよう。彼が
さけ き
わたしにむかって叫ぶならば、わたしはこれに聞くであろう。わたしは
ふか
あわれみ深いからである。
かみ たみ つかさ
あなたは神をののしってはならない。また民の司をのろってはなら
二八
ない。
ゆた こくもつ さけ
あなたの豊かな穀物と、あふれる酒とをささげるに、ためらってはな
二九
出エジプト記

らない。
あなたのういごを、わたしにささげなければならない。 三〇あなたはま
うし ひつじ どうよう なぬか あいだ はは
た、あなたの牛と羊をも同様にしなければならない。七日の間その母と

95
とも お か め
共に置いて、八日目にそれをわたしに、ささげなければならない。
たい せい たみ
三一 あなたがたは、わたしに対して聖なる民とならなければならない。
の さ ころ にく た
あなたがたは、野で裂き殺されたものの肉を食べてはならない。それは
いぬ な あた
犬に投げ与えなければならない。
第二三章
いつわ い あくにん
一あなたは偽りのうわさを言いふらしてはならない。あなたは悪人と
て たずさ あくい しょうにん たすう
手を携えて、悪意のある証 人になってはならない。 二あなたは多数に
したが あく そしょう たすう
従 っ て 悪 を お こ な っ て は な ら な い。あ な た は 訴訟 に お い て、多数 に
したが かたよ せいぎ ま しょうげん まず
従 って片寄り、正義を曲げるような証 言をしてはならない。 三また貧
出エジプト記

ひと そしょう ま
しい人をその訴訟において、曲げてかばってはならない。
てき うし まよ あ とき かなら
四もし、あなたが敵の牛または、ろばの迷っているのに会う時は、 必ず
かれ ところ つ い かえ
これを彼の所に連れて行って、帰さなければならない。 五もしあなたを

96
にく もの にもつ した たお ふ み とき
憎む者のろばが、その荷物の下に倒れ伏しているのを見る時は、これを
み す お き かなら ひと て か おこ
見捨てて置かないように気をつけ、必ずその人に手を貸して、これを起
さなければならない。
まず もの そしょう さいばん ま
六あなたは貧しい者の訴訟において、裁判を曲げてはならない。 七あな
いつわ こと とお つみ もの ただ
たは偽り事に遠ざからなければならない。あなたは罪のない者と正し
もの ころ あくにん ぎ
い者とを殺してはならない。わたしは悪人を義とすることはないから
わいろ と わいろ ひと め
で あ る。 八あ な た は 賄賂 を 取 っ て は な ら な い。賄賂 は 人 の 目 を く ら ま
ただ もの じけん ま
し、正しい者の事件をも曲げさせるからである。
きりゅう た こ く じん
九あなたは寄留の他国人をしえたげてはならない。あなたがたはエジ
くに きりゅう た こ く じん きりゅう た こ く じん こころ し
プトの国で寄留の他国人であったので、寄留の他国人の心を知っている
からである。
ねん ち たね さんぶつ と い
出エジプト記

一〇 あなたは六年のあいだ、地に種をまき、その産物を取り入れることが
ねん め やす たがや お
できる。 一一しかし、七年目には、これを休ませて、耕さずに置かなけれ
たみ まず もの た のこ
ばならない。そうすれば、あなたの民の貧しい者がこれを食べ、その残

97
の けもの た はたけ はたけ
りは野の獣が食べることができる。あなたのぶどう畑も、オリブ 畑も
どうよう
同様にしなければならない。
か しごと なぬか め やす
あなたは六日のあいだ、仕事をし、七日目には休まなければならな
一二
うし やす え
い。これはあなたの牛および、ろばが休みを得、またあなたのはしため
こ きりゅう た こ く じん やす
の子および寄留の他国人を休ませるためである。 一三わたしが、あなた
い こと こころ と た かみがみ な とな
がたに言ったすべての事に心を留めなさい。他の神々の名を唱えては
きこ
ならない。また、これをあなたのくちびるから聞えさせてはならない。
ねん ど まつり おこな
あなたは年に三度、わたしのために祭を行わなければならない。 一五
一四
たね い まつり まも
あなたは種入れぬパンの祭を守らなければならない。わたしが、あなた
めい つき さだ とき なぬか たね い
に命じたように、アビブの月の定めの時に七日のあいだ、種入れぬパン
た つき で
を食べなければならない。それはその月にあなたがエジプトから出た
て まえ で
出エジプト記

からである。だれも、むなし手でわたしの前に出てはならない。 一六ま
はたけ え もの きんろう はつほ かりい まつり
た、あなたが畑にまいて獲た物の勤労の初穂をささげる刈入れの祭と、
きんろう み はたけ と い とし おわ とりい まつり おこな
あなたの勤労の実を畑から取り入れる年の終りに、取入れの祭を行わな

98
だんし ねん ど しゅ かみ まえ で
ければならない。 一七男子はみな、年に三度、主なる神の前に出なければ
ならない。
ぎせい ち たね い とも
あなたはわたしの犠牲の血を、種を入れたパンと共にささげてはな
一八
まつり しぼう よくあさ のこ お
らない。また、わたしの祭の脂肪を翌朝まで残して置いてはならない。
と ち はつほ もっと よ もの かみ しゅ いえ たずさ
あなたの土地の初穂の最も良い物を、あなたの神、主の家に携えてこ
一九
こ はは ちち に
なければならない。あなたは子やぎを、その母の乳で煮てはならない。
み つかい まえ みち まも
見よ、わたしは使をあなたの前につかわし、あなたを道で守らせ、わ
二〇
そな ところ みちび まえ つつし
たしが備えた所に導かせるであろう。 二一あなたはその前に慎み、その
ことば き したが かれ な かれ
言葉に聞き従い、彼にそむいてはならない。わたしの名が彼のうちにあ
かれ
るゆえに、彼はあなたがたのとがをゆるさないであろう。
かれ こえ き したが かた
しかし、もしあなたが彼の声によく聞き従い、すべてわたしが語るこ
二二
おこな てき てき
出エジプト記

とを行うならば、わたしはあなたの敵を敵とし、あなたのあだをあだと
するであろう。
つかい まえ い
わたしの使はあなたの前に行って、あなたをアモリびと、ヘテびと、
二三

99
ところ みちび
ペリジびと、カナンびと、ヒビびと、およびエブスびとの所に導き、わ
かれ ほろ かれ かみがみ おが
たしは彼らを滅ぼすであろう。 二四あなたは彼らの神々を拝んではなら
つか かれ
ない。これに仕えてはならない。また彼らのおこないにならってはな
かれ まった う たお いし はしら う くだ
らない。あなたは彼らを全く打ち倒し、その石の柱を打ち砕かなければ
かみ しゅ つか
ならない。 二五あなたがたの神、主に仕えなければならない。そうすれ
みず しゅく やまい
ば、わたしはあなたがたのパンと水を祝し、あなたがたのうちから病を
のぞ さ くに りゅうざん おんな ふにん
除き去るであろう。 二六あなたの国のうちには流 産する女もなく、不妊
おんな ひ かず み た
の女もなく、わたしはあなたの日の数を満ち足らせるであろう。 二七わ
さき おそ い ところ たみ
たしはあなたの先に、わたしの恐れをつかわし、あなたが行く所の民を、
う やぶ てき せ ほう む
ことごとく打ち敗り、すべての敵に、その背をあなたの方へ向けさせる
さき
であろう。 二八わたしはまた、くまばちをあなたの先につかわすであろ
まえ お
出エジプト記

う。これはヒビびと、カナンびと、およびヘテびとをあなたの前から追
はら かれ ねん
い払うであろう。 二九しかし、わたしは彼らを一年のうちには、あなたの
まえ お はら と ち あ の けもの ま
前から追い払わないであろう。土地が荒れすたれ、野の獣が増して、あ

100
がい じょじょ かれ
なたを害することのないためである。 三〇わたしは徐々に彼らをあなた
まえ お はら ち
の前から追い払うであろう。あなたは、ついにふえひろがって、この地
つ こうかい
を継ぐようになるであろう。 わたしは紅海からペリシテびとの
三一
うみ いた あらの かわ いた りょういき
海に至るまでと、荒野からユフラテ川に至るまでを、あなたの領 域と
ち す もの て かれ
し、この地に住んでいる者をあなたの手にわたすであろう。あなたは彼
まえ お はら かれ かれ
らをあなたの前から追い払うであろう。 三二あなたは彼ら、および彼ら
かみがみ けいやく むす かれ くに す
の神々と契約を結んではならない。 三三彼らはあなたの国に住んではな
かれ たい つみ おか
らない。彼らがあなたをいざなって、わたしに対して罪を犯させること
かれ かみ つか かなら
のないためである。もし、あなたが彼らの神に仕えるならば、それは必
ずあなたのわなとなるであろう﹂。
出エジプト記

第二四章

また、モーセに言われた、
一 ﹁あなたはアロン、ナダブ、アビウおよびイ

101
にん ちょうろう とも しゅ
ス ラ エ ル の 七 十 人 の 長 老 た ち と 共 に、主 の も と に の ぼ っ て き な さ い。
とお はな れいはい
そ し て あ な た が た は 遠 く 離 れ て 礼拝 し な さ い。 二た だ モ ー セ ひ と り が
しゅ ちか た もの ちか たみ かれ とも
主に近づき、他の者は近づいてはならない。また、民も彼と共にのぼっ
てはならない﹂。
しゅ ことば たみ つ
三モーセはきて、主のすべての言葉と、すべてのおきてとを民に告げた。
たみ どうおん こた い しゅ おお ことば みな
民はみな同音に答えて言った、﹁わたしたちは主の仰せられた言葉を皆、
おこな しゅ ことば か あさ
行います﹂。 四そしてモーセは主の言葉を、ことごとく書きしるし、朝は
お やま さいだん きず ぶぞく したが
やく起きて山のふもとに祭壇を築き、イスラエルの十二部族に従 って
はしら た ひとびと わかもの
十二の柱を建て、 五イスラエルの人々のうちの若者たちをつかわして、
しゅ はんさい しゅうおんさい おうし
主に燔祭をささげさせ、また酬 恩 祭として雄牛をささげさせた。 六その
とき ち なか と はち い ち なか さいだん
時モーセはその血の半ばを取って、鉢に入れ、また、その血の半ばを祭壇
そそ けいやく しょ と たみ よ き
出エジプト記

に注ぎかけた。 七そして契約の書を取って、これを民に読み聞かせた。
かれ こた い しゅ おお みな
すると、彼らは答えて言った、
﹁わたしたちは主が仰せられたことを皆、
じゅうじゅん おこな ち と たみ そそ
従 順に行います﹂。 八そこでモーセはその血を取って、民に注ぎかけ、

102
い み しゅ ことば もとづ
そして言った、
﹁見よ、これは主がこれらのすべての言葉に基いて、あな
むす けいやく ち
たがたと結ばれる契約の血である﹂。
にん
九こうしてモーセはアロン、ナダブ、アビウおよびイスラエルの七十人
ちょうろう とも い かれ かみ
の長 老たちと共にのぼって行った。 一〇そして、彼らがイスラエルの神
み あし した しきいし もの す わた
を見ると、その足の下にはサファイアの敷石のごとき物があり、澄み渡
かみ ひとびと しどうしゃ
るおおぞらのようであった。 一一神はイスラエルの人々の指導者たちを
て かれ かみ み の く
手にかけられなかったので、彼らは神を見て、飲み食いした。
しゅ い やま のぼ ところ
一二 ときに主はモーセに言われた、
﹁山に登り、わたしの所にきて、そこ
かれ おし りっぽう いまし か
にいなさい。彼らを教えるために、わたしが律法と戒めとを書きしるし
いし いた さづ じゅうしゃ
た石の板をあなたに授けるであろう﹂。 一三そこでモーセは従 者 ヨシュ
とも た かみ やま のぼ かれ ちょうろう
ア と 共 に 立 ち あ が り、モ ー セ は 神 の 山 に 登 っ た。 一四彼 は 長 老 た ち に
い ところ かえ く ま
出エジプト記

言った、﹁わたしたちがあなたがたの所に帰って来るまで、ここで待って
み とも こと
いなさい。見よ、アロンとホルとが、あなたがたと共にいるから、事あ
もの かれ ところ い
る者は、だれでも彼らの所へ行きなさい﹂。

103
やま のぼ くも やま しゅ
一五 こ う し て モ ー セ は 山 に 登 っ た が、雲 は 山 を お お っ て い た。 一六主 の
えいこう さん うえ くも か やま
栄光がシナイ山の上にとどまり、雲は六日のあいだ、山をおおっていた
なぬか め しゅ くも なか よ しゅ えいこう やま いただき
が、七日目に主は雲の中からモーセを呼ばれた。 一七主の栄光は山の頂
も ひ ひとびと め み くも
で、燃える火のようにイスラエルの人々の目に見えたが、一八モーセは雲
なか やま のぼ にち や やま
の中にはいって、山に登った。そしてモーセは四十日四十夜、山にいた。
第二五章
しゅ い ひとびと つ
一主はモーセに言われた、二﹁イスラエルの人々に告げて、わたしのため
もの たずさ こころ よろこ もの
にささげ物を携えてこさせなさい。すべて、 心から喜んでする者から、
もの う と かれ う
わ た し に さ さ げ る 物 を 受 け 取 り な さ い。 三あ な た が た が 彼 ら か ら 受 け
出エジプト記

と もの きん ぎん せいどう あおいと むらさき


取るべきささげ物はこれである。すなわち金、銀、青銅、 四青糸、 紫
いと ひ いと あ ま ねんし けいと そめ おひつじ かわ
糸、緋糸、亜麻の撚糸、やぎの毛糸、 五あかね染の雄羊の皮、じゅごん
かわ ざい あぶら そそ あぶら こう くんこう こうりょう
の皮、アカシヤ材、 六ともし油、注ぎ油と香ばしい薫香のための香 料、 七

104
しま むねあて ほうせき かれ
縞めのう、エポデと胸当にはめる宝石。 八また、彼らにわたしのために
せいじょ つく かれ す
聖所 を 造 ら せ な さ い。わ た し が 彼 ら の う ち に 住 む た め で あ る。 九す べ
しめ まくや かた うつわ かた したが
てあなたに示す幕屋の型および、そのもろもろの器の型に従 って、これ
つく
を造らなければならない。
かれ ざい はこ つく なが
一〇彼らはアカシヤ材で箱を造らなければならない。長さは二キュビト
はん はば はん たか はん じゅんきん
半、幅は一キュビト半、高さは一キュビト半。 一一あなたは純 金でこれを
ないがい うえ
おおわなければならない。すなわち内外ともにこれをおおい、その上の
しゅうい きん かざ ふち つく きん かん い
周囲 に 金 の 飾 り 縁 を 造 ら な け れ ば な ら な い。 一二ま た 金 の 環 四 つ を 鋳
と つ かん
て、その四すみに取り付けなければならない。すなわち二つの環をこち
がわ かん がわ つ
ら側に、二つの環をあちら側に付けなければならない。 一三またアカシ
ざい つく きん
ヤ材のさおを造り、金でこれをおおわなければならない。 一四そしてそ
はこ そくめん かん とお はこ
出エジプト記

のさおを箱の側面の環に通し、それで箱をかつがなければならない。 一五
はこ かん さ お ぬ はな
さおは箱の環に差して置き、それを抜き放してはならない。 一六そして
はこ あた いた おさ
その箱に、わたしがあなたに与えるあかしの板を納めなければならな

105
じゅんきん しょくざいしょ つく なが
い。 一七ま た 純 金 の 贖 罪 所 を 造 ら な け れ ば な ら な い。長 さ は 二 キ ュ ビ
はん はば はん きん つく
ト半、幅は一キュビト半。 一八また二つの金のケルビムを造らなければ
うちものつく しょくざいしょ りょうはし お
ならない。これを打物造りとし、贖 罪 所の両 端に置かなければならな
はし はし つく
い。 一九一つのケルブをこの端に、一つのケルブをかの端に造り、ケルビ
しょくざいしょ いちぶ りょうはし つく
ム を 贖 罪 所 の 一部 と し て そ の 両 端 に 造 ら な け れ ば な ら な い。 二〇ケ ル
つばさ たか の つばさ しょくざいしょ かお たがい
ビムは翼を高く伸べ、その翼をもって贖 罪 所をおおい、顔は互にむかい
あ かお しょくざいしょ
合い、ケルビムの顔は贖 罪 所にむかわなければならない。 二一あなたは
しょくざいしょ はこ うえ お はこ なか さづ いた おさ
贖 罪 所を箱の上に置き、箱の中にはわたしが授けるあかしの板を納め
ところ あ しょくざいしょ うえ
なければならない。 二二その所でわたしはあなたに会い、贖 罪 所の上か
はこ うえ あいだ ひとびと
ら、あかしの箱の上にある二つのケルビムの間から、イスラエルの人々
めい こと かた
のために、わたしが命じようとするもろもろの事を、あなたに語るであ
出エジプト記

ろう。
ざい つくえ つく なが
二三 あ な た は ま た ア カ シ ヤ 材 の 机 を 造 ら な け れ ば な ら な い。長 さ は 二
はば たか はん じゅんきん
キュビト、幅は一キュビト、高さは一キュビト半。 二四純 金でこれをお

106
しゅうい きん かざ ふち つく しゅうい て はば さん つく
おい、周囲に金の飾り縁を造り、 二五またその周囲に手幅の棧を造り、そ
さん しゅうい きん かざ ふち つく
の棧の周囲に金の飾り縁を造らなければならない。 二六また、そのため
きん かん つく あし しょ かん と つ
に金の環四つを造り、その四つの足のすみ四か所にその環を取り付けな
かん さん つ つくえ い
ければならない。 二七環は棧のわきに付けて、 机をかつぐさおを入れる
ところ ざい つく きん
所としなければならない。 二八またアカシヤ材のさおを造り、金でこれ
つくえ
をおおい、それをもって、机をかつがなければならない。 二九また、その
さら にゅうこう も はい かんさい そそ びん はち つく
皿、 乳 香 を 盛 る 杯 お よ び 灌祭 を 注 ぐ た め の 瓶 と 鉢 を 造 り、こ れ ら は
じゅんきん つく つくえ うえ そな お
純 金で造らなければならない。 三〇そして机の上には供えのパンを置い
つね まえ
て、常にわたしの前にあるようにしなければならない。
じゅんきん しょくだい つく しょくだい うちものつく
三一 ま た 純 金 の 燭 台 を 造 ら な け れ ば な ら な い。 燭 台 は 打物造 り と し、
だい みき がく ふし はな つら
その台、幹、萼、節、花を一つに連ならせなければならない。 三二また六
えだ だ しょくだい えだ がわ しょくだい
出エジプト記

つの枝をそのわきから出させ、 燭 台の三つの枝をこの側から、 燭 台の
えだ がわ だ はな
三つの枝をかの側から出させなければならない。 三三あめんどうの花の
かたち がく ふし はな えだ
形をした三つの萼が、それぞれ節と花をもって一つの枝にあり、また、あ

107
はな かたち がく ふし はな えだ
めんどうの花の形をした三つの萼が、それぞれ節と花をもってほかの枝
しょくだい で えだ
にあるようにし、燭 台から出る六つの枝を、みなそのようにしなければ
しょくだい みき はな かたち
ならない。 三四また、 燭 台の幹には、あめんどうの花の形をした四つの
がく つ がく ふし はな
萼を付け、その萼にはそれぞれ節と花をもたせなさい。 三五すなわち二
えだ した ふし と つ つぎ えだ した ふし と
つの枝の下に一つの節を取り付け、次の二つの枝の下に一つの節を取り
つ さら つぎ えだ した ふし と つ しょくだい みき で
付け、更に次の二つの枝の下に一つの節を取り付け、燭 台の幹から出る
えだ ふし えだ
六つの枝に、みなそのようにしなければならない。 三六それらの節と枝
つら じゅんきん うちものつく
を一つに連ね、ことごとく純 金の打物造りにしなければならない。 三七
ざら つく ざら ひ
また、それのともしび皿を七つ造り、そのともしび皿に火をともして、そ
ぜんぽう てら しん き しん と ざら
の前方を照させなければならない。 三八その芯切りばさみと、芯取り皿
じゅんきん つく じゅんきん しょくだい
は純 金で造らなければならない。 三九すなわち純 金 一タラントで燭 台
うつわ つく
出エジプト記

と、これらのもろもろの器とが造られなければならない。 四〇そしてあ
やま しめ かた したが ちゅうい つく
なたが山で示された型に従い、注意してこれを造らなければならない。

108
第二六章
まい まく まくや つく
一あなたはまた十枚の幕をもって幕屋を造らなければならない。すな
あ ま ねんし あおいと むらさきいと ひ いと まく つく たく
わち亜麻の撚糸、青糸、 紫 糸、緋糸で幕を作り、巧みなわざをもって、
お だ まく なが
それにケルビムを織り出さなければならない。 二幕の長さは、おのおの
まく はば まく みなおな すんぽう
二十八キュビト、幕の幅は、おのおの四キュビトで、幕は皆同じ寸法で
まく まい たがい つら あ た まい まく
なければならない。 三その幕五枚を互に連ね合わせ、また他の五枚の幕
たがい つら あ いちれん はし まく ふち
を も 互 に 連 ね 合 わ せ な け れ ば な ら な い。 四そ の 一連 の 端 に あ る 幕 の 縁
あおいろ ち た いちれん はし まく ふち
に青色の乳をつけ、また他の一連の端にある幕の縁にもそのようにしな
まい まく ち た
ければならない。 五あなたは、その一枚の幕に乳五十をつけ、また他の
いちれん まく はし ち ち たがい あい む
一連の幕の端にも乳五十をつけ、その乳を互に相向かわせなければなら
きん わ つく わ まく たがい つら あ
出エジプト記

ない。 六あなたはまた金の輪五十を作り、その輪で幕を互に連ね合わせ
まくや
て一つの幕屋にしなければならない。
まくや てんまく けいと まく つく
七また幕屋をおおう天幕のためにやぎの毛糸で幕を作らなければなら

109
まく まい つく まい まく なが
な い。す な わ ち 幕 十 一 枚 を 作 り、 八そ の 一 枚 の 幕 の 長 さ は 三 十 キ ュ ビ
まい まく はば まい まく おな すんぽう
ト、その一枚の幕の幅は四キュビトで、その十一枚の幕は同じ寸法でな
まく まい つら あ
ければならない。 九そして、その幕五枚を一つに連ね合わせ、またその
まく まい つら あ まい め まく てんまく まえ お かさ
幕六枚を一つに連ね合わせて、その六枚目の幕を天幕の前で折り重ねな
いちれん はし まく ふち ち
け れ ば な ら な い。 一〇ま た そ の 一連 の 端 に あ る 幕 の 縁 に 乳 五 十 を つ け、
た いちれん まく ふち ち
他の一連の幕の縁にも乳五十をつけなさい。
せいどう わ つく わ ち か てんまく つら あ
一一 そして青銅の輪五十を作り、その輪を乳に掛け、その天幕を連ね合わ
てんまく まく のこ た ぶぶん のこ
せて一つにし、一二その天幕の幕の残りの垂れる部分、すなわちその残り
はんまく まくや た てんまく
の半幕を幕屋のうしろに垂れさせなければならない。 一三そして天幕の
まく あま
幕のたけで余るものの、こちらのキュビトと、あちらのキュビトとは、
まくや りょうがわ た
幕屋をおおうように、その両 側のこちらとあちらとに垂れさせなけれ
ぞ おひつじ かわ てんまく
出エジプト記

ばならない。 一四また、あかね染めの雄羊の皮で天幕のおおいと、じゅご
かわ うえ つく
んの皮でその上にかけるおおいとを造らなければならない。
まくや ざい たてわく つく
一五 あなたは幕屋のために、アカシヤ材で立枠を造らなければならない。

110
わく なが わく はば はん わく
一六枠の長さを十キュビト、枠の幅を一キュビト半とし、 一七枠ごとに二
ほぞ つく く あ まくや わく
つの柄を造って、かれとこれとを食い合わさせ、幕屋のすべての枠にこ
まくや わく つく
の よ う に し な け れ ば な ら な い。 一 八あ な た は 幕屋 の た め に 枠 を 造 り、
みなみがわ わく わく した ぎん ざ つく
南 側 の た め に 枠 二 十 と し、 一九そ の 二 十 の 枠 の 下 に 銀 の 座 四 十 を 造 っ
わく した ほぞ ざ お わく した
て、この枠の下に、その二つの柄のために二つの座を置き、かの枠の下
ほぞ ざ お
にもその二つの柄のために二つの座を置かなければならない。 二〇また
まくや た がわ きたがわ わく つく ぎん ざ
幕屋の他の側、すなわち北側のためにも枠二十を造り、二一その銀の座四
つく わく した ざ お わく した ざ
十を造って、この枠の下に、二つの座を置き、かの枠の下にも二つの座
お まくや にしがわ
を置かなければならない。 二二また幕屋のうしろ、すなわち西側のため
わく つく まくや わく つく
に枠六つを造り、 二三幕屋のうしろの二つのすみのために枠二つを造ら
した かさ あ おな いただき だい
なければならない。 二四これらは下で重なり合い、同じくその頂でも第
かん かさ あ
出エジプト記

一の環まで重なり合うようにし、その二つともそのようにしなければな
もう
らない。それらは二つのすみのために設けるものである。 二五こうして
わく ぎん ざ わく した ざ わく した
その枠は八つ、その銀の座は十六、この枠の下に二つの座、かの枠の下

111
ざ お ざい よこぎ つく
にも二つの座を置かなければならない。 二六またアカシヤ材で横木を造
まくや がわ わく
らなければならない。すなわち幕屋のこの側の枠のために五つ、 二七ま
まくや がわ わく よこぎ まくや にしがわ わく
た幕屋のかの側の枠のために横木五つ、幕屋のうしろの西側の枠のため
よこぎ つく わく なか ちゅうおう よこぎ はし はし とお
に横木五つを造り、 二八枠のまん中にある中 央の横木は端から端まで通
わく きん
る よ う に し な け れ ば な ら な い。 二 九そ し て そ の 枠 を 金 で お お い、ま た
よこぎ とお かん きん つく よこぎ きん
横木を通すその環を金で造り、また、その横木を金でおおわなければな
やま しめ ようしき したが まくや た
らない。 三〇こうしてあなたは山で示された様式に従 って幕屋を建てな
ければならない。
あおいと むらさきいと ひ いと あ ま ねんし たれまく つく たく
三一また青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻の撚糸で垂幕を作り、巧みなわざをもっ
お だ きん
て、そ れ に ケ ル ビ ム を 織 り 出 さ な け れ ば な ら な い。 三 二そ し て 金 で お
ざい はしら きん こま か はしら ぎん
おった四つのアカシヤ材の柱の金の鉤にこれを掛け、その柱は四つの銀
ざ うえ たれまく わ こま か
出エジプト記

の座の上にすえなければならない。 三三 その垂幕の輪を鉤に掛け、そ
たれまく うち はこ おさ たれまく
の垂幕の内にあかしの箱を納めなさい。その垂幕はあなたがたのため
せいじょ しせいじょ へだ わ しせいじょ
に聖所と至聖所とを隔て分けるであろう。 三四また至聖所にあるあかし

112
はこ うえ しょくざいしょ お たれまく そと
の箱の上に贖 罪 所を置かなければならない。 三五そしてその垂幕の外に
つくえ お まくや みなみがわ つくえ む あ しょくだい お
机を置き、幕屋の南 側に、 机に向かい合わせて燭 台を置かなければな
つくえ きたがわ お
らない。ただし机は北側に置かなければならない。
てんまく いりぐち あおいと むらさきいと ひ いと あ ま ねんし
三六 あなたはまた天幕の入口のために青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻の撚糸で、
いろ お つく
色とりどりに織ったとばりを作らなければならない。 三七あなたはその
ざい はしら つく きん こま
とばりのためにアカシヤ材の柱 五つを造り、これを金でおおい、その鉤
きん つく はしら せいどう ざ い つく
を金で造り、またその柱のために青銅の座五つを鋳て造らなければなら
ない。
第二七章
出エジプト記

ざい さいだん つく なが
一あ な た は ま た ア カ シ ヤ 材 で 祭壇 を 造 ら な け れ ば な ら な い。長 さ 五
はば かく たか
キュビト、幅五キュビトの四角で、高さは三キュビトである。 二その四
うえ いちぶ つの つく せいどう さいだん
すみの上にその一部としてそれの角を造り、青銅で祭壇をおおわなけれ

113
はい と じゅうのう はち にくまた ひざら つく
ばならない。 三また灰を取るつぼ、 十 能、鉢、肉叉、火皿を造り、その
うつわ せいどう つく さいだん せいどう あみ
器 は み な 青銅 で 造 ら な け れ ば な ら な い。 四ま た 祭壇 の た め に 青銅 の 網
ざいく こうし つく あみ うえ せいどう かん と つ
細工の格子を造り、その四すみで、網の上に青銅の環を四つ取り付けな
あみ さいだん で ば した と つ さいだん
ければならない。 五その網を祭壇の出張りの下に取り付け、これを祭壇
たか なか たっ さいだん
の 高 さ の 半 ば に 達 す る よ う に し な け れ ば な ら な い。 六ま た 祭壇 の た め
つく ざい つく
に、さおを造らなければならない。すなわちアカシヤ材で、さおを造り、
せいどう かん とお
青銅で、これをおおわなければならない。 七そのさおを環に通し、さお
さいだん りょうがわ さいだん いた
を祭壇の両 側にして、これをかつがなければならない。 八祭壇は板で
くうどう つく やま しめ つく
空洞に造り、山で示されたように、これを造らなければならない。
まくや にわ つく りょうがわ にわ なが
九あなたはまた幕屋の庭を造り、 両 側では庭のために長さ百キュビト
あ ま ねんし もう いっぽう あ
の亜麻の撚糸のあげばりを設け、その一方に当てなければならない。 一〇
はしら はしら ざ せいどう はしら こま けた ぎん
出エジプト記

その柱は二十、その柱の二十の座は青銅にし、その柱の鉤と桁とは銀に
おな きたがわ なが
しなければならない。 一一また同じく北側のために、長さ百キュビトの
もう はしら はしら ざ
あげばりを設けなければならない。その柱は二十、その柱の二十の座は

114
せいどう はしら こま けた ぎん にわ
青銅にし、その柱の鉤と桁とは銀にしなければならない。 一二また庭の
にしがわ はば もう
西側 の 幅 の た め に 五 十 キ ュ ビ ト の あ げ ば り を 設 け な け れ ば な ら な い。
はしら ざ ひがしがわ にわ はば
その柱は十、その座も十。 一三また東 側でも庭の幅を五十キュビトにし
いっぽう もう
なければならない。 一四そしてその一方に十五キュビトのあげばりを設
はしら ざ た いっぽう
けなければならない。その柱は三つ、その座も三つ。 一五また他の一方
もう はしら
にも十五キュビトのあげばりを設けなければならない。その柱は三つ、
ざ にわ もん あおいと むらさきいと ひ いと あ ま ねんし
その座も三つ。 一六庭の門のために青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻の撚糸で、
いろ お なが もう
色とりどりに織った長さ二十キュビトのとばりを設けなければならな
はしら ざ にわ しゅうい はしら ぎん けた
い。その柱は四つ、その座も四つ。 一七庭の周囲の柱はみな銀の桁でつ
こま ぎん ざ せいどう にわ なが
なぎ、その鉤は銀、その座は青銅にしなければならない。 一八庭の長さは
はば たか あ ま
百キュビト、その幅は五十キュビト、その高さは五キュビトで、亜麻の
ねんし ぬの か ざ せいどう
出エジプト記

撚糸の布を掛けめぐらし、その座を青銅にしなければならない。 一九す
まくや もち うつわ くぎ にわ
べて幕屋に用いるもろもろの器、およびそのすべての釘、また庭のすべ
くぎ せいどう つく
ての釘は青銅で造らなければならない。

115
ひとびと めい と
二〇 あなたはまたイスラエルの人々に命じて、オリブをつぶして採った
じゅんすい あぶら ひ も た ひ
純 粋の油を、ともし火のために持ってこさせ、絶えずともし火をともさ
こ かいけん まくや なか
なければならない。 二一アロンとその子たちとは、会見の幕屋の中のあ
はこ まえ たれまく そと ゆう あさ しゅ まえ ひ
かしの箱の前にある垂幕の外で、夕から朝まで主の前に、そのともし火
ととの ひとびと まも よ よ かわ
を整えなければならない。これはイスラエルの人々の守るべき世々変
さだ
らざる定めでなければならない。
第二八章
ひとびと きょうだい こ
一またイスラエルの人々のうちから、あなたの兄 弟 アロンとその子た

ち、すなわちアロンとアロンの子ナダブ、アビウ、エレアザル、イタマ
出エジプト記

さいし つか
ルとをあなたのもとにこさせ、祭司としてわたしに仕えさせ、 二またあ
きょうだい せい いふく つく かれ さか うるわ
なたの兄 弟 アロンのために聖なる衣服を作って、彼に栄えと麗しきを
こころ ち え もの
も た せ な け れ ば な ら な い。 三あ な た は す べ て 心 に 知恵 あ る 者、す な わ

116
ち え れい み もの かた いふく つく
ち、わたしが知恵の霊を満たした者たちに語って、アロンの衣服を作ら
せいべつ さいし つか
せ、アロンを聖別し、祭司としてわたしに仕えさせなければならない。 四
かれ つく いふく つぎ むねあて ころも
彼らの作るべき衣服は次のとおりである。すなわち胸当、エポデ、 衣、
いちまつ も よ う ふく ぼうし おび かれ きょうだい こ
市松模様の服、帽子、帯である。彼らはあなたの兄 弟 アロンとその子た
せい いふく つく さいし つか
ちとのために聖なる衣服を作り、祭司としてわたしに仕えさせなければ
ならない。
かれ きんし あおいと むらさきいと ひ いと あ ま ねんし う と
五彼らは金糸、青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻の撚糸を受け取らなければな
かれ きんし あおいと むらさきいと ひ いと あ ま ねんし もち
らない。 六そして彼らは金糸、青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻の撚糸を用い、
たく つく
巧 み な わ ざ を も っ て エ ポ デ を 作 ら な け れ ば な ら な い。 七こ れ に 二 つ の
かた つ りょうはし つ
肩ひもを付け、その両 端を、これに付けなければならない。 八エポデの
うえ おび おな つく きんし あお
上で、これをつかねる帯は、同じきれでエポデの作りのように、金糸、青
いと むらさきいと ひ いと あ ま ねんし つく
出エジプト記

糸、 紫 糸、緋糸、亜麻の撚糸で作らなければならない。 九あなたは二
しま と うえ こ な きざ
つの縞めのうを取って、その上にイスラエルの子たちの名を刻まなけれ
な いし のこ な た
ばならない。 一〇すなわち、その名六つを一つの石に、残りの名六つを他

117
いし かれ うま じゅん きざ ほうせき ちょうこく
の石に、彼らの生れた順に刻まなければならない。 一一宝石に彫 刻する
ひと いん ちょうこく こ な いし
人が印を彫 刻するように、イスラエルの子たちの名をその二つの石に
きざ きん あみ ざ い く いし かた
刻み、それを金の編細工にはめ、一二この二つの石をエポデの肩ひもにつ
こ きねん いし
けて、イスラエルの子たちの記念の石としなければならない。こうして
しゅ まえ りょうかた かれ な お きねん
アロンは主の前でその両 肩に彼らの名を負うて記念としなければなら
きん あみ ざ い く つく
ない。 一三あなたはまた金の編細工を作らなければならない。 一四そして
じゅんきん くさり ざいく つく くさり あみ ざ い く
二つの純 金の鎖を、ひも細工にねじて作り、そのひもの鎖をかの編細工
につけなければならない。
むねあて たく つく
一五 あなたはまたさばきの胸当を巧みなわざをもって作り、これをエポ
つく つく きんし あおいと むらさきいと
デの作りのように作らなければならない。すなわち金糸、青糸、 紫 糸、
ひ いと あ ま ねんし つく
緋糸、亜麻の撚糸で、これを作らなければならない。 一六これは二つに
お かく なが ゆびあた はば ゆびあた
出エジプト記

折って四角にし、長さは一指当り、幅も一指当りとしなければならない。
なか ほうせき れつ こ こう
一七 またその中に宝石を四列にはめ込まなければならない。すなわち紅
ぎょくずい き いし すいしょう れつ だい れつ だい に れつ いし
玉 髄、貴かんらん石、水 晶の列を第一列とし、 一八第二列は、ざくろ石、

118
あかしま だい れつ き すいしょう むらさきすいしょう だい れつ
るり、赤縞めのう。 一九第三列は黄 水 晶、めのう、 紫 水 晶。 二〇第四列
き へきぎょく しま へきぎょく きん あみ ざ い く なか
は黄 碧 玉、縞めのう、 碧 玉であって、これらを金の編細工の中にはめ
こ ほうせき こ な したが
込 ま な け れ ば な ら な い。 二一そ の 宝石 は イ ス ラ エ ル の 子 ら の 名 に 従 い、
な いん ちょうこく ぶぞく
その名とひとしく十二とし、おのおの印の彫 刻のように十二の部族の
な きざ ざいく じゅんきん
ためにその名を刻まなければならない。 二二またひも細工にねじた純 金
くさり むねあて むねあて きん かん
の鎖を胸当につけなければならない。 二三また、胸当のために金の環二
つく むねあて りょうはし かん に すじ きん
つを作り、胸当の両 端にその二つの環をつけ、 二四かの二筋の金のひも
むねあて はし かん に すじ
を胸当の端の二つの環につけなければならない。 二五ただし、その二筋
た りょうはし あみ ざ い く かた
のひもの他の両 端をかの二つの編細工につけ、エポデの肩ひもにつけ
まえ きん
て、前にくるようにしなければならない。 二六あなたはまた二つの金の
かん つく むねあて りょうはし
環を作って、これを胸当の両 端につけなければならない。すなわちエ
せっ うちがわ ふち
出エジプト記

ポデに接する内側の縁にこれをつけなければならない。 二七また二つの
きん かん つく かた した ぶぶん まえ
金の環を作って、これをエポデの二つの肩ひもの下の部分につけ、前の
ほう め ちか おび うえ ほう
方で、そのつなぎ目に近く、エポデの帯の上の方にあるようにしなけれ

119
むねあて あお かん かん むす
ばならない。 二八胸当は青ひもをもって、その環をエポデの環に結びつ
おび うえ ほう
け、エポデの帯の上の方にあるようにしなければならない。こうして
むねあて はな
胸当 が エ ポ デ か ら 離 れ な い よ う に し な け れ ば な ら な い。 二九ア ロ ン が
せいじょ とき むねあて こ な
聖所にはいる時は、さばきの胸当にあるイスラエルの子たちの名をその
むね お しゅ まえ つね おぼ
胸に置き、主の前に常に覚えとしなければならない。 三〇あなたはさば
むねあて い しゅ まえ とき
きの胸当にウリムとトンミムを入れて、アロンが主の前にいたる時、そ
むね うえ しゅ まえ
の胸の上にあるようにしなければならない。こうしてアロンは主の前
つね こ むね お
に常にイスラエルの子たちのさばきを、その胸に置かなければならな
い。
ぞく うわふく あおじ つく
三一あなたはまた、エポデに属する上服をすべて青地で作らなければな
あたま とお くち なか もう くち しゅうい
らない。 三二 頭を通す口を、そのまん中に設け、その口の周囲には、よろ
おりもの ふち
出エジプト記

いのえりのように織物の縁をつけて、ほころびないようにし、三三そのす
あおいと むらさきいと ひ いと つく しゅうい
そには青糸、 紫 糸、緋糸で、ざくろを作り、そのすその周囲につけ、ま
しゅうい きん すず あいだあいだ
た周囲に金の鈴をざくろの間 々につけなければならない。 三四すなわち

120
きん すず きん すず うわふく しゅうい
金の鈴にざくろ、また金の鈴にざくろと、上服のすその周囲につけなけ
つとめ とき き かれ
ればならない。 三五アロンは務の時、これを着なければならない。彼が
せいじょ しゅ まえ とき で とき おと きこ かれ
聖所にはいって主の前にいたる時、また出る時、その音が聞えて、彼は
し まぬか
死を免れるであろう。
じゅんきん いた つく いん ちょうこく うえ しゅ
三六 あなたはまた純 金の板を造り、印の彫 刻のように、その上に﹃主に
せい もの きざ あお ぼうし つ ぼうし まえ ほう
聖なる者﹄と刻み、 三七これを青ひもで帽子に付け、それが帽子の前の方
く ひたい
に来るようにしなければならない。 三八これはアロンの額にあり、そし
ひとびと せい もの かれ
てアロンはイスラエルの人々がささげる聖なる物、すなわち彼らのもろ
せい そな もの つみ せ お しゅ
もろの聖なる供え物についての罪の責めを負うであろう。これは主の
まえ う つね ひたい
前にそれらの受けいれられるため、常にアロンの額になければならな
い。
あ ま いと いちまつ も よ う したふく お あ ま ぬの つく
出エジプト記

三九 あなたは亜麻糸で市松模様に下服を織り、亜麻布で、ずきんを作り、
おび いろ お つく
また、帯を色とりどりに織って作らなければならない。
こ したふく つく かれ おび
四〇 あなたはまたアロンの子たちのために下服を作り、彼らのために帯

121
つく かれ つく かれ さか うるわ
を作り、彼らのために、ずきんを作って、彼らに栄えと麗しきをもたせ
きょうだい
な け れ ば な ら な い。 四一そ し て あ な た は こ れ を あ な た の 兄 弟 ア ロ ン お
かれ とも こ き かれ あぶら そそ かれ しょく にん
よび彼と共にいるその子たちに着せ、彼らに油を注ぎ、彼らを職に任じ、
かれ せいべつ さいし つか
彼らを聖別し、祭司として、わたしに仕えさせなければならない。 四二ま
かれ かく ところ あ ま ぬの つく こし
た、彼らのために、その隠し所をおおう亜麻布のしたばきを作り、腰か
とど こ
ら も も に 届 く よ う に し な け れ ば な ら な い。 四三ア ロ ン と そ の 子 た ち は
かいけん まくや とき せいじょ つとめ さいだん ちか とき
会見の幕屋にはいる時、あるいは聖所で務をするために祭壇に近づく時
き かれ つみ え し
に、これを着なければならない。そうすれば、彼らは罪を得て死ぬこと
かれ かれ のち しそん えいきゅう さだ
はないであろう。これは彼と彼の後の子孫とのための永 久の定めでな
ければならない。
出エジプト記

第二九章
かれ せいべつ さいし つか つぎ
一あなたは彼らを聖別し、祭司としてわたしに仕えさせるために、次の

122
こと かれ わか おうし とう
事を彼らにしなければならない。すなわち若い雄牛一頭と、きずのない
おひつじ とう と たね い あぶら ま たね い か し
雄羊二頭とを取り、 二また種入れぬパンと、 油を混ぜた種入れぬ菓子
あぶら ぬ たね い と こ む ぎ こ
と、 油を塗った種入れぬせんべいとを取りなさい。これらは小麦粉で
つく い
作らなければならない。 三そしてこれを一つのかごに入れ、そのかごに
い とう おうし とう おひつじ とも たずさ
入れたまま、かの一頭の雄牛および二頭の雄羊と共に携えてこなければ
こ かいけん まくや いりぐち
な ら な い。 四あ な た は ま た ア ロ ン と そ の 子 た ち を 会見 の 幕屋 の 入口 に
つ みず かれ あら きよ いふく と したふく
連れてきて、水で彼らを洗い清め、 五また衣服を取り、下服とエポデに
ぞく うわふく むねあて き おび し
属する上服と、エポデと胸当とをアロンに着せ、エポデの帯を締めさせ
かれ あたま ぼうし ぼうし うえ
なければならない。 六そして彼の頭に帽子をかぶらせ、その帽子の上に
せい かんむり そそ あぶら と かれ あたま かれ あぶらそそ
かの聖なる冠をいただかせ、 七注ぎ油を取って彼の頭にかけ、彼に油 注
かれ こ つ した
ぎ を し な け れ ば な ら な い。 八あ な た は ま た 彼 の 子 た ち を 連 れ て き て 下
ふく き かれ こ おび し
出エジプト記

服を着せ、 九彼ら、すなわちアロンとその子たちに帯を締めさせ、ずき
さいし しょく えいきゅう さだ かれ
んをかぶらせなければならない。祭司の職は永 久の定めによって彼ら
き こ しょく にん
に帰するであろう。あなたはこうして、アロンとその子たちを職に任じ

123
なければならない。
かいけん まくや まえ おうし ひ こ
一〇 あなたは会見の幕屋の前に雄牛を引いてきて、アロンとその子たち
おひつじ あたま て お かいけん まくや
は、その雄羊の頭に手を置かなければならない。 一一そして会見の幕屋
いりぐち しゅ まえ おうし おうし ち と ゆび
の入口で、主の前にその雄牛をほふり、 一二その雄牛の血を取り、指を
さいだん つの のこ ち さいだん もとい そそ
もって、これを祭壇の角につけ、その残りの血を祭壇の基に注ぎかけな
ないぞう しぼう かんぞう しょうよう
さい。 一三また、その内臓をおおうすべての脂肪と肝臓の小 葉と、二つの
じんぞう うえ しぼう と さいだん うえ や
腎臓と、その上の脂肪とを取って、これを祭壇の上で焼かなければなら
おうし にく かわ おぶつ しゅくえい そと ひ や
ない。 一四ただし、その雄牛の肉と皮と汚物とは、 宿 営の外で火で焼き
す ざいさい
捨てなければならない。これは罪祭である。
おひつじ とう と こ
一五 あなたはまた、かの雄羊の一頭を取り、そしてアロンとその子たち
おひつじ あたま て お おひつじ
は、その雄羊の頭に手を置かなければならない。 一六あなたはその雄羊
ち と さいだん そくめん そそ
出エジプト記

をほふり、その血を取って、祭壇の四つの側面に注ぎかけなければなら
おひつじ き さ ないぞう あし あら
ない。 一七またその雄羊を切り裂き、その内臓と、その足とを洗って、こ
にく き あたま とも お おひつじ さいだん うえ
れをその肉の切れ、および頭と共に置き、一八その雄羊をみな祭壇の上で

124
や しゅ はんさい
焼かなければならない。これは主にささげる燔祭である。すなわち、こ
こう しゅ かさい
れは香ばしいかおりであって、主にささげる火祭である。
おひつじ た とう と こ
一九 あなたはまた雄羊の他の一頭を取り、アロンとその子たちは、その
おひつじ あたま て お おひつじ
雄羊の頭に手を置かなければならない。 二〇そしてあなたはその雄羊を
ち と みぎ みみ こ みぎ みみ
ほふり、その血を取って、アロンの右の耳たぶと、その子たちの右の耳
かれ みぎ て おやゆび みぎ あし おやゆび
たぶとにつけ、また彼らの右の手の親指と、右の足の親指とにつけ、そ
のこ ち さいだん そくめん そそ
の残りの血を祭壇の四つの側面に注ぎかけなければならない。 二一また
さいだん うえ ち そそ あぶら と いふく こ
祭壇の上の血および注ぎ油を取って、アロンとその衣服、およびその子
こ いふく そそ かれ いふく
たちと、その子たちの衣服とに注がなければならない。彼とその衣服、
こ いふく せいべつ
およびその子らと、その衣服とは聖別されるであろう。
おひつじ しぼう あぶら お ないぞう しぼう かんぞう
二二 あなたはまた、その雄羊の脂肪、 脂 尾、内臓をおおう脂肪、肝臓の
しょうよう じんぞう うえ しぼう みぎ と
出エジプト記

小 葉、二つの腎臓、その上の脂肪、および右のももを取らなければなら
にんしょく おひつじ しゅ まえ たね い
ない。これは任 職の雄羊である。 二三また主の前にある種入れぬパンの
なか こ あぶら か し こ こ と
かごの中からパン一個と、 油 菓子一個と、せんべい一個とを取り、 二四

125
て こ て お しゅ まえ ゆ
これをみなアロンの手と、その子たちの手に置き、これを主の前に揺り
うご ようさい かれ
動かして、揺祭としなければならない。 二五そしてあなたはこれを彼ら
て う と はんさい くわ さいだん うえ や しゅ まえ こう
の手から受け取り、燔祭に加えて祭壇の上で焼き、主の前に香ばしいか
しゅ かさい
おりとしなければならない。これは主にささげる火祭である。
にんしょく おひつじ むね と しゅ まえ ゆ
二六あなたはまた、アロンの任 職の雄羊の胸を取り、これを主の前に揺
うご ようさい う ぶん
り動かして、揺祭としなければならない。これはあなたの受ける分とな
こ にんしょく おひつじ むね
る で あ ろ う。 二七あ な た は ア ロ ン と そ の 子 た ち の 任 職 の 雄羊 の 胸 と も
ゆ うご ようさい むね せいべつ
も、すなわち揺り動かした揺祭の胸と、ささげたももとを聖別しなけれ
ひとびと えいきゅう こ
ばならない。 二八これはイスラエルの人々から永 久に、アロンとその子
う もの ひとびと しゅうおんさい ぎせい
たちの受くべきささげ物であって、イスラエルの人々の酬 恩 祭の犠牲
なか う しゅ もの
の中から受くべきもの、すなわち主にささげるささげ物である。
せい いふく かれ のち しそん き かれ
出エジプト記

二九アロンの聖なる衣服は彼の後の子孫に帰すべきである。彼らはこれ
き あぶらそそ しょく にん こ
を着て、 油 注がれ、 職に任ぜられなければならない。 三〇その子たちの
かれ かわ さいし せいじょ つか かいけん まくや
うち、彼に代って祭司となり、聖所で仕えるために会見の幕屋にはいる

126
もの なぬか あいだ き
者は、七日の間これを着なければならない。
にんしょく おひつじ と せい ば しょ にく に
あなたは任 職の雄羊を取り、聖なる場所でその肉を煮なければなら
三一
こ かいけん まくや いりぐち おひつじ にく
ない。 三二アロンとその子たちは会見の幕屋の入口で、その雄羊の肉と、
なか た かれ しょく にん せいべつ
かごの中のパンとを食べなければならない。 三三彼らを職に任じ、聖別
もち かれ た
するため、あがないに用いたこれらのものを、彼らは食べなければなら
た ひと た せい もの
ない。他の人はこれを食べてはならない。これは聖なる物だからであ
にんしょく にく あさ のこ
る。 三四もし任 職の肉、あるいはパンのうち、朝まで残るものがあれば、
のこ ひ や せい もの た
その残りは火で焼かなければならない。これは聖なる物だから食べて
はならない。
めい こ
あなたはわたしがすべて命じるように、アロンとその子たちにしな
三五
かれ なぬか にんしょく しき おこな
ければならない。すなわち彼らのために七日のあいだ、任 職の式を行
まいにち ざいさい おうし
出エジプト記

わなければならない。 三六あなたは毎日、あがないのために、罪祭の雄牛
とう さいだん
一頭をささげなければならない。また祭壇のために、あがないをなす
とき ざいさい あぶら そそ せいべつ
時、そのために罪祭をささげ、また、これに油を注いで聖別しなさい。 三

127
なぬか あいだ さいだん せいべつ
あなたは七日の間、祭壇のために、あがないをして、これを聖別しな

さいだん せい もの さいだん
ければならない。こうして祭壇は、いと聖なる物となり、すべて祭壇に
ふ もの せい
触れる者は聖となるであろう。
さいだん うえ もの つぎ
三八 あ な た が 祭壇 の 上 に さ さ ぐ べ き 物 は 次 の と お り で あ る。す な わ ち
とうさい こひつじ とう まいにち た
当歳の小羊二頭を毎日絶やすことなくささげなければならない。 三九そ
とう こひつじ あさ た とう こひつじ ゆう
の一頭の小羊は朝にこれをささげ、他の一頭の小羊は夕にこれをささげ
とう こひつじ と あぶら
なければならない。 四〇一頭の小羊には、つぶして取った油 一ヒンの四
ぶん むぎこ ぶん そ かんさい しゅ
分の一をまぜた麦粉十分の一エパを添え、また灌祭として、ぶどう酒一
ぶん そ た とう こひつじ ゆう
ヒンの四分の一を添えなければならない。 四一他の一頭の小羊は夕にこ
あさ そさい かんさい おな そ こう
れをささげ、朝の素祭および灌祭と同じものをこれに添えてささげ、香
しゅ かさい
ばしいかおりのために主にささげる火祭としなければならない。 四二こ
よ よ かいけん まくや いりぐち しゅ まえ た
出エジプト記

れはあなたがたが代々会見の幕屋の入口で、主の前に絶やすことなく、
はんさい ところ あ かた
ささぐべき燔祭である。わたしはその所であなたに会い、あなたと語る
ところ ひとびと あ
であろう。 四三また、その所でわたしはイスラエルの人々に会うであろ

128
まくや えいこう せいべつ
う。幕屋 は わ た し の 栄光 に よ っ て 聖別 さ れ る で あ ろ う。 四 四わ た し は
かいけん まくや さいだん せいべつ こ
会見の幕屋と祭壇とを聖別するであろう。またアロンとその子たちを
せいべつ さいし つか
聖別し、祭司としてわたしに仕えさせるであろう。 四五わたしはイスラ
ひとびと す かれ かみ かれ
エルの人々のうちに住んで、彼らの神となるであろう。 四六わたしが彼
す かれ くに みちび だ かれ かみ
らのうちに住むために、彼らをエジプトの国から導き出した彼らの神、
しゅ かれ し かれ かみ しゅ
主であることを彼らは知るであろう。わたしは彼らの神、主である。
第三〇章
こう さいだん つく ざい
一あなたはまた香をたく祭壇を造らなければならない。アカシヤ材で
つく なが はば かく たか
これを造り、 二長さ一キュビト、幅一キュビトの四角にし、高さ二キュ
出エジプト記

いちぶ つの いただき
ビトで、これにその一部として角をつけなければならない。 三その頂、
そくめん つの じゅんきん しゅうい きん かざ ふち
その四つの側面、およびその角を純 金でおおい、その周囲に金の飾り縁
つく りょうがわ かざ ふち した きん かん
を造り、 四また、その両 側に、飾り縁の下に金の環二つをこれのために

129
つく がわ つく
造らなければならない。すなわち、その二つの側にこれを造らなければ
とお
な ら な い。こ れ は そ れ を か つ ぐ さ お を 通 す と こ ろ で あ る。 五そ の さ お
ざい つく きん
は ア カ シ ヤ 材 で 造 り、金 で お お わ な け れ ば な ら な い。 六あ な た は そ れ
はこ まえ たれまく まえ お あ
を、あかしの箱の前にある垂幕の前に置いて、わたしがあなたと会うあ
はこ うえ しょくざいしょ む
かしの箱の上にある贖 罪 所に向かわせなければならない。 七アロンは
うえ こう くんこう あさ
その上で香ばしい薫香をたかなければならない。朝ごとに、ともしびを
ととの とき ゆう
整える時、これをたかなければならない。 八アロンはまた夕べにともし
とき しゅ まえ
びをともす時にも、これをたかなければならない。これは主の前にあな
よ よ た くんこう
たがたが代々に絶やすことなく、ささぐべき薫香である。 九あなたがた
うえ こと こう はんさい そさい うえ
はその上で異なる香をささげてはならない。燔祭をも素祭をもその上
うえ かんさい そそ
でささげてはならない。また、その上に灌祭を注いではならない。 一〇
ねん ど つの ち
出エジプト記

アロンは年に一度その角に血をつけてあがないをしなければならない。
ざいさい ち よ よ ねん ど
すなわち、あがないの罪祭の血をもって代々にわたり、年に一度これが
しゅ もっと せい
ために、あがないをしなければならない。これは主に最も聖なるもので

130
ある﹂。
しゅ い ひとびと かず そうけい
主はモーセに言われた、 一二﹁あなたがイスラエルの人々の数の総計
一一
あた かぞ とき いのち しゅ
をとるに当り、おのおのその数えられる時、その命のあがないを主にさ
かぞ とき かれ わざわい おこ
さげなければならない。これは数えられる時、彼らのうちに災の起らな
かず い もの せいじょ はん はら
いためである。 一三すべて数に入る者は聖所のシケルで、半シケルを払
はん
わなければならない。一シケルは二十ゲラであって、おのおの半シケル
しゅ もの かず い さいいじょう
を主にささげ物としなければならない。 一四すべて数に入る二十歳以上
もの しゅ もの いのち
の者は、主にささげ物をしなければならない。 一五あなたがたの命をあ
しゅ もの とき と もの はん おお だ
がなうために、主にささげ物をする時、富める者も半シケルより多く出
まず もの すく だ
してはならず、貧しい者もそれより少なく出してはならない。 一六あな
ひとびと ぎん と かいけん まくや
たはイスラエルの人々から、あがないの銀を取って、これを会見の幕屋
よう あ しゅ まえ ひとびと
出エジプト記

の用に当てなければならない。これは主の前にイスラエルの人々のた
きねん いのち
め記念となって、あなたがたの命をあがなうであろう﹂。
しゅ い あら せんばん
主はモーセに言われた、 一八﹁あなたはまた洗うために洗盤と、その
一七

131
だい せいどう つく かいけん まくや さいだん あいだ お なか みず
台を青銅で造り、それを会見の幕屋と祭壇との間に置いて、その中に水
い こ て あし あら
を入れ、一九アロンとその子たちは、それで手と足とを洗わなければなら
かれ かいけん まくや とき みず あら し
ない。 二〇彼らは会見の幕屋にはいる時、水で洗って、死なないようにし
さいだん ちか つとめ かさい しゅ
なければならない。また祭壇に近づいて、その務をなし、火祭を主にさ
とき て あし
さげる時にも、そうしなければならない。 二一すなわち、その手、その足
あら し かれ しそん
を洗って、死なないようにしなければならない。これは彼とその子孫の
よ よ えいきゅう さだ
代々にわたる永 久の定めでなければならない﹂。
しゅ い もっと よ こうりょう と
二二 主はまたモーセに言われた、 二三﹁あなたはまた最も良い香 料を取り
えきたい もつやく こう にっけい なか
なさい。すなわち液体の没薬五百シケル、香ばしい肉桂をその半ば、す
しょうぶ けい し
なわち二百五十シケル、におい菖蒲二百五十シケル、二四桂枝五百シケル
せいじょ と あぶら と
を聖所のシケルで取り、また、オリブの油 一ヒンを取りなさい。 二五あな
せい そそ あぶら こうゆ つく あ
出エジプト記

たはこれを聖なる注ぎ油、すなわち香油を造るわざにしたがい、まぜ合
あぶら つく せい そそ あぶら
わせて、におい油に造らなければならない。これは聖なる注ぎ油であ
あぶら かいけん まくや はこ そそ つくえ
る。 二六あなたはこの油を会見の幕屋と、あかしの箱とに注ぎ、二七 机と、

132
うつわ しょくだい うつわ こう さいだん はんさい
そのもろもろの器、 燭 台と、そのもろもろの器、香の祭壇、 二八燔祭の
さいだん うつわ せんばん だい あぶら そそ
祭壇と、そのもろもろの器、洗盤と、その台とに油を注ぎ、 二九これらを
もっと せい もの ふ もの
きよめて最も聖なる物としなければならない。すべてこれに触れる者
せい こ あぶら そそ
は聖となるであろう。 三〇あなたはアロンとその子たちに油を注いで、
かれ せいべつ さいし つか
彼らを聖別し、祭司としてわたしに仕えさせなければならない。 三一そ
ひとびと い
してあなたはイスラエルの人々に言わなければならない、﹃これはあな
よ よ せい そそ あぶら つね ひと み
たがたの代々にわたる、わたしの聖なる注ぎ油であって、三二常の人の身
そそ わりあい ひと
にこれを注いではならない。またこの割合をもって、これと等しいもの
つく せい
を造ってはならない。これは聖なるものであるから、あなたがたにとっ
せい もの ひと もの つく
て も 聖 な る 物 で な け れ ば な ら な い。 三三す べ て こ れ と 等 し い 物 を 造 る
もの さいしいがい ひと もの たみ た
者、あるいはこれを祭司以外の人につける者は、民のうちから断たれる
出エジプト記

であろう﹄﹂。
しゅ い こうりょう そ ごうこう
三四主はまた、モーセに言われた、
﹁あなたは香 料、すなわち蘇合香、シ
こう ふう し こう じゅんすい にゅうこう こうりょう と おな りょう
ケレテ香、楓子香、純 粋の乳 香の香 料を取りなさい。おのおの同じ量

133
こう こうりょう
でなければならない。 三五あなたはこれをもって香、すなわち香 料をつ
くんこう つく しお くわ じゅん せい もの
くるわざにしたがって薫香を造り、塩を加え、純にして聖なる物としな
いく こま くだ あ かいけん
さい。 三六また、その幾ぶんを細かに砕き、わたしがあなたと会う会見の
まくや はこ まえ そな
幕屋にある、あかしの箱の前にこれを供えなければならない。これはあ
もっと せい つく こう おな わりあい
な た が た に 最 も 聖 な る も の で あ る。 三七あ な た が 造 る 香 の 同 じ 割合 を
じぶん つく
もって、それを自分のために造ってはならない。これはあなたにとって
しゅ せい ひと
主 に 聖 な る も の で な け れ ば な ら な い。 三八す べ て こ れ と 等 し い も の を
つく もの たみ た
造って、これをかぐ者は民のうちから断たれるであろう﹂。
第三一章
出エジプト記

しゅ い み ぶぞく ぞく
一主はモーセに言われた、二﹁見よ、わたしはユダの部族に属するホルの
こ こ な め かみ れい み
子なるウリの子ベザレルを名ざして召し、 三これに神の霊を満たして、
ち え さと ちしき しょしゅ こうさく ちょう くふう こ きん ぎん
知恵と悟りと知識と諸種の工作に長ぜしめ、 四工夫を凝らして金、銀、

134
せいどう さいく ほうせき き き ちょうこく しょしゅ
青銅の細工をさせ、 五また宝石を切りはめ、木を彫 刻するなど、諸種の
こうさく み ぶぞく ぞく
工作をさせるであろう。 六見よ、わたしはまたダンの部族に属するアヒ
こ かれ とも かしこ もの こころ ち え
サマクの子アホリアブを彼と共ならせ、そしてすべて賢い者の心に知恵
さづ めい かれ つく
を授け、わたしがあなたに命じたものを、ことごとく彼らに造らせるで
かいけん まくや はこ うえ しょくざいしょ まくや
あろう。 七すなわち会見の幕屋、あかしの箱、その上にある贖 罪 所、幕屋
うつわ つくえ うつわ じゅんきん しょくだい うつわ こう
のもろもろの器、 八 机とその器、純 金の燭 台と、そのもろもろの器、香
さいだん はんさい さいだん うつわ せんばん だい あみもの ふく
の祭壇、九燔祭の祭壇とそのもろもろの器、洗盤とその台、一〇編物の服、
さいし つとめ さいし せい ふく こ
すなわち祭司の務をするための祭司アロンの聖なる服、およびその子た
ふく そそ あぶら せいじょ こう こう
ちの服、 一一注ぎ油、聖所のための香ばしい香などを、すべてわたしがあ
めい つく
なたに命じたように造らせるであろう﹂。
しゅ い ひとびと い
主はまたモーセに言われた、 一三﹁あなたはイスラエルの人々に言い
一二
かなら あんそくにち まも
出エジプト記

なさい、﹃あなたがたは必ずわたしの安息日を守らなければならない。
あいだ よ よ
これはわたしとあなたがたとの間の、代々にわたるしるしであって、わ
せいべつ しゅ し
たしがあなたがたを聖別する主であることを、知らせるためのものであ

135
あんそくにち まも
る。 一四それゆえ、あなたがたは安息日を守らなければならない。これ
せい ひ けが もの かなら ころ
はあなたがたに聖なる日である。すべてこれを汚す者は必ず殺され、す
ひ しごと もの たみ た
べてこの日に仕事をする者は、民のうちから断たれるであろう。 一五六
か しごと なぬか め まった やす あんそくにち しゅ
日のあいだは仕事をしなさい。七日目は全き休みの安息日で、主のため
せい あんそくにち しごと もの かなら ころ
に聖である。すべて安息日に仕事をする者は必ず殺されるであろう。 一
ひとびと あんそくにち おぼ えいえん けいやく よ よ
ゆえに、イスラエルの人々は安息日を覚え、永遠の契約として、代々

あんそくにち まも えいえん
安息日を守らなければならない。 一七これは永遠にわたしとイスラエル
ひとびと あいだ しゅ か てんち つく
の人々との間のしるしである。それは主が六日のあいだに天地を造り、
なぬか め やす
七日目に休み、かつ、いこわれたからである﹄﹂。
しゅ さん かた お いた まい
一八 主はシナイ山でモーセに語り終えられたとき、あかしの板二枚、すな
かみ ゆび か いし いた さづ
わち神が指をもって書かれた石の板をモーセに授けられた。
出エジプト記

136
第三二章
たみ やま くだ み あつ
民はモーセが山を下ることのおそいのを見て、アロンのもとに集まっ

かれ い さきだ ゆ かみ
て彼に言った、
﹁さあ、わたしたちに先立って行く神を、わたしたちのた
つく くに みちび ひと
めに造ってください。わたしたちをエジプトの国から導きのぼった人、
かれ
あのモーセはどうなったのかわからないからです﹂。 二アロンは彼らに
い つま むすめ きん みみわ
言った、
﹁あなたがたの妻、むすこ、 娘らの金の耳輪をはずしてわたし
も たみ みな きん みみわ
に持ってきなさい﹂。 三そこで民は皆その金の耳輪をはずしてアロンの
も かれ て う と こうぐ かた
もとに持ってきた。 四アロンがこれを彼らの手から受け取り、工具で型
つく い こ うし かれ い
を造り、鋳て子牛としたので、彼らは言った、
﹁イスラエルよ、これはあ
くに みちび かみ
なたをエジプトの国から導きのぼったあなたの神である﹂。 五アロンは
み まえ さいだん きず ふこく い
出エジプト記

これを見て、その前に祭壇を築いた。そしてアロンは布告して言った、
しゅ まつり ひとびと あさはや お はんさい
﹁あ す は 主 の 祭 で あ る﹂。 六そ こ で 人々 は あ く る 朝早 く 起 き て 燔祭 を さ
しゅうおんさい そな たみ ざ く の た ざ
さげ、 酬 恩 祭を供えた。民は座して食い飲みし、立って戯れた。

137
しゅ い いそ くだ くに
七主はモーセに言われた、﹁急いで下りなさい。あなたがエジプトの国
みちび たみ わる かれ はや
か ら 導 き の ぼ っ た あ な た の 民 は 悪 い こ と を し た。 八彼 ら は 早 く も わ た
めい みち はな じぶん いもの こ うし つく おが
しが命じた道を離れ、自分のために鋳物の子牛を造り、これを拝み、こ
ぎせい くに
れに犠牲をささげて、﹃イスラエルよ、これはあなたをエジプトの国から
みちび かみ い しゅ
導きのぼったあなたの神である﹄と言っている﹂。 九主はまたモーセに
い たみ み たみ
言われた、
﹁わたしはこの民を見た。これはかたくなな民である。 一〇そ
いか かれ も かれ
れで、わたしをとめるな。わたしの怒りは彼らにむかって燃え、彼らを
ほろ おお こくみん
滅ぼしつくすであろう。しかし、わたしはあなたを大いなる国民とする
であろう﹂。
かみ しゅ い しゅ おお ちから つよ て
一一 モーセはその神、主をなだめて言った、
﹁主よ、大いなる力と強き手
くに みちび だ たみ
をもって、エジプトの国から導き出されたあなたの民にむかって、なぜ
いか も かれ
出エジプト記

あなたの怒りが燃えるのでしょうか。 一二どうしてエジプトびとに﹃彼
あくい かれ みちび だ かれ さんち ころ ち めん た ほろ
は悪意をもって彼らを導き出し、彼らを山地で殺し、地の面から断ち滅
い はげ いか
ぼすのだ﹄と言わせてよいでしょうか。どうかあなたの激しい怒りをや

138
たみ くだ わざわい おも なお
め、あなたの民に下そうとされるこの災を思い直し、一三あなたのしもべ
ご じしん ちか
アブラハム、イサク、イスラエルに、あなたが御自身をさして誓い、
﹃わ
てん ほし しそん ま やくそく
たしは天の星のように、あなたがたの子孫を増し、わたしが約束したこ
ち みな しそん あた なが しょゆう
の地を皆あなたがたの子孫に与えて、長くこれを所有させるであろう﹄
かれ おお おぼ しゅ たみ
と彼らに仰せられたことを覚えてください﹂。 一四それで、主はその民に
くだ い わざわい おも なお
下すと言われた災について思い直された。
み てん やま くだ かれ て まい
一五モーセは身を転じて山を下った。彼の手には、かの二枚のあかしの
いた いた りょうめん も じ めん
板があった。板はその両 面に文字があった。すなわち、この面にも、か
めん も じ いた かみ さく も じ かみ も じ
の 面 に も 文字 が あ っ た。 一 六そ の 板 は 神 の 作、そ の 文字 は 神 の 文字 で
いた ほ たみ よ こえ き
あって、板に彫ったものである。 一七ヨシュアは民の呼ばわる声を聞い
い しゅくえい なか たたか こえ
て、モーセに言った、
﹁宿 営の中に戦いの声がします﹂。 一八しかし、モー
い かち こえ はいぼく さけ ごえ き
出エジプト記

セは言った、﹁勝どきの声でなく、敗北の叫び声でもない。わたしの聞く
うた こえ しゅくえい ちか こ うし おど み
のは歌の声である﹂。 一九モーセが宿 営に近づくと、子牛と踊りとを見た
かれ いか も て いた な やま
ので、彼は怒りに燃え、手からかの板を投げうち、これを山のふもとで

139
くだ かれ つく こ うし と ひ や くだ
砕いた。 二〇また彼らが造った子牛を取って火に焼き、こなごなに砕き、
みず うえ ひとびと の
これを水の上にまいて、イスラエルの人々に飲ませた。
い たみ なに
モーセはアロンに言った、
二一 ﹁この民があなたに何をしたので、あなた
かれ おお つみ おか い
は彼らに大いなる罪を犯させたのですか﹂。 二二アロンは言った、﹁わが
しゅ はげ いか たみ わる
主よ、激しく怒らないでください。この民の悪いのは、あなたがごぞん
かれ い さきだ い かみ
じです。 二三彼らはわたしに言いました、
﹃わたしたちに先立って行く神
つく くに
を、わたしたちのために造ってください。わたしたちをエジプトの国か
みちび ひと
ら導きのぼった人、あのモーセは、どうなったのかわからないからで
きん も もの と
す﹄。 二四そこでわたしは﹃だれでも、金を持っている者は、それを取り
かれ い かれ わた
はずしなさい﹄と彼らに言いました。彼らがそれをわたしに渡したの
ひ な い こ うし で
で、わたしがこれを火に投げ入れると、この子牛が出てきたのです﹂。
たみ み かれ
出エジプト記

モーセは民がほしいままにふるまったのを見た。アロンは彼らがほ
二五
まか てき なか ものわら
しいままにふるまうに任せ、敵の中に物笑いとなったからである。 二六
しゅくえい もん た い しゅ もの
モーセは宿 営の門に立って言った、
﹁すべて主につく者はわたしのもと

140
こ かれ あつ
に き な さ い﹂。レ ビ の 子 た ち は み な 彼 の も と に 集 ま っ た。 二 七そ こ で
かれ い かみ しゅ い
モーセは彼らに言った、
﹁イスラエルの神、主はこう言われる、
﹃あなた
こし お しゅくえい なか もん もん い めぐ
がたは、おのおの腰につるぎを帯び、 宿 営の中を門から門へ行き巡っ
きょうだい とも りんじん ころ こ
て、おのおのその兄 弟、その友、その隣人を殺せ﹄﹂。 二八レビの子たちは
ことば ひ たみ にん
モーセの言葉どおりにしたので、その日、民のうち、おおよそ三千人が
たお い こ
倒れた。 二九そこで、モーセは言った、
﹁あなたがたは、おのおのその子、
きょうだい さか しゅ み しゅ
その兄 弟に逆らって、きょう、主に身をささげた。それで主は、きょう、
しゅくふく あた
あなたがたに祝 福を与えられるであろう﹂。
ひ たみ い おお つみ おか
三〇あくる日、モーセは民に言った、﹁あなたがたは大いなる罪を犯した。
いま しゅ のぼ い つみ つぐな
それで今、わたしは主のもとに上って行く。あなたがたの罪を償うこと
し しゅ かえ い
が、できるかも知れない﹂。 三一モーセは主のもとに帰って、そして言っ
たみ おお つみ おか じぶん きん かみ つく
出エジプト記

た、
﹁ああ、この民は大いなる罪を犯し、自分のために金の神を造りまし
いま かれ つみ
た。 三二今もしあなたが、彼らの罪をゆるされますならば︱︱。しかし、

もしかなわなければ、どうぞあなたが書きしるされたふみから、わたし

141
な け さ しゅ い
の名を消し去ってください﹂。 三三主はモーセに言われた、﹁すべてわた
つみ おか もの け さ
しに罪を犯した者は、これをわたしのふみから消し去るであろう。 三四
いま い つ たみ みちび
しかし、今あなたは行って、わたしがあなたに告げたところに民を導き
み つかい さきだ い
なさい。見よ、わたしの使はあなたに先立って行くであろう。ただし
けいばつ ひ かれ つみ ばっ
刑罰の日に、わたしは彼らの罪を罰するであろう﹂。
しゅ たみ う かれ こ うし つく
三五 そして主は民を撃たれた。彼らが子牛を造ったからである。それは
つく
アロンが造ったのである。
第三三章
しゅ い くに
一さて、主はモーセに言われた、
﹁あなたと、あなたがエジプトの国から
出エジプト記

みちび たみ た
導きのぼった民とは、ここを立ってわたしがアブラハム、イサク、ヤコ
ちか しそん あた い ち
ブに誓って、﹃これをあなたの子孫に与える﹄と言った地にのぼりなさ
つかい さきだ
い。 二わ た し は ひ と り の 使 を つ か わ し て あ な た に 先立 た せ、カ ナ ン び

142

と、アモリびと、ヘテびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとを追い
はら ちち みつ なが ち
払 う で あ ろ う。 三あ な た が た は 乳 と 蜜 の 流 れ る 地 に の ぼ り な さ い。し
たみ みち
かし、あなたがたは、かたくなな民であるから、わたしが道であなたが
ほろ いっしょ
たを滅ぼすことのないように、あなたがたのうちにあって一緒にはのぼ
らないであろう﹂。
たみ わる し き うれ かざ み つ もの
四民はこの悪い知らせを聞いて憂い、ひとりもその飾りを身に着ける者
しゅ い ひとびと い
はなかった。 五主はモーセに言われた、﹁イスラエルの人々に言いなさ
たみ いっこく
い、
﹃あなたがたは、かたくなな民である。もしわたしが一刻でも、あな
いっしょ い ほろ
たがたのうちにあって、一緒にのぼって行くならば、あなたがたを滅ぼ
いま かざ み と さ
すであろう。ゆえに、今、あなたがたの飾りを身から取り去りなさい。

そ う す れ ば わ た し は あ な た が た に な す べ き こ と を 知 る で あ ろ う﹄﹂。 六
ひとびと やま い ら い かざ と のぞ
出エジプト記

それで、イスラエルの人々はホレブ山以来その飾りを取り除いていた。
まくや と しゅくえい そと しゅくえい はな は
七モーセは幕屋を取って、これを宿 営の外に、宿 営を離れて張り、これ
かいけん まくや な しゅ うかが こと もの で しゅくえい
を会見の幕屋と名づけた。すべて主に伺い事のある者は出て、 宿 営の

143
そと かいけん まくや い で まくや い とき たみ
外にある会見の幕屋に行った。 八モーセが出て、幕屋に行く時には、民
た まくや てんまく
はみな立ちあがり、モーセが幕屋にはいるまで、おのおのその天幕の
いりぐち た かれ みおく まくや くも はしら くだ
入口に立って彼を見送った。 九モーセが幕屋にはいると、雲の柱が下っ
まくや いりぐち た しゅ かた たみ
て 幕屋 の 入口 に 立 っ た。そ し て 主 は モ ー セ と 語 ら れ た。 一 〇民 は み な
まくや いりぐち くも はしら た み た じぶん てんまく
幕屋の入口に雲の柱が立つのを見ると、立っておのおの自分の天幕の
いりぐち れいはい ひと とも かた しゅ かお あ
入口で礼拝した。 一一人がその友と語るように、主はモーセと顔を合わ
かた しゅくえい かえ じゅうしゃ わかもの
せて語られた。こうしてモーセは宿 営に帰ったが、その従 者なる若者、
こ まくや はな
ヌンの子ヨシュアは幕屋を離れなかった。
しゅ い たみ みちび
一二モーセは主に言った、
﹁ごらんください。あなたは﹃この民を導きの
い いっしょ もの し
ぼれ﹄とわたしに言いながら、わたしと一緒につかわされる者を知らせ
まえ えら
てくださいません。しかも、あなたはかつて﹃わたしはお前を選んだ。
まえ まえ めぐ え おお
出エジプト記

お前はまたわたしの前に恵みを得た﹄と仰せになりました。 一三それで
いま まえ めぐ え
今、わたしがもし、あなたの前に恵みを得ますならば、どうか、あなた
みち しめ し まえ めぐ え
の道を示し、あなたをわたしに知らせ、あなたの前に恵みを得させてく

144
こくみん たみ おぼ
ださい。また、この国民があなたの民であることを覚えてください﹂。 一
しゅ い じしん いっしょ い
四主は言われた﹁わたし自身が一緒に行くであろう。そしてあなたに
あんそく あた しゅ い じしん
安息 を 与 え る で あ ろ う﹂。 一五モ ー セ は 主 に 言 っ た﹁も し あ な た 自身 が
いっしょ い
一緒に行かれないならば、わたしたちをここからのぼらせないでくださ
たみ まえ めぐ え なに
い。 一六わたしとあなたの民とが、あなたの前に恵みを得ることは、何に
し いっしょ い
よって知られましょうか。それはあなたがわたしたちと一緒に行かれ
たみ ち めん しょみん こと
て、わたしとあなたの民とが、地の面にある諸民と異なるものになるか
らではありませんか﹂。
しゅ い まえ めぐ え
一七 主はモーセに言われた、
﹁あなたはわたしの前に恵みを得、またわた
な し い こと
しは名をもってあなたを知るから、あなたの言ったこの事をもするであ
い えいこう しめ
ろう﹂。 一八モーセは言った、
﹁どうぞ、あなたの栄光をわたしにお示しく
しゅ い ぜん
出エジプト記

ださい﹂。 一九主は言われた、﹁わたしはわたしのもろもろの善をあなた
まえ とお しゅ な まえ めぐ
の前に通らせ、主の名をあなたの前にのべるであろう。わたしは恵もう
もの めぐ もの い
とする者を恵み、あわれもうとする者をあわれむ﹂。 二〇また言われた、

145
かお み み
﹁しかし、あなたはわたしの顔を見ることはできない。わたしを見て、な
い ひと しゅ い み
お生きている人はないからである﹂。 二一そして主は言われた、
﹁見よ、わ
ところ いわ うえ た
たしのかたわらに一つの所がある。あなたは岩の上に立ちなさい。 二二
えいこう とお す いわ さ め
わたしの栄光がそこを通り過ぎるとき、わたしはあなたを岩の裂け目に
い とお す て
入れて、わたしが通り過ぎるまで、手であなたをおおうであろう。 二三そ
て み
してわたしが手をのけるとき、あなたはわたしのうしろを見るが、わた
かお み
しの顔は見ないであろう﹂。
第三四章
しゅ い まえ いし いた まい き つく
一主はモーセに言われた、
﹁あなたは前のような石の板二枚を、切って造
出エジプト記

くだ はじ いた ことば いた
りなさい。わたしはあなたが砕いた初めの板にあった言葉を、その板に
か あさ そな あさ さん
書 く で あ ろ う。 二あ な た は 朝 ま で に 備 え を し、朝 の う ち に シ ナ イ 山 に
のぼ やま いただき まえ た とも のぼ
登って、山の頂でわたしの前に立ちなさい。 三だれもあなたと共に登っ

146
やま なか やま まえ ひつじ
てはならない。また、だれも山の中にいてはならない。また山の前で羊
うし か まえ いし いた
や牛を飼っていてはならない﹂。 四そこでモーセは前のような石の板二
まい き つく あさはや お しゅ かれ めい さん
枚を、切って造り、朝早く起きて、主が彼に命じられたようにシナイ山
のぼ かれ て いし いた まい しゅ くも なか
に 登 っ た。彼 は そ の 手 に 石 の 板 二 枚 を と っ た。 五と き に 主 は 雲 の 中 に
くだ かれ とも た しゅ な の しゅ かれ まえ
あって下り、彼と共にそこに立って主の名を宣べられた。 六主は彼の前
す の しゅ しゅ めぐ いか
を過ぎて宣べられた。﹁主、主、あわれみあり、恵みあり、怒ることおそ
ゆた かみ だい
く、いつくしみと、まこととの豊かなる神、 七いつくしみを千代までも
ほどこ あく つみ もの ばつ もの けっ
施し、悪と、とがと、罪とをゆるす者、しかし、罰すべき者をば決して
ちち つみ こ むく こ こ むく だい もの
ゆるさず、父の罪を子に報い、子の子に報いて、三、四代におよぼす者﹂。
いそ ち ふ はい い しゅ
八モーセは急ぎ地に伏して拝し、 九そして言った、
﹁ああ主よ、わたしが
まえ めぐ え たみ
もし、あなたの前に恵みを得ますならば、かたくなな民ですけれども、ど
しゅ いっしょ い
出エジプト記

うか主がわたしたちのうちにあって一緒に行ってください。そしてわ
あく つみ
たしたちの悪と罪とをゆるし、わたしたちをあなたのものとしてくださ
い﹂。

147
しゅ い み けいやく むす ち
主は言われた、
一〇 ﹁見よ、わたしは契約を結ぶ。わたしは地のいずこに
たみ おこな ふ し ぎ
も、いかなる民のうちにも、いまだ行われたことのない不思議を、あな
たみ まえ おこな とも す たみ しゅ
たのすべての民の前に行うであろう。あなたが共に住む民はみな、主の
み おそ
わざを見るであろう。わたしがあなたのためになそうとすることは、恐
るべきものだからである。
めい まも み
わたしが、きょう、あなたに命じることを守りなさい。見よ、わたし
一一
はアモリびと、カナンびと、ヘテびと、ペリジびと、ヒビびと、エブス
まえ お はら ゆ くに す
びとを、あなたの前から追い払うであろう。 一二あなたが行く国に住ん
もの けいやく むす き
でいる者と、契約を結ばないように、気をつけなければならない。おそ
かれ
らく彼らはあなたのうちにあって、わなとなるであろう。 一三むしろあ
かれ さいだん たお いし はしら くだ ぞう き たお
なたがたは、彼らの祭壇を倒し、石の柱を砕き、アシラ像を切り倒さな
た かみ おが しゅ な
出エジプト記

ければならない。 一四あなたは他の神を拝んではならない。主はその名
い かみ
を﹃ねたみ﹄と言って、ねたむ神だからである。 一五おそらくあなたはそ
くに す もの けいやく むす かれ かみがみ した かんいん おこな かみがみ
の国に住む者と契約を結び、彼らの神々を慕って姦淫を行い、その神々

148
ぎせい まね かれ ぎせい た むすめ
に犠牲をささげ、招かれて彼らの犠牲を食べ、 一六またその娘たちを、あ
むすめ じぶん かみがみ した かんいん
なたのむすこたちにめとり、その娘たちが自分たちの神々を慕って姦淫
おこな かれ かみがみ した かんいん
を行い、また、あなたのむすこたちをして、彼らの神々を慕わせ、姦淫
おこな いた
を行わせるに至るであろう。
じぶん いもの かみがみ つく
一七あなたは自分のために鋳物の神々を造ってはならない。
たね い まつり まも
一八あなたは種入れぬパンの祭を守らなければならない。すなわち、わ
めい つき さだ とき なぬか
たしがあなたに命じたように、アビブの月の定めの時に、七日のあいだ、
たね い た つき
種入れぬパンを食べなければならない。あなたがアビブの月にエジプ
で はじ うま もの
トを出たからである。 一九すべて初めに生れる者は、わたしのものであ
かちく おす うし ひつじ
る。すべてあなたの家畜のういごの雄は、牛も羊もそうである。 二〇た
こひつじ
だし、ろばのういごは小羊であがなわなければならない。もしあがなわ
くび お
出エジプト記

ないならば、その首を折らなければならない。あなたのむすこのうちの
て まえ で
ういごは、みなあがなわなければならない。むなし手でわたしの前に出
てはならない。

149
か はたら なぬか め やす たがや
二一 あなたは六日のあいだ働き、七日目には休まなければならない。 耕
どき かりい どき やす しゅう まつり
し時にも、刈入れ時にも休まなければならない。 二二あなたは七 週の祭、
こむぎ か はつほ まつり おこな ねん おわ
すなわち小麦刈りの初穂の祭を行わなければならない。また年の終り
と い まつり おこな ねん ど だんし しゅ
に取り入れの祭を行わなければならない。 二三年に三度、男子はみな主
かみ かみ まえ で くにぐに
なる神、イスラエルの神の前に出なければならない。 二四わたしは国々
たみ まえ お はら さかい ひろ
の民をあなたの前から追い払って、あなたの境を広くするであろう。あ
ねん ど かみ しゅ まえ で とき
なたが年に三度のぼって、あなたの神、主の前に出る時には、だれもあ
くに おか
なたの国を侵すことはないであろう。
ぎせい ち たね い とも そな
二五 あなたは犠牲の血を、種を入れたパンと共に供えてはならない。ま
すぎこし まつり ぎせい よくあさ のこ お
た過越の祭の犠牲を、翌朝まで残して置いてはならない。 二六あなたの
と ち はつほ もっと よ かみ しゅ いえ たずさ
土地の初穂の最も良いものを、あなたの神、主の家に携えてこなければ
こ はは ちち に
出エジプト記

な ら な い。あ な た は 子 や ぎ を そ の 母 の 乳 で 煮 て は な ら な い﹂。 二七ま た


しゅ い ことば か
主はモーセに言われた、﹁これらの言葉を書きしるしなさい。わたしは
ことば もとづ けいやく むす
これらの言葉に基いて、あなたおよびイスラエルと契約を結んだからで

150
しゅ とも にち や た
ある﹂。 二八モーセは主と共に、四十日四十夜、そこにいたが、パンも食
みず の かれ けいやく ことば じっかい いた うえ か
べず、水も飲まなかった。そして彼は契約の言葉、十誡を板の上に書い
た。
いた まい て さん くだ
二九モーセはそのあかしの板二枚を手にして、シナイ山から下ったが、そ
やま くだ しゅ かた かお かわ ひかり
の山を下ったとき、モーセは、さきに主と語ったゆえに、顔の皮が光を
はな し ひとびと
放 っ て い る の を 知 ら な か っ た。 三〇ア ロ ン と イ ス ラ エ ル の 人々 と が み
み かれ かお かわ ひかり はな かれ おそ
な、モーセを見ると、彼の顔の皮が光を放っていたので、彼らは恐れて
ちか かれ よ かいしゅう
これに近づかなかった。 三一モーセは彼らを呼んだ。アロンと会 衆のか
かえ かれ
しらたちとがみな、モーセのもとに帰ってきたので、モーセは彼らと
かた のち ひとびと ちか しゅ
語った。 三二その後、イスラエルの人々がみな近よったので、モーセは主
さん かれ かた かれ
が シ ナ イ 山 で 彼 に 語 ら れ た こ と を、こ と ご と く 彼 ら に さ と し た。 三 三
かれ かた お とき かお かお あ
出エジプト記

モーセは彼らと語り終えた時、顔おおいを顔に当てた。 三四しかしモー
しゅ まえ い しゅ かた とき で かお と のぞ
セは主の前に行って主と語る時は、出るまで顔おおいを取り除いてい
で く めい こと ひとびと つ
た。そして出て来ると、その命じられた事をイスラエルの人々に告げ

151
ひとびと かお み かお かわ ひかり
た。 三五イスラエルの人々はモーセの顔を見ると、モーセの顔の皮が光
はな い しゅ かた かお かお あ
を放っていた。モーセは行って主と語るまで、また顔おおいを顔に当て
た。
第三五章
ひとびと ぜんかいしゅう あつ い しゅ おこな
一モーセはイスラエルの人々の全 会 衆を集めて言った、
﹁これは主が行
めい ことば か あいだ しごと なぬか め
え と 命 じ ら れ た 言葉 で あ る。 二六 日 の 間 は 仕事 を し な さ い。七日目 は
せいじつ しゅ まった やす あんそくにち ひ しごと
あなたがたの聖日で、主の全き休みの安息日であるから、この日に仕事
もの ころ あんそくにち
を す る 者 は だ れ で も 殺 さ れ な け れ ば な ら な い。 三安息日 に は あ な た が

たのすまいのどこでも火をたいてはならない﹂。
出エジプト記

ひとびと ぜんかいしゅう い しゅ めい
四モーセはイスラエルの人々の全 会 衆に言った、
﹁これは主が命じられ
も もの しゅ もの と
たことである。 五あなたがたの持ち物のうちから、主にささげる物を取
こころ よろこ もの しゅ もの も
りなさい。すべて、心から喜んでする者は、主にささげる物を持ってき

152
きん ぎん せいどう あおいと むらさきいと ひ いと あ ま いと
なさい。すなわち金、銀、青銅。 六青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻糸、やぎ
けいと ぞ おひつじ かわ かわ ざい
の毛糸。 七あかね染めの雄羊の皮、じゅごんの皮、アカシヤ材、 八ともし
あぶら そそ あぶら こう くんこう こうりょう しま むねあて
油、注ぎ油と香ばしい薫香とのための香 料、 九縞めのう、エポデと胸当
ほうせき
とにはめる宝石。
こころ ち え もの しゅ めい
一〇すべてあなたがたのうち、 心に知恵ある者はきて、主の命じられた
つく まくや てんまく
ものをみな造りなさい。 一一すなわち幕屋、その天幕と、そのおおい、そ
こま わく よこぎ はしら ざ はこ
の 鉤 と、そ の 枠、そ の 横木、そ の 柱 と、そ の 座、 一二箱 と、そ の さ お、
しょくざいしょ へだ たれまく つくえ うつわ そな
贖 罪 所、隔ての垂幕、一三 机と、そのさお、およびそのもろもろの器、供
しょくだい うつわ ざら
えのパン、 一四また、ともしびのための燭 台と、その器、ともしび皿と、
あぶら こう さいだん そそ あぶら こう くんこう まくや いりぐち
ともし油、一五香の祭壇と、そのさお、注ぎ油、香ばしい薫香、幕屋の入口
はんさい さいだん せいどう あみ
のとばり、 一六燔祭の祭壇およびその青銅の網、そのさおと、そのもろも
うつわ せんばん だい にわ はしら ざ にわ もん
出エジプト記

ろの器、洗盤と、その台、 一七庭のあげばり、その柱とその座、庭の門の
まくや くぎ にわ くぎ せいじょ つとめ
とばり、一八幕屋の釘、庭の釘およびそのひも、一九聖所における務のため
あみもの ふく さいし つとめ さいし せい ふく
の編物の服、すなわち祭司の務をなすための祭司アロンの聖なる服およ

153
こ ふく
びその子たちの服﹂。
ひとびと ぜんかいしゅう まえ さ こころ かん
二〇イスラエルの人々の全 会 衆はモーセの前を去り、 二一すべて心に感
もの こころ よろこ もの かいけん まくや さぎょう
じた者、すべて心から喜んでする者は、会見の幕屋の作業と、そのもろ
ほうし せい ふく しゅ もの たずさ
もろの奉仕と、聖なる服とのために、主にささげる物を携えてきた。 二二
こころ よろこ だんじょ はなわ みみわ ゆびわ くびかざ
すなわち、すべて心から喜んでする男女は、鼻輪、耳輪、指輪、首飾り、
きん かざ たずさ きん もの しゅ
およびすべての金の飾りを携えてきた。すべて金のささげ物を主にさ
もの あおいと むらさきいと ひ いと あ ま いと
さげる者はそのようにした。 二三すべて青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻糸、や
けいと ぞ おひつじ かわ かわ も もの
ぎの毛糸、あかね染めの雄羊の皮、じゅごんの皮を持っている者は、そ
たずさ ぎん せいどう もの
れを携えてきた。 二四すべて銀、青銅のささげ物をささげることのでき
もの しゅ もの たずさ くみた
る者は、それを主にささげる物として携えてきた。また、すべて組立て
こうじ もち ざい も もの たずさ
の工事に用いるアカシヤ材を持っている者は、それを携えてきた。 二五
こころ ち え おんな て つむ つむ
出エジプト記

また、すべて心に知恵ある女たちは、その手をもって紡ぎ、その紡いだ
あおいと むらさきいと ひ いと あ ま いと たずさ ち え こころ
青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻糸を携えてきた。 二六すべて知恵があって、心
かん おんな け つむ しま
に感じた女たちは、やぎの毛を紡いだ。 二七また、かしらたちは縞めの

154
むねあて ほうせき たずさ
う、およびエポデと胸当にはめる宝石を携えてきた。 二八また、ともしび
そそ あぶら こう くんこう こうりょう あぶら たずさ
と、注ぎ油と、香ばしい薫香のための香 料と、 油とを携えてきた。 二九
ひとびと じはつ もの しゅ たずさ
このようにイスラエルの人々は自発のささげ物を主に携えてきた。す
しゅ めい こうさく
なわち主がモーセによって、なせと命じられたすべての工作のために、
もの たずさ こころ よろこ だんじょ
物を携えてこようと、 心から喜んでする男女はみな、そのようにした。
ひとびと い み しゅ ぶぞく ぞく
三〇モーセはイスラエルの人々に言った、
﹁見よ、主はユダの部族に属す
こ こ な め かれ かみ れい み
るホルの子なるウリの子ベザレルを名ざして召し、 三一彼に神の霊を満
ち え さと ちしき しょしゅ こうさく ちょう くふう こ
たして、知恵と悟りと知識と諸種の工作に長ぜしめ、三二工夫を凝らして
きん ぎん せいどう さいく ほうせき き き ちょうこく
金、銀、青銅の細工をさせ、三三また宝石を切りはめ、木を彫 刻するなど、
しょしゅ こうさく ひと おし ちから かれ こころ さづ かれ
諸種の工作をさせ、三四また人を教えうる力を、彼の心に授けられた。彼
ぶぞく ぞく こ
とダンの部族に属するアヒサマクの子アホリアブとが、それである。 三五
しゅ かれ ち え こころ み しょしゅ こうさく
出エジプト記

主は彼らに知恵の心を満たして、諸種の工作をさせられた。すなわち
ちょうこく う おり あおいと むらさきいと ひ いと あ ま いと ぬいと はたおり
彫 刻、浮き織および青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻糸の縫取り、また機織な
しょしゅ こうさく くふう こ たく
ど諸種の工作をさせ、工夫を凝らして巧みなわざをさせられた。

155
第三六章
こころ ち え もの しゅ
一ベザレルとアホリアブおよびすべて心に知恵ある者、すなわち主が
ち え さと さづ せいじょ くみた しょしゅ こうじ
知恵と悟りとを授けて、聖所の組立ての諸種の工事を、いかになすかを
し もの しゅ めい
知らせられた者は、すべて主が命じられたようにしなければならない﹂。
こころ ち え
二そこで、モーセはベザレルとアホリアブおよびすべて心に知恵ある
もの こころ しゅ ち え さづ もの こうじ
者、すなわち、その心に主が知恵を授けられた者、またきて、その工事
こころ のぞ もの め よ かれ せいじょ くみた
を な そ う と 心 に 望 む す べ て の 者 を 召 し 寄 せ た。 三彼 ら は 聖所 の 組立 て
こうじ ひとびと たずさ
の工事をするために、イスラエルの人々が携えてきたもろもろのささげ
もの う と たみ あさ じはつ もの
物を、モーセから受け取ったが、民はなおも朝ごとに、自発のささげ物
かれ たずさ せいじょ こうじ かしこ
を 彼 の も と に 携 え て き た。 四そ こ で 聖所 の も ろ も ろ の 工事 を す る 賢 い
ひとびと こうじ い たみ
出エジプト記

人々はみな、おのおのしていた工事をやめて、 五モーセに言った﹁民が
おお たずさ く しゅ めい
あまりに多く携えて来るので、主がせよと命じられた 組
;[ 立 く
]( みた )}
こうじ あま めいれい はっ しゅくえいちゅう
ての工事には余ります﹂。 六モーセは命令を発し、宿 営 中にふれさせて

156
い おとこ おんな せいじょ もの およ
言った、
﹁男も女も、もはや聖所のために、ささげ物をするに及ばない﹂。
たみ たずさ く ざいりょう こうじ
それで民は携えて来ることをやめた。 七材 料はすべての工事をするの
あま
にじゅうぶんで、かつ余るからである。
こうさく もの こころ ち え もの まい まく まくや
すべて工作をする者のうちの心に知恵ある者は、十枚の幕で幕屋を

つく あ ま ねんし あおいと むらさきいと ひ いと つく たく
造った。すなわち亜麻の撚糸、青糸、 紫 糸、緋糸で造り、巧みなわざ
お だ まく なが
をもって、それにケルビムを織り出した。 九幕の長さは、おのおの二十
まく はば まく おな すんぽう
八キュビト、幕の幅は、おのおの四キュビトで、幕はみな同じ寸法であ
る。
まく まい たがい つら あ た まい まく たがい つら あ
一〇 その幕五枚を互に連ね合わせ、また他の五枚の幕をも互に連ね合わ
いちれん はし まく ふち あおいろ ち た いちれん はし
せ、一一その一連の端にある幕の縁に青色の乳をつけ、他の一連の端にあ
まく ふち まい まく ち た
る幕の縁にも、そのようにした。 一二その一枚の幕に乳五十をつけ、他の
いちれん まく はし ち ち たがい あい む
出エジプト記

一連の幕の端にも、乳五十をつけた。その乳を互に相向かわせた。 一三
きん わ つく わ まく たがい つら あ
そして金の輪五十を作り、その輪で、幕を互に連ね合わせたので、一つ
まくや
の幕屋になった。

157
けいと まく つく まくや てんまく まく
一四 また、やぎの毛糸で幕を作り、幕屋をおおう天幕にした。すなわち幕
まい つく まく なが
十一枚を作った。 一五おのおのの幕の長さは三十キュビト、おのおのの
まく はば まい まく おな すんぽう
幕の幅は四キュビトで、その十一枚の幕は同じ寸法である。 一六そして、
まく まい つら あ まく まい つら あ
その幕五枚を一つに連ね合わせ、また、その幕六枚を一つに連ね合わせ、
いちれん はし まく ふち ち た いちれん まく ふち
一七 その一連の端にある幕の縁に、乳五十をつけ、他の一連の幕の縁に
ち せいどう わ つく てんまく つら
も、乳五十をつけた。 一八そして、青銅の輪五十を作り、その天幕を連ね
あ ぞ おひつじ かわ てんまく
合わせて一つにした。 一九また、あかね染めの雄羊の皮で、天幕のおおい
かわ うえ つく
と、じゅごんの皮で、その上にかけるおおいとを作った。
まくや ざい たてわく つく わく なが
二〇 また幕屋のためにアカシヤ材をもって、立枠を造った。 二一枠の長さ
わく はば はん わく
は十キュビト、枠の幅は、おのおの一キュビト半とし、 二二枠ごとに二つ
ほぞ つく あ まくや わく
の柄を造って、かれとこれとをくい合わせ、幕屋のすべての枠にこのよ
まくや わく つく みなみがわ わく
出エジプト記

うにした。 二三幕屋のために枠を造った。すなわち南 側のために枠二十


つく わく した ぎん ざ つく わく した
を造った。 二四その二十の枠の下に銀の座四十を造って、この枠の下に、
ほぞ ざ お わく した ほぞ
その二つの柄のために二つの座を置き、かの枠の下にも、その二つの柄

158
ざ お まくや た がわ きたがわ
のために二つの座を置いた。 二五また幕屋の他の側、すなわち北側のた
わく つく ぎん ざ つく わく した
めにも枠二十を造った。 二六その銀の座四十を造って、この枠の下にも
ざ お わく した ざ お まくや
二つの座を置き、かの枠の下にも二つの座を置いた。 二七また幕屋のう
にしがわ わく つく まくや
しろ、西側のために枠六つを造り、二八幕屋のうしろの二つのすみのため
わく つく した かさ あ おな いただき だい
に枠二つを造った。 二九これらは、下で重なり合い、同じくその頂でも第
かん かさ あ
一の環まで重なり合うようにし、その二つとも二つのすみのために、そ
つく わく ぎん ざ
のように造った。 三〇こうして、その枠は八つ、その銀の座は十六、おの
わく した ざ
おのの枠の下に、二つずつ座があった。
ざい よこぎ つく まくや がわ わく
またアカシヤ材の横木を造った。すなわち幕屋のこの側の枠のため
三一
まくや がわ わく よこぎ まくや
に五つ、 三二また幕屋のかの側の枠のために横木五つ、幕屋のうしろの
にしがわ わく よこぎ つく わく なか ちゅうおう よこぎ
西側の枠のために横木五つを造った。 三三枠のまん中にある中 央の横木
はし はし とお わく きん
出エジプト記

は、端から端まで通るようにした。 三四そして、その枠を金でおおい、ま
よこぎ とお かん きん つく よこぎ きん
た横木を通すその環を金で造り、またその横木を金でおおった。
あおいと むらさきいと ひ いと あ ま ねんし たれまく つく たく
また青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻の撚糸で、垂幕を作り、巧みなわざを
三五

159
お だ
もって、それにケルビムを織り出した。 三六また、これがためにアカシヤ
ざい はしら ほん つく きん こま きん はしら
材の柱 四本を作り、金でこれをおおい、その鉤を金にし、その柱のため
ぎん ざ い まくや いりぐち あおいと むらさきいと ひ いと
に銀の座四つを鋳た。 三七また幕屋の入口のために青糸、 紫 糸、緋糸、
あ ま ねんし いろ お つく はしら ほん
亜麻の撚糸で、色とりどりに織ったとばりを作った。 三八その柱 五本と、
こま つく はしら あたま けた きん
その鉤とを造り、その柱の頭と桁とを金でおおった。ただし、その五つ
ざ せいどう
の座は青銅であった。
第三七章
ざい はこ つく なが はん はば
一ベザレルはアカシヤ材の箱を造った。長さは二キュビト半、幅は一
はん たか はん じゅんきん うち
キュビト半、高さは一キュビト半である。 二純 金で、内そとをおおい、そ
出エジプト記

しゅうい きん かざ ふち つく きん かん い
の周囲に金の飾り縁を造った。 三また金の環四つを鋳て、その四すみに
と かん がわ かん がわ と
取りつけた。すなわち二つの環をこちら側に、二つの環をあちら側に取
ざい つく きん
りつけた。 四またアカシヤ材のさおを造り、金でこれをおおい、五そのさ

160
はこ そくめん かん とお はこ じゅんきん
お を 箱 の 側面 の 環 に 通 し て、箱 を か つ ぐ よ う に し た。 六ま た 純 金 で
しょくざいしょ つく なが はん はば はん
贖 罪 所を造った。長さは二キュビト半、幅は一キュビト半である。 七ま
きん つく うちものつく
た 金 で、二 つ の ケ ル ビ ム を 造 っ た。す な わ ち、こ れ を 打物造 り と し、
しょくざいしょ りょうはし お はし
贖 罪 所の両 端に置いた。 八一つのケルブをこの端に、一つのケルブを
はし お しょくざいしょ いちぶ りょうはし
かの端に置いた。すなわちケルビムを贖 罪 所の一部として、その両 端
つく つばさ たか の つばさ しょくざいしょ かお
に造った。 九ケルビムは翼を高く伸べ、その翼で贖 罪 所をおおい、顔は
たがい む あ かお しょくざいしょ む
互に向かい合った。すなわちケルビムの顔は贖 罪 所に向かっていた。
ざい つくえ つく なが はば
一〇またアカシヤ材で、 机を造った。長さは二キュビト、幅は一キュビ
たか はん じゅんきん しゅうい
ト、高さは一キュビト半である。 一一純 金でこれをおおい、その周囲に
きん かざ ふち つく しゅうい て はば さん つく しゅうい
金の飾り縁を造った。 一二またその周囲に手幅の棧を造り、その周囲の
さん きん かざ ふち つく きん かん い
棧に金の飾り縁を造った。 一三またこれがために金の環四つを鋳て、そ
あし しょ かん と かん さん
出エジプト記

の四つの足のすみ四か所にその環を取りつけた。 一四その環は棧のわき
つくえ い ところ ざい
にあって、 机をかつぐさおを入れる所とした。 一五またアカシヤ材で、
つくえ つく きん つくえ うえ うつわ
机をかつぐさおを造り、金でこれをおおった。 一六また机の上の器、すな

161
さら にゅうこう も はい かんさい そそ はち びん じゅんきん
わちその皿、 乳 香を盛る杯および灌祭を注ぐための鉢と瓶とを純 金で
つく
造った。
じゅんきん しょくだい つく うちものつく しょくだい つく
一七 また純 金の燭 台を造った。すなわち打物造りで燭 台を造り、その
だい みき がく ふし はな つら えだ だ
台、幹、萼、節、花を一つに連ねた。 一八また六つの枝をそのわきから出
しょくだい えだ がわ しょくだい えだ
させた。すなわち燭 台の三つの枝をこの側から、 燭 台の三つの枝をか
がわ だ はな かたち がく ふし はな
の側から出させた。 一九あめんどうの花の形をした三つの萼が、節と花
えだ はな かたち がく
とをもって、この枝にあり、また、あめんどうの花の形をした三つの萼
ふし はな えだ しょくだい で えだ
が、節と花とをもって、かの枝にあり、燭 台から出る六つの枝をみなそ
しょくだい みき はな かたち
のようにした。 二〇また燭 台の幹には、あめんどうの花の形をした四つ
がく ふし はな と えだ した
の萼を、その節と花とをもたせて取りつけた。 二一また二つの枝の下に
ふし と つぎ えだ した ふし と
一つの節を取りつけ、次の二つの枝の下に一つの節を取りつけ、さらに
つぎ えだ した ふし と しょくだい みき で えだ
出エジプト記

次の二つの枝の下に一つの節を取りつけ、 燭 台の幹から出る六つの枝
ふし えだ つら
に、みなそのようにした。 二二それらの節と枝を一つに連ね、ことごとく
じゅんきん うちものつく ざら しん き
純 金の打物造りとした。 二三また、それのともしび皿七つと、その芯切り

162
しん と ざら じゅんきん つく じゅんきん
ばさみと、芯取り皿とを純 金で造った。 二四すなわち純 金 一タラントを
しょくだい うつわ つく
もって、 燭 台とそのすべての器とを造った。
ざい こう さいだん つく なが はば
またアカシヤ材で香の祭壇を造った。長さ一キュビト、幅一キュビ
二五
かく たか いちぶ つの
トの四角にし、高さ二キュビトで、これにその一部として角をつけた。
いただき しゅうい そくめん つの じゅんきん
二六そして、その頂、その周囲の側面、その角を純 金でおおい、そ
しゅうい きん かざ ふち つく りょうがわ かざ ふち した きん
の周囲に金の飾り縁を造った。 二七また、その両 側に、飾り縁の下に金の
かん つく がわ つく
環二つを、そのために造った。すなわちその二つの側にこれを造った。
とお ところ ざい
これはそれをかつぐさおを通す所である。 二八そのさおはアカシヤ材で
つく きん
造り、金でこれをおおった。
こうりょう つく せい そそ あぶら じゅんすい こうりょう
二九 また香 料を造るわざにしたがって、聖なる注ぎ油と純 粋の香 料の
くんこう つく
薫香とを造った。
出エジプト記

163
第三八章
ざい はんさい さいだん つく なが はば
一またアカシヤ材で燔祭の祭壇を造った。長さ五キュビト、幅五キュビ
かく たか うえ いちぶ
トの四角で、高さは三キュビトである。 二その四すみの上に、その一部
つの つく せいどう さいだん さいだん
とし、それの角を造り、青銅で祭壇をおおった。 三また祭壇のもろもろ
うつわ じゅうのう はち にくまた ひざら つく
の器、すなわち、つぼ、十 能、鉢、肉叉、火皿を造った。そのすべての
うつわ せいどう つく さいだん せいどう あみ ざ い く こうし つく
器を青銅で造った。 四また祭壇のために、青銅の網細工の格子を造り、
さいだん で ば した と さいだん たか なか たっ
これを祭壇の出張りの下に取りつけて、祭壇の高さの半ばに達するよう
せいどう こうし かん い とお
にした。 五また青銅の格子の四すみのために、環四つを鋳て、さおを通
ところ ざい つく せいどう
す所とした。 六アカシヤ材で、そのさおを造り、青銅でこれをおおい、 七
さいだん りょうがわ かん とお
そ の さ お を 祭壇 の 両 側 に あ る 環 に 通 し て、そ れ を か つ ぐ よ う に し た。
さいだん いた くうどう つく
出エジプト記

祭壇は板をもって、空洞に造った。
せんばん だい せいどう つく かいけん まくや いりぐち つとめ
八また洗盤と、その台を青銅で造った。すなわち会見の幕屋の入口で務
おんな かがみ つく
をなす女たちの鏡をもって造った。

164
にわ つく みなみがわ あ ま ねんし にわ
九また庭を造った。その南 側のために百キュビトの亜麻の撚糸の庭の
もう はしら はしら ざ せいどう
あげばりを設けた。 一〇その柱は二十、その柱の二十の座は青銅で、その
はしら こま けた ぎん きたがわ
柱の鉤と桁は銀とした。 一一また北側のためにも百キュビトのあげばり
もう はしら はしら ざ せいどう はしら こま けた
を設けた。その柱 二十、その柱の二十の座は青銅で、その柱の鉤と桁は
ぎん にしがわ もう
銀 と し た。 一二ま た 西側 の た め に、五 十 キ ュ ビ ト の あ げ ば り を 設 け た。
はしら ざ はしら こま けた ぎん ひがしがわ
その柱は十、その座も十で、その柱の鉤と桁は銀とした。 一三また東 側の
もう いっぽう
ためにも、五十キュビトのあげばりを設けた。 一四その一方に十五キュ
もう はしら ざ た
ビトのあげばりを設けた。その柱は三つ、その座も三つ。 一五また他の
いっぽう おな にわ もん
一方にも、同じようにした。すなわち庭の門のこなたかなたともに、十
もう はしら ざ にわ
五キュビトのあげばりを設けた。その柱は三つ、その座も三つ。 一六庭
しゅうい あ ま ねんし はしら ざ せいどう はしら こま
の周囲のあげばりはみな亜麻の撚糸である。 一七 柱の座は青銅、 柱の鉤
けた ぎん はしら あたま ぎん にわ はしら ぎん けた つら
出エジプト記

と桁とは銀、 柱の頭のおおいも銀である。庭の柱はみな銀の桁で連ね
にわ もん あおいと むらさきいと ひ いと あ ま ねんし いろ
た。 一八庭の門のとばりは青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻の撚糸で、色とりど
お なが はば たか
りに織ったものであった。長さは二十キュビト、幅なる高さは五キュビ

165
にわ ひと はしら ざ
トで、庭のあげばりと等しかった。 一九その柱は四つ、その座も四つで、
せいどう こま ぎん はしら あたま けた ぎん
ともに青銅。その鉤は銀、柱の頭のおおいと桁は銀である。 二〇ただし、
まくや しゅうい にわ くぎ せいどう
幕屋および、その周囲の庭の釘はみな青銅であった。
まくや まくや もち もの そうけい つぎ
二一幕屋、すなわちあかしの幕屋に用いた物の総計は次のとおりである。
いのち したが さいし こ もち
すなわちモーセの命に従い、祭司アロンの子イタマルがレビびとを用い
はか ぶぞく ぞく こ こ
て量ったものである。 二二ユダの部族に属するホルの子なるウリの子ベ
しゅ めい こと
ザ レ ル は、主 が モ ー セ に 命 じ ら れ た 事 を こ と ご と く し た。 二 三ダ ン の
ぶぞく ぞく こ かれ とも ちょうこく う
部族に属するアヒサマクの子アホリアブは彼と共にあって彫 刻、浮き
おり あおいと むらさきいと ひ いと あ ま いと ぬいと もの
織をなし、また青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻糸で、縫取りをする者であっ
た。
せいじょ こうさく もち きん もの
二四聖所のもろもろの工作に用いたすべての金、すなわち、ささげ物なる
きん せいじょ
出エジプト記

金 は 聖所 の シ ケ ル で、二 十 九 タ ラ ン ト 七 百 三 十 シ ケ ル で あ っ た。 二 五
かいしゅう かぞ もの ぎん せいじょ
会 衆のうちの数えられた者のささげた銀は聖所のシケルで、百タラン
あた
ト千七百七十五シケルであった。 二六これはひとり当り一ベカ、すなわ

166
せいじょ はん さいいじょう かぞ もの
ち聖所のシケルの半シケルであって、すべて二十歳以上で数えられた者
にん せいじょ ざ たれまく ざ
が六十万三千五百五十人であったからである。 二七聖所の座と垂幕の座
い もち ぎん ざ
とを鋳るために用いた銀は百タラントであった。すなわち百座につき

百タラント、一座につき一タラントである。 二八また千七百七十五シケ
はしら こま つく はしら あたま はしら けた つく
ルで柱の鉤を造り、また柱の頭をおおい、柱のために桁を造った。 二九さ
もの せいどう もち
さげ物なる青銅は七十タラント二千四百シケルであった。 三〇これを用
かいけん まくや いりぐち ざ せいどう さいだん せいどう こうし
いて会見の幕屋の入口の座、青銅の祭壇と、それにつく青銅の格子、お
さいだん うつわ つく にわ しゅうい ざ にわ もん ざ
よび祭壇のもろもろの器を造った。 三一また庭の周囲の座、庭の門の座、
まくや くぎ にわ しゅうい くぎ つく
および幕屋のもろもろの釘と、庭の周囲のもろもろの釘を造った。
第三九章
出エジプト記

かれ あおいと むらさきいと ひ いと せいじょ つとめ あみもの ふく つく


彼らは青糸、 紫 糸、緋糸で、聖所の務のための編物の服を作った。ま

せい ふく つく しゅ めい
たアロンのために聖なる服を作った。主がモーセに命じられたとおり

167
である。
きんし あおいと むらさきいと ひ いと あ ま ねんし つく
二また金糸、青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻の撚糸でエポデを作った。 三また
きん う の いた き いと あおいと むらさきいと ひ いと あ ま
金を打ち延べて板とし、これを切って糸とし、青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻
ねんし まじ たく さいく かた
の 撚糸 に 交 え て、巧 み な 細工 と し た。 四ま た、こ れ が た め に 肩 ひ も を
つく りょうはし うえ
作ってこれにつけ、その両 端でこれにつけた。 五エポデの上で、これを
おび おな おな きんし あおいと むらさきいと ひ いと あ ま
つかねる帯は、同じきれで、同じように、金糸、青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻
ねんし つく しゅ めい
の撚糸で作った。主がモーセに命じられたとおりである。
しま さいく きんし あみ ざ い く いん ちょうこく
六また、縞めのうを細工して、金糸の編細工にはめ、これに印を彫 刻す
こ な きざ かた
るように、イスラエルの子たちの名を刻み、 七これをエポデの肩ひもに
こ きねん いし しゅ めい
つけて、イスラエルの子たちの記念の石とした。主がモーセに命じられ
たとおりである。
むねあて たく つく つく
出エジプト記

八また胸当を巧みなわざをもって、エポデの作りのように作った。すな
きんし あおいと むらさきいと ひ いと あ ま ねんし つく むねあて
わち金糸、青糸、 紫 糸、緋糸、亜麻の撚糸で作った。 九胸当は二つに
お かく お なが ゆびあた はば
折って四角にした。すなわち二つに折って、長さを一指当りとし、幅も

168
ゆびあた なか ほうせき れつ こうぎょくずい
一指当りとした。 一〇その中に宝石四列をはめた。すなわち、紅 玉 髄、
き いし すいしょう れつ だい れつ だい れつ いし
貴かんらん石、水 晶の列を第一列とし、 一一第二列は、ざくろ石、るり、
あかしま だい れつ き すいしょう むらさきすいしょう だい れつ き
赤縞めのう、 一二第三列は黄 水 晶、めのう、 紫 水 晶、 一三第四列は黄
へきぎょく しま へきぎょく きん あみ ざ い く なか こ
碧 玉、縞めのう、 碧 玉であって、これらを金の編細工の中にはめ込ん
ほうせき こ な な ひと
だ。 一四その宝石はイスラエルの子たちの名にしたがい、その名と等し
いん ちょうこく ぶぞく な きざ
く十二とし、おのおの印の彫 刻のように、十二部族のためにその名を刻
ざいく じゅんきん むねあて
ん だ。 一五ま た ひ も 細工 に ね じ た 純 金 の く さ り を 胸当 に つ け た。 一六ま
きん あみ ざ い く きん かん つく かん むねあて
た金の二つの編細工と、二つの金の環とを作り、その二つの環を胸当の
りょうはし すじ きん むねあて はし かん
両 端 に つ け た。 一七か の 二 筋 の 金 の ひ も を 胸当 の 端 の 二 つ の 環 に つ け
すじ た りょうはし あみ ざ い く
た。 一八ただし、その二筋のひもの他の両 端を、かの二つの編細工につ
かた まえ きん
け、エポデの肩ひもにつけて前にくるようにした。 一九また二つの金の
かん つく むねあて りょうはし せっ
出エジプト記

環 を 作 っ て、こ れ を 胸当 の 両 端 に つ け た。す な わ ち エ ポ デ に 接 す る
うちがわ ふち きん かん つく
内側の縁にこれをつけた。 二〇また金の環二つを作って、これをエポデ
かた した ぶぶん まえ ほう め ちか
の二つの肩ひもの下の部分につけ、前の方で、そのつなぎ目に近く、エ

169
おび うえ ほう むねあて あお
ポデの帯の上の方にくるようにした。 二一胸当は青ひもをもって、その
かん かん むす おび うえ ほう
環をエポデの環に結びつけ、エポデの帯の上の方にくるようにした。こ
むねあて はな しゅ めい
うして、胸当がエポデから離れないようにした。主がモーセに命じられ
たとおりである。
ぞく うわふく あおじ おりもの つく うわふく
二二 またエポデに属する上服は、すべて青地の織物で作った。 二三上服の
くち なか くち しゅうい ふち
口はそのまん中にあって、その口の周囲には、よろいのえりのように縁
うわふく あおいと むらさきいと
をつけて、ほころびないようにした。 二四上服のすそには青糸、 紫 糸、
ひ いと あ ま ねんし つく じゅんきん すず つく
緋糸、亜麻の撚糸で、ざくろを作りつけ、 二五また純 金で鈴を作り、その
すず うわふく しゅうい あいだ
鈴を上服のすその周囲の、ざくろとざくろとの間につけた。 二六すなわ
すず すず つとめ うわふく しゅうい しゅ
ち鈴にざくろ、鈴にざくろと、 務の上服のすその周囲につけた。主が
めい
モーセに命じられたとおりである。
こ あ ま いと お したふく つく
出エジプト記

二七 またアロンとその子たちのために、亜麻糸で織った下服を作り、 二八
あ ま ぬの ぼうし つく あ ま ぬの うるわ ずきん つく あ ま ねんし ぬの した
亜麻布で帽子を作り、亜麻布で麗しい頭布を作り、亜麻の撚糸の布で、下
つく あ ま ねんし あおいと むらさきいと ひ いと いろ
ばきを作り、 二九亜麻の撚糸および青糸、 紫 糸、緋糸で、色とりどりに

170
お おび つく しゅ めい
織った帯を作った。主がモーセに命じられたとおりである。
じゅんきん せい かんむり まえいた つく いん ちょうこく
三〇 また純 金をもって、聖なる冠の前板を作り、印の彫 刻のように、そ
うえ しゅ せい もの も じ か あお
の上に﹁主に聖なる者﹂という文字を書き、 三一これに青ひもをつけて、
ぼうし うえ むす しゅ めい
それを帽子の上に結びつけた。主がモーセに命じられたとおりである。
かいけん てんまく まくや こうじ おわ
三二 こうして会見の天幕なる幕屋の、もろもろの工事が終った。イスラ
ひとびと しゅ めい かれ
エルの人々はすべて主がモーセに命じられたようにおこなった。 三三彼
まくや てんまく うつわ たずさ
らは幕屋と天幕およびそのもろもろの器をモーセのもとに携えてきた。
こま わく よこぎ はしら ざ ぞ
すなわち、その鉤、その枠、その横木、その柱、その座、 三四あかね染め
おひつじ かわ かわ へだ たれまく
の雄羊の皮のおおい、じゅごんの皮のおおい、隔ての垂幕、 三五あかしの
はこ しょくざいしょ つくえ うつわ そな
箱と、そのさお、贖 罪 所、 三六 机と、そのもろもろの器、供えのパン、 三
じゅんきん しょくだい ざら れつ なら ざら
七純 金の燭 台と、そのともしび皿、すなわち列に並べるともしび皿と、
うつわ あぶら きん さいだん そそ あぶら こう
出エジプト記

そのもろもろの器、およびそのともし油、 三八金の祭壇、注ぎ油、香ばし
くんこう まくや いりぐち せいどう さいだん せいどう こうし
い薫香、幕屋の入口のとばり、 三九青銅の祭壇、その青銅の格子と、その
うつわ せんばん だい にわ
さお、およびそのもろもろの器、洗盤とその台、 四〇庭のあげばり、その

171
はしら ざ にわ もん くぎ かいけん てんまく まくや
柱とその座、庭の門のとばり、そのひもとその釘、また会見の天幕の幕屋
もち うつわ せいじょ つとめ あみもの ふく さいし つとめ
に用いるもろもろの器、四一聖所で務をなす編物の服、すなわち祭司の務
さいし せい ふく こ ふく
をなすための祭司アロンの聖なる服およびその子たちの服。 四二イスラ
ひとびと しゅ めい
エルの人々は、すべて主がモーセに命じられたように、そのすべての
こうじ こうじ み かれ しゅ めい
工事をした。 四三モーセがそのすべての工事を見ると、彼らは主が命じ
かれ しゅくふく
られたとおりに、それをなしとげていたので、モーセは彼らを祝 福し
た。
第四〇章
しゅ い しょうがつ がんじつ かいけん てんまく
一主 は モ ー セ に 言 わ れ た。 二﹁正 月 の 元日 に あ な た は 会見 の 天幕 な る
出エジプト記

まくや た なか はこ お
幕屋を建てなければならない。 三そして、その中にあかしの箱を置き、
たれまく はこ へだ かく つくえ たずさ い なら なら
垂幕で、箱を隔て隠し、 四また、 机を携え入れ、それに並べるものを並
しょくだい たずさ い
べ、燭 台を携え入れて、そのともしびをともさなければならない。 五あ

172
きん こう さいだん はこ まえ まくや
なたはまた金の香の祭壇を、あかしの箱の前にすえ、とばりを幕屋の
いりぐち はんさい さいだん かいけん てんまく
入口 に か け な け れ ば な ら な い。 六 ま た 燔祭 の 祭壇 を 会見 の 天幕 な る
まくや いりぐち まえ せんばん かいけん てんまく さいだん あいだ
幕屋の入口の前にすえ、 七洗盤を会見の天幕と祭壇との間にすえて、こ
みず い しゅうい にわ もう にわ もん
れに水を入れなければならない。 八また周囲に庭を設け、庭の門にとば
そそ あぶら まくや なか
りをかけなければならない。 九そして注ぎ油をとって、幕屋とその中の
そそ うつわ せいべつ
すべてのものに注ぎ、それとそのもろもろの器とを聖別しなければなら
せい はんさい さいだん
ない、こうして、それは聖となるであろう。 一〇あなたはまた燔祭の祭壇
うつわ あぶら そそ さいだん せいべつ
と、そのすべての器に油を注いで、その祭壇を聖別しなければならない。
さいだん せい せんばん
こうして祭壇は、いと聖なるものとなるであろう。 一一また洗盤と、その
だい あぶら そそ せいべつ こ かいけん まくや
台とに油を注いで、これを聖別し、一二アロンとその子たちを会見の幕屋
いりぐち つ みず かれ あら せい ふく き
の入口に連れてきて、水で彼らを洗い、 一三アロンに聖なる服を着せ、こ
あぶら そそ せいべつ さいし つとめ かれ
出エジプト記

れに油を注いで聖別し、祭司の務をさせなければならない。 一四また彼
こ つ ふく き ちち あぶら そそ
の子たちを連れてきて、これに服を着せ、 一五その父に油を注いだよう
かれ あぶら そそ さいし つとめ かれ あぶら
に、彼らにも油を注いで、祭司の務をさせなければならない。彼らが油

173
よ よ さ い し しょく
そそがれることは、代々ながく祭司 職のためになすべきことである﹂。
おこな しゅ かれ めい
一六 モ ー セ は そ の よ う に 行 っ た。す な わ ち 主 が 彼 に 命 じ ら れ た よ う に
おこな だい ねん しょうがつ つき がんじつ まくや た
行 った。 一七第二年の正 月になって、その月の元日に幕屋は建った。 一八
まくや た ざ わく た よこぎ
すなわちモーセは幕屋を建て、その座をすえ、その枠を立て、その横木
こ はしら た まくや うえ てんまく うえ てんまく
をさし込み、その柱を立て、 一九幕屋の上に天幕をひろげ、その上に天幕
しゅ めい かれ
のおおいをかけた。主がモーセに命じられたとおりである。 二〇彼はま
いた はこ おさ はこ しょくざいしょ はこ うえ お
たあかしの板をとって箱に納め、さおを箱につけ、贖 罪 所を箱の上に置
はこ まくや たずさ い へだ たれまく はこ かく
き、二一箱を幕屋に携え入れ、隔ての垂幕をかけて、あかしの箱を隠した。
しゅ めい かれ かいけん てんまく
主 が モ ー セ に 命 じ ら れ た と お り で あ る。 二 二彼 は ま た 会見 の 天幕 な る
まくや ないぶ きたがわ たれまく そと つくえ うえ れつ なら
幕屋の内部の北側、垂幕の外に机をすえ、 二三その上にパンを列に並べ
しゅ まえ そな しゅ めい かれ
て、主の前に供えた。主がモーセに命じられたとおりである。 二四彼は
かいけん てんまく まくや ないぶ みなみがわ つくえ あ しょくだい
出エジプト記

また会見の天幕なる幕屋の内部の南 側に、 机にむかい合わせて燭 台を


しゅ まえ しゅ めい
すえ、 二五主の前にともしびをともした。主がモーセに命じられたとお
かれ かいけん まくや なか たれまく まえ きん さいだん
りである。 二六彼は会見の幕屋の中、垂幕の前に金の祭壇をすえ、 二七そ

174
うえ こう くんこう しゅ めい
の上に香ばしい薫香をたいた。主がモーセに命じられたとおりである。
かれ まくや いりぐち はんさい さいだん かいけん てんまく
二八 彼はまた幕屋の入口にとばりをかけ、 二九燔祭の祭壇を会見の天幕な
まくや いりぐち うえ はんさい そさい しゅ めい
る幕屋の入口にすえ、その上に燔祭と素祭をささげた。主がモーセに命
かれ かいけん てんまく さいだん あいだ せんばん
じられたとおりである。 三〇彼はまた会見の天幕と祭壇との間に洗盤を
お あら みず い こ
置き、洗うためにそれに水を入れた。 三一モーセとアロンおよびその子
て あし あら かいけん てんまく
たちは、それで手と足を洗った。 三二すなわち会見の天幕にはいるとき、
さいだん ちか あら しゅ めい
また祭壇に近づくとき、そこで洗った。主がモーセに命じられたとおり
まくや さいだん しゅうい にわ もう にわ もん
である。 三三また幕屋と祭壇の周囲に庭を設け、庭の門にとばりをかけ
こうじ お
た。このようにしてモーセはその工事を終えた。
くも かいけん てんまく しゅ えいこう まくや み
三四 そのとき、雲は会見の天幕をおおい、主の栄光が幕屋に満ちた。 三五
かいけん まくや くも うえ
モーセは会見の幕屋に、はいることができなかった。雲がその上にとど
しゅ えいこう まくや み くも まくや うえ
出エジプト記

まり、主の栄光が幕屋に満ちていたからである。 三六雲が幕屋の上から
とき ひとびと みち すす かれ たびじ つね
のぼる時、イスラエルの人々は道に進んだ。彼らはその旅路において常
くも とき ひ みち すす
にそうした。 三七しかし、雲がのぼらない時は、そののぼる日まで道に進

175
いえ もの まえ ひる
ま な か っ た。 三 八す な わ ち イ ス ラ エ ル の 家 の す べ て の 者 の 前 に、昼 は
まくや うえ しゅ くも よる くも なか ひ かれ たびじ
幕屋の上に主の雲があり、夜は雲の中に火があった。彼らの旅路におい
つね
て常にそうであった。
出エジプト記

176

レビ記
第一章
しゅ よ かいけん まくや つ い
一主はモーセを呼び、会見の幕屋からこれに告げて言われた、二﹁イスラ
ひとびと い かちく そな もの
エルの人々に言いなさい、﹃あなたがたのうちだれでも家畜の供え物を
しゅ うし ひつじ そな もの
主にささげるときは、牛または羊を供え物としてささげなければならな
い。
そな もの うし はんさい おうし まった
三もしその供え物が牛の燔祭であるならば、雄牛の全きものをささげな
かいけん まくや いりぐち しゅ まえ う い
ければならない。会見の幕屋の入口で、主の前に受け入れられるよう
かれ はんさい けもの あたま て お
に、これをささげなければならない。 四彼はその燔祭の獣の頭に手を置
う い かれ
かなければならない。そうすれば受け入れられて、彼のためにあがない
かれ しゅ まえ こ うし こ
と な る で あ ろ う。 五彼 は 主 の 前 で そ の 子牛 を ほ ふ り、ア ロ ン の 子 な る
レビ記

さいし ち たずさ かいけん まくや いりぐち さいだん しゅうい


祭司たちは、その血を携えてきて、会見の幕屋の入口にある祭壇の周囲

0
ち そそ かれ はんさい けもの かわ
に、その血を注ぎかけなければならない。 六彼はまたその燔祭の獣の皮
ふしぶし き わ さいし こ
をはぎ、節々に切り分かたなければならない。 七祭司アロンの子たちは
さいだん うえ ひ お ひ うえ なら こ
祭壇 の 上 に 火 を 置 き、そ の 火 の 上 に た き ぎ を 並 べ、 八ア ロ ン の 子 な る
さいし き わ あたま しぼう とも さいだん うえ
祭司たちはその切り分けたものを、頭および脂肪と共に、祭壇の上にあ
ひ うえ うえ なら ないぞう あし
る 火 の 上 の た き ぎ の 上 に 並 べ な け れ ば な ら な い。 九そ の 内臓 と 足 と は
みず あら さいし さいだん うえ
水で洗わなければならない。こうして祭司はそのすべてを祭壇の上で
や はんさい かさい しゅ
焼いて燔祭としなければならない。これは火祭であって、主にささげる
こう
香ばしいかおりである。
はんさい そな もの む ひつじ おす まった
一〇 もしその燔祭の供え物が群れの羊または、やぎであるならば、雄の全
かれ さいだん きたがわ しゅ まえ
きものをささげなければならない。 一一彼は祭壇の北側で、主の前にこ
こ さいし ち さいだん しゅうい そそ
れをほふり、アロンの子なる祭司たちは、その血を祭壇の周囲に注ぎか
かれ ふしぶし き わ さいし
けなければならない。 一二彼はまたこれを節々に切り分かち、祭司はこ
あたま しぼう とも さいだん うえ ひ うえ うえ なら
れを頭および脂肪と共に、祭壇の上にある火の上のたきぎの上に並べな
レビ記

ないぞう あし みず あら
ければならない。 一三その内臓と足とは水で洗わなければならない。こ

1
さいし さいだん うえ や はんさい
うして祭司はそのすべてを祭壇の上で焼いて燔祭としなければならな
かさい しゅ こう
い。これは火祭であって、主にささげる香ばしいかおりである。
しゅ そな もの とり はんさい やま
もし主にささげる供え物が、鳥の燔祭であるならば、山ばと、または
一四
いえ そな もの さいし
家ばとのひなを、その供え物としてささげなければならない。 一五祭司
さいだん たずさ い くび つ やぶ さいだん うえ や
はこれを祭壇に携えて行き、その首を摘み破り、祭壇の上で焼かなけれ
ち しぼ だ さいだん そくめん ぬ
ばならない。その血は絞り出して祭壇の側面に塗らなければならない。
え ぶくろ はね とも のぞ さいだん ひがし ほう はいすて ば す
またその餌 袋は羽と共に除いて、祭壇の東の方にある灰捨場に捨て
一六
つばさ にぎ さ
なければならない。 一七これは、その翼を握って裂かなければならない。
ひ はな さいし さいだん うえ ひ うえ
ただし引き離してはならない。祭司はこれを祭壇の上で、火の上のたき
うえ はんさい や かさい しゅ
ぎの上で燔祭として焼かなければならない。これは火祭であって、主に
こう
ささげる香ばしいかおりである。
レビ記

2
第二章
ひと そさい そな もの しゅ そな もの むぎこ
一人が素祭の供え物を主にささげるときは、その供え物は麦粉でなけれ
うえ あぶら そそ うえ にゅうこう そ
ばならない。その上に油を注ぎ、またその上に乳 香を添え、 二これをア
こ さいし たずさ い さいし
ロンの子なる祭司たちのもとに携えて行かなければならない。祭司は
むぎこ あぶら ひとにぎ にゅうこう ぜんぶ とも と きねん ぶん
その麦粉とその油の一握りを乳 香の全部と共に取り、これを記念の分
さいだん うえ や かさい しゅ
として、祭壇の上で焼かなければならない。これは火祭であって、主に
こう そさい のこ こ
さ さ げ る 香 ば し い か お り で あ る。 三素祭 の 残 り は ア ロ ン と そ の 子 ら の
しゅ かさい せい もの
ものになる。これは主の火祭のいと聖なる物である。
てんぴ や そさい
四あなたが、もし天火で焼いたものを素祭としてささげるならば、それ
むぎこ あぶら ま つく たね い か し あぶら ぬ たね い
は麦粉に油を混ぜて作った種入れぬ菓子、または油を塗った種入れぬ
せんべい そな もの ひらなべ や
煎餅 で な け れ ば な ら な い。 五あ な た の 供 え 物 が、も し、平鍋 で 焼 い た
そさい むぎこ あぶら ま つく たね い
素祭であるならば、それは麦粉に油を混ぜて作った種入れぬものでなけ
レビ記

こま くだ うえ あぶら そそ
ればならない。 六あなたはそれを細かく砕き、その上に油を注がなけれ

3
そさい そな もの ふかなべ に
ばならない。これは素祭である。 七あなたの供え物が、もし深鍋で煮た
そさい むぎこ あぶら ま つく
素祭であるならば、麦粉に油を混ぜて作らなければならない。 八あなた
もの つく そさい しゅ たずさ い
はこれらの物で作った素祭を、主に携えて行かなければならない。それ
さいし わた さいし さいだん たずさ い そさい
を祭司に渡すならば、祭司はそれを祭壇に携えて行き、 九その素祭のう
きねん ぶん と さいだん うえ や
ちから記念の分を取って、祭壇の上で焼かなければならない。これは
かさい しゅ こう そさい のこ
火祭であって、主にささげる香ばしいかおりである。 一〇素祭の残りは
こ しゅ かさい せい もの
アロンとその子らのものになる。これは、主の火祭のいと聖なる物であ
る。
しゅ そさい たね い つく
あなたがたが主にささげる素祭は、すべて種を入れて作ってはなら
一一
だね みつ しゅ かさい や
ない。パン種も蜜も、すべて主にささげる火祭として焼いてはならない
はつほ そな もの しゅ
からである。 一二ただし、初穂の供え物としては、これらを主にささげる
こう さいだん
ことができる。しかし香ばしいかおりとして祭壇にささげてはならな
そさい そな もの しお あじ
い。 一三あなたの素祭の供え物は、すべて塩をもって味をつけなければ
レビ記

そさい かみ けいやく しお か
ならない。あなたの素祭に、あなたの神の契約の塩を欠いてはならな

4
そな もの しお そ
い。すべて、あなたの供え物は、塩を添えてささげなければならない。
はつほ そさい しゅ ひ ほ や
一四 もしあなたが初穂の素祭を主にささげるならば、火で穂を焼いたも
しんこく くだ はつほ そさい
の、新穀の砕いたものを、あなたの初穂の素祭としてささげなければな
あぶら くわ うえ にゅうこう お
らない。 一五あなたはそれに油を加え、その上に乳 香を置かなければな
そさい さいし くだ もの あぶら
らない。これは素祭である。 一六祭司は、その砕いた物およびその油の
きねん ぶん と にゅうこう ぜんぶ とも や
うちから記念の分を取って、乳 香の全部と共に焼かなければならない。
しゅ かさい
これは主にささげる火祭である。
第三章
かれ そな もの しゅうおんさい ぎせい うし
もし彼の供え物が酬 恩 祭の犠牲であって、牛をささげるのであれば、

しゆう まった しゅ まえ
雌雄いずれであっても、 全きものを主の前にささげなければならない。
かれ そな もの あたま て お かいけん まくや いりぐち
彼はその供え物の頭に手を置き、会見の幕屋の入口で、これをほふら

レビ記

こ さいし ち さいだん
なければならない。そしてアロンの子なる祭司たちは、その血を祭壇の

5
しゅうい そそ かれ しゅうおんさい ぎせい
周囲に注ぎかけなければならない。 三彼はまたその酬 恩 祭の犠牲のう
かさい しゅ ないぞう
ち か ら 火祭 を 主 に さ さ げ な け れ ば な ら な い。す な わ ち 内臓 を お お う
しぼう ないぞう うえ しぼう じんぞう うえ こし
脂肪と、内臓の上のすべての脂肪、 四二つの腎臓とその上の腰のあたり
しぼう じんぞう とも かんぞう うえ しょうよう
にある脂肪、ならびに腎臓と共にとられる肝臓の上の小 葉である。 五そ
こ さいだん うえ ひ うえ うえ お はんさい
してアロンの子たちは祭壇の上で、火の上のたきぎの上に置いた燔祭の
うえ や かさい しゅ
上で、これを焼かなければならない。これは火祭であって、主にささげ
こう
る香ばしいかおりである。
かれ そな もの しゅ しゅうおんさい ぎせい ひつじ
六もし彼の供え物が主にささげる酬 恩 祭の犠牲で、それが羊であるな
しゆう まった
らば、雌雄いずれであっても、 全きものをささげなければならない。 七
こひつじ そな もの しゅ まえ つ
もし小羊を供え物としてささげるならば、それを主の前に連れてきて、八
そな もの あたま て お かいけん まくや まえ
その供え物の頭に手を置き、それを会見の幕屋の前で、ほふらなければ
こ ち さいだん しゅうい そそ
ならない。そしてアロンの子たちはその血を祭壇の周囲に注ぎかけな
かれ しゅうおんさい ぎせい かさい しゅ
ければならない。 九彼はその酬 恩 祭の犠牲のうちから、火祭を主にささ
レビ記

しぼう せぼね せっ き と あぶら お


げなければならない。すなわちその脂肪、背骨に接して切り取る脂 尾

6
ぜんぶ ないぞう しぼう ないぞう うえ しぼう じんぞう
の全部、内臓をおおう脂肪と内臓の上のすべての脂肪、一〇二つの腎臓と
うえ こし しぼう じんぞう とも と かんぞう うえ
その上の腰のあたりにある脂肪、ならびに腎臓と共に取られる肝臓の上
しょうよう さいし さいだん うえ や
の小 葉である。 一一祭司はこれを祭壇の上で焼かなければならない。こ
かさい しゅ しょくもつ
れは火祭であって、主にささげる食 物である。
かれ そな もの しゅ まえ つ
一二もし彼の供え物が、やぎであるならば、それを主の前に連れてきて、
あたま て お かいけん まくや まえ
一三その頭に手を置き、それを会見の幕屋の前で、ほふらなければならな
こ ち さいだん しゅうい そそ
い。そしてアロンの子たちは、その血を祭壇の周囲に注ぎかけなければ
かれ そな もの と かさい しゅ
ならない。 一四彼はまたそのうちから供え物を取り、火祭として主にさ
ないぞう しぼう ないぞう うえ
さげなければならない。すなわち内臓をおおう脂肪と内臓の上のすべ
しぼう じんぞう うえ こし しぼう
ての脂肪、 一五二つの腎臓とその上の腰のあたりにある脂肪、ならびに
じんぞう とも と かんぞう うえ しょうよう さいし さいだん うえ
腎臓と共に取られる肝臓の上の小 葉である。 一六祭司はこれを祭壇の上
や かさい しょくもつ
で 焼 か な け れ ば な ら な い。こ れ は 火祭 と し て さ さ げ る 食 物 で あ っ て、
こう しぼう しゅ き
香ばしいかおりである。脂肪はみな主に帰すべきものである。 一七あな
レビ記

しぼう ち た
たがたは脂肪と血とをいっさい食べてはならない。これはあなたがた

7
す ところ よ よ まも えいきゅう さだ
が、すべてその住む所で、代々守るべき永 久の定めである﹄﹂。
第四章
しゅ い ひとびと い
一主はまたモーセに言われた、 二﹁イスラエルの人々に言いなさい、
﹃も
ひと つみ おか しゅ
し人があやまって罪を犯し、主のいましめにそむいて、してはならない
とき つぎ
こ と の 一 つ を し た 時 は 次 の よ う に し な け れ ば な ら な い。 三す な わ ち、
あぶらそそ さいし つみ おか たみ およ かれ おか
油 注がれた祭司が罪を犯して、とがを民に及ぼすならば、彼はその犯し
つみ おす まった こ うし ざいさい しゅ
た罪のために雄の全き子牛を罪祭として主にささげなければならない。
こ うし かいけん まくや いりぐち つ しゅ まえ いた こ うし
四その子牛を会見の幕屋の入口に連れてきて主の前に至り、その子牛の
あたま て お こ うし しゅ まえ あぶらそそ
頭に手を置き、その子牛を主の前で、ほふらなければならない。 五 油 注
さいし こ うし ち と かいけん まくや たずさ い
がれた祭司は、その子牛の血を取って、それを会見の幕屋に携え入り、六
さいし ゆび ち ひた せいじょ たれまく まえ しゅ まえ ち
そして祭司は指をその血に浸して、聖所の垂幕の前で主の前にその血を
レビ記

そそ さいし ち と しゅ まえ
七 た び 注 が な け れ ば な ら な い。 七祭司 は ま た そ の 血 を 取 り、主 の 前 で

8
かいけん まくや なか こう くんこう さいだん つの ぬ
会見の幕屋の中にある香ばしい薫香の祭壇の角に、それを塗らなければ
こ うし ち のこ かいけん まくや いりぐち
ならない。その子牛の血の残りはことごとく会見の幕屋の入口にある
はんさい さいだん そそ ざいさい こ うし
燔祭 の 祭壇 の も と に 注 が な け れ ば な ら な い。 八ま た そ の 罪祭 の 子牛 か
しぼう と ないぞう しぼう
ら、すべての脂肪を取らなければならない。すなわち内臓をおおう脂肪
ないぞう うえ しぼう じんぞう うえ こし
と内臓の上のすべての脂肪、 九二つの腎臓とその上の腰のあたりにある
しぼう じんぞう とも と かんぞう うえ しょうよう
脂肪、ならびに腎臓と共に取られる肝臓の上の小 葉である。 一〇これを
と しゅうおんさい ぎせい おうし と おな
取るには酬 恩 祭の犠牲の雄牛から取るのと同じようにしなければなら
さいし はんさい さいだん うえ や
ない。そして祭司はそれを燔祭の祭壇の上で焼かなければならない。 一
こ うし かわ にく あたま あし ないぞう おぶつ
一その子牛の皮とそのすべての肉、およびその頭と足と内臓と汚物な
こ うし のこ しゅくえい そと きよ ば しょ はいすて
ど、一二すべてその子牛の残りは、これを宿 営の外の、清い場所なる灰捨
ば たずさ だ ひ うえ や す
場に携え出し、火をもってこれをたきぎの上で焼き捨てなければならな
はいすて ば や す
い。すなわちこれは灰捨場で焼き捨てらるべきである。 一三もしイスラ
ぜんかいしゅう おか かいしゅう め かく
エ ル の 全 会 衆 が あ や ま ち を 犯 し、そ の こ と が 会 衆 の 目 に 隠 れ て い て
レビ記

しゅ
も、主のいましめにそむいて、してはならないことの一つをなして、と

9
え おか つみ あらわ とき かいしゅう おす こ うし ざいさい
がを得たならば、 一四その犯した罪が現れた時、 会 衆は雄の子牛を罪祭
かいけん まくや まえ つ
としてささげなければならない。すなわちそれを会見の幕屋の前に連
かいしゅう ちょうろう しゅ まえ こ うし あたま て お
れてきて、一五会 衆の長 老たちは、主の前でその子牛の頭に手を置き、そ
こ うし しゅ まえ あぶらそそ
の子牛を主の前で、ほふらなければならない。 一六そして、 油 注がれた
さいし こ うし ち かいけん まくや たずさ い さいし ゆび ち
祭司は、その子牛の血を会見の幕屋に携え入り、一七祭司は指をその血に
ひた たれまく まえ しゅ まえ そそ
浸し、垂幕の前で主の前に七たび注がなければならない。 一八またその
ち と かいけん まくや なか しゅ まえ さいだん つの ぬ
血を取って、会見の幕屋の中の主の前にある祭壇の角に、それを塗らな
ち のこ かいけん まくや いりぐち
ければならない。その血の残りはことごとく会見の幕屋の入口にある
はんさい さいだん そそ しぼう
燔祭の祭壇のもとに注がなければならない。 一九またそのすべての脂肪
と さいだん うえ や さいし ざいさい
を取って祭壇の上で焼かなければならない。 二〇すなわち祭司は罪祭の
おうし おうし さいし
雄牛にしたように、この雄牛にも、しなければならない。こうして、祭司
かれ かれ
が彼らのためにあがないをするならば、彼らはゆるされるであろう。 二一
かれ おうし しゅくえい そと たずさ だ おうし や す
そして、彼はその雄牛を宿 営の外に携え出し、はじめの雄牛を焼き捨て
レビ記

や す かいしゅう ざいさい
たように、これを焼き捨てなければならない。これは会 衆の罪祭であ

10
る。
もの つみ おか かみ しゅ
二二またつかさたる者が罪を犯し、あやまって、その神、主のいましめに
え おか
そむき、してはならないことの一つをして、とがを得、 二三もしその犯し
つみ し そな もの お まった つ
た罪を知るようになったときは、供え物として雄やぎの全きものを連れ
あたま て お はんさい ば しょ しゅ まえ
てきて、 二四そのやぎの頭に手を置き、燔祭をほふる場所で、主の前にこ
ざいさい さいし ゆび
れをほふらなければならない。これは罪祭である。 二五祭司は指でその
ざいさい ち と はんさい さいだん つの ぬ のこ ち はんさい さいだん
罪祭の血を取り、燔祭の祭壇の角にそれを塗り、残りの血は燔祭の祭壇
そそ しぼう
の も と に 注 が な け れ ば な ら な い。 二 六 ま た、そ の す べ て の 脂肪 は、
しゅうおんさい ぎせい しぼう おな さいだん うえ や
酬 恩 祭の犠牲の脂肪と同じように、祭壇の上で焼かなければならない。
さいし かれ つみ かれ
こうして、祭司が彼のためにその罪のあがないをするならば、彼はゆる
いっぱん ひと つみ おか しゅ
されるであろう。 二七また一般の人がもしあやまって罪を犯し、主のい

ましめにそむいて、してはならないことの一つをして、とがを得、 二八そ
おか つみ し おか つみ そな もの
の犯した罪を知るようになったときは、その犯した罪のために供え物と
レビ記

め まった つ ざいさい あたま て お はんさい


して雌やぎの全きものを連れてきて、二九その罪祭の頭に手を置き、燔祭

11
ば しょ ざいさい さいし
をほふる場所で、その罪祭をほふらなければならない。 三〇そして祭司
ゆび ち と はんさい さいだん つの ぬ のこ ち
は指でその血を取り、燔祭の祭壇の角にこれを塗り、残りの血をことご
さいだん そそ しぼう
とく祭壇のもとに注がなければならない。 三一またそのすべての脂肪は
しゅうおんさい ぎせい しぼう と おな と さいだん うえ
酬 恩 祭の犠牲から脂肪を取るのと同じように取り、これを祭壇の上で
や しゅ こう
焼いて主にささげる香ばしいかおりとしなければならない。こうして
さいし かれ かれ
祭司が彼のためにあがないをするならば、彼はゆるされるであろう。
こひつじ ざいさい そな もの つ めす まった
三二 もし小羊を罪祭のために供え物として連れてくるならば、雌の全き
つ ざいさい あたま て お はんさい
ものを連れてこなければならない。 三三その罪祭の頭に手を置き、燔祭
ば しょ ざいさい
をほふる場所で、これをほふり、罪祭としなければならない。 三四そして
さいし ゆび ざいさい ち と はんさい さいだん つの ぬ のこ
祭司は指でその罪祭の血を取り、燔祭の祭壇の角にそれを塗り、残りの
ち さいだん そそ
血はことごとく祭壇のもとに注がなければならない。 三五またそのすべ
しぼう しゅうおんさい ぎせい こひつじ しぼう と おな と
て の 脂肪 は 酬 恩 祭 の 犠牲 か ら 小羊 の 脂肪 を 取 る の と 同 じ よ う に 取 り、
さいし しゅ かさい さいだん うえ や
祭司はこれを主にささげる火祭のように祭壇の上で焼かなければなら
レビ記

さいし かれ おか つみ かれ
ない。こうして祭司が彼の犯した罪のためにあがないをするならば、彼

12
はゆるされるであろう。
第五章
ひと しょうにん た ちか こえ き み し
もし人が証 人に立ち、誓いの声を聞きながら、その見たこと、知って

い つみ おか かれ お
いることを言わないで、罪を犯すならば、彼はそのとがを負わなければ
ひと けが やじゅう したい けが かちく したい けが
ならない。 二また、もし人が汚れた野獣の死体、汚れた家畜の死体、汚
は したい けが ふ
れた這うものの死体など、すべて汚れたものに触れるならば、そのこと
き かれ けが え
に気づかなくても、彼は汚れたものとなって、とがを得る。 三また、も
かれ ひと けが ふ ひと けが けが
し彼が人の汚れに触れるならば、その人の汚れが、どのような汚れであ
き かれ し とき
れ、それに気づかなくても、彼がこれを知るようになった時は、とがを
え ひと ちか あく
得る。 四また、もし人がみだりにくちびるで誓い、悪をなそう、または
ぜん い ひと ちか い
善をなそうと言うならば、その人が誓ってみだりに言ったことは、それ
レビ記

き かれ し
がどんなことであれ、それに気づかなくても、彼がこれを知るように

13
とき え
なった時は、これらの一つについて、とがを得る。 五もしこれらの一つ
え つみ おか こくはく おか
について、とがを得たときは、その罪を犯したことを告白し、 六その犯
つみ つぐな めす かちく めす こひつじ め
した罪のために償いとして、雌の家畜、すなわち雌の小羊または雌やぎ
しゅ つ ざいさい さいし
を主のもとに連れてきて、罪祭としなければならない。こうして祭司は
かれ つみ
彼のために罪のあがないをするであろう。
こひつじ て とき やま わ いえ わ
もし小羊に手のとどかない時は、山ばと二羽か、家ばとのひな二羽か

かれ おか つみ つぐな しゅ たずさ わ ざいさい
を、彼が犯した罪のために償いとして主に携えてきて、一羽を罪祭に、一
わ はんさい さいし たずさ
羽を燔祭にしなければならない。 八すなわち、これらを祭司に携えてき
さいし ざいさい さき
て、祭司はその罪祭のものを先にささげなければならない。すなわち、
あたま くび ね つ やぶ き
その頭を首の根のところで、摘み破らなければならない。ただし、切り
はな ざいさい ち さいだん そくめん そそ のこ
離してはならない。 九そしてその罪祭の血を祭壇の側面に注ぎ、残りの
ち さいだん しぼ だ ざいさい
血は祭壇のもとに絞り出さなければならない。これは罪祭である。 一〇
だい さだ はんさい
また第二のものは、定めにしたがって燔祭としなければならない。こう
レビ記

さいし かれ おか つみ かれ
して、祭司が彼のためにその犯した罪のあがないをするならば、彼はゆ

14
るされるであろう。
わ やま わ いえ て とど
一一 もし二羽の山ばとにも、二羽の家ばとのひなにも、手の届かないとき
かれ おか つみ そな もの むぎこ ぶん たずさ
は、彼の犯した罪のために、供え物として麦粉十分の一エパを携えてき
ざいさい うえ あぶら
て、これを罪祭としなければならない。ただし、その上に油をかけては
うえ にゅうこう そ ざいさい
ならない。またその上に乳 香を添えてはならない。これは罪祭だから
かれ さいし たずさ い さいし ひとにぎ と
である。 一二彼はこれを祭司のもとに携えて行き、祭司は一握りを取っ
きねん ぶん しゅ かさい さいだん うえ や
て、記念の分とし、これを主にささげる火祭のように、祭壇の上で焼か
ざいさい さいし かれ
なければならない。これは罪祭である。 一三こうして、祭司が彼のため、
かれ おか つみ
すなわち、彼がこれらの一つを犯した罪のために、あがないをするなら
かれ のこ そさい おな さいし
ば、彼はゆるされるであろう。そしてその残りは素祭と同じく、祭司に

帰するであろう﹄﹂。
しゅ い ひと ふせい
一四 主はまたモーセに言われた、 一五﹁もし人が不正をなし、あやまって
しゅ せい もの つみ おか つぐな ね
主の聖なる物について罪を犯したときは、その償いとして、あなたの値
レビ記

づも せいじょ ぎんすう あた おひつじ まった


積りにしたがい、聖所のシケルで、銀数シケルに当る雄羊の全きものを、

15
む と しゅ たずさ けんさい
群れのうちから取り、それを主に携えてきて、愆祭としなければならな
せい もの おか つみ つぐな
い。 一六そしてその聖なる物について犯した罪のために償いをし、また
ぶん くわ さいし わた
その五分の一をこれに加えて、祭司に渡さなければならない。こうして
さいし けんさい おひつじ かれ かれ
祭司がその愆祭の雄羊をもって、彼のためにあがないをするならば、彼
はゆるされるであろう。
ひと つみ おか しゅ
一七 また人がもし罪を犯し、主のいましめにそむいて、してはならないこ
し かれ つみ え
との一つをしたときは、たといそれを知らなくても、彼は罪を得、その
お かれ ね づも
と が を 負 わ な け れ ば な ら な い。 一八彼 は あ な た の 値積 り に し た が っ て、
おひつじ まった む と けんさい さいし
雄羊の全きものを群れのうちから取り、愆祭としてこれを祭司のもとに
たずさ さいし かれ かれ
携えてこなければならない。こうして、祭司が彼のために、すなわち彼
し おか かしつ
が知らないで、しかもあやまって犯した過失のために、あがないをする
かれ けんさい かれ たし
ならば、彼はゆるされるであろう。 一九これは愆祭である。彼は確かに
しゅ まえ え
主の前にとがを得たからである﹂。
レビ記

16
第六章
しゅ い ひと つみ おか しゅ たい ふせい
主はまたモーセに言われた、二﹁もし人が罪を犯し、主に対して不正を

あず もの て しちぐさ もの
なしたとき、すなわち預かり物、手にした質草、またはかすめた物につ
りんじん あざむ りんじん おと
いて、その隣人を欺き、あるいはその隣人をしえたげ、 三あるいは落し
もの ひろ あざむ いつわ ちか ひと
物を拾い、それについて欺き、偽 って誓うなど、すべて人がそれをなし
つみ つみ おか え かれ
て罪となることの一つについて、 四罪を犯し、とがを得たならば、彼は
もの と もの あず もの ひろ おと もの
そのかすめた物、しえたげて取った物、預かった物、拾った落し物、 五
いつわ ちか もの かえ のこ
または偽り誓ったすべての物を返さなければならない。すなわち残り
つぐな さら ぶん くわ かれ けんさい ひ
なく償い、更にその五分の一をこれに加え、彼が愆祭をささげる日に、こ
もと も ぬし わた かれ つぐな
れをその元の持ち主に渡さなければならない。 六彼はその償いとして、
ね づも おひつじ まった む なか と
あなたの値積りにしたがい、雄羊の全きものを、群れの中から取り、こ
さいし たずさ けんさい しゅ
れを祭司のもとに携えてきて、愆祭として主にささげなければならな
レビ記

さいし しゅ まえ かれ かれ
い。 七こうして、祭司が主の前で彼のためにあがないをするならば、彼

17
い え
はそのいずれを行ってとがを得てもゆるされるであろう﹂。
しゅ い こ めい い
主はまたモーセに言われた、 九﹁アロンとその子たちに命じて言いな

はんさい つぎ はんさい さいだん ろ うえ あさ
さい、﹃燔祭のおきては次のとおりである。燔祭は祭壇の炉の上に、朝ま
よ さいだん ひ も つづ
で夜もすがらあるようにし、そこに祭壇の火を燃え続かせなければなら
さいし あ ま ぬの ふく き あ ま ぬの み さいだん
ない。 一〇祭司は亜麻布の服を着、亜麻布のももひきを身につけ、祭壇の
うえ ひ や はんさい はい と さいだん お
上で火に焼けた燔祭の灰を取って、これを祭壇のそばに置き、 一一その
いふく ぬ いふく き はい しゅくえい そと きよ ば しょ たずさ だ
衣服を脱ぎ、ほかの衣服を着て、その灰を宿 営の外の清い場所に携え出
さいだん うえ ひ も つづ け
さなければならない。 一二祭壇の上の火は、そこに燃え続かせ、それを消
さいし あさ うえ も はんさい
してはならない。祭司は朝ごとに、たきぎをその上に燃やし、燔祭をそ
うえ なら しゅうおんさい しぼう うえ や
の上に並べ、また酬 恩 祭の脂肪をその上で焼かなければならない。 一三
ひ た さいだん うえ も つづ け
火は絶えず祭壇の上に燃え続かせ、これを消してはならない。
そさい つぎ こ さいだん
一四 素祭のおきては次のとおりである。アロンの子たちはそれを祭壇の
まえ しゅ まえ そさい む ぎ こ ひとにぎ
前で主の前にささげなければならない。 一五すなわち素祭の麦粉一握り
レビ記

あぶら そさい うえ ぜんぶ にゅうこう とも と さいだん うえ や


とその油を、素祭の上にある全部の乳 香と共に取って、祭壇の上で焼

18
こう きねん ぶん しゅ
き、香ばしいかおりとし、記念の分として主にささげなければならない。
のこ こ た
一六 そ の 残 り は ア ロ ン と そ の 子 た ち が 食 べ な け れ ば な ら な い。す な わ
たね い せい ところ た かいけん まくや にわ
ち、種を入れずに聖なる所で食べなければならない。会見の幕屋の庭で
た たね い や
こ れ を 食 べ な け れ ば な ら な い。 一七こ れ は 種 を 入 れ て 焼 い て は な ら な
かさい かれ ぶん あた
い。わ た し は こ れ を わ た し の 火祭 の う ち か ら 彼 ら の 分 と し て 与 え る。
ざいさい けんさい どうよう せい
これは罪祭および愆祭と同様に、いと聖なるものである。 一八アロンの
こ だんし た しゅ
子たちのうち、すべての男子はこれを食べることができる。これは主に
かさい よ よ えいきゅう う さだ
ささげる火祭のうちから、あなたがたが代々 永 久に受けるように定め
ぶん ふ せい
られた分である。すべてこれに触れるものは聖となるであろう﹄﹂。
しゅ い こ
一九 主はまたモーセに言われた、 二〇﹁アロンとその子たちが、アロンの
あぶらそそ ひ しゅ そな もの つぎ
油 注がれる日に、主にささぐべき供え物は次のとおりである。すなわ
むぎこ ぶん た そさい なか あさ なか
ち麦粉十分の一エパを、絶えずささげる素祭とし、半ばは朝に、半ばは
ゆう あぶら ま ひらなべ や
夕 に さ さ げ な け れ ば な ら な い。 二一そ れ は 油 を よ く 混 ぜ て 平鍋 で 焼 き、
レビ記

たずさ こま くだ そさい こう しゅ
それを携えてきて、細かく砕いた素祭とし、香ばしいかおりとして、主

19
かれ こ あぶらそそ かれ
にささげなければならない。 二二彼の子たちのうち、 油 注がれて彼につ
さいし もの えいきゅう
いで祭司となる者は、これをささげなければならない。これは永 久に
しゅ き ぶん まった や さいし
主に帰する分として、 全く焼きつくすべきものである。 二三すべて祭司
そさい まった や た
の素祭は全く焼きつくすべきものであって、これを食べてはならない﹂。
しゅ い こ い
主はまたモーセに言われた、二五
二四 ﹁アロンとその子たちに言いなさい、
ざいさい つぎ ざいさい はんさい ば しょ しゅ
﹃罪祭のおきては次のとおりである。罪祭は燔祭をほふる場所で、主の
まえ せい もの つみ
前にほふらなければならない。これはいと聖なる物である。 二六罪のた
さいし た
めにこれをささげる祭司が、これを食べなければならない。すなわち
かいけん まくや にわ せい ところ た
会見の幕屋の庭の聖なる所で、これを食べなければならない。 二七すべ
にく ふ もの せい ち いふく
てその肉に触れる者は聖となるであろう。もしその血が衣服にかかっ
せい ところ あら
たならば、そのかかったものは聖なる所で洗わなければならない。 二八
に つち うつわ くだ せいどう うつわ に
またそれを煮た土の器は砕かなければならない。もし青銅の器で煮た
みず あら さいし
のであれば、それはみがいて、水で洗わなければならない。 二九祭司たち
レビ記

だんし た せい
のうちのすべての男子は、これを食べることができる。これはいと聖な

20
ち かいけん まくや たずさ せいじょ
るものである。 三〇しかし、その血を会見の幕屋に携えていって、聖所で
もち ざいさい た ひ や す
あがないに用いた罪祭は食べてはならない。これは火で焼き捨てなけ
ればならない。
第七章
けんさい つぎ せい もの
一愆祭 の お き て は 次 の と お り で あ る。そ れ は い と 聖 な る 物 で あ る。 二
けんさい はんさい ば しょ さいし
愆祭は燔祭をほふる場所でほふらなければならない。そして祭司はそ
ち さいだん しゅうい そそ しぼう
の血を祭壇の周囲に注ぎかけ、 三そのすべての脂肪をささげなければな
あぶら お ないぞう しぼう じんぞう うえ こし
らない。すなわち脂 尾、内臓をおおう脂肪、 四二つの腎臓とその上の腰
しぼう じんぞう とも と かんぞう うえ しょうよう
の あ た り に あ る 脂肪、腎臓 と 共 に 取 ら れ る 肝臓 の 上 の 小 葉 で あ る。 五
さいし さいだん うえ や しゅ かさい
祭司はこれを祭壇の上で焼いて、主に火祭としなければならない。これ
けんさい さいし だんし た
は愆祭である。 六祭司たちのうちのすべての男子は、これを食べること
レビ記

せい ところ た せい
ができる。これは聖なる所で食べなければならない。これはいと聖な

21
もの ざいさい けんさい こと
る物である。 七罪祭も愆祭も、そのおきては一つであって、異なるとこ
さいし き ひと たずさ
ろ は な い。こ れ は、あ が な い を な す 祭司 に 帰 す る。 八人 が 携 え て く る
はんさい さいし さいし はんさい かわ き
燔祭をささげる祭司、その祭司に、そのささげる燔祭のものの皮は帰す
てんぴ や そさい ふかなべ ひらなべ つく
る。 九すべて天火で焼いた素祭、またすべて深鍋または平鍋で作ったも
さいし き そさい あぶら ま
のは、これをささげる祭司に帰する。 一〇すべて素祭は、油を混ぜたもの
こ き
も、かわいたものも、アロンのすべての子たちにひとしく帰する。
しゅ しゅうおんさい ぎせい つぎ
一一 主にささぐべき酬 恩 祭の犠牲のおきては次のとおりである。 一二も
かんしゃ あぶら ま たね い か し
しこれを感謝のためにささげるのであれば、 油を混ぜた種入れぬ菓子
あぶら ぬ たね い せんべい ま むぎこ あぶら ま つく
と、 油を塗った種入れぬ煎餅と、よく混ぜた麦粉に油を混ぜて作った
か し かんしゃ ぎせい あ たね
菓子とを、感謝の犠牲に合わせてささげなければならない。 一三また種
い か し かんしゃ しゅうおんさい ぎせい あ そな
を入れたパンの菓子をその感謝のための酬 恩 祭の犠牲に合わせ、供え
もの そな もの
物としてささげなければならない。 一四すなわちこのすべての供え物の
か し と しゅ
うちから、菓子一つずつを取って主にささげなければならない。これは
レビ記

しゅうおんさい ち そそ さいし き かんしゃ しゅうおんさい


酬 恩 祭の血を注ぎかける祭司に帰する。 一五その感謝のための酬 恩 祭

22
ぎせい にく そな もの ひ た
の犠牲の肉は、その供え物をささげた日のうちに食べなければならな
すこ あ あさ のこ お
い。少しでも明くる朝まで残して置いてはならない。 一六しかし、その
そな もの ぎせい せいがん そな もの じはつ そな もの
供え物の犠牲がもし誓願の供え物、または自発の供え物であるならば、
ぎせい ひ た のこ あ ひ
その犠牲をささげた日のうちにそれを食べ、その残りはまた明くる日に
た ぎせい にく のこ か め ひ
食べることができる。 一七ただし、その犠牲の肉の残りは三日目には火
や す しゅうおんさい ぎせい にく か め
で焼き捨てなければならない。 一八もしその酬 恩 祭の犠牲の肉を三日目
すこ た う い そな もの み
に少しでも食べるならば、それは受け入れられず、また供え物と見なさ
い もの た もの
れず、かえって忌むべき物となるであろう。そしてそれを食べる者はと

がを負わなければならない。
にく けが もの ふ た ひ
一九 その肉がもし汚れた物に触れるならば、それを食べることなく、火で
や す ぎせい にく きよ もの た
焼き捨てなければならない。犠牲の肉はすべて清い者がこれを食べる
ひと み けが しゅ
こ と が で き る。 二 〇も し 人 が そ の 身 に 汚 れ が あ る の に、主 に さ さ げ た
しゅうおんさい ぎせい にく た ひと たみ た
酬 恩 祭の犠牲の肉を食べるならば、その人は民のうちから断たれるで
レビ記

ひと けが ひと けが
あろう。 二一また人がもしすべて汚れたもの、すなわち人の汚れ、あるい

23
けが けもの けが は ふ しゅ
は 汚 れ た 獣、あ る い は 汚 れ た 這 う も の に 触 れ な が ら、主 に さ さ げ た
しゅうおんさい ぎせい にく た ひと たみ た
酬 恩 祭の犠牲の肉を食べるならば、その人は民のうちから断たれるで
あろう﹄﹂。
しゅ い ひとびと い
二二主はまたモーセに言われた、 二三﹁イスラエルの人々に言いなさい、
うし ひつじ しぼう た しぜん
﹃あなたがたは、すべて牛、羊、やぎの脂肪を食べてはならない。 二四自然
し けもの しぼう さ ころ けもの しぼう
に死んだ獣の脂肪および裂き殺された獣の脂肪は、さまざまのことに
つか けっ た
使ってもよい。しかし、それは決して食べてはならない。 二五だれでも
かさい しゅ けもの しぼう た た ひと たみ
火祭として主にささげる獣の脂肪を食べるならば、これを食べる人は民
た す ところ
のうちから断たれるであろう。 二六またあなたがたはすべてその住む所
とり けもの ち た
で、鳥にせよ、獣にせよ、すべてその血を食べてはならない。 二七だれで
ち た ひと たみ た
も す べ て 血 を 食 べ る な ら ば、そ の 人 は 民 の う ち か ら 断 た れ る で あ ろ
う﹄﹂。
しゅ い ひとびと い
二八主はまたモーセに言われた、 二九﹁イスラエルの人々に言いなさい、
レビ記

しゅうおんさい ぎせい しゅ もの しゅうおんさい ぎせい


﹃酬 恩 祭の犠牲を主にささげる者は、その酬 恩 祭の犠牲のうちから、そ

24
そな もの しゅ たずさ しゅ かさい て
の供え物を主に携えてこなければならない。 三〇主の火祭は手ずからこ
たずさ しぼう むね たずさ
れを携えてこなければならない。すなわちその脂肪と胸とを携えてき
むね しゅ まえ ゆ うご ようさい
て、その胸を主の前に揺り動かして、揺祭としなければならない。 三一そ
さいし しぼう さいだん うえ や むね
して祭司はその脂肪を祭壇の上で焼かなければならない。その胸はア
こ き しゅうおんさい ぎせい
ロ ン と そ の 子 た ち に 帰 す る。 三二あ な た が た の 酬 恩 祭 の 犠牲 の う ち か
みぎ きょさい さいし あた
ら、その右のももを挙祭として、祭司に与えなければならない。 三三アロ
こ しゅうおんさい ち しぼう もの みぎ
ンの子たちのうち、酬 恩 祭の血と脂肪とをささげる者は、その右のもも
じぶん ぶん え ひとびと
を 自分 の 分 と し て、獲 る で あ ろ う。 三 四わ た し は イ ス ラ エ ル の 人々 の
しゅうおんさい ぎせい ようさい むね きょさい と さいし
酬 恩 祭の犠牲のうちから、その揺祭の胸と挙祭のももを取って、祭司ア
こ あた ひとびと えいきゅう かれ
ロンとその子たちに与え、これをイスラエルの人々から永 久に彼らの
う ぶん しゅ かさい う ぶん
受くべき分とする。 三五これは主の火祭のうちから、アロンの受ける分
こ う ぶん さいし しょく かれ しゅ
と、その子たちの受ける分とであって、祭司の職をなすため、彼らが主
ひ さだ かれ
にささげられた日に定められたのである。 三六すなわち、これは彼らに
レビ記

あぶら そそ ひ ひとびと かれ あた しゅ めい
油を注ぐ日に、イスラエルの人々が彼らに与えるように、主が命じられ

25
よ よ えいきゅう う ぶん
たものであって、代々 永 久に受くべき分である﹄﹂。
はんさい そさい ざいさい けんさい にんしょくさい しゅうおんさい ぎせい
三七 これは燔祭、素祭、罪祭、愆祭、任 職 祭、酬 恩 祭の犠牲のおきてで
しゅ あらの ひとびと
ある。 三八すなわち、主がシナイの荒野においてイスラエルの人々にそ
そな もの しゅ めい ひ さん めい
の供え物を主にささげることを命じられた日に、シナイ山でモーセに命
じられたものである。
第八章
しゅ い こ
主はまたモーセに言われた、二﹁あなたはアロンとその子たち、および

いふく そそ あぶら ざいさい おうし おひつじ とう たね い と
その衣服、注ぎ油、罪祭の雄牛、雄羊二頭、種入れぬパン一かごを取り、
ぜんかいしゅう かいけん まくや いりぐち あつ しゅ めい
また全 会 衆を会見の幕屋の入口に集めなさい﹂。 四モーセは主が命じ

かいしゅう かいけん まくや いりぐち あつ
られたようにした。そして会 衆は会見の幕屋の入口に集まった。
かいしゅう い しゅ
そこでモーセは会 衆にむかって言った、
五 ﹁これは主があなたがたにせ
レビ記

めい こ
よと命じられたことである﹂。 六そしてモーセはアロンとその子たちを

26
つ みず かれ あら きよ ふく き おび
連れてきて、水で彼らを洗い清め、 七アロンに服を着させ、帯をしめさ
ころも つ おび
せ、 衣をまとわせ、エポデを着けさせ、エポデの帯をしめさせ、それを
み ゆ むねあて つ むねあて
もってエポデを身に結いつけ、 八また胸当を着けさせ、その胸当にウリ
い あたま ぼうし ぼうし まえ きん
ムとトンミムを入れ、 九その頭に帽子をかぶらせ、その帽子の前に金の
いた せい かんむり しゅ めい
板、すなわち聖なる冠をつけさせた。主がモーセに命じられたとおりで
ある。
そそ あぶら と まくや もの あぶら そそ
一〇 モーセはまた注ぎ油を取り、幕屋とそのうちのすべての物に油を注
せいべつ さいだん そそ さいだん
いでこれを聖別し、 一一かつ、それを七たび祭壇に注ぎ、祭壇とそのもろ
うつわ せんばん だい あぶら そそ せいべつ そそ あぶら
もろの器、洗盤とその台に油を注いでこれを聖別し、一二また注ぎ油をア
あたま そそ かれ あぶら そそ せいべつ
ロンの頭に注ぎ、彼に油を注いでこれを聖別した。 一三モーセはまたア
こ つ ふく かれ き おび かれ
ロンの子たちを連れてきて、服を彼らに着させ、帯を彼らにしめさせ、
ずきん あたま ま しゅ めい
頭巾を頭に巻かせた。主がモーセに命じられたとおりである。
かれ ざいさい おうし つ こ
一四 彼はまた罪祭の雄牛を連れてこさせ、アロンとその子たちは、その
レビ記

ざいさい おうし あたま て お ち と


罪祭の雄牛の頭に手を置いた。 一五モーセはこれをほふり、その血を取

27
ゆび ち さいだん つの さいだん きよ のこ
り、指をもってその血を祭壇の四すみの角につけて祭壇を清め、また残
ち さいだん そそ せいべつ
りの血を祭壇のもとに注いで、これを聖別し、これがためにあがないを
ないぞう うえ しぼう かんぞう しょうよう
した。 一六モーセはまたその内臓の上のすべての脂肪、肝臓の小 葉、二つ
じんぞう しぼう と さいだん うえ や
の腎臓とその脂肪とを取り、これを祭壇の上で焼いた。 一七ただし、その
おうし かわ にく おぶつ しゅくえい そと ひ や す しゅ
雄牛の皮と肉と汚物は宿 営の外で、火をもって焼き捨てた。主がモー
めい
セに命じられたとおりである。
かれ はんさい おひつじ つ こ
彼はまた燔祭の雄羊を連れてこさせ、アロンとその子たちは、その
一八
おひつじ あたま て お ち さいだん
雄羊の頭に手を置いた。 一九モーセはこれをほふって、その血を祭壇の
しゅうい そそ おひつじ ふしぶし き わ
周囲に注ぎかけた。 二〇そして、モーセはその雄羊を節々に切り分かち、
あたま き わ しぼう や みず
その頭と切り分けたものと脂肪とを焼いた。 二一またモーセは水でその
ないぞう あし あら おひつじ さいだん うえ や こう
内臓と足とを洗い、その雄羊をことごとく祭壇の上で焼いた。これは香
はんさい しゅ かさい しゅ
ばしいかおりのための燔祭であって、主にささげる火祭である。主が
めい
モーセに命じられたとおりである。
レビ記

かれ おひつじ にんしょく おひつじ つ


彼はまたほかの雄羊、すなわち任 職の雄羊を連れてこさせ、アロン
二二

28
こ おひつじ あたま て お
とその子たちは、その雄羊の頭に手を置いた。 二三モーセはこれをほふ
ち と みぎ みみ みぎて おやゆび みぎあし おやゆび
り、その血を取って、アロンの右の耳たぶと、右手の親指と、右足の親指
こ つ ち
とにつけた。 二四またモーセはアロンの子たちを連れてきて、その血を
かれ みぎ みみ みぎて おやゆび みぎあし おやゆび
彼 ら の 右の 耳た ぶ と、右手 の 親指 と、右足の 親指 とに つ け た。そ して
のこ ち さいだん しゅうい そそ かれ
モーセはその残りの血を、祭壇の周囲に注ぎかけた。 二五彼はまたその
しぼう あぶら お ないぞう うえ しぼう かんぞう しょうよう じんぞう
脂肪、すなわち脂 尾、内臓の上のすべての脂肪、肝臓の小 葉、二つの腎臓
しぼう みぎ と しゅ まえ たね い
とその脂肪、ならびにその右のももを取り、二六また主の前にある種入れ
たね い か し あぶら い か し
ぬパンのかごから種入れぬ菓子一つと、 油を入れたパンの菓子一つと、
せんべい と しぼう みぎ うえ の
煎餅一つとを取って、かの脂肪と右のももとの上に載せ、二七これをすべ
て こ て わた しゅ まえ ゆ うご ようさい
てアロンの手と、その子たちの手に渡し、主の前に揺り動かさせて揺祭
かれ て と さいだん うえ はんさい
とした。 二八そしてモーセはこれを彼らの手から取り、祭壇の上で燔祭
とも や こう にんしょく そな もの
と 共 に 焼 い た。こ れ は 香 ば し い か お り と す る 任 職 の 供 え 物 で あ っ て、
しゅ かさい むね と しゅ まえ
主にささげる火祭である。 二九そしてモーセはその胸を取り、主の前に
レビ記

ゆ うご ようさい にんしょく おひつじ き


これを揺り動かして揺祭とした。これは任 職の雄羊のうちモーセに帰

29
ぶん しゅ めい
すべき分であった。主がモーセに命じられたとおりである。
そそ あぶら さいだん うえ ち と
三〇 モーセはまた注ぎ油と祭壇の上の血とを取り、これをアロンとその
ふく こ ふく そそ ふく
服、またその子たちとその服とに注いで、アロンとその服、およびその
こ ふく せいべつ
子たちと、その服とを聖別した。
こ い かいけん まくや いりぐち
三一 モーセはまたアロンとその子たちに言った、
﹁会見の幕屋の入口でそ
にく に にんしょくさい なか とも
の肉を煮なさい。そして任 職 祭のかごの中のパンと共に、それをその
ところ た こ た
所で食べなさい。これは﹃アロンとその子たちが食べなければならな
い めい
い、と言え﹄とわたしが命じられたとおりである。 三二あなたがたはその
にく のこ ひ や す
肉とパンとの残ったものを火で焼き捨てなければならない。 三三あなた
にんしょくさい おわ ひ なぬか あいだ かいけん まくや いりぐち で
がたはその任 職 祭の終る日まで七日の間、会見の幕屋の入口から出て
にんしょく なぬか よう
はならない。あなたがたの任 職は七日を要するからである。 三四きょう
おこな しゅ めい
行 ったように、あなたがたのために、あがないをせよ、と主はお命じに
かいけん まくや いりぐち なぬか あいだ にちや
なった。 三五あなたがたは会見の幕屋の入口に七日の間、日夜とどまり、
レビ記

しゅ おお まも し
主の仰せを守って、死ぬことのないようにしなければならない。わたし

30
めい こ しゅ
はそのように命じられたからである﹂。 三六アロンとその子たちは主が
めい おこな
モーセによってお命じになったことを、ことごとく行 った。
第九章
か め こ
一八日目になって、モーセはアロンとその子たち、およびイスラエルの
ちょうろう よ よ い おす こ うし まった
長 老たちを呼び寄せ、 二アロンに言った、﹁あなたは雄の子牛の全きも
ざいさい と おひつじ まった はんさい と しゅ
のを罪祭のために取り、また雄羊の全きものを燔祭のために取って、主
まえ ひとびと い
の前にささげなさい。 三あなたはまたイスラエルの人々に言いなさい、
お ざいさい と さい まった こ うし こひつじ
﹃あなたがたは雄やぎを罪祭のために取り、また一歳の全き子牛と小羊
はんさい と しゅ まえ しゅうおんさい
とを燔祭のために取りなさい、 四また主の前にささげる酬 恩 祭のため
おうし おひつじ と あぶら ま そさい と しゅ
に雄牛と雄羊とを取り、また油を混ぜた素祭を取りなさい。主がきょう
あらわ かれ めい
あ な た が た に 現 れ た も う か ら で あ る﹄﹂。 五彼 ら は モ ー セ が 命 じ た も の
レビ記

かいけん まくや まえ たずさ かいしゅう ちか しゅ まえ た


を会見の幕屋の前に携えてきた。 会 衆がみな近づいて主の前に立った

31
い しゅ めい
ので、 六モーセは言った、
﹁これは主があなたがたに、せよと命じられた
しゅ えいこう あらわ
こ と で あ る。こ う し て 主 の 栄光 は あ な た が た に 現 れ る で あ ろ う﹂。 七
い さいだん ちか ざいさい
モーセはまたアロンに言った、﹁あなたは祭壇に近づき、あなたの罪祭と
はんさい たみ たみ
燔祭をささげて、あなたのため、また民のためにあがないをし、また民
そな もの かれ しゅ めい
の供え物をささげて、彼らのためにあがないをし、すべて主がお命じに
なったようにしなさい﹂。
さいだん ちか じぶん ざいさい こ うし
八そこでアロンは祭壇に近づき、自分のための罪祭の子牛をほふった。
こ ち かれ たずさ かれ
九そしてアロンの子たちは、その血を彼のもとに携えてきたので、彼は
ゆび ち ひた さいだん つの のこ ち さいだん そそ
指をその血に浸し、それを祭壇の角につけ、残りの血を祭壇のもとに注
ざいさい しぼう じんぞう かんぞう しょうよう さいだん うえ や しゅ
ぎ、 一〇また罪祭の脂肪と腎臓と肝臓の小 葉とを祭壇の上で焼いた。主
めい にく かわ しゅくえい そと
がモーセに命じられたとおりである。 一一またその肉と皮とは宿 営の外
ひ や す
で火をもって焼き捨てた。
かれ はんさい けもの こ ち かれ わた
一二 彼はまた燔祭の獣をほふり、アロンの子たちがその血を彼に渡した
レビ記

さいだん しゅうい そそ かれ はんさい


ので、これを祭壇の周囲に注ぎかけた。 一三彼らがまた燔祭のもの、すな

32
き わ あたま かれ わた かれ さいだん
わち、その切り分けたものと頭とを彼に渡したので、彼はこれを祭壇の
うえ や ないぞう あし あら さいだん うえ はんさい とも
上で焼いた。 一四またその内臓と足とを洗い、祭壇の上で燔祭と共にこ

れを焼いた。
かれ たみ そな もの たみ ざいさい
彼はまた民の供え物をささげた。すなわち、民のための罪祭のやぎ
一五
と まえ つみ
を取ってこれをほふり、前のようにこれを罪のためにささげた。 一六ま
はんさい さだ
た燔祭をささげた。すなわち、これを定めのようにささげた。 一七また
そさい ひとにぎ と あさ はんさい くわ
素祭をささげ、そのうちから一握りを取り、朝の燔祭に加えて、これを
さいだん うえ や
祭壇の上で焼いた。
かれ たみ しゅうおんさい ぎせい おうし おひつじ
一八 彼 は ま た 民 の た め に さ さ げ る 酬 恩 祭 の 犠牲 の 雄牛 と 雄羊 と を ほ ふ
こ ち かれ わた かれ さいだん しゅうい
り、アロンの子たちが、その血を彼に渡したので、彼はこれを祭壇の周囲
そそ おうし おひつじ しぼう あぶら お ないぞう
に注ぎかけた。 一九またその雄牛と雄羊との脂肪、すなわち、脂 尾、内臓
じんぞう かんぞう しょうよう しぼう かれ むね うえ
をおおうもの、腎臓、肝臓の小 葉。 二〇これらの脂肪を彼らはその胸の上
の たずさ かれ しぼう さいだん うえ や
に載せて携えてきたので、彼はその脂肪を祭壇の上で焼いた。 二一その
レビ記

むね みぎ しゅ まえ ゆ うご ようさい
胸と右のももとは、アロンが主の前に揺り動かして揺祭とした。モーセ

33
めい
が命じたとおりである。
たみ て かれ しゅくふく ざいさい はんさい
二二 ア ロ ン は 民 に む か っ て 手 を あ げ て、彼 ら を 祝 福 し、罪祭、燔祭、
しゅうおんさい おわ ふ かいけん まくや い
酬 恩 祭 を さ さ げ 終 っ て 降 り た。 二三モ ー セ と ア ロ ン は 会見 の 幕屋 に 入
で たみ しゅくふく しゅ えいこう たみ あらわ
り、また出てきて民を祝 福した。そして主の栄光はすべての民に現れ、
しゅ まえ ひ で さいだん うえ はんさい しぼう や たみ
二四 主の前から火が出て、祭壇の上の燔祭と脂肪とを焼きつくした。民
み よろこ ふ
はみな、これを見て喜びよばわり、そしてひれ伏した。
第一〇章
こ こうろ と ひ
一さてアロンの子ナダブとアビフとは、おのおのその香炉を取って火を
い くんこう うえ も ことび しゅ まえ
これに入れ、薫香をその上に盛って、異火を主の前にささげた。これは
しゅ めいれい はん しゅ まえ ひ で かれ や
主の命令に反することであったので、 二主の前から火が出て彼らを焼き
ほろ かれ しゅ まえ し とき い しゅ
滅ぼし、彼らは主の前に死んだ。 三その時モーセはアロンに言った、
﹁主
レビ記

おお ちか もの
は、こう仰せられた。すなわち﹃わたしは、わたしに近づく者のうちに、

34
せい しめ たみ まえ えいこう あらわ
わたしの聖なることを示し、すべての民の前に栄光を現すであろう﹄﹂。
もく
アロンは黙していた。
お じ こ よ
四モーセはアロンの叔父ウジエルの子ミシヤエルとエルザパンとを呼
よ かれ い ちかよ きょうだい せいじょ まえ
び寄せて彼らに言った、
﹁近寄って、あなたがたの兄 弟たちを聖所の前
しゅくえい そと はこ だ かれ ちかよ かれ ふく
から、宿 営の外に運び出しなさい﹂。 五彼らは近寄って、彼らをその服の
しゅくえい そと はこ だ い
まま宿 営の外に運び出し、モーセの言ったようにした。 六モーセはまた
こ い
アロンおよびその子エレアザルとイタマルとに言った、﹁あなたがたは
かみ け みだ いふく さ し
髪の毛を乱し、また衣服を裂いてはならない。あなたがたが死ぬことの
しゅ いか かいしゅう およ
ないため、また主の怒りが、すべての会 衆に及ぶことのないためであ
きょうだい ぜんか しゅ ひ や
る。ただし、あなたがたの兄 弟 イスラエルの全家は、主が火をもって焼
ほろ なげ し
き滅ぼしたもうたことを嘆いてもよい。 七また、あなたがたは死ぬこと
かいけん まくや いりぐち そと で
のないように、会見の幕屋の入口から外へ出てはならない。あなたがた
うえ しゅ そそ あぶら かれ ことば
の上に主の注ぎ油があるからである﹂。彼らはモーセの言葉のとおりに
レビ記

した。

35
しゅ い こ かいけん まくや
主はアロンに言われた、九﹁あなたも、あなたの子たちも会見の幕屋に

とき し しゅ こ さけ の
はいる時には、死ぬことのないように、ぶどう酒と濃い酒を飲んではな
よ よ なが まも さだ
らない。これはあなたがたが代々永く守るべき定めとしなければなら
せい ぞく けが
ない。 一〇これはあなたがたが聖なるものと俗なるもの、汚れたものと
きよ くべつ しゅ
清いものとの区別をすることができるため、 一一また主がモーセによっ
かた さだ ひとびと おし
て語られたすべての定めを、イスラエルの人々に教えることができるた
めである﹂。
のこ こ
一二 モーセはまたアロンおよびその残っている子エレアザルとイタマル
い しゅ かさい そさい のこ と
とに言った、﹁あなたがたは主の火祭のうちから素祭の残りを取り、パン
だね い さいだん た せい
種を入れずに、これを祭壇のかたわらで食べなさい。これはいと聖なる
もの しゅ かさい う ぶん
物である。 一三これは主の火祭のうちからあなたの受ける分、またあな
こ う ぶん せい ところ た
たの子たちの受ける分であるから、あなたがたはこれを聖なる所で食べ
めい
なければならない。わたしはこのように命じられたのである。 一四また
レビ記

ゆ うご むね むすめ
揺り動かした胸とささげたももとは、あなたとあなたのむすこ、娘たち

36
きよ ところ た ひとびと
がこれを清い所で食べなければならない。これはイスラエルの人々の
しゅうおんさい ぎせい なか ぶん こ ぶん あた
酬 恩 祭の犠牲の中からあなたの分、あなたの子たちの分として与えら
かれ ゆ うご むね
れるものだからである。 一五彼らはそのささげたももと揺り動かした胸
かさい しぼう とも たずさ しゅ まえ ゆ うご ようさい
とを、火祭の脂肪と共に携えてきて、これを主の前に揺り動かして揺祭
しゅ めい なが う
としなければならない。これは主がお命じになったように、長く受くべ
ぶん こ き
き分としてあなたと、あなたの子たちとに帰するであろう﹂。
ざいさい さが み
一六さてモーセは罪祭のやぎを、ていねいに捜したが、見よ、それがすで
や かれ のこ こ
に焼かれていたので、彼は残っているアロンの子エレアザルとイタマル
いか い ざいさい せい
とにむかい、怒って言った、 一七﹁あなたがたは、なぜ罪祭のものを聖な
ところ た せい もの
る所で食べなかったのか。これはいと聖なる物であって、あなたがたが
かいしゅう つみ お かれ しゅ まえ
会 衆の罪を負って、彼らのために主の前にあがないをするため、あなた
たま もの み ち せいじょ なか たずさ い
が た に 賜 わ っ た 物 で あ る。 一 八見 よ、そ の 血 は 聖所 の 中 に 携 え 入 れ な
にく めい かなら せい
かった。その肉はわたしが命じたように、あなたがたは必ずそれを聖な
レビ記

ところ た い み
る所で食べるべきであった﹂。 一九アロンはモーセに言った、
﹁見よ、きょ

37
かれ ざいさい はんさい しゅ まえ こと
う、彼らはその罪祭と燔祭とを主の前にささげたが、このような事がわ
のぞ ざいさい た しゅ
たしに臨んだ。もしわたしが、きょう罪祭のものを食べたとしたら、主
よ き よ
はこれを良しとせられたであろうか﹂。 二〇モーセはこれを聞いて良し
とした。
第一一章
しゅ い ひとびと い
主はまたモーセとアロンに言われた、 二﹁イスラエルの人々に言いな

ち けもの た
さい、﹃地にあるすべての獣のうち、あなたがたの食べることができる
どうぶつ つぎ けもの わ
動物は次のとおりである。 三 獣のうち、すべてひずめの分かれたもの、
まった き はんすう た
すなわち、ひずめの全く切れたもの、反芻するものは、これを食べるこ
はんすう わ
とができる。 四ただし、反芻するもの、またはひずめの分かれたものの
つぎ た はんすう
うち、次のものは食べてはならない。すなわち、らくだ、これは、反芻
レビ記

わ けが
するけれども、ひずめが分かれていないから、あなたがたには汚れたも

38
いわ はんすう わ
のである。 五岩たぬき、これは、反芻するけれども、ひずめが分かれて
けが の
いないから、あなたがたには汚れたものである。 六野うさぎ、これは、
はんすう わ けが
反芻するけれども、ひずめが分かれていないから、あなたがたには汚れ
ぶた わ まった き
たものである。 七豚、これは、ひずめが分かれており、ひずめが全く切
はんすう けが
れているけれども、反芻することをしないから、あなたがたには汚れた
にく た
ものである。 八あなたがたは、これらのものの肉を食べてはならない。
したい ふ けが
またその死体に触れてはならない。これらは、あなたがたには汚れたも
のである。
みず なか た
水の中にいるすべてのもののうち、あなたがたの食べることができる

つぎ うみ かわ みず なか
ものは次のとおりである。すなわち、海でも、川でも、すべて水の中に

いるもので、ひれと、うろこのあるものは、これを食べることができる。
みず むら みず なか い もの
一〇 すべて水に群がるもの、またすべての水の中にいる生き物のうち、す
うみ かわ
なわち、すべて海、また川にいて、ひれとうろこのないものは、あなた
レビ記

い い
がたに忌むべきものである。 一一これらはあなたがたに忌むべきもので

39
にく た したい い
あるから、あなたがたはその肉を食べてはならない。またその死体は忌
みず なか
むべきものとしなければならない。 一二すべて水の中にいて、ひれも、う

ろこもないものは、あなたがたに忌むべきものである。
とり つぎ い た
一三 鳥のうち、次のものは、あなたがたに忌むべきものとして、食べては

ならない。それらは忌むべきものである。すなわち、はげわし、ひげは
るい るい
げわし、みさご、 一四とび、はやぶさの類、 一五もろもろのからすの類、 一
るい
だちょう、よたか、かもめ、たかの類、 一七ふくろう、う、みみずく、

るい
一八 むらさきばん、ペリカン、はげたか、 一九こうのとり、さぎの類、や
つがしら、こうもり。
はね あし ある は
二〇 また羽があって四つの足で歩くすべての這うものは、あなたがたに
い はね あし ある
忌むべきものである。 二一ただし、羽があって四つの足で歩くすべての
は あし は あし ち うえ
這うもののうち、その足のうえに、跳ね足があり、それで地の上をはね
た つぎ た
るものは食べることができる。 二二すなわち、そのうち次のものは食べ
レビ記

いじゅう るい へんれき るい おお るい しょう


ることができる。移住いなごの類、遍歴いなごの類、大いなごの類、 小

40
るい はね あし ある
いなごの類である。 二三しかし、羽があって四つの足で歩く、そのほかの
は い
すべての這うものは、あなたがたに忌むべきものである。
つぎ ばあい けが
あなたがたは次の場合に汚れたものとなる。すなわち、すべてこれ
二四
したい ふ もの ゆう けが
らのものの死体に触れる者は夕まで汚れる。 二五すべてこれらのものの
したい はこ もの いふく あら かれ ゆう けが
死体を運ぶ者は、その衣服を洗わなければならない。彼は夕まで汚れ
わ けもの き め き
る。 二六すべて、ひずめの分かれた獣で、その切れ目の切れていないも
はんすう けが
の、また、反芻することをしないものは、あなたがたに汚れたものであ
ふ もの けが あし ある けもの
る。すべて、これに触れる者は汚れる。 二七すべて四つの足で歩く獣の
あし うら ある みな けが
うち、その足の裏のふくらみで歩くものは皆あなたがたに汚れたもので
したい ふ もの ゆう けが したい はこ
ある。すべてその死体に触れる者は夕まで汚れる。 二八その死体を運ぶ
もの いふく あら かれ ゆう けが
者は、その衣服を洗わなければならない。彼は夕まで汚れる。これは、
けが
あなたがたに汚れたものである。
ち は つぎ けが
地にはう這うもののうち、次のものはあなたがたに汚れたものであ
二九
レビ記

お るい
る。すなわち、もぐらねずみ、とびねずみ、とげ尾とかげの類、 三〇やも

41
だい は
り、大とかげ、とかげ、すなとかげ、カメレオン。 三一もろもろの這うも
けが
ののうち、これらはあなたがたに汚れたものである。すべてそれらのも
し ふ もの ゆう けが
のが死んで、それに触れる者は夕まで汚れる。 三二またそれらのものが
し お もの けが き うつわ いふく
死んで、それが落ちかかった物はすべて汚れる。木の器であれ、衣服で
かわ ふくろ しごと つか うつわ みず い
あれ、皮であれ、 袋であれ、およそ仕事に使う器はそれを水に入れなけ
ゆう けが きよ
ればならない。それは夕まで汚れているが、そののち清くなる。 三三ま
つち うつわ なか お なか みな
たそれらのものが、土の器の中に落ちたならば、その中にあるものは皆
けが うつわ
汚れる。あなたがたはその器をこわさなければならない。 三四またすべ
なか しょくもつ すいぶん けが
てその中にある食 物で、水分のあるものは汚れる。またすべてそのよ
うつわ なか の もの みなけが したい お
うな器の中にある飲み物も皆汚れる。 三五またそれらのものの死体が落
もの けが てんぴ
ちかかったならば、その物はすべて汚れる。天火であれ、かまどであれ、
けが
それをこわさなければならない。これらは汚れたもので、あなたがたに
けが いずみ みず あつ みず けが
汚れたものとなる。 三六ただし、泉、あるいは水の集まった水たまりは汚
レビ記

したい ふ もの けが
れ な い。し か し、そ の 死体 に 触 れ る 者 は 汚 れ る。 三 七そ れ ら の も の の

42
したい たね うえ お けが たね うえ
死体が、まく種の上に落ちても、それは汚れない。 三八ただし、種の上に
みず うえ したい お
水がかかっていて、その上にそれらのものの死体が、落ちるならば、そ
けが
れはあなたがたに汚れたものとなる。
た けもの し とき したい ふ もの ゆう けが
三九あなたがたの食べる獣が死んだ時、その死体に触れる者は夕まで汚
したい た もの いふく あら
れ る。 四〇そ の 死体 を 食 べ る 者 は、そ の 衣服 を 洗 わ な け れ ば な ら な い。
ゆう けが したい はこ もの いふく あら
夕まで汚れる。その死体を運ぶ者も、その衣服を洗わなければならな
ゆう けが
い。夕まで汚れる。
ち は い た
四一すべて地にはう這うものは忌むべきものである。これを食べてはな
はら い あし ある おお
らない。 四二すべて腹ばい行くもの、四つ足で歩くもの、あるいは多くの
あし ち は
足をもつもの、すなわち、すべて地にはう這うものは、あなたがたはこ
た い
れを食べてはならない。それらは忌むべきものだからである。 四三あな
は み い
たがたはすべて這うものによって、あなたがたの身を忌むべきものとし
み けが けが
てはならない。また、これをもって身を汚し、あるいはこれによって汚
レビ記

かみ しゅ
されてはならない。 四四わたしはあなたがたの神、主であるから、あなた

43
せいべつ せい もの せい
がたはおのれを聖別し、聖なる者とならなければならない。わたしは聖
もの ち は み けが
なる者である。地にはう這うものによって、あなたがたの身を汚しては
かみ
ならない。 四五わたしはあなたがたの神となるため、あなたがたをエジ
くに みちび のぼ しゅ せい もの
プトの国から導き上った主である。わたしは聖なる者であるから、あな
せい もの
たがたは聖なる者とならなければならない﹄﹂。
けもの とり みず なか うご い もの ち は
四六 これは獣と鳥と、水の中に動くすべての生き物と、地に這うすべての
かん けが きよ た い
ものに関するおきてであって、四七汚れたものと清いもの、食べられる生
もの た い もの くべつ
き物と、食べられない生き物とを区別するものである。
第一二章
しゅ い ひとびと い おんな
一主はまたモーセに言われた、 二﹁イスラエルの人々に言いなさい、
﹃女
み おとこ こ う なぬか けが つき
がもし身ごもって男の子を産めば、七日のあいだ汚れる。すなわち、月
レビ記

ひ けが か め こ まえ かわ
の さ わ り の 日 か ず ほ ど 汚 れ る で あ ろ う。 三八 日目 に は そ の 子 の 前 の 皮

44
かつれい ほどこ おんな ち きよ にち
に割礼を施さなければならない。 四その女はなお、血の清めに三十三日
へ きよ ひ み せい もの ふ
を経なければならない。その清めの日の満ちるまでは、聖なる物に触れ
せい ところ おんな こ
て は な ら な い。ま た 聖 な る 所 に は い っ て は な ら な い。 五も し 女 の 子 を
う しゅうかん つき おな けが おんな ち
産めば、二 週 間、月のさわりと同じように汚れる。その女はなお、血の
きよ にち へ
清めに六十六日を経なければならない。
おとこ こ おんな こ きよ ひ み おんな はんさい
六 男の子または女の子についての清めの日が満ちるとき、 女は燔祭の
さい こひつじ ざいさい いえ やま かいけん
ために一歳の小羊、罪祭のために家ばとのひな、あるいは山ばとを、会見
まくや いりぐち さいし たずさ さいし
の幕屋の入口の、祭司のもとに、 携えてこなければならない。 七祭司は
しゅ まえ おんな
これを主の前にささげて、その女のために、あがないをしなければなら
おんな しゅっけつ けが きよ おとこ こ
ない。こうして女はその出 血の汚れが清まるであろう。これは男の子
おんな こ う おんな おんな こひつじ
ま た は 女 の 子 を 産 ん だ 女 の た め の お き て で あ る。 八も し そ の 女 が 小羊
て とど やま わ いえ わ と
に手の届かないときは、山ばと二羽か、家ばとのひな二羽かを取って、一
はんさい ざいさい さいし おんな
つを燔祭、一つを罪祭とし、祭司はその女のために、あがないをしなけ
レビ記

おんな きよ
ればならない。こうして女は清まるであろう﹄﹂。

45
第一三章
しゅ い ひと み かわ しゅ
一主はまたモーセとアロンに言われた、二﹁人がその身の皮に腫、あるい
ふきでもの ひか ところ み かわ びょう かんぶ
は吹出物、あるいは光る所ができ、これがその身の皮にらい病の患部の
ひと さいし さいし こ
ようになるならば、その人を祭司アロンまたは、祭司なるアロンの子た
つ い さいし み
ちのひとりのもとに、連れて行かなければならない。 三祭司はその身の
かわ かんぶ み かんぶ け しろ かわ かんぶ み かわ
皮の患部を見、その患部の毛がもし白く変り、かつ患部が、その身の皮
ふか み びょう かんぶ さいし かれ み
よりも深く見えるならば、それはらい病の患部である。祭司は彼を見
けが もの み かわ ひか
て、これを汚れた者としなければならない。 四もしまたその身の皮の光
ところ しろ かわ ふか み け しろ かわ
る所が白くて、皮よりも深く見えず、また毛も白く変っていないならば、
さいし かんじゃ なぬか と お なぬか め
祭司 は そ の 患者 を 七日 の あ い だ 留 め 置 か な け れ ば な ら な い。 五七日目
さいし み かんぶ ようす かわ かんぶ かわ ひろ
に祭司はこれを見て、もし患部の様子に変りがなく、また患部が皮に広
さいし ひと なぬか と お
がっていないならば、祭司はその人をさらに七日のあいだ留め置かなけ
レビ記

なぬか め さいし ふたた ひと み かんぶ うす


れ ば な ら な い。 六七日目 に 祭司 は 再 び そ の 人 を 見 て、患部 が も し 薄 ら

46
かんぶ かわ ひろ さいし きよ もの
ぎ、また患部が皮に広がっていないならば、祭司はこれを清い者としな
ふきでもの ひと いふく あら
ければならない。これは吹出物である。その人は衣服を洗わなければ
きよ ひと さいし み
ならない。そして清くなるであろう。 七しかし、その人が祭司に見せて
きよ もの のち ふきでもの かわ ひろ ふたた さいし
清い者とされた後に、その吹出物が皮に広くひろがるならば、再び祭司
み み さいし み ふきでもの
にその身を見せなければならない。 八祭司はこれを見て、その吹出物が
かわ ひろ さいし ひと けが もの
皮に広がっているならば、祭司はその人を汚れた者としなければならな
びょう
い。これはらい病である。
ひと びょう かんぶ ひと さいし つ い
もし人にらい病の患部があるならば、その人を祭司のもとに連れて行

さいし み かわ しろ しゅ
かなければならない。 一〇祭司がこれを見て、その皮に白い腫があり、そ
け しろ かわ しゅ い なまにく み ふる
の毛も白く変り、かつその腫に生きた生肉が見えるならば、一一これは古
びょう み かわ さいし ひと けが もの
いらい病がその身の皮にあるのであるから、祭司はその人を汚れた者と
ひと けが もの と お
しなければならない。その人は汚れた者であるから、これを留め置くに
およ びょう ひろ かわ で びょう かんじゃ かわ
及ばない。 一二もしらい病が広く皮に出て、そのらい病が、その患者の皮
レビ記

あたま あし さいし み およ
を頭から足まで、ことごとくおおい、祭司の見るところすべてに及んで

47
さいし み びょう み
おれば、一三祭司はこれを見、もしらい病がその身をことごとくおおって
かんじゃ きよ もの しろ
おれば、その患者を清い者としなければならない。それはことごとく白
かわ かれ きよ もの なまにく ひと あらわ
く変ったから、彼は清い者である。 一四しかし、もし生肉がその人に現れ
けが もの さいし なまにく み ひと けが
ておれば、汚れた者である。 一五祭司はその生肉を見て、その人を汚れた
もの なまにく けが びょう
者としなければならない。生肉は汚れたものであって、それはらい病で
なまにく ふたた しろ かわ ひと さいし
ある。 一六もしまたその生肉が再び白く変るならば、その人は祭司のも
い さいし ひと み かんぶ
とに行かなければならない。 一七祭司はその人を見て、もしその患部が
しろ かわ さいし かんじゃ きよ もの
白く変っておれば、祭司はその患者を清い者としなければならない。そ
ひと きよ もの
の人は清い者である。
み かわ はれもの なお はれもの ば しょ しろ しゅ
また身の皮に腫物があったが、直って、一九その腫物の場所に白い腫、
一八
あか しろ ひか ところ さいし み
または赤みをおびた白い光る所があれば、これを祭司に見せなければな
さいし み かわ ひく み け しろ
らない。 二〇祭司はこれを見て、もし皮よりも低く見え、その毛が白く
かわ さいし ひと けが もの
変っていれば、祭司はその人を汚れた者としなければならない。それは
レビ記

はれもの た びょう かんぶ さいし み


腫物に起ったらい病の患部だからである。 二一しかし、祭司がこれを見

48
ところ しろ け かわ ひく ところ
て、もしその所に白い毛がなく、また皮よりも低い所がなく、かえって
うす さいし ひと なぬか と お
薄らいでいるならば、祭司はその人を七日のあいだ留め置かなければな
かわ ひろ さいし ひと
らない。 二二そしてもし皮に広くひろがっているならば、祭司はその人
けが もの かんぶ
を汚れた者としなければならない。それは患部だからである。 二三しか
ひか ところ ところ ひろ はれもの
し、その光る所がもしその所にとどまって広がらなければ、それは腫物
あと さいし ひと きよ もの
の跡である。祭司はその人を清い者としなければならない。
み かわ い にく あか
また身の皮にやけどがあって、そのやけどの生きた肉がもし赤みを
二四
しろ しろ ひか ところ さいし み
おびた白、または、ただ白くて光る所となるならば、 二五祭司はこれを見
ひか ところ け しろ かわ
なければならない。そしてもし、その光る所にある毛が白く変って、そ
かわ ふか み しょう びょう
こが皮よりも深く見えるならば、これはやけどに生じたらい病である。
さいし ひと けが もの びょう かんぶ
祭司はその人を汚れた者としなければならない。これはらい病の患部
さいし み ひか ところ しろ け
だからである。 二六けれども祭司がこれを見て、その光る所に白い毛が
かわ ひく ところ うす さいし
なく、また皮よりも低い所がなく、かえって薄らいでいるならば、祭司
レビ記

ひと なぬか と お なぬか め さいし かれ み


はその人を七日のあいだ留め置き、 二七七日目に祭司は彼を見なければ

49
かわ ひろ さいし ひと けが
ならない。もし皮に広くひろがっているならば、祭司はその人を汚れた
もの びょう かんぶ
者としなければならない。これはらい病の患部だからである。 二八もし
ひか ところ ところ かわ ひろ うす
その光る所が、その所にとどまって、皮に広がらずに、かえって薄らい
しゅ さいし ひと きよ もの
でいるならば、これはやけどの腫である。祭司はその人を清い者としな
あと
ければならない。これはやけどの跡だからである。
おとこ おんな あたま かんぶ しょう さいし
二九 男あるいは女がもし、頭またはあごに患部が生じたならば、三〇祭司
かんぶ み かわ ふか み
はその患部を見なければならない。もしそれが皮よりも深く見え、また
きいろ ほそ け さいし ひと けが もの
そこに黄色の細い毛があるならば、祭司はその人を汚れた者としなけれ
あたま びょう
ばならない。それはかいせんであって、 頭またはあごのらい病だから
さいし かんぶ み かわ
である。 三一また祭司がそのかいせんの患部を見て、もしそれが皮より
ふか み くろ け さいし
も深く見えず、またそこに黒い毛がないならば、祭司はそのかいせんの
かんじゃ なぬか と お なぬか め さいし かんぶ み
患者を七日のあいだ留め置き、 三二七日目に祭司はその患部を見なけれ
ひろ きいろ け
ばならない。そのかいせんがもし広がらず、またそこに黄色の毛がな
レビ記

かわ ふか み ひと み
く、そのかいせんが皮よりも深く見えないならば、三三その人は身をそら

50
さいし
なければならない。ただし、そのかいせんをそってはならない。祭司は
もの なぬか と お なぬか め
そ の か い せ ん の あ る 者 を さ ら に 七日 の あ い だ 留 め 置 き、 三 四七日目 に
さいし み かわ
祭司はそのかいせんを見なければならない。もしそのかいせんが皮に
ひろ かわ ふか み さいし ひと きよ
広がらず、またそれが皮よりも深く見えないならば、祭司はその人を清
もの ひと いふく あら
い者としなければならない。その人はまたその衣服を洗わなければな
きよ かれ きよ もの
らない。そして清くなるであろう。 三五しかし、もし彼が清い者とされ
のち かわ ひろ さいし ひと
た後に、そのかいせんが、皮に広くひろがるならば、 三六祭司はその人を
み かわ ひろ
見 な け れ ば な ら な い。も し そ の か い せ ん が 皮 に 広 が っ て い る な ら ば、
さいし きいろ け さが ひと けが もの
祭司は黄色の毛を捜すまでもなく、その人は汚れた者である。 三七しか
ようす かわ くろ け しょう
し、もしそのかいせんの様子に変りなく、そこに黒い毛が生じているな
なお ひと きよ さいし ひと きよ
らば、そのかいせんは直ったので、その人は清い。祭司はその人を清い
もの
者としなければならない。
おとこ おんな み かわ ひか ところ しろ ひか ところ
三八 また男あるいは女がもし、その身の皮に光る所、すなわち白い光る所
レビ記

さいし み み かわ
があるならば、 三九祭司はこれを見なければならない。もしその身の皮

51
ひか ところ にぶ しろ はく かわ しょう
の光る所が、鈍い白であるならば、これはただ白せんがその皮に生じた
ひと きよ
のであって、その人は清い。
ひと あたま け ぬ お きよ
人がもしその頭から毛が抜け落ちても、それがはげならば清い。 四一
四〇
ひたい け ぬ お ひたい きよ
もしその額の毛が抜け落ちても、それが額のはげならば清い。 四二けれ
あたま ひたい あか しろ かんぶ
ども、もしそのはげ頭または、はげ額に赤みをおびた白い患部があるな
あたま ひたい びょう はっ
らば、それはそのはげ頭または、はげ額にらい病が発したのである。 四三
さいし み あたま ひたい
祭司はこれを見なければならない。もしそのはげ頭または、はげ額の
かんぶ しゅ しろ あか み かわ びょう
患部の腫が白く赤みをおびて、身の皮にらい病があらわれているなら
ひと びょう おか もの けが もの さいし
ば、四四その人はらい病に冒された者であって、汚れた者である。祭司は
ひと たし けが もの かんぶ あたま
その人を確かに汚れた者としなければならない。患部が頭にあるから
である。
かんぶ びょうにん いふく さ あたま あらわ くち
患部のあるらい病 人は、その衣服を裂き、その頭を現し、その口ひ
四五
けが もの けが もの よ
げをおおって﹃汚れた者、汚れた者﹄と呼ばわらなければならない。 四六
レビ記

かんぶ み ひ あいだ けが もの ひと
その患部が身にある日の間は汚れた者としなければならない。その人

52
けが もの はな す
は汚れた者であるから、離れて住まなければならない。すなわち、その
しゅくえい そと
すまいは宿 営の外でなければならない。
いふく びょう かんぶ しょう とき ようもう いふく
四七 また衣服にらい病の患部が生じた時は、それが羊毛の衣服であれ、
あ ま いふく あ ま ようもう たていと よこいと
亜麻の衣服であれ、四八あるいは亜麻または羊毛の縦糸であれ、横糸であ
かわ かわ つく もの
れ、あるいは皮であれ、皮で作ったどのような物であれ、 四九もしその
いふく かわ たていと よこいと かわ つく
衣服あるいは皮、あるいは縦糸、あるいは横糸、あるいは皮で作ったど
もの かんぶ あお あか
のような物であれ、その患部が青みをおびているか、あるいは赤みをお
びょう かんぶ さいし み
びているならば、これはらい病の患部である。これを祭司に見せなけれ
さいし かんぶ み かんぶ もの なぬか
ばならない。 五〇祭司はその患部を見て、その患部のある物を七日のあ
と お なぬか め かんぶ み いふく たていと
いだ留め置き、 五一七日目に患部を見て、もしその衣服、あるいは縦糸、
よこいと かわ もち かわ
あるいは横糸、あるいは皮、またどのように用いられている皮であれ、
かんぶ ひろ かんぶ あくせい びょう
患部が広がっているならば、その患部は悪性のらい病であって、それは
けが もの かれ かんぶ いふく ようもう
汚れた物である。 五二彼はその患部のある衣服、あるいは羊毛、または
レビ記

あ ま たていと よこいと かわ つく もの や
亜麻の縦糸、または横糸、あるいはすべて皮で作った物を焼かなければ

53
あくせい びょう もの ひ や
ならない。これは悪性のらい病であるから、その物を火で焼かなければ
ならない。
さいし み かんぶ いふく たていと
五三 しかし、祭司がこれを見て、もし患部がその衣服、あるいは縦糸、あ
よこいと かわ つく もの ひろ
るいは横糸、あるいはすべて皮で作った物に広がっていないならば、 五四
さいし めい かんぶ もの あら なぬか あいだ と
祭司は命じて、その患部のある物を洗わせ、さらに七日の間これを留め
お かんぶ あら のち さいし
置かなければならない。 五五そしてその患部を洗った後、祭司はそれを
み かんぶ いろ かわ かんぶ ひろ けが
見て、もし患部の色が変らなければ、患部が広がらなくても、それは汚
もの ひょう うら くさ
れた物である。それが表にあっても裏にあっても腐れであるから、それ
ひ や
を火で焼かなければならない。
さいし み あら のち かんぶ うす
五六 しかし、祭司がこれを見て、それを洗った後に、その患部が薄らいだ
いふく かわ たていと よこいと
ならば、その衣服、あるいは皮、あるいは縦糸、あるいは横糸から、そ
き と いふく
れを切り取らなければならない。 五七しかし、なおその衣服、あるいは
たていと よこいと かわ つく もの あらわ
縦糸、あるいは横糸、あるいはすべて皮で作った物にそれが現れれば、そ
レビ記

さいはつ かんぶ もの ひ や
れは再発したのである。その患部のある物を火で焼かなければならな

54
あら いふく たていと よこいと
い。 五八また洗った衣服、あるいは縦糸、あるいは横糸、あるいはすべて
かわ つく もの かんぶ き さ ふたた あら
皮で作った物から、患部が消え去るならば、再びそれを洗わなければな
きよ
らない。そうすれば清くなるであろう﹂。
ようもう あ ま いふく たていと よこいと
五九 これは羊毛または亜麻の衣服、あるいは縦糸、あるいは横糸、あるい
かわ つく もの しょう びょう かんぶ きよ もの
はすべて皮で作った物に生じるらい病の患部について、それを清い物と
けが もの
し、または汚れた物とするためのおきてである。
第一四章
しゅ い びょうにん きよ もの とき
主はまたモーセに言われた、 二﹁らい病 人が清い者とされる時のおき

つぎ ひと さいし つ い
ては次のとおりである。すなわち、その人を祭司のもとに連れて行き、三
さいし しゅくえい そと で い ひと み びょう かんぶ
祭司は宿 営の外に出て行って、その人を見、もしらい病の患部がいえて
さいし めい きよ もの い きよ
いるならば、 四祭司は命じてその清められる者のために、生きている清
レビ記

ことり わ こうはく き ひ いと と さいし


い小鳥二羽と、香柏の木と、緋の糸と、ヒソプとを取ってこさせ、五祭司

55
めい ことり わ なが みず も つち うつわ うえ ころ
はまた命じて、その小鳥の一羽を、流れ水を盛った土の器の上で殺させ、
い ことり こうはく き ひ いと とも と
六そして生きている小鳥を、香柏の木と、緋の糸と、ヒソプと共に取っ
なが みず も つち うつわ うえ ころ ことり ち い
て、これをかの流れ水を盛った土の器の上で殺した小鳥の血に、その生
ことり とも ひた びょう きよ もの そそ
きている小鳥と共に浸し、 七これをらい病から清められる者に七たび注
ひと きよ もの い ことり の はな
いで、その人を清い者とし、その生きている小鳥は野に放たなければな
きよ もの いふく あら け おと
らない。 八清められる者はその衣服を洗い、毛をことごとくそり落し、
みず み きよ のち しゅくえい
水に身をすすいで清くなり、その後、宿 営にはいることができる。ただ
なぬか あいだ てんまく そと なぬか め
し 七日 の 間 は そ の 天幕 の 外 に い な け れ ば な ら な い。 九そ し て 七日目 に
け あたま け
毛をことごとくそらなければならない。 頭の毛も、ひげも、まゆも、こ
かれ いふく あら みず み
とごとくそらなければならない。彼はその衣服を洗い、水に身をすすい
きよ
で清くなるであろう。
か め ひと おす こひつじ まった とう さい めす こひつじ まった
一〇 八日目にその人は雄の小羊の全きもの二頭と、一歳の雌の小羊の全
とう と むぎこ ぶん あぶら ま そさい あぶら
きもの一頭とを取り、また麦粉十分の三エパに油を混ぜた素祭と、油 一
レビ記

と きよ さいし きよ ひと
ログとを取らなければならない。 一一清めをなす祭司は、清められる人

56
もの かいけん まくや いりぐち しゅ まえ お さいし
とこれらの物とを、会見の幕屋の入口で主の前に置き、 一二祭司は、かの
おす こひつじ とう と あぶら とも けんさい
雄の小羊一頭を取って、これを一ログの油と共に愆祭としてささげ、ま
しゅ まえ ゆ うご ようさい おす
たこれを主の前に揺り動かして揺祭としなければならない。 一三この雄
こひつじ ざいさい はんさい ば しょ せい ところ
の小羊は罪祭および燔祭をほふる場所、すなわち聖なる所で、これをほ
けんさい ざいさい おな さいし き
ふらなければならない。愆祭は罪祭と同じく、祭司に帰するものであっ
せい もの さいし けんさい ち と
て、いと聖なる物である。 一四そして祭司はその愆祭の血を取り、これを
きよ もの みぎ みみ みぎ て おやゆび みぎ あし おやゆび
清められる者の右の耳たぶと、右の手の親指と、右の足の親指とにつけ
さいし あぶら と じぶん
なければならない。 一五祭司はまた一ログの油を取って、これを自分の
ひだり て そそ さいし みぎ ゆび ひだり て あぶら
左の手のひらに注ぎ、 一六そして祭司は右の指を左の手のひらにある油
ひた ゆび あぶら しゅ まえ そそ
に浸し、その指をもって、その油を七たび主の前に注がなければならな
さいし て あぶら のこ きよ もの みぎ みみ
い。 一七祭司は手のひらにある油の残りを、清められる者の右の耳たぶ
みぎ て おやゆび みぎ あし おやゆび けんさい ち うえ
と、右の手の親指と、右の足の親指とに、さきにつけた愆祭の血の上に
さいし て のこ あぶら
つけなければならない。 一八そして祭司は手のひらになお残っている油
レビ記

きよ もの あたま しゅ まえ ひと
を、清められる者の頭につけ、主の前で、その人のためにあがないをし

57
さいし ざいさい けが きよ
なければならない。 一九また祭司は罪祭をささげて、汚れのゆえに、清め
もの のち はんさい
られねばならぬ者のためにあがないをし、その後、燔祭のものをほふら
さいし はんさい そさい さいだん うえ
な け れ ば な ら な い。 二 〇そ し て 祭司 は 燔祭 と 素祭 と を 祭壇 の 上 に さ さ
ひと ひと
げ、その人のために、あがないをしなければならない。こうしてその人
きよ
は清くなるであろう。
ひと まず て とど とき じぶん
二一その人がもし貧しくて、それに手の届かない時は、自分のあがないの
ゆ うご けんさい おす こひつじ とう と そさい あぶら
ために揺り動かす愆祭として、雄の小羊一頭を取り、また素祭として油
ま むぎこ ぶん あぶら と て
を混ぜた麦粉十分の一エパと、 油 一ログとを取り、 二二さらにその手の
とど やま わ いえ わ と
届く山ばと二羽、または家ばとのひな二羽を取らなければならない。そ
ざいさい た はんさい か め
の一つは罪祭のため、他の一つは燔祭のためである。 二三そして八日目
きよ かいけん まくや いりぐち さいし しゅ まえ
に、その清めのために会見の幕屋の入口におる祭司のもと、主の前にこ
たずさ い さいし けんさい おす こひつじ
れ を 携 え て 行 か な け れ ば な ら な い。 二四祭司 は そ の 愆祭 の 雄 の 小羊 と、
あぶら と しゅ まえ ゆ うご ようさい
一ログの油とを取り、これを主の前に揺り動かして揺祭としなければな
レビ記

さいし けんさい おす こひつじ けんさい ち


ら な い。 二 五そ し て 祭司 は 愆祭 の 雄 の 小羊 を ほ ふ り、そ の 愆祭 の 血 を

58
と きよ もの みぎ みみ みぎ て おやゆび みぎ あし
取って、これを清められる者の右の耳たぶと、右の手の親指と、右の足
おやゆび さいし あぶら じぶん ひだり
の親指とにつけなければならない。 二六また祭司はその油を自分の左の
て そそ さいし みぎ ゆび ひだり て
手のひらに注ぎ、 二七祭司はその右の指をもって、 左の手のひらにある
あぶら しゅ まえ そそ さいし て
油を、七たび主の前に注がなければならない。 二八また祭司はその手の
あぶら きよ もの みぎ みみ みぎ て おやゆび みぎ
ひらにある油を、清められる者の右の耳たぶと、右の手の親指と、右の
あし おやゆび けんさい ち
足の親指とに、すなわち、愆祭の血をつけたところにつけなければなら
さいし て のこ あぶら きよ もの あたま
ない。 二九また祭司は手のひらに残っている油を、清められる者の頭に
しゅ まえ ひと
つけ、主の前で、その人のために、あがないをしなければならない。 三〇
ひと て とど やま わ いえ わ
その人はその手の届く山ばと一羽、または家ばとのひな一羽をささげな
て とど ざいさい た
ければならない。 三一すなわち、その手の届くものの一つを罪祭とし、他
はんさい そさい とも
の 一 つ を 燔祭 と し て 素祭 と 共 に さ さ げ な け れ ば な ら な い。こ う し て
さいし きよ もの しゅ まえ
祭司は清められる者のために、主の前にあがないをするであろう。 三二
びょう かんじゃ きよ ひつよう て とど もの
これはらい病の患者で、その清めに必要なものに、手の届かない者のた
レビ記

めのおきてである﹂。

59
しゅ い しょゆう
主はまたモーセとアロンに言われた、 三四﹁あなたがたに所有として
三三
あた ち とき しょゆう ち いえ
与えるカナンの地に、あなたがたがはいる時、その所有の地において、家
びょう かんぶ しょう いえ も
にわたしがらい病の患部を生じさせることがあれば、 三五その家の持ち
ぬし さいし つ かんぶ いえ
主はきて、祭司に告げ、
﹃患部のようなものが、わたしの家にあります﹄
い さいし めい さいし かんぶ み い
と言わなければならない。 三六祭司は命じて、祭司がその患部を見に行
まえ いえ いえ もの けが
く前に、その家をあけさせ、その家にあるすべての物が汚されないよう
のち さいし いえ み
にし、その後、祭司は、はいってその家を見なければならない。 三七その
かんぶ み かんぶ いえ かべ あお あか
患部を見て、もしその患部が家の壁にあって、青または赤のくぼみをも
かべ ひく み さいし いえ で いえ
ち、それが壁よりも低く見えるならば、 三八祭司はその家を出て、家の
いりぐち なぬか あいだ いえ へいさ さいし
入口にいたり、七日の間その家を閉鎖しなければならない。 三九祭司は
なぬか め み かんぶ いえ かべ ひろ
七日目に、またきてそれを見、その患部がもし家の壁に広がっているな
さいし めい かんぶ いし と だ まち そと けが
らば、 四〇祭司は命じて、その患部のある石を取り出し、町の外の汚れた
もの す ば しょ す いえ うちがわ けず
物を捨てる場所に捨てさせ、四一またその家の内側のまわりを削らせ、そ
レビ記

けず まち そと けが もの す ば しょ す
の削ったしっくいを町の外の汚れた物を捨てる場所に捨てさせ、 四二ほ

60
いし と もと いし い
かの石を取って、元の石のところに入れさせ、またほかのしっくいを
と いえ ぬ
取って、家を塗らせなければならない。
いし と だ いえ けず ぬ のち かんぶ
四三 このように石を取り出し、家を削り、塗りかえた後に、その患部がも
ふたた いえ で さいし み かんぶ
し再び家に出るならば、 四四祭司はまたきて見なければならない。患部
いえ ひろ いえ あくせい びょう
がもし家に広がっているならば、これは家にある悪性のらい病であっ
けが もの いえ いし き
て、これは汚れた物である。 四五その家は、こぼち、その石、その木、そ
いえ まち そと けが もの す ば しょ はこ だ
の家のしっくいは、ことごとく町の外の汚れた物を捨てる場所に運び出
いえ へいさ ひ あいだ
さなければならない。 四六その家が閉鎖されている日の間に、これには
もの ゆう けが いえ ね もの いふく あら
いる者は夕まで汚れるであろう。 四七その家に寝る者はその衣服を洗わ
いえ しょく もの いふく あら
なければならない。その家で食する者も、その衣服を洗わなければなら
ない。
さいし み いえ ぬ のち かんぶ
四八 しかし、祭司がはいって見て、もし家を塗りかえた後に、その患部が
いえ ひろ かんぶ さいし
家に広がっていなければ、これはその患部がいえたのであるから、祭司
レビ記

いえ きよ かれ いえ きよ
はその家を清いものとしなければならない。 四九また彼はその家を清め

61
ことり わ こうはく き ひ いと と
るために、小鳥二羽と、香柏の木と、緋の糸と、ヒソプとを取り、 五〇そ
ことり わ なが みず も つち うつわ うえ ころ こうはく き
の小鳥の一羽を流れ水を盛った土の器の上で殺し、五一香柏の木と、ヒソ
ひ いと い ことり と ころ ことり ち なが
プと、緋の糸と、生きている小鳥とを取って、その殺した小鳥の血と流
みず ひた いえ そそ
れ 水 に 浸 し、こ れ を 七 た び 家 に 注 が な け れ ば な ら な い。 五 二こ う し て
さいし ことり ち なが みず い ことり こうはく き
祭司は小鳥の血と流れ水と、生きている小鳥と、香柏の木と、ヒソプと、
ひ いと いえ きよ い ことり まち そと の はな
緋の糸とをもって家を清め、 五三その生きている小鳥は町の外の野に放
いえ
して、その家のために、あがないをしなければならない。こうして、そ
きよ
れは清くなるであろう﹂。
びょう かんぶ いふく いえ
五四 これはらい病のすべての患部、かいせん、 五五および衣服と家のらい
びょう しゅ ふきでもの ひか ところ かん
病、 五六ならびに腫と、吹出物と、光る所とに関するおきてであって、 五
けが きよ おし
七いつそれが汚れているか、いつそれが清いかを教えるものである。こ
びょう かん
れがらい病に関するおきてである。
レビ記

62
第一五章
しゅ い ひとびと い
主はまた、モーセとアロンに言われた、二﹁イスラエルの人々に言いな

にく りゅうしゅつ りゅうしゅつ けが
さい、
﹃だれでもその肉に流 出があれば、その流 出は汚れである。 三そ
りゅうしゅつ けが つぎ にく りゅうしゅつ つづ
の流 出による汚れは次のとおりである。すなわち、その肉の流 出が続
にく りゅうしゅつ と とも けが
いていても、あるいは、その肉の流 出が止まっていても、共に汚れであ
りゅうしゅつ もの ね とこ けが ひと もの
る。 四 流 出ある者の寝た床はすべて汚れる。またその人のすわった物
けが とこ ふ もの いふく あら みず
はすべて汚れるであろう。 五その床に触れる者は、その衣服を洗い、水
み かれ ゆう けが りゅうしゅつ
に身をすすがなければならない。彼は夕まで汚れるであろう。 六 流 出
もの もの うえ もの いふく あら みず み
ある者のすわった物の上にすわる者は、その衣服を洗い、水に身をすす
かれ ゆう けが りゅうしゅつ もの にく
がなければならない。彼は夕まで汚れるであろう。 七 流 出ある者の肉
ふ もの いふく あら みず み かれ ゆう
に触れる者は衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼は夕ま
けが りゅうしゅつ もの きよ もの
で汚れるであろう。 八 流 出ある者のつばきが、清い者にかかったなら
レビ記

ひと いふく あら みず み かれ ゆう
ば、その人は衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼は夕ま

63
けが りゅうしゅつ もの の くら けが
で 汚 れ る で あ ろ う。 九 流 出 あ る 者 の 乗 っ た 鞍 は す べ て 汚 れ る。 一〇ま
かれ した もの ふ もの ゆう けが
た彼の下になった物に触れる者は、すべて夕まで汚れるであろう。また
もの はこ もの いふく あら みず み
それらの物を運ぶ者は、その衣服を洗い、水に身をすすがなければなら
かれ ゆう けが りゅうしゅつ もの みず て あら
ない。彼は夕まで汚れるであろう。 一一 流 出ある者が、水で手を洗わず
ひと ふ ひと いふく あら みず み
に人に触れるならば、その人は衣服を洗い、水に身をすすがなければな
かれ ゆう けが りゅうしゅつ もの ふ つち うつわ
らない。彼は夕まで汚れるであろう。 一二 流 出ある者が触れた土の器
くだ き うつわ みず あら
は砕かなければならない。木の器はすべて水で洗わなければならない。
りゅうしゅつ もの りゅうしゅつ きよ きよ なぬか
一三 流 出ある者の流 出がやんで清くなるならば、清めのために七日を
かぞ いふく あら なが みず み
数え、その衣服を洗い、流れ水に身をすすがなければならない。そうし
きよ か め やま わ いえ
て清くなるであろう。 一四八日目に、山ばと二羽、または家ばとのひな二
わ と かいけん まくや いりぐち い しゅ まえ で さいし わた
羽を取って、会見の幕屋の入口に行き、主の前に出て、それを祭司に渡
さいし ざいさい た はんさい
さなければならない。 一五祭司はその一つを罪祭とし、他の一つを燔祭
さいし ひと
としてささげなければならない。こうして祭司はその人のため、その
レビ記

りゅうしゅつ しゅ まえ
流 出のために主の前に、あがないをするであろう。

64
ひと せい も ぜんしん みず
一六人がもし精を漏らすことがあれば、その全身を水にすすがなければ
かれ ゆう けが せい いふく
ならない。彼は夕まで汚れるであろう。 一七すべて精のついた衣服およ
かわ つく もの みず あら ゆう けが
び皮で作った物は水で洗わなければならない。これは夕まで汚れるで
おとこ おんな ね せい も かれ とも みず
あろう。 一八 男がもし女と寝て精を漏らすことがあれば、彼らは共に水
み かれ ゆう けが
に身をすすがなければならない。彼らは夕まで汚れるであろう。
おんな りゅうしゅつ み りゅうしゅつ ち
一九また女に流 出があって、その身の流 出がもし血であるならば、その
おんな なぬか ふじょう おんな ふ もの ゆう けが
女は七日のあいだ不浄である。すべてその女に触れる者は夕まで汚れ
ふじょう あいだ おんな ね もの けが
るであろう。 二〇その不浄の間に、その女の寝た物はすべて汚れる。ま
おんな もの けが おんな
たその女のすわった物も、すべて汚れるであろう。 二一すべてその女の
とこ ふ もの いふく あら みず み
床に触れる者は、その衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。
かれ ゆう けが おんな もの ふ もの
彼は夕まで汚れるであろう。 二二すべてその女のすわった物に触れる者
みな いふく あら みず み かれ ゆう けが
は皆その衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼は夕まで汚
おんな とこ うえ もの うえ とき
れるであろう。 二三またその女が床の上、またはすわる物の上におる時、
レビ記

ふ ひと ゆう けが おとこ
それに触れるならば、その人は夕まで汚れるであろう。 二四 男がもし、そ

65
おんな ね ふじょう み かれ なぬか けが
の女と寝て、その不浄を身にうけるならば、彼は七日のあいだ汚れるで
かれ ね とこ けが
あろう。また彼の寝た床はすべて汚れるであろう。
おんな ふじょう とき おお ひ ち りゅうしゅつ
二五 女にもし、その不浄の時のほかに、多くの日にわたって血の流 出が
ふじょう とき こ りゅうしゅつ けが
あ る か、あ る い は そ の 不浄 の 時 を 越 し て 流 出 が あ れ ば、そ の 汚 れ の
りゅうしゅつ ひ あいだ ふじょう とき おな おんな けが もの
流 出の日の間は、すべてその不浄の時と同じように、その女は汚れた者
りゅうしゅつ ひ あいだ おんな ね とこ おんな
である。 二六その流 出の日の間に、その女の寝た床は、すべてその女の
ふじょう とき とこ おな おんな もの ふじょう
不浄の時の床と同じようになる。すべてその女のすわった物は、不浄の
けが けが もの ふ ひと けが
汚れのように汚れるであろう。 二七すべてこれらの物に触れる人は汚れ
いふく あら みず み かれ ゆう けが
る。その衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼は夕まで汚
おんな りゅうしゅつ きよ
れるであろう。 二八しかし、その女の流 出がやんで、清くなるならば、
じぶん なぬか かぞ のち きよ
自分のために、なお七日を数えなければならない。そして後、清くなる
おんな か め やま わ いえ わ
であろう。 二九その女は八日目に山ばと二羽、または家ばとのひな二羽
じぶん と かいけん まくや いりぐち さいし たずさ
を自分のために取り、それを会見の幕屋の入口におる祭司のもとに携え
レビ記

い さいし ざいさい た
て行かなければならない。 三〇祭司はその一つを罪祭とし、他の一つを

66
はんさい さいし おんな
燔祭としてささげなければならない。こうして祭司はその女のため、そ
けが りゅうしゅつ しゅ まえ
の汚れの流 出のために主の前に、あがないをするであろう。
ひとびと けが はな
三一 このようにしてあなたがたは、イスラエルの人々を汚れから離さな
かれ まくや かれ けが
ければならない。これは彼らのうちにあるわたしの幕屋を彼らが汚し、
けが し
その汚れのために死ぬことのないためである﹄﹂。
りゅうしゅつ もの せい も けが もの ふじょう おんな
三二 これは流 出ある者、精を漏らして汚れる者、 三三不浄をわずらう女、
おとこ おんな りゅうしゅつ もの ふじょう おんな ね もの かん
ならびに男あるいは女の流 出ある者、および不浄の女と寝る者に関す
るおきてである。
第一六章
こ しゅ まえ ちか し のち しゅ
アロンのふたりの子が、主の前に近づいて死んだ後、 二主はモーセに

い きょうだい つ かれ とき たれまく
言われた、
﹁あなたの兄 弟 アロンに告げて、彼が時をわかたず、垂幕の
レビ記

うち せいじょ い はこ うえ しょくざいしょ まえ い
内なる聖所に入り、箱の上なる贖 罪 所の前に行かぬようにさせなさい。

67
かれ し まぬか くも なか
彼 が 死 を 免 れ る た め で あ る。な ぜ な ら、わ た し は 雲 の 中 に あ っ て
しょくざいしょ うえ あらわ せいじょ つぎ
贖 罪 所の上に現れるからである。 三アロンが聖所に、はいるには、次の
おす こ うし ざいさい と
よ う に し な け れ ば な ら な い。す な わ ち 雄 の 子牛 を 罪祭 の た め に 取 り、
おひつじ はんさい と せい あ ま ぬの ふく き あ ま ぬの
雄羊を燔祭のために取り、 四聖なる亜麻布の服を着、亜麻布のももひき
み あ ま ぬの おび あ ま ぬの ぼうし
をその身にまとい、亜麻布の帯をしめ、亜麻布の帽子をかぶらなければ
せい いふく かれ みず み
ならない。これらは聖なる衣服である。彼は水に身をすすいで、これを
き ひとびと かいしゅう お とう
着なければならない。 五またイスラエルの人々の会 衆から雄やぎ二頭
ざいさい と おひつじ とう はんさい と
を罪祭のために取り、雄羊一頭を燔祭のために取らなければならない。
じぶん ざいさい おうし じぶん じぶん
六そ し て ア ロ ン は 自分 の た め の 罪祭 の 雄牛 を さ さ げ て、自分 と 自分 の
かぞく とう
家族のために、あがないをしなければならない。 七アロンはまた二頭の
と かいけん まくや いりぐち しゅ まえ た とう
やぎを取り、それを会見の幕屋の入口で主の前に立たせ、 八その二頭の
ひ しゅ
やぎのために、くじを引かなければならない。すなわち一つのくじは主
しゅ
のため、一つのくじはアザゼルのためである。 九そしてアロンは主のた
レビ記

あた ざいさい
めのくじに当ったやぎをささげて、これを罪祭としなければならない。

68
あた しゅ まえ い
一〇 しかし、アザゼルのためのくじに当ったやぎは、主の前に生かしてお
あらの
き、これをもって、あがないをなし、これをアザゼルのために、荒野に
おく
送らなければならない。
じぶん ざいさい おうし じぶん じぶん
一一 すなわち、アロンは自分のための罪祭の雄牛をささげて、自分と自分
かぞく かれ じぶん
の家族のために、あがないをしなければならない。彼は自分のための
ざいさい おうし しゅ まえ さいだん すみび み こうろ こま
罪祭の雄牛をほふり、一二主の前の祭壇から炭火を満たした香炉と、細か
こう くんこう りょう て と たれまく うち たずさ
くひいた香ばしい薫香を両 手いっぱい取って、これを垂幕の内に携え
い しゅ まえ くんこう ひ くんこう くも はこ うえ
入り、 一三主の前で薫香をその火にくべ、薫香の雲に、あかしの箱の上な
しょくざいしょ かれ し まぬか
る贖 罪 所をおおわせなければならない。こうして、彼は死を免れるで
かれ おうし ち と ゆび しょくざいしょ
あろう。 一四彼はまたその雄牛の血を取り、指をもってこれを贖 罪 所の
ひがし めん そそ ゆび ち しょくざいしょ まえ そそ
東の面に注ぎ、また指をもってその血を贖 罪 所の前に、七たび注がなけ
ればならない。
たみ ざいさい ち たれまく うち たずさ い
一五 また民のための罪祭のやぎをほふり、その血を垂幕の内に携え入り、
レビ記

ち おうし ち しょくざいしょ うえ しょくざいしょ まえ そそ


その血をかの雄牛の血のように、贖 罪 所の上と、贖 罪 所の前に注ぎ、 一

69
ひとびと けが かれ
イスラエルの人々の汚れと、そのとが、すなわち、彼らのもろもろの

つみ せいじょ かれ
罪のゆえに、聖所のためにあがないをしなければならない。また彼らの
けが かれ とも かいけん まくや
汚れのうちに、彼らと共にある会見の幕屋のためにも、そのようにしな
かれ せいじょ とき
ければならない。 一七彼が聖所であがないをするために、はいった時は、
じぶん じぶん かぞく ぜんかいしゅう
自分と自分の家族と、イスラエルの全 会 衆とのために、あがないをなし
お で かいけん まくや うち
終えて出るまで、だれも会見の幕屋の内にいてはならない。 一八そして
かれ しゅ まえ さいだん で
彼は主の前の祭壇のもとに出てきて、これがために、あがないをしなけ
おうし ち ち と さいだん
ればならない、すなわち、かの雄牛の血と、やぎの血とを取って祭壇の
つの ゆび ち うえ そそ
四すみの角につけ、一九また指をもって七たびその血をその上に注ぎ、イ
ひとびと けが のぞ きよ せいべつ
スラエルの人々の汚れを除いてこれを清くし、聖別しなければならな
い。
せいじょ かいけん まくや さいだん お
二〇 こうして聖所と会見の幕屋と祭壇とのために、あがないをなし終え
い ひ
たとき、かの生きているやぎを引いてこなければならない。 二一そして
レビ記

い あたま りょうて ひとびと


アロンは、その生きているやぎの頭に両手をおき、イスラエルの人々の

70
あく かれ つみ
もろもろの悪と、もろもろのとが、すなわち、彼らのもろもろの罪をそ
うえ こくはく あたま さだ ひと て
の上に告白して、これをやぎの頭にのせ、定めておいた人の手によって、
あらの おく かれ
これを荒野に送らなければならない。 二二こうしてやぎは彼らのもろも
あく ひとざとはな ち い
ろの悪をになって、人里離れた地に行くであろう。すなわち、そのやぎ
あらの おく
を荒野に送らなければならない。
かいけん まくや い せいじょ い とき き あ ま ぬの
二三 そして、アロンは会見の幕屋に入り、聖所に入る時に着た亜麻布の
いふく ぬ お せい ところ みず み た いふく
衣服を脱いで、そこに置き、 二四聖なる所で水に身をすすぎ、他の衣服を
き で じぶん はんさい たみ はんさい じぶん
着、出てきて、自分の燔祭と民の燔祭とをささげて、自分のため、また
たみ ざいさい しぼう
民 の た め に、あ が な い を し な け れ ば な ら な い。 二 五ま た 罪祭 の 脂肪 を
さいだん うえ や おく もの
祭壇の上で焼かなければならない。 二六かのやぎをアザゼルに送った者
いふく あら みず み のち しゅくえい い
は衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。その後、宿 営に入る
せいじょ ち たずさ い
ことができる。 二七聖所で、あがないをするために、その血を携え入れら
ざいさい おうし ざいさい しゅくえい そと たずさ だ かわ にく
れた罪祭の雄牛と、罪祭のやぎとは、宿 営の外に携え出し、その皮と肉
レビ記

おぶつ ひ や す や もの いふく
と汚物とは、火で焼き捨てなければならない。 二八これを焼く者は衣服

71
あら みず み のち しゅくえい い
を洗い、水に身をすすがなければならない。その後、宿 営に入ることが
できる。
えいきゅう まも さだ がつ
二九これはあなたがたが永 久に守るべき定めである。すなわち、七月に
つき か み なや なに しごと
なって、その月の十日に、あなたがたは身を悩まし、何の仕事もしては
くに うま もの やど きりゅうしゃ
ならない。この国に生れた者も、あなたがたのうちに宿っている寄留者

も、そうしなければならない。 三〇この日にあなたがたのため、あなたが
きよ しゅ まえ
たを清めるために、あがないがなされ、あなたがたは主の前に、もろも
つみ きよ まった やす
ろ の 罪 が 清 め ら れ る か ら で あ る。 三一こ れ は あ な た が た の 全 き 休 み の
あんそくにち み なや
安息日であって、あなたがたは身を悩まさなければならない。これは
えいきゅう まも さだ あぶら そそ ちち かわ さいし しょく にん
永 久に守るべき定めである。 三二 油を注がれ、父に代って祭司の職に任
さいし あ ま ぬの いふく せい いふく き
じられる祭司は、亜麻布の衣服、すなわち、聖なる衣服を着て、あがな
かれ しせいじょ
いをしなければならない。 三三彼は至聖所のために、あがないをなし、ま
かいけん まくや さいだん さいし
た会見の幕屋のためと、祭壇のために、あがないをなし、また祭司たち
レビ記

たみ ぜんかいしゅう
のためと、民の全 会 衆のために、あがないをしなければならない。 三四

72
えいきゅう まも さだ ひとびと
これはあなたがたの永 久に守るべき定めであって、イスラエルの人々
つみ ねん ど
のもろもろの罪のために、年に一度あがないをするものである﹂。
かれ しゅ めい
彼は主がモーセに命じられたとおりにおこなった。
第一七章
しゅ い こ
主はまたモーセに言われた、二﹁アロンとその子たち、およびイスラエ

ひとびと い しゅ めい
ルのすべての人々に言いなさい、﹃主が命じられることはこれである。
いえ うし ひつじ しゅくえい
すなわち 三イスラエルの家のだれでも、牛、羊あるいは、やぎを宿 営の
うち しゅくえい そと かいけん まくや いりぐち たずさ
内でほふり、または宿 営の外でほふり、 四それを会見の幕屋の入口に携
しゅ まくや まえ そな もの しゅ ひと
えてきて主の幕屋の前で、供え物として主にささげないならば、その人
ち なが もの かれ ち なが たみ
は血を流した者とみなされる。彼は血を流したゆえ、その民のうちから
た ひとびと かれ の
断たれるであろう。 五これはイスラエルの人々に、彼らが野のおもてで
レビ記

つね ぎせい しゅ かいけん まくや


ほふるのを常としていた犠牲を主のもとにひいてこさせ、会見の幕屋の

73
いりぐち さいし しゅ しゅうおんさい ぎせい
入口におる祭司のもとにきて、これを主にささげる酬 恩 祭の犠牲とし
さいし ち かいけん まくや いりぐち
て ほ ふ ら せ る た め で あ る。 六祭司 は そ の 血 を 会見 の 幕屋 の 入口 に あ る
しゅ さいだん そそ しぼう や こう しゅ
主の祭壇に注ぎかけ、またその脂肪を焼いて香ばしいかおりとし、主に
かれ した かんいん
さ さ げ な け れ ば な ら な い。 七彼 ら が 慕 っ て 姦淫 を お こ な っ た み だ ら な
かみ ふたた ぎせい かれ よ よ まも
神に、 再び犠牲をささげてはならない。これは彼らが代々ながく守る
さだ
べき定めである﹄。
かれ い いえ もの
八あなたはまた彼らに言いなさい、
﹃イスラエルの家の者、またはあなた
やど きりゅうしゃ はんさい ぎせい
がたのうちに宿る寄留者のだれでも、燔祭あるいは犠牲をささげるの
かいけん まくや いりぐち たずさ しゅ
に、九これを会見の幕屋の入口に携えてきて、主にささげないならば、そ
ひと たみ た
の人は、その民のうちから断たれるであろう。
いえ もの やど きりゅうしゃ
一〇 イスラエルの家の者、またはあなたがたのうちに宿る寄留者のだれ
ち た ち た ひと てき
でも、血を食べるならば、わたしはその血を食べる人に敵して、わたし
かお む たみ た にく いのち ち
の顔を向け、これをその民のうちから断つであろう。 一一肉の命は血に
レビ記

たましい さいだん うえ
あるからである。あなたがたの魂のために祭壇の上で、あがないをする

74
あた ち いのち
ため、わたしはこれをあなたがたに与えた。血は命であるゆえに、あが
なうことができるからである。 一二このゆえに、わたしはイスラエルの
ひとびと い ち た
人々に言った。あなたがたのうち、だれも血を食べてはならない。また
やど きりゅうしゃ ち た
あなたがたのうちに宿る寄留者も血を食べてはならない。 一三イスラエ
ひとびと やど きりゅうしゃ
ルの人々のうち、またあなたがたのうちに宿る寄留者のうち、だれでも、
た けもの とり か え もの ち そそ だ つち
食べてもよい獣あるいは鳥を狩り獲た者は、その血を注ぎ出し、土でこ
れをおおわなければならない。
にく いのち ち
一四 すべて肉の命は、その血と一つだからである。それで、わたしはイス
ひとびと い にく ち た
ラエルの人々に言った。あなたがたは、どんな肉の血も食べてはならな
にく いのち ち ち た もの た
い。すべて肉の命はその血だからである。すべて血を食べる者は断た
しぜん し さ ころ た
れるであろう。 一五自然に死んだもの、または裂き殺されたものを食べ
ひと くに うま もの きりゅうしゃ いふく あら みず み
る人は、国に生れた者であれ、寄留者であれ、その衣服を洗い、水に身
かれ ゆう けが のち きよ
をすすがなければならない。彼は夕まで汚れているが、その後、清くな
レビ記

あら み かれ つみ
るであろう。 一六もし、洗わず、また身をすすがないならば、彼はその罪

75

を負わなければならない﹄﹂。
第一八章
しゅ い ひとびと い
主はまたモーセに言われた、 二﹁イスラエルの人々に言いなさい、
一 ﹃わ
かみ しゅ す
たしはあなたがたの神、主である。 三あなたがたの住んでいたエジプト
くに しゅうかん みなら みちび い
の国の習 慣を見習ってはならない。またわたしがあなたがたを導き入
くに しゅうかん みなら かれ さだ あゆ
れるカナンの国の習 慣を見習ってはならない。また彼らの定めに歩ん
おこな さだ まも
ではならない。 四わたしのおきてを行い、わたしの定めを守り、それに
あゆ かみ しゅ
歩まなければならない。わたしはあなたがたの神、主である。 五あなた
さだ まも
がたはわたしの定めとわたしのおきてを守らなければならない。もし
ひと おこな い しゅ
人が、これを行うならば、これによって生きるであろう。わたしは主で
ある。
レビ記

にくしん もの ちか おか
あなたがたは、だれも、その肉親の者に近づいて、これを犯してはな

76
しゅ はは おか
ら な い。わ た し は 主 で あ る。 七あ な た の 母 を 犯 し て は な ら な い。そ れ
ちち かのじょ はは
はあなたの父をはずかしめることだからである。彼女はあなたの母で
おか ちち つま おか
あるから、これを犯してはならない。 八あなたの父の妻を犯してはなら
ちち
な い。そ れ は あ な た の 父 を は ず か し め る こ と だ か ら で あ る。 九あ な た
しまい ちち むすめ はは むすめ いえ うま
の姉妹、すなわちあなたの父の娘にせよ、母の娘にせよ、家に生れたの
うま と おか
と、よそに生れたのとを問わず、これを犯してはならない。 一〇あなたの
むすめ むすめ むすめ おか
むすこの娘、あるいは、あなたの娘の娘を犯してはならない。それはあ
じしん ちち つま
なた自身をはずかしめることだからである。 一一あなたの父の妻があな
ちち う むすめ しまい おか
たの父によって産んだ娘は、あなたの姉妹であるから、これを犯しては
ちち しまい おか かのじょ
ならない。 一二あなたの父の姉妹を犯してはならない。彼女はあなたの
ちち にくしん はは しまい おか
父 の 肉親 だ か ら で あ る。 一 三ま た あ な た の 母 の 姉妹 を 犯 し て は な ら な
かのじょ はは にくしん ちち きょうだい つま
い。彼女はあなたの母の肉親だからである。 一四あなたの父の兄 弟の妻
おか ちち きょうだい かのじょ
を犯し、父の兄 弟をはずかしめてはならない。彼女はあなたのおばだ
レビ記

よめ おか かのじょ
からである。 一五あなたの嫁を犯してはならない。彼女はあなたのむす

77
つま おか きょうだい つま
この妻であるから、これを犯してはならない。 一六あなたの兄 弟の妻を
おか きょうだい
犯してはならない。それはあなたの兄 弟をはずかしめることだからで
おんな むすめ いっしょ おか
ある。 一七あなたは女とその娘とを一緒に犯してはならない。またその
おんな むすめ むすめ むすめ と おか
女のむすこの娘、またはその娘の娘を取って、これを犯してはならない。
かれ にくしん あくじ つま
彼らはあなたの肉親であるから、これは悪事である。 一八あなたは妻の
い しまい と おな つま おか
なお生きているうちにその姉妹を取って、同じく妻となし、これを犯し
てはならない。
つき ふじょう おんな ちか おか
一九あなたは月のさわりの不浄にある女に近づいて、これを犯してはな
となり つま まじ かのじょ み けが
らない。 二〇 隣の妻と交わり、彼女によって身を汚してはならない。 二一
こ かみ な
あなたの子どもをモレクにささげてはならない。またあなたの神の名
けが しゅ おんな ね
を汚してはならない。わたしは主である。 二二あなたは女と寝るように
おとこ ね にく けもの まじ
男と寝てはならない。これは憎むべきことである。 二三あなたは獣と交
み けが おんな けもの まえ た
わり、これによって身を汚してはならない。また女も獣の前に立って、
レビ記

まじ みち
これと交わってはならない。これは道にはずれたことである。

78
こと み けが
二四 あなたがたはこれらのもろもろの事によって身を汚してはならな
まえ お はら くにぐに ひと
い。わたしがあなたがたの前から追い払う国々の人は、これらのもろも
こと けが ち けが
ろの事によって汚れ、二五その地もまた汚れている。ゆえに、わたしはそ
あく ばっ ち じゅうみん は だ
の悪のためにこれを罰し、その地もまたその住 民を吐き出すのである。
さだ まも
ゆえに、あなたがたはわたしの定めとわたしのおきてを守り、これら
二六
にく こと おこな くに うま もの
のもろもろの憎むべき事の一つでも行 ってはならない。国に生れた者
やど きりゅうしゃ
も、あなたがたのうちに宿っている寄留者もそうである。 二七あなたが
さき ち ひとびと にく こと おこな
たの先にいたこの地の人々は、これらのもろもろの憎むべき事を行 っ
ち けが ち
たので、その地も汚れたからである。 二八これは、あなたがたがこの地を
けが ち さき たみ は だ
汚して、この地があなたがたの先にいた民を吐き出したように、あなた
は だ にく
がたをも吐き出すことのないためである。 二九これらのもろもろの憎む
こと おこな もの おこな ひと たみ
べき事の一つでも行う者があれば、これを行う人は、だれでもその民の
た い
うちから断たれるであろう。 三〇それゆえに、あなたがたはわたしの言
レビ記

まも さき おこな にく ふうしゅう おこな


いつけを守り、先に行われたこれらの憎むべき風 習の一つをも行 って

79
み けが
はならない。またこれによって身を汚してはならない。わたしはあな
かみ しゅ
たがたの神、主である﹄﹂。
第一九章
しゅ い ひとびと ぜんかいしゅう い
主はモーセに言われた、﹁
一 二 イスラエルの人々の全 会 衆に言いなさい、
かみ しゅ せい せい
﹃あなたがたの神、主なるわたしは、聖であるから、あなたがたも聖でな
はは ちち
ければならない。 三あなたがたは、おのおのその母とその父とをおそれ
あんそくにち まも
なければならない。またわたしの安息日を守らなければならない。わ
かみ しゅ かみがみ こころ よ
たしはあなたがたの神、主である。 四むなしい神々に心を寄せてはなら
じぶん かみがみ い つく
ない。また自分のために神々を鋳て造ってはならない。わたしはあな
かみ しゅ
たがたの神、主である。
しゅうおんさい ぎせい しゅ う い
五酬 恩 祭の犠牲を主にささげるときは、あなたがたが受け入れられる
レビ記


ように、それをささげなければならない。 六それは、ささげた日と、そ

80
よくじつ た か め のこ ひ や
の翌日とに食べ、三日目まで残ったものは、それを火で焼かなければな
か め すこ た い
らない。 七もし三日目に、少しでも食べるならば、それは忌むべきもの
う い た もの
となって、あなたは受け入れられないであろう。 八それを食べる者は、
しゅ せい もの けが お ひと
主の聖なる物を汚すので、そのとがを負わなければならない。その人は
たみ た
民のうちから断たれるであろう。
ち み か い はたけ か
あなたがたの地の実のりを刈り入れるときは、 畑のすみずみまで刈

かりい お ぼ ひろ
りつくしてはならない。またあなたの刈入れの落ち穂を拾ってはなら
はたけ み と
ない。 一〇あなたのぶどう畑の実を取りつくしてはならない。またあな
はたけ お み ひろ まず もの きりゅうしゃ
たのぶどう畑に落ちた実を拾ってはならない。貧しい者と寄留者との
のこ
ために、これを残しておかなければならない。わたしはあなたがたの
かみ しゅ
神、主である。
ぬす あざむ たがい いつわ
一一 あなたがたは盗んではならない。 欺いてはならない。 互に偽 って
な いつわ ちか かみ な
はならない。 一二わたしの名により偽り誓って、あなたがたの神の名を
レビ記

けが しゅ
汚してはならない。わたしは主である。

81
りんじん
一三 あなたの隣人をしえたげてはならない。また、かすめてはならない。
ひ やといにん ちんぎん あ あさ
日 雇 人の賃銀を明くる朝まで、あなたのもとにとどめておいてはなら
みみ め まえ もの
ない。 一四耳しいを、のろってはならない。目しいの前につまずく物を
お かみ おそ しゅ
置いてはならない。あなたの神を恐れなければならない。わたしは主
である。
ふせい おこな まず もの かた
一五 さばきをするとき、不正を行 ってはならない。貧しい者を片よって
ちから もの ま たす せいぎ りんじん
かばい、 力ある者を曲げて助けてはならない。ただ正義をもって隣人
たみ い めぐ ひと わるぐち い
をさばかなければならない。 一六民のうちを行き巡って、人の悪口を言
りんじん ち ぎしょう
いふらしてはならない。あなたの隣人の血にかかわる偽証をしてはな
しゅ
らない。わたしは主である。
こころ きょうだい にく りんじん
一七 あ な た は 心 に 兄 弟 を 憎 ん で は な ら な い。あ な た の 隣人 を ね ん ご ろ
かれ つみ み お
にいさめて、彼のゆえに罪を身に負ってはならない。 一八あなたはあだ
かえ たみ ひとびと うら
を返してはならない。あなたの民の人々に恨みをいだいてはならない。
レビ記

じしん りんじん あい
あなた自身のようにあなたの隣人を愛さなければならない。わたしは

82
しゅ
主である。
さだ まも かちく
一九あなたがたはわたしの定めを守らなければならない。あなたの家畜
こと たね はたけ しゅ たね
に異なった種をかけてはならない。あなたの畑に二種の種をまいては
しゅ いと ま お いふく み
ならない。二種の糸の混ぜ織りの衣服を身につけてはならない。
ひと こんやく おんな ど れ い じゆう あた
二〇だれでも、人と婚約のある女 奴隷で、まだあがなわれず、自由を与
もの ね まじ かれ ばつ う
えられていない者と寝て交わったならば、彼らふたりは罰を受ける。し
ころ かのじょ じゆう おんな
かし、殺されることはない。彼女は自由の女ではないからである。 二一
おとこ けんさい しゅ たずさ
し か し、そ の 男 は 愆祭 を 主 に 携 え て こ な け れ ば な ら な い。す な わ ち、
けんさい おひつじ かいけん まくや いりぐち つ
愆祭の雄羊を、会見の幕屋の入口に連れてこなければならない。 二二そ
さいし かれ おか つみ けんさい おひつじ しゅ まえ
して、祭司は彼の犯した罪のためにその愆祭の雄羊をもって、主の前に
かれ かれ おか つみ
彼のために、あがないをするであろう。こうして彼の犯した罪はゆるさ
れるであろう。
ち き う
二三あなたがたが、かの地にはいって、もろもろのくだものの木を植える
レビ記

み かつれい み
ときは、その実はまだ割礼をうけないものと、見なさなければならない。

83
ねん あいだ かつれい た
すなわち、それは三年の間あなたがたには、割礼のないものであって、食
ねん め み せい もの
べてはならない。 二四四年目には、そのすべての実を聖なる物とし、それ
そな もの しゅ ねん
をさんびの供え物として主にささげなければならない。 二五しかし五年
め み た
目には、あなたがたはその実を食べることができるであろう。こうする
おお み むす
ならば、それはあなたがたのために、多くの実を結ぶであろう。わたし
かみ しゅ
はあなたがたの神、主である。
なに ち た うらな
二六 あなたがたは何をも血のままで食べてはならない。また占いをして
まほう おこな け
は な ら な い。魔法 を 行 っ て は な ら な い。 二七あ な た が た の び ん の 毛 を
き りょうたん しにん
切ってはならない。ひげの両 端をそこなってはならない。 二八死人のた
み きず み いれずみ
めに身を傷つけてはならない。また身に入墨をしてはならない。わた
しゅ
しは主である。
むすめ ゆうじょ けが
二九 あなたの娘に遊女のわざをさせて、これを汚してはならない。これ
こと くに おこな あくじ ち み
はみだらな事が国に行われ、悪事が地に満ちないためである。 三〇あな
レビ記

あんそくにち まも せいじょ うやま


たがたはわたしの安息日を守り、わたしの聖所を敬わなければならな

84
しゅ
い。わたしは主である。
くちよ うらな し
三一あなたがたは口寄せ、または占い師のもとにおもむいてはならない。
かれ と けが かみ しゅ
彼らに問うて汚されてはならない。わたしはあなたがたの神、主であ
る。
はくはつ ひと まえ きりつ ろうじん
三二あなたは白髪の人の前では、起立しなければならない。また老人を
うやま かみ おそ しゅ
敬い、あなたの神を恐れなければならない。わたしは主である。
た こ く じん くに きりゅう とも
三三もし他国人があなたがたの国に寄留して共にいるならば、これをし
とも きりゅう た こ く じん
えたげてはならない。 三四あなたがたと共にいる寄留の他国人を、あな
おな くに うま もの じしん あい
たがたと同じ国に生れた者のようにし、あなた自身のようにこれを愛さ
くに た こ く じん
なければならない。あなたがたもかつてエジプトの国で他国人であっ
かみ しゅ
たからである。わたしはあなたがたの神、主である。
ものさ
三五あなたがたは、さばきにおいても、物差しにおいても、はかりにおい
ふせい おこな ただ
ても、ますにおいても、不正を行 ってはならない。 三六あなたがたは正し
レビ記

ただ いし ただ ただ つか
いてんびん、正しいおもり石、正しいエパ、正しいヒンを使わなければ

85
くに みちび だ
ならない。わたしは、あなたがたをエジプトの国から導き出したあなた
かみ しゅ さだ
がたの神、主である。 三七あなたがたはわたしのすべての定めと、わたし
まも おこな しゅ
のすべてのおきてを守って、これを行わなければならない。わたしは主
である﹄﹂。
第二〇章
しゅ い ひとびと い
一主はまたモーセに言われた、 二﹁イスラエルの人々に言いなさい、
﹃イ
ひとびと きりゅう た こ く じん
スラエルの人々のうち、またイスラエルのうちに寄留する他国人のう
こ とも もの かなら ころ
ち、だれでもその子供をモレクにささげる者は、必ず殺されなければな
くに たみ かれ いし う
らない。すなわち、国の民は彼を石で撃たなければならない。 三わたし
かお ひと む かれ たみ た かれ こ とも
は顔をその人に向け、彼を民のうちから断つであろう。彼がその子供を
せいじょ けが せい な けが
モレクにささげてわたしの聖所を汚し、またわたしの聖なる名を汚した
レビ記

ひと こども くに たみ
からである。 四その人が子供をモレクにささげるとき、国の民がもしこ

86
こと め ころ じしん
とさらに、この事に目をおおい、これを殺さないならば、 五わたし自身、
かお ひと かぞく む かれ かれ み した
顔をその人とその家族とに向け、彼および彼に見ならってモレクを慕
かんいん もの たみ た
い、これと姦淫する者を、すべて民のうちから断つであろう。
くちよ うらな し かれ した かんいん
もし口寄せ、または占い師のもとにおもむき、彼らを慕って姦淫する

もの かお ひと む たみ た
者があれば、わたしは顔をその人に向け、これを民のうちから断つであ
せいべつ せい もの
ろう。 七ゆえにあなたがたは、みずからを聖別し、聖なる者とならなけ
かみ しゅ
ればならない。わたしはあなたがたの神、主である。 八あなたがたはわ
さだ まも おこな
たしの定めを守って、これを行わなければならない。わたしはあなたが
せいべつ しゅ ちち はは もの かなら ころ
たを聖別する主である。 九だれでも父または母をのろう者は、必ず殺さ
かれ ちち はは ち かれ き
れなければならない。彼が父または母をのろったので、その血は彼に帰
するであろう。
ひと つま かんいん もの りんじん つま かんいん もの
一〇 人の妻と姦淫する者、すなわち隣人の妻と姦淫する者があれば、その
かんぷ かんぷ とも かなら ころ ちち つま ね
姦夫、姦婦は共に必ず殺されなければならない。 一一その父の妻と寝る
レビ記

もの ちち もの かれ かなら ころ
者は、その父をはずかしめる者である。彼らはふたりとも必ず殺されな

87
ち かれ き こ つま ね もの
ければならない。その血は彼らに帰するであろう。 一二子の妻と寝る者
とも かなら ころ かれ みち
は、ふたり共に必ず殺されなければならない。彼らは道ならぬことをし
ち かれ き おんな ね おとこ ね
たので、その血は彼らに帰するであろう。 一三 女と寝るように男と寝る
もの にく こと かなら ころ
者は、ふたりとも憎むべき事をしたので、 必ず殺されなければならな
ち かれ き おんな はは いっしょ
い。その血は彼らに帰するであろう。 一四 女をその母と一緒にめとるな
あくじ かれ おんな ひ や
らば、これは悪事であって、彼も、 女たちも火に焼かれなければならな
あくじ おとこ
い。このような悪事をあなたがたのうちになくするためである。 一五 男
けもの ね かれ かなら ころ
がもし、 獣と寝るならば彼は必ず殺されなければならない。あなたが
けもの ころ おんな けもの ちか
たはまた、その獣を殺さなければならない。 一六 女がもし、 獣に近づい
ね おんな けもの ころ
て、これと寝るならば、あなたは、その女と獣とを殺さなければならな
かれ かなら ころ ち かれ き
い。彼らは必ず殺さるべきである。その血は彼らに帰するであろう。
ひと しまい ちち むすめ はは むすめ ちか
人がもし、その姉妹、すなわち父の娘、あるいは母の娘に近づいて、
一七
しまい み おんな きょうだい み は
その姉妹のはだを見、女はその兄 弟のはだを見るならば、これは恥ずべ
レビ記

こと かれ たみ ひとびと め まえ た
き事である。彼らは、その民の人々の目の前で、断たれなければならな

88
かれ しまい おか つみ お
い。彼は、その姉妹を犯したのであるから、その罪を負わなければなら
ひと つき おんな ね あらわ
ない。 一八人がもし、月のさわりのある女と寝て、そのはだを現すなら
おとこ おんな みなもと あらわ おんな じぶん ち みなもと あらわ
ば、男は女の源を現し、女は自分の血の源を現したのであるから、ふた
とも たみ た はは
り 共 に そ の 民 の う ち か ら 断 た れ な け れ ば な ら な い。 一九あ な た の 母 の
しまい ちち しまい おか じぶん
姉妹、またはあなたの父の姉妹を犯してはならない。これは、自分の
にくしん もの おか かれ つみ お
肉親の者を犯すことであるから、彼らはその罪を負わなければならな
ひと ね
い。 二〇人がもし、そのおばと寝るならば、これはおじをはずかしめるこ
かれ つみ お こ し ひと
とであるから、彼らはその罪を負い、子なくして死ぬであろう。 二一人が
きょうだい つま と けが かれ
もし、その兄 弟の妻を取るならば、これは汚らわしいことである。彼は
きょうだい かれ こ もの
その兄 弟をはずかしめたのであるから、彼らは子なき者となるであろ
う。
さだ まも
二二あなたがたはわたしの定めとおきてとをことごとく守って、これを
おこな す
行わなければならない。そうすれば、わたしがあなたがたを住まわせよ
レビ記

みちび い ち は だ
うと導いて行く地は、あなたがたを吐き出さぬであろう。 二三あなたが

89
まえ お はら くに ふうしゅう あゆ
たの前からわたしが追い払う国びとの風 習に、あなたがたは歩んでは
かれ かれ にく
ならない。彼らは、このもろもろのことをしたから、わたしは彼らを憎
い かれ
むのである。 二四わたしはあなたがたに言った、
﹁あなたがたは、彼らの
ち え あた え
地を獲るであろう。わたしはこれをあなたがたに与えて、これを獲させ
ちち みつ なが ち
るであろう。これは乳と蜜との流れる地である﹂。わたしはあなたがた
た たみ くべつ かみ しゅ きよ
を他の民から区別したあなたがたの神、主である。 二五あなたがたは清
けもの けが けもの けが とり きよ とり くべつ
い獣と汚れた獣、汚れた鳥と清い鳥を区別しなければならない。わたし
けが くべつ けもの とり
があなたがたのために汚れたものとして区別した獣、または鳥またはす
ち は み い
べて地を這うものによって、あなたがたの身を忌むべきものとしてはな
たい せい もの
ら な い。 二六あ な た が た は わ た し に 対 し て 聖 な る 者 で な け れ ば な ら な
しゅ せい もの
い。主なるわたしは聖なる者で、あなたがたをわたしのものにしよう
た たみ くべつ
と、他の民から区別したからである。
おとこ おんな くちよ うらな もの かなら ころ
二七 男または女で、口寄せ、または占いをする者は、 必ず殺されなけれ
レビ記

いし う ころ ち かれ
ばならない。すなわち、石で撃ち殺さなければならない。その血は彼ら

90

に帰するであろう﹄﹂。
第二一章
しゅ い こ さいし つ い
一主はまたモーセに言われた、﹁アロンの子なる祭司たちに告げて言い
たみ しにん み けが もの
なさい、
﹃民のうちの死人のために、身を汚す者があってはならない。 二
きんしん もの ちち はは むすめ きょうだい
ただし、近親の者、すなわち、父、母、むすこ、 娘、 兄 弟のため、 三ま
かれ きんしん おっと しょじょ しまい み けが
た彼の近親で、まだ夫のない処女なる姉妹のためには、その身を汚して
おっと しまい み けが
もよい。 四しかし、 夫にとついだ姉妹のためには、身を汚してはならな
かれ あたま いただき りょうたん おと
い。 五彼らは頭の頂をそってはならない。ひげの両 端をそり落しては
み きず かれ かみ たい せい
な ら な い。ま た 身 に 傷 を つ け て は な ら な い。 六彼 ら は 神 に 対 し て 聖 で
かみ な けが かれ しゅ かさい
なければならない。また神の名を汚してはならない。彼らは主の火祭、
かみ しょくもつ もの せい
すなわち、神の食 物をささげる者であるから、聖でなければならない。
レビ記

かれ ゆうじょ けが おんな おっと だ おんな


七彼らは遊女や汚れた女をめとってはならない。また夫に出された女

91
さいし かみ たい せい もの
を め と っ て は な ら な い。祭司 は 神 に 対 し て 聖 な る 者 だ か ら で あ る。 八
かれ せい かれ かみ しょくもつ
あなたは彼を聖としなければならない。彼はあなたの神の食 物をささ
もの かれ せい もの
げる者だからである。彼はあなたにとって聖なる者でなければならな
せい しゅ せい もの
い。あなたがたを聖とする主、すなわち、わたしは聖なる者だからであ
さいし むすめ もの いんこう み けが
る。 九祭司の娘である者が、淫行をなして、その身を汚すならば、その
ちち けが かのじょ ひ や
父を汚すのであるから、彼女を火で焼かなければならない。
きょうだい あたま そそ あぶら そそ しょく にん いふく
一〇その兄 弟のうち、 頭に注ぎ油を注がれ、 職に任ぜられて、その衣服
だい さ い し もの かみ け みだ
をつけ、大祭司となった者は、その髪の毛を乱してはならない。またそ
いふく さ しにん
の衣服を裂いてはならない。 一一死人のところに、はいってはならない。
ちち はは み けが せいじょ
また父のためにも母のためにも身を汚してはならない。 一二また聖所か
で かみ せいじょ けが かみ そそ あぶら
ら出てはならない。神の聖所を汚してはならない。その神の注ぎ油に
せいべつ かれ うえ しゅ かれ
よ る 聖別 が、彼 の 上 に あ る か ら で あ る。わ た し は 主 で あ る。 一 三彼 は
しょじょ つま か ふ だ おんな けが おんな
処女を妻にめとらなければならない。 一四寡婦、出された女、汚れた女、
レビ記

ゆうじょ じぶん たみ しょじょ つま


遊女などをめとってはならない。ただ、自分の民のうちの処女を、妻に

92
かれ たみ じぶん しそん
めとらなければならない。 一五そうすれば、彼は民のうちに、自分の子孫
けが かれ せいべつ しゅ
を汚すことはない。わたしは彼を聖別する主だからである﹄﹂。
しゅ い つ い
一六主はまたモーセに言われた、 一七﹁アロンに告げて言いなさい、
﹃あな
よ よ しそん み もの ちかよ かみ しょくもつ
たの代々の子孫で、だれでも身にきずのある者は近寄って、神の食 物を
み もの ちかよ
ささげてはならない。 一八すべて、その身にきずのある者は近寄っては
め あし はな もの てあし ふ
ならない。すなわち、目しい、足なえ、鼻のかけた者、手足の不つりあ
もの あし お もの て お もの め
いの者、 一九足の折れた者、手の折れた者、 二〇せむし、こびと、目にきず
もの もの もの もの
のある者、かいせんの者、かさぶたのある者、こうがんのつぶれた者な
さいし しそん み もの
ど で あ る。 二 一す べ て 祭司 ア ロ ン の 子孫 の う ち、身 に き ず の あ る 者 は
ちかよ しゅ かさい かれ み
近寄って、主の火祭をささげてはならない。彼は身にきずがあるから、
かみ しょくもつ ちかよ かれ かみ しょくもつ
神の食 物をささげるために、近寄ってはならない。 二二彼は神の食 物の
せい もの もっと せい もの た たれまく ちか
聖なる物も、最も聖なる物も食べることができる。 二三ただし、垂幕に近
さいだん ちかよ み
づいてはならない。また祭壇に近寄ってはならない。身にきずがある
レビ記

