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Fûfu bessei AERA, 2023/01/08

なぜ、世襲議員に夫婦別姓反対が多いのか 前川喜平氏「父親の価値観を受け継いでいる」

夫婦同姓しか選べないのは、実は世界で日本だけ。実生活で不便や不利益を感じている人がこれだ
けいるのに、なぜ議論が進まないのか。同姓か別姓か、どちらも選べる「選択的」であっても、反対
姿勢を崩さない政治家がいるのはなぜなのか。

* * *

元文部科学事務次官で、官僚として 38 年間にわたり国の施策に携わってきた前川喜平さんは、反
対派の国会議員について「確固たる反対意見を持っているというよりも、支援団体の顔色をうかがっ
ている側面が強い」と指摘する。

「特に政治的に大きな影響力を持つ宗教系の団体には、夫婦別姓や同性婚に対し、反対姿勢を明確に
示しているところがある。こうした支援団体の存在が、反対派の声に色濃く影響していると考えま
す」(前川さん)

夫婦別姓に反対派の与党議員には、2 世や 3 世議員といった「世襲」議員も多い。これらの「世
襲」議員に共通する姿勢として、前川さんは「父親の思想をそのまま受け継いでいる人が多い」とも
指摘する。

「私は夫婦別姓が認められないことは、憲法違反だと思います。姓を変えなければ婚姻を認めないと
いうのは、明らかに個人の尊厳を尊重していない。しかし政界を見れば、ここ 20 年で、まるで明治
国家に戻ろうとするような動きが強まったように感じる。戦後生まれであるはずなのに、まるで戦前
回帰のような道徳観や価値観を持った政治家が、夫婦別姓の反対派の中心にいます。その中にも見ら
れる『世襲』議員にいたっては、前時代的な価値観や思考を、父親からそのまま受け継いでいるよう
に見えるのです」(前川さん)

現在、保守派の国会議員は、旧姓の通称使用を拡大することを推進している。19 年度からマイナン
バーカードや運転免許証などで、本名の姓の隣にカッコ書きで旧姓が併記できるようになった。[…]

『結婚の法律学』(有斐閣)などの著書で知られる早稲田大学の棚村政行教授(法学部)は、次のよ
うに指摘する。

「中途半端に通称を名乗れるようにすることで、余計に管理が大変になる。行政上の手続きや戸籍管
理の視点においても、本名と通称を名乗れるようにするより、選択的夫婦別姓に統一したほうがさま
ざまな負担も減るはず」

長年にわたり、さまざまな政策の決定に携わってきた前出の前川さんも、「選択的夫婦別姓によっ
て、行政上の管理やシステムが煩雑になることは考えにくい」と明かした。

「現在の行政のシステムは、戸籍や住民登録によって家族単位で管理されています。選択的夫婦別姓
は、そうしたシステムを変えることではなく、姓を選べるようにするというだけの話。行政の仕組み
を考えるうえで、夫婦別姓が大きな足かせになることは、まずないでしょう。もっと言えば、”家族
単位で管理する”戸籍や住民登録も家制度の名残。戸籍筆頭者や世帯主を通じてではなく、本来は個
人単位で管理すべきものだと思います」(前川さん)

選択的夫婦別姓制度についての国会での議論は、反対姿勢を貫く一部の国会議員によって、なかな
か進まない現状がある。だが現実に、結婚せずに別姓のまま事実婚をしたり、仕方なく夫婦同姓の法
律婚をしてみたものの納得できず、ペーパー離婚して元の姓に戻したり、とりあえず不便な通称使用
でしのいだりしている「現行の制度に困っている」人たちがたくさんいる。[…]

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