かれ せいじょ けが
からである。彼はわたしの聖所を汚してはならない。わたしはそれを

93
せいべつ しゅ こ およ
聖別する主である﹄﹂。 二四モーセはこれをアロンとその子ら及びイスラ
ひとびと つ
エルのすべての人々に告げた。
第二二章
しゅ い こ つ
主はまたモーセに言われた、二﹁アロンとその子たちに告げて、イスラ

ひとびと せい もの かれ もの
エルの人々の聖なる物、すなわち、彼らがわたしにささげる物をみだり
もち せい な けが しゅ
に用いて、わたしの聖なる名を汚さないようにさせなさい。わたしは主
かれ い よ よ しそん
である。 三彼らに言いなさい、
﹃あなたがたの代々の子孫のうち、だれで
ひとびと しゅ せい もの けが み ちか
も、イスラエルの人々が主にささげる聖なる物に、汚れた身をもって近
もの ひと まえ た
づく者があれば、その人はわたしの前から断たれるであろう。わたしは
しゅ しそん びょう もの りゅうしゅつ
主である。 四アロンの子孫のうち、だれでも、らい病の者、また流 出あ
もの きよ せい もの た したい
る者は清くなるまで、聖なる物を食べてはならない。また、すべて死体
レビ記

けが もの ふ もの せい も もの ひと
によって汚れた物に触れた者、精を漏らした者、 五または、すべて人を

94
けが は ふ もの けが ひと けが
汚す這うものに触れた者、または、どのような汚れにせよ、人を汚れさ
ひと ふ もの ふ ひと ゆう けが
せる人に触れた者、 六このようなものに触れた人は夕まで汚れるであろ
かれ み みず せい もの た
う。彼はその身を水にすすがないならば、聖なる物を食べてはならな
ひ い かれ きよ せい もの た
い。 七日が入れば、彼は清くなるであろう。そののち、聖なる物を食べ
かれ しょくもつ しぜん し
ることができる。それは彼の食 物だからである。 八自然に死んだもの、
さ ころ た み けが
または裂き殺されたものを食べ、それによって身を汚してはならない。
しゅ かれ い まも
わたしは主である。 九それゆえに、彼らはわたしの言いつけを守らなけ
かれ けが つみ え し
ればならない。彼らがこれを汚し、これがために、罪を獲て死ぬことの
かれ せいべつ しゅ
ないためである。わたしは彼らを聖別する主である。
いっぱん ひと せい もの た さいし どうきょひと
一〇 す べ て 一般 の 人 は 聖 な る 物 を 食 べ て は な ら な い。祭司 の 同居人 や
やといにん せい もの た さいし かね ひと
雇 人も聖なる物を食べてはならない。 一一しかし、祭司が金をもって人
か とき もの た いえ うま
を買った時は、その者はこれを食べることができる。またその家に生れ
もの さいし しょくもつ た さいし むすめ いっぱん ひと
た者も祭司の食 物を食べることができる。 一二もし祭司の娘が一般の人
レビ記

かのじょ せい そな もの た
にとついだならば、彼女は聖なる供え物を食べてはならない。 一三もし

95
さいし むすめ か ふ だ こども ちち いえ
祭司の娘が、寡婦となり、または出されて、子供もなく、その父の家に
かえ むすめ とき ちち しょくもつ た
帰り、娘の時のようであれば、その父の食 物を食べることができる。た
いっぱん ひと た ひと
だし、一般の人は、すべてこれを食べてはならない。 一四もし人があや
せい もの た ぶん くわ せい もの
まって聖なる物を食べるならば、それにその五分の一を加え、聖なる物
さいし わた さいし
と し て こ れ を 祭司 に 渡 さ な け れ ば な ら な い。 一 五祭司 は イ ス ラ エ ル の
ひとびと しゅ せい もの けが ひとびと せい
人々が、主にささげる聖なる物を汚してはならない。 一六人々が聖なる
もの た つみ お
物を食べて、その罪のとがを負わないようにさせなければならない。わ
かれ せいべつ しゅ
たしは彼らを聖別する主である﹄﹂。
しゅ い こ
一七 主はまたモーセに言われた、 一八﹁アロンとその子たち、およびイス
ひとびと い いえ もの
ラエルのすべての人々に言いなさい、﹃イスラエルの家の者、またはイス
た こ く じん せいがん そな もの じはつ そな
ラエルにおる他国人のうちのだれでも、誓願の供え物、または自発の供
もの はんさい しゅ う
え物を燔祭として主にささげようとするならば、 一九あなたがたの受け
い うし ひつじ おす まった
入れられるように牛、羊、あるいはやぎの雄の全きものをささげなけれ
レビ記

ばならない。 二〇すべてきずのあるものはささげてはならない。それは

96
う い ひと とくべつ
あなたがたのために、受け入れられないからである。 二一もし人が特別
せいがん じはつ そな もの うし ひつじ しゅうおんさい
の誓願をなすため、または自発の供え物のために、牛または羊を酬 恩 祭
ぎせい しゅ う い
の犠牲として、主にささげようとするならば、その受け入れられるため
まった
に、それは全きものでなければならない。それには、どんなきずもあっ
けもの お ところ
てはならない。 二二すなわち獣のうちで、めくらのもの、折れた所のある
き と ところ で もの もの
もの、切り取った所のあるもの、うみの出る者、かいせんの者、かさぶ
もの しゅ
たのある者など、あなたがたは、このようなものを主にささげてはなら
さいだん うえ かさい しゅ
ない。また祭壇の上に、これらを火祭として、主にささげてはならない。
うし ひつじ あし なが もの みじか もの
牛あるいは羊で、足の長すぎる者、または短すぎる者は、あなたがた
二三
じはつ そな もの せいがん そな もの う い
が自発の供え物とすることはできるが、誓願の供え物としては受け入れ
やぶ
られないであろう。 二四あなたがたは、こうがんの破れたもの、つぶれた
さ き と しゅ
もの、裂けたもの、または切り取られたものを、主にささげてはならな
くに おこな
い。またあなたがたの国のうちで、このようなことを、行 ってはならな
レビ記

いほうじん て う
い。 二五また、あなたがたは異邦人の手からこれらのものを受けて、あな

97
かみ しょくもつ けってん
たがたの神の食 物としてささげてはならない。これらのものには欠点
う い
があり、きずがあって、あなたがたのために受け入れられないからであ
る﹄﹂。
しゅ い うし ひつじ うま
二六 主はまたモーセに言われた、 二七﹁牛、または羊、またはやぎが生れ
なぬか あいだ ははおや お
たならば、これを七日の間その母親のもとに置かなければならない。八
か め しゅ かさい う い
日目からは主にささげる火祭として受け入れられるであろう。 二八あな
めうし め ひつじ こ おな ひ
たがたは雌牛または雌 羊をその子と同じ日にほふってはならない。 二九
かんしゃ ぎせい しゅ う い
あなたがたが感謝の犠牲を主にささげるときは、あなたがたの受け入れ
ひ た
られるようにささげなければならない。 三〇これはその日のうちに食べ
あ ひ のこ
なければならない。明くる日まで残しておいてはならない。わたしは
しゅ
主である。
いまし まも おこな
三一 あなたがたはわたしの戒めを守り、これを行わなければならない。
しゅ せい な けが
わたしは主である。 三二あなたがたはわたしの聖なる名を汚してはなら
レビ記

ひとびと せい
ない。かえって、わたしはイスラエルの人々のうちに聖とされなければ

98
せいべつ しゅ
ならない。わたしはあなたがたを聖別する主である。 三三あなたがたの
かみ くに みちび だ もの
神となるために、あなたがたをエジプトの国から導き出した者である。
しゅ
わたしは主である﹂。
第二三章
しゅ い ひとびと い
一主はまたモーセに言われた、 二﹁イスラエルの人々に言いなさい、
﹃あ
しめ せいかい しゅ さだ まつり つぎ
なたがたが、ふれ示して聖会とすべき主の定めの祭は次のとおりであ
さだ まつり か あいだ しごと
る。こ れ ら は わ た し の 定 め の 祭 で あ る。 三六 日 の 間 は 仕事 を し な け れ
だい にち まった やす あんそくにち せいかい
ばならない。第七日は全き休みの安息日であり、聖会である。どのよう
しごと
な仕事もしてはならない。これはあなたがたのすべてのすまいにおい
まも しゅ あんそくにち
て守るべき主の安息日である。
ときどき しめ しゅ さだ まつり せいかい つぎ
四その時々に、あなたがたが、ふれ示すべき主の定めの祭なる聖会は次
レビ記

しょうがつ か ゆう しゅ すぎこし まつり


の と お り で あ る。 五 正 月 の 十 四 日 の 夕 は 主 の 過越 の 祭 で あ る。 六ま た

99
つき にち しゅ たね い まつり なぬか
その月の十五日は主の種入れぬパンの祭である。あなたがたは七日の
あいだ たね い た はじ ひ せいかい
間 は 種入 れ ぬ パ ン を 食 べ な け れ ば な ら な い。 七そ の 初 め の 日 に 聖会 を
ひら ろうどう
開 か な け れ ば な ら な い。ど ん な 労働 も し て は な ら な い。 八あ な た が た
なぬか あいだ しゅ かさい だい にち せい
は七日の間、主に火祭をささげなければならない。第七日には、また聖
かい ひら ろうどう
会を開き、どのような労働もしてはならない﹄﹂。
しゅ い ひとびと い
九主はまたモーセに言われた、一〇
﹁イスラエルの人々に言いなさい、
﹃わ
あた ち こくもつ か い こくもつ
たしが与える地にはいって穀物を刈り入れるとき、あなたがたは穀物の
はつほ たば さいし たずさ かれ
初穂の束を、祭司のところへ携えてこなければならない。 一一彼はあな
う い たば しゅ まえ ゆ うご
たがたの受け入れられるように、その束を主の前に揺り動かすであろ
さいし あんそくにち よくじつ ゆ うご
う。すなわち、祭司は安息日の翌日に、これを揺り動かすであろう。 一二
たば ゆ うご ひ さい おす こひつじ まった はんさい
またその束を揺り動かす日に、一歳の雄の小羊の全きものを燔祭として
しゅ そさい あぶら ま むぎこ ぶん
主にささげなければならない。 一三その素祭には油を混ぜた麦粉十分の
もち しゅ かさい こう
二エパを用い、これを主にささげて火祭とし、香ばしいかおりとしなけ
レビ記

かんさい しゅ ぶん もち
ればならない。またその灌祭には、ぶどう酒一ヒンの四分の一を用いな

100
かみ そな もの ひ
ければならない。 一四あなたがたの神にこの供え物をささげるその日ま
やきむぎ しんこく た
で、あなたがたはパンも、焼麦も、新穀も食べてはならない。これはあ
よ よ まも さだ
なたがたのすべてのすまいにおいて、代々ながく守るべき定めである。
あんそくにち よくじつ ようさい たば ひ まん しゅう
また安息日の翌日、すなわち、揺祭の束をささげた日から満七 週を
一五
かぞ だい あんそくにち よくじつ
数えなければならない。 一六すなわち、第七の安息日の翌日までに、五十
にち かぞ しんこく そさい しゅ
日を数えて、新穀の素祭を主にささげなければならない。 一七またあな
ぶん むぎこ たね い や こ
たがたのすまいから、十分の二エパの麦粉に種を入れて焼いたパン二個
たずさ ようさい はつほ しゅ
を携えてきて揺祭としなければならない。これは初穂として主にささ
さい まった こひつじ
げるものである。 一八あなたがたはまたパンのほかに、一歳の全き小羊
とう わか おうし とう おひつじ とう
七頭と、若き雄牛一頭と、雄羊二頭をささげなければならない。すなわ
そさい かんさい しゅ はんさい
ち、これらをその素祭および灌祭とともに主にささげて燔祭としなけれ
かさい しゅ こう
ばならない。これは火祭であって、主に香ばしいかおりとなるであろ
お とう ざいさい さい こひつじ とう しゅうおんさい
う。 一九また雄やぎ一頭を罪祭としてささげ、一歳の小羊二頭を酬 恩 祭
レビ記

ぎせい さいし はつほ


の犠牲としてささげなければならない。 二〇そして祭司はその初穂のパ

101
とも とう こひつじ しゅ まえ ようさい ゆ うご
ンと共に、この二頭の小羊を主の前に揺祭として揺り動かさなければな
しゅ せい もの さいし き
らない。これらは主にささげる聖なる物であって、祭司に帰するであろ
ひ しめ せいかい ひら
う。 二一あなたがたは、その日にふれ示して、聖会を開かなければならな
ろうどう
い。どのような労働もしてはならない。これはあなたがたのすべての
よ よ まも さだ
すまいにおいて、代々ながく守るべき定めである。
ち こくもつ か い かりい
二二 あなたがたの地の穀物を刈り入れるときは、その刈入れにあたって、
はたけ か こくもつ お
畑のすみずみまで刈りつくしてはならない。またあなたの穀物の落ち
ぼ ひろ まず もの きりゅうしゃ のこ
穂を拾ってはならない。貧しい者と寄留者のために、それを残しておか
かみ しゅ
なければならない。わたしはあなたがたの神、主である﹄﹂。
しゅ い ひとびと い
二三 主はまたモーセに言われた、 二四﹁イスラエルの人々に言いなさい、
がつ にち あんそく ひ ふ な きねん
﹃七月一日をあなたがたの安息の日とし、ラッパを吹き鳴らして記念す
せいかい ろうどう
る 聖会 と し な け れ ば な ら な い。 二五ど の よ う な 労働 も し て は な ら な い。
しゅ かさい
しかし、主に火祭をささげなければならない﹄﹂。
レビ記

しゅ い とく がつ か しょくざい ひ
二六 主はまたモーセに言われた、 二七﹁特にその七月の十日は贖 罪の日で

102
せいかい ひら み なや しゅ かさい
ある。あなたがたは聖会を開き、身を悩まし、主に火祭をささげなけれ
ひ しごと
ばならない。 二八その日には、どのような仕事もしてはならない。これ
かみ しゅ まえ
はあなたがたのために、あなたがたの神、主の前にあがないをなすべき
しょくざい ひ ひ み なや もの たみ
贖 罪の日だからである。 二九すべてその日に身を悩まさない者は、民の
た ひ しごと
うちから断たれるであろう。 三〇またすべてその日にどのような仕事を
ひと たみ ほろ さ
しても、その人をわたしは民のうちから滅ぼし去るであろう。 三一あな
しごと
たがたはどのような仕事もしてはならない。これはあなたがたのすべ
よ よ まも さだ
てのすまいにおいて、代々ながく守るべき定めである。 三二これはあな
まった やす あんそくにち み なや
たがたの全き休みの安息日である。あなたがたは身を悩まさなければ
つき か ゆう ゆう つぎ ゆう あんそく まも
ならない。またその月の九日の夕には、その夕から次の夕まで安息を守
らなければならない﹂。
しゅ い ひとびと い
三三主はまたモーセに言われた、 三四﹁イスラエルの人々に言いなさい、
がつ にち かりいお まつり なぬか あいだ しゅ まえ まも
﹃その七月の十五日は仮庵の祭である。七日の間、主の前にそれを守ら
レビ記

はじ ひ せいかい ひら
なければならない。 三五初めの日に聖会を開かなければならない。どの

103
ろうどう なぬか あいだ しゅ かさい
ような労働もしてはならない。 三六また七日の間、主に火祭をささげな
か め せいかい ひら しゅ かさい
ければならない。八日目には聖会を開き、主に火祭をささげなければな
せいかい ひ ろうどう
らない。これは聖会の日であるから、どのような労働もしてはならな
い。
しゅ さだ まつり しめ せいかい
これらは主の定めの祭であって、あなたがたがふれ示して聖会とし、
三七
しゅ かさい はんさい そさい ぎせい かんさい ひ
主に火祭すなわち、燔祭、素祭、犠牲および灌祭を、そのささぐべき日
しゅ あんそくにち
にささげなければならない。 三八このほかに主の安息日があり、またほ
もの
かに、あなたがたのささげ物があり、またほかに、あなたがたのもろも
せいがん そな もの
ろの誓願の供え物があり、またそのほかに、あなたがたのもろもろの
じはつ そな もの みな しゅ
自発の供え物がある。これらは皆あなたがたが主にささげるものであ
る。
ち さんぶつ あつ おわ がつ にち なぬか
あなたがたが、地の産物を集め終ったときは、七月の十五日から七日
三九
しゅ まつり まも はじ ひ
のあいだ、主の祭を守らなければならない。すなわち、初めの日にも
レビ記

あんそく か め あんそく はじ ひ うつく


安息をし、八日目にも安息をしなければならない。 四〇初めの日に、美し

104
き み えだ しげ き えだ たに えだ
い木の実と、なつめやしの枝と、茂った木の枝と、谷のはこやなぎの枝
と なぬか あいだ かみ しゅ まえ たの
を取って、七日の間あなたがたの神、主の前に楽しまなければならない。
ねん なぬか あいだ しゅ まつり まも
四一 あなたがたは年に七日の間、主にこの祭を守らなければならない。
よ よ まも さだ がつ まも
これはあなたがたの代々ながく守るべき定めであって、七月にこれを守
なぬか あいだ かりいお す
らなければならない。 四二あなたがたは七日の間、仮庵に住み、イスラエ
うま もの かりいお す
ルで生れた者はみな仮庵に住まなければならない。 四三これはわたしが
ひとびと くに みちび だ かれ かりいお す
イスラエルの人々をエジプトの国から導き出したとき、彼らを仮庵に住
こと よ よ しそん し
まわせた事を、あなたがたの代々の子孫に知らせるためである。わたし
かみ しゅ
はあなたがたの神、主である﹄﹂。
しゅ さだ まつり ひとびと つ
四四 モーセは主の定めの祭をイスラエルの人々に告げた。
第二四章
レビ記

しゅ い ひとびと めい
主はまたモーセに言われた、二﹁イスラエルの人々に命じて、オリブを

105
くだ と じゅんすい あぶら ところ も
砕いて採った純 粋の油を、ともしびのためにあなたの所へ持ってこさ
た かいけん
せ、絶 え ず と も し び を と も さ せ な さ い。 三す な わ ち、ア ロ ン は 会見 の
まくや たれまく そと ゆう あさ た
幕屋のうちのあかしの垂幕の外で、夕から朝まで絶えず、そのともしび
しゅ まえ ととの よ よ まも
を主の前に整えなければならない。これはあなたがたが代々ながく守
さだ かれ じゅんきん しょくだい うえ た
るべき定めである。 四彼は純 金の燭 台の上に、そのともしびを絶えず
しゅ まえ ととの
主の前に整えなければならない。
むぎこ と こ か し や
五あなたは麦粉を取り、それで十二個の菓子を焼かなければならない。
か し こ むぎこ ぶん もち
菓子 一 個 に 麦粉 十 分 の 二 エ パ を 用 い な け れ ば な ら な い。 六そ し て そ れ
しゅ まえ じゅんきん つくえ うえ かさ こ かさ お
を主の前の純 金の机の上に、ひと重ね六個ずつ、ふた重ねにして置かな
かさ うえ じゅんすい にゅうこう
ければならない。 七あなたはまた、おのおのの重ねの上に、純 粋の乳 香
お きねん ぶん しゅ かさい
を置いて、そのパンの記念の分とし、主にささげて火祭としなければな
あんそくにち た しゅ まえ ととの
ら な い。 八安息日 ご と に 絶 え ず、こ れ を 主 の 前 に 整 え な け れ ば な ら な
ひとびと えいえん けいやく
い。これはイスラエルの人々のささぐべきものであって、永遠の契約で
レビ記

こ き かれ せい ところ
あ る。 九こ れ は ア ロ ン と そ の 子 た ち に 帰 す る。彼 ら は こ れ を 聖 な る 所

106
た せい もの しゅ かさい
で食べなければならない。これはいと聖なる物であって、主の火祭のう
かれ き えいきゅう ぶん
ち彼に帰すべき永 久の分である﹂。
おんな はは ちち もの
一〇 イスラエルの女を母とし、エジプトびとを父とするひとりの者が、イ
ひとびと で おんな う こ
スラエルの人々のうちに出てきて、そのイスラエルの女の産んだ子と、
しゅくえい なか あらそ
ひとりのイスラエルびとが宿 営の中で争いをし、 一一そのイスラエルの
おんな う こ しゅ な けが ひとびと かれ
女の産んだ子が主の名を汚して、のろったので、人々は彼をモーセのも
つ はは ぶぞく むすめ な
とに連れてきた。その母はダンの部族のデブリの娘で、名をシロミテと
ひとびと かれ と こ お しゅ しめ う ま
いった。 一二人々は彼を閉じ込めて置いて、主の示しを受けるのを待っ
ていた。
とき しゅ い い もの
一三 時 に 主 は モ ー セ に 言 わ れ た、 一四﹁あ の、の ろ い ご と を 言 っ た 者 を
しゅくえい そと ひ だ き もの て かれ あたま お ぜん
宿 営の外に引き出し、それを聞いた者に、みな手を彼の頭に置かせ、全
かいしゅう かれ いし う ひとびと
会 衆 に 彼 を 石 で 撃 た せ な さ い。 一五あ な た は ま た イ ス ラ エ ル の 人々 に
い かみ もの つみ お
言いなさい、
﹃だれでも、その神をのろう者は、その罪を負わなければな
レビ記

しゅ な けが もの かなら ころ ぜんかいしゅう かなら


ら な い。 一六主 の 名 を 汚 す 者 は 必 ず 殺 さ れ る で あ ろ う。全 会 衆 は 必 ず

107
かれ いし う たこく もの くに うま もの
彼を石で撃たなければならない。他国の者でも、この国に生れた者で
しゅ な けが ころ ひと う
も、主の名を汚すときは殺されなければならない。 一七だれでも、人を撃
ころ もの かなら ころ けもの う ころ もの
ち 殺 し た 者 は、 必 ず 殺 さ れ な け れ ば な ら な い。 一八 獣 を 撃 ち 殺 し た 者
けもの けもの つぐな ひと りんじん きず
は、 獣をもってその獣を償わなければならない。 一九もし人が隣人に傷
お ひと じぶん じぶん
を負わせるなら、その人は自分がしたように自分にされなければならな
こっせつ こっせつ め め は は ひと きず
い。 二〇すなわち、骨折には骨折、目には目、歯には歯をもって、人に傷
お じぶん けもの う ころ
を負わせたように、自分にもされなければならない。 二一 獣を撃ち殺し
もの つぐな ひと う ころ もの ころ
た者はそれを償い、人を撃ち殺した者は殺されなければならない。 二二
たこく もの くに うま もの どういつ もち
他国の者にも、この国に生れた者にも、あなたがたは同一のおきてを用
かみ しゅ
いなければならない。わたしはあなたがたの神、主だからである﹄﹂。 二三
ひとびと む い もの
モーセがイスラエルの人々に向かい、﹁あの、のろいごとを言った者を
しゅくえい そと ひ だ いし う めい ひとびと
宿 営の外に引き出し、石で撃て﹂と命じたので、イスラエルの人々は、
しゅ めい
主がモーセに命じられたようにした。
レビ記

108
第二五章
しゅ さん い ひとびと い
一主はシナイ山で、モーセに言われた、二﹁イスラエルの人々に言いなさ
あた ち ち
い、
﹃わたしが与える地に、あなたがたがはいったときは、その地にも、
しゅ む あんそく まも ねん あいだ はたけ
主 に 向 か っ て 安息 を 守 ら せ な け れ ば な ら な い。 三六 年 の 間 あ な た は 畑
たね ねん あいだ はたけ えだ か こ み あつ
に種をまき、また六年の間ぶどう畑の枝を刈り込み、その実を集めるこ
ねん め ち まった やす あんそく あた
とができる。 四しかし、七年目には、地に全き休みの安息を与えなけれ
しゅ む まも あんそく はたけ たね
ばならない。これは、主に向かって守る安息である。あなたは畑に種を
はたけ えだ か こ
まいてはならない。また、ぶどう畑の枝を刈り込んではならない。 五あ
こくもつ しぜん は か と
なたの穀物の自然に生えたものは刈り取ってはならない。また、あなた
えだ て い むす み つ
のぶどうの枝の手入れをしないで結んだ実は摘んではならない。これ
ち まった やす とし あんそく とし ち さんぶつ
は地のために全き休みの年だからである。 六安息の年の地の産物は、あ
しょくもつ だんじょ どれい
なたがたの食 物となるであろう。すなわち、あなたと、男女の奴隷と、
レビ記

やといにん ところ やど た こ く じん かちく


雇 人と、あなたの所に宿っている他国人と、 七あなたの家畜と、あなた

109
くに けもの さんぶつ しょくもつ
の国のうちの獣とのために、その産物はみな、 食 物となるであろう。
あんそく とし ねん かいかぞ
八あなたは安息の年を七たび、すなわち、七年を七回数えなければなら
あんそく とし ねんすう ねん がつ か
な い。安息 の 年 七 た び の 年数 は 四 十 九 年 で あ る。 九七 月 の 十 日 に あ な
おと ひび わた しょくざい ひ
たはラッパの音を響き渡らせなければならない。すなわち、 贖 罪の日
ぜんこく ひび わた
にあなたがたは全国にラッパを響き渡らせなければならない。 一〇その
ねん め せいべつ くにぢゅう じゅうみん じゆう しめ
五十年目を聖別して、 国 中のすべての住 民に自由をふれ示さなければ
とし とし
ならない。この年はあなたがたにはヨベルの年であって、あなたがた
しょゆう ち かえ かぞく かえ
は、おのおのその所有の地に帰り、おのおのその家族に帰らなければな
ねん め とし たね
らない。 一一その五十年目はあなたがたにはヨベルの年である。種をま
しぜん は か と
い て は な ら な い。ま た 自然 に 生 え た も の は 刈 り 取 っ て は な ら な い。
て い むす み つ とし
手入れをしないで結んだぶどうの実は摘んではならない。 一二この年は
とし せい
ヨベルの年であって、あなたがたに聖であるからである。あなたがたは
はたけ しぜん もの た
畑に自然にできた物を食べなければならない。
レビ記

とし しょゆう ち かえ
一三 このヨベルの年には、おのおのその所有の地に帰らなければならな

110
りんじん もの う りんじん もの か たがい あざむ
い。 一四あなたの隣人に物を売り、また隣人から物を買うときは、互に欺
のち とし かず りんじん
いてはならない。 一五ヨベルの後の年の数にしたがって、あなたは隣人
か かれ はたけ さんぶつ ねんすう う
から買い、彼もまた畑の産物の年数にしたがって、あなたに売らなけれ
とし かず おお とき あたい ま とし かず すく とき
ばならない。 一六年の数の多い時は、その値を増し、年の数の少ない時
あたい へ かれ う さんぶつ かず
は、 値を減らさなければならない。彼があなたに売るのは産物の数だ
たがい あざむ かみ おそ
からである。 一七あなたがたは互に欺いてはならない。あなたの神を恐
かみ しゅ
れなければならない。わたしはあなたがたの神、主である。
さだ おこな まも
あなたがたはわたしの定めを行い、またわたしのおきてを守って、こ
一八
おこな やす ち
れを行わなければならない。そうすれば、あなたがたは安らかにその地
す ち み むす あ
に住むことができるであろう。 一九地はその実を結び、あなたがたは飽
た やす す
きるまでそれを食べ、安らかにそこに住むことができるであろう。 二〇
ねん め たね さんぶつ あつ
﹁七年目に種をまくことができず、また産物を集めることができないな
なに た い
らば、わたしたちは何を食べようか﹂とあなたがたは言うのか。 二一わた
レビ記

めい ねん め しゅくふく ねんぶん さんぶつ みの


しは命じて六年目に、あなたがたに祝 福をくだし、三か年分の産物を実

111
ねん め たね とき ふる
らせるであろう。 二二あなたがたは八年目に種をまく時には、なお古い
さんぶつ た ねん め さんぶつ
産物を食べているであろう。九年目にその産物のできるまで、あなたが
ふる た ち えいたい う
たは古いものを食べることができるであろう。 二三地は永代には売って

はならない。地はわたしのものだからである。あなたがたはわたしと
とも きりゅうしゃ たび しょゆう
共にいる寄留者、また旅びとである。 二四あなたがたの所有としたどの
と ち と ち か おう
ような土地でも、その土地の買いもどしに応じなければならない。
きょうだい お しょゆう ち う とき かれ きんしんしゃ
二五 あなたの兄 弟が落ちぶれてその所有の地を売った時は、彼の近親者
きょうだい う か
がきて、 兄 弟の売ったものを買いもどさなければならない。 二六たとい
ひと か ひと ひと と
その人に、それを買いもどしてくれる人がいなくても、その人が富み、
じぶん か
自分でそれを買いもどすことができるようになったならば、 二七それを
う とし かぞ のこ ぶん か て かえ
売 っ て か ら の 年 を 数 え て 残 り の 分 を 買 い 手 に 返 さ な け れ ば な ら な い。
ひと しょゆう ち かえ
そうすればその人はその所有の地に帰ることができる。 二八しかし、も
か う もの とし
しそれを買いもどすことができないならば、その売った物はヨベルの年
レビ記

か ぬし て ひと しょゆう ち
まで買い主の手にあり、ヨベルにはもどされて、その人はその所有の地

112
かえ
に帰ることができるであろう。
ひと じょうへき まち じゅうたく う とき う まん ねん あいだ
二九 人が城 壁のある町の住 宅を売った時は、売ってから満一年の間は、
か かん かれ か ゆる
それを買いもどすことができる。その間は彼に買いもどすことを許さ
まん ねん か とき
な け れ ば な ら な い。 三〇満 一 年 の う ち に、そ れ を 買 い も ど さ な い 時 は、
じょうへき まち うち いえ えいたい か ひと さだ
城 壁 の あ る 町 の 内 の そ の 家 は 永代 に そ れ を 買 っ た 人 の も の と 定 ま っ
よ よ しょゆう とし
て、代々の所有となり、ヨベルの年にももどされないであろう。 三一しか
しゅうい じょうへき むらむら いえ ちほう はたけ ふぞく
し、周囲に城 壁のない村々の家は、その地方の畑に附属するものとみな
か とし
され、買いもどすことができ、またヨベルの年には、もどされるであろ
まちまち かれ しょゆう まちまち いえ
う。 三二レビびとの町々、すなわち、彼らの所有の町々の家は、レビびと

はいつでも買いもどすことができる。 三三レビびとのひとりが、それを
か とき しょゆう まち う いえ とし
買いもどさない時は、その所有の町にある売った家はヨベルの年にはも
まちまち いえ ひとびと
どされるであろう。レビびとの町々の家はイスラエルの人々のうちに
かれ しょゆう かれ まちまち しゅうい
彼らがもっている所有だからである。 三四ただし、彼らの町々の周囲の
レビ記

ほうぼく ち う かれ えいきゅう しょゆう


放牧地は売ってはならない。それは彼らの永 久の所有だからである。

113
きょうだい お くら い とき かれ たす きりゅうしゃ
三五あなたの兄 弟が落ちぶれ、暮して行けない時は、彼を助け、寄留者
たび とも い
または旅びとのようにして、あなたと共に生きながらえさせなければな
かれ り し りそく と かみ おそ
ら な い。 三 六彼 か ら 利子 も 利息 も 取 っ て は な ら な い。あ な た の 神 を 恐
きょうだい とも い
れ、あなたの兄 弟をあなたと共に生きながらえさせなければならない。
り し と かれ かね か りえき
三七あなたは利子を取って彼に金を貸してはならない。また利益をえる
しょくもつ か かみ しゅ
た め に 食 物 を 貸 し て は な ら な い。 三八わ た し は あ な た が た の 神、主 で
ち あた かみ
あって、カナンの地をあなたがたに与え、かつあなたがたの神となるた
くに みちび だ もの
めにあなたがたをエジプトの国から導き出した者である。
きょうだい お み う どれい
三九あなたの兄 弟が落ちぶれて、あなたに身を売るときは、奴隷のよう
はたら かれ やといにん たび
に働かせてはならない。 四〇彼を雇 人のように、また旅びとのようにし
ところ とし ところ つと
てあなたの所におらせ、ヨベルの年まであなたの所で勤めさせなさい。
とき かれ こども とも ところ で いちぞく
四一その時には、彼は子供たちと共にあなたの所から出て、その一族のも
かえ せんぞ しょゆう ち かれ くに
とに帰り、先祖の所有の地にもどるであろう。 四二彼らはエジプトの国
レビ記

みちび だ み う どれい
からわたしが導き出したわたしのしもべであるから、身を売って奴隷と

114
かれ つか
なってはならない。 四三あなたは彼をきびしく使ってはならない。あな
かみ おそ どれい だんじょ
たの神を恐れなければならない。 四四あなたがもつ奴隷は男女ともにあ
しゅうい いほうじん か かれ
なたの周囲の異邦人のうちから買わなければならない。すなわち、彼ら
だんじょ どれい か
のうちから男女の奴隷を買うべきである。 四五また、あなたがたのうち
やど たび こども か かれ
に宿っている旅びとの子供のうちからも買うことができる。また彼ら
くに うま とも ひとびと かぞく
のうちあなたがたの国で生れて、あなたがたと共におる人々の家族から
か かれ しょゆう
も買うことができる。そして彼らはあなたがたの所有となるであろう。
かれ え のち しそん しょゆう つ
あなたがたは彼らを獲て、あなたがたの後の子孫に所有として継が
四六
かれ なが どれい
せることができる。すなわち、彼らは長くあなたがたの奴隷となるであ
きょうだい ひとびと
ろう。しかし、あなたがたの兄 弟であるイスラエルの人々をあなたが
たがい つか
たは互にきびしく使ってはならない。
とも きりゅうしゃ たび と
あなたと共にいる寄留者または旅びとが富み、そのかたわらにいる
四七
きょうだい お とも きりゅうしゃ たび
あなたの兄 弟が落ちぶれて、あなたと共にいるその寄留者、旅びと、ま
レビ記

きりゅうしゃ いちぞく み う ばあい み う のち かれ


たは寄留者の一族のひとりに身を売った場合、 四八身を売った後でも彼

115
か きょうだい かれ か
を買いもどすことができる。その兄 弟のひとりが彼を買いもどさなけ
こ かれ か
ればならない。 四九あるいは、おじ、または、おじの子が彼を買いもどさ
いちぞく きんしん もの かれ か
なければならない。あるいは一族の近親の者が、彼を買いもどさなけれ
じぶん とみ じぶん か
ばならない。あるいは自分に富ができたならば、自分で買いもどさなけ
とき かれ じぶん み う とし とし
ればならない。 五〇その時、彼は自分の身を売った年からヨベルの年ま
か ぬし とも かぞ ねんすう み しろきん き
でを、その買い主と共に数え、その年数によって、身の代金を決めなけ
ねんすう やと ねんすう かぞ
ればならない。その年数は雇われた年数として数えなければならない。
のこ とし おお とき ねんすう か きんがく てら
五一なお残りの年が多い時は、その年数にしたがい、買われた金額に照し
かね はら とし
て、あがないの金を払わなければならない。 五二またヨベルの年までに
のこ とし すく ひと とも けいさん ねんすう
残りの年が少なければ、その人と共に計算し、その年数にしたがって、あ
かね はら かれ ねんねんやと ひと
がないの金を払わなければならない。 五三彼は年々雇われる人のように
あつか め まえ かれ つか
扱われなければならない。あなたの目の前で彼をきびしく使わせては
かれ
ならない。 五四もし彼がこのようにしてあがなわれないならば、ヨベル
レビ記

とし かれ こども とも で い ひとびと
の 年 に 彼 は 子供 と 共 に 出 て 行 く こ と が で き る。 五 五イ ス ラ エ ル の 人々

116
かれ くに みちび
は、わたしのしもべだからである。彼らはわたしがエジプトの国から導
だ かみ しゅ
き出したわたしのしもべである。わたしはあなたがたの神、主である。
第二六章
じぶん ぐうぞう つく きざ ぞう
あなたがたは自分のために、偶像を造ってはならない。また刻んだ像

いし はしら た ち せきぞう た
も石の柱も立ててはならない。またあなたがたの地に石像を立てて、そ
おが かみ しゅ
れを拝んではならない。わたしはあなたがたの神、主だからである。 二
あんそくにち まも せいじょ うやま
あなたがたはわたしの安息日を守り、またわたしの聖所を敬わなければ
しゅ
ならない。わたしは主である。
さだ あゆ いまし まも
もしあなたがたがわたしの定めに歩み、わたしの戒めを守って、これ

おこな きせつきせつ あめ あた
を行うならば、 四わたしはその季節季節に、雨をあなたがたに与えるで
ち さんぶつ だ はたけ き ぎ み むす
あろう。地は産物を出し、畑の木々は実を結ぶであろう。 五あなたがた
レビ記

むぎう とりい とき つづ とりい たね


の麦打ちは、ぶどうの取入れの時まで続き、ぶどうの取入れは、種まき

117
とき つづ あ た
の時まで続くであろう。あなたがたは飽きるほどパンを食べ、またあな
ち やす す くに へいわ あた
た が た の 地 に 安 ら か に 住 む で あ ろ う。 六わ た し が 国 に 平和 を 与 え る か
やす ね おそ
ら、あなたがたは安らかに寝ることができ、あなたがたを恐れさすもの
くに わる けもの た
はないであろう。わたしはまた国のうちから悪い獣を絶やすであろう。
くに い めぐ
つ る ぎ が あ な た が た の 国 を 行 き 巡 る こ と は な い で あ ろ う。 七あ な た が
てき お かれ たお
たは敵を追うであろう。彼らは、あなたがたのつるぎに倒れるであろ
にん にん お にん にん お
う。 八あなたがたの五人は百人を追い、百人は万人を追い、あなたがた
てき たお かえり おお
の敵はつるぎに倒れるであろう。 九わたしはあなたがたを顧み、多くの
こ え ま むす けいやく かた
子を獲させ、あなたがたを増し、あなたがたと結んだ契約を固めるであ
ふる こくもつ た あいだ あたら
ろう。 一〇あなたがたは古い穀物を食べている間に、また新しいものを
え ふる す まくや
獲て、その古いものを捨てるようになるであろう。 一一わたしは幕屋を
た こころ い
あなたがたのうちに建て、 心にあなたがたを忌みきらわないであろう。
あゆ かみ
一二 わたしはあなたがたのうちに歩み、あなたがたの神となり、あなたが
レビ記

たみ かみ しゅ
た は わ た し の 民 と な る で あ ろ う。 一 三わ た し は あ な た が た の 神、主 で

118
くに みちび だ どれい みぶん と
あって、あなたがたをエジプトの国から導き出して、奴隷の身分から解
はな もの よこぎ くだ
き放った者である。わたしはあなたがたのくびきの横木を砕いて、まっ
た ある
すぐに立って歩けるようにしたのである。
き したが いまし
一四 しかし、あなたがたがもしわたしに聞き従わず、またこのすべての戒
まも さだ かろ こころ い
めを守らず、 一五わたしの定めを軽んじ、 心にわたしのおきてを忌みき
いまし まも けいやく やぶ
らって、わたしのすべての戒めを守らず、わたしの契約を破るならば、一
わたしはあなたがたにこのようにするであろう。すなわち、あなたが

うえ きょうふ のぞ はいびょう ねつびょう め み
たの上に恐怖を臨ませ、 肺 病と熱 病をもって、あなたがたの目を見え
いのち おとろ たね
なくし、 命をやせ衰えさせるであろう。あなたがたが種をまいてもむ
てき た かお
だである。敵がそれを食べるであろう。 一七わたしは顔をあなたがたに
せ てき まえ う
むけて攻め、あなたがたは敵の前に撃ちひしがれるであろう。またあな
にく もの おさ お もの
たがたの憎む者があなたがたを治めるであろう。あなたがたは追う者

もないのに逃げるであろう。 一八それでもなお、あなたがたがわたしに
レビ記

き したが つみ ばいおも ばっ
聞き従わないならば、わたしはあなたがたの罪を七倍重く罰するであろ

119
ほこり ちから くだ てん てつ
う。 一九わたしはあなたがたの誇とする力を砕き、あなたがたの天を鉄
ち せいどう
のようにし、あなたがたの地を青銅のようにするであろう。 二〇あなた
ちから ついや ち さんぶつ
がたの力は、むだに費されるであろう。すなわち、地は産物をいださず、
くに き ぎ み むす
国のうちの木々は実を結ばないであろう。
さか あゆ き したが
二一もしあなたがたがわたしに逆らって歩み、わたしに聞き従わないな
つみ したが ばい わざわい くだ
らば、わたしはあなたがたの罪に従 って七倍の災をあなたがたに下す
やじゅう おく
で あ ろ う。 二二わ た し は ま た 野獣 を あ な た が た の う ち に 送 る で あ ろ う。
こども うば かちく ほろ かず
それはあなたがたの子供を奪い、また家畜を滅ぼし、あなたがたの数を
すく おおじ あ は
少なくするであろう。あなたがたの大路は荒れ果てるであろう。
こら う あらた
二三もしあなたがたがこれらの懲しめを受けてもなお改めず、わたしに
さか あゆ さか あゆ
逆らって歩むならば、二四わたしもまたあなたがたに逆らって歩み、あな
つみ ばいおも ばっ うえ
たがたの罪を七倍重く罰するであろう。 二五わたしはあなたがたの上に
のぞ いやく うら むく まちまち あつ
つるぎを臨ませ、違約の恨みを報いるであろう。あなたがたが町々に集
レビ記

とき えきびょう おく てき て
まる時は、あなたがたのうちに疫 病を送り、あなたがたは敵の手にわた

120
くだ
さ れ る で あ ろ う。 二六わ た し が あ な た が た の つ え と す る パ ン を 砕 く と
にん おんな や
き、十人の女が一つのかまどでパンを焼き、それをはかりにかけてあな
わた た み
たがたに渡すであろう。あなたがたは食べても満たされないであろう。
き したが さか
二七 それでもなお、あなたがたがわたしに聞き従わず、わたしに逆らって
あゆ さか いか あゆ
歩むならば、 二八わたしもあなたがたに逆らい、怒りをもって歩み、あな
つみ ばいおも ばっ じぶん
たがたの罪を七倍重く罰するであろう。 二九あなたがたは自分のむすこ
にく た じぶん むすめ にく た
の肉を食べ、また自分の娘の肉を食べるであろう。 三〇わたしはあなた
たか ところ こう さいだん たお ぐうぞう したい うえ
がたの高き所をこぼち、香の祭壇を倒し、偶像の死体の上に、あなたが
したい な す こころ い
たの死体を投げ捨てて、わたしは心にあなたがたを忌みきらうであろ
まちまち あ ち
う。 三 一わ た し は ま た あ な た が た の 町々 を 荒 れ 地 と し、あ な た が た の
せいじょ あ こう
聖所を荒らすであろう。またわたしはあなたがたのささげる香ばしい
ち あ
かおりをかがないであろう。 三二わたしがその地を荒らすゆえ、そこに
す てき み おどろ
住むあなたがたの敵はそれを見て驚くであろう。 三三わたしはあなたが
レビ記

くにぐに あいだ ち ぬ うしろ お


たを国々の間に散らし、つるぎを抜いて、あなたがたの後を追うであろ

121
ち あ は まちまち あ ち
う。あなたがたの地は荒れ果て、あなたがたの町々は荒れ地となるであ
ろう。
ち あ は てき くに あいだ ち
こうしてその地が荒れ果てて、あなたがたは敵の国にある間、地は
三四
あんそく たの とき ち やす え あんそく たの
安息を楽しむであろう。すなわち、その時、地は休みを得て、安息を楽
あ は ひ あいだ やす
しむであろう。 三五それは荒れ果てている日の間、休むであろう。あな
す あいだ あんそく やす え
たがたがそこに住んでいる間、あなたがたの安息のときに休みを得な
のこ もの こころ
かったものである。 三六またあなたがたのうちの残っている者の心に、
てき くに おそ かれ こ は うご おと
敵の国でわたしは恐れをいだかせるであろう。彼らは木の葉の動く音
おどろ に さ に もの に お もの
にも驚いて逃げ、つるぎを避けて逃げる者のように逃げて、追う者もな
たお かれ お もの
いのにころび倒れるであろう。 三七彼らは追う者もないのに、つるぎを
もの お かさ たお
のがれる者のように折り重なって、つまずき倒れるであろう。あなたが
てき まえ た くにぐに
たは敵の前に立つことができないであろう。 三八あなたがたは国々のう
ほろ てき ち
ちにあって滅びうせ、あなたがたの敵の地はあなたがたをのみつくすで
レビ記

のこ もの てき ち
あろう。 三九あなたがたのうちの残っている者は、あなたがたの敵の地

122
じぶん つみ おとろ せんぞ つみ かれ おな
で自分の罪のゆえにやせ衰え、また先祖たちの罪のゆえに彼らと同じよ
おとろ
うにやせ衰えるであろう。
かれ じぶん つみ せんぞ つみ
四〇しかし、彼らがもし、自分の罪と、先祖たちの罪、すなわち、わたし
はんぎゃく さか あゆ こくはく
に反 逆し、またわたしに逆らって歩んだことを告白するならば、 四一た
かれ さか あゆ かれ てき くに ひ い
といわたしが彼らに逆らって歩み、彼らを敵の国に引いて行っても、も
かれ む かつれい こころ くだ つみ ばつ う
し彼らの無割礼の心が砕かれ、あまんじて罪の罰を受けるならば、四二そ
むす けいやく おも おこ むす
のときわたしはヤコブと結んだ契約を思い起し、またイサクと結んだ
けいやく むす けいやく おも おこ ち おも おこ
契約およびアブラハムと結んだ契約を思い起し、またその地を思い起す
かれ ち はな ち あ は あいだ ち
であろう。 四三しかし、彼らが地を離れて地が荒れ果てている間、地はそ
あんそく たの かれ つみ ばつ う
の安息を楽しむであろう。彼らはまた、あまんじて罪の罰を受けるであ
かれ かろ こころ さだ い
ろ う。彼 ら が わ た し の お き て を 軽 ん じ、 心 に わ た し の 定 め を 忌 み き
かれ てき
らったからである。 四四それにもかかわらず、なおわたしは彼らが敵の
くに かれ す い かれ ほろ つく
国におるとき、彼らを捨てず、また忌みきらわず、彼らを滅ぼし尽さず、
レビ記

かれ むす けいやく やぶ かれ
彼らと結んだわたしの契約を破ることをしないであろう。わたしは彼

123
かみ しゅ かれ せんぞ むす けいやく
らの神、主だからである。 四五わたしは彼らの先祖たちと結んだ契約を
かれ おも おこ かれ かみ
彼らのために思い起すであろう。彼らはわたしがその神となるために
くにぐに ひと め まえ ち みちび だ もの
国々の人の目の前で、エジプトの地から導き出した者である。わたしは
しゅ
主である﹄﹂。
しゅ さん じぶん ひとびと あいだ
四六 これらは主が、シナイ山で、自分とイスラエルの人々との間に、モー
た さだ りっぽう
セによって立てられた定めと、おきてと、律法である。
第二七章
しゅ い ひとびと い ひと
一主はモーセに言われた、 二﹁イスラエルの人々に言いなさい、
﹃人があ
ね づも したが しゅ み せいがん とき
なたの値積りに従 って主に身をささげる誓願をする時は、 三あなたの
ね づも さい さい おとこ ね づも せいじょ
値積りは、二十歳から六十歳までの男には、その値積りを聖所のシケル
したが ぎん おんな ね づも
に従 って銀五十シケルとし、四 女には、その値積りは三十シケルとしな
レビ記

さい さい おとこ ね づも
ければならない。 五また五歳から二十歳までは、男にはその値積りを二

124
おんな げつ
十シケルとし、女には十シケルとしなければならない。 六一か月から五
さい おとこ ね づも ぎん おんな ね づも ぎん
歳までは、男にはその値積りを銀五シケルとし、女にはその値積りを銀
さいいじょう おとこ ね づも
三シケルとしなければならない。 七また六十歳以上は、男にはその値積
おんな
りを十五シケルとし、女には十シケルとしなければならない。 八もしそ
ひと まず ね づも おう さいし
の人が貧しくて、あなたの値積りに応じることができないならば、祭司
まえ た さいし ね づも う さいし せいがんしゃ
の前に立ち、祭司の値積りを受けなければならない。祭司はその誓願者
ちから したが ね づも
の力に従 って値積らなければならない。
しゅ そな もの かちく ひと しゅ
主に供え物とすることができる家畜で、人が主にささげるものはすべ

せい もの だいよう よ
て聖なる物となる。 一〇ほかのものをそれに代用してはならない。良い
もの わる もの わる もの よ もの と か かちく
物を悪い物に、悪い物を良い物に取り換えてはならない。もし家畜と
かちく と か もの と か もの とも せい
家畜とを取り換えるならば、その物も、それと取り換えた物も共に聖な
もの けが かちく しゅ そな もの
る物となるであろう。 一一もしそれが汚れた家畜で、主に供え物として
ひと かちく さいし まえ ひ
ささげられないものであるならば、その人はその家畜を祭司の前に引い
レビ記

さいし よ わる したが ね づも
てこなければならない。 一二祭司はその良い悪いに従 って、それを値積

125
さいし ねづも
らなければならない。それは祭司が値積るとおりになるであろう。 一三
ひと ね づも ぶん
もしその人が、それをあがなおうとするならば、その値積りにその五分
くわ
の一を加えなければならない。
ひと じぶん いえ しゅ せい もの さいし
もし人が自分の家を主に聖なる物としてささげるときは、祭司はそ
一四
よ わる したが ね づも さいし
の良い悪いに従 って、それを値積らなければならない。それは祭司が
ね づも いえ ひと
値積ったとおりになるであろう。 一五もしその家をささげる人が、それ
ね づも かね ぶん くわ
をあがなおうとするならば、その値積りの金に、その五分の一を加えな
かれ
ければならない。そうすれば、それは彼のものとなるであろう。
ひと そうぞく はたけ いちぶ しゅ
もし人が相続した畑の一部を主にささげるときは、あなたはそこに
一六
たね たしょう おう ね づも おおむぎ
まく種の多少に応じて、値積らなければならない。すなわち、大麦一ホ
たね ぎん ね づも はたけ
メルの種を銀五十シケルに値積らなければならない。 一七もしその畑を
とし あたい ね づも
ヨベルの年からささげるのであれば、その価はあなたの値積りのとおり
はたけ とし のち
になるであろう。 一八もしその畑をヨベルの年の後にささげるのであれ
レビ記

さいし とし のこ とし かず したが かね かぞ
ば、祭司はヨベルの年までに残っている年の数に従 ってその金を数え、

126
ね づも ひ
そ れ を あ な た の 値積 り か ら さ し 引 か な け れ ば な ら な い。 一九も し ま た、
はたけ ひと ね づも
その畑をささげる人が、それをあがなおうとするならば、あなたの値積
かね ぶん くわ かれ
りの金にその五分の一を加えなければならない。そうすれば、それは彼
き はたけ
のものと決まるであろう。 二〇しかし、もしその畑をあがなわず、またそ
た ひと う
れを他の人に売るならば、それはもはやあがなうことができないであろ
はたけ とし きげん き ほうのう はたけ
う。 二一その畑は、ヨベルの年になって期限が切れるならば、奉納の畑と
おな しゅ せい もの さいし しょゆう
同じく、主の聖なる物となり、祭司の所有となるであろう。 二二もしまた
そうぞく はたけ いちぶ か はたけ しゅ とき さいし ね づも
相続した畑の一部でなく、買った畑を主にささげる時は、二三祭司は値積
とし かね かぞ ひと ね
りしてヨベルの年までの金を数えなければならない。その人はその値
づも かね ひ しゅ せい もの
積りの金をその日に主にささげて、聖なる物としなければならない。 二四
とし はたけ う ぬし ち そうぞくしゃ かえ
ヨベルの年にその畑は売り主であるその地の相続者に返るであろう。 二
ね づも せいじょ
五すべてあなたの値積りは聖所のシケルによってしなければならない。
二十ゲラを一シケルとする。
レビ記

かちく しゅ
二六 しかし、家畜のういごは、ういごとしてすでに主のものだから、だれ

127
うし ひつじ しゅ
もこれをささげてはならない。牛でも羊でも、それは主のものである。
けが かちく ね づも ぶん くわ
二七もし汚れた家畜であるならば、あなたの値積りにその五分の一を加
ひと
えて、その人はこれをあがなわなければならない。もしあがなわないな
ね づも したが う
らば、それを値積りに従 って売らなければならない。
ひと じぶん も ほうのうぶつ しゅ
二八ただし、人が自分の持っているもののうちから奉納物として主にさ
ひと かちく そうぞく はたけ
さげたものは、人であっても、家畜であっても、また相続の畑であって

も、い っ さ い こ れ を 売 っ て は な ら な い。ま た あ が な っ て は な ら な い。
ほうのうぶつ しゅ ぞく せい もの ひと
奉納物はすべて主に属するいと聖なる物である。 二九またすべて人のう
ほうのうぶつ ひと かれ かなら
ちから奉納物としてささげられた人は、あがなってはならない。彼は必
ころ
ず殺されなければならない。
ち ぶん ち さんぶつ き み しゅ
三〇地の十分の一は地の産物であれ、木の実であれ、すべて主のもので
しゅ せい もの ひと ぶん
あって、主に聖なる物である。 三一もし人がその十分の一をあがなおう
とき ぶん くわ うし
とする時は、それにその五分の一を加えなければならない。 三二牛また
レビ記

ひつじ ぶん ぼくしゃ した ばんめ とお


は羊の十分の一については、すべて牧者のつえの下を十番目に通るもの

128
しゅ せい もの よ わる と
は、主に聖なる物である。 三三その良い悪いを問うてはならない。また
と か と か と
それを取り換えてはならない。もし取り換えたならば、それと、その取
か とも せい もの
り換えたものとは、共に聖なる物となるであろう。それをあがなうこと
はできない﹄﹂。
しゅ さん ひとびと めい
これらは主が、シナイ山で、イスラエルの人々のために、モーセに命
三四
いまし
じられた戒めである。
レビ記

129
みんすう き
民数記
第一章
くに で つぎ とし がつ にち しゅ あらの
エジプトの国を出た次の年の二月一日に、主はシナイの荒野におい

かいけん まくや い
て、会見の幕屋で、モーセに言われた、 二﹁あなたがたは、イスラエル
ひとびと ぜんかいしゅう しぞく ふ そ いえ ちょうさ
の人々の全 会 衆を、その氏族により、その父祖の家によって調査し、そ
だんし な かず かぞ そうすう え
のすべての男子の名の数を、ひとりびとり数えて、その総数を得なさい。
せんそう で さいいじょう もの
イスラエルのうちで、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者

ぶたい かぞ
を、あなたとアロンとは、その部隊にしたがって数えなければならない。
ぶぞく ふ そ いえ ちょう
また、すべての部族は、おのおの父祖の家の長たるものを、ひとりず

だ きょうりょく
つ出して、あなたがたと協 力させなければならない。 五すなわち、あな
きょうりょく ひとびと な つぎ
たがたに協 力すべき人々の名は、次のとおりである。ルベンからはシ
民数記

こ こ
デウルの子エリヅル。 六シメオンからはツリシャダイの子シルミエル。

0
こ こ
七ユダからはアミナダブの子ナション。 八イッサカルからはツアルの子
こ こ
ネタニエル。 九ゼブルンからはヘロンの子エリアブ。 一〇ヨセフの子た

ちのうち、エフライムからはアミホデの子エリシャマ、マナセからはパ
こ こ
ダヅルの子ガマリエル。 一一ベニヤミンからはギデオニの子アビダン。

一二 ダンからはアミシャダイの子アヒエゼル。 一三アセルからはオクラ
こ こ
ンの子パギエル。 一四ガドからはデウエルの子エリアサフ。 一五ナフタリ
こ かいしゅう えら だ
からはエナンの子アヒラ﹂。 一六これらは会 衆のうちから選び出された
ひとびと ふ そ ぶぞく しぞく
人々で、その父祖の部族のつかさたち、またイスラエルの氏族のかしら
たちである。
な かか ひとびと ひ つ
一七 こうして、モーセとアロンが、ここに名を掲げた人々を引き連れて、
がつ にち かいしゅう あつ かれ しぞく
一八 二月一日に会 衆をことごとく集めたので、彼らはその氏族により、
ふ そ いえ な かず さいいじょう
その父祖の家により、その名の数にしたがって二十歳以上のものが、ひ
とうろく しゅ めい
と り び と り 登録 し た。 一 九主 が 命 じ ら れ た よ う に、モ ー セ は シ ナ イ の
民数記

あらの かれ かぞ
荒野で彼らを数えた。

1
ちょうし こ うま
二〇 すなわち、イスラエルの長子ルベンの子たちから生れたものを、その
しぞく ふ そ いえ しら せんそう で
氏族により、その父祖の家によって調べ、すべて戦争に出ることのでき
さいいじょう だんし な かず え ぶぞく
る二十歳以上の男子の名の数を、ひとりびとり得たが、二一ルベンの部族
かぞ にん
のうちで、数えられたものは四万六千五百人であった。
こ うま しぞく ふ そ
二二 またシメオンの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖
いえ しら せんそう で さいいじょう だんし
の家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の男子の
な かず え ぶぞく かぞ
名の数を、ひとりびとり得たが、 二三シメオンの部族のうちで、数えられ
にん
たものは五万九千三百人であった。
こ うま しぞく ふ そ いえ
二四 またガドの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家
しら せんそう で さいいじょう もの な かず
によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数
え ぶぞく かぞ
を得たが、二五ガドの部族のうちで、数えられたものは四万五千六百五十
にん
人であった。
こ うま しぞく ふ そ いえ
二六 ユダの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家に
民数記

しら せんそう で さいいじょう もの な かず
よって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数を

2
え ぶぞく かぞ にん
得たが、 二七ユダの部族のうちで、数えられたものは七万四千六百人で
あった。
こ うま しぞく ふ そ
二八 イッサカルの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の
いえ しら せんそう で さいいじょう もの な
家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の
かず え ぶぞく かぞ
数を得たが、二九イッサカルの部族のうちで、数えられたものは五万四千
にん
四百人であった。
こ うま しぞく ふ そ いえ
三〇 ゼブルンの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家
しら せんそう で さいいじょう もの な かず
によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数
え ぶぞく かぞ
を得たが、三一ゼブルンの部族のうちで、数えられたものは五万七千四百
にん
人であった。
こ こ うま
三二 ヨセフの子たちのうち、エフライムの子たちから生れたものを、その
しぞく ふ そ いえ しら せんそう で
氏族により、その父祖の家によって調べ、すべて戦争に出ることのでき
さいいじょう もの な かず え ぶぞく かぞ
る二十歳以上の者の名の数を得たが、三三エフライムの部族のうちで、数
民数記

にん
えられたものは四万五百人であった。

3
こ うま しぞく ふ そ いえ
三四 マナセの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家に
しら せんそう で さいいじょう もの な かず
よって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数を
え ぶぞく かぞ にん
得たが、三五マナセの部族のうちで、数えられたものは三万二千二百人で
あった。
こ うま しぞく ふ そ
三六 ベニヤミンの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の
いえ しら せんそう で さいいじょう もの な
家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の
かず え ぶぞく かぞ
数を得たが、三七ベニヤミンの部族のうちで、数えられたものは三万五千
にん
四百人であった。
こ うま しぞく ふ そ いえ
三八 ダンの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家に
しら せんそう で さいいじょう もの な かず
よって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数を
え ぶぞく かぞ にん
得たが、 三九ダンの部族のうちで、数えられたものは六万二千七百人で
あった。
こ うま しぞく ふ そ いえ
四〇 アセルの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家に
民数記

しら せんそう で さいいじょう もの な かず
よって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数を

4
え ぶぞく かぞ にん
得たが、四一アセルの部族のうちで、数えられたものは四万一千五百人で
あった。
こ うま しぞく ふ そ いえ
四二 ナフタリの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家
しら せんそう で さいいじょう もの な かず
によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数
え ぶぞく かぞ
を得たが、 四三ナフタリの部族のうちで、数えられたものは、五万三千四
にん
百人であった。
かぞ ひとびと
四四 これらが数えられた人々であって、モーセとアロンとイスラエルの
かぞ ひとびと にん
つかさたちとが数えた人々である。そのつかさたちは十二人であって、
ふ そ いえ で
おのおのその父祖の家のために出たものである。 四五そしてイスラエル
ひとびと ふ そ いえ かぞ もの
の人々のうち、その父祖の家にしたがって数えられた者は、すべてイス
せんそう で さいいじょう もの
ラエルのうち、戦争に出ることのできる二十歳以上の者であって、四六そ
かぞ もの あ にん
の数えられた者は合わせて六十万三千五百五十人であった。
ふ そ ぶぞく かぞ
四七 しかし、レビびとは、その父祖の部族にしたがって、そのうちに数え
民数記

しゅ い
られなかった。 四八すなわち、主はモーセに言われた、四九﹁あなたはレビ

5
ぶぞく かぞ そうすう ひとびと
の部族だけは数えてはならない。またその総数をイスラエルの人々の
かぞ まくや
うちに数えあげてはならない。 五〇あなたはレビびとに、あかしの幕屋
うつわ ふぞく もの かんり
と、そのもろもろの器と、それに附属するもろもろの物を管理させなさ
かれ まくや うつわ も はこ つとめ
い。彼らは幕屋と、そのもろもろの器とを持ち運び、またそこで務をし、
まくや しゅくえい まくや すす とき
幕屋のまわりに宿 営しなければならない。 五一幕屋が進む時は、レビび
と まくや は とき く た
とがこれを取りくずし、幕屋を張る時は、レビびとがこれを組み立てな
ひと ちか とき ころ
ければならない。ほかの人がこれに近づく時は殺されるであろう。 五二
ひとびと ぶたい しゅくえい
イスラエルの人々はその部隊にしたがって、おのおのその宿 営に、おの
はた てんまく は
おのその旗のもとにその天幕を張らなければならない。 五三しかし、レ
まくや しゅくえい
ビびとは、あかしの幕屋のまわりに宿 営しなければならない。そうす
しゅ いか ひとびと かいしゅう うえ のぞ
れば、主の怒りはイスラエルの人々の会 衆の上に臨むことがないであ
まくや つとめ まも
ろう。レビびとは、あかしの幕屋の務を守らなければならない﹂。 五四イ
ひとびと しゅ めい
スラエルの人々はこのようにして、すべて主がモーセに命じられたよう
民数記

おこな
に行 った。

6
第二章
しゅ い ひとびと
一主はモーセとアロンに言われた、二﹁イスラエルの人々は、おのおのそ
ぶたい はた ふ そ いえ はたじるし しゅくえい
の部隊の旗のもとに、その父祖の家の旗 印にしたがって宿 営しなけれ
かいけん まくや む しゅくえい
ばならない。また会見の幕屋のまわりに、それに向かって宿 営しなけ
ひ で ほう ひがし しゅくえい
ればならない。 三すなわち、日の出る方、 東に宿 営するものは、ユダの
しゅくえい はた もの ぶたい しゅくえい
宿 営の旗につく者であって、その部隊にしたがって宿 営し、アミナダブ
こ こ ぶたい
の子ナションが、ユダの子たちのつかさとなるであろう。 四その部隊、
かぞ もの にん
す な わ ち、数 え ら れ た 者 は 七 万 四 千 六 百 人 で あ る。 五そ の か た わ ら に
しゅくえい もの ぶぞく こ
宿 営する者はイッサカルの部族で、ツアルの子ネタニエルが、イッサカ
こ ぶたい かぞ
ルの子たちのつかさとなるであろう。 六その部隊、すなわち、数えられ
もの にん つぎ ぶぞく こ
た者は五万四千四百人である。 七次はゼブルンの部族で、ヘロンの子エ
こ ぶたい
リアブが、ゼブルンの子たちのつかさとなるであろう。 八その部隊、す
民数記

かぞ もの にん しゅくえい
なわち、数えられた者は五万七千四百人である。 九ユダの宿 営の、その

7
ぶたい かぞ もの あ にん
部隊にしたがって数えられた者は、合わせて十八万六千四百人である。
もの さき すす
これらの者は、まっ先に進まなければならない。
みなみ ほう しゅくえい はた もの ぶたい
一〇 南の方では、ルベンの宿 営の旗につく者が、その部隊にしたがって
こ こ
おり、シデウルの子エリヅルが、ルベンの子たちのつかさとなるであろ
ぶたい かぞ もの にん
う。 一一その部隊、すなわち、数えられた者は四万六千五百人である。 一
しゅくえい もの ぶぞく こ
二そのかたわらに宿 営する者はシメオンの部族で、ツリシャダイの子

シ ル ミ エ ル が、シ メ オ ン の 子 た ち の つ か さ と な る で あ ろ う。 一 三そ の
ぶたい かぞ もの にん つぎ
部隊、すなわち、数えられた者は五万九千三百人である。 一四次はガドの
ぶぞく こ こ
部族で、デウエルの子エリアサフが、ガドの子たちのつかさとなるであ
ぶたい かぞ もの にん
ろう。 一五その部隊、すなわち、数えられた者は四万五千六百五十人であ
しゅくえい ぶたい かぞ もの あ
る。 一六ルベンの宿 営の、その部隊にしたがって数えられた者は、合わせ
にん もの ばんめ すす
て十五万一千四百五十人である。これらの者は二番目に進まなければ
ならない。
民数記

つぎ かいけん まくや しゅくえい しゅくえい


一七 その次に会見の幕屋を、レビびとの宿 営とともに、もろもろの宿 営

8
ちゅうおう すす かれ しゅくえい おな
の 中 央 に し て 進 ま な け れ ば な ら な い。彼 ら は 宿 営 す る の と 同 じ よ う
い ち はた すす
に、おのおのその位置で、その旗にしたがって進まなければならない。
にし ほう しゅくえい はた もの ぶたい
一八 西 の 方 で は、エ フ ラ イ ム の 宿 営 の 旗 に つ く 者 が、そ の 部隊 に し た
こ こ
がっており、アミホデの子エリシャマが、エフライムの子たちのつかさ
ぶたい かぞ もの にん
となるであろう。 一九その部隊、すなわち、数えられた者は四万五百人で
ぶぞく こ
ある。 二〇そのかたわらにマナセの部族がおって、パダヅルの子ガマリ
こ ぶたい
エルが、マナセの子たちのつかさとなるであろう。 二一その部隊、すなわ
かぞ もの にん つぎ ぶぞく
ち、数えられた者は三万二千二百人である。 二二次にベニヤミンの部族
こ こ
がおって、ギデオニの子アビダンが、ベニヤミンの子たちのつかさとな
ぶたい かぞ もの にん
るであろう。 二三その部隊、すなわち、数えられた者は三万五千四百人で
しゅくえい ぶたい かぞ もの
ある。 二四エフライムの宿 営の、その部隊にしたがって数えられた者は、
あ にん もの ばんめ すす
合わせて十万八千百人である。これらの者は三番目に進まなければな
らない。
民数記

きた ほう しゅくえい はた もの ぶたい
二五 北の方では、ダンの宿 営の旗につく者が、その部隊にしたがってお

9
こ こ
り、アミシャダイの子アヒエゼルが、ダンの子たちのつかさとなるであ
ぶたい かぞ もの にん
ろう。 二六その部隊、すなわち、数えられた者は六万二千七百人である。
しゅくえい もの ぶぞく
二七 そのかたわらに宿 営する者は、アセルの部族であって、オクランの
こ こ ぶたい
子パギエルが、アセルの子たちのつかさとなるであろう。 二八その部隊、
かぞ もの にん つぎ
すなわち、数えられた者は四万一千五百人である。 二九次にナフタリの
ぶぞく こ こ
部族がおって、エナンの子アヒラが、ナフタリの子たちのつかさとなる
ぶたい かぞ もの にん
であろう。 三〇その部隊、すなわち、数えられた者は五万三千四百人であ
しゅくえい かぞ もの あ にん
る。 三一ダンの宿 営の、数えられた者は合わせて十五万七千六百人であ
もの はた さいご すす
る。これらの者はその旗にしたがって、最後に進まなければならない﹂。
ひとびと ふ そ いえ かぞ
三二 これがイスラエルの人々の、その父祖の家にしたがって数えられた
ひとびと しゅくえい ぶたい かぞ もの
人々である。もろもろの宿 営の、その部隊にしたがって数えられた者
あ にん
は合わせて六十万三千五百五十人であった。 三三しかし、レビびとはイ
ひとびと かぞ しゅ めい
スラエルの人々のうちに数えられなかった。主がモーセに命じられた
民数記

とおりである。

10
ひとびと しゅ めい おこな
三四 イスラエルの人々は、すべて主がモーセに命じられたとおりに行い、
はた しゅくえい しぞく したが ふ そ いえ
その旗にしたがって宿 営し、おのおのその氏族に従い、その父祖の家に
したが すす
従 って進んだ。
第三章
しゅ さん かた とき いちぞく つぎ
一主がシナイ山で、モーセと語られた時の、アロンとモーセの一族は、次
こ な つぎ ちょうし
のとおりであった。 二アロンの子たちの名は、次のとおりである。長子
つぎ こ
はナダブ、次はアビウ、エレアザル、イタマル。 三これがアロンの子た
な かれ あぶら そそ さいし しょく にん さいし
ちの名であって、彼らはみな油を注がれ、祭司の職に任じられて祭司と
あらの ことび しゅ まえ
なった。 四ナダブとアビウとは、シナイの荒野において、異火を主の前
しゅ まえ し かれ こども
にささげたので、主の前で死んだ。彼らには子供がなかった。そしてエ
ちち まえ さいし つとめ
レアザルとイタマルとが、父アロンの前で祭司の務をした。
民数記

しゅ い ぶぞく め よ さいし
五主はまたモーセに言われた、六﹁レビの部族を召し寄せ、祭司アロンの

11
まえ た つか かれ かいけん まくや まえ
前に立って仕えさせなさい。 七彼らは会見の幕屋の前にあって、アロン
ぜんかいしゅう つとめ まくや はたら
と全 会 衆のために、その務をし、幕屋の働きをしなければならない。 八
かれ かいけん まくや うつわ ひとびと
すなわち、彼らは会見の幕屋の、すべての器をまもり、イスラエルの人々
つとめ まくや はたら
のために務をし、幕屋の働きをしなければならない。 九あなたはレビび
こ あた かれ
とを、アロンとその子たちとに、与えなければならない。彼らはイスラ
ひとびと まった あた
エルの人々のうちから、 全くアロンに与えられたものである。 一〇あな
こ た さいし しょく まも
たはアロンとその子たちとを立てて、祭司の職を守らせなければならな
ひと ちか ころ
い。ほかの人で近づくものは殺されるであろう﹂。
しゅ い ひとびと
主はまたモーセに言われた、 一二﹁わたしは、イスラエルの人々のう
一一
はじ うま かわ
ちの初めに生れたすべてのういごの代りに、レビびとをイスラエルの
ひとびと と
人々のうちから取るであろう。レビびとは、わたしのものとなるであろ
う。 一三ういごはすべてわたしのものだからである。わたしは、エジプ
くに う ころ ひ
トの国において、すべてのういごを撃ち殺した日に、イスラエルのうい
民数記

ひと けもの せいべつ き かれ
ごを、人も獣も、ことごとく聖別して、わたしに帰せしめた。彼らはわ

12
しゅ
たしのものとなるであろう。わたしは主である﹂。
しゅ あらの い こ
一四 主はまたシナイの荒野でモーセに言われた、 一五﹁あなたはレビの子
ふ そ いえ しぞく かぞ
たちを、その父祖の家により、その氏族によって数えなさい。すなわち、
げついじょう だんし かぞ しゅ
一 か 月以上 の 男子 を 数 え な け れ ば な ら な い﹂。 一六そ れ で モ ー セ は 主 の
ことば めい かぞ こ
言葉にしたがって、命じられたとおりに、それを数えた。 一七レビの子た
な つぎ
ちの名は次のとおりである。すなわち、ゲルション、コハテ、メラリ。 一
こ な しぞく つぎ
八ゲルションの子たちの名は、その氏族によれば次のとおりである。す
こ しぞく
なわち、リブニ、シメイ。 一九コハテの子たちは、その氏族によれば、ア
こ しぞく
ムラム、イヅハル、ヘブロン、ウジエル。 二〇メラリの子たちは、その氏族
ふ そ いえ しぞく
によれば、マヘリ、ムシ。これらはその父祖の家によるレビの氏族であ
る。
しぞく しぞく で
二一 ゲルションからリブニびとの氏族と、シメイびとの氏族とが出た。
しぞく かぞ もの
これらはゲルションびとの氏族である。 二二その数えられた者、すなわ
民数記

げついじょう だんし かず あ にん
ち、一 か 月以上 の 男子 の 数 は 合 わ せ て 七 千 五 百 人 で あ っ た。 二 三ゲ ル

13
しぞく まくや こうほう にし ほう しゅくえい
ションびとの氏族は幕屋の後方、すなわち、西の方に宿 営し、二四ラエル
こ ふ そ いえ
の子エリアサフが、ゲルションびとの父祖の家のつかさとなるであろ
かいけん まくや こ つとめ まくや てんまく
う。 二五会見の幕屋の、ゲルションの子たちの務は、幕屋、天幕とそのお
かいけん まくや いりぐち にわ まくや さいだん
おい、会見の幕屋の入口のとばり、 二六庭のあげばり、幕屋と祭壇のまわ
にわ いりぐち もち もの まも
りの庭の入口のとばり、そのひも、およびすべてそれに用いる物を守る
ことである。
しぞく しぞく
二七 また、コハテからアムラムびとの氏族、イヅハルびとの氏族、ヘブロ
しぞく しぞく で しぞく
ンびとの氏族、ウジエルびとの氏族が出た。これらはコハテびとの氏族
げついじょう だんし かず あ にん
で あ る。 二八一 か 月以上 の 男子 の 数 は、合 わ せ て 八 千 六 百 人 で あ っ て、
せいじょ つとめ まも もの こ しぞく まくや みなみ
聖所の務を守る者たちである。 二九コハテの子たちの氏族は、幕屋の南
ほう しゅくえい こ しぞく
の 方 に 宿 営 し、 三〇ウ ジ エ ル の 子 エ リ ザ パ ン が、コ ハ テ び と の 氏族 の
ふ そ いえ かれ つとめ けいやく はこ つくえ
父祖 の 家 の つ か さ と な る で あ ろ う。 三 一彼 ら の 務 は、契約 の 箱、 机、
しょくだい さいだん せいじょ つとめ もち うつわ
燭 台、二つの祭壇、聖所の務に用いる器、とばり、およびすべてそれに
民数記

もち もの まも さいし こ
用いる物を守ることである。 三二祭司アロンの子エレアザルが、レビび

14
ちょう せいじょ つとめ まも かんとく
とのつかさたちの長となり、聖所の務を守るものたちを監督するであろ
う。
しぞく しぞく で
メラリからマヘリびとの氏族と、ムシびとの氏族とが出た。これら
三三
しぞく かぞ もの げついじょう
はメラリの氏族である。 三四その数えられた者、すなわち、一か月以上の
だんし かず あ にん こ
男子の数は、合わせて六千二百人であった。 三五アビハイルの子ツリエ
しぞく ふ そ いえ かれ まくや
ルが、メラリの氏族の父祖の家のつかさとなるであろう。彼らは幕屋の
きた ほう しゅくえい こ つとめ
北の方に宿 営しなければならない。 三六メラリの子たちが、その務とし
かんり まくや わく よこぎ はしら ざ
て管理すべきものは、幕屋の枠、その横木、その柱、その座、そのすべ
うつわ もち もの にわ はしら
ての器、およびそれに用いるすべての物、三七ならびに庭のまわりの柱と
ざ くぎ
その座、その釘、およびそのひもである。
まくや まえ ひがし ほう かいけん まくや ひがし ほう しゅくえい
また幕屋の前、その東の方、すなわち、会見の幕屋の東の方に宿 営
三八
もの こ
する者は、モーセとアロン、およびアロンの子たちであって、イスラエ
ひとびと つとめ かわ せいじょ つとめ まも ひと ちか
ルの人々の務に代って、聖所の務を守るものである。ほかの人で近づく
民数記

もの ころ しゅ ことば
者は殺されるであろう。 三九モーセとアロンとが、主の言葉にしたがっ

15
かぞ しぞく かぞ もの げついじょう
て数えたレビびとで、その氏族によって数えられた者、一か月以上の
だんし あ にん
男子は、合わせて二万二千人であった。
しゅ い ひとびと
主はまたモーセに言われた、﹁あなたは、イスラエルの人々のうち、す
四〇
だんし げついじょう かぞ な かず しら
べてういごである男子の一か月以上のものを数えて、その名の数を調べ
しゅ ひとびと
なさい。 四一また主なるわたしのために、イスラエルの人々のうちの、す
かわ と ひとびと かちく
べてのういごの代りにレビびとを取り、またイスラエルの人々の家畜の
かわ かちく と
うちの、すべてのういごの代りに、レビびとの家畜を取りなさい﹂。 四二
しゅ めい ひとびと
そこでモーセは主の命じられたように、イスラエルの人々のうちの、す
かぞ かぞ だんし
べてのういごを数えた。 四三その数えられたういごの男子、すべて一か
げついじょう もの な かず にん
月以上の者は、その名の数によると二万二千二百七十三人であった。
しゅ い ひとびと
主はモーセに言われた、四五
四四 ﹁あなたはイスラエルの人々のうちの、す
かわ と かれ かちく かわ
べてのういごの代りに、レビびとを取り、また彼らの家畜の代りに、レ
かちく と
ビびとの家畜を取りなさい。レビびとはわたしのものとなる。わたし
民数記

しゅ ひとびと かず
は主である。 四六またイスラエルの人々のういごは、レビびとの数を二

16
にんちょうか
百七十三人超過しているから、そのあがないのために、四七そのあたまか
ぎん ご と
ずによって、ひとりごとに銀五シケルを取らなければならない。すなわ
せいじょ と
ち、聖所のシケルにしたがって、それを取らなければならない。一シケ
ちょうか もの かね
ルは二十ゲラである。 四八あなたは、その超過した者をあがなう金を、ア
こ わた
ロンと、その子たちに渡さなければならない﹂。 四九そこでモーセは、レ
もの ちょうか ひとびと かね
ビびとによってあがなわれた者を超過した人々から、あがないの金を
と ひとびと せいじょ
取った。 五〇すなわち、モーセは、イスラエルの人々のういごから、聖所
ぎん と
のシケルにしたがって千三百六十五シケルの銀を取り、 五一そのあがな
かね しゅ ことば こ わた しゅ
いの金を、主の言葉にしたがって、アロンとその子たちに渡した。主が
めい
モーセに命じられたとおりである。
第四章
民数記

しゅ い こ
主はまたモーセとアロンに言われた、二﹁レビの子たちのうちから、コ

17
こ そうすう しぞく ふ そ いえ しら
ハテの子たちの総数を、その氏族により、その父祖の家にしたがって調
さいいじょう さい い か つとめ かいけん まくや はたら
べ、 三三十歳以上五十歳以下で、 務につき、会見の幕屋で働くことので
もの かぞ こ かいけん まくや
きる者を、ことごとく数えなさい。 四コハテの子たちの、会見の幕屋の
つとめ せい もの つぎ
務は、いと聖なる物にかかわるものであって、次のとおりである。 五す
しゅくえい すす とき こ
なわち、 宿 営の進む時に、アロンとその子たちとは、まず、はいって、
へだ たれまく と はこ
隔ての垂幕を取りおろし、それをもって、あかしの箱をおおい、 六その
うえ かわ ほどこ うえ そうあおいろ ぬの
上に、じゅごんの皮のおおいを施し、またその上に総青色の布をうちか
かん い そな つくえ うえ あおいろ ぬの
け、環にさおをさし入れる。 七また供えのパンの机の上には、青色の布
うえ にゅうこう も さかずき はち かんさい びん なら
をうちかけ、その上に、さら、乳 香を盛る杯、鉢、および灌祭の瓶を並
た そな お ひいろ ぬの うえ
べ、また絶やさず供えるパンを置き、 八緋色の布をその上にうちかけ、
かわ い
じゅごんの皮のおおいをもって、これをおおい、さおをさし入れる。 九
あおいろ ぬの と しょくだい ひ しん き しん と
また青色の布を取って、燭 台とそのともし火ざら、芯切りばさみ、芯取
もち あぶら うつわ
りざら、およびそれに用いるもろもろの油の器をおおい、一〇じゅごんの
民数記

かわ しょくだい うつわ たんか の


皮のおおいのうちに、 燭 台とそのもろもろの器をいれて、担架に載せ

18
きん さいだん うえ あおいろ ぬの かわ
る。 一一また、金の祭壇の上に青色の布をうちかけ、じゅごんの皮のおお
い せいじょ つとめ もち
いで、これをおおい、そのさおをさし入れる。 一二また聖所の務に用いる
つとめ うつわ と あおいろ ぬの つつ かわ
務の器をみな取り、青色の布に包み、じゅごんの皮のおおいで、これを
たんか の さいだん はい と さ むらさき ぬの
おおって、担架に載せる。 一三また祭壇の灰を取り去って、 紫の布をそ
さいだん うえ うえ つとめ もち
の祭壇の上にうちかけ、 一四その上に、 務をするのに用いるもろもろの
うつわ ひ にく じゅうのう はち さいだん うつわ
器、すなわち、火ざら、肉さし、十 能、鉢、および祭壇のすべての器を
の うえ かわ
載せ、またその上に、じゅごんの皮のおおいをうちかけ、そしてさおを
い しゅくえい すす こ せいじょ
さ し 入 れ る。 一五 宿 営 の 進 む と き、ア ロ ン と そ の 子 た ち と が、聖所 と
せいじょ うつわ おわ のち こ
聖所のすべての器をおおうことを終ったならば、その後コハテの子たち
はこ かれ
は、それを運ぶために、はいってこなければならない。しかし、彼らは
せい もの ふ ふ し かいけん まくや
聖なる物に触れてはならない。触れると死ぬであろう。会見の幕屋の
もの こ はこ
うちの、これらの物は、コハテの子たちが運ぶものである。
さいし こ あぶら こう くんこう た そな
一六 祭司アロンの子エレアザルは、ともし油、香ばしい薫香、絶やさず供
民数記

そさい そそ あぶら まくや ぜんたい


える素祭および注ぎ油をつかさどり、また幕屋の全体と、そのうちにあ

19
せい もの ところ うつわ
るすべての聖なる物、およびその所のもろもろの器をつかさどらなけれ
ばならない﹂。
しゅ い
一七 主はまた、モーセとアロンに言われた、 一八﹁あなたがたはコハテび
いちぞく た かれ
との一族を、レビびとのうちから絶えさせてはならない。 一九彼らがい
せい もの ちか とき し いのち たも
と聖なる物に近づく時、死なないで、 命を保つために、このようにしな
こ かれ
さい、すなわち、アロンとその子たちが、まず、はいり、彼らをおのお
はたら と
のその働きにつかせ、そのになうべきものを取らせなさい。 二〇しかし、
かれ め せい もの み み
彼らは、はいって、ひと目でも聖なる物を見てはならない。見るならば

死ぬであろう﹂。
しゅ い こ
二一 主はまたモーセに言われた、 二二﹁あなたはまたゲルションの子たち
そうすう ふ そ いえ しぞく しら さい
の総数を、その父祖の家により、その氏族にしたがって調べ、 二三三十歳
いじょう さい い か つとめ かいけん まくや はたら もの
以上五十歳以下で、 務につき、会見の幕屋で働くことのできる者を、こ
かぞ しぞく つとめ はたら
と ご と く 数 え な さ い。 二四ゲ ル シ ョ ン び と の 氏族 の 務 と し て 働 く こ と
民数記

はこ もの つぎ かれ まくや まく かいけん
と、運ぶ物とは次のとおりである。 二五すなわち、彼らは幕屋の幕、会見

20
まくや うえ かわ
の幕屋およびそのおおいと、その上のじゅごんの皮のおおい、ならびに
かいけん まくや いりぐち はこ にわ まくや
会見の幕屋の入口のとばりを運び、二六また庭のあげばり、および幕屋と
さいだん にわ もん いりぐち もち
祭壇のまわりの庭の門の入口のとばりと、そのひも、ならびにそれに用
うつわ はこ かれ
いるすべての器を運ばなければならない。そして彼らはすべてこれら
はたら こ
のものについての働きをしなければならない。 二七ゲルションびとの子
つとめ はこ はたら
たちのすべての務、すなわち、その運ぶことと、 働くこととは、すべて
こ めい したが かれ
アロンとその子たちの命に従わなければならない。あなたがたは彼ら
はこ もの さだ まも
にすべてその運ぶべき物を定めて、これを守らせなければならない。 二八
こ しぞく かいけん まくや はたら
これはすなわちゲルションびとの子たちの氏族が、会見の幕屋でする働
かれ つとめ さいし こ し き
きであって、彼らの務は祭司アロンの子イタマルの指揮のもとにおかな
ければならない。
こ しぞく そ ふ いえ
二九メラリの子たちをもまたあなたはその氏族により、その祖父の家に
しら さいいじょう さい い か つとめ かいけん まくや
したがって調べ、三〇三十歳以上五十歳以下で、務につき、会見の幕屋の
民数記

はたら もの かぞ かれ かいけん
働きをすることのできる者を、ことごとく数えなさい。 三一彼らが会見

21
まくや つとめ はこ せきにん もの つぎ
の幕屋でするすべての務にしたがって、その運ぶ責任のある物は次のと
まくや わく よこぎ はしら ざ にわ
おりである。すなわち、幕屋の枠、その横木、その柱、その座、 三二庭の
はしら ざ くぎ うつわ
まわりの柱、その座、その釘、そのひも、またそのすべての器、および
もち かれ はこ せきにん
それに用いるすべてのものである。あなたがたは彼らが運ぶ責任のあ
うつわ な わ あ
る器を、その名によって割り当てなければならない。 三三これはすなわ
こ しぞく はたら かれ さいし こ
ちメラリの子たちの氏族の働きであって、彼らは祭司アロンの子イタマ
し き かいけん まくや はたら
ルの指揮のもとに、会見の幕屋で、このすべての働きをしなければなら
ない﹂。
かいしゅう こ
そこでモーセとアロン、および会 衆のつかさたちは、コハテの子た
三四
しぞく ふ そ いえ しら さいいじょう
ちをその氏族により、その父祖の家にしたがって調べ、三五三十歳以上五
さい い か つとめ かいけん まくや はたら もの
十歳以下で、 務につき、会見の幕屋で働くことのできる者を、ことごと
かぞ しぞく かぞ もの にん
く数えたが、 三六その氏族にしたがって数えられた者は二千七百五十人
しぞく かぞ もの
であった。 三七これはすなわち、コハテびとの氏族の数えられた者で、す
民数記

かいけん まくや はたら もの しゅ


べて会見の幕屋で働くことのできる者であった。モーセとアロンが、主

22
めい かぞ
のモーセによって命じられたところにしたがって数えたのである。
こ しぞく ふ そ いえ
またゲルションの子たちを、その氏族により、その父祖の家にした
三八
しら さいいじょう さい い か つとめ かいけん まくや はたら
がって調べ、三九三十歳以上五十歳以下で、務につき、会見の幕屋で働く
もの かぞ しぞく ふ そ
ことのできる者を、ことごとく数えたが、 四〇その氏族により、その父祖
いえ かぞ もの にん
の家にしたがって数えられた者は二千六百三十人であった。 四一これは
こ しぞく かぞ もの かいけん
すなわち、ゲルションの子たちの氏族の数えられた者で、すべて会見の
まくや はたら もの しゅ めい
幕屋で働くことのできる者であった。モーセとアロンが、主の命にした
かぞ
がって数えたのである。
こ しぞく しぞく ふ そ いえ
またメラリの子たちの氏族を、その氏族により、その父祖の家にした
四二
しら さいいじょう さい い か つとめ かいけん まくや はたら
がって調べ、四三三十歳以上五十歳以下で、務につき、会見の幕屋で働く
もの かぞ しぞく かぞ
ことのできる者を、ことごとく数えたが、四四その氏族にしたがって数え
もの にん こ
られた者は三千二百人であった。 四五これはすなわち、メラリの子たち
しぞく かぞ もの しゅ めい
の氏族の数えられた者で、モーセとアロンが、主のモーセによって命じ
民数記

かぞ
られたところにしたがって数えたのである。

23
四六 モーセとアロン、およびイスラエルのつかさたちは、レビびとを、そ
しぞく ふ そ いえ しら さいいじょう さい
の氏族により、その父祖の家にしたがって調べ、 四七三十歳以上五十歳
い か かいけん まくや つとめ はたら はこ はたら もの
以下で、会見の幕屋にはいって務の働きをし、また、運ぶ働きをする者
かぞ かぞ もの にん
を、ことごとく数えたが、四八その数えられた者は八千五百八十人であっ
かれ しゅ めい にん はたら
た。 四九彼らは主の命により、モーセによって任じられ、おのおのその働
はこ う も かれ しゅ
きにつき、かつその運ぶところを受け持った。こうして彼らは主のモー
めい かぞ
セに命じられたように数えられたのである。
第五章
しゅ い ひとびと めい
一主 は ま た モ ー セ に 言 わ れ た、 二﹁イ ス ラ エ ル の 人々 に 命 じ て、ら い
びょうにん りゅうしゅつ もの したい けが もの しゅくえい そと
病 人、 流 出のある者、死体にふれて汚れた者を、ことごとく宿 営の外
だ おとこ おんな かれ しゅくえい そと だ
に出させなさい。 三 男でも女でも、あなたがたは彼らを宿 営の外に出
民数記

かれ しゅくえい けが
してそこにおらせ、彼らに宿 営を汚させてはならない。わたしがその

24
なか す ひとびと
中 に 住 ん で い る か ら で あ る﹂。 四イ ス ラ エ ル の 人々 は そ の よ う に し て、
かれ しゅくえい そと だ しゅ い
彼らを宿 営の外に出した。すなわち、主がモーセに言われたようにイ
ひとびと い
スラエルの人々は行った。
しゅ い ひとびと つ おとこ
五主はまたモーセに言われた、 六﹁イスラエルの人々に告げなさい、
﹃男
おんな ひと おか つみ しゅ つみ え ひと
または女が、もし人の犯す罪をおかして、主に罪を得、その人がとがあ
もの とき おか つみ こくはく もの あたい ぶん
る者となる時は、 七その犯した罪を告白し、その物の価にその五分の一
くわ かれ おか あいてがた わた つぐな
を加えて、彼がとがを犯した相手方に渡し、そのとがをことごとく償わ
つぐな う と
な け れ ば な ら な い。 八し か し、も し、そ の と が の 償 い を 受 け 取 る べ き
しんぞく ひと とき しゅ つぐな さいし
親族も、その人にない時は、主にそのとがの償いをして、これを祭司に

帰せしめなければならない。なお、このほか、そのあがないをするため
もち しょくざい おひつじ さいし き
に用いた贖 罪の雄羊も、祭司に帰せしめなければならない。 九イスラエ
ひとびと さいし たずさ く せい もの
ルの人々が、祭司のもとに携えて来るすべての聖なるささげ物は、みな
さいし き ひと せい もの
祭司 に 帰 せ し め な け れ ば な ら な い。 一〇す べ て 人 の 聖 な る さ さ げ 物 は
民数記

さいし き ひと さいし あた もの さいし き


祭司に帰し、すべて人が祭司に与える物は祭司に帰するであろう﹄﹂。

25
しゅ い ひとびと つ
主はまたモーセに言われた、 一二﹁イスラエルの人々に告げなさい、
一一
ひと つま もの みち こと おっと つみ おか ひと
﹃もし人の妻たる者が、道ならぬ事をして、その夫に罪を犯し、 一三人が
かのじょ ね こと おっと め かく あらわ かのじょ み けが
彼女と寝たのに、その事が夫の目に隠れて現れず、彼女はその身を汚し
たい しょうにん かのじょ とき とら
たけれども、それに対する証 人もなく、彼女もまたその時に捕えられな
ばあい つま み けが おっと うたが こころ おこ
かった場合、一四すなわち、妻が身を汚したために、夫が疑いの心を起し
つま うたが つま み けが こと おっと うたが
て妻を疑うことがあり、または妻が身を汚した事がないのに、夫が疑い
こころ おこ つま うたが おっと つま さいし ともな
の心を起して妻を疑うことがあれば、 一五 夫は妻を祭司のもとに伴い、
かのじょ おおむぎ こな ぶん そな もの たずさ
彼女のために大麦の粉一エパの十分の一を供え物として携えてこなけ
うえ あぶら そそ にゅうこう
ればならない。ただし、その上に油を注いではならない。また乳 香を
くわ うたが そな もの おぼ そな もの つみ おぼ
加えてはならない。これは疑いの供え物、覚えの供え物であって罪を覚
えさせるものだからである。
さいし おんな ちか すす しゅ まえ た
祭司はその女を近く進ませ、主の前に立たせなければならない。 一七
一六
さいし つち うつわ せい みず い まくや と みず
祭司はまた土の器に聖なる水を入れ、幕屋のゆかのちりを取ってその水
民数記

い おんな しゅ まえ た おんな かみ け おぼ
に入れ、一八その女を主の前に立たせ、女にその髪の毛をほどかせ、覚え

26
そな もの うたが そな もの て も
の供え物すなわち、 疑いの供え物を、その手に持たせなければならな
さいし にが みず て と おんな ちか
い。そして祭司は、のろいの苦い水を手に取り、一九 女に誓わせて、これ
い ひと ね
に言わなければならない、﹁もし人があなたと寝たことがなく、またあな
おっと みち こと けが
たが、 夫のもとにあって、道ならぬ事をして汚れたことがなければ、の
にが みず がい あた
ろいの苦い水も、あなたに害を与えないであろう。 二〇しかし、あなた
おっと みち み けが おっと
が、もし夫のもとにあって、道ならぬことをして身を汚し、あなたの夫
ひと ね さいし おんな
でない人が、あなたと寝たことがあるならば、︱︱ 祭司はその女に、
二一
ちか ちか おんな い しゅ
のろいの誓いをもって誓わせ、その女に言わなければならない。︱︱主
はら たみ
はあなたのももをやせさせ、あなたの腹をふくれさせて、あなたを民の
うちの、のろいとし、また、ののしりとされるように。 二二また、のろい
みず はら はら
の水が、あなたの腹にはいってあなたの腹をふくれさせ、あなたのもも
とき おんな い
をやせさせるように﹂。その時、 女は﹁アァメン、アァメン﹂と言わな
ければならない。
民数記

さいし か もの か にが みず あら おと
祭司は、こののろいを書き物に書きしるし、それを苦い水に洗い落
二三

27
おんな みず の
し、 二四 女にそののろいの水を飲ませなければならない。そののろいの
みず かのじょ にが さいし おんな
水は彼女のうちにはいって苦くなるであろう。 二五そして祭司はその女
て うたが そな もの と そな もの しゅ まえ ゆ うご
の手から疑いの供え物を取り、その供え物を主の前に揺り動かして、そ
さいだん も さいし そな もの
れを祭壇に持ってこなければならない。 二六祭司はその供え物のうちか
おぼ ぶん ひとにぎ と さいだん や のち おんな
ら、覚えの分、一握りを取って、それを祭壇で焼き、その後、 女にその
みず の みず おんな の とき
水を飲ませなければならない。 二七その水を女に飲ませる時、もしその
おんな み けが おっと つみ おか こと みず おんな
女が身を汚し、夫に罪を犯した事があれば、そののろいの水は女のうち
にが はら おんな たみ
にはいって苦くなり、その腹はふくれ、ももはやせて、その女は民のう
おんな み けが こと
ちののろいとなるであろう。 二八しかし、もし女が身を汚した事がなく、
きよ がい う こ う
清いならば、害を受けないで、子を産むことができるであろう。
うたが とき つま もの おっと
二九 こ れ は 疑 い の あ る 時 の お き て で あ る。妻 た る 者 が 夫 の も と に あ っ
みち こと み けが とき おっと もの うたが こころ おこ
て、道ならぬ事をして身を汚した時、三〇または夫たる者が疑いの心を起
つま うたが とき かれ おんな しゅ まえ た さいし
して、妻を疑う時、彼はその女を主の前に立たせ、祭司はこのおきてを、
民数記

かのじょ おこな おっと つみ


ことごとく彼女に行わなければならない。 三一こうするならば、 夫は罪

28
つま つみ お
がなく、妻は罪を負うであろう﹄﹂。
第六章
しゅ い ひとびと い おとこ
一主はまたモーセに言われた、 二﹁イスラエルの人々に言いなさい、
﹃男
おんな とく ちか た せいがん み しゅ
または女が、特に誓いを立て、ナジルびととなる誓願をして、身を主に
せいべつ とき しゅ こ さけ た しゅ す
聖別する時は、三ぶどう酒と濃い酒を断ち、ぶどう酒の酢となったもの、
こ さけ す の しる の なま
濃い酒の酢となったものを飲まず、また、ぶどうの汁を飲まず、また生
ほ た
でも干したものでも、ぶどうを食べてはならない。 四ナジルびとである
あいだ き たね かわ た
間は、すべて、ぶどうの木からできるものは、種も皮も食べてはならな
い。
せいがん た あいだ あたま
五また、ナジルびとたる誓願を立てている間は、すべて、かみそりを頭
あ み しゅ せいべつ ひかず み かれ せい
に当ててはならない。身を主に聖別した日数の満ちるまで、彼は聖なる
民数記

かみ け
ものであるから、髪の毛をのばしておかなければならない。

29
み しゅ せいべつ あいだ したい ちか
六身 を 主 に 聖別 し て い る 間 は、す べ て 死体 に 近 づ い て は な ら な い。 七
ふ ぼ きょうだい しまい し とき み けが
父母、 兄 弟、姉妹が死んだ時でも、そのために身を汚してはならない。
かみ せいべつ あたま かれ
神に聖別したしるしが、頭にあるからである。 八彼はナジルびとである
あいだ しゅ せい もの
間は、すべて主の聖なる者である。
ひと かれ し かれ せいべつ あたま けが
九もし人がはからずも彼のかたわらに死んで、彼の聖別した頭を汚した
かれ み きよ ひ あたま
ならば、彼は身を清める日に、 頭をそらなければならない。すなわち、
なぬか め か め やま
七日目にそれをそらなければならない。 一〇 そして八日目に山ばと
わ いえ わ たずさ かいけん まくや いりぐち さいし
二羽、または家ばとのひな二羽を携えて、会見の幕屋の入口におる祭司
ところ い さいし いちわ ざいさい いちわ
の 所 に 行 か な け れ ば な ら な い。 一一祭司 は そ の 一 羽 を 罪祭 に、一 羽 を
はんさい かれ したい え つみ かれ
燔祭にささげて、彼が死体によって得た罪を彼のためにあがない、その
ひ かれ あたま せいべつ かれ ひ
日に彼の頭を聖別しなければならない。 一二彼はまたナジルびとたる日
かず あらた しゅ せいべつ さい おす こひつじ たずさ けんさい
の数を、 改めて主に聖別し、一歳の雄の小羊を携えてきて、愆祭としな
いぜん ひ かれ せいべつ けが むこう
ければならない。それ以前の日は、彼がその聖別を汚したので、無効に
民数記

なるであろう。

30
りっぽう せいべつ ひ かず み とき ひと
一三これがナジルびとの律法である。聖別の日数が満ちた時は、その人
かいけん まくや いりぐち つ ひと
を会見の幕屋の入口に連れてこなければならない。 一四そしてその人は
そな もの しゅ さい おす こひつじ まった
供え物を主にささげなければならない。すなわち、一歳の雄の小羊の全
とう はんさい さい めす こひつじ まった とう ざいさい
き も の 一 頭 を 燔祭 と し、一 歳 の 雌 の 小羊 の 全 き も の 一 頭 を 罪祭 と し、
おひつじ まった とう しゅうおんさい たね い あぶら
雄羊の全きもの一頭を酬 恩 祭とし、 一五また種入れぬパンの一かご、 油
ま つく むぎこ か し あぶら ぬ たね い せんべい そさい
を混ぜて作った麦粉の菓子、 油を塗った種入れぬ煎餅、および素祭と
かんさい たずさ さいし しゅ まえ たずさ
灌祭を携えてこなければならない。 一六祭司はこれを主の前に携えてき
ざいさい はんさい おひつじ たね い
て、その罪祭と燔祭とをささげ、一七また雄羊を種入れぬパンの一かごと
とも しゅうおんさい ぎせい しゅ さいし
共に、酬 恩 祭の犠牲として、主にささげなければならない。祭司はまた
そさい かんさい
そ の 素祭 と 灌祭 を も さ さ げ な け れ ば な ら な い。 一 八そ の ナ ジ ル び と は
かいけん まくや いりぐち せいべつ あたま せいべつ あたま かみ と
会見の幕屋の入口で、聖別した頭をそり、その聖別した頭の髪を取って、
しゅうおんさい ぎせい した ひ うえ お
こ れ を 酬 恩 祭 の 犠牲 の 下 に あ る 火 の 上 に 置 か な け れ ば な ら な い。 一 九
さいし おひつじ かた に と たね い か し
祭司はその雄羊の肩の煮えたものと、かごから取った種入れぬ菓子一つ
民数記

たね い せんべい と せいべつ あたま


と、種入れぬ煎餅一つを取って、これをナジルびとが、その聖別した頭

31
のち て さづ さいし しゅ まえ ゆ うご ようさい
をそった後、その手に授け、二〇祭司は主の前でこれを揺り動かして揺祭
せい もの ゆ うご むね
としなければならない。これは聖なる物であって、その揺り動かした胸
とも さいし き のち
と、ささげたももと共に、祭司に帰するであろう。こうして後、そのナ
しゅ の
ジルびとは、ぶどう酒を飲むことができる。
せいがん こと しゅ
これは誓願をするナジルびとと、そのナジルびとたる事のために、主
二一
かれ そな もの りっぽう ちから およ
にささげる彼の供え物についての律法である。このほかにその力の及
もの かれ ちか せいがん
ぶ物をささげることができる。すなわち、彼はその誓う誓願のように、
りっぽう おこな
ナジルびとの律法にしたがって行わなければならない﹄﹂。
しゅ い こ い
主はまたモーセに言われた、二三
二二 ﹁アロンとその子たちに言いなさい、
ひとびと しゅくふく い
﹃あ な た が た は イ ス ラ エ ル の 人々 を 祝 福 し て こ の よ う に 言 わ な け れ ば
ならない。
ねが しゅ しゅくふく
二四 ﹁願わくは主があなたを祝 福し、
まも
あなたを守られるように。
民数記

ねが しゅ かお てら
二五 願わくは主がみ顔をもってあなたを照し、

32
めぐ
あなたを恵まれるように。
ねが しゅ かお む
願わくは主がみ顔をあなたに向け、
二六
へいあん たま
あなたに平安を賜わるように﹂﹄。
かれ ひとびと な とな
二七 こうして彼らがイスラエルの人々のために、わたしの名を唱えるな
かれ しゅくふく
らば、わたしは彼らを祝 福するであろう﹂。
第七章
まくや た おわ あぶら そそ せいべつ
モーセが幕屋を建て終り、これに油を注いで聖別し、またそのすべて

うつわ さいだん うつわ あぶら そそ せいべつ
の器、およびその祭壇と、そのすべての器に油を注いで、これを聖別し
ひ ふ そ いえ ちょう
た日に、 二イスラエルのつかさたち、すなわち、その父祖の家の長たち
もの かれ かく ぶ ぞ く かぞ
は、ささげ物をした。彼らは各部族のつかさたちであって、その数えら
ひとびと もの かれ そな もの しゅ まえ
れた人々をつかさどる者どもであった。 三彼らはその供え物を、主の前
民数記

たずさ くるま りょう おうし とう


に携えてきたが、おおいのある車 六 両と雄牛十二頭であった。つかさ

33
くるま りょう おうし とう かれ まくや まえ
ふたりに車 一 両、ひとりに雄牛一頭である。彼らはこれを幕屋の前に
ひ とき しゅ い かいけん
引いてきた。 四その時、主はモーセに言われた、 五﹁あなたはこれを会見
まくや つとめ もち かれ う と
の幕屋の務に用いるために、彼らから受け取って、レビびとに、おのお
つとめ わた
のその務にしたがって、渡さなければならない﹂。 六そこでモーセはそ
くるま おうし う と わた
の車と雄牛を受け取って、これをレビびとに渡した。 七すなわち、ゲル
こ つとめ くるま りょう おうし とう わた
ションの子たちには、その務にしたがって、車 二 両と雄牛四頭を渡し、
こ つとめ くるま りょう おうし とう わた
メラリの子たちには、その務にしたがって車 四 両と雄牛八頭を渡し、

さいし こ かんとく こ
祭司アロンの子イタマルに、これを監督させた。 九しかし、コハテの子
なに わた かれ つとめ せい もの かた
たちには、何をも渡さなかった。彼らの務は聖なる物を、肩にになって
はこ さいだん あぶら そそ
運ぶことであったからである。 一〇つかさたちは、また祭壇に油を注ぐ
ひ さいだんほうのう そな もの たずさ そな もの さいだん まえ
日に、祭壇奉納の供え物を携えてきて、その供え物を祭壇の前にささげ
しゅ い にち さいだん
た。 一一主はモーセに言われた、
﹁つかさたちは一日にひとりずつ、祭壇
ほうのう そな もの
奉納の供え物をささげなければならない﹂。
民数記

だい にち そな もの もの ぶぞく こ
一二 第 一 日 に 供 え 物 を さ さ げ た 者 は、ユ ダ の 部族 の ア ミ ナ ダ ブ の 子 ナ

34
そな もの ぎん おも
ションであった。 一三その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シ
ぎん はち とも せいじょ
ケル、銀の鉢一つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この
そさい つか あぶら ま むぎこ み
二つには素祭に使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。 一四また十シケル
きん さかずき くんこう み はんさい つか わか
の 金 の 杯 一 つ。こ れ に は 薫香 を 満 た し て い た。 一五ま た 燔祭 に 使 う 若
おうし とう おひつじ とう さい おす こひつじ とう ざいさい つか お
い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊一頭。 一六罪祭に使う雄やぎ一
とう しゅうおんさい ぎせい つか おうし とう おひつじ とう お とう さい
頭。 一七酬 恩 祭の犠牲に使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の
おす こひつじ とう こ そな もの
雄の小羊五頭であって、これはアミナダブの子ナションの供え物であっ
た。
だい にち こ もの
一八第二日にはイッサカルのつかさ、ツアルの子ネタニエルがささげ物
そな もの ぎん おも
をした。 一九そのささげた供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シ
ぎん はち とも せいじょ
ケル、銀の鉢一つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この
そさい つか あぶら ま むぎこ み
二つには素祭に使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。 二〇また十シケル
きん さかずき くんこう み はんさい つか わか
の金の杯 一つ、これには薫香を満たしていた。 二一また燔祭に使う若い
民数記

おうし とう おひつじ とう さい おす こひつじ とう ざいさい つか お とう


雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊一頭。 二二罪祭に使う雄やぎ一頭。

35
しゅうおんさい ぎせい つか おうし とう おひつじ とう お とう さい おす
二三 酬 恩 祭の犠牲に使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の
こひつじ とう こ そな もの
小羊五頭であって、これはツアルの子ネタニエルの供え物であった。
だい にち こ こ
二四 第三日にはゼブルンの子たちのつかさ、ヘロンの子エリアブ。 二五そ
そな もの ぎん おも ぎん はち
の供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これ
とも せいじょ そさい つか あぶら
は七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を
ま むぎこ み きん さかずき
混ぜた麦粉を満たしていた。 二六また十シケルの金の杯 一つ、これには
くんこう み はんさい つか わか おうし とう おひつじ とう さい
薫香を満たしていた。 二七また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳
おす こひつじ とう ざいさい つか お とう しゅうおんさい ぎせい つか
の雄の小羊一頭。 二八罪祭に使う雄やぎ一頭。 二九酬 恩 祭の犠牲に使う
おうし とう おひつじ とう お とう さい おす こひつじ とう
雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これ
こ そな もの
はヘロンの子エリアブの供え物であった。
だい にち こ こ
三〇 第四日にはルベンの子たちのつかさ、シデウルの子エリヅル。 三一そ
そな もの ぎん おも ぎん はち
の供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これ
とも せいじょ そさい つか あぶら
は七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を
民数記

ま むぎこ み きん さかずき
混ぜた麦粉を満たしていた。 三二また十シケルの金の杯 一つ、これには

36
くんこう み はんさい つか わか おうし とう おひつじ とう さい
薫香を満たしていた。 三三また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳
おす こひつじ とう ざいさい つか お とう しゅうおんさい ぎせい つか
の雄の小羊一頭。 三四罪祭に使う雄やぎ一頭。 三五酬 恩 祭の犠牲に使う
おうし とう おひつじ とう お とう さい おす こひつじ とう
雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これ
こ そな もの
はシデウルの子エリヅルの供え物であった。
だい にち こ こ
第五日にはシメオンの子たちのつかさ、ツリシャダイの子シルミエ
三六
そな もの ぎん おも ぎん はち
ル。 三七その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一
とも せいじょ そさい
つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に
つか あぶら ま むぎこ み きん さかずき
使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。 三八また十シケルの金の杯 一つ、
くんこう み はんさい つか わか おうし とう おひつじ
これには薫香を満たしていた。 三九また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊
とう さい おす こひつじ とう ざいさい つか お とう しゅうおんさい
一頭、一歳の雄の小羊一頭。 四〇罪祭に使う雄やぎ一頭。 四一酬 恩 祭の
ぎせい つか おうし とう おひつじ とう お とう さい おす こひつじ とう
犠牲に使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であっ
こ そな もの
て、これはツリシャダイの子シルミエルの供え物であった。
だい にち こ こ
第六日にはガドの子たちのつかさ、デウエルの子エリアサフ。 四三そ
四二
民数記

そな もの ぎん おも ぎん はち
の供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これ

37
とも せいじょ そさい つか あぶら
は七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を
ま むぎこ み きん さかずき
混ぜた麦粉を満たしていた。 四四また十シケルの金の杯 一つ、これには
くんこう み はんさい つか わか おうし とう おひつじ とう さい
薫香を満たしていた。 四五また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳
おす こひつじ とう ざいさい つか お とう しゅうおんさい ぎせい つか
の雄の小羊一頭。 四六罪祭に使う雄やぎ一頭。 四七酬 恩 祭の犠牲に使う
おうし とう おひつじ とう お とう さい おす こひつじ とう
雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これ
こ そな もの
はデウエルの子エリアサフの供え物であった。
だい にち こ こ
四八 第七日にはエフライムの子たちのつかさ、アミホデの子エリシャマ。
そな もの ぎん おも ぎん はち
四九 その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、
とも せいじょ そさい つか
これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う
あぶら ま むぎこ み きん さかずき
油を混ぜた麦粉を満たしていた。 五〇また十シケルの金の杯 一つ、これ
くんこう み はんさい つか わか おうし とう おひつじ とう
には薫香を満たしていた。 五一また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、
さい おす こひつじ とう ざいさい つか お とう しゅうおんさい ぎせい
一歳の雄の小羊一頭。 五二罪祭に使う雄やぎ一頭。 五三酬 恩 祭の犠牲に
つか おうし とう おひつじ とう お とう さい おす こひつじ とう
使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、こ
民数記

こ そな もの
れはアミホデの子エリシャマの供え物であった。

38
だい か こ こ
第八日にはマナセの子たちのつかさ、パダヅルの子ガマリエル。 五五
五四
そな もの ぎん おも ぎん はち
その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、こ
とも せいじょ そさい つか あぶら
れは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油
ま むぎこ み きん さかずき
を混ぜた麦粉を満たしていた。 五六また十シケルの金の杯 一つ、これに
くんこう み はんさい つか わか おうし とう おひつじ とう
は薫香を満たしていた。 五七また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一
さい おす こひつじ とう ざいさい つか お とう しゅうおんさい ぎせい つか
歳の雄の小羊一頭。 五八罪祭に使う雄やぎ一頭。 五九酬 恩 祭の犠牲に使
おうし とう おひつじ とう お とう さい おす こひつじ とう
う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、こ
こ そな もの
れはパダヅルの子ガマリエルの供え物であった。
だい にち こ こ
第九日にはベニヤミンの子らのつかさ、ギデオニの子アビダン。 六一
六〇
そな もの ぎん おも ぎん はち
その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、こ
とも せいじょ そさい つか あぶら
れは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油
ま むぎこ み きん さかずき
を混ぜた麦粉を満たしていた。 六二また十シケルの金の杯 一つ、これに
くんこう み はんさい つか わか おうし とう おひつじ とう
は薫香を満たしていた。 六三また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一
民数記

さい おす こひつじ とう ざいさい つか お とう しゅうおんさい ぎせい つか


歳の雄の小羊一頭。 六四罪祭に使う雄やぎ一頭。 六五酬 恩 祭の犠牲に使

39
おうし とう おひつじ とう お とう さい おす こひつじ とう
う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、こ
こ そな もの
れはギデオニの子アビダンの供え物であった。
だい にち こ こ
六六 第十日にはダンの子たちのつかさ、アミシャダイの子アヒエゼル。 六
そな もの ぎん おも ぎん はち
その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、こ

とも せいじょ そさい つか あぶら
れは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油
ま むぎこ み きん さかずき
を混ぜた麦粉を満たしていた。 六八また十シケルの金の杯 一つ、これに
くんこう み はんさい つか わか おうし とう おひつじ とう
は薫香を満たしていた。 六九また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一
さい おす こひつじ とう ざいさい つか お とう しゅうおんさい ぎせい つか
歳の雄の小羊一頭。 七〇罪祭に使う雄やぎ一頭。 七一酬 恩 祭の犠牲に使
おうし とう おひつじ とう お とう さい おす こひつじ とう
う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、こ
こ そな もの
れはアミシャダイの子アヒエゼルの供え物であった。
だい にち こ こ
七二 第十一日にはアセルの子たちのつかさ、オクランの子パギエル。 七三
そな もの ぎん おも ぎん はち
その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、こ
とも せいじょ そさい つか あぶら
れは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油
民数記

ま むぎこ み きん さかずき
を混ぜた麦粉を満たしていた。 七四また十シケルの金の杯 一つ、これに

40
くんこう み はんさい つか わか おうし とう おひつじ とう
は薫香を満たしていた。 七五また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一
さい おす こひつじ とう ざいさい つか お とう しゅうおんさい ぎせい つか
歳の雄の小羊一頭。 七六罪祭に使う雄やぎ一頭。 七七酬 恩 祭の犠牲に使
おうし とう おひつじ とう お とう さい おす こひつじ とう
う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、こ
こ そな もの
れはオクランの子パギエルの供え物であった。
だい にち こ こ
七八 第十二日にはナフタリの子たちのつかさ、エナンの子アヒラ。 七九そ
そな もの ぎん おも ぎん はち
の供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これ
とも せいじょ そさい つか あぶら
は七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を
ま むぎこ み きん さかずき
混ぜた麦粉を満たしていた。 八〇また十シケルの金の杯 一つ、これには
くんこう み はんさい つか わか おうし とう おひつじ とう さい
薫香を満たしていた。 八一また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳
おす こひつじ とう ざいさい つか お とう しゅうおんさい ぎせい つか
の雄の小羊一頭。 八二罪祭に使う雄やぎ一頭。 八三酬 恩 祭の犠牲に使う
おうし とう おひつじ とう お とう さい おす こひつじ とう
雄牛二頭。雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これ
こ そな もの
はエナンの子アヒラの供え物であった。
いじょう さいだん あぶら そそ ひ さいだん ほうのう
八四 以上は祭壇に油を注ぐ日に、イスラエルのつかさたちが、祭壇を奉納
民数記

そな もの ぎん ぎん
する供え物として、ささげたものである。すなわち、銀のさら十二、銀

41
はち きん さかずき ぎん はち
の鉢十二、金の杯 十二。 八五銀のさらはそれぞれ百三十シケル、鉢はそ
せいじょ ぎん うつわ あ
れぞれ七十シケル、聖所のシケルによれば、この銀の器は合わせて二千
くんこう み きん さかずき せいじょ
四百シケル。 八六また薫香の満ちている十二の金の杯は、聖所のシケル
さかずき きん あ
によれば、それぞれ十シケル、その杯の金は合わせて百二十シケルで
はんさい つか おうし あ おひつじ さい おす
あった。 八七また燔祭に使う雄牛は合わせて十二、雄羊は十二、一歳の雄
こひつじ そさい ざいさい つか お
の小羊は十二、このほかにその素祭のものがあった。また罪祭に使う雄
しゅうおんさい ぎせい つか おうし あ おひつじ
やぎは十二。 八八酬 恩 祭の犠牲に使う雄牛は合わせて二十四、雄羊は六
お さい おす こひつじ さいだん あぶら
十、雄やぎは六十、一歳の雄の小羊は六十であって、これは祭壇に油を
そそ のち さいだんほうのう そな もの
注いだ後に、祭壇奉納の供え物としてささげたものである。
しゅ かた かいけん まくや はこ
さてモーセは主と語るために、会見の幕屋にはいって、あかしの箱の
八九
うえ しょくざいしょ うえ あいだ じぶん かた こえ き
上の、 贖 罪 所の上、二つのケルビムの間から自分に語られる声を聞い
しゅ かれ かた
た。すなわち、主は彼に語られた。
民数記

42
第八章
しゅ い い ひ
一主はモーセに言われた、 二﹁アロンに言いなさい、
﹃あなたがともし火
とき ひ しょくだい ぜんぽう てら
をともす時は、七つのともし火で燭 台の前方を照すようにしなさい﹄﹂。
しゅ めい
三アロンはそのようにした。すなわち、主がモーセに命じられたよう
しょくだい ぜんぽう てら ひ しょくだい つく つぎ
に、燭 台の前方を照すように、ともし火をともした。 四燭 台の造りは次
きん う もの だい はな とも うちものつく
のとおりである。それは金の打ち物で、その台もその花も共に打物造り
しゅ しめ かた
で あ っ た。モ ー セ は 主 に 示 さ れ た 型 に し た が っ て、そ の よ う に そ の
しょくだい つく
燭 台を造った。
しゅ い ひとびと
五主はまたモーセに言われた、 六﹁レビびとをイスラエルの人々のうち
と かれ きよ かれ きよ
から取って、彼らを清めなさい。 七あなたはこのようにして彼らを清め
つみ きよ みず かれ そそ かれ
なければならない。すなわち、罪を清める水を彼らに注ぎかけ、彼らに
ぜんしん いふく あら み きよ かれ わか おうし
全身をそらせ、衣服を洗わせて、身を清めさせ、八そして彼らに若い雄牛
民数記

とう あぶら ま むぎこ そさい と


一頭と、油を混ぜた麦粉の素祭とを取らせなさい。あなたはまた、ほか

43
わか おうし ざいさい と
に若い雄牛を罪祭のために取らなければならない。 九そして、あなたは
かいけん まくや まえ つ ひとびと ぜんかいしゅう
レビびとを会見の幕屋の前に連れてきて、イスラエルの人々の全 会 衆
あつ しゅ まえ すす ひとびと て
を集め、 一〇レビびとを主の前に進ませ、イスラエルの人々をして、手を
うえ お
レビびとの上に置かせなければならない。 一一そしてアロンは、レビび
ひとびと ようさい しゅ まえ
とをイスラエルの人々のささげる揺祭として、主の前にささげなければ
かれ しゅ つとめ
ならない。これは彼らに主の務をさせるためである。 一二それからあな
て おうし あたま うえ お ざいさい
たはレビびとをして、手をかの雄牛の頭の上に置かせ、その一つを罪祭
はんさい しゅ つみ
とし、一つを燔祭として主にささげ、レビびとのために罪のあがないを

しなければならない。 一三あなたはレビびとを、アロンとその子たちの
まえ た ようさい しゅ
前に立たせ、これを揺祭として主にささげなければならない。
ひとびと わ
こうして、あなたはレビびとをイスラエルの人々のうちから分かち、
一四
のち
レビびとをわたしのものとしなければならない。 一五こうして後レビび
かいけん まくや つとめ かれ きよ
とは会見の幕屋にはいって務につくことができる。あなたは彼らを清
民数記

かれ ようさい かれ
め、彼らをささげて揺祭としなければならない。 一六彼らはイスラエル

44
ひとびと まった
の人々のうちから、 全くわたしにささげられたものだからである。イ
ひとびと はじ うま もの
スラエルの人々のうちの初めに生れた者、すなわち、すべてのういごの
かわ かれ と
代りに、わたしは彼らを取ってわたしのものとした。 一七イスラエルの
ひとびと ひと けもの
人々のうちのういごは、人も獣も、みなわたしのものだからである。わ
ち う ころ ひ かれ せいべつ
たしはエジプトの地で、すべてのういごを撃ち殺した日に、彼らを聖別
ひとびと
してわたしのものとした。 一八それでわたしはイスラエルの人々のうち
かわ と
の、すべてのういごの代りにレビびとを取った。 一九わたしはイスラエ
ひとびと と こ あた かれ
ルの人々のうちからレビびとを取って、アロンとその子たちに与え、彼
かいけん まくや ひとびと かわ つとめ
らに会見の幕屋で、イスラエルの人々に代って務をさせ、またイスラエ
ひとびと つみ
ルの人々のために罪のあがないをさせるであろう。これはイスラエル
ひとびと せいじょ ちか ひとびと わざわい おこ
の人々が、聖所に近づいて、イスラエルの人々のうちに災の起ることの
ないようにするためである﹂。
ひとびと ぜんかいしゅう しゅ
モーセとアロン、およびイスラエルの人々の全 会 衆は、すべて主が
二〇
民数記

こと めい ところ
レビびとの事につき、モーセに命じられた所にしたがって、レビびとに

45
い ひとびと かれ い
行った、すなわち、イスラエルの人々は、そのように彼らに行った。 二一
み きよ いふく あら かれ しゅ まえ
そこでレビびとは身を清め、その衣服を洗った。アロンは彼らを主の前
ようさい かれ つみ
にささげて揺祭とした。アロンはまた彼らのために、罪のあがないをし
かれ きよ のち かいけん まくや
て彼らを清めた。 二二こうして後、レビびとは会見の幕屋にはいって、ア
こ つか つとめ かれ こと
ロンとその子たちに仕えて務をした。すなわち、彼らはレビびとの事に
しゅ めい ところ かれ
ついて、主がモーセに命じられた所にしたがって、そのように彼らに

行った。
しゅ い つぎ
二三 主はまたモーセに言われた、 二四﹁レビびとは次のようにしなければ
さいいじょう もの つとめ かいけん まくや はたら
ならない。すなわち、二十五歳以上の者は務につき、会見の幕屋の働き
さい つとめ はたら しりぞ かさ
をしなければならない。 二五しかし、五十歳からは務の働きを退き、重ね
つとめ かいけん まくや きょうだい つとめ たす
て務をしてはならない。 二六ただ、会見の幕屋でその兄 弟たちの務の助
つとめ
けをすることができる。しかし、 務をしてはならない。あなたがレビ
つとめ
びとにその務をさせるには、このようにしなければならない﹂。
民数記

46
第九章
くに で つぎ とし しょうがつ しゅ あらの い
一エジプトの国を出た次の年の正 月、主はシナイの荒野でモーセに言
ひとびと すぎこし まつり さだ とき おこな
われた、 二﹁イスラエルの人々に、過越の祭を定めの時に行わせなさい。
つき か ゆうぐれ さだ とき おこな
三この月の十四日の夕暮、定めの時に、それを行わなければならない。
さだ
あなたがたは、そのすべての定めと、そのすべてのおきてにしたがって、
おこな ひとびと
そ れ を 行 わ な け れ ば な ら な い﹂。 四そ こ で モ ー セ が イ ス ラ エ ル の 人々
すぎこし まつり おこな い かれ しょうがつ
に、過越の祭を行わなければならないと言ったので、 五彼らは正 月の十
か ゆうぐれ あらの すぎこし まつり おこな
四日の夕暮、シナイの荒野で過越の祭を行 った。すなわち、イスラエル
ひとびと しゅ めい
の人々は、すべて主がモーセに命じられたようにおこなった。 六ところ
ひと したい ふ み けが ひ すぎこし まつり おこな
が人の死体に触れて身を汚したために、その日に過越の祭を行うことの
ひとびと ひ まえ ひとびと
できない人々があって、その日モーセとアロンの前にきて、 七その人々
かれ い ひと したい ふ み けが
は彼に言った、﹁わたしたちは人の死体に触れて身を汚しましたが、なぜ
民数記

さだ とき ひとびと とも しゅ そな もの
その定めの時に、イスラエルの人々と共に、主に供え物をささげること

47
かれ い ま しゅ
ができないのですか﹂。 八モーセは彼らに言った、
﹁しばらく待て。主が
おお き
あなたがたについて、どう仰せになるかを聞こう﹂。
しゅ い ひとびと い
九主はモーセに言われた、 一〇﹁イスラエルの人々に言いなさい、
﹃あな
しそん したい ふ み けが
たがたのうち、また、あなたがたの子孫のうち、死体に触れて身を汚し
ひと とお たびじ ひと すぎこし まつり しゅ たい おこな
た人も、遠い旅路にある人も、なお、過越の祭を主に対して行うことが
にがつ か ゆうぐれ おこな たね い
できるであろう。 一一すなわち、二 月の十四日の夕暮、それを行い、種入
く な そ た すこ
れぬパンと苦菜を添えて、それを食べなければならない。 一二これを少
あさ のこ ほね ぽん お
しでも朝まで残しておいてはならない。またその骨は一本でも折って
すぎこし まつり さだ おこな
はならない。過越の祭のすべての定めにしたがってこれを行わなけれ
み きよ たび で すぎこし
ばならない。 一三しかし、その身は清く、旅に出てもいないのに、過越の
まつり おこな ひと たみ た
祭を行わないときは、その人は民のうちから断たれるであろう。このよ
ひと さだ とき しゅ そな もの つみ お
うな人は、定めの時に主の供え物をささげないゆえ、その罪を負わなけ
たこく ひと きりゅう
ればならない。 一四もし他国の人が、あなたがたのうちに寄留していて、
民数記

しゅ たい すぎこし まつり おこな すぎこし まつり さだ


主に対して過越の祭を行おうとするならば、過越の祭の定めにより、そ

48
おこな
のおきてにしたがって、これを行わなければならない。あなたがたは
たこく ひと じこく ひと どういつ さだ もち
他国の人にも、自国の人にも、同一の定めを用いなければならない﹄﹂。
まくや た ひ くも まくや
一五 幕屋を建てた日に、雲は幕屋をおおった。すれはすなわち、あかしの
まくや ゆう まくや うえ くも ひ み あさ
幕屋であって、夕には、幕屋の上に、雲は火のように見えて、朝にまで
およ つね ひる くも よる ひ
及んだ。 一六常にそうであって、昼は雲がそれをおおい、夜は火のように
み くも まくや はな とき ひとびと
見えた。 一七雲が幕屋を離れてのぼる時は、イスラエルの人々は、ただち
みち すす くも ところ ひとびと しゅくえい
に道に進んだ。また雲がとどまる所に、イスラエルの人々は宿 営した。
ひとびと しゅ めい みち すす しゅ めい
一八 すなわち、イスラエルの人々は、主の命によって道に進み、主の命に
しゅくえい まくや うえ くも あいだ しゅくえい
よって宿 営し、幕屋の上に雲がとどまっている間は、宿 営していた。 一
まくや うえ ひ ひさ くも とき ひとびと しゅ い
幕屋の上に、日久しく雲のとどまる時は、イスラエルの人々は主の言

まも みち すす まくや うえ くも
いつけを守って、道に進まなかった。 二〇また幕屋の上に、雲のとどまる
ひ すく とき かれ しゅ めい しゅくえい しゅ
日の少ない時もあったが、彼らは、ただ主の命にしたがって宿 営し、主
めい みち すす くも ゆう あさ
の命にしたがって、道に進んだ。 二一また雲は夕から朝まで、とどまるこ
民数記

あさ くも とき かれ みち すす
ともあったが、朝になって、雲がのぼる時は、彼らは道に進んだ。また

49
ひる よる くも とき かれ みち すす
昼でも夜でも、雲がのぼる時は、彼らは道に進んだ。 二二ふつかでも、一
げつ いじょう まくや うえ くも あいだ
か月でも、あるいはそれ以上でも、幕屋の上に、雲がとどまっている間
ひとびと しゅくえい みち すす
は、イスラエルの人々は宿 営していて、道に進まなかったが、それがの
みち すす かれ しゅ めい しゅくえい しゅ
ぼると道に進んだ。 二三すなわち、彼らは主の命にしたがって宿 営し、主
めい みち すす しゅ めい
の命にしたがって道に進み、モーセによって、主が命じられたとおりに、
しゅ い まも
主の言いつけを守った。
第一〇章
しゅ い ぎん ほん
主はモーセに言われた、 二﹁銀のラッパを二本つくりなさい。すなわ

うちものつく かいしゅう よ あつ しゅくえい すす
ち、打物造りとし、それで会 衆を呼び集め、また宿 営を進ませなさい。
ふ ぜんかいしゅう かいけん まくや いりぐち ところ
この二つを吹くときは、全 会 衆が会見の幕屋の入口に、あなたの所に

あつ ふ
集まってこなければならない。 四もしその一つだけを吹くときは、イス
民数記

しぞく ちょう ところ あつ


ラエルの氏族の長であるつかさたちが、あなたの所に集まってこなけれ

50
けいほう ふ な とき ひがし ほう
ば な ら な い。 五ま た あ な た が た が 警報 を 吹 き 鳴 ら す 時 は、 東 の 方 の
しゅくえい みち すす ど め けいほう ふ な とき
宿 営が、道に進まなければならない。 六二度目の警報を吹き鳴らす時
みなみ ほう しゅくえい みち すす みち すす とき
は、 南の方の宿 営が、道に進まなければならない。すべて道に進む時
けいほう ふ な かいしゅう あつ とき
は、警報を吹き鳴らさなければならない。 七また会 衆を集める時にも、
ふ な けいほう ふ な こ
ラッパを吹き鳴らすが、警報は吹き鳴らしてはならない。 八アロンの子
さいし ふ
である祭司たちが、ラッパを吹かなければならない。これはあなたがた
よ よ まも さだ
が、代々ながく守るべき定めとしなければならない。 九また、あなたが
くに たたか で とき
たの国で、あなたがたをしえたげるあだとの戦いに出る時は、ラッパを
けいほう ふ な
もって、警報を吹き鳴らさなければならない。そうするならば、あなた
かみ しゅ おぼ てき すく
がたは、あなたがたの神、主に覚えられて、あなたがたの敵から救われ
よろこ ひ いわ とき
るであろう。 一〇また、あなたがたの喜びの日、あなたがたの祝いの時、
つきづき だい にち はんさい しゅうおんさい ぎせい
および月々の第一日には、あなたがたの燔祭と酬 恩 祭の犠牲をささげ
あた ふ な
るに当って、ラッパを吹き鳴らさなければならない。そうするならば、
民数記

かみ おぼ
あなたがたの神は、それによって、あなたがたを覚えられるであろう。

51
かみ しゅ
わたしはあなたがたの神、主である﹂。
だい ねん にがつ は つ か くも まくや はな
一一 第二年の二 月 二十日に、雲があかしの幕屋を離れてのぼったので、一
ひとびと あらの で たびじ すす
二イスラエルの人々は、シナイの荒野を出て、その旅路に進んだが、パ
あらの いた くも かれ しゅ
ランの荒野に至って、雲はとどまった。 一三こうして彼らは、主がモーセ
めい みち すす はじ
によって、命じられたところにしたがって、道に進むことを始めた。 一四
せんとう こ しゅくえい はた ぶたい したが すす
先頭には、ユダの子たちの宿 営の旗が、その部隊を従えて進んだ。ユダ
ぶたい ちょう こ こ ぶぞく
の部隊の長はアミナダブの子ナション、 一五イッサカルの子たちの部族
ぶたい ちょう こ こ ぶぞく
の 部隊 の 長 は ツ ア ル の 子 ネ タ ニ エ ル、 一 六ゼ ブ ル ン の 子 た ち の 部族 の
ぶたい ちょう こ
部隊の長はヘロンの子エリアブであった。
まくや と こ こ
一七 そして幕屋は取りくずされ、ゲルションの子たち、およびメラリの子
まくや はこ すす つぎ しゅくえい はた ぶたい したが
たちは幕屋を運び進んだ。 一八次にルベンの宿 営の旗が、その部隊を従
すす ぶたい ちょう こ
えて進んだ。ルベンの部隊の長はシデウルの子エリヅル、 一九シメオン
こ ぶぞく ぶたい ちょう こ
の子たちの部族の部隊の長はツリシャダイの子シルミエル、 二〇ガドの
民数記

こ ぶぞく ぶたい ちょう こ


子たちの部族の部隊の長はデウエルの子エリアサフであった。

52
せい もの はこ すす つ
二一 そ し て コ ハ テ び と は 聖 な る 物 を 運 び 進 ん だ。こ れ が 着 く ま で に、
ひとびと まくや た おわ つぎ こ しゅくえい
人々は幕屋を建て終るのである。 二二次にエフライムの子たちの宿 営の
はた ぶたい したが すす ぶたい ちょう こ
旗が、その部隊を従えて進んだ。エフライムの部隊の長はアミホデの子
こ ぶぞく ぶたい ちょう こ
エリシャマ、 二三マナセの子たちの部族の部隊の長はパダヅルの子ガマ
こ ぶぞく ぶたい ちょう こ
リエル、 二四ベニヤミンの子たちの部族の部隊の長はギデオニの子アビ
ダンであった。
つぎ こ しゅくえい はた ぶたい したが すす
二五 次 に ダ ン の 子 た ち の 宿 営 の 旗 が、そ の 部隊 を 従 え て 進 ん だ。こ の
ぶたい しゅくえい ぶたい ちょう
部隊はすべての宿 営のしんがりであった。ダンの部隊の長はアミシャ
こ こ ぶぞく ぶたい ちょう
ダイの子アヒエゼル、 二六アセルの子たちの部族の部隊の長はオクラン
こ こ ぶぞく ぶたい ちょう こ
の子パギエル、 二七ナフタリの子たちの部族の部隊の長はエナンの子ア
ひとびと みち すす とき
ヒラであった。 二八イスラエルの人々が、その道に進む時は、このよう
ぶたい したが すす
に、その部隊に従 って進んだ。
つま ちち こ い
さて、モーセは、妻の父、ミデヤンびとリウエルの子ホバブに言った、
二九
民数記

しゅ あた やくそく ところ む
﹁わ た し た ち は、か つ て 主 が お ま え た ち に 与 え る と 約束 さ れ た 所 に 向

53
すす いっしょ こうふく
かって進んでいます。あなたも一緒においでください。あなたが幸福
しゅ こうふく やくそく
になられるようにいたしましょう。主がイスラエルに幸福を約束され
かれ い い
たのですから﹂。 三〇彼はモーセに言った、﹁わたしは行きません。わた
くに かえ しんぞく い い
しは国に帰って、親族のもとに行きます﹂。 三一モーセはまた言った、
﹁ど
み す あらの
うかわたしたちを見捨てないでください。あなたは、わたしたちが荒野
しゅくえい ごぞん め
のどこに宿 営すべきかを御存じですから、わたしたちの目となってく
いっしょ しゅ
ださい。 三二もしあなたが一緒においでくださるなら、主がわたしたち
たま こうふく およ
に賜わる幸福をあなたにも及ぼしましょう﹂。
かれ しゅ やま さ か こうてい すす しゅ けいやく
こうして彼らは主の山を去って、三日の行程を進んだ。主の契約の
三三
はこ か こうてい あいだ かれ さきだ い かれ やす ところ
箱は、その三日の行程の間、彼らに先立って行き、彼らのために休む所
たず かれ しゅくえい で みち すす ひる しゅ くも かれ
を尋ねもとめた。 三四彼らが宿 営を出て、道に進むとき、昼は主の雲が彼
うえ
らの上にあった。
けいやく はこ すす い
契約の箱の進むときモーセは言った、
三五
民数記

しゅ た
﹁主よ、立ちあがってください。

54
てき う ち
あなたの敵は打ち散らされ、
にく もの
あなたを憎む者どもは、
まえ に さ
あなたの前から逃げ去りますように﹂。
かれ い
三六 またそのとどまるとき、彼は言った、
しゅ かえ
﹁主よ、帰ってきてください、
ひと
イスラエルのちよろずの人に﹂。
第一一章
たみ さいなん あ ひと しゅ みみ しゅ
一さて、民は災難に会っている人のように、主の耳につぶやいた。主は
き いか はっ しゅ ひ かれ も
こ れ を 聞 い て 怒 り を 発 せ ら れ、主 の 火 が 彼 ら の う ち に 燃 え あ が っ て、
しゅくえい はし や たみ さけ
宿 営の端を焼いた。 二そこで民はモーセにむかって叫んだ。モーセが
しゅ いの ひ しゅ ひ かれ も
主に祈ったので、その火はしずまった。 三主の火が彼らのうちに燃えあ
民数記

ところ な よ
がったことによって、その所の名はタベラと呼ばれた。

55
かれ おお よ あつ よくしん おこ
四また彼らのうちにいた多くの寄り集まりびとは欲心を起し、イスラエ
ひとびと ふたた な い にく た
ルの人々もまた再び泣いて言った、
﹁ああ、肉が食べたい。 五われわれは
おも おこ うお た
思い起すが、エジプトでは、ただで、魚を食べた。きゅうりも、すいか
も、にらも、たまねぎも、そして、にんにくも。 六しかし、いま、われ
せいこん つ め まえ なに
われの精根は尽きた。われわれの目の前には、このマナのほか何もな
い﹂。
み いろ いろ
七マナは、こえんどろの実のようで、色はブドラクの色のようであった。
たみ ある あつ
八民は歩きまわって、これを集め、ひきうすでひき、または、うすでつ
に あじ あぶら か し あじ
き、かまで煮て、これをもちとした。その味は油 菓子の味のようであっ
よる しゅくえい つゆ とも ふ
た。 九夜、 宿 営の露がおりるとき、マナはそれと共に降った。
たみ いえ てんまく いりぐち な き
一〇 モーセは、民が家ごとに、おのおのその天幕の入口で泣くのを聞い
しゅ はげ いか ふかい おも
た。そこで主は激しく怒られ、またモーセは不快に思った。 一一そして、
しゅ い わる し う
モーセは主に言った、﹁あなたはなぜ、しもべに悪い仕打ちをされるので
民数記

まえ めぐ え たみ
すか。どうしてわたしはあなたの前に恵みを得ないで、このすべての民

56
おもに お たみ
の重荷を負わされるのですか。 一二わたしがこのすべての民を、はらん

だのですか。わたしがこれを生んだのですか。そうではないのに、あな
やしな おや にゅうじ だ かれ だ
たはなぜわたしに﹃養い親が乳児を抱くように、彼らをふところに抱い
かれ せんぞ ちか ち い い
て、あなたが彼らの先祖たちに誓われた地に行け﹄と言われるのですか。
にく え たみ あた
一三わたしはどこから肉を獲て、このすべての民に与えることができま
かれ な にく た い
しょうか。彼らは泣いて、﹃肉を食べさせよ﹄とわたしに言っているので
たみ お
す。 一四わ た し ひ と り で は、こ の す べ て の 民 を 負 う こ と が で き ま せ ん。
おも す まえ めぐ え
それはわたしには重過ぎます。 一五もしわたしがあなたの前に恵みを得
し う
ますならば、わたしにこのような仕打ちをされるよりは、むしろ、ひと
おも ころ くる あ
思いに殺し、このうえ苦しみに会わせないでください﹂。
しゅ い ちょうろう たみ ちょうろう
一六主はモーセに言われた、﹁イスラエルの長 老たちのうち、民の長 老と
し もの にん
なり、つかさとなるべきことを、あなたが知っている者七十人をわたし
あつ かいけん まくや つ とも た
のもとに集め、会見の幕屋に連れてきて、そこにあなたと共に立たせな
民数記

くだ ところ かた
さい。 一七わたしは下って、その所で、あなたと語り、またわたしはあな

57
うえ れい かれ わ あた かれ とも
たの上にある霊を、彼らにも分け与えるであろう。彼らはあなたと共
たみ おもに お お
に、民の重荷を負い、あなたが、ただひとりで、それを負うことのない
たみ い
ようにするであろう。 一八あなたはまた民に言いなさい、
﹃あなたがたは
み きよ ま にく た
身を清めて、あすを待ちなさい。あなたがたは肉を食べることができる
な しゅ みみ にく た
であろう。あなたがたが泣いて主の耳に、わたしたちは肉が食べたい。
とき よ い しゅ
エジプトにいた時は良かったと言ったからである。それゆえ、主はあな
にく あた た
たがたに肉を与えて食べさせられるであろう。 一九あなたがたがそれを
た にち ふつか か か は つ か げつ およ
食べるのは、一日や二日や五日や十日や二十日ではなく、二〇一か月に及
はな で
び、ついにあなたがたの鼻から出るようになり、あなたがたは、それに
あ は しゅ かる
飽き果てるであろう。それはあなたがたのうちにおられる主を軽んじ
まえ な で
て、その前に泣き、なぜ、わたしたちはエジプトから出てきたのだろう
い い とも たみ
と 言 っ た か ら で あ る﹄﹂。 二一モ ー セ は 言 っ た、﹁わ た し と 共 に お る 民 は
と ほ だんし かれ
徒歩の男子だけでも六十万です。ところがあなたは、﹃わたしは彼らに
民数記

にく あた げつ た い ひつじ うし
肉を与えて一か月のあいだ食べさせよう﹄と言われます。 二二 羊と牛の

58
む かれ かれ あ うみ
群れを彼らのためにほふって、彼らを飽きさせるというのですか。海の
うお かれ あつ かれ あ
すべての魚を彼らのために集めて、彼らを飽きさせるというのですか﹂。
しゅ い しゅ て みじか
二三 主はモーセに言われた、
﹁主の手は短かろうか。あなたは、いま、わ
ことば な み
たしの言葉の成るかどうかを見るであろう﹂。
とき で しゅ ことば たみ つ たみ ちょうろう にん
二四 この時モーセは出て、主の言葉を民に告げ、民の長 老たち七十人を
あつ まくや しゅうい た しゅ くも くだ
集めて、幕屋の周囲に立たせた。 二五主は雲のうちにあって下り、モーセ
かた うえ れい にん ちょうろう わ あた
と語られ、モーセの上にある霊を、その七十人の長 老たちにも分け与え
れい かれ うえ とき かれ よげん
られた。その霊が彼らの上にとどまった時、彼らは預言した。ただし、
のち かさ よげん
その後は重ねて預言しなかった。
とき もの しゅくえい な
二六 その時ふたりの者が、宿 営にとどまっていたが、ひとりの名はエル
い な かれ うえ れい
ダデと言い、ひとりの名はメダデといった。彼らの上にも霊がとどまっ
かれ な もの まくや い
た。彼 ら は 名 を し る さ れ た 者 で あ っ た が、幕屋 に 行 か な か っ た の で、
しゅくえい よげん とき わかもの はし
宿 営のうちで預言した。 二七時にひとりの若者が走ってきて、モーセに
民数記

つ い しゅくえい よげん
告げて言った、
﹁エルダデとメダデとが宿 営のうちで預言しています﹂。

59
わか とき じゅうしゃ こ こた い
二八 若い時からモーセの従 者であったヌンの子ヨシュアは答えて言っ
しゅ かれ と かれ
た、
﹁わが主、モーセよ、彼らをさし止めてください﹂。 二九モーセは彼に
い おも おこ
言った、
﹁あなたは、わたしのためを思って、ねたみを起しているのか。
しゅ たみ よげんしゃ しゅ れい かれ あた ねが
主の民がみな預言者となり、主がその霊を彼らに与えられることは、願
ちょうろう とも
わ し い こ と だ﹂。 三〇こ う し て モ ー セ は イ ス ラ エ ル の 長 老 た ち と 共 に、
しゅくえい ひ
宿 営に引きあげた。
しゅ かぜ おこ うみ む はこ
三一 さて、主のもとから風が起り、海の向こうから、うずらを運んできて、
しゅくえい ちか おと お はんい しゅくえい しゅうい
これを宿 営の近くに落した。その落ちた範囲は、 宿 営の周囲で、こち
がわ にち こうてい がわ にち こうてい じめん
ら側も、おおよそ一日の行程、あちら側も、おおよそ一日の行程、地面
たか たみ た あ
から高さおおよそ二キュビトであった。 三二そこで民は立ち上がってそ
ひ しゅうじつ よ しゅうや つぎ ひ しゅうじつ あつ
の日は終 日、その夜は終夜、またその次の日も終 日、うずらを集めたが、
あつ こと もっと すく もの あつ かれ
集める事の最も少ない者も、十ホメルほど集めた。彼らはみな、それを
しゅくえい しゅうい ひろ にく かれ は あいだ
宿 営の周囲に広げておいた。 三三その肉がなお、彼らの歯の間にあって
民数記

た しゅ たみ いか はっ しゅ ひじょう はげ
食べつくさないうちに、主は民にむかって怒りを発し、主は非常に激し

60
えきびょう たみ う ところ な
い疫 病をもって民を撃たれた。 三四これによって、その所の名はキブロ
よ よくしん おこ たみ う
テ・ハッタワと呼ばれた。欲心を起した民を、そこに埋めたからである。
たみ すす
三五 キブロテ・ハッタワから、民はハゼロテに進み、ハゼロテにとどまっ
た。
第一二章
おんな おんな
モーセはクシの女をめとっていたが、そのクシの女をめとったゆえを

ひなん かれ い しゅ
もって、ミリアムとアロンはモーセを非難した。 二彼らは言った、
﹁主は
かた かた
ただモーセによって語られるのか。われわれによっても語られるので
しゅ き ひと にゅうわ
はないのか﹂。主はこれを聞かれた。 三モーセはその人となり柔和なこ
ちじょう ひと しゅ とつぜん
と、地上のすべての人にまさっていた。 四そこで、主は突然モーセとア
にん かいけん まくや で
ロン、およびミリアムにむかって﹁あなたがた三人、会見の幕屋に出て
民数記

い かれ にん で しゅ くも はしら
きなさい﹂と言われたので、彼ら三人は出てきたが、 五主は雲の柱のう

61
くだ まくや いりぐち た よ
ちにあって下り、幕屋の入口に立って、アロンとミリアムを呼ばれた。
かれ すす で かれ い
彼らふたりが進み出ると、 六彼らに言われた、
﹁あなたがたは、いま、わ
ことば き よげんしゃ
たしの言葉を聞きなさい。あなたがたのうちに、もし、預言者があるな
しゅ まぼろし し ゆめ
らば、主なるわたしは幻をもって、これにわたしを知らせ、また夢をもっ
かた
て、これと語るであろう。 七しかし、わたしのしもべモーセとは、そう
かれ ぜんか ちゅうしん もの かれ
ではない。彼はわたしの全家に忠 信なる者である。 八彼とは、わたしは
くち かた あき い つか かれ しゅ かたち み
口ずから語り、明らかに言って、なぞを使わない。彼はまた主の形を見
おそ ひなん
るのである。なぜ、あなたがたはわたしのしもべモーセを恐れず非難す
るのか﹂。
しゅ かれ いか はっ さ くも まくや うえ はな
九主 は 彼 ら に む か い 怒 り を 発 し て 去 ら れ た。 一 〇雲 が 幕屋 の 上 を 離 れ
さ とき びょう み ゆき しろ
去った時、ミリアムは、らい病となり、その身は雪のように白くなった。
かえ み かのじょ びょう
アロンがふり返ってミリアムを見ると、彼女はらい病になっていた。 一一
い しゅ おろ
そこで、アロンはモーセに言った、
﹁ああ、わが主よ、わたしたちは愚か
民数記

つみ おか ばつ う
なことをして罪を犯しました。どうぞ、その罰をわたしたちに受けさせ

62
かのじょ はは たい にく なか ほろ で
ないでください。 一二どうぞ彼女を母の胎から肉が半ば滅びうせて出る
しにん とき しゅ よ
死人 の よ う に し な い で く だ さ い﹂。 一三そ の 時 モ ー セ は 主 に 呼 ば わ っ て
い かみ かのじょ しゅ
言った、
﹁ああ、神よ、どうぞ彼女をいやしてください﹂。 一四主はモーセ
い かのじょ ちち かのじょ かお かのじょ なぬか
に言われた、﹁彼女の父が彼女の顔につばきしてさえ、彼女は七日のあい
は み かく かのじょ なぬか しゅくえい そと と
だ、恥じて身を隠すではないか。彼女を七日のあいだ、宿 営の外で閉じ
のち つ
こめておかなければならない。その後、連れもどしてもよい﹂。 一五そこ
なぬか しゅくえい そと と たみ
でミリアムは七日のあいだ、 宿 営の外で閉じこめられた。民はミリア
つ みち すす のち たみ
ムが連れもどされるまでは、道に進まなかった。 一六その後、民はハゼロ
た すす あらの しゅくえい
テを立って進み、パランの荒野に宿 営した。
第一三章
しゅ い ひと
一主はモーセに言われた、 二﹁人をつかわして、わたしがイスラエルの
民数記

ひとびと あた ち さぐ ふ そ ぶぞく
人々に与えるカナンの地を探らせなさい。すなわち、その父祖の部族ご

63
かれ もの
とに、すべて彼らのうちのつかさたる者ひとりずつをつかわしなさい﹂。
しゅ めい あらの かれ
三モーセは主の命にしたがって、パランの荒野から彼らをつかわした。
ひとびと ひとびと かれ な
そ の 人々 は み な イ ス ラ エ ル の 人々 の か し ら た ち で あ っ た。 四彼 ら の 名
つぎ ぶぞく こ
は次のとおりである。ルベンの部族ではザックルの子シャンマ、 五シメ
ぶぞく こ ぶぞく こ
オンの部族ではホリの子シャパテ、 六ユダの部族ではエフンネの子カレ
ぶぞく こ ぶぞく
ブ、 七イッサカルの部族ではヨセフの子イガル、 八エフライムの部族で
こ ぶぞく こ
はヌンの子ホセア、 九ベニヤミンの部族ではラフの子パルテ、 一〇ゼブル
ぶぞく こ ぶぞく
ンの部族ではソデの子ガデエル、 一一ヨセフの部族すなわち、マナセの
ぶぞく こ ぶぞく こ
部族ではスシの子ガデ、 一二ダンの部族ではゲマリの子アンミエル、 一三
ぶぞく こ ぶぞく
アセルの部族ではミカエルの子セトル、 一四ナフタリの部族ではワフシ
こ ぶぞく こ いじょう
の子ナヘビ、 一五ガドの部族ではマキの子ギウエル。 一六以上はモーセが
ち さぐ ひとびと な
その地を探らせるためにつかわした人々の名である。そしてモーセは
こ な
ヌンの子ホセアをヨシュアと名づけた。
民数記

かれ ち さぐ
一七 モーセは彼らをつかわし、カナンの地を探らせようとして、これに

64
い い やま のぼ ち ようす
言った、
﹁あなたがたはネゲブに行って、山に登り、 一八その地の様子を
み す たみ つよ よわ すく おお かれ す
見、そこに住む民は、強いか弱いか、少ないか多いか、 一九また彼らの住
ち よ わる ひとびと す まちまち てんまく じょうへき
んでいる地は、良いか悪いか。人々の住んでいる町々は、天幕か、城 壁
まち ち こ き
のある町か、 二〇その地は、肥えているか、やせているか、そこには、木
み いさ い ち
があるかないかを見なさい。あなたがたは、勇んで行って、その地のく
と とき じゅく はじ きせつ
だものを取ってきなさい﹂。時は、ぶどうの熟し始める季節であった。
かれ ち あらの
二一 そこで、彼らはのぼっていって、その地をチンの荒野からハマテの
いりぐち ちか さぐ かれ
入口に近いレホブまで探った。 二二彼らはネゲブにのぼって、ヘブロン
い しそん
まで行った。そこにはアナクの子孫であるアヒマン、セシャイ、および
ねんまえ た
タルマイがいた。ヘブロンはエジプトのゾアンよりも七年前に建てら
かれ たに い
れたものである。 二三ついに彼らはエシコルの谷に行って、そこで一ふ
えだ き と ぼう
さのぶどうの枝を切り取り、これを棒をもって、ふたりでかつぎ、また、
と ひとびと き
ざ く ろ と い ち じ く を も 取 っ た。 二 四イ ス ラ エ ル の 人々 が、そ こ で 切 り
民数記

と ところ たに よ
取ったぶどうの一ふさにちなんで、その所はエシコルの谷と呼ばれた。

65
にち のち かれ ち さぐ おわ かえ
二五 四十日の後、彼らはその地を探り終って帰ってきた。 二六そして、パ
あらの
ランの荒野にあるカデシにいたモーセとアロン、およびイスラエルの
ひとびと ぜんかいしゅう い かれ ぜんかいしゅう ふくめい ち
人々の全 会 衆のもとに行って、彼らと全 会 衆とに復命し、その地のく
かれ み かれ い
だものを彼らに見せた。 二七彼らはモーセに言った、
﹁わたしたちはあな
ち い ちち みつ なが
たが、つかわした地へ行きました。そこはまことに乳と蜜の流れている
ち ち す たみ つよ
地です。これはそのくだものです。 二八しかし、その地に住む民は強く、
まちまち けんご ひじょう おお しそん
その町々は堅固で非常に大きく、わたしたちはそこにアナクの子孫がい
み ち す さんち
るのを見ました。 二九またネゲブの地には、アマレクびとが住み、山地に
す うみ きし
はヘテびと、エブスびと、アモリびとが住み、海べとヨルダンの岸べに

は、カナンびとが住んでいます﹂。
まえ たみ い
三〇 そのとき、カレブはモーセの前で、民をしずめて言った、
﹁わたした
せ と かなら か
ちはすぐにのぼって、攻め取りましょう。わたしたちは必ず勝つことが
かれ い ひとびと い
できます﹂。 三一しかし、彼とともにのぼって行った人々は言った、
﹁わた
民数記

たみ せ かれ
したちはその民のところへ攻めのぼることはできません。彼らはわた

66
つよ かれ さぐ ち
したちよりも強いからです﹂。 三二そして彼らはその探った地のことを、
ひとびと わる い い い めぐ
イスラエルの人々に悪く言いふらして言った、﹁わたしたちが行き巡っ
さぐ ち す もの ほろ ち ところ
て探った地は、そこに住む者を滅ぼす地です。またその所でわたしたち
み たみ せ たか ひとびと
が見た民はみな背の高い人々です。 三三わたしたちはまたそこで、ネピ
で しそん み じぶん
リムから出たアナクの子孫ネピリムを見ました。わたしたちには自分
おも かれ み ちが
が、いなごのように思われ、また彼らにも、そう見えたに違いありませ
ん﹂。
第一四章
かいしゅう こえ さけ たみ よ な あ
一そこで、 会 衆はみな声をあげて叫び、民はその夜、泣き明かした。 二
ひとびと ぜん
またイスラエルの人々はみなモーセとアロンにむかってつぶやき、全
かいしゅう かれ い くに し
会 衆は彼らに言った、
﹁ああ、わたしたちはエジプトの国で死んでいた
民数記

あらの し
らよかったのに。この荒野で死んでいたらよかったのに。 三なにゆえ、

67
しゅ ち つ たお
主はわたしたちをこの地に連れてきて、つるぎに倒れさせ、またわたし
さいし かえ ほう
たちの妻子をえじきとされるのであろうか。エジプトに帰る方が、むし

ろ良いではないか﹂。
かれ たがい い た
四彼らは互に言った、
﹁わたしたちはひとりのかしらを立てて、エジプト
かえ ひとびと ぜんかいしゅう
に帰ろう﹂。 五そこで、モーセとアロンはイスラエルの人々の全 会 衆の
まえ ち さぐ もの こ
前 で ひ れ ふ し た。 六こ の と き、そ の 地 を 探 っ た 者 の う ち の ヌ ン の 子 ヨ
こ いふく さ ひとびと
シュアとエフンネの子カレブは、その衣服を裂き、 七イスラエルの人々
ぜんかいしゅう い い めぐ さぐ ち ひじょう よ ち
の全 会 衆に言った、
﹁わたしたちが行き巡って探った地は非常に良い地
しゅ よ ち みちび
です。 八もし、主が良しとされるならば、わたしたちをその地に導いて
い ちち みつ なが
行って、それをわたしたちにくださるでしょう。それは乳と蜜の流れて
ち しゅ ち たみ おそ
いる地です。 九ただ、主にそむいてはなりません。またその地の民を恐
かれ く もの かれ
れてはなりません。彼らはわたしたちの食い物にすぎません。彼らを
まも もの す のぞ しゅ とも かれ
守る者は取り除かれます。主がわたしたちと共におられますから、彼ら
民数記

おそ かいしゅう いし かれ う ころ
を恐れてはなりません﹂。 一〇ところが会 衆はみな石で彼らを撃ち殺そ

68
うとした。
しゅ えいこう かいけん まくや ひと あらわ
そのとき、主の栄光が、会見の幕屋からイスラエルのすべての人に現れ
しゅ い たみ あなど
た。 一一主はモーセに言われた、﹁この民はいつまでわたしを侮るのか。
かれ い かれ
わたしがもろもろのしるしを彼らのうちに行ったのに、彼らはいつまで
しん えきびょう かれ う ほろ
わたしを信じないのか。 一二わたしは疫 病をもって彼らを撃ち滅ぼし、
かれ おお つよ こくみん
あなたを彼らよりも大いなる強い国民としよう﹂。
しゅ い ちから
モーセは主に言った、
一三 ﹁エジプトびとは、あなたが力をもって、この
たみ かれ みちび だ き ち じゅうみん つ
民を彼らのうちから導き出されたことを聞いて、 一四この地の住 民に告
かれ しゅ たみ しゅ
げるでしょう。彼らは、主なるあなたが、この民のうちにおられ、主な
あらわ くも かれ うえ ひる
るあなたが、まのあたり現れ、あなたの雲が、彼らの上にとどまり、昼
くも はしら よる ひ はしら かれ まえ い
は雲の柱のうちに、夜は火の柱のうちにあって、彼らの前に行かれるの
き たみ のこ ころ
を聞いたのです。 一五いま、もし、あなたがこの民をひとり残らず殺され
き こくみん かた しゅ あた ちか
るならば、あなたのことを聞いた国民は語って、 一六﹃主は与えると誓っ
民数記

ち たみ みちび い かれ あらの ころ
た地に、この民を導き入れることができなかったため、彼らを荒野で殺

69
い やくそく
したのだ﹄と言うでしょう。 一七どうぞ、あなたが約束されたように、い
しゅ おお ちから あらわ しゅ いか
ま主の大いなる力を現してください。 一八あなたはかつて、
﹃主は怒るこ
と つみ もの ばつ
とおそく、いつくしみに富み、罪ととがをゆるす者、しかし、罰すべき
もの けっ ちち つみ こ むく だい およ もの
者は、決してゆるさず、父の罪を子に報いて、三、四代に及ぼす者であ
い おお
る﹄と言われました。 一九どうぞ、あなたの大いなるいつくしみによっ
いま たみ
て、エジプトからこのかた、今にいたるまで、この民をゆるされたよう
たみ つみ
に、この民の罪をおゆるしください﹂。
しゅ い ことば
二〇 主は言われた、﹁わたしはあなたの言葉のとおりにゆるそう。 二一し
い しゅ えいこう ぜん せ か い み
かし、わたしは生きている。また主の栄光が、全世界に満ちている。 二二
えいこう あらの い み
わたしの栄光と、わたしがエジプトと荒野で行ったしるしを見ながら、
ど こころ こえ き
このように十度もわたしを試みて、わたしの声に聞きしたがわなかった
ひとびと かれ せんぞ あた ちか
人々はひとりも、 二三わたしがかつて彼らの先祖たちに与えると誓った
ち み あなど ひとびと み
地を見ないであろう。またわたしを侮 った人々も、それを見ないであ
民数記

ちが こころ
ろう。 二四ただし、わたしのしもべカレブは違った心をもっていて、わた

70
かんぜん したが かれ い ち かれ みちび い
しに完全に従 ったので、わたしは彼が行ってきた地に彼を導き入れる
かれ しそん しょゆう たに
であろう。彼の子孫はそれを所有するにいたるであろう。 二五谷にはア
す み
マレクびととカナンびとが住んでいるから、あなたがたは、あす、身を
こうかい みち あらの すす
めぐらして紅海の道を荒野へ進みなさい﹂。
しゅ い
二六 主はモーセとアロンに言われた、 二七﹁わたしにむかってつぶやくこ
わる かいしゅう しの
の悪い会 衆をいつまで忍ぶことができようか。わたしはイスラエルの
ひとびと き かれ い
人々が、わたしにむかってつぶやくのを聞いた。 二八あなたは彼らに言
しゅ い い
いなさい、
﹃主は言われる、
﹁わたしは生きている。あなたがたが、わた
みみ かた
しの耳に語ったように、わたしはあなたがたにするであろう。 二九あな
したい あらの たお
たがたは死体となって、この荒野に倒れるであろう。あなたがたのう
もの かぞ
ち、わたしにむかってつぶやいた者、すなわち、すべて数えられた二十
さいいじょう もの たお こ
歳以上の者はみな倒れるであろう。 三〇エフンネの子カレブと、ヌンの
こ す て
子ヨシュアのほかは、わたしがかつて、あなたがたを住まわせようと、手
民数記

ちか ち
をあげて誓った地に、はいることができないであろう。 三一しかし、あな

71
い こども
たがたが、えじきになるであろうと言ったあなたがたの子供は、わたし
みちび かれ ち し
が導いて、はいるであろう。彼らはあなたがたが、いやしめた地を知る
したい あらの
ようになるであろう。 三二しかしあなたがたは死体となってこの荒野に
たお こ したい あらの
倒れるであろう。 三三あなたがたの子たちは、あなたがたの死体が荒野
く は ねん あらの ひつじかい
に朽ち果てるまで四十年のあいだ、荒野で羊 飼となり、あなたがたの
ふしん つみ お ち さぐ にち
不信の罪を負うであろう。 三四あなたがたは、かの地を探った四十日の
ひ かず にち ねん ねん じぶん つみ
日数にしたがい、その一日を一年として、四十年のあいだ、自分の罪を
お とお し しゅ
負い、わたしがあなたがたを遠ざかったことを知るであろう﹂。 三五主な
い かなら さか あつ
るわたしがこれを言う。わたしは必ずわたしに逆らって集まったこの
わる かいしゅう おこな かれ あらの く
悪い会 衆に、これをことごとく行うであろう。彼らはこの荒野に朽ち、

ここで死ぬであろう﹄﹂。
ち さぐ い かえ
三六 こうして、モーセにつかわされ、かの地を探りに行き、帰ってきて、
ち わる い ぜんかいしゅう ひとびと
その地を悪く言い、全 会 衆を、モーセにむかって、つぶやかせた人々、
民数記

ち わる い ひとびと えきびょう しゅ
三七 すなわち、その地を悪く言いふらした人々は、疫 病にかかって主の

72
まえ し ち さぐ い ひとびと こ
前に死んだが、三八その地を探りに行った人々のうち、ヌンの子ヨシュア
こ い のこ
と、エフンネの子カレブとは生き残った。
ひとびと つ
モーセが、これらのことを、イスラエルのすべての人々に告げたと
三九
たみ ひじょう かな あさはや お やま いただ のぼ い
き、民は非常に悲しみ、 四〇朝早く起きて山の頂きに登って言った、
﹁わ
しゅ やくそく ところ のぼ い
たしたちはここにいる。さあ、主が約束された所へ上って行こう。わた
つみ おか い
したちは罪を犯したのだから﹂。 四一モーセは言った、
﹁あなたがたは、そ
と しゅ めい
れをなし遂げることもできないのに、どうして、そのように主の命にそ
のぼ い しゅ
むくのか。 四二あなたがたは上って行ってはならない。主があなたがた
てき まえ う やぶ
のうちにおられないから、あなたがたは敵の前に、撃ち破られるであろ
まえ
う。 四三そこには、アマレクびとと、カナンびとがあなたがたの前にいる
たお
から、あなたがたは、つるぎに倒れるであろう。あなたがたがそむいて、
しゅ したが しゅ とも
主に従わなかったゆえ、主はあなたがたと共におられないからである﹂。
かれ やま いただき のぼ しゅ けいやく
しかし、彼らは、ほしいままに山の頂に登った。ただし、主の契約の
四四
民数記

はこ しゅくえい なか で やま す
箱と、モーセとは、 宿 営の中から出なかった。 四五そこで、その山に住

73
くだ かれ う やぶ
んでいたアマレクびとと、カナンびとが下ってきて、彼らを撃ち破り、ホ

ルマまで追ってきた。
第一五章
しゅ い ひとびと い
主はモーセに言われた、 二﹁イスラエルの人々に言いなさい、
一 ﹃あなた
あた す ち い しゅ かさい とき
がたが、わたしの与えて住ませる地に行って、三主に火祭をささげる時、
とくべつ せいがん そな もの じはつ そな もの しゅく
すなわち特別の誓願の供え物、あるいは自発の供え物、あるいは祝のと
そな もの うし ひつじ はんさい ぎせい しゅ こう
きの供え物として、牛または羊を燔祭または犠牲としてささげ、主に香
そな もの しゅ もの はんさい
ばしいかおりとするとき、四五その供え物を主にささげる者は、燔祭また
ぎせい とも こひつじ とう むぎこ ぶん あぶら
は犠牲と共に、小羊一頭ごとに、麦粉一エパの十分の一に、油 一ヒンの
ぶん ま そさい しゅ ぶん
四分の一を混ぜたものを、素祭としてささげ、ぶどう酒一ヒンの四分の
かんさい おひつじ もち
一を、灌祭としてささげなければならない。 六もし、また雄羊を用いる
民数記

むぎこ ぶん あぶら ぶん ま
ときは、麦粉一エパの十分の二に、 油 一ヒンの三分の一を混ぜたもの

74
そさい しゅ ぶん かんさい
を、素祭としてささげ、 七また、ぶどう酒一ヒンの三分の一を、灌祭と
しゅ こう
してささげて、主に香ばしいかおりとしなければならない。 八またあな
とくべつ せいがん そな もの しゅうおんさい しゅ とき わか
たが特別の誓願の供え物、あるいは酬 恩 祭を、主にささげる時、若い
おうし はんさい ぎせい むぎこ ぶん あぶら
雄牛を、燔祭または犠牲とするならば、 九麦粉一エパの十分の三に、 油
ぶん ま そさい わか おうし とも
一ヒンの二分の一を混ぜたものを、素祭として、若い雄牛と共にささげ、
しゅ ぶん かんさい
また、ぶどう酒一ヒンの二分の一を、灌祭としてささげなければなら
一〇
かさい しゅ こう
ない。これは火祭であって、主に香ばしいかおりとするものである。
おうし おひつじ こひつじ こ とう
雄牛、あるいは雄羊、あるいは小羊、あるいは子やぎは、一頭ごとに、
一一
このようにしなければならない。 一二すなわち、あなたがたのささげる
かず かず とう
数にてらし、その数にしたがって、一頭ごとに、このようにしなければ
くに うま もの かさい しゅ こう
ならない。 一三すべて国に生れた者が、火祭をささげて、主に香ばしいか
おこな
おりとするときは、このように、これらのことを行わなければならない。
きりゅう た こ く じん
またあなたがたのうちに寄留している他国人、またはあなたがたの
一四
民数記

よ よ す もの かさい しゅ こう
うちに、代々ながく住む者が、火祭をささげて、主に香ばしいかおりと

75
とき ひと
しようとする時は、あなたがたがするように、その人もしなければなら
かいしゅう もの きりゅう
ない。 一五会 衆たる者は、あなたがたも、あなたがたのうちに寄留して
た こ く じん どういつ さだ したが
いる他国人も、同一の定めに従わなければならない。これは、あなたが
よ よ まも さだ たこく ひと しゅ まえ
たが代々ながく守るべき定めである。他国の人も、主の前には、あなた
ひと
がたと等しくなければならない。 一六すなわち、あなたがたも、あなたが
きりゅう た こ く じん どういつ りっぽう どういつ したが
たのうちに寄留している他国人も、同一の律法、同一のおきてに従わな
ければならない﹄﹂。
しゅ い ひとびと い
一七 主はまたモーセに言われた、 一八﹁イスラエルの人々に言いなさい、
みちび い ち ち しょくもつ
﹃わたしが導いて行く地に、あなたがたがはいって、 一九その地の食 物を
た もの しゅ
食べるとき、あなたがたは、ささげ物を主にささげなければならない。 二
むぎこ はつもの つく か し もの
すなわち、麦粉の初物で作った菓子を、ささげ物としなければならな

う ば もの
い。これを、打ち場からのささげ物のように、ささげなければならない。
よ よ むぎこ はつもの しゅ もの
二一 あなたがたは代々その麦粉の初物で、主にささげ物をしなければな
民数記

らない。

76
しゅ つ
二二あなたがたが、もしあやまって、主がモーセに告げられたこのすべて
いまし おこな しゅ いまし あた ひ
の戒めを行わず、 二三主がモーセによって戒めを与えられた日からこの
よ よ めい こと おこな
かた、代々にわたり、あなたがたに命じられたすべての事を行わないと
かいしゅう し おか とき ぜんかいしゅう
き、 二四すなわち、会 衆が知らずに、あやまって犯した時は、全 会 衆は
わか おうし とう はんさい しゅ こう
若い雄牛一頭を、燔祭としてささげ、主に香ばしいかおりとし、これに
そさい かんさい さだ くわ お とう ざいさい
素祭と灌祭とを定めのように加え、また雄やぎ一頭を、罪祭としてささ
さいし ひとびと ぜんかいしゅう
げなければならない。 二五そして祭司は、イスラエルの人々の全 会 衆の
つみ かれ
ために、罪のあがないをしなければならない。そうすれば、彼らはゆる
かしつ かれ かしつ
されるであろう。それは過失だからである。彼らはその過失のために、
そな もの かさい しゅ ざいさい しゅ まえ
その供え物として、火祭を主にささげ、また罪祭を主の前にささげなけ
ひとびと ぜんかいしゅう
れ ば な ら な い。 二六そ う す れ ば、イ ス ラ エ ル の 人々 の 全 会 衆 は ゆ る さ
かれ きりゅう た こ く じん たみ
れ、また彼らのうちに寄留している他国人も、ゆるされるであろう。民
かしつ おか
はみな過失を犯したからである。
民数記

ひと つみ おか とき さい め とう ざいさい
二七もし人があやまって罪を犯す時は、一歳の雌やぎ一頭を罪祭として

77
さいし ひと つみ おか
ささげなければならない。 二八そして祭司は、人があやまって罪を犯し
とき つみ おか ひと しゅ まえ つみ
た時、そのあやまって罪を犯した人のために、主の前に罪のあがないを
つみ かれ
して、その罪をあがなわなければならない。そうすれば、彼はゆるされ
ひとびと くに うま もの
るであろう。 二九イスラエルの人々のうちの、国に生れた者でも、そのう
きりゅう た こ く じん つみ おか もの
ちに寄留している他国人でも、あやまって罪を犯す者には、あなたがた
どういつ りっぽう もち くに うま もの
は同一の律法を用いなければならない。 三〇しかし、国に生れた者でも、
たこく ひと こ い つみ おか もの しゅ けが ひと たみ
他国の人でも、故意に罪を犯す者は主を汚すもので、その人は民のうち
た かれ しゅ ことば あなど いまし
か ら 断 た れ な け れ ば な ら な い。 三 一彼 は 主 の 言葉 を 侮 り、そ の 戒 め を
やぶ かなら た つみ お
破ったのであるから、 必ず断たれ、その罪を負わなければならない﹄﹂。
ひとびと あらの あんそくにち ひと
三二 イスラエルの人々が荒野におるとき、安息日にひとりの人が、たきぎ
あつ み あつ み ひとびと ひと
を集めるのを見た。 三三そのたきぎを集めるのを見た人々は、その人を
ぜんかいしゅう つ と あつか
モーセとアロン、および全 会 衆のもとに連れてきたが、 三四どう取り扱
しめ う かれ と こ
うべきか、まだ示しを受けていなかったので、彼を閉じ込めておいた。 三
民数記

しゅ い ひと かなら ころ
五そのとき、主はモーセに言われた、
﹁その人は必ず殺されなければなら

78
ぜんかいしゅう しゅくえい そと かれ いし う ころ
ない。全 会 衆は宿 営の外で、彼を石で撃ち殺さなければならない﹂。 三
ぜんかいしゅう かれ しゅくえい そと つ だ かれ いし う ころ しゅ
そこで、全 会 衆は彼を宿 営の外に連れ出し、彼を石で撃ち殺し、主が

めい
モーセに命じられたようにした。
しゅ い ひとびと めい よ よ
三七 主はまたモーセに言われた、 三八﹁イスラエルの人々に命じて、代々
いふく あお
その衣服のすその四すみにふさをつけ、そのふさを青ひもで、すその四
み しゅ
すみにつけさせなさい。 三九あなたがたが、そのふさを見て、主のもろも
いまし おも おこ おこな じぶん こころ め よく
ろの戒めを思い起して、それを行い、あなたがたが自分の心と、目の欲
したが おこな
に従 って、みだらな行いをしないためである。 四〇こうして、あなたがた
いまし おも おこ おこな
は、わたしのもろもろの戒めを思い起して、それを行い、あなたがたの
かみ せい もの かみ
神に聖なる者とならなければならない。 四一わたしはあなたがたの神、
しゅ かみ くに
主であって、あなたがたの神となるために、あなたがたをエジプトの国
みちび だ もの かみ しゅ
から導き出した者である。わたしはあなたがたの神、主である﹂。
民数記

79
第一六章
こ こ こ こ
ここに、レビの子コハテの子なるイヅハルの子コラと、ルベンの子な

こ こ こ
るエリアブの子ダタンおよびアビラムと、ルベンの子なるペレテの子オ
あいむす ひとびと かいしゅう えら
ンとが相結び、 二イスラエルの人々のうち、 会 衆のうちから選ばれて、
な ひとびと にん とも た さか
つかさとなった名のある人々二百五十人と共に立って、モーセに逆らっ
かれ あつ さか い
た。 三彼らは集まって、モーセとアロンとに逆らって言った、
﹁あなたが
ぶん こ ぜんかいしゅう せい
たは、分を越えています。全 会 衆は、ことごとく聖なるものであって、
しゅ しゅ かいしゅう うえ
主がそのうちにおられるのに、どうしてあなたがたは、主の会 衆の上に
た き ふ かれ
立つのですか﹂。 四モーセはこれを聞いてひれ伏した。 五やがて彼はコ
なかま い しゅ しゅ
ラと、そのすべての仲間とに言った、
﹁あす、主は、主につくものはだれ、
せい もの しめ ひと ちか
聖なる者はだれであるかを示して、その人をみもとに近づけられるであ
えら ひと ちか
ろう。すなわち、その選んだ人を、みもとに近づけられるであろう。 六
民数記

つぎ なかま ひ
それで、次のようにしなさい。コラとそのすべての仲間とは、火ざらを

80
と なか ひ い くんこう も しゅ まえ で
取り、 七その中に火を入れ、それに薫香を盛って、あす、主の前に出な
とき しゅ えら ひと せい もの こ
さい。その時、主が選ばれる人は聖なる者である。レビの子たちよ、あ
ぶん こ い
なたがたこそ、分を越えている﹂。 八モーセはまたコラに言った、
﹁レビ
こ き かみ
の子たちよ、聞きなさい。 九イスラエルの神はあなたがたをイスラエル
かいしゅう わ しゅ ちか しゅ まくや つとめ
の会 衆のうちから分かち、主に近づかせて、主の幕屋の務をさせ、かつ
かいしゅう まえ た つか ちい
会 衆の前に立って仕えさせられる。これはあなたがたにとって、小さ
かみ きょうだい こ
いことであろうか。 一〇神はあなたとあなたの兄 弟なるレビの子たちを
ちか うえ さいし もと
みな近づけられた。あなたがたはなお、その上に祭司となることを求め
なかま あつ しゅ てき
るのか。 一一あなたとあなたの仲間は、みなそのために集まって主に敵
おも かれ たい
している。あなたがたはアロンをなんと思って、彼に対してつぶやくの
か﹂。
ひと こ よ
一二 モーセは人をやって、エリアブの子ダタンとアビラムとを呼ばせた
かれ い まい ちち みつ なが
が、彼らは言った、
﹁わたしたちは参りません。 一三あなたは乳と蜜の流
民数記

ち みちび だ あらの ころ
れる地から、わたしたちを導き出して、荒野でわたしたちを殺そうとし

81
ちい うえ
ている。これは小さいことでしょうか。その上、あなたはわたしたちに
くんりん ちち みつ
君臨しようとしている。 一四かつまた、あなたはわたしたちを、乳と蜜の
なが ち みちび い はたけ はたけ し ぎょう あた
流れる地に導いて行かず、 畑と、ぶどう畑とを嗣 業として与えもしな
ひとびと め まい
い。これらの人々の目をくらまそうとするのですか。わたしたちは参
りません﹂。
おお いか しゅ い かれ そな もの かえり
モーセは大いに怒って、主に言った、
一五 ﹁彼らの供え物を顧みないでく
かれ とう と かれ
ださい。わたしは彼らから、ろば一頭をも取ったことなく、また彼らの
がい い
ひとりをも害したことはありません﹂。 一六そしてモーセはコラに言っ
なかま いっしょ しゅ まえ で
た、
﹁あなたとあなたの仲間はみなアロンと一緒に、あす、主の前に出な
ひ と くんこう も
さい。 一七あなたがたは、おのおの火ざらを取って、それに薫香を盛り、
ひ しゅ まえ たずさ い ひ あ
おのおのその火ざらを主の前に携えて行きなさい。その火ざらは会わ
ひ たずさ い
せて二百五十。あなたとアロンも、おのおの火ざらを携えて行きなさ
かれ ひ と ひ なか い くんこう
い﹂。 一八彼らは、おのおの火ざらを取り、火をその中に入れ、それに薫香
民数記

も とも かいけん まくや いりぐち た


を盛り、モーセとアロンも共に、会見の幕屋の入口に立った。 一九そのと

82
かいしゅう かいけん まくや いりぐち あつ かれ
き、コラは会 衆を、ことごとく会見の幕屋の入口に集めて、彼らふたり
さか しゅ えいこう ぜんかいしゅう あらわ
に逆らわせようとしたが、主の栄光は全 会 衆に現れた。
しゅ い かいしゅう はな
二〇主はモーセとアロンに言われた、 二一﹁あなたがたはこの会 衆を離れ
かれ ほろ かれ
なさい。わたしはただちに彼らを滅ぼすであろう﹂。 二二彼らふたりは、
ふ い かみ にく もの いのち かみ
ひれ伏して言った、
﹁神よ、すべての肉なる者の命の神よ、このひとりの
ひと つみ おか ぜんかいしゅう たい いか
人が、罪を犯したからといって、あなたは全 会 衆に対して怒られるので
しゅ い かいしゅう つ
すか﹂。 二三主はモーセに言われた、 二四﹁あなたは会 衆に告げて、コラと
しゅうい さ い
ダタンとアビラムのすまいの周囲を去れと言いなさい﹂。
た い
二五モーセは立ってダタンとアビラムのもとに行ったが、イスラエルの
ちょうろう かれ したが い かいしゅう い
長 老たちも、彼に従 って行った。 二六モーセは会 衆に言った、
﹁どうぞ、
わる ひとびと てんまく はな かれ
あなたがたはこれらの悪い人々の天幕を離れてください。彼らのもの
なに ふ かれ つみ
には何にも触れてはならない。彼らのもろもろの罪によって、あなたが
ほろ ひとびと
た も 滅 ぼ さ れ て は い け な い か ら﹂。 二七そ こ で 人々 は コ ラ と ダ タ ン と ア
民数記

しゅうい はな さ
ビラムのすまいの周囲を離れ去った。そして、ダタンとアビラムとは、

83
つま こ ようじ いっしょ で てんまく いりぐち た
妻、子、および幼児と一緒に出て、天幕の入口に立った。 二八モーセは
い しゅ こと
言った、﹁あなたがたは主がこれらのすべての事をさせるために、わたし
じぶん こころ おこな
をつかわされたこと、またわたしが、これを自分の心にしたがって行う
つぎ し
ものでないことを、次のことによって知るであろう。 二九すなわち、もし
ひとびと ふつう し かた し ふつう うんめい あ しゅ
これらの人々が、普通の死に方で死に、普通の運命に会うのであれば、主
しゅ あたら こと
がわたしをつかわされたのではない。 三〇しかし、主が新しい事をされ、
ち くち ひら ひとびと ぞく もの
地が口を開いて、これらの人々と、それに属する者とを、ことごとくの
い よ み くだ
みつくして、生きながら陰府に下らせられるならば、あなたがたはこれ
ひとびと しゅ あなど し
らの人々が、主を侮 ったのであることを知らなければならない﹂。
ことば の おわ かれ した と ち
三一 モーセが、これらのすべての言葉を述べ終ったとき、彼らの下の土地
さ ち くち ひら かれ かぞく ぞく
が裂け、 三二地は口を開いて、彼らとその家族、ならびにコラに属するす
ひとびと しょゆうぶつ かれ
べての人々と、すべての所有物をのみつくした。 三三すなわち、彼らと、
かれ ぞく みな い よ み くだ ち うえ と
彼らに属するものは、皆生きながら陰府に下り、地はその上を閉じふさ
民数記

かれ かいしゅう た ほろ とき しゅうい
いで、彼らは会 衆のうちから、断ち滅ぼされた。 三四この時、その周囲に

84
ひとびと かれ さけ き に さ おそ ち
いたイスラエルの人々は、みな彼らの叫びを聞いて逃げ去り、﹁恐らく地
い しゅ
はわたしたちをも、のみつくすであろう﹂と言った。 三五また主のもとか
ひ で くんこう そな にん や
ら火が出て、薫香を供える二百五十人をも焼きつくした。
しゅ い さいし こ
三六 主はモーセに言われた、 三七﹁あなたは祭司アロンの子エレアザルに
つ も ひ なか ひ と だ なか ひ
告げて、その燃える火の中から、かの火ざらを取り出させ、その中の火
とお ひろ ち ひ せい
を遠く広くまき散らさせなさい。それらの火ざらは聖となったから、 三
つみ おか いのち うしな ひとびと ひ ひろ の いた
罪を犯して命を失 った人々の、これらの火ざらを、広い延べ板とし

さいだん しゅ まえ せい
て、祭壇のおおいとしなさい。これは主の前にささげられて、聖となっ
ひとびと
たからである。こうして、これはイスラエルの人々に、しるしとなるで
さいし や ころ ひとびと そな
あろう﹂。 三九そこで祭司エレアザルは、かの焼き殺された人々が供えた
せいどう ひ と ひろ う の さいだん
青銅の火ざらを取り、これを広く打ち延ばして、祭壇のおおいとし、 四〇
ひとびと きねん もの しそん
これをイスラエルの人々の記念の物とした。これはアロンの子孫でな
ひと しゅ まえ ちか くんこう
いほかの人が、主の前に近づいて、薫香をたくことのないようにするた
民数記

ひと なかま
め、またその人がコラ、およびその仲間のようにならないためである。

85
しゅ い
すなわち、主がモーセによってエレアザルに言われたとおりである。
よくじつ ひとびと かいしゅう
四一その翌日、イスラエルの人々の会 衆は、みなモーセとアロンとにつ
い しゅ たみ ころ かいしゅう あつ
ぶ や い て 言 っ た、﹁あ な た が た は 主 の 民 を 殺 し ま し た﹂。 四二 会 衆 が 集
さか かいけん まくや のぞ み くも
まって、モーセとアロンとに逆らったとき、会見の幕屋を望み見ると、雲
しゅ えいこう あらわ かいけん
がこれをおおい、主の栄光が現れていた。 四三モーセとアロンとが、会見
まくや まえ い しゅ い
の幕屋の前に行くと、四四主はモーセに言われた、四五
﹁あなたがたはこの
かいしゅう はな かれ ほろ かれ
会 衆 を 離 れ な さ い。わ た し は た だ ち に 彼 ら を 滅 ぼ そ う﹂。そ こ で 彼 ら
ふ い ひ
ふたりは、ひれ伏した。 四六モーセはアロンに言った、
﹁あなたは火ざら
と さいだん と ひ い うえ くんこう も いそ
を取って、それに祭壇から取った火を入れ、その上に薫香を盛り、急い
かいしゅう も い かれ つみ
でそれを会 衆のもとに持って行って、彼らのために罪のあがないをし
しゅ いか はっ えきびょう はじ
な さ い。主 が 怒 り を 発 せ ら れ、 疫 病 が す で に 始 ま っ た か ら で す﹂。 四七
い と かいしゅう なか はし
そこで、アロンはモーセの言ったように、それを取って会 衆の中に走っ
い えきびょう たみ はじ くんこう
て行ったが、 疫 病はすでに民のうちに始まっていたので、薫香をたい
民数記

たみ つみ し もの い
て、民のために罪のあがないをし、 四八すでに死んだ者と、なお生きてい

86
もの あいだ た えきびょう こと し もの
る者との間に立つと、 疫 病はやんだ。 四九コラの事によって死んだ者の
えきびょう し もの にん
ほかに、この疫 病によって死んだ者は一万四千七百人であった。 五〇ア
かいけん まくや いりぐち かえ えきびょう
ロンは会見の幕屋の入口にいるモーセのもとに帰った。こうして疫 病
はやんだ。
第一七章
しゅ い ひとびと つ かれ
主はモーセに言われた、二﹁イスラエルの人々に告げて、彼らのうちか

ふ そ いえ ぽん と
ら、おのおのの父祖の家にしたがって、つえ一本ずつを取りなさい。す
ふ そ いえ
なわち、そのすべてのつかさたちから、父祖の家にしたがって、つえ十
ほん と ひとびと な か
二本を取り、その人々の名を、おのおのそのつえに書きしるし、 三レビ
な か ふ そ いえ
のつえにはアロンの名を書きしるしなさい。父祖の家のかしらは、おの
ぽん だ
おののつえ一本を出すのだからである。 四そして、これらのつえを、わ
民数記

あ かいけん まくや なか はこ まえ お
たしがあなたがたに会う会見の幕屋の中の、あかしの箱の前に置きなさ

87
えら ひと め で
い。 五わたしの選んだ人のつえには、芽が出るであろう。こうして、わ
ひとびと
たしはイスラエルの人々が、あなたがたにむかって、つぶやくのをやめ
ひとびと かた
させるであろう﹂。 六モーセが、このようにイスラエルの人々に語った
ふ そ いえ
ので、つかさたちはみな、その父祖の家にしたがって、おのおの、つえ
ぽん かれ わた あ ほん
一本ずつを彼に渡した。そのつえは合わせて十二本。アロンのつえも、
まくや
そのつえのうちにあった。 七モーセは、それらのつえを、あかしの幕屋
なか しゅ まえ お
の中の、主の前に置いた。
よくじつ まくや み いえ
その翌日、モーセが、あかしの幕屋にはいって見ると、レビの家のた

だ め だ はな さ
めに出したアロンのつえは芽をふき、つぼみを出し、花が咲いて、あめ
み むす しゅ
んどうの実を結んでいた。 九モーセがそれらのつえを、ことごとく主の
まえ ひと ところ も だ かれ み
前から、イスラエルのすべての人の所に持ち出したので、彼らは見て、お
じぶん と しゅ い
のおの自分のつえを取った。 一〇主はモーセに言われた、
﹁アロンのつえ
はこ まえ も かえ ほぞん もの
を、あかしの箱の前に持ち帰り、そこに保存して、そむく者どものため
民数記

かれ たい
に、しるしとしなさい。こうして、彼らのわたしに対するつぶやきをや

88
かれ し
めさせ、彼らの死ぬのをまぬかれさせなければならない﹂。 一一モーセは
しゅ かれ めい おこな
そのようにして、主が彼に命じられたとおりに行 った。
ひとびと い し
一二 イスラエルの人々は、モーセに言った、﹁ああ、わたしたちは死ぬ。
はめつ ぜんめつ しゅ まくや ちか もの し
破滅です、全滅です。 一三主の幕屋に近づく者が、みな死ぬのであれば、
し た
わたしたちは死に絶えるではありませんか﹂。
第一八章
しゅ い こ
そこで、主はアロンに言われた、
一 ﹁あなたとあなたの子たち、およびあ
ふ そ いえ もの せいじょ かん つみ お
なたの父祖の家の者は、聖所に関する罪を負わなければならない。ま
こ さ い し しょく かん つみ お
た、あなたとあなたの子たちとは、祭司 職に関する罪を負わなければな
きょうだい ぶぞく もの
らない。 二あなたはまた、あなたの兄 弟なるレビの部族の者、すなわち、
ふ そ ぶぞく もの ちか つら
あなたの父祖の部族の者どもを、あなたに近づかせ、あなたに連なり、あ
民数記

つか こ
なたに仕えさせなければならない。ただし、あなたとあなたの子たちと

89
とも まくや まえ つか かれ
は、共にあかしの幕屋の前で仕えなければならない。 三彼らは、あなた
つとめ まくや つとめ まも せいじょ
の務と、すべての幕屋の務とを守らなければならない。ただし、聖所の
うつわ さいだん ちか かれ し
器と、祭壇とに近づいてはならない。彼らもあなたがたも、死ぬことの
かれ つら かいけん まくや つとめ まも
ないためである。 四彼らはあなたに連なって、会見の幕屋の務を守り、
まくや はたら もの
幕屋のもろもろの働きをしなければならない。ほかの者は、あなたがた
ちか せいじょ つとめ さいだん
に近づいてはならない。 五このように、あなたがたは、聖所の務と、祭壇
つとめ まも しゅ はげ いか
の務とを守らなければならない。そうすれば、主の激しい怒りは、かさ
ひとびと のぞ
ね て イ ス ラ エ ル の 人々 に 臨 ま な い で あ ろ う。 六わ た し は あ な た が た の
きょうだい ひとびと と しゅ
兄 弟たるレビびとを、イスラエルの人々のうちから取り、主のために、
たまもの あた かいけん まくや はたら
これを賜物として、あなたがたに与え、会見の幕屋の働きをさせる。 七
こ とも さ い し しょく まも さいだん たれまく
あなたとあなたの子たちは共に祭司 職を守って、祭壇と、垂幕のうちの
こと と おこな とも つと さいし
すべての事を執り行い、共に勤めなければならない。わたしは祭司の
しょくむ たまもの あた ひと ちか もの ころ
職務を賜物として、あなたがたに与える。ほかの人で近づく者は殺され
民数記

るであろう﹂。

90
しゅ い ひとびと
主はまたアロンに言われた、
八 ﹁わたしはイスラエルの人々の、すべての
せい そな もの もの いちぶ あた
聖なる供え物で、わたしにささげる物の一部をあなたに与える。すなわ
こ わ まえ あた
ち、わたしはこれをあなたと、あなたの子たちに、その分け前として与
えいきゅう う ぶん せい そな もの ひ や
え、永 久に受くべき分とする。 九いと聖なる供え物のうち、火で焼かず
き つぎ
に、あなたに帰すべきものは次のとおりである。すなわち、わたしにさ
そな もの そさい ざいさい けんさい せい もの
さげるすべての供え物、素祭、罪祭、愆祭はみな、いと聖なる物であっ
こ き せい ところ
て、あなたとあなたの子たちに帰するであろう。 一〇いと聖なる所で、そ
た だんし た
れを食べなければならない。男子はみな、それを食べることができる。
き せい もの き
それはあなたに帰すべき聖なる物である。 一一またあなたに帰すべきも
ひとびと そな もの
のはこれである。すなわち、イスラエルの人々のささげる供え物のう
ようさい むすめ
ち、すべて揺祭とするものであって、これをあなたとあなたのむすこ娘
あた えいきゅう う ぶん いえ もの きよ もの
に与えて、永 久に受くべき分とする。あなたの家の者のうち、清い者は
た あぶら もっと もの
みな、これを食べることができる。 一二すべて油の最もよい物、およびす
民数記

あたら しゅ こくもつ もっと よ もの ひとびと しゅ


べて新しいぶどう酒と、穀物の最も良い物など、人々が主にささげる

91
はつほ あた くに さんぶつ はつもの ひとびと しゅ
初穂をあなたに与える。 一三国のすべての産物の初物で、人々が主のも
たずさ き いえ もの
とに携えてきたものは、あなたに帰するであろう。あなたの家の者のう
きよ もの た
ち、清い者はみな、これを食べることができる。 一四イスラエルのうちの
ほうのうぶつ き にく もの
奉納物はみな、あなたに帰する。 一五すべて肉なる者のういごであって、
しゅ もの ひと けもの き ひと
主にささげられる者はみな、人でも獣でも、あなたに帰する。ただし、人
かなら けが けもの
のういごは必ずあがなわなければならない。また汚れた獣のういごも、
ひと せいご げつ
あがなわなければならない。 一六人のういごは生後一か月で、あがなわ
きん ね づも せいじょ
なければならない。そのあがない金はあなたの値積りにより、聖所のシ
ぎん
ケルにしたがって、銀五シケルでなければならない。一シケルは二十ゲ
うし ひつじ
ラである。 一七しかし、牛のういご、羊のういご、やぎのういごは、あが
せい ち さいだん そそ
なってはならない。これらは聖なるものである。その血を祭壇に注ぎ
しぼう や かさい こう しゅ
かけ、その脂肪を焼いて火祭とし、香ばしいかおりとして、主にささげ
にく き ようさい むね みぎ
なければならない。 一八その肉はあなたに帰する。それは揺祭の胸や右
民数記

おな き ひとびと しゅ
のももと同じく、あなたに帰する。 一九イスラエルの人々が、主にささげ

92
せい そな もの むすめ あた えいきゅう
る聖なる供え物はみな、あなたとあなたのむすこ娘とに与えて、永 久に
う ぶん しゅ まえ しそん たい
受ける分とする。これは主の前にあって、あなたとあなたの子孫とに対
えいえん かわ しお けいやく しゅ い
し、永遠に変らぬ塩の契約である﹂。 二〇主はまたアロンに言われた、
﹁あ
ひとびと ち し ぎょう
なたはイスラエルの人々の地のうちに、嗣 業をもってはならない。ま
かれ なに ぶん も かれ
た彼らのうちに、何の分をも持ってはならない。彼らのうちにあって、
ぶん し ぎょう
わたしがあなたの分であり、あなたの嗣 業である。
しそん ぶん し
二一 わたしはレビの子孫にはイスラエルにおいて、すべて十分の一を嗣
ぎょう あた はたら かいけん まくや はたら むく
業として与え、その働き、すなわち、会見の幕屋の働きに報いる。 二二イ
ひとびと かいけん まくや ちか つみ え
スラエルの人々は、かさねて会見の幕屋に近づいてはならない。罪を得
し かいけん まくや はたら
て死なないためである。 二三レビびとだけが会見の幕屋の働きをしなけ
かれ つみ お かれ
れ ば な ら な い。彼 ら が そ の 罪 を 負 う で あ ろ う。彼 ら が イ ス ラ エ ル の
ひとびと し ぎょう ち も よ よ
人々のうちに、嗣 業の地を持たないことをもって、あなたがたの代々な
まも さだ
が く 守 る べ き 定 め と し な け れ ば な ら な い。 二四わ た し は イ ス ラ エ ル の
民数記

ひとびと そな もの しゅ ぶん し ぎょう
人々が供え物として主にささげる十分の一を、レビびとに嗣 業として

93
あた かれ ひとびと し ぎょう ち も
与えた。それで﹃彼らはイスラエルの人々のうちに、嗣 業の地を持って
かれ い
はならない﹄と、わたしは彼らに言ったのである﹂。
しゅ い い
主はモーセに言われた、 二六﹁レビびとに言いなさい、
二五 ﹃わたしがイス
ひとびと と し ぎょう あた ぶん う とき
ラエルの人々から取って、嗣 業として与える十分の一を受ける時、あな
ぶん ぶん しゅ
たがたはその十分の一の十分の一を、主にささげなければならない。 二七
もの う ば こくもつ さか しゅ
あなたがたのささげ物は、打ち場からの穀物や、酒ぶねからのぶどう酒
おな み
と同じように見なされるであろう。 二八そのようにあなたがたもまた、
ひとびと う ぶん もの しゅ そな
イスラエルの人々から受けるすべての十分の一の物のうちから、主に供
もの しゅ そな もの さいし あた
え物をささげ、主にささげたその供え物を、祭司アロンに与えなければ
う もの よ
ならない。 二九あなたがたの受けるすべての贈物のうちから、その良い
せい ぶぶん と そな もの しゅ
ところ、すなわち、聖なる部分を取って、ことごとく供え物として、主
かれ い
にささげなければならない﹄。 三〇あなたはまた彼らに言いなさい、﹃あ
よ と とき のこ
なたがたが、そのうちから良いところを取ってささげる時、その残りの
民数記

ぶぶん う ば さんぶつ さか さんぶつ おな み


部分はレビびとには、打ち場の産物や、酒ぶねの産物と同じように見な

94
かぞく
されるであろう。 三一あなたがたと、あなたがたの家族とは、どこでそれ
た かいけん まくや はたら ほうしゅう
を食べてもよい。これは会見の幕屋であなたがたがする働きの報 酬で

ある。 三二あなたがたが、その良いところをささげるときは、それによっ
つみ お
て、あなたがたは罪を負わないであろう。あなたがたはイスラエルの
ひとびと せい そな もの けが し
人々 の 聖 な る 供 え 物 を 汚 し て は な ら な い。死 を ま ぬ か れ る た め で あ
る﹄﹂。
第一九章
しゅ い しゅ めい りっぽう さだ つぎ
一主はモーセとアロンに言われた、 二﹁主の命じられた律法の定めは次
ひとびと つ かんぜん きず
のとおりである。すなわち﹃イスラエルの人々に告げて、完全で、傷が
お あか めうし ひ
なく、まだくびきを負ったことのない赤い雌牛を、あなたのもとに引い
さいし しゅくえい そと だ
てこさせ、 三これを祭司エレアザルにわたして、 宿 営の外にひき出さ
民数記

かれ まえ さいし
せ、彼の前でこれをほふらせなければならない。 四そして祭司エレアザ

95
ゆび ち と かいけん まくや ひょう む ち
ルは、指をもってその血を取り、会見の幕屋の表に向かって、その血を
めうし じぶん め まえ
七 た び ふ り か け な け れ ば な ら な い。 五つ い で そ の 雌牛 を 自分 の 目 の 前
や かわ にく ち おぶつ とも や
で焼かせ、その皮と肉と血とは、その汚物と共に焼かなければならない。
さいし こうはく き ひ いと と めうし も
六そして祭司は香柏の木と、ヒソプと、緋の糸とを取って雌牛の燃えて
な い さいし いふく あら みず
いるなかに投げ入れなければならない。 七そして祭司は衣服を洗い、水
み のち しゅくえい さいし ゆう
に身をすすいで後、宿 営に、はいることができる。ただし祭司は夕まで
けが めうし や もの みず いふく あら みず み
汚れる。 八またその雌牛を焼いた者も水で衣服を洗い、水に身をすすが
かれ ゆう けが み きよ もの
な け れ ば な ら な い。彼 も 夕 ま で 汚 れ る。 九そ れ か ら 身 の 清 い 者 が ひ と
めうし はい あつ しゅくえい そと きよ ところ
り、その雌牛の灰を集め、宿 営の外の清い所にたくわえておかなければ
ひとびと かいしゅう けが きよ みず
ならない。これはイスラエルの人々の会 衆のため、汚れを清める水を
そな つみ きよ
つ く る た め に 備 え る も の で あ っ て、罪 を 清 め る も の で あ る。 一 〇そ の
めうし はい あつ もの いふく あら ひと ゆう
雌牛の灰を集めた者は衣服を洗わなければならない。その人は夕まで
けが ひとびと やど た こ く じん
汚れる。これはイスラエルの人々と、そのうちに宿っている他国人と
民数記

えいきゅう まも さだ
の、 永 久に守るべき定めとしなければならない。

96
ひと したい ふ もの なぬか けが ひと
一一 すべて人の死体に触れる者は、七日のあいだ汚れる。 一二その人は三
か め なぬか め はい みず み きよ
日目と七日目とに、この灰の水をもって身を清めなければならない。そ
きよ か め なぬか め み きよ
うすれば清くなるであろう。しかし、もし三日目と七日目とに、身を清
きよ しにん したい ふ
めないならば、清くならないであろう。 一三すべて死人の死体に触れて、
み きよ もの しゅ まくや けが もの ひと た
身を清めない者は主の幕屋を汚す者で、その人はイスラエルから断たれ
けが きよ みず み そそ
なければならない。汚れを清める水がその身に注ぎかけられないゆえ、
ひと きよ けが み
その人は清くならず、その汚れは、なお、その身にあるからである。
ひと てんまく なか し とき もち りっぽう つぎ
一四 人が天幕の中で死んだ時に用いる律法は次のとおりである。すなわ
てんまく もの てんまく もの
ち、すべてその天幕にはいった者、およびすべてその天幕にいた者は
なぬか けが うえ うつわ けが
七日のあいだ汚れる。 一五ふたで上をおおわない器はみな汚れる。 一六つ
ころ もの し もの ひと ほね はか
るぎで殺された者、または死んだ者、または人の骨、または墓などに、
やがい ふ もの みな なぬか けが けが もの とき
野外で触れる者は皆、七日のあいだ汚れる。 一七汚れた者があった時に
つみ きよ や めうし はい と うつわ い なが みず くわ
は、罪を清める焼いた雌牛の灰を取って器に入れ、流れの水をこれに加
民数記

み きよ もの と みず ひた
え、 一八身の清い者がひとりヒソプを取って、その水に浸し、これをその

97
てんまく うつわ ひとびと ほね ころ もの
天幕と、すべての器と、そこにいた人々と、骨、あるいは殺された者、あ
し もの はか ふ もの
るいは死んだ者、あるいは墓などに触れた者とにふりかけなければなら
み きよ ひと か め なぬか め けが
ない。 一九すなわちその身の清い人は三日目と七日目とにその汚れたも
なぬか め ひと み
のに、それをふりかけなければならない。そして七日目にその人は身を
きよ いふく あら みず み ゆう
清め、衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。そうすれば夕に
きよ
なって清くなるであろう。
けが み きよ ひと しゅ せいじょ けが もの ひと
二〇 し か し、汚 れ て 身 を 清 め な い 人 は 主 の 聖所 を 汚 す 者 で、そ の 人 は
かいしゅう た けが きよ みず み
会 衆のうちから断たれなければならない。汚れを清める水がその身に
そそ ひと けが かれ
注ぎかけられないゆえ、その人は汚れているからである。 二一これは彼
えいきゅう まも さだ けが きよ
らの永 久に守るべき定めとしなければならない。すなわち汚れを清め
みず もの いふく あら けが きよ
る水をふりかけた者は衣服を洗わなければならない。また汚れを清め
みず ふ もの ゆう けが けが ひと ふ
る水に触れた者も夕まで汚れるであろう。 二二すべて汚れた人の触れる
もの けが ふ ひと ゆう けが
物は汚れる。またそれに触れる人も夕まで汚れるであろう﹄﹂。
民数記

98
第二〇章
ひとびと ぜんかいしゅう しょうがつ あらの
一イスラエルの人々の全 会 衆は正 月になってチンの荒野にはいった。
たみ し かのじょ
そして民はカデシにとどまったが、ミリアムがそこで死んだので、彼女
ほうむ
をそこに葬 った。
かいしゅう みず え あいあつ
二そのころ会 衆は水が得られなかったため、相集まってモーセとアロ
せま たみ あらそ い
ンに迫った。 三すなわち民はモーセと争 って言った、﹁さきにわれわれ
きょうだい しゅ まえ し とき し
の兄 弟たちが主の前に死んだ時、われわれも死んでいたらよかったも
しゅ かいしゅう あらの みちび
のを。 四なぜ、あなたがたは主の会 衆をこの荒野に導いて、われわれと、
かちく し
われわれの家畜とを、ここで死なせようとするのですか。 五どうしてあ
のぼ わる ところ みちび い
なたがたはわれわれをエジプトから上らせて、この悪い所に導き入れた
たね ところ
のですか。ここには種をまく所もなく、いちじくもなく、ぶどうもなく、
の みず
ざくろもなく、また飲む水もありません﹂。 六そこでモーセとアロンは
民数記

かいしゅう まえ さ かいけん まくや いりぐち い ふ しゅ


会 衆の前を去り、会見の幕屋の入口へ行ってひれ伏した。すると主の

99
えいこう かれ あらわ しゅ い
栄光が彼らに現れ、七主はモーセに言われた、八
﹁あなたは、つえをとり、
きょうだい とも かいしゅう あつ め まえ いわ めい みず
あなたの兄 弟 アロンと共に会 衆を集め、その目の前で岩に命じて水を
だ かれ いわ みず だ
出 さ せ な さ い。こ う し て あ な た は 彼 ら の た め に 岩 か ら 水 を 出 し て、
かいしゅう かちく の めい しゅ まえ
会 衆とその家畜に飲ませなさい﹂。 九モーセは命じられたように主の前
と とも かいしゅう いわ まえ あつ
にあるつえを取った。 一〇モーセはアロンと共に会 衆を岩の前に集めて
かれ い ひと き
彼らに言った、﹁そむく人たちよ、聞きなさい。われわれがあなたがたの
いわ みず だ
ためにこの岩から水を出さなければならないのであろうか﹂。 一一モー
て いわ ど う みず で
セ は 手 を あ げ、つ え で 岩 を 二 度打 つ と、水 が た く さ ん わ き 出 た の で、
かいしゅう かちく の しゅ
会 衆 と そ の 家畜 は と も に 飲 ん だ。 一二そ の と き 主 は モ ー セ と ア ロ ン に
い しん ひとびと まえ
言われた、﹁あなたがたはわたしを信じないで、イスラエルの人々の前に
せい あらわ かいしゅう かれ
わたしの聖なることを現さなかったから、この会 衆をわたしが彼らに
あた ち みちび い
与えた地に導き入れることができないであろう﹂。 一三これがメリバの
みず ひとびと しゅ あらそ しゅ じぶん せい
水であって、イスラエルの人々はここで主と争 ったが、主は自分の聖な
民数記

かれ あらわ
ることを彼らのうちに現された。

100
おう し しゃ い
一四 さて、モーセはカデシからエドムの王に使者をつかわして言った、
きょうだい もう
﹁あなたの兄 弟、イスラエルはこう申します、﹃あなたはわたしたちが
そうぐう かんなん ぞん せんぞ
遭遇したすべての患難をご存じです。 一五わたしたちの先祖はエジプト
くだ い としひさ す
に下って行って、わたしたちは年久しくエジプトに住んでいましたが、
せんぞ なや
エジプトびとがわたしたちと、わたしたちの先祖を悩ましたので、一六わ
しゅ よ しゅ こえ き
たしたちが主に呼ばわったとき、主はわたしたちの声を聞き、ひとりの
てん つかい みちび だ
天の使をつかわして、わたしたちをエジプトから導き出されました。わ
いま りょうち はし まち
たしたちは今あなたの領地の端にあるカデシの町におります。 一七どう
くに とお はたけ
ぞ、わたしたちにあなたの国を通らせてください。わたしたちは畑もぶ
はたけ とお い ど みず の おう おおじ とお
どう畑も通りません。また井戸の水も飲みません。ただ王の大路を通
りょうち す みぎ ひだり まが
り、あなたの領地を過ぎるまでは右にも左にも曲りません﹄﹂。 一八しか
い りょうち
し、エドムはモーセに言った、﹁あなたはわたしの領地をとおってはなり
で た
ません。さもないと、わたしはつるぎをもって出て、あなたに立ちむか
民数記

ひとびと い
うでしょう﹂。 一九イスラエルの人々はエドムに言った、﹁わたしたちは

101
おおじ とお かちく みず
大路を通ります。もしわたしたちとわたしたちの家畜とが、あなたの水
の あたい はら と ほ とお
を飲むことがあれば、その価を払います。わたしは徒歩で通るだけです
なにごと とお
から何事もないでしょう﹂。 二〇しかし、エドムは﹁あなたは通ることは
い おお たみ つよ ぐんぜい ひき で た
なりません﹂と言って、多くの民と強い軍勢とを率い、出て、これに立
りょうち とお
ちむかってきた。 二一このようにエドムはイスラエルに、その領地を通
こば む
ることを拒んだので、イスラエルはエドムからほかに向かった。
ひとびと ぜんかいしゅう すす やま
二二 こうしてイスラエルの人々の全 会 衆はカデシから進んでホル山に
つ しゅ こっきょう ちか やま い
着いた。 二三主はエドムの国 境に近いホル山で、モーセとアロンに言わ
たみ つら かれ
れた、二四
﹁アロンはその民に連ならなければならない。彼はわたしがイ
ひとびと あた ち
スラエルの人々に与えた地に、はいることができない。これはメリバの
みず ことば
水で、あなたがたがわたしの言葉にそむいたからである。 二五あなたは
こ つ やま のぼ いふく
アロンとその子エレアザルを連れてホル山に登り、 二六アロンに衣服を
ぬ こ き
脱がせて、それをその子エレアザルに着せなさい。アロンはそのところ
民数記

し たみ つら しゅ めい
で死んで、その民に連なるであろう﹂。 二七モーセは主が命じられたとお

102
つ ぜんかいしゅう め まえ やま のぼ
りにし、連れだって全 会 衆の目の前でホル山に登った。 二八そしてモー
いふく ぬ こ き
セはアロンに衣服を脱がせ、それをその子エレアザルに着せた。アロン
やま いただき し やま くだ
はその山の頂で死んだ。そしてモーセとエレアザルは山から下ったが、
ぜんかいしゅう し み ぜんか にち
二九 全 会 衆がアロンの死んだのを見たとき、イスラエルの全家は三十日
あいだ な
の間 アロンのために泣いた。
第二一章
とき す おう
一時にネゲブに住んでいたカナンびとアラデの王は、イスラエルがアタ
みち く き こうげき
リムの道をとおって来ると聞いて、イスラエルを攻撃し、そのうちの
すうにん ほ りょ しゅ ちか た い
数人 を 捕虜 に し た。 二そ こ で イ ス ラ エ ル は 主 に 誓 い を 立 て て 言 っ た、
たみ て
﹁もし、あなたがこの民をわたしの手にわたしてくださるならば、わたし
まちまち ほろ しゅ ことば
はその町々をことごとく滅ぼしましょう﹂。 三主はイスラエルの言葉を
民数記


聞きいれ、カナンびとをわたされたので、イスラエルはそのカナンびと

103
まちまち ほろ ところ な よ
と、その町々とをことごとく滅ぼした。それでその所の名はホルマと呼
ばれた。
たみ やま すす こうかい みち ち まわ
民はホル山から進み、紅海の道をとおって、エドムの地を回ろうとし

たみ みち た たみ かみ
たが、民はその道に堪えがたくなった。 五民は神とモーセとにむかい、
い みちび
つぶやいて言った、﹁あなたがたはなぜわたしたちをエジプトから導き
のぼ あらの し しょくもつ みず
上って、荒野で死なせようとするのですか。ここには食 物もなく、水も
そあく しょくもつ
ありません。わたしたちはこの粗悪な食 物はいやになりました﹂。 六そ
しゅ ひ たみ おく たみ
こで主は、火のへびを民のうちに送られた。へびは民をかんだので、イ
たみ おお し たみ い
スラエルの民のうち、多くのものが死んだ。 七民はモーセのもとに行っ
い しゅ
て言った、
﹁わたしたちは主にむかい、またあなたにむかい、つぶやいて
つみ おか と さ しゅ
罪を犯しました。どうぞへびをわたしたちから取り去られるように主
いの たみ いの しゅ
に祈ってください﹂。モーセは民のために祈った。 八そこで主はモーセ
い ひ つく うえ か
に言われた、﹁火のへびを造って、それをさおの上に掛けなさい。すべて
民数記

もの あお み い
のかまれた者が仰いで、それを見るならば生きるであろう﹂。 九モーセ

104
せいどう つく うえ か お
は青銅で一つのへびを造り、それをさおの上に掛けて置いた。すべてへ
もの せいどう あお み い
びにかまれた者はその青銅のへびを仰いで見て生きた。 一〇イスラエル
ひとびと みち すす しゅくえい すす ひがし
の人々は道を進んでオボテに宿 営した。 一一またオボテから進んで東の
ほう まえ あらの しゅくえい
方、モアブの前にある荒野において、イエアバリムに宿 営した。 一二また
すす たに しゅくえい すす
そこから進んでゼレデの谷に宿 営し、 一三さらにそこから進んでアルノ
かわ しゅくえい かわ さかい の ひろ
ン川のかなたに宿 営した。アルノン川はアモリびとの境から延び広が
あらの なが あいだ
る荒野を流れるもので、モアブとアモリびととの間にあって、モアブの
さかい しゅ たたか しょ い
境をなしていた。 一四それゆえに、
﹁主の戦いの書﹂にこう言われている。
﹁スパのワヘブ、
たにだに
アルノンの谷々、
たにだに しゃめん
一五 谷々の斜面、
まち かたむ
アルの町まで傾き、
さかい よ
モアブの境に寄りかかる﹂。
民数記

かれ すす い しゅ
一六彼らはそこからベエルへ進んで行った。これは主がモーセにむかっ

105
たみ あつ みず あた い
て、﹁民を集めよ。わたしはかれらに水を与えるであろう﹂と言われた
い ど とき うた
井戸である。 一七その時イスラエルはこの歌をうたった。
い ど みず
﹁井戸の水よ、わきあがれ、
ひとびと い ど うた
人々よ、この井戸のために歌え、
しゃく
一八 笏とつえとをもって
い ど ほ
つかさたちがこの井戸を掘り、
たみ ほ
民のおさたちがこれを掘った﹂。
かれ あらの すす
そして彼らは荒野からマッタナに進み、 一九マッタナからナハリエルに、
の たに い
ナハリエルからバモテに、 二〇バモテからモアブの野にある谷に行き、
あらの み いただき つ
荒野を見おろすピスガの頂に着いた。
おう し しゃ い
二一 ここでイスラエルはアモリびとの王シホンに使者をつかわして言わ
くに とお はたけ
せた、二二
﹁わたしにあなたの国を通らせてください。わたしたちは畑に
はたけ い ど みず の
もぶどう畑にも、はいりません。また井戸の水も飲みません。わたした
民数記

りょうち とお す おう おおじ とお
ちはあなたの領地を通り過ぎるまで、ただ王の大路を通ります﹂。 二三し

106
じぶん りょうち とお ゆる
かし、シホンはイスラエルに自分の領地を通ることを許さなかった。そ
たみ あつ あらの で せ
してシホンは民をことごとく集め、荒野に出て、イスラエルを攻めよう
たたか かれ
とし、ヤハズにきてイスラエルと戦 った。 二四イスラエルは、やいばで彼
う かれ ち せんりょう
を撃ちやぶり、アルノンからヤボクまで彼の地を占 領し、アンモンびと
さかい およ さかい
の境に及んだ。ヤゼルはアンモンびとの境だからである。 二五こうして
まちまち と
イスラエルはこれらの町々をことごとく取った。そしてイスラエルは
まちまち す ふぞく
アモリびとのすべての町々に住み、ヘシボンとそれに附属するすべての
むらむら おう みやこ
村々にいた。 二六ヘシボンはアモリびとの王シホンの都であって、シホ
いぜん おう たたか かれ ち
ンはモアブの以前の王と戦 って、彼の地をアルノンまで、ことごとくそ
て うば と うた
の手から奪い取ったのである。 二七それゆえに歌にうたわれている。
ひとびと
﹁人々よ、ヘシボンにきたれ、
まち きず た
シホンの町を築き建てよ。
ひ も だ
ヘシボンから火が燃え出し、
二八
民数記

みやこ ほのお で
シホンの都から炎が出て、

107
や つく
モアブのアルを焼き尽し、
こうち きみ ほろ
アルノンの高地の君たちを滅ぼしたからだ。
まえ
二九モアブよ、お前はわざわいなるかな、
たみ まえ ほろ
ケモシの民よ、お前は滅ぼされるであろう。
かれ に さ
彼は、むすこらを逃げ去らせ、
むすめ おう ほ りょ
娘らをアモリびとの王シホンの捕虜とならせた。
かれ こ ほろ さ
三〇彼らの子らは滅び去った、
ヘシボンからデボンまで。
あら ひ およ
われわれは荒した、火はついてメデバに及んだ﹂。
ち す
こうしてイスラエルはアモリびとの地に住んだが、 三二モーセはまた
三一
ひと さぐ むらむら と
人をつかわしてヤゼルを探らせ、ついにその村々を取って、そこにいた
お だ てん みち のぼ い
アモリびとを追い出し、 三三転じてバシャンの道に上って行ったが、バ
おう たみ ひき たたか
シャンの王オグは、その民をことごとく率い、エデレイで戦おうとして
民数記

でむか しゅ い かれ おそ
出迎えた。 三四主はモーセに言われた、
﹁彼を恐れてはならない。わたし

108
かれ たみ ち て
は彼とその民とその地とを、ことごとくあなたの手にわたす。あなたは
す おう かれ
ヘシボンに住んでいたアモリびとの王シホンにしたように彼にもする
かれ こ たみ のこ う
であろう﹂。 三五そこで彼とその子とすべての民とを、ひとり残らず撃ち
ころ ち せんりょう
殺して、その地を占 領した。
第二二章
ひとびと みち すす ちか
一さて、イスラエルの人々はまた道を進んで、エリコに近いヨルダンの
へいや しゅくえい こ
かなたのモアブの平野に宿 営した。 二チッポルの子バラクはイスラエ
こと み おお
ルがアモリびとにしたすべての事を見たので、 三モアブは大いにイスラ
たみ おそ かず おお
エルの民を恐れた。その数が多かったためである。モアブはイスラエ
ひとびと おそ ちょうろう い
ル の 人々 を ひ じ ょ う に 恐 れ た の で、 四ミ デ ア ン の 長 老 た ち に 言 っ た、
ぐんしゅう うし の くさ しゅうい もの
﹁この群 衆は牛が野の草をなめつくすように、われわれの周囲の物をみ
民数記

こ とき
な、なめつくそうとしている﹂。チッポルの子バラクはこの時モアブの

109
おう かれ くに かわ
王 で あ っ た。 五彼 は ア ン モ ン び と の 国 の ユ フ ラ テ 川 の ほ と り に あ る ペ
し しゃ こ まね い
トルに使者をつかわし、ベオルの子バラムを招こうとして言わせた、﹁エ
で たみ ち まえ
ジプトから出てきた民があり、地のおもてをおおってわたしの前にいま
いま たみ かれ
す。 六ど う ぞ 今 き て わ た し の た め に こ の 民 を の ろ っ て く だ さ い。彼 ら
つよ かれ
はわたしよりも強いのです。そうしてくだされば、われわれは彼らを
う くに お はら
撃って、この国から追い払うことができるかもしれません。あなたが
しゅくふく もの しゅくふく もの
祝 福する者は祝 福され、あなたがのろう者はのろわれることをわたし

は知っています﹂。
ちょうろう ちょうろう うらな れいもつ て
七モ ア ブ の 長 老 た ち と ミ デ ア ン の 長 老 た ち は 占 い の 礼物 を 手 に し て
しゅっぱつ い ことば つ かれ
出 発し、バラムのもとへ行って、バラクの言葉を告げた。 八バラムは彼
い こんや と しゅ つ
らに言った、﹁今夜ここに泊まりなさい。主がわたしに告げられるとお
へんとう
りに、あなたがたに返答しましょう﹂。それでモアブのつかさたちはバ
かみ のぞ い
ラムのもとにとどまった。 九ときに神はバラムに臨んで言われた、﹁あ
民数記

ひとびと かみ い
なたのところにいるこの人々はだれですか﹂。 一〇バラムは神に言った、

110
おう こ ひと い
﹁モアブの王チッポルの子バラクが、わたしに人をよこして言いました。
で たみ ち
﹃エジプトから出てきた民があり、地のおもてをおおっています。ど
一一
いま かれ
うぞ今きてわたしのために彼らをのろってください。そうすればわた
たたか かれ お はら かみ
しは戦 って、彼らを追い払うことができるかもしれません﹄﹂。 一二神は
い かれ いっしょ い
バラムに言われた、﹁あなたは彼らと一緒に行ってはならない。またそ
たみ かれ しゅくふく もの
の 民 を の ろ っ て は な ら な い。彼 ら は 祝 福 さ れ た 者 だ か ら で あ る﹂。 一三
あ あさ お い
明くる朝起きて、バラムはバラクのつかさたちに言った、﹁あなたがたは
くに かえ しゅ いっしょ い ゆる
国にお帰りなさい。主はわたしがあなたがたと一緒に行くことを、お許

し に な り ま せ ん﹂。 一 四モ ア ブ の つ か さ た ち は 立 っ て バ ラ ク の も と に
い い いっしょ く しょうち
行 っ て 言 っ た、﹁バ ラ ム は わ た し た ち と 一緒 に 来 る こ と を 承知 し ま せ
ん﹂。
まえ もの みぶん たか まえ おお
一五 バラクはまた前の者よりも身分の高いつかさたちを前よりも多くつ
かれ い い こ
かわした。 一六彼らはバラムのところへ行って言った、
﹁チッポルの子バ
民数記

もう さまた かえり
ラクはこう申します、﹃どんな妨げをも顧みず、どうぞわたしのところへ

111
おお ゆうぐう
おいでください。 一七わたしはあなたを大いに優遇します。そしてあな
い こと
たがわたしに言われる事はなんでもいたします。どうぞきてわたしの
たみ
た め に こ の 民 を の ろ っ て く だ さ い﹄﹂。 一 八し か し、バ ラ ム は バ ラ ク の
けらい こた いえ み きんぎん
家来たちに答えた、﹁たといバラクがその家に満ちるほどの金銀をわた
あた こと だいしょう と かみ しゅ ことば こ
しに与えようとも、事の大 小を問わず、わたしの神、主の言葉を越えて
なに こんや
は何もすることができません。 一九それで、どうぞ、あなたがたも今夜こ
しゅ うえ おお たし
こにとどまって、主がこの上、わたしになんと仰せられるかを確かめさ
よる かみ のぞ い ひとびと
せてください﹂。 二〇夜になり、神はバラムに臨んで言われた、
﹁この人々
まね た ひとびと いっしょ い
はあなたを招きにきたのだから、立ってこの人々と一緒に行きなさい。
つ おこな
ただしわたしが告げることだけを行わなければならない﹂。
あ あさ お
二一明くる朝起きてバラムは、ろばにくらをおき、モアブのつかさたちと
いっしょ い かみ かれ い いか はっ しゅ
一緒に行った。 二二しかるに神は彼が行ったために怒りを発せられ、主
つかい かれ さまた みち た
の使は彼を妨げようとして、道に立ちふさがっていた。バラムは、ろば
民数記

の かれ とも しゅ つかい て
に乗り、そのしもべふたりも彼と共にいたが、 二三ろばは主の使が、手に

112
ぬ み みち た み みち
抜き身のつるぎをもって、道に立ちふさがっているのを見、道をそれて
はたけ う みち かえ
畑にはいったので、バラムは、ろばを打って道に返そうとした。 二四しか
しゅ つかい はたけ あいだ せま みち た みち
るに主の使はまたぶどう畑の間の狭い道に立ちふさがっていた。道の
りょうがわ いし しゅ つかい み いし よ
両 側には石がきがあった。 二五ろばは主の使を見て、石がきにすり寄り、
あし いし お う
バラムの足を石がきに押しつけたので、バラムは、また、ろばを打った。
しゅ つかい さき すす せま ところ た みぎ
二六 主の使はまた先に進んで、狭い所に立ちふさがっていた。そこは右
ひだり まが みち しゅ つかい み した
にも左にも、曲る道がなかったので、二七ろばは主の使を見てバラムの下
ふ いか はっ う
に伏した。そこでバラムは怒りを発し、つえでろばを打った。 二八する
しゅ くち ひら い
と、主が、ろばの口を開かれたので、ろばはバラムにむかって言った、﹁わ
なに ど
た し が あ な た に 何 を し た と い う の で す か。あ な た は 三 度 も わ た し を
う い まえ あなど
打ったのです﹂。 二九バラムは、ろばに言った、﹁お前がわたしを侮 ったか
て まえ ころ
らだ。わたしの手につるぎがあれば、いま、お前を殺してしまうのだ
い なが
が﹂。 三〇ろばはまたバラムに言った、
﹁わたしはあなたが、きょうまで長
民数記


いあいだ乗られたろばではありませんか。わたしはいつでも、あなたに

113

このようにしたでしょうか﹂。バラムは言った、﹁いや、しなかった﹂。
しゅ め ひら かれ しゅ つかい て ぬ み
三一 このとき主がバラムの目を開かれたので、彼は主の使が手に抜き身
みち た み あたま た
のつるぎをもって、道に立ちふさがっているのを見て、頭を垂れてひれ
ふ しゅ つかい かれ い ど う
伏した。 三二主の使は彼に言った、
﹁なぜあなたは三度もろばを打ったの
あやま みち い さまた
か。あなたが誤 って道を行くので、わたしはあなたを妨げようとして
で み ど み めぐ さ
出てきたのだ。 三三ろばはわたしを見て三度も身を巡らしてわたしを避
み めぐ さ
けた。もし、ろばが身を巡らしてわたしを避けなかったなら、わたしは
いま ころ い
きっと今あなたを殺して、ろばを生かしておいたであろう﹂。 三四バラム
しゅ つかい い つみ おか
は主の使に言った、﹁わたしは罪を犯しました。あなたがわたしをとど
みち た し
めようとして、道に立ちふさがっておられるのを、わたしは知りません
いま お き め かえ
でした。それで今、もし、お気に召さないのであれば、わたしは帰りま
しゅ つかい い ひとびと いっしょ い
しょう﹂。 三五主の使はバラムに言った、
﹁この人々と一緒に行きなさい。
つ の
ただし、わたしが告げることのみを述べなければならない﹂。こうして
民数記

いっしょ い
バラムはバラクのつかさたちと一緒に行った。

114
き こっきょう かわ
三六さて、バラクはバラムがきたと聞いて、国 境のアルノン川のほとり、
こっきょう いったん まち で い むか
国 境 の 一端 に あ る モ ア ブ の 町 ま で 出 て 行 っ て 迎 え た。 三七そ し て バ ラ
い ひと まね
クはバラムに言った、﹁わたしは人をつかわしてあなたを招いたではあ
りませんか。あなたはなぜわたしのところへきませんでしたか。わた
じっさい ゆうぐう
し は 実際 あ な た を 優遇 す る こ と が で き な い で し ょ う か﹂。 三八バ ラ ム は

バラクに言った、﹁ごらんなさい。わたしはあなたのところにきていま
いま なにごと い
す。しかし、今、何事かをみずから言うことができましょうか。わたし
かみ くち さづ の
はただ神がわたしの口に授けられることを述べなければなりません﹂。
いっしょ い
三九こうしてバラムはバラクと一緒に行き、キリアテ・ホゾテにきたと
うし ひつじ かれ とも
き、四〇バラクは牛と羊とをほふって、バラムおよび彼と共にいたバラム
つ おく
を連れてきたつかさたちに贈った。
あ あさ ともな
四一明くる朝バラクはバラムを伴 ってバモテバアルにのぼり、そこから
たみ しゅくえい いったん
イスラエルの民の宿 営の一端をながめさせた。
民数記

115
第二三章
い さいだん きず
一バラムはバラクに言った、﹁わたしのために、ここに七つの祭壇を築
とう おうし とう おひつじ ととの
き、七 頭 の 雄牛 と 七 頭 の 雄羊 と を 整 え な さ い﹂。 二バ ラ ク は バ ラ ム の
い さいだん おうし
言ったとおりにした。そしてバラクとバラムとは、その祭壇ごとに雄牛
とう おひつじ とう い
一頭と雄羊一頭とをささげた。 三バラムはバラクに言った、﹁あなたは
はんさい た あいだ い
燔祭のかたわらに立っていてください。その間にわたしは行ってきま
しゅ あ しゅ
す。主はたぶんわたしに会ってくださるでしょう。そして、主がわたし
しめ こと つ かれ
に示される事はなんでもあなたに告げましょう﹂。こうして彼は一つの
やま のぼ かみ あ かみ い
はげ山に登った。 四神がバラムに会われたので、バラムは神に言った、
さいだん もう さいだん おうし とう おひつじ とう
﹁わたしは七つの祭壇を設け、祭壇ごとに雄牛一頭と雄羊一頭とをささ
しゅ くち ことば さづ い
げました﹂。 五主はバラムの口に言葉を授けて言われた、
﹁バラクのもと
かえ い かれ かえ
に帰ってこう言いなさい﹂。 六彼がバラクのもとに帰ってみると、バラ
民数記

とも はんさい た
クはモアブのすべてのつかさたちと共に燔祭のかたわらに立っていた。

116
たくせん の
バラムはこの託宣を述べた。

まね よ
﹁バラクはわたしをアラムから招き寄せ、
おう ひがし やま まね よ い
モアブの王はわたしを東の山から招き寄せて言う、
﹃きてわたしのためにヤコブをのろえ、
きてイスラエルをのろえ﹄と。
かみ もの
八神ののろわない者を、わたしがどうしてのろえよう。
しゅ もの
主ののろわない者を、わたしがどうしてのろえよう。
いわ いただき
九岩の頂からながめ、
おか うえ み
丘の上から見たが、
はな す たみ
これはひとり離れて住む民、
こくみん なら
もろもろの国民のうちに並ぶものはない。
ぐんしゅう かぞ
一〇 だれがヤコブの群 衆を数え、
むすう たみ かぞ え
イスラエルの無数の民を数え得よう。
民数記

ぎじん し
わたしは義人のように死に、

117
おわ かれ おわ
わたしの終りは彼らの終りのようでありたい﹂。
い なに
一一 そこでバラクはバラムに言った、
﹁あなたはわたしに何をするのです
てき まね
か。わたしは敵をのろうために、あなたを招いたのに、あなたはかえっ
てき しゅくふく こた しゅ
て敵を祝 福するばかりです﹂。 一二バラムは答えた、﹁わたしは、主がわた
くち さづ こと かた ちゅうい
しの口に授けられる事だけを語るように注意すべきではないでしょう
か﹂。
かれ い いっしょ い
一三 バラクは彼に言った、
﹁わたしと一緒にほかのところへ行って、そこ
かれ かれ いったん み
か ら 彼 ら を ご ら ん く だ さ い。あ な た は た だ 彼 ら の 一端 を 見 る だ け で、
ぜんたい み かれ
全体を見ることはできないでしょうが、そこからわたしのために彼らを
かれ つ の い
のろってください﹂。 一四そして彼はバラムを連れてゾピムの野に行き、
いただき のぼ さいだん きず さいだん おうし とう
ピスガの頂に登って、そこに七つの祭壇を築き、祭壇ごとに雄牛一頭と
おひつじ とう い
雄羊一頭とをささげた。 一五ときにはバラムはバラクに言った、
﹁あなた
はんさい た む
はここで、燔祭のかたわらに立っていてください。わたしは向こうへ
民数記

い しゅ うかが しゅ のぞ ことば くち さづ
行って、主に伺いますから﹂。 一六主はバラムに臨み、言葉を口に授けて

118
い かえ い かれ
言われた、﹁バラクのもとに帰ってこう言いなさい﹂。 一七彼がバラクの
い み はんさい た
ところへ行って見ると、バラクは燔祭のかたわらに立ち、モアブのつか
とも い しゅ い
さたちも共にいた。バラクはバラムに言った、﹁主はなんと言われまし
たくせん の
たか﹂。 一八そこでバラムはまたこの託宣を述べた。
た き
﹁バラクよ、立って聞け、
こ みみ かたむ
チッポルの子よ、わたしに耳を傾けよ。
かみ ひと いつわ
一九 神は人のように偽ることはなく、
ひと こ く
また人の子のように悔いることもない。
い おこな
言ったことで、 行わないことがあろうか、
かた
語ったことで、しとげないことがあろうか。
しゅくふく めい
二〇 祝 福せよとの命をわたしはうけた、
かみ しゅくふく
すでに神が祝 福されたものを、

わたしは変えることができない。
民数記

わざわい み
二一 だれもヤコブのうちに災のあるのを見ない、

119
なや み
またイスラエルのうちに悩みのあるのを見ない。
かれ かみ しゅ とも
彼らの神、主が共にいまし、
おう こえ なか きこ
王をたたえる声がその中に聞える。
かみ かれ みちび だ
二二 神は彼らをエジプトから導き出された、
かれ やぎゅう つの
彼らは野牛の角のようだ。
まじゅつ
二三 ヤコブには魔術がなく、
うらな
イスラエルには占いがない。
かみ とき おう つ
神がそのなすところを時に応じてヤコブに告げ、
しめ
イスラエルに示されるからだ。
み たみ め た あ
二四 見よ、この民は雌じしのように立ち上がり、
お み おこ
雄じしのように身を起す。
えもの く
これはその獲物を食らい、
ころ もの ち の み よこ
その殺した者の血を飲むまでは身を横たえない﹂。
民数記

い かれ しゅくふく
バラクはバラムに言った、﹁あなたは彼らをのろうことも祝 福する
二五

120
こた い しゅ い
ことも、やめてください﹂。 二六バラムは答えてバラクに言った、
﹁主の言

われることは、なんでもしなければならないと、わたしはあなたに告げ

ませんでしたか﹂。 二七バラクはバラムに言った、
﹁どうぞ、おいでくださ
ところ つ かみ
い。わたしはあなたをほかの所へお連れしましょう。神はあなたがそ
かれ ゆる
こからわたしのために彼らをのろうことを許されるかもしれません﹂。
つ あらの み いただき い
二八 そしてバラクはバラムを連れて、荒野を見おろすペオルの頂に行っ
い さいだん
た。 二九バラムはバラクに言った、
﹁わたしのためにここに七つの祭壇を
きず おうし とう おひつじ とう ととの
築 き、雄牛 七 頭 と、雄羊 七 頭 と を 整 え な さ い﹂。 三〇バ ラ ク は バ ラ ム の
い さいだん おうし とう おひつじ とう
言ったとおりにし、その祭壇ごとに雄牛一頭と雄羊一頭とをささげた。
第二四章
しゅくふく しゅ こころ み
一バラムはイスラエルを祝 福することが主の心にかなうのを見たの
民数記

こんど い まじゅつ もと かお あらの


で、今度はいつものように行って魔術を求めることをせず、顔を荒野に

121
め あ ぶぞく しゅくえい
むけ、 二目を上げて、イスラエルがそれぞれ部族にしたがって宿 営して
み とき かみ れい のぞ かれ たくせん の
いるのを見た。その時、神の霊が臨んだので、三彼はこの託宣を述べた。
こ ことば
﹁ベオルの子バラムの言葉、
め と ひと ことば
目を閉じた人の言葉、
かみ ことば き もの
四神の言葉を聞く者、
ぜんのうしゃ まぼろし み もの
全能者の幻を見る者、
たお ふ め ひら もの ことば
倒れ伏して、目の開かれた者の言葉。
てんまく うるわ
五ヤコブよ、あなたの天幕は麗しい、
うるわ
イスラエルよ、あなたのすまいは、 麗しい。
とお たにだに
六それは遠くひろがる谷々のよう、
かわ その
川べの園のよう、
しゅ う ぢんこうじゅ
主が植えられた沈香樹のよう、
なが こうはく
流れのほとりの香柏のようだ。
民数記

みず かれ
七水は彼らのかめからあふれ、

122
かれ たね みず うるお そだ
彼らの種は水の潤いに育つであろう。
かれ おう たか
彼らの王はアガグよりも高くなり、
かれ くに
彼らの国はあがめられるであろう。
かみ かれ みちび だ
神は彼らをエジプトから導き出された、

かれ やぎゅう つの
彼らは野牛の角のようだ。
かれ てき くにぐに たみ ほろ
彼らは敵なる国々の民を滅ぼし、
ほね くだ
その骨を砕き、
や つ とお
矢をもって突き通すであろう。
かれ お み
彼らは雄じしのように身をかがめ、

め ふ
雌じしのように伏している。
かれ おこ
だれが彼らを起しえよう。
しゅくふく もの しゅくふく
あなたを祝 福する者は祝 福され、
もの
あなたをのろう者はのろわれるであろう﹂。
民数記

いか はっ て う な
そこでバラクはバラムにむかって怒りを発し、手を打ち鳴らした。
一〇

123
い てき まね
そしてバラクはバラムに言った、﹁敵をのろうために招いたのに、あなた
ど かれ しゅくふく いま いそ
は か え っ て 三 度 ま で も 彼 ら を 祝 福 し た。 一一そ れ で 今 あ な た は 急 い で
じぶん かえ おお ゆうぐう
自分のところへ帰ってください。わたしはあなたを大いに優遇しよう
おも しゅ ゆうぐう え
と思った。しかし、主はその優遇をあなたに得させないようにされまし

た﹂。 一 二バ ラ ム は バ ラ ク に 言 っ た、﹁わ た し は あ な た が つ か わ さ れ た
し しゃ い いえ み
使者たちに言ったではありませんか、一三
﹃たといバラクがその家に満ち
きんぎん あた しゅ ことば こ こころ ぜん
るほどの金銀をわたしに与えようとも、主の言葉を越えて心のままに善
あく おこな しゅ い の
も悪も行うことはできません。わたしは主の言われることを述べるだ
いま たみ かえ い
け で す﹄。 一四わ た し は 今 わ た し の 民 の と こ ろ へ 帰 っ て 行 き ま す。そ れ
たみ のち ひ たみ おし
でわたしはこの民が後の日にあなたの民にどんなことをするかをお知
たくせん の
らせしましょう﹂。 一五そしてこの託宣を述べた。
こ ことば
﹁ベオルの子バラムの言葉、
め と ひと ことば
目を閉じた人の言葉。
民数記

かみ ことば き もの
一六 神の言葉を聞く者、

124
たか もの ちしき もの
いと高き者の知識をもつ者、
ぜんのうしゃ まぼろし み
全能者の幻を見、
たお ふ め ひら もの ことば
倒れ伏して、目の開かれた者の言葉。
かれ み いま
一七 わたしは彼を見る、しかし今ではない。
かれ のぞ み ちか
わたしは彼を望み見る、しかし近くではない。
ほし で
ヤコブから一つの星が出、
ぽん おこ
イスラエルから一本のつえが起り、
モアブのこめかみと、
こ のうてん う
セツのすべての子らの脳天を撃つであろう。
てき りょうち
一八 敵のエドムは領地となり、
りょうち
セイルもまた領地となるであろう。
しょうり え
そしてイスラエルは勝利を得るであろう。
けん と もの で
一九 権を執る者がヤコブから出、
民数記

い のこ もの まち た ほろ
生き残った者を町から断ち滅ぼすであろう﹂。

125
のぞ み たくせん の
バラムはまたアマレクを望み見て、この託宣を述べた。
二〇
しょこくみん さいしょ
﹁アマレクは諸国民のうちの最初のもの、
ほろ さ
しかし、ついに滅び去るであろう﹂。
のぞ み たくせん の
またケニびとを望み見てこの託宣を述べた。
二一
まえ けんご
﹁お前のすみかは堅固だ、
いわ まえ す
岩に、お前は巣をつくっている。
ほろ
二二 しかし、カインは滅ぼされるであろう。
まえ ほ りょ
アシュルはいつまでお前を捕虜とするであろうか﹂。
かれ たくせん の
彼はまたこの託宣を述べた。
二三
かみ さだ いじょう
﹁ああ、神が定められた以上、
い の
だれが生き延びることができよう。
かいがん ふね
二四 キッテムの海岸から舟がきて、

アシュルを攻めなやまし、
民数記


エベルを攻めなやますであろう。

126
かれ ほろ さ
そして彼もまたついに滅び去るであろう﹂。
た あ じぶん かえ
二五 こうしてバラムは立ち上がって、自分のところへ帰っていった。バ
た さ
ラクもまた立ち去った。
第二五章
たみ むすめ
一イスラエルはシッテムにとどまっていたが、民はモアブの娘たちと、
こと はじ むすめ かみがみ ぎせい とき たみ
み だ ら な 事 を し 始 め た。 二そ の 娘 た ち が 神々 に 犠牲 を さ さ げ る 時 に 民
まね たみ いっしょ た むすめ かみがみ おが
を招くと、民は一緒にそれを食べ、 娘たちの神々を拝んだ。 三イスラエ
しゅ
ルはこうしてペオルのバアルにつきしたがったので、主はイスラエルに
いか はっ しゅ い たみ
む か っ て 怒 り を 発 せ ら れ た。 四そ し て 主 は モ ー セ に 言 わ れ た、﹁民 の
しゅりょう とら ひ ひとびと しゅ まえ しょけい
首 領をことごとく捕え、日のあるうちにその人々を主の前で処刑しな
しゅ いか はな
さい。そうすれば主の怒りはイスラエルを離れるであろう﹂。 五モーセ
民数記


はイスラエルのさばきびとたちにむかって言った、﹁あなたがたはおの

127
はいか もの ころ
おの、配下の者どもでペオルのバアルにつきしたがったものを殺しなさ
い﹂。
ひとびと ぜんかいしゅう かいけん まくや いりぐち な
六モーセとイスラエルの人々の全 会 衆とが会見の幕屋の入口で泣いて
とき かれ め まえ きょうだい
いた時、彼らの目の前で、ひとりのイスラエルびとが、その兄 弟たちの
なか おんな つ さいし こ
中に、ひとりのミデアンの女を連れてきた。 七祭司アロンの子なるエレ
こ み かいしゅう た あ
アザルの子ピネハスはこれを見て、会 衆のうちから立ち上がり、やりを
て と ひと あと お おく ま い
手に執り、 八そのイスラエルの人の後を追って、奥の間に入り、そのイ
ひと つ おんな はら つ とお ころ
スラエルの人を突き、またその女の腹を突き通して、ふたりを殺した。
えきびょう ひとびと およ
こうして疫 病がイスラエルの人々に及ぶのがやんだ。 九しかし、その
えきびょう し もの にん
疫 病で死んだ者は二万四千人であった。
しゅ い さいし こ こ
一〇 主はモーセに言われた、 一一﹁祭司アロンの子なるエレアザルの子ピ
じぶん ふんげき ひとびと
ネハスは自分のことのように、わたしの憤激をイスラエルの人々のうち
あら いか と さ ふんげき
に表わし、わたしの怒りをそのうちから取り去ったので、わたしは憤激
民数記

ひとびと ほろ
して、イスラエルの人々を滅ぼすことをしなかった。 一二このゆえにあ

128
い へいわ けいやく かれ さづ かれ
なたは言いなさい、
﹃わたしは平和の契約を彼に授ける。 一三これは彼と
のち しそん えいえん さ い し しょく けいやく かれ かみ
その後の子孫に永遠の祭司 職の契約となるであろう。彼はその神のた
ねっしん ひとびと つみ
めに熱心であって、イスラエルの人々のために罪のあがないをしたから
である﹄と﹂。
おんな とも ころ ひと な
ミデアンの女と共に殺されたイスラエルの人の名はジムリといい、
一四
こ いちぞく
サルの子で、シメオンびとのうちの一族のつかさであった。 一五またそ
ころ おんな な むすめ
の殺されたミデアンの女の名はコズビといい、ツルの娘であった。ツル
たみ いちぞく しゅ い
はミデアンの民の一族のかしらであった。 一六主はまたモーセに言われ
う なや かれ
た、 一七﹁ミデアンびとを打ち悩ましなさい。 一八彼らはたくらみをもっ
なや こと かれ しまい
て、あなたがたを悩まし、ペオルの事と、彼らの姉妹、ミデアンのつか
むすめ こと えきびょう おこ ひ ころ
さの娘 コズビ、すなわちペオルの事により、 疫 病の起った日に殺され
おんな こと まど
た女の事とによって、あなたがたを惑わしたからである﹂。
民数記

129
第二六章
えきびょう のち しゅ さいし こ い
一疫 病の後、主はモーセと祭司アロンの子エレアザルとに言われた、 二
ひとびと ぜんかいしゅう そうすう ふ そ いえ しら
﹁イスラエルの人々の全 会 衆の総数をその父祖の家にしたがって調べ、
せんそう で さいいじょう もの
イスラエルにおいて、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者を
かぞ さいし ちか
数えなさい﹂。 三そこでモーセと祭司エレアザルとは、エリコに近いヨ
へいや かれ い しゅ
ルダンのほとりにあるモアブの平野で彼らに言った、 四﹁主がモーセに
めい さいいじょう もの かぞ
命じられたように、あなたがたのうちの二十歳以上の者を数えなさい﹂。
ち で ひとびと つぎ
エジプトの地から出てきたイスラエルの人々は次のとおりである。
ちょうし しそん
ルベンはイスラエルの長子である。ルベンの子孫は、ヘノクからヘノ

しぞく で しぞく で
クびとの氏族が出、パルからパルびとの氏族が出、 六ヘヅロンからヘヅ
しぞく で しぞく で
ロンびとの氏族が出、カルミからカルミびとの氏族が出た。 七これらは
しぞく かぞ もの にん
ルベンびとの氏族であって、数えられた者は四万三千七百三十人であっ
民数記

こ こ
た。 八またパルの子はエリアブ。 九エリアブの子はネムエル、ダタン、ア

130
かいしゅう えら だ
ビラムである。このダタンとアビラムとは会 衆のうちから選び出され
もの とも さか しゅ あらそ
た者で、コラのともがらと共にモーセとアロンとに逆らって主と争 っ
とき ち くち ひら かれ なかま し
た時、一〇地は口を開いて彼らとコラとをのみ、その仲間は死んだ。その
とき にん ひ や ほろ いまし かがみ
時二百五十人が火に焼き滅ぼされて、戒めの鏡となった。 一一ただし、コ
こ し
ラの子たちは死ななかった。
しそん しぞく
一二 シメオンの子孫は、その氏族によれば、ネムエルからネムエルびとの
しぞく で しぞく で
氏族が出、ヤミンからヤミンびとの氏族が出、ヤキンからヤキンびとの
しぞく で しぞく で
氏族が出、一三ゼラからゼラびとの氏族が出、シャウルからシャウルびと
しぞく で しぞく かぞ
の氏族が出た。 一四これらはシメオンびとの氏族であって、数えられた
もの にん
者は二万二千二百人であった。
しそん しぞく しぞく
一五 ガドの子孫は、その氏族によれば、ゼポンからゼポンびとの氏族が
で しぞく で しぞく で
出、ハギからハギびとの氏族が出、シュニからシュニびとの氏族が出、一
しぞく で しぞく で
オズニからオズニびとの氏族が出、エリからエリびとの氏族が出、 一七

民数記

しぞく で しぞく で
アロドからアロドびとの氏族が出、アレリからアレリびとの氏族が出

131
しそん しぞく かぞ もの
た。 一八これらはガドの子孫の氏族であって、数えられた者は四万五百
にん
人であった。

一九 ユダの子らはエルとオナンとであって、エルとオナンとはカナンの
ち し しそん しぞく
地で死んだ。 二〇ユダの子孫は、その氏族によれば、シラからシラびとの
しぞく で しぞく で しぞく
氏族が出、ペレヅからペレヅびとの氏族が出、ゼラからゼラびとの氏族
で しそん しぞく で
が出た。 二一ペレヅの子孫は、ヘヅロンからヘヅロンびとの氏族が出、ハ
しぞく で しぞく
ム ル か ら ハ ム ル び と の 氏族 が 出 た。 二二こ れ ら は ユ ダ の 氏族 で あ っ て、
かぞ もの にん
数えられた者は七万六千五百人であった。
しそん しぞく しぞく
二三 イッサカルの子孫は、その氏族によれば、トラからトラびとの氏族が
で しぞく で しぞく
出、プワからプワびとの氏族が出、二四ヤシュブからヤシュブびとの氏族
で しぞく で
が出、シムロンからシムロンびとの氏族が出た。 二五これらはイッサカ
しぞく かぞ もの にん
ルの氏族であって、数えられた者は六万四千三百人であった。 二六ゼブ
しそん しぞく しぞく で
ルンの子孫は、その氏族によれば、セレデからセレデびとの氏族が出、エ
民数記

しぞく で しぞく で
ロンからエロンびとの氏族が出、ヤリエルからヤリエルびとの氏族が出

132
しぞく かぞ もの
た。 二七これらはゼブルンびとの氏族であって、数えられた者は六万五
にん
百人であった。
こ しぞく
二八 ヨセフの子らは、その氏族によれば、マナセとエフライムとであっ
しそん しぞく で
て、二九マナセの子孫は、マキルからマキルびとの氏族が出た。マキルか
うま しぞく で
らギレアデが生れ、ギレアデからギレアデびとの氏族が出た。 三〇ギレ
しそん つぎ しぞく
アデの子孫は次のとおりである。イエゼルからイエゼルびとの氏族が
で しぞく で
出、ヘレクからヘレクびとの氏族が出、三一アスリエルからアスリエルび
しぞく で しぞく で
との氏族が出、シケムからシケムびとの氏族が出、三二セミダからセミダ
しぞく で しぞく で こ
びとの氏族が出、ヘペルからヘペルびとの氏族が出た。 三三ヘペルの子
おとこ こ おんな こ おんな こ
ゼロペハデには男の子がなく、ただ女の子のみで、ゼロペハデの女の子

の名はマアラ、ノア、ホグラ、ミルカ、テルザといった。 三四これらはマ
しぞく かぞ もの にん
ナセの氏族であって、数えられた者は五万二千七百人であった。
しそん しぞく つぎ
三五 エフライムの子孫は、その氏族によれば、次のとおりである。シュテ
民数記

しぞく で しぞく で
ラからはシュテラびとの氏族が出、ベケルからベケルびとの氏族が出、

133
しぞく で しそん つぎ
タハンからタハンびとの氏族が出た。 三六またシュテラの子孫は次のと
しぞく で
おりである。すなわちエランからエランびとの氏族が出た。 三七これら
しそん しぞく かぞ もの にん
はエフライムの子孫の氏族であって、数えられた者は三万二千五百人で
いじょう しそん しぞく
あった。以上はヨセフの子孫で、その氏族によるものである。
しそん しぞく しぞく
三八 ベニヤミンの子孫は、その氏族によれば、ベラからベラびとの氏族が
で しぞく で
出、アシベルからアシベルびとの氏族が出、アヒラムからアヒラムびと
しぞく で しぞく で
の氏族が出、三九シュパムからシュパムびとの氏族が出、ホパムからホパ
しぞく で こ
ムびとの氏族が出た。 四〇ベラの子はアルデとナアマンとであって、ア
しぞく で しぞく で
ルデからアルデびとの氏族が出、ナアマンからナアマンびとの氏族が出
しそん しぞく かぞ
た。 四一これらはベニヤミンの子孫であって、その氏族によれば数えら
もの にん
れた者は四万五千六百人であった。
しそん しぞく つぎ
四二 ダンの子孫は、その氏族によれば、次のとおりである。シュハムから
しぞく で しぞく しぞく
シュハムびとの氏族が出た。これらはダンの氏族であって、その氏族に
民数記

しぞく かぞ
よるものである。 四三シュハムびとのすべての氏族のうち、数えられた

134
もの にん
者は六万四千四百人であった。
しそん しぞく しぞく
四四 アセルの子孫は、その氏族によれば、エムナからエムナびとの氏族が
で しぞく で しぞく
出、エスイからエスイびとの氏族が出、ベリアからベリアびとの氏族が
で しそん しぞく で
出た。 四五ベリアの子孫のうちヘベルからヘベルびとの氏族が出、マル
しぞく で むすめ な
キエルからマルキエルびとの氏族が出た。 四六アセルの娘の名はサラと
しそん しぞく かぞ もの
いった。 四七これらはアセルの子孫の氏族であって、数えられた者は五
にん
万三千四百人であった。
しそん しぞく
四八 ナフタリの子孫は、その氏族によれば、ヤジエルからヤジエルびとの
しぞく で しぞく で
氏族が出、グニからグニびとの氏族が出、 四九エゼルからエゼルびとの
しぞく で しぞく で
氏族が出、シレムからシレムびとの氏族が出た。 五〇これらはナフタリ
しぞく しぞく かぞ もの にん
の氏族であって、その氏族により、数えられた者は四万五千四百人で
あった。
しそん かぞ もの
五一 これらはイスラエルの子孫の数えられた者であって、六十万一千百
民数記

にん
三十人であった。

135
しゅ い ひとびと な かず
主はモーセに言われた、五三
五二 ﹁これらの人々に、その名の数にしたがっ
ち わ あた し ぎょう おお ぶぞく おお し ぎょう
て地を分け与え、嗣 業とさせなさい。 五四大きい部族には多くの嗣 業を
あた ちい ぶぞく すこ し ぎょう あた かぞ
与え、小さい部族には少しの嗣 業を与えなさい。すなわち数えられた
かず ぶぞく し ぎょう あた
数にしたがって、おのおのの部族にその嗣 業を与えなければならない。
ち わ ふ そ ぶぞく な
ただし地は、くじをもって分け、その父祖の部族の名にしたがって、
五五
つ し ぎょう
それを継がなければならない。 五六すなわち、くじをもってその嗣 業を
おお ちい わ
大きいものと、小さいものとに分けなければならない﹂。
しぞく かぞ もの つぎ
五七 レ ビ び と の そ の 氏族 に し た が っ て 数 え ら れ た 者 は 次 の と お り で あ
しぞく で
る。ゲルションからゲルションびとの氏族が出、コハテからコハテびと
しぞく で しぞく で しぞく つぎ
の氏族が出、メラリからメラリびとの氏族が出た。 五八レビの氏族は次
しぞく しぞく
のとおりである。すなわちリブニびとの氏族、ヘブロンびとの氏族、マ
しぞく しぞく しぞく
ヘリびとの氏族、ムシびとの氏族、コラびとの氏族であって、コハテか
うま つま な
らアムラムが生れた。 五九アムラムの妻の名はヨケベデといって、レビ
民数記

むすめ かのじょ うま もの
の娘である。彼女はエジプトでレビに生れた者であるが、アムラムにと

136
しまい う
ついで、アロンとモーセおよびその姉妹ミリアムを産んだ。 六〇アロン
うま
にはナダブ、アビウ、エレアザルおよびイタマルが生れた。 六一ナダブと
ことび しゅ まえ とき し かぞ
アビウは異火を主の前にささげた時に死んだ。 六二その数えられた一か
げついじょう だんし にん かれ
月以上 の す べ て の 男子 は 二 万 三 千 人 で あ っ た。彼 ら は イ ス ラ エ ル の
ひとびと し ぎょう あた ひとびと
人々のうちに嗣 業を与えられなかったため、イスラエルの人々のうち
かぞ もの
に数えられなかった者である。
さいし ちか
六三これらはモーセと祭司エレアザルが、エリコに近いヨルダンのほと
へいや かぞ ひとびと かず
りにあるモアブの平野で数えたイスラエルの人々の数である。 六四ただ
さいし あらの
しそのうちには、モーセと祭司アロンがシナイの荒野でイスラエルの
ひとびと かぞ とき かぞ もの しゅ
人々を数えた時に数えられた者はひとりもなかった。 六五それは主がか
かれ かれ かなら あらの し い
つて彼らについて﹁彼らは必ず荒野で死ぬであろう﹂と言われたからで
かれ こ こ
ある。それで彼らのうちエフンネの子カレブとヌンの子ヨシュアのほ
のこ もの
か、ひとりも残った者はなかった。
民数記

137
第二七章
こ しぞく こ むすめ
さて、ヨセフの子マナセの氏族のうちのヘペルの子、ゼロペハデの娘

うった こ こ
たちが訴えてきた。ヘペルはギレアデの子、ギレアデはマキルの子、マ
こ むすめ な
キルはマナセの子である。その娘たちは名をマアラ、ノア、ホグラ、ミ
かれ かいけん まくや いりぐち さいし
ルカ、テルザといったが、 二彼らは会見の幕屋の入口でモーセと、祭司
ぜんかいしゅう まえ た い
エレアザルと、つかさたちと全 会 衆との前に立って言った、 三﹁わたし
ちち あらの し かれ なかま しゅ さか
たちの父は荒野で死にました。彼は、コラの仲間となって主に逆らった
もの なかま くわ かれ じぶん つみ
者どもの仲間のうちには加わりませんでした。彼は自分の罪によって
し おとこ こ おとこ こ
死んだのですが、 男の子がありませんでした。 四 男の子がないからと
ちち な しぞく けず
いって、どうしてわたしたちの父の名がその氏族のうちから削られなけ
ちち きょうだい おな
ればならないのでしょうか。わたしたちの父の兄 弟と同じように、わ
しょゆう ち あた
たしたちにも所有地を与えてください﹂。
民数記

こと しゅ まえ の しゅ い
モーセがその事を主の前に述べると、 六主はモーセに言われた、 七﹁ゼ

138
むすめ い ただ かなら かれ ちち きょうだい
ロペハデの娘たちの言うことは正しい。あなたは必ず彼らの父の兄 弟
おな かれ し ぎょう しょゆう ち あた
た ち と 同 じ よ う に、彼 ら に も 嗣 業 の 所有地 を 与 え な け れ ば な ら な い。
ちち し ぎょう かれ わた
すなわち、その父の嗣 業を彼らに渡さなければならない。 八あなたはイ
ひとびと い ひと し おとこ こ とき
スラエルの人々に言いなさい、
﹃もし人が死んで、男の子がない時は、そ
し ぎょう むすめ わた むすめ とき し
の嗣 業を娘に渡さなければならない。 九もしまた娘もない時は、その嗣
ぎょう きょうだい あた きょうだい とき し
業を兄 弟に与えなければならない。 一〇もし兄 弟もない時は、その嗣
ぎょう ちち きょうだい あた ちち きょうだい
業を父の兄 弟に与えなければならない。 一一もしまた父に兄 弟がない
とき しぞく かれ もっと ちか しんぞく し ぎょう あた しょゆう
時は、その氏族のうちで彼に最も近い親族にその嗣 業を与えて所有さ
しゅ めい
せ な け れ ば な ら な い﹄。主 が モ ー セ に 命 じ ら れ た よ う に イ ス ラ エ ル の
ひとびと さだ
人々は、これをおきての定めとしなければならない﹂。
しゅ い やま のぼ
一二主はモーセに言われた、
﹁このアバリムの山に登って、わたしがイス
ひとびと あた ち み み
ラ エ ル の 人々 に 与 え る 地 を 見 な さ い。 一 三あ な た は そ れ を 見 て か ら、
きょうだい たみ くわ かいしゅう
兄 弟 アロンのようにその民に加えられるであろう。 一四これは会 衆が
民数記

あらの さか あらそ とき めい
チンの荒野で逆らい争 った時、あなたがたはわたしの命にそむき、あの

139
みず かれ め まえ せい あらわ
水のかたわらで彼らの目の前にわたしの聖なることを現さなかったか
あらの みず
ら で あ る﹂。こ れ は チ ン の 荒野 に あ る カ デ シ の メ リ バ の 水 で あ る。 一五
しゅ い にく いのち かみ しゅ
モーセは主に言った、一六﹁すべての肉なるものの命の神、主よ、どうぞ、
かいしゅう うえ ひと た かれ まえ で い かれ みちび
この会 衆の上にひとりの人を立て、 一七彼らの前に出入りし、彼らを導
だ かれ みちび い もの しゅ かいしゅう ぼくしゃ ひつじ
き出し、彼らを導き入れる者とし、主の会 衆を牧者のない羊のようにし
しゅ い かみ れい
ないでください﹂。 一八主はモーセに言われた、﹁神の霊のやどっている
こ えら て うえ かれ さいし
ヌンの子ヨシュアを選び、あなたの手をその上におき、一九彼を祭司エレ
ぜんかいしゅう まえ た かれ まえ しょく にん
アザルと全 会 衆の前に立たせて、彼らの前で職に任じなさい。 二〇そし
かれ けんい わ あた ひとびと ぜんかいしゅう かれ したが
て彼にあなたの権威を分け与え、イスラエルの人々の全 会 衆を彼に従
かれ さいし まえ た かれ
わせなさい。 二一彼は祭司エレアザルの前に立ち、エレアザルは彼のた
しゅ まえ はんだん もと
めにウリムをもって、主の前に判断を求めなければならない。ヨシュア
ひとびと ぜんかいしゅう ことば したが
とイスラエルの人々の全 会 衆とはエレアザルの言葉に従 っていで、エ
ことば したが
レアザルの言葉に従 ってはいらなければならない﹂。 二二そこでモーセ
民数記

しゅ めい えら さいし ぜん
は主が命じられたようにし、ヨシュアを選んで、祭司エレアザルと全

140
かいしゅう まえ た かれ うえ て しゅ かた
会 衆の前に立たせ、 二三彼の上に手をおき、主がモーセによって語られ
かれ にんめい
たとおりに彼を任命した。
第二八章
しゅ い ひとびと めい い
一主はモーセに言われた、 二﹁イスラエルの人々に命じて言いなさい、
こう かさい
﹃あなたがたは香ばしいかおりとしてわたしにささげる火祭、すなわち、
そな もの しょくもつ さだ とき
わたしの供え物、わたしの食 物を定めの時にわたしにささげることを
おこた かれ い しゅ
怠 ってはならない﹄。 三また彼らに言いなさい、
﹃あなたがたが主にささ
かさい さい おす まった こひつじ とう まいにち
ぐべき火祭はこれである。すなわち一歳の雄の全き小羊二頭を毎日さ
じょうはんさい とう こひつじ あさ
さげて常 燔 祭としなければならない。 四すなわち一頭の小羊を朝にさ
とう こひつじ ゆう むぎこ
さげ、一頭の小羊を夕にささげなければならない。 五また麦粉一エパの
ぶん くだ と あぶら ぶん ま そさい
十分の一に、砕いて取った油 一ヒンの四分の一を混ぜて素祭としなけ
民数記

さん さだ じょうはんさい しゅ こう
ればならない。 六これはシナイ山で定められた常 燔 祭であって、主に香

141
かさい かんさい こひつじ とう
ば し い か お り と し て さ さ げ る 火祭 で あ る。 七ま た そ の 灌祭 は 小羊 一 頭
ぶん せいじょ
について一ヒンの四分の一をささげなければならない。すなわち聖所
しゅ こ さけ かんさい
に お い て 主 の た め に 濃 い 酒 を そ そ い で 灌祭 と し な け れ ば な ら な い。 八
ゆう た とう こひつじ そさい かんさい
夕には他の一頭の小羊をささげなければならない。その素祭と灌祭と
あさ おな こひつじ かさい しゅ こう
は朝のものと同じようにし、その小羊を火祭としてささげ、主に香ばし
いかおりとしなければならない。
あんそくにち さい おす まった こひつじ とう むぎこ ん
九また安息日には一歳の雄の全き小羊二頭と、麦粉一エパの十分の二に
あぶら ま そさい かんさい
油を混ぜた素祭と、その灌祭とをささげなければならない。 一〇これは
あんそくにち はんさい じょうはんさい かんさい くわ
安息日ごとの燔祭であって、 常 燔 祭とその灌祭とに加えらるべきもの
である。
つきづき だい にち はんさい しゅ
一一 またあなたがたは月々の第一日に燔祭を主にささげなければならな
わか おうし とう おひつじ とう さい おす まった こひつじ とう
い。すなわち若い雄牛二頭、雄羊一頭、一歳の雄の全き小羊七頭をささ
おうし とう むぎこ ぶん あぶら ま そさい
げ、 一二雄牛一頭には麦粉一エパの十分の三に油を混ぜたものを素祭と
民数記

おひつじ とう むぎこ ぶん あぶら ま そさい


し、雄羊一頭には麦粉一エパの十分の二に油を混ぜたものを素祭とし、一

142
こひつじ とう むぎこ ぶん あぶら ま そさい こう
小羊一頭には麦粉十分の一に油を混ぜたものを素祭とし、これを香ば

はんさい しゅ かさい
しいかおりの燔祭として主のために火祭としなければならない。 一四ま
かんさい おうし とう しゅ ぶん おひつじ とう
たその灌祭は雄牛一頭についてぶどう酒一ヒンの二分の一、雄羊一頭に
ぶん こひつじ とう ぶん
ついて一ヒンの三分の一、小羊一頭について一ヒンの四分の一をささげ
ねん つきづき つう しんげつ
なければならない。これは年の月々を通じて、新月ごとにささぐべき
はんさい じょうはんさい かんさい お とう ざいさい
燔祭である。 一五また常 燔 祭とその灌祭とのほかに、雄やぎ一頭を罪祭
しゅ
として主にささげなければならない。
しょうがつ か しゅ すぎこし まつり つき にち
一六 正 月 の 十 四 日 は 主 の 過越 の 祭 で あ る。 一 七ま た そ の 月 の 十 五 日 は
さいじつ なぬか たね い た
祭日としなければならない。七日のあいだ種入れぬパンを食べなけれ
はじ ひ せいかい ひら
ばならない。 一八その初めの日には聖会を開かなければならない。なん
ろうえき かさい しゅ はんさい
の労役をもしてはならない。 一九あなたがたは火祭として主に燔祭をさ
わか おうし とう おひつじ とう さい おす
さげなければならない。すなわち若い雄牛二頭、雄羊一頭、一歳の雄の
こひつじ とう まった
小羊七頭をささげなければならない。これらはみな全きものでなけれ
民数記

そさい あぶら ま むぎこ


ばならない。 二〇その素祭には油を混ぜた麦粉をささげなければならな

143
おうし とう むぎこ ぶん おひつじ とう
い。すなわち雄牛一頭につき麦粉一エパの十分の三、雄羊一頭につき十
ぶん とう こひつじ とう ぶん
分の二をささげ、 二一また七頭の小羊にはその一頭ごとに十分の一をさ
お とう ざいさい
さげなければならない。 二二また雄やぎ一頭を罪祭としてささげ、あな
つみ
たがたのために罪のあがないをしなければならない。 二三あなたがたは
あさ じょうはんさい はんさい
朝にささげる常 燔 祭の燔祭のほかに、これらをささげなければならな
なぬか まいにち かさい しょくもつ
い。 二四このようにあなたがたは七日のあいだ毎日、火祭の食 物をささ
しゅ こう じょうはんさい
げて、主に香ばしいかおりとしなければならない。これは常 燔 祭とそ
かんさい だい にち
の灌祭とのほかにささぐべきものである。 二五そして第七日に、あなた
せいかい ひら ろうえき
がたは聖会を開かなければならない。なんの労役をもしてはならない。
しゅう まつり あたら そさい しゅ はつほ
二六 あなたがたは七 週の祭、すなわち新しい素祭を主にささげる初穂の
ひ せいかい ひら ろうえき
日にも聖会を開かなければならない。なんの労役をもしてはならない。
はんさい しゅ こう
二七 あなたがたは燔祭をささげて、主に香ばしいかおりとしなければな
わか おうし とう おひつじ とう さい おす こひつじ とう
らない。すなわち若い雄牛二頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊七頭をささ
民数記

そさい あぶら ま むぎこ


げなければならない。 二八その素祭には油を混ぜた麦粉をささげなけれ

144
おうし とう ぶん おひつじ とう
ばならない。すなわち雄牛一頭につき一エパの十分の三、雄羊一頭につ
ぶん とう こひつじ とう ぶん
き十分の二をささげ、 二九また七頭の小羊には一頭ごとに十分の一をさ
お とう
さげなければならない。 三〇また雄やぎ一頭をささげてあなたがたのた
つみ じょうはんさい
めに罪のあがないをしなければならない。 三一あなたがたは常 燔 祭とそ
そさい かんさい
の素祭とその灌祭とのほかに、これらをささげなければならない。これ
まった
らはみな、 全きものでなければならない。
第二九章
がつ つき だい にち せいかい ひら
一七月には、その月の第一日に聖会を開かなければならない。なんの
ろうえき ふ ひ
労役をもしてはならない。これはあなたがたがラッパを吹く日である。
はんさい しゅ こう
二あなたがたは燔祭をささげて、主に香ばしいかおりとしなければなら
わか おうし とう おひつじ とう さい おす まった こひつじ とう
ない。すなわち若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の全き小羊七頭をさ
民数記

そさい あぶら ま むぎこ


さ げ な け れ ば な ら な い。 三そ の 素祭 に は 油 を 混 ぜ た 麦粉 を さ さ げ な け

145
おうし とう ぶん おひつじ とう
ればならない。すなわち雄牛一頭について一エパの十分の三、雄羊一頭
ぶん とう こひつじ とう ぶん
について十分の二をささげ、 四また七頭の小羊には一頭ごとに十分の一
お とう ざいさい
をささげなければならない。 五また雄やぎ一頭を罪祭としてささげ、あ
つみ しんげつ
な た が た の た め に 罪 の あ が な い を し な け れ ば な ら な い。 六こ れ は 新月
はんさい そさい じょうはんさい そさい かんさい
の燔祭とその素祭、常 燔 祭とその素祭、および灌祭のほかのものであっ
さだ こう しゅ かさい
て、これらのものの定めにしたがい、香ばしいかおりとして、主に火祭
としなければならない。
がつ か せいかい ひら み なや
七またその七月の十日に聖会を開き、かつあなたがたの身を悩まさなけ
しごと しゅ
れ ば な ら な い。な ん の 仕事 も し て は な ら な い。 八あ な た が た は 主 に
はんさい こう わか
燔祭をささげて、香ばしいかおりとしなければならない。すなわち若い
おうし とう おひつじ とう さい おす こひつじ とう
雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊七頭をささげなければならない。
まった そさい あぶら ま
こ れ ら は み な 全 き も の で な け れ ば な ら な い。 九そ の 素祭 に は 油 を 混 ぜ
むぎこ おうし とう
た麦粉をささげなければならない。すなわち雄牛一頭につき一エパの
民数記

ぶん おひつじ とう ぶん とう こひつじ
十分の三、雄羊一頭につき十分の二をささげ、一〇また七頭の小羊には一

146
とう ぶん お とう
頭 ご と に 十 分 の 一 を さ さ げ な け れ ば な ら な い。 一一ま た 雄 や ぎ 一 頭 を
ざいさい しょくざい ざいさい じょうはんさい
罪祭としてささげなければならない。これらは贖 罪の罪祭と常 燔 祭と
そさい かんさい
その素祭、および灌祭のほかのものである。
がつ にち せいかい ひら ろうえき
一二 七月の十五日に聖会を開かなければならない。なんの労役もしては
なぬか しゅ まつり
ならない。七日のあいだ主のために祭をしなければならない。 一三あな
はんさい しゅ こう かさい
たがたは燔祭をささげて、主に香ばしいかおりの火祭としなければなら
わか おうし とう おひつじ とう さい おす こひつじ とう
ない。すなわち若い雄牛十三頭、雄羊二頭、一歳の雄の小羊十四頭をさ
まった
さげなければならない。これらはみな全きものでなければならない。 一
そさい あぶら ま むぎこ
四その素祭には油を混ぜた麦粉をささげなければならない。すなわち
とう おうし とう ぶん とう おひつじ とう
十三頭の雄牛には一頭ごとに十分の三、その二頭の雄羊には一頭ごとに
ぶん とう こひつじ とう ぶん
十分の二をささげ、 一五その十四頭の小羊には一頭ごとに十分の一をさ
お とう ざいさい
さげなければならない。 一六また雄やぎ一頭を罪祭としてささげなけれ
じょうはんさい そさい かんさい
ばならない。これらは常 燔 祭とその素祭および灌祭のほかのものであ
民数記

る。

147
だい にち わか おうし とう おひつじ とう さい おす まった こひつじ とう
一七第二日には若い雄牛十二頭、雄羊二頭、一歳の雄の全き小羊十四頭を
おうし おひつじ こひつじ そさい
ささげなければならない。 一八その雄牛と雄羊と小羊とのための素祭と
かんさい かず さだ
灌祭とはその数にしたがって、定めのようにささげなければならない。
お とう ざいさい
一九ま た 雄 や ぎ 一 頭 を 罪祭 と し て さ さ げ な け れ ば な ら な い。こ れ ら は
じょうはんさい そさい かんさい だい にち おうし
常 燔 祭とその素祭および灌祭のほかのものである。 二〇第三日には雄牛
とう おひつじ とう さい おす まった こひつじ とう
十一頭、雄羊二頭、一歳の雄の全き小羊十四頭をささげなければならな
おうし おひつじ こひつじ そさい かんさい かず
い。 二一その雄牛と雄羊と小羊とのための素祭と灌祭とは、その数にし
さだ お とう
たがって定めのようにささげなければならない。 二二また雄やぎ一頭を
ざいさい じょうはんさい そさい
罪祭としてささげなければならない。これらは常 燔 祭とその素祭およ
かんさい
び灌祭のほかのものである。
だい にち おうし とう おひつじ とう さい おす まった こひつじ とう
二三第四日には雄牛十頭、雄羊二頭、一歳の雄の全き小羊十四頭をささげ
おうし おひつじ こひつじ そさい かんさい
なければならない。 二四その雄牛と雄羊と小羊とのための素祭と灌祭と
かず さだ
は、その数にしたがって定めのようにささげなければならない。 二五ま
民数記

お とう ざいさい じょうはんさい
た雄やぎ一頭を罪祭としてささげなければならない。これらは常 燔 祭

148
そさい かんさい
とその素祭および灌祭のほかのものである。
だい にち おうし とう おひつじ とう さい おす まった こひつじ とう
第五日には雄牛九頭、雄羊二頭、一歳の雄の全き小羊十四頭をささげ
二六
おうし おひつじ こひつじ そさい かんさい
なければならない。 二七その雄牛と雄羊と小羊とのための素祭と灌祭と
かず さだ
は、その数にしたがって定めのようにささげなければならない。 二八ま
お とう ざいさい じょうはんさい
た雄やぎ一頭を罪祭としてささげなければならない。これらは常 燔 祭
そさい かんさい
とその素祭および灌祭のほかのものである。
だい にち おうし とう おひつじ とう さい おす まった こひつじ とう
第六日には雄牛八頭、雄羊二頭、一歳の雄の全き小羊十四頭をささげ
二九
おうし おひつじ こひつじ そさい かんさい
なければならない。 三〇その雄牛と雄羊と小羊とのための素祭と灌祭と
かず さだ
は、その数にしたがって定めのようにささげなければならない。 三一ま
お とう ざいさい じょうはんさい
た雄やぎ一頭を罪祭としてささげなければならない。これらは常 燔 祭
そさい かんさい
とその素祭および灌祭のほかのものである。
だい にち おうし とう おひつじ とう さい おす まった こひつじ とう
第七日には雄牛七頭、雄羊二頭、一歳の雄の全き小羊十四頭をささげ
三二
おうし おひつじ こひつじ そさい かんさい
なければならない。 三三その雄牛と雄羊と小羊とのための素祭と灌祭と
民数記

かず さだ
は、その数にしたがって定めのようにささげなければならない。 三四ま

149
お とう ざいさい じょうはんさい
た雄やぎ一頭を罪祭としてささげなければならない。これらは常 燔 祭
そさい かんさい
とその素祭および灌祭のほかのものである。
だい か しゅうかい ひら ろうえき
三五第 八 日 に は ま た 集 会 を 開 か な け れ ば な ら な い。な ん の 労役 を も し
はんさい しゅ こう
てはならない。 三六あなたがたは燔祭をささげて主に香ばしいかおりの
かさい おうし とう おひつじ とう さい おす
火祭としなければならない。すなわち雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の
まった こひつじ とう おうし おひつじ こひつじ
全き小羊七頭をささげなければならない。 三七その雄牛と雄羊と小羊と
そさい かんさい かず さだ
のための素祭と灌祭とは、その数にしたがって定めのようにささげなけ
お とう ざいさい
ればならない。 三八また雄やぎ一頭を罪祭としてささげなければならな
じょうはんさい そさい かんさい
い。これらは常 燔 祭とその素祭および灌祭のほかのものである。
さだ まつり とき しゅ
三九あなたがたは定めの祭の時に、これらのものを主にささげなければ
せいがん じはつ そな もの
ならない。これらはあなたがたの誓願、または自発の供え物としてささ
はんさい そさい かんさい しゅうおんさい
げる燔祭、素祭、灌祭および酬 恩 祭のほかのものである﹄﹂。
しゅ めい こと ひとびと つ
四〇モ ー セ は 主 が 命 じ ら れ た 事 を こ と ご と く イ ス ラ エ ル の 人々 に 告 げ
民数記

た。

150
第三〇章
ひとびと ぶぞく い しゅ
一モーセはイスラエルの人々の部族のかしらたちに言った、﹁これは主
めい こと ひと しゅ せいがん み もの
が命じられた事である。 二もし人が主に誓願をかけ、またはその身に物
だ ちか ことば やぶ くち
断ちをしようと誓いをするならば、その言葉を破ってはならない。口で
い おこな おんな わか
言 っ た と お り に す べ て 行 わ な け れ ば な ら な い。 三ま た も し 女 が ま だ 若
ちち いえ しゅ せいがん み もの だ
く、父の家にいて、主に誓願をかけ、またはその身に物断ちをしようと
とき ちち かのじょ せいがん かのじょ み た もの だ き
する時、 四父が彼女の誓願、または彼女の身に断った物断ちのことを聞
かのじょ なに い かのじょ せいがん おこな
いて、彼女に何も言わないならば、彼女はすべて誓願を行い、またその
み た もの だ まも かのじょ ちち
身に断った物断ちをすべて守らなければならない。 五しかし、彼女の父
き ひ しょうにん とき かのじょ せいがん
がそれを聞いた日に、それを承 認しない時は、彼女はその誓願、または
み た もの だ ちち しょうにん
その身に断った物断ちをすべてやめることができる。父が承 認しない
しゅ かのじょ おっと み
のであるから、主は彼女をゆるされるであろう。 六またもし夫のある身
民数記

せいがん み もの だ かるがる
で、みずから誓願をかけ、またはその身に物断ちをしようと、軽々しく

151
くち い ばあい おっと き き ひ かのじょ なに い
口で言った場合、 七 夫がそれを聞き、それを聞いた日に彼女に何も言わ
かのじょ せいがん おこな み た もの だ まも
ないならば、彼女はその誓願を行い、その身に断った物断ちを守らなけ
おっと き ひ しょうにん
ればならない。 八しかし、もし夫がそれを聞いた日に、それを承 認しな
おっと おんな せいがん み もの だ
いならば、 夫はその女がかけた誓願、またはその身に物断ちをしよう
かるがる くち い しゅ おんな
と、軽々しく口に言ったことをやめさせることができる。主はその女を
か ふ りえん おんな せいがん
ゆるされるであろう。 九しかし、寡婦あるいは離縁された女の誓願、す
み た もの だ まも
べてその身に断った物断ちは、それを守らなければならない。 一〇もし
おんな おっと いえ せいがん み もの だ ちか とき
女が夫の家で誓願をかけ、またはその身に物断ちをしようと誓った時、一
おっと き かのじょ なに い はんたい
一 夫がそれを聞いて、彼女に何も言わず、またそれに反対しないなら
せいがん おこな み た もの だ
ば、その誓願はすべて行わなければならない。またその身に断った物断
まも おっと き
ちはすべて守らなければならない。 一二しかし、もし夫がそれを聞いた
ひ みと かのじょ せいがん み もの だ
日にそれを認めないならば、彼女の誓願、または身の物断ちについて、
かのじょ くち い こと おっと みと
彼女が口で言った事は、すべてやめることができる。 夫がそれを認め
民数記

しゅ おんな
な か っ た の だ か ら、主 は そ の 女 を ゆ る さ れ る で あ ろ う。 一 三す べ て の

152
せいがん み なや もの だ せいやく おっと まも
誓願およびすべてその身を悩ます物断ちの誓約は、 夫がそれを守らせ
おっと おっと
ることができ、または夫がそれをやめさせることができる。 一四もし夫
かのじょ なに い ひ おく かれ つま せいがん もの だ
が彼女に何も言わずに日を送るならば、彼は妻がした誓願、または物断
みと かれ き ひ つま なに い
ち を す べ て 認 め た の で あ る。彼 は そ れ を 聞 い た 日 に 妻 に 何 も 言 わ な
みと おっと き
かったのだから、それを認めたのである。 一五しかし、もし夫がそれを聞
みと かれ つま つみ お
き、あとになって、それを認めないならば、彼は妻の罪を負わなければ
ならない﹂。
しゅ めい さだ おっと つま あいだ
一六 これらは主がモーセに命じられた定めであって、 夫と妻との間、お
ちち わか ちち いえ むすめ あいだ かん
よび父とまだ若くて父の家にいる娘との間に関するものである。
第三一章
しゅ い ひとびと
一さて主はモーセに言われた、 二﹁ミデアンびとにイスラエルの人々の
民数記

むく のち たみ くわ
あだを報いなさい。その後、あなたはあなたの民に加えられるであろ

153
たみ い ひと えら たたか
う﹂。 三モーセは民に言った、
﹁あなたがたのうちから人を選んで戦いの
ぶそう せ しゅ ふくしゅう
ために武装させ、ミデアンびとを攻めて、主のためミデアンびとに復 讐
ぶぞく ぶぞく にん
しなさい。 四すなわちイスラエルのすべての部族から、部族ごとに千人
たたか おく だ ぶぞく
ずつを戦いに送り出さなければならない﹂。 五そこでイスラエルの部族
ぶぞく にん えら にん え たたか
のうちから部族ごとに千人ずつを選び、一万二千人を得て、戦いのため
ぶそう かく ぶ ぞ く にん たたか
に武装させた。 六モーセは各部族から千人ずつを戦いにつかわし、また
さいし こ せい うつわ ふ な と
祭司エレアザルの子ピネハスに、聖なる器と吹き鳴らすラッパとを執ら
とも たたか かれ しゅ めい
せて、共に戦いにつかわした。 七彼らは主がモーセに命じられたように
たたか だんし ころ ころ もの
ミデアンびとと戦 って、その男子をみな殺した。 八その殺した者のほか
おう にん ころ な
にまたミデアンの王五人を殺した。その名はエビ、レケム、ツル、フル、
こ ころ
レバである。またベオルの子バラムをも、つるぎにかけて殺した。 九ま
ひとびと おんな こ とも ほ りょ
たイスラエルの人々はミデアンの女たちとその子供たちを捕虜にし、そ
かちく ひつじ む か ざい うば と
の家畜と、羊の群れと、貨財とをことごとく奪い取り、一〇そのすまいの
民数記

まちまち ぶらく ひ や かれ
ある町々と、その部落とを、ことごとく火で焼いた。 一一こうして彼らは

154
うば ひと かちく と なま
すべて奪ったものと、かすめたものとは人をも家畜をも取り、一二その生
もの うば たずさ ちか
けどった者と、かすめたものと、奪ったものとを携えて、エリコに近い
へいや しゅくえい さいし
ヨルダンのほとりのモアブの平野の宿 営におるモーセと祭司エレアザ
ひとびと かいしゅう
ルとイスラエルの人々の会 衆のもとへもどってきた。
さいし かいしゅう しゅくえい
一三 ときにモーセと祭司エレアザルと会 衆のつかさたちはみな宿 営の
そと で むか ぐんぜい しょう せんじょう かえ
外に出て迎えたが、 一四モーセは軍勢の将たち、すなわち戦 場から帰っ
にん ちょう にん ちょう たい いか かれ
てきた千人の長たちと、百人の長たちに対して怒った。 一五モーセは彼
い おんな い かれ
らに言った、
﹁あなたがたは女たちをみな生かしておいたのか。 一六彼ら
ひとびと
はバラムのはかりごとによって、イスラエルの人々に、ペオルのことで
しゅ つみ おか しゅ かいしゅう えきびょう おこ いた
主に罪を犯させ、ついに主の会 衆のうちに疫 病を起すに至った。 一七そ
いま こども おとこ こ ころ おとこ ね おとこ
れで今、この子供たちのうちの男の子をみな殺し、また男と寝て、 男を
し おんな ころ おとこ ね おとこ し むすめ
知った女をみな殺しなさい。 一八ただし、まだ男と寝ず、男を知らない娘

はすべてあなたがたのために生かしておきなさい。 一九そしてあなたが
民数記

なぬか しゅくえい そと
たは七日のあいだ宿 営の外にとどまりなさい。あなたがたのうちすべ

155
ひと ころ もの ころ もの ふ もの
て人を殺した者、およびすべて殺された者に触れた者は、あなたがた
じしん ほ りょ とも か め なぬか め み きよ
自身も、あなたがたの捕虜も共に、三日目と七日目とに身を清めなけれ
いふく かわ うつわ
ばならない。 二〇またすべての衣服と、すべての皮の器と、すべてやぎの
け つく き うつわ きよ
毛で作ったものと、すべての木の器とを清めなければならない﹂。
さいし たたか で い しゅ
二一 祭司エレアザルは戦いに出たいくさびとたちに言った、
﹁これは主が
めい りっぽう さだ きん ぎん せいどう てつ なまり
モーセに命じられた律法の定めである。 二二金、銀、青銅、鉄、すず、 鉛
ひ た もの ひ なか とお
など、 二三すべて火に耐える物は火の中を通さなければならない。そう
きよ うえ けが きよ みず きよ
すれば清くなるであろう。なおその上、汚れを清める水で、清めなけれ
ひ た みず なか とお
ばならない。しかし、すべて火に耐えないものは水の中を通さなければ
なぬか め いふく あら
ならない。 二四あなたがたは七日目に衣服を洗わなければならない。そ
きよ のちしゅくえい
して清くなり、その後 宿 営にはいることができる﹂。
しゅ い さいし かいしゅう
二五 主はモーセに言われた、 二六﹁あなたと祭司エレアザルおよび会 衆の
しぞく なま ひと かちく えもの そうすう しら
氏族のかしらたちは、その生けどった人と家畜の獲物の総数を調べ、 二七
民数記

えもの たたか で ゆうし ぜんかいしゅう せっぱん たたか


その獲物を戦いに出た勇士と、全 会 衆とに折半しなさい。 二八そして戦

156
で ひと うし ひつじ
いに出たいくさびとに、人または牛、またはろば、または羊を、おのお
と しゅ
の五百ごとに一つを取り、みつぎとして主にささげさせなさい。 二九す
かれ う はんぶん と しゅ もの
なわち彼らが受ける半分のなかから、それを取り、主にささげる物とし
さいし わた ひとびと う
て 祭司 エ レ ア ザ ル に 渡 し な さ い。 三 〇ま た イ ス ラ エ ル の 人々 が 受 け る
はんぶん え ひと うし ひつじ かちく
半分のなかから、その獲た人または牛、またはろば、または羊などの家畜
と しゅ まくや つとめ あた
を、おのおの五十ごとに一つを取り、主の幕屋の務をするレビびとに与
さいし しゅ めい
え な さ い﹂。 三一モ ー セ と 祭司 エ レ ア ザ ル と は 主 が モ ー セ に 命 じ ら れ た

とおりに行った。
えもの うば と のこ
三二そこでその獲物、すなわち、いくさびとたちが奪い取ったものの残り
ひつじ うし ひと
は羊 六十七万五千、 三三牛七万二千、 三四ろば六万一千、 三五人三万二千、
おとこ ね おとこ し おんな はんぶん
これはみな男と寝ず、男を知らない女であった。 三六そしてその半分、す
たたか で もの ぶん ひつじ しゅ
なわち戦いに出た者の分は羊 三十三万七千五百、 三七主にみつぎとした
ひつじ うし しゅ
羊は六百七十五。 三八牛は三万六千、そのうちから主にみつぎとしたも
民数記

しゅ
のは七十二。 三九ろばは三万五百、そのうちから主にみつぎとしたもの

157
ひと しゅ
は六十一。 四〇人は一万六千、そのうちから主にみつぎとしたものは三
にん しゅ もの さいし
十二人であった。 四一モーセはそのみつぎを主にささげる物として祭司
わた しゅ めい
エレアザルに渡した。主がモーセに命じられたとおりである。
たたか で ひとびと べつ ひとびと あた はんぶん
四二 モーセが戦いに出た人々とは別にイスラエルの人々に与えた半分、四
かいしゅう う はんぶん ひつじ うし
すなわち会 衆の受けた半分は羊 三十三万七千五百、四四牛三万六千、四

ひと
五ろ ば 三 万 五 百、 四六人 一 万 六 千 で あ っ て、 四七モ ー セ は イ ス ラ エ ル の
ひとびと う はんぶん ひと けもの
人々の受けた半分のなかから、人および獣をおのおの五十ごとに一つを
と しゅ まくや つとめ あた しゅ めい
取って、主の幕屋の務をするレビびとに与えた。主がモーセに命じられ
たとおりである。
とき ぐんぜい しょう にん ちょう にん ちょう
四八 時に軍勢の将であったものども、すなわち千人の長たちと百人の長
い し き
たちとがモーセのところにきて、四九モーセに言った、﹁しもべらは、指揮
か かぞ か もの
下のいくさびとを数えましたが、われわれのうち、ひとりも欠けた者は
て い きん かざ
ありませんでした。 五〇それで、われわれは、おのおの手に入れた金の飾
民数記

もの うでかざ うでわ ゆびわ みみわ くびかざ しゅ たずさ


り物、すなわち腕飾り、腕輪、指輪、耳輪、首飾りなどを主に携えてき

158
そな もの しゅ まえ いのち おも
て供え物とし、主の前にわれわれの命のあがないをしようと思います﹂。
さいし かれ さいく ほどこ きん かざ もの
五一 モーセと祭司エレアザルとは、彼らから細工を施した金の飾り物を
う と にん ちょう にん ちょう しゅ
受け取った。 五二千人の長たちと百人の長たちとが、主にささげものと
きん あ
した金は合わせて一万六千七百五十シケル。 五三いくさびとは、おのお
じぶん もの え さいし にん
の自分のぶんどり物を獲た。 五四モーセと祭司エレアザルとは、千人の
ちょう にん ちょう きん う と たずさ かいけん
長たちと百人の長たちとから、その金を受け取り、それを携えて会見の
まくや い しゅ まえ お ひとびと きねん
幕屋に入り、主の前に置いてイスラエルの人々のために記念とした。
第三二章
しそん しそん ひじょう おお かちく む も
一ルベンの子孫とガドの子孫とは非常に多くの家畜の群れを持ってい
かれ ち ち み かちく か
た。彼らがヤゼルの地と、ギレアデの地とを見ると、そこは家畜を飼う
てき しそん しそん
のに適していたので、二ガドの子孫とルベンの子孫とがきて、モーセと、
民数記

さいし かいしゅう い
祭司エレアザルと、会 衆のつかさたちとに言った、 三﹁アタロテ、デボ

159
ン、ヤゼル、ニムラ、ヘシボン、エレアレ、シバム、ネボ、ベオン、 四
しゅ かいしゅう まえ う ほろ くに かちく か
すなわち主がイスラエルの会 衆の前に撃ち滅ぼされた国は、家畜を飼
てき ち かちく も かれ
うのに適した地ですが、しもべらは家畜を持っています﹂。 五彼らはま
い めぐ え ち
た言った、
﹁それでもし、あなたの恵みを得られますなら、どうぞこの地
りょうち わた
をしもべらの領地にして、われわれにヨルダンを渡らせないでくださ
い﹂。
しそん しそん い きょうだい
六モーセはガドの子孫とルベンの子孫とに言った、
﹁あなたがたは兄 弟
たたか い
が戦いに行くのに、ここにすわっていようというのか。 七どうしてあな
ひとびと こころ しゅ かれ あた ち
たがたはイスラエルの人々の心をくじいて、主が彼らに与えられる地に
わた せんぞ
渡ることができないようにするのか。 八あなたがたの先祖も、わたしが
ち み とき おな
カデシ・バルネアから、その地を見るためにつかわした時に、同じよう
かれ たに い ち み
なことをした。 九すなわち彼らはエシコルの谷に行って、その地を見た
ひとびと こころ しゅ あた ち い
とき、イスラエルの人々の心をくじいて、主が与えられる地に行くこと
民数記

とき しゅ いか はっ ちか い
ができないようにした。 一〇そこでその時、主は怒りを発し、誓って言わ

160
で ひとびと さいいじょう もの
れた、一一
﹃エジプトから出てきた人々で二十歳以上の者はひとりもわた
ちか ち み かれ
しがアブラハム、イサク、ヤコブに誓った地を見ることはできない。彼
したが
らはわたしに従わなかったからである。 一二ただケニズびとエフンネの
こ こ まった しゅ
子カレブとヌンの子ヨシュアとはそうではない。このふたりは全く主
したが しゅ いか
に従 ったからである﹄。 一三主はこのようにイスラエルにむかって怒り
はっ かれ ねん あらの しゅ まえ あく
を発し、彼らを四十年のあいだ荒野にさまよわされたので、主の前に悪
おこな せだい ひとびと ほろ
を行 ったその世代の人々は、ついにみな滅びた。 一四あなたがたはその
ちち かわ た つみ しゅ たい はげ
父に代って立った罪びとのやからであって、主のイスラエルに対する激
いか ま しゅ
しい怒りをさらに増そうとしている。 一五あなたがたがもしそむいて主
したが しゅ たみ あらの
に従わないならば、主はまたこの民を荒野にすておかれるであろう。そ
たみ ほろ いた
うすればあなたがたはこの民をことごとく滅ぼすに至るであろう﹂。
かれ すす よ い ところ
一六 彼らはモーセのところへ進み寄って言った、﹁われわれはこの所に、
む ひつじ た こども まちまち た
群れのために羊のおりを建て、また子供たちのために町々を建てようと
民数記

おも ぶそう ひとびと まえ すす
思います。 一七しかし、われわれは武装してイスラエルの人々の前に進

161
かれ ところ みちび い こども
み、彼らをその所へ導いて行きましょう。ただわれわれの子供たちは、
ち じゅうみん がい けんご まちまち す
この地の住 民の害をのがれるため、堅固な町々に住ませておかなけれ
ひとびと し ぎょう
ばなりません。 一八われわれはイスラエルの人々が、おのおのその嗣 業
う いえ かえ
を受けるまでは、家に帰りません。 一九またわれわれはヨルダンのかな
かれ し ぎょう う
た で 彼 ら と と も に は 嗣 業 を 受 け ま せ ん。わ れ わ れ は ヨ ル ダ ン の こ な
ひがし ほう し ぎょう う かれ い
た、すなわち東の方で嗣 業を受けるからです﹂。 二〇モーセは彼らに言っ
ぶそう しゅ まえ い たたか
た、
﹁もし、あなたがたがそのようにし、みな武装して主の前に行って戦
ぶそう しゅ まえ い がわ わた しゅ てき
い、 二一みな武装して主の前に行ってヨルダン川を渡り、主がその敵を
じぶん まえ お はら くに しゅ まえ せいふく のち かえ
自分の前から追い払われて、二二この国が主の前に征服されて後、帰って
しゅ まえ まえ
くるならば、あなたがたは主の前にも、イスラエルの前にも、とがめは
ち しゅ まえ しょゆう
ないであろう。そしてこの地は主の前にあなたがたの所有となるであ
しゅ つみ おか
ろう。 二三しかし、そうしないならば、あなたがたは主にむかって罪を犯
もの つみ かなら み およ し
した者となり、その罪は必ず身に及ぶことを知らなければならない。 二四
民数記

こども まちまち た ひつじ た


あなたがたは子供たちのために町々を建て、羊のために、おりを建てな

162
やくそく おこな
さい。しかし、あなたがたは約束したことは行わなければならない﹂。 二
しそん しそん い
五ガドの子孫とルベンの子孫とは、モーセに言った、
﹁しもべらはあなた
めい こども つま ひつじ
の 命 じ ら れ た と お り に い た し ま す。 二六わ れ わ れ の 子供 た ち と 妻 と 羊
かちく まちまち のこ
と、すべての家畜とは、このギレアデの町々に残します。 二七しかし、し
ぶそう い しゅ まえ わた い
もべらはみな武装して、あなたの言われるとおり、主の前に渡って行っ
たたか
て戦います﹂。
かれ さいし こ
二八 モーセは彼らのことについて、祭司エレアザルと、ヌンの子ヨシュア
ひとびと ぶぞく しぞく めい
と、イスラエルの人々の部族のうちの氏族のかしらたちとに命じた。 二九
かれ い しそん しそん
そしてモーセは彼らに言った、
﹁ガドの子孫と、ルベンの子孫とが、おの
ぶそう いっしょ わた しゅ まえ たたか
おの武装してあなたがたと一緒にヨルダンを渡り、主の前に戦 って、そ
ち せいふく かれ ち
の地をあなたがたが征服するならば、あなたがたは彼らにギレアデの地
りょうち あた かれ ぶそう
を領地として与えなければならない。 三〇しかし、もし彼らが武装して
いっしょ わた い かれ ち
あなたがたと一緒に渡って行かないならば、彼らはカナンの地であなた
民数記

りょうち え しそん
がたのうちに領地を獲なければならない﹂。 三一ガドの子孫と、ルベンの

163
しそん こた い しゅ い
子孫とは答えて言った、﹁しもべらは主が言われたとおりにいたします。
ぶそう しゅ まえ ち わた い
三二われわれは武装して、主の前にカナンの地へ渡って行きますが、ヨル
し ぎょう
ダンのこなたで、われわれの嗣 業をもつことにします﹂。
しそん しそん こ
三三そこでモーセはガドの子孫と、ルベンの子孫と、ヨセフの子マナセの
ぶぞく なか おう くに おう くに
部族の半ばとに、アモリびとの王シホンの国と、バシャンの王オグの国
あた くに りょうない まちまち まちまち
と を 与 え た。す な わ ち、そ の 国 お よ び そ の 領 内 の 町々 と そ の 町々 の
しゅうい ち あた しそん
周囲の地とを与えた。 三四こうしてガドの子孫は、デボン、アタロテ、ア
ロエル、 三五アテロテ・ショパン、ヤゼル、ヨグベハ、 三六ベテニムラ、ベ
けんご まちまち た ひつじ た
テハランなどの堅固な町々を建て、 羊のおりを建てた。 三七またルベン
しそん のち な あらた
の子孫は、ヘシボン、エレアレ、キリヤタイム、 三八および後に名を改め
まち た まち た かれ
たネボと、バアル・メオンの町を建て、またシブマの町を建てた。彼ら
た まちまち あたら な あた こ しそん
は建てた町々に新しい名を与えた。 三九またマナセの子マキルの子孫は
い と じゅうみん お はら
ギレアデに行って、そこを取り、その住 民 アモリびとを追い払ったの
民数記

こ あた す
で、 四〇モーセはギレアデをマナセの子マキルに与えてそこに住まわせ

164
こ い むらむら と
た。 四一またマナセの子ヤイルは行って村々を取り、それをハオテヤイ
な い むらむら と じぶん
ルと名づけた。 四二またノバは行ってケナテとその村々を取り、自分の
な な
名にしたがって、それをノバと名づけた。
第三三章
ひとびと みちび ぶたい したが
イスラエルの人々が、モーセとアロンとに導かれ、その部隊に従 っ

くに で へ たびじ つぎ
て、エジプトの国を出てから経た旅路は次のとおりである。 二モーセは
しゅ めい たびじ しゅくえき か しゅくえき
主の命により、その旅路にしたがって宿 駅を書きとめた。その宿 駅に
たびじ つぎ かれ しょうがつ にち
したがえば旅路は次のとおりである。 三彼らは正 月の十五日にラメセ
しゅったつ すぎこし よくじつ ひとびと
スを出 立した。すなわち過越の翌日イスラエルの人々は、すべてのエ
め まえ いきようよう しゅったつ とき
ジプトびとの目の前を意気揚々と出 立した。 四その時エジプトびとは、
しゅ う ころ ほうむ しゅ かれ かみがみ
主に撃ち殺されたすべてのういごを葬 っていた。主はまた彼らの神々
民数記

ばつ くわ
にも罰を加えられた。

165
ひとびと しゅったつ しゅくえい
五こうしてイスラエルの人々はラメセスを出 立してスコテに宿 営し、 六
しゅったつ あらの はし しゅくえい しゅったつ
スコテを出 立して荒野の端にあるエタムに宿 営し、 七エタムを出 立し
まえ ひ かえ まえ
てバアル・ゼポンの前にあるピハヒロテに引き返してミグドルの前に
しゅくえい しゅったつ うみ あらの い
宿 営し、 八ピハヒロテを出 立して、海のなかをとおって荒野に入り、エ
あらの か じ い しゅくえい しゅったつ
タムの荒野を三日路ほど行って、メラに宿 営し、 九メラを出 立し、エリ
い しゅくえい みず いずみ ほん
ムに行って宿 営した。エリムには水の泉 十二と、なつめやし七十本と
しゅったつ こうかい しゅくえい こうかい
が あ っ た。 一 〇エ リ ム を 出 立 し て 紅海 の ほ と り に 宿 営 し、 一 一紅海 を
しゅったつ あらの しゅくえい あらの しゅったつ
出 立 し て シ ン の 荒野 に 宿 営 し、 一 二シ ン の 荒野 を 出 立 し て ド フ カ に
しゅくえい しゅったつ しゅくえい しゅったつ
宿 営し、 一三ドフカを出 立してアルシに宿 営し、 一四アルシを出 立して
しゅくえい たみ の みず
レピデムに宿 営した。そこには民の飲む水がなかった。 一五レピデムを
しゅったつ あらの しゅくえい あらの しゅったつ
出 立してシナイの荒野に宿 営し、 一六シナイの荒野を出 立してキブロ
しゅくえい しゅったつ
テ・ハッタワに宿 営し、 一七キブロテ・ハッタワを出 立してハゼロテに
しゅくえい しゅったつ しゅくえい しゅったつ
宿 営し、 一八ハゼロテを出 立してリテマに宿 営し、 一九リテマを出 立し
民数記

しゅくえい しゅったつ
てリンモン・パレツに宿 営し、 二〇リンモン・パレツを出 立してリブナ

166
しゅくえい しゅったつ しゅくえい しゅったつ
に宿 営し、 二一リブナを出 立してリッサに宿 営し、 二二リッサを出 立し
しゅくえい しゅったつ やま しゅくえい
てケヘラタに宿 営し、二三ケヘラタを出 立してシャペル山に宿 営し、二四
やま しゅったつ しゅくえい しゅったつ
シャペル山を出 立してハラダに宿 営し、 二五ハラダを出 立してマケロ
しゅくえい しゅったつ しゅくえい
テ に 宿 営 し、 二 六マ ケ ロ テ を 出 立 し て タ ハ テ に 宿 営 し、 二 七タ ハ テ を
しゅったつ しゅくえい しゅったつ しゅくえい
出 立してテラに宿 営し、 二八テラを出 立してミテカに宿 営し、 二九ミテ
しゅったつ しゅくえい しゅったつ
カ を 出 立 し て ハ シ モ ナ に 宿 営 し、 三 〇ハ シ モ ナ を 出 立 し て モ セ ラ に
しゅくえい しゅったつ しゅくえい
宿 営し、 三一モセラを出 立してベネヤカンに宿 営し、 三二ベネヤカンを
しゅったつ しゅくえい しゅったつ
出 立してホル・ハギデガデに宿 営し、 三三ホル・ハギデガデを出 立して
しゅくえい しゅったつ しゅくえい
ヨテバタに宿 営し、 三四ヨテバタを出 立してアブロナに宿 営し、 三五ア
しゅったつ しゅくえい
ブロナを出 立してエジオン・ゲベルに宿 営し、 三六エジオン・ゲベルを
しゅったつ あらの しゅくえい しゅったつ
出 立してチンの荒野すなわちカデシに宿 営し、 三七カデシを出 立して
くに はし やま しゅくえい
エドムの国の端にあるホル山に宿 営した。
ひとびと くに で ねん め がつ にち
三八イ ス ラ エ ル の 人々 が エ ジ プ ト の 国 を 出 て 四 十 年目 の 五 月 一 日 に、
民数記

さいし しゅ めい やま のぼ ところ し
祭司アロンは主の命によりホル山に登って、その所で死んだ。 三九アロ

167
やま し さい
ンはホル山で死んだとき百二十三歳であった。
ち す おう
カナンの地のネゲブに住んでいたカナンびとアラデの王は、イスラ
四〇
ひとびと く き
エルの人々の来るのを聞いた。
やま しゅったつ しゅくえい しゅったつ
ついで、ホル山を出 立してザルモナに宿 営し、 四二ザルモナを出 立
四一
しゅくえい しゅったつ しゅくえい
してプノンに宿 営し、 四三プノンを出 立してオボテに宿 営し、 四四オボ
しゅったつ さかい しゅくえい
テを出 立してモアブの境にあるイエ・アバリムに宿 営し、 四五イエ・ア
しゅったつ しゅくえい しゅったつ
バリムを出 立してデボン・ガドに宿 営し、 四六デボン・ガドを出 立して
しゅくえい しゅったつ
アルモン・デブラタイムに宿 営し、 四七アルモン・デブラタイムを出 立
まえ やま しゅくえい やま しゅったつ
してネボの前にあるアバリムの山に宿 営し、 四八アバリムの山を出 立し
ちか へいや しゅくえい
てエリコに近いヨルダンのほとりのモアブの平野に宿 営した。 四九すな
へいや
わちヨルダンのほとりのモアブの平野で、ベテエシモテとアベル・シッ
あいだ しゅくえい
テムとの間に宿 営した。
ちか へいや しゅ い
エリコに近いヨルダンのほとりのモアブの平野で、主はモーセに言
五〇
民数記

ひとびと い
われた、五一
﹁イスラエルの人々に言いなさい。あなたがたがヨルダンを

168
わた ち ち じゅうみん
渡ってカナンの地にはいるときは、 五二その地の住 民をことごとくあな
まえ お はら せきぞう い ぞう
たがたの前から追い払い、すべての石像をこぼち、すべての鋳像をこぼ
たか ところ はかい
ち、すべての高き所を破壊しなければならない。 五三またあなたがたは
ち たみ お はら す
その地の民を追い払って、そこに住まなければならない。わたしがその
ち しょゆう あた
地をあなたがたの所有として与えたからである。 五四あなたがたは、お
しぞく ひ ち わ し ぎょう
のおの氏族ごとにくじを引き、その地を分けて嗣 業としなければなら
おお ぶぞく おお し ぎょう あた ちい ぶぞく すこ し ぎょう
ない。大きい部族には多くの嗣 業を与え、小さい部族には少しの嗣 業
あた あた ところ しょゆう
を与えなければならない。そのくじの当った所がその所有となるであ
ふ そ ぶぞく つ
ろう。あなたがたは父祖の部族にしたがって、それを継がなければなら
ち じゅうみん まえ お はら
ない。 五五しかし、その地の住 民をあなたがたの前から追い払わないな
のこ お もの め
らば、その残して置いた者はあなたがたの目にとげとなり、あなたがた
わき す くに なや
の脇にいばらとなり、あなたがたの住む国において、あなたがたを悩ま
かれ おも
すであろう。 五六また、わたしは彼らにしようと思ったとおりに、あなた
民数記

がたにするであろう﹂。

169
第三四章
しゅ い ひとびと めい い
一主はモーセに言われた、 二﹁イスラエルの人々に命じて言いなさい。
ち し ぎょう
あなたがたがカナンの地にはいるとき、あなたがたの嗣 業となるべき
ち ち ぜんいき つぎ みなみ ほう
地はカナンの地で、その全域は次のとおりである。 三 南の方はエドムに
せっ あらの はじ みなみ さかい ひがし しお うみ はし はじ
接するチンの荒野に始まり、南の境は、東は塩の海の端に始まる。 四そ
さかい さか みなみ めぐ む
の境はアクラビムの坂の南を巡ってチンに向かい、カデシ・バルネアの
みなみ いた すす およ さかい
南に至り、ハザル・アダルに進み、アズモンに及ぶ。 五その境はまたア
てん かわ いた うみ およ つ
ズモンから転じてエジプトの川に至り、海に及んで尽きる。
にし さかい えんがん にし さかい
六西の境はおおうみとその沿岸で、これがあなたがたの西の境である。
きた さかい つぎ
七あなたがたの北の境は次のとおりである。すなわちおおうみからホ
やま せん ひ やま いりぐち せん ひ さかい
ル山まで線を引き、 八ホル山からハマテの入口まで線を引き、その境を
いた さかい すす いた
ゼダデに至らせ、九またその境はジフロンに進み、ハザル・エノンに至っ
民数記

つ きた さかい
て尽きる。これがあなたがたの北の境である。

170
ひがし さかい せん ひ
一〇 あなたがたの東の境は、ハザル・エノンからシパムまで線を引き、 一
さかい ひがし ほう くだ
一またその境はアインの東の方で、シパムからリブラに下り、またその
さかい くだ うみ ひがし しゃめん いた さかい
境は下ってキンネレテの海の東の斜面に至り、 一二またその境はヨルダ
くだ しお うみ いた つ くに しゅうい さかい いじょう
ンに下り、塩の海に至って尽きる。あなたがたの国の周囲の境は以上の
とおりである﹂。
ひとびと めい い
一三 モーセはイスラエルの人々に命じて言った、﹁これはあなたがたが、
つ ち しゅ ぶぞく はん ぶ ぞ く
くじによって継ぐべき地である。主はこれを九つの部族と半部族とに
あた めい しそん ぶぞく しそん
与 え よ と 命 じ ら れ た。 一 四そ れ は ル ベ ン の 子孫 の 部族 と ガ ド の 子孫 の
ぶぞく とも ふ そ いえ し ぎょう う
部族とが共に父祖の家にしたがって、すでにその嗣 業を受け、またマナ
はん ぶ ぞ く し ぎょう う ぶぞく
セの半部族もその嗣 業を受けていたからである。 一五この二つの部族と
はん ぶ ぞ く ちか ひがし ほう ひ で
半部族とはエリコに近いヨルダンのかなた、すなわち東の方、日の出る
ほう し ぎょう う
方で、その嗣 業を受けた﹂。
しゅ い し ぎょう ち わ
一六 主はまたモーセに言われた、 一七﹁あなたがたに、嗣 業として地を分
民数記

あた ひとびと な つぎ さいし
け与える人々の名は次のとおりである。すなわち祭司エレアザルと、ヌ

171
こ ぶぞく
ンの子ヨシュアとである。 一八あなたがたはまた、おのおの部族から、つ
えら ち わ あた
かさひとりずつを選んで、地を分け与えさせなければならない。 一九そ
ひとびと な つぎ ぶぞく
の人々の名は次のとおりである。すなわちユダの部族ではエフンネの
こ しそん ぶぞく こ
子カレブ、 二〇シメオンの子孫の部族ではアミホデの子サムエル、 二一ベ
ぶぞく こ しそん ぶぞく
ニヤミンの部族ではキスロンの子エリダデ、 二二ダンの子孫の部族では
こ しそん ぶぞく
ヨグリの子つかさブッキ、二三ヨセフの子孫、すなわちマナセの部族では
こ しそん ぶぞく
エポデの子つかさハニエル、 二四エフライムの子孫の部族ではシフタン
こ しそん ぶぞく こ
の子つかさケムエル、 二五ゼブルンの子孫の部族ではパルナクの子つか
しそん ぶぞく こ
さエリザパン、 二六イッサカルの子孫の部族ではアザンの子つかさパル
しそん ぶぞく こ
テエル、 二七アセルの子孫の部族ではシロミの子つかさアヒウデ、 二八ナ
しそん ぶぞく こ
フタリの子孫の部族では、アミホデの子つかさパダヘル。 二九カナンの
ち ひとびと し ぎょう わ あた しゅ めい ひとびと
地でイスラエルの人々に嗣 業を分け与えることを主が命じられた人々
いじょう
は以上のとおりである﹂。
民数記

172
第三五章
ちか へいや しゅ い
一エリコに近いヨルダンのほとりのモアブの平野で、主はモーセに言わ
ひとびと めい え し ぎょう
れた、 二﹁イスラエルの人々に命じて、その獲た嗣 業のうちから、レビ
す まちまち あた まちまち
びとに住むべき町々を与えさせなさい。また、あなたがたは、その町々
しゅうい ほうぼく ち あた まちまち かれ
の 周囲 の 放牧地 を レ ビ び と に 与 え な け れ ば な ら な い。 三そ の 町々 は 彼
す ところ ほうぼく ち かれ かちく む けもの
らの住む所、その放牧地は彼らの家畜と群れ、およびすべての獣のため
あた まちまち ほうぼく ち まち いし
である。 四あなたがたがレビびとに与える町々の放牧地は、町の石がき
しゅうい まち
か ら 一 千 キ ュ ビ ト の 周囲 と し な け れ ば な ら な い。 五あ な た が た は 町 の
そと ひがしがわ みなみがわ にしがわ
外で東 側に二千キュビト、南 側に二千キュビト、西側に二千キュビト、
きたがわ はか まち ちゅうおう かれ
北側に二千キュビトを計り、町はその中 央にしなければならない。彼
まち ほうぼく ち
ら の 町 の 放牧地 は こ の よ う に し な け れ ば な ら な い。 六あ な た が た が レ
あた まちまち まち ひと ころ もの
ビびとに与える町々は六つで、のがれの町とし、人を殺した者がのがれ
民数記

ところ まち あた
る所としなければならない。なおこのほかに四十二の町を与えなけれ

173
あた まち あ
ば な ら な い。 七す な わ ち あ な た が た が レ ビ び と に 与 え る 町 は 合 わ せ て
ほうぼく ち とも あた
四十八で、これをその放牧地と共に与えなければならない。 八あなたが
ひとびと しょゆう まちまち あた
たがイスラエルの人々の所有のうちからレビびとに町々を与えるには、
おお ぶぞく おお と ちい ぶぞく すく と う
大きい部族からは多く取り、小さい部族からは少なく取り、おのおの受
し ぎょう まちまち あた
け る 嗣 業 に し た が っ て、そ の 町々 を レ ビ び と に 与 え な け れ ば な ら な
い﹂。
しゅ い ひとびと い
九主はモーセに言われた、一〇﹁イスラエルの人々に言いなさい。あなた
わた ち
がたがヨルダンを渡ってカナンの地にはいるときは、 一一あなたがたの
まち えら まち ひと ころ もの
ために町を選んで、のがれの町とし、あやまって人を殺した者を、そこ
ふくしゅう もの
にのがれさせなければならない。 一二これはあなたがたが復 讐する者を
さ まち ひと ころ もの かいしゅう まえ た
避けてのがれる町であって、人を殺した者が会 衆の前に立って、さばき
う ころ
を受けないうちに、殺されることのないためである。 一三あなたがたが
あた まちまち まち
与える町々のうち、六つをのがれの町としなければならない。 一四すな
民数記

まち あた ち まち あた
わちヨルダンのかなたで三つの町を与え、カナンの地で三つの町を与え

174
まち まち
て、のがれの町としなければならない。 一五これらの六つの町は、イスラ
ひとびと たこく ひと きりゅうしゃ ば しょ
エルの人々と、他国の人および寄留者のために、のがれの場所としなけ
ひと ころ もの
ればならない。すべてあやまって人を殺した者が、そこにのがれるため
である。
ひと てつ うつわ ひと う し ひと こ さつじん
一六 もし人が鉄の器で、人を打って死なせたならば、その人は故殺人であ
こ さつじん かなら ころ ひと ころ
る。故殺人は必ず殺されなければならない。 一七またもし人を殺せるほ
いし と ひと う し ひと こ さつじん
どの石を取って、人を打って死なせたならば、その人は故殺人である。
こ さつじん かなら ころ ひと ころ
故殺人は必ず殺されなければならない。 一八あるいは人を殺せるほどの
き うつわ と ひと う し ひと こ さつじん
木の器を取って、人を打って死なせたならば、その人は故殺人である。
こ さつじん かなら ころ ち ふくしゅう もの じぶん
故殺人は必ず殺されなければならない。 一九血の復 讐をする者は、自分
こ さつじん ころ かれ で あ かれ ころ
でその故殺人を殺すことができる。すなわち彼に出会うとき、彼を殺す
うら ひと つ こ い ひと
ことができる。 二〇またもし恨みのために人を突き、あるいは故意に人
もの な し うら て ひと う し
に物を投げつけて死なせ、 二一あるいは恨みによって手で人を打って死
民数記

う もの かなら ころ かれ こ
なせたならば、その打った者は必ず殺されなければならない。彼は故

175
さつじん ち ふくしゅう もの こ さつじん で あ ころ
殺人だからである。血の復 讐をする者は、その故殺人に出会うとき殺
すことができる。
うら おも ひと つ
二二 しかし、もし恨みもないのに思わず人を突き、または、なにごころな
ひと もの な ひと み ひと ころ
く人に物を投げつけ、二三あるいは人のいるのも見ずに、人を殺せるほど
いし な し ばあい ひと てき がい くわ
の石を投げつけて死なせた場合、その人がその敵でもなく、また害を加
とき かいしゅう
えようとしたのでもない時は、 二四会 衆はこれらのおきてによって、そ
ひと ころ もの ち ふくしゅう もの あいだ
の人を殺した者と、血の復 讐をする者との間をさばかなければならな
かいしゅう ひと ころ もの ち ふくしゅう もの て
い。 二五す な わ ち 会 衆 は そ の 人 を 殺 し た 者 を 血 の 復 讐 を す る 者 の 手 か
すく だ に い まち かえ
ら救い出して、逃げて行ったのがれの町に返さなければならない。その
もの せい あぶら そそ だい さ い し し
者は聖なる油を注がれた大祭司の死ぬまで、そこにいなければならな
ひと ころ もの に い まち さかい
い。 二六しかし、もし人を殺した者が、その逃げて行ったのがれの町の境
で ばあい ち ふくしゅう もの まち さかい そと
を出た場合、 二七血の復 讐をする者は、のがれの町の境の外で、これに
で あ ち ふくしゅう もの ひと ころ もの ころ かれ ち
出会い、血の復 讐をする者が、その人を殺した者を殺しても、彼には血
民数記

なが つみ かれ だい さ い し し まち
を流した罪はない。 二八彼は大祭司の死ぬまで、そののがれの町におる

176
だい さ い し し のち ひと ころ もの じぶん
べきものだからである。大祭司の死んだ後は、人を殺した者は自分の
しょゆう ち
所有の地にかえることができる。
す ところ よ よ
二九 これらのことはすべてあなたがたの住む所で、代々あなたがたのた
さだ ひと ころ もの
めのおきての定めとしなければならない。 三〇人を殺した者、すなわち
こ さつじん しょうにん しょうげん ころ
故殺人はすべて証 人の証 言にしたがって殺されなければならない。し
しょうげん ころ
かし、だれもただひとりの証 言によって殺されることはない。 三一あな
し あた つみ おか こ さつじん いのち と
たがたは死に当る罪を犯した故殺人の命のあがないしろを取ってはな
かれ かなら ころ まち
らない。彼は必ず殺されなければならない。 三二また、のがれの町にの
もの と だい さ い し し まえ かれ じぶん
がれた者のために、あがないしろを取って大祭司の死ぬ前に彼を自分の
ち かえ す ところ ち けが
地に帰り住まわせてはならない。 三三あなたがたはそのおる所の地を汚
りゅうけつ ち けが ち うえ なが ち
し て は な ら な い。 流 血 は 地 を 汚 す か ら で あ る。地 の 上 に 流 さ れ た 血
なが もの ち
は、それを流した者の血によらなければあがなうことができない。 三四
す ところ ち ち けが
あなたがたは、その住む所の地、すなわちわたしのおる地を汚してはな
民数記

しゅ ひとびと す
らない。主なるわたしがイスラエルの人々のうちに住んでいるからで

177
ある﹂。
第三六章
しそん しぞく こ こ
一ヨセフの子孫の氏族のうち、マナセの子マキルの子であるギレアデの
こ しぞく ひとびと
子らの氏族のかしらたちがきて、モーセとイスラエルの人々のかしらで
まえ かた い ひとびと
あるつかさたちとの前で語って、 二言った、
﹁イスラエルの人々に、その
し ぎょう ち あた しゅ めい
嗣 業の地をくじによって与えることを主はあなたに命じられ、あなた
きょうだい し ぎょう むすめ あた
もまた、われわれの兄 弟 ゼロペハデの嗣 業を、その娘たちに与えるよ
しゅ めい むすめ
う、主 に よ っ て 命 じ ら れ ま し た。 三そ の 娘 た ち が も し、イ ス ラ エ ル の
ひとびと た ぶぞく かのじょ し ぎょう
人々のうちの他の部族のむすこたちにとつぐならば、彼女たちの嗣 業
ふ そ し ぎょう す のぞ ぶぞく
は、われわれの父祖の嗣 業のうちから取り除かれて、そのとつぐ部族の
し ぎょう くわ し ぎょう ぶん
嗣 業に加えられるでしょう。こうしてそれはわれわれの嗣 業の分から
民数記

す のぞ ひとびと とし
取 り 除 か れ る で し ょ う。 四そ し て イ ス ラ エ ル の 人々 の ヨ ベ ル の 年 が き

178
とき かのじょ し ぎょう ぶぞく し ぎょう くわ
た時、彼女たちの嗣 業は、そのとついだ部族の嗣 業に加えられるでしょ
かのじょ し ぎょう ふ そ ぶぞく し ぎょう
う。こうして彼女たちの嗣 業は、われわれの父祖の部族の嗣 業のうち
す のぞ
から取り除かれるでしょう﹂。
しゅ ことば ひとびと めい い
五モーセは主の言葉にしたがって、イスラエルの人々に命じて言った、
しそん ぶぞく い ただ むすめ
﹁ヨセフの子孫の部族の言うところは正しい。 六ゼロペハデの娘たちに
しゅ めい かのじょ
ついて、主が命じられたことはこうである。すなわち﹃彼女たちはその
こころ もの ふ そ ぶぞく いちぞく
心にかなう者にとついでもよいが、ただその父祖の部族の一族にのみ、
ひとびと し ぎょう
と つ が な け れ ば な ら な い。 七そ う す れ ば イ ス ラ エ ル の 人々 の 嗣 業 は、
ぶぞく ぶぞく うつ ひとびと
部族から部族に移るようなことはないであろう。イスラエルの人々は、
ふ そ ぶぞく し ぎょう たも
おのおのその父祖の部族の嗣 業をかたく保つべきだからである。 八イ
ひとびと ぶぞく し ぎょう むすめ ちち
スラエルの人々の部族のうち、嗣 業をもっている娘はみな、その父の
ぶぞく ぞく いちぞく
部族に属する一族にとつがなければならない。そうすればイスラエル
ひとびと ふ そ し ぎょう たも し
の人々は、おのおのその父祖の嗣 業を保つことができる。 九こうして嗣
民数記

ぎょう ぶぞく た ぶぞく うつ


業 は 一 つ の 部族 か ら 他 の 部族 に 移 る こ と は な か ろ う。イ ス ラ エ ル の

179
ひとびと ぶぞく し ぎょう たも
人々の部族はおのおのその嗣 業をかたく保つべきだからである﹄﹂。
むすめ しゅ めい
そこでゼロペハデの娘たちは、主がモーセに命じられたようにした。
一〇
むすめ
すなわちゼロペハデの娘たち、マアラ、テルザ、ホグラ、ミルカおよ
一一
ちち きょうだい かのじょ
びノアは、その父の兄 弟のむすこたちにとついだ。 一二彼女たちはヨセ
こ いちぞく し ぎょう ちち
フの子マナセのむすこたちの一族にとついだので、その嗣 業はその父
いちぞく ぞく ぶぞく
の一族の属する部族にとどまった。
ちか へいや しゅ
一三こ れ ら は エ リ コ に 近 い ヨ ル ダ ン の ほ と り の モ ア ブ の 平野 で、主 が
ひとびと めい めいれい
モーセによってイスラエルの人々に命じられた命令とおきてである。
民数記

180
しんめい き
申命記
第一章
む あらの
一これはヨルダンの向こうの荒野、パランと、トペル、ラバン、ハゼロ
あいだ まえ
テ、デザハブとの間の、スフの前にあるアラバにおいて、モーセがイス
ひと つ ことば やま みち
ラ エ ル の す べ て の 人 に 告 げ た 言葉 で あ る。 二ホ レ ブ か ら セ イ ル 山 の 道
へ たっ にち みち だい
を経て、カデシ・バルネアに達するには、十一日の道のりである。 三第
ねん がつ つき にち ひとびと
四十年の十一月となり、その月の一日に、モーセはイスラエルの人々に
しゅ かれ かれ さづ めいれい つ
むかって、主が彼らのため彼に授けられた命令を、ことごとく告げた。 四
す おう
これはモーセがヘシボンに住んでいたアモリびとの王シホン、およびア
す おう ころ のち
シタロテとエデレイとに住んでいたバシャンの王オグを殺した後で
む ち
あった。 五すなわちモーセはヨルダンの向こうのモアブの地で、みずか
申命記

りっぽう せつめい あた い かみ しゅ
ら、この律法の説明に当った、そして言った、 六﹁われわれの神、主は

0
い ひさ
ホレブにおいて、われわれに言われた、
﹃あなたがたはすでに久しく、こ
やま み みち すす
の 山 に と ど ま っ て い た が、 七身 を め ぐ ら し て 道 に 進 み、ア モ リ び と の
さんち い きんりん ところ さんち ていち うみ
山地に行き、その近隣のすべての所、アラバ、山地、低地、ネゲブ、海
ち い おおかわ い
べ、カナンびとの地、またレバノンに行き、大川ユフラテにまで行きな
み ち まえ お ち
さい。 八見よ、わたしはこの地をあなたがたの前に置いた。この地には
じぶん しゅ せんぞ
いって、それを自分のものとしなさい。これは主が、あなたがたの先祖
ちか かれ のち しそん あた
アブラハム、イサク、ヤコブに誓って、彼らとその後の子孫に与えると
い ところ
言われた所である﹄。
とき い
九あの時、わたしはあなたがたに言った、
﹃わたしはひとりであなたがた
お かみ しゅ おお
を負うことができない。 一〇あなたがたの神、主はあなたがたを多くさ
そら ほし おお
れたので、あなたがたは、きょう、空の星のように多い。 一一︱︱どうぞ、
せんぞ かみ しゅ いま ばい おお
あなたがたの先祖の神、主があなたがたを、今あるより千倍も多くし、ま
やくそく めぐ
たあなたがたに約束されたように、あなたがたを恵んでくださるよう
申命記


に。︱︱ 一二 わたしひとりで、どうして、あなたがたを負い、あなたがた

1
おもに あらそ しょ り
の重荷と、あなたがたの争いを処理することができようか。 一三あなた
ぶぞく ち え ちしき ひと し
がたは、おのおの部族ごとに、知恵があり、知識があって、人に知られ
ひとびと えら だ ひとびと
ている人々を選び出しなさい。わたしはその人々を、あなたがたのかし
とき こた
らとするであろう﹄。 一四その時、あなたがたはわたしに答えた、
﹃あなた
い よ
がしようと言われることは良いことです﹄。 一五そこで、わたしは、あな
ち え ひと し ひとびと と
たがたのうちから、知恵があり、人に知られている人々を取って、あな
にん ちょう にん ちょう にん ちょう
たがたのかしらとした。すなわち千人の長、百人の長、五十人の長、十
にん ちょう ぶぞく
人の長とし、また、あなたがたの部族のつかさびととした。 一六また、あ
めい い
のとき、わたしはあなたがたのさばきびとたちに命じて言った、﹃あなた
きょうだい あいだ うった き ひと きょうだい きりゅう たこく
がたは、兄 弟たちの間の訴えを聞き、人とその兄 弟、または寄留の他国
じん あいだ ただ
人との間を、正しくさばかなければならない。 一七あなたがたは、さばき
とき ひと かたよ み ちい もの おお もの き
をする時、人を片寄り見てはならない。小さい者にも大いなる者にも聞
ひと かお おそ かみ こと
かなければならない。人の顔を恐れてはならない。さばきは神の事だ
申命記

き こと
からである。あなたがたで決めるのにむずかしい事は、わたしのところ

2
も き
に 持 っ て こ な け れ ば な ら な い。わ た し は そ れ を 聞 く で あ ろ う﹄。 一八わ
とき
たしはまた、あの時、あなたがたがしなければならないことを、ことご
めい
とく命じた。
かみ しゅ めい しゅったつ
一九 われわれの神、主が命じられたように、われわれは、ホレブを出 立
み おお おそ あらの とお
して、あなたがたが見た、あの大きな恐ろしい荒野を通り、アモリびと
さんち ゆ みち とき
の山地へ行く道によって、カデシ・バルネアにきた。 二〇その時わたしは
い かみ しゅ あた
あなたがたに言った、
﹃あなたがたは、われわれの神、主がお与えになる
さんち つ み かみ しゅ ち
アモリびとの山地に着いた。 二一見よ、あなたの神、主はこの地をあなた
まえ お せんぞ かみ しゅ つ のぼ
の前に置かれた。あなたの先祖の神、主が告げられたように、上って
い じぶん おそ
行って、これを自分のものとしなさい。恐れてはならない。おののいて
みな ちかよ い
はならない﹄。 二二あなたがたは皆わたしに近寄って言った、﹃われわれ
ひと ち さぐ みち のぼ
は人をさきにつかわして、その地を探らせ、どの道から上るべきか、ど
まちまち い ふくめい よ おも
の町々に入るべきかを、復命させましょう﹄。 二三このことは良いと思っ
申命記

ぶぞく
たので、わたしはあなたがたのうち、おのおのの部族から、ひとりずつ

3
にん もの えら かれ み さんち のぼ い
十二人の者を選んだ。 二四彼らは身をめぐらして、山地に上って行き、エ
たに い さぐ ち て と
シコルの谷へ行ってそれを探り、二五その地のくだものを手に取って、わ
も くだ ふくめい い かみ しゅ たま
れわれのところに持って下り、復命して言った、
﹃われわれの神、主が賜
ち よ ち
わる地は良い地です﹄。
のぼ い この
二六しかし、あなたがたは上って行くことを好まないで、あなたがたの
かみ しゅ めいれい てんまく い しゅ
神、主の命令にそむいた。 二七そして天幕でつぶやいて言った。﹃主はわ
にく て わた ほろ くに
れわれを憎んでアモリびとの手に渡し、滅ぼそうとしてエジプトの国か
みちび だ のぼ い きょうだい
ら 導 き 出 さ れ た の だ。 二八わ れ わ れ は ど こ へ 上 っ て 行 く の か。 兄 弟 た
たみ おお せ たか まちまち おお
ちは、
﹁その民はわれわれよりも大きくて、背も高い。町々は大きく、そ
いし てん とど しそん
の石がきは天に届いている。われわれは、またアナクびとの子孫をその
ところ み い こころ とき
所で見た﹂と言って、われわれの心をくじいた﹄。 二九その時、わたしは
い かれ おそ
あなたがたに言った、﹃彼らをこわがってはならない。また恐れてはな
さき た い かみ しゅ
らない。 三〇先に立って行かれるあなたがたの神、主はエジプトにおい
申命記

め まえ おこな
て、あなたがたの目の前で、すべてのことを行われたように、あなたが

4
たたか あらの
たのために戦われるであろう。 三一あなたがたはまた荒野で、あなたの
かみ しゅ ひと こ だ だ み
神、主が、人のその子を抱くように、あなたを抱かれるのを見た。あな
ところ く みち
たがたが、この所に来るまで、その道すがら、いつもそうであった﹄。 三
い かみ しゅ しん
二このように言っても、あなたがたはなお、あなたがたの神、主を信じ
しゅ みちみち さき た い
な か っ た。 三 三主 は 道々 あ な た が た の 先 に 立 っ て 行 き、あ な た が た が
しゅくえい ば しょ さが よる ひ ひる くも
宿 営する場所を捜し、夜は火のうちにあり、昼は雲のうちにあって、あ
ゆ みち しめ
なたがたに行くべき道を示された。
しゅ ことば き いか ちか い
三四 主は、あなたがたの言葉を聞いて怒り、誓って言われた、 三五﹃この
わる せだい ひとびと せんぞ あた
悪い世代の人々のうちには、わたしが、あなたがたの先祖たちに与える
ちか よ ち み もの
と誓ったあの良い地を見る者は、ひとりもないであろう。 三六ただエフ
こ み かれ ふ
ンネの子カレブだけはそれを見ることができるであろう。彼が踏んだ
ち かれ しそん あた かれ まった しゅ したが
地を、わたしは彼とその子孫に与えるであろう。彼が全く主に従 った
しゅ いか い
からである﹄。 三七主はまた、あなたがたのゆえに、わたしをも怒って言
申命記

われた、
﹃おまえもまた、そこにはいることができないであろう。 三八お

5
つか こ かれ ちから
まえに仕えているヌンの子ヨシュアが、そこにはいるであろう。彼を力
かれ え
づけよ。彼はイスラエルにそれを獲させるであろう。 三九またあなたが

たが、かすめられるであろうと言ったあなたがたのおさなごたち、およ
ひ ぜんあく こども
びその日にまだ善悪をわきまえないあなたがたの子供たちが、そこには
かれ あた かれ しょゆう
いるであろう。わたしはそれを彼らに与える。彼らはそれを所有とす
み こうかい みち あらの
るであろう。 四〇あなたがたは身をめぐらし、紅海の道によって、荒野に
すす い
進んで行きなさい﹄。
こた い しゅ
四一 しかし、あなたがたはわたしに答えて言った、﹃われわれは主にむ
つみ おか かみ しゅ めい
かって罪を犯しました。われわれの神、主が命じられたように、われわ
のぼ い たたか ぶ き み お
れは上って行って戦いましょう﹄。そして、おのおの武器を身に帯びて、
さんち のぼ い とき しゅ い
かるがるしく山地へ上って行こうとした。 四二その時、主はわたしに言
かれ い のぼ い
われた、﹃彼らに言いなさい、﹁あなたがたは上って行ってはならない。
たたか
また戦 ってはならない。わたしはあなたがたのうちにいない。おそら
申命記

てき う やぶ
く、あなたがたは敵に撃ち敗られるであろう﹂﹄。 四三このようにわたし

6
つ き しゅ めいれい
が告げたのに、あなたがたは聞かないで主の命令にそむき、ほしいまま
さんち のぼ い さんち す
に山地へ上って行ったが、四四その山地に住んでいるアモリびとが、あな
む で お お
たがたに向かって出てきて、はちが追うように、あなたがたを追いかけ、
う やぶ およ かえ
セイルで撃ち敗って、ホルマにまで及んだ。 四五あなたがたは帰ってき
しゅ まえ な しゅ こえ き みみ
て、主の前で泣いたが、主はあなたがたの声を聞かず、あなたがたに耳
かたむ ひ ひさ
を傾けられなかった。 四六こうしてあなたがたは、日久しくカデシにと
にっすう
どまった。あなたがたのそこにとどまった日数のとおりである。
第二章
み しゅ つ
それから、われわれは身をめぐらし、主がわたしに告げられたように、

こうかい ほう む あらの すす い ひ ひさ やま い
紅海の方に向かって荒野に進み入り、日久しくセイル山を行きめぐって
しゅ い すで ひさ やま
いたが、二主はわたしに言われた、三﹃あなたがたは既に久しくこの山を
申命記

い み きた すす
行きめぐっているが、身をめぐらして北に進みなさい。 四おまえはまた

7
たみ めい い しそん す
民に命じて言え、
﹁あなたがたは、エサウの子孫、すなわちセイルに住ん
きょうだい りょうない とお かれ
でいるあなたがたの兄 弟の領 内を通ろうとしている。彼らはあなたが
おそ ふか つつし かれ
たを恐れるであろう。それゆえ、あなたがたはみずから深く慎み、 五彼
あらそ かれ ち あし うら ふ
らと争 ってはならない。彼らの地は、足の裏で踏むほどでも、あなたが
あた やま あた りょうち
たに与えないであろう。わたしがセイル山をエサウに与えて、領地とさ
かれ かね しょくもつ か た
せたからである。 六あなたがたは彼らから金で食 物を買って食べ、また
かね みず か の かみ しゅ
金で水を買って飲まなければならない。 七あなたの神、主が、あなたの
こと めぐ おお あらの
するすべての事において、あなたを恵み、あなたがこの大いなる荒野を
とお みまも かみ しゅ ねん あいだ
通るのを、見守られたからである。あなたの神、主がこの四十年の間、あ
とも なに とぼ
なたと共におられたので、あなたは何も乏しいことがなかった﹂﹄。 八こ
しそん す きょうだい はな
うしてわれわれは、エサウの子孫でセイルに住んでいる兄 弟を離れ、ア
みち さ はな すす
ラバの道を避け、エラテとエジオン・ゲベルを離れて進んだ。
てん あらの ほう む すす とき しゅ
われわれは転じて、モアブの荒野の方に向かって進んだ。 九その時、主
申命記

い てきし あらそ
はわたしに言われた、﹃モアブを敵視してはならない。またそれと争い

8
たたか かれ ち りょうち あた
戦 ってはならない。彼らの地は、領地としてあなたに与えない。ロト
しそん あた りょうち
の子孫にアルを与えて、領地とさせたからである。 一〇︵むかし、エミび
ところ す たみ おお たみ かず おお
とがこの所に住んでいた。この民は大いなる民であって、数も多く、ア
せ たか おな
ナクびとのように背も高く、 一一またアナクびとと同じくレパイムであ

ると、みなされていたが、モアブびとは、これをエミびとと呼んでいた。
す しそん
一二 ホリびとも、むかしはセイルに住んでいたが、エサウの子孫がこれを
お はら ほろ かれ かわ す しゅ たま
追い払い、これを滅ぼし、彼らに代ってそこに住んだ。主が賜わった
しょゆう ち おな
所有の地に、イスラエルがおこなったのと同じである。︶ 一三あなたがた
た がわ わた
は、いま、立ちあがってゼレデ川を渡りなさい﹄。そこでわれわれはゼレ
がわ わた で がわ わた
デ川を渡った。 一四カデシ・バルネアを出てこのかた、ゼレデ川を渡るま
あいだ ひ ねん せだい し た
での間の日は三十八年であって、その世代のいくさびとはみな死に絶え
しゅくえい しゅ かれ ちか
て、宿 営のうちにいなくなった。主が彼らに誓われたとおりである。 一
しゅ て かれ せ しゅくえい ほろ さ
五まことに主の手が彼らを攻め、宿 営のうちから滅ぼし去られたので、
申命記

かれ し た
彼らはついに死に絶えた。

9
たみ し た しゅ い
一六 いくさびとがみな民のうちから死に絶えたとき、 一七主はわたしに言
りょうち とお
われた、一八﹃おまえは、きょう、モアブの領地アルを通ろうとしている。
しそん ちか とき かれ てきし
一九 アンモンの子孫に近づく時、おまえは彼らを敵視してはならない。
あらそ しそん ち りょうち
ま た 争 っ て は な ら な い。わ た し は ア ン モ ン の 子孫 の 地 を 領地 と し て、
あた しそん りょうち あた
おまえに与えない。それをロトの子孫に領地として与えたからである。
くに
︵これもまたレパイムの国とみなされた。むかし、レパイムがここに
二〇
す かれ
住んでいたからである。しかし、アンモンびとは彼らをザムズミびとと
よ たみ おお たみ かず おお
呼んだ。 二一この民は大いなる民であって数も多く、アナクびとのよう
せ たか しゅ まえ ほろ
に背も高かったが、主はアンモンびとの前から、これを滅ぼされ、アン
お はら かれ かわ す こと
モンびとがこれを追い払って、彼らに代ってそこに住んだ。 二二この事
す しそん まえ
は、セイルに住んでいるエサウの子孫のためにその前から、ホリびとを
ほろ おな かれ お はら かわ
滅ぼされたのと同じである。彼らはホリびとを追い払い、これに代って
こんにち す で
今日 ま で そ こ に 住 ん で い る。 二三ま た カ フ ト ル か ら 出 た カ フ ト ル び と
申命記

およ むらむら す ほろ かわ
は、ガザにまで及ぶ村々に住んでいたアビびとを滅ぼして、これに代っ

10
す た すす がわ
てそこに住んでいる。︶ 二四あなたがたは立ちあがり、進んでアルノン川
わた おう くに
を渡りなさい。わたしはヘシボンの王アモリびとシホンとその国とを、
て わた せいふく はじ かれ あらそ たたか
おまえの手に渡した。それを征服し始めよ。彼と争 って戦え。 二五きょ
ぜん て ん か たみ おそ
うから、わたしは全天下の民に、おまえをおびえ恐れさせるであろう。
かれ き ふる くる
彼らはおまえのうわさを聞いて震え、おまえのために苦しむであろう﹄。
あらの おう し しゃ
二六 そこでわたしは、ケデモテの荒野から、ヘシボンの王シホンに使者を
へいわ ことば の くに とお
つかわし、平和の言葉を述べさせた。 二七﹃あなたの国を通らせてくださ
おおじ みぎ ひだり まが
い。わたしは大路をとおっていきます、右にも左にも曲りません。 二八
かね しょくもつ う た かね みず あた
金で食 物を売ってわたしに食べさせ、金をとって水を与えてわたしに
の と ほ とお
飲ませてください。徒歩で通らせてくださるだけでよいのです。 二九セ
す しそん す
イルに住むエサウの子孫と、アルに住むモアブびとが、わたしにしたよ
わた
うにしてください。そうすれば、わたしはヨルダンを渡って、われわれ
かみ しゅ たま ち い おう
の神、主が賜わる地に行きます﹄。 三〇しかし、ヘシボンの王シホンは、わ
申命記

とお この かみ しゅ かれ て
れわれを通らせるのを好まなかった。あなたの神、主が彼をあなたの手

11
わた き つよ こころ
に渡すため、その気を強くし、その心をかたくなにされたからである。
こんにち み とき しゅ い
今日見るとおりである。 三一時に主はわたしに言われた、
﹃わたしはシホ
ち わた はじ せいふく
ンと、その地とを、おまえに渡し始めた。おまえはそれを征服しはじめ、
ち じぶん せ
その地を自分のものとせよ﹄。 三二そこでシホンは、われわれを攻めよう
たみ ひき で たたか
として、その民をことごとく率い、出てきてヤハズで戦 ったが、三三われ
かみ しゅ かれ わた かれ こ
われの神、主が彼を渡されたので、われわれは彼とその子らと、そのす
たみ う ころ とき かれ まち と
べての民とを撃ち殺した。 三四その時、われわれは彼のすべての町を取
まち おとこ おんな こども まった ほろ のこ
り、そのすべての町の男、 女および子供を全く滅ぼして、ひとりをも残
かちく と まちまち もの
さなかった。 三五ただその家畜は、われわれが取った町々のぶんどり物
とも え じぶん もの たに
と共に、われわれが獲て自分の物とした。 三六アルノンの谷のほとりに
たに なか まち いた
あるアロエルおよび谷の中にある町からギレアデに至るまで、われわれ
せ と まち かみ しゅ
が攻めて取れなかった町は一つもなかった。われわれの神、主がことご
わた しそん ち
とくわれわれに渡されたのである。 三七ただアンモンの子孫の地、すな
申命記

がわ ぜんきし さんち まちまち かみ しゅ


わちヤボク川の全岸、および山地の町々、またすべてわれわれの神、主

12
きん ところ ちかよ
が禁じられた所には近寄らなかった。
第三章
み みち のぼ い
そしてわれわれは身をめぐらして、バシャンの道を上って行ったが、

おう むか う たみ
バシャンの王オグは、われわれを迎え撃とうとして、その民をことごと
ひき で たたか とき しゅ い かれ
く率い、出てきてエデレイで戦 った。 二時に主はわたしに言われた、﹃彼
おそ かれ たみ ち
を恐れてはならない。わたしは彼と、そのすべての民と、その地をおま
て わた す おう
えの手に渡している。おまえはヘシボンに住んでいたアモリびとの王
かれ かみ しゅ
シホンにしたように、彼にするであろう﹄。 三こうしてわれわれの神、主
おう たみ て わた
はバシャンの王オグと、そのすべての民を、われわれの手に渡されたの
う ころ のこ とき
で、われわれはこれを撃ち殺して、ひとりをも残さなかった。 四その時、
かれ まちまち と と まち
われわれは彼の町々を、ことごとく取った。われわれが取らなかった町
申命記

と まち ぜん ち ほ う
は一つもなかった。取った町は六十。アルゴブの全地方であって、バ

13
くに みな たか いし もん
シャンにおけるオグの国である。 五これらは皆、高い石がきがあり、門
かん き けんご まち いし まち
があり、貫の木のある堅固な町であった。このほかに石がきのない町
ひじょう おお おう
は、非常に多かった。 六われわれはヘシボンの王シホンにしたように、
まった ほろ まち おとこ おんな こども
これらを全く滅ぼし、そのすべての町の男、女および子供をことごとく
ほろ かちく まちまち もの
滅ぼした。 七ただし、そのすべての家畜と、その町々からのぶんどり物
え じぶん もの とき
とは、われわれが獲て自分の物とした。 八その時われわれはヨルダンの
む がわ おう て がわ
向こう側にいるアモリびとのふたりの王の手から、アルノン川からヘル
ざん ち と よ
モ ン 山 ま で の 地 を 取 っ た。 九︵シ ド ン び と は ヘ ル モ ン を シ リ オ ン と 呼
よ こうげん
び、アモリびとはこれをセニルと呼んでいる。︶ 一〇すなわち高原のすべ
まち ぜん ち ぜん ち
ての町、ギレアデの全地、バシャンの全地、サルカおよびエデレイまで、
くに まちまち と
バシャンにあるオグの国の町々をことごとく取った。 一一︵バシャンの
おう せいぞんしゃ かれ しんだい てつ
王 オ グ は レ パ イ ム の た だ ひ と り の 生存者 で あ っ た。彼 の 寝台 は 鉄 の
しんだい いま
寝台 で あ っ た。こ れ は 今 な お ア ン モ ン び と の ラ バ に あ る で は な い か。
申命記

ふつう しゃく なが きゅう はば


これは普通のキュビト 尺で、長さ九 キュビト、幅四キュビトである。︶

14
とき ち え がわ
一二 その時われわれは、この地を獲た。そしてわたしはアルノン川のほ
はじ ち さんち なか まちまち
とりのアロエルから始まる地と、ギレアデの山地の半ばと、その町々と
あた のこ
は、ルベンびとと、ガドびととに与えた。 一三わたしはまたギレアデの残
ち くに ぜん ち はん ぶ ぞ く あた
りの地と、オグの国であったバシャンの全地とは、マナセの半部族に与
ぜん ち ほ う ぜん ち
えた。すなわちアルゴブの全地方である。︵そのバシャンの全地はレパ
くに とな こ ぜん ち ほ う
イムの国と唱えられる。 一四マナセの子ヤイルは、アルゴブの全地方を
と さかい たっ じぶん な
取って、ゲシュルびとと、マアカびとの境にまで達し、自分の名にした
な な こんにち
がって、バシャンをハボテ・ヤイルと名づけた。この名は今日にまでお
あた
よんでいる。︶ 一五またわたしはマキルにはギレアデを与えた。 一六ルベ
がわ あた
ンびとと、ガドびととには、ギレアデからアルノン川までを与え、その
かわ なか さかい さかい がわ
川のまん中をもって境とし、またアンモンびとの境であるヤボク川にま
たっ さかい
で達せしめた。 一七またヨルダンを境として、キンネレテからアラバの
うみ しお うみ あた ひがし ほう
海すなわち塩の海まで、アラバをこれに与えて、東の方ピスガのふもと
申命記

たっ
に達せしめた。

15
とき めい い かみ しゅ
一八 その時わたしはあなたがたに命じて言った、
﹃あなたがたの神、主は
ち あた え
この地をあなたがたに与えて、これを獲させられるから、あなたがた
ゆうし ぶそう きょうだい ひとびと さきだ わた
勇士はみな武装して、兄 弟であるイスラエルの人々に先立って、渡って
い つま こども かちく
行かなければならない。 一九ただし、あなたがたの妻と、子供と、家畜と
あた まちまち
は、わたしが与えた町々にとどまらなければならない。︵わたしはあな
おお かちく も し しゅ
たがたが多くの家畜を持っているのを知っている。︶ 二〇主がすでにあな
あた きょうだい あんそく あた
たがたに与えられたように、あなたがたの兄 弟にも安息を与えられて、
かれ む がわ かみ しゅ あた ち
彼らもまたヨルダンの向こう側で、あなたがたの神、主が与えられる地

を獲るようになったならば、あなたがたはおのおのわたしがあなたがた
あた りょうち かえ とき めい
に 与 え た 領地 に 帰 る こ と が で き る﹄。 二一そ の 時 わ た し は ヨ シ ュ ア に 命
い め かみ しゅ おう おこな
じて言った、﹃あなたの目はあなたがたの神、主がこのふたりの王に行わ
み しゅ わた い くに
れたすべてのことを見た。主はまたあなたが渡って行くもろもろの国
おな おこな かれ おそ
にも、同じように行われるであろう。 二二彼らを恐れてはならない。あ
申命記

かみ しゅ たたか
なたがたの神、主があなたがたのために戦われるからである﹄。

16
とき しゅ ねが い しゅ かみ おお
その時わたしは主に願って言った、 二四﹃主なる神よ、あなたの大い
二三
こと つよ て いま しめ はじ
なる事と、あなたの強い手とを、たった今、しもべに示し始められまし
てん ち ちから
た。天にも地にも、あなたのようなわざをなし、あなたのような力ある
かみ
わざのできる神が、ほかにありましょうか。 二五どうぞ、わたしにヨルダ
わた い む がわ よ ち よ さんち
ンを渡って行かせ、その向こう側の良い地、あの良い山地、およびレバ
み しゅ
ノンを見ることのできるようにしてください﹄。 二六しかし主はあなた
いか き しゅ
がたのゆえにわたしを怒り、わたしに聞かれなかった。そして主はわた
い た こと かさ
しに言われた、﹃おまえはもはや足りている。この事については、重ねて
い いただき のぼ め
わたしに言ってはならない。 二七おまえはピスガの頂に登り、目をあげ
にし きた みなみ ひがし のぞ み わた
て西、北、南、東を望み見よ。おまえはこのヨルダンを渡ることができ
めい かれ はげ かれ
ないからである。 二八しかし、おまえはヨシュアに命じ、彼を励まし、彼
つよ かれ たみ さきだ わた い かれ み ち
を強くせよ。彼はこの民に先立って渡って行き、彼らにおまえの見る地
つ たい たに
を継がせるであろう﹄。 二九こうしてわれわれはベテペオルに対する谷
申命記

にとどまっていた。

17
第四章
おし さだ
一イスラエルよ、いま、わたしがあなたがたに教える定めと、おきてと
き おこな い
を聞いて、これを行いなさい。そうすれば、あなたがたは生きることが
せんぞ かみ しゅ たま ち じぶん
でき、あなたがたの先祖の神、主が賜わる地にはいって、それを自分の
めい ことば つ
も の と す る こ と が で き よ う。 二わ た し が あ な た が た に 命 じ る 言葉 に 付
くわ へ めい
け加えてはならない。また減らしてはならない。わたしが命じるあな
かみ しゅ めいれい まも
たがたの神、主の命令を守ることのできるためである。 三あなたがたの
め しゅ おこな み
目は、主がバアル・ペオルで行われたことを見た。ペオルのバアルに
したが ひとびと かみ しゅ ほろ
従 った人々は、あなたの神、主がことごとく、あなたのうちから滅ぼし
かみ しゅ したが
つくされたのである。 四しかし、あなたがたの神、主につき従 ったあな
みな い かみ しゅ
たがたは皆、きょう、生きながらえている。 五わたしはわたしの神、主
めい さだ おし
が命じられたとおりに、定めと、おきてとを、あなたがたに教える。あ
申命記

じぶん ち おこな
なたがたがはいって、自分のものとする地において、そのように行うた

18
まも おこな
めである。 六あなたがたは、これを守って行わなければならない。これ
たみ ち え ちしき しめ こと かれ
は、もろもろの民にあなたがたの知恵、また知識を示す事である。彼ら
さだ き おお こくみん ち え
は、このもろもろの定めを聞いて、
﹃この大いなる国民は、まことに知恵
ちしき たみ い
あり、知識ある民である﹄と言うであろう。
かみ しゅ よ もと とき ちか
われわれの神、主は、われわれが呼び求める時、つねにわれわれに近

おお こくみん ちか かみ
くおられる。いずれの大いなる国民に、このように近くおる神があるで
おお こくみん
あろうか。 八また、いずれの大いなる国民に、きょう、わたしがあなた
まえ た りっぽう ただ さだ
がたの前に立てるこのすべての律法のような正しい定めと、おきてとが
あるであろうか。
つつし じしん まも
ただあなたはみずから慎み、またあなた自身をよく守りなさい。そし

め み わす い あいだ こと
て目に見たことを忘れず、生きながらえている間、それらの事をあなた
こころ はな しそん し
の心から離してはならない。またそれらのことを、あなたの子孫に知ら
かみ しゅ まえ
せなければならない。 一〇あなたがホレブにおいて、あなたの神、主の前
申命記

た ひ しゅ い たみ あつ
に立った日に、主はわたしに言われた、﹃民をわたしのもとに集めよ。わ

19
かれ ことば き ちじょう い あいだ かれ
たしは彼らにわたしの言葉を聞かせ、地上に生きながらえる間、彼らに
おそ まな こ とも おし
わたしを恐れることを学ばせ、またその子供を教えることのできるよう
ちか やま た
に さ せ よ う﹄。 一一そ こ で あ な た が た は 近 づ い て、山 の ふ も と に 立 っ た
やま ひ や ほのお ちゅうてん たっ あんこく くも こ くも
が、山は火で焼けて、その炎は中 天に達し、暗黒と雲と濃い雲とがあっ
とき しゅ ひ なか かた
た。 一二時に主は火の中から、あなたがたに語られたが、あなたがたは
ことば こえ き こえ かたち み しゅ
言葉の声を聞いたけれども、声ばかりで、なんの形も見なかった。 一三主
けいやく の おこな めい
はその契約を述べて、それを行うように、あなたがたに命じられた。そ
じっかい しゅ に まい いし いた か
れはすなわち十誡であって、主はそれを二枚の石の板に書きしるされ
とき しゅ めい さだ
た。 一四その時、主はわたしに命じて、あなたがたに定めと、おきてとを
おし わた い じぶん ち
教 え さ せ ら れ た。あ な た が た が 渡 っ て 行 っ て 自分 の も の と す る 地 で、
おこな
行わせるためであった。
ふか つつし
一五それゆえ、あなたがたはみずから深く慎まなければならない。ホレ
しゅ ひ なか かた ひ かたち
ブで主が火の中からあなたがたに語られた日に、あなたがたはなんの形
申命記

み みち あやま じぶん
も見なかった。 一六それであなたがたは道を誤 って、自分のために、どん

20
かたち きざ ぞう つく おとこ おんな ぞう つく
な形の刻んだ像をも造ってはならない。 男または女の像を造ってはな
ち うえ けもの ぞう そら と
らない。 一七すなわち地の上におるもろもろの獣の像、空を飛ぶもろも
とり ぞう ち は もの ぞう ち した みず なか
ろの鳥の像、一八地に這うもろもろの物の像、地の下の水の中におるもろ
うお ぞう つく め あ てん のぞ
もろの魚の像を造ってはならない。 一九あなたはまた目を上げて天を望
ひ つき ほし てん ばんしょう み ゆうわく おが
み、日、月、星すなわちすべて天の万 象を見、誘惑されてそれを拝み、
つか かみ しゅ ぜん て ん か
それに仕えてはならない。それらのものは、あなたの神、主が全天下の
ばんみん わ しゅ と てつ
万民に分けられたものである。 二〇しかし、主はあなたがたを取って、鉄
ろ みちび だ じぶん しょゆう たみ
の炉すなわちエジプトから導き出し、自分の所有の民とされた。きょ
み しゅ
う、見るとおりである。 二一ところで主はあなたがたのゆえに、わたしを
いか わた い
怒り、わたしがヨルダンを渡って行くことができないことと、あなたの
かみ しゅ し ぎょう たま よ ち
神、主が嗣 業としてあなたに賜わる良い地にはいることができないこ
ちか ち し わた い
ととを誓われた。 二二わたしはこの地で死ぬ。ヨルダンを渡って行くこ
わた い よ ち え
とはできない。しかしあなたがたは渡って行って、あの良い地を獲るで
申命記

つつし かみ しゅ むす
あろう。 二三あなたがたは慎み、あなたがたの神、主があなたがたと結ば

21
けいやく わす かみ しゅ きん かたち きざ ぞう
れた契約を忘れて、あなたの神、主が禁じられたどんな形の刻んだ像を
つく かみ しゅ や ひ かみ
も造ってはならない。 二四あなたの神、主は焼きつくす火、ねたむ神であ
る。
こ う まご え なが ち みち あやま
二五 あなたがたが子を生み、孫を得、長くその地におるうちに、道を誤 っ
なに かたち きざ ぞう つく かみ しゅ め まえ あく
て、すべて何かの形に刻んだ像を造り、あなたの神、主の目の前に悪を
いきどお ひ おこ てん
なして、その憤りを引き起すことがあれば、 二六わたしは、きょう、天と
ち よ たい
地を呼んであなたがたに対してあかしとする。あなたがたはヨルダン
わた い え ち ぜんめつ
を渡って行って獲る地から、たちまち全滅するであろう。あなたがたは
ところ なが いのち たも まった ほろ しゅ
その所で長く命を保つことができず、 全く滅ぼされるであろう。 二七主
くにぐに ち しゅ
はあなたがたを国々に散らされるであろう。そして主があなたがたを
お こくみん のこ もの かず すく
追いやられる国民のうちに、あなたがたの残る者の数は少ないであろ
ところ ひと て つく み き
う。 二八その所であなたがたは人が手で作った、見ることも、聞くこと
た き いし かみがみ つか
も、食べることも、かぐこともない木や石の神々に仕えるであろう。 二九
申命記

ところ かみ しゅ もと こころ せいしん


しかし、その所からあなたの神、主を求め、もし心をつくし、精神をつ

22
しゅ もと しゅ あ のち ひ
くして、主を求めるならば、あなたは主に会うであろう。 三〇後の日に
こと のぞ
なって、あなたがなやみにあい、これらのすべての事が、あなたに臨む
かみ しゅ た かえ こえ き
とき、もしあなたの神、主に立ち帰ってその声に聞きしたがうならば、三
かみ しゅ ふか かみ す
あなたの神、主はいつくしみの深い神であるから、あなたを捨てず、あ

ほろ せんぞ ちか けいやく わす
なたを滅ぼさず、またあなたの先祖に誓った契約を忘れられないであろ
う。
こころ まえ す さ ひ と かみ ちじょう ひと
三二 試 み に あ な た の 前 に 過 ぎ 去 っ た 日 に つ い て 問 え。神 が 地上 に 人 を
つく ひ てん はし はし
造られた日からこのかた、天のこの端から、かの端までに、かつてこの
おお こと き
ように大いなる事があったであろうか。このようなことを聞いたこと
ひ なか かた かみ こえ き
があったであろうか。 三三火の中から語られる神の声をあなたが聞いた
き い たみ
ように、聞いてなお生きていた民がかつてあったであろうか。 三四ある
かみ しゅ め
いはまた、あなたがたの神、主がエジプトにおいて、あなたがたの目の
まえ こと こころ
前に、あなたがたのためにもろもろの事をなされたように、 試みと、し
申命記

ふ し ぎ たたか つよ て の うで おお おそ
るしと、不思議と、 戦いと、強い手と、伸ばした腕と、大いなる恐るべ

23
こと のぞ こくみん た こくみん ひ だ
き 事 と を も っ て 臨 み、一 つ の 国民 を 他 の 国民 の う ち か ら 引 き 出 し て、
じぶん たみ かみ こと
自分の民とされた神が、かつてあったであろうか。 三五あなたにこの事
しめ しゅ かみ かみ し
を示したのは、主こそ神であって、ほかに神のないことを知らせるため
くんれん しゅ てん こえ き
で あ っ た。 三六あ な た を 訓練 す る た め に、主 は 天 か ら そ の 声 を 聞 か せ、
ちじょう おお ひ しめ ことば ひ なか
地上では、またその大いなる火を示された。あなたはその言葉が火の中
で き しゅ せんぞ あい
から出るのを聞いた。 三七主はあなたの先祖たちを愛されたので、その
のち しそん えら おお ちから
後の子孫を選び、大いなる力をもって、みずからあなたをエジプトから
みちび だ おお つよ こくみん
導き出し、 三八あなたよりも大きく、かつ強いもろもろの国民を、あなた
まえ お はら ち みちび い し ぎょう
の前から追い払い、あなたをその地に導き入れて、これを嗣 業としてあ
あた こんにち み
なたに与えようとされること、今日見るとおりである。 三九それゆえ、あ
し こころ うえ てん した ち
なたは、きょう知って、 心にとめなければならない。上は天、下は地に
しゅ かみ かみ
おいて、主こそ神にいまし、ほかに神のないことを。 四〇あなたは、きょ
めい しゅ さだ めいれい まも
う、わたしが命じる主の定めと命令とを守らなければならない。そうす
申命記

のち しそん え かみ しゅ
れば、あなたとあなたの後の子孫はさいわいを得、あなたの神、主が

24
えいきゅう たま ち なが いのち たも
永 久にあなたに賜わる地において、長く命を保つことができるであろ
う﹂。
む がわ ひがし ほう まちまち してい
四一それからモーセはヨルダンの向こう側、 東の方に三つの町々を指定
か こ うら りんじん ころ もの
した。 四二過去の恨みによるのではなく、あやまって隣人を殺した者を
まち いのち まっと
そこにのがれさせ、その町の一つにのがれて、 命を全うさせるためで
あらの なか こうち
あった。 四三すなわちルベンびとのためには荒野の中の高地にあるベゼ
ルを、ガドびとのためにはギレアデのラモテを、マナセびとのためには
さだ
バシャンのゴランを定めた。
ひとびと まえ しめ りっぽう
四四モ ー セ が イ ス ラ エ ル の 人々 の 前 に 示 し た 律法 は こ れ で あ る。 四五イ
ひとびと で かれ の
スラエルの人々がエジプトから出たとき、モーセが彼らに述べたあかし
さだ む がわ
と、定めと、おきてとはこれである。 四六すなわちヨルダンの向こう側、
おう くに たい たに の
アモリびとの王シホンの国のベテペオルに対する谷においてこれを述
す ひとびと
べた。シホンはヘシボンに住んでいたが、モーセとイスラエルの人々
申命記

で とき う やぶ くに え
が、エジプトを出てきた時、これを撃ち敗って、 四七その国を獲、またバ

25
おう くに え おう
シャンの王オグの国を獲た。このふたりはアモリびとの王であって、ヨ
む がわ ひがし ほう かれ え ち がわ
ルダンの向こう側、 東の方におった。 四八彼らの獲た地はアルノン川の
ざん およ
ほとりにあるアロエルからシリオン山すなわちヘルモンに及び、 四九ヨ
ひがしがわ ぜんぶ うみ たっ
ルダンの東 側のアラバの全部をかねて、アラバの海に達し、ピスガのふ
およ
もとに及んだ。
第五章
ひと め よ い
一さてモーセはイスラエルのすべての人を召し寄せて言った、﹁イスラ
みみ かた さだ き
エルよ、きょう、わたしがあなたがたの耳に語る定めと、おきてを聞き、
まな まも おこな かみ しゅ
これを学び、これを守って行え。 二われわれの神、主はホレブで、われ
けいやく むす しゅ けいやく せんぞ むす
わ れ と 契約 を 結 ば れ た。 三主 は こ の 契約 を わ れ わ れ の 先祖 た ち と は 結
い もの むす
ばず、きょう、ここに生きながらえているわれわれすべての者と結ばれ
申命記

しゅ やま ひ なか かお あ かた
た。 四主は山で火の中から、あなたがたと顔を合わせて語られた。 五そ

26
とき しゅ あいだ た しゅ ことば
の時、わたしは主とあなたがたとの間に立って主の言葉をあなたがたに
つた ひ おそ やま のぼ
伝えた。あなたがたは火のゆえに恐れて山に登ることができなかった
しゅ い
からである。主は言われた、
かみ しゅ ち どれい
六﹃わたしはあなたの神、主であって、あなたをエジプトの地、奴隷の
いえ みちび だ もの
家から導き出した者である。
なに かみ
七あなたはわたしのほかに何ものをも神としてはならない。
じぶん きざ ぞう つく うえ てん
八あなたは自分のために刻んだ像を造ってはならない。上は天にある
した ち ち した みず なか
もの、下は地にあるもの、また地の下の水の中にあるものの、どのよう
かたち つく おが
な 形 を も 造 っ て は な ら な い。 九そ れ を 拝 ん で は な ら な い。ま た そ れ に
つか かみ しゅ かみ
仕えてはならない。あなたの神、主であるわたしは、ねたむ神であるか
にく ちち つみ こ むく だい およ
ら、わたしを憎むものには、父の罪を子に報いて三、四代に及ぼし、 一〇
あい いまし まも もの めぐ ほどこ せんだい いた
わたしを愛し、わたしの戒めを守る者には恵みを施して千代に至るであ
ろう。
申命記

かみ しゅ な とな しゅ な
一一 あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。主はその名をみ

27
とな もの ばっ
だりに唱える者を罰しないではおかないであろう。
あんそくにち まも せい かみ しゅ めい
安息日を守ってこれを聖とし、あなたの神、主があなたに命じられた
一二
か はたら
ようにせよ。 一三六日のあいだ働いて、あなたのすべてのわざをしなけ
なぬか め かみ しゅ あんそく
ればならない。 一四七日目はあなたの神、主の安息であるから、なんのわ
むすめ
ざをもしてはならない。あなたも、あなたのむすこ、 娘、しもべ、はし
うし かちく もん たこく ひと
ため、牛、ろば、もろもろの家畜も、あなたの門のうちにおる他国の人
おな おな
も同じである。こうしてあなたのしもべ、はしためを、あなたと同じよ
やす ち どれい
うに休ませなければならない。 一五あなたはかつてエジプトの地で奴隷
かみ しゅ つよ て の うで
であったが、あなたの神、主が強い手と、伸ばした腕とをもって、そこ
みちび だ おぼ
からあなたを導き出されたことを覚えなければならない。それゆえ、あ
かみ しゅ あんそくにち まも めい
なたの神、主は安息日を守ることを命じられるのである。
かみ しゅ めい ちち はは うやま
あなたの神、主が命じられたように、あなたの父と母とを敬え。あな
一六
かみ しゅ たま ち なが いのち たも え
たの神、主が賜わる地で、あなたが長く命を保ち、さいわいを得ること
申命記

のできるためである。

28
ころ
あなたは殺してはならない。
一七
かんいん
あなたは姦淫してはならない。
一八
ぬす
あなたは盗んではならない。
一九
りんじん ぎしょう
あなたは隣人について偽証してはならない。
二〇
りんじん つま りんじん いえ はたけ
あなたは隣人の妻をむさぼってはならない。また隣人の家、 畑、し
二一
うし りんじん
もべ、はしため、牛、ろば、またすべて隣人のものをほしがってはなら
ない﹄。
しゅ ことば やま ひ なか くも なか こ くも なか おお
主はこれらの言葉を山で火の中、雲の中、濃い雲の中から、大いなる
二二
こえ ぜんかいしゅう つ
声をもって、あなたがたの全 会 衆にお告げになったが、このほかのこと
い まい いし いた か さづ
は言われず、二枚の石の板にこれを書きしるして、わたしに授けられた。
とき やま ひ も あんこく きこ こえ
時に山は火で燃えていたが、あなたがたが暗黒のうちから聞える声
二三
き およ ぶぞく ちょうろう
を聞くに及んで、あなたがたの部族のすべてのかしらと長 老たちは、わ
ちかよ い かみ しゅ えいこう おお
たしに近寄って、 二四言った、
﹃われわれの神、主がその栄光と、その大
申命記

しめ ひ なか で
いなることとを、われわれに示されて、われわれは火の中から出るその

29
こえ き かみ ひと かた
声を聞きました。きょう、われわれは神が人と語られ、しかもなおその
ひと い み し
人が生きているのを見ました。 二五われわれはなぜ死ななければならな
おお ひ や ほろ
いでしょうか。この大いなる火はわれわれを焼き滅ぼそうとしていま
うえ かみ しゅ こえ き し
す。もしこの上なおわれわれの神、主の声を聞くならば、われわれは死
にく もの ひ なか かた
んでしまうでしょう。 二六およそ肉なる者のうち、だれが、火の中から語
い かみ こえ き い もの
られる生ける神の声を、われわれのように聞いてなお生きている者があ
ちか すす い かみ しゅ
りましょうか。 二七あなたはどうぞ近く進んで行って、われわれの神、主
い き かみ しゅ つ
が言われることをみな聞き、われわれの神、主があなたにお告げになる
つ き おこな
こ と を す べ て わ れ わ れ に 告 げ て く だ さ い。わ れ わ れ は 聞 い て 行 い ま
す﹄。
かた とき しゅ ことば き
二八あなたがたがわたしに語っている時、主はあなたがたの言葉を聞い
い たみ かた ことば き
て、わたしに言われた、﹃わたしはこの民がおまえに語っている言葉を聞
かれ い よ ねが かれ
いた。彼らの言ったことはみな良い。 二九ただ願わしいことは、彼らが
申命記

こころ おそ めいれい
つねにこのような心をもってわたしを恐れ、わたしのすべての命令を

30
まも かれ しそん えいきゅう え
守って、彼らもその子孫も永 久にさいわいを得るにいたることである。
い かれ てんまく かえ
三〇 おまえは行って彼らに、
﹁あなたがたはおのおのその天幕に帰れ﹂と
い ところ た
言え。 三一しかし、おまえはこの所でわたしのそばに立て。わたしはす
めいれい さだ つ しめ
べての命令と、定めと、おきてとをおまえに告げ示すであろう。おまえ
かれ おし かれ あた え ち
はこれを彼らに教え、わたしが彼らに与えて獲させる地において、これ
おこな かみ しゅ めい
を行わせなければならない﹄。 三二それゆえ、あなたがたの神、主が命じ
つつし おこな ひだり みぎ
られたとおりに、 慎んで行わなければならない。そして左にも右にも
まが かみ しゅ めい みち あゆ
曲ってはならない。 三三あなたがたの神、主が命じられた道に歩まなけ

ればならない。そうすればあなたがたは生きることができ、かつさいわ
え え ち なが いのち たも
いを得て、あなたがたの獲る地において、長く命を保つことができるで
あろう。
申命記

31
第六章
かみ しゅ おし めい めいれい
一これはあなたがたの神、主があなたがたに教えよと命じられた命令
さだ わた い え ち
と、定めと、おきてであって、あなたがたは渡って行って獲る地で、こ
おこな こ まご とも
れを行わなければならない。 二これはあなたが子や孫と共に、あなたの
い ひ あいだ かみ しゅ おそ めい
生きながらえる日の間、つねにあなたの神、主を恐れて、わたしが命じ
さだ めいれい まも なが いのち たも
るもろもろの定めと、命令とを守らせるため、またあなたが長く命を保

つことのできるためである。 三それゆえ、イスラエルよ、聞いて、それ
まも おこな え せんぞ かみ しゅ
を守り行え。そうすれば、あなたはさいわいを得、あなたの先祖の神、主
い ちち みつ なが くに かず おお
があなたに言われたように、乳と蜜の流れる国で、あなたの数は大いに

増すであろう。
き かみ しゅ ゆいいつ しゅ
四イスラエルよ聞け。われわれの神、主は唯一の主である。 五あなたは
こころ せいしん ちから かみ しゅ あい
心をつくし、精神をつくし、 力をつくして、あなたの神、主を愛さなけ
申命記

めい ことば
ればならない。 六きょう、わたしがあなたに命じるこれらの言葉をあな

32
こころ と つと こ おし いえ ざ
たの心に留め、 七努めてこれをあなたの子らに教え、あなたが家に座し
とき みち ある とき ね とき お とき かた
ている時も、道を歩く時も、寝る時も、起きる時も、これについて語ら

な け れ ば な ら な い。 八ま た あ な た は こ れ を あ な た の 手 に つ け て し る し
め あいだ お おぼ いえ いりぐち はしら
とし、あなたの目の間に置いて覚えとし、 九またあなたの家の入口の柱
もん か
と、あなたの門とに書きしるさなければならない。
かみ しゅ せんぞ む
一〇あなたの神、主は、あなたの先祖アブラハム、イサク、ヤコブに向かっ
あた ちか ち とき
て、あなたに与えると誓われた地に、あなたをはいらせられる時、あな
た おお うつく まちまち え み
たが建てたものでない大きな美しい町々を得させ、 一一あなたが満たし
よ もの み いえ え ほ
たものでないもろもろの良い物を満たした家を得させ、あなたが掘った
ほ い ど え う はたけ
ものでない掘り井戸を得させ、あなたが植えたものでないぶどう畑とオ
はたけ え た あ
リブの畑とを得させられるであろう。あなたは食べて飽きるであろう。
とき つつし ち どれい いえ みちび だ
一二その時、あなたはみずから慎み、エジプトの地、奴隷の家から導き出
しゅ わす かみ しゅ おそ つか
された主を忘れてはならない。 一三あなたの神、主を恐れてこれに仕え、
申命記

な ちか た かみがみ
その名をさして誓わなければならない。 一四あなたがたは他の神々すな

33
しゅうい たみ かみがみ したが
わち周囲の民の神々に従 ってはならない。 一五あなたのうちにおられる
かみ しゅ かみ む いか
あなたの神、主はねたむ神であるから、おそらく、あなたに向かって怒
はっ ち ほろ さ
りを発し、地のおもてからあなたを滅ぼし去られるであろう。
かみ しゅ こころ
あなたがたがマッサでしたように、あなたがたの神、主を試みてはな
一六
かみ しゅ めい めいれい
らない。 一七あなたがたの神、主があなたがたに命じられた命令と、あか
さだ つと まも しゅ み ただ
しと、定めとを、努めて守らなければならない。 一八あなたは主が見て正
よ おこな
しいとし、良いとされることを行わなければならない。そうすれば、あ
え しゅ せんぞ ちか よ ち
なたはさいわいを得、かつ主があなたの先祖に誓われた、あの良い地に
じぶん しゅ おお
はいって、自分のものとすることができるであろう。 一九また主が仰せ
てき みな まえ お はら
られたように、あなたの敵を皆あなたの前から追い払われるであろう。
のち ひ こ と い
後の日となって、あなたの子があなたに問うて言うであろう、
二〇 ﹃われ
かみ しゅ めい さだ
われの神、主があなたがたに命じられたこのあかしと、定めと、おきて
とき こ い
とは、なんのためですか﹄。 二一その時あなたはその子に言わなければな
申命記

どれい しゅ つよ て
らない。﹃われわれはエジプトでパロの奴隷であったが、主は強い手を

34
みちび だ しゅ め
もって、われわれをエジプトから導き出された。 二二主はわれわれの目
まえ おお おそ ふ し ぎ
の前で、大きな恐ろしいしるしと不思議とをエジプトと、パロとその
ぜんか しめ みちび だ
全家とに示され、 二三われわれをそこから導き出し、かつてわれわれの
せんぞ ちか ち たま
先祖に誓われた地にはいらせ、それをわれわれに賜わった。 二四そして
しゅ さだ おこな めい
主はこのすべての定めを行えと、われわれに命じられた。これはわれわ
かみ しゅ おそ こんにち
れの神、主を恐れて、われわれが、つねにさいわいであり、また今日の
しゅ まも いのち たも
ように、主がわれわれを守って命を保たせるためである。 二五もしわれ
めい めいれい かみ しゅ
われが、命じられたとおりに、このすべての命令をわれわれの神、主の
まえ まも おこな ぎ
前に守って行うならば、それはわれわれの義となるであろう﹄。
第七章
かみ しゅ い と ち みちび い おお
あなたの神、主が、あなたの行って取る地にあなたを導き入れ、多く

申命記

くにぐに たみ
の国々の民、ヘテびと、ギルガシびと、アモリびと、カナンびと、ペリ

35
かずおお
ジびと、ヒビびと、およびエブスびと、すなわちあなたよりも数多く、ま
ちから たみ まえ お とき
た力のある七つの民を、あなたの前から追いはらわれる時、 二すなわち
かみ しゅ かれ わた う とき
あなたの神、主が彼らをあなたに渡して、これを撃たせられる時は、あ
かれ まった ほろ かれ けいやく
なたは彼らを全く滅ぼさなければならない。彼らとなんの契約をもし
かれ なに しめ かれ
て は な ら な い。彼 ら に 何 の あ わ れ み を も 示 し て は な ら な い。 三ま た 彼
こんいん むすめ かれ あた
らと婚姻をしてはならない。あなたの娘を彼のむすこに与えてはなら
むすめ かれ
な い。か れ の 娘 を あ な た の む す こ に め と っ て は な ら な い。 四そ れ は 彼
まど したが かみがみ つか
らがあなたのむすこを惑わしてわたしに従わせず、ほかの神々に仕えさ
しゅ いか はっ
せ、そのため主はあなたがたにむかって怒りを発し、すみやかにあなた
ほろ
がたを滅ぼされることとなるからである。 五むしろ、あなたがたはこの
かれ おこな かれ さいだん
ように彼らに行わなければならない。すなわち彼らの祭壇をこぼち、そ
いし はしら う くだ ぞう き たお きざ ぞう ひ や
の石の柱を撃ち砕き、そのアシラ像を切り倒し、その刻んだ像を火で焼
かなければならない。
申命記

かみ しゅ せい たみ かみ しゅ ち
六あなたはあなたの神、主の聖なる民である。あなたの神、主は地のお

36
たみ えら じぶん たから たみ
もてのすべての民のうちからあなたを選んで、自分の宝の民とされた。
しゅ あい えら
七主があなたがたを愛し、あなたがたを選ばれたのは、あなたがたがど
こくみん かず おお たみ
の国民よりも数が多かったからではない。あなたがたはよろずの民の
かず すく しゅ あい
う ち、も っ と も 数 の 少 な い も の で あ っ た。 八た だ 主 が あ な た が た を 愛
せんぞ ちか ちか まも しゅ つよ て
し、またあなたがたの先祖に誓われた誓いを守ろうとして、主は強い手
みちび だ どれい いえ おう て
をもってあなたがたを導き出し、奴隷の家から、エジプトの王パロの手
だ し
から、あがない出されたのである。 九それゆえあなたは知らなければな
かみ しゅ かみ しんじつ かみ かれ
らない。あなたの神、主は神にましまし、真実の神にましまして、彼を
あい めいれい まも もの けいやく まも めぐ ほどこ せんだい およ
愛し、その命令を守る者には、契約を守り、恵みを施して千代に及び、 一
かれ にく もの むく ほろ しゅ じぶん
〇また彼を憎む者には、めいめいに報いて滅ぼされることを。主は自分
にく もの ゆうよ むく
を憎む者には猶予することなく、めいめいに報いられる。 一一それゆえ、
めい めいれい さだ まも
きょうわたしがあなたに命じる命令と、定めと、おきてとを守って、こ
おこな
れを行わなければならない。
申命記

き まも おこな かみ
一二 あなたがたがこれらのおきてを聞いて守り行うならば、あなたの神、

37
しゅ せんぞ ちか けいやく まも ほどこ
主はあなたの先祖たちに誓われた契約を守り、いつくしみを施されるで
あい しゅくふく かず ま
あろう。 一三あなたを愛し、あなたを祝 福し、あなたの数を増し、あなた
あた せんぞ ちか ち し じょ しゅくふく
に与えると先祖たちに誓われた地で、あなたの子女を祝 福し、あなたの
ち さんぶつ こくもつ さけ あぶら うし こ ひつじ こ ま
地の産物、穀物、酒、 油、また牛の子、 羊の子を増されるであろう。 一
ばんみん しゅくふく おとこ
四あなたは万民にまさって祝 福されるであろう。あなたのうち、 男も
おんな こ かちく こ
女も子のないものはなく、またあなたの家畜にも子のないものはないで
しゅ やまい と さ し
あろう。 一五主はまたすべての病をあなたから取り去り、あなたの知っ
あくえき にく
ている、あのエジプトの悪疫にかからせず、ただあなたを憎むすべての
もの のぞ かみ しゅ わた
者にそれを臨ませられるであろう。 一六あなたの神、主があなたに渡さ
こくみん ほろ かれ み かれ
れる国民を滅ぼしつくし、彼らを見てあわれんではならない。また彼ら
かみがみ つか
の神々に仕えてはならない。それがあなたのわなとなるからである。
こころ こくみん おお
一七 あなたは心のうちで﹃これらの国民はわたしよりも多いから、どうし
お はら い かれ おそ
てこれを追い払うことができようか﹄と言うのか。 一八彼らを恐れては
申命記

かみ しゅ
ならない。あなたの神、主がパロと、すべてのエジプトびととにされた

38
おぼ め み おお こころ
ことを、よく覚えなさい。 一九すなわち、あなたが目で見た大いなる試み
ふ し ぎ つよ て の うで おぼ
と、しるしと、不思議と、強い手と、伸ばした腕とを覚えなさい。あな
かみ しゅ みちび だ
たの神、主はこれらをもって、あなたを導き出されたのである。またそ
かみ しゅ おそ たみ
のように、あなたの神、主はあなたが恐れているすべての民にされるで
かみ しゅ かれ おく
あろう。 二〇あなたの神、主はまた、くまばちを彼らのうちに送って、な
のこ もの に かく もの ほろ
お残っている者と逃げ隠れている者を滅ぼしつくされるであろう。 二一
かれ おそ かみ しゅ おお おそ
あなたは彼らを恐れてはならない。あなたの神、主である大いなる恐る
かみ かみ しゅ
べき神があなたのうちにおられるからである。 二二あなたの神、主はこ
こくみん じょじょ まえ お はら
れらの国民を徐々にあなたの前から追い払われるであろう。あなたは
かれ ほろ の けもの
すみやかに彼らを滅ぼしつくしてはならない。そうでなければ、野の獣
ま がい かみ しゅ かれ
が増してあなたを害するであろう。 二三しかし、あなたの神、主は彼らを
わた おお こんらん ほろ
あなたに渡し、大いなる混乱におとしいれて、ついに滅ぼされるであろ
かれ おう て わた
う。 二四また彼らの王たちをあなたの手に渡されるであろう。あなたは
申命記

かれ な てん した け さ た
彼らの名を天の下から消し去るであろう。あなたに立ちむかうものは

39
かれ ほろ かれ
なく、あなたはついに彼らを滅ぼすにいたるであろう。 二五あなたは彼
かみがみ ちょうぞう ひ や き ぎん
らの神々の彫 像を火に焼かなければならない。それに着せた銀または
きん と じぶん
金をむさぼってはならない。これを取って自分のものにしてはならな
い。そうでなければ、あなたはこれによって、わなにかかるであろう。
かみ い い
これはあなたの神が忌みきらわれるものだからである。 二六あなたは忌
いえ も おな じしん
むべきものを家に持ちこんで、それと同じようにあなた自身も、のろわ
まった い
れたものとなってはならない。あなたはそれを全く忌みきらわなけれ
ばならない。それはのろわれたものだからである。
第八章
めい めいれい まも
一わたしが、きょう、命じるこのすべての命令を、あなたがたは守って
おこな い
行わなければならない。そうすればあなたがたは生きることができ、か
申命記

ま しゅ せんぞ ちか ち
つふえ増し、主があなたがたの先祖に誓われた地にはいって、それを

40
じぶん かみ しゅ
自分のものとすることができるであろう。 二あなたの神、主がこの四十
ねん あいだ あ ら の みちび みち おぼ
年の間、荒野であなたを導かれたそのすべての道を覚えなければならな
くる こころ こころ し
い。それはあなたを苦しめて、あなたを試み、あなたの心のうちを知り、
めいれい まも し しゅ
あなたがその命令を守るか、どうかを知るためであった。 三それで主は
くる う し せんぞ
あなたを苦しめ、あなたを飢えさせ、あなたも知らず、あなたの先祖た
し やしな ひと
ちも知らなかったマナをもって、あなたを養われた。人はパンだけでは
い ひと しゅ くち で い
生きず、人は主の口から出るすべてのことばによって生きることをあな
し ねん あいだ きもの き
たに知らせるためであった。 四この四十年の間、あなたの着物はすり切
あし ひと こ くんれん
れず、あなたの足は、はれなかった。 五あなたはまた人がその子を訓練
かみ しゅ くんれん こころ
するように、あなたの神、主もあなたを訓練されることを心にとめなけ
かみ しゅ めいれい まも みち あゆ かれ
ればならない。 六あなたの神、主の命令を守り、その道に歩んで、彼を
おそ かみ しゅ よ ち みちび
恐れなければならない。 七それはあなたの神、主があなたを良い地に導
い たに やま で みず なが いずみ
き入れられるからである。そこは谷にも山にもわき出る水の流れ、 泉、
申命記

ふち ち こむぎ おおむぎ およ
および淵のある地、 八小麦、大麦、ぶどう、いちじく及びざくろのある

41
ち あぶら き みつ ち た しょくもつ か
地、 油のオリブの木、および蜜のある地、 九あなたが食べる食 物に欠け
とぼ ち ち いし てつ
ることなく、なんの乏しいこともない地である。その地の石は鉄であっ
やま どう ほ と た あ
て、その山からは銅を掘り取ることができる。 一〇あなたは食べて飽き、
かみ しゅ よ ち たま かんしゃ
あなたの神、主がその良い地を賜わったことを感謝するであろう。
めい しゅ めいれい さだ
一一 あなたは、きょう、わたしが命じる主の命令と、おきてと、定めとを
まも かみ しゅ わす つつし
守らず、あなたの神、主を忘れることのないように慎まなければならな
た あ うるわ いえ た す うし ひつじ
い。 一二あなたは食べて飽き、 麗しい家を建てて住み、 一三また牛や羊が
きんぎん ま も もの ま くわ こころ
ふえ、金銀が増し、持ち物がみな増し加わるとき、 一四おそらく心にたか
かみ しゅ わす しゅ ち
ぶり、あなたの神、主を忘れるであろう。主はあなたをエジプトの地、
どれい いえ みちび だ みちび おお おそ あらの
奴隷の家から導き出し、 一五あなたを導いて、あの大きな恐ろしい荒野、
ひ みず ち とお
すなわち火のへびや、さそりがいて、水のない、かわいた地を通り、あ
かた いわ みず だ せんぞ し
なたのために堅い岩から水を出し、 一六先祖たちも知らなかったマナを
あらの た くる こころ
荒野であなたに食べさせられた。それはあなたを苦しめ、あなたを試み
申命記

こころ
て、ついにはあなたをさいわいにするためであった。 一七あなたは心の

42
じぶん ちから じぶん て はたら とみ え い
うちに﹃自分の力と自分の手の働きで、わたしはこの富を得た﹄と言っ
かみ しゅ おぼ
て は な ら な い。 一八あ な た は あ な た の 神、主 を 覚 え な け れ ば な ら な い。
しゅ せんぞ ちか けいやく こんにち おこな
主はあなたの先祖たちに誓われた契約を今日のように行うために、あな
とみ え ちから あた かみ しゅ わす
たに富を得る力を与えられるからである。 一九もしあなたの神、主を忘
た かみがみ したが つか おが
れて他の神々に従い、これに仕え、これを拝むならば、︱︱わたしは、
けいこく ほろ
きょう、あなたがたに警告する。︱︱あなたがたはきっと滅びるであろ
しゅ まえ ほろ さ くにぐに たみ
う。 二〇主があなたがたの前から滅ぼし去られる国々の民のように、あ
ほろ かみ しゅ こえ したが
なたがたも滅びるであろう。あなたがたの神、主の声に従わないからで
ある。
第九章
き わた い
一イスラエルよ、聞きなさい。あなたは、きょう、ヨルダンを渡って行っ
申命記

おお つよ くにぐに と まちまち
て、あなたよりも大きく、かつ強い国々を取ろうとしている。その町々

43
おお いし てん たっ たみ し
は大きく、石がきは天に達している。 二その民は、あなたの知っている
しそん おお せ たか
アナクびとの子孫であって、大きく、また背が高い。あなたはまた﹃ア
しそん まえ た ひと い き
ナクの子孫の前に、だれが立つことができようか﹄と人の言うのを聞い
かみ しゅ や ひ
た。 三それゆえ、あなたは、きょう、あなたの神、主は焼きつくす火で
まえ すす し しゅ かれ
あって、あなたの前に進まれることを知らなければならない。主は彼ら
ほろ かれ まえ くっぷく しゅ
を滅ぼし、彼らをあなたの前に屈伏させられるであろう。主があなたに
い かれ お はら ほろ
言われたように、彼らを追い払い、すみやかに滅ぼさなければならない。
かみ しゅ まえ かれ お はら のち
四あなたの神、主があなたの前から彼らを追い払われた後に、あなたは
こころ ただ しゅ ち みちび い
心のなかで﹃わたしが正しいから主はわたしをこの地に導き入れてこれ
え い くにぐに たみ わる しゅ
を獲させられた﹄と言ってはならない。この国々の民が悪いから、主は
まえ お はら い
こ れ を あ な た の 前 か ら 追 い 払 わ れ る の で あ る。 五あ な た が 行 っ て そ の
ち え ただ こころ
地を獲るのは、あなたが正しいからではなく、またあなたの心がまっす
くにぐに たみ わる かみ しゅ かれ
ぐだからでもない。この国々の民が悪いから、あなたの神、主は彼らを
申命記

まえ お はら しゅ せんぞ
あなたの前から追い払われるのである。これは主があなたの先祖アブ

44
ちか ことば おこな
ラハム、イサク、ヤコブに誓われた言葉を行われるためである。
かみ しゅ よ ち あた
六それであなたは、あなたの神、主があなたにこの良い地を与えてこれ
え ただ し
を得させられるのは、あなたが正しいからではないことを知らなければ
ごうじょう たみ あらの かみ しゅ
ならない。あなたは強 情な民である。 七あなたは荒野であなたの神、主
いか おぼ わす
を怒らせたことを覚え、それを忘れてはならない。あなたがたはエジプ
ち で ひ ところ く しゅ
トの地を出た日からこの所に来るまで、いつも主にそむいた。 八またホ
しゅ いか しゅ いか
レブにおいてさえ、あなたがたが主を怒らせたので、主は怒ってあなた
ほろ いし いた しゅ
が た を 滅 ぼ そ う と さ れ た。 九わ た し が 石 の 板 す な わ ち 主 が あ な た が た
むす けいやく いた う やま のぼ とき にち
と結ばれた契約の板を受けるために山に登った時、わたしは四十日四十
や やま た みず の しゅ かみ ゆび
夜、山にいて、パンも食べず水も飲まなかった。 一〇主は神の指をもって
か いし いた まい さづ うえ しゅうかい
書きしるした石の板二枚をわたしに授けられた。その上には、 集 会の
ひ しゅ やま ひ なか つ ことば
日に主が山で火の中から、あなたがたに告げられた言葉が、ことごとく
か にち や おわ とき しゅ
書いてあった。 一一すなわち四十日四十夜が終った時、主はわたしにそ
申命記

けいやく いた いし いた まい さづ しゅ い
の契約の板である石の板二枚を授け、 一二そして主はわたしに言われた、

45
た ところ ふ
﹃おまえは立って、すみやかにこの所から降りなさい。おまえがエジプ
みちび だ たみ あく おこな かれ めい
トから導き出した民は悪を行 ったからである。彼らはわたしが命じた
みち はや はな い ぞう じぶん つく
道を早くも離れて、鋳た像を自分たちのために造った﹄。
しゅ い たみ み ごうじょう たみ
一三 主はまたわたしに言われた、
﹃この民を見るのに、これは強 情な民で
と かれ ほろ かれ な てん
ある。 一四わたしを止めるな。わたしは彼らを滅ぼし、彼らの名を天の
した け さ かれ つよ おお こくみん
下から消し去り、おまえを彼らよりも強く、かつ大いなる国民としよ
み やま お やま ひ や
う﹄。 一五そこでわたしは身をめぐらして山を降りたが、山は火で焼けて
けいやく いた まい りょうて み
いた。契約の板二枚はわたしの両手にあった。 一六そしてわたしが見る
かみ しゅ つみ おか じぶん
と、あなたがたは、あなたがたの神、主にむかって罪を犯し、自分たち
いもの こ うし つく しゅ めい みち はや はな
のために鋳物の子牛を造って、主が命じられた道を早くも離れたので、一
まい いた りょうて な だ
わたしはその二枚の板をつかんで、両手から投げ出し、あなたがたの

め まえ くだ まえ にち や
目の前でこれを砕いた。 一八そしてわたしは前のように四十日四十夜、
しゅ まえ ふ た みず の
主の前にひれ伏し、パンも食べず、水も飲まなかった。これはあなたが
申命記

しゅ め まえ あく つみ おか しゅ いか つみ
たが主の目の前に悪をおこない、罪を犯して主を怒らせたすべての罪に

46
しゅ いか はっ いきどお おこ いか
よるのである。 一九主は怒りを発し、 憤りを起し、あなたがたを怒って
ほろ おそ とき しゅ
滅ぼそうとされたので、わたしは恐れたが、その時もまた主はわたしの
ねが き しゅ いか かれ ほろ
願いを聞かれた。 二〇主はまた、はなはだしくアロンを怒って、彼を滅ぼ
とき いの
そうとされたが、わたしはその時もまたアロンのために祈った。 二一わ
つく つみ え こ うし と ひ や
たしはあなたがたが造って罪を得た子牛を取り、それを火で焼き、それ
う くだ こま やま なが くだ
を撃ち砕き、よくひいて細かいちりとし、そのちりを山から流れ下る
たにがわ な す
谷川に投げ捨てた。
二二 あなたがたはタベラ、マッサおよびキブロテ・ハッタワにおいてもま
しゅ いか しゅ
た主を怒らせた。 二三また主はカデシ・バルネアから、あなたがたをつか
とき のぼ い あた ち せんりょう
わそうとされた時、
﹃上って行って、わたしが与える地を占 領せよ﹄と
い かみ しゅ めいれい
言われた。ところが、あなたがたはあなたがたの神、主の命令にそむき、
かれ しん かれ こえ き したが
彼を信ぜず、また彼の声に聞き従わなかった。 二四わたしがあなたがた
し ひ しゅ
を知ったその日からこのかた、あなたがたはいつも主にそむいた。
申命記

ふ にち や しゅ まえ
二五 そしてわたしは、さきにひれ伏したように、四十日四十夜、主の前に

47
ふ しゅ ほろ い
ひれ伏した。主があなたがたを滅ぼすと言われたからである。 二六わた
しゅ いの い しゅ かみ おお ちから
しは主に祈って言った、﹃主なる神よ、あなたが大いなる力をもってあが
つよ て みちび だ たみ
ない、強い手をもってエジプトから導き出されたあなたの民、あなたの
し ぎょう ほろ
嗣 業を滅ぼさないでください。 二七あなたのしもべアブラハム、イサク、
おぼ たみ ごうじょう あく つみ め
ヤコブを覚えてください。この民の強 情と悪と罪とに目をとめないで
みちび だ くに ひと しゅ
ください。 二八あなたがわれわれを導き出された国の人はおそらく、
﹁主
やくそく ち かれ みちび い かれ にく
は、約束した地に彼らを導き入れることができず、また彼らを憎んだの
かれ みちび だ あらの ころ い かれ
で、彼らを導き出して荒野で殺したのだ﹂と言うでしょう。 二九しかし彼
たみ し ぎょう おお ちから の
らは、あなたの民、あなたの嗣 業であって、あなたが大いなる力と伸ば
うで みちび だ
した腕とをもって導き出されたのです﹄。
第一〇章
申命記

とき しゅ い まえ いし いた まい
その時、主はわたしに言われた、
一 ﹃おまえは、前のような石の板二枚を

48
き つく やま のぼ き はこ
切って作り、山に登って、わたしのもとにきなさい。また木の箱一つを
つく くだ まい いた か ことば
作りなさい。 二さきにおまえが砕いた二枚の板に書いてあった言葉を、
いた か はこ
わたしはその板に書きしるそう。おまえはそれをその箱におさめなけ
ざい はこ つく まえ
ればならない﹄。 三そこでわたしはアカシヤ材の箱一つを作り、また前
いし いた まい き つく まい いた て も やま のぼ
のような石の板二枚を切って作り、その二枚の板を手に持って山に登っ
しゅ しゅうかい ひ やま ひ なか つ
た。 四主はかつて、かの集 会の日に山で火の中からあなたがたに告げら
じっかい か いた か しゅ
れた十誡を書きしるされたように、その板に書きしるし、それを主はわ
さづ み やま お
たしに授けられた。 五それでわたしは身をめぐらして山から降り、その
いた つく はこ いま なか しゅ
板を、わたしが作った箱におさめた。今なおその中にある。主がわたし
めい
に命じられたとおりである。
ひとびと しゅったつ
︵こうしてイスラエルの人々はベエロテ・ベネ・ヤカンを出 立してモ

つ ところ し ほうむ こ
セラに着いた。アロンはその所で死んでそこに葬られ、その子エレアザ
かれ かわ さいし しゅったつ いた
ルが彼に代って祭司となった。 七またそこを出 立してグデゴダに至り、
申命記

しゅったつ つ ち おお みず なが
グデゴダを出 立してヨテバタに着いた。この地には多くの水の流れが

49
とき しゅ ぶぞく えら しゅ けいやく はこ しゅ
あった。 八その時、主はレビの部族を選んで、主の契約の箱をかつぎ、主
まえ た つか しゅ な しゅくふく
の 前 に 立 っ て 仕 え、ま た 主 の 名 を も っ て 祝 福 す る こ と を さ せ ら れ た。
こと こんにち およ きょうだい いっしょ わ
この事は今日に及んでいる。 九そのためレビは兄 弟たちと一緒には分
まえ し ぎょう かみ しゅ かれ い しゅ
け前がなく、嗣 業もない。あなたの神、主が彼に言われたとおり、主み
かれ し ぎょう
ずからが彼の嗣 業であった。︶
まえ とき にち や やま しゅ とき
一〇わたしは前の時のように四十日四十夜、山におったが、主はその時に
ねが き しゅ ほろ のぞ
もわたしの願いを聞かれた。主はあなたを滅ぼすことを望まれなかっ
しゅ た たみ さきだ すす い
た。 一一そして主はわたしに﹃おまえは立ちあがり、民に先立って進み行
かれ あた せんぞ ちか ち かれ
き、わたしが彼らに与えると、その先祖に誓った地に彼らをはいらせ、そ
と い
れを取らせよ﹄と言われた。
いま かみ しゅ もと こと
一二イスラエルよ、今、あなたの神、主があなたに求められる事はなんで
かみ しゅ おそ
あるか。ただこれだけである。すなわちあなたの神、主を恐れ、そのす
みち あゆ かれ あい こころ せいしん かみ
べての道に歩んで、彼を愛し、心をつくし、精神をつくしてあなたの神、
申命記

しゅ つか めい しゅ めいれい さだ
主に仕え、一三また、わたしがきょうあなたに命じる主の命令と定めとを

50
まも え み てん てん てん
守って、さいわいを得ることである。 一四見よ、天と、もろもろの天の天、
ち ち かみ しゅ
および地と、地にあるものとはみな、あなたの神、主のものである。 一五
しゅ せんぞ よろこ あい のち しそん
そうであるのに、主はただあなたの先祖たちを喜び愛し、その後の子孫
ばんみん えら こんにち み
であるあなたがたを万民のうちから選ばれた。今日見るとおりである。
こころ かつれい ごうじょう
一六 それゆえ、あなたがたは心に割礼をおこない、もはや強 情であって
かみ しゅ かみ かみ しゅ しゅ おお
はならない。 一七あなたがたの神である主は、神の神、主の主、大いにし
ちから おそ かみ ひと み
て力ある恐るべき神にましまし、人をかたより見ず、また、まいないを
と こ ただ おこな きりゅう
取らず、一八みなし子とやもめのために正しいさばきを行い、また寄留の
た こ く じん あい しょくもつ きもの あた
他国人を愛して、 食 物と着物を与えられるからである。 一九それゆえ、
きりゅう た こ く じん あい くに
あなたがたは寄留の他国人を愛しなさい。あなたがたもエジプトの国
きりゅう た こ く じん かみ しゅ おそ かれ つか かれ したが
で寄留の他国人であった。 二〇あなたの神、主を恐れ、彼に仕え、彼に従
な ちか かれ
い、その名をさして誓わなければならない。 二一彼はあなたのさんびす
かみ め み おお
べきもの、またあなたの神であって、あなたが目に見たこれらの大いな
申命記

おそ こと おこな せんぞ
る恐るべき事を、あなたのために行われた。 二二あなたの先祖たちは、わ

51
にん くだ かみ しゅ てん
ずか七十人でエジプトに下ったが、いま、あなたの神、主はあなたを天
ほし おお
の星のように多くされた。
第一一章
かみ しゅ あい つね さだ
それゆえ、あなたの神、主を愛し、常にそのさとしと、定めと、おき

いまし まも つぎ
てと、 戒めとを守らなければならない。 二あなたがたは、きょう、次の
し かた こども
ことを知らなければならない。わたしが語るのは、あなたがたの子供た
たい かれ かみ しゅ くんれん しゅ おお
ちに対してではない。彼らはあなたがたの神、主の訓練と、主の大いな
こと つよ て の うで し み
る事と、その強い手と、伸べた腕とを知らず、また見なかった。 三また
かれ しゅ おう ぜんこく たい おこな
彼らは主がエジプトで、エジプト王パロとその全国に対して行われたし
しゅ ぐんぜい うま せんしゃ おこな
るしと、わざ、 四また主がエジプトの軍勢とその馬と戦車とに行われた
こと かれ お とき こうかい みず かれ
事、すなわち彼らがあなたがたのあとを追ってきた時に、紅海の水を彼
申命記

うえ かれ ほろ こんにち いた こと
らの上にあふれさせ、彼らを滅ぼされて、今日に至った事、 五またあな

52
ところ く しゅ あらの おこな こと
たがたがこの所に来るまで、主が荒野で、あなたがたに行われた事、 六
こ こ こと
およびルベンの子のエリアブの子、ダタンとアビラムとにされた事、す
ひとびと なか ち くち ひら かれ
なわちイスラエルのすべての人々の中で、地が口を開き、彼らと、その
かぞく てんまく かれ したが こと かれ
家族と、天幕と、彼らに従うすべてのものを、のみつくした事などを彼
し み しゅ おこな
らは知らず、また見なかった。 七しかし、あなたがたは主が行われたこ
おお こと め み
れらの大いなる事を、ことごとく目に見たのである。
めい いまし
八ゆえに、わたしが、きょう、あなたがたに命じる戒めを、ことごとく
まも つよ わた い
守らなければならない。そうすればあなたがたは強くなり、渡って行っ
と ち と しゅ せんぞ
て取ろうとする地にはいって、それを取ることができ、九かつ、主が先祖
ちか かれ しそん あた い ち ちち みつ なが
たちに誓って彼らとその子孫とに与えようと言われた地、乳と蜜の流れ
くに なが い
る 国 に お い て、長 く 生 き る こ と が で き る で あ ろ う。 一 〇あ な た が た が
い と ち で ち
行って取ろうとする地は、あなたがたが出てきたエジプトの地のようで
あおものばたけ たね あし
はない。あそこでは、青物 畑でするように、あなたがたは種をまき、足
申命記

みず そそ わた い と ち
でそれに水を注いだ。 一一しかし、あなたがたが渡って行って取る地は、

53
やま たに おお ち てん ふ あめ うるお ち
山と谷の多い地で、天から降る雨で潤 っている。 一二その地は、あなたの
かみ しゅ かえり ところ とし はじ とし おわ かみ しゅ
神、主が顧みられる所で、年の始めから年の終りまで、あなたの神、主
め つね うえ
の目が常にその上にある。
めい めいれい き したが
一三 もし、きょう、あなたがたに命じるわたしの命令によく聞き従 って、
かみ しゅ あい こころ せいしん つか
あなたがたの神、主を愛し、心をつくし、精神をつくして仕えるならば、
しゅ ち あめ あき あめ はる あめ とき
一四 主はあなたがたの地に雨を、秋の雨、春の雨ともに、時にしたがって
ふ こくもつ しゅ あぶら と い かちく
降らせ、穀物と、ぶどう酒と、油を取り入れさせ、 一五また家畜のために
の くさ は あ た
野に草を生えさせられるであろう。あなたは飽きるほど食べることが
こころ まよ はな さ た かみがみ つか
できるであろう。 一六あなたがたは心が迷い、離れ去って、他の神々に仕
おが つつし しゅ
え、それを拝むことのないよう、慎まなければならない。 一七おそらく主
いか はっ てん と
はあなたがたにむかい怒りを発して、天を閉ざされるであろう。そのた
あめ ふ ち さんぶつ だ しゅ たま よ ち
め雨は降らず、地は産物を出さず、あなたがたは主が賜わる良い地から、
ほろ
すみやかに滅びうせるであろう。
申命記

ことば こころ たましい て


一八 それゆえ、これらのわたしの言葉を心と魂におさめ、またそれを手に

54
め あいだ お おぼ こども おし
つけて、しるしとし、目の間に置いて覚えとし、 一九これを子供たちに教
いえ ざ とき みち ある とき ね とき お とき
え、家に座している時も、道を歩く時も、寝る時も、起きる時も、それ
かた いえ いりぐち はしら もん か
について語り、二〇また家の入口の柱と、門にそれを書きしるさなければ
しゅ せんぞ あた ちか ち
ならない。 二一そうすれば、主が先祖たちに与えようと誓われた地に、あ
す にっすう こども す にっすう てん ち
なたがたの住む日数およびあなたがたの子供たちの住む日数は、天が地
にっすう おお めい
をおおう日数のように多いであろう。 二二もしわたしがあなたがたに命
めいれい まも おこな かみ しゅ あい
じるこのすべての命令をよく守って行い、あなたがたの神、主を愛し、そ
みち あゆ しゅ したが しゅ くにぐに たみ みな
のすべての道に歩み、主につき従うならば、 二三主はこの国々の民を皆、
まえ お はら おお
あなたがたの前から追い払われ、あなたがたはあなたがたよりも大き
つよ くにぐに と いた あし うら ふ
く、かつ強い国々を取るに至るであろう。 二四あなたがたが足の裏で踏
ところ みな りょういき あらの
む所は皆、あなたがたのものとなり、あなたがたの領 域は荒野からレバ
およ おおかわ にし うみ およ
ノンに及び、また大川ユフラテから西の海に及ぶであろう。 二五だれも
た む もの
あなたがたに立ち向かうことのできる者はないであろう。あなたがた
申命記

かみ しゅ い ふ い ち ひとびと
の神、主は、かつて言われたように、あなたがたの踏み入る地の人々が、

55
おそ
あなたがたを恐れおののくようにされるであろう。
み まえ しゅくふく お
二六 見よ、わたしは、きょう、あなたがたの前に祝 福と、のろいとを置
めい かみ しゅ
く。 二七もし、きょう、わたしがあなたがたに命じるあなたがたの神、主
めいれい き したが しゅくふく う
の命令に聞き従うならば、 祝 福を受けるであろう。 二八もしあなたがた
かみ しゅ めいれい き したが めい
の神、主の命令に聞き従わず、わたしが、きょう、あなたがたに命じる
みち はな し た かみがみ したが
道を離れ、あなたがたの知らなかった他の神々に従うならば、のろいを
う かみ しゅ い せんりょう ち
受けるであろう。 二九あなたの神、主が、あなたの行って占 領する地にあ
みちび い とき やま しゅくふく お やま
なたを導き入れられる時、あなたはゲリジム山に祝 福を置き、エバル山
お やま む
にのろいを置かなければならない。 三〇これらの山はヨルダンの向こう
がわ す ち ひ い ほう みち にしがわ
側、アラバに住んでいるカナンびとの地で、日の入る方の道の西側にあ
む き ちか
り、ギルガルに向かいあって、モレのテレビンの木の近くにあるではな
わた かみ しゅ たま ち
いか。 三一あなたがたはヨルダンを渡り、あなたがたの神、主が賜わる地
せんりょう せんりょう
にはいって、それを占 領しようとしている。あなたがたはそれを占 領
申命記


して、そこに住むであろう。 三二それゆえ、わたしが、きょう、あなたが

56
さづ さだ まも おこな
たに授ける定めと、おきてをことごとく守って行わなければならない。
第一二章
せんぞ かみ しゅ しょゆう たま ち
これはあなたの先祖たちの神、主が所有として賜わる地で、あなたが

よ い あいだ まも おこな さだ
たが世に生きながらえている間、守り行わなければならない定めと、お
お はら くにぐに たみ かみがみ つか ところ
きてである。 二あなたがたの追い払う国々の民が、その神々に仕えた所
たか やま おか あお き した
は、高い山にあるものも、丘にあるものも、青木の下にあるものも、こ
さいだん はしら くだ ぞう ひ や
とごとくこわし、三その祭壇をこぼち、柱を砕き、アシラ像を火で焼き、
きざ かみがみ ぞう き たお な ところ け さ
また刻んだ神々の像を切り倒して、その名をその所から消し去らなけれ
かみ しゅ
ばならない。 四ただし、あなたがたの神、主にはそのようにしてはなら
かみ しゅ な お ぜんぶ
ない。 五あなたがたの神、主がその名を置くために、あなたがたの全部
ぞく えら ば しょ しゅ たず もと
族のうちから選ばれる場所、すなわち主のすまいを尋ね求めて、そこに
申命記

い はんさい ぎせい ぶん もの せいがん


行き、 六あなたがたの燔祭と、犠牲と、十分の一と、ささげ物と、誓願

57
そな もの じはつ そな もの うし ひつじ たずさ い
の供え物と、自発の供え物および牛、 羊のういごをそこに携えて行っ
かみ しゅ まえ た かぞく みな
て、 七そこであなたがたの神、主の前で食べ、あなたがたも、家族も皆、
て ろう え もの よろこ たの
手を労して獲るすべての物を喜び楽しまなければならない。これはあ
かみ しゅ めぐ え
なたの神、主の恵みによって獲るものだからである。 八そこでは、われ
ただ おも
われがきょうここでしているように、めいめいで正しいと思うようにふ
かみ しゅ たま
るまってはならない。 九あなたがたはまだ、あなたがたの神、主から賜
あんそく し ぎょう ち
わる安息と嗣 業の地に、はいっていないのである。 一〇しかし、あなたが
わた かみ しゅ し ぎょう たま ち す
たがヨルダンを渡り、あなたがたの神、主が嗣 業として賜わる地に住む
しゅ しゅうい てき のぞ
よ う に な り、さ ら に 主 が あ な た が た の 周囲 の 敵 を こ と ご と く 除 い て、
あんそく あた やす す とき
安息を与え、あなたがたが安らかに住むようになる時、一一あなたがたの
かみ しゅ な お ば しょ えら
神、主はその名を置くために、一つの場所を選ばれるであろう。あなた
めい もの たずさ い
がたはそこにわたしの命じる物をすべて携えて行かなければならない。
はんさい ぎせい ぶん もの
すなわち、あなたがたの燔祭と、犠牲と、十分の一と、ささげ物および
申命記

しゅ ちか せいがん そな もの たずさ い
あなたがたが主に誓ったすべての誓願の供え物とを携えて行かなけれ

58
むすめ とも
ばならない。 一二そしてあなたがたのむすこ、娘、しもべ、はしためと共
かみ しゅ まえ よろこ たの まち うち
にあなたがたの神、主の前に喜び楽しまなければならない。また町の内
かれ
におるレビびととも、そうしなければならない。彼はあなたがたのうち
わ まえ し ぎょう も つつし
に分け前がなく、嗣 業を持たないからである。 一三 慎んで、すべてあな
おも ば しょ はんさい
たがよいと思う場所で、みだりに燔祭をささげないようにしなければな
ぶぞく しゅ えら ば しょ
らない。 一四ただあなたの部族の一つのうちに、主が選ばれるその場所
はんさい めい こと
で、燔祭をささげ、またわたしが命じるすべての事をしなければならな
い。
かみ しゅ たま めぐ こころ この
一五しかし、あなたの神、主が賜わる恵みにしたがって、すべて心に好む
けもの まち ころ にく た
獣を、どの町ででも殺して、その肉を食べることができる。すなわち、か
お にく どうよう けが ひと きよ ひと た
もしかや雄じかの肉と同様にそれを、汚れた人も、清い人も、食べるこ
ち た みず
とができる。 一六ただし、その血は食べてはならない。水のようにそれ
ち そそ こくもつ しゅ あぶら
を地に注がなければならない。 一七あなたの穀物と、ぶどう酒と、油との
申命記

ぶん うし ひつじ た せいがん そな もの
十分の一および牛、羊のういご、ならびにあなたが立てる誓願の供え物

59
じはつ そな もの もの まち うち た
と、自発の供え物およびささげ物は、町の内で食べることはできない。 一
かみ しゅ えら ば しょ かみ しゅ まえ た
あなたの神、主が選ばれる場所で、あなたの神、主の前でそれを食べ

むすめ
なければならない。すなわちあなたのむすこ、 娘、しもべ、はしため、
まち うち とも た て ろう え
および町の内におるレビびとと共にそれを食べ、手を労して獲るすべて
もの かみ しゅ まえ よろこ たの つつし
の物を、あなたの神、主の前に喜び楽しまなければならない。 一九 慎ん
よ い あいだ す
で、あなたが世に生きながらえている間、レビびとを捨てないようにし
なければならない。
かみ しゅ やくそく りょういき ひろ
二〇 あなたの神、主が約束されたように、あなたの領 域を広くされると
にく た ねが にく た い
き、あなたは肉を食べたいと願って、
﹃わたしは肉を食べよう﹄と言うで
とき にく た
あろう。その時、あなたはほしいだけ肉を食べることができる。 二一も
かみ しゅ な お えら ば しょ とお はな
しあなたの神、主がその名を置くために選ばれる場所が、遠く離れてい
めい しゅ たま うし ひつじ もん うち
るならば、わたしが命じるように、主が賜わる牛、 羊をほふり、門の内
た お た
で、ほしいだけ食べることができる。 二二かもしかや、雄じかを食べるよ
申命記

た けが ひと きよ ひと いちよう
うに、それを食べることができる。すなわち汚れた人も、清い人も一様

60
た かた つつし ち た
にそれを食べることができる。 二三ただ堅く慎んで、その血を食べない
ち いのち いのち にく いっしょ
ようにしなければならない。血は命だからである。その命を肉と一緒
た た みず
に食べてはならない。 二四あなたはそれを食べてはならない。水のよう
ち そそ た
にそれを地に注がなければならない。 二五あなたはそれを食べてはなら
しゅ ただ み こと おこな のち
ない。こうして、主が正しいと見られる事を行うならば、あなたにも後
しそん せい
の子孫にも、さいわいがあるであろう。 二六ただあなたのささげる聖な
もの せいがん もの しゅ えら ば しょ たずさ い
る物と、誓願の物とは、主が選ばれる場所へ携えて行かなければならな
はんさい とき にく ち かみ しゅ さいだん
い。 二七そして燔祭をささげる時は、肉と血とをあなたの神、主の祭壇の
うえ ぎせい とき ち かみ
上にささげなければならない。犠牲をささげる時は、血をあなたの神、
しゅ さいだん にく た
主の祭壇にそそぎかけ、肉はみずから食べることができる。 二八あなた
めい こと き まも
はわたしが命じるこれらの事を、ことごとく聞いて守らなければならな
かみ しゅ み よ ただ こと おこな
い。こうしてあなたの神、主が見て良いとし、正しいとされる事を行う
のち しそん なが
ならば、あなたにも後の子孫にも、長くさいわいがあるであろう。
申命記

かみ しゅ い お はら くにぐに たみ
あなたの神、主が、あなたの行って追い払おうとする国々の民を、あ
二九

61
まえ た ほろ くにぐに え ち
なたの前から断ち滅ぼされ、あなたがついにその国々を獲て、その地に
す とき つつし かれ まえ ほろ
住むようになる時、三〇あなたはみずから慎み、彼らがあなたの前から滅
のち かれ かれ
ぼされた後、彼らにならって、わなにかかってはならない。また彼らの
かみがみ たず もと くにぐに たみ かみがみ つか
神々を尋ね求めて、﹃これらの国々の民はどのようにその神々に仕えた

のか、わたしもそのようにしよう﹄と言ってはならない。 三一あなたの
かみ しゅ たい かれ しゅ にく
神、主に対しては、そのようにしてはならない。彼らは主の憎まれるも
い こと かみがみ おこな むすめ ひ
ろもろの忌むべき事を、その神々にむかって行い、むすこ、 娘をさえ火
や かみがみ
に焼いて、神々にささげたからである。
めい こと まも おこな
三二 あなたがたはわたしが命じるこのすべての事を守って行わなければ
くわ へ
ならない。これにつけ加えてはならない。また減らしてはならない。
第一三章
申命記

よげんしゃ ゆめ もの た きせき
あなたがたのうちに預言者または夢みる者が起って、しるしや奇跡を

62
しめ つ きせき じつげん
示し、 二あなたに告げるそのしるしや奇跡が実現して、あなたがこれま
し かみがみ したが つか い
で知らなかった﹃ほかの神々に、われわれは従い仕えよう﹄と言っても、
よげんしゃ ゆめ もの ことば き したが
三あ な た は そ の 預言者 ま た は 夢 み る 者 の 言葉 に 聞 き 従 っ て は な ら な
かみ しゅ こころ せいしん
い。あなたがたの神、主はあなたがたが心をつくし、精神をつくして、あ
かみ しゅ あい し
なたがたの神、主を愛するか、どうかを知ろうと、このようにあなたが
こころ かみ しゅ したが あゆ かれ
たを試みられるからである。 四あなたがたの神、主に従 って歩み、彼を
おそ いまし まも ことば き したが かれ つか かれ したが
恐れ、その戒めを守り、その言葉に聞き従い、彼に仕え、彼につき従わ
よげんしゃ ゆめ もの ころ
な け れ ば な ら な い。 五そ の 預言者 ま た は 夢 み る 者 を 殺 さ な け れ ば な ら
くに みちび だ どれい いえ
ない。あなたがたをエジプトの国から導き出し、奴隷の家からあがなわ
かみ しゅ かみ しゅ あゆ
れたあなたがたの神、主にあなたがたをそむかせ、あなたの神、主が歩
めい みち はな かた
めと命じられた道を離れさせようとして語るゆえである。こうしてあ
あく のぞ さ
なたがたのうちから悪を除き去らなければならない。
おな はは うま きょうだい むすめ
六同じ母に生れたあなたの兄 弟、またはあなたのむすこ、娘、またはあ
申命記

つま しんめい とも とも
なたのふところの妻、またはあなたと身命を共にする友が、ひそかに

63
さそ い た かみがみ つか い し
誘って﹃われわれは行って他の神々に仕えよう﹄と言うかも知れない。
せんぞ し かみがみ ち
これはあなたも先祖たちも知らなかった神々、 七すなわち地のこのはて
ち ちか とお しゅうい
から、地のかのはてまで、あるいは近く、あるいは遠く、あなたの周囲
たみ かみがみ ひと したが
にある民の神々である。 八しかし、あなたはその人に従 ってはならな
ひと い き ひと
い。その人の言うことを聞いてはならない。その人をあわれんではな
ひと お ひと
らない。その人を惜しんではならない。その人をかばってはならない。
かなら かれ ころ かれ ころ かれ
九 必ず彼を殺さなければならない。彼を殺すには、あなたがまず彼に
て くだ のち たみ て くだ かれ
手を下し、その後、民がみな手を下さなければならない。 一〇彼はエジプ
くに どれい いえ みちび だ かみ しゅ
トの国、奴隷の家からあなたを導き出されたあなたの神、主からあなた
はな いし かれ う ころ
を離れさせようとしたのであるから、あなたは石をもって彼を撃ち殺さ
みな き おそ かさ
なければならない。 一一そうすればイスラエルは皆聞いて恐れ、重ねて
わる こと おこな
このような悪い事を、あなたがたのうちに行わないであろう。
かみ しゅ あた す まち
一二 あなたの神、主があなたに与えて住まわせられる町の一つで、 一三よ
申命記

ひとびと た し
こしまな人々があなたがたのうちに起って、あなたがたの知らなかった

64
かみがみ い つか い まち す
﹃ほかの神々に、われわれは行って仕えよう﹄と言って、その町に住む
ひとびと ゆうわく き たず さぐ
人々を誘惑したことを聞くならば、 一四あなたはそれを尋ね、探り、よく
と にく こと
問いたださなければならない。そして、そのような憎むべき事があなた
おこな こと しんじつ たし かなら
がたのうちに行われた事が、真実で、確かならば、 一五あなたは必ず、そ
まち す もの は う ころ まち
の町に住む者をつるぎの刃にかけて撃ち殺し、その町と、そのうちにお
もの かちく は ほろ
るすべての者、およびその家畜をつるぎの刃にかけて、ことごとく滅ぼ
もの まち ひろば
さなければならない。 一六またそのすべてのぶんどり物は、町の広場の
ちゅうおう あつ ひ まち もの
中 央に集め、火をもってその町と、すべてのぶんどり物とを、ことごと
や かみ しゅ
く焼いて、あなたの神、主にささげなければならない。これはながく
あらつか ふたた た なお もの
荒塚となって、 再び建て直されないであろう。 一七そののろわれた物は
て と しゅ はげ いか
一つもあなたの手に留めおいてはならない。主が激しい怒りをやめ、あ
じ ひ ほどこ せんぞ ちか
なたに慈悲を施して、あなたをあわれみ、先祖たちに誓われたように、あ
かず おお かみ しゅ ことば き したが
なたの数を多くされるためである。 一八あなたの神、主の言葉に聞き従
申命記

めい いまし まも かみ しゅ
い、わたしが、きょう、命じるすべての戒めを守り、あなたの神、主が

65
ただ み こと おこな
正しいと見られる事を行うならば、このようになるであろう。
第一四章
かみ しゅ こども し ひと
あなたがたはあなたがたの神、主の子供である。死んだ人のために

じぶん み きず ひたい かみ
自分の身に傷をつけてはならない。また額の髪をそってはならない。 二
かみ しゅ せい たみ しゅ ち
あなたはあなたの神、主の聖なる民だからである。主は地のおもてのす
たみ えら じぶん たから たみ
べての民のうちからあなたを選んで、自分の宝の民とされた。
い もの た た
忌むべき物は、どんなものでも食べてはならない。 四あなたがたの食

けもの つぎ うし ひつじ お
べることができる獣は次のとおりである。すなわち牛、 羊、やぎ、 五雄
の や ぎ けもの
じか、かもしか、こじか、野やぎ、くじか、おおじか、野羊など、 六 獣
わか き
のうち、すべて、ひずめの分れたもの、ひずめが二つに切れたもので、
はんすう た はんすう
反芻するものは食べることができる。 七ただし、反芻するものと、ひず
申命記

わか つぎ た
めの分れたもののうち、次のものは食べてはならない。すなわち、らく

66
の いわ はんすう
だ、野うさぎ、および岩だぬき、これらは反芻するけれども、ひずめが
わか けが ぶた わか
分れていないから汚れたものである。 八また豚、これは、ひずめが分れ
はんすう けが にく た
ているけれども、反芻しないから、汚れたものである。その肉を食べて
したい ふ
はならない。またその死体に触れてはならない。
みず なか もの つぎ た
水の中にいるすべての物のうち、次のものは食べることができる。す


なわち、すべて、ひれと、うろこのあるものは、食べることができる。 一
た けが
すべて、ひれと、うろこのないものは、食べてはならない。これは汚

れたものである。
きよ とり た つぎ た
一一 すべて清い鳥は食べることができる。 一二ただし、次のものは食べて
くろ
はならない。すなわち、はげわし、ひげはげわし、みさご、 一三黒とび、
るい かくしゅ るい よる
はやぶさ、とびの類。 一四各種のからすの類。 一五だちょう、夜たか、かも
るい
め、たかの類。 一六ふくろう、みみずく、むらさきばん、 一七ペリカン、は
るい
げたか、う、 一八こうのとり、さぎの類。やつがしら、こうもり。 一九また
申命記

はね は けが た
すべて羽があって這うものは汚れたものである。それを食べてはなら

67
つばさ きよ た
ない。 二〇すべて翼のある清いものは食べることができる。
しぜん し た まち うち きりゅう
二一 すべて自然に死んだものは食べてはならない。町の内におる寄留の
た こ く じん あた た がいこくじん
他国人に、それを与えて食べさせることができる。またそれを外国人に
う かみ しゅ せい たみ
売ってもよい。あなたはあなたの神、主の聖なる民だからである。
こ はは ちち に
子やぎをその母の乳で煮てはならない。
まいとし はたけ たね え さんぶつ ぶん かなら
二二 あなたは毎年、 畑に種をまいて獲るすべての産物の十分の一を必ず
と わ かみ しゅ まえ しゅ
取り分けなければならない。 二三そしてあなたの神、主の前、すなわち主
な お えら ば しょ こくもつ しゅ あぶら
がその名を置くために選ばれる場所で、穀物と、ぶどう酒と、 油との十
ぶん うし ひつじ た つね かみ しゅ おそ
分の一と、牛、 羊のういごを食べ、こうして常にあなたの神、主を恐れ
まな みち とお
ることを学ばなければならない。 二四ただし、その道があまりに遠く、あ
かみ しゅ な お えら ば しょ ひじょう とお はな
なたの神、主がその名を置くために選ばれる場所が、非常に遠く離れて
かみ しゅ めぐ たずさ い
いて、あなたの神、主があなたを恵まれるとき、それを携えて行くこと
もの かね か かね つつ て
ができないならば、二五あなたはその物を金に換え、その金を包んで手に
申命記

と かみ しゅ えら ば しょ い かね
取り、あなたの神、主が選ばれる場所に行き、 二六その金をすべてあなた

68
この もの か うし ひつじ しゅ こ さけ
の好む物に換えなければならない。すなわち牛、 羊、ぶどう酒、濃い酒
ほっ もの か ところ かみ しゅ まえ
など、すべてあなたの欲する物に換え、その所であなたの神、主の前で
た かぞく とも たの まち うち
それを食べ、家族と共に楽しまなければならない。 二七町の内におるレ
す かれ ぶん し ぎょう
ビびとを捨ててはならない。彼はあなたがたのうちに分がなく、嗣 業
も もの
を持たない者だからである。
ねん おわ とし さんぶつ ぶん も だ
二八 三年の終りごとに、その年の産物の十分の一を、ことごとく持ち出し
まち うち わ まえ し ぎょう も
て、町の内にたくわえ、二九あなたがたのうちに分け前がなく、嗣 業を持
まち うち きりゅう た こ く じん こ じ か ふ
たないレビびと、および町の内におる寄留の他国人と、孤児と、寡婦を
よ た まんぞく
呼んで、それを食べさせ、満足させなければならない。そうすれば、あ
かみ しゅ て おこな こと しゅくふく
なたの神、主はあなたが手で行うすべての事にあなたを祝 福されるで
あろう。
申命記

69
第一五章
ねん おわ おこな
一あなたは七年の終りごとに、ゆるしを行わなければならない。 二その
つぎ りんじん か かしぬし
ゆるしのしかたは次のとおりである。すべてその隣人に貸した貸主は
りんじん きょうだい とくそく
それをゆるさなければならない。その隣人または兄 弟にそれを督促し
しゅ しめ がいこくじん
てはならない。主のゆるしが、ふれ示されたからである。 三外国人には
とくそく きょうだい か もの
それを督促することができるが、あなたの兄 弟に貸した物はゆるさな
まず もの
け れ ば な ら な い。 四し か し あ な た が た の う ち に 貧 し い 者 は な く な る で
かみ しゅ し ぎょう あた ち しゅくふく
あろう。︵あなたの神、主が嗣 業として与えられる地で、あなたを祝 福
かみ しゅ ことば き したが
されるからである。︶ 五ただ、あなたの神、主の言葉に聞き従 って、わた
めい いまし まも おこな
しが、きょう、あなたに命じることの戒めを、ことごとく守り行うとき、
かみ しゅ やくそく
そのようになるであろう。 六あなたの神、主が約束されたようにあなた
しゅくふく おお くに か か
を祝 福されるから、あなたは多くの国びとに貸すようになり、借りるこ
申命記

おお くに おさ かれ
とはないであろう。またあなたは多くの国びとを治めるようになり、彼

70
おさ
らがあなたを治めることはないであろう。
かみ しゅ たま ち きょうだい まず もの
あなたの神、主が賜わる地で、もしあなたの兄 弟で貧しい者がひとり

まち うち まず きょうだい こころ
でも、町の内におるならば、その貧しい兄 弟にむかって、心をかたくな
て と かなら かれ て ひら
にしてはならない。また手を閉じてはならない。 八 必ず彼に手を開い
ひつよう もの か あた とぼ おぎな
て、その必要とする物を貸し与え、乏しいのを補わなければならない。 九
こころ じゃねん おこ だい ねん とし ちか い
あなたは心に邪念を起し、
﹃第七年のゆるしの年が近づいた﹄と言って、
まず きょうだい たい もの お なに あた つつし
貧しい兄 弟に対し、物を惜しんで、何も与えないことのないように慎ま
ひと しゅ うった つみ
なければならない。その人があなたを主に訴えるならば、あなたは罪を
え こころ かれ あた かれ あた
得るであろう。 一〇あなたは心から彼に与えなければならない。彼に与
とき お かみ しゅ こと
える時は惜しんではならない。あなたの神、主はこの事のために、あな
じぎょう て はたら しゅくふく
たをすべての事業と、手のすべての働きにおいて祝 福されるからであ
まず もの くに た
る。 一一貧しい者はいつまでも国のうちに絶えることがないから、わた
めい い かなら くに きょうだい とぼ
しは命じて言う、
﹃あなたは必ず国のうちにいるあなたの兄 弟の乏しい
申命記

もの まず もの て ひら
者と、貧しい者とに、手を開かなければならない﹄。

71
きょうだい おとこ おんな
一二 もしあなたの兄 弟であるヘブルの男、またはヘブルの女が、あなた
う ねんつか だい ねん かれ じゆう あた
のところに売られてきて、六年仕えたならば、第七年には彼に自由を与
さ かれ じゆう あた さ とき
えて去らせなければならない。 一三彼に自由を与えて去らせる時は、か
て さ む う ば さか
ら手で去らせてはならない。 一四群れと、打ち場と、酒ぶねのうちから
と お かれ あた かみ
取って、惜しみなく彼に与えなければならない。すなわちあなたの神、
しゅ めぐ かれ あた
主があなたを恵まれたように、彼に与えなければならない。 一五あなた
くに どれい かみ しゅ
はかつてエジプトの国で奴隷であったが、あなたの神、主があなたをあ
だ こと きおく
が な い 出 さ れ た 事 を 記憶 し な け れ ば な ら な い。こ の ゆ え に わ た し は、
こと めい ひと かぞく
きょう、この事を命じる。 一六しかしその人があなたと、あなたの家族を
あい いっしょ のぞ はな さ
愛し、あなたと一緒にいることを望み、﹃わたしはあなたを離れて去りた
い と かれ みみ と
くありません﹄と言うならば、 一七あなたは、きりを取って彼の耳を戸に
さ かれ どれい
刺さなければならない。そうすれば、彼はいつまでもあなたの奴隷とな
おんな ど れ い かれ じゆう あた
る で あ ろ う。 女 奴隷 に も そ う し な け れ ば な ら な い。 一八彼 に 自由 を 与
申命記

さ とき こころよ さ かれ ねんかん ちんぎん


えて去らせる時には、 快く去らせなければならない。彼が六年間、賃銀

72
と やといにん ばい つか はたら
を取る雇 人の二倍あなたに仕えて働いたからである。あなたがそうす
かみ しゅ おこな こと しゅくふく
るならば、あなたの神、主はあなたが行うすべての事にあなたを祝 福さ
れるであろう。
うし ひつじ う おす みな かみ しゅ せいべつ
一九牛、 羊の産む雄のういごは皆あなたの神、主に聖別しなければなら
うし もち しごと ひつじ
ない。牛のういごを用いてなんの仕事をもしてはならない。また羊の
け き かみ しゅ えら ところ しゅ
ういごの毛を切ってはならない。 二〇あなたの神、主が選ばれる所で、主
まえ かぞく とも とし た
の前にあなたは家族と共に年ごとにそれを食べなければならない。 二一
けもの きず あし
しかし、その獣がもし傷のあるもの、すなわち足なえまたは、めくらな
わる きず とき かみ しゅ ぎせい
ど、すべて悪い傷のあるものである時は、あなたの神、主にそれを犠牲
まち うち た
と し て さ さ げ て は な ら な い。 二二町 の 内 で そ れ を 食 べ な け れ ば な ら な
けが ひと きよ ひと お どうよう た
い。汚れた人も、清い人も、かもしかや、雄じかと同様にそれを食べる
ち た みず
ことができる。 二三ただし、その血は食べてはならない。水のようにそ

れを地にそそがなければならない。
申命記

73
第一六章
つき まも かみ しゅ すぎこし まつり おこな
一あなたはアビブの月を守って、あなたの神、主のために過越の祭を行
つき かみ しゅ よる あいだ
わなければならない。アビブの月に、あなたの神、主が夜の間にあなた
みちび だ しゅ な お
を エ ジ プ ト か ら 導 き 出 さ れ た か ら で あ る。 二主 が そ の 名 を 置 く た め に
えら ば しょ ひつじ うし かみ しゅ すぎこし ぎせい
選ばれる場所で、羊または牛をあなたの神、主に過越の犠牲としてほふ
たね い とも た
ら な け れ ば な ら な い。 三種 を 入 れ た パ ン を そ れ と 共 に 食 べ て は な ら な
なぬか たね い なや とも た
い。七日のあいだ、種入れぬパンすなわち悩みのパンを、それと共に食
くに で いそ で
べなければならない。あなたがエジプトの国から出るとき、急いで出た
よ い ひ あいだ くに で
からである。こうして世に生きながらえる日の間、エジプトの国から出
ひ つね おぼ なぬか あいだ くに うち
てきた日を常に覚えなければならない。 四その七日の間は、国の内どこ
だね はじ ひ ゆうぐれ
にもパン種があってはならない。また初めの日の夕暮にほふるものの
にく よくあさ のこ かみ しゅ たま まち
肉を、翌朝まで残しておいてはならない。 五あなたの神、主が賜わる町
申命記

うち すぎこし ぎせい かみ しゅ
の内で、過越の犠牲をほふってはならない。 六ただあなたの神、主がそ

74
な お えら ば しょ ゆうぐれ ひ い
の名を置くために選ばれる場所で、夕暮の日の入るころ、あなたがエジ
で じこく すぎこし ぎせい
プトから出た時刻に、過越の犠牲をほふらなければならない。 七そして
かみ しゅ えら ば しょ や た あさ てんまく
あなたの神、主が選ばれる場所で、それを焼いて食べ、朝になって天幕
かえ か たね い た なぬか め
に帰らなければならない。 八六日のあいだ種入れぬパンを食べ、七日目
かみ しゅ せいかい ひら しごと
にあなたの神、主のために聖会を開かなければならない。なんの仕事も
してはならない。
しゅうかん かぞ こくもつ い
九また七 週 間を数えなければならない。すなわち穀物に、かまを入れ
はじ とき しゅうかん かぞ はじ
始 め る 時 か ら 七 週 間 を 数 え 始 め な け れ ば な ら な い。 一〇そ し て あ な た
かみ しゅ しゅう まつり おこな かみ しゅ たま しゅくふく
の神、主のために七 週の祭を行い、あなたの神、主が賜わる祝 福にした
ちから おう じはつ そな もの
がって、力に応じ、自発の供え物をささげなければならない。 一一こうし
むすめ まち うち
てあなたはむすこ、娘、しもべ、はしためおよび町の内におるレビびと、
きりゅう た こ く じん こ じ か ふ とも
ならびにあなたがたのうちにおる寄留の他国人と孤児と寡婦と共に、あ
かみ しゅ な お えら ば しょ かみ しゅ
なたの神、主がその名を置くために選ばれる場所で、あなたの神、主の
申命記

まえ よろこ たの どれい
前に喜び楽しまなければならない。 一二あなたはかつてエジプトで奴隷

75
おぼ さだ まも おこな
であったことを覚え、これらの定めを守り行わなければならない。
う ば さか とりい なぬか かりいお まつり おこな
一三 打ち場と、酒ぶねから取入れをしたとき、七日のあいだ仮庵の祭を行
まつり とき むすめ
わなければならない。 一四その祭の時には、あなたはむすこ、娘、しもべ、
まち うち きりゅう た こ く じん こ じ か ふ とも
はしためおよび町の内におるレビびと、寄留の他国人、孤児、寡婦と共
よろこ たの しゅ えら ば しょ なぬか あいだ
に喜び楽しまなければならない。 一五主が選ばれる場所で七日の間、あ
かみ しゅ まつり おこな かみ しゅ
なたの神、主のために祭を行わなければならない。あなたの神、主はす
さんぶつ て しゅくふく
べての産物と、手のすべてのわざとにおいて、あなたを祝 福されるか
おお よろこ たの
ら、あなたは大いに喜び楽しまなければならない。
だんし みな かみ しゅ えら ば しょ ねん
一六 あなたのうちの男子は皆あなたの神、主が選ばれる場所で、年に三
ど たね い まつり しゅう まつり かりいお まつり しゅ まえ
度、すなわち種入れぬパンの祭と、七 週の祭と、仮庵の祭に、主の前に
で て しゅ まえ で
出なければならない。ただし、から手で主の前に出てはならない。 一七
かみ しゅ たま しゅくふく ちから おう
あなたの神、主が賜わる祝 福にしたがい、おのおの力に応じて、ささげ
もの
物をしなければならない。
申命記

かみ しゅ たま まちまち うち ぶぞく
一八 あなたの神、主が賜わるすべての町々の内に、部族にしたがって、さ

76
た かれ ただ
ばきびとと、つかさびととを、立てなければならない。そして彼らは正
たみ
しいさばきをもって民をさばかなければならない。 一九あなたはさばき
ま ひと み わいろ と
を曲げてはならない。人をかたより見てはならない。また賄賂を取っ
わいろ かしこ もの め ただ もの じけん ま
てはならない。賄賂は賢い者の目をくらまし、正しい者の事件を曲げる
こうぎ もと
からである。 二〇ただ公義をのみ求めなければならない。そうすればあ
い かみ しゅ たま ち しょゆう
なたは生きながらえて、あなたの神、主が賜わる地を所有するにいたる
であろう。
かみ しゅ きず さいだん もくぞう た
二一 あなたの神、主のために築く祭壇のかたわらに、アシラの木像をも立
かみ しゅ にく はしら た
ててはならない。 二二またあなたの神、主が憎まれる柱を立ててはなら
ない。
第一七章
申命記

きず か ところ うし ひつじ かみ しゅ
すべて傷があり、欠けた所のある牛または羊はあなたの神、主にささ

77
かみ しゅ い
げてはならない。そのようなものはあなたの神、主の忌みきらわれるも
のだからである。
かみ しゅ たま まち だんし
二あなたの神、主が賜わる町で、あなたがたのうちに、もし男子または
じょ し かみ しゅ まえ あくじ けいやく い
女子があなたの神、主の前に悪事をおこなって、契約にそむき、 三行っ
た かみがみ つか おが きん ひ つき た てん
て他の神々に仕え、それを拝み、わたしの禁じる、日や月やその他の天
ばんしょう おが こと し もの
の万 象を拝むことがあり、 四その事を知らせる者があって、あなたがそ
き しら
れを聞くならば、あなたはそれをよく調べなければならない。そしてそ
こと しんじつ にく こと たし
の事が真実であり、そのような憎むべき事が確かにイスラエルのうちに
おこな あくじ だんし じょ し
行われていたならば、 五あなたはその悪事をおこなった男子または女子
まち もん だ だんし じょ し いし う ころ
を町の門にひき出し、その男子または女子を石で撃ち殺さなければなら
しょうにん にん しょうにん しょうげん ころ もの
ない。 六ふたりの証 人または三人の証 人の証 言によって殺すべき者を
ころ しょうにん しょうげん ころ
殺さなければならない。ただひとりの証 人の証 言によって殺してはな
もの ころ しょうにん て くだ たみ
らない。 七そのような者を殺すには、証 人がまず手を下し、それから民
申命記

みな て くだ あく のぞ
が皆、手を下さなければならない。こうしてあなたのうちから悪を除き

78

去らなければならない。
まち うち うった こと おこ じけん ち なが こと けんり あらそ
八町の内に訴え事が起り、その事件がもし血を流す事、または権利を争
こと ひと う こと
う事、または人を撃った事などであって、あなたが、さばきかねるもの
とき た かみ しゅ えら ば しょ
である時は、立ってあなたの神、主が選ばれる場所にのぼり、 九レビび
さいし とき さいばんにん い たず かれ
とである祭司と、その時の裁判人とに行って尋ねなければならない。彼
はんけつ ことば つ しゅ えら
らはあなたに判決の言葉を告げるであろう。 一〇あなたは、主が選ばれ
ば しょ かれ つ ことば したが かれ おし
るその場所で、彼らが告げる言葉に従 っておこない、すべて彼らが教え
まも おこな かれ おし りっぽう
る よ う に 守 り 行 わ な け れ ば な ら な い。 一一す な わ ち 彼 ら が 教 え る 律法
かれ つ はんけつ したが おこな かれ つ
と、彼らが告げる判決とに従 って行わなければならない。彼らが告げ
ことば みぎ ひだり ひと
る言葉にそむいて、右にも左にもかたよってはならない。 一二もし人が
かみ しゅ まえ た つか さいし
ほしいままにふるまい、あなたの神、主の前に立って仕える祭司または
さいばんにん き したが ひと ころ
裁判人に聞き従わないならば、その人を殺して、イスラエルのうちから
あく のぞ たみ みな き おそ かさ
悪を除かなければならない。 一三そうすれば民は皆、聞いて恐れ、重ねて
申命記

ほしいままにふるまうことをしないであろう。

79
かみ しゅ たま ち い え す
あなたの神、主が賜わる地に行き、それを獲てそこに住むようになる
一四
とき しゅうい くに
時、もしあなたが﹃わたしも周囲のすべての国びとのように、わたしの
うえ おう た い かなら かみ しゅ えら もの
上に王を立てよう﹄と言うならば、一五 必ずあなたの神、主が選ばれる者
うえ た おう どうほう
を、あなたの上に立てて王としなければならない。同胞のひとりを、あ
うえ た おう どうほう がいこくじん
なたの上に立てて王としなければならない。同胞でない外国人をあな
うえ た おう ひと じぶん うま おお え
たの上に立ててはならない。 一六王となる人は自分のために馬を多く獲
うま おお え たみ かえ
ようとしてはならない。また馬を多く獲るために民をエジプトに帰ら
しゅ のち みち
せてはならない。主はあなたがたにむかって、﹃この後かさねてこの道
かえ おお つま おお も
に帰ってはならない﹄と仰せられたからである。 一七また妻を多く持っ
こころ まよ じぶん きんぎん おお
て心を、迷わしてはならない。また自分のために金銀を多くたくわえて
はならない。
かれ くに おうい さいし ほかん
彼が国の王位につくようになったら、レビびとである祭司の保管す
一八
しょもつ りっぽう うつ しょもつ か よ い
る書物から、この律法の写しを一つの書物に書きしるさせ、一九世に生き
申命記

ひ あいだ つね じぶん お よ
ながらえる日の間、常にそれを自分のもとに置いて読み、こうしてその

80
かみ しゅ おそ まな りっぽう ことば さだ
神、主を恐れることを学び、この律法のすべての言葉と、これらの定め
まも おこな かれ こころ どうほう み
とを守って行わなければならない。 二〇そうすれば彼の心が同胞を見く
たか いまし はな みぎ ひだり まが
だして、高ぶることなく、また戒めを離れて、右にも左にも曲ることな
しそん とも なが くらい
く、その子孫と共にイスラエルにおいて、長くその位にとどまることが
できるであろう。
第一八章
さいし ぜ ん ぶ ぞく ぶん
一レビびとである祭司すなわちレビの全部族はイスラエルのうちに、分
し ぎょう も かれ しゅ かさい もの た
も嗣 業も持たない。彼らは主にささげられる火祭の物と、その他のさ
もの た かれ きょうだい し ぎょう
さげ物とを食べなければならない。 二彼らはその兄 弟のうちに嗣 業を
も かれ やくそく しゅ かれ し ぎょう
持 た な い。か つ て 彼 ら に 約束 さ れ た と お り 主 が 彼 ら の 嗣 業 で あ る。 三
さいし たみ う ぶん つぎ ぎせい
祭司が民から受ける分は次のとおりである。すなわち犠牲をささげる
申命記

もの うし ひつじ かた りょうほう い さいし あた


者は、牛でも、 羊でも、その肩と、 両 方のほおと、胃とを祭司に与え

81
こくもつ しゅ あぶら はつもの ひつじ け
なければならない。 四また穀物と、ぶどう酒と、 油の初物および羊の毛
はつもの かれ あた かみ しゅ
の 初物 を も 彼 に 与 え な け れ ば な ら な い。 五あ な た の 神、主 が す べ て の
ぶぞく かれ えら だ かれ しそん なが しゅ な
部族のうちから彼を選び出して、彼とその子孫を長く主の名によって
た つか
立って仕えさせられるからである。
ぜん ち もの かれ やど
六レビびとはイスラエルの全地のうち、どこにいる者でも、彼が宿って
まち で しゅ えら ば しょ い かれ しゅ まえ た
いる町を出て、主が選ばれる場所に行くならば、 七彼は主の前に立って
きょうだい おな かみ しゅ な つか
いるすべての兄 弟 レビびとと同じように、その神、主の名によって仕え
かれ た ぶん かれ おな かれ
る こ と が で き る。 八彼 が 食 べ る 分 は 彼 ら と 同 じ で あ る。た だ し 彼 は こ
ちち いさん う え もの も
のほかに父の遺産を売って獲た物を持つことができる。
かみ しゅ たま ち くにぐに たみ にく
九あなたの神、主が賜わる地にはいったならば、その国々の民の憎むべ
こと なら じぶん
き事を習いおこなってはならない。 一〇あなたがたのうちに、自分のむ
むすめ ひ や もの うらな
すこ、 娘を火に焼いてささげる者があってはならない。また占いをす
もの ぼくしゃ えきしゃ まほうつかい じゅもん とな もの くちよ しにん
る者、卜者、易者、魔法使、 一一呪文を唱える者、口寄せ、かんなぎ、死人
申命記

と もの しゅ こと
に問うことをする者があってはならない。 一二主はすべてこれらの事を

82
もの にく にく こと
する者を憎まれるからである。そしてこれらの憎むべき事のゆえにあ
かみ しゅ かれ まえ お はら
なたの神、主は彼らをあなたの前から追い払われるのである。 一三あな
かみ しゅ まえ まった もの お
たの神、主の前にあなたは全き者でなければならない。 一四あなたが追
はら くにぐに たみ ぼくしゃ うらな もの き したが
い払うかの国々の民は卜者、 占いをする者に聞き従うからである。し
かみ しゅ こと ゆる
かし、あなたには、あなたの神、主はそうする事を許されない。
かみ しゅ どうほう
あなたの神、主はあなたのうちから、あなたの同胞のうちから、わた
一五
よげんしゃ おこ
しのようなひとりの預言者をあなたのために起されるであろう。あな
かれ き したが しゅうかい ひ
たがたは彼に聞き従わなければならない。 一六これはあなたが集 会の日
かみ しゅ もと
にホレブであなたの神、主に求めたことである。すなわちあなたは﹃わ
し かみ しゅ こえ ど き
たしが死ぬことのないようにわたしの神、主の声を二度とわたしに聞か
おお ひ ど み
せないでください。またこの大いなる火を二度と見させないでくださ
い しゅ い かれ い ただ
い﹄と言った。 一七主はわたしに言われた、
﹃彼らが言ったことは正しい。
かれ どうほう よげんしゃ
わたしは彼らの同胞のうちから、おまえのようなひとりの預言者を
一八
申命記

かれ おこ ことば くち さづ かれ
彼らのために起して、わたしの言葉をその口に授けよう。彼はわたしが

83
めい かれ つ かれ な
命じることを、ことごとく彼らに告げるであろう。 一九彼がわたしの名
ことば かた き したが もの
によって、わたしの言葉を語るのに、もしこれに聞き従わない者がある
ばっ よげんしゃ
ならば、わたしはそれを罰するであろう。 二〇ただし預言者が、わたしが
かた めい な かた
語れと命じないことを、わたしの名によってほしいままに語り、あるい
た かみがみ な かた よげんしゃ ころ
は他の神々の名によって語るならば、その預言者は殺さなければならな
こころ ことば しゅ い
い﹄。 二一あなたは心のうちに﹃われわれは、その言葉が主の言われたも
し え い よげんしゃ
のでないと、どうして知り得ようか﹄と言うであろう。 二二もし預言者が
しゅ な かた ことば じょうじゅ こと
あって、主の名によって語っても、その言葉が成 就せず、またその事が
おこ とき しゅ かた ことば よげんしゃ
起らない時は、それは主が語られた言葉ではなく、その預言者がほしい
かた よげんしゃ おそ およ
ままに語ったのである。その預言者を恐れるに及ばない。
第一九章
申命記

かみ しゅ くにぐに たみ ほろ かみ しゅ
あなたの神、主が国々の民を滅ぼしつくして、あなたの神、主がその

84
ち たま え まちまち いえいえ す
地を賜わり、あなたがそれを獲て、その町々と、その家々に住むように
とき かみ しゅ あた え ち
なる時は、 二あなたの神、主が与えて獲させられる地のうちに、三つの
まち してい い みち
町 を あ な た の た め に 指定 し な け れ ば な ら な い。 三そ し て そ こ に 行 く 道
そな かみ しゅ つ ち りょういき く
を備え、またあなたの神、主があなたに継がせられる地の領 域を三区に
わ ひと ころ もの
分け、すべて人を殺した者をそこにのがれさせなければならない。
ひと ころ もの いのち まっと ばあい つぎ
四人を殺した者がそこにのがれて、 命を全うすべき場合は次のとおり
いぜん にく し りんじん
である。すなわち以前から憎むこともないのに、知らないでその隣人を
ころ ばあい ひと き き りんじん いっしょ はやし い
殺した場合、五たとえば人が木を切ろうとして、隣人と一緒に林に入り、
て と き き たお う あたま え
手におのを取って、木を切り倒そうと撃ちおろすとき、その頭が柄から
ぬ りんじん し ばあい ひと
抜け、隣人にあたって、死なせたような場合がそれである。そういう人
まち いのち まっと
はこれらの町の一つにのがれて、命を全うすることができる。 六そうし
ふくしゅう もの いか ころ もの お みち なが
なければ、復 讐する者が怒って、その殺した者を追いかけ、道が長いた
お ころ ひと いぜん かれ
めに、ついに追いついて殺すであろう。しかし、その人は以前から彼を
申命記

にく もの ころ りゆう
憎んでいた者でないから、殺される理由はない。 七それでわたしはあな

85
めい まち してい
たに命じて﹃三つの町をあなたのために指定しなければならない﹄と
い かみ しゅ せんぞ ちか
言ったのである。 八あなたの神、主が先祖たちに誓われたように、あな
りょういき ひろ せんぞ あた い ち たま
たの領 域を広め、先祖たちに与えると言われた地を、ことごとく賜わる
とき めい いまし まも
時、︱︱ 九わたしが、きょう、命じるこのすべての戒めを守って、それ
かみ しゅ あい つね みち あゆ とき
をおこない、あなたの神、主を愛して、常にその道に歩む時︱︱あなた
まち まち ま くわ
はこれら三つの町のほかに、また三つの町をあなたのために増し加えな
かみ しゅ あた し ぎょう ち
ければならない。 一〇これはあなたの神、主が与えて嗣 業とされる地の
つみ もの ち なが
うちで、罪のない者の血が流されないようにするためである。そうしな
ち なが き
ければ、その血を流したとがは、あなたに帰するであろう。
ひと りんじん にく た
一一 しかし、もし人が隣人を憎んでそれをつけねらい、立ちかかってその
ひと う ころ まち まち
人を撃ち殺し、そしてこれらの町の一つにのがれるならば、一二その町の
ちょうろう ひと かれ ひ ふくしゅう もの
長 老たちは人をつかわして彼をそこから引いてこさせ、 復 讐する者に
ころ かれ つみ
わたして殺させなければならない。 一三彼をあわれんではならない。罪
申命記

もの ち なが のぞ
のない者の血を流したとがを、イスラエルから除かなければならない。

86
そうすればあなたにさいわいがあるであろう。
かみ しゅ あた え ち つ し ぎょう
一四 あなたの神、主が与えて獲させられる地で、あなたが継ぐ嗣 業にお
せんぞ さだ りんじん と ち さかい うつ
いて、先祖の定めたあなたの隣人の土地の境を移してはならない。
ふせい ひと おか つみ
一五 どんな不正であれ、どんなとがであれ、すべて人の犯す罪は、ただひ
しょうにん さだ しょうにん しょうげん
とりの証 人によって定めてはならない。ふたりの証 人の証 言により、
にん しょうにん しょうげん こと さだ
または三人の証 人の証 言によって、その事を定めなければならない。 一
あくい しょうにん た ひと たい わる しょうげん
六もし悪意のある証 人が起って、人に対して悪い証 言をすることがあ
あいあらそ もの しゅ まえ い とき さいし
れ ば、 一七そ の 相 争 う ふ た り の 者 は 主 の 前 に 行 っ て、そ の 時 の 祭司 と
さいばんにん まえ た とき さいばんにん しょうさい
裁判人の前に立たなければならない。 一八その時、裁判人は詳 細にそれ
しら しょうにん いつわ しょうにん
を 調 べ な け れ ば な ら な い。そ し て そ の 証 人 が も し 偽 り の 証 人 で あ っ
きょうだい いつわ しょうげん もの
て、兄 弟にむかって偽りの証 言をした者であるならば、 一九あなたがた
かれ きょうだい かれ おこな
は彼が兄 弟にしようとしたことを彼に行い、こうしてあなたがたのう
あく のぞ さ た ひと き
ちから悪を除き去らなければならない。 二〇そうすれば他の人たちは聞
申命記

おそ のち あく おこな
いて恐れ、その後ふたたびそのような悪をあなたがたのうちに行わない

87
いのち いのち め め は は
であろう。 二一あわれんではならない。 命には命、目には目、歯には歯、
て て あし あし つぐな
手には手、足には足をもって償わせなければならない。
第二〇章
てき たたか で とき うま せんしゃ だい
一あなたが敵と戦うために出る時、馬と戦車と、あなたよりも大ぜいの
ぐんたい み かれ おそ くに みちび
軍隊を見ても、彼らを恐れてはならない。あなたをエジプトの国から導
かみ しゅ とも
きのぼられたあなたの神、主が共におられるからである。 二あなたがた
たたか のぞ さいし すす で たみ つ かれ い
が戦いに臨むとき、祭司は進み出て民に告げて、 三彼らに言わなければ
き てき たたか
ならない、
﹃イスラエルよ聞け。あなたがたは、きょう、敵と戦おうとし
き おそ
ている。気おくれしてはならない。恐れてはならない。あわててはな
かれ おどろ かみ しゅ とも い
ら な い。彼 ら に 驚 い て は な ら な い。 四あ な た が た の 神、主 が 共 に 行 か
てき たたか すく
れ、あなたがたのために敵と戦 って、あなたがたを救われるからであ
申命記

つぎ たみ つ い あたら
る﹄。 五次 に つ か さ た ち は 民 に 告 げ て 言 わ な け れ ば な ら な い。﹃新 し い

88
いえ た もの ひと いえ かえ
家を建てて、まだそれをささげていない者があれば、その人を家に帰ら
かれ たたか し
せなければならない。そうしなければ、彼が戦いに死んだとき、ほかの
ひと はたけ つく
人がそれをささげるようになるであろう。 六ぶどう畑を作って、まだそ
み た もの ひと いえ かえ
の実を食べていない者があれば、その人を家に帰らせなければならな
かれ たたか し ひと た
い。そうしなければ彼が戦いに死んだとき、ほかの人がそれを食べるよ
おんな こんやく おんな もの
うになるであろう。 七 女と婚約して、まだその女をめとっていない者が
ひと いえ かえ かれ たたか
あれば、その人を家に帰らせなければならない。そうしなければ彼が戦
し ひと かのじょ
いに死んだとき、ほかの人が彼女をめとるようになるであろう﹄。 八つ
たみ つ い おそ き
かさたちは、また民に告げて言わなければならない。﹃恐れて気おくれ
もの ひと いえ かえ
する者があるならば、その人を家に帰らせなければならない。そうしな
きょうだい こころ かれ こころ
ければ、 兄 弟たちの心が彼の心のようにくじけるであろう﹄。 九つかさ
たみ つ おわ ぐんぜい た たみ
たちがこのように民に告げ終ったならば、軍勢のかしらたちを立てて民
ひき
を率いさせなければならない。
申命記

まち すす い せ とき おだ
一つの町へ進んで行って、それを攻めようとする時は、まず穏やかに
一〇

89
こうふく すす まち おだ こうふく
降服することを勧めなければならない。 一一もしその町が穏やかに降服
こた もん ひら たみ
しようと答えて、門を開くならば、そこにいるすべての民に、みつぎを
おさ つか おだ こうふく
納めさせ、あなたに仕えさせなければならない。 一二もし穏やかに降服
たたか せ
せず、 戦おうとするならば、あなたはそれを攻めなければならない。 一
かみ しゅ て とき
そしてあなたの神、主がそれをあなたの手にわたされる時、つるぎを

おとこ う ころ おんな
もってそのうちの男をみな撃ち殺さなければならない。 一四ただし女、
こども かちく まち もの みな
子供、家畜およびすべて町のうちにあるもの、すなわちぶんどり物は皆、
せ ん り ひん と てき もの
戦利品として取ることができる。また敵からぶんどった物はあなたの
かみ しゅ たま もち
神、主が賜わったものだから、あなたはそれを用いることができる。 一五
とお はな まちまち くにぐに ぞく まちまち
遠く離れている町々、すなわちこれらの国々に属さない町々には、すべ
かみ しゅ し ぎょう
てこのようにしなければならない。 一六ただし、あなたの神、主が嗣 業と
あた たみ まちまち いき もの い
して与えられるこれらの民の町々では、息のある者をひとりも生かして
おいてはならない。 一七すなわちヘテびと、アモリびと、カナンびと、ペ
申命記

ほろ かみ しゅ めい
リジびと、ヒビびと、エブスびとはみな滅ぼして、あなたの神、主が命

90
かれ かみがみ おが
じられたとおりにしなければならない。 一八これは彼らがその神々を拝
にく こと おし おこな
んでおこなったすべての憎むべき事を、あなたがたに教えて、それを行
かみ しゅ つみ おか
わせ、あなたがたの神、主に罪を犯させることのないためである。
なが まち せ かこ と とき
一九 長く町を攻め囲んで、それを取ろうとする時でも、おのをふるって、
き き か しょく
そこの木を切り枯らしてはならない。それはあなたの食となるものだ
き たお でんや き ひと せ
から、切り倒してはならない。あなたは田野の木までも、人のように攻
み むす き
めなければならないであろうか。 二〇ただし実を結ばない木とわかって
き き たお たたか まち
いる木は切り倒して、あなたと戦 っている町にむかい、それをもってと
きず かんらく せ
りでを築き、陥落するまで、それを攻めることができる。
第二一章
かみ しゅ あた え ち ころ の たお
あなたの神、主が与えて獲させられる地で、殺されて野に倒れている

申命記

ひと ころ とき ちょうろう
人があって、だれが殺したのかわからない時は、 二長 老たちと、さばき

91
で ころ もの ところ しゅうい まちまち
びとたちが出てきて、その殺された者のある所から、周囲の町々までの
きょ り ころ もの ところ
距離 を は か ら な け れ ば な ら な い。 三そ し て そ の 殺 さ れ た 者 の あ る 所 に
もっと ちか まち ちょうろう つか お ひ
最も近い町の長 老たちは、まだ使わない、まだくびきを負わせて引いた
わか めうし まち ちょうろう めうし たがや
ことのない若い雌牛をとり、四その町の長 老たちはその雌牛を、耕すこ
たね た みず なが たに ひ
とも、種まくこともしない、絶えず水の流れている谷へ引いていって、そ
たに めうし お とき しそん
の 谷 で 雌牛 の く び を 折 ら な け れ ば な ら な い。 五そ の 時 レ ビ の 子孫 で あ
さいし すす で かれ かみ しゅ
る祭司たちは、そこに進み出なければならない。彼らはあなたの神、主
じぶん つか しゅ な しゅくふく えら もの
が自分に仕えさせ、また主の名によって祝 福させるために選ばれた者
ろんそう ぼうこう かれ ことば かいけつ
で、すべての論争と、すべての暴行は彼らの言葉によって解決されるか
ころ もの ところ もっと ちか まち ちょうろう
らである。 六そしてその殺された者のある所に最も近い町の長 老たち
みな かれ たに お めうし うえ て あら しょうげん い
は皆、彼らが谷でくびを折った雌牛の上で手を洗い、 七証 言して言わな
て ち なが め
ければならない、﹃われわれの手はこの血を流さず、われわれの目もそれ
み しゅ たみ
を見なかった。 八主よ、あなたがあがなわれた民イスラエルをおゆるし
申命記

つみ もの ち なが たみ
ください。罪のない者の血を流したとがを、あなたの民イスラエルのう

92
ち なが
ちにとどめないでください。そして血を流したとがをおゆるしくださ
しゅ ただ み こと
い﹄。 九このようにして、あなたは主が正しいと見られる事をおこない、
つみ もの ち なが のぞ さ
罪のない者の血を流したとがを、あなたがたのうちから除き去らなけれ
ばならない。
で てき たたか さい かみ しゅ て
一〇 あなたが出て敵と戦う際、あなたの神、主がそれをあなたの手にわた
ほ りょ とき ほ りょ うつく おんな
され、あなたがそれを捕虜とした時、一一もし捕虜のうちに美しい女のあ
み この つま おんな
るのを見て、それを好み、妻にめとろうとするならば、 一二その女をあな
いえ つ かえ おんな かみ き
たの家に連れて帰らなければならない。 女は髪をそり、つめを切り、 一
ほ りょ きもの ぬ いえ じぶん ふ ぼ
また捕虜の着物を脱ぎすてて、あなたの家におり、自分の父母のため

げつ なげ のち かのじょ ところ
に一か月のあいだ嘆かなければならない。そして後、あなたは彼女の所
おっと かのじょ つま のち
にはいって、その夫となり、彼女を妻とすることができる。 一四その後あ
かのじょ この かのじょ じゆう さ
なたがもし彼女を好まなくなったならば、彼女を自由に去らせなければ
けっ かね う かのじょ
ならない。決して金で売ってはならない。あなたはすでに彼女をはず
申命記

かのじょ どれい
かしめたのだから、彼女を奴隷のようにあしらってはならない。

93
ひと つま あい もの き
一五 人がふたりの妻をもち、そのひとりは愛する者、ひとりは気にいらな
もの あい もの き もの おとこ
い者であって、その愛する者と気にいらない者のふたりが、ともに男の
こ う ちょうし き おんな う もの とき
子を産み、もしその長子が、気にいらない女の産んだ者である時は、 一六
こ じぶん ざいさん つ とき き おんな う ちょうし
その子たちに自分の財産を継がせる時、気にいらない女の産んだ長子を
あい おんな う こ ちょうし かなら
さしおいて、愛する女の産んだ子を長子とすることはできない。 一七 必
き もの う こ ちょうし みと じぶん ざいさん
ずその気にいらない者の産んだ子が長子であることを認め、自分の財産
わ とき ばい わ まえ あた
を分ける時には、これに二倍の分け前を与えなければならない。これは
じぶん ちから はじ ちょうし とっけん も
自分の力の初めであって、長子の特権を持っているからである。
て お こ ちち ことば はは ことば
一八 もし、わがままで、手に負えない子があって、父の言葉にも、母の言葉
したが ふ ぼ こ とき ふ ぼ
にも従わず、父母がこれを懲らしてもきかない時は、一九その父母はこれ
とら まち もん い まち ちょうろう まえ だ まち ちょうろう
を捕えて、その町の門に行き、町の長 老たちの前に出し、 二〇町の長 老
い こ て
たちに言わなければならない、﹃わたしたちのこの子はわがままで、手に
お ことば したが み も わる だい さ け の
負 え ま せ ん。わ た し た ち の 言葉 に 従 わ ず、身持ち が悪 く、大酒飲 み で
申命記

まち ひと みな かれ いし う ころ
す﹄。 二一そのとき、町の人は皆、彼を石で撃ち殺し、あなたがたのうち

94
あく のぞ さ みな き
から悪を除き去らなければならない。そうすれば、イスラエルは皆聞い
おそ
て恐れるであろう。
ひと し つみ おか ころ き うえ
二二 もし人が死にあたる罪を犯して殺され、あなたがそれを木の上にか
とき よくあさ したい き うえ と
け る 時 は、 二三翌朝 ま で そ の 死体 を 木 の 上 に 留 め て お い て は な ら な い。
かなら ひ う き もの
必ずそれをその日のうちに埋めなければならない。木にかけられた者
かみ もの かみ しゅ し ぎょう たま
は神にのろわれた者だからである。あなたの神、主が嗣 業として賜わ
ち けが
る地を汚してはならない。
第二二章
きょうだい うし ひつじ まよ み み す
一あなたの兄 弟の牛、または羊の迷っているのを見て、それを見捨てて
かなら きょうだい つ かえ
おいてはならない。 必ずそれを兄 弟のところへ連れて帰らなければな
きょうだい ちか もの し ひと
らない。 二もしその兄 弟が近くの者でなく、知らない人であるならば、
申命記

じぶん いえ きょうだい たず
それを自分の家にひいてきて、あなたのところにおき、その兄 弟が尋ね

95
とき かれ かえ きょうだい
てきた時に、それを彼に返さなければならない。 三あなたの兄 弟のろば
ばあい きもの ばあい
の場合も、そうしなければならない。着物の場合も、そうしなければな
きょうだい うしな もの み ばあい
らない。またすべてあなたの兄 弟の失 った物を見つけた場合も、そう
み す
し な け れ ば な ら な い。そ れ を 見捨 て て お く こ と は で き な い。 四あ な た
きょうだい うし みち たお み み す
の兄 弟のろばまたは牛が道に倒れているのを見て、見捨てておいては
かなら たす おこ
ならない。 必ずそれを助け起さなければならない。
おんな おとこ きもの き おとこ おんな きもの き
五 女は男の着物を着てはならない。また男は女の着物を着てはならな
かみ しゅ こと もの い
い。あなたの神、主はそのような事をする者を忌みきらわれるからであ
る。
みち き うえ じめん とり す み
六もしあなたが道で、木の上、または地面に鳥の巣のあるのを見つけ、そ
なか ひよこ たまご ははとり ひよこ たまご だ
の中に雛または卵があって、母鳥がその雛または卵を抱いているなら
ははとり ひよこ いっしょ と かなら ははとり さ ひよこ
ば、母鳥を雛と一緒に取ってはならない。 七 必ず母鳥を去らせ、ただ雛
と え なが
だけを取らなければならない。そうすればあなたはさいわいを得、長く
申命記


生きながらえることができるであろう。

96
あたら いえ た とき や ね らんかん もう
八 新しい家を建てる時は、屋根に欄干を設けなければならない。それ
ひと や ね お ち いえ き
は人が屋根から落ちて、血のとがをあなたの家に帰することのないよう
にするためである。
はたけ しゅ たね ま
ぶどう畑に二種の種を混ぜてまいてはならない。そうすればあなた

たね さん もの はたけ で もの い もの
がまいた種から産する物も、ぶどう畑から出る物も、みな忌むべき物と
うし く あ たがや
なるであろう。 一〇牛と、ろばとを組み合わせて耕してはならない。 一一
ようもう あ ま いと ま お きもの き
羊毛と亜麻糸を混ぜて織った着物を着てはならない。
み うわぎ
一二 身にまとう上着の四すみに、ふさをつけなければならない。
ひと つま つま のち おんな
一三 もし人が妻をめとり、妻のところにはいって後、その女をきらい、 一
おんな ちか とき かのじょ しょじょ しょうこ み
﹃わ た し は こ の 女 を め と っ て 近 づ い た 時、彼女 に 処女 の 証拠 を 見 な

い きょ ぎ ひなん おんな あくめい お
かった﹄と言って虚偽の非難をもって、その女に悪名を負わせるならば、
おんな ちち はは かのじょ しょじょ しょうこ と もん まち ちょうろう
一五 その女の父と母は、彼女の処女の証拠を取って、門におる町の長 老
さ だ かのじょ ちち ちょうろう い
たちに差し出し、 一六そして彼女の父は長 老たちに言わなければならな
申命記

ひと むすめ あた つま ひと むすめ
い。﹃わたしはこの人に娘を与えて妻にさせましたが、この人は娘をき

97
きょ ぎ ひなん むすめ しょじょ しょうこ み
らい、 一七虚偽の非難をもって、
﹁わたしはあなたの娘に処女の証拠を見
い むすめ しょじょ しょうこ
なかった﹂と言います。しかし、これがわたしの娘の処女の証拠です﹄と
い ふ ぼ ぬの まち ちょうろう まえ
言って、その父母はかの布を町の長 老たちの前にひろげなければなら
とき まち ちょうろう ひと とら う こ
ない。 一八その時、町の長 老たちは、その人を捕えて撃ち懲らし、 一九ま
ぎん ばっきん か おんな ちち あた かれ
た銀百シケルの罰金を課し、それを女の父に与えなければならない。彼
しょじょ あくめい お かれ おんな つま
はイスラエルの処女に悪名を負わせたからである。彼はその女を妻と
いっしょう おんな だ ひなん しんじつ
し、 一 生その女を出すことはできない。 二〇しかし、この非難が真実で
おんな しょじょ しょうこ み とき おんな ちち いえ
あって、その女に処女の証拠が見られない時は、 二一その女を父の家の
いりぐち だ まち ひとびと かのじょ いし う ころ
入口 に ひ き 出 し、町 の 人々 は 彼女 を 石 で 撃 ち 殺 さ な け れ ば な ら な い。
かのじょ ちち いえ こと おろ こと
彼女は父の家で、みだらな事をおこない、イスラエルのうちに愚かな事
あく のぞ
をしたからである。あなたはこうしてあなたがたのうちから悪を除き

去らなければならない。
おっと おんな ね おとこ み おんな ね おとこ
二二 もし夫のある女と寝ている男を見つけたならば、その女と寝た男お
申命記

おんな いっしょ ころ あく のぞ さ
よびその女を一緒に殺し、こうしてイスラエルのうちから悪を除き去ら

98
なければならない。
しょじょ おんな ひと こんやく のち た おとこ まち うち おんな あ
二三もし処女である女が、人と婚約した後、他の男が町の内でその女に会
おか まち もん だ
い、これを犯したならば、二四あなたがたはそのふたりを町の門にひき出
いし う ころ おんな まち うち
して、石で撃ち殺さなければならない。これはその女が町の内におりな
さけ おとこ りんじん つま
がら叫ばなかったからであり、またその男は隣人の妻をはずかしめたか
あく のぞ さ
らである。あなたはこうしてあなたがたのうちから悪を除き去らなけ
ればならない。
おとこ ひと こんやく おんな の あ おんな とら
二五しかし、 男が、人と婚約した女に野で会い、その女を捕えてこれを
おか おとこ ころ おんな なに
犯したならば、その男だけを殺さなければならない。 二六その女には何
おんな し つみ ひと りんじん た
もしてはならない。 女には死にあたる罪がない。人がその隣人に立ち
ころ おな じけん おとこ の
むかって、それを殺したと同じ事件だからである。 二七これは男が野で
おんな あ ひと こんやく おんな さけ すく もの
女に会ったので、人と婚約したその女が叫んだけれども、救う者がな
かったのである。
申命記

ひと こんやく しょじょ おんな おとこ あ とら おか


二八まだ人と婚約しない処女である女に、男が会い、これを捕えて犯し、

99
み おんな おか おとこ おんな ちち ぎん
ふたりが見つけられたならば、 二九 女を犯した男は女の父に銀五十シケ
あた おんな じぶん つま かれ おんな
ルを与えて、 女を自分の妻としなければならない。彼はその女をはず
いっしょう おんな だ
かしめたゆえに、 一 生その女を出すことはできない。
ちち つま ちち つま ね
三〇 だれも父の妻をめとってはならない。父の妻と寝てはならない。
第二三章
きょせい だんし しゅ かいしゅう くわ
すべて去勢した男子は主の会 衆に加わってはならない。

し せ い じ しゅ かいしゅう くわ しそん だい しゅ
私生児は主の会 衆に加わってはならない。その子孫は十代までも主

かいしゅう くわ
の会 衆に加わってはならない。
しゅ かいしゅう くわ かれ
アンモンびととモアブびとは主の会 衆に加わってはならない。彼ら

しそん だい しゅ かいしゅう くわ
の子孫は十代までも、いつまでも主の会 衆に加わってはならない。 四こ
で とき かれ みず たずさ
れはあなたがたがエジプトから出てきた時に、彼らがパンと水を携えて
申命記

みち むか こ
あなたがたを道に迎えず、アラム・ナハライムのペトルからベオルの子

100
やと
バラムを雇って、あなたをのろわせようとしたからである。 五しかし、
かみ しゅ い き かみ しゅ
あなたの神、主はバラムの言うことを聞こうともせず、あなたの神、主
か しゅくふく かみ
はあなたのために、そののろいを変えて、祝 福とされた。あなたの神、
しゅ あい いっしょう かれ
主があなたを愛されたからである。 六あなたは一 生いつまでも彼らの
へいあん こうふく もと
ために平安をも、幸福をも求めてはならない。
にく かれ きょうだい
七あなたはエドムびとを憎んではならない。彼はあなたの兄 弟だから
にく
である。またエジプトびとを憎んではならない。あなたはかつてその
くに きりゅうしゃ かれ う こ だい
国 の 寄留者 で あ っ た か ら で あ る。 八そ し て 彼 ら が 産 ん だ 子 ど も は 三 代
め しゅ かいしゅう くわ
目には、主の会 衆に加わることができる。
てき せ で じんえい とき けが もの さ
九敵を攻めるために出て陣営におる時は、すべての汚れた物を避けなけ
ればならない。
よる おも こと み けが ひと
一〇 あなたがたのうちに、夜の思いがけない事によって身の汚れた人が
じんえい そと で じんえい うち
あるならば、陣営の外に出なければならない。陣営の内に、はいっては
申命記

ゆうがた みず み あら ひ ぼっ のち じんえい
ならない。 一一しかし、夕方になって、水で身を洗い、日が没して後、陣営

101
うち
の内に、はいることができる。
じんえい そと ところ もう よう とき
一二 あなたはまた陣営の外に一つの所を設けておいて、用をたす時、そこ
で い ぶ き とも そな そと で
に出て行かなければならない。 一三また武器と共に、くわを備え、外に出
とき つち ほ む で もの
て、かがむ時、それをもって土を掘り、向きをかえて、出た物をおおわ
かみ しゅ すく てき
なければならない。 一四あなたの神、主があなたを救い、敵をあなたにわ
じんえい なか あゆ じんえい せい ところ
たそうと、陣営の中を歩まれるからである。ゆえに陣営は聖なる所とし
たも しゅ もの
て保たなければならない。主があなたのうちにきたない物のあるのを
み はな さ
見て、離れ去られることのないためである。
しゅじん さ に どれい しゅじん
一五 主人を避けて、あなたのところに逃げてきた奴隷を、その主人にわた
もの とも
してはならない。 一六その者をあなたがたのうちに、あなたと共におら
まち かれ この えら ば しょ す
せ、町の一つのうち、彼が好んで選ぶ場所に住ませなければならない。
かれ ぎゃくたい
彼を虐 待してはならない。
じょ し しんでんしょうふ
一七 イスラエルの女子は神殿娼婦となってはならない。またイスラエル
申命記

だんし しんでんだんしょう しょうふ え あたい だんしょう


の 男子 は 神殿 男 娼 と な っ て は な ら な い。 一八娼婦 の 得 た 価 ま た は 男 娼

102
あたい かみ しゅ いえ たずさ い せいがん もち
の価をあなたの神、主の家に携えて行って、どんな誓願にも用いてはな
かみ しゅ にく
らない。これはともにあなたの神、主の憎まれるものだからである。
きょうだい りそく と か きんせん りそく しょくもつ りそく
一九 兄 弟に利息を取って貸してはならない。金銭の利息、 食 物の利息
か りそく もの りそく と がいこくじん
などすべて貸して利息のつく物の利息を取ってはならない。 二〇外国人
りそく と か きょうだい りそく と か
には利息を取って貸してもよい。ただ兄 弟には利息を取って貸しては
と ち かみ しゅ
ならない。これはあなたが、はいって取る地で、あなたの神、主がすべ
こと しゅくふく あた
てあなたのする事に祝 福を与えられるためである。
かみ しゅ せいがん とき はた おこた
あなたの神、主に誓願をかける時、それを果すことを怠 ってはなら
二一
かみ しゅ かなら もと
ない。あなたの神、主は必ずそれをあなたに求められるからである。そ
おこた つみ え せいがん
れを怠るときは罪を得るであろう。 二二しかし、あなたが誓願をかけな
つみ え くち い こと まも おこな
いならば、罪を得ることはない。 二三あなたが口で言った事は守って行
くち やくそく こと かみ しゅ
わなければならない。あなたが口で約束した事は、あなたの神、主にあ
じ は つ まと せいがん
なたが自発的に誓願したのだからである。
申命記

りんじん はたけ とき こころ あ


あなたが隣人のぶどう畑にはいる時、そのぶどうを心にまかせて飽
二四

103
た うつわ なか と い
きるほど食べてもよい。しかし、あなたの器の中に取り入れてはならな
りんじん むぎばたけ とき て ほ つ た
い。 二五あなたが隣人の麦 畑にはいる時、手でその穂を摘んで食べても
りんじん むぎばたけ い
よい。しかし、あなたの隣人の麦 畑にかまを入れてはならない。
第二四章
ひと つま けっこん おんな は
人が妻をめとって、結婚したのちに、その女に恥ずべきことのあるの

み この り え ん じょう か かのじょ て わた いえ
を見て、好まなくなったならば、離縁 状を書いて彼女の手に渡し、家を
さ おんな いえ で い ひと
去らせなければならない。 二 女がその家を出てのち、行って、ほかの人
のち おっと かのじょ り え ん じょう か て わた
にとつぎ、 三後の夫も彼女をきらって、離縁 状を書き、その手に渡して
いえ さ つま のち おっと し かのじょ
家を去らせるか、または妻にめとった後の夫が死んだときは、 四彼女は
み けが かのじょ さ さき おっと
すでに身を汚したのちであるから、彼女を去らせた先の夫は、ふたたび
かのじょ つま しゅ まえ にく こと
彼女を妻にめとることはできない。これは主の前に憎むべき事だから
申命記

かみ しゅ し ぎょう あた ち つみ お
である。あなたの神、主が嗣 業としてあなたに与えられる地に罪を負

104
わせてはならない。
ひと あら つま とき せんそう だ なに つとめ
人が新たに妻をめとった時は、戦争に出してはならない。また何の務

お ひと ねん あいだ そくばく いえ
もこれに負わせてはならない。その人は一年の間、束縛なく家にいて、
つま なぐさ
そのめとった妻を慰めなければならない。
うわいし しつ いのち
ひきうす、またはその上石を質にとってはならない。これは命をつな

しつ
ぐものを質にとることだからである。
ひとびと どうほう どれい
イスラエルの人々のうちの同胞のひとりをかどわかして、これを奴隷

う もの み
のようにあしらい、またはこれを売る者を見つけたならば、そのかどわ
もの ころ あく のぞ さ
かした者を殺して、あなたがたのうちから悪を除き去らなければならな
い。
びょう た とき き さいし おし
らい病の起った時は気をつけて、すべてレビびとたる祭司が教えるこ

まも おこな かれ めい
とを、よく守って行わなければならない。すなわちわたしが彼らに命じ
まも おこな
たように、あなたがたはそれを守って行わなければならない。 九あなた
申命記

で みち かみ しゅ
がたがエジプトから出てきたとき、道であなたの神、主がミリアムにさ

105
きおく
れたことを記憶しなければならない。
りんじん もの か じぶん いえ しちもの
一〇 あなたが隣人に物を貸すときは、自分でその家にはいって、質物を
と そと た か ひと しちもの そと
取ってはならない。 一一あなたは外に立っていて、借りた人が質物を外
も だ ひと
にいるあなたのところへ持ち出さなければならない。 一二もしその人が
まず ひと とき しちもの と ね
貧しい人である時は、あなたはその質物を留めおいて寝てはならない。
しちもの ひ い かなら かえ
一三 その質物は日の入るまでに、 必ず返さなければならない。そうすれ
かれ じぶん うわぎ ね しゅくふく
ば彼は自分の上着をかけて寝ることができて、あなたを祝 福するであ
かみ しゅ まえ ぎ
ろう。それはあなたの神、主の前にあなたの義となるであろう。
まず とぼ やといにん どうほう くに まち
一四 貧しく乏しい雇 人は、同胞であれ、またはあなたの国で、町のうち
きりゅう た こ く じん ぎゃくたい ちんぎん
に寄留している他国人であれ、それを虐 待してはならない。 一五賃銀は
ひ はら ひ い の かれ まず
その日のうちに払い、それを日の入るまで延ばしてはならない。彼は貧
もの こころ かれ
しい者で、その心をこれにかけているからである。そうしなければ彼は
しゅ うった つみ え
あなたを主に訴えて、あなたは罪を得るであろう。
申命記

ちち こ ころ こ ちち ころ
一六 父は子のゆえに殺さるべきではない。子は父のゆえに殺さるべきで

106
じぶん つみ ころ
はない。おのおの自分の罪のゆえに殺さるべきである。
きりゅう た こ く じん こ じ ま か ふ きもの
一七 寄留の他国人または孤児のさばきを曲げてはならない。寡婦の着物
しつ と どれい
を質に取ってはならない。 一八あなたはかつてエジプトで奴隷であった
かみ しゅ すく だ きおく
が、あなたの神、主がそこからあなたを救い出されたことを記憶しなけ
こと めい
ればならない。それでわたしはあなたにこの事をせよと命じるのであ
る。
はたけ こくもつ か とき ひとたば はたけ わす
一九 あなたが畑で穀物を刈る時、もしその一束を畑におき忘れたならば、
と ひ かえ きりゅう た こ く じん こ じ
そ れ を 取 り に 引 き 返 し て は な ら な い。そ れ は 寄留 の 他国人 と 孤児 と
か ふ と かみ しゅ
寡婦に取らせなければならない。そうすればあなたの神、主はすべてあ
こと しゅくふく
なたがする事において、あなたを祝 福されるであろう。 二〇あなたがオ
み おと えだ さが
リブの実をうち落すときは、ふたたびその枝を捜してはならない。それ
きりゅう た こ く じん こ じ か ふ と
を寄留の他国人と孤児と寡婦に取らせなければならない。 二一またぶど
はたけ つ と のこ さが
う畑のぶどうを摘み取るときは、その残ったものを、ふたたび捜しては
申命記

きりゅう た こ く じん こ じ か ふ と
ならない。それを寄留の他国人と孤児と寡婦に取らせなければならな

107
くに どれい きおく
い。 二二あなたはかつてエジプトの国で奴隷であったことを記憶しなけ
こと めい
ればならない。それでわたしはあなたにこの事をせよと命じるのであ
る。
第二五章
ひと ひと あいだ あらそ こと もと
人と人との間に争い事があって、さばきを求めてきたならば、さばき

ただ もの ただ わる もの わる
びとはこれをさばいて、正しい者を正しいとし、悪い者を悪いとしなけ
わる もの う もの
ればならない。 二その悪い者が、むち打つべき者であるならば、さばき
かれ ふ じぶん まえ つみ かぞ かれ う
びとは彼を伏させ、自分の前で、その罪にしたがい、数えて彼をむち打
かれ う こ
たせなければならない。 三彼をむち打つには四十を越えてはならない。
こ おお う きょうだい
もしそれを越えて、それよりも多くむちを打つときは、あなたの兄 弟は
め まえ
あなたの目の前で、はずかしめられることになるであろう。
申命記

だっこく うし か
脱穀をする牛にくつこを掛けてはならない。

108
きょうだい いっしょ す し こ とき
五兄 弟が一緒に住んでいて、そのうちのひとりが死んで子のない時は、
し もの つま で たにん おっと きょうだい
その死んだ者の妻は出て、他人にとついではならない。その夫の兄 弟
かのじょ ところ つま おっと きょうだい みち かのじょ
が彼女の所にはいり、めとって妻とし、夫の兄 弟としての道を彼女につ
おんな はじ う おとこ こ し
くさなければならない。 六そしてその女が初めに産む男の子に、死んだ
きょうだい な つ な た
兄 弟の名を継がせ、その名をイスラエルのうちに絶やさないようにし
ひと きょうだい つま この
なければならない。 七しかしその人が兄 弟の妻をめとるのを好まない
きょうだい つま まち もん い ちょうろう い
ならば、その兄 弟の妻は町の門へ行って、 長 老たちに言わなければな
おっと きょうだい きょうだい な のこ
らない、﹃わたしの夫の兄 弟はその兄 弟の名をイスラエルのうちに残す
こば おっと きょうだい みち この
のを拒んで、 夫の兄 弟としての道をつくすことを好みません﹄。 八その
まち ちょうろう かれ よ よ
とき町の長 老たちは彼を呼び寄せて、さとさなければならない。もし
かれ こしつ かのじょ この い
彼が固執して、﹃わたしは彼女をめとることを好みません﹄と言うなら
きょうだい つま ちょうろう め まえ かれ い あし
ば、 九その兄 弟の妻は長 老たちの目の前で、彼のそばに行き、その足の
ぬ かお こた い
く つ を 脱 が せ、そ の 顔 に つ ば き し て、答 え て 言 わ な け れ ば な ら な い。
申命記

きょうだい いえ もの かれ
﹃兄 弟の家をたてない者には、このようにすべきです﹄。 一〇そして彼の

109
いえ な ぬ もの いえ よ
家の名は、くつを脱がされた者の家と、イスラエルのうちで呼ばれるで
あろう。
ひと たがい あらそ ひと つま う もの て
一一ふたりの人が互に争うときに、そのひとりの人の妻が、打つ者の手か
おっと すく ちか て の ひと かく ところ
ら夫を救おうとして近づき、手を伸べて、その人の隠し所をつかまえる
おんな て き おと
ならば、 一二その女の手を切り落さなければならない。あわれみをかけ
てはならない。
ふくろ だいしょう しゅ おも いし い
一三 あなたの袋に大 小 二種の重り石を入れておいてはならない。 一四あ
いえ だいしょう しゅ ふそく ただ
な た の 家 に 大 小 二 種 の ま す を お い て は な ら な い。 一五不足 の な い 正 し
おも いし も ふそく ただ も
い重り石を持ち、また不足のない正しいますを持たなければならない。
かみ しゅ たま ち なが いのち たも
そうすればあなたの神、主が賜わる地で、あなたは長く命を保つことが
ふせい もの かみ しゅ
できるであろう。 一六すべてこのような不正をする者を、あなたの神、主
にく
が憎まれるからである。
で とき みち
一七あなたがエジプトから出てきた時、道でアマレクびとがあなたにし
申命記

きおく かれ みち
た こ と を 記憶 し な け れ ば な ら な い。 一八す な わ ち 彼 ら は 道 で あ な た に

110
で あ つか とき
出会い、あなたがうみ疲れている時、うしろについてきていたすべての
よわ もの せ う かれ かみ おそ
弱っている者を攻め撃った。このように彼らは神を恐れなかった。 一九
かみ しゅ し ぎょう たま ち かみ しゅ
それで、あなたの神、主が嗣 業として賜わる地で、あなたの神、主があ
しゅうい てき せいふく あんそく あた とき
なたの周囲のすべての敵を征服して、あなたに安息を与えられる時、あ
な てん した け さ こと
なたはアマレクの名を天の下から消し去らなければならない。この事
わす
を忘れてはならない。
第二六章
かみ しゅ し ぎょう たま くに しょゆう
一あなたの神、主が嗣 業として賜わる国にはいって、それを所有し、そ
す とき かみ しゅ たま くに ち み
こに住む時は、 二あなたの神、主が賜わる国にできる、地のすべての実
はつもの と い かみ しゅ な お えら
の初物を取ってかごに入れ、あなたの神、主がその名を置くために選ば
ところ たずさ い とき さいし ところ
れ る 所 へ 携 え て 行 か な け れ ば な ら な い。 三そ し て そ の 時 の 祭司 の 所 へ
申命記

い かれ い かみ しゅ
行って彼に言わなければならない、
﹃きょう、あなたの神、主にわたしは

111
もう しゅ あた せんぞ ちか くに
申します。主がわれわれに与えると先祖たちに誓われた国に、わたしは
さいし て
はいることができました﹄。 四そのとき祭司はあなたの手からそのかご
う と かみ しゅ さいだん まえ お
を受け取ってあなたの神、主の祭壇の前に置かなければならない。
かみ しゅ まえ の い
そして、あなたはあなたの神、主の前に述べて言わなければならない、

せんぞ ひと
﹃わたしの先祖は、さすらいの一アラムびとでありましたが、わずかの人
つ くだ い ところ きりゅう おお
を連れてエジプトへ下って行って、その所に寄留し、ついにそこで大き
つよ にんずう おお こくみん
く、強い、人数の多い国民になりました。 六ところがエジプトびとはわ
なや ろうえき お
れわれをしえたげ、また悩まして、つらい労役を負わせましたが、 七わ
せんぞ かみ しゅ さけ しゅ こえ き
れわれが先祖たちの神、主に叫んだので、主はわれわれの声を聞き、わ
なや ほねお かえり しゅ つよ て の
れわれの悩みと、骨折りと、しえたげとを顧み、 八主は強い手と、伸べ
うで おお おそ こと ふ し ぎ
た腕と、大いなる恐るべき事と、しるしと、不思議とをもって、われわ
みちび だ ところ つ ちち みつ
れをエジプトから導き出し、 九われわれをこの所へ連れてきて、乳と蜜
なが ち たま しゅ
の流れるこの地をわれわれに賜わりました。 一〇主よ、ごらんください。
申命記

たま ち み はつもの たずさ
あなたがわたしに賜わった地の実の初物を、いま携えてきました﹄。そ

112
かみ しゅ まえ お かみ しゅ まえ
してあなたはそれをあなたの神、主の前に置いて、あなたの神、主の前
れいはい かみ しゅ いえ たま
に礼拝し、一一あなたの神、主があなたとあなたの家とに賜わったすべて
よ もの きりゅう た こ く じん
の良い物をもって、レビびとおよびあなたのなかにいる寄留の他国人と
とも よろこ たの
共に喜び楽しまなければならない。
だい ねん ぶん おさ とし さんぶつ
第三年すなわち十分の一を納める年に、あなたがすべての産物の十
一二
ぶん おさ おわ きりゅう た こ く じん こ じ か ふ
分の一を納め終って、それをレビびとと寄留の他国人と孤児と寡婦とに
あた まち かれ あ た とき かみ しゅ
与え、町のうちで彼らに飽きるほど食べさせた時、 一三あなたの神、主の
まえ い せい もの いえ と だ
前で言わなければならない、﹃わたしはその聖なる物を家から取り出し、
きりゅう た こ く じん こ じ か ふ あた
またレビびとと寄留の他国人と孤児と寡婦とにそれを与え、すべてあな
めい めいれい めいれい
たが命じられた命令のとおりにいたしました。わたしはあなたの命令
わす せい もの
にそむかず、またそれを忘れませんでした。 一四わたしはその聖なる物
も た けが み と だ
を喪のうちで食べたことがなく、また汚れた身でそれを取り出したこと
しにん そな
がなく、また死人にそれを供えたことがありませんでした。わたしはわ
申命記

かみ しゅ こえ き したが めい
たしの神、主の声に聞き従い、すべてあなたがわたしに命じられたとお

113
せい てん
りにいたしました。 一五あなたの聖なるすみかである天からみそなわし
たみ あた ち
て、あなたの民イスラエルと、あなたがわれわれに与えられた地とを
しゅくふく せんぞ ちか ちち みつ
祝 福してください。これはあなたがわれわれの先祖に誓われた乳と蜜
なが ち
の流れる地です﹄。
かみ しゅ さだ おこな
一六 きょう、あなたの神、主はこれらの定めと、おきてとを行うことをあ
めい こころ せいしん
なたに命じられる。それゆえ、あなたは心をつくし、精神をつくしてそ
まも おこな しゅ かみ
れを守り行わなければならない。 一七きょう、あなたは主をあなたの神
みち あゆ さだ いまし まも こえ
とし、かつその道に歩み、定めと、 戒めと、おきてとを守り、その声に
き したが めいげん しゅ さき やくそく
聞き従うことを明言した。 一八そして、主は先に約束されたように、きょ
じぶん たから たみ
う、あなたを自分の宝の民とされること、また、あなたがそのすべての
めいれい まも めいげん しゅ ほまれ よ な さか
命令を守るべきことを明言された。 一九主は誉と良き名と栄えとをあな
あた しゅ つく こくみん
たに与えて、主の造られたすべての国民にまさるものとされるであろ
しゅ い かみ しゅ せい たみ
う。あなたは主が言われたように、あなたの神、主の聖なる民となるで
申命記

あろう﹂。

114
第二七章
ちょうろう たみ めい い
モーセとイスラエルの長 老たちとは民に命じて言った、﹁わたしが、

めい いまし まも
きょう、あなたがたに命じるすべての戒めを守りなさい。 二あなたがた
わた かみ しゅ たま くに とき おお
がヨルダンを渡ってあなたの神、主が賜わる国にはいる時、あなたは大
いし す う こ た ぬ わた
きな石数個を立てて、それにしっくいを塗り、三そしてあなたが渡って、
せんぞ かみ しゅ やくそく かみ しゅ たま
あなたの先祖たちの神、主が約束されたようにあなたの神、主が賜わる
ち ちち みつ なが ち とき りっぽう ことば
地、すなわち乳と蜜の流れる地にはいる時、この律法のすべての言葉を
うえ か
その上に書きしるさなければならない。 四すなわち、あなたがたが、ヨ
わた めい
ルダンを渡ったならば、わたしが、きょう、あなたがたに命じるそれら
いし やま た ぬ
の石をエバル山に立て、それにしっくいを塗らなければならない。 五ま
かみ しゅ さいだん いし さいだん きず
たそこにあなたの神、主のために、祭壇、すなわち石の祭壇を築かなけ
てつ うつわ いし あ しぜん いし かみ
ればならない。鉄の器を石に当てず、 六自然のままの石であなたの神、
申命記

しゅ さいだん きず うえ かみ しゅ はんさい
主のために祭壇を築き、その上であなたの神、主に燔祭をささげなけれ

115
しゅうおんさい ぎせい ところ た
ばならない。 七また酬 恩 祭の犠牲をささげて、その所で食べ、あなたの
かみ しゅ まえ よろこ たの りっぽう
神、主の前で喜び楽しまなければならない。 八あなたはこの律法のすべ
ことば いし うえ あき か
ての言葉をその石の上に明らかに書きしるさなければならない﹂。
さいし ひとびと
またモーセとレビびとたる祭司たちとは、イスラエルのすべての人々

い しず き
に言った、
﹁イスラエルよ、静かに聞きなさい。あなたは、きょう、あな
かみ しゅ たみ かみ しゅ こえ き したが
たの神、主の民となった。 一〇それゆえ、あなたの神、主の声に聞き従い、
めい いまし さだ おこな
わたしが、きょう、命じる戒めと定めとを行わなければならない﹂。
ひ たみ めい い
一一 その日またモーセは民に命じて言った、 一二﹁あなたがたがヨルダン
わた とき つぎ ひと やま た たみ しゅくふく
を渡った時、次の人たちはゲリジム山に立って民を祝 福しなければな
らない。すなわちシメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ヨセフおよびベ
つぎ ひと やま た
ニヤミン。 一三また次の人たちはエバル山に立ってのろわなければなら
ない。すなわちルベン、ガド、アセル、ゼブルン、ダンおよびナフタリ。
おおごえ ひとびと つ い
一四 そしてレビびとは大声でイスラエルのすべての人々に告げて言わな
申命記

ければならない。

116
こうじん て さく きざ ぞう い ぞう しゅ にく
﹃工人の手の作である刻んだ像、または鋳た像は、主が憎まれるもの
一五
つく あんち もの たみ
であるから、それを造って、ひそかに安置する者はのろわれる﹄。民は、
こた い
みな答えてアァメンと言わなければならない。
ちち はは かろ もの たみ い
﹃父や母を軽んずる者はのろわれる﹄。民はみなアァメンと言わなけ
一六
ればならない。
りんじん と ち さかい うつ もの たみ い
﹃隣人との土地の境を移す者はのろわれる﹄。民はみなアァメンと言
一七
わなければならない。
もうじん みち まよ もの たみ い
﹃盲人を道に迷わす者はのろわれる﹄。民はみなアァメンと言わなけ
一八
ればならない。
きりゅう た こ く じん こ じ か ふ ま もの たみ
﹃寄留の他国人や孤児、寡婦のさばきを曲げる者はのろわれる﹄。民
一九

はみなアァメンと言わなければならない。
ちち つま おか もの ちち は
﹃父の妻を犯す者は、父を恥ずかしめるのであるからのろわれる﹄。
二〇
たみ い
民はみなアァメンと言わなければならない。
申命記

けもの おか もの たみ い
﹃すべて獣を犯す者はのろわれる﹄。民はみなアァメンと言わなけれ
二一

117
ばならない。
ちち むすめ はは むすめ じぶん しまい おか もの
﹃父の娘、または母の娘である自分の姉妹を犯す者はのろわれる﹄。
二二
たみ い
民はみなアァメンと言わなければならない。
つま はは おか もの たみ い
﹃妻の母を犯す者はのろわれる﹄。民はみなアァメンと言わなければ
二三
ならない。
りんじん う ころ もの たみ い
﹃ひそかに隣人を撃ち殺す者はのろわれる﹄。民はみなアァメンと言
二四
わなければならない。
と つみ もの ころ もの たみ
﹃まいないを取って罪なき者を殺す者はのろわれる﹄。民はみなアァ
二五

メンと言わなければならない。
りっぽう ことば まも おこな もの たみ
﹃この律法の言葉を守り行わない者はのろわれる﹄。民はみなアァメ
二六

ンと言わなければならない。
申命記

118
第二八章
かみ しゅ こえ き したが
もしあなたが、あなたの神、主の声によく聞き従い、わたしが、きょ

めい いまし まも おこな かみ しゅ
う、命じるすべての戒めを守り行うならば、あなたの神、主はあなたを
ち こくみん うえ た
地のもろもろの国民の上に立たせられるであろう。 二もし、あなたがあ
かみ しゅ こえ き したが しゅくふく のぞ
なたの神、主の声に聞き従うならば、このもろもろの祝 福はあなたに臨
およ まち うち しゅくふく はたけ
み、あなたに及ぶであろう。 三あなたは町の内でも祝 福され、 畑でも
しゅくふく み うま ち さん
祝 福されるであろう。 四またあなたの身から生れるもの、地に産する
もの かちく う うし こ ひつじ こ しゅくふく
物、家畜の産むもの、すなわち牛の子、 羊の子は祝 福されるであろう。
しゅくふく
五またあなたのかごと、こねばちは祝 福されるであろう。 六あなたは、
しゅくふく で しゅくふく
はいるにも祝 福され、出るにも祝 福されるであろう。
てき た せ とき しゅ う やぶ
敵が起ってあなたを攻める時は、主はあなたにそれを撃ち敗らせられ

かれ みち せ く まえ みち
るであろう。彼らは一つの道から攻めて来るが、あなたの前で七つの道
申命記

に さ しゅ めい しゅくふく くら て
から逃げ去るであろう。 八主は命じて祝 福をあなたの倉と、あなたの手

119
かみ しゅ たま ち しゅくふく
のすべてのわざにくだし、あなたの神、主が賜わる地であなたを祝 福さ
かみ しゅ いまし まも みち あゆ
れるであろう。 九もし、あなたの神、主の戒めを守り、その道を歩むな
しゅ ちか た せい たみ
らば、主は誓われたようにあなたを立てて、その聖なる民とされるであ
ち たみ みな しゅ な とな
ろう。 一〇そうすれば地のすべての民は皆あなたが主の名をもって唱え
み おそ しゅ あた
ら れ る の を 見 て あ な た を 恐 れ る で あ ろ う。 一一主 が あ な た に 与 え る と
せんぞ ちか ち しゅ よ もの み うま もの
先祖に誓われた地で、主は良い物、すなわちあなたの身から生れる者、
かちく う ち さん もの ゆた しゅ
家畜の産むもの、地に産する物を豊かにされるであろう。 一二主はその
たから くら てん ひら あめ きせつ
宝の蔵である天をあなたのために開いて、雨を季節にしたがってあなた
ち ふ て しゅくふく
の地に降らせ、あなたの手のすべてのわざを祝 福されるであろう。あ
おお こくみん か か
なたは多くの国民に貸すようになり、借りることはないであろう。 一三
しゅ お
主はあなたをかしらとならせ、尾とはならせられないであろう。あなた
さか おとろ めい
はただ栄えて衰えることはないであろう。きょう、わたしが命じるあな
かみ しゅ いまし き したが まも おこな かなら
たの神、主の戒めに聞き従 って、これを守り行うならば、あなたは必ず
申命記

めい
こ の よ う に な る で あ ろ う。 一 四き ょ う、わ た し が 命 じ る こ の す べ て の

120
ことば はな みぎ ひだり まが た かみがみ したが つか
言葉を離れて右または左に曲り、他の神々に従い、それに仕えてはなら
ない。
かみ しゅ こえ き したが めい
しかし、あなたの神、主の声に聞き従わず、きょう、わたしが命じる
一五
いまし さだ まも おこな
すべての戒めと定めとを守り行わないならば、このもろもろののろいが
のぞ およ まち
あなたに臨み、あなたに及ぶであろう。 一六あなたは町のうちでものろ
はたけ
われ、 畑でものろわれ、 一七あなたのかごも、こねばちものろわれ、 一八
み うま ち さん もの うし こ ひつじ こ
あなたの身から生れるもの、地に産する物、牛の子、 羊の子ものろわれ

るであろう。 一九あなたは、はいるにものろわれ、出るにものろわれるで
あろう。
しゅ て はたら こんらん こら
主はあなたが手をくだすすべての働きにのろいと、混乱と、懲しめと
二〇
おく ほろ は
を送られ、あなたはついに滅び、すみやかにうせ果てるであろう。これ
あく す しゅ えきびょう
はあなたが悪をおこなってわたしを捨てたからである。 二一主は疫 病を
み い と ち た
あなたの身につかせ、あなたが行って取る地から、ついにあなたを断ち
申命記

ほろ しゅ はいびょう ねつびょう えんしょう あいだ ねつ


滅ぼされるであろう。 二二主はまた肺 病と熱 病と炎 症と間けつ熱と、か

121
た が くさ ほ う
んばつと、立ち枯れと、腐り穂とをもってあなたを撃たれるであろう。
お ほろ
これらのものはあなたを追い、ついにあなたを滅ぼすであろう。 二三あ
あたま うえ てん せいどう した ち てつ
なたの頭の上の天は青銅となり、あなたの下の地は鉄となるであろう。
しゅ ち あめ かわ てん
二四 主はあなたの地の雨を、ちりと、ほこりに変らせ、それが天からあな
うえ ほろ
たの上にくだって、ついにあなたを滅ぼすであろう。
しゅ てき まえ やぶ みち
二五 主はあなたを敵の前で敗れさせられるであろう。あなたは一つの道
かれ せ い かれ まえ みち に さ
から彼らを攻めて行くが、彼らの前で七つの道から逃げ去るであろう。
ち くに おそ み
そしてあなたは地のもろもろの国に恐るべき見せしめとなるであろう。
したい そら とり ち けもの
二六 またあなたの死体は空のもろもろの鳥と、地の獣とのえじきとなり、
お はら もの しゅ はれもの
し か も そ れ を 追 い 払 う 者 は な い で あ ろ う。 二七主 は エ ジ プ ト の 腫物 と
かいよう かいけつびょう う
潰瘍と壊 血 病とひぜんとをもってあなたを撃たれ、あなたはいやされ
しゅ う き くる め
ることはないであろう。 二八また主はあなたを撃って気を狂わせ、目を
み こころ こんらん もうじん くら
見えなくし、 心を混乱させられるであろう。 二九あなたは盲人が暗やみ
申命記

てさぐ まひる てさぐ ゆ みち


に手探りするように、真昼にも手探りするであろう。あなたは行く道で

122
さか つね
栄えることがなく、ただ常にしえたげられ、かすめられるだけで、あな
すく もの つま ひと
たを救う者はないであろう。 三〇あなたは妻をめとっても、ほかの人が
かのじょ ね いえ た なか す
彼女と寝るであろう。家を建てても、その中に住まないであろう。ぶど
はたけ つく み つ と
う畑を作っても、その実を摘み取ることがないであろう。 三一あなたの
うし め まえ た
牛が目の前でほふられても、あなたはそれを食べることができず、あな
め まえ うば かえ ひつじ てき
たのろばが目の前で奪われても、返されないであろう。あなたの羊が敵
すく かえ もの
のものになっても、それを救ってあなたに返す者はないであろう。 三二
むすめ たこくみん め み
あ な た の む す こ や 娘 は 他国民 に わ た さ れ る。あ な た の 目 は そ れ を 見、
しゅうじつ かれ した おとろ て ほどこ
終 日、彼らを慕って衰えるが、あなたは手を施すすべもないであろう。
ち さんぶつ ろう え もの し
三三 あなたの地の産物およびあなたの労して獲た物はみなあなたの知ら
たみ た つね くる
ない民が食べるであろう。あなたは、ただ常にしえたげられ、苦しめら
め み ことがら き
れるのみであろう。 三四こうしてあなたは目に見る事柄によって、気が
くる しゅ わる
狂うにいたるであろう。 三五主はあなたのひざと、はぎとに悪い、いやし
申命記

え はれもの しょう あし うら あたま いただき およ


得ない腫物を生じさせて、足の裏から頭の頂にまで及ぼされるであろ

123
う。
しゅ た おう たずさ せんぞ
三六主はあなたとあなたが立てた王とを携えて、あなたもあなたの先祖
し くに うつ き いし つく
も知らない国に移されるであろう。あなたはそこで木や石で造ったほ
かみがみ つか しゅ お
かの神々に仕えるであろう。 三七あなたは主があなたを追いやられるも
たみ おどろ わら ぐさ
ろもろの民のなかで驚きとなり、ことわざとなり、笑い草となるであろ
おお たね はたけ たずさ で しゅうかく すく
う。 三八あなたが多くの種を畑に携えて出ても、その収 穫は少ないであ
く はたけ
ろう。いなごがそれを食いつくすからである。 三九あなたがぶどう畑を
つく しゅ の み
作り、それにつちかっても、そのぶどう酒を飲むことができず、その実
あつ むし た
を集めることもないであろう。虫がそれを食べるからである。 四〇あな
くに き
たの国にはあまねくオリブの木があるであろう。しかし、あなたはその
あぶら み ぬ み お
油を身に塗ることができないであろう。その実がみな落ちてしまうか
むすめ うま
らである。 四一むすこや、娘があなたに生れても、あなたのものにならな
かれ とら い
いであろう。彼らは捕えられて行くからである。 四二あなたのもろもろ
申命記

き ち さんぶつ と た
の木、および地の産物は、いなごが取って食べるであろう。 四三あなたの

124
きりゅう た こ く じん たか うえ で
うちに寄留する他国人は、ますます高くなり、あなたの上に出て、あな
ひく かれ か かれ
たはますます低くなるであろう。 四四彼はあなたに貸し、あなたは彼に
か かれ お
貸すことができない。彼はかしらとなり、あなたは尾となるであろう。
のぞ お お
四五 このもろもろののろいが、あなたに臨み、あなたを追い、ついに追い
ほろ かみ しゅ こえ き したが
ついて、あなたを滅ぼすであろう。これはあなたの神、主の声に聞き従
めい いまし さだ まも
わず、あなたに命じられた戒めと定めとを、あなたが守らなかったから
こと なが しそん
で あ る。 四六こ れ ら の 事 は 長 く あ な た と あ な た の 子孫 の う え に あ っ て、
ふ し ぎ
しるしとなり、また不思議となるであろう。
もの ゆた かみ しゅ こころ よろこ たの
四七 あなたがすべての物に豊かになり、あなたの神、主に心から喜び楽し
つか う はだか もの
んで仕えないので、 四八あなたは飢え、かわき、裸になり、すべての物に
とぼ しゅ てき つか てき てつ
乏しくなって、主があなたにつかわされる敵に仕えるであろう。敵は鉄
ほろ
のくびきをあなたのくびにかけ、ついにあなたを滅ぼすであろう。 四九
しゅ とお ところ ち たみ と
すなわち主は遠い所から、地のはてから一つの民を、はげたかが飛びか
申命記


けるように、あなたに攻めきたらせられるであろう。これはあなたがそ

125
ことば し たみ かお おそ たみ かれ ろうじん み かえり
の言葉を知らない民、五〇顔の恐ろしい民であって、彼らは老人の身を顧
おさな もの かちく う ち さんぶつ
みず、幼い者をあわれまず、五一あなたの家畜が産むものや、地の産物を
く ほろ こくもつ さけ あぶら うし こ ひつじ
食って、あなたを滅ぼし、穀物をも、酒をも、 油をも、牛の子をも、 羊
こ ところ のこ まった ほろ
の子をも、あなたの所に残さず、ついにあなたを全く滅ぼすであろう。 五
たみ ぜんこく まち せ かこ たの
二その民は全国ですべての町を攻め囲み、ついにあなたが頼みとする、
けんご たか いし う かみ しゅ たま
堅固な高い石がきをことごとく撃ちくずし、あなたの神、主が賜わった
くに まちまち せ かこ てき かこ
国 の う ち の す べ て の 町々 を 攻 め 囲 む で あ ろ う。 五三あ な た は 敵 に 囲 ま
はげ せ かみ しゅ たま
れ、激しく攻めなやまされて、ついにあなたの神、主が賜わったあなた
み うま もの むすめ にく た いた
の身から生れた者、むすこ、娘の肉を食べるに至るであろう。 五四あなた
おんわ おとこ じぶん きょうだい じぶん
がたのうちのやさしい、温和な男でさえも、自分の兄 弟、自分のふとこ
つま さいご のこ こども しょくもつ お あた じぶん
ろの妻、最後に残っている子供にも食 物を惜しんで与えず、 五五自分が
じぶん こども た にく すこ ひとびと あた
自分の子供を食べ、その肉を少しでも、この人々のだれにも与えようと
てき まちまち かこ はげ せ
はしないであろう。これは敵があなたのすべての町々を囲み、激しく攻
申命記

なや なに ひと のこ
め悩まして、何をもその人に残さないからである。 五六またあなたがた

126
にゅうわ おんな にゅうわ あし うら つち
のうちのやさしい、柔和な女、すなわち柔和で、やさしく、足の裏を土
つ もの じぶん おっと むすめ
に付けようともしない者でも、自分のふところの夫や、むすこ、 娘にも
じぶん あし あいだ ごさん じぶん う こ た
かくして、五七自分の足の間からでる後産や、自分の産む子をひそかに食
てき まちまち かこ はげ せ
べるであろう。敵があなたの町々を囲み、激しく攻めなやまして、すべ
もの けつぼう
ての物が欠乏するからである。
しょもつ りっぽう ことば
もしあなたが、この書物にしるされているこの律法のすべての言葉
五八
まも おこな かみ しゅ さか おそ な おそ
を守り行わず、あなたの神、主というこの栄えある恐るべき名を恐れな
しゅ しそん うえ はげ わざわい くだ
いならば、 五九主はあなたとその子孫の上に激しい災を下されるであろ
わざわい ひさ びょうき おも ひさ
う。その災はきびしく、かつ久しく、その病気は重く、かつ久しいであ
しゅ おそ びょうき
ろう。 六〇主はまた、あなたが恐れた病気、すなわちエジプトのもろもろ
びょうき ふたた のぞ み
の病気を再び臨ませて、あなたの身につかせられるであろう。 六一また
りっぽう しょ びょうき わざわい しゅ
この律法の書にのせてないもろもろの病気と、もろもろの災とを、主は
ほろ うえ くだ
あなたが滅びるまで、あなたの上に下されるであろう。 六二あなたがた
申命記

てん ほし おお かみ しゅ こえ き したが
は天の星のように多かったが、あなたの神、主の声に聞き従わなかった

127
のこ もの すく しゅ よ
から、残る者が少なくなるであろう。 六三さきに主があなたがたを良く
おお よろこ しゅ いま
あしらい、あなたがたを多くするのを喜ばれたように、主は今あなたが
ほろ た よろこ と
たを滅ぼし絶やすのを喜ばれるであろう。あなたがたは、はいって取る
ち ぬ さ しゅ ち
地から抜き去られるであろう。 六四主は地のこのはてから、かのはてま
たみ ち ところ
でのもろもろの民のうちにあなたがたを散らされるであろう。その所
せんぞ し き いし つく
で、あなたもあなたの先祖たちも知らなかった木や石で造ったほかの
かみがみ つか くにぐに たみ やす
神々にあなたは仕えるであろう。 六五その国々の民のうちであなたは安
え あし うら やす ところ え しゅ ところ
きを得ず、また足の裏を休める所も得られないであろう。主はその所
こころ め おとろ せいしん う
で、あなたの心をおののかせ、目を衰えさせ、精神を打ちしおれさせら
いのち ほそ いと
れ る で あ ろ う。 六 六あ な た の 命 は 細 い 糸 に か か っ て い る よ う に な り、
よるひるおそ いのち おも
夜昼恐れおののいて、その命もおぼつかなく思うであろう。 六七あなた
こころ おそ め み あさ ゆう
が心にいだく恐れと、目に見るものによって、朝には﹃ああ夕であれば
い ゆう あさ い
よいのに﹄と言い、夕には﹃ああ朝であればよいのに﹄と言うであろう。
申命記

しゅ ふね の つ
六八 主はあなたを舟に乗せ、かつてわたしがあなたに告げて、
﹃あなたは

128
ふたた み い みち
再びこれを見ることはない﹄と言った道によって、あなたをエジプトへ
つ だんじょ どれい てき
連れもどされるであろう。あなたがたはそこで男女の奴隷として敵に
う か もの
売られるが、だれも買う者はないであろう﹂。
第二九章
しゅ めい ち ひとびと むす
一これは主がモーセに命じて、モアブの地でイスラエルの人々と結ばせ
けいやく ことば かれ むす けいやく
られた契約の言葉であって、ホレブで彼らと結ばれた契約のほかのもの
である。
ひと よ あつ い
二モーセはイスラエルのすべての人を呼び集めて言った、﹁あなたがた
しゅ ち けらい ぜん ち
は主がエジプトの地で、パロと、そのすべての家来と、その全地とにせ
こと み おお こころ
られたすべての事をまのあたり見た。 三すなわちその大きな試みと、し
おお ふ し ぎ み こんにち
るしと、大きな不思議とをまのあたり見たのである。 四しかし、今日ま
申命記

しゅ こころ さと め み みみ き
で主はあなたがたの心に悟らせず、目に見させず、耳に聞かせられな

129
ねん あいだ みちび あらの とお
か っ た。 五わ た し は 四 十 年 の 間、あ な た が た を 導 い て 荒野 を 通 ら せ た
み きもの ふる あし ふる
が、あなたがたの身につけた着物は古びず、足のくつは古びなかった。 六
た しゅ こ さけ の
あなたがたはまたパンも食べず、ぶどう酒も濃い酒も飲まなかった。こ
かみ しゅ し
うしてあなたがたは、わたしがあなたがたの神、主であることを知るに
いた ところ おう
至った。 七あなたがたがこの所にきたとき、ヘシボンの王シホンと、バ
おう むか たたか かれ う
シャンの王オグがわれわれを迎えて戦 ったが、われわれは彼らを撃ち
やぶ ち と
敗って、 八その地を取り、これをルベンびとと、ガドびとと、マナセび
なか し ぎょう あた けいやく
との半ばとに、嗣 業として与えた。 九それゆえ、あなたがたはこの契約
ことば まも おこな
の言葉を守って、それを行わなければならない。そうすればあなたがた
こと さか
のするすべての事は栄えるであろう。
みな かみ しゅ まえ た
一〇あなたがたは皆、きょう、あなたがたの神、主の前に立っている。す
ぶぞく ちょうろう
なわちあなたがたの部族のかしらたち、長 老たち、つかさたちなど、イ
ひとびと ちい もの つま
スラエルのすべての人々、 一一あなたがたの小さい者たちも、妻たちも、
申命記

しゅくえい きりゅう た こ く じん わ もの
宿 営のうちに寄留している他国人も、あなたのために、たきぎを割る者

130
みず もの しゅ まえ た かみ しゅ
も、水をくむ者も、みな主の前に立って、 一二あなたの神、主が、きょう、
むす かみ しゅ けいやく ちか
あなたと結ばれるあなたの神、主の契約と誓いとに、はいろうとしてい
しゅ やくそく
る。 一 三こ れ は 主 が さ き に あ な た に 約束 さ れ た よ う に、ま た あ な た の
せんぞ ちか
先祖アブラハム、イサク、ヤコブに誓われたように、きょう、あなたを
た じぶん たみ かみ
立てて自分の民とし、またみずからあなたの神となられるためである。
けいやく ちか むす
一四 わたしはただあなたがたとだけ、この契約と誓いとを結ぶのではな
かみ しゅ まえ とも た
い。 一五きょう、ここで、われわれの神、主の前にわれわれと共に立って
もの とも もの むす
いる者ならびに、きょう、ここにわれわれと共にいない者とも結ぶので
ある。
くに す
一六 わ れ わ れ が ど の よ う に エ ジ プ ト の 国 に 住 ん で い た か、ど の よ う に
くにぐに たみ なか とお し
国々の民の中を通ってきたか、それはあなたがたが知っている。 一七ま
き いし ぎん きん つく にく もの ぐうぞう かれ
たあなたがたは木や石や銀や金で造った憎むべき物と偶像とが、彼らの

うちにあるのを見た。 一八それゆえ、あなたがたのうちに、きょう、その
申命記

こころ かみ しゅ はな こくみん かみがみ い つか おとこ


心にわれわれの神、主を離れてそれらの国民の神々に行って仕える男や

131
おんな し ぞ く ぶぞく どくそう
女、氏族や部族があってはならない。またあなたがたのうちに、毒草や、
しょう ね ひと ちか
にがよもぎを生ずる根があってはならない。 一九そのような人はこの誓
ことば き こころ じぶん しゅくふく こころ あゆ
いの言葉を聞いても、心に自分を祝 福して﹃心をかたくなにして歩んで
へいあん い うるお もの
もわたしには平安がある﹄と言うであろう。そうすれば潤 った者も、か
もの ほろ しゅ ひと
わいた者もひとしく滅びるであろう。 二〇主はそのような人をゆるすこ
この しゅ ひと いか はっ しょもつ
とを好まれない。かえって主はその人に怒りとねたみを発し、この書物
かれ うえ くわ しゅ ひと な
にしるされたすべてののろいを彼の上に加え、主はついにその人の名を
てん した け さ しゅ ぶぞく
天の下から消し去られるであろう。 二一主はイスラエルのすべての部族
ひと く べっ わざわい りっぽう しょ
のうちからその人を区別して災をくだし、この律法の書にしるされた
けいやく なか のち よ
契約 の 中 の も ろ も ろ の の ろ い の よ う に さ れ る で あ ろ う。 二二後 の 代 の
ひと おこ しそん とお くに
人、すなわちあなたがたののちに起るあなたがたの子孫および遠い国か
く がいこくじん ち わざわい み しゅ ち びょうき み
ら来る外国人は、この地の災を見、主がこの地にくだされた病気を見て
い ぜん ち いおう しお や つち
言うであろう。 二三︱︱全地は硫黄となり、塩となり、焼け土となって、
申命記

たね み むす くさ しょう しゅ いか
種もまかれず、実も結ばず、なんの草も生じなくなって、むかし主が怒

132
いきどお ほろ はめつ
りと憤りをもって滅ぼされたソドム、ゴモラ、アデマ、ゼボイムの破滅
こくみん い
のようである。︱︱ 二四すなわち、もろもろの国民は言うであろう、
﹃な
しゅ ち はげ おお いか
ぜ、主はこの地にこのようなことをされたのか。この激しい大いなる怒
なに ひとびと い かれ せんぞ
りは何ゆえか﹄。 二五そのとき人々は言うであろう、﹃彼らはその先祖の
かみ しゅ くに かれ みちび だ かれ むす けいやく
神、主がエジプトの国から彼らを導き出して彼らと結ばれた契約をす
い かれ し さず かみがみ つか
て、 二六行って彼らの知らない、また授からない、ほかの神々に仕えて、
おが しゅ ち いか はっ
それを拝んだからである。 二七それゆえ主はこの地にむかって怒りを発
しょもつ
し、この書物にしるされたもろもろののろいをこれにくだし、二八そして
しゅ いか いか おお いきどお かれ ち
主は怒りと、はげしい怒りと大いなる憤りとをもって彼らをこの地から
ぬ と くに な こんにち み
抜き取って、ほかの国に投げやられた。今日見るとおりである﹄。
かく こと かみ しゅ ぞく あら
二九 隠れた事はわれわれの神、主に属するものである。しかし表わされ
なが しそん ぞく りっぽう
たことは長くわれわれとわれわれの子孫に属し、われわれにこの律法の
ことば おこな
すべての言葉を行わせるのである。
申命記

133
第三〇章
まえ の しゅくふく
一わたしがあなたがたの前に述べたこのもろもろの祝 福と、のろいの
こと のぞ かみ しゅ お
事があなたに臨み、あなたがあなたの神、主に追いやられたもろもろの
こくみん こと こころ かんが こども とも
国民のなかでこの事を心に考えて、 二あなたもあなたの子供も共にあな
かみ しゅ た かえ めい
たの神、主に立ち帰り、わたしが、きょう、命じるすべてのことにおい
こころ せいしん しゅ こえ き したが
て、 心をつくし、精神をつくして、主の声に聞き従うならば、 三あなた
かみ しゅ ふたた さか かみ しゅ
の神、主はあなたを再び栄えさせ、あなたをあわれみ、あなたの神、主
ち くにぐに ふたた あつ
は あ な た を 散 ら さ れ た 国々 か ら 再 び 集 め ら れ る で あ ろ う。 四た と い あ
てん お かみ しゅ
なたが天のはてに追いやられても、あなたの神、主はそこからあなたを
あつ つ かえ かみ しゅ
集め、そこからあなたを連れ帰られるであろう。 五あなたの神、主はあ
せんぞ しょゆう ち かえ しょゆう
なたの先祖が所有した地にあなたを帰らせ、あなたはそれを所有するに
いた しゅ さか かず ま せんぞ
至るであろう。主はまたあなたを栄えさせ、数を増して先祖たちよりも
申命記

おお かみ しゅ こころ
多くされるであろう。 六そしてあなたの神、主はあなたの心とあなたの

134
しそん こころ かつれい ほどこ こころ せいしん
子孫の心に割礼を施し、あなたをして、 心をつくし、精神をつくしてあ
かみ しゅ あい いのち え
なたの神、主を愛させ、こうしてあなたに命を得させられるであろう。 七
かみ しゅ はくがい てき にく もの
あなたの神、主はまた、あなたを迫害する敵と、あなたを憎む者とに、こ
のもろもろののろいをこうむらせられるであろう。 八しかし、あなたは
ふたた しゅ こえ き したが めい いまし
再び主の声に聞き従い、わたしが、きょう、あなたに命じるすべての戒
まも かみ しゅ
めを守るであろう。 九そうすればあなたの神、主はあなたのするすべて
み うま もの かちく う ち さん
のことと、あなたの身から生れる者と、家畜の産むものと、地に産する
もの ゆた あた さか しゅ
物を豊かに与えて、あなたを栄えさせられるであろう。すなわち主はあ
せんぞ よろこ ふたた よろこ さか
なたの先祖たちを喜ばれたように再びあなたを喜んで、あなたを栄えさ
かみ しゅ こえ き
せられるであろう。 一〇これはあなたが、あなたの神、主の声に聞きした
りっぽう しょ いまし さだ まも こころ
が い、こ の 律法 の 書 に し る さ れ た 戒 め と 定 め と を 守 り、 心 を つ く し、
せいしん かみ しゅ き
精神をつくしてあなたの神、主に帰するからである。
めい いまし
一一わたしが、きょう、あなたに命じるこの戒めは、むずかしいものでは
申命記

とお てん
なく、また遠いものでもない。 一二これは天にあるのではないから、
﹃だ

135
てん のぼ も
れがわれわれのために天に上り、それをわれわれのところへ持ってき
き おこな い およ
て、われわれに聞かせ、行わせるであろうか﹄と言うに及ばない。 一三ま
うみ
たこれは海のかなたにあるのではないから、﹃だれがわれわれのために
うみ わた い たずさ き
海を渡って行き、それをわれわれのところへ携えてきて、われわれに聞
おこな い およ ことば
かせ、 行わせるであろうか﹄と言うに及ばない。 一四この言葉はあなた
ちか くち こころ
に、はなはだ近くあってあなたの口にあり、またあなたの心にあるから、
おこな
あなたはこれを行うことができる。
み いのち し わざわい
見よ、わたしは、きょう、 命とさいわい、および死と災をあなたの
一五
まえ お かみ しゅ
前に置いた。 一六すなわちわたしは、きょう、あなたにあなたの神、主を
あい みち あゆ いまし さだ まも めい
愛し、その道に歩み、その戒めと定めと、おきてとを守ることを命じる。
したが い かず おお
それに従うならば、あなたは生きながらえ、その数は多くなるであろう。
かみ しゅ い と ち しゅくふく
またあなたの神、主はあなたが行って取る地であなたを祝 福されるで
こころ き したが さそ た
あろう。 一七しかし、もしあなたが心をそむけて聞き従わず、誘われて他
申命記

かみがみ おが つか
の神々を拝み、それに仕えるならば、 一八わたしは、きょう、あなたがた

136
つ かなら ほろ
に告げる。あなたがたは必ず滅びるであろう。あなたがたはヨルダン
わた い と ち いのち たも
を渡り、はいって行って取る地でながく命を保つことができないであろ
てん ち よ たい しょうにん
う。 一九わたしは、きょう、天と地を呼んであなたがたに対する証 人とす
いのち し しゅくふく まえ お
る。わたしは命と死および祝 福とのろいをあなたの前に置いた。あな
いのち えら しそん
たは命を選ばなければならない。そうすればあなたとあなたの子孫は
い かみ しゅ
生きながらえることができるであろう。 二〇すなわちあなたの神、主を
あい こえ き しゅ したが
愛して、その声を聞き、主につき従わなければならない。そうすればあ
いのち え なが いのち たも しゅ せんぞ
なたは命を得、かつ長く命を保つことができ、主が先祖アブラハム、イ
あた ちか ち す
サク、ヤコブに与えると誓われた地に住むことができるであろう﹂。
第三一章
つづ ことば ひと つ
そこでモーセは続いてこの言葉をイスラエルのすべての人に告げて、

申命記

かれ い さい で い
彼らに言った、﹁わたしは、きょう、すでに百二十歳になり、もはや出入

137
しゅ わた
りすることはできない。また主はわたしに﹃おまえはこのヨルダンを渡
い かみ しゅ
ることはできない﹄と言われた。 三あなたの神、主はみずからあなたに
さきだ わた まえ くにぐに たみ ほろ さ
先立って渡り、あなたの前から、これらの国々の民を滅ぼし去って、あ
え しゅ い
なたにこれを獲させられるであろう。また主がかつて言われたように、
ひき わた しゅ
ヨ シ ュ ア は あ な た を 率 い て 渡 る で あ ろ う。 四主 が さ き に ア モ リ び と の
おう ち かれ かれ
王シホンとオグおよびその地にされたように、彼らにもおこなって彼ら
ほろ しゅ かれ わた
を滅ぼされるであろう。 五主は彼らをあなたがたに渡されるから、あな
めい めいれい かれ おこな
たがたはわたしが命じたすべての命令のとおりに彼らに行わなければ
つよ いさ かれ
ならない。 六あなたがたは強く、かつ勇ましくなければならない。彼ら
おそ かみ しゅ とも い
を恐れ、おののいてはならない。あなたの神、主があなたと共に行かれ
しゅ けっ みはな み す
るからである。主は決してあなたを見放さず、またあなたを見捨てられ
ないであろう﹂。
よ ひと め まえ かれ
七モーセはヨシュアを呼び、イスラエルのすべての人の目の前で彼に
申命記

い たみ とも い しゅ かれ せんぞ あた ちか
言った、﹁あなたはこの民と共に行き、主が彼らの先祖たちに与えると誓

138
ち い つよ いさ
われた地に入るのであるから、あなたは強く、かつ勇ましくなければな
かれ え しゅ
ら な い。あ な た は 彼 ら に そ れ を 獲 さ せ る で あ ろ う。 八主 は み ず か ら あ
さきだ い とも みはな み す
なたに先立って行き、またあなたと共におり、あなたを見放さず、見捨
おそ
てられないであろう。恐れてはならない、おののいてはならない﹂。
りっぽう か しゅ けいやく はこ しそん
九モーセはこの律法を書いて、主の契約の箱をかつぐレビの子孫である
さいし ちょうろう さづ
祭司およびイスラエルのすべての長 老たちに授けた。 一〇そしてモーセ
かれ めい い ねん おわ とし さだ
は彼らに命じて言った、
﹁七年の終りごとに、すなわち、ゆるしの年の定
とき まつり ひと
めの時になり、かりいおの祭に、一一イスラエルのすべての人があなたの
かみ しゅ まえ で しゅ えら ば しょ く
神、主の前に出るため、主の選ばれる場所に来るとき、あなたはイスラ
ひと まえ りっぽう よ き
エルのすべての人の前でこの律法を読んで聞かせなければならない。 一
おとこ おんな こども まち きりゅう た こ く じん
二すなわち男、女、子供およびあなたの町のうちに寄留している他国人
たみ あつ かれ き まな
など民を集め、彼らにこれを聞かせ、かつ学ばせなければならない。そ
かれ かみ しゅ おそ りっぽう ことば
うすれば彼らはあなたがたの神、主を恐れてこの律法の言葉を、ことご
申命記

まも おこな かれ こども し もの
とく守り行うであろう。 一三また彼らの子供たちでこれを知らない者も

139
き かみ しゅ おそ まな
聞いて、あなたがたの神、主を恐れることを学ぶであろう。あなたがた
わた い と ち ひ つね
がヨルダンを渡って行って取る地にながらえる日のあいだ常にそうし
なければならない﹂。
しゅ い し ひ ちか
一四 主はまたモーセに言われた、﹁あなたの死ぬ日が近づいている。ヨ
め とも かいけん まくや た かれ つとめ めい
シュアを召して共に会見の幕屋に立ちなさい。わたしは彼に務を命じ
い かいけん まくや た しゅ
るであろう﹂。モーセとヨシュアが行って会見の幕屋に立つと、 一五主は
まくや くも はしら あらわ くも はしら まくや いりぐち
幕屋で雲の柱のうちに現れられた。その雲の柱は幕屋の入口のかたわ
らにとどまった。
しゅ い ねむ せんぞ いっしょ
一六 主はモーセに言われた、
﹁あなたはまもなく眠って先祖たちと一緒に
たみ い ち こと
なるであろう。そのときこの民はたちあがり、はいって行く地の異なる
かみがみ した かんいん おこな す かれ むす けいやく
神々を慕って姦淫を行い、わたしを捨て、わたしが彼らと結んだ契約を
やぶ ひ かれ いか はっ かれ
破るであろう。 一七その日には、わたしは彼らにむかって怒りを発し、彼
す かお かれ かく かれ ほろ おお
らを捨て、わたしの顔を彼らに隠すゆえに、彼らは滅ぼしつくされ、多
申命記

わざわい なや かれ のぞ ひ かれ い
くの災と悩みが彼らに臨むであろう。そこでその日、彼らは言うであろ

140
わざわい のぞ かみ
う、﹃これらの災がわれわれに臨むのは、われわれの神がわれわれのうち
かれ かみがみ き
におられないからではないか﹄。 一八しかも彼らがほかの神々に帰して、
あく おこな ひ かなら かお かく
もろもろの悪を行うゆえに、わたしはその日には必ずわたしの顔を隠す
いま うた か
であろう。 一九それであなたがたは今、この歌を書きしるし、イスラエル
ひとびと おし くち とな うた ひとびと たい
の人々に教えてその口に唱えさせ、この歌をイスラエルの人々に対する
かれ せんぞ ちか
わ た し の あ か し と な ら せ な さ い。 二〇わ た し が 彼 ら の 先祖 た ち に 誓 っ
ちち みつ なが ち かれ みちび い とき かれ た あ こ
た、乳と蜜の流れる地に彼らを導き入れる時、彼らは食べて飽き、肥え
ふと およ かみがみ き つか かろ
太るに及んで、ほかの神々に帰し、それに仕えて、わたしを軽んじ、わ
けいやく やぶ おお わざわい なや かれ のぞ
たしの契約を破るであろう。 二一こうして多くの災と悩みとが彼らに臨
とき うた かれ たい うた
む時、この歌は彼らに対して、あかしとなるであろう。︵それはこの歌が
かれ しそん くち かれ わす
彼らの子孫の口にあって、彼らはそれを忘れないからである。︶わたしが
ちか ち かれ みちび い まえ かれ おも こと
誓った地に彼らを導き入れる前、すでに彼らが思いはかっている事をわ
し ひ うた か
たしは知っているからである﹂。 二二モーセはその日、この歌を書いてイ
申命記

ひとびと おし
スラエルの人々に教えた。

141
しゅ こ めい い
二三 主はヌンの子ヨシュアに命じて言われた、﹁あなたはイスラエルの
ひとびと かれ ちか ち みちび い
人々をわたしが彼らに誓った地に導き入れなければならない。それゆ
つよ いさ とも
え強くかつ勇ましくあれ。わたしはあなたと共にいるであろう﹂。
りっぽう ことば しょもつ か おわ とき
二四 モ ー セ が こ の 律法 の 言葉 を、こ と ご と く 書物 に 書 き 終 っ た 時、 二五
しゅ けいやく はこ めい い りっぽう
モーセは主の契約の箱をかつぐレビびとに命じて言った、二六
﹁この律法
しょ かみ しゅ けいやく はこ お
の書をとって、あなたがたの神、主の契約の箱のかたわらに置き、その
ところ
所であなたにむかってあかしをするものとしなさい。 二七わたしはあな

たのそむくことと、かたくななこととを知っている。きょう、わたしが
い いっしょ あいだ しゅ
生きながらえて、あなたがたと一緒にいる間ですら、あなたがたは主に

そむいた。ましてわたしが死んだあとはどんなであろう。 二八あなたが
ぶぞく ちょうろう あつ
たの部族のすべての長 老たちと、つかさたちをわたしのもとに集めな
ことば かれ かた き てん ち よ かれ
さい。わたしはこれらの言葉を彼らに語り聞かせ、天と地とを呼んで彼
し し
らにむかってあかしさせよう。 二九わたしは知っている。わたしが死ん
申命記

かなら わる こと めい みち はな
だのち、あなたがたは必ず悪い事をして、わたしが命じた道を離れる。

142
のち ひ わざわい のぞ しゅ あく み
そして後の日に災があなたがたに臨むであろう。これは主の悪と見ら
おこな しゅ いか
れることを行い、あなたがたのすることをもって主を怒らせるからであ
る﹂。
ぜんかいしゅう つぎ うた ことば
そしてモーセはイスラエルの全 会 衆に次の歌の言葉を、ことごとく
三〇
かた き
語り聞かせた。
第三二章
てん みみ かたむ かた
一﹁天よ、耳を傾けよ、わたしは語る、
ち くち ことば き
地よ、わたしの口の言葉を聞け。
おしえ あめ ふ
二わたしの教は雨のように降りそそぎ、
ことば つゆ
わたしの言葉は露のようにしたたるであろう。
わかくさ うえ ふ こさめ
若草の上に降る小雨のように、
申命記

あおくさ うえ ゆうだ
青草の上にくだる夕立ちのように。

143
しゅ な
わたしは主の名をのべよう、

かみ えいこう かえ
われわれの神に栄光を帰せよ。
しゅ いわ まった
主は岩であって、そのみわざは全く、

みち ただ
その道はみな正しい。
しゅ しんじつ かみ いつわ
主は真実なる神であって、 偽りなく、
ぎ せい
義であって、正である。
かれ しゅ あく おこな
彼らは主にむかって悪を行い、

しゅ こ
そのきずのゆえに、もはや主の子らではなく、
まが
よこしまで、曲ったやからである。
おろ ち え たみ
愚かな知恵のない民よ、

しゅ むく
あなたがたはこのようにして主に報いるのか。
しゅ う つく
主はあなたを生み、あなたを造り、
かた た ちち
あなたを堅く立てられたあなたの父ではないか。
申命記

ひ おぼ
いにしえの日を覚え、

144
よ よ とし おも
代々の年を思え。
ちち と
あなたの父に問え、
かれ つ
彼はあなたに告げるであろう。
ちょうろう と
長 老たちに問え、
かれ かた
彼らはあなたに語るであろう。
たか もの ひと こ わ
いと高き者は人の子らを分け、

しょこくみん し ぎょう あた
諸国民にその嗣 業を与えられたとき、
こ かず てら
イスラエルの子らの数に照して、
たみ さかい さだ
もろもろの民の境を定められた。
しゅ ぶん たみ
主の分はその民であって、

さだ し ぎょう
ヤコブはその定められた嗣 業である。
しゅ あらの ち み
一〇 主はこれを荒野の地で見いだし、
けもの あ ち あ
獣のほえる荒れ地で会い、
申命記

めぐ かこ
これを巡り囲んでいたわり、

145
め まも
目のひとみのように守られた。
す よ おこ
一一 わしがその巣のひなを呼び起し、
こ うえ ま
その子の上に舞いかけり、
はね かれ
その羽をひろげて彼らをのせ、
うえ お
そのつばさの上にこれを負うように、
しゅ かれ みちび
一二 主はただひとりで彼を導かれて、
かみがみ
ほかの神々はあずからなかった。
しゅ かれ ち たか ところ の とお
一三 主は彼に地の高き所を乗り通らせ、
たはた さんぶつ く
田畑の産物を食わせ、
いわ なか みつ す
岩の中から蜜を吸わせ、
かた いわ あぶら す
堅い岩から油を吸わせ、
うし ぎょうにゅう ひつじ ちち
一四 牛の凝 乳、 羊の乳、
こひつじ おひつじ しぼう
小羊と雄羊の脂肪、
申命記

うし お
バシャンの牛と雄やぎ、

146
こむぎ よ もの く
小麦の良い物を食わせられた。
た さけ の
またあなたはぶどうのしるのあわ立つ酒を飲んだ。
こ ふと あし
しかるにエシュルンは肥え太って、足でけった。
一五
こ ふと
あなたは肥え太って、つややかになり、
じぶん つく かみ す
自分を造った神を捨て、
すくい いわ あなど
救の岩を侮 った。
かれ かみがみ つか しゅ おこ
彼らはほかの神々に仕えて、主のねたみを起し、
一六
にく しゅ いか おこ
憎むべきおこないをもって主の怒りをひき起した。
かれ かみ あくれい ぎせい
彼らは神でもない悪霊に犠牲をささげた。
一七
かれ し かみがみ
それは彼らがかつて知らなかった神々、
ちか で あたら かみがみ
近ごろ出た新しい神々、
せんぞ おそ もの
先祖たちの恐れることもしなかった者である。
じぶん う いわ かろ
あなたは自分を生んだ岩を軽んじ、
一八
申命記

じぶん つく かみ わす
自分を造った神を忘れた。

147
しゅ み
一九主はこれを見、
むすめ いか す
そのむすこ、 娘を怒ってそれを捨てられた。

二〇そして言われた、
かお かれ かく
﹃わたしはわたしの顔を彼らに隠そう。
かれ おわ み
わたしは彼らの終りがどうなるかを見よう。
かれ
彼らはそむき、もとるやから、
しんじつ こ
真実のない子らである。
かれ かみ もの
二一彼らは神でもない者をもって、
おこ
わたしにねたみを起させ、
ぐうぞう いか
偶像をもって、わたしを怒らせた。
たみ もの
それゆえ、わたしは民ともいえない者をもって、
かれ おこ
彼らにねたみを起させ、
おろ たみ かれ いか
愚かな民をもって、彼らを怒らせるであろう。
申命記

いか ひ も
二二わたしの怒りによって、火は燃えいで、

148
よ み ふか も い
陰府の深みにまで燃え行き、
ち さんぶつ や
地とその産物とを焼きつくし、
やまやま もとい も
山々の基を燃やすであろう。
かれ うえ わざわい つ
二三 わたしは彼らの上に災を積みかさね、
や かれ い
わたしの矢を彼らにむかって射つくすであろう。
かれ う おとろ
二四 彼らは飢えて、やせ衰え、
ねつびょう わる えきびょう ほろ
熱 病と悪い疫 病によって滅びるであろう。
かれ けもの は
わたしは彼らを獣の歯にかからせ、
ち は どく
地に這うものの毒にあたらせるであろう。
そと うち おそ
二五 外にはつるぎ、内には恐れがあって、
わか おとこ わか おんな
若き男も若き女も、
ち ご ひと ほろ
乳のみ子も、しらがの人も滅びるであろう。
い かれ とお ち
二六 わたしはまさに言おうとした、﹁彼らを遠く散らし、
申命記

かれ こと ひとびと きおく
彼らの事を人々が記憶しないようにしよう﹂。

149
てき ほこ おそ
二七しかし、わたしは敵が誇るのを恐れる。

あだびとはまちがえて言うであろう、
て か
﹁われわれの手が勝ちをえたのだ。
しゅ
これはみな主がされたことではない﹂﹄。
かれ し りょ か たみ
二八彼らは思慮の欠けた民、
ちしき
そのうちには知識がない。
かれ ち え
二九もし、彼らに知恵があれば、これをさとり、
み おわ
その身の終りをわきまえたであろうに。
かれ いわ かれ う
三〇彼らの岩が彼らを売らず、
しゅ かれ
主が彼らをわたされなかったならば、
にん お
どうして、ひとりで千人を追い、
まんにん やぶ
ふたりで万人を敗ることができたであろう。
かれ いわ いわ およ
三一彼らの岩はわれらの岩に及ばない。
申命記

てき みと
われらの敵もこれを認めている。

150
かれ き
彼らのぶどうの木は、
三二
き で
ソドムのぶどうの木から出たもの、
の で
またゴモラの野から出たもの、
どく にが
そのぶどうは毒ぶどう、そのふさは苦い。
しゅ どく
そのぶどう酒はへびの毒のよう、
三三
おそ どく
まむしの恐ろしい毒のようである。
これはわたしのもとにたくわえられ、
三四
くら ふう こ
わたしの倉に封じ込められているではないか。
かれ あし
彼らの足がすべるとき、
三五
かえ むく
わたしはあだを返し、報いをするであろう。
かれ わざわい ひ ちか
彼らの災の日は近く、
かれ はめつ
彼らの破滅は、

すみやかに来るであろう。
申命記

しゅ たみ
主はついにその民をさばき、
三六

151
くわ
そのしもべらにあわれみを加えられるであろう。
かれ ちから さ
これは彼らの力がうせ去り、
もの もの
つながれた者もつながれない者も、
しゅ み
もはやいなくなったのを、主が見られるからである。
しゅ い
三七 そのとき主は言われるであろう、
かれ かみがみ
﹃彼らの神々はどこにいるか、
かれ たの いわ
彼らの頼みとした岩はどこにあるか。
かれ ぎせい く
三八 彼らの犠牲のあぶらを食い、
かんさい さけ の もの
灌祭の酒を飲んだ者はどこにいるか。
た たす
立ちあがってあなたがたを助けさせよ、
まも
あなたがたを守らせよ。
いまみ かれ
三九 今見よ、わたしこそは彼である。
かみ
わたしのほかに神はない。
申命記

ころ い
わたしは殺し、また生かし、

152
きず
傷つけ、またいやす。
て すく だ
わたしの手から救い出しうるものはない。
てん て ちか
四〇 わたしは天にむかい手をあげて誓う、
えいえん い
﹁わたしは永遠に生きる。
四一 わたしがきらめくつるぎをとぎ、
て にぎ
手にさばきを握るとき、
てき かえ
わたしは敵にあだを返し、
にく もの ほうふく
わたしを憎む者に報復するであろう。
や ち よ
四二 わたしの矢を血に酔わせ、
にく く
わたしのつるぎに肉を食わせるであろう。
ころ もの とら もの ち の
殺された者と捕えられた者の血を飲ませ、
てき ちょうはつ あたま にく く
敵の長 髪の頭の肉を食わせるであろう﹂﹄。
くにぐに たみ しゅ たみ よろこ うた
四三 国々の民よ、主の民のために喜び歌え。
申命記

しゅ ち ほうふく
主はそのしもべの血のために報復し、

153
てき かえ
その敵にあだを返し、
たみ ち けが きよ
その民の地の汚れを清められるからである﹂。
こ とも い うた ことば
モーセとヌンの子ヨシュアは共に行って、この歌の言葉を、ことごと
四四
たみ よ き ことば
く民に読み聞かせた。 四五モーセはこの言葉を、ことごとくイスラエル
ひと つ おわ かれ い
のすべての人に告げ終って、四六彼らに言った、﹁あなたがたはわたしが、
めい ことば こころ こども
きょう、あなたがたに命じるこのすべての言葉を心におさめ、子供たち
りっぽう ことば まも おこな めい
にもこの律法のすべての言葉を守り行うことを命じなければならない。
ことば ことば
この言葉はあなたがたにとって、むなしい言葉ではない。これはあ
四七
ことば
なたがたのいのちである。この言葉により、あなたがたはヨルダンを
わた い と ち なが いのち たも
渡って行って取る地で、長く命を保つことができるであろう﹂。
ひ しゅ い たい
この日、主はモーセに言われた、 四九﹁あなたはエリコに対するモア
四八
ち やま やま のぼ
ブの地にあるアバリム山すなわちネボ山に登り、わたしがイスラエルの
ひとびと あた え ち み わ のぼ い
人々に与えて獲させるカナンの地を見渡たせ。 五〇あなたは登って行く
申命記

やま し たみ つら きょうだい
その山で死に、あなたの民に連なるであろう。あなたの兄 弟 アロンが

154
やま し たみ つら
ホル山で死んでその民に連なったようになるであろう。 五一これはあな
あらの みず
たがたがチンの荒野にあるメリバテ・カデシの水のほとりで、イスラエ
ひとびと ひとびと
ルの人々のうちでわたしにそむき、イスラエルの人々のうちでわたしを
せい うやま
聖なるものとして敬わなかったからである。 五二それであなたはわたし
ひとびと あた ち め まえ み
がイスラエルの人々に与える地を、目の前に見るであろう。しかし、そ

の地に、はいることはできない﹂。
第三三章
かみ ひと し まえ ひとびと しゅくふく しゅくふく ことば
神の人モーセは死ぬ前にイスラエルの人々を祝 福した。 祝 福の言葉

つぎ
は次のとおりである。
しゅ
﹁主はシナイからこられ、

セイルからわれわれにむかってのぼられ、
申命記

やま ひかり はな
パランの山から光を放たれ、

155
せいじゃ なか
ちよろずの聖者の中からこられた。
みぎ て も ひ
その右の手には燃える火があった。
しゅ たみ あい
まことに主はその民を愛される。

しゅ せいべつ て
すべて主に聖別されたものは、み手のうちにある。
かれ あし ざ
彼らはあなたの足もとに座して、
おしえ
教をうける。
りっぽう さづ
モーセはわれわれに律法を授けて、

かいしゅう しょゆう
ヤコブの会 衆の所有とさせた。
たみ あつ
民のかしらたちが集まり、

ぶぞく あつ とき
イスラエルの部族がみな集まった時、
しゅ おう
主はエシュルンのうちに王となられた﹂。
い し
﹁ルベンは生きる、死にはしない。

にんずう すく
しかし、その人数は少なくなるであろう﹂。
申命記


ユダについては、こう言った、

156
しゅ こえ き
﹁主よ、ユダの声を聞いて、
かれ たみ みちび
彼をその民に導きかえしてください。
て かれ たたか
み手をもって、彼のために戦 ってください。
かれ たす てき あた
彼を助けて、敵に当らせてください﹂。

八レビについては言った、
あた
﹁あなたのトンミムをレビに与えてください。
つか ひと あた
ウリムをあなたに仕える人に与えてください。
かれ こころ
かつてあなたはマッサで彼を試み、
みず かれ あらそ
メリバの水のほとりで彼と争われた。
かれ ちち はは い
九彼はその父、その母について言った、
かれ かえり
﹃わたしは彼らを顧みない﹄。
かれ じぶん きょうだい みと
彼は自分の兄 弟をも認めず、
じぶん こども かえり
自分の子供をも顧みなかった。
申命記

かれ ことば
彼らはあなたの言葉にしたがい、

157
けいやく まも
あなたの契約を守ったからである。
かれ おし
一〇 彼らはあなたのおきてをヤコブに教え、
りっぽう おし
あなたの律法をイスラエルに教え、
くんこう まえ そな
薫香をあなたの前に供え、
はんさい さいだん うえ
燔祭を祭壇の上にささげる。
しゅ かれ ちから しゅくふく
一一 主よ、彼の力を祝 福し、
かれ て よろこ う
彼の手のわざを喜び受けてください。
かれ さか もの
彼に逆らう者と、
かれ にく もの こし う くだ
彼を憎む者との腰を打ち砕いて、
た あ
立ち上がることのできないようにしてください﹂。

一二 ベニヤミンについては言った、
しゅ あい もの
﹁主に愛される者、
かれ やす しゅ
彼は安らかに主のそばにおり、
申命記

しゅ しゅうじつ かれ まも
主は終 日、彼を守り、

158
かた あいだ いとな
その肩の間にすまいを営まれるであろう﹂。

一三ヨセフについては言った、
しゅ かれ ち しゅくふく
﹁どうぞ主が彼の地を祝 福されるように。
うえ てん たまもの つゆ
上なる天の賜物と露、
した よこ ふち たまもの
下に横たわる淵の賜物、
ひ さん たっと たまもの
一四日によって産する尊い賜物、
つき しょう たっと たまもの
月によって生ずる尊い賜物、
やまやま さん たまもの
一五いにしえの山々の産する賜物、
おか たっと たまもの
とこしえの丘の尊い賜物、
ち み たっと たまもの
一六地とそれに満ちる尊い賜物、
なか もの めぐ
しばの中におられた者の恵みが、
あたま のぞ
ヨセフの頭に臨み、
きょうだい くん もの あたま いただき
その兄 弟たちの君たる者の頭の頂にくだるように。
申命記

かれ うし いげん
一七彼の牛のういごは威厳があり、

159
つの やぎゅう つの
その角は野牛の角のよう、
くにぐに たみ つ たお
これをもって国々の民をことごとく突き倒し、
ち およ
地のはてにまで及ぶ。
もの いくまん
このような者はエフライムに幾万とあり、
もの いくせん
またこのような者はマナセに幾千とある﹂。

一八 ゼブルンについては言った、
そと で たの え
﹁ゼブルンよ、あなたは外に出て楽しみを得よ。
てんまく たの え
イッサカルよ、あなたは天幕にいて楽しみを得よ。
かれ くにぐに たみ やま まね
一九 彼らは国々の民を山に招き、
ところ ただ ぎせい
その所で正しい犠牲をささげるであろう。
かれ うみ とみ す
彼らは海の富を吸い、
すな かく たから と
砂に隠れた宝を取るからである﹂。

二〇 ガドについては言った、
申命記

おお もの
﹁ガドを大きくする者は、ほむべきかな。

160

ガドは、ししのように伏し、
うで あたま いただき さ
腕や頭の頂をかき裂くであろう。
かれ はつほ ち じぶん えら
二一彼は初穂の地を自分のために選んだ。
しょうぐん ぶん と お
そこには将 軍の分も取り置かれていた。
かれ たみ とも
彼は民のかしらたちと共にきて、
とも しゅ せいぎ しんぱん おこな
イスラエルと共に主の正義と審判とを行 った﹂。

二二ダンについては言った、

﹁ダンはししの子であって、
バシャンからおどりでる﹂。

二三ナフタリについては言った、
めぐ み
﹁ナフタリよ、あなたは恵みに満たされ、
しゅ しゅくふく み
主の祝 福に満ちて、
みずうみ みなみ ち しょゆう
湖とその南の地を所有する﹂。
申命記


二四アセルについては言った、

161
た こ しゅくふく
﹁アセルは他の子らにまさって祝 福される。
かれ きょうだい あい
彼はその兄 弟たちに愛せられ、
あし あぶら
その足を油にひたすことができるように。
かん き てつ せいどう
二五あなたの貫の木は鉄と青銅、
ちから とし とも つづ
あなたの力はあなたの年と共に続くであろう﹂。
かみ なら もの
二六﹁エシュルンよ、神に並ぶ者はほかにない。
たす てん の
あなたを助けるために天に乗り、
いこう そら とお
威光をもって空を通られる。
かみ
二七とこしえにいます神はあなたのすみかであり、
した えいえん うで
下には永遠の腕がある。
てき まえ お はら
敵をあなたの前から追い払って、
ほろ い
﹃滅ぼせ﹄と言われた。
やす す
二八イスラエルは安らかに住み、
申命記

いずみ こくもつ しゅ ち
ヤコブの泉は穀物とぶどう酒の地に、

162
ひとりいるであろう。
てん つゆ
また天は露をくだすであろう。
二九 イスラエルよ、あなたはしあわせである。
だれがあなたのように、
しゅ すく たみ
主に救われた民があるであろうか。
しゅ たす たて
主はあなたを助ける盾、
いこう
あなたの威光のつるぎ、
てき ふく
あなたの敵はあなたにへつらい服し、
かれ たか ところ ふ すす
あなたは彼らの高き所を踏み進むであろう﹂。
第三四章
へいや やま のぼ む
一モーセはモアブの平野からネボ山に登り、エリコの向かいのピスガの
申命記

いただき い しゅ かれ ぜん ち しめ
頂へ行った。そこで主は彼にギレアデの全地をダンまで示し、 二ナフタ

163
ぜんぶ ち ぜん ち にし うみ しめ
リの全部、エフライムとマナセの地およびユダの全地を西の海まで示
ていち まち たに しめ
し、 三ネゲブと低地、すなわち、しゅろの町エリコの谷をゾアルまで示
しゅ かれ い
された。 四そして主は彼に言われた、
﹁わたしがアブラハム、イサク、ヤ
しそん あた い ちか ち
コブに、これをあなたの子孫に与えると言って誓った地はこれである。
め み わた い
わたしはこれをあなたの目に見せるが、あなたはそこへ渡って行くこと
しゅ しゅ ことば
はできない﹂。 五こうして主のしもべモーセは主の言葉のとおりにモア
ち し しゅ かれ たい ち たに ほうむ
ブ の 地 で 死 ん だ。 六主 は 彼 を ベ テ ペ オ ル に 対 す る モ ア ブ の 地 の 谷 に 葬
こんにち はか し ひと し とき
られたが、今日までその墓を知る人はない。 七モーセは死んだ時、百二
さい め きりょく おとろ
十歳であったが、目はかすまず、気力は衰えていなかった。 八イスラエ
ひとびと へいや にち あいだ な
ルの人々はモアブの平野で三十日の間 モーセのために泣いた。そして
な かな ひ おわ
モーセのために泣き悲しむ日はついに終った。
こ ち え れい み ひと かれ うえ
九ヌンの子ヨシュアは知恵の霊に満ちた人であった。モーセが彼の上
て お ひとびと かれ き したが しゅ
に手を置いたからである。イスラエルの人々は彼に聞き従い、主がモー
申命記

めい
セ に 命 じ ら れ た と お り に お こ な っ た。 一 〇イ ス ラ エ ル に は、こ の の ち

164
よげんしゃ おこ しゅ かお あ し
モーセのような預言者は起らなかった。モーセは主が顔を合わせて知
もの しゅ ち かれ
ら れ た 者 で あ っ た。 一一主 は エ ジ プ ト の 地 で 彼 を パ ロ と そ の す べ て の
けらい ぜん ち ふ し ぎ おこな
家来およびその全地につかわして、もろもろのしるしと不思議を行わせ
ひと まえ おお ちから
られた。 一二モーセはイスラエルのすべての人の前で大いなる力をあら
おお おそ こと
わし、大いなる恐るべき事をおこなった。
申命記

165

ヨシュア記
第一章
しゅ し のち しゅ じゅうしゃ こ
主のしもべモーセが死んだ後、主はモーセの従 者、ヌンの子ヨシュア

い し いま
に言われた、 二﹁わたしのしもべモーセは死んだ。それゆえ、今あなた
たみ とも た わた
と、このすべての民とは、共に立って、このヨルダンを渡り、わたしが
ひとびと あた ち い あし うら
イスラエルの人々に与える地に行きなさい。 三あなたがたが、足の裏で
ふ ところ やくそく あた
踏む所はみな、わたしがモーセに約束したように、あなたがたに与える
りょういき あらの およ おおかわ
であろう。 四あなたがたの領 域は、荒野からレバノンに及び、また大川
ぜん ち ひ い ほう たいかい たっ
ユフラテからヘテびとの全地にわたり、日の入る方の大海に達するであ
い ひ あいだ あた もの
ろう。 五あなたが生きながらえる日の間、あなたに当ることのできる者
ヨシュア記

とも
は、ひとりもないであろう。わたしは、モーセと共にいたように、あな
とも みはな みすて
たと共におるであろう。わたしはあなたを見放すことも、見捨ることも

0
つよ お お たみ かれ
しない。 六強く、また雄々しくあれ。あなたはこの民に、わたしが彼ら
あた せんぞ ちか ち え
に与えると、その先祖たちに誓った地を獲させなければならない。 七た
つよ お お めい
だ強く、また雄々しくあって、わたしのしもべモーセがあなたに命じた
りっぽう まも おこな はな みぎ ひだり まが
律法をことごとく守って行い、これを離れて右にも左にも曲ってはなら
い しょうり え
ない。それはすべてあなたが行くところで、勝利を得るためである。 八
りっぽう しょ くち はな ひる よる おも
この律法の書をあなたの口から離すことなく、昼も夜もそれを思い、そ
まも おこな
のうちにしるされていることを、ことごとく守って行わなければならな
みち さか しょうり え
い。そうするならば、あなたの道は栄え、あなたは勝利を得るであろう。
めい つよ お お
わたしはあなたに命じたではないか。強く、また雄々しくあれ。あな

い かみ しゅ とも おそ
たがどこへ行くにも、あなたの神、主が共におられるゆえ、恐れてはな
らない、おののいてはならない﹂。
たみ めい い しゅくえい
一〇 そこでヨシュアは民のつかさたちに命じて言った、 一一﹁宿 営のなか
ヨシュア記

めぐ たみ めい い りょうしょく そな か
を巡って民に命じて言いなさい、﹃糧 食の備えをしなさい。三日のうち
わた かみ しゅ
に、あなたがたはこのヨルダンを渡って、あなたがたの神、主があなた

1
あた え ち え すす い
がたに与えて獲させようとされる地を獲るために、進み行かなければな
らないからである﹄﹂。
はん ぶ ぞ く い
一二 ヨシュアはまたルベンびと、ガドびと、およびマナセの半部族に言っ
しゅ めい かみ しゅ
た、一三﹁主のしもべモーセがあなたがたに命じて、
﹃あなたがたの神、主
あんそく ば しょ そな ち たま
はあなたがたのために安息の場所を備え、この地をあなたがたに賜わる
い ことば きおく さいし かちく
であろう﹄と言った言葉を記憶しなさい。 一四あなたがたの妻子と家畜
あた がわ ち
とは、モーセがあなたがたに与えたヨルダンのこちら側の地にとどまら
ゆうし ぶそう
なければならない。しかし、あなたがたのうちの勇士はみな武装して、
きょうだい さき た わた たす
兄 弟たちの先に立って渡り、これを助けなければならない。 一五そして
しゅ たま きょうだい あんそく
主があなたがたに賜わったように、あなたがたの兄 弟たちにも安息を
たま かれ かみ しゅ たま ち え
賜わり、彼らもあなたがたの神、主が賜わる地を獲るようになるならば、
しゅ あた がわ
あなたがたは、主のしもべモーセから与えられた、ヨルダンのこちら側、
ヨシュア記

ひ で ほう しょゆう ち かえ たも
日の出の方にある、あなたがたの所有の地に帰って、それを保つことが
かれ こた
できるであろう﹂。 一六彼らはヨシュアに答えた、﹁あなたがわれわれに

2
めい おこな ところ
命じられたことをみな行います。あなたがつかわされる所へは、どこへ
い き したが
でも行きます。 一七われわれはすべてのことをモーセに聞き従 ったよう
き したが かみ しゅ
に、あなたに聞き従います。ただ、どうぞ、あなたの神、主がモーセと
とも とも
共におられたように、あなたと共におられますように。 一八だれであっ
めいれい めい ことば き したが
ても、あなたの命令にそむき、あなたの命じられる言葉に聞き従わない
い つよ お お
ものがあれば、生かしてはおきません。ただ、強く、また雄々しくあっ
てください﹂。
第二章
こ せっこう
ヌンの子ヨシュアは、シッテムから、ひそかにふたりの斥候をつかわ

かれ い い ち とく さぐ かれ
して彼らに言った、
﹁行って、その地、特にエリコを探りなさい﹂。彼ら
ヨシュア記

い な ゆうじょ いえ と
は行って、名をラハブという遊女の家にはいり、そこに泊まったが、 二
おう ひとびと すうめい もの こんや ち さぐ
エリコの王に、﹁イスラエルの人々のうちの数名の者が今夜この地を探

3
い もの おう
るために、はいってきました﹂と言う者があったので、 三エリコの王は
ひと い ところ いえ
人をやってラハブに言った、﹁あなたの所にきて、あなたの家にはいった
ひとびと だ かれ くに さぐ
人々をここへ出しなさい。彼らはこの国のすべてを探るためにきたの
おんな ひと い かれ かく
です﹂。 四しかし、 女はすでにそのふたりの人を入れて彼らを隠してい
かのじょ い たし ひとびと ところ
た。そして彼女は言った、﹁確かにその人々はわたしの所にきました。
ひとびと し
しかし、わたしはその人々がどこからきたのか知りませんでしたが、 五
とき もん と ひとびと で い
たそがれ時、門の閉じるころに、その人々は出て行きました。どこへ
い し いそ お お
行ったのかわたしは知りません。急いであとを追いなさい。追いつけ
じつ かのじょ かれ つ や ね おくじょう
るでしょう﹂。 六その実、彼女はすでに彼らを連れて屋根にのぼり、屋 上
なら あ ま くき なか かれ かく
に 並 べ て あ っ た 亜麻 の 茎 の 中 に 彼 ら を 隠 し て い た の で あ る。 七そ こ で
ひとびと かれ お みち すす わた ば む
その人々は彼らのあとを追ってヨルダンの道を進み、渡し場へ向かっ
お もの で い もん と
た。あとを追う者が出て行くとすぐ門は閉ざされた。
ヨシュア記

ひと ね おくじょう かれ ところ
八ふたりの人がまだ寝ないうち、ラハブは屋 上にのぼって彼らの所に
かれ い しゅ ち たま
きた。 九そして彼らに言った、﹁主がこの地をあなたがたに賜わったこ

4
おそ
と、わたしたちがあなたがたをひじょうに恐れていること、そしてこの
ち たみ まえ ふる
地の民がみなあなたがたの前に震えおののいていることをわたしは
し で とき しゅ
知っています。 一〇あなたがたがエジプトから出てこられた時、主があ
まえ こうかい みず ほ
なたがたの前で紅海の水を干されたこと、およびあなたがたが、ヨルダ
む がわ おう
ンの向こう側にいたアモリびとのふたりの王シホンとオグにされたこ
ぜんめつ き
と、すなわちふたりを、全滅されたことを、わたしたちは聞いたからで
き こころ き ひとびと
す。 一一わたしたちはそれを聞くと、心は消え、あなたがたのゆえに人々
まった ゆうき うしな かみ しゅ うえ てん
は全く勇気を失 ってしまいました。あなたがたの神、主は上の天にも、
した ち かみ
下の地にも、神でいらせられるからです。 一二それで、どうか、わたしが
しんせつ あつか ちち いえ
あなたがたを親切に扱 ったように、あなたがたも、わたしの父の家を
しんせつ あつか しゅ ちか たし
親切に扱われることをいま主をさして誓い、確かなしるしをください。
ふ ぼ きょうだい しまい かれ ぞく
一三 そしてわたしの父母、兄 弟、姉妹およびすべて彼らに属するものを
ヨシュア記

い いのち すく し まぬか
生きながらえさせ、わたしたちの命を救って、死を免れさせてくださ
ひと かのじょ い
い﹂。 一四ふたりの人は彼女に言った、
﹁もしあなたがたが、われわれのこ

5
た も いのち
のことを他に漏らさないならば、われわれは命にかけて、あなたがたを
すく しゅ ち たま とき しんせつ
救います。また主がわれわれにこの地を賜わる時、あなたがたを親切に
あつか しんじつ
扱い、真実をつくしましょう﹂。
つな かれ まど いえ まち
一五 そこでラハブは綱をもって彼らを窓からつりおろした。その家が町
じょうへき うえ た かのじょ じょうへき うえ す
の城 壁の上に建っていて、彼女はその城 壁の上に住んでいたからであ
かれ い おっ て あ
る。 一六ラハブは彼らに言った、
﹁追手に会わないように、あなたがたは
やま い か あいだ み かく おっ て かえ い ま
山へ行って、三日の間そこに身を隠し、追手の帰って行くのを待って、そ
さ い ひと かのじょ い
れから去って行きなさい﹂。 一七ふたりの人は彼女に言った、﹁あなたが
ちか ちか つみ おか
われわれに誓わせたこの誓いについて、われわれは罪を犯しません。 一八
ち う い とき まど
われわれがこの地に討ち入る時、わたしたちをつりおろした窓に、この
あか いと むす ふ ぼ きょうだい ちち
赤い糸のひもを結びつけ、またあなたの父母、兄 弟、およびあなたの父
かぞく いえ あつ いえ とぐち そと
の家族をみなあなたの家に集めなさい。 一九ひとりでも家の戸口から外
ヨシュア記

で ち なが せ ひと じ し ん
へ出て、血を流されることがあれば、その責めはその人自身のこうべに
き つみ いえ なか
帰すでしょう。われわれに罪はありません。しかしあなたの家の中に

6
ひと て ち なが せ
いる人に手をかけて血を流すことがあれば、その責めはわれわれのこう
き た も
べに帰すでしょう。 二〇またあなたが、われわれのこのことを他に漏ら
ちか ちか つみ
すならば、あなたがわれわれに誓わせた誓いについては、われわれに罪
い おお
はありません﹂。 二一ラハブは言った、﹁あなたがたの仰せのとおりにい
かれ おく だ かれ さ
たしましょう﹂。こうして彼らを送り出したので、彼らは去った。そし
かのじょ あか まど むす
て彼女は赤いひもを窓に結んだ。
かれ た さ やま おっ て かえ ま か あいだ
彼らは立ち去って山にはいり、追手が帰るのを待って、三日の間そこ
二二
おっ て かれ みち さが み
にとどまった。追手は彼らをあまねく道に捜したが、ついに見つけるこ
ひと やま くだ かわ わた
とができなかった。 二三こうしてふたりの人はまた山を下り、川を渡っ
こ み た の
て、ヌンの子ヨシュアのもとにきて、その身に起ったことをつぶさに述
い しゅ くに
べた。 二四そしてヨシュアに言った、
﹁ほんとうに主はこの国をことごと
て あた くに じゅうみん
くわれわれの手にお与えになりました。この国の住 民はみなわれわれ
ヨシュア記

まえ ふる
の前に震えおののいています﹂。

7
第三章
あさはや お ひとびと
一ヨシュアは朝早く起き、イスラエルの人々すべてとともにシッテムを
しゅったつ い わた やど か
出 立して、ヨルダンに行き、それを渡らずに、そこに宿った。 二三日の
のち しゅくえい なか い めぐ たみ めい い
後、つかさたちは宿 営の中を行き巡り、三民に命じて言った、
﹁レビびと
さいし かみ しゅ けいやく はこ み
である祭司たちが、あなたがたの神、主の契約の箱をかきあげるのを見
ところ しゅったつ したが
るならば、あなたがたはその所を出 立して、そのあとに従わなければな
い みち し
らない。 四そうすれば、あなたがたは行くべき道を知ることができるで
まえ みち
あ ろ う。あ な た が た は 前 に こ の 道 を と お っ た こ と が な い か ら で あ る。
はこ あいだ きょ り
しかし、あなたがたと箱との間には、おおよそ二千キュビトの距離をお
ちか
かなければならない。それに近づいてはならない﹂
。 五ヨシュアはまた
たみ い み きよ しゅ
民に言った、﹁あなたがたは身を清めなさい。あす、主があなたがたのう
ヨシュア記

ふ し ぎ おこな さいし い
ち に 不思議 を 行 わ れ る か ら で あ る﹂。 六ヨ シ ュ ア は 祭司 た ち に 言 っ た、
けいやく はこ たみ さきだ わた かれ けいやく はこ
﹁契約の箱をかき、民に先立って渡りなさい﹂。そこで彼らは契約の箱を

8
たみ さきだ すす
かき、民に先立って進んだ。
しゅ い
主はヨシュアに言われた、﹁きょうからわたしはすべてのイスラエル

まえ たっと もの とも
の前にあなたを尊い者とするであろう。こうしてわたしがモーセと共
かれ し
にいたように、あなたとともにおることを彼らに知らせるであろう。 八
けいやく はこ さいし めい い
あなたは契約の箱をかく祭司たちに命じて言わなければならない、﹃あ
みず い なか た
なたがたは、ヨルダンの水ぎわへ行くと、すぐ、ヨルダンの中に立ちと
ひとびと い
どまらなければならない﹄﹂。 九ヨシュアはイスラエルの人々に言った、
ちか かみ しゅ ことば き
﹁あなたがたはここに近づいて、あなたがたの神、主の言葉を聞きなさ
い い かみ
い﹂。 一〇そしてヨシュアは言った、﹁生ける神があなたがたのうちにお
まえ
いでになり、あなたがたの前から、カナンびと、ヘテびと、ヒビびと、ペ
かなら お はら
リジびと、ギルガシびと、アモリびと、エブスびとを、 必ず追い払われ
つぎ し
ることを、次のことによって、あなたがたは知るであろう。 一一ごらんな
ヨシュア記

ぜん ち しゅ けいやく はこ さきだ わた
さい。全地の主の契約の箱は、あなたがたに先立ってヨルダンを渡ろう
いま ぶぞく ぶぞく
としている。 一二それゆえ、今、イスラエルの部族のうちから、部族ごと

9
あ にん えら ぜん ち しゅ かみ はこ
にひとりずつ、合わせて十二人を選びなさい。 一三全地の主なる神の箱
さいし あし うら みず なか ふ とき
をかく祭司たちの足の裏が、ヨルダンの水の中に踏みとどまる時、ヨル
みず なが うえ なが みず
ダンの水は流れをせきとめられ、上から流れくだる水はとどまって、う
たか
ず高くなるであろう﹂。
たみ わた てんまく た さいし
こうして民はヨルダンを渡ろうとして天幕をいで立ち、祭司たちは
一四
けいやく はこ たみ さきだ い はこ もの
契約の箱をかき、民に先立って行ったが、一五箱をかく者がヨルダンにき
はこ さいし あし みず どうじ
て、箱をかく祭司たちの足が水ぎわにひたると同時に、︱︱ヨルダンは
かりい あいだぢゅう きしいちめん うえ なが
刈入れの間 中、岸一面にあふれるのであるが、︱︱ 一六 上から流れくだ
みず とお まち
る水はとどまって、はるか遠くのザレタンのかたわらにある町アダムの
たか た うみ しお うみ ほう なが
あたりで、うず高く立ち、アラバの海すなわち塩の海の方に流れくだる
みず まった たみ む わた
水は全くせきとめられたので、民はエリコに向かって渡った。 一七すべ
ち わた い あいだ しゅ けいやく はこ
てのイスラエルが、かわいた地を渡って行く間、主の契約の箱をかく
ヨシュア記

さいし なか ち た たみ
祭司たちは、ヨルダンの中のかわいた地に立っていた。そしてついに民
わた おわ
はみなヨルダンを渡り終った。

10
第四章
たみ みな わた おわ とき しゅ い たみ
民が皆、ヨルダンを渡り終った時、主はヨシュアに言われた、 二﹁民の

ぶぞく あ にん えら かれ めい
うちから、部族ごとにひとりずつ、合わせて十二人を選び、 三彼らに命
い なか さいし あし ふ ところ
じて言いなさい、﹃ヨルダンの中で祭司たちが足を踏みとどめたその所
いし と たずさ わた こんや やど ば しょ
から、石十二を取り、それを携えて渡り、今夜あなたがたが宿る場所に
ひとびと ぶぞく
すえなさい﹄﹂。 四そこでヨシュアはイスラエルの人々のうちから、部族
さだ にん もの め よ
ごとに、ひとりずつ、かねて定めておいた十二人の者を召し寄せ、 五ヨ
かれ い かみ しゅ けいやく はこ まえ た い
シュアは彼らに言った、﹁あなたがたの神、主の契約の箱の前に立って行
なか すす はい ひとびと ぶぞく かず
き、ヨルダンの中に進み入り、イスラエルの人々の部族の数にしたがっ
いし と あ かた はこ
て、おのおの石一つを取り上げ、肩にのせて運びなさい。 六これはあな
のち ひ
たがたのうちに、しるしとなるであろう。後の日になって、あなたがた
ヨシュア記

こ いし と
の子どもたちが、
﹃これらの石は、どうしたわけですか﹄と問うならば、
とき かれ みず しゅ けいやく はこ
その時あなたがたは彼らに、むかしヨルダンの水が、主の契約の箱の

11
まえ はこ わた とき
前で、せきとめられたこと、すなわちその箱がヨルダンを渡った時、ヨ
みず つ
ルダンの水が、せきとめられたことを告げなければならない。こうし
いし えいきゅう ひとびと きねん
て、それらの石は永 久にイスラエルの人々の記念となるであろう﹂。
ひとびと めい しゅ い
イスラエルの人々はヨシュアが命じたようにし、主がヨシュアに言わ

ひとびと ぶぞく かず なか
れたように、イスラエルの人々の部族の数にしたがって、ヨルダンの中
いし と たずさ わた かれ やど ば しょ い
から十二の石を取り、それを携えて渡り、彼らの宿る場所へ行って、そ
なか けいやく はこ さいし
こにすえた。 九ヨシュアはまたヨルダンの中で、契約の箱をかく祭司た
あし ふ ところ いし た こんにち
ちが、足を踏みとどめた所に、十二の石を立てたが、今日まで、そこに
のこ はこ さいし しゅ めい たみ つ
残っている。 一〇箱をかく祭司たちは、主がヨシュアに命じて、民に告げ
こと おこな なか た
させられた事が、すべて行われてしまうまで、ヨルダンの中に立ってい
めい たみ いそ わた
た。すべてモーセがヨシュアに命じたとおりである。民は急いで渡っ
たみ わた おわ とき しゅ はこ さいし たみ み まえ
た。 一一民がみな渡り終った時、主の箱と祭司たちとは、民の見る前で
ヨシュア記

わた しそん しそん ぶぞく なか


渡った。 一二ルベンの子孫とガドの子孫、およびマナセの部族の半ばは、
かれ めい ぶそう ひとびと さきだ
モーセが彼らに命じていたように武装して、イスラエルの人々に先立っ

12
わた たたか ぶそう もの たたか しゅ
て渡り、 一三 戦いのために武装したおおよそ四万の者が戦うため、主の
まえ わた へいや つ ひ しゅ
前に渡って、エリコの平野に着いた。 一四この日、主はイスラエルのすべ
ひと まえ たっと もの かれ
て の 人 の 前 に ヨ シ ュ ア を 尊 い 者 と さ れ た の で、彼 ら は み な モ ー セ を
うやま いっしょう うやま
敬 ったように、ヨシュアを一 生のあいだ敬 った。
しゅ い はこ さいし めい
一五 主はヨシュアに言われた、一六
﹁あかしの箱をかく祭司たちに命じて、
あ さいし めい
ヨ ル ダ ン か ら 上 が っ て こ さ せ な さ い﹂。 一七ヨ シ ュ ア は 祭司 た ち に 命 じ
い あ しゅ けいやく はこ
て言った、﹁ヨルダンから上がってきなさい﹂。 一八主の契約の箱をかく
さいし なか あ さいし あし うら
祭司たちはヨルダンの中から上がってきたが、祭司たちの足の裏がかわ
ち どうじ みず ところ なが
い た 地 に あ が る と 同時 に、ヨ ル ダ ン の 水 は も と の 所 に 流 れ か え っ て、
いぜん きし
以前のように、その岸にことごとくあふれた。
たみ しょうがつ か あ ひがし さかい
一九 民は正 月の十日に、ヨルダンから上がってきて、エリコの東の境に
しゅくえい ひとびと
あるギルガルに宿 営した。 二〇そしてヨシュアは、人々がヨルダンから
ヨシュア記

と いし た ひとびと い
取ってきた十二の石をギルガルに立て、 二一イスラエルの人々に言った、
のち ひ こ ちち いし
﹁後の日にあなたがたの子どもたちが、その父に﹃これらの石は、どうし

13
たわけですか﹄とたずねたならば、 二二﹃むかしイスラエルがこのヨルダ
ち わた い こ し
ンを、かわいた地にされて渡ったのだ﹄と言って、その子どもたちに知
かみ しゅ
らせなければならない。 二三すなわちあなたがたの神、主はヨルダンの
みず ほ わた
水を、あなたがたのために干しからして、あなたがたを渡らせてくだ
かみ しゅ こうかい
さった。それはあたかも、あなたがたの神、主が、われわれのために紅海
ほ わた おな
を干しからして、われわれを渡らせてくださったのと同じである。 二四
ち たみ しゅ て ちから し
このようにされたのは、地のすべての民に、主の手に力のあることを知
かみ しゅ おそ
らせ、あなたがたの神、主をつねに恐れさせるためである﹂。
第五章
む がわ にし ほう おう
ヨルダンの向こう側、すなわち西の方におるアモリびとの王たちと、

ヨシュア記

うみ おう みな しゅ ひとびと まえ
海べにおるカナンびとの王たちとは皆、主がイスラエルの人々の前で、
みず ほ かれ わた き
ヨルダンの水を干しからして、彼らを渡らせられたと聞いて、イスラエ

14
ひとびと こころ き かれ げんき
ルの人々のゆえに、心は消え、彼らのうちに、もはや元気もなくなった。
とき しゅ い ひうちいし こがたな つく かさ
二その時、主はヨシュアに言われた、
﹁火打石の小刀を造り、重ねてまた
ひとびと かつれい おこな ひうちいし
イスラエルの人々に割礼を行いなさい﹂。 三そこでヨシュアは火打石の
こがたな つく よう ひ おか ひとびと かつれい おこな
小刀を造り、陽皮の丘で、イスラエルの人々に割礼を行 った。 四ヨシュ
ひとびと かつれい おこな りゆう で たみ
アが人々に割礼を行 った理由はこうである。エジプトから出てきた民
だんし みな
のうちの、すべての男子、すなわち、いくさびとたちは皆、エジプトを
で のち とちゅう あらの し で たみ みな かつれい う
出た後、途中、荒野で死んだが、 五その出てきた民は皆、割礼を受けた
もの で のち とちゅう あらの う たみ
者であった。しかし、エジプトを出た後に、途中、荒野で生まれた民は、
かつれい う ひとびと ねん あいだ あらの
みな割礼を受けていなかった。 六イスラエルの人々は四十年の間、荒野
ある で たみ
を歩いていて、そのエジプトから出てきた民、すなわち、いくさびとた
し た かれ しゅ こえ き したが
ちは、みな死に絶えた。これは彼らが主の声に聞き従わなかったので、
しゅ かれ せんぞ ちか あた おお ち ちち
主は彼らの先祖たちに誓って、われわれに与えると仰せられた地、乳と
ヨシュア記

みつ なが ち かれ み ちか
蜜の流れる地を、彼らに見させないと誓われたからである。 七ヨシュア
かつれい おこな ひとびと おこ こ
が 割礼 を 行 っ た の は、こ の 人々 に つ い で 起 さ れ た そ の 子 ど も た ち で

15
かれ とちゅう かつれい う む かつれい もの
あった。彼らは途中で割礼を受けていなかったので、無割礼の者であっ
たからである。
たみ かつれい おこな おわ たみ しゅくえい じぶん
すべての民に割礼を行うことが終ったので、民は宿 営のうちの自分

ところ きず なお ま とき しゅ い
の所にとどまって傷の直るのを待った。 九その時、主はヨシュアに言わ
れた、
﹁きょう、わたしはエジプトのはずかしめを、あなたがたからころ
さ ところ な こんにち よ
がし去った﹂。それでその所の名は、今日までギルガルと呼ばれている。
ひとびと しゅくえい つき か
一〇 イスラエルの人々はギルガルに宿 営していたが、その月の十四日の
ゆうぐれ へいや すぎこし まつり おこな すぎこし まつり よくじつ
夕暮、エリコの平野で過越の祭を行 った。 一一そして過越の祭の翌日、そ
ち こくもつ たね い むぎ ひ た
の地の穀物、すなわち種入れぬパンおよびいり麦を、その日に食べたが、
ち こくもつ た よくじつ ふ
一二 その地の穀物を食べた翌日から、マナの降ることはやみ、イスラエル
ひとびと え とし ち さんぶつ た
の人々は、もはやマナを獲なかった。その年はカナンの地の産物を食べ
た。
ヨシュア記

ちか め あ み ひと
一三 ヨシュアがエリコの近くにいたとき、目を上げて見ると、ひとりの人
ぬ み て も む た
が抜き身のつるぎを手に持ち、こちらに向かって立っていたので、ヨ

16
ひと い い たす
シュアはその人のところへ行って言った、﹁あなたはわれわれを助ける
てき たす かれ い
のですか。それともわれわれの敵を助けるのですか﹂。 一四彼は言った、
しゅ ぐんぜい しょう いま ち
﹁いや、わたしは主の軍勢の将として今きたのだ﹂。ヨシュアは地にひれ
ふ はい い しゅ なに つ
伏 し 拝 し て 言 っ た、﹁わ が 主 は 何 を し も べ に 告 げ よ う と さ れ る の で す
しゅ ぐんぜい しょう い あし
か﹂。 一五すると主の軍勢の将はヨシュアに言った、﹁あなたの足のくつ
ぬ た ところ せい ところ
を脱ぎなさい。あなたが立っている所は聖なる所である﹂。ヨシュアは
そのようにした。
第六章
ひとびと と で い
一さてエリコは、イスラエルの人々のゆえに、かたく閉ざして、出入り
しゅ い み
するものがなかった。 二主はヨシュアに言われた、
﹁見よ、わたしはエリ
ヨシュア記

おう だい ゆ う し て
コと、その王および大勇士を、あなたの手にわたしている。 三あなたが
まち めぐ まち しゅうい ど まわ
た、いくさびとはみな、町を巡って、町の周囲を一度回らなければなら

17
むいか あいだ にん さいし
ない。六日の間そのようにしなければならない。 四七人の祭司たちは、
おひつじ つの たずさ はこ さきだ
おのおの雄羊の角のラッパを携えて、箱に先立たなければならない。そ
なぬか め ど まち めぐ さいし ふ な
して七日目には七度町を巡り、祭司たちはラッパを吹き鳴らさなければ
さいし おひつじ つの なが ふ な
ならない。 五そして祭司たちが雄羊の角を長く吹き鳴らし、そのラッパ
おと きこ とき たみ おおごえ よ さけ
の音が、あなたがたに聞える時、民はみな大声に呼ばわり、叫ばなけれ
まち しゅうい いし お たみ
ばならない。そうすれば、町の周囲の石がきは、くずれ落ち、民はみな
すす せ のぼ こ さいし
ただちに進んで、攻め上ることができる﹂。 六ヌンの子ヨシュアは祭司
め い けいやく はこ にん さいし
たちを召して言った、﹁あなたがたは契約の箱をかき、七人の祭司たちは
おひつじ つの ほん たずさ しゅ はこ さきだ
雄羊の角のラッパ七本を携えて、主の箱に先立たなければならない﹂。 七
たみ い すす い まち めぐ ぶそう
そして民に言った、﹁あなたがたは進んで行って町を巡りなさい。武装
もの しゅ はこ さきだ すす
した者は主の箱に先立って進まなければならない﹂。
たみ めい にん さいし おひつじ つの
ヨシュアが民に命じたように、七人の祭司たちは、雄羊の角のラッパ

ヨシュア記

ほん たずさ しゅ さきだ すす ふ な しゅ けいやく


七本を携えて、主に先立って進み、ラッパを吹き鳴らした。主の契約の
はこ したが ぶそう もの ふ な さいし
箱はそのあとに従 った。 九武装した者はラッパを吹き鳴らす祭司たち

18
さきだ い はこ したが た ま な ひび
に先立って行き、しんがりは箱に従 った。ラッパは絶え間なく鳴り響
たみ めい い よ
い た。 一〇し か し、ヨ シ ュ ア は 民 に 命 じ て 言 っ た、﹁あ な た が た は 呼 ば
こえ きこ くち
わってはならない。あなたがたの声を聞えさせてはならない。また口
ことば だ よ めい ひ
から言葉を出してはならない。ただ、わたしが呼ばわれと命じる日に、
よ しゅ はこ も
あなたがたは呼ばわらなければならない﹂。 一一こうして主の箱を持っ
まち めぐ しゅうい ど まわ ひとびと しゅくえい かえ よる
て、町を巡らせ、その周囲を一度回らせた。人々は宿 営に帰り、夜を
しゅくえい す
宿 営で過ごした。
よくあさ はや お さいし しゅ はこ にん さいし
一二翌朝ヨシュアは早く起き、祭司たちは主の箱をかき、 一三七人の祭司
おひつじ つの ほん たずさ しゅ はこ さきだ た
たちは、雄羊の角のラッパ七本を携えて、主の箱に先立ち、絶えず、ラッ
ふ な すす ぶそう もの さきだ い
パを吹き鳴らして進み、武装した者はこれに先立って行き、しんがりは
しゅ はこ したが た ま な ひび つぎ ひ
主 の 箱 に 従 っ た。ラ ッ パ は 絶 え 間 な く 鳴 り 響 い た。 一四そ の 次 の 日 に
まち しゅうい ど めぐ しゅくえい かえ むいか あいだ
も、町の周囲を一度巡って宿 営に帰った。六日の間そのようにした。
ヨシュア記

なぬか め よ あ はや お おな まち ど
一五七日目には、夜明けに、早く起き、同じようにして、町を七度めぐっ
まち ど ひ ど め さいし
た。町を七度めぐったのはこの日だけであった。 一六七度目に、祭司た

19
ふ とき たみ い よ しゅ
ちがラッパを吹いた時、ヨシュアは民に言った、﹁呼ばわりなさい。主は
まち たま まち なか
この町をあなたがたに賜わった。 一七この町と、その中のすべてのもの
しゅ ほうのうぶつ ほろ ゆうじょ
は、主への奉納物として滅ぼされなければならない。ただし遊女ラハブ
いえ とも もの い
と、その家に共におる者はみな生かしておかなければならない。われわ
おく し しゃ
れが送った使者たちをかくまったからである。 一八また、あなたがたは、
ほうのうぶつ て ふ ほうのう あた ほうのうぶつ
奉納物に手を触れてはならない。奉納に当り、その奉納物をみずから
と しゅくえい ほろ なや
取って、イスラエルの宿 営を、滅ぼさるべきものとし、それを悩ますこ
ぎん きん せいどう てつ うつわ しゅ せい
とのないためである。 一九ただし、銀と金、青銅と鉄の器は、みな主に聖
もの しゅ くら たずさ い たみ
なる物であるから、主の倉に携え入れなければならない﹂。 二〇そこで民
よ さいし ふ な たみ おと き
は呼ばわり、祭司たちはラッパを吹き鳴らした。民はラッパの音を聞く
どうじ おおごえ よ いし お
と同時に、みな大声をあげて呼ばわったので、石がきはくずれ落ちた。
たみ のぼ まち まち せ と
そこで民はみな、すぐに上って町にはいり、町を攻め取った。 二一そして
ヨシュア記

まち おとこ おんな わか もの お もの うし ひつじ


町にあるものは、 男も、 女も、若い者も、老いた者も、また牛、 羊、ろ
ほろ
ばをも、ことごとくつるぎにかけて滅ぼした。

20
とき ち さぐ ひと い ゆうじょ
二二その時ヨシュアは、この地を探ったふたりの人に言った、
﹁あの遊女
いえ おんな かのじょ ぞく つ だ かのじょ
の家にはいって、その女と彼女に属するすべてのものを連れ出し、彼女
ちか せっこう わか ひと
に 誓 っ た よ う に し な さ い﹂。 二三斥候 と な っ た そ の 若 い 人 た ち は は い っ
ふ ぼ きょうだい かのじょ ぞく つ
て、ラハブとその父母、兄 弟、そのほか彼女に属するすべてのものを連
だ しんぞく つ だ しゅくえい そと お
れ出し、その親族をみな連れ出して、イスラエルの宿 営の外に置いた。
ひ まち なか や ぎん きん せいどう
二四そして火で町とその中のすべてのものを焼いた。ただ、銀と金、青銅
てつ うつわ しゅ いえ くら おさ ゆうじょ ちち いえ
と鉄の器は、主の家の倉に納めた。 二五しかし、遊女ラハブとその父の家
いちぞく かのじょ ぞく い
の一族と彼女に属するすべてのものとは、ヨシュアが生かしておいたの
こんにち す
で、ラハブは今日までイスラエルのうちに住んでいる。これはヨシュア
さぐ し しゃ
がエリコを探らせるためにつかわした使者たちをかくまったためであ
る。
とき ひとびと ちか た い た
二六ヨシュアは、その時、人々に誓いを立てて言った、
﹁おおよそ立って、
ヨシュア記

まち さいけん ひと しゅ まえ
このエリコの町を再建する人は、主の前にのろわれるであろう。
いしずえ ひと ちょうし うしな
その礎をすえる人は長子を失い、

21
もん た ひと すえ こ うしな
その門を建てる人は末の子を失うであろう﹂。
しゅ とも めいせい ち ひろ
二七 主はヨシュアと共におられ、ヨシュアの名声は、あまねくその地に広
がった。
第七章
ひとびと ほうのうぶつ つみ おか
一しかし、イスラエルの人々は奉納物について罪を犯した。すなわちユ
ぶぞく こ こ こ
ダ の 部族 の う ち の、ゼ ラ の 子 ザ ブ デ の 子 で あ る カ ル ミ の 子 ア カ ン が
ほうのうぶつ と しゅ ひとびと いか
奉納物を取ったのである。それで主はイスラエルの人々にむかって怒
はっ
りを発せられた。
ひとびと ひがし ちか
二ヨシュアはエリコから人々をつかわし、ベテルの東、ベテアベンの近
い ひとびと い のぼ い
くにあるアイに行かせようとして、その人々に言った、
﹁上って行って、
ヨシュア記

ち さぐ ひとびと のぼ い さぐ
かの地を探ってきなさい﹂。人々は上って行って、アイを探ったが、三ヨ
かえ い たみ い およ
シュアのもとに帰ってきて言った、﹁民をことごとく行かせるには及び

22
にん のぼ う かれ すく
ません。ただ二、三千人を上らせて、アイを撃たせなさい。彼らは少な
たみ およ
いのですから、民をことごとくあそこへやってほねおりをさせるには及
たみ にん のぼ
びません﹂。 四そこで民のうち、おおよそ三千人がそこに上ったが、つい
ひとびと まえ に だ ひとびと かれ
にアイの人々の前から逃げ出した。 五アイの人々は彼らのうち、おおよ
にん ころ さら かれ もん まえ お くだ ざか
そ三十六人を殺し、更に彼らを門の前からシバリムまで追って、下り坂
かれ ころ たみ こころ き みず
で彼らを殺したので、民の心は消えて水のようになった。
いふく さ ちょうろう とも しゅ
六そのためヨシュアは衣服を裂き、イスラエルの長 老たちと共に、主の
はこ まえ ゆうがた ち ふ い
箱の前で、夕方まで地にひれ伏し、ちりをかぶった。 七ヨシュアは言っ
しゅ かみ たみ わた
た、
﹁ああ、主なる神よ、あなたはなにゆえ、この民にヨルダンを渡らせ、
て わた ほろ
われわれをアモリびとの手に渡して滅ぼさせられるのですか。われわ
む やす
れ は ヨ ル ダ ン の 向 こ う に、安 ん じ て と ど ま れ ば よ か っ た の で す。 八あ
しゅ てき せ いま
あ、主よ。イスラエルがすでに敵に背をむけた今となって、わたしはま
ヨシュア記

なに い え ち す
た何を言い得ましょう。 九カナンびと、およびこの地に住むすべてのも
き せ な ち た
のは、これを聞いて、われわれを攻めかこみ、われわれの名を地から断

23
さ おお な
ち去ってしまうでしょう。それであなたは、あなたの大いなる名のため
なに
に、何をしようとされるのですか﹂。
しゅ い た
主はヨシュアに言われた、
一〇 ﹁立ちなさい。あなたはどうして、そのよ
ふ つみ おか かれ
うにひれ伏しているのか。 一一イスラエルは罪を犯し、わたしが彼らに
めい けいやく やぶ かれ ほうのうぶつ と ぬす いつわ
命じておいた契約を破った。彼らは奉納物を取り、盗み、かつ偽 って、
じぶん しょゆうぶつ い ひとびと てき
それを自分の所有物のうちに入れた。 一二それでイスラエルの人々は敵
あた てき せ かれ ほろ
に当ることができず、敵に背をむけた。彼らも滅ぼされるべきものと
ほろ
なったからである。あなたがたが、その滅ぼされるべきものを、あなた
ほろ さ
がたのうちから滅ぼし去るのでなければ、わたしはもはやあなたがたと
とも た たみ きよ い
は共にいないであろう。 一三立って、民を清めて言いなさい、
﹃あなたが
み きよ そな かみ しゅ
たは身を清めて、あすのために備えなさい。イスラエルの神、主はこう
おお ほろ
仰せられる、
﹁イスラエルよ、あなたがたのうちに、滅ぼされるべきもの
ヨシュア記

ほろ のぞ さ
がある。その滅ぼされるべきものを、あなたがたのうちから除き去るま
てき あた あさ
では、敵に当ることはできないであろう﹂。 一四それゆえ、あすの朝、あ

24
ぶぞく すす で しゅ あ
なたがたは部族ごとに進み出なければならない。そして主がくじを当
ぶぞく しぞく すす しゅ あ しぞく
てられる部族は、氏族ごとに進みいで、主がくじを当てられる氏族は、
かぞく すす しゅ あ かぞく おとこ すす
家族ごとに進みいで、主がくじを当てられる家族は、男ひとりびとり進
で ほろ も
み出なければならない。 一五そしてその滅ぼされるべきものを持ってい
あ もの も もの ぜ ん ぶ とも ひ や
て、くじを当てられた者は、その持ち物全部と共に、火で焼かれなけれ
しゅ けいやく やぶ おろ おこな
ばならない。主の契約を破りイスラエルのうちに愚かなことを行 った
からである﹄﹂。
あさはや お ぶぞく すす だ
一六 こうしてヨシュアは朝早く起き、イスラエルを部族ごとに進み出さ
ぶぞく あた しぞく すす
せたところ、ユダの部族がくじに当り、一七ユダのもろもろの氏族を進み
だ しぞく あた しぞく
出させたところ、ゼラびとの氏族が、くじに当った。ゼラびとの氏族を
かぞく すす だ かぞく あた
家族ごとに進み出させたところ、ザブデの家族が、くじに当った。 一八ザ
かぞく おとこ すす だ あた
ブデの家族を男ひとりびとり進み出させたところ、アカンがくじに当っ
ヨシュア記

ぶぞく こ こ
た。アカンはユダの部族のうちの、ゼラの子、ザブデの子なるカルミの
こ とき い こ
子である。 一九その時ヨシュアはアカンに言った、
﹁わが子よ、イスラエ

25
かみ しゅ えいこう き しゅ いま
ルの神、主に栄光を帰し、また主をさんびし、あなたのしたことを今わ
つ かく
た し に 告 げ な さ い。わ た し に 隠 し て は な ら な い﹂。 二〇ア カ ン は ヨ シ ュ
こた かみ しゅ たい つみ おか
アに答えた、﹁ほんとうにわたしはイスラエルの神、主に対して罪を犯し
もの
ま し た。わ た し が し た の は こ う で す。 二 一わ た し は ぶ ん ど り 物 の う ち
うつく がいとう まい ぎん めかた きん
に、シナルの美しい外套一枚と銀二百シケルと、目方五十シケルの金の
の ぼう ぽん み と
延べ棒一本のあるのを見て、ほしくなり、それを取りました。わたしの
てんまく なか ち かく ぎん した
天幕の中に、地に隠してあります。銀はその下にあります﹂。
し しゃ し しゃ てんまく はし
二二 そこでヨシュアは使者たちをつかわした。使者たちが天幕に走って
み かれ てんまく かく ぎん した
いって見ると、それは彼の天幕に隠してあって、銀もその下にあった。 二
かれ てんまく なか と だ
三彼らはそれを天幕の中から取り出して、ヨシュアとイスラエルのすべ
ひとびと ところ たずさ しゅ まえ お
ての人々の所に携えてきたので、それを主の前に置いた。 二四ヨシュア
とも こ とら ぎん
はすべてのイスラエルびとと共に、ゼラの子アカンを捕え、かの銀と
ヨシュア記

がいとう きん の ぼう かれ むすめ うし ひつじ てんまく


外套と金の延べ棒、および彼のむすこ、 娘、牛、ろば、 羊、天幕など、
かれ も もの と たに ひ
彼の持ち物をことごとく取って、アコルの谷へ引いていった。 二五そし

26
い なや しゅ
てヨシュアは言った、﹁なぜあなたはわれわれを悩ましたのか。主は、
なや
きょう、あなたを悩まされるであろう﹂。やがてすべてのイスラエルび
いし かれ う ころ かれ かぞく いし う ころ ひ や
とは石で彼を撃ち殺し、また彼の家族をも石で撃ち殺し、火をもって焼
うえ いしづか おお つ あ こんにち
いた。 二六そしてアカンの上に石塚を大きく積み上げたが、それは今日
のこ しゅ はげ いか
まで残っている。そして主は激しい怒りをやめられたが、このことに
ところ な こんにち たに よ
よって、その所の名は今日までアコルの谷と呼ばれている。
第八章
しゅ い おそ
主はヨシュアに言われた、﹁恐れてはならない、おののいてはならな

みな ひき た せ のぼ
い。いくさびとを皆、率い、立って、アイに攻め上りなさい。わたしは
おう たみ まち ち て さづ
アイの王とその民、その町、その地をあなたの手に授ける。 二あなたは、
ヨシュア記

おう おう
さきにエリコとその王にしたとおり、アイとその王とにしなければなら
もの かちく せ ん り ひん
ない。ただし、ぶんどり物と家畜とは戦利品としてあなたがたのものと

27
まち ふくへい お
することができるであろう。あなたはまず、町のうしろに伏兵を置きな
さい﹂。
た とも せ のぼ
三ヨシュアは立って、すべてのいくさびとと共に、アイに攻め上ろうと
だい ゆ う し にん えら よる
し て、ま ず 大勇士 三 万 人 を 選 び、そ れ を 夜 の う ち に つ か わ し た。 四ヨ
かれ めい い まち む まち
シュアは彼らに命じて言った、﹁あなたがたは町に向かって、町のうしろ
ふ まち とお はな そな
に伏せていなければならない。町を遠く離れないで、みな備えをしてい
したが たみ みなとも まち せ よ
なければならない。 五わたしとわたしに従う民とは皆共に、町に攻め寄
かれ まえ で
せよう。そして彼らが前のようにわれわれにむかって出てくるとき、わ
かれ まえ に かれ
れ わ れ は 彼 ら の 前 か ら 逃 げ る で あ ろ う。 六そ う す れ ば 彼 ら は わ れ わ れ
お で かれ まち
を追って出てくるであろうから、われわれはついに彼らを町からおびき
だ かれ い ひとびと まえ
出すことができる。彼らは言うであろう、﹃この人々はまた前のように、
まえ に かれ まえ に
われわれの前から逃げていく﹄。こうしてわれわれは彼らの前から逃げ
ヨシュア記

とき ふ ところ た あ
るであろう。 七その時、あなたがたは伏せている所から立ち上がって、
まち と かみ しゅ
町を取らなければならない。あなたがたの神、主がそれをあなたがたの

28
て あた まち と まち
手に与えられるからである。 八あなたがたが、町を取ったならば、町に
ひ はな しゅ めい
火を放ち、主が命じられたようにしなければならない。わたしはこう、
めい かれ
あなたがたに命じるのである﹂。 九そうしてヨシュアが彼らをつかわし
かれ せいほう あいだ ま ぶ ば しょ
たので、彼らはアイの西方、ベテルとアイの間の待ち伏せする場所に
い み ふ よる たみ なか やど
行って身を伏せた。ヨシュアはその夜、民の中に宿った。
あ あさ はや お たみ あつ ちょうろう
一〇 ヨシュアは明くる朝、早く起きて、民を集め、イスラエルの長 老た
とも たみ さきだ のぼ かれ とも
ちと共に、民に先立って、アイに上っていった。 一一彼と共にいたいくさ
のぼ まち まえ ちか きた じん と
びとたちもみな上っていって、町の前に近づき、アイの北に陣を取った。
かれ あいだ たに
彼らとアイの間には、一つの谷があった。 一二ヨシュアはおおよそ五千
にん まち せいほう あいだ ふ
人をとって、町の西方、ベテルとアイの間に、伏せておいた。 一三こうし
たみ しゅりょく まち きた まち にし
て民の主 力を町の北におき、しんがりを町の西においた。ヨシュアは
よ たに なか やど おう み たみ とも
その夜、谷の中で宿った。 一四アイの王はこれを見て、すべての民と共
ヨシュア記

いそ はや お い くだ ざか すす で
に、急いで、早く起き、アラバに行く下り坂に進み出て、イスラエルと
たたか おう まち ふくへい
戦 った。しかし、王は町のうしろに、すきをうかがう伏兵のおることを

29
し ひとびと とも かれ
知らなかった。 一五ヨシュアはイスラエルのすべての人々と共に、彼ら
う やぶ あらの ほうこう に まち
に打ち破られたふりをして、荒野の方向へ逃げだしたので、一六その町の
たみ よ あつ かれ お お
民はみな呼ばわり集まって彼らのあとを追い、ヨシュアのあとを追って
まち だ のこ
町からおびき出され、 一七アイにもベテルにも残っているものはひとり
で お まち あ はな
もなく、みな出てイスラエルのあとを追い、町を開け放して、イスラエ

ルのあとを追った。
とき しゅ い て
一八 その時、主はヨシュアに言われた、﹁あなたの手にあるなげやりを、ア
ほう の まち て あた
イの方にさし伸べなさい。わたしはその町をあなたの手に与えるであ
て ほう の
ろう﹂。そこでヨシュアが手にしていたなげやりを、アイの方にさし伸
ふくへい ば しょ た あ て
べると、一九伏兵はたちまちその場所から立ち上がり、ヨシュアが手をの
どうじ はし まち はい と まち ひ
べると同時に、走って町に入り、それを取って、ただちに町に火をかけ
ひとびと かえ み まち や けむり
た。 二〇それでアイの人々が、うしろをふり返って見ると、町の焼ける煙
ヨシュア記

てん た に
が天に立ちのぼっていたので、こちらへもあちらへも逃げるすべがな
あらの に たみ み お もの せま
かった。荒野へ逃げていった民も身をかえして、追ってきた者に迫っ

30
ふくへい まち と まち や
た。 二一ヨシュアとすべてのイスラエルびとは、伏兵が町を取り、町の焼
けむり た のぼ み み ひとびと う
ける煙が立ち上るのを見て、身をかえしてアイの人々を撃った。 二二ま
まち と まち で かれ む かれ
た町を取ったものは町を出て彼らに向かったので、彼らは、こちらとあ
なか
ちらとからイスラエルの中にはさまれた。こうしてイスラエルびとが
かれ う い のこ に
彼らを撃ったので、生き残ったもの、逃げおおせたものは、ひとりもな
おう い つ
かった。 二三そしてアイの王を生けどりにして、ヨシュアのもとへ連れ
てきた。
あらの ついげき じゅうみん の
イスラエルびとは、荒野に追撃してきたアイの住 民をことごとく野
二四
ころ のこ う たお みな かえ
で殺し、つるぎをもってひとりも残さず撃ち倒してのち、皆アイに帰り、
まち う ほろ ひ ひとびと
つるぎをもってその町を撃ち滅ぼした。 二五その日アイの人々はことご
たお かず だんじょ にん
とく倒れた。その数は男女あわせて一万二千人であった。 二六ヨシュア
じゅうみん ほろ の
はアイの住 民をことごとく滅ぼしつくすまでは、なげやりをさし伸べ
ヨシュア記

て ひ まち かちく ひん
た手を引っこめなかった。 二七ただし、その町の家畜および、ぶんどり品
じぶん せ ん り ひん と しゅ
はイスラエルびとが自分たちの戦利品として取った。主がヨシュアに

31
めい ことば
命じられた言葉にしたがったのである。 二八こうしてヨシュアはアイを
や えいきゅう あらつか こんにち あ ち
焼いて、 永 久に荒塚としたが、それは今日まで荒れ地となっている。 二
おう ゆうがた き か ひ い
ヨシュアはまた、アイの王を夕方まで木に掛けてさらし、日の入るこ

めい したい き と まち もん いりぐち な
ろ、命じて、その死体を木から取りおろし、町の門の入口に投げすて、そ
うえ いし おおつか つ あ こんにち のこ
の上に石の大塚を積み上げさせたが、それは今日まで残っている。
やま かみ しゅ
三〇 そ し て ヨ シ ュ ア は エ バ ル 山 に イ ス ラ エ ル の 神、主 の た め に 一 つ の
さいだん きず しゅ ひとびと めい
祭壇を築いた。 三一これは主のしもべモーセがイスラエルの人々に命じ
りっぽう しょ てつ
たことにもとづき、モーセの律法の書にしるされているように、鉄の
どうぐ あ しぜん いし さいだん ひとびと うえ しゅ
道具を当てない自然のままの石の祭壇であって、人々はその上で、主に
はんさい しゅうおんさい そな ところ
燔祭をささげ、 酬 恩 祭を供えた。 三二その所で、ヨシュアはまたモーセ
か りっぽう ひとびと まえ いし か うつ
の書きしるした律法を、イスラエルの人々の前で、石に書き写した。 三三
ほんごくじん きりゅう た こ く じん ちょうろう
こうしてすべてのイスラエルびとは、本国人も、寄留の他国人も、長 老、
ヨシュア記

とも しゅ けいやく はこ
つかさびと、さばきびとと共に、主の契約の箱をかくレビびとである
さいし まえ はこ わか なか やま まえ
祭司たちの前で、箱のこなたとかなたに分れて、半ばはゲリジム山の前

32
なか やま まえ た しゅ めい
に、半ばはエバル山の前に立った。これは主のしもべモーセがさきに命
たみ しゅくふく のち
じたように、イスラエルの民を祝 福するためであった。 三四そして後、ヨ
りっぽう しょ ところ しゅくふく
シュアはすべての律法の書にしるされている所にしたがって、祝 福と、
かん りっぽう ことば よ めい
のろいとに関する律法の言葉をことごとく読んだ。 三五モーセが命じた
ことば ぜんかいしゅう おんな こ
すべての言葉のうち、ヨシュアがイスラエルの全 会 衆および女と子ど
す きりゅう た こ く じん まえ よ
もたち、ならびにイスラエルのうちに住む寄留の他国人の前で、読まな
かったものは一つもなかった。
第九章
にしがわ さんち へいち たいかい
さて、ヨルダンの西側の、山地、平地、およびレバノンまでの大海の

えんがん す おう
沿岸に住むもろもろの王たち、すなわちヘテびと、アモリびと、カナン
ヨシュア記

おう き
びと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとの王たちは、これを聞いて、 二
こころ あ あいあつ たたか
心を合わせ、相集まって、ヨシュアおよびイスラエルと戦おうとした。

33
じゅうみん
三しかし、ギベオンの住 民たちは、ヨシュアがエリコとアイにおこなっ
き じぶん さくりゃく い しょくりょうひん じゅんび
たことを聞いて、 四自分たちも策 略をめぐらし、行って食 料 品を準備
ふる ふくろ ふる やぶ つくろ しゅ かわぶくろ
し、古びた袋と、古びて破れたのを繕 ったぶどう酒の皮 袋とを、ろばに
お つくろ ふる あし ふる きもの み かれ
負わせ、五 繕 った古ぐつを足にはき、古びた着物を身につけた。彼らの
しょくりょう くだ かれ じんえい
食 料のパンは、みなかわいて、砕けていた。 六彼らはギルガルの陣営の
ところ かれ ひとびと い とお
ヨシュアの所にきて、彼とイスラエルの人々に言った、﹁われわれは遠い
くに いま けいやく むす
国からまいりました。それで今われわれと契約を結んでください﹂。 七
ひとびと い
しかし、イスラエルの人々はそのヒビびとたちに言った、﹁あなたがたは
す し
われわれのうちに住んでいるのかも知れないから、われわれはどうして
けいやく むす かれ い
あなたがたと契約が結べましょう﹂。 八彼らはヨシュアに言った、
﹁われ
かれ い
われはあなたのしもべです﹂。ヨシュアは彼らに言った、﹁あなたがたは
かれ い
だれですか。どこからきたのですか﹂。 九彼らはヨシュアに言った、
﹁し
ヨシュア記

かみ しゅ な とお くに
もべどもはあなたの神、主の名のゆえに、ひじょうに遠い国からまいり
しゅ めいせい しゅ おこな
ました。われわれは主の名声、および主がエジプトで行われたすべての

34
こと き しゅ む がわ
事を聞き、 一〇また主がヨルダンの向こう側にいたアモリびとのふたり
おう おう
の王、すなわちヘシボンの王シホン、およびアシタロテにおったバシャ
おう おこな き
ンの王オグに行われたすべてのことを聞いたからです。 一一それで、わ
ちょうろう くに じゅうみん い
れわれの長 老たち、および国の住 民はみなわれわれに言いました、
﹃お
たびじ しょくりょう て たずさ かれ あ い
まえたちは旅路の食 料を手に携えていって、彼らに会って言いなさい、
いま けいやく むす
﹁われわれはあなたがたのしもべです。それで今われわれと契約を結ん
ところ く
でください﹂﹄。 一二ここにあるこのパンは、あなたがたの所に来るため、
しゅったつ ひ いえ たび
われわれが出 立する日に、おのおの家から、まだあたたかなのを旅の
しょくりょう じゅんび いま くだ
食 料として準備したのですが、今はもうかわいて砕けています。 一三ま
しゅ み かわぶくろ あたら やぶ
たぶどう酒を満たしたこれらの皮 袋も、新しかったのですが、破れまし
きもの たびじ なが ふる
た。われわれのこの着物も、くつも、旅路がひじょうに長かったので、古
ひとびと かれ しょくりょうひん とも
びてしまいました﹂。 一四そこでイスラエルの人々は彼らの食 料 品を共
ヨシュア記

た しゅ もと
に食べ、主のさしずを求めようとはしなかった。 一五そしてヨシュアは
かれ わ こう けいやく むす かれ い かいしゅう ちょう
彼らと和を講じ、契約を結んで、彼らを生かしておいた。 会 衆の長たち

35
かれ ちか た
は彼らに誓いを立てた。
けいやく むす か のち かれ ひとびと ちか ひとびと じぶん
契約を結んで三日の後に、彼らはその人々が近くの人々で、自分たち
一六
す き ひとびと すす
のうちに住んでいるということを聞いた。 一七イスラエルの人々は進ん
か め まちまち つ まちまち
で、三日目にその町々に着いた。その町々とは、ギベオン、ケピラ、ベ
かいしゅう ちょう
エロテおよびキリアテ・ヤリムであった。 一八ところで会 衆の長たちが、
かみ しゅ かれ ちか た
すでにイスラエルの神、主をさして彼らに誓いを立てていたので、イス
ひとびと かれ ころ かいしゅう ちょう
ラエルの人々は彼らを殺さなかった。そこで会 衆はみな、 長たちにむ
ちょう みな ぜんかいしゅう い
かってつぶやいた。 一九しかし、長たちは皆、全 会 衆に言った、
﹁われわ
かみ しゅ かれ ちか いま かれ ふ
れはイスラエルの神、主をさして彼らに誓った。それゆえ今、彼らに触
かれ い
れてはならない。 二〇われわれは、こうして彼らを生かしておこう。そ
かれ た ちか いか のぞ
うすれば、われわれが彼らに立てた誓いのゆえに、怒りがわれわれに臨
ちょう ひとびと かれ い
むことはないであろう﹂。 二一 長たちはまた人々に﹁彼らを生かしておこ
ヨシュア記

い かれ ぜんかいしゅう き みず
う﹂と言ったので、彼らはついに、全 会 衆のために、たきぎを切り、水
ちょう かれ い
をくむものとなった。 長たちが彼らに言ったとおりである。

36
かれ よ よ い
二二 ヨシュアは彼らを呼び寄せて言った、
﹁あなたがたは、われわれのう
す とお はな
ちに住みながら、なぜ﹃われわれはあなたがたからは遠く離れている﹄と
い いま
言って、われわれをだましたのか。 二三それであなたがたは今のろわれ、
どれい かみ いえ き みず
奴隷となってわたしの神の家のために、たきぎを切り、水をくむものが、
た で かれ こた
絶えずあなたがたのうちから出るであろう﹂。 二四彼らはヨシュアに答
い かみ しゅ ち
えて言った、
﹁あなたの神、主がそのしもべモーセに、この地をことごと
あた ち す たみ まえ
くあなたがたに与え、この地に住む民をことごとくあなたがたの前から
ほろ さ めい あき つた
滅ぼし去るようにと、お命じになったことを、しもべどもは明らかに伝
き いのち あやう ひじょう
え聞きましたので、あなたがたのゆえに、 命が危いと、われわれは非常
おそ いま て
に恐れて、このことをしたのです。 二五われわれは、今、あなたの手のう
よ おも ただ おも
ちにあります。われわれにあなたがして良いと思い、正しいと思うこと
かれ かれ
をしてください﹂。 二六そこでヨシュアは、彼らにそのようにし、彼らを
ヨシュア記

ひとびと て すく ころ
イスラエルの人々の手から救って殺させなかった。 二七しかし、ヨシュ
ひ かれ かいしゅう しゅ さいだん しゅ えら
アは、その日、彼らを、会 衆のため、また主の祭壇のため、主が選ばれ

37
ば しょ き みず もの こんにち
る場所で、たきぎを切り、水をくむ者とした。これは今日までつづいて
いる。
第一〇章
おう せ と
エルサレムの王アドニゼデクは、ヨシュアがアイを攻め取って、それ

まった ほろ おう おう
を全く滅ぼし、さきにエリコとその王とにしたように、アイとその王に
じゅうみん わ こう
もしたこと、またギベオンの住 民が、イスラエルと和を講じて、そのう
き おお おそ おお まち
ちにおることを聞き、 二大いに恐れた。それは、ギベオンが大きな町で
おう みやこ おお
あって、王の都にもひとしいものであり、またアイより大きくて、その
ひとびと つよ おう
うちの人々が、すべて強かったからである。 三それでエルサレムの王ア
おう おう おう
ドニゼデクは、ヘブロンの王ホハム、ヤルムテの王ピラム、ラキシの王
ヨシュア記

おう ひと い
ヤピア、およびエグロンの王デビルに人をつかわして言った、 四﹁わた
ところ のぼ たす
しの所に上ってきて、わたしを助けてください。われわれはギベオンを

38
う ひとびと わ こう
撃ちましょう。ギベオンはヨシュアおよびイスラエルの人々と和を講
にん おう おう
じたからです﹂。 五アモリびとの五人の王、すなわちエルサレムの王、ヘ
おう おう おう おう へい あつ
ブロンの王、ヤルムテの王、ラキシの王、およびエグロンの王は兵を集
ぐんぜい ひき のぼ む じん と
め、そのすべての軍勢を率いて上ってきて、ギベオンに向かって陣を取
せ たたか
り、それを攻めて戦 った。
ひとびと じんえい ひと い
ギベオンの人々は、ギルガルの陣営に人をつかわし、ヨシュアに言っ

て ひ たす はや
た、
﹁あなたの手を引かないで、しもべどもを助けてください。早く、わ
ところ のぼ すく たす さんち す
れわれの所に上ってきて、われわれを救い、助けてください。山地に住
おう あつ せ
むアモリびとの王たちがみな集まって、われわれを攻めるからです﹂。 七
だい ゆ う し ひき
そこでヨシュアはすべてのいくさびとと、すべての大勇士を率いて、ギ
のぼ い とき しゅ い かれ
ルガルから上って行った。 八その時、主はヨシュアに言われた、
﹁彼らを
おそ かれ て
恐れてはならない。わたしが彼らをあなたの手にわたしたからである。
ヨシュア記

かれ あた
彼らのうちには、あなたに当ることのできるものは、ひとりもないであ
すす
ろう﹂。 九ヨシュアは、ギルガルから、よもすがら進みのぼって、にわか

39
かれ せ しゅ かれ まえ おそ
に彼らに攻めよせたところ、 一〇主は彼らを、イスラエルの前に、恐れあ
かれ う
わてさせられたので、イスラエルはギベオンで彼らをおびただしく撃ち
ころ のぼ ざか に かれ
殺し、ベテホロンの上り坂をとおって逃げる彼らを、アゼカとマッケダ
ついげき かれ まえ に はし
まで追撃した。 一一彼らがイスラエルの前から逃げ走って、ベテホロン
くだ ざか とき しゅ てん かれ うえ おおいし ふ
の下り坂をおりていた時、主は天から彼らの上に大石を降らし、アゼカ
おお ひとびと し
にいたるまでもそうされたので、多くの人々が死んだ。イスラエルの
ひとびと ころ ひょう う し
人々がつるぎをもって殺したものよりも、 雹に打たれて死んだものの
おお
ほうが多かった。
しゅ ひとびと ひ
主がアモリびとをイスラエルの人々にわたされた日に、ヨシュアは
一二
ひとびと まえ しゅ い
イスラエルの人々の前で主にむかって言った、
ひ うえ
﹁日よ、ギベオンの上にとどまれ、
つき たに
月よ、アヤロンの谷にやすらえ﹂。
ヨシュア記

たみ てき う やぶ
一三 民がその敵を撃ち破るまで、

日はとどまり、

40
つき うご
月は動かなかった。
しょ ひ てん ちゅうくう
これはヤシャルの書にしるされているではないか。日が天の中 空にと
いそ ぼっ にち
どまって、急いで没しなかったこと、おおよそ一日であった。 一四これよ
さき しゅ ひと ことば き ひ
り先にも、あとにも、主がこのように人の言葉を聞きいれられた日は一
にち しゅ たたか
日もなかった。主がイスラエルのために戦われたからである。
ひと とも じんえい
一五 こうしてヨシュアはイスラエルのすべての人と共にギルガルの陣営
かえ
に帰った。
にん おう に い あな かく
一六 かの五人の王たちは逃げて行って、マッケダのほら穴に隠れたが、 一
にん おう あな み
五人の王たちがマッケダのほら穴にかくれているのが見つかったと、

つ もの い あな くち
ヨシュアに告げる者があったので、 一八ヨシュアは言った、
﹁ほら穴の口
おおいし ひと お まも
に大石をころがし、そのそばに人を置いて、守らせなさい。 一九ただし、
てき お
あなたがたは、そこにとどまらないで、敵のあとを追い、そのしんがり
ヨシュア記

う かれ まち かみ しゅ
を撃ち、彼らをその町にはいらせてはならない。あなたがたの神、主が
かれ て わた
彼らをあなたがたの手に渡されたからである﹂。 二〇ヨシュアとイスラ

41
ひとびと おお かれ う ころ かれ ほろ
エルの人々は、大いに彼らを撃ち殺し、ついに彼らを滅ぼしつくしたが、
かれ い のこ もの けんご まちまち に
彼らのうちのがれて生き残った者どもは、堅固な町々に逃げこんだの
たみ やす じんえい かえ
で、 二一民はみな安らかにマッケダの陣営のヨシュアのもとに帰ってき
ひとびと した な もの
たが、イスラエルの人々にむかって舌を鳴らす者はひとりもなかった。
とき い あな くち ひら あな
二二その時ヨシュアは言った、
﹁ほら穴の口を開いて、ほら穴から、かの
にん おう だ
五人の王たちを、わたしのもとにひき出しなさい﹂。 二三やがて、そのよ
にん おう おう
うにして、かの五人の王たち、すなわち、エルサレムの王、ヘブロンの
おう おう おう おう あな かれ
王、ヤルムテの王、ラキシの王、およびエグロンの王を、ほら穴から彼
だ おう だ
の も と に ひ き 出 し た。 二四こ の 王 た ち を ヨ シ ュ ア の も と に ひ き 出 し た
とき ひとびと よ よ じぶん とも い
時、ヨシュアはイスラエルのすべての人々を呼び寄せ、自分と共に行っ
ちょう い ちかよ おう あし
たいくさびとの長たちに言った、﹁近寄って、この王たちのくびに足をか
ちかよ おう あし
けなさい﹂。そこで近寄って、その王たちのくびに足をかけたので、 二五
ヨシュア記

かれ い おそ つよ お お
ヨシュアは彼らに言った、﹁恐れおののいてはならない。強くまた雄々
せ たたか てき しゅ
しくあれ。あなたがたが攻めて戦うすべての敵には、主がこのようにさ

42
のち かれ う し ほん き
れるのである﹂。 二六そして後ヨシュアは彼らを撃って死なせ、五本の木
ゆうぐ き うえ お ひ い
にかけて、夕暮れまで木の上にさらして置いたが、 二七日の入るころに
めい き かれ かく
なって、ヨシュアが命じたので、これを木からおろし、彼らが隠れてい
あな な い あな くち おおいし お こんにち のこ
たほら穴に投げ入れ、ほら穴の口に大石を置いた。これは今日まで残っ
ている。
ひ と おう
その日ヨシュアはマッケダを取り、つるぎをもって、それと、その王
二八
う なか ひと ほろ のこ
とを撃ち、その中のすべての人を、ことごとく滅ぼして、ひとりも残さ
おう おう
ず、エリコの王にしたように、マッケダの王にもした。
ひと ひき
こうしてヨシュアはイスラエルのすべての人を率いて、マッケダか
二九
すす せ たたか しゅ おう
らリブナに進み、リブナを攻めて戦 った。 三〇主が、それと、その王をも、
て わた なか
イスラエルの手に渡されたので、つるぎをもって、それと、その中のす
ひと う ほろ なか のこ おう
べての人を撃ち滅ぼして、ひとりもその中に残さず、エリコの王にした
ヨシュア記

おう
ように、その王にもした。
ひと ひき
ヨシュアはまたイスラエルのすべての人を率いて、リブナからラキ
三一

43
すす む じん せ たたか しゅ
シに進み、これに向かって陣をしき、攻め戦 った。 三二主がラキシをイス
て わた め と
ラエルの手に渡されたので、ふつか目にこれを取り、つるぎをもって、そ
なか ひと う ほろ
れと、その中のすべての人を撃ち滅ぼした。すべてリブナにしたとおり
であった。
とき おう たす のぼ
その時、ゲゼルの王ホラムが、ラキシを助けるために上ってきたの
三三
かれ たみ う ほろ のこ
で、ヨシュアは彼と、その民とを撃ち滅ぼして、ついにひとりも残さな
かった。
ひと ひき
ヨシュアはまたイスラエルのすべての人を率いて、ラキシからエグ
三四
すす む じん せ たたか ひ と
ロンに進み、これに向かって陣をしき、攻め戦 った。 三五その日これを取
う なか ひと
り、つるぎをもって、これを撃ち、その中のすべての人を、ことごとく
ひ ほろ
その日に滅ぼした。すべてラキシにしたとおりであった。
ひと ひき
ヨシュアはまたイスラエルのすべての人を率いて、エグロンからヘ
三六
ヨシュア記

すす のぼ せ たたか と
ブロンに進み上り、これを攻めて戦い、 三七それを取って、それと、その
おう まちまち なか ひと
王、およびそのすべての町々と、その中のすべての人を、つるぎをもっ

44
う ほろ のこ
て撃ち滅ぼし、ひとりも残さなかった。すべてエグロンにしたとおりで
なか ひと ほろ
あった。すなわち、それとその中のすべての人を、ことごとく滅ぼした。
ひと ひき
またヨシュアはイスラエルのすべての人を率いて、デビルへひきか
三八
せ たたか おう まちまち
えし、これを攻めて戦い、 三九それと、その王、およびそのすべての町々
と う なか ひと
を取り、つるぎをもってそれを撃ち、その中のすべての人を、ことごと
ほろ のこ かれ おう
く滅ぼし、ひとりも残さなかった。彼がデビルと、その王にしたことは、
おう
ヘブロンにしたとおりであり、またリブナと、その王にしたとおりで
あった。
ち ぜんぶ さんち へいち
こうしてヨシュアはその地の全部、すなわち、山地、ネゲブ、平地、
四〇
さんぷく ち おう う ほろ のこ
および山腹の地と、そのすべての王たちを撃ち滅ぼして、ひとりも残さ
いき ほろ かみ しゅ
ず、すべて息のあるものは、ことごとく滅ぼした。イスラエルの神、主
めい
が命じられたとおりであった。 四一ヨシュアはカデシ・バルネアからガ
ヨシュア記

くにぐに ぜん ち う ほろ およ
ザまでの国々、およびゴセンの全地を撃ち滅ぼして、ギベオンにまで及
かみ しゅ たたか
んだ。 四二イスラエルの神、主がイスラエルのために戦われたので、ヨ

45
おう ち と
シュアはこれらすべての王たちと、その地をいちどきに取った。 四三そ
ひと ひき じんえい
してヨシュアはイスラエルのすべての人を率いて、ギルガルの陣営に
かえ
帰った。
第一一章
おう き おう
一ハゾルの王ヤビンは、これを聞いて、マドンの王ヨバブ、シムロンの
おう おう きた さんち みなみ
王、およびアクサフの王、 二また北の山地、キンネロテの南のアラバ、
へいち にし ほう こうち おう とうざい
平地、西の方のドルの高地におる王たち、 三すなわち、東西のカナンび
さんち
と、アモリびと、ヘテびと、ペリジびと、山地のエブスびと、ミヅパの
ち し しゃ
地 に あ る ヘ ル モ ン の ふ も と の ヒ ビ び と に 使者 を つ か わ し た。 四そ し て
かれ ぐんぜい ひき で たいぐん はま すな
彼らは、そのすべての軍勢を率いて出てきた。その大軍は浜べの砂のよ
ヨシュア記

かずおお うま せんしゃ おお おう
うに数多く、馬と戦車も、ひじょうに多かった。 五これらの王たちはみ
ぐん あつ すす とも みず じん
な軍を集め、進んできて、共にメロムの水のほとりに陣をしき、イスラ

46
たたか とき しゅ い かれ
エルと戦おうとした。 六その時、主はヨシュアに言われた、
﹁彼らのゆえ
おそ いま かれ みな わた
に恐れてはならない。あすの今ごろ、わたしは彼らを皆イスラエルに渡
ころ かれ うま あし すじ き
して、ことごとく殺させるであろう。あなたは彼らの馬の足の筋を切
せんしゃ ひ や
り、戦車を火で焼かなければならない﹂。 七そこでヨシュアは、すべての
ひき みず よ かれ
いくさびとを率いて、にわかにメロムの水のほとりにおし寄せ、彼らを
おそ しゅ かれ て わた う やぶ
襲 っ た。 八主 は 彼 ら を イ ス ラ エ ル の 手 に 渡 さ れ た の で、こ れ を 撃 ち 破
だい ついげき ひがし ほう
り、大シドンおよびミスレポテ・マイムまで、これを追撃し、 東の方で
たに かれ お のこ う
は、ミヅパの谷まで彼らを追い、ついにひとりも残さず撃ちとった。 九
しゅ めい かれ おこな かれ うま あし すじ き
ヨシュアは主が命じられたとおりに彼らに行い、彼らの馬の足の筋を切
せんしゃ ひ や
り、戦車を火で焼いた。
とき と
一〇その時、ヨシュアはひきかえして、ハゾルを取り、つるぎをもって、
おう う むかし くにぐに めいしゅ
その王を撃った。ハゾルは昔、これらすべての国々の盟主であったから
ヨシュア記

かれ なか ひと う
である。 一一彼らはつるぎをもって、その中のすべての人を撃ち、ことご
ほろ いき のこ ひ
とくそれを滅ぼし、息のあるものは、ひとりも残さなかった。そして火

47
や おう
を も っ て ハ ゾ ル を 焼 い た。 一二ヨ シ ュ ア は こ れ ら の 王 た ち の す べ て の
まちまち しょおう と う
町々、およびその諸王を取り、つるぎをもって、これを撃ち、ことごと
ほろ しゅ めい
く 滅 ぼ し た。主 の し も べ モ ー セ が 命 じ た と お り で あ っ た。 一三た だ し、
おか うえ た まちまち や
丘の上に立っている町々をイスラエルは焼かなかった。ヨシュアはた
や まち もの かちく
だハゾルだけを焼いた。 一四これらの町のすべてのぶんどり物と家畜と
ひとびと せ ん り ひん と ひと
は、イスラエルの人々が戦利品として取ったが、人はみなつるぎをもっ
ほろ つく いき のこ しゅ
て、滅ぼし尽し、息のあるものは、ひとりも残さなかった。 一五主がその
めい めい
しもべモーセに命じられたように、モーセはヨシュアに命じたが、ヨ
しゅ めい
シュアはそのとおりにおこなった。すべて主がモーセに命じられたこ
おこな
とで、ヨシュアが行わなかったことは一つもなかった。
ぜん ち さんち ぜん ち
一六こうしてヨシュアはその全地、すなわち、山地、ネゲブの全地、ゴセ
ぜん ち へいち さんち へいち と
ンの全地、平地、アラバならびにイスラエルの山地と平地を取り、 一七セ
ヨシュア記

のぼ い みち やま やま
イルへ上って行く道のハラク山から、ヘルモン山のふもとのレバノンの
たに え おう
谷にあるバアルガデまでを獲た。そしてそれらの王たちを、ことごとく

48
とら う ころ おう なが
捕えて、撃ち殺した。 一八ヨシュアはこれらすべての王たちと、長いあい
たたか じゅうみん ひとびと
だ戦 った。 一九ギベオンの住 民 ヒビびとのほかには、イスラエルの人々
わ こう まち まちまち せんそう せ と
と和を講じた町は一つもなかった。町々はみな戦争をして、攻め取った
かれ こころ せ
ものであった。 二〇彼らが心をかたくなにして、イスラエルに攻めよせ
しゅ かれ もの
たのは、もともと主がそうさせられたので、彼らがのろわれた者となり、
う ほろ しゅ
あわれみを受けず、ことごとく滅ぼされるためであった。主がモーセに
めい
命じられたとおりである。
とき い さんち
その時、ヨシュアはまた行って、山地、ヘブロン、デビル、アナブ、
二一
さんち さんち た
ユダのすべての山地、イスラエルのすべての山地から、アナクびとを断
かれ まちまち とも ほろ ひとびと ち
ち、彼らの町々をも共に滅ぼした。 二二それでイスラエルの人々の地に、
アナクびとは、ひとりもいなくなった。ただガサ、ガテ、アシドドには、
すこ のこ ち
少し残っているだけであった。 二三こうしてヨシュアはその地を、こと
ヨシュア記

と しゅ つ
ごとく取った。すべて主がモーセに告げられたとおりである。そして
ぶぞく ぶん あた し ぎょう
ヨシュアはイスラエルの部族にそれぞれの分を与えて、嗣 業とさせた。

49
ち せんそう
こうしてその地に戦争はやんだ。
第一二章
む がわ ひ で ほう たに
さてヨルダンの向こう側、日の出の方で、アルノンの谷からヘルモン

やま ひがし ぜんど ひとびと う ほろ
山まで、および東 アラバの全土のうちで、イスラエルの人々が撃ち滅ぼ
ち と くに おう つぎ
して地を取った国の王たちは、次のとおりである。 二まず、アモリびと
おう かれ す りょうち たに
の王シホン。彼はヘシボンに住み、その領地は、アルノンの谷のほとり
たに なか まち なか し
にあるアロエル、および谷の中の町から、ギレアデの半ばを占めて、ア
さかい かわ たっ ひがし ほう
ンモンびととの境であるヤボク川に達し、 三 東の方ではアラバをキン
みずうみ し うみ しお うみ ひがし
ネレテの湖まで占め、またアラバの海すなわち塩の海の東におよび、ベ
みち へ みなみ やま たっ つぎ
テエシモテの道を経て、南はピスガの山のふもとに達した。 四次にレパ
ヨシュア記

い のこ おう かれ
イムの生き残りのひとりであったバシャンの王オグ。彼はアシタロテ
す やま ぜんど
とエデレイとに住み、 五ヘルモン山、サレカ、およびバシャンの全土を

50
りょう さかい せっ
領したので、ゲシュルびと、およびマアカびとと境を接し、またギレア
なか りょう おう さかい せっ しゅ
デの半ばを領したので、ヘシボンの王シホンと境を接していた。 六主の
ひとびと かれ う ほろ しゅ
しもべモーセと、イスラエルの人々とが、彼らを撃ち滅ぼし、そして主

のしもべモーセは、これらの地を、ルベンびと、ガドびと、およびマナ
はん ぶ ぞ く あた しょゆう
セの半部族に与えて所有とさせた。
がわ にし ほう たに
七ヨルダンのこちら側、西の方にあって、レバノンの谷にあるバアルガ
のぼ い みち やま あいだ
デから、セイルへ上って行く道のハラク山までの間で、ヨシュアと、イ
ひとびと う ほろ くに おう つぎ
スラエルの人々とが、撃ち滅ぼした国の王たちは、次のとおりである。
かれ ち ぶぞく ぶん あた し
ヨシュアは彼らの地をイスラエルの部族に、それぞれの分を与えて嗣
ぎょう さんち へいち さんぷく あらの
業とさせた。 八これは、山地、平地、アラバ、山腹、荒野、およびネゲ
ブであって、ヘテびと、アモリびと、カナンびと、ペリジびと、ヒビび
しょりょう おう
と、エブスびとの所 領であった。 九エリコの王ひとり。ベテルのほとり
ヨシュア記

おう おう おう
の ア イ の 王 ひ と り。 一〇エ ル サ レ ム の 王 ひ と り。ヘ ブ ロ ン の 王 ひ と り。
おう おう おう
一一 ヤルムテの王ひとり。ラキシの王ひとり。 一二エグロンの王ひとり。

51
おう おう おう
ゲゼルの王ひとり。 一三デビルの王ひとり。ゲデルの王ひとり。 一四ホル
おう おう おう
マの王ひとり。アラデの王ひとり。 一五リブナの王ひとり。アドラムの
おう おう おう
王ひとり。 一六マッケダの王ひとり。ベテルの王ひとり。 一七タップアの
おう おう おう おう
王ひとり。ヘペルの王ひとり。 一八アペクの王ひとり。シャロンの王ひ
おう おう
とり。 一九マドンの王ひとり。ハゾルの王ひとり。 二〇シムロン・メロン
おう おう おう
の王ひとり。アクサフの王ひとり。 二一タアナクの王ひとり。メギドの
おう おう おう
王 ひ と り。 二二ケ デ シ の 王 ひ と り。カ ル メ ル の ヨ ク ネ ア ム の 王 ひ と り。
こうち おう おう
二三 ド ル の 高地 に お る ド ル の 王 ひ と り。ガ リ ラ ヤ の ゴ イ イ ム の 王 ひ と
おう あ おう
り。 二四テルザの王ひとり。合わせて三十一王である。
第一三章
ヨシュア記

とし すす お しゅ かれ い とし
一さてヨシュアは年が進んで老いたが、主は彼に言われた、
﹁あなたは年
すす お と ち おお のこ のこ
が進んで老いたが、取るべき地は、なお多く残っている。 二その残って

52
ち つぎ ぜん ち い き
いる地は、次のとおりである。ペリシテびとの全地域、ゲシュルびとの
ぜんど ひがし きた ぞく
全土、 三エジプトの東のシホルから北にのびて、カナンびとに属すると
さかい ち にん きみ ち
いわれるエクロンの境までの地、ペリシテびとの五人の君たちの地、す
みなみ
なわち、ガザ、アシドド、アシケロン、ガテ、およびエクロン。 四 南の
ち ぜん ち ぞく
アビびとの地、カナンびとの全地、シドンびとに属するメアラからアモ
さかい ぶぶん やま
リ び と の 境 に あ る ア ペ ク ま で の 部分。 五ま た ヘ ル モ ン 山 の ふ も と の バ
いりぐち いた ち ひがし
アルガデからハマテの入口に至るゲバルびとの地、およびレバノンの東
ぜんど さんち たみ
の全土。 六レバノンからミスレポテ・マイムまでの山地のすべての民、
ぜんど かれ
す な わ ち シ ド ン び と の 全土。わ た し は み ず か ら 彼 ら を イ ス ラ エ ル の
ひとびと まえ お はら めい
人々の前から追い払うであろう。わたしが命じたように、あなたはその
ち わ あた し ぎょう
地をイスラエルに分け与えて、嗣 業とさせなければならない。 七すなわ
ち ぶぞく はん ぶ ぞ く わ あた し ぎょう
ち、その地を九つの部族と、マナセの半部族とに分け与えて、嗣 業とさ
ヨシュア記

せなければならない﹂。
た はん ぶ ぞ く とも
八マナセの他の半部族と共に、ルベンびとと、ガドびととは、ヨルダン

53
む がわ ひがし ほう し ぎょう う しゅ
の向こう側、東の方で、その嗣 業をモーセから受けた。主のしもべモー
かれ あた たに
セが、彼らに与えたのは、 九アルノンの谷のほとりにあるアロエル、お
たに なか まち あいだ こうげん
よび谷の中にある町から、デボンとメデバの間にある高原のすべての
ち よ おさ おう まちまち
地。 一〇ヘシボンで世を治めた、アモリびとの王シホンのすべての町々
ふく ひとびと さかい ち
を含めて、アンモンの人々の境までの地。 一一ギレアデと、ゲシュルび
りょうち やま ぜんど
と、ならびにマアカびとの領地、ヘルモン山の全土、サルカまでのバシャ
ぜんたい よ おさ おう
ン 全体。 一二ア シ タ ロ テ と エ デ レ イ で 世 を 治 め た バ シ ャ ン の 王 オ グ の
ぜんこく い のこ う
全国。オグはレパイムの生き残りであった。モーセはこれらを撃って、
お はら ひとびと
追い払った。 一三ただし、イスラエルの人々は、ゲシュルびとと、マアカ
お はら こんにち
びとを追い払わなかった。ゲシュルびとと、マアカびとは、今日までイ

スラエルのうちに住んでいる。
ぶぞく し ぎょう あた
一四 ただレビの部族には、ヨシュアはなんの嗣 業をも与えなかった。イ
ヨシュア記

かみ しゅ かさい かれ し ぎょう しゅ
スラエルの神、主の火祭が彼らの嗣 業であるからである。主がヨシュ

アに言われたとおりである。

54
ぶぞく かぞく し ぎょう あた
一五モーセはルベンびとの部族に、その家族にしたがって嗣 業を与えた
りょういき たに たに
が、 一六その領 域はアルノンの谷のほとりにあるアロエル、および谷の
なか まち こうげん
中にある町からメデバのほとりのすべての高原、 一七ヘシボンおよびそ
こうげん まちまち
の高原のすべての町々、デボン、バモテ・バアル、ベテ・バアル・メオ
たに なか
ン、 一八ヤハヅ、ケデモテ、メパアテ、 一九キリアタイム、シブマ、谷の中
やま さんぷく
の山にあるゼレテ・シャハル、 二〇ベテペオル、ピスガの山腹、ベテエシ
こうげん まちまち よ おさ
モテ、二一すなわち高原のすべての町々と、ヘシボンで世を治めたアモリ
おう ぜんこく およ
びとの王シホンの全国に及んだ。モーセはシホンを、ミデアンのつかさ
とも う ころ
たちエビ、レケム、ツル、ホルおよびレバと共に撃ち殺した。これらは
しょこう ち す もの
みなシホンの諸侯であって、その地に住んでいた者である。 二二イスラ
ひとびと こ うらな し
エルの人々はまたベオルの子、占い師バラムをもつるぎにかけて、その
ころ もの とも ころ りょういき
ほかに殺した者どもと共に殺した。 二三ルベンびとの領 域はヨルダンを
ヨシュア記

さかい かぞく え し ぎょう


境 と し た。こ れ は ル ベ ン び と が、そ の 家族 に し た が っ て 獲 た 嗣 業 で
まちまち むらむら ふく
あって、その町々と村々とを含む。

55
ぶぞく しそん かぞく
二四 モーセはまたガドの部族、ガドの子孫にも、その家族にしたがって、
し ぎょう あた りょういき まちまち
嗣 業を与えたが、 二五その領 域はヤゼル、ギレアデのすべての町々、ア
ち なか ひがし ち
ンモンびとの地の半ばで、ラバの東のアロエルまでの地。 二六ヘシボン

からラマテ・ミゾパまでの地、およびベトニム、マハナイムからデビル
さかい ち たに なか
の境までの地。 二七谷の中ではベテハラム、ベテニムラ、スコテ、および
おう くに のこ ぶぶん さかい
ザポンなど、ヘシボンの王シホンの国の残りの部分。ヨルダンを境とし
ひがしがわ みずうみ みなみ はし ち
て、ヨルダンの東 側、キンネレテの湖の南の端までの地。 二八これはガド
かぞく え し ぎょう まちまち むらむら
びとが、その家族にしたがって獲た嗣 業であって、その町々と村々とを
ふく
含む。
はん ぶ ぞ く し ぎょう あた
二九 モーセはまたマナセの半部族にも、嗣 業を与えたが、それはマナセ
はん ぶ ぞ く かぞく あた
の 半部族 が、そ の 家族 に し た が っ て 与 え ら れ た も の で あ る。 三 〇そ の
りょういき ぜんど およ おう
領 域 は マ ハ ナ イ ム か ら バ シ ャ ン の 全土 に 及 び、バ シ ャ ン の 王 オ グ の
ヨシュア記

ぜんこく まちまち まち
全国、バシャンにあるヤイルのすべての町々、すなわちその六十の町。 三
なか くに まち
一またギレアデの半ば、バシャンのオグの国の町であるアシタロテとエ

56
こ しそん あた
デレイ。これらはマナセの子マキルの子孫に与えられた。すなわちマ
しそん なか かぞく え
キルの子孫の半ばが、その家族にしたがって、それを獲た。
む がわ ひがし へいや
三二 これらはヨルダンの向こう側、エリコの東のモアブの平野で、モーセ
わ あた し ぎょう ぶぞく
が分け与えた嗣 業である。 三三ただし、レビの部族には、モーセはなんの
し ぎょう あた かみ しゅ し ぎょう
嗣 業をも与えなかった。イスラエルの神、主がその嗣 業だからである。
しゅ い
主がモーセに言われたとおりである。
第一四章
ひとびと ち う し ぎょう ち つぎ
イスラエルの人々が、カナンの地で受けた嗣 業の地は、次のとおりで

さいし こ
ある。すなわち、祭司エレアザル、ヌンの子ヨシュア、およびイスラエ
ひとびと ぶぞく しゅちょう かれ わ しゅ
ルの人々の部族の首 長たちが、これを彼らに分かち、 二主がモーセに
ヨシュア記

めい ぶぞく なか
よって命じられたように、くじによって、これを九つの部族と、半ばの
ぶぞく し ぎょう あた む がわ
部族とに、嗣 業として与えた。 三これはヨルダンの向こう側で、モーセ

57
た ぶぞく なか ぶぞく し ぎょう あた
がすでに他の二つの部族と、半ばの部族とに、嗣 業を与えていたからで
かれ なか し ぎょう あた しそん
ある。ただしレビびとには、彼らの中で嗣 業を与えず、 四ヨセフの子孫
ぶぞく
が、マナセと、エフライムの二つの部族となったからである。レビびと
と ち わ まえ あた す まちまち かちく も
には土地の分け前を与えず、ただ、その住むべき町々および、家畜と持
もの お ほうぼく ち あた
ち 物 と を 置 く た め の 放牧地 を 与 え た ば か り で あ っ た。 五イ ス ラ エ ル の
ひとびと しゅ めい ち わ
人々は、主がモーセに命じられたようにおこなって、その地を分けた。
とき ひとびと ところ
六時に、ユダの人々がギルガルのヨシュアの所にきて、ケニズびとエフ
こ い しゅ
ンネの子カレブが、ヨシュアに言った、
﹁主がカデシ・バルネアで、あな
かみ ひと い
たとわたしとについて、神の人モーセに言われたことを、あなたはごぞ
しゅ ち さぐ
んじです。 七主のしもべモーセが、この地を探るために、わたしをカデ
とき さい
シ・バルネアからつかわした時、わたしは四十歳でした。そしてわたし
じぶん しん ふくめい とも のぼ い
は、自分の信ずるところを復命しました。 八しかし、共に上って行った
ヨシュア記

きょうだい たみ こころ まった かみ


兄 弟たちは、民の心をくじいてしまいましたが、わたしは全くわが神、
しゅ したが ひ ちか い あし
主に従いました。 九その日モーセは誓って、言いました、
﹃おまえの足で

58
ふ ち なが しそん し ぎょう
踏んだ地は、かならず長くおまえと子孫との嗣 業となるであろう。お
まった かみ しゅ したが しゅ ことば
まえが全くわが神、主に従 ったからである﹄。 一〇主がこの言葉をモーセ
かた とき あらの あゆ ねん あいだ
に語られた時からこのかた、イスラエルが荒野に歩んだ四十五年の間、
しゅ い い
主は言われたように、わたしを生きながらえさせてくださいました。わ
こんにち さい いま
たしは今日すでに八十五歳ですが、一一今もなお、モーセがわたしをつか
ひ すこ いま ちから とき ちから おと
わした日のように、健やかです。わたしの今の力は、あの時の力に劣ら
はたら たたか こた しゅ
ず、どんな働きにも、戦いにも堪えることができます。 一二それで主があ
ひ かた さんち いま ひ
の日語られたこの山地を、どうか今、わたしにください。あの日あなた
き まちまち おお けんご
も聞いたように、そこにはアナキびとがいて、その町々は大きく堅固で
しゅ とも しゅ い
す。しかし、主がわたしと共におられて、わたしはついには、主が言わ
かれ お はら
れたように、彼らを追い払うことができるでしょう﹂。
こ しゅくふく かれ あた
一三 そこでヨシュアはエフンネの子カレブを祝 福し、ヘブロンを彼に与
ヨシュア記

し ぎょう こ
えて嗣 業とさせた。 一四こうしてヘブロンは、ケニズびとエフンネの子
し ぎょう こんにち いた かれ まった かみ
カレブの嗣 業となって、今日に至っている。彼が全くイスラエルの神、

59
しゅ したが な
主に従 ったからである。 一五ヘブロンの名は、もとはキリアテ・アルバと
もっと おお ひと
いった。アルバは、アナキびとのうちの、最も大いなる人であった。こ
ち せんそう
うしてこの地に戦争はやんだ。
第一五章
ひとびと ぶぞく かぞく え ち みなみ
一ユダの人々の部族が、その家族にしたがって、くじで獲た地は、 南の
ほう さかい たっ みなみ あらの およ
方では、エドムの境に達し、 南のはてにあるチンの荒野に及んでいた。
みなみ さかい しお うみ みなみ はし いりうみ おこ さか
二その南の境は、塩の海の南の端の、入海から起り、三アクラビムの坂の
みなみ で すす みなみ のぼ すす
南に出てチンに進み、カデシ・バルネアの南から上って、ヘヅロンに進
のぼ まわ すす
み、アダルに上っていって、カルカに回り、 四アヅモンに進んで、エジ
かわ たっ さかい うみ いた つ かれ みなみ さかい
プトの川に達し、その境は海に至って尽きる。これが彼らの南の境であ
ヨシュア記

ひがし さかい しお うみ かわぐち たっ きた ほう さかい


る。 五 東の境は塩の海であって、ヨルダンの川口に達する。北の方の境
かわぐち いりうみ おこ のぼ い
は、ヨルダンの川口の、入海から起り、 六上ってベテホグラに行き、ベ

60
きた す のぼ いし たっ
テアラバの北を過ぎ、上ってルベンびとボハンの石に達し、 七またアコ
たに のぼ きた かわ みなみ さか
ルの谷からデビルに上って、北におもむき、川の南にあるアドミムの坂
たい む すす みず たっ
に対するギルガルに向かって進み、エンシメシの水に達し、エンロゲル
いた つ さかい たに そ
に至って尽きる。 八またその境はベンヒンノムの谷に沿って、エブスび
ち みなみ のぼ たに にし
との地、すなわちエルサレムの南のわきに上り、ヒンノムの谷の西にあ
やま いただき のぼ たに きた はて
る 山 の 頂 に 上 る。こ れ は レ パ イ ム の 谷 の 北 の 果 に あ る も の で あ る。 九
さかい やま いただき みず みなもと いた ところ
その境は、この山の頂からネフトアの水の源に至り、その所からエフロ
やま まちまち およ さかい まが たっ
ン山の町々に及び、その境は曲ってバアラに達する。これは、すなわち
さかい にし まわ
キリアテ・ヤリムである。 一〇その境は、バアラから西に回って、セイル
やま およ やま きた へ
山に及び、ヤリム山、すなわちケサロンの北のわきを経て、ベテシメシ
くだ すす きた おか で
に下り、テムナに進み、 一一エクロンの北の丘のわきに出て、シッケロン
まが やま すす たっ うみ いた つ
に曲り、バアラ山に進み、ヤブネルに達し、海に至って尽きる。 一二また
ヨシュア記

にし さかい たいかい かいがん さかい ひとびと


西の境は大海であって、海岸を境とした。これがユダの人々の、その
かぞく え ち しほう さかい
家族にしたがって獲た地の四方の境である。

61
しゅ めい こ
一三ヨシュアは、主に命じられたように、エフンネの子カレブに、ユダの
ひとびと あた ぶん
人々のうちで、キリアテ・アルバ、すなわちヘブロンを与えて、その分
ちち ところ
とさせた。アルバはアナクの父であった。 一四カレブはその所から、ア
こ にん お はら
ナクの子三人を追い払った。すなわち、セシャイ、アヒマン、およびタ
で かれ ところ
ルマイであって、アナクから出たものである。 一五そして彼はこの所か
す たみ ところ せ のぼ な
らデビルに住む民の所に攻め上った。デビルの名は、もとはキリアテ・
い う
セペルといった。 一六カレブは言った、﹁キリアテ・セペルを撃って、こ
と もの むすめ つま あた
れを取る者には、わたしの娘 アクサを妻として与えるであろう﹂。 一七ケ
こ おとうと と むすめ
ナズの子で、カレブの弟 オテニエルがそれを取ったので、カレブは娘
つま かれ あた かのじょ とき はたけ ちち もと
アクサを、妻として彼に与えた。 一八彼女がとつぐ時、畑を父に求めるよ
すす かのじょ ふ
うにと、オテニエルに勧められた。そして彼女が、ろばから降りたので、
かのじょ なに のぞ かのじょ こた い
カ レ ブ は 彼女 に、何 を 望 む の か と た ず ね た。 一九彼女 は 答 え て 言 っ た、
ヨシュア記

おく もの ち
﹁わたしに贈り物をください。あなたはネゲブの地に、わたしをやられ
いずみ かのじょ うえ いずみ した いずみ
るのですから、 泉をもください﹂。カレブは彼女に上の泉と下の泉とを

62
あた
与えた。
ひとびと ぶぞく かぞく え し ぎょう つぎ
ユダの人々の部族が、その家族にしたがって獲た嗣 業は、次のとお
二〇
ひとびと ぶぞく みなみ さかい ほう
りである。 二一ユダの人々の部族が、 南でエドムの境の方にもっていた
とお まちまち
遠くの町々は、カブジエル、エデル、ヤグル、 二二キナ、デモナ、アダダ、
ケデシ、ハゾル、イテナン、 二四ジフ、テレム、ベアロテ、 二五ハゾル・
二三
ハダッタ、ケリオテ・ヘヅロンすなわちハゾル、 二六アマム、シマ、モラ
ダ、 二七ハザルガダ、ヘシモン、ベテペレテ、 二八ハザル・シュアル、ベエ
ルシバ、ビジョテヤ、 二九バアラ、イイム、エゼム、 三〇エルトラデ、ケシ
ル、ホルマ、 三一チクラグ、マデマンナ、サンサンナ、 三二レバオテ、シル
まち あ
ヒム、アイン、リンモン。これらの町は合わせて二十九、ならびにそれ
ぞく むらむら
に属する村々。
へいち
平地では、エシタオル、ゾラ、アシナ、三四ザノア、エンガンニム、タッ
三三
ヨシュア記

プア、エナム、 三五ヤルムテ、アドラム、ソコ、アゼカ、 三六シャアライム、


まちまち ぞく
アデタイム、ゲデラ、ゲデロタイム。すなわち十四の町々と、それに属

63
むらむら
する村々。
三七 ゼナン、ハダシャ、ミグダルガデ、 三八デラン、ミヅパ、ヨクテル、 三
ラキシ、ボヅカテ、エグロン、 四〇カボン、ラマム、キテリシ、 四一ゲデ

まちまち
ロテ、ベテダゴン、ナアマ、マッケダ。すなわち十六の町々と、それに
ぞく むらむら
属する村々。
四二 またリブナ、エテル、アシャン、 四三イフタ、アシナ、ネジブ、 四四ケ
まちまち ぞく むらむら
イラ、アクジブ、マレシャ。すなわち九つの町々と、それに属する村々。
まちまち むらむら うみ
四五 エクロンと、その町々、および村々。 四六エクロンから海まで、すべ
まちまち ぞく むらむら
てアシドドのほとりにある町々、およびそれに属する村々。
まちまち むらむら まちまち むらむら
四七 アシドドとその町々および村々。ガザとその町々および村々。エジ
かわ たいかい かいがん さかい
プトの川と大海の海岸までが、その境であった。
さんち
四八 山地では、シャミル、ヤッテル、ソコ、 四九ダンナ、キリアテ・サン
ヨシュア記

ナすなわちデビル、 五〇アナブ、エシテモ、アニム、 五一ゴセン、ホロン、


まちまち ぞく むらむら
ギロ。すなわち十一の町々と、それに属する村々。

64
アラブ、ドマ、エシャン、 五三ヤニム、ベテタップア、アペカ、 五四ホ
五二
まちまち
ムタ、キリアテ・アルバすなわちヘブロン、ヂオル。すなわち九つの町々
ぞく むらむら
と、それに属する村々。
マオン、カルメル、ジフ、ユッタ、 五六エズレル、ヨクデアム、ザノ
五五
まちまち ぞく
ア、 五七カイン、ギベア、テムナ。すなわち十の町々と、それに属する
むらむら
村々。
ハルホル、ベテズル、ゲドル、 五九マアラテ、ベテアノテ、エルテコ
五八
まちまち ぞく むらむら
ン。すなわち六つの町々と、それに属する村々。
キリアテ・バアルすなわちキリアテ・ヤリム、ラバ。これらの二つの
六〇
まち ぞく むらむら
町とそれに属する村々。
あらの しお まち
荒野では、ベテアラバ、ミデン、セカカ、 六二ニブシャン、塩の町、エ
六一
まちまち ぞく むらむら
ンゲデ。すなわち六つの町々と、それに属する村々。
ヨシュア記

ひとびと じゅうみん お はら
しかし、ユダの人々は、エルサレムの住 民 エブスびとを追い払うこ
六三
こんにち ひとびと とも
とができなかった。それでエブスびとは今日まで、ユダの人々と共にエ

65

ルサレムに住んでいる。
第一六章
しそん え ち さかい
ヨセフの子孫が、くじによって獲た地の境は、エリコのほとりのヨル

みず ひがし た あらの の さんち
ダン、すなわちエリコの水の東から起って、荒野に延び、エリコから山地
のぼ あらの へ いた
に上っている荒野を経て、ベテルに至り、二ベテルからルズにおもむき、
りょうち すす にし くだ
アルキびとの領地であるアタロテに進み、 三西に下ってヤフレテびとの
りょうち たっ した ちいき およ たっ うみ いた つ
領地に達し、下ベテホロンの地域に及び、ゲゼルに達し、海に至って尽
きる。
しそん し ぎょう う
こうしてヨセフの子孫のマナセと、エフライムとは、その嗣 業を受け

た。
ヨシュア記

しそん かぞく え ち さかい つぎ


エフライムの子孫が、その家族にしたがって獲た地の境は、次のとお

かれ し ぎょう ひがし さかい うえ
りである。彼らの嗣 業の東の境は、アタロテ・アダルであって、上ベテ

66
たっ さかい ところ うみ およ きた
ホロンに達し、 六その境は、その所から海に及ぶ。北にはミクメタテが
ひがし さかい まが すす ひがし いた
あり、 東ではその境はタアナテシロで曲り、進んでヤノアの東に至り、
くだ たっ いた
ヤノアからアタロテとナアラに下り、エリコに達し、ヨルダンに至っ

つ さかい にし すす かわ たっ うみ
て尽きる。 八タップアからその境は西に進んで、カナの川に達し、海に
いた つ しそん ぶぞく かぞく
至って尽きる。これはエフライムの子孫の部族が、その家族にしたがっ
え し ぎょう しそん し ぎょう
て獲た嗣 業である。 九このほかにマナセの子孫の嗣 業のうちにも、エ
しそん わ あた まちまち
フライムの子孫のために分け与えられた町々があって、そのすべての
まちまち ぞく むらむら え す
町々と、それに属する村々を獲た。 一〇ただし、ゲゼルに住むカナンびと
お はら こんにち なか す
を、追い払わなかったので、カナンびとは今日までエフライムの中に住
どれい お つか
み、奴隷となって追い使われている。
第一七章
ヨシュア記

ぶぞく え ち つぎ
マナセの部族が、くじによって獲た地は、次のとおりである。マナセ

67
ちょうし ちょうし ちち
はヨセフの長子であった。マナセの長子で、ギレアデの父であるマキル
ぐんじん え ぶぞく
は、軍人であったので、ギレアデとバシャンを獲た。 二マナセの部族の
た かぞく ち あた
他のものにも、その家族にしたがって、地を与えたが、それは、アビエ
ゼル、ヘレク、アスリエル、シケム、ヘペル、セミダで、これらはヨセ
こ おとこ しそん かぞく
フの子マナセの男の子孫であって、その家族にしたがって、あげたもの
である。
こ こ こ こ
しかし、マナセの子マキル、その子ギレアデ、その子ヘペル、その子

おんな こ おとこ こ おんな こ
であったゼロペハデには、 女の子だけで、 男の子がなかった。 女の子
な かのじょ
たちの名は、マヘラ、ノア、ホグラ、ミルカ、テルザといった。 四彼女
さいし こ まえ
たちは、祭司エレアザル、ヌンの子ヨシュアおよび、つかさたちの前に
すす で きょうだい おな し ぎょう
進み出て、
﹁わたしたちの兄 弟と同じように、わたしたちにも、嗣 業を
あた しゅ めい い
与えよと、主はモーセに命じおきになりました﹂と言ったので、ヨシュ
ヨシュア記

しゅ いのち かれ ちち きょうだい おな かのじょ


アは主の命にしたがって、彼らの父の兄 弟たちと同じように、彼女たち
し ぎょう あた む がわ
にも嗣 業を与えた。 五こうしてマナセはヨルダンの向こう側で、ギレア

68
ち ぶぶん え むすめ
デ と バ シ ャ ン の 地 の ほ か に、な お 十 の 部分 を 獲 た。 六マ ナ セ の 娘 た ち
おとこ こ とも し ぎょう え ち
が、男の子らと共に、嗣 業を獲たからである。ギレアデの地は、そのほ
しそん わ あた
かのマナセの子孫に分け与えられた。
え ち さかい ひがし およ
七マナセの獲た地の境は、アセルからシケムの東のミクメタテに及び、
さかい みなみ の じゅうみん たっ ち
その境は南に延びて、エンタップアの住 民に達する。 八タップアの地は
ぞく さかい まち
マナセに属していたが、マナセの境にあるタップアの町は、エフライム
しそん ぞく さかい かわ くだ かわ みなみ いた
の 子孫 に 属 し て い た。 九ま た そ の 境 は カ ナ の 川 に 下 っ て、川 の 南 に 至
まちまち まちまち なか ぞく
る。そこの町々はマナセの町々の中にあって、エフライムに属した。マ
さかい かわ きた そ すす うみ たっ つ かわ みなみ
ナセの境は、川の北に沿って進み、海に達して尽きる。 一〇その川の南の
ち ぞく きた ぞく うみ さかい
地は、エフライムに属し、北はマナセに属する。海がその境となる。マ
きた せっ ひがし せっ
ナセは北はアセルに接し、 東はイッサカルに接する。 一一マナセはまた
なか むらむら
イッサカルとアセルの中に、ベテシャンとその村々、イブレアムとその
ヨシュア記

むらむら じゅうみん むらむら じゅうみん むらむら


村々、ドルの住 民とその村々、エンドルの住 民とその村々、タアナクの
じゅうみん むらむら じゅうみん むらむら え だい
住 民とその村々、メギドの住 民とその村々を獲た。このうち第三のも

69
こうち しそん まちまち と
のは高地である。 一二しかし、マナセの子孫は、これらの町々を取ること
なが ち す つづ
ができなかったので、カナンびとは長くこの地に住み続けようとした。
ひとびと つよ
一三 しかし、イスラエルの人々が強くなるにしたがって、カナンびとを
しえき お はら
使役するようになり、ことごとく追い払うことはしなかった。
しそん い しゅ いま しゅくふく
一四 ヨセフの子孫はヨシュアに言った、
﹁主が今まで、わたしを祝 福され
かず おお たみ し
たので、わたしは数の多い民となったのに、あなたはなぜ、わたしの嗣
ぎょう ぶん
業として、ただ一つのくじ、一つの分だけを、くださったのですか﹂。 一
かれ い かず おお たみ はやし
五ヨ シ ュ ア は 彼 ら に 言 っ た、﹁も し あ な た が 数 の 多 い 民 な ら ば、 林 に
のぼ ち じぶん き ひら
上っていって、そこで、ペリジびとやレパイムびとの地を自分で切り開
さんち せま
くがよい。エフライムの山地が、あなたがたには狭いのだから﹂。 一六ヨ
しそん こた さんち じゅうぶん
セフの子孫は答えた、
﹁山地はわたしどもに十 分ではありません。かつ
へいち むらむら
また平地におるカナンびとは、ベテシャンとその村々におるものも、エ
ヨシュア記

たに てつ せんしゃ も
ズレルの谷におるものも、みな鉄の戦車を持っています﹂。 一七ヨシュア
いえ い かず
はまたヨセフの家、すなわちエフライムとマナセに言った、﹁あなたは数

70
おお たみ おお ちから た
の多い民で、大きな力をもっています。それでただ一つのくじでは足り
さんち はやし
ません。 一八山地をもあなたのものとしなければなりません。それは林
き ひら む はし じぶん
ではあるが、切り開いて、向こうの端まで、自分のものとしなければな
てつ せんしゃ つよ
りません。カナンびとは鉄の戦車があって、強くはあるが、あなたはそ
お はら
れを追い払うことができます﹂。
第一八章
ひとびと ぜんかいしゅう ち せいふく
そこでイスラエルの人々の全 会 衆は、その地を征服したので、シロに

あつ かいけん まくや た
集まり、そこに会見の幕屋を立てた。
とき ひとびと し ぎょう わ と ぶぞく
その時、イスラエルの人々のうちに、まだ嗣 業を分かち取らない部族

のこ ひとびと い
が、七つ残っていたので、 三ヨシュアはイスラエルの人々に言った、
﹁あ
ヨシュア記

せんぞ かみ しゅ あた ち と い
なたがたは、先祖の神、主が、あなたがたに与えられた地を取りに行く
おこた ぶぞく にん だ
のを、いつまで怠 っているのですか。 四部族ごとに三人ずつを出しなさ

71
ひとびと かれ た
い。わたしはその人々をつかわしましょう。彼らは立っていって、その
ち い めぐ し ぎょう ずめん
地を行き巡り、おのおのの嗣 業のために、それを図面にして、わたしの
も かれ ち ぶぶん
と こ ろ へ 持 っ て こ な け れ ば な ら な い。 五彼 ら は そ の 地 を 七 つ の 部分 に
わ みなみ りょうち いえ
分けなければならない。ユダは南のその領地にとどまり、ヨセフの家は
きた りょうち ち
北のその領地にとどまらなければならない。 六あなたがたは、その地を
わ ずめん も
七つに分けて、図面にし、それをここに、わたしのところへ持ってこな
かみ しゅ まえ
ければならない。わたしはここで、われわれの神、主の前に、あなたが

たのために、くじを引くであろう。 七レビびとは、あなたがたのうちに
なに ぶん も しゅ さいし かれ し ぎょう
何の分をも持たない。主の祭司たることが、彼らの嗣 業だからである。
はん ぶ ぞ く む がわ ひがし ほう
またガドとルベンとマナセの半部族とは、ヨルダンの向こう側、東の方
し ぎょう う しゅ かれ あた
で、すでにその嗣 業を受けた。それは主のしもべモーセが、彼らに与え
たものである﹂。
ヨシュア記

ひとびと た い ち ずめん つく で い
八そこでその人々は立って行った。その地の図面を作るために出て行
ひとびと めい い い ち い
く人々に、ヨシュアは命じて言った、
﹁あなたがたは行って、その地を行

72
めぐ ずめん も かえ
き巡り、それを図面にして、わたしのところに持って帰りなさい。わた
しゅ まえ ひ
しはシロで、主の前に、あなたがたのために、ここでくじを引きましょ
ひとびと い ち へ まちまち
う﹂。 九こうしてその人々は行って、その地を経めぐり、町々にしたがっ
ぶぶん ずめん しょもつ か しゅくえい
て、それを七つの部分とし、図面にして、書物に書きしるし、シロの宿 営
も かれ
におるヨシュアのもとへ持ってきた。 一〇ヨシュアはシロで、彼らのた
しゅ まえ ひ ところ
めに主の前に、くじを引いた。そしてヨシュアはその所で、イスラエル
ひとびと ぶん ち わ あた
の人々に、それぞれの分として、地を分け与えた。
しそん ぶぞく かぞく
まずベニヤミンの子孫の部族のために、その家族にしたがって、くじ
一一
ひ え りょうち しそん
を引いた。そしてそのくじによって獲た領地は、ユダの子孫と、ヨセフ
しそん あいだ きた ほう さかい はじ
の子孫との間にあった。 一二すなわち、その北の方の境は、ヨルダンに始
きた のぼ にし ほう さんち のぼ
まり、エリコの北のわきに上り、また西の方の山地をとおって上り、ベ
あらの たっ つ さかい すす
テアベンの荒野に達して尽きる。 一三そこから、その境はルズに進み、ル
ヨシュア記

みなみ いた さかい した
ズの南のわきに至る。ルズはベテルである。ついでその境は下ベテホ
みなみ やま くだ にし ほう
ロンの南の山にあるアタロテ・アダルに下り、 一四西の方では、ベテホロ

73
みなみ やま みなみ まが しそん まち いた
ンの南にある山から南に曲り、ユダの子孫の町キリアテ・バアルに至っ
つ にし ほう
て尽きる。キリアテ・バアルはキリアテ・ヤリムである。これが西の方
さかい みなみ ほう はし はじ
の境であった。 一五また南の方は、キリアテ・ヤリムの端に始まり、その
さかい みず みなもと いた
境はそこからエフロンにおもむき、ネフトアの水の源に至り、一六ついで
さかい たに きた はし たに み やま
その境は、レパイムの谷の北の端にあるベンヒンノムの谷を見おろす山
はし くだ すす みなみ たに くだ ま た
の端に下り、進んでエブスびとのわきの南、ヒンノムの谷に下り、また
した いた きた まが
下ってエンロゲルに至り、一七北に曲ってエンシメシにおもむき、アドミ
さか たい いし くだ
ムの坂に対するゲリロテにおもむき、ルベンびとボハンの石に下り、 一八
きた すす くだ さかい
ベテアラバのわきを北に進んで、アラバに下り、 一九その境は、ベテホグ
きた すす なんたん しお うみ きた いりうみ いた つ
ラの北のわきに進み、ヨルダンの南端で、塩の海の北の入海に至って尽
みなみ さかい ひがし ほう さかい
き る。こ れ が 南 の 境 で あ る。 二〇ヨ ル ダ ン は 東 の 方 の 境 と な っ て い た。
しそん かぞく え し ぎょう しほう
これがベニヤミンの子孫の、その家族にしたがって獲た嗣 業の四方の
ヨシュア記

さかい
境である。
しそん ぶぞく かぞく え まちまち
二一ベニヤミンの子孫の部族が、その家族にしたがって獲た町々は、エリ

74
コ、ベテホグラ、エメクケジツ、 二二ベテアラバ、ゼマライム、ベテル、
二三 アビム、パラ、オフラ、 二四ケパル・アンモニ、オフニ、ゲバ。すな
まちまち ぞく むらむら
わち十二の町々と、それに属する村々。 二五またギベオン、ラマ、ベエロ
テ、 二六ミヅパ、ケピラ、モザ、 二七レケム、イルピエル、タララ、 二八ゼ
ラ、エレフ、エブスすなわちエルサレム、ギベア、キリアテ・ヤリム。す
まちまち ぞく むらむら しそん
なわち十四の町々と、それに属する村々。これがベニヤミンの子孫の、
かぞく え し ぎょう
その家族にしたがって獲た嗣 業である。
第一九章
つぎ しそん ぶぞく
一次にシメオンのため、すなわちシメオンの子孫の部族のために、その
かぞく ひ し ぎょう しそん し ぎょう
家族にしたがって、くじを引いた。その嗣 業はユダの子孫の嗣 業のう
ヨシュア記

し ぎょう え
ちにあった。 二その嗣 業として獲たものは、ベエルシバ、すなわちシバ、
モラダ、 三ハザル・シュアル、バラ、エゼム、 四エルトラデ、ベトル、ホ

75
ルマ、五チクラグ、ベテ・マルカボテ、ハザルスサ、六ベテレバオテ、シャ
まちまち ぞく むらむら
ルヘン。すなわち十三の町々と、それに属する村々。 七またアイン、リ
まちまち ぞく むらむら
ンモン、エテル、アシャン。すなわち四つの町々と、それに属する村々。
まち しゅうい
八およびこれらの町の周囲にあって、バアラテ・ベエル、すなわちネゲ
いた むらむら しそん ぶぞく
ブのラマに至るまでのすべての村々。これがシメオンの子孫の部族の、
かぞく え し ぎょう しそん し ぎょう
そ の 家族 に し た が っ て 獲 た 嗣 業 で あ る。 九シ メ オ ン の 子孫 の 嗣 業 は、
しそん りょういき しそん ぶん おお
ユダの子孫の領 域のうちにあった。これはユダの子孫の分が大きかっ
しそん し ぎょう かれ し ぎょう なか え
たので、シメオンの子孫が、その嗣 業を彼らの嗣 業の中に獲たからであ
る。
だい しそん かぞく ひ
一〇 第三にゼブルンの子孫のために、その家族にしたがって、くじを引い
し ぎょう りょういき およ さかい にし のぼ
た。その嗣 業の領 域はサリデに及び、 一一その境は西に上って、マララ
いた たっ ひがし かわ たっ
に至り、ダバセテに達し、ヨクネアムの東にある川に達し、 一二サリデか
ヨシュア記

ひがし ほう ひ で ほう まが さかい いた
ら、 東の方、日の出の方に曲り、キスロテ・タボルの境に至り、ダベラ
で のぼ ひがし ほう ひ で ほう すす
テに出て、ヤピアに上り、 一三そこから東の方、日の出の方に進んで、ガ

76
いた すす ほう まが
テヘペルとイッタ・カジンに至り、リンモンに進んで、ネアの方に曲る。
きた さかい まわ たに いた つ
一四北ではその境はハンナトンに回り、イフタエルの谷に至って尽きる。
一五そしてカッタテ、ナハラル、シムロン、イダラ、ベツレヘムなど十二
まちまち ぞく むらむら しそん
の町々と、それに属する村々があった。 一六これがゼブルンの子孫の、そ
かぞく え し ぎょう まちまち ぞく むらむら
の家族にしたがって獲た嗣 業であって、その町々と、それに属する村々
とである。
だい しそん かぞく
一七第四にイッサカル、すなわちイッサカルの子孫のために、その家族に
ひ りょういき
したがって、くじを引いた。 一八その領 域には、エズレル、ケスロテ、シュ
ネム、 一九ハパライム、シオン、アナハラテ、 二〇ラビテ、キション、エベ
ツ、 二一レメテ、エンガンニム、エンハダ、ベテパッゼズがあり、 二二その
さかい たっ さかい いた
境はタボル、シャハヂマ、ベテシメシに達し、その境はヨルダンに至っ
つ まちまち ぞく むらむら
て尽きる。十六の町々と、それに属する村々があった。 二三これがイッ
ヨシュア記

しそん ぶぞく かぞく え し ぎょう


サカルの子孫の部族の、その家族にしたがって獲た嗣 業であって、その
まちまち ぞく むらむら
町々と、それに属する村々とである。

77
だい しそん ぶぞく かぞく
二四第五に、アセルの子孫の部族のために、その家族にしたがって、くじ
ひ りょういき
を引いた。 二五その領 域には、ヘルカテ、ハリ、ベテン、アクサフ、 二六
さかい にし
アランメレク、アマデ、ミシャルがあり、その境は西では、カルメルと
たっ ひがし お いた
シホル・リブナテに達し、 二七それから東に折れて、ベテダゴンに至り、
きた ほう たに たっ
北の方ゼブルンと、イプタエルの谷に達し、ベテエメクおよびネイエル
いた きた さら
に至り、北はカブルにいで、 二八更にエブロン、レホブ、ハンモン、カナ
へ だい およ さかい まが けんご まち
を経て、大シドンに及び、 二九それから、その境はラマに曲り、堅固な町
いた さかい まが うみ いた つ
ツロに至る。またその境はホサに曲り、海に至って尽きる。そして、マ
まちまち
ハラブ、アクジブ、 三〇ウンマ、アペク、レホブなど、二十二の町々と、
ぞく むらむら しそん ぶぞく
そ れ に 属 す る 村々 が あ っ た。 三 一こ れ が ア セ ル の 子孫 の 部族 の、そ の
かぞく え し ぎょう まちまち ぞく むらむら
家族にしたがって獲た嗣 業であって、その町々と、それに属する村々と
である。
ヨシュア記

だい しそん かぞく ひ
三二第六に、ナフタリの子孫のために、その家族にしたがって、くじを引
さかい き
いた。 三三その境はヘレフから、すなわちザアナニイムのかしの木から

78
おこ へ いた
起り、アダミ・ネケブおよび、ヤブネルを経て、ラクムに至り、ヨルダ
いた つ さかい にし む
ンに至って尽きる。 三四そしてその境は西に向かって、アズノテ・タボル
いた で みなみ せっ にし
に至り、そこからホッコクに出る。 南はゼブルンに接し、西はアセルに
せっ ひがし たっ けんご まちまち
接し、東はヨルダンのユダに達する。 三五その堅固な町々は、ヂデム、ゼ
ル、ハンマテ、ラッカテ、キンネレテ、 三六アダマ、ラマ、ハゾル、 三七ケ
デシ、エデレイ、エンハゾル、 三八イロン、ミグダルエル、ホレム、ベテ
まちまち ぞく むらむら
アナテ、ベテシメシなどで、十九の町々と、それに属する村々があった。
しそん ぶぞく かぞく え し ぎょう
三九 これがナフタリの子孫の部族が、その家族にしたがって獲た嗣 業で
まちまち ぞく むらむら
あって、その町々と、それに属する村々とである。
だい しそん ぶぞく かぞく
四〇 第七に、ダンの子孫の部族のために、その家族にしたがって、くじを
ひ し ぎょう りょういき
引いた。 四一その嗣 業の領 域には、ゾラ、エシタオル、イルシメシ、 四二
シャラビム、アヤロン、イテラ、 四三エロン、テムナ、エクロン、 四四エル
ヨシュア記

テケ、ギベトン、バアラテ、 四五エホデ、ベネベラク、ガテリンモン、 四
あいたい ちいき
メヤルコン、ラッコン、およびヨッパと相対する地域があった。 四七た

79
しそん りょういき かれ ちい しそん
だし、ダンの子孫の領 域は、彼らのために小さかったので、ダンの子孫
のぼ い せ と う ほろ
は、上って行き、レセムを攻めてそれを取り、つるぎにかけて撃ち滅ぼ
え す せんぞ な
し、それを獲てそこに住み、先祖ダンの名にしたがって、レセムをダン
な しそん ぶぞく かぞく え
と名づけた。 四八これがダンの子孫の部族の、その家族にしたがって獲
し ぎょう まちまち ぞく むらむら
た嗣 業であって、その町々と、それに属する村々とである。
くに かくち し ぎょう わ あた おわ
四九 こうして国の各地域を嗣 業として分け与えることを終ったとき、イ
ひとびと じぶん し ぎょう こ
スラエルの人々は、自分たちのうちに、一つの嗣 業を、ヌンの子ヨシュ
あた しゅ いのち したが かれ もと まち あた
アに与えた。 五〇すなわち、主の命に従 って、彼が求めた町を与えたが、
さんち かれ まち
それはエフライムの山地にあるテムナテ・セラであって、彼はその町を
た す
建てなおして、そこに住んだ。
さいし こ
五一 これらは、祭司エレアザル、ヌンの子ヨシュア、およびイスラエルの
しそん ぶぞく ぞくちょう かいけん まくや いりぐち しゅ まえ
子孫の部族の族 長たちが、シロにおいて会見の幕屋の入口で、主の前
ヨシュア記

ひ わ あた し ぎょう ち わ
に、くじを引いて分け与えた嗣 業である。こうして地を分けることを
おわ
終った。

80
第二〇章
しゅ い ひとびと い
そこで主はヨシュアに言われた、 二﹁イスラエルの人々に言いなさい、

さき い まち えら さだ
﹃先にわたしがモーセによって言っておいた、のがれの町を選び定め、 三
し ひと ころ もの
あやまって、知らずに人を殺した者を、そこへのがれさせなさい。これ
う もの ば しょ
はあなたがたが、あだを討つ者をさけて、のがれる場所となるでしょう。
ひと まち い まち もん いりぐち た
その人は、これらの町の一つにのがれて行って、町の門の入口に立ち、

まち ちょうろう の
その町の長 老たちに、そのわけを述べなければならない。そうすれば、
かれ ひと まち う い ば しょ あた とも す
彼らはその人を町に受け入れて、場所を与え、共に住ませるであろう。 五
う もの お ひと ころ もの て
たとい、あだを討つ者が追ってきても、人を殺したその者を、その手に
わた かれ りんじん ころ
渡してはならない。彼はあやまって隣人を殺したのであって、もとから
にく ひと かいしゅう まえ た
それを憎んでいたのではないからである。 六その人は、会 衆の前に立っ
ヨシュア記

う とき だい さ い し し まち
て、さばきを受けるまで、あるいはその時の大祭司が死ぬまで、その町
す のち かれ じぶん まち じぶん いえ かえ
に住まなければならない。そして後、彼は自分の町、自分の家に帰って

81
い に だ まち す
行って、逃げ出してきたその町に住むことができる﹄﹂。
さんち さんち
七そこで、ナフタリの山地にあるガリラヤのケデシ、エフライムの山地
さんち
にあるシケム、およびユダの山地にあるキリアテ・アルバすなわちヘブ
えら わ む がわ
ロンを、これがために選び分かち、 八またヨルダンの向こう側、エリコ
ひがし ほう ぶぞく こうげん あらの
の東の方では、ルベンの部族のうちから、高原の荒野にあるベゼル、ガ
ぶぞく ぶぞく
ドの部族のうちから、ギレアデのラモテ、マナセの部族のうちから、バ
えら さだ
シ ャ ン の ゴ ラ ン を 選 び 定 め た。 九こ れ ら は、イ ス ラ エ ル の す べ て の
ひとびと きりゅう た こ く じん もう まちまち
人々、およびそのうちに寄留する他国人のために設けられた町々であっ
ひと ころ もの かいしゅう まえ
て、すべて、あやまって人を殺した者を、そこにのがれさせ、会 衆の前
た う もの て し
に立たないうちに、あだを討つ者の手にかかって死ぬことのないように
するためである。
ヨシュア記

82
第二一章
とき ぞくちょう さいし こ
時にレビの族 長たちは、祭司エレアザル、ヌンの子ヨシュアおよびイ

ぶぞく ぞくちょう ち かれ
スラエルの部族の族 長たちのもとにきて、 二カナンの地のシロで彼ら
い しゅ す まちまち あた
に言った、
﹁主はかつて、われわれに住むべき町々を与えることと、それ
ぞく ほうぼく ち かちく あた めい
に属する放牧地を、家畜のために与えることを、モーセによって命じら
ひとびと しゅ いのち じぶん
れました﹂。 三それでイスラエルの人々は、主の命にしたがって、自分た
し ぎょう つぎ まちまち ほうぼく ち あた
ちの嗣 業のうちから、次の町々と、その放牧地とを、レビびとに与えた。
しぞく ひ さいし しそん
まずコハテびとの氏族のために、くじを引いた。祭司アロンの子孫で

ぶぞく ぶぞく
あるこれらのレビびとは、くじによって、ユダの部族、シメオンの部族、
ぶぞく まち え
およびベニヤミンの部族のうちから、十三の町を獲た。
た ぶぞく しぞく
その他のコハテびとは、くじによって、エフライムの部族の氏族、ダ

ヨシュア記

ぶぞく はん ぶ ぞ く まち え
ンの部族、およびマナセの半部族のうちから、十の町を獲た。
ぶぞく しぞく
またゲルションびとは、くじによって、イッサカルの部族の氏族、ア

83
ぶぞく ぶぞく はん ぶ ぞ く
セルの部族、ナフタリの部族、およびバシャンにあるマナセの半部族の
まち え
うちから、十三の町を獲た。
しぞく ぶぞく
ま た メ ラ リ び と は、そ の 氏族 に し た が っ て、ル ベ ン の 部族、ガ ド の

ぶぞく ぶぞく まち え
部族、およびゼブルンの部族のうちから、十二の町を獲た。
ひとびと しゅ めい
イスラエルの人々は、主がモーセによって命じられたとおりに、これ

まち ほうぼく ち あた
らの町と、その放牧地とを、くじによって、レビびとに与えた。
ぶぞく ぶぞく つぎ な まちまち
まずユダの部族と、シメオンの部族のうちから、次に名をあげる町々

あた ぞく しぞく
を与えた。 一〇これらはレビびとに属するコハテびとの氏族の一つであ
しそん あた さいしょ かれ あた
る、アロンの子孫に与えられた。最初のくじが彼らに当ったからであ
さんち
る。 一一すなわちユダの山地にあるキリアテ・アルバすなわちヘブロン
しゅうい ほうぼく ち かれ あた ちち
およびその周囲の放牧地を彼らに与えた。このアルバはアナクの父で
まち はたけ ぞく むらむら
あった。 一二ただし、この町の畑と、それに属する村々とは、すでにエフ
ヨシュア記

こ う しょゆう
ンネの子カレブが、それを受けて所有していた。
さいし しそん あた ひと ころ もの まち
一三 祭司アロンの子孫に与えたのは、人を殺した者の、のがれる町である

84
ほうぼく ち ほうぼく ち ほうぼく
ヘブロンとその放牧地、リブナとその放牧地、 一四ヤッテルとその放牧
ち ほうぼく ち ほうぼく ち
地、エシテモアとその放牧地、 一五ホロンとその放牧地、デビルとその
ほうぼく ち ほうぼく ち ほうぼく ち
放牧地、 一六アインとその放牧地、ユッタとその放牧地、ベテシメシとそ
ほうぼく ち まち ぶぞく わ あた
の放牧地など、九つの町であって、この二つの部族のうちから分け与え
ぶぞく
たものである。 一七またベニヤミンの部族のうちから、ギベオンとその
ほうぼく ち ほうぼく ち ほうぼく ち
放牧地、ゲバとその放牧地、 一八アナトテとその放牧地、アルモンとその
ほうぼく ち まち あた しそん さいし まち
放牧地など、四つの町を与えた。 一九アロンの子孫である祭司たちの町
あ ぞく ほうぼく ち
は、合わせて十三であって、それに属する放牧地があった。
た しぞく
二〇 その他のコハテびとであるレビびとの氏族は、くじによって、エフラ
ぶぞく まち え まち ひと ころ
イムの部族のうちから町を獲た。 二一すなわち、その町は、人を殺したも
まち さんち ほうぼく ち
のの、のがれる町であるエフライムの山地のシケムとその放牧地、ゲゼ
ほうぼく ち ほうぼく ち ほうぼく ち
ルとその放牧地、二二キブザイムとその放牧地、ベテホロンとその放牧地
ヨシュア記

まち ぶぞく わ あた まち
など、四つの町である。 二三またダンの部族のうちから分け与えた町は、
ほうぼく ち ほうぼく ち ほうぼく
エルテケとその放牧地、ギベトンとその放牧地、二四アヤロンとその放牧

85
ち ほうぼく ち まち
地、ガテリンモンとその放牧地など、四つの町である。 二五またマナセの
はん ぶ ぞ く わ あた まち ほうぼく ち
半部族のうちから分け与えた町は、タアナクとその放牧地、およびガテ
ほうぼく ち まち た
リンモンとその放牧地など、二つの町である。 二六その他のコハテびと
しぞく まち あ ぞく ほうぼく ち
の氏族の町は、合わせて十であって、それに属する放牧地があった。
しぞく あた まち
二七 ゲルションびとであるレビびとの氏族の一つに与えられた町は、マ
はん ぶ ぞ く ひと ころ もの まち
ナセの半部族のうちからは、人を殺した者の、のがれる町であるバシャ
ほうぼく ち ほうぼく ち
ンのゴランとその放牧地、およびベエシテラとその放牧地など、二つの
まち ぶぞく ほうぼく ち
町である。 二八イッサカルの部族のうちからは、キションとその放牧地、
ほうぼく ち ほうぼく ち
ダベラテとその放牧地、二九ヤルムテとその放牧地、エンガンニムとその
ほうぼく ち まち ぶぞく
放牧地など、四つの町である。 三〇アセルの部族のうちからは、ミシャル
ほうぼく ち ほうぼく ち ほうぼく ち
とその放牧地、アブドンとその放牧地、 三一ヘルカテとその放牧地、レホ
ほうぼく ち まち ぶぞく
ブとその放牧地など、四つの町である。 三二ナフタリの部族のうちから
ヨシュア記

ひと ころ もの まち ほうぼく ち
は、人を殺した者の、のがれる町であるガリラヤのケデシとその放牧地、
ほうぼく ち ほうぼく ち まち
ハンモテ・ドルとその放牧地、カルタンとその放牧地など、三つの町で

86
しぞく え まち あ
ある。 三三ゲルションびとが、その氏族にしたがって獲た町は、合わせて
まち ぞく ほうぼく ち
十三の町であって、それに属する放牧地があった。
た しぞく あた まち
三四 その他のレビびとである、メラリびとの氏族に与えられた町は、ゼブ
ぶぞく ほうぼく ち ほうぼく
ルンの部族のうちからは、ヨクネアムとその放牧地、カルタとその放牧
ち ほうぼく ち ほうぼく ち まち
地、 三五デムナとその放牧地、ナハラルとその放牧地など、四つの町であ
ぶぞく ほうぼく ち
る。 三六ルベンの部族のうちからは、ベゼルとその放牧地、ヤハヅとその
ほうぼく ち ほうぼく ち ほうぼく ち
放牧地、 三七ケデモテとその放牧地、メパアテとその放牧地など、四つの
まち ぶぞく ひと ころ もの まち
町である。 三八ガドの部族のうちからは、人を殺した者の、のがれる町で
ほうぼく ち ほうぼく ち
あるギレアデのラモテとその放牧地、マハナイムとその放牧地、三九ヘシ
ほうぼく ち ほうぼく ち あ まち
ボンとその放牧地、ヤゼルとその放牧地など、合わせて四つの町である。
しぞく
四〇 これらはみな、ほかのレビびとであるメラリびとが、その氏族にした
え まち あ
がって、くじをもって獲た町であって、合わせて十二であった。
ヨシュア記

ひとびと しょゆう も まちまち あ


四一 イスラエルの人々の所有のうちに、レビびとが持った町々は、合わせ
ぞく ほうぼく ち まちまち
て四十八であって、それに属する放牧地があった。 四二これらの町々は、

87
しゅうい ほうぼく ち まちまち
それぞれその周囲に放牧地があった。これらの町々はみなそうであっ
た。
しゅ あた せんぞ ちか
四三 このように、主が、イスラエルに与えると、その先祖たちに誓われた
ち あた かれ え す
地を、ことごとく与えられたので、彼らはそれを獲て、そこに住んだ。 四
しゅ かれ せんぞ ちか しほう あんそく たま
四主は彼らの先祖たちに誓われたように、四方に安息を賜わったので、
てき かれ て む もの しゅ てき
すべての敵のうち、ひとりも彼らに手向かう者はなかった。主が敵をこ
かれ て わた しゅ いえ
と ご と く 彼 ら の 手 に 渡 さ れ た か ら で あ る。 四五主 が イ ス ラ エ ル の 家 に
やくそく よ じつげん
約束されたすべての良いことは、一つとしてたがわず、みな実現した。
第二二章
とき ぶぞく なか
一時にヨシュアは、ルベンびと、ガドびと、およびマナセの部族の半ば
ヨシュア記

よ あつ い しゅ めい
を呼び集めて、二言った、
﹁あなたがたは主のしもべモーセが命じたこと
まも めい こと ことば
を、ことごとく守り、またわたしの命じたすべての事にも、わたしの言葉

88
き こんにち なが としつき あいだ きょうだい
に聞きしたがいました。 三今日まで長い年月の間、あなたがたの兄 弟た
す かみ しゅ めいれい まも いま
ちを捨てず、あなたがたの神、主の命令を、よく守ってきました。 四今
かみ しゅ きょうだい さき やくそく
はすでに、あなたがたの神、主が、あなたがたの兄 弟たちに、先に約束
あんそく たま
されたとおり、安息を賜わるようになりました。それで、あなたがたは
み かえ しゅ あた む
身を返して、主のしもべモーセが、あなたがたに与えたヨルダンの向こ
がわ しょゆう ち い じぶん てんまく かえ しゅ
う側の所有の地に行き、自分たちの天幕に帰りなさい。 五ただ主のしも
めい いまし りっぽう つつし おこな
べモーセが、あなたがたに命じた戒めと、律法とを慎んで行い、あなた
かみ しゅ あい みち あゆ めいれい まも しゅ
がたの神、主を愛し、そのすべての道に歩み、その命令を守って、主に
したが こころ せいしん しゅ つか
つき従い、心をつくし、精神をつくして、主に仕えなさい﹂。 六そしてヨ
かれ しゅくふく さ かれ てんまく かえ
シュアが彼らを祝 福して去らせたので、彼らはその天幕に帰った。
ぶぞく なか しょゆう ち あた
マナセの部族の半ばには、すでにモーセがバシャンで所有地を与えた

た なか がわ にし ほう きょうだい
が、他の半ばには、ヨシュアがヨルダンのこちら側、西の方で、その兄 弟
ヨシュア記

しょゆう ち あた かれ てんまく おく
たちのうちに、所有地を与えた。ヨシュアは、彼らをその天幕に送りか
とき かれ しゅくふく い おお か ざい
えす時、彼らを祝 福して、 八言った、
﹁あなたがたは多くの貨財と、おび

89
かず かちく きん ぎん せいどう てつ おお いふく も てんまく
ただしい数の家畜と、金、銀、青銅、鉄、および多くの衣服を持って天幕
かえ てき え もの きょうだい わ
に帰り、敵から獲たぶんどり物を兄 弟たちに分けなさい﹂。 九こうして
しそん しそん ぶぞく なか しゅ
ルベンの子孫、ガドの子孫、およびマナセの部族の半ばは、主がモーセ
めい じぶん しょゆう ち
によって命じられたように、すでに自分の所有地となっているギレアデ
ち い ち ひとびと わか かえ
の地に行こうと、カナンの地のシロで、イスラエルの人々と別れて帰っ

て行った。
しそん しそん ぶぞく なか
一〇 ルベンの子孫、ガドの子孫、およびマナセの部族の半ばが、カナンの
ち とき ところ きし
地のヨルダンのほとりにきた時、その所で、ヨルダンの岸べに一つの
さいだん きず おお とお み さいだん
祭壇を築いた。それは大きくて遠くから見える祭壇であった。 一一イス
ひとびと しそん しそん ぶぞく なか
ラエルの人々は、
﹁ルベンの子孫、ガドの子孫、およびマナセの部族の半
ち こっきょう ひとびと ぞく
ばが、カナンの地の国 境、ヨルダンのほとりのイスラエルの人々に属す
ほう さいだん きず き
る方で、一つの祭壇を築いた﹂といううわさを聞いた。 一二イスラエルの
ヨシュア記

ひとびと き ひとびと ぜんかいしゅう あつ


人々が、それを聞くとひとしく、イスラエルの人々の全 会 衆はシロに集
かれ ところ せ のぼ
まって、彼らの所に攻め上ろうとした。

90
ひとびと さいし こ
そしてイスラエルの人々は、祭司エレアザルの子ピネハスをギレア
一三
ち しそん しそん はん ぶ ぞ く ところ
デの地のルベンの子孫、ガドの子孫、およびマナセの半部族の所につか
かく ぶ ぞ く ふ そ いえ
わし、 一四イスラエルの各部族のうちから、父祖の家のつかさ、ひとりず
あ にん かれ とも い
つをあげて、合わせて十人のつかさたちを、彼と共に行かせた。これら
しぞく ふ そ いえ ひとびと
はみなイスラエルの氏族のうちで、父祖の家のかしらたる人々であっ
かれ ち い しそん しそん
た。 一五彼らはギレアデの地に行き、ルベンの子孫、ガドの子孫、および
はん ぶ ぞ く かた い しゅ ぜんかいしゅう い
マナセの半部族に語って言った、 一六﹁主の全 会 衆はこう言います、
﹃あ
かみ おか こんにち
なたがたがイスラエルの神にむかって、とがを犯し、今日、ひるがえっ
しゅ したが じぶん さいだん きず こんにち しゅ
て主に従うことをやめ、自分のために一つの祭壇を築いて、今日、主に
なにごと おか つみ た
そむこうとするのは何事か。 一七ペオルで犯した罪で、なお足りないと
しゅ かいしゅう わざわい くだ こんにち
するのか。それがために主の会 衆に災が下ったが、われわれは今日も
つみ きよ こんにち
なお、その罪から清められていない。 一八しかもあなたがたは、今日、ひ
ヨシュア記

しゅ したが
るがえって主に従うことをやめようとするのか。あなたがたが、きょ
しゅ しゅ ぜんかいしゅう いか
う、主にそむくならば、あす、主はイスラエルの全 会 衆にむかって怒ら

91
しょゆう ち きよ
れ る で あ ろ う。 一九も し あ な た が た の 所有 の 地 が 清 く な い の で あ れ ば、
しゅ まくや た しゅ しょゆう ち わた
主の幕屋の立っている主の所有の地に渡ってきて、われわれのうちに、
しょゆう ち え かみ しゅ さいだん じぶん
所有の地を獲なさい。ただ、われわれの神、主の祭壇のほかに、自分の
さいだん きず しゅ もの
ために祭壇を築いて、主にそむき、またわれわれをそむく者とならせな
こ もの おか
いでください。 二〇ゼラの子アカンは、のろわれた物について、とがを犯
ぜんかいしゅう いか のぞ
し、それがためイスラエルの全 会 衆に、怒りが臨んだではないか。また
つみ ほろ もの かれ
その罪によって滅びた者は、彼ひとりではなかった﹄﹂。
とき しそん しそん はん ぶ ぞ く
二一その時、ルベンの子孫、ガドの子孫、およびマナセの半部族は、イス
しぞく こた い ちから もの かみ しゅ ちから
ラエルの氏族のかしらたちに答えて言った、 二二﹁力ある者、神、主。 力
もの かみ しゅ しゅ し し
ある者、神、主。主は知ろしめす。イスラエルもまた知らなければなら
しゅ つみ おか
ない。もしそれがそむくことであり、あるいは主に罪を犯すことである
さいだん
ならば、きょう、われわれをゆるさないでください。 二三われわれが祭壇
ヨシュア記

きず しゅ したが うえ
を築いたことが、もし主に従うことをやめるためであり、またその上に、
はんさい そさい うえ しゅうおんさい
燔祭、素祭をささげるためであり、あるいはまたその上に、 酬 恩 祭の

92
ぎせい しゅ つみ と
犠牲をささげるためであったならば、主みずから、その罪を問いただし
つぎ かんが
てください。 二四しかし、われわれは次のことを考えてしたのです。す
ひ しそん しそん
なわち、のちの日になって、あなたがたの子孫が、われわれの子孫にむ
い し
かって言うことがあるかも知れません、﹃あなたがたは、イスラエルの
かみ しゅ かんけい しそん しそん
神、主と、なんの関係があるのですか。 二五ルベンの子孫と、ガドの子孫
しゅ あいだ さかい
よ、主は、あなたがたと、われわれとの間に、ヨルダンを境とされまし
しゅ たみ とっけん い
た。あなたがたは主の民の特権がありません﹄。こう言って、あなたが
しそん しそん しゅ おが し
たの子孫が、われわれの子孫に、主を拝むことをやめさせるかも知れな
い さいだん きず
いので、 二六われわれは言いました、
﹃さあ、われわれは一つの祭壇を築
はんさい ぎせい
こう。燔祭のためではなく、また犠牲のためでもなく、二七ただあなたが
あいだ のち しそん あいだ しょうこ
たと、われわれとの間、およびわれわれの後の子孫の間に、証拠となら
はんさい ぎせい しゅうおんさい しゅ まえ しゅ
せて、われわれが、燔祭と犠牲、および酬 恩 祭をもって、主の前で、主
ヨシュア記


につとめをするためである。こうすれば、のちの日になって、あなたが
しそん しそん しゅ たみ とっけん
たの子孫が、われわれの子孫に、﹁あなたがたは主の民の特権がありませ

93
い い ひ
ん﹂とは言わないであろう﹄。 二八またわれわれは言いました、
﹃のちの日
しそん い
に、われわれ、またわれわれの子孫が、もしそのようなことを言われる
とき い せんぞ つく しゅ さいだん
ならば、その時、われわれは言おう、
﹁われわれの先祖が造った主の祭壇
かた はんさい ぎせい
の型をごらんなさい。これは燔祭のためではなく、また犠牲のためでも
あいだ しょうこ しゅ
なく、あなたがたと、われわれとの間の証拠である﹂。 二九主にそむき、ひ
こんにち しゅ したが かみ しゅ まくや まえ
るがえって今日、主に従うことをやめて、われわれの神、主の幕屋の前
さいだん はんさい そさい ぎせい さいだん
にある祭壇のほかに、燔祭、素祭、または犠牲をささげるための祭壇を
きず けっ
築くようなことは、決していたしません﹄﹂。
さいし かいしゅう かれ とも い
三〇祭司ピネハス、および会 衆のつかさたち、すなわち彼と共に行った
しぞく しそん しそん
イスラエルの氏族のかしらたちは、ルベンの子孫、ガドの子孫、および
しそん かた ことば き よ
マ ナ セ の 子孫 が 語 っ た 言葉 を 聞 い て、そ れ を 良 し と し た。 三 一そ し て
さいし こ しそん しそん
祭司エレアザルの子ピネハスは、ルベンの子孫、ガドの子孫、およびマ
ヨシュア記

しそん い こんにち しゅ
ナセの子孫に言った、
﹁今日、われわれは、主がわれわれのうちにいます
し しゅ おか
ことを知った。あなたがたが、主にむかって、このとがを犯さなかった

94
いま ひとびと しゅ て すく だ
からである。あなたがたは今、イスラエルの人々を、主の手から救い出
したのです﹂。
さいし こ
三二 こうして祭司エレアザルの子ピネハスと、つかさたちは、ルベンの
しそん しそん わか ち ち かえ
子孫、およびガドの子孫に別れて、ギレアデの地からカナンの地に帰り、
ひとびと い ふくめい
イ ス ラ エ ル の 人々 の と こ ろ に 行 っ て 復命 し た の で、 三 三イ ス ラ エ ル の
ひとびと よ ひとびと かみ
人々はそれを良しとした。そしてイスラエルの人々は神をほめたたえ、
しそん しそん す くに ほろ せ のぼ
ルベンの子孫、およびガドの子孫の住んでいる国を滅ぼすために攻め上
い しそん しそん
ろうとは、もはや言わなかった。 三四ルベンの子孫とガドの子孫は、その
さいだん な い あいだ
祭壇を﹁あかし﹂と名づけて言った、
﹁これは、われわれの間にあって、
しゅ かみ
主が神にいますというあかしをするものである﹂。
第二三章
ヨシュア記

しゅ しゅうい てき のぞ あんそく
一主がイスラエルの周囲の敵を、ことごとく除いて、イスラエルに安息

95
たま ひさ とし すす お
を賜わってのち、久しくたち、ヨシュアも年が進んで老いた。 二ヨシュ
ひと ちょうろう
アはイスラエルのすべての人、その長 老、かしらたち、さばきびと、つ
よ あつ い ねん すす ろうじん
かさびとたちを呼び集めて言った、﹁わたしは年も進んで老人となった。
かみ しゅ くに
三あなたがたは、すでにあなたがたの神、主が、このもろもろの国びと
おこな み たたか
に行われたすべてのことを見た。あなたがたのために戦われたのは、あ
かみ しゅ み ひ い ほう
なたがたの神、主である。 四見よ、わたしはヨルダンから、日の入る方、
たいかい のこ くにぐに ほろ
大海までの、このもろもろの残っている国々と、すでにわたしが滅ぼし
さ くにぐに わ あた
去ったすべての国々を、くじをもって、あなたがたに分け与え、あなた
かく ぶ ぞ く し ぎょう まえ こくみん う
がたの各部族の嗣 業とさせた。 五あなたがたの前から、その国民を打ち
はら め まえ お はら かみ しゅ
払い、あなたがたの目の前から追い払われるのは、あなたがたの神、主
かみ しゅ やくそく
である。そしてあなたがたの神、主が約束されたように、あなたがたは
かれ ち え かた た
彼らの地を獲るであろう。 六それゆえ、あなたがたは堅く立って、モー
ヨシュア記

りっぽう しょ まも おこな
セの律法の書にしるされていることを、ことごとく守って行わなければ
はな みぎ ひだり まが
な ら な い。そ れ を 離 れ て 右 に も 左 に も 曲 っ て は な ら な い。 七あ な た が

96
のこ こくみん ま かれ
たのうちに残っている、これらの国民と交じってはならない。彼らの
かみがみ な とな ちか
神々の名を唱えてはならない。それをさして誓ってはならない。また
つか おが こんにち
それに仕え、それを拝んではならない。 八ただ、今日までしてきたよう
かみ しゅ したが しゅ おお
に、あなたがたの神、主につき従わなければならない。 九主が大いなる
つよ こくみん まえ お はら こんにち
強き国民を、あなたがたの前から追い払われた。あなたがたには今日ま
た む もの
で、立ち向かうことのできる者は、ひとりもなかった。 一〇あなたがたの
にん お はら かみ しゅ
ひとりは、千人を追い払うことができるであろう。あなたがたの神、主
やくそく たたか
が約束されたように、みずからあなたがたのために戦われるからであ
ふか つつし かみ しゅ あい
る。 一一それゆえ、あなたがたは深く慎んで、あなたがたの神、主を愛さ
なければならない。 一二しかし、あなたがたがもしひるがえって、これら
こくみん い のこ なか もの した
の国民の、生き残って、あなたがたの中にとどまる者どもと親しくなり、
こんいん し
これと婚姻し、ゆききするならば、 一三あなたがたは、しかと知らなけれ
ヨシュア記

かみ しゅ こくみん
ばならない。あなたがたの神、主は、もはや、これらの国民をあなたが
まえ お はら かれ
たの前から、追い払うことをされないであろう。彼らは、かえって、あ

97
あみ
なたがたのわなとなり、網となり、あなたがたのわきに、むちとなり、あ
め かみ
なたがたの目に、とげとなって、あなたがたはついに、あなたがたの神、
しゅ たま よ ち ほろ
主が賜わったこの良い地から、滅びうせるであろう。
み こんにち よ ひと い みち い
見よ、今日、わたしは世の人のみな行く道を行こうとする。あなたが
一四
こころ きも めい し
たがみな、 心のうちにまた、肝に銘じて知っているように、あなたがた
かみ しゅ やくそく よ
の神、主が、あなたがたについて約束されたもろもろの良いことで、一
か のぞ か
つも欠けたものはなかった。みなあなたがたに臨んで、一つも欠けたも
かみ しゅ
のはなかった。 一五しかし、あなたがたの神、主があなたがたについて
やくそく よ のぞ しゅ
約束された、もろもろの良いことが、あなたがたに臨んだように、主は
わる くだ かみ しゅ
また、もろもろの悪いことをあなたがたに下して、あなたがたの神、主
たま よ ち ほろ た
が賜わったこの良い地から、ついに、あなたがたを滅ぼし断たれるであ
かみ しゅ めい けいやく おか い
ろう。 一六もし、あなたがたの神、主が命じられたその契約を犯し、行っ
ヨシュア記

た かみがみ つか おが しゅ いか
て他の神々に仕え、それを拝むならば、主はあなたがたにむかって怒り
はっ しゅ たま よ ち ほろ
を発し、あなたがたは、主が賜わった良い地から、すみやかに滅びうせ

98
るであろう﹂。
第二四章
ぶぞく あつ
ヨシュアは、イスラエルのすべての部族をシケムに集め、イスラエル

ちょうろう め よ とも かみ まえ
の長 老、かしら、さばきびと、つかさたちを召し寄せて、共に神の前に
すす で たみ い かみ
進み出た。 二そしてヨシュアはすべての民に言った、
﹁イスラエルの神、
しゅ おお せんぞ
主は、こう仰せられる、
﹃あなたがたの先祖たち、すなわちアブラハムの
ちち ちち むかし かわ む す
父、ナホルの父テラは、 昔、ユフラテ川の向こうに住み、みな、ほかの
かみがみ つか せんぞ かわ
神々に仕えていたが、 三わたしは、あなたがたの先祖アブラハムを、川
む つ だ ぜん ち みちび とお しそん ま
の向こうから連れ出して、カナンの全地を導き通り、その子孫を増した。
かれ あた あた
わたしは彼にイサクを与え、 四イサクにヤコブとエサウを与え、エサウ
ヨシュア記

さんち あた しょゆう こ とも
にはセイルの山地を与えて、所有とさせたが、ヤコブとその子供たちは
くだ
エジプトに下った。 五わたしはモーセとアロンをつかわし、またエジプ

99
ふ し ぎ わざわい くだ のち
トのうちに不思議をおこなって、これに災を下し、その後あなたがたを
みちび だ ちち みちび だ
導 き 出 し た。 六わ た し は あ な た が た の 父 た ち を、エ ジ プ ト か ら 導 き 出
うみ せんしゃ きへい
し、あなたがたが海にきたとき、エジプトびとは、戦車と騎兵とをもっ
ちち こうかい お
て、あなたがたの父たちを紅海に追ってきた。 七そのとき、あなたがた
ちち しゅ よ しゅ くら
の父たちが主に呼ばわったので、主は暗やみをあなたがたとエジプトび
あいだ お うみ かれ うえ かたむ かれ
ととの間に置き、海を彼らの上に傾けて彼らをおおわれた。あなたがた
め み なが あいだ あらの す
は、わたしがエジプトでしたことを目で見た。そして長い間、荒野に住
む がわ す
ん で い た。 八わ た し は ま た ヨ ル ダ ン の 向 こ う 側 に 住 ん で い た ア モ リ び
ち みちび い かれ たたか
との地に、あなたがたを導き入れた。彼らはあなたがたと戦 ったので、
かれ て わた かれ ち え かれ
わたしは彼らをあなたがたの手に渡して、彼らの地を獲させ、彼らをあ
まえ ほろ さ おう こ
なたがたの前から滅ぼし去った。 九ついで、モアブの王チッポルの子バ
た てき ひと こ
ラクが立って、イスラエルに敵し、人をつかわし、ベオルの子バラムを
ヨシュア記

まね き
招き、あなたがたをのろわせようとしたが、一〇わたしがバラムに聞こう
かれ しゅくふく
としなかったので、彼は、かえって、あなたがたを祝 福した。こうして

100
かれ て すく だ
わ た し は 彼 の 手 か ら あ な た が た を 救 い 出 し た。 一一そ し て あ な た が た
わた ひとびと
は、ヨルダンを渡って、エリコにきたが、エリコの人々はあなたがたと
たたか
戦い、アモリびと、ペリジびと、カナンびと、ヘテびと、ギルガシびと、
たたか かれ
ヒビびと、およびエブスびとも、あなたがたと戦 ったが、わたしは彼ら
て わた まえ
をあなたがたの手に渡した。 一二わたしは、あなたがたの前に、くまばち
おく おう まえ お
を送って、あのアモリびとのふたりの王を、あなたがたの前から追い
はら ゆみ
払った。これはあなたがたのつるぎ、または、あなたがたの弓によって
じぶん ろう
ではなかった。 一三そしてわたしは、あなたがたが自分で労しなかった
ち あた た まち
地を、あなたがたに与え、あなたがたが建てなかった町を、あなたがた
あた ところ す
に与えた。そしてあなたがたはいまその所に住んでいる。あなたがた
じぶん つく はたけ はたけ み た
はまた自分で作らなかったぶどう畑と、オリブ 畑の実を食べている﹄。
しゅ おそ しんじつ
一四 それゆえ、いま、あなたがたは主を恐れ、まことと、まごころと、真実
ヨシュア記

しゅ つか せんぞ かわ む
とをもって、主に仕え、あなたがたの先祖が、川の向こう、およびエジ
つか た かみがみ のぞ さ しゅ つか
プトで仕えた他の神々を除き去って、主に仕えなさい。 一五もしあなた

101
しゅ つか
がたが主に仕えることを、こころよしとしないのならば、あなたがたの
せんぞ かわ む つか かみがみ す
先祖が、川の向こうで仕えた神々でも、または、いまあなたがたの住む
ち かみがみ つか もの えら
地のアモリびとの神々でも、あなたがたの仕える者を、きょう、選びな
いえ とも しゅ つか
さい。ただし、わたしとわたしの家とは共に主に仕えます﹂。
とき たみ こた い しゅ す た かみがみ つか
一六 その時、民は答えて言った、
﹁主を捨てて、他の神々に仕えるなど、わ
けっ かみ しゅ
れわれは決していたしません。 一七われわれの神、主がみずからわれわ
せんぞ ち どれい いえ みちび のぼ
れと、われわれの先祖とを、エジプトの地、奴隷の家から導き上り、ま
め まえ おお おこな い
たわれわれの目の前で、あの大いなるしるしを行い、われわれの行くす
みち まも とお こくみん なか まも
べての道で守り、われわれが通ったすべての国民の中でわれわれを守ら
しゅ ち す
れたからです。 一八主はまた、この地に住んでいたアモリびとなど、すべ
たみ まえ お はら
ての民を、われわれの前から追い払われました。それゆえ、われわれも
しゅ つか しゅ かみ
主に仕えます。主はわれわれの神だからです﹂。
ヨシュア記

たみ い しゅ つか
一九 しかし、ヨシュアは民に言った、
﹁あなたがたは主に仕えることはで
しゅ せい かみ かみ
きないであろう。主は聖なる神であり、ねたむ神であって、あなたがた

102
つみ
の罪、あなたがたのとがを、ゆるされないからである。 二〇もしあなたが
しゅ す こと かみがみ つか
たが主を捨てて、異なる神々に仕えるならば、あなたがたにさいわいを
くだ わざわい
下されたのちにも、ひるがえってあなたがたに災をくだし、あなたがた
ほろ たみ い
を滅ぼしつくされるであろう﹂。 二一民はヨシュアに言った、
﹁いいえ、わ
しゅ つか たみ い
れわれは主に仕えます﹂。 二二そこでヨシュアは民に言った、﹁あなたが
しゅ えら しゅ つか い しょうにん
たは主を選んで、主に仕えると言った。あなたがたみずからその証 人
かれ い しょうにん
である﹂。彼らは言った、﹁われわれは証 人です﹂。 二三ヨシュアはまた
い こと かみがみ のぞ さ
言った、﹁それならば、あなたがたのうちにある、異なる神々を除き去り、
かみ しゅ こころ かたむ たみ い
イスラエルの神、主に、 心を傾けなさい﹂。 二四民はヨシュアに言った、
かみ しゅ つか こえ き
﹁われわれの神、主に、われわれは仕え、その声に聞きしたがいます﹂。 二
ひ たみ けいやく さだ
こうしてヨシュアは、その日、民と契約をむすび、シケムにおいて、定

かれ もう ことば かみ
めと、おきてを、彼らのために設けた。 二六ヨシュアはこれらの言葉を神
ヨシュア記

りっぽう しょ おお いし と ところ しゅ せいじょ


の律法の書にしるし、大きな石を取って、その所で、主の聖所にあるか
き した た たみ い み
しの木の下にそれを立て、 二七ヨシュアは、すべての民に言った、
﹁見よ、

103
いし しゅ かた
この石はわれわれのあかしとなるであろう。主がわれわれに語られた
ことば き じぶん かみ
すべての言葉を、聞いたからである。それゆえ、あなたがたが自分の神
す いし
を捨てることのないために、この石が、あなたがたのあかしとなるであ
たみ し ぎょう ち き さ
ろう﹂。 二八こうしてヨシュアは民を、おのおのその嗣 業の地に帰し去ら
せた。
こと のち しゅ こ さい し
これらの事の後、主のしもべ、ヌンの子ヨシュアは百十歳で死んだ、
二九
ひとびと かれ し ぎょう ち ほうむ
人々は彼をその嗣 業の地のうちのテムナテ・セラに葬 った。テムナ
三〇
さんち やま きた
テ・セラは、エフライムの山地で、ガアシ山の北にある。
よ ひ あいだ しゅ
イスラエルはヨシュアの世にある日の間、また主がイスラエルのた
三一
おこな し い のこ
めに行われたもろもろのことを知っていて、ヨシュアのあとに生き残っ
ちょうろう よ ひ あいだ しゅ つか
た長 老たちが世にある日の間、つねに主に仕えた。
ひとびと たずさ のぼ ほね
イスラエルの人々が、エジプトから携え上ったヨセフの骨は、むかし
三二
ヨシュア記

ぎん まい ちち こ か と
ヤコブが銀百枚で、シケムの父ハモルの子らから買い取ったシケムのう
じ しょ いちぶ ほうむ しそん し ぎょう
ちの地所の一部に葬られた。これはヨセフの子孫の嗣 業となった。

104
こ し ひとびと かれ こ あた
アロンの子エレアザルも死んだ。人々は彼を、その子ピネハスに与
三三
まち さんち ほうむ
えられた町で、エフライムの山地にあるギベアに葬 った。
ヨシュア記

105
し し き
士師記
第一章
し のち ひとびと しゅ と い
ヨシュアが死んだ後、イスラエルの人々は主に問うて言った、
一 ﹁わたし
さき せ のぼ たたか
たちのうち、だれが先に攻め上って、カナンびとと戦いましょうか﹂。 二
しゅ い のぼ くに かれ て
主は言われた、﹁ユダが上るべきである。わたしはこの国を彼の手にわ
きょうだい い いっしょ
たした﹂。 三ユダはその兄 弟 シメオンに言った、
﹁わたしと一緒に、わた
わ あ りょうち のぼ い たたか
しに割り当てられた領地へ上って行って、カナンびとと戦 ってくださ
いっしょ わ あ りょうち
い。そうすればわたしもあなたと一緒に、あなたに割り当てられた領地
い かれ いっしょ い のぼ
へ行きましょう﹂。そこでシメオンは彼と一緒に行った。 四ユダが上っ
い しゅ かれ て
て行くと、主は彼らの手にカナンびととペリジびととをわたされたの
かれ にん う やぶ
で、彼らはベゼクで一万人を撃ち破り、 五またベゼクでアドニベゼクに
士師記

あ かれ たたか う やぶ
会い、彼と戦 ってカナンびととペリジびととを撃ち破った。 六アドニベ

0
に かれ お かれ とら てあし おやゆび
ゼクは逃げたが、彼らはそのあとを追って彼を捕え、その手足の親指を
き はな い にん おう てあし
切り放った。 七アドニベゼクは言った、﹁かつて七十人の王たちが手足
おやゆび き しょくたく した ひろ
の親指を切られて、わたしの食 卓の下で、くずを拾ったことがあった
かみ むく ひとびと かれ
が、神はわたしがしたように、わたしに報いられたのだ﹂。人々は彼をエ
つ い かれ し
ルサレムへ連れて行ったが、彼はそこで死んだ。
ひとびと せ と
八ユダの人々はエルサレムを攻めて、これを取り、つるぎをもってこれ
う まち ひ はな のち ひとびと さんち へいち
を撃ち、町に火を放った。 九その後、ユダの人々は山地とネゲブと平地
す たたか くだ
に住んでいるカナンびとと戦うために下ったが、 一〇ユダはまずヘブロ
す せ
ンに住んでいるカナンびとを攻めて、セシャイとアヒマンとタルマイを
う やぶ な
撃ち破った。ヘブロンのもとの名はキリアテ・アルバであった。
すす じゅうみん せ な
一一 またそこから進んでデビルの住 民を攻めた。︵デビルのもとの名は
とき い
キリアテ・セペルであった。︶ 一二時にカレブは言った、﹁キリアテ・セペ
う と もの むすめ つま あた
ルを撃って、これを取る者には、わたしの娘 アクサを妻として与えるで
士師記

おとうと こ と
あ ろ う﹂。 一三カ レ ブ の 弟 ケ ナ ズ の 子 オ テ ニ エ ル が そ れ を 取 っ た の で、

1
むすめ つま かれ あた い かのじょ
カレブは娘 アクサを妻として彼に与えた。 一四アクサは行くとき彼女の
ちち はたけ もと おっと お
父に畑を求めることを夫にすすめられたので、アクサがろばから降りる
かのじょ い なに のぞ かれ
と、カレブは彼女に言った、
﹁あなたは何を望むのか﹂。 一五アクサは彼に
い おく もの ち
言った、﹁わたしに贈り物をください。あなたはわたしをネゲブの地へ
いずみ うえ いずみ した
やられるのですから、 泉をもください﹂。それでカレブは上の泉と下の
いずみ かのじょ あた
泉とを彼女に与えた。
しそん ひとびと とも
一六 モーセのしゅうとであるケニびとの子孫はユダの人々と共に、しゅ
まち ちか の のぼ
ろの町からアラドに近いネゲブにあるユダの野に上ってきて、アマレク
とも す きょうだい とも い
びとと共に住んだ。 一七そしてユダはその兄 弟 シメオンと共に行って、
す う ほろ
ゼパテに住んでいたカナンびとを撃ち、それをことごとく滅ぼした。こ
まち な よ
れによってその町の名はホルマと呼ばれた。 一八ユダはまたガザとその
ちいき ちいき ちいき と しゅ
地域、アシケロンとその地域、エクロンとその地域を取った。 一九主がユ
とも さんち て い へいち す
ダと共におられたので、ユダはついに山地を手に入れたが、平地に住ん
士師記

たみ てつ せんしゃ お だ
でいた民は鉄の戦車をもっていたので、これを追い出すことができな

2
ひとびと い
かった。 二〇人々はモーセがかつて言ったように、ヘブロンをカレブに
あた ところ にん こ お だ
与えたので、カレブはその所からアナクの三人の子を追い出した。 二一
ひとびと す お だ
ベニヤミンの人々はエルサレムに住んでいたエブスびとを追い出さな
こんにち ひとびと とも
かったので、エブスびとは今日までベニヤミンの人々と共にエルサレム

に住んでいる。
いちぞく せ のぼ しゅ かれ とも
二二ヨセフの一族はまたベテルに攻め上ったが、主は彼らと共におられ
いちぞく ひと さぐ まち
た。 二三すなわちヨセフの一族は人をやってベテルを探らせた。この町
な せっこう まち で ひと み
のもとの名はルズであった。 二四その斥候たちは町から出てきた人を見
い まち みち おし
て、言った、﹁どうぞこの町にはいる道を教えてください。そうすればわ
めぐ ほどこ かれ まち みち おし
たしたちはあなたに恵みを施しましょう﹂。 二五彼が町にはいる道を教
かれ まち う ひと
えたので、彼らはつるぎをもって町を撃った。しかし、かの人とその
かぞく じゆう さ ひと ち い まち た
家族 は 自由 に 去 ら せ た。 二六そ の 人 は ヘ テ び と の 地 に 行 っ て 町 を 建 て、
な こんにち な
それをルズと名づけた。これは今日までその名である。
士師記

むらざと じゅうみん むらざと


二七 マ ナ セ は ベ テ シ ャ ン と そ の 村里 の 住 民、タ ア ナ ク と そ の 村里 の

3
じゅうみん むらざと じゅうみん むらざと じゅうみん
住 民、ドルとその村里の住 民、イブレアムとその村里の住 民、メギド
むらざと じゅうみん お だ ひ つづ
とその村里の住 民を追い出さなかったので、カナンびとは引き続いて
ち す つよ
その地に住んでいたが、二八イスラエルは強くなったとき、カナンびとを
きょうせいろうどう ふく かれ お だ
強 制 労働に服させ、彼らをことごとくは追い出さなかった。
す お だ
二九 またエフライムはゲゼルに住んでいたカナンびとを追い出さなかっ
かれ す
たので、カナンびとはゲゼルにおいて彼らのうちに住んでいた。
じゅうみん じゅうみん お だ
三〇 ゼブルンはキテロンの住 民およびナハラルの住 民を追い出さな
かれ す きょうせいろうどう ふく
かったので、カナンびとは彼らのうちに住んで強 制 労働に服した。
じゅうみん
三一 アセルはアッコの住 民およびシドン、アヘラブ、アクジブ、ヘルバ、
じゅうみん お だ
アピク、レホブの住 民を追い出さなかったので、三二アセルびとは、その
ち じゅうみん す かれ お だ
地 の 住 民 で あ る カ ナ ン び と の う ち に 住 ん で い た。彼 ら が 追 い 出 さ な
かったからである。
じゅうみん じゅうみん お だ
三三 ナフタリはベテシメシの住 民およびベテアナテの住 民を追い出さ
士師記

ち じゅうみん す
ずに、その地の住 民であるカナンびとのうちに住んでいた。しかしベ

4
じゅうみん かれ きょうせいろうどう ふく
テシメシとベテアナテの住 民は、ついに彼らの強 制 労働に服した。
ひとびと さんち お こ へいち くだ ゆる
三四 アモリびとはダンの人々を山地に追い込んで平地に下ることを許さ
ひ つづ
なかった。 三五アモリびとは引き続いてハルヘレス、アヤロン、シャラビ
す いちぞく て つよ かれ きょうせい
ムに住んでいたが、ヨセフの一族の手が強くなったので、彼らは強 制
ろうどう ふく さかい さか へ うえ
労働に服した。 三六アモリびとの境はアクラビムの坂からセラを経て上
ほう およ
の方に及んだ。
第二章
しゅ つかい のぼ い
主の使がギルガルからボキムに上って言った、﹁わたしはあなたがた

のぼ せんぞ ちか ち つ
をエジプトから上らせて、あなたがたの先祖に誓った地に連れてきて、
い むす けいやく けっ やぶ
言った、﹃わたしはあなたと結んだ契約を決して破ることはない。 二あ
くに じゅうみん けいやく むす かれ さいだん
なたがたはこの国の住 民と契約を結んではならない。彼らの祭壇をこ
士師記

めいれい したが
ぼたなければならない﹄と。しかし、あなたがたはわたしの命令に従わ

5
なかった。あなたがたは、なんということをしたのか。 三それでわたし
い まえ かれ お はら
は言う、﹃わたしはあなたがたの前から彼らを追い払わないであろう。
かれ てき かれ かみがみ
彼らはかえってあなたがたの敵となり、彼らの神々はあなたがたのわな
しゅ つかい ことば
となるであろう﹄と﹂。 四主の使がこれらの言葉をイスラエルのすべて
ひとびと つ たみ こえ な ところ な
の人々に告げたので、民は声をあげて泣いた。 五それでその所の名をボ
よ かれ ところ しゅ ぎせい
キムと呼んだ。そして彼らはその所で主に犠牲をささげた。
たみ さ ひとびと りょうち
六ヨシュアが民を去らせたので、イスラエルの人々はおのおのその領地
い と ち え たみ ざいせいちゅう
へ行って土地を獲た。 七民はヨシュアの在 世 中も、またヨシュアのあと
い のこ ちょうろう しゅ おこな
に生き残った長 老たち、すなわち主がかつてイスラエルのために行わ
おお み ひとびと ざいせいちゅう しゅ つか
れたすべての大いなるわざを見た人々の在 世 中も主に仕えた。 八こう
しゅ こ さい し ひとびと かれ
し て 主 の し も べ ヌ ン の 子 ヨ シ ュ ア は 百 十 歳 で 死 ん だ。 九人々 は 彼 を エ
さんち やま きた かれ りょうちうち
フライムの山地のガアシ山の北のテムナテ・ヘレスにある彼の領地内に
ほうむ じだい もの せんぞ
葬 った。 一〇そしてその時代の者もまたことごとくその先祖たちのもと
士師記

のち じだい た しゅ し
にあつめられた。その後ほかの時代が起ったが、これは主を知らず、ま

6
しゅ おこな し
た主がイスラエルのために行われたわざをも知らなかった。
ひとびと しゅ まえ あく おこな つか
一一 イスラエルの人々は主の前に悪を行い、もろもろのバアルに仕え、 一
ち かれ みちび だ せんぞ かみ しゅ す
かつてエジプトの地から彼らを導き出された先祖たちの神、主を捨て

かみがみ しゅうい こくみん かみがみ したが
て、ほかの神々すなわち周囲にある国民の神々に従い、それにひざまず
しゅ いか おこ かれ しゅ す
いて、主の怒りをひき起した。 一三すなわち彼らは主を捨てて、バアルと
つか しゅ いか たい も
アシタロテに仕えたので、一四主の怒りがイスラエルに対して燃え、かす
うば もの て うば しゅうい てき て
め奪う者の手にわたして、かすめ奪わせ、かつ周囲のもろもろの敵の手
う かれ ふたた てき た む
に売られたので、彼らは再びその敵に立ち向かうことができなかった。
かれ い しゅ て かれ わざわい しゅ
一五 彼らがどこへ行っても、主の手は彼らに災をした。これは主がかつ
い しゅ かれ ちか かれ なや
て言われ、また主が彼らに誓われたとおりで、彼らはひどく悩んだ。
とき しゅ おこ かれ うば もの て すく
一六 その時、主はさばきづかさを起して、彼らをかすめ奪う者の手から救
だ かれ したが
い出された。 一七しかし彼らはそのさばきづかさにも従わず、かえって
かみがみ した かんいん おこな せんぞ
ほかの神々を慕ってそれと姦淫を行い、それにひざまずき、先祖たちが
士師記

しゅ めいれい したが あゆ みち はな さ おこな


主の命令に従 って歩んだ道を、いちはやく離れ去って、そのようには行

7
しゅ かれ おこ
わなかった。 一八主が彼らのためにさばきづかさを起されたとき、その
ざいせいちゅう しゅ とも かれ てき
さばきづかさの在 世 中、主はさばきづかさと共におられて、彼らを敵の
て すく だ かれ じぶん なや もの
手から救い出された。これは彼らが自分をしえたげ悩ました者のゆえ
かな しゅ かれ
に、うめき悲しんだので、主が彼らをあわれまれたからである。 一九しか
し かれ せんぞ あく おこな
しさばきづかさが死ぬと、彼らはそむいて、先祖たちにまさって悪を行
かみがみ したが つか
い、ほかの神々に従 ってそれに仕え、それにひざまずいてそのおこない
みち はな しゅ
をやめず、かたくなな道を離れなかった。 二〇それで主はイスラエルに
たい はげ いか い たみ せんぞ めい
対し激しく怒って言われた、﹁この民はわたしがかつて先祖たちに命じ
けいやく おか めいれい したが
た契約を犯し、わたしの命令に従わないゆえ、二一わたしもまたヨシュア
し のこ こくみん のち かれ まえ お はら
が死んだときに残しておいた国民を、この後、彼らの前から追い払わな
せんぞ まも しゅ みち
いであろう。 二二これはイスラエルが、先祖たちの守ったように主の道
まも あゆ こころ
を守ってそれに歩むかどうかをわたしが試みるためである﹂。 二三それ
しゅ こくみん いそ お はら のこ
ゆえ主はこれらの国民を急いで追い払わずに残しておいて、ヨシュアの
士師記


手にわたされなかったのである。

8
第三章
せんそう し ひとびと こころ
すべてカナンのもろもろの戦争を知らないイスラエルの人々を試み

しゅ のこ こくみん つぎ
るために、主が残しておかれた国民は次のとおりである。 二これはただ
よ よ しそん とく せんそう し おし
イスラエルの代々の子孫、特にまだ戦争を知らないものに、それを教え
し にん きみ
知らせるためである。 三すなわちペリシテびとの五人の君たちと、すべ
やま す
てのカナンびとと、シドンびとおよびレバノン山に住んで、バアル・ヘ
やま いりぐち し
ルモン山からハマテの入口までを占めていたヒビびとなどであって、 四
こころ しゅ せんぞ めい
これらをもってイスラエルを試み、主がモーセによって先祖たちに命じ
めいれい かれ したが し
られた命令に、彼らが従うかどうかを知ろうとされたのである。 五しか
ひとびと
るにイスラエルの人々はカナンびと、ヘテびと、アモリびと、ペリジび
す かれ むすめ つま
と、ヒビびと、エブスびとのうちに住んで、六彼らの娘を妻にめとり、ま
じぶん むすめ かれ あた かれ かみがみ つか
た自分たちの娘を彼らのむすこに与えて、彼らの神々に仕えた。
士師記

ひとびと しゅ まえ あく おこな じぶん かみ しゅ


こうしてイスラエルの人々は主の前に悪を行い、自分たちの神、主を

9
わす つか しゅ たい
忘れて、バアルおよびアシラに仕えた。 八そこで主はイスラエルに対し
はげ いか かれ おう て
て激しく怒り、彼らをメソポタミヤの王クシャン・リシャタイムの手に
う ひとびと ねん あいだ
売りわたされたので、イスラエルの人々は八年の間、クシャン・リシャ
つか ひとびと しゅ よ
タイムに仕えた。 九しかし、イスラエルの人々が主に呼ばわったとき、
しゅ ひとびと きゅうじょしゃ おこ かれ すく
主はイスラエルの人々のために、ひとりの救 助 者を起して彼らを救わ
おとうと こ しゅ れい
れた。すなわちカレブの弟、ケナズの子オテニエルである。 一〇主の霊
のぞ かれ かれ たたか で
がオテニエルに臨んだので、彼はイスラエルをさばいた。彼が戦いに出
しゅ おう て
ると、主はメソポタミヤの王クシャン・リシャタイムをその手にわたさ
て か くに
れたので、オテニエルの手はクシャン・リシャタイムに勝ち、 一一国は四
ねん たいへい こ し
十年のあいだ太平であった。ケナズの子オテニエルはついに死んだ。
ひとびと しゅ まえ あく かれ
一二 イスラエルの人々はまた主の前に悪をおこなった。すなわち彼らが
しゅ まえ あく しゅ おう つよ
主の前に悪をおこなったので、主はモアブの王エグロンを強めて、イス
てきたい
ラ エ ル に 敵対 さ せ ら れ た。 一三エ グ ロ ン は ア ン モ ン お よ び ア マ レ ク の
士師記

ひとびと あつ う まち せんりょう
人々を集め、きてイスラエルを撃ち、しゅろの町を占 領した。 一四こうし

10
ひとびと ねん あいだ おう つか
てイスラエルの人々は十八年の間 モアブの王エグロンに仕えた。
ひとびと しゅ よ しゅ かれ
一五 しかしイスラエルの人々が主に呼ばわったとき、主は彼らのために、
きゅうじょしゃ おこ こ ひだり
ひとりの救 助 者を起された。すなわちベニヤミンびと、ゲラの子、左き
ひとびと かれ おう
きのエホデである。イスラエルの人々は彼によってモアブの王エグロ
もの おく なが は
ンに、みつぎ物を送った。 一六エホデは長さ一キュビトのもろ刃のつる
つく ころも した みぎ うえ お おう
ぎを作らせ、それを衣の下、右のももの上に帯びて、 一七モアブの王エグ
もの ひじょう こ ひと
ロンにみつぎ物をもってきた。エグロンは非常に肥えた人であった。 一
もの おわ かれ もの
エホデがみつぎ物をささげ終ったとき、彼はみつぎ物をになってきた

たみ かえ じしん ちか せきぞう ところ ひ
民を帰らせ、 一九かれ自身はギルガルに近い石像のある所から引きかえ
い おう もう きみつ
して言った、﹁王よ、わたしはあなたに申しあげる機密をもっています﹂。
おう い た もの
そこで王は﹁さがっておれ﹂と言ったので、かたわらに立っている者は
みな で い おう く おう
皆出て行った。 二〇エホデが王のところにはいって来ると、王はひとり
すず たかどの ざ かみ いのち
で涼みの高殿に座していたので、エホデが﹁わたしは神の命によってあ
士師記

もう い おう ざ た
なたに申しあげることがあります﹂と言うと、王は座から立ちあがった。

11
ひだり て の みぎ おう
そのときエホデは左の手を伸ばし、右のももからつるぎをとって王
二一
はら さ は とも はら
の腹を刺した。 二二つるぎのつかも刃と共にはいったが、つるぎを腹か
ぬ だ しぼう は おぶつ で
ら抜き出さなかったので、脂肪が刃をふさいだ。そして汚物が出た。 二三
ろうか で おう たかどの と と じょう
エホデは廊下に出て、王のおる高殿の戸を閉じ、 錠をおろした。
かれ で のち おう たかどの と じょう
彼が出た後、王のしもべどもがきて、高殿の戸に錠のおろされてある
二四
み おう すず どの あし
のを見て、﹁王はきっと涼み殿のへやで足をおおっておられるのだ﹂と
おも なが ま おう たかどの と
思った。 二五しもべどもは長いあいだ待っていたが、王がなお高殿の戸
ひら しんぱい ひら み おう ゆか
を開かないので、心配してかぎをとって開いて見ると、王は床にたおれ

て死んでいた。
かれ せきぞう ところ す
エホデは彼らのためらうまに、のがれて石像のある所を過ぎ、セイラ
二六
に かれ い さんち ふ な
に逃げていった。 二七彼が行ってエフライムの山地にラッパを吹き鳴ら
ひとびと かれ とも さんち くだ したが
したので、イスラエルの人々は彼と共に山地から下ってエホデに従 っ
かれ い しゅ
た。 二八エホデは彼らに言った、
﹁わたしについてきなさい。主はあなた
士師記

てき て かれ
がたの敵モアブびとをあなたがたの手にわたされます﹂。そこで彼らは

12
したが くだ わた ば
エホデに従 って下り、ヨルダンの渡し場をおさえ、モアブびとをひとり
わた かれ にん ころ
も渡らせなかった。 二九そのとき彼らはモアブびとおおよそ一万人を殺
こ ふと ゆうし もの
した。これはいずれも肥え太った勇士であって、ひとりも、のがれた者
ひ て ふく くに
がなかった。 三〇こうしてモアブはその日イスラエルの手に服し、国は
ねん たいへい
八十年のあいだ太平であった。
のち こ おこ うし
三一 エホデの後、アナテの子シャムガルが起り、牛のむちをもってペリシ
にん ころ ひと すく
テびと六百人を殺した。この人もまたイスラエルを救った。
第四章
し のち ひとびと しゅ まえ あく
エホデが死んだ後、イスラエルの人々がまた主の前に悪をおこなった

しゅ よ おさ おう て かれ
ので、 二主は、ハゾルで世を治めていたカナンの王ヤビンの手に彼らを
う ぐんぜい ちょう す
売りわたされた。ヤビンの軍勢の長はハロセテ・ゴイムに住んでいたシ
士師記

かれ てつ せんしゃ りょう ねん あいだ


セラであった。 三彼は鉄の戦車九百 両をもち、二十年の間 イスラエル

13
ひとびと はげ ひとびと しゅ む よ
の人々を激しくしえたげたので、イスラエルの人々は主に向かって呼ば
わった。
つま おんな よ げ ん し ゃ
四そのころラピドテの妻、 女 預言者デボラがイスラエルをさばいてい
かのじょ さんち あいだ
た。 五彼女 は エ フ ラ イ ム の 山地 の ラ マ と ベ テ ル の 間 に あ る デ ボ ラ の
き した ざ ひとびと かのじょ のぼ
しゅろの木の下に座し、イスラエルの人々は彼女のもとに上ってきて、
ひと
さばきをうけた。 六デボラは人をつかわして、ナフタリのケデシからア
こ まね い かみ しゅ
ビノアムの子バラクを招いて言った、
﹁イスラエルの神、主はあなたに、
めい ぶぞく ぶぞく
こう命じられるではありませんか、﹃ナフタリの部族とゼブルンの部族
にん ひき い やま じん
から一万人を率い、行って、タボル山に陣をしけ。 七わたしはヤビンの
ぐんぜい ちょう せんしゃ ぐんたい かわ ひ よ
軍勢の長 シセラとその戦車と軍隊とをキション川に引き寄せて、あな
で かれ て かのじょ
たに出あわせ、彼をあなたの手にわたすであろう﹄﹂。 八バラクは彼女に
い いっしょ い い
言った、﹁あなたがもし一緒に行ってくだされば、わたしは行きます。し
いっしょ い い い
かし、一緒に行ってくださらないならば、行きません﹂。 九デボラは言っ
士師記

かなら いっしょ い いま い みち ほまれ


た、﹁必ずあなたと一緒に行きます。しかしあなたは今行く道では誉を

14
え しゅ おんな て
得ないでしょう。主はシセラを女の手にわたされるからです﹂。デボラ
た いっしょ い
は立ってバラクと一緒にケデシに行った。 一〇バラクはゼブルンとナフ
よ あつ にん したが のぼ かれ とも
タリをケデシに呼び集め、一万人を従えて上った。デボラも彼と共に
のぼ
上った。
とき しそん
一一 時にケニびとヘベルはモーセのしゅうとホバブの子孫であるケニび
わか ちか き とお い
とから分れて、ケデシに近いザアナイムのかしの木までも遠く行って
てんまく は
天幕を張っていた。
こ やま のぼ ひとびと つ
一二 アビノアムの子バラクがタボル山に上ったと、人々がシセラに告げ
じぶん せんしゃ ぜんぶ てつ せんしゃ りょう
た の で、 一 三シ セ ラ は 自分 の 戦車 の 全部 す な わ ち 鉄 の 戦車 九 百 両 と、
じぶん とも たみ かわ よ あつ
自分と共におるすべての民をハロセテ・ゴイムからキション川に呼び集
い た
めた。 一四デボラはバラクに言った、
﹁さあ、立ちあがりなさい。きょう
しゅ て ひ しゅ さきだ
は主がシセラをあなたの手にわたされる日です。主はあなたに先立っ
で にん したが
て出られるではありませんか﹂。そこでバラクは一万人を従えてタボル
士師記

やま くだ しゅ せんしゃ
山 か ら 下 っ た。 一五主 は つ る ぎ を も っ て シ セ ラ と す べ て の 戦車 お よ び

15
ぐんぜい まえ う やぶ せんしゃ と
軍勢をことごとくバラクの前に撃ち敗られたので、シセラは戦車から飛
と ほ に さ せんしゃ ぐんぜい ついげき
びおり、徒歩で逃げ去った。 一六バラクは戦車と軍勢とを追撃してハロ
い ぐんぜい
セテ・ゴイムまで行った。シセラの軍勢はことごとくつるぎにたおれ
のこ
て、残ったものはひとりもなかった。
と ほ に さ つま
一七 し か し シ セ ラ は 徒歩 で 逃 げ 去 っ て、ケ ニ び と ヘ ベ ル の 妻 ヤ エ ル の
てんまく い おう いえ たがい
天幕に行った。ハゾルの王ヤビンとケニびとヘベルの家とは互にむつ
で むか かれ い
まじかったからである。 一八ヤエルは出てきてシセラを迎え、彼に言っ
しゅ おそ
た、﹁おはいりください。主よ、どうぞうちへおはいりください。恐れる
てんまく もうふ
に は お よ び ま せ ん﹂。シ セ ラ が 天幕 に は い っ た の で、ヤ エ ル は 毛布 を
かれ い
もって彼をおおった。 一九シセラはヤエルに言った、
﹁どうぞ、わたしに
みず すこ の ちち
水を少し飲ませてください。のどがかわきましたから﹂。ヤエルは乳の
かわぶくろ ひら かれ の かれ
皮 袋を開いて彼に飲ませ、また彼をおおった。 二〇シセラはまたヤエル
い てんまく いりぐち た ひと
に言った、﹁天幕の入口に立っていてください。もし人がきて、あなたに
士師記

と こた
﹃だれか、ここにおりますか﹄と問うならば﹃おりません﹄と答えてくだ

16
かれ つか じゅくすい つま てんまく
さい﹂。 二一しかし彼が疲れて熟 睡したとき、ヘベルの妻ヤエルは天幕の
と て つち たずさ かれ しの よ う こ
くぎを取り、手に槌を携えて彼に忍び寄り、こめかみにくぎを打ち込ん
ち さ とお かれ いき た し
で 地 に 刺 し 通 し た の で、彼 は 息絶 え て 死 ん だ。 二 二バ ラ ク が シ セ ラ を
お かれ でむか い
追ってきたとき、ヤエルは彼を出迎えて言った、﹁おいでなさい。あなた
もと ひと み かれ てんまく み
が求めている人をお見せしましょう﹂。彼がヤエルの天幕にはいって見
う たお し
ると、シセラはこめかみにくぎを打たれて倒れて死んでいた。
ひ かみ おう ひとびと まえ
二三 こうしてその日、神はカナンの王ヤビンをイスラエルの人々の前に
う やぶ ひとびと て
撃ち敗られた。 二四そしてイスラエルの人々の手はますますカナンびと
おう うえ おも おう ほろ いた
の王ヤビンの上に重くなって、ついにカナンの王ヤビンを滅ぼすに至っ
た。
第五章
士師記

ひ こ うた い
一その日デボラとアビノアムの子バラクは歌って言った。

17
しどうしゃ さき た
﹁イスラエルの指導者たちは先に立ち、

たみ よろこ いさ すす で
民は喜び勇んで進み出た。
しゅ
主をさんびせよ。
おう き
もろもろの王よ聞け、

きみ みみ かたむ
もろもろの君よ、耳を傾けよ。
しゅ む うた
わたしは主に向かって歌おう、
かみ しゅ
わたしはイスラエルの神、主をほめたたえよう。
しゅ で
主よ、あなたがセイルを出、

ち すす
エドムの地から進まれたとき、
ち ふる てん
地は震い、天はしたたり、
くも みず
雲は水をしたたらせた。
やま しゅ まえ ゆ うご
もろもろの山は主の前に揺り動き、

しゅ かみ しゅ まえ ゆ うご
シナイの主、すなわちイスラエルの神、主の前に揺り動いた。
士師記


アナテの子シャムガルのとき、

18
とき たいしょう た
ヤエルの時には隊 商は絶え、
たびびと みち
旅人はわき道をとおった。
のうみん た
イスラエルには農民が絶え、

た は
かれらは絶え果てたが、

デボラよ、ついにあなたは立ちあがり、
た はは
立ってイスラエルの母となった。
ひとびと あたら かみがみ えら
人々が新しい神々を選んだとき、

たたか もん およ
戦いは門に及んだ。
にん
イスラエルの四万人のうちに、
たて やり み
盾あるいは槍の見られたことがあったか。
こころ たみ よろこ いさ
わたしの心は民のうちの喜び勇んで

すす で とも
進み出たイスラエルのつかさたちと共にある。
しゅ
主をさんびせよ。
士師記

ちゃいろ の
一〇 茶色のろばに乗るもの、

19
もうせん うえ
毛氈の上にすわるもの、
みち あゆ とも うた
および道を歩むものよ、共に歌え。
がくじん しら みず ところ きこ
一一 楽人の調べは水くむ所に聞える。
しゅ すくい とな
かれらはそこで主の救を唱え、
のうみん すくい とな
イスラエルの農民の救を唱えている。
とき しゅ たみ もん くだ い
その時、主の民は門に下って行った。
お お
一二 起きよ、起きよ、デボラ。
お お うた
起きよ、起きよ、歌をうたえ。
た とら
立てよ、バラク、とりこを捕えよ、

アビノアムの子よ。
とき のこ もの たっと もの くだ い
一三 その時、残った者は尊い者のように下って行き、
しゅ たみ ゆうし くだ い
主の民は勇士のように下って行った。
かれ で たに すす
一四 彼らはエフライムから出て谷に進み、
士師記

きょうだい たみ
兄 弟 ベニヤミンはあなたの民のうちにある。

20
くだ い
マキルからはつかさたちが下って行き、
し き と くだ い
ゼブルンからは指揮を執るものが下って行った。
きみ とも
イッサカルの君たちはデボラと共におり、
一五
おな
イッサカルはバラクと同じく、
ただ たに とっしん
直ちにそのあとについて谷に突進した。
しぞく おお しあん
しかしルベンの氏族は大いに思案した。
あいだ
なぜ、あなたは、おりの間にとどまって、
一六
ひつじ む ふえ ふ き
羊の群れに笛吹くのを聞いているのか。
しぞく おお しあん
ルベンの氏族は大いに思案した。

ギレアデはヨルダンの向こうにとどまっていた。
一七
ふね
なぜ、ダンは舟のかたわらにとどまったか。
はま ざ
アセルは浜べに座し、
は と ば
その波止場のかたわらにとどまっていた。
士師記

いのち し おそ たみ
ゼブルンは命をすてて、死を恐れぬ民である。
一八

21
の たか ところ
野の高い所におるナフタリもまたそうであった。
おう たたか
一九 もろもろの王たちはきて戦 った。
とき おう
その時カナンの王たちは、
みず たたか
メギドの水のほとりのタアナクで戦 った。
かれ いっぺん ぎん え
彼らは一片の銀をも獲なかった。
ほし てん たたか
二〇 もろもろの星は天より戦い、
きどう たたか
その軌道をはなれてシセラと戦 った。
かわ かれ お なが
二一 キションの川は彼らを押し流した、
はげ なが かわ かわ
激しく流れる川、キションの川。
たましい いさ すす
わが魂よ、勇ましく進め。
とき ぐんば か
二二 その時、軍馬ははせ駆けり、
うま ち ふ
馬のひずめは地を踏みならした。
しゅ つかい い
二三 主の使は言った、﹃メロズをのろえ、
士師記

はげ たみ
激しくその民をのろえ、

22
かれ しゅ たす
彼らはきて主を助けず、
しゅ たす ゆうし せ
主を助けて勇士を攻めなかったからである﹄。
つま
ケニびとヘベルの妻ヤエルは、
二四
おんな もっと めぐ もの
女のうちの最も恵まれた者、
てんまく す おんな もっと めぐ もの
天幕に住む女のうち最も恵まれた者である。
みず もと ちち あた
シセラが水を求めると、ヤエルは乳を与えた。
二五
きちょう はち ぎょうにゅう も
すなわち貴重な鉢に凝 乳を盛ってささげた。

ヤエルはくぎに手をかけ、
二六
みぎて おも つち
右手に重い槌をとって、
う あたま くだ
シセラを打ち、その頭を砕き、
こなごな う つらぬ
粉々にして、そのこめかみを打ち貫いた。
あし たお ふ
シセラはヤエルの足もとにかがんで倒れ伏し、
二七
あし たお
その足もとにかがんで倒れ、
士師記

ところ たお し
そのかがんだ所に倒れて死んだ。

23
はは まど
二八 シセラの母は窓からながめ、
こ う し まど さけ い
格子窓から叫んで言った、
かれ くるま く
﹃どうして彼の車の来るのがおそいのか、
かれ くるま あゆ
どうして彼の車の歩みがはかどらないのか﹄。
じ じょ かしこ もの こた
二九 その侍女たちの賢い者は答え、
はは こた い
母またみずからおのれに答えて言った、
かれ えもの え
三〇 ﹃彼らは獲物を得て、

それを分けているのではないか、
ひと と
人ごとにひとり、ふたりのおなごを取り、
えもの いろ ぞ ころも
シセラの獲物は色染めの衣、
ぬ と いろ ぞ ころも えもの
縫い取りした色染めの衣の獲物であろう。
ぬ と いろ ぞ ころも
すなわち縫い取りした色染めの衣 二つを、
えもの
獲物としてそのくびにまとうであろう﹄。
士師記

しゅ てき ほろ
三一 主よ、あなたの敵はみなこのように滅び、

24
あい もの
あなたを愛する者を
たいよう いきお のぼ
太陽の勢いよく上るようにしてください﹂。
のち くに ねん たいへい
こうして後、国は四十年のあいだ太平であった。
第六章
ひとびと しゅ まえ あく しゅ かれ
一イスラエルの人々はまた主の前に悪をおこなったので、主は彼らを七
ねん あいだ て て
年の間 ミデアンびとの手にわたされた。 二ミデアンびとの手はイスラ
か ひとびと やま
エルに勝った。イスラエルの人々はミデアンびとのゆえに、山にある
いわや あな ようがい じぶん つく
岩屋と、ほら穴と要害とを自分たちのために造った。 三イスラエルびと
たね とき とうほう
が種をまいた時には、いつもミデアンびと、アマレクびとおよび東方の
たみ のぼ おそ む じん
民が上ってきてイスラエルびとを襲い、 四イスラエルびとに向かって陣
と ち さんぶつ あら ふきん およ
を取り、地の産物を荒してガザの附近にまで及び、イスラエルのうちに
士師記

いのち もの のこ ひつじ うし のこ かれ
命をつなぐべき物を残さず、 羊も牛もろばも残さなかった。 五彼らが

25
かちく てんまく たずさ おお のぼ
家畜と天幕を携えて、いなごのように多く上ってきたからである。すな
かれ むすう かれ くに あら
わち彼らとそのらくだは無数であって、彼らは国を荒すためにはいって
ひじょう
き た の で あ っ た。 六こ う し て イ ス ラ エ ル は ミ デ ア ン び と の た め に 非常
おとろ ひとびと しゅ よ
に衰え、イスラエルの人々は主に呼ばわった。
ひとびと しゅ よ
七イスラエルの人々がミデアンびとのゆえに、主に呼ばわったとき、 八
しゅ よげんしゃ ひとびと かれ い
主はひとりの預言者をイスラエルの人々につかわして彼らに言われた、
かみ しゅ い
﹁イスラエルの神、主はこう言われる、
﹃わたしはかつてあなたがたをエ
みちび のぼ どれい いえ たずさ だ
ジプトから導き上り、あなたがたを奴隷の家から携え出し、 九エジプト
て もの て すく だ
びとの手およびすべてあなたがたをしえたげる者の手から救い出し、あ
まえ かれ お はら くに あた
なたがたの前から彼らを追い払って、その国をあなたがたに与えた。 一〇
い かみ しゅ
そしてあなたがたに言った、﹁わたしはあなたがたの神、主である。あな
す くに かみがみ おそ
たがたが住んでいる国のアモリびとの神々を恐れてはならない﹂と。し
ことば したが
かし、あなたがたはわたしの言葉に従わなかった﹄﹂。
士師記

しゅ つかい ぞく
一一 さて主の使がきて、アビエゼルびとヨアシに属するオフラにあるテ

26
き した ざ とき こ
レビンの木の下に座した。時にヨアシの子ギデオンはミデアンびとの
め さ さか なか むぎ う しゅ つかい かれ あらわ
目を避けるために酒ぶねの中で麦を打っていたが、 一二主の使は彼に現
い だい ゆ う し しゅ とも
れて言った、
﹁大勇士よ、主はあなたと共におられます﹂。 一三ギデオンは
い きみ しゅ とも
言った、
﹁ああ、君よ、主がわたしたちと共におられるならば、どうして
こと のぞ せんぞ しゅ
これらの事がわたしたちに臨んだのでしょう。わたしたちの先祖が﹃主
みちび のぼ
はわれわれをエジプトから導き上られたではないか﹄といって、わたし
つ ふ し ぎ いま しゅ
たちに告げたそのすべての不思議なみわざはどこにありますか。今、主
す て しゅ
はわたしたちを捨てて、ミデアンびとの手にわたされました﹂。 一四主は
む かれ い ちから い
ふり向いて彼に言われた、﹁あなたはこのあなたの力をもって行って、ミ
て すく だ
デアンびとの手からイスラエルを救い出しなさい。わたしがあなたを
しゅ い しゅ
つかわすのではありませんか﹂。 一五ギデオンは主に言った、
﹁ああ主よ、
すく
わたしはどうしてイスラエルを救うことができましょうか。わたしの
しぞく もっと よわ ちち
氏族はマナセのうちで最も弱いものです。わたしはまたわたしの父の
士師記

かぞく もっと ちい しゅ い
家族のうちで最も小さいものです﹂。 一六主は言われた、
﹁しかし、わたし

27
とも う う
があなたと共におるから、ひとりを撃つようにミデアンびとを撃つこと
しゅ い
ができるでしょう﹂。 一七ギデオンはまた主に言った、﹁わたしがもしあ
まえ めぐ え かた
なたの前に恵みを得ていますならば、どうぞ、わたしと語るのがあなた
み そな もの
であるというしるしを見せてください。 一八どうぞ、わたしが供え物を
たずさ まえ そな
携えてあなたのもとにもどってきて、あなたの前に供えるまで、ここを
さ しゅ い く
去らないでください﹂。主は言われた、﹁わたしはあなたがもどって来る

まで待ちましょう﹂。
じぶん いえ い こ ととの こな
一九 そこでギデオンは自分の家に行って、やぎの子を整え、一エパの粉で
たね い にく い も
種入れぬパンをつくり、肉をかごに入れ、あつものをつぼに盛り、テレ
き した かれ も そな かみ つかい
ビンの木の下におる彼のもとに持ってきて、それを供えた。 二〇神の使
かれ い にく たね い いわ うえ お
は彼に言った、
﹁肉と種入れぬパンをとって、この岩の上に置き、それに
そそ かれ しゅ つかい て
あ つ も の を 注 ぎ な さ い﹂。彼 は そ の よ う に し た。 二一す る と 主 の 使 が 手
さき だ にく たね い ふ いわ
にもっていたつえの先を出して、肉と種入れぬパンに触れると、岩から
士師記

ひ も にく たね い や しゅ つかい
火が燃えあがって、肉と種入れぬパンとを焼きつくした。そして主の使

28
さ み ひと しゅ つかい
は去って見えなくなった。 二二ギデオンはその人が主の使であったこと
い しゅ かみ
をさとって言った、﹁ああ主なる神よ、どうなることでしょう。わたしは
かお しゅ つかい み しゅ かれ い あんしん
顔をあわせて主の使を見たのですから﹂。 二三主は彼に言われた、﹁安心
おそ し しゅ
せよ、恐れるな。あなたは死ぬことはない﹂。 二四そこでギデオンは主の
さいだん きず しゅ へいあん な こんにち
ために祭壇をそこに築いて、それを﹁主は平安﹂と名づけた。これは今日
までアビエゼルびとのオフラにある。
よ しゅ い ちち おうし さい だい
二五その夜、主はギデオンに言われた、
﹁あなたの父の雄牛と七歳の第二
おうし と ちち さいだん う
の雄牛とを取り、あなたの父のもっているバアルの祭壇を打ちこわし、
ぞう き たお かみ しゅ
そのかたわらにあるアシラ像を切り倒し、 二六あなたの神、主のために、
いただき いし なら さいだん きず だい おうし と
このとりでの頂に、石を並べて祭壇を築き、第二の雄牛を取り、あなた
き たお き はんさい
が 切 り 倒 し た ア シ ラ の 木 を も っ て 燔祭 を さ さ げ な さ い﹂。 二七ギ デ オ ン
にん つ しゅ い かれ
はしもべ十人を連れて、主が言われたとおりにおこなった。ただし彼は
ちち かぞく まち ひとびと おそ ひる おこな
父の家族のもの、および町の人々を恐れたので、昼それを行うことがで
士師記

よる おこな
きず、夜それを行 った。

29
まち ひとびと あさはや お み さいだん う
二八 町の人々が朝早く起きて見ると、バアルの祭壇は打ちこわされ、その
ぞう き たお あら きず さいだん うえ だい
かたわらのアシラ像は切り倒され、新たに築いた祭壇の上に、第二の
おうし かれ たがい
雄牛がささげられてあった。 二九そこで彼らは互に﹁これはだれのしわ
い と たず こ
ざか﹂と言って問い尋ねたすえ、﹁これはヨアシの子ギデオンのしわざ
い まち ひとびと い ひ
だ﹂と言った。 三〇町の人々はヨアシに言った、
﹁あなたのむすこを引き
だ ころ かれ さいだん う
出 し て 殺 し な さ い。彼 は バ ア ル の 祭壇 を 打 ち こ わ し そ の か た わ ら に
ぞう き たお じぶん む
あ っ た ア シ ラ 像 を 切 り 倒 し た の で す﹂。 三 一し か し ヨ ア シ は 自分 に 向
た もの い
かって立っているすべての者に言った、﹁あなたがたはバアルのために
い あらそ かれ べんご
言い争うのですか。あるいは彼を弁護しようとなさるのですか。バア
い あらそ もの あさ ころ
ルのために言い争う者は、あすの朝までに殺されるでしょう。バアルが
かみ じぶん さいだん う かれ
もし神であるならば、自分の祭壇が打ちこわされたのだから、彼みずか
い あらそ ひ じぶん さいだん う
ら言い争うべきです﹂。 三二そこでその日、﹁自分の祭壇が打ちこわされ
ひと い あらそ い
たのだから、バアルみずからその人と言い争うべきです﹂と言ったので、
士師記

よ とき
ギデオンはエルバアルと呼ばれた。 三三時にミデアンびと、アマレクび

30
とうほう たみ あつ がわ わた たに じん
とおよび東方の民がみな集まってヨルダン川を渡り、エズレルの谷に陣
と しゅ れい のぞ ふ
を取ったが、三四主の霊がギデオンに臨み、ギデオンがラッパを吹いたの
あつ かれ したが つぎ かれ
で、アビエゼルびとは集まって彼に従 った。 三五次に彼があまねくマナ
し しゃ あつ かれ したが
セ に 使者 を つ か わ し た の で、マ ナ セ び と も ま た 集 ま っ て 彼 に 従 っ た。
かれ し しゃ
彼がまたアセル、ゼブルンおよびナフタリに使者をつかわすと、その
ひとびと のぼ かれ むか
人々も上って彼を迎えた。
かみ い い
三六 ギデオンは神に言った、
﹁あなたがかつて言われたように、わたしの
て すく ひつじ け
手によってイスラエルを救おうとされるならば、 三七わたしは羊の毛一
とうぶん う ば お つゆ ひつじ け うえ ち
頭分を打ち場に置きますから、露がその羊の毛の上にだけあって、地が
すべてかわいているようにしてください。これによってわたしは、あな
い て すく
たがかつて言われたように、わたしの手によってイスラエルをお救いに
し かれ よくあさ
な る こ と を 知 る で し ょ う﹂。 三八す な わ ち そ の よ う に な っ た。彼 が 翌朝
はや お ひつじ け よ け つゆ しぼ はち み
早く起きて、 羊の毛をかき寄せ、その毛から露を絞ると、鉢に満ちるほ
士師記

みず で かみ い いか
どの水が出た。 三九ギデオンは神に言った、
﹁わたしをお怒りにならない

31
ねが ど い
ように願います。わたしにもう一度だけ言わせてください。どうぞ、も
ど ひつじ け ひつじ け
う一度だけ羊の毛をもってためさせてください。どうぞ、 羊の毛だけ
ち つゆ かみ
をかわかして、地にはことごとく露があるようにしてください﹂。 四〇神
よる ひつじ け ち つゆ
はその夜、そうされた。すなわち羊の毛だけかわいて、地にはすべて露
があった。
第七章
よ かれ とも たみ
一さてエルバアルと呼ばれるギデオンおよび彼と共にいたすべての民
あさはや お いずみ じん と じん
は朝早く起き、ハロデの泉のほとりに陣を取った。ミデアンびとの陣は
かれ きた ほう おか そ たに なか
彼らの北の方にあり、モレの丘に沿って谷の中にあった。
しゅ い とも たみ おお
二主はギデオンに言われた、﹁あなたと共におる民はあまりに多い。ゆ
かれ て
えにわたしは彼らの手にミデアンびとをわたさない。おそらくイスラ
士師記

む ほこ じしん て じぶん
エ ル は わ た し に 向 か っ て み ず か ら 誇 り、﹃わ た し は 自身 の 手 で 自分 を

32
すく い たみ みみ ふ しめ
救ったのだ﹄と言うであろう。 三それゆえ、民の耳に触れ示して、
﹃だれ
おそ もの かえ い かれ
でも恐れおののく者は帰れ﹄と言いなさい﹂。こうしてギデオンは彼ら
こころ たみ かえ もの にん のこ もの にん
を試みたので、民のうち帰った者は二万二千人あり、残った者は一万人
であった。
しゅ い たみ おお かれ みちび みず
四主はまたギデオンに言われた、﹁民はまだ多い。彼らを導いて水ぎわ
くだ かれ こころ
に下りなさい。わたしはそこで、あなたのために彼らを試みよう。わた
つ ひと とも い い もの
しがあなたに告げて﹃この人はあなたと共に行くべきだ﹄と言う者は、あ
とも い つ ひと
なたと共に行くべきである。またわたしがあなたに告げて﹃この人はあ
とも い い もの い
なたと共に行ってはならない﹄と言う者は、だれも行ってはならない﹂。
たみ みちび みず くだ しゅ かれ い
五そこでギデオンが民を導いて水ぎわに下ると、主は彼に言われた、
﹁す
いぬ した みず もの べつ
べて犬のなめるように舌をもって水をなめる者はそれを別にしておき
お みず の もの
なさい。またすべてひざを折り、かがんで水を飲む者もそうしなさい﹂。
て くち みず もの かず にん のこ
六そして手を口にあてて水をなめた者の数は三百人であった。残りの
士師記

たみ お みず の しゅ い
民 は み な ひ ざ を 折 り、か が ん で 水 を 飲 ん だ。 七主 は ギ デ オ ン に 言 わ れ

33
みず にん もの すく
た、
﹁わたしは水をなめた三百人の者をもって、あなたがたを救い、ミデ
て のこ たみ いえ かえ
アンびとをあなたの手にわたそう。残りの民はおのおのその家に帰ら
かれ にん と のこ
せなさい﹂。 八そこで彼はかの三百人を留めおき、残りのイスラエルび
て と たみ てんまく かえ
との手から、つぼとラッパを取り、民をおのおのその天幕に帰らせた。
とき じん した たに なか
時にミデアンびとの陣は下の谷の中にあった。
よる しゅ い た くだ てきじん せ
その夜、主はギデオンに言われた、
九 ﹁立てよ、下っていって敵陣に攻め
い て くだ い
入れ。わたしはそれをあなたの手にわたす。 一〇もしあなたが下って行
おそ とも てきじん くだ
くことを恐れるならば、あなたのしもべプラと共に敵陣に下っていっ
かれ い き て つよ
て、 一一彼らの言うところを聞け。そうすればあなたの手が強くなって、
てきじん せ くだ とも
敵陣に攻め下ることができるであろう﹂。ギデオンがしもべプラと共に
くだ てきじん へいたい ぜんしょう ち て ん い
下って、敵陣にある兵隊たちの前 哨 地点に行ってみると、 一二ミデアン
とうほう たみ かずおお たに
びと、アマレクびとおよびすべての東方の民はいなごのように数多く谷
そ ふ うみ すな おお かぞ
に沿って伏していた。そのらくだは海べの砂のように多くて数えきれ
士師記

い ひと なかま ゆめ
なかった。 一三ギデオンがそこへ行ったとき、ある人がその仲間に夢を

34
かた ひと い ゆめ み おおむぎ
語っていた。その人は言った、﹁わたしは夢を見た。大麦のパン一つが
じんちゅう てんまく たっ う たお
ミデアンの陣 中にころがってきて、天幕に達し、それを打ち倒し、くつ
てんまく たお ふ なかま こた い
がえしたので、天幕は倒れ伏した﹂。 一四仲間は答えて言った、
﹁それはイ
ひと こ かみ
スラエルの人、ヨアシの子ギデオンのつるぎにちがいない。神はミデア
ぐんぜい かれ て
ンとすべての軍勢を彼の手にわたされるのだ﹂。
ゆめ ものがたり と あ き れいはい
ギデオンは夢の物 語とその解き明かしとを聞いたので、礼拝し、イ
一五
じんえい かえ い た しゅ ぐんぜい
スラエルの陣営に帰り、そして言った、
﹁立てよ、主はミデアンの軍勢を
て かれ にん くみ わ て
あなたがたの手にわたされる﹂。 一六そして彼は三百人を三組に分け、手
て と なか
に手にラッパと、からつぼとを取らせ、つぼの中にたいまつをともさせ、
かれ い み
彼らに言った、
一七 ﹁わたしを見て、わたしのするようにしなさい。わた
てきじん たっ
しが敵陣のはずれに達したとき、あなたがたもわたしのするようにしな
とも もの ふ
さい。 一八わたしと共におる者がみなラッパを吹くと、あなたがたもま
じんえい しほう ふ しゅ
たすべての陣営の四方でラッパを吹き、﹃主のためだ、ギデオンのため
士師記


だ﹄と言いなさい﹂。

35
かれ とも にん もの ちゅうこう はじ てきじん
一九 こうしてギデオンと、彼と共にいた百人の者が、中 更の初めに敵陣
い ばんぺい こうたい とき かれ
のはずれに行ってみると、ちょうど番兵を交代した時であったので、彼
ふ て たずさ う くだ
らはラッパを吹き、手に携えていたつぼを打ち砕いた。 二〇すなわち三
くみ もの ふ う くだ ひだり て
組の者がラッパを吹き、つぼを打ち砕き、 左の手にはたいまつをとり、
みぎ て も ふ しゅ
右の手にはラッパを持ってそれを吹き、﹁主のためのつるぎ、ギデオンの
さけ も ば た てきじん
ためのつるぎ﹂と叫んだ。 二一そしておのおのその持ち場に立ち、敵陣を
と かこ てきぐん はし おおごえ に さ にん
取り囲んだので、敵軍はみな走り、大声をあげて逃げ去った。 二二三百人
ふ しゅ てきぐん たがい どうし う
のものがラッパを吹くと、主は敵軍をしてみな互に同志打ちさせられた
てきぐん ほう さかい
ので、敵軍はゼレラの方、ベテシッタおよびアベルメホラの境、タバテ
ちか に さ ひとびと
の近くまで逃げ去った。 二三イスラエルの人々はナフタリ、アセルおよ
ぜん あつ ついげき
び全マナセから集まってきて、ミデアンびとを追撃した。
し しゃ さんち くだ
二四 ギデオンは使者をあまねくエフライムの山地につかわし、
﹁下ってき
せ いた なが と
て、ミデアンびとを攻め、ベタバラに至るまでの流れを取り、またヨル
士師記

と い ひとびと あつ
ダンをも取れ﹂と言わせた。そこでエフライムの人々はみな集まってき

36
いた なが と と かれ
て、ベタバラに至るまでの流れを取り、またヨルダンをも取った。 二五彼
きみ とら
らはまたミデアンびとのふたりの君オレブとゼエブを捕え、オレブをオ
いわ ころ さか ころ
レブ岩のほとりで殺し、ゼエブをゼエブの酒ぶねのほとりで殺した。ま
ついげき くび たずさ む
たミデアンびとを追撃し、オレブとゼエブの首を携えてヨルダンの向こ

うのギデオンのもとへ行った。
第八章
ひとびと む たたか
エフライムの人々はギデオンに向かい﹁あなたが、ミデアンびとと戦

い よ
うために行かれたとき、われわれを呼ばれなかったが、どうしてそうい
い はげ かれ せ かれ
うことをされたのですか﹂と言って激しく彼を責めた。 二ギデオンは彼
い いま こと こと くら
らに言った、﹁今わたしのした事は、あなたがたのした事と比べものにな
ひろ あつ と のこ
りましょうか。エフライムの拾い集めた取り残りのぶどうはアビエゼ
士師記

しゅうかく かみ
ルの収 穫したぶどうにもまさるではありませんか。 三神はミデアンの

37
きみ て
君オレブとゼエブをあなたがたの手にわたされました。わたしのなし
え こと こと くら
得た事は、あなたがたのした事と比べものになりましょうか﹂。ギデオ
ことば の かれ いきどお と
ンがこの言葉を述べると、彼らの憤りは解けた。
じぶん したが にん とも い
四ギデオンは自分に従 っていた三百人と共にヨルダンに行ってこれを
わた つか ついげき かれ ひとびと い
渡り、疲れながらもなお追撃したが、 五彼はスコテの人々に言った、
﹁ど
したが たみ あた かれ つか
うぞわたしに従 っている民にパンを与えてください。彼らが疲れてい
おう ついげき
るのに、わたしはミデアンの王ゼバとザルムンナを追撃しているのです

から﹂。 六スコテのつかさたちは言った、
﹁ゼバとザルムンナは、すでに
て ぐんぜい
あなたの手のうちにあるのですか。われわれはどうしてあなたの軍勢
あた い
にパンを与えねばならないのですか﹂。 七ギデオンは言った、
﹁それなら
しゅ て の
ば主がわたしの手にゼバとザルムンナをわたされるとき、わたしは野の
にく う
いばらと、おどろをもって、あなたがたの肉を打つであろう﹂。 八そして
のぼ おな ひとびと の
ギデオンはそこからペヌエルに上り、同じことをペヌエルの人々に述べ
士師記

かれ ひとびと こた こた
る と、彼 ら も ス コ テ の 人々 が 答 え た よ う に 答 え た の で、 九ペ ヌ エ ル の

38
ひとびと い やす かえ う
人々に言った、﹁わたしが安らかに帰ってきたとき、このやぐらを打ちこ
わすであろう﹂。
ぐんぜい にん ひき
一〇 さてゼバとザルムンナは軍勢おおよそ一万五千人を率いて、カルコ
みな とうほう たみ ぜんぐん い のこ せんし
ルにいた。これは皆、東方の民の全軍のうち生き残ったもので、戦死し
もの お にん
た者は、つるぎを帯びているものが十二万人あった。 一一ギデオンはノ
ひがし たいしょう みち のぼ てきぐん ゆだん
バとヨグベハの東の隊 商の道を上って、敵軍の油断しているところを
う に ついげき
撃った。 一二ゼバとザルムンナは逃げたが、ギデオンは追撃して、ミデア
おう とら ぐんぜい う
ンのふたりの王ゼバとザルムンナを捕え、その軍勢をことごとく撃ち
やぶ
敗った。
こ さか たたか かえ
一三 こうしてヨアシの子ギデオンはヘレスの坂をとおって戦いから帰
わかもの とら たず かれ
り、 一四スコテの若者ひとりを捕えて、尋ねたところ、彼はスコテのつか
およ ちょうろう にん な か
さ た ち 及 び 長 老 た ち 七 十 七 人 の 名 を ギ デ オ ン の た め に 書 き し る し た。
ひとびと い い
一五 ギデオンはスコテの人々のところへ行って言った、
﹁あなたがたがか
士師記


つて﹃ゼバとザルムンナはすでにあなたの手のうちにあるのか。われわ

39
つか ひとびと あた
れはどうしてあなたの疲れた人々にパンを与えねばならないのか﹄と
い み
言って、わたしをののしったそのゼバとザルムンナを見なさい﹂。 一六そ
かれ まち ちょうろう とら の と
して彼は、その町の長 老たちを捕え、野のいばらと、おどろとを取り、
ひとびと こ う
それをもってスコテの人々を懲らし、 一七またペヌエルのやぐらを打ち
まち ひとびと ころ
こわして町の人々を殺した。

一八 そしてギデオンはゼバとザルムンナに言った、
﹁あなたがたがタボル
ころ ひとびと かれ こた かれ
で殺したのは、どんな人々であったか﹂。彼らは答えた、
﹁彼らはあなた
に おうじ み い かれ
に似てみな王子のように見えました﹂。 一九ギデオンは言った、﹁彼らは
きょうだい はは こ しゅ い
わたしの兄 弟、わたしの母の子たちだ。主は生きておられる。もしあ
かれ い ころ
なたがたが彼らを生かしておいたならば、わたしはあなたがたを殺さな
ちょうし い た かれ ころ
いのだが﹂。 二〇そして長子エテルに言った、﹁立って、彼らを殺しなさ
わかもの とし わか おそ ぬ
い﹂。しかしその若者はなお年が若かったので、恐れてつるぎを抜かな
い じしん た
かった。 二一そこでゼバとザルムンナは言った、﹁あなた自身が立って、
士師記

う ひと ちから ちが
わ た し た ち を 撃 っ て く だ さ い。人 に よ っ て そ れ ぞ れ 力 も 違 い ま す か

40
た ころ かれ
ら﹂。ギデオンは立ちあがってゼバとザルムンナを殺し、彼らのらくだ
くび か つきがた かざ と
の首に掛けてあった月形の飾りを取った。
ひとびと い て
二二イスラエルの人々はギデオンに言った、
﹁あなたはミデアンの手から
すく こ まご
われわれを救われたのですから、あなたも、あなたの子も孫もわれわれ
おさ かれ い
を治めてください﹂。 二三ギデオンは彼らに言った、﹁わたしはあなたが
おさ こ おさ
たを治めることはいたしません。またわたしの子もあなたがたを治め
しゅ おさ
て は な り ま せ ん。主 が あ な た が た を 治 め ら れ ま す﹂。 二四ギ デ オ ン は ま
かれ い ねが
た彼らに言った、﹁わたしはあなたがたに一つの願いがあります。あな
みみわ
たがたのぶんどった耳輪をめいめいわたしにください﹂。ミデアンびと
きん みみわ も
はイシマエルびとであったゆえに、金の耳輪を持っていたからである。
かれ こた よろこ
二五彼らは答えた、﹁わたしどもは喜んでそれをさしあげます﹂。そして
ころも みみわ なか な い
衣をひろげ、めいめいぶんどった耳輪をその中に投げ入れた。 二六こう
もと え きん みみわ おも きん
してギデオンが求めて得た金の耳輪の重さは一千七百金シケルであっ
士師記

つきがた かざ みみかざ おう き むらさき ころも


た。ほかに月形の飾りと耳飾りと、ミデアンの王たちの着た紫の衣およ

41
くび か くびかざ
びらくだの首に掛けた首飾りなどもあった。 二七ギデオンはそれをもっ
つく じぶん まち お
て一つのエポデを作り、それを自分の町オフラに置いた。イスラエルは
みな した かんいん いえ
皆それを慕って姦淫をおこなった。それはギデオンとその家にとって、
ひとびと せいふく
わなとなった。 二八このようにしてミデアンはイスラエルの人々に征服
ふたた あたま くに
されて、 再びその頭をあげることができなかった。そして国はギデオ
よ ねん たいへい
ンの世にあるうち、四十年のあいだ太平であった。
こ い じぶん いえ す
二九 ヨアシの子エルバアルは行って自分の家に住んだ。 三〇ギデオンは
おお つま じぶん こども にん
多くの妻をもっていたので、自分の子供だけで七十人あった。 三一シケ
かれ こ う な
ムにいた彼のめかけがまたひとりの子を産んだので、アビメレクと名づ
こ こうれい たっ し
けた。 三二ヨアシの子ギデオンは高齢に達して死に、アビエゼルびとの
ちち はか ほうむ
オフラにある父ヨアシの墓に葬られた。
し ひとびと した
ギデオンが死ぬと、イスラエルの人々はまたバアルを慕って、これと
三三
かんいん おこな じぶん かみ
姦淫を行い、バアル・ベリテを自分たちの神とした。 三四すなわちイスラ
士師記

ひとびと しゅうい てき て じぶん すく かれ


エルの人々は周囲のもろもろの敵の手から自分たちを救われた彼らの

42
かみ しゅ おぼ
神、主を覚えず、三五またエルバアルすなわちギデオンがイスラエルのた
ぜんこう おう かれ かぞく しんせつ
めにしたもろもろの善行に応じて彼の家族に親切をつくすこともしな
かった。
第九章
こ い はは みうち ひと
さてエルバアルの子アビメレクはシケムに行き、母の身内の人たちの

い かれ はは ちち いえ いちぞく い
もとに行って、彼らと母の父の家の一族とに言った、 二﹁どうぞ、シケ
ひとびと みみ つ こ
ムのすべての人々の耳に告げてください、﹃エルバアルのすべての子七
にん おさ おさ
十人であなたがたを治めるのと、ただひとりであなたがたを治めるの
こつにく おぼ
と、どちらがよいか。わたしがあなたがたの骨肉であることを覚えてく
はは みうち ひと かわ
ださい﹄と﹂。 三そこで母の身内の人たちがアビメレクに代ってこれら
ことば ひとびと みみ つ かれ こころ
の言葉をことごとくシケムのすべての人々の耳に告げると、彼らは心を
士師記

かたむ かれ きょうだい い
アビメレクに傾け、
﹁彼はわれわれの兄 弟だ﹂と言って、 四バアル・ベリ

43
みや ぎん と かれ あた
テ の 宮 か ら 銀 七 十 シ ケ ル を 取 っ て 彼 に 与 え た。ア ビ メ レ ク は そ れ を
もの やと じぶん したが ちち
もって、やくざのならず者を雇って自分に従わせ、 五オフラにある父の
いえ い こ じぶん きょうだい にん いし
家に行って、エルバアルの子で、自分の兄 弟である七十人を、一つの石
うえ ころ すえ こ み かく い
の上で殺した。ただしエルバアルの末の子ヨタムは身を隠したので生
のこ ひとびと ひとびと
き 残 っ た。 六そ こ で シ ケ ム の す べ て の 人々 と ベ テ ミ ロ の す べ て の 人々
あつ い いし はしら き
は集まり、行ってシケムにある石の柱のかたわらのテレビンの木のもと
た おう
で、アビメレクを立てて王とした。
つ もの い
七このことをヨタムに告げる者があったので、ヨタムは行ってゲリジム
やま いただき た おおごえ さけ かれ い ひとびと
山の頂に立ち、大声に叫んで彼らに言った、
﹁シケムの人々よ、わたしに
き かみ き
聞 き な さ い。そ う す れ ば 神 は あ な た が た に 聞 か れ る で し ょ う。 八あ る
とき き じぶん うえ おう た で い
時、もろもろの木が自分たちの上に王を立てようと出て行ってオリブの
き い おう き
木に言った、
﹃わたしたちの王になってください﹄。 九しかしオリブの木
かれ い かみ ひと もち
は彼らに言った、﹃わたしはどうして神と人とをあがめるために用いら
士師記

あぶら す い き おさ
れるわたしの油を捨てて行って、もろもろの木を治めることができま

44
き き い
しょう﹄。 一〇もろもろの木はまたいちじくの木に言った、﹃きてわたし
おう き かれ い
たちの王になってください﹄。 一一しかしいちじくの木は彼らに言った、
かんみ よ かじつ す い
﹃わたしはどうしてわたしの甘味と、わたしの良い果実とを捨てて行っ
き おさ き
て、もろもろの木を治めることができましょう﹄。 一二もろもろの木はま
き い おう
たぶどうの木に言った、﹃きてわたしたちの王になってください﹄。 一三
き かれ い かみ ひと よろこ
しかし、ぶどうの木は彼らに言った、﹃わたしはどうして神と人とを喜ば
しゅ す い き おさ
せるわたしのぶどう酒を捨てて行って、もろもろの木を治めることがで
き い
きましょう﹄。 一四そこですべての木はいばらに言った、﹃きてわたした
おう き い
ちの王になってください﹄。 一五いばらはもろもろの木に言った、﹃あな
しんじつ た おう かげ なん
たがたが真実にわたしを立てて王にするならば、きてわたしの陰に難を
さ ひ で こうはく や
避けなさい。そうしなければ、いばらから火が出てレバノンの香柏を焼
きつくすでしょう﹄。
た おう しんじつ けいい
一六 あなたがたがアビメレクを立てて王にしたことは、真実と敬意とを
士師記

いえ あつか
もってしたものですか。あなたがたはエルバアルとその家をよく扱い、

45
かれ おう ちち
彼のおこないに応じてしたのですか。 一七わたしの父はあなたがたのた
たたか じぶん いのち な だ て すく
めに戦い、自分の命を投げ出して、あなたがたをミデアンの手から救い
だ ちち いえ はんこう おこ
出したのに、一八あなたがたは、きょう、わたしの父の家に反抗して起り、
こ にん いし うえ ころ こしもと こ
その子七十人を一つの石の上で殺し、その腰元の子アビメレクをあなた
みうち もの た ひとびと おう
がたの身内の者であるゆえに立てて、シケムの人々の王にしました。 一九
いえ しんじつ
あなたがたが、きょう、エルバアルとその家になされたことが真実と
けいい よろこ
敬意をもってしたものであるならば、アビメレクのために喜びなさい。
かれ よろこ
彼もまたあなたがたのために喜ぶでしょう。 二〇しかし、そうでなけれ
ひ で ひとびと や
ば、アビメレクから火が出て、シケムの人々とベテミロとを焼きつくし、
ひとびと ひ で や
またシケムの人々とベテミロからも火が出てアビメレクを焼きつくす
はし に さ い きょうだい
でしょう﹂。 二一こうしてヨタムは走って逃げ去り、ベエルに行き、兄 弟
かお す
アビメレクの顔をさけてそこに住んだ。
ねん あいだ おさ かみ
二二 アビメレクは三年の間 イスラエルを治めたが、 二三神はアビメレク
士師記

ひとびと あいだ あくれい ひとびと


とシケムの人々の間に悪霊をおくられたので、シケムの人々はアビメレ

46
あざむ にん こ う
ク を 欺 く よ う に な っ た。 二四こ れ は エ ル バ ア ル の 七 十 人 の 子 が 受 け た
ぼうぎゃく かれ ち かれ ころ きょうだい うえ かれ て つよ
暴 虐と彼らの血が、彼らを殺した兄 弟 アビメレクの上と、彼の手を強
きょうだい ころ ひとびと うえ むく
めてその兄 弟を殺させたシケムの人々の上とに報いとなってきたので
ひとびと かれ てき ま ぶ もの やまやま いただき
あ る。 二 五シ ケ ム の 人々 は 彼 に 敵 し て 待 ち 伏 せ す る 者 を 山々 の 頂 に お
みち とお す もの りゃくだつ
き、すべてその道を通り過ぎる者を略 奪させた。このことがアビメレ
つ し
クに告げ知らされた。
こ みうち ひとびと いっしょ いじゅう
二六さてエベデの子ガアルはその身内の人々と一緒にシケムに移住した
ひとびと かれ しんよう ひとびと はたけ で と い
が、シケムの人々は彼を信用した。 二七人々は畑に出てぶどうを取り入
ふ しぼ まつり かみ みや い の く
れ、それを踏み絞って祭をし、神の宮に行って飲み食いしてアビメレク
こ い なに
をのろった。 二八そしてエベデの子ガアルは言った、
﹁アビメレクは何も
なに かれ つか
のか。シケムのわれわれは何ものなれば彼に仕えなければならないの
こ やくにん せんぞ いちぞく
か。エルバアルの子とその役人ゼブルはシケムの先祖ハモルの一族に
つか かれ つか
仕えたではないか。われわれはどうして彼に仕えなければならないの
士師記

たみ て した
か。 二九ああ、この民がわたしの手の下にあったらよいのだが。そうす

47

ればわたしはアビメレクをやめさせ、アビメレクに向かって﹃おまえの
ぐんぜい ま で い
軍勢を増して出てこい﹄と言うであろう﹂。
まち こ ことば き いか はっ
三〇 町のつかさゼブルはエベデの子ガアルの言葉を聞いて怒りを発し、三
し しゃ い こ
一使者をアルマにおるアビメレクにつかわして言わせた、﹁エベデの子
みうち ひとびと まち さわ
ガアルとその身内の人々がシケムにきて、町を騒がせ、あなたにそむか
とも ひとびと よる
せようとしています。 三二それであなたと、あなたと共におる人々が夜
い の み ふ あさ ひ はや
のうちに行って、野に身を伏せ、 三三朝になって、日ののぼるとき、早く
お で まち おそ かれ とも たみ で
起き出て町を襲うならば、ガアルと、彼と共におる民は出てきて、あな
ていこう とき はた え かれ う
たに抵抗するでしょう。その時あなたは機を得て、彼らを撃つことがで
きるでしょう﹂。
かれ とも たみ よる お で くみ
三四 アビメレクと、彼と共にいたすべての民は夜のうちに起き出て、四組
わか み ふ こ で
に分れ、身を伏せてシケムをうかがった。 三五エベデの子ガアルが出て、
まち もん いりぐち た かれ とも たみ み ふ
町の門の入口に立ったとき、アビメレクと、彼と共にいた民が身を伏せ
士師記

た たみ み
て い た と こ ろ か ら 立 ち あ が っ た の で、 三六ガ ア ル は 民 を 見 て ゼ ブ ル に

48
い たみ やまやま いただき かれ
言った、﹁ごらんなさい。民が山々の頂からおりてきます﹂。ゼブルは彼
い やまやま かげ ひと み
に言った、﹁あなたは山々の影を人のように見るのです﹂。 三七ガアルは
ふたた い たみ くに ちゅうおう ぶ くみ
再び言った、
﹁ごらんなさい。民が国の中 央 部からおりてきます。一組
うらな し き ほう かれ い
は 占 い 師 の テ レ ビ ン の 木 の 方 か ら き ま す﹂。 三八ゼ ブ ル は 彼 に 言 っ た、
なに なに かれ
﹁あなたがかつて﹃アビメレクは何ものか。われわれは何ものなれば彼
つか い くち いま
に仕えなければならないのか﹄と言ったあなたの口は今どこにあります
あなど たみ いま で かれ たたか
か。これはあなたが侮 った民ではありませんか。今、出て彼らと戦い
ひとびと ひき で
な さ い﹂。 三九そ こ で ガ ア ル は シ ケ ム の 人々 を 率 い、出 て ア ビ メ レ ク と
たたか かれ お かれ まえ に
戦 ったが、 四〇アビメレクは彼を追ったので、ガアルは彼の前から逃げ
きず たお もの おお もん いりぐち およ
た。そして傷つき倒れる者が多く、門の入口にまで及んだ。 四一こうし
ひ つづ みうち
てアビメレクは引き続いてアルマにいたが、ゼブルはガアルとその身内
ひとびと お だ
の人々を追い出してシケムにおらせなかった。
よくじつ たみ はたけ で きこ
四二 翌日、民が畑に出ると、そのことがアビメレクに聞えた。 四三アビメ
士師記

じぶん たみ ひき くみ わ の み ふ
レクは自分の民を率い、それを三組に分け、野に身を伏せて、うかがっ

49
たみ まち で う
ていると、民が町から出てきたので、たちあがってこれを撃った。 四四ア
かれ とも くみ もの おそ い まち もん いりぐち た
ビメレクと、彼と共にいた組の者は襲って行って、町の門の入口に立ち、
た くみ の おそ ころ
他の二組は野にいたすべてのものを襲って、それを殺した。 四五アビメ
ひ しゅうじつ まち せ まち と たみ ころ
レクはその日、終 日、町を攻め、ついに町を取って、そのうちの民を殺
まち はかい しお
し、町を破壊して、塩をまいた。
ひとびと みな き みや とう
四六 シケムのやぐらの人々は皆これを聞いて、エルベリテの宮の塔には
ひとびと みなあつ きこ
いった。 四七シケムのやぐらの人々が皆集まったことがアビメレクに聞
じぶん いっしょ たみ ひき
えたので、 四八アビメレクは自分と一緒にいた民をことごとく率いてザ
さん て と き えだ き おと
ルモン山にのぼり、アビメレクは手におのを取って、木の枝を切り落し、
と じぶん かた いっしょ たみ い
それを取りあげて自分の肩にのせ、一緒にいた民にむかって言った、﹁あ
み いそ
なたがたはわたしがしたことを見たとおりに急いでしなさい﹂。 四九そ
たみ みな えだ き おと したが い
こで民もまた皆おのおのその枝を切り落し、アビメレクに従 って行っ
えだ とう とう ひ かれ せ
て、枝を塔によせかけ、塔に火をつけて彼らを攻めた。こうしてシケム
士師記

ひとびと し だんじょ にん
のやぐらの人々もまたことごとく死んだ。男女おおよそ一千人であっ

50
た。
い む じん は
五〇 ついでアビメレクはテベツに行き、テベツに向かって陣を張り、これ
せ と まち なか けんご
を攻め取ったが、 五一町の中に一つの堅固なやぐらがあって、すべての
だんじょ まち ひとびと みな に こ と
男女すなわち町の人々が皆そこに逃げ込み、あとを閉ざして、やぐらの
や ね のぼ お よ
屋根に上ったので、 五二アビメレクはやぐらのもとに押し寄せてこれを
せ いりぐち ちか ひ や
攻め、やぐらの入口に近づいて、火をつけて焼こうとしたとき、 五三ひと
おんな あたま うわいし な ず がいこつ くだ
りの女がアビメレクの頭に、うすの上石を投げて、その頭骸骨を砕いた。
じぶん ぶ き も わかもの いそ よ い
五四 アビメレクは自分の武器を持つ若者を急ぎ呼んで言った、
﹁つるぎを
ぬ ころ ひとびと おんな ころ
抜いてわたしを殺せ。さもないと人々はわたしを、 女に殺されたのだ
い わかもの かれ さ とお かれ し
と 言 う で あ ろ う﹂。そ の 若者 が 彼 を 刺 し 通 し た の で 彼 は 死 ん だ。 五五イ
ひとびと し み さ いえ
スラエルの人々はアビメレクの死んだのを見て、おのおの去って家に
かえ かみ きょうだい にん ころ
帰 っ た。 五 六こ の よ う に 神 は ア ビ メ レ ク が そ の 兄 弟 七 十 人 を 殺 し て、
じぶん ちち たい おか あく むく かみ ひとびと
自分の父に対して犯した悪に報いられた。 五七また神はシケムの人々の
士師記

あく かれ むく こ
すべての悪を彼らのこうべに報いられた。こうしてエルバアルの子ヨ

51
かれ のぞ
タムののろいが、彼らに臨んだのである。
第一〇章
のち ひと こ こ
アビメレクの後、イッサカルの人で、ドドの子であるプワの子トラが

た すく かれ さんち す
起ってイスラエルを救った。彼はエフライムの山地のシャミルに住み、
ねん あいだ し ほうむ
二十三年の間 イスラエルをさばいたが、ついに死んでシャミルに葬

られた。
かれ のち た ねん あいだ
彼の後にギレアデびとヤイルが起って二十二年の間 イスラエルをさ

かれ にん こ かれ とう の
ばいた。 四彼に三十人の子があった。彼らは三十頭のろばに乗り、また
まち ち こんにち よ
三十の町をもっていた。ギレアデの地で今日まで、ハボテ・ヤイルと呼
し ほうむ
ばれているものがそれである。 五ヤイルは死んで、カモンに葬られた。
ひとびと ふたた しゅ まえ あく おこな
イスラエルの人々は再び主の前に悪を行い、バアルとアシタロテおよ

士師記

かみがみ かみがみ かみがみ かみがみ


びスリヤの神々、シドンの神々、モアブの神々、アンモンびとの神々、ペ

52
かみがみ つか しゅ す つか しゅ
リシテびとの神々に仕え、主を捨ててこれに仕えなかった。 七主はイス
たい いか はっ かれ て
ラエルに対して怒りを発し、彼らをペリシテびとの手およびアンモンび
て う かれ ねん ひとびと
との手に売りわたされたので、 八彼らはその年イスラエルの人々をしえ
なや かれ む
たげ悩ました。すなわち彼らはヨルダンの向こうのギレアデにあるア
ち ねん なや
モリびとの地にいたすべてのイスラエルびとを十八年のあいだ悩まし
ひとびと しぞく
た。 九ま た ア ン モ ン の 人々 が ユ ダ と ベ ニ ヤ ミ ン と エ フ ラ イ ム の 氏族 を
せ わた ひじょう なや
攻めるためにヨルダンを渡ってきたので、イスラエルは非常に悩まされ
た。
ひとびと しゅ よ い
一〇 そこでイスラエルの人々は主に呼ばわって言った、
﹁わたしたちはわ
かみ す つか つみ おか しゅ
たしたちの神を捨ててバアルに仕え、あなたに罪を犯しました﹂。 一一主
ひとびと い
はイスラエルの人々に言われた、﹁わたしはかつてエジプトびと、アモリ
すく だ
びと、アンモンびと、ペリシテびとからあなたがたを救い出したではな
いか。 一二またシドンびと、アマレクびとおよびマオンびとがあなたが
士師記

とき よ かれ て
たをしえたげた時、わたしに呼ばわったので、あなたがたを彼らの手か

53
すく だ す かみがみ
ら救い出した。 一三しかしあなたがたはわたしを捨てて、ほかの神々に
つか すく
仕えた。それゆえ、わたしはかさねてあなたがたを救わないであろう。
えら かみがみ い よ なや とき
一四 あなたがたが選んだ神々に行って呼ばわり、あなたがたの悩みの時、
かれ すく ひとびと しゅ
彼 ら に あ な た が た を 救 わ せ る が よ い﹂。 一 五イ ス ラ エ ル の 人々 は 主 に
い つみ おか よ おも
言った、﹁わたしたちは罪を犯しました。なんでもあなたが良いと思わ
すく
れることをしてください。ただどうぞ、きょう、わたしたちを救ってく
かれ じぶん こと かみがみ と のぞ
だ さ い﹂。 一六そ う し て 彼 ら は 自分 た ち の う ち か ら 異 な る 神々 を 取 り 除
しゅ つか しゅ こころ なや み しの
いて、主に仕えた。それで主の心はイスラエルの悩みを見るに忍びなく
なった。
とき ひとびと しょうしゅう じん と
一七 時にアンモンの人々は召 集されてギレアデに陣を取ったが、イスラ
ひとびと あつ じん と とき たみ
エルの人々は集まってミヅパに陣を取った。 一八その時、民とギレアデ
きみ たがい い ひとびと む たたか はじ
の君たちとは互に言った、﹁だれがアンモンの人々に向かって戦いを始
ひと たみ
めるか。その人はギレアデのすべての民のかしらとなるであろう﹂。
士師記

54
第一一章
つよ ゆうし ゆうじょ こ
一さてギレアデびとエフタは強い勇士であったが遊女の子で、エフタの
ちち つま こども う つま
父 は ギ レ ア デ で あ っ た。 二ギ レ ア デ の 妻 も 子供 を 産 ん だ が、そ の 妻 の
こども せいちょう かれ お だ かれ い
子供たちが成 長したとき、彼らはエフタを追い出して彼に言った、
﹁あ
おんな う こ ちち いえ つ
なたはほかの女の産んだ子だから、わたしたちの父の家を継ぐことはで
きょうだい に さ
きません﹂。 三それでエフタはその兄 弟たちのもとから逃げ去って、ト
ち す もの あつ かれ
ブの地に住んでいると、やくざ者がエフタのもとに集まってきて、彼と
いっしょ で りゃくだつ こと
一緒に出かけて略 奪を事としていた。
ひ のち ひとびと たたか
四日がたって後、アンモンの人々はイスラエルと戦うことになり、 五ア
ひとびと たたか ちょうろう い
ンモンの人々がイスラエルと戦 ったとき、ギレアデの長 老たちは行っ
ち つ い
てエフタをトブの地から連れてこようとして、 六エフタに言った、﹁き
たいしょう
て、わたしたちの大 将になってください。そうすればわたしたちはア
士師記

ひとびと たたか ちょうろう


ンモンの人々と戦うことができます﹂。 七エフタはギレアデの長 老たち

55
い にく ちち いえ お だ
に言った、﹁あなたがたはわたしを憎んで、わたしの父の家から追い出し
いま こま とき
たではありませんか。しかるに今あなたがたが困っている時とはいえ、
く ちょうろう
わたしのところに来るとはどういうわけですか﹂。 八ギレアデの長 老た
い いま かえ
ちはエフタに言った、
﹁それでわたしたちは今、あなたに帰ったのです。
いっしょ い ひとびと たたか
どうぞ、わたしたちと一緒に行って、アンモンの人々と戦 ってくださ

い。そしてわたしたちとギレアデに住んでいるすべてのものとのかし
ちょうろう い
らになってください﹂。 九エフタはギレアデの長 老たちに言った、
﹁もし
かえ ひとびと たたか
あなたがたが、わたしをつれて帰って、アンモンの人々と戦わせるとき、
しゅ かれ
主が彼らをわたしにわたされるならば、わたしはあなたがたのかしらと
ちょうろう い しゅ
なりましょう﹂。 一〇ギレアデの長 老たちはエフタに言った、﹁主はあな
あいだ しょうにん かなら い
たとわたしたちの間の証 人です。わたしたちは必ずあなたの言われる
ちょうろう いっしょ
とおりにしましょう﹂。 一一そこでエフタはギレアデの長 老たちと一緒
い たみ かれ た じぶん たいしょう
に行った。民は彼を立てて自分たちのかしらとし、 大 将とした。それ
士師記

じぶん ことば しゅ まえ の
でエフタはミヅパで、自分の言葉をことごとく主の前に述べた。

56
ひとびと おう し しゃ い
一二かくてエフタはアンモンの人々の王に使者をつかわして言った、
﹁あ

なたはわたしとなんのかかわりがあって、わたしのところへ攻めてき
くに たたか ひとびと おう
て、わたしの国と戦おうとするのですか﹂。 一三アンモンの人々の王はエ
し しゃ こた むかし のぼ
フタの使者に答えた、
﹁昔、イスラエルがエジプトから上ってきたとき、
およ およ くに うば と
アルノンからヤボクに及び、またヨルダンに及ぶわたしの国を奪い取っ
いま おだ かえ
たからです。それゆえ今、穏やかにそれを返しなさい﹂。 一四エフタはま
し しゃ ひとびと おう い
た使者をアンモンの人々の王につかわして、 一五言わせた、
﹁エフタはこ
もう ち ひとびと ち と
う申します、﹃イスラエルはモアブの地も、またアンモンの人々の地も取
のぼ あらの
りませんでした。 一六イスラエルはエジプトから上ってきたとき、荒野
こうかい
をとおって紅海にいたり、カデシにきました。 一七そしてイスラエルは
し しゃ おう くに とお
使者をエドムの王につかわして﹁どうぞ、われわれにあなたの国を通ら
い おう き
せてください﹂と言わせましたが、エドムの王は聞きいれませんでした。
おな ひと おう かれ しょうだく
また同じように人をモアブの王につかわしたが、彼も承 諾しなかった
士師記

あらの
の で、イ ス ラ エ ル は カ デ シ に と ど ま り ま し た。 一 八そ れ か ら 荒野 を と

57
ち ち まわ ち とうぶ たっ
おって、エドムの地とモアブの地を回り、モアブの地の東部に達し、ア
む しゅくえい りょういき
ルノンの向こうに宿 営しましたがモアブの領 域には、はいりませんで
さかい つぎ
した。アルノンはモアブの境だからです。 一九次にイスラエルはヘシボ
おう おう し しゃ む
ンの王すなわちアモリびとの王シホンに使者をつかわし、シホンに向
くに もくてき ち
かって﹁どうぞ、われわれにあなたの国をとおって、われわれの目的地
い い
へ行かせてください﹂と言わせました。 二〇ところがシホンはイスラエ
しん りょういき とお たみ あつ
ルを信ぜず、その領 域を通らせないばかりか、かえってすべての民を集
じん と たたか
めてヤハヅに陣を取り、イスラエルと戦いましたが、 二一イスラエルの
かみ しゅ たみ て
神、主はシホンとそのすべての民をイスラエルの手にわたされたので、
かれ う やぶ と ち す ち
イスラエルは彼らを撃ち破って、その土地に住んでいたアモリびとの地
せんりょう あらの
をことごとく占 領し、 二二アルノンからヤボクまでと、荒野からヨルダ
りょういき せんりょう
ンまで、アモリびとの領 域をことごとく占 領しました。 二三このように
かみ しゅ たみ まえ お はら
イスラエルの神、主はその民イスラエルの前からアモリびとを追い払わ
士師記


れたのに、あなたはそれを取ろうとするのですか。 二四あなたは、あなた

58
かみ と と
の神ケモシがあなたに取らせるものを取らないのですか。われわれは
かみ しゅ まえ お はら と ち と
われわれの神、主がわれわれの前から追い払われたものの土地を取るの
おう こ もの
です。 二五あなたはモアブの王チッポルの子バラクにまさる者ですか。
あらそ かれ
バラクはかつてイスラエルと争 ったことがありますか。かつて彼らと
たたか むらざと す
戦 っ た こ と が あ り ま す か。 二六イ ス ラ エ ル は ヘ シ ボ ン と そ の 村里 に 住
むらざと きし そ まちまち
み、またアロエルとその村里およびアルノンの岸に沿うすべての町々に
す ねん かん と
住むこと三百年になりますが、あなたがたはどうしてその間にそれを取
なに わる こと
りもどさなかったのですか。 二七わたしはあなたに何も悪い事をしたこ
たたか がい くわ
ともないのに、あなたはわたしと戦 って、わたしに害を加えようとしま
しんぱんしゃ しゅ ひとびと
す。審判者であられる主よ、どうぞ、きょう、イスラエルの人々とアン
ひとびと あいだ ひとびと
モンの人々との間をおさばきください﹄﹂。 二八しかしアンモンの人々の
おう い ことば
王はエフタが言いつかわした言葉をききいれなかった。
とき しゅ れい のぞ
二九 時 に 主 の 霊 が エ フ タ に 臨 み、エ フ タ は ギ レ ア デ お よ び マ ナ セ を と
士師記

い すす
おって、ギレアデのミヅパに行き、ギレアデのミヅパから進んでアンモ

59
ひとびと い しゅ せいがん た い
ンの人々のところに行った。 三〇エフタは主に誓願を立てて言った、
﹁も
ひとびと て
しあなたがアンモンの人々をわたしの手にわたされるならば、 三一わた
ひとびと か かえ いえ とぐち で
しがアンモンの人々に勝って帰るときに、わたしの家の戸口から出てき
むか しゅ もの はんさい
て、わたしを迎えるものはだれでも主のものとし、その者を燔祭として
ひとびと すす い
さ さ げ ま し ょ う﹂。 三二エ フ タ は ア ン モ ン の 人々 の と こ ろ に 進 ん で 行 っ
かれ たたか しゅ かれ て
て、彼らと戦 ったが、主は彼らをエフタの手にわたされたので、三三アロ
ふきん まち う はい
エルからミンニテの附近まで、二十の町を撃ち敗り、アベル・ケラミム
いた ひじょう おお ひと ころ ひとびと
に至るまで、非常に多くの人を殺した。こうしてアンモンの人々はイス
ひとびと まえ せ ふ
ラエルの人々の前に攻め伏せられた。
かえ じぶん いえ く かれ むすめ つづみ
三四やがてエフタはミヅパに帰り、自分の家に来ると、彼の娘が鼓をも
ま おど かれ でむか かのじょ こ だんし
ち、舞い踊って彼を出迎えた。彼女はエフタのひとり子で、ほかに男子
じょ し かのじょ み ころも さ い
も女子もなかった。 三五エフタは彼女を見ると、 衣を裂いて言った、
﹁あ
むすめ まった う なや
あ、娘よ、あなたは全くわたしを打ちのめした。わたしを悩ますものと
士師記

しゅ ちか あらた
なった。わたしが主に誓ったのだから改めることはできないのだ﹂。 三六

60
むすめ い ちち しゅ ちか しゅ
娘は言った、
﹁父よ、あなたは主に誓われたのですから、主があなたの
てき ひとびと ほうふく いま い
ために、あなたの敵アンモンの人々に報復された今、あなたが言われた
むすめ ちち い
とおりにわたしにしてください﹂。 三七 娘はまた父に言った、﹁どうぞ、こ
こと げつ あいだ
の事をわたしにさせてください。すなわち二か月の間わたしをゆるし、
とも いっしょ い やまやま しょじょ
友だちと一緒に行って、山々をゆきめぐり、わたしの処女であることを
なげ い い かのじょ
嘆かせてください﹂。 三八エフタは﹁行きなさい﹂と言って、彼女を二か
げつ あいだ だ かのじょ とも いっしょ い やま うえ じぶん
月の間、出してやった。彼女は友だちと一緒に行って、山の上で自分の
しょじょ なげ げつ のち ちち かえ
処女であることを嘆いたが、 三九二か月の後、父のもとに帰ってきたの
ちち ちか せいがん かのじょ かのじょ おとこ し
で、父は誓った誓願のとおりに彼女におこなった。彼女はついに男を知
ねんねん むすめ い ねん
らなかった。 四〇これによって年々イスラエルの娘たちは行って、年に
か むすめ なげ
四日ほどギレアデびとエフタの娘のために嘆くことがイスラエルのな
らわしとなった。
士師記

61
第一二章
ひとびと あつ い い
エフライムの人々は集まってザポンに行き、エフタに言った、
一 ﹁なぜあ
すす い ひとびと たたか まね
なたは進んで行ってアンモンの人々と戦いながら、われわれを招いて
いっしょ い いえ ひ
一緒に行かせませんでしたか。われわれはあなたの家に火をつけてあ
いっしょ や かれ い
なたを一緒に焼いてしまいます﹂。 二エフタは彼らに言った、
﹁かつてわ
たみ ひとびと おお あらそ
たしとわたしの民がアンモンの人々と大いに争 ったとき、あなたがた
よ かれ て すく
を呼んだが、あなたがたはわたしを彼らの手から救ってくれませんでし
すく み いのち
た。 三あなたがたが救ってくれないのを見たから、わたしは命がけでア
ひとびと せ い しゅ かれ て
ンモンの人々のところへ攻めて行きますと、主は彼らをわたしの手にわ
たされたのです。どうしてあなたがたは、きょう、わたしのところに
のぼ たたか
上ってきて、わたしと戦おうとするのですか﹂。 四そこでエフタはギレ
ひとびと あつ たたか ひとびと
アデの人々をことごとく集めてエフライムと戦い、ギレアデの人々はエ
士師記

う やぶ
フライムを撃ち破った。これはエフライムが﹁ギレアデびとよ、あなた

62
おちうど い
がたはエフライムとマナセのうちにいるエフライムの落人だ﹂と言った
わた わた
か ら で あ る。 五そ し て ギ レ ア デ び と は エ フ ラ イ ム に 渡 る ヨ ル ダ ン の 渡
ば おさ おちうど わた い
し場を押えたので、エフライムの落人が﹁渡らせてください﹂と言うと
ひとびと と
き、ギレアデの人々は﹁あなたはエフライムびとですか﹂と問い、その
ひと い ひと
人がもし﹁そうではありません﹂と言うならば、 六またその人に﹁では
い い ひと ただ はつおん
﹃シボレテ﹄と言ってごらんなさい﹂と言い、その人がそれを正しく発音
い ひと とら
することができないで﹁セボレテ﹂と言うときは、その人を捕えて、ヨ
わた ば ころ とき たお
ルダンの渡し場で殺した。その時エフライムびとの倒れたものは四万
にん
二千人であった。
ねん あいだ
七エフタは六年の間 イスラエルをさばいた。ギレアデびとエフタはつ
し じぶん まち ほうむ
いに死んで、ギレアデの自分の町に葬られた。
かれ のち かれ
八彼の後にベツレヘムのイブザンがイスラエルをさばいた。 九彼に三十
にん にん むすめ じぶん しぞく
人のむすこがあった。また三十人の娘があったが、それを自分の氏族
士師記

いがい もの にん むすめ
以外の者にとつがせ、むすこたちのためには三十人の娘をほかからめ

63
かれ ねん あいだ し
とった。彼は七年の間 イスラエルをさばいた。 一〇イブザンはついに死
ほうむ
んで、ベツレヘムに葬られた。
かれ のち かれ ねん
一一 彼の後にゼブルンびとエロンがイスラエルをさばいた。彼は十年の
あいだ し
間 イスラエルをさばいた。 一二ゼブルンびとエロンはついに死んで、ゼ
ち ほうむ
ブルンの地のアヤロンに葬られた。
かれ のち こ
一三 彼の後にピラトンびとヒレルの子アブドンがイスラエルをさばい
かれ にん およ にん まご とう
た。 一 四彼 に 四 十 人 の む す こ 及 び 三 十 人 の 孫 が あ り、七 十 頭 の ろ ば に
の かれ ねん あいだ
乗った。彼は八年の間 イスラエルをさばいた。 一五ピラトンびとヒレル
こ し ち さんち
の子アブドンはついに死んで、エフライムの地のアマレクびとの山地に
ほうむ
あるピラトンに葬られた。
第一三章
士師記

ひとびと しゅ まえ あく おこな しゅ かれ
一イスラエルの人々がまた主の前に悪を行 ったので、主は彼らを四十

64
ねん あいだ て
年の間 ペリシテびとの手にわたされた。
しぞく もの な ひと
二ここにダンびとの氏族の者で、名をマノアというゾラの人があった。
つま こ う しゅ つかい おんな
その妻はうまずめで、子を産んだことがなかった。 三主の使がその女に
あらわ い こ う
現れて言った、﹁あなたはうまずめで、子を産んだことがありません。し
み おとこ こ う き
かし、あなたは身ごもって男の子を産むでしょう。 四それであなたは気
しゅ こ さけ の けが
をつけて、ぶどう酒または濃い酒を飲んではなりません。またすべて汚
た み おとこ こ う
れ た も の を 食 べ て は な り ま せ ん。 五あ な た は 身 ご も っ て 男 の 子 を 産 む
あたま こ うま
でしょう。その頭にかみそりをあててはなりません。その子は生れた
とき かみ かれ て
時から神にささげられたナジルびとです。彼はペリシテびとの手から
すく はじ おんな おっと い
イ ス ラ エ ル を 救 い 始 め る で し ょ う﹂。 六そ こ で そ の 女 は き て 夫 に 言 っ
かみ ひと かお かみ つかい かお
た、﹁神の人がわたしのところにきました。その顔かたちは神の使の顔
おそ ひと
かたちのようで、たいそう恐ろしゅうございました。わたしはその人
たず ひと な つ
が、どこからきたのか尋ねませんでしたが、その人もわたしに名を告げ
士師記

ひと み おとこ こ
ませんでした。 七しかしその人はわたしに﹃あなたは身ごもって男の子

65
う しゅ こ さけ の
を産むでしょう。それであなたはぶどう酒または濃い酒を飲んではな
けが た こ うま
りません。またすべて汚れたものを食べてはなりません。その子は生
とき し ひ かみ もう
れた時から死ぬ日まで神にささげられたナジルびとです﹄と申しまし
た﹂。
しゅ ねが もと い しゅ
八そこでマノアは主に願い求めて言った、
﹁ああ、主よ、どうぞ、あなた
かみ ひと ど のぞ
がさきにつかわされた神の人をもう一度わたしたちに臨ませて、わたし
うま こ おし かみ
たちがその生れる子になすべきことを教えさせてください﹂。 九神がマ
ねが き かみ つかい おんな はたけ ざ とき
ノアの願いを聞かれたので、神の使は女が畑に座していた時、ふたたび
かのじょ のぞ おっと いっしょ おんな いそ
彼女 に 臨 ん だ。し か し 夫 マ ノ ア は 一緒 に い な か っ た。 一 〇 女 は 急 ぎ
はし い おっと い のぞ ひと
走って行って夫に言った、﹁さきごろ、わたしに臨まれた人がまたわたし
あらわ た つま い ひと
に現れました﹂。 一一マノアは立って妻のあとについて行き、その人のも
い い おんな つ
とに行って言った、﹁あなたはかつてこの女にお告げになったおかたで
ひと い い い
すか﹂。その人は言った、
﹁そうです﹂。 一二マノアは言った、
﹁あなたの言
士師記

じじつ こ そだ かた
われたことが事実となったとき、その子の育て方およびこれになすべき

66
こと しゅ つかい い
事はなんでしょうか﹂。 一三主の使はマノアに言った、﹁わたしがさきに
おんな い みな まも
女に言ったことは皆、守らせなければなりません。 一四すなわちぶどう
き さん た しゅ こ
の木から産するものはすべて食べてはなりません。またぶどう酒と濃
さけ の けが た
い酒を飲んではなりません。またすべて汚れたものを食べてはなりま
かのじょ めい みな まも
せん。わたしが彼女に命じたことは皆、守らせなければなりません﹂。
しゅ つかい い ひ と
一五 マノアは主の使に言った、
﹁どうぞ、わたしたちに、あなたを引き留
こ そな しゅ つかい
めさせ、あなたのために子やぎを備えさせてください﹂。 一六主の使はマ
い ひ と
ノ ア に 言 っ た、﹁あ な た が わ た し を 引 き 留 め て も、わ た し は あ な た の
しょくもつ はんさい そな
食 物をたべません。しかしあなたが燔祭を備えようとなさるのであれ
しゅ かれ しゅ つかい し
ば、主にそれをささげなさい﹂。マノアは彼が主の使であるのを知らな
しゅ つかい い な
かったからである。 一七マノアは主の使に言った、
﹁あなたの名はなんと
い じじつ
いいますか。あなたの言われたことが事実となったとき、わたしたちは
しゅ つかい かれ い な
あ な た を あ が め ま し ょ う﹂。 一 八主 の 使 は 彼 に 言 っ た、﹁わ た し の 名 は
士師記

ふ し ぎ
不思議 で す。ど う し て あ な た は そ れ を た ず ね る の で す か﹂。 一九そ こ で

67
こ そさい いわ うえ しゅ しゅ
マノアは子やぎと素祭とをとり、岩の上でそれを主にささげた。主は
ふ し ぎ つま み ほのお
不思議なことをされ、マノアとその妻はそれを見た。 二〇すなわち炎が
さいだん てん しゅ つかい さいだん ほのお
祭壇から天にあがったとき、主の使は祭壇の炎のうちにあってのぼっ
つま み ち ふ
た。マノアとその妻は見て、地にひれ伏した。
しゅ つかい つま あらわ とき
二一 主の使はふたたびマノアとその妻に現れなかった。その時マノアは
かれ しゅ つかい し つま む い
彼が主の使であることを知った。 二二マノアは妻に向かって言った、
﹁わ
かみ み し つま かれ い
たしたちは神を見たから、きっと死ぬであろう﹂。 二三妻は彼に言った、
しゅ ころ おも て
﹁主がもし、わたしたちを殺そうと思われたのならば、わたしたちの手か
はんさい そさい
ら燔祭と素祭をおうけにならなかったでしょう。またこれらのすべて
こと しめ いま
の事をわたしたちにお示しになるはずはなく、また今わたしたちにこの
こと つ おんな おとこ こ
ような事をお告げにならなかったでしょう﹂。 二四やがて女は男の子を
う な よ こ せいちょう しゅ かれ めぐ
産んで、その名をサムソンと呼んだ。その子は成 長し、主は彼を恵まれ
しゅ れい あいだ はじ かれ
た。 二五主の霊はゾラとエシタオルの間のマハネダンにおいて初めて彼
士師記

かんどう
を感動させた。

68
第一四章
くだ い むすめ す
サムソンはテムナに下って行き、ペリシテびとの娘で、テムナに住む

おんな み かれ かえ ふ ぼ い
ひとりの女を見た。 二彼は帰ってきて父母に言った、﹁わたしはペリシ
むすめ す おんな み かのじょ
テびとの娘で、テムナに住むひとりの女を見ました。彼女をめとってわ
つま ふ ぼ い い かつれい
たしの妻にしてください﹂。 三父母は言った、
﹁あなたが行って、割礼を
つま むか みうち むすめ
うけないペリシテびとのうちから妻を迎えようとするのは、身内の娘た
たみ おんな
ちのうちに、あるいはわたしたちのすべての民のうちに女がないためな
ちち い かのじょ
のですか﹂。しかしサムソンは父に言った、﹁彼女をわたしにめとってく
かのじょ こころ
ださい。彼女はわたしの心にかないますから﹂。
ふ ぼ こと しゅ で し
父母はこの事が主から出たものであることを知らなかった。サムソ


ンはペリシテびとを攻めようと、おりをうかがっていたからである。そ
おさ
のころペリシテびとはイスラエルを治めていた。
士師記

ふ ぼ とも くだ い かれ
かくてサムソンは父母と共にテムナに下って行った。彼がテムナの

69
はたけ つ とう わか かれ む
ぶどう畑に着くと、一頭の若いししがほえたけって彼に向かってきた。
とき しゅ れい はげ かれ のぞ かれ こ さ
六時に主の霊が激しく彼に臨んだので、彼はあたかも子やぎを裂くよう
さ て ぶ き も
にそのししを裂いたが、手にはなんの武器も持っていなかった。しかし
ちち はは つ
サ ム ソ ン は そ の し た こ と を 父 に も 母 に も 告 げ な か っ た。 七サ ム ソ ン は
くだ い おんな はな あ おんな こころ ひ
下って行って女と話し合ったが、女はサムソンの心にかなった。 八日が
のち かのじょ かえ みち てん
たって後、サムソンは彼女をめとろうとして帰ったが、道を転じて、か
み む みつ
のししのしかばねを見ると、ししのからだに、はちの群れと、蜜があっ
かれ て ある た ふ ぼ
た。 九彼はそれをかきあつめ、手にとって歩きながら食べ、父母のもと
かえ かれ あた かれ た
に帰って、彼らに与えたので、彼らもそれを食べた。しかし、ししのか
みつ かれ つ
らだからその蜜をかきあつめたことは彼らに告げなかった。
ちち くだ おんな い
一〇 そこで父が下って、 女のもとに行ったので、サムソンはそこにふる
もう はなむこ
まいを設けた。そうすることは花婿のならわしであったからである。 一
ひとびと み にん きゃく つ どうせき
一人々はサムソンを見ると、三十人の客を連れてきて、同席させた。 一二
士師記

かれ い だ
サムソンは彼らに言った、﹁わたしはあなたがたに一つのなぞを出しま

70
なぬか と
しょう。あなたがたがもし七日のふるまいのうちにそれを解いて、わた
つ あ ま きもの
しに告げることができたなら、わたしはあなたがたに亜麻の着物三十
は ぎ
と、晴れ着三十をさしあげましょう。 一三しかしあなたがたが、それをわ
つ あ ま きもの は ぎ
たしに告げることができなければ、亜麻の着物三十と晴れ着三十をわた
かれ い だ
しにくれなければなりません﹂。彼らはサムソンに言った、﹁なぞを出し
き かれ
な さ い。わ た し た ち は そ れ を 聞 き ま し ょ う﹂。 一 四サ ム ソ ン は 彼 ら に

言った、
く もの く もの で
﹁食らう者から食い物が出、
つよ もの あま もの で
強い者から甘い物が出た﹂。
かれ か と
彼らは三日のあいだなぞを解くことができなかった。
か め かれ つま い おっと と
一五 四日目になって、彼らはサムソンの妻に言った、
﹁あなたの夫を説き

すすめて、なぞをわたしたちに明かすようにしてください。そうしなけ
ひ ちち いえ や
れば、わたしたちは火をつけてあなたとあなたの父の家を焼いてしまい
士師記

もの と まね
ます。あなたはわたしたちの物を取るために、わたしたちを招いたので

71
つま まえ な い
すか﹂。 一六そこでサムソンの妻はサムソンの前に泣いて言った、﹁あな
にく あい くに
たはただわたしを憎むだけで、愛してくれません。あなたはわたしの国
ひとびと だ と あ
の人々になぞを出して、それをわたしに解き明かしませんでした﹂。サ
かのじょ い じぶん ちち はは と あ
ム ソ ン は 彼女 に 言 っ た、﹁わ た し は 自分 の 父 に も 母 に も 解 き 明 か さ な
と あ かのじょ なぬか
か っ た。ど う し て あ な た に 解 き 明 か せ よ う﹂。 一七彼女 は 七日 の ふ る ま
あいだ かれ まえ な なぬか め かのじょ
いの間、彼の前に泣いていたが、七日目になって、サムソンはついに彼女
と あ かれ せま かのじょ
に解き明かした。ひどく彼に迫ったからである。そこで彼女はなぞを
じぶん くに ひとびと なぬか め ひ ぼっ まえ まち
自分の国の人々にあかした。 一八七日目になって、日の没する前に町の
ひとびと い
人々はサムソンに言った、
みつ あま なに
﹁蜜より甘いものに何があろう。
つよ なに
ししより強いものに何があろう﹂。
かれ い
サムソンは彼らに言った、
わか めうし たがや
﹁わたしの若い雌牛で耕さなかったなら、
士師記


わたしのなぞは解けなかった﹂。

72
とき しゅ れい はげ のぞ
一九 この時、主の霊が激しくサムソンに臨んだので、サムソンはアシケロ
くだ い まち もの にん ころ かれ と
ンに下って行って、その町の者三十人を殺し、彼らからはぎ取って、か
と ひとびと は ぎ あた はげ いか ちち いえ かえ
のなぞを解いた人々に、その晴れ着を与え、激しく怒って父の家に帰っ
つま はなむこつきそいにん きゃく つま
た。 二〇サムソンの妻は花婿付添人であった客の妻となった。
第一五章
ひ のち むぎかり とき こ たずさ つま
一日がたって後、麦刈の時にサムソンは子やぎを携えて妻をおとずれ、
つま あ い つま ちち
﹁へやにはいって、妻に会いましょう﹂と言ったが、妻の父ははいること
ゆる ちち い たし かのじょ
を許さなかった。 二そして父は言った、﹁あなたが確かに彼女をきらっ
そうい おも かのじょ きゃく もの
たに相違ないと思ったので、わたしは彼女をあなたの客であった者にや
かのじょ いもうと かのじょ
り ま し た。彼女 の 妹 は 彼女 よ り も き れ い で は あ り ま せ ん か。ど う ぞ、
かのじょ かわ いもうと かれ い
彼女 の 代 り に 妹 を め と っ て く だ さ い﹂。 三サ ム ソ ン は 彼 ら に 言 っ た、
士師記

こんど がい くわ かれ
﹁今度はわたしがペリシテびとに害を加えても、彼らのことでは、わたし

73
つみ い ひき とら
に罪がない﹂。 四そこでサムソンは行って、きつね三百匹を捕え、たいま
お お お あいだ むす
つをとり、尾と尾をあわせて、その二つの尾の間に一つのたいまつを結
ひ か
びつけ、 五たいまつに火をつけて、そのきつねをペリシテびとのまだ刈
むぎ なか はな い つ か
らない麦の中に放し入れ、そのたばね積んだものと、まだ刈らないもの
や はたけ や い
とを焼き、オリブ 畑をも焼いた。 六ペリシテびとは言った、﹁これはだれ
ひとびと い むこ
のしわざか﹂。人々は言った、﹁テムナびとの婿サムソンだ。そのしゅう
つま と かえ きゃく もの あた
とがサムソンの妻を取り返して、その客であった者に与えたからだ﹂。
のぼ かのじょ ちち いえ ひ や はら
そこでペリシテびとは上ってきて彼女とその父の家を火で焼き払った。
かれ い
サムソンは彼らに言った、
七 ﹁あなたがたがそんなことをするならば、わ
しかえ かれ
たしはあなたがたに仕返しせずにはおかない﹂。 八そしてサムソンは彼
う だい ころ くだ い
らを、さんざんに撃って大ぜい殺した。こうしてサムソンは下って行っ
いわ さ め す
て、エタムの岩の裂け目に住んでいた。
のぼ じん と せ
そこでペリシテびとは上ってきて、ユダに陣を取り、レヒを攻めたの

士師記

ひとびと い
で、 一〇ユダの人々は言った、
﹁あなたがたはどうしてわれわれのところ

74
せ かれ い
に攻めのぼってきたのですか﹂。彼らは言った、﹁われわれはサムソンを
しば かれ かれ のぼ
縛り、彼がわれわれにしたように、彼にするために上ってきたのです﹂。
ひとびと にん いわ さ め くだ い
そこでユダの人々三千人がエタムの岩の裂け目に下って行って、サ
一一
い しはいしゃ
ムソンに言った、﹁ペリシテびとはわれわれの支配者であることをあな
し こと
たは知らないのですか。あなたはどうしてわれわれにこんな事をした
かれ い かれ
のですか﹂。サムソンは彼らに言った、
﹁彼らがわたしにしたように、わ
かれ かれ い
たしは彼らにしたのです﹂。 一二彼らはまたサムソンに言った、﹁われわ
しば て くだ
れはあなたを縛って、ペリシテびとの手にわたすために下ってきたので
かれ い じしん う
す﹂。サムソンは彼らに言った、﹁あなたがた自身はわたしを撃たないと
ちか かれ い
いうことを誓いなさい﹂。 一三彼らはサムソンに言った、
﹁いや、われわれ
しば て けっ
はただ、あなたを縛って、ペリシテびとの手にわたすだけです。決して
ころ かれ ほん あたら つな かれ しば いわ
あなたを殺しません﹂。彼らは二本の新しい綱をもって彼を縛って、岩
からひきあげた。
士師記

こえ かれ ちか
サムソンがレヒにきたとき、ペリシテびとは声をあげて、彼に近づい
一四

75
とき しゅ れい はげ かれ のぞ かれ うで つな
た。その時、主の霊が激しく彼に臨んだので、彼の腕にかかっていた綱
ひ や あ ま て と お
は火に焼けた亜麻のようになって、そのなわめが手から解けて落ちた。
かれ あたら ほね み て の と
彼はろばの新しいあご骨一つを見つけたので、手を伸べて取り、それ
一五
にん う ころ い
をもって一千人を打ち殺した。 一六そしてサムソンは言った、
ほね やま やま きず
﹁ろばのあご骨をもって山また山を築き、
ほね にん う ころ
ろばのあご骨をもって一千人を打ち殺した﹂。
かれ い おわ て ほね な
彼は言い終ると、その手からあご骨を投げすてた。これがためにそ
一七
ところ ほね おか よ
の所は﹁あご骨の丘﹂と呼ばれた。
とき かれ おぼ しゅ よ い
時に彼はひどくかわきを覚えたので、主に呼ばわって言った、
一八 ﹁あな
て おお すくい ほどこ いま
たはしもべの手をもって、この大きな救を施されたのに、わたしは今、か
し かつれい て おちい
わいて死に、割礼をうけないものの手に陥ろうとしています﹂。 一九そこ
かみ ところ さ みず なが で
で神はレヒにあるくぼんだ所を裂かれたので、そこから水が流れ出た。
の かれ れい もと き
サムソンがそれを飲むと彼の霊はもとにかえって元気づいた。それで
士師記

な よ もの いずみ よ こんにち
その名を﹁呼ばわった者の泉﹂と呼んだ。これは今日までレヒにある。 二

76
じだい ねん あいだ
〇サ ム ソ ン は ペ リ シ テ び と の 時代 に 二 十 年 の 間 イ ス ラ エ ル を さ ば い
た。
第一六章
い ゆうじょ み おんな
サムソンはガザへ行って、そこでひとりの遊女を見、その女のところ

ひとびと つ
にはいった。 二﹁サムソンがここにきた﹂と、ガザの人々に告げるもの
ひとびと ところ と かこ よどお まち もん ま ぶ
があったので、ガザの人々はその所を取り囲み、夜通し町の門で待ち伏
あさ ま かれ ころ い よどお しず
せし、
﹁われわれは朝まで待って彼を殺そう﹂と言って、夜通し静かにし
よなか ね よなか お まち もん
ていた。 三サムソンは夜中まで寝たが、夜中に起きて、町の門のとびら
もんちゅう て かん き ひ ぬ かた の
と二つの門 柱に手をかけて、貫の木もろともに引き抜き、肩に載せて、
む やま いただき はこ い
ヘブロンの向かいにある山の頂に運んで行った。
のち たに おんな あい
この後、サムソンはソレクの谷にいるデリラという女を愛した。 五ペ

士師記

きみ おんな い
リシテびとの君たちはその女のところにきて言った、﹁あなたはサムソ

77
と かれ だいりき
ンを説きすすめて、彼の大力はどこにあるのか、またわれわれはどうす
かれ か かれ しば くる み
れば彼に勝って、彼を縛り苦しめることができるかを見つけなさい。そ
ぎん まい
うすればわれわれはおのおの銀千百枚ずつをあなたにさしあげましょ
い だいりき
う﹂。 六そこでデリラはサムソンに言った、
﹁あなたの大力はどこにある
しば くる
のか、またどうすればあなたを縛って苦しめることができるか、どうぞ
き おんな い ひとびと
わたしに聞かせてください﹂。 七サムソンは女に言った、﹁人々がもし、
ほん あたら ゆみづる しば
かわいたことのない七本の新しい弓弦をもってわたしを縛るなら、わた
よわ ひと
しは弱くなってほかの人のようになるでしょう﹂。 八そこでペリシテび
きみ ほん あたら ゆみづる おんな も
との君たちが、かわいたことのない七本の新しい弓弦を女に持ってきた
おんな しば おんな おく
ので、 女はそれをもってサムソンを縛った。 九 女はかねて奥のへやに
ひと しの い
人を忍ばせておいて、サムソンに言った、
﹁サムソンよ、ペリシテびとが
せま ゆみづる あ ま
あなたに迫っています﹂。しかしサムソンはその弓弦を、あたかも亜麻
いと ひ た た き かれ ちから ひみつ
糸が火にあって断たれるように断ち切った。こうして彼の力の秘密は
士師記


知れなかった。

78
い あざむ い
一〇デリラはサムソンに言った、
﹁あなたはわたしを欺いて、うそを言い
しば いま き
ました。どうしたらあなたを縛ることができるか、どうぞ今わたしに聞
おんな い ひとびと もち
かせてください﹂。 一一サムソンは女に言った、﹁もし人々がまだ用いた
あたら つな しば よわ ひと
ことのない新しい綱をもって、わたしを縛るなら、弱くなってほかの人
あたら つな
の よ う に な る で し ょ う﹂。 一二そ こ で デ リ ラ は 新 し い 綱 を と り、そ れ を
かれ しば かれ い
もって彼を縛り、そして彼に言った、
﹁サムソンよ、ペリシテびとがあな
せま とき ひとびと おく しの
たに迫っています﹂。時に人々は奥のへやに忍んでいたが、サムソンは
つな いと うで た おと
その綱を糸のように腕から断ち落した。
い いま あざむ
一三そこでデリラはサムソンに言った、
﹁あなたは今まで、わたしを欺い
い しば
て、うそを言いましたが、どうしたらあなたを縛ることができるか、わ
き かれ おんな い
たしに聞かせてください﹂。彼は女に言った、
﹁あなたがもし、わたしの
かみ け はた たていと いっしょ お と
髪の毛七ふさを機の縦糸と一緒に織って、くぎでそれを留めておくなら
よわ ひと かれ
ば、わたしは弱くなってほかの人のようになるでしょう﹂。そこで彼が
士師記

ねむ かみ け はた
眠ったとき、デリラはサムソンの髪の毛、七ふさをとって、それを機の

79
たていと お こ と かれ い
縦糸に織り込み、 一四くぎでそれを留めておいて、彼に言った、
﹁サムソ
せま め
ンよ、ペリシテびとがあなたに迫っています﹂。しかしサムソンは目を
はた たていと ひ ぬ
さまして、くぎと機と縦糸とを引き抜いた。
おんな い こころ はな
一五 そこで女はサムソンに言った、
﹁あなたの心がわたしを離れているの
あい い
に、どうして﹃おまえを愛する﹄と言うことができますか。あなたはす
ど あざむ だいりき つ
でに三度もわたしを欺き、あなたの大力がどこにあるかをわたしに告げ
おんな まいにち ことば かれ せま うなが かれ
ませんでした﹂。 一六 女は毎日その言葉をもって彼に迫り促したので、彼
たましい し くる かれ こころ う
の魂は死ぬばかりに苦しんだ。 一七彼はついにその心をことごとく打ち
あ おんな い あたま あ
明けて女に言った、﹁わたしの頭にはかみそりを当てたことがありませ
うま とき かみ
ん。わ た し は 生 れ た 時 か ら 神 に さ さ げ ら れ た ナ ジ ル び と だ か ら で す。
かみ おと ちから さ よわ ひと
もし髪をそり落されたなら、わたしの力は去って弱くなり、ほかの人の
ようになるでしょう﹂。
こころ う あ み ひと
一八 デリラはサムソンがその心をことごとく打ち明けたのを見、人をつ
士師記

きみ よ い こころ
かわしてペリシテびとの君たちを呼んで言った、﹁サムソンはその心を

80
う あ こんど のぼ
ことごとくわたしに打ち明けましたから、今度こそ上っておいでなさ
きみ ぎん たずさ おんな のぼ
い﹂。そこでペリシテびとの君たちは、銀を携えて女のもとに上ってき
おんな じぶん うえ ねむ ひと よ かみ け
た。 一九 女は自分のひざの上にサムソンを眠らせ、人を呼んで髪の毛、七
おと かれ くる はじ ちから かれ さ
ふさをそり落させ、彼を苦しめ始めたが、その力は彼を去っていた。 二〇
おんな せま い
そして女が﹁サムソンよ、ペリシテびとがあなたに迫っています﹂と言っ
かれ め い で い
たので、彼は目をさまして言った、﹁わたしはいつものように出て行っ
かれ しゅ じぶん さ し
て、からだをゆすろう﹂。彼は主が自分を去られたことを知らなかった。
かれ とら りょう め ひ
二一 そこでペリシテびとは彼を捕えて、 両 眼をえぐり、ガザに引いて
い せいどう あし かれ ごくや
行って、青銅の足かせをかけて彼をつないだ。こうしてサムソンは獄屋
なか かみ け おと のち
の中で、うすをひいていたが、 二二その髪の毛はそり落された後、ふたた
の はじ
び伸び始めた。
きみ かれ かみ おお ぎせい
二三 さてペリシテびとの君たちは、彼らの神ダゴンに大いなる犠牲をさ
しゅく とも あつ い かみ てき
さげて祝をしようと、共に集まって言った、
﹁われわれの神は、敵サムソ
士師記

て たみ み じぶん
ンをわれわれの手にわたされた﹂。 二四民はサムソンを見て、自分たちの

81
かみ い かみ くに あら
神をほめたたえて言った、
﹁われわれの神は、われわれの国を荒し、われ
おお ころ てき て かれ こころ
われを多く殺した敵をわれわれの手にわたされた﹂。 二五彼らはまた心
よろこ い よ ざ ごと
に喜んで言った、﹁サムソンを呼んで、われわれのために戯れ事をさせよ
かれ ごくや よ だ かれ まえ ざ ごと
う﹂。彼らは獄屋からサムソンを呼び出して、彼らの前に戯れ事をさせ
かれ はしら た じぶん
た。彼らがサムソンを柱のあいだに立たせると、 二六サムソンは自分の
て わかもの い て はな いえ
手をひいている若者に言った、﹁わたしの手を放して、この家をささえて
はしら よ いえ
い る 柱 を さ ぐ ら せ、そ れ に 寄 り か か ら せ て く だ さ い﹂。 二七そ の 家 に は
だんじょ み きみ みな や ね うえ
男女が満ち、ペリシテびとの君たちも皆そこにいた。また屋根の上には
にん だんじょ ざ ごと み
三千人ばかりの男女がいて、サムソンの戯れ事をするのを見ていた。
しゅ よ い しゅ かみ
二八 サムソンは主に呼ばわって言った、
﹁ああ、主なる神よ、どうぞ、わ
おぼ かみ ど つよ
たしを覚えてください。ああ、神よ、どうぞもう一度、わたしを強くし
め むく
て、わたしの二つの目の一つのためにでもペリシテびとにあだを報いさ
いえ なか
せてください﹂。 二九そしてサムソンは、その家をささえている二つの中
士師記

はしら みぎ て ひだり て み よ
柱の一つを右の手に、一つを左の手にかかえて、身をそれに寄せ、 三〇

82
とも し い ちから み
﹁わたしはペリシテびとと共に死のう﹂と言って、 力をこめて身をかが
いえ なか きみ たみ うえ たお
めると、家はその中にいた君たちと、すべての民の上に倒れた。こうし
し ころ い ころ
てサムソンが死ぬときに殺したものは、生きているときに殺したものよ
おお かれ みうち ひと ちち かぞく もの
りも多かった。 三一やがて彼の身内の人たちおよび父の家族の者がみな
くだ かれ ひ と たずさ のぼ あいだ
下ってきて、彼を引き取り、 携え上って、ゾラとエシタオルの間にある
ちち はか ほうむ ねん
父マノアの墓に葬 った。サムソンがイスラエルをさばいたのは二十年
であった。
第一七章
さんち ひと な よ かれ
ここにエフライムの山地の人で、名をミカと呼ぶものがあった。 二彼

はは い ぎん まい と
は母に言った、﹁あなたはかつて銀千百枚を取られたので、それをのろ
はな ぎん も
い、わたしにも話されましたが、その銀はわたしが持っています。わた
士師記

と はは い しゅ こ しゅくふく
しがそれを取ったのです﹂。母は言った、﹁どうぞ主がわが子を祝 福さ

83
かれ ぎん まい はは かえ はは い
れますように﹂。 三そして彼が銀千百枚を母に返したので、母は言った、
こ きざ ぞう い ぞう つく
﹁わたしはわたしの子のために一つの刻んだ像と、一つの鋳た像を造る
ぎん て しゅ けんのう いま
ためにその銀をわたしの手から主に献納します。それで今それをあな
かえ ぎん はは かえ はは ぎん
たに返しましょう﹂。 四ミカがその銀を母に返したので、母はその銀二
まい ぎん ざ い く に ん あた きざ ぞう い
百枚をとって、それを銀細工人に与え、一つの刻んだ像と、一つの鋳た
ぞう つく ぞう いえ ひと かみ
像 を 造 ら せ た。そ の 像 は ミ カ の 家 に あ っ た。 五こ の ミ カ と い う 人 は 神
みや つく こ た じぶん
の宮をもち、エポデとテラピムを造り、その子のひとりを立てて、自分
さいし おう ひとびと
の祭司とした。 六そのころイスラエルには王がなかったので、人々はお
じぶん め ただ おも おこな
のおの自分たちの目に正しいと思うことを行 った。
しぞく
七さてここにユダの氏族のもので、ユダのベツレヘムからきたひとりの
わかもの かれ きりゅう
若者があった。彼はレビびとであって、そこに寄留していたのである。
ひと じぶん す たず まち さ
八この人は自分の住むべきところを尋ねて、ユダのベツレヘムの町を去
たび さんち いえ かれ い
り、旅してエフライムの山地のミカの家にきた。 九ミカは彼に言った、
士師記

かれ い
﹁あなたはどこからおいでになりましたか﹂。彼は言った、﹁わたしはユ

84
す たず たび
ダのベツレヘムのレビびとですが、住むべきところを尋ねて旅をしてい
い いっしょ ちち
るのです﹂。 一〇ミカは言った、
﹁わたしと一緒にいて、わたしのために父
さいし ねん ぎん まい いふく
とも祭司ともなってください。そうすれば年に銀十枚と衣服ひとそろ
しょくもつ ひと いっしょ
いと食 物とをさしあげましょう﹂。 一一レビびとはついにその人と一緒
す しょうだく わかもの かれ こ
に 住 む こ と を 承 諾 し た。そ し て そ の 若者 は 彼 の 子 の ひ と り の よ う に
わかもの た じぶん さいし
なった。 一二ミカはレビびとであるこの若者を立てて自分の祭司とした
かれ いえ い いま
ので、彼はミカの家にいた。 一三それでミカは言った、
﹁今わたしはレビ
さいし も しゅ めぐ
びとを祭司に持つようになったので、主がわたしをお恵みくださること
がわかりました﹂。
第一八章
おう ぶぞく
一そのころイスラエルには王がなかった。そのころダンびとの部族は
士師記

ぶぞく ひ し ぎょう ち え
イ ス ラ エ ル の 部族 の う ち に あ っ て、そ の 日 ま で ま だ 嗣 業 の 地 を 得 な

85
じぶん す し ぎょう ち もと
かったので自分たちの住むべき嗣 業の地を求めていた。 二それでダン
ひとびと じぶん ぶぞく そうぜい ゆうしゃ にん
の人々は自分の部族の総勢のうちから、勇者五人をゾラとエシタオルか
と ち さぐ かれ い い
らつかわして土地をうかがい探らせた。すなわち彼らに言った、﹁行っ
と ち さぐ かれ さんち い いえ
て土地を探ってきなさい﹂。彼らはエフライムの山地に行き、ミカの家
つ やど かれ いえ ちか
に着いて、そこに宿ろうとした。 三彼らがミカの家に近づいたとき、レ
わかもの こえ き み
ビびとである若者の声を聞きわけたので、身をめぐらしてそこにはいっ
かれ い つ
て彼に言った、﹁だれがあなたをここに連れてきたのですか。あなたは
なに よう
こ こ で 何 を し て い る の で す か。こ こ に な ん の 用 が あ る の で す か﹂。 四
わかもの かれ い やと
若者は彼らに言った、﹁ミカが、かようかようにしてわたしを雇ったの
さいし かれ い かみ
で、わたしはその祭司となったのです﹂。 五彼らは言った、
﹁どうぞ、神
うかが い みち し
に伺 って、われわれが行く道にしあわせがあるかどうかを知らせてく
さいし かれ い あんしん い
ださい﹂。 六その祭司は彼らに言った、
﹁安心して行きなさい。あなたが
い みち しゅ みまも
たが行く道は主が見守っておられます﹂。
士師記

にん もの さ い たみ み かれ
七そこで五人の者は去ってライシに行き、そこにいる民を見ると、彼ら

86
やす す おだ やす
は安らかに住まい、その穏やかで安らかなことシドンびとのようであっ
くに か とみ も
て、この国には一つとして欠けたものがなく、富を持ち、またシドンび
とお はな たみ まじ かれ
とと遠く離れており、ほかの民と交わることがなかった。 八かくて彼ら
きょうだい かえ きょうだい
がゾラとエシタオルにおる兄 弟たちのもとに帰ってくると、 兄 弟たち
かれ い かれ い た かれ
は彼らに言った、
﹁いかがでしたか﹂。 九彼らは言った、
﹁立って彼らのと
せ のぼ ち み ひじょう ゆた
ころに攻め上りましょう。われわれはかの地を見たが、非常に豊かで
すす
す。あなたがたはなぜじっとしているのですか。ためらわずに進んで
い ち と い やす たみ
行って、かの地を取りなさい。 一〇あなたがたが行けば、安らかにおる民
ところ い ち ひろ かみ て たま
の所に行くでしょう。その地は広く、神はそれをあなたがたの手に賜わ
ち か
るのです。そこには地にあるもの一つとして欠けているものはありま
せん﹂。
しぞく にん ぶ き お
一一 そこでダンの氏族のもの六百人が武器を帯びて、ゾラとエシタオル
しゅっぱつ のぼ い じん は
を出 発し、 一二上って行ってユダのキリアテ・ヤリムに陣を張った。こ
士師記

ところ こんにち よ
のゆえに、その所は今日までマハネダンと呼ばれる。それはキリアテ・

87
にし かれ さんち すす
ヤリムの西にある。 一三彼らはそこからエフライムの山地に進み、ミカ
いえ つ
の家に着いた。
くに い にん もの きょうだい
一四 かのライシの国をうかがいに行った五人の者はその兄 弟たちに
い いえ きざ ぞう い
言った、﹁あなたがたはこれらの家にエポデとテラピムと刻んだ像と鋳
ぞう し いま
た像のあるのを知っていますか。それであなたがたは今、なすべきこと
き かれ ほう み
を決めなさい﹂。 一五そこで彼らはその方へ身をめぐらして、かのレビび
わかもの いえ いえ い かれ あんぴ と
との若者の家すなわちミカの家に行って、彼に安否を問うた。 一六しか
ぶ き お にん ひとびと もん いりぐち た
し武器を帯びた六百人のダンの人々は門の入口に立っていた。 一七かの
と ち い にん もの のぼ い きざ
土地をうかがいに行った五人の者は上って行って、そこにはいり、刻ん
ぞう い ぞう と さいし ぶ き お
だ像とエポデとテラピムと鋳た像とを取ったが、祭司は武器を帯びた六
にん もの とも もん いりぐち た かれ いえ
百人の者と共に門の入口に立っていた。 一八彼らがミカの家にはいって
きざ ぞう い ぞう と とき さいし かれ い
刻んだ像とエポデとテラピムと鋳た像とを取った時、祭司は彼らに言っ
なに かれ い だま
た、
﹁あなたがたは何をなさいますか﹂。 一九彼らは言った、
﹁黙りなさい。
士師記

て くち いっしょ ちち
あなたの手を口にあてて、われわれと一緒にきて、われわれのために父

88
さいし いえ さいし
とも祭司ともなりなさい。ひとりの家の祭司であるのと、イスラエルの
いち ぶ ぞ く いち し ぞ く さいし さいし よろこ
一部族、一氏族の祭司であるのと、どちらがよいですか﹂。 二〇祭司は喜
きざ ぞう と たみ くわ
んで、エポデとテラピムと刻んだ像とを取り、民のなかに加わった。
かれ み さ こ とも かちく か ざい
二一かくて彼らは身をめぐらして去り、その子供たちと家畜と貨財をさ
すす いえ はな いえ ちか
きにたてて進んだが、二二ミカの家をはるかに離れたとき、ミカは家に近
いえ ひとびと あつ ひとびと お ひとびと よ
い家の人々を集め、ダンの人々に追いつき、 二三ダンの人々を呼んだの
かれ む い なかま つ
で、彼らはふり向いてミカに言った、﹁あなたがそのように仲間を連れて
かれ い
きたのは、どうしたのですか﹂。 二四彼は言った、
﹁あなたがたが、わたし
つく かみがみ さいし うば さ なに のこ
の造った神々および祭司を奪い去ったので、わたしに何が残っています
む い
か。しかるにあなたがたがわたしに向かって﹃どうしたのですか﹄と言
なにごと ひとびと かれ い おお
われるとは何事ですか﹂。 二五ダンの人々は彼に言った、﹁あなたは大き
こえ だ き あら れんちゅう う
な声を出さないがよい。気の荒い連 中があなたに撃ちかかって、あな
じぶん いのち かぞく いのち うしな
た は 自分 の 命 と 家族 の 命 を 失 う よ う に な る で し ょ う﹂。 二六こ う し て ダ
士師記

ひとびと さ い かれ つよ み
ンの人々は去って行ったが、ミカは彼らの強いのを見て、くびすをかえ

89
じぶん いえ かえ
して自分の家に帰った。
かれ つく もの とも さいし うば
二七 さて彼らはミカが造った物と、ミカと共にいた祭司とを奪ってライ
おだ やす たみ い
シにおもむき、穏やかで、安らかな民のところへ行って、つるぎをもっ
かれ う ひ まち や とお はな
て彼らを撃ち、火をつけてその町を焼いたが、二八シドンを遠く離れてお
たみ まじ すく
り、ほかの民との交わりがなかったので、それを救うものがなかった。
まち ぞく たに かれ まち た
その町はベテレホブに属する谷にあった。彼らは町を建てなおしてそ
す うま せんぞ な まち
こに住み、二九イスラエルに生れた先祖ダンの名にしたがって、その町の
な な まち な
名をダンと名づけた。その町の名はもとはライシであった。 三〇そして
ひとびと きざ ぞう じぶん あんち まご
ダンの人々は刻んだ像を自分たちのために安置し、モーセの孫すなわち
こ しそん ぶぞく さいし
ゲルショムの子ヨナタンとその子孫がダンびとの部族の祭司となって、
くに ほしゅう ひ およ かみ いえ つね
国が捕囚となる日にまで及んだ。 三一神の家がシロにあったあいだ、常
かれ つく きざ ぞう かざ お
に彼らはミカが造ったその刻んだ像を飾って置いた。
士師記

90
第一九章
おう とき さんち おく
一そのころ、イスラエルに王がなかった時、エフライムの山地の奥にひ
きりゅう かれ
とりのレビびとが寄留していた。彼はユダのベツレヘムからひとりの
おんな むか いか かれ
女を迎えて、めかけとしていたが、 二そのめかけは怒って、彼のところ
さ ちち いえ かえ げつ す
を去り、ユダのベツレヘムの父の家に帰って、そこに四か月ばかり過ご
おっと かのじょ つ かえ とう
した。 三そこで夫は彼女をなだめて連れ帰ろうと、しもべと二頭のろば
したが た かのじょ お い かれ おんな ちち いえ つ
を従え、立って彼女のあとを追って行った。彼が女の父の家に着いた
とき むすめ ちち かれ み よろこ むか むすめ ちち ひ
時、娘の父は彼を見て、喜んで迎えた。 四 娘の父であるしゅうとが引き
と かれ か とも の く やど
留めたので、彼は三日共におり、みな飲み食いしてそこに宿った。 五四
か め かれ あさ お かれ た さ むすめ ちち むこ
日目に彼らは朝はやく起き、彼が立ち去ろうとしたので、娘の父は婿に
い すこ しょくじ げんき で
言った、
﹁少し食事をして元気をつけ、それから出かけなさい﹂。 六そこ
ざ とも の く むすめ ちち ひと い
でふたりは座して共に飲み食いしたが、 娘の父はその人に言った、
﹁ど
士師記

ひとばん と たの す ひと た さ
うぞもう一晩泊まって楽しく過ごしなさい﹂。 七その人は立って去ろう

91
やど か め
としたが、しゅうとがしいたので、ついにまたそこに宿った。 八五日目
あさ お さ むすめ ちち い
になって、朝はやく起きて去ろうとしたが、 娘の父は言った、
﹁どうぞ、
げんき ひ かたむ かれ
元気 を つ け て、日 が 傾 く ま で と ど ま り な さ い﹂。そ こ で 彼 ら ふ た り は
しょくじ ひと とも さ
食事 を し た。 九そ の 人 が つ い に め か け お よ び し も べ と 共 に 去 ろ う と し
た むすめ ちち かれ い ひ く
て立ちあがったとき、 娘の父であるしゅうとは彼に言った、
﹁日も暮れ
ばん と ひ かたむ
ようとしている。どうぞもう一晩泊まりなさい。日は傾いた。ここに
やど たの す あさ お しゅったつ
宿 っ て 楽 し く 過 ご し な さ い。そ し て あ し た の 朝 は や く 起 き て 出 立 し、
いえ かえ
家に帰りなさい﹂。
ひと と この た さ
一〇しかし、その人は泊まることを好まないので、立って去り、エブスす
む つ とう かれ
なわちエルサレムの向かいに着いた。くらをおいた二頭のろばと彼の
いっしょ かれ ちか ひ
めかけも一緒であった。 一一彼らがエブスに近づいたとき、日はすでに
ぼっ しゅじん い みち てん
没したので、しもべは主人に言った、
﹁さあ、われわれは道を転じてエブ
まち やど しゅじん かれ い
スびとのこの町にはいって、そこに宿りましょう﹂。 一二主人は彼に言っ
士師記

みち てん ひとびと まち がいこくじん まち
た、﹁われわれは道を転じて、イスラエルの人々の町でない外国人の町

92
い かれ
に、は い っ て は な ら な い。ギ ベ ア ま で 行 こ う﹂。 一三彼 は ま た し も べ に
い つ
言った、
﹁さあ、われわれはギベアかラマか、そのうちの一つに着いてそ
やど かれ すす い ぞく
こに宿ろう﹂。 一四彼らは進んで行ったが、ベニヤミンに属するギベアの
ちか ひ く い やど みち てん
近くで日が暮れたので、 一五ギベアへ行って宿ろうと、そこに道を転じ、
まち ひろば ざ かれ いえ むか と
町にはいって、その広場に座した。だれも彼らを家に迎えて泊めてくれ
もの
る者がなかったからである。
とき ろうじん ゆうぐれ はたけ しごと かえ ひと
一六 時にひとりの老人が夕暮に畑の仕事から帰ってきた。この人はエフ
さんち もの きりゅう ところ
ライムの山地の者で、ギベアに寄留していたのである。ただしこの所の
ひとびと かれ め まち ひろば たびびと
人々はベニヤミンびとであった。 一七彼は目をあげて、町の広場に旅人
み ろうじん い い
のおるのを見た。老人は言った、﹁あなたはどこへ行かれるのですか。
ひと い
どこからおいでになりましたか﹂。 一八その人は言った、﹁われわれはユ
さんち おく い
ダのベツレヘムから、エフライムの山地の奥へ行くものです。わたしは
もの い いま いえ かえ
あそこの者で、ユダのベツレヘムへ行き、今わたしの家に帰るところで
士師記

いえ と もの
すが、だれもわたしを家に泊めてくれる者がありません。 一九われわれ

93
かいば
には、ろばのわらも飼葉もあり、またわたしと、はしためと、しもべと
とも わかもの しょくもつ さけ なに か
共にいる若者との食 物も酒もあって、何も欠けているものはありませ
ろうじん い あんしん ひつよう
ん﹂。 二〇老人は言った、﹁安心しなさい。あなたの必要なものはなんで
そな ひろば よる す
も 備 え ま し ょ う。た だ 広場 で 夜 を 過 ご し て は な り ま せ ん﹂。 二一そ し て
かれ いえ つ かいば あた かれ あし あら の く
彼を家に連れていって、ろばに飼葉を与えた。彼らは足を洗って飲み食
いした。
かれ たの す とき まち ひとびと わる もの いえ と
二二彼らが楽しく過ごしていた時、町の人々の悪い者どもがその家を取
かこ と う いえ ろうじん い
り囲み、戸を打ちたたいて、家のあるじである老人に言った、
﹁あなたの
いえ ひと だ もの し
家 に き た 人 を 出 し な さ い。わ れ わ れ は そ の 者 を 知 る で あ ろ う﹂。 二三し
いえ かれ で い きょうだい
かし家のあるじは彼らのところに出ていって言った、
﹁いいえ、兄 弟た
わる ひと
ちよ、どうぞ、そんな悪いことをしないでください。この人はすでにわ
いえ こと
たしの家にはいったのだから、そんなつまらない事をしないでくださ
しょじょ むすめ ひと いま
い。 二四ここに処女であるわたしの娘と、この人のめかけがいます。今
士師記

だ す
それを出しますから、それをはずかしめ、あなたがたの好きなようにし

94
ひと こと
なさい。しかしこの人にはそのようなつまらない事をしないでくださ
ひとびと き ひと じぶん
い﹂。 二五しかし人々が聞きいれなかったので、その人は自分のめかけを
かれ だ かれ おんな おか あさ しゅうや
とって彼らのところに出した。彼らはその女を犯して朝まで終夜はず
ひ はな かえ あさ おんな
か し め、日 の の ぼ る こ ろ に な っ て 放 し 帰 ら せ た。 二 六朝 に な っ て 女 は
じぶん しゅじん やど ひと いえ とぐち たお ふ よる
自分の主人を宿してくれた人の家の戸口にきて倒れ伏し、夜のあけるま
およ
でに及んだ。
かのじょ しゅじん あさ お いえ と ひら で たびだ
二七 彼女の主人は朝起きて家の戸を開き、出て旅立とうとすると、そのめ
おんな いえ とぐち て しきい たお かれ おんな
かけである女が家の戸口に、手を敷居にかけて倒れていた。 二八彼は女
む お い い こたえ
に向かって、
﹁起きよ、行こう﹂と言ったけれども、なんの答もなかった。
ひと おんな の た じぶん いえ
そこでその人は女をろばに乗せ、立って自分の家におもむいたが、二九そ
いえ つ かたな と とら き
の家に着いたとき、 刀を執り、めかけを捕えて、そのからだを十二切れ
た き ぜんりょういき おく
に断ち切り、それをイスラエルの全 領 域にあまねく送った。 三〇それを
み い ひとびと ち のぼ
見たものはみな言った、﹁イスラエルの人々がエジプトの地から上って
士師記

ひ こんにち こと た み
きた日から今日まで、このような事は起ったこともなく、また見たこと

95
こと かんが きょうぎ い き
もない。この事をよく考え、協議して言うことを決めよ﹂。
第二〇章
ひとびと
そこでイスラエルの人々は、ダンからベエルシバまで、またギレアデ

ち で かいしゅう しゅ
の地からもみな出てきて、その会 衆はひとりのようにミヅパで主のも
あつ たみ しゅりょう ぶぞく
とに集まった。 二民の首 領たち、すなわちイスラエルのすべての部族の
しゅりょう かみ たみ しゅうごう で お ほへい
首 領たちは、みずから神の民の集 合に出た。つるぎを帯びている歩兵
にん ひとびと ひとびと
が四十万人あった。 三ベニヤミンの人々は、イスラエルの人々がミヅパ
のぼ き ひとびと い
に上ったことを聞いた。イスラエルの人々は言った、﹁どうして、この
あくじ おこ はな ころ おんな おっと
悪事が起ったのか、われわれに話してください﹂。 四殺された女の夫で
こた い いっしょ
あるレビびとは答えて言った、﹁わたしは、めかけと一緒にベニヤミンに
ぞく い やど ひとびと た
属するギベアへ行って宿りましたが、 五ギベアの人々は立ってわたしを
士師記

せ よ ま いえ と かこ ころ くわだ
攻め、夜の間に、わたしのおる家を取り囲んで、わたしを殺そうと企て、

96

ついにわたしのめかけをはずかしめて、死なせました。 六それでわたし
とら た き し ぎょう ちほう
はめかけを捕えて断ち切り、それをイスラエルの嗣 業のすべての地方
おく かれ にく
にあまねく送りました。彼らがイスラエルにおいて憎むべきみだらな
おこな ひとびと みな じ ぶ ん
ことを行 ったからです。 七イスラエルの人々よ、あなたがたは皆自分の
いけん かんが の
意見と考えをここに述べてください﹂。
たみ みな た い じぶん てんまく
八民は皆ひとりのように立って言った、﹁われわれはだれも自分の天幕
い じぶん いえ かえ いま
に 行 き ま せ ん。ま た だ れ も 自分 の 家 に 帰 り ま せ ん。 九わ れ わ れ が 今 ギ
たい こと ひ
ベアに対してしようとする事はこれです。われわれはくじを引いて、ギ
せ ぶぞく
ベアに攻めのぼりましょう。 一〇すなわちイスラエルのすべての部族か
にん にん にん にん にん にん えら たみ
ら百人について十人、千人について百人、万人について千人を選んで、民
りょうしょく たみ い
の糧 食をとらせ、民はベニヤミンのギベアに行って、ベニヤミンびとが
こと たい ほうふく
イスラエルにおいておこなったすべてのみだらな事に対して、報復しま
ひとびと みなあつ い っ ち けっそく まち
しょう﹂。 一一こうしてイスラエルの人々は皆集まり、一致結束して町を
士師記


攻めようとした。

97
ぶぞく ひとびと ぶぞく
一二イスラエルのもろもろの部族は人々をあまねくベニヤミンの部族の
い た こと
うちにつかわして言わせた、﹁あなたがたのうちに起ったこの事は、なん
あくじ いま わる ひとびと
たる悪事でしょうか。 一三それで今ギベアにいるあの悪い人々をわたし
かれ ころ あく のぞ さ
なさい。われわれは彼らを殺して、イスラエルから悪を除き去りましょ
ひとびと きょうだい ひとびと
う﹂。し か し ベ ニ ヤ ミ ン の 人々 は そ の 兄 弟 で あ る イ ス ラ エ ル の 人々 の
ことば き ひとびと まちまち
言葉を聞きいれなかった。 一四かえってベニヤミンの人々は町々からギ
あつ で ひとびと たたか ひ まちまち
ベアに集まり、出てイスラエルの人々と戦おうとした。 一五その日、町々
あつ ひとびと お もの にん
から集まったベニヤミンの人々はつるぎを帯びている者二万六千人あ
じゅうみん あつ せいへい にん
り、ほかにギベアの住 民で集まった精兵が七百人あった。 一六このすべ
たみ ひだり せいへい にん ぽん け
ての民のうちに左ききの精兵が七百人あって、いずれも一本の毛すじを
いし な
ね ら っ て 石 を 投 げ て も、は ず れ る こ と が な か っ た。 一 七イ ス ラ エ ル の
ひとびと あつ もの のぞ お もの
人々の集まった者はベニヤミンを除いて、つるぎを帯びている者四十万
にん ぐんじん
人あり、いずれも軍人であった。
士師記

ひとびと た かみ たず
一八イスラエルの人々は立ちあがってベテルにのぼり、神に尋ねた、
﹁わ

98
ひとびと たたか
れわれのうち、いずれがさきにのぼって、ベニヤミンの人々と戦いま
しゅ い
しょうか﹂。主は言われた、﹁ユダがさきに﹂。
ひとびと あさ お たい じん と
一九 そこでイスラエルの人々は、朝起きて、ギベアに対し陣を取った。 二
ひとびと たたか で い
すなわちイスラエルの人々はベニヤミンと戦うために出て行って、ギ

かれ たい たたか そな ひとびと
ベアで彼らに対して戦いの備えをしたが、 二一ベニヤミンの人々はギベ
で ひ ひとびと にん ち う
アから出てきて、その日イスラエルの人々のうち二万二千人を地に撃ち
たお たみ ひとびと ふる はじ ひ そな
倒した。 二二しかしイスラエルの民の人々は奮いたって初めの日に備え
ところ たたか そな ひとびと
をした所にふたたび戦いの備えをした。 二三そしてイスラエルの人々は
のぼ い しゅ まえ ゆうぐれ な しゅ たず ふたた
上って行って主の前に夕暮まで泣き、主に尋ねた、﹁われわれは再びわれ
きょうだい ひとびと たたか まじ
われの兄 弟であるベニヤミンの人々と戦いを交えるべきでしょうか﹂。
しゅ い せ
主は言われた、﹁攻めのぼれ﹂。
ひとびと つぎ ひ ひとびと ところ せ
二四 そこでイスラエルの人々は、次の日またベニヤミンの人々の所に攻
つぎ ひ で むか
めよせたが、 二五ベニヤミンは次の日またギベアから出て、これを迎え、
士師記

ひとびと にん ち う たお
ふたたびイスラエルの人々のうち一万八千人を地に撃ち倒した。これ

99
みな お もの
らは皆つるぎを帯びている者であった。 二六これがためにイスラエルの
ひとびと ぜんぐん のぼ い な ところ しゅ
すべての人々すなわち全軍はベテルに上って行って泣き、その所で主の
まえ ざ ひ ゆうぐれ だんじき はんさい しゅうおんさい しゅ まえ
前に座して、その日夕暮まで断食し、燔祭と酬 恩 祭を主の前にささげ
ひとびと しゅ たず かみ けいやく
た。 二七そしてイスラエルの人々は主に尋ね、︱︱そのころ神の契約の
はこ こ こ
箱はそこにあって、二八アロンの子エレアザルの子であるピネハスが、そ
つか い で
れに仕えていた︱︱そして言った、﹁われわれはなおふたたび出て、われ
きょうだい ひとびと たたか
われの兄 弟であるベニヤミンの人々と戦うべきでしょうか。あるいは
しゅ い かれ
やめるべきでしょうか﹂。主は言われた、﹁のぼれ。わたしはあす彼らを

あなたがたの手にわたすであろう﹂。
しゅうい ふくへい お
そこでイスラエルはギベアの周囲に伏兵を置き、 三〇そしてイスラエ
二九
ひとびと か め ひとびと せ まえ
ルの人々は三日目にまたベニヤミンの人々のところに攻めのぼり、前の
たい そな ひとびと で たみ
ようにギベアに対して備えをした。 三一ベニヤミンの人々は出て、民を
むか まち だ かれ まえ おおじ
迎えたが、ついに町からおびき出されたので、彼らは前のように大路で
士師記

たみ う の ひと にん ころ
民を撃ちはじめ、また野でイスラエルの人を三十人ばかり殺した。その

100
おおじ いた いた
大路は、一つはベテルに至り、一つはギベアに至るものであった。 三二ベ
ひとびと い かれ はじ まえ う やぶ
ニヤミンの人々は言った、﹁彼らは初めのように、われわれの前に撃ち破
ひとびと い に かれ
られる﹂。しかしイスラエルの人々は言った、
﹁われわれは逃げて、彼ら
まち おおじ だ ひとびと みな
を 町 か ら 大路 に お び き 出 そ う﹂。 三三そ し て イ ス ラ エ ル の 人々 は 皆 そ の
ところ た そな かん ま ぶ
所から立ってバアル・タマルに備えをした。その間に待ち伏せていたイ
ひとびと ところ にし あらわ で
スラエルの人々がその所から、すなわちゲバの西から現れ出た。 三四す
ぜんぐん せいへい にん おそ
なわちイスラエルの全軍のうちから精兵一万人がきて、ギベアを襲い、
たたか はげ ひとびと わざわい じぶん
そ の 戦 い は 激 し か っ た。し か し ベ ニ ヤ ミ ン の 人々 は 災 の 自分 た ち に
せま し しゅ まえ
迫っているのを知らなかった。 三五主がイスラエルの前にベニヤミンを
う やぶ ひとびと ひ
撃ち敗られたので、イスラエルの人々は、その日ベニヤミンびと二万五
にん ころ みな お もの
千一百人を殺した。これらは皆つるぎを帯びている者であった。 三六こ
ひとびと じぶん う やぶ み
うしてベニヤミンの人々は自分たちの撃ち敗られたのを見た。
ひとびと たい もう ふくへい
そこでイスラエルの人々はギベアに対して設けた伏兵をたのんで、ベニ
士師記

さ しりぞ ふくへい いそ つ い すす
ヤミンびとを避けて退いた。 三七伏兵は急いでギベアに突き入り、進ん

101
まち う ひとびと ふくへい
でつるぎをもって町をことごとく撃った。 三八イスラエルの人々と伏兵
あいだ さだ あいず まち おお
の間に定めた合図は、町から大いなるのろしがあがるとき、三九イスラエ
ひとびと たたか てん はじ
ルの人々が戦いに転じることであった。さてベニヤミンは初めイスラ
ひとびと う にん ころ い かれ
エルの人々を撃って三十人ばかりを殺したので言った、﹁まことに彼ら
さいしょ たたか まえ う やぶ
は最初の戦いのようにわれわれの前に撃ち敗られる﹂。 四〇しかし、のろ
けむり はしら まち ひとびと
しが煙の柱となって町からのぼりはじめたので、ベニヤミンの人々がう
み まち けむり てん とき
しろを見ると、町はみな煙となって天にのぼっていた。 四一その時イス
ひとびと む か ひとびと わざわい じぶん
ラエルの人々が向きを変えたので、ベニヤミンの人々は災が自分たちに
せま み ひとびと まえ み
迫ったのを見て、うろたえ、四二イスラエルの人々の前から身をめぐらし
あらの ほう む たたか かれ お せま まち で もの
て荒野の方に向かったが、戦いが彼らに追い迫り、町から出てきた者ど
かれ なか ころ ひとびと
もは、彼らを中にはさんで殺した。 四三すなわちイスラエルの人々はベ
ひとびと き たお お う ふ ひがし ほう
ニヤミンの人々を切り倒し、追い撃ち、踏みにじって、ノハから東の方
む およ たお もの にん
ギベアの向かいにまで及んだ。 四四ベニヤミンの倒れた者は一万八千人
士師記

ゆうし かれ み あらの ほう
で、みな勇士であった。 四五彼らは身をめぐらして荒野の方、リンモンの

102
いわ に ひとびと おおじ にん き たお
岩まで逃げたが、イスラエルの人々は大路でそのうち五千人を切り倒
ついげき いた にん ころ
し、なおも追撃してギドムに至り、そのうちの二千人を殺した。 四六こう
ひ たお もの お もの あ
してその日ベニヤミンの倒れた者はつるぎを帯びている者合わせて二
にん ゆうし にん もの み
万五千人で、みな勇士であった。 四七しかし六百人の者は身をめぐらし
あらの ほう いわ に げつ あいだ いわ す
て荒野の方、リンモンの岩まで逃げて、四か月の間 リンモンの岩に住ん
ひとびと み ひとびと
だ。 四八そこでイスラエルの人々はまた身をかえしてベニヤミンの人々
せ ひと けもの み う ころ
を攻め、つるぎをもって人も獣もすべて見つけたものを撃ち殺し、また
み まち ひ
見つけたすべての町に火をかけた。
第二一章
ひとびと
一かつてイスラエルの人々はミヅパで、﹁われわれのうちひとりもその
むすめ つま あた もの い
娘をベニヤミンびとの妻として与える者があってはならない﹂と言って
士師記

ちか たみ い ゆうぐれ かみ まえ ざ こえ
誓ったので、 二民はベテルに行って、そこで夕暮まで神の前に座し、声

103
はげ な い かみ しゅ
をあげて激しく泣いて、 三言った、
﹁イスラエルの神、主よ、どうしてイ
こと た こんにち ぶぞく か
スラエルにこのような事が起って、今日イスラエルに一つの部族が欠け
よくじつ たみ はや お さいだん きず
るようになったのですか﹂。 四翌日、民は早く起きて、そこに祭壇を築
はんさい しゅうおんさい ひとびと い
き、燔祭と酬 恩 祭をささげた。 五そしてイスラエルの人々は言った、﹁イ
ぶぞく しゅうかい のぼ しゅ い
ス ラ エ ル の す べ て の 部族 の う ち で 集 会 に 上 っ て、主 の も と に 行 か な
もの かれ しゅ い
かった者はだれか﹂。これは彼らがミヅパにのぼって、主のもとに行か
もの おお ちか た ひと かなら ころ
ない者のことについて大いなる誓いを立てて、﹁その人は必ず殺されな
い ひとびと
け れ ば な ら な い﹂と 言 っ た か ら で あ る。 六し か し イ ス ラ エ ル の 人々 は
きょうだい い こんにち ぶぞく
兄 弟 ベニヤミンをあわれんで言った、
﹁今日イスラエルに一つの部族が
た しゅ むすめ かれ つま あた
絶えた。 七われわれは主をさして、われわれの娘を彼らに妻として与え
ちか のこ もの つま
ないと誓ったので、かの残った者どもに妻をめとらせるにはどうしたら
よいであろうか﹂。
かれ い ぶぞく しゅ
八彼らはまた言った、
﹁イスラエルの部族のうちで、ミヅパにのぼって主
士師記

い ぶぞく
のもとに行かなかったのはどの部族か﹂。ところがヤベシ・ギレアデか

104
じんえい しゅうかい のぞ もの たみ
らはひとりも陣営にきて集 会に臨んだ者がなかった。 九すなわち民を
あつ み じゅうみん
集めて見ると、ヤベシ・ギレアデの住 民はひとりもそこにいなかった。
かいしゅう ゆうし にん めい
一〇 そ こ で 会 衆 は 勇士 一 万 二 千 人 を か し こ に つ か わ し、こ れ に 命 じ て
い い じゅうみん おんな こども
言った、﹁ヤベシ・ギレアデに行って、その住 民を、 女、子供もろとも

つるぎをもって撃て。 一一そしてこのようにしなければならない。すな
おとこ おとこ ね おんな ほろ
わ ち 男 お よ び 男 と 寝 た 女 は こ と ご と く 滅 ぼ さ な け れ ば な ら な い﹂。 一二
かれ じゅうみん にん わか しょじょ
こうして彼らはヤベシ・ギレアデの住 民のうちで四百人の若い処女を
え おとこ ね おとこ し もの かれ
獲た。これはまだ男と寝たことがなく、 男を知らない者である。彼ら
ち じんえい つ
はこれをカナンの地にあるシロの陣営に連れてきた。
ぜんかいしゅう ひと いわ
一三 そこで全 会 衆は人をつかわして、リンモンの岩におるベニヤミンの
ひとびと へいわ つ ひとびと とき かえ
人々に平和を告げた。 一四ベニヤミンの人々がその時、帰ってきたので、
かれ おんな い おんな あた
彼らはヤベシ・ギレアデの女のうちから生かしておいた女をこれに与え
た たみ しゅ ぶぞく
たが、なお足りなかった。 一五こうして民は、主がイスラエルの部族のう
士師記

けっかん
ちに欠陥をつくられたことのために、ベニヤミンをあわれんだ。

105
かいしゅう ちょうろう い おんな た のこ
一六会 衆の長 老たちは言った、﹁ベニヤミンの女が絶えたので、かの残り
もの つま かれ
の者どもに妻をめとらせるにはどうしたらよいでしょうか﹂。 一七彼ら
い ぶぞく き
はまた言った、﹁イスラエルから一つの部族が消えうせないためにベニ
のこ もの
ヤミンのうちの残りの者どもに、あとつぎがなければならない。 一八し
むすめ かれ つま あた
かし、われわれの娘を彼らの妻に与えることはできない。イスラエルの
ひとびと つま あた もの い ちか
人々が﹃ベニヤミンに妻を与える者はのろわれる﹄と言って誓ったから
かれ い ねんねん しゅ まつり
である﹂。 一九それで彼らは言った、
﹁年々シロに主の祭がある﹂。シロは
きた おおじ ひがし みなみ
ベテルの北にあって、ベテルからシケムにのぼる大路の東、レバナの南
かれ ひとびと めい い
にある。 二〇そして彼らはベニヤミンの人々に命じて言った、
﹁あなたが
い はたけ ま ぶ
たは行って、ぶどう畑に待ち伏せして、二一うかがいなさい。もしシロの
むすめ おど おど で はたけ で むすめ
娘たちが踊りを踊りに出てきたならば、ぶどう畑から出て、シロの娘た
じぶん つま ち つ い
ちのうちから、めいめい自分の妻をとって、ベニヤミンの地に連れて行
ちち きょうだい うった
きなさい。 二二もしその父あるいは兄 弟がきて、われわれに訴えるなら
士師記

かれ かれ
ば、われわれは彼らに、﹃われわれのために彼らをゆるしてください。

106
せんそう かれ つま
戦争のときにわれわれは、彼らおのおのに妻をとってやらなかったし、
かれ あた あた
またあなたがたも彼らに与えなかったからです。もし与えたならば、あ
つみ おか い
なたがたは罪を犯したことになるからでした﹄と言いましょう﹂。 二三ベ
ひとびと おこな おど もの じぶん
ニヤミンの人々はそのように行い、踊っている者どものうちから自分た
かず つま と つ りょうち かえ まちまち た
ちの数にしたがって妻を取り、それを連れて領地に帰り、町々を建てな
す ひとびと とき
おして、そこに住んだ。 二四こうしてイスラエルの人々は、その時そこを
さ ぶぞく しぞく かえ た
去って、おのおのその部族および氏族に帰った。すなわちそこを立っ
し ぎょう ち かえ
て、おのおのその嗣 業の地に帰った。
おう じぶん め ただ
二五 そのころ、イスラエルには王がなかったので、おのおの自分の目に正

しいと見るところをおこなった。
士師記

107

ルツ記
第一章
よ おさ くに き
一さばきづかさが世を治めているころ、国に飢きんがあったので、ひと
ひと つま おとこ こ つ さ
りの人がその妻とふたりの男の子を連れてユダのベツレヘムを去り、モ
ち い たいざい ひと な つま な
アブの地へ行ってそこに滞在した。 二その人の名はエリメレク、妻の名
おとこ こ な
はナオミ、ふたりの男の子の名はマロンとキリオンといい、ユダのベツ
かれ ち い
レヘムのエフラタびとであった。彼らはモアブの地へ行って、そこに
おっと し おとこ こ
おったが、 三ナオミの夫 エリメレクは死んで、ナオミとふたりの男の子
のこ おとこ こ おんな つま むか
が 残 さ れ た。 四ふ た り の 男 の 子 は そ れ ぞ れ モ ア ブ の 女 を 妻 に 迎 え た。
な な かれ
そのひとりの名はオルパといい、ひとりの名はルツといった。彼らはそ
ねん す し
こ に 十 年 ほ ど 住 ん で い た が、 五マ ロ ン と キ リ オ ン の ふ た り も ま た 死 ん
ルツ記

こ おっと さき
だ。こうしてナオミはふたりの子と夫とに先だたれた。

0
とき ち しゅ たみ かえり しょくもつ
六その時、ナオミはモアブの地で、主がその民を顧みて、すでに食 物を
あた き よめ とも た
お与えになっていることを聞いたので、その嫁と共に立って、モアブの
ち かえ かのじょ いま ところ しゅったつ
地からふるさとへ帰ろうとした。 七そこで彼女は今いる所を出 立し、ユ
ち かえ よめ つ みち すす
ダの地へ帰ろうと、ふたりの嫁を連れて道に進んだ。 八しかしナオミは
よめ い じぶん はは いえ かえ い
ふたりの嫁に言った、﹁あなたがたは、それぞれ自分の母の家に帰って行
し こ しんせつ
きなさい。あなたがたが、死んだふたりの子とわたしに親切をつくした
しゅ たま
ように、どうぞ、主があなたがたに、いつくしみを賜わりますよう。 九
しゅ おっと あた おっと いえ み お つ
どうぞ、主があなたがたに夫を与え、 夫の家で、それぞれ身の落ち着き
どころ え い よめ くち
所を得させられるように﹂。こう言って、ふたりの嫁に口づけしたので、
かれ こえ な い いっしょ
彼らは声をあげて泣き、一〇ナオミに言った、﹁いいえ、わたしたちは一緒
たみ かえ い むすめ
にあなたの民のところへ帰ります﹂。 一一しかしナオミは言った、﹁娘た
かえ い いっしょ い
ちよ、帰って行きなさい。どうして、わたしと一緒に行こうというので
おっと こ たいない おも
すか。あなたがたの夫となる子がまだわたしの胎内にいると思うので
ルツ記

むすめ かえ い とし
すか。 一二 娘たちよ、帰って行きなさい。わたしは年をとっているので、

1
おっと こんや おっと こ
夫をもつことはできません。たとい、わたしが今夜、夫をもち、また子
う のぞ こ
を 産 む 望 み が あ る と し て も、 一 三そ の た め に あ な た が た は、子 ど も の
せいちょう ま
成 長するまで待っているつもりなのですか。あなたがたは、そのため
おっと むすめ
に夫をもたずにいるつもりなのですか。 娘たちよ、それはいけません。
しゅ て のぞ せ
主の手がわたしに臨み、わたしを責められたことで、あなたがたのため
ひじょう こころ いた かれ こえ
に、わたしは非常に心を痛めているのです﹂。 一四彼らはまた声をあげて
な くち
泣いた。そしてオルパはそのしゅうとめに口づけしたが、ルツはしゅう
はな
とめを離れなかった。
い あいよめ じぶん たみ
一五 そこでナオミは言った、
﹁ごらんなさい。あなたの相嫁は自分の民と
じぶん かみがみ かえ い あいよめ
自分の神々のもとへ帰って行きました。あなたも相嫁のあとについて
かえ い す はな
帰りなさい﹂。 一六しかしルツは言った、
﹁あなたを捨て、あなたを離れて
かえ すす い
帰ることをわたしに勧めないでください。わたしはあなたの行かれる
ところ い やど ところ やど たみ
所へ行き、またあなたの宿られる所に宿ります。あなたの民はわたしの
ルツ記

たみ かみ かみ し ところ
民、あなたの神はわたしの神です。 一七あなたの死なれる所でわたしも

2
し ほうむ し わか
死んで、そのかたわらに葬られます。もし死に別れでなく、わたしがあ
わか しゅ ばっ
なたと別れるならば、主よ、どうぞわたしをいくえにも罰してくださ
じぶん いっしょ い かた けっしん
い﹂。 一八ナオミはルツが自分と一緒に行こうと、固く決心しているのを
み い
見たので、そのうえ言うことをやめた。
たび つ かれ
一九 そしてふたりは旅をつづけて、ついにベツレヘムに着いた。彼らが
つ まち かれ さわ おんな
ベツレヘムに着いたとき、町はこぞって彼らのために騒ぎたち、女たち
い かれ い
は言った、
﹁これはナオミですか﹂。 二〇ナオミは彼らに言った、
﹁わたし
たの よ くる よ
をナオミ︵楽しみ︶と呼ばずに、マラ︵苦しみ︶と呼んでください。な
ぜんのうしゃ くる で
ぜなら全能者がわたしをひどく苦しめられたからです。 二一わたしは出
い ゆた しゅ て かえ
て行くときは豊かでありましたが、主はわたしをから手で帰されまし
しゅ なや ぜんのうしゃ わざわい
た。主がわたしを悩まし、全能者がわたしに災をくだされたのに、どう

してわたしをナオミと呼ぶのですか﹂。 二二こうしてナオミは、モアブの
ち かえ よめ おんな いっしょ かえ おおむぎかり はじ
地から帰った嫁、モアブの女 ルツと一緒に帰ってきて、大麦刈の初めに
ルツ記


ベツレヘムに着いた。

3
第二章
おっと いちぞく ひじょう ゆうふく しんせき
さてナオミには、夫 エリメレクの一族で、非常に裕福なひとりの親戚

な おんな い
があって、その名をボアズといった。 二モアブの女 ルツはナオミに言っ
はたけ い しんせつ ひと みあた
た、﹁どうぞ、わたしを畑に行かせてください。だれか親切な人が見当る
かた お ぼ ひろ
ならば、わたしはその方のあとについて落ち穂を拾います﹂。ナオミが
かのじょ むすめ い い い か ひと
彼女に﹁娘よ、行きなさい﹂と言ったので、 三ルツは行って、刈る人た
したが はたけ お ぼ ひろ かのじょ
ちのあとに従い、畑で落ち穂を拾ったが、彼女ははからずもエリメレク
いちぞく はたけ ぶぶん とき
の一族であるボアズの畑の部分にきた。 四その時ボアズは、ベツレヘム
か もの い しゅ とも
からきて、刈る者どもに言った、﹁主があなたがたと共におられますよう
かれ こた しゅ しゅくふく
に﹂。彼らは答えた、﹁主があなたを祝 福されますように﹂。 五ボアズは
か ひと かんとく い むすめ
刈る人たちを監督しているしもべに言った、﹁これはだれの娘ですか﹂。
か ひと かんとく こた おんな
刈る人たちを監督しているしもべは答えた、
六 ﹁あれはモアブの女で、モ
ルツ記

ち いっしょ かえ かのじょ
アブの地からナオミと一緒に帰ってきたのですが、七彼女は﹃どうぞ、わ

4
か ひと たば お ぼ ひろ あつ
たしに、刈る人たちのあとについて、束のあいだで、落ち穂を拾い集め
い かのじょ あさはや いま はたら
させてください﹄と言いました。そして彼女は朝早くきて、今まで働い
すこ やす
て、少しのあいだも休みませんでした﹂。
い むすめ き はたけ ほ ひろ
ボアズはルツに言った、
八 ﹁娘よ、お聞きなさい。ほかの畑に穂を拾いに
い さ
行ってはいけません。またここを去ってはなりません。わたしのとこ
はたら おんな はな ひとびと か
ろで働く女たちを離れないで、ここにいなさい。 九人々が刈りとってい
はたけ め い わかもの
る畑に目をとめて、そのあとについて行きなさい。わたしは若者たちに
めい い
命じて、あなたのじゃまをしないようにと、言っておいたではありませ
とき みず い わかもの
んか。あなたがかわく時には水がめのところへ行って、若者たちのくん
の かのじょ ち ふ はい かれ い
だのを飲みなさい﹂。 一〇彼女は地に伏して拝し、彼に言った、
﹁どうして
がいこくじん かえり しんせつ
あなたは、わたしのような外国人を顧みて、親切にしてくださるのです
こた かのじょ い おっと し
か﹂。 一一ボアズは答えて彼女に言った、
﹁あなたの夫が死んでこのかた、
じぶん ふ ぼ うま くに はな
あなたがしゅうとめにつくしたこと、また自分の父母と生れた国を離れ
ルツ記

し たみ みな きこ
て、かつて知らなかった民のところにきたことは皆わたしに聞えまし

5
しゅ むく
た。 一二どうぞ、主があなたのしたことに報いられるように。どうぞ、イ
かみ しゅ つばさ した み よ
スラエルの神、主、すなわちあなたがその翼の下に身を寄せようとして
しゅ むく え かのじょ い
き た 主 か ら じ ゅ う ぶ ん の 報 い を 得 ら れ る よ う に﹂。 一 三彼女 は 言 っ た、
しゅ
﹁わが主よ、まことにありがとうございます。わたしはあなたのはした
およ なぐさ
めのひとりにも及ばないのに、あなたはこんなにわたしを慰め、はした
かた
めにねんごろに語られました﹂。
しょくじ とき かのじょ い た
一四食事の時、ボアズは彼女に言った、
﹁ここへきて、パンを食べ、あな
た もの す ひた かのじょ か ひとびと
たの食べる物を酢に浸しなさい﹂。彼女が刈る人々のかたわらにすわっ
やきむぎ かのじょ あた かのじょ あ た のこ
たので、ボアズは焼麦を彼女に与えた。彼女は飽きるほど食べて残し
かのじょ ほ ひろ た
た。 一 五そ し て 彼女 が ま た 穂 を 拾 お う と 立 ち あ が っ た と き、ボ ア ズ は
わかもの めい い かのじょ たば あいだ ほ ひろ
若者たちに命じて言った、﹁彼女には束の間でも穂を拾わせなさい。と
かのじょ たば ぬ おと
がめてはならない。 一六また彼女のために束からわざと抜き落しておい
ひろ かのじょ ゆうぐれ
て 拾 わ せ な さ い。し か っ て は な ら な い﹂。 一七こ う し て 彼女 は 夕暮 ま で
ルツ記

はたけ お ぼ ひろ ひろ ほ う おおむぎ
畑で落ち穂を拾った。そして拾った穂を打つと、大麦は一エパほどあっ

6
かのじょ たずさ まち ひろ
た。 一八彼女はそれを携えて町にはいり、しゅうとめにその拾ったもの
み た あ のこ も と だ あた
を見せ、かつ食べ飽きて、残して持ちかえったものを取り出して与えた。
かのじょ い ほ ひろ
一九しゅうとめは彼女に言った、
﹁あなたは、きょう、どこで穂を拾いま
はたら かえり
したか。どこで働きましたか。あなたをそのように顧みてくださった
しゅくふく かのじょ じぶん ところ はたら
かたに、どうか祝 福があるように﹂。そこで彼女は自分がだれの所で働
つ はたら
いたかを、しゅうとめに告げて、
﹁わたしが、きょう働いたのはボアズと
な ひと ところ い よめ い い
いう名の人の所です﹂と言った。 二〇ナオミは嫁に言った、
﹁生きている
もの し もの かえり たま しゅ
者をも、死んだ者をも、 顧みて、いつくしみを賜わる主が、どうぞその
ひと しゅくふく かのじょ い ひと
人を祝 福されますように﹂。ナオミはまた彼女に言った、﹁その人はわ
えんじゃ もっと ちか しんせき おんな
たしたちの縁者で、 最も近い親戚のひとりです﹂。 二一モアブの女 ルツ
い ひと かりい
は言った、﹁その人はまたわたしに﹃あなたはわたしのところの刈入れが
ぜ ん ぶ おわ い
全部終るまで、わたしのしもべたちのそばについていなさい﹄と言いま
よめ い むすめ ひと はたら おんな
した﹂。 二二ナオミは嫁ルツに言った、
﹁娘よ、その人のところで働く女た
ルツ記

いっしょ で はたけ ひと
ちと一緒に出かけるのはけっこうです。そうすればほかの畑で人にい

7
まぬか かのじょ
じ め ら れ る の を 免 れ る で し ょ う﹂。 二三そ れ で 彼女 は ボ ア ズ の と こ ろ で
はたら おんな ほ ひろ おおむぎかり こ む ぎ かり おわ
働く女たちのそばについていて穂を拾い、大麦刈と小麦刈の終るまでそ
かのじょ いっしょ くら
うした。こうして彼女はしゅうとめと一緒に暮した。
第三章
とき かのじょ い むすめ お
一時にしゅうとめナオミは彼女に言った、
﹁娘よ、わたしはあなたの落ち
つ どころ もと
着き所を求めて、あなたをしあわせにすべきではないでしょうか。 二あ
いっしょ はたら おんな しゅじん しんせき
なたが一緒に働いた女たちの主人ボアズはわたしたちの親戚ではあり
かれ こんや う ば おおむぎ わ
ませんか。彼は今夜、打ち場で大麦をあおぎ分けます。 三それであなた
み あら あぶら は ぎ う ば くだ い
は身を洗って油をぬり、晴れ着をまとって打ち場に下って行きなさい。
ひと の く おわ ひと し
ただ、あなたはその人が飲み食いを終るまで、その人に知られてはなり
ひと ね とき ね ば しょ みさだ
ま せ ん。 四そ し て そ の 人 が 寝 る 時、そ の 寝 る 場所 を 見定 め、は い っ て
ルツ記

い あし ところ ね かれ
行って、その足の所をまくって、そこに寝なさい。彼はあなたのすべき

8
し い
こ と を 知 ら せ る で し ょ う﹂。 五ル ツ は し ゅ う と め に 言 っ た、﹁あ な た の
みな
おっしゃることを皆いたしましょう﹂。
かのじょ う ば くだ めい
六こうして彼女は打ち場に下り、すべてしゅうとめが命じたとおりにし
の く こころ むぎ つ
た。 七ボアズは飲み食いして、 心をたのしませたあとで、麦を積んであ
ば しょ い ね かのじょ い
る場所のかたわらへ行って寝た。そこで彼女はひそかに行き、ボアズの
あし ところ ね よなか ひと おどろ お
足の所をまくって、そこに寝た。 八夜中になって、その人は驚き、起き
み おんな あし ね
かえって見ると、ひとりの女が足のところに寝ていたので、 九﹁あなた
い かのじょ こた
はだれですか﹂と言うと、彼女は答えた、
﹁わたしはあなたのはしためル
もっと
ツです。あなたのすそで、はしためをおおってください。あなたは最も
ちか しんせき い むすめ しゅ しゅくふく
近い親戚です﹂。 一〇ボアズは言った、
﹁娘よ、どうぞ、主があなたを祝 福
ひんぷ わか ひと したが ゆ
されるように。あなたは貧富にかかわらず若い人に従い行くことはせ
さいご しめ しんせつ しめ しんせつ
ず、あなたが最後に示したこの親切は、さきに示した親切にまさってい
むすめ おそ もと
ます。 一一それで、娘よ、あなたは恐れるにおよびません。あなたが求め
ルツ記

みな まち ひとびと みな
ることは皆、あなたのためにいたしましょう。わたしの町の人々は皆、

9
おんな し
あなたがりっぱな女であることを知っているからです。 一二たしかにわ
ちか しんせき ちか しんせき
たしは近い親戚ではありますが、わたしよりも、もっと近い親戚があり
こんや あさ ひと
ます。 一三今夜はここにとどまりなさい。朝になって、もしその人が、あ
しんせき ぎ む ひと
なたのために親戚の義務をつくすならば、よろしい、その人にさせなさ
しゅ い ひと しんせき
い。しかし主は生きておられます。その人が、あなたのために親戚の
ぎ む この しんせき
義務をつくすことを好まないならば、わたしはあなたのために親戚の
ぎ む あさ
義務をつくしましょう。朝までここにおやすみなさい﹂。
あさ かれ あし ね み わ がた
一四 ルツは朝まで彼の足のところに寝たが、だれかれの見分け難いころ
お おんな う ば ひと し
に起きあがった。それはボアズが﹁この女の打ち場にきたことが人に知
い い
ら れ て は な ら な い﹂と 言 っ た か ら で あ る。 一五そ し て ボ ア ズ は 言 っ た、
き がいとう も ひろ かのじょ ひろ
﹁あなたの着る外套を持ってきて、それを広げなさい﹂。彼女がそれを広
おおむぎ かのじょ お かのじょ まち
げると、ボアズは大麦六オメルをはかって彼女に負わせた。彼女は町に
かえ い い むすめ
帰り、一六しゅうとめのところへ行くと、しゅうとめは言った、
﹁娘よ、ど
ルツ記

ひと かのじょ つ
うでしたか﹂。そこでルツはその人が彼女にしたことをことごとく告げ

10
い む て
て、 一七言った、
﹁あのかたはわたしに向かって、から手で、しゅうとめ
かえ い おおむぎ
のところへ帰ってはならないと言って、この大麦六オメルをわたしにく
い むすめ こと
ださいました﹂。 一八しゅうとめは言った、
﹁娘よ、この事がどうなるかわ
ま ひと こと けってい お
かるまでお待ちなさい。あの人は、きょう、その事を決定しなければ落

ち着かないでしょう﹂。
第四章
まち もん のぼ
ボアズは町の門のところへ上っていって、そこにすわった。すると、

い しんせき ひと とお す
さきにボアズが言った親戚の人が通り過ぎようとしたので、ボアズはそ
ひと い とも かれ
の人に言った、
﹁友よ、こちらへきて、ここにおすわりください﹂。彼は
まち ちょうろう にん まね い
きてすわった。 二ボアズはまた町の長 老 十人を招いて言った、﹁ここに
かれ とき しんせき ひと い
おすわりください﹂。彼らがすわった時、 三ボアズは親戚の人に言った、
ルツ記

ち かえ しんぞく
﹁モ ア ブ の 地 か ら 帰 っ て き た ナ オ ミ は、わ れ わ れ の 親族 エ リ メ レ ク の

11
じ しょ う し
地所 を 売 ろ う と し て い ま す。 四そ れ で わ た し は そ の こ と を あ な た に 知
ひとびと たみ ちょうろう まえ か
らせて、ここにすわっている人々と、民の長 老たちの前で、それを買い
い おも
なさいと、あなたに言おうと思いました。もし、あなたが、それをあが
おも
なおうと思われるならば、あがなってください。しかし、あなたがそれ
い し
をあがなわないならば、わたしにそう言って知らせてください。それを
ひと つぎ
あがなう人は、あなたのほかにはなく、わたしはあなたの次ですから﹂。
かれ い い
彼は言った、﹁わたしがあがないましょう﹂。 五そこでボアズは言った、
て じ しょ か とき し もの つま
﹁あなたがナオミの手からその地所を買う時には、死んだ者の妻であっ
おんな か し もの な おこ し ぎょう つた
たモアブの女 ルツをも買って、死んだ者の名を起してその嗣 業を伝え
しんせき ひと い
なければなりません﹂。 六その親戚の人は言った、
﹁それでは、わたしに
じぶん し ぎょう
はあがなうことができません。そんなことをすれば自分の嗣 業をそこ
かわ じぶん
ないます。あなたがわたしに代って、自分であがなってください。わた
もの
しはあがなうことができませんから﹂。 七むかしイスラエルでは、物を
ルツ記

こと けんり じょうと ばんじ けってい とき


あがなう事と、権利の譲渡について、万事を決定する時のならわしはこ

12
ひと じぶん ぬ あいて ひと わた
うであった。すなわち、その人は、自分のくつを脱いで、相手の人に渡
しょうめい ほうほう しんせき ひと
した。これがイスラエルでの証 明の方法であった。 八そこで親戚の人
じぶん い
がボアズにむかい﹁あなたが自分であがないなさい﹂と言って、そのく
ぬ ちょうろう たみ い
つを脱いだので、 九ボアズは長 老たちとすべての民に言った、﹁あなた
もの
がたは、きょう、わたしがエリメレクのすべての物およびキリオンとマ
もの て か こと しょうにん
ロンのすべての物をナオミの手から買いとった事の証 人です。 一〇また
つま おんな か つま
わたしはマロンの妻であったモアブの女 ルツをも買って、わたしの妻
し もの な おこ し ぎょう つた し
としました。これはあの死んだ者の名を起してその嗣 業を伝え、死ん
もの な いちぞく きょうり もん だんぜつ
だ者の名がその一族から、またその郷里の門から断絶しないようにする
しょうにん もん
ためです。きょうあなたがたは、その証 人です﹂。 一一すると門にいたす
たみ ちょうろう い しょうにん しゅ
べての民と長 老たちは言った、
﹁わたしたちは証 人です。どうぞ、主が
いえ おんな いえ
あなたの家にはいる女を、イスラエルの家をたてたラケルとレアのふた
とみ え
りのようにされますよう。どうぞ、あなたがエフラタで富を得、ベツレ
ルツ記

な あ しゅ わか おんな
ヘムで名を揚げられますように。 一二どうぞ、主がこの若い女によって

13
たま こども いえ う
あなたに賜わる子供により、あなたの家が、かのタマルがユダに産んだ
いえ
ペレヅの家のようになりますように﹂。
つま かのじょ
一三こうしてボアズはルツをめとって妻とし、彼女のところにはいった。
しゅ かのじょ かのじょ おとこ こ う
主は彼女をみごもらせられたので、彼女はひとりの男の子を産んだ。 一四
おんな い しゅ しゅ
そのとき、 女たちはナオミに言った、
﹁主はほむべきかな、主はあなた
み す きんしん さづ
を見捨てずに、きょう、あなたにひとりの近親をお授けになりました。
こ な たか あ
どうぞ、その子の名がイスラエルのうちに高く揚げられますように。 一五
かれ あら ろうねん やしな もの
彼はあなたのいのちを新たにし、あなたの老年を養う者となるでしょ
あい よめ にん かのじょ かれ う
う。あなたを愛するあなたの嫁、七人のむすこにもまさる彼女が彼を産
こ お
ん だ の で す か ら﹂。 一六そ こ で ナ オ ミ は そ の 子 を と り、ふ と こ ろ に 置 い
やしな そだ きんじょ おんな おとこ こ うま い
て、養い育てた。 一七近所の女たちは﹁ナオミに男の子が生れた﹂と言っ
かれ な な よ かれ ちち
て、彼に名をつけ、その名をオベデと呼んだ。彼はダビデの父である
ちち しそん つぎ
エッサイの父となった。 一八さてペレヅの子孫は次のとおりである。ペ
ルツ記

うま うま
レヅからヘヅロンが生れ、一九ヘヅロンからラムが生れ、ラムからアミナ

14
うま うま
ダブが生れ、二〇アミナダブからナションが生れ、ナションからサルモン
うま うま うま
が生れ、二一サルモンからボアズが生れ、ボアズからオベデが生れ、二二オ
うま うま
ベデからエッサイが生れ、エッサイからダビデが生れた。
ルツ記

15
き じょう
サムエル記 上
第一章
さんち な ひと
エフライムの山地のラマタイム・ゾピムに、エルカナという名の人が


あった。エフライムびとで、エロハムの子であった。エロハムはエリウ
こ こ こ
の子、エリウはトフの子、トフはツフの子である。 二エルカナには、ふ
つま な な
たりの妻があって、ひとりの名はハンナといい、ひとりの名はペニンナ
こ こ
といった。ペニンナには子どもがあったが、ハンナには子どもがなかっ
た。
ひと とし まち のぼ ばんぐん しゅ はい
この人は年ごとに、その町からシロに上っていって、万軍の主を拝し、

サムエル記上

しゅ ぎせい つね こ
主に犠牲をささげるのを常とした。シロには、エリのふたりの子、ホフ
しゅ つか さいし ぎせい
ニとピネハスとがいて、主に仕える祭司であった。 四エルカナは、犠牲
ひ つま むすめ わ まえ あた
をささげる日、妻ペニンナとそのむすこ娘にはみな、その分け前を与え

0
あい かのじょ わ まえ
た。 五エルカナはハンナを愛していたが、彼女には、ただ一つの分け前
あた しゅ たい と
を 与 え る だ け で あ っ た。主 が そ の 胎 を 閉 ざ さ れ た か ら で あ る。 六ま た
かのじょ にく た つま かのじょ なや しゅ たい と
彼女を憎んでいる他の妻は、ひどく彼女を悩まして、主がその胎を閉ざ
うら とし く とし あ
されたことを恨ませようとした。 七こうして年は暮れ、年は明けたが、
しゅ みや のぼ かのじょ なや
ハンナが主の宮に上るごとに、ペニンナは彼女を悩ましたので、ハンナ
な た おっと かのじょ い
は泣いて食べることもしなかった。 八 夫 エルカナは彼女に言った、
﹁ハ
な た こころ かな
ンナよ、なぜ泣くのか。なぜ食べないのか。どうして心に悲しむのか。
にん こ
わたしはあなたにとって十人の子どもよりもまさっているではない
か﹂。
かれ の く た とき
九シ ロ で 彼 ら が 飲 み 食 い し た の ち、ハ ン ナ は 立 ち あ が っ た。そ の 時、
さいし しゅ しんでん はしら ざ
祭司エリは主の神殿の柱のかたわらの座にすわっていた。 一〇ハンナは
こころ ふか かな しゅ いの な ちか た
サムエル記上

心に深く悲しみ、主に祈って、はげしく泣いた。 一一そして誓いを立てて
い ばんぐん しゅ なや
言った、
﹁万軍の主よ、まことに、はしための悩みをかえりみ、わたしを
おぼ わす おとこ こ たま
覚え、はしためを忘れずに、はしために男の子を賜わりますなら、わた

1
こ いっしょう しゅ あたま
しはその子を一 生のあいだ主にささげ、かみそりをその頭にあてませ
ん﹂。
かのじょ しゅ まえ なが いの かのじょ くち め
一二 彼女が主の前で長く祈っていたので、エリは彼女の口に目をとめた。
こころ もの い うご こえ
一三 ハンナは心のうちで物を言っていたので、くちびるが動くだけで、声
きこ よ おも かのじょ
は聞えなかった。それゆえエリは、酔っているのだと思って、一四彼女に
い よ よ
言った、﹁いつまで酔っているのか。酔いをさましなさい﹂。 一五しかし
こた しゅ ふこう おんな しゅ
ハンナは答えた、﹁いいえ、わが主よ。わたしは不幸な女です。ぶどう酒
こ さけ の しゅ まえ こころ そそ だ
も濃い酒も飲んだのではありません。ただ主の前に心を注ぎ出してい
わる おんな おも つも うれ
たのです。 一六はしためを、悪い女と思わないでください。積る憂いと
なや いま もの い
悩みのゆえに、わたしは今まで物を言っていたのです﹂。 一七そこでエリ
こた あんしん い かみ もと
は答えた、﹁安心して行きなさい。どうかイスラエルの神があなたの求
ねが き かのじょ い
サムエル記上

める願いを聞きとどけられるように﹂。 一八彼女は言った、
﹁どうぞ、はし
まえ めぐ え おんな
ためにも、あなたの前に恵みを得させてください﹂。こうして、その女は
さ しょくじ かお かな
去って食事し、その顔は、もはや悲しげではなくなった。

2
かれ あさはや お しゅ まえ れいはい いえ かえ
一九 彼らは朝早く起きて、主の前に礼拝し、そして、ラマにある家に帰っ
い つま し しゅ かのじょ かえり
て行った。エルカナは妻ハンナを知り、主が彼女を顧みられたので、 二〇
かのじょ とき めぐ おとこ こ う
彼女はみごもり、その時が巡ってきて、 男の子を産み、
﹁わたしがこの
こ しゅ もと な な
子を主に求めたからだ﹂といって、その名をサムエルと名づけた。
ひと かぞく のぼ とし ぎせい
二一 エルカナその人とその家族とはみな上っていって、年ごとの犠牲と、
ちか そな もの のぼ い おっと
誓 い の 供 え 物 と を さ さ げ た。 二二し か し ハ ン ナ は 上 っ て 行 か ず、 夫 に
い こ ちばな しゅ まえ つ
言った、
﹁わたしはこの子が乳離れしてから、主の前に連れていって、い
おっと かのじょ い
つ ま で も、そ こ に お ら せ ま し ょ う﹂。 二三 夫 エ ル カ ナ は 彼女 に 言 っ た、
よ おも こ ちばな ま
﹁あなたが良いと思うようにして、この子の乳離れするまで待ちなさい。
しゅ い じつげん
ただどうか主がその言われたことを実現してくださるように﹂。こうし
おんな こ ちち ちばな ま
てその女はとどまって、その子に乳をのませ、乳離れするのを待ってい
ちばな とき さい おうし とう むぎこ しゅ
サムエル記上

たが、二四乳離れした時、三歳の雄牛一頭、麦粉一エパ、ぶどう酒のはいっ
かわぶくろ と こ つ しゅ みや い
た皮 袋 一つを取り、その子を連れて、シロにある主の宮に行った。その
こ おさな かれ うし ころ こども
子はなお幼かった。 二五そして彼らはその牛を殺し、子供をエリのもと

3
つ い い きみ い
へ連れて行った。 二六ハンナは言った、
﹁わが君よ、あなたは生きておら
た まえ しゅ いの おんな
れます。わたしは、かつてここに立って、あなたの前で、主に祈った女
こ あた いの しゅ
です。 二七この子を与えてくださいと、わたしは祈りましたが、主はわた
もと ねが き
しの求めた願いを聞きとどけられました。 二八それゆえ、わたしもこの
こ しゅ こ いっしょう しゅ
子を主にささげます。この子は一 生のあいだ主にささげたものです﹂。
かれ しゅ れいはい
そして彼らはそこで主を礼拝した。
第二章
いの い
ハンナは祈って言った、

こころ しゅ よろこ
﹁わたしの心は主によって喜び、
サムエル記上

ちから しゅ つよ
わたしの力は主によって強められた、
くち てき わら
わたしの口は敵をあざ笑う、
すくい たの
あなたの救によってわたしは楽しむからである。

4
しゅ せい
主のように聖なるものはない、

あなたのほかには、だれもない、
かみ いわ
われわれの神のような岩はない。
かさ こうまん かた
あなたがたは重ねて高慢に語ってはならない、

ことば くち
たかぶりの言葉を口にすることをやめよ。
しゅ し かみ
主はすべてを知る神であって、
しゅ はか
もろもろのおこないは主によって量られる。
ゆうし ゆみ お
勇士の弓は折れ、

よわ もの ちから お
弱き者は力を帯びる。
あ た もの しょく やと
飽き足りた者は食のために雇われ、

う う
飢えたものは、もはや飢えることがない。
にん こ う
サムエル記上

うまずめは七人の子を産み、
おお こ おんな こどく
多くの子をもつ女は孤独となる。
しゅ ころ い
主は殺し、また生かし、

5
よ み うえ
陰府にくだし、また上げられる。
しゅ まず と
主は貧しくし、また富ませ、

ひく たか
低くし、また高くされる。
まず もの た
貧しい者を、ちりのなかから立ちあがらせ、

とぼ もの ひ あ
乏しい者を、あくたのなかから引き上げて、
おうこう とも
王侯と共にすわらせ、
えいよ くらい つ
栄誉の位を継がせられる。
ち はしら しゅ
地の柱は主のものであって、
はしら うえ せかい
その柱の上に、世界をすえられたからである。
しゅ せいと あし まも
主はその聖徒たちの足を守られる、

わる あんこく ほろ
しかし悪いものどもは暗黒のうちに滅びる。
ひと ちから か
サムエル記上

人は力をもって勝つことができないからである。
しゅ あらそ こなごな くだ
一〇 主と争うものは粉々に砕かれるであろう、
しゅ かれ てん かみなり
主は彼らにむかって天から雷をとどろかし、

6
ち おう ちから あた
地のはてまでもさばき、王に力を与え、
あぶら もの ちから つよ
油そそがれた者の力を強くされるであろう﹂。
いえ かえ おさ こ さいし まえ
一一 エルカナはラマにある家に帰ったが、幼な子は祭司エリの前にいて
しゅ つか
主に仕えた。
こ ひとびと しゅ おそ たみ
一二 さて、エリの子らは、よこしまな人々で、主を恐れなかった。 一三民
もの さいし ひと ぎせい
のささげ物についての祭司のならわしはこうである。人が犠牲をささ
とき にく に あいだ さいし にく さ て
げる時、その肉を煮る間に、祭司のしもべは、みつまたの肉刺しを手に
も はち
持ってきて、 一四それをかま、またはなべ、またはおおがま、または鉢に
つ にく さ ひ あ さいし じぶん かれ
突きいれ、肉刺しの引き上げるものは祭司がみな自分のものとした。彼
く ひと
らはシロで、そこに来るすべてのイスラエルの人に、このようにした。 一
ひとびと しぼう や まえ さいし ぎせい
人々が脂肪を焼く前にもまた、祭司のしもべがきて、犠牲をささげる

ひと い さいし や にく あた さいし
サムエル記上

人に言うのであった、﹁祭司のために焼く肉を与えよ。祭司はあなたか
に にく う なま にく ひと しぼう や
ら煮た肉を受けない。生の肉がよい﹂。 一六その人が、﹁まず脂肪を焼か
のち と い
せましょう。その後ほしいだけ取ってください﹂と言うと、しもべは、

7
いま ちから と
﹁いや、今もらいたい。くれないなら、わたしは力づくで、それを取ろう﹂
い わかもの つみ しゅ まえ ひじょう おお
と言う。 一七このように、その若者たちの罪は、主の前に非常に大きかっ
ひとびと しゅ そな もの かろ
た。この人々が主の供え物を軽んじたからである。
おさな み あ ま ぬの つ しゅ まえ つか
一八サムエルはまだ幼く、身に亜麻布のエポデを着けて、主の前に仕えて
はは かれ ちい うわぎ つく とし おっと とも とし
いた。 一九母は彼のために小さい上着を作り、年ごとに、夫と共にその年
ぎせい のぼ とき も
の犠牲をささげるために上る時、それを持ってきた。 二〇エリはいつも
つま しゅくふく い おんな しゅ もの
エルカナとその妻を祝 福して言った、
﹁この女が主にささげた者のかわ
しゅ おんな こ あた かれ
りに、主がこの女によってあなたに子を与えられるように﹂。そして彼
いえ かえ つね
らはその家に帰るのを常とした。
しゅ かえり にん
二一こうして主がハンナを顧みられたので、ハンナはみごもって、三人の
おとこ こ おんな こ う しゅ まえ そだ
男の子とふたりの女の子を産んだ。わらべサムエルは主の前で育った。
とし こ ひとびと
サムエル記上

二二エリはひじょうに年をとった。そしてその子らがイスラエルの人々
き かいけん まくや いりぐち つと おんな
にしたいろいろのことを聞き、また会見の幕屋の入口で勤めていた女た
ね き かれ い
ちと寝たことを聞いて、 二三彼らに言った、
﹁なにゆえ、そのようなこと

8
たみ わる
をするのか。わたしはこのすべての民から、あなたがたの悪いおこない
き こ き しゅ たみ
のことを聞く。 二四わが子らよ、それはいけない。わたしの聞く、主の民
い ふうせつ よ ひと ひと たい つみ おか
の言いふらしている風説は良くない。 二五もし人が人に対して罪を犯す
かみ ちゅうさい ひと しゅ たい つみ おか
ならば、神が仲 裁されるであろう。しかし人が主に対して罪を犯すな
かれ ちち
らば、だれが、そのとりなしをすることができようか﹂。しかし彼らは父
い みみ かたむ しゅ かれ ころ
の言うことに耳を傾けようともしなかった。主が彼らを殺そうとされ
たからである。
そだ しゅ ひとびと あい
わらべサムエルは育っていき、主にも、人々にも、ますます愛せられ
二六
た。
かみ ひと い しゅ
このとき、ひとりの神の人が、エリのもとにきて言った、
二七 ﹁主はかく
おお せんぞ いえ いえ どれい
仰せられる、﹃あなたの先祖の家がエジプトでパロの家の奴隷であった
せんぞ いえ みずか あらわ
サムエル記上

とき、わたしはその先祖の家に自らを現した。 二八そしてイスラエルの
ぶぞく えら だ さいし
すべての部族のうちからそれを選び出して、わたしの祭司とし、わたし
さいだん のぼ こう まえ つ
の祭壇に上って、香をたかせ、わたしの前でエポデを着けさせ、また、イ

9
ひとびと かさい せんぞ いえ あた
スラエルの人々の火祭をことごとくあなたの先祖の家に与えた。 二九そ
めい ぎせい そな もの
れにどうしてあなたがたは、わたしが命じた犠牲と供え物をむさぼりの
め み じぶん こ たっと
目をもって見るのか。またなにゆえ、わたしよりも自分の子らを尊び、
たみ そな もの もっと よ ぶぶん
わたしの民イスラエルのささげるもろもろの供え物の、 最も良き部分
じぶん こ かみ しゅ おお
をもって自分を肥やすのか﹄。 三〇それゆえイスラエルの神、主は仰せら
いえ ちち いえ えいきゅう
れる、
﹃わたしはかつて、
﹁あなたの家とあなたの父の家とは、永 久にわ
まえ あゆ い いま しゅ おお けっ
たしの前に歩むであろう﹂と言った﹄。しかし今、主は仰せられる、
﹃決
たっと もの たっと いや
してそうはしない。わたしを尊ぶ者を、わたしは尊び、わたしを卑しめ
もの かろ み ひ く ひ
る者は、軽んぜられるであろう。 三一見よ、日が来るであろう。その日、
ちから ちち いえ ちから た いえ としお
わたしはあなたの力と、あなたの父の家の力を断ち、あなたの家に年老
もの わざわい
いた者をなくするであろう。 三二そのとき、あなたは災のうちにあって、
あた はんえい み
サムエル記上

イスラエルに与えられるもろもろの繁栄を、ねたみ見るであろう。あな
いえ えいきゅう としお もの
たの家には永 久に年老いた者がいなくなるであろう。 三三しかしあなた
いちぞく さいだん た かれ のこ
の一族のひとりを、わたしの祭壇から断たないであろう。彼は残されて

10
め な こころ いた いえ うま で
その目を泣きはらし、 心を痛めるであろう。またあなたの家に生れ出
し こ
るものは、みなつるぎに死ぬであろう。 三四あなたのふたりの子ホフニ
み おこ
とピネハスの身に起ることが、あなたのためにそのしるしとなるであろ
とも おな ひ し
う。す な わ ち そ の ふ た り は 共 に 同 じ 日 に 死 ぬ で あ ろ う。 三 五わ た し は
じぶん ちゅうじつ さいし おこ ひと こころ おも
自分のために、ひとりの忠 実な祭司を起す。その人はわたしの心と思
したが おこな いえ かくりつ ひと
いとに従 って行うであろう。わたしはその家を確立しよう。その人は
あぶら もの まえ あゆ
わたしが油そそいだ者の前につねに歩むであろう。 三六そしてあなたの
いえ い のこ ひとびと かれ まい ぎん こ こ
家で生き残っている人々はみなきて、彼に一枚の銀と一個のパンを請い
もと さいし しょく にん ひとくち た
求め、
﹁どうぞ、わたしを祭司の職の一つに任じ、一口のパンでも食べる

ことができるようにしてください﹂と言うであろう﹄﹂。
サムエル記上

第三章
まえ しゅ つか しゅ ことば
一わらべサムエルは、エリの前で、主に仕えていた。そのころ、主の言葉

11
もくし つね
はまれで、黙示も常ではなかった。
め み
二さてエリは、しだいに目がかすんで、見ることができなくなり、その
じぶん ね かみ き
とき自分のへやで寝ていた。 三神のともしびはまだ消えず、サムエルが
かみ はこ しゅ しんでん ね とき しゅ
神の箱のある主の神殿に寝ていた時、 四主は﹁サムエルよ、サムエルよ﹂
よ かれ い ところ はし
と呼ばれた。彼は﹁はい、ここにおります﹂と言って、五エリの所へ走っ
い およ
ていって言った、﹁あなたがお呼びになりました。わたしは、ここにおり
い よ かえ ね
ます﹂。しかしエリは言った、﹁わたしは呼ばない。帰って寝なさい﹂。
かれ い ね しゅ よ
彼は行って寝た。 六主はまたかさねて﹁サムエルよ、サムエルよ﹂と呼
お い い およ
ばれた。サムエルは起きてエリのもとへ行って言った、﹁あなたがお呼
い こ
びになりました。わたしは、ここにおります﹂。エリは言った、﹁子よ、わ
よ ど ね しゅ し
た し は 呼 ば な い。も う 一 度寝 な さ い﹂。 七サ ム エ ル は ま だ 主 を 知 ら ず、
しゅ ことば かれ あらわ しゅ ど め
サムエル記上

主 の 言葉 が ま だ 彼 に 現 さ れ な か っ た。 八主 は ま た 三 度目 に サ ム エ ル を
よ お い い
呼ばれたので、サムエルは起きてエリのもとへ行って言った、﹁あなたが
およ とき しゅ
お呼びになりました。わたしは、ここにおります﹂。その時、エリは主が

12
よ さと
わ ら べ を 呼 ば れ た の で あ る こ と を 悟 っ た。 九そ し て エ リ は サ ム エ ル に
い い ね よ き
言った、
﹁行って寝なさい。もしあなたを呼ばれたら、
﹃しもべは聞きま
しゅ はな い い じぶん ところ
す。主よ、お話しください﹄と言いなさい﹂。サムエルは行って自分の所

で寝た。
しゅ た まえ よ
一〇 主はきて立ち、前のように、
﹁サムエルよ、サムエルよ﹂と呼ばれた
い き はな
ので、サムエルは言った、
﹁しもべは聞きます。お話しください﹂。 一一そ
とき しゅ い み
の時、主はサムエルに言われた、
﹁見よ、わたしはイスラエルのうちに一
こと き もの みみ な
つの事をする。それを聞く者はみな、耳が二つとも鳴るであろう。 一二
ひ いえ はな
その日には、わたしが、かつてエリの家について話したことを、はじめ
おわ おこな かれ
から終りまでことごとく、エリに行うであろう。 一三わたしはエリに、彼
し あくじ いえ えいきゅう ばっ つ
が知っている悪事のゆえに、その家を永 久に罰することを告げる。そ
こ かみ かれ
サムエル記上

の子らが神をけがしているのに、彼がそれをとめなかったからである。
いえ ちか いえ あく ぎせい そな もの
一四 それゆえ、わたしはエリの家に誓う。エリの家の悪は、犠牲や供え物
えいきゅう
をもってしても、 永 久にあがなわれないであろう﹂。

13
あさ ね しゅ みや と まぼろし
一五サムエルは朝まで寝て、主の宮の戸をあけたが、サムエルはその幻の
かた おそ よ い
ことをエリに語るのを恐れた。 一六しかしエリはサムエルを呼んで言っ
こ い
た、
﹁わが子サムエルよ﹂。サムエルは言った、
﹁はい、ここにおります﹂。
い なにごと つ かく はな
一七エリは言った、﹁何事をお告げになったのか。隠さず話してくださ
つ かく い
い。もしお告げになったことを一つでも隠して、わたしに言わないなら
かみ ばっ おも ばっ
ば、どうぞ神があなたを罰し、さらに重く罰せられるように﹂。 一八そこ
こと はな なに かれ かく
でサムエルは、その事をことごとく話して、何も彼に隠さなかった。エ
い しゅ しゅ よ おも おこな
リは言った、﹁それは主である。どうぞ主が、良いと思うことを行われる
ように﹂。
そだ しゅ かれ とも ことば
一九サムエルは育っていった。主が彼と共におられて、その言葉を一つ
ち お
も地に落ちないようにされたので、二〇ダンからベエルシバまで、イスラ
ひと しゅ よげんしゃ さだ し
サムエル記上

エルのすべての人は、サムエルが主の預言者と定められたことを知っ
しゅ あらわ しゅ しゅ
た。 二 一主 は ふ た た び シ ロ で 現 れ ら れ た。す な わ ち 主 は シ ロ で、主 の
ことば みずか あらわ ことば
言葉によって、サムエルに自らを現された。こうしてサムエルの言葉

14
ひとびと およ
は、あまねくイスラエルの人々に及んだ。
第四章
で たたか
イスラエルびとは出てペリシテびとと戦おうとして、エベネゼルのほ

じん じん
とりに陣をしき、ペリシテびとはアペクに陣をしいた。 二ペリシテびと
じんそな たたか およ
はイスラエルびとにむかって陣備えをしたが、戦うに及んで、イスラエ
まえ やぶ せんじょう
ルびとはペリシテびとの前に敗れ、ペリシテびとは戦 場において、おお
にん ころ たみ じんえい しりぞ とき ちょうろう
よそ四千人を殺した。 三民が陣営に退いた時、イスラエルの長 老たちは
い しゅ まえ やぶ
言った、
﹁なにゆえ、主はきょう、ペリシテびとの前にわれわれを敗られ
い しゅ けいやく はこ たずさ
たのか。シロへ行って主の契約の箱をここへ携えてくることにしよう。
サムエル記上

しゅ むか てき て すく
そして主をわれわれのうちに迎えて、敵の手から救っていただこう﹂。 四
たみ ひと うえ ざ ばんぐん
そこで民は人をシロにつかわし、ケルビムの上に座しておられる万軍の
しゅ けいやく はこ たずさ とき こ
主の契約の箱を、そこから携えてこさせた。その時エリのふたりの子、

15
かみ けいやく はこ とも ところ
ホフニとピネハスは神の契約の箱と共に、その所にいた。
しゅ けいやく はこ じんえい とき おおごえ さけ
主の契約の箱が陣営についた時、イスラエルびとはみな大声で叫んだ

ち な ひび さけ ごえ き い
ので、地は鳴り響いた。 六ペリシテびとは、その叫び声を聞いて言った、
じんえい おお さけ ごえ なにごと しゅ はこ
﹁ヘブルびとの陣営の、この大きな叫び声は何事か﹂。そして主の箱が、
じんえい つ し とき おそ い かみがみ
陣営に着いたことを知った時、七ペリシテびとは恐れて言った、
﹁神々が
じんえい かれ い
陣営にきたのだ﹂。彼らはまた言った、
﹁ああ、われわれはわざわいであ
いま
る。このようなことは今までなかった。 八ああ、われわれはわざわいで
つよ かみがみ て すく だ
ある。だれがわれわれをこれらの強い神々の手から救い出すことがで
かみがみ わざわい あらの
きようか。これらの神々は、もろもろの災をもってエジプトびとを荒野
う ゆうき だ おとこ
で撃ったのだ。 九ペリシテびとよ、勇気を出して男らしくせよ。ヘブル
つか かれ つか
びとがあなたがたに仕えたように、あなたがたが彼らに仕えることのな
おとこ たたか
サムエル記上

いために、 男らしく戦え﹂。
たたか やぶ
一〇 こうしてペリシテびとが戦 ったので、イスラエルびとは敗れて、お
いえ に かえ せんししゃ おお
のおのその家に逃げて帰った。戦死者はひじょうに多く、イスラエルの

16
ほへい たお かみ はこ うば
歩兵で倒れたものは三万であった。 一一また神の箱は奪われ、エリのふ
こ ころ
たりの子、ホフニとピネハスは殺された。
ひ いふく さ あたま つち
一二 その日ひとりのベニヤミンびとが、衣服を裂き、頭に土をかぶって、
せんじょう はし かれ つ みち
戦 場から走ってシロにきた。 一三彼が着いたとき、エリは道のかたわら
じぶん ざ ま こころ かみ はこ こと
にある自分の座にすわって待ちかまえていた。その心に神の箱の事を
き ひと まち じょうほう
気づかっていたからである。その人が町にはいって、 情 報をつたえた
まち さけ さけ ごえ き い
ので、町はこぞって叫んだ。 一四エリはその叫び声を聞いて言った、
﹁こ
さわ こえ なに ひと いそ ところ つ
の 騒 ぎ 声 は 何 か﹂。そ の 人 は 急 い で エ リ の 所 へ き て エ リ に 告 げ た。 一五
とき さい め かた み
その時エリは九十八歳で、その目は固まって見ることができなかった。
ひと い せんじょう
一六 その人はエリに言った、﹁わたしは戦 場からきたものです。きょう
せんじょう い こ ようす
戦 場からのがれたのです﹂。エリは言った、﹁わが子よ、様子はどうで
ひと こた い
サムエル記上

あったか﹂。 一七しらせをもたらしたその人は答えて言った、﹁イスラエ
まえ に たみ おお せんししゃ
ルびとは、ペリシテびとの前から逃げ、民のうちにはまた多くの戦死者
こ し かみ はこ うば
があり、あなたのふたりの子、ホフニとピネハスも死に、神の箱は奪わ

17
かれ かみ はこ い ざ
れました﹂。 一八彼が神の箱のことを言ったとき、エリはその座から、あ
もん お くび お し お み おも
おむけに門のかたわらに落ち、首を折って死んだ。老いて身が重かった
かれ ねん
からである。彼のイスラエルをさばいたのは四十年であった。
かれ よめ つま しゅっさん とき ちか かみ
彼の嫁、ピネハスの妻はみごもって出 産の時が近づいていたが、神
一九
はこ うば おっと し き
の箱が奪われたこと、しゅうとと夫が死んだというしらせを聞いたと
じんつう おこ み こ う かのじょ し
き、陣痛が起り身をかがめて子を産んだ。 二〇彼女が死にかかっている
とき せ わ おんな かのじょ い おそ おとこ
時、世話をしていた女が彼女に言った、
﹁恐れることはありません。 男
こ うま かのじょ こた かえり
の子が生れました﹂。しかし彼女は答えもせず、また顧みもしなかった。
かのじょ えいこう さ い こ
ただ彼女は﹁栄光はイスラエルを去った﹂と言って、その子をイカボ
二一
な かみ はこ うば かのじょ おっと
デと名づけた。これは神の箱の奪われたこと、また彼女のしゅうとと夫
かのじょ えいこう さ
のことによるのである。 二二彼女はまた、﹁栄光はイスラエルを去った。
かみ はこ うば い
サムエル記上

神の箱が奪われたからです﹂と言った。

18
第五章
かみ はこ はこ
一ペリシテびとは神の箱をぶんどって、エベネゼルからアシドドに運ん
かみ はこ と みや はこ
で き た。 二そ し て ペ リ シ テ び と は そ の 神 の 箱 を 取 っ て ダ ゴ ン の 宮 に 運
お ひとびと つぎ ひ はや
びこみ、ダゴンのかたわらに置いた。 三アシドドの人々が、次の日、早
お み しゅ はこ まえ ち たお
く起きて見ると、ダゴンが主の箱の前に、うつむきに地に倒れていたの
かれ おこ ところ お つぎ あさ
で、彼らはダゴンを起して、それをもとの所に置いた。 四その次の朝ま
はや お み しゅ はこ まえ ち たお
た早く起きて見ると、ダゴンはまた、主の箱の前に、うつむきに地に倒
あたま りょうて き はな うえ
れていた。そしてダゴンの頭と両手とは切れて離れ、しきいの上にあ
どうたい さいし
り、ダゴンはただ胴体だけとなっていた。 五それゆえダゴンの祭司たち
みや ひとびと こんにち
やダゴンの宮にはいる人々は、だれも今日にいたるまで、アシドドのダ

サムエル記上

ゴンのしきいを踏まない。
しゅ て うえ のぞ しゅ はれもの
六そして主の手はアシドドびとの上にきびしく臨み、主は腫物をもって
りょういき ひとびと おそ なや
アシドドとその領 域の人々を恐れさせ、また悩まされた。 七アシドドの

19
ひとびと み い かみ はこ
人々は、このありさまを見て言った、
﹁イスラエルの神の箱を、われわれ
ところ お かみ て
の所に、とどめ置いてはならない。その神の手が、われわれと、われわ
かみ うえ のぞ かれ ひと
れの神ダゴンの上にきびしく臨むからである﹂。 八そこで彼らは人をつ
きみ あつ い かみ はこ
かわして、ペリシテびとの君たちを集めて言った、﹁イスラエルの神の箱
かれ い かみ はこ うつ
をどうしましょう﹂。彼らは言った、﹁イスラエルの神の箱はガテに移そ
ひとびと かみ はこ うつ かれ うつ
う﹂。人々はイスラエルの神の箱をそこに移した。 九彼らがそれを移す
しゅ て まち のぞ ひじょう さわ た ろうにゃく と
と、主の手がその町に臨み、非常な騒ぎが起った。そして老 若を問わず
まち ひとびと う かれ み はれもの ひとびと
町の人々を撃たれたので、彼らの身に腫物ができた。 一〇そこで人々は
かみ はこ おく かみ はこ つ とき
神の箱をエクロンに送ったが、神の箱がエクロンに着いた時、エクロン
ひとびと さけ い かれ かみ はこ ところ
の人々は叫んで言った、﹁彼らがイスラエルの神の箱をわれわれの所に
うつ たみ ほろ かれ ひと
移したのは、われわれと民を滅ぼすためである﹂。 一一そこで彼らは人を
きみ あつ い
サムエル記上

つかわして、ペリシテびとの君たちをみな集めて言った、﹁イスラエルの
かみ はこ おく だ ところ かえ たみ ほろ
神の箱を送り出して、もとの所に返し、われわれと民を滅ぼすことのな
おそ さわ まちぢゅう た
い よ う に し よ う﹂。恐 ろ し い 騒 ぎ が 町 中 に 起 っ て い た か ら で あ る。そ

20
かみ て ひじょう のぞ し ひと はれもの
こには神の手が非常にきびしく臨んでいたので、 一二死なない人は腫物
う まち さけ てん たっ
をもって撃たれ、町の叫びは天に達した。
第六章
しゅ はこ げつ あいだ ち
主の箱は七か月の間 ペリシテびとの地にあった。 二ペリシテびとは、

さいし うらな し よ い かみ はこ
祭司や占い師を呼んで言った、﹁イスラエルの神の箱をどうしましょう
ところ おく かえ つ
か。どのようにして、それをもとの所へ送り返せばよいか告げてくださ
かれ い かみ はこ おく かえ とき
い﹂。 三彼らは言った、
﹁イスラエルの神の箱を送り返す時には、それを
かえ かなら かれ そな もの つぐな
むなしく返してはならない。 必ず彼にとがの供え物をもって償いをし
かれ て
なければならない。そうすれば、あなたがたはいやされ、また彼の手が
サムエル記上

はな し ひとびと
なぜあなたがたを離れないかを知ることができるであろう﹂。 四人々は
い つぐな そな もの なに かれ
言った、﹁われわれが償うとがの供え物には何をしましょうか﹂。彼らは
こた きみ かず きん はれもの きん
答えた、﹁ペリシテびとの君たちの数にしたがって、金の腫物五つと金の

21
きみ のぞ わざわい
ねずみ五つである。あなたがたすべてと、君たちに臨んだ災は一つだか
はれもの ぞう ち あら ぞう
らである。 五それゆえ、あなたがたの腫物の像と、地を荒すねずみの像
つく かみ えいこう き かれ
を造り、イスラエルの神に栄光を帰するならば、たぶん彼は、あなたが
かみがみ ち て くわ
た、およびあなたがたの神々と、あなたがたの地に、その手を加えるこ
かる
とを軽くされるであろう。 六なにゆえ、あなたがたはエジプトびととパ
こころ じぶん こころ
ロがその心をかたくなにしたように、自分の心をかたくなにするのか。
かみ かれ なや かれ たみ い たみ さ
神が彼らを悩ましたので、彼らは民を行かせ、民は去ったではないか。 七
いま あたら くるま りょう つく つ
そ れ ゆ え 今、 新 し い 車 一 両 を 造 り、ま だ く び き を 付 け た こ と の な い
にゅうぎゅう とう うし くるま こ うし にゅうぎゅう
乳 牛 二頭をとり、その牛を車につなぎ、そのおのおのの子牛を乳 牛か
はな いえ つ かえ しゅ はこ くるま の
ら離して家に連れ帰り、 八主の箱をとって、それをその車に載せ、あな
そな もの かれ つぐな きん つく もの はこ
たがたがとがの供え物として彼に償う金の作り物を一つの箱におさめ
お おく さ み
サムエル記上

て そ の か た わ ら に 置 き、そ れ を 送 っ て 去 ら せ な さ い。 九そ し て 見 て い
じぶん りょうち い みち のぼ おお
て、それが自分の領地へ行く道を、ベテシメシへ上るならば、この大い
わざわい くだ かれ とき
なる災を、われわれに下したのは彼である。しかし、そうしない時は、わ

22
う かれ て こと ぐうぜん し
れわれを撃ったのは彼の手ではなく、その事の偶然であったことを知る
であろう﹂。
ひとびと かれ とう にゅうぎゅう
一〇人々はそのようにした。すなわち、彼らは二頭の乳 牛をとって、こ
くるま こ うし いえ と しゅ はこ
れを車につなぎ、そのおのおのの子牛を家に閉じこめ、 一一主の箱、およ
きん はれもの ぞう はこ くるま の
び 金 の ね ず み と、腫物 の 像 を お さ め た 箱 と を 車 に 載 せ た。 一 二す る と
めうし ほうこう おおじ あゆ な
雌牛はまっすぐにベテシメシの方向へ、ひとすじに大路を歩み、鳴きな
すす みぎ ひだり まが きみ
がら進んでいって、右にも左にも曲らなかった。ペリシテびとの君たち
さかい とき
は、ベテシメシの境までそのあとについていった。 一三時にベテシメシ
ひとびと たに こむぎ か い め はこ み
の人々は谷で小麦を刈り入れていたが、目をあげて、その箱を見、それ
むか よろこ くるま はたけ
を迎えて喜んだ。 一四 車はベテシメシびとヨシュアの畑にはいって、そ
ところ おお いし ひとびと くるま き わ
こにとどまった。その所に大きな石があった。人々は車の木を割り、そ
めうし はんさい しゅ しゅ はこ
サムエル記上

の雌牛を燔祭として主にささげた。 一五レビびとは主の箱と、そのかた
きん つく もの はこ と おおいし うえ お
わらの、金の作り物をおさめた箱を取りおろし、それを大石の上に置い
ひとびと ひ しゅ はんさい そな ぎせい
た。そしてベテシメシの人々は、その日、主に燔祭を供え、犠牲をささ

23
にん きみ み ひ
げた。 一六ペリシテびとの五人の君たちはこれを見て、その日、エクロン
かえ
に帰った。
そな もの しゅ つぐな きん はれもの
一七 ペリシテびとが、とがの供え物として、主に償いをした金の腫物は、
つぎ
次のとおりである。すなわちアシドドのために一つ、ガザのために一
つ、アシケロンのために一つ、ガテのために一つ、エクロンのために一
きん じょうへき まち じょうへき
つであった。 一八また金のねずみは、城 壁をめぐらした町から城 壁のな
むらざと にん きみ ぞく まち
い村里にいたるまで、すべて五人の君たちに属するペリシテびとの町の
かず つく しゅ はこ ところ おおいし
数にしたがって造った。主の箱をおろした所のかたわらにあった大石
こんにち はたけ
は、今日にいたるまで、ベテシメシびとヨシュアの畑にあって、あかし
となっている。
ひとびと しゅ はこ なか み しゅ
一九 ベテシメシの人々で主の箱の中を見たものがあったので、主はこれ
う たみ にん う しゅ たみ う おお
サムエル記上

を撃たれた。すなわち民のうち七十人を撃たれた。主が民を撃って多
もの ころ たみ かな ひとびと
くの者を殺されたので、民はなげき悲しんだ。 二〇ベテシメシの人々は
い せい かみ しゅ まえ た しゅ
言った、
﹁だれが、この聖なる神、主の前に立つことができようか。主は

24
はな ところ のぼ い
われわれを離れてだれの所へ上って行かれたらよいのか﹂。 二一そして
かれ し しゃ ひとびと い
彼らは、使者をキリアテ・ヤリムの人々につかわして言った、
﹁ペリシテ
しゅ はこ かえ くだ ところ たずさ
びとが主の箱を返したから、下ってきて、それをあなたがたの所へ携え
のぼ
上ってください﹂。
第七章
ひとびと しゅ はこ たずさ のぼ おか うえ
キリアテ・ヤリムの人々は、きて、主の箱を携え上り、丘の上のアビ

いえ も こ せいべつ しゅ はこ まも
ナダブの家に持ってきて、その子エレアザルを聖別して、主の箱を守ら
はこ ひさ ねん へ
せた。 二その箱は久しくキリアテ・ヤリムにとどまって、二十年を経た。
ぜんか しゅ した なげ
イスラエルの全家は主を慕って嘆いた。
サムエル記上

とき ぜんか つ
その時サムエルはイスラエルの全家に告げていった、
三 ﹁もし、あなたが
いっしん しゅ た かえ かみがみ
たが一心に主に立ち返るのであれば、ほかの神々とアシタロテを、あな
す さ こころ しゅ む しゅ つか
たがたのうちから捨て去り、心を主に向け、主にのみ仕えなければなら

25
しゅ て すく だ
ない。そうすれば、主はあなたがたをペリシテびとの手から救い出され
ひとびと す
るであろう﹂。 四そこでイスラエルの人々はバアルとアシタロテを捨て
さ しゅ つか
去り、ただ主にのみ仕えた。
い あつ
五サムエルはまた言った、
﹁イスラエルびとを、ことごとくミヅパに集め
しゅ いの ひとびと
なさい。わたしはあなたがたのために主に祈りましょう﹂。 六人々はミ
あつ みず しゅ まえ そそ ひ だんじき
ヅパに集まり、水をくんでそれを主の前に注ぎ、その日、断食してその
ところ い しゅ たい つみ おか
所で言った、﹁われわれは主に対して罪を犯した﹂。サムエルはミヅパで
ひとびと ひとびと あつ
イ ス ラ エ ル の 人々 を さ ば い た。 七イ ス ラ エ ル の 人々 の ミ ヅ パ に 集 ま っ
きこ きみ
たことがペリシテびとに聞えたので、ペリシテびとの君たちは、イスラ
せ のぼ ひとびと き
エルに攻め上ってきた。イスラエルの人々はそれを聞いて、ペリシテび
おそ ひとびと い
とを恐れた。 八そしてイスラエルの人々はサムエルに言った、﹁われわ
かみ しゅ さけ
サムエル記上

れのため、われわれの神、主に叫ぶことを、やめないでください。そう
しゅ て すく だ
すれば主がペリシテびとの手からわれわれを救い出されるでしょう﹂。
ちち の こひつじ とう まった はんさい しゅ
九そこでサムエルは乳を飲む小羊一頭をとり、これを全き燔祭として主

26
しゅ さけ しゅ
にささげた。そしてサムエルはイスラエルのために主に叫んだので、主
こた はんさい とき
はこれに答えられた。 一〇サムエルが燔祭をささげていた時、ペリシテ
たたか ちか しゅ ひ おお
びとはイスラエルと戦おうとして近づいてきた。しかし主はその日、大
かみなり うえ かれ みだ かれ
いなる雷をペリシテびとの上にとどろかせて、彼らを乱されたので、彼
まえ やぶ に ひとびと
らはイスラエルびとの前に敗れて逃げた。 一一イスラエルの人々はミヅ
で お う した い
パを出てペリシテびとを追い、これを撃って、ベテカルの下まで行った。
とき いし あいだ
一二 その時サムエルは一つの石をとってミヅパとエシャナの間にすえ、
しゅ いま いた たす い な
﹁主は今に至るまでわれわれを助けられた﹂と言って、その名をエベネゼ
な せいふく
ルと名づけた。 一三こうしてペリシテびとは征服され、ふたたびイスラ
りょうち いっしょう あいだ しゅ て
エルの領地に、はいらなかった。サムエルの一 生の間、主の手が、ペリ
ふせ と まちまち
シ テ び と を 防 い だ。 一四ペ リ シ テ び と が イ ス ラ エ ル か ら 取 っ た 町々 は、
しゅうい
サムエル記上

エクロンからガテまで、イスラエルにかえり、イスラエルはその周囲の
ち て と
地をもペリシテびとの手から取りかえした。またイスラエルとアモリ
あいだ へいわ
びととの間には平和があった。

27
いっしょう あいだ とし
一五 サムエルは一 生の間 イスラエルをさばいた。 一六年ごとにサムエル
めぐ ところどころ
はベテルとギルガル、およびミヅパを巡って、その所 々でイスラエルを
かえ かれ いえ ところ
さばき、 一七ラマに帰った。そこに彼の家があったからである。その所
かれ しゅ さいだん きず
でも彼はイスラエルをさばき、またそこで主に祭壇を築いた。
第八章
としお こ
一サムエルは年老いて、その子らをイスラエルのさばきづかさとした。
ちょうし な つぎ こ な い かれ
二長子の名はヨエルといい、次の子の名はアビヤと言った。彼らはベエ
こ ちち みち あゆ
ル シ バ で さ ば き づ か さ で あ っ た。 三し か し そ の 子 ら は 父 の 道 を 歩 ま な
り と ま
いで、利にむかい、まいないを取って、さばきを曲げた。
サムエル記上

とき ちょうろう あつ
四この時、イスラエルの長 老たちはみな集まってラマにおるサムエル
い としお こ
のもとにきて、 五言った、
﹁あなたは年老い、あなたの子たちはあなたの
みち あゆ いま くにぐに おう
道を歩まない。今ほかの国々のように、われわれをさばく王を、われわ

28
た かれ おう
れ の た め に 立 て て く だ さ い﹂。 六し か し 彼 ら が、﹁わ れ わ れ を さ ば く 王
あた い き よろこ
を、われわれに与えよ﹂と言うのを聞いて、サムエルは喜ばなかった。そ
しゅ いの しゅ い たみ
してサムエルが主に祈ると、 七主はサムエルに言われた、
﹁民が、すべて
い ところ こえ き したが かれ す
あなたに言う所の声に聞き従いなさい。彼らが捨てるのはあなたでは
す かれ うえ おう みと
なく、わたしを捨てて、彼らの上にわたしが王であることを認めないの
かれ つ のぼ ひ
である。 八彼らは、わたしがエジプトから連れ上った日から、きょうま
す かみがみ つか こと
で、わたしを捨ててほかの神々に仕え、さまざまの事をわたしにしたよ
いま こえ き したが
うに、あなたにもしているのである。 九今その声に聞き従いなさい。た
ふか かれ いまし かれ おさ おう かれ しめ
だし、深く彼らを戒めて、彼らを治める王のならわしを彼らに示さなけ
ればならない﹂。
おう た もと たみ しゅ ことば つ
一〇サムエルは王を立てることを求める民に主の言葉をことごとく告げ
い おさ おう つぎ
サムエル記上

て、一一言った、﹁あなたがたを治める王のならわしは次のとおりである。
かれ と せんしゃたい い きへい じぶん せんしゃ
彼はあなたがたのむすこを取って、戦車隊に入れ、騎兵とし、自分の戦車
まえ はし かれ にん ちょう にん ちょう
の前に走らせるであろう。 一二彼はまたそれを千人の長、五十人の長に

29
にん ち たがや さくもつ か ぶ き せんしゃ
任じ、またその地を耕させ、その作物を刈らせ、またその武器と戦車の
そうび つく むすめ と こう
装備を造らせるであろう。 一三また、あなたがたの娘を取って、香をつく
もの りょうり もの や もの
る者とし、料理をする者とし、パンを焼く者とするであろう。 一四また、
はたけ はたけ はたけ もっと よ もの と
あ な た が た の 畑 と ぶ ど う 畑 と オ リ ブ 畑 の 最 も 良 い 物 を 取 っ て、そ の
けらい あた こくもつ はたけ ぶん と
家来に与え、 一五あなたがたの穀物と、ぶどう畑の、十分の一を取って、
やくにん けらい あた だんじょ どれい
その役人と家来に与え、 一六また、あなたがたの男女の奴隷および、あな
もっと よ うし と じぶん はたら
たがたの最も良い牛とろばを取って、自分のために働かせ、 一七また、あ
ひつじ ぶん と どれい
なたがたの羊の十分の一を取り、あなたがたは、その奴隷となるであろ
ひ じぶん えら おう よ
う。 一八そしてその日あなたがたは自分のために選んだ王のゆえに呼ば
しゅ ひ こた
わるであろう。しかし主はその日にあなたがたに答えられないであろ
う﹂。
たみ こえ き したが こば い
サムエル記上

一九 ところが民はサムエルの声に聞き従うことを拒んで言った、﹁いい
おさ おう た くにぐに
え、われわれを治める王がなければならない。 二〇われわれも他の国々
おう ひき
のようになり、王がわれわれをさばき、われわれを率いて、われわれの

30
たたか たみ ことば き
戦 い に た た か う の で あ る﹂。 二一サ ム エ ル は 民 の 言葉 を こ と ご と く 聞 い
しゅ みみ つ しゅ い かれ こえ
て、それを主の耳に告げた。 二二主はサムエルに言われた、
﹁彼らの声に
き したが かれ おう た ひとびと
聞き従い、彼らのために王を立てよ﹂。サムエルはイスラエルの人々に
い まち かえ
言った、﹁あなたがたは、めいめいその町に帰りなさい﹂。
第九章
ひと な ゆうふく ひと
一さて、ベニヤミンの人で、キシという名の裕福な人があった。キシは
こ こ こ
アビエルの子、アビエルはゼロルの子、ゼロルはベコラテの子、ベコラ

テはアピヤの子、アピヤはベニヤミンびとである。 二キシにはサウルと
な こ わか うるわ ひとびと かれ
いう名の子があった。若くて麗しく、イスラエルの人々のうちに彼より
サムエル記上

うるわ ひと たみ かた うえ せ たか
も麗しい人はなく、民のだれよりも肩から上、背が高かった。
ちち すうとう こ
三サウルの父キシの数頭のろばがいなくなった。そこでキシは、その子
い つ た い さが
サウルに言った、
﹁しもべをひとり連れて、立って行き、ろばを捜してき

31
さんち とお
なさい﹂。 四そこでふたりはエフライムの山地を通りすぎ、シャリシャ
ち とお す みあた ち とお す
の地を通り過ぎたけれども見当らず、シャリムの地を通り過ぎたけれど
ち とお す みあた
もおらず、ベニヤミンの地を通り過ぎたけれども見当らなかった。
かれ ち とき つ い
彼らがツフの地にきた時、サウルは連れてきたしもべに言った、﹁さ

かえ ちち しんぱい
あ、帰ろう。父は、ろばのことよりも、われわれのことを心配するだろ
い まち かみ ひと
う﹂。 六ところが、しもべは言った、﹁この町には神の人がおられます。
たっと ひと い ところ
尊い人で、その言われることはみなそのとおりになります。その所へ
い で たび なに しめ
行きましょう。われわれの出てきた旅のことについて何か示されるで
い い ひと
しょう﹂。 七サウルはしもべに言った、
﹁しかし行くのであれば、その人
なに おく ふくろ かみ ひと も おく
に何を贈ろうか。 袋のパンはもはや、なくなり、神の人に持っていく贈
もの なに こた
り物がない。何かありますか﹂。 八しもべは、またサウルに答えた、
﹁わ
て ぶん ぎん かみ ひと
サムエル記上

たしの手に四分の一シケルの銀があります。わたしはこれを、神の人に
あた みち しめ むかし
与えて、われわれの道を示してもらいましょう﹂。 九︱︱昔 イスラエル
かみ と い とき い せんけんしゃ
では、神に問うために行く時には、こう言った、﹁さあ、われわれは先見者

32
い いま よげんしゃ むかし せんけんしゃ
のところへ行こう﹂。今の預言者は、 昔は先見者といわれていたのであ
い よ い
る。︱︱ 一〇 サ ウ ル は そ の し も べ に 言 っ た、﹁そ れ は 良 い。さ あ、行 こ
かれ かみ ひと まち い
う﹂。こうして彼らは、神の人のいるその町へ行った。
かれ まち い さか のぼ とき みず で
一一 彼らは町へ行く坂を上っている時、水をくむために出てくるおとめ
で あ かれ い せんけんしゃ
たちに出会ったので、彼らに言った、﹁先見者はここにおられますか﹂。 一
こた さき いそ
おとめたちは答えた、
二 ﹁おられます。ごらんなさい、この先です。急い
い たみ たか ところ ぎせい いま まち
で行きなさい。民がきょう高き所で犠牲をささげるので、たった今、町
まち
にこられたところです。 一三あなたがたは、町にはいるとすぐ、あのかた
たか ところ のぼ しょくじ まえ あ たみ
が高き所に上って食事される前に会えるでしょう。民はそのかたがこ
しょくじ ぎせい しゅくふく まね
られるまでは食事をしません。あのかたが犠牲を祝 福されてから、招
ひとびと しょくじ のぼ あ
かれた人々が食事をするのです。さあ、上っていきなさい。すぐに会え
かれ まち のぼ まち なか
サムエル記上

るでしょう﹂。 一四こうして彼らは町に上っていった。そして町の中に、
とき たか ところ のぼ かれ む
はいろうとした時、サムエルは高き所に上るため彼らのほうに向かって

出てきた。

33
く にちまえ しゅ みみ つ い
一五 さてサウルが来る一日前に、主はサムエルの耳に告げて言われた、 一
いま ところ ち ひと
六﹁あすの今ごろ、あなたの所に、ベニヤミンの地から、ひとりの人を
ひと あぶら そそ たみ
つかわすであろう。あなたはその人に油を注いで、わたしの民イスラエ
きみ かれ たみ て すく だ
ルの君としなさい。彼はわたしの民をペリシテびとの手から救い出す
たみ さけ とど なや かえり
であろう。わたしの民の叫びがわたしに届き、わたしがその悩みを顧み
み とき しゅ い み
るからである﹂。 一七サムエルがサウルを見た時、主は言われた、
﹁見よ、
い ひと ひと たみ おさ
わたしの言ったのはこの人である。この人がわたしの民を治めるであ
もん なか ちか い
ろ う﹂。 一 八そ の と き サ ウ ル は、門 の 中 で サ ム エ ル に 近 づ い て 言 っ た、
せんけんしゃ いえ おし
﹁先見者の家はどこですか。どうか教えてください﹂。 一九サムエルはサ
こた せんけんしゃ まえ い たか ところ
ウルに答えた、﹁わたしがその先見者です。わたしの前に行って、高き所
のぼ いっしょ しょくじ
に上りなさい。あなたがたは、きょう、わたしと一緒に食事しなさい。
あさ かえ こころ しめ
サムエル記上

わたしはあすの朝あなたを帰らせ、あなたの心にあることをみな示しま
か まえ み
しょう。 二〇三日前に、いなくなったあなたのろばは、もはや見つかった
こころ のぞ
ので心にかけなくてもよろしい。しかしイスラエルのすべての望まし

34
ちち いえ
きものはだれのものですか。それはあなたのもの、あなたの父の家のす
ひと こた
べての人のものではありませんか﹂。 二一サウルは答えた、﹁わたしはイ
もっと ちい ぶぞく
スラエルのうちの最も小さい部族のベニヤミンびとであって、わたしの
いちぞく いちぞく いや
一族はまたベニヤミンのどの一族よりも卑しいものではありませんか。

どうしてあなたは、そのようなことをわたしに言われるのですか﹂。
みちび まね
二二 サムエルはサウルとそのしもべを導いて、へやにはいり、招かれた三
にん かみざ りょうりにん
十 人 ほ ど の う ち の 上座 に す わ ら せ た。 二 三そ し て サ ム エ ル は 料理人 に
い わた と い ぶん
言った、﹁あなたに渡して、取りのけておくようにと言っておいた分を
も りょうりにん うえ ぶぶん と あ
持ってきなさい﹂。 二四料理人は、ももとその上の部分を取り上げて、そ
まえ お い
れをサウルの前に置いた。そしてサムエルは言った、﹁ごらんなさい。
と もの まえ お め
取っておいた物が、あなたの前に置かれています。召しあがってくださ
きゃくじん いっしょ しょくじ とき
サムエル記上

い。あなたが客 人たちと一緒に食事ができるように、この時まで、あな

たのために取っておいたものです﹂。
ひ いっしょ しょくじ かれ
こうしてサウルはその日サムエルと一緒に食事をした。 二五そして彼ら

35
たか ところ くだ まち とき おくじょう とこ もう
が高き所を下って町にはいった時、サウルのために屋 上に床が設けら
かれ うえ み よこ ね よ あ
れ、彼はその上に身を横たえて寝た。 二六そして夜明けになって、サムエ
おくじょう よ い お おく
ルは屋 上のサウルに呼ばわって言った、
﹁起きなさい。あなたをお送り
お あ
し ま す﹂。サ ウ ル は 起 き 上 が っ た。そ し て サ ウ ル と サ ム エ ル の ふ た り
とも そと で
は、共に外に出た。
かれ まち くだ とき い
二七 彼らが町はずれに下った時、サムエルはサウルに言った、
﹁あなたの
さき い い さき い
しもべに先に行くように言いなさい。しもべが先に行ったら、あなた
た かみ ことば し
は、しばらくここに立ちとどまってください。神の言葉を知らせましょ
う﹂。
第一〇章
サムエル記上

とき あぶら と あたま そそ かれ くち
一その時サムエルは油のびんを取って、サウルの頭に注ぎ、彼に口づけ
い しゅ あぶら そそ たみ きみ
して言った、﹁主はあなたに油を注いで、その民イスラエルの君とされた

36
しゅ たみ おさ しゅうい てき て かれ すく
ではありませんか。あなたは主の民を治め、周囲の敵の手から彼らを救
しゅ あぶら そそ し ぎょう きみ
わなければならない。主があなたに油を注いで、その嗣 業の君とされ
つぎ はな
たことの、しるしは次のとおりです。 二あなたがきょう、わたしを離れ
さ い りょうち はか
て、去って行くとき、ベニヤミンの領地のゼルザにあるラケルの墓のか
ひと あ かれ い
たわらで、ふたりの人に会うでしょう。そして彼らはあなたに言いま
さが い み ちちうえ
す、﹃あなたが捜しに行かれたろばは見つかりました。いま父上は、ろば
こと しんぱい こ
よりもあなたがたの事を心配して、﹁わが子のことは、どうしよう﹂と
い すす
言っておられます﹄。 三あなたが、そこからなお進んで、タボルのかしの
き ところ い のぼ かみ おが にん もの あ
木の所へ行くと、そこでベテルに上って神を拝もうとする三人の者に会
とう こ つ たずさ
うでしょう。ひとりは三頭の子やぎを連れ、ひとりは三つのパンを携
しゅ かわぶくろ たずさ かれ
え、ひとりは、ぶどう酒のはいった皮 袋 一つを携えている。 四彼らはあ
サムエル記上

なたにあいさつし、二つのパンをくれるでしょう。あなたはそれを、そ
て う のち かみ い
の 手 か ら 受 け な け れ ば な ら な い。 五そ の 後、あ な た は 神 の ギ ベ ア へ 行
し ゅ び へい ところ ところ
く。そこはペリシテびとの守備兵のいる所である。あなたはその所へ

37
い まち とき たてごと て つづみ ふえ こと と ひとびと さき い
行って、町にはいる時、立琴、手 鼓、笛、琴を執る人々を先に行かせて、
よげん たか ところ ふ いちぐん よげんしゃ あ
預言 し な が ら 高 き 所 か ら 降 り て く る 一群 の 預言者 に 会 う で し ょ う。 六
とき しゅ れい うえ くだ かれ いっしょ
その時、主の霊があなたの上にもはげしく下って、あなたは彼らと一緒
よげん かわ あたら ひと
に預言し、変って新しい人となるでしょう。 七これらのしるしが、あな
み た て あ
たの身に起ったならば、あなたは手当たりしだいになんでもしなさい。
かみ いっしょ さきだ
神 が あ な た と 一緒 に お ら れ る か ら で す。 八あ な た は わ た し に 先立 っ て
くだ くだ
ギ ル ガ ル に 下 ら な け れ ば な ら な い。わ た し は あ な た の も と に 下 っ て
はんさい そな しゅうおんさい
いって、燔祭を供え、酬 恩 祭をささげるでしょう。わたしがあなたのも
い こと しめ なぬか
とに行って、あなたのしなければならない事をあなたに示すまで、七日

のあいだ待たなければならない﹂。
せ はな かみ かれ あたら こころ あた
九サウルが背をかえしてサムエルを離れたとき、神は彼に新しい心を与
みな ひ た かれ
サムエル記上

えられた。これらのしるしは皆その日に起った。 一〇彼らはギベアにき
とき よげんしゃ いちぐん で あ かみ れい うえ
た時、預言者の一群に出会った。そして神の霊が、はげしくサウルの上
くだ かれ かれ よげん し
に下り、彼は彼らのうちにいて預言した。 一一もとからサウルを知って

38
ひとびと よげんしゃ とも よげん み たがい い
いた人々はみな、サウルが預言者たちと共に預言するのを見て互に言っ
こ なにごと た よげんしゃ
た、﹁キシの子に何事が起ったのか。サウルもまた預言者たちのうちに
ところ もの こた かれ ちち
い る の か﹂。 一 二そ の 所 の ひ と り の 者 が 答 え た、﹁彼 ら の 父 は だ れ な の
よげんしゃ
か﹂。それで﹁サウルもまた預言者たちのうちにいるのか﹂というのが、
よげん お たか ところ い
ことわざとなった。 一三サウルは預言することを終えて、高き所へ行っ
た。

一四 サウルのおじが、サウルとそのしもべとに言った、﹁あなたがたは、ど
い い さが
こへ行ったのか﹂。サウルは言った、
﹁ろばを捜しにいったのですが、ど

こにもいないので、サムエルのもとに行きました﹂。 一五サウルのおじは
い い はな
言った、
﹁サムエルが、どんなことを言ったか、どうぞ話してください﹂。
い み
一六 サウルはおじに言った、
﹁ろばが見つかったと、はっきり、わたした
い い おうこく
サムエル記上

ちに言いました﹂。しかしサムエルが言った王国のことについて、おじ
なに つ
には何も告げなかった。
たみ しゅ まえ あつ ひとびと
一七 さて、サムエルは民をミヅパで主の前に集め、 一八イスラエルの人々

39
い かみ しゅ おお
に言った、
﹁イスラエルの神、主はこう仰せられる、
﹃わたしはイスラエ
みちび だ て
ルをエジプトから導き出し、あなたがたをエジプトびとの手、およびす
おうこく て すく だ
べ て あ な た が た を し え た げ る 王国 の 手 か ら 救 い 出 し た﹄。 一九し か し あ
なや くる なか すく
なたがたは、きょう、あなたがたをその悩みと苦しみの中から救われる
かみ す うえ うえ おう た
あなたがたの神を捨て、その上、
﹃いいえ、われわれの上に王を立てよ﹄
い いま ぶぞく しぞく
と言う。それゆえ今、あなたがたは、部族にしたがい、また氏族にした
しゅ まえ で
がって、主の前に出なさい﹂。
ぶぞく よ よ とき
二〇こうしてサムエルがイスラエルのすべての部族を呼び寄せた時、ベ
ぶぞく あた ぶぞく
ニ ヤ ミ ン の 部族 が、く じ に 当 っ た。 二 一ま た ベ ニ ヤ ミ ン の 部族 を そ の
しぞく よ よ とき しぞく あた
氏族にしたがって呼び寄せた時、マテリの氏族が、くじに当り、マテリ
しぞく ひと よ よ とき こ あた
の氏族を人ごとに呼び寄せた時、キシの子サウルが、くじに当った。し
ひとびと かれ さが とき み しゅ
サムエル記上

かし人々が彼を捜した時、見つからなかった。 二二そこでまた主に﹁その
ひと と しゅ い かれ にもつ あいだ
人はここにきているのですか﹂と問うと、主は言われた、
﹁彼は荷物の間
かく ひとびと はし い かれ つ かれ
に隠れている﹂。 二三人々は走って行って、彼をそこから連れてきた。彼

40
たみ なか た かた うえ たみ ひと たか
は民の中に立ったが、肩から上は、民のどの人よりも高かった。 二四サム
たみ い しゅ えら ひと たみ
エルはすべての民に言った、﹁主が選ばれた人をごらんなさい。民のう
かれ ひと たみ おうばんざい さけ
ちに彼のような人はないではありませんか﹂。民はみな﹁王万歳﹂と叫ん
だ。
とき おうこく たみ かた しょ
二五 その時サムエルは王国のならわしを民に語り、それを書にしるして、
しゅ まえ たみ いえ かえ
主の前におさめた。こうしてサムエルはすべての民をそれぞれ家に帰
かれ いえ かえ かみ
らせた。 二六サウルもまたギベアにある彼の家に帰った。そして神にそ
こころ うご ゆうし かれ とも い
の心を動かされた勇士たちも彼と共に行った。 二七しかし、よこしまな
ひとびと おとこ すく い かれ
人々は﹁この男がどうしてわれわれを救うことができよう﹂と言って、彼
かろ おく もの だま
を軽んじ、贈り物をしなかった。しかしサウルは黙っていた。
サムエル記上

第一一章
のぼ せ かこ
アンモンびとナハシは上ってきて、ヤベシ・ギレアデを攻め囲んだ。

41
ひとびと い けいやく むす
ヤベシの人々はナハシに言った、﹁われわれと契約を結びなさい。そう
つか
すればわれわれはあなたに仕えます﹂。 二しかしアンモンびとナハシは
かれ い つぎ じょうけん けいやく むす
彼らに言った、
﹁次の条 件であなたがたと契約を結ぼう。すなわち、わ
みぎ め と ぜん
たしが、あなたがたすべての右の目をえぐり取って、全イスラエルをは
ちょうろう かれ い
ずかしめるということだ﹂。 三ヤベシの長 老たちは彼に言った、
﹁われわ
なぬか ゆうよ あた ぜんりょうど し しゃ おく ゆる
れに七日の猶予を与え、イスラエルの全領土に使者を送ることを許して
すく もの とき こうふく
ください。そしてもしわれわれを救う者がない時は降伏します﹂。 四こ
し しゃ こと たみ みみ つ たみ
うして使者が、サウルのギベアにきて、この事を民の耳に告げたので、民
こえ な
はみな声をあげて泣いた。
とき はたけ うし い
その時サウルは畑から牛のあとについてきた。そしてサウルは言っ

たみ な ひとびと かれ ひとびと
た、
﹁民が泣いているのは、どうしたのか﹂。人々は彼にヤベシの人々の
こと つ ことば き とき かみ れい はげ かれ うえ
サムエル記上

事を告げた。 六サウルがこの言葉を聞いた時、神の霊が激しく彼の上に
のぞ かれ いか も かれ うし
臨んだので、彼の怒りははなはだしく燃えた。 七彼は一くびきの牛をと
き さ し しゃ て ぜんりょうど おく い
り、それを切り裂き、使者の手によってイスラエルの全領土に送って言

42
したが で もの
わせた、
﹁だれであってもサウルとサムエルとに従 って出ない者は、そ
うし たみ しゅ おそ
の牛がこのようにされるであろう﹂。民は主を恐れて、ひとりのように
で かぞ ひとびと
出てきた。 八サウルはベゼクでそれを数えたが、イスラエルの人々は三
ひとびと ひとびと し しゃ
十 万、ユ ダ の 人々 は 三 万 で あ っ た。 九そ し て 人々 は、き た 使者 た ち に
い ひと い ひ あつ
言った、﹁ヤベシ・ギレアデの人にこう言いなさい、﹃あす、日の暑くな
すくい え し しゃ かえ
るころ、あなたがたは救を得るであろう﹄と﹂。使者が帰って、ヤベシの
ひとびと つ かれ よろこ ひとびと い
人々 に 告 げ た の で、彼 ら は 喜 ん だ。 一〇そ こ で ヤ ベ シ の 人々 は 言 っ た、
こうふく よ おも
﹁あす、われわれは降伏します。なんでも、あなたがたが良いと思うこと
あ ひ たみ ぶたい
を、われわれにしてください﹂。 一一明くる日、サウルは民を三つの部隊
わ てき じんえい せ い ひ あつ
に分け、あかつきに敵の陣営に攻め入り、日の暑くなるころまで、アン
ころ い のこ もの いっしょ
モンびとを殺した。生き残った者はちりぢりになって、ふたり一緒にい
サムエル記上

るものはなかった。
とき たみ い
一二 その時、民はサムエルに言った、
﹁さきに、
﹃サウルがどうしてわれわ
おさ い
れを治めることができようか﹄と言ったものはだれでしょうか。その

43
ひとびと ひ だ ひとびと ころ
人々 を 引 き 出 し て く だ さ い。わ れ わ れ は そ の 人々 を 殺 し ま す﹂。 一三し
い しゅ すくい ほどこ
かしサウルは言った、﹁主はきょう、イスラエルに救を施されたのですか
ひと ころ たみ い
ら、きょうは人を殺してはなりません﹂。 一四そこでサムエルは民に言っ
い おうこく いっしん
た、
﹁さあ、ギルガルへ行って、あそこで王国を一新しよう﹂。 一五こうし
たみ い ところ しゅ まえ おう
て 民 は み な ギ ル ガ ル へ 行 っ て、そ の 所 で 主 の 前 に サ ウ ル を 王 と し、
しゅうおんさい しゅ まえ ひとびと みな ところ おお
酬 恩 祭を主の前にささげ、サウルとイスラエルの人々は皆、その所で大
いわ
いに祝った。
第一二章
ひとびと い み
一サムエルはイスラエルの人々に言った、
﹁見よ、わたしは、あなたがた
サムエル記上

ことば き したが うえ おう た み おう いま
の言葉に聞き従 って、あなたがたの上に王を立てた。 二見よ王は今、あ
まえ あゆ としお かみ しろ こ
なたがたの前に歩む。わたしは年老いて髪は白くなった。わたしの子
とも わか とき
らもあなたがたと共にいる。わたしは若い時から、きょうまで、あなた

44
まえ あゆ しゅ まえ あぶら
がたの前に歩んだ。 三わたしはここにいる。主の前と、その油そそがれ
もの まえ うった うし と
た者の前に、わたしを訴えよ。わたしが、だれの牛を取ったか。だれの
と あざむ て
ろばを取ったか。だれを欺いたか。だれをしえたげたか。だれの手か
と じぶん め
ら、まいないを取って、自分の目をくらましたか。もしそのようなこと
つぐな かれ い
があれば、わたしはそれを、あなたがたに償おう﹂。 四彼らは言った、
﹁あ
あざむ
なたは、われわれを欺いたことも、しえたげたこともありません。また
ひと て なに と かれ い
人 の 手 か ら 何 も 取 っ た こ と は あ り ま せ ん﹂。 五サ ム エ ル は 彼 ら に 言 っ
て ふせい み
た、
﹁あなたがたが、わたしの手のうちに、なんの不正をも見いださない
しゅ あぶら もの
ことを、主はあなたがたにあかしされる。その油そそがれた者も、きょ
かれ い
うそれをあかしする﹂。彼らは言った、﹁あかしされます﹂。
たみ い た せんぞ
六サムエルは民に言った、
﹁モーセとアロンを立てて、あなたがたの先祖
ち みちび だ しゅ しょうにん
サムエル記上

をエジプトの地から導き出された主が証 人です。 七それゆえ、あなたが


いま た しゅ せんぞ
たは今、立ちなさい。わたしは主が、あなたがたとあなたがたの先祖の
おこな すくい しゅ まえ ろん
ために行われたすべての救のわざについて、主の前に、あなたがたと論

45
い かれ
じよう。 八ヤコブがエジプトに行って、エジプトびとが、彼らを、しえ
とき せんぞ しゅ よ しゅ
たげた時、あなたがたの先祖は主に呼ばわったので、主はモーセとアロ
かれ せんぞ みちび
ンをつかわされた。そこで彼らは、あなたがたの先祖をエジプトから導
だ ところ す かれ かみ しゅ わす
き出して、この所に住まわせた。 九しかし、彼らがその神、主を忘れた
しゅ かれ おう ぐん ちょう て わた
ので、主は彼らをハゾルの王ヤビンの軍の長 シセラの手に渡し、またペ
て おう て かれ
リシテびとの手とモアブの王の手にわたされた。そこで彼らがイスラ
せ たみ しゅ よ い しゅ す
エルを攻めたので、 一〇民は主に呼ばわって言った、
﹃われわれは主を捨
つか つみ おか いま てき
て、バアルとアシタロテに仕えて、罪を犯しました。今、われわれを敵
て すく だ つか しゅ
の 手 か ら 救 い 出 し て く だ さ い。わ れ わ れ は あ な た に 仕 え ま す﹄。 一一主
はエルバアルとバラクとエフタとサムエルをつかわして、あなたがたを
しゅうい てき て すく だ やす す
周囲の敵の手から救い出されたので、あなたがたは安らかに住むことが
おう せ み
サムエル記上

できた。 一二ところが、アンモンびとの王ナハシが攻めてくるのを見た
かみ しゅ おう
とき、あなたがたの神、主があなたがたの王であるのに、あなたがたは
おさ おう い
わたしに、﹃いいえ、われわれを治める王がなければならない﹄と言った。

46
いま えら おう もと おう み
それゆえ、今あなたがたの選んだ王、あなたがたが求めた王を見なさ
一三
しゅ うえ おう た しゅ
い。主はあなたがたの上に王を立てられた。 一四もし、あなたがたが主
おそ しゅ つか こえ き したが しゅ いまし
を恐れ、主に仕えて、その声に聞き従い、主の戒めにそむかず、あなた
おさ おう とも かみ しゅ したが
がたも、あなたがたを治める王も共に、あなたがたの神、主に従うなら
よ しゅ こえ き したが しゅ
ば、それで良い。 一五しかし、もしあなたがたが主の声に聞き従わず、主
いまし しゅ て おう せ
の戒めにそむくならば、主の手は、あなたがたとあなたがたの王を攻め
いま た しゅ
るであろう。 一六それゆえ、今、あなたがたは立って、主が、あなたがた
め まえ おこな おお こと み こ む ぎ かり
の目の前で行われる、この大いなる事を見なさい。 一七きょうは小麦刈
とき しゅ よ しゅ かみなり
の時ではないか。わたしは主に呼ばわるであろう。そのとき主は雷と
あめ くだ おう もと しゅ まえ おか つみ おお
雨を下して、あなたがたが王を求めて、主の前に犯した罪の大いなるこ
み し しゅ よ
とを見させ、また知らせられるであろう﹂。 一八そしてサムエルが主に呼
しゅ ひ かみなり あめ くだ たみ みな しゅ
サムエル記上

ばわったので、主はその日、 雷と雨を下された。民は皆ひじょうに主と
おそ
サムエルとを恐れた。
たみ い かみ しゅ
民はみなサムエルに言った、
一九 ﹁しもべらのために、あなたの神、主に

47
いの し
祈って、われわれの死なないようにしてください。われわれは、もろも
つみ おか うえ おう もと あく くわ
ろの罪を犯した上に、また王を求めて、悪を加えました﹂。 二〇サムエル
たみ い おそ あく
は民に言った、﹁恐れることはない。あなたがたは、このすべての悪をお
しゅ したが こころ しゅ つか
こなった。しかし主に従うことをやめず、 心をつくして主に仕えなさ
もの まよ い
い。 二一むなしい物に迷って行ってはならない。それは、あなたがたを
たす すく しゅ
助 け る こ と も 救 う こ と も で き な い む な し い も の だ か ら で あ る。 二二主
おお な たみ す しゅ
は、その大いなる名のゆえに、その民を捨てられないであろう。主が、あ
じぶん たみ よ
な た が た を 自分 の 民 と す る こ と を 良 し と さ れ る か ら で あ る。 二三ま た、
いの しゅ つみ おか
わたしは、あなたがたのために祈ることをやめて主に罪を犯すことは、
よ ただ みち
けっしてしないであろう。わたしはまた良い、正しい道を、あなたがた
おし しゅ おそ こころ
に教えるであろう。 二四あなたがたは、ただ主を恐れ、 心をつくして、
せいじつ しゅ つか しゅ おお
サムエル記上

誠実に主に仕えなければならない。そして主がどんなに大きいことを
かんが
あなたがたのためにされたかを考えなければならない。 二五しかし、あ
あく おこな おう
なたがたが、なおも悪を行うならば、あなたがたも、あなたがたの王も、

48
とも ほろ
共に滅ぼされるであろう﹂。
第一三章
さい おう くらい ねん おさ
サウルは三十歳で王の位につき、二年イスラエルを治めた。

えら とも
さてサウルはイスラエルびと三千を選んだ。二千はサウルと共にミ

さんち とも
クマシ、およびベテルの山地におり、一千はヨナタンと共にベニヤミン
た たみ てんまく かえ
のギベアにいた。サウルはその他の民を、おのおの、その天幕に帰らせ
し ゅ び へい やぶ
た。 三ヨナタンは、ゲバにあるペリシテびとの守備兵を敗った。ペリシ
き くにぢゅう つのぶえ
テびとはそのことを聞いた。そこで、サウルは国 中に、あまねく角笛を
ふ い き ひと みな
吹きならして言わせた、
﹁ヘブルびとよ、聞け﹂。 四イスラエルの人は皆、
サムエル記上

し ゅ び へい やぶ
サウルがペリシテびとの守備兵を敗ったこと、そしてイスラエルがペリ
にく き たみ め
シテびとに憎まれるようになったことを聞いた。こうして民は召され
あつ
て、ギルガルのサウルのもとに集まった。

49
たたか あつ せんしゃ きへい
五ペリシテびとはイスラエルと戦うために集まった。戦車三千、騎兵六
たみ はま すな おお かれ のぼ
千、民は浜べの砂のように多かった。彼らは上ってきて、ベテアベンの
ひがし じん は あっぱく
東 の ミ ク マ シ に 陣 を 張 っ た。 六イ ス ラ エ ル び と は、ひ ど く 圧迫 さ れ、
みかた あやう み あな たてあな いわ はか いけ
味方が危くなったのを見て、ほら穴に、縦穴に、岩に、墓に、ため池に
み かく わた
身を隠した。 七また、あるヘブルびとはヨルダンを渡って、ガドとギレ
ち い たみ
アデの地へ行った。しかしサウルはなおギルガルにいて、民はみな、ふ
かれ したが
るえながら彼に従 った。
さだ なぬか ま
八サウルは、サムエルが定めたように、七日のあいだ待ったが、サムエ
たみ かれ はな ち い
ルがギルガルにこなかったので、民は彼を離れて散って行った。 九そこ
い はんさい しゅうおんさい ところ も
で サ ウ ル は 言 っ た、﹁燔祭 と 酬 恩 祭 を わ た し の 所 に 持 っ て き な さ い﹂。
かれ はんさい はんさい おわ
こうして彼は燔祭をささげた。 一〇その燔祭をささげ終ると、サムエル
かれ むか で とき
サムエル記上

がきた。サウルはあいさつをしようと、彼を迎えに出た。 一一その時サ
い なに い たみ
ムエルは言った、﹁あなたは何をしたのですか﹂。サウルは言った、﹁民は
はな ち い さだ ひ
わたしを離れて散って行き、あなたは定まった日のうちにこられないの

50
あつ み
に、ペリシテびとがミクマシに集まったのを見たので、 一二わたしは、ペ
いま くだ おそ し
リシテびとが今にも、ギルガルに下ってきて、わたしを襲うかも知れな
しゅ めぐ もと おも
いのに、わたしはまだ主の恵みを求めることをしていないと思い、やむ
え はんさい い
を得ず燔祭をささげました﹂。 一三サムエルはサウルに言った、﹁あなた
おろ かみ しゅ めい めいれい まも
は愚かなことをした。あなたは、あなたの神、主の命じられた命令を守
まも しゅ いま おうこく なが
らなかった。もし守ったならば、主は今あなたの王国を長くイスラエル
うえ かくほ いま おうこく つづ
の上に確保されたであろう。 一四しかし今は、あなたの王国は続かない
しゅ じぶん こころ ひと もと ひと たみ きみ
であろう。主は自分の心にかなう人を求めて、その人に民の君となるこ
めい しゅ めい こと まも
とを命じられた。あなたが主の命じられた事を守らなかったからであ

る﹂。 一五こうしてサムエルは立って、ギルガルからベニヤミンのギベア
のぼ
に上っていった。
とも たみ かぞ にん
サムエル記上

サウルは共にいる民を数えてみたが、おおよそ六百人あった。 一六サウ
こ とも たみ
ルとその子ヨナタン、ならびに、共にいる民は、ベニヤミンのゲバにお
じん は
り、ペリシテびとはミクマシに陣を張っていた。 一七そしてペリシテび

51
じん ぶたい りゃくだつたい で ぶ たい
との陣から三つの部隊にわかれた略 奪 隊が出てきて、一部隊はオフラ
ほう む ち い ぶ たい ほう む
の方に向かって、シュアルの地に行き、一八一部隊はベテホロンの方に向
ぶ たい あらの ほう たに み さかい ほう む
かい、一部隊は荒野の方のゼボイムの谷を見おろす境の方に向かった。
ち てっこう
そのころ、イスラエルの地にはどこにも鉄工がいなかった。ペリシ
一九
つく い
テびとが﹁ヘブルびとはつるぎも、やりも造ってはならない﹂と言った
ひと みな
からである。 二〇ただしイスラエルの人は皆、そのすきざき、くわ、おの、
は ところ くだ い
かまに刃をつけるときは、ペリシテびとの所へ下って行った。 二一すき
りょうきん は
ざきと、くわのための料 金は一ピムであり、おのに刃をつけるのと、と
なお ぶん たたか
げのあるむちを直すのは三分の一シケルであった。 二二それでこの戦い
ひ とも たみ て
の日には、サウルおよびヨナタンと共にいた民の手には、つるぎもやり
こ も
もなく、ただサウルとその子ヨナタンとがそれを持っていた。 二三ペリ
せんじん わた すす で
サムエル記上

シテびとの先陣はミクマシの渡りに進み出た。

52
第一四章
ひ こ ぶ き と わかもの
一ある日、サウルの子ヨナタンは、その武器を執る若者に﹁さあ、われ
む がわ せんじん わた い い
われは向こう側の、ペリシテびとの先陣へ渡って行こう﹂と言った。し
ちち つ
かしヨナタンは父には告げなかった。 二サウルはギベアのはずれで、ミ
き した とも たみ
グロンにある、ざくろの木の下にとどまっていたが、共にいた民はおお
にん み つ とも
よ そ 六 百 人 で あ っ た。 三ま た ア ヒ ヤ は エ ポ デ を 身 に 着 け て 共 に い た。
こ きょうだい
アヒヤはアヒトブの子、アヒトブはイカボデの兄 弟、イカボデはピネハ
こ しゅ さいし こ たみ
スの子、ピネハスはシロにおいて主の祭司であったエリの子である。民
で し
は ヨ ナ タ ン が 出 か け る こ と を 知 ら な か っ た。 四ヨ ナ タ ン が ペ リ シ テ び
せんじん わた い わた いっぽう けわ いわ たほう
との先陣に渡って行こうとする渡りには、一方に険しい岩があり、他方
けわ いわ いっぽう な たほう な
サムエル記上

にも険しい岩があり、一方の名をボゼヅといい、他方の名をセネといっ
いわ まえ きた まえ
た。 五岩 の 一 つ は ミ ク マ シ の 前 に あ っ て 北 に あ り、一 つ は ゲ バ の 前 に
みなみ
あって南にあった。

53
ぶ き と わかもの い
六ヨナタンはその武器を執る若者に言った、﹁さあ、われわれは、この
かつれい もの せんじん わた い しゅ なに おこな
割礼なき者どもの先陣へ渡って行こう。主がわれわれのために何か行
おお ひと すく すく ひと すく
われるであろう。多くの人をもって救うのも、少ない人をもって救うの
しゅ さまた ぶ き と もの かれ
も、主にとっては、なんの妨げもないからである﹂。 七武器を執る者は彼
い のぞ いっしょ
に言った、﹁あなたの望みどおりにしなさい。わたしは一緒にいます。
おな こころ い
わ た し は あ な た と 同 じ 心 で す﹂。 八ヨ ナ タ ン は ま た 言 っ た、﹁わ れ わ れ
ひとびと ところ わた かれ み あらわ
は、あの人々の所に渡っていって、彼らに身を現そう。 九そして、もし
かれ い ま い
彼らがわれわれに、
﹃こちらから行くまで待て﹄と言うならば、われわれ
ば かれ ところ のぼ
はその場にとどまり、彼らの所に上っていかないであろう。 一〇しかし、
かれ のぼ い
もし彼らが﹃われわれのところへ上ってこい﹄と言うならば、われわれ
のぼ い しゅ かれ て わた
は上って行こう。主が彼らをわれわれの手に渡されるからである。こ
サムエル記上

れ を も っ て し る し と し よ う﹂。 一 一こ う し て ふ た り は ペ リ シ テ び と の
せんじん み あらわ い み
先陣に、その身を現したので、ペリシテびとは言った、
﹁見よ、ヘブルび
かく あな で せんじん ひとびと
とが、隠れていた穴から出てくる﹂。 一二先陣の人々はヨナタンと、その

54
ぶ き と もの さけ い のぼ め
武器を執る者に叫んで言った、﹁われわれのところに上ってこい。目に、
み ぶ き と もの い
もの見せてくれよう﹂。ヨナタンは、その武器を執る者に言った、
﹁わた
のぼ しゅ かれ て わた
しのあとについて上ってきなさい。主は彼らをイスラエルの手に渡さ
のぼ ぶ き と もの
れたのだ﹂。 一三そしてヨナタンはよじ登り、武器を執る者もそのあとに
のぼ まえ たお ぶ き と もの
ついて登った。ペリシテびとはヨナタンの前に倒れた。武器を執る者
ころ
も、あ と に つ い て い っ て ペ リ シ テ び と を 殺 し た。 一 四ヨ ナ タ ン と そ の
ぶ き と もの てはじ ころ にん
武器を執る者とが、手始めに殺したものは、おおよそ二十人であって、こ
うし たがや はたけ はんぶん うち おこな
のことは一くびきの牛の耕す畑のおおよそ半分の内で行われた。 一五そ
じんえい もの の たみ きょうふ おそ
して陣営にいる者、野にいるもの、およびすべての民は恐怖に襲われ、
せんじん りゃくだつたい おそ ち ふる うご
先陣のもの、および略 奪 隊までも、恐れおののいた。また地は震い動
ひじょう おお きょうふ
き、非常に大きな恐怖となった。
ばんぺい み
サムエル記上

一六 ベニヤミンのギベアにいたサウルの番兵たちが見ると、ペリシテび
ぐんしゅう うおうさおう とき とも
との群 衆はくずれて右往左往していた。 一七その時サウルは、共にいる
たみ い にんずう しら で い み
民に言った、﹁人数を調べて、われわれのうちのだれが出て行ったかを見

55
にんずう しら ぶ き と もの
よ﹂。人数を調べたところ、ヨナタンとその武器を執る者とがそこにい
い も
なかった。 一八サウルはアヒヤに言った、
﹁エポデをここに持ってきなさ
とき ひとびと まえ み つ
い﹂。その時、アヒヤはイスラエルの人々の前でエポデを身に着けてい
さいし かた あいだ
たからである。 一九サウルが祭司に語っている間にも、ペリシテびとの
じんえい さわ おお さいし い て
陣営の騒ぎはますます大きくなったので、サウルは祭司に言った、﹁手を
ひ とも たみ みな あつ たたか
引きなさい﹂。 二〇こうしてサウルおよび共にいる民は皆、集まって戦い
で どうし う ひじょう おお
に出た。ペリシテびとはつるぎをもって同志打ちしたので、非常に大き
こんらん さき とも かれ とも
な 混乱 と な っ た。 二 一ま た 先 に ペ リ シ テ び と と 共 に い て、彼 ら と 共 に
じんえい ひるがえ とも
陣営にきていたヘブルびとたちも、 翻 ってサウルおよびヨナタンと共
さんち
にいるイスラエルびとにつくようになった。 二二またエフライムの山地
み かく みな に き
に身を隠していたイスラエルびとたちも皆、ペリシテびとが逃げると聞
かれ たたか で ついげき しゅ ひ
サムエル記上

いて、彼らもまた戦いに出て、それを追撃した。 二三こうして主はその日
すく たたか うつ
イスラエルを救われた。そして戦いはベテアベンに移った。
ひ ひとびと くる たみ ちか
二四 しかしその日イスラエルの人々は苦しんだ。これはサウルが民に誓

56
ゆうがた てき かえ しょくもつ た もの
わせて﹁夕方まで、わたしが敵にあだを返すまで、 食 物を食べる者は、
い たみ
のろわれる﹂と言ったからである。それゆえ民のうちには、ひとりも
しょくもつ くち たみ もり なか
食 物を口にしたものはなかった。 二五ところで、民がみな森の中にはい
ち みつ たみ もり とき みつ
ると、地のおもてに蜜があった。 二六民は森にはいった時、蜜のしたたっ
み て と くち
ているのを見た。しかしだれもそれを手に取って口につけるものがな
たみ ちか おそ ちち たみ
かった。民が誓いを恐れたからである。 二七しかしヨナタンは、父が民
ちか き て の さき みつ す
に誓わせたことを聞かなかったので、手を伸べてつえの先を蜜ばちの巣
ひた て と くち かれ め
に浸し、手に取って口につけた。すると彼は目がはっきりした。 二八そ
とき たみ い ちち たみ ちか
の時、民のひとりが言った、
﹁あなたの父は、かたく民に誓わせて﹃きょ
しょくもつ た もの い たみ つか
う、食 物を食べる者は、のろわれる﹄と言われました。それで民は疲れ
い ちち くに なや
ているのです﹂。 二九ヨナタンは言った、﹁父は国を悩ませました。ごら
みつ め
サムエル記上

ん な さ い。こ の 蜜 を す こ し な め た ば か り で、わ た し の 目 が こ ん な に、
たみ てき
は っ き り し た で は あ り ま せ ん か。 三 〇ま し て、民 が き ょ う 敵 か ら ぶ ん
もの た おお
どった物を、じゅうぶん食べていたならば、さらに多くのペリシテびと

57
ころ
を殺していたでしょうに﹂。
ひ う
その日イスラエルびとは、ペリシテびとを撃って、ミクマシからアヤ
三一
およ たみ つか もの
ロンに及んだ。そして民は、ひじょうに疲れたので、 三二ぶんどり物に、
ひつじ うし こ うし と ち うえ ころ ち
はせかかって、 羊、牛、子牛を取って、それを地の上に殺し、血のまま
た ひとびと い たみ ち た
でそれを食べた。 三三人々はサウルに言った、﹁民は血のままで食べて、
しゅ つみ おか い
主に罪を犯しています﹂。サウルは言った、﹁あなたがたはそむいてい
ところ おお いし
る。この所へ、わたしのもとに大きな石をころがしてきなさい﹂。 三四サ
い わか たみ なか かれ い
ウルはまた言った、
﹁あなたがたは分れて、民の中にはいって、彼らに言
うし ひつじ ひ た
いなさい、
﹃おのおの牛または、 羊を引いてきてここでほふって食べな
ち た しゅ つみ おか たみ
さい。血のままで食べて、主に罪を犯してはならない﹄﹂。そこで民は
みな よる うし ひ ところ
皆、その夜、おのおの牛を引いてきて、それを、その所でほふった。 三五
しゅ さいだん きず しゅ
サムエル記上

こうしてサウルは主に一つの祭壇を築いた。これはサウルが主のため
きず さいしょ さいだん
に築いた最初の祭壇である。
い よる お くだ
三六 サウルは言った、﹁われわれは夜のうちにペリシテびとを追って下

58
よ あ かれ のこ ひとびと
り、夜明けまで彼らをかすめて、ひとりも残らぬようにしよう﹂。人々は
い よ おも さいし
言った、
﹁良いと思われることを、なんでもしてください﹂。しかし祭司
い かみ たず
は言った、
﹁われわれは、ここで、神に尋ねましょう﹂。 三七そこでサウル
かみ うかが お くだ
は神に伺 った、﹁わたしはペリシテびとを追って下るべきでしょうか。
かれ て わた かみ
あなたは彼らをイスラエルの手に渡されるでしょうか﹂。しかし神はそ
ひ こた い たみ ちょう
の日は答えられなかった。 三八そこでサウルは言った、﹁民の長たちよ、
ところ ちか み
みなこの所に近よりなさい。あなたがたは、よく見きわめて、きょうの
つみ お し すく しゅ
この罪が起きたわけを知らなければならない。 三九イスラエルを救う主
い こ かなら
は生きておられる。たとい、それがわたしの子ヨナタンであっても、必
し たみ こた
ず死ななければならない﹂。しかし民のうちにはひとりも、これに答え
ひと い
るものがいなかった。 四〇サウルはイスラエルのすべての人に言った、
む がわ こ
サムエル記上

﹁あなたがたは向こう側にいなさい。わたしとわたしの子ヨナタンはこ
がわ たみ い よ おも
ちら側にいましょう﹂。民はサウルに言った、﹁良いと思われることをし
い かみ しゅ
てください﹂。 四一そこでサウルは言った、
﹁イスラエルの神、主よ、あな

59
こた つみ
たはきょう、なにゆえしもべに答えられなかったのですか。もしこの罪

がわたしにあるか、またはわたしの子ヨナタンにあるのでしたら、イス
かみ しゅ あた つみ
ラエルの神、主よ、ウリムをお与えください。しかし、もしこの罪が、あ
たみ あた
なたの民イスラエルにあるのでしたらトンミムをお与えください﹂。こ
あた たみ
うしてヨナタンとサウルとが、くじに当り、民はのがれた。 四二サウルは
い こ き ひ
言った、
﹁わたしか、わたしの子ヨナタンかを決めるために、くじを引き
あた
なさい﹂。くじはヨナタンに当った。
い い
四三 サウルはヨナタンに言った、
﹁あなたがしたことを、わたしに言いな
い たし て さき すこ
さい﹂。ヨナタンは言った、﹁わたしは確かに手にあったつえの先に少し
みつ し かくご
ばかりの蜜をつけて、なめました。わたしはここにいます。死は覚悟し
い かみ ばっ
ています﹂。 四四サウルは言った、﹁神がわたしをいくえにも罰してくだ
かなら し
サムエル記上

さるように。ヨナタンよ、あなたは必ず死ななければならない﹂。 四五そ
とき たみ い おお しょうり
の時、民はサウルに言った、﹁イスラエルのうちにこの大いなる勝利をも
し けっ
たらしたヨナタンが死ななければならないのですか。決してそうでは

60
しゅ い かみ け ち
ありません。主は生きておられます。ヨナタンの髪の毛一すじも地に
おと かれ かみ とも はたら たみ
落してはなりません。彼は神と共にきょう働いたのです﹂。こうして民
すく かれ し まぬか
はヨナタンを救ったので彼は死を免れた。 四六サウルはペリシテびとを
お ひ くに かえ
追うことをやめて引きあげ、ペリシテびとはその国へ帰った。
おう しゅうい てき
四七 サウルはイスラエルの王となって、周囲のもろもろの敵、すなわちモ
ひとびと おう たたか
アブ、アンモンの人々、エドム、ゾバの王たちおよびペリシテびとと戦
む ところ しょうり え いさ はたら
い、すべて向かう所で勝利を得た。 四八サウルは勇ましく働き、アマレク
う りゃくだつしゃ て すく だ
びとを撃って、イスラエルびとを略 奪 者の手から救い出した。
四九 さて、サウルのむすこたちはヨナタン、エスイ、およびマルキシュア
むすめ な つぎ あね な
である。ふたりの娘の名は次のとおりである。すなわち姉の名はメラ
いもうと な つま な
ブ、 妹の名はミカルである。 五〇サウルの妻の名はアヒノアムといい、
むすめ ぐん ちょう な
サムエル記上

アヒマアズの娘である。また軍の長の名はアブネルといい、サウルのお
こ ちち ちち
じネルの子である。 五一サウルの父キシとアブネルの父ネルとは、アビ

エルの子である。

61
いっしょう あいだ はげ たたか
五二 サウルの一 生の間、ペリシテびとと激しい戦いがあった。サウルは
ちから つよ ひと ゆうき ひと み め
力の強い人や勇気のある人を見るごとに、それを召しかかえた。
第一五章
い しゅ
一さて、サムエルはサウルに言った、
﹁主は、わたしをつかわし、あなた
あぶら たみ おう いま しゅ
に油をそそいで、その民イスラエルの王とされました。それゆえ、今、主
ことば き ばんぐん しゅ おお
の言葉を聞きなさい。 二万軍の主は、こう仰せられる、
﹃わたしは、アマ
こと のぼ
レクがイスラエルにした事、すなわちイスラエルがエジプトから上って
とき とちゅう てきたい かれ ばっ
き た 時、そ の 途中 で 敵対 し た こ と に つ い て 彼 ら を 罰 す る で あ ろ う。 三
いま い う も もの ほろ かれ
今、行ってアマレクを撃ち、そのすべての持ち物を滅ぼしつくせ。彼ら
サムエル記上

おとこ おんな おさ こ ち の ご うし ひつじ


をゆるすな。 男も女も、幼な子も乳飲み子も、牛も羊も、らくだも、ろ
みな ころ
ばも皆、殺せ﹄﹂。
たみ よ あつ にんずう しら ほへい
四サウルは民を呼び集め、テライムで人数を調べたところ、歩兵は二十

62
ひと まち い
万、ユ ダ の 人 は 一 万 で あ っ た。 五そ し て サ ウ ル は ア マ レ ク の 町 へ 行 っ
たに へい ふ い
て、谷に兵を伏せた。 六サウルはケニびとに言った、
﹁さあ、あなたがた
はな くだ かれ いっしょ
はアマレクびとを離れて、下っていってください。彼らと一緒にあなた
ほろ
がたを滅ぼすようなことがあってはならない。あなたがたは、イスラエ
ひとびと のぼ とき しんせつ
ルの人々がエジプトから上ってきた時、親切にしてくれたのですから﹂。
はな い
そ こ で ケ ニ び と は ア マ レ ク び と を 離 れ て 行 っ た。 七サ ウ ル は ア マ レ ク
う ひがし およ
びとを撃って、ハビラからエジプトの東にあるシュルにまで及んだ。 八
おう たみ
そしてアマレクびとの王アガグをいけどり、つるぎをもってその民をこ
ほろ たみ ひつじ うし
とごとく滅ぼした。 九しかしサウルと民はアガグをゆるし、また羊と牛
もっと よ こ こひつじ よ のこ
の最も良いもの、肥えたものならびに小羊と、すべての良いものを残し、
ほろ つく この ね もの
それらを滅ぼし尽すことを好まず、ただ値うちのない、つまらない物を
ほろ つく
サムエル記上

滅ぼし尽した。
とき しゅ ことば のぞ おう
一〇その時、主の言葉がサムエルに臨んだ、 一一﹁わたしはサウルを王と
く かれ したが ことば おこな
したことを悔いる。彼がそむいて、わたしに従わず、わたしの言葉を行

63
いか よどお しゅ よ
わなかったからである﹂。サムエルは怒って、夜通し、主に呼ばわった。
あさ あ はや お つ ひと
一二 そして朝サウルに会うため、早く起きたが、サムエルに告げる人が
じぶん せんしょう き ね ん ひ た み
あった、﹁サウルはカルメルにきて、自分のために戦 勝 記念碑を建て、身
すす くだ い
をかえして進み、ギルガルへ下って行きました﹂。 一三サムエルがサウル
く かれ い しゅ しゅくふく
のもとへ来ると、サウルは彼に言った、
﹁どうぞ、主があなたを祝 福さ
しゅ ことば じっこう
れ ま す よ う に。わ た し は 主 の 言葉 を 実行 し ま し た﹂。 一 四サ ム エ ル は
い みみ ひつじ こえ き
言った、
﹁それならば、わたしの耳にはいる、この羊の声と、わたしの聞
うし こえ い ひとびと
く牛の声は、いったい、なんですか﹂。 一五サウルは言った、
﹁人々がアマ
ところ ひ たみ かみ しゅ
レクびとの所から引いてきたのです。民は、あなたの神、主にささげる
ひつじ うし もっと よ のこ
ために、羊と牛の最も良いものを残したのです。そのほかは、われわれ
ほろ つく い
が滅ぼし尽しました﹂。 一六サムエルはサウルに言った、
﹁おやめなさい。
さくや しゅ い つ
サムエル記上

昨夜、主がわたしに言われたことを、あなたに告げましょう﹂。サウルは
かれ い い
彼に言った、﹁言ってください﹂。
い じぶん ちい おも
一七 サムエルは言った、
﹁たとい、自分では小さいと思っても、あなたは

64
しょぶぞく ちょう しゅ あぶら そそ
イスラエルの諸部族の長ではありませんか。主はあなたに油を注いで
おう しゅ しめい さづ
イスラエルの王とされた。 一八そして主はあなたに使命を授け、つかわ
い い つみ ほろ つく かれ
して言われた、﹃行って、罪びとなるアマレクびとを滅ぼし尽せ。彼らを
みなごろ たたか しゅ こえ
皆殺しにするまで戦え﹄。 一九それであるのに、どうしてあなたは主の声
き したが もの しゅ め まえ あく
に聞き従わないで、ぶんどり物にとびかかり、主の目の前に悪をおこ
い しゅ こえ
なったのですか﹂。 二〇サウルはサムエルに言った、﹁わたしは主の声に
き したが しゅ しめい お い おう
聞き従い、主がつかわされた使命を帯びて行き、アマレクの王アガグを
つ ほろ つく たみ ほろ
連れてきて、アマレクびとを滅ぼし尽しました。 二一しかし民は滅ぼし
つく もっと よ かみ しゅ
尽すべきもののうち最も良いものを、ギルガルで、あなたの神、主にさ
もの ひつじ うし と
さげるため、ぶんどり物のうちから羊と牛を取りました﹂。 二二サムエル

は言った、
しゅ ことば き したが こと よろこ
サムエル記上

﹁主はそのみ言葉に聞き従う事を喜ばれるように、
はんさい ぎせい よろこ
燔祭や犠牲を喜ばれるであろうか。
み したが ぎせい
見よ、 従うことは犠牲にまさり、

65
き おひつじ しぼう
聞くことは雄羊の脂肪にまさる。
うらな つみ ひと
二三 そむくことは占いの罪に等しく、
ごうじょう ぐうぞうれいはい つみ ひと
強 情は偶像礼拝の罪に等しいからである。
しゅ す
あなたが主のことばを捨てたので、
しゅ す おう くらい しりぞ
主もまたあなたを捨てて、王の位から退けられた﹂。
い しゅ めいれい ことば
二四 サウルはサムエルに言った、
﹁わたしは主の命令とあなたの言葉にそ
つみ おか たみ おそ こえ き したが
むいて罪を犯しました。民を恐れて、その声に聞き従 ったからです。 二
いま つみ いっしょ かえ しゅ おが
五どうぞ、今わたしの罪をゆるし、わたしと一緒に帰って、主を拝ませ
い いっしょ かえ
てください﹂。 二六サムエルはサウルに言った、﹁あなたと一緒に帰りま
しゅ ことば す しゅ す
せん。あなたが主の言葉を捨てたので、主もあなたを捨てて、イスラエ
おうい しりぞ さ
ル の 王位 か ら 退 け ら れ た か ら で す﹂。 二七こ う し て サ ム エ ル が 去 ろ う と
み とき うわぎ とら
サムエル記上

して身をかえした時、サウルがサムエルの上着のすそを捕えたので、そ
さ かれ い しゅ
れは裂けた。 二八サムエルは彼に言った、
﹁主はきょう、あなたからイス
おうこく さ よ りんじん あた
ラエルの王国を裂き、もっと良いあなたの隣人に与えられた。 二九また

66
えいこう いつわ く かれ ひと
イスラエルの栄光は偽ることもなく、悔いることもない。彼は人ではな
く い つみ おか
いから悔いることはない﹂。 三〇サウルは言った、﹁わたしは罪を犯しま
たみ ちょうろう まえ たっと
したが、どうぞ、民の長 老たち、およびイスラエルの前で、わたしを尊
いっしょ かえ かみ しゅ おが
び、わたしと一緒に帰って、あなたの神、主を拝ませてください﹂。 三一
かえ しゅ
そこでサムエルはサウルのあとについて帰った。そしてサウルは主を
おが
拝んだ。
とき い ところ おう ひ
三二時にサムエルは言った、
﹁わたしの所にアマレクびとの王アガグを引
ところ
いてきなさい﹂。アガグはうれしそうにサムエルの所にきた。アガグは
し くる す さ おも い
﹁死 の 苦 し み は き っ と 過 ぎ 去 っ た の だ﹂と 思 っ た。 三三サ ム エ ル は 言 っ
おお おんな こども うしな
た、﹁あなたのつるぎは多くの女に子供を失わせた。そのようにあなた
はは おんな もっと むざん こども うしな もの
の母も女のうちで最も無惨に子供を失う者となるであろう﹂。サムエル
しゅ まえ すんだん
サムエル記上

はギルガルで主の前に、アガグを寸断した。
い こきょう のぼ
三四そしてサムエルはラマに行き、サウルは故郷のギベアに上って、その
いえ かえ し ひ ど み
家 に 帰 っ た。 三五サ ム エ ル は 死 ぬ 日 ま で、二 度 と サ ウ ル を 見 な か っ た。

67
かな しゅ
しかしサムエルはサウルのために悲しんだ。また主はサウルをイスラ
おう く
エルの王としたことを悔いられた。
第一六章
しゅ い す
さて主はサムエルに言われた、
一 ﹁わたしがすでにサウルを捨てて、イス
おうい しりぞ かれ かな
ラエルの王位から退けたのに、あなたはいつまで彼のために悲しむの
つの あぶら み い
か。角に油を満たし、それをもって行きなさい。あなたをベツレヘムび

とエッサイのもとにつかわします。わたしはその子たちのうちにひと
おう さが え い
りの王を捜し得たからである﹂。 二サムエルは言った、
﹁どうしてわたし
い き ころ
は行くことができましょう。サウルがそれを聞けば、わたしを殺すで
サムエル記上

しゅ い とう こ うし ひ しゅ ぎせい
しょう﹂。主は言われた、﹁一頭の子牛を引いていって、﹃主に犠牲をささ
い ぎせい ば しょ
げるためにきました﹄と言いなさい。 三そしてエッサイを犠牲の場所に
よ とき しめ
呼びなさい。その時わたしはあなたのすることを示します。わたしが

68
つ ひと あぶら そそ しゅ めい
あなたに告げる人に油を注がなければならない﹂。 四サムエルは主が命
い まち ちょうろう おそ
じられたようにして、ベツレヘムへ行った。町の長 老たちは、恐れなが
で かれ むか おだ こと い
ら出て、彼を迎え、
﹁穏やかな事のためにこられたのですか﹂と言った。
い おだ こと しゅ ぎせい
サムエルは言った、﹁穏やかな事のためです。わたしは主に犠牲をさ

み ぎせい ば しょ とも
さげるためにきました。身をきよめて、犠牲の場所にわたしと共にきて
こ ぎせい
ください﹂。そしてサムエルはエッサイとその子たちをきよめて犠牲の
ば まね
場に招いた。
かれ とき み じぶん まえ ひと
彼らがきた時、サムエルはエリアブを見て、
六 ﹁自分の前にいるこの人こ
しゅ あぶら ひと おも しゅ い
そ、主が油をそそがれる人だ﹂と思った。 七しかし主はサムエルに言わ
かお み み ひと
れた、﹁顔かたちや身のたけを見てはならない。わたしはすでにその人
す み ひと こと ひと そと かお
を捨てた。わたしが見るところは人とは異なる。人は外の顔かたちを
み しゅ こころ み よ
サムエル記上

見、主は心を見る﹂。 八そこでエッサイはアビナダブを呼んでサムエル
まえ とお い しゅ えら ひと
の前を通らせた。サムエルは言った、﹁主が選ばれたのはこの人でもな
とお い しゅ えら
い﹂。 九エッサイはシャンマを通らせたが、サムエルは言った、
﹁主が選

69
ひと にん こ まえ
ばれたのはこの人でもない﹂。 一〇エッサイは七人の子にサムエルの前
とお い しゅ えら ひと
を通らせたが、サムエルはエッサイに言った、﹁主が選ばれたのはこの人

たちではない﹂。 一一サムエルはエッサイに言った、﹁あなたのむすこた
みな かれ い すえ こ のこ ひつじ
ちは皆ここにいますか﹂。彼は言った、﹁まだ末の子が残っていますが羊
か い ひと かれ つ
を飼っています﹂。サムエルはエッサイに言った、﹁人をやって彼を連れ
かれ く しょくたく
てきなさい。彼がここに来るまで、われわれは食 卓につきません﹂。 一二
ひと かれ かれ けっしょく め すがた
そこで人をやって彼をつれてきた。彼は血 色のよい、目のきれいな、姿
うつく ひと しゅ い た あぶら
の美しい人であった。主は言われた、﹁立ってこれに油をそそげ。これ
ひと あぶら つの きょうだい なか
がその人である﹂。 一三サムエルは油の角をとって、その兄 弟たちの中
かれ あぶら ひ しゅ れい
で、彼に油をそそいだ。この日からのち、主の霊は、はげしくダビデの
うえ のぞ た い
上に臨んだ。そしてサムエルは立ってラマへ行った。
しゅ れい はな しゅ く あくれい かれ なや
サムエル記上

さて主の霊はサウルを離れ、主から来る悪霊が彼を悩ました。 一五サ
一四
けらい かれ い かみ く あくれい
ウルの家来たちは彼に言った、﹁ごらんなさい。神から来る悪霊があな
なや しゅくん まえ
たを悩ましているのです。 一六どうぞ、われわれの主君が、あなたの前に

70
つか けらい めい こと もの さが
仕えている家来たちに命じて、じょうずに琴をひく者ひとりを捜させて
かみ く あくれい のぞ とき かれ て こと
ください。神から来る悪霊があなたに臨む時、彼が手で琴をひくなら
よ けらい
ば、あ な た は 良 く な ら れ る で し ょ う﹂。 一七そ こ で サ ウ ル は 家来 た ち に
い こと もの さが つ
言った、﹁じょうずに琴をひく者を捜して、わたしのもとに連れてきなさ
とき わかもの
い﹂。 一八その時、ひとりの若者がこたえた、﹁わたしはベツレヘムびと
こ み こと ゆうき
エッサイの子を見ましたが、琴がじょうずで、勇気もあり、いくさびと
べんぜつ すがた うつく ひと しゅ かれ とも
で、弁舌にひいで、姿の美しい人です。また主が彼と共におられます﹂。
し しゃ い ひつじ
一九 そこでサウルはエッサイのもとに使者をつかわして言った、﹁羊を
か こ
飼 っ て い る あ な た の 子 ダ ビ デ を わ た し の も と に よ こ し な さ い﹂。 二 〇
お かわぶくろ しゅ ふくろ
エッサイは、ろばにパンを負わせ、皮 袋にいれたぶどう酒一 袋と、やぎ
こ と こ て おく
の子とを取って、その子ダビデの手によってサウルに送った。 二一ダビ
かれ つか あい
サムエル記上

デはサウルのもとにきて、彼に仕えた。サウルはひじょうにこれを愛し
ぶ き と もの ひと
て、その武器を執る者とした。 二二またサウルは人をつかわしてエッサ
い つか かれ こころ
イに言った、﹁ダビデをわたしに仕えさせてください。彼はわたしの心

71
かみ で あくれい のぞ とき こと
にかないました﹂。 二三神から出る悪霊がサウルに臨む時、ダビデは琴を
て き しず よ あくれい かれ
とり、手でそれをひくと、サウルは気が静まり、良くなって、悪霊は彼
はな
を離れた。
第一七章
ぐん あつ たたか ぞく あつ
一さてペリシテびとは、軍を集めて戦おうとし、ユダに属するソコに集
あいだ じんど
まって、ソコとアゼカの間にあるエペス・ダミムに陣取った。 二サウル
ひとびと あつ たに じんど たい
とイスラエルの人々は集まってエラの谷に陣取り、ペリシテびとに対し
せんれつ む やま うえ た
て戦列をしいた。 三ペリシテびとは向こうの山の上に立ち、イスラエル
やま うえ た かん たに とき
はこちらの山の上に立った。その間に谷があった。 四時に、ペリシテび
サムエル記上

じん な たたか もの で
との陣から、ガテのゴリアテという名の、 戦いをいどむ者が出てきた。
み はん あたま せいどう いただ み
身のたけは六キュビト半。 五 頭には青銅のかぶとを頂き、身には、うろ
き せいどう おも
こ と じ の よ ろ い を 着 て い た。そ の よ ろ い は 青銅 で 重 さ 五 千 シ ケ ル。 六

72
あし せいどう とう つ かた せいどう な せ お
また足には青銅のすね当を着け、肩には青銅の投げやりを背負ってい
て も え はた まきぼう ほ
た。 七手に持っているやりの柄は、機の巻棒のようであり、やりの穂の
てつ かれ まえ たて と もの すす
鉄は六百シケルであった。彼の前には、盾を執る者が進んだ。 八ゴリア
た せんれつ む さけ せんれつ
テ は 立 っ て イ ス ラ エ ル の 戦列 に 向 か っ て 叫 ん だ、﹁な に ゆ え 戦列 を つ

くって出てきたのか。わたしはペリシテびと、おまえたちはサウルの
けらい えら
家来ではないか。おまえたちから、ひとりを選んで、わたしのところへ
くだ ひと たたか ころ
下ってこさせよ。 九もしその人が戦 ってわたしを殺すことができたら、
けらい か ひと
われわれはおまえたちの家来となる。しかしわたしが勝ってその人を
ころ けらい つか
殺したら、おまえたちは、われわれの家来になって仕えなければならな

い﹂。 一〇またこのペリシテびとは言った、
﹁わたしは、きょうイスラエル
せんれつ だ たたか
の戦列にいどむ。ひとりを出して、わたしと戦わせよ﹂。 一一サウルとイ
ひと ことば き おどろ
サムエル記上

スラエルのすべての人は、ペリシテびとのこの言葉を聞いて驚き、ひ
おそ
じょうに恐れた。
一二さて、ダビデはユダのベツレヘムにいたエフラタびとエッサイとい

73
な ひと こ ひと はちにん こ よ とし すす
う名の人の子で、この人に八人の子があったが、サウルの世には年が進
としお こ うえ にん
んで、すでに年老いていた。 一三エッサイの子らのうち、上の三人はサウ
したが せんそう で たたか で にん こ な ちょうし
ルに従 って戦争に出た。その戦いに出た三人の子の名は、長子をエリ
つぎ だい い
アブといい、次をアビナダブといい、第三をシャンマと言った。 一四ダビ
すえ こ あに にん
デは末の子であって、兄三人はサウルにしたがった。 一五ダビデはサウ
ところ い ちち ひつじ か
ルの所から行ったりきたりして、ベツレヘムで父の羊を飼っていた。 一六
にち あいだ あさゆう で かれ まえ た
あのペリシテびとは四十日の間、朝夕出てきて、彼らの前に立った。
とき こ い あに
時に、エッサイはその子ダビデに言った、
一七 ﹁兄たちのため、このいり
むぎ こ いそ じんえい あに ところ も
麦一エパと、この十個のパンをとって、急いで陣営にいる兄の所へ持っ
かんらく と にん ちょう い
ていきなさい。 一八またこの十の乾酪を取って、千人の長にもって行き、
あに あんぴ み
兄たちの安否を見とどけて、そのしるしをもらってきなさい﹂。
かれ ひと たに
サムエル記上

さてサウルと彼らおよびイスラエルのすべての人は、エラの谷でペ
一九
たたか あさ お ひつじ ばんにん たく
リシテびとと戦 っていた。 二〇ダビデは朝はやく起きて、 羊を番人に託
めい しょくりょうひん たずさ い かれ じんえい つ
し、エッサイが命じたように食 料 品を携えて行った。彼が陣営に着い

74
とき ぐんぜい こえ せんせん で
た時、軍勢は、ときの声をあげて戦線に出ようとしていた。 二一そしてイ
せんれつ し ぐん ぐん む あ
スラエルとペリシテびととは戦列を敷いて、軍と軍と向き合った。 二二
にもつ にもつ まも もの せんれつ ほう はし あに
ダビデは荷物をおろして、荷物を守る者にあずけ、戦列の方へ走って、兄
ところ い かれ あんぴ たず あに かた とき
たちの所へ行き、彼らの安否を尋ねた。 二三兄たちと語っている時、ペリ
せんれつ な
シテびとの戦列から、ガテのペリシテびとで、名をゴリアテという、あ
たたか もの のぼ まえ おな ことば い
の戦いをいどむ者が上ってきて、前と同じ言葉を言ったので、ダビデは

それを聞いた。
ひと ひと み さ に
イスラエルのすべての人は、その人を見て、避けて逃げ、ひじょうに
二四
おそ ひとびと い のぼ
恐れた。 二五イスラエルの人々はまた言った、
﹁あなたがたは、あの上っ
ひと み たし のぼ
てきた人を見たか。確かにイスラエルにいどむために上ってきたのだ。
かれ ころ ひと おう おお とみ あた と むすめ あた ちち
彼を殺す人は、王が大いなる富を与えて富ませ、その娘を与え、その父
いえ ぜい まぬか
サムエル記上

の家にはイスラエルのうちで税を免れさせるであろう﹂。 二六ダビデは
た ひとびと い ころ
かたわらに立っている人々に言った、﹁このペリシテびとを殺し、イスラ
はじ ひと かつれい
エルの恥をすすぐ人には、どうされるのですか。この割礼なきペリシテ

75
なにもの い かみ ぐん たみ まえ おな
びとは何者なので、生ける神の軍をいどむのか﹂。 二七民は前と同じよう
かれ ころ ひと こた
に、﹁彼を殺す人にはこうされるであろう﹂と答えた。
うえ あに ひとびと かた き む
二八上の兄エリアブはダビデが人々と語るのを聞いて、ダビデに向かい
いか はっ い くだ の
怒りを発して言った、﹁なんのために下ってきたのか。野にいるわずか
ひつじ たく わる こころ
の羊はだれに託したのか。あなたのわがままと悪い心はわかっている。
たたか み くだ い いま
戦いを見るために下ってきたのだ﹂。 二九ダビデは言った、﹁わたしが今、
なに こと
何をしたというのですか。ただひと言いっただけではありませんか﹂。
む ひと まえ かた たみ おな
三〇またふり向いて、ほかの人に前のように語ったところ、民はまた同じ
こた
ように答えた。
ひとびと かた ことば き つ
三一人々はダビデの語った言葉を聞いて、それをサウルに告げたので、サ
かれ よ よ い かれ
ウルは彼を呼び寄せた。 三二ダビデはサウルに言った、
﹁だれも彼のゆえ
き おと い たたか
サムエル記上

に気を落してはなりません。しもべが行ってあのペリシテびとと戦い
い い
ましょう﹂。 三三サウルはダビデに言った、
﹁行って、あのペリシテびとと
たたか ねんしょう かれ わか とき ぐんじん
戦うことはできない。あなたは年 少だが、彼は若い時からの軍人だか

76
い ちち ひつじ か
らです﹂。 三四しかしダビデはサウルに言った、﹁しもべは父の羊を飼っ
む こひつじ と とき
ていたのですが、しし、あるいはくまがきて、群れの小羊を取った時、 三
お う こひつじ くち すく
五わたしはそのあとを追って、これを撃ち、小羊をその口から救いだし
けもの とき
ました。その獣がわたしにとびかかってきた時は、ひげをつかまえて、
う ころ ころ
それを撃ち殺しました。 三六しもべはすでに、ししと、くまを殺しまし
かつれい い かみ ぐん
た。この割礼なきペリシテびとも、生ける神の軍をいどんだのですか
けもの とう い
ら、あの獣の一頭のようになるでしょう﹂。 三七ダビデはまた言った、
﹁し
すく だ しゅ
しのつめ、くまのつめからわたしを救い出された主は、またわたしを、こ
て すく だ
の ペ リ シ テ び と の 手 か ら 救 い 出 さ れ る で し ょ う﹂。サ ウ ル は ダ ビ デ に
い い しゅ とも
言った、﹁行きなさい。どうぞ主があなたと共におられるように﹂。 三八
じぶん ころも き せいどう
そしてサウルは自分のいくさ衣をダビデに着せ、青銅のかぶとを、その
あたま み
サムエル記上

頭にかぶらせ、また、うろことじのよろいを身にまとわせた。 三九ダビデ
ころも うえ お い
は、いくさ衣の上に、つるぎを帯びて行こうとしたが、できなかった。そ
な い
れ に 慣 れ て い な か っ た か ら で あ る。そ こ で ダ ビ デ は サ ウ ル に 言 っ た、

77
つ な
﹁わたしはこれらのものを着けていくことはできません。慣れていない
ぬ て たにま
からです﹂。 四〇ダビデはそれらを脱ぎすて、手につえをとり、谷間から
いし こ えら じぶん も ひつじかい ふくろ い て
なめらかな石五個を選びとって自分の持っている羊 飼の袋に入れ、手
いし な と ちか
に石投げを執って、あのペリシテびとに近づいた。
すす ちか と
四一 そのペリシテびとは進んできてダビデに近づいた。そのたてを執る
もの かれ まえ み み
者が彼の前にいた。 四二ペリシテびとは見まわしてダビデを見、これを
あなど わか けっしょく すがた うつく
侮 った。まだ若くて血 色がよく、姿が美しかったからである。 四三ペリ
い も む
シテびとはダビデに言った、
﹁つえを持って、向かってくるが、わたしは
いぬ かみがみ な
犬なのか﹂。ペリシテびとは、また神々の名によってダビデをのろった。
い む にく
四四 ペリシテびとはダビデに言った、
﹁さあ、向かってこい。おまえの肉
そら とり の けもの
を、空の鳥、野の獣のえじきにしてくれよう﹂。 四五ダビデはペリシテび
い な も
サムエル記上

とに言った、
﹁おまえはつるぎと、やりと、投げやりを持って、わたしに
む ばんぐん しゅ な
向かってくるが、わたしは万軍の主の名、すなわち、おまえがいどんだ、
ぐん かみ な た む しゅ
イスラエルの軍の神の名によって、おまえに立ち向かう。 四六きょう、主

78

は、おまえをわたしの手にわたされるであろう。わたしは、おまえを
う くび ぐんぜい し そら とり
撃って、首をはね、ペリシテびとの軍勢の死かばねを、きょう、空の鳥、
ち やじゅう かみ ぜん ち し
地の野獣のえじきにし、イスラエルに、神がおられることを全地に知ら
ぜんかいしゅう しゅ すくい ほどこ もち
せよう。 四七またこの全 会 衆も、主は救を施すのに、つるぎとやりを用
し たたか しゅ たたか しゅ
いられないことを知るであろう。この戦いは主の戦いであって、主がわ
て わた
れわれの手におまえたちを渡されるからである﹂。
た あ ちか た む
四八 そのペリシテびとが立ち上がり、近づいてきてダビデに立ち向かっ
いそ せんせん はし で た む
たので、ダビデは急ぎ戦線に走り出て、ペリシテびとに立ち向かった。 四
て ふくろ い なか いし と いし な な
ダビデは手を袋に入れて、その中から一つの石を取り、石投げで投げ

ひたい う いし ひたい つ はい
て、ペリシテびとの額を撃ったので、石はその額に突き入り、うつむき
ち たお
に地に倒れた。
いし な いし か
サムエル記上

五〇 こうしてダビデは石投げと石をもってペリシテびとに勝ち、ペリシ
う ころ て
テびとを撃って、これを殺した。ダビデの手につるぎがなかったので、五
はし うえ の と
ダビデは走りよってペリシテびとの上に乗り、そのつるぎを取って、

79
ぬ かれ ころ くび
さやから抜きはなし、それをもって彼を殺し、その首をはねた。ペリシ
ひとびと ゆうし し み に
テの人々は、その勇士が死んだのを見て逃げた。 五二イスラエルとユダ
ひとびと た ついげき
の人々は立ちあがり、ときをあげて、ペリシテびとを追撃し、ガテおよ
もん およ ふしょうしゃ
びエクロンの門にまで及んだ。そのためペリシテびとの負傷者は、シャ
い みち うえ たお
ライムからガテおよびエクロンに行く道の上に倒れた。 五三イスラエル
ひとびと ついげき お かえ じんえい りゃくだつ
の人々はペリシテびとの追撃を終えて帰り、その陣営を略 奪した。 五四
くび と も い
ダビデは、あのペリシテびとの首を取ってエルサレムへ持って行った
ぶ き じぶん てんまく お
が、その武器は自分の天幕に置いた。
む で み
五五 サウルはダビデがあのペリシテびとに向かって出ていくのを見て、
ぐん ちょう い わかもの こ
軍の長 アブネルに言った、
﹁アブネルよ、この若者はだれの子か﹂。アブ
い おう ちか し
ネルは言った、﹁王よ、あなたのいのちにかけて誓います。わたしは知ら
おう い わかもの こ たず
サムエル記上

ないのです﹂。 五六王は言った、
﹁この若者がだれの子か、尋ねてみよ﹂。 五
ころ かえ とき
ダビデが、あのペリシテびとを殺して帰ってきた時、アブネルは、ペ

くび て も かれ まえ つ い
リシテびとの首を手に持っている彼を、サウルの前に連れて行った。 五八

80
かれ い わかもの こ こた
サウルは彼に言った、﹁若者よ、あなたはだれの子か﹂。ダビデは答えた、

﹁あなたのしもべ、ベツレヘムびとエッサイの子です﹂。
第一八章
かた お とき こころ こころ むす
一ダビデがサウルに語り終えた時、ヨナタンの心はダビデの心に結びつ
じぶん いのち あい ひ
き、ヨナタンは自分の命のようにダビデを愛した。 二この日、サウルは
め ちち いえ かえ
ダビデを召しかかえて、父の家に帰らせなかった。 三ヨナタンとダビデ
けいやく むす じぶん いのち あい
とは契約を結んだ。ヨナタンが自分の命のようにダビデを愛したから
じぶん き うわぎ ぬ あた
で あ る。 四ヨ ナ タ ン は 自分 が 着 て い た 上着 を 脱 い で ダ ビ デ に 与 え た。
ころも ゆみ おび
また、そのいくさ衣、およびつるぎも弓も帯も、そのようにした。 五ダ
サムエル記上

ところ で い た
ビデはどこでもサウルがつかわす所に出て行って、てがらを立てたの
かれ へい たいちょう たみ こころ
で、サウルは彼を兵の隊 長とした。それはすべての民の心にかない、ま
けらい こころ
たサウルの家来たちの心にもかなった。

81
ひとびと ひ あ とき ころ
人々が引き揚げてきた時、すなわちダビデが、かのペリシテびとを殺

かえ とき おんな まちまち で て つづみ いわ うた
して帰った時、女たちはイスラエルの町々から出てきて、手 鼓と祝い歌
みついと こと うた ま おう むか おんな おど
と三糸の琴をもって、歌いつ舞いつ、サウル王を迎えた。 七 女たちは踊
たがい うた
りながら互に歌いかわした、
う ころ
﹁サウルは千を撃ち殺し、
まん う ころ
ダビデは万を撃ち殺した﹂。
いか ことば き わる い
サウルは、ひじょうに怒り、この言葉に気を悪くして言った、
八 ﹁ダビデ
まん い い うえ かれ あた くに
には万と言い、わたしには千と言う。この上、彼に与えるものは、国の

ほかないではないか﹂。 九サウルは、この日からのちダビデをうかがっ
た。
つぎ ひ かみ く あくれい のぞ いえ なか
一〇 次の日、神から来る悪霊がサウルにはげしく臨んで、サウルが家の中
くる て こと
サムエル記上

で狂いわめいたので、ダビデは、いつものように、手で琴をひいた。そ
とき て かべ さ
の時、サウルの手にやりがあったので、 一一サウルは﹁ダビデを壁に刺し
とお おも あ ど み
通そう﹂と思って、そのやりをふり上げた。しかしダビデは二度身をか

82

わしてサウルを避けた。
しゅ はな とも
一二 主がサウルを離れて、ダビデと共におられたので、サウルはダビデを
おそ とお にん ちょう
恐れた。 一三それゆえサウルは、ダビデを遠ざけて、千人の長としたの
たみ さき た で い
で、ダビデは民の先に立って出入りした。 一四またダビデは、すべてその
た しゅ とも
することに、てがらを立てた。主が共におられたからである。 一五サウ
おお た み かれ おそ
ルはダビデが大きなてがらを立てるのを見て彼を恐れたが、 一六イスラ
ひと あい かれ たみ さき た で い
エルとユダのすべての人はダビデを愛した。彼が民の先に立って出入
りしたからである。
とき い ちょうじょ
一七 その時サウルはダビデに言った、
﹁わたしの長 女 メラブを、あなたに
つま あた いさ しゅ たたか
妻として与えよう。ただ、あなたはわたしのために勇ましく、主の戦い
たたか じぶん て かれ ころ
を戦いなさい﹂。サウルは﹁自分の手で彼を殺さないで、ペリシテびとの
て ころ おも い
サムエル記上

手で殺そう﹂と思ったからである。 一八ダビデはサウルに言った、
﹁わた
なにもの しんぞく ちち いちぞく
しは何者なのでしょう。わたしの親族、わたしの父の一族はイスラエル
なにもの おう
のうちで何者なのでしょう。そのわたしが、どうして王のむこになるこ

83
むすめ
とができましょう﹂。 一九しかしサウルの娘 メラブは、ダビデにとつぐべ
とき つま あた
き時になって、メホラびとアデリエルに妻として与えられた。
むすめ あい ひとびと つ
二〇 サ ウ ル の 娘 ミ カ ル は ダ ビ デ を 愛 し た。人々 が そ れ を サ ウ ル に 告 げ
こと よろこ かれ あた
たとき、サウルはその事を喜んだ。 二一サウルは﹁ミカルを彼に与えて、
かれ あざむ て て かれ ころ おも
彼を欺く手だてとし、ペリシテびとの手で彼を殺そう﹂と思ったので、サ

ウルはふたたびダビデに言った、
﹁あなたを、きょう、わたしのむこにし
けらい めい い
ます﹂。 二二そしてサウルは家来たちに命じた、﹁ひそかにダビデに言い
おう き い おう けらい みな あい
なさい、﹃王はあなたが気に入り、王の家来たちも皆あなたを愛していま
おう けらい
す。それゆえ王のむこになりなさい﹄﹂。 二三そこでサウルの家来たちは
ことば みみ かた い
この言葉をダビデの耳に語ったので、ダビデは言った、﹁わたしのような
まず いや もの おう
貧しく、卑しい者が、王のむこになることは、あなたがたには、たやす
おも けらい
サムエル記上

いことと思われますか﹂。 二四サウルの家来たちはサウルに、﹁ダビデは
い つ い
こう言った﹂と告げた。 二五サウルは言った、
﹁あなたがたはダビデにこ
い おう ゆいのう のぞ よう
う言いなさい、﹃王はなにも結納を望まれない。ただペリシテびとの陽

84
かわ え おう う のぞ
の皮一百を獲て、王のあだを討つことを望まれる﹄﹂。これはサウルが、
て たお おも
ダビデをペリシテびとの手によって倒そうと思ったからである。 二六サ
けらい ことば つ とき おう
ウルの家来たちが、この言葉をダビデに告げた時、ダビデは王のむこに
よ さだ ひ
なることを良しとした。そして定めた日がまだこないうちに、 二七ダビ
じゅうしゃ た い にん ころ よう
デは従 者をつれて、立って行き、ペリシテびと二百人を殺して、その陽
かわ たずさ かえ おう おう
の皮を携え帰り、王のむこになるために、それをことごとく王にささげ
むすめ かれ つま あた
た。そこでサウルは娘 ミカルを彼に妻として与えた。 二八しかしサウル
み しゅ とも ひと
は見て、主がダビデと共におられること、またイスラエルのすべての人
あい し とき おそ
がダビデを愛するのを知った時、 二九サウルは、ますますダビデを恐れ
た てき
た。こうしてサウルは絶えずダビデに敵した。
きみ せ かれ せ
三〇 さてペリシテびとの君たちが攻めてきたが、ダビデは、彼らが攻めて
けらい おお た
サムエル記上

くるごとに、サウルのどの家来よりも多くのてがらを立てたので、その
な そんけい
名はひじょうに尊敬された。

85
第一九章
こ けらい ころ
サウルはその子ヨナタンおよびすべての家来たちにダビデを殺すよ

い こ ふか あい
うにと言った。しかしサウルの子ヨナタンは深くダビデを愛していた。
い ちち ころ
ヨナタンはダビデに言った、﹁父サウルはあなたを殺そうとしていま

あさ き ば しょ み かく
す。それゆえあすの朝、気をつけて、わからない場所に身を隠していて
で い のはら ちち
ください。 三わたしは出て行って、あなたがいる野原で父のかたわらに
た ちち はな なに
立ち、父にあなたのことを話しましょう。そして、何かわたしにわかれ
つ ちち
ば、あなたに告げましょう﹂。 四ヨナタンは父サウルにダビデのことを
い おう けらい たい つみ おか
ほめて言った、﹁王よ、どうか家来ダビデに対して罪を犯さないでくださ
かれ つみ おか かれ
い。彼は、あなたに罪を犯さず、また彼のしたことは、あなたのために
かれ いのち ころ しゅ
サムエル記上

なることでした。 五彼は命をかけて、あのペリシテびとを殺し、主はイ
ひとびと おお しょうり あた
スラエルの人々に大いなる勝利を与えられたのです。あなたはそれを
み よろこ ころ
見て喜ばれました。それであるのに、どうしてゆえなくダビデを殺し、

86
つみ もの ち なが つみ おか
罪なき者の血を流して罪を犯そうとされるのですか﹂。 六サウルはヨナ
ことば き ちか しゅ い
タンの言葉を聞きいれた。そしてサウルは誓った、﹁主は生きておられ
けっ かれ ころ よ
る。わたしは決して彼を殺さない﹂。 七ヨナタンはダビデを呼んでこれ

らのことをみなダビデに告げた。そしてヨナタンがダビデをサウルの
つ まえ
もとに連れてきたので、ダビデは、もとのようにサウルの前にいた。
せんそう で たたか おお
ところがまた戦争がおこって、ダビデは出てペリシテびとと戦い、大

かれ ころ かれ まえ に さ
いに彼らを殺したので、彼らはその前から逃げ去った。 九さてサウルが
いえ て も とき しゅ く あくれい
家にいて手にやりを持ってすわっていた時、主から来る悪霊がサウルに
のぞ こと
臨んだので、ダビデは琴をひいていたが、一〇サウルはそのやりをもって
かべ さ とお かれ まえ み
ダビデを壁に刺し通そうとした。しかし彼はサウルの前に身をかわし
かべ に さ
たので、やりは壁につきささった。そしてダビデは逃げ去った。
よる いえ し しゃ み は
サムエル記上

一一 その夜、サウルはダビデの家に使者たちをつかわして見張りをさせ、
あさ かれ ころ つま
朝になって彼を殺させようとした。しかしダビデの妻ミカルはダビデ
い こんや じぶん いのち すく
に言った、
﹁もし今夜のうちに、あなたが自分の命を救わないならば、あ

87
ころ まど
すは殺されるでしょう﹂。 一二そしてミカルがダビデを窓からつりおろ
かれ に さ ぞう ねどこ うえ
したので、彼は逃げ去った。 一三ミカルは一つの像をとって、寝床の上に
よこ あたま け あみ きもの
横たえ、その頭にやぎの毛の網をかけ、着物をもってそれをおおった。 一
とら し しゃ かのじょ い
四サウルはダビデを捕えるため使者たちをつかわしたが、彼女は言っ
ひと びょうき み
た、﹁あの人は病気です﹂。 一五そこでサウルは、ダビデを見させようと
し しゃ い かれ ねどこ ところ つ
使者たちをつかわして言った、﹁彼を寝床のまま、わたしの所に連れてき
かれ ころ し しゃ み ねどこ
なさい。わたしが彼を殺そう﹂。 一六使者たちがはいって見ると、寝床に
ぞう よこ あたま け あみ
は像が横たえてあって、その頭には、やぎの毛の網がかけてあった。 一七
い あざむ
サウルはミカルに言った、﹁あなたはどうして、このようにわたしを欺い
てき に こた ひと
て、わたしの敵を逃がしたのか﹂。ミカルはサウルに答えた、
﹁あの人は
に ころ い
わたしに﹃逃がしてくれ。さもないと、おまえを殺す﹄と言いました﹂。
に さ い
サムエル記上

一八 ダビデは逃げ去り、ラマにいるサムエルのもとへ行って、サウルが
じぶん かれ つ
自分 に し た す べ て の こ と を 彼 に 告 げ た。そ し て ダ ビ デ と サ ム エ ル は
い す ひと
行ってナヨテに住んだ。 一九ある人がサウルに﹁ダビデはラマのナヨテ

88
つ とら し しゃ
にいます﹂と告げたので、 二〇サウルは、ダビデを捕えるために、使者た
かれ よげんしゃ いちぐん よげん
ちをつかわした。彼らは預言者の一群が預言していて、サムエルが、そ
た み とき かみ れい
のうちの、かしらとなって立っているのを見たが、その時、神の霊はサ
し しゃ のぞ かれ よげん
ウルの使者たちにも臨んで、彼らもまた預言した。 二一サウルは、このこ
き た し しゃ かれ よげん
とを聞いて、他の使者たちをつかわしたが、彼らもまた預言した。サウ
し しゃ かれ よげん
ルは三たび使者たちをつかわしたが、彼らもまた預言した。 二二そこで
い お お い ど つ とき と い
サウルはみずからラマに行き、セクの大井戸に着いた時、問うて言った、
ひと こた かれ
﹁サムエルとダビデは、どこにおるか﹂。ひとりの人が答えた、﹁彼らはラ
マ の ナ ヨ テ に い ま す﹂。 二 三そ こ で サ ウ ル は そ こ か ら ラ マ の ナ ヨ テ に
い かみ れい かれ のぞ かれ つ ある
行ったが、神の霊はまた彼にも臨んで、彼はラマのナヨテに着くまで歩
よげん かれ きもの ぬ おな
きながら預言した。 二四そして彼もまた着物を脱いで、同じようにサム
まえ よげん にち や はだか たお ふ ひとびと
サムエル記上

エルの前で預言し、一日一夜、 裸で倒れ伏していた。人々が﹁サウルも
よげんしゃ
また預言者たちのうちにいるのか﹂というのはこのためである。

89
第二〇章
に い
一ダビデはラマのナヨテから逃げてきて、ヨナタンに言った、
﹁わたしが
なに わる ちち まえ つみ おか
何をし、どのような悪いことがあり、あなたの父の前にどんな罪を犯し
ころ かれ
た の で、わ た し を 殺 そ う と さ れ る の で し ょ う か﹂。 二ヨ ナ タ ン は 彼 に
い けっ ころ ちち こと だいしょう と
言った、﹁決して殺されることはありません。父は事の大 小を問わず、
つ ちち
わたしに告げないですることはありません。どうして父がわたしにそ
こと かく
の事を隠しましょう。そのようなことはありません﹂。 三しかしダビデ
こた ちち こうい
は答えた、﹁あなたの父は、わたしがあなたの好意をえていることをよく
し かな
知っておられます。それで﹃ヨナタンが悲しむことのないように、これ
し おも しゅ い
を知らせないでおこう﹄と思っておられるのです。しかし、主は生きて
たましい い し あいだ ぽ
サムエル記上

おられ、あなたの魂は生きています。わたしと死との間は、ただ一歩で
い い
す﹂。 四ヨナタンはダビデに言った、
﹁あなたが言われることはなんでも

します﹂。 五ダビデはヨナタンに言った、
﹁あすは、ついたちですから、わ

90
おう いっしょ しょくじ い
たしは王と一緒に食事をしなければなりません。しかしわたしを行か
か め ゆうがた のはら かく ゆる
せて三日目の夕方まで、野原に隠れることを許してください。 六もしあ
ちち たず とき い
なたの父がわたしのことを尋ねられるならば、その時、言ってください、
まち いそ い ゆる
﹃ダビデはふるさとの町ベツレヘムへ急いで行くことを許してください
もと ぜんか としまつり
と、し き り に わ た し に 求 め ま し た。そ こ で 全家 の 年 祭 が あ る か ら で
かれ よ い あんぜん いか
す﹄。 七もし彼が﹁良し﹂と言われるなら、しもべは安全ですが、怒られ
がい くわ けっしん し
るなら、わたしに害を加える決心でおられるのを知ってください。 八あ
しゅ まえ けいやく むす
なたは、主の前で、しもべと契約を結んでくださいました。それでどう
ほどこ わる
ぞしもべにいつくしみを施してください。しかし、もしわたしに悪いこ
みずか ころ
とがあるならば、あなた自らわたしを殺してください。どうしてあなた
ちち ひ
の父のもとへわたしを引いていかなければならないでしょう﹂。 九ヨナ
い けっ ちち がい
サムエル記上

タンは言った、﹁そのようなことは決してありません。父があなたに害
くわ けっしん
を加える決心をしていることがわたしにわかっているならば、わたしは

それをあなたに告げないでおきましょうか﹂。 一〇ダビデはヨナタンに

91
い ちち あらあら こた とき
言った、﹁あなたの父が荒々しくあなたに答えられる時、だれがわたしに
つ い のはら で
告げるでしょうか﹂。 一一ヨナタンはダビデに言った、
﹁さあ、野原へ出て
のはら で い
いこう﹂。こうしてふたりは野原へ出て行った。
い かみ しゅ しょうにん
一二 そしてヨナタンはダビデに言った、
﹁イスラエルの神、主が、証 人で
みょうにち みょうごにち いま ちち こころ さぐ ちち たい
す。 明 日か明後日の今ごろ、わたしが父の心を探って、父がダビデに対
よ み ひと し
して良いのを見ながら、人をつかわしてあなたに知らせないようなこと
ちち がい くわ おも
をするでしょうか。 一三しかし、もし父があなたに害を加えようと思っ
し に あんぜん さ
ているのに、それをあなたに知らせず、あなたを逃がして、安全に去ら
しゅ いくえ ばっ
せないならば、主よ、どうぞ幾重にも、このヨナタンを罰してください。
しゅ ちち とも とも
どうぞ主が父と共におられたように、あなたと共におられますように。
い しゅ
一四 もしわたしがなお生きながらえているならば、主のいつくしみをわ
ほどこ し まぬか いえ なが
サムエル記上

たしに施し、死を免れさせてください。 一五またわたしの家をも、長くあ
しゅ てき
なたのいつくしみにあずからせてください。主がダビデの敵をことご
ち た ほろ とき な いえ
とく地のおもてから断ち滅ぼされる時、 一六ヨナタンの名をダビデの家

92
た しゅ てき かえ
から絶やさないでください。どうぞ主がダビデの敵に、あだを返される
かさ ちか かれ あい
よ う に﹂。 一七そ し て ヨ ナ タ ン は 重 ね て ダ ビ デ に 誓 わ せ た。彼 を 愛 し た
じぶん いのち かれ あい
からである。ヨナタンは自分の命のように彼を愛していた。
い せき
一八ヨナタンはダビデに言った、
﹁あすはついたちです。あなたの席があ
たず か め
いているので、どうしたのかと尋ねられるでしょう。 一九三日目には、き
たず さき かく ば しょ い む
びしく尋ねられるでしょうから、先にあなたが隠れた場所へ行って、向
いしづか まと い
こうの石塚のかたわらにいてください。 二〇わたしは的を射るようにし
や ほん はな い や さが
て、矢を三本、そのそばに放ちます。 二一そして、
﹃行って矢を捜してき
い こども こども や てまえ
なさい﹄と言って子供をつかわしましょう。わたしが子供に、﹃矢は手前
と い とき
にある。それを取ってきなさい﹄と言うならば、その時あなたはきてく
しゅ い あんぜん なに きけん
ださい。主が生きておられるように、あなたは安全で、何も危険がない
こ とも や む い
サムエル記上

からです。 二二しかしわたしがその子供に、
﹃矢は向こうにある﹄と言う
とき さ い しゅ さ
ならば、その時、あなたは去って行きなさい。主があなたを去らせられ
はな こと しゅ つね
るのです。 二三あなたとわたしとで話しあった事については、主が常に

93
あいだ
あなたとわたしとの間におられます﹂。
のはら み かく おう
二四 そこでダビデは野原に身を隠した。さて、ついたちになったので、王
しょくじ せき つ おう かべ よ せき つ
は食事をするため席に着いた。 二五王はいつものように壁寄りに席に着
む がわ せき つ よこ せき
き、ヨナタンはその向かい側の席に着き、アブネルはサウルの横の席に
つ ば しょ
着いたが、ダビデの場所にはだれもいなかった。
ひ なに い かれ なに た けが
二六 ところがその日サウルは何も言わなかった、
﹁彼に何か起って汚れた
けが おも
のだろう。きっと汚れたのにちがいない﹂と思ったからである。 二七し
め あ ひ ば しょ
かし、ふつか目すなわち、ついたちの明くる日も、ダビデの場所はあい
こ い
ていたので、サウルは、その子ヨナタンに言った、
﹁どうしてエッサイの
こ しょくじ こた
子は、きのうもきょうも食事にこないのか﹂。 二八ヨナタンはサウルに答
い ゆる
えた、
﹁ダビデは、ベツレヘムへ行くことを許してくださいと、しきりに
もと かれ い い
サムエル記上

わ た し に 求 め ま し た。 二九彼 は 言 い ま し た、﹃わ た し に 行 か せ て く だ さ
いちぞく まち まつり あに く めい
い。われわれの一族が町で祭をするので、兄がわたしに来るようにと命
まえ めぐ え
じました。それでもし、あなたの前に恵みを得ますならば、どうぞ、わ

94
い ゆる きょうだい あ かれ おう
たしに行くことを許し、兄 弟たちに会わせてください﹄。それで彼は王
しょくたく
の食 卓にこなかったのです﹂。
とき いか はっ かれ い
三〇その時サウルはヨナタンにむかって怒りを発し、彼に言った、
﹁あな
こころ まが おんな う こ こ えら
たは心の曲った、そむく女の産んだ子だ。あなたがエッサイの子を選ん
じぶん み はは み
で、自分の身をはずかしめ、また母の身をはずかしめていることをわた
し おも こ よ い
しが知らないと思うのか。 三一エッサイの子がこの世に生きながらえて
あいだ おうこく かた た
いる間は、あなたも、あなたの王国も堅く立っていくことはできない。
いま ひと かれ つ
それゆえ今、人をつかわして、彼をわたしのもとに連れてこさせなさい。
かれ かなら し ちち こた
彼 は 必 ず 死 な な け れ ば な ら な い﹂。 三二ヨ ナ タ ン は 父 サ ウ ル に 答 え た、
かれ ころ かれ なに
﹁どうして彼は殺されなければならないのですか。彼は何をしたのです
う かれ む
か﹂。 三三ところがサウルはヨナタンを撃とうとして、やりを彼に向かっ
ふ あ ちち ころ こころ き
サムエル記上

て振り上げたので、ヨナタンは父がダビデを殺そうと、心に決めている
し はげ いか せき た つき
のを知った。 三四ヨナタンは激しく怒って席を立ち、その月のふつかに
しょくじ ちち
は食事をしなかった。父がダビデをはずかしめたので、ダビデのために

95
うれ
憂えたからである。
あさ ちい こども つ う
三五 あくる朝、ヨナタンは、ひとりの小さい子供を連れて、ダビデと打ち
あ のはら で い こ とも い はし
合わせたように野原に出て行った。 三六そしてその子供に言った、
﹁走っ
い い や さが こども はし い あいだ
て行って、わたしの射る矢を捜しなさい﹂。子供が走って行く間に、ヨナ
や かれ まえ ほう はな こども はな
タンは矢を彼の前の方に放った。 三七そして子供が、ヨナタンの放った
や い とき こども よ や
矢のところへ行った時、ヨナタンは子供のうしろから呼ばわって、﹁矢は
む い こ とも
向こうにあるではないか﹂と言った。 三八ヨナタンはまた、その子供のう
よ い はや いそ こ とも
しろから呼ばわって言った、
﹁早くせよ、急げ。とどまるな﹂。その子供
や ひろ あつ しゅじん こども なに し
は矢を拾い集めて主人ヨナタンのもとにきた。 三九しかし子供は何も知

らず、ヨナタンとダビデだけがそのことを知っていた。 四〇ヨナタンは
じぶん ぶ き こ とも わた い まち はこ い
自分の武器をその子供に渡して言った、﹁あなたはこれを町へ運んで行
こども い いしづか
サムエル記上

き な さ い﹂。 四一子供 が 行 っ て し ま う と ダ ビ デ は 石塚 の か た わ ら を は な
た ち ふ ど けいれい たがい くち
れて立ちいで、地にひれ伏して三度敬礼した。そして、ふたりは互に口
たがい な こころ お つ とき
づけし、 互に泣いた。やがてダビデは心が落ち着いた。 四二その時ヨナ

96
い ぶ じ い しゅ
タンはダビデに言った、
﹁無事に行きなさい。われわれふたりは、
﹃主が
つね あいだ しそん しそん
常にわたしとあなたの間におられ、また、わたしの子孫とあなたの子孫
あいだ い しゅ な ちか
の間におられる﹄と言って、主の名をさして誓ったのです﹂。こうしてダ
た さ まち
ビデは立ち去り、ヨナタンは町にはいった。
第二一章
い さいし い
ダビデはノブに行き、祭司アヒメレクのところへ行った。アヒメレク

むか い
はおののきながらダビデを迎えて言った、﹁どうしてあなたはひとりで
とも さいし い
すか。だれも供がいないのですか﹂。 二ダビデは祭司アヒメレクに言っ
おう こと めい
た、
﹁王がわたしに一つの事を命じて、
﹃わたしがおまえをつかわしてさ
サムエル記上

こと めい なに ひと し
せる事、またわたしが命じたことについては、何をも人に知らせてはな
い ば しょ わかもの ま
らない﹄と言われました。そこでわたしは、ある場所に若者たちを待た
いま て こ
せてあります。 三ところで今あなたの手もとにパン五個でもあれば、そ

97
れをわたしにください。なければなんでも、あるものをください﹂。 四
さいし こた い つね て
祭司はダビデに答えて言った、﹁常のパンはわたしの手もとにありませ
わかもの おんな つつし せいべつ
ん。ただその若者たちが女を慎んでさえいたのでしたら、聖別したパン
さいし こた たたか で
があります﹂。 五ダビデは祭司に答えた、
﹁わたしが戦いに出るいつもの
とき おんな ちか わかもの
時のように、われわれはたしかに女たちを近づけていません。若者たち
うつわ つね たび きよ かれ
の器は、常の旅であったとしても、清いのです。まして、きょう、彼ら
うつわ きよ さいし かれ せいべつ あた
の器は清くないでしょうか﹂。 六そこで祭司は彼に聖別したパンを与え
ところ そな と
た。その所に、供えのパンのほかにパンがなく、このパンは、これを取
さ ひ お しゅ まえ と とり
り下げる日に、あたたかいパンと置きかえるため、主の前から取り下さ
げたものである。
ひ ところ しゅ まえ と お
七その日、その所に、サウルのしもべのひとりが、主の前に留め置かれ
な ぼくしゃ
サムエル記上

ていた。その名はドエグといい、エドムびとであって、サウルの牧者の
ちょう
長であった。
い て
八ダビデはまたアヒメレクに言った、
﹁ここに、あなたの手もとに、やり

98
おう こと きゅう よう
かつるぎがありませんか。王の事が急を要したので、わたしはつるぎも
ぶ き も さいし い たに
武器も持ってこなかったのです﹂。 九祭司は言った、
﹁あなたがエラの谷
ころ ぬの つつ
で殺したペリシテびとゴリアテのつるぎが、布に包んでエポデのうしろ
と と
にあります。もしあなたがこれを取ろうとおもわれるなら、お取りくだ

さい。ここにはそのほかにはありません﹂。ダビデは言った、﹁それにま
さ る も の は あ り ま せ ん。そ れ を わ た し に く だ さ い﹂。 一〇ダ ビ デ は そ の
ひ おそ た おう に い
日サウルを恐れて、立ってガテの王アキシのところへ逃げて行った。 一一
けらい い くに おう
アキシの家来たちはアキシに言った、﹁これはあの国の王ダビデではあ
ひとびと おど たがい うた
りませんか。人々が踊りながら、 互に歌いかわして、
う ころ
﹃サウルは千を撃ち殺し、
まん う ころ
ダビデは万を撃ち殺した﹄
い ひと
サムエル記上

と言ったのは、この人のことではありませんか﹂。 一二ダビデは、これら
ことば こころ おう おそ ひとびと
の言葉を心におき、ガテの王アキシを、ひじょうに恐れたので、 一三人々
まえ きょどう か とら きちが もん
の前で、わざと挙動を変え、捕えられて気違いのふりをし、門のとびら

99
う なが つた けらい
を打ちたたき、よだれを流して、ひげに伝わらせた。 一四アキシは家来た
い み ひと きちが かれ
ちに言った、﹁あなたがたの見るように、この人は気違いだ。どうして彼
ところ つ きちが ひつよう
をわたしの所へ連れてきたのか。 一五わたしに気違いが必要なのか。こ
もの つ まえ くる もの
の者を連れてきて、わたしの前で狂わせようというのか。この者をわた
いえ い
しの家へ入れようとするのか﹂。
第二二章
ところ さ あな かれ
こうしてダビデはその所を去り、アドラムのほら穴へのがれた。彼の

きょうだい ちち いえ もの みな き ところ くだ かれ
兄 弟たちと父の家の者は皆、これを聞き、その所に下って彼のもとにき
ひとびと ふさい ひとびと こころ ふまん
た。 二また、しえたげられている人々、負債のある人々、 心に不満のあ
サムエル記上

ひとびと みな かれ あつ かれ ちょう
る人々も皆、彼のもとに集まってきて、彼はその長となった。おおよそ
にん ひとびと かれ とも
四百人の人々が彼と共にあった。
い おう い かみ
ダビデはそこからモアブのミヅパへ行き、モアブの王に言った、
三 ﹁神が

100
ふ ぼ
わたしのためにどんなことをされるかわかるまで、どうぞわたしの父母
ところ かれ おう かれ
をあなたの所におらせてください﹂。 四そして彼はモアブの王に彼らを
たく かれ ようがい あいだ おう ところ
託したので、彼らはダビデが要害におる間、王の所におった。 五さて、
よげんしゃ い ようがい さ
預言者ガドはダビデに言った、﹁要害にとどまっていないで、去ってユダ
ち い さ もり い
の地へ行きなさい﹂。そこでダビデは去って、ハレテの森へ行った。
かれ とも ひとびと み
六サウルは、ダビデおよび彼と共にいる人々が見つかったということを
き て おか き
聞いた。サウルはギベアで、やりを手にもって、丘のぎょりゅうの木の
した けらい た
下にすわっており、家来たちはみなそのまわりに立っていた。 七サウル
た けらい い
はまわりに立っている家来たちに言った、﹁あなたがたベニヤミンびと
き こ はたけ
は聞きなさい。エッサイの子もまた、あなたがたおのおのに畑やぶどう
はたけ あた にん ちょう にん ちょう
畑を与え、おのおのを千人の長、百人の長にするであろうか。 八あなた
みなとも てき こ こ
サムエル記上

がたは皆共にはかってわたしに敵した。わたしの子がエッサイの子と
けいやく むす つ
契約を結んでも、それをわたしに告げるものはなく、またあなたがたの
うれ こ
うち、ひとりもわたしのために憂えず、きょうのように、わたしの子が

101
さか みち かれ ま
わたしのしもべをそそのかしてわたしに逆らわせ、道で彼がわたしを待
ぶ つ もの とき
ち伏せするようになっても、わたしに告げる者はない﹂。 九その時エド
けらい た こた い
ムびとドエグは、サウルの家来たちのそばに立っていたが、答えて言っ
こ こ ところ
た、﹁わたしはエッサイの子がノブにいるアヒトブの子アヒメレクの所
み かれ しゅ と かれ
にきたのを見ました。 一〇アヒメレクは彼のために主に問い、また彼に
しょくもつ あた あた
食 物を与え、ペリシテびとゴリアテのつるぎを与えました﹂。
おう ひと こ さいし ちち
一一 そこで王は人をつかわして、アヒトブの子祭司アヒメレクとその父
いえ もの さいし め おう ところ
の家のすべての者、すなわちノブの祭司たちを召したので、みな王の所
い こ き かれ こた
にきた。 一二サウルは言った、
﹁アヒトブの子よ、聞きなさい﹂。彼は答え
しゅ かれ い
た、
﹁わが主よ、わたしはここにおります﹂。 一三サウルは彼に言った、
﹁ど
こ とも てき かれ
うしてあなたはエッサイの子と共にはかってわたしに敵し、彼にパンと
あた かれ かみ と かれ さか
サムエル記上

つるぎを与え、彼のために神に問い、きょうのように彼をわたしに逆
た みち ま ぶ おう こた
らって立たせ、道で待ち伏せさせるのか﹂。 一四アヒメレクは王に答えて
い けらい ちゅうぎ もの
言った、﹁あなたの家来のうち、ダビデのように忠義な者がほかにありま

102
かれ おう むすめむこ こ の え へい ちょう いえ たっと
すか。彼は王の娘 婿であり、近衛兵の長であって、あなたの家で尊ばれ
ひと かれ かみ と はじ
る人ではありませんか。 一五彼のために神に問うたのは、きょう初めて
けっ おう
でしょうか。いいえ、決してそうではありません。王よ、どうぞ、しも
ちち ぜんか つみ お
べと父の全家に罪を負わせないでください。しもべは、これについて
こと だいしょう と なに し おう い
は、事の大 小を問わず、何をも知らなかったのです﹂。 一六王は言った、
かなら ころ ちち
﹁アヒメレクよ、あなたは必ず殺されなければならない。あなたの父の
ぜんか おな おう た このえ へい
全家 も 同 じ で あ る﹂。 一 七そ し て 王 は ま わ り に 立 っ て い る 近衛 の 兵 に
い み しゅ さいし ころ かれ
言った、﹁身をひるがえして、主の祭司たちを殺しなさい。彼らもダビデ
きょうりょく に し つ
と協 力していて、ダビデの逃げたのを知りながら、それをわたしに告げ
おう けらい しゅ さいし ころ
なかったからです﹂。ところが王の家来たちは主の祭司たちを殺すため
て くだ おう い
に手を下そうとはしなかった。 一八そこで王はドエグに言った、
﹁あなた
み さいし ころ み
サムエル記上

が身をひるがえして、祭司たちを殺しなさい﹂。エドムびとドエグは身
さいし う ひ あ ま ぬの み
をひるがえして祭司たちを撃ち、その日亜麻布のエポデを身につけてい
もの にん ころ かれ さいし まち
る者八十五人を殺した。 一九彼はまた、つるぎをもって祭司の町ノブを

103
う おとこ おんな おさ こ ち の ご うし ひつじ ころ
撃ち、つるぎをもって男、 女、幼な子、乳飲み子、牛、ろば、 羊を殺し
た。
こ こ な
二〇 しかしアヒトブの子アヒメレクの子たちのひとりで、名をアビヤタ
ひと ところ はし
ルという人は、のがれてダビデの所に走った。 二一そしてアビヤタルは、
しゅ さいし ころ つ
サウルが主の祭司たちを殺したことをダビデに告げたので、 二二ダビデ
い ひ
はアビヤタルに言った、﹁あの日、エドムびとドエグがあそこにいたの
かれ つ おも
で、わたしは彼がきっとサウルに告げるであろうと思った。わたしがあ
ちち いえ ひとびと いのち うしな
なたの父の家の人々の命を失わせるもととなったのです。 二三あなたは
ところ おそ
わたしの所にとどまってください。恐れることはありません。あなた
いのち もと もの いのち もと ところ
の命を求める者は、わたしの命をも求めているのです。わたしの所にお
あんぜん
られるならば、あなたは安全でしょう﹂。
サムエル記上

104
第二三章
ひとびと つ い せ
一さて人々はダビデに告げて言った、
﹁ペリシテびとがケイラを攻めて、
う ば こくもつ しゅ と い
打 ち 場 の 穀物 を か す め て い ま す﹂。 二そ こ で ダ ビ デ は 主 に 問 う て 言 っ
い う しゅ
た、
﹁わたしが行って、このペリシテびとを撃ちましょうか﹂。主はダビ
い い う すく
デに言われた、﹁行ってペリシテびとを撃ち、ケイラを救いなさい﹂。 三
じゅうしゃ かれ い
し か し ダ ビ デ の 従 者 た ち は 彼 に 言 っ た、﹁わ れ わ れ は、ユ ダ の こ こ に
おそ い
おってさえ、恐れているのに、ましてケイラへ行って、ペリシテびとの
ぐん あた かさ しゅ と
軍 に 当 る こ と が で き ま し ょ う か﹂。 四ダ ビ デ が 重 ね て 主 に 問 う た と こ
しゅ かれ こた い た くだ
ろ、主は彼に答えて言われた、
﹁立って、ケイラへ下りなさい。わたしは
て わた じゅうしゃ
ペリシテびとをあなたの手に渡します﹂。 五ダビデとその従 者たちはケ
い たたか かれ かちく うば かれ おお
サムエル記上

イラへ行って、ペリシテびとと戦い、彼らの家畜を奪いとり、彼らを多
う ころ じゅうみん すく
く撃ち殺した。こうしてダビデはケイラの住 民を救った。

六アヒメレクの子アビヤタルは、ケイラにいるダビデのもとにのがれて

105
とき て くだ
きた時、手にエポデをもって下ってきた。 七さてダビデのケイラにきた
きこ い かみ て かれ
ことがサウルに聞えたので、サウルは言った、﹁神はわたしの手に彼をわ
かれ もん かん き まち じぶん み と
たされた。彼は門と貫の木のある町にはいって、自分で身を閉じこめた
たみ たたか よ あつ
からである﹂。 八そこでサウルはすべての民を戦いに呼び集めて、ケイ
くだ じゅうしゃ せ かこ
ラに下り、ダビデとその従 者を攻め囲もうとした。 九ダビデはサウルが
じぶん がい くわ し さいし い
自分に害を加えようとしているのを知って、祭司アビヤタルに言った、
も い
﹁エポデを持ってきてください﹂。 一〇そしてダビデは言った、
﹁イスラエ
かみ しゅ
ルの神、主よ、しもべはサウルがケイラにきて、わたしのために、この
まち ほろ たし き ひとびと
町を滅ぼそうとしていることを確かに聞きました。 一一ケイラの人々は
かれ て わた き
わたしを彼の手に渡すでしょうか。しもべの聞いたように、サウルは
くだ かみ しゅ つ
下ってくるでしょうか。イスラエルの神、主よ、どうぞ、しもべに告げ
しゅ い かれ くだ く い
サムエル記上

てください﹂。主は言われた、﹁彼は下って来る﹂。 一二ダビデは言った、
ひとびと じゅうしゃ て
﹁ケ イ ラ の 人々 は わ た し と 従 者 た ち を サ ウ ル の 手 に わ た す で し ょ う
しゅ い かれ わた
か﹂。主は言われた、
﹁彼らはあなたがたを渡すであろう﹂。 一三そこでダ

106
にん じゅうしゃ た さ
ビデとその六百人ほどの従 者たちは立って、ケイラを去り、いずことも
に さ きこ
なくさまよった。ダビデのケイラから逃げ去ったことがサウルに聞え
たたか で あらの
た の で、サ ウ ル は 戦 い に 出 る こ と を や め た。 一 四ダ ビ デ は 荒野 に あ る
ようがい あらの さんち ひ び かれ たず
要害におり、またジフの荒野の山地におった。サウルは日々に彼を尋ね
もと かみ かれ て わた
求めたが、神は彼をその手に渡されなかった。
じぶん いのち もと で おそ
一五 さてダビデはサウルが自分の命を求めて出てきたので恐れた。その
とき あらの こ
時 ダ ビ デ は ジ フ の 荒野 の ホ レ シ に い た が、 一六サ ウ ル の 子 ヨ ナ タ ン は
た い かみ かれ ちから
立って、ホレシにいるダビデのもとに行き、神によって彼を力づけた。 一
かれ い おそ ちち
七そしてヨナタンは彼に言った、﹁恐れるにはおよびません。父サウル
て とど おう
の手はあなたに届かないでしょう。あなたはイスラエルの王となり、わ
つぎ ちち し
たしはあなたの次となるでしょう。このことは父サウルも知っていま
かれ しゅ まえ けいやく むす
サムエル記上

す﹂。 一八こうして彼らふたりは主の前で契約を結び、ダビデはホレシに
いえ かえ
とどまり、ヨナタンは家に帰った。
とき のぼ い
一九 その時ジフびとはギベアにいるサウルのもとに上って行き、そして

107
い あらの みなみ おか うえ ようがい かく
言った、﹁ダビデは、荒野の南にあるハキラの丘の上のホレシの要害に隠
とも おう
れて、われわれと共にいるではありませんか。 二〇それゆえ王よ、あなた
くだ い のぞ くだ
が下って行こうという望みのとおり、いま下ってきてください。われわ
かれ おう て わた い
れは彼を王の手に渡します﹂。 二一サウルは言った、﹁あなたがたはわた
どうじょう よ しゅ しゅくふく
しに同 情を寄せてくれたのです。どうぞ主があなたがたを祝 福される
い たし かれ い
ように。 二二あなたがたは行って、なお確かめてください。彼のよく行
ところ かれ み み ひと かた
く所とだれがそこで彼を見たかを見きわめてください。人の語るとこ
かれ わるがしこ かれ
ろによると、彼はひじょうに悪 賢いそうだ。 二三それで、あなたがたは彼
かく かく ば しょ み たし し ところ
が隠れる隠れ場所をみな見きわめ、確かな知らせをもってわたしの所に
かえ とき とも い かれ
帰ってきなさい。その時わたしはあなたがたと共に行きます。もし彼
ち しぞく たず かれ さが
がこの地にいるならば、わたしはユダの氏族をあまねく尋ねて彼を捜し
かれ た さきだ い
サムエル記上

だします﹂。 二四彼らは立って、サウルに先立ってジフへ行った。
じゅうしゃ あらの みなみ あらの
さてダビデとその従 者たちは荒野の南のアラバにあるマオンの荒野に
じゅうしゃ かれ さが ひとびと
いた。 二五そしてサウルとその従 者たちはきて彼を捜した。人々がこれ

108
つ あらの いわ ところ くだ
をダビデに告げたので、ダビデはマオンの荒野にある岩の所へ下って
い き あらの お
行った。サウルはこれを聞いて、マオンの荒野にきてダビデを追った。
やま がわ い じゅうしゃ やま
二六 サウルは山のこちら側を行き、ダビデとその従 者たちとは山のむこ
がわ おこな いそ
う 側 を 行 っ た。そ し て ダ ビ デ は 急 い で サ ウ ル か ら の が れ よ う と し た。
じゅうしゃ じゅうしゃ かこ とら
サウルとその従 者たちが、ダビデとその従 者たちを囲んで捕えようと
とき ところ し しゃ い
したからである。 二七その時、サウルの所に、ひとりの使者がきて言っ
くに おか いそ
た、﹁ペリシテびとが国を侵しています。急いできてください﹂。 二八そ
お かえ い
こでサウルはダビデを追うことをやめて帰り、行ってペリシテびとに
あた ひとびと ところ いわ な
当った。それで人々は、その所を﹁のがれの岩﹂と名づけた。 二九ダビデ
のぼ ようがい
はそこから上ってエンゲデの要害にいた。
サムエル記上

第二四章
お かえ ひとびと かれ
一サウルがペリシテびとを追うことをやめて帰ってきたとき、人々は彼

109
つ い の
に 告 げ て 言 っ た、﹁ダ ビ デ は エ ン ゲ デ の 野 に い ま す﹂。 二そ こ で サ ウ ル
ぜん えら ひと ひき じゅうしゃ
は、全イスラエルから選んだ三千の人を率い、ダビデとその従 者たちと
さが いわ まえ で とちゅう ひつじ ところ
を捜すため、
﹁やぎの岩﹂の前へ出かけた。 三途中、羊のおりの所にきた
あな あし なか
が、そこに、ほら穴があり、サウルは足をおおうために、その中にはいっ
とき じゅうしゃ あな おく
た。その時、ダビデとその従 者たちは、ほら穴の奥にいた。 四ダビデの
じゅうしゃ かれ い しゅ つ てき
従 者たちは彼に言った、
﹁主があなたに告げて、
﹃わたしはあなたの敵を
て わた じぶん よ おも かれ
あなたの手に渡す。あなたは自分の良いと思うことを彼にすることが
い ひ た
できる﹄と言われた日がきたのです﹂。そこでダビデは立って、ひそか
うわぎ き のち
に、サウルの上着のすそを切った。 五しかし後になって、ダビデはサウ
うわぎ き こころ せ かん じゅうしゃ
ルの上着のすそを切ったことに、 心の責めを感じた。 六ダビデは従 者
い しゅ あぶら そそ きみ こと
たちに言った、﹁主が油を注がれたわが君に、わたしがこの事をするのを
しゅ きん かれ しゅ あぶら そそ もの かれ てき
サムエル記上

主は禁じられる。彼は主が油を注がれた者であるから、彼に敵して、わ
て よ ことば
た し の 手 を の べ る の は 良 く な い﹂。 七ダ ビ デ は こ れ ら の 言葉 を も っ て
じゅうしゃ さ と う ゆる
従 者 た ち を 差 し 止 め、サ ウ ル を 撃 つ こ と を 許 さ な か っ た。サ ウ ル は

110
た あな さ みち すす
立って、ほら穴を去り、道を進んだ。
た あな で
八ダビデもまた、そのあとから立ち、ほら穴を出て、サウルのうしろか
よ きみ おう い む
ら呼ばわって、
﹁わが君、王よ﹂と言った。サウルがうしろをふり向いた
とき ち ふ はい い
時、ダ ビ デ は 地 に ひ れ 伏 し て 拝 し た。 九そ し て ダ ビ デ は サ ウ ル に 言 っ
がい
た、
﹁どうして、あなたは﹃ダビデがあなたを害しようとしている﹄とい
ひとびと ことば き ひ じぶん め
う人々の言葉を聞かれるのですか。 一〇あなたは、この日、自分の目で、
しゅ あな なか て わた
主があなたをきょう、ほら穴の中でわたしの手に渡されたのをごらんに
ひとびと ころ すす
なりました。人々はわたしにあなたを殺すことを勧めたのですが、わた
ころ きみ しゅ あぶら そそ かた
しは殺しませんでした。﹃わが君は主が油を注がれた方であるから、こ
てき て い
れに敵して手をのべることはしない﹄とわたしは言いました。 一一わが
ちち うわぎ て
父よ、ごらんなさい。あなたの上着のすそは、わたしの手にあります。
うわぎ き ころ
サムエル記上

わたしがあなたの上着のすそを切り、しかも、あなたを殺さなかったこ
て あく み し
とによって、あなたは、わたしの手に悪も、とがもないことを見て知ら
いのち と
れるでしょう。あなたはわたしの命を取ろうと、ねらっておられます

111
たい つみ
が、わたしはあなたに対して罪をおかしたことはないのです。 一二どう
しゅ あいだ しゅ
ぞ主がわたしとあなたの間をさばかれますように。また主がわたしの
むく て
ために、あなたに報いられますように。しかし、わたしはあなたに手を
むかし い
くだすことをしないでしょう。 一三 昔から、ことわざに言っているよう
あく あくにん で て
に、
﹃悪は悪人から出る﹄。しかし、わたしはあなたに手をくだすことを
おう お で
しないでしょう。 一四イスラエルの王は、だれを追って出てこられたの
お し いぬ お
ですか。あなたは、だれを追っておられるのですか。死んだ犬を追って
ぴき のみ お しゅ
おられるのです。一匹の蚤を追っておられるのです。 一五どうぞ主がさ
あいだ み
ばきびととなって、わたしとあなたの間をさばき、かつ見て、わたしの
うった き て すく だ
訴えを聞き、わたしをあなたの手から救い出してくださるように﹂。
ことば かた おわ い
一六ダビデがこれらの言葉をサウルに語り終ったとき、サウルは言った、
こ こえ こえ
サムエル記上

﹁わが子ダビデよ、これは、あなたの声であるか﹂。そしてサウルは声を
な い
あげて泣いた。 一七サウルはまたダビデに言った、
﹁あなたはわたしより
ただ あく むく ぜん むく
も正しい。わたしがあなたに悪を報いたのに、あなたはわたしに善を報

112
よ あき
いる。 一八きょう、あなたはいかに良くわたしをあつかったかを明らか
しゅ て
にしました。すなわち主がわたしをあなたの手にわたされたのに、あな
ころ ひと てき あ てき ぶ じ
たはわたしを殺さなかったのです。 一九人は敵に会ったとき、敵を無事
さ こと
に去らせるでしょうか。あなたが、きょう、わたしにした事のゆえに、ど
しゅ よ むく あた いま
うぞ主があなたに良い報いを与えられるように。 二〇今わたしは、あな
おう し おうこく
たがかならず王となることを知りました。またイスラエルの王国が、あ
て かた た し
なたの手によって堅く立つことを知りました。 二一それゆえ、あなたは
しそん た ちち いえ
わたしのあとに、わたしの子孫を断たず、またわたしの父の家から、わ
な ほろ さ しゅ ちか
たしの名を滅ぼし去らないと、いま主をさして、わたしに誓ってくださ
ちか
い﹂。 二二そこでダビデはサウルに、そのように誓った。そしてサウルは
いえ かえ じゅうしゃ ようがい い
家に帰り、ダビデとその従 者たちは要害にのぼって行った。
サムエル記上

113
第二五章
し ひとびと あつ かれ
さてサムエルが死んだので、イスラエルの人々はみな集まって、彼の

かな いえ かれ ほうむ
ためにひじょうに悲しみ、ラマにあるその家に彼を葬 った。
た あらの くだ い
そしてダビデは立ってパランの荒野に下って行った。 二マオンに、ひと
ひと しょゆう ゆうふく ひつじ
りの人があって、カルメルにその所有があり、ひじょうに裕福で、羊 三
とう とう も かれ ひつじ け き
千頭、やぎ一千頭を持っていた。彼はカルメルで羊の毛を切っていた。
ひと な つま な
その人の名はナバルといい、妻の名はアビガイルといった。アビガイ

かしこ うつく おっと ごうじょう そぼう かれ
ルは賢くて美しかったが、その夫は剛 情で、粗暴であった。彼はカレブ
あらの ひつじ け き
びとであった。 四ダビデは荒野にいて、ナバルがその羊の毛を切ってい
き にん わかもの わかもの い
ることを聞いたので、五十人の若者をつかわし、その若者たちに言った、
のぼ い ところ い な かれ
サムエル記上

﹁カルメルに上って行ってナバルの所へ行き、わたしの名をもって彼に
かれ い へいあん
あいさつし、 六彼にこう言いなさい、﹃どうぞあなたに平安があるよう
いえ へいあん も もの
に。あなたの家に平安があるように。またあなたのすべての持ち物に

114
へいあん ひつじ け き
平安 が あ る よ う に。 七わ た し は あ な た が 羊 の 毛 を 切 っ て お ら れ る こ と
き ひつじかい いっしょ
を 聞 き ま し た。あ な た の 羊 飼 た ち は わ れ わ れ と 一緒 に い た の で す が、
かれ すこ がい かれ
われわれは彼らを少しも害しませんでした。また彼らはカルメルにい
あいだ なに うしな わかもの き
る間に、何ひとつ失 ったことはありません。 八あなたの若者たちに聞い
わかもの
てみられるならば、わかります。それゆえ、わたしの若者たちに、あな
こうい しめ しゅく ひ
たの好意を示してください。われわれは祝の日にきたのです。どうぞ、
て おく もの こ
あなたの手もとにあるものを、贈り物として、しもべどもとあなたの子
ダビデにください﹄﹂。
わかもの い な ことば
九ダビデの若者たちは行って、ダビデの名をもって、これらの言葉をナ
かた ま わかもの こた
バルに語り、そして待っていた。 一〇ナバルはダビデの若者たちに答え
い こ
て言った、﹁ダビデとはだれか。エッサイの子とはだれか。このごろは、
しゅじん す に おお みず
サムエル記上

主人を捨てて逃げるしもべが多い。 一一どうしてわたしのパンと水、ま
ひつじ け き ひとびと にく
たわたしの羊の毛を切る人々のためにほふった肉をとって、どこからき
ひとびと あた わかもの
た の か わ か ら な い 人々 に 与 え る こ と が で き よ う か﹂。 一二ダ ビ デ の 若者

115
さ かえ かれ こと つ
たちは、そこを去り、帰ってきて、彼にこのすべての事を告げた。 一三そ
じゅうしゃ い お かれ
こでダビデは従 者たちに言った、
﹁おのおの、つるぎを帯びなさい﹂。彼
お お
らはおのおのつるぎを帯び、ダビデもまたつるぎを帯びた。そしておお
にん したが のぼ にん にもつ
よそ四百人がダビデに従 って上っていき、二百人は荷物のところにと
どまった。
わかもの つま い
ところで、ひとりの若者がナバルの妻アビガイルに言った、
一四 ﹁ダビデ
あらの し しゃ しゅじん しゅじん
が荒野から使者をつかわして、主人にあいさつをしたのに、主人はその
し しゃ ひとびと だい
使者たちをののしられました。 一五しかし、あの人々はわれわれに大へ
すこ がい う の
んよくしてくれて、われわれは少しも害を受けず、またわれわれが野に
とき かれ とも あいだ なに うしな
いた時、彼らと共にいた間は、何ひとつ失 ったことはありませんでし
ひつじ か かれ とも あいだ かれ よる ひる
た。 一六われわれが羊を飼って彼らと共にいる間、彼らは夜も昼もわれ
いま し
サムエル記上

われのかきとなってくれました。 一七それで、あなたは今それを知って、
じぶん かんが しゅじん いっ か わざわい お
自分のすることを考えてください。主人とその一家に災が起きるから
しゅじん ひと はな
です。しかも主人はよこしまな人で、話しかけることもできません﹂。

116
とき いそ しゅ かわぶくろ ちょうり
一八 その時、アビガイルは急いでパン二百、ぶどう酒の皮 袋 二つ、調理
ひつじ とう むぎ
した羊 五頭、いり麦五セア、ほしぶどう百ふさ、ほしいちじくのかたま
と わかもの い
り二百を取って、ろばにのせ、 一九若者たちに言った、
﹁わたしのさきに
すす い
進みなさい。わたしはあなたがたのうしろに、ついて行きます﹂。しか
かのじょ おっと つ の
し彼女は夫 ナバルには告げなかった。 二〇アビガイルが、ろばに乗って
やまかげ くだ とき じゅうしゃ かのじょ ほう む ふ
山陰を下ってきた時、ダビデと従 者たちは彼女の方に向かって降りて
かのじょ ひとびと で あ
きたので、彼女はその人々に出会った。 二一さて、ダビデはさきにこう
い ひと あらの も もの まも ひと
言った、﹁わたしはこの人が荒野で持っている物をみな守って、その人に
ぞく もの なに まった
属する物を何ひとつなくならないようにしたが、それは全くむだであっ
かれ しんせつ あく むく
た。彼はわたしのした親切に悪をもって報いた。 二二もしわたしがあす
あさ ぞく もの おとこ のこ
の朝まで、ナバルに属するすべての者のうち、ひとりの男でも残してお
かみ いくえ ばっ
サムエル記上

くならば、神が幾重にもダビデを罰してくださるように﹂。
み いそ ふ まえ ち
二三 アビガイルはダビデを見て、急いで、ろばを降り、ダビデの前で地に
ふ あし ふ い きみ
ひれ伏し、 二四その足もとに伏して言った、
﹁わが君よ、このとがをわた

117
お みみ
しだけに負わせてください。しかしどうぞ、はしために、あなたの耳に
かた ゆる ことば き きみ
語ることを許し、はしための言葉をお聞きください。 二五わが君よ、どう
ひと き ひと
ぞ、このよこしまな人ナバルのことを気にかけないでください。あの人
な な おろ もの
はその名のとおりです。名はナバルで、愚かな者です。あなたのはした
きみ わかもの み
めであるわたしは、わが君なるあなたがつかわされた若者たちを見な
いま きみ しゅ い
かったのです。 二六それゆえ今、わが君よ、主は生きておられます。また
い しゅ ち なが て
あなたは生きておられます。主は、あなたがきて血を流し、また手ずか
むく いま てき
ら、あだを報いるのをとどめられました。どうぞ今、あなたの敵、およ
きみ がい くわ もの
びわが君に害を加えようとする者は、ナバルのごとくになりますよう
いま きみ たずさ おく もの きみ
に。 二七今、あなたのつかえめが、わが君に携えてきた贈り物を、わが君
したが わかもの あた ゆる
に従う若者たちに与えてください。 二八どうぞ、はしためのとがを許し
しゅ かなら きみ たし いえ つく
サムエル記上

て く だ さ い。主 は 必 ず わ が 君 の た め に 確 か な 家 を 造 ら れ る で し ょ う。
きみ しゅ たたか よ い あいだ
わが君が主のいくさを戦い、またこの世に生きながらえられる間、あな
わる み ひと た
たのうちに悪いことが見いだされないからです。 二九たとい人が立って

118
お いのち もと きみ いのち い もの
あなたを追い、あなたの命を求めても、わが君の命は、生きている者の
たば かみ しゅ まも
束にたばねられて、あなたの神、主のもとに守られるでしょう。しかし
しゅ てき いのち いし な なか な な す
主はあなたの敵の命を、石投げの中から投げるように、投げ捨てられる
しゅ かた よ
でしょう。 三〇そして主があなたについて語られたすべての良いことを
きみ おこな にん とき
わが君に行い、あなたをイスラエルのつかさに任じられる時、三一あなた
ち なが きみ むく い
が、ゆえなく血を流し、またわが君がみずからあだを報いたと言うこと
きみ こころ せ
で、それがあなたのつまずきとなり、またわが君の心の責めとなること
しゅ きみ よ とき
のないようにしてください。主がわが君を良くせられる時、このはした
おも
めを思いだしてください﹂。

三二 ダビデはアビガイルに言った、
﹁きょう、あなたをつかわして、わた
むか かみ しゅ
しを迎えさせられたイスラエルの神、主はほむべきかな。 三三あなたの
ち え
サムエル記上

知恵はほむべきかな。またあなたはほむべきかな。あなたは、きょう、
ち なが て むく
わたしがきて血を流し、手ずからあだを報いることをとどめられたので
がい かみ
す。 三四わたしがあなたを害することをとどめられたイスラエルの神、

119
しゅ い いそ あ
主はまことに生きておられる。もしあなたが急いでわたしに会いにこ
あさ おとこ
なかったならば、あすの朝までには、ナバルのところに、ひとりの男も
のこ たずさ もの
残らなかったでしょう﹂。 三五ダビデはアビガイルが携えてきた物をそ
て う かのじょ い ぶ じ いえ かえ
の手から受けて、彼女に言った、
﹁あなたは無事にのぼって、家に帰りな
こえ き ねが ゆる
さい。わたしはあなたの声を聞きいれ、あなたの願いを許します﹂。
み かれ いえ
三六 こうしてアビガイルはナバルのもとにきたが、見よ、彼はその家で、
おう しゅえん しゅえん ひら こころ たの
王の酒宴のような酒宴を開いていた。ナバルは心に楽しみ、ひじょうに
よ あ あさ こと だいしょう と なに
酔っていたので、アビガイルは明くる朝まで事の大 小を問わず何をも
かれ つ あさ よ つま
彼に告げなかった。 三七朝になってナバルの酔いがさめたとき、その妻
かれ こと つ かれ こころ し かれ いし
が彼にこれらの事を告げると、彼の心はそのうちに死んで、彼は石のよ
か しゅ う かれ し
う に な っ た。 三八十 日 ば か り し て 主 が ナ バ ル を 撃 た れ た の で 彼 は 死 ん
サムエル記上

だ。
し き い しゅ しゅ
三九 ダビデはナバルが死んだと聞いて言った、
﹁主はほむべきかな。主は
て う ぶじょく むく あく
わたしがナバルの手から受けた侮辱に報いて、しもべが悪をおこなわな

120
しゅ あくぎょう むく
いようにされた。主はナバルの悪 行をそのこうべに報いられたのだ﹂。
つま ひと かのじょ もう こ
ダビデはアビガイルを妻にめとろうと、人をつかわして彼女に申し込ん
ところ
だ。 四〇ダビデのしもべたちはカルメルにいるアビガイルの所にきて、
かのじょ い つま
彼女に言った、﹁ダビデはあなたを妻にめとろうと、われわれをあなたの
ところ た ち ふ はい
所 へ つ か わ し た の で す﹂。 四一ア ビ ガ イ ル は 立 ち、地 に ひ れ 伏 し 拝 し て
い きみ あし あら
言った、﹁はしためは、わが君のしもべたちの足を洗うつかえめです﹂。 四
いそ た の にん じ じょ つ
二アビガイルは急いで立ち、ろばに乗って、五人の侍女たちを連れ、ダ
し しゃ したが い つま
ビデの使者たちに従 って行き、ダビデの妻となった。
かのじょ
四三 ダビデはまたエズレルのアヒノアムをめとった。彼女たちはふたり
つま むすめ つま
ともダビデの妻となった。 四四ところでサウルはその娘、ダビデの妻ミ
ひと こ あた
カルを、ガリムの人であるライシの子パルテに与えた。
サムエル記上

121
第二六章

一そのころジフびとがギベアにおるサウルのもとにきて言った、﹁ダビ
あらの まえ やま かく
デは荒野の前にあるハキラの山に隠れているではありませんか﹂。 二サ
た あらの さが
ウルは立って、ジフの荒野でダビデを捜すために、イスラエルのうちか
えら にん つ あらの くだ あらの
ら選んだ三千人をひき連れて、ジフの荒野に下った。 三サウルは荒野の
まえ みち やま じん と あらの
前の道のかたわらにあるハキラの山に陣を取った。ダビデは荒野にと
じぶん お あらの み
どまっていたが、サウルが自分のあとを追って荒野にきたのを見て、 四
せっこう だ たし し た
斥候 を 出 し、サ ウ ル が 確 か に き た の を 知 っ た。 五そ し て ダ ビ デ は 立 っ
じん と ところ い ぐん ちょう
て、サウルが陣を取っている所へ行って、サウルとその軍の長、ネルの
こ ね ば しょ み じんしょ ね たみ
子アブネルの寝ている場所を見た。サウルは陣所のうちに寝ていて、民
しゅうい しゅくえい
サムエル記上

はその周囲に宿 営していた。
こ きょうだい
六ダビデは、ヘテびとアヒメレク、およびゼルヤの子で、ヨアブの兄 弟
い とも じん くだ
であるアビシャイに言った、﹁だれがわたしと共にサウルの陣に下って

122
い い いっしょ くだ い
行 く か﹂。ア ビ シ ャ イ は 言 っ た、﹁わ た し が 一緒 に 下 っ て 行 き ま す﹂。 七
よる たみ い
こうしてダビデとアビシャイとが夜、民のところへ行ってみると、サウ
じんしょ み よこ ね まくら ち つ
ルは陣所のうちに身を横たえて寝ており、そのやりは枕もとに地に突き
たみ しゅうい ね
さ し て あ っ た。そ し て ア ブ ネ ル と 民 ら と は そ の 周囲 に 寝 て い た。 八ア
い かみ てき て わた
ビシャイはダビデに言った、﹁神はきょう敵をあなたの手に渡されまし
かれ つ かれ ち さ
た。どうぞわたしに、彼のやりをもってひと突きで彼を地に刺しとおさ
つ およ
せてください。ふたたび突くには及びません﹂。 九しかしダビデはアビ
い かれ ころ しゅ あぶら そそ もの む
シ ャ イ に 言 っ た、﹁彼 を 殺 し て は な ら な い。主 が 油 を 注 が れ た 者 に 向
て つみ え もの い
かって、手をのべ、罪を得ない者があろうか﹂。 一〇ダビデはまた言った、
しゅ い しゅ かれ う かれ し
﹁主は生きておられる。主が彼を撃たれるであろう。あるいは彼の死ぬ
ひ く たたか くだ い ほろ
日が来るであろう。あるいは戦いに下って行って滅びるであろう。 一一
しゅ あぶら そそ もの む て しゅ きん
サムエル記上

主が油を注がれた者に向かって、わたしが手をのべることを主は禁じら
いま みず と
れる。しかし今、そのまくらもとにあるやりと水のびんを取りなさい。
さ まくら
そしてわれわれは去ろう﹂。 一二こうしてダビデはサウルの枕もとから、

123
みず と かれ さ み し
やりと水のびんを取って彼らは去ったが、だれもそれを見ず、だれも知
め ねむ しゅ かれ ふか ねむ
らず、また、だれも目をさまさず、みな眠っていた。主が彼らを深く眠
らされたからである。
む がわ わた い とお はな やま いただき た かれ
ダビデは向こう側に渡って行って、遠く離れて山の頂に立った。彼
一三
あいだ へだ おお たみ こ よ
らの間の隔たりは大きかった。 一四ダビデは民とネルの子アブネルに呼
い こた こた
ばわって言った、
﹁アブネルよ、あなたは答えないのか﹂。アブネルは答
い おう よ
えて言った、﹁王を呼んでいるあなたはだれか﹂。 一五ダビデはアブネル
い おとこ およ
に言った、﹁あなたは男ではないか。イスラエルのうちに、あなたに及ぶ
ひと しゅくん おう まも
人があろうか。それであるのに、どうしてあなたは主君である王を守ら
たみ しゅくん おう ころ
なかったのか。民のひとりが、あなたの主君である王を殺そうとして、
こと よ しゅ い
はいりこんだではないか。 一六あなたがしたこの事は良くない。主は生
し あたい しゅ あぶら
サムエル記上

きておられる。あなたがたは、まさに死に値する。主が油をそそがれ
しゅくん まも おう
た、あなたの主君を守らなかったからだ。いま王のやりがどこにある
まくら みず み
か。その枕もとにあった水のびんがどこにあるかを見なさい﹂。

124
こえ き い こ
一七 サウルはダビデの声を聞きわけて言った、
﹁わが子ダビデよ、これは
こえ い おう きみ こえ
あなたの声か﹂。ダビデは言った、
﹁王、わが君よ、わたしの声です﹂。 一
い きみ お
ダビデはまた言った、﹁わが君はどうしてしもべのあとを追われるの

なに て
ですか。わたしが何をしたのですか。わたしの手になんのわるいこと
おう きみ いま ことば き
があるのですか。 一九王、わが君よ、どうぞ、今しもべの言葉を聞いてく
しゅ うご てき
ださい。もし主があなたを動かして、わたしの敵とされたのであれば、
しゅ そな もの う やわ ひと
どうぞ主が供え物を受けて和らいでくださるように。もし、それが人で
ひとびと しゅ まえ う かれ
あるならば、どうぞその人々が主の前にのろいを受けるように。彼らが
い た かみがみ つか い お
﹃おまえは行って他の神々に仕えなさい﹄と言って、きょう、わたしを追
だ しゅ し ぎょう
い出し、主の嗣 業にあずかることができないようにしたからです。 二〇
いま しゅ まえ はな ち ち お
それゆえ今、主の前を離れて、わたしの血が地に落ちることのないよう
おう ひと やま お
サムエル記上

にしてください。イスラエルの王は、人が山で、しゃこを追うように、わ
いのち と で
たしの命を取ろうとして出てこられたのです﹂。
とき い つみ おか こ
二一 その時、サウルは言った、﹁わたしは罪を犯した。わが子ダビデよ、

125
かえ いのち め たっと み
帰ってきてください。きょう、わたしの命があなたの目に尊く見られた
がい くわ おろ
ゆえ、わたしは、もはやあなたに害を加えないであろう。わたしは愚か
ひじょう こた おう
なことをして、非常なまちがいをした﹂。 二二ダビデは答えた、
﹁王のやり
わかもの わた も
は、ここにあります。ひとりの若者に渡ってこさせ、これを持ちかえら
しゅ ひと ぎ しんじつ したが むく
せてください。 二三主は人おのおのにその義と真実とに従 って報いられ
しゅ て わた しゅ
ます。主がきょう、あなたをわたしの手に渡されたのに、わたしは主が
あぶら そそ もの む て
油を注がれた者に向かって、手をのべることをしなかったのです。 二四
いのち おも しゅ いのち
きょう、わたしがあなたの命を重んじたように、どうぞ主がわたしの命
おも くなん すく だ
を重んじて、もろもろの苦難から救い出してくださるように﹂。 二五サウ
い こ
ルはダビデに言った、﹁わが子ダビデよ、あなたはほむべきかな。あなた
おお こと と
は多くの事をおこなって、それをなし遂げるであろう﹂。こうしてダビ
みち い じぶん ところ かえ
サムエル記上

デはその道を行き、サウルは自分の所へ帰った。

126
第二七章
こころ い て
一ダビデは心のうちに言った、
﹁わたしは、いつかはサウルの手にかかっ
ほろ はや ち
て滅ぼされるであろう。早くペリシテびとの地へのがれるほかはない。
うえ ち さが
そうすればサウルはこの上イスラエルの地にわたしをくまなく捜すこ
かれ て
とはやめ、わたしは彼の手からのがれることができるであろう﹂。 二こ
とも にん いっしょ た おう こ
うしてダビデは、共にいた六百人と一緒に、立ってガテの王マオクの子
ところ い じゅうしゃ かぞく
アキシの所へ行った。 三ダビデと従 者たちは、おのおのその家族ととも
とも す つま
に、ガテでアキシと共に住んだ。ダビデはそのふたりの妻、すなわちエ
おんな おんな つま
ズレルの女 アヒノアムと、カルメルの女でナバルの妻であったアビガ
とも きこ
イ ル と 共 に お っ た。 四ダ ビ デ が ガ テ に の が れ た こ と が サ ウ ル に 聞 え た
かれ さが
サムエル記上

ので、サウルはもはや彼を捜さなかった。
い まえ めぐ え
五さてダビデはアキシに言った、﹁もしわたしがあなたの前に恵みを得
まち ば しょ あた
るならば、どうぞ、いなかにある町のうちで一つの場所をわたしに与え

127
す とも おう まち
てそこに住まわせてください。どうしてしもべがあなたと共に王の町
す ひ かれ あた
に住むことができましょうか﹂。 六アキシはその日チクラグを彼に与え
こんにち おう ぞく
た。こ う し て チ ク ラ グ は 今日 に い た る ま で ユ ダ の 王 に 属 し て い る。 七
くに す ひ かず ねん げつ
ダビデがペリシテびとの国に住んだ日の数は一年と四か月であった。
じゅうしゃ とも
八さてダビデは従 者と共にのぼって、ゲシュルびと、ゲゼルびとおよび
おそ むかし いた ち じゅうみん
アマレクびとを襲った。これらは昔からシュルに至るまでの地の住 民
いた ち す ち
であって、エジプトに至るまでの地に住んでいた。 九ダビデはその地を
う おとこ おんな い ひつじ うし いふく と
撃って、男も女も生かしおかず、羊と牛とろばとらくだと衣服とを取っ
かえ おそ
て、アキシのもとに帰ってきた。 一〇アキシが﹁あなたはきょうどこを襲
たず ときどき
いましたか﹂と尋ねると、ダビデは、その時々、
﹁ユダのネゲブです﹂、
﹁エ

ラメルびとのネゲブです﹂
﹁ケニびとのネゲブです﹂と言った。 一一ダビ
おとこ おんな い ひ い
サムエル記上

デは男も女も生かしおかず、ひとりをもガテに引いて行かなかった。そ
おそ かれ い
れはダビデが、
﹁恐らくは、彼らが、
﹃ダビデはこうした﹄と言って、わ
つ おも
れわれのことを告げるであろう﹂と思ったからである。ダビデはペリシ

128
す あいだ つね
テびとのいなかに住んでいる間はこうするのが常であった。 一二アキシ
しん い かれ じぶん まった たみ にく
はダビデを信じて言った、﹁彼は自分を全くその民イスラエルに憎まれ
かれ えいきゅう
るようにした。それゆえ彼は永 久にわたしのしもべとなるであろう﹂。
第二八章
たたか
一そのころ、ペリシテびとがイスラエルと戦おうとして、いくさのため
ぐんぜい あつ い しょうち
に軍勢を集めたので、アキシはダビデに言った、
﹁あなたは、しかと承知
じゅうしゃ とも で
し て く だ さ い。あ な た と あ な た の 従 者 た ち と は、わ た し と 共 に 出 て、
ぐんぜい くわ い
軍勢に加わらなければなりません﹂。 二ダビデはアキシに言った、
﹁よろ
なに し
しい、あなたはしもべが何をするかを知られるでしょう﹂。アキシはダ
サムエル記上

い しゅうしん ごえい ちょう


ビデに言った、
﹁よろしい、あなたを終 身わたしの護衛の長としよう﹂。
し ひと かれ
三さてサムエルはすでに死んで、イスラエルのすべての人は彼のために
かな まち ほうむ さき くちよ うらな し
悲しみ、その町ラマに葬 った。また先にサウルは口寄せや占い師をそ

129
ち ついほう あつ じん
の 地 か ら 追放 し た。 四ペ リ シ テ び と が 集 ま っ て き て シ ュ ネ ム に 陣 を
と ひと あつ じん
取ったので、サウルはイスラエルのすべての人を集めて、ギルボアに陣
と ぐんぜい み おそ こころ
を取った。 五サウルはペリシテびとの軍勢を見て恐れ、その心はいたく
しゅ うかが しゅ ゆめ
お の の い た。 六そ こ で サ ウ ル は 主 に 伺 い を た て た が、主 は 夢 に よ っ て
よげんしゃ かれ こた
も、ウリムによっても、預言者によっても彼に答えられなかった。 七サ
い くちよ おんな さが だ
ウルはしもべたちに言った、﹁わたしのために、口寄せの女を捜し出しな
い おんな たず かれ い
さい。わたしは行ってその女に尋ねよう﹂。しもべたちは彼に言った、
み くちよ
﹁見よ、エンドルにひとりの口寄せがいます﹂。
すがた か きもの じゅうしゃ ともな い
八サウルは姿を変えてほかの着物をまとい、ふたりの従 者を伴 って行
よる あいだ おんな ところ い
き、夜の間に、その女の所にきた。そしてサウルは言った、
﹁わたしのた
くちよ じゅつ い つ ひと よ おこ
めに口寄せの術を行って、わたしがあなたに告げる人を呼び起してくだ
おんな かれ い
サムエル記上

さい﹂。 九 女は彼に言った、﹁あなたはサウルがしたことをごぞんじで
かれ くちよ うらな し くに た ほろ
しょう。彼は口寄せや占い師をその国から断ち滅ぼしました。どうし
いのち し
てあなたは、わたしの命にわなをかけて、わたしを死なせようとするの

130
しゅ かのじょ ちか い しゅ い
ですか﹂。 一〇サウルは主をさして彼女に誓って言った、﹁主は生きてお
こと ばつ う
られる。この事のためにあなたが罰を受けることはないでしょう﹂。 一一
おんな い よ おこ
女は言った、﹁あなたのためにだれを呼び起しましょうか﹂。サウルは
い よ おこ おんな み とき
言った、﹁サムエルを呼び起してください﹂。 一二 女はサムエルを見た時、
おおごえ さけ おんな い
大声で叫んだ。そしてその女はサウルに言った、﹁どうしてあなたはわ
あざむ おう かのじょ い
た し を 欺 か れ た の で す か。あ な た は サ ウ ル で す﹂。 一三王 は 彼女 に 言 っ
おそ なに み おんな
た、﹁恐れることはない。あなたには何が見えるのですか﹂。 女はサウ
い かみ ち み
ルに言った、﹁神のようなかたが地からのぼられるのが見えます﹂。 一四
かのじょ い ひと ようす かのじょ
サウルは彼女に言った、﹁その人はどんな様子をしていますか﹂。彼女は
い ろうじん ひと うわぎ
言った、﹁ひとりの老人がのぼってこられます。その人は上着をまとっ
ひと し ち
ておられます﹂。サウルはその人がサムエルであるのを知り、地にひれ
ふ はい
サムエル記上

伏して拝した。
い よ おこ
一五 サムエルはサウルに言った、
﹁なぜ、わたしを呼び起して、わたしを
わずら い なや
煩わすのか﹂。サウルは言った、﹁わたしは、ひじょうに悩んでいます。

131
む おこ かみ はな
ペリシテびとがわたしに向かっていくさを起し、神はわたしを離れて、
よげんしゃ ゆめ こた
預言者によっても、夢によっても、もはやわたしに答えられないのです。
し よ
それで、わたしのすべきことを知るために、あなたを呼びました﹂。 一六
い しゅ はな てき
サムエルは言った、
﹁主があなたを離れて、あなたの敵となられたのに、
と しゅ かた
どうしてあなたはわたしに問うのですか。 一七主は、わたしによって語
おこな しゅ おうこく て さ
られたとおりにあなたに行われた。主は王国を、あなたの手から裂きは
りんじん あた しゅ こえ
なして、あなたの隣人であるダビデに与えられた。 一八あなたは主の声
き したが しゅ はげ いか したが う ほろ
に聞き従わず、主の激しい怒りに従 って、アマレクびとを撃ち滅ぼさな
しゅ こと ひ おこな
かったゆえに、主はこの事を、この日、あなたに行われたのである。 一九
しゅ とも て わた
主はまたイスラエルをも、あなたと共に、ペリシテびとの手に渡される
こ いっしょ
であろう。あすは、あなたもあなたの子らもわたしと一緒になるであろ
しゅ ぐんぜい て わた
サムエル記上

う。また主はイスラエルの軍勢をもペリシテびとの手に渡される﹂。
ち の たお ことば
そのときサウルは、ただちに、地に伸び、倒れ、サムエルの言葉のた
二〇
おそ ちから にち や
めに、ひじょうに恐れ、またその力はうせてしまった。その一日一夜、

132
しょくもつ おんな かれ
食 物をとっていなかったからである。 二一 女はサウルのもとにきて、彼
み い こえ
のおののいているのを見て言った、﹁あなたのつかえめは、あなたの声に
き したが いのち い ことば したが
聞き従い、わたしの命をかけて、あなたの言われた言葉に従いました。 二
いま こえ き したが ひとくち
それゆえ今あなたも、つかえめの声に聞き従い、一口のパンをあなた

まえ ちから
の前にそなえさせてください。あなたはそれをめしあがって力をつけ、
みち い ことわ い
道を行ってください﹂。 二三ところがサウルは断 って言った、﹁わたしは
た かれ おんな
食べません﹂。しかし彼のしもべたちも、その女もしいてすすめたので、
ことば き ち お とこ うえ
サウルはその言葉を聞きいれ、地から起きあがり、床の上にすわった。 二
おんな いえ こ こ うし いそ
四その女は家に肥えた子牛があったので、急いでそれをほふり、また
むぎこ たね い や
麦粉をとり、こねて、種入れぬパンを焼き、 二五サウルとそのしもべたち
まえ も かれ た かれ た あ
の前に持ってきたので、彼らは食べた。そして彼らは立ち上がって、そ
よる さ
サムエル記上

の夜のうちに去った。

133
第二九章
ぐんぜい あつ
一さてペリシテびとは、その軍勢をことごとくアペクに集めた。イスラ
いずみ じん と
エ ル び と は エ ズ レ ル に あ る 泉 の か た わ ら に 陣 を 取 っ た。 二ペ リ シ テ び
きみ にん にん ひき すす
との君たちは、あるいは百人、あるいは千人を率いて進み、ダビデとそ
じゅうしゃ とも すす とき
の従 者たちはアキシと共に、しんがりになって進んだ。 三その時、ペリ
きみ い なに
シテびとの君たちは言った、﹁これらのヘブルびとはここで何をしてい
い おう
るのか﹂。アキシはペリシテびとたちに言った、﹁これはイスラエルの王
かれ ひ とし
サウルのしもべダビデではないか。彼はこの日ごろ、この年ごろ、わた
とも に お ひ かれ
しと共にいたが、逃げ落ちてきた日からきょうまで、わたしは彼にあや
み きみ
まちがあったのを見たことがない﹂。 四しかしペリシテびとの君たちは
かれ む いか きみ かれ い
サムエル記上

彼に向かって怒った。そしてペリシテびとの君たちは彼に言った、﹁こ
ひと かえ かれ お ところ い
の人を帰らせて、あなたが彼を置いたもとの所へ行かせなさい。われわ
いっしょ かれ たたか くだ たたか とき かれ
れと一緒に彼を戦いに下らせてはならない。 戦いの時、彼がわれわれ

134
てき し もの なに しゅくん
の敵となるかも知れないからである。この者は何をもってその主君と
ひとびと くび
やわらぐことができようか。ここにいる人々の首をもってするほかは
ひとびと おど うた
あるまい。 五これは、かつて人々が踊りのうちに歌いかわして、
う ころ
﹃サウルは千を撃ち殺し、
まん う ころ
ダビデは万を撃ち殺した﹄

と言った、あのダビデではないか﹂。
よ い しゅ い
そこでアキシはダビデを呼んで言った、﹁主は生きておられる。あな

ただ ひと いっしょ たたか で い
たは正しい人である。あなたがわたしと一緒に戦いに出入りすること
よ おも ところ ひ
をわたしは良いと思っている。それはあなたがわたしの所にきた日か
ひ わる こと み
らこの日まで、わたしは、あなたに悪い事があったのを見たことがない
きみ よ い
からである。しかしペリシテびとの君たちはあなたを良く言わない。 七
いまやす かえ い かれ わる おも
サムエル記上

それゆえ今安らかに帰って行きなさい。彼らが悪いと思うことはしな
い なに
いがよかろう﹂。 八ダビデはアキシに言った、
﹁しかしわたしが何をした
つか ひ ひ
というのですか。わたしがあなたに仕えはじめた日からこの日までに、

135
み なに み い
あなたはしもべの身に何を見られたので、わたしは行って、わたしの
しゅくん おう てき たたか
主君である王の敵と戦うことができないのですか﹂。 九アキシはダビデ
こた み かみ つかい ひと
に答えた、﹁わたしは見て、あなたが神の使のようにりっぱな人であるこ
し きみ いっしょ
とを知っている。しかし、ペリシテびとの君たちは、﹃われわれと一緒に
かれ たたか のぼ い
彼を戦いに上らせてはならない﹄と言っている。 一〇それで、あなたは、
いっしょ しゅくん とも あさはや お
一緒にきたあなたの主君のしもべたちと共に朝早く起きなさい。そし
あさはや お よる あ さ
て朝早く起き、夜が明けてから去りなさい﹂。 一一こうしてダビデとその
じゅうしゃ とも ち かえ あさはや お しゅったつ
従 者たちとは共にペリシテびとの地へ帰ろうと、朝早く起きて出 立し
のぼ い
たが、ペリシテびとはエズレルへ上って行った。
第三〇章
サムエル記上

じゅうしゃ か め とき
一さてダビデとその従 者たちが三日目にチクラグにきた時、アマレク
おそ かれ う
びとはすでにネゲブとチクラグを襲っていた。彼らはチクラグを撃ち、

136
ひ や なか おんな もの
火 を は な っ て こ れ を 焼 き、 二そ の 中 に い た 女 た ち お よ び す べ て の 者 を
ほ りょ ちい もの おお もの ころ ひ
捕虜にし、小さい者をも大きい者をも、ひとりも殺さずに、引いて、そ
みち い じゅうしゃ まち まち ひ や
の道に行った。 三ダビデと従 者たちはその町にきて、町が火で焼かれ、
つま むすめ ほ りょ み かれ とも
そ の 妻 と む す こ 娘 ら は 捕虜 と な っ た の を 見 た。 四ダ ビ デ お よ び 彼 と 共
たみ こえ な な ちから
にいた民は声をあげて泣き、ついに泣く力もなくなった。 五ダビデのふ
つま おんな
たりの妻すなわちエズレルの女 アヒノアムと、カルメルびとナバルの
つま ほ りょ とき
妻であったアビガイルも捕虜になった。 六その時、ダビデはひじょうに
なや たみ むすめ こころ いた
悩んだ。それは民がみなおのおのそのむすこ娘のために心を痛めたた
いし う い かみ
め、ダビデを石で撃とうと言ったからである。しかしダビデはその神、
しゅ じぶん ちから
主によって自分を力づけた。
こ さいし
七ダビデはアヒメレクの子、祭司アビヤタルに、
﹁エポデをわたしのとこ
も い
サムエル記上

ろに持ってきなさい﹂と言ったので、アビヤタルは、エポデをダビデの
も しゅ うかが い
ところに持ってきた。 八ダビデは主に伺いをたてて言った、﹁わたしは
ぐんたい お お
この軍隊のあとを追うべきですか。わたしはそれに追いつくことがで

137
しゅ かれ い お かなら お
きましょうか﹂。主は彼に言われた、﹁追いなさい。あなたは必ず追いつ
たし すく だ いっしょ
いて、確かに救い出すことができるであろう﹂。 九そこでダビデは、一緒
にん もの とも しゅったつ かわ い のこ もの
にいた六百人の者と共に出 立してベソル川へ行ったが、あとに残る者
にん とも ついげき
はそこにとどまった。 一〇すなわちダビデは四百人と共に追撃をつづけ
つか かわ わた もの にん
たが、疲れてベソル川を渡れない者二百人はとどまった。
かれ の み ひ
彼らは野で、ひとりのエジプトびとを見て、それをダビデのもとに引
一一
た みず の かれ
いてきて、パンを食べさせ、水を飲ませた。 一二また彼らはほしいちじく
かれ あた かれ た げんき
のかたまり一つと、ほしぶどう二ふさを彼に与えた。彼は食べて元気を
かいふく かれ か よ た みず の
回復した。彼は三日三夜、パンを食べず、水を飲んでいなかったからで
かれ い
ある。 一三ダビデは彼に言った、
﹁あなたはだれのものか。どこからきた
かれ い わかもの どれい
のか﹂。彼は言った、
﹁わたしはエジプトの若者で、アマレクびとの奴隷
か まえ びょうき しゅじん す い
サムエル記上

です。三日前にわたしが病気になったので、主人はわたしを捨てて行き
ぞく ち
ました。 一四わたしどもは、ケレテびとのネゲブと、ユダに属する地と、
おそ ひ や
カレブのネゲブを襲い、また火でチクラグを焼きはらいました﹂。 一五ダ

138
かれ い ぐんたい みちび くだ
ビデは彼に言った、﹁あなたはその軍隊のところへわたしを導き下って
かれ い ころ
くれるか﹂。彼は言った、
﹁あなたはわたしを殺さないこと、またわたし
しゅじん て わた かみ ちか
を主人の手に渡さないことを、神をさしてわたしに誓ってください。そ
ぐんたい みちび くだ
うすればあなたをその軍隊のところへ導き下りましょう﹂。
かれ みちび くだ み かれ ち
一六 彼はダビデを導き下ったが、見よ、彼らはペリシテびとの地とユダの
ち うば と おお もの く の
地から奪い取ったさまざまの多くのぶんどり物のゆえに、食い飲み、か
おど ち ち
つ踊りながら、地のおもてにあまねく散りひろがっていた。 一七ダビデ
ゆう よくじつ ゆうがた かれ う の に
は夕ぐれから翌日の夕方まで、彼らを撃ったので、らくだに乗って逃げ
にん わかもの もの
た四百人の若者たちのほかには、ひとりものがれた者はなかった。 一八
うば と と
こうしてダビデはアマレクびとが奪い取ったものをみな取りもどした。
つま すく だ かれ ぞく
またダビデはそのふたりの妻を救い出した。 一九そして彼らに属するも
ちい おお むすめ もの
サムエル記上

のは、小さいものも大きいものも、むすこも娘もぶんどり物も、アマレ
うば さ もの なに うしな と
クびとが奪い去った物は何をも失わないで、ダビデがみな取りもどし
ひつじ うし と ひとびと かちく
た。 二〇ダビデはまたすべての羊と牛を取った。人々はこれらの家畜を

139
かれ まえ お い もの い
彼の前に追って行きながら、
﹁これはダビデのぶんどり物だ﹂と言った。
つか い
二一 そしてダビデが、あの疲れてダビデについて行くことができずに、ベ
かわ にん もの とき かれ
ソル川のほとりにとどまっていた二百人の者のところへきた時、彼らは
で むか とも たみ むか たみ
出てきてダビデを迎え、またダビデと共にいる民を迎えた。ダビデは民
ちか あんぴ と とも い ひとびと
に近づいてその安否を問うた。 二二そのときダビデと共に行った人々の
わる もの い かれ
うちで、悪く、かつよこしまな者どもはみな言った、
﹁彼らはわれわれと
とも い ひとびと と
共に行かなかったのだから、われわれはその人々にわれわれの取りもど
もの わ あた
し た ぶ ん ど り 物 を 分 け 与 え る こ と は で き な い。た だ お の お の に そ の
さいし あた つ い い
妻子 を 与 え て、連 れ て 行 か せ ま し ょ う﹂。 二 三し か し ダ ビ デ は 言 っ た、
きょうだい しゅ まも せ ぐんたい て
﹁兄 弟たちよ、主はわれわれを守って、攻めてきた軍隊をわれわれの手
わた しゅ たま
に渡された。その主が賜わったものを、あなたがたはそのようにしては
こと き したが
サムエル記上

な ら な い。 二四だ れ が こ の 事 に つ い て、あ な た が た に 聞 き 従 い ま す か。
たたか くだ い もの わ まえ にもつ
戦いに下って行った者の分け前と、荷物のかたわらにとどまっていた
もの わ まえ どうよう かれ わ まえ う
者の分け前を同様にしなければならない。彼らはひとしく分け前を受

140
ひ いらい さだ
けるべきである﹂。 二五この日以来、ダビデはこれをイスラエルの定めと
こんにち およ
し、おきてとして今日に及んでいる。
もの いちぶ ちょうろう
ダビデはチクラグにきて、そのぶんどり物の一部をユダの長 老であ
二六
ゆうじん い しゅ てき と もの
る友人たちにおくって言った、﹁これは主の敵から取ったぶんどり物の
おく もの さき
うちからあなたがたにおくる贈り物である﹂。 二七そのおくり先は、ベテ
ひとびと ひとびと ひとびと
ルにいる人々、ネゲブのラモテにいる人々、ヤッテルにいる人々、 二八ア
ひとびと ひとびと ひとびと
ロエルにいる人々、シフモテにいる人々、エシテモアにいる人々、ラカ
ひとびと まちまち ひとびと まちまち
ルにいる人々、二九エラメルびとの町々にいる人々、ケニびとの町々にい
ひとびと ひとびと ひとびと
る人々、 三〇ホルマにいる人々、ボラシャンにいる人々、アタクにいる
ひとびと ひとびと じゅうしゃ
人々、三一ヘブロンにいる人々、およびダビデとその従 者たちが、さまよ
ある ところ ひとびと
い歩いたすべての所にいる人々であった。
サムエル記上

141
第三一章
たたか ひとびと
さてペリシテびとはイスラエルと戦 った。イスラエルの人々はペリ

まえ に おお もの きず やま
シテびとの前から逃げ、多くの者は傷ついてギルボア山にたおれた。 二
こ せ よ
ペリシテびとはサウルとその子らに攻め寄り、そしてペリシテびとはサ
こ ころ たたか
ウルの子ヨナタン、アビナダブ、およびマルキシュアを殺した。 三 戦い
はげ せま ゆみ い もの み かれ い
は激しくサウルに迫り、弓を射る者どもがサウルを見つけて、彼を射た
い もの きず お
ので、サウルは射る者たちにひどい傷を負わされた。 四そこでサウルは
ぶ き と もの い ぬ さ
その武器を執る者に言った、﹁つるぎを抜き、それをもってわたしを刺
む かつれい もの さ
せ。さもないと、これらの無割礼の者どもがきて、わたしを刺し、わた
ごろ ぶ き と もの
しをなぶり殺しにするであろう﹂。しかしその武器を執る者は、ひじょ
おそ おう と
サムエル記上

うに恐れて、それに応じなかったので、サウルは、つるぎを執って、そ
うえ ふ ぶ き と もの し み じぶん
の上に伏した。 五武器を執る者はサウルが死んだのを見て、自分もまた
うえ ふ かれ とも し にん
つるぎの上に伏して、彼と共に死んだ。 六こうしてサウルとその三人の

142
こ ぶ き と もの じゅうしゃ みな
子たち、およびサウルの武器を執る者、ならびにその従 者たちは皆、こ
ひ とも し ひとびと たに む がわ
の日共に死んだ。 七イスラエルの人々で、谷の向こう側、およびヨルダ
む がわ もの ひとびと に み
ンの向こう側にいる者が、イスラエルの人々の逃げるのを見、またサウ
こ し み まちまち す に
ルとその子たちの死んだのを見て町々を捨てて逃げたので、ペリシテび
なか す
とはきてその中に住んだ。
ひ ころ もの と
八あくる日、ペリシテびとは殺された者から、はぎ取るためにきたが、サ
にん こ やま み
ウルとその三人の子たちがギルボア山にたおれているのを見つけた。 九
かれ くび き と ぜん ち
彼らはサウルの首を切り、そのよろいをはぎ取り、ペリシテびとの全地
ひと よ し ぐうぞう たみ つた
に人をつかわして、この良い知らせを、その偶像と民とに伝えさせた。 一
かれ しんでん お かれ
〇また彼らは、そのよろいをアシタロテの神殿に置き、彼のからだをベ
じょうへき じゅうみん
テ シ ャ ン の 城 壁 に く ぎ づ け に し た。 一一ヤ ベ シ・ギ レ ア デ の 住 民 た ち
こと き ゆうし た
サムエル記上

は、ペリシテびとがサウルにした事を聞いて、 一二勇士たちはみな立ち、
よ い こ
夜もすがら行って、サウルのからだと、その子たちのからだをベテシャ
じょうへき と や ほね
ンの城 壁から取りおろし、ヤベシにきて、これをそこで焼き、一三その骨

143
と き した ほうむ なぬか あいだ だんじき
を取って、ヤベシのぎょりゅうの木の下に葬り、七日の間、断食した。
サムエル記上

144
き げ
サムエル記下
第一章
し のち う かえ あいだ
サウルが死んだ後、ダビデはアマレクびとを撃って帰り、ふつかの間

か め ひと
チクラグにとどまっていたが、 二三日目となって、ひとりの人が、その
きもの さ あたま つち じんえい
着物を裂き、頭に土をかぶって、サウルの陣営からきた。そしてダビデ
ち ふ はい かれ い
のもとにきて、地に伏して拝した。 三ダビデは彼に言った、
﹁あなたはど
かれ い じんえい
こからきたのか﹂。彼はダビデに言った、﹁わたしはイスラエルの陣営か
かれ い ようす
ら、のがれてきたのです﹂。 四ダビデは彼に言った、
﹁様子はどうであっ
はな かれ こた たみ たたか に たみ おお たお
たか話しなさい﹂。彼は答えた、
﹁民は戦いから逃げ、民の多くは倒れて
サムエル記下

し こ し じぶん
死に、サウルとその子ヨナタンもまた死にました﹂。 五ダビデは自分と
はな わかもの い こ し
話している若者に言った、﹁あなたはサウルとその子ヨナタンが死んだ
し かれ はな わかもの い
のを、どうして知ったのか﹂。 六彼に話している若者は言った、
﹁わたし

0
やま
は、はからずも、ギルボア山にいましたが、サウルはそのやりによりか
せんしゃ きへい かれ せ よ
か っ て お り、戦車 と 騎兵 と が 彼 に 攻 め 寄 ろ う と し て い ま し た。 七そ の
とき かれ ふ む み よ
時、彼はうしろを振り向いてわたしを見、わたしを呼びましたので、
﹃こ
こた かれ い
こにいます﹄とわたしは答えました。 八彼は﹃おまえはだれか﹄と言い
こた かれ い
ましたので、
﹃アマレクびとです﹄と答えました。 九彼はまたわたしに言
ころ くる た
いました、﹃そばにきて殺してください。わたしは苦しみに耐えない。
いのち かれ ころ
まだ命があるからです﹄。 一〇そこで、わたしはそのそばにいって彼を殺
かれ たお い し
しました。彼がすでに倒れて、生きることのできないのを知ったからで
かれ あたま かんむり うで うでわ と
す。そしてわたしは彼の頭にあった冠と、腕につけていた腕輪とを取っ
しゅ たずさ
て、それをわが主のもとに携えてきたのです﹂。
じぶん きもの さ かれ とも
一一そのときダビデは自分の着物をつかんでそれを裂き、彼と共にいた
ひとびと みなおな かれ こ
サムエル記下

人々も皆同じようにした。 一二彼らはサウルのため、またその子ヨナタ
しゅ たみ いえ かな な
ンのため、また主の民のため、またイスラエルの家のために悲しみ泣い
ゆうぐれ しょく た かれ たお
て、夕暮まで食を断った。それは彼らがつるぎに倒れたからである。 一三

1
じぶん はな わかもの い ひと
ダビデは自分と話していた若者に言った、﹁あなたはどこの人ですか﹂。
かれ い きりゅう た こ く じん こ
彼は言った、
﹁アマレクびとで、寄留の他国人の子です﹂。 一四ダビデはま
かれ い て の しゅ あぶら そそ もの ころ
た彼に言った、﹁どうしてあなたは手を伸べて主の油を注がれた者を殺
おそ わかもの よ
す こ と を 恐 れ な か っ た の で す か﹂。 一 五ダ ビ デ は ひ と り の 若者 を 呼 び、
ちかよ かれ う い かれ う し
﹁近寄って彼を撃て﹂と言った。そこで彼を撃ったので死んだ。 一六ダビ
かれ い なが ち せ き
デは彼に言った、﹁あなたの流した血の責めはあなたに帰する。あなた
じぶん くち しゅ あぶら そそ もの ころ い
が自分の口から、﹃わたしは主の油を注がれた者を殺した﹄と言って、
じしん しょうこ た
自身にむかって証拠を立てたからである﹂。
かな うた こ
一七ダビデはこの悲しみの歌をもって、サウルとその子ヨナタンのため
あいとう ひとびと おし ゆみ うた
に哀悼した。︱︱ 一八 これは、ユダの人々に教えるための弓の歌で、ヤ
しょ かれ い
シャルの書にしるされている。︱︱彼は言った、
えいこう
サムエル記下

一九 ﹁イスラエルよ、あなたの栄光は、
たか ところ ころ
あなたの高き所で殺された。
ゆうし たお
ああ、勇士たちは、ついに倒れた。

2
こと つ
二〇 ガテにこの事を告げてはいけない。
つた
アシケロンのちまたに伝えてはならない。
むすめ よろこ
おそらくはペリシテびとの娘たちが喜び、
かつれい もの むすめ か
割礼なき者の娘たちが勝ちほこるであろう。
やま
二一 ギルボアの山よ、
つゆ うえ
露はおまえの上におりるな。
し の
死の野よ、
あめ うえ ふ
雨もおまえの上に降るな。
ところ ゆうし たて す
その所に勇士たちの盾は捨てられ、
たて あぶら ぬ す
サウルの盾は油を塗らずに捨てられた。
ころ もの ち の
二二 殺した者の血を飲まずには、
ゆみ しりぞ
サムエル記下

ヨナタンの弓は退かず、
ゆうし しぼう た
勇士の脂肪を食べないでは、
かえ
サウルのつるぎは、むなしくは帰らなかった。

3
あい よろこ
サウルとヨナタンとは、愛され、かつ喜ばれた。
二三
かれ い し はな
彼らは生きるにも、死ぬにも離れず、
はや
わしよりも早く、
つよ
ししよりも強かった。
むすめ な
イスラエルの娘たちよ、サウルのために泣け。
二四
かれ ひいろ きもの
彼は緋色の着物をもって、
よそお
はなやかにあなたがたを装い、
きもの きん かざ
あなたがたの着物に金の飾りをつけた。
ゆうし たたか たお
ああ、勇士たちは戦いのさなかに倒れた。
二五
たか ところ ころ
ヨナタンは、あなたの高き所で殺された。
きょうだい かな
わが兄 弟 ヨナタンよ、あなたのためわたしは悲しむ。
二六
たの もの
サムエル記下

あなたはわたしにとって、いとも楽しい者であった。
あい よ つね
あなたがわたしを愛するのは世の常のようでなく、
おんな あい
女の愛にもまさっていた。

4
ゆうし たお
二七 ああ、勇士たちは倒れた。
たたか うつわ
戦いの器はうせた﹂。
第二章
のち しゅ と い まち のぼ
この後、ダビデは主に問うて言った、
一 ﹁わたしはユダの一つの町に上る
しゅ かれ い のぼ い
べきでしょうか﹂。主は彼に言われた、﹁上りなさい﹂。ダビデは言った、
のぼ しゅ い
﹁どこへ上るべきでしょうか﹂。主は言われた、
﹁ヘブロンへ﹂。 二そこで
ところ のぼ かれ つま おんな
ダビデはその所へ上った。彼のふたりの妻、エズレルの女 アヒノアム
つま のぼ
と、カルメルびとナバルの妻であったアビガイルも上った。 三ダビデは
じぶん とも ひとびと みな かぞく とも つ のぼ かれ
また自分と共にいた人々を、皆その家族と共に連れて上った。そして彼
サムエル記下

まちまち す とき ひとびと ところ


らはヘブロンの町々に住んだ。 四時にユダの人々がきて、その所でダビ
あぶら そそ いえ おう
デに油を注ぎ、ユダの家の王とした。
ひとびと つ ほうむ ひとびと
人々がダビデに告げて、﹁サウルを葬 ったのはヤベシ・ギレアデの人々

5
い し しゃ ひとびと
である﹂と言ったので、 五ダビデは使者をヤベシ・ギレアデの人々につ
かれ い しゅくん ちゅうせい
かわして彼らに言った、
﹁あなたがたは、主君サウルにこの忠 誠をあら
かれ ほうむ しゅ しゅくふく
わして彼を葬 った。どうぞ主があなたがたを祝 福されるように。 六ど
しゅ しんじつ しめ
うぞ主がいまあなたがたに、いつくしみと真実を示されるように。あな
こと こうい しめ
たがたが、この事をしたので、わたしもまたあなたがたに好意を示すで
いま て つよ お お
あ ろ う。 七今 あ な た が た は 手 を 強 く し、雄々 し く あ れ。あ な た が た の
しゅくん し いえ あぶら そそ かれ おう
主君サウルは死に、ユダの家がわたしに油を注いで、彼らの王としたか
らである﹂。
ぐん ちょう こ こ
八さてサウルの軍の長、ネルの子アブネルは、さきにサウルの子イシボ
と つ わた かれ
セテを取り、マハナイムに連れて渡り、 九彼をギレアデ、アシュルびと、
ぜん おう
エズレル、エフライム、ベニヤミンおよび全イスラエルの王とした。 一〇
こ おう とき さい
サムエル記下

サウルの子イシボセテはイスラエルの王となった時、四十歳であって、
ねん あいだ よ おさ いえ したが
二年の間、世を治めたが、ユダの家はダビデに従 った。 一一ダビデがヘブ
いえ おう にっすう ねん げつ
ロンにいてユダの家の王であった日数は七年と六か月であった。

6
こ こ けらい
一二 ネルの子アブネル、およびサウルの子イシボセテの家来たちはマハ
で い こ けらい
ナイムを出てギベオンへ行った。 一三ゼルヤの子ヨアブとダビデの家来
で いけ かれ で あ いっぽう いけ
たちも出ていって、ギベオンの池のそばで彼らと出会い、一方は池のこ
がわ いっぽう いけ がわ
ち ら 側 に、一方 は 池 の あ ち ら 側 に す わ っ た。 一 四ア ブ ネ ル は ヨ ア ブ に
い わかもの た まえ しょうぶ
言った、
﹁さあ、若者たちを立たせて、われわれの前で勝負をさせよう﹂。
い かれ た こ
ヨアブは言った、﹁彼らを立たせよう﹂。 一五こうしてサウルの子イシボ
にん けらい
セテとベニヤミンびととのために十二人、およびダビデの家来たち十二
にん かぞ だ かれ た すす あいて あたま とら
人を数えて出した。彼らは立って進み、一六おのおの相手の頭を捕え、つ
あいて ばら さ かれ とも たお
るぎを相手のわき腹に刺し、こうして彼らは共に倒れた。それゆえ、そ
ところ よ
の所はヘルカテ・ハヅリムと呼ばれた。それはギベオンにある。 一七そ
ひ たたか はげ ひとびと
の日、戦いはひじょうに激しく、アブネルとイスラエルの人々はダビデ
けらい まえ やぶ
サムエル記下

の家来たちの前に敗れた。
ところ にん こ
一八 その所にゼルヤの三人の子、ヨアブ、アビシャイ、およびアサヘルが
あし はや の
いたが、アサヘルは足の早いこと、野のかもしかのようであった。 一九ア

7
お い みぎ ひだり まが
サヘルはアブネルのあとを追っていったが、行くのに右にも左にも曲る
はし うしろ
こ と な く、ア ブ ネ ル の あ と に 走 っ た。 二 〇ア ブ ネ ル は 後 を ふ り む い て
い こた
言った、﹁あなたはアサヘルであったか﹂。アサヘルは答えた、﹁わたしで
かれ い みぎ ひだり まが わかもの とら
す﹂。 二一アブネルは彼に言った、﹁右か左に曲って、若者のひとりを捕
うば お
え、そのよろいを奪いなさい﹂。しかしアサヘルはアブネルを追うこと

をやめず、ほかに向かおうともしなかった。 二二アブネルはふたたびア
い お む
サヘルに言った、﹁わたしを追うことをやめて、ほかに向かいなさい。あ
ち う たお
なたを地に撃ち倒すことなど、どうしてわたしにできようか。それをす
あに かお あ
れば、わたしは、どうしてあなたの兄ヨアブに顔を合わせることができ
かれ む こば
ようか﹂。 二三それでもなお彼は、ほかに向かうことを拒んだので、アブ
いし つ かれ はら つ せなか で
ネルは、やりの石突きで彼の腹を突いたので、やりはその背中に出た。
かれ たお ば し たお し
サムエル記下

彼はそこに倒れて、その場で死んだ。そしてアサヘルが倒れて死んでい
ば しょ く もの みな た
る場所に来る者は皆立ちとどまった。
お かれ
二四 しかしヨアブとアビシャイとは、なおアブネルのあとを追ったが、彼

8
あらの みち まえ やま
らがギベオンの荒野の道のほとり、ギアの前にあるアンマの山にきた
とき ひ く ひとびと
時、日は暮れた。 二五ベニヤミンの人々はアブネルのあとについてきて、
あつ たい やま いただき た とき
集まり、一隊となって、一つの山の頂に立った。 二六その時アブネルはヨ
よ い ほろ
アブに呼ばわって言った、﹁いつまでもつるぎをもって滅ぼそうとする
けっ か ひさん し たみ
のか。あなたはその結果の悲惨なのを知らないのか。いつまで民にそ
きょうだい お めい い かみ
の兄 弟を追うことをやめよと命じないのか﹂。 二七ヨアブは言った、﹁神
い い たみ
は生きておられる。もしあなたが言いださなかったならば、民はおのお
きょうだい お あさ さ
のその兄 弟を追わずに、朝のうちに去っていたであろう﹂。 二八こうして
つのぶえ ふ たみ た
ヨアブは角笛を吹いたので、民はみな立ちとどまって、もはやイスラエ
お かさ たたか
ルのあとを追わず、また重ねて戦わなかった。
じゅうしゃ よ とお い
アブネルとその従 者たちは、夜もすがら、アラバを通って行き、ヨ
二九
わた ひる こうしん つづ つ
サムエル記下

ルダンを渡り、昼まで行進を続けてマハナイムに着いた。 三〇ヨアブは
お かえ たみ あつ けらい
アブネルを追うことをやめて帰り、民をみな集めたが、ダビデの家来た
ひと みあた けらい
ち十九人とアサヘルとが見当らなかった。 三一しかし、ダビデの家来た

9
じゅうしゃ ひとびと にん う ころ
ちは、アブネルの従 者であるベニヤミンの人々三百六十人を撃ち殺し
ひとびと と あ ちち はか
た。 三二人々 は ア サ ヘ ル を 取 り 上 げ て ベ ツ レ ヘ ム に あ る そ の 父 の 墓 に
ほうむ じゅうしゃ よ い よ あ
葬 った。ヨアブとその従 者たちは、夜もすがら行って、夜明けにヘブロ

ンに着いた。
第三章
いえ いえ あいだ せんそう ひさ つづ
一サウルの家とダビデの家との間の戦争は久しく続き、ダビデはますま
つよ いえ よわ
す強くなり、サウルの家はますます弱くなった。
おとこ こ うま かれ ちょうし おんな
二ヘブロンでダビデに男の子が生れた。彼の長子はエズレルの女 アヒ
う つぎ つま
ノアムの産んだアムノン、 三その次はカルメルびとナバルの妻であった
サムエル記下

う だい おう むすめ
アビガイルの産んだキレアブ、第三はゲシュルの王タルマイの娘 マア
こ だい こ だい こ
カの子アブサロム、 四第四はハギテの子アドニヤ、第五はアビタルの子
だい つま う こ
シパテヤ、 五第六はダビデの妻エグラの産んだイテレアム。これらの子

10
うま
がヘブロンでダビデに生れた。
いえ いえ たたか つづ あいだ
サウルの家とダビデの家とが戦いを続けている間に、アブネルはサウ

いえ つよ
ルの家で、強くなってきた。 七さてサウルには、ひとりのそばめがあっ
な むすめ
た。その名をリヅパといい、アヤの娘であったが、イシボセテはアブネ
い ちち
ルに言った、﹁あなたはなぜわたしの父のそばめのところにはいったの
ことば き ひじょう いか い
ですか﹂。 八アブネルはイシボセテの言葉を聞き、非常に怒って言った、
いぬ ちち
﹁わたしはユダの犬のかしらですか。わたしはきょう、あなたの父サウ
いえ きょうだい ゆうじん ちゅうせい
ルの家と、その兄 弟と、その友人とに忠 誠をあらわして、あなたをダビ
て わた おんな こと
デの手に渡すことをしなかったのに、あなたはきょう、女の事のあやま
あ せ しゅ ちか
ちを挙げてわたしを責められる。 九主がダビデに誓われたことを、わた
かれ と かみ ばっ
しが彼のためになし遂げないならば、神がアブネルをいくえにも罰しら
おうこく いえ うつ くらい
サムエル記下

れるように。 一〇すなわち王国をサウルの家から移し、ダビデの位をダ
いた うえ た
ンからベエルシバに至るまで、イスラエルとユダの上に立たせられるで
おそ こと かれ こた
あろう﹂。 一一イシボセテはアブネルを恐れたので、ひと言も彼に答える

11
ことができなかった。
し しゃ い
一二 ア ブ ネ ル は ヘ ブ ロ ン に い る ダ ビ デ の も と に 使者 を つ か わ し て 言 っ
くに けいやく むす
た、﹁国はだれのものですか。わたしと契約を結びなさい。わたしはあ
ちからぞ
なたに力添えして、イスラエルをことごとくあなたのものにしましょ
い けいやく むす
う﹂。 一三ダビデは言った、
﹁よろしい。わたしは、あなたと契約を結びま
こと もと
しょう。ただし一つの事をあなたに求めます。あなたがきてわたしの
かお み むすめ つ く
顔を見るとき、まずサウルの娘 ミカルを連れて来るのでなければ、わた
かお み し しゃ
し の 顔 を 見 る こ と は で き ま せ ん﹂。 一四そ れ か ら ダ ビ デ は 使者 を サ ウ ル
こ い よう かわ
の 子 イ シ ボ セ テ に つ か わ し て 言 っ た、﹁ペ リ シ テ び と の 陽 の 皮 一 百 を
つま ひ わた
もってめとったわたしの妻ミカルを引き渡しなさい﹂。 一五そこでイシ
ひと かのじょ おっと こ と
ボセテは人をやって彼女をその夫、ライシの子パルテエルから取ったの
おっと かのじょ とも い な かのじょ
サムエル記下

で、 一六その夫は彼女と共に行き、泣きながら彼女のあとについて、バホ
い かれ かえ い い かれ かえ
リムまで行ったが、アブネルが彼に﹁帰って行け﹂と言ったので彼は帰っ
た。

12
ちょうろう きょうぎ い
一七 アブネルはイスラエルの長 老たちと協議して言った、﹁あなたがた
いぜん おう もと
は以前からダビデをあなたがたの王とすることを求めていましたが、 一
いま しゅ
今それをしなさい。主がダビデについて、﹃わたしのしもべダビデの

て たみ て
手によって、わたしの民イスラエルをペリシテびとの手、およびもろも
てき て すく だ い
ろの敵の手から救い出すであろう﹄と言われたからです﹂。 一九アブネル
かた
はまたベニヤミンにも語った。そしてアブネルは、イスラエルとベニヤ
ぜんか よ おも つ
ミンの全家が良いと思うことをみな、ヘブロンでダビデに告げようとし
しゅっぱつ
て出 発した。
にん したが い
二〇 アブネルが二十人を従えてヘブロンにいるダビデのもとに行った
とき かれ したが じゅうしゃ しゅえん もう
時、ダビデはアブネルと彼に従 っている従 者たちのために酒宴を設け
い た い
た。 二一アブネルはダビデに言った、
﹁わたしは立って行き、イスラエル
しゅ おう あつ けいやく むす
サムエル記下

をことごとく、わが主、王のもとに集めて、あなたと契約を結ばせ、あ
のぞ おさ
なたの望むものをことごとく治められるようにいたしましょう﹂。こう
おく かえ かれ あんぜん さ い
してダビデはアブネルを送り帰らせたので彼は安全に去って行った。

13
とき けらい とも おお
二二 ちょうどその時、ダビデの家来たちはヨアブと共に多くのぶんどり
もの たずさ りゃくだつ かえ
物を携えて略 奪から帰ってきた。しかしアブネルはヘブロンのダビデ
かれ かえ かれ あんぜん さ
のもとにはいなかった。ダビデが彼を帰らせて彼が安全に去ったから
かれ とも ぐんぜい かえ
で あ る。 二 三ヨ ア ブ お よ び 彼 と 共 に い た 軍勢 が み な 帰 っ て き た と き、
ひとびと い こ おう おう かれ
人々はヨアブに言った、﹁ネルの子アブネルが王のもとにきたが、王が彼
かえ かれ あんぜん さ おう
を 帰 ら せ た の で 彼 は 安全 に 去 っ た﹂。 二 四そ こ で ヨ ア ブ は 王 の も と に
い い なに
行って言った、﹁あなたは何をなさったのですか。アブネルがあなたの
ところ かれ かえ さ
所にきたのに、あなたはどうして、彼を返し去らせられたのですか。 二五
こ あざむ で い
ネルの子アブネルがあなたを欺くためにきたこと、そしてあなたの出入
し し
りを知り、またあなたのなさっていることを、ことごとく知るためにき
たことをあなたはごぞんじです﹂。
ところ で し しゃ お
サムエル記下

二六 ヨアブはダビデの所から出てきて、使者をつかわし、アブネルを追わ
かれ い ど かれ つ かえ
せたので、彼らはシラの井戸から彼を連れて帰った。しかしダビデはそ
こと し かえ
の事を知らなかった。 二七アブネルがヘブロンに帰ってきたとき、ヨア

14
かた かれ もん つ い ところ かれ
ブはひそかに語ろうといって彼を門のうちに連れて行き、その所で彼の
はら さ し じぶん きょうだい ち むく のち
腹を刺して死なせ、自分の兄 弟 アサヘルの血を報いた。 二八その後ダビ
こと き い おうこく こ
デはこの事を聞いて言った、﹁わたしとわたしの王国とは、ネルの子アブ
ち かん しゅ まえ えいきゅう つみ つみ
ネルの血に関して、主の前に永 久に罪はない。 二九どうぞ、その罪がヨア
あたま ちち ぜんか き いえ りゅうしゅつ
ブの頭と、その父の全家に帰するように。またヨアブの家には流 出を
や もの びょうにん もの たお もの しょくもつ
病む者、らい病 人、つえにたよる者、つるぎに倒れる者、または食 物の
とぼ もの た おとうと
乏しい者が絶えないように﹂。 三〇こうしてヨアブとその弟 アビシャイ
ころ かれ たたか かれ きょうだい
とはアブネルを殺したが、それは彼がギベオンの戦いで彼らの兄 弟 ア
ころ
サヘルを殺したためであった。
じぶん とも たみ い
三一 ダビデはヨアブおよび自分と共にいるすべての民に言った、
﹁あなた
きもの さ あらぬの まえ なげ い
がたは着物を裂き、荒布をまとい、アブネルの前に嘆きながら行きなさ
おう かん したが ひとびと
サムエル記下

い﹂。そしてダビデ王はその棺のあとに従 った。 三二人々はアブネルを


ほうむ おう はか こえ な たみ な
ヘブロンに葬 った。王はアブネルの墓で声をあげて泣き、民もみな泣
おう かな うた つく い
いた。 三三王はアブネルのために悲しみの歌を作って言った、

15
おろ ひと し
﹁愚かな人の死ぬように、

アブネルがどうして死んだのか。
て しば
三四あなたの手は縛られず、
あし あし
足には足かせもかけられないのに、
あくにん まえ たお ひと
悪人の前に倒れる人のように、
たお
あなたは倒れた﹂。
たみ みな かれ な たみ ひ
そして民は皆、ふたたび彼のために泣いた。 三五民はみなきて、日のある
た ちか い
うちに、ダビデにパンを食べさせようとしたが、ダビデは誓って言った、
ひ い まえ あじ
﹁もしわたしが日の入る前に、パンでも、ほかのものでも味わうならば、
かみ ばっ たみ み
神がわたしをいくえにも罰しられるように﹂。 三六民はみなそれを見て
まんぞく おう たみ まんぞく ひ
満足した。すべて王のすることは民を満足させた。 三七その日すべての
たみ みな こ ころ おう い し
サムエル記下

民およびイスラエルは皆、ネルの子アブネルを殺したのは、王の意思に
し おう けらい い ひ
よるものでないことを知った。 三八王はその家来たちに言った、
﹁この日
いだい しょうぐん たお し
イスラエルで、ひとりの偉大なる将 軍が倒れたのをあなたがたは知ら

16
あぶら そそ おう こんにち よわ
ないのか。 三九わたしは油を注がれた王であるけれども、今日なお弱い。
こ ひとびと て しゅ
ゼルヤの子であるこれらの人々はわたしの手におえない。どうぞ主が
あく おこな もの あく むく
悪を行う者に、その悪にしたがって報いられるように﹂。
第四章
こ し き
サウルの子イシボセテは、アブネルがヘブロンで死んだことを聞い

ちから うしな みな こ
て、その力を失い、イスラエルは皆あわてた。 二サウルの子イシボセテ
りゃくだつたい たいちょう な た
にはふたりの略 奪 隊の隊 長があった。ひとりの名はバアナ、他のひと
な しそん
りの名はレカブといって、ベニヤミンの子孫であるベロテびとリンモン
こ かぞ
の子たちであった。︵それはベロテもまたベニヤミンのうちに数えられ
サムエル記下

に こんにち
ているからである。 三ベロテびとはギッタイムに逃げていって、今日ま
ところ きりゅう
でその所に寄留している︶。
こ あし こ
さてサウルの子ヨナタンに足のなえた子がひとりあった。エズレル

17
こと し とき かれ さい
からサウルとヨナタンの事の知らせがきた時、彼は五歳であった。うば
かれ だ に いそ に とき こ お あし
が彼を抱いて逃げたが、急いで逃げる時、その子は落ちて足なえとなっ

た。その名はメピボセテといった。
こ しゅったつ ひ あつ
ベロテびとリンモンの子たち、レカブとバアナとは出 立して、日の暑

いえ ひるね いえ
いころイシボセテの家にきたが、イシボセテは昼寝をしていた。 六家の
もん まも おんな むぎ わ ねむ ね
門を守る女は麦をあおぎ分けていたが、眠くなって寝てしまった。そこ
きょうだい なか かれ いえ
でレカブとその兄 弟 バアナは、ひそかに中にはいった。 七彼らが家には
とき しんしつ ゆか うえ ね かれ
いった時、イシボセテは寝室で床の上に寝ていたので、彼らはそれを
う ころ くび くび と みち
撃って殺し、その首をはね、その首を取って、よもすがらアラバの道を
い くび たずさ い
行き、 八イシボセテの首をヘブロンにいるダビデのもとに携えて行って
おう い いのち もと てき こ
王に言った、﹁あなたの命を求めたあなたの敵サウルの子イシボセテの
くび しゅ きみ おう ほうふく
サムエル記下

首です。主はきょう、わが君、王のためにサウルとそのすえとに報復さ
こ きょうだい
れました﹂。 九ダビデはベロテびとリンモンの子レカブとその兄 弟 バア
こた いのち くなん すく しゅ い
ナに答えた、﹁わたしの命を、もろもろの苦難から救われた主は生きてお

18
ひと つ み し
られる。 一〇わたしはかつて、人がわたしに告げて、
﹃見よ、サウルは死
い よ つた もの おも もの とら
んだ﹄と言って、みずから良いおとずれを伝える者と思っていた者を捕
ころ むく あくにん ただ ひと
えてチクラグで殺し、そのおとずれに報いたのだ。 一一悪人が正しい人
いえ ゆか うえ ころ いま かれ
をその家の床の上で殺したときは、なおさらのことだ。今わたしが、彼
ち なが つみ むく ち た ほろ
の血を流した罪を報い、あなたがたを、この地から絶ち滅ぼさないでお
わかもの めい わかもの
くであろうか﹂。 一二そしてダビデは若者たちに命じたので、若者たちは
かれ ころ てあし き はな いけ き か
彼らを殺し、その手足を切り離し、ヘブロンの池のほとりで木に掛けた。
ひとびと くび も い はか
人々はイシボセテの首を持って行って、ヘブロンにあるアブネルの墓に
ほうむ
葬 った。
第五章
サムエル記下

ぶぞく
一イ ス ラ エ ル の す べ て の 部族 は ヘ ブ ロ ン に い る ダ ビ デ の も と に き て
い こつにく さき おう
言った、
﹁われわれは、あなたの骨肉です。 二先にサウルがわれわれの王

19
とき ひき で い
であった時にも、あなたはイスラエルを率いて出入りされました。そし
しゅ たみ ぼく
て主はあなたに、﹃あなたはわたしの民イスラエルを牧するであろう。
きみ い
またあなたはイスラエルの君となるであろう﹄と言われました﹂。 三こ
ちょうろう みな おう
のようにイスラエルの長 老たちが皆、ヘブロンにいる王のもとにきた
おう しゅ まえ かれ けいやく むす かれ
ので、ダビデ王はヘブロンで主の前に彼らと契約を結んだ。そして彼ら
あぶら そそ おう おう
は ダ ビ デ に 油 を 注 い で イ ス ラ エ ル の 王 と し た。 四ダ ビ デ は 王 と な っ た
さい ねん あいだ よ おさ ねん
とき三十歳で、四十年の間、世を治めた。 五すなわちヘブロンで七年六
げつ おさ ねん ぜん おさ
か月ユダを治め、またエルサレムで三十三年、全イスラエルとユダを治
めた。
おう じゅうしゃ い ち じゅうみん
六王とその従 者たちとはエルサレムへ行って、その地の住 民 エブスび
せ い
とを攻めた。エブスびとはダビデに言った、﹁あなたはけっして、ここに
せ い あし お
サムエル記下

攻め入ることはできない。かえって、めしいや足なえでも、あなたを追
はら かれ せ い
い払うであろう﹂。彼らが﹁ダビデはここに攻め入ることはできない﹂と
おも ようがい と
思 っ た か ら で あ る。 七と こ ろ が ダ ビ デ は シ オ ン の 要害 を 取 っ た。こ れ

20
まち ひ う
がダビデの町である。 八その日ダビデは、﹁だれでもエブスびとを撃と
ひと みず あ たてあな のぼ い こころ にく
うとする人は、水をくみ上げる縦穴を上って行って、ダビデが心に憎ん
あし う い ひとびと
でいる足なえやめしいを撃て﹂と言った。それゆえに人々は、﹁めしいや
あし みや い
足なえは、宮にはいってはならない﹂と言いならわしている。 九ダビデ
ようがい す まち な
はその要害に住んで、これをダビデの町と名づけた。またダビデはミロ
うち しゅうい じょうへき きず おお
から内の周囲に城 壁を築いた。 一〇こうしてダビデはますます大いなる
もの ばんぐん かみ しゅ かれ とも
者となり、かつ万軍の神、主が彼と共におられた。
おう し しゃ こうはく だいく
一一 ツ ロ の 王 ヒ ラ ム は ダ ビ デ に 使者 を つ か わ し て、香柏 お よ び 大工 と
いしく おく かれ いえ た
石工を送った。彼らはダビデのために家を建てた。 一二そしてダビデは
しゅ じぶん かた た おう しゅ たみ
主が自分を堅く立ててイスラエルの王とされたこと、主がその民イスラ
おうこく おこ さと
エルのためにその王国を興されたことを悟った。
のち つま い
サムエル記下

ダビデはヘブロンからきて後、さらにエルサレムで妻とそばめを入
一三
むすめ うま かれ うま
れたので、むすこと娘がまたダビデに生れた。 一四エルサレムで彼に生
もの な つぎ
れた者の名は次のとおりである。シャンムア、ショバブ、ナタン、ソロ

21
モン、 一五イブハル、エリシュア、ネペグ、ヤピア、 一六エリシャマ、エリ
アダ、およびエリペレテ。
あぶら そそ おう
一七さてペリシテびとは、ダビデが油を注がれてイスラエルの王になっ
き のぼ さが き
たことを聞き、みな上ってきてダビデを捜したが、ダビデはそれを聞い
ようがい くだ い たに ひろ
て 要害 に 下 っ て 行 っ た。 一 八ペ リ シ テ び と は き て、レ パ イ ム の 谷 に 広
しゅ と い む
がっていた。 一九ダビデは主に問うて言った、
﹁ペリシテびとに向かって
のぼ かれ て わた
上るべきでしょうか。あなたは彼らをわたしの手に渡されるでしょう
しゅ い のぼ
か﹂。主はダビデに言われた、﹁上るがよい。わたしはかならずペリシテ
て わた
びとをあなたの手に渡すであろう﹂。 二〇そこでダビデはバアル・ペラジ
い かれ ところ う やぶ い しゅ やぶ で
ムへ行って、彼らをその所で撃ち破り、そして言った、
﹁主は、破り出る
みず てき まえ やぶ ところ な
水のように、敵をわたしの前に破られた﹂。それゆえにその所の名はバ
よ ところ かれ
サムエル記下

ア ル・ペ ラ ジ ム と 呼 ば れ て い る。 二 一ペ リ シ テ び と は そ の 所 に 彼 ら の
ぐうぞう す い じゅうしゃ はこ さ
偶像を捨てて行ったので、ダビデとその従 者たちはそれを運び去った。
のぼ たに ひろ
二二ペリシテびとが、ふたたび上ってきて、レパイムの谷に広がったの

22
しゅ と しゅ い のぼ かれ
で、 二三ダビデは主に問うたが、主は言われた、
﹁上ってはならない。彼
まわ き まえ かれ おそ
らのうしろに回り、バルサムの木の前から彼らを襲いなさい。 二四バル
き うえ こうしん おと きこ ふる た
サムの木の上に行進の音が聞えたならば、あなたは奮い立たなければな
とき しゅ まえ で ぐんぜい う
らない。その時、主があなたの前に出て、ペリシテびとの軍勢を撃たれ
しゅ めい
るからである﹂。 二五ダビデは、主が命じられたようにして、ペリシテび
う およ
とを撃ち、ゲバからゲゼルに及んだ。
第六章
ふたた ぬ もの にん あつ
一ダビデは再びイスラエルのえり抜きの者三万人をことごとく集めた。
た じぶん とも たみ とも
二そしてダビデは立って、自分と共にいるすべての民と共にバアレ・ユ
サムエル記下

い かみ はこ のぼ はこ
ダへ行って、神の箱をそこからかき上ろうとした。この箱はケルビムの
うえ ざ ばんぐん しゅ な よ かれ かみ
上 に 座 し て お ら れ る 万軍 の 主 の 名 を も っ て 呼 ば れ て い る。 三彼 ら は 神
はこ あたら くるま の やま うえ いえ はこ だ
の箱を新しい車に載せて、山の上にあるアビナダブの家から運び出し

23
こ かみ はこ の あたら くるま
た。 四アビナダブの子たち、ウザとアヒオとが神の箱を載せた新しい車
し き かみ はこ そ はこ まえ すす
を指揮し、ウザは神の箱のかたわらに沿い、アヒオは箱の前に進んだ。 五
ぜんか こと たてごと て つづみ すず
ダビデとイスラエルの全家は琴と立琴と手 鼓と鈴とシンバルとをもっ
うた ちから しゅ まえ おど
て歌をうたい、 力をきわめて、主の前に踊った。
かれ う ば とき かみ はこ て の
六彼らがナコンの打ち場にきた時、ウザは神の箱に手を伸べて、それを
おさ うし しゅ む いか
押 え た。牛 が つ ま ず い た か ら で あ る。 七す る と 主 は ウ ザ に 向 か っ て 怒
はっ かれ て はこ の かれ ば う かれ かみ
りを発し、彼が手を箱に伸べたので、彼をその場で撃たれた。彼は神の
はこ し しゅ う いか
箱のかたわらで死んだ。 八主がウザを撃たれたので、ダビデは怒った。
ところ こんにち よ ひ しゅ
その所は今日までペレヅ・ウザと呼ばれている。 九その日ダビデは主を
おそ い しゅ はこ ところ く
恐 れ て 言 っ た、﹁ど う し て 主 の 箱 が わ た し の 所 に 来 る こ と が で き よ う
しゅ はこ まち い この うつ
か﹂。 一〇ダビデは主の箱をダビデの町に入れることを好まず、これを移
いえ はこ かみ はこ
サムエル記下

してガテびとオベデエドムの家に運ばせた。 一一神の箱はガテびとオベ
いえ げつ しゅ ぜんか
デ エ ド ム の 家 に 三 か 月 と ど ま っ た。主 は オ ベ デ エ ド ム と そ の 全家 を
しゅくふく
祝 福された。

24
おう しゅ かみ はこ いえ
しかしダビデ王は、
一二 ﹁主が神の箱のゆえに、オベデエドムの家とその
しょゆう しゅくふく き い よろこ
すべての所有を祝 福されている﹂と聞き、ダビデは行って、喜びをもっ
かみ はこ いえ まち のぼ しゅ
て、神の箱をオベデエドムの家からダビデの町にかき上った。 一三主の
はこ もの ほ すす とき うし こ もの ぎせい
箱をかく者が六歩進んだ時、ダビデは牛と肥えた物を犠牲としてささげ
ちから しゅ はこ まえ おど とき
た。 一四そしてダビデは力をきわめて、主の箱の前で踊った。その時ダ
あ ま ぬの
ビデは亜麻布のエポデをつけていた。 一五こうしてダビデとイスラエル
ぜんか よろこ さけ つのぶえ おと かみ はこ のぼ
の全家とは、 喜びの叫びと角笛の音をもって、神の箱をかき上った。
しゅ はこ まち とき むすめ まど
主の箱がダビデの町にはいった時、サウルの娘 ミカルは窓からなが
一六
おう しゅ まえ ま おど み こころ
め、ダビデ王が主の前に舞い踊るのを見て、心のうちにダビデをさげす
ひとびと しゅ はこ い は てんまく
んだ。 一七人々は主の箱をかき入れて、ダビデがそのために張った天幕
なか ば しょ お はんさい しゅうおんさい しゅ まえ
の中のその場所に置いた。そしてダビデは燔祭と酬 恩 祭を主の前にさ
はんさい しゅうおんさい おわ とき ばんぐん しゅ な
サムエル記下

さげた。 一八ダビデは燔祭と酬 恩 祭をささげ終った時、万軍の主の名に


たみ しゅくふく たみ ぜんみんしゅう
よって民を祝 福した。 一九そしてすべての民、イスラエルの全 民 衆に、
おとこ おんな か し こ にく
男にも女にも、おのおのパンの菓子一個、肉一きれ、ほしぶどう一かた

25
わ あた たみ いえ かえ
まりを分け与えた。こうして民はみなおのおのその家に帰った。
かぞく しゅくふく かえ とき むすめ
二〇 ダビデが家族を祝 福しようとして帰ってきた時、サウルの娘 ミカル
でむか い おう いげん
は ダ ビ デ を 出迎 え て 言 っ た、﹁き ょ う イ ス ラ エ ル の 王 は な ん と 威厳 の
もの はじ し み あらわ
あったことでしょう。いたずら者が、恥も知らず、その身を現すように、
けらい まえ じぶん み あらわ
き ょ う 家来 た ち の は し た め ら の 前 に 自分 の 身 を 現 さ れ ま し た﹂。 二一ダ
い ちち ぜんか
ビデはミカルに言った、
﹁あなたの父よりも、またその全家よりも、むし
えら しゅ たみ きみ しゅ まえ おど
ろわたしを選んで、主の民イスラエルの君とせられた主の前に踊ったの
しゅ まえ おど
だ。わたしはまた主の前に踊るであろう。 二二わたしはこれよりももっ
かろ め いや
と軽んじられるようにしよう。そしてあなたの目には卑しめられるで
い ほまれ
あろう。しかしわたしは、あなたがさきに言った、はしためたちに誉を
え むすめ し ひ こども
得るであろう﹂。 二三こうしてサウルの娘 ミカルは死ぬ日まで子供がな
サムエル記下

かった。

26
第七章
おう じぶん いえ す しゅ しゅうい てき う しりぞ
一さて、王が自分の家に住み、また主が周囲の敵をことごとく打ち退け
かれ あんそく たま とき おう よげんしゃ い み いま
て彼に安息を賜わった時、 二王は預言者ナタンに言った、
﹁見よ、今わた
こうはく いえ す かみ はこ まくや
しは、香柏の家に住んでいるが、神の箱はなお幕屋のうちにある﹂。 三ナ
おう い しゅ とも い
タンは王に言った、
﹁主があなたと共におられますから、行って、すべて
こころ おこな
あなたの心にあるところを行いなさい﹂。
よ しゅ ことば のぞ い い
四その夜、主の言葉がナタンに臨んで言った、 五﹁行って、わたしのしも
い しゅ おお す
べダビデに言いなさい、﹃主はこう仰せられる。あなたはわたしの住む
いえ た ひとびと
家 を 建 て よ う と す る の か。 六わ た し は イ ス ラ エ ル の 人々 を エ ジ プ ト か
みちび だ ひ こんにち いえ す てんまく あゆ
ら導き出した日から今日まで、家に住まわず、天幕をすまいとして歩ん
ひとびと とも あゆ
サムエル記下

で き た。 七わ た し が イ ス ラ エ ル の す べ て の 人々 と 共 に 歩 ん だ す べ て の
ところ たみ ぼく めい
所で、わたしがわたしの民イスラエルを牧することを命じたイスラエル
こと
のさばきづかさのひとりに、ひと言でも﹁どうしてあなたがたはわたし

27
こうはく いえ た い
のために香柏の家を建てないのか﹂と、言ったことがあるであろうか﹄。
いま い
八そ れ ゆ え、今 あ な た は、わ た し の し も べ ダ ビ デ に こ う 言 い な さ い、
ばんぐん しゅ おお まきば ひつじ したが
﹃万軍の主はこう仰せられる。わたしはあなたを牧場から、羊に従 って
ところ と たみ きみ
いる所から取って、わたしの民イスラエルの君とし、 九あなたがどこへ
い とも てき まえ た
行くにも、あなたと共におり、あなたのすべての敵をあなたの前から断
さ ちじょう おお もの な おお な
ち去った。わたしはまた地上の大いなる者の名のような大いなる名を
え たみ
あなたに得させよう。 一〇そしてわたしの民イスラエルのために一つの
ところ さだ かれ う かれ じぶん ところ す かさ うご
所を定めて、彼らを植えつけ、彼らを自分の所に住ませ、重ねて動くこ
まえ
とのないようにするであろう。 一一また前のように、わたしがわたしの
たみ うえ た ひ
民 イ ス ラ エ ル の 上 に さ ば き づ か さ を 立 て た 日 か ら こ の か た の よ う に、
あくにん かさ なや
悪人が重ねてこれを悩ますことはない。わたしはあなたのもろもろの
てき う しりぞ あんそく あた しゅ
サムエル記下

敵を打ち退けて、あなたに安息を与えるであろう。主はまた﹁あなたの
いえ つく おお ひ み せんぞ とも
ために家を造る﹂と仰せられる。 一二あなたが日が満ちて、先祖たちと共
ねむ とき み で こ た
に眠る時、わたしはあなたの身から出る子を、あなたのあとに立てて、そ

28
おうこく かた かれ な いえ た
の 王国 を 堅 く す る で あ ろ う。 一三彼 は わ た し の 名 の た め に 家 を 建 て る。
なが くに くらい かた かれ ちち かれ
わたしは長くその国の位を堅くしよう。 一四わたしは彼の父となり、彼
こ かれ つみ おか ひと
はわたしの子となるであろう。もし彼が罪を犯すならば、わたしは人の
ひと こ かれ こ
つえと人の子のむちをもって彼を懲らす。 一五しかしわたしはわたしの
まえ のぞ と さ
いつくしみを、わたしがあなたの前から除いたサウルから取り去ったよ
かれ と さ いえ おうこく まえ なが
うに、彼からは取り去らない。 一六あなたの家と王国はわたしの前に長
たも くらい なが かと
く保つであろう。あなたの位は長く堅うせられる﹄﹂。 一七ナタンはすべ
ことば まぼろし かた
てこれらの言葉のように、またすべてこの幻のようにダビデに語った。
とき おう しゅ まえ ざ い しゅ かみ
一八その時ダビデ王は、はいって主の前に座して言った、﹁主なる神よ、わ
いえ なに みちび
たしがだれ、わたしの家が何であるので、あなたはこれまでわたしを導
しゅ かみ め ちい こと
かれたのですか。 一九主なる神よ、これはなおあなたの目には小さい事
しゅ かみ いえ のち こと かた
サムエル記下

です。主なる神よ、あなたはまたしもべの家の、はるか後の事を語って、
よ よ しめ うえ
きたるべき代々のことを示されました。 二〇ダビデはこの上なにをあな
もう しゅ かみ
たに申しあげることができましょう。主なる神よ、あなたはしもべを

29
し やくそく こころ
知っておられるのです。 二一あなたの約束のゆえに、またあなたの心に
したが おお こと おこな し
従 って、あなたはこのもろもろの大いなる事を行い、しもべにそれを知
しゅ かみ いだい
らせられました。 二二主なる神よ、あなたは偉大です。それは、われわれ
みみ き もの
がすべて耳に聞いたところによれば、あなたのような者はなく、またあ
かみ ち こくみん たみ
なたのほかに神はないからです。 二三地のどの国民が、あなたの民イス
かみ い じぶん
ラエルのようでありましょうか。これは神が行って、自分のためにあが
たみ みずか な かれ おお
なって民とし、自らの名をあげられたもの、また彼らのために大いなる
おそ たみ まえ くに かみがみ お だ
恐るべきことをなし、その民の前から国びととその神々とを追い出され
たみ えいえん たみ
たものです。 二四そしてあなたの民イスラエルを永遠にあなたの民とし
じぶん さだ しゅ かれ かみ
て、自分のために、定められました。主よ、あなたは彼らの神となられ
しゅ かみ いま いえ
たのです。 二五主なる神よ、今あなたが、しもべとしもべの家とについて
かた ことば なが かと い
サムエル記下

語られた言葉を長く堅うして、あなたの言われたとおりにしてくださ
な ばんぐん しゅ
い。 二六そうすれば、あなたの名はとこしえにあがめられて、
﹃万軍の主
かみ い いえ
はイスラエルの神である﹄と言われ、あなたのしもべダビデの家は、あ

30
まえ かた た ばんぐん しゅ
なたの前に堅く立つことができましょう。 二七万軍の主、イスラエルの
かみ しめ いえ た い
神よ、あなたはしもべに示して、
﹃おまえのために家を建てよう﹄と言わ
いのり ゆうき え
れました。それゆえ、しもべはこの祈をあなたにささげる勇気を得たの
しゅ かみ かみ ことば しんじつ
です。 二八主なる神よ、あなたは神にましまし、あなたの言葉は真実で
よ こと やくそく いま
す。あなたはこの良き事をしもべに約束されました。 二九どうぞ今、し
いえ しゅくふく まえ なが しゅ
もべの家を祝 福し、あなたの前に長くつづかせてくださるように。主
かみ い しゅくふく
な る 神 よ、あ な た が そ れ を 言 わ れ た の で す。ど う ぞ あ な た の 祝 福 に
いえ しゅくふく
よって、しもべの家がながく祝 福されますように﹂。
第八章
サムエル記下

のち う せいふく
一この後ダビデはペリシテびとを撃って、これを征服した。ダビデはま
て と
たペリシテびとの手からメテグ・アンマを取った。
かれ う かれ ち ふ かれ はか
二彼はまたモアブを撃ち、彼らを地に伏させ、なわをもって彼らを測っ

31
すじ ころ もの はか すじ
た。すなわち二筋のなわをもって殺すべき者を測り、一筋のなわをもっ
い もの はか
て生かしておく者を測った。そしてモアブびとは、ダビデのしもべと
おさ
なって、みつぎを納めた。
こ おう かわ
ダビデはまたレホブの子であるゾバの王ハダデゼルが、ユフラテ川の

せいりょく かいふく い う
ほとりにその勢 力を回復しようとして行くところを撃った。 四そして
かれ きへい にん ほへい にん と
ダビデは彼から騎兵千七百人、歩兵二万人を取った。ダビデはまた一百
せんしゃ うま のこ せんしゃ うま あし すじ き
の戦車の馬を残して、そのほかの戦車の馬はみなその足の筋を切った。
おう たす
ダマスコのスリヤびとが、ゾバの王ハダデゼルを助けるためにきたの

にん ころ
で、ダビデはスリヤびと二万二千人を殺した。 六そしてダビデはダマス
し ゅ び たい お
コのスリヤに守備隊を置いた。スリヤびとは、ダビデのしもべとなっ
おさ しゅ い ところ しょうり あた
て、みつぎを納めた。主はダビデにすべてその行く所で勝利を与えられ
も きん たて うば
サムエル記下

た。 七ダビデはハダデゼルのしもべらが持っていた金の盾を奪って、エ
も おう まち
ルサレムに持ってきた。 八ダビデ王はまたハダデゼルの町、ベタとベロ
おお せいどう と
タイから、ひじょうに多くの青銅を取った。

32
とき おう ぐんぜい う
時にハマテの王トイは、ダビデがハダデゼルのすべての軍勢を撃ち

やぶ き こ おう かれ
破ったことを聞き、一〇その子ヨラムをダビデ王のもとにつかわして、彼
しゅく の
にあいさつし、かつ祝を述べさせた。ハダデゼルはかつてしばしばトイ
たたか まじ たたか う やぶ
と戦いを交えたが、ダビデがハダデゼルと戦 ってこれを撃ち破ったか
ぎん うつわ きん うつわ せいどう うつわ たずさ
らである。ヨラムが銀の器と金の器と青銅の器を携えてきたので、 一一
おう せいふく こくみん と きんぎん とも
ダビデ王は征服したすべての国民から取ってささげた金銀と共にこれ
しゅ ひとびと
らをも主にささげた。 一二すなわちエドム、モアブ、アンモンの人々、ペ
え もの おう こ
リシテびと、アマレクから獲た物、およびゾバの王レホブの子ハダデゼ
え もの とも
ルから獲たぶんどり物と共にこれをささげた。
めいせい え かれ かえ しお たに
一三 こうしてダビデは名声を得た。彼は帰ってきてから塩の谷でエドム
にん う ころ し ゅ び たい お
びと一万八千人を撃ち殺した。 一四そしてエドムに守備隊を置いた。す
ぜん ち し ゅ び たい お みな
サムエル記下

なわちエドムの全地に守備隊を置き、エドムびとは皆ダビデのしもべと
しゅ い ところ しょうり あた
なった。主はダビデにすべてその行く所で勝利を与えられた。
ぜん ち おさ たみ せいぎ
一五 こうしてダビデはイスラエルの全地を治め、そのすべての民に正義

33
こうへい おこな こ ぐん ちょう こ
と公平を行 った。 一六ゼルヤの子ヨアブは軍の長、アヒルデの子ヨシャ
しかん こ こ
パ テ は 史官、 一七ア ヒ ト ブ の 子 ザ ド ク と ア ビ ヤ タ ル の 子 ア ヒ メ レ ク は
さいし しょきかん こ
祭司、セラヤは書記官、一八エホヤダの子ベナヤはケレテびととペレテび
ちょう こ さいし
との長、ダビデの子たちは祭司であった。
第九章
とき い いえ ひと のこ もの
一時にダビデは言った、﹁サウルの家の人で、なお残っている者がある
ひと めぐ ほどこ
か。わたしはヨナタンのために、その人に恵みを施そう﹂。 二さて、サウ
いえ な ひとびと かれ
ルの家にヂバという名のしもべがあったが、人々が彼をダビデのもとに
よ よ おう かれ い かれ い
呼び寄せたので、王は彼に言った、
﹁あなたがヂバか﹂。彼は言った、
﹁し
サムエル記下

おう い いえ ひと のこ
もべがそうです﹂。 三王は言った、
﹁サウルの家の人がまだ残っていませ
ひと かみ めぐ ほどこ おも おう い
ん か。わ た し は そ の 人 に 神 の 恵 み を 施 そ う と 思 う﹂。ヂ バ は 王 に 言 っ
こ おう かれ い
た、﹁ヨ ナ タ ン の 子 が ま だ お り ま す。あ し な え で す﹂。 四王 は 彼 に 言 っ

34
ひと おう い かれ
た、
﹁その人はどこにいるのか﹂。ヂバは王に言った、
﹁彼はロ・デバルの
こ いえ おう ひと
ア ン ミ エ ル の 子 マ キ ル の 家 に お り ま す﹂。 五ダ ビ デ 王 は 人 を つ か わ し
こ いえ かれ つ
て、ロ・デバルのアンミエルの子マキルの家から、彼を連れてこさせた。
こ こ
六サウルの子ヨナタンの子であるメピボセテはダビデのもとにきて、ひ
ふ はい い かれ
れ伏して拝した。ダビデが、
﹁メピボセテよ﹂と言ったので、彼は、
﹁し
こた かれ い おそ
もべは、ここにおります﹂と答えた。 七ダビデは彼に言った、
﹁恐れるこ
ちち めぐ
とはない。わたしはかならずあなたの父ヨナタンのためにあなたに恵
ほどこ ちち ち かえ
み を 施 し ま し ょ う。あ な た の 父 サ ウ ル の 地 を み な あ な た に 返 し ま す。
つね しょくたく しょくじ かれ はい い
またあなたは常にわたしの食 卓で食事をしなさい﹂。 八彼は拝して言っ
なん し いぬ
た、
﹁あなたは、しもべを何とおぼしめして、死んだ犬のようなわたしを
かえり
顧みられるのですか﹂。
おう よ い いえ
サムエル記下

九王はサウルのしもべヂバを呼んで言った、﹁すべてサウルとその家に
ぞく もの みな しゅじん こ あた
属する物を皆、わたしはあなたの主人の子に与えた。 一〇あなたと、あな
こ かれ ち たがや しゅじん
たの子たちと、しもべたちとは、彼のために地を耕して、あなたの主人

35
こ た しょくもつ と い しゅじん
の子が食べる食 物を取り入れなければならない。しかしあなたの主人
こ しょくたく しょくじ
の 子 メ ピ ボ セ テ は い つ も わ た し の 食 卓 で 食事 を す る で あ ろ う﹂。ヂ バ
にん おとこ こ にん おう い
に は 十 五 人 の 男 の 子 と 二 十 人 の し も べ が あ っ た。 一一ヂ バ は 王 に 言 っ
おう しゅくん めい
た、﹁すべて王わが主君がしもべに命じられるとおりに、しもべはいたし
おう こ
ま し ょ う﹂。こ う し て メ ピ ボ セ テ は 王 の 子 の ひ と り の よ う に ダ ビ デ の
しょくたく しょくじ ちい こ な
食 卓で食事をした。 一二メピボセテには小さい子があって、名をミカと
いえ す もの
いった。そしてヂバの家に住んでいる者はみなメピボセテのしもべと
す かれ おう しょくたく
なった。 一三メピボセテはエルサレムに住んだ。彼がいつも王の食 卓で
しょくじ かれ りょうあし
食事をしたからである。彼は両 足ともに、なえていた。
第一〇章
サムエル記下

のち ひとびと おう し こ かわ おう
一この後アンモンの人々の王が死んで、その子ハヌンがこれに代って王
い こ
となった。 二そのときダビデは言った、
﹁わたしはナハシの子ハヌンに、

36
ちち めぐ ほどこ めぐ ほどこ
その父がわたしに恵みを施したように、恵みを施そう﹂。そしてダビデ
かれ ちち なぐさ
は彼を、その父のゆえに慰めようと、しもべをつかわした。ダビデのし
ひとびと ち い ひとびと
もべたちはアンモンの人々の地に行ったが、 三アンモンの人々のつかさ
しゅくん い なぐさ もの
たちはその主君ハヌンに言った、﹁ダビデが慰める者をあなたのもとに
かれ ちち たっと おも
つかわしたのは彼があなたの父を尊ぶためだと思われますか。ダビデ
まち
があなたのもとに、しもべたちをつかわしたのは、この町をうかがい、そ
さぐ ほろ
れを探って、滅ぼすためではありませんか﹂。 四そこでハヌンはダビデ
とら なか おと きもの なか
のしもべたちを捕え、おのおの、ひげの半ばをそり落し、その着物を中
た き こし ところ かれ かえ ひとびと
ほどから断ち切り腰の所までにして、彼らを帰らせた。 五人々がこれを
つ ひと かれ むか
ダビデに告げたので、ダビデは人をつかわして彼らを迎えさせた。その
ひとびと は おう い
人々はひじょうに恥じたからである。そこで王は言った、﹁ひげがのび
のち かえ
サムエル記下

るまでエリコにとどまって、その後、帰りなさい﹂。
ひとびと じぶん にく
アンモンの人々は自分たちがダビデに憎まれていることがわかった

ひと
ので、人をつかわして、ベテ・レホブのスリヤびととゾバのスリヤびと

37
ほへい にん おう にん ひと にん
との歩兵二万人およびマアカの王とその一千人、トブの人一万二千人を
やと い き ゆうし ぜんぐん
雇い入れた。 七ダビデはそれを聞いて、ヨアブと勇士の全軍をつかわし
ひとびと で もん いりぐち たたか そな
たので、 八アンモンの人々は出て、門の入口に戦いの備えをした。ゾバ
ひとびと べつ の
とレホブとのスリヤびと、およびトブとマアカの人々は別に野にいた。
たたか ぜんご じぶん せま み
九ヨアブは戦いが前後から自分に迫ってくるのを見て、イスラエルのえ
ぬ へいし えら たい そな
り抜きの兵士のうちから選んで、これをスリヤびとに対して備え、一〇そ
たみ じぶん きょうだい て ひとびと
のほかの民を自分の兄 弟 アビシャイの手にわたして、アンモンの人々
たい そな い て
に対して備えさせ、 一一そして言った、
﹁もしスリヤびとがわたしに手ご
たす ひとびと
わいときは、わたしを助けてください。もしアンモンの人々があなたに
て い たす いさ
手ごわいときは、行ってあなたを助けましょう。 一二勇ましくしてくだ
たみ かみ まちまち いさ
さい。われわれの民のため、われわれの神の町々のため、勇ましくしま
しゅ よ おも
サムエル記下

し ょ う。ど う ぞ 主 が 良 い と 思 わ れ る こ と を さ れ る よ う に﹂。 一三ヨ ア ブ


じぶん いっしょ たみ とも む たたか ちか
が自分と一緒にいる民と共に、スリヤびとに向かって戦おうとして近づ
かれ まえ に ひとびと
いたとき、スリヤびとは彼の前から逃げた。 一四アンモンの人々はスリ

38
に み かれ まえ に まち
ヤびとが逃げるのを見て、彼らもまたアビシャイの前から逃げて町には
ひとびと う
いった。そこでヨアブはアンモンの人々を撃つことをやめてエルサレ
かえ
ムに帰った。
じぶん う やぶ み
一五 し か し ス リ ヤ び と は 自分 た ち の イ ス ラ エ ル に 打 ち 敗 ら れ た の を 見
とも あつ ひと かわ
て、共に集まった。 一六そしてハダデゼルは人をつかわし、ユフラテ川の
む がわ ひき
向こう側にいるスリヤびとを率いてヘラムにこさせた。ハダデゼルの
ぐん ちょう ひき こと きこ かれ
軍の長 ショバクがこれを率いた。 一七この事がダビデに聞えたので、彼
あつ わた
はイスラエルをことごとく集め、ヨルダンを渡ってヘラムにきた。スリ
む そな かれ たたか
ヤびとはダビデに向かって備えをして彼と戦 った。 一八しかしスリヤび
まえ に せんしゃ へい
とがイスラエルの前から逃げたので、ダビデはスリヤびとの戦車の兵七
きへい ころ ぐん ちょう う かれ
百、騎兵四万を殺し、またその軍の長 ショバクを撃ったので、彼はその
ところ し けらい おう じぶん
サムエル記下

所で死んだ。 一九ハダデゼルの家来であった王たちはみな、自分たちが
う やぶ み わ こう つか
イスラエルに打ち敗られたのを見て、イスラエルと和を講じ、これに仕
おそ ふたた ひとびと たす
えた。こうしてスリヤびとは恐れて再びアンモンの人々を助けること

39
をしなかった。
第一一章
はる おう たたか で およ
一春になって、王たちが戦いに出るに及んで、ダビデはヨアブおよび
じぶん とも けらい なら ぜんぐん かれ
自分と共にいる家来たち、並びにイスラエルの全軍をつかわした。彼ら
ひとびと ほろ ほうい
はアンモンの人々を滅ぼし、ラバを包囲した。しかしダビデはエルサレ
ムにとどまっていた。
ひ ゆうぐれ ゆか お で おう いえ おくじょう ある
二さて、ある日の夕暮、ダビデは床から起き出て、王の家の屋 上を歩い
おくじょう おんな あら み
ていたが、屋 上から、ひとりの女がからだを洗っているのを見た。その
おんな ひじょう うつく ひと おんな さぐ
女 は 非常 に 美 し か っ た。 三ダ ビ デ は 人 を つ か わ し て そ の 女 の こ と を 探
サムエル記下

ひと い むすめ
らせたが、ある人は言った、
﹁これはエリアムの娘で、ヘテびとウリヤの
つま し しゃ
妻 バ テ シ バ で は あ り ま せ ん か﹂。 四そ こ で ダ ビ デ は 使者 を つ か わ し て、
おんな つ おんな かれ ところ かれ おんな ね おんな み
その女を連れてきた。 女は彼の所にきて、彼はその女と寝た。︵女は身

40
けが きよ おんな いえ かえ おんな
の汚れを清めていたのである。︶こうして女はその家に帰った。 五 女は
にんしん ひと つ い こ
妊娠したので、人をつかわしてダビデに告げて言った、﹁わたしは子をは
らみました﹂。
ところ
六そこでダビデはヨアブに、
﹁ヘテびとウリヤをわたしの所につかわせ﹂
い ところ
と言ってやったので、ヨアブはウリヤをダビデの所につかわした。 七ウ
ところ たみ
リヤがダビデの所にきたので、ダビデは、ヨアブはどうしているか、民
たたか
はどうしているか、戦いはうまくいっているかとたずねた。 八そしてダ
い いえ い あし あら
ビデはウリヤに言った、
﹁あなたの家に行って、足を洗いなさい﹂。ウリ
おう いえ で おう おく もの かれ のち したが
ヤは王の家を出ていったが、王の贈り物が彼の後に従 った。 九しかしウ
おう いえ いりぐち しゅくん けらい とも ね じぶん いえ かえ
リヤは王の家の入口で主君の家来たちと共に寝て、自分の家に帰らな
ひとびと じぶん いえ かえ
かった。 一〇人々がダビデに、﹁ウリヤは自分の家に帰りませんでした﹂
つ い たび かえ
サムエル記下

と告げたので、ダビデはウリヤに言った、﹁旅から帰ってきたのではない
いえ かえ い
か。ど う し て 家 に 帰 ら な か っ た の か﹂。 一 一ウ リ ヤ は ダ ビ デ に 言 っ た、
かみ はこ こ や なか す しゅじん
﹁神の箱も、イスラエルも、ユダも、小屋の中に住み、わたしの主人ヨア

41
しゅくん けらい の じん と
ブと、わが主君の家来たちが野のおもてに陣を取っているのに、わたし
いえ かえ く の つま ね
はどうして家に帰って食い飲みし、妻と寝ることができましょう。あな
い たましい い こと
たは生きておられます。あなたの魂は生きています。わたしはこの事

をいたしません﹂。 一二ダビデはウリヤに言った、
﹁きょうも、ここにとど

まりなさい。わたしはあす、あなたを去らせましょう﹂。そこでウリヤ
ひ つぎ ひ かれ まね
は そ の 日 と 次 の 日 エ ル サ レ ム に と ど ま っ た。 一三ダ ビ デ は 彼 を 招 い て
じぶん まえ く の かれ よ ゆうぐれ かれ で
自分の前で食い飲みさせ、彼を酔わせた。夕暮になって彼は出ていっ
ゆか しゅくん けらい とも ね じぶん いえ くだ
て、その床に、主君の家来たちと共に寝た。そして自分の家には下って

行かなかった。
あさ てがみ か て たく
一四 朝になってダビデはヨアブにあてた手紙を書き、ウリヤの手に託し
おく かれ てがみ はげ たたか
てそれを送った。 一五彼はその手紙に、
﹁あなたがたはウリヤを激しい戦
さいぜんせん だ かれ うしろ しりぞ かれ うちじに か
サムエル記下

いの最前線に出し、彼の後から退いて、彼を討死させよ﹂と書いた。 一六
まち かこ ゆうし し ば しょ
ヨアブは町を囲んでいたので、勇士たちがいると知っていた場所にウリ
お まち ひとびと で たたか たみ
ヤを置いた。 一七町の人々が出てきてヨアブと戦 ったので、民のうち、ダ

42
けらい たお し
ビデの家来たちにも、倒れるものがあり、ヘテびとウリヤも死んだ。 一八
ひと たたか つ
ヨアブは人をつかわして戦いのことをつぶさにダビデに告げた。 一九ヨ
し しゃ めい い たたか おう
アブはその使者に命じて言った、﹁あなたが戦いのことをつぶさに王に
かた おわ おう いか おこ たたか
語り終ったとき、 二〇もし王が怒りを起して、
﹃あなたがたはなぜ戦おう
まち ちか かれ じょうへき うえ い し
としてそんなに町に近づいたのか。彼らが城 壁の上から射るのを知ら
こ う
なかったのか。 二一エルベセテの子アビメレクを撃ったのはだれか。ひ
おんな じょうへき うえ いし うわいし な かれ ころ
とりの女が城 壁の上から石うすの上石を投げて彼をテベツで殺したの
じょうへき ちか
ではなかったか。あなたがたはなぜそんなに城 壁に近づいたのか﹄と
い とき
言われたならば、その時あなたは、
﹃あなたのしもべ、ヘテびとウリヤも
し い
また死にました﹄と言いなさい﹂。
し しゃ い い
二二 こうして使者は行き、ダビデのもとにきて、ヨアブが言いつかわした
つ し しゃ い てき
サムエル記下

ことをことごとく告げた。 二三使者はダビデに言った、
﹁敵はわれわれよ
ゆうり い ち し で の せ
りも有利な位置を占め、出てきてわれわれを野で攻めましたが、われわ
まち いりぐち かれ お かえ とき しゃしゅ じょうへき
れは町の入口まで彼らを追い返しました。 二四その時、射手どもは城 壁

43
けらい い おう けらい もの し
からあなたの家来たちを射ましたので、王の家来のある者は死に、また、
けらい し し しゃ い
あ な た の 家来 ヘ テ び と ウ リ ヤ も 死 に ま し た﹂。 二五ダ ビ デ は 使者 に 言 っ
い こと しんぱい
た、﹁あなたはヨアブにこう言いなさい、﹃この事で心配することはない。
かれ おな ほろ つよ まち せ たたか
つるぎはこれをも彼をも同じく滅ぼすからである。強く町を攻めて戦
せ おと はげ
い、それを攻め落しなさい﹄と。そしてヨアブを励ましなさい﹂。
つま おっと し き おっと かな
二六 ウリヤの妻は夫 ウリヤが死んだことを聞いて、 夫のために悲しん
も す とき ひと かのじょ じぶん いえ
だ。 二七その喪が過ぎた時、ダビデは人をつかわして彼女を自分の家に
め い かのじょ かれ つま おとこ こ う
召し入れた。彼女は彼の妻となって男の子を産んだ。しかしダビデが
こと しゅ いか
したこの事は主を怒らせた。
第一二章
サムエル記下

しゅ かれ ところ い
一主はナタンをダビデにつかわされたので、彼はダビデの所にきて言っ
まち ひと と まず
た、﹁ある町にふたりの人があって、ひとりは富み、ひとりは貧しかった。

44
と ひと ひじょう おお ひつじ うし も まず ひと
二富 ん で い る 人 は 非常 に 多 く の 羊 と 牛 を 持 っ て い た が、 三貧 し い 人 は
じぶん か とう ちい めす こひつじ なに も
自分 が 買 っ た 一 頭 の 小 さ い 雌 の 小羊 の ほ か は 何 も 持 っ て い な か っ た。
かれ そだ こひつじ かれ かれ こども とも せいちょう
彼がそれを育てたので、その小羊は彼および彼の子供たちと共に成 長
かれ しょくもつ た かれ の かれ ね かれ
し、彼の食 物を食べ、彼のわんから飲み、彼のふところで寝て、彼にとっ
むすめ とき たび と ひと
ては娘のようであった。 四時に、ひとりの旅びとが、その富んでいる人
じぶん ひつじ うし とう と じぶん ところ
のもとにきたが、自分の羊または牛のうちから一頭を取って、自分の所
たび ちょうり お まず ひと こひつじ
にきた旅びとのために調理することを惜しみ、その貧しい人の小羊を
と じぶん ところ ひと ちょうり
取って、これを自分の所にきた人のために調理した﹂。 五ダビデはその
ひと こと いか い しゅ い
人の事をひじょうに怒ってナタンに言った、﹁主は生きておられる。こ
こと ひと し ひと こと
の 事 を し た そ の 人 は 死 ぬ べ き で あ る。 六か つ そ の 人 は こ の 事 を し た た
こひつじ ばい つぐな
め、またあわれまなかったため、その小羊を四倍にして償わなければな
サムエル記下

らない﹂。
い ひと かみ しゅ
七ナタンはダビデに言った、
﹁あなたがその人です。イスラエルの神、主
おお あぶら そそ おう
はこう仰せられる、﹃わたしはあなたに油を注いでイスラエルの王とし、

45
て すく しゅじん いえ あた しゅじん
あなたをサウルの手から救いだし、 八あなたに主人の家を与え、主人の
つま あた いえ
妻たちをあなたのふところに与え、またイスラエルとユダの家をあなた
あた すく おお
に与えた。もし少なかったならば、わたしはもっと多くのものをあなた
ま くわ しゅ ことば かろ め
に増し加えたであろう。 九どうしてあなたは主の言葉を軽んじ、その目
まえ あくじ
の前に悪事をおこなったのですか。あなたはつるぎをもってヘテびと
ころ つま じぶん つま
ウリヤを殺し、その妻をとって自分の妻とした。すなわちアンモンの
ひとびと かれ ころ かろ
人々のつるぎをもって彼を殺した。 一〇あなたがわたしを軽んじてヘテ
つま じぶん つま
びとウリヤの妻をとり、自分の妻としたので、つるぎはいつまでもあな
いえ はな しゅ おお み
たの家を離れないであろう﹄。 一一主はこう仰せられる、
﹃見よ、わたしは
いえ うえ わざわい おこ め
あなたの家からあなたの上に災を起すであろう。わたしはあなたの目
まえ つま と となり あた ひと
の前であなたの妻たちを取って、 隣びとに与えるであろう。その人は
たいよう まえ つま いっしょ ね
サムエル記下

この太陽の前で妻たちと一緒に寝るであろう。 一二あなたはひそかにそ
ぜん まえ たいよう まえ こと
れをしたが、わたしは全イスラエルの前と、太陽の前にこの事をするの
い しゅ つみ
である﹄﹂。 一三ダビデはナタンに言った、
﹁わたしは主に罪をおかしまし

46
い しゅ つみ のぞ
た﹂。ナタンはダビデに言った、﹁主もまたあなたの罪を除かれました。
し おこな
あなたは死ぬことはないでしょう。 一四しかしあなたはこの行いによっ
おお しゅ あなど うま こども し
て大いに主を侮 ったので、あなたに生れる子供はかならず死ぬでしょ
いえ かえ
う﹂。 一五こうしてナタンは家に帰った。
しゅ つま う こ う びょうき
さて主は、ウリヤの妻がダビデに産んだ子を撃たれたので、病気になっ
こ かみ たんがん だんじき
た。 一六ダビデはその子のために神に嘆願した。すなわちダビデは断食
しゅうや ち ふ いえ ちょうろう かれ
して、へやにはいり終夜地に伏した。 一七ダビデの家の長 老たちは、彼の
た かれ ち おこ かれ お
かたわらに立って彼を地から起そうとしたが、彼は起きようとはせず、
かれ いっしょ しょくじ なぬか め こ し
また彼らと一緒に食事をしなかった。 一八七日目にその子は死んだ。ダ
けらい こ し つ おそ
ビ デ の 家来 た ち は そ の 子 が 死 ん だ こ と を ダ ビ デ に 告 げ る の を 恐 れ た。
かれ み こ い あいだ かれ かた
それは彼らが、
﹁見よ、子のなお生きている間に、われわれが彼に語った
かれ ことば き かれ こ し
サムエル記下

のに彼はその言葉を聞きいれなかった。どうして彼にその子の死んだ
つ かれ みずか がい し
ことを告げることができようか。彼は自らを害するかも知れない﹂と
おも けらい たがい あ
思ったからである。 一九しかしダビデは、家来たちが互にささやき合う

47
み こ し さと けらい い こ し
のを見て、その子の死んだのを悟り、家来たちに言った、
﹁子は死んだの
かれ い し ち お
か﹂。彼らは言った、
﹁死なれました﹂。 二〇そこで、ダビデは地から起き
あ み あら あぶら きもの か しゅ いえ はい
上がり、身を洗い、 油をぬり、その着物を替えて、主の家にはいって拝
じぶん いえ い もと じぶん しょくもつ そな
した。そののち自分の家に行き、求めて自分のために食 物を備えさせ
た けらい かれ い こと
て食べた。 二一家来たちは彼に言った、
﹁あなたのなさったこの事はなん
こ い あいだ こ だんじき な
でしょうか。あなたは子の生きている間はその子のために断食して泣
こ し お しょくじ
かれました。しかし子が死ぬと、あなたは起きて食事をなさいました﹂。
い こ い あいだ だんじき な
二二 ダビデは言った、
﹁子の生きている間に、わたしが断食して泣いたの
しゅ こ い し
は、﹃主がわたしをあわれんで、この子を生かしてくださるかも知れな
おも いま し
い﹄と思ったからです。 二三しかし今は死んだので、わたしはどうして
だんじき ふたた かれ
断食しなければならないでしょうか。わたしは再び彼をかえらせるこ
かれ ところ い かれ ところ
サムエル記下

とができますか。わたしは彼の所に行くでしょうが、彼はわたしの所に
かえ
帰ってこないでしょう﹂。
つま なぐさ かのじょ ところ かのじょ とも ね
二四 ダビデは妻バテシバを慰め、彼女の所にはいって、彼女と共に寝たの

48
かのじょ おとこ こ う な な しゅ
で、彼女は男の子を産んだ。ダビデはその名をソロモンと名づけた。主
あい よげんしゃ めい な
はこれを愛された。 二五そして預言者ナタンをつかわし、命じてその名

をエデデアと呼ばせられた。
ひとびと せ おう まち と
二六 さ て ヨ ア ブ は ア ン モ ン の 人々 の ラ バ を 攻 め て 王 の 町 を 取 っ た。 二七
し しゃ い せ みず
ヨアブは使者をダビデにつかわして言った、﹁わたしはラバを攻めて水
まち と いま のこ たみ あつ まち む
の町を取りました。 二八あなたは今、残りの民を集め、この町に向かって
じん と まち と ひと
陣をしき、これを取りなさい。わたしがこの町を取って、人がわたしの
な よ
名をもって、これを呼ぶようにならないためです﹂。 二九そこでダビデは
たみ あつ い せ と
民をことごとく集めてラバへ行き、攻めてこれを取った。 三〇そしてダ
かれ おう かんむり あたま と きん おも
ビデは彼らの王の冠をその頭から取りはなした。それは金で重さは一
ほうせき あたま お
タラントであった。宝石がはめてあり、それをダビデの頭に置いた。ダ
まち もの ひじょう おお も だ
サムエル記下

ビデはその町からぶんどり物を非常に多く持ち出した。 三一またダビデ
たみ ひ だ かれ てつ てつ
はそのうちの民を引き出して、彼らをのこぎりや、鉄のつるはし、鉄の
つか しごと つく ろうえき かれ
おのを使う仕事につかせ、また、れんが造りの労役につかせた。彼はア

49
ひとびと まち たみ
ンモンの人々のすべての町にこのようにした。そしてダビデと民とは
みな かえ
皆エルサレムに帰った。
第一三章
こ な うつく いもうと
一さてダビデの子アブサロムには名をタマルという美しい妹があった
のち こ こい いもうと
が、その後ダビデの子アムノンはこれを恋した。 二アムノンは妹 タマ
なや しょじょ
ルのために悩んでついにわずらった。それはタマルが処女であって、ア
かのじょ なにごと おも
ム ノ ン は 彼女 に 何事 も す る こ と が で き な い と 思 っ た か ら で あ る。 三と
とも な
ころがアムノンにはひとりの友だちがあった。名をヨナダブといい、ダ
きょうだい こ かしこ ひと
ビ デ の 兄 弟 シ メ ア の 子 で あ る。ヨ ナ ダ ブ は ひ じ ょ う に 賢 い 人 で あ っ
サムエル記下

かれ い おうじ あさ
た。 四彼はアムノンに言った、
﹁王子よ、あなたは、どうして朝ごとに、
おとろ はな
そんなにやせ衰えるのですか。わたしに話さないのですか﹂。アムノン
かれ い きょうだい いもうと こい
は彼に言った、﹁わたしは兄 弟 アブサロムの妹 タマルを恋しているの

50
かれ い やまい いつわ ねどこ よこ
です﹂。 五ヨナダブは彼に言った、
﹁あなたは病と偽り、寝床に横たわっ
ちち み かれ い
て、あなたの父がきてあなたを見るとき彼に言いなさい、
﹃どうぞ、わた
いもうと ところ しょくもつ はこ
しの妹 タマルをこさせ、わたしの所に食 物を運ばせてください。そし
かのじょ め まえ しょくもつ かのじょ て た
て彼女がわたしの目の前で食 物をととのえ、彼女の手からわたしが食
よこ
べ る こ と の で き る よ う に さ せ て く だ さ い﹄﹂。 六そ こ で ア ム ノ ン は 横 に
やまい いつわ おう かれ み とき おう い
なって病と偽 ったが、王がきて彼を見た時、アムノンは王に言った、
﹁ど
いもうと め まえ か し つく
うぞわたしの妹 タマルをこさせ、わたしの目の前で二つの菓子を作ら
かのじょ て た
せて、彼女の手からわたしが食べることのできるようにしてください﹂。
いえ ひと い あに
七ダビデはタマルの家に人をつかわして言わせた、﹁あなたの兄アムノ
いえ い かれ しょくもつ
ンの家へ行って、彼のために食 物をととのえなさい﹂。 八そこでタマル
あに いえ い ね
はその兄アムノンの家へ行ったところ、アムノンは寝ていた。タマルは
こな と かれ め まえ か し つく か し や
サムエル記下

粉を取って、これをこね、彼の目の前で、菓子を作り、その菓子を焼き、
と かれ まえ かれ た こば
九なべを取って彼の前にそれをあけた。しかし彼は食べることを拒ん
はな で い
だ。そしてアムノンは、
﹁みな、わたしを離れて出てください﹂と言った

51
みな かれ はな で い しょくもつ しんしつ
ので、皆、彼を離れて出た。 一〇アムノンはタマルに言った、﹁食 物を寝室
も て た
に持ってきてください。わたしはあなたの手から食べます﹂。そこでタ
じぶん つく か し しんしつ あに ところ も
マルは自分の作った菓子をとって、寝室にはいり兄アムノンの所へ持っ
かれ た ちか も い
て い っ た。 一一タ マ ル が 彼 に 食 べ さ せ よ う と し て 近 く に 持 っ て 行 っ た
とき かれ とら かのじょ い いもうと き ね
時、彼はタマルを捕えて彼女に言った、﹁妹よ、来て、わたしと寝なさい﹂。
い あにうえ
一二タマルは言った、
﹁いいえ、兄上よ、わたしをはずかしめてはなりま
おこな おろ
せん。このようなことはイスラエルでは行われません。この愚かなこ
はじ も い
とをしてはなりません。 一三わたしの恥をわたしはどこへ持って行くこ
おろ もの
と が で き ま し ょ う。あ な た は イ ス ラ エ ル の 愚 か 者 の ひ と り と な る で
おう はな おう
しょう。それゆえ、どうぞ王に話してください。王がわたしをあなたに
あた かのじょ い
与 え な い こ と は な い で し ょ う﹂。 一四し か し ア ム ノ ン は 彼女 の 言 う こ と
き つよ
サムエル記下

を聞こうともせず、タマルよりも強かったので、タマルをはずかしめて
とも ね
これと共に寝た。
ふか にく
一五 それからアムノンは、ひじょうに深くタマルを憎むようになった。

52
かのじょ にく にく かのじょ こい こい おお
彼女を憎む憎しみは、彼女を恋した恋よりも大きかった。アムノンは
かのじょ い た い い
彼女に言った、
﹁立って、行きなさい﹂。 一六タマルはアムノンに言った、
あにうえ かえ
﹁いいえ、兄上よ、わたしを返すことは、あなたがさきにわたしになさっ
こと おお あく かのじょ い き
た事よりも大きい悪です﹂。しかしアムノンは彼女の言うことを聞こう
かれ つか わかもの よ い おんな
ともせず、 一七彼に仕えている若者を呼んで言った、
﹁この女をわたしの
ところ そと だ と と とき
所から外におくり出し、そのあとに戸を閉ざすがよい﹂。 一八この時、タ
なが きもの き むかし おう ひめ しょじょ もの
マルは長そでの着物を着ていた。 昔、王の姫たちの処女である者はこ
きもの き かのじょ そと だ
のような着物を着たからである。アムノンのしもべは彼女を外に出し
と と はい あたま き なが
て、そのあとに戸を閉ざした。 一九タマルは灰を頭にかぶり、着ていた長
きもの さ て あたま さけ さ い
そでの着物を裂き、手を頭にのせて、叫びながら去って行った。
あに かのじょ い あに いっしょ
二〇兄アブサロムは彼女に言った、
﹁兄アムノンがあなたと一緒にいたの
いもうと いま だま かれ あに こと
サムエル記下

か。しかし妹よ、今は黙っていなさい。彼はあなたの兄です。この事を
こころ あに いえ さび
心にとめなくてよろしい﹂。こうしてタマルは兄アブサロムの家に寂し
す おう こと き
く住んでいた。 二一ダビデ王はこれらの事をことごとく聞いて、ひじょ

53
いか よ わる かた
うに怒った。 二二アブサロムはアムノンに良いことも悪いことも語るこ
いもうと
とをしなかった。それはアムノンがアブサロムの妹 タマルをはずかし
かれ にく
めたので、アブサロムが彼を憎んでいたからである。
まん ねん のち ちか
二三 満二年の後、アブサロムはエフライムの近くにあるバアル・ハゾルで
ひつじ け き とき おう こ まね
羊の毛を切らせていた時、王の子たちをことごとく招いた。 二四そして
おう い み ひつじ け き
アブサロムは王のもとにきて言った、﹁見よ、しもべは羊の毛を切らせて
おう おう けらい とも
おります。どうぞ王も王の家来たちも、しもべと共にきてください﹂。 二
おう い こ みな い
五王はアブサロムに言った、
﹁いいえ、わが子よ、われわれが皆行っては
おもに
ならない。あなたの重荷になるといけないから﹂。アブサロムはダビデ
ねが い しょうち かれ しゅくふく あた
にしいて願った。しかしダビデは行くことを承知せず彼に祝 福を与え
い あに
た。 二六そこでアブサロムは言った、
﹁それでは、どうぞわたしの兄アム
とも い おう かれ い
サムエル記下

ノンをわれわれと共に行かせてください﹂。王は彼に言った、﹁どうして
かれ とも い
彼があなたと共に行かなければならないのか﹂。 二七しかしアブサロム
かれ ねが おう こ みな
は彼にしいて願ったので、ついにアムノンと王の子たちを皆、アブサロ

54
とも い わかもの めい い
ム と 共 に 行 か せ た。 二八そ こ で ア ブ サ ロ ム は 若者 た ち に 命 じ て 言 っ た、
さけ の こころたの とき み
﹁アムノンが酒を飲んで、 心 楽しくなった時を見すまし、わたしがあな
う い とき かれ ころ おそ
たがたに、
﹃アムノンを撃て﹄と言う時、彼を殺しなさい。恐れることは
めい お お いさ
ない。わたしが命じるのではないか。雄々しくしなさい。勇ましくし
わかもの めい
な さ い﹂。 二九ア ブ サ ロ ム の 若者 た ち は ア ブ サ ロ ム の 命 じ た よ う に ア ム
おう こ みな た ら ば
ノンにおこなったので、王の子たちは皆立って、おのおのその騾馬に
の に
乗って逃げた。
かれ つ おう こ
三〇 彼らがまだ着かないうちに、
﹁アブサロムは王の子たちをことごとく
ころ のこ もの し たっ
殺して、ひとりも残っている者がない﹂という知らせがダビデに達した
おう た きもの さ ち ふ
ので、 三一王は立ち、その着物を裂いて、地に伏した。そのかたわらに
た けらい みな きもの さ きょうだい
立 っ て い た 家来 た ち も 皆 そ の 着物 を 裂 い た。 三二し か し ダ ビ デ の 兄 弟
こ い しゅ おう こ わかもの
サムエル記下

シメアの子ヨナダブは言った、﹁わが主よ、王の子たちである若者たちが
ころ かんが し
みな殺されたと、お考えになってはなりません。アムノンだけが死んだ
かれ いもうと ひ
のです。これは彼がアブサロムの妹 タマルをはずかしめた日から、ア

55
いのち さだ
ブサロムの命によって定められていたことなのです。 三三それゆえ、わ
しゅ おう おう こ みな し おも こと こころ
が主、王よ、王の子たちが皆死んだと思って、この事を心にとめられて

はなりません。アムノンだけが死んだのです﹂。
とき み は わかもの め み
三四 アブサロムはのがれた。時に見張りをしていた若者が目をあげて見
やま みち おお たみ く み
ると、山のかたわらのホロナイムの道から多くの民の来るのが見えた。
おう い み おう こ
三五 ヨナダブは王に言った、﹁見よ、王の子たちがきました。しもべの
い かれ かた おわ とき おう こ こえ
言ったとおりです﹂。 三六彼が語ることを終った時、王の子たちはきて声
な おう けらい みな ひじょう な
をあげて泣いた。王もその家来たちも皆、非常にはげしく泣いた。
おう こ
三七 しかしアブサロムはのがれて、ゲシュルの王アミホデの子タルマイ
い ひ び こ かな
のもとに行った。ダビデは日々その子のために悲しんだ。 三八アブサロ
い ねん あいだ おう こころ
ムはのがれてゲシュルに行き、三年の間そこにいた。 三九王は心に、アブ
あ のぞ し
サムエル記下

サロムに会うことを、せつに望んだ。アムノンは死んでしまい、ダビデ
かれ
が彼のことはあきらめていたからである。

56
第一四章
こ おう こころ む し
ゼルヤの子ヨアブは王の心がアブサロムに向かっているのを知った。

ひと かしこ おんな
そこでヨアブはテコアに人をつかわして、そこからひとりの賢い女を

つ おんな い かな ひと
連れてこさせ、その女に言った、﹁あなたは悲しみのうちにある人をよそ
もふく き あぶら み ぬ し ひと なが かな
おって、喪服を着、 油を身に塗らず、死んだ人のために長いあいだ悲し
おんな おう い かれ
んでいる女のように、よそおって、 三王のもとに行き、しかじかと彼に
かた ことば かのじょ くち さづ
語りなさい﹂。こうしてヨアブはその言葉を彼女の口に授けた。
おんな おう い ち ふ はい おう たす
テコアの女は王のもとに行き、地に伏して拝し、
四 ﹁王よ、お助けくださ
い おう おんな い おんな い
い﹂と言った。 五王は女に言った、
﹁どうしたのか﹂。 女は言った、
﹁まこ
か ふ おっと し
とにわたしは寡婦でありまして、夫は死にました。 六つかえめにはふた
こ の あらそ かれ ひ わ
サムエル記下

りの子どもがあり、ふたりは野で争いましたが、だれも彼らを引き分け
もの た もの う ころ
る者がなかったので、ひとりはついに他の者を撃って殺しました。 七す
ぜ ん か ぞく さか た きょうだい う ころ もの ひ わ
ると全家族がつかえめに逆らい立って、
﹃兄 弟を撃ち殺した者を引き渡

57
かれ ころ きょうだい いのち かれ ころ
た す が よ い。わ れ わ れ は 彼 が 殺 し た そ の 兄 弟 の 命 の た め に 彼 を 殺 そ
い かれ よつぎ ころ かれ のこ
う﹄と言い、彼らは世継をも殺そうとしました。こうして彼らは残って
すみび け おっと な あとつぎ ち
いるわたしの炭火を消して、わたしの夫の名をも、跡継をも、地のおも
てにとどめないようにしようとしています﹂。
おう おんな い いえ かえ
八王は女に言った、﹁家に帰りなさい。わたしはあなたのことについて
めいれい くだ おんな おう い しゅ おう
命令を下します﹂。 九テコアの女は王に言った、
﹁わが主、王よ、わたし
ちち いえ つみ き おう おう くらい
とわたしの父の家にその罪を帰してください。どうぞ王と王の位には
つみ おう い なに い もの
罪がありませんように﹂。 一〇王は言った、﹁もしあなたに何か言う者が
ところ つ ひと かさ
あれば、わたしの所に連れてきなさい。そうすれば、その人は重ねてあ
ふ おんな い おう
なたに触れることはないでしょう﹂。 一一 女は言った、﹁どうぞ王が、あな
かみ しゅ ち ほうふく もの かさ ほろ
たの神、主をおぼえて、血の報復をする者に重ねて滅ぼすことをさせず、
こ ころ おう い
サムエル記下

わたしの子の殺されることのないようにしてください﹂。王は言った、
しゅ い こ かみ け すじ ち お
﹁主は生きておられる。あなたの子の髪の毛一筋も地に落ちることはな
いでしょう﹂。

58
おんな い こと しゅ おう い
一二 女は言った、
﹁どうぞ、つかえめにひと言、わが主、王に言わせてく
い い おんな い
ださい﹂。ダビデは言った、
﹁言いなさい﹂。 一三 女は言った、
﹁あなたは、
かみ たみ む こと はか
それならばどうして、神の民に向かってこのような事を図られたのです
おう いま こと い じぶん つみ もの
か。王は今この事を言われたことによって自分を罪ある者とされてい
おう ついほう もの かえ
ます。それは王が追放された者を帰らせられないからです。 一四わたし
し ち みず ふたた あつ
たちはみな死ななければなりません。地にこぼれた水の再び集めるこ
おな かみ ついほう もの す
とのできないのと同じです。しかし神は、追放された者が捨てられない
もう ひと いのち と
ように、てだてを設ける人の命を取ることはなさいません。 一五わたし
こと おう しゅ い き たみ おそ
がこの事を王、わが主に言おうとして来たのは、わたしが民を恐れたか
おも おう もう あ おう
らです。つかえめは、こう思ったのです、
﹃王に申し上げよう。王は、は
ねが おう き
しための願いのようにしてくださるかもしれない。 一六王は聞いてくだ
こ とも ほろ かみ し ぎょう はな
サムエル記下

さる。わたしとわたしの子を共に滅ぼして神の嗣 業から離れさせよう
ひと て すく だ
とする人の手から、はしためを救い出してくださるのだから﹄。 一七つか
おも おう しゅ ことば あんしん
えめはまた、こう思ったのです、
﹃王、わが主の言葉はわたしを安心させ

59
おう しゅ かみ つかい ぜん あく き
るであろう﹄と。それは王、わが主は神の使のように善と悪を聞きわけ
かみ しゅ とも
られるからです。どうぞあなたの神、主があなたと共におられますよう
に﹂。
おう おんな こた い と かく こた
一八 王は女に答えて言った、﹁わたしが問うことに隠さず答えてくださ
おんな い おう しゅ い おう い
い﹂。 女は言った、﹁王、わが主よ、どうぞ言ってください﹂。 一九王は言っ
こと て とも
た、﹁このすべての事において、ヨアブの手があなたと共にありますか﹂。
おんな こた い おう しゅ
女は答えた、
﹁あなたはたしかに生きておられます。王、わが主よ、す
おう しゅ い こと ひと みぎ ひだり まが
べて王、わが主の言われた事から人は右にも左にも曲ることはできませ
めい かれ
ん。わたしに命じたのは、あなたのしもべヨアブです。彼がつかえめの
くち ことば さづ こと か
口に、これらの言葉をことごとく授けたのです。 二〇事のなりゆきを変
こと きみ かみ
えるため、あなたのしもべヨアブがこの事をしたのです。わが君には神
つかい ち え ち え ち うえ し
サムエル記下

の使の知恵のような知恵があって、地の上のすべてのことを知っておら
れます﹂。
おう い こと ゆる い わかもの
そこで王はヨアブに言った、
二一 ﹁この事を許す。行って、若者アブサロ

60
つ かえ ち ふ はい おう しゅくふく
ムを連れ帰るがよい﹂。 二二ヨアブは地にひれ伏して拝し、王を祝 福し
い しゅ おう おう ねが ゆる
た。そしてヨアブは言った、
﹁わが主、王よ、王がしもべの願いを許され
まえ めぐ え し
たので、きょうしもべは、あなたの前に恵みを得たことを知りました﹂。
た い
二三 そこでヨアブは立ってゲシュルに行き、アブサロムをエルサレムに
つ おう い かれ じぶん いえ ひ
連れてきた。 二四王は言った、﹁彼を自分の家に引きこもらせるがよい。
かお み じぶん いえ ひ
わたしの顔を見てはならない﹂。こうしてアブサロムは自分の家に引き
おう かお み
こもり、王の顔を見なかった。
ぜん うつく
二五 さて全イスラエルのうちにアブサロムのように、 美しさのためほめ
ひと あし うら あたま いただき かれ きず
られた人はなかった。その足の裏から頭の頂まで彼には傷がなかった。
あたま か とき かみ け おう
二六 アブサロムがその頭を刈る時、その髪の毛をはかったが、王のはかり
まいねん おわ か つね
で二百シケルあった。毎年の終りにそれを刈るのを常とした。それが
おも かれ か にん
サムエル記下

重くなると、彼はそれを刈ったのである。 二七アブサロムに三人のむす
な むすめ うま うつく おんな
こと、タマルという名のひとりの娘が生れた。タマルは美しい女であっ
た。

61
まん ねん あいだ す おう かお
二八 こうしてアブサロムは満二年の間 エルサレムに住んだが、王の顔を
み おう
見なかった。 二九そこでアブサロムはヨアブを王のもとにつかわそうと
ところ ひと かれ ところ
して、ヨアブの所に人をつかわしたが、ヨアブは彼の所にこようとはし
かれ ふたた ひと
なかった。彼は再び人をつかわしたがヨアブはこようとはしなかった。
けらい い はたけ はたけ
三〇 そこでアブサロムはその家来に言った、
﹁ヨアブの畑はわたしの畑の
となり おおむぎ い ひ はな
隣にあって、そこに大麦がある。行ってそれに火を放ちなさい﹂。アブ
けらい はたけ ひ はな た
サロムの家来たちはその畑に火を放った。 三一ヨアブは立ってアブサロ
いえ かれ い けらい はたけ
ムの家にきて彼に言った、﹁どうしてあなたの家来たちはわたしの畑に
ひ はな い
火を放ったのですか﹂。 三二アブサロムはヨアブに言った、﹁わたしはあ
ひと く い おう
なたに人をつかわして、ここへ来るようにと言ったのです。あなたを王
のもとにつかわし、﹃なんのためにわたしはゲシュルからきたのですか。
よ い
サムエル記下

なおあそこにいたならば良かったでしょうに﹄と言わせようとしたので
いま おう かお み つみ
す。それゆえ今わたしに王の顔を見させてください。もしわたしに罪
おう ころ おう
があるなら王にわたしを殺させてください﹂。 三三そこでヨアブは王の

62
い つ おう め かれ おう
もとへ行って告げたので、王はアブサロムを召しよせた。彼は王のもと
おう まえ ち ふ はい おう くち
にきて、王の前に地にひれ伏して拝した。王はアブサロムに口づけし
た。
第一五章
のち じぶん せんしゃ うま じぶん まえ か
一この後、アブサロムは自分のために戦車と馬、および自分の前に駆け
もの にん そな はや お もん みち
る 者 五 十 人 を 備 え た。 二ア ブ サ ロ ム は 早 く 起 き て 門 の 道 の か た わ ら に
た つね ひと うった おう さいばん もと く
立つのを常とした。人が訴えがあって王に裁判を求めに来ると、アブサ
ひと よ い まち もの ひと
ロムはその人を呼んで言った、﹁あなたはどの町の者ですか﹂。その人が
ぶぞく い
﹁しもべはイスラエルのこれこれの部族のものです﹂と言うと、三アブサ
サムエル記下

ひと い み ようきゅう よ ただ
ロムはその人に言った、
﹁見よ、あなたの要 求は良く、また正しい。し
き ひと おう た
かしあなたのことを聞くべき人は王がまだ立てていない﹂。 四アブサロ
い ち
ムはまた言った、﹁ああ、わたしがこの地のさばきびとであったならばよ

63
うった もうし た みな ところ
いのに。そうすれば訴え、または申 立てのあるものは、皆わたしの所に
こうへい おこな
きて、わたしはこれに公平なさばきを行うことができるのだが﹂。 五そ
ひと かれ けいれい ちか かれ て の ひと だ
して人が彼に敬礼しようとして近づくと、彼は手を伸べ、その人を抱き
くち おう もと く
か か え て 口 づ け し た。 六ア ブ サ ロ ム は 王 に さ ば き を 求 め て 来 る す べ て
のイスラエルびとにこのようにした。こうしてアブサロムはイスラエ
ひとびと こころ じぶん
ルの人々の心を自分のものとした。
ねん おわ おう い い
七そして四年の終りに、アブサロムは王に言った、
﹁どうぞわたしを行か
しゅ た ちか はた
せ、ヘブロンで、かつて主に立てた誓いを果させてください。 八それは、
とき ちか た しゅ
しもべがスリヤのゲシュルにいた時、誓いを立てて、﹃もし主がほんとう
つ かえ しゅ れいはい
にわたしをエルサレムに連れ帰ってくださるならば、わたしは主に礼拝
い おう かれ やす い
をささげます﹄と言ったからです﹂。 九王が彼に、
﹁安らかに行きなさい﹂
い かれ た い
サムエル記下

と言ったので、彼は立ってヘブロンへ行った。 一〇そしてアブサロムは
みっ し ぶぞく い
密使をイスラエルのすべての部族のうちにつかわして言った、﹁ラッパ
ひび き おう い
の響きを聞くならば、﹃アブサロムがヘブロンで王となった﹄と言いなさ

64
にん まね もの とも い
い﹂。 一一二百人の招かれた者がエルサレムからアブサロムと共に行っ
かれ なにこころ い なにごと し
た。彼 ら は 何 心 な く 行 き、何事 を も 知 ら な か っ た。 一二ア ブ サ ロ ム は
ぎせい あいだ ひと ぎ かん
犠牲をささげている間に人をつかわして、ダビデの議官ギロびとアヒト
まち よ よ ととう つよ たみ
ペルを、その町ギロから呼び寄せた。徒党は強く、民はしだいにアブサ
くわ
ロムに加わった。
し しゃ ひとびと こころ
一三ひとりの使者がダビデのところにきて、
﹁イスラエルの人々の心はア
したが い じぶん いっしょ
ブサロムに従いました﹂と言った。 一四ダビデは、自分と一緒にエルサレ
けらい い た に
ムにいるすべての家来に言った、﹁立て、われわれは逃げよう。そうしな
まえ いそ
ければアブサロムの前からのがれることはできなくなるであろう。急
い かれ いそ お がい
いで行くがよい。さもないと、彼らが急ぎ追いついて、われわれに害を
まち う おう
こうむらせ、つるぎをもって町を撃つであろう﹂。 一五王のしもべたちは
おう い しゅくん おう えら ところ おこな
サムエル記下

王に言った、
﹁しもべたちは、わが主君、王の選ばれる所をすべて行いま
おう で い ぜんか かれ したが おう にん
す﹂。 一六こうして王は出て行き、その全家は彼に従 った。王は十人のめ
のこ いえ まも おう で い たみ かれ したが
かけを残して家を守らせた。 一七王は出て行き、民はみな彼に従 った。

65
かれ まち いえ かれ みな かれ
彼らは町はずれの家にとどまった。 一八彼のしもべたちは皆、彼のかた
すす かれ
わらを進み、すべてのケレテびとと、すべてのペレテびと、および彼に
したが にん みな おう まえ すす
従 ってガテからきた六百人のガテびとは皆、王の前に進んだ。
とき おう い
一九時に王はガテびとイッタイに言った、
﹁どうしてあなたもまた、われ
とも い かえ おう とも
われと共に行くのですか。あなたは帰って王と共にいなさい。あなた
がいこくじん じぶん くに ついほう もの
は外国人で、また自分の国から追放された者だからです。 二〇あなたは、
き じぶん い ところ し い
きのう来たばかりです。わたしは自分の行く所を知らずに行くのに、ど
とも
うしてきょう、あなたを、われわれと共にさまよわせてよいでしょう。
かえ きょうだい つ かえ
あなたは帰りなさい。あなたの兄 弟たちも連れて帰りなさい。どうぞ
しゅ めぐ しんじつ しめ
主 が 恵 み と 真実 を あ な た に 示 し て く だ さ る よ う に﹂。 二一し か し イ ッ タ
おう こた しゅ い きみ おう い
イは王に答えた、
﹁主は生きておられる。わが君、王は生きておられる。
きみ おう ところ し い
サムエル記下

わが君、王のおられる所に、死ぬも生きるも、しもべもまたそこにおり
い すす い
ます﹂。 二二ダビデはイッタイに言った、
﹁では進んで行きなさい﹂。そこ
すす かれ じゅうしゃ かれ とも
でガテびとイッタイは進み、また彼のすべての従 者および彼と共にい

66
こ みな すす くにぢゅう おおごえ な たみ すす
た子どもたちも皆、進んだ。 二三国 中みな大声で泣いた。民はみな進ん
おう たに わた すす たみ みなすす あらの ほう む
だ。王もまたキデロンの谷を渡って進み、民は皆進んで荒野の方に向
かった。
のぼ み かれ とも
二四そしてアビヤタルも上ってきた。見よ、ザドクおよび彼と共にいる
かみ けいやく はこ かれ かみ はこ
すべてのレビびともまた、神の契約の箱をかいてきた。彼らは神の箱を
たみ まち で ま おう
おろして、民がことごとく町を出てしまうのを待った。 二五そこで王は
い かみ はこ まち しゅ
ザドクに言った、﹁神の箱を町にかきもどすがよい。もしわたしが主の
まえ めぐ え しゅ つ かえ はこ
前に恵みを得るならば、主はわたしを連れ帰って、わたしにその箱とそ
み しゅ
のすまいとを見させてくださるであろう。 二六しかしもし主が、
﹃わたし
よろこ い しゅ よ おも
はおまえを喜ばない﹄とそう言われるのであれば、どうぞ主が良しと思
わ れ る こ と を わ た し に し て く だ さ る よ う に。わ た し は こ こ に お り ま
おう さいし い み
サムエル記下

す﹂。 二七王はまた祭司ザドクに言った、
﹁見よ、あなたもアビヤタルも、
こ こ こ
ふたりの子たち、すなわちあなたの子アヒマアズとアビヤタルの子ヨナ
つ やす まち かえ
タンを連れて、安らかに町に帰りなさい。 二八わたしはあなたがたから

67
ことば し あらの わた ば
言葉があって知らせをうけるまで、荒野の渡し場にとどまります﹂。 二九
かみ はこ
そこでザドクとアビヤタルは神の箱をエルサレムにかきもどり、そこに
とどまった。
やま さかみち のぼ のぼ とき な あたま
三〇 ダビデはオリブ山の坂道を登ったが、登る時に泣き、その頭をおお
い かれ とも たみ あたま のぼ な
い、はだしで行った。彼と共にいる民もみな頭をおおって登り、泣きな
のぼ とき きょうぼう もの
がら登った。 三一時に、﹁アヒトペルがアブサロムと共 謀した者のうちに
つ ひと い しゅ
いる﹂とダビデに告げる人があったのでダビデは言った、
﹁主よ、どうぞ
けいりゃく おろ
アヒトペルの計 略を愚かなものにしてください﹂。
やま いただき かみ れいはい ば しょ とき み
三二 ダビデが山の頂にある神を礼拝する場所にきた時、見よ、アルキびと
うわぎ さ あたま つち き むか
ホシャイはその上着を裂き、 頭に土をかぶり、来てダビデを迎えた。 三
かれ い とも すす
ダビデは彼に言った、
三 ﹁もしあなたがわたしと共に進むならば、わたし
おもに まち かえ
サムエル記下

の重荷となるであろう。 三四しかしもしあなたが町に帰ってアブサロム
む おう
に向かい、﹃王よ、わたしはあなたのしもべとなります。わたしがこれま
ちち いま
で、あなたの父のしもべであったように、わたしは今あなたのしもべと

68
い けいりゃく
なります﹄と言うならば、あなたはわたしのためにアヒトペルの計 略を
やぶ さいし
破ることができるであろう。 三五祭司たち、ザドクとアビヤタルとは、あ
とも おう いえ き
なたと共にあそこにいるではないか。それゆえ、あなたは王の家から聞
さいし つ
くことをことごとく祭司たち、ザドクとアビヤタルとに告げなさい。 三六
かれ とも こ こ
あそこには彼らと共にそのふたりの子たち、すなわちザドクの子アヒマ
こ き
アズとアビヤタルの子ヨナタンとがいる。あなたがたは聞いたことを
かれ て つうほう
こ と ご と く 彼 ら の 手 に よ っ て わ た し に 通報 し な さ い﹂。 三七そ こ で ダ ビ
とも まち とき
デの友ホシャイは町にはいった。その時アブサロムはすでにエルサレ
ムにはいっていた。
第一六章
サムエル記下

やま いただき す い とき
一ダビデが山の頂を過ぎて、すこし行った時、メピボセテのしもべヂバ
お とう ひ うえ こ ほし
は、くらを置いた二頭のろばを引き、その上にパン二百個、干ぶどう百

69
なつ しゅ ふくろ の むか
ふさ、夏のくだもの一百、ぶどう酒一 袋を載せてきてダビデを迎えた。
おう い も
二王はヂバに言った、﹁あなたはどうしてこれらのものを持ってきたの
こた おう かぞく の なつ
ですか﹂。ヂバは答えた、
﹁ろばは王の家族が乗るため、パンと夏のくだ
わかもの た しゅ あらの よわ もの の
ものは若者たちが食べるため、ぶどう酒は荒野で弱った者が飲むためで
おう い しゅじん こ
す﹂。 三王は言った、﹁あなたの主人の子はどこにおるのですか﹂。ヂバ
おう い かれ
は王に言った、
﹁エルサレムにとどまっています。彼は、
﹃イスラエルの
いえ ちち くに かえ おも
家はきょう、わたしの父の国をわたしに返すであろう﹄と思ったので
おう い み
す﹂。 四王はヂバに言った、
﹁見よ、メピボセテのものはことごとくあな
い けいい あらわ しゅ おう
たのものです﹂。ヂバは言った、
﹁わたしは敬意を表します。わが主、王
まえ めぐ え
よ、あなたの前にいつまでも恵みを得させてください﹂。
おう とき いえ いちぞく もの
五ダビデ王がバホリムにきた時、サウルの家の一族の者がひとりそこか
で な こ かれ で
サムエル記下

ら出てきた。その名をシメイといい、ゲラの子である。彼は出てきなが
た かれ おう けらい
ら 絶 え ず の ろ っ た。 六そ し て 彼 は ダ ビ デ と ダ ビ デ 王 の も ろ も ろ の 家来
む いし な とき たみ ゆうし おう さゆう
に向かって石を投げた。その時、民と勇士たちはみな王の左右にいた。

70
とき い ち なが ひと ひと た
シメイはのろう時にこう言った、
七 ﹁血を流す人よ、よこしまな人よ、立
さ た さ かわ おう いえ ち
ち去れ、立ち去れ。 八あなたが代って王となったサウルの家の血をすべ
しゅ むく しゅ おうこく こ
て主があなたに報いられたのだ。主は王国をあなたの子アブサロムの
て わた み ち なが ひと わざわい あ
手に渡された。見よ、あなたは血を流す人だから、 災に会うのだ﹂。
とき こ おう い し いぬ
時にゼルヤの子アビシャイは王に言った、﹁この死んだ犬がどうして

しゅ おう い かれ くび と
わが主、王をのろってよかろうか。わたしに、行って彼の首を取らせて
おう い こ
ください﹂。 一〇しかし王は言った、
﹁ゼルヤの子たちよ、あなたがたと、
かれ しゅ かれ
なんのかかわりがあるのか。彼がのろうのは、主が彼に、﹃ダビデをのろ

え﹄と言われたからであるならば、だれが、
﹃あなたはどうしてこういう

ことをするのか﹄と言ってよいであろうか﹂。 一一ダビデはまたアビシャ
じぶん けらい い み で こ
イと自分のすべての家来とに言った、﹁わたしの身から出たわが子がわ
いのち もと いま
サムエル記下

たしの命を求めている。今、このベニヤミンびととしてはなおさらだ。
かれ ゆる しゅ かれ めい しゅ
彼を許してのろわせておきなさい。主が彼に命じられたのだ。 一二主は
なや かえり しゅ かれ
わたしの悩みを顧みてくださるかもしれない。また主はきょう彼のの

71
ぜん むく し
ろいにかえて、わたしに善を報いてくださるかも知れない﹂。 一三こうし
じゅうしゃ みち い なら
てダビデとその従 者たちとは道を行ったが、シメイはダビデに並んで
む やま ちゅうふく い い かれ む いし
向かいの山の中 腹を行き、行きながらのろい、また彼に向かって石や、
な おう とも たみ つか つ
ちりを投げつけた。 一四王および共にいる民はみな疲れてヨルダンに着
かれ ところ いき
き、彼はその所で息をついだ。
たみ ひとびと
一五 さてアブサロムとすべての民、イスラエルの人々はエルサレムにき
とも とも
た。アヒトペルもアブサロムと共にいた。 一六ダビデの友であるアルキ
とき
びとホシャイがアブサロムのもとにきた時、ホシャイはアブサロムに
おうばんざい おうばんざい い い
﹁王万歳、王万歳﹂と言った。 一七アブサロムはホシャイに言った、
﹁これ
とも しめ しんじつ とも
はあなたがその友に示す真実なのか。あなたはどうしてあなたの友と
いっしょ い い
一緒に行かなかったのか﹂。 一八ホシャイはアブサロムに言った、﹁いい
しゅ たみ ひとびと えら もの ぞく
サムエル記下

え、主とこの民とイスラエルのすべての人々が選んだ者にわたしは属
ひと いっしょ つか
し、かつその人と一緒におります。 一九かつまたわたしはだれに仕える
こ まえ つか ちち
べきですか。その子の前に仕えるべきではありませんか。あなたの父

72
まえ つか まえ つか
の前に仕えたように、わたしはあなたの前に仕えます﹂。

二〇そこでアブサロムはアヒトペルに言った、
﹁あなたがたは、われわれ
はか の
がどうしたらよいのか、計りごとを述べなさい﹂。 二一アヒトペルはアブ
い ちち いえ まも のこ
サロムに言った、﹁あなたの父が家を守るために残された、めかけたちの
ところ みな ちちうえ にく
所にはいりなさい。そうすればイスラエルは皆あなたが父上に憎まれ
き いっしょ もの て つよ
ることを聞くでしょう。そしてあなたと一緒にいる者の手は強くなる
かれ おくじょう てんまく は
でしょう﹂。 二二こうして彼らがアブサロムのために屋 上に天幕を張っ
ぜん め まえ ちち ところ
たので、アブサロムは全イスラエルの目の前で父のめかけたちの所には
さづ はか ひと かみ つ
いった。 二三そのころアヒトペルが授ける計りごとは人が神のみ告げを
うかが はか みな
伺うようであった。アヒトペルの計りごとは皆ダビデにもアブサロム
とも おも
にも共にそのように思われた。
サムエル記下

73
第一七章
とき い ひと えら
時にアヒトペルはアブサロムに言った、﹁わたしに一万二千の人を選

だ た こんや お かれ
び出させてください。わたしは立って、今夜ダビデのあとを追い、 二彼
つか て よわ おそ かれ
が疲れて手が弱くなっているところを襲って、彼をあわてさせましょ
かれ とも たみ に おう う
う。そして彼と共にいる民がみな逃げるとき、わたしは王ひとりを撃ち
と たみ はなよめ おっと かえ かえ
取り、 三すべての民を花嫁がその夫のもとに帰るようにあなたに帰らせ
もと いのち
ましょう。あなたが求めておられるのはただひとりの命だけですから、
たみ おだ ことば
民はみな穏やかになるでしょう﹂。 四この言葉はアブサロムとイスラエ
ちょうろう こころ
ルのすべての長 老の心にかなった。
い よ
そこでアブサロムは言った、﹁アルキびとホシャイをも呼びよせなさ

かれ い き
サムエル記下

い。われわれは彼の言うことを聞きましょう﹂。 六ホシャイがアブサロ
とき かれ い
ムのもとにきた時、アブサロムは彼に言った、﹁アヒトペルはこのように
い かれ ことば おこな
言った。われわれは彼の言葉のように行うべきか。いけないのであれ

74
い い
ば、言いなさい﹂。 七ホシャイはアブサロムに言った、
﹁このたびアヒト
さづ はか よ い
ペ ル が 授 け た 計 り ご と は 良 く あ り ま せ ん﹂。 八ホ シ ャ イ は ま た 言 っ た、
ちち じゅうしゃ ゆうし うえ
﹁ごぞんじのように、あなたの父とその従 者たちとは勇士です。その上
かれ の こ うば くま いか
彼らは、野で子を奪われた熊のように、ひどく怒っています。また、あ
ちち たみ とも やど かれ いま
なたの父はいくさびとですから、民と共に宿らないでしょう。 九彼は今
あな なか ところ たみ いくひと
でも穴の中か、どこかほかの所にかくれています。もし民のうちの幾人
てはじ たお き もの したが
かが手始めに倒れるならば、それを聞く者はだれでも、﹃アブサロムに従
たみ せんししゃ い
う民のうちに戦死者があった﹄と言うでしょう。 一〇そうすれば、ししの
こころ こころ いさ ひと おそ き さ
心のような心のある勇ましい人であっても、恐れて消え去ってしまうで
ひと ちち ゆうし
しょう。それはイスラエルのすべての人が、あなたの父の勇士であるこ
かれ とも もの いさ ひとびと し
と、また彼と共にいる者が、勇ましい人々であることを知っているから
はか
サムエル記下

です。 一一ところでわたしの計りごとは、イスラエルをダンからベエル
うみ すな おお あつ
シバまで、海べの砂のように多くあなたのもとに集めて、あなたみずか
たたか のぞ かれ み ば しょ かれ
ら戦いに臨むことです。 一二こうしてわれわれは彼の見つかる場所で彼

75
おそ ち かれ うえ くだ かれ かれ とも
を襲い、つゆが地におりるように彼の上に下る。そして彼および彼と共
ひと のこ かれ
にいるすべての人をひとりも残さないでしょう。 一三もし彼がいずれか
まち しりぞ ぜん まち
の町に退くならば、全イスラエルはその町になわをかけ、われわれはそ
たに ひ たお こいし み
れを谷に引き倒して、そこに一つの小石も見られないようにするでしょ
ひとびと
う﹂。 一四アブサロムとイスラエルの人々はみな、﹁アルキびとホシャイ
はか はか い しゅ
の計りごとは、アヒトペルの計りごとよりもよい﹂と言った。それは主
わざわい くだ よ はか やぶ
がアブサロムに災を下そうとして、アヒトペルの良い計りごとを破るこ
さだ
とを定められたからである。
さいし い
そこでホシャイは祭司たち、ザドクとアビヤタルとに言った、
一五 ﹁アヒ
ちょうろう はか
トペルはアブサロムとイスラエルの長 老たちのためにこういう計りご
はか
とをした。またわたしはこういう計りごとをした。 一六それゆえ、あな
ひと つ こんや あらの わた ば
サムエル記下

たがたはすみやかに人をつかわしてダビデに告げ、﹃今夜、荒野の渡し場
やど かなら わた い おう とも
に宿らないで、 必ず渡って行きなさい。さもないと王および共にいる
たみ ほろ い とき
民はみな、滅ぼされるでしょう﹄と言いなさい﹂。 一七時に、ヨナタンと

76
ま い かれ
アヒマアズはエンロゲルで待っていた。ひとりのつかえめが行って彼
つ かれ い おう つ つね かれ
らに告げ、彼らは行ってダビデ王に告げるのが常であった。それは彼ら
まち み
が町にはいるのを見られないようにするためである。 一八ところがひと
わかもの かれ み つ かれ いそ さ
りの若者が彼らを見てアブサロムに告げたので、彼らふたりは急いで去
ひと いえ ひと にわ い ど
り、バホリムの、あるひとりの人の家にきた。その人の庭に井戸があっ
かれ なか くだ おんな と い ど くち
て、彼らはその中に下ったので、 一九 女はおおいを取ってきて井戸の口
うえ むぎ うえ ち こと なに し
の上にひろげ、麦をその上にまき散らした。それゆえその事は何も知れ
おんな いえ い
なかった。 二〇アブサロムのしもべたちはその女の家にきて言った、
﹁ア
おんな かれ い
ヒ マ ア ズ と ヨ ナ タ ン は ど こ に い ま す か﹂。 女 は 彼 ら に 言 っ た、﹁あ の
ひとびと おがわ わた い かれ たず みあた
人々は小川を渡って行きました﹂。彼らは尋ねたが見当らなかったので
かえ
エルサレムに帰った。
かれ さ のち ひとびと い ど のぼ い おう つ
サムエル記下

二一彼らが去った後、人々は井戸から上り、行ってダビデ王に告げた。す
かれ い た かわ わた
なわち彼らはダビデに言った、﹁立って、すみやかに川を渡りなさい。ア
たい はか
ヒトペルがあなたがたに対してこういう計りごとをしたからです﹂。 二二

77
た とも たみ いっしょ わた
そこでダビデは立って、共にいるすべての民と一緒にヨルダンを渡っ
よ あ わた もの
た。夜明けには、ヨルダンを渡らない者はひとりもなかった。
じぶん はか おこな み
二三 アヒトペルは、自分の計りごとが行われないのを見て、ろばにくらを
お た じぶん まち い いえ かえ いえ ひと ゆいごん
置き、立って自分の町に行き、その家に帰った。そして家の人に遺言し
し ちち はか ほうむ
てみずからくびれて死に、その父の墓に葬られた。
じぶん とも
二四 ダビデはマハナイムにきた。またアブサロムは自分と共にいるイス
ひとびと いっしょ わた
ラエルのすべての人々と一緒にヨルダンを渡った。 二五アブサロムはア
かわ ぐん ちょう むすめ
マサをヨアブの代りに軍の長とした。アマサはかのナハシの娘でヨア
はは いもうと な
ブの母ゼルヤの妹であるアビガルをめとったイシマエルびと、名はイト
ひと こ
ラという人の子である。 二六そしてイスラエルとアブサロムはギレアデ
ち じんど
の地に陣取った。
とき ひとびと
サムエル記下

二七 ダビデがマハナイムにきた時、アンモンの人々のうちのラバのナハ
こ こ
シの子ショビと、ロ・デバルのアンミエルの子マキル、およびロゲリム
ねどこ はち ど き こむぎ おおむぎ こな
のギレアデびとバルジライは、 二八寝床と鉢、土器、小麦、大麦、粉、い

78
むぎ まめ まめ みつ ぎょうにゅう ひつじ かんらく とも
り麦、豆、レンズ豆、 二九蜜、 凝 乳、 羊、乾酪をダビデおよび共にいる
たみ た も かれ たみ あらの う つか
民が食べるために持ってきた。それは彼らが、﹁民は荒野で飢え疲れか
おも
わいている﹂と思ったからである。
第一八章
じぶん とも たみ しら うえ にん ちょう にん
一さてダビデは自分と共にいる民を調べて、その上に千人の長、百人の
ちょう た たみ ぶん て
長 を 立 て た。 二そ し て ダ ビ デ は 民 を つ か わ し、三 分 の 一 を ヨ ア ブ の 手
ぶん こ きょうだい て ぶん
に、三分の一をゼルヤの子ヨアブの兄 弟 アビシャイの手に、三分の一を
て おう たみ い
ガテびとイッタイの手にあずけた。こうして王は民に言った、﹁わたし
かなら いっしょ で たみ い
もまた必ずあなたがたと一緒に出ます﹂。 三しかし民は言った、
﹁あなた
サムエル記下

で に かれ
は出てはなりません。それはわれわれがどんなに逃げても、彼らはわれ
こころ なか し こころ
われに心をとめず、われわれの半ばが死んでも、われわれに心をとめな
ひと
いからです。しかしあなたはわれわれの一万に等しいのです。それゆ

79
まち なか たす ほう おう
えあなたは町の中からわれわれを助けてくださる方がよろしい﹂。 四王
かれ い もっと よ おも
は 彼 ら に 言 っ た、﹁あ な た が た の 最 も 良 い と 思 う こ と を わ た し は し ま
おう もん た たみ みな にん
しょう﹂。こうして王は門のかたわらに立ち、民は皆あるいは百人、ある
にん で い おう
いは千人となって出て行った。 五王はヨアブ、アビシャイおよびイッタ
めい わかもの あつか
イに命じて、
﹁わたしのため、若者アブサロムをおだやかに扱うように﹂
い おう こと ちょう めい
と言った。王がアブサロムの事についてすべての長たちに命じている
とき たみ みな き
時、民は皆聞いていた。
たみ む の で い もり
六こうして民はイスラエルに向かって野に出て行き、エフライムの森で
たたか たみ ところ けらい まえ やぶ
戦 ったが、 七イスラエルの民はその所でダビデの家来たちの前に敗れ
ひ ところ せんししゃ おお およ たたか
た。その日その所に戦死者が多く、二万に及んだ。 八そして戦いはあま
ち ひろ ひ もり ほろ もの
ねくその地のおもてに広がった。この日、森の滅ぼした者は、つるぎの
ほろ もの おお
サムエル記下

滅ぼした者よりも多かった。
けらい い あ とき
九さてアブサロムはダビデの家来たちに行き会った。その時アブサロ
ら ば の ら ば おお き しげ えだ した
ムは騾馬に乗っていたが、騾馬は大きいかしの木の、茂った枝の下を

80
とお あたま き かれ てんち あいだ
通ったので、アブサロムの頭がそのかしの木にかかって、彼は天地の間
ら ば かれ す す い ひと
につりさがった。騾馬は彼を捨てて過ぎて行った。 一〇ひとりの人がそ
み つ い き
れを見てヨアブに告げて言った、﹁わたしはアブサロムが、かしの木にか
み つ ひと い
かっているのを見ました﹂。 一一ヨアブはそれを告げた人に言った、﹁あ
み かれ ところ
なたはそれを見たというのか。それなら、どうしてあなたは彼をその所
ち う おと ぎん おび すじ
で、地に撃ち落さなかったのか。わたしはあなたに銀十シケルと帯一筋
あた ひと い
を与えたであろうに﹂。 一二その人はヨアブに言った、﹁たといわたしの
て ぎん う て だ おう こ てき
手に銀千シケルを受けても、手を出して王の子に敵することはしませ
おう き
ん。王はわれわれが聞いているところで、あなたとアビシャイとイッタ
わかもの ほ ご めい
イに、﹃わたしのため若者アブサロムを保護せよ﹄と命じられたからで
かれ いのち なにごと
す。 一三もしわたしがそむいて彼の命をそこなったのであれば、何事も
おう かく た せ
サムエル記下

王に隠れることはありませんから、あなたはみずから立ってわたしを責
とも
められたでしょう﹂。 一四そこで、ヨアブは﹁こうしてあなたと共にとど
い て すじ な と
まってはおられない﹂と言って、手に三筋の投げやりを取り、あのかし

81
き い しんぞう つ とお
の木にかかって、なお生きているアブサロムの心臓にこれを突き通し
ぶ き と にん わかもの と ま
た。 一五ヨアブの武器を執る十人の若者たちは取り巻いて、アブサロム
う ころ
を撃ち殺した。
ふ たみ お
一六こうしてヨアブがラッパを吹いたので、民はイスラエルのあとを追
かえ たみ ひ ひとびと
うことをやめて帰った。ヨアブが民を引きとめたからである。 一七人々
と もり なか おお あな な うえ
はアブサロムを取って、森の中の大きな穴に投げいれ、その上にひじょ
おお いしづか つ あ
うに大きい石塚を積み上げた。そしてイスラエルはみなおのおのその
てんまく に かえ い あいだ おう たに
天幕 に 逃 げ 帰 っ た。 一 八さ て ア ブ サ ロ ム は 生 き て い る 間 に、王 の 谷 に
じぶん はしら た かれ じぶん な つた
自分のために一つの柱を建てた。それは彼が、﹁わたしは自分の名を伝
こ おも かれ はしら じぶん な
える子がない﹂と思ったからである。彼はその柱に自分の名をつけた。
はしら こんにち いしぶみ
その柱は今日までアブサロムの碑ととなえられている。
こ い はし い しゅ
サムエル記下

一九さてザドクの子アヒマアズは言った、
﹁わたしは走って行って、主が
おう てき て すく だ おう つた
王を敵の手から救い出されたおとずれを王に伝えましょう﹂。 二〇ヨア
かれ い つた
ブは彼に言った、﹁きょうは、おとずれを伝えてはならない。おとずれを

82
つた ひ おう こ し
伝えるのは、ほかの日にしなさい。きょうは王の子が死んだので、おと
つた い い
ずれを伝えてはならない﹂。 二一ヨアブはクシびとに言った、
﹁行って、あ
み こと おう つ れい はし
なたの見た事を王に告げなさい﹂。クシびとはヨアブに礼をして走って
い こ かさ い なにごと
行った。 二二ザドクの子アヒマアズは重ねてヨアブに言った、
﹁何事があ
はし い
ろうとも、わたしにもクシびとのあとから走って行かせてください﹂。
い こ むく え
ヨアブは言った、
﹁子よ、おとずれの報いを得られないのに、どうしてあ
はし い かれ い なにごと
なたは走って行こうとするのか﹂。 二三彼は言った、
﹁何事があろうとも、
はし い かれ い はし い
わたしは走って行きます﹂。ヨアブは彼に言った、﹁走って行きなさい﹂。
ていち みち はし い お こ
そこでアヒマアズは低地の道を走って行き、クシびとを追い越した。
とき もん あいだ み は もの
二四 時 に ダ ビ デ は 二 つ の 門 の 間 に す わ っ て い た。そ し て 見張 り の 者 が
じょうへき もん や ね め み はし
城 壁の門の屋根にのぼり、目をあげて見ていると、ただひとりで走って
もの み は もの よ おう つ おう
サムエル記下

く る 者 が あ っ た。 二 五見張 り の 者 が 呼 ば わ っ て 王 に 告 げ た の で、王 は
い くち
言った、
﹁もしひとりならば、その口におとずれがあるであろう﹂。その
ひと いそ ちか み は もの はし
人は急いできて近づいた。 二六見張りの者は、ほかにまたひとり走って

83
み もん ほう よ い み
くるのを見たので、門の方に呼ばわって言った、
﹁見よ、ほかにただひと
はし く もの おう い かれ も
りで走って来る者があります﹂。王は言った、﹁彼もまたおとずれを持っ
み は もの い さき はし く ひと
てくるのだ﹂。 二七見張りの者は言った、﹁まっ先に走って来る人はザド
こ おう い かれ よ ひと よ
クの子アヒマアズのようです﹂。王は言った、﹁彼は良い人だ。良いおと

ずれを持ってくるであろう﹂。
とき よ おう い へいあん
時にアヒマアズは呼ばわって王に言った、
二八 ﹁平安でいらせられますよ
おう まえ ち ふ い かみ しゅ
うに﹂。そして王の前に地にひれ伏して言った、
﹁あなたの神、主はほむ
しゅ おう きみ てき て ひとびと ひ わた
べきかな。主は王、わが君に敵して手をあげた人々を引き渡されまし
おう い わかもの へいあん こた
た﹂。 二九王は言った、
﹁若者アブサロムは平安ですか﹂。アヒマアズは答
とき おお さわ み
えた、﹁ヨアブがしもべをつかわす時、わたしは大きな騒ぎを見ました
なにごと し おう い い
が、何事であったか知りません﹂。 三〇王は言った、
﹁わきへ行って、そこ
た かれ い た
サムエル記下

に立っていなさい﹂。彼はわきへ行って立った。
とき い きみ おう
その時クシびとがきた。そしてそのクシびとは言った、
三一 ﹁わが君、王
よ う しゅ てき
が良いおとずれをお受けくださるよう。主はきょう、すべてあなたに敵

84
た もの て すく だ おう
して立った者どもの手から、あなたを救い出されたのです﹂。 三二王はク
い わかもの へいあん こた
シびとに言った、﹁若者アブサロムは平安ですか﹂。クシびとは答えた、
おう きみ てき てき た がい
﹁王、わが君の敵、およびすべてあなたに敵して立ち、害をしようとする
もの わかもの おう かな
者は、あの若者のようになりますように﹂。 三三王はひじょうに悲しみ、
もん うえ のぼ な かれ い い
門の上のへやに上って泣いた。彼は行きながらこのように言った、﹁わ
こ こ こ かわ
が子アブサロムよ。わが子、わが子アブサロムよ。ああ、わたしが代っ
し こ こ
て死ねばよかったのに。アブサロム、わが子よ、わが子よ﹂。
第一九章
とき つ もの み おう な
時にヨアブに告げる者があって、
一 ﹁見よ、王はアブサロムのために泣き
サムエル記下

かな い ひ しょうり たみ かな
悲しんでいる﹂と言った。 二こうしてその日の勝利はすべての民の悲し
ひ たみ おう こ かな
みとなった。それはその日、民が、
﹁王はその子のために悲しんでいる﹂
ひと い き たみ ひ たたか に
と人の言うのを聞いたからである。 三そして民はその日、戦いに逃げて

85
は たみ まち おう
恥じている民がひそかに、はいるように、ひそかに町にはいった。 四王
かお おう おおごえ さけ こ
は顔をおおった。そして王は大声に叫んで、﹁わが子アブサロムよ。ア
こ こ い とき いえ
ブサロム、わが子よ、わが子よ﹂と言った。 五時にヨアブは家にはいり、
おう い いのち
王のもとにきて言った、
﹁あなたは、きょう、あなたの命と、あなたのむ
むすめ いのち つま いのち いのち すく
すこ娘たちの命、およびあなたの妻たちの命と、めかけたちの命を救っ
けらい かお じぶん
た す べ て の 家来 の 顔 を は ず か し め ら れ ま し た。 六そ れ は あ な た が 自分
にく もの あい じぶん あい もの にく
を憎む者を愛し、自分を愛する者を憎まれるからです。あなたは、きょ
ぐん ちょう かえり しめ
う、軍 の 長 た ち を も、し も べ た ち を も 顧 み な い こ と を 示 さ れ ま し た。
し い
きょう、わたしは知りました。もし、アブサロムが生きていて、われわ
みな し め いま た
れが皆きょう死んでいたら、あなたの目にかなったでしょう。 七今立っ
で い かた しゅ
て出て行って、しもべたちにねんごろに語ってください。わたしは主を
ちか で こんや とも
サムエル記下

さして誓います。もしあなたが出られないならば、今夜あなたと共にと
もの わか とき いま
どまる者はひとりもないでしょう。これはあなたが若い時から今まで
わざわい わる
にこうむられたすべての災よりも、あなたにとって悪いでしょう﹂。 八

86
おう た もん ざ ひとびと たみ み
そこで王は立って門のうちの座についた。人々はすべての民に、﹁見よ、
おう もん ざ つ たみ おう まえ
王は門に座している﹂と告げたので、民はみな王の前にきた。
てんまく に かえ
さ て イ ス ラ エ ル は お の お の そ の 天幕 に 逃 げ 帰 っ た。 九そ し て イ ス ラ エ
ぶぞく なか たみ あらそ い おう てき
ルのもろもろの部族の中で民はみな争 って言った、
﹁王はわれわれを敵
て すく だ て たす だ
の手から救い出し、またわれわれをペリシテびとの手から助け出され
いま くに に
た。しかし今はアブサロムのために国のそとに逃げておられる。 一〇ま
あぶら そそ うえ た たたか し
たわれわれが油を注いで、われわれの上に立てたアブサロムは戦いで死
おう みちび
んだ。それであるのに、どうしてあなたがたは王を導きかえることにつ
なに い
いて、何をも言わないのか﹂。
おう さいし ひと い
一一 ダ ビ デ 王 は 祭司 た ち ザ ド ク と ア ビ ヤ タ ル と に 人 を つ か わ し て 言 っ
ちょうろう い ぜん ことば おう たっ
た、
﹁ユダの長 老たちに言いなさい、
﹃全イスラエルの言葉が王に達した
おう いえ みちび さいご もの
サムエル記下

のに、どうしてあなたがたは王をその家に導きかえる最後の者となるの
きょうだい こつにく
ですか。 一二あなたがたはわたしの兄 弟、わたしの骨肉です。それにど
おう みちび さいご もの い
う し て 王 を 導 き か え る 最後 の 者 と な る の で す か﹄。 一三ま た ア マ サ に 言

87
こつにく のち
いなさい、﹃あなたはわたしの骨肉ではありませんか。これから後あな
か ぐん ちょう
たをヨアブに代えて、わたしの軍の長とします。もしそうしないとき
かみ いくえ ばっ
は、神が幾重にもわたしを罰してくださるように﹄﹂。 一四こうしてダビ
ひと こころ じぶん かたむ
デはユダのすべての人の心を、ひとりのように自分に傾けさせたので、
かれ おう けらい かえ
彼らは王に、﹁どうぞあなたも、すべての家来たちも帰ってきてくださ
い おう かえ く
い﹂と言いおくった。 一五そこで王は帰ってきてヨルダンまで来ると、ユ
ひとびと おう むか おう わた
ダの人々は王を迎えるためギルガルにきて、王にヨルダンを渡らせた。
こ いそ ひとびと
一六 バホリムのベニヤミンびと、ゲラの子シメイは、急いでユダの人々と
とも くだ おう むか にん かれ
共に下ってきて、ダビデ王を迎えた。 一七一千人のベニヤミンびとが彼
とも いえ にん
と共にいた。またサウルの家のしもべヂバもその十五人のむすこと、二
にん したが おう まえ か くだ おう
十人のしもべを従えて、王の前にヨルダンに駆け下った。 一八そして王
かぞく わた おう こころ わた ば わた
サムエル記下

の家族を渡し、王の心にかなうことをしようと渡し場を渡った。ゲラの
こ わた とき おう まえ ふ おう い
子シメイはヨルダンを渡ろうとする時、王の前にひれ伏し、一九王に言っ
きみ つみ き きみ
た、
﹁どうぞわが君が、罪をわたしに帰しられないように。またわが君、

88
おう で ひ わる こと おも だ
王のエルサレムを出られた日に、しもべがおこなった悪い事を思い出さ
おう こころ と
れないように。どうぞ王がそれを心に留められないように。 二〇しもべ
じぶん つみ おか し み
は自分が罪を犯したことを知っています。それゆえ、見よ、わたしは
ぜんか さき くだ しゅ おう むか
きょう、ヨセフの全家のまっ先に下ってきて、わが主、王を迎えるので
こ こた い しゅ あぶら そそ
す﹂。 二一ゼルヤの子アビシャイは答えて言った、﹁シメイは主が油を注
もの ころ
がれた者をのろったので、そのために殺されるべきではありませんか﹂。
い こ
ダビデは言った、
二二 ﹁あなたがたゼルヤの子たちよ、あなたがたとなに
てきたい
のかかわりがあって、あなたがたはきょうわたしに敵対するのか。きょ
ひと ころ よ
う、イスラエルのうちで人を殺して良かろうか。わたしが、きょうイス
おう じぶん し
ラエルの王となったことを、どうして自分で知らないことがあろうか﹂。
おう ころ い おう かれ ちか
こうして王はシメイに、﹁あなたを殺さない﹂と言って、王は彼に誓っ
二三
サムエル記下

た。
こ くだ おう むか かれ おう さ ひ
サウルの子メピボセテは下ってきて王を迎えた。彼は王が去った日
二四
やす かえ ひ あし かざ ととの
から安らかに帰る日まで、その足を飾らず、そのひげを整えず、またそ

89
きもの あら かれ おう むか とき おう
の着物を洗わなかった。 二五彼がエルサレムからきて王を迎えた時、王
かれ い とも い
は彼に言った、﹁メピボセテよ、あなたはどうしてわたしと共に行かな
かれ こた しゅ おう けらい
かったのか﹂。 二六彼は答えた、
﹁わが主、王よ、わたしの家来がわたしを
あざむ かれ お
欺いたのです。しもべは彼に、﹃わたしのために、ろばにくらを置け。わ
の おう とも い い あし
たしはそれに乗って王と共に行く﹄と言ったのです。しもべは足なえだ
かれ しゅ おう まえ
からです。 二七ところが彼はしもべのことをわが主、王の前に、あしざま
い しゅ おう かみ つかい
に言ったのです。しかし、わが主、王は神の使のようでいらせられます。
よ おも ちち
それで、あなたの良いと思われることをしてください。 二八わたしの父
ぜんか しゅ おう まえ し ひと
の全家はわが主、王の前にはみな死んだ人にすぎないのに、あなたはし
しょくたく しょくじ ひとびと お
もべを、あなたの食 卓で食事をする人々のうちに置かれました。わた
けんり かさ おう うった
しになんの権利があって、重ねて王に訴えることができましょう﹂。 二九
おう かれ い じぶん い
サムエル記下

王は彼に言った、﹁あなたはどうしてなおも自分のことを言うのですか。
き と ち わ
わ た し は 決 め ま し た。あ な た と ヂ バ と は そ の 土地 を 分 け な さ い﹂。 三〇
おう い しゅ おう やす いえ かえ
メピボセテは王に言った、﹁わが主、王が安らかに家に帰られたのですか

90
かれ と
ら、彼にそれをみな取らせてください﹂。
くだ
三一さてギレアデびとバルジライはロゲリムから下ってきて、ヨルダン
おう みおく おう とも すす
で王を見送るため、王と共にヨルダンに進んだ。 三二バルジライは、ひ
としお ひと さい かれ ゆうふく ひと
じょうに年老いた人で八十歳であった。彼はまた、ひじょうに裕福な人
おう あいだ おう やしな おう
であったので、王がマハナイムにとどまっている間、王を養 った。 三三王
い いっしょ わた い
はバルジライに言った、﹁わたしと一緒に渡って行きなさい。わたしは
とも やしな
エルサレムであなたをわたしと共におらせて養いましょう﹂。 三四バル
おう い なにねん おう とも
ジライは王に言った、
﹁わたしは、なお何年いきながらえるので、王と共
のぼ こんにち さい
に エ ル サ レ ム に 上 る の で す か。 三 五わ た し は 今日 八 十 歳 で す。わ た し
よ わる た
に、良いこと悪いことがわきまえられるでしょうか。しもべは食べるも
の あじ うた おとこ うた おんな
の、飲むものを味わうことができましょうか。わたしは歌う男や歌う女
こえ き
サムエル記下

の声をまだ聞くことができましょうか。それであるのに、しもべはどう
しゅ おう おもに
してなおわが主、王の重荷となってよろしいでしょうか。 三六しもべは
おう とも わた すこ い おう
王と共にヨルダンを渡って、ただ少し行きましょう。どうして王はこの

91
むく むく
ような報いをわたしに報いられなければならないのでしょうか。 三七ど
かえ じぶん まち ふ ぼ はか ちか
うぞしもべを帰らせてください。わたしは自分の町で、父母の墓の近く

で死にます。ただし、あなたのしもべキムハムがここにおります。わが
しゅ おう とも かれ わた い よ おも
主、王と共に彼を渡って行かせてください。またあなたが良いと思われ
こと かれ おう こた とも
る事を彼にしてください﹂。 三八王は答えた、﹁キムハムはわたしと共に
わた い よ おも こと かれ
渡って行かせます。わたしは、あなたが良いと思われる事を彼にしま
のぞ
しょう。またあなたが望まれることはみな、あなたのためにいたしま
たみ わた おう わた とき
す﹂。 三九こうして民はみなヨルダンを渡った。王は渡った時、バルジラ
くち しゅくふく かれ じぶん いえ かえ おう
イに口づけして、 祝 福したので、彼は自分の家に帰っていった。 四〇王
すす かれ とも すす たみ おう
はギルガルに進んだ。キムハムも彼と共に進んだ。ユダの民はみな王
おく たみ なか
を送り、イスラエルの民の半ばもまたそうした。
ひとびと おう ところ おう い
サムエル記下

さてイスラエルの人々はみな王の所にきて、王に言った、
四一 ﹁われわれ
きょうだい ひとびと なに ぬす さ おう
の兄 弟であるユダの人々は、何ゆえにあなたを盗み去って、王とその
かぞく ともな じゅうしゃ わた
家族、およびダビデに伴 っているすべての従 者にヨルダンを渡らせた

92
ひとびと ひとびと こた おう
のですか﹂。 四二ユダの人々はみなイスラエルの人々に答えた、﹁王はわ
きんしん こと いか
れわれの近親だからです。あなたがたはどうしてこの事で怒られるの
すこ おう もの た おう
ですか。われわれが少しでも王の物を食べたことがありますか。王が
なに たまもの あた
何 か 賜物 を わ れ わ れ に 与 え た こ と が あ り ま す か﹂。 四 三イ ス ラ エ ル の
ひとびと ひとびと こた おう ぶん も
人々はユダの人々に答えた、﹁われわれは王のうちに十の分を持ってい
おお も
ます。またダビデのうちにもわれわれはあなたがたよりも多くを持っ
かろ
ています。それであるのに、どうしてあなたがたはわれわれを軽んじた
おう みちび かえ さいしょ い
のですか。われらの王を導き帰ろうと最初に言ったのはわれわれでは
ひとびと ことば ひとびと ことば
ないのですか﹂。しかしユダの人々の言葉はイスラエルの人々の言葉よ
はげ
りも激しかった。
サムエル記下

第二〇章
ところ ひと な
一さて、その所にひとりのよこしまな人があって、名をシバといった。

93
こ かれ ふ い
ビクリの子で、ベニヤミンびとであった。彼はラッパを吹いて言った、
ぶん こ し
﹁わ れ わ れ は ダ ビ デ の う ち に 分 が な い。ま た エ ッ サ イ の 子 の う ち に 嗣
ぎょう も てんまく かえ
業を持たない。イスラエルよ、おのおのその天幕に帰りなさい﹂。 二そ
ひとびと みな したが こと こ
こでイスラエルの人々は皆ダビデに従う事をやめて、ビクリの子シバに
したが ひとびと おう したが
従 った。しかしユダの人々はその王につき従 って、ヨルダンからエル

サレムへ行った。
じぶん いえ おう いえ まも
三ダビデはエルサレムの自分の家にきた。そして王は家を守るために
のこ にん と いえ い まも
残しておいた十人のめかけたちを取って、一つの家に入れて守り、また
やしな かのじょ ところ かのじょ し ひ
養 ったが、彼女たちの所には、はいらなかった。彼女たちは死ぬ日まで
と いっしょう か ふ
閉じこめられ一 生、寡婦としてすごした。
おう い か ひとびと よ
四王はアマサに言った、﹁わたしのため三日のうちにユダの人々を呼び
あつ よ あつ い
サムエル記下

集めて、ここにきなさい﹂。 五アマサはユダを呼び集めるために行った
かれ さだ とき い
が、彼 は 定 め ら れ た 時 よ り も お く れ た。 六ダ ビ デ は ア ビ シ ャ イ に 言 っ
こ いま おお がい
た、﹁ビクリの子シバは今われわれにアブサロムよりも多くの害をする

94
しゅくん けらい ひき かれ お
であろう。あなたの主君の家来たちを率いて、彼のあとを追いなさい。
かれ けんご まちまち え なや
さもないと彼は堅固な町々を獲て、われわれを悩ますであろう﹂。 七こ
ゆうし
うしてヨアブとケレテびととペレテびと、およびすべての勇士はアビ
したが で かれ で こ
シャイに従 って出た。すなわち彼らはエルサレムを出て、ビクリの子
お かれ おおいし とき
シバのあとを追った。 八彼らがギベオンにある大石のところにいた時、
かれ あ とき ぐんぷく き おび
アマサがきて彼らに会った。時にヨアブは軍服を着て、帯をしめ、その
うえ おさ こし むす お かれ すす で とき
上にさやに納めたつるぎを腰に結んで帯びていたが、彼が進み出た時つ
ぬ お きょうだい やす
るぎは抜け落ちた。 九ヨアブはアマサに、﹁兄 弟よ、あなたは安らかです
い みぎ て とら かれ くち
か﹂と言って、ヨアブは右の手をもってアマサのひげを捕えて彼に口づ
て き
けしようとしたが、 一〇アマサはヨアブの手につるぎがあることに気づ
ふくぶ さ
かなかったので、ヨアブはそれをもってアマサの腹部を刺して、そのは
ち なが だ かさ う かれ ころ
サムエル記下

らわたを地に流し出し、重ねて撃つこともなく彼を殺した。
きょうだい こ お
こうしてヨアブとその兄 弟 アビシャイはビクリの子シバのあとを追っ
とき わかもの た い
た。 一一時 に ヨ ア ブ の 若者 の ひ と り が ア マ サ の か た わ ら に 立 っ て 言 っ

95
みかた もの もの したが
た、﹁ヨアブに味方する者、ダビデにつく者はヨアブのあとに従いなさ
ち し おおじ なか
い﹂。 一二アマサは血に染んで大路の中にころがっていたので、そのそば
く もの かれ み た ひと たみ た
に来る者はみな彼を見て立ちどまった。この人は民がみな立ちどまる
み おおじ はたけ うつ いふく うえ
のを見て、アマサを大路から畑に移し、衣服をその上にかけた。 一三アマ
おおじ うつ たみ みな したが すす こ
サが大路から移されたので、民は皆ヨアブに従 って進み、ビクリの子シ

バのあとを追った。
ぶぞく とお
一四 シバはイスラエルのすべての部族のうちを通ってベテマアカのアベ
みな あつ かれ したが
ルにきた。ビクリびとは皆、集まってきて彼に従 った。 一五そこでヨア
とも ひとびと かれ かこ まち
ブと共にいたすべての人々がきて、彼をベテマアカのアベルに囲み、町
む つちるい きず む た
に向かって土塁を築いた。それはとりでに向かって立てられた。こう
かれ じょうへき う とき
して彼らは城 壁をくずそうとしてこれを撃った。 一六その時、ひとりの
かしこ おんな まち よ き
サムエル記下

賢い女が町から呼ばわった、﹁あなたがたは聞きなさい。あなたがたは
き い
聞きなさい。ヨアブに、﹃ここにきてください。わたしはあなたに言う
い かれ おんな ちかよ おんな
ことがあります﹄と言ってください﹂。 一七彼がその女に近寄ると、 女は

96
い かれ こた
﹁あなたがヨアブですか﹂と言った。彼は﹁そうです﹂と答えた。すると
おんな かれ ことば き い き
女は彼に﹁はしための言葉をお聞きください﹂と言ったので、﹁聞きま
かれ い おんな い むかし ひとびと
しょう﹂と彼は言った。 一八そこで女は言った、
﹁昔、人々はいつも、
﹃ア
たず い こと さだ
ベルで尋ねなさい﹄と言って、事を定めました。 一九わたしはイスラエル
へいわ ちゅうせい もの
のうちの平和な、忠 誠な者です。そうであるのに、あなたはイスラエル
はは まち ほろ しゅ
のうちで母ともいうべき町を滅ぼそうとしておられます。どうして主
し ぎょう つく こた
の嗣 業を、のみ尽そうとされるのですか﹂。 二〇ヨアブは答えた、﹁いい
けっ つく ほろ
え、決してそうではなく、わたしが、のみ尽したり、滅ぼしたりするこ
じじつ さんち ひと
とはありません。 二一事実はそうではなく、エフライムの山地の人ビク
こ な もの て おう
リの子、名をシバという者が手をあげて王ダビデにそむいたのです。あ
かれ わた まち さ おんな
なたがたが彼ひとりを渡すならば、わたしはこの町を去ります﹂。 女は
い かれ くび じょうへき うえ ところ な
サムエル記下

ヨ ア ブ に 言 っ た、﹁彼 の 首 は 城 壁 の 上 か ら あ な た の 所 へ 投 げ ら れ る で
おんな ち え たみ ところ い
しょう﹂。 二二こうしてこの女が知恵をもって、すべての民の所に行った
かれ こ くび ところ な だ
ので、彼らはビクリの子シバの首をはねてヨアブの所へ投げ出した。そ

97
ふ ひとびと ち まち さ
こでヨアブはラッパを吹きならしたので、人々は散って町を去り、おの
いえ かえ おう かえ
おの家に帰った。ヨアブはエルサレムにいる王のもとに帰った。
ぜんぐん ちょう こ
二三 ヨアブはイスラエルの全軍の長であった。エホヤダの子ベナヤはケ
ちょう ちょうぼにん ちょう
レテびと、およびペレテびとの長、 二四アドラムは徴募人の長、アヒルデ
こ しかん しょきかん
の 子 ヨ シ ャ パ テ は 史官、 二 五シ ワ は 書記官、ザ ド ク と ア ビ ヤ タ ル と は
さいし さいし
祭司。 二六またヤイルびとイラはダビデの祭司であった。
第二一章
よ とし とし ねん しゅ
一ダビデの世に、年また年と三年、ききんがあったので、ダビデが主に
たず しゅ い いえ ち なが つみ
尋ねたところ、主は言われた、
﹁サウルとその家とに、血を流した罪があ
サムエル記下

かれ ころ おう
る。それはかつて彼がギベオンびとを殺したためである﹂。 二そこで王
め しそん
はギベオンびとを召しよせた。ギベオンびとはイスラエルの子孫では
のこ ひとびと かれ ちか た
なく、アモリびとの残りであって、イスラエルの人々は彼らと誓いを立

98
いのち たす ひとびと
てて、その命を助けた。ところがサウルはイスラエルとユダの人々のた
ねっしん かれ ころ
めに熱心であったので、彼らを殺そうとしたのである。 三それでダビデ
い なに
はギベオンびとに言った、﹁わたしはあなたがたのために、何をすればよ
つぐな しゅ し ぎょう しゅくふく
いのですか。どんな償いをすれば、あなたがたは主の嗣 業を祝 福する
かれ い
のですか﹂。 四ギベオンびとは彼に言った、
﹁これはわれわれと、サウル
いえ あいだ きんぎん もんだい
またはその家との間の金銀の問題ではありません。またイスラエルの
ころ
うちのひとりでも、われわれが殺そうというのでもありません﹂。ダビ
い なに い
デは言った、﹁わたしがあなたがたのために何をすればよいと言うので
おう い ほろ ひと ほろ
すか﹂。 五かれらは王に言った、
﹁われわれを滅ぼした人、われわれを滅
りょういき
ぼしてイスラエルの領 域のどこにもおらせないようにと、たくらんだ
ひと ひと しそん にん ひ わた しゅ やま
人、 六その人の子孫七人を引き渡してください。われわれは主の山にあ
かれ しゅ まえ き おう い ひ
サムエル記下

るギベオンで、彼らを主の前に木にかけましょう﹂。王は言った、
﹁引き
わた
渡しましょう﹂。
おう こ こ お
七し か し 王 は サ ウ ル の 子 ヨ ナ タ ン の 子 で あ る メ ピ ボ セ テ を 惜 し ん だ。

99
かれ あいだ こ あいだ しゅ
彼らの間、すなわちダビデとサウルの子ヨナタンとの間に、主をさして
た ちか おう むすめ う
立てた誓いがあったからである。 八王はアヤの娘 リヅパがサウルに産
こ むすめ
んだふたりの子アルモニとメピボセテ、およびサウルの娘 メラブがメ
こ う にん こ と かれ
ホラびとバルジライの子アデリエルに産んだ五人の子を取って、 九彼ら
て ひ わた かれ やま しゅ
をギベオンびとの手に引き渡したので、ギベオンびとは彼らを山で主の
まえ き かれ にん とも たお かれ かりい はじ ひ
前に木にかけた。彼ら七人は共に倒れた。彼らは刈入れの初めの日、す
おおむぎ か はじ ころ
なわち大麦刈りの初めに殺された。
むすめ あらぬの じぶん いわ うえ し
一〇 ア ヤ の 娘 リ ヅ パ は 荒布 を と っ て、そ れ を 自分 の た め に 岩 の 上 に 敷
かりい はじ ひとびと したい うえ てん あめ ふ ひる
き、刈入れの初めから、その人々の死体の上に天から雨が降るまで、昼
そら とり したい うえ よる の けもの ちかよ
は空の鳥が死体の上にこないようにし、夜は野の獣を近寄らせなかっ
むすめ
た。 一一アヤの娘でサウルのめかけであったリヅパのしたことがダビデ
きこ い ほね こ ほね
サムエル記下

に聞えたので、 一二ダビデは行ってサウルの骨とその子ヨナタンの骨を、
ひとびと ところ と
ヤベシギレアデの人々の所から取ってきた。これはペリシテびとがサ
ころ ひ き ひろば かれ
ウルをギルボアで殺した日に、木にかけたベテシャンの広場から、彼ら

100
ぬす ほね こ
が盗んでいたものである。 一三ダビデはそこからサウルの骨と、その子
ほね たずさ のぼ ひとびと もの ほね
ヨナタンの骨を携えて上った。また人々はそのかけられた者どもの骨
あつ かれ こ ほね
を集めた。 一四こうして彼らはサウルとその子ヨナタンの骨を、ベニヤ
ち ちち はか ほうむ おう めい
ミンの地のゼラにあるその父キシの墓に葬り、すべて王の命じたように
のち かみ ち いのり き
した。この後、神はその地のために、 祈を聞かれた。
せんそう けらい
一五ペリシテびとはまたイスラエルと戦争をした。ダビデはその家来た
とも くだ たたか つか とき
ちと共に下ってペリシテびとと戦 ったが、ダビデは疲れていた。 一六時
ころ おも きょじん
に イ シ ビ ベ ノ ブ は ダ ビ デ を 殺 そ う と 思 っ た。イ シ ビ ベ ノ ブ は 巨人 の
しそん せいどう おも かれ あたら お
子孫で、そのやりは青銅で重さ三百シケルあり、彼は新しいつるぎを帯
こ たす
びていた。 一七しかしゼルヤの子アビシャイはダビデを助けて、そのペ
う ころ じゅうしゃ かれ ちか い
リシテびとを撃ち殺した。そこでダビデの従 者たちは彼に誓って言っ
とも かさ せんそう で
サムエル記下

た、﹁あなたはわれわれと共に、重ねて戦争に出てはなりません。さもな
ひ け
いと、あなたはイスラエルのともし火を消すでしょう﹂。
のち ふたた たたか とき
一八この後、 再びゴブでペリシテびととの戦いがあった。時にホシャび

101
きょじん しそん ころ
と シ ベ カ イ は 巨人 の 子孫 の ひ と り サ フ を 殺 し た。 一 九こ こ に ま た ゴ ブ
たたか
で、ペリシテびととの戦いがあったが、そこではベツレヘムびとヤレオ
こ ころ え
レギムの子エルハナンは、ガテびとゴリアテを殺した。そのやりの柄は
はた まきぼう ふたた たたか
機の巻棒のようであった。 二〇またガテで再び戦いがあったが、そこに
せ たか ひと て ゆび あし ゆび ぽん かず
ひとりの背の高い人があり、その手の指と足の指は六本ずつで、その数
あ ほん かれ きょじん うま もの
は合わせて二十四本であった。彼もまた巨人から生れた者であった。 二
かれ きょうだい こ
一彼はイスラエルをののしったので、ダビデの兄 弟 シメアの子ヨナタ
かれ ころ にん きょじん うま もの
ンが彼を殺した。 二二これらの四人はガテで巨人から生れた者であった
て けらい て たお
が、ダビデの手とその家来たちの手に倒れた。
第二二章
サムエル記下

しゅ てき て て じぶん すく だ
一ダビデは主がもろもろの敵の手とサウルの手から、自分を救い出され
ひ うた ことば しゅ む の かれ い
た日に、この歌の言葉を主に向かって述べ、 二彼は言った、

102
しゅ いわ しろ すく もの
﹁主はわが岩、わが城、わたしを救う者、
かみ いわ かれ よ たの
三わが神、わが岩。わたしは彼に寄り頼む。
たて すくい つの
わが盾、わが救の角、
たか さ どころ
わが高きやぐら、わが避け所、
すくいぬし ぼうぎゃく すく
わが救 主。あなたはわたしを暴 虐から救われる。
しゅ よ
四わたしは、ほめまつるべき主に呼ばわって、
てき すく
わたしの敵から救われる。
し なみ
五死の波はわたしをとりまき、
ほろ おおみず おそ
滅びの大水はわたしを襲った。
よ み つな
六陰府の綱はわたしをとりかこみ、
し む
死のわなはわたしに、たち向かった。
くなん しゅ よ
サムエル記下

七苦難のうちにわたしは主を呼び、
かみ よ
またわが神に呼ばわった。
しゅ みや こえ き
主がその宮からわたしの声を聞かれて、

103
さけ みみ
わたしの叫びはその耳にとどいた。
とき ち ふる
その時地は震いうごき、

てん もとい
天の基はゆるぎふるえた。
かれ いか
彼が怒られたからである。
けむり はな のぼ
九 煙はその鼻からたち上り、
ひ くち で や
火はその口から出て焼きつくし、
はくねつ すみ かれ も で
白熱の炭は彼から燃え出た。
かれ てん ひく くだ
一〇 彼は天を低くして下られ、
くら かれ あし した
暗やみが彼の足の下にあった。
かれ の と
一一 彼はケルブに乗って飛び、
かぜ つばさ の
風の翼に乗ってあらわれた。
かれ しゅうい まくや
サムエル記下

一二 彼はその周囲に幕屋として、
こ くも みず あつ お
やみと濃き雲と水の集まりとを置かれた。
まえ かがや
一三 そのみ前の輝きから

104
すみび も で
炭火が燃え出た。
しゅ てん かみなり
主は天から雷をとどろかせ、
一四
たか もの こえ だ
いと高き者は声を出された。
かれ や はな かれ ち
彼はまた矢を放って彼らを散らし、
一五
はな かれ う やぶ
いなずまを放って彼らを撃ち破られた。
しゅ はな
主のとがめと、その鼻のいぶきとによって、
一六
うみ そこ
海の底はあらわれ、
せかい もとい
世界の基が、あらわになった。
かれ たか ところ て の とら
彼は高き所から手を伸べてわたしを捕え、
一七
おおみず なか ひ あ
大水の中からわたしを引き上げ、
つよ てき にく もの
わたしの強い敵と、わたしを憎む者とから
一八
すく
サムエル記下

わたしを救われた。
かれ つよ
彼らはわたしにとって、あまりにも強かったからだ。
かれ わざわい ひ む
彼らはわたしの災の日にわたしに、たち向かった。
一九

105
しゅ しちゅう
しかし主はわたしの支柱となられた。
かれ ひろ ところ ひ
彼はまたわたしを広い所へ引きだされ、
二〇
よろこ すく
わたしを喜ばれて、救ってくださった。
しゅ ぎ むく
主はわたしの義にしたがってわたしに報い、
二一
て きよ
わたしの手の清きにしたがって
むく
わたしに報いかえされた。
しゅ みち まも あく おこな
それは、わたしが主の道を守り、悪を行わず、
二二
かみ はな
わが神から離れたことがないからである。
まえ
そのすべてのおきてはわたしの前にあって、
二三
さだ はな
わたしはその、み定めを離れたことがない。
しゅ まえ か ところ
わたしは主の前に欠けた所なく、
二四
みずか まも つみ おか
サムエル記下

自らを守って罪を犯さなかった。
しゅ ぎ
それゆえ、主はわたしの義にしたがい、
二五
め きよ
その目のまえにわたしの清きにしたがって、

106
むく
わたしに報いられた。
ちゅうじつ もの ちゅうじつ もの
二六 忠 実な者には、あなたは忠 実な者となり、
か ところ ひと
欠けた所のない人には、
か ところ もの
あなたは欠けた所のない者となり、
きよ もの きよ もの
二七 清い者には、あなたは清い者となり、
もの もの
まがった者には、かたいぢな者となられる。
たみ すく
二八 あなたはへりくだる民を救われる、
め たか もの み
しかしあなたの目は高ぶる者を見て
これをひくくせられる。
しゅ び
二九 まことに、主よ、あなたはわたしのともし火、
かみ てら
わが神はわたしのやみを照される。
サムエル記下

三〇 まことに、あなたによって
てきぐん ほろ
わたしは敵軍をふみ滅ぼし、
かみ いし こ
わが神によって石がきをとび越えることができる。

107
かみ みち ひ
この神こそ、その道は非のうちどころなく、
三一
しゅ やくそく しんじつ
主の約束は真実である。
かれ かれ よ たの もの たて
彼はすべて彼に寄り頼む者の盾である。
しゅ かみ
主のほかに、だれが神か、
三二
かみ いわ
われらの神のほか、だれが岩であるか。
かみ けんご さ どころ
この神こそわたしの堅固な避け所であり、
三三
みち あんぜん
わたしの道を安全にされた。
あし あし
わたしの足をめじかの足のようにして、
三四
たか ところ あんぜん た
わたしを高い所に安全に立たせ、
て たたか な
わたしの手を戦いに慣らされたので、
三五
うで せいどう ゆみ ひ
わたしの腕は青銅の弓を引くことができる。
すくい たて あた
サムエル記下

あなたはその救の盾をわたしに与え、
三六
たす おお もの
あなたの助けは、わたしを大いなる者とされた。
ある ひろ ば しょ あた
あなたはわたしが歩く広い場所を与えられたので、
三七

108
あし
わたしの足はすべらなかった。
てき お ほろ
わたしは敵を追って、これを滅ぼし、
三八
た かえ
これを絶やすまでは帰らなかった。
かれ た かれ くだ
わたしは彼らを絶やし、彼らを砕いたので
三九
かれ た あし たお
彼らは立つことができず、わたしの足もとに倒れた。
たたか ちから お
あなたは戦いのために、わたしに力を帯びさせ
四〇
せ もの した
わたしを攻める者をわたしの下にかがませられた。
てき
あなたによって、敵は
四一

そのうしろをわたしに向けたので、
にく もの ほろ
わたしを憎む者をわたしは滅ぼした。
かれ み すく もの
彼らは見まわしたが、救う者はいなかった。
四二
かれ しゅ さけ かれ こた
サムエル記下

彼らは主に叫んだが、彼らには答えられなかった。
かれ ち
わたしは彼らを地のちりのように
四三
こま う
細かに打ちくだき、

109

ちまたのどろのように、踏みにじった。
くにぐに たみ あらそ すく だ
あなたはわたしを国々の民との争いから救い出し、
四四
こくみん
わたしをもろもろの国民のかしらとされた。
し たみ つか
わたしの知らなかった民がわたしに仕えた。
いこく ひと
異国の人たちはきてわたしにこび、
四五
こと き したが
わたしの事を聞くとすぐわたしに従 った。
いこく ひと
異国の人たちは、うちしおれて
四六
しろ で
その城からふるえながら出てきた。
しゅ い いわ
主は生きておられる。わが岩はほむべきかな。
四七
かみ すくい いわ
わが神、わが救の岩はあがむべきかな。
かみ むく
この神はわたしのために、あだを報い、
四八
たみ した お
サムエル記下

もろもろの民をわたしの下に置かれた。
てき すく だ
またわたしを敵から救い出し、
四九
うえ
あだの上にわたしをあげ、

110
ぼうぎゃく ひとびと すく だ
暴 虐の人々からわたしを救い出された。
しゅ くにたみ なか
五〇 それゆえ、主よ、わたしはもろもろの国民の中で、
あなたをたたえ、
な うた
あなたの、み名をほめ歌うであろう。
しゅ おう おお しょうり あた
五一 主はその王に大いなる勝利を与え、
あぶら そそ もの しそん
油を注がれた者に、ダビデとその子孫とに、
ほどこ
とこしえに、いつくしみを施される﹂。
第二三章
さいご ことば
これはダビデの最後の言葉である。

サムエル記下

こ たくせん
エッサイの子ダビデの託宣、
たか あ ひと
すなわち高く挙げられた人、
かみ あぶら そそ ひと
ヤコブの神に油を注がれた人、

111
よ うた たくせん
イスラエルの良き歌びとの託宣。
しゅ れい かた
二﹁主の霊はわたしによって語る、
ことば した うえ
その言葉はわたしの舌の上にある。
かみ かた
三イスラエルの神は語られた、
いわ い
イスラエルの岩はわたしに言われた、
ひと ただ おさ もの
﹃人を正しく治める者、
かみ おそ おさ もの
神を恐れて、治める者は、
あさ ひかり
四朝の光のように、
くも あさ かがや たいよう
雲のない朝に、 輝きでる太陽のように、
ち わかくさ め あめ ひと のぞ
地に若草を芽ばえさせる雨のように人に臨む﹄。

五まことに、わが家はそのように、
かみ とも
サムエル記下

神と共にあるではないか。
かみ そな たし
それは、神が、よろず備わって確かな
けいやく むす
とこしえの契約をわたしと結ばれたからだ。

112
かれ すくい ねが
どうして彼はわたしの救と願いを、
みな
皆なしとげられぬことがあろうか。
ひと
しかし、よこしまな人は、いばらのようで、

て と
手をもって取ることができないゆえ、
とも す
みな共に捨てられるであろう。
ふ ひと
これに触れようとする人は

てつ え ぶそう
鉄や、やりの柄をもって武装する、
かれ ひ や
彼らはことごとく火で焼かれるであろう﹂。
ゆうし な つぎ
ダ ビ デ の 勇士 た ち の 名 は 次 の と お り で あ る。タ ク モ ン び と ヨ セ ブ・

にん ちょう かれ にん む
バッセベテはかの三人のうちの長であったが、彼はいちじに八百人に向
ころ
かって、やりをふるい、それを殺した。
かれ つぎ こ ゆうし
サムエル記下

彼の次はアホアびとドドの子エレアザルであって、三勇士のひとりで

かれ たたか あつ む たたか
ある。彼は、 戦おうとしてそこに集まったペリシテびとに向かって戦
ひとびと しりぞ とき とも
いをいどみ、イスラエルの人々が退いた時、ダビデと共にいたが、 一〇

113
た う て つか て つ はな
立ってペリシテびとを撃ち、ついに手が疲れ、手がつるぎに着いて離れ
ひ しゅ おお しょうり あた たみ かれ
ないほどになった。その日、主は大いなる勝利を与えられた。民は彼の
かえ ころ もの と
あとに帰ってきて、ただ殺された者をはぎ取るばかりであった。
かれ つぎ こ とき
一一 彼の次はハラルびとアゲの子シャンマであった。ある時、ペリシテ
あつ いちめん まめ つく じ しょ
びとはレヒに集まった。そこに一面にレンズ豆を作った地所があった。
たみ まえ に かれ じ しょ なか た
民はペリシテびとの前から逃げたが、一二彼はその地所の中に立って、こ
ふせ ころ しゅ おお すくい あた
れを防ぎ、ペリシテびとを殺した。そして主は大いなる救を与えられ
た。
にん ちょう にん くだ い かりい
一三 三十人の長たちのうちの三人は下って行って刈入れのころに、アド
あな とき たい
ラムのほら穴にいるダビデのもとにきた。時にペリシテびとの一隊は
たに じん と とき ようがい
レパイムの谷に陣を取っていた。 一四その時ダビデは要害におり、ペリ
せんじん のぞ
サムエル記下

シテびとの先陣はベツレヘムにあったが、 一五ダビデは、せつに望んで、
もん い ど みず の
﹁だれかベツレヘムの門のかたわらにある井戸の水をわたしに飲ませて
い にん ゆうし
くれるとよいのだが﹂と言った。 一六そこでその三人の勇士たちはペリ

114
じん つ とお もん い ど みず
シテびとの陣を突き通って、ベツレヘムの門のかたわらにある井戸の水
く と たずさ の
を汲み取って、ダビデのもとに携えてきた。しかしダビデはそれを飲も
しゅ まえ そそ い しゅ だん
うとはせず、主の前にそれを注いで、 一七言った、
﹁主よ、わたしは断じ
の い ひとびと ち
て飲むことをいたしません。いのちをかけて行った人々の血を、どうし
の かれ の
てわたしは飲むことができましょう﹂。こうして彼はそれを飲もうとは
ゆうし おこな
しなかった。三勇士はこれらのことを行 った。
こ きょうだい にん ちょう かれ
一八 ゼルヤの子ヨアブの兄 弟 アビシャイは三十人の長であった。彼は
にん む ころ かれ にん
三百人に向かって、やりをふるい、それを殺した。そして、彼は三人と
とも な え かれ にん もっと たっと もの かれ ちょう
共 に 名 を 得 た。 一 九彼 は 三 十 人 の う ち 最 も 尊 ば れ た 者 で、彼 ら の 長 と
にん およ
なった。しかし、かの三人には及ばなかった。
こ しゅっしん ゆうし おお
二〇エホヤダの子ベナヤはカブジエル 出 身の勇士であって、多くのてが
た かれ こ う ころ かれ
サムエル記下

らを立てた。彼はモアブのアリエルのふたりの子を撃ち殺した。彼は
ゆき ひ くだ あな なか う ころ かれ
また雪の日に下っていって、穴の中でししを撃ち殺した。 二一彼はまた
すがた う ころ て
姿のうるわしいエジプトびとを撃ち殺した。そのエジプトびとは手に

115
も ところ くだ
やりを持っていたが、ベナヤはつえをとってその所に下っていき、エジ
て ころ
プトびとの手からやりをもぎとって、そのやりをもって殺した。 二二エ
こ こと ゆうし とも な え かれ
ホヤダの子ベナヤはこれらの事をして三勇士と共に名を得た。 二三彼は
にん ゆうめい にん およ
三十人のうちに有名であったが、かの三人には及ばなかった。ダビデは
かれ じえい ちょう
彼を侍衛の長とした。
にん きょうだい
二四 三十人のうちにあったのは、ヨアブの兄 弟 アサヘル。ベツレヘム
しゅっしん こ しゅっしん しゅっしん
出 身のドドの子エルハナン。 二五ハロデ 出 身のシャンマ。ハロデ 出 身
しゅっしん こ
のエリカ。 二六パルテびとヘレヅ。テコア 出 身のイッケシの子イラ。 二
しゅっしん
七アナトテ 出 身のアビエゼル。ホシャびとメブンナイ。 二八アホアびと
しゅっしん しゅっしん こ
ザルモン。ネトパ 出 身のマハライ。 二九ネトパ 出 身のバアナの子ヘレ
で こ
ブ。ベニヤミンびとのギベアから出たリバイの子イッタイ。 三〇ピラト
たにしゅっしん
サムエル記下

ン の ベ ナ ヤ。ガ ア シ の 谷 出 身 の ヒ ダ イ。 三一ア ル バ テ び と ア ビ ア ル ボ
しゅっしん しゅっしん
ン。バホリム 出 身のアズマウテ。 三二シャルボン 出 身のエリヤバ。ヤ

センの子たち。ヨナタン。 三三ハラルびとシャンマ。ハラルびとシャラ

116
こ しゅっしん こ
ル の 子 ア ヒ ア ム。 三四マ ア カ 出 身 の ア ハ ス バ イ の 子 エ リ ペ レ テ。ギ ロ
しゅっしん こ しゅっしん
出 身のアヒトペルの子エリアム。 三五カルメル 出 身のヘヅロ。アルバ
しゅっしん こ
び と パ ア ラ イ。 三六ゾ バ 出 身 の ナ タ ン の 子 イ ガ ル。ガ ド び と バ ニ。 三七
こ ぶ き と もの
ア ン モ ン び と ゼ レ ク。ゼ ル ヤ の 子 ヨ ア ブ の 武器 を 執 る 者、ベ エ ロ テ
しゅっしん
出 身のナハライ。 三八イテルびとイラ。イテルびとガレブ。 三九ヘテび
あ にん
とウリヤ。合わせて三十七人である。
第二四章
しゅ ふたた む いか はっ かんどう かれ
一主は再びイスラエルに向かって怒りを発し、ダビデを感動して彼らに
さか い かぞ い
逆らわせ、
﹁行ってイスラエルとユダとを数えよ﹂と言われた。 二そこで
サムエル記下

おう とも ぐん ちょう い
王はヨアブおよびヨアブと共にいる軍の長たちに言った、﹁イスラエル
ぶぞく い めぐ たみ かぞ
のすべての部族のうちを、ダンからベエルシバまで行き巡って民を数
たみ かず し おう い
え、わたしに民の数を知らせなさい﹂。 三ヨアブは王に言った、
﹁どうぞ

117
かみ しゅ たみ いま ばい ま
あなたの神、主が、民を今よりも百倍に増してくださいますように。そ
おう しゅ み おう
して王、わが主がまのあたり、それを見られますように。しかし王、わ
しゅ なに こと よろこ おう ことば
が主は何ゆえにこの事を喜ばれるのですか﹂。 四しかし王の言葉がヨア
ぐん ちょう か ぐん ちょう おう まえ しりぞ
ブと軍の長たちとに勝ったので、ヨアブと軍の長たちとは王の前を退
たみ かぞ で い かれ わた
き、イスラエルの民を数えるために出て行った。 五彼らはヨルダンを渡
たに なか まち はじ む
り、アロエルから、すなわち谷の中にある町から始めて、ガドに向かい、
すす い ち
ヤゼルに進んだ。 六それからギレアデに行き、またヘテびとの地にある
い いた
カデシに行き、それからダンに至り、ダンからシドンにまわり、 七また
ようがい い まち い
ツロの要害に行き、ヒビびと、およびカナンびとのすべての町に行き、ユ
で い かれ くに
ダ の ネ ゲ ブ に 出 て ベ エ ル シ バ へ 行 っ た。 八こ う し て 彼 ら は 国 を あ ま ね
い めぐ げつ にち へ
く行き巡って、九か月と二十日を経てエルサレムにきた。 九そしてヨア
たみ そうすう おう つ ぬ
サムエル記下

ブは民の総数を王に告げた。すなわちイスラエルには、つるぎを抜く
ゆうし ひとびと
勇士たちが八十万あった。ただしユダの人々は五十万であった。
たみ かぞ のち こころ せ しゅ
一〇しかしダビデは民を数えた後、 心に責められた。そこでダビデは主

118
い おお つみ おか
に言った、﹁わたしはこれをおこなって大きな罪を犯しました。しかし
しゅ いま つみ と さ
主よ、今どうぞしもべの罪を取り去ってください。わたしはひじょうに
おろ あさ お しゅ ことば
愚かなことをいたしました﹂。 一一ダビデが朝起きたとき、主の言葉はダ
せんけんしゃ よげんしゃ のぞ い い い
ビデの先見者である預言者ガデに臨んで言った、一二
﹁行ってダビデに言
しゅ おお しめ
いなさい、
﹃主はこう仰せられる、
﹁わたしは三つのことを示す。あなた
えら おこな
は そ の 一 つ を 選 ぶ が よ い。わ た し は そ れ を あ な た に 行 う で あ ろ う﹂
かれ い くに ねん
と﹄﹂。 一三ガデはダビデのもとにきて、彼に言った、
﹁あなたの国に三年
てき お げつてき まえ に
のききんをこさせようか。あなたが敵に追われて三か月敵の前に逃げ
くに か えきびょう
るようにしようか。それとも、あなたの国に三日の疫 病をおくろうか。
かんが こたえ かた
あなたは考えて、わたしがどの答を、わたしをつかわされた方になすべ
き い
きかを決めなさい﹂。 一四ダビデはガデに言った、﹁わたしはひじょうに
なや しゅ おお しゅ て おちい
サムエル記下

悩んでいますが、主のあわれみは大きいゆえ、われわれを主の手に陥ら
ひと て おちい
せてください。わたしを人の手には陥らせないでください﹂。
しゅ あさ さだ とき えきびょう くだ
一五 そ こ で 主 は 朝 か ら 定 め の 時 ま で 疫 病 を イ ス ラ エ ル に 下 さ れ た。ダ

119
たみ し もの にん てん つかい て
ンからベエルシバまでに民の死んだ者は七万人あった。 一六天の使が手
の ほろ しゅ がいあく く
をエルサレムに伸べてこれを滅ぼそうとしたが、主はこの害悪を悔い、
たみ ほろ てん つかい い いま
民を滅ぼしている天の使に言われた、﹁もはや、じゅうぶんである。今あ
て とき しゅ つかい
なたの手をとどめるがよい﹂。その時、主の使はエブスびとアラウナの
う ば たみ う てん つかい み
打 ち 場 の か た わ ら に い た。 一七ダ ビ デ は 民 を 撃 っ て い る 天 の 使 を 見 た
とき しゅ い つみ おか あく おこな
時、主に言った、
﹁わたしは罪を犯しました。わたしは悪を行いました。
ひつじ なに て
しかしこれらの羊たちは何をしたのですか。どうぞあなたの手をわた
ちち いえ む
しとわたしの父の家に向けてください﹂。
ひ かれ い のぼ い
一八 その日ガデはダビデのところにきて彼に言った、
﹁上って行ってエブ
う ば しゅ さいだん た
ス び と ア ラ ウ ナ の 打 ち 場 で 主 に 祭壇 を 建 て な さ い﹂。 一九ダ ビ デ は ガ デ
ことば したが しゅ めい のぼ い み
の言葉に従い、主の命じられたように上って行った。 二〇アラウナは見
おう じぶん ほう すす み
サムエル記下

おろして、王とそのしもべたちが自分の方に進んでくるのを見たので、
で おう まえ ち ふ はい
アラウナは出てきて王の前に地にひれ伏して拝した。 二一そしてアラウ
い おう しゅ ところ
ナは言った、
﹁どうして王わが主は、しもべの所にこられましたか﹂。ダ

120
い う ば か と しゅ さいだん きず たみ くだ
ビデは言った、﹁あなたから打ち場を買い取り、主に祭壇を築いて民に下
わざわい い おう
る災をとどめるためです﹂。 二二アラウナはダビデに言った、
﹁どうぞ王、
しゅ おも もの と はんさい うし
わが主のよいと思われる物を取ってささげてください。燔祭にする牛
だ こく き うし おう
も あ り ま す。た き ぎ に す る 打穀機 も 牛 の く び き も あ り ま す。 二三王 よ、
おう おう
アラウナはこれをことごとく王にささげます﹂。アラウナはまた王に、
かみ しゅ う い
﹁あなたの神、主があなたを受けいれられますように﹂と言った。 二四し
おう い だいか しはら
かし王はアラウナに言った、﹁いいえ、代価を支払ってそれをあなたから
か と ひよう はんさい かみ しゅ
買い取ります。わたしは費用をかけずに燔祭をわたしの神、主にささげ
ぎん う ば うし
ることはしません﹂。こうしてダビデは銀五十シケルで打ち場と牛とを
か と ところ しゅ さいだん きず はんさい しゅうおんさい
買い取った。 二五ダビデはその所で主に祭壇を築き、燔祭と酬 恩 祭をさ
しゅ ち いのり き わざわい
さげた。そこで主はその地のために祈を聞かれたので、 災がイスラエ
くだ
サムエル記下

ルに下ることはとどまった。

121
れ つ お う き じょう
列王紀 上
第一章
おう とし お よ ぎ き あたた
一ダビデ王は年がすすんで老い、夜着を着せても暖まらなかったので、二
けらい かれ い おう しゅ わか
その家来たちは彼に言った、﹁王わが主のために、ひとりの若いおとめを
さが もと おう おう つきそ ね おう
捜し求めて王にはべらせ、王の付添いとし、あなたのふところに寝て、王
しゅ あたた かれ
わ が 主 を 暖 め さ せ ま し ょ う﹂。 三そ し て 彼 ら は あ ま ね く イ ス ラ エ ル の
りょうど うつく さが もと え おう
領土に美しいおとめを捜し求めて、シュナミびとアビシャグを得、王の
つ ひじょう うつく おう つきそ おう
もとに連れてきた。 四おとめは非常に美しく、王の付添いとなって王に
つか おう かのじょ し
仕えたが、王は彼女を知ることがなかった。
こ たか おう い
五さてハギテの子アドニヤは高ぶって、
﹁わたしは王となろう﹂と言い、
じぶん せんしゃ きへい じぶん まえ か もの にん そな
列王紀上

自分のために戦車と騎兵および自分の前に駆ける者五十人を備えた。 六
かれ ちち かれ うま ど こと
彼の父は彼が生れてこのかた一度も﹁なぜ、そのような事をするのか﹂と

0
い かれ ひじょう すがた よ
言って彼をたしなめたことがなかった。アドニヤもまた非常に姿の良
ひと つぎ うま もの かれ こ
い人であって、アブサロムの次に生れた者である。 七彼がゼルヤの子ヨ
さいし そうだん かれ したが かれ
アブと祭司アビヤタルとに相談したので、彼らはアドニヤに従 って彼
たす さいし こ よげんしゃ
を助けた。 八しかし祭司ザドクと、エホヤダの子ベナヤと、預言者ナタ
ゆうし したが
ンおよびシメイとレイ、ならびにダビデの勇士たちはアドニヤに従わな
かった。
いし ひつじ
アドニヤはエンロゲルのほとりにある﹁へびの石﹂のかたわらで、 羊

うし こ かちく おう こ じぶん きょうだい おう
と牛と肥えた家畜をほふって、王の子である自分の兄 弟たち、および王
けらい ひとびと まね よげんしゃ
の家来であるユダの人々をことごとく招いた。 一〇しかし預言者ナタン
ゆうし じぶん きょうだい まね
と、ベナヤと、勇士たちと、自分の兄 弟 ソロモンとは招かなかった。
とき はは い こ
一一 時にナタンはソロモンの母バテシバに言った、
﹁ハギテの子アドニヤ
おう き しゅ
が王となったのをお聞きになりませんでしたか。われわれの主ダビデ
はか さづ
はそれをごぞんじないのです。 一二それでいま、あなたに計りごとを授
列王紀上

いのち こ いのち すく
けて、あなたの命と、あなたの子ソロモンの命を救うようにいたしま

1
おう い おう しゅ
しょう。 一三あなたはすぐダビデ王のところへ行って、
﹃王わが主よ、あ
ちか こ つ おう
なたは、はしために誓って、おまえの子ソロモンが、わたしに次いで王
くらい ざ い
となり、わたしの位に座するであろうと言われたではありませんか。そ
おう い
うであるのに、どうしてアドニヤが王となったのですか﹄と言いなさい。
おう はな あいだ
あなたがなお王と話しておられる間に、わたしもまた、あなたのあと
一四
い ことば かくにん
から、はいって行って、あなたの言葉を確認しましょう﹂。
しんしつ おう ところ い おう ひじょう お
そこでバテシバは寝室にはいって王の所へ行った。︵王は非常に老
一五
おう つか み
いて、シュナミびとアビシャグが王に仕えていた︶。 一六バテシバは身を
おう はい おう い なに よう かのじょ おう い
かがめて王を拝した。王は言った、
﹁何の用か﹂。 一七彼女は王に言った、
しゅ かみ しゅ ちか
﹁わが主よ、あなたは、あなたの神、主をさして、はしために誓い、
﹃お
こ つ おう くらい ざ
まえの子ソロモンがわたしに次いで王となり、わたしの位に座するであ
い いま
ろう﹄と言われました。 一八そうであるのに、ごらんなさい、今アドニヤ
おう おう しゅ
が王となりました。王わが主よ、あなたはそれをごぞんじないのです。
列王紀上

かれ うし こ かちく ひつじ おう こ
彼は牛と肥えた家畜と羊をたくさんほふって、王の子たち、および
一九

2
さいし ぐん ちょう まね
祭司アビヤタルと、軍の長 ヨアブを招きましたが、あなたのしもべソロ
まね おう しゅ め
モンは招きませんでした。 二〇王わが主よ、イスラエルのすべての目は
そそ つ おう しゅ くらい ざ
あなたに注がれ、だれがあなたに次いで、王わが主の位に座すべきかを
つ のぞ おう しゅ せんぞ とも ねむ
告 げ ら れ る の を 望 ん で い ま す。 二一王 わ が 主 が 先祖 と 共 に 眠 ら れ る と
こ む ほ ん ひと
き、わたしと、わたしの子ソロモンは謀叛人とみなされるでしょう﹂。
おう はな よげんしゃ
二二 バテシバがなお王と話しているうちに、預言者ナタンがはいってき
ひとびと おう つ よげんしゃ い
た。 二三人々は王に告げて、
﹁預言者ナタンがここにおります﹂と言った。
かれ おう まえ ち ふ おう はい い
彼は王の前にはいり、地に伏して王を拝した。 二四そしてナタンは言っ
おう しゅ つ おう
た、
﹁王わが主よ、あなたは、
﹃アドニヤがわたしに次いで王となり、わ
くらい ざ おお かれ くだ
たしの位に座するであろう﹄と仰せられましたか。 二五彼はきょう下っ
うし こ かちく ひつじ おう こ ぐん
ていって、牛と、肥えた家畜と羊をたくさんほふって、王の子たちと、軍
ちょう さいし まね かれ まえ
の長 ヨアブと、祭司アビヤタルを招きました。彼らはアドニヤの前で
く の ばんざい い
食い飲みして、
﹃アドニヤ万歳﹄と言いました。 二六しかし、あなたのし
列王紀上

さいし こ
もべであるわたしと、祭司ザドクと、エホヤダの子ベナヤと、あなたの

3
まね こと おう しゅ
しもべソロモンを招きませんでした。 二七この事は王わが主がさせられ
こと つ おう しゅ
た事ですか。あなたはしもべたちに、だれがあなたに次いで王わが主の
くらい ざ つ
位に座すべきかを告げられませんでした﹂。
おう こた い よ
二八 ダビデ王は答えて言った、﹁バテシバをわたしのところに呼びなさ
かのじょ おう まえ おう まえ た おう
い﹂。彼女 は 王 の 前 に は い っ て き て、王 の 前 に 立 っ た。 二九す る と 王 は
ちか い いのち くなん すく しゅ い
誓って言った、﹁わたしの命をすべての苦難から救われた主は生きてお
かみ しゅ ちか
られる。 三〇わたしがイスラエルの神、主をさしてあなたに誓い、
﹃あな
こ つ おう かわ
たの子ソロモンがわたしに次いで王となり、わたしに代って、わたしの
くらい ざ い
位に座するであろう﹄と言ったように、わたしはきょう、そのようにし
み ち ふ おう はい しゅ
よう﹂。 三一そこでバテシバは身をかがめ、地に伏して王を拝し、
﹁わが主
おう い い
ダビデ王が、とこしえに生きながらえられますように﹂と言った。
い さいし よげんしゃ こ
三二ダビデは言った、
﹁祭司ザドクと、預言者ナタンおよびエホヤダの子
ところ よ かれ おう まえ
ベ ナ ヤ を わ た し の 所 に 呼 び な さ い﹂。や が て 彼 ら は 王 の 前 に き た。 三三
列王紀上

おう かれ い しゅくん けらい つ こ
王は彼らに言った、﹁あなたがたの主君の家来たちを連れ、わが子ソロモ

4
ら ば の かれ みちび くだ ところ さいし
ンをわたしの騾馬に乗せ、彼を導いてギホンに下り、三四その所で祭司ザ
よげんしゃ かれ あぶら そそ おう
ドクと預言者ナタンは彼に油を注いでイスラエルの王としなさい。そ
ふ おうばんざい い
してラッパを吹いて、
﹃ソロモン王万歳﹄と言いなさい。 三五それから、あ
かれ したが のぼ かれ くらい ざ
なたがたは彼に従 って上ってきなさい。彼はきて、わたしの位に座し、
かわ おう かれ た
わたしに代って王となるであろう。わたしは彼を立ててイスラエルと
うえ しゅくん こ おう こた い
ユダの上に主君とする﹂。 三六エホヤダの子ベナヤは王に答えて言った、
ねが おう しゅくん かみ しゅ おお
﹁アァメン、願わくは、王わが主君の神、主もまたそう仰せられますよう
ねが しゅ おう しゅくん とも とも
に。 三七願わくは、主が王わが主君と共におられたように、ソロモンと共
くらい しゅくん おう くらい おお
におられて、その位をわが主君ダビデ王の位よりも大きくせられますよ
うに﹂。
さいし よげんしゃ こ
三八 そこで祭司ザドクと預言者ナタンおよびエホヤダの子ベナヤ、なら
くだ い おう
びにケレテびとと、ペレテびとは下って行って、ソロモンをダビデ王の
ら ば の かれ みちび い さいし まくや あぶら
騾馬に乗せ、彼をギホンに導いて行った。 三九祭司ザドクは幕屋から油
列王紀上

つの と あぶら そそ ふ な
の角を取ってきて、ソロモンに油を注いだ。そしてラッパを吹き鳴ら

5
たみ みな おうばんざい い たみ かれ したが のぼ
し、民は皆﹁ソロモン王万歳﹂と言った。 四〇民はみな彼に従 って上り、
ふえ ふ おお よろこ いわ ち かれ こえ さ
笛を吹いて大いに喜び祝った。地は彼らの声で裂けるばかりであった。
かれ とも きゃく みなしょくじ おわ
四一 アドニヤおよび彼と共にいた客たちは皆食事を終ったとき、これを
き おと き い まち なか さわ なに
聞いた。ヨアブはラッパの音を聞いて言った、﹁町の中のあの騒ぎは何
かれ ことば おわ さいし こ
か﹂。 四二彼の言葉のなお終らないうちに、そこへ祭司アビヤタルの子ヨ
かれ い
ナタンがきたので、アドニヤは彼に言った、﹁はいりなさい。あなたは
ゆうかん ひと し も こた
勇敢な人で、よい知らせを持ってきたのでしょう﹂。 四三ヨナタンは答え
い しゅくん おう おう
てアドニヤに言った、﹁いいえ、主君ダビデ王はソロモンを王とせられま
おう さいし よげんしゃ こ
し た。 四四王 は 祭司 ザ ド ク と 預言者 ナ タ ン お よ び エ ホ ヤ ダ の 子 ベ ナ ヤ、
とも
ならびにケレテびとと、ペレテびとをソロモンと共につかわされたの
かれ おう ら ば の い さいし よげんしゃ
で、彼らはソロモンを王の騾馬に乗せて行き、四五祭司ザドクと預言者ナ
かれ あぶら そそ おう かれ
タンはギホンで彼に油を注いで王としました。そして彼らがそこから
よろこ のぼ く まち さわ き こえ
喜んで上って来るので、町が騒がしいのです。あなたが聞いた声はそれ
列王紀上

おう くらい ざ おう けらい
なのです。 四六こうしてソロモンは王の位に座し、 四七かつ王の家来たち

6
しゅくん おう いわ の ねが かみ
がきて、主君ダビデ王に祝いを述べて、
﹃願わくは、あなたの神がソロモ
な な たか かれ くらい くらい おお
ンの名をあなたの名よりも高くし、彼の位をあなたの位よりも大きくさ
い おう ゆか うえ はい
れますように﹄と言いました。そして王は床の上で拝されました。 四八
おう い かみ しゅ しゅ
王はまたこう言われました、﹃イスラエルの神、主はほむべきかな。主は
くらい ざ こ あた み
きょう、わたしの位に座するひとりの子を与えて、これをわたしに見せ
てくださった﹄と﹂。
とき とも きゃく おどろ た じぶん みち
その時アドニヤと共にいた客はみな驚き、立っておのおの自分の道
四九
さ い おそ た い
に去って行った。 五〇そしてアドニヤはソロモンを恐れ、立って行って
さいだん つの ひと つ い
祭壇の角をつかんだ。 五一ある人がこれをソロモンに告げて言った、
﹁ア
おそ いまかれ さいだん つの
ドニヤはソロモンを恐れ、今彼は祭壇の角をつかんで、
﹃どうぞ、ソロモ
おう ころ ちか
ン王がきょう、つるぎをもってしもべを殺さないとわたしに誓ってくだ
い い かれ ひと
さるように﹄と言っています﹂。 五二ソロモンは言った、
﹁もし彼がよい人
かみ け ち お
となるならば、その髪の毛ひとすじも地に落ちることはなかろう。しか
列王紀上

かれ あく かれ し
し彼のうちに悪のあることがわかるならば、彼は死ななければならな

7
ひと かれ さいだん くだ かれ
い﹂。 五三ソ ロ モ ン は 人 を つ か わ し て 彼 を 祭壇 か ら つ れ て 下 ら せ た。彼
はい かれ いえ かえ い
がきてソロモンを拝したので、ソロモンは彼に﹁家に帰りなさい﹂と言っ
た。
第二章
し ひ ちか かれ こ めい い
一ダビデの死ぬ日が近づいたので、彼はその子ソロモンに命じて言っ
よ ひと い みち い
た、 二﹁わたしは世のすべての人の行く道を行こうとしている。あなた
つよ おとこ かみ しゅ まも
は強く、男らしくなければならない。 三あなたの神、主のさとしを守り、
みち あゆ さだ いまし りっぽう
その道に歩み、その定めと戒めと、おきてとあかしとを、モーセの律法
まも
にしるされているとおりに守らなければならない。そうすれば、あなた
こと む ところ さか
がするすべての事と、あなたの向かうすべての所で、あなたは栄えるで
しゅ かた こ
あろう。 四また主がさきにわたしについて語って﹃もしおまえの子たち
列王紀上

みち つつし こころ せいしん しんじつ


が、その道を慎み、 心をつくし、精神をつくして真実をもって、わたし

8
まえ あゆ つ くらい ひと か
の前に歩むならば、おまえに次いでイスラエルの位にのぼる人が、欠け
い ことば かくじつ
ることはなかろう﹄と言われた言葉を確実にされるであろう。
こ こと かれ
五またあなたはゼルヤの子ヨアブがわたしにした事、すなわち彼がイス
ぐん ちょう こ こ
ラエルのふたりの軍の長 ネルの子アブネルと、エテルの子アマサにし
こと し かれ ころ せんそう なが ち たいへい
た事を知っている。彼はこのふたりを殺して、戦争で流した地を太平の
とき むく つみ もの ち こし おび あし
時に報い、罪のない者の血をわたしの腰のまわりの帯と、わたしの足の
ち え こと おこな かれ
くつにつけた。 六それゆえ、あなたの知恵にしたがって事を行い、彼の
やす よ み くだ
し ら が を 安 ら か に 陰府 に 下 ら せ て は な ら な い。 七た だ し ギ レ ア デ び と
こ めぐ ほどこ かれ しょくたく しょくじ
バ ル ジ ラ イ の 子 ら に は 恵 み を 施 し、彼 ら を あ な た の 食 卓 で 食事 す る
ひとびと くわ かれ きょうだい
人々のうちに加えなさい。彼らはわたしがあなたの兄 弟 アブサロムを
さ に とき むか
避けて逃げた時、わたしを迎えてくれたからである。 八またバホリムの
こ とも かれ
ベニヤミンびとゲラの子シメイがあなたと共にいる。彼はわたしがマ
い とき はげ ことば
ハナイムへ行った時、激しいのろいの言葉をもってわたしをのろった。
列王紀上

かれ くだ むか しゅ
しかし彼がヨルダンへ下ってきて、わたしを迎えたので、わたしは主を

9
かれ ちか ころ い
さして彼に誓い、﹃わたしはつるぎをもってあなたを殺さない﹄と言っ
かれ つみ もの ち え
た。 九し か し 彼 を 罪 の な い 者 と し て は な ら な い。あ な た は 知恵 の あ る
ひと かれ こと し かれ ち
人であるから、彼になすべき事を知っている。あなたは彼のしらがを血
ぞ よ み くだ
に染めて陰府に下らせなければならない﹂。
せんぞ とも ねむ まち ほうむ
一〇 ダビデはその先祖と共に眠って、ダビデの町に葬られた。 一一ダビデ
おさ にっすう ねん
がイスラエルを治めた日数は四十年であった。すなわちヘブロンで七
ねん ねん おう
年、エルサレムで三十三年、王であった。 一二このようにしてソロモンは
ちち くらい ざ くに かた さだ
父ダビデの位に座し、国は堅く定まった。
こ はは
一三 さて、ハギテの子アドニヤがソロモンの母バテシバのところへきた
い おだ こと
ので、バテシバは言った、﹁あなたは穏やかな事のためにきたのですか﹂。
かれ い おだ こと かれ い
彼は言った、
﹁穏やかな事のためです﹂。 一四彼はまた言った、
﹁あなたに
もう こと い い かれ
申しあげる事があります﹂。バテシバは言った、
﹁言いなさい﹂。 一五彼は
い くに ひと みな
言った、
﹁ごぞんじのように、国はわたしのもので、イスラエルの人は皆
列王紀上

おう きたい くに てん
わたしが王になるものと期待していました。しかし国は転じて、わたし

10
きょうだい かれ しゅ で
の兄 弟のものとなりました。彼のものとなったのは、主から出たこと
いま ねが ことわ
です。 一六今わたしはあなたに一つのお願いがあります。 断らないでく
かれ い い かれ い
ださい﹂。バテシバは彼に言った、
﹁言いなさい﹂。 一七彼は言った、
﹁どう
おう こ おう ことわ
かソロモン王に請うて、︱︱王はあなたに断るようなことはないでしょ
あた つま
うから︱︱シュナミびとアビシャグをわたしに与えて妻にさせてくだ
い おう
さい﹂。 一八バテシバは言った、﹁よろしい。わたしはあなたのために王
はな
に話しましょう﹂。
おう はな おう
一九 バ テ シ バ は ア ド ニ ヤ の た め に ソ ロ モ ン 王 に 話 す た め、王 の も と へ
い おう た むか かのじょ はい おうざ つ おうはは ざ
行った。王は立って迎え、彼女を拝して王座に着き、王母のために座を
もう かのじょ おう みぎ ざ い
設けさせたので、彼女は王の右に座した。 二〇そこでバテシバは言った、
ちい ねが ことわ
﹁あなたに一つの小さいお願いがあります。お断りにならないでくださ
おう かのじょ い ははうえ ねが い
い﹂。王は彼女に言った、
﹁母上よ、あなたの願いを言ってください。わ
ことわ かのじょ い
たしは断らないでしょう﹂。 二一彼女は言った、
﹁どうぞ、シュナミびとア
列王紀上

きょうだい あた つま
ビシャグをあなたの兄 弟 アドニヤに与えて、妻にさせてください﹂。 二二

11
おう こた はは い
ソロモン王は答えて母に言った、﹁どうしてアドニヤのためにシュナミ
もと かれ くに もと
びとアビシャグを求められるのですか。彼のためには国をも求めなさ
かれ あに かれ みかた さいし こ
い。彼はわたしの兄で、彼の味方には祭司アビヤタルとゼルヤの子ヨア
おう しゅ ちか い
ブがいるのですから﹂。 二三そしてソロモン王は主をさして誓って言っ
ことば じぶん いのち うしな
た、﹁もしアドニヤがこの言葉によって自分の命を失うのでなければ、ど
ばっ た ちち
んなにでもわたしを罰してください。 二四わたしを立てて、父ダビデの
くらい しゅ やくそく いっ か あた
位にのぼらせ、主が約束されたように、わたしに一家を与えてくださっ
しゅ い さつ
た主は生きておられる。アドニヤはきょう殺されなければならない﹂。
おう こ かれ
二五ソロモン王はエホヤダの子ベナヤをつかわしたので、彼はアドニヤ
う ころ
を撃って殺した。
おう さいし い りょうち い
二六王はまた祭司アビヤタルに言った、
﹁あなたの領地アナトテへ行きな
し あた もの ちち まえ かみ
さい。あなたは死に当る者ですが、さきにわたしの父ダビデの前に神、
しゅ はこ ちち う くる とも
主の箱をかつぎ、またすべてわたしの父が受けた苦しみを、あなたも共
列王紀上

くる ころ
に苦しんだので、わたしは、きょうは、あなたを殺しません﹂。 二七そし

12
しゅ さ い し しょく ついほう しゅ
てソロモンはアビヤタルを主の祭司 職から追放した。こうして主がシ
いえ い しゅ ことば じょうじゅ
ロでエリの家について言われた主の言葉が成 就した。
し たっ しゅ まくや
二八 さてこの知らせがヨアブに達したので、ヨアブは主の幕屋にのがれ
さいだん つの し じ
て、祭壇の角をつかんだ。ヨアブはアブサロムを支持しなかったけれど
し じ しゅ まくや
も、アドニヤを支持したからである。 二九ヨアブが主の幕屋にのがれて、
さいだん おう つ もの
祭壇のかたわらにいることを、ソロモン王に告げる者があったので、ソ
おう こ い かれ う い
ロモン王はエホヤダの子ベナヤをつかわし、﹁行って彼を撃て﹂と言っ
しゅ まくや い かれ い おう で く
た。 三〇ベナヤは主の幕屋へ行って彼に言った、
﹁王はあなたに、出て来
もう かれ い し
るようにと申されます﹂。しかし彼は言った、
﹁いや、わたしはここで死
おう ふくめい い もう
にます﹂。ベナヤは王に復命して言った、﹁ヨアブはこう申しました。ま
こた おう い かれ い
たわたしにこう答えました﹂。 三一そこで王はベナヤに言った、﹁彼が言
かれ う ころ ほうむ なが ち
うようにし、彼を撃ち殺して葬り、ヨアブがゆえなく流した血のとがを
ちち いえ のぞ さ しゅ
わたしと、わたしの父の家から除き去りなさい。 三二主はまたヨアブが
列王紀上

ち なが こうい かれ じ し ん むく かれ
血を流した行為を、彼自身のこうべに報いられるであろう。これは彼が

13
じぶん ただ ひと ぐん ちょう
自分よりも正しいすぐれたふたりの人、すなわちイスラエルの軍の長
こ ぐん ちょう こ
ネルの子アブネルと、ユダの軍の長 エテルの子アマサを、つるぎをもっ
う ころ ちち し こと
て撃ち殺し、わたしの父ダビデのあずかり知らない事をしたからであ
かれ ち えいえん しそん
る。 三三それゆえ、彼らの血は永遠にヨアブのこうべと、その子孫のこう
き しそん いえ くらい
べに帰すであろう。しかしダビデと、その子孫と、その家と、その位と
しゅ たま へいあん えいきゅう
には、主から賜わる平安が永 久にあるであろう﹂。 三四そこでエホヤダの
こ のぼ かれ う ころ かれ あらの じぶん いえ
子ベナヤは上っていって、彼を撃ち殺した。彼は荒野にある自分の家に
ほうむ おう こ かわ ぐん ちょう
葬られた。 三五王はエホヤダの子ベナヤを、ヨアブに代って軍の長とし
おう さいし かわ
た。王はまた祭司ザドクをアビヤタルに代らせた。
おう ひと め い
三六 また王は人をつかわし、シメイを召して言った、
﹁あなたはエルサレ
じぶん いえ た す
ムのうちに、自分のために家を建てて、そこに住み、そこからどこへも
で で かわ わた ひ かなら ころ
出てはならない。 三七あなたが出て、キデロン川を渡る日には必ず殺さ
し ち
れることを、しかと知らなければならない。あなたの血はあなたのこう
列王紀上

き おう い ことば けっこう おう
べに帰すであろう﹂。 三八シメイは王に言った、
﹁お言葉は結構です。王、

14
しゅ おお
わが主の仰せられるとおりに、しもべはいたしましょう﹂。こうしてシ
ひさ す
メイは久しくエルサレムに住んだ。
ねん のち どれい おう こ
ところが三年の後、シメイのふたりの奴隷が、ガテの王マアカの子ア
三九
に さ ひとびと つ
キシのところへ逃げ去った。人々がシメイに告げて、﹁ごらんなさい、あ
どれい い た
なたの奴隷はガテにいます﹂と言ったので、 四〇シメイは立って、ろばに
お い どれい たず
くらを置き、ガテのアキシのところへ行って、その奴隷を尋ねた。すな
い どれい つ
わちシメイは行ってその奴隷をガテから連れてきたが、 四一シメイがエ
い かえ おう きこ
ルサレムからガテへ行って帰ったことがソロモン王に聞えたので、 四二
おう ひと め い しゅ
王は人をつかわし、シメイを召して言った、﹁わたしはあなたに主をさし
ちか いまし で ゆ
て誓わせ、かつおごそかにあなたを戒めて、
﹃あなたが出て、どこかへ行
ひ かなら ころ し い
く日には、 必ず殺されることを、しかと知らなければならない﹄と言っ
ことば けっこう したが
たではないか。そしてあなたは、わたしに﹃お言葉は結構です。 従いま
い しゅ たい ちか
す﹄と言った。 四三ところで、あなたはなぜ主に対する誓いと、わたしが
列王紀上

めい めいれい まも おう い
命じた命令を守らなかったのか﹂。 四四王はまたシメイに言った、﹁あな

15
じぶん こころ ちち あく し
たは自分の心に、あなたがわたしの父ダビデにしたもろもろの悪を知っ
しゅ あく むく
ている。主はあなたの悪をあなたのこうべに報いられるであろう。 四五
おう しゅくふく くらい えいきゅう しゅ まえ かた た
しかしソロモン王は祝 福をうけ、ダビデの位は永 久に主の前に堅く立
おう こ めい かれ で
つであろう﹂。 四六王がエホヤダの子ベナヤに命じたので、彼は出ていっ
う ころ くに て かた た
てシメイを撃ち殺した。こうして国はソロモンの手に堅く立った。
第三章
おう おう ふち むす むすめ
一ソロモン王はエジプトの王パロと縁を結び、パロの娘をめとってダビ
まち つ じぶん いえ しゅ みや しゅうい じょうへき
デの町に連れてきて、自分の家と、主の宮と、エルサレムの周囲の城 壁
た おわ しゅ な た
を 建 て 終 る ま で そ こ に お ら せ た。 二そ の こ ろ ま で 主 の 名 の た め に 建 て
みや たみ たか ところ ぎせい
た宮がなかったので、民は高き所で犠牲をささげていた。
しゅ あい ちち さだ あゆ かれ たか ところ
ソロモンは主を愛し、父ダビデの定めに歩んだが、ただ彼は高き所で
列王紀上


ぎせい こう ひ おう い
犠牲をささげ、香をたいた。 四ある日、王はギベオンへ行って、そこで

16
ぎせい しゅよう たか ところ
犠牲 を さ さ げ よ う と し た。そ れ が 主要 な 高 き 所 で あ っ た か ら で あ る。
はんさい さいだん しゅ よ
ソ ロ モ ン は 一 千 の 燔祭 を そ の 祭壇 に さ さ げ た。 五ギ ベ オ ン で 主 は 夜 の
ゆめ あらわ い なに あた もと
夢にソロモンに現れて言われた、﹁あなたに何を与えようか、求めなさ
い ちち
い﹂。 六ソロモンは言った、
﹁あなたのしもべであるわたしの父ダビデが
たい せいじつ こうぎ まごころ まえ あゆ
あなたに対して誠実と公義と真心とをもって、あなたの前に歩んだの
おお かれ しめ かれ
で、あなたは大いなるいつくしみを彼に示されました。またあなたは彼
おお こんにち かれ くらい ざ
のために、この大いなるいつくしみをたくわえて、今日、彼の位に座す
こ さづ かみ しゅ
る子を授けられました。 七わが神、主よ、あなたはこのしもべを、わた
ちち かわ おう ちい
しの父ダビデに代って王とならせられました。しかし、わたしは小さい
こども で い し
子供であって、出入りすることを知りません。 八かつ、しもべはあなた
えら たみ かず おお かぞ しら
が選ばれた、あなたの民、すなわちその数が多くて、数えることも、調
たみ なか
べ る こ と も で き な い ほ ど の お び た だ し い 民 の 中 に お り ま す。 九そ れ ゆ
き こころ あた たみ
え、聞きわける心をしもべに与えて、あなたの民をさばかせ、わたしに
列王紀上

ぜんあく え おお
善悪をわきまえることを得させてください。だれが、あなたのこの大い

17
たみ
なる民をさばくことができましょう﹂。
こと もと しゅ
ソロモンはこの事を求めたので、そのことが主のみこころにかなっ
一〇
かみ かれ い こと もと じぶん
た。 一一そこで神は彼に言われた、
﹁あなたはこの事を求めて、自分のた
ちょうめい もと じぶん とみ もと じぶん てき いのち
めに長 命を求めず、また自分のために富を求めず、また自分の敵の命を
もと うった ち え もと み
も求めず、ただ訴えをききわける知恵を求めたゆえに、 一二見よ、わたし
ことば かしこ えいめい こころ あた さき
はあなたの言葉にしたがって、賢い、英明な心を与える。あなたの先に
なら もの のち なら もの おこ
はあなたに並ぶ者がなく、あなたの後にもあなたに並ぶ者は起らないで
もと とみ ほまれ
あろう。 一三わたしはまたあなたの求めないもの、すなわち富と誉をも
あた い おう
あなたに与える。あなたの生きているかぎり、王たちのうちにあなたに
なら もの ちち あゆ
並ぶ者はないであろう。 一四もしあなたが、あなたの父ダビデの歩んだ
みち あゆ さだ めいれい まも
ように、わたしの道に歩んで、わたしの定めと命令とを守るならば、わ
ひ なが
たしはあなたの日を長くするであろう﹂。
め ゆめ かれ
ソロモンが目をさましてみると、それは夢であった。そこで彼はエ
列王紀上

一五
い しゅ けいやく はこ まえ た はんさい しゅうおんさい
ルサレムへ行き、主の契約の箱の前に立って燔祭と酬 恩 祭をささげ、す

18
けらい しゅくえん もう
べての家来のために祝 宴を設けた。
ゆうじょ おう おう まえ た
一六 さて、ふたりの遊女が王のところにきて、王の前に立った。 一七ひと
おんな い しゅ おんな いえ す
りの女は言った、
﹁ああ、わが主よ、この女とわたしとはひとつの家に住
おんな いっしょ いえ とき こ う
んでいますが、わたしはこの女と一緒に家にいる時、子を産みました。 一
う のち か め おんな こ う
ところがわたしの産んだ後、三日目にこの女もまた子を産みました。

いっしょ いえ
そしてわたしたちは一緒にいましたが、家にはほかにだれもわたしたち
とも もの
と共にいた者はなく、ただわたしたちふたりだけでした。 一九ところが
おんな じぶん こ うえ ふ よる こ し
この女は自分の子の上に伏したので、夜のうちにその子は死にました。
かのじょ よなか お ねむ あいだ こ
二〇 彼女は夜中に起きて、はしための眠っている間に、わたしの子をわた
と じぶん ね じぶん し こ
しのかたわらから取って、自分のふところに寝かせ、自分の死んだ子を
ね あさ こ ちち の
わたしのふところに寝かせました。 二一わたしは朝、子に乳を飲ませよ
お み し あさ み
うとして起きて見ると死んでいました。しかし朝になってよく見ると、
う こ おんな い
それはわたしが産んだ子ではありませんでした﹂。 二二ほかの女は言っ
列王紀上

い こ し こ
た、﹁いいえ、生きているのがわたしの子です。死んだのはあなたの子で

19
はじ おんな い し こ い
す﹂。初めの女は言った、
﹁いいえ、死んだのがあなたの子です。生きて
こ かれ おう まえ い あ
いるのはわたしの子です﹂。彼らはこのように王の前に言い合った。
とき おう い い こ
二三 この時、王は言った、
﹁ひとりは﹃この生きているのがわたしの子で、
し こ い し
死んだのがあなたの子だ﹄と言い、またひとりは﹃いいえ、死んだのが
こ い こ い おう
あなたの子で、生きているのはわたしの子だ﹄と言う﹂。 二四そこで王は
かたな も い かたな おう まえ も おう
﹁刀を持ってきなさい﹂と言ったので、 刀を王の前に持ってきた。 二五王
い い こ わ はんぶん はんぶん
は言った、
﹁生きている子を二つに分けて、半分をこちらに、半分をあち
あた い こ はは おんな こ
らに与えよ﹂。 二六すると生きている子の母である女は、その子のために
こころ おう い しゅ い こ
心がやけるようになって、王に言った、
﹁ああ、わが主よ、生きている子
かのじょ あた けっ ころ
を彼女に与えてください。決してそれを殺さないでください﹂。しかし

ほかのひとりは言った、﹁それをわたしのものにも、あなたのものにもし
わ おう こた い い こ
ないで、分けてください﹂。 二七すると王は答えて言った、
﹁生きている子
はじ おんな あた けっ ころ かのじょ はは
を 初 め の 女 に 与 え よ。決 し て 殺 し て は な ら な い。彼女 は そ の 母 な の
列王紀上

みなおう あた はんけつ き おう おそ かみ
だ﹂。 二 八イ ス ラ エ ル は 皆王 が 与 え た 判決 を 聞 い て 王 を 恐 れ た。神 の

20
ち え かれ み
知恵が彼のうちにあって、さばきをするのを見たからである。
第四章
おう ぜん ち おう かれ こうかん つぎ
一ソロモン王はイスラエルの全地の王であった。 二彼の高官たちは次の
こ さいし こ
と お り で あ る。ザ ド ク の 子 ア ザ リ ヤ は 祭司。 三シ シ ャ の 子 エ リ ホ レ フ
しょきかん こ しかん こ
と ア ヒ ヤ は 書記官。ア ヒ ル デ の 子 ヨ シ ャ バ テ は 史官。 四エ ホ ヤ ダ の 子
ぐん ちょう さいし こ
ベ ナ ヤ は 軍 の 長。ザ ド ク と ア ビ ヤ タ ル は 祭司。 五ナ タ ン の 子 ア ザ リ ヤ
だいかん ちょう こ さいし おう とも
は代官の長。ナタンの子ザブデは祭司で、王の友であった。 六アヒシャ
くないきょう こ ちょうぼ ちょう
ルは宮内卿。アブダの子アドニラムは徴募の長であった。
ぜん ち にん だいかん お
七ソ ロ モ ン は ま た イ ス ラ エ ル の 全地 に 十 二 人 の 代官 を 置 い た。そ の
ひとびと おう いえ しょくもつ そな ねん
人々は王とその家のために食 物を備えた。すなわちおのおの一年に一
つき しょくもつ そな な つぎ
月ずつ食 物を備えるのであった。 八その名は次のとおりである。エフ
列王紀上

さんち
ライムの山地にはベンホル。 九マカヅと、シャラビムと、ベテシメシと、

21
かれ
エロン・ベテハナンにはベンデケル。 一〇アルボテにはベンヘセデ、︵彼
ぜん ち たんとう こうち ぜんぶ
はソコとヘペルの全地を担当した︶。 一一ドルの高地の全部にはベン・ア
かれ むすめ つま こ
ビナダブ、︵彼はソロモンの娘 タパテを妻とした︶。 一二アヒルデの子バ
した
アナはタアナクとメギドと、エズレルの下、ザレタンのかたわらにある
ぜん ち たんとう いた
ベテシャンの全地を担当して、ベテシャンからアベル・メホラに至り、ヨ
む およ
クメアムの向こうにまで及んだ。 一三ラモテ・ギレアデにはベンゲベル、
かれ こ むらむら たんとう
︵彼はギレアデにあるマナセの子ヤイルの村々を担当し、またバシャン
ちほう じょうへき せいどう かん き おお まち
に あ る ア ル ゴ ブ の 地方 の 城 壁 と 青銅 の 貫 の 木 の あ る 大 き な 町 六 十 を
たんとう こ
担当した︶。 一四マハナイムにはイドの子アヒナダブ。 一五ナフタリには
かれ むすめ つま
アヒマアズ、︵彼もソロモンの娘 バスマテを妻にめとった︶。 一六アセル
こ こ
とベアロテにはホシャイの子バアナ。 一七イッサカルにはパルアの子ヨ
こ おう
シャパテ。 一八ベニヤミンにはエラの子シメイ。 一九アモリびとの王シホ
ち おう ち ち こ
ンの地およびバシャンの王オグの地なるギレアデの地にはウリの子ゲ
列王紀上

かれ ち だいかん
ベル。彼はその地のただひとりの代官であった。

22
ひとびと おお うみ すな かれ
ユダとイスラエルの人々は多くて、海べの砂のようであったが、彼ら
二〇
の く たの かわ
は飲み食いして楽しんだ。 二一ソロモンはユフラテ川からペリシテびと
ち さかい いた しょこく おさ みな もの たずさ
の地と、エジプトの境に至るまでの諸国を治めたので、皆みつぎ物を携
いっしょう つか
えてきて、ソロモンの一 生のあいだ仕えた。
にち しょくもつ こま むぎこ あら むぎこ
さてソロモンの一日の食 物は細かい麦粉三十コル、荒い麦粉六十コ
二二
こ うし とう まきば うし とう ひつじ とう お
ル、 二三肥えた牛十頭、牧場の牛二十頭、 羊 百頭で、そのほかに雄じか、
こ とり
かもしか、こじか、および肥えた鳥があった。 二四これはソロモンがユフ
かわ にし ちほう おさ
ラテ川の西の地方をテフサからガザまで、ことごとく治めたからであ
かれ かわ にし しょおう おさ しゅういいた ところ
る。すなわち彼はユフラテ川の西の諸王をことごとく治め、周囲至る所
へいあん え いっしょう あいだ
に平安を得た。 二五ソロモンの一 生の間、ユダとイスラエルはダンから
いた やす じぶん き した
ベエルシバに至るまで、安らかにおのおの自分たちのぶどうの木の下
き した す せんしゃ うま
と、いちじくの木の下に住んだ。 二六ソロモンはまた戦車の馬の、うまや
きへい も だいかん
四千と、騎兵一万二千を持っていた。 二七そしてそれらの代官たちはお
列王紀上

とうばん つき おう おう しょくたく
のおの当番の月にソロモン王のため、およびすべてソロモン王の食 卓

23
つら もの しょくもつ そな か
に連なる者のために、 食 物を備えて欠けることのないようにした。 二八
かれ わりあて うま はやうま く
ま た 彼 ら は お の お の そ の 割当 に し た が っ て 馬 お よ び 早馬 に 食 わ せ る
おおむぎ うま ところ も
大麦とわらを、その馬のいる所に持ってきた。
かみ ひじょう おお ち え さと さづ うみ すなはら
二九神はソロモンに非常に多くの知恵と悟りを授け、また海べの砂原の
ひろ こころ さづ ち え ひがし ひとびと ち え
ように広い心を授けられた。 三〇ソロモンの知恵は東の人々の知恵とエ
ち え かれ ひと かしこ
ジプトのすべての知恵にまさった。 三一彼はすべての人よりも賢く、エ

ズラびとエタンよりも、またマホルの子ヘマン、カルコル、ダルダより
かしこ めいせい しゅうい くにぐに きこ かれ しんげん
も賢く、その名声は周囲のすべての国々に聞えた。 三二彼はまた箴言三
と うた しゅ かれ くさき
千を説いた。またその歌は一千五首あった。 三三彼はまた草木のことを
ろん こうはく いし およ かれ
論じてレバノンの香柏から石がきにはえるヒソプにまで及んだ。彼は
けもの とり は うお ろん しょこく ひとびと
また獣と鳥と這うものと魚のことを論じた。 三四諸国の人々はソロモン
ち え き ち しょおう ち え き ひと
の知恵を聞くためにきた。地の諸王はソロモンの知恵を聞いて人をつ
かわした。
列王紀上

24
第五章
おう あぶら そそ ちち かわ おう
一さてツロの王ヒラムは、ソロモンが油を注がれ、その父に代って、王
き けらい つね
となったのを聞いて、家来をソロモンにつかわした。ヒラムは常にダビ
あい ひと
デ を 愛 し た か ら で あ る。 二そ こ で ソ ロ モ ン は ヒ ラ ム に 人 を つ か わ し て
い し ちち しゅうい てき
言った、 三﹁あなたの知られるとおり、父ダビデはその周囲にあった敵
たたか かれ かみ しゅ な みや た しゅ
との戦いのゆえに、彼の神、主の名のために宮を建てることができず、主
かれ あし うら した お ま いま
が 彼 ら を そ の 足 の 裏 の 下 に 置 か れ る の を 待 ち ま し た。 四と こ ろ が 今 わ
かみ しゅ しほう たいへい たま てき わざわい
が神、主はわたしに四方の太平を賜わって、敵もなく、 災もなくなった
しゅ ちち かわ くらい
ので、 五主が父ダビデに﹃おまえに代って、おまえの位に、わたしがつ
こ ひと な みや た い
かせるおまえの子、その人がわが名のために宮を建てるであろう﹄と言
かみ しゅ な みや た おも
われたように、わが神、主の名のために宮を建てようと思います。 六そ
めいれい くだ こうはく き
れゆえ、あなたは命令を下して、レバノンの香柏をわたしのために切り
列王紀上

だ いっしょ
出させてください。わたしのしもべたちをあなたのしもべたちと一緒

25
はたら
に働かせます。またわたしはすべてあなたのおっしゃるとおり、あなた
ちんぎん はら し
のしもべたちの賃銀をあなたに払います。あなたの知られるとおり、わ
き き たく ひと
たしたちのうちにはシドンびとのように木を切るに巧みな人がないか
らです﹂。
ことば き おお よろこ しゅ
七ヒラムはソロモンの言葉を聞いて大いに喜び、
﹁きょう、主はあがむべ
しゅ たみ おさ かしこ こ たま
きかな。主はこのおびただしい民を治める賢い子をダビデに賜わった﹂
い ひと い
と言った。 八そしてヒラムはソロモンに人をつかわして言った、﹁わた
もう き こうはく ざいもく
しはあなたが申しおくられたことを聞きました。香柏の材木と、いとす
ざいもく のぞ
ぎの材木については、すべてお望みのようにいたします。 九わたしのし
うみ はこ
もべどもにそれをレバノンから海に運びおろさせましょう。わたしは
く かいろ し じ ば しょ おく
それをいかだに組んで、海路、あなたの指示される場所まで送り、そこ
う と
でそれをくずしましょう。あなたはそれを受け取ってください。また、
いえ しょくもつ きょうきゅう のぞ
あなたはわたしの家のために食 物を供 給して、わたしの望みをかなえ
列王紀上

のぞ
て く だ さ い﹂。 一 〇こ う し て ヒ ラ ム は ソ ロ モ ン に す べ て 望 み の よ う に

26
こうはく ざいもく ざいもく あた
香柏の材木と、いとすぎの材木を与えた。 一一またソロモンはヒラムに
いえ しょくもつ こむぎ あた と
その家の食 物として小麦二万コルを与え、またオリブをつぶして取っ
あぶら あた ねんねん あた
た 油 二 万 コ ル を 与 え た。こ の よ う に ソ ロ モ ン は 年々 ヒ ラ ム に 与 え た。
しゅ やくそく ち え たま
一二 主は約束されたようにソロモンに知恵を賜わった。またヒラムとソ
あいだ へいわ かれ じょうやく むす
ロモンの間は平和であって、彼らふたりは条 約を結んだ。
おう ぜん ち きょうせいてき ろうどうしゃ ちょうぼ
一三 ソ ロ モ ン 王 は イ ス ラ エ ル の 全地 か ら 強 制 的 に 労働者 を 徴募 し た。
ちょうぼじんいん にん かれ げつこうたい
その徴募人員は三万人であった。 一四ソロモンは彼らを一か月交代に一
にん げつ げついえ
万人ずつレバノンにつかわした。すなわち一か月レバノンに、二か月家
ちょうぼ かんとく に
にあり、アドニラムは徴募の監督であった。 一五ソロモンにはまた荷を
お もの にん やま いし き もの にん
負う者が七万人、山で石を切る者が八万人あった。 一六ほかにソロモン
こうじ かんとく うわやく かんり にん こうじ はたら たみ
には工事を監督する上役の官吏が三千三百人あって、工事に働く民を
かんとく おう めい おお こうか いし き だ き いし
監督した。 一七王は命じて大きい高価な石を切り出させ、切り石をもっ
みや もとい けんちくしゃ
て 宮 の 基 を す え さ せ た。 一 八こ う し て ソ ロ モ ン の 建築者 と、ヒ ラ ム の
列王紀上

けんちくしゃ いし き ざいもく いし みや た そな
建築者およびゲバルびとは石を切り、材木と石とを宮を建てるために備

27
えた。
第六章
ひとびと ち で のち ねん
一イスラエルの人々がエジプトの地を出て後四百八十年、ソロモンがイ
おう だい ねん つき がつ しゅ
スラエルの王となって第四年のジフの月すなわち二月に、ソロモンは主
みや た はじ おう しゅ た
の た め に 宮 を 建 て る こ と を 始 め た。 二ソ ロ モ ン 王 が 主 の た め に 建 て た
みや なが はば たか
宮は長さ六十キュビト、幅二十キュビト、高さ三十キュビトであった。 三
みや はいでん まえ ろう みや はば なが はば みや
宮の拝殿の前の廊は宮の幅にしたがって長さ二十キュビト、その幅は宮
まえ かれ みや うちがわ ひろ わく まど つく
の前で十キュビトであった。 四彼は宮に、内側の広い枠の窓を造った。 五
みや かべ しゅうい わきや もう みや かべ はいでん ほんでん かべ
また宮の壁につけて周囲に脇屋を設け、宮の壁すなわち拝殿と本殿の壁
しゅうい た みや しゅうい わきま した わきま
の周囲に建てめぐらし、宮の周囲に脇間があるようにした。 六下の脇間
ひろ なか ひろ だい ひろ
は広さ五キュビト、中の広さ六キュビト、第三のは広さ七キュビトで
列王紀上

みや そとがわ かべ だん つく はり みや かべ なか さ こ
あった。宮の外側には壁に段を造って、梁を宮の壁の中に差し込まない

28
ようにした。
みや た とき いし き ば き ととの いし つく た
七宮は建てる時に、石切り場で切り整えた石をもって造ったので、建て
あいだ みや た てっ き おと きこ
ている間は宮のうちには、つちも、おのも、その他の鉄器もその音が聞
えなかった。
した わきま いりぐち みや みぎがわ まわ かいだん なか わきま なか
八下の脇間の入口は宮の右側にあり、回り階段によって中の脇間に、中
わきま だい わきま かれ みや た おわ こうはく
の脇間から第三の脇間にのぼった。 九こうして彼は宮を建て終り、香柏
いた みや てんじょう つく みや
のたるきと板をもって宮の天 井を造った。 一〇また宮につけて、おのお
たか わきま わきや た こうはく ざいもく
の高さ五キュビトの脇間のある脇屋を建てめぐらし、香柏の材木をもっ
みや せつぞく
て宮に接続させた。
しゅ ことば のぞ た みや
一一 そこで主の言葉がソロモンに臨んだ、 一二﹁あなたが建てるこの宮に
さだ あゆ おこな
ついては、もしあなたがわたしの定めに歩み、おきてを行い、すべての
いまし まも したが あゆ ちち
戒めを守り、それに従 って歩むならば、わたしはあなたの父ダビデに
やくそく じょうじゅ ひとびと
約束したことを成 就する。 一三そしてわたしはイスラエルの人々のうち
列王紀上

す たみ す
に住み、わたしの民イスラエルを捨てることはない﹂。

29
みや た おわ かれ こうはく いた みや
一四 こうしてソロモンは宮を建て終った。 一五彼は香柏の板をもって宮
かべ うちがわ は みや ゆか てんじょう こうはく いた
の壁の内側を張った。すなわち宮の床から天 井のたるきまで香柏の板
は いた みや ゆか は みや
で張った。また、いとすぎの板をもって宮の床を張った。 一六また宮の
おく しつ ゆか てんじょう こうはく いた
奥 に 二 十 キ ュ ビ ト の 室 を 床 か ら 天 井 の た る き ま で 香柏 の 板 を も っ て
つく みや うち しせいじょ ほんどう つく みや
造った。すなわち宮の内に至聖所としての本堂を造った。 一七宮すなわ
ほんでん まえ はいでん なが みや うちがわ
ち 本殿 の 前 に あ る 拝殿 は 長 さ 四 十 キ ュ ビ ト で あ っ た。 一 八宮 の 内側 の
こうはく いた かたち さ はな うきぼり こうはく
香柏の板は、ひさごの形と、咲いた花を浮彫りにしたもので、みな香柏
いた いし み しゅ けいやく はこ お みや
の板で、石は見えなかった。 一九そして主の契約の箱を置くために、宮の
うち おく ほんでん もう ほんでん なが はば
内の奥に本殿を設けた。 二〇本殿は長さ二十キュビト、幅二十キュビト、
たか じゅんきん こうはく さいだん
高さ二十キュビトであって、 純 金でこれをおおった。また香柏の祭壇
つく じゅんきん みや うちがわ ほんでん まえ
を造った。 二一ソロモンは純 金をもって宮の内側をおおい、本殿の前に
きん くさり へだ つく きん きん
金の鎖をもって隔てを造り、金をもってこれをおおった。 二二また金を
のこ みや みや かざ お
もって残らず宮をおおい、ついに宮を飾ることをことごとく終えた。ま
列王紀上

ほんでん ぞく さいだん きん
た本殿に属する祭壇をことごとく金でおおった。

30
ほんでん き つく たか
本殿のうちにオリブの木をもって二つのケルビムを造った。その高
二三
つばさ なが
さはおのおの十キュビト。 二四そのケルブの一つの翼の長さは五キュビ
た つばさ なが つばさ
ト、またそのケルブの他の翼の長さも五キュビトであった。一つの翼の
はし た つばさ はし た
端から他の翼の端までは十キュビトあった。 二五他のケルブも十キュビ
おな すんぽう おな かたち
トであって、二つのケルビムは同じ寸法、同じ形であった。 二六このケル
たか たか おな
ブの高さは十キュビト、かのケルブの高さも同じであった。 二七ソロモ
みや おく つばさ の
ンは宮のうちの奥にケルビムをすえた。ケルビムの翼を伸ばしたとこ
つばさ かべ たっ つばさ かべ たっ た
ろ、このケルブの翼はこの壁に達し、かのケルブの翼はかの壁に達し、他
つばさ みや なか たがい ふ あ かれ きん
の二つの翼は宮の中で互に触れ合った。 二八彼は金をもってそのケルビ
ムをおおった。
かれ みや しゅうい かべ ないがい しつ みな き さ
彼は宮の周囲の壁に、内外の室とも皆ケルビムと、しゅろの木と、咲
二九
はな かたち ほ もの きざ みや ゆか ないがい しつ きん
いた花の形の彫り物を刻み、 三〇宮の床は、内外の室とも金でおおった。
ほんでん いりぐち き つく うえ
本殿の入口にはオリブの木のとびらを造った。そのとびらの上のか
列王紀上

三一
わきばしら へんけい
まちと脇 柱とで五辺形をなしていた。 三二その二つのとびらもオリブの

31
き うえ き さ はな
木であって、ソロモンはその上にケルビムと、しゅろの木と、咲いた花
かたち きざ きん き
の形を刻み、金をもっておおった。すなわちケルビムと、しゅろの木の
うえ きん き
上に金を着せた。
はいでん いりぐち き しかく かたち
三三 こうしてソロモンはまた拝殿の入口のためにオリブの木で四角の形
わきばしら つく
に脇 柱を造った。 三四その二つのとびらはいとすぎであって、一つのと
お と た お と
びらは二つにたたむ折り戸であり、他のとびらも二つにたたむ折り戸で
うえ き さ はな
あった。 三五ソロモンはその上にケルビムと、しゅろの木と、咲いた花を
きざ きん ほ もの うえ かたち き いし
刻み、金をもって彫り物の上を形どおりにおおった。 三六また切り石三
こうはく かくざい うちにわ つく
かさねと、香柏の角材ひとかさねとをもって内庭を造った。
だい ねん つき しゅ みや もとい だい ねん つき
三七 第四年のジフの月に主の宮の基をすえ、 三八第十一年のブルの月すな
がつ みや ぶぶん せっけい かんせい
わち八月に、宮のすべての部分が設計どおりに完成した。ソロモンはこ
た ねん よう
れを建てるのに七年を要した。
列王紀上

32
第七章
じぶん いえ た ねん いえ ぜんぶ た
一またソロモンは自分の家を建てたが、十三年かかってその家を全部建
おわ
て終った。
かれ もり いえ た なが はば
二彼はレバノンの森の家を建てた。長さ百キュビト、幅五十キュビト、
たか れつ こうはく はしら はしら うえ こうはく はり
高さ三十キュビトで、三列の香柏の柱があり、その柱の上に香柏の梁が
ほん はしら うえ しつ こうはく いた はしら かく
あった。 三四十五本の柱の上にある室は香柏の板でおおった。 柱は各
れつ ほん まど れつ まど まど だん む
列 十 五 本 あ っ た。 四ま た 窓 わ く が 三 列 あ っ て、窓 と 窓 と 三 段 に 向 か い
あ とぐち まど しかく わく まど まど だん む
合っていた。 五戸口と窓はみな四角の枠をもち、窓と窓と三段に向かい

合った。
はしら ひろま つく なが はば
六また柱の広間を造った。長さ五十キュビト、幅三十キュビトであっ
はしら まえ ひろま げんかん はしら
た。 柱の前に一つの広間があり、その玄関に柱とひさしがあった。
しんぱん ぎょくざ ひろま しんぱん
またソロモンはみずから審判をするために玉座の広間、すなわち審判
列王紀上


ひろま つく ゆか こうはく
の広間を造った。床からたるきまで香柏をもっておおった。

33
す きゅうでん ひろま た にわ
八ソロモンが住んだ宮 殿はその広間のうしろの他の庭にあって、その
ぞうさ おな かれ むすめ
造作は同じであった。ソロモンはまた彼がめとったパロの娘のために
いえ た ひろま おな
家を建てたが、その広間と同じであった。
ないがい どだい のき しゅ みや にわ おおにわ
九これらはみな内外とも、土台から軒まで、また主の宮の庭から大庭ま
すんぽう あ き いし こうか いし
で、寸法に合わせて切った石、すなわち、のこぎりでひいた高価な石で
つく どだい こうか いし おお いし
造られた。 一〇また土台は高価な石、大きな石、すなわち八キュビトの
いし いし うえ すんぽう あ き
石、十 キ ュ ビ ト の 石 で あ っ た。 一 一そ の 上 に は 寸法 に 合 わ せ て 切 っ た
こうか いし こうはく おおにわ しゅうい き いし
高価な石と香柏とがあった。 一二また大庭の周囲には三かさねの切り石
こうはく かくざい しゅ みや うちにわ きゅうでん ひろま にわ
と、一かさねの香柏の角材があった。主の宮の内庭と宮 殿の広間の庭
ばあい おな
の場合と同じである。
おう ひと よ かれ
一三 ソロモン王は人をつかわしてツロからヒラムを呼んできた。 一四彼
ぶぞく か ふ こ ちち ひと せいどう
はナフタリの部族の寡婦の子であって、その父はツロの人で、青銅の
さいくにん せいどう さいく ち え さと
細工人であった。ヒラムは青銅のいろいろな細工をする知恵と悟りと
列王紀上

ちしき み もの おう
知識に満ちた者であったが、ソロモン王のところにきて、そのすべての

34
さいく
細工をした。
かれ せいどう はしら ほん い ぽん はしら たか
一五彼は青銅の柱 二本を鋳た。一本の柱の高さは十八キュビト、そのま
つな はか ゆび ほん あつ くうどう
わりは綱をもって測ると十二キュビトあり、指四本の厚さで空洞であっ
た はしら おな せいどう と ちゅうとう つく はしら
た。他の柱も同じである。 一六また青銅を溶かして柱 頭 二つを造り、柱
いただき ちゅうとう たか た ちゅうとう たか
の頂にすえた。その一つの柱 頭の高さは五キュビト、他の柱 頭の高さ
はしら いただき ちゅうとう くさり あ かざ
も 五 キ ュ ビ ト で あ っ た。 一七 柱 の 頂 に あ る 柱 頭 の た め に 鎖 に 編 ん だ 飾
いちまつ も よ う あみ ざ い く つく ちゅうとう
りひもで市松模様の網細工二つを造った。すなわちこの柱 頭のために
ちゅうとう つく つく
一つ、かの柱 頭のために一つを造った。 一八またざくろを造った。すな
なら あみ ざ い く うえ つく はしら いただき
わち二並びのざくろを一つの網細工の上のまわりに造って、 柱の頂に
ちゅうとう ま た ちゅうとう おな ろう はしら
あ る 柱 頭 を 巻 い た。他 の 柱 頭 に も 同 じ よ う に し た。 一九こ の 廊 の 柱 の
いただき ちゅうとう うえ はな さいく
頂にある柱 頭の上に四キュビトのゆりの花の細工があった。 二〇二つの
はしら じょうたん まる とっしゅつ ぶ うえ あみ ざ い く ちゅうとう しゅうい
柱の上 端の丸い突 出 部の上にある網細工の柱 頭の周囲には、おのおの
なら はしら しんでん ろう た
二 百 の ざ く ろ が 二 並 び に な っ て い た。 二一こ の 柱 を 神殿 の 廊 に 立 て た。
列王紀上

みなみ はしら た な な きた はしら た


すなわち南に柱を立てて、その名をヤキンと名づけ、北に柱を立てて、そ

35
な な はしら いただき はな さいく
の 名 を ボ ア ズ と 名 づ け た。 二二そ の 柱 の 頂 に は ゆ り の 花 の 細工 が あ っ
はしら ぞうさ
た。こうしてその柱の造作ができあがった。
うみ い つく ふち ふち しゅうい
二三ま た 海 を 鋳 て 造 っ た。縁 か ら 縁 ま で 十 キ ュ ビ ト で あ っ て、周囲 は
えんけい たか しゅうい つな はか
円形をなし、高さ五キュビトで、その周囲は綱をもって測ると三十キュ
ふち した しゅうい
ビトであった。 二四その縁の下には三十キュビトの周囲をめぐるひさご
うみ しゅうい かこ なら うみ い とき
があって、海の周囲を囲んでいた。そのひさごは二並びで、海を鋳る時
い うみ うし うえ お きた
に鋳たものである。 二五その海は十二の牛の上に置かれ、その三つは北
む にし む みなみ む ひがし む
に向かい、三つは西に向かい、三つは南に向かい、三つは東に向かって
うみ うえ お うし みなうち む うみ
いた。海はその上に置かれ、牛のうしろは皆内に向かっていた。 二六海
あつ て はば ふち はい ふち はな に つく
の厚さは手の幅で、その縁は杯の縁のように、ゆりの花に似せて造られ
うみ みず
た。海には水が二千バテはいった。
せいどう だい こ つく だい なが はば たか
二七また青銅の台を十個造った。台は長さ四キュビト、幅四キュビト、高
だい こうぞう つぎ だい
さ三キュビトであった。 二八その台の構造は次のとおりである。台には
列王紀上

かがみいた かがみいた わく なか わく なか かがみいた


鏡 板があり、鏡 板は枠の中にあった。 二九枠の中にある鏡 板には、しし

36
うし うし うえ した わく しゃめん
と牛とケルビムとがあり、また、ししと牛の上と下にある枠の斜面には
はなかざ さいく だい せいどう しゃりん
花飾 り が 細工 し て あ っ た。 三 〇ま た 台 に は お の お の 四 つ の 青銅 の 車輪
せいどう しゃじく せんばん
と、青銅の車軸があり、その四すみには洗盤のささえがあった。そのさ
はなかざ い つく
さえは、おのおの花飾りのかたわらに鋳て造りつけてあった。 三一その
くち うえ つ で だい いただき うち くち まる だいざ
口は一キュビト上に突き出て、台の頂の内にあり、その口は丸く、台座
つく ふか はん くち ほ もの
のように造られ、深さ一キュビト半であった。またその口には彫り物が
かがみいた しかく まる しゃりん かがみいた した
あった。その鏡 板は四角で、丸くなかった。 三二四つの車輪は鏡 板の下
しゃじく だい と つ しゃりん たか
にあり、車軸は台に取り付けてあり、車輪の高さはおのおの一キュビト
はん しゃりん こうぞう せんしゃ しゃりん こうぞう おな しゃじく
半であった。 三三車輪の構造は戦車の車輪の構造と同じで、その車軸と
ふち や こしき いもの だい
縁と輻と轂とはみな鋳物であった。 三四おのおのの台の四すみに四つの
だい いちぶ だい うえ たか
ささえがあり、そのささえは台の一部をなしていた。 三五台の上には高
はん まる おび わ だい うえ しちゅう
さ 半 キ ュ ビ ト の 丸 い 帯輪 が あ っ た。そ し て 台 の 上 に あ る そ の 支柱 と
かがみいた いちぶ しちゅう ひょうめん かがみいた
鏡 板とはその一部をなしていた。 三六その支柱の表 面と鏡 板にはそれ
列王紀上

ば しょ きざ しゅうい はな
ぞれの場所に、ケルビムと、ししと、しゅろを刻み、またその周囲に花

37
かざ ほどこ こ だい つく おな
飾りを施した。 三七このようにして十個の台を造った。それはみな同じ
いかた おな すんぽう おな かたち
鋳方、同じ寸法、同じ形であった。
せいどう せんばん こ つく せんばん みず
三八また青銅の洗盤を十個造った。洗盤はおのおの四十バテの水がはい
せんばん こ だい うえ
り、洗盤はおのおの四キュビトであった。十個の台の上にはおのおの一
せんばん だい こ みや みなみ ほう こ みや
つずつの洗盤があった。 三九その台の五個を宮の南の方に、五個を宮の
きた ほう お みや とうなん ほう うみ
北の方に置き、宮の東南の方に海をすえた。
じゅうのう はち つく
四〇 ヒ ラ ム は ま た つ ぼ と 十 能 と 鉢 を 造 っ た。こ う し て ヒ ラ ム は ソ ロ モ
おう しゅ みや さいく お ほん
ン王のために主の宮のすべての細工をなし終えた。 四一すなわち二本の
はしら はしら いただき ちゅうとう たま はしら いただき ちゅうとう
柱と、その柱の頂にある柱 頭の二つの玉と、 柱の頂にある柱 頭の二つ
たま あみ ざ い く あみ ざ い く
の玉をおおう二つの網細工と、 四二その二つの網細工のためのざくろ四
あみ ざ い く なら はしら いただき ちゅうとう
百。このざくろは一つの網細工に、二並びにつけて、柱の頂にある柱 頭
たま ま こ だい だい うえ こ せんばん
の二つの玉を巻いた。 四三また十個の台と、その台の上の十個の洗盤と、
うみ うみ した うし
一つの海と、その海の下の十二の牛とであった。
列王紀上

四四
じゅうのう はち おう つく
四五さてつぼと十 能と鉢、すなわちヒラムがソロモン王のために造った

38
しゅ みや うつわ ひかり せいどう おう
主の宮のこれらの器はみな光のある青銅であった。 四六王はヨルダンの
ていち あいだ ねんど ち い
低地で、スコテとザレタンの間の粘土の地でこれらを鋳た。 四七ソロモ
うつわ ひじょう おお みな
ンはその器が非常に多かったので、皆それをはからずにおいた。その
せいどう おも え
青銅の重さは、はかり得なかった。
しゅ みや うつわ つく きん
四八またソロモンは主の宮にあるもろもろの器を造った。すなわち金の
さいだん そな の きん つくえ じゅんきん しょくだい しょくだい
祭壇と、供えのパンを載せる金の机、 四九および純 金の燭 台。この燭 台
ほんでん まえ みなみ きた きん はな
は本殿の前に、五つは南に、五つは北にあった。また金の花と、ともし
さら こころ じゅんきん さら しんき はち こう はい
び皿と、 心かきと、 五〇純 金の皿と、心切りばさみと、鉢と、香の杯と、
しんと ざら しせいじょ みや おく みや はいでん
心取り皿と、至聖所である宮の奥のとびらのためおよび、宮の拝殿のと
きん つく
びらのために、金のひじつぼを造った。
おう しゅ みや つく さいく おわ
五一 こうしてソロモン王が主の宮のために造るすべての細工は終った。
ちち もの きんぎん うつわもの
そしてソロモンは父ダビデがささげた物、すなわち金銀および器 物を
たずさ はい しゅ みや ほうぞう なか
携え入り、主の宮の宝蔵の中にたくわえた。
列王紀上

39
第八章
しゅ けいやく はこ まち のぼ
一ソロモンは主の契約の箱をダビデの町、すなわちシオンからかつぎ上
ちょうろう ぶぞく
ろうとして、イスラエルの長 老たちと、すべての部族のかしらたちと、
ひとびと しぞく ちょう おう
イスラエルの人々の氏族の長たちをエルサレムでソロモン王のもとに
め あつ ひと みな つき がつ まつり
召 し 集 め た。 二イ ス ラ エ ル の 人 は 皆 エ タ ニ ム の 月 す な わ ち 七 月 の 祭 に
おう あつ ちょうろう みな き
ソロモン王のもとに集まった。 三イスラエルの長 老たちが皆来たので、
さいし はこ と かれ しゅ はこ かいけん まくや
祭司たちは箱を取りあげた。 四そして彼らは主の箱と、会見の幕屋と、
まくや せい うつわ のぼ さいし
幕屋にあるすべての聖なる器をかつぎ上った。すなわち祭司とレビび
もの のぼ おう かれ あつ
と が こ れ ら の 物 を か つ ぎ 上 っ た。 五ソ ロ モ ン 王 お よ び 彼 の も と に 集
かいしゅう みなかれ とも はこ まえ ひつじ うし
まったイスラエルの会 衆は皆彼と共に箱の前で、羊と牛をささげたが、
かず おお しら かぞ さいし
そ の 数 が 多 く て 調 べ る こ と も 数 え る こ と も で き な か っ た。 六祭司 た ち
しゅ けいやく はこ ば しょ い みや ほんでん
は主の契約の箱をその場所にかつぎ入れた。すなわち宮の本殿である
列王紀上

しせいじょ つばさ した お つばさ はこ ところ


至聖所 の う ち の ケ ル ビ ム の 翼 の 下 に 置 い た。 七ケ ル ビ ム は 翼 を 箱 の 所

40
の うえ はこ
に伸べていたので、ケルビムは上から箱とそのさおをおおった。 八さお
なが はし ほんでん まえ せいじょ み そと
は長かったので、さおの端が本殿の前の聖所から見えた。しかし外には
み こんにち はこ うち
見 え な か っ た。そ の さ お は 今日 ま で そ こ に あ る。 九箱 の 内 に は 二 つ の
いし いた なに ひとびと ち
石の板のほか何もなかった。これはイスラエルの人々がエジプトの地
で しゅ かれ けいやく むす
から出たとき、主が彼らと契約を結ばれたときに、モーセがホレブで、そ
おさ さいし せいじょ で くも
れに納めたものである。 一〇そして祭司たちが聖所から出たとき、雲が
しゅ みや み さいし くも た つか
主の宮に満ちたので、 一一祭司たちは雲のために立って仕えることがで
しゅ えいこう しゅ みや み
きなかった。主の栄光が主の宮に満ちたからである。

一二 そこでソロモンは言った、
しゅ ひ てん お
﹁主は日を天に置かれた。
しゅ みずか こ くも なか す い
しかも主は自ら濃き雲の中に住まおうと言われた。
たか いえ
一三 わたしはあなたのために高き家、

とこしえのみすまいを建てた﹂。
列王紀上

おう み かいしゅう しゅくふく
一四 王は身をめぐらして、イスラエルのすべての会 衆を祝 福した。その

41
とき かいしゅう た かれ い
時イスラエルのすべての会 衆は立っていた。 一五彼は言った、﹁イスラエ
かみ しゅ しゅ くち ちち
ルの神、主はほむべきかな。主はその口をもってわたしの父ダビデに
やくそく て と しゅ い
約束されたことを、その手をもってなし遂げられた。主は言われた、 一六
たみ みちび だ ひ
﹃わが民イスラエルをエジプトから導き出した日から、わたしはわたし
な お みや た ぶぞく
の名を置くべき宮を建てるために、イスラエルのもろもろの部族のうち
まち えら えら たみ
から、どの町をも選んだことがなかった。ただダビデを選んで、わが民
うえ た かみ しゅ な みや
イスラエルの上に立たせた﹄と。 一七イスラエルの神、主の名のために宮
た ちち こころ しゅ
を建てることは、わたしの父ダビデの心にあった。 一八しかし主はわた
ちち い な みや た
しの父ダビデに言われた、﹃わたしの名のために宮を建てることはあな
こころ こころ こと けっこう
たの心にあった。あなたの心にこの事のあったのは結構である。 一九け
みや た み で
れどもあなたはその宮を建ててはならない。あなたの身から出るあな
こ な みや た しゅ
たの子がわたしの名のために宮を建てるであろう﹄と。 二〇そして主は
い ことば おこな ちち かわ た
その言われた言葉を行われた。すなわちわたしは父ダビデに代って立
列王紀上

しゅ い くらい ざ かみ しゅ
ち、主が言われたように、イスラエルの位に座し、イスラエルの神、主

42
な みや た しゅ けいやく おさ はこ
の名のために宮を建てた。 二一わたしはまたそこに主の契約を納めた箱
ば しょ もう けいやく しゅ せんぞ
のために一つの場所を設けた。その契約は主がわれわれの先祖をエジ
ち みちび だ とき かれ むす
プトの地から導き出された時に、彼らと結ばれたものである﹂。
ぜんかいしゅう まえ しゅ さいだん まえ た て
ソロモンはイスラエルの全 会 衆の前で、主の祭壇の前に立ち、手を
二二
てん の い かみ しゅ うえ てん した ち
天に伸べて、 二三言った、
﹁イスラエルの神、主よ、上の天にも、下の地
かみ けいやく まも こころ
にも、あなたのような神はありません。あなたは契約を守られ、心をつ
まえ あゆ ほどこ
くしてあなたの前に歩むあなたのしもべらに、いつくしみを施し、二四あ
ちち やくそく まも
なたのしもべであるわたしの父ダビデに約束されたことを守られまし
くち やくそく て と
た。あなたが口をもって約束されたことを、手をもってなし遂げられた
こんにち み かみ しゅ
ことは、今日見るとおりであります。 二五それゆえ、イスラエルの神、主
ちち やくそく
よ、あなたのしもべであるわたしの父ダビデに、あなたが約束して﹃お
まえ あゆ しそん みち つつし
まえがわたしの前に歩んだように、おまえの子孫が、その道を慎んで、わ
まえ あゆ くらい ざ ひと
たしの前に歩むならば、おまえにはイスラエルの位に座する人が、わた
列王紀上

まえ か い
しの前に欠けることはないであろう﹄と言われたことを、ダビデのため

43
まも かみ
に守ってください。 二六イスラエルの神よ、どうぞ、あなたのしもべであ
ちち い ことば かくにん
るわたしの父ダビデに言われた言葉を確認してください。
かみ ちじょう す み てん
しかし神は、はたして地上に住まわれるでしょうか。見よ、天も、い
二七
たか てん た
と高き天もあなたをいれることはできません。ましてわたしの建てた
みや かみ しゅ いのり ねが かえり
この宮はなおさらです。 二八しかしわが神、主よ、しもべの祈と願いを顧
まえ さけ いのり き
みて、しもべがきょう、あなたの前にささげる叫びと祈をお聞きくださ
な お い ところ
い。 二九あなたが﹃わたしの名をそこに置く﹄と言われた所、すなわち、
みや む よるひる め ひら ところ
この宮に向かって夜昼あなたの目をお開きください。しもべがこの所
む いの いのり き たみ
に向かって祈る祈をお聞きください。 三〇しもべと、あなたの民イスラ
ところ む いの とき ねが き
エルがこの所に向かって祈る時に、その願いをお聞きください。あなた
てん き き
のすみかである天で聞き、聞いておゆるしください。
ひと とな びと たい つみ おか ちか もと
もし人がその隣り人に対して罪を犯し、誓いをすることを求められ
三一
とき き みや さいだん まえ ちか てん き
る時、来てこの宮であなたの祭壇の前に誓うならば、三二あなたは天で聞
列王紀上

おこな あくにん ばっ
いて行い、あなたのしもべらをさばき、悪人を罰して、そのおこないの

44
むく き ぎじん ぎ ぎ
報いをそのこうべに帰し、義人を義として、その義にしたがって、その
ひと むく
人に報いてください。
たみ たい つみ おか てき
三三 もしあなたの民イスラエルが、あなたに対して罪を犯したために敵
まえ やぶ とき た かえ な みや
の前に敗れた時、あなたに立ち返って、あなたの名をあがめ、この宮で
いの ねが てん き たみ
あなたに祈り願うならば、三四あなたは天にあって聞き、あなたの民イス
つみ かれ せんぞ たま ち かれ かえ
ラエルの罪をゆるして、あなたが彼らの先祖に賜わった地に彼らを帰ら
せてください。
かれ つみ おか てん と あめ
三五 もし彼らがあなたに罪を犯したために、天が閉ざされて雨がなく、あ
かれ くる とき かれ ところ む いの
なたが彼らを苦しめられる時、彼らがこの所に向かって祈り、あなたの
な つみ はな てん き
名をあがめ、その罪を離れるならば、 三六あなたは天で聞き、あなたのし
たみ つみ かれ あゆ よ みち おし
もべ、あなたの民イスラエルの罪をゆるし、彼らに歩むべき良い道を教
たみ し ぎょう あた ち あめ ふ
えて、あなたが、あなたの民に嗣 業として与えられた地に雨を降らせて
ください。
列王紀上

くに えきびょう た が くさ ほ
三七 もし国にききんがあるか、もしくは疫 病、立ち枯れ、腐り穂、いな

45
あおむし てき まち なか せ かこ
ご、青虫があるか、もしくは敵のために町の中に攻め囲まれることがあ
さいがい びょうき
るか、どんな災害、どんな病気があっても、 三八もし、だれでも、あなた
たみ こころ なや し みや む
の民イスラエルがみな、おのおのその心の悩みを知って、この宮に向か
て の いのり ねが
い、手を伸べるならば、どんな祈、どんな願いでも、 三九あなたは、あな
てん き おこな ひと
たのすみかである天で聞いてゆるし、かつ行い、おのおのの人に、その
こころ し みち むく
心を知っておられるゆえ、そのすべての道にしたがって報いてくださ
ひと こころ し
い。ただ、あなただけ、すべての人の心を知っておられるからです。 四〇
せんぞ たま ち かれ い ひ
あなたが、われわれの先祖に賜わった地に、彼らの生きながらえる日の
あいだ つね おそ
間、常にあなたを恐れさせてください。
たみ もの な とお くに
四一またあなたの民イスラエルの者でなく、あなたの名のために遠い国
く いほうじん かれ おお な つよ て
から来る異邦人が、四二︱︱それは彼らがあなたの大いなる名と、強い手
の うで き およ みや む
と、伸べた腕とについて聞き及ぶからです、︱︱もしきて、この宮に向
いの てん き
かって祈るならば、 四三あなたは、あなたのすみかである天で聞き、すべ
列王紀上

いほうじん よ もと
て異邦人があなたに呼び求めることをかなえさせてください。そうす

46
ち たみ たみ な
れば、地のすべての民は、あなたの民イスラエルのように、あなたの名
し おそ た みや な
を知り、あなたを恐れ、またわたしが建てたこの宮があなたの名によっ
よ し
て呼ばれることを知るにいたるでしょう。
たみ てき たたか みち とお で
あなたの民が敵と戦うために、あなたがつかわされる道を通って出
四四
い かれ えら まち な
て行くとき、もし彼らがあなたの選ばれた町、わたしがあなたの名のた
た みや ほう む しゅ いの てん かれ
めに建てた宮の方に向かって、主に祈るならば、 四五あなたは天で、彼ら
いのり ねが き かれ たす
の祈と願いを聞いて彼らをお助けください。
かれ たい つみ おか ひと つみ おか
彼らがあなたに対して罪を犯すことがあって、︱︱人は罪を犯さな
四六
もの かれ いか かれ てき てき
い者はないのです、︱︱あなたが彼らを怒り、彼らを敵にわたし、敵が
かれ ほ りょ えんきん てき ち ひ い とき かれ
彼らを捕虜として遠近にかかわらず、敵の地に引いて行く時、四七もし彼
とら ち かえり く じぶん とら もの
らが捕われていった地で、みずから省みて悔い、自分を捕えていった者
ち ねが つみ おか あく おこな
の地で、あなたに願い、
﹃われわれは罪を犯しました、そむいて悪を行い
い じぶん とら てき ち こころ せいしん
ました﹄と言い、 四八自分を捕えていった敵の地で、心をつくし、精神を
列王紀上

た かえ かれ せんぞ あた ち
つくしてあなたに立ち返り、あなたが彼らの先祖に与えられた地、あな

47
えら まち な た みや ほう む
たが選ばれた町、わたしがあなたの名のために建てた宮の方に向かっ
いの てん かれ いのり ねが
て、あなたに祈るならば、 四九あなたのすみかである天で、彼らの祈と願
き かれ たす たみ たい おか つみ
いを聞いて、彼らを助け、五〇あなたの民が、あなたに対して犯した罪と、
たい い かれ とら
あなたに対して行ったすべてのあやまちをゆるし、彼らを捕えていった
もの まえ かれ え ひとびと かれ
者の前で、彼らにあわれみを得させ、その人々が彼らをあわれむように
かれ てつ なか
してください。 五一︵彼らはあなたがエジプトから、鉄のかまどの中から
みちび だ たみ し ぎょう
導き出されたあなたの民、あなたの嗣 業であるからです︶。 五二どうぞ、
ねが たみ ねが め ひら
しもべの願いと、あなたの民イスラエルの願いに、あなたの目を開き、す
よ もと とき かれ ねが き
べてあなたに呼び求める時、彼らの願いをお聞きください。 五三あなた
かれ ち たみ く べっ し ぎょう
は彼らを地のすべての民のうちから区別して、あなたの嗣 業とされた
しゅ かみ せんぞ みちび だ
からです。主なる神よ、あなたがわれわれの先祖をエジプトから導き出
とき い
された時、モーセによって言われたとおりです﹂。
いのり ねが しゅ おわ
ソロモンはこの祈と願いをことごとく主にささげ終ると、それまで
列王紀上

五四
てん む て の しゅ さいだん まえ た
天に向かって手を伸べ、ひざまずいていた主の祭壇の前から立ちあが

48
た おおごえ ぜんかいしゅう しゅくふく い しゅ
り、 五五立って大声でイスラエルの全 会 衆を祝 福して言った、 五六﹁主は
しゅ やくそく たみ たいへい
ほむべきかな。主はすべて約束されたように、その民イスラエルに太平
たま おお よ やくそく みな
を賜わった。そのしもべモーセによって仰せられたその良き約束は皆
かみ せんぞ とも
一つもたがわなかった。 五七われわれの神がわれわれの先祖と共におら
とも はな
れたように、われわれと共におられるように。われわれを離れず、また
み す こころ しゅ かたむ しゅ
われわれを見捨てられないように。 五八われわれの心を主に傾けて、主
みち あゆ せんぞ めい いまし さだ
のすべての道に歩ませ、われわれの先祖に命じられた戒めと定めと、お
まも しゅ まえ の ねが
きてとを守らせられるように。 五九主の前にわたしが述べたこれらの願
ことば にちや かみ しゅ おぼ しゅ
いの言葉が、日夜われわれの神、主に覚えられるように。そして主は
ひ び こと たす しゅ たみ たす
日々の事に、しもべを助け、主の民イスラエルを助けられるように。 六〇
ち たみ しゅ かみ ほか かみ
そうすれば、地のすべての民は主が神であることと、他に神のないこと
し いた こんにち
を知るに至るであろう。 六一それゆえ、あなたがたは、今日のようにわれ
かみ しゅ たい こころ まった しんじつ しゅ さだ あゆ しゅ いまし
われの神、主に対して、 心は全く真実であり、主の定めに歩み、主の戒
列王紀上

まも
めを守らなければならない﹂。

49
おう おう とも しゅ まえ
六二 そして王および王と共にいるすべてのイスラエルびとは主の前に
ぎせい しゅうおんさい うし とう ひつじ
犠牲をささげた。 六三ソロモンは酬 恩 祭として牛二万二千頭、羊 十二万
とう しゅ おう ひとびと みなしゅ みや ほうけん
頭を主にささげた。こうして王とイスラエルの人々は皆主の宮を奉献
ひ おう しゅ みや まえ にわ なか せいべつ ところ はんさい
した。 六四その日、王は主の宮の前にある庭の中を聖別し、その所で燔祭
そさい しゅうおんさい しぼう しゅ まえ せいどう さいだん
と素祭と酬 恩 祭の脂肪をささげた。これは主の前にある青銅の祭壇が
そさい しゅうおんさい しぼう う た
素祭と酬 恩 祭の脂肪とを受けるに足りなかったからである。
とき なぬか あいだ かみ しゅ まえ まつり おこな
その時ソロモンは七日の間われわれの神、主の前に祭を行 った。ハ
六五
いりぐち かわ いた
マテの入口からエジプトの川に至るまでのすべてのイスラエルびとの
おお かいしゅう かれ とも か め たみ かえ
大いなる会 衆が彼と共にいた。 六六八日目にソロモンは民を帰らせた。
たみ おう しゅくふく しゅ たみ ほどこ
民は王を祝 福し、主がそのしもべダビデと、その民イスラエルとに施さ
めぐ よろこ こころ たの てんまく かえ い
れたもろもろの恵みを喜び、 心に楽しんでその天幕に帰って行った。
列王紀上

50
第九章
しゅ みや おう きゅうでん た のぞ
一ソロモンが主の宮と王の宮 殿およびソロモンが建てようと望んだす
た おわ とき しゅ あらわ
べてのものを建て終った時、 二主はかつてギベオンでソロモンに現れら
ふたた あらわ かれ い まえ ねが
れたように再び現れて、 三彼に言われた、
﹁あなたが、わたしの前に願っ
いのり ねが き た みや せいべつ
た祈と願いとを聞いた。わたしはあなたが建てたこの宮を聖別して、わ
な えいきゅう お め こころ つね
たしの名を永 久にそこに置く。わたしの目と、わたしの心は常にそこ
ちち あゆ まった
にあるであろう。 四あなたがもし、あなたの父ダビデが歩んだように全
こころ ただ まえ あゆ めい
き心をもって正しくわたしの前に歩み、すべてわたしが命じたようにお
さだ まも
こなって、わたしの定めと、おきてとを守るならば、 五わたしは、あな
ちち やくそく おうい ひと か
たの父ダビデに約束して﹃イスラエルの王位にのぼる人があなたに欠け
い おう
ることはないであろう﹄と言ったように、あなたのイスラエルに王たる
くらい かくほ
位をながく確保するであろう。 六しかし、あなたがた、またはあなたが
列王紀上

しそん したが まえ お
たの子孫がそむいてわたしに従わず、わたしがあなたがたの前に置いた

51
いまし さだ まも た かみがみ い つか おが
戒めと定めとを守らず、他の神々に行って、それに仕え、それを拝むな
あた ち た
らば、 七わたしはイスラエルを、わたしが与えた地のおもてから断つで
な せいべつ みや まえ な
あろう。またわたしの名のために聖別した宮をわたしの前から投げす
たみ
てるであろう。そしてイスラエルはもろもろの民のうちにことわざと
わら ぐさ みや あらつか
なり、笑い草となるであろう。 八かつ、この宮は荒塚となり、そのかた
す もの みなおどろ しゅ ち
わらを過ぎる者は皆 驚き、うそぶいて﹃なにゆえ、主はこの地と、この
みや い ときひとびと こた
宮とにこのようにされたのか﹄と言うであろう。 九その時人々は答えて
かれ じぶん せんぞ ち みちび だ かれ かみ しゅ す
﹃彼らは自分の先祖をエジプトの地から導き出した彼らの神、主を捨て
た かみがみ したが おが つか しゅ
て、他の神々につき従い、それを拝み、それに仕えたために、主はこの
わざわい かれ うえ くだ い
すべての災を彼らの上に下したのである﹄と言うであろう﹂。
ねん へ いえ しゅ みや おう きゅうでん
一〇 ソロモンは二十年を経て二つの家すなわち主の宮と王の宮 殿とを
た おわ とき おう のぞ まか こうはく
建て終った時、一一ツロの王ヒラムがソロモンの望みに任せて香柏と、い
きん きょうきゅう おう ち まち
とすぎと、金とを供 給したので、ソロモン王はガリラヤの地の町二十を
列王紀上

あた き かれ あた
ヒラムに与えた。 一二しかしヒラムがツロから来て、ソロモンが彼に与

52
まちまち み かれ き かれ
え た 町々 を 見 た と き、そ れ ら は 彼 の 気 に い ら な か っ た の で、 一三彼 は、
きょうだい まちまち
﹁兄 弟よ、あなたがくださったこれらの町々は、いったいなんですか﹂と
い こんにち ち よ
言った。それで、そこは今日までカブルの地と呼ばれている。 一四ヒラ
きん おう おく
ムはかつて金百二十タラントを王に贈った。
おう きょうせいてき ろうどうしゃ ちょうぼ
一五 ソ ロ モ ン 王 が 強 制 的 に 労働者 を 徴募 し た の は こ う で あ る。す な わ
しゅ みや じぶん きゅうでん じょうへき
ち主の宮と自分の宮 殿と、ミロとエルサレムの城 壁と、ハゾルとメギド
た おう のぼ
とゲゼルを建てるためであった。 一六︵エジプトの王パロはかつて上っ
と ひ や まち す
てきて、ゲゼルを取り、火でこれを焼き、その町に住んでいたカナンび
ころ つま じぶん むすめ あた こんいん おく もの
とを殺し、これをソロモンの妻である自分の娘に与えて婚姻の贈り物と
た なお ま た した
したので、 一七ソロモンはそのゲゼルを建て直した︶。また下ベテホロン
くに あらの
と、 一八バアラテとユダの国の荒野にあるタマル、 一九およびソロモンが
も そうこ まちまち せんしゃ まちまち きへい まちまち
持っていた倉庫の町々、戦車の町々、騎兵の町々ならびにソロモンがエ
りょうち た のぞ
ルサレム、レバノンおよびそのすべての領地において建てようと望んだ
列王紀上

た しそん
ものをことごとく建てるためであった。 二〇すべてイスラエルの子孫で

53
のこ
ないアモリびと、ヘテびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとの残っ
もの ち かれ のこ しそん
た者、 二一その地にあって彼らのあとに残った子孫すなわちイスラエル
ひとびと ほろ もの きょうせいてき
の人々の滅ぼしつくすことのできなかった者を、ソロモンは強 制 的に
どれい ちょうぼ こんにち いた
奴隷として徴募をおこない、今日に至っている。 二二しかしイスラエル
ひとびと どれい かれ ぐんじん かれ
の人々をソロモンはひとりも奴隷としなかった。彼らは軍人、また彼の
やくにん し れ い かん し き かん せんしゃたいちょう き へ い た い ちょう
役人、司令官、指揮官、戦車 隊 長、騎兵隊 長であったからである。
こうじ かんとく うわやく かんり にん こうじ
ソロモンの工事を監督する上役の官吏は五百五十人であって、工事
二三
はたら たみ おさ
に働く民を治めた。
むすめ まち のぼ かのじょ た
パロの娘はダビデの町から上って、ソロモンが彼女のために建てた
二四
いえ す とき た
家に住んだ。その時ソロモンはミロを建てた。
しゅ きず さいだん うえ ねん ど はんさい しゅうおんさい
二五 ソ ロ モ ン は 主 の た め に 築 い た 祭壇 の 上 に 年 に 三 度燔祭 と 酬 恩 祭 を
しゅ まえ こう みや かんせい
ささげ、また主の前に香をたいた。こうしてソロモンは宮を完成した。
おう ち こうかい きし ちか
ソロモン王はエドムの地、紅海の岸のエラテに近いエジオン・ゲベル
列王紀上

二六
すうせき ふね つく うみ こと し せんいん
で数隻の船を造った。 二七ヒラムは海の事を知っている船員であるその

54
とも ふね かれ
しもべをソロモンのしもべと共にその船でつかわした。 二八彼らはオフ
い きん と おう ところ
ルへ行って、そこから金四百二十タラントを取って、ソロモン王の所に
もってきた。
第一〇章
じょおう しゅ な めいせい き なんもん
一シバの女王は主の名にかかわるソロモンの名声を聞いたので、難問を
こころ かのじょ おお じゅうしゃ つ
もってソロモンを試みようとたずねてきた。 二彼女は多くの従 者を連
こうりょう きん ほうせき お
れ、香 料と、たくさんの金と宝石とをらくだに負わせてエルサレムにき
かのじょ こころ かれ
た。彼女はソロモンのもとにきて、その心にあることをことごとく彼に
つ とい こた おう し かのじょ
告げたが、 三ソロモンはそのすべての問に答えた。王が知らないで彼女
せつめい じょおう
に 説明 の で き な い こ と は 一 つ も な か っ た。 四シ バ の 女王 は ソ ロ モ ン の
ち え た きゅうでん しょくたく しょくもつ れつざ
もろもろの知恵と、ソロモンが建てた宮 殿、五その食 卓の食 物と、列座
列王紀上

けらい じしん しこう かれ ふくそう かれ きゅうじ


の家来たちと、その侍臣たちの伺候ぶり、彼らの服装と、彼の給仕たち、

55
かれ しゅ みや はんさい み まった き うば
および彼が主の宮でささげる燔祭を見て、 全く気を奪われてしまった。
かのじょ おう い くに こと ち え
六彼女は王に言った、
﹁わたしが国であなたの事と、あなたの知恵につい
き しんじつ め み
て聞いたことは真実でありました。 七しかしわたしがきて、目に見るま
ことば しん いまみ はんぶん し
では、その言葉を信じませんでしたが、今見るとその半分もわたしは知
ち え はんえい き
らされていなかったのです。あなたの知恵と繁栄はわたしが聞いたう
おくがた つね
わ さ に ま さ っ て い ま す。 八あ な た の 奥方 た ち は さ い わ い で す。常 に あ
まえ た ち え き けらい
なたの前に立って、あなたの知恵を聞く家来たちはさいわいです。 九あ
かみ しゅ しゅ よろこ
なたの神、主はほむべきかな。主はあなたを喜び、あなたをイスラエル
くらい しゅ えいきゅう あい
の 位 に の ぼ ら せ ら れ ま し た。主 は 永 久 に イ ス ラ エ ル を 愛 せ ら れ る ゆ
おう こうどう せいぎ おこな
え、あなたを王として公道と正義とを行わせられるのです﹂。 一〇そして
かのじょ きん おお こうりょう ほうせき おう おく
彼女は金百二十タラントおよび多くの香 料と宝石とを王に贈った。シ
じょおう おう おく おお こうりょう ふたた
バの女王がソロモン王に贈ったような多くの香 料は再びこなかった。
きん の ふね
オフルから金を載せてきたヒラムの船は、またオフルからたくさん
列王紀上

一一
き ほうせき はこ おう き
のびゃくだんの木と宝石とを運んできたので、 一二王はびゃくだんの木

56
しゅ みや おう きゅうでん へきちゅう つく うた ひとびと
をもって主の宮と王の宮 殿のために壁 柱を造り、また歌う人々のため
こと たてごと つく き
に琴と立琴とを造った。このようなびゃくだんの木は、かつてきたこと
こんにち み
もなく、また今日まで見たこともなかった。
おう ゆた じょおう おく もの
ソロモン王はその豊かなのにしたがってシバの女王に贈り物をした
一三
かのじょ のぞ もと もの おく
ほかに、彼女の望みにまかせて、すべてその求める物を贈った。そして
かのじょ けらい とも じぶん くに かえ
彼女はその家来たちと共に自分の国へ帰っていった。
ねん あいだ きん めかた
さて一年の間にソロモンのところに、はいってきた金の目方は六百
一四
ぼうえきしょう しょうにん とりひき
六十六タラントであった。 一五そのほかに貿易 商および商 人の取引、な
しょおう くに だいかん
らびにアラビヤの諸王と国の代官たちからも、はいってきた。 一六ソロ
おう のべきん おおだて つく おおだて
モン王は延金の大盾二百を造った。その大盾にはおのおの六百シケル
きん もち のべきん こだて つく こだて
の金を用いた。 一七また延金の小盾三百を造った。その小盾にはおのお
きん もち おう もり いえ お
の三ミナの金を用いた。王はこれらをレバノンの森の家に置いた。 一八
おう おお ぞうげ ぎょくざ つく じゅんきん
王はまた大きな象牙の玉座を造り、 純 金をもってこれをおおった。 一九
列王紀上

ぎょくざ だん ぎょくざ のち こ うし あたま ざせき りょうがわ


その玉座に六つの段があり、玉座の後に子牛の頭があり、座席の両 側に

57
か か た
ひじ掛けがあって、ひじ掛けのわきに二つのししが立っていた。 二〇ま
だん りょうがわ た
た六つの段のおのおのの両 側に十二のししが立っていた。このような
もの くに つく おう の
物はどこの国でも造られたことがなかった。 二一ソロモン王が飲むとき
もち うつわ みなきん もり いえ うつわ みなじゅんきん
に 用 い た 器 は 皆金 で あ っ た。ま た レ バ ノ ン の 森 の 家 の 器 も 皆 純 金 で
ぎん ぎん よ かえり
あって、銀のものはなかった。銀はソロモンの世には顧みられなかっ
おう うみ せんたい しょゆう せんたい
た。 二 二こ れ は 王 が 海 に タ ル シ シ の 船隊 を 所有 し て、ヒ ラ ム の 船隊 と
いっしょ こうかい せんたい ねん ど きん ぎん ぞうげ
一緒に航海させ、タルシシの船隊に三年に一度、金、銀、象牙、さる、く

じゃくを載せてこさせたからである。
おう とみ ち え ち おう
二三このようにソロモン王は富も知恵も、地のすべての王にまさってい
ぜん ち ひとびと かみ こころ さづ ち え き
たので、 二四全地の人々は神がソロモンの心に授けられた知恵を聞こう
えっけん もと ひとびと おく もの たずさ
としてソロモンに謁見を求めた。 二五人々はおのおの贈り物を携えてき
ぎん うつわ きん うつわ いふく もつやく こうりょう うま ら ば ねんねんさだ
た。すなわち銀の器、金の器、衣服、没薬、香 料、馬、騾馬など年々定
まっていた。
列王紀上

せんしゃ きへい あつ せんしゃ りょう きへい


二六ソロモンは戦車と騎兵とを集めたが、戦車一千四百 両、騎兵一万二

58
せんしゃ まち おう お
千あった。ソロモンはこれを戦車の町とエルサレムの王のもとに置い
おう ぎん いし もち こうはく へいち
た。 二七王はエルサレムで、銀を石のように用い、香柏を平地にあるいち
くわ おお もち うま ゆにゅう
じく桑のように多く用いた。 二八ソロモンが馬を輸入したのはエジプト
おう ぼうえきしょう だいか はら う
とクエからであった。すなわち王の貿易 商はクエから代価を払って受
と ゆにゅう せんしゃ りょう ぎん
け取ってきた。 二九エジプトから輸入される戦車一 両は銀六百シケル、
うま おう ぼうえき
馬は百五十シケルであった。このようにして、これらのものが王の貿易
しょう おう おう ゆしゅつ
商によって、ヘテびとのすべての王たちおよびスリヤの王たちに輸出
された。
第一一章
おう おお がいこく おんな あい むすめ
ソロモン王は多くの外国の女を愛した。すなわちパロの娘、モアブび

おんな あい
と、アンモンびと、エドムびと、シドンびと、ヘテびとの女を愛した。 二
列王紀上

しゅ こくみん ひとびと い
主はかつてこれらの国民について、イスラエルの人々に言われた、﹁あな

59
かれ まじ かれ まじ
たがたは彼らと交わってはならない。彼らもまたあなたがたと交わっ
かれ かなら こころ てん かれ かみがみ したが
てはならない。彼らは必ずあなたがたの心を転じて彼らの神々に従わ
かれ あい はな かれ
せるからである﹂。しかしソロモンは彼らを愛して離れなかった。 三彼
おうひ つま にん にん つま かれ
には王妃としての妻七百人、そばめ三百人があった。その妻たちが彼の
こころ てん としお とき つま かれ こころ
心を転じたのである。 四ソロモンが年老いた時、その妻たちが彼の心を
てん た かみがみ したが かれ こころ ちち こころ
転じて他の神々に従わせたので、彼の心は父ダビデの心のようには、そ
かみ しゅ しんじつ めがみ
の神、主に真実でなかった。 五これはソロモンがシドンびとの女神アシ
したが かみ にく もの したが
タロテに従い、アンモンびとの神である憎むべき者ミルコムに従 った
しゅ め まえ あく おこな ちち
からである。 六このようにソロモンは主の目の前に悪を行い、父ダビデ
まった しゅ したが かみ
の よ う に 全 く は 主 に 従 わ な か っ た。 七そ し て ソ ロ モ ン は モ ア ブ の 神 で
にく もの ひとびと かみ にく
ある憎むべき者ケモシのために、またアンモンの人々の神である憎むべ
もの ひがし やま たか ところ きず かれ
き 者 モ レ ク の た め に エ ル サ レ ム の 東 の 山 に 高 き 所 を 築 い た。 八彼 は ま
がいこく つま かのじょ かみがみ
た外国のすべての妻たちのためにもそうしたので、彼女たちはその神々
列王紀上

こう ぎせい
に香をたき、犠牲をささげた。

60
こころ てん かみ しゅ はな
九このようにソロモンの心が転じて、イスラエルの神、主を離れたため、
しゅ かれ いか しゅ ど かれ あらわ こと
主は彼を怒られた。すなわち主がかつて二度彼に現れ、 一〇この事につ
かれ た かみがみ したが めい かれ しゅ めい
いて彼に、他の神々に従 ってはならないと命じられたのに、彼は主の命
まも しゅ
じられたことを守らなかったからである。 一一それゆえ、主はソロモン
い ほんしん めい けいやく さだ
に言われた、﹁これがあなたの本心であり、わたしが命じた契約と定めと
まも かなら くに さ はな
を守らなかったので、わたしは必ずあなたから国を裂き離して、それを
けらい あた ちち
あなたの家来に与える。 一二しかしあなたの父ダビデのために、あなた
よ こ て さ はな
の世にはそれをしないが、あなたの子の手からそれを裂き離す。 一三た
くに さ はな
だし、わたしは国をことごとくは裂き離さず、わたしのしもべダビデの
えら ぶぞく
ために、またわたしが選んだエルサレムのために一つの部族をあなたの
こ あた
子に与えるであろう﹂。
しゅ おこ てき
一四 こうして主はエドムびとハダデを起して、ソロモンの敵とされた。
かれ おういえ もの
彼 は エ ド ム の 王家 の 者 で あ っ た。 一五さ き に ダ ビ デ は エ ド ム に い た が、
列王紀上

ぐん ちょう のぼ せんし もの ほうむ だんし


軍の長 ヨアブが上っていって、戦死した者を葬り、エドムの男子をこと

61
う ころ とき ひとびと とも げつ
ごとく打ち殺した時、一六
︵ヨアブはイスラエルの人々と共に六か月そこ
だんし た ちち
にとどまって、エドムの男子をことごとく断った︶。 一七ハダデはその父
すうにん とも に い
のしもべである数人のエドムびとと共に逃げてエジプトへ行こうとし
とき しょうねん かれ た
た。その時ハダデはまだ少 年であった。 一八彼らがミデアンを立ってパ
い ひとびと ともな い おう
ランへ行き、パランから人々を伴 ってエジプトへ行き、エジプトの王パ
い かれ いえ あた しょくりょう さだ と ち
ロのところへ行くと、パロは彼に家を与え、 食 糧を定め、かつ土地を
あた おお こころ じぶん つま
与えた。 一九ハダデは大いにパロの心にかなったので、パロは自分の妻
いもうと おうひ いもうと つま かれ あた
の妹すなわち王妃タペネスの妹を妻として彼に与えた。 二〇タペネスの
いもうと かれ おとこ こ う こ いえ
妹は彼に男の子ゲヌバテを産んだので、タペネスはその子をパロの家の
ちばな いえ こ いっしょ
うちで乳離れさせた。ゲヌバテはパロの家で、パロの子どもたちと一緒
せんぞ とも ねむ
にいた。 二一さてハダデはエジプトで、ダビデがその先祖と共に眠った
ぐん ちょう し き い
ことと、軍の長 ヨアブが死んだことを聞いたので、ハダデはパロに言っ
さ くに かえ かれ い
た、﹁わたしを去らせて、国へ帰らせてください﹂。 二二パロは彼に言っ
列王紀上

とも ふそく くに かえ もと
た、﹁わたしと共にいて、なんの不足があって国へ帰ることを求めるので

62
かれ い かえ
すか﹂。彼は言った、﹁ただ、わたしを帰らせてください﹂。
かみ こ おこ てき かれ
神はまたエリアダの子レゾンを起してソロモンの敵とされた。彼は
二三
しゅじん おう に さ もの
その主人ゾバの王ハダデゼルのもとを逃げ去った者であった。 二四ダビ
ひとびと ころ のち かれ ひとびと じぶん あつ りゃくだつたい
デがゾバの人々を殺した後、彼は人々を自分のまわりに集めて略 奪 隊
しゅりょう かれ い す かれ
の首 領となった。彼らはダマスコへ行って、そこに住み、ダマスコで彼
おう かれ いっしょう あいだ てき
を王とした。 二五彼はソロモンの一 生の間、イスラエルの敵となって、ハ
がい にく おさ
ダデがしたように害をなし、イスラエルを憎んでスリヤを治めた。
こ けらい
ゼレダのエフライムびとネバテの子ヤラベアムはソロモンの家来で
二六
はは な か ふ かれ て
あったが、その母の名はゼルヤといって寡婦であった。彼もまたその手
おう てき かれ て おう てき じじょう
をあげて王に敵した。 二七彼が手をあげて、王に敵した事情はこうであ
きず ちち まち やぶ くち
る。ソロモンはミロを築き、父ダビデの町の破れ口をふさいでいた。 二八
ひじょう しゅわん ひと わかもの
ヤラベアムは非常に手腕のある人であったが、ソロモンはこの若者がよ
はたら み かれ いえ きょうせいろうどう かんとく
く働くのを見て、彼にヨセフの家のすべての強 制 労働の監督をさせた。
列王紀上


そ の こ ろ、ヤ ラ ベ ア ム が エ ル サ レ ム を 出 た と き、シ ロ び と で あ る
二九

63
よげんしゃ みち かれ あ あたら きもの き
預言者アヒヤが道で彼に会った。アヒヤは新しい着物を着ていた。そ
かれ の き きもの
し て 彼 ら ふ た り だ け が 野 に い た。 三〇ア ヒ ヤ は 着 て い る 着物 を つ か ん
き さ い き
で、それを十二切れに裂き、 三一ヤラベアムに言った、
﹁あなたは十切れ
と かみ しゅ い み くに
を取りなさい。イスラエルの神、主はこう言われる、
﹃見よ、わたしは国
て さ はな ぶぞく あた
をソロモンの手から裂き離して、あなたに十部族を与えよう。 三二︵ただ
かれ
し彼はわたしのしもべダビデのために、またわたしがイスラエルのすべ
ぶぞく えら まち ぶぞく
ての部族のうちから選んだ町エルサレムのために、一つの部族をもつで
かれ す めがみ
あろう︶。 三三それは彼がわたしを捨てて、シドンびとの女神アシタロテ
かみ ひとびと かみ おが ちち
と、モアブの神ケモシと、アンモンの人々の神ミルコムを拝み、父ダビ
みち あゆ め こと おこな
デのように、わたしの道に歩んで、わたしの目にかなう事を行い、わた
さだ まも
しの定めと、おきてを守ることをしなかったからである。 三四しかし、わ
くに かれ て と えら
たしは国をことごとくは彼の手から取らない。わたしが選んだ、わたし
めいれい さだ まも かれ
のしもべダビデが、わたしの命令と定めとを守ったので、わたしは彼の
列王紀上

いっしょう あいだ きみ こ
ためにソロモンを一 生の間、君としよう。 三五そして、わたしはその子の

64
て くに と ぶぞく あた こ
手から国を取って、その十部族をあなたに与える。 三六その子には一つ
ぶぞく あた な お えら まち
の部族を与えて、わたしの名を置くために選んだ町エルサレムで、わた
まえ つね たも
しのしもべダビデに、わたしの前に常に一つのともしびを保たせるであ
えら こころ のぞ おさ
ろう。 三七わたしがあなたを選び、あなたはすべて心の望むところを治
うえ おう
めて、イスラエルの上に王となるであろう。 三八もし、あなたが、わたし
めい こと き みち あゆ め
の命じるすべての事を聞いて、わたしの道に歩み、わたしの目にかなう
こと おこな さだ いまし
事を行い、わたしのしもべダビデがしたように、わたしの定めと戒めと
まも とも た
を守るならば、わたしはあなたと共にいて、わたしがダビデのために建
けんご いえ た
てたように、あなたのために堅固な家を建てて、イスラエルをあなたに
あた しそん くる
与 え よ う。 三 九わ た し は こ の た め に ダ ビ デ の 子孫 を 苦 し め る。し か し
えいきゅう ころ
永 久にではない﹄﹂。 四〇ソロモンはヤラベアムを殺そうとしたが、ヤラ
た おう い
ベアムは立ってエジプトにのがれ、エジプト王シシャクのところへ行っ

て、ソロモンの死ぬまでエジプトにいた。
列王紀上

じせき かれ こと ち え
四一 ソロモンのそのほかの事績と、彼がしたすべての事およびその知恵

65
じせき しょ
は、ソロモンの事績の書にしるされているではないか。 四二ソロモンが
ぜん ち おさ ひ ねん
エルサレムでイスラエルの全地を治めた日は四十年であった。 四三ソロ
せんぞ とも ねむ ちち まち ほうむ こ
モンはその先祖と共に眠って、父ダビデの町に葬られ、その子レハベア
かわ おう
ムが代って王となった。
第一二章
い かれ おう
一レハベアムはシケムへ行った。すべてのイスラエルびとが彼を王に
い こ
し よ う と シ ケ ム へ 行 っ た か ら で あ る。 二ネ バ テ の 子 ヤ ラ ベ ア ム は ソ ロ
さ き
モンを避けてエジプトにのがれ、なおそこにいたが、これを聞いてエジ
かえ ひとびと ひと かれ まね
プトから帰ったので、 三人々は人をつかわして彼を招いた。そしてヤラ
かいしゅう みな ところ い ちちうえ
ベアムとイスラエルの会 衆は皆レハベアムの所にきて言った、 四﹁父上
おも いまちちうえ しえき
は わ れ わ れ の く び き を 重 く さ れ ま し た が、今父上 の き び し い 使役 と、
列王紀上

ちちうえ お おも かる
父上がわれわれに負わせられた重いくびきとを軽くしてください。そ

66
つか かれ い
う す れ ば わ れ わ れ は あ な た に 仕 え ま す﹂。 五レ ハ ベ ア ム は 彼 ら に 言 っ
さ か す
た、
﹁去って、三日過ぎてから、またわたしのところにきなさい﹂。それ
たみ た さ
で民は立ち去った。
おう ちち ぞんめいなか つか ろうじん
六レ ハ ベ ア ム 王 は 父 ソ ロ モ ン の 存命中 ソ ロ モ ン に 仕 え た 老人 た ち に
そうだん い たみ へんとう おも かれ
相談して言った、
﹁この民にどう返答すればよいと思いますか﹂。 七彼ら
い たみ
はレハベアムに言った、﹁もし、あなたが、きょう、この民のしもべとなっ
かれ つか かれ こた かた かれ
て彼らに仕え、彼らに答えるとき、ねんごろに語られるならば、彼らは
えいきゅう かれ ろうじん あた
永 久にあなたのしもべとなるでしょう﹂。 八しかし彼は老人たちが与え
すす す じぶん いっしょ おお じぶん つか わかもの
た勧めを捨てて、自分と一緒に大きくなって自分に仕えている若者たち
そうだん かれ い たみ ちち
に相談して、 九彼らに言った、
﹁この民がわたしにむかって﹃あなたの父
お かる
がわれわれに負わせたくびきを軽くしてください﹄というのに、われわ
へんとう おも かれ いっしょ おお
れ は な ん と 返答 す れ ば よ い と 思 い ま す か﹂。 一〇彼 と 一緒 に 大 き く な っ
わかもの かれ い ちちうえ
た若者たちは彼に言った、﹁あなたにむかって﹃父上はわれわれのくびき
列王紀上

おも かる
を重くされましたが、あなたは、それをわれわれのために軽くしてくだ

67
い たみ い こゆび ちち こし
さい﹄と言うこの民に、こう言いなさい、
﹃わたしの小指は父の腰よりも
ふと ちち おも お
太い。 一一父はあなたがたに重いくびきを負わせたが、わたしはさらに、
おも ちち こ
あなたがたのくびきを重くしよう。父はむちであなたがたを懲らした

が、わたしはさそりをもってあなたがたを懲らそう﹄と﹂。
たみ みな おう か め ふたた く
一二さてヤラベアムと民は皆、王が﹁三日目に再びわたしのところに来る
い か め おう
ように﹂と言ったとおりに、三日目にレハベアムのところにきた。 一三王
あらあら たみ こた ろうじん あた すす す わかもの すす
は荒々しく民に答え、老人たちが与えた勧めを捨てて、一四若者たちの勧
したが かれ つ い ちち おも
めに従い、彼らに告げて言った、﹁父はあなたがたのくびきを重くした
おも ちち
が、わたしはあなたがたのくびきを、さらに重くしよう。父はむちであ
こ こ
なたがたを懲らしたが、わたしはさそりをもってあなたがたを懲らそ
おう たみ い き
う﹂。 一五こ の よ う に 王 は 民 の 言 う こ と を 聞 き い れ な か っ た。こ れ は か
しゅ こ い
つて主がシロびとアヒヤによって、ネバテの子ヤラベアムに言われた
ことば じょうじゅ しゅ し む こと
言葉を成 就するために、主が仕向けられた事であった。
列王紀上

ひとびと みな おう じぶん い き
一六イスラエルの人々は皆、王が自分たちの言うことを聞きいれないの

68
み たみ おう こた い
を見たので、民は王に答えて言った、
なに ぶん
﹁われわれはダビデのうちに何の分があろうか、
こ し ぎょう
エッサイの子のうちに嗣 業がない。
てんまく かえ
イスラエルよ、あなたがたの天幕へ帰れ。
いま じ ぶ ん いえ こと み
ダビデよ、今自分の家の事を見よ﹂。
てんまく さ
そしてイスラエルはその天幕へ去っていった。 一七しかしレハベアムは
まちまち す ひとびと おさ おう
ユダの町々に住んでいるイスラエルの人々を治めた。 一八レハベアム王
ちょうぼ かんとく みな かれ
は徴募の監督であったアドラムをつかわしたが、イスラエルが皆、彼を
いし う ころ おう いそ くるま の に
石で撃ち殺したので、レハベアム王は急いで車に乗り、エルサレムへ逃
いえ こんにち いた
げ た。 一九こ う し て イ ス ラ エ ル は ダ ビ デ の 家 に そ む い て 今日 に 至 っ た。
みな かえ き ひと
二〇イスラエルは皆ヤラベアムの帰ってきたのを聞き、人をつかわして
かれ しゅうかい まね ぜんか うえ おう ぶぞく
彼を集 会に招き、イスラエルの全家の上に王とした。ユダの部族のほ
いえ したが もの
かはダビデの家に従う者がなかった。
列王紀上

こ き ぜんか
二一ソロモンの子レハベアムはエルサレムに来て、ユダの全家とベニヤ

69
ぶぞく もの ぬ ぐんじん あつ くに と
ミンの部族の者、すなわちえり抜きの軍人十八万を集め、国を取りもど
いえ たたか かみ ことば かみ ひと
すために、イスラエルの家と戦おうとしたが、二二神の言葉が神の人シマ
のぞ こ おう
ヤに臨んだ、 二三﹁ソロモンの子であるユダの王レハベアム、およびユダ
ぜんか たみ い しゅ
とベニヤミンの全家、ならびにそのほかの民に言いなさい、 二四﹃主はこ
おお のぼ
う仰せられる。あなたがたは上っていってはならない。あなたがたの
きょうだい ひとびと たたか いえ かえ
兄 弟であるイスラエルの人々と戦 ってはならない。おのおの家に帰り
こと で かれ しゅ ことば
なさい。この事はわたしから出たのである﹄﹂。それで彼らは主の言葉
しゅ ことば したが かえ
をきき、主の言葉に従 って帰っていった。
さんち た す
二五 ヤラベアムはエフライムの山地にシケムを建てて、そこに住んだ。
かれ で た
彼はまたそこから出てペヌエルを建てた。 二六しかしヤラベアムはその
こころ い くに いま いえ
心のうちに言った、
﹁国は今ダビデの家にもどるであろう。 二七もしこの
たみ しゅ みや ぎせい のぼ
民がエルサレムにある主の宮に犠牲をささげるために上るならば、この
たみ こころ おう かれ しゅくん かえ ころ
民の心はユダの王である彼らの主君レハベアムに帰り、わたしを殺し
列王紀上

おう かえ おう そうだん
て、ユダの王レハベアムに帰るであろう﹂。 二八そこで王は相談して、二

70
きん こ うし つく たみ い のぼ
つの金の子牛を造り、民に言った、﹁あなたがたはもはやエルサレムに上
くに みちび
るには、およばない。イスラエルよ、あなたがたをエジプトの国から導
のぼ かみ み かれ
き上ったあなたがたの神を見よ﹂。 二九そして彼は一つをベテルにすえ、
お こと つみ たみ い
一つをダンに置いた。 三〇この事は罪となった。民がベテルへ行って一
れいはい い れいはい かれ たか
つを礼拝し、ダンへ行って一つを礼拝したからである。 三一彼はまた高
ところ いえ つく しそん いっぱん たみ さいし にんめい
き所に家を造り、レビの子孫でない一般の民を祭司に任命した。 三二ま
おこな まつり おな まつり がつ にち さだ
たヤラベアムはユダで行う祭と同じ祭を八月の十五日に定め、そして
さいだん のぼ かれ おこな かれ つく こ うし ぎせい
祭壇に上った。彼はベテルでそのように行い、彼が造った子牛に犠牲を
じぶん つく たか ところ さいし た
ささげた。また自分の造った高き所の祭司をベテルに立てた。 三三こう
かれ つく さいだん がつ にち のぼ かれ
し て 彼 は ベ テ ル に 造 っ た 祭壇 に 八 月 の 十 五 日 に 上 っ た。こ れ は 彼 が
じぶん かっ て かんが つき かれ ひとびと
自分で勝手に考えついた月であった。そして彼はイスラエルの人々の
まつり さだ さいだん のぼ こう
ために祭を定め、祭壇に上って香をたいた。
列王紀上

71
第一三章
み かみ ひと しゅ いのち とき
一見よ、神の人が主の命によってユダからベテルにきた。その時ヤラベ
さいだん うえ た こう かみ ひと さいだん しゅ
ア ム は 祭壇 の 上 に 立 っ て 香 を た い て い た。 二神 の 人 は 祭壇 に む か い 主
いのち よ い さいだん さいだん しゅ おお
の命によって呼ばわって言った、﹁祭壇よ、祭壇よ、主はこう仰せられる、
み いえ こ うま な かれ
﹃見よ、ダビデの家にひとりの子が生れる。その名をヨシヤという。彼
うえ こう たか ところ さいし うえ
はおまえの上で香をたく高き所の祭司らを、おまえの上にささげる。ま
ひと ほね うえ や ひ かれ
た人の骨がおまえの上で焼かれる﹄﹂。 三その日、彼はまた一つのしるし
しめ い しゅ い み さいだん さ
を示して言った、
﹁主の言われたしるしはこれである、
﹃見よ、祭壇は裂
うえ はい で おう かみ
け、その上にある灰はこぼれ出るであろう﹄﹂。 四ヤラベアム王は、神の
ひと さいだん よ ことば き とき さいだん て
人がベテルにある祭壇にむかって呼ばわる言葉を聞いた時、祭壇から手
の かれ とら い かれ の て か
を伸ばして、
﹁彼を捕えよ﹂と言ったが、彼にむかって伸ばした手が枯れ
こ かみ ひと しゅ ことば
て、ひっ込めることができなかった。 五そして神の人が主の言葉をもっ
列王紀上

しめ さいだん さ はい さいだん で おう
て示したしるしのように祭壇は裂け、灰は祭壇からこぼれ出た。 六王は

72
かみ ひと い かみ しゅ ねが いの
神の人に言った、
﹁あなたの神、主に願い、わたしのために祈って、わた
て かえ かみ ひと しゅ ねが おう て
しの手をもとに返らせてください﹂。神の人が主に願ったので、王の手
かえ まえ おう かみ ひと い
はもとに返って、前のようになった。 七そこで王は神の人に言った、
﹁わ
いっしょ いえ み やす しゃれい
たしと一緒に家にきて、身を休めなさい。あなたに謝礼をさしあげま
かみ ひと おう い いえ なか
し ょ う﹂。 八神 の 人 は 王 に 言 っ た、﹁た と い、あ な た の 家 の 半 ば を く だ
いっしょ ところ
さっても、わたしはあなたと一緒にまいりません。またこの所では、パ
た みず の しゅ ことば た
ンも食べず水も飲みません。 九主の言葉によってわたしは、﹃パンを食
みず の き みち かえ
べてはならない、水を飲んではならない。また来た道から帰ってはなら
めい かれ みち い
ない﹄と命じられているからです﹂。 一〇こうして彼はほかの道を行き、
き みち かえ
ベテルに来た道からは帰らなかった。
としお よげんしゃ す
一一さてベテルにひとりの年老いた預言者が住んでいたが、そのむすこ
ひ かみ ひと こと かれ はな かみ
たちがきて、その日神の人がベテルでした事どもを彼に話した。また神
ひと おう い ことば ちち はな ちち かれ ひと
の人が王に言った言葉をもその父に話した。 一二父が彼らに﹁その人は
列王紀上

みち い き かみ ひと
どの道を行ったか﹂と聞いたので、むすこたちはユダからきた神の人の

73
い みち ちち しめ ちち い
行った道を父に示した。 一三父はむすこたちに言った、
﹁わたしのために
お かれ お かれ
ろばにくらを置きなさい﹂。彼らがろばにくらを置いたので、彼はそれ
の かみ ひと お い き した
に乗り、一四神の人のあとを追って行き、かしの木の下にすわっているの
み ひと い かみ ひと
を見て、その人に言った、﹁あなたはユダからこられた神の人ですか﹂。
ひと い かれ ひと い
その人は言った、
﹁そうです﹂。 一五そこで彼はその人に言った、
﹁わたし
いっしょ いえ た ひと い
と一緒に家にきてパンを食べてください﹂。 一六その人は言った、﹁わた
いっしょ ひ かえ いっしょ い
しはあなたと一緒に引き返すことはできません。あなたと一緒に行く
ところ いっしょ た
ことはできません。またわたしはこの所であなたと一緒にパンも食べ
みず の しゅ ことば ところ た
ず水も飲みません。 一七主の言葉によってわたしは、
﹃その所でパンを食
みず の き みち かえ
べてはならない、水を飲んではならない。また来た道から帰ってはなら
い かれ ひと い
ない﹄と言われているからです﹂。 一八彼はその人に言った、
﹁わたしもあ
おな よげんしゃ てん つかい しゅ いのち つ
なたと同じ預言者ですが、天の使が主の命によってわたしに告げて、﹃そ
ひと いっしょ いえ かえ た みず の い
の人を一緒に家につれ帰り、パンを食べさせ、水を飲ませよ﹄と言いま
列王紀上

かれ ひと あざむ ひと かれ
し た﹂。こ れ は 彼 が そ の 人 を 欺 い た の で あ る。 一九そ こ で そ の 人 は 彼 と

74
いっしょ ひ かえ いえ た みず の
一緒に引き返し、その家でパンを食べ、水を飲んだ。
かれ しょくたく しゅ ことば ひと かえ
二〇 彼らが食 卓についていたとき、主の言葉が、その人をつれて帰った
よげんしゃ のぞ かれ かみ ひと よ
預言者に臨んだので、 二一彼はユダからきた神の人にむかい呼ばわって
い しゅ おお しゅ ことば
言った、
﹁主はこう仰せられます、
﹃あなたが主の言葉にそむき、あなた
かみ しゅ めい めいれい まも ひ かえ しゅ
の神、主がお命じになった命令を守らず、二二引き返して、主があなたに、
た みず の い ば しょ
パンを食べてはならない、水を飲んではならない、と言われた場所でパ
た みず の したい せんぞ はか い
ンを食べ、水を飲んだゆえ、あなたの死体はあなたの先祖の墓に行かな
ひと た みず の のち かれ
いであろう﹄﹂。 二三そしてその人がパンを食べ、水を飲んだ後、彼はその
ひと かえ よげんしゃ お
人のため、すなわちつれ帰った預言者のためにろばにくらを置いた。 二四
ひと た さ みち かれ あ かれ ころ
こうしてその人は立ち去ったが、道でししが彼に会って彼を殺した。そ
したい みち す た
してその死体は道に捨てられ、ろばはそのかたわらに立ち、ししもまた
したい た ひとびと みち す
死体のかたわらに立っていた。 二五人々はそこをとおって、道に捨てら
したい したい た み ろう
れ て い る 死体 と、死体 の か た わ ら に 立 っ て い る し し を 見 て、か の 老
列王紀上

よげんしゃ す まち はな
預言者の住んでいる町にきてそれを話した。

75
ひと みち かえ よげんしゃ き い
その人を道からつれて帰った預言者はそれを聞いて言った、
二六 ﹁それは
しゅ ことば かみ ひと しゅ かれ い ことば しゅ かれ
主の言葉にそむいた神の人だ。主が彼に言われた言葉のように、主は彼
かれ さ ころ
をししにわたされ、ししが彼を裂き殺したのだ﹂。 二七そしてむすこたち
い お かれ お
に言った、﹁わたしのためにろばにくらを置きなさい﹂。彼らがくらを置
かれ い したい みち す したい
いたので、 二八彼は行って、死体が道に捨てられ、ろばとししが死体のか
た み したい た さ
たわらに立っているのを見た。ししはその死体を食べず、ろばも裂いて
よげんしゃ かみ ひと したい と
いなかった。 二九そこで預言者は神の人の死体を取りあげ、それをろば
の まち も かえ かな ほうむ したい
に載せて町に持ち帰り、悲しんでそれを葬 った。 三〇すなわちその死体
じぶん はか おさ みな きょうだい い かな
を自分の墓に納め、皆これがために﹁ああ、わが兄 弟よ﹂と言って悲し
かれ ほうむ のち い し
んだ。 三一彼はそれを葬 って後、むすこたちに言った、
﹁わたしが死んだ
とき かみ ひと ほうむ はか ほうむ ほね かれ ほね おさ
時は、神の人を葬 った墓に葬り、わたしの骨を彼の骨のかたわらに納め
かれ しゅ いのち さいだん
なさい。 三二彼が主の命によって、ベテルにある祭壇にむかい、またサマ
まちまち たか ところ いえ よ ことば かなら
リヤの町々にある高き所のすべての家にむかって呼ばわった言葉は必
列王紀上

じょうじゅ
ず成 就するのです﹂。

76
こと のち わる みち はな た かえ
三三 この事の後も、ヤラベアムはその悪い道を離れて立ち返ることをせ
いっぱん たみ たか ところ さいし にんめい この
ず、また一般の民を、高き所の祭司に任命した。すなわち、だれでも好
もの た たか ところ さいし こと
む者は、それを立てて高き所の祭司とした。 三四この事はヤラベアムの
いえ つみ ち た ほろ
家の罪となって、ついにこれを地のおもてから断ち滅ぼすようになっ
た。
第一四章
こ びょうき
一そのころヤラベアムの子アビヤが病気になったので、 二ヤラベアムは
つま い た すがた か つま し
妻に言った、﹁立って姿を変え、ヤラベアムの妻であることの知られない
い たみ おう
ようにしてシロへ行きなさい。わたしがこの民の王となることを、わた
つ よげんしゃ こ か し すうこ
し に 告 げ た 預言者 ア ヒ ヤ が そ こ に い ま す。 三パ ン 十 個 と 菓子数個 お よ
たずさ かれ い かれ こ
び、みつ一びんを携えて彼のところへ行きなさい。彼はこの子がどうな
列王紀上


るかをあなたに告げるでしょう﹂。

77
つま た い いえ
ヤラベアムの妻はそのようにして、立ってシロへ行き、アヒヤの家に

つ としお め み
着いたが、アヒヤは年老いたため、目がかすんで見ることができなかっ
しゅ い つま こども こと
た。 五しかし主はアヒヤに言われた、﹁ヤラベアムの妻が子供の事をあ
たず く こども びょうき かのじょ い
なたに尋ねるために来る。子供は病気だ。あなたは彼女にこうこう言
わなければならない﹂。
かのじょ く たにん よそお かのじょ とぐち
彼女は来るとき、他人を装 っていた。 六しかし彼女が戸口にはいってき
あしおと き い つま
たとき、アヒヤはその足音を聞いて言った、
﹁ヤラベアムの妻よ、はいり
たにん よそお こと つ
なさい。なぜ、他人を装うのですか。わたしはあなたにきびしい事を告
めい い い
げるよう、命じられています。 七行ってヤラベアムに言いなさい、
﹃イス
かみ しゅ おお たみ
ラエルの神、主はこう仰せられる、﹁わたしはあなたを民のうちからあ
たみ うえ た きみ くに いえ
げ、わたしの民イスラエルの上に立てて君とし、 八国をダビデの家から
さ はな あた
裂き離して、それをあなたに与えたのに、あなたはわたしのしもべダビ
めいれい まも いっしん したが め
デが、わたしの命令を守って一心にわたしに従い、ただわたしの目にか
列王紀上

こと おこな さき
なった事のみを行 ったようにではなく、 九あなたよりも先にいたすべ

78
もの あく い じぶん た かみがみ い ぞう つく
ての者にまさって悪をなし、行って自分のために他の神々と鋳た像を造
いか す さ み
り、わたしを怒らせ、わたしをうしろに捨て去った。 一〇それゆえ、見よ、
いえ わざわい くだ ぞく おとこ
わたしはヤラベアムの家に災を下し、ヤラベアムに属する男は、イスラ
もの じゆう もの た ひと
エルについて、つながれた者も、自由な者もことごとく断ち、人があく
のこ や いえ まった た ほろ
たを残りなく焼きつくすように、ヤラベアムの家を全く断ち滅ぼすであ
ぞく もの まち し もの いぬ た の し もの
ろう。 一一ヤラベアムに属する者は、町で死ぬ者を犬が食べ、野で死ぬ者
そら とり た しゅ い
を空の鳥が食べるであろう。主がこれを言われるのである﹂﹄。 一二あな
た いえ かえ あし まち とき こ
たは立って、家へ帰りなさい。あなたの足が町にはいる時に、子どもは
し みな かれ かな かれ ほうむ
死にます。 一三そしてイスラエルは皆、彼のために悲しんで彼を葬るで
ぞく もの かれ はか ほうむ
しょう。ヤラベアムに属する者は、ただ彼だけ墓に葬られるでしょう。
いえ かれ かみ しゅ よ おも
ヤラベアムの家のうちで、彼はイスラエルの神、主にむかって良い思い
しゅ うえ おう おこ
をいだいていたからです。 一四主はイスラエルの上にひとりの王を起さ
かれ ひ いえ た のちしゅ
れます。彼はその日ヤラベアムの家を断つでしょう。 一五その後主はイ
列王紀上

う みず ゆ あし せんぞ
スラエルを撃って、水に揺らぐ葦のようにし、イスラエルを、その先祖

79
たま よ ち ぬ さ かわ む ち
に賜わったこの良い地から抜き去って、ユフラテ川の向こうに散らされ
かれ ぞう つく しゅ いか しゅ
るでしょう。彼らがアシラ像を造って主を怒らせたからです。 一六主は
つみ かれ おか
ヤラベアムの罪のゆえに、すなわち彼がみずから犯し、またイスラエル
おか つみ す
に犯させたその罪のゆえにイスラエルを捨てられるでしょう﹂。
つま た さ い いえ しきい
一七ヤラベアムの妻は立って去り、テルザへ行って、家の敷居をまたいだ
とき こ し みなかれ ほうむ かれ かな
時、子どもは死んだ。 一八イスラエルは皆彼を葬り、彼のために悲しん
しゅ よげんしゃ い ことば
だ。主がそのしもべ預言者アヒヤによって言われた言葉のとおりであ
た じせき かれ たたか よ
る。 一九ヤラベアムのその他の事績、彼がどのように戦い、どのように世
おさ おう れきだいし しょ
を治めたかは、イスラエルの王の歴代志の書にしるされている。 二〇ヤ
よ おさ ひ ねん かれ せんぞ とも
ラ ベ ア ム が 世 を 治 め た 日 は 二 十 二 年 で あ っ た。彼 は そ の 先祖 と 共 に
ねむ こ かわ おう
眠って、その子ナダブが代って王となった。
こ よ おさ おう
二一 ソ ロ モ ン の 子 レ ハ ベ ア ム は ユ ダ で 世 を 治 め た。レ ハ ベ ア ム は 王 と
さい しゅ な お
なったとき四十一歳であったが、主がその名を置くために、イスラエル
列王紀上

ぶぞく えら まち ねん よ おさ
のすべての部族のうちから選ばれた町エルサレムで、十七年世を治め

80
はは な
た。そ の 母 の 名 は ナ ア マ と い っ て ア ン モ ン び と で あ っ た。 二 二ユ ダ の
ひとびと せんぞ おこな こと しゅ め まえ あく おこな
人々はその先祖の行 ったすべての事にまさって、主の目の前に悪を行
おか つみ しゅ いか ひ おこ かれ
い、その犯した罪によって主の怒りを引き起した。 二三彼らもすべての
たか おか うえ あお き した たか ところ いし はしら ぞう た
高い丘の上と、すべての青木の下に、高き所と石の柱とアシラ像とを建
くに しんでんだんしょう かれ しゅ
て た か ら で あ る。 二四そ の 国 に は ま た 神殿 男 娼 た ち が い た。彼 ら は 主
ひとびと まえ お はら こくみん にく こと
がイスラエルの人々の前から追い払われた国民のすべての憎むべき事

をならい行った。
おう だい ねん おう せ
二五 レハベアムの王の第五年にエジプトの王シシャクがエルサレムに攻
のぼ しゅ みや ほうもつ おう きゅうでん ほうもつ うば さ かれ
め上ってきて、 二六主の宮の宝物と、王の宮 殿の宝物を奪い去った。彼
うば さ つく きん たて うば
はそれをことごとく奪い去り、またソロモンの造った金の盾をみな奪い
さ かわ せいどう たて つく おう きゅうでん もん
去った。 二七レハベアムはその代りに青銅の盾を造って、王の宮 殿の門
まも じ え い ちょう て おう しゅ みや じえい
を守る侍衛 長の手にわたした。 二八王が主の宮にはいるごとに、侍衛は
たずさ じえい も かえ
それを携え、また、それを侍衛のへやへ持ち帰った。
列王紀上

た じせき かれ こと おう
二九 レハベアムのその他の事績と、彼がしたすべての事は、ユダの王の

81
れきだいし しょ
歴代志の書にしるされているではないか。 三〇レハベアムとヤラベアム
あいだ た せんそう せんぞ とも ねむ
の間には絶えず戦争があった。 三一レハベアムはその先祖と共に眠って
せんぞ とも まち ほうむ はは な
先祖と共にダビデの町に葬られた。その母の名はナアマといってアン
こ かわ おう
モンびとであった。その子アビヤムが代って王となった。
第一五章
こ おう だい ねん おう
一ネバテの子ヤラベアム王の第十八年にアビヤムがユダの王となり、 二
ねん よ おさ はは な
エルサレムで三年世を治めた。その母の名はマアカといって、アブサロ
むすめ かれ ちち さき おこな つみ
ムの娘であった。 三彼はその父が先に行 ったもろもろの罪をおこない、
こころ ちち こころ かみ しゅ たい まった しんじつ
その心は父ダビデの心のようにその神、主に対して全く真実ではなかっ
かみ しゅ
た。 四それにもかかわらず、その神、主はダビデのために、エルサレム
かれ あた こ かれ た
において彼に一つのともしびを与え、その子を彼のあとに立てて、エル
列王紀上

かた こと
サ レ ム を 固 め ら れ た。 五そ れ は ダ ビ デ が ヘ テ び と ウ リ ヤ の 事 の ほ か、

82
いっしょう あいだ しゅ め こと おこな しゅ めい こと
一 生の間、主の目にかなう事を行い、主が命じられたすべての事に、そ
あいだ いっしょう
むかなかったからである。 六レハベアムとヤラベアムの間には一 生の
あいだ せんそう た こうい かれ こと
間、戦争があった。 七アビヤムのその他の行為と、彼がしたすべての事
おう れきだいし しょ
は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。アビヤムとヤ
あいだ せんそう せんぞ とも ねむ
ラベアムの間にも戦争があった。 八アビヤムはその先祖と共に眠って、
まち ほうむ こ かわ おう
ダビデの町に葬られ、その子アサが代って王となった。
おう だい ねん おう
九イスラエルの王ヤラベアムの第二十年にアサはユダの王となり、 一〇
ねん よ おさ はは な
エルサレムで四十一年世を治めた。その母の名はマアカといってアブ
むすめ ちち しゅ め
サロムの娘であった。 一一アサはその父ダビデがしたように主の目にか
こと しんでんだんしょう くに お だ せんぞ つく
なう事をし、 一二神殿 男 娼を国から追い出し、先祖たちの造ったもろも
ぐうぞう のぞ かれ はは にく
ろの偶像を除いた。 一三彼はまたその母マアカが、アシラのために憎む
ぞう つく かのじょ たいこう くらい しりぞ
べき像を造らせたので、彼女を太后の位から退けた。そしてアサはその
にく ぞう き たお たに や す たか ところ
憎むべき像を切り倒してキデロンの谷で焼き捨てた。 一四ただし高き所
列王紀上

のぞ こころ いっしょう あいだ しゅ たい まった しんじつ


は除かなかった。けれどもアサの心は一 生の間、主に対して全く真実

83
かれ ちち けんのう もの じぶん けんのう もの きんぎん
で あ っ た。 一 五彼 は 父 の 献納 し た 物 と 自分 の 献納 し た 物、金銀 お よ び
うつわもの しゅ みや たずさ い
器 物を主の宮に携え入れた。
おう あいだ いっしょう あいだ せんそう
一六 アサとイスラエルの王バアシャの間には一 生の間、戦争があった。
おう せ のぼ おう ところ
一七 イスラエルの王バアシャはユダに攻め上り、ユダの王アサの所に、だ
で い きず しゅ みや
れをも出入りさせないためにラマを築いた。 一八そこでアサは主の宮の
ほうぞう おう きゅうでん ほうぞう のこ きんぎん と
宝蔵と、王の宮 殿の宝蔵に残っている金銀をことごとく取って、これを
けらい て おう かれ す
家来たちの手にわたし、そしてアサ王は彼らをダマスコに住んでいるス
おう こ こ
リヤの王、ヘジョンの子タブリモンの子であるベネハダデにつかわして
い ちち ちち あいだ むす
言わせた、 一九﹁わたしの父とあなたの父との間に結ばれていたように、
あいだ どうめい むす きんぎん
わたしとあなたの間に同盟を結びましょう。わたしはあなたに金銀の
おく もの い おう
贈り物をさしあげます。行って、あなたとイスラエルの王バアシャとの
どうめい は き かれ ところ てったい
同盟を破棄し、彼をわたしの所から撤退させてください﹂。 二〇ベネハダ
おう い き じぶん ぐんぜい ちょう
デはアサ王の言うことを聞き、自分の軍勢の長たちをつかわしてイスラ
列王紀上

まちまち せ
エルの町々を攻め、イヨンとダンとアベル・ベテ・マアカおよびキンネ

84
ぜん ち ぜん ち う き
レテの全地と、ナフタリの全地を撃った。 二一バアシャはこれを聞き、ラ
きず おう
マを築くことをやめて、テルザにとどまった。 二二そこでアサ王はユダ
ぜんこく ふこく はっ まぬか もの
全国 に 布告 を 発 し た。ひ と り も 免 れ る 者 は な か っ た。す な わ ち バ ア
きず もち いし ざいもく はこ おう
シャがラマを築くために用いた石と材木を運びこさせ、アサ王はそれを
もち きず た じせき
用いて、ベニヤミンのゲバとミヅパを築いた。 二三アサのその他の事績
くんこう かれ こと かれ た まちまち
とそのすべての勲功と、彼がしたすべての事および彼が建てた町々は、
おう れきだいし しょ かれ ろうねん
ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。彼は老年になっ
あし や せんぞ とも ねむ ちち まち せんぞ
て足を病んだ。 二四アサはその先祖と共に眠って、父ダビデの町に先祖
とも ほうむ こ かわ おう
と共に葬られ、その子ヨシャパテが代って王となった。
おう だい ねん こ おう
二五ユダの王アサの第二年にヤラベアムの子ナダブがイスラエルの王と
ねん おさ かれ しゅ め まえ あく おこな
なって、二年イスラエルを治めた。 二六彼は主の目の前に悪を行い、その
ちち みち あゆ ちち おか つみ
父の道に歩み、父がイスラエルに犯させた罪をおこなった。
いえ こ かれ たい くわだ
イッサカルの家のアヒヤの子バアシャは彼に対してむほんを企て、
列王紀上

二七
ぞく かれ う
ペリシテびとに属するギベトンで彼を撃った。これはナダブとイスラ

85
みな かこ おう
エルが皆ギベトンを囲んでいたからである。 二八こうしてユダの王アサ
だい ねん かれ ころ かれ かわ おう かれ おう
の第三年にバアシャは彼を殺し、彼に代って王となった。 二九彼は王と
ぜんか う いき もの
なるとすぐヤラベアムの全家を撃ち、息のある者をひとりもヤラベアム
いえ のこ ほろ しゅ
の家に残さず、ことごとく滅ぼした。主がそのしもべシロびとアヒヤに
い ことば
よって言われた言葉のとおりであって、 三〇これはヤラベアムがみずか
おか おか つみ かれ かみ
ら犯し、またイスラエルに犯させた罪のため、また彼がイスラエルの神、
しゅ いか いか
主を怒らせたその怒りによるのであった。
た じせき かれ こと おう
三一ナダブのその他の事績と、彼がしたすべての事は、イスラエルの王の
れきだいし しょ おう
歴代志の書にしるされているではないか。 三二アサとイスラエルの王バ
あいだ いっしょう あいだせんそう
アシャの間には一 生の間 戦争があった。
おう だい ねん こ
三三ユダの王アサの第三年にアヒヤの子バアシャはテルザでイスラエル
ぜん ち おう ねん よ おさ かれ しゅ め まえ あく
の全地の王となって、二十四年世を治めた。 三四彼は主の目の前に悪を
おこな みち あゆ おか つみ
行い、ヤラベアムの道に歩み、ヤラベアムがイスラエルに犯させた罪を
列王紀上

おこなった。

86
第一六章
しゅ ことば こ のぞ せ い
一そこで主の言葉がハナニの子エヒウに臨み、バアシャを責めて言っ
なか たみ
た、 二﹁わたしはあなたをちりの中からあげて、わたしの民イスラエル
うえ きみ みち あゆ たみ
の上に君としたが、あなたはヤラベアムの道に歩み、わたしの民イスラ
つみ おか つみ いか
エルに罪を犯させ、その罪をもってわたしを怒らせた。 三それでわたし
いえ まった ほろ さ いえ こ
は、バアシャとその家を全く滅ぼし去り、あなたの家をネバテの子ヤラ
いえ ぞく もの まち し もの いぬ
ベアムの家のようにする。 四バアシャに属する者で、町で死ぬ者は犬が
た かれ ぞく もの の し もの そら とり た
食べ、彼に属する者で、野で死ぬ者は空の鳥が食べるであろう﹂。
た じせき かれ こと くんこう
五バアシャのその他の事績と、彼がした事と、その勲功とは、イスラエ
おう れきだいし しょ
ル の 王 の 歴代志 の 書 に し る さ れ て い る で は な い か。 六バ ア シ ャ は そ の
せんぞ とも ねむ ほうむ こ かわ おう
先祖と共に眠って、テルザに葬られ、その子エラが代って王となった。 七
しゅ ことば こ よげんしゃ のぞ
主の言葉はまたハナニの子預言者エヒウによって臨み、バアシャとその
列王紀上

いえ せ かれ しゅ め まえ あく おこな て
家を責めた。これは彼が主の目の前に、もろもろの悪を行い、その手の

87
しゅ いか いえ
わざをもって主を怒らせ、ヤラベアムの家にならったためであり、また
かれ いえ ほろ
彼がヤラベアムの家を滅ぼしたためであった。
おう だい ねん こ
ユダの王アサの第二十六年にバアシャの子エラはテルザでイスラエ

おう ねん よ おさ かれ きゅうでん
ルの王となり、二年世を治めた。 九彼がテルザにいて、テルザの宮 殿の
いえ さけ の よ とき けらい せんしゃたい なか
つかさアルザの家で酒を飲んで酔った時、その家来で戦車隊の半ばを
し き かれ おう だい
指揮していたジムリが、彼にそむいた。 一〇そしてユダの王アサの第二
ねん かれ う ころ かれ かわ おう
十七年にジムリは、はいってきて彼を撃ち殺し、彼に代って王となった。
おう くらい とき ぜんか ころ
一一 ジムリは王となって、 位についた時、バアシャの全家を殺し、その
しんぞく とも だんし のこ
親族または友だちの男子は、ひとりも残さなかった。 一二こうしてジム
ぜんか ほろ しゅ よげんしゃ
リはバアシャの全家を滅ぼした。主が預言者エヒウによってバアシャ
せ い ことば
を責めて言われた言葉のとおりである。 一三これはバアシャのもろもろ
つみ こ つみ かれ つみ おか
の罪と、その子エラの罪のためであって、彼らが罪を犯し、またイスラ
つみ おか かれ ぐうぞう かみ しゅ いか
エルに罪を犯させ、彼らの偶像をもってイスラエルの神、主を怒らせた
列王紀上

た じせき かれ こと
からである。 一四エラのその他の事績と、彼がしたすべての事は、イスラ

88
おう れきだいし しょ
エルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
おう だい ねん なぬか あいだ よ おさ
一五 ユダの王アサの第二十七年にジムリはテルザで七日の間、世を治め
たみ ぞく じんど
た。民はペリシテびとに属するギベトンにむかって陣取っていたが、 一
じんど たみ おこ おう ころ ひと
その陣取っていた民が﹁ジムリはむほんを起して王を殺した﹂と人の

き みな ひ じんえい ぐん ちょう
いうのを聞いたので、イスラエルは皆その日陣営で、軍の長 オムリをイ
おう ひとびと とも
スラエルの王とした。 一七そこでオムリはイスラエルの人々と共にギベ
のぼ かこ まち おちい み
トンから上ってテルザを囲んだ。 一八ジムリはその町の陥るのを見て、
おう きゅうでん てんしゅ おう きゅうでん ひ なか し
王の宮 殿の天守にはいり、王の宮 殿に火をかけてその中で死んだ。 一九
かれ おか つみ かれ しゅ め まえ あく おこな
これは彼が犯した罪のためであって、彼が主の目の前に悪を行い、ヤラ
みち あゆ おか つみ おこな
ベアムの道に歩み、ヤラベアムがイスラエルに犯させたその罪を行 っ
た じせき かれ くわだ いんぼう
たからである。 二〇ジムリのその他の事績と、彼が企てた陰謀は、イスラ
おう れきだいし しょ
エルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
とき たみ わか たみ なか こ
その時イスラエルの民は二つに分れ、民の半ばはギナテの子テブニ
列王紀上

二一
したが おう なか したが
に従 って、これを王としようとし、半ばはオムリに従 った。 二二しかし

89
したが たみ こ したが たみ か
オムリに従 った民はギナテの子テブニに従 った民に勝って、テブニは
し おう おう だい ねん
死に、オムリが王となった。 二三ユダの王アサの第三十一年にオムリは
おう ねん よ おさ かれ ねんおう
イ ス ラ エ ル の 王 と な っ て 十 二 年世 を 治 め た。彼 は テ ル ザ で 六 年王 で
かれ ぎん やま か
あった。 二四彼は銀二タラントでセメルからサマリヤの山を買い、その
うえ まち た た まち な やま も ぬし な
上に町を建て、その建てた町の名をその山の持ち主であったセメルの名
したが よ
に従 ってサマリヤと呼んだ。
しゅ め まえ あく おこな かれ さき もの
二五 オムリは主の目の前に悪を行い、彼よりも先にいたすべての者にま
わる こと かれ こ みち あゆ
さって悪い事をした。 二六彼はネバテの子ヤラベアムのすべての道に歩
つみ おか かれ ぐうぞう
み、ヤラベアムがイスラエルに罪を犯させ、彼らの偶像をもってイスラ
かみ しゅ いか つみ おこな い た
エルの神、主を怒らせたその罪を行 った。 二七オムリが行ったその他の
じせき かれ くんこう おう れきだいし しょ
事績と、彼があらわした勲功とは、イスラエルの王の歴代志の書にしる
せんぞ とも ねむ
されているではないか。 二八オムリはその先祖と共に眠って、サマリヤ
ほうむ こ かわ おう
に葬られ、その子アハブが代って王となった。
列王紀上

おう だい ねん こ おう
二九 ユダの王アサの第三十八年にオムリの子アハブがイスラエルの王と

90
こ ねん おさ
なった。オムリの子アハブはサマリヤで二十二年イスラエルを治めた。
こ かれ さき もの しゅ
三〇 オムリの子アハブは彼よりも先にいたすべての者にまさって、主の
め まえ あく おこな かれ こ つみ おこな
目 の 前 に 悪 を 行 っ た。 三一彼 は ネ バ テ の 子 ヤ ラ ベ ア ム の 罪 を 行 う こ と
かる こと おう むすめ つま
を、軽い事とし、シドンびとの王エテバアルの娘 イゼベルを妻にめと
い つか おが かれ た
り、行ってバアルに仕え、これを拝んだ。 三二彼はサマリヤに建てたバア
みや さいだん きず ぞう
ルの宮に、バアルのために祭壇を築いた。 三三アハブはまたアシラ像を
つく かれ さき おう
造った。アハブは彼よりも先にいたイスラエルのすべての王にまさっ
かみ しゅ いか おこな かれ よ
てイスラエルの神、主を怒らせることを行 った。 三四彼の代にベテルび
た かれ もとい とき ちょうし
とヒエルはエリコを建てた。彼はその基をすえる時に長子アビラムを
うしな もん た とき すえ こ うしな しゅ こ
失 い、そ の 門 を 立 て る 時 に 末 の 子 セ グ ブ を 失 っ た。主 が ヌ ン の 子 ヨ
い ことば
シュアによって言われた言葉のとおりである。
列王紀上

91
第一七章
す い
一ギレアデのテシベに住むテシベびとエリヤはアハブに言った、﹁わた
つか かみ しゅ い ことば
しの仕えているイスラエルの神、主は生きておられます。わたしの言葉
すうねんあめ つゆ しゅ ことば のぞ
のないうちは、数年雨も露もないでしょう﹂。 二主の言葉がエリヤに臨
さ ひがし ひがし かわ
んだ、 三﹁ここを去って東におもむき、ヨルダンの東にあるケリテ川の
み かく かわ みず の
ほ と り に 身 を 隠 し な さ い。 四そ し て そ の 川 の 水 を 飲 み な さ い。わ た し
めい やしな い しゅ
はからすに命じて、そこであなたを養わせよう﹂。 五エリヤは行って、主
ことば い ひがし かわ
の言葉のとおりにした。すなわち行って、ヨルダンの東にあるケリテ川
す あさ かれ ところ にく はこ
のほとりに住んだ。 六すると、からすが朝ごとに彼の所にパンと肉を運
ゆう にく はこ かれ かわ みず の
び、また夕ごとにパンと肉を運んできた。そして彼はその川の水を飲ん
くに あめ かわ
だ。 七しかし国に雨がなかったので、しばらくしてその川はかれた。
とき しゅ ことば かれ のぞ い た ぞく
その時、主の言葉が彼に臨んで言った、九﹁立ってシドンに属するザレ
列王紀上


い す おんな めい
パテへ行って、そこに住みなさい。わたしはそのところのやもめ女に命

92
やしな かれ た い
じてあなたを養わせよう﹂。 一〇そこで彼は立ってザレパテへ行ったが、
まち もん つ おんな ところ ひろ
町の門に着いたとき、ひとりのやもめ女が、その所でたきぎを拾ってい
かれ おんな こえ い うつわ みず すこ も
た。彼はその女に声をかけて言った、﹁器に水を少し持ってきて、わたし
の かのじょ い も
に 飲 ま せ て く だ さ い﹂。 一一彼女 が 行 っ て、そ れ を 持 っ て こ よ う と し た
とき かれ かのじょ よ い て ひとくち も
時、彼は彼女を呼んで言った、﹁手に一口のパンを持ってきてください﹂。
かのじょ い かみ しゅ い
一二彼女は言った、
﹁あなたの神、主は生きておられます。わたしにはパ
ひとにぎ こな すこ あぶら
ンはありません。ただ、かめに一握りの粉と、びんに少しの油があるだ
いま ぼん ひろ かえ こども
けです。今わたしはたきぎ二、三本を拾い、うちへ帰って、わたしと子供
ちょうり た し
のためにそれを調理し、それを食べて死のうとしているのです﹂。 一三エ
かのじょ い おそ い い
リヤは彼女に言った、﹁恐れるにはおよばない。行って、あなたが言った
ちい
とおりにしなさい。しかしまず、それでわたしのために小さいパンを、
つく も のち こども
一つ作って持ってきなさい。その後、あなたと、あなたの子供のために
つく しゅ あめ ち ふ ひ こな つ
作りなさい。 一四﹃主が雨を地のおもてに降らす日まで、かめの粉は尽き
列王紀上

あぶら た かみ しゅ い
ず、びんの油は絶えない﹄とイスラエルの神、主が言われるからです﹂。

93
かのじょ い い かのじょ かれ かのじょ
一五彼女は行って、エリヤが言ったとおりにした。彼女と彼および彼女
かぞく ひさ た しゅ い ことば
の 家族 は 久 し く 食 べ た。 一 六主 が エ リ ヤ に よ っ て 言 わ れ た 言葉 の よ う
こな つ あぶら た
に、かめの粉は尽きず、びんの油は絶えなかった。
こと のち いえ しゅ ふ おんな おとこ こ びょうき
一七これらの事の後、その家の主婦であるこの女の男の子が病気になっ
びょうき おも いき た かのじょ い
た。その病気はたいそう重く、息が絶えたので、一八彼女はエリヤに言っ
かみ ひと なに うら
た、
﹁神の人よ、あなたはわたしに、何の恨みがあるのですか。あなたは
つみ おも だ こ し
わたしの罪を思い出させるため、またわたしの子を死なせるためにおい
かのじょ い こ
でになったのですか﹂。 一九エリヤは彼女に言った、
﹁子をわたしによこ
かのじょ こども と じぶん おくじょう
しなさい﹂。そして彼女のふところから子供を取り、自分のいる屋 上の
のぼ じぶん しんだい ね しゅ よ い
へやへかかえて上り、自分の寝台に寝かせ、 二〇主に呼ばわって言った、
かみ しゅ やど いえ わざわい
﹁わが神、主よ、あなたはわたしが宿っている家のやもめにさえ災をくだ
こども ころ ど こ とも うえ み の
して、子供を殺されるのですか﹂。 二一そして三度その子供の上に身を伸
しゅ よ い かみ しゅ こども たましい かえ
ばし、主に呼ばわって言った、
﹁わが神、主よ、この子供の魂をもとに帰
列王紀上

しゅ こえ き こ とも
らせてください﹂。 二二主はエリヤの声を聞きいれられたので、その子供

94
たましい かえ かれ い こ とも と
の魂はもとに帰って、彼は生きかえった。 二三エリヤはその子供を取っ
おくじょう いえ なか ふ はは い
て屋 上のへやから家の中につれて降り、その母にわたして言った、
﹁ご
こ い おんな い
らんなさい。あなたの子は生きかえりました﹂。 二四 女はエリヤに言っ
いま かみ ひと くち しゅ
た、﹁今わたしはあなたが神の人であることと、あなたの口にある主の
ことば しんじつ し
言葉が真実であることを知りました﹂。
第一八章
おお ひ へ ねん め しゅ ことば のぞ い
多くの日を経て、三年目に主の言葉がエリヤに臨んだ、
一 ﹁行って、あな
み しめ あめ ち ふ
たの身をアハブに示しなさい。わたしは雨を地に降らせる﹂。 二エリヤ
み しめ い とき
はその身をアハブに示そうとして行った。その時、サマリヤにききんが
はげ いえ め ふか
激しかった。 三アハブは家づかさオバデヤを召した。︵オバデヤは深く
しゅ おそ ひと しゅ よげんしゃ た ほろ とき
主を恐れる人で、 四イゼベルが主の預言者を断ち滅ぼした時、オバデヤ
列王紀上

にん よげんしゃ すく だ にん あな かく みず
は百人の預言者を救い出して五十人ずつほら穴に隠し、パンと水をもっ

95
かれ やしな い くにぢゅう みず
て彼らを養 った︶。 五アハブはオバデヤに言った、﹁国 中のすべての水
みなもと かわ い うま ら ば い
の源と、すべての川に行ってみるがよい。馬と騾馬を生かしておくため
くさ かちく
の草があるかもしれない。そうすれば、われわれは家畜をいくぶんでも
うしな かれ い めぐ ち わ
失わずにすむであろう﹂。 六彼らは行き巡る地をふたりで分け、アハブ
みち い た みち おこな
はひとりでこの道を行き、オバデヤはひとりで他の道を行 った。
みち すす とき かれ あ かれ みと
七オバデヤが道を進んでいた時、エリヤが彼に会った。彼はエリヤを認
ふ い しゅ
めて伏して言った、﹁わが主エリヤよ、あなたはここにおられるのです
かれ い い しゅじん
か﹂。 八エリヤは彼に言った、
﹁そうです。行って、あなたの主人に、エ
つ かれ い つみ
リヤはここにいると告げなさい﹂。 九彼は言った、
﹁わたしにどんな罪が
て ころ
あって、あなたはしもべをアハブの手にわたして殺そうとされるのです
かみ しゅ い しゅじん
か。 一〇あなたの神、主は生きておられます。わたしの主人があなたを
たず ひと たみ くに
尋ねるために、人をつかわさない民はなく、国もありません。そしてエ
い とき くに たみ み
リヤはいないと言う時は、その国、その民に、あなたが見つからないと
列王紀上

ちか いま い
いう誓いをさせるのです。 一一あなたは今﹃行って、エリヤはここにいる

96
しゅじん つ い はな い
と主人に告げよ﹄と言われます。 一二しかしわたしがあなたを離れて行
しゅ れい し ところ つ い
くと、主の霊はあなたを、わたしの知らない所へ連れて行くでしょう。
い つ かれ み
わたしが行ってアハブに告げ、彼があなたを見つけることができなけれ
かれ ころ おさな とき しゅ おそ
ば、彼はわたしを殺すでしょう。しかし、しもべは幼い時から主を恐れ
もの しゅ よげんしゃ ころ とき
ている者です。 一三イゼベルが主の預言者を殺した時に、わたしがした
こと しゅ よげんしゃ にん にん あな かく
事、すなわち、わたしが主の預言者のうち百人を五十人ずつほら穴に隠
みず やしな こと しゅ き
して、パンと水をもって養 った事を、わが主は聞かれませんでしたか。
いま い しゅじん つ
一四 ところが今あなたは﹃行って、エリヤはここにいると主人に告げよ﹄
い かれ ころ
と言われます。そのようなことをすれば彼はわたしを殺すでしょう﹂。
い つか ばんぐん しゅ い
一五 エリヤは言った、
﹁わたしの仕える万軍の主は生きておられる。わた
かなら み かれ しめ
し は 必 ず、き ょ う、わ た し の 身 を 彼 に 示 す で あ ろ う﹂。 一六オ バ デ ヤ は
い あ かれ つ あ
行ってアハブに会い、彼に告げたので、アハブはエリヤに会おうとして

行った。
列王紀上

み かれ い なや もの
一七 アハブはエリヤを見たとき、彼に言った、﹁イスラエルを悩ます者よ、

97
かれ こた
あなたはここにいるのですか﹂。 一八彼は答えた、﹁わたしがイスラエル
なや ちち いえ なや
を悩ますのではありません。あなたと、あなたの父の家が悩ましたので
しゅ めいれい す したが
す。あなたがたが主の命令を捨て、バアルに従 ったためです。 一九それ
いま ひと ひと よげんしゃ
で今、人をつかわしてイスラエルのすべての人およびバアルの預言者四
にん よげんしゃ にん しょくたく しょくじ
百五十人、ならびにアシラの預言者四百人、イゼベルの食 卓で食事する
もの やま あつ ところ
者たちをカルメル山に集めて、わたしの所にこさせなさい﹂。
ひと ひと よげんしゃ
二〇そこでアハブはイスラエルのすべての人に人をつかわして、預言者
やま あつ たみ ちか
たちをカルメル山に集めた。 二一そのときエリヤはすべての民に近づい
い あいだ まよ
て言った、﹁あなたがたはいつまで二つのものの間に迷っているのです
しゅ かみ したが かみ
か。主が神ならばそれに従いなさい。しかしバアルが神ならば、それに
したが たみ こと かれ こた たみ い
従 い な さ い﹂。民 は ひ と 言 も 彼 に 答 え な か っ た。 二二エ リ ヤ は 民 に 言 っ
のこ しゅ よげんしゃ
た、﹁わ た し は た だ ひ と り 残 っ た 主 の 預言者 で す。し か し バ ア ル の
よげんしゃ にん とう うし
預言者は四百五十人あります。 二三われわれに二頭の牛をください。そ
列王紀上

とう うし かれ えら き さ うえ の
して一頭の牛を彼らに選ばせ、それを切り裂いて、たきぎの上に載せ、そ

98
ひ とう うし ととの
れに火をつけずにおかせなさい。わたしも一頭の牛を整え、それをたき
うえ の ひ
ぎの上に載せて火をつけずにおきましょう。 二四こうしてあなたがたは
かみ な よ しゅ な よ
あ な た が た の 神 の 名 を 呼 び な さ い。わ た し は 主 の 名 を 呼 び ま し ょ う。
ひ こた かみ かみ たみ みなこた
そして火をもって答える神を神としましょう﹂。民は皆答えて﹁それが
い よげんしゃ い
よかろう﹂と言った。 二五そこでエリヤはバアルの預言者たちに言った、
だい はじ とう うし えら ととの
﹁あなたがたは大ぜいだから初めに一頭の牛を選んで、それを整え、あな
かみ な よ ひ
た が た の 神 の 名 を 呼 び な さ い。た だ し 火 を つ け て は な り ま せ ん﹂。 二六
かれ あた うし と ととの あさ ひる な よ
彼らは与えられた牛を取って整え、朝から昼までバアルの名を呼んで
こた い こえ こた
﹁バアルよ、答えてください﹂と言った。しかしなんの声もなく、また答
もの かれ じぶん つく さいだん おど
える者もなかったので、彼らは自分たちの造った祭壇のまわりに踊っ
ひる かれ い かれ かみ
た。 二七昼になってエリヤは彼らをあざけって言った、﹁彼は神だから、
おおごえ よ かれ かんが い
大声をあげて呼びなさい。彼は考えにふけっているのか、よそへ行った
たび で ねむ おこ
のか、旅に出たのか、または眠っていて起されなければならないのか﹂。
列王紀上

かれ おおごえ よ かれ したが かたな


二八そこで彼らは大声に呼ばわり、彼らのならわしに従 って、 刀とやり

99
み きず ち み なが いた ひる す
で身を傷つけ、血をその身に流すに至った。 二九こうして昼が過ぎても
かれ さけ つづ ゆう そな もの とき およ
彼らはなお叫び続けて、夕の供え物をささげる時にまで及んだ。しかし
こえ こた もの かえり もの
なんの声もなく、答える者もなく、また顧みる者もなかった。
とき たみ ちかよ
三〇 その時エリヤはすべての民にむかって﹁わたしに近寄りなさい﹂と
い たみ みなかれ ちかよ かれ しゅ さいだん つくろ
言ったので、民は皆彼に近寄った。彼はこわれている主の祭壇を繕 っ
むかし しゅ ことば のぞ
た。 三一そしてエリヤは昔、主の言葉がヤコブに臨んで、
﹁イスラエルを
な い こ ぶぞく かず
あなたの名とせよ﹂と言われたヤコブの子らの部族の数にしたがって十
いし と いし しゅ な さいだん きず さいだん しゅうい たね
二の石を取り、三二その石で主の名によって祭壇を築き、祭壇の周囲に種
おお つく なら
二セヤをいれるほどの大きさの、みぞを作った。 三三また、たきぎを並
うし き さ うえ の い みず み
べ、牛を切り裂いてたきぎの上に載せて言った、﹁四つのかめに水を満た
はんさい うえ そそ い ど
し、それを燔祭とたきぎの上に注げ﹂。 三四また言った、﹁それを二度せ
ど い ど ど
よ﹂。二度それをすると、また言った、﹁三度それをせよ﹂。三度それをし
みず さいだん しゅうい なが みず み
た。 三五水は祭壇の周囲に流れた。またみぞにも水を満たした。
列王紀上

ゆう そな もの とき よげんしゃ ちかよ い
三六 夕の供え物をささげる時になって、預言者エリヤは近寄って言った、

100
かみ しゅ かみ
﹁アブラハム、イサク、ヤコブの神、主よ、イスラエルでは、あなたが神
ことば したが
であること、わたしがあなたのしもべであって、あなたの言葉に従 って
こと おこな こんにち し しゅ
このすべての事を行 ったことを、今日知らせてください。 三七主よ、わた
こた こた しゅ たみ
しに答えてください、わたしに答えてください。主よ、この民にあなた
かみ かれ こころ ひるがえ し
が神であること、またあなたが彼らの心を翻されたのであることを知ら
しゅ ひ くだ はんさい いし
せてください﹂。 三八そのとき主の火が下って燔祭と、たきぎと、石と、ち
や みず たみ みな み
りとを焼きつくし、またみぞの水をなめつくした。 三九民は皆見て、ひれ
ふ い しゅ かみ しゅ かみ かれ
伏 し て 言 っ た、﹁主 が 神 で あ る。主 が 神 で あ る﹂。 四 〇エ リ ヤ は 彼 ら に
い よげんしゃ とら に
言 っ た、﹁バ ア ル の 預言者 を 捕 え よ。そ の ひ と り も 逃 が し て は な ら な
かれ とら かれ かわ つ
い﹂。そ こ で 彼 ら を 捕 え た の で、エ リ ヤ は 彼 ら を キ シ ョ ン 川 に 連 れ く
かれ ころ
だって、そこで彼らを殺した。
い おおあめ おと のぼ い く
四一 エリヤはアハブに言った、
﹁大雨の音がするから、上って行って、食
の く の のぼ
い 飲 み し な さ い﹂。 四二ア ハ ブ は 食 い 飲 み す る た め に 上 っ て い っ た。し
列王紀上

いただき のぼ ち ふ かお あいだ い
かしエリヤはカルメルの頂に登り、地に伏して顔をひざの間に入れてい

101
かれ い のぼ うみ ほう み かれ
たが、四三彼はしもべに言った、﹁上っていって海の方を見なさい﹂。彼は
のぼ み なに い
上っていって、見て、
﹁何もありません﹂と言ったので、エリヤは﹁もう
ど い い ど およ ど め い
一度行きなさい﹂と言って七度に及んだ。 四四七度目にしもべは言った、
うみ ひと て ちい くも た い
﹁海 か ら 人 の 手 ほ ど の 小 さ な 雲 が 起 っ て い ま す﹂
。エ リ ヤ は 言 っ た、
のぼ あめ くるま ととの くだ
﹁上っていって、
﹃雨にとどめられないように車を整えて下れ﹄とアハブ
い ま くも かぜ おこ そら くろ
に 言 い な さ い﹂。 四五す る と 間 も な く、雲 と 風 が 起 り、空 が 黒 く な っ て
おおあめ ふ くるま の い しゅ
大雨が降ってきた。アハブは車に乗ってエズレルへ行った。 四六また主
て のぞ かれ こし いりぐち
の手がエリヤに臨んだので、彼は腰をからげ、エズレルの入口までアハ
まえ はし
ブの前に走っていった。
第一九章
こと かれ よげんしゃ かたな ころ
アハブはエリヤのしたすべての事、また彼がすべての預言者を刀で殺
列王紀上


つ し しゃ
したことをイゼベルに告げたので、 二イゼベルは使者をエリヤにつかわ

102
い いま いのち ひとびと
して言った、
﹁もしわたしが、あすの今ごろ、あなたの命をあの人々のひ
いのち かみがみ ばっ
とりの命のようにしていないならば、神々がどんなにでも、わたしを罰
おそ じぶん いのち すく
してくださるように﹂。 三そこでエリヤは恐れて、自分の命を救うため
た に ぞく い のこ
に立って逃げ、ユダに属するベエルシバへ行って、しもべをそこに残し、
じぶん にち みち あらの い き した ざ
自分は一日の道のりほど荒野にはいって行って、れだまの木の下に座

じぶん し もと い しゅ いま
し、自分の死を求めて言った、
﹁主よ、もはや、じゅうぶんです。今わた
いのち と せんぞ もの
しの命を取ってください。わたしは先祖にまさる者ではありません﹂。
かれ き した ふ ねむ てん つかい かれ お
彼はれだまの木の下に伏して眠ったが、天の使が彼にさわり、
五 ﹁起きて
た い お み あたま や いし うえ
食べなさい﹂と言ったので、 六起きて見ると、 頭のそばに、焼け石の上
や こ みず かれ た の
で焼いたパン一個と、一びんの水があった。彼は食べ、かつ飲んでまた
ね しゅ つかい ふたた かれ い お た
寝た。 七主の使は再びきて、彼にさわって言った、
﹁起きて食べなさい。
みち とお た かれ お た の
道が遠くて耐えられないでしょうから﹂。 八彼は起きて食べ、かつ飲み、
しょくもつ ちから にち や い かみ やま つ
その食 物で力づいて四十日四十夜行って、神の山ホレブに着いた。
列王紀上

ところ かれ あな やど しゅ ことば かれ のぞ
その所で彼はほら穴にはいって、そこに宿ったが、主の言葉が彼に臨

103
かれ い なに
んで、彼に言われた、
﹁エリヤよ、あなたはここで何をしているのか﹂。 一
かれ い ばんぐん かみ しゅ ひじょう ねっしん
〇彼は言った、﹁わたしは万軍の神、主のために非常に熱心でありまし
ひとびと けいやく す さいだん
た。イスラエルの人々はあなたの契約を捨て、あなたの祭壇をこわし、
かたな よげんしゃ ころ のこ
刀をもってあなたの預言者たちを殺したのです。ただわたしだけ残り
かれ いのち と しゅ い
ま し た が、彼 ら は わ た し の 命 を 取 ろ う と し て い ま す﹂。 一一主 は 言 わ れ
で やま うえ しゅ まえ た ときしゅ とお す
た、
﹁出て、山の上で主の前に、立ちなさい﹂。その時主は通り過ぎられ、
しゅ まえ おお つよ かぜ ふ やま さ いわ くだ しゅ かぜ
主の前に大きな強い風が吹き、山を裂き、岩を砕いた。しかし主は風の
なか かぜ のち じしん じしん なか しゅ
中におられなかった。風の後に地震があったが、地震の中にも主はおら
じしん のち ひ ひ なか しゅ
れ な か っ た。 一 二地震 の 後 に 火 が あ っ た が、火 の 中 に も 主 は お ら れ な
ひ のち しず ほそ こえ きこ き かお
かった。火の後に静かな細い声が聞えた。 一三エリヤはそれを聞いて顔
がいとう つつ で あな くち た かれ かた こえ きこ
を外套に包み、出てほら穴の口に立つと、彼に語る声が聞えた、
﹁エリヤ
なに かれ い ばんぐん
よ、あなたはここで何をしているのか﹂。 一四彼は言った、
﹁わたしは万軍
かみ しゅ ひじょう ねっしん ひとびと
の神、主のために非常に熱心でありました。イスラエルの人々はあなた
列王紀上

けいやく す さいだん かたな よげんしゃ ころ


の契約を捨て、あなたの祭壇をこわし、刀であなたの預言者たちを殺し

104
のこ かれ いのち と
たからです。ただわたしだけ残りましたが、彼らはわたしの命を取ろう
しゅ かれ い みち かえ い
としています﹂。 一五主は彼に言われた、
﹁あなたの道を帰って行って、ダ
あらの つ あぶら そそ
マスコの荒野におもむき、ダマスコに着いて、ハザエルに油を注ぎ、ス
おう こ あぶら そそ
リヤの王としなさい。 一六またニムシの子エヒウに油を注いでイスラエ
おう こ あぶら
ルの王としなさい。またアベルメホラのシャパテの子エリシャに油を
そそ かわ よげんしゃ
注いで、あなたに代って預言者としなさい。 一七ハザエルのつるぎをの
もの ころ もの ころ
がれる者をエヒウが殺し、エヒウのつるぎをのがれる者をエリシャが殺
にん のこ
すであろう。 一八また、わたしはイスラエルのうちに七千人を残すであ
みな くち もの
ろう。皆バアルにひざをかがめず、それに口づけしない者である﹂。
さ い こ あ
一九さてエリヤはそこを去って行って、シャパテの子エリシャに会った。
かれ うし まえ い じぶん ばんめ とも
彼は十二くびきの牛を前に行かせ、自分は十二番目のくびきと共にいて
たがや かれ とお す がいとう かれ うえ
耕していた。エリヤは彼のかたわらを通り過ぎて外套を彼の上にかけ
うし す はし い
た。 二〇エリシャは牛を捨て、エリヤのあとに走ってきて言った、
﹁わた
列王紀上

ふ ぼ くち のち したが
しの父母に口づけさせてください。そして後あなたに従いましょう﹂。

105
かれ い い なに
エリヤは彼に言った、﹁行ってきなさい。わたしはあなたに何をしまし
かれ はな かえ うし と ころ
たか﹂。 二一エリシャは彼を離れて帰り、ひとくびきの牛を取って殺し、
うし も にく に たみ あた た た
牛のくびきを燃やしてその肉を煮、それを民に与えて食べさせ、立って
い したが かれ つか
行ってエリヤに従い、彼に仕えた。
第二〇章
おう ぐんぜい あつ にん
一スリヤの王ベネハダデはその軍勢をことごとく集めた。三十二人の
おう かれ とも うま せんしゃ かれ のぼ かこ
王が彼と共におり、また馬と戦車もあった。彼は上ってサマリヤを囲
せ かれ まち し しゃ おう
み、これを攻めた。 二また彼は町に使者をつかわし、イスラエルの王ア
い もう きんぎん
ハブに言った、
﹁ベネハダデはこう申します、 三﹃あなたの金銀はわたし
つま こども もっと うつく もの
のもの、またあなたの妻たちと子供たちの最も美しい者もわたしのもの
おう こた おう しゅ おお
です﹄﹂。 四イスラエルの王は答えた、
﹁王、わが主よ、仰せのとおり、わ
列王紀上

も もの みな し しゃ ふたた
た し と、わ た し の 持 ち 物 は 皆 あ な た の も の で す﹂。 五使者 は 再 び き て

106
い もう ひと
言った、﹁ベネハダデはこう申します、﹃わたしはさきに人をつかわして、
きんぎん さいし ひ い いま
あなたの金銀、妻子を引きわたせと言いました。 六しかし、あすの今ご
かれ いえ
ろ、しもべたちをあなたにつかわします。彼らはあなたの家と、あなた
けらい いえ さぐ かれ き もの て い うば さ
の家来の家を探って、すべて彼らの気にいる物を手に入れて奪い去るで
しょう﹄﹂。
おう くに ちょうろう め い
七そこでイスラエルの王は国の長 老をことごとく召して言った、
﹁よく
ちゅうい ひと む り こと もと し かれ ひと
注意して、この人が無理な事を求めているのを知りなさい。彼は人をつ
さいし きんぎん もと こば
かわして、わたしの妻子と金銀を求めたが、わたしはそれを拒まなかっ
ちょうろう たみ みなかれ い き
た﹂。 八すべての長 老および民は皆彼に言った、﹁聞いてはなりません。
しょうだく かれ し しゃ い
承 諾 し て は な り ま せ ん﹂。 九そ れ で 彼 は ベ ネ ハ ダ デ の 使者 に 言 っ た、
おう しゅ つ はじ ようきゅう みな
﹁王、わが主に告げなさい。﹃あなたが初めに要 求されたことは皆いた
こんど こと し しゃ さ ふくめい
しましょう。しかし今度の事はできません﹄﹂。使者は去って復命した。
かれ ひと い
ベネハダデは彼に人をつかわして言った、﹁もしサマリヤのちりが、
列王紀上

一〇
したが たみ て み た かみがみ
わたしに従うすべての民の手を満たすに足りるならば、神々がどんなに

107
ばっ おう こた
でも、わたしを罰してくださるように﹂。 一一イスラエルの王は答えた、
ぶ ぐ お もの ぬ もの ほこ つ
﹁﹃武具を帯びる者は、それを脱ぐ者のように誇ってはならない﹄と告げ
かり ご や おう さけ の
なさい﹂。 一二ベネハダデは仮小屋で、王たちと酒を飲んでいたが、この
こと き けらい い たたか そな かれ まち
事を聞いて、その家来たちに言った、
﹁戦いの備えをせよ﹂。彼らは町に
たたか そな
むかって戦いの備えをした。
とき よげんしゃ おう い
一三 こ の 時 ひ と り の 預言者 が イ ス ラ エ ル の 王 ア ハ ブ の も と に き て 言 っ
しゅ おお たいぐん み
た、
﹁主はこう仰せられる、
﹃あなたはこの大軍を見たか。わたしはきょ
て しゅ し
う、これをあなたの手にわたす。あなたは、わたしが主であることを、知

る よ う に な る で あ ろ う﹄﹂。 一四ア ハ ブ は 言 っ た、﹁だ れ に さ せ ま し ょ う
かれ い しゅ おお ちほう だいかん けらい
か﹂。彼は言った、﹁主はこう仰せられる、﹃地方の代官の家来たちにさせ
い たたか はじ かれ こた
よ﹄﹂。アハブは言った、﹁だれが戦いを始めましょうか﹂。彼は答えた、
ちほう だいかん けらい しら
﹁あなたです﹂。 一五そこでアハブは地方の代官の家来たちを調べたとこ
にん つぎ たみ
ろ二百三十二人あった。次にすべての民、すなわちイスラエルのすべて
列王紀上

ひと しら にん
の人を調べたところ七千人あった。

108
かれ ひる で かり ご や みかた にん
彼らは昼ごろ出ていったが、ベネハダデは仮小屋で、味方の三十二人
一六
おう とも さけ の よ ちほう だいかん けらい さき
の王たちと共に酒を飲んで酔っていた。 一七地方の代官の家来たちが先
で せっこう かれ
に出ていった。ベネハダデは斥候をつかわしたが、彼らは﹁サマリヤか
ひとびと で ほうこく かれ い わかい で
ら人々が出てきた﹂と報告したので、 一八彼は言った、
﹁和解のために出
いけ たたか で
てきたのであっても、生どりにせよ。また戦いのために出てきたので
いけ
あっても、生どりにせよ﹂。
ちほう だいかん けらい したが ぐんぜい まち で
地方の代官の家来たちと、それに従う軍勢が町から出ていって、 二〇
一九
あいて う ころ に
おのおのその相手を撃ち殺したので、スリヤびとは逃げた。イスラエル
お おう うま の きへい したが
はこれを追ったが、スリヤの王ベネハダデは馬に乗り、騎兵を従えての
おう で うま せんしゃ おお
がれた。 二一イスラエルの王は出ていって、馬と戦車をぶんどり、また大
う ころ
いにスリヤびとを撃ち殺した。
とき よげんしゃ おう い い
時に、かの預言者がイスラエルの王のもとにきて言った、﹁行って、
二二
ちから やしな こと かんが らいねん はる おう
力を養い、なすべき事をよく考えなさい。来年の春にはスリヤの王が、
列王紀上

せ のぼ
あなたのところに攻め上ってくるからです﹂。

109
おう けらい おう い かれ かみがみ やま かみ
二三 スリヤの王の家来たちは王に言った、
﹁彼らの神々は山の神ですから
かれ つよ へいち たたか
彼らがわれわれよりも強かったのです。もしわれわれが平地で戦うな
かなら かれ つよ おう
らば、 必ず彼らよりも強いでしょう。 二四それでこうしなさい。王たち
ち い しりぞ そうとく お かわ
をおのおのその地位から退かせ、総督を置いてそれに代らせなさい。 二五
うしな ぐんぜい ひと ぐんぜい あつ うま うま せんしゃ せんしゃ
またあなたが失 った軍勢に等しい軍勢を集め、馬は馬、戦車は戦車を
おぎな へいち たたか かなら かれ
もって補いなさい。こうしてわれわれが平地で戦うならば必ず彼らよ
つよ かれ ことば き
りも強いでしょう﹂。彼はその言葉を聞きいれて、そのようにした。
はる あつ たたか
二六 春になって、ベネハダデはスリヤびとを集めて、イスラエルと戦うた
のぼ ひとびと しょうしゅう りょうしょく
めに、アペクに上ってきた。 二七イスラエルの人々は召 集され、糧 食を
う かれ むか う で ひとびと
受けて彼らを迎え撃つために出かけた。イスラエルの人々はやぎの二
ちい む かれ まえ じんど ち
つの小さい群れのように彼らの前に陣取ったが、スリヤびとはその地に
み ときかみ ひと おう い しゅ
満ちていた。 二八その時神の人がきて、イスラエルの王に言った、
﹁主は
おお しゅ やま かみ たに かみ
こう仰せられる、
﹃スリヤびとが、主は山の神であって、谷の神ではない
列王紀上

い たいぐん て
と言っているから、わたしはこのすべての大軍をあなたの手にわたす。

110
しゅ し かれ
あなたは、わたしが主であることを知るようになるであろう﹄﹂。 二九彼
なぬか あいだ たがい じんど なぬか め たたか まじ
らは七日の間、互にむかいあって陣取り、七日目になって戦いを交えた
ひとびと にち ほへい にん ころ
が、イスラエルの人々は一日にスリヤびとの歩兵十万人を殺した。 三〇
もの まち に じょうへき のこ
そのほかの者はアペクの町に逃げこんだが、城 壁がくずれて、その残っ
にん うえ たお
た二万七千人の上に倒れた。
に まち はい おく あいだ けらい かれ
ベネハダデは逃げて町に入り、奥の間にはいった。 三一家来たちは彼に
い いえ おう ふか おう き
言った、﹁イスラエルの家の王たちはあわれみ深い王であると聞いてい
こし あらぬの
ます。それでわれわれの腰に荒布をつけ、くびになわをかけて、イスラ
おう ところ い かれ いのち たす
エルの王の所へ行かせてください。たぶん彼はあなたの命を助けるで
かれ あらぬの こし
しょう﹂。 三二そこで彼らは荒布を腰にまき、なわをくびにかけてイスラ
おう ところ い い
エルの王の所へ行って言った、
﹁あなたのしもべベネハダデが﹃どうぞ、
いのち たす もう い かれ
わたしの命を助けてください﹄と申しています﹂。アハブは言った、
﹁彼
い かれ きょうだい ひとびと
はまだ生きているのですか。彼はわたしの兄 弟です﹂。 三三その人々は
列王紀上

きっちょう かれ ことば
これを吉 兆としてすみやかに彼の言葉をうけ、
﹁そうです。ベネハダデ

111
きょうだい い かれ い い かれ
はあなたの兄 弟です﹂と言ったので、彼は言った、
﹁行って彼をつれて
かれ ところ で かれ
き な さ い﹂。そ れ で ベ ネ ハ ダ デ は 彼 の 所 に 出 て き た の で、彼 は こ れ を
じぶん くるま の かれ い ちち
自分の車に乗せた。 三四ベネハダデは彼に言った、
﹁わたしの父が、あな
ちちうえ と まちまち かえ ちち
た の 父上 か ら 取 っ た 町々 は 返 し ま す。ま た わ た し の 父 が サ マ リ ヤ に
つく しじょう もう
造ったように、あなたはダマスコに、あなたのために市場を設けなさ
い けいやく かえ
い﹂。アハブは言った、﹁わたしはこの契約をもってあなたを帰らせま
かれ けいやく むす かれ かえ
しょう﹂。こうしてアハブは彼と契約を結び、彼を帰らせた。
よげんしゃ しゅ ことば したが なかま
三五 さ て 預言者 の と も が ら の ひ と り が 主 の 言葉 に 従 っ て そ の 仲間 に
い う ひと う
言った、
﹁どうぞ、わたしを撃ってください﹂。しかしその人は撃つこと
こば かれ ひと い しゅ ことば き したが
を拒んだので、 三六彼はその人に言った、
﹁あなたは主の言葉に聞き従わ
はな い ころ
ないゆえ、わたしを離れて行くとすぐ、ししがあなたを殺すでしょう﹂。
ひと かれ はな い かれ あ かれ ころ
その人が彼のそばを離れて行くとすぐ、ししが彼に会って彼を殺した。
かれ ひと あ い う
彼はまたほかの人に会って言った、
﹁どうぞ、わたしを撃ってくださ
列王紀上

三七
ひと かれ う う きず
い﹂。す る と そ の 人 は 彼 を 撃 ち、撃 っ て 傷 つ け た。 三 八こ う し て そ の

112
よげんしゃ い みち おう ま め あ すがた
預言者は行って、道のかたわらで王を待ち、目にほうたいを当てて姿を
か おう とお す とき おう よ い
変えていた。 三九王が通り過ぎる時、王に呼ばわって言った、
﹁しもべは
なか で い ぐんじん ひと ところ
いくさの中に出て行きましたが、ある軍人が、ひとりの人をわたしの所
い ひと まも かれ
につれてきて言いました、﹃この人を守っていなさい。もし彼がいなく
いのち かれ いのち か ぎん はら
なれば、あなたの命を彼の命に代えるか、または銀一タラントを払わな
いそが
ければならない﹄。 四〇ところが、しもべはあちらこちらと忙しくしてい
かれ おう かれ い
たので、ついに彼はいなくなりました﹂。イスラエルの王は彼に言った、
じぶん
﹁あなたはそのとおりにさばかれなければならない。あなたが自分でそ
さだ かれ いそ め と のぞ
れを定めたのです﹂。 四一そこで彼が急いで目のほうたいを取り除いた
おう よげんしゃ し
ので、イスラエルの王はそれが預言者のひとりであることを知った。 四二
かれ おう い しゅ おお ほろ さだ ひと
彼は王に言った、
﹁主はこう仰せられる、
﹃わたしが滅ぼそうと定めた人
じぶん て はな い いのち かれ いのち
を、あなたは自分の手から放して行かせたので、あなたの命は彼の命に
かわ たみ かれ たみ かわ おう
代り、あなたの民は彼の民に代るであろう﹄と﹂。 四三イスラエルの王は
列王紀上

かな いか じぶん いえ かえ
悲しみ、かつ怒って自分の家におもむき、サマリヤに帰った。

113
第二一章
はたけ
さてエズレルびとナボテはエズレルにぶどう畑をもっていたが、サマ

おう きゅうでん
リヤの王アハブの宮 殿のかたわらにあったので、 二アハブはナボテに
い はたけ いえ ちか
言った、﹁あなたのぶどう畑はわたしの家の近くにあるので、わたしに
ゆず あおものはたけ かわ よ
譲って青物 畑にさせてください。その代り、わたしはそれよりも良い
はたけ のぞ あたい きん
ぶどう畑をあなたにあげましょう。もしお望みならば、その価を金でさ
い せんぞ し ぎょう
しあげましょう﹂。 三ナボテはアハブに言った、
﹁わたしは先祖の嗣 業を
ゆず だん
あなたに譲ることを断じていたしません﹂。 四アハブはエズレルびとナ
い ことば き かな いか いえ
ボテが言った言葉を聞いて、悲しみ、かつ怒って家にはいった。ナボテ
せんぞ し ぎょう ゆず い
が﹁わたしは先祖の嗣 業をあなたに譲りません﹂と言ったからである。
とこ ふ かお しょくじ
アハブは床に伏し、顔をそむけて食事をしなかった。
つま かれ ところ い なに かな
妻イゼベルは彼の所にきて、言った、﹁あなたは何をそんなに悲しん
列王紀上


しょくじ かれ かのじょ い
で、食事をなさらないのですか﹂。 六彼は彼女に言った、
﹁わたしはエズ

114
はたけ かね ゆず のぞ
レルびとナボテに﹃あなたのぶどう畑を金で譲ってください。もし望む
かわ はたけ い かれ こた
ならば、その代りに、ほかのぶどう畑をあげよう﹄と言ったが、彼は答
はたけ ゆず い つま
えて﹃わたしはぶどう畑を譲りません﹄と言ったからだ﹂。 七妻イゼベル
かれ い いま おさ お
は彼に言った、﹁あなたが今イスラエルを治めているのですか。起きて
しょくじ げんき だ
食事をし、元気を出してください。わたしがエズレルびとナボテのぶど
はたけ
う畑をあなたにあげます﹂。
かのじょ な てがみ か かれ しるし おな
八彼女はアハブの名で手紙を書き、彼の印をおして、ナボテと同じよう
まち す ちょうろう みぶん たっと ひとびと てがみ おく
に、その町に住んでいる長 老たちと身分の尊い人々に、その手紙を送っ
かのじょ てがみ か だんじき ふこく たみ
た。 九彼女はその手紙に書きしるした、
﹁断食を布告して、ナボテを民の
たか ところ もの かれ まえ
うちの高い所にすわらせ、 一〇またふたりのよこしまな者を彼の前にす
かれ うった かみ おう い
わらせ、そして彼を訴えて、
﹃あなたは神と王とをのろった﹄と言わせな
かれ ひ だ いし う ころ まち
さ い。こ う し て 彼 を 引 き 出 し、石 で 撃 ち 殺 し な さ い﹂。 一 一そ の 町 の
ひとびと まち す ちょうろう みぶん たっと ひとびと
人々、すなわち、その町に住んでいる長 老たちおよび身分の尊い人々
列王紀上

い かのじょ かれ おく てがみ
は、イゼベルが言いつかわしたようにした。彼女が彼らに送った手紙に

115
か かれ だんじき ふこく たみ
書きしるされていたように、一二彼らは断食を布告して、ナボテを民のう
たか ところ もの
ちの高い所にすわらせた。 一三そしてふたりのよこしまな者がはいって
まえ もの たみ まえ うった
きて、その前にすわり、そのよこしまな者たちが民の前でナボテを訴え
かみ おう い ひとびと かれ まち そと
て、﹁ナボテは神と王とをのろった﹂と言った。そこで人々は彼を町の外
ひ だ いし う ころ ひとびと いし
に引き出し、石で撃ち殺した。 一四そして人々はイゼベルに﹁ナボテは石
う ころ い おく
で撃ち殺された﹂と言い送った。
いし う ころ き
一五 イ ゼ ベ ル は ナ ボ テ が 石 で 撃 ち 殺 さ れ た の を 聞 く と す ぐ、ア ハ ブ に
い た かね ゆず
言った、
﹁立って、あのエズレルびとナボテが、あなたに金で譲ることを
こば はたけ と い し
拒んだぶどう畑を取りなさい。ナボテは生きていません。死んだので
し き た
す﹂。 一六アハブはナボテの死んだのを聞くとすぐ、立って、エズレルび
はたけ と くだ
とナボテのぶどう畑を取るために、そこへ下っていった。
しゅ ことば のぞ た くだ
一七 そのとき、主の言葉がテシベびとエリヤに臨んだ、一八﹁立って、下っ
い おう あ かれ
て行き、サマリヤにいるイスラエルの王アハブに会いなさい。彼はナボ
列王紀上

はたけ と くだ かれ い
テのぶどう畑を取ろうとしてそこへ下っている。 一九あなたは彼に言わ

116
しゅ おお ころ
なければならない、﹃主はこう仰せられる、あなたは殺したのか、また
と かれ い しゅ おお いぬ
取ったのか﹄と。また彼に言いなさい、
﹃主はこう仰せられる、犬がナボ
ち ば しょ いぬ ち
テの血をなめた場所で、犬があなたの血をなめるであろう﹄﹂。
い てき み
二〇 アハブはエリヤに言った、
﹁わが敵よ、ついに、わたしを見つけたの
かれ い み しゅ め まえ あく おこな
か﹂。彼は言った、﹁見つけました。あなたが主の目の前に悪を行うこと
み わざわい くだ まった ほろ
に身をゆだねたゆえ、二一わたしはあなたに災を下し、あなたを全く滅ぼ
ぞく おとこ もの じゆう もの
し、アハブに属する男は、イスラエルにいてつながれた者も、自由な者
た いえ こ いえ
もことごとく断ち、 二二またあなたの家をネバテの子ヤラベアムの家の
こ いえ
ようにし、アヒヤの子バアシャの家のようにするでしょう。これはあな
いか いか つみ おか
たがわたしを怒らせた怒りのゆえ、またイスラエルに罪を犯させたゆえ
しゅ い いぬ
です。 二三イゼベルについて、主はまた言われました、
﹃犬がエズレルの
ちいき く ぞく もの まち し
地域でイゼベルを食うであろう﹄と。 二四アハブに属する者は、町で死ぬ
もの いぬ く の し もの そら とり く
者を犬が食い、野で死ぬ者を空の鳥が食うでしょう﹂。
列王紀上

しゅ め まえ あく おこな み もの
二五 アハブのように主の目の前に悪を行うことに身をゆだねた者はな

117
つま かれ かれ しゅ
かった。その妻イゼベルが彼をそそのかしたのである。 二六彼は主がイ
ひとびと まえ お はら ぐうぞう
スラエルの人々の前から追い払われたアモリびとがしたように偶像に
したが にく こと おこな
従 って、はなはだ憎むべき事を行 った。
ことば き とき ころも さ あらぬの み しょく
二七 アハブはこれらの言葉を聞いた時、衣を裂き、荒布を身にまとい、食
た あらぬの ふ う ある とき しゅ ことば
を断ち、荒布に伏し、打ちしおれて歩いた。 二八この時、主の言葉がテシ
のぞ まえ
ベびとエリヤに臨んだ、二九
﹁アハブがわたしの前にへりくだっているの
み かれ まえ あ よ
を見たか。彼がわたしの前にへりくだっているゆえ、わたしは彼の世に
わざわい くだ こ よ わざわい いえ くだ
は災を下さない。その子の世に災をその家に下すであろう﹂。
第二二章
あいだ せんそう ねん へ ねん め
一スリヤとイスラエルの間に戦争がなくて三年を経た。 二しかし三年目
おう おう ところ くだ
にユダの王ヨシャパテがイスラエルの王の所へ下っていったので、 三イ
列王紀上

おう けらい い
スラエルの王はその家来たちに言った、
﹁あなたがたは、ラモテ・ギレア

118
しょゆう し
デがわれわれの所有であることを知っていますか。しかもなおわれわ
おう て と だま かれ
れはスリヤの王の手からそれを取らずに黙っているのです﹂。 四彼はヨ
い たたか いっしょ い
シャパテに言った、﹁ラモテ・ギレアデで戦うためにわたしと一緒に行か
おう い
れませんか﹂。ヨシャパテはイスラエルの王に言った、﹁わたしはあなた
たみ たみ うま
と一つです。わたしの民はあなたの民と一つです。わたしの馬はあな
うま
たの馬と一つです﹂。
おう い しゅ ことば うかが
ヨシャパテはまたイスラエルの王に言った、
五 ﹁まず、主の言葉を伺いな
おう よげんしゃ にん あつ かれ
さい﹂。 六そこでイスラエルの王は預言者四百人ばかりを集めて、彼ら
い たたか い
に言った、
﹁わたしはラモテ・ギレアデに戦いに行くべきでしょうか、あ
ひか かれ い のぼ しゅ
るいは控えるべきでしょうか﹂。彼らは言った、﹁上っていきなさい。主
おう て い
はそれを王の手にわたされるでしょう﹂。 七ヨシャパテは言った、
﹁ここ
と しゅ よげんしゃ
には、われわれの問うべき主の預言者がほかにいませんか﹂。 八イスラ
おう い しゅ と ひと
エルの王はヨシャパテに言った、﹁われわれが主に問うことのできる人
列王紀上

こ かれ よ
が、まだひとりいます。イムラの子ミカヤです。彼はわたしについて良

119
こと よげん わる こと よげん かれ にく
い事を預言せず、ただ悪い事だけを預言するので、わたしは彼を憎んで
い おう い
います﹂。ヨシャパテは言った、
﹁王よ、そう言わないでください﹂。 九そ
おう やくにん よ いそ こ つ
こでイスラエルの王は役人を呼んで、﹁急いでイムラの子ミカヤを連れ
い おう おう
てきなさい﹂と言った。 一〇さてイスラエルの王およびユダの王ヨシャ
おう ふく き もん いりぐち ひろば おうざ
パテは王の服を着て、サマリヤの門の入口の広場に、おのおのその王座
よげんしゃ みな まえ よげん こ
にすわり、預言者たちは皆その前で預言していた。 一一ケナアナの子ゼ
てつ つの つく い しゅ おお
デキヤは鉄の角を造って言った、
﹁主はこう仰せられます、
﹃あなたはこ
つの つ かれ ほろ
れ ら の 角 を も っ て ス リ ヤ び と を 突 い て 彼 ら を 滅 ぼ し な さ い﹄﹂。 一 二
よげんしゃ みな よげん い のぼ
預言者たちは皆そのように預言して言った、﹁ラモテ・ギレアデに上って
しょうり え しゅ おう て
いって勝利を得なさい。主はそれを王の手にわたされるでしょう﹂。
よ し しゃ かれ い よげんしゃ いっ ち
一三さてミカヤを呼びにいった使者は彼に言った、
﹁預言者たちは一致し
おう よ こと い かれ ことば
て王に良い事を言いました。どうぞ、あなたも、彼らのひとりの言葉の
よ こと い い しゅ い
ようにして、良い事を言ってください﹂。 一四ミカヤは言った、
﹁主は生き
列王紀上

しゅ い こと もう かれ おう
て お ら れ ま す。主 が わ た し に 言 わ れ る 事 を 申 し ま し ょ う﹂。 一五彼 が 王

120
ところ い おう かれ い
の所へ行くと、王は彼に言った、
﹁ミカヤよ、われわれはラモテ・ギレア
たたか い ひか かれ
デに戦いに行くべきでしょうか、あるいは控えるべきでしょうか﹂。彼
おう い のぼ しょうり え しゅ おう て
は王に言った、﹁上っていって勝利を得なさい。主はそれを王の手にわ
おう かれ い いく ちか
たされるでしょう﹂。 一六しかし王は彼に言った、﹁幾たびあなたを誓わ
しゅ な しんじつ つ
せたら、あなたは主の名をもって、ただ真実のみをわたしに告げるで
かれ い みな ぼくしゃ ひつじ
しょうか﹂。 一七彼は言った、
﹁わたしはイスラエルが皆、牧者のない羊の
やま ち み しゅ もの かいぬし
ように、山に散っているのを見ました。すると主は﹃これらの者は飼主
かれ やす いえ かえ い
がいない。彼らをそれぞれ安らかに、その家に帰らせよ﹄と言われまし
おう い かれ
た﹂。 一八イスラエルの王はヨシャパテに言った、﹁彼がわたしについて
よ こと よげん わる こと よげん つ
良い事を預言せず、ただ悪い事だけを預言すると、あなたに告げたでは
い しゅ ことば き
ありませんか﹂。 一九ミカヤは言った、
﹁それゆえ主の言葉を聞きなさい。
しゅ ぎょくざ てん ばんぐん みぎひだり
わたしは主がその玉座にすわり、天の万軍がそのかたわらに、 右 左に
た み しゅ
立っているのを見たが、 二〇主は﹃だれがアハブをいざなってラモテ・ギ
列王紀上

のぼ かれ たお い
レアデに上らせ、彼を倒れさせるであろうか﹄と言われました。すると

121
こと い こと い とき
ひとりはこの事を言い、ひとりはほかの事を言いました。 二一その時一
れい すす で しゅ まえ た かれ
つの霊が進み出て、主の前に立ち、
﹃わたしが彼をいざないましょう﹄と
い しゅ ほうほう い かれ
言いました。 二二主は﹃どのような方法でするのか﹄と言われたので、彼
で い いつわ い れい よげんしゃ くち
は﹃わたしが出て行って、 偽りを言う霊となって、すべての預言者の口
やど い しゅ かれ
に宿りましょう﹄と言いました。そこで主は﹃おまえは彼をいざなって、
な と で い い
それを成し遂げるであろう。出て行って、そうしなさい﹄と言われまし
しゅ いつわ い れい よげんしゃ くち い
た。 二 三そ れ で 主 は 偽 り を 言 う 霊 を あ な た の す べ て の 預言者 の 口 に 入
しゅ み おこ わざわい つ
れ、また主はあなたの身に起る災を告げられたのです﹂。 二四するとケナ
こ ちかよ う い
アナの子ゼデキヤは近寄って、ミカヤのほおを打って言った、﹁どのよう
しゅ れい はな かた
にして主の霊がわたしを離れて、あなたに語りましたか﹂。 二五ミカヤは
い おく あいだ み かく ひ
言った、﹁あなたが奥の間にはいって身を隠すその日に、わかるでしょ
おう い とら まち
う﹂。 二六イスラエルの王は言った、﹁ミカヤを捕え、町のつかさアモン
おう こ ところ ひ かえ い おう い
と、王の子ヨアシの所へ引いて帰って、 二七言いなさい、
﹃王がこう言い
列王紀上

もの ごくや い みず かれ やしな
ます、この者を獄屋に入れ、わずかのパンと水をもって彼を養い、わた

122
しょうり え かえ ま い
しが勝利を得て帰ってくるのを待て﹄﹂。 二八ミカヤは言った、
﹁もしあな
しょうり え かえ しゅ かた
たが勝利を得て帰ってこられるならば、主がわたしによって語られな
かれ い たみ き
かったのです﹂。また彼は言った、
﹁あなたがた、すべての民よ、聞きな
さい﹂。
おう おう
二九 こうしてイスラエルの王とユダの王ヨシャパテはラモテ・ギレアデ
のぼ おう い
に上っていった。 三〇イスラエルの王はヨシャパテに言った、
﹁わたしは
すがた か たたか い おう ふく つ
姿を変えて、 戦いに行きます。あなたは王の服を着けなさい﹂。イスラ
おう すがた か たたか い おう せんしゃ
エルの王は姿を変えて戦いに行った。 三一さて、スリヤの王は、その戦車
ちょう にん めい い ちい もの おお もの
長 三十二人に命じて言った、
﹁あなたがたは、小さい者とも大きい者と
たたか おう たたか せんしゃちょう
も戦わないで、ただイスラエルの王とだけ戦いなさい﹂。 三二戦車 長らは
み おう おも
ヨシャパテを見たとき、これはきっとイスラエルの王だと思ったので、
み たたか よ
身をめぐらして、これと戦おうとすると、ヨシャパテは呼ばわった。 三三
せんしゃちょう かれ おう み かれ お
戦車 長らは彼がイスラエルの王でないのを見たので、彼を追うことを
列王紀上

ひ かえ ひと なにこころ ゆみ
やめて引き返した。 三四しかし、ひとりの人が何 心なく弓をひいて、イス

123
おう むねあて くさずり あいだ い かれ せんしゃ ぎょしゃ い
ラエルの王の胸当と草摺の間を射たので、彼はその戦車の御者に言っ
きず う せんしゃ せんじょう はこ
た、
﹁わたしは傷を受けた。戦車をめぐらして、わたしを戦 場から運び
だ ひ たたか はげ おう せんしゃ なか
出せ﹂。 三五その日 戦いは激しくなった。王は戦車の中にささえられて
た ゆうぐれ し きず
立ち、スリヤびとにむかっていたが、ついに、夕暮になって死んだ。傷
ち せんしゃ そこ なが ひ ぼっ ぐんぜい なか よ こえ
の血は戦車の底に流れた。 三六日の没するころ、軍勢の中に呼ばわる声
まち くに かえ
がした、﹁めいめいその町へ、めいめいその国へ帰れ﹂。
おう し たずさ い ひとびと おう ほうむ
三七 王は死んで、サマリヤへ携え行かれた。人々は王をサマリヤに葬 っ
せんしゃ いけ あら いぬ ち
た。 三八またその戦車をサマリヤの池で洗ったが、犬がその血をなめた。
ゆうじょ み あら しゅ い ことば
また遊女がそこで身を洗った。主が言われた言葉のとおりである。 三九
じせき かれ こと た ぞうげ
アハブのそのほかの事績と、彼がしたすべての事と、その建てた象牙の
いえ た まち おう れきだいし しょ
家と、その建てたすべての町は、イスラエルの王の歴代志の書にしるさ
せんぞ とも ねむ
れているではないか。 四〇こうしてアハブはその先祖と共に眠って、そ
こ かわ おう
の子アハジヤが代って王となった。
列王紀上

こ おう だい ねん おう
四一 アサの子ヨシャパテはイスラエルの王アハブの第四年にユダの王と

124
おう とき さい
なった。 四二ヨシャパテは王となった時、三十五歳であったが、エルサレ
ねん よ おさ はは な むすめ
ムで二十五年世を治めた。その母の名はアズバといい、シルヒの娘で
ちち みち あゆ はな
あった。 四三ヨシャパテは父アサのすべての道に歩み、それを離れるこ
しゅ め こと たか ところ のぞ
となく、主の目にかなう事をした。ただし高き所は除かなかったので、
たみ たか ところ ぎせい こう
民はなお高き所で犠牲をささげ、香をたいた。 四四ヨシャパテはまたイ
おう むす
スラエルの王と、よしみを結んだ。
た じせき かれ くんこう せんそう
四五ヨシャパテのその他の事績と、彼があらわした勲功およびその戦争
おう れきだいし しょ
については、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。 四六
かれ ちち よ のこ しんでんだんしょう くに お
彼 は 父 ア サ の 世 に な お 残 っ て い た 神殿 男 娼 た ち を 国 の う ち か ら 追 い
はら
払った。
おう だいかん おう
四七そのころエドムには王がなく、代官が王であった。 四八ヨシャパテは
ふね つく きん え い
タルシシの船を造って、金を獲るためにオフルに行かせようとしたが、
ふね なんぱ い
その船はエジオン・ゲベルで難破したため、ついに行かなかった。 四九そ
列王紀上

こ けらい けらい
こでアハブの子アハジヤはヨシャパテに﹁わたしの家来をあなたの家来

125
いっしょ ふね い い しょうち
と一緒に船で行かせなさい﹂と言ったが、ヨシャパテは承知しなかった。
せんぞ とも ねむ ちち まち せんぞ とも ほうむ
ヨシャパテはその先祖と共に眠って、父ダビデの町に先祖と共に葬
五〇
こ かわ おう
られ、その子ヨラムが代って王となった。
こ おう だい ねん
アハブの子アハジヤはユダの王ヨシャパテの第十七年にサマリヤで
五一
おう ねん おさ かれ しゅ め まえ
イスラエルの王となり、二年イスラエルを治めた。 五二彼は主の目の前
あく おこな ちち みち はは みち つみ
に悪を行い、その父の道と、その母の道、およびかのイスラエルに罪を
おか こ みち あゆ つか
犯させたネバテの子ヤラベアムの道に歩み、五三バアルに仕えて、それを
おが かみ しゅ いか かれ ちち
拝み、イスラエルの神、主を怒らせた。すべて彼の父がしたとおりで
あった。
列王紀上

126
れつおうき げ
列王紀下
第一章
し のち
アハブが死んだ後、モアブはイスラエルにそむいた。

たかどの お びょうき
二さ て ア ハ ジ ヤ は サ マ リ ヤ に あ る 高殿 の ら ん か ん か ら 落 ち て 病気 に
し しゃ い かみ
なったので、使者をつかわし、﹁行ってエクロンの神バアル・ゼブブに、
びょうき たず めい とき しゅ つかい
この病気がなおるかどうかを尋ねよ﹂と命じた。 三時に、主の使はテシ
い た のぼ い おう し しゃ
ベびとエリヤに言った、﹁立って、上って行き、サマリヤの王の使者に
あ い かみ たず
会って言いなさい、﹃あなたがたがエクロンの神バアル・ゼブブに尋ねよ
い かみ しゅ
うとして行くのは、イスラエルに神がないためか﹄。 四それゆえ主はこ
おお のぼ しんだい お かなら し
う仰せられる、
﹃あなたは、登った寝台から降りることなく、 必ず死ぬ
のぼ い
列王紀下

であろう﹄﹂。そこでエリヤは上って行った。
し しゃ かえ かれ い
使者たちがアハジヤのもとに帰ってきたので、アハジヤは彼らに言っ

0
かえ かれ い ひと のぼ
た、﹁なぜ帰ってきたのか﹂。 六彼らは言った、﹁ひとりの人が上ってき
あ い おう ところ
て、われわれに会って言いました、﹃おまえたちをつかわした王の所へ
かえ い しゅ おお かみ
帰って言いなさい。主はこう仰せられる、あなたがエクロンの神バア
たず ひと かみ
ル・ゼブブに尋ねようとして人をつかわすのは、イスラエルに神がない
のぼ しんだい お かなら
ためなのか。それゆえあなたは、登った寝台から降りることなく、必ず
し かれ い のぼ
死ぬであろう﹄﹂。 七アハジヤは彼らに言った、
﹁上ってきて、あなたがた
あ こと つ ひと ひと かれ こた
に会って、これらの事を告げた人はどんな人であったか﹂。 八彼らは答
ひと け き こし かわ おび し かれ
えた、
﹁その人は毛ごろもを着て、腰に皮の帯を締めていました﹂。彼は
い ひと
言った、﹁その人はテシべびとエリヤだ﹂。
おう にん ちょう ぶ か にん とも ところ
そこで王は五十人の長を、部下の五十人と共にエリヤの所へつかわし

かれ ところ のぼ やま いただき
た。彼がエリヤの所へ上っていくと、エリヤは山の頂にすわっていたの
い かみ ひと おう くだ く い
で、エリヤに言った、
﹁神の人よ、王があなたに、下って来るようにと言
にん ちょう こた かみ
われます﹂。 一〇しかしエリヤは五十人の長に答えた、﹁わたしがもし神
列王紀下

ひと ひ てん くだ ぶ か にん や
の人であるならば、火が天から下って、あなたと部下の五十人とを焼き

1
つく ひ てん くだ かれ ぶ か にん
尽すでしょう﹂。そのように火が天から下って、彼と部下の五十人とを
や つく
焼き尽した。
おう た にん ちょう ぶ か にん とも
一一 王はまた他の五十人の長を、部下の五十人と共にエリヤにつかわし
かれ のぼ い かみ ひと おう めい
た。彼は上っていってエリヤに言った、﹁神の人よ、王がこう命じられま
くだ かれ こた
す、﹃すみやかに下ってきなさい﹄﹂。 一二しかしエリヤは彼らに答えた、
かみ ひと ひ てん くだ ぶ か
﹁わたしがもし神の人であるならば、火が天から下って、あなたと部下の
にん や つく かみ ひ てん くだ かれ
五十人とを焼き尽すでしょう﹂。そのように神の火が天から下って、彼
ぶ か にん や つく
と部下の五十人とを焼き尽した。
おう だい にん ちょう ぶ か にん とも だい
一三 王はまた第三の五十人の長を部下の五十人と共につかわした。第三
にん ちょう のぼ まえ かれ ねが
の五十人の長は上っていって、エリヤの前にひざまずき、彼に願って
い かみ ひと いのち
言った、
﹁神の人よ、どうぞ、わたしの命と、あなたのしもべであるこの
にん いのち め たっと
五十人の命をあなたの目に尊いものとみなしてください。 一四ごらんな
ひ てん にん ちょう ぶ か
さい、火が天からくだって、さきの五十人の長ふたりと、その部下の五
列王紀下

にん や つく いま いのち め たっと
十人ずつとを焼き尽しました。しかし今わたしの命をあなたの目に尊

2
とき しゅ つかい い かれ
いものとみなしてください﹂。 一五その時、主の使はエリヤに言った、
﹁彼
とも くだ かれ おそ た
と共に下りなさい。彼を恐れてはならない﹂。そこでエリヤは立って、
かれ とも くだ おう い おう い しゅ おお
彼と共に下り、王のもとへ行って、 一六王に言った、
﹁主はこう仰せられ
かみ たず し しゃ
ます、﹃あなたはエクロンの神バアル・ゼブブに尋ねようと使者をつかわ
ことば もと かみ
したが、それはイスラエルに、その言葉を求むべき神がないためである
のぼ しんだい お かなら し
か。それゆえあなたは、登った寝台から降りることなく、必ず死ぬであ
ろう﹄﹂。
かれ い しゅ ことば し かれ こ
一七彼はエリヤが言った主の言葉のとおりに死んだが、彼に子がなかっ
きょうだい かれ かわ おう おう
たので、その兄 弟 ヨラムが彼に代って王となった。これはユダの王ヨ
こ だい ねん た じせき
シ ャ パ テ の 子 ヨ ラ ム の 第 二 年 で あ る。 一八ア ハ ジ ヤ の そ の 他 の 事績 は、
おう れきだいし しょ
イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
列王紀下

3
第二章
しゅ かぜ てん のぼ とき
一主がつむじ風をもってエリヤを天に上らせようとされた時、エリヤは
とも で い い
エリシャと共にギルガルを出て行った。 二エリヤはエリシャに言った、
しゅ
﹁どうぞ、ここにとどまってください。主はわたしをベテルにつかわさ
い しゅ い
れるのですから﹂。しかしエリシャは言った、﹁主は生きておられます。
い はな
またあなたも生きておられます。わたしはあなたを離れません﹂。そし
かれ くだ よげんしゃ
て 彼 ら は ベ テ ル へ 下 っ た。 三ベ テ ル に い る 預言者 の と も が ら が、エ リ
で かれ い しゅ し じ しゅじん
シャのもとに出てきて彼に言った、﹁主がきょう、あなたの師事する主人
と し かれ い し
をあなたから取られるのを知っていますか﹂。彼は言った、
﹁はい、知っ
だま
ています。あなたがたは黙っていてください﹂。
かれ い
四エリヤは彼に言った、
﹁エリシャよ、どうぞ、ここにとどまってくださ
しゅ
い。主はわたしをエリコにつかわされるのですから﹂。しかしエリシャ
列王紀下

い しゅ い い
は言った、﹁主は生きておられます。またあなたも生きておられます。

4
はな かれ い
わたしはあなたを離れません﹂。そして彼らはエリコへ行った。 五エリ
よげんしゃ かれ い しゅ
コにいた預言者のともがらが、エリシャのもとにきて彼に言った、﹁主が
し じ しゅじん と し
きょう、あなたの師事する主人をあなたから取られるのを知っています
かれ い し だま
か﹂。彼は言った、
﹁はい、知っています。あなたがたは黙っていてくだ
さい﹂。
かれ い しゅ
エリヤはまた彼に言った、
六 ﹁どうぞ、ここにとどまってください。主は
かれ い しゅ
わたしをヨルダンにつかわされるのですから﹂。しかし彼は言った、﹁主
い い
は生きておられます。またあなたも生きておられます。わたしはあな
はな すす い よげんしゃ
たを離れません﹂。そしてふたりは進んで行った。 七預言者のともがら
にん い かれ はな た かれ
五十人も行って、彼らにむかって、はるかに離れて立っていた。彼らふ
た がいとう と
たりは、ヨルダンのほとりに立ったが、 八エリヤは外套を取り、それを
ま みず う みず さゆう わか つち うえ
巻いて水を打つと、水が左右に分れたので、ふたりはかわいた土の上を
わた
渡ることができた。
列王紀下

かれ わた い と
彼らが渡ったとき、エリヤはエリシャに言った、
九 ﹁わたしが取られて、

5
はな まえ こと もと
あなたを離れる前に、あなたのしてほしい事を求めなさい﹂。エリシャ
い れい ぶん つ
は言った、﹁どうぞ、あなたの霊の二つの分をわたしに継がせてくださ
い こと もと
い﹂。 一〇エリヤは言った、﹁あなたはむずかしい事を求める。あなたが
と はな み
もし、わたしが取られて、あなたを離れるのを見るならば、そのように
み かれ
なるであろう。しかし見ないならば、そのようにはならない﹂。 一一彼ら
すす かた とき ひ くるま ひ うま へだ
が進みながら語っていた時、火の車と火の馬があらわれて、ふたりを隔
かぜ の てん
てた。そしてエリヤはつむじ風に乗って天にのぼった。 一二エリシャは
み ちち ちち せんしゃ きへい
これを見て﹁わが父よ、わが父よ、イスラエルの戦車よ、その騎兵よ﹂と
さけ ふたた かれ み
叫んだが、 再び彼を見なかった。
じぶん きもの さ
そこでエリシャは自分の着物をつかんで、それを二つに裂き、一三またエ
み お がいとう と あ かえ きし た
リヤの身から落ちた外套を取り上げ、帰ってきてヨルダンの岸に立っ
み お がいとう と みず う
た。 一四そしてエリヤの身から落ちたその外套を取って水を打ち、
﹁エリ
かみ しゅ い かれ みず う みず さゆう
ヤの神、主はどこにおられますか﹂と言い、彼が水を打つと、水は左右
列王紀下

わか わた
に分れたので、エリシャは渡った。

6
よげんしゃ かれ ちか く み
一五 エリコにいる預言者のともがらは彼の近づいて来るのを見て、
﹁エリ
れい うえ い かれ き
ヤの霊がエリシャの上にとどまっている﹂と言った。そして彼らは来て
かれ むか まえ ち ふ かれ い ところ ちから
彼を迎え、その前に地に伏して、 一六彼に言った、
﹁しもべらの所に力の
つよ もの にん かれ しゅじん たず
強い者が五十人います。どうぞ彼らをつかわして、あなたの主人を尋ね
しゅ れい かれ ひ かれ やま たに な
させてください。主の霊が彼を引きあげて、彼を山か谷に投げたのかも
し い かれ
知れません﹂。エリシャは﹁つかわしてはならない﹂と言ったが、 一七彼
は かれ い
の恥じるまで、しいたので、彼は﹁つかわしなさい﹂と言った。それで
かれ にん もの か あいだたず かれ み
彼らは五十人の者をつかわし、三日の間 尋ねたが、彼を見いださなかっ
とき かれ かえ
た。 一八エリシャのなおエリコにとどまっている時、彼らが帰ってきた
かれ い い
ので、エリシャは彼らに言った、
﹁わたしは、あなたがたに、行ってはな

らないと告げたではないか﹂。
まち ひとびと い み まち ば しょ よ
一九 町の人々はエリシャに言った、
﹁見られるとおり、この町の場所は良
みず わる ち りゅうざん おこ い
いが水が悪いので、この地は流 産を起すのです﹂。 二〇エリシャは言っ
列王紀下

あたら さら しお も も かれ も
た、
﹁新しい皿に塩を盛って、わたしに持ってきなさい﹂。彼らは持って

7
みず みなもと で い しお な い い
きた。 二一エリシャは水の源へ出て行って、塩をそこに投げ入れて言っ
しゅ おお みず よ みず
た、
﹁主はこう仰せられる、
﹃わたしはこの水を良い水にした。もはやこ
し りゅうざん おこ みず
こには死も流 産も起らないであろう﹄﹂。 二二こうしてその水はエリシャ
い よ みず こんにち いた
の言ったとおりに良い水になって今日に至っている。
かれ のぼ のぼ い とちゅう ちい こども まち
二三 彼はそこからベテルへ上ったが、上って行く途中、小さい子供らが町
で かれ かれ あたま あたま
から出てきて彼をあざけり、彼にむかって﹁はげ頭よ、のぼれ。はげ頭
い かれ かえ かれ み しゅ な
よ、のぼれ﹂と言ったので、 二四彼はふり返って彼らを見、主の名をもっ
かれ はやし なか とう め で こ
て彼らをのろった。すると林の中から二頭の雌ぐまが出てきて、その子
とも にん さ かれ やま い
供らのうち四十二人を裂いた。 二五彼はそこからカルメル山へ行き、そ
かえ
こからサマリヤに帰った。
第三章
列王紀下

おう だい ねん こ
一ユダの王ヨシャパテの第十八年にアハブの子ヨラムはサマリヤでイ

8
おう ねん よ おさ かれ しゅ め まえ あく
スラエルの王となり、十二年世を治めた。 二彼は主の目の前に悪をおこ
ふ ぼ かれ ちち つく
なったが、その父母のようではなかった。彼がその父の造ったバアルの
せきちゅう のぞ かれ つみ おか
石 柱を除いたからである。 三しかし彼はイスラエルに罪を犯させたネ
こ つみ したが はな
バテの子ヤラベアムの罪につき従 って、それを離れなかった。
おう ひつじ し い く もの こひつじ おひつじ け
四モアブの王メシャは羊の飼育者で、十万の小羊と、十万の雄羊の毛と
ねんねん おう おさ し のち
を年々イスラエルの王に納めていたが、 五アハブが死んだ後、モアブの
おう おう おう とき
王 は イ ス ラ エ ル の 王 に そ む い た。 六そ こ で ヨ ラ ム 王 は そ の 時 サ マ リ ヤ
で あつ ひと おう
を出て、イスラエルびとをことごとく集め、七また、人をユダの王ヨシャ
おう
パテにつかわし、﹁モアブの王はわたしにそむきました。あなたはモア
たたか いっしょ い い かれ
ブと戦うために、わたしと一緒に行かれませんか﹂と言わせた。彼は
い い たみ
言った、﹁行きましょう。わたしはあなたと一つです。わたしの民はあ
たみ うま うま かれ
なたの民と一つです。わたしの馬はあなたの馬と一つです﹂。 八彼はま
い みち のぼ こた
た言った、﹁われわれはどの道を上るのですか﹂。ヨラムは答えた、﹁エド
列王紀下

あらの みち のぼ
ムの荒野の道を上りましょう﹂。

9
おう おう おう とも で
九こうしてイスラエルの王はユダの王およびエドムの王と共に出て
い かれ まわ みち なぬか あいだすす ぐんぜい
行った。しかし彼らは回り道をして、七日の間 進んだが、軍勢とそれに
したが かちく の みず おう い
従う家畜の飲む水がなかったので、一〇イスラエルの王は言った、﹁ああ、
しゅ にん おう て わた め あつ
主は、この三人の王をモアブの手に渡そうとして召し集められたのだ﹂。
い しゅ と しゅ よげんしゃ
一一 ヨシャパテは言った、
﹁われわれが主に問うことのできる主の預言者
おう けらい こた
はここにいませんか﹂。イスラエルの王のひとりの家来が答えた、﹁エリ
て みず そそ こ
ヤ の 手 に 水 を 注 い だ シ ャ パ テ の 子 エ リ シ ャ が こ こ に い ま す﹂。 一 二ヨ
い しゅ ことば かれ おう
シャパテは言った、﹁主の言葉が彼にあります﹂。そこでイスラエルの王
おう かれ くだ
とヨシャパテとエドムの王とは彼のもとへ下っていった。
おう い
一三 エリシャはイスラエルの王に言った、
﹁わたしはあなたとなんのかか
ちちうえ よげんしゃ ははうえ よげんしゃ
わりがありますか。あなたの父上の預言者たちと母上の預言者たちの
ところ い おう かれ い しゅ
所へ行きなさい﹂。イスラエルの王は彼に言った、
﹁いいえ、主がこの三
にん おう て わた め あつ
人の王をモアブの手に渡そうとして召し集められたのです﹂。 一四エリ
列王紀下

い つか ばんぐん しゅ い
シャは言った、﹁わたしの仕える万軍の主は生きておられます。わたし

10
おう かえり
はユダの王ヨシャパテのためにするのでなければ、あなたを顧み、あな
あ がくじん ところ つ
たに会うことはしないのだが、 一五いま楽人をわたしの所に連れてきな
がくじん がく そう しゅ て かれ のぞ かれ い
さい﹂。そこで楽人が楽を奏すると、主の手が彼に臨んで、 一六彼は言っ
しゅ おお たに みず み
た、
﹁主はこう仰せられる、
﹃わたしはこの谷を水たまりで満たそう﹄。 一
しゅ おお かぜ あめ み
七これは主がこう仰せられるからである、﹃あなたがたは風も雨も見な
たに みず み かちく けもの の
いのに、この谷に水が満ちて、あなたがたと、その家畜および獣が飲む
しゅ め ちい こと しゅ
で あ ろ う﹄。 一八こ れ は 主 の 目 に は 小 さ い 事 で あ る。主 は モ ア ブ び と を
て わた けんご
も、あなたがたの手に渡される。 一九そしてあなたがたはすべての堅固
まち よ まち う よ き き たお
な町と、すべての良い町を撃ち、すべての良い木を切り倒し、すべての
みず い ど いし ち よ ところ あら
水の井戸をふさぎ、石をもって地のすべての良い所を荒すであろう﹂。 二
あさ そな もの とき みず ほう なが
〇あくる朝になって、供え物をささげる時に、水がエドムの方から流れ
みず くに み
てきて、水は国に満ちた。
みな おう じぶん せ のぼ
さてモアブびとは皆、王たちが自分たちを攻めるために上ってきた
列王紀下

二一
き き もの お わか
のを聞いたので、よろいを着ることのできる者を、老いも若きもことご

11
しょうしゅう こっきょう はいち あさ お たいよう
とく召 集して、国 境に配置したが、 二二朝はやく起きて、太陽がのぼっ
みず てら め まえ ち あか みず み
て水を照したとき、モアブびとは目の前に血のように赤い水を見たの
かれ い ち おう たがい たたか ころ
で、 二三彼らは言った、﹁これは血だ、きっと王たちが互に戦 って殺し
あ い
合ったのだ。だから、モアブよ、ぶんどりに行きなさい﹂。 二四しかしモ
じんえい い た
アブびとがイスラエルの陣営に行くと、イスラエルびとは立ちあがって
う かれ まえ に さ
モアブびとを撃ったので、彼らはイスラエルの前から逃げ去った。イス
すす う くに まちまち
ラエルびとは進んで、モアブびとを撃ち、その国にはいって、 二五町々を
ほろ いし ち よ ところ な
滅ぼし、おのおの石を一つずつ、地のすべての良い所に投げて、これに
み みず い ど よ き き たお
満たし、水の井戸をことごとくふさぎ、良い木をことごとく切り倒して、
な のこ いし な もの
ただキル・ハラセテはその名を残すのみとなったが、石を投げる者がこ
かこ う ほろ おう たたか はげ あた
れを囲んで撃ち滅ぼした。 二六モアブの王は戦いがあまりに激しく、当
み ぬ もの にん ひき おう ところ つ
りがたいのを見て、つるぎを抜く者七百人を率い、エドムの王の所に突
はい はた じぶん くらい つ ちょうし
き入ろうとしたが、果さなかったので、二七自分の位を継ぐべきその長子
列王紀下

じょうへき うえ はんさい とき おお
をとって城 壁の上で燔祭としてささげた。その時イスラエルに大いな

12
いきどお のぞ かれ かれ じぶん くに かえ
る憤りが臨んだので、彼らは彼をすてて自分の国に帰った。
第四章
よげんしゃ つま よ い
預言者のともがらの、ひとりの妻がエリシャに呼ばわって言った、
一 ﹁あ
おっと し
なたのしもべであるわたしの夫が死にました。ごぞんじのように、あな
しゅ おそ もの いま さいしゅ
たのしもべは主を恐れる者でありましたが、今、債主がきて、わたしの
こども と どれい
ふたりの子供を取って奴隷にしようとしているのです﹂。 二エリシャは
かのじょ い なに いえ
彼女に言った、﹁あなたのために何をしましょうか。あなたの家にどん
もの い かのじょ い あぶら
な物があるか、言いなさい﹂。彼女は言った、
﹁一びんの油のほかは、は
いえ なに かれ い い となり
しための家に何もありません﹂。 三彼は言った、﹁ほかへ行って、 隣の
ひとびと うつわ か うつわ か すこ
人々から器を借りなさい。あいた器を借りなさい。少しばかりではい
うち こども いっしょ と うち
けません。 四そして内にはいって、あなたの子供たちと一緒に戸の内に
列王紀下

と うつわ あぶら
閉じこもり、そのすべての器に油をついで、いっぱいになったとき、一

13
と かのじょ かれ はな さ こども
つずつそれを取りのけておきなさい﹂。 五彼女は彼を離れて去り、子供
いっしょ と うち と こども も く うつわ あぶら
たちと一緒に戸の内に閉じこもり、子供たちの持って来る器に油をつい
あぶら み かのじょ こども うつわ も
だ。 六 油が満ちたとき、彼女は子供に﹁もっと器を持ってきなさい﹂と
い こども うつわ い あぶら
言ったが、子供が﹁器はもうありません﹂と言ったので、油はとまった。
かのじょ かみ ひと つ かれ い い
そこで彼女は神の人のところにきて告げたので、彼は言った、﹁行っ

あぶら う ふさい はら こども
て、その油を売って負債を払いなさい。あなたと、あなたの子供たちは
のこ くら
その残りで暮すことができます﹂。
ひ い ゆうふく ふじん
ある日エリシャはシュネムへ行ったが、そこにひとりの裕福な婦人が

かれ しょくじ かれ とお
いて、しきりに彼に食事をすすめたので、彼はそこを通るごとに、そこ
よ しょくじ おんな おっと い ところ
に寄って食事をした。 九その女は夫に言った、﹁いつもわたしたちの所
とお ひと たし かみ せい ひと おくじょう かべ
を通るあの人は確かに神の聖なる人です。 一〇わたしたちは屋 上に壁の
ちい つく しんだい つくえ しょくだい かれ
ある一つの小さいへやを造り、そこに寝台と机といすと燭 台とを彼の
そな かれ ところ く
ために備えましょう。そうすれば彼がわたしたちの所に来るとき、そこ
列王紀下

に、はいることができます﹂。

14
ひ やす
一一 さて、ある日エリシャはそこにきて、そのへやにはいり、そこに休ん
かれ おんな よ
だが、 一二彼はそのしもべゲハジに﹁このシュネムの女を呼んできなさ
い かれ おんな よ かのじょ まえ た
い﹂と言った。彼がその女を呼ぶと、彼女はきてエリシャの前に立った
い かのじょ い
ので、 一三エリシャはゲハジに言った、
﹁彼女に言いなさい、
﹃あなたはこ
こころ もち
んなにねんごろに、わたしたちのために心を用いられたが、あなたのた
なに おう ぐんぜい ちょう こと
めには何をしたらよいでしょうか。王または軍勢の長にあなたの事を
たの のぞ かのじょ こた い
よろしく頼むことをお望みですか﹄﹂。彼女は答えて言った、﹁わたしは
じぶん たみ す い
自分 の 民 の う ち に 住 ん で い ま す﹂。 一 四エ リ シ ャ は 言 っ た、﹁そ れ で は
かのじょ なに い かのじょ こども
彼女のために何をしようか﹂。ゲハジは言った、﹁彼女には子供がなく、
おっと お かのじょ よ
その夫は老いています﹂。 一五するとエリシャが﹁彼女を呼びなさい﹂と
い かのじょ よ き とぐち た い
言ったので、彼女を呼ぶと、来て戸口に立った。 一六エリシャは言った、
らいねん いま こ だ かのじょ い
﹁来年の今ごろ、あなたはひとりの子を抱くでしょう﹂。彼女は言った、
しゅ かみ ひと あざむ
﹁いいえ、わが主よ、神の人よ、はしためを欺かないでください﹂。 一七し
列王紀下

おんな み かのじょ い つぎ ねん
かし女はついに身ごもって、エリシャが彼女に言ったように、次の年の

15
こ う
そのころに子を産んだ。
こ せいちょう ひ かりい ところ で ちち
一八 その子が成 長して、ある日、刈入れびとの所へ出ていって、父のも
い ちち あたま あたま い ちち
とへ行ったが、 一九父にむかって﹁頭が、 頭が﹂と言ったので、父はしも
かれ はは せ お い かれ せ お
べに﹁彼を母のもとへ背負っていきなさい﹂と言った。 二〇彼を背負って
はは い ひる はは うえ し
母のもとへ行くと、昼まで母のひざの上にすわっていたが、ついに死ん
はは あ かみ ひと しんだい うえ お と と
だ。 二一母は上がっていって、これを神の人の寝台の上に置き、戸を閉じ
で おっと よ い
て出てきた。 二二そして夫を呼んで言った、
﹁どうぞ、しもべひとりと、ろ
とう いそ かみ ひと ところ い
ば一頭をわたしにかしてください。急いで神の人の所へ行って、また
かえ おっと い かれ ところ い
帰ってきます﹂。 二三 夫は言った、﹁どうしてきょう彼の所へ行こうとす
あんそくにち かのじょ い
るのか。きょうは、ついたちでもなく、安息日でもない﹂。彼女は言っ
かのじょ お
た、
﹁よろしいのです﹂。 二四そして彼女はろばにくらを置いて、しもべに
い はや か めい とき ほちょう
言った、﹁速く駆けさせなさい。わたしが命じる時でなければ、歩調をゆ
かのじょ しゅっぱつ やま い
るめてはなりません﹂。 二五こうして彼女は出 発してカルメル山へ行き、
列王紀下

かみ ひと ところ い
神の人の所へ行った。

16
かみ ひと かのじょ ちか み い む
神の人は彼女の近づいてくるのを見て、しもべゲハジに言った、﹁向こう
おんな く はし い かのじょ むか い
から、あのシュネムの女が来る。 二六すぐ走って行って、彼女を迎えて言
ぶ じ おっと ぶ じ
いなさい、﹃あなたは無事ですか。あなたの夫は無事ですか。あなたの
こども ぶ じ かのじょ こた ぶ じ かのじょ
子供は無事ですか﹄﹂。彼女は答えた、﹁無事です﹂。 二七ところが彼女は
やま かみ ひと ところ あし
山にきて、神の人の所へくるとエリシャの足にすがりついた。ゲハジが
かのじょ お ちか とき かみ ひと い
彼女を追いのけようと近よった時、神の人は言った、﹁かまわずにおきな
かのじょ こころ くる しゅ かく
さい。彼女は心に苦しみがあるのだから。主はそれを隠して、まだわた
つ かのじょ い
しにお告げにならないのだ﹂。 二八そこで彼女は言った、﹁わたしがあな
こ もと あざむ い
たに子を求めましたか。わたしを欺かないでくださいと言ったではあ
い こし
りませんか﹂。 二九エリシャはゲハジに言った、
﹁腰をひきからげ、わたし
て も い あ
のつえを手に持って行きなさい。だれに会っても、あいさつしてはなら
もの こた
ない。またあなたにあいさつする者があっても、それに答えてはならな
こども かお うえ お こども はは い
い。わ た し の つ え を 子供 の 顔 の 上 に 置 き な さ い﹂。 三〇子供 の 母 は 言 っ
列王紀下

しゅ い い
た、﹁主は生きておられます。あなたも生きておられます。わたしはあ

17
はな た かのじょ
なたを離れません﹂。そこでエリシャはついに立ちあがって彼女のあと
い かれ さき い こども かお うえ
について行った。 三一ゲハジは彼らの先に行って、つえを子供の顔の上
お こえ い かえ
に置いたが、なんの声もなく、生きかえったしるしもなかったので、帰っ
あ かれ つ こども め
てきてエリシャに会い、彼に告げて﹁子供はまだ目をさましません﹂と

言った。
いえ み こども し しんだい うえ よこ
三二 エリシャが家にはいって見ると、子供は死んで、寝台の上に横たわっ
かれ と と かれ うち しゅ
ていたので、 三三彼ははいって戸を閉じ、彼らふたりだけ内にいて主に
いの あ こども うえ ふ じぶん くち
祈 っ た。 三 四そ し て エ リ シ ャ が 上 が っ て 子供 の 上 に 伏 し、自分 の 口 を
こども くち うえ じぶん め こども め うえ じぶん りょうて こども りょうて
子供の口の上に、自分の目を子供の目の上に、自分の両手を子供の両手
うえ み こども うえ の こども あたた
の上にあて、その身を子供の上に伸ばしたとき、子供のからだは暖かに
ふたた お いえ なか
なった。 三五こうしてエリシャは再び起きあがって、家の中をあちらこ
あゆ うえ み こども うえ の こども
ちらと歩み、また上がって、その身を子供の上に伸ばすと、子供は七た
め ひら よ
び く し ゃ み を し て 目 を 開 い た。 三六エ リ シ ャ は た だ ち に ゲ ハ ジ を 呼 ん
列王紀下

おんな よ い かのじょ よ かのじょ


で、
﹁あのシュネムの女を呼べ﹂と言ったので、彼女を呼んだ。彼女がは

18
い こども い
いってくるとエリシャは言った、﹁あなたの子供をつれて行きなさい﹂。
かのじょ あし ふ ち み
三七 彼女ははいってきて、エリシャの足もとに伏し、地に身をかがめた。
こ とも と で
そしてその子供を取りあげて出ていった。
かえ ち よげんしゃ
三八 エリシャはギルガルに帰ったが、その地にききんがあった。預言者
かれ まえ ざ い
のともがらが彼の前に座していたので、エリシャはそのしもべに言っ
おお よげんしゃ やさい にもの
た、﹁大きなかまをすえて、預言者のともがらのために野菜の煮物をつく
かれ はたけ で あおもの
りなさい﹂。 三九彼らのうちのひとりが畑に出ていって青物をつんだが、
くさ み の つつみ にもの なか
つる草のあるのを見て、その野うりを一 包つんできて、煮物のかまの中
き こ かれ なに し
に切り込んだ。彼らはそれが何であるかを知らなかったからである。 四
も ひとびと た かれ にもの
やがてこれを盛って人々に食べさせようとしたが、彼らがその煮物を

た とき さけ かみ ひと なか し
食べようとした時、叫んで、
﹁ああ神の人よ、かまの中に、たべると死ぬ
い た
ものがはいっています﹂と言って、食べることができなかったので、 四一
こな も き い な
エリシャは﹁それでは粉を持って来なさい﹂と言って、それをかまに投
列王紀下

い も ひとびと た い なか
げ入れ、
﹁盛って人々に食べさせなさい﹂と言った。かまの中には、なん

19
どくぶつ
の毒物もなくなった。
とき ひと はつほ おおむぎ
四二 その時、バアル・シャリシャから人がきて、初穂のパンと、大麦のパ
こ しんこく ふくろ かみ ひと も
ン二十個と、新穀一 袋とを神の人のもとに持ってきたので、エリシャは
ひとびと あた た い めしつかい い
﹁人々に与えて食べさせなさい﹂と言ったが、四三その召 使は言った、
﹁ど
にん まえ そな かれ い ひとびと
うしてこれを百人の前に供えるのですか﹂。しかし彼は言った、﹁人々に
あた た しゅ い かれ た あま
与えて食べさせなさい。主はこう言われる、﹃彼らは食べてなお余すで
かれ かれ まえ そな かれ た
あろう﹄﹂。 四四そこで彼はそれを彼らの前に供えたので、彼らは食べて
あま しゅ ことば
なお余した。主の言葉のとおりであった。
第五章
おう ぐんぜい ちょう しゅくん おも ゆうりょく ひと
スリヤ王の軍勢の長 ナアマンはその主君に重んじられた有 力な人で

しゅ かれ もち しょうり え
あった。主がかつて彼を用いてスリヤに勝利を得させられたからであ
列王紀下

かれ だい ゆ う し びょう
る。彼は大勇士であったが、らい病をわずらっていた。 二さきにスリヤ

20
りゃくだつたい く で ち
び と が 略 奪 隊 を 組 ん で 出 て き た と き、イ ス ラ エ ル の 地 か ら ひ と り の
しょうじょ とら い かのじょ つま つか おんなしゅじん
少 女を捕えて行った。彼女はナアマンの妻に仕えたが、 三その女 主人
ご しゅじん よげんしゃ とも
にむかって、﹁ああ、御主人がサマリヤにいる預言者と共におられたらよ
かれ びょう い
かったでしょうに。彼はそのらい病をいやしたことでしょう﹂と言った
い しゅくん ち むすめ
ので、 四ナアマンは行って、その主君に、
﹁イスラエルの地からきた娘が
こと い つ おう い
こういう事を言いました﹂と告げると、 五スリヤ王は言った、
﹁それでは
い おう てがみ か
行きなさい。わたしはイスラエルの王に手紙を書きましょう﹂。
かれ ぎん きん は ぎ ちゃく たずさ い
そこで彼は銀十タラントと、金六千シケルと、晴れ着十 着を携えて行っ
かれ おう も い てがみ てがみ
た。 六彼がイスラエルの王に持って行った手紙には、﹁この手紙があな
けらい
たにとどいたならば、わたしの家来ナアマンを、あなたにつかわしたこ
ご しょうち かれ びょう
とと御承知ください。あなたに彼のらい病をいやしていただくためで
おう てがみ よ とき ころも さ
す﹂とあった。 七イスラエルの王はその手紙を読んだ時、 衣を裂いて
い ころ い かみ
言った、﹁わたしは殺したり、生かしたりすることのできる神であろう
列王紀下

ひと びょうにん
か。どうしてこの人は、らい病 人をわたしにつかわして、それをいやせ

21
い かれ あらそ し
と言うのか。あなたがたは、彼がわたしに争いをしかけているのを知っ
けいかい
て警戒するがよい﹂。
かみ ひと おう ころも さ き おう
八神の人エリシャは、イスラエルの王がその衣を裂いたことを聞き、王
ひと い ころも さ かれ
に人をつかわして言った、﹁どうしてあなたは衣を裂いたのですか。彼
かれ よげんしゃ
をわたしのもとにこさせなさい。そうすれば彼はイスラエルに預言者
し うま くるま
のあることを知るようになるでしょう﹂。 九そこでナアマンは馬と車と
したが いえ いりぐち た かれ
を従えてきて、エリシャの家の入口に立った。 一〇するとエリシャは彼
し しゃ い い み あら
に使者をつかわして言った、﹁あなたはヨルダンへ行って七たび身を洗
にく きよ
いなさい。そうすれば、あなたの肉はもとにかえって清くなるでしょ
いか さ い かれ
う﹂。 一一しかしナアマンは怒って去り、そして言った、
﹁わたしは、彼が
で た かみ しゅ な よ か しょ
きっとわたしのもとに出てきて立ち、その神、主の名を呼んで、その箇所
うえ て うご びょう おも
の上に手を動かして、らい病をいやすのだろうと思った。 一二ダマスコ
かわ かわみず
の 川 ア バ ナ と パ ル パ ル は イ ス ラ エ ル の す べ て の 川水 に ま さ る で は な い
列王紀下

かわ み あら きよ
か。わたしはこれらの川に身を洗って清まることができないのであろ

22
かれ み いか さ とき
うか﹂。こうして彼は身をめぐらし、怒って去った。 一三その時、しもべ
かれ ちか い ちち よげんしゃ なに おお
たちは彼に近よって言った、
﹁わが父よ、預言者があなたに、何か大きな
こと めい
事をせよと命じても、あなたはそれをなさらなかったでしょうか。まし
かれ み あら きよ い
て彼はあなたに﹃身を洗って清くなれ﹄と言うだけではありませんか﹂。
くだ い かみ ひと ことば
一四 そこでナアマンは下って行って、神の人の言葉のように七たびヨル
み ひた にく おさ ご にく
ダンに身を浸すと、その肉がもとにかえって幼な子の肉のようになり、
きよ
清くなった。
かれ じゅうしゃ つ かみ ひと かえ まえ
一五 彼 は す べ て の 従 者 を 連 れ て 神 の 人 の も と に 帰 っ て き て、そ の 前 に
た い いま ぜん ち かみ
立って言った、
﹁わたしは今、イスラエルのほか、全地のどこにも神のお
し おく もの う
られないことを知りました。それゆえ、どうぞ、しもべの贈り物を受け
い つか しゅ い
てください﹂。 一六エリシャは言った、﹁わたしの仕える主は生きておら
なに う かれ う
れる。わたしは何も受けません﹂。彼はしいて受けさせようとしたが、
こば い う
それを拒んだ。 一七そこでナアマンは言った、
﹁もしお受けにならないの
列王紀下

ら ば だ つち のち
であれば、どうぞ騾馬に二駄の土をしもべにください。これから後しも

23
た かみ はんさい ぎせい しゅ
べは、他の神には燔祭も犠牲もささげず、ただ主にのみささげます。 一八
しゅ こと
どうぞ主がこの事を、しもべにおゆるしくださるように。すなわち、わ
しゅくん みや れいはい
たしの主君がリンモンの宮にはいって、そこで礼拝するとき、わたしの
て みや み
手によりかかることがあり、またわたしもリンモンの宮で身をかがめる
みや み とき
ことがありましょう。わたしがリンモンの宮で身をかがめる時、どうぞ
しゅ こと かれ
主がその事を、しもべにおゆるしくださるように﹂。 一九エリシャは彼に
い やす い
言った、﹁安んじて行きなさい﹂。
はな すこ い かみ ひと
ナアマンがエリシャを離れて少し行ったとき、 二〇神の人エリシャのし
い しゅじん かれ
もべゲハジは言った、﹁主人はこのスリヤびとナアマンをいたわって、彼
たずさ もの う しゅ い かれ
が携えてきた物を受けなかった。主は生きておられる。わたしは彼の
お かれ すこ もの う
あとを追いかけて、彼から少し、物を受けよう﹂。 二一そしてゲハジはナ
お じぶん かれ はし
アマンのあとを追ったが、ナアマンは自分のあとから彼が走ってくるの
み くるま ふ かれ むか かわ こと い
を見て、 車から降り、彼を迎えて、
﹁変った事があるのですか﹂と言う
列王紀下

かれ い ぶ じ しゅじん い
と、二二彼は言った、﹁無事です。主人がわたしをつかわして言わせます、

24
さんち よげんしゃ わかもの
﹃ただいまエフライムの山地から、預言者のともがらのふたりの若者が、
き かれ ぎん は ぎ
わたしのもとに来ましたので、どうぞ彼らに銀一タラントと晴れ着二
ちゃく あた う
着を与えてください﹄﹂。 二三ナアマンは、﹁どうぞ二タラントを受けてく
い かれ ぎん ふくろ い は ぎ
ださい﹂と言って彼にしい、銀二タラントを二つの袋に入れ、晴れ着二
ちゃく そ じぶん わた かれ お
着を添えて、自分のふたりのしもべに渡したので、彼らはそれを負って
さき た すす かれ おか かれ て
ゲハジの先に立って進んだが、二四彼は丘にきたとき、それを彼らの手か
う と いえ ひとびと おく かれ さ
ら受け取って家のうちにおさめ、人々を送りかえしたので、彼らは去っ
かれ しゅじん まえ た かれ い
た。 二五彼がはいって主人の前に立つと、エリシャは彼に言った、
﹁ゲハ
い かれ い い
ジよ、どこへ行ってきたのか﹂。彼は言った、
﹁しもべはどこへも行きま
い ひと くるま むか
せん﹂。 二六エリシャは言った、
﹁あの人が車をはなれて、あなたを迎えた
こころ いっしょ いま きん う
とき、わたしの心はあなたと一緒にそこにいたではないか。今は金を受
きもの う はたけ はたけ ひつじ うし う
け、着物を受け、オリブ 畑、ぶどう畑、 羊、牛、しもべ、はしためを受
とき びょう つ
ける時であろうか。 二七それゆえ、ナアマンのらい病はあなたに着き、な
列王紀下

しそん およ かれ まえ で
が く あ な た の 子孫 に 及 ぶ で あ ろ う﹂。彼 が エ リ シ ャ の 前 を 出 て い く と

25
びょう はっ ゆき しろ
き、らい病が発して雪のように白くなっていた。
第六章
よげんしゃ い
さて預言者のともがらはエリシャに言った、﹁わたしたちがあなたと

とも す ところ せま い
共に住んでいる所は狭くなりましたので、 二わたしたちをヨルダンに行
ぽん ざいもく と す
かせ、そこからめいめい一本ずつ材木を取ってきて、わたしたちの住む
ば しょ つく い い とき
場所を造らせてください﹂。エリシャは言った、﹁行きなさい﹂。 三時に
いっしょ い
そのひとりが、
﹁どうぞあなたも、しもべらと一緒に行ってください﹂と
い い こた
言ったので、エリシャは﹁行きましょう﹂と答えた。 四そしてエリシャ
かれ いっしょ い かれ い き き たお
は彼らと一緒に行った。彼らはヨルダンへ行って木を切り倒したが、 五
ざいもく き たお あたま みず なか お
ひとりが材木を切り倒しているとき、おのの頭が水の中に落ちたので、
かれ さけ い しゅ か かみ
彼は叫んで言った。﹁ああ、わが主よ。これは借りたものです﹂。 六神の
列王紀下

ひと い お かれ ば しょ し
人は言った、﹁それはどこに落ちたのか﹂。彼がその場所を知らせると、

26
ぽん えだ き おと な い あたま うか
エリシャは一本の枝を切り落し、そこに投げ入れて、そのおのの頭を浮
と い ひと て の
ばせ、 七﹁それを取りあげよ﹂と言ったので、その人は手を伸べてそれ

を取った。
おう たたか けらい ひょうぎ
八かつてスリヤの王がイスラエルと戦 っていたとき、家来たちと評議
ところ じん は い かみ ひと
して﹁しかじかの所にわたしの陣を張ろう﹂と言うと、 九神の人はイス
おう ようじん ところ
ラエルの王に﹁あなたは用心して、この所をとおってはなりません。ス
くだ い おく
リヤびとがそこに下ってきますから﹂と言い送った。 一〇それでイスラ
おう かみ ひと じぶん つ ところ ひと けいかい
エルの王は神の人が自分に告げてくれた所に人をつかわし、警戒したの
ところ ふせ かい
で、その所でみずからを防ぎえたことは一、二回にとどまらなかった。
おう こと こころ なや けらい め い
一一 スリヤの王はこの事のために心を悩まし、家来たちを召して言った、
おう つう つ
﹁われわれのうち、だれがイスラエルの王と通じているのか、わたしに告
もの けらい い おう しゅ つう
げる者はないか﹂。 一二ひとりの家来が言った、
﹁王、わが主よ、だれも通
もの よげんしゃ
じている者はいません。ただイスラエルの預言者エリシャが、あなたが
列王紀下

しんしつ かた ことば おう つ おう
寝室 で 語 ら れ る 言葉 で も イ ス ラ エ ル の 王 に 告 げ る の で す﹂。 一 三王 は

27
い かれ い さが ひと かれ
言った、﹁彼がどこにいるか行って捜しなさい。わたしは人をやって彼
とら とき かれ おう つ もの
を捕えよう﹂。時に﹁彼はドタンにいる﹂と王に告げる者があったので、
おう うま せんしゃ たいぐん かれ よる き
一四 王はそこに馬と戦車および大軍をつかわした。彼らは夜のうちに来
まち かこ
て、その町を囲んだ。
かみ ひと めしつかい あさはや お で み ぐんぜい うま せんしゃ
一五 神の人の召 使が朝早く起きて出て見ると、軍勢が馬と戦車をもって
まち かこ わかもの い しゅ
町を囲んでいたので、その若者はエリシャに言った、
﹁ああ、わが主よ、
い おそ
わたしたちはどうしましょうか﹂。 一六エリシャは言った、﹁恐れること
とも もの かれ とも もの おお
はない。われわれと共にいる者は彼らと共にいる者よりも多いのだか
いの しゅ かれ め ひら み
ら﹂。 一七そしてエリシャが祈って﹁主よ、どうぞ、彼の目を開いて見さ
い しゅ わかもの め ひら かれ み
せてください﹂と言うと、主はその若者の目を開かれたので、彼が見る
ひ うま ひ せんしゃ やま み
と、火の馬と火の戦車が山に満ちてエリシャのまわりにあった。 一八ス
ところ くだ とき しゅ いの い
リヤびとがエリシャの所に下ってきた時、エリシャは主に祈って言っ
ひとびと め
た、
﹁どうぞ、この人々の目をくらましてください﹂。するとエリシャの
列王紀下

ことば かれ め かれ
言葉のとおりに彼らの目をくらまされた。 一九そこでエリシャは彼らに

28
みち まち
﹁これはその道ではない。これはその町でもない。わたしについてきな
たず ひと ところ つ い
さい。わたしはあなたがたを、あなたがたの尋ねる人の所へ連れて行き
い かれ つ い
ましょう﹂と言って、彼らをサマリヤへ連れて行った。
かれ い しゅ ひとびと
彼らがサマリヤにはいったとき、エリシャは言った、﹁主よ、この人々
二〇
め ひら み しゅ かれ め ひら かれ
の目を開いて見させてください﹂。主は彼らの目を開かれたので、彼ら
み み かれ き おう
が見ると、見よ、彼らはサマリヤのうちに来ていた。 二一イスラエルの王
かれ み い ちち かれ う ころ
は彼らを見て、エリシャに言った、
﹁わが父よ、彼らを撃ち殺しましょう
かれ う ころ こた う ころ
か。彼らを撃ち殺しましょうか﹂。 二二エリシャは答えた、﹁撃ち殺して
ゆみ ほ りょ もの う ころ
はならない。あなたはつるぎと弓をもって、捕虜にした者どもを撃ち殺
みず かれ まえ そな く の しゅくん
すでしょうか。パンと水を彼らの前に供えて食い飲みさせ、その主君の
い おう かれ さか
もとへ行かせなさい﹂。 二三そこで王は彼らのために盛んなふるまいを
もう かれ く の おわ かれ さ しゅくん ところ
設けた。彼らが食い飲みを終ると彼らを去らせたので、その主君の所へ
かえ りゃくだつたい ふたた ち
帰った。スリヤの略 奪 隊は再びイスラエルの地にこなかった。
列王紀下

のち おう ぜんぐん あつ のぼ
この後スリヤの王ベネハダデはその全軍を集め、上ってきてサマリ
二四

29
せ かこ はげ た
ヤを攻め囲んだので、 二五サマリヤに激しいききんが起った。すなわち
かれ せ かこ あたま ぎん
彼らがこれを攻め囲んだので、ついに、ろばの頭 一つが銀八十シケルで
う ぶん ぎん う
売られ、はとのふん一カブの四分の一が銀五シケルで売られるように
おう じょうへき うえ とき おんな
なった。 二六イスラエルの王が城 壁の上をとおっていた時、ひとりの女
かれ よ しゅ おう たす い
が彼に呼ばわって、
﹁わが主、王よ、助けてください﹂と言ったので、 二
かれ い しゅ たす なに
彼は言った、
七 ﹁もし主があなたを助けられないならば、何をもってわた
たす う ば もの さか
しがあなたを助けることができよう。打ち場の物をもってか、酒ぶねの
もの おう おんな たず なにごと かのじょ
物をもってか﹂。 二八そして王は女に尋ねた、
﹁何事なのですか﹂。彼女は
こた おんな こ
答えた、﹁この女はわたしにむかって﹃あなたの子をください。わたした
た こ た い
ちは、きょうそれを食べ、あす、わたしの子を食べましょう﹄と言いま
こ に た つぎ
した。 二九それでわたしたちは、まずわたしの子を煮て食べましたが、次
ひ かのじょ こ
の日わたしが彼女にむかって﹃あなたの子をください。わたしたちはそ
た い かのじょ こ かく おう
れを食べましょう﹄と言いますと、彼女はその子を隠しました﹂。 三〇王
列王紀下

おんな ことば き ころも さ おう じょうへき うえ


はその女の言葉を聞いて、衣を裂き、︱︱王は城 壁の上をとおっていた

30
たみ み み あらぬの つ おう い
が、民が見ると、その身に荒布を着けていた︱︱ 三一 そして王は言った
こ くび かた うえ
﹁きょう、シャパテの子エリシャの首がその肩の上にすわっているなら
かみ ばっ
ば、神がどんなにでもわたしを罰してくださるように﹂。
いえ ざ ちょうろう かれ とも ざ
三二 さてエリシャはその家に座していたが、長 老たちもきて彼と共に座
おう じぶん ところ ひと し しゃ
した。王は自分の所から人をつかわしたが、エリシャはその使者がまだ
つ ちょうろう い ひと ころ もの
着かないうちに長 老たちに言った、
﹁あなたがたは、この人を殺す者が
くび と ひと み し しゃ
わたしの首を取るために、人をつかわすのを見ますか。その使者がきた
と と うち い かれ しゅくん
ならば、戸を閉じて、内に入れてはなりません。彼のうしろに、その主君
あしおと かれ かれ かた
の 足音 が す る で は あ り ま せ ん か﹂。 三三彼 が な お 彼 ら と 語 っ て い る う ち
おう かれ くだ い わざわい しゅ で
に、王は彼のもとに下ってきて言った、﹁この災は主から出たのです。わ
うえ しゅ ま
たしはどうしてこの上、主を待たなければならないでしょうか﹂。
列王紀下

31
第七章
い しゅ ことば き しゅ おお
一エリシャは言った、﹁主の言葉を聞きなさい。主はこう仰せられる、
いま もん むぎこ う おおむぎ
﹃あすの今ごろサマリヤの門で、麦粉一セアを一シケルで売り、大麦二セ
う とき ふくかん
ア を 一 シ ケ ル で 売 る よ う に な る で あ ろ う﹄﹂。 二時 に ひ と り の 副官 す な
おう ひと て もの かみ ひと こた い
わ ち 王 が そ の 人 の 手 に よ り か か っ て い た 者 が 神 の 人 に 答 え て 言 っ た、
しゅ てん まど ひら こと
﹁たとい主が天に窓を開かれても、そんな事がありえましょうか﹂。エリ
い じぶん め み
シャは言った、﹁あなたは自分の目をもってそれを見るであろう。しか

しそれを食べることはなかろう﹂。
まち もん いりぐち にん びょうにん かれ たがい い
三さ て 町 の 門 の 入口 に 四 人 の ら い 病 人 が い た が、彼 ら は 互 に 言 っ た、
ざ し ま
﹁われわれはどうしてここに座して死を待たねばならないのか。 四われ
まち まち しょくもつ つ
われがもし町にはいろうといえば、町には食 物が尽きているから、われ
し ざ し
わ れ は そ こ で 死 ぬ で あ ろ う。し か し こ こ に 座 し て い て も 死 ぬ の だ。
列王紀下

こと じんえい に い かれ
いっその事、われわれはスリヤびとの陣営へ逃げて行こう。もし彼らが

32
い たす
われわれを生かしておいてくれるならば、助かるが、たといわれわれを
ころ し かれ じんえい い
殺 し て も 死 ぬ ば か り だ﹂。 五そ こ で 彼 ら は ス リ ヤ び と の 陣営 へ 行 こ う
た じんえい い み
と、たそがれに立ちあがったが、スリヤびとの陣営のほとりに行って見
しゅ ぐんぜい
る と、そ こ に は だ れ も い な か っ た。 六こ れ は 主 が ス リ ヤ び と の 軍勢 に
せんしゃ おと うま おと たいぐん おと き かれ たがい み
戦車の音、馬の音、大軍の音を聞かせられたので、彼らは互に﹁見よ、イ
おう せ おう
スラエルの王がわれわれを攻めるために、ヘテびとの王たちおよびエジ
おう やと おそ い
プトの王たちを雇ってきて、われわれを襲うのだ﹂と言って、 七たそが
た に てんまく うま す じんえい
れに立って逃げ、その天幕と、馬と、ろばを捨て、陣営をそのままにし
いのち まっと に びょうにん
ておいて、 命を全うしようと逃げたからである。 八そこでらい病 人た
じんえい い てんまく く の
ちは陣営のほとりに行き、一つの天幕にはいって食い飲みし、そこから
きんぎん いふく も だ かく き た てんまく はい
金銀、衣服を持ち出してそれを隠し、また来て、他の天幕に入り、そこ
も だ かく
からも持ち出してそれを隠した。
かれ たがい い こと
そして彼らは互に言った、﹁われわれのしている事はよくない。きょ
列王紀下


よ ひ だま よ あ ま
うは良いおとずれのある日であるのに、黙っていて、夜明けまで待つな

33
ばつ い おう
らば、われわれは罰をこうむるであろう。さあ、われわれは行って王の
かぞく つ かれ き まち もん まも もの よ い
家族に告げよう﹂。 一〇そこで彼らは来て、町の門を守る者を呼んで言っ
じんえい い み すがた
た、﹁わたしたちがスリヤびとの陣営に行って見ると、そこにはだれの姿
み ひとごえ うま てんまく
も見えず、また人声もなく、ただ、馬とろばがつないであり、天幕はそ
もん まも もの よ おう かぞく
のままでした﹂。 一一そこで門を守る者は呼ばわって、それを王の家族の
し おう よる お けらい い
うちに知らせた。 一二王は夜のうちに起きて、家来たちに言った、
﹁スリ
たい はか こと つ かれ
ヤびとがわれわれに対して図っている事をあなたがたに告げよう。彼
う し じんえい で の かく
らは、われわれの飢えているのを知って、陣営を出て野に隠れ、
﹃イスラ
まち で まち お い かんが
エルびとが町を出たら、いけどりにして、町に押し入ろう﹄と考えてい
けらい こた い ひとびと のこ
るのだ﹂。 一三家来のひとりが答えて言った、
﹁人々に、ここに残っている
うま とう つ のこ
馬のうち五頭を連れてこさせてください。ここに残っているこれらの
ひとびと ほろ ぜんぐんしゅう おな うんめい
人々は、すでに滅びうせたイスラエルの全 群 衆と同じ運命にあうので
ひと かれ
す か ら。わ た し た ち は 人 を や っ て う か が わ せ ま し ょ う﹂。 一四そ こ で 彼
列王紀下

きへい えら おう い み い
らはふたりの騎兵を選んだ。王はそれをつかわし、﹁行って見よ﹂と言っ

34
ぐんぜい かれ
て、スリヤびとの軍勢のあとをつけさせたので、 一五彼らはそのあとを
お い みち に
追ってヨルダンまで行ったが、道にはすべて、スリヤびとがあわてて逃
とき す いふく ぶ き ち し しゃ かえ
げる時に捨てていった衣服と武器が散らばっていた。その使者は帰っ
おう つ
てきて、これを王に告げた。
たみ で じんえい むぎこ
一六 そこで民が出ていって、スリヤびとの陣営をかすめたので、麦粉一セ
う おおむぎ う しゅ ことば
アは一シケルで売られ、大麦二セアは一シケルで売られ、主の言葉のと
おう じぶん ひと て
お り に な っ た。 一 七王 は 自分 が そ の 人 の 手 に よ り か か っ て い た、あ の
ふくかん た もん かんり たみ もん かれ ふ かれ し
副官を立てて門を管理させたが、民は門で彼を踏みつけたので、彼は死
おう かみ ひと くだ とき かみ ひと い
んだ。すなわち、王が神の人のところに下ってきた時、神の人が言った
かみ ひと おう いま
とおりであった。 一八これは神の人が王にむかって、
﹁あすの今ごろ、サ
もん おおむぎ う むぎこ う
マリヤの門で大麦二セアを一シケルで売り、麦粉一セアを一シケルで売
い ふくかん かみ ひと こた
るようになるであろう﹂と言ったときに、 一九その副官が神の人に答え
しゅ てん まど ひら こと い
て、
﹁たとい主が天に窓を開かれても、そんな事がありえようか﹂と言っ
列王紀下

かみ ひと じぶん め み
たからである。そのとき神の人は﹁あなたは自分の目をもってそれを見

35
た い
るであろう。しかしそれを食べることはなかろう﹂と言ったが、二〇これ
かれ のぞ たみ もん かれ ふ かれ
はそのとおり彼に臨んだ。すなわち民が門で彼を踏みつけたので彼は

死んだ。
第八章
こ い おんな い
一エリシャはかつて、その子を生きかえらせてやった女に言ったことが
た かぞく とも い きりゅう
ある。﹁あなたは、ここを立って、あなたの家族と共に行き、寄留しよう
おも ところ きりゅう しゅ よ くだ ねん あいだ
と思う所に寄留しなさい。主がききんを呼び下されたので、七年の間そ
ち のぞ おんな た かみ ひと ことば
れ が こ の 地 に 臨 む か ら﹂。 二そ こ で 女 は 立 っ て 神 の 人 の 言葉 の よ う に
かぞく とも い ち ねんきりゅう ねん
し、そ の 家族 と 共 に 行 っ て ペ リ シ テ び と の 地 に 七 年寄留 し た。 三七 年
のち おんな ち かえ じぶん いえ はたけ
たって後、女はペリシテびとの地から帰ってきて、自分の家と畑のため
おう うった で とき おう かみ ひと
に 王 に 訴 え よ う と 出 て い っ た。 四時 に 王 は 神 の 人 の し も べ ゲ ハ ジ に む
列王紀下

おお こと はな
かって﹁エリシャがしたもろもろの大きな事をわたしに話してくださ

36
い かれ ものがた しにん い
い﹂と言って、彼と物語っていた。 五すなわちエリシャが死人を生きか
こと おう ものがた こ い
えらせた事を、ゲハジが王と物語っていたとき、その子を生きかえらせ
おんな じぶん いえ はたけ おう うった
てもらった女が、自分の家と畑のために王に訴えてきたので、ゲハジは
い しゅ おう おんな こ
言った、
﹁わが主、王よ、これがその女です。またこれがその子で、エリ
い おう おんな たず かのじょ おう
シャが生きかえらせたのです﹂。 六王がその女に尋ねると、彼女は王に
はな おう かのじょ やくにん めい い
話したので、王は彼女のためにひとりの役人に命じて言った、﹁すべて
かのじょ ぞく もの かのじょ ち さ ひ いま はたけ
彼女に属する物、ならびに彼女がこの地を去った日から今までのその畑
さんぶつ かのじょ かえ
の産物をことごとく彼女に返しなさい﹂。
き とき おう びょうき
さてエリシャはダマスコに来た。時にスリヤの王ベネハダデは病気

かみ ひと き つ もの おう
であったが、
﹁神の人がここに来た﹂と告げる者があったので、 八王はハ
い おく もの たずさ い かみ ひと むか かれ しゅ
ザエルに言った、﹁贈り物を携えて行って神の人を迎え、彼によって主に
びょうき い たず
﹃わたしのこの病気はなおりましょうか﹄と言って尋ねなさい﹂。 九そこ
かれ むか よ もの
でハザエルは彼を迎えようと、ダマスコのもろもろの良い物をらくだ四
列王紀下

とう の おく もの たずさ い まえ た い
十頭に載せ、贈り物として携え行き、エリシャの前に立って言った、
﹁あ

37
こ おう
なたの子、スリヤの王ベネハダデがわたしをあなたにつかわして、﹃わた
びょうき い
しのこの病気はなおりましょうか﹄と言わせています﹂。 一〇エリシャは
かれ い い かれ かなら つ
彼に言った、
﹁行って彼に﹃あなたは必ずなおります﹄と告げなさい。た
しゅ かれ かなら し しめ かみ
だし主はわたしに、彼が必ず死ぬことを示されました﹂。 一一そして神の
ひと さだ かれ は み な だ
人がひとみを定めて彼の恥じるまでに見つめ、やがて泣き出したので、一
い しゅ な
二ハ ザ エ ル は 言 っ た、﹁わ が 主 よ、ど う し て 泣 か れ る の で す か﹂。エ リ
こた ひとびと
シ ャ は 答 え た、﹁わ た し は あ な た が イ ス ラ エ ル の 人々 に し よ う と す る
がいあく し かれ しろ ひ
害悪を知っているからです。すなわち、あなたは彼らの城に火をかけ、
わかもの ころ おさ ご な にんしん おんな ひ さ
つるぎをもって若者を殺し、幼な子を投げうち、妊娠の女を引き裂くで
い ぴき いぬ
しょう﹂。 一三ハザエルは言った、
﹁しもべは一匹の犬にすぎないのに、ど
おお こと い
う し て そ ん な 大 き な 事 を す る こ と が で き ま し ょ う﹂。エ リ シ ャ は 言 っ
しゅ しめ おう
た、﹁主 が わ た し に 示 さ れ ま し た。あ な た は ス リ ヤ の 王 と な る で し ょ
かれ さ しゅくん い
う﹂。 一四彼がエリシャのもとを去って、主君のところへ行くと、﹁エリ
列王紀下

い たず かなら
シャはあなたになんと言ったか﹂と尋ねられたので、﹁あなたが必ずなお

38
かれ つ こた よくじつ
るでしょうと、彼はわたしに告げました﹂と答えた。 一五しかし翌日に
ぬの と みず ひた おう かお
なってハザエルは布を取って水に浸し、それをもって王の顔をおおった
おう し かれ かわ おう
ので、王は死んだ。ハザエルは彼に代って王となった。
おう こ だい ねん おう
一六イスラエルの王アハブの子ヨラムの第五年に、ユダの王ヨシャパテ
こ くらい かれ おう さい ねん
の子ヨラムが位についた。 一七彼は王となったとき三十二歳で、八年の
あいだ よ おさ かれ いえ
間 エルサレムで世を治めた。 一八彼はアハブの家がしたようにイスラエ
おう みち あゆ むすめ かれ つま
ル の 王 た ち の 道 に 歩 ん だ。ア ハ ブ の 娘 が 彼 の 妻 で あ っ た か ら で あ る。
かれ しゅ め まえ あく しゅ
彼は主の目の前に悪をおこなったが、 一九主はしもべダビデのためにユ
ほろ この しゅ かれ しそん つね
ダを滅ぼすことを好まれなかった。すなわち主は彼とその子孫に常に
あた かれ やくそく
ともしびを与えると、彼に約束されたからである。
よ しはい だっ おう た
二〇ヨラムの世にエドムがそむいてユダの支配を脱し、みずから王を立
せんしゃ したが い
てたので、二一ヨラムはすべての戦車を従えてザイルにわたって行き、そ
せんしゃ し き かん とも よ た かれ ほうい
の戦車の指揮官たちと共に、夜のうちに立ちあがって、彼を包囲してい
列王紀下

う ぐんたい てんまく に かえ
るエドムびとを撃った。しかしヨラムの軍隊は天幕に逃げ帰った。 二二

39
しはい だっ こんにち いた
エドムはこのようにそむいてユダの支配を脱し、今日に至っている。リ
どうじ た じせき かれ
ブナもまた同時にそむいた。 二三ヨラムのその他の事績および彼がした
こと れきだいし しょ
すべての事は、ユダの歴代志の書にしるされているではないか。 二四ヨ
せんぞ とも ねむ まち せんぞ とも ほうむ
ラムはその先祖たちと共に眠って、ダビデの町にその先祖たちと共に葬
こ かわ おう
られ、その子アハジヤが代って王となった。
おう こ だい ねん おう こ
イスラエルの王アハブの子ヨラムの第十二年にユダの王ヨラムの子
二五
くらい おう さい
アハジヤが位についた。 二六アハジヤは王となったとき二十二歳で、エ
ねん よ おさ はは な い
ルサレムで一年世を治めた。その母は名をアタリヤと言って、イスラエ
おう まごむすめ いえ みち あゆ
ルの王オムリの孫 娘であった。 二七アハジヤはまたアハブの家の道に歩
いえ しゅ め まえ あく かれ
み、アハブの家がしたように主の目の前に悪をおこなった。彼はアハブ
いえ むこ
の家の婿であったからである。
かれ こ とも い おう
彼はアハブの子ヨラムと共に行って、スリヤの王ハザエルとラモテ・
二八
たたか きず お
ギレアデで戦 ったが、スリヤびとらはヨラムに傷を負わせた。 二九ヨラ
列王紀下

おう おう たたか お
ム王はそのスリヤの王ハザエルと戦うときにラマでスリヤびとに負わ

40
きず かえ おう こ
された傷をいやすため、エズレルに帰ったが、ユダの王ヨラムの子アハ
こ や くだ かれ
ジヤはアハブの子ヨラムが病んでいたので、エズレルに下って彼をおと
ずれた。
第九章
とき よげんしゃ よげんしゃ よ い
一時 に 預言者 エ リ シ ャ は 預言者 の と も が ら の ひ と り を 呼 ん で 言 っ た、
こし あぶら たずさ い
﹁腰をひきからげ、この油のびんを携えて、ラモテ・ギレアデへ行きなさ
つ こ こ
い。 二そこに着いたならば、ニムシの子ヨシャパテの子であるエヒウを
たず だ うち かれ どうりょう た おく あいだ
尋ね出し、内にはいって彼をその同 僚たちのうちから立たせて、奥の間
つ い あぶら と あたま そそ しゅ おお
に連れて行き、三 油のびんを取って、その頭に注ぎ、
﹃主はこう仰せられ
あぶら そそ おう い
る、わたしはあなたに油を注いでイスラエルの王とする﹄と言い、そし
と に さ
て戸をあけて逃げ去りなさい。とどまってはならない﹂。
列王紀下

よげんしゃ わかもの い き
そこで預言者であるその若者はラモテ・ギレアデへ行ったが、 五来て

41
み ぐんぜい ちょう か い ぎ ちゅう かれ しょうぐん
見ると、軍勢の長たちが会議 中であったので、彼は﹁将 軍よ、わたしは
もう こと い こた
あなたに申しあげる事があります﹂と言うと、エヒウが答えて、
﹁われわ
い かれ しょうぐん
れすべてのうちの、だれにですか﹂と言ったので、彼は﹁将 軍よ、あな
い た いえ
た に で す﹂と 言 っ た。 六す る と エ ヒ ウ が 立 ち あ が っ て 家 に は い っ た の
わかもの あたま あぶら そそ かれ い かみ しゅ
で、若者はその頭に油を注いで彼に言った、
﹁イスラエルの神、主はこう
おお あぶら そそ しゅ たみ おう
仰せられます、﹃わたしはあなたに油を注いで、主の民イスラエルの王と
しゅくん いえ う ほろ
す る。 七あ な た は 主君 ア ハ ブ の 家 を 撃 ち 滅 ぼ さ な け れ ば な ら な い。そ
よげんしゃ ち しゅ
れによってわたしは、わたしのしもべである預言者たちの血と、主のす
ち むく ぜんか ほろ
べ て の し も べ た ち の 血 を イ ゼ ベ ル に 報 い る。 八ア ハ ブ の 全家 は 滅 び る
ぞく おとこ もの
であろう。アハブに属する男は、イスラエルにいて、つながれた者も、
じゆう もの た いえ こ
自由な者も、ことごとくわたしは断ち、 九アハブの家をネバテの子ヤラ
こ いえ いぬ
ベアムのようにし、アヒヤの子バアシャの家のようにする。 一〇犬がイ
ちいき く かのじょ ほうむ もの
ズレルの地域でイゼベルを食い、彼女を葬る者はないであろう﹄﹂。そし
列王紀下

かれ と に さ
て彼は戸をあけて逃げ去った。

42
しゅくん けらい ところ で く かれ
一一 やがてエヒウが主君の家来たちの所へ出て来ると、彼らはエヒウに
い かわ こと きちが
言った、﹁変った事はありませんか。あの気違いは、なんのためにあなた
ところ かれ い ひと
の所にきたのですか﹂。エヒウは彼らに言った、
﹁あなたがたは、あの人
し い こと し かれ い
を知っています。またその言う事も知っています﹂。 一二彼らは言った、
ちが はな
﹁それは違います。どうぞわれわれに話してください﹂。そこでエヒウ
い かれ つ い しゅ おお
は言った、
﹁彼はこうこう、わたしに告げて言いました、
﹃主はこう仰せ
あぶら そそ おう
られる、わたしはあなたに油を注いで、イスラエルの王とする﹄﹂。 一三す
かれ いそ いふく かいだん うえ した
ると彼らは急いで、おのおの衣服をとり、それを階段の上のエヒウの下
し ふ おう い
に敷き、ラッパを吹いて﹁エヒウは王である﹂と言った。
こ こ
一四 こうしてニムシの子であるヨシャパテの子エヒウはヨラムにそむい
ひき
た。︵ヨラムはイスラエルをことごとく率いて、ラモテ・ギレアデでスリ
おう ふせ おう おう たたか
ヤの王ハザエルを防いだが、 一五ヨラム王はスリヤの王ハザエルと戦 っ
とき お きず かえ
た時に、スリヤびとに負わされた傷をいやすため、エズレルに帰ってい
列王紀下

い ほんしん
た。︶エヒウは言った、
﹁もしこれがあなたがたの本心であるならば、ひ

43
まち しの で つ
とりもこの町から忍び出て、これをエズレルに告げてはならない﹂。 一六
くるま の い ふ
そしてエヒウは車に乗ってエズレルへ行った。ヨラムがそこに伏して
おう み ま くだ
いたからである。またユダの王アハジヤはヨラムを見舞うために下っ
ていた。
ものみ た
一七 さてエズレルのやぐらに、ひとりの物見が立っていたが、エヒウの
ぐんしゅう く み ぐんしゅう み い い
群 衆が来るのを見て、
﹁群 衆が見える﹂と言ったので、ヨラムは言った、
うま の あ へいあん い
﹁ひとりを馬に乗せてつかわし、それに会わせて﹃平安ですか﹄と言わせ
うま の い かれ あ い おう
なさい﹂。 一八そこでひとりが馬に乗って行き、彼に会って言った、
﹁王は
おお へいあん い へいあん
こう仰せられます、
﹃平安ですか﹄﹂。エヒウ言った、
﹁あなたは平安とな
かんけい ものみ
んの関係がありますか。わたしのあとについてきなさい﹂。物見はまた
つ い し しゃ かれ ところ い かえ
告げて言った、
﹁使者は彼らの所へ行きましたが、帰ってきません﹂。 一九
ふたた ひと うま かれ ところ い い おう
そこで再び人を馬でつかわしたので、彼らの所へ行って言った、﹁王はこ
おお へいあん こた い
う仰せられます、﹃平安ですか﹄﹂。エヒウは答えて言った、﹁あなたは
列王紀下

へいあん かんけい
平安となんの関係がありますか。わたしのあとについてきなさい﹂。 二〇

44
ものみ つ い かれ かれ ところ い かえ
物見はまた告げて言った、﹁彼も、彼らの所へ行きましたが帰ってきませ
くるま そうじゅう こ そうじゅう に もうれつ いきお
ん。あの車の操 縦はニムシの子エヒウの操 縦するのに似て、猛烈な勢
そうじゅう き
いで操 縦して来ます﹂。
くるま ようい い くるま ようい
二一 そこでヨラムが﹁車を用意せよ﹂と言ったので、車を用意すると、イ
おう おう くるま で
スラエルの王ヨラムと、ユダの王アハジヤは、おのおのその車で出て
い あ で
行った。すなわちエヒウに会うために出ていって、エズレルびとナボテ
じ しょ かれ あ み い
の 地所 で 彼 に 会 っ た。 二 二ヨ ラ ム は エ ヒ ウ を 見 て 言 っ た、﹁エ ヒ ウ よ、
へいあん こた はは かんいん まじゅつ
平安ですか﹂。エヒウは答えた、﹁あなたの母イゼベルの姦淫と魔術と
おお へいあん とき
が、こんなに多いのに、どうして平安でありえましょうか﹂。 二三その時
くるま に はんぎゃく
ヨラムは車をめぐらして逃げ、アハジヤにむかって、﹁アハジヤよ、反 逆
い て ゆみ りょうかた あいだ
です﹂と言うと、二四エヒウは手に弓をひきしぼって、ヨラムの両 肩の間
い や かれ しんぞう つらぬ かれ くるま なか たお
を射たので、矢は彼の心臓を貫き、彼は車の中に倒れた。 二五エヒウはそ
ふくかん い かれ と はたけ
の副官ビデカルに言った、﹁彼を取りあげて、エズレルびとナボテの畑に
列王紀下

な す とも の かれ
投げ捨てなさい。かつて、わたしとあなたと、ふたり共に乗って、彼の

45
ちち したが しゅ かれ よげん きおく
父アハブに従 ったとき、主が彼について、この預言をされたことを記憶
しゅ い
しなさい。 二六すなわち主は言われた、
﹃まことに、わたしはきのうナボ
ち こ ち み しゅ い
テの血と、その子らの血を見た﹄。また主は言われた、﹃わたしはこの
じ しょ ほうふく かれ と じ しょ な
地所であなたに報復する﹄と。それゆえ彼を取りあげて、その地所に投
しゅ ことば
げすて、主の言葉のようにしなさい﹂。
おう み ほう に
二七 ユダの王アハジヤはこれを見てベテハガンの方へ逃げたが、エヒウ
お かれ う い
はそのあとを追い、
﹁彼をも撃て﹂と言ったので、イブレアムのほとりの
さか くるま なか かれ う かれ に
グルの坂で車の中の彼を撃った。彼はメギドまで逃げていって、そこで
し けらい かれ くるま の はこ
死んだ。 二八その家来たちは彼を車に載せてエルサレムに運び、ダビデ
まち かれ はか せんぞ とも ほうむ
の町で彼の墓にその先祖たちと共に葬 った。
こ だい ねん おう
二九 アハブの子ヨラムの第十一年にアハジヤはユダの王となったのであ
る。
とき き め ぬ
エヒウがエズレルにきた時、イゼベルはそれを聞いて、その目を塗
列王紀下

三〇
かみ かざ まど のぞ み もん
り、髪を飾って窓から望み見たが、 三一エヒウが門にはいってきたので、

46
しゅくん ころ ぶ じ い かお
﹁主君を殺したジムリよ、無事ですか﹂と言った。 三二するとエヒウは顔
まど みかた もの
をあげて窓にむかい、﹁だれか、わたしに味方する者があるか。だれかあ
い にん かんがん のぞ み
るか﹂と言うと、二、三人の宦官がエヒウを望み見たので、 三三エヒウは
かのじょ な おと い かれ かのじょ な おと ち かべ
﹁彼女を投げ落せ﹂と言った。彼らは彼女を投げ落したので、その血が壁
うま うま かのじょ ふ うち
と馬とにはねかかった。そして馬は彼女を踏みつけた。 三四エヒウは内
く の い おんな み かのじょ
にはいって食い飲みし、そして言った、
﹁あののろわれた女を見、彼女を
ほうむ かのじょ おう むすめ かれ かのじょ ほうむ
葬 り な さ い。彼女 は 王 の 娘 な の だ﹂。 三五し か し 彼 ら が 彼女 を 葬 ろ う と
い み ずがいこつ あし なに
して行って見ると、頭蓋骨と、足と、たなごころのほか何もなかったの
かえ かれ つ かれ い しゅ
で、 三六帰って、彼に告げると、彼は言った、
﹁これは主が、そのしもべ、
つ ことば
テシベびとエリヤによってお告げになった言葉である。すなわち﹃エズ
ち いぬ にく く したい
レルの地で犬がイゼベルの肉を食うであろう。 三七イゼベルの死体はエ
ち ふんど の す
ズレルの地で、糞土のように野のおもてに捨てられて、だれも、これは

イゼベルだ、と言うことができないであろう﹄﹂。
列王紀下

47
第一〇章
にん こども てがみ
一アハブはサマリヤに七十人の子供があった。エヒウは手紙をしたた
おく まち ちょうろう こども
めてサマリヤに送り、町のつかさたちと、長 老たちと、アハブの子供の
もりやく つた い しゅくん こども
守役たちとに伝えて言った、 二﹁あなたがたの主君の子供たちがあなた
とも せんしゃ うま けんご まち ぶ き
がたと共におり、また戦車も馬も、堅固な町も武器もあるのだから、こ
てがみ とど しゅくん
の手紙があなたがたのもとに届いたならば、すぐ、 三あなたがたは主君
こども もっと もっと てきとう もの えら ちち くらい
の子供たちのうち最もすぐれた、最も適当な者を選んで、その父の位に
しゅくん いえ たたか かれ おお おそ い
す え、主君 の 家 の た め に 戦 い な さ い﹂。 四彼 ら は 大 い に 恐 れ て 言 っ た、
おう かれ あた
﹁ふたりの王たちがすでに彼に当ることができなかったのに、われわれ
あた きゅうてい まち
がどうして当ることができよう﹂。 五そこで宮 廷のつかさ、町のつかさ、
ちょうろう もりやく ひと い
長 老たちと守役たちはエヒウに人をつかわして言った、﹁わたしたち
めい こと
は、あなたのしもべです。すべてあなたが命じられる事をいたします。
列王紀下

おう た この おも
わたしたちは王を立てることを好みません。あなたがよいと思われる

48
ふたた かれ てがみ か おく
ことをしてください﹂。 六そこでエヒウは再び彼らに手紙を書き送って
い みかた したが
言った、
﹁もしあなたがたが、わたしに味方し、わたしに従おうとするな
しゅくん こども くび と いま
らば、あなたがたの主君の子供たちの首を取って、あすの今ごろエズレ
も おう こども
ルにいるわたしのもとに持ってきなさい﹂。そのころ、王の子供たち七
にん かれ そだ まち ひとびと とも かれ
十 人 は 彼 ら を 育 て て い た 町 の お も だ っ た 人々 と 共 に い た。 七彼 ら は そ
てがみ う と おう こども とら にん
の手紙を受け取ると、王の子供たちを捕えて、その七十人をことごとく
ころ くび おく
殺し、その首をかごにつめて、エズレルにいるエヒウのもとに送った。 八
し しゃ き つ ひとびと おう こども くび も
使者が来て、エヒウに告げ、﹁人々が王の子供たちの首を持ってきまし
い あさ もん いりぐち やま つ
た﹂と言うと、
﹁あくる朝までそれを門の入口に、ふた山に積んでおけ﹂
い あさ かれ で い た たみ い
と言った。 九朝になると、彼は出て行って立ち、すべての民に言った、
ただ しゅくん かれ ころ
﹁あなたがたは正しい。主君にそむいて彼を殺したのはわたしです。し
もの ころ
かしこのすべての者どもを殺したのはだれですか。 一〇これであなたが
しゅ いえ つ しゅ ことば ひと ち お
たは、主がアハブの家について告げられた主の言葉は一つも地に落ちな
列王紀下

し しゅ つ
いことを知りなさい。主は、そのしもべエリヤによってお告げになった

49
こと と いえ ぞく
事をなし遂げられたのです﹂。 一一こうしてエヒウは、アハブの家に属す
もの のこ もの ころ
る者でエズレルに残っている者をことごとく殺し、またそのすべてのお
もの した もの さいし ころ かれ ぞく もの
もだった者、その親しい者およびその祭司たちを殺して、彼に属する者
のこ
はひとりも残さなかった。
た い とちゅう ぼくしゃ あつ ば
さてエヒウは立ってサマリヤへ行ったが、途中、牧者の集まり場で、
一二
おう みうち ひとびと あ
一三 ユダの王アハジヤの身内の人々に会い、﹁あなたがたはどなたです
い みうち もの おう こども
か﹂と言うと、
﹁わたしたちはアハジヤの身内の者ですが、王の子供たち
おうはは こども あんぴ と くだ こた
と、王母の子供たちの安否を問うために下ってきたのです﹂と答えたの
かれ めい かれ
で、一四エヒウは﹁彼らをいけどれ﹂と命じた。そこで彼らをいけどって、
あつ ば あな かれ にん ころ
集まり場の穴のかたわらで彼ら四十二人をことごとく殺し、ひとりをも
のこ
残さなかった。
た い じぶん むか こ
エヒウはそこを立って行ったが、自分を迎えにきたレカブの子ヨナ
一五
あ かれ こころ
ダブに会ったので、彼にあいさつして、
﹁あなたの心は、わたしがあなた
列王紀下

たい しんじつ い しんじつ こた
に対するように真実ですか﹂と言うと、ヨナダブは﹁真実です﹂と答え

50
て の
た。するとエヒウは﹁それならば、あなたの手をわたしに伸べなさい﹂と
い て の かれ ひ じぶん くるま のぼ
言ったので、その手を伸べると、彼を引いて自分の車に上らせ、 一六﹁わ
いっしょ しゅ ねっしん み い
たしと一緒にきて、わたしが主に熱心なのを見なさい﹂と言った。そし
かれ じぶん くるま の い ぞく もの
て彼を自分の車に乗せ、 一七サマリヤへ行って、アハブに属する者で、サ
のこ もの ころ いちぞく ほろ しゅ
マリヤに残っている者をことごとく殺して、その一族を滅ぼした。主が
つ ことば
エリヤにお告げになった言葉のとおりである。
つ たみ あつ かれ い すこ
一八 次いでエヒウは民をことごとく集めて彼らに言った、
﹁アハブは少し
つか おお つか
ばかりバアルに仕えたが、エヒウは大いにこれに仕えるであろう。 一九
いま よげんしゃ れいはいしゃ さいし
それゆえ、今バアルのすべての預言者、すべての礼拝者、すべての祭司
め もの
をわたしのもとに召しなさい。ひとりもこない者のないようにしなさ
おお ぎせい
い。わたしは大いなる犠牲をバアルにささげようとしている。すべて
もの い れいはいしゃ
こない者は生かしておかない﹂。しかしエヒウはバアルの礼拝者たちを
ほろ いつわ
滅ぼすために偽 ってこうしたのである。 二〇そしてエヒウは﹁バアルの
列王紀下

せいかい もよお めい かれ ふこく


ために聖会を催しなさい﹂と命じたので、彼らはこれを布告した。 二一エ

51
ひと れいはいしゃ
ヒウはあまねくイスラエルに人をつかわしたので、バアルの礼拝者たち
き のこ もの かれ
はことごとく来た。こないで残った者はひとりもなかった。彼らはバ
みや みや たん たん
アルの宮にはいったので、バアルの宮は端から端までいっぱいになっ
とき いしょう もの さいふく と だ
た。 二二その時エヒウは衣装をつかさどる者に﹁祭服を取り出してバア
れいはいしゃ あた い かれ さいふく と
ルのすべての礼拝者に与えよ﹂と言ったので、彼らのために祭服を取り
だ こ とも みや はい
出した。 二三そしてエヒウはレカブの子ヨナダブと共にバアルの宮に入
れいはいしゃ い しら
り、バアルの礼拝者たちに言った、
﹁調べてみて、ここにはただバアルの
れいはいしゃ しゅ
礼拝者のみで、主のしもべはひとりも、あなたがたのうちにいないよう
かれ ぎせい はんさい
に し な さ い﹂。 二四こ う し て 彼 は 犠牲 と 燔祭 と を さ さ げ る た め に は い っ
た。
にん もの そと お い
さてエヒウは八十人の者を外に置いて言った、﹁わたしがあなたがたの
て わた もの のが もの じぶん いのち ひと いのち か
手に渡す者をひとりでも逃す者は、自分の命をもってその人の命に換え
はんさい おわ
なければならない﹂。 二五こうして燔祭をささげることが終ったとき、エ
列王紀下

じえい しょうこう い かれ ころ
ヒウはその侍衛と将 校たちに言った、
﹁はいって彼らを殺せ。ひとりも

52
に じえい しょうこう かれ う
逃 が し て は な ら な い﹂。侍衛 と 将 校 た ち は つ る ぎ を も っ て 彼 ら を 撃 ち
ころ な だ みや ほんでん はい みや
殺し、それを投げ出して、バアルの宮の本殿に入り、 二六バアルの宮にあ
はしら ぞう と だ や かれ せきちゅう
る柱の像を取り出して、それを焼いた。 二七また彼らはバアルの石 柱を
みや こんにち のこ
こわし、バアルの宮をこわして、かわやとしたが今日まで残っている。
いっそう
二八 こ の よ う に エ ヒ ウ は イ ス ラ エ ル の う ち か ら バ ア ル を 一掃 し た。 二九
つみ おか こ つみ
し か し エ ヒ ウ は イ ス ラ エ ル に 罪 を 犯 さ せ た ネ バ テ の 子 ヤ ラ ベ ア ム の 罪、
きん こ うし つか
すなわちベテルとダンにある金の子牛に仕えることをやめなかった。 三
しゅ い め こと おこな
〇主はエヒウに言われた、﹁あなたはわたしの目にかなう事を行うにあ
おこな こころ こと
たって、よくそれを行い、またわたしの心にあるすべての事をアハブの
いえ しそん だい くらい ざ
家にしたので、あなたの子孫は四代までイスラエルの位に座するであろ
かみ しゅ りっぽう こころ まも
う﹂。 三一しかしエヒウはイスラエルの神、主の律法を心をつくして守り
おこな つみ おか つみ はな
行おうとはせず、イスラエルに罪を犯させたヤラベアムの罪を離れな
かった。
列王紀下

とき しゅ りょうち き と はじ
三二 この時にあたって、主はイスラエルの領地を切り取ることを始めら

53
りょういき おか
れた。すなわちハザエルはイスラエルのすべての領 域を侵し、 三三ヨル
ひがし ぜん ち ち
ダンの東で、ギレアデの全地、カドびと、ルベンびと、マナセびとの地
おか かわ
を侵し、アルノン川のほとりにあるアロエルからギレアデとバシャンに
およ た じせき かれ こと
及んだ。 三四エヒウのその他の事績と、彼がしたすべての事およびその
ぶゆう おう れきだいし しょ
武勇は、ことごとくイスラエルの王の歴代志の書にしるされているでは
せんぞ とも ねむ かれ
ないか。 三五エヒウはその先祖たちと共に眠ったので、彼をサマリヤに
ほうむ こ かわ おう
葬 った。その子エホアハズが代って王となった。 三六エヒウがサマリヤ
おさ ねん
でイスラエルを治めたのは二十八年であった。
第一一章
はは こ し み た おう
一さてアハジヤの母アタリヤはその子の死んだのを見て、立って王の
いちぞく ほろ おう むすめ しまい
一族をことごとく滅ぼしたが、 二ヨラム王の娘で、アハジヤの姉妹であ
列王紀下

こ ころ おう こ
るエホシバはアハジヤの子ヨアシを、殺されようとしている王の子たち

54
ぬす と かれ しんしつ い かく
のうちから盗み取り、彼とそのうばとを寝室に入れて、アタリヤに隠し
かれ ころ とも ねん あいだ
たので、彼はついに殺されなかった。 三ヨアシはうばと共に六年の間、
しゅ みや かく かん くに おさ
主の宮に隠れていたが、その間アタリヤが国を治めた。
だい ねん ひと こ の え へい
四第七年になってエホヤダは人をつかわして、カリびとと近衛兵との
たいしょう まね しゅ みや じぶん かれ けいやく
大 将たちを招きよせ、主の宮にいる自分のもとにこさせ、彼らと契約を
むす しゅ みや かれ ちか おう こ み めい い
結び、主の宮で彼らに誓いをさせて王の子を見せ、 五命じて言った、
﹁あ
こと あんそくにち ひばん おう いえ
なたがたのする事はこれです、すなわち、安息日に非番となって王の家
まも ぶん きゅうでん まも た
を守るあなたがたの三分の一は、 六宮 殿を守らなければならない。︵他
ぶん もん ぶん こ の え へい もん
の三分の一はスルの門におり、三分の一は近衛兵のうしろの門におる︶。
あんそくにち とうばん しゅ みや まも ぶたい
すべて安息日に当番で主の宮を守るあなたがたの二つの部隊は、 八お

ぶ き て と おう た
のおのの武器を手に取って王のまわりに立たなければならない。すべ
れつ ちか もの ころ おう で とき
て列に近よる者は殺されなければならない。あなたがたは王が出る時
とき おう とも
にも、はいる時にも王と共にいなければならない﹂。
列王紀下

たいしょう さいし めい
九そ こ で そ の 大 将 た ち は 祭司 エ ホ ヤ ダ が す べ て 命 じ た と お り に お こ

55
かれ あんそくにち ひばん もの あんそくにち
なった。すなわち彼らはおのおの安息日に非番となる者と、安息日に
とうばん もの ひき さいし さいし しゅ
当番となる者とを率いて祭司エホヤダのもとにきたので、 一〇祭司は主
みや おう たて たいしょう わた こ の え へい
の宮にあるダビデ王のやりと盾を大 将たちに渡した。 一一近衛兵はおの
て ぶ き しゅ みや みなみがわ きたがわ さいだん みや と ま
おの手に武器をとって主の宮の南 側から北側まで、祭壇と宮を取り巻
た おう こ だ かんむり
い て 立 っ た。 一二そ こ で エ ホ ヤ ダ は 王 の 子 を つ れ 出 し て 冠 を い た だ か
りっぽう しょ わた かれ おう せんげん あぶら そそ ひとびと て う
せ、律法の書を渡し、彼を王と宣言して油を注いだので、人々は手を打っ
おうばんざい い
て﹁王万歳﹂と言った。
こ の え へい たみ こえ き しゅ みや はい たみ
一三 アタリヤは近衛兵と民の声を聞いて、主の宮に入り、民のところへ
い み おう かんれい はしら た おう
行って、 一四見ると、王は慣例にしたがって柱のかたわらに立ち、王のか
たいしょう て た くに たみ みなよろこ
た わ ら に は 大 将 た ち と ラ ッ パ 手 た ち が 立 ち、ま た 国 の 民 は 皆 喜 ん で
ふ ころも さ はんぎゃく
ラ ッ パ を 吹 い て い た の で、ア タ リ ヤ は そ の 衣 を 裂 い て、﹁反 逆 で す、
はんぎゃく さけ とき さ い し ぐんぜい し き
反 逆 で す﹂と 叫 ん だ。 一五そ の 時祭司 エ ホ ヤ ダ は 軍勢 を 指揮 し て い た
たいしょう めい かのじょ れつ あいだ で い かのじょ したが
大 将たちに命じて、
﹁彼女を列の間をとおって出て行かせ、彼女に従う
列王紀下

もの ころ い さいし かのじょ
者をつるぎをもって殺しなさい﹂と言った。これは祭司がさきに﹁彼女

56
しゅ みや ころ い かれ
を主の宮で殺してはならない﹂と言ったからである。 一六そこで彼らは
かのじょ とら おう いえ うまみち つ い かのじょ ころ
彼女を捕え、王の家の馬道へ連れて行ったが、彼女はついにそこで殺さ
れた。
しゅ おう たみ あいだ みなしゅ たみ
かくてエホヤダは主と王および民との間に、皆主の民となるという
一七
けいやく た おう たみ あいだ た
契約を立てさせ、また王と民との間にもそれを立てさせた。 一八そこで
くに たみ みな みや い さいだん ぞう う
国の民は皆バアルの宮に行って、これをこわし、その祭壇とその像を打
くだ さいし さいだん まえ ころ さいし
ち砕き、バアルの祭司マッタンをその祭壇の前で殺した。そして祭司は
しゅ みや か ん り ひと お つ たいしょう
主の宮に管理人を置いた。 一九次いでエホヤダは大 将たちと、カリびと
こ の え へい くに たみ ひき しゅ みや おう みちび くだ このえ
と、近衛兵と国のすべての民を率いて、主の宮から王を導き下り、近衛
へい もん みち おう いえ はい おう くらい ざ くに
兵の門の道から王の家に入り、王の位に座せしめた。 二〇こうして国の
たみ みなよろこ まち おう いえ ころ
民は皆 喜び、町はアタリヤが王の家でつるぎをもって殺されてのち、お
くらい とき さい
だやかになった。 二一ヨアシは位についた時七歳であった。
列王紀下

57
第一二章
だい ねん くらい ねん あいだ よ
ヨアシはエヒウの第七年に位につき、エルサレムで四十年の間、世を

おさ はは しゅっしん な
治めた。その母はベエルシバの出 身で、名をヂビアといった。 二ヨアシ
いっしょう あいだ しゅ め こと さいし かれ おし
は一 生の間、主の目にかなう事をおこなった。祭司エホヤダが彼を教
たか ところ のぞ たみ たか
えたからである。 三しかし高き所は除かなかったので、民はなおその高
ところ ぎせい こう
き所で犠牲をささげ、香をたいた。
さいし い しゅ みや せいべつ ぎん
ヨアシは祭司たちに言った、
四 ﹁すべて主の宮に聖別してささげる銀、す
か わりあて ひとびと だ ぎん
なわちおのおのが課せられて、割当にしたがって人々の出す銀、および
ひとびと こころ ねが しゅ みや も ぎん さいし
人々が心から願って主の宮に持ってくる銀は、 五これを祭司たちがおの
し ひと う と しゅ みや やぶ み とき
おのその知る人から受け取り、どこでも主の宮に破れの見える時は、そ
やぶ つくろ おう
れをもってその破れを繕わなければならない﹂。 六ところがヨアシ王の
ねん いた さいし しゅ みや やぶ つくろ
二十三年に至るまで、祭司たちは主の宮の破れを繕わなかった。 七それ
列王紀下

おう さいし た さいし め い
で、ヨアシ王は祭司エホヤダおよび他の祭司たちを召して言った、﹁な

58
しゅ みや やぶ つくろ
ぜ、あなたがたは主の宮の破れを繕わないのか。あなたがたはもはや
ちじん ぎん う しゅ みや やぶ つくろ わた
知人から銀を受けてはならない。主の宮の破れを繕うためにそれを渡
さいし かさ たみ ぎん う こと しゅ みや やぶ
しなさい﹂。 八祭司たちは重ねて民から銀を受けない事と、主の宮の破
つくろ こと どうい
れを繕わない事とに同意した。
さいし はこ と あな
九そこで祭司エホヤダは一つの箱を取り、そのふたに穴をあけて、それ
しゅ みや いりぐち みぎがわ さいだん お もん まも さいし
を主の宮の入口の右側、祭壇のかたわらに置いた。そして門を守る祭司
しゅ みや ぎん なか い
たちは主の宮にはいってくる銀をことごとくその中に入れた。 一〇こう
はこ なか ぎん おお み おう しょきかん だい さ い し
してその箱の中に銀が多くなったのを見ると、王の書記官と大祭司が
のぼ しゅ みや ぎん かぞ ふくろ つ かぞ
上ってきて、主の宮にある銀を数えて袋に詰めた。 一一そしてその数え
ぎん こうじ しゅ みや かんとくもの て かれ
た銀を、工事をつかさどる主の宮の監督者の手にわたしたので、彼らは
しゅ みや はたら もっこう けんちく し はら いしく いし き はら
それを主の宮に働く木工と建築師に払い、 一二石工および石切りに払い、
しゅ みや やぶ つくろ ざいもく き いし か しゅ みや つくろ
またそれをもって主の宮の破れを繕う材木と切り石を買い、主の宮を繕
もち もの ついや しゅ みや
う た め に 用 い る す べ て の 物 の た め に 費 し た。 一 三た だ し、主 の 宮 に は
列王紀下

ぎん しゅ みや ぎん しんき
いってくるその銀をもって主の宮のために銀のたらい、心切りばさみ、

59
はち きん うつわ ぎん うつわ つく
鉢、ラッパ、金の器、銀の器などを造ることはしなかった。 一四ただこれ
こうじ もの わた しゅ みや つくろ ぎん
を工事をする者に渡して、それで主の宮を繕わせた。 一五またその銀を
わた こうじ もの はら ひとびと けいさん かれ
渡して工事をする者に払わせた人々と計算することはしなかった。彼
しょうじき こと けんさい ぎん ざいさい ぎん しゅ
らは正 直に事をおこなったからである。 一六愆祭の銀と罪祭の銀は主の
みや さいし き
宮に、はいらないで、祭司に帰した。
おう のぼ せ
一七 そのころ、スリヤの王ハザエルが上ってきて、ガテを攻めてこれを
と せ のぼ かお む
取った。そしてハザエルがエルサレムに攻め上ろうとして、その顔を向
おう せんぞ おう
けたとき、一八ユダの王ヨアシはその先祖、ユダの王ヨシャパテ、ヨラム、
せいべつ もの じしん せいべつ
アハジヤが聖別してささげたすべての物、およびヨアシ自身が聖別して
もの しゅ みや くら しゅ みや きん と
ささげた物、ならびに主の宮の倉と、主の宮にある金をことごとく取っ
おう おく はな
て、スリヤ王のハザエルに贈ったので、ハザエルはエルサレムを離れ

去った。
た じせき かれ こと おう
ヨ ア シ の そ の 他 の 事績 お よ び 彼 が し た す べ て の 事 は、ユ ダ の 王 の
列王紀下

一九
れきだいし しょ けらい た
歴代志の書にしるされているではないか。 二〇ヨアシの家来たちは立っ

60
ととう むす くだ みち いえ ころ
て徒党を結び、シラに下る道にあるミロの家でヨアシを殺した。 二一す
けらい こ こ かれ
なわちその家来シメアテの子ヨザカルと、ショメルの子ヨザバデが彼を
う ころ かれ せんぞ おな まち ほうむ こ
撃って殺し、彼をその先祖と同じく、ダビデの町に葬 った。その子アマ
かわ おう
ジヤが代って王となった。
第一三章
おう こ だい ねん こ
ユダの王アハジヤの子ヨアシの第二十三年にエヒウの子エホアハズ

おう ねん よ おさ かれ しゅ め
はサマリヤでイスラエルの王となり、十七年世を治めた。 二彼は主の目
まえ あく おこな つみ おか こ つみ
の前に悪を行い、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムの罪
おこな はな しゅ たい
を行いつづけて、それを離れなかった。 三そこで主はイスラエルに対し
いか はっ ちせい あいだ た おう
て怒りを発し、エホアハズの治世の間、絶えずイスラエルをスリヤの王
て こ て
ハザエルの手にわたし、またハザエルの子ベネハダデの手にわたされ
列王紀下

しゅ ねが もと しゅ き
た。 四しかしエホアハズが主に願い求めたので、主はついにこれを聞き

61
おう なや なや み
いれられた。スリヤの王によって悩まされたイスラエルの悩みを見ら
しゅ きゅうじょしゃ たま
れたからである。 五それで主がひとりの救 助 者をイスラエルに賜わっ
ひとびと て まえ じぶん
たので、イスラエルの人々はスリヤびとの手をのがれ、前のように自分
てんまく す かれ
たちの天幕に住むようになった。 六それにもかかわらず、彼らはイスラ
つみ おか いえ つみ はな おこな
エルに罪を犯させたヤラベアムの家の罪を離れず、それを行いつづけ
ぞう た
た。ま た ア シ ラ の 像 も サ マ リ ヤ に 立 っ た ま ま で あ っ た。 七さ き に ス リ
おう かれ ほろ ふ くだ
ヤの王が彼らを滅ぼし、踏み砕くちりのようにしたのでエホアハズの
ぐんぜい のこ きへい にん せんしゃ りょう ほへい にん
軍勢で残ったものは、ただ騎兵五十人、戦車十 両、歩兵一万人のみで
た じせき かれ こと
あった。 八エホアハズその他の事績と、彼がしたすべての事およびその
ぶゆう おう れきだいし しょ
武勇は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。 九
せんぞ とも ねむ かれ ほうむ
エホアハズは先祖たちと共に眠ったので、彼をサマリヤに葬 った。そ
こ かわ おう
の子ヨアシが代って王となった。
おう だい ねん こ
ユダの王ヨアシの第三十七年に、エホアハズの子ヨアシはサマリヤ
列王紀下

一〇
おう ねん よ おさ かれ しゅ め まえ あく
でイスラエルの王となり、十六年世を治めた。 一一彼は主の目の前に悪

62
おこな つみ おか こ
を行い、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムのもろもろの
つみ はな あゆ た じせき かれ
罪を離れず、それに歩んだ。 一二ヨアシのその他の事績と、彼がしたすべ
こと おう たたか ぶゆう おう
ての事およびユダの王アマジヤと戦 ったその武勇は、イスラエルの王
れきだいし しょ せんぞ とも
の歴代志の書にしるされているではないか。 一三ヨアシは先祖たちと共
ねむ くらい ざ
に眠って、ヤラベアムがその位に座した。そしてヨアシはイスラエルの
おう おな ほうむ
王たちと同じくサマリヤに葬られた。
し びょうき おう
一四 さてエリシャは死ぬ病気にかかっていたが、イスラエルの王ヨアシ
くだ かれ かお うえ なみだ なが ちち ちち
は下ってきて彼の顔の上に涙を流し、
﹁わが父よ、わが父よ、イスラエル
せんしゃ きへい い かれ ゆみ や と
の戦車よ、その騎兵よ﹂と言った。 一五エリシャは彼に﹁弓と矢を取りな
い ゆみ や と
さい﹂と言ったので、弓と矢を取った。 一六エリシャはまたイスラエルの
おう ゆみ て い て
王に﹁弓に手をかけなさい﹂と言ったので、手をかけた。するとエリシャ
じぶん て おう て うえ ひがし む まど い
は自分の手を王の手の上におき、一七﹁東 向きの窓をあけなさい﹂と言っ
い い かれ
たので、それをあけると、エリシャはまた﹁射なさい﹂と言った。彼が
列王紀下

い い しゅ すくい や たい すくい や
射ると、エリシャは言った、
﹁主の救の矢、スリヤに対する救の矢。あな

63
う やぶ かれ ほろ
たはアペクでスリヤびとを撃ち破り、彼らを滅ぼしつくすであろう﹂。 一
や と い と
八エリシャはまた﹁矢を取りなさい﹂と言ったので、それを取った。エ
おう ち い い
リシャはまたイスラエルの王に﹁それをもって地を射なさい﹂と言った
ど い かみ ひと いか い
ので、三度射てやめた。 一九すると神の人は怒って言った、
﹁あなたは五
ど ど い う
度も六度も射るべきであった。そうしたならば、あなたはスリヤを撃ち
やぶ ほろ いま
破り、それを滅ぼしつくすことができたであろう。しかし今あなたはそ
う やぶ ど
うしなかったので、スリヤを撃ち破ることはただ三度だけであろう﹂。
し ほうむ りゃくだつたい とし
二〇 こうしてエリシャは死んで葬られた。さてモアブの略 奪 隊は年が
あらた くに く つね とき ひと
改まるごとに、国にはいって来るのを常とした。 二一時に、ひとりの人を
ほうむ もの りゃくだつたい み ひと はか
葬ろうとする者があったが、略 奪 隊を見たので、その人をエリシャの墓
な い さ ひと ほね ふ い
に 投 げ 入 れ て 去 っ た。そ の 人 は エ リ シ ャ の 骨 に 触 れ る と す ぐ 生 き か

えって立ちあがった。
おう いっしょう あいだ なや
スリヤの王ハザエルはエホアハズの一 生の間、イスラエルを悩まし
列王紀下

二二
しゅ むす けいやく
たが、 二三主はアブラハム、イサク、ヤコブと結ばれた契約のゆえにイス

64
めぐ かえり ほろ この
ラエルを恵み、これをあわれみ、これを顧みて滅ぼすことを好まず、な
まえ す
おこれをみ前から捨てられなかった。
おう し こ かわ おう
二四 スリヤの王ハザエルはついに死んで、その子ベネハダデが代って王
こ ちち
となった。 二五そこでエホアハズの子ヨアシは、父エホアハズがハザエ
せ と まちまち こ て と かえ
ルに攻め取られた町々を、ハザエルの子ベネハダデの手から取り返し
ど かれ う やぶ まちまち と かえ
た。すなわちヨアシは三度彼を撃ち破って、イスラエルの町々を取り返
した。
第一四章
おう こ だい ねん おう
一イスラエルの王エホアハズの子ヨアシの第二年に、ユダの王ヨアシの
こ おう かれ おう とき さい ねん
子アマジヤが王となった。 二彼は王となった時二十五歳で、二十九年の
あいだ よ おさ はは しゅっしん な
間 エルサレムで世を治めた。その母はエルサレムの出 身で、名をエホ
列王紀下

しゅ め こと せんぞ
アダンといった。 三アマジヤは主の目にかなう事をおこなったが、先祖

65
かれ こと ちち
ダビデのようではなかった。彼はすべての事を父ヨアシがおこなった
たか ところ のぞ たみ
ようにおこなった。 四ただし高き所は除かなかったので、民はなおその
たか ところ ぎせい こう かれ くに かれ て つよ
高 き 所 で 犠牲 を さ さ げ、香 を た い た。 五彼 は 国 が 彼 の 手 の う ち に 強 く
とき ちち おう さつがい けらい ころ さつがいしゃ
なった時、父ヨアシ王を殺害した家来たちを殺したが、 六その殺害者の
こども ころ りっぽう しょ
子供たちは殺さなかった。これはモーセの律法の書にしるされている
ところ したが しゅ めい ちち こ ころ
所に従 ったのであって、そこに主は命じて﹁父は子のゆえに殺さるべき
こ ちち ころ じぶん つみ
ではない。子は父のゆえに殺さるべきではない。おのおの自分の罪の
ころ い
ゆえに殺さるべきである﹂と言われている。
しお たに にん ころ せ
七アマジヤはまた塩の谷でエドムびと一万人を殺した。またセラを攻
と な な こんにち
め取って、その名をヨクテルと名づけたが、今日までそのとおりである。
こ こ おう
八そこでアマジヤがエヒウの子エホアハズの子であるイスラエルの王
し しゃ たがい かお あ
ヨアシに使者をつかわして、
﹁さあ、われわれは互に顔を合わせよう﹂と
い おう おう い おく
言わせたので、 九イスラエルの王ヨアシはユダの王アマジヤに言い送っ
列王紀下

こうはく むすめ
た、
﹁かつてレバノンのいばらがレバノンの香柏に、
﹃あなたの娘をわた

66
つま い おく
しのむすこの妻にください﹄と言い送ったことがあったが、レバノンの
やじゅう ふ たお おお
野獣がとおって、そのいばらを踏み倒した。 一〇あなたは大いにエドム
う こころ えいよ まんぞく いえ
を撃って、心にたかぶっているが、その栄誉に満足して家にとどまりな
なに わざわい おこ じぶん とも ほろ
さい。何ゆえ、あなたは災をひき起して、自分もユダも共に滅びるよう
こと
な事をするのですか﹂。
き おう
一一 しかしアマジヤが聞きいれなかったので、イスラエルの王ヨアシは
のぼ かれ おう たがい
上ってきた。そこで彼とユダの王アマジヤはユダのベテシメシで互に
かお やぶ てんまく
顔をあわせたが、一二ユダはイスラエルに敗られて、おのおのその天幕に
に かえ おう こ こ
逃げ帰った。 一三イスラエルの王ヨアシはアハジヤの子ヨアシの子であ
おう とら
るユダの王アマジヤをベテシメシで捕え、エルサレムにきて、エルサレ
じょうへき もん すみ もん
ムの城 壁をエフライムの門から隅の門まで、おおよそ四百キュビトに
しゅ みや おう いえ くら きんぎん
わたってこわし、 一四また主の宮と王の家の倉にある金銀およびもろも
うつわ と ひとじち かえ
ろの器をことごとく取り、かつ人質をとってサマリヤに帰った。
列王紀下

た じせき ぶゆう かれ おう
一五 ヨアシのその他の事績と、その武勇および彼がユダの王アマジヤと

67
たたか こと おう れきだいし しょ
戦 った事は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではない
せんぞ とも ねむ おう とも
か。 一六ヨアシはその先祖たちと共に眠って、イスラエルの王たちと共
ほうむ こ かわ おう
にサマリヤに葬られ、その子ヤラベアムが代って王となった。
こ おう こ
一七ヨアシの子であるユダの王アマジヤは、エホアハズの子であるイス
おう し のち ねん い
ラエルの王ヨアシが死んで後、なお十五年生きながらえた。 一八アマジ
た じせき おう れきだいし しょ
ヤのその他の事績は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではない
とき ひとびと ととう むす かれ てきたい かれ
か。 一九時に人々がエルサレムで徒党を結び、彼に敵対したので、彼はラ
に ひとびと ひと かれ
キシに逃げていったが、その人々はラキシに人をつかわして彼をそこで
ころ ひとびと かれ うま の はこ かれ
殺 さ せ た。 二 〇人々 は 彼 を 馬 に 載 せ て 運 ん で き て、エ ル サ レ ム で 彼 を
せんぞ とも まち ほうむ たみ みな
先祖たちと共にダビデの町に葬 った。 二一そしてユダの民は皆アザリヤ
ちち かわ おう とき ねん さい かれ
を父アマジヤの代りに王とした。時に年十六歳であった。 二二彼はエラ
まち た ふっ き おう せんぞ
テの町を建てて、これをユダに復帰させた。これはかの王がその先祖た
とも ねむ のち
ちと共に眠った後であった。
列王紀下

おう こ だい ねん おう
二三ユダの王ヨアシの子アマジヤの第十五年に、イスラエルの王ヨアシ

68
こ おう ねん あいだ よ おさ
の子ヤラべアムがサマリヤで王となって四十一年の間、世を治めた。 二四
かれ しゅ め まえ あく おこな つみ おか こ
彼は主の目の前に悪を行い、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラ
つみ はな かれ いりぐち うみ
ベ ア ム の 罪 を 離 れ な か っ た。 二五彼 は ハ マ テ の 入口 か ら ア ラ バ の 海 ま
りょういき かいふく かみ しゅ
で、イスラエルの領 域を回復した。イスラエルの神、主がガテヘペルの
こ よげんしゃ い ことば
アミッタイの子である、そのしもべ預言者ヨナによって言われた言葉の
しゅ なや ひじょう はげ み
と お り で あ る。 二六主 は イ ス ラ エ ル の 悩 み の 非常 に 激 し い の を 見 ら れ
もの じゆう もの
た。そこにはつながれた者も、自由な者もいなくなり、またイスラエル
たす もの しゅ な あめ した
を助ける者もいなかった。 二七しかし主はイスラエルの名を天が下から
け さ い かれ こ
消し去ろうとは言われなかった。そして彼らをヨアシの子ヤラベアム
て すく
の手によって救われた。
た じせき かれ こと ぶゆう
二八 ヤラベアムのその他の事績と、彼がしたすべての事およびその武勇、
かれ せんそう こと ぞく
すなわち彼が戦争をした事および、かつてユダに属していたダマスコと
ふっ き こと おう れきだいし しょ
ハマテを、イスラエルに復帰させた事は、イスラエルの王の歴代志の書
列王紀下

せんぞ
にしるされているではないか。 二九ヤラベアムはその先祖であるイスラ

69
おう とも ねむ こ かわ おう
エルの王たちと共に眠って、その子ゼカリヤが代って王となった。
第一五章
おう だい ねん おう こ
イスラエルの王ヤラベアムの第二十七年に、ユダの王アマジヤの子ア

おう かれ おう とき さい ねん あいだ
ザリヤが王となった。 二彼が王となった時は十六歳で、五十二年の間 エ
よ おさ はは しゅっしん な
ルサレムで世を治めた。その母はエルサレムの出 身で、名をエコリア
かれ しゅ め こと おこな こと ちち
といった。 三彼は主の目にかなう事を行い、すべての事を父アマジヤが
い たか ところ のぞ たみ
行ったようにおこなった。 四ただし高き所は除かなかったので、民はな
たか ところ ぎせい こう しゅ おう う
おその高き所で犠牲をささげ、香をたいた。 五主が王を撃たれたので、
し ひ びょうにん はな や す おう こ
その死ぬ日まで、らい病 人となって、離れ家に住んだ。王の子ヨタムが
いえ こと かんり くに たみ た じせき かれ
家の事を管理し、国の民をさばいた。 六アザリヤのその他の事績と、彼
こと おう れきだいし しょ
がしたすべての事は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではない
列王紀下

せんぞ とも ねむ かれ まち
か。 七アザリヤはその先祖たちと共に眠ったので、彼をダビデの町にそ

70
せんぞ とも ほうむ こ かわ おう
の先祖たちと共に葬 った。その子ヨタムが代って王となった。
おう だい ねん こ
八ユダの王アザリヤの第三十八年にヤラベアムの子ゼカリヤがサマリ
おう げつ よ おさ かれ せんぞ
ヤでイスラエルの王となり、六か月世を治めた。 九彼はその先祖たちが
しゅ め まえ あく おこな つみ おか
おこなったように主の目の前に悪を行い、イスラエルに罪を犯させたネ
こ つみ はな こ
バ テ の 子 ヤ ラ ベ ア ム の 罪 を 離 れ な か っ た。 一〇ヤ ベ シ の 子 シ ャ ル ム が
ととう むす かれ てき かれ う ころ かれ かわ おう
徒党を結んで彼に敵し、イブレアムで彼を撃ち殺し、彼に代って王と
た じせき おう れきだいし しょ
なった。 一一ゼカリヤのその他の事績は、イスラエルの王の歴代志の書
しゅ しそん だい
にしるされている。 一二主はかつてエヒウに、
﹁あなたの子孫は四代まで
くらい ざ つ
イスラエルの位に座するであろう﹂と告げられたが、はたしてそのとお
りになった。
こ おう だい ねん おう
一三 ヤベシの子シャルムはユダの王ウジヤの第三十九年に王となり、サ
げつ よ おさ とき こ
マリヤで一か月世を治めた。 一四時にガデの子メナヘムがテルザからサ
のぼ こ う ころ かれ
マリヤに上ってきて、ヤベシの子シャルムをサマリヤで撃ち殺し、彼に
列王紀下

かわ おう た じせき かれ ととう むす
代って王となった。 一五シャルムのその他の事績と、彼が徒党を結んだ

71
こと おう れきだいし しょ とき
事は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされている。 一六その時メナ
すす
ヘムはテルザから進んでいって、タップアと、そのうちにいるすべての
もの りょういき う かれ かれ ひら
者、およびその領 域を撃った。すなわち彼らが彼のために開かなかっ
う にんしん おんな ひ さ
たので、これを撃って、そのうちの妊娠の女をことごとく引き裂いた。
おう だい ねん こ
一七ユダの王アザリヤの第三十九年に、ガデの子メナヘムはイスラエル
おう ねん あいだ よ おさ かれ しゅ め まえ あく
の王となり、サマリヤで十年の間、世を治めた。 一八彼は主の目の前に悪
おこな つみ おか こ つみ いっしょう
を行い、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムの罪を一 生
あいだ はな とき おう くに せ
の間、離れなかった。 一九時にアッスリヤの王プルが国に攻めてきたの
ぎん あた かれ たす
で、メナヘムは銀一千タラントをプルに与えた。これは彼がプルの助け
え くに じぶん て つよ
を得て、国を自分の手のうちに強くするためであった。 二〇すなわちメ
ぎん と もの か ひとびと
ナヘムはその銀をイスラエルのすべての富める者に課し、その人々にお
ぎん だ おう あた
の お の 銀 五 十 シ ケ ル を 出 さ せ て ア ッ ス リ ヤ の 王 に 与 え た。こ う し て
おう くに かえ
アッスリヤの王は国にとどまらないで帰っていった。 二一メナヘムのそ
列王紀下

た じせき かれ こと おう れきだいし しょ
の他の事績と彼がしたすべての事は、イスラエルの王の歴代志の書にし

72
せんぞ とも ねむ こ
るされているではないか。 二二メナヘムは先祖たちと共に眠り、その子
かわ おう
ペカヒヤが代って王となった。
こ おう だい ねん
二三 メナヘムの子ペカヒヤはユダの王アザリヤの第五十年に、サマリヤ
おう ねん あいだ よ おさ かれ しゅ め まえ
でイスラエルの王となり、二年の間、世を治めた。 二四彼は主の目の前に
あく おこな つみ おか こ つみ はな
悪を行い、イスラエルに罪を犯せたネバテの子ヤラベアムの罪を離れな
とき かれ ふくかん
かった。 二五時に彼の副官であったレマリヤのペカが、ギレアデびと五
にん とも ととう むす かれ てき おう きゅうでん てんしゅ かれ
十人と共に徒党を結んで彼に敵し、サマリヤの、王の宮 殿の天守で彼を
う ころ かれ ころ かれ かわ おう
撃ち殺した。すなわちペカは彼を殺し、彼に代って王となった。 二六ペ
た じせき かれ こと おう
カ ヒ ヤ の そ の 他 の 事績 と 彼 が し た す べ て の 事 は、イ ス ラ エ ル の 王 の
れきだいし しょ
歴代志の書にしるされている。
こ おう だい ねん
二七 レマリヤの子ペカはユダの王アザリヤの第五十二年に、サマリヤで
おう ねん あいだ よ おさ かれ しゅ め まえ
イスラエルの王となり、二十年の間、世を治めた。 二八彼は主の目の前に
あく つみ おか こ つみ
悪をおこない、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムの罪を
列王紀下

はな
離れなかった。

73
おう よ おう き
イスラエルの王ペカの世に、アッスリヤの王テグラテピレセルが来
二九
て、イヨン、アベル・ベテマアカ、ヤノア、ケデシ、ハゾル、ギレアデ、
ぜん ち と ひとびと とら うつ
ガリラヤ、ナフタリの全地を取り、人々をアッスリヤへ捕え移した。 三〇
とき こ ととう むす こ てき かれ う
時にエラの子ホセアは徒党を結んで、レマリヤの子ペカに敵し、彼を撃
ころ かれ かわ おう こ だい ねん
ち殺し、彼に代って王となった。これはウジヤの子ヨタムの第二十年で
た じせき かれ こと
あった。 三一ペカのその他の事績と彼がしたすべての事は、イスラエル
おう れきだいし しょ
の王の歴代志の書にしるされている。
こ おう だい ねん おう こ
レマリヤの子イスラエルの王ペカの第二年に、ユダの王ウジヤの子
三二
おう かれ おう とき さい
ヨタムが王となった。 三三彼は王となった時二十五歳であったが、エル
ねん あいだ よ おさ はは むすめ な
サレムで十六年の間、世を治めた。母はザドクの娘で、名をエルシャと
かれ しゅ め こと おこな ちち い
いった。 三四彼は主の目にかなう事を行い、すべて父ウジヤの行ったよ
たか ところ のぞ たみ
うにおこなった。 三五ただし高き所は除かなかったので、民はなおその
たか ところ ぎせい こう かれ しゅ みや うえ もん た
高き所で犠牲をささげ、香をたいた。彼は主の宮の上の門を建てた。 三六
列王紀下

た じせき かれ こと おう れきだいし しょ
ヨタムのその他の事績と彼がしたすべての事は、ユダの王の歴代志の書

74
しゅ おう
にしるされているではないか。 三七そのころ、主はスリヤの王レヂンと
こ せ せんぞ
レマリヤの子ペカをユダに攻めこさせられた。 三八ヨタムは先祖たちと
とも ねむ せんぞ まち せんぞ とも ほうむ こ
共に眠って、その先祖ダビデの町に先祖たちと共に葬られ、その子アハ
かわ おう
ズが代って王となった。
第一六章
こ だい ねん おう こ おう
一レマリヤの子ペカの第十七年にユダの王ヨタムの子アハズが王と
おう とき さい ねん あいだ
なった。 二アハズは王となった時二十歳で、エルサレムで十六年の間、
よ おさ かみ しゅ め こと せんぞ おこな
世を治めたが、その神、主の目にかなう事を先祖ダビデのようには行わ
かれ おう みち あゆ しゅ
なかった。 三彼はイスラエルの王たちの道に歩み、また主がイスラエル
ひとびと まえ お はら いほうじん にく
の人々の前から追い払われた異邦人の憎むべきおこないにしたがって、
じぶん こ ひ や もの かれ たか ところ おか
自分 の 子 を 火 に 焼 い て さ さ げ 物 と し た。 四か つ 彼 は 高 き 所、ま た 丘 の
列王紀下

うえ あお き した ぎせい こう
上、すべての青木の下で犠牲をささげ、香をたいた。

75
おう こ
五そのころ、スリヤの王レヂンおよびレマリヤの子であるイスラエルの
おう せ のぼ かこ か
王ペカがエルサレムに攻め上って、アハズを囲んだが、勝つことができ
とき おう かいふく しょりょう
なかった。 六その時エドムの王はエラテを回復してエドムの所 領とし、
ひとびと お だ
ユダの人々をエラテから追い出した。そしてエドムびとがエラテにき
す こんにち いた し しゃ
て、そこに住み、今日に至っている。 七そこでアハズは使者をアッスリ
おう い
ヤの王テグラテピレセルにつかわして言わせた、﹁わたしはあなたのし
こ おう おう せ かこ
もべ、あなたの子です。スリヤの王とイスラエルの王がわたしを攻め囲
のぼ かれ て すく だ
んでいます。どうぞ上ってきて、彼らの手からわたしを救い出してくだ
しゅ みや おう いえ くら きん ぎん
さい﹂。 八そしてアハズは主の宮と王の家の倉にある金と銀をとり、こ
おく もの おう おう
れを贈り物としてアッスリヤの王におくったので、 九アッスリヤの王は
かれ ねが き おう せ
彼 の 願 い を 聞 き い れ た。す な わ ち ア ッ ス リ ヤ の 王 は ダ マ ス コ に 攻 め
のぼ と たみ とら うつ ころ
上って、これを取り、その民をキルに捕え移し、またレヂンを殺した。
おう おう あ
アハズ王はアッスリヤの王テグラテピレセルに会おうとダマスコへ
列王紀下

一〇
い さいだん み おう さいだん つく
行ったが、ダマスコにある祭壇を見たので、アハズ王はその祭壇の作り

76
くわ ずめん がた つく さいし おく
にしたがって、その詳しい図面と、ひな型とを作って、祭司ウリヤに送っ
さいし おう おく
た。 一一そこで祭司ウリヤはアハズ王がダマスコから送ったものにした
さいだん た さいし おう
がって祭壇を建てた。すなわち祭司ウリヤはアハズ王がダマスコから
かえ つく おう かえ
帰るまでにそのとおりに作った。 一二王はダマスコから帰ってきて、そ
さいだん み さいだん ちか うえ のぼ はんさい そさい や かんさい
の祭壇を見、祭壇に近づいてその上に登り、 一三燔祭と素祭を焼き、灌祭
そそ しゅうおんさい ち さいだん かれ しゅ まえ
を注ぎ、酬 恩 祭の血を祭壇にそそぎかけた。 一四彼はまた主の前にあっ
せいどう さいだん みや まえ うつ あたら さいだん しゅ
た青銅の祭壇を宮の前から移した。すなわちそれを新しい祭壇と主の
みや あいだ うつ あたら さいだん きた ほう おう
宮の間から移して、 新しい祭壇の北の方にすえた。 一五そしてアハズ王
さいし めい い あさ はんさい ゆう そさい おう はんさい
は祭司ウリヤに命じて言った、﹁朝の燔祭と夕の素祭および王の燔祭と
そさい くにぢゅう たみ はんさい そさい かんさい おお
その素祭、ならびに国 中の民の燔祭とその素祭および灌祭は、この大き
さいだん うえ や はんさい ち ぎせい ち
な祭壇の上で焼きなさい。また燔祭の血と犠牲の血はすべてこれにそ
せいどう さいだん うかが た もち
そぎかけなさい。あの青銅の祭壇をわたしは伺いを立てるのに用いよ
さいし おう めい
う﹂。 一六祭司ウリヤはアハズ王がすべて命じたとおりにおこなった。
列王紀下

おう だい かがみいた き と せんばん うえ うつ
またアハズ王は台の鏡 板を切り取って、洗盤をその上から移し、ま
一七

77
うみ した せいどう うし うえ いし ざ うえ
た海をその下にある青銅の牛の上からおろして、石の座の上にすえ、 一八
みや つく あんそくにちよう みち おう もち
また宮のうちに造られていた安息日用のおおいのある道、および王の用
そと いりぐち おう しゅ みや のぞ
いる外の入口をアッスリヤの王のために主の宮から除いた。 一九アハズ
た じせき おう れきだいし しょ
のその他の事績は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではない
せんぞ とも ねむ まち せんぞ
か。 二〇アハズは先祖たちと共に眠って、ダビデの町にその先祖たちと
とも ほうむ こ かわ おう
共に葬られ、その子ヒゼキヤが代って王となった。
第一七章
おう だい ねん こ おう
一ユダの王アハズの第十二年にエラの子ホセアが王となり、サマリヤで
ねん あいだ おさ かれ しゅ め まえ あく おこな かれ
九年の間、イスラエルを治めた。 二彼は主の目の前に悪を行 ったが、彼
いぜん おう おう
以前 の イ ス ラ エ ル の 王 た ち の よ う で は な か っ た。 三ア ッ ス リ ヤ の 王
せ のぼ かれ れいぞく おさ
シャルマネセルが攻め上ったので、ホセアは彼に隷属して、みつぎを納
列王紀下

おう じぶん し
め た が、 四ア ッ ス リ ヤ の 王 は ホ セ ア が つ い に 自分 に そ む い た の を 知 っ

78
し しゃ おう ねんねんおさ
た。それはホセアが使者をエジプトの王ソにつかわし、また年々納めて
おう おさ
いたみつぎを、アッスリヤの王に納めなかったからである。そこでアッ
おう かれ かんきん ごくや おう
スリヤの王は彼を監禁し、獄屋につないだ。 五そしてアッスリヤの王は
せ のぼ くにぢゅう おか のぼ ねん あいだ せ かこ
攻め上って国 中を侵し、サマリヤに上ってきて三年の間、これを攻め囲
だい ねん おう
んだ。 六ホセアの第九年になって、アッスリヤの王はついにサマリヤを
と ひとびと とら
取り、イスラエルの人々をアッスリヤに捕えていって、ハラと、ゴザン
かわ まちまち
の川ハボルのほとりと、メデアの町々においた。
こと た ひとびと じぶん ち
七この事が起ったのは、イスラエルの人々が、自分たちをエジプトの地
みちび のぼ おう て かみ しゅ
から導き上って、エジプトの王パロの手をのがれさせられたその神、主
つみ おか た かみがみ うやま しゅ ひとびと まえ
にむかって罪を犯し、他の神々を敬い、 八主がイスラエルの人々の前か
お はら いほうじん したが あゆ おう
ら追い払われた異邦人のならわしに従 って歩み、またイスラエルの王
さだ したが あゆ
た ち が 定 め た な ら わ し に 従 っ て 歩 ん だ か ら で あ る。 九イ ス ラ エ ル の
ひとびと かみ しゅ ただしか こと おこな み は り だい けんご
人々はその神、主にむかって正らぬ事をひそかに行い、見張台から堅固
列王紀下

まち いた まちまち たか ところ た たか おか
な町に至るまで、すべての町々に高き所を建て、一〇またすべての高い丘

79
うえ あお き した いし はしら ぞう た しゅ かれ まえ
の上、すべての青木の下に石の柱とアシラ像を立て、一一主が彼らの前か
とら うつ いほうじん たか ところ こう あくじ
ら捕え移された異邦人がしたように、すべての高き所で香をたき、悪事
い しゅ いか しゅ かれ こと
を行って、主を怒らせた。 一二また主が彼らに﹁あなたがたはこの事をし
い ぐうぞう つか しゅ よげんしゃ
てはならない﹂と言われたのに偶像に仕えた。 一三主はすべての預言者、
せんけんしゃ いまし ひるがえ
すべての先見者によってイスラエルとユダを戒め、
﹁翻 って、あなたが
わる みち はな せんぞ めい
たの悪い道を離れ、わたしがあなたがたの先祖たちに命じ、またわたし
よげんしゃ つた りっぽう
のしもべである預言者たちによってあなたがたに伝えたすべての律法
いまし さだ まも おお かれ
のとおりに、わたしの戒めと定めとを守れ﹂と仰せられたが、 一四彼らは
き かれ せんぞ かみ しゅ しん ごうじょう
聞きいれず、彼らの先祖たちがその神、主を信じないで、強 情であった
かれ ごうじょう かれ しゅ さだ す しゅ かれ
ように、彼らは強 情であった。 一五そして彼らは主の定めを捨て、主が彼
せんぞ むす けいやく やぶ かれ あた けいこく かる
らの先祖たちと結ばれた契約を破り、また彼らに与えられた警告を軽ん
ぐうぞう したが しゅうい いほうじん したが
じ、かつむなしい偶像に従 ってむなしくなり、また周囲の異邦人に従 っ
しゅ かれ かれ めい
た。これは主が、彼らのようにおこなってはならないと彼らに命じられ
列王紀下

かれ かみ しゅ いまし す じぶん
たものである。 一六彼らはその神、主のすべての戒めを捨て、自分のため

80
こ うし ぞう い つく ぞう つく てん ばんしょう おが
に二つの子牛の像を鋳て造り、またアシラ像を造り、天の万 象を拝み、
つか むすめ ひ や もの
かつバアルに仕え、 一七またそのむすこ、娘を火に焼いてささげ物とし、
うらな しゅ め まえ あく み
占いおよびまじないをなし、主の目の前に悪をおこなうことに身をゆ
しゅ いか しゅ おお いか かれ
だねて、主を怒らせた。 一八それゆえ、主は大いにイスラエルを怒り、彼
まえ のぞ ぶぞく のこ もの
らをみ前から除かれたので、ユダの部族のほか残った者はなかった。
かみ しゅ いまし まも さだ
一九ところがユダもまたその神、主の戒めを守らず、イスラエルが定めた
あゆ しゅ しそん す かれ
ならわしに歩んだので、二〇主はイスラエルの子孫をことごとく捨て、彼
くる かれ りゃくだつしゃ て かれ まえ う
らを苦しめ、彼らを略 奪 者の手にわたして、ついに彼らをみ前から打ち
すてられた。
しゅ いえ さ はな
二一主はイスラエルをダビデの家から裂き離されたので、イスラエルは
こ おう しゅ
ネバテの子ヤラベアムを王としたが、ヤラベアムはイスラエルに、主に
したが おお つみ おか ひとびと
従うことをやめさせ、大きな罪を犯させた。 二二イスラエルの人々がヤ
つみ つづ はな
ラベアムのおこなったすべての罪をおこない続けて、それを離れなかっ
列王紀下

しゅ よげんしゃ い
たので、 二三ついに主はそのしもべである預言者たちによって言われた

81
まえ のぞ さ
ように、イスラエルをみ前から除き去られた。こうしてイスラエルは
じぶん くに うつ こんにち いた
自分の国からアッスリヤに移されて今日に至っている。
おう
二四 かくてアッスリヤの王はバビロン、クタ、アワ、ハマテおよびセパル
ひとびと ひとびと かわ
ワイムから人々をつれてきて、これをイスラエルの人々の代りにサマリ
まちまち ひとびと りょうゆう まちまち
ヤの町々におらせたので、その人々はサマリヤを領 有して、その町々に
す かれ す はじ とき しゅ うやま
住んだ。 二五彼らがそこに住み始めた時、主を敬うことをしなかったの
しゅ かれ おく かれ すうにん ころ
で、主は彼らのうちにししを送り、ししは彼らのうちの数人を殺した。 二
ひとびと おう つ い うつ
そこで人々はアッスリヤの王に告げて言った、﹁あなたが移してサマ

まちまち くにぐに たみ ち かみ し
リヤの町々におらせられたあの国々の民は、その地の神のおきてを知ら
かみ かれ おく かれ ころ
ないゆえに、その神は彼らのうちにししを送り、ししは彼らを殺した。
かれ ち かみ し
これは彼らが、その地の神のおきてを知らないためです﹂。 二七アッスリ
おう めい い うつ さいし
ヤの王は命じて言った、﹁あなたがたがあそこから移した祭司のひとり
つ い かれ す くに
をあそこへ連れて行きなさい。彼をあそこへやって住まわせ、その国の
列王紀下

かみ ひとびと おし
神のおきてをその人々に教えさせなさい﹂。

82
うつ さいし き す
そこでサマリヤから移された祭司のひとりが来てベテルに住み、ど
二八
しゅ うやま かれ おし たみ
のように主を敬うべきかを彼らに教えた。 二九しかしその民はおのおの
じぶん かみがみ つく つく たか ところ いえ あんち
自分の神々を造って、それをサマリヤびとが造った高き所の家に安置し
たみ みな す まちまち
た。民は皆住んでいる町々でそのようにおこなった。 三〇すなわちバビ
ひとびと つく ひとびと つく
ロンの人々はスコテ・ベノテを造り、クタの人々はネルガルを造り、ハ
ひとびと つく ひとびと つく
マテの人々はアシマを造り、 三一アワの人々はニブハズとタルタクを造
こ ひ や かみ
り、セパルワイムびとはその子を火に焼いて、セパルワイムの神アデラ
かれ しゅ うやま じぶん
ンメレクおよびアナンメレクにささげた。 三二彼はまた主を敬い、自分
いっぱん たみ た たか ところ さいし ひとびと
たちのうちから一般の民を立てて高き所の祭司としたので、その人々は
たか ところ いえ つと かれ しゅ うやま かれ
高き所の家で勤めをした。 三三このように彼らは主を敬 ったが、また彼
で くにぐに じぶん かみがみ つか
らが出てきた国々のならわしにしたがって、自分たちの神々にも仕え
こんにち いた かれ さき
た。 三四今日に至るまで彼らは先のならわしにしたがっておこなってい
る。
列王紀下

かれ しゅ うやま しゅ な しそん
彼らは主を敬わず、また主がイスラエルと名づけられたヤコブの子孫に

83
めい さだ りっぽう いまし したが しゅ
命じられた定めにも、おきてにも、律法にも、戒めにも従わない。 三五主
かれ けいやく むす かれ めい い た
はかつて彼らと契約を結び、彼らに命じて言われた、﹁あなたがたは他の
かみがみ うやま かれ おが かれ つか かれ ぎせい
神々を敬 ってはならない。また彼らを拝み、彼らに仕え、彼らに犠牲を
おお ちから の うで
ささげてはならない。 三六ただ大きな力と伸べた腕とをもって、あなた
ち みちび のぼ しゅ うやま おが
がたをエジプトの地から導き上った主をのみ敬い、これを拝み、これに
ぎせい か
犠牲をささげなければならない。 三七またあなたがたのために書きしる
さだ りっぽう いまし つつし つね まも
された定めと、おきてと、律法と、戒めとを、慎んで常に守らなければ
た かみがみ うやま むす
ならない。他の神々を敬 ってはならない。 三八わたしがあなたがたと結
けいやく わす た かみがみ うやま
んだ契約を忘れてはならない。また他の神々を敬 ってはならない。 三九
かみ しゅ うやま しゅ
ただあなたがたの神、主を敬わなければならない。主はあなたがたをそ
てき て すく だ かれ き
のすべての敵の手から救い出されるであろう﹂。 四〇しかし彼らは聞き
さき
いれず、かえって先のならわしにしたがっておこなった。
たみ しゅ うやま きざ ぞう つか
このように、これらの民は主を敬い、またその刻んだ像にも仕えた
列王紀下

四一
こ まご どうよう かれ せんぞ
が、その子たちも、孫たちも同様であって、彼らはその先祖がおこなっ

84
こんにち
たように今日までおこなっている。
第一八章
おう こ だい ねん おう こ
一イスラエルの王エラの子ホセアの第三年にユダの王アハズの子ヒゼ
おう かれ おう とき さい
キヤが王となった。 二彼は王となった時二十五歳で、エルサレムで二十
ねん あいだ よ おさ はは むすめ な
九年の間、世を治めた。その母はゼカリヤの娘で、名をアビといった。 三
せんぞ しゅ め こと
ヒゼキヤはすべて先祖ダビデがおこなったように主の目にかなう事を
おこな たか ところ のぞ せきちゅう ぞう き たお
行い、 四高き所を除き、石 柱をこわし、アシラ像を切り倒し、モーセの
つく せいどう う くだ ひとびと とき
造った青銅のへびを打ち砕いた。イスラエルの人々はこの時までその
む こう ひとびと
へびに向かって香をたいていたからである。人々はこれをネホシタン
よ かみ しゅ しんらい かれ
と呼んだ。 五ヒゼキヤはイスラエルの神、主に信頼した。そのために彼
かれ さき おう かれ およ もの
のあとにも彼の先にも、ユダのすべての王のうちに彼に及ぶ者はなかっ
列王紀下

かれ かた しゅ したが はな しゅ めい
た。 六すなわち彼は固く主に従 って離れることなく、主がモーセに命じ

85
めいれい まも しゅ かれ とも かれ で たたか
られた命令を守った。 七主が彼と共におられたので、すべて彼が出て戦
こう かれ おう かれ つか
うところで功をあらわした。彼はアッスリヤの王にそむいて、彼に仕え
かれ う はい りょういき たっ
なかった。 八彼はペリシテびとを撃ち敗って、ガザとその領 域にまで達
み は り だい けんご まち およ
し、見張台から堅固な町にまで及んだ。
おう だい ねん おう こ だい
ヒゼキヤ王の第四年すなわちイスラエルの王エラの子ホセアの第七

ねん おう せ のぼ
年に、アッスリヤの王シャルマネセルはサマリヤに攻め上って、これを
かこ ねん のち と と
囲んだが、 一〇三年の後ついにこれを取った。サマリヤが取られたのは
だい ねん おう だい ねん
ヒゼキヤの第六年で、それはイスラエルの王ホセアの第九年であった。
おう ひとびと とら
一一 アッスリヤの王はイスラエルの人々をアッスリヤに捕えていって、
かわ まちまち お
ハラと、ゴザンの川ハボルのほとりと、メデアの町々に置いた。 一二これ
かれ かみ しゅ ことば けいやく やぶ しゅ
は彼らがその神、主の言葉にしたがわず、その契約を破り、主のしもべ
めい こと みみ かたむ おこな
モーセの命じたすべての事に耳を傾けず、また行わなかったからであ
る。
列王紀下

おう だい ねん おう せ のぼ
一三 ヒゼキヤ王の第十四年にアッスリヤの王セナケリブが攻め上ってユ

86
けんご まちまち と おう ひと
ダのすべての堅固な町々を取ったので、 一四ユダの王ヒゼキヤは人をラ
おう い つみ おか
キシにつかわしてアッスリヤの王に言った、﹁わたしは罪を犯しました。
ひ あ か
どうぞ引き上げてください。わたしに課せられることはなんでもいた
おう ぎん きん
します﹂。アッスリヤの王は銀三百タラントと金三十タラントをユダの
おう か しゅ みや おう いえ くら ぎん
王ヒゼキヤに課した。 一五ヒゼキヤは主の宮と王の家の倉とにある銀を
かれ あた とき おう しゅ しんでん
ことごとく彼に与えた。 一六この時ユダの王ヒゼキヤはまた主の神殿の
と はしら じぶん き きん と おう あた
戸および柱から自分が着せた金をはぎ取って、アッスリヤの王に与え
おう
た。 一七アッスリヤの王はまたタルタン、ラブサリスおよびラブシャケ
たいぐん ひき おう
を、ラキシから大軍を率いてエルサレムにいるヒゼキヤ王のもとにつか
かれ のぼ き かれ つ
わした。彼らは上ってエルサレムに来た。彼らはエルサレムに着くと、
ぬの ば い おおじ そ うえ いけ すいどう い
布さらし場に行く大路に沿っている上の池の水道のかたわらへ行って、
た かれ おう よ こ
そこに立った。 一八そして彼らが王を呼んだので、ヒルキヤの子である
くないきょう しょきかん こ しかん
宮内卿エリアキム、書記官セブナ、およびアサフの子である史官ヨアが
列王紀下

かれ で
彼らのところに出てきた。

87
かれ い い だいおう
ラブシャケは彼らに言った、
一九 ﹁ヒゼキヤに言いなさい、
﹃大王、アッス
おう おお たの もの なに くちさき
リヤの王はこう仰せられる。あなたが頼みとする者は何か。 二〇口先だ
ことば せんそう けいりゃく ちから かんが いま
けの言葉が戦争をする計 略と力だと考えるのか。あなたは今だれにた
いま お あし
よって、わたしにそむいたのか。 二一今あなたは、あの折れかけている葦
たの ひと とき
のつえ、エジプトを頼みとしているが、それは人がよりかかる時、その
ひと て さ とお おう よ たの もの
人の手を刺し通すであろう。エジプトの王パロはすべて寄り頼む者に
かみ
そのようにする。 二二しかしあなたがもし﹁われわれは、われわれの神、
しゅ たの い かみ
主を頼む﹂とわたしに言うのであれば、その神はヒゼキヤがユダとエル
つ さいだん まえ れいはい
サレムに告げて、﹁あなたがたはエルサレムで、この祭壇の前に礼拝しな
い たか ところ さいだん のぞ もの
ければならない﹂と言って、その高き所と祭壇とを除いた者ではないか。
しゅくん おう ほう
さあ、わたしの主君アッスリヤの王とかけをせよ。もしあなたの方
二三
の ひと うま とう あた
に乗る人があるならば、わたしは馬二千頭を与えよう。 二四あなたはエ
たの せんしゃ きへい こ もと しゅくん けらい
ジプトを頼み、戦車と騎兵を請い求めているが、わたしの主君の家来の
列王紀下

もっと ちい たいちょう げきたい


うちの最も小さい一 隊 長でさえ、どうして撃退することができようか。

88
ところ ほろ のぼ しゅ ゆる
二五 わたしがこの所を滅ぼすために上ってきたのは、主の許しなしにし
しゅ ち せ のぼ ほろ
たことであろうか。主がわたしにこの地に攻め上ってこれを滅ぼせと

言われたのだ﹄﹂。
とき こ
二六 その時ヒルキヤの子エリアキムおよびセブナとヨアはラブシャケに
い ご はな
言った、﹁どうぞ、アラム語でしもべどもに話してください。わたしたち
じょうへき うえ たみ き
は、それがわかるからです。 城 壁の上にいる民の聞いているところで、
ことば はな
わ た し た ち に ユ ダ ヤ の 言葉 で 話 さ な い で く だ さ い﹂。 二 七し か し ラ ブ
かれ い しゅくん しゅくん
シャケは彼らに言った、﹁わたしの主君は、あなたの主君とあなたにだけ
じょうへき うえ ざ ひとびと ことば つ
でなく、城 壁の上に座している人々にも、この言葉を告げるためにわた
かれ とも じぶん ふんにょう
しをつかわしたのではないか。彼らも、あなたがたと共に自分の糞 尿
く の いた
を食い飲みするに至るであろう﹂。
た ことば おおごえ よ
二八 そしてラブシャケは立ちあがり、ユダヤの言葉で大声に呼ばわって
い だいおう おう ことば き おう おお
言 っ た。﹁大王、ア ッ ス リ ヤ の 王 の 言葉 を 聞 け。 二九王 は こ う 仰 せ ら れ
列王紀下

あざむ かれ
る、﹃あなたがたはヒゼキヤに欺かれてはならない。彼はあなたがたを

89
て すく しゅ かなら
わたしの手から救いだすことはできない。 三〇ヒゼキヤが﹁主は必ずわ
すく だ まち おう て おちい
れわれを救い出される。この町はアッスリヤ王の手に陥ることはない﹂
い しゅ たの
と言っても、あなたがたは主を頼みとしてはならない﹄。 三一あなたがた
ことば き おう おお
はヒゼキヤの言葉を聞いてはならない。アッスリヤの王はこう仰せら
わかい こうふく
れる、﹃あなたがたはわたしと和解して、わたしに降服せよ。そうすれば
じぶん み た じぶん
あなたがたはおのおの自分のぶどうの実を食べ、おのおの自分のいちじ
み た じぶん い ど みず の
くの実を食べ、おのおの自分の井戸の水を飲むことができるであろう。
き くに つ い
三二 やがてわたしが来て、あなたがたを一つの国へ連れて行く。それは
くに こくもつ しゅ ち はたけ
あなたがたの国のように穀物とぶどう酒のある地、パンとぶどう畑のあ
ち き みつ ち い
る地、オリブの木と蜜のある地である。あなたがたは生きながらえるこ
し しゅ すく
とができ、死ぬことはない。ヒゼキヤが﹁主はわれわれを救われる﹂と
い まど かれ き しょこくみん
言って、あなたがたを惑わしても彼に聞いてはならない。 三三諸国民の
かみがみ かみ くに おう て すく
神々のうち、どの神がその国をアッスリヤの王の手から救ったか。 三四
列王紀下

かみがみ
ハマテやアルパデの神々はどこにいるのか。セパルワイム、ヘナおよび

90
かみがみ かれ て すく
イワの神々はどこにいるのか。彼らはサマリヤをわたしの手から救い
だ くにぐに かみがみ くに て すく
出したか。 三五国々のすべての神々のうち、その国をわたしの手から救
だ もの しゅ て すく
い出した者があったか。主がどうしてエルサレムをわたしの手から救

い出すことができよう﹄﹂。
たみ もく こと かれ こた おう めい かれ こた
三六 しかし民は黙して、ひと言も彼に答えなかった。王が命じて﹁彼に答

えてはならない﹂と言っておいたからである。 三七こうしてヒルキヤの
こ くないきょう しょきかん こ
子である宮内卿エリアキム、書記官セブナ、およびアサフの子である
しかん ころも さ き ことば かれ
史官ヨアは衣を裂き、ヒゼキヤのもとに来て、ラブシャケの言葉を彼に

告げた。
第一九章
おう き ころも さ あらぬの み しゅ みや
ヒゼキヤ王はこれを聞いて、衣を裂き、荒布を身にまとって主に宮に
列王紀下


はい くないきょう しょきかん さいし ねんちょうしゃ
入り、 二宮内卿エリアキムと書記官セブナおよび祭司のうちの年 長 者

91
あらぬの こ よげんしゃ
たちに荒布をまとわせて、アモツの子預言者イザヤのもとにつかわし
かれ い もう
た。 三彼らはイザヤに言った、
﹁ヒゼキヤはこう申されます、
﹃きょうは
なや こら ひ たいじ うま
悩みと、懲しめと、はずかしめの日です。胎児がまさに生れようとして、
う だ ちから かみ しゅ
これを産み出す力がないのです。 四あなたの神、主はラブシャケがその
しゅくん おう い かみ
主君アッスリヤの王につかわされて、生ける神をそしったもろもろの
ことば き かみ しゅ き
言葉を聞かれたかもしれません。そしてあなたの神、主はその聞いた
ことば のこ もの
言葉をとがめられるかもしれません。それゆえ、この残っている者のた
いのり おう けらい
め に 祈 を さ さ げ て く だ さ い﹄﹂。 五ヒ ゼ キ ヤ 王 の 家来 た ち が イ ザ ヤ の も
き かれ い しゅくん い
とに来たとき、六イザヤは彼らに言った、
﹁あなたがたの主君にこう言い
しゅ おお おう けらい
なさい、
﹃主はこう仰せられる、アッスリヤの王の家来たちが、わたしを
ことば き おそ およ み れい
そしった言葉を聞いて恐れるには及ばない。 七見よ、わたしは一つの霊
かれ おく き かれ じぶん くに かえ
を彼らのうちに送って、一つのうわさを聞かせ、彼を自分の国へ帰らせ
じぶん くに たお
て、自分の国でつるぎに倒れさせるであろう﹄﹂。
列王紀下

ひ かえ おう せ
八ラブシャケは引き返して、アッスリヤの王がリブナを攻めているとこ

92
い かれ おう さ き
ろ へ 行 っ た。彼 が 王 の ラ キ シ を 去 っ た こ と を 聞 い た か ら で あ る。 九こ
とき おう おう かれ
の時アッスリヤの王はエチオピヤの王テルハカについて、﹁彼はあなた
たたか で ひとびと き ふたた し しゃ
と戦うために出てきた﹂と人々がいうのを聞いたので、再び使者をヒゼ
い おう い
キヤにつかわして言った、一〇
﹁ユダの王ヒゼキヤにこう言いなさい、﹃あ
おう て おちい い
なたは、エルサレムはアッスリヤの王の手に陥ることはない、と言うあ
しんらい かみ あざむ おう
なたの信頼する神に欺かれてはならない。 一一あなたはアッスリヤの王
くにぐに こと かれ まった ほろ こと き
たちがもろもろの国々にした事、彼らを全く滅ぼした事を聞いている。
すく ちち
どうしてあなたが救われることができようか。 一二わたしの父たちはゴ
ひとびと ほろ
ザン、ハラン、レゼフ、およびテラサルにいたエデンの人々を滅ぼした
くにぐに かみがみ かれ すく おう おう
が、その国々の神々は彼らを救ったか。 一三ハマテの王、アルパデの王、
まち おう おう おう
セパルワイムの町の王、ヘナの王およびイワの王はどこにいるのか﹄﹂。
し しゃ て てがみ う と よ しゅ みや
一四ヒゼキヤは使者の手から手紙を受け取ってそれを読み、主の宮にの
しゅ まえ しゅ まえ
ぼっていって、主の前にそれをひろげ、 一五そしてヒゼキヤは主の前に
列王紀下

いの い うえ ざ かみ しゅ
祈って言った、
﹁ケルビムの上に座しておられるイスラエルの神、主よ、

93
ち くに かみ
地のすべての国のうちで、ただあなただけが神でいらせられます。あな
てん ち つく しゅ みみ かたむ き しゅ
たは天と地を造られました。 一六主よ、耳を傾けて聞いてください。主
め ひら い かみ
よ、目を開いてごらんください。セナケリブが生ける神をそしるために
か おく ことば き しゅ おう
書き送った言葉をお聞きください。 一七主よ、まことにアッスリヤの王
たみ くにぐに ほろ かみがみ ひ な
たちはもろもろの民とその国々を滅ぼし、 一八またその神々を火に投げ
い かみ ひと て つく き いし
入れました。それらは神ではなく、人の手の作ったもので、木や石だか
ほろ かみ しゅ いま かれ
ら滅ぼされたのです。 一九われわれの神、主よ、どうぞ、今われわれを彼
て すく だ ち くにぐに みな しゅ
の手から救い出してください。そうすれば地の国々は皆、主であるあな
かみ し
ただけが神でいらせられることを知るようになるでしょう﹂。 二〇その
とき こ ひと い
時アモツの子イザヤは人をつかわしてヒゼキヤに言った、﹁イスラエル
かみ しゅ おお おう
の神、主はこう仰せられる、﹃アッスリヤの王セナケリブについてあなた
いの き しゅ かれ かた ことば
が わ た し に 祈 っ た こ と は 聞 い た﹄。 二一主 が 彼 に つ い て 語 ら れ た 言葉 は
こうである、
列王紀下

しょじょ むすめ
﹃処女であるシオンの娘は

94
あなど
あなたを侮り、あなたをあざける。
むすめ
エルサレムの娘は
あたま ふ
あなたのうしろで頭を振る。
二二 あなたはだれをそしり、だれをののしったのか。
こえ
あなたはだれにむかって声をあげ、
め たか
目を高くあげたのか。
せいじゃ
イスラエルの聖者にむかってしたのだ。
し しゃ しゅ い
二三 あなたは使者をもって主をそしって言った、
おお せんしゃ やまやま いただき
﹁わたしは多くの戦車をひきいて山々の頂にのぼり、
おく い
レバノンの奥に行き、
たか こうはく もっと よ き たお
たけの高い香柏と最も良いいとすぎを切り倒し、
はて やえい ち い
またその果の野営地に行き、
みつりん
その密林にはいった。
列王紀下

い ど ほ がいこく みず の
二四 わたしは井戸を掘って外国の水を飲んだ。

95
あし うら
わたしは足の裏で、
かわ ふ
エジプトのすべての川を踏みからした﹂。

二五 あなたは聞かなかったか、
むかし さだ
昔わたしがこれを定めたことを。
けんご まちまち あらつか
堅固な町々をあなたが荒塚とすることも、
ひ けいかく
いにしえの日からわたしが計画して
いま
今これをおこなうのだ。
す たみ ちからよわ はじ
二六 そのうちに住む民は力 弱くおののき、恥をいだいて、
の くさ あおな
野の草のように、青菜のようになり、
そだ か や ね くさ
育たないで枯れる屋根の草のようになった。
で い
二七 わたしはあなたのすわること、出入りすること、
いか さけ し
わたしにむかって怒り叫んだことをも知っている。
いか さけ
あなたがわたしにむかって怒り叫んだことと、
列王紀下

二八
こうまん みみ
あなたの高慢がわたしの耳にはいったため、

96
はな わ
わたしはあなたの鼻に輪をつけ、
くち
あなたの口にくつわをはめて、
みち ひ
あなたをもときた道へ引きもどすであろう﹄。
あた お ぼ
﹃あなたに与えるしるしはこれである。すなわち、ことしは落ち穂か
二九
た ねん め お ぼ た
らはえたものを食べ、二年目にはまたその落ち穂からはえたものを食
ねん め たね か い はたけ つく み た
べ、三年目には種をまき、刈り入れ、ぶどう畑を作ってその実を食べる
いえ のこ もの ふたた した ね は うえ み
であろう。 三〇ユダの家ののがれて残る者は再び下に根を張り、上に実
むす のこ もの で
を結ぶであろう。 三一すなわち残る者がエルサレムから出てき、のがれ
もの やま で く しゅ ねっしん
た者がシオンの山から出て来るであろう。主の熱心がこれをされるで
あろう﹄。
しゅ おう おお かれ
それゆえ、主はアッスリヤの王について、こう仰せられる、
三二 ﹃彼はこ
まち や はな たて まえ く
の町にこない、またここに矢を放たない、盾をもってその前に来ること
るい きず せ かれ き みち かえ
なく、また塁を築いてこれを攻めることはない。 三三彼は来た道を帰っ
列王紀下

まち しゅ い じぶん
て、この町に、はいることはない。主がこれを言う。 三四わたしは自分の

97
まち まも すく
ため、またわたしのしもべダビデのためにこの町を守って、これを救う
であろう﹄﹂。
よる しゅ つかい で じんえい にん う ころ
三五 その夜、主の使が出て、アッスリヤの陣営で十八万五千人を撃ち殺し
ひとびと あさはや お み かれ みな したい
た。人々が朝早く起きて見ると、彼らは皆、死体となっていた。 三六アッ
おう た さ かえ い
スリヤの王セナケリブは立ち去り、帰って行ってニネベにいたが、三七そ
かみ しんでん れいはい とき こ
の神ニスロクの神殿で礼拝していた時、その子アデランメレクとシャレ
かれ ころ ち に い
ゼルが、つるぎをもって彼を殺し、ともにアララテの地へ逃げて行った。
こ かわ おう
そこでその子エサルハドンが代って王となった。
第二〇章
びょうき し こ
一そのころ、ヒゼキヤは病気になって死にかかっていた。アモツの子
よげんしゃ かれ い しゅ おお いえ
預言者イザヤは彼のところにきて言った、
﹁主はこう仰せられます、
﹃家
列王紀下

ひと ゆいごん し い
の人に遺言をなさい。あなたは死にます。生きながらえることはでき

98
かお かべ む しゅ いの い
ません﹄﹂。 二そこでヒゼキヤは顔を壁に向けて主に祈って言った、三
﹁あ
しゅ しんじつ まごころ まえ あゆ め
あ主よ、わたしが真実を真心をもってあなたの前に歩み、あなたの目に
おも おこ
かなうことをおこなったのをどうぞ思い起してください﹂。そしてヒゼ
はげ な なかにわ で しゅ ことば
キ ヤ は 激 し く 泣 い た。 四イ ザ ヤ が ま だ 中庭 を 出 な い う ち に 主 の 言葉 が
かれ のぞ ひ かえ たみ きみ い
彼に臨んだ、五
﹁引き返して、わたしの民の君ヒゼキヤに言いなさい、﹃あ
ちち かみ しゅ おお いのり き
なたの父ダビデの神、主はこう仰せられる、わたしはあなたの祈を聞き、
なみだ み み か め
あなたの涙を見た。見よ、わたしはあなたをいやす。三日目にはあなた
しゅ みや のぼ ねん ま
は主の宮に上るであろう。 六かつ、わたしはあなたのよわいを十五年増
まち おう て すく
す。わたしはあなたと、この町とをアッスリヤの王の手から救い、わた
な まち まも
しの名のため、またわたしのしもべダビデのためにこの町を守るであろ
い ほ も
う﹄﹂。 七そしてイザヤは言った、﹁干しいちじくのひとかたまりを持っ
はれもの なお
てきて、それを腫物につけさせなさい。そうすれば直るでしょう﹂。
い しゅ こと か め
ヒゼキヤはイザヤに言った、
﹁主がわたしをいやされる事と、三日目に
列王紀下


しゅ いえ のぼ
わたしが主の家に上ることについて、どんなしるしがありましょうか﹂。

99
い しゅ やくそく おこな しゅ
九イザヤは言った、
﹁主が約束されたことを行われることについては、主
え ひかげ ど すす
からこのしるしを得られるでしょう。すなわち日影が十度進むか、ある
ど しりぞ こた ひかげ ど すす
いは十度 退くかです﹂。 一〇ヒゼキヤは答えた、﹁日影が十度進むことは
こと ひかげ ど しりぞ
た や す い 事 で す。む し ろ 日影 を 十 度 退 か せ て く だ さ い﹂。 一 一そ こ で
よげんしゃ しゅ よ ひ とき うえ すす ひかげ
預言者イザヤが主に呼ばわると、アハズの日時計の上に進んだ日影を、
ど しりぞ
十度 退かせられた。
こ おう
一二 そのころ、バラダンの子であるバビロンの王メロダクバラダンは、
てがみ おく もの も しせつ
手紙と贈り物を持たせて使節をヒゼキヤにつかわした。これはヒゼキ
や き かれ よろこ むか
ヤが病んでいることを聞いたからである。 一三ヒゼキヤは彼らを喜び迎
ほうもつ くら きんぎん こうりょう きちょう あぶら ぶ き くら そうこ
えて、宝物の蔵、金銀、香 料、貴重な油および武器倉、ならびにその倉庫
もの かれ み いえ もの くに もの
にあるすべての物を彼らに見せた。家にある物も、国にある物も、ヒゼ
かれ み もの とき よげんしゃ
キヤが彼らに見せない物は一つもなかった。 一四その時、預言者イザヤ
おう い ひとびと なに い
はヒゼキヤ王のもとにきて言った、﹁あの人々は何を言いましたか。ど
列王紀下

い かれ とお くに
こからきたのですか﹂。ヒゼキヤは言った、
﹁彼らは遠い国から、バビロ

100
い かれ いえ なに み
ンからきたのです﹂。 一五イザヤは言った、﹁彼らはあなたの家で何を見
こた い いえ もの みな み
ましたか﹂。ヒゼキヤは答えて言った、﹁わたしの家にある物を皆見まし
そうこ かれ み もの
た。わたしの倉庫のうちには、わたしが彼らに見せない物は一つもあり
ません﹂。
い しゅ ことば き しゅ
一六そこでイザヤはヒゼキヤに言った、
﹁主の言葉を聞きなさい、 一七﹃主
い み いえ もの せんぞ
は言われる、見よ、すべてあなたの家にある物、および、あなたの先祖
こんにち つ もの はこ さ ひ く
たちが今日までに積みたくわえた物の、バビロンに運び去られる日が来
なに のこ み で
る。何も残るものはないであろう。 一八また、あなたの身から出るあな
こ つ さ おう きゅうでん かんがん
た の 子 た ち も 連 れ 去 ら れ、バ ビ ロ ン の 王 の 宮 殿 で 宦官 と な る で あ ろ
い い しゅ ことば
う﹄﹂。 一九ヒ ゼ キ ヤ は イ ザ ヤ に 言 っ た、﹁あ な た が 言 わ れ た 主 の 言葉 は
けっこう かれ じぶん よ へいわ あんぜん よ
結構です﹂。彼は﹁せめて自分が世にあるあいだ、平和と安全があれば良
おも
いことではなかろうか﹂と思ったからである。
た じせき ぶゆう かれ ちょすいち すいどう
ヒ ゼ キ ヤ の そ の 他 の 事績 と そ の 武勇 お よ び、彼 が 貯水池 と 水道 を
列王紀下

二〇
つく まち みず ひ こと おう れきだいし しょ
作って、町に水を引いた事は、ユダの王の歴代志の書にしるされている

101
せんぞ とも ねむ こ
ではないか。 二一ヒゼキヤはその先祖たちと共に眠って、その子マナセ
かわ おう
が代って王となった。
第二一章
さい おう ねん あいだ よ おさ
一マナセは十二歳で王となり、五十五年の間、エルサレムで世を治めた。
はは な しゅ ひとびと まえ
母 の 名 は ヘ フ ジ バ と い っ た。 二マ ナ セ は 主 が イ ス ラ エ ル の 人々 の 前 か
お はら くにぐに たみ にく しゅ め まえ
ら追い払われた国々の民の憎むべきおこないにならって、主の目の前に
あく かれ ちち たか ところ た なお
悪をおこなった。 三彼は父ヒゼキヤがこわした高き所を建て直し、また
おう さいだん きず
イスラエルの王アハブがしたようにバアルのために祭壇を築き、アシラ
ぞう つく てん ばんしょう おが つか しゅ みや
像を造り、かつ天の万 象を拝んで、これに仕えた。 四また主の宮のうち
すうこ さいだん きず しゅ な お
に数個の祭壇を築いた。これは主が﹁わたしの名をエルサレムに置こ
い みや かれ しゅ みや にわ てん ばんしょう
う﹂と言われたその宮である。 五彼はまた主の宮の二つの庭に天の万 象
列王紀下

さいだん きず こ ひ や もの うらな
のために祭壇を築いた。 六またその子を火に焼いてささげ物とし、占い

102
まじゅつ おこな くちよ まほうつかい もち しゅ め まえ おお あく い
をし、魔術を行い、口寄せと魔法使を用い、主の目の前に多くの悪を行っ
しゅ いか ひ おこ かれ ちょうぞう つく しゅ みや
て、主の怒りを引き起した。 七彼はまたアシラの彫 像を作って主の宮に
お しゅ みや こ い
置いた。主はこの宮についてダビデとその子ソロモンに言われたこと
みや ぶぞく
がある、﹁わたしはこの宮と、わたしがイスラエルのすべての部族のうち
えら な えいえん お かれ
から選んだエルサレムとに、わたしの名を永遠に置く。 八もし、彼らが
めい こと めい
わたしが命じたすべての事、およびわたしのしもべモーセが命じたすべ
りっぽう まも おこな あし かれ せんぞ
ての律法を守り行うならば、イスラエルの足を、わたしが彼らの先祖た
あた ち かさ まよ だ かれ
ちに与えた地から、重ねて迷い出させないであろう﹂。 九しかし彼らは
き ひとびと あく おこな しゅ
聞きいれなかった。マナセが人々をいざなって悪を行 ったことは、主
ひとびと まえ ほろ くにぐに たみ
がイスラエルの人々の前に滅ぼされた国々の民よりもはなはだしかっ
た。
しゅ よげんしゃ い
一〇 そこで主はそのしもべである預言者たちによって言われた、 一一﹁ユ
おう にく こと おこな かれ さき
ダの王マナセがこれらの憎むべき事を行い、彼の先にあったアモリびと
列王紀下

い こと わる こと おこな ぐうぞう
の行ったすべての事よりも悪い事を行い、またその偶像をもってユダに

103
つみ おか かみ しゅ おお み
罪を犯させたので、 一二イスラエルの神、主はこう仰せられる、見よ、わ
わざわい き もの
たしはエルサレムとユダに災をくだそうとしている。これを聞く者は、
みみ な はか
その耳が二つながら鳴るであろう。 一三わたしはサマリヤをはかった測
いえ もち さ ふ ひと
りなわと、アハブの家に用いた下げ振りをエルサレムにほどこし、人が
さら ふ さ
皿をぬぐい、これをぬぐって伏せるように、エルサレムをぬぐい去る。 一
し ぎょう たみ のこ す かれ てき て わた かれ
わたしは、わたしの嗣 業の民の残りを捨て、彼らを敵の手に渡す。彼

てき りゃくだつ かれ
らはもろもろの敵のえじきとなり、 略 奪にあうであろう。 一五これは彼
せんぞ で ひ こんにち いた かれ
らの先祖たちがエジプトを出た日から今日に至るまで、彼らがわたしの
め まえ あく い いか
目の前に悪を行って、わたしを怒らせたためである﹂。
しゅ め まえ あく い つみ おか つみ
一六 マナセはまた主の目の前に悪を行って、ユダに罪を犯させたその罪
つみ もの ち おお なが はて
のほかに、罪なき者の血を多く流して、エルサレムのこの果から、かの
はて み
果にまで満たした。
た じせき かれ こと おか
マナセのその他の事績と、彼がおこなったすべての事およびその犯
列王紀下

一七
つみ おう れきだいし しょ
した罪は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。 一八マ

104
せんぞ とも ねむ いえ その その ほうむ
ナセは先祖たちと共に眠って、その家の園すなわちウザの園に葬られ、
こ かわ おう
その子アモンが代って王となった。
おう とき さい ねん あいだ よ
一九 アモンは王となった時二十二歳であって、エルサレムで二年の間、世
おさ はは むすめ な
を治めた。母はヨテバのハルツの娘で、名をメシュレメテといった。 二〇
ちち しゅ め まえ あく おこな
アモンはその父マナセのおこなったように、主の目の前に悪を行 った。
かれ ちち あゆ みち あゆ ちち つか ぐうぞう つか
二一 すなわち彼はすべてその父の歩んだ道に歩み、父の仕えた偶像に仕
おが せんぞ かみ しゅ す しゅ みち あゆ
えて、これを拝み、 二二先祖たちの神、主を捨てて、主の道に歩まなかっ
けらい かれ てき ととう むす おう いえ
た。 二三アモンの家来たちはついに彼に敵して徒党を結び、王をその家
ころ くに たみ おう てき ととう むす もの
で殺したが、二四国の民は、アモン王に敵して徒党を結んだ者をことごと
う ころ くに たみ こ おう
く撃ち殺した。そして国の民はアモンの子ヨシヤを王としてアモンに
かわ た じせき おう れきだいし しょ
代らせた。 二五アモンのその他の事績は、ユダの王の歴代志の書にしる
その はか ほうむ
されているではないか。 二六アモンはウザの園にある墓に葬られ、その
こ かわ おう
子ヨシヤが代って王となった。
列王紀下

105
第二二章
さい おう ねん あいだ よ おさ
一ヨシヤは八歳で王となり、エルサレムで三十一年の間、世を治めた。
はは むすめ な しゅ め
母はボヅカテのアダヤの娘で、名をエデダといった。 二ヨシヤは主の目
こと おこな せんぞ みち あゆ みぎ ひだり まが
にかなう事を行い、先祖ダビデの道に歩んで右にも左にも曲らなかっ
た。
おう だい ねん おう こ こ
三 ヨシヤ王の第十八年に王はメシュラムの子アザリヤの子である
しょきかん しゅ みや い だい さ い し
書記官シャパンを主の宮につかわして言った、 四﹁大祭司ヒルキヤのも
い しゅ みや ぎん もん まも もの
とへのぼって行って、主に宮にはいってきた銀、すなわち門を守る者が
たみ あつ そうがく かれ かぞ こうじ しゅ
民から集めたものの総額を彼に数えさせ、 五それを工事をつかさどる主
みや かんとくもの て わた かれ しゅ みや こうじ もの わた
の宮の監督者の手に渡させ、彼らから主の宮で工事をする者にそれを渡
みや やぶ つくろ もっこう けんちく し いしく
して、宮の破れを繕わせなさい。 六すなわち木工と建築師と石工にそれ
わた みや つくろ ざいもく き いし か かれ
を 渡 し、ま た 宮 を 繕 う 材木 と 切 り 石 を 買 わ せ な さ い。 七た だ し 彼 ら は
列王紀下

しょうじき こと おこな かれ わた ぎん かれ けいさん およ


正 直に事を行うから、彼らに渡した銀については彼らと計算するに及

106
ばない﹂。
ときだい さ い し しょきかん い しゅ みや
八その時大祭司ヒルキヤは書記官シャパンに言った、﹁わたしは主の宮
りっぽう しょ み しょもつ
で律法の書を見つけました﹂。そしてヒルキヤがその書物をシャパンに
わた かれ よ しょきかん おう い
渡したので、彼はそれを読んだ。 九書記官シャパンは王のもとへ行き、
おう ほうこく い みや ぎん みな だ
王に報告して言った、﹁しもべどもは宮にあった銀を皆出して、それを
こうじ しゅ みや かんとくもの て わた しょきかん
工事 を つ か さ ど る 主 の 宮 の 監督者 の 手 に 渡 し ま し た﹂。 一〇書記官 シ ャ
おう つ さいし しょもつ わた
パンはまた王に告げて﹁祭司ヒルキヤはわたしに一つの書物を渡しまし
い おう まえ よ
た﹂と言い、それを王の前で読んだ。
おう りっぽう しょ ことば き ころも さ おう
一一 王はその律法の書の言葉を聞くと、その衣を裂いた。 一二そして王は
さいし こ こ
祭司 ヒ ル キ ヤ と、シ ャ パ ン の 子 ア ヒ カ ム と、ミ カ ヤ の 子 ア ク ボ ル と、
しょきかん おう だいじん めい い
書記官シャパンと、王の大臣アサヤとに命じて言った、 一三﹁あなたがた
い み しょもつ ことば たみ
は行って、この見つかった書物の言葉について、わたしのため、民のた
ぜんこく しゅ たず せんぞ
め、またユダ全国のために主に尋ねなさい。われわれの先祖たちがこの
列王紀下

しょもつ ことば き したが こと


書物の言葉に聞き従わず、すべてわれわれについてしるされている事を

107
おこな しゅ おお いか はっ
行わなかったために、主はわれわれにむかって、大いなる怒りを発して
おられるからです﹂。
さいし
一四そこで祭司ヒルキヤ、アヒカム、アクボル、シャパンおよびアサヤは
つま おんな よ げ ん し ゃ い
シャルムの妻である女 預言者ホルダのもとへ行った。シャルムはハル
こ こ いしょう まも もの とき
ハスの子であるテクワの子で、衣装べやを守る者であった。その時ホル
したまち す かれ つ
ダはエルサレムの下町に住んでいた。彼らがホルダに告げたので、 一五
かれ い かみ しゅ おお
ホルダは彼らに言った、
﹁イスラエルの神、主はこう仰せられます、
﹃あ
ひと い しゅ い
なたがたをわたしにつかわした人に言いなさい。 一六主はこう言われま
み おう よ しょもつ ことば
す、見よ、わたしはユダの王が読んだあの書物のすべての言葉にした
わざわい ところ す たみ くだ
がって、 災をこの所と、ここに住んでいる民に下そうとしている。 一七
かれ す た かみがみ こう じぶん て つく
彼らがわたしを捨てて他の神々に香をたき、自分たちの手で作ったもろ
もの いか
もろの物をもって、わたしを怒らせたからである。それゆえ、わたしは
ところ いか ひ はっ き
この所にむかって怒りの火を発する。これは消えることがないであろ
列王紀下

しゅ たず おう
う﹄。 一八ただし主に尋ねるために、あなたがたをつかわしたユダの王に

108
い き ことば かみ しゅ
はこう言いなさい、﹃あなたが聞いた言葉についてイスラエルの神、主は
おお ところ す
こう仰せられます、 一九あなたは、わたしがこの所と、ここに住んでいる
たみ あ ち い
民にむかって、これは荒れ地となり、のろいとなるであろうと言うのを
き とき こころ く しゅ まえ ころも さ まえ な
聞いた時、心に悔い、主の前にへりくだり、衣を裂いてわたしの前に泣
い き しゅ い
いたゆえ、わたしもまたあなたの言うことを聞いたのであると主は言わ
み せんぞ あつ
れる。 二〇それゆえ、見よ、わたしはあなたを先祖たちのもとに集める。
やす はか あつ ところ くだ わざわい
あなたは安らかに墓に集められ、わたしがこの所に下すもろもろの災を
め み かれ ことば おう も かえ
目に見ることはないであろう﹄﹂。彼らはこの言葉を王に持ち帰った。
第二三章
おう ひと ちょうろう
そこで王は人をつかわしてユダとエルサレムの長 老たちをことごと

あつ おう ひとびと
く集めた。 二そして王はユダのもろもろの人々と、エルサレムのすべて
列王紀下

じゅうみん さいし よげんしゃ だいしょう たみ したが しゅ みや


の住 民および祭司、預言者ならびに大 小のすべての民を従えて主の宮

109
しゅ みや み けいやく しょ ことば かれ よ
にのぼり、主の宮で見つかった契約の書の言葉をことごとく彼らに読み
き つ おう はしら た しゅ まえ けいやく た
聞かせた。 三次いで王は柱のかたわらに立って、主の前に契約を立て、
しゅ したが あゆ こころ せいしん しゅ いまし
主に従 って歩み、 心をつくし精神をつくして、主の戒めと、あかしと、
さだ まも しょもつ けいやく ことば おこな
定めとを守り、この書物にしるされているこの契約の言葉を行うことを
ちか たみ みな けいやく くわ
誓った。民は皆その契約に加わった。
おう だい さ い し つ さいし もん まも
こうして王は大祭司ヒルキヤと、それに次ぐ祭司たちおよび門を守る

もの めい しゅ しんでん てん ばんしょう
者どもに命じて、主の神殿からバアルとアシラと天の万 象とのために
つく うつわ と だ そと の
作ったもろもろの器を取り出させ、エルサレムの外のキデロンの野でそ
や はい も い まちまち
れを焼き、その灰をベテルに持って行かせた。 五また、ユダの町々とエ
しゅうい たか ところ こう おう にんめい
ルサレムの周囲にある高き所で香をたくためにユダの王たちが任命し
さいし はい ひ つき せいしゅく てん ばんしょう こう
た祭司たちを廃し、またバアルと日と月と星 宿と天の万 象とに香をた
もの はい かれ しゅ みや ぞう と だ
く者どもをも廃した。 六彼はまた主の宮からアシラ像を取り出し、エル
そと かわ も い かわ や
サレムの外のキデロン川に持って行って、キデロン川でそれを焼き、そ
列王紀下

う くだ こな こな たみ はか な しゅ みや
れを打ち砕いて粉とし、その粉を民の墓に投げすてた。 七また主の宮に

110
しんでんだんしょう いえ おんな ぞう か
あった神殿 男 娼の家をこわした。そこは女たちがアシラ像のために掛
まく お ところ かれ まちまち さいし
け 幕 を 織 る 所 で あ っ た。 八彼 は ま た ユ ダ の 町々 か ら 祭司 を こ と ご と く
め さいし こう たか ところ けが
召しよせ、また祭司が香をたいたゲバからベエルシバまでの高き所を汚
もん たか ところ たか ところ まち
し、また門にある高き所をこわした。これらの高き所は町のつかさヨ
もん いりぐち まち もん ひと ひだり たか ところ
シュアの門の入口にあり、町の門にはいる人の左にあった。 九高き所の
さいし しゅ さいだん
祭司たちはエルサレムで主の祭壇にのぼることをしなかったが、その
きょうだい たね い た おう
兄 弟たちのうちにあって種入れぬパンを食べた。 一〇王はまた、だれも
むすめ ひ や もの
そのむすこ娘を火に焼いて、モレクにささげ物とすることのないよう
たに けが おう
に、ベンヒンノムの谷にあるトペテを汚した。 一一またユダの王たちが
たいよう しゅ みや もん お うま けいだい じじゅう
太陽にささげて主の宮の門に置いた馬を、境内にある侍従ナタンメレク
うつ たいよう くるま ひ や おう
のへやのかたわらに移し、太陽の車を火で焼いた。 一二また王はユダの
おう たかどの おくじょう つく さいだん しゅ みや
王たちがアハズの高殿の屋 上に造った祭壇と、マナセが主の宮の二つ
にわ つく さいだん う くだ くだ
の庭に造った祭壇とをこわして、それを打ち砕き、砕けたものをキデロ
列王紀下

かわ な おう おう むかし
ン川に投げすてた。 一三また王はイスラエルの王ソロモンが昔 シドンび

111
にく もの にく もの
との憎むべき者アシタロテと、モアブびとの憎むべき者ケモシと、アン
ひとびと にく もの ひがし めつぼう やま
モンの人々の憎むべき者ミルコムのためにエルサレムの東、滅亡の山の
みなみ きず たか ところ けが せきちゅう う くだ
南に築いた高き所を汚した。 一四またもろもろの石 柱を打ち砕き、アシ
ぞう き たお ひと ほね ところ み
ラ像を切り倒し、人の骨をもってその所を満たした。
さいだん つみ おか こ
一五 また、ベテルにある祭壇と、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤ
つく たか ところ さいだん たか ところ かれ
ラベアムが造った高き所、すなわちその祭壇と高き所とを彼はこわし、
いし う くだ こな ぞう や
その石を打ち砕いて粉とし、かつアシラ像を焼いた。 一六そしてヨシヤ
み やま はか み ひと はか ほね
は身をめぐらして山に墓のあるのを見、人をつかわしてその墓から骨を
と さいだん うえ や けが むかし かみ ひと しゅ
取らせ、それをその祭壇の上で焼いて、それを汚した。 昔、神の人が主
ことば こと よ つ
の言葉としてこの事を呼ばわり告げたが、そのとおりになった。 一七そ
とき み せきひ なに たず まち ひとびと かれ
の時ヨシヤは﹁あそこに見える石碑は何か﹂と尋ねた。町の人々が彼に
さいだん たい おこな こと
﹁あれはあなたがベテルの祭壇に対して行われたこれらの事を、ユダか
よげん かみ ひと はか い かれ い
らきて預言した神の人の墓です﹂と言ったので、 一八彼は言った、
﹁その
列王紀下

お ほね うつ
ままにして置きなさい。だれもその骨を移してはならない﹂。それでそ

112
ほね よげんしゃ ほね て
の骨と、サマリヤからきた預言者の骨には手をつけなかった。 一九また
おう まちまち つく しゅ いか たか ところ
イスラエルの王たちがサマリヤの町々に造って、主を怒らせた高き所の
いえ みな と のぞ かれ い
家も皆ヨシヤは取り除いて、彼がすべてベテルに行ったようにこれに
い かれ たか ところ さいし みなさいだん うえ
行った。 二〇彼はまた、そこにあった高き所の祭司たちを皆祭壇の上で
ころ ひと ほね さいだん うえ や かれ かえ
殺し、人の骨を祭壇の上で焼いた。こうして彼はエルサレムに帰った。
おう たみ めい けいやく しょ
二一 そして王はすべての民に命じて、
﹁あなたがたはこの契約の書にしる
かみ しゅ すぎこし まつり と おこな
されているように、あなたがたの神、主に過越の祭を執り行いなさい﹂と
い ひ
言った。 二二さばきづかさがイスラエルをさばいた日からこのかた、ま
おう おう よ すぎこし まつり
たイスラエルの王たちとユダの王たちの世にも、このような過越の祭を
と おこな おう だい ねん
執り行 ったことはなかったが、 二三ヨシヤ王の第十八年に、エルサレム
すぎこし まつり しゅ と おこな
でこの過越の祭を主に執り行 ったのである。
さいし しゅ みや み しょもつ
二四 ヨシヤはまた祭司ヒルキヤが主の宮で見つけた書物にしるされてい
りっぽう ことば かくじつ おこな くちよ うらな し ぐうぞう
る律法の言葉を確実に行うために、口寄せと占い師と、テラピムと偶像
列王紀下

ち み にく もの と
およびユダの地とエルサレムに見られるもろもろの憎むべき者を取り

113
のぞ こころ せいしん ちから
除いた。 二五ヨシヤのように心をつくし、精神をつくし、 力をつくして
りっぽう しゅ よ たよ おう さき
モーセのすべての律法にしたがい、主に寄り頼んだ王はヨシヤの先には
のち かれ もの おこ
なく、またその後にも彼のような者は起らなかった。
しゅ はっ はげ おお いか
けれども主はなおユダにむかって発せられた激しい大いなる怒りを
二六
はら おこな
やめられなかった。これはマナセがもろもろの腹だたしい行いをもっ
しゅ いか しゅ い
て主を怒らせたためである。 二七それゆえ主は言われた、
﹁わたしはイス
うつ め まえ うつ えら
ラエルを移したように、ユダをもわたしの目の前から移し、わたしが選
まち な お い みや
んだこのエルサレムの町と、わたしの名をそこに置こうと言ったこの宮

とを捨てるであろう﹂。
た じせき かれ い こと おう
二八 ヨ シ ヤ の そ の 他 の 事績 と、彼 が 行 っ た す べ て の 事 は、ユ ダ の 王 の
れきだいし しょ よ
歴代志の書にしるされているではないか。 二九ヨシヤの世にエジプトの
おう おう い かわ
王パロ・ネコが、アッスリヤの王のところへ行こうと、ユフラテ川をさ
のぼ おう かれ むか う で い
して上ってきたので、ヨシヤ王は彼を迎え撃とうと出て行ったが、パロ・
列王紀下

かれ み かれ ころ けらい かれ
ネコは彼を見るや、メギドにおいて彼を殺した。 三〇その家来たちは彼

114
したい くるま の はこ かれ はか ほうむ
の 死体 を 車 に 載 せ、メ ギ ド か ら エ ル サ レ ム に 運 ん で 彼 の 墓 に 葬 っ た。
くに たみ こ た かれ あぶら そそ おう ちち かわ
国の民はヨシヤの子エホアハズを立て、彼に油を注ぎ、王として父に代
らせた。
おう とき さい げつ あいだ よ
三一エホアハズは王となった時二十三歳で、エルサレムで三か月の間、世
おさ はは むすめ な
を治めた。母はリブナのエレミヤの娘で、名をハムタルといった。 三二
せんぞ い しゅ め まえ あく おこな
エホアハズは先祖たちがすべて行ったように主の目の前に悪を行 った
かれ ち お
が、 三三パロ・ネコは彼をハマテの地のリブラにつないで置いて、エルサ
よ おさ ぎん きん
レムで世を治めることができないようにした。また銀百タラントと金
くに か こ
一タラントのみつぎを国に課した。 三四そしてパロ・ネコはヨシヤの子
ちち かわ おう な あらた
エリアキムを父ヨシヤに代って王とならせ、名をエホヤキムと改め、エ
ひ い い
ホアハズをエジプトへ引いて行った。エホアハズはエジプトへ行って
し きんぎん おく かれ
そこで死んだ。 三五エホヤキムは金銀をパロに送った。しかし彼はパロ
いのち したが かね おく くに ぜい か くに たみ
の命に従 って金を送るために国に税を課し、国の民おのおのからその
列王紀下

かぜい きんぎん と た おく
課税にしたがって金銀をきびしく取り立てて、それをパロ・ネコに送っ

115
た。
さい おう ねん あいだ よ おさ
三六 エホヤキムは二十五歳で王となり、エルサレムで十一年の間、世を治
はは むすめ な
めた。母はルマのペダヤの娘で、名をゼビダといった。 三七エホヤキム
せんぞ い しゅ め まえ あく おこな
は先祖たちがすべて行ったように主の目の前に悪を行 った。
第二四章
よ おう のぼ
一エホヤキムの世にバビロンの王ネブカデネザルが上ってきたので、エ
かれ れいぞく ねん へ ひるがえ かれ
ホヤキムは彼に隷属して三年を経たが、ついに翻 って彼にそむいた。 二
しゅ りゃくだつたい りゃくだつたい りゃくだつ
主はカルデヤびとの略 奪 隊、スリヤびとの略 奪 隊、モアブびとの略 奪
たい りゃくだつたい せ
隊、アンモンびとの略 奪 隊をつかわしてエホヤキムを攻められた。す
せ ほろ かれ しゅ
なわちユダを攻め、これを滅ぼすために彼らをつかわされた。主がその
よげんしゃ かた ことば
し も べ で あ る 預言者 た ち に よ っ て 語 ら れ た 言葉 の と お り で あ る。 三こ
列王紀下

まった しゅ いのち のぞ しゅ め まえ はら
れは全く主の命によってユダに臨んだもので、ユダを主の目の前から払

116
のぞ つみ
い除くためであった。すなわちマナセがすべておこなったその罪のた
かれ つみ ひと ち なが つみ ひと ち み
め、 四また彼が罪なき人の血を流し、罪なき人の血をエルサレムに満た
しゅ つみ
したためであって、主はその罪をゆるそうとはされなかった。 五エホヤ
た じせき かれ こと おう
キ ム の そ の 他 の 事績 と、彼 が お こ な っ た す べ て の 事 は、ユ ダ の 王 の
れきだいし しょ せんぞ
歴代志 の 書 に し る さ れ て い る で は な い か。 六エ ホ ヤ キ ム は 先祖 た ち と
ねむ こ かわ おう おう
ともに眠り、その子エホヤキンが代って王となった。 七エジプトの王は
ふたた くに で おう かわ
再びその国から出てこなかった。バビロンの王がエジプトの川からユ
かわ おう ぞく と
フラテ川まで、すべてエジプトの王に属するものを取ったからである。
おう とき さい げつ あいだ よ
八エホヤキンは王となった時十八歳で、エルサレムで三か月の間、世を
おさ はは むすめ な
治めた。母はエルサレムのエルナタンの娘で、名をネホシタといった。
ちち しゅ め まえ あく
九エホヤキンはすべてその父がおこなったように主の目の前に悪を
おこな
行 った。
おう けらい
そのころ、バビロンの王ネブカデネザルの家来たちはエルサレムに
列王紀下

一〇
せ のぼ まち かこ けらい まち かこ
攻め上って、町を囲んだ。 一一その家来たちが町を囲んでいたとき、バビ

117
おう まち せ おう
ロンの王ネブカデネザルもまた町に攻めてきた。 一二ユダの王エホヤキ
はは けらい じじゅう とも で
ンはその母、その家来、そのつかさたち、および侍従たちと共に出て、バ
おう こうふく おう かれ ほ りょ
ビロンの王に降服したので、バビロンの王は彼を捕虜とした。これはネ
ちせい だい ねん かれ しゅ みや
ブカデネザルの治世の第八年であった。 一三彼はまた主の宮のもろもろ
ほうもつ おう いえ ほうもつ も だ おう
の宝物および王の家の宝物をことごとく持ち出し、イスラエルの王ソロ
つく しゅ しんでん お きん うつわ き しゅ
モンが造って主の神殿に置いたもろもろの金の器を切りこわした。主
い かれ しみん
が言われたとおりである。 一四彼はまたエルサレムのすべての市民、お
ゆうし もっこう か じ
よびすべてのつかさとすべての勇士、ならびにすべての木工と鍛冶一万
にん とら い のこ もの くに たみ まず もの
人を捕えて行った。残った者は国の民の貧しい者のみであった。 一五さ
かれ とら い おう はは おう つま
らに彼はエホヤキンをバビロンに捕えて行き、また王の母、王の妻たち、
じじゅう くに ひとびと とら
および侍従と国のうちのおもな人々をも、エルサレムからバビロンへ捕
い おう ゆうかん もの にん もっこう
え て 行 っ た。 一 六ま た バ ビ ロ ン の 王 は す べ て 勇敢 な 者 七 千 人、木工 と
か じ にん つよ よ たたか もの とら つ
鍛冶一千人ならびに強くて良く戦う者をみな捕えてバビロンへ連れて
列王紀下

い おう ちち きょうだい
行 っ た。 一七そ し て バ ビ ロ ン の 王 は エ ホ ヤ キ ン の 父 の 兄 弟 マ ッ タ ニ ヤ

118
おう か な あらた
を王としてエホヤキンに代え、名をゼデキヤと改めた。
さい おう ねん あいだ よ おさ
一八 ゼデキヤは二十一歳で王となり、エルサレムで十一年の間、世を治め
はは むすめ な
た。母はリブナのエレミヤの娘で、名をハムタルといった。 一九ゼデキ
しゅ め まえ あく おこな
ヤはすべてエホヤキムがおこなったように主の目の前に悪を行 った。
こと た しゅ いか
二〇 エルサレムとユダにこのような事の起ったのは主の怒りによるの
しゅ かれ まえ はら
で、主はついに彼らをみ前から払いすてられた。
おう
さてゼデキヤはバビロンの王にそむいた。
第二五章
ちせい だい ねん がつ か おう
一そこでゼデキヤの治世の第九年の十月十日に、バビロンの王ネブカデ
ぐんぜい ひき じん
ネザルはもろもろの軍勢を率い、エルサレムにきて、これにむかって陣
は しゅうい きず せ まち かこ
を 張 り、周囲 に と り で を 築 い て こ れ を 攻 め た。 二こ う し て 町 は 囲 ま れ
列王紀下

おう だい ねん およ がつ か まち
て、ゼデキヤ王の第十一年にまで及んだが、三その四月九日になって、町

119
はげ ち たみ しょくもつ まち
のうちにききんが激しくなり、その地の民に食 物がなくなった。 四町の
いっかく やぶ おう へいし おう その
一角がついに破れたので、王はすべての兵士とともに、王の園のかたわ
じょうへき もん みち よる に だ
らにある二つの城 壁のあいだの門の道から夜のうちに逃げ出して、カ
まち かこ あいだ ほう お の
ルデヤびとが町を囲んでいる間に、アラバの方へ落ち延びた。 五しかし
ぐんぜい おう お へいち かれ お かれ
カルデヤびとの軍勢は王を追い、エリコの平地で彼に追いついた。彼の
ぐんぜい かれ はな ち さ おう とら かれ
軍勢はみな彼を離れて散り去ったので、 六カルデヤびとは王を捕え、彼
おう ひ かれ つみ さだ
をリブラにいるバビロンの王のもとへ引いていって彼の罪を定め、 七ゼ
こ め まえ ころ め あし
デキヤの子たちをゼデキヤの目の前で殺し、ゼデキヤの目をえぐり、足
つ い
かせをかけてバビロンへ連れて行った。
おう だい ねん ごがつ な ぬ か
八バビロンの王ネブカデネザルの第十九年の五 月 七日に、バビロンの
おう しん じえい ちょう しゅ みや おう いえ
王の臣、侍衛の長 ネブザラダンがエルサレムにきて、 九主の宮と王の家
いえ や ひ おお
とエルサレムのすべての家を焼いた。すなわち火をもってすべての大
いえ や じえい ちょう とも
きな家を焼いた。 一〇また侍衛の長と共にいたカルデヤびとのすべての
列王紀下

ぐんぜい しゅうい じょうへき はかい じえい ちょう


軍勢 は エ ル サ レ ム の 周囲 の 城 壁 を 破壊 し た。 一一そ し て 侍衛 の 長 ネ ブ

120
まち のこ たみ おう こうふく もの のこ
ザラダンは、町に残された民およびバビロン王に降服した者と残りの
ぐんしゅう とら うつ じえい ちょう ち まず もの のこ
群 衆を捕え移した。 一二ただし侍衛の長はその地の貧しい者を残して、
つく もの のうふ
ぶどうを作る者とし、農夫とした。
しゅ みや せいどう はしら しゅ みや せんばん だい せいどう
一三 カルデヤびとはまた主の宮の青銅の柱と、主の宮の洗盤の台と、青銅
うみ くだ せいどう はこ じゅうのう
の海を砕いて、その青銅をバビロンに運び、 一四またつぼと、 十 能と、
しんき こう も さら しんでん つとめ もち せいどう うつわ
心切りばさみと、香を盛る皿およびすべて神殿の務に用いる青銅の器、一
しんと ざら はち と さ じえい ちょう きん つく もの ぎん
五また心取り皿と鉢を取り去った。侍衛の長はまた金で作った物と銀
つく もの と さ しゅ みや つく
で作った物を取り去った。 一六ソロモンが主の宮のために造った二つの
はしら うみ せんばん だい うつわ せいどう おも
柱と、一つの海と洗盤の台など、これらのもろもろの器の青銅の重さは
はか はしら たか
量ることができなかった。 一七一つの柱の高さは十八キュビトで、その
うえ せいどう ちゅうとう ちゅうとう たか ちゅうとう しゅうい あみ
上に青銅の柱 頭があり、柱 頭の高さは三キュビトで、柱 頭の周囲に網
さいく せいどう た はしら あみ さ い く
細工とざくろがあって、みな青銅であった。他の柱もその網細工もこれ
おな
と同じであった。
列王紀下

じえい ちょう さ い し ちょう じせき さいし にん もん まも


一八 侍衛の長は祭司 長 セラヤと次席の祭司ゼパニヤと三人の門を守る

121
もの とら へいし やくにん おう まえ もの
者を捕え、一九また兵士をつかさどるひとりの役人と、王の前にはべる者
まち み もの にん ち たみ つの ぐんぜい ちょう
の う ち、町 で 見 つ か っ た 者 五 人 と、そ の 地 の 民 を 募 っ た 軍勢 の 長 の
しょきかん まち み ち たみ にん まち とら さ
書記官と、町で見つかったその地の民六十人を町から捕え去った。 二〇
じえい ちょう かれ とら おう
侍衛の長 ネブザラダンは彼らを捕えて、リブラにいるバビロンの王の
つ い おう ち かれ
もとへ連れて行ったので、 二一バビロンの王はハマテの地のリブラで彼
う ころ ち とら うつ
らを撃ち殺した。このようにしてユダはその地から捕え移された。
おう ち のこ
二二さてバビロンの王ネブカデネザルはユダの地に残してとどまらせた
たみ うえ こ こ た そうとく
民の上に、シャパンの子アヒカムの子であるゲダリヤを立てて総督とし
とき ぐんぜい ちょう ぶ か ひとびと おう
た。 二三時に軍勢の長たちおよびその部下の人々は、バビロンの王がゲ
そうとく き
ダリヤを総督としたことを聞いて、ミヅパにいるゲダリヤのもとにき
こ こ
た。すなわちネタニヤの子イシマエル、カレヤの子ヨハナン、ネトパび
こ こ ぶ か
とタンホメテの子セラヤ、マアカびとの子ヤザニヤおよびその部下の
ひとびと かれ ぶ か ひとびと
人々がゲダリヤのもとにきた。 二四ゲダリヤは彼らとその部下の人々に
列王紀下

ちか い おそ
誓って言った、﹁あなたがたはカルデヤびとのしもべとなることを恐れ

122
ち す おう つか
てはならない。この地に住んで、バビロンの王に仕えなさい。そうすれ
こうふく え がつ おう
ばあなたがたは幸福を得るでしょう﹂。 二五ところが七月になって、王の
けっとう こ こ にん もの とも
血統のエリシャマの子であるネタニヤの子イシマエルは十人の者と共
う ころ かれ とも ひと
にきて、ゲダリヤを撃ち殺し、また彼と共にミヅパにいたユダヤ人と、カ
ころ だいしょう たみ ぐんぜい ちょう
ルデヤびとを殺した。 二六そのため、 大 小の民および軍勢の長たちは、
た い かれ おそ
みな立ってエジプトへ行った。彼らはカルデヤびとを恐れたからであ
る。
おう とら うつ のち ねん がつ にち
二七ユダの王エホヤキンが捕え移されて後三十七年の十二月二十七日、
おう ちせい だい ねん おう おう
すなわちバビロンの王エビルメロダクの治世の第一年に、王はユダの王
ごくや だ かれ なぐさ くらい かれ とも
エホヤキンを獄屋から出して 二八 ねんごろに彼を慰め、その位を彼と共
おう くらい たか
にバビロンにいる王たちの位よりも高くした。 二九こうしてエホヤキン
ごくや ころも ぬ いっしょう あいだ つね おう まえ しょくじ かれ
は そ の 獄屋 の 衣 を 脱 ぎ、 一 生 の 間、常 に 王 の 前 で 食事 し た。 三〇彼 は
いっしょう あいだ ひ び ぶん おう たま しょくもつ
一 生の間、たえず日々の分を王から賜わって、その食 物とした。
列王紀下

123
れ き だ い し じょう
歴代志 上
第一章
一アダム、セツ、エノス、 二ケナン、マハラレル、ヤレド、 三エノク、メ
トセラ、ラメク、 四ノア、セム、ハム、ヤペテ。

五ヤペテの子らはゴメル、マゴグ、マダイ、ヤワン、トバル、メセク、テ
こ こ
ラス。 六ゴメルの子らはアシケナズ、デパテ、トガルマ。 七ヤワンの子ら
はエリシャ、タルシシ、キッテム、ロダニム。
こ こ
八ハムの子らはクシ、エジプト、プテ、カナン。 九クシの子らはセバ、ハ

ビラ、サブタ、ラアマ、サブテカ。ラアマの子らはシバとデダン。 一〇ク
う はじ よ けんりょく もの
シはニムロデを生んだ。ニムロデは初めて世の権 力ある者となった。
歴代志上

一一 エジプトはルデびと、アナムびと、レハブびと、ナフトびと、 一二パ

テロスびと、カスルびと、カフトルびとを生んだ。カフトルびとからペ

0

リシテびとが出た。
ちょうし う
カナンは長子シドンとヘテを生んだ。 一四またエブスびと、アモリび
一三
と、ギルガシびと、 一五ヒビびと、アルキびと、セニびと、 一六アルワデび

と、ゼマリびと、ハマテびとを生んだ。

セムの子らはエラム、アシュル、アルパクサデ、ルデ、アラム、ウズ、
一七

ホル、ゲテル、メセクである。 一八アルパクサデはシラを生み、シラはエ
う こ うま な
ベルを生んだ。 一九エベルにふたりの子が生れた。ひとりの名はペレグ
かれ よ ち たみ ち わか おとうと な
︱︱彼の代に地の民が散り分れたからである︱︱その弟の名はヨクタ
ンといった。 二〇ヨクタンはアルモダデ、シャレフ、ハザル・マウテ、エ
ラ、 二一ハドラム、ウザル、デクラ、 二二エバル、アビマエル、シバ、 二三
う こ
オフル、ハビラ、ヨバブを生んだ。これらはみなヨクタンの子である。
セム、アルパクサデ、シラ、 二五エベル、ペレグ、リウ、 二六セルグ、ナ
二四
ホル、テラ、 二七アブラムすなわちアブラハムである。
歴代志上

こ かれ しそん
アブラハムの子らはイサクとイシマエルである。 二九彼らの子孫は
二八

1
つぎ ちょうし つぎ
次のとおりである。イシマエルの長子はネバヨテ、次はケダル、アデビ
エル、ミブサム、 三〇ミシマ、ドマ、マッサ、ハダデ、テマ、 三一エトル、
しそん
ネフシ、ケデマ。これらはイシマエルの子孫である。 三二アブラハムの
しそん つぎ かのじょ
そばめケトラの子孫は次のとおりである。彼女はジムラン、ヨクシャ
う こ
ン、メダン、ミデアン、イシバク、シュワを産んだ。ヨクシャンの子ら

はシバとデダンである。 三三ミデアンの子らはエパ、エペル、ヘノク、ア
しそん
ビダ、エルダア。これらはみなケトラの子孫である。
う こ
三四 ア ブ ラ ハ ム は イ サ ク を 生 ん だ。イ サ ク の 子 ら は エ サ ウ と イ ス ラ エ

ル。 三五エサウの子らはエリパズ、リウエル、エウシ、ヤラム、コラ。 三

エリパズの子らはテマン、オマル、ゼピ、ガタム、ケナズ、テムナ、ア


マレク。 三七リウエルの子らはナハテ、ゼラ、シャンマ、ミッザ。

三八 セイルの子らはロタン、ショバル、ヂベオン、アナ、デション、エゼ
こ いもうと
ル、デシャン。 三九ロタンの子らはホリとホマム。ロタンの妹はテムナ。
歴代志上


四〇 ショバルの子らはアルヤン、マナハテ、エバル、シピ、オナム。ヂベ

2
こ こ こ
オンの子らはアヤとアナ。 四一アナの子はデション。デションの子らは

ハムラン、エシバン、イテラン、ケラン。 四二エゼルの子らはビルハン、

ザワン、ヤカン。デシャンの子らはウズとアラン。
ひとびと おさ おう とき ち おさ
四三 イスラエルの人々を治める王がまだなかった時、エドムの地を治め
おう つぎ こ みやこ な
た王たちは次のとおりである。ベオルの子ベラ。その都の名はデナバ
し こ かわ おう
と い っ た。 四 四ベ ラ が 死 ん で、ボ ズ ラ の ゼ ラ の 子 ヨ バ ブ が 代 っ て 王 と
し ち かわ おう
なった。 四五ヨバブが死んで、テマンびとの地のホシャムが代って王と
し こ かわ おう
なった。 四六ホシャムが死んで、ベダテの子ハダデが代って王となった。
かれ の う かれ みやこ な
彼はモアブの野でミデアンを撃った。彼の都の名はアビテといった。 四
し かわ おう
七ハダデが死んで、マスレカのサムラが代って王となった。 四八サムラ
し かわ かわ おう
が死んで、ユフラテ川のほとりのレホボテのサウルが代って王となっ
し こ かわ おう
た。 四九サウルが死んで、アクボルの子バアル・ハナンが代って王となっ
し かわ おう かれ みやこ
た。 五〇バアル・ハナンが死んで、ハダデが代って王となった。彼の都の
歴代志上

な かれ つま むすめ な
名はパイといった。彼の妻はマテレデの娘であって、名をメヘタベルと

3
むすめ し
いった。マテレデはメザハブの娘である。 五一ハダデも死んだ。
ぞくちょう こう こう こう こう
エドムの族 長は、テムナ侯、アルヤ侯、エテテ侯、 五二アホリバマ侯、エ
こう こう こう こう こう こう
ラ侯、ピノン侯、五三ケナズ侯、テマン侯、ミブザル侯、五四マグデエル侯、
こう ぞくちょう
イラム侯。これらはエドムの族 長である。
第二章
こ つぎ
イスラエルの子らは次のとおりである。ルベン、シメオン、レビ、ユ

ダ、イッサカル、ゼブルン、 二ダン、ヨセフ、ベニヤミン、ナフタリ、ガ
こ にん
ド、アセル。 三ユダの子らはエル、オナン、シラである。この三人はカ
おんな う もの ちょうし
ナンの女 バテシュアがユダによって産んだ者である。ユダの長子エル
しゅ まえ あく おこな しゅ かれ ころ よめ
は主の前に悪を行 ったので、主は彼を殺された。 四ユダの嫁タマルはユ
う こ あ にん
ダによってペレヅとゼラを産んだ。ユダの子らは合わせて五人である。
歴代志上

こ こ
ペレヅの子らはヘヅロンとハムル。 六ゼラの子らはジムリ、エタン、ヘ

4
あ にん こ
マン、カルコル、ダラで、合わせて五人である。 七カルミの子はアカル。
ほうのうぶつ つみ おか なや もの
アカルは奉納物について罪を犯し、イスラエルを悩ました者である。 八

エタンの子はアザリヤである。
うま こ
ヘヅロンに生れた子らはエラメル、ラム、ケルバイである。 一〇ラムは

う しそん う
アミナダブを生み、アミナダブはユダの子孫のつかさナションを生ん
う う
だ。 一一ナションはサルマを生み、サルマはボアズを生み、 一二ボアズは
う う ちょうし
オベデを生み、オベデはエッサイを生んだ。 一三エッサイは長子エリア
つぎ だい だい だい
ブ、次にアビナダブ、第三にシメア、 一四第四にネタンエル、第五にラダ
だい だい う かれ しまい
イ、 一五第六にオゼム、第七にダビデを生んだ。 一六彼らの姉妹はゼルヤ
う こ
とアビガイルである。ゼルヤの産んだ子はアビシャイ、ヨアブ、アサヘ
にん う ちち
ルの三人である。 一七アビガイルはアマサを産んだ。アマサの父はイシ
マエルびとエテルである。
こ つま こ
ヘヅロンの子カレブはその妻アズバおよびエリオテによって子をも
歴代志上

一八

うけた。その子らはエシル、ショバブ、アルドンである。 一九カレブはア

5

ズバが死んだのでエフラタをめとった。エフラタはカレブによってホ
う う う
ルを産んだ。 二〇ホルはウリを生み、ウリはベザレルを生んだ。
ちち むすめ ところ かれ
二一そののちヘヅロンはギレアデの父マキルの娘の所にはいった。彼が
かのじょ さい かのじょ
彼女をめとったときは六十歳であった。彼女はヘヅロンによってセグ
う う ち
ブを産んだ。 二二セグブはヤイルを生んだ。ヤイルはギレアデの地に二
まち かれ
十 三 の 町 を も っ て い た。 二三し か し ゲ シ ュ ル と ア ラ ム は 彼 ら か ら ハ ボ
むらざと あ まち と
テ・ヤイルおよびケナテとその村里など合わせて六十の町を取った。こ
ちち しそん し
れらはみなギレアデの父マキルの子孫であった。 二四ヘヅロンが死んだ
ちち つま ところ かのじょ かれ
のち、カレブは父ヘヅロンの妻エフラタの所にはいった。彼女は彼にテ
ちち う
コアの父アシュルを産んだ。
ちょうし こ ちょうし つぎ
二五ヘヅロンの長子エラメルの子らは長子ラム、次はブナ、オレン、オゼ
つま な
ム、アヒヤである。 二六エラメルはまたほかの妻をもっていた。名をア
はは ちょうし こ
タラといって、オナムの母である。 二七エラメルの長子ラムの子らはマ
歴代志上


アツ、ヤミン、エケルである。 二八オナムの子らはシャンマイとヤダであ

6

る。シャンマイの子らはナダブとアビシュルである。 二九アビシュルの
つま な う
妻の名はアビハイルといって、アバンとモリデを産んだ。 三〇ナダブの
こ こ し
子らはセレデとアッパイムである。セレデは子をもたずに死んだ。 三一
こ こ こ
アッパイムの子はイシ、イシの子はセシャン、セシャンの子はアヘライ
きょうだい こ
である。 三二シャンマイの兄 弟 ヤダの子らはエテルとヨナタンである。
こ し こ
エテルは子をもたずに死んだ。 三三ヨナタンの子らはペレテとザザであ
いじょう しそん おとこ こ
る。以上はエラメルの子孫である。 三四セシャンには男の子はなく、た
おんな こ かれ よ どれい
だ女の子のみであったが、彼はヤルハと呼ぶエジプトびとの奴隷をもっ
むすめ どれい あた つま
て い た の で、 三五セ シ ャ ン は 娘 を 奴隷 ヤ ル ハ に 与 え て そ の 妻 と さ せ た。
かのじょ う う
彼女 は ヤ ル ハ に よ っ て ア ッ タ イ を 産 ん だ。 三六ア ッ タ イ は ナ タ ン を 生
う う
み、ナタンはザバデを生み、 三七ザバデはエフラルを生み、エフラルはオ
う う う
ベデを生み、三八オベデはエヒウを生み、エヒウはアザリヤを生み、三九ア
う う
ザリヤはヘレヅを生み、ヘレヅはエレアサを生み、四〇エレアサはシスマ
歴代志上

う う う
イを生み、シスマイはシャルムを生み、 四一シャルムはエカミヤを生み、

7

エカミヤはエリシャマを生んだ。
きょうだい こ ちょうし
四二エ ラ メ ル の 兄 弟 で あ る カ レ ブ の 子 ら は 長子 を マ レ シ ャ と い っ て ジ
ちち こ こ
フ の 父 で あ る。マ レ シ ャ の 子 は ヘ ブ ロ ン。 四三ヘ ブ ロ ン の 子 ら は コ ラ、

タップア、レケム、シマである。 四四シマはラハムを生んだ。ラハムはヨ
ちち う
ルカムの父である。またレケムはシャンマイを生んだ。 四五シャンマイ
こ ちち
の子はマオン。マオンはベテヅルの父である。 四六カレブのそばめエパ
う う
はハラン、モザ、ガゼズを産んだ。ハランはガゼズを生んだ。 四七エダイ

の子らはレゲム、ヨタム、ゲシャン、ペレテ、エパ、シャフである。 四八

カレブのそばめマアカはシベルとテルハナを産み、 四九またマデマンナ
ちち ちち う むすめ
の父シャフおよびマクベナとギベアの父シワを産んだ。カレブの娘は
しそん
アクサである。 五〇これらはカレブの子孫であった。
ちょうし こ ちち
エフラタの長子ホルの子らはキリアテ・ヤリムの父ショバル、 五一ベツレ
ちち ちち
ヘムの父サルマおよびベテガデルの父ハレフである。 五二キリアテ・ヤ
歴代志上

ちち こ なか
リムの父ショバル子らはハロエとメヌコテびとの半ばである。 五三キリ

8
しぞく
アテ・ヤリムの氏族はイテルびと、プテびと、シュマびと、ミシラびと

であって、これらからザレアびとおよびエシタオルびとが出た。 五四サ

ルマの子らはベツレヘム、ネトパびと、アタロテ・ベテ・ヨアブ、マナ
なか す
ハ テ び と の 半 ば お よ び ゾ リ び と で あ る。 五五ま た ヤ ベ ヅ に 住 ん で い た
しょ き しぞく
書記の氏族テラテびと、シメアテびと、スカテびとである。これらはケ
いえ せんぞ で もの
ニびとであってレカブの家の先祖ハマテから出た者である。
第三章
うま こ つぎ ちょうし
一ヘブロンで生れたダビデの子らは次のとおりである。長子はアムノ
うま つぎ
ンでエズレルびとアヒノアムから生れ、次はダニエルでカルメルびとア
うま だい おう むすめ
ビガイルから生れ、 二第三はアブサロムでゲシュルの王タルマイの娘
う こ だい う こ だい
マアカの産んだ子、第四はアドニヤでハギテの産んだ子、 三第五はシパ
歴代志上

うま だい かれ つま うま
テヤでアビタルから生れ、第六はイテレアムで、彼の妻エグラから生れ

9
にん かれ うま おう
た。 四こ の 六 人 は ヘ ブ ロ ン で 彼 に 生 れ た。ダ ビ デ が そ こ で 王 と な っ て
ねん げつ おう ねん
いたのは七年六か月、エルサレムで王となっていたのは三十三年であっ
うま つぎ
た。 五エルサレムで生れたものは次のとおりである。すなわちシメア、
にん むすめ
ショバブ、ナタン、ソロモン。この四人はアンミエルの娘 バテシュアか
うま
ら生れた。 六またイブハル、エリシャマ、エリペレテ、 七ノガ、ネペグ、
にん
ヤピア、 八エリシャマ、エリアダ、エリペレテの九人、 九これらはみなダ
こ う こ
ビデの子である。このほかに、そばめどもの産んだ子らがあり、タマル
かれ しまい
は彼らの姉妹であった。
こ こ こ こ
一〇ソロモンの子はレハベアム、その子はアビヤ、その子はアサ、その子
こ こ こ
はヨシャパテ、一一その子はヨラム、その子はアハジヤ、その子はヨアシ、
こ こ こ こ
一二その子はアマジヤ、その子はアザリヤ、その子はヨタム、 一三その子
こ こ こ
はアハズ、その子はヒゼキヤ、その子はマナセ、 一四その子はアモン、そ
こ こ ちょうし つぎ だい
の子はヨシヤ、 一五ヨシヤの子らは長子ヨハナン、次はエホヤキム、第三
歴代志上

だい しそん こ
はゼデキヤ、第四はシャルムである。 一六エホヤキムの子孫はその子は

10
こ ほ りょ こ
エコニア、その子はゼデキヤである。 一七捕虜となったエコニヤの子ら

はその子シャルテル、 一八マルキラム、ペダヤ、セナザル、エカミア、ホ

シャマ、ネダビヤである。 一九ペダヤの子らはゼルバベルとシメイであ
こ かれ
る。ゼ ル バ ベ ル の 子 ら は メ シ ュ ラ ム と ハ ナ ニ ヤ。シ ロ ミ テ は 彼 ら の
しまい
姉妹である。 二〇またハシュバ、オヘル、ベレキヤ、ハサデヤ、ユサブ・
にん こ
ヘセデの五人がある。 二一ハナニヤの子らはペラテヤとエシャヤ、その
こ こ こ こ
子レパヤ、その子アルナン、その子オバデヤ、その子シカニヤである。 二
こ こ
二シカニヤの子らはシマヤ。シマヤの子らはハットシ、イガル、バリア、
にん こ
ネアリヤ、シャパテの六人である。 二三ネアリヤの子らはエリオエナイ、
にん こ
ヒゼキヤ、アズリカムの三人である。 二四エリオエナイの子らはホダヤ、
にん
エリアシブ、ペラヤ、アックブ、ヨハナン、デラヤ、アナニの七人であ
る。
歴代志上

11
第四章

一ユダの子らはペレヅ、ヘヅロン、カルミ、ホル、ショバルである。 二ショ
こ う う
バルの子レアヤはヤハテを生み、ヤハテはアホマイとラハデを生んだ。
いちぞく こ
これらはザレアびとの一族である。 三エタムの子らはエズレル、イシマ
かれ しまい な ちち
およびイデバシ、彼らの姉妹の名はハゼレルポニである。 四ゲドルの父
ちち ちち
はペヌエル、ホシャの父はエゼルである。これらはベツレヘムの父エフ
ちょうし こ ちち つま
ラ タ の 長子 ホ ル の 子 ら で あ る。 五テ コ ア の 父 ア シ ュ ル に は ふ た り の 妻
ヘラとナアラとがあった。 六ナアラはアシュルによってアホザム、ヘペ
う こ
ル、テメニおよびアハシタリを産んだ。これらはナアラの子である。 七

ヘラの子らはゼレテ、エゾアル、エテナンである。 八コヅはアヌブとゾ
う こ しぞく かれ で
ベ バ を 生 ん だ。ま た ハ ル ム の 子 ア ハ ル ヘ ル の 氏族 も 彼 か ら 出 た。 九ヤ
きょうだい もっと たっと もの はは
ベヅはその兄 弟のうちで最も尊ばれた者であった。その母が﹁わたし
歴代志上

くる こ う い な な
は苦しんでこの子を産んだから﹂と言ってその名をヤベヅと名づけたの

12
かみ よ い
である。 一〇ヤベヅはイスラエルの神に呼ばわって言った、
﹁どうか、あ
ゆた めぐ こっきょう ひろ て
なたが豊かにわたしを恵み、わたしの国 境を広げ、あなたの手がわたし
わざわい まぬか くる
とともにあって、わたしを災から免れさせ、苦しみをうけさせられない
かみ かれ もと きょうだい
ように﹂。神は彼の求めるところをゆるされた。 一一シュワの兄 弟 ケル
う ちち
ブはメヒルを生んだ。メヒルはエシトンの父、 一二エシトンはベテラパ、
ちち う ひとびと
パセアおよびイルナハシの父テヒンナを生んだ。これらはレカの人々
こ こ
である。 一三ケナズの子らはオテニエルとセラヤ。オテニエルの子らは

ハタテとメオノタイ。 一四メオノタイはオフラを生み、セラヤはゲハラ
ちち う かれ こうじん よ
シムの父ヨアブを生んだ。彼らは工人であったのでゲハラシムと呼ば
こ こ
れたのである。 一五エフンネの子カレブの子らはイル、エラおよびナア
こ こ
ム。エラの子はケナズ。 一六エハレレルの子らはジフ、ジバ、テリア、ア
こ つぎ
サレルである。 一七エズラの子らはエテル、メレデ、エペル、ヤロン。次
むすめ こ
の も の は メ レ デ が め と っ た パ ロ の 娘 ビ テ ヤ の 子 ら で あ る。す な わ ち
歴代志上

かのじょ う
彼女はみごもってミリアム、シャンマイおよびイシバを産んだ。イシバ

13
ちち かれ つま ひと ちち
はエシテモアの父である。 一八彼の妻はユダヤ人で、ゲドルの父エレデ
ちち ちち う しまい
とソコの父ヘベルとザノアの父エクテエルを産んだ。 一九ナハムの姉妹
つま こ ちち
であるホデヤの妻の子らはガルムびとケイラの父およびマアカびとエ

シテモアである。 二〇シモンの子らはアムノン、リンナ、ベネハナン、テ
こ こ
ロンである。イシの子らはゾヘテとベネゾヘテである。 二一ユダの子シ
こ ちち ちち
ラ の 子 ら は レ カ の 父 エ ル、マ レ シ ャ の 父 ラ ダ お よ び ベ テ ア シ ベ ア の
あ ま ぬ の おり いえ いちぞく おさ かえ
亜麻布織の家の一族、 二二ならびにモアブを治めてレヘムに帰ったヨキ
ひとびと きろく ふる
ム、コゼバの人々、ヨアシおよびサラフである。その記録は古い。 二三こ
もの とうき つく ひと す おう よう
れらの者は陶器を造る人で、ネタイムおよびゲデラに住み、王の用をす
おう す
るため、王とともに、そこに住んだ。

二四 シメオンの子らはネムエル、ヤミン、ヤリブ、ゼラ、シャウル。 二五
こ こ こ
シャウルの子はシャルム、その子はミブサム、その子はミシマ。 二六ミシ
しそん こ こ こ
マの子孫は、その子はハムエル、その子はザックル、その子はシメイ。 二
歴代志上

おとこ こ にん おんな こ にん きょうだい おお


七シメイには男の子十六人、女の子六人あったが、その兄 弟たちには多

14
こ しぞく もの しそん
くの子はなかった。またその氏族の者はすべてユダの子孫ほどにはふ
かれ す ところ
えなかった。 二八彼らの住んだ所はベエルシバ、モラダ、ハザル・シュア
ル、 二九ビルハ、エゼム、トラデ、 三〇ベトエル、ホルマ、チクラグ、 三一
ベテ・マルカボテ、ハザル・スシム、ベテ・ビリ、およびシャライムで
よ いた かれ まち むらざと
ある。これらはダビデの世に至るまで彼らの町であった。 三二その村里
まち
はエタム、アイン、リンモン、トケン、アシャンの五つの町である。 三三
まちまち しゅうい おお むら かれ
またこれらの町々の周囲に多くの村があって、バアルまでおよんだ。彼
いじょう かれ けいず
らのすみかは以上のとおりで、彼らはおのおの系図をもっていた。 三四

メショバブ、ヤムレク、アマジヤの子ヨシャ、 三五ヨエル、アシエルのひ
まご こ
こ、セラヤの孫、ヨシビアの子エヒウ。 三六エリオエナイ、ヤコバ、エショ

ハヤ、アサヤ、アデエル、エシミエル、ベナヤ、 三七およびシピの子ジザ。
こ こ こ
シピはアロンの子、アロンはエダヤの子、エダヤはシムリの子、シムリ
こ な もの しぞく ちょう
は シ マ ヤ の 子 で あ る。 三八こ こ に 名 を あ げ た 者 ど も は そ の 氏族 の 長 で
歴代志上

しぞく おお ひろ かれ む
あって、それらの氏族は大いにふえ広がった。 三九彼らは群れのために

15
まきば もと いりぐち い たに ひがし ほう すす ゆた
牧場を求めてゲドルの入口に行き、谷の東の方まで進み、四〇ついに豊か
よ まきば み ち ひろ おだ やす
な良い牧場を見いだした。その地は広く穏やかで、安らかであった。そ
ち まえ じゅうみん な
の地の前の住 民はハムびとであったからである。 四一これらの名をしる
もの おう よ い かれ てんまく
した者どもはユダの王ヒゼキヤの世に行って、彼らの天幕と、そこにい
う やぶ かれ ほろ こんにち いた
たメウニびとを撃ち破り、彼らをことごとく滅ぼして今日に至ってい
む まきば かれ す
る。そこには、群れのための牧場があったので、彼らはそこに住んだ。 四
にん こ
またシメオンびとのうちの五百人はイシの子らペラテヤ、ネアリヤ、

やま い
レパヤ、ウジエルをかしらとしてセイル山に行き、 四三アマレクびとで、
のこ もの う ほろ こんにち す
のがれて残っていた者を撃ち滅ぼして、今日までそこに住んでいる。
第五章
ちょうし こ つぎ
イスラエルの長子ルベンの子らは次のとおりである。︱︱ルベンは
歴代志上


ちょうし ちち とこ けが ちょうし けん こ
長子であったが父の床を汚したので、長子の権はイスラエルの子ヨセフ

16
こ あた ちょうし けん けいず
の子らに与えられた。それで長子の権による系図にしるされていない。
きょうだい もの なか くん もの
またユダは兄 弟たちにまさる者となり、その中から君たる者がでた

ちょうし けん
が長子の権はヨセフのものとなったのである。︱︱ 三すなわちイスラ
ちょうし こ
エルの長子ルベンの子らはハノク、パル、ヘヅロン、カルミ。 四ヨエル
こ こ こ こ こ
の子らはその子はシマヤ、その子はゴグ、その子はシメイ、 五その子は
こ こ こ
ミカ、その子はレアヤ、その子はバアル、 六その子はベエラである。こ
おう とら うつ もの
のベエラはアッスリヤの王テルガテ・ピルネセルが捕え移した者であ
かれ かれ きょうだい しぞく
る。彼はルベンびとのつかさであった。 七彼の兄 弟たちは、その氏族に
れきだい けいず
より、その歴代の系図によれば、かしらエイエルおよびゼカリヤ、 八ベ
こ まご かれ
ラなどである。ベラはアザズの子、シマの孫、ヨエルのひこである。彼
す およ
はアロエルに住み、ネボおよびバアル・メオンまで及んでいたが、 九ギ
ち かれ かちく ま かれ ひがし ほう かわ
レアデの地で彼の家畜がふえ増したので、彼は東の方ユフラテ川のこな
あらの いりぐち す とき かれ
たの荒野の入口にまで住んだ。 一〇またサウルの時、彼らはハガルびと
歴代志上

たたか う たお ひがし ぜんぶ かれ てんまく


と戦 って、これを撃ち倒し、ギレアデの東の全部にわたって彼らの天幕

17

に住んだ。
しそん あいたい ち す およ
一一 ガドの子孫はこれと相対してバシャンの地に住み、サルカまで及ん
つぎ
でいた。 一二そのかしらはヨエル、次はシャパム、ヤアナイ、シャパテで、
す かれ きょうだい しぞく
ともにバシャンに住んだ。 一三彼らの兄 弟たちは、その氏族によればミ
にん
カエル、メシュラム、シバ、ヨライ、ヤカン、ジア、エベルの七人であ
こ こ
る。 一 四こ れ ら は ホ リ の 子 ア ビ ハ イ ル の 子 ら で あ る。ホ リ は ヤ ロ ア の
こ こ こ
子、ヤロアはギレアデの子、ギレアデはミカエルの子、ミカエルはエシ
こ こ こ
サイの子、エシサイはヤドの子、ヤドはブズの子である。 一五アヒはアブ
こ こ しぞく ちょう かれ
デルの子、アブデルはグニの子、グニはその氏族の長である。 一六彼らは
むらざと ほうぼく ち す
ギレアデとバシャンとその村里とシャロンのすべての放牧地に住んで、
しほう さかい およ おう よ
その四方の境にまで及んでいた。 一七これらはみなユダの王ヨタムの世
おう よ けいず
とイスラエルの王ヤラベアムの世に系図にのせられた。
はん ぶ ぞ く で たたか もの
ルベンびとと、ガドびとと、マナセの半部族には出て戦いうる者四万
歴代志上

一八
にん みな ゆ う し たて ゆみ たたか
四千七百六十人あり、皆勇士で、盾とつるぎをとり、弓をひき、 戦いに

18
たく ひとびと かれ
巧みな人々であった。 一九彼らはハガルびとおよびエトル、ネフシ、ノダ
たたか たす え せ
ブなどと戦 ったが、 二〇助けを得てこれを攻めたので、ハガルびとおよ
もの みな かれ て かれ たたか
びこれとともにいた者は皆、彼らの手にわたされた。これは彼らが戦い
かみ よ かみ よ たよ かみ ねが き
にあたって神に呼ばわり、神に寄り頼んだので神はその願いを聞かれた
かれ かちく うば と ひつじ
からである。 二一彼らはその家畜を奪い取ったが、らくだ五万、 羊 二十
ひと じゅうまんにん たたか かみ
五万、ろば二千あり、また人は十 万人あった。 二二これはその戦いが神に
おお もの ころ たお かれ とら
よったので、多くの者が殺されて倒れたからである。そして彼らは捕え
うつ とき かわ ところ す
移される時まで、これに代ってその所に住んだ。
はん ぶ ぞ く ひとびと ち す ひろ
二三マナセの半部族の人々はこの地に住み、ふえ広がって、ついにバシャ
やま およ
ンからバアル・ヘルモン、セニルおよびヘルモン山にまで及んだ。 二四そ
しぞく ちょう つぎ
の氏族の長たちは次のとおりである。すなわち、エペル、イシ、エリエ
みな しぞく
ル、アズリエル、エレミヤ、ホダヤ、ヤデエル。これらは皆その氏族の
ちょう なだか だい ゆ う し かれ せんぞ かみ つみ おか
長で名高い大勇士であった。 二五彼らは先祖たちの神にむかって罪を犯
歴代志上

かみ かれ まえ ほろ くに たみ かみがみ した
し、神が、かつて彼らの前から滅ぼされた国の民の神々を慕って、これ

19
かんいん かみ おう こころ ふる
と姦淫したので、二六イスラエルの神は、アッスリヤの王プルの心を奮い
おこ おう こころ ふる おこ
起し、またアッスリヤの王テルガテ・ピルネセルの心を奮い起されたの
かれ はん ぶ ぞ く とら い
で、彼はついにルベンびとと、ガドびとと、マナセの半部族を捕えて行
かわ うつ こんにち いた
き、ハウラとハボルとハラとゴザン川のほとりに移して今日に至ってい
る。
第六章
こ こ
レビの子らはゲルション、コハテ、メラリ。 二コハテの子らはアムラ


ム、イヅハル、ヘブロン、ウジエル。 三アムラムの子らはアロン、モー

セ、ミリアム。アロンの子らはナダブ、アビウ、エレアザル、イタマル。
う う
エレアザルはピネハスを生み、ピネハスはアビシュアを生み、 五アビ

う う う
シュアはブッキを生み、ブッキはウジを生み、六ウジはゼラヒヤを生み、
歴代志上

う う
ゼラヒヤはメラヨテを生み、 七メラヨテはアマリヤを生み、アマリヤは

20
う う う
アヒトブを生み、 八アヒトブはザドクを生み、ザドクはアヒマアズを生
う う
み、 九アヒマアズはアザリヤを生み、アザリヤはヨナハンを生み、 一〇ヨ

ナハンはアザリヤを生んだ。このアザリヤはソロモンがエルサレムに
た みや さいし つとめ もの う
建 て た 宮 で 祭司 の 務 を し た 者 で あ る。 一一ア ザ リ ヤ は ア マ リ ヤ を 生 み、
う う
アマリヤはアヒトブを生み、一二アヒトブはザトクを生み、ザトクはシャ
う う う
ルムを生み、 一三シャルムはヒルキヤを生み、ヒルキヤはアザリヤを生
う う
み、 一四アザリヤはセラヤを生み、セラヤはヨザダクを生んだ。 一五ヨザ
しゅ て ひと とら
ダクは主がネブカデネザルの手によってユダとエルサレムの人を捕え
うつ とき とら い
移された時に捕えられて行った。
こ こ
一六 レビの子らはゲルション、コハテおよびメラリ。 一七ゲルションの子
な こ
らの名はリブニとシメイ。 一八コハテの子らはアムラム、イヅハル、ヘブ

ロン、ウジエルである。 一九メラリの子らはマヘリとムシ。これらはレ
いえすじ しぞく こ
ビびとのその家筋による氏族である。 二〇ゲルションの子はリブニ、そ
歴代志上

こ こ こ こ
の子はヤハテ、その子はジンマ、 二一その子はヨア、その子はイド、その

21
こ こ こ こ
子はゼラ、その子はヤテライ。 二二コハテの子はアミナダブ、その子はコ
こ こ こ
ラ、その子はアシル、 二三その子はエルカナ、その子はエビアサフ、その
こ こ こ こ
子はアシル、 二四その子はタハテ、その子はウリエル、その子はウジヤ、
こ こ
その子はシャウル。 二五エルカナの子らはアマサイとアヒモテ、 二六その
こ こ こ こ
子はエルカナ、その子はゾパイ、その子はナハテ、二七その子はエリアブ、
こ こ こ ちょうし
その子はエロハム、その子はエルカナ。 二八サムエルの子らは、長子はヨ
つぎ こ こ こ
エル、次はアビヤ。 二九メラリの子はマヘリ、その子はリブニ、その子は
こ こ こ こ
シメイ、その子はウザ、 三〇その子はシメア、その子はハギヤ、その子は
アサヤである。
けいやく はこ あんち しゅ みや うた こと
三一 契約の箱を安置したのち、ダビデが主の宮で歌をうたう事をつかさ
ひとびと つぎ かれ かいけん まくや まえ うた
ど ら せ た 人々 は 次 の と お り で あ る。 三 二彼 ら は 会見 の 幕屋 の 前 で 歌 を
つか しゅ みや た いってい
もって仕えたが、ソロモンがエルサレムに主の宮を建ててからは、一定
ちつじょ したが つとめ おこな つとめ こ
の秩序に従 って務を行 った。 三三その務をしたもの、およびその子らは
歴代志上

つぎ こ うた もの
次のとおりである。コハテびとの子らのうちヘマンは歌をうたう者、ヘ

22
こ こ
マンはヨエルの子、ヨエルはサムエルの子、 三四サムエルはエルカナの
こ こ こ
子、エルカナはエロハムの子、エロハムはエリエルの子、エリエルはト
こ こ こ
アの子、 三五トアはヅフの子、ヅフはエルカナの子、エルカナはマハテの
こ こ こ
子、マハテはアマサイの子、 三六アマサイはエルカナの子、エルカナはヨ
こ こ こ
エルの子、ヨエルはアザリヤの子、アザリヤはゼパニヤの子、 三七ゼパニ
こ こ こ
ヤはタハテの子、タハテはアシルの子、アシルはエビアサフの子、エビ
こ こ こ
アサフはコラの子、 三八コラはイヅハルの子、イヅハルはコハテの子、コ
こ こ きょうだい
ハテはレビの子、レビはイスラエルの子である。 三九ヘマンの兄 弟 アサ
みぎ た こ
フはヘマンの右に立った。アサフはベレキヤの子、ベレキヤはシメアの
こ こ こ
子、 四〇シメアはミカエルの子、ミカエルはバアセヤの子、バアセヤはマ
こ こ こ
ルキヤの子、 四一マルキヤはエテニの子、エテニはゼラの子、ゼラはアダ
こ こ こ
ヤの子、 四二アダヤはエタンの子、エタンはジンマの子、ジンマはシメイ
こ こ こ
の子、 四三シメイはヤハテの子、ヤハテはゲルションの子、ゲルションは
歴代志上

こ かれ きょうだい こ ひだり た
レ ビ の 子 で あ る。 四四ま た 彼 ら の 兄 弟 で あ る メ ラ リ の 子 ら が 左 に 立 っ

23
こ こ
た。そのうちのエタンはキシの子、キシはアブデの子、アブデはマルク
こ こ こ
の子、 四五マルクはハシャビヤの子、ハシャビヤはアマジヤの子、アマジ
こ こ こ
ヤはヒルキヤの子、 四六ヒルキヤはアムジの子、アムジはバニの子、バニ
こ こ こ
はセメルの子、 四七セメルはマヘリの子、マヘリはムシの子、ムシはメラ
こ こ かれ きょうだい
リの子、メラリはレビの子である。 四八彼らの兄 弟であるレビびとたち
かみ みや まくや つとめ にん
は、神の宮の幕屋のもろもろの務に任じられた。
こ はんさい だん こう さいだん うえ
ア ロ ン と そ の 子 ら は 燔祭 の 壇 と 香 の 祭壇 の 上 に さ さ げ る こ と を な
四九
しせいじょ
し、また至聖所のすべてのわざをなし、かつイスラエルのためにあがな
かみ めい
いをなした。すべて神のしもべモーセの命じたとおりである。 五〇アロ
しそん つぎ こ こ
ンの子孫は次のとおりである。アロンの子はエレアザル、その子はピネ
こ こ こ こ
ハス、その子はアビシュア、 五一その子はブッキ、その子はウジ、その子
こ こ こ
はゼラヒヤ、 五二その子はメラヨテ、その子はアマリヤ、その子はアヒト
こ こ
ブ、 五三その子はザドク、その子はアヒマアズである。
歴代志上

しそん す ところ さかい しゅくえい


ア ロ ン の 子孫 の 住 む 所 は そ の 境 の う ち に あ る 宿 営 に よ っ て い え ば
五四

24
つぎ しぞく え
次のとおりである。まずコハテびとの氏族がくじによって得たところ、
かれ あた ち
五五 すなわち彼らが与えられたところは、ユダの地にあるヘブロンとそ
しゅうい ほうぼく ち まち たはた むらむら
の周囲の放牧地である。 五六ただし、その町の田畑とその村々は、エフン
こ あた しそん あた
ネの子カレブに与えられた。 五七そしてアロンの子孫に与えられたもの
まち ほうぼく ち
は、のがれの町であるヘブロンおよびリブナとその放牧地、ヤッテルお
ほうぼく ち ほうぼく ち
よびエシテモアとその放牧地、 五八ヒレンとその放牧地、デビルとその
ほうぼく ち ほうぼく ち ほうぼく ち
放牧地、 五九アシャンとその放牧地、ベテシメシとその放牧地である。 六
ぶぞく ほうぼく ち
またベニヤミンの部族のうちからはゲバとその放牧地、アレメテとそ

ほうぼく ち ほうぼく ち あた かれ まち
の放牧地、アナトテとその放牧地を与えられた。彼らの町は、すべてそ
しぞく
の氏族のうちに十三あった。
しそん のこ もの ぶぞく しぞく はん ぶ ぞ く
六一 またコハテの子孫の残りの者は部族の氏族のうちからと、半部族す
はん ぶ ぞ く じゅう まち あた
なわちマナセの半部族のうちからくじによって十の町を与えられた。 六
しそん しぞく ぶぞく
またゲルションの子孫はその氏族によってイッサカルの部族、アセル
歴代志上


ぶぞく ぶぞく ぶぞく
の部族、ナフタリの部族、およびバシャンのマナセの部族のうちから十

25
まち あた しそん しぞく
三 の 町 が 与 え ら れ た。 六 三メ ラ リ の 子孫 は そ の 氏族 に よ っ て ル ベ ン の
ぶぞく ぶぞく ぶぞく
部族、ガドの部族、およびゼブルンの部族のうちからくじによって十二
まち あた ひとびと まちまち
の町が与えられた。 六四このようにイスラエルの人々はレビびとに町々
ほうぼく ち あた しそん ぶぞく
とその放牧地とを与えた。 六五すなわちユダの子孫の部族とシメオンの
ぶぞく しそん しそん ぶぞく な
部族の子孫と、ベニヤミンの子孫の部族のうちからここに名をあげたこ
まち あた
れらの町をくじによって与えた。
しそん しぞく ぶぞく まちまち え
六六 コハテの子孫の氏族はまたエフライムの部族のうちからも町々を獲
りょうち かれ あた まち
てその領地とした。 六七すなわち彼らが与えられた、のがれの町はエフ
さんち ほうぼく ち ほうぼく ち
ライムの山地にあるシケムとその放牧地、ゲゼルとその放牧地、六八ヨク
ほうぼく ち ほうぼく ち ほうぼく
メアムとその放牧地、ベテホロンとその放牧地、六九アヤロンとその放牧
ち ほうぼく ち はん ぶ ぞ く
地、ガテリンモンとその放牧地である。 七〇またマナセの半部族のうち
ほうぼく ち ほうぼく ち
からは、アネルとその放牧地およびビレアムとその放牧地を、コハテの
しそん しぞく のこ あた
子孫の氏族の残りのものに与えた。
歴代志上

しそん あた はん ぶ ぞ く
七一 ゲルションの子孫に与えられたものはマナセの半部族のうちからは

26
ほうぼく ち ほうぼく ち
バシャンのゴランとその放牧地、アシタロテとその放牧地。 七二イッサ
ぶぞく ほうぼく ち ほうぼく ち
カルの部族のうちからはケデシとその放牧地、ダベラテとその放牧地、七
ほうぼく ち ほうぼく ち ぶぞく
ラモテとその放牧地、アネムとその放牧地。 七四アセルの部族のうち

ほうぼく ち ほうぼく ち
からはマシャルとその放牧地、アブドンとその放牧地、七五ホコクとその
ほうぼく ち ほうぼく ち ぶぞく
放牧地、レホブとその放牧地。 七六ナフタリの部族のうちからはガリラ
ほうぼく ち ほうぼく ち
ヤのケデシとその放牧地、ハンモンとその放牧地、キリアタイムとその
ほうぼく ち しそん あた
放牧地である。 七七このほかのもの、すなわちメラリの子孫に与えられ
ぶぞく ほうぼく ち
たものはゼブルンの部族のうちからリンモンとその放牧地、タボルとそ
ほうぼく ち ちか ひがし
の放牧地、七八エリコに近いヨルダンのかなた、すなわちヨルダンの東で
ぶぞく あらの ほうぼく ち
はルベンの部族のうちからは荒野のベゼルとその放牧地、ヤザとその
ほうぼく ち ほうぼく ち ほうぼく ち
放牧地、 七九ケデモテとその放牧地、メパアテとその放牧地。 八〇ガドの
ぶぞく ほうぼく ち
部族のうちからはギレアデのラモテとその放牧地、マハナイムとその
ほうぼく ち ほうぼく ち ほうぼく ち
放牧地、 八一ヘシボンとその放牧地、ヤゼルとその放牧地である。
歴代志上

27
第七章
こ にん
一イッサカルの子らはトラ、プワ、ヤシュブ、シムロムの四人。 二トラの

子らはウジ、レパヤ、エリエル、ヤマイ、エブサム、サムエル。これは
みな こ しぞく ちょう しそん だい ゆ う し もの
皆トラの子で、その氏族の長である。その子孫の大勇士たる者はダビデ
よ かず にん こ
の世にはその数二万二千六百人であった。 三ウジの子はイズラヒヤ、イ
こ にん
ズラヒヤの子らはミカエル、オバデヤ、ヨエル、イシアの五人で、みな
ちょう もの しそん しぞく したが ぐんぜい しそつ
長たる者であった。 四その子孫のうちに、その氏族に従えば軍勢の士卒
にん かれ さいし おお
三万六千人あった。これは彼らが妻子を多くもっていたからである。 五
しぞく きょうだい けいず かぞ
イッサカルのすべての氏族のうちの兄 弟たちで系図によって数えられ
だい ゆ う し あ にん
た大勇士は合わせて八万七千人あった。
こ にん こ
六ベニヤミンの子らはベラ、ベケル、エデアエルの三人。 七ベラの子らは
にん みな しぞく ちょう
エヅボン、ウジ、ウジエル、エレモテ、イリの五人で、皆その氏族の長
歴代志上

けいず かぞ だい ゆ う し にん
である。その系図によって数えられた大勇士は二万二千三十四人あっ

28

た。 八ベケルの子らはゼミラ、ヨアシ、エリエゼル、エリオエナイ、オ
みな こ
ムリ、エレモテ、アビヤ、アナトテ、アラメテで皆ベケルの子らである。
しそん しぞく ちょう けいず かぞ だい ゆ う し
九その子孫のうち、その氏族の長として系図によって数えられた大勇士
にん こ こ
は二万二百人あった。 一〇エデアエルの子はビルハン。ビルハンの子ら
はエウシ、ベニヤミン、エホデ、ケナアナ、ゼタン、タルシシ、アヒシャ
みな こ しぞく ちょう しそん
ハル。 一一皆エデアエルの子らで氏族の長であった。その子孫のうちに
で たたか だい ゆ う し にん
は、いくさに出てよく戦う大勇士が一万七千二百人あった。 一二またイ
こ こ
ルの子らはシュパムとホパム。アヘルの子はホシムである。
こ みな
一三 ナフタリの子らはヤハジエル、グニ、エゼル、シャルムで皆ビルハの
う こ こ おんな う
産んだ子である。 一四マナセの子らはそのそばめであるスリヤの女の産
かのじょ ちち う
んだアスリエル。彼女はまたギレアデの父マキルを産んだ。 一五マキル
いもうと もの つま ばんめ こ
はホパムとシュパムの妹 マアカという者を妻にめとった。二番目の子
おんな こ
はゼロペハデという。ゼロペハデには女の子だけがあった。 一六マキル
歴代志上

つま おとこ こ う な な おとうと な
の 妻 マ ア カ は 男 の 子 を 産 ん で 名 を ペ レ シ と 名 づ け た。そ の 弟 の 名 は

29
こ こ
シャレシ。シャレシの子らはウラムとラケムである。 一七ウラムの子は
こ こ こ
ベダン。これらはマナセの子マキルの子であるギレアデの子らである。
いもうと う
一八 その妹 ハンモレケテはイシホデ、アビエゼル、マヘラを産んだ。 一九

セミダの子らはアヒアン、シケム、リキ、アニアムである。
こ こ こ
二〇 エフライムの子はシュテラ、その子はベレデ、その子はタハテ、その
こ こ こ こ
子はエラダ、その子はタハテ、 二一その子はザバデ、その子はシュテラで
どじん ころ かれ
あ る。エ ゼ ル と エ レ ア デ は ガ テ の 土人 ら に 殺 さ れ た。こ れ は 彼 ら が
くだ い かちく うば ちち
下って行ってその家畜を奪おうとしたからである。 二二父エフライムが
ひ ひさ かな きょうだい き かれ なぐさ
日久しくこのために悲しんだので、その兄 弟たちが来て彼を慰めた。 二
つま つま おとこ こ
三そののち、エフライムは妻のところにはいった。妻ははらんで男の子
う な な いえ わざわい
を産み、その名をベリアと名づけた。その家に災があったからである。
むすめ うえ した た
二四 エフライムの娘 セラは上と下のベテホロンおよびウゼン・セラを建
こ こ こ こ
てた。 二五ベリアの子はレパ、その子はレセフ、その子はテラ、その子は
歴代志上

こ こ こ
タハン、 二六その子はラダン、その子はアミホデ、その子はエリシャマ、

30
こ こ しそん りょうち
二七 そ の 子 は ヌ ン、そ の 子 は ヨ シ ュ ア。 二八エ フ ラ イ ム の 子孫 の 領地 と
じゅうしょ むらむら ひがし ほう にし ほう
住 所はベテルとその村々、また東の方ではナアラン、西の方ではゲゼル
むらむら むらむら むらむら
とその村々、またシケムとその村々、アワとその村々。 二九またマナセの
しそん こっきょう そ むらむら むらむら
子孫の国 境に沿って、ベテシャンとその村々、タアナクとその村々、メ
むらむら むらむら こ しそん
ギドンとその村々、ドルとその村々で、イスラエルの子ヨセフの子孫は
ところ す
これらの所に住んだ。
こ しまい
三〇 アセルの子らはイムナ、イシワ、エスイ、ベリアおよびその姉妹セラ。
こ ちち
三一 ベリアの子らはヘベルとマルキエル。マルキエルはビルザヒテの父
しまい
である。 三二ヘベルはヤフレテ、ショメル、ホタムおよびその姉妹シュア
う こ
を生んだ。 三三ヤフレテの子らはパサク、ビムハル、アシワテ。これらは
こ かれ きょうだい こ
ヤレフテの子らである。 三四彼の兄 弟 ショメルの子らはロガ、ホバおよ
きょうだい こ
びアラム。 三五ショメルの兄 弟 ヘレムの子らはゾパ、イムナ、シレシ、ア

マル。 三六ゾパの子らはスア、ハルネペル、シュアル、ベリ、イムラ、 三
歴代志上

ベゼル、ホド、シャンマ、シルシャ、イテラン、ベエラ。 三八エテルの

31
こ こ
子らはエフンネ、ピスパおよびアラ。 三九ウラの子らはアラ、ハニエル、
みな しそん しぞく ちょう
およびリヂア。 四〇これらは皆アセルの子孫であって、その氏族の長、え
だい ゆ う し けいず かぞ
りぬきの大勇士、つかさたちのかしらであった。その系図によって数え
もの で たたか もの かず にん
られた者で、いくさに出てよく戦う者の数は二万六千人であった。
第八章
う もの ちょうし つぎ だい
一ベニヤミンの生んだ者は長子はベラ、その次はアシベル、第三はアハ
だい だい こ
ラ、二第四はノハ、第五はラパ。 三ベラの子らはアダル、ゲラ、アビウデ、
四アビシュア、ナアマン、アホア、 五ゲラ、シフパム、ヒラム。 六エホデ
こ つぎ じゅうみん しぞく ちょう
の 子 ら は 次 の と お り で あ る。︵こ れ ら は ゲ バ の 住 民 の 氏族 の 長 で あ っ
とら うつ
て、マナハテに捕え移されたものである。︶七すなわちナアマン、アヒヤ、
ちち
ゲ ラ す な わ ち ヘ グ ラ ム。ゲ ラ は ウ ザ と ア ヒ フ デ の 父 で あ っ た。 八シ ャ
歴代志上

つま りべつ くに こ
ハライムは妻ホシムとバアラを離別してのち、モアブの国で子らをもう

32
かれ つま こ
けた。 九彼が妻ホデシによってもうけた子らはヨバブ、ヂビア、メシャ、

マルカム、 一〇エウヅ、シャキヤ、ミルマ。これらはその子らであって
しぞく ちょう かれ
氏族の長である。 一一彼はまたホシムによってアビトブとエルパアルを
こ かれ
もうけた。 一二エルパアルの子らはエベル、ミシャムおよびセメド。彼
むらむら た もの
は オ ノ と ロ ド と そ の 村々 を 建 て た 者 で あ る。 一三ま た ベ リ ア と シ マ が
じゅうみん しぞく ちょう じゅうみん お
あった。︵これはアヤロンの住 民の氏族の長であって、ガテの住 民を追
はら
い払ったものである。︶ 一四またアヒオ、シャシャク、エレモテ。 一五ゼバ

デヤ、アラデ、アデル、 一六ミカエル、イシパおよびヨハはベリアの子ら
であった。 一七ゼバデヤ、メシュラム、ヘゼキ、ヘベル、 一八イシメライ、

エズリアおよびヨバブはエルパアルの子らであった。 一九ヤキン、ジク
リ、ザベデ、 二〇エリエナイ、チルタイ、エリエル、 二一アダヤ、ベラヤお

よびシムラテはシマの子らであった。 二二イシパン、ヘベル、エリエル、
アブドン、ジクリ、ハナン、 二四ハナニヤ、エラム、アントテヤ、 二五
歴代志上

二三

イペデヤおよびペヌエルはシャシャクの子らであった。 二六シャムセラ

33
イ、シハリア、アタリヤ、 二七ヤレシャ、エリヤおよびジクリはエロハム
こ れきだい しぞく ちょう
の 子 ら で あ っ た。 二 八こ れ ら は 歴代 の 氏族 の 長 で あ り、ま た か し ら で

あって、エルサレムに住んだ。
ちち す つま な
二九 ギ ベ オ ン の 父 エ イ エ ル は ギ ベ オ ン に 住 み、そ の 妻 の 名 は マ ア カ と
ちょうし つぎ
いった。 三〇その長子はアブドンで、次はツル、キシ、バアル、ナダブ、
三一 ゲドル、アヒオ、ザケル、 三二およびミクロテ。ミクロテはシメアを
う きょうだい む す
生 ん だ。こ れ ら も ま た 兄 弟 た ち と 向 か い あ っ て エ ル サ レ ム に 住 ん だ。
う う
三三 ネルはキシを生み、キシはサウルを生み、サウルはヨナタン、マルキ
う こ
シュア、アビナダブ、エシバアルを生んだ。 三四ヨナタンの子はメリバア
う こ
ルで、メリバアルはミカエルを生んだ。 三五ミカの子らはピトン、メレ

ク、タレア、アハズである。 三六アハズはエホアダを生み、エホアダはア
う う
レメテ、アズマウテ、ジムリを生み、ジムリはモザを生み、 三七モザはビ
う こ こ こ
ネアを生んだ。ビネアの子はラパ、ラパの子はエレアサ、エレアサの子
歴代志上

にん こ な
はアゼルである。 三八アゼルには六人の子があり、その名はアズリカム、

34
みな こ
ボケル、イシマエル、シャリヤ、オバデヤ、ハナンで、皆アゼルの子で
きょうだい こ ちょうし つぎ だい
ある。 三九その兄 弟 エセクの子らは、長子はウラム、次はエウシ、第三
こ だい ゆ う し ゆみ い もの
はエリペレテである。 四〇ウラムの子らは大勇士で、よく弓を射る者で
かれ おお こ まご にん みな
あった。彼は多くの子と孫をもち、百五十人もあった。これらは皆ベニ
しそん
ヤミンの子孫である。
第九章
けいず かぞ
一このようにすべてのイスラエルびとは系図によって数えられた。こ
れつおうき ふしん
れらはイスラエルの列王紀にしるされている。ユダはその不信のゆえ
ほしゅう りょうち まちまち さいしょ す
に バ ビ ロ ン に 捕囚 と な っ た。 二そ の 領地 の 町々 に 最初 に 住 ん だ も の は
さいし みや つか
イスラエルびと、祭司、レビびとおよび宮に仕えるしもべたちであった。
しそん しそん
またエルサレムにはユダの子孫、ベニヤミンの子孫およびエフライム
歴代志上


しそん す こ しそん
と マ ナ セ の 子孫 が 住 ん で い た。 四す な わ ち ユ ダ の 子 ペ レ ヅ の 子孫 の う

35
こ こ
ちではアミホデの子ウタイ。アミホデはオムリの子、オムリはイムリの
こ こ ちょうし
子、イムリはバニの子である。 五シロびとのうちでは長子アサヤとその
こ しそん きょうだい にん
ほかの子たち。 六ゼラの子孫のうちではユエルとその兄 弟 六百九十人。
しそん こ こ
七ベ ニ ヤ ミ ン の 子孫 の う ち で は ハ セ ヌ ア の 子 ホ ダ ビ ヤ の 子 で あ る メ
こ こ こ
シュラムの子サル、 八エロハムの子イブニヤ、ミクリの子であるウジの
こ こ こ こ
子エラおよびイブニヤの子リウエルの子であるシパテヤの子メシュラ
かれ きょうだい けいず あ
ム、 九ならびに彼らの兄 弟たちで、その系図によれば合わせて九百五十
にん ひとびと みな しぞく ちょう
六人。これらの人々は皆その氏族の長であった。
さいし こ
一〇 祭司のうちではエダヤ、ヨアリブ、ヤキン、 一一およびヒルキヤの子
こ こ
アザリヤ、ヒルキヤはメシュラムの子、メシュラムはザドクの子、ザド
こ こ かみ みや
クはメラヨテの子、メラヨテはアヒトブの子である。アザリヤは神の宮

のつかさである。 一二またエロハムの子アダヤ、エロハムはパシュルの
こ こ こ
子、パシュルはマルキヤの子である。またアデエルの子はマアセヤ、ア
歴代志上

こ こ
デエルはヤゼラの子、ヤゼラはメシュラムの子、メシュラムはメシレモ

36
こ こ かれ きょうだい
テの子、メシレモテはインメルの子である。 一三そのほかに彼らの兄 弟
しぞく ちょう あ にん
たちもあった。これらはその氏族の長で、合わせて一千七百六十人、み
かみ みや つとめ ちから ひとびと
な神の宮の務をするのに、はなはだ力のある人々であった。

一四 レビびとのうちではハシュブの子シマヤ、ハシュブはアズリカムの
こ こ しそん
子、アズリカムはハシャビヤの子で、これらはメラリの子孫である。 一五
こ こ
またバクバッカル、ヘレシ、ガラル、およびアサフの子ジクリの子であ
こ こ こ
るミカの子マッタニヤ、 一六ならびにエドトンの子ガラルの子であるシ
こ こ こ
マヤの子オバデヤおよびエルカナの子であるアサの子ベレキヤ、エルカ
むらざと す もの
ナはネトパびとの村里に住んだ者である。
もん まも
一七 門を守るものはシャルム、アックブ、タルモン、アヒマンおよびその
きょうだい ちょう かれ こんにち ひがし ほう
兄 弟たちで、シャルムはその長であった。 一八彼は今日まで東の方にあ
おう もん まも しそん もん まも もの
る王の門を守っている。これらはレビの子孫で営の門を守る者である。
こ こ こ しぞく
コラの子エビヤサフの子であるコレの子シャルムおよびその氏族の
歴代志上

一九
きょうだい まくや もん まも つとめ
兄 弟たちなどのコラびとは幕屋のもろもろの門を守る務をつかさどっ

37
せんぞ しゅ えい いりぐち まも もの
た。その先祖たちは主の営をつかさどり、その入口を守る者であった。
こ かれ しゅ かれ
二〇エレアザルの子ピネハスが、むかし彼らのつかさであった。主は彼
こ かいけん まくや もん まも
とともにおられた。 二一メシレミヤの子ゼカリヤは会見の幕屋の門を守
もの みなえら もん まも もの あ
る者であった。 二二これらは皆選ばれて門を守る者で、合わせて二百十
にん かれ むらむら けいず かぞ もの
二人あった。彼らはその村々で系図によって数えられた者で、ダビデと
せんけんしゃ かれ しょく にん かれ
先見者サムエルが彼らを職に任じたのである。 二三こうして彼らとその
しそん かんしゅにん しゅ いえ まくや いえ もん
子孫は監守人として、主の家である幕屋の家の門をつかさどった。 二四
もん まも もの とうざいなんぼく しほう むらむら きょうだい
門を守る者は東西南北の四方にいた。 二五またその村々にいる兄 弟たち
なぬか かわ き かれ たす もん まも もの ちょう にん
は七日ごとに代り、来て彼らを助けた。 二六門を守る者の長である四人
かみ いえ しつ たから かれ
のレビびとは神の家のもろもろの室と宝とをつかさどった。 二七彼らは
かみ いえ まも み やど あさ
神の家を守る身であるから、そのまわりに宿った。そして朝ごとにこれ
ひら
を開くことをした。
つとめ うつわ もの かれ かず しら
そのうちに務の器をつかさどる者があった。彼らはその数を調べて
歴代志上

二八
たずさ はい かず しら たずさ だ ひん
携え入り、またその数を調べて携え出した。 二九またそのほかの品、すべ

38
せい うつわ むぎこ しゅ あぶら にゅうこう こうりょう もの
ての聖なる器および麦粉、ぶどう酒、 油、乳 香、香 料をつかさどる者
さいし こうりょう ま もの
があった。 三〇また祭司のともがらのうちに香 料を混ぜる者があった。
ちょうし
三一コラびとシャルムの長子でレビびとのひとりであるマタテヤはせん
つく つと しそん
べいを造る勤めをつかさどった。 三二またコハテびとの子孫であるその
きょうだい そな あんそくにち ととの
兄 弟たちのうちに供えのパンをつかさどって、安息日ごとにこれを整
もの
える者どもがあった。
しぞく ちょう もの うた もの みや
三三レビびとの氏族の長であるこれらの者は歌うたう者であって、宮の
しつ す つとめ かれ にちやじぶん つとめ
もろもろの室に住み、ほかの務はしなかった。彼らは日夜自分の務に
したが れきだい しぞく ちょう
従 ったからである。 三四これらはレビびとの歴代の氏族の長であって、
ひとびと かれ す
かしらたる人々であった。彼らはエルサレムに住んだ。
ちち す つま な
三五ギベオンの父エヒエルはギベオンに住んでいた。その妻の名はマア
かれ ちょうし つぎ
カといった。 三六彼の長子はアブドン、次はツル、キシ、バアル、ネル、
ナダブ、 三七ゲドル、アヒオ、ゼカリヤ、ミクロテである。 三八ミクロテは
歴代志上

う かれ きょうだい す
シ メ ア ム を 生 ん だ。彼 ら も そ の 兄 弟 た ち と と も に エ ル サ レ ム に 住 ん

39
きょうだい む う
で、その兄 弟たちと向かいあっていた。 三九ネルはキシを生み、キシはサ

ウルを生み、サウルはヨナタン、マルキシュア、アビナダブ、エシバア
う こ う
ルを生んだ。 四〇ヨナタンの子はメリバアルで、メリバアルはミカを生

んだ。 四一ミカの子らはピトン、メレク、タレアおよびアハズである。 四
う う
アハズはヤラを生み、ヤラはアレメテ、アズマウテおよびジムリを生

う う こ
み、ジムリはモザを生み、四三モザはビネアを生んだ。ビネアの子はレパ
こ こ にん おとこ
ヤ、その子はエレアサ、その子はアゼルである。 四四アゼルに六人の男の
こ な
子があった。その名はアズリカム、ボケル、イシマエル、シャリヤ、オ

バデヤ、ハナン。これらはみなアゼルの子らであった。
第一〇章
たたか ひとびと
さてペリシテびとはイスラエルと戦 ったが、イスラエルの人々がペ
歴代志上


まえ に やま ころ たお
リシテびとの前から逃げ、ギルボア山で殺されて倒れたので、 二ペリシ

40
こ お こ
テびとはサウルとその子たちのあとを追い、サウルの子ヨナタン、アビ
ころ たたか はげ せま
ナダブおよびマルキシュアを殺した。 三 戦いは激しくサウルにおし迫
い て もの み かれ て もの
り、射手の者どもがついにサウルを見つけたので、彼は射手の者どもに
きず お ぶ き と もの い
傷を負わされた。 四そこでサウルはその武器を執る者に言った、﹁つる
ぬ さ かつれい
ぎを抜き、それをもってわたしを刺せ。さもないと、これらの割礼なき
もの き ぶ き と もの
者が来て、わたしをはずかしめるであろう﹂。しかしその武器を執る者
おそ き うえ
がいたく恐れて聞きいれなかったので、サウルはつるぎをとってその上
ふ ぶ き と もの し み じぶん
に伏した。 五武器を執る者はサウルの死んだのを見て、自分もまたつる
うえ ふ し にん こ
ぎ の 上 に 伏 し て 死 ん だ。 六こ う し て サ ウ ル と 三 人 の 子 ら お よ び そ の
かぞく みな し たに ひとびと みなかれ に
家族 は 皆 と も に 死 ん だ。 七谷 に い た イ ス ラ エ ル の 人々 は 皆彼 ら の 逃 げ
み こ し み まちまち に
るのを見、またサウルとその子らの死んだのを見て、町々をすてて逃げ
き す
たので、ペリシテびとが来てそのうちに住んだ。
ひ ころ もの と き
あくる日ペリシテびとは殺された者から、はぎ取るために来て、サウ
歴代志上


こ やま たお み
ルとその子らのギルボア山に倒れているのを見、 九サウルをはいでその

41
くび と くに しほう ひと
首と、よろいかぶとを取り、ペリシテびとの国の四方に人をつかわして、
よ し ぐうぞう たみ つ
この良き知らせをその偶像と民に告げさせた。 一〇そしてサウルのよろ
かれ かみ いえ お くび しんでん
いかぶとを彼らの神の家に置き、首をダゴンの神殿にくぎづけにした。
ひとびと みな
しかしヤベシ・ギレアデの人々は皆ペリシテびとがサウルにしたこ
一一
き ゆうし みな た あ こ
とを聞いたので、一二勇士たちが皆立ち上がり、サウルのからだとその子
も き き
らのからだをとって、これをヤベシに持って来て、ヤベシのかしの木の
した ほね ほうむ なぬか あいだ だんじき
下にその骨を葬り、七日の間、断食した。
しゅ おか つみ し
こうしてサウルは主にむかって犯した罪のために死んだ。すなわち
一三
かれ しゅ ことば まも くちよ と しゅ と
彼は主の言葉を守らず、また口寄せに問うことをして、一四主に問うこと
しゅ かれ ころ くに うつ こ
をしなかった。それで主は彼を殺し、その国を移してエッサイの子ダビ
あた
デに与えられた。
歴代志上

42
第一一章
ひと みな あつ
ここにイスラエルの人は皆ヘブロンにいるダビデのもとに集まって

き い こつにく さき おう
来て言った、
﹁われわれは、あなたの骨肉です。 二先にサウルが王であっ
とき ひき で い
た時にも、あなたはイスラエルを率いて出入りされました。そしてあな
かみ しゅ たみ ぼく もの
たの神、主はあなたに﹃あなたはわが民イスラエルを牧する者となり、わ
たみ きみ い
が民イスラエルの君となるであろう﹄と言われました﹂。 三このように
ちょうろう みな おう き
イスラエルの長 老が皆ヘブロンにいる王のもとに来たので、ダビデは
しゅ まえ かれ けいやく むす かれ
ヘブロンで主の前に彼らと契約を結んだ。そして彼らは、サムエルに
かた しゅ ことば したが あぶら そそ おう
よって語られた主の言葉に従 ってダビデに油を注ぎ、イスラエルの王
とした。

ダビデとすべてのイスラエルはエルサレムへ行った。エルサレムは

ち じゅうみん
すなわちエブスであって、そこにはその地の住 民であるエブスびとが
歴代志上

じゅうみん い
いた。 五エブスの住 民はダビデに言った、﹁あなたはここにはいっては

43
ようがい と
ならない﹂。しかし、ダビデはシオンの要害を取った。これがすなわち
まち とき い だい
ダビデの町である。 六この時ダビデは言った、﹁だれでも第一にエブス
う もの しょう こ だい
びとを撃つ者を、かしらとし、 将とする﹂。ゼルヤの子ヨアブが第一に
ようがい す
のぼっていったので、かしらとなった。 七そしてダビデがその要害に住
ひとびと まち な まち
ん だ の で 人々 は こ れ を ダ ビ デ の 町 と 名 づ け た。 八ダ ビ デ は ま た そ の 町
しゅうい しほう いし きず まち ぶぶん
の周囲すなわちミロから四方に石がきを築き、ヨアブは町のほかの部分
つくろ おお もの ばんぐん
を繕 った。 九こうしてダビデはますます大いなる者となった。万軍の
しゅ かれ
主が彼とともにおられたからである。
ゆうし つぎ かれ
一〇ダビデの勇士のおもなものは次のとおりである。彼らはイスラエル
ひと ちから くに え しゅ
のすべての人とともにダビデに力をそえて国を得させ、主がイスラエル
い ことば かれ おう ひとびと
について言われた言葉にしたがって、彼を王とした人々である。 一一ダ
ゆうし かず つぎ にん ちょう
ビデの勇士の数は次のとおりである。すなわち三人の長であるハクモ
こ かれ にん む ど
ニびとの子ヤショベアム、彼はやりをふるって三百人に向かい、一度に
歴代志上

ころ もの
これを殺した者である。

44
かれ つぎ こ ゆうし
一二 彼の次はアホアびとドドの子エレアザルで、三勇士のひとりである。
かれ あつ
一三 彼はダビデとともにパスダミムにいたが、ペリシテびとがそこに集
き たたか いちめん おおむぎ じ しょ たみ
まって来て戦 った。そこに一面に大麦のはえた地所があった。民はペ
まえ に かれ じ しょ なか た ふせ
リシテびとの前から逃げた。 一四しかし彼は地所の中に立ってこれを防
ころ しゅ おお しょうり あた かれ すく
ぎ、ペリシテびとを殺した。そして主は大いなる勝利を与えて彼らを救
われた。
にん ちょう にん くだ
一五 三十人の長たちのうちの三人は下っていってアドラムのほらあなの
いわ ところ い とき ぐんぜい
岩の所にいるダビデのもとへ行った。時にペリシテびとの軍勢はレパ
たに じん と とき ようがい
イムの谷に陣を取っていた。 一六その時ダビデは要害におり、ペリシテ
せんじん のぞ
びとの先陣はベツレヘムにあったが、 一七ダビデはせつに望んで、
﹁だれ
もん い ど みず の
かベツレヘムの門のかたわらにある井戸の水をわたしに飲ませてくれ
い にん じん
るとよいのだが﹂と言った。 一八そこでその三人はペリシテびとの陣を
つ とお もん い ど みず と
突き通って、ベツレヘムの門のかたわらにある井戸の水をくみ取って、
歴代志上

たずさ き の
ダビデのもとに携えて来た。しかしダビデはそれを飲もうとはせず、そ

45
しゅ まえ そそ い かみ だん
れを主の前に注いで、 一九言った、
﹁わが神よ、わたしは断じてこれをい
いのち い ひと ち の
たしません。 命をかけて行ったこの人たちの血をどうしてわたしは飲
かれ いのち みず き
む こ と が で き ま し ょ う。彼 ら は 命 を か け て こ の 水 を と っ て 来 た の で
みず の ゆうし
す﹂。それゆえ、ダビデはこの水を飲もうとはしなかった。三勇士はこ
のことをおこなった。
きょうだい にん ちょう かれ
二〇 ヨ ア ブ の 兄 弟 ア ビ シ ャ イ は 三 十 人 の 長 で あ っ た。彼 は や り を ふ
にん た む ころ にん な え
るって三百人に立ち向かい、これを殺して三人のほかに名を得た。 二一
かれ にん もっと たっと もの かれ
彼は三十人のうち、 最も尊ばれた者で、彼らのかしらとなった。しか
にん およ
し、かの三人には及ばなかった。
こ しゅっしん ゆうし おお
二二エホヤダの子ベナヤは、カブジエル 出 身の勇士であって、多くのて
た かれ こ う ころ かれ
がらを立てた。彼はモアブのアリエルのふたりの子を撃ち殺した。彼
ゆき ひ くだ あな なか う ころ かれ
はまた雪の日に下っていって、穴の中でししを撃ち殺した。 二三彼はま
み う ころ
た身のたけ五キュビトばかりのエジプトびとを撃ち殺した。そのエジ
歴代志上

て はた まきぼう も
プトびとは手に機の巻棒ほどのやりを持っていたが、ベナヤはつえを

46
かれ ところ くだ い て
とって彼の所へ下って行き、エジプトびとの手から、やりをもぎとり、そ
かれ ころ こ こと
のやりをもって彼を殺した。 二四エホヤダの子ベナヤは、これらの事を
い ゆうし な え かれ にん ゆうめい
行って三勇士のほかに名を得た。 二五彼は三十人のうちに有名であった
にん およ かれ じえい ちょう
が、かの三人には及ばなかった。ダビデは彼を侍衛の長とした。
ぐんだん ゆうし きょうだい しゅっしん
二六 軍団のうちの勇士はヨアブの兄 弟 アサヘル。ベツレヘム 出 身のド
こ しゅっしん
ドの子エルハナン。 二七ハロデ 出 身のシャンマ。ペロンびとヘレヅ。 二
しゅっしん こ しゅっしん
八テ コ ア 出 身 の イ ッ ケ シ の 子 イ ラ。ア ナ ト テ 出 身 の ア ビ エ ゼ ル。 二九
しゅっしん
ホ シ ャ テ び と シ ベ カ イ。ア ホ ア び と イ ラ イ。 三〇ネ ト パ 出 身 の マ ハ ラ
しゅっしん こ
イ。ネ ト パ 出 身 の バ ア ナ の 子 ヘ レ デ。 三一ベ ニ ヤ ミ ン び と の ギ ベ ア か
で こ たに
ら 出 た リ バ イ の 子 イ タ イ。ピ ラ ト ン の ベ ナ ヤ。 三 二ガ ア シ の 谷 の ホ ラ
しゅっしん
イ。ア ル バ テ び と ア ビ エ ル。 三三バ ハ ル ム 出 身 の ア ズ マ ウ テ。シ ャ ル
しゅっしん こ
ボ ン 出 身 の エ リ ヤ バ。 三四ギ ゾ ン び と ハ セ ム。ハ ラ ル び と シ ャ ゲ の 子
こ こ
ヨナタン。 三五ハラルびとサカルの子アヒアム。ウルの子エリパル。 三六
歴代志上

しゅっしん
メケラテびとヘペル。ペロンびとアヒヤ。 三七カルメル 出 身のヘズロ。

47
こ きょうだい こ
エ ズ バ イ の 子 ナ ア ラ イ。 三八ナ タ ン の 兄 弟 ヨ エ ル。ハ グ リ の 子 ミ ブ ハ
こ ぶ き と
ル。 三九アンモンびとゼレク。ゼルヤの子ヨアブの武器を執るもの、ベ
しゅっしん
エ ロ テ 出 身 の ナ ハ ラ イ。 四〇イ テ ル び と イ ラ。イ テ ル び と ガ レ ブ。 四一
こ こ
ヘ テ び と ウ リ ヤ。ア ハ ラ イ の 子 ザ バ デ。 四 二ル ベ ン び と シ ザ の 子 ア デ
かれ ちょう にん ひき
ナ。彼はルベンびとの長であって、三十人を率いた。 四三またマアカの

子ハナン。ミテニびとヨシャパテ。 四四アシテラテびとウジヤ。アロエ
こ こ
ルびとホタムの子らシャマとエイエル。 四五テジびとシムリの子エデア
きょうだい こ
エ ル お よ び そ の 兄 弟 ヨ ハ。 四六マ ハ ブ び と エ リ エ ル。エ ル ナ ア ム の 子
らエリバイおよびヨシャビヤ。モアブびとイテマ。 四七エリエル、オベ
デおよびメゾバびとヤシエルである。
第一二章
歴代志上

こ とき
一ダビデがキシの子サウルにしりぞけられて、なおチクラグにいた時、

48
つぎ ひとびと かれ き かれ たす たたか ゆうし
次の人々が彼のもとに来た。彼らはダビデを助けて戦 った勇士たちの
ゆみ もの さゆう て や い
うちにあり、二弓をよくする者、左右いずれの手をもってもよく矢を射、
いし な もの どうぞく
石を投げる者で、ともにベニヤミンびとで、サウルの同族である。 三そ
つぎ しゅっしん こ
のかしらはアヒエゼル、次はヨアシで、ともにギベア 出 身のシマアの子

たちである。またエジエルとペレテで、ともにアズマウテの子たちであ
しゅっしん しゅっしん
る。またベラカおよびアナトテ 出 身のエヒウ。 四またギベオン 出 身の
かれ にん ゆうし にん ちょう
イシマヤ、彼は三十人のうちの勇士で、その三十人の長である。またエ
しゅっしん
レミヤ、ヤハジエル、ヨハナン、ゲデラ 出 身のヨザバデ、五エルザイ、エ
リモテ、ベアリヤ、シマリヤ、ハリフびとシパテヤ、 六エルカナ、イシ
ア、アザリエル、ヨエゼル、ヤショベアムで、これらはコラびとである。

またゲドルのエロハムの子たちであるヨエラおよびゼバデヤである。

あらの ようがい き もの みな ゆ う し
八ガドびとのうちから荒野の要害に来て、ダビデについた者は皆勇士
たたか ぐんじん たて もの かお かお
で、よく戦う軍人、よく盾とやりをつかう者、その顔はししの顔のよう
歴代志上

はや やま かれ
で、その速いことは山にいるしかのようであった。 九彼らのかしらはエ

49
つぎ だい だい だい
ゼル、次はオバデヤ、第三はエリアブ、 一〇第四はミシマンナ、第五はエ
だい だい だい だい
レミヤ、一一第六はアッタイ、第七はエリエル、一二第八はヨナハン、第九
だい だい
はエルザバデ、 一三第十はエレミヤ、第十一はマクバナイである。 一四こ
しそん ぐんぜい ちょう もの もっと ちい もの にん あた
れらはガドの子孫で軍勢の長たる者、その最も小さい者でも百人に当
もっと おお もの にん あた しょうがつ ぜん
り、その最も大いなる者は千人に当った。 一五正 月、ヨルダンがその全
きし かれ わた たにだに もの ひがし
岸にあふれたとき、彼らはこれを渡って、谷々にいる者をことごとく東
にし に はし
に西に逃げ走らせた。
しそん ひとびと ようがい き
一六ベニヤミンとユダの子孫のうちの人々が要害に来て、ダビデについ
で かれ むか い こうい
た。 一七ダ ビ デ は 出 て 彼 ら を 迎 え て 言 っ た、﹁あ な た が た が 好意 を も っ
たす き こころ
て、わたしを助けるために来たのならば、わたしの心もあなたがたと、ひ
て あくじ
とつになりましょう。しかし、わたしの手になんの悪事もないのに、も
あざむ てき わた
しあなたがたが、わたしを欺いて、敵に渡すためであるならば、われわ
せんぞ かみ せ
れの先祖の神がどうぞみそなわして、あなたがたを責められますよう
歴代志上

とき れい にん ちょう のぞ い
に﹂。 一八時に霊が三十人の長 アマサイに臨み、アマサイは言った、

50
﹁ダビデよ、われわれはあなたのもの。
こ とも
エッサイの子よ、われわれはあなたと共にある。
へいあん へいあん
平安あれ、あなたに平安あれ。
たす もの へいあん
あなたを助ける者に平安あれ。
かみ たす
あなたの神があなたを助けられる﹂。
かれ う ぶたい ちょう
そこでダビデは彼らを受けいれて部隊の長とした。
とも たたか せ き
一九 さきにダビデがペリシテびとと共にサウルと戦おうと攻めて来たと
すうにん
き、マナセびと数人がダビデについた。︵ただしダビデはついにペリシ
たす きみ あい
テ び と を 助 け な か っ た。そ れ は ペ リ シ テ び と の 君 た ち が 相 は か っ て、
かれ くび しゅくん かえ
﹁彼はわれわれの首をとって、その主君サウルのもとに帰るであろう﹂と
い かれ さ い
言って、彼を去らせたからである。︶二〇ダビデがチクラグへ行ったとき、
マナセびとアデナ、ヨザバデ、エデアエル、ミカエル、ヨザバデ、エリ
かれ みな にん ちょう かれ
ウ、ヂルタイが彼についた。皆マナセびとの千人の長であった。 二一彼
歴代志上

たす てきぐん あた かれ みなだい ゆ う し ぐんぜい ちょう


らはダビデを助けて敵軍に当った。彼らは皆大勇士で軍勢の長であっ

51
たす もの ひ ひ くわ たいぐん かみ
た。 二二ダビデを助ける者が日に日に加わって、ついに大軍となり、神の
ぐんぜい
軍勢のようになった。
しゅ ことば したが くに あた
主の言葉に従い、サウルの国をダビデに与えようとして、ヘブロンに
二三
き ぶそう ぐんたい かず つぎ
いるダビデのもとに来た武装した軍隊の数は、次のとおりである。 二四
しそん たて ぶそう もの にん
ユダの子孫で盾とやりをとり、武装した者六千八百人、 二五シメオンの
しそん たたか ゆうし にん しそん にん
子孫で、よく戦う勇士七千百人、 二六レビの子孫からは四千六百人。 二七
いえ かれ ぞく もの にん
エホヤダはアロンの家のつかさで、彼に属する者は三千七百人。 二八ザ
ねんわか ゆうし かれ しぞく で しょうぐん にん
ドクは年若い勇士で、彼の氏族から出た将 軍は二十二人。 二九サウルの
どうぞく しそん にん おお
同族、ベニヤミンの子孫からは三千人、ベニヤミンびとの多くはなおサ
いえ ちゅうぎ しそん
ウルの家に忠義をつくしていた。 三〇エフライムの子孫からは二万八百
にん みな ゆ う し しぞく な ひとびと はん ぶ ぞ く
人、皆勇士で、その氏族の名ある人々であった。 三一マナセの半部族から
にん みな おう た のぼ き な
は一万八千人、皆ダビデを王に立てようとして上って来て、名をつらね
もの しそん じせい つう
た者である。 三二イッサカルの子孫からはよく時勢に通じ、イスラエル
歴代志上

ひとびと き ちょう もの にん
のなすべきことをわきまえた人々が来た。その長たる者が二百人あっ

52
きょうだい みな し き したが にん
て、その兄 弟たちは皆その指揮に従 った。 三三ゼブルンからは五万人、
みなくんれん へ ぐんたい ぶ ぐ み いっしん たす
皆訓練を経た軍隊で、もろもろの武具で身をよろい、一心にダビデを助
もの しょう もの にん たて
け た 者 で あ る。 三四ナ フ タ リ か ら は 将 た る 者 一 千 人 お よ び 盾 と や り を
したが もの にん ぶそう もの
とってこれに従う者三万七千人。 三五ダンびとからは武装した者二万八
にん たたか そな じゅくれん もの にん
千 六 百 人。 三六ア セ ル か ら は 戦 い の 備 え を し た 熟 練 の 者 四 万 人。 三七ま
はん ぶ ぞ く
たヨルダンのかなたルベンびと、ガドびと、マナセの半部族からはもろ
ぶ ぐ み もの にん
もろの武具で身をよろった者十二万人であった。
たたか そな まごころ
三八 すべてこれらの戦いの備えをしたいくさびとらは真心をもってヘブ
き ぜん おう
ロンに来て、ダビデを全イスラエルの王にしようとした。このほかのイ
こころ おう
スラエルびともまた、 心をひとつにしてダビデを王にしようとした。 三
かれ か く の
九彼 ら は ヘ ブ ロ ン に ダ ビ デ と と も に 三 日 い て、食 い 飲 み し た。そ の
きょうだい かれ そな かれ ちか
兄 弟 た ち は 彼 ら の た め に 備 え を し た か ら で あ る。 四〇ま た 彼 ら に 近 い
ひとびと とお ところ もの
人々はイッサカル、ゼブルン、ナフタリなどの遠い所の者まで、ろば、ら
歴代志上

ら ば うし しょくもつ お き むぎこ しょくもつ ひ


くだ、騾馬、牛などに食 物を負わせて来た。すなわち麦粉の食 物、干い

53
ほし しゅ あぶら うし ひつじ おお たずさ き
ちじく、干ぶどう、ぶどう酒、 油、牛、 羊などを多く携えて来た。これ
よろこ
はイスラエルに喜びがあったからである。
第一三章
にん ちょう にん ちょう しょしょう あい
一ここにダビデは千人の長、百人の長などの諸 将と相はかり、 二そして
ぜんかいしゅう い
ダビデはイスラエルの全 会 衆に言った、
﹁もし、このことをあなたがた
かみ しゅ ゆる
がよしとし、われわれの神、主がこれを許されるならば、われわれは、イ
かくち のこ きょうだい ほうぼく ち つ
スラエルの各地に残っているわれわれの兄 弟ならびに、放牧地の付い
まちまち さいし つかい ところ よ
ている町々にいる祭司とレビびとに、使をつかわし、われわれの所に呼
あつ かみ はこ ところ うつ
び 集 め ま し ょ う。 三ま た 神 の 箱 を わ れ わ れ の 所 に 移 し ま し ょ う。わ れ
よ かいしゅう いちどう
われはサウルの世にはこれをおろそかにしたからです﹂。 四会 衆は一同
い たみ め ただ
﹁そうしましょう﹂と言った。このことがすべての民の目に正しかった
歴代志上

からである。

54
かみ はこ はこ
五そこでダビデはキリアテ・ヤリムから神の箱を運んでくるため、エジ
いりぐち よ あつ
プトのシホルからハマテの入口までのイスラエルをことごとく呼び集
め た。 六そ し て ダ ビ デ と す べ て の イ ス ラ エ ル は バ ア ラ す な わ ち ユ ダ の
のぼ うえ ざ しゅ な
キリアテ・ヤリムに上り、ケルビムの上に座しておられる主の名をもっ
よ かみ はこ のぼ かみ はこ あたら くるま
て呼ばれている神の箱をそこからかき上ろうと、 七神の箱を新しい車に
いえ くるま ぎょ
のせて、アビナダブの家からひきだし、ウザとアヒヨがその車を御した。
うた こと たてごと て つづみ
八ダビデおよびすべてのイスラエルは歌と琴と立琴と、手 鼓と、シンバ
ちから かみ まえ おど
ルと、ラッパをもって、 力をきわめて神の前に踊った。
かれ う ば き とき て の はこ おさ うし
九彼らがキドンの打ち場に来た時、ウザは手を伸べて箱を押えた。牛が
て はこ しゅ
つまずいたからである。 一〇ウザが手を箱につけたことによって、主は
かれ む いか はっ かれ う かれ ところ かみ まえ し
彼に向かって怒りを発し、彼を撃たれたので、彼はその所で神の前に死
しゅ う いか ところ こんにち
んだ。 一一主がウザを撃たれたので、ダビデは怒った。その所は今日ま
よ ひ かみ おそ い
でペレヅ・ウザと呼ばれている。 一二その日ダビデは神を恐れて言った、
歴代志上

かみ はこ ところ い
﹁どうして神の箱を、わたしの所へかいて行けようか﹂。 一三それでダビ

55
はこ じぶん ところ まち うつ てん
デはその箱を自分の所 ダビデの町へは移さず、これを転じてガテびと
いえ はこ かみ はこ げつ あいだ
オベデ・エドムの家に運ばせた。 一四神の箱は三か月の間、オベデ・エド
いえ かぞく しゅ かぞく
ムの家に、その家族とともにとどまった。主はオベデ・エドムの家族と
も もの しゅくふく
そのすべての持ち物を祝 福された。
第一四章
おう し しゃ かれ いえ た
一ツロの王ヒラムはダビデに使者をつかわし、彼のために家を建てさせ
こうはく いしく もっこう おく しゅ じぶん かた た
よ う と 香柏 お よ び 石工 と 木工 を 送 っ た。 二ダ ビ デ は 主 が 自分 を 堅 く 立
おう たみ かれ くに
ててイスラエルの王とされたことと、その民イスラエルのために彼の国
おお おこ さと
を大いに興されたことを悟った。
つま
三ダビデはエルサレムでまた妻たちをめとった。そしてダビデにまた
むすめ うま かれ え こ な つぎ
むすこ、娘が生れた。 四彼がエルサレムで得た子たちの名は次のとおり
歴代志上

である。すなわちシャンマ、ショバブ、、ナタン、ソロモン、五イブハル、

56
エリシュア、エルペレテ、 六ノガ、ネペグ、ヤピア、 七エリシャマ、ベエ
リアダ、エリペレテである。
あぶら そそ ぜん おう
八さてペリシテびとはダビデが油を注がれて全イスラエルの王になっ
き のぼ さが
たことを聞いたので、ペリシテびとはみな上ってきてダビデを捜した。
き あた で
ダビデはこれを聞いてこれに当ろうと出ていったが、 九ペリシテびとは
き たに おか かみ と い
す で に 来 て、レ パ イ ム の 谷 を 侵 し た。 一〇ダ ビ デ は 神 に 問 う て 言 っ た、
む のぼ かれ
﹁ペリシテびとに向かって上るべきでしょうか。あなたは彼らをわたし
て しゅ い のぼ
の手にわたされるでしょうか﹂。主はダビデに言われた、﹁上りなさい。
かれ て かれ
わたしは彼らをあなたの手にわたそう﹂。 一一そこで彼はバアル・ペラジ
のぼ ところ かれ う はい い
ムへ上っていった。その所でダビデは彼らを打ち敗り、そして言った、
かみ やぶ で みず て てき やぶ
﹁神は破り出る水のように、わたしの手で敵を破られた﹂。それゆえ、そ
ところ な よ かれ じぶん かみ
の所の名はバアル・ペラジムと呼ばれている。 一二彼らが自分たちの神
のこ しりぞ めい ひ や
をそこに残して退いたので、ダビデは命じてこれを火で焼かせた。
歴代志上

ふたた たに おか ふたた かみ と
一三 ペリシテびとは再び谷を侵した。 一四ダビデが再び神に問うたので

57
かみ い かれ お のぼ とおまわ
神は言われた、﹁あなたは彼らを追って上ってはならない。遠回りして
き まえ かれ おそ き うえ こうしん
バルサムの木の前から彼らを襲いなさい。 一五バルサムの木の上に行進
おと きこ い たたか かみ まえ で
の音が聞えたならば、あなたは行って戦いなさい。神があなたの前に出
ぐんぜい う かみ めい
て ペ リ シ テ び と の 軍勢 を 撃 た れ る か ら で す﹂。 一六ダ ビ デ は 神 が 命 じ ら
ぐんぜい う やぶ
れたようにして、ペリシテびとの軍勢を撃ち破り、ギベオンからゲゼル
およ な くにぐに きこ しゅ
に及んだ。 一七そこでダビデの名はすべての国々に聞えわたり、主はす
くに かれ おそ
べての国びとに彼を恐れさせられた。
第一五章
まち じぶん いえ た かみ はこ
一ダビデはダビデの町のうちに自分のために家を建て、また神の箱のた
ところ そな まくや は い かみ はこ
めに所を備え、これがために幕屋を張った。 二ダビデは言った、
﹁神の箱
もの しゅ しゅ はこ しゅ
をかくべき者はただレビびとのみである。主が主の箱をかかせ、また主
歴代志上

なが つか かれ えら しゅ
に長く仕えさせるために彼らを選ばれたからである﹂。 三ダビデは主の

58
はこ そな ところ のぼ
箱をこれがために備えた所にかき上るため、イスラエルをことごとくエ
あつ しそん あつ
ルサレムに集めた。 四ダビデはまたアロンの子孫とレビびとを集めた。
しそん ちょう きょうだい
五すなわち、コハテの子孫のうちからはウリエルを長としてその兄 弟
にん しそん ちょう きょうだい
百二十人、 六メラリの子孫のうちからはアサヤを長としてその兄 弟 二
にん しそん ちょう
百 二 十 人、 七ゲ ル シ ョ ム の 子孫 の う ち か ら は ヨ エ ル を 長 と し て そ の
きょうだい にん しそん ちょう
兄 弟 百三十人、 八エリザパンの子孫のうちからはシマヤを長としてそ
きょうだい にん しそん ちょう
の兄 弟 二百人、 九ヘブロンの子孫のうちからはエリエルを長としてそ
きょうだい にん しそん ちょう
の兄 弟 八十人、 一〇ウジエルの子孫のうちからはアミナダブを長として
きょうだい にん さいし
その兄 弟 百十二人である。 一一ダビデは祭司ザドクとアビヤタル、およ
びレビびとウリエル、アサヤ、ヨエル、シマヤ、エリエル、アミナダブ
め かれ い しぞく ちょう
を召し、 一二彼らに言った、﹁あなたがたはレビびとの氏族の長である。
きょうだい み きよ かみ しゅ
あなたがたとあなたがたの兄 弟はともに身を清め、イスラエルの神、主
はこ そな ところ のぼ
の箱をわたしがそのために備えた所にかき上りなさい。 一三さきにこれ
歴代志上

もの かみ しゅ
をかいた者があなたがたでなかったので、われわれの神、主はわれわれ

59
う さだ あつか
を撃たれました。これはわれわれがその定めにしたがってそれを扱わ
さいし
な か っ た か ら で す﹂。 一四そ こ で 祭司 た ち と レ ビ び と た ち は イ ス ラ エ ル
かみ しゅ はこ のぼ み きよ しゅ
の神、主の箱をかき上るために身を清め、一五レビびとたちはモーセが主
ことば めい かみ はこ かた
の言葉にしたがって命じたように、神の箱をさおをもって肩にになっ
た。
ちょう きょうだい えら うた
一六ダビデはまたレビびとの長たちに、その兄 弟たちを選んで歌うたう
もの たてごと こと がっ き う よろこ こえ
者となし、立琴と琴とシンバルなどの楽器を打ちはやし、喜びの声をあ
めい こ
げ る こ と を 命 じ た。 一 七そ こ で レ ビ び と は ヨ エ ル の 子 ヘ マ ン と、そ の
きょうだい こ しそん かれ きょうだい
兄 弟 ベ レ キ ヤ の 子 ア サ フ お よ び メ ラ リ の 子孫 で あ る 彼 ら の 兄 弟 ク
こ えら つ きょうだい
シャヤの子エタンを選んだ。 一八またこれに次ぐその兄 弟たちがこれと
とも
共にいた。すなわちゼカリヤ、ヤジエル、セミラモテ、エイエル、ウン
ニ、エリアブ、ベナヤ、マアセヤ、マッタテヤ、エリペレホ、ミクネヤ
もん まも もの うた もの
および門を守る者オベデ・エドムとエイエル。 一九歌うたう者ヘマン、ア
歴代志上

せいどう う もの
サフおよびエタンは青銅のシンバルを打ちはやす者であった。 二〇ゼカ

60
リヤ、アジエル、セミラモテ、エイエル、ウンニ、エリアブ、マアセヤ、
たてごと そう もの
ベ ナ ヤ は ア ラ モ テ に し た が っ て 立琴 を 奏 す る 者 で あ っ た。 二一し か し
マッタテヤ、エリペレホ、ミクネヤ、オベデ・エドム、エイエル、アザ
こと し き もの
ジヤはセミニテにしたがって琴をもって指揮する者であった。 二二ケナ
がくちょう おんがく つう し き
ニヤはレビびとの楽 長で、音楽に通じていたので、これを指揮した。 二
はこ もん まも もの さいし
三ベレキヤとエルカナは箱のために門を守る者であった。 二四祭司シバ
ニヤ、ヨシャパテ、ネタネル、アマサイ、ゼカリヤ、ベナヤ、エリエゼ
かみ はこ まえ ふ はこ
ルらは神の箱の前でラッパを吹き、オベデ・エドムとエヒアは箱のため
もん まも もの
に門を守る者であった。
ちょうろう にん ちょう い
二五 ダビデとイスラエルの長 老たちおよび千人の長たちは行って、オベ
いえ しゅ けいやく はこ よろこ いさ のぼ かみ しゅ
デ・エドムの家から主の契約の箱を喜び勇んでかき上った。 二六神が主
けいやく はこ たす かれ おうし とう おひつじ
の契約の箱をかくレビびとを助けられたので、彼らは雄牛七頭、雄羊七
とう あ ま ぬの いふく き はこ
頭をささげた。 二七ダビデは亜麻布の衣服を着ていた。箱をかくすべて
歴代志上

うた もの おんがく どうよう
のレビびとは、歌うたう者、音楽をつかさどるケナニヤも同様である。

61
あ ま ぬの き
ダ ビ デ は ま た 亜麻布 の エ ポ デ を 着 て い た。 二 八こ う し て イ ス ラ エ ル は
みな こえ つのぶえ ふ たてごと こと
皆、声をあげ、角笛を吹きならし、ラッパと、シンバルと、立琴と琴を
う しゅ けいやく はこ のぼ
もって打ちはやして主の契約の箱をかき上った。
しゅ けいやく はこ まち むすめ まど
二九 主の契約の箱がダビデの町にはいったとき、サウルの娘 ミカルが窓
おう ま おど み こころ かれ
からながめ、ダビデ王の舞い踊るのを見て、 心のうちに彼をいやしめ
た。
第一六章
ひとびと かみ はこ い は まくや
一人々は神の箱をかき入れて、ダビデがそのために張った幕屋のうちに
お はんさい しゅうおんさい かみ まえ はんさい
置 き、そ し て 燔祭 と 酬 恩 祭 を 神 の 前 に さ さ げ た。 二ダ ビ デ は 燔祭 と
しゅうおんさい お しゅ な たみ しゅくふく
酬 恩 祭をささげ終えたとき、主の名をもって民を祝 福し、三イスラエル
ひとびと おとこ おんな にく き ほし
の人々に男にも女にもおのおのパン一つ、肉一切れ、干ぶどう一かたま
歴代志上

わ あた
りを分け与えた。

62
しゅ はこ まえ つか もの た
ダビデはまたレビびとのうちから主の箱の前に仕える者を立てて、イ

かみ しゅ かんしゃ がくちょう
スラエルの神、主をあがめ、感謝し、ほめたたえさせた。 五楽 長はアサ
つぎ
フ、その次はゼカリヤ、エイエル、セミラモテ、エヒエル、マッタテヤ、
かれ たてごと こと だん
エリアブ、ベナヤ、オベデ・エドム、エイエルで、彼らは立琴と琴を弾
う な さいし かみ
じ、アサフはシンバルを打ち鳴らし、 六祭司ベナヤとヤハジエルは神の
けいやく はこ まえ ふ
契約の箱の前でつねにラッパを吹いた。
ひ はじ かれ きょうだい た しゅ かんしゃ
その日ダビデは初めてアサフと彼の兄 弟たちを立てて、主に感謝を

ささげさせた。
しゅ かんしゃ な よ
八 主に感謝し、そのみ名を呼び、
たみ なか し
そのみわざをもろもろの民の中に知らせよ。
しゅ うた しゅ うた
九 主にむかって歌え、主をほめ歌え。
かた
そのもろもろのくすしきみわざを語れ。
せい な ほこ
その聖なるみ名を誇れ。
歴代志上

一〇
しゅ もと もの こころ よろこ
どうか主を求める者の心が喜ぶように。

63
しゅ ちから もと
主とそのみ力とを求めよ。
一一
かお
つねにそのみ顔をたずねよ。
一二一三 そのしもべアブラハムのすえよ、
えら こ
その選ばれたヤコブの子らよ。
しゅ きせき
主のなされたくすしきみわざと、その奇跡と、
くち こころ
そのみ口のさばきとを心にとめよ。
かれ かみ しゅ
彼はわれわれの神、主にいます。
一四
ぜん ち
そのさばきは全地にある。
しゅ けいやく
主はとこしえにその契約をみこころにとめられる。
一五
めい ことば
これはよろずよに命じられたみ言葉であって、
むす けいやく
アブラハムと結ばれた契約、
一六
ちか やくそく
イサクに誓われた約束である。
しゅ かた た さだ
主はこれを堅く立ててヤコブのために定めとし、
歴代志上

一七
けいやく
イスラエルのためにとこしえの契約として、

64
い ち あた
一八 言われた、﹁あなたにカナンの地を与えて、
う し ぎょう わ まえ
あなたがたの受ける嗣 業の分け前とする﹂と。
とき かれ かず すく
一九 その時、彼らの数は少なくて、
かぞ た くに たび
数えるに足らず、かの国で旅びととなり、
くに くに い
二〇 国から国へ行き、
くに たみ い
この国からほかの民へ行った。
しゅ ひと かれ
二一 主は人の彼らをしえたげるのをゆるされず、
かれ おう こら
彼らのために王たちを懲しめて、
い あぶら もの
二二 言われた、﹁わが油そそがれた者たちに
さわってはならない。
よげんしゃ がい くわ
わが預言者たちに害を加えてはならない﹂と。
ぜん ち しゅ む うた
二三 全地よ、主に向かって歌え。
ひ すくい の つた
日ごとにその救を宣べ伝えよ。
歴代志上

くに なか えいこう
二四 もろもろの国の中にその栄光をあらわし、

65
たみ なか
もろもろの民の中にくすしきみわざをあらわせ。
しゅ おお
主は大いなるかたにいまして、
二五
もの
いとほめたたうべき者、
かみ おそ もの
もろもろの神にまさって、恐るべき者だからである。
たみ かみ
もろもろの民のすべての神はむなしい。
二六
しゅ てん つく
しかし主は天を造られた。
ほまれ いげん まえ
二七 誉と威厳とはそのみ前にあり、
ちから よろこ せいじょ
力と喜びとはその聖所にある。
たみ しゅ き
もろもろの民のやからよ、主に帰せよ、
二八
えいこう ちから しゅ き
栄光と力とを主に帰せよ。
な えいこう しゅ き
そのみ名にふさわしい栄光を主に帰せよ。
二九
そな もの たずさ しゅ まえ
供え物を携えて主のみ前にきたれ。
せい よそお しゅ おが
聖なる装いをして主を拝め。
歴代志上

ぜん ち まえ
全地よ、そのみ前におののけ。
三〇

66
せかい かた た うご
世界は堅く立って、動かされることはない。
てん よろこ ち
天は喜び、地はたのしみ、
三一
くにたみ なか い しゅ おう
もろもろの国民の中に言え、﹁主は王であられる﹂と。
うみ なか み な
海とその中に満つるものとは鳴りどよめき、
三二
たはた なか もの よろこ
田畑とその中のすべての物は喜べ。
はやし き しゅ まえ よろこ うた
そのとき林のもろもろの木も主のみ前に喜び歌う。
三三
しゅ ち
主は地をさばくためにこられるからである。
しゅ かんしゃ しゅ めぐ
主に感謝せよ、主は恵みふかく、
三四

そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
い すくい かみ すく
また言え、﹁われわれの救の神よ、われわれを救い、
三五
くにたみ なか
もろもろの国民の中から
あつ すく
われわれを集めてお救いください。
せい な かんしゃ
そうすればあなたの聖なるみ名に感謝し、
歴代志上

ほまれ ほこ
あなたの誉を誇るでしょう。

67
かみ しゅ
三六 イスラエルの神、主は、
とこしえからとこしえまでほむべきかな﹂と。
とき たみ い しゅ
その時すべての民は﹁アァメン﹂と言って主をほめたたえた。
きょうだい しゅ けいやく はこ まえ
三七ダビデはアサフとその兄 弟たちを主の契約の箱の前にとめおいて、
つね はこ まえ つか ひ び おこな
常に箱の前に仕え、日々のわざを行わせた。 三八オベデ・エドムとその
きょうだい あ にん こ
兄 弟たちは合わせて六十八人である。またエドトンの子オベデ・エド
かどもり さいし きょうだい さいし
ムおよびホサは門守であった。 三九祭司ザドクとその兄 弟である祭司た
たか ところ しゅ まくや まえ つか しゅ
ちはギベオンにある高き所で主の幕屋の前に仕え、 四〇主がイスラエル
めい りっぽう はんさい だん
に命じられた律法にしるされたすべてのことにしたがって燔祭の壇の
うえ あさゆう はんさい しゅ かれ
上に朝夕たえず燔祭を主にささげた。 四一また彼らとともにヘマン、エ
えら な もの しゅ
ドトンおよびほかの選ばれて名をしるされた者どもがいて、主のいつく
よ よ かぎ しゅ かんしゃ
しみの世々限りなきことについて主に感謝した。 四二すなわちヘマンお
かれ た
よびエドトンは彼らとともにいて、ラッパ、シンバルおよびその他の
歴代志上

せいか がっ き おんがく そう こ もん まも
聖歌のための楽器をとって音楽を奏し、エドトンの子らは門を守った。

68
たみ みな いえ かえ かぞく しゅくふく
四三 こうして民は皆おのおの家に帰り、ダビデはその家族を祝 福するた
かえ い
めに帰って行った。
第一七章
じぶん いえ す よげんしゃ い
一さてダビデは自分の家に住むようになったとき、預言者ナタンに言っ
み こうはく いえ す しゅ けいやく はこ てんまく
た、
﹁見よ、わたしは香柏の家に住んでいるが、主の契約の箱は天幕のう
い かみ
ちにある﹂。 二ナタンはダビデに言った、
﹁神があなたとともにおられる
こころ おこな
から、すべてあなたの心にあるところを行いなさい﹂。
よる かみ ことば のぞ い い
三その夜、神の言葉がナタンに臨んで言った、四﹁行ってわたしのしもべ
つ しゅ い す いえ た
ダビデに告げよ、﹃主はこう言われる、わたしの住む家を建ててはならな
みちび のぼ ひ こんにち いえ す
い。 五わ た し は イ ス ラ エ ル を 導 き 上 っ た 日 か ら 今日 ま で、家 に 住 ま わ
てんまく てんまく まくや まくや うつ
ず、天幕から天幕に、幕屋から幕屋に移ったのである。 六わたしがすべ
歴代志上

とも あゆ ところ たみ ぼく
てのイスラエルと共に歩んだすべての所で、わたしの民を牧することを

69
めい こと
命じたイスラエルのさばきづかさのひとりに、ひと言でも、﹁どうしてあ
こうはく いえ た い
なたがたは、わたしのために香柏の家を建てないのか﹂と言ったことが
いま
あるだろうか﹄と。 七それゆえ今あなたは、わたしのしもべダビデにこ
い ばんぐん しゅ おお まきば
う言いなさい、
﹃万軍の主はこう仰せられる、
﹁わたしはあなたを牧場か
ひつじ したが ところ と たみ きみ
ら、 羊に従 っている所から取って、わたしの民イスラエルの君とし、 八
い とも てき
あなたがどこへ行くにもあなたと共におり、あなたのすべての敵をあな
まえ た さ ち うえ おお もの な
たの前から断ち去った。わたしはまた地の上の大いなる者の名のよう
な え たみ
な 名 を あ な た に 得 さ せ よ う。 九そ し て わ た し は わ が 民 イ ス ラ エ ル の た
ところ さだ かれ う かれ じぶん ところ す かさ
めに一つの所を定めて、彼らを植えつけ、彼らを自分の所に住ませ、重
うご まえ
ねて動くことのないようにしよう。 一〇また前のように、すなわちわた
たみ うえ た とき
しがわが民イスラエルの上にさばきづかさを立てた時からこのかたの
わる ひと かさ あら
ように、悪い人が重ねてこれを荒すことはないであろう。わたしはまた
てき せいふく しゅ
あなたのもろもろの敵を征服する。かつわたしは主があなたのために
歴代志上

いえ た つ ひ み せんぞ
家を建てられることを告げる。 一一あなたの日が満ち、あなたの先祖た

70
ところ い こ
ちの所へ行かねばならぬとき、わたしはあなたの子、すなわちあなたの
こ た おうこく かた かれ
子らのひとりを、あなたのあとに立てて、その王国を堅くする。 一二彼は
いえ た なが かれ くらい かた
わたしのために家を建てるであろう。わたしは長く彼の位を堅くする。
かれ ちち かれ こ
一三 わたしは彼の父となり、彼はわたしの子となる。わたしは、わたしの
もの と さ かれ
いつくしみを、あなたのさきにあった者から取り去ったように、彼から
と さ かれ なが いえ
は取り去らない。 一四かえって、わたしは彼を長くわたしの家に、わたし
おうこく かれ くらい かた た
の王国にすえおく。彼の位はとこしえに堅く立つであろう﹄﹂。 一五ナタ
ことば まぼろし
ンはすべてこれらの言葉のように、またすべてこの幻のようにダビデに
かた
語った。
おう しゅ まえ ざ い しゅ かみ
一六 そこで、ダビデ王は、はいって主の前に座して言った、
﹁主なる神よ、
いえ
わたしがだれ、わたしの家がなんであるので、あなたはこれまでわたし
みちび かみ め ちい こと
を 導 か れ た の で す か。 一七神 よ、こ れ は あ な た の 目 に は 小 さ な 事 で す。
しゅ かみ いえ のち こと かた
主なる神よ、あなたはしもべの家について、はるか後の事を語って、き
歴代志上

よ よ しめ めいよ
たるべき代々のことを示されました。 一八しもべの名誉については、ダ

71
うえ なに もう
ビデはこの上あなたに何を申しあげることができましょう。あなたは
し しゅ
しもべを知っておられるからです。 一九主よ、あなたはしもべのために、
こころ おお こと
またあなたの心にしたがって、このもろもろの大いなる事をなし、すべ
おお こと し しゅ みみ き
ての大いなる事を知らされました。 二〇主よ、われわれがすべて耳に聞
ところ かみ
いた所によれば、あなたのようなものはなく、またあなたのほかに神は
ちじょう こくみん たみ
ありません。 二一また地上のどの国民が、あなたの民イスラエルのよう
かみ い じぶん たみ
でありましょうか。これは神が行って、自分のためにあがなって民と
だ たみ まえ くにぐに
し、エジプトからあなたがあがない出されたあなたの民の前から国々の
たみ お はら おお おそ こと い な え
民を追い払い、大いなる恐るべき事を行って、名を得られたものではあ
たみ なが たみ
りませんか。 二二あなたはあなたの民イスラエルを長くあなたの民とさ
しゅ かれ かみ しゅ
れました。主よ、あなたは彼らの神となられたのです。 二三それゆえ主
いえ かた ことば なが かた
よ、あなたがしもべと、しもべの家について語られた言葉を長く堅くし

て、あなたの言われたとおりにしてください。 二四そうすればあなたの
歴代志上

な かた かみ ばんぐん しゅ
名はとこしえに堅くされ、あがめられて、
﹃イスラエルの神、万軍の主は

72
かみ い いえ
イスラエルの神である﹄と言われ、またあなたのしもべダビデの家はあ
まえ かた た かみ かれ
なたの前に堅く立つことができるでしょう。 二五わが神よ、あなたは彼
いえ た しめ
のために家を建てると、しもべに示されました。それゆえ、しもべはあ
まえ いの ゆうき え しゅ かみ よ
なたの前に祈る勇気を得ました。 二六主よ、あなたは神にいまし、この良
こと やくそく いえ
き事をしもべに約束されました。 二七それゆえどうぞいま、しもべの家
しゅくふく まえ なが つづ しゅ
を祝 福し、あなたの前に長く続かせてくださるように。主よ、あなたの
しゅくふく なが しゅくふく う
祝 福されるものは長く祝 福を受けるからです﹂。
第一八章
のち う せいふく
この後ダビデはペリシテびとを撃ってこれを征服し、ペリシテびとの

て むらむら と
手からガテとその村々を取った。
かれ う
彼はまたモアブを撃った。モアブびとはダビデのしもべとなって、み
歴代志上


おさ
つぎを納めた。

73
おう かわ
三ダビデはまた、ハマテのゾバの王ハダデゼルがユフラテ川のほとり
き ね ん ひ た い かれ う
に、その記念碑を建てようとして行ったとき彼を撃った。 四そしてダビ
かれ せんしゃ きへい にん ほへい にん と
デは彼から戦車一千、騎兵七千人、歩兵二万人を取った。ダビデは一百
せんしゃ うま のこ せんしゃ うま あし すじ き
の戦車の馬を残して、そのほかの戦車の馬はみなその足の筋を切った。
とき おう たす
五その時ダマスコのスリヤびとがゾバの王ハダデゼルを助けるために
き にん ころ
来たので、ダビデはそのスリヤびと二万二千人を殺した。 六そしてダビ
し ゅ び たい お おさ
デはダマスコのスリヤに守備隊を置いた。スリヤびとはみつぎを納め
しゅ い ところ しょうり
てダビデのしもべとなった。主はダビデにすべてその行く所で勝利を
あた も きん たて
与 え ら れ た。 七ダ ビ デ は ハ ダ デ ゼ ル の し も べ ら が 持 っ て い た 金 の 盾 を
うば も まち
奪って、エルサレムに持ってきた。 八またハダデゼルの町テブハテとク
ひじょう おお せいどう と もち
ンからダビデは非常に多くの青銅を取った。ソロモンはそれを用いて
せいどう うみ はしら せいどう うつわ つく
青銅の海、 柱および青銅の器を造った。
とき おう おう ぐんぜい
時にハマテの王トイはダビデがゾバの王ハダデゼルのすべての軍勢
歴代志上


う やぶ き こ おう
を撃ち破ったことを聞き、 一〇その子ハドラムをダビデ王につかわして、

74
かれ しゅく の
彼にあいさつさせ、かつ祝を述べさせた。ハダデゼルはかつてしばしば
たたか まじ たたか う やぶ
トイと戦いを交えたが、ダビデはハダデゼルと戦 って、これを撃ち破っ
きん ぎん せいどう うつわ おく
たからである。ハドラムは金、銀および青銅のさまざまの器を贈ったの
おう ひとびと
で、 一一ダビデ王はこれをエドム、モアブ、アンモンの人々、ペリシテび
しょこくみん と きんぎん しゅ
と、アマクレなどの諸国民のうちから取ってきた金銀とともに、主にさ
さげた。
こ しお たに う ころ
ゼルヤの子アビシャイは塩の谷で、エドムびと一万八千を撃ち殺し
一二
し ゅ び たい お みな
た。 一三ダビデはエドムに守備隊を置き、エドムびとは皆ダビデのしも
しゅ い ところ しょうり あた
べとなった。主はダビデにすべてその行く所で勝利を与えられた。 一四
ぜん ち おさ たみ こうどう
こうしてダビデはイスラエルの全地を治め、そのすべての民に公道と
せいぎ おこな こ ぐん ちょう こ
正義を行 った。 一五ゼルヤの子ヨアブは軍の長、アヒルデの子ヨシャパ
しかん こ こ さいし
テは史官、 一六アヒトブの子ザドクとアビヤタルの子アビメレクは祭司、
しょきかん こ
シャウシャは書記官、 一七エホヤダの子ベナヤはケレテびととペレテび
歴代志上

ちょう こ おう だいじん
との長、ダビデの子たちは王のかたわらにはべる大臣であった。

75
第一九章
のち ひとびと おう し こ かわ おう
この後アンモンの人々の王ナハシが死んで、その子がこれに代って王

い こ
となった。 二そのときダビデは言った、
﹁わたしはナハシの子ハヌンに、
かれ ちち めぐ ほどこ めぐ ほどこ
彼の父がわたしに恵みを施したように、恵みを施そう﹂。そしてダビデ
かれ ちち なぐさ し しゃ
は彼をその父のゆえに慰めようとして使者をつかわした。ダビデのし
なぐさ ひとびと ち き
もべたちはハヌンを慰めるためアンモンの人々の地に来たが、 三アンモ
ひとびと い なぐさ もの
ンの人々のつかさたちはハヌンに言った、﹁ダビデが慰める者をあなた
かれ ちち たっと
のもとにつかわしたことによって、あなたは彼があなたの父を尊ぶのだ
おも かれ き くに さぐ
と思われますか。彼のしもべたちが来たのは、この国をうかがい、探っ
ほろ
て滅ぼすためではありませんか﹂。 四そこでハヌンはダビデのしもべた
とら おと きもの なか た き こし
ちを捕えて、そのひげをそり落し、その着物を中ほどから断ち切って腰
ところ かれ かえ ひとびと き ひと
の所までにして彼らを帰してやった。 五ある人々が来て、この人たちの
歴代志上

つ かれ ひと かれ むか
されたことをダビデに告げたので、彼は人をつかわして、彼らを迎えさ

76
ひとびと ひじょう は おう い
せた。その人々が非常に恥じたからである。そこで王は言った、﹁ひげ
のちかえ
がのびるまでエリコにとどまって、その後帰りなさい﹂。
ひとびと じぶん にく
六アンモンの人々は自分たちがダビデに憎まれることをしたとわかっ
ひとびと ぎん おく
たので、ハヌンおよびアンモンの人々は銀千タラントを送ってメソポタ
せんしゃ きへい やと い
ミヤとアラム・マアカ、およびゾバから戦車と騎兵を雇い入れた。 七す
せんしゃ おう ぐんたい やと い かれ
なわち戦車三万二千およびマアカの王とその軍隊を雇い入れたので、彼
き まえ じん は ひとびと まちまち
らは来てメデバの前に陣を張った。そこでアンモンの人々は町々から
よ あつ たたか しゅつどう き
寄 り 集 ま っ て、 戦 い に 出 動 し た。 八ダ ビ デ は こ れ を 聞 い て ヨ ア ブ と
ゆうし ぜんぐん ひとびと で き まち いりぐち
勇士の全軍をつかわしたので、 九アンモンの人々は出て来て町の入口に
たたか そな たす き おう べつ の
戦いの備えをした。また助けに来た王たちは別に野にいた。
とき たたか ぜんご じぶん む み
一〇 時にヨアブは戦いが前後から自分に向かっているのを見て、イスラ
ぬ へいし えら たい そな
エルのえり抜きの兵士のうちから選んで、これをスリヤびとに対して備
たみ じぶん きょうだい て
え、 一一そのほかの民を自分の兄 弟 アビシャイの手にわたして、アンモ
歴代志上

ひとびと たい そな い
ンの人々に対して備えさせ、 一二そして言った、
﹁もしスリヤびとがわた

77
て たす ひとびと
しに手ごわいときは、わたしを助けてください。もしアンモンの人々が
て たす いさ
あなたに手ごわいときは、あなたを助けましょう。 一三勇ましくしてく
たみ かみ まちまち いさ
ださい。われわれの民のためと、われわれの神の町々のために、勇まし
しゅ よ おも
くしましょう。どうか、主が良いと思われることをされるように﹂。 一四
じぶん いっしょ たみ とも む たたか
こうしてヨアブが自分と一緒にいる民と共にスリヤびとに向かって戦
ちか かれ まえ に
おうとして近づいたとき、スリヤびとは彼の前から逃げた。 一五アンモ
ひとびと に み かれ きょうだい
ンの人々はスリヤびとの逃げるのを見て、彼らもまたヨアブの兄 弟 ア
まえ に まち
ビシャイの前から逃げて町にはいった。そこでヨアブはエルサレムに
かえ
帰った。
じぶん まえ う やぶ
一六 しかしスリヤびとは自分たちがイスラエルの前に打ち敗られたのを
み し しゃ ぐん ちょう ひき
見て、使者をつかわし、ハダデゼルの軍の長 ショパクの率いるユフラテ
かわ む がわ ひ だ こと きこ
川の向こう側にいるスリヤびとを引き出した。 一七この事がダビデに聞
かれ あつ わた かれ
えたので、彼はイスラエルをことごとく集め、ヨルダンを渡り、彼らの
歴代志上

ところ き む たたか そな
所に来て、これに向かって戦いの備えをした。ダビデがこのようにスリ

78
たい たたか そな かれ たたか
ヤびとに対して戦いの備えをしたとき、彼はダビデと戦 った。 一八しか
まえ に
しスリヤびとがイスラエルの前から逃げたので、ダビデはスリヤびとの
せんしゃ へい ほへい ころ ぐん ちょう ころ
戦車の兵七千、歩兵四万を殺し、また軍の長 ショパクをも殺した。 一九ハ
みかた もの う やぶ み
ダデゼルのしもべたちは味方の者がイスラエルに打ち敗られたのを見
わ こう かれ つか ふたた
て、ダビデと和を講じ、彼に仕えた。スリヤびとは再びアンモンびとを
たす
助けることをしなかった。
第二〇章
はる おう たたか で およ ぐんぜい ひき
一春になって、王たちが戦いに出るに及んで、ヨアブは軍勢を率いてア
ち あら い ほうい
ンモンびとの地を荒し、行ってラバを包囲した。しかしダビデはエルサ
う ほろ
レムにとどまった。ヨアブはラバを撃って、これを滅ぼした。 二そして
かれ おう かんむり あたま と きん おも
ダ ビ デ は 彼 ら の 王 の 冠 を そ の 頭 か ら 取 り は な し た。そ の 金 の 重 さ を
歴代志上

はか なか ほうせき
量ってみると一タラント、またその中に宝石があった。これをダビデの

79
あたま お まち もの ひじょう おお も だ
頭に置いた。ダビデはまたその町のぶんどり物を非常に多く持ち出し
かれ たみ ひ だ てつ
た。 三また彼はそのうちの民を引き出して、これをのこぎりと、鉄のつ
つか しごと
るはしと、おのを使う仕事につかせた。ダビデはアンモンびとのすべて
まちまち い たみ みな
の 町々 に こ の よ う に 行 っ た。そ し て ダ ビ デ と 民 と は 皆 エ ル サ レ ム に
かえ
帰った。
のち たたか た とき
四この後ゲゼルでペリシテびとと戦いが起った。その時ホシャびとシ
きょじん しそん ころ せいふく
ベカイが巨人の子孫のひとりシパイを殺した。かれらはついに征服さ
たたか こ
れた。 五ここにまたペリシテびとと戦いがあったが、ヤイルの子エルハ
きょうだい ころ え はた
ナ ン は ガ テ び と ゴ リ ア テ の 兄 弟 ラ ミ を 殺 し た。そ の や り の 柄 は 機 の
まきぼう たたか せ
巻棒のようであった。 六またガテに戦いがあったが、そこにひとりの背
たか ひと て ゆび あし ゆび ぽん あ ほん
の高い人がいた。その手の指と足の指は六本ずつで、合わせて二十四本
かれ きょじん うま もの かれ
あ っ た。彼 も ま た 巨人 か ら 生 れ た 者 で あ っ た。 七彼 は イ ス ラ エ ル を の
きょうだい こ ころ
のしったので、ダビデの兄 弟 シメアの子ヨナタンがこれを殺した。 八こ
歴代志上

きょじん うま もの て けらい
れらはガテで巨人から生れた者であったが、ダビデの手とその家来たち

80
て たお
の手に倒れた。
第二一章
とき た てき うご
一時にサタンが起ってイスラエルに敵し、ダビデを動かしてイスラエル
かぞ ぐん しょうこう い
を 数 え さ せ よ う と し た。 二ダ ビ デ は ヨ ア ブ と 軍 の 将 校 た ち に 言 っ た、
い かぞ
﹁あなたがたは行って、ベエルシバからダンまでのイスラエルを数え、そ
かず しら し い
の数を調べてわたしに知らせなさい﹂。 三ヨアブは言った、
﹁それがどの
しゅ たみ ばい ま おう
くらいあっても、どうか主がその民を百倍に増されるように。しかし王
しゅ かれ みな しゅ
わが主よ、彼らは皆あなたのしもべではありませんか。どうしてわが主
こと もと つみ え
はこの事を求められるのですか。どうしてイスラエルに罪を得させら
おう ことば か で
れるのですか﹂。 四しかし王の言葉がヨアブに勝ったので、ヨアブは出
い い めぐ かえ き
て行って、イスラエルをあまねく行き巡り、エルサレムに帰って来た。 五
歴代志上

たみ そうすう つ
そしてヨアブは民の総数をダビデに告げた。すなわちイスラエルには

81
ぬ もの にん ぬ もの にん
つるぎを抜く者が百十万人、ユダにはつるぎを抜く者が四十七万人あっ
おう めいれい こころよ
た。 六しかしヨアブは王の命令を快しとしなかったので、レビとベニヤ
なか かぞ
ミンとはその中に数えなかった。
こと かみ め わる かみ う
この事が神の目に悪かったので、神はイスラエルを撃たれた。 八そこ

かみ い こと い おお つみ おか
でダビデは神に言った、﹁わたしはこの事を行って大いに罪を犯しまし
いま つみ のぞ ひじょう おろ
た。しかし今どうか、しもべの罪を除いてください。わたしは非常に愚
しゅ せんけんしゃ つ い
かなことをいたしました﹂。 九主はダビデの先見者ガデに告げて言われ
い い しゅ おお
た、 一〇﹁行ってダビデに言いなさい、
﹃主はこう仰せられる、わたしは
こと しめ えら
三つの事を示す。あなたはその一つを選びなさい。わたしはそれをあ
おこな き い しゅ おお
なたに行おう﹄と﹂。 一一ガデはダビデのもとに来て言った、
﹁主はこう仰
えら ねん
せられます、
﹃あなたは選びなさい。 一二すなわち三年のききんか、ある
がつ あいだ まえ やぶ てき お
いは三月の間、あなたのあだの前に敗れて、敵のつるぎに追いつかれる
か あいだ しゅ えきびょう くに しゅ
か、あるいは三日の間、主のつるぎすなわち疫 病がこの国にあって、主
歴代志上

つかい ぜんりょういき ほろ
の使がイスラエルの全 領 域にわたって滅ぼすことをするか﹄。いま、わ

82
こたえ き
たしがどういう答をわたしをつかわしたものになすべきか決めなさ
い ひじょう なや しゅ
い﹂。 一三ダビデはガデに言った、
﹁わたしは非常に悩んでいるが、主のあ
おお しゅ て おちい
われみは大きいゆえ、わたしを主の手に陥らせてください。しかしわた
ひと て おちい
しを人の手に陥らせないでください﹂。
しゅ えきびょう くだ
一四 そこで主はイスラエルに疫 病を下されたので、イスラエルびとのう
にん たお かみ つかい
ち七万人が倒れた。 一五神はまたみ使をエルサレムにつかわして、これ
ほろ つかい ほろ しゅ み
を滅ぼそうとされたが、み使がまさに滅ぼそうとしたとき、主は見られ
わざわい く ほろ つかい い いま
て、この災を悔い、その滅ぼすみ使に言われた、
﹁もうじゅうぶんだ。今
て しゅ つかい う
あなたの手をとどめよ﹂。そのとき主の使はエブスびとオルナンの打ち
ば た め み しゅ つかい
場のかたわらに立っていた。 一六ダビデが目をあげて見ると、主の使が
ち てん あいだ た て ぬ うえ
地と天の間に立って、手に抜いたつるぎをもち、エルサレムの上にさし
の ちょうろう あらぬの き ふ
伸べていたので、ダビデと長 老たちは荒布を着て、ひれ伏した。 一七そし
かみ い たみ かぞ めい
てダビデは神に言った、﹁民を数えよと命じたのはわたしではありませ
歴代志上

つみ おか わる こと ひつじ なに
んか。罪を犯し、悪い事をしたのはわたしです。しかしこれらの羊は何

83
かみ しゅ て
をしましたか。わが神、主よ、どうぞあなたの手をわたしと、わたしの
ちち いえ わざわい たみ くだ
父の家にむけてください。しかし災をあなたの民に下さないでくださ
い﹂。
とき しゅ つかい めい のぼ い
一八 時に主の使はガデに命じ、ダビデが上って行って、エブスびとオルナ
う ば しゅ さいだん きず つ
ンの打ち場で主のために一つの祭壇を築くように告げさせた。 一九そこ
しゅ な つ ことば したが のぼ い
で ダ ビ デ は ガ デ が 主 の 名 を も っ て 告 げ た 言葉 に 従 っ て 上 っ て 行 っ た。
むぎ う つかい み
二〇 そのときオルナンは麦を打っていたが、ふりかえってみ使を見たの
かれ にん こ み
で、ともにいた彼の四人の子は身をかくした。 二一ダビデがオルナンに
ちか め あ み う ば で き ち
近づくと、オルナンは目を上げてダビデを見、打ち場から出て来て地に
ふ はい い う
ひれ伏してダビデを拝した。 二二ダビデはオルナンに言った、
﹁この打ち
ば ところ あた わざわい たみ くだ
場の所をわたしに与えなさい。わたしは災が民に下るのをとどめるた
しゅ さいだん きず
め、そこに主のために一つの祭壇を築きます。あなたは、そのじゅうぶ
あたい あた
んな価をとってこれをわたしに与えなさい﹂。 二三オルナンはダビデに
歴代志上

い と おう しゅ よ み
言った、﹁どうぞこれをお取りなさい。そして王わが主の良しと見られ

84
おこな うし はんさい だ こっ き
るところを行いなさい。わたしは牛を燔祭のために、打穀機をたきぎの
むぎ そさい みな
ために、麦を素祭のためにささげます。わたしは皆これをささげます﹂。
おう い だいか
二四ダビデ王はオルナンに言った、
﹁いいえ、わたしはじゅうぶんな代価
はら か しゅ と
を払ってこれを買います。わたしは主のためにあなたのものを取るこ
つい はんさい
とをしません。また、費えなしに燔祭をささげることをいたしません﹂。
ところ きん
二五それでダビデはその所のために金六百シケルをはかって、オルナン
はら しゅ ところ さいだん きず
に払った。 二六こうしてダビデは主のために、その所に一つの祭壇を築
はんさい しゅうおんさい しゅ よ しゅ はんさい さいだん うえ てん
き、燔祭と酬 恩 祭をささげて、主を呼んだ。主は燔祭の祭壇の上に天か
ひ くだ こた しゅ つかい めい かれ
ら火を下して答えられた。 二七また主がみ使に命じられたので、彼はつ
るぎをさやにおさめた。
とき しゅ う ば じぶん こた
二八その時ダビデは主がエブスびとオルナンの打ち場で自分に答えられ
み ところ ぎせい あらの つく
たのを見たので、その所で犠牲をささげた。 二九モーセが荒野で造った
しゅ まくや はんさい さいだん とき たか ところ
主の幕屋と燔祭の祭壇とは、その時ギベオンの高き所にあったからであ
歴代志上

まえ い かみ もと
る。 三〇し か し ダ ビ デ は そ の 前 へ 行 っ て 神 に 求 め る こ と が で き な か っ

85
かれ しゅ つかい おそ
た。彼が主の使のつるぎを恐れたからである。
第二二章
い しゅ かみ いえ
一それでダビデは言った、
﹁主なる神の家はこれである、イスラエルのた
はんさい さいだん
めの燔祭の祭壇はこれである﹂と。
めい ち た こ く じん あつ かみ いえ
二ダビデは命じてイスラエルの地にいる他国人を集めさせ、また神の家
た もち いし き いしく さだ もん
を 建 て る の に 用 い る 石 を 切 る た め に 石工 を 定 め た。 三ダ ビ デ は ま た 門
もち てつ そな
のとびらのくぎ、およびかすがいに用いる鉄をおびただしく備えた。ま
せいどう はか そな こうはく
た 青銅 を 量 る こ と も で き な い ほ ど お び た だ し く 備 え た。 四ま た 香柏 を
かぞ そな ひとびと
数えきれぬほど備えた。これはシドンびととツロの人々がおびただし
こうはく ところ も き い
く香柏をダビデの所に持って来たからである。 五ダビデは言った、﹁わ
こ わか けいけん しゅ た いえ
が子ソロモンは若く、かつ経験がない。また主のために建てる家はきわ
歴代志上

そうだい ばんこく な え さか え
めて壮大で、万国に名を得、栄えを得るものでなければならない。それ

86
じゅんび し まえ
ゆえ、わたしはその準備をしておこう﹂と。こうしてダビデは死ぬ前に
おお ぶっ し じゅんび
多くの物資を準備した。
かれ こ め かみ しゅ いえ
そして彼はその子ソロモンを召して、イスラエルの神、主のために家

た めい い
を建てることを命じた。 七すなわちダビデはソロモンに言った、﹁わが
こ かみ しゅ な いえ た こころざ
子よ、わたしはわが神、主の名のために家を建てようと志していた。 八
しゅ ことば のぞ い おお ち なが
ところが主の言葉がわたしに臨んで言われた、﹃おまえは多くの血を流
おお せんそう まえ おお ち ち なが
し、大いなる戦争をした。おまえはわたしの前で多くの血を地に流した
な いえ た み おとこ こ
から、わが名のために家を建ててはならない。 九見よ、 男の子がおまえ
うま かれ へいわ ひと かれ へいあん あた しゅうい
に生れる。彼は平和の人である。わたしは彼に平安を与えて、周囲のも
てき わずら かれ な よ
ろもろの敵に煩わされないようにしよう。彼の名はソロモンと呼ばれ、
あ よ へいあん せいおん あた かれ な
彼の世にわたしはイスラエルに平安と静穏とを与える。 一〇彼はわが名
いえ た かれ こ かれ ちち
のために家を建てるであろう。彼はわが子となり、わたしは彼の父とな
かれ おうい うえ かた
る。わたしは彼の王位をながくイスラエルの上に堅くするであろう﹄。
歴代志上

こ しゅ とも さか
一一 それでわが子よ、どうか主があなたと共にいまし、あなたを栄えさせ

87
しゅ い かみ しゅ いえ た
て、主があなたについて言われたように、あなたの神、主の家を建てさ
しゅ ふんべつ ち え たま
せてくださるように。 一二ただ、どうか主があなたに分別と知恵を賜い、
うえ た かみ しゅ りっぽう
あなたをイスラエルの上に立たせられるとき、あなたの神、主の律法を、
まも しゅ
あなたに守らせてくださるように。 一三あなたがもし、主がイスラエル
めい さだ つつし まも
についてモーセに命じられた定めとおきてとを慎んで守るならば、あな
さか こころ つよ いさ おそ
たは栄えるであろう。 心を強くし、勇め。恐れてはならない、おののい
み くなん しゅ いえ
てはならない。 一四見よ、わたしは苦難のうちにあって主の家のために
きん ぎん そな せいどう てつ はか
金十万タラント、銀百万タラントを備え、また青銅と鉄を量ることもで
そな ざいもく いし そな
きないほどおびただしく備えた。また材木と石をも備えた。あなたは
くわ たすう しょくにん
またこれに加えなければならない。 一五あなたにはまた多数の職 人、す
いし き き きざ もの こうさく たく かくしゅ もの きん ぎん
なわち石や木を切り刻む者、工作に巧みな各種の者がある。 一六金、銀、
せいどう てつ おこな しゅ
青銅、鉄もおびただしくある。たって行いなさい。どうか主があなたと
とも
共におられるように﹂。
歴代志上


ダビデはまたイスラエルのすべてのつかさたちにその子ソロモンを
一七

88
たす めい い かみ しゅ
助けるように命じて言った、 一八﹁あなたがたの神、主はあなたがたとと
しほう たいへい たま しゅ
もにおられるではないか。四方に泰平を賜わったではないか。主はこ
ち たみ て ち しゅ まえ たみ まえ
の地の民をわたしの手にわたされたので、この地は主の前とその民の前
ふく こころ せいしん
に服している。 一九それであなたがたは心をつくし、精神をつくしてあ
かみ しゅ もと しゅ かみ せいじょ た しゅ な
なたがたの神、主を求めなさい。たって主なる神の聖所を建て、主の名
た いえ しゅ けいやく はこ かみ せい うつわ たずさ
のために建てるその家に、主の契約の箱と神の聖なるもろもろの器を携

え入れなさい﹂。
第二三章
お ひ み こ
ダビデは老い、その日が満ちたので、その子ソロモンをイスラエルの

おう
王とした。
さいし あつ
ダビデはイスラエルのすべてのつかさおよび祭司とレビびとを集め
歴代志上


さいいじょう かぞ おとこ かず
た。 三レビびとの三十歳以上のものを数えると、その男の数が三万八千

89
にん い にん しゅ いえ しごと
人あった。 四ダビデは言った、﹁そのうち二万四千人は主の家の仕事を
にん にん
つかさどり、六千人はつかさびと、およびさばきびととなり、 五四千人
もん まも もの にん つく がっ き
は門を守る者となり、また四千人はさんびのためにわたしの造った楽器
しゅ かれ こ
で主をたたえよ﹂。 六そしてダビデは彼らをレビの子らにしたがってゲ
くみ わ
ルション、コハテ、メラリの組に分けた。
こ こ
七ゲルションの子らはラダンとシメイ。 八ラダンの子らは、かしらのエ
にん こ
ヒ エ ル と ゼ タ ム と ヨ エ ル の 三 人。 九シ メ イ の 子 ら は シ ロ ミ テ、ハ ジ エ
にん しぞく ちょう
ル、ハランの三人。これらはラダンの氏族の長であった。 一〇シメイの
こ にん みな こ
子らはヤハテ、ジナ、エウシ、ベリアの四人。皆シメイの子で、 一一ヤハ
つぎ こ おお
テはかしら、ジザはその次、エウシとベリアは子が多くなかったので、と
かぞ しぞく
もに数えられて一つの氏族となった。
こ にん
一二 コハテの子らはアムラム、イヅハル、ヘブロン、ウジエルの四人。 一
こ こ
アムラムの子らはアロンとモーセである。アロンはその子らととも
歴代志上


せい せいべつ わ しゅ まえ こう
に、ながくいと聖なるものを聖別するために分かたれて、主の前に香を

90
しゅ つか つね しゅ な しゅくふく かみ ひと
たき、主に仕え、常に主の名をもって祝 福することをなした。 一四神の人
こ ぶぞく かぞ こ
モーセの子らはレビの部族のうちに数えられた。 一五モーセの子らはゲ

ルションとエリエゼル。 一六ゲルションの子らは、かしらはシブエル。 一

エリエゼルの子らは、かしらはレハビヤ。エリエゼルにはこのほかに

こ こ ひじょう おお
子がなかった。しかしレハビヤの子らは非常に多かった。 一八イヅハル
こ こ ちょうし つぎ
の子らは、かしらはシロミテ。 一九ヘブロンの子らは長子はエリヤ、次は
だい だい こ
アマリヤ、第三はヤハジエル、第四はエカメアム。 二〇ウジエルの子ら
つぎ
は、かしらはミカ、次はイシアである。
こ こ
二一 メラリの子らはマヘリとムシ。マヘリの子らはエレアザルとキシ。
おとこ こ し むすめ
二二 エレアザルは男の子がなくて死に、ただ娘たちだけであったが、キシ
こ みうち おとこ かのじょ こ
の子であるその身内の男たちが彼女たちをめとった。 二三ムシの子らは
にん
マヘリ、エデル、エレモテの三人である。
しぞく しそん にんずう かぞ
これらはその氏族によるレビの子孫であって、その人数が数えられ、
歴代志上

二四
な しゅ いえ つとめ さいいじょう もの しぞく ちょう
その名がしるされて、主の家の務をなした二十歳以上の者で、氏族の長

91
い かみ しゅ たみ へいあん
であった。 二五ダビデは言った、
﹁イスラエルの神、主はその民に平安を
あた す かさ まくや
与え、ながくエルサレムに住まわれる。 二六レビびとは重ねて幕屋およ
つと うつわもの さいご ことば
びその勤めの器 物をかつぐことはない。 二七︱︱ダビデの最後の言葉に
さいいじょう もの かぞ かれ つとめ
よって、レビびとは二十歳以上の者が数えられた︱︱ 二八彼らの務はア
しそん たす しゅ いえ はたら にわ しごと
ロンの子孫を助けて主の家の働きをし、庭とへやの仕事およびすべての
せい きよ かみ いえ はたら
聖なるものを清めること、そのほか、すべて神の家の働きをすることで
そな そさい むぎこ たね い か し や そな もの
ある。 二九また供えのパン、素祭の麦粉、種入れぬ菓子、焼いた供え物、
あぶら そな もの ぶんりょう おお はか
油をまぜた供え物をつかさどり、またすべて分 量および大きさを量る
あさ た しゅ かんしゃ ゆう
ことをつかさどり、 三〇また朝ごとに立って主に感謝し、さんびし、夕に
あんそくにち しんげつ さいじつ しゅ
もまたそのようにし、 三一また安息日と新月と祭日に、主にもろもろの
はんさい た しゅ まえ めい かず
燔祭をささげるときは、絶えず主の前にその命じられた数にしたがって
かれ かいけん まくや せいじょ
ささげなければならない。 三二このようにして彼らは会見の幕屋と聖所
つとめ まも しゅ いえ はたら きょうだい こ つか
の務を守り、主の家の働きのためにその兄 弟であるアロンの子らに仕
歴代志上

えなければならない﹂。

92
第二四章
しそん くみ つぎ こ
一アロンの子孫の組は次のとおりである。すなわちアロンの子らはナ
ちち さき
ダブ、アビウ、エレアザル、イタマル。 二ナダブとアビウはその父に先
し こ さいし
だって死に、子がなかったので、エレアザルとイタマルが祭司となった。
しそん しそん たす
三ダビデはエレアザルの子孫ザドクとイタマルの子孫アヒメレクの助
かれ わ つと
け に よ っ て 彼 ら を 分 け て、そ れ ぞ れ の 勤 め に つ け た。 四エ レ ア ザ ル の
しそん しそん ちょう ひとびと おお
子孫 の う ち に は イ タ マ ル の 子孫 の う ち よ り も 長 た る 人々 が 多 か っ た。
しそん しぞく ちょう にん しそん
それでエレアザルの子孫で氏族の長である十六人と、イタマルの子孫で
しぞく ちょう もの にん わ かれ みな
氏族 の 長 で あ る 者 八 人 に こ れ を 分 け た。 五こ の よ う に 彼 ら は 皆 ひ と し
わ せいじょ かみ
く、くじによって分けられた。聖所のつかさ、および神のつかさは、と
しそん しそん で
も に エ レ ア ザ ル の 子孫 と イ タ マ ル の 子孫 か ら 出 た か ら で あ る。 六レ ビ
こ しょ き おう さいし
びとネタネルの子である書記シマヤは、王とつかさたちと祭司ザドクと
歴代志上

こ さいし しぞく ちょう まえ


アビヤタルの子アヒメレクと祭司およびレビびとの氏族の長たちの前

93
か しぞく と
で、これを書きしるした。すなわちエレアザルのために氏族一つを取れ

ば、イタマルのためにも一つを取った。
だい あた だい あた だい
第一のくじはヨアリブに当り、第二はエダヤに当り、 八第三はハリム

だい だい だい だい
に、第四はセオリムに、 九第五はマルキヤに、第六はミヤミンに、 一〇第
だい だい だい
七はハッコヅに、第八はアビヤに、 一一第九はエシュアに、第十はシカニ
だい だい だい
ヤに、一二第十一はエリアシブに、第十二はヤキムに、一三第十三はホッパ
だい だい だい
に、第十四はエシバブに、 一四第十五はビルガに、第十六はインメルに、
だい だい だい だい
一五 第十七はヘジルに、第十八はハピセツに、一六第十九はペタヒヤに、第
だい だい
二十はエゼキエルに、 一七第二十一はヤキンに、第二十二はガムルに、 一
だい だい あた かれ
第二十三はデラヤに、第二十四はマアジヤに当った。 一九これは、彼ら

せんぞ もう さだ しゅ いえ つとめ
の先祖アロンによって設けられた定めにしたがい、主の家にはいって務
じゅんじょ かみ しゅ かれ めい
をなす順 序であって、イスラエルの神、主の彼に命じられたとおりであ
る。
歴代志上

しそん つぎ こ
二〇 このほかのレビの子孫は次のとおりである。すなわちアムラムの子

94

らのうちではシュバエル。シュバエルの子らのうちではエデヤ。 二一レ
こ ちょうし
ハビヤについては、レハビヤの子らのうちでは長子イシア。 二二イヅハ

リびとのうちではシロミテ。シロミテの子らのうちではヤハテ。 二三ヘ
こ ちょうし つぎ だい だい
ブロンの子らは長子はエリヤ、次はアマリヤ、第三はヤハジエル、第四
こ こ
はエカメアム。 二四ウジエルの子らのうちではミカ。ミカの子らのうち
きょうだい こ
ではシャミル。 二五ミカの兄 弟はイシア。イシアの子らのうちではゼカ
こ こ
リヤ。 二六メラリの子らはマヘリとムシ。ヤジアの子らはベノ。 二七メラ
しそん で もの
リの子孫のヤジアから出た者はベノ、ショハム、ザックル、イブリ。 二八
で かれ こ
マヘリからエレアザルが出た。彼には子がなかった。 二九キシについて
こ こ
は、キシの子はエラメル。 三〇ムシの子らはマヘリ、エデル、エリモテ。
しそん しぞく もの
これらはレビびとの子孫で、その氏族によっていった者である。 三一こ
もの しぞく あに おとうと どうよう おう
れらの者もまた氏族の兄もその弟も同様に、ダビデ王と、ザドクと、ア
さいし しぞく ちょう まえ しそん
ヒメレクと、祭司およびレビびとの氏族の長たちの前で、アロンの子孫
歴代志上

きょうだい ひ
であるその兄 弟たちのようにくじを引いた。

95
第二五章
ぐん ちょう こ つと
一ダビデと軍の長たちはまたアサフ、ヘマンおよびエドトンの子らを勤
わ こと たてごと よげん もの
めのために分かち、琴と、立琴と、シンバルをもって預言する者にした。
つと ひとびと かず つぎ こ
そ の 勤 め を な し た 人々 の 数 は 次 の と お り で あ る。 二ア サ フ の 子 た ち は
し き
ザックル、ヨセフ、ネタニヤ、アサレラであって、アサフの指揮のもと
おう いのち よげん もの
に王の命によって預言した者である。 三エドトンについては、エドトン
こ にん
の子たちはゲダリヤ、ゼリ、エサヤ、ハシャビヤ、マッタテヤの六人で、
こと しゅ かんしゃ よげん ちち
琴をもって主に感謝し、かつほめたたえて預言したその父エドトンの
し き した こ
指揮の下にあった。 四ヘマンについては、ヘマンの子たちはブッキヤ、
マッタニヤ、ウジエル、シブエル、エレモテ、ハナニヤ、ハナニ、エリ
アタ、ギダルテ、ロマムテ・エゼル、ヨシベカシャ、マロテ、ホテル、マ
みな かみ じしん やくそく たか
ハジオテである。 五これらは皆、神がご自身の約束にしたがって高くさ
歴代志上

おう せんけんしゃ こ かみ おとこ こ にん
れた王の先見者ヘマンの子たちであった。神はヘマンに男の子十四人、

96
おんな こ にん あた もの みな ちち し き した
女の子三人を与えられた。 六これらの者は皆その父の指揮の下にあっ
しゅ みや うた たてごと こと かみ みや つとめ
て、主の宮で歌をうたい、シンバルと立琴と琴をもって神の宮の務をし
おう いのち した かれ
た。アサフ、エドトンおよびヘマンは王の命の下にあった。 七彼らおよ
しゅ うた くんれん じゅくれん きょうだい
び主に歌をうたうことのために訓練され、すべて熟 練した兄 弟たちの
かず にん かれ しょう もの だい もの きょうし
数は二百八十八人であった。 八彼らは小なる者も、大なる者も、教師も
せいと みな つとめ ひ
生徒も皆ひとしくその務のためにくじを引いた。
だい あた だい あた
九第一のくじはアサフのためにヨセフに当り、第二はゲダリヤに当っ
かれ きょうだい こ あ にん だい
た。彼とその兄 弟たちおよびその子たち、合わせて十二人。 一〇第三は
あた こ きょうだい あ にん
ザックルに当った。その子たちおよびその兄 弟たち、合わせて十二人。
だい あた こ きょうだい あ
一一 第四はイヅリに当った。その子たちおよびその兄 弟たち、合わせて
にん だい あた こ きょうだい
十 二 人。 一二第 五 は ネ タ ニ ヤ に 当 っ た。そ の 子 た ち お よ び そ の 兄 弟 た
あ にん だい あた こ
ち、合わせて十二人。 一三第六はブッキヤに当った。その子たちおよび
きょうだい あ にん だい あた こ
その兄 弟たち、合わせて十二人。 一四第七はアサレラに当った。その子
歴代志上

きょうだい あ にん だい あた
たちおよびその兄 弟たち、合わせて十二人。 一五第八はエサヤに当った。

97
こ きょうだい あ にん だい
その子たちおよびその兄 弟たち、合わせて十二人。 一六第九はマッタニ
あた こ きょうだい あ にん だい
ヤに当った。その子たちおよびその兄 弟たち、合わせて十二人。 一七第
あた こ きょうだい あ
十はシメイに当った。その子たちおよびその兄 弟たち、合わせて十二
にん だい あた こ きょうだい
人。 一八第 十 一 は ア ザ リ エ ル に 当 っ た。そ の 子 た ち お よ び そ の 兄 弟 た
あ にん だい あた こ
ち、合わせて十二人。 一九第十二はハシャビヤに当った。その子たちお
きょうだい あ にん だい あた
よびその兄 弟たち、合わせて十二人。 二〇第十三はシュバエルに当った。
こ きょうだい あ にん だい
その子たちおよびその兄 弟たち、合わせて十二人。 二一第十四はマッタ
あた こ きょうだい あ にん
テヤに当った。その子たちおよびその兄 弟たち、合わせて十二人。 二二
だい あた こ きょうだい あ
第十五はエレモテに当った。その子たちおよびその兄 弟たち、合わせ
にん だい あた こ きょうだい
て十二人。 二三第十六はハナニヤに当った。その子たちおよびその兄 弟
あ にん だい あた こ
たち、合わせて十二人。 二四第十七はヨシベカシャに当った。その子た
きょうだい あ にん だい あた
ちおよびその兄 弟たち、合わせて十二人。 二五第十八はハナニに当った。
こ きょうだい あ にん だい
その子たちおよびその兄 弟たち、合わせて十二人。 二六第十九はマロテ
歴代志上

あた こ きょうだい あ にん だい
に当った。その子たちおよびその兄 弟たち、合わせて十二人。 二七第二

98
あた こ きょうだい あ
十はエリアタに当った。その子たちおよびその兄 弟たち、合わせて十
にん だい あた こ きょうだい
二 人。 二八第 二 十 一 は ホ テ ル に 当 っ た。そ の 子 た ち お よ び そ の 兄 弟 た
あ にん だい あた こ
ち、合わせて十二人。 二九第二十二はギダルテに当った。その子たちお
きょうだい あ にん だい あた
よびその兄 弟たち、合わせて十二人。 三〇第二十三はマハジオテに当っ
こ きょうだい あ にん だい
た。その子たちおよびその兄 弟たち、合わせて十二人。 三一第二十四は
あた こ きょうだい あ
ロマムテ・エゼルに当った。その子たちおよびその兄 弟たち、合わせて
にん
十二人であった。
第二六章
もん まも もの くみ つぎ
一門を守る者の組は次のとおりである。すなわちコラびとのうちでは、
しそん こ こ
アサフの子孫のうちのコレの子メシレミヤ。 二メシレミヤの子たちは、
ちょうし つぎ だい だい
長子はゼカリヤ、次はエデアエル、第三はゼバデヤ、第四はヤテニエル、
歴代志上

だい だい だい
三第五はエラム、第六はヨハナン、第七はエリヨエナイである。 四オベ

99
こ ちょうし つぎ だい だい
デ・エドムの子たちは、長子はシマヤ、次はヨザバデ、第三はヨア、第
だい だい だい
四はサカル、第五はネタネル、 五第六はアンミエル、第七はイッサカル、
だい かみ かれ しゅくふく かれ こ
第八はピウレタイである。神が彼を祝 福されたからである。 六彼の子
すうにん こ うま ゆうのう ひとびと ちち いえ おさ
シマヤにも数人の子が生れ、有能な人々であったので、その父の家を治
もの こ
める者となった。 七すなわちシマヤの子たちはオテニ、レパエル、オベ
きょうだい ちから ひとびと
デ、エルザバデで、エルザバデの兄 弟 エリウとセマキヤは力ある人々で
みな しそん かれ こ
あった。 八これらは皆オベデ・エドムの子孫である。彼らはその子たち
きょうだい とも つと てき ちから ひとびと あ
およびその兄 弟たちと共にその勤めに適した力ある人々で、合わせて
にん ぞく もの こ
六十二人、みなオベデ・エドムに属する者である。 九メシレミヤにも子
きょうだい あ にん みなちから ひとびと
たちと兄 弟たち合わせて十八人あって、皆 力ある人々であった。 一〇メ
しそん こ ちょうし
ラリの子孫ホサにも子たちがあった。そのかしらはシムリ、これは長子
ちち つぎ
ではなかったが、父はこれをかしらにしたのであった。 一一次はヒルキ
だい だい こ きょうだい
ヤ、第三はテバリヤ、第四はゼカリヤである。ホサの子たちと兄 弟たち
歴代志上

あ にん
は合わせて十三人である。

100
もん まも もの くみ ちょう ひとびと きょうだい
一二 こ れ ら は 門 を 守 る 者 の 組 の 長 た る 人々 で あ っ て、そ の 兄 弟 た ち と
どうよう つとめ しゅ みや つか かれ もん しょう
同様に務をなして、主の宮に仕えた。 一三彼らはそれぞれ門のために小
もの だい もの ひと しぞく ひ
なる者も、大なる者も等しく、その氏族にしたがってくじを引いた。 一四
ひがし もん あた かれ こ し り ょ ふか ぎ し
東の門のくじはシレミヤに当った。また彼の子で思慮深い議士ゼカリ
ひ きた もん あた
ヤのためにくじを引いたが、北の門のくじがこれに当った。 一五オベデ・
みなみ もん こ くら
エドムには南の門のくじ、その子たちには倉のくじ、一六シュパムとホサ
にし もん あた さか おおじ もん
には西の門のくじが当った。これは坂の大路にあるシャレケテの門の
まも もの まも もの あいたい ひがし ほう
かたわらにあった。守る者と守る者とが相対していた。 一七 東の方には
まいにち にん きた ほう まいにち にん みなみ ほう まいにち にん くら にん
毎日六人、北の方には毎日四人、 南の方には毎日四人、倉には二人と二
にん にし ほう おおじ にん にん もん まも
人、 一八西の方パルバルには大路に四人、パルバルに二人。 一九門を守る
もの くみ いじょう しそん しそん
者の組は以上のとおりで、コラの子孫とメラリの子孫であった。
かみ みや くら せい もの くら
二〇 レビびとのうちアヒヤは神の宮の倉および聖なる物の倉をつかさ
しそん で
ど っ た。 二一ラ ダ ン の 子孫 す な わ ち ラ ダ ン か ら 出 た ゲ ル シ ョ ン び と の
歴代志上

しそん しぞく ちょう


子孫で、ゲルションびとの氏族の長はエヒエリである。

101
きょうだい こ しゅ みや くら
二二 エヒエリ、ゼタムおよびその兄 弟 ヨエルの子たちは主の宮の倉をつ
かさどった。 二三アムラムびと、イヅハルびと、ヘブロンびと、ウジエル
つぎ こ
びとのうちでは次のとおりであった。 二四すなわちモーセの子ゲルショ
こ くら きょうだい
ムの子シブエルは倉のつかさであった。 二五その兄 弟でエリエゼルから
で もの こ こ こ
出た者は、その子はレハビヤ、その子はエサヤ、その子はヨラム、その
こ こ きょうだい
子はジクリ、その子はシロミテである。 二六このシロミテとその兄 弟た
せい もの くら おう しぞく
ちはすべての聖なる物の倉をつかさどった。これはダビデ王と、氏族の
ちょう にん ちょう にん ちょう ぐん ちょう
長と、千人の長と、百人の長と、軍の長たちのささげたものである。 二七
かれ たたか え もの しゅ みや しゅうぜん
すなわち彼らが戦いで獲たぶんどり物のうちから主の宮の修 繕のため
せんけんしゃ こ
にささげたものである。 二八またすべて先見者サムエル、キシの子サウ
こ こ もの
ル、ネルの子アブネル、ゼルヤの子ヨアブなどがささげた物。すべてこ
もの きょうだい かんり
れらのささげ物はシロミテとその兄 弟たちが管理した。

イヅハルびとのうちでは、ケナニヤとその子たちが、つかさおよびさ
歴代志上

二九
がいじ えら
ばきびととしてイスラエルの外事のために選ばれた。 三〇ヘブロンびと

102
きょうだい ゆうし にん
のうちでは、ハシャビヤおよびその兄 弟など勇士千七百人があって、ヨ
にし ほう かんとく しゅ
ルダンのこなた、すなわち西の方でイスラエルの監督となり、主のすべ
こと おこな おう ほうし けいず しぞく
ての事を行い、王に奉仕した。 三一ヘブロンびとのうちでは、系図と氏族
ちょう ちせい だい
によってエリヤがヘブロンびとの長であったが、ダビデの治世の第四十
ねん かれ たず もと かれ だい ゆ う し え
年に彼らを尋ね求め、ギレアデのヤゼルで彼らのうちから大勇士を得
おう かれ きょうだい しぞく ちょう にん ゆうし
た。 三二ダビデ王は彼とその兄 弟など氏族の長たち二千七百人の勇士を
はん ぶ ぞ く かんとく かみ
ルベンびと、ガドびと、マナセびとの半部族の監督となし、すべて神に
こと おう こと
つける事と王の事とをつかさどらせた。
第二七章
しそん しぞく ちょう せんにん ちょう にん ちょう
イスラエルの子孫のうちで氏族の長、千人の長、百人の長、およびつ

ねん つき あいだ つき こうたい くみ こと
かさたちは年のすべての月の間、月ごとに交替して組のすべての事をな
歴代志上

おう つか かず かくくみ にん
して王に仕えたが、その数にしたがえば各組二万四千人あった。 二まず

103
だい くみ しょうがつ ぶん こ ひき
第一の組すなわち正 月の分はザブデエルの子ヤショベアムがこれを率
くみ にん かれ しそん しょうがつ
いた。その組には二万四千人あった。 三彼はペレヅの子孫で、 正 月の
ぐんだん しょう がつ くみ
軍団 の す べ て の 将 た ち の か し ら で あ っ た。 四二 月 の 組 は ア ホ ア び と ド
ひき くみ にん がつ だい
ダ イ が こ れ を 率 い た。そ の 組 に は 二 万 四 千 人 あ っ た。 五三 月 の 第 三 の
しょう さいし こ ちょう くみ にん
将は祭司エホヤダの子ベナヤが長であって、その組には二万四千人あっ
にん ゆうし にん ひき
た。 六このベナヤはかの三十人のうちの勇士であって三十人を率い、そ
こ くみ がつ だい しょう きょうだい
の子アミザバデがその組にあった。 七四月の第四の将はヨアブの兄 弟
こ つ くみ
アサヘルであって、その子ゼバデヤがこれに次いだ。その組には二万四
にん がつ だい しょう
千人あった。 八五月の第五の将はイズラヒびとシャンモテであって、そ
くみ にん がつ だい しょう
の 組 に は 二 万 四 千 人 あ っ た。 九六 月 の 第 六 の 将 は テ コ ア び と イ ッ ケ シ
こ くみ にん がつ だい しょう
の子イラであって、その組には二万四千人あった。 一〇七月の第七の将
しそん くみ
はエフライムの子孫であるペロンびとヘレヅであって、その組には二万
にん がつ だい しょう しそん
四千人あった。 一一八月の第八の将はゼラびとの子孫であるホシャびと
歴代志上

くみ にん がつ だい しょう
シベカイであって、その組には二万四千人あった。 一二九月の第九の将

104
しそん くみ
はベニヤミンの子孫であるアナトテびとアビエゼルであって、その組に
にん がつ だい しょう しそん
は二万四千人あった。 一三十月の第十の将はゼラびとの子孫であるネト
くみ にん がつ
パびとマハライであって、その組には二万四千人あった。 一四十一月の
だい しょう しそん
第十一の将はエフライムの子孫であるピラトンびとベナヤであって、そ
くみ にん がつ だい しょう
の 組 に は 二 万 四 千 人 あ っ た。 一五十 二 月 の 第 十 二 の 将 は オ テ ニ エ ル の
しそん くみ にん
子孫であるネトパびとヘルダイであって、その組には二万四千人あっ
た。
ぶぞく おさ もの つぎ
一六なおイスラエルの部族を治める者たちは次のとおりである。ルベン

びとのつかさはヂクリの子エリエゼル。シメオンびとのつかさはマア
こ こ
カの子シパテヤ。 一七レビびとのつかさはケムエルの子ハシャビヤ。ア
きょうだい
ロンびとのつかさはザドク。 一八ユダのつかさはダビデの兄 弟のひとり

エリウ。イッサカルのつかさはミカエルの子オムリ。 一九ゼブルンのつ
こ こ
かさはオバデヤの子イシマヤ。ナフタリのつかさはアズリエルの子エ
歴代志上

しそん こ
レモテ。 二〇エフライムの子孫のつかさはアザジヤの子ホセア。マナセ

105
はん ぶ ぞ く こ はん
の半部族のつかさはペダヤの子ヨエル。 二一ギレアデにあるマナセの半
ぶぞく こ
部族のつかさはゼカリヤの子イド。ベニヤミンのつかさはアブネルの
こ こ
子ヤシエル。 二二ダンのつかさはエロハムの子アザリエル。これらはイ
ぶぞく さい い か
スラエルの部族のつかさたちであった。 二三しかしダビデは二十歳以下
もの かぞ しゅ てん ほし おお
の者は数えなかった。主がかつてイスラエルを天の星のように多くす
い こ かぞ はじ
ると言われたからである。 二四ゼルヤの子ヨアブは数え始めたが、これ
お かぞ いか うえ
をなし終えなかった。その数えることによって怒りがイスラエルの上
のぞ かず おう れきだいし の
に臨んだ。またその数はダビデ王の歴代志に載せなかった。
こ おう くら こ
二五 アデエルの子アズマウテは王の倉をつかさどり、ウジヤの子ヨナタ
でんや まちまち むらむら とう くら
ンは田野、町々、村々、もろもろの塔にある倉をつかさどり、 二六ケルブ
こ ち たがや のうふ
の子エズリは地を耕す農夫をつかさどり、 二七ラマテびとシメイはぶど
はたけ はたけ と しゅ
う畑をつかさどり、シプミびとザブデはぶどう畑から取ったぶどう酒の
くら へいや き
倉をつかさどり、 二八ゲデルびとバアル・ハナンは平野のオリブの木とい
歴代志上

くわ き あぶら くら
ちじく桑の木をつかさどり、ヨアシは油の倉をつかさどり、二九シャロン

106
か うし む こ
びとシテライはシャロンで飼う牛の群れをつかさどり、アデライの子
たに うし む
シャパテはもろもろの谷におる牛の群れをつかさどり、 三〇イシマエル
びとオビルはらくだをつかさどり、メロノテびとエデヤはろばをつかさ
ひつじ む かれ みな
どり、 三一ハガルびとヤジズは羊の群れをつかさどった。彼らは皆ダビ
おう ざいさん
デ王の財産のつかさであった。
ぎ かん ち え ひと がくしゃ
三二 またダビデのおじヨナタンは議官で、知恵ある人であり、学者であっ
かれ こ おう こ ほ さ
た。また彼とハクモニの子エヒエルは王の子たちの補佐であった。 三三
おう ぎ かん おう とも
アヒトペルは王の議官。アルキびとホシャイは王の友であった。 三四ア
つ もの こ おう ぐん
ヒトペルに次ぐ者はベナヤの子エホヤダおよびアビヤタル。王の軍の
ちょう
長はヨアブであった。
第二八章
歴代志上

ちょうかん ぶぞく ちょう おう つか


一ダビデはイスラエルのすべての長 官、すなわち部族の長、王に仕えた

107
くみ ちょう にん ちょう にん ちょう おう こ ざいさん かちく
組の長、千人の長、百人の長、王とその子たちのすべての財産および家畜
かんがん ゆうりょくしゃ ゆうし め あつ
のつかさ、宦官、有 力 者、勇士などをことごとくエルサレムに召し集め
おう あし た あ い きょうだい
た。 二そしてダビデ王はその足で立ち上がって言った、
﹁わが兄 弟たち、
たみ き しゅ けいやく はこ
わが民よ、わたしに聞きなさい。わたしは主の契約の箱のため、われわ
かみ あしだい あんじゅう いえ た こころざし
れの神の足台のために安 住の家を建てようとの 志 をもち、すでにこれ
た じゅんび かみ い
を建てる準備をした。 三しかし神はわたしに言われた、﹃おまえはわが
な いえ た ぐんじん おお ち
名のために家を建ててはならない。おまえは軍人であって、多くの血を
なが かみ しゅ
流したからである﹄と。 四それにもかかわらず、イスラエルの神、主は
ちち ぜんか えら なが おう
わたしの父の全家のうちからわたしを選んで長くイスラエルの王とせ
えら いえ
られた。すなわちユダを選んでかしらとし、ユダの家のうちで、わたし
ちち いえ えら ちち こ よろこ ぜん
の父の家を選び、わたしの父の子らのうちで、わたしを喜び、全イスラ
おう しゅ おお こ たま
エルの王とせられた。 五そして主はわたしに多くの子を賜わり、そのす
こ こ えら しゅ くに くらい
べての子らのうちからわが子ソロモンを選び、これを主の国の位にすわ
歴代志上

おさ しゅ い
らせて、イスラエルを治めさせようとせられた。 六主はまたわたしに言

108
こ や にわ つく
われた、﹃おまえの子ソロモンがわが家およびわが庭を造るであろう。
かれ えら こ かれ ちち
わたしは彼を選んでわが子となしたからである。わたしは彼の父とな
かれ こんにち いまし かた まも おこな
る。 七彼がもし今日のように、わが戒めとわがおきてを固く守って行う
くに かた
ならば、わたしはその国をいつまでも堅くするであろう﹄と。 八それゆ
しゅ かいしゅう ぜん め まえ かみ き
えいま、主の会 衆なる全イスラエルの目の前およびわれわれの神の聞
ところ すす かみ しゅ いまし
かれる所であなたがたに勧める。あなたがたはその神、主のすべての戒
まも もと よ ち
めを守り、これを求めなさい。そうすればあなたがたはこの良き地を
しょゆう のち しそん なが し ぎょう つた
所有し、これをあなたがたの後の子孫に長く嗣 業として伝えることが
できる。
こ ちち かみ し まった こころ よろこ いさ
わが子ソロモンよ、あなたの父の神を知り、全き心をもって喜び勇ん

かれ つか しゅ こころ さぐ おも さと
で彼に仕えなさい。主はすべての心を探り、すべての思いを悟られるか
かれ もと あ
らである。あなたがもし彼を求めるならば会うことができる。しかし
す かれ なが す
あなたがもしかれを捨てるならば彼は長くあなたを捨てられるであろ
歴代志上

つつし しゅ えら せいじょ
う。 一〇それであなたは慎みなさい。主はあなたを選んで聖所とすべき

109
いえ た こころ つよ おこな
家を建てさせようとされるのだから心を強くしてこれを行いなさい﹂。
しんでん ろう いえ くら うえ しつ
一一こうしてダビデは神殿の廊およびその家、その倉、その上の室、その
うち しつ しょくざいしょ しつ けいかく こ さづ
内の室、 贖 罪 所の室などの計画をその子ソロモンに授け、 一二またその
こころ しゅ みや にわ しゅうい しつ かみ
心にあったすべてのもの、すなわち主の宮の庭、周囲のすべての室、神
いえ くら もの くら けいかく さづ さいし
の家の倉、ささげ物の倉などの計画を授け、一三また祭司およびレビびと
くみ しゅ みや つとめ しごと しゅ みや つと
の組と、主の宮のもろもろの務の仕事と、主の宮のもろもろの勤めの
うつわもの さづ つと もち きん うつわ
器 物について授け、 一四またもろもろの勤めに用いるすべての金の器を
つく きん めかた つと もち ぎん うつわ めかた さだ
造る金の目方、およびもろもろの勤めに用いる銀の器の目方を定めた。
きん しょくだい さら めかた しょくだい
一五すなわち金の燭 台と、そのともしび皿の目方、おのおのの燭 台と、そ
さら きん めかた さだ ぎん しょくだい
のともしび皿の金の目方を定め、また銀の燭 台についてもおのおのの
しょくだい ようほう しょくだい さら ぎん めかた さだ
燭 台の用法にしたがって燭 台と、そのともしび皿の銀の目方を定めた。
そな つくえ つくえ きん
一六 ま た 供 え の パ ン の 机 に つ い て は、そ の お の お の の 机 の た め に 金 の
めかた さだ ぎん つくえ ぎん さだ にく はち
目方を定め、また銀の机のためにも銀を定め、 一七また肉さし、鉢、かめ
歴代志上

もち じゅんきん めかた さだ きん たいはい めかた さだ


に用いる純 金の目方を定め、金の大杯についてもおのおのの目方を定

110
ぎん たいはい めかた さだ こう さいだん
め、銀の大杯についてもおのおのの目方を定め、一八また香の祭壇のため
せいきん めかた さだ つばさ の しゅ けいやく はこ
に精金の目方を定め、また翼を伸べて主の契約の箱をおおっているケル
きん くるま がた きん さだ こうさく けいかく
ビムの金の車のひな型の金を定めた。 一九ダビデはすべての工作が計画
しゅ て か
にしたがってなされるため、これについて主の手によって書かれたもの
あき
により、これをことごとく明らかにした。
こ い こころ つよ いさ
ダビデはその子ソロモンに言った、
二〇 ﹁あなたは心を強くし、勇んでこ
おこな おそ しゅ
れを行いなさい。恐れてはならない。おののいてはならない。主なる
かみ かみ しゅ はな
神、わたしの神があなたとともにおられるからである。主はあなたを離
す しゅ みや つとめ こうじ お
れず、あなたを捨てず、ついに主の宮の務のすべての工事をなし終えさ
み かみ みや つとめ さいし
せられるでしょう。 二一見よ、神の宮のすべての務のためには祭司とレ
くみ つと しごと よろこ
ビびとの組がある。またもろもろの勤めのためにすべての仕事を喜ん
たく もの みな とも
でする巧みな者が皆あなたと共にある。またつかさたちおよびすべて
たみ めい おこな
の民もあなたの命じるところをことごとく行うでしょう﹂。
歴代志上

111
第二九章
おう ぜんかいしゅう い こ かみ
ダビデ王はまた全 会 衆に言った、
一 ﹁わが子ソロモンは神がただひとり
えら もの わか けいけん じぎょう おお
を選ばれた者であるが、まだ若くて経験がなく、この事業は大きい。こ
みや ひと しゅ かみ
の宮は人のためではなく、主なる神のためだからである。 二そこでわた
ちから かみ みや そな きん もの つく
しは力をつくして神の宮のために備えた。すなわち金の物を造るため
きん ぎん もの ぎん せいどう もの せいどう てつ もの てつ き
に金、銀の物のために銀、青銅の物のために青銅、鉄の物のために鉄、木
もの き そな た しま いし いろ
の物のために木を備えた。その他縞めのう、はめ石、アンチモニイ、色
いし ほうせき だいりせき
のついた石、さまざまの宝石、大理石などおびただしい。 三なおわたし
かみ みや ねっしん せい いえ そな もの
はわが神の宮に熱心なるがゆえに、聖なる家のために備えたすべての物
くわ も きんぎん ざいほう かみ みや
に加えて、わたしの持っている金銀の財宝をわが神の宮にささげる。 四
きん せいぎん
すなわちオフルの金三千タラント、精銀七千タラントをそのもろもろの
たてもの かべ きん きん もの ぎん ぎん もの
建物の壁をおおうためにささげる。 五金は金の物のために、銀は銀の物
歴代志上

こうじん つく もち
のために、すべて工人によって造られるもののために用いる。だれか

112
しゅ み もの よろこ もの
きょう、主にその身をささげる者のように喜んでささげ物をするだろう
か﹂。
しぞく ちょう ぶぞく にん ちょう
六そこで氏族の長たち、イスラエルの部族のつかさたち、千人の長、百
にん ちょう おう こうじ もの よろこ もの
人の長および王の工事をつかさどる者たちは喜んでささげ物をした。 七
かれ かみ みや つとめ きん ぎん
こうして彼らは神の宮の務のために金五千タラント一万ダリク、銀一万
せいどう てつ ほうせき
タラント、青銅一万八千タラント、鉄十万タラントをささげた。 八宝石
も もの て かみ みや
を持っている者はそれをゲルションびとエヒエルの手によって神の宮
くら おさ かれ こころ すす しゅ
の倉に納めた。 九彼らがこのように真 心からみずから進んで主にささ
たみ すす よろこ おう
げたので、民はそのみずから進んでささげたのを喜んだ。ダビデ王もま
おお よろこ
た大いに喜んだ。
ぜんかいしゅう まえ しゅ い
一〇 そこでダビデは全 会 衆の前で主をほめたたえた。ダビデは言った、
せんぞ かみ しゅ
﹁われわれの先祖イスラエルの神、主よ、あなたはとこしえにほむべきか
しゅ おお ちから えいこう しょうり いこう
たです。 一一主よ、大いなることと、 力と、栄光と、勝利と、威光とはあ
歴代志上

てん ち みな
なたのものです。天にあるもの、地にあるものも皆あなたのものです。

113
しゅ くに ばんゆう
主よ、国もまたあなたのものです。あなたは万有のかしらとして、あが
とみ ほまれ で ばんゆう
められます。 一二富と誉とはあなたから出ます。あなたは万有をつかさ
て いきお ちから て
どられます。あなたの手には勢いと力があります。あなたの手はすべ
おお つよ かみ
てのものを大いならしめ、強くされます。 一三われわれの神よ、われわれ
かんしゃ こうえい な
は、いま、あなたに感謝し、あなたの光栄ある名をたたえます。
よろこ
一四 しかしわれわれがこのように喜んでささげることができても、わた
なにもの たみ なに もの
しは何者でしょう。わたしの民は何でしょう。すべての物はあなたか
で う
ら出ます。われわれはあなたから受けて、あなたにささげたのです。 一五
まえ せんぞ たび
わ れ わ れ は あ な た の 前 で は す べ て の 先祖 た ち の よ う に、旅 び と で す、
きりゅうしゃ よ ひ かげ なが
寄留者です。われわれの世にある日は影のようで、長くとどまることは
かみ しゅ せい な
できません。 一六われわれの神、主よ、あなたの聖なる名のために、あな
いえ た そな おお もの みな
たに家を建てようとしてわれわれが備えたこの多くの物は皆あなたの
て で みな かみ こころ
手から出たもの、また皆あなたのものです。 一七わが神よ、あなたは心を
歴代志上

しょうじき よろこ し
ためし、また正 直を喜ばれることを、わたしは知っています。わたしは

114
ただ こころ もの よろこ いま
正しい心で、このすべての物を喜んでささげました。今わたしはまた、
たみ よろこ すす もの
ここにおるあなたの民が喜んで、みずから進んであなたにささげ物をす
み せんぞ
るのを見ました。 一八われわれの先祖アブラハム、イサク、イスラエルの
かみ しゅ たみ こころ い し せいしん たも
神、主よ、あなたの民の心にこの意志と精神とをいつまでも保たせ、そ
こころ む こ こころ
の心をあなたに向けさせてください。 一九またわが子ソロモンに心をつ
めいれい まも
くしてあなたの命令と、あなたのあかしと、あなたのさだめとを守らせ
おこな そな みや た
て、これをことごとく行わせ、わたしが備えをした宮を建てさせてくだ
さい﹂。
ぜんかいしゅう かみ しゅ
二〇そしてダビデが全 会 衆にむかって、
﹁あなたがたの神、主をほめたた
い ぜんかいしゅう せんぞ かみ しゅ ふ
えよ﹂と言ったので、全 会 衆は先祖たちの神、主をほめたたえ、伏して
しゅ はい おう けいれい よくじつかれ ぜん
主を拝し、王に敬礼した。 二一そしてその翌日彼らは全イスラエルのた
しゅ ぎせい はんさい おうし おひつじ
め に 主 に 犠牲 を さ さ げ た。す な わ ち 燔祭 と し て 雄牛 一 千、雄羊 一 千、
こひつじ かんさい とも しゅ ぎせい
小羊一千をその灌祭と共に主にささげ、おびただしい犠牲をささげた。
歴代志上

ひ かれ おお よろこ しゅ まえ く の
二二そしてその日、彼らは大いなる喜びをもって主の前に食い飲みした。

115
かれ あらた こ おう あぶら そそ
彼らはさらに改めてダビデの子ソロモンを王となし、これに油を注いで
しゅ きみ さいし
主の君となし、またザドクを祭司とした。 二三こうしてソロモンはその
ちち かわ おう しゅ くらい ざ かれ さか みな
父ダビデに代り、王として主の位に座した。彼は栄え、イスラエルは皆
かれ したが ゆうし おう
彼に従 った。 二四またすべてのつかさたち、勇士たち、およびダビデ王の
おうじ みな おう ちゅうせい ちか しゅ ぜん め
王子たちも皆ソロモン王に忠 誠を誓った。 二五主は全イスラエルの目の
まえ ひじょう おお かれ まえ おう
前でソロモンを非常に大いならしめ、彼より前のイスラエルのどの王も
え おうい かれ あた
得たことのない王威を彼に与えられた。
こ ぜん おさ かれ
二六 このようにエッサイの子ダビデは全イスラエルを治めた。 二七彼が
おさ きかん ねん ねん
イスラエルを治めた期間は四十年であった。すなわちヘブロンで七年
よ おさ ねん よ おさ かれ こうれい たっ ねん
世を治め、エルサレムで三十三年世を治めた。 二八彼は高齢に達し、年も
とみ ほまれ み た し こ かれ かわ おう
富も誉も満ち足りて死んだ。その子ソロモンが彼に代って王となった。
おう しじゅう こうい せんけんしゃ しょ よげんしゃ しょ
二九 ダビデ王の始終の行為は、先見者サムエルの書、預言者ナタンの書お
せんけんしゃ しょ かれ
よび先見者ガドの書にしるされている。 三〇そのうちには彼のすべての
歴代志上

せい ちから かれ た くにぐに のぞ こと
政と、その力および彼とイスラエルと他のすべての国々に臨んだ事ども

116
をしるしている。
歴代志上

117
れきだいし げ
歴代志下
第一章
こ くに じぶん ち い かくりつ かみ しゅ
ダビデの子ソロモンはその国に自分の地位を確立した。その神、主が

とも かれ ひじょう おお もの
共にいまして彼を非常に大いなる者にされた。
にん ちょう にん ちょう
ソロモンはすべてのイスラエルびと、すなわち千人の長、百人の長、さ

ぜん ち しぞく
ばきびとおよびイスラエルの全地のすべてのつかさ、氏族のかしらたち
つ ぜんかいしゅう
に告げた。 三そしてソロモンとイスラエルの全 会 衆はともにギベオン
たか ところ い しゅ あらの つく かみ かいけん
にある高き所へ行った。主のしもべモーセが荒野で造った神の会見の
まくや かみ はこ
幕屋がそこにあったからである。 四︵しかし神の箱はダビデがすでにキ
そな ところ はこ のぼ
リアテ・ヤリムから、これのために備えた所に運び上らせてあった。ダ
てんまく は お
歴代志下

ビデはさきに、エルサレムでこれのために天幕を張って置いたからであ
こ こ つく せいどう さいだん
る。︶ 五またホルの子であるウリの子ベザレルが造った青銅の祭壇がそ

0
ところ しゅ まくや まえ かいしゅう しゅ もと
の所の主の幕屋の前にあり、ソロモンおよび会 衆は主に求めた。 六ソロ
のぼ い かいけん まくや しゅ まえ せいどう
モンはそこに上って行って、会見の幕屋のうちにある主の前の青銅の
さいだん はんさい
祭壇に燔祭一千をささげた。
よる かみ あらわ い なに あた
その夜、神はソロモンに現れて言われた、
七 ﹁あなたに何を与えようか、
もと かみ い ちち
求めなさい﹂。 八ソロモンは神に言った、
﹁あなたはわたしの父ダビデに
おお しめ かれ かわ おう
大いなるいつくしみを示し、またわたしを彼に代って王とされました。
しゅ かみ ちち やくそく こと はた
主なる神よ、どうぞわが父ダビデに約束された事を果してください。

ち おお たみ うえ た おう
あなたは地のちりのような多くの民の上にわたしを立てて王とされた
たみ まえ で い いま
からです。 一〇この民の前に出入りすることのできるように今わたしに
ち え ちしき あた おお
知恵と知識とを与えてください。だれがこのような大いなるあなたの
たみ かみ い
民をさばくことができましょうか﹂。 一一神はソロモンに言われた、﹁こ
こと こころ とみ たから ほまれ にく
の事があなたの心にあって、富をも、宝をも、誉をも、またあなたを憎
もの いのち もと ちょうめい もと た
む者の命をも求めず、また長 命をも求めず、ただわたしがあなたを立て
歴代志下

おう たみ ち え ちしき じぶん もと
て王としたわたしの民をさばくために知恵と知識とを自分のために求

1
ち え ちしき あた
めたので、 一二知恵と知識とはあなたに与えられている。わたしはまた
まえ おう え とみ たから ほまれ
あなたの前の王たちの、まだ得たことのないほどの富と宝と誉とをあな
あた のち もの え
たに与えよう。あなたの後の者も、このようなものを得ないでしょう﹂。
たか ところ さ かいけん まくや まえ
一三 そ れ か ら ソ ロ モ ン は ギ ベ オ ン の 高 き 所 を 去 り、会見 の 幕屋 の 前 を
さ かえ おさ
去って、エルサレムに帰り、イスラエルを治めた。
せんしゃ きへい あつ せんしゃ りょう きへい
一四 ソロモンは戦車と騎兵とを集めたが、戦車一千四百 両、騎兵一万二
にん せんしゃ まちまち おう
千人あった。ソロモンはこれを戦車の町々と、エルサレムの王のもとと
お おう ぎん きん いし おお こうはく
に 置 い た。 一 五王 は 銀 と 金 を 石 の よ う に エ ル サ レ ム に 多 く し、香柏 を
へいや くわ おお うま ゆにゅう
平野のいちじく桑のように多くした。 一六ソロモンが馬を輸入したのは
おう ぼうえきしょうにん だいか
エジプトとクエからであった。すなわち王の貿易 商 人がクエから代価
はら う と き かれ せんしゃ りょう ぎん
を払って受け取って来た。 一七彼らはエジプトから戦車一 両を銀六百シ
ゆにゅう うま とう ぎん ゆにゅう おな
ケルで輸入し、馬一頭を銀百五十で輸入した。同じようにこれらのもの
かれ おう おう
が彼らによってヘテびとのすべての王たち、およびスリヤの王たちにも
歴代志下

ゆしゅつ
輸出された。

2
第二章
しゅ な みや た じぶん
一さてソロモンは主の名のために一つの宮を建て、また自分のために一
おうきゅう た おも に お もの にん
つの王 宮を建てようと思った。 二そしてソロモンは荷を負う者七万人、
やま いし き だ もの にん かんとく もの にん かぞ だ
山で石を切り出す者八万人、これらを監督する者三千六百人を数え出し
ひと い
た。 三ソロモンはまずツロのヒラムに人をつかわして言わせた、﹁あな
ちち す いえ た こうはく おく
たはわたしの父ダビデに、その住むべき家を建てるために香柏を送られ
かれ くだ み
ました。どうぞ彼にされたように、わたしにもして下さい。 四見よ、わ
かみ しゅ な いえ た せいべつ かれ
たしはわが神、主の名のために一つの家を建て、これを聖別して彼にさ
かれ まえ こう じょうく そな はんさい
さげ、彼の前にこうばしい香をたき、常供のパンを供え、また燔祭を
あんそくにち しんげつ かみ しゅ さだ まつり あさゆう
安息日、新月、およびわれらの神、主の定めの祭に朝夕ささげ、これを
まも さだ
イ ス ラ エ ル の な が く 守 る べ き 定 め に し よ う と し て い ま す。 五ま た わ た
た いえ おお いえ かみ かみ おお
しの建てる家は大きな家です。われらの神はすべての神よりも大いな
歴代志下

かみ てん しょてん てん かれ い
る神だからです。 六しかし、天も、諸天の天も彼を入れることができな

3
かれ いえ た
いのに、だれが彼のために家を建てることができましょうか。わたしは
なにもの かれ いえ た かれ まえ こう
何者ですか、彼のために家を建てるというのも、ただ彼の前に香をたく
ところ きん ぎん せいどう てつ さいく
所に、ほかならないのです。 七それで、どうぞ金、銀、青銅、鉄の細工
むらさきいと ひ いと あおいと おりもの ちょうこく じゅつ たく こうじん
および紫 糸、緋糸、青糸の織物にくわしく、また彫 刻の術に巧みな工人
おく ちち そな
ひとりをわたしに送って、父ダビデが備えておいたユダとエルサレムの
こうじん いっしょ はたら
わ た し の 工人 た ち と 一緒 に 働 か せ て く だ さ い。 八ま た ど う ぞ レ バ ノ ン
こうはく おく
から香柏、いとすぎ、びゃくだんを送ってください。わたしはあなたの
き き し
しもべたちがレバノンで木を切ることをよくわきまえているのを知っ
いっしょ はたら
ています。わたしのしもべたちも、あなたのしもべたちと一緒に働か
ざいもく そな
せ、 九わたしのためにたくさんの材木を備えさせてください。わたしの
た いえ ひじょう こうだい き き
建てる家は非常に広大なものですから。 一〇わたしは木を切るあなたの
くだ こむぎ おおむぎ しゅ
しもべたちに砕いた小麦二万コル、大麦二万コル、ぶどう酒二万バテ、
あぶら あた
油 二万バテを与えます﹂。
歴代志下

おう てがみ おく こた しゅ
一一 そこでツロの王ヒラムは手紙をソロモンに送って答えた、
﹁主はその

4
たみ あい かれ おう
民を愛するゆえに、あなたを彼らの王とされました﹂。 一二ヒラムはまた
い てんち つく かみ しゅ かれ
言った、﹁天地を造られたイスラエルの神、主はほむべきかな。彼はダビ
おう かしこ こ あた ふんべつ ち え さづ しゅ みや た
デ王に賢い子を与え、これに分別と知恵を授けて、主のために宮を建て、
じぶん おうきゅう た
また自分のために、 王 宮を建てることをさせられた。
たつじん ち え こうじん
一三 いまわたしは達人ヒラムという知恵のある工人をつかわします。 一四
かれ しそん おんな はは ひと ちち きんぎん せいどう てつ
彼はダンの子孫である女を母とし、ツロの人を父とし、金銀、青銅、鉄、
いし き さいく むらさきいと あおいと あ ま いと ひ いと おりもの
石、木の細工および紫 糸、青糸、亜麻糸、緋糸の織物にくわしく、また
ちょうこく いしょう こ こうさく
よ く も ろ も ろ の 彫 刻 を し、意匠 を 凝 ら し て も ろ も ろ の 工作 を し ま す。
かれ もち こうじん ちち しゅ こうじん いっしょ
彼を用いてあなたの工人およびあなたの父、わが主ダビデの工人と一緒
はたら しゅ い こむぎ おおむぎ あぶら
に働かせなさい。 一五それでいまわが主の言われた小麦、大麦、油および
しゅ おく もと
ぶどう酒をそのしもべどもに送ってください。 一六あなたの求められる
ざいもく き く うみ おく
材木はレバノンから切りだし、いかだに組んで、海からヨッパに送りま
はこ あ
す。あなたはそれをエルサレムに運び上げなさい﹂。
歴代志下

ちち かぞ くに
一七 そこでソロモンはその父ダビデが数えたようにイスラエルの国にい

5
た こ く じん かぞ あ にん
るすべての他国人を数えたが、合わせて十五万三千六百人あった。 一八
かれ にん に お もの にん やま き いし き もの
彼はその七万人を荷を負う者とし、八万人を山で木や石を切る者とし、
にん たみ はたら かんとくしゃ
三千六百人を民を働かせる監督者とした。
第三章
やま しゅ みや た はじ
一ソロモンはエルサレムのモリアの山に主の宮を建てることを始めた。
ちち しゅ あらわ ところ う
そこは父ダビデに主が現れられた所、すなわちエブスびとオルナンの打
ば そな ところ みや た はじ
ち場にダビデが備えた所である。 二ソロモンが宮を建て始めたのは、そ
ちせい ねん がつ た かみ みや もとい すんぽう
の 治世 の 四 年 の 二 月 で あ っ た。 三ソ ロ モ ン の 建 て た 神 の 宮 の 基 の 寸法
つぎ むかし しゃくど なが はば
は次のとおりである。すなわち昔の尺度によれば長さ六十キュビト、幅
みや まえ ろう みや はば したが なが たか
二十キュビト、 四宮の前の廊は宮の幅に従 って長さ二十キュビト高さ
ないぶ じゅんきん はいでん
百二十キュビトで、その内部は純 金でおおった。 五またその拝殿はいと
歴代志下

いた は せいきん うえ くさり かたち


すぎの板で張り、精金をもってこれをおおい、その上にしゅろと鎖の形

6
ほどこ ほうせき こ みや かざ きん
を 施 し た。 六ま た 宝石 を は め 込 ん で 宮 を 飾 っ た。そ の 金 は パ ル ワ イ ム
きん かれ きん みや はり しきい かべ
の金であった。 七彼はまた金をもってその宮、すなわち、梁、敷居、壁
と かべ うえ ほ かれ しせいじょ
および戸をおおい、壁の上にケルビムを彫りつけた。 八彼はまた至聖所
つく なが みや なが はば
を造った。その長さは宮の長さにしたがって二十キュビト、幅も二十
かれ せいきん
キ ュ ビ ト で あ る。彼 は 精金 六 百 タ ラ ン ト を も っ て こ れ を お お っ た。 九
くぎ きん おも かれ かいじょう しつ きん
その釘の金の重さは五十シケルであった。彼はまた階 上の室も金でお
おった。
かれ しせいじょ き きざ ぞう つく きん
一〇彼 は 至聖所 に 木 を 刻 ん だ ケ ル ビ ム の 像 を 二 つ 造 り、こ れ を 金 で お
つばさ なが あ
おった。 一一ケルビムの翼の長さは合わせて二十キュビトあった。すな
つばさ みや かべ とど つばさ
わち一つのケルブの一つの翼は五キュビトで、宮の壁に届き、ほかの翼
た つばさ とど た つばさ
も五キュビトで、他のケルブの翼に届き、一二他のケルブの一つの翼も五
みや かべ とど つばさ さき つばさ
キュビトで、宮の壁に届き、ほかの翼も五キュビトで、先のケルブの翼
せっ つばさ ひろ
に接していた。 一三これらのケルビムの翼は広げると二十キュビトあっ
歴代志下

とも あし た かお はいでん む
た。かれらは共に足で立ち、その顔は拝殿に向かっていた。 一四ソロモ

7
あおいと むらさきいと ひ いと あ ま いと たれまく つく うえ
ンはまた青糸、 紫 糸、緋糸および亜麻糸で垂幕を造り、その上にケル
ぬ と ほどこ
ビムの縫い取りを施した。
かれ みや まえ はしら ほんつく たか
一五 彼は宮の前に柱を二本造った。その高さは三十五キュビト、おのお
はしら いただき ちゅうとう つく かれ くびかざり くさり
の の 柱 の 頂 に 五 キ ュ ビ ト の 柱 頭 を 造 っ た。 一六彼 は 首 飾 の よ う な 鎖 を
つく はしら いただき つく くさり うえ かれ
造って、柱の頂につけ、ざくろ百を造ってその鎖の上につけた。 一七彼は
はしら しんでん まえ ぽん みなみ ほう ぽん きた ほう た みなみ ほう
この柱を神殿の前に、一本を南の方に、一本を北の方に立て、 南の方の
な きた ほう な
をヤキンと名づけ、北の方のをボアズと名づけた。
第四章
せいどう さいだん つく なが はば
一ソロモンはまた青銅の祭壇を造った。その長さ二十キュビト、幅二十
たか かれ うみ い つく ふち
キュビト、高さ十キュビトである。 二彼はまた海を鋳て造った。縁から
ふち しゅうい えんけい たか
縁まで十キュビトであって、周囲は円形をなし、高さ五キュビトで、そ
歴代志下

しゅうい つな はか うみ した
の 周囲 は 綱 を も っ て 測 る と 三 十 キ ュ ビ ト あ っ た。 三海 の 下 に は 三 十

8
しゅうい かたち うみ しゅうい かこ
キュビトの周囲をめぐるひさごの形があって、海の周囲を囲んでいた。
なら うみ い とき い うみ
そのひさごは二並びで、海を鋳る時に鋳たものである。 四その海は十二
うし うえ お きた む にし む
の牛の上に置かれ、その三つは北に向かい、三つは西に向かい、三つは
みなみ む ひがし む うみ うえ お うし
南に向かい、三つは東に向かっていた。海はその上に置かれ、牛のうし
うち む うみ あつ て はば ふち はい ふち
ろはみな内に向かっていた。 五海の厚さは手の幅で、その縁は杯の縁の
はな に つく うみ みず い
ように、ゆりの花に似せて造られた。海には水を三千バテ入れることが
かれ もの あら せんばん こ つく こ みなみがわ
できた。 六彼はまた物を洗うために洗盤十個を造って、五個を南 側に、
こ きたがわ お なか はんさい もち あら うみ
五個を北側に置いた。その中で燔祭に用いるものを洗った。しかし海
さいし なか み あら
は祭司がその中で身を洗うためであった。
かれ きん しょくだい こ さだ したが つく はいでん なか みなみがわ
七彼はまた金の燭 台 十個をその定めに従 って造り、拝殿の中の南 側に
こ きたがわ こ お つくえ こ つく しんでん なか みなみがわ こ
五個、北側に五個を置き、八また机 十個を造り、神殿の中の南 側に五個、
きたがわ こ お きん はち つく かれ さいし にわ おおにわ
北側に五個を置き、また金の鉢百を造った。 九彼はまた祭司の庭と大庭
にわ と つく と せいどう かれ うみ みや とうなん
および庭の戸を造り、その戸を青銅でおおった。 一〇彼は海を宮の東南
歴代志下

のすみにすえた。

9
じゅうのう はち つく
一一ヒ ラ ム は ま た つ ぼ と 十 能 と 鉢 と を 造 っ た。こ う し て ヒ ラ ム は ソ ロ
おう かみ みや こうじ お ほん はしら たま はしら
モン王のため、神の宮の工事を終えた。 一二すなわち二本の柱と玉と、柱
いただき ちゅうとう はしら いただき ちゅうとう たま
の頂にある二つの柱 頭と、 柱の頂にある柱 頭の二つの玉をおおう二つ
あみ ざ い く あみ ざ い く
の網細工と、一三その二つの網細工のためのざくろ四百、このざくろはお
あみ ざ い く なら はしら いただき ちゅうとう たま ま
のおの網細工に二並びにつけて、 柱の頂にある柱 頭の二つの玉を巻い
かれ だい だい うえ せんばん うみ した
ていた。 一四彼はまた台と台の上の洗盤と、 一五一つの海とその下の十二
うし つく じゅうのう にく うつわもの たつじん
の牛を造った。 一六つぼ、十 能、肉さしなどすべてこれらの器 物を、達人
おう しゅ みや ひかり せいどう つく
ヒラムはソロモン王のため、主の宮のために、 光のある青銅で造った。
おう ていち あいだ ねんど ち い
王はヨルダンの低地で、スコテとゼレダの間の粘土の地でこれを鋳
一七
うつわもの ひじょう おお つく
た。 一八このようにソロモンはこれらのすべての器 物を非常に多く造っ
せいどう じゅうりょう はか
たので、その青銅の重 量は、量ることができなかった。
かみ みや うつわもの つく きん
一九こ う し て ソ ロ モ ン は 神 の 宮 の す べ て の 器 物 を 造 っ た。す な わ ち 金
さいだん そな の つくえ さだ ほんでん まえ ひ
の祭壇と、供えのパンを載せる机、二〇また定めのように本殿の前で火を
歴代志下

じゅんきん しょくだい さら つく はな
ともす純 金の燭 台と、そのともしび皿を造った。 二一その花、ともしび

10
さら こころ せいきん しんき はち こう はい しんと
皿、心かきは精金であった。 二二また心切りばさみ、鉢、香の杯、心取り
ざら じゅんきん みや と しせいじょ ないぶ と
皿 は 純 金 で あ っ た。ま た 宮 の 戸、す な わ ち 至聖所 の 内部 の 戸 お よ び
はいでん と きん
拝殿の戸のひじつぼは金であった。
第五章
しゅ みや こうじ おわ
一こうしてソロモンは主の宮のためにしたすべての工事を終った。そ
ちち もの きんぎん
してソロモンは父ダビデがささげた物、すなわち金銀およびもろもろの
うつわもの たずさ い かみ みや ほうぞう おさ
器 物を携えて行って神の宮の宝蔵に納めた。
しゅ けいやく はこ まち のぼ
二ソロモンは主の契約の箱をダビデの町シオンからかつぎ上ろうとし
ちょうろう ぶぞく
て、イスラエルの長 老たちと、すべての部族のかしらたちと、イスラエ
ひとびと しぞく ちょう め あつ
ル の 人々 の 氏族 の 長 た ち を エ ル サ レ ム に 召 し 集 め た。 三イ ス ラ エ ル の
ひとびと みな がつ まつり おう あつ ちょうろう
人々は皆七月の祭に王のもとに集まった。 四イスラエルの長 老たちが
歴代志下

みな はこ と あ かれ はこ かいけん
皆 き た の で、レ ビ び と た ち は 箱 を 取 り 上 げ た。 五彼 ら は 箱 と、会見 の

11
まくや まくや せい うつわ のぼ さいし
幕屋と、幕屋にあるすべて聖なる器をかつぎ上った。すなわち祭司とレ
もの のぼ おう かれ
ビ び と が こ れ ら の 物 を か つ ぎ 上 っ た。 六ソ ロ モ ン 王 お よ び 彼 の も と に
あつ かいしゅう みなはこ まえ ひつじ うし かず
集まったイスラエルの会 衆は皆箱の前で羊と牛をささげたが、その数
おお しら かぞ さいし
が多くて、調べることも数えることもできなかった。 七こうして祭司た
しゅ けいやく はこ ば しょ い みや ほんでん しせいじょ
ちは主の契約の箱をその場所にかつぎ入れ、宮の本殿である至聖所のう
つばさ した お つばさ はこ ところ うえ の
ち の ケ ル ビ ム の 翼 の 下 に 置 い た。 八ケ ル ビ ム は 翼 を 箱 の 所 の 上 に 伸 べ
うえ はこ なが
て い た の で、ケ ル ビ ム は 上 か ら 箱 と そ の さ お を お お っ た。 九さ お は 長
はし ほんでん まえ せいじょ み がいぶ み
かったので、さおの端が本殿の前の聖所から見えた。しかし外部には見
こんにち はこ うち まい いた
えなかった。さおは今日までそこにある。 一〇箱の内には二枚の板のほ
なに ひとびと で き
か何もなかった。これはイスラエルの人々がエジプトから出て来たと
しゅ かれ けいやく むす おさ
き、主が彼らと契約を結ばれ、モーセがホレブでそれを納めたものであ
さいし せいじょ で さいし みな
る。 一一そして祭司たちが聖所から出たとき︵ここにいた祭司たちは皆、
くみ じゅん み きよ うた もの
その組の順にかかわらず身を清めた。 一二またレビびとの歌うたう者、
歴代志下

かれ こ きょうだい
すなわちアサフ、ヘマン、エドトンおよび彼らの子たちと兄 弟たちはみ

12
あ ま ぬの き たてごと こと さいだん ひがし た
な亜麻布を着、シンバルと、立琴と、琴をとって祭壇の東に立ち、百二
にん さいし かれ いっしょ た ふ ふ もの
十人の祭司は彼らと一緒に立ってラッパを吹いた。 一三ラッパ吹く者と
うた もの こえ あ しゅ かんしゃ
歌うたう者とは、ひとりのように声を合わせて主をほめ、感謝した︶、そ
かれ た がっ き こえ
して彼らがラッパと、シンバルとその他の楽器をもって声をふりあげ、
しゅ
主をほめて
しゅ めぐ
﹁主は恵みあり、

そのあわれみはとこしえに絶えることがない﹂
い くも みや しゅ みや み さいし くも
と言ったとき、雲はその宮すなわち主の宮に満ちた。 一四祭司たちは雲
た つと しゅ えいこう かみ みや
のゆえに立って勤めをすることができなかった。主の栄光が神の宮に

満ちたからである。
第六章
歴代志下


そこでソロモンは言った、

13
しゅ こ くも なか す い
﹁主はみずから濃き雲の中に住まおうと言われた。
たか いえ
しかしわたしはあなたのために高き家、


とこしえのみすまいを建てた﹂。
おう かお む ぜんかいしゅう しゅくふく とき
そして王は顔をふり向けてイスラエルの全 会 衆を祝 福した。その時

ぜんかいしゅう た かれ い かみ しゅ
イスラエルの全 会 衆は立っていた。 四彼は言った、﹁イスラエルの神、主
しゅ くち ちち やくそく
はほむべきかな。主は口をもってわが父ダビデに約束されたことを、そ
て と しゅ い たみ
の手をもってなし遂げられた。すなわち主は言われた、 五﹃わが民をエ
ち みちび だ ひ な お いえ た
ジプトの地から導き出した日から、わたしはわが名を置くべき家を建て
ぶぞく まち えら
るために、イスラエルのもろもろの部族のうちから、どの町をも選んだ
た たみ きみ えら
ことがなく、また他のだれをもわが民イスラエルの君として選んだこと
な お えら
がない。 六わが名を置くために、ただエルサレムだけを選び、またわが
たみ おさ えら
民イスラエルを治めさせるために、ただダビデだけを選んだ﹄。 七イス
かみ しゅ な いえ た ちち こころ
ラエルの神、主の名のために家を建てることは、父ダビデの心にあった。
歴代志下

しゅ ちち い な いえ た
八しかし主は父ダビデに言われた、﹃わたしの名のために家を建てるこ

14
こころ こころ こと けっこう
とはあなたの心にあった。あなたの心にこの事のあったのは結構であ
いえ た こし で
る。 九し か し あ な た は そ の 家 を 建 て て は な ら な い。あ な た の 腰 か ら 出
こ な いえ た
るあなたの子がわたしの名のために家を建てるであろう﹄。 一〇そして
しゅ い ことば おこな ちち かわ
主はそう言われた言葉を行われた。すなわちわたしは父ダビデに代っ
た しゅ い くらい ざ かみ
て立ち、主が言われたように、イスラエルの位に座し、イスラエルの神、
しゅ な いえ た しゅ ひとびと
主の名のために家を建てた。 一一わたしはまた、主がイスラエルの人々
むす しゅ けいやく い はこ おさ
と結ばれた主の契約を入れた箱をそこに納めた﹂。
ぜんかいしゅう まえ しゅ さいだん まえ た て
一二 ソロモンはイスラエルの全 会 衆の前、主の祭壇の前に立って、手を
の なが はば たか
伸べた。 一三ソロモンはさきに長さ五キュビト、幅五キュビト、高さ三
せいどう だい つく にわ なか お かれ
キュビトの青銅の台を造って、庭のまん中にすえて置いたので、彼はそ
うえ た ぜんかいしゅう まえ て てん の
の上に立ち、イスラエルの全 会 衆の前でひざをかがめ、その手を天に伸
い かみ しゅ てん ち
べて、 一四言った、
﹁イスラエルの神、主よ、天にも地にも、あなたのよ
かみ けいやく まも こころ
うな神はありません。あなたは契約を守られ、 心をつくしてあなたの
歴代志下

まえ あゆ ほどこ
前に歩むあなたのしもべらに、いつくしみを施し、 一五あなたのしもべ、

15
ちち やくそく まも くち
わ た し の 父 ダ ビ デ に 約束 さ れ た こ と を 守 ら れ ま し た。あ な た が 口 を
やくそく て と こんにち み
もって約束されたことを、手をもってなし遂げられたことは、今日見る
かみ しゅ
とおりであります。 一六それゆえ、イスラエルの神、主よ、あなたのしも
ちち やくそく まえ あゆ
べ、わたしの父ダビデに、あなたが約束して、
﹃おまえがわたしの前に歩
しそん みち つつし あゆ
んだように、おまえの子孫がその道を慎んで、わたしのおきてに歩むな
くらい ざ ひと まえ か
らば、おまえにはイスラエルの位に座する人がわたしの前に欠けること
い まも
はない﹄と言われたことを、ダビデのためにお守りください。 一七それゆ
かみ しゅ い
え、イスラエルの神、主よ、どうぞ、あなたのしもべダビデに言われた
ことば かくにん
言葉を確認してください。
かみ ひと とも ちじょう す み
一八しかし神は、はたして人と共に地上に住まわれるでしょうか。見よ、
てん たか てん た
天も、いと高き天もあなたをいれることはできません。わたしの建てた
いえ かみ しゅ いのり ねが
この家などなおさらです。 一九しかしわが神、主よ、しもべの祈と願いを
かえり まえ さけ いのり き
顧みて、しもべがあなたの前にささげる叫びと祈をお聞きください。 二〇
歴代志下

め ひる よる いえ な
どうぞ、あなたの目を昼も夜もこの家に、すなわち、あなたの名をそこ

16
お い ところ む ひら
に置くと言われた所に向かってお開きください。どうぞ、しもべがこの
ところ む いのり き
所に向かってささげる祈をお聞きください。 二一どうぞ、しもべと、あな
たみ ところ む いの とき ねが き
たの民イスラエルがこの所に向かって祈る時に、その願いをお聞きくだ
てん き き
さい。あなたのすみかである天から聞き、聞いておゆるしください。
ひと とな びと たい つみ おか ちか もと
二二もし人がその隣り人に対して罪を犯し、誓いをすることを求められ
き みや さいだん まえ ちか てん
るとき、来てこの宮で、あなたの祭壇の前に誓うならば、 二三あなたは天
き おこな あくにん むく
から聞いて、 行い、あなたのしもべらをさばき、悪人に報いをなして、
おこな むく き ぎじん ぎ ぎ
その行いの報いをそのこうべに帰し、義人を義として、その義にした
ひと むく
がってその人に報いてください。
たみ たい つみ おか てき
二四もしあなたの民イスラエルが、あなたに対して罪を犯したために、敵
まえ やぶ とき た かえ な みや
の前に敗れた時、あなたに立ち返って、あなたの名をあがめ、この宮で
まえ いの ねが てん き たみ
あなたの前に祈り願うならば、二五あなたは天から聞き、あなたの民イス
つみ かれ せんぞ あた ち かれ
ラエルの罪をゆるして、あなたが彼らとその先祖に与えられた地に彼ら
歴代志下

かえ
を帰らせてください。

17
かれ つみ おか てん と あめ
もし彼らがあなたに罪を犯したために、天が閉ざされて、雨がなく、
二六
かれ くる かれ ところ む いの
あなたが彼らを苦しめられるとき、彼らがこの所に向かって祈り、あな
な つみ はな てん き
たの名をあがめ、その罪を離れるならば、 二七あなたは天にあって聞き、
たみ つみ かれ あゆ
あなたのしもべ、あなたの民イスラエルの罪をゆるして、彼らに歩むべ
よ みち おし たみ し ぎょう たま ち あめ ふ
き良い道を教え、あなたの民に嗣 業として賜わった地に雨を降らせて
ください。
くに えきびょう た が くさ ほ
もし国にききんがあるか、もしくは疫 病、立ち枯れ、腐り穂、いな
二八
あおむし てき まち もん なか せ かこ
ご、青虫があるか、または敵のために町の門の中に攻め囲まれることが
さいがい びょうき
あるか、どんな災害、どんな病気があっても、 二九もし、ひとりか、ある
たみ みな こころ なや し みや
いはあなたの民イスラエルが皆おのおのその心の悩みを知って、この宮
む て の いのり ねが
に向かい、手を伸べるならば、どんな祈、どんな願いでも、 三〇あなたは
てん き ひと こころ し
そのすみかである天から聞いてゆるし、おのおのの人に、その心を知っ
みち むく
ておられるゆえ、そのすべての道にしたがって報いてください。ただあ
歴代志下

ひと こころ し
なただけがすべての人の心を知っておられるからです。 三一あなたがわ

18
せんぞ たま ち かれ い ひ あいだ つね
れわれの先祖たちに賜わった地に、彼らの生きながらえる日の間、常に
おそ みち あゆ
あなたを恐れさせ、あなたの道に歩ませてください。
たみ もの た こ く じん おお
三二 またあなたの民イスラエルの者でなく、他国人で、あなたの大いなる
な つよ て の うで とお くに き みや む
名と、強い手と、伸べた腕のために遠い国から来て、この宮に向かって
いの てん き
祈るならば、 三三あなたは、あなたのすみかである天から聞き、すべて
た こ く じん よ もと ち
他国人があなたに呼び求めるようにしてください。そうすれば地のす
たみ たみ な し
べての民はあなたの民イスラエルのように、あなたの名を知り、あなた
おそ た みや な よ
を恐れ、またわたしが建てたこの宮が、あなたの名によって呼ばれるこ

とを知るにいたるでしょう。
たみ てき たたか みち で
三四 あなたの民が敵と戦うために、あなたがつかわされる道によって出
かれ えら まち な
るとき、もし彼らがあなたの選ばれたこの町と、わたしがあなたの名の
た みや む いの てん
ために建てたこの宮に向かってあなたに祈るならば、 三五あなたは天か
かれ いのり ねが き かれ たす かれ
ら彼らの祈と願いとを聞いて彼らをお助けください。 三六彼らがあなた
歴代志下

たい つみ おか つみ おか ひと
に対して罪を犯すことがあって、︱︱罪を犯さない人はないゆえ、︱︱

19
かれ いか てき てき かれ ほ りょ とお ち
あなたが彼らを怒って、敵にわたし、敵が彼らを捕虜として遠い地ある
ちか ち ひ い かれ とら い ち
いは近い地に引いて行くとき、 三七もし、彼らが捕われて行った地で、み
かえり く とら ち ねが つみ おか
ずから省みて悔い、その捕われの地であなたに願い、﹃われわれは罪を犯
こと あく おこな い とら ち
し、よこしまな事をし、悪を行いました﹄と言い、 三八その捕われの地で
こころ せいしん た かえ かれ せんぞ
心をつくし、精神をつくしてあなたに立ち返り、あなたが彼らの先祖に
あた ち えら まち な た
与えられた地、あなたが選ばれた町、わたしがあなたの名のために建て
みや む いの てん かれ
たこの宮に向かって祈るならば、三九あなたのすみかである天から、彼ら
いのり ねが き かれ たす む つみ おか
の祈と願いとを聞いて彼らを助け、あなたに向かって罪を犯したあなた
たみ かみ ところ いのり
の民をおゆるしください。 四〇わが神よ、どうぞ、この所でささげる祈に
め ひら みみ かたむ
あなたの目を開き、あなたの耳を傾けてください。
しゅ かみ いま ちから はこ
四一 主なる神よ、今あなたと、あなたの力の箱が
た あんそくじょ
立って、あなたの安息所におはいりください。
しゅ かみ さいし
主なる神よ、どうぞあなたの祭司たちに
歴代志下

すくい ころも き
救の衣を着せ、

20
せいと めぐ よろこ
あなたの聖徒たちに恵みを喜ばせてください。
しゅ かみ あぶら もの かお
主なる神よ、どうぞあなたの油そそがれた者の顔を
四二
しりぞ
退けないでください。
しめ
あなたのしもべダビデに示されたいつくしみを
おぼ くだ
覚えて下さい﹂。
第七章
いの おわ てん ひ くだ はんさい ぎせい や しゅ
一ソロモンが祈り終ったとき、天から火が下って燔祭と犠牲を焼き、主
えいこう みや み しゅ えいこう しゅ みや み さいし しゅ
の栄光が宮に満ちた。 二主の栄光が主の宮に満ちたので、祭司たちは主
みや ひとびと ひ
の 宮 に、は い る こ と が で き な か っ た。 三イ ス ラ エ ル の 人々 は み な 火 が
くだ み しゅ えいこう みや のぞ み しきいし うえ ち
下ったのを見、また主の栄光が宮に臨んだのを見て、敷石の上で地にひ
ふ はい しゅ かんしゃ い
れ伏して拝し、主に感謝して言った、
歴代志下

しゅ めぐ
﹁主は恵みふかく、

21

そのいつくしみはとこしえに絶えることがない﹂。
おう たみ みなしゅ まえ ぎせい おう
四そして王と民は皆主の前に犠牲をささげた。 五ソロモン王のささげた
ぎせい うし とう ひつじ とう おう たみ みなかみ
犠牲は、牛二万二千頭、羊 十二万頭であった。こうして王と民は皆神の
みや さいし も ば た しゅ がっ き
宮をささげた。 六祭司はその持ち場に立ち、レビびとも主の楽器をとっ
た がっ き おう しゅ かんしゃ つく
て立った。その楽器はダビデ王が主に感謝するために造ったもので、ダ
かれ て
ビデが彼らの手によってさんびをささげるとき、﹁そのいつくしみは、と
た さいし かれ
こしえに絶えることがない﹂ととなえさせたものである。祭司は彼らの
まえ ふ た
前でラッパを吹き、すべてのイスラエルびとは立っていた。
しゅ みや まえ にわ なか せいべつ ところ はんさい
七ソロモンはまた主の宮の前にある庭の中を聖別し、その所で、燔祭と
しゅうおんさい つく せいどう さいだん
酬 恩 祭 の あ ぶ ら を さ さ げ た。こ れ は ソ ロ モ ン が 造 っ た 青銅 の 祭壇 が、
はんさい そさい の た
その燔祭と素祭とあぶらとを載せるに足りなかったからである。
とき なぬか あいだまつり おこな いりぐち
八そ の 時 ソ ロ モ ン は 七日 の 間 祭 を 行 っ た。ハ マ テ の 入口 か ら エ ジ プ
かわ いた かれ とも ひじょう おお
トの川に至るまでのすべてのイスラエルびとが彼と共にあり、非常に大
歴代志下

かいしゅう か め せいかい ひら かれ なぬか あいだ


きな会 衆であった。 九そして八日目に聖会を開いた。彼らは七日の間、

22
さいだんほうけん れい おこな なぬか あいだまつり おこな がつ にち いた
祭壇奉献の礼を行い、七日の間 祭を行 ったが、 一〇七月二十三日に至っ
たみ てんまく かえ みなしゅ
てソロモンは民をその天幕に帰らせた。皆主がダビデ、ソロモンおよび
たみ ほどこ めぐ よろこ こころ たの さ
その民イスラエルに施された恵みのために喜び、かつ心に楽しんで去っ
た。
しゅ いえ おう いえ つく お かれ
こうしてソロモンは主の家と王の家とを造り終えた。すなわち彼は
一一
しゅ いえ じぶん いえ けいかく こと しゅ び
主の家と自分の家について、しようと計画したすべての事を首尾よくな
と とき しゅ よる あらわ い
し遂げた。 一二時に主は夜ソロモンに現れて言われた、
﹁わたしはあなた
いのり き ところ えら ぎせい いえ
の祈を聞き、この所をわたしのために選んで、犠牲をささげる家とした。
てん と あめ めい ち
わたしが天を閉じて雨をなくし、またはわたしがいなごに命じて地
一三
もの く えきびょう たみ なか おく な
の物を食わせ、または疫 病を民の中に送るとき、 一四わたしの名をもっ
たみ いの かお
てとなえられるわたしの民が、もしへりくだり、祈って、わたしの顔を
もと わる みち はな てん き つみ
求め、その悪い道を離れるならば、わたしは天から聞いて、その罪をゆ
ち いま ところ いのり め
るし、その地をいやす。 一五今この所にささげられる祈にわたしの目を
歴代志下

ひら みみ かたむ いま な
開き、耳を傾ける。 一六今わたしはわたしの名をながくここにとどめる

23
みや えら せいべつ め こころ つね
ために、この宮を選び、かつ聖別した。わたしの目とわたしの心は常に
ちち あゆ まえ あゆ
ここにある。 一七あなたがもし父ダビデの歩んだようにわたしの前に歩
めい い さだ
み、わたしが命じたとおりにすべて行って、わたしの定めとおきてとを
まも ちち けいやく おさ
守るならば、一八わたしはあなたの父ダビデに契約して﹃イスラエルを治
ひと か い おう
める人はあなたに欠けることがない﹄と言ったとおりに、あなたの王の
くらい かた
位を堅くする。
ひるがえ まえ お
一九しかし、あなたがたがもし翻 って、わたしがあなたがたの前に置い
さだ いまし す い た かみがみ つか おが
た定めと戒めとを捨て、行って他の神々に仕え、それを拝むならば、 二〇
あた ち ぬ さ な
わたしはあなたがたをわたしの与えた地から抜き去り、またわたしの名
せいべつ みや まえ な す たみ
のために聖別したこの宮をわたしの前から投げ捨てて、もろもろの民の
わら ぐさ みや たか
うちにことわざとし、笑い草とする。 二一またこの宮は高いけれども、つ
す もの みなおどろ なに しゅ ち
いには、そのかたわらを過ぎる者は皆 驚いて、
﹃何ゆえ主はこの地と、こ
みや い とき ひとびと こた
の宮とにこのようにされたのか﹄と言うであろう。 二二その時、人々は答
歴代志下

かれ せんぞ ち みちび だ かれ かみ しゅ
えて﹃彼らはその先祖たちをエジプトの地から導き出した彼らの神、主

24
す た かみがみ したが おが つか しゅ
を捨てて、他の神々につき従い、それを拝み、それに仕えたために、主
わざわい かれ うえ くだ い
はこのすべての災を彼らの上に下したのである﹄と言うであろう﹂。
第八章
ねん へ しゅ いえ じぶん いえ た おわ
ソロモンは二十年を経て、主の家と自分の家とを建て終った。 二また

おく まちまち た なお
ソロモンはヒラムから送られた町々を建て直して、そこにイスラエルの
ひとびと す
人々を住ませた。
せ と かれ あらの
ソロモンはまたハマテ・ゾバを攻めて、これを取った。 四彼はまた荒野

た くら まち た じょうへき
にタデモルを建て、もろもろの倉の町をハマテに建てた。 五また城 壁、
もん かん き けんご まち うえ した た
門、貫の木のある堅固な町、上ベテホロンと下ベテホロンを建てた。 六
じぶん くら まち
ソロモンはまたバアラテと自分のもっていたすべての倉の町と、すべて
せんしゃ まち きへい まち じぶん
の戦車の町と、騎兵の町、ならびにエルサレム、レバノンおよび自分の
歴代志下

おさ ぜん ち ほ う た のぞ た
治める全地方に建てようと望んだものを、ことごとく建てた。 七すべて

25
しそん
イスラエルの子孫でないヘテびと、アモリびと、ペリジびと、ヒビびと、
のこ たみ ち かれ のこ
エ ブ ス び と の 残 っ た 民、 八そ の 地 に あ っ て 彼 ら の あ と に 残 っ た そ の
しそん しそん ほろ つく たみ
子孫、すなわちイスラエルの子孫が滅ぼし尽さなかった民に、ソロモン
きょうせいちょうぼ こんにち およ
は強 制 徴募をおこなって今日に及んでいる。 九しかし、イスラエルの
ひとびと こうじ どれい かれ
人々をソロモンはその工事のためには、ひとりも奴隷としなかった。彼
へいし しょうこう せんしゃ きへい ちょう
らは兵士となり、 将 校となり、戦車と、騎兵の長となった。 一〇これら
おう かんり にん たみ おさ
はソロモン王のおもな官吏で、二百五十人あり、民を治めた。
むすめ まち つ のぼ かのじょ た
一一ソロモンはパロの娘をダビデの町から連れ上って、彼女のために建
いえ い い しゅ はこ むか ところ しんせい
てた家に入れて言った、﹁主の箱を迎えた所は神聖であるから、わたしの
つま おう いえ す
妻はイスラエルの王ダビデの家に住んではならない﹂。
ろう まえ きず しゅ さいだん うえ しゅ はんさい
一二ソロモンは廊の前に築いておいた主の祭壇の上で主に燔祭をささげ
めいれい したが まいにちさだ
た。 一 三す な わ ち モ ー セ の 命令 に 従 っ て、毎日定 め の よ う に さ さ げ、
あんそくにち しんげつ ねん ど まつり たね い まつり しゅう
安息日、新月および年に三度の祭、すなわち種入れぬパンの祭、七 週の
歴代志下

まつり かりいお まつり ちち


祭、仮庵の祭にこれをささげた。 一四ソロモンは、その父ダビデのおきて

26
したが さいし くみ さだ しょく にん つと
に従 って、祭司の組を定めてその職に任じ、またレビびとをその勤めに
にん まいにちさだ さいし まえ ほうし もん まも
任じて、毎日定めのように祭司の前でさんびと奉仕をさせ、また門を守
もの くみ もん まも かみ ひと
る者に、その組にしたがって、もろもろの門を守らせた。これは神の人
めい さいし
ダビデがこのように命じたからである。 一五祭司とレビびとはすべての
こと くら こと おう めいれい
事につき、また倉の事について、王の命令にそむかなかった。
しゅ みや もとい ひ お
このようにソロモンは、主の宮の基をすえた日からこれをなし終え
一六
こうじ じゅんび しゅ みや かんせい
たときまで、その工事の準備をことごとくなしたので、主の宮は完成し
た。
ち うみ
それからソロモンはエドムの地の海べにあるエジオン・ゲベルおよ
一七
い とき て せんだん
びエロテへ行った。 一八時にヒラムはそのしもべどもの手によって船団
かれ おく うみ こと かれ
を彼に送り、また海の事になれたしもべどもをつかわしたので、彼らは
とも い きん
ソロモンのしもべらと共にオフルへ行き、そこから金四百五十タラント
と おう たずさ
を取って、これをソロモン王のもとに携えてきた。
歴代志下

27
第九章
じょおう めいせい き なんもん
一シバの女王はソロモンの名声を聞いたので、難問をもってソロモンを
こころ ひじょう おお じゅうしゃ つ こうりょう ひじょう きん
試みようと、非常に多くの従 者を連れ、 香 料と非常にたくさんの金と
ほうせき お き
宝石とをらくだに負わせて、エルサレムのソロモンのもとに来て、その
こころ かれ つ かのじょ
心 に あ る こ と を こ と ご と く 彼 に 告 げ た。 二ソ ロ モ ン は 彼女 の す べ て の
とい こた し かのじょ せつめい
問に答えた。ソロモンが知らないで彼女に説明のできないことは一つ
じょおう ち え かれ た いえ み
もなかった。 三シバの女王はソロモンの知恵と、彼が建てた家を見、四ま
しょくたく しょくもつ れつざ けらい じしん しこう ふ かれ
たその食 卓の食 物と、列座の家来たちと、その侍臣たちの伺候振りと彼
ふくそう かれ きゅうじ ふくそう かれ しゅ みや
らの服装、および彼の給仕たちとその服装、ならびに彼が主の宮でささ
はんさい み まった き うば
げる燔祭を見て、 全く気を奪われてしまった。
かのじょ おう い くに こと ち え
五彼女は王に言った、
﹁わたしが国であなた

